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2017年4月17日 平成29年度第一回高齢者医薬品適正使用検討会議事録

医薬・生活衛生局

○日時

平成29年4月17日(月)
18:00~20:10


○場所

AP新橋虎ノ門会議室C・D


○議題

(1)開催趣旨及び検討課題について
(2)その他

○議事

 

○安全対策課長 開会に先立ちまして、傍聴の皆様にお知らせをいたします。傍聴に当たっては、既にお配りしております注意事項をお守りいただきますよう、お願いいたします。また、本日の検討会は従来の取扱いと同様、公開で行うこととしております。カメラ撮りは議事に入るまでとさせていただいておりますので、マスコミの関係者の皆様方におかれましては、御理解と御協力のほどをよろしくお願いいたします。

 まだお越しになられていない構成員の先生もいらっしゃいますが、定刻になりましたので、ただいまから「第 1 回高齢者医薬品適正使用検討会」を開会いたします。御出席の構成員の先生方におかれましては、御多用のところを御出席いただき、また、非常に遅い時間にもかかわらず御出席いただきまして、誠にありがとうございます。

 初めに、本検討会では、第 1 回目の開催であることから、構成員の皆様の御紹介をさせていただきます。名簿に従って、お名前を五十音順に読み上げさせていただきますので、一言ずつ御挨拶を頂ければと思います。秋下雅弘構成員でございます。

○秋下構成員 東京大学の秋下と申します。老年医学会の推薦で参りました。よろしくお願いいたします。

○安全対策課長 荒井美由紀構成員でございます。

○荒井構成員 荒井でございます。日本製薬団体連合会から参りました。どうぞよろしくお願いいたします。

○安全対策課長 池端幸彦構成員でございます。

○池端構成員 日本慢性期医療協会から参りました池端と申します。どうぞよろしくお願いいたします。

○安全対策課長 印南一路構成員でございます。

○印南構成員 慶應義塾大学の印南でございます。どうかよろしくお願いいたします。

○安全対策課長 大井一弥構成員でございます。

○大井構成員 鈴鹿医療科学大学の薬学部から参りました。また、日本老年薬学会の推薦であります。よろしくお願いいたします。

○安全対策課長 齋藤嘉朗構成員でございます。

○齋藤構成員 国立医薬品食品衛生研究所の齋藤でございます。専門は、副作用に関する薬剤疫学、薬物動態、ゲノム解析でございます。どうぞよろしくお願いいたします。

○安全対策課長 島田光明構成員でございます。

○島田構成員 日本薬剤師会から参りました島田でございます。よろしくお願いいたします。

○安全対策課長 林昌洋構成員でございます。

○林構成員 日本病院薬剤師会から参りました。実際にはこの近くの虎の門病院で、今も現役で薬剤師をやっております。どうぞよろしくお願いいたします。

○安全対策課長 樋口恵子構成員でございます。

○樋口構成員 「高齢社会をよくする女性の会」から参りました樋口恵子でございます。会員のうち 65 歳以上がおそらく 7 割を占めていると存じます。よろしくお願いします。

○安全対策課長 平井みどり構成員でございます。

○平井構成員 老年薬学会から参りました平井でございます。 3 月末まで神戸大学医学部附属病院の薬剤部におりました。どうぞよろしくお願いいたします。

○安全対策課長 福井トシ子構成員でございます。

○福井構成員 日本看護協会から参りました福井でございます。どうぞよろしくお願いいたします。

○安全対策課長 松本純一構成員でございます。

○松本構成員 日本医師会の常任理事をしております松本でございます。よろしくお願いいたします。

○安全対策課長 水上勝義構成員でございます。

○水上構成員 筑波大学の水上でございます。私は日本精神神経学会の推薦で参りました。よろしくお願いいたします。

○安全対策課長 溝神文博構成員でございます。

○溝神構成員 国立長寿医療研究センターの薬剤部の溝神です。どうぞよろしくお願いいたします。

○安全対策課長 美原盤構成員でございます。

○美原構成員 全日本病院協会から参りました美原です。どうぞよろしくお願いします。

○安全対策課長 三宅智構成員でございます。

○三宅構成員 東京医科歯科大学から来ました。緩和医療学会の推薦です。よろしくお願いします。

○安全対策課長 山中崇構成員でございます。

○山中構成員 日本在宅医学会から参りました。普段は東京大学におります。よろしくお願いいたします。

○安全対策課長 どうもありがとうございます。本日、北澤構成員は遅れての出席との御連絡いただいておりますが、ちょうど到着されました。北澤構成員でございます。

○北澤構成員 遅れてすみません。北澤と申します。よろしくお願いします。

○安全対策課長 ありがとうございます。あと、伴構成員は御欠席との連絡を頂いております。以上、構成員 19 名中、現時点では 18 名の出席をもって検討会を開催させていただきます。

 続きまして、事務局を紹介します。医薬・生活衛生局長の武田でございます。

○医薬・生活衛生局長 武田でございます。よろしくお願いします。

○安全対策課長 審議官の森でございます。

○審議官 森でございます。よろしくお願いします。

○安全対策課長 総務課長の辺見でございます。

○総務課長 辺見です。どうぞよろしくお願いいたします。

○安全対策課長 安全使用推進室長の上野でございます。

○安全使用推進室長 上野でございます。どうぞよろしくお願いいたします。

○安全対策課長 最後に私、安全対策課長の佐藤でございます。どうぞよろしくお願いします。

 紹介は以上となります。引き続き、開催に当たりまして、局長の武田より一言御挨拶を申し上げます。

○医薬・生活衛生局長 医薬・生活衛生局長の武田でございます。本日はかくも多くの方々にお集まりいただきました。皆様、大変お忙しい先生方ばかりと承知しておりますが、時間調整の上、天気も悪い中、お集まりいただいたことを厚く感謝申し上げます。また、先生方には日頃から医薬行政に御尽力いただいていることにも、併せて御礼を申し上げたいと思います。

 今般、高齢化の急速な進展により、高齢者への薬物療法に伴う問題が顕在化しております。一昨年、医療保険の診療報酬改定におきまして、高齢者に大変多くの薬が出されていることが報告され、様々な診療報酬改定にもつながったことが記憶に新しいです。当時、医薬分業のあり方についても併せて規制改革委員会で議論されまして、現在に至ってもホットな話題だと認識しております。その際、高齢者に大変多くの薬が出されている実態が明らかになったわけですが、具体的に、どのような薬がどのような相互作用で、また、どのような問題が生じていて、どうしていかなければならないかは、やはり専門の先生方に十分御議論いただかなければならない問題かと思います。

 また、御承知のとおり、日本は世界で最も高齢化が進んでおり、かつ、皆保険であり、ほぼ全ての薬にアクセスが保証されている状況です。私どもが世界の先陣を切って、高齢者のポリファーマシー問題に取り組んでいく必要性は高いのではないかと考えております。中でもこの適正使用という問題につきましては、最近、最適使用推進ガイドラインが制度化されて、これから本格的に採用されていくわけですが、身近な薬についても、この適正使用を図っていくことは非常に大きい課題ではないかと思います。そういった中、高齢者の薬物療法に目を転じてみますと、学会におけるガイドラインの作成、それから、各種研究班のほか、個別の医療機関や薬局での対応など、様々な取組が各地で行われているのが実態です。私どもはこういうことを踏まえまして、この検討会には、それらに知見をお持ちの先生方を含めて、幅広い分野から専門家の方に御参集をいただきました。

 この検討会の趣旨、目的になりますけれども、既存の知見や取組を踏まえ、又は、これからそのデータを精査する必要もあるかとは思いますが、現状をまず正確に把握した上で、高齢者の薬物療法に関する安全対策の推進に当たって必要な対策について、御検討をお願いできればと思います。例えば、医薬品相互作用などの安全性や適正使用に関する情報提供とか、実際の臨床現場で役に立つ指針とか、多職種連携など地域で必要な取組とか、是非幅広い視点で御議論いただければと思います。

 高齢化が急速に進行する中、今回の、高齢者医薬品適正使用というテーマについては喫緊の課題であると思いますし、また、国民の関心も高いのではないかと思うので、お集まりの先生方には高い見地から、忌憚のない御意見を頂けますよう、心からお願いをして、私の冒頭の御挨拶としたいと思います。どうぞよろしくお願いします。

○安全対策課長 引き続きまして、本検討会の開催要綱に沿って説明します。皆様、お手元の資料に「高齢者医薬品適正使用検討会」開催要綱という一枚紙があるかと思います。この検討会の目的は、高齢者の薬物療法に関する安全対策を推進する上で必要となる事項について、調査・検討することでして、検討事項としては、高齢者の薬物療法の安全確保のための医薬品の安全性情報提供のあり方等、安全対策を推進するに当たっての必要な事項です。

 構成員等、 3 番の所ですが、本検討会に座長を置き、座長は検討会の議事を整理する、必要に応じて、構成員以外の専門家及び有識者から意見を聴くことができる、特定の必要な事項を調査・検討するために分科会等を開催することができる等の事項がありますので、御確認いただければと思います。

 この開催要綱で、今申し上げましたが、本検討会に座長を置き、座長が検討会の議事を整理すると定められていまして、事務局としては印南委員に座長をお願いしたいと考えておりますが、いかがでしょうか。

(異議なし)

○安全対策課長 それでは印南構成員、座長席にご移動をお願いします。

○印南座長 それでは、御指名によって座長を務めさせていただきます。どうぞよろしくお願いします。安全対策事業におきましては、本検討会は大変重要な役目を担うことになると思いますので、構成員の皆様方、どうかよろしく御検討くださるよう、お願い申し上げます。

○安全対策課長 ありがとうございます。続きまして、座長代理の指名についてです。開催要綱で、「座長に事故があるときは、あらかじめ座長の指名する構成員がその職務を代行すること」と定められておりますので、座長には座長代理の御指名をお願いします。

○印南座長 座長代理は秋下先生にお願いしたいと思います。いかがでしょうか。

(異議なし)

○安全対策課長 それでは、座長代理は秋下先生にお願いしますので、座長代理席のほうに御移動をお願いします。以降の議事進行は座長にお願いします。カメラ撮りはここまでとさせていただきますので、マスコミ関係の方におかれては御協力のほどをよろしくお願いします。

○印南座長 それでは、議事を進めてまいりたいと思います。初めに、事務局から資料の確認をお願いします。

○安全対策課課長補佐 配布資料の確認をさせていただきます。お手元にお配りした資料の一番上に座席表、続いて、議事次第と配布資料一覧、開催要綱、構成員名簿となります。続いて資料がありますので、順に確認します。まず資料 1 「開催趣旨及び検討課題について」、資料 2 「高齢者の適正な薬物療法」、資料 3 「高齢者の安全な薬物療法ガイドライン」、資料 4 「高齢者の安全対策に関して今後の議論の方向性として考えうる論点(案)」、最後、資料 5 「今後の予定(案)」、最後に参考資料として「高齢者が気を付けたい多すぎる薬と副作用」というオレンジ色のパンフレットを付けています。本日の資料は以上になります。過不足や印刷の不調等がありましたらお申し付けください。

○印南座長 よろしいでしょうか。それでは、議事に入りたいと思います。議題 2 は「開催趣旨及び検討課題について」です。これについて事務局より説明をお願いします。

○安全対策課長 本日お集まりいただきました高齢者医薬品適正使用検討会は第 1 回目ですので、この検討会の趣旨及び検討課題等について、事務局より御説明します。皆様方、お手元の資料 1 を御覧ください。

2 ページ、「高齢者における医薬品安全対策の推進について」です。先ほど局長より御説明申し上げましたが、高齢化の急速な進展により、高齢者への薬物療法に伴う問題が顕在化している現状があります。これも一重に高齢者の方々の腎 / 肝機能低下といった身体機能の変化による薬物動態の変化、合併症による多剤投与の増加、多剤投与による医薬品の副作用の増強や薬物間相互作用の発現などの問題が指摘されております。また医薬品の情報は、添付文書等でも提供されておりますが、それぞれ品目ごとの単位で行われており、こういったポリファーマシー、多剤投与の状況の中での複数製剤を包含した注意喚起は、現状行われていないという状況にあります。

 このような状況下で、高齢者の薬物療法に関する安全対策の充実、専門性の強化と多職種連携等の必要な対応について、御議論頂きたいということで、本検討会を開催しております。

 次の 3 ページ以降ですが、背景となる情報について、はじめに紹介します。 4 ページ、高齢者の疾病・病態上の特徴と服薬行動・薬物治療への影響ということで、疾病上の要因や機能上の要因、そしてまた社会的な要因などの高齢者の特徴を踏まえていくと、多剤併用、併科受診、長期服用、過量投与といった問題、またコンプライアンスの低下というような問題、様々な薬物治療への影響というものが指摘されております。

5 ページ、高齢者の医薬品関連の有害事象ということで、欧米でも入院症例では、高齢者の 6-15 %に医薬品に関連する有害作用が認められており、 70 歳以上では 60 歳未満の 1.5-2 倍の出現率ということです。日本でも東京大学の老年病科の入院症例で、ほぼ同様の結果が報告されております。

6 ページ、高齢者の加齢に伴う薬物動態等の変化ということで、ここに幾つか生理的な変化等に伴う要因を挙げております。概して医薬品の血中の濃度が上昇しやすい傾向が、これまでも指摘されてきております。

7 ページ、高齢者において薬剤の効果が増強されることによる有害事象の事例としては、例えば高血圧の薬では低血圧、経口抗凝固薬では出血、糖尿病薬では低血糖ということで、薬が効き過ぎるような形での有害事象が起こり得るということが指摘されているところです。

8 ページを御覧ください。代表的な老年症候群の症状としては、食欲低下、意識障害、認知機能障害、睡眠障害、抑うつ等があり、それらが医薬品の副作用として添付文書に記載されているものをここに挙げております。特に精神神経用剤が 32.3 %、次に循環系の薬、そして抗ウイルス薬という順に、これらの副作用が添付文書上にも記載されている状況です。

9 ページ、上のグラフは、老年症候群の症状毎にそれらが副作用として添付文書に記載されている薬剤を薬効別に集計したもので、抑うつ、せん妄、意識障害等の副作用は、精神神経系の薬に一番多く記載されています。下のグラフにおいては、その精神神経系の薬の中でも、特にメジャートランキライザーに属するものにこういった副作用が記載されている頻度が高いことが示されている状況です。

10 ページ、海外での高齢者の薬剤使用の安全性という部分での報告例を見てみると、台湾の医療保険データベースでの調査においては、催眠導入薬を使用した高齢者の方で、認知症発現リスクが使用していない患者さんに比べて高まるというような報告もあります。

 続いて 11 ページ、米国の調査です。高齢者の方の緊急入院のうち、医薬品の関連ということで、ワルファリン、インスリン、抗血小板薬、糖尿病薬の 4 種類が共通に有害事象の原因として指摘されているというような報告もあります。

12 ページ、翻って医薬品の添付文書での高齢者に関する注意の現状を見てみると、精神安定剤・催眠鎮静薬の例をここで挙げておりますが、高齢者では、例えば少量から投与を開始するなど慎重に投与することという事項や、併用注意ということで様々な医薬品の名前が挙げられているという状況です。

13 ページ、先ほど精神神経系の薬の話が出てきましたが、本年 3 月にベンゾジアゼピン系薬剤の副作用で、承認用量の範囲においても、連用により薬物依存は生じることがあるということで、厚生労働省から医薬品の添付文書の改訂の指示をしております。用量及び使用期間に注意すること、また漫然とした継続投与による長期使用を避けることを追記する使用上の注意の改訂もなされている状況です。

14 ページ以降、様々な処方状況に関するデータです。 14 ページの右側、高齢になるほど投与される薬剤数が増加する傾向があるということで、診療明細書の 1 件当たりの薬剤種類数を示した図があります。

15 ページ、 PMDA において、日本医療情報データセンターの調剤レセプトを分析した結果でも同様の結果が示されており、主な薬効分類群において、 60 歳以上の方でほぼ 1 剤程度の剤数がそれ未満の方よりも多く処方されているというような数字が出ております。

16 ページ、高齢者の内服薬数です。 2 疾病以上の慢性疾患を有する高齢者では、平均 6 剤が処方されています。慢性疾患を合併する認知症の高齢者においては、 6 剤以上の多剤の処方が行われている実態もあります。

17 ページ、高齢者の投薬において、複数の医療機関から、合計 10 種類を超えて投薬されている患者が一定割合存在するということで、右側の例 2 ですが、平均受診医療機関数が 2 機関以上の方で、 10 種以上を投薬されておられる方が、全体の約 3 割程度おられるという状況があります。

18 ページ、多剤処方の問題点ということで、 1 日当たりの服用回数が多いほど、薬剤が正しく服用されにくくなり、服薬アドヒアランスの低下が指摘されております。

19 ページ、こういった高齢者の多剤投与による問題、有害事象を減少させるための取組として、国内外でガイドラインが作成されております。高齢者に対する中止を考慮すべき薬剤のリストということで、アメリカでは「 Beers Criteria 」、欧州では「 STOPP/START Criteria 」というものがありますし、国内では 2015 年に改訂された日本老年医学会の「高齢者の安全な薬物治療ガイドライン」というものもあります。こういった取組については、後ほど構成員からのプレゼンテーションの中で、改めて御説明を頂けるものと思います。

20 ページ、関連する保険診療上の取扱いということで、先ほども紹介がありましたが、平成 28 年度から、薬剤総合評価調整加算・管理料が導入されて、減薬をした際に評価されるような仕組みも導入されておりますし、その他重複投薬・相互作用等防止加算等々の保険診療上での取扱いもなされてきている状況にあります。

21 ページ、 22 ページ、ここからは検討課題です。高齢者の薬剤の適正使用のあり方を、これから検討いただきますが、向精神薬を含む高齢者の多剤処方について、安全性情報を提供して、関係者に適正な使用を促すというものが、 1 つの目標ということになるわけです。今、紹介したようないろいろな医薬品の情報、そして減薬をするようなツールの提供を目指すことになりますが、処方実態や副作用の実態も少し網羅的に把握して、そういった結果も踏まえながら、これらの対策について検討いただくという部分が、検討課題ではないかと思っております。

23 ページですが、以上を踏まえ、この検討会においては、これからの進め方ということで、事務局から提案させていただくと、 2 か月に 1 回程度の開催頻度で御検討をお願いしたいと思います。当面は処方状況や実態の把握、薬物動態や薬理学的な高齢者の特徴の理解、副作用等の状況の把握、また各団体での取組について構成員の先生方から御紹介いただき、その後に検討課題の整理と、検討の方向性についての中間的な取りまとめをお願いしたいと思っております。以降はそれぞれの課題について御検討いただき、平成 30 年度末ぐらいをめどに取りまとめをしてはどうかと考えているところです。事務局からの説明は以上です。

○印南座長 事務局から本検討会の趣旨及び課題について説明いただきましたが、御意見、御質問等があれば、お願いしたいと思います。よろしいでしょうか。それでは議題 2 を終了いたします。

 次の議題は、構成員からのプレゼンテーションです。今回は平井構成員と秋下構成員にプレゼンテーションをお願いしております。まず、平井構成員から「ポリファーマシー対策の現状と取組について」、御説明いただきます。

○平井構成員 前任の神戸大学医学部附属病院の薬剤部で行っていた活動を中心に御報告したいと思います。まずこれは、私の友人で在宅医療を行っている悠翔会の佐々木理事長から頂いた資料ですけれども、ここににこやかな御高齢の女性がいらっしゃいます。右の方は看護師さんですが、このにこやかな方が実は最初、私の友人が在宅を受け持ったときには、要介護度 5 、認知症の終末期と診断されていたのです。

 そのときの処方薬はこれです。決して多くはないのですけれども、見ていただきますと、先ほどの御紹介にもありましたように、向精神薬がすごく多い。それで友人が、これをちょっと整理しまして、アリセプトだけにしたのです。そうすると、この方の要介護度が 1 になり、一人暮らしを継続できるようになったということで、 5 から 1 まで劇的に良くなり、近所のコンビニまでお買物に行けるという状況です。実例を御紹介させていただきましたが、これは 3 年ほど前に頂いたもので、非常に衝撃的なお話です。

 高齢者の薬物治療は先ほどの御紹介にもありましたように、複数疾患、身体機能低下、有害事象の増加ということが問題になるかと思います。ですから、本当に必要な薬や治療を判断するのは非常に難しいというのが事実だと思います。

 例えば、これも病院の薬局に勤めている私の友人が言っていたのですけれども、窓口で患者さんが出された降圧薬を毎日飲むとふらふらするから、 1 日おきに飲んでいるのだと。処方せんを見ますと、その日にまた新しい降圧薬が追加されている。要は血圧が十分に下がっていないということで、ドクターが追加をしているのです。

 こういうことが起こりますと、結局お薬が残って、残薬 400 億とか 600 億とかも言われていますが、こういう問題になってしまう。ポリファーマシー( Polypharmacy )という言葉が先ほども出てきましたけれども、お薬の数が多いということで、何剤以上がポリファーマシーという明確な定義はないのですが、不必要に多いお薬があるということです。また、今、問題が起こっていなくても、潜在的に何かの問題を起こすような処方が組まれている場合も、ポリファーマシーといいます。また、必要なお薬がないということも、これもポリファーマシーのうちに入りますので、適切な処方に近づけるということがポリファーマシーの対応ということになるかと思います。

 ポリファーマシーの何が悪いかということですが、結局死亡率が高まっていくところにつながったりするということであり、一方ではアドヒアランスが下がってしまうということで問題になります。現在、ポリファーマシーは非常に関心を持たれ、特に薬剤師の間では関心が高まっており、また総合内科医の先生のほうでも関心が高まっております。様々な本が出ていまして、愛知医科大学の宮田先生は「ポリ・ポリファーマシー」ということもおっしゃっています。

 なぜポリファーマシーが起こるかということなのですけれども、これには大きく分けて処方する医師側の問題、患者側の問題、そして社会的背景があるかと思います。やはり各疾患についてガイドラインがありますので、そのガイドラインに沿ってお薬を出してしまうと、どうしても処方薬は増えてしまう。それから患者さんにしても、お薬をもらうということが安心感につながるといったことがあるかと思います。やはり高齢化社会という社会的背景というものも、非常に大きいのではないかと考える次第です。

 例えば、ポリファーマシーがなぜいけないかということで、 1 つの例として処方カスケードというものがあります。古典的な例を御紹介しようと思います。例えば御高齢の方が食欲不振なので、スルピリドが処方されます。そうしますと、スルピリドの副作用でふらつきや振戦、震えが起こります。そうすると、「年齢からみて」こういう症状が出るのはパーキンソン病が起こしたのではないかという判断がされ、抗パーキンソン薬が処方されます。その結果、認知機能が低下したり、せん妄が起こったりする。そうするとアルツハイマー病の治療薬が処方されて、更に食欲不振が起こってしまい、処方薬も増える上に患者さんの状態はますます悪くなる。

 こういうことがよく言われるのですけれども、お薬でこうならないために、やはり十分に注意する必要があると思います。様々な副作用で、運動障害を起こす薬や筋力低下を起こす薬、低血圧、低血糖を生じるような薬、様々あります。これを無自覚に使っていますと、転倒、骨折、寝たきりと、これは私の父親なのですけれども、こういう状況になってしまったりもするのです。

 一方で「ポリ・ドクター」というような言葉も言われておりまして、例えば 60 代の女性でアトルバスタチンを高脂血症で服用しているのですけれども、肝機能異常で自己抗体が上がるということで、肝臓の専門のドクター、それから膠原病の専門のドクターに診察していただいて、「自己免疫性肝疾患」という診断を受ける。すると、それぞれのお薬が増えて、ステロイド等が投与されるわけです。この方は狭心症も持っていまして、ヨードアレルギーがあるので造影ができないということで、狭心症のためのお薬もずっと出ていました。循環器の内科のドクターは狭心症の副作用予防のためにスタチンはどうしても必要だということになるのですが、この方はステロイドを減量する度に発熱や疲労感が出現するということでした。

 これを院外処方されている薬局の薬剤師さんが、ひょっとしてアトルバスタチンの副作用なのではないかと考えて、その病院内の薬局の薬剤師にその話をした結果、その薬剤師から循環器の先生のほうにお話が行って、スタチンの中止から肝機能異常が良くなったというような例が実際にありました。

 ポリファーマシー、お薬がどんどん増えるという 1 つの原因として、ドクターが前医の処方に対して手を付けない、他院の処方に踏み込めないという状況があるかと思います。また、お医者さんはよくおっしゃるのですけれども、先輩とか顔の見えないドクターに対しては気を遣うということです。例えばポリファーマシー外来をされています栃木医療センターの矢吹拓先生などは、ポリファーマシー外来をする前に、その地域の医師会の先生方に、非常に丁寧な文書を、もちろん病院長の許可を得てですけれども、病院長のバックアップの下に文書を出して、それからようやく始めたというようなことがあります。

 これは私自身の話なのですけれども、神戸大に 10 年前に着任した当初、入院もそうなのですが、特に外来処方を見ますと、処方薬の種類が非常に多くて、また量の調節も非常に微妙な方がいらっしゃる。そのために診察に時間が掛かって、処方が出るのが終業時刻を大幅に超えて、院内調剤でやらなければいけないという状況があって、何とかできないのかなと考えたのです。

 実際、外来の投薬の様子を見ますと、左に見えますように、レジ袋いっぱいにお薬を持って帰る御高齢の方がこのようにいらっしゃる。両手に抱えているような方もいらっしゃいます。最近少しは減りましたけれども、湿布薬を何キロと持って帰るような方もいらっしゃったということです。

 一方で病院の執行部からは、経営面から「薬剤費を縮小せよ」ということで、値引き交渉だけでは対応できないので、先ほども申し上げましたように、必要のない処方が行われていないかということを考え、こういう提案をいたしました。執行部会議に「ポリファーマシー」の説明をして、ポリファーマシー是正のためのワーキンググループを提案したわけです。また院内の安全講習で、ポリファーマシーについて繰り返し説明もしました。しかし、なかなか病院として動いてくれないので、薬剤部で対応しようということで始めた結果を、この後、御紹介したいと思います。

 処方適正化、ポリファーマシー対応のツールとして、先ほども御紹介がありましたが、 Beers Criteria 、それから STOPP Criteria 、そして日本老年医学会のガイドライン等があります。それを活用して、まず、私たちはいろいろ見たのですけれども、欧州の STOPP Criteria が日本の現状に合っているのではないかということで、 2014 年からそれに取り組みました。

 その結果を医療薬学に発表したのですが、 2014 年後半 6 か月間の調査結果です。このときは STOPP Criteria(Ver.1) でした。今は Ver.2 になっておりますけれども、 Ver.1 でのまとめを御紹介したいと思います。 65 歳以上の入院患者を対象に、一部の病棟から始めました。最初は整形外科の整形、形成のところから始めました。そうしますと、 STOPP Criteria に該当した患者さんは、やはり該当しない患者さんに比べて、服用薬剤の数が多かったのです。また女性のほうが割合が多かったのです。これは病棟の特徴ではないかなと考えます。それから、服用薬剤数の多い方ほど、 STOPP Criteria 、すなわち処方の適正化が必要な範疇に当てはまることが分かりました。

 そして「 PIMs 」というものは、潜在的に不適切な処方という、あまりいい日本語訳ではないのですが、要するに修正が必要なお薬のことです。その種類として一番多かったものが NSAIDs 、非ステロイド性消炎鎮痛薬です。これは整形外科から始めたということがあるかと思います。それからカルシウムブロッカー、ベンゾジアゼピン、βブロッカーといったようなお薬が、 STOPP Criteria に当てはまったということです。このような感じでお薬がどんどん残ってしまうのです。

 どういう形で薬剤師がスクリーニングをしたかという流れがここに書いております。これは「 STOPP Ver.2 」と書いていますけれども、 2015 年からは STOPP のバージョンが変わりましたので、 Ver.2 に従って修正すべき処方をスクリーニングいたしました。そして、薬剤師はその対象となる処方薬を見つけると、主治医と協議して、可能であれば処方の中止・変更を行い、変更された場合は慎重に処方を行ってまいりました。

STOPP Ver.2 が英文で出ておりますので、薬剤部で日本語訳したものの一部を紹介しております。この STOPP Ver.2 で適用した結果が、つい最近英文誌に掲載されましたので、御興味のある方は御覧いただきたいと思います。

 そのまとめなのですが、 2015 4 月から 2016 3 月までの調査結果です。病棟が増えています、心臓血管外科や循環器内科等々です。まだ全病棟でやっているわけではありません。そこで修正が必要な対象薬としてはベンゾジアゼピンが一番多かったのです。そして NSAIDs 、それから SU 薬、これは糖尿病の薬です。それからプロトンポンプインヒビター、抗コリン薬、抗血小板薬などが挙がってまいりました。その検出されたお薬に関して 45 %が修正となっております。

 日本老年医学会により 2005 年に、最初、ガイドラインが出されたのですが、 2015 年に改訂されました。これに関しては、後ほど秋下先生から御紹介があります。

 私たちは STOPP Ver.2 と、先ほどの高齢者ガイドラインの両方を適用し、 2015 年の後半 6 か月ほどの間の比較なのですが、 2 位のお薬は少し違うのですけれども、 STOPP Criteria のほうでは、ベンゾジアゼピン系が一番多く、高齢者のガイドラインでもベンゾジアゼピン系が一番多かったという結果になっております。

 これらを突き合わせますと、やはり高齢者のベンゾジアゼピン適正使用が望まれるということを強調したいところです。また H2 遮断薬、それからマグネシウム製剤の使用には、高齢者の場合は要注意であることが分かりました。やはり病態に合わせた処方薬の調整が必要であるということで、ポリファーマシーは減らすことだけが目的ではないということを強調したいと思います。むしろ、なぜお薬が残るのか、なぜ残薬が生じるのかということを、きちんと明らかにし、その原因を潰していくことが大事かと思います。

 我々の取組で処方を適正化し、では患者さんはどうなったかということですが、処方は変更されても特に「変化なし」が多いということで、劇的に良くなったわけではないので、少し残念なのですが、悪化しないということですので、これは良いことだなと考えています。ただ、個別の症例で、例えば腎機能が改善するといった例もありますので、今後、地道に続けていく必要があるかなということで、その内容をまとめたものを右に出しております。

こういう取組をやりますと、大学病院というものは超急性期病院ですので、入院期間も短く、その処方の調整を続けていくことがなかなか難しいので、実際の例としてこういうことがありました。

70 代の女性で、変形性膝関節症の手術を目的で入院された方です。術後のせん妄を防ぐためにベンゾジアゼピンとシメチジンを変更いたしました。その結果、睡眠は悪化することなく、また術後のせん妄もなく、無事退院という運びになりました。退院後、かかりつけのお医者さんにお薬が変更になったという旨を伝えるよう、お薬手帳にも書いてありますが、「お医者さんに伝えてくださいね」と口頭で説明したのですけれども、半年後に再入院で反対側の膝の手術をするときには、お薬が元どおりに戻っていたということです。これは病院としても、きちんと主治医宛てに文書を送らなければいけなかったなと、ちょっと反省しているところです。

 こういったことを続けていくためには、どうしても連携ということが必要かと思います。神戸大学附属病院では薬剤部として、地域の薬局と連携することで取組を行っております。例えば近隣の薬局さんに来ていただいて吸入指導の実施をしたり、あるいは、実際に薬局の薬剤師さんに来ていただいて、抗がん剤の調整の実習をしていただくといった連携をやっています。

 また、ここに挙げているような、病診薬連携の内容を昨年の 9 月から行っており、疑義照会の簡素化プロトコール、あるいはトレーシングレポートといったものを活用して、情報の共有をするようにしております。実際にこれは疑義照会の簡素化プロトコールなのですが、プロトコールに基づいて定型的な疑義照会に関しては、最初の 1 回は疑義照会していただくけれども、それ以降はトレーシングレポートを使って事後報告にしていただくといったことをしております。その内容は患者さんのカルテにスキャンして貼り付けるようにしていて、主治医が後で見られるようになっているということです。このようにしますと、診療中に疑義照会が何度も掛かってきて、ドクターの手を煩わせることが減ったということです。

 院内医師にアンケートをいたしますと、疑義照会の簡素化のプロトコールを知らないドクターが結構多いのですが、 3 分の 1 のドクターは知っているということです。その負担はどうなったかというと、知っている先生に関しては疑義照会の負担が減ったという者が半分ぐらいいたということです。院内の全員のドクターに周知することはなかなか難しいです。

 でも、こういったトレーシングレポートに関しては、ドクターも今後活用したいと積極的に評価してくださっているので、このような形で地域の薬局と大学病院が連携して、先ほど言ったような、ポリファーマシーの是正も少しずつ広げていければいいなと考えている次第です。

 下の写真はポリファーマシー( Polypharmacy )の「 P 」というサインなのですが、これを患者さんとの合言葉にしようと。なぜこんなことを言うかというと、この講演をしたときに、「じゃあ薬局に行ってこのサインをしたら、お薬を調整してもらえるのですか」と一般の方が質問されましたので、こういった形で Polypharmacy の「 P 」を患者さんとの合言葉にしたのだと考えている次第です。以上です。どうもありがとうございました。

○印南座長 どうもありがとうございました。ただいまの御説明に関して、御質問や御意見等がありましたらお願いします。

○松本構成員 日本医師会の松本です。 33 のスライドに、ポリファーマシーと残薬というのが出ておりましたが、ここは残薬の話をする場ではないという理解でよろしいですか。これは事務局へお聞きしたいと思います。

○安全対策課長 残薬の話をする場ではないのではないかという御質問ですね。基本的には高齢者の医薬品の適正使用のための対応を検討するというのが、この検討会の趣旨ですが、残薬の話をするのが適切かどうかというのは、現時点の議題のコンテクストの中からは判断しかねるかと思っております。今後、必要であれば議論する必要があるのでしょうし、現時点では議論の対象はまだよく分からないところです。

○松本構成員 残薬の話をし出すと長期投薬の話まで広がっていくので、できれば残薬については、必要であればまたしていくということで、ここでは多剤投薬のことでお願いしたいと思います。

○印南座長 ほかにありませんか。

○三宅構成員 医科歯科大学の三宅と申します。大変勉強になりました。私は緩和ケアでやっています。これは私の個人的な感想かもしれませんが、老年の先生方、総合診の先生方、それに追いかけて緩和ケアが、割と横断的にこういう立場でやっています。実際に私も老年の先生や総合診の先生がすごく頑張っていらっしゃって、それができるのかなという印象があるのです。神戸大学では実際に老年病と総合診の実態は、どういうようになっているか教えていただけますか。

○平井構成員 老年内科は数年前になくなってしまいました。総合診療は、私たち薬剤部にも非常に協力してくださって、一緒にやっています。ただ、横断的にやってくださるかというと、まだまだ少ないということで、どうしても科別の対応になってしまうのです。これは現状に逆らうような状態ですけれども、大学病院としてなかなかものが言いにくいところがあるのです。お分かりいただけるのではないかと思います。

○松本構成員 平井先生には本当に分かりやすく御説明いただきました。ちょっと教えていただきたいのです。いわゆるポリファーマシーで、今は古典的なものとして出されていますが、今こういうことがあるかどうか。薬を出していてある症状が出てきたら、普通はまず副作用を考えると思うのです。全てが全てこの古典的なものではないと思いますし、先生方みんなが副作用に気が付くわけでもないと思います。その割合は出されていますか。

○平井構成員 割合というものを調べたデータは、なかなかないのです。私たちの経験からすると、大学病院で見た感じでは、それほどはないのです。ただ在宅に行っているような友人とか、訪問看護師さんなどから聞きますと、薬を減らすことで劇的に良くなったという例もありますので、やはり副作用が見過ごされている例もままあるのではないかと考えている次第です。

 あと、病院で一番問題になっているのが転倒・転落です。我々から見ますと、安易に眠剤が出されている。特にベンゾジアゼピンが出されていたので、非ベンゾはあるのですけれども、病棟の配置薬からベンゾジアゼピンをなくしました。ですから、あまり安易にベンゾジアゼピンを使わないようにという対応をしております。

○印南座長 今のは古典的な処方カスケードのほかに、そうでないものもという趣旨だと私は思ったのですが。

○秋下座長代理 東京大学の秋下です。先ほど事務局から出された資料の中に、老年症候群の話が出てきました。高齢者の場合は老化とか様々な病気との関係で、いろいろ出てくる症状があって、これを「老年症候群」と呼んでいるのです。ここに挙げられている症状が、薬で悪くなることがあるのです。よく知られている副作用は薬疹とか、転倒といったはっきりしたイベントに表れます。出血や重症の低血糖もそうです。先ほどの救急受診の話と絡めて、これも資料として提示されましたけれども。一方、もともと持っていた症状、例えば抗コリン薬によって便秘がちょっと悪くなったというようなことは、なかなか気付きにくいので、その目で見ないと分からない。要するにやめてみないと分からない。やめたら良くなったということで、やはりこの薬が悪い作用をしていたということに初めて気付くことが多いのです。ですから若い人の副作用と違って、高齢者の副作用というのは分かりにくいという特性があるかと思います。

○池端構成員 平井構成員のプレゼンは、私自身も非常に納得できることが多く、ありがとうございました。ちょっときつい言い方をさせていただくと、今日は慢性期医療という立場で来ていると思いますけれども、ポリファーマシーの発生源というのは、実は急性期ではないかと思っているのです。臓器の専門の先生方は本当に一生懸命です。しかし足し算の処方でどんどんされていて、それがなかなか調整できないままに慢性期や在宅に下りてきて、そこで大変な思いをする。患者は急性期の先生方が出した処方に対して、変更されることにすごく抵抗があったりして、なかなか難しい部分があるのです。せっかく今、神戸大学で素晴らしい取組をされていますので、全科横断的にそういうアプローチをされていたのかどうか、その辺の対策や反応はいかがだったか、もし分かれば教えていただきたいと思います。

○平井構成員 最初は本当に一部の科から始めたのですけれども、今はかなりいろいろな所に広まっています。というのは、入院患者の持参薬を薬剤師がチェックすることがありますので、それがまずいい機会なのです。そこのところでほぼ全科です。今は一部の科、例えば小児科などでは必要ないということで、大体そういうようにやっています。どうしても処方薬の数が増えるのが循環器内科で、そこには我々もかなり入っていたのですけれども、病状がどんどん変わりますので、なかなか薬を減らすのは難しいということで、やはり地域との意思統一と言うのですか、地域連携をこれまで以上に進めていかないと、この対応は難しいかと思っている次第です。

○島田構成員 今の平井先生のお話も、実態を非常に把握されている内容だと思います。以前に比べるとこういった症例は少なくなったといっても、長期投与の関係から、実際に多いとか少ないということの前に、家庭においてどういうように飲まれているかという実態の把握も、まだまだし切れていない。薬局で今は残薬の確認から糸口を明らかにしつつあるところですけれども、やはり実際の治療の効果を判断する前に、実態を調べる必要がまだあるかと思います。在宅などに行きますと、決め付けてはいけませんけれども、コンプライアンスがきちんと守られてない場合があります。これは薬局側の服薬指導や確認が、まだまだ足りないところかと思います。先ほどもお話がありましたように、足していくことは割合簡単ですが、減らすために必要なエビデンスについては、これから情報を取っていきたいと思っているところです。

○水上構成員 平井先生、どうもありがとうございました。最初の資料 1 と、平井先生のお話の両方に、向精神薬がいろいろ出てきます。特にベンゾジアゼピンの問題も出ています。この 29 ページの図を見ますと、ベンゾジアゼピンの頻度が一番高いですよね。しかも、これは精神科ではなく、ほかの科のデータですよね。だから向精神薬の問題というのは非常に大きいけれども、精神科の問題と言うより全科的なというか、むしろ精神科以外の先生方にこの重要性を十分知っていただくことが必要で、その辺は非常に意味のあることではないかと思います。

○平井構成員 精神科の先生方は向精神薬の使い方を熟知されているので、私たちもそれほど問題になることはないのです。精神科でポリファーマシーの対応をしているのは、非向精神薬の問題で、薬剤師がサポートしたりというのはやっています。ただ、先生もおっしゃるように、精神科医でない先生方によって、特に高齢の方で睡眠に問題のある方が要するに「夜眠れない」と言うと、安易にベンゾジアゼピンが出てしまうという現状がしばしばあると思います。その辺りはやはり注意を喚起するということで、我々も言っているのですけれども、精神科の先生方からも是非アピールしていただいたらいいかと思います。

○印南座長 ほかにありませんか。よろしいですか。それでは、続いて秋下構成員から、「高齢者の安全な薬物療法ガイドライン」についての説明をお願いします。

○秋下座長代理 資料 3 に従ってお話したいと思います。「高齢者の安全な薬物療法ガイドライン」というのは、先ほどの事務局の資料にも、平井先生の資料にも出てきた老年医学会で出しているガイドラインの名称です。特に 2015 年版に基づいたお話と、それに付随する問題をお話させていただければと思います。

 先ほど平井先生からも御提示いただいたように、このガイドラインの中では高齢者の処方適正化スクリーニングツールとして、特に慎重な投与を要する薬物のリストという、名前どおりのリストがあります。高齢者では中止も検討するような薬物という意味合いになってくるかと思います。もう 1 つは、開始を考慮すべき薬物のリストというのを作っております。先ほど水上先生から、向精神薬は誰が使っているかというお話もあったかと思います。専門領域に関しては、ある程度知識を持ち、危険も考えながら使っているという部分があるので、なるべくそうではない所でこういうものを参照いただきたいということで、それを対象にしています。

 それから、薬剤師の方にはやはり処方をきちんと見ていただいて、処方の見直しの提案などもしていただく対象だろうということで、利用対象にしていますし、看護師の方も服薬管理においては非常に重要です。特にコミュニケーション能力が高いことから、患者さんがどれぐらい飲んでいるかということを把握されているので、ここも対象にしています。そういうこともあって、基本的には医師向けのガイドラインなのに、「薬剤師の役割」という章を入れています。また、高齢者と言えばいろいろな医療現場があるということで、在宅医療や介護施設の章も設けているというのが、 1 つの特徴ではないかと思います。

 そもそも考えてみると、高齢者の医療というのはそんなに簡単ではないわけで、医薬品の適正使用という前に、いろいろ考えなければいけないこともあるわけです。その医薬品のエビデンスがあまりないこととか、先ほど急性期病院の話が出ましたが、多病である高齢者にどうするのか、安全性の問題は正にこの検討会の重要課題ですし、現場も様々であるということ。

 そういうことを受けて、実はこのガイドラインの前段階で、高齢者に対する適切な医療を考えてみようということで、池端先生の所属されている日本慢性期医療協会、あるいは日本医師会にも協力を得て、総論的な指針を作っております。その中の 4 番目の薬物療法の基本的な考え方として、薬物有害事象や服薬管理、優先順位に配慮した薬物療法を理解し実践するという到達目標を入れております。これは別に必ずしも医師向けに作ったものではありませんので、全ての医療に関わる職種の方々に読んでいただきたい、コンピテンシーを身に付けていただきたいという視点で作ったものです。 1 3 5 6 というのは、いわゆる地域包括ケアで全部言われているものが入っていて、高齢者になれば、そういう視点はやはり必要であるということです。

 そういうことの次に作ったのが、 4 番の薬物療法を外出ししたガイドラインです。このガイドラインの一番のターゲットがポリファーマシーです。このガイドラインにグラフを引用しています。ポリファーマシーというのは先ほど平井先生がおっしゃったように、必ずしも数によるものではないのですが、やはり現場では目安が必要です。そこで我々のデータを解析してみますと、 6 種類以上から明らかに薬物有害事象、つまり副作用が増えるということです。こういったものは疾患数やいろいろな因子で調整した多変量でも残ることから、 1 つの目安として 6 種類というのが引っ掛かるかと。

 ただ、一方で東大病院などは特殊な現場という考え方もできるかもしれません。ある診療所で見たところ、 5 種類以上からその後の転倒リスクが多かったということで、ガイドラインの中では 5 ないし 6 種類以上をポリファーマシーの目安として考えたらどうだろうというように提案しています。ただ、あくまでもこれは目安であって、必ずそれを超えたら絶対にいけないというものではありません。

 これは最近、東京大学の高齢社会総合研究機構で行っている柏市の研究で出てきたもので、今度行われる日本老年薬学会で発表する予定になっています。ベースラインのときに、これは 6 種類以上ということで多剤を定義していますけれども、そういう方はその後、要介護に移行するリスクが高いということです。そして様々な因子で調整しても、 5 種類以下の人に対して 6 種類以上の人は、ハザード比が 2.4 倍になるということです。先ほど平井先生から、薬をアリセプトだけにしたら要介護 1 になったという話がありました。これは観察研究ですけれども、こういうデータから介入に生かしていくということも、今後は考えなければいけないデータかと思っているところです。

 そもそもポリファーマシーの一番の要因というのは、平井先生がおっしゃった多病ということです。ですから違う視点が必要で、病気単位で薬を出すということでは、この問題は解決しないかと思っています。若い人であるエビデンスが高齢者に当てはまるのか、症状を良くする薬が効いているのか、何でもかんでも薬ということではないだろう、やはり高齢者の生活の問題というのは、きちんと見なければいけないだろうと。そして何より優先順位というのが重要です。これには様々な問題があります。特に高齢者ですので、認知機能や ADL のようなものとか、例えばたくさんの薬の服用を介助してくださる家族がいるのか、本人の考え方も非常に大切で、こういうことで優先順位を決めていくということになろうかと思います。

突き詰めていきますと、薬を使う場合には、こういう天びんを考えるということではないかと思います。ちなみに益と不利益(ベネフィットリスクバランス)を問うことは、ガイドライン作成のためのガイドラインである Minds に入っています。いわゆる薬物有害事象は副作用だけではないと。 1 日に 3 回飲むとか、毎日注射を打つといったことは負担が大きくなりますし、やはりコストが高い。国全体の問題もあるかもしれませんが、個人の払う医療費や薬剤費というのも今、高齢者の生活を圧迫するような状態もありますので、そこまで考えてあげる必要があるということだと思います。

 さらに、そもそも高齢者では優先順位が低いとされる薬物があります。これは先ほど平井先生から、 PIMs と略したものとして提示されたものです。 Potentially Inappropriate Medications というのを略すと PIMs となります。これには各国のガイドラインがあるというのも、お話があったとおりです。ちなみに我々のガイドラインは対象を 65 歳以上ではなく、 75 歳以上のいわゆる後期高齢者としています。老年医学会では 74 歳までは准高齢者という提言をしておりますので、これが高齢者だと言えば高齢者です。あるいは 75 歳未満でも要介護の一歩手前の方、ないし要介護の方という薬に弱い方を対象にしているとか、急性期はいろいろあるので、ここは慢性期を対象にしているとか、長期投与を対象にしているといったことがあります。

 どのようなものが入っているかということですが、 29 系統の薬物を、各専門領域別の先生方に、システマティック・レビューを行って選んでいただいております。ここでは 1 つ、認知機能の低下を挙げています。先ほど、老年症候群として出ているものが多いと言いました。例えば一部の薬物は認知機能を低下させるとか、認知症の発症リスクになるということもあります。ベンゾジアゼピン系の睡眠薬・抗不安薬は、転倒・骨折も起こしやすいわけです。

 そこで高齢者に悪い薬と言えば、ベンゾジアゼピンを含めた向精神薬と、抗コリン系の薬物だと思います。特に抗コリン系の薬物は、例えば花粉症で耳鼻科に行ったら抗ヒスタミン薬が出るとか、精神神経系の薬はそういう診療科で出るとか、頻尿で泌尿器科に行ったら過活動膀胱の抗コリン薬が出るとか、不整脈で循環器内科に行ったら抗コリン系の抗不整脈薬が出るということです。「ポリ・ドクター」という言葉も出てきましたけれども、ポリ・ドクター、ポリファーマシーということと非常に密接に関わっていて、 1 つだと、とどめを刺さないのですけれども、こういうものが累積することによって力価が上がると、認知症やアルツハイマーになりやすくなるという報告もあります。ですから見ていく薬剤としては、こういうところも 1 つのポイントではないかと思っております。

 それ以外にベンゾだけでないという、先ほど平井先生のお話もありました。これも転倒・骨折のリスクが多いので、漫然と長期使用はしないで、なるべく少量にとどめるという 3 月の添付文書の改訂が、正にこの辺のポイントかと思います。あと、平井先生のお話で出てきたスルピリドとか、それから抗血栓薬が、高齢者では出血を起こしやすいということから、本当に必要な時期は使うにしても、それを漫然と長期間使わないという考え方が、最近の循環器の世界でもいろいろ出てきています。利尿薬についてもそうです。やはり漫然と使うのではなく、病態が落ち着いたら少し減量を考えると。低血糖を起こしやすい糖尿病薬としては、スルホニル尿素薬があるし、鎮痛薬の NSAIDs も、本当に痛いときだけ使えばいいのではないか、痛くなくなっているのに使い続けているというのは本当に必要なのか、もう病気が良くなっているかも分からないじゃないかということもありますので、こういうものを提案しています。

 このようなガイドラインを作りますと、世の中的にはかなり誤解を受ける面があり、こういうフローチャートを後で付けさせていただきました。いろいろ考えるポイントはあります。もちろん減量・中止することもあれば、ほかの薬に切り替えることもあれば、そのまま「やはりこの人にはこの薬が必要でしょう」というものもあるので、必ずしも見つけたら即中止というものではありません。このリストは薬物有害事象の回避であり、アドヒアランスの改善もターゲットにしております。

 今回、医薬品の適正使用検討会の一番のターゲット、特に今日はポリファーマシーがテーマですが、行き過ぎた減薬とか、高齢者への差別的な医療というのも時に見られます。そういうものは本当に必要な薬の処方を制限してしまう結果にもつながることから、「開始を考慮するべき薬物のリスト」というのも作らせていただいております。あくまでもまだ本当に試み的に、ごく僅かの薬が入っているだけです。ワクチンが 2 つも入っていて、これは内服薬じゃないよねという感じですけれども、例えば認知機能障害のあるパーキンソン病患者には、抗パーキンソン病薬の中でも L- ドパをまず使いましょうとか、誤嚥性肺炎のリスクが高い高血圧の方には、 ACE 阻害薬を使いましょうといったことを、エビデンスに基づいて提案しています。

 平井先生は医師免許もお持ちですけれども、薬剤師の立場から御提案いただいたかと思います。こういうガイドラインは作ったものの、私は医師の立場からいろいろな問題を感じており、以降にそのポイントを挙げています。やはりポリファーマシーは、ポリ・ドクターにも関係があると思います。一元管理と多職種協働をきちんとやらないと、やはりこの問題は解決しないかと思っています。特に大都市部では医師が近くにいますので、ちょっと電車に乗れば名医と言われる人がいるということで、あちらこちらそれぞれの病気ごとにかかっています。それは若いうちとか、高齢者でも元気なうちはいいでしょうけれども、それがフレイルと呼ばれる状態になったり、ちょっと認知機能が落ちてきたりしたときにも、そのままでいいのかということになると思うのです。そういう意味で、そこはかかりつけ医の下できちんと管理をされた処方、適正化された処方というのがあるのだろうと思っています。

 ちなみに、これは介護付有料老人ホームのデータです。介護付有料老人ホームの方は要介護なので、薬は少ないのかと思ったら、平均服薬数が 6 7 種類ということで非常に多いのです。しかも当たり前のようなことですが、複数の医療機関にかかっていると、 7 種類以上である方が非常に多いのです。フリーアクセスというのは日本の医療制度のいいところですけれども、そこら辺に限度もあるかなという感じがいたします。

 こういうことは、厚労省側からは言いにくいかと思いますが、厚労省側も手をこまねいているわけではありません。特に認知症の方の主治医の機能を評価されるようになりましたし、その前から、地域包括診療料とか、地域包括診療加算といったものを取り入れて、平成 28 年度には緩和して、取りやすくされているかと思います。

 ただ、そういうことを実践していく上でも多職種協働は必要です。特に、日本では処方ができるのが医師だけという現状がありますし、調剤は薬剤師、普段患者に一番近い所にいるのは看護師ということで、この辺はかなりキーパーソンになります。また、処方の見直しということになると、センターラインは医師と薬剤師ということで、こういった連携をどう作っていくかがポイントです。ちなみに、このガイドラインの中には薬剤師の役割ということで、クリニカルクエスチョンとして 9 つ立っています。様々なエビデンスに基づいて、基本的に全て推奨度 : 強になっており、外来でも入院でも薬剤師はいろいろなことをやらなければいけないということが読み取れます。

 先ほどのお話にあった薬剤総合評価調整加算とか管理料というのは、かかりつけ薬局だけでなく、かかりつけ医と両方にインセンティブが行くような仕組みになっています。これをうまく利用すれば、何となくインセンティブに誘導されてということになるかもしれませんが、ポリファーマシー対策が進むはずだったと思うのです。それが 1 年たったところで、まだそれほど進んでいないという危機感からこの検討会が立ち上がったのかなと、私自身は思っております。実際に我々もただぼーっと見ているだけでは、この問題は解決しないということから、医師・薬剤師連携ガイド作成をターゲットにして、 2 年間の AMED 研究をやっております。まず、この中ではしっかりした実態調査をやろうということもやっておりますが、今後、検討会の中でもそういったことをやっていただけると、大変有り難いかと思っています。最終的には連携ガイドを作成するという予定です。

 東大も取組をしているので、御紹介したいと思います。神戸大学と同じように今、大学病院等の大病院では病棟配置の薬剤師がおります。東大だと 2 病棟に 1 人という配置で、持参薬評価テンプレートというものを作って対応しています。特に今回、薬剤総合評価調整加算が導入されたことから、まずは薬剤師がきちんと総合評価をすると。数の問題とか飲みにくいとか、先ほどの老年医学会のリストに該当するとか、服薬管理能力などなど、こういったものでチェックが入れば検討する必要があるだろうと。

 その上で、こういう薬は見直したほうがいいのではないかという提案を頂いて、主治医に伝言メールが来ます。主治医はそれを見て反応するか反応しないかということになります。一応確認はするのでしょうけれども、反応というのは、要するに処方を変更するかどうかということです。例えば、反応して減薬がなされていれば、どういう理由で減薬したのかもきちんと書く。先ほど平井先生から、元に戻ってしまうというお話がありました。これはなぜ減薬したのかということが、きちんと伝わっていないからだと思います。私は、それが退院時のかかりつけ医への情報提供書にきちんと書かれていれば、そういう理由で変えたのねということで、そのまま生かされるのではないかと思っています。ただ、それは医師から医師への話で、病院の薬局から地元の薬局へというのも必要ではないかと思っております。

 ちなみに、この仕組みを導入することで、左側がその対象になって検討の「必要性あり」と判断したもので、右側が「必要性なし」と判断したものです。もともとの薬の数も違うのですけれども、「必要性なし」ではその後の減薬はみられないということです。検討の「必要性あり」ということで返すと、平均 1 種類の減薬がなされていて、 2 種類以上減薬した人が 40 %です。先ほどの加算の対象者は、「必要性あり」の中では 4 割ということになります。ちなみに東大では全ての科にはまだ行っておりません。 4 科でパイロット的に始めているという状況です。

 もう 1 つ問題なのが、やはり患者側の問題です。これにはきちんとした情報を、まずお伝えするということが重要かと思います。先ほどの AMED の研究の中で、このようなパンフレットを作りました。今日、皆さんの配布資料の中にその実物を入れていただいています。一般の方にも、まずどういうことを考えなければいけないのかと。今までは薬に結構依存していたのに、週刊誌などで「こんな薬は良くないよ」と書かれると、急に飲むのをやめてしまって、処方している医師は全くそのことを知らないという実態が結構あるのです。そういうことがないように、こういうパンフレットを作成し、学会の HP などに掲載し、必要に応じて配布もしているということです。やはり一般の啓発というのは、今日もメディアの方も来られていると思いますけれども、そういうところから是非お願いできたら有り難いと思っています。

 それから、やはりエビデンスが足りないということで、今後はここをしっかりと、この検討会から課題を挙げることで、研究等につながっていけばいいと思っております。この検討会では今回、ポリファーマシーをやりますし、次は用法用量の問題も取り上げていただけると伺っています。腎機能の話はよく出てくるのですけれども、それ以外にもかなり副作用を起こしやすい対象があります。認知機能や ADL 、ポリファーマシーの状態、いわゆる併存疾患が多い、年齢層も「高齢者」と言っても高齢になるほどリスクが高いですから、そういうことを考慮し、さらに一部の薬物では用法用量に関して特に配慮が必要ではないかということです。この報告書はまだ一般向けには公開されていないのですけれども、 2 年間にわたって行った厚労科研の中で提言させていただきました。

 ポリファーマシーの問題ですが、加算が付いたり、他の点数が付いたり、あるいは大量の残薬にすごくお金がかかっているという話になると、ついついお金の話ばかりにいってしまうのですが、私自身は医療者として、薬で副作用が出るとか、飲んでもらっているはずの薬が飲んでいただけていないとか、あちらこちらで自分の専門のところだけを診てほかは診ないという中で、 3 か所から胃薬とか、作用が完全に拮抗するような薬が出ているということもあり、そういうのはやはり医療の質が低いことの証だと思います。日本はせっかくこれだけいい医療体制を築いていながら、ポリファーマシーの問題に関しては、先進国の中ではまだかなり遅れているかと思っています。日本の医療の質を上げるために頑張っていきたいといつも思って、平井先生などにも常に意見を頂きながら進めていますし、この検討会でもそういうことができれば、大変有り難いと思っております。以上です。御清聴ありがとうございました。

○印南座長 ありがとうございました。ただいまの御説明に関して、御質問や御意見等がありましたらお願いします。

○池端構成員 秋下先生、今日はお世話になりました。大変分かりやすい御説明をありがとうございました。何点かあります。まず 18 ページの「コミュニティで創る医療の姿」の「連携の取れた地域医療」ということで、都市型からこちらのほうにという絵があります。ここでは病院がひとくくりになっています。私自身、先ほど神戸大学には急性期からというお話をしましたけれども、実際に急性期というのは、平均在院日数が 2 週間前後で回っています。そこでポリファーマシーを一生懸命やろうとしても、なかなか難しいと思うのです。急性期の先生方も治すことで精一杯です。そこでふらついただろうが、眠れないだろうが、それは後でよろしくという感じになると思うのです。その後を受ける、いわゆる回復期とか地域包括病棟でこそ、このポリファーマシーをしっかりやるべきではないかと思うのです。そういう病院の機能分化と合わせた医療連携、病病連携というのも必要ではないかと思うので、先生の御意見を頂きたいと思います。

○秋下座長代理 それはおっしゃるとおりです。急性期で出した処方を急性期の間に切るというのは、逆に病状悪化のリスクが非常に高いので、私どももそれはいつも申し送り事項として、この辺の薬は今後病状が安定したときには見直していただきたいとか、今回はちょっと気になったけれども、取りあえず切るところまではいかなかったので、例えば次の回復期リハでお願いするとか、その次の所でお願いするように情報を伝えていくことが大切ではないかと思っております。池端先生がおっしゃるとおりだと思います。

○池端構成員 もう 1 点よろしいですか。私がなぜそういう話をしたかというと、外来まで下りてきてしまうと、外来で 10 15 という処方を減薬するのは非常に大変なのです。せいぜい 2 週間、 1 か月という単位での処方の中で調整することになるからです。入院であれば 2 3 日様子を見ながら、少しずつ調整できるのです。そこで慢性期や回復期の入院機能で、ポリファーマシーを調整するというのが非常に大事だと思うので、御提案させていただきました。

 もう 1 点は、医師にしかないという処方権の問題があります。ポリファーマシーの問題は、私も含めて高度急性期から在宅まで、全ての医師がしっかり認識すべきことだと思うのです。そうなるとその前の段階、学生とか研修医のレベルから、本当はしっかり教育していただいたほうがいいかと思うのです。老年医学会の立場から、先生はいかがでしょうか。

○秋下座長代理 我々老年病科医は一生懸命協力しているつもりです。しかし神戸大学にはないというお話もありましたように、全国の大学病院の中でも老年病科はまだ少ないわけです。昔よりもむしろ減っているという現状があります。そういう意味では総合診療科のある所では、そういう所でお願いできたらと思いますし、実は全部の診療科、医療機関でやらなければいけないことだと思います。今般改訂された医学部の医学モデル・コア・カリキュラムの中にも、「ポリファーマシー」という言葉はしっかり入っておりますので、今後は医学教育の中にそういうものを入れていくような流れはあるかと思います。

○松本構成員 地域の特性というのはあるのかもしれませんが、私どものほうは急性期の病院から在宅へ移行する患者さんが多くて。そうすると院内の調整、いわゆるポリファーマシーに限って言えば、院内の調整がなかなかできていなくて。例えば、内科からの退院照会が来たとき、ほかの科からはこういう処方が出ておりますというのはあるのですが、それを私にどうしろというのだというような感じで。近所の薬剤師さんと相談して減らすという、できることには限界がある。だから、そういう意味では院内調整は全ての病院がしなくてはいけないというか、できれば一番いいわけです。今、池端構成員から出た、学生の時代からというように、やはりその辺の教育を院内でできるように、退院時には院内で調整してから退院をするとか、そういうようなシステム化はできないものですか。

○秋下座長代理 先ほど急性期からの減薬というのはなかなか難しいというお話もしたのですが、減薬はしなくてもチェックはしておく、次にやるのはこの辺ですというのは、むしろ専門医療を行って処方を出した者の責任ではないかと僕は思うのです。だから、これは残しておいてほしいけど、これは病状によってはちょっと減らしていって中止してもいいと、そういう意見を付けてもらって。それが先生方の所に行って、場合によってはそこから更に在宅に行って、そこで対応していただく。そうでないと開業の先生方、特に在宅医療をされている先生方も安心してできないと僕は思っています。そこは逆に専門医の役割なのではないかと。今後は専門医の中でもそういうこともきちんと対応し、この辺は見直したらどうだというような働き掛けを強めていただければと思っています。ちなみに、このガイドラインも各専門学会には全部レビューしていただいて、専門学会によっては非常に前向きに、これ問題だよねということで、逆に僕たちの背中を押してくださる学会も多かったことを申し添えておきたいと思います。

 もう一言、日本医師会の横倉会長以下、やはりこの問題というのはゆゆしきことである、日本医師会としてもきちんと取り組まねばいけないということで、今かかりつけ医向けのパンフレットのシリーズを作成中で、老年医学会が協力依頼を受けております。そういうものがかかりつけ医の先生方の所にしっかりと行き渡れば、また国全体も変わってくるのかと思っています。

○美原構成員 今急性期の病院で、どこでポリファーマシーが生じるかといったときに、本当に急性期の病院なのだろうかと、僕は思うわけです。というのは、現在 DPC の場合には持参薬というのはほとんど使わないです。なぜならば、持参薬全部、持って来た物を書かなくてはならないから。その期間、例えばストロークで入院したときに、そのときに必要なだけお薬を出して、それ以外に関しては持って来たお薬はそのとき返してしまう。そうすると、どこで増えているのかというと、実は急性期病院ではなくて、その前の段階で増えてしまっているのだろうと思うのです。つまり、うちに入院して来る患者さんを見ると、整形外科に行っています、内科に行っています、糖尿に行っています、どこに行っていますとたくさんの、正にポリ・ドクターというような形で入院してくる。入院してきたときに急性期のお医者さんはどんなことをやっているかというと、決してそこで増やそうなんていうことは思っていないし、まず出さないです。なぜならば、それは非常に大変だからです、管理とかそういうものが。ですから、そこの中ではその病気に特化した形だけでして。そして恐らくは、その急性期の治療が終わったら、病病連携・病診連携でお返しする。あるいは、その後の慢性期ないし回復期にいくわけです。ですから、今急性期の先生方の意識を高めることはもちろんですが、先ほど秋下先生がおっしゃったように、急性期の前の段階というのを、やはりそこの大元のところでしっかり考えないと、なかなかこの問題は解決しないのではないかと思います。以上です。

○印南座長 何かありますか、よろしいですか。

○秋下座長代理 実際にはいろいろな所で減らす人もいれば、増やす人もいて。ポリファーマシーはいろいろな所で起きているのかなと、皆さんの御意見を聞いていて思いました。

○池端構成員 美原先生のおっしゃるとおりだと思います。急性期の前がどこかと言うと、実は急性期の外来なのです、一般に。急性期的な外来の方々が、かかりつけ医ではなくて、本当に専門外来で、結構そこがダーっと処方していって、合わせてみると 20 種類あるとか、 25 種類あるとかという形、何度も経験しているのです。急性期といって責めるわけではないし、専門医は専門医で責めるわけではないのですが、そこだと思うのです。その辺を、もちろんかかりつけ医も含めて、一緒に考えなくてはいけないのだろうと思っています。

○秋下座長代理 その点については確かに問題が多く、情報ツールも「お薬手帳」しかないのが現状です。またそれは別のところで議論するべき問題だと思いますが、やはり情報共有が不十分です。ある医師は自分の出しているお薬しかその人は飲んでいないと思い込んでいたりして、 4 種類ぐらいだったらいいよねと。それが 5 か所になると 20 種類になるという現象が起きているのが、現状ではないかと思います。

○樋口構成員 平井先生にも、秋下先生にも大変行き届いたお話を伺いまして、有り難いことと思っております。私自身、 60 代のときに高血圧で国立国際医療センターに、厚労省の方から御紹介いただきまして、かかり始めました。そして今から数年前、 77 歳のときに、胸腹部大動脈瘤感染症で急性期の病院に運び込まれて、瘤を 3 個取りまして、その後も 6 年生き延びているということで、医療のお蔭様で、私は今生きています。

考えてみると、 60 代のときに頂いた薬を今までもう 20 年飲んでいるのです。その間、老いというものは一人一人老いてみないと実感できないと思うのですが、運動量の低下、食べることが好きだった私の食欲がなくなる、そして運動機能も衰えていく。時々刻々、老いは人の上に及んでおりますのに、 20 年前の処方は変わっておりません。そして薬そのものが昔から小児用と、成人用と 2 通りしかなくて、 65 歳以上、あるいは 75 歳以上の服薬量について、何ら標準化した動きがないのはどうしてかと、私は素人ながら疑問に思っておりましたところ、今回こういう検討会が作られまして、本当に有り難いと思います。人間というものは成長をして、盛んな時期を迎え、やがて衰えていく。その変化にふさわしい量の、あるいは質の服薬ということを考えていただいたら、本当に有り難いと思って、一言お礼でございます。

 さきほどの私の夜を徹しての手術でございましたけれど、その病院退院時全然薬が増えなかったことに感心しています。私自身も今服用中の薬の名を全部言えました。高齢者の心身状況にもよりますが、本人側ももっと薬について知識を持つ必要があると思っております。

 このところ減らし時、やめ時が話題に上るようになりました。いわゆる終末期の医療については私どもの会におきましても、延命治療というものには割に否定的な考えの人が多いのですが、やはり高齢者が健やかに生ききるための服薬と治療には万全を期していただきたい。高齢者の命だからと言って、粗略に扱かっていただきたくはないと思っております。

 最後に 1 つ申し上げますのは、高齢者の療養の場として「在宅、在宅」という声が今進んでおります。私は社会的な視点から家族の変化を見ていますが、「ファミレス社会」と言っております。「 less 」のほうのファミレスでございまして。今高齢者の 25 %が 1 人、お一人様です。 30 %が老夫婦のみです。「老老介護」「認認介護」という言葉もあるぐらい、配偶者の服薬を管理できる能力がどれだけあるか、 80 代になると 1 人で服薬管理できない人が、家族がいなかったらかなり多いと思っていただきたいのです。

 それで「在宅、在宅」とおっしゃるときに、どうぞ家族の具体的機能と環境について、ご勘案いただきたい。平井先生のお話で、薬を減らしたら、 1 人で服薬できるようになったと、これは希望の星のお話です。しかし、それだって、人は一日一日老いていく。いつまで続く、この幸せと思って、伺っておりました。以上でございます。

○印南座長 ほかにありませんか。三宅構成員、お願いします。

○三宅構成員 先ほど池端先生と美原先生のお話を聞いていて思ったのですが、今大学病院で緩和ケア外来をやっていると、併診をすごくするのです。私はもともと外科医なのですが、入院患者さんで薬がどんどん増えてくるというよりは、併診をして。ちょっと具合が悪い、では、この科にかかろうかと言って、この科にかかると、新しい薬が追加されて返ってくる。総合病院の外来で、併診を重ねるとどんどん薬が増えていくという印象が、個人的にあったので、お話しました。どうもありがとうございます。

○島田構成員 今の樋口構成員のお話は、本当に迫るものがありました。用法用量については、また別の機会に議論されると思うのですが、私ども薬局でも、 1 つの例としてはクレアチニンクリアランスに注目した例があります。例えば長崎での調査例ですが、外来患者さんのうち、そのクレアチニンクリアランスが 50 を切るような方が 2 割ぐらいあったというような実態もあります。加齢に伴う生理機能の低下などに注目した薬剤の適正な量というものについて、今私どもも努力をしているところであることを御紹介したいと思っております。

○印南座長 ほかよろしいですか。

○平井構成員 池端先生が医学教育のことをおっしゃっていますけれど、神戸大学では薬剤部も医師の教育をやっています。そこの中でポリファーマシーをテーマにした講義とか、それから演習もやっているのです。学生さんたちに聞きますと、お薬は使いたくないとか、自分は使いたくないし、患者さんにもできるだけ減らしたいと言う学生さんは多いのです。ただ、やはり研修医になってそれぞれの科に行きますと、それぞれの科としての教育を受けて、結局はお薬を少なく使うというのはなかなか難しいというようになっていくのかなというのがあります。教育をやっていないわけではないので、その辺、今後卒後の教育とどう連携していくかというのが問題点かと考えています。以上です。

○印南座長 ほかによろしいですか。これで議題 3 を終了いたします。

 次の議題は、「今後の議論の方向性について」です。これについて、まず事務局より説明をお願いします。

○安全対策課長 事務局です。本日第 1 回目の検討会ということで、これからまた議論を続けていく上で、先生方の今日の御議論も踏まえて、どういった方向で検討を頂き得るかということの論点を挙げさせていただいております。ここからは自由討論で是非お願いをしたいと思います。今日のお二人の先生の発表内容からも事前に事項を抽出して、これからの議論の参考ということで、幾つか論点として挙げております。

1 つ目はエビデンスの収集ということです。医薬品の高齢者に関する用量を決めていく上での薬物動態の情報、多剤処方と副作用の関係、データベース研究などをベースに情報収集することもあるのだろうと思います。 2 つ目が、対策が必要な疾患領域と書いていますが、正確には薬の検討会なので、薬剤の領域ということです。今日も御指摘がありましたように、糖尿病ですとか、循環器、認知症、不眠等の治療の領域の薬剤が議論の対象としてはあるのかもしれません。 3 つ目は多職種、多様な医療現場、専門領域以外の方も含めて、対処に役に立つような対策ということで、ガイドラインのようなものの作成も 1 つの方向性としてはあるのだろう。 4 つ目としては、先ほども急性期、慢性期の様々な調整の御議論がありましたが、そういう多様な現場の状況を含めた中での多剤複合的な安全性情報ということです。そういった情報の共有とか、対応をどのようにやっていくかということで、ここから下は少し行為のほうに入っていくようなお話になるかと思います。 5 つ目のポイントとしては、多職種の連携ということです。病院間、医師間、薬剤師間、それぞれに対する情報の共有・管理といった部分のあり方があるかと。 6 つ目としては患者さんや医療者の教育という部分も含む話だろうと理解をしておりますが、現場での安全性と適正使用の意識の向上ということです。取りあえず 6 つほど例示を事務局でしておりますが、少し時間がありますので、構成員の皆様方から自由に、活発な討論を頂ければと思います。

○印南座長 ただいま説明ありましたが、本日は第 1 回ということでもありますので、ここに挙げた論点に限らず、各構成員が検討課題とお考えのことがあれば自由討論ということで、活発な議論をお願いしたいと思いますが、いかがですか。

○大井構成員 今日の平井先生と秋下先生の議論は、医療用医薬品に限られていたと思うのですが、最近セルフメディケーションというのを国は推進していると思うのです。老人は慢性的な症状というか、かゆいとか、痛いとか、便が出ないとか、そういうすっきりしない症状に対して OTC 医薬品とか、それからサプリメントとか、そういうものもかなり多用しているという現状もあるようです。その辺の医療用医薬品プラス、そういうものもプラスされているという現状の把握が、あまり報告としてなされていないのかなという気がいたします。最近、 OTC 医薬品と言いましても抗ヒスタミン剤、 NSAIDs H2 ブロッカー、下剤とか、そういう医療用医薬品とほぼ同等のようなものが出ているので、それらがものすごく大量に飲まれていたら、それはある意味ポリファーマシーを助長していることにもなると思いますので、一般用医薬品とか、サプリメントも含めた、そういう高齢者の安全な薬の服用の仕方とかという議論もあれば面白いかなと思います。以上です。

○印南座長 松本構成員どうぞ。

○松本構成員 この資料の 4 ですが、恐らく薬の服用によって転倒・骨折ということもあるから「安全対策」となっているのかもしれないのですが、もともと高齢者への薬の適正使用の検討なので、一気にタイトルを「安全対策」としてしまうのもどうかと思うのです。ここでここまで踏み込むのか、事務局の意気込みという理解をしなくてはいけないのかもしれませんが。

 論点は幾つか書いていただいていますが、「多職種連携」とか、そういうのはほかの局でも、別に医薬局でやってはいけないというわけではないでしょうが、ひょっとして整合性が取れなくなってしまうとまた困るし、この辺はどのようにお考えなのか、事務局の考え方もお聞きしたいと思います。そういった意味では、 3 つ目と 5 つ目の○に関してはちょっとどうなのかなという感じがするのですが、いかがですか。

○安全対策課長 事務局です。まず、タイトルの「高齢者の安全対策」ということですが、私どもの所管課の名前が「安全対策課」という課でして、そこから単純に「安全対策」と書かせていただいたのですが、確かに御指摘のように、今日の議論を伺っていても、「適正使用」という部分でそこは考えていただいてよろしいのではないかと思っております。以後私どもも気をつけて対応したいと思います。

2 つ目の御質問ですが、「多職種連携」という観点では、今日私の隣りに総務課長の辺見が座っておりますが、医薬・生活衛生局は薬剤師の関係を所管しておりますので、そういう意味では、多職種連携の医師・薬剤師・看護師といった場合の 3 つのうちの 1 つを私どもの局で担っていまして、そういった観点から御議論させていただく部分はあるのだろうと思います。この検討会を開催するに当たって、関係する部局ともいろいろな形で連携はさせていただいておりますので、その辺りは他の部局の対策、対応等々と不整合にならないような形で、省内でよく調整をして、連携をしてやってまいりたいと思っております。

○松本構成員 そういうことなのだろうなということなのですが、ただ、この 3 つ目以降は高齢者には限りませんよね、この 3 4 5 6 というのは。「高齢者」と銘打っている中で、あえてまたこれを。何か高齢者にうまく結び付けたタイトルに、論点にならないですか。

○安全対策課長 事務局です。確かに御指摘のように、高齢者だけではない問題もはらんでいる部分を論点として挙げておりますが、やはりここに書いてある部分の一番その基になっているのは「多剤複合的な」という部分です。多剤併用、ポリファーマシー的な部分での対策ということに、そこはむしろ特化して考えていただいてもいいところなのだろうと思います。少し論点としての説明不足だったかとは思っております。

○印南座長 溝神構成員、お願いします。

○溝神構成員 国立長寿医療研究センターの溝神です。現在、国立長寿医療研究センターでは多職種で連携して、「ポリファーマシー削減チーム」というチームを作って、多職種でポリファーマシー対策を進めさせていただいております。というのも、ポリファーマシーの問題は先ほどからいろいろ挙がっているかと思うのですが、医師・薬剤師の問題だけではなく、やはり生活面も含めたところ、そういったところを非常によく見られているのは看護師さんということで、看護師さんにも入っていただいております。薬をやめた後、例えば糖尿病の薬をやめた後の食事の取り方とか、コントロールといったところで栄養指導が必要になってくるということで、栄養士の方にも入っていただいております。そのほか、高齢者になってくると嚥下機能等々も低下してくるということで、言語聴覚士の方にも入っていただいて専門の御意見を頂いたりと、多職種で当センターではポリファーマシー対策を進めさせていただいております。そういったことで多職種で集まりますと、非常にいろいろな意見が出てきて、ポリファーマシー対策にも幅が広がっていくのかなと思っております。以上です。

○福井構成員 日本看護協会福井でございます。ただいまの溝神先生のお話の続きになりますが、薬剤を必要とする人々は申すまでもなく医療機関だけではなく、在宅はもとより、特に介護施設、それから福祉施設にいらっしゃいます。そういった施設の医療職は、このポリファーマシーに対応する体制が出来ていないというのが現状ではないでしょうか。むしろ課題を認識し共有しなければならない状況なのかもしれません。

後発医薬品が入ってから、看護職は医薬品に弱くなってきたように思います。薬剤師が病棟配置されるようになって、これは医薬品の安全管理の観点から素晴らしいことですが、看護職が行わなければならない副作用に関する観察がおろそかになっているのではないかと危惧されます。ですから、ポリファーマシーに関する教育を推進していくことが必要だとも思います。

どのような取り組み方が効果的なのか、例えば、溝神先生の言われているようなチームで、取り組めていければもっともよいのだと思いますが、チーム形成が難しい施設等での取り組みについて、幅広に人材育成のあり方として論点にしていただけたらと思います。

○印南座長 ほかによろしいですか。それでは北澤構成員。

○北澤構成員 北澤です。私自身は医療者ではないので、高齢者の薬の適正使用については医療職の方に専門的な立場から御検討願いたいと思うのですが、それでもなお残るのは、薬がもらいたいという患者、あるいは薬を先生がやめると言ったら怒り出してしまう患者で、そういった人がいるから、薬がやめられないということを聞くことがあります。というのはなぜかというと、やはりそう思い込んでいる、あるいは思い込まされている事情があるわけです。将来病気になるかもしれませんよとか、将来危ないことになるかもしれませんよというような、不安をあおるような情報が、身の回りにたくさんある。そういう中で、何か薬をもらいたいというような気持ちが出てくるのも当然です。もしできましたら、この検討会でも、医療を受ける側の方にどういう情報提供、あるいは働き掛けをしていったらいいのか、そして、それがどういう効果があるのかというところまで含めて、ご検討願えればと思っています。

○池端構成員 私は今の北澤構成員と全く同じ話をしようと思っていたのですが、最終的にはお薬を飲む側に対してのきちんとした情報提供というのは、まだまだ遅れているように感じます。ジェネリックとか、多剤、残薬の問題は結構アナウンスされてきて、少しずつ理解が深まっている。これと同じように、例えば胃瘻の問題などでも理解が深まれば、逆にちょっと今行き過ぎかもしれませんが、反対の意見も出てくる。こういうことで、いわゆる国民向けというか、患者さん側に対する情報提供をもっとしっかり併せてやっていくべきではないかというのが 1 点です。

 それからもう一点は、医師それぞれの、秋下先生とか平井先生とか国立長寿医療研究センターの取組とかをお聞きしましたが、やはり多職種のチームで取り組むのが非常に大事だと思うのですが、これでうまくいったのは NST チームだと思うのです。これに医師も入って、チームが横断的に病棟、病院を全部回って、そこで指示をしてと。こういう(ポリファーマシー関連の)チームがそれぞれの病院に行って、処方権を持っている医師も入って、専門医と連携をしながら調整をしていくという権限を与えた強いチームが出来ればいいのかと。これは保険診療としても是非、そういうのを入れていただければということも含めて、提案型の考えを述べさせていただきました。ちょっと私、最終便に間に合わないので、これで失礼させてもらいますので、申し訳ありませんがよろしくお願いいたします。

○印南座長 ほかにありませんか、お願いします。

○水上構成員 先ほどからいろいろな話が出てきて、まず、この適正使用には増やさない方向と減らすという両面、両方向があって、どこで増えるのかという議論もかなりいろいろあって、結局いろいろな場面があるのだろうという話になりました。ですので、画一的な対策というよりは、やはりどういうところで増えるのか、まずそれが明らかにならないと、増やさない対策というのもはっきり分からない。そこら辺の増え方と減らし方の話が出てくると思うのです。その減らし方に関しても、やはり多職種連携がスムーズにできる所と、そうでない、例えばかかりつけ医がどうやって減らすのかという、個人レベルの問題もあるのでしょう。増え方にしても、減らし方にしてもある程度のレベル、いろいろな場面を想定しながらの対策というのも必要なのかと、議論を聞いて感じております。以上です。

○印南座長 ほかによろしいですか、それではお願いします。

○山中構成員 日本在宅医学会の立場から一言発言させていただきます。今日は「在宅医療」というキーワードが何回も出てきたように思います。在宅医療の場は薬剤処方の結果が出やすいという一面もありますが、生活の場に踏み込んで診療を行いますので、患者さんとか御家族との距離が短くなって、アドヒアランスの実態が把握しやすくなる。それから、なぜ薬を飲まないといけないのかということを話し合いながら、薬剤処方の調整がしやすい。また、更には飲みづらいので処方を調整するというような、そういう動機にもつながりやすいということです。結果が出やすいという側面と、在宅医療ならではの調整しやすくなるというメリットがあると思います。

 もう一点、いろいろなたくさんの医師から薬剤処方を受けて、ポリファーマシーになってきますが、在宅医療ではかかりつけ医、在宅医が 1 人で全体をコーディネートするというような観点もありますので、そういう意味では有利な条件かと思います。また、樋口先生がお話くださいましたように、家で薬を管理する人がいないという場合には実態に即して対応せざるを得ないというような、特有な問題もあります。そういう意味からは、資料4で、「多様な現場」という言葉を挙げていただいておりますが、やはり現場ごとの対応の仕方というのを今後、検討していただければ有り難いなと思います。

 もう一点だけ、長くなりますが、私、東大の医学部で、地域医療学実習の学生実習を担当しております。その中で、模擬サービス担当者会議を学生さんに開いていただいているのです。シナリオを見せまして、この薬が必要だということは結構言い当てられるのですが、血圧が下がっている、血糖が低くても、なかなか薬を削減するというような発言が出てこないということで、減らすというのはかなり意識づけをしないと難しいのではないかと思います。そういう方向でもまた議論することができればと思います。以上です。

○印南座長 それでは齋藤構成員、お願いします。

○齋藤構成員 先ほどの水上先生の御意見に全く同意でして。やはり実態調査と、あとどのようにすれば減らせるのかという調査をすることが、まず重要ではないかと思います。特に、どういう場合に減らすことができたか、成功例をこの検討会として十分議論することが、私も重要ではないかと考えております。以上です。

○印南座長 ほかによろしいですか。林構成員、お願いします。

○林構成員 今のお話を受けて、病院の薬剤師もチームで診療に参加していますと、やはり副作用とか、御本人の効果の実感のなさに応じて、医師と協議をする、そうしていくと、それは多くの場合は薬の中止か、減量につながることが多いです。そのデータは日本病院薬剤師会では、「 Prevent and avoid the adverse drug reaction 」ということで、プレアボイドとかと共通語にしていますが、かなりのデータが蓄積してきていますので、場合によっては御紹介させていただこうと思います。

 もう 1 つ、患者さんたちの思いというのに応えようと思うと、やはり治りたい、もっと良い健康状態でありたいと思うために、大規模スタディや治験のデータに基づいて薬を処方するというストラテジーがあるのです。そのときに多くの場合、 relative risk reduction 、つまり、心筋梗塞のリスクを 50 %減らしますと言ってお話をしていることが多いのですが、実はそれは 5 %が 2.5 %になる場合も、 50 risk reduction なのです。なので、その場合には残りの 95 人の方は、もしかしたら飲んでいても飲んでいなくても同じゴールにたどり着いていたかもしれないと、そういうことも含めて、コンセンサスのリスク・コミュニケーションをするためには、お一人、お一人にその病態や、思いの違いがあることを受け止めて、その使う場合のストラテジーも、患者さんと医師と薬剤師と関係の皆さんと共有したほうがいい、できればそれを。先ほどの抗菌薬の場合には、デ・エスカレーションというストラテジーが学会内でも相当定着していまして、最初はガツンといくなり何なり、最大限の投与をするのだけれど、抗菌スペクトルに合わせて減らすことができているストラテジーがあるのです。多くの薬について、先ほど急性期から慢性期リハにバトンタッチするときに、減らすお約束やメッセージの共有をしたいと。私たちも、急性期の病院に勤務しているので、回復期の病院の先生にそこをバトンタッチしたいのですが、やはり「お薬手帳」に、患者さんに託すしかないのです。よりもっとストレートに回復期や慢性期の、あるいは在宅の皆さんと情報を共有したい、看護師の皆さんとも、栄養士の皆さんとも情報を共有したいということはありますので、そのメッセージをつなぐツールの開発が、もしこの会でできたら、とても皆さんのために役に立つのではないか、国民の皆さんに喜んでもらえるかなと思いながら、今日は参加しておりました。どうもありがとうございました。

○印南座長 ほかによろしいですか。これで議題 4 を終了いたします。

 最後に、「今後の予定について」を事務局より説明をお願いします。

○安全対策課課長補佐 それでは資料 5 について説明いたします。今後の予定案ということで、本日、 4 17 日が第 1 回の検討会です。第 3 回まで日程が決まっていまして、 2 回目が 6 23 日の金曜日、 3 回目が 7 14 日の金曜日に予定しております。この 3 回、先生方にはプレゼンテーションを頂きながら、こういった最後のような議論を重ねつつ、夏頃に検討課題の整理と、検討の方向性に関する取りまとめ、中間的な取りまとめをしたいと考えております。以降、 2 か月に 1 回程度、また、必要に応じて検討会の下にワーキンググループ等を開催し、夏頃に取りまとめた内容について、具体的に検討を行っていきたいと思います。それで、最終的な取りまとめという形につなげていきたいと考えています。また本日、実態調査なども必要というような御意見を頂いておりますので、そういった検討課題も取りまとめていければと考えております。以上です。

○印南座長 この検討会ではこれから 2 回にわたり、高齢者の薬剤の使用の現状や、各関係者の取組等を御紹介いただき、議論したいと思います。各構成員の所属団体等で紹介したい取組等がもしありますようであれば、次回以降発表をお願いしたいと思っております。その際は、事務局に事前に御連絡を頂けるようにお願いいたします。以上です。

 御質問等よろしいですか。以上で、本日予定した議題は全て終了となりますが、そのほかに御発言とか最後のほうでありましたら。時間も迫まっていますがよろしいですか。

 事務局から何か連絡がありますか。

○安全対策課課長補佐 次回の検討会日程を、繰り返し申し上げます。 6 23 日、金曜日、 15 時からの開催を予定しております。場所等、詳細はまた事務局より御連絡させていただきます。また、本日の議事録については後日送付させていただきますので、内容の御確認をお願いいたします。なお、修正を御確認いただいた後は、厚生労働省のホームページに掲載いたしますので、よろしくお願いいたします。事務局からは以上です。

○印南座長 それでは、これで閉会といたします。本日はどうもお疲れ様でした。ありがとうございました。


(了)

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