ホーム> 政策について> 審議会・研究会等> 中央最低賃金審議会(目安制度のあり方に関する全員協議会)> 第13回目安制度の在り方に関する全員協議会 議事録(2016年10月24日)




2016年10月24日 第13回目安制度の在り方に関する全員協議会 議事録

労働基準局

○日時

平成28年10月24日(月)
10:00~10:50


○場所

厚生労働省9階省議室


○出席者

【公益委員】

仁田会長、戎野委員、土田委員、中窪委員

【労働者委員】

木住野委員、須田委員、冨田委員、新沼委員、萩原委員、松井委員

【使用者委員】

小林委員、中西委員、横山委員、吉岡委員

【事務局】

藤澤大臣官房審議官、増田賃金課長、川田代主任中央賃金指導官
伊勢中央賃金指導官、由井賃金課長補佐、大野賃金課長補佐、成川賃金政策専門官

○議題

目安制度の在り方について

○議事

○仁田会長
 それでは、定刻より早いですが、ただいまから第13回目安制度の在り方に関する全員協議会を開催いたします。本日はお忙しいところ、御出席いただきまして誠にありがとうございます。本日は鹿住委員、武石委員、渡辺委員、高橋委員が御欠席でございます。また土田委員は交通機関の関係で、少し遅れて来られるということです。
 初めに、久しぶりの会議ですので、前回までの議論を振り返ってみたいと思います。当協議会では平成26年6月より議論を始めまして、昨年の10月からは中間整理で優先的に議論を行っていくとされました、ランク区分設定に用いるべき統計指標、参考資料等について議論してまいりました。
 前回の会議においては、「ランク区分の在り方については、目安制度の運用の基本に関わる部分であり、もう一度原点に立ち戻って議論すべき、また関係者の理解と信頼を得るべく慎重に検討すべき」との御意見が出されております。
 これを踏まえて、議論の進め方については、当初目指しておりました平成27年度内の取りまとめに関わらず慎重に検討を進めて、関係者の意見を踏まえて、とりまとめるとなった次第です。
 地方最低賃金審議会への影響等を考えますと、取りまとめが平成28年度となった場合には、28年度の目安審議については現行のランク区分・制度で行う、とされたところです。
 その後、平成27年度内には取りまとめに実際に至らなかったことから、平成28年度の目安審議については、御承知のとおり、現行のランク制度で行ったところです。
 目安審議も終わりまして、全協再開となります。これまでの経緯を踏まえれば、平成28年度内に報告書を取りまとめたいと考えております。今後、取りまとめに向けて議論を進めてまいりたいと思いますので、よろしくお願いを申し上げます。
 ここまでのところで何か御質問、御意見等ございますか。よろしいですか。
 それでは、本日の内容ですが、夏の目安審議の中で議論がありました、「中小企業・小規模事業者への支援等」及び「最低賃金の引上げが及ぼす影響」について、御議論をいただきたいと考えております。まず、第1点目、7月28日の中央最低賃金審議会において、取りまとめられました今年度の答申の中では、「政府において、中小企業・小規模事業者の生産性向上等のための支援や、取引条件の改善等に引き続き取り組むことを強く要望する」としたところでございます。その後、政府におきまして、支援の拡充等が行われたとのことでございますので、事務局から御説明をいただきたいと思います。


○大野賃金課長補佐
 それでは、資料No.1の「中小企業・小規模事業者への支援等」について御説明申し上げます。
 1ページ目は、本年度の中央最低賃金審議会で答申を取りまとめいただいた後、8月2日に、「未来への投資を実現する経済対策」が閣議決定されました。この経済対策の第2章「取り組む施策」3(2)で、「中小企業・小規模事業者の経営力強化・生産性向上に向けた支援を拡充する。あわせて、最低賃金引上げの環境整備措置を講ずる」として、大きく5点の施策が明示されております。1から5になりますが、ものづくり・商業・サービス産業における革新的な開発の支援、最低賃金の引上げの環境整備として生産性向上に向けた支援措置の拡充、下請等取引の改善、小規模事業者による販路開拓の取組支援などに取り組んでいくこととしています。その後、中小企業、小規模事業者への支援策の拡充を含む第二次補正予算が本年10月11日に成立しております。以下、経済対策に記載された取り組む施策のうち、主要なものについて説明いたします。
 まず資料の2ページ目ですが、「業務改善助成金」です。この助成金は、機械設備、POSシステムの導入など、生産性向上のための設備投資等を行い、事業場内の最低賃金を一定額以上引き上げた場合に、その設備投資などにかかった費用の一部を助成するものです。これまで、事業場内で最も低い賃金を時給で60円以上引き上げる場合のみを助成の対象としておりましたが、30円以上引き上げる場合でも助成の対象とするなど、事業場内の最低賃金額に応じて助成金の支給コースを拡充しております。また、助成率についても拡充しておりますが、生産性の向上が認められる企業に対しては、助成割合を更に上乗せすることとしています。
 その裏の3ページ目については「支給の要件」「お問合わせ先」等を書いておりますが、説明は割愛させていただきます。
 4ページ目になりますが、キャリアアップ助成金です。この助成金は、非正規雇用労働者の企業内のキャリアアップなどを促進するために、正社員化、人材育成、処遇改善の取組を実施した事業主に対して助成する制度です。このうち、賃金引上げに関連するものとしては、処遇改善コースがありまして、これまで賃金規定等を2%以上増額改定した場合に助成金を支給することとしておりましたが、中小企業は3%以上増額改定した場合に助成額に加算を行うこととしました。また、計画書の提出期限の緩和、賃金規定等の運用期間の緩和など、企業がより利用しやすくなるよう支給要件の緩和を実施しております。
 横書きになっているものですが、6ページ目です。6ページ以降、中小企業庁において実施する支援制度になります。まず6ページ目の地域未来投資促進事業について御説明申し上げます。これは、中小企業等の革新的なものづくり・商業・サービスの開発や、IT導入の取組を支援するものになります。右側の四角枠の1番目の革新的ものづくり・商業・サービス開発支援事業の中で太字で記載しておりますが、経営力向上に資する革新的ものづくり・商業・サービス開発の支援については、賃金の引上げに取り組む企業について、補助上限を倍増させるほか、最低賃金引上げの影響を受ける企業に対しては、補助上限を更に1.5倍にするといった措置を講じております。
 続いて7ページになります。小規模事業者販路開拓支援事業です。この事業は、小規模事業者が商工会や商工会議所と一体となって経営計画を作成し、販路開拓に取り組む費用を支援するものであり、こちらも従業者の賃上げを実施する事業者について補助上限額を50万円から100万円に増額するなど、中小企業の賃金引上げに配慮した内容となっております。なお、本事業は、原則的に販路開拓等の取組をする場合に助成するものですが、サービス提供等プロセスの改善や、IT利活用による生産性向上の取組みを行う場合には、その生産性向上の取組に係る経費についても補助対象となるものです。
 続いて8ページ目です。下請企業等の中小企業の取引条件改善を図るための取組として御説明いたします。経済産業省のほうで9月に、「未来志向型の取引慣行に向けて」ということで基本方針や重点課題を示しています。ここでは、「価格決定方法の適正化」「コスト負担の適正化」「支払条件の改善」といった課題に重点を置いて、親事業者が負担すべき費用等を下請け業者に押し付けることがないよう徹底する方針が示されています。具体的には、業種横断的なルールの明確化・厳格な運用ということで、下請代金法の運用基準や下請振興法の振興基準の改正を行うとともに、各業界団体に対して、サプライチェーン全体での「取引適正化」と「付加価値向上」に向けた自主行動計画の策定、着実な実行等を要請することとしています。
 資料1の説明は以上になります。なお、参考資料No.1として、平成28年度地域別最低賃金額改定の目安に関する中央最低賃金審議会の答申をお付けしております。先ほど仁田会長よりお話のありましたとおり、この答申の中で、「4 政府において、中小企業・小規模事業者の生産生向上等のための支援や、取引条件の改善等に引き続き取り組むことを強く要望する」との記載がありますので、適宜、御参照ください。説明は以上になります。


○仁田会長
 どうもありがとうございました。それでは、ただいまいただきました事務局からの御説明に関して、何か御質問等ございますでしょうか。


○戎野委員
 御説明ありがとうございました。この施策がどのようなものかという評価をするにはまだ早いことは重々分かっているのですが、実際に今のところ手応えとか、感触とか、そういったものがもしお分かりになるようでしたら、教えていただきたいと思います。


○大野賃金課長補佐
 ありがとうございます。先ほど御説明いたしました、業務改善助成金ですとかキャリアアップ助成金については補正予算案の閣議決定、それからその前に経済対策が閣議決定されましたときも、関係する団体に周知を行っておりまして、今、具体的な申請件数等を詳細にお答えすることはできないのですが、各労働局の状況を聞いておりますと、補正予算成立前、若しくは経済対策の閣議決定前と比較し、かなり申請数は延びていると聞いております。


○仁田会長
 ほかにはいかがでございますか。


○小林委員
 ありがとうございました。まず、業務改善助成金の拡充をしていただきましたこと、また、キャリアアップ助成金の拡充についても取り組んでいただきましたことに、御礼申し上げます。
 業務改善助成金については、かなり前からこの助成金があったわけですが、支給対象の費用については絞られてきた側面があって、利用率が減ったという状況が過去にありました。また、今回も助成の対象となる賃金引上げ額の要件の拡充もしていただきましたし、また、支給対象の費用の拡充もしていただいたわけですが、最低賃金がかなりの金額に引き上がった状況にあるわけでして、それについて対応できないような企業、小規模企業の生産性向上に向けた支援策として大きなものでもありますので、今後是非とも、この助成制度があること自体の普及とか、またより更に使いやすいような形に、更なる改善についても、見直していただきたいと思います。
 それから、下請関係のことについて一言申し上げます。経済産業省のほうで、下請取引についての適正化、かつ公平化につながるような対策ということで、この資料にあるとおり、3つの基本方針を出して取り組んでいるということですが、これは、なかなか難しい問題です。私どもは下請の中小企業に対してのガイドラインの策定支援でもお手伝いをしてきた経緯がありますが、現在のところ、大企業との関係の下請関係については、「適正な取引」、それから「取引環境の改善」というのはなかなかなされていない状況がございます。この「適正取引」、「取引環境の改善」について、どんなことができるのかというのを、いろいろな下請関係の業界がございますが、建設業をはじめ、話を聞いているところによれば、運輸業では、7次の下請があるというようなことで、相当なる中間業者がいるようです。それら業界の意見もまた是非聞いていただいて取引慣行が改善されるように、より一層の取組みをしていただくようお願いいたします。以上です。


○仁田会長
 どうもありがとうございました。この点、事務局のほうでも、十分御配慮をいただきたいと思います。ほかにはいかがでしょうか。
 私のほうからごく初歩的な質問というか、確認のためなのですが、助成金の支給対象となる中小企業者及び小規模事業者にどういう企業が含まれるのかという、定義、範囲の問題なのですが、一応念のため、お聞かせ願えないでしょうか。


○大野賃金課長補佐
 中小企業については、基本的には中小企業基本法に基づく中小企業者ということでありまして、例えば製造業、ですと、資本金の額又は出資の総額が3億円以下の会社又は常時使用する従業員の数が300人以下の会社及び個人、また、業界によっても多少人数が変わってくるのですが、卸売業でしたら、資本金の額又は出資の総額が1億円以下の会社又は常時使用する従業員の数が100人以下の会社及び個人、小売業については、資本金の額又は出資の総額が5,000万円以下の会社又は常時使用する従業員の数が50人以下の会社及び個人、サービス業については、資本金の額又は出資の総額が5,000万円以下の会社、又は常時使用する従業者の数が100人以下の会社及び個人とされています。
 それから、小規模事業者については、こちらも業種によって決まるのですが、製造業においては従業員20人以下、商業・サービス業においては、一部宿泊等を除きますが、従業員5人以下という形で提示されております。


○仁田会長
 どうもありがとうございました。まあ、最低賃金の引上げが中小企業、小規模事業者に影響が大きいというのは、これまでの常識でもありますし、事実そうだと思うのですが、最低賃金近傍の賃金が支払われている人たちがどういう所で働いているかということを考えますと、これからどう見ていけばいいのかという話を考えるときに関連してくると思うのですが、ある程度の規模が大きいところでも、例えばスーパーのパートタイマーの人では最低賃金が上がると、賃金が変わると。そういうような状況もございます。ですので、そういう所に助成金のようなものが適するかどうか、それは分かりませんが、そういうことは考えていく必要があるのではないかなと感じているところです。
 例えば特定の業界の名前を出しますとあれですが、別に陳情しているわけではないのですが、「コールセンターの調査」というのを結構やったのですが、これは結構大手の会社もあり、いわゆる非正規の人が多くて、時間給が必ずしも最低賃金近傍とは限らないのですが、そういう状態も結構広がっておりますので、この中小企業対策という点では、それはそれで結構なのですが、我々が今後、最低賃金の影響ということを考えていく場合には、もう少し範囲を広げて、イメージをしていく必要があるのではないかなと考えております。


○土田委員
 今、会長が言われた中小企業以外、それも規模の大きい企業の非正規雇用労働者の処遇改善という、この点は、例えば4ページの「キャリアアップの助成金」のほうでは、そこは対象に含まれているのでしょうか。含まれているような気がしたのですが。


○仁田会長
 いかがでしょうか。


○大野賃金課長補佐
 お答え申し上げます。まずはコースが幾つか分かれておりまして、「正社員化」「人材育成」「処遇改善の取組」ということで、それぞれに応じたコースがあるのですが、まずは、現行の「賃金規定等改定(処遇改善コース)」については、土田委員御指摘のとおり、中小企業以外についても、企業の規模に応じた助成金が支払われるようになっております。それから新しい補正予算に基づく「中小企業に対する加算措置」ということでは、現在、中小企業が基本給の賃金規定等を3%以上増額した場合に助成を上乗せするという形になっております。


○仁田会長
 よろしいですか。その分が拡充されたということですね。


○松井委員
 せっかく会長が言っていただいたので、一言申したいのですが、私の所は特に小売業で働いている組合が多くございまして、先ほどの中小企業の定義でも、小売業の場合は、資本金が5,000万円以下で、常時使用する従業員の数は50人以下ということで、製造業と比べて、かなり限定されたところにしか適用されていないという現状がございます。中小企業の定義自体を見直してほしいということは、我々は従前から申し上げてはいるのですが、おっしゃられているように、特に最低賃金のことに関する助成ということで申しますと、そういう業種が非常に大きく影響を受けているということがございますので、是非御検討いただければと思います。


○仁田会長
 ほかにはよろしいですか。どうもありがとうございました。それでは、第1の議題は、以上をもちまして、一応議論を終了するということにいたします。次に「最低賃金引上げの影響」ということについての議論をいただきたいと思います。本年度の答申に当たりまして、目安小委員会委員長の私の名前で、小委員会報告についての補足説明というものを取りまとめまして、各地方最低賃金審議会にお伝えをいたしました。
 その中におきまして、「本年度の目安の金額が、従来と比較して高い水準にあることも踏まえ、今後、中央最低賃金審議会において、最低賃金の引上げが及ぼす影響について慎重に検討していく必要があると考える」という旨を示したところです。
 この検討を行う場としては、目安全協というものが当然想定されると思いますので、本日は、この点について皆様の御意見を伺いたいと考えておりますが、まず、事務局から、参考となると考えられる統計等を資料として御用意いただきましたので、その御説明をお願いしたいと思います。


○大野賃金課長補佐
 それでは、資料No.2の説明をさせていただきます。仁田会長からお話のありましたとおり、最低賃金引上げが及ぼす影響についての検討に向けて、まずは都道府県別の雇用・労働時間等のデータが得られる統計調査等を整理し、資料No.2にまとめております。調査の対象、取得できるデータ、調査名や調査対象規模、公表時期をそれぞれ一覧表の形にまとめております。それから、★を付けているものは目安小委の資料でもお示しているものになります。また、資料の一番右の括弧書きで記載しているものは7月1日時点で確認することのできるデータの範囲になります。
 まず1ページ目、雇用・失業関係です。以下、統計資料の上から順番に説明いたします。労働者・失業者の動向を把握する調査として、月次のもので毎月勤労統計調査、雇用保険事業月報があります。毎月勤労統計調査では、一般労働者・パートタイム労働者別に雇用者数を把握できることに加え、製造業、卸売、小売業等の産業別にもデータを取得することができます。また、雇用保険事業月報は雇用保険に関する業務統計であり、適用事業所で雇用されている労働者のデータとなっています。ただし、1週間の所定労働時間が20時間未満である人や、同一の事業主に継続して31日以上雇用されることが見込まれない人などは雇用保険の適用対象外ですので、全ての労働者をカバーしているものではありません。雇用保険の受給資格決定件数は、離職者の提出した離職票に基づき、基本手当等の支給を受ける資格があると決定した件数になります。
 次に、3つ目の四半期データになります。労働力調査でも都道府県別の労働力人口等を把握することができます。ただし、労働力調査は都道府県別に表章するように標本の設計を行っておらず、全国結果に比べて精度が十分に確保できないことに留意が必要です。四半期で、労働力人口、就業者数、完全失業者数、完全失業率が都道府県別に把握できます。
 次に、公表は数年に1度になりますが、経済センサスや国勢調査でも雇用者数等を把握することができます。経済センサスや国勢調査は他の調査よりもさらに細かい区分でもデータをみることができるというメリットがあります。例えば経済センサスの場合は1人~4人の零細企業のデータや正規・非正規のデータも取得可能となっています。なお、ここでいう正規は「正社員・正職員」という項目、非正規は「正社員・正職員以外」という項目でデータを取っております。
 次に「入職・離職の動向」につきましては、雇用保険事業月報、雇用動向調査から把握することができます。雇用保険事業月報では、被保険者となった資格取得者数と被保険者でなくなった資格喪失者数を把握することができます。また、雇用動向調査は、半期ごとに行われる調査ですが、事業所への入職者数、離職者数を都道府県別、年齢階級別に見ることができます。
 次に、求人、求職の状況は、職業安定業務統計である一般職業紹介状況から、有効・新規の求人数、求職者数、求人倍率を都道府県ごとに毎月把握することができます。
 続いて2ページ目は労働時間関係の統計等になります。労働時間、実労働日数を把握する調査として毎月勤労統計調査と賃金構造基本統計調査があります。毎月勤労統計調査はその名のとおり、毎月調査を行っている月次調査である一方、賃金構造基本統計調査は年に1回、6月時点の賃金や労働時間について調べる調査です。毎月勤労統計調査では、一般・パート別、産業別に総実労働時間、所定内労働時間、所定外労働時間、出勤日数を把握することができます。また、賃金構造統計基本調査では、一般労働者について、所定内労働時間、超過実労働時間を、短時間労働者について、実労働日数、1日当たり所定内実労働時間をそれぞれ男女別、年齢階級別、産業別などで把握することができます。
 同じページの賃金関係です。給与についても毎月勤労統計調査と賃金構造基本統計調査から把握することができます。毎月勤労統計調査では、一般・パート別、産業別に現金給与総額、決まって支給する給与、所定内給与、所定外給与、特別に支払われた給与を把握することができます。また賃金構造基本統計調査では、一般労働者について、きまって支給する現金給与額、所定内給与額、年間賞与その他特別給与額を、短時間労働者について、1時間当たり所定内給与額、年間賞与その他特別給与額をそれぞれ男女別、年齢階級別、産業別などで把握することができます。
 次に、3ページ目です。企業経営関係です。倒産の状況を都道府県別に把握できる調査として、東京商工リサーチの全国企業倒産状況があります。これは負債額1,000万円以上の倒産を集計したものであり、毎月の倒算件数を把握することができます。
 一方、事業所数の動向については、雇用保険事業月報の適用事業所数や、経済センサスの事業所数で把握することができます。
 最後に、参考として都道府県別に把握できるその他のデータを記載しております。世帯の収入と支出については家計調査、全国消費実態調査で把握でき、消費者物価については消費者物価指数、小売物価統計調査から把握することができます。資料No.2の説明については以上になります。
 なお、この資料に関連し、参考資料No.2として、平成28年度の中央最低賃金審議会目安に関する小委員会報告についての補足説明を配布しております。あわせて、参考資料No.3として、目安審議に関連する統計資料等ということで、本年度の目安に関する小委員会で使用した主要統計資料や平成28年の賃金改定状況調査結果等を配布しておりますので、適宜御参照ください。説明は以上です。


○仁田会長
 どうもありがとうございました。ただ今の御説明につきまして何か御質問、御意見等があれば承りたいと思います。


○須田委員
 最賃が与えた影響の検討をすること自体は了解しています。ただ、この全員協議会の場で具体的に何を決めるのかが、いまいちイメージができません。短期的に分かるものと、あるトレンドを見なくてはいけないもの、いろいろあろうかと思います。その中で、こういう指標でウォッチしていきましょうねということを決めるのか、5年に1回影響をみると言っているのか、その辺がちょっと分かりづらかったので、補足があればお願いしたいと思います。


○仁田会長
 慎重に検討するというのが現在の共通了解だと思います。それが具体的にどういうやり方であるのかということについては、特段確認がされていないと思います。ですので、これからそれをこの全員協議会の中の議論で、もし何か具体的にこういうことをやるというように決める必要があるとなれば、それを御議論いただいて決めていくということになるかと思います。今日の御説明だと、とりあえず、そもそもどういうメニューがあり得て、我々は何を見ることができるのかということでお出ししたものです。
 それ以外に、例えば目的のために何か新しく調査をしてほしいとすることもできるかもしれません。あるいは今日取り上げたものや、全国統計以外で、また何か検討対象とすべき資料等があるのではないかというような議論もできるのではないかと思っています。
 もちろん長期的に影響というものは出てくるものだと思います。普通、影響というのは少なくとも、3年なり5年なり経たないとはっきりしないものですので、そのような観察・検討を続けていって、今年の目安ないしその後の目安の影響等について検討していくということになるのではないかと思っています。


○須田委員
 これから我々も検討しますが、印象として、労働市場に与える影響と企業に与える影響と言ってもマイナスの影響みたいな印象が強い。少なくとも第9条2項の3要素が実現できているかできていないかという影響もあるのだろうと。その意味で、これまでも参考資料で出されていることからすると、先ほどの就職支援策ではないですが、最低賃金は上がったけれども、生産性は上がったかと言えば、別にプラスマイナスみたいなこともある。生産性が上がったのか、あるいは労働分配率はどうなったのか、一個一個個別に見ても仕方ないのですが、影響率や未満率というものもあるのでしょう。そういうものを幅広く見ながら、見た上でどう判断するかというのは非常に難しいと思うのです。捉えられる指標というのは、ある一定の限界があるのは承知しつつ、幅広くウォッチするということのほうがいいのではないかという気がしています。


○仁田会長
 御意見、承って検討したいと思います。これまで目安審議に関連して、目安全協等で検討対象としてきた影響についての指標としては、主に影響率と未満率に着目して見てきたと思います。もちろん、それは今後とも重要な指標として多分見ていくことになるのだろうと思います。
 それだけではなく、もう少し広げてほかのものもきちんと見ていく必要があるのではないかという、そういう問題意識が慎重な検討という中には含まれてくるかと思います。もちろん、「最低賃金引上げの影響」と言っても、それが価格効果、コストに及ぼす影響と、所得効果、労働者の所得を引き上げて需要を増やすという効果の両方があるわけです。その辺を含めて、我々は経済学の論文を書くわけではありませんので、少なくとも最低賃金、目安をここで議論していく時に目配りをしなければならない経済状況は何かについて、この際ですので、再検討をしておく必要があるのではないかと考えています。ほかにはいかがでしょうか。


○小林委員
 今の須田委員の発言と同じなのですが、参考資料No.3-1の27ページに、「法人企業統計でみた労働生産性の推移」が出ています。法人企業統計から出していくものですが、最近のものを見ていくと、平成26年度までしかないという形です。28ページにも、それをグラフ化したものが見られます。企業の生産性が分かるような、労働生産性が分かるような資料はこれ以外にあるのか、その辺もちょっと調べる必要があると感じているところです。
 先ほどの「未満率」と「影響率」、これもかなり最低賃金の引上げによって変わってきています。特定の県を挙げると、神奈川などかなり張り付いてきていますし、最低賃金の近傍の所に集まってきているような状況もあります。この辺、未満率や影響率についても都道府県別にみるとか、しっかり見ていくことも必要と感じているところです。以上です。


○仁田会長
 事務局から何かありますか。


○由井賃金課長補佐
 労働生産性の件ですが、都道府県別にデータが取れるかどうかよく調べたいと思います。


○仁田会長
 付加価値などを調べて無理矢理、頭数で割るとか、操作をすれば何か近似的な数字ができるかもしれない。これは乱暴な話だと思います。多分、法人企業統計は全国ベースのデータで都道府県別のものはあるのかな、ないのかな、ちょっと調べてください。


○由井賃金課長補佐
 はい。


○仁田会長
 ほかにはいかがでしょうか。


○松井委員
 補足説明の中では、特に非正規雇用増加や賃金格差を踏まえるということを言われていますので、「格差」というところを見る調査という意味で、賃金の関係の調査というのもあるのでしょうが、よく相対的貧困率やジニ係数を算出する際に用いられる国民生活基礎調査というものがあります。あのようなものも見ておく必要があるのではないでしょうか。


○仁田会長
 どうもありがとうございました。具体的に何か影響等を検討する中では、以前の目安審議でやりましたように、専門家の御意見を聞くというようなこともやってみたらいいかとは考えております。ほかにはいかがでしょうか。


○須田委員
 くどくて申し訳ありません。論点の中間整理の時に、1つ目にランクの在り方、2つ目に参考資料という2つのテーマがありました。2つ目の「参考資料の在り方」の内数として、この影響についても並べて見ていくということを整理しようとおっしゃっておられるのか、2つのほかに影響の部分について、改めて今回の全協で整理するテーマとして別の項目として起こそうと言われているのか、ちょっと頭が混乱していて分かりません。要は影響って毎年毎年の金額審議のときにも配慮しなければならない要素もあるでしょうし、先ほど言いましたように、ある程度の時間軸がないと分からない項目もあるでしょうし、その応用編かとは思うのですが、どう見ていくのか、いまいちイメージが沸かないものですから、その辺は区分せずまず議論してみて、年々の金額審議でも影響があるのだったら、それも参考にしようという、幅を持つイメージでいいのでしょうか。


○仁田会長
 一応、参考資料については見直しましょうという話になっているから、それについてはまだ目安制度の報告書が出ておりませんので、何らかの報告をしなければいけないわけです。基本的にはその一部というか、目安を審議する時にどういう統計資料等を見て判断するのかということの一部になるかと思います。
 それが現在、つまり簡単に言えば、参考資料No.3-1の中身をどれだけ拡充するのかという話にとどまるものかどうかがちょっとまだ見えないところがある。その膨らまし方が、毎年毎年の目安審議の参考資料ということ以上に、もう少し長期的な視点に立った検討をしなければいけなくなる可能性もあるかと思っています。その辺の取扱いについては、またこのあと事務局を通じて少し調整をしていただいて、どういう扱いにしていったらいいかを御議論いただこうかと思います。いかがでしょうか。


○須田委員
 よく整理しますが、今年の夏の補足説明では中央最低賃金審議会が影響をみるとされたわけです。参考資料にしてしまうと、地方での影響をみるみたいに誤解されるのが嫌だなと思います。そこの点だけです。


○仁田会長
 中賃がやるということですから、最終的には中央最低賃金審議会全体の課題ということだと思います。目安審議は一応、差し当たりは目安小委での議論の中で使われている資料等の話です。その辺をどのように位置づけをして、影響についての議論をしていくかをきちんと考える必要はあるかと思います。ほかにはいかがでしょうか、よろしゅうございますか。
 それでは、以上をもちまして、「最低賃金引上げが及ぼす影響について」の第1回目の検討というか、出発点の議論をしたというように考えます。次回以降ですが、「目安制度の在り方について」の議論を深めていく必要がありますので、労使各側で準備をよろしくお願いしたいと存じます。
 また、取りまとめをしていくということですが、各地方最低賃金審議会会長の御意見も聞いていただきたいと考えております。この点については事務局で準備をしていただくようよろしくお願いいたします。よろしゅうございましょうか。
 次回の開催日程については、事務局で別途調整をお願いしたいと思います。
 以上をもちまして、本日の全員協議会は終了させていただこうと思います。この際、何か発言しておきたいことはありますか。よろしいですか。


○須田委員
 具体的な日程は会長から今あったとおり、事務的に進めていただきたいと思います。逆に冒頭、会長からありましたように、平成28年度中に報告書を出すというのは是非ともこの場で再確認いただいた上で、具体的な日程をどう配置して議論を進めていくのかという再確認をできればお願いしたいと思います。


○仁田会長
 最初に申し上げましたとおり、かなり長いこと検討してまいりました。平成28年度中ということは3月31日までということになるのですが、様々な事情もこれあり、年度をまたぐということは考えず、年度内に今回の目安全協の報告書を出したいと考えております。それから逆算していくと、いろいろな日程調整等が必要となると思いますが、その点はよろしく御協力をお願いしたいと思います。よろしゅうございましょうか。
 それでは、以上をもちまして本日の全員協議会を終了させていただきます。本日の議事録の署名につきましては木住野委員と小林委員にお願いしたいと思います。本日はお忙しい中をどうもありがとうございました。


(了)
<照会先>

労働基準局賃金課
最低賃金係(内線:5532)

代表: 03-5253-1111

ホーム> 政策について> 審議会・研究会等> 中央最低賃金審議会(目安制度のあり方に関する全員協議会)> 第13回目安制度の在り方に関する全員協議会 議事録(2016年10月24日)

ページの先頭へ戻る