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2017年1月23日 第2回エイズ・性感染症に関する小委員会

健康局結核感染症課

○日時

平成29年1月23日(月)14:00~17:00


○場所

厚生労働省専用第15会議室(12F)


○議題

(1) 後天性免疫不全症候群および性感染症に関する特定感染症予防指針の改定について
(2) その他

○議事

 

○結核感染症課エイズ対策推進室長 それでは、定刻となりましたので、ただいまより第2回「厚生科学審議会感染症部会エイズ・性感染症に関する小委員会」を開催いたします。結核感染症課の野田でございます。

 本日は、早乙女委員より御欠席の御連絡をいただいており、また、南委員が少しおくれて出席されるとの御連絡をいただいております。現時点で10名中8名の委員に出席いただいており、定足数以上の委員に御出席をいただいておりますので、会議が成立いたしますことを御報告いたします。

 また、本日は岩本委員長の御指示により、参考人といたしまして、有馬参考人、高橋参考人に御出席いただいております。

 次に、事務局より資料等の確認をさせていただきます。

 議事次第、委員名簿、座席図のほか、資料1~4、参考資料1~8を御用意しております。不足の資料等がございましたら事務局までお申しつけ下さい。

 冒頭のカメラ撮りにつきましては、ここまでとさせていただきます。御協力をお願いいたします。

 以降の議事運営につきましては、岩本委員長にお願いいたします。よろしくお願いします。

○岩本委員長 先生方、お忙しいところ大変ありがとうございます。日本医療研究開発機構の岩本と申します。議事進行を担当させていただきます。

 それでは、まず、議題の確認からですけれども、きょうの議題は()が「後天性免疫不全症候群および性感染症に関する特定感染症予防指針の改定について」、それぞれの指針について議論いただきます。議題()は「その他」となっております。

 まずは、きょうは全体の構成、特に医療提供についてということで横幕委員からプレゼンテーションをお願いしておりますので、議事に従って進行させていただきます。

 きょうは予定では3時間をいただいておりますけれども、御協力をよろしくお願いいたします。

 それでは、議題()「後天性免疫不全症候群および性感染症に関する特定感染症予防指針の改定について」ということで、議事に入りたいと思いますが、事務局から資料1のまずエイズからやるのですね。

○結核感染症課エイズ対策推進室室長補佐 前回改定のときの指針の概要について説明させていただきます。

○岩本委員長 失礼しました。

○結核感染症課エイズ対策推進室室長補佐 では、事務局から説明させていただきます。参考資料4、5に現行の特定感染症予防指針の原文がございますので、適宜御参照ください。

 資料1は、前回、委員の先生から御要望のありました平成24年改定時の概要になります。後天性免疫不全症候群、性感染症ともに、前回改定時には議論の積み残しはなく、改定時の変更点を中心とした資料となっております。

 まず、資料1の1ページが、後天性免疫不全に関する特定感染症予防指針改正の概要です。大きく4つの○から成っておりますが、検査・相談体制の充実の位置づけを強化するために、単独の章として位置づけ、発生の予防及び蔓延の防止の項から、この検査の項を独立させております。

 また、前回の改定では、個別施策層への対策について重点的に議論され、個別施策層に対する検査・相談の実施として、目標設定の必要性を明記しております。これについて現在20の重点都道府県などにおいて、5カ所で目標を設定、4カ所で取り組みについての方向性や計画書などを作成しております。地域における総合的な医療提供体制の充実とし、保健医療、福祉サービスの連携強化などを明記しております。また、個別施策層に対する施策の実施におけるNGOとの連携の重要性についても明記しております。

 2ページは、性感染症に関する特定感染症予防指針改正の概要になります。こちらは7つの項目立てになっておりますが、まずコンドームによる予防に加え、コンドーム以外の予防方法などに関する情報提供を推進としており、厚生労働省としては感染症対策特別促進事業、特定感染症予防等普及啓発事業などを通じ、正しい知識の普及に努めております。また、より精度の高い病原体検査を推奨。個人の実情・心情等に配慮した普及啓発などの実施。医療の提供の部分におきましては、学会等と連携した医療の質の向上と医療へのアクセスの向上、この2つの観点から描かれております。発生動向のより的確な把握のために、指定届出機関(定点)の指定の基準づくりを実施し、後ほど説明させていただきますが、感染症発生動向調査事業における性感染症の発生動向調査についての通知を発出しております。性感染症のリスクに関する意識や行動についての調査の実施も、前回議論になっております。

 資料1については、以上になります。

○岩本委員長 資料1が横にずれていまして、先に論点からいくのかと思って資料2から見ていたので、大変失礼いたしました。

 それでは、特定予防指針の前回の改定時及びこの前御議論のあった、今、事務局からの御説明について、まず、エイズのほうからお願いいたします。何か御質問・コメント等ございますか。

 荒川委員どうぞ。

○荒川委員 どうもありがとうございました。第1回小委員会で私がリクエストさせていただいたことにお応えいただいて感謝申し上げます。エイズも性感染症も、特定感染症予防指針の前回改定のその前の改定がたしか平成18年だったと思いますが、そのときに比して前回の改定ではこういった項目が付加されたという理解でよろしいですか。

○結核感染症課エイズ対策推進室室長補佐 基本的には感染症法に基づいて6つの内容について記載するということが決まっておりまして、その中からエイズに関しては検査の項目と普及啓発及び教育という項目が特に重要ということで項立てが追加になった背景。それから、人権の項目については、かなり早い段階から項立てがされているという状況でございます。

○荒川委員 ありがとうございます。恐らく平成24年の前回改定のときも、平成18年すなわち6年前に改定された指針を基本的に尊重して、大きな変更というよりは、むしろ新たな項目をつけ加えるという姿勢で臨まれたという理解でよろしゅうございますか。

○結核感染症課エイズ対策推進室室長補佐 さようでございます。

○荒川委員 したがって、今回の改定においても、こういった方式を踏襲するのか、あるいは後で議論になると思いますけれども、エイズと性感染症の項立てを統一するということでやって、ある程度削減する部分も出すのかということを大きな方針して多少は意識していくべきかと思います。

○岩本委員長 この前の御議論で御意見もありましたので、法律で決まっている6項目はやらなければいけないわけですけれども、その他については、エイズと性感染症のそれぞれの議論の中で今後違う点もあるでしょうから、最終的にどういうものになるか、完全に一緒にすることを現在から目標とするかどうかは先生方の御議論の中で決めていけばいいと思っております。だから、エイズと性感染症は少し別の項目立てになるかもしれない。ただ、6項目は全部つくると。

○荒川委員 最低限ですね。わかりました。

○岩本委員長 事務局もそれでよろしいでしょうか。

○結核感染症課エイズ対策推進室室長補佐 結構でございます。

○岩本委員長 そのほか御質問・コメント等いかがでしょうか。

 では、先に進みましょうか。それでは、項目に沿って各論の議論に入ってまいりますけれども、エイズと性感染症を項目ごとにいく予定ですので、まずは資料2から御説明をお願いいたします。

○結核感染症課エイズ対策推進室室長補佐 申しわけございません。項目ごとの論点に入る前に、本日欠席されております早乙女委員より御意見をいただいておりますので、ここで御紹介させていただきます。いただいた内容を全て読み上げる形で御紹介させていただきます。

 1.HIVに関して、2008年の17万件超の検査件数に比して、それ以降年間1213万件

で推移しているのは、感染者の増加を考えると少なすぎるのではないでしょうか。AYA

世代の性交経験者数を考えたら一けた足りないと思われます。コンドーム啓発の前に検

査を受けることを常識化する方法が望まれます。

 2.PrEPの研究を行うことが示唆されていますが、WHOの勧告もあり、国内での研究

を行うことに賛成します。特にMSMへの介入がうまく行けば、研究の中で感染者を減らせ

る可能性もあります。

 3.国立国際医療研究センターを頂点とする拠点病院、中核拠点病院での診療体制の

充実も大事ですが、それ以外の施設での対応の不備が気になっています。例えば、HIV

陽性者の体外受精に対応できる施設は実際はほとんどありません。また、歯科治療や近

所のかかりつけ医も必要ですが、情報網が不足しているように思われます。拠点病院以

外の啓発も必要ではないでしょうか。

  4.STIに関して、梅毒の増加はピルの普及ではないかという、根拠のない言説が流れ

ているようです。

 日本は国際的には避妊後進国でコンドームに頼っている状態が続いておりますが、そ

の反面、コンドームの使用が確実ではなかったり、使用すべきリスクの高い人ほど使用

していない可能性があります。コンドームの使用と性感染症の関係の調査の必要性も感

じます。避妊に関しては2017年1月号の『産婦人科の実際』に執筆しました。

 避妊と性感染症対策は分けて考えるべきであることも、医療関係者のみならず様々な

有識者の方に認識して頂きたい点です。

 以上、いただいた御意見について御説明申し上げました。

 続きまして、資料2の「()医療の提供1」について御説明をさせていただきます。この資料の課題・御意見は、前回の小委員会での委員、参考人の御発言などをもとに作成しております。

 まず、19ページ目をごらんください。「医療の提供」に係る現状を記載しております。

 我が国のエイズ対策では、拠点病院が患者や感染者の診療を担っている。患者や感染者は、多職種によるチーム医療の提供により、服薬アドヒアランスが良好に維持されていることや、国民皆保険制度のもと、治療にかかわる経済的負担軽減を目的として、身体障害者手帳制度等のさまざまな社会福祉制度が適用されることから、個々の病状に応じた抗HIV療法を受けることができ、良好な治療効果を得ることができる環境にある。

 研究班による調査によると、2015年末時点での全国のエイズ診療拠点病院の定期通院者は約2万人であり、そのうち9割以上が既に抗HIV療法を受け、そのほとんどが良好なウイルス量の抑制が得られております。

 しかしながら、拠点病院を除く多くの医療機関や福祉施設での患者や感染者の受け入れは、疾病や価値観の多様性への理解の欠如から必ずしも良好とは言えない状況にございます。

18ページに、委員の先生方の御意見などを含めて「現状」「課題」「課題に対する委員等のご意見」をまとめております。

 現状としては、現行の予防指針では、拠点病院の役割を明確にしつつ、患者が一般の医療機関においても良質かつ適切な医療を居住地で安心して受けられるような基盤づくりが重要としております。

 課題ですが、予後改善のため、合併症への対応や福祉との連携の重要度が増しているが、一拠点病院のみでは医療福祉全般の対応をすることは困難である。また、精神的側面から、専門性の高い介入が必要となることがある。

 これらに対し、委員等の御意見として、地域の患者数や医療資源の状況に応じ、拠点病院を中心とする包括的な診療体制を構築することが重要としてはどうか。

 現在のチーム医療の中で心理面の支援を担う医療者を介し、院内外の専門家や専門施設との連携を図り、加療継続が可能になるような包括的支援体制を構築することが重要であるとしてはどうかとまとめております。

20ページは、現在のエイズ治療に関する医療提供体制の図になっております。中核的医療機関である国立国際医療研究センター、地域ブロック拠点病院、中核拠点病院、拠点病院の機能強化などを現行指針では推進しております。全国に384カ所の拠点病院が現在指定されています。

 続きまして、21ページ「()医療の提供2」に移ります。

 現状は、長期内服に対する副作用などの懸念から、これまで必ずしも診断後即治療が推奨されてきませんでした。2015年9月のWHOの新ガイドラインでは、CD4陽性Tリンパ球数にかかわらず、抗HIV療法が開始されることが推奨されております。適切な治療が行われ、ウイルスがコントロールされれば、他者への感染も防げることが明らかになっております。

 これに対し課題として、長期間継続して高価な抗HIV薬を服用しなければならないため、経済的事由により治療が滞る事例が存在しております。

 委員等の御意見としては、発生の予防・蔓延の防止にも有用であることから、HIV感染判明後速やかに治療開始が可能となることが望ましい。継続的に治療が受けられるための支援の枠組みを検討する必要があるという御意見をいただいております。

 近年の抗HIV療法につきましては、22ページに根拠となった論文や前向きな試験につきまして記載しております。

 また、CD4要請陽性Tリンパ球数というのは免疫の指標と言われておりますが、ACC(国立国際医療研究センター)のエイズ治療センターでは、500以上の比較的免疫力の落ちていない患者様が2014年は13%、2015年は16%程度いらしたということです。これがすぐに治療が開始できない人たちというわけではございませんで、実際には2016年はウイルス量も少なく、CD4の値が高い治療を開始できなかった人は1名、2015年に関しては6名という御報告をいただいております。

 ここで一旦切らせていただきます。

○岩本委員長 それでは、今、事務局から早乙女先生の御意見と「()医療の提供」から、きょうはこれから横幕委員の御説明もあるので、先に横幕委員の御説明も伺ったほうがよろしいのではないですかね。厚生労働省の研究班での現在の医療状況について先生方に御理解いただいた上で、この項目について御議論いただきたいと思いますので、横幕委員、お願いいたします。

○横幕委員 名古屋医療センターの横幕です。今からは参考人として、「我が国のHIV感染症/エイズの診療体制の現況と課題」という形でお話をさせていただきます。

 今からお話しさせていただくデータにつきましては、私が今、主任をさせていただいておりますHIV感染症の医療体制の整備に関する研究班の仕事として、厚生労働省と各都道府県の担当者の方、全国の拠点病院の診療担当の方、事務の方に多大な御協力をいただきまして出てきたものです。改めて御礼申し上げたいと思います。

 ポインターがありませんので、ちょっと見にくいかもしれません。あと、字が小さいところに関しましては、お手元の資料4も参照いただきながら聞いていただければと思います。説明におよそ10分いただいておりますので、少し早口になるかもしれませんが、よろしくお願いいたします。

 まず、きょうの内容ですけれども、まず、拠点病院制度とは何ぞやということを簡単に説明させていただいて、現在の我が国の状況を少しお話しさせていただいて、私なりに感じている課題、提言に移らせていただければと思っております。

 拠点病院の整備につきましては、平成5年いわゆる血友病薬害被害者の方の和解が成立する前に既に出ているものです。先ほど事務局から拠点病院のあり方や課題等をいろいろいただいておりますけれども、実はこちらの整備についての通達を見ますと、基本的には全て答えが出ておりまして、拠点病院に押しつけといった状況になっていますけれども、本来ここにうたわれているとおり、拠点病院が機能に応じて周りの医療機関、行政と連携して受け入れていくという制度をつくればいいということですので、取り立てて拠点病院制度について議論することなく、この基本に立ち戻って医療体制を組み立てていけばいいのではないかと個人的には考えております。これは実は忘れられてしまっておりますけれども、20年ぐらい前になりますが、ここまでの思いに至ったものが出ていたというのは、実は感動に近いものがあります。

 ブロック拠点につきましては、血友病薬害被害者の方の和解を受けまして、主に救済医療の趣旨を担うということもありますし、診療、研究、研修、情報という4つの大きな役割も担っております。特に、情報につきましては、私も東海ブロックのブロック拠点病院、名古屋医療センターの診療責任者ですが、診療だけではなくて、さまざまな情報を収集・提供・発信していくという機能も担っているところです。

 これからお話しすることは、全国の拠点病院三百八十数カ所あるのですけれども、そちらで今どのような診療、何人ぐらいの患者さんを診ていて、その方々がどのような治療を受け、どのような状況にあるかを調べた結果をお話しさせていただきます。

 調査方法につきまして簡単にお話しさせていただきますが、基本的にはアンケートです。調査票をお送りしまして、各病院の先生方からお答えをいただいております。この調査につきましては、当初は研究代表者から各病院に直接お願いしていたのですけれども、今は各都道府県の方に、自分の県の中で、自分の自治体の中で、どのような例でどのくらい患者さんを診ているか、どのような状況にあるかを把握していただきたいということもありまして、一旦県のほうに投げまして、県のほうで情報をとりまとめていただき、それを私がいただいて収集・解析したという形になっております。ですから、今からお話しすることは、各都道府県の担当者のそれぞれの自治体、どのような病院が何人ぐらいの患者さんを診て、どのような診療を行っているかが把握されていると考えていただければと思います。

 前回の小委員会でも少し話題になりましたが、いわゆる名ばかりの拠点病院があるのではないかという御指摘をいただいております。アンケートにお答えいただいたのが、調査時点では383施設あったのですけれども、377施設から調査票を回収させていただきました。まず、0というのがいわゆる定期受診者が0になります。この医療機関が86施設あります。定期受診者が10人まで、いわゆる一桁の病院がどれくらいあるかというと、実は100医療施設あります。ですから、383のうち186施設については、0または一桁の定期受診者しかいませんよというお答えをいただいております。

200人以上診ているところは実は17施設になります。1,000人以上診ている施設は非常に大きな施設になるのですけれども、そちらにつきましては東京都内に3カ所、大阪に1カ所、愛知県に1カ所ということで、計5カ所が1,000人以上診ている患者が非常に集積している病院となります。

 こちらは見ていただければわかりますが、200人以上診ているところが171,000人以上診ているところが5、その他実は100人未満のところがほとんどでして、基本的に医療機関によってかなり差がありますということをわかっていただければと思います。

 今は、医療機関ごとに差があるという話でしたが、地域ではどうかということで少し話をしていきます。この次に日本地図をお示しいたしますが、次にお示ししますのは、会員となった全医療機関で定期受診者がいますよとお答えいただいた270施設の人数をもとに、各日本のブロックで何人ぐらい定期受診者がいるかを日本地図に表してみます。

 患者数に比例するような形で○で表してありますけれども、総数2万数千人なのですけれども、基本的には関東・甲信越が半分以上を占めております。東京都がたしか8,000人近くだったと思います。その後、近畿が続きまして、東海、九州と続き、北海道、中四国、東北、北陸と人数がこのような形になっております。ですので、医療機関ごとによっても差がある。あと、地域によっても差がある。その地域の中においても医療機関で定期受診者の差があるということになっております。二次医療圏別に見るともう少し細かいことがわかるのですが、基本的には患者数によって必要とされる医療環境は全く違いますし、そこで行われている医療、実は拠点病院が担っている機能というのも患者数に応じて、地域、地域に応じて上手にやっているということがあります。

 次に、診療状況ですけれども、それぞれの病院に何人ぐらい治療中の方がいらっしゃいますか、あと、その治療中の方でウイルス量が良好に抑えられている方は何人いますかということでお伺いしました。まず、施設ごとに何パーセント治療導入されていて、その中で何パーセント治療がうまくいっているかをお答えいただきました。施設ごとに治療中の方、治療成功中の方を出しまして平均をとりますと、92%の方に治療が導入されて、そのうちの98.4%の方が治療がうまくいっていることがわかりました。

 こちらは標準誤差にしてありますけれども、ばらつきが少ないところがありまして、基本的にどの施設も差がなく高率に治療が導入されていて、しかも、ほぼ全てのところで治療がうまくいっていることがわかりました。

 医療施設の間だけではなくてブロックの間でも9割ぐらい、99%になるのですけれども、非常に高い治療導入率と治療成功率。あと、ここをよくわかるように拡大しましたので差があるように見えますけれども、基本的には95100%のところで治療も成功しているということがありますので、我が国においては医療機関の差、ブロック間、地域間の差がなく、ほぼほぼ9割以上の方で治療が導入され、そのほとんどで治療が成功しているという環境が達成されているということがわかりました。

 1つ問題になっているのは、診断された方が拠点病院につながっているかどうかということになります。一応、仮定としましては自立支援医療等の縛りがありますので、我が国でHIV感染症と診断された方につきましては、ほぼ拠点病院に集積している。ほぼほぼその方たちがかかっているだろうという仮定のもとで調べていますが、少しギャップがあります。エイズ動向委員会から報告されている発生届ベースでいきますと、およそ7,000人弱のギャップがありました。それを埋めていきます。そうすると、死亡者も実は同時に調べておりまして、性感染症の方と薬害被害の方の死亡数は総数で2,300人ぐらいだと思います。あと、外国の方も情報が少し限られているのですが、他の厚生労働省の研究班の報告をもとに推計すると、およそ2,000人近くの方が帰国されているでしょうと。実はどちらにいっているかわからないという方が1,600人ぐらいいらっしゃるという状況がありました。

 ちなみに、実は拠点病院だけの調査をしまして、このギャップが出ていますけれども、東京都内には3つの非常にたくさんの患者さんを診ているクリニックがあります。その3つのクリニックの先生方に少し聞き取りをしまして、何人ぐらいの患者さんが今、定期受診されていますかと伺うと、3つの施設で大体1,500人くらいの方が受診されております。ですので、少し重なりがありますので、全てここで1,500人が当たるかというとそうではないのですけれども、クリニックを合わせますとおおよそ拠点病院とその数を合わせて診断されている方のギャップが埋まるのではないかと考えております。

 ですので、我が国の場合は、一旦とにかく診断をつけられて、拠点病院もしくは非常に診療経験の豊富なクリニックにきちんとリンクしてしまえば、ほぼほぼ抗HIV療法が導入されて、そのほとんどの方で良好な経過を得て、基本的にはほぼ全ての方々が社会に復帰して、就労・就学、日常生活を送っている状況になっていると理解していただければと思っております。

 ここからは参考資料になりますけれども、年齢の構成です。長期療養等の課題も出ておりますので、参考としてお出しさせていただきました。これは名古屋医療センターの情報になります。男性、女性の人口ピラミッドのような図をつくってみましたが、30代、40代が基本ですけれども、60代以上の方もそこそこいらっしゃる。実際に1,200人分の160人くらいの方が60代以上の方になっております。実は、この方たちのほとんどは男性同性愛者の方たちになりますので、基本的に男のひとり暮らしの方になります。男のひとり暮らしのHIV陽性者の方がおよそ1割いらっしゃるということですけれども、総務省から発表されております独居の高齢者のデータを見ますと、65歳以上の高齢男性の割合はおよそ10%ぐらいだろうという2010年の数字が出ていますので、ここも取り立ててHIV陽性者の方が高齢者の方が多いというわけでもなく、年齢だけを見ればHIVの問題さえクリアーできれば、あとスティグマの問題がクリアーされれば、我が国の独居高齢の65歳以上の方に考えられている施策を当てはめていけばよいのではないかという感覚も実は持っております。

 もう一つ参考として、生活保護の受給状況をお示ししました。とても生活規模の脆弱な方が多い、もしくは普通の生活をしているような方が少ないのではないかという批判も聞こえてきたりします。もし、そういった方が非常に多いのであれば、仮説として生活保護を受給している方たちが非常に多いのではないかという形で、当院通院中の方について調べてみました。

 全体としては、愛知県在住の方を名古屋市と名古屋市外で調べましたけれども、生活保護率が調べたときに名古屋市では2%ぐらいですが、日本国籍の方だと大体3%後半、愛知県全体だと2%台に落ちてくるという形で、取り立てて多くないのだなと思いまして、このデータは実は外国籍の方を見ていただければと思って出しました。実は、愛知県名古屋市はトヨタ等自動車産業があるということもありまして、非英語圏の外国籍の方が多く、そういった方たちに生活保護受給が多いのではないかという印象を持っておりました。こちらを調べてみますと、やはり1割以上の方が生活保護を受給して、それが実は都市部に集積しているということも出てきております。

HIVの方は結構頑張って、生活保護等を受けることなく自分できちんと治療して、仕事をして、生活しているという実態も出ながら、外国籍の方に生活基盤の弱い方が多いのではないかという印象も受けております。

 課題を少しまとめさせていただきますと、患者は確かに集中しておりますが、その中でも基本的には拠点病院では抗HIV療法をしっかり行われて、しっかりした成績が得られているということで、抗HIV療法に関しては、診療レベルは我が国では均てん化は達成されていると考えております。

 ただ、今回の予防指針の背景に関しまして少しお話ししたいことは、実はこの2~3年のうちにHIV感染症診療の質が全く変化しました。導入維持が非常に容易になりました。患者さんも継続が容易になりました。本当に抗HIV薬の進歩は非常に目覚ましく、医療者も負担が減り、感染者の方も負担が減り、治療が継続可能な状況。しかも、経済的な負担も少ないということになっております。

 ただ、実際はHIVの副作用の抑制は達成されているのだけれども、HIVから少し離れた普通の人々が直面するような問題で、医療機関に受診することができなくなる方、血友病の方であれば感染症等の問題もあるかと思いますが、そういった方が増加していて、HIV以外の問題の対処に実は現場は追われています。

 そこで出てくるのは、拠点病院の機能と実際にこういった診療上必要とされている課題のミスマッチが起こっております。私たち拠点病院というのは、基本的には地域の一番病院といったところが多く、高次の医療機能病院で、基本的に慢性的に通院するような方を多く抱えているような病院ではありません。こういった長期療養の方を抱えるような機能を果たせない環境にあると言っても過言ではありません。そういった病院が、我が国ではHIV感染者の診療をほぼほぼ担っておりますので、療養の生活を支えるという点では少しミスマッチが出てきていて、最初の話ではありませんが、拠点病院の設立の理念に従って、きちんと機能分化して対応していくことが必要ではないかと思っておりますし、HIV感染症以外の問題が非常に大きくなっておりますので、例えば、私たちは感染症科が担っておりますけれども、私たちが単科で対応すること、もしくは医者1人だけ、一職種だけで対応すること、もしくは名古屋医療センターだけで対応することが難しいということが多くなっております。行政に一言申し上げるとすれば、私たちが行政と話すときには、感染症の予防の窓口になるのですけれども、実は拠点病院が背負わされている課題というのは医療・福祉の問題でありまして、ここの窓口が少し違いまして、行政になかなか声が届かないということも一言だけ言わせていただければと思います。

 提言ですけれども、実は今どれだけ通院者がいて、どれだけ治療が導入されて、どれだけ治療がうまくいっているかはわかっています。ただ、予防指針を考えれば、今どれくらいの方が実は感染者としていて、どれくらいの人が診断がついていないかを知ることは予防指針を策定する上では重要な情報だと思いますので、これを何とか立てていただきたい。それを立てるために、私たちは臨床情報をきちんと提供していく機能を背負いたいと思っております。

 あと、少し重複の問題があります。発生届のシステムもありますので、ひもづけが難しい部分、重複があります。こちらにつきましては、データの精査を行って、もう少し精度の高い数字を出していくような努力が長期的には必要ではないかと思っております。実は今、疫学的な情報を我が国で得るのは非常に容易な環境にありますので、新しい指針ができてくる5年間に今の拠点病院できちんとグリップできるような状況の中で、いろいろな施策を打たれていくことが大事だと思っております。

 あと、外国籍の方の情報が限られていることが今回、痛いほどわかりました。基礎的な面から、もしくは長期療養の面からも、実はこの方たちというのは感染症、MSM以外の感染のソースとなることを防がなければいけない方たちだと思っておりますので、ここの動向の把握が私たちの医療体制班で今後行うべきことだろうというふうに岩本先生からも宿題をいただきましたけれども、改めて考えました。

 あと、長期療養のことを考えるにつきましては、死因の把握まで行うことが必要だろうということと、こういった疫学的な情報を継続的に収集する枠組みを設定する。これについては、拠点病院がきちんと機能する環境にありますので、今後も継続して数値を集めていくような形になっていけばと考えております。

 以上になります。

○岩本委員長 ありがとうございました。

 それでは、早乙女委員の書面による御意見と、横幕委員の国内の診療状況、事務局の医療の提供に関する御説明で、医療の提供という項目についての御議論をお願いしたいと思います。御質問どうぞ。

○俣野委員 横幕委員に、御発表の内容で質問させていただきたいのですけれども、資料4ですと8ページになると思うのですが、結果3を聞き逃したのですが、左のグラフの分母の数はどうやって出しているのですか。

○横幕委員 治療中の患者及び感染者の割合の算出の方法ですか。治療中の患者につきましては、今回の場合は分母につきましては各医療機関の定期受診者数にしています。定期受診者数で治療が入っている方を分子にしまして、その割合にしております。ですので、ここについては先生から御指摘があったように、分母をどこにするかで少し数字は変わってきますので、今回についてはそのように算出しております。

○俣野委員 そこははっきりしておかないとかなり誤解を生むので、ここはもしかしたらブロック別で相当差が出る可能性もあるのではないかと思うのですが、いかがでしょうか。

○横幕委員 実際は余り大きく差はなく、少しバーが高く出ているところにつきましては、受診者数の少ないところのばらつきが大きいところが、ちょっと差が大きく出ております。実は患者が集積して少ない医療機関に固まっているところにつきましては差が少ない。一桁の病院が転々とある地区については、1人、2人が大きく率にかかわってくるところがあると、バーが高くなってくるということになります。からくりとしてはそうなっておりまして、データを精査すればきちんとお話しできるところになっております。

○俣野委員 特に右側のほうは、90-90-90の一番最後のステップをそれなりに意識して、真ん中は少しだけ90-90-90の2番目のステップを意識しているのではないかと思うのですけれども、真ん中の部分はそれなりに離れているという理解でいいですか。

○横幕委員 真ん中の部分は、さらに実は細かく分類して検討する必要があるかと思いますが、先生の「意識して」というところにすごく深い意味を感じているのですけれども、意識して出した数字になりますので、そのように理解していただければと思います。

○岩本委員長 確かに分母を何にして数字を出すかは大事です。横幕委員のデータは定期通院者を分母に治療中の患者の割合を出している。一方、UNAIDS/WHO90-90-90の目標での2番目のステップは、診断された感染者数が分母になっているので病院調査に基づく横幕委員のデータとは異なる数字になろうかと思います。

○俣野委員 もう一個だけ済みません。12ページの現状と課題の2番目と3番目の項目は、基本的にこういう状況がはっきり意識されるのは名古屋の状況という理解でよろしいですか。

○横幕委員 HIVの診療の医者というのは全国で意思疎通が強く図られておりまして、味澤委員の御意見もいただければと思いますけれども、これは基本的にHIV感染症診療医が切に感じているところになっています。ですので、お答えをしながら少し意見を申し上げるという形になってしまうのですけれども、前回の治療指針の策定が定められた時期からは、本当にガラッとHIV感染症診療の性格が変わっております。今回の指針を変えていくという流れの中で、少し文言を時代に即して変えていく、ちょっとしたイノベーション的な変革というよりは、HIVの診療が激変したという現状を少し反映する形で、イノベーション的な大きな変更を図っていくべきではないかと個人的には考えております。

 その枠組みの中で、先ほど俣野委員から90-90-90の後半を意識したのではないかという御指摘をいただきましたが、そこについては強く申し上げたいところがありまして、我が国で90-90のところは多くの医療者、行政の方々の本当に多大な努力、患者さんの努力によって非常に高いレベルで達成されていると個人では思っております。そうなりますと、鍵としましては、いかにこの情報を社会に正しく発信・普及させていき、それをどのように検査につなげていくかというところで、実は普及と検査体制を一体として論じていくほうが非常に効率もよく、実態に即しているだろうと考えます。事務局から最初に項立てを少し分けた、検査体制を少し派生させたという話がありましたけれども、その時期から今の状況を考えると、普及啓発、検査体制というのは、根は本当に正しい情報の啓発というところになってくるかと思いますので、そこに重点を置いて1つの項として強く訴えていくような項立てというのも考慮すべきではないかと考えております。

 2つお答えにあわせて提言させていただきましたが、御検討いただければと思います。

○岩本委員長 ありがとうございます。

 そのほか御質問・御意見等いかがでしょうか。味澤委員どうぞ。

○味澤委員 確かに今、横幕委員が言われたように治療のほうは、去年12月に鹿児島でエイズ学会があったのですけれども、そのとき示された代表的な病院の治療の仕方はほぼ同じような治療になっておりました。横幕委員の資料を見ると、恐らく日本全体でみても、同じような治療で、成功率も高い、副作用も少ないということがはっきりしたと思います。HIVの薬を工夫して結果がいいとか悪いという時期はもう過ぎてしまった。結核の治療に非常に近くなっているところまで言っていいのではないかと思います。むしろ、こういった治療を長く続けていかなければいけないということになると、風邪で拠点病院に来ると何時間も待って風邪薬をもらって帰るというようなばかげた状況になってしまうので、そういったことを少しこれから考えていかなければいけないのかなと思います。透析などもそうですし、通常の方が困るようなことが、HIVの感染者の中でも起きてくると言っていいのではないでしょうか。

○岩本委員長 白井委員どうぞ。

○白井委員 味澤委員のおっしゃったことと共通するのですけれども、やはり治療がうまくいってコントロールできるようになったところで、かなり延命が可能になったということになると、普通のいろいろな病気にかかってくるということで、神戸市では2年に1回ぐらい医師会の先生の協力で、拠点病院との連携とか、どういう状況でHIVの患者さんを受け入れられるかというアンケートをとっていたのですけれども、その中で今発生する患者数が大体プラトーになってきている中で、神戸市において余りふえていないということもあるのですけれども、診るということについての拒否ではないのですが、余り経験がないということで拠点病院がやればいいという意見がちょっと特化してきたようなところがあって少し危惧をしています。確かにHIV陽性ということになると、認知症であるとか糖尿病であるとか割と老化が早くなるということも聞きますので、それに対応するような地域の医療機関や介護福祉事業者への啓発は、自治体としてもやっているつもりなのですけれども、まだまだ足りないと言われますし、その辺の状況も拠点病院と一緒にやっていかないといけないかなと思っています。

○岩本委員長 ありがとうございました。

 今おっしゃった中で、新規はふえていないのだけれども、毎年1,000人のHIV感染者と約500人のエイズ患者が結局積み上がっているので、患者数としては1,500人ぐらい毎年日本の中で診療数がふえていっているというようなことに対してどうやっていくかということと、診療の問題としては、さっき横幕委員がおっしゃったように20年前に地域連携は大事だと書いてあるのだけれども、残念ながら経験のない先生方の間ではほとんど診療が広がっていないという現状があるのだろうと思います。

 そのほか御質問・御意見等いかがでしょうか。廣田委員どうぞ。

○廣田委員 詳細な御説明ありがとうございました。2015年の1年間の定期通院患者についての御報告でしたけれども、1回でも受診した、しかし、定期通院はしていないといった患者層というのは極めて少ないわけですか。

○横幕委員 それにつきましては、非常に情報の収集が難しく全国では調べていませんが、当院で詳細に調べたのですけれども、ほかの分担者が調べているので、今ここに数字は持ち合わせていないのですが、実はそういった方というのは非常に少ない。多く見積もっても全体の5%も落ちていないということが実はわかってきています。

 調べてみますと、定期受診、1回だけ来てやめてしまう、もしくはいわゆる再受診した方の背景等も調べますと、社会経済的な理由が多いことがわかっています。保険証が切れたから受診できなくなった、就労して保険証がとれたので再受診したということがほとんどの理由になっていました。実は治療がきついですとか、いわゆる差別がきつい、当然拠点病院はそういった環境にはないので良好な環境にあると私も信じておりますけれども、定期受診から外れる、もしくは再開するという事由については、基本的には社会経済的な理由によるところで、その数は多くはないのですけれども、そこに少し特徴がある。外国人の方はもうちょっと環境が違うことがわかっているのですけれども、日本人の方でも経済的な理由というのが今回浮き出てきたことについては、御紹介させていただければと思います。

○岩本委員長 そのほかいかがでしょうか。よろしいでしょうか。

 私から2点だけ質問があるのですけれども、早乙女委員のAYA世代というのは何のことですか。

○結核感染症課長 Adultの「A」、Young Adultで「YA」でAYA世代というのが今のトレンドの用語になっています。

○岩本委員長 もう一点だけ、事務局説明の中で「経済的理由により診療が滞る事例が存在する」というのは、今の説明だと「高価なHIV薬を服用しなければいけないため」という説明があるのですけれども、そうすると、現在セーフティーネットになっている自立支援と生活保護では足りないという意味をここで言っているのでしょうか。今、横幕委員がおっしゃったのは、治療を受ける、受けないにかかわらず、ドロップアウトされていく患者さんは経済的理由が多いという意味で御説明になったと思うので、ちょっと違うと思います。自立支援医療でほとんどの方は診療が続けていける、できていると私は個人的に思っています。私は委員長なので余り意見を言ってはいけないのですが。薬が高価だから診療を続けられない、というのはかなりありますか。

○横幕委員 事務局を補足するわけではないですけれども、ここの「察するに」というところを述べさせていただくと、議論の中で早期治療に行けない方というところが恐らく前段にあって、その方たちは検査通知等を満たさないがゆえに身体障害者手帳がとれない、それによって自立支援医療の適応も受けられない。その方について、もし仮に抗HIV薬が自己負担可能な額であれば治療が続けられる。

○岩本委員長 むしろ、自立支援を受けるための基準が全員治療にマッチしていないということですね。全員治療しなさいというWHOの方針にマッチしていない免疫障害の取得条件になっているということですね。

○結核感染症課エイズ対策推進室室長補佐 数としてはそんなに多くはないと認識しておりますが、診断即治療に入らない人がいるという現状です。

○岩本委員長 わかりました。

 白井委員どうぞ。

○白井委員 自治体の現状からいっても、数は多くなくても、やはり生活保護にも至らない、国民健康保険も払えないということで第一歩が踏み出させない。保健所の検査までは受けても、その先がつながらないという方もいらっしゃいますので、それはこれからの課題というか、目に見えている問題ではないかと思っています。

○岩本委員長 俣野委員どうぞ。

○俣野委員 今の件で、基本的にはそれがメーンでいいとは思うのですけれども、経費的なこと以外で治療が続けられない可能性の部分に関しては、それほど問題視しなくていいという理解でいいのでしょうか。

○岩本委員長 横幕委員どうぞ。

○横幕委員 以前はやはりスティグマの問題があり、保険証も使わずという方がいらっしゃって、その方たちが生涯経済的な負担を背負えないという形もあったかと思いますけれども、最近、新規にいらっしゃる方の受診時の雰囲気を見ますと、そこは情報がある程度いっておりまして、いわゆる医療費の負担が軽い形で治療継続ができるという情報を知って受診している方が正直多い印象があります。ですので、それ以外の問題、スティグマ等の問題で治療開始ないし継続できないという方は、現場の印象としては少ないと感じております。

○岩本委員長 それでは、時間も押していますので、次に、性感染症の同じ項目「()医療の提供」についてですね。では、事務局から説明をお願いします。

○結核感染症課エイズ対策推進室室長補佐 資料が飛んで申しわけございません。資料3の8ページをごらんください。性感染症に係る項目についての「()医療の提供」になります。

 現状ですが、現状の指針では「国及び都道府県等は、医師会等の関係団体との連携を図りながら、診断や治療に関する最新の方法に関する情報を迅速に提供し、普及させるよう努めることが重要」としております。

 課題として、診断ができない若い医師が存在する。現在、日本で承認されている梅毒の治療薬は、複数回の服薬が必要であり、脱落する患者がいる。国際標準で使われている梅毒の治療薬は、単回で治療が終了するが、国内では使えない。薬剤耐性を持つ淋菌の割合の増加が指摘されているという課題が、委員の先生方を含め出されております。

 この課題に対する御意見として、医療者向けの啓発の重要性を強調してはどうか。国際標準で使われている治療薬が国内でも使えることが重要であることを記載してはどうか。薬剤耐性を持つ性感染症に係る病原体に対する治療法の開発の重要性を記載してはどうかと事務局でまとめております。

 9ページに、梅毒の治療について状況が説明されておりますので、適宜御参照ください。

 性感染症の医療に関する提供については、以上になります。

○岩本委員長 ありがとうございました。

 性感染症の「()医療の提供」について、荒川委員から追加はございますか。

○荒川委員 疾患を診た経験がないことから診断ができない若い医師が存在する、これは確かに現実の問題としてございまして、いろいろな方策でこれを解消すべくどう取り組んでいくかということがございます。それには、こういう性感染症に遭遇する可能性の高い診療科等において、主体の学会等で卒後教育プログラムに性感染症をもう少し積極的に取り入れていく等の働きかけが必要ではないかと思っております。

 したがって、医療者向けの啓発にそれがつながると思っておりますし、もう一つは、薬剤耐性の問題ですけれども、淋菌が特に今、目下の問題で、WHOか、世界的な感染症の脅威として多剤耐性淋菌の問題を挙げております。いわゆるSuper bagという超多剤耐性菌、要するにセフトリアキソンさえも効かなくなる淋菌が現実に世界で複数出てきております。そういった中で、もっと根源的に言いますと、セフトリアキソンを使ってくれればまだいいのですけれども、第一線の開業の先生方がいまだに淋菌感染症にペニシリンをお使いになっているといったところもありますので、若い医師に限らず、医師の生涯教育の中で例えば淋菌感染症に対して一番適切な治療法を認識していただきたいと思うわけです。日本性感染症学会が新規の診断・治療ガイドラインを201611月に改定いたしまして、だれでもアクセスできるようにホームページの中で見られるようにしておりますけれども、そういったことを一般医家に啓発するということも恐らく特定感染症予防指針にもはっきり組み込んでいただいたほうがいいのではないかと思っております。

 それと、梅毒が今非常に問題になっておりますし、治療薬に関してこの資料最後のページにありますが、確かにbenzathine penicillin Gの筋注薬というのは1回筋注しますと、血中濃度が維持されて、1期、2期梅毒などの顕症梅毒は1回で治療が成立するという抗生物質が日本で使えないという現状のもと、今後それが使えるようにできるのかという問題があります。ただ、このことには製薬企業等も余り積極的ではないという現実があると思います。日本ではペニシリンショックの問題で、こういう薬剤が使えないということが起きてきた経緯があると思いますので、それを今後どういうふうに方向づけていくかということがございます。

 梅毒に関しては、バイシリンG顆粒という経口薬でございますけれども、現在日本で限られた製薬会社が販売しておりますが、生産工場の問題か何かで今、品不足になっておりまして、たしかリウマチ熱の発症予防といったものにしか使えなくなっているということで、天然ペニシリンが使えないので、どうしても合成ペニシリンのAMPCあるいはABPCの2~4週間とか、あるいはそれ以上の期間の連続投与に頼らざるを得ないというのが現状です。そうすると、服薬コンプライアンスとかそういうことが実際にクリアーできているかということもございますし、梅毒が昨年1年間の発生動向調査統計の速報が出まして四千五百何名、これは本日の参考人ご出席の有馬先生や高橋先生にフォローしていただければと思いますが、この全数把握数が例年倍々になっている現実の中で治療体系が十分に確保されているか、あるいは診断法が十分に啓発されているかという心配がどうしても出てまいります。

 疫学的なことは両参考人に聞いていただければと思います。

○岩本委員長 梅毒に関しては、どこかに資料は入れていませんでしたか。

○結核感染症課エイズ対策推進室室長補佐 参考資料8に、前回の資料が出ておりまして、2ページに梅毒の発生動向、3ページにも梅毒の性別・年齢別の報告数などが入っております。

○岩本委員長 今は「()医療の提供」なので。

○荒川委員 済みません、脱線しましたけれども、せっかく専門家の参考人がお見えなので。

○岩本委員長 それは伺うつもりです。感染研の先生には、後で発生動向の項目で聞く予定になっていますので。

○荒川委員 失礼しました。いずれにしましても医療の体制としましては、診断・治療、両方にまたがって、まだまだ課題がある現状だと思います。

○岩本委員長 そのほか御質問・御意見等いかがでしょうか。

 ペニシリンGに関しては非常に重要な問題で、どういうふうにしていくかというのは、この小委員会だけで答えの出る問題でもないような気もしますけれども。

○荒川委員 日本性感染症学会の中に梅毒委員会というものがございまして、岩本先生も以前は関与していただいたと思いますけれども、今は慈恵医大の石地教授が委員長をしていただいておりますが、年何回か委員会を開いていただいておりまして、先ほど申し上げましたAMPC(合成ペニシリン)等が現実に日本で広く治療薬として使用されている中でアンケート調査等をしまして、実際にそれが本当に梅毒の治癒を明確にもたらしているかどうかということは調べております。

○岩本委員長 それでは、最後に時間をとるために次の項目、「()原因の究明」に移らせていただきます。エイズのほうから、どうぞ。

○結核感染症課エイズ対策推進室長 一応、項目ごとでとりあえず方向性について、今回の委員会では予防指針をどう改定していくかというところがございますので。

○岩本委員長 それは資料がないと無理ではないですか。

○結核感染症課エイズ対策推進室長 あります。事務局で御意見をまとめさせていただいておりますので、例えば、HIVの「()医療の提供」で言いますと、先ほども説明をさせていただきました21ページにございます。また、性感染症では8ページに「課題に対する委員等のご意見」がございますので、そこについて何か加えるべきものがあるかどうか。また、仮に削るべきところがあれば削るという御意見をいただいておきましたら、次回以降、事務局で作業ができるかなと思っております。

○岩本委員長 さっき課題のところは私も言いましたけれども、今の室長の御説明にありましたように、エイズの予防指針で21ページ、性感染症は8ページの部分については、次回、今後こういう案ではどうかというひな形を先生方にできるだけお示ししながら議論していただきたいとは思っているのですけれども、その中に今回「()医療の提供」として「現状」「課題」「課題に対する委員等のご意見」という中に重要なことが入っていないというものがあれば、ぜひメールなりで田中補佐にいただけるとよろしいかと思います。今ここで全てを言うのは時間的にもなかなか難しいような気がするのですが、それでよろしいでしょうか。最後の方に、もう一回確認させていただきます。ありがとうございます。

 それでは、「()原因の究明」について、エイズからお願いします。

○結核感染症課エイズ対策推進室室長補佐 「()原因の究明」につきまして、説明させていただきます。

 「()原因の究明」には、エイズ、性感染症のどちらも動向調査について現状の指針では主に述べられております。資料2の2ページをごらんください。「原因の究明」の現状について記載してございます。

 エイズ動向委員会報告によると、平成27年末時点での発生届数は、平成27年末時点でHIV感染者1万7,909件、エイズ患者8,086件で計2万5,995件である。その主体は3040歳代の日本国籍の男性で、同性間性交渉を行う者(MSM)である。

 年次ごとの届出数は、平成21年以降、毎年約1,500人で推移している。また、外国籍患者及び感染者の累計発生届出数は4,217件で、国籍区分別では東南アジアを中心とするアジア、ラテンアメリカ、サハラ以南アフリカの国籍を有する者が大多数を占める。

 厚生労働省科学研究費補助金エイズ対策研究事業における研究班の報告によると、現在の定期通院中の患者及び感染者は2万615人である。

 1ページ目に、「()原因の究明」の「現状」「課題」「課題に対する委員等のご意見」を記載してございます。

 現行の予防指針では、個別施策層に対する発生動向調査の実施、国際的な発生動向の把握、結果の公開・提供についての記載があり、エイズ発生動向調査、研究班などを通じて取り組んでおります。現行の予防指針では「エイズ発生動向調査の強化」とあるが、国際的な施策の指標としてUNAIDS/WHOが提唱するケアカスケードについての記載がない。

 課題につきましては、ケアカスケードをエイズ施策の指標とすることが提唱されている一方、その疫学的データが不足している。現在のエイズ発生動向調査では、新規感染者の数は把握できるが、定期通院者の数、死亡者数、抗HIV療法の導入状況、治療状況などが把握できない。また、検査を受けていない感染者・患者数の推計については、継続的な研究が必要である。

 これを受け御意見として、国は、我が国のHIV感染症・エイズ診療状況を把握し、HIV感染症におけるケアカスケードを作成するための疫学情報を継続的に収集・研究し、広く情報提供を行うことで啓発に努めることとしてはどうかとしております。

 3ページに、今お話しさせていただきましたUNAIDS/WHOが提唱するケアカスケードについての説明資料を入れてございます。このケアカスケードですが、HIV検査、ケアへのつなぎ止め、有効な治療の開始、治療に対するアドヒアランス、ケアの継続という一連のプロセスを評価したもので、UNAIDS/WHO2014年に出した行動目標になります。

 以上が、エイズに関する「()原因の究明」の項の説明になります。

○岩本委員長 それでは、エイズの「()原因の究明」について、御質問・御意見をお願いします。

 これは事務局には申し上げたのですけれども、エイズの原因はHIVであって、「原因の究明」は既に確定している、それをどうするかの話だと思うのですけれども、法律で原因の究明になっている、やらなければいけないということのようで、ここに疫学状況とかそういうことを書くことでよろしいかどうかということについても、委員の先生方の御意見をいただく必要があるということだと思います。

 御質問・御意見いかがでしょうか。この部分については今、私が申し上げたことで、これまでの予防指針に書かれてあることをそのまま踏襲するのではないけれども、大体内容的にはそれをアップデートした形で書くことでよろしいでしょうか。

 これは法律を変えるわけにはいかないのですか。

○結核感染症課エイズ対策推進室長 さすがに法律に関しましては、変えようと思うと国会を通さないとなりませんので、なかなか難しいと思っております。

○岩本委員長 ただ、この法律は新興感染症が問題になった頃に作られた法律で、病気によっての事情も考えてほしいなと思うわけです。

 それでは、性感染症の「()原因の究明」のところを事務局から御説明いただきたいと思います。

○結核感染症課エイズ対策推進室室長補佐 では、資料3の1ページをごらんください。性感染症の「()原因の究明」の「現状」「課題」「課題に対する委員等のご意見」を説明させていただきます。

 現行の指針では、国は発生動向調査の結果を踏まえた指定届出機関の指定の基準(定点選定法)をより具体的に示すとともに、指定の状況を適宜確認して、発生動向調査の改善を図ることとしており、これを受けて、通知により、性感染症定点医療機関の選定方法について具体的に示しております。平成28年度振興・再興感染症及び予防接種政策推進研究事業の「振興・再興感染症の発生に備えた感染症サーベイランスの強化とリスクアセスメント」において、定点についての分析を行っております。耳鼻咽喉科や口腔外科が定点に入っていないという現状です。

 課題ですが、前回の予防指針改定時に、定点に内科を加えるべきかについて議論されておりますが、診療実績の実態が明らかではないことや、定点をより患者の少ない医療機関に分散させることになるデメリットが指摘され、定点には加えられておりませんでした。

 課題に対する御意見としては、国は適宜指定届出機関の妥当性の調査を行う必要があることを記載してはどうかとさせていただいております。

 2ページが、前回の予防指針の改定を受けて出された通知になります。これは3ページのワーキンググループの資料にある案1~案5の案2と案3を踏まえて出された通知になっております。病院・診療科のバランス、患者実績の多い病院を選定することに努めるということで、現状に即した形の定点を選定するということで、こちらの通知が平成24年3月1日に出されております。

 以上です。

○岩本委員長 ありがとうございました。

 御意見・御質問いかがでしょうか。荒川委員どうぞ。

○荒川委員 現行の予防指針では、「()原因の究明」のところに基本的考え方から発生動向調査に話が入っていって、原因の究明というよりはどちらかというと発生動向の話になっています。したがって、今の定点の問題が延長上で出てきていると思います。多分、ここで感染研の方々の御意見をいただけると思うのですが、前回も議論になっている点ですが、現行の定点は1,000近くございますよね。定点医療機関は、大きく泌尿器科・皮膚科系と産婦人科系の2つに分かれています。今は泌尿器科と皮膚科は分かれましたけれども、日本は歴史的に明治時期に泌尿器科と皮膚科が一緒の科として発足しています。これは梅毒が泌尿器科と皮膚科の接点になっていたという歴史的な経緯があるわけです。定点の中では泌尿器科・皮膚科系の定点、要するに泌尿器科、皮膚科あるいは皮膚泌尿器科という看板を掲げている医療機関及び産婦人科系、これは婦人科という標榜もありますが、要するに、その2つの系統の定点がほとんどを占めています。性病科という標榜の定点も一部はありますけれども、今はほとんどなくなっております。多分、産婦人科系と泌尿器科・皮膚科系が四百幾つぐらいずつという構成でして、前回改定時も定点に内科を入れるかで議論があったようでございますが、少なくとも梅毒を入れた5種に関しては、今後は、あるいは従来からもあると思うのですが、梅毒なら口腔梅毒とか皮膚所見、そういう場合、内科の先生方は今申し上げた皮膚科、泌尿器科等に紹介されることが多分多いのではないかと考えますと、今の定点は診療科としては妥当かとも思います。

 ただ、問題はここにも書いてありますけれども、例えば、口腔咽頭の性感染症というのが今は非常にはっきりしてきまして、梅毒にしても2期梅毒はかなりの頻度で口腔粘膜に病変をつくります。しかも、口腔というのは内科であれいろいろな科で、何も性器を診なくても口だけ開けさせれば診られるわけです。もっと言いますと、それをさらに専門的に診断するには耳鼻科とかになりますから、これも医師の啓発が必要で、耳鼻咽喉科の先生方で性感染症を念頭に置いてどれくらい診察されているかということも、もう少し突き止めていかなければいけないのですが、試験的にあるところで耳鼻科の先生方に聞いてみますと、やはり極めて忙しい日常診療の中で、そこまではなかなか手が回っていないという現状もあるようです。しかし、これは非常に重要な問題なので、平成24年改定のときにも盛り込まれているのですけれども、今後、口腔咽頭性感染症ということをもう少し強調していくべきかということも含めて議論されるべきかと思います。

 以上です。

○岩本委員長 ありがとうございます。

 1つは、性病科というのは少ないだろうけれども、定点は考えなければいけないのではないかという気がします。例えば、性病科の中で内科で性病科を標榜している先生だったら、内科の先生も考えてもらってもいいと思いますし、もう一点、さっき横幕委員の説明であった、拠点病院にこれ以上の仕事を覆いかぶせようとは思いませんけれども、HIV感染は今2万人以上が日本で診療を受けているわけです。梅毒の合併率たるや今、女性がふえてきたということで大事だということになっていますけれども、やはり男性の梅毒は数の上でも非常に大事で、それが拾われないのは非常に問題だと思っています。

○荒川委員 これは味澤委員や横幕委員にお聞きしたいのですが、従来HIVの方に梅毒の合併率が高いということで、今もそうだと思いますけれども、その場合、駆梅療法すなわち梅毒治療は内科の先生、要するにHIV感染の専門家がされているのでしょうか。

○岩本委員長 そのとおりです。

 味澤委員どうぞお答えください。

○味澤委員 そのとおりですね。

 それから、最近、別にHIVではない方でも眼梅毒も結構ふえていて、私は週に1回、駒込病院に行っているのですけれども、毎月1人は入院して駆梅療法を受けている状況です。眼は多分定点には乗ってこないのではないかと思います。要するに、梅毒は全身なので、そういう意味では皮膚、泌尿器、婦人科だけで定点を成していていいのかなという疑問はあります。すみません、全数把握なので問題ありませんね。

○荒川委員 失礼しました。ちょっと混同いたしました。梅毒は全数把握なので、定点とは関係ないです。

○岩本委員長 横幕委員どうぞ。

○横幕委員 せっかくなので梅毒の情報提供だけさせていただきます。恐らく全拠点病院で梅毒のいわゆるRPR陽性の方というのは2~3割いると思います。HIV診療医の梅毒の診断能力は高いと思います。治療が必要な梅毒の患者については、いわゆるAMPCを使った治療が行われているという環境にありますので、情報提供だけさせていただきます。

○荒川委員 ありがとうございました。

 ここで内科や耳鼻咽喉科を定点に入れるべきかどうかということは、梅毒という観点ではなくて、そのほかの4つ、淋菌、クラミジア、性器ヘルペス、尖圭コンジローマ、この4つの定点に内科、耳鼻科を入れるべきかどうかになってくるので、それは今回議論が必要かと思います。この4種についは、咽頭クラミジア、咽頭淋菌感染症といった口腔咽頭の性感染症についてきっちりと発生動向を見たほうがいいのかどうかという意味において、耳鼻科等が定点に組み込まれるべきかどうかということが今、日本性感染症学会や厚生労働科学研究班では議論の対象になっております。

○岩本委員長 診療科の数は多くないかもしれないですけれども、そういう点では肛門科も非常に大事だと思いますよ。

○荒川委員 直腸の淋菌感染、クラミジア感染もありますし、尖圭コンジローマも肛門周囲にできることもありますので、そういうところでトラップされる症例は確かにあるはずなので、それが漏れてしまっているということは否めないと思います。

○岩本委員長 私が余り発言してはいけないのですけれども、エイズのところで1,500人ぐらいが出ているけれども、そのうちの500名弱がエイズになった人たちが報告されている。結局薬がよくなったけれども、非常に遅いところにまで検査等が行われていない、診療を受けていない方々が毎年3分の1いるという点、このあたりの調査等も最近すごく少ないと思いますので、なぜ、もう少し早く診療を受けて健康な生活ができるようにならないのかというのは、一般的な啓発も大事ですけれども、感染した方々がなぜこれだけおくれるのかということに関する疫学的な研究はもっと要ると思います。病院の中での問診であるとか、研究的な調査が大事だと思います。

○荒川委員 委員長、感染研のコメントをお願いします。

○岩本委員長 エイズと性感染症に関して、感染研から疫学データ等について御追加があればどうぞ。

○有馬参考人 エイズの疫学的研究という観点で、1点だけコメントさせていただきます。

 「いきなりエイズ」とよく言われておりますが、地域差が発生動向調査からも見られております。また、日本の感染症サーベイランスとしてHIVサーベイランスの長所は、保健所等での検査数がわかることです。人口当たりどのくらい検査が行われているかわかるので、大体陽性率的なものがわかります。どのくらい実際に検査がされていて、陽性率といきなりエイズ率などとあわせてHIV/エイズの状況の把握が発生動向調査からよりわかります。

 梅毒に関しては、近年報告数の増加は非常に懸念すべきことだと考えております。ただ、これに関しては、他の感染症と同様に、検査数の情報がないというのがデメリットであり、これだけ啓発を行っていますので、いいことですが検査行動も変わっているかと思います。それが把握できると、またよりよい解釈ができるかと思っております。

 他の4疾患に関しては、ここ10年あたり横ばいですが、1つ今後考えていかなければいけないと思うのは、郵送検査などが普及しているということで、それも何らか評価した上、発生動向を追っていきたいと思います。そもそも定点の4疾患に関しては、従来の梅毒等とは異なり、頻度が高いクラミジアやHPVなので、これ以上定点をふやすということは、何が目的かをしっかりと考えていくのが重要かと思います。疾病負荷ではなくて、トレンドモニター(どのようにトレンドが推移しているか)という目的であれば、定点の追加は、慎重に考える必要があると思います。今の定点では見えていない、或いは方向が異なるようなことが懸念されるのであれば、耳鼻科等の検討もありかと思います。もし疾病負荷をより包括的に見たいのであれば、耳鼻科等をさらに検討することはありかと思いますが、追加していくことに関しては、目的を明確にして、丁寧に考えていくことが重要かと思います。

○岩本委員長 どうもありがとうございました。

 御質問・御意見いかがでしょうか。よろしいでしょうか。

 それでは、引き続き資料の説明を事務局からお願いします。

○結核感染症課エイズ対策推進室室長補佐 最初に委員長からも御説明がございましたが、前回の議論の中でエイズと性感染症を並べて議論するに当たって、項立てについての議論が少しございました。この項立てについて、資料2の4ページを見ていただきたいのですが、「()発生の予防及びまん延の防止1」のところに「(普及啓発及び教育)」という書き方をさせていただいております。これは現行の指針では「普及啓発及び教育」という項立てになっておりますが、性感染症と合わせることを意識してこのような形になっており、普及啓発及び教育の内容を「()発生の予防及びまん延の防止1」の中であわせて議論させていただければということで、このような資料になっていることを御了承いただきたいと思います。

 最初に、「普及啓発及び教育」の現状を御説明させていただきます。5ページをごらんください。

 諸外国や我が国の疫学的検討結果に基づき、個別施策層(特に、青少年やMSM)に対する支援を行うことを目的として、国内主要都市にコミュニティーセンターが設置されています。運営を委託された患者団体を含む非営利組織または非政府組織により、主にその利用者に対して啓発が行われております。

 国民一般を対象としたHIV感染症やエイズに係る知識普及としては、教育機関において指導要領に基づいた啓発が行われております。

 国や地方自治体においては、世界エイズデー(12月1日)、HIV検査普及週間(6月1~7日)にあわせた各種イベントやインターネットを利用した情報提供などを実施しております。

 医療・福祉従事者に対しては、ブロック拠点病院の医療従事者が中心となって啓発が行われています。

 6ページには、エイズ対策の現状について資料を添付しております。

 これら現状を踏まえ、4ページにまとめておりますが、現行の予防指針では、患者等や個別施策層に対する普及啓発・教育の強化、医療従事者等に対する教育について記載されております。一方、現行の予防指針では、どのような内容について普及啓発・教育を行うべきかについての記載がありません。

 課題としては、致死的なエイズ発症例を除き、HIV感染診断確定後に医療機関を受診すれば、抗HIV療法によって良好な予後を得ることができ、また他者への感染も防ぐことができるにもかかわらず、その理解が進んでおらず、HIV・エイズに対する不治の病等の誤ったイメージが存在する。

 課題に対する御意見としては、早期発見・早期治療を行うことが自らにも社会にも有益であることを、国民一般に広く啓発する重要性を記載してはどうかとさせていただいております。

 続きまして、検査・相談体制に移ります。8ページをごらんください。先ほど岩本委員長からも御説明がありましたが、新既HIV感染者及び新既エイズ患者の合計数に対する新既エイズ患者数の割合ということで、近年3割前後で横ばいで推移しております。エイズを発症して見つかる、つまり検査受検がおくれたケースということになります。

 9ページには、我が国のHIV検査について書かれております。あわせて保健所検査の件数も載せておりますが、近年13万件程度の横ばいで推移しております。

 以上を踏まえ、7ページをごらんください。検査・相談体制についての現状、課題等について記載してございます。

 現行の予防指針では、保健所等の検査・相談体制の強化に重点が置かれております。エイズ発症後に初めて検査を受けて発見される人の数が横ばいである。

 課題としては、保健所等の検査は全国で件数が横ばいになっております。感染しただけでは自覚症状がなく、普及啓発だけでは検査の増加に限界がある。これは医療機関の検査になりますが、同意を定めている通知において、検査前・検査後の保健指導やカウンセリングの実施を必要としており、医療機関の負担に一部なっているという御指摘がございました。同通知において書面同意は必要としていないが、現場では書面同意をとっており、医療機関や患者にとって検査のハードルが高い。また、先ほどお話もありましたが、事前検査としての郵送検査については、件数が増加している一方で、医療機関への結びつけの問題などがございます。

 課題に対する御意見では、有病率などの各地域の実情に即した効果的な検査の実施や重要性を記載してはどうか。検査での同意を定めている通知を改正し、検査前・検査後の保健指導やカウンセリングの実施については任意とし、また、口頭での同意で検査が可能と明記してはどうか。郵送検査では、医療機関などへの結びつけに配慮する必要があることを記載してはどうかとさせていただいております。

 なお、こちらにありますHIV検査の実施についての通知に関しましては、10ページに抜粋を載せてございます。10ページの2番、()に本人の同意を得ることが書いてあり、()に「検査前及び検査後の保健指導あるいはカウンセリングがなされること」との記載がございます。

11ページには、OPT-OUT検査について資料を提示しております。これは前回の委員会で松下参考人からOPT-OUT検査についてのお話があったということで資料を作成しております。OPT-OUT検査とは、積極的に拒否しない人の全員に検査を行うものとされております。HIV感染の有無を調べるHIV検査は、受検希望者が自らの意思で保健所や医療機関を訪れ、自発的に検査を受ける自発的相談検査が原則とされてきました。2006年に、アメリカのCDCHIV検査の見直しを提案し、全ての医療機関で1664歳の患者全員に普通にHIV検査を実施することとしております。この際に、積極的に拒否しない人全員に検査を行うOPT-OUTスクリーニングの概念が導入されております。

 一方、WHOではPITC、医療者主導によるHIV検査相談という形で位置づけを行っております。2007年にWHOUNAIDSPITCガイダンスを発表しております。

PITCの分類としては、診断のための検査、スクリーニング、ターゲッテッド検査、強制的検査の4つに大きく分かれ、日本では2番のスクリーニングを除いてPITC検査は導入されていると考えていいのではないかというところです。

 このPITC検査ですが、流行段階により対応が異なるとされておりまして、日本はいかなる集団内でも陽性率が5%を超えない低流行期と考えられております。

 郵送検査につきましては、厚生労働省の研究班によるデータを載せてございますが、2015年には郵送検査の件数は8万5,000件を超えております。この増加につきまして、問題点などもあわせて研究班で現在研究中ということでございます。

14ページ「()発生の予防及びまん延の防止3(その他)」と記載してございますが、これは前回の小委員会でもお話がありましたが、予防投薬について主に記載してございます。

 現行の予防指針の中には予防投薬についての記載はなく、現状としては現行の指針に基づいて、15ページに書いておりますが、我が国の新規感染者の主体は、同性間性交渉によるMSMで、エイズ発症率は約3割で推移しており、保健所などの検査で診断される感染者は新既HIV感染者のうち約4割で、医療機関において検査勧奨により診断される患者や感染者の割合が高くなっております。

 新既患者や感染者における肝炎ウイルス、梅毒、ヒトパピローマウイルス、アメーバ等の性感染症の有既往率や合併罹患率は高い。

MSMの利用者率が高い保健所の夜間・休日検査機会やMSMを対象としたイベント検査での新既HIV感染判明率は経年的に低下傾向を示す場合があります。

 我が国において、妊婦検診におけるHIVスクリーニング検査実施率はほぼ100%に近い水準に達しております。妊婦検診によってHIV感染が判明し、HIV感染症診療医により適切な対応が速やかに開始された症例での母子感染の報告はありません。

 献血件数10万件当たりの核酸増幅検査陽性件数は減少傾向にあります。

 これらの現状を踏まえ、14ページに「現状」「課題」等についてまとめております。

 現行の予防指針では、感染経路別対策と個別施策層に対する施策について記載されております。2015年、WHOHIV感染症の相当リスクのある人に対して、包括的な予防方法の1つとして内服薬を暴露前に予防投薬することを推奨するとしました。日本では予防目的での抗HIV薬の薬事承認はされておりません。

 課題としては、そもそも蔓延の防止には検査を行うことが重要ではないかという御意見。また、HIV感染症の低蔓延国である日本において、有効な暴露前予防投与の対象者が明確になっていないという課題が挙げられております。

 課題に対する御意見としては、我が国において暴露前予防投与が有効か否かについて研究を進めると記載してはどうかとさせていただいております。

 暴露前予防内服につきましては前回、松下参考人からもお話がございましたが、16ページ、17ページに参考資料を載せておりますので、適宜御参照ください。

 事務局からは、エイズについては以上になります。

○岩本委員長 ありがとうございます。

 ここで御質問・御意見等いただきたいと思いますが、いかがでしょうか。白井委員どうぞ。

○白井委員 15ページの質問です。「発生の予防及びまん延の防止」に係る現状の1行目ですけれども、新規感染者の主体は同性間性交渉によるMSMで、エイズ発症率は約3割というのは、感染者が発症するのが3割ということですか。

○結核感染症課エイズ対策推進室室長補佐 違います。新規の感染者のうちのエイズ発症者、いわゆる全新既患者のうちのエイズ発症者で見つかる人という意味です。

○白井委員 それとイコールMSMですか。

○結核感染症課エイズ対策推進室室長補佐 済みません、文章はここで切れます。「MSMです」となって、その後「エイズ発症率は」というふうに、MSMの中でというわけではありません。申しわけありません。

○岩本委員長 いかがでしょうか。俣野委員どうぞ。

○俣野委員 14ページの()の3の項目立てに、個別施策層に関することが少しコメントされていると思います。個別施策の問題というのは、恐らく個別施策の対象をどうするかということと、その対象に対してどうするかという問題が、先々で議論になる可能性があると思うのですが、ここの項目での議論と、もっと手前の教育あるいは啓発のところでも個別施策の問題が出てくるのではないかと思うのですが、ここの段階では4ページにそのことを少しコメントしておく必要は特になくてよろしいのでしょうか。

○結核感染症課エイズ対策推進室室長補佐 現在の予防指針と基本的な考え方という形で、各項立ての前に大きな項目についての考え方の基本のようなことが現在の指針ではございます。その中に、いずれの項目にも入るような内容につきましては入っておりますので、全てに個別施策層が入っているということですが、個別施策層の位置づけなど大枠的なお話はそういったところに入れることは当然できると考えております。

○俣野委員 もう一点。これは委員としての1つの意見なのですが、4ページの()の1の「課題に対する委員等のご意見」で、このとおりで私も一つの意見としていいかと思うのですけれども、ある程度課題を踏まえることになるかと思うのですが、課題のところでは誤ったイメージが存在することが書いてあるのですが、早期治療を行うことが本人に対してメリットになることが伝わっていないという記載が全くないのですが、ここにそれがあってもいいのではないかと思うのですが、いかがでしょうか。

○結核感染症課エイズ対策推進室室長補佐 課題として認識しておりますので、記載させていただきます。

○岩本委員長 そのほか御質問・御意見いかがでしょうか。

 現在の指針は、検査一般について検査・相談体制の充実ということが書かれているのですけれども、先ほど来ちょっとあった、要するに保健所の無料検査をどうしていくかという問題と、郵送検査等の増加のことは書かないといけないですよね。郵送検査の詳細をどこまで指針の中に書き込むかはともかくとして、郵送検査のことは入ると思います。一方、保健所の無料検査と医療現場での検査とは今まで大体一緒に、検査するときはこうですよと指導されてきたと思います。医療現場での検査と、いわゆる医療機関でない保健所や郵送検査と同じ土俵で書くのか、それとも医療の提供の中である程度医療現場での検査の提供に関して、要するに患者さんと1対1で面しているわけですから、すぐにOPT-OUTをとるというのではなくても、保健所の検査とは違いますよというところがあってもいいのではないかと思います。その辺御意見をいただければありがたいと思います。

○結核感染症課エイズ対策推進室室長補佐 性感染症も医療の提供の中に検査については書いてございますので、医療機関での検査についてはそちらの項目にまとめるという形でよろしいでしょうか。

○岩本委員長 いかがでしょうか。

○荒川委員 それでよろしいかと思います。私がHIV検査でずっと思っていましたのは、ここにも書いていただいているのですが、厚生労働省からの通知では同意を得ることとなっているのですけれども、それは口頭でも構わないので、診療録に口頭同意を得たと1行書いておけばいいと思うのですけれども、それがいまだに文書同意が必要だと思っている医療機関がかなりあるので、そこの誤解は解いていただきたいと思います。

○岩本委員長 そうなのですか。

○結核感染症課エイズ対策推進室室長補佐 それは医療機関にもよると思うのですが、念のため文書同意を求めている大きな病院があるというのは現状のようです。

○岩本委員長 それともう一点は、この件でいくと、全員HIVの術前検査を必ずやるのかというのは本当に費用対効果の問題で、その点について例えば指針でどう言及するのか、医療機関は全部こうですよというやり方をここで全部決めるのは、余りにも事を急ぎ過ぎだと思いますので、そのあたりは書ける範囲内で医療現場での検査と、一般の方により医療現場から離れて提供される検査と相談体制に分けていくと。その中には郵送検査の増加を見込んで、郵送検査のことも書いていくということでいかがでしょうか。

○荒川委員 郵送検査とか保健所に検査を受けに来る人は、自分から自発的に受けに来るわけだから同意もへったくれもないので、それはそれで推し進めるのは当然必要ですし、医療現場でもOPT-OUTではないけれども、あなた調べておきましょうということをもう少し手軽にやるという方向性は必要かと思います。

○岩本委員長 あなた調べておきましょうというのは、ちょっと強圧的な聞き方だと私は思います。拒否権は、あなたにあるんですよということです。

○荒川委員 そうですね。調べませんかということです。

○岩本委員長 白井委員どうぞ。

○白井委員 術前検査とか医療機関で調べるときに、例えば医療機関側のために調べるような説明になると、すごく拒否感があると思うんです。そこで自分のためにも早く見つけてほしいなというところを、ちゃんとその人のために説明するということができたら、そのほうがいいと思います。

 あと、ちょっと別のことなのですけれども、保健所の検査や郵送検査を考えたときに、保健所でも即日検査は進んではきていますが、もうちょっと早くならないかとも思います。イギリスなどでは、NPOがやっている検査センターに来て指で採血というか、1滴とってそこから検査がわかるというようなこともやっていますし、それはもちろん罹患率というか発見率の違いで、それをスクリーニングするかどうかというのは課題にはなるかと思いますけれども、保健所でもそういう簡単な検査を取り入れていくという発想があってもいいのかなとちょっと思いました。

○岩本委員長 ありがとうございます。

 そのほかいかがでしょうか。味澤委員どうぞ。

○味澤委員 保健所の検査は確かに頭打ちになっているのですけれども、そのかわり郵送検査が非常にふえていて、トータルで見れば検査はそんなに減っていないというよりは、むしろ少しふえています。それ自体はいいのですけれども、郵送検査をこの指針でどういう形で出していくかですね。推奨するというような書き方にするのか、それとももうちょっと。

○岩本委員長 それは次回がベストですけれども、事務局から案を出していただいて、先生方になるべく早くチェックしていただくと。

○味澤委員 わかりました。

○岩本委員長 南委員どうぞ。

○南委員 前回の予防指針の議論から時間がたっていて詳細が理解できていないことも多いのですけれども、先ほど俣野委員が御指摘された資料2の4ページ。「普及啓発及び教育」ということで言えば、課題はここに書かれていることに尽きると思うのです。つまり、がんでも何でもそうなのですが、病気を正しく理解して、正しく恐れるというのでしょうか、決して慢心してよい病気ではないのだと。でも、きちんと対応すればよい、今はこういう段階なのだ、ということを国民に広く知っていただくことが、何より普及啓発になるので、そこをいかに丁寧に進めるかということであって、議論をワーキンググループか何かわかりませんけれども重ねて、教育現場、つまり社会教育でも、家庭教育でも、学校教育でも、あらゆるところで丁寧にしていただくことが一番大事なのではないかと、強く思います。

 一方で、OPT-OUTのような話については啓発を一歩間違うと誤解も非常に多く生みます。このあたりも非常に丁寧に進める必要があります。今、国民は医療情報の過半数をネットで得ている、という調査が出ているのですけれども、ネットの情報だけだと誤解や曲解を招くようなものも非常に多くあります。OPT-OUT検査の概念も、本来の意義をきちんと伝えることが不可欠です。その最初を間違えると、幾ら後から上塗りをしてもなかなか修正が難しいということを申し上げておきたいと思います。

○岩本委員長 ありがとうございます。そのほか御意見・御質問よろしいでしょうか。

 それでは、人権の尊重のところですね。お願いいたします。

○結核感染症課エイズ対策推進室室長補佐 資料3の6ページをごらんください。性感染症の「()発生の予防及びまん延の防止」についての資料になります。

 現状として「一般的な普及啓発の実施に加え、若年層を中心とした普及啓発を実施するとともに、実施に当たっては、対象者の実情に応じて、普及啓発の内容や方法に配慮することが重要である」としております。学校教育については、「学習指導要領に則り、児童生徒の発達段階及び保護者や地域の理解を踏まえることが重要」。「保健所等は、教育関係機関及び保護者等と十分に連携し、学校における教育と連動した普及啓発を行うことが重要である」としております。

 課題ですが、現在の若年層に向けた施策は学校教育に偏っている。学校現場での教育が重要である。保護者や地域の理解をさらに推し進める必要があるといった課題をいただいております。

 これらの課題に対する御意見として、国が、社会の理解を後押しするような取り組みを自治体等と協力して進めていくことを記載してはどうか。教育関係者への啓発ツール開発の重要性を記載してはどうかなどの御意見をいただいております。

 7ページには、平成28年度の性感染症対策関連事業について記載してございますので、御参照ください。こういった事業を通じて普及啓発を行っているという例になります。

 事務局からは以上です。

○岩本委員長 荒川委員、追加はありますか。

○荒川委員 ここに書いていただいているように、確かに性感染症の特定感染症予防指針では、「()発生の予防及びまん延の防止」の項目の中に、6ページの一番上の「現状」に3つ書き抜かれていますけれども、普及啓発に関しては3カ所にしか出てこないといいますか、余りインパクトがないように私は思っています。もう少しここを強調していただきたいと。梅毒も含めまして5種の性感染症に関しては、鉄は熱いうちに打てといいますが、中高生の間でそういう病気があるという認識を必ず持ってもらうということにおいては、今の学校現場では学習指導要領などに、性感染症の予防手段としてのコンドームのことはちゃんと明記されているのですけれども、そこを担当教員がどの程度実際に授業に盛り込んでおられるかが少し心配でございます。それはいろいろな方から指摘を受けております。コンドームのことを余り強調すると寝た子を起こすということで、非常に反発を持つ教育者や父兄もおられて、そういう教育啓発を積極的にやっている医療者が、バッシングを受けたというようなこともございます。そういうことではなく、正しいコンドームの使用法というのは常識として必要だということも含めまして、コンドームのことは項立てして予防効果に関する普及啓発が必要と指針では書かれておりますので、これはぜひ残していただく方向で、しかも、必ずこれを中高生の間に理解させるという踏み込んだ記載が私は望ましいのではないかと考えます。

 そういう意味において、1回目の会合でここは課題ということで出していただいておりますし、教育関係者への啓発ツール開発というのは、保健体育の先生等がそこの授業をうまくやっていけるようサポートするような、例えば、スライドというようなものを提供することが今後必要ではないかと思っております。

 白井委員に補足していただかないといけないと思いますが。

○岩本委員長 白井委員どうぞ。

○白井委員 確かに、この辺については性感染症だけではなくて、HIVも教育啓発というところでは学校教育、若者に対しては共通するところだと思いますし、「学習指導要領に則り」と書いていますので、その中身は本当に丁寧に書いていることがわかっていますので、そこをお互い理解して、そのとおりにやっているということを学校の先生方にもむしろ理解いただく必要があるかなと思っています。

 教育関係者についてということなのですが、今、窓口としては養護教諭だったり保健体育だったりするのですけれども、学校は学校長が事業者として運営権を持っていますので、校長会での啓発の徹底が必要かなと思っています。その意味で、最初からこうあるべきということだけではなくて、生徒さんの前に学校の先生に理解していただくというステップが要るのかなと思いますし、あと、リスクのある子どもさんが不登校などで学校では、なかなか拾われない方がいらっしゃいますので、そこをどういうふうに拾い上げていくか、その辺は学習指導要領とどう関係しているのか逆に教えていただきたいのですけれども、そこも対応できるような教育啓発の書き方が必要かなと思いました。

○岩本委員長 野津委員どうぞ。

○野津委員 教育でどう扱っていくかという議論ですけれども、学校教育において健康にかかわる教育の推進を議論するときに、もう少し細やかにする必要があろうかと思うんです。私は保健教育を専門にしておりますので、こうした議論の場に時々かかわるのですが、まず、学習指導要領と言ってしまえばそれで解決していくような錯覚があるのではないか。学習指導要領というものは法的拘束力があるという理解で学校では進められておりまして、その教育の推進には説得力のあるものと言えます。例えば今話題になっていましたコンドームに関しては、小中高校の教科としての学習、つまり小学校の体育科の保健領域、中学校の保健体育科の保健分野、高等学校の保健体育科の科目保健の学習指導要領レベルでは一言も出てきておりません。それに追加して別につくられる「解説」は法的拘束力はないわけですが、教科書を作成するときにそれが基準になってきますので、解説にそれが載っていると教科書には間違いなく載ってこないと検定上問題になります。その解説レベルにおいて中学校の保健の学習の中に「例えば」という表現で、エイズなどの予防においてコンドームは有効な方法の一つという程度に書いてあります。

 高校の方は学習指導要領はもちろんですが、解説書にもコンドームということは具体的に出てきておりません。ただし、主たる教材として非常に重視される教科書レベルでは、避妊の有効な方法の一つという位置づけで示されています。

 また、そもそも中学校の保健体育の中の保健分野には、3年間で48時間程度しか授業時間が配当されておりませんので、まさにピンポイントで取り扱うことにもなりかねません。

 さらに、教員に対する教育・研修が必要だという話がありましたけれども、一部の管理職だったり、保護者だったり、社会全体のそういった教育への必要性・理解というものが十分でないので、現場の教師がやりにくいということもあるということを考える必要があると思います。

しっかり受け止めてやるべきことはやらなければ学校の先生もだめですし、そこは管理職も問われますので、制度的にきちんと整えていった上で、保護者を含めた国民・社会がそういう教育が重要で、ぜひともすべきだということが明確に伝わるような社会への啓発が必要だと思います。また今、学習指導要領の改定の真っ最中で、小・中は本年度末までに、高校が来年度以降なわけですが、その辺のことを考えていく必要があるのではないかと思います。

 あちこち話が飛びましたけれども、教育に関しては非常に重要ですので、ぜひここで議論を深めて、具体的にもう少し詰めた発信ができたらいいのではないかと願っております。

○岩本委員長 横幕委員どうぞ。

○横幕委員 最近、教育現場の方といろいろお仕事をさせていただく中で感じたことだけ申し上げます。

 正直、学校の先生方というのは、いかに健康を維持するかというところが主体になりまして、私たちは、いかに治療に結びつけるかということでコンセプトが違うということと、学校の先生方とお話をしていると、集団指導と個別指導で分けて考えなければいけないだろうと。性交渉を持った方45%といったときに、医療者は45%もいるから介入しなければいけないと見る。だけれども、教育の方は例えば55%は性交渉を持っていないのだから、そこに何かしなければいけないとか、見るアプローチも違うということはよく耳にしますし、存じ上げているところです。実際こういった疾病教育等を全て教育の先生方に委ねることは、やはり無責任ですし、そこに対しては医療者が専門的な立場で関係していくという関係性を構築することが重要だと考えております。

 それに際しては、やはりお話ししていく中では、教育の現場でのニーズをきちんと把握すること。それに対して医療者が何が提供できるかをきちんと出していくこと。あと、委員の御指摘にあったように、社会全体にきちんと正しい情報を発信していくこと、そのあたりをきちんと包括的に行った上で、お願いするのであればお願いするという形でないと、医療者が必要だからと言いっ放しになったときに、教育の現場で継続的なメッセージが残らないことになって打ち上げ花火的になってしまいますので、お願いしたいのはやまやまなのですけれども、医療者もきちんと汗を流して教育現場のことを理解した上で、いい形で啓発を進めるというふうにしていくべきだと考えております。

○岩本委員長 ありがとうございます。そのほかいかがでしょうか。

 白井委員どうぞ。

○白井委員 野津委員のお話の中で、そういった制度の中で現状の中でもやれることはたくさんあると思いますし、そういったときに学校側に任せるということではなくて、医療者や家庭、社会も全体にかかわっていくということができたらいいかなと思いますので、またよろしくお願いしたいと思います。やり方について、医療者がどうしても特化した言い方で入ってしまうことがあって、それが拒否的になることもあると思いますので、その辺については、学校側からの意見との調整が必要かなと思います。

○岩本委員長 野津委員どうぞ。

○野津委員 例えば、薬物乱用防止のための教育に関しては、教科の中で学習指導するとともに、同時に外部講師として麻薬取締官OBとか薬剤師といった方々が学校に講師として招いて薬物乱用防止教室をやるという制度などをつくって、その講師の養成のプログラムといいますか研修などもして、学校教育における薬物乱用防止教室の講師養成ということも仕組んできています。

 性に関してもこれまでですと、産婦人科医の方とか保健師さんといった方々がそれぞれの地域で、積極的に取り組んで活躍されている例がありますが、性は非常にナーバスな保護者あるいは先生方にもいろいろな考えがありますので、そういった外部講師の養成やトレーニングを行う必要があるのではないか。

 先ほど南委員が、課題のところに対しての記述、あるいはそれに対応した課題解決に向けた具体的な対策の記述がちょっとラフになっていると言われましたが、私も、もう少し具体化していくことが必要だと思います。もちろん指針ですから、書ける程度というのはあると思いますけれども、それにしてももう少し戦略的に書いてもいいのではないかという感想を持っております。

○荒川委員 追加よろしいですか。

 まさに野津委員がおっしゃったことが必要というのは、白井委員の御発言にも共通しているのですけれども、医療者がデリバリー事業をして生徒の皆さんに啓発させていただくということを学校現場が受け入れてくだされば、私どもは決してやぶさかではなくて、神戸市では、市内全ての中学校対象に医師が性感染症教育に行くというシステムを確立され非常に先駆的にやっておられます。先ほど申し上げたように、高校にも医療者が担当して行っているということは現実にございますし、これは産婦人科医であったり、泌尿器科医であったり、私もその一翼を担っておりますけれども、そういうことを学校現場が均一化して受け入れてくれればいいのですが、先ほど白井委員のお話にあったように、高校は特に校長の決定権が大きいですよね。校長先生がそういうことに積極的であれば、私どもを呼んでいただいて話す機会を得るのですけれども、そこは学校によって非常にまちまちなので、今、野津委員もそこを書き込むかどうかとおっしゃいましたけれども、例えば、医療者のそういうことも含めた学校での啓発事業も検討するということまで指針に入れていただくのも一つの方法かなと思っております。

○岩本委員長 ありがとうございます。

 それでは、事務局から次の「()人権の尊重」をお願いします。

○結核感染症課エイズ対策推進室室長補佐 資料2の24ページ、エイズの「()人権の尊重」の説明に移らせていただきます。

○荒川委員 ちょっとだけ待ってください。そこに入る前に委員長に1つだけ。今の中で結局、性感染症のところでは、エイズのほうに項立てされている普及啓発及び教育と検査・相談体制の充実というのは性感染症のほうにはないので、性感染症に合わせていただいてHIVは「()発生の予防及びまん延の防止」の中に、教育啓発及び教育と検査・相談体制の充実を入れ込むのかどうか、ここである程度決めていただいたほうがいいと思いますが、どうでしょうか。項立ての話は後でいいですか。

○岩本委員長 事務局で1回検討しまして提示させていただきます。

○荒川委員 わかりました。

○結核感染症課エイズ対策推進室室長補佐 「()人権の尊重」の前には、現行指針では研究開発の推進と国際的な連携についての項がございますが、この2項目については後天性免疫不全症候群及び性感染症、どちらについても特段論点となる御意見をいただいておりませんので、特に資料等は提示しておりません。

 では、「()人権の尊重」について説明させていただきます。24ページをごらんください。

 現行の予防指針では、人権の尊重や個人情報の保護を徹底することが重要なこと、偏見・差別の撤廃への努力をしていくこと、説明と同意に基づく保健医療サービスの提供が重要であることが記載されております。また、医療機関での診療拒否や福祉施設での受け入れ拒否の問題についてなどは記載がありません。現行の予防指針では、HIV感染者などへの就労支援に関する記載がございません。職場内差別の防止などを内容とする「職場におけるエイズ問題に関するガイドライン」「事業場における治療と職業生活の両立支援のためのガイドライン」を示しております。

 課題としては、怖い病気という偏見があることから、HIV感染者・エイズ患者の診療拒否や福祉施設での受け入れ拒否がございます。就労支援のための体制整備が重要であるという課題をいただいております。

 これら課題についての御意見として、感染者や患者の診療・介護には特別な予防策は必要なく、標準感染予防策で対応できることを記載してはどうか。また、HIV感染者等への就労支援の重要性について記載してはどうかと御意見をいただいております。

 現在の「人権の尊重」に係る現状につきましては、我が国におけるHIV感染症・エイズの疾病理解の進歩と抗HIV療法の予後改善及び性的少数者と称される層に対する社会の受容は進みつつあります。

 しかし、患者や感染者は、今もなお医療・福祉の現場のみならず、就学・就労に際しても不利益をこうむることがあります。

 一方で、患者や感染者に対して配慮されてきたプライバシーの保護や多様な価値観の受容については、今や罹病者に限らず広く一般に尊重されるべき事項となっているという現状を書いております。

 最後に、職場におけるエイズ問題に関するガイドラインの抜粋を載せておりますので、御参照ください。

 性感染症に関しては人権の項目はございませんので、エイズに関してだけ御説明させていただきます。

 以上になります。

○岩本委員長 ありがとうございます。

 御質問・御意見等いかがでしょうか。南委員どうぞ。

○南委員 わかれば教えていただきたいのですが、24ページの「課題」にある現状としては怖い病気という偏見があることから、診療拒否や福祉施設での受け入れ拒否があると書かれています。そこで診療の拒否について伺いたいのですが、理由というか背景なのですけれども、さまざまな医療を提供していく上で、色々医学、医療上の不都合があるので拠点病院に行ってください、ということなのか、例えば、手術の安全管理上の問題とか具体的なリスクがあってそうなっているのか、それとも正しく理解をせずにことさら忌避しているということなのか、現状はどうなっているのかを現場の先生に伺いたいのですが。

○岩本委員長 いかがですか。味澤委員どうぞ。

○味澤委員 例えば、透析にしても、透析をしているのはドクターだけではなくて、技師の方とか看護師の方とかいろいろな方がチームをつくられていて成り立っているわけです。HIVの感染者は拠点病院に今ほとんど通っているわけですけれども、拠点病院で維持透析を行っているところは少ないですよね、急性期病院ですから。多くのHIV感染者ではない透析患者というのは御自宅のそばの透析の施設に通われているわけですけれども、HIVの方も透析になるという事例がふえておりますが、HIV感染者の場合は御自宅近くの透析施設を探すということが非常に大変です。多い場合は50カ所ぐらい紹介してようやく受け入れてもらって、受け入れてくれるにしても、拠点病院のスタッフが4~5人で行ってレクチャーをして初めて受け入れていただけるとか、そういったことが現状です。

 それから、HIVの方もがんになるわけで、その場合、ホスピスを希望されてもほとんど受け入れてもらえないと。例外的に受け入れてくれるところもありますけれども、それも全国的には10個はないのではないでしょうか。拠点病院の受け入れは非常によくなっていますけれども、一般医療機関での受け入れはかなり個々で差があって、いいところは非常にまだ少ないというところです。

○南委員 それは医学的に見ても無理もないことなのか、それとも医療従事者の偏見によるところが大きいのかを伺いたいと思ったのですが。

○味澤委員 透析に関しても透析学会でガイドラインをつくっていただいたりしていますけれども、それでもなかなか受け入れてくれないということは、やはり頭で理解していても心で理解していないということなのではないかと思います。

○岩本委員長 横幕委員どうぞ。

○横幕委員 追加させていただきます。恐らくここに拒否と書いてしまうと、いろいろと難しい問題が生じるかと思いますので、事務局の思いを代弁することになるかどうかわかりませんが、補足させていただきます。

30年前のエビデンスレベルであれば適当かもしれません。30年前の疾病の扱いであれば、例えば、マスコミから提供されるような情報で一般的に理解し得る情報に基づくものであれば、ひょっとするとこれは肯定されるかもしれませんが、現在のエビデンスレベル、先ほど私が申し上げたような事実であるとか、俣野委員等が研究されていますけれども、一般的なHIVの基礎のエビデンスレベルに基づいていけば不適当ではないかと思うのですが、ただ、それを知らずにやっているという点では罪に問われないだろうということだと思います。あとは、心情的な問題があると思いますので、医学者・医療者としては正しい知識をきちんと得る、もしくはそれに対して情報提供することが個々の問題を解決することになりますし、その他、医療者につきましても正しい知識をきちんと啓発することによって、そういった心情の部分も解決されるというのが玉虫色の答えかと存じます。

○岩本委員長 きょう横幕委員の御発表にもあったように、拠点病院体制というのが恐らく世界で本当に数カ国しかないような医療レベルを達成しているわけです。それはこの体制だったと思うのですけれども、逆にいうとほかの医療従事者が患者さんを診たことがないわけです。その間に元気でおられるうちに年齢をとっていって、いろいろな合併疾患が出てきたときに全部急性期病院なので、その人たちをどういうふうに診るかということは、例えば新しい医療施設にというのは昔と同じことが起こって、薬でほとんどウイルスは検出できない状態になっており、感染性がない状態ですと言っても、経験がありませんというのが前に出てくるのがいまだに現状で、これをどうやって揺り動かすかは難しいところですけれども、何らかの形で診療方針を変えていかないと患者さんたちのメリットにはならないと思います。

 よろしいでしょうか。白井委員どうぞ。

○白井委員 一番最初の医療のところでお話があったのですが、早乙女委員のお話もあったのですけれども、例えば、特化した透析であるとか、不妊治療というようなところでHIVの患者さんだったら、もうできないという話にもなってしまうので、医療のところで歯科とか精神的なところは以前の指針に書いてありましたので、透析であるとか特化した医療という具体的なものを入れるというのは、今の医療事情から言うといいのではないかと思いますが。

○岩本委員長 ありがとうございました。

 それでは、事務局から続きがまだありますよね。

○結核感染症課エイズ対策推進室室長補佐 最後は、エイズの項目に関しての「()施策の評価及び関係機関との新たな連携」について説明をさせていただきます。資料2の27ページをごらんください。

 現行の予防指針では、施策の評価を進めることや研究班・NGO等との連携が重要であることが記載されております。一方で、現行の予防指針では、施策の評価に必要な疫学的情報の収集などについて記載がありません。

 エイズ動向委員会ではカスケードに必要な数値が得られていないということ。新規患者や感染者数の推移に関する報告から、我が国の従前の予防指針に基づく施策が一定の効果を上げていることは推測されるが、その要因を分析するために必要な疫学情報が不足していること。医療機関とNGOとの連携は重要であるが、マッチングが難しいことなどが課題として挙げられております。

 課題に対する御意見として、カスケードに必要な数値を得る疫学情報の重要性を記載してはどうか。国民の知識の状況を把握する疫学調査の重要性を記載してはどうか。自治体を中心として医療機関とNGOが連携することの重要性について記載してはどうかとまとめております。

 こちらの項目については以上になります。

 性感染症では、この施策の評価については特に御意見がなかったために記載はしておりません。

 事務局からの説明は以上になります。

○岩本委員長 ありがとうございます。

 御質問・御意見いかがでしょうか。白井委員どうぞ。

○白井委員 カスケードに必要な数値というところで、UNAIDS/WHOが出している90-90-90というのは、別に国とか自治体とかそういうことではなくて全世界的な目標値だと思いますので、それを日本で受け入れられるかどうかということにもなると思いますし、指針には書いていなかったかと思いますけれども、自治体の検査がいきなりエイズではなくてできるだけ早期に感染者を見つけるということであれば、その割合をどう自治体ごとに出すかとかそういうことも目標の中に入れていくということは現実的ではないかと思います。

NGOと自治体の連携の評価というのはなかなか難しいかなとは思うのですけれども、こういうNGOがあってとか、自治体との連携の事例ということをできるだけ広く紹介していただくとか、そういうことがモデルになるかなという気はしました。

○岩本委員長 そのほか全般的にいかがでしょうか。俣野委員どうぞ。

○俣野委員 今後の話なのですが、事務局のほうでは今後も参考人という方を毎回呼ぶようなスタイルになっていくのでしょうか。

○結核感染症課エイズ対策推進室長 議論に必要な参考人につきましては、お呼びするという形になろうかと思っております。

○俣野委員 もちろん、参考人から情報をいただくのは非常に大事なことだと思うのですが、参考人の方から客観的な情報をいただく必要性が生じる場合とか、あるいはそれなりに必要な提言をしていただくということも必要な場合があると思うのですが、提言なのか、情報提供なのかわからないような状況というのは余り好ましくないと思うので、もちろんある1人の方に両方やっていただく必要も出てくる場合があると思うのですが、特に今回、性感染症が御専門の方とエイズが御専門の方と分ける必要は全然ないのですけれども、例えば、エイズの専門委員がエイズ関係でそのあたりを両方話されているのを聞いている場合、提言の部分と客観的な部分と判断がつくと思うのですが、微妙に専門が違うとそのあたりがわからなくなってくる部分もあると思いますので、もちろんできる範囲で結構なのですが、そのあたりは客観的な情報とわかるような形にしていただければと思います。

○岩本委員長 それ以外に何かありますか。

 この前のときに出たPrEPだとか、予防投与の話はもう少しやっておく必要はないですか。

○結核感染症課エイズ対策推進室長 きょうは時間を3時間とっていただいております。まだ25分時間がございますので、必要があればここで御議論いただいて構わないと思います。

○岩本委員長 事務局案が出てきたほうが意見が言いやすいかもしれないですが、何かありますか。きょうのところは大体よろしいでしょうか。

 白井委員どうぞ。

○白井委員 施策の評価については、前のときには指針の評価が余りできていなかったと言われながら、きょうの議論はこれで終わりなのかなという気がするのですけれども、逆に宿題をいただいて持って帰ったほうがいいのかなと思ったりはするのですが、次にも施策の評価というか、その辺についての議論はあるのでしょうか。

○結核感染症課エイズ対策推進室長 施策の評価については、まさにこの委員会で御議論いただく形になろうかと思いますが、本日、岩本委員長から、予防指針の改定の細かい文言について、どういう形で改定していくかというところは、事務局から委員の先生方の御意見を踏まえて出していただいたほうがいいという御要望がございましたので、次回開催するときに各委員からの御意見を踏まえて事務局で案を出させていただいて、どういう形で改定するかというところに焦点を絞って議論していくということになろうかと思っております。

○白井委員 それでしたら、きょう時間もあと25分とおっしゃいましたけれども、詳しいことはメールで意見を出すということは構わないわけですか。

○結核感染症課エイズ対策推進室長 さようでございます。

○結核感染症課エイズ対策推進室室長補佐 白井先生のほうで、施策の評価でこれをしてほしいというものが何かおありということでしょうか。

○白井委員 私だけではなくて、それぞれの委員からいろいろ評価ということを考えながら指針の改定はしたほうがいいかと思いますし、目標設定で数値目標を出すかどうかということについては難しいところもあるとは思うのですけれども、それもできるものについては、そういうふうにするというような委員会の中での意見があったのかどうかというかという確認をしながら意見を出していきたいなと思いましたので。

○岩本委員長 きょうこういうことを言い忘れたとか、後で気がついたということは、事務局にどんどんメールなりで上げていただければよろしいかと思います。

 次回の予定をお願いします。

○結核感染症課エイズ対策推進室長 まだ議題2が残っておりますが、議題2「その他」につきまして、事務局からは何もございません。

 次回でございますけれども、第3回の開催につきましては、2月21日の14時からの開催を予定しております。先ほど申し上げましたけれども、岩本委員長より次回、各先生方の御意見を踏まえて事務局から予防指針の改定案についてお示しするということを考えておりますので、委員の先生からはメールベースで御意見をいただくという形で先ほど委員長より御指示いただきましたので、メールで御意見をいただければと思います。期間を指定したほうがいいと思いますが、本日が23日月曜日になりますので、例えば、今週の26日木曜日ぐらいまでに事務局にメールをお送りいただければ、こちらで集約し、次回修正案についてお示しさせていただきたいと思います。

 事務局からは以上になります。

○岩本委員長 短過ぎないですか。

○白井委員 26日中ですか。

○結核感染症課エイズ対策推進室長 もう少し時間が必要でございましたら検討しますけれども、いかがでしょうか。

○結核感染症課長 もし難しければ、別途担当のほうに委員の先生方から申し出ていただければ、事務局側としては調整させていただきますので、よろしくお願いします。

○荒川委員 全般的に、どの項目に関してでもいいわけですね。

○結核感染症課エイズ対策推進室長 さようでございます。

○岩本委員長 では、どうもありがとうございました。 

 


(了)

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