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2017年1月23日 独立行政法人評価に関する有識者会議 労働WG(第15回)議事録

○日時

平成29年1月23日(月)9:55~11:39


○場所

厚生労働省共用第8会議室(19階)


○出席者

今村主査、酒井構成員、志藤構成員、柴田構成員、関口構成員、高田構成員、戸田構成員、中村構成員

○議事

○今村主査

 それでは、ただいまから第15回独立行政法人評価に関する有識者会議労働WGを開催いたします。構成員の皆様におかれましては、お忙しい中お集まりいただきまして、誠にありがとうございます。なお本日は、小西構成員、園田構成員、田宮構成員、松尾構成員、宮崎構成員が御欠席です。それでは最初に、本日の議事について事務局から説明をお願いいたします。

 

○政策評価官室長補佐

 本日の議事は、労働政策研究・研修機構の次期中期目標案及び次期中期計画案についてです。本件については、参考資料1の独立行政法人評価に関する有識者会議開催要項の3の第4号「その他1から3までに掲げる事項に関し重要な事項」に該当するものとして、本WGの意見を賜るものです。

 厚生労働省所管の中期目標管理法人については、厚生労働大臣が中期目標を定め、当該法人は定められた中期目標に基づき中期計画を策定することとされておりますが、法人の中期目標と中期計画は、御意見を頂く上で密接な関係にありますので、本日は中期目標と中期計画について、同時に御議論を頂きたいと考えております。

 また、平成29年度からの新たな中期目標及び中期計画の策定に至るまでの流れについて、簡単に御説明いたします。参考資料2を御覧ください。一番上の四角い囲みに、平成2889月労働政策研究・研修機構の「業務・組織全般の見直し内容」等を総務省へ提出とあります。労働政策研究・研修機構の中期目標期間見込評価書と、業務・組織全般の見直し内容については、昨年8月に開催した本WGにおいて、皆様から御意見を頂き、その意見を踏まえ、厚生労働大臣から総務省独立行政法人評価制度委員会に通知したところです。

 中ほどの四角い囲みに、平成28912月総務省独立行政法人評価制度委員会の審議・意見とあります。総務省同委員会が労働政策研究・研修機構の中期目標期間見込評価書と業務・組織全般の見直し内容について審議した結果が厚生労働大臣に通知されました。これらを踏まえて作成したのが、本日御議論いただく労働政策研究・研修機構の次期中期目標と次期中期計画の案です。

 一番下の四角い囲みの平成2812月~平成293月労働政策研究・研修機構の次期中期目標・次期中期計画の策定は、今後の流れについてのまとめです。本日御議論いただく当機構の次期中期目標案については、本日頂く御意見を踏まえ、必要に応じて修正等を行い、2月に厚生労働大臣が総務省の委員会へ送付いたします。その後、2月に同委員会において審議が行われ、その審議結果に基づいて出される意見を聴いた上で、財務大臣との協議を経て、次期中期目標が確定されることになります。

 一方、中期計画については、確定した次期中期目標を基に、労働政策研究・研修機構が次期中期計画を作成し、同計画について主務大臣である厚生労働大臣が内容の精査及び財務大臣との協議を経て、年度内に認可する予定になっております。長くなりましたが、事務局からは以上です。よろしくお願いいたします。

 

○今村主査

 夏の大変な時期から本当に久しぶりなので、念のためにきちんと復習しましたが、何か御意見がありましたら、どうぞ御質問等おっしゃってください。

 よろしいでしょうか。それでは、議事に入りたいと思います。本日は労働政策研究・研修機構の次期中期目標及び次期中期計画について御議論いただきたいと思っております。最初に、法人所管課から次期中期目標案について御説明いただき、その後、法人のほうから次期中期計画案について御説明いただきます。この2つの説明が終わってから、質疑応答という流れで進めていきたいと思います。

 それでは法人所管課のほうから、次期中期目標案について御説明をお願いいたします。

 

○労働政策担当参事官

 労働政策担当参事官の森川です。まず、中期目標案について、資料1-1、また資料3-1の新旧対照表に基づき、御説明申し上げたいと思います。資料1-1を御覧ください。目標の期間は平成294月から平成343月までの5年間です。当機構が実施しているサービスの内容の業務としては、御覧の労働政策研究、情報収集・整理、成果・提言の普及、研修という4つです。

 まず、1の研究についてです。第4期では厚生労働省の労働政策の企画立案及び推進に資する質の高い調査研究に一層重点化するとともに、労働政策の動向を把握し、政策の基礎となる研究を体系的・継続的に推進するというのが基本的な考えです。具体的な事項のところですが、この考え方を踏まえ実施するプロジェクト研究については、労働市場を取り巻く環境の変化等も見据え、労働行政に関する中長期の政策にリトライするために、以下(1)~(4)の視点を基に研究を行うことにしています。

 ここは第3期の目標には余りこういった視点を書くことはやってこなかったということで、今般については、一億総活躍及び働き方改革の実現ということ、それから20年先、要するに2035年を見据えた新しい労働政策の構築、基礎的研究を体系的・継続的に推進するということ、政策の効果を検証するというようなことです。また、毎年度の行政政策ニーズに対応した課題研究、それから4半期ごとに実施している緊急調査についても引き続き実施を求めております。

 これに対する評価の指標です。プロジェクト研究については、外部の有識者等からの外部評価を実施。課題研究、緊急調査については、政策ニーズに対応したかどうかというのを、実際に予算なり法令なりにどれぐらい反映されたかといった成果の件数をもって、評価したいと考えております。

2の情報収集・整理です。政策担当者・労使関係者の実態把握や、政策効果の検証に資するエビデンスを提供するという目的の下、国際データの重要性の増加などへの対応の必要性といった基本的な考え方を踏まえ、具体的事項としては、厚生労働省や外部機関と連携して、国内だけでなく、海外の情報を調査・収集することを実施するとともに、誰もが活用しやすいような情報の整理を行うことを求めております。

 これについての評価の指標です。まずは国内外の情報収集の成果の件数と、それから、公表された媒体についての有意義度等を収集するということで、貢献度を測っていきたいということです。

 第3の柱、成果・提言の普及については、国民各層における政策課題についての関心・理解を深めるとともに、政策的対応が求められる課題について、提言・理論を活性化することを目的として、多様な媒体を有機的に連携された情報発信の推進や、研究者・政策担当者・労使関係者が参加する労働政策フォーラムの開催を行うことを目標としております。

 この成果の指標の観点については、メールマガジン等を一定回数発行ということと、その読者に対する有意義度調査、それから、労働政策フォーラムについても、同様に開催件数と有意義度の評価を見ることにしております。

4の研修です。受講者の現場の知識・技能の活用による円滑な行政推進への貢献を目的として、行政に対しては、科目の設定、経験交流の現場力の強化に資する研修の効果的な実施を図ることとしております。

 また、第4期では現場力の強化に加えて、研究を通じて得られた成果を活用した効果的な研修の実施や、研修生との交流等により、実態に即した研究への貢献などを通じて、研究・研修との連携によるシナジー効果を発揮させることにより、相互の質の向上を図ることを目的として、研究員の研修への積極的な参加に加え、研究員と研修員が研修終了後に交流し、互いに業務で得られた知見を共有し合う機会であるイブニングセッションの開催などを通じた研究・研修の充実を行うこととしております。

 これに対する評価の指標です。これまでは研修直後に有意義度評価を行っていたのですが、一定期間経過後に研修生等による有意義度の評価ということ。それから、イブニングセッションを通じて得られた知見に基づく研修教材の開発・改善の件数を指標として考えております。

 次のページを御覧ください。業務運営の効率化、財務内容の改善についてです。基本的には内部統制の実施や、組織運営・人事管理の体制の見直しなど、他の独立行政法人と同様に、機構が対応すべき事項について定めております。

 また、3番目の情報セキュリティ強化については、昨今のセキュリティに関する対応の重要性の高まりを踏まえ、政府統一基準を基に、ハード・ソフト面の充実を図るとともに、組織的な対応力向上、PDCAへの実施を行うこととしております。

 それから、4点目の業務運営の効率化について、詳しくは新旧対照表の11ページにありますが、既に長期にわたって業務運営体制の縮減を図ってきたことを踏まえ、第4期では業務経費の5%削減を目標とすることを検討しております。また、契約については一者応札の件数を第3期の平均以下とするなど、適切な調達の実施を心掛けていただくこととしております。

 財務内容の改善に関する事項としては、経費の節減を見込んで予算を立てて、それを基に業務運営を図るなど、財務内容の改善を図るために必要な指標を設定しております。以上が全体の概要となります。

 続いて、新旧対照表3-1を御覧いただきたいと思います。まずは1ページ目に前文がありますが、政策体系における法人の位置付け及び役割というところです。第2パラグラフにあるように、第3期と異なり、一億総活躍社会の実現、働き方改革の実施、20年後の働き方を見据えた新たな労働政策の構築など、今後、中長期的に重要となってくる労働政策に関する諸課題について、的確に対応したものとなるよう求めております。また、その下ですが、労働政策は労使に直接関わるものであることから、政府から一定の独立性を持たせる機関で実施する必要があることも明記しております。

 次のページを御覧ください。2ページの労働政策研究(1)の研究の重点化のところですが、これまでどおり民間の研究機関等でできない研究に重点化する方針は明記しつつ、「また」のパラグラフにあるように、中長期的に実施していくべき基礎的な研究も継続することを求めております。それから、厚生労働省による労働政策の企画立案及び、その効果的かつ効率的な推進に貢献するために質の高い労働政策の研究や、行政職員の研修などを行うことを目標として新たに求めております。このことも民間研究機関等で実施は困難であると考えているためです。

 イのプロジェクト研究のところですが、これは冒頭で申し上げたとおり、新たに(1)~(4)の視点を盛り込むよう求めております。

 飛びまして、4ページ目(3)海外との関係です。研究者の人材育成の観点ということを2行目に書いておりますが、それはもとより海外の情報が重要となる中、一時期そのための事業を削減するという時期があって、海外研究機関等のネットワークも大分細ってしまったということもありましたので、海外研究機関等とネットワークの再構築なども含めて、ここは記述をさせていただいております。

 この研究の箇所の具体的な評価の指標について、説明したいと思います。5ページの(5)です。基本的には第3期の目標を上回る水準を数値目標として設定しているところですが、1のリサーチ・アドバイザー部会による外部評価について、これまでは、高い評価を受けた研究成果が総数の3分の2以上ということだったのですが、御覧のとおりS3点とするような点数付けをして、この平均が2.0以上になることを求めております。第3期が2.11ということで、第3期の実績を下回るのではないかというところですが、これは先ほど来申し上げたように、働き方改革など非常に政策ニーズの高いものをやっていただくことになると、どちらかというとリサーチ・アドバイザー部会は学者の先生方が多いものですから、やや基礎的な部分に、やや高い評価がされがちであることも踏まえると、2.0、全体評価Aというところを求めるのがせいぜいではなかろうかと考えております。平均Aで全体がBということになってしまいますので、これを下回ると、それでCというのもいかがなものかというのが設定の考え方です。

 そのほか、2にあるように、政策貢献が期待できると評価を受けたプロジェクト研究サブテーマを8割以上確保するということ。それから、実際に法令、あるいは予算事業につながるというような研究成果が全体総数の85%以上となること。第3期は現在のところ83.7というところです。

 さらには4にあるように、有識者を対象としたアンケート調査で、これも点数化をして、第3期の実績、これは平成26年からしか取っておりませんけれども、この平成2627年の平均以上となるようにということです。

5点目については、主に厚生労働省の昼休みなどに勉強会を開催しております。機構の研究員が講師となっているような勉強会を開催しております。昼休みですので、これは当然、参加するかどうかは任意なわけで、そういった中で第3期では、4年間で大体900件弱という実績が出ておりますので、第4期においても、年平均225人以上確保することを求めております。以上が政策関係の評価指標です。

 続いて、情報収集、提供の関係です。資料の7ページ目の(2)評価における指標のところです。これは具体的には国内情報収集成果、海外情報収集成果の件数を、第3期、それぞれ134142件であったところ、それぞれ140件以上、150件以上ということ、それから、媒体を計12回以上発行するというようなことです。

 さらに3番目の柱である成果の普及・政策提言についての指標のところです。8ページの下の(2)を御覧ください。これまでもメールマガジンを週2回発行するということで、第4期においても同じように週2回のアウトプットを求めております。それから、労働政策フォーラムも2か月に1回、平均的に開催しているわけですが、これも同様のアウトプットを求めております。

2のメールマガジン、労働政策フォーラム、いずれについてもそこを活用していただいた参加者、講読者に対しアンケートを取るような形で、第3期の実績を上回る1.35以上となることを求めております。

4の研修です。こちらの評価の指標は10ページを御覧ください。先ほど申し上げましたが、毎年度、研修生と研修生の上司に対するアンケートで、85%以上の者から有意義であったというような評価を得るということでしたが、第4期においては終了後6か月以降に、その知識あるいは技能が着実に業務のほうに反映されるであろうタイミングで調査するということにしております。

 それから、イブニングセッションについては、毎年度30回以上というアウトプット目標、それからアウトカムとして、それを基にした研究開発の改善の件数、毎年度3件以上ということを求めております。

 第4、業務運営の効率化に関する事項、財務内容の改善に関する事項については、御覧のような定性的な目標が中心になっておりますが、12ページの4(1)、経費の節減については、第3期は一般管理費は5年で15%削減、業務経費は5%縮減としたところです。中期計画期間も第4期ということで、一般管理費は節減するところまで節減してきたというところで、現在のところはそちらの目標については改訂明記をしておりません。この箇所については、今後、財務当局との協議により、変わり得ることを御承知おきいただければと思っております。

13ページの一番下、プロジェクト研究のテーマについて、今回7つのテーマを進めております。まず(1)雇用システムに関する研究は、研究部門の垣根を越えた横断的なテーマとして設定しております。非正規労働者が増加するということで、大分、日本的雇用システムが変化しているといわれておりますが、学卒一括採用などコアの部分は大きく変わっていないのではないかと。ただ、今後、働き方改革の進捗などにより、そこも含めて変動するのではないかと。その前にやはり一旦、その形成期から整理をしておく必要があるのではないかと考えた次第で、このテーマを設定しているところです。

 次に(2)については、労働雇用政策のあり方に関する研究ということで、政策評価なども含めたものを研究していただこうと考えております。

 (3)の雇用労働のあり方は将来像ということですが、20年後の雇用労働の将来像についての研究です。AIIoTの影響などもこのテーマでやっていただこうと考えております。

 (4)の働き方改革の中で、同一労働同一賃金、長時間労働の削減といった、年度末に取りまとめられる実現計画において求める中身の検討、それを踏まえて企業や労働者がどう行動していくのか、それらの現状と課題を整理していただこうと考えております。

 (5)~(7)は冒頭に申し上げた、これまでの基礎的な研究を継続的にやっていただこうということです。中期目標の説明については以上です。

 

○今村主査

 では続いて、法人から次期中期計画案について、御説明をお願いいたします。

 

○労働政策研究・研修機構総務部長

 資料1-2が概要で、新旧対照表が資料3-2となっております。基本的に中期計画は、先ほど御説明いただいた中期目標で示された目標を達成するためにとるべき措置を記載しているもので、私ども労働政策研究・研修機構としては、引き続き労働政策の企画立案及びその効果的かつ効率的な推進に寄与するとの目的の下で、各種業務を的確に推進していくことが肝要であり、それが我々に課せられた使命であることを認識しつつ、計画を策定し、その業務を的確に推進していくこととしているものです。

 基本的に資料3-2の新旧対照表で説明したいと思います。第1、国民に対して提供するサービスその他の業務の質の向上に関する目標を達成するために取るべき措置です。2ページ目に先ほど来、御説明いただいた私どもの実施する労働政策研究については、引き続き民間及び大学等の他の研究機関において実施が困難な研究内容に一層厳選する。その上で高い水準の成果を出すこととしております。

 さらに先ほども説明がありましたが、引き続き労働政策の基礎となる研究を体系的・継続的に実施するという観点も重要であると認識しているところです。

 具体的な研究として、プロジェクト研究について、先ほど概略を説明いただきましたが、一番下の16ページに、それぞれのプロジェクト研究について、若干の説明を書いておりますので、説明申し上げたいと思います。1つ目の雇用システムに関する研究については、先ほど、部門横断的な研究という御紹介がありましたが、私どもが実施する様々な研究の基礎土台となる研究と位置付けており、研究所が一体となって、この雇用システムに関する研究を進めていこうと考えております。先ほども説明いただきましたが、日本の長期雇用システムというのは、変容しつつある部分と、まだ依然として堅持されている部分と種々あるかと思いますが、それらの状況が実態としてどのような現状にあって、どのような方向に向かっているのか、企業、労働者、社会全体など、これを社会保障制度をはじめとして、様々な周辺システムとの関係にも目配せをしつつ、多様な視点から研究を進めていきたいと考えております。

2つ目の労働・雇用政策のあり方に関する研究については、一億総活躍等々の喫緊の課題となっている、65歳以上層を含めた生涯現役社会の実現や非正規労働者の処遇改善、均等待遇、更には同一労働同一賃金といった課題について、調査、研究を行うとともに、既存の労働政策の効果測定という視点を持ちながら、研究を進めていきたいと考えております。

3番目の将来の雇用・労働のあり方に関する研究については、技術革新の進展や需給構造の変化といった大きなトレンドを踏まえて、今後求められる生産性の向上といった観点を含めて、雇用・労働の今後の動向、また、地域における雇用機会と働き方の分析等を踏まえて、将来に向けた政策的インプリケーションを提示していきたいと考えております。

4番目の働き方改革の中の労働者と企業の行動戦略に関しては、昨今、様々な報道等がありますが、長時間労働の是正やインターバル規制の導入といった労働時間制度など、人事管理のあり方や、女性の活躍推進を含めた女性の就業に関する問題、育児・介護とキャリアの両立、そのための労働者・企業双方の行動戦略の課題というものを摘出していきたいと考えております。

5番目の職業能力開発の関係です。基本的には国全体として、いかなる職業能力開発インフラというものを設定することが求められるのか。また、今後、技術革新とか働き方の変化を踏まえて、新たな産業領域等における生産性向上に向けた人材育成の問題、我が国の将来を支える若年者が円滑に職業へ移行する仕組みづくり、そういったものの研究を引き続きやっていきたいと思っております。

6番目の全員参加型の社会実現に向けたキャリア形成に関してです。生涯にわたるキャリアデザイン、労働者の主体的なキャリア形成と、その支援のあり方に関する研究や、生活保護受給者や学校中途退学者等の就職活動に困難を抱える方々が労働参加を進めるためのマッチングの仕組み、カウンセリングの方策といったものを研究する。同時に、時代に応じて、様々な職業や資格といったものが現在できておりますが、そうしたものを網羅して、求職者が的確、正確な情報が入手できるような仕組みづくり、更には就職支援ツールといったものの研究開発を進めていきます。

7番目の労使関係についてです。昨今、労働者概念というものも変わってきていることが指摘されております。雇用関係ではないけれども、指揮命令関係に準じた働き方というものも拡大している中で、そうした働き方を是認するような労働法体系、労働政策といったものがどのようなものなのか。また、集団的、若しくは個別的な労使関係に係る問題も生じており、こうした問題について、国際比較も含めて実態を把握し課題を摘出するといった研究を進めていきたいと思っております。

 以上、7本が中期目標の中で示されたプロジェクト研究に関して、今現在での雑駁な考え方です。

 資料の2ページに戻ります。これらの研究を進めるに当たり、基本的に現行6つの研究部門に分かれておりますが、これらの各部門が責任を持って研究を推進するという体制を取るとともに、必要に応じて部門横断的な実施体制を組んで進めていきたいと思っております。さらに進捗管理の評価等を行うために、研究テーマごとに機構の研究員がプロジェクトリーダーになって、適切なPDCAを推進していきたいと思っております。

 次のロとハの課題研究、緊急調査については、先ほども御説明いただきましたが、それぞれ年度ごと、若しくは4半期ごとの厚生労働省の要請に基づいて、政策的重要度が高く、政策の企画立案に活用される可能性が高いものに厳選して、実施していきたいと思っております。

(2)の研究の実施体制の強化については、基本的には部門がそれぞれ責任を持って研究を実施していくわけですが、新たに強化又は充実すべき分野等が生じた場合に対応できるように、内部労働者の採用、育成に努めるとともに、必要に応じて外部の研究員の活用、更には夏の会議でも御指摘いただいたように、他の民間機関との連携といったものも推進していきたいと思っております。

(3)の厚生労働省との連携は、これまでもあらかじめ研究ごとに担当課を決めて、それぞれ研究部門と逐次の相談、又は成果の評価を実施いただいておりますが、更に十分な意見交換を確保する仕組みを、今後確立し、引き続き政策と研究のブリッジ機能の強化を推進していきたいと考えております。具体的には次のページにあるように、毎年度実施しているハイレベル会合や研究報告会等の枠組み等を活用し、より適切なPDCAの取組を推進していきます。

(4)の海外からの招へい・派遣については、前回までの計画においては海外情報の収集に付帯する業務ということで位置付けておりましたが、今計画から調査研究業務の促進のために、これら業務を行うという位置付けに変更していただいたところです。中期目標に基づいて、イの研究者の招へい、ロの研究者等の派遣といったもの、過去の経緯等ありますが、より積極的に実施していきたいと思っております。

 さらにハで国際セミナーの開催と書いてありますが、これまでも日韓、日中韓、また、我が国で国際比較労働法セミナーといった形で各国の研究者と交流をする機会を持っておりましたが、更にこれを拡充し、新たに国際比較セミナーというものを東京で毎年度開催するという方向で、今、検討しております。

 こうした形で積極的に海外研究者、海外機関との情報交換、交流を図ることによって、アジアにおける機構の存在意義を高めていくことを目指していきたいと思っております。

(5)の適切な指標の設定等々ですが、これは先ほど来御指摘いただいている外部の評価機関、リサーチ・アドバイザー部会等の外部評価機関から、厳格な評価を頂くとともに、そもそも中期目標、中期計画で達成を目指す目標水準が妥当であるかというものも、毎年度検証して、それを運用していくことを考えているところです。

(6)、評価における指標としては、厚生労働省から示されたものを達成することが一義的な私どもの目標であり、1つだけ申し上げれば、(1)のリサーチ・アドバイザー部会の評価の2.0というものですが、S評価3A評価2B評価1としていることについて、私どもはC評価以下というものは、これまで取ったことがありません。B評価というのが私どもとしては標準レベル、合格レベルということで、研究員が1年間、若しくは数年間掛けて研究した成果が合格ということについて1点と設定していただいたということで、研究員のモチベーションの確保に資するのではないかと考えているところです。

 次の5ページ、労働事情・労働政策に関する情報の収集・整理です。こちらについても中期目標で示されたとおり、国内外の情報を分かりやすく整理、提供するとともに、4行目辺りですが、内外の労働事情、各種統計データ等を継続的に収集・整理をいたします。また、国際比較が可能なデータを中心に、海外の調査・情報収集も強化していきたいと考えております。

 具体的な業務については、イロハニとありますが、イで国内、ロで海外の情報です。特にイの最後のパラグラフで、情報収集の成果について、ニュースレターにより国民各層及び海外関係者に幅広く提供することとしております。特に海外の関係者に対しては、当然、日本の情報を英文で発信することによって、我が国の労働関係の情報について、海外の関係者により広く御理解を頂きたいと考えております。

 続いて、3の労働政策研究の成果の普及と政策提言です。ここは個別に実施する業務について記載しております。まずメールマガジンについては、前回の計画において、メールマガジンの送付対象者数を32,500人という目標設定もありましたが、これは既に平成27年度で33,000人を超え、達成しておりまして、今後週2回は確実に送付、発信するということで、この内容の充実にも努めていきたいと思っております。

 また、ホームページが平成27年度で700万ビューを超える閲覧を頂いており、これが私どもの業務の発信に最も有効であろうということで、これを更にアクセシビリティの改善を図ることによって、広報機能の強化に努めていきたいと思っております。研究専門雑誌、日本労働研究雑誌というレフリー制の雑誌を発行しておりますが、これについても引き続き実施していきます。労働政策フォーラムについても、先ほど目標で示していただいたとおり、政策提言・政策議論の活性化という目的に資するよう、着実に実施していきたいと考えております。

(2)でその他の事業(付帯する業務)ということで記載しておりますが、具体的には東京労働大学講座というものを長年実施しており、これは広く労使実務家を対象に、研修事業を行っているものです。これについては平成27年度も様々な科目がありますが、2,000人を超える方々に対して実施しており、引き続き実施していきたいと考えております。

 次のページで、労働行政担当職員研修です。昨今、様々な政策課題というものが新たに提供されております。特に雇用環境の改善を図るために、地方労働局において組織の再編が既に行われております。また、本省においても、来年度に機構改革が予定されていると承知しております。引き続き、そうした新たな行政ニーズに対応したコース・科目の設定というものに努めていきたいと思っておりますし、現場力の強化に資するように行うことは当然であると考えております。

 また、研修の事前・事後の各段階での有識者からの意見、これも以前から実施しておりますが、次年度以降も的確な意見を得て、研修の質の向上を図れるように対応していきたいと思っております。さらに、研修と研究の連携によるシナジー効果の発揮ということで、先ほど中期目標で示していただいたとおり、研究員の研修事業への参画、また、その参画を通じた研究開発、就職支援ツール等の開発改善に努めていきたいと考えております。

 次のページ、第2の業務運営の効率化のための措置ですが、これについては先ほど中期目標で示していただいたものを、基本的にそれを達成すべく記載しております。それぞれについて的確に実施していきたいと思っております。

 第3の予算の関係、第4の短期借入金、第5の不要財産等々、そのほかの部分についても基本的には中期目標で示されたことについて、これを間違いなく的確に実施していくこととして、中期計画上、記載をしているものです。以上、雑駁でありますが、説明といたします。

 

○今村主査

 それでは、ただいま御説明がありました次期中期目標案と次期中期計画案について、どうぞ御自由に御意見、御質問等をお願いいたします。

 

○志藤構成員

 私、自分の仕事とも関係することなので、お伺いというか、要望も含めて申し上げたいと思います。16ページに第4期でどのようなことをなさるかというのがありまして、それの(2)に「人口・雇用構造の変化等に」ということで、人口構造、65歳以上がこれからどんどん増えていくという中で、生涯現役社会の実現ということが当たり前のようになってきています。御存じのように、老年学会と老年医学会で、今の75歳は、10年前の65歳と同じぐらいなので、その人たちが元気であるということを証明して、その方々にも社会に関わっていただくようにというようなお話があったかと思います。それは、老年学会と老年医学会という学会が発表したもので、それを受けて、国がどのようになさるかということはこれからのことなのですが、そのときに、街の声とか新聞紙上等で出ていたものが、仕事の関係もありいろいろ分析しますと、批判的なものとして大きく3つに分かれていたと思います。

1つは、これを使って社会保障制度の改悪と言いますか、年金などの支給開始年齢を遅らせるのではないかといったような声とか、2つ目は、いつまで働かせるつもりなのかということと、3つ目は、年寄りが、そんないつまでも残っていることによって、若者の職を、今、それでなくても非正規というような中で大変なのではないか。若者が、むしろつらい目に合うのではないかと。大きく3つに分類されていたと思います、私の見た限り。メディアの扱いですので、当然そういう視点を強調するのは分かるのですが、その中の支給開始年齢を遅らせるとか、いつまでも働かせるのかということに関しては、きちんとした対応ができると思うのです。しかし、若者の職を奪うのではないかという言い方に対しては、これは次元の違う問題であるということとか、働き方の違いとか、種類の違うものであるということをきちんと提言していかないと、こういう言葉は割と一般的に流布しやすいので、年寄りがいつまでも働くということは、若者の職を奪うとか若者の機会を奪うという発想にすぐつながりがちで、なるほどというようなことになって、それに正当性を与えられてしまうのも、私としては非常に困ったことだと思います。

 それにはやはり、きちんとしたエビデンスとか、海外などでどうだろうということは、実は海外では、高齢者が働き続けることが若者の職を奪うことにはならないということが、きちんとした政策、研究結果として出ているわけです。そういうものをうまく取り入れながら、日本でもそういうことは起こらないのだというようなことを、やはりきちんとお出しいただくのがJILPTの大きな役割ではないかと、私はとてもそこを期待しております。人口構造の変化によって一億総働きの中では、そういう対立構造というものを避けるためのエビデンスに基づいた研究というものを、是非、お願いしたいという、要望も含めてですが、気が付きましたので申し上げさせていただきました。

 

○労働政策研究・研修機構研究所長

 そのとおりでございます。私どもは、若者の研究と高齢者の研究も両方やっております。先生が今おっしゃったように、高齢者と若者の働き方が違いますし、日本の場合は、役割分担と言うと変なのですが、企業としての取扱いも違うのでということは、これまでもいろいろな場で、私どもも研究員も申し上げてきたところなのです。今は景気回復しておりますけれども、いまだに就職氷河期だった頃の印象がまだ大変強くて、そういう議論にもつながりやすいのかと思っております。

 この研究のところでは、働きたい方が能力をいかして生涯現役で働けるための研究というのが1つと、これから人口減少社会の中で、技術革新の進展もあって、若者とか高齢者とかというくくりでなく、いろいろな意味で構造が変わってくるかと思いますので、その辺り、将来展望も含めて広い視点でお示しできるようにしていきたいと思います。ありがとうございます。

 

○今村主査

 今のことで少しお伺いしたいのですが、突拍子もない質問ですけれども、厚労省の縦割りの中でこういうテーマが出るのはやむを得ないことですが、社人研との研究テーマのすり合わせや交流はやっていらっしゃるのですか。

 

○労働政策研究・研修機構研究所長

 研究テーマのすり合わせは組織的なことはやっていないのですが、個々の研究員で連絡があり、論文を書いたりなど接点もありまして、今後、特に冒頭に挙げたような雇用システムの研究の中では、いろいろな社会保障制度、社会保障政策も含めて関連が出てくるところがあるかと思いますので、ますます連携をしなければいけないかと思います。

 

○今村主査

 志藤構成員の御指摘はすごく重要なことで、例えば、貧困とか格差というのは全く入っていないですね。縦割りの中では仕方ないことですが、JILPTのアプローチからそこに入り込んでいくイノベーションというのは、多分、可能だと思いますので、是非、そういう形で御努力いただければと思います。よろしくお願いします。

 

○労働政策研究・研修機構研究所長

 女性の貧困問題については、既に長年やっている研究がありまして。

 

○今村主査

 女性のほうはやっていらっしゃいますが。

 

○労働政策研究・研修機構研究所長

 あと、若者もやっておりますので、その辺をもうちょっとまとまった形で認識していただけるようにしたいと思います。

 

○柴田構成員

 私は今日、2つ意見というか、お願いを申し上げようと思っていました。1つが、正にそれと関係があることなのです。他の独法でも、こちらと同じように普通の機関ではできないようないろいろな研究をされています。例えば、安全衛生の問題とか障害者雇用の能力開発とか、そういった研究を機構が一元的に把握しているとよいと思いました。少なくとも、どこでどのようなものをやっているかという情報収集のところで全体の体系と、最近のトレンドのようなものを把握していただきたい。今回は海外のことをとっても強調しておられて、それもすごく重要なことだと思いますが、国内において、希少な研究がどれだけ行われているかというのを、きちんと体系的にいつも情報収集をしていただいたら、そして、それをホームページなどに載せていただくと、とても参考になるのではないかと思っています。研究員の方々は、それぞれそれをやる度にサーベイをやっておられるとお聞きしていますので、そこを組織としてやっていただけたらいいと思います。この件についてはこれだけです。

 もう1つは、評価の問題です。資料3-25ページに「評価における指標」があって、そして、(1)の所にリサーチ・アドバイザー部会等の評価が「重要度:高」で「難易度:高」ということで、評価がSABCとなっていて、御説明ではB評価が標準レベルという話だったのですが、世の中は大体C評価が標準なのですが、機構はB評価ですというように理解したのです。

 まず、前提として外部の研究者の方にSBを付けていただくときに、どういう要件を満たしたらSなのかということを設定しているのかということが1つです。

 今、申し上げたように、世間ではCが普通ということであれば、Cという指標と、Cより下のDというのも設定しておいて、結果としてBとか、Aとか、Sばかりなのだから、難易度が高くて重要度が高いというならば外から見ても説得力のある評価になるのではないかと思います。

 それと、(4)のアンケート調査の所で、「大変有意義」「有意義」「有意義でない」という3段階になっているのですが、アンケートを作るときに回答者の心理的なことを考慮するのだったら、ネガティブな選択肢と、肯定的な選択肢は同数設定すべきです。そうすると、「大変有意義」「有意義」「有意義でない」「全く有意義でない」を設けておくべきだと思います。3段階でやると、「有意義」に集中し、「有意義でない」というのは心理的に付けにくい。今回は新しい中期計画ということなので、もちろん前中期計画との継続性はあるかもしれませんけれども、多少、読替えをして、指標はもう少し一般の人にも分かりやすくて説得力のあるものにしたほうが、より皆様のやっておられることの評価の高さが明らかになるのではないかと思いました。以上です。

 

○今村主査

 これはどちらでしょうか。

 

○労働政策担当参事官

 行政の理解として、重要度高、難易度高の考え方は申し上げましたとおりなのですが、普通にその研究員がSABCD5段階評価で、普通の研究員がリサーチ・アドバイザー部会に出してしまうと、普通はBが標準になるのかという、正規分布にはなるのかと思ってはいるのですが、ただ、別に研究員がということではなくて、リサーチ・アドバイザー部会に出すプロセスの中で、一定組織的に議論を行って、必要に応じて修正をしていると。そうすると、ややA、どちらかというとBが中心になるというよりは、分布としてはSなりAのほうに近いものが多くなっているのかと。そうすると、全体としてはAが、平均的にAを取るということが組織的には標準、それ以上になるというように私どもは理解して、このような設定をさせていただいております。

 それから、(4)の3段階で、「大変有意義」「有意義」「有意義でない」というこの表示と、選択肢の付け方ですが、ごもっともな部分は確かにあります。更にマイナス点でも付ければいいのかという話はあるのですが、ここのところ、あくまでも私ども総務省等から求められている制約として、できるだけ過去の実績を上回るというような考え方がありまして、過去の実績が、仮にここで違う選択肢を設けてやってしまったときに、では、何点を取ればBというか標準になるかというのも、また新たに考えないといけないということで、できるだけ過去との接続性を重視して、こういう目標設定、選択肢としてはこれまでどおりですが、点数としてはそれ以上になるように、そういった形で設定させていただきました。ここの御意見は御意見として、総務省等々とも相談の上、また検討してまいりたいと思います。

 

○今村主査

 もし何かあれば、どうぞ。

 

○労働政策研究・研修機構理事

 最初のホームページというか、他の研究の、私どものほうで御紹介したほうがいいのではないかという御指摘なのですが、私どもの研究は、確かに労働政策研究ということで、一番包括的なものではありますが、他の、例えば安全衛生研究とか、あるいはJEEDでやっているような障害者の研究、どちらかというと、かなり専門的に特化したような研究が多いと思っておりまして、そういう意味で私どものホームページで、その研究自体を事細かに御紹介するというのもふさわしいのかという疑問はあります。それぞれの機構のほうでしっかりとその辺りの詳細を発表していただいている状況ではあります。

 ただ、私どもの研究と非常に関連する部分もいろいろありますので、適宜、メールマガジンとか、そういったところで御紹介していくということは心掛けていきたいと思っております。

 

○柴田構成員

 そこまでは私は求めていなくて、リストがあり、リンクで、飛べばいいだけの話かと思います。

 もう1つ、評価基準についてです。余り納得はいっていないのですが、SABCDということの評価要件が明文化されているかということです。それぞれ付ける人が、これを達成してからAと付けてくださいとか、そういった基準があるのかという質問が残っていました。

 

○労働政策研究・研修機構研究所長

 評価については、何項目か個別に付けていただいた上で、それで総合評価を付けていただいて、全体としてSABCDということになります。個々の項目の評価については、「趣旨・目的が明確になっているか」、「研究方法が適切なものか」、「研究成果・結果の水準はどうか」、「研究成果・結果の有益度」。「政策への貢献度」といった個別の項目ごとに、Sが最優秀という評価で、Aが優秀、Bが普通、Cが要努力ということなので、Cだと達成できていないということになります。Dはレベル不足ということで、これは駄目という評価になります。5段階で、今、申し上げました5つの点について評価を頂いた上で、総合評価を更に頂くということで、それをお二人の有識者の方に頂いております。ですから、私どもの研究員も含めた理解としては、Bが合格、ちょっと褒めていただいたのがAの優秀、頑張ったねというところでして、Sは、なかなか狙って頂けるものではないというか、何か特段そのときに御評価いただいたものがあったときに、2人の先生の評価と、それから、リサーチ・アドバイザー部会の先生全体の御評価で、特にこれは褒めてもいいのではないかというときにSが頂けるということです。一応、Aを目標にして、「優秀」は頂けることを目標に、みんな取りまとめを機構内では頑張っておりますけれども、Sが頂けたら、時々、基礎研究などで高い評価を頂けることがあるのですが、気持ちとしては例外的に最優秀と言っていただけたというような受け止めで、私どもは研究取りまとめをしております。

 

○柴田構成員

 分かりました。もっと大勢の評価者がいらっしゃるのかと思ったものですから、お二人ということなので、多少、意思が通じているのだなということですね。ただ、評価者が変わった時のことも考える必要があります。評価委員会の際も評価者が変わると、突然評価が上下してしまいました。だから、ある程度客観的な要件のようなものが、明文化されていると、評価のぶれが小さくなって、今後のためには良いのかと思いました。これは意見です。

 

○労働政策研究・研修機構研究所長

 評価をいただく様式である「研究成果評価票」には個別項目ごとに説明を付けまして、こういう視点で御評価くださいということでお願いしておりますが。

 

○柴田構成員

 達成度合いなど、指標めいたものが入っているといいかと思ったのですが、これは、今後、御検討いただければと思います。どうもありがとうございました。

 

○労働政策研究・研修機構研究所長

 ありがとうございます。

 

○今村主査

 すみません、今の柴田構成員の発言を受けると、少し時間は戻りますが、この夏に我々がやったことで評価できるのは、この件に関して積極的に発言する人が今はいないので残念ですが、評価の客観性、透明性、納得性というものを、我々が夏に必死になって達成したと思います。横並びでの信頼性、横串での信頼性ですね、それを確保したと思います。

 やはり柴田構成員の中には何か評価の基準に対して、ちょっと納得できないというか、Bは標準ですと言っても、言葉の使い方として「普通」という言葉を積極的に捉えるか、捉えないかということがありますので、つまり、2.11という過去の実績があるのにもかかわらず2.0というのは、やはりネガティブ、目標設定だったら、これは当然なのです。なぜという説明を、今、頂きました。でも、ちょっと、もやもやしているというのが正直なところです。ですから、ここはいっそのこと、質問項目の表現を変えたらいいと思います。つまり、夏に我々がやったのは、Bは標準ですと、100%達成しましたよ、それで十分ですという表現にすれば、Bが標準ということに我々は納得できるのですけれども、「大変よくできました」「よくできました」「普通ですね」にして「普通ですね」、何か、これ、ネガティブな感じです。だから質問項目の工夫をして、夏に我々が、園田構成員はじめ皆さんの貢献で、きちんと信頼性を達成したことに倣って、是非、思い切って、あえて2.0という目標とする設定があるのであれば、1.0は普通であるというような客観的な指標を、あえて取り入れるべきだと。そういうマインドセットのリセットがやはり必要ではないのかもしれません。評価のほうを、参事官、是非御検討をお願いしたいと思います。

 

○酒井構成員

 よろしいですか。

 

○今村主査

 どうぞ。

 

○酒井構成員

 違ったことですが、全体的に見て、第3期と第4期の目標計画とも見せていただいて、当然かもしれませんけれども、リリースAサイクルで、第3期の皆さん方の自己評価に基づいて、改善、改革されているというように、全体で聞かせていただきました。

 その場合に、1つ目は、目標と計画との関係ですが、ここで目標で特にプロジェクト研究について、4つの視点を出されているわけです。この視点と、計画にある7つのプロジェクトの紐付けの一つ一つは、それは全く無関係だとは思わない。紐付いていると思うのですが、その辺が皆さんたちの中で、非常に意図的に戦略的に紐付いているものなのかどうかということを、簡単にお伺いしたいことが1つ目です。

2つ目は、特に目標の最初のところに、一億総活躍社会とか働き方改革ということがありますが、これは素人が、もし見方が間違えていたら御指摘いただきたいのですけれども、厚労省自身が、過去の皆さんたちのいろいろな研究成果に基づいて積み上げられたというようにはどうも見えなくて、今の政府自体がトップダウンで落としてきているように見えるのです。そうすると、今後これから先、5年間、中期を考えていったときに、厚労省と政府と皆さんとの関係の構造が、研究の上で今のままの形で、常に政府の政策に直結するようにいく、そこの辺はどのように皆さんたちの間で議論されているのかということを教えていただけたらと思っている次第です。

3つ目は、先ほど柴田委員が、全体の中で常に皆さんたちのやっていることの分脈のもう1つでいくと、民間との研究、特に、こういった政策のことをいろいろやってコンサルテーションしている非常に優れた総研がたくさんあるわけで、その辺のところとの関係がどのようなのかということを教えていただけたらと思いました。

 

○労働政策研究・研修機構研究所長

 それでは、冒頭に目標で掲げられました一億総活躍、20年先の働き方等の4つのことと、私どもが来期に手掛けたいと思っている計画のほうに挙げた7点の関係です。まず、「一億総活躍及び働き方改革を実現する視点」という目標は、これは非常に広いテーマですけれども、一応、私どもの考え方としては、計画別紙のプロジェクト研究(2)の所で、一億総活躍社会に向けて高齢者、非正規の方々の課題を中心にやることと、政策評価をやるというプロジェクトで立てております。この中で、かなりの部分をカバーしつつ、目標の「働き方改革」の視点については、プロジェクト研究(4)の「働き方改革の中の労働者と企業との行動戦略」の研究のほうで対応したいと考えております。

 それと、20年先の働き方は、新しい働き方の問題ですが、これについては、主に16ページのプロジェクト研究(3)の「技術革新等に伴う雇用・労働の今後のあり方に関する研究」というところで、主に将来推計、それから、地域がどうなっていくかということも重要な視点かと思いますので地域の問題も含めて、こちらのほうで研究を進めていきたいと思っております。 

 また、冒頭の目標の(3)で、体系的、継続的に基礎となる研究を進めていくということで、目標をいただいておりますので、それは(1)の雇用システムに関する研究のほうで、しっかり部門横断的にいろいろな研究員に参加するような形をつくってやっていきたいと思っておりますし、あるいは、例えば職業適性、職業情報の関係とか、あるいは労使関係とか、いろいろな意味で基礎となる研究を我々は長年やってきておりますので、こちらのほうで対応できるかと思っております。

 目標の最後の(4)の政策効果の検証のところは、これは全ての部門に係ると思っておりますが、主としては、労働・雇用政策のあり方ということで、計画別紙(2)のプロジェクトのほうにおいてメインでやっていくようになるかと考えております。最初に御質問を頂きました目標とテーマとの紐付けについては、以上のように、今のところ考えております。

 

○労働政策担当参事官

 政策と研究の関係ということですが、確かに一億総活躍、あるいは働き方改革というのは、主に政府からということなのですが、でも、政府の方向性、政策を議論するのに、実は労働政策研究・研修機構の研究成果や調査研究、かなり引用されている部分があります。それは、やった当時、働き方改革とか政府の大きな動きがあったわけではなく、それを見越していたわけではなくて、やはりそこは地道にいろいろな研究員、調査員が将来こういうことが起こるかもしれない。かもしれないということで、緊急調査のように、直ちに使うということではないかもしれないけれども、そういうのを地道にきちんとやってきたことが、今の政策のほうにつながっているのではないかというように私どもは思っております。

 民間の調査機関等々の関係ですが、我々は本当に行政で必要な都合のいいデータや資料でしたら、それは別に委託研究でほかの民間の調査会社でも使っていいのだと思いますが、私ども、JILPTのほうにお願いするというのは、都合の悪い結果でも、きちんとオープンにしていってもらうということなのだと思います。ファクト、つまりエビデンスを大切にしていかないと、やはり労働政策は駄目なのだろうと考えております。ですから、そういう意味で、今回の(1)~(4)の視点というのは、確かに政策に直接、政策立案につながっている部分もありますし、それから、その政策を進めていく過程で、多分、いろいろな問題もまた出てくるのだろうと思っております。それもまた、きちんとフォローをしていっていただく。それのほうが大事な視点かなと思いまして、ここを(1)あるいは(4)といった観点を付け加えさせていただいております。

 

○高田構成員

 数値目標に関して議論があったのですが、具体的に数値目標をどのぐらいにするかということもさることながら、数値目標をこういう研究中心の事業の中で継続的に高めていくというのは、評価のあり方として妥当かどうかというように、私は疑問があります。

 特に、そのときどきのトピカルな研究もありますが、継続的に基礎的な研究を行っていくという目標も、御紹介いただいたようにやっていらっしゃるわけですので、そういう意味で、一体今期の目標の中で、どこが今までと違った達成をしているのかということが、我々に分かるように評価の仕方、つまりテーマが、今までを思うと、こういう点は新しいトピックを取り上げたとか、新しい切り口で取り上げましたというような、研究の中身の評価というものも御紹介いただけたら、評価のバランスとしてより適切なものになるのではないかと思います。その点、これは今すぐという必要はないと思うのですが、今後中期計画の評価をしていく過程で、そういう視点を取り入れて、成果というものを我々にアピールしていただけたらと考えております。

 

○労働政策担当参事官

 もともとJILPTは政策貢献を期待されて設置されているということで、今期の目標として、これまでなかったものとしては、実際にどれだけが研究成果が役に立ったかというアンケート調査だったのですが、実際にどれぐらい法令、予算等につながったかというところは、数値目標でお示しすることにしております。

 ただ、こういった数値目標だけで測るのはどうかという気もいたしますが、やはりこれは使われたといって、審議会の資料で使われた、あるいは国会答弁のときに使われたと、いろいろなレベルがあるのだろうと思っています。そういった個々の研究成果がどれだけ役に立ったか、あるいは先生方からどれぐらい評価されたかというのは、今後のことになるかと思いますが、毎年の報告等の段階で数値だけではなくて、具体例として、これはこういうことにつながった、これは働き方改革の新しい観点を出したといった具体例をお示ししていくことが大事かなと思っております。

 高田先生の御指摘もありまして、今後実績報告していく中で、そういったところを機構に御努力いただくようにお願いしていきたいと思います。

 

○中村構成員

 全体的な印象ですが、第3期と比べると、第4期は目標、計画ともに詳細かつ具体的な形になっているという点が、評価できます。

 ただ、その中で、海外に関する研究の取扱いがもの足りません。今まで第3期では「労働政策研究に資することを目的として」という中で触れられていました。今回はそうではなくて、明確に、「機構の労働政策研究の国際的プレゼンスを高める」、それから「アジアにおける労働政策研究の拠点としての機能の強化を図ることを目的として」ということで、質的に全然違います。これはいいことで、是非やってほしいと思います。

 ただ、そうして見たときに、第3期の中期目標も第4期の中期目標も、項目が「研究者、有職者の海外からの招へい、海外への派遣」となっていて同じなのです。項目の表現は方法論であって目標ではないと考えると、第4期の研究者、有識者の海外からの招へい、海外派遣ではなくて、何か目的らしいものをもう少し強調して出したほうがいいのではないかと感じました。

 具体的には何を行うかと言いますと、同じようなことを言っているわけです。つまり、「具体的には以下のとおりに業務を実施する」という中身は、「研究者等招へい、研究者等派遣、国際セミナーの開催」で、これは従前と変わってません。目的が、非常に積極的な方向に変わったにもかかわらず、やることは同じにしているところが残念だと思います。この点は少し考えていただければという気がします。以上です。

 

○労働政策研究・研修機構理事長

 先ほどの高田先生の御質問とも関連させて、私の気持ちを御説明いたします。私は、労働市場あるいは労働関係について、今、かなり大きな構造変化が起きていると、しかも、これは先進諸国のいずれでも大きな変化が起きていると思います。そういうのを踏まえて、政府も非常に張り切って、働き方改革など、いろいろな労働政策をやっていますし、しかも20年先の働き方を見据えるとか、そういうことを言っているのだと思います。

 そういう状況においては、JILPTのなすべきことは、現在の具体的な政策課題と関連させて調査研究を行うことばかりではなく、かなり基礎的な全体の構造にわたって変化の先を見据えることが必要だと思います。歴史にも照らして、それで非常に重要なのは国際比較だと思っております。

 今度は国際活動を重要なものとして入れていただいたのは、そういう気持ちで、アジアの拠点というのも、研究者の交流をしてお互いに議論して、先進諸国で何が共通に起こっているのか、それについてどういう政策をそれぞれ考えているのか、そういうことをやりながら、若手の研究者を育てたり、研究者の関連の議論を進めて、共同の研究を進めていくというようなつもりです。

 

○戸田構成員

 今のお話に関連してですが、国際的プレゼンスを高めるというところが重要であると考えていますし、意見に賛成はできるのですが、今回挙げているプロジェクト研究の中の7つのテーマを見る限り、一部は国際比較とか、国際的に有用な問題であろうものもある中で、一部は日本固有の問題と言わざるを得ないところもあると考えています。

 例えば、雇用システムに関する研究という話で申し上げますと、御存じのように、日本はかなり職務に特化した働き方、いわゆる日本的雇用慣行などが従前からあります。これは崩壊しているという意見もありますが、私の見る限りでは余り変化はしていないという中で、そういったところをもう少し国際比較の観点で見られるのかというところは重要なのではないかということで、そういうところも是非意識していただければなと思います。

 それに加えて、例えば(2)の人口・雇用構造の変化等に対応した労働・雇用政策のあり方、ここは少子高齢化というような議論は日本にとどまらず、世界的に起こる課題ですので、そういうところで、日本の事例だけではなく世界が抱える課題について、どう取り組むかという視点も重要だと考えます。

 そのように見ていきますと、一億総活躍とか働き方改革という話は、日本固有の問題と捉えがちですが、国際的に見ても重要な課題であるというところと、そういう中で日本の事例、日本の取組というものが、いかに海外の政府なり研究者の役に立つのかという視点で考えていただきたいと思います。

 私自身も海外の交流者と交流していると、日本の事例は日本特殊のもので、余り参考にならないという声が多いです。一部には参考になるという方もいらっしゃるかと思うのですが、是非そういうところを変えていくというお考えで進めていただけると、より国際的プレゼンスというところにもつながっていくのかなと思いました。以上です。

 

○労働政策研究・研修機構理事長

 御存知のようにかつては日本的経営あるいは日本的雇用システム、労使関係は世界の注目の的で、非常に国際比較の観点から日本研究が行われたわけですが、それが1990年代半ばぐらいから低調になったわけです。

 しかし関心がなくなったわけではなくて、日本からも積極的に発信がされなくなった。それは様々な変化を捉えるのが非常に難しくなったということもあると思います。今、私どもも海外のいろいろなセミナー、学会等に出席すると、もう一回発信してくれと、それで、比較すれば同じような変化がいろいろと起きていて、どうするのだろう、日本はどうやっているのだろうというのは、向こうも関心がありますので、先生がおっしゃったようなことは私も十分に意識してやっていくべきだと思っています。

 

○今村主査

 先進国との国際関係と、発展途上国との国際関係というのは、若干ニュアンスが違うかもしれません。先進国の場合は問題共有だけれども、発展途上国の場合は、私たちも4月から新しいグローバル・イノベーション学科というのを作るのですが、アジアからの留学生は「日本の成功体験を知りたい」と。そういう意味でのニーズが若干違いますので、そこは柔軟に御対応いただければ有り難いと思います。

 

○労働政策研究・研修機構理事長

 アジアにおける拠点と強調しているのは、アジアも視野に入れてということです。

 

○関口構成員

 プロジェクト研究をはじめ、今後の研究に非常に期待しているところです。3期の部分でもかなり研究について発信していただいたと思うのですが、より一般国民に広く知っていただけるような情報発信の方法を、是非考えていただきたいと思っています。

1つは、最近労働関係の討論番組等もありますが、残念ながらJILPTの研究員の方は、非常に有効な研究成果を出している方々がなかなか登場しないという、テレビ側の選択の部分もあるかと思うのですが、これだけの成果を出されているので、そういった部分から発信していただける方を、どんどん研究員の方を出していっていただきたいと思います。抑えていらっしゃるということではないとは思うのですが、是非発信を積極的にしていただけるといいかなと思います。

9ページ等にありますが、メディアに対しての情報発信というところで、まだ情報提供のレベルなのかなと思うのですが、是非積極的に発信していっていただきたいと思います。今は事例がすぐには思い浮かばないのですが、残業ゼロ法案などというキャッチーなタイトルが付いてしまって、本質的な議論が全然深まらないといったところがあるので、そのようなことに関しても、いろいろな蓄積がおありになるJILPTの方々の研究成果を発進するという方向からも、是非考えていただきたいというのがあります。

 もう1つ、情報発信に関してです。先ほどメールマガジンの話をしていただきましたが、学生等を見ていますと、メールを余り活用していない、テレビも見ていないと。そうなってきますと、それ以外の情報発信の仕方を、情報セキュリティの問題はあるかと思いますが、考えていただいたほうがいいのかなと思います。自宅であってもテレビをほとんど見ないとか、自宅外ですとテレビがなくて、パソコンでYouTube等の映像を見ているという学生がほとんどです。そうなってきた場合に、せっかくの成果を学生や若い世代に伝えるためには、何か有効な方法はないのか。安倍総理もラインを使っていろいろと発信されていますが、あれだけの短い部分ではなかなかJILPTの皆さんの成果を発表することはできないのかもしれないのですが、何か工夫していただけると、よりいいのかなと思っています。学生に対してブラックバイトの問題について、労働問題はなかなか自分が実際に正規職員として働いたことがなく分からないので、ブラックバイトの問題から、入口としてということで講義をしたりするのですが、身近な問題ですと、非常に学生たちも関心を持つということがありますので、そのようなところも是非工夫を、中期目標の中に入れるということではなくても、何か視野に入れていただけるといいかなと思います。期待を込めてということです。

 

○中村構成員

 中期目標に対する意見です。先ほど私が言ったことに対する回答がなかったようなのですが、中期目標の4ページの(3)の研究者、有識者の海外からの招へい、海外派遣について、これは方法論であって目標ではないではないかと申しました。余りこだわるものではありませんが、これに対する見解をお願いします。それよりは目的でもう少し前向きなことが書いてあるので、例えば「国際的プレゼンス向上」とか、「アジアの拠点化」といった積極的な表現でいいのかなという気がします。コメントをお願いします。

 

○労働政策担当参事官

 冒頭に申し上げましたが、方法論としては確かに変わらないのかもしれませんが、今後の海外情報のネットワークを作っていくのは重要だと。これは海外の情報を収集しようとするときに、行政官ですと、どうしても23年での人事異動がありまして、継続的な情報収集はしにくいという面があります。そういう面で、非常にJILの研究員の皆さんが、海外等のネットワークを作っていくことで、継続的に、しかもかなり広く、特定の国だけではなくて、広く情報収集する体制が構築できるのではないか。そういった問題意識で、研究者の人材育成もそうなのですが、正に行動していくことで、JILそのもののプレゼンスを高めていく。ひいては、アジアの中で、日本の中で労働問題の研究をしているところは、JILPTであると。そういったことを広く認識、改めて認識されるようにしていっていただきたいという気持ちを込めて、こういった書きぶりにさせていただいているということです。

 

○中村構成員

 書いていることは非常にいいのです。ただし、そのタイトルが相変わらず、研究者、有識者の海外からの招へい、海外派遣となっているのが、ちょっともったいないというだけです。ただ、今日の議論が議事録として残っているのだったら、それはそれで十分かなと思いますので結構です。

 

○今村主査

 今の御発言に関してですが、機構の中でも人材育成ということで、そういう国際の場に出ていって、ネットワークを作って、またこちらにもそういうネットワークを作るという、研究者という閉鎖的なものではなくて、もっと社交的でオープンな人材育成とか、そういう人材像も新たに機構に必要なのかなと、お話を聞いていて、こういう成果を挙げるためにですね。コツコツ勉強していればそれでいいという評価基準ではなくて、もっと幅広くネットワークを獲得していくというようなことが、もしかしたら必要かなと思いました。是非、そういう意欲を、達成するようにトータルで戦略を立てていただければと思います。

 まだ時間は若干あるのですが、せっかく時間が残っているのにこのようなことを言って申し訳ないのですが、1つだけ気になることがあるので、是非お考えいただきたいのは、先ほど来議論になっている研究テーマのことです。あえて誤解を恐れずに言うと、対象が企業社会だけになっています。つまり、これは厚労省の独法はみんな同じことなので、私は前から発言しているのですが、NPOとか社会的企業とか、そういうサードセクターではなくて、市民とかいろいろな人たちが一緒になって、ボトムアップで草の根でやっているというものなどいろいろあるのですが、そういうものを是非連携してやってくださいということを申し上げて、どこの機構もそうなのですが、企業社会で、企業の所で止まってしまっていると。

 でも、例えばハーバードなどの卒業生の半分以上は企業に就職しないで、社会的企業とかNPOに行っているわけです。日本でも慶應の湘南藤沢などに行くと、かなりの人間が自分でNPOを作ってやっているのです。私の大学でも、NPOの名刺を出してきた1年生がいました。そういう意味で、働き方そのものがボトムアップでかなり変わっているという現状は、JILPTとしても、今回表に出すことは性急かもしれませんが、先ほど来基礎研究とおっしゃっていますので、そういう世の中の動きがどうなっているのか、特に個人の、若者たちのマインドはどうなっているかということを、しっかりと捉えていただくことが必要なのではないかということを感じました。

 だから、是非そういう、三者、政府、民間営利企業、サードセクターの社会的企業、NPOなどと連携していくような、そういうことでトップダウン的ものではなく、ボトムアップに、きちんと上と下とで連携するような、それが本当の意味でのアウトカム、政策のほうも達成していくのではないかと、あくまでも第一印象というか、具体的にどうこうということは申し上げにくいところもありますが、是非御検討いただければと思います。

 そのときに、数値指標のことがいろいろと議論されていて、量的指標と質的指標の両立というのは、夏にも随分議論しましたから、是非きちんと両方プレゼンテーションしていただいて、評価の対象としていただくのはすごく大事なことだと思うのですが、そのときにインパクト、つまり政策のアウトカムをどう評価するかというのは、数値でできるものは数値できちんとやる。だけれども、できないものはできないもので、質的にというか、記述的にやるという手法は必要なのではないかなと思います。

 極端な例として、ソーシャルインパクトボンドというのがありまして、ソーシャルインパクトを数値化して、達成したら政府なり地方自治体がお金を払うと。その間は資本家のお金を借りてオペレーションしてくださいというものです。いろいろと批判はあるのですが、オックスフォードのアレックス・ニコラスが言うには、これは強制的に政府と社会的企業、資本家たちが協力して目標を達成するという意味では、非常に連携を促進する意味ではいい方法だと。だから発想として、もし必要なことは、横串あるいは横の連携、そういうことをどうやって達成していくのか。

 この間、イギリスの内閣府に行ったら、彼らはPBRで、ペイバイリザルトなのです。アメリカだと、これがペイフォアサクセスと言うのですが、全部が全部は無理にしても、一方で数値比をできるものはきちんと厳格にと、私たちは夏もやりましたから、そういうことは客観性を持たせながら、質的なものと相補いながらやっていくというスタンスの中で、こういう手法も是非検討していただきたいと思います。

 最後に生意気なことを申し上げますと、ブルース・モウというカナダのグラフィックデザイナーが、インコンプリートマニフェストというものを出していまして、その中に面白い文章が1つありまして、プロセスとアウトカムがありますと。アウトカムを目標にして、アウトカムからプロセスをドライブしようとすると、既に行ったことのある所にしか行けないと。だけれども、プロセスからアウトカムをドライブしようとすれば、我々はどこにいるかは全く分からない、どこに行くかは全く分からないけれども、たどり着いた所は私の行きたい所だろうということを言っているのです。

 そういう意味で、こういう官庁組織の中で大変難しい、無理な注文かもしれませんが、是非シンクタンク的な機構の中で、そういう新しい発想で、先ほど来いろいろな御提案がありますが、そういうものをいかしていっていただければと思います。ほかになければこれで終わりにします。どうもありがとうございました。

最後に、法人所管課と法人から一言お願いいたします。

 

○労働政策担当参事官

 まず、本日は貴重な御意見をありがとうございました。御意見については、今後、目標に反映できるものはしっかりと反映していきたいと思いますし、目標でない部分、先ほど今村先生がおっしゃったような指標の考え方ですとか、そういったことについては、また今後業務運営をしていく中で、どういった工夫ができるかというのをしっかりと工夫していきたいと思っています。本日はありがとうございました。

 

○労働政策研究・研修機構理事長

 本日は長時間にわたりまして、私どもの第4期中期目標・中期計画案について御審議いただきまして、誠にありがとうございました。

 先ほど申し上げましたが、現在人口減少社会の進展、様々な画期的な技術革新の進行、企業のガバナンスの大きな変化など、我が国の労働市場を取り巻く環境は大きく変化しております。これは国際的にも変化しております。そうした変化の中で、的確な労働施策が企画立案されるために、引き続き当機構の研究成果において、正確なデータに基づき、適切な政策の構築に資するエビデンスを提示していくことが必要だと考えております。また、研修事業のほうも、適切な実施を通じて、行政の質の向上にも引き続き貢献していきたいと考えております。

 御審議いただいた中期目標・中期計画案は、当機構の第4期の業務運営の重要な指針となるものでありますので、本日頂いた重要な御意見を踏まえつつ、一層政策研究の企画立案、推進に貢献できるよう、また的確な研修事業の遂行ができるよう、努力していきたいと思います。役職員一丸となって努力していく所存ですので、委員の皆様にも今後とも引き続き御指導をお願い申し上げます。ありがとうございました。

 

○今村主査

 ありがとうございました。以上で、本日の議事を終了いたします。最後に、事務局からお願いいたします。

 

○政策評価官室長補佐

 まずは本日はありがとうございました。私、個人的に思いましたのが、最後に今村先生からお話がありましたアウトカムからプロセスではなくて、プロセスからアウトカムへという御発想なのですが、私は政策評価のほうも担当しておりますと、先生方からロジックモデルの徹底ということをよく言われます。どうしても行政側からは予算事業で何を持っているから、そのためにどういう施策を立てていますかという、下から考えがちなのですが、そうではなくて、どういう政策課題があって、それを実現するためにはどういうそれぞれの達成目標があり、そのためにはどのような達成手段があるのかというような考え方、そのためにどういう測定指標を設けるのかというロジックモデルを貫徹させるような評価指標を作りなさいということを言われておりまして、そのところで頭を悩ませているところで、同じようなことを御指摘いただいたので、独法評価のほうでも関係があるのかなと思った次第です。

 今後の流れにつきましては、冒頭に参考資料2で説明しましたとおりです。確定した中期目標と中期計画については、構成員の皆様にお送りさせていただきます。

 最後に、本日配布した資料の送付を御希望される場合には、机の上にそのままにして御退席いただきますようお願いいたします。事務局からは以上です。

 

○今村主査

 最後に、本WGの閉会に当たり、酒光総合政策・政策評価審議官からの御挨拶をお願いいたします。

 

○総合政策・政策評価審議官

 酒光です。本日、委員の皆様にはお忙しい中をお集まりいただきまして、また貴重な御意見をありがとうございます。

 議論の中でもありましたが、評価するに当たって目標の設定というのはすごく大事だということで、昨年も皆さんに御苦労いただきましたが、こういった期待される役割を十分に認識した上で、適切な目標と計画を立てることは大事だと思います。本日頂いた御意見を踏まえまして、厚生労働省及び法人において、中期目標・中期計画について再精査していただいて策定するということで手続を進めたいと思っておりますので、どうぞよろしくお願いいたします。

 また、今後も引き続き評価などがありますので、皆様に大変御迷惑をお掛けするかと思いますが、どうぞよろしく御指導お願いいたします。どうもありがとうございました。

 

○今村主査

 以上で、第15回独立行政法人評価に関する有識者会議労働WGを終了させていただきます。長時間にわたりまして熱心な御議論、本当にありがとうございました。


(了)

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