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2016年8月8日 平成28年度 第3回化学物質による労働者の健康障害防止措置に係る検討会 議事録

労働基準局安全衛生部化学物質対策課化学物質評価室

○日時

平成28年8月8日(月)15:00~


○場所

厚生労働省共用第6会議室(3階)


○議事

○米倉化学物質情報管理官 本日は大変お忙しい中、御参集いただきまして、誠にありがとうございます。定刻になりましたので、ただいまより「第3回化学物質による労働者の健康障害防止措置に係る検討会」を開催いたします。

 まず、今回の検討に当たりましては、本検討会の委員に加えまして、これまで同様に、多岐にわたる化学物質の有害性及びばく露防止対策に精通した上で適切なリスク低減措置の導入等を検討する必要があるため、リスク評価制度開始当初からリスク評価に携わっておられる櫻井委員に御参画いただいております。

 それから、ばく露防止措置の検討の際には、健康診断等の健康管理対策と関連付けて議論する必要があることから、特殊健康診断等に関する検討会の主要メンバーである圓藤委員、清水委員にも御参画いただいております。

 委員の出席状況ですが、圓藤委員から御欠席との御連絡を頂いております。また、保利委員からは若干遅れるとの御連絡を頂いております。また、本日はオブザーバーとして、化成品工業協会に御出席を頂いております。

 それでは、以下の議事進行につきましては、菅野先生にお願いいたします。

○菅野座長 本日もよろしくお願いいたします。まず、事務局から資料の確認をお願いいたします。

○米倉化学物質情報管理官 委員の方々につきましては、資料を大きく3つでとじてあります。資料1ページが「議事次第」、2ページが「配付資料一覧」となっております。3ページからが資料1「健康障害防止措置の健康シート(事務局案H28.8.8)」です。17ページからが資料2「関係事業者・団体への意見照会結果(オルト-トルイジン)」です。この資料2は次の資料3-1と資料3-2を項目ごとにまとめた資料です。27ページからが資料3-1「オルト-トルイジンに関する調査票」(日本化学工業協会)です。31ページからが資料3-2「オルト-トルイジンに関する調査票」(化成品工業協会)です。37ページが資料4「今後の予定」です。

39ページからが参考資料1「化学物質による労働者の健康障害防止措置に係る検討会開催要綱」です。41ページからが参考資料2「健康障害防止対策の検討手順」。47ページからが参考資料3「オルト-トルイジンに対する今後の対応」。75ページからのA3横のものが参考資料4「調査した福井県の化学工場における作業環境測定結果の推移」です。こちらの資料については参考資料4の枠内に書いてありますとおり、本資料について発言する場合については、個人情報保護の観点から、事業場名、対象物質名は伏せていただきますよう、よろしくお願いします。77ページが参考資料5「オルト-トルイジン取扱い事業場に対する膀胱がんに関する検査の実施要請等の状況」。

 別とじ参考資料6-1JIS T8115化学防護服」としております。35ページからが参考資料6-2JIS T8116化学防護手袋」。47ページからが参考資料6-3JIS T8117化学防護長靴」です。3つ目のとじの参考資料7「特定化学物質障害予防規則の抜粋」です。

 その他、当日配布資料として委員のみに配布で、田中委員、保護具メーカーからの提供資料が2枚あります。以上です。

○菅野座長 不足の資料はありませんか。

 それでは、本日の議題に入りたいと思います。本日は「オルト-トルイジンに係る健康障害防止措置の検討について」ですが、まず、これまでの経緯について、事務局から御説明をお願いします。

○米倉化学物質情報管理官 47ページからの参考資料3です。こちらは平成2877日に開催した化学物質のリスク評価検討会において「オルト-トルイジンに係る今後の対応」ということで検討していただき、参考資料3のとおり報告書を取りまとめております。この内容については728日付けで公表しております。報告書の内容については、3ページからの資料1にまとめておりますので、そちらで説明します。

3ページの資料1は、健康障害防止措置の検討シートです。物質名はオルト-トルイジン、CasNo.95-53-4、評価年月日が平成287月となっています。1の検討結果の概要ですが、(1)の物理化学的性質は、性状は液体、特徴的な臭気のある無色の液体で、空気や光にばく露すると帯赤茶色になります。沸点が200℃、融点が(α型)で-16℃、(β型)で-24.4℃。蒸気圧が34.5Paで、オクタノール/水分配係数が1.43となっています。

(2)の有害性情報です。発がん性については、ヒトに対する発がん性があるということで、根拠としては、IARC1ACGIHA3、産衛学会で第1群、DFGでカテゴリーで1とされており、閾値の有無は、遺伝毒性があると判断されるため、なしとされております。そのほか眼に対する重篤な損傷性/刺激性ですが、眼に対する重篤な損傷性/刺激性がありということで、根拠としては、ウサギで強い眼刺激と角膜の腐食が報告されている。ただし、ヒトでは情報はありません。

 遺伝毒性については、ありで、根拠としては、in vitroでは、細菌による変異原性試験については、条件により+又は-の報告があるが、染色体異常、小核及び異数性については陽性であり、in vivoでは、ラットで末梢血赤血球に小核を、肝細胞でDNA結合を誘起し、マウスでは骨随細胞に姉妹染色分体交換を起こすとされているところです。許容濃度等ですが、ACGIHについてはTWA2ppmskinです。オルト-トルイジンへの職業ばく露に対するTLV-TWAとして、アニリンとの類似性および間接的にニトロベンゼンとの類似性により、2ppmを勧告する。この値は、主としてメトヘモグロビン血症を、また、皮膚、眼、腎臓及び膀胱の刺激を防止するために設定される。オルト-トルイジンは皮膚吸収が大きく、全身に健康影響を及ぼすと報告されていることから、skinの表記を指定する。オルト-トルイジンはメトヘモグロビン誘起物質の1つとして、BEIが勧告されております。

 日本産業衛生学会については1ppmで、経皮吸収するとされています。日本産業衛生学会では既にオルト-トルイジンについて、発がん物質第2Aに分類しておりますが、2016年に第1群に改訂提案をされています。したがって、許容濃度はできるだけ低濃度に保つとしてもよいが、アニリンの許容濃度が現行1ppmであること、また、実際的な管理面を考慮して、許容濃度1ppm4.4mg/m3 、皮膚吸収注意を付して提案されているところです。

(3)の製造・取扱状況は、平成27年度現在でオルト-トルイジンを製造・取り扱っている27事業場について、全国の労働基準監督署が調査・把握している結果を取りまとめた内容で、次のとおりです。対象事業場におけるオルト-トルイジンの主な用途としては、「他の製剤等の原料としての使用」です。年間の製造・取扱量は「500kg未満」が15%、「500kg以上1t未満」が11%、「1t以上10t未満」が44%、「10t以上100t未満」が15%、「100t以上」が15%であり、製造・取扱作業の従事者数については「5人未満」が41%、「5人以上10人未満」が30%、「10人以上20人未満」が15%、「20人以上」が15%でした。

 また、オルト-トルイジンを取り扱う作業としては、「計量、配合、注入、投入又は小分けの作業」が70%、「サンプリング、分析、試験又は研究の業務」が19%、「充填又は袋詰めの作業」が11%です。発散抑制装置・保護具の使用状況については「密閉化施設」が28%、「局所排気装置」が14%、「呼吸用保護具」が28%、「保護衣等」が30%でした。

(4)は、独立行政法人労働者健康安全機構労働安全衛生総合研究所による福井県の化学工場における膀胱がん発症に係る調査結果の概要です。1つ目の○、過去の取扱状況について関係者に聞き取りをした結果、オルト-トルイジンを含有する有機溶剤でゴム手袋を洗浄して繰り返し使用することは多くの労働者が行っていたこと、夏場は半袖の化学防護性のない一般的な服装で作業していたこと、作業の過程でオルト-トルイジンを含有する有機溶剤で作業着が濡れることがしばしばあったこと、作業着が濡れた直後にシャワー等で体を洗い流さなかったこと、一部の作業について直接手指でオルト-トルイジンに触れていた等、オルト-トルイジンに皮膚接触する機会があったものと推察されております。

 また、事業場では20年近くにわたり有機溶剤に関して労働者の尿中代謝物測定を実施するとともに作業環境測定を実施しており、それらの結果から、当時は有機溶剤に関し、呼吸器からのばく露(経気道ばく露)を含めたばく露レベルが高かったことが推察されております。このため、オルト-トルイジンについても、皮膚からのばく露だけでなく、経気道ばく露があったことが推察されております。

 こちらの20年近くにわたる作業環境測定結果については、参考資料475ページからのA3の横のもので、上のほうが直近のデータで、下に行くほど古いデータになっていますが、昔のほうが、かなり高い濃度がしばしば出ていたという結果です。裏面も同様な数値です。

4ページに戻り、2つ目の○です。オルト-トルイジンの取扱いに係る作業の再現において、作業環境測定や個人ばく露測定を実施したところ、許容濃度と比べて十分小さい濃度であったことから、オルト-トルイジンの経気道ばく露は少ないと推察した。製品(粉体)については、保護具の着用状況等から、体内に取り込んだ量(経気道、経口)は小さいと推察した。さらにオルト-トルイジン以外の芳香族アミンについては、呼吸器から吸い込む量(経気道ばく露)は少ないと推察したということです。

 その次の○は、聞き取りや作業方法等の確認により、原料としてオルト-トルイジンの仕込み作業、製品の洗浄作業、乾燥機への投入作業等において経皮吸収の危険性が確認されたところです。

 その次の○は、過去の作業を再現した調査に参加した多くの作業員について、就業前と就業後に、それぞれ尿中代謝物を検査した結果、オルト-トルイジンが増加しており、ゴム手袋に付着していたオルト-トルイジンの量と就業前後の労働者の尿中のオルト-トルイジンの増加量に関連が見られたとされています。

 最後の○です。作業に使用したゴム手袋をオルト-トルイジンを含む有機溶剤で洗浄し、再度使用することを繰り返し行ったため、内側がオルト-トルイジンに汚染されたゴム手袋を通じ、オルト-トルイジンに皮膚接触し、長時間にわたり労働者の皮膚から吸収(経皮ばく露)をしていたことが示唆されております。

(5)オルト-トルイジンに対する今後の対応についてですが、(2)の有害性情報、(3)の製造・取扱状況、(4)の調査結果の概要を踏まえて記載しています。オルト-トルイジンはIARCにおける発がん性分類はGroup1(ヒトに対して発がん性がある)となっている。福井県内の化学工場で発生した膀胱がんに関する労働安全衛生総合研究所による災害調査において、現在の作業及び過去の作業におけるばく露防止対策が不十分であり、労働者が当該物質にばく露していたことが示唆された。また、全国の労働基準監督署において、オルト-トルイジンを製造し、又は取り扱う事業場の状況を調査したところ、相当数の事業場において、多くの労働者がオルト-トルイジンを取り扱う作業等に従事している実態が明らかになった。このため、職業がんの予防の観点から、オルト-トルイジンの製造・取扱作業について制度的対応を念頭に置いて「化学物質による労働者の健康障害防止措置に係る検討会」等において具体的措置を検討することが必要である、とされたところです。今回こういった経緯でこの検討会で検討をお願いしているところです。以上です。

○菅野座長 ただいまの御説明につきまして御質問がありましたらお願いいたします。

○唐沢委員 少し先走るのですが、資料一連番号57ページ、オルト-トルイジンの製造・取扱状況の一覧表があり、合計27事業場となっていたと思います。オルト-トルイジンの対象物の製造は空欄になっているから存在しないという理解でよろしいのですよね。そうすると日本国内ではオルト-トルイジンを製造している事業場はないと理解してよろしいのでしょうか。

○米倉化学物質情報管理官 後ほど御説明したいと思っていたのですが、ほかの物質を製造する際に副生成物として製造されるものはあるとお聞きしております。

○唐沢委員 副生物としてですね。

○米倉化学物質情報管理官 はい。

○唐沢委員 目的的にそのものをオルト-トルイジンをメインに製造という事業場はないという理解でよろしいですか。

○米倉化学物質情報管理官 はい。

○唐沢委員 分かりました。ありがとうございます。

○清水委員 4ページの一番最後の5で、労働安全衛生総合研究所が調査されていますね。その中でそこの企業には産業医が専任されていたのかどうかなど。それから定期健康診断、いわゆる労安法に基づく定期健康診断が行われていて、早期から尿中に血尿が検出されていなかったのかどうか。その辺は何かデータはおありでしょうか。

○菅野座長 どなたか御存じでしょうか。

○米倉化学物質情報管理官 すみません産業医の専任状況が今は分からないのですけれども。2ページの一番上にあるように、20年にわたり有機溶剤に関して尿中代謝物測定とか、作業環境測定については、オルト-トルイジンではなくて、別の有機溶剤を測定していたというのはあります。

○清水委員 労安法に基づく定期健康診断はやっていなかったと。それによる血尿の検出というのがされていなかったということですか。そこまでは調査されていないのですか。

○小野委員 情報あったかもしれないのですけれども、私どもは正確に把握しておりません。すみません。

○清水委員 そうですか。

○菅野座長 ほかにはいかがでしょうか。それでは次に移らせていただきます。続いて関係事業者団体からオルト-トルイジンの健康障害防止措置について御意見をお聞きしたいと思います。まず事務局から御説明をお願いします。

○米倉化学物質情報管理官 検討に先立ち、事務局からオルト-トルイジンを製造、又は取り扱っていると考えられる業界の団体として、日本化学工業協会、それから化成品工業協会に対して、健康障害防止措置の検討に向けたアンケートを実施しております。日本化学工業協会からは資料3-1、化成品工業協会からは資料3-2のとおり御意見を頂いています。本日は化成品工業協会には御出席いただいておりますので、化成品工業協会からは直接御意見が頂けるものと考えております。

○菅野座長 分かりました。それではまず2つの団体の御意見を伺いました後に質疑応答をいたします。日本化学工業協会については、本日は御欠席ですので、事務局から御説明をお願いします。

○米倉化学物質情報管理官 日本化学工業協会は、本日は所用により御出席いただけないということでしたので、私から御説明をいたします。27ページの資料3-1です。【質問2】ですが、日本化学工業協会の会員企業数は、企業会員179社、団体会員78団体です。オルト-トルイジンを使用しているおよその企業数をお聞きしたところ、3社でした。

 協会の活動内容としては、化学工業に関する生産・流通、消費などの調査・研究ならびに化学工業に関する技術、労働、環境・安全などに係る諸問題の調査・研究ならびに対策の企画およびその推進などを行うことにより、化学工業の健全な発展を図り、もってわが国の経済の繁栄と国民生活の向上に寄与するとされております。

 【質問3】の業界団体としての取組みですが、本物質を製造又は取扱う業務に関し、特段具体的な活動は実施していないが、化学物質を取扱う上での自主管理活動として、リスクアセスメント手法等の公開、リスク評価支援ポータルサイト等の公開等の展開を図っているということです。また、この問題に係る情報については、注意喚起等の周知の徹底を図っていただいております。

28ページの【質問4】で事業者の自主的な取組み状況を聞いたところです。ばく露作業の概要としては4つありますが、左側2つと右側2つで大きく分かれており、左側2つのサンプリング、それからドラム詰めですが、括弧書きで書いてあるように(オルト-トルイジンを約1.5%含む物質)ということで、先ほど唐沢委員から御質問があったのに関連しますが、他の製剤を製造する際に副生成物として約1.5%含む物質ができるものについての作業です。それから右側2つについては原材料として使用する作業の中で、ドラム缶からタンクへの移送、タンクから製造プロセスへの移送などの作業があります。その下○×で書いてあるのはそれぞれ措置を取っていただいているかどうかということで、基本的には大分取り組んでいただいている状況なのかなというところです。

29ページの保護手袋、保護長靴については、いろいろと検討して着用等されています。【質問5】の健康障害防止措置の導入に当たって考慮が必要な事項ということで、検査項目の整合性ということで、健診の関係で御意見を頂いています。その下、取扱い性状による適切な措置内容ということで、取り扱う性状によってばく露は著しく異なる。例えば液と粉体では、大きく異なるのでということですが、今回のオルト-トルイジンについては液体として取り扱っているので、液体としてのばく露の対策となるように配慮をお願いしたいということでした。

 【質問6】の技術的課題及び措置導入の可能性です。ばく露防止対策としての技術的課題を、製造工程に異物除去対策として設置されているストレーナ、カートリッジフィルターの清掃、取替作業等については解放部の局所排気装置は問題ないが、ストレーナの網やカートリッジフィルターを取り出す場合の対策が困難であるとされておりますが、措置導入の可能性で書いていただいているとおり、現状は局所排気装置+防毒マスク着装orエアーラインマスクということで措置をされているということです。

30ページの【質問7】として特殊な作業(少量取扱い等でリスクが低いと考えられる作業)の概要と意見というところです。研究、分析については屋内で数ccとか数mg単位での取扱いが多々あると思われる、ということでされておりましたが、2段落目で、現状は常時の作業頻度に該当する作業であれば、少量の取扱いであっても、リスクアセスメントを実施し、ドラフト内での作業実施、作業環境測定、健康診断は行っていることで措置しているとされています。

 【質問9】の措置方針についての意見については、オルト-トルイジンその他、そのものを製造又は取扱う業務ではないが、他の製品を製造する過程で副生するのも対象とするのか。閾値を明確にしていただきたいという御意見を頂いています。以上でございます。

○菅野座長 ありがとう。それでは、続いて化成品工業協会様からお願いします。

○化成品工業協会 化成品工業協会の上村です。今日はこういうチャンスを与えていただき、ありがとうございます。それでは、資料に従って御説明します。そこにあるように【質問1】では、我々としてこのオルト-トルイジンに関する調査票の関連があるという形でお答えしています。以下、詳細をお話します。

 【質問2】ですが、今、現行の我々の会員は、商社等も含めて129社あります。うち製造会社は約110社になっています。そういった団体で、あと、このオルト-トルイジンを使用しているおおよその会員企業数ということで、1520と幅を持たせていますが、そこの※に書いたようにPRTRというのが、排出事業者が平成26年度の届出が把握できますので、それで見ると日本全体では32事業所ほど名前が出ていまして、その中の我々の会員は15社、19事業所ありました。この中には我々化成協と日化協の両方に入っておられる会員さんもおられますので、具体的には今回、多分3社が該当すると思いますが、3社は共通会員なので、日化協のほうに3社、お答えがあって、我々のほうからは12社、対象があるということは分かっています。12社のうちの2社は回答がなかったのですが、このPRTRの排出報告にない、多分少量の扱いになるので、そこは届出がないのだと思うのですが、そういった事業者が、それとは別に2社、我々の会員にありましたので、先ほどの13社から日化協の3社を引いた10社、プラス、新たにPRTRの排出報告のない2社があったということで、化成品工業協会としては12社の声を拾っているということです。そういう意味で、全体としては15社あるという会員の数で分かって、そして、届出の対象外の会社がまた更に2社あるということなので、15プラスアルファあるという意味で、1520としたというぐらいの幅を持たせて書いています。限定的な書き方にはなりません。

 一方で我々の活動内容はそこに掲げたとおりですが、我々の特徴としては、3行目ぐらいに書いた所管製品の所を説明しますが、所管製品は合成染料、有機顔料、有機ゴム薬品、医薬中間体、農薬中間体、有機写真薬品、その他の有機中間物、フェノール、無水フタル酸、無水マレイン酸、クロロベンゼン類、これをかなりバルクな商品です。それ以外の熱媒体、機能性商品など、多岐にわたっているということで、特定の製品群をバックアップしているというイメージの業界にはなっていないです。複数の業界が混在しているといったような形です。だから、会員の中でもサプライチェーンがあって、原料作成、そして、その原料を使って合成、更にそれを使っていくというような商社も含めて、我々の会員に入っている形になっています。

 【質問3】「業界団体としての取組」に1行書いていますが、少し古い話になるのですが、平成512月にまとめた「オルト-トルイジンの取扱い安全指針」というものが、現在、この組織はなくなっているのですが、化成品工業協会の中の工場衛生専門委員会が作成したものを、会員の中で特に当時、ベンジジンのやはり同じような職業性の膀胱がんの発生で、いろいろ対応しておられた20社余りの会社の関係者には、配布したと伺っています。この内容については一応、厚生労働省さんのほうにはコピーを先日お渡ししていますので、必要があればまた参照いただいて結構だと思います。

 次のページに移ります。ここからは【質問4】になりますが、自主的な取組の程度がマトリクスで表されています。我々がヒアリングしたときに、12社からいろいろな情報が来ていまして、プロセス的に言うと原料を仕込んだり、プロセスユニットというか、曝露の単位ごとに書いておられる会社もおられたし、作業場で統合した書き方をしている会社もいたという形なので、必ずしもこういう分類で、全てきれいにきっちりと網羅できたかというのは、完全には分からない部分もあるのですが、大きくはこういったカテゴリーに分かれているのだろうということで、私の主観も入るのですがまとめています。

 共通して主に当然起こることは、オルト-トルイジンが原料なので、原料としてのオルト-トルイジンを反応槽に仕込むだとか、あるいは原料で買ってきたものを少量に小分けするだとか、そういったところが一番左側に書いてある計量・注入・投入・小分けという、この曝露作業報告の作業コードで表現すると、コード33に相当するようなところがあります。ここに書いてある、例えば作業場の屋内・屋外の別という形で、屋内を11/15にして、屋外を6/15にしているのは、それぞれ母数が全体の事業者数で、それに対応するところが分子に来ているという形です。だからフルマーク、全部対応している所であれば15/15という形で表現されますし、全く対応していない、例えばプッシュプル型の換気装置の整備まで行っていないということであれば、0/15という形です。分子が小さいほど、対応ができていないという形になります。

 次いで作業コードでいくと313235に相当する掻き落としです。これは主に粉体の部分になりますが、あとは剥離であるとか、その充填、袋詰めという、こういう製品を掻き落として、袋に詰めていくという工程で報告があった所が4プロセスあるということです。

 その対応ぶりというのは、発散抑制装置については、これは作業の形態からいうと袋詰めの作業です。後段になりますので、そういうこともあって対応できていない部分は、発散抑制装置というか、そういうところは余り対応できていないです。

 それと、作業環境の測定。そこは、余り袋詰めの工程のところは対応していないというのが実状です。そして、乾燥・破砕・粉砕という、これも乾燥工程、破砕工程があるということは、固形状のものを乾燥させて、崩して、最後は粉状のパウダーといいますか、ある程度の顆粒状にして、製品に仕立てるということから、やはり顆粒状商品を扱っているプロセス、こういったものが2工程あるということです。

 あと、洗浄・ろ過、作業コードで言うと4149になるものが、3つほど報告が上がっている。そして、その他としては反応で、一番最初の反応と違うところは、ある触媒を使った縮合反応を起こさせるという、個別の反応を報告されていたので、ここに分けたわけですが、ここでの反応、あるいは蒸留という工程を、その他の工程として、作業後の補充でまとめたという形です。だから、大きく分けると主に粉体も、僅かながら製品群であって、大半のものは液状で取り扱われているという形だと理解しています。

 その次のページで、34ページの上の部分です。これが今までのヒアリングではなくて、今回付け加えられた所ですが、「保護手袋・保護衣・保護長靴を使用している場合は、その材質などを記入してください。また、これからの使用にあたり、管理状況、取り組んでいる対策も記載してください」ということでして、先ほどの報告では12社のうちの、現在こういう生産をしているというのは10社、過去にやっていたのは2社という形で、現在やっている所の分母・母数が10になっているわけです。保護手袋について言うと、その前者ですね。保護手袋の着用下で作業を行っているということです。材質については天然ゴムで、半分ぐらいの所は対応していまして、あと耐油性のポリ塩化ビニルが1社など、ポリ酢酸ビニル、ポリウレタン、ブチルゴム、ニトリルゴムを主に一番外側に使う。そして、中にはポリエチレン製の手袋を内側に入れて二重にしたり、あるいはそれ以外のものを入れて三重にしたりといった事業者さんも、多重に使っているという所は延べ4社ありました。保護衣の着用については、約半数が保護衣着用の下で作業をすると。保護長靴でいきますと8割方、保護長靴を着用しての操作であると。そして、先ほどの保護衣であるとか保護長靴、保護手袋について、使い捨てというものは余り多くなくて、基本的には洗浄して、乾かして再度使用するという形になりますので、その際にアルカリ水、洗剤を使っての水洗浄だったり、あるいはメタノールで一部溶媒洗浄して、風乾して再使用するという例もあります。比較的、一般的に使われるポリエチレン製の手袋、一番内側にするのが例ですが、そういうものは使い捨てされているが、一般的には洗浄して再使用ということです。

 そして、保護具の傷などについては、目視をしている所も多いのですが、中には例えば手袋の中に水を入れて、漏れがないかの確認をしているといった所もあります。何らかの形で漏れの確認を、一応目視とか、こういったやり方でやっている所があるということです。

 【質問5】について、ここは健康障害防止措置の導入に当たっての考慮が必要な事項を書く所なので、4つほど掲げています。1つ目が労災認定された罹患者に対する健康管理手帳の交付ということで、今のところ作業者の方、罹患された方から労災認定の請求が来ているとは聞いていますが、決定に至っていませんので、今のところ健康管理手帳等を渡した管理という形にはなっていないということで、今は事業者の対応が中心になっていますので、認定をされた方については、速やかに認定をしていただいた上で、健康管理手帳等の配布をしていただけたらという御意見です。

2つ目に書いてあるのは、保護手袋供給者による各種薬品に対する耐透過性・耐劣化性の情報提供義務で、これも先ほど委員の皆様には一部添付されていると思うのですが、JIS T8116、これは「化学防護手袋」によるクラス分け表示が必要だと言っている意見です。実は手袋でよくあるのは、耐溶剤性の手袋で、こういう溶媒には耐性がありますよという情報はよく出ているのですが、今回の福井の事業所で問題になった例だと、手袋に徐々に染みてきて、その結果、内側に濡れが生じて、そこに皮膚が触れて暴露するといったケースがあったということでして、要は耐溶剤性ということ以外に浸透性といいますか、特定の溶媒に対する浸透性についての情報が必要だということが、ここで言いたいことです。

 海外であると、こういった情報が出ているということも聞きますが、今のところ国内では、こういった情報が出ているということは希有といいますか、ほとんどないようで、このクラス分けを事業者自ら行うのは難しいだろうということで、こういう意見が出ているということです。

 あと、尿沈渣の検査についてですが、要するにこれはパパニコラ法という、尿沈渣の後、実際には細胞を着色、染色して、顕微鏡で見る試験があります。このパパニコラ着色をして見る方法があるのですが、そういった専門の検査ができる機関が、必ずしも多くないということです。場合によっては、そういう専門家がおられないというか、事業者として見つけることが難しい事例も多いということで、見つかったとしても、非常に限定された日程で対応されるので、結果が上がるのに時間が掛かってしまって困るといったようなことです。

 最後の4つ目に書いてあるのは、混合物や閾値の扱いということで、これは化学反応ですので、場合によっては非意図的に生成不純物としてオルト-トルイジンが発生したり、あるいは原料からの一部分解でオルト-トルイジンの微量な発生があるという可能性があるわけで、そういった取扱いを含めて、管理の対象とするオルト-トルイジンの閾値について考えていきたいのですが、安衛法下の発がん性物質であるとか、GHSの分類に倣って、0.11%程度としていただきたい。ここでは(痕跡量を規制の対象としない)というところです。こういったことを掲げています。

 【質問6】は技術的課題なので、これは主に措置・機械的な対応についての課題を中心に書く所ですが、2つのうち1つのほうは、必ずしもそういう書きぶりではありませんが、ここに書いてあるのは「経皮ばく露防止措置について」ということで、技術的課題としてどのような指標を基に定量管理を実施すればよいのかが不明であると。尿中オルト-トルイジンを指標とするならば、その管理の数値・濃度、例えば(μg/L)であるという設定をするとか、採尿時期の指針、これは実際にオルト-トルイジンを使い始めてから、例えば何時間後とか、そういった経過時間に対する、サンプルを採るタイミングの指標ですが、そういうことの明示をしていただくということを掲げています。今のところ指標がないので、事業者自らも動きにくいですし、そうは言いながら健康管理について非常に情報が気になるので、必要な情報をちゃんと採りたいといったことも含めて、ここに書かせていただいたということです。

 その下は発散抑制措置です。これは機械的なことが中心になるのですが、少し声があったのは、我々の化成品工業協会の会員さんの大半というか、7割方が中小規模の事業者さんになりますので、マルチのプラントによる大量生産ということではなくて、使用量が比較的少ないケースもあります。原料は、普通はドラム缶で買ってくるのですが、実際にドラム缶から必要量を小分けして、その原料を使うといった例もありますので、使用量が少ないといったことによって、実際に小分け作業が発生してしまうことであるとか、現設備の配置状況、これは細かくは見ていませんので、詳細は分からないのですが、現場に行くとそういう配置状況から、必ずしも措置検討がうまく図られるような形にはなっていないということで、我々の所からは2社、こういった声が聞こえてきています。だから、設備対応がそういう意味で困難なため、防毒マスクなどの呼吸用保護具というか、保護手袋を含めて、要するに保護具で対応せざるを得ないといったことです。

 【質問7】については、これは特殊な作業ということで、少量取扱いなど、リスクが低いと考えられることがあれば書けということですので、8つほど書いてあります。これは、いろいろな事業者さんが、いろいろなユニットで、単位操作も含めてやっておられるので、数が出た分をそのまま書いておりまして、少し見づらいのですが、1番最初に書いているラボ実験作業というのは、1行目の右のほうに書いてあるように、(品質改善・工程改善)のための純粋なラボ実験をしているということ。フラスコなどの実験器具を使用してのラボ実験作業、詳しい状況はそこに掲げたとおりです。ドラフトを設置しているラボとか、そういう実験作業をイメージしています。保護メガネなどの保護具も着用している、ドラフト内作業であるといったものです。

 その2つ目にあるのは、品質管理部門の作業ですが、これは原料を購入しているので、入荷原料の品質・品位を確認するためにラボを動かすといった検査作業です。そういった右に掲げている内容で、液クロマトグラフィー、ガスクロマトグラフィーで純度を確認するという、主なことをやっているということです。

 その下の滴下反応作業であるとか、その下のドラム缶から反応釜への仕込み、この2つと、1つとばして、その下の仕込み・投入作業、その下の計量、仕込み作業、反応・合成作業については、これは基本的には製造プロセスの、1つの流れの中のどれかになるので、基本的には製造作業ですが、先ほど言ったように、主にどちらかというと封入といいますか、蓋が閉まった反応装置の中にノズル等を通して、導入されていく原料が扱われている状況は、暴露が非常に少ないことと、そういった状況の中で取扱い量も比較的少ないと事業者が思って書いているところです。あとは保護具等を着けて作業しているので、事業者としては暴露が少ないからという理由で、ここに掲げたものです。

 あとはサンプリング及びガスクロ分析と、下から4行目の所ですが、これはどちらかというと屋内作業、採取量ということで、サンプリングしているのでプロセスを言えば操業分析的な操作だと理解しますが、サンプリングしてきて、その純度を見ているといった形です。ガスクロに注入する、現場に行って少量のサンプルを採取してくる、保護具を着用してやっているという形です。主にそういったラボといいますか、分析とか検査作業、そういったものが対象で、主なプロセスの中にも比較的暴露が少なかったり、取扱い量が少ないと事業者が思っているプロセスがあるということで、ここに掲げているわけです。

 【質問8】については、「産業活動への影響や公正競争の観点からの意見」があればということでして、ここに掲げたのは、オルト-トルイジンは過去から20年以上前から広く用いられてきている化学物質であると。これは主に染料・顔料の世界、色の世界で使われてきているわけですが、そういった物質の産業抑制防止の観点から、「過度な規制ではなくて、調査結果に基づいた適切な作業方法や作業管理について、業界の意見も参考にしていただき、政策を進めていただきたい。なお、当面は日本の規制が先行すると思われるが、競合する海外品との市場競争に不利とならないよう、有害性情報の海外への連絡や、我が国における規制の施行時期や内容について、特段の御配慮を頂きますようお願いします」といった声が上がってきています。確かに海外製品との競合というのは実態としてあってということです。

 【質問9】は措置の方針についての意見という形で掲げています。これも誤解があったらいけないので内容をそのまま読みますが、「公開された災害調査報告書によれば、今回の事例については保護手袋等の不適切な取扱いや直接の接触による経皮吸収経路での吸収の疑いが示唆されている一方、適切な保護手袋の選択と使用により経皮ばく露が防げることも示唆されている」。例えば二重手袋にしたときの、尿中のオルト-トルイジンの検出がゼロであったというような例からです。「一方、個々の会員企業の取扱いにおいて、暴露機会が本事例と比較して著しく低く、かつ保護具の使用も適切になされているケースも多い。密閉されたラインによる取扱い作業など、直接接触のない職場については、同様の措置を講ずることの無いようにして頂きたい」。例えば石綿では取扱いにより違いがあるということで、また、1日に取り扱う時間が限られており、実際に取り扱っている暴露時間から延べ時間で、これは数例であるようですが、3か月間の取扱いという、例えばそういう期間を設けるなど、ベンジジンでもそういう期間が設けられていますが、そういう関連を使用していた退職者に対しては考えてほしいとか、使用停止後50年程度たった者、非常に年月がたっている人に対して、膀胱がんが発生した場合でも、現状では事業者としては労災認定として扱っているわけですが、膀胱がんについては喫煙など、ほかのリスクからも発生するということもあって、潜伏期間について「50年程度たった者にも」という今の現状はそのままでいいのかということも考慮していただきたいといった意見です。

 最後の【質問10】意見としては、その他の意見で、「その他があれば」ということです。ここに書いてあるのも直接読みますが、「直接の接触の機会のある作業、密閉等などにより直接の接触のない作業など、作業現場により暴露の状況に違いがあると思われるが、現に取扱いをしている作業者の健康管理(健康診断)は必要だと考える。しかし、退職者について一律に健康診断を行うのではなく、調査に基づいた根拠に照らして、取扱量、回数など、暴露の状況により考慮頂きたい。工業会に発した通達において、退職者について健康診断の勧奨を企業に行うように記載されています。今後、法制化されるに当たり、退職者の健康診断は重要な観点であり、健康管理手帳の交付等による健診の実施が有効と考える。現在、同様の健康管理として、ベンジジンの取扱いによる退職者に健康管理手帳を交付して、健康診断が実施されており、健康管理手帳の交付要件として、3か月以上の取扱いが対象者である」ということです。「今般の事例は、特殊な取扱いによる発症であり、取扱いにより暴露の状況に差があります。健康管理手帳の交付要件について、検討をお願いしたい」ということで、事業者から声が出ているということです。

 個別の部分につき、訥々としゃべっておりますので、最後にもう一度、繰り返しになる部分もありますが、もう少し我々の要求を分かりやすくまとめて報告したいと思います。大きくは5つほどに分けて報告します。1つはオルト-トルイジンに対する暴露対策についてということですが、今回発生した膀胱がんの発症事案については、現職者はもとより、配転された現行社員に対する検査の実施。更に退職者についても、同検査の受診勧奨を継続していますと。膀胱がんの発生が終息するか、拡大するかは、オルト-トルイジン取扱い事業者の検査結果を追跡することで、今後の対応について結論が明らかになると思われます。例えば本事案が特定の事業者に限定される場合。当該事業者の暴露状況に問題があったと思われ、当該事業者について暴露状況の改善が喫緊の課題となる一方で、膀胱がんの発生していない事業者については、従来からの作業方法に特段の問題は認められず、暴露抑制設備の強化を一律に義務化することは適当でないと考えます。また、平成19年度の化学物質による労働者の健康障害防止に関わるリスク評価検討会報告により、オルト-トルイジンの暴露状況について、A測定結果及び個人暴露測定結果の双方で、オルト-トルイジン濃度は産衛学会の許容濃度である1ppmと比べて、その数十ないしは数百倍低い結果でありました。このことは平成19年当時の以前、既に吸入及び経口暴露のリスクは問題があるレベルになかったことを示しているのではないかということです。しかるに、今般の国の調査で新たに保護具などを介した経皮暴露のリスクが明らかとなったところですが、今後、事業者に共通する暴露防止として、詳細な検討、例えば事業者の使用環境における保護具の選択の在り方、耐溶剤性のみならず耐薬品浸透性の基準の策定であるとか、そういったことなどの検討に関して、専門家の方々に御協力いただくべきではないかと考えます、というのが暴露対策についての考え方です。

2つ目に、オルト-トルイジンに関する検査についても、若干意見を入れています。先ほども述べましたが、膀胱がん発症事例の有無にかかわらず、オルト-トルイジンの取扱い事業者は配置転換した社員も含め、社員に対し、オルト-トルイジンに関する検査の実施を行っています。検査については3つの課題があるということで、3つほど掲げていまして、1は尿検査について、医師が必要と認める場合に、パパニコラ法による細胞診が指定されています。しかし、複数の会員事業者より、パパニコラ法を実施できる病院が限られること。尿沈渣で異常が指摘されやすい。具体的には、個人個人で尿細胞に特徴があるということで、同一観察者により継続的に観察を行う中で、異常を指摘することが大切な試験法だという実態もあるということで、必ずしもそういう観察がされていないということとか、パパニコラ法による確認を経ずに、膀胱鏡検査が行われてしまったという例も、数点指摘されているところです。パパニコラ法が全国の病院で実施可能かなど、国のほうでも調査いただき、有用な情報が頂けたら我々として幸いだと思っています。速やかに対応しようとしても、先ほど言ったようになかなか専門の先生方が捕まえられないといったジレンマもあるといった声です。

2つ目は特に退職者の方々への勧奨について、どれだけ作業経歴を遡ればよいのか。現行はオルト-トルイジンに関して、作業記録の保存期間が義務づけられていないことから、事業者の考え方により対応がまちまちになっているということです。どこまで作業履歴を調査するのかについて、考え方をお示しいただけたら有難いです。そこまでが2つ目です。先ほども申し上げたように、50年まで遡るというか、極力遡っている事業者が実際には多いわけで、非常にそこは苦労しているという実態があります。

3つ目に掲げたのは、オルト-トルイジン取扱い作業者の暴露状況を確認するに当たり、調査対象物質、オルト-トルイジンあるいはその代謝物など、並びに検出濃度の閾値について、指針を策定いただきたい。検討には、一定の時間が掛かることが予想されるので、暫定的な判断基準をまずお示しいただきたいということです。これは事業者として、従業員等の健康対策に資する情報として考えたときに、そういう意見が出ているということです。

3つ目として、これはリスクが低いと思われる作業の規制対象からの除外で、先ほども申し述べたことではありますが、【質問7】に掲げた内容です。その内容は4つほどに分けられるということを、もう一度言っていまして、品質や工程の改善のための技術検討を行うラボ作業、あるいは入荷原料の品質を確認する試験・検査作業、サンプリング及びガスクロ分析などの操業分析作業、製品を合成する反応における工程の中でですが、原料としてのオルト-トルイジンの仕込みであるとか投入作業で、暴露が少ないと思われる作業。いずれも装置などからオルト-トルイジンの暴露がほとんどなく、暴露の防止のための保護具を着用した作業であることから、このような暴露が極めて少ない作業は、規制の除外対象としていただきたいという声です。

4つ目に掲げたのは、規制の対象とするオルト-トルイジン濃度の考え方ということで、先ほども述べましたが、非意図的生成不純物の取扱いを含めて、規制の対象となるオルト-トルイジン濃度の設定について。安衛法化の他の発がん性物質とGHSに照らして、閾値を設定してください。痕跡量をもって規制の対象としないことをお願いします、という意見です。

 最後にその他の事項として、その他ですから複数あるのですが、1つは競合する海外品との市場競争に不利にならないように、【質問8】に記載のとおり御配慮を願いたいということと、労災認定手続を迅速に進めていただき、該当者が健康管理手帳により、躊躇無く検査を受けられるようにしていただきたいと、【質問5】の所に掲げたような内容です。

 最後にオルト-トルイジンの取扱い履歴のある退職者について、健康診断受診要件を一律にせず、取扱い量や回数など、暴露の状況により考慮の上、基準設定をいただきたいということ。また、健康管理手帳の交付要件も御検討いただきたい。例えばベンジジンは累積従事期間が3か月以上が要件となっているなどということで、ここは【質問9】や【質問12】でも上げた意見を代表しています。長くなりましたが以上です。

○菅野座長 ありがとうございました。2つの業界団体からの御説明と御意見ですが、御質問がありましたら、お願いいたします。

○唐沢委員 日本国内でオルト-トルイジン自身を目的に製造している事業所はないということも、先ほど事務局からのお答えがあったのですが、結局、原料としてオルト-トルイジンをお使いになって、他の化学物質を製造されるということなので、オルト-トルイジンそのものは輸入か何かで調達させるのでしょうか。

○化成品工業協会 そうです、主に輸入と考えていただいて結構だと思います。

○唐沢委員 差し支えなければ、輸入相手国はどこですか。

○化成品工業協会 私はそこまで確かなことは知らないのですが、例えば1つの例として中国などがあると思うのです。

○唐沢委員 恐らく私が調べた限りでは、イギリスとかドイツは、既にオルト-トルイジンは規制していると思いますので、中国は分かりませんからね。

○菅野座長 ドイツの製品はどちらなのですか。

○唐沢委員 ドイツの製品はあるのですか。

○菅野座長 輸入されていると思います。

○唐沢委員 はい。

○小野委員 2点お伺いしたいのですが、1点目としまして、先ほど閾値のお話をなさっていましたが、製品の中に非意図的に含まれるというお話でしたが、製品の品質管理をやっていらっしゃるということは、当然、含まれている量については、定量的につかまえていらっしゃるということでよろしいのでしょうか。

○化成品工業協会 はい、先生のおっしゃるとおりです。私が理解している例でいくと、プロセスの後段に近付いていけば、0.00数パーセントぐらいのレベルまで下がっていくことに。そういう例もあるということです。あるいは、その反応で完全にオルト-トルイジンと反応させる相手物質を過剰に用いるために反応が完結していて、しかもオルト-トルイジンに戻らないという分析を確認している事業者もおられます。

○小野委員 最終製品についてはデータを持っていらっしゃるということですが、途中のろ過とか洗浄ですと、恐らくその中間ぐらいというか、もう少し濃度が高い条件、オルト-トルイジンが溶液に多少残っていて、より高い環境が存在するのではないかと思われるのですが、そこについてもオルト-トルイジンをお測りになっているでしょうか。

○化成品工業協会 私の知っている事業者は、そこを測っております。それは当然1%未満になっていますが、0.数パーセントより高い値から、プロセスが後段に行くほどその値は低くなり、その値は数十ppmから数百ppmぐらいが普通かという気がしていますが。

○小野委員 おそらく反応がそこまで行ってから取り出しに移るということで測っていらっしゃるのかと思うのですが。

○化成品工業協会 反応の詳細まで理解はしていないのですが。要するに、オルトートルイジンの濃度が完全にゼロでない部分があるのも事実です。

○小野委員 分かりました。ありがとうございます。

○田中委員 32ページの自主的な取組の一覧表の中に、「作業環境の測定をやっています」という記載があるのですが、ここで言う作業環境の測定というのは、環境中のオルト-トルイジンを計測しているのでしょうか。何かを測っているのでしょうか。

○化成品工業協会 「5/15」の所ですね。

○田中委員 はい。あるいは33ページの測定の所、「23」という記載があるのですが、もし分かれば教えていただければと思います。

○化成品工業協会 詳細内容は理解しておりません。少しお待ちください、分かるかどうか。今、私が持っている記録からは、ここは確認ができていないのが正直なところで、聞き方としては、そこまでは聞いていませんでした。場合により情報の入手ができたら、折り返したいと思います。

○保利委員 私のほうですが、作業環境測定の対象というわけではないと思いますが、作業環境測定基準に準じた測定をやってあるかどうも、もし可能でしたら。

○化成品工業協会 同じく繰り返しになってしまうのですが、対象物が何であったかの確認が、今、私はできていないので、こういう答えをしていまして、基本的にオルト-トルイジンが測定の対象物質だと思いますが、場合によってはオルト-トルイジンでない可能性もゼロではないので、そこは一応関係事業者にもできるだけヒアリングをしてみたいと思います。

○名古屋委員 物質名は言えないのですが、75ページの有機溶剤としてやっているということではないのですか。要するに、オルト-トルイジンではなくて、扱っている有機溶剤のほうに物質名がかなり書いてありますね。この場合、それを扱っているということではないのですか。そういうことではないかと思います。

○化成品工業協会 実際に答えをお伺いした所にヒアリングをしてみたいと思います。すみません、ちょっとそこまでは。

○清水委員 129社とありますが、そのうちでオルト-トルイジンは15社か20社。事業規模は何人ぐらいの規模なのですか、従業員は。50人未満と考えていいのですか。

○化成品工業協会 会社というかその製造現場そのものは、恐らくその程度の所が多いかと思います。事業者としては、全体としては、もっと営業とかいろいろいますが。

○清水委員 ということは、産業医は専任されて。

○化成品工業協会 必ずしも置かずにという形の所も多いと思います。

○清水委員 健診結果は、誰が読んでいるのですかね。

○化成品工業協会 実態は完全に把握していないのです。

○藤間委員 PRTRの届出が約32事業所ですか、そのぐらい500キロ以上というのが出ているかと思うのですが、15という中にPRTRで出されている所は、どのぐらいあるとか、ないとかとは、よろしいですか。

○化成品工業協会 今おっしゃっているのは、15ある中でPRTRを出している事業者数ということですか。

○藤間委員 はい、それ以下の500キロ以下の事業所も、この中に含まれていると考えるといいますかね。

○化成品工業協会 基本的には、PRTRの届出をする要件として、1t以上というのがある。これは実は経産省の所管するPRTRのホームページから引っ張ってきているので、1t未満の所は落ちているのではないかと理解をしています。

○藤間委員 ここには入っていない。

○化成品工業協会 もしかしたら少し違っているのかもしれないのだけれども。

○大前委員 今回の福井の事業所で膀胱がんはたくさん出たのですが、なぜ今回この時期なのかという疑問がありまして、オルト-トルイジン自身は、いつ頃から結構多量に使われているものなのですか。

○化成品工業協会 少なくとも20年以上前からだと思います、30年か。

○大前委員 そのずっと前から福井事業場のほかの事業所も含めて、そこで数十年の。

○化成品工業協会 はい。

○化成品工業協会 通常の把握というか通常業務の把握はしていません。それで、今回こういう事案があって、厚生労働省からの指示もありまして、一応、会員のヒアリングですが、強制立入りではなくて、ヒアリングベースで一応同様の発症がないかの確認については行っていますが、我々の会員では、福井の会員は発症しているのですが、それ以外から発症したという例は聞いていないです。

 一応、国が我々あるいはマスコミに対して公表しているデータで見ると、同じ会社の中で1名以上出ているというのは、この当該事業所ともう1社あるのです。その他は、今、私が知っている限りでは、11名ずつのような感じなので、因果関係がどの程度あるのかは分からないですが、複数あるのはどうも2社という感じではないかと思う。今後どうなるのか、大前先生がおっしゃるように、ベンジジンの時の経験からいくと、非常に、遅発性の膀胱がんが今後発生する心配はあるのですが、そういう意味で今後の追跡を必要としているのではないかという、先ほどの意見につながっています。

○大前委員 オルト-トルイジンは、結構、蒸気圧が低いのですが、工程の中で加熱をすることによって蒸気圧が高くなって噴出し、常温でミストとして高濃度ばく露になるような、そういうことはあるのですか。

○化成品工業協会 これも完全に把握できていないのですが、溶液反応でそれほど高温に上げることは、多分ないのではないかと思っています。一方で、乾燥工程みたいなところは温度を上げますから、そういう意味では温度が上がる因子があるとしたら、乾燥のところとか、そこが一番多いのでしょうね。あるいはプロセス上の微量にそういうオルト-トルイジンを含んだ溶媒の回収工程。例えば、炊き上げる。タワーであるとか、沸点でもって分離するとかですね。それがどの程度人にばく露するかは分からない。

○田中委員 保護具で防護するというお考えの中の1つに、今、お話を聞いていると、防毒マスクだけが取り上げられる、現場でも使われているようにお聞きしたのですが、粒子上、あるいは今のミスト上で浮遊しているということは、傘下の工場の中では考えられないのでしょうか。

○化成品工業協会 ごめんなさい。

○田中委員 厳しいですか。

○化成品工業協会 そうですね。だから、現場、とにかくプロセスを見ていないものですから、実際に現場に立ち入って、いろいろなユニットがあるので、どのユニットで何が起こっているか、実際に見てみないと確かなことは言えないのです。一般的には、温度が上がるプロセスではほとんどなくて、温度が上がる因子でミストになる、あるいはそういう条件になるのが、ごく多くなくて、限られた部分ではないかと思ってはいるのですが。これは当該事業者も含めてですが、そこまでいくと個別に立ち入った話になっていくと思いますので。

○保利委員 35ページの滴下反応作業は、滴下して反応する製品にするということですが、ここで全て反応するということですが、多分、これは反応化すると100%反応するのかもしれないのですが、残留するとか、あるいはうまく反応されないことは、起こらないと考えてよろしいですか。基本的には、全部反応してしまうということで。

○化成品工業協会 事業者が書いていること全てを信じるしかないというところは正直あるので。

○保利委員 この点は、例えば、後から残量物を確認するとかいうことはあるのですかね。

○化成品工業協会 それは、自分たちの製品については、多分、普通やっていると思います。そうでないと、出荷可能かどうかの判断に響いてくると思いますので。

○大前委員 実際、検査する機関が非常に少ないことが問題と思うのですが、ベンジジンの頃は、各社がスクリーニングをやっていらっしゃいましたよね。

○化成品工業協会 はい。

○大前委員 それで、多分、健康管理手帳をまだもっていらっしゃる方々に対して、毎年毎年診ていらっしゃると思うのですが、それはもう。

○化成品工業協会 実態を申し上げますと、実はベンジジンでそういう事案が発生して、60年間ぐらいそういうことを継続してやってきたのです。その当時、東京女子医大の石津先生がずっと教鞭をとっておられて、スクリーナーは、その先生の下で毎年一定の間隔で検査技術研修をやってきていると。実は私がこちらに来て4年間ぐらい見ていたのですが、4年の間にもですが、スクリーナーをどう養成したかというと、従業員の方で異型細胞が出ている場合、その細胞を持ち寄って、一応勉強会をしていたわけです。ところが、この数年間は、患者のものが手に入らなくなっていって、そういう意味では、ベンジジン関係でいくと膀胱がんの発症はほぼ終息してきているわけです。だから、石津先生が亡くなっているということもあるのですが、それの同じやり方での技術研修の継続が非常に難しくなってきている実情があって、どうしようかと言っている状況の下で今回の事案が発生しているので、非常に難しさを感じています。

○菅野座長 いかがですか。よろしいですか。それでは、続きまして、健康障害防止措置について、事務局案の御説明をお願いいたします。

○米倉化学物質情報管理官 リスク評価検討会報告書「オルト-トルイジンに係る今後の対応について」、それから事前に頂いておりました業界団体等の御意見を踏まえまして、資料17ページ以降に事務局案を示しておりますので、7ページを御覧ください。措置、内容としまして、7ページの表のとおりになりますが、基本的な考え方としては、作業としては製造・取扱い作業で、適用除外作業については、なしという考え方です。

 その下の措置の内容はいろいろ書いてありますが、基本的な考え方としては、特定化学物質の特定第2類物質に係る措置と同様の措置ということで、情報提供以下、マークしている措置が必要ではないかと考えております。

 加えて、オルト-トルイジンは、経皮吸収が大きく、福井県の化学工場の調査においては、皮膚からの吸収が示唆されておりますので、作業管理の一番下ですが、保護衣、保護手袋、保護長靴、保護眼鏡の使用、これらは現行の特化則の特定第2類の措置としては使用の義務はないのですが、このような保護具については、使用を義務付けるべきではないかというところで案を示しております。

 下から2つ目の特殊健康診断の実施の有無については実施という方向ですが、仮に実施することとなった場合の具体的な事項については、別途、特殊健診等に係る検討会で検討をさせていただければと考えているところです。

 健康管理手帳ですが、こちらは、今、別途、労災認定の検討をしているところですので、労災認定された場合については、その後の具体的な内容も含めて別途検討することになるというところです。

 それ以外の項目については、8ページ以降で追加で御説明をさせていただきます。(2)の技術的課題及び措置導入の可能性ですが、先ほどヒアリングの中でありましたが、製造工程の異物除去対策として、設置されている物のメンテナンスの関係ですが、右側の措置導入の可能性ですが、特化則22条において、設備の改造、修理、清掃等の作業を行う場合は、健康障害予防のため、作業の現場指揮、作業開始前及び作業中における換気、測定、保護具の使用、器具の備付等必要な措置が必要とされており、同等の措置がなされている状況ですので、追加措置としては不要です。

 発散抑制措置ですが、「使用量が少ない(人による小分け作業が必須)、現設備の配置状況等から求められる措置への対応が困難」という御意見ですが、こちらは「少量の取り扱いであっても、発散源を密閉する設備、局所排気装置又はプッシュプル型換気装置のうちから現実的な発散抑制措置の導入が必要」で、措置は可能ではないかと考えているところです。

 経皮ばく露防止措置についての項目については、健診の内容ですので、別途検討になります。

(3)ですが、規制化の必要性です。表の一番左の列の措置内容は、先ほどの措置の内容の項目ごとに記載しています。自主的改善の進捗状況については、ヒアリングで提出いただいた措置の状況から判断して書かせていただいております。一部未実施、実施済、未実施が多いとの記述をさせていただいています。

 一番下、特殊健康診断の実施ですが、行政指導前は未実施 (現在は実施)という記載ですが、77ページの参考資料5を御覧ください。こちらは緊急的な検査の実施要請ということで、福井県の事業場の膀胱がん事案を踏まえて、厚生労働省では、平成271218日、オルト-トルイジンを現在取り扱っている又は過去に取り扱っていた事業場に対し要請を行い、検査の実施をお願いし、実施していただいているところです。

 実施状況については確認をしているところです。3の継続的な健康管理の要請ということで、「オルト-トルイジンについては、法令による規制について検討する」ということで、この場で検討していただいているわけですが、「規制導入までの間、継続的な健康管理が必要」ということで、さらに、平成28620日付けで関係業界団体を通じて、おおむね6か月以内ごとに検査を実施していただくよう要請をして、実施していただいているところです。

8ページに戻っていただきまして、設備投資の必要性、行政指導の効果、有害性の程度、用途の広がりの程度を勘案しまして、総合評価ですが、情報提供、労働衛生教育については、既に措置をされている内容ですので、措置済とさせていただいております。発散抑制措置以下については、全て規制が必要ではないかという提案とさせていただいています。

9ページに行きまして、検討するに当たって、対策を3パターンで比較・検討した内容です。オプション1が、今回、提案させていただいている規制の内容です。基本的には全て規制する内容で、概要としては、「原則、密閉化、作業管理、特殊健康診断等を規制措置として導入」というのを、オプション1にしています。

 それと比較するものとしまして、オプション2とオプション3を書いてありますが、オプション2については、基本的には規制するのだけれども、ただし書きの所で、発散抑制措置、作業環境測定等は規制除外し、行政指導にした場合です。

 オプション3としては、基本的には規制をしないで、国の通知による自主的改善を指導した場合です。

これらと比較して、オプション1がどうなのかということで比較したものが、次の表です。オプション1については、健康障害防止措置の効率について重視した対策なので、効率性が高いだろうと。オプション3については、効率性が低いだろうと。ただ、一部だけ措置をするオプション2については、効率性としては中程度になるのではないかとさせていただいます。

 丸2の技術的な可能性については、どの措置をとっても不可能ということは認められないだろうと。丸3の産業活動への影響ですが、オプション1のとおり規制した場合については、当然、義務付けに伴うコスト増があります。オプション3については、自主的な改善をする場合ですので、影響は小さいのではないかということです。

 丸4の措置の継続性の確保、義務化については、オプション1については、義務化により確保され、行政指導のオプション3であれば、措置が確保されない可能性があるということです。

(2)最適な対策の導入にあたって考慮すべき事項ですが、ヒアリングの内容等を踏まえまして幾つか記載しています。下から4つ目の作業管理(呼吸用保護具)については、作業に対応する呼吸用保護具を選択することが必要となってくるとか、下から3つ目の作業管理のうち(保護衣、保護手袋、保護長靴、保護慣鏡)等については、物質によって浸透性が異なることから、オルト-トルイジンに対して不浸透性のものを選択することが必要とか、不適切な保護具の使用により、ばく露することがないよう、適正な管理が必要ではないかということです。特殊健康診断の実施については、別途検討です。

10ページの(3)留意事項ですが、リスクが低いとされた作業にかかる規制の考慮です。設備の改造等の作業、すなわち、先ほどから出てきておりますメンテナンス作業については、現行の特化則22条の措置がありますので、そういった措置については、減免しないでできるのではないかということです。

 そのほかの作業については、化成品工業協会から項目をかなりいろいろ出されていましたが、その内容を確認したところ、屋外作業と少量取扱い作業というところですので、そういった形でまとめさせていただいております。

 屋外作業について、屋外作業場で行う作業で、製造に係るものではないものについてですが、屋外作業における当該物質の取扱作業(製造に係るものを除く)においては、作業環境管理は困難と考えられるため、発散抑制措置、作業環境の測定については、必ずしも措置を要しない。しかしながら、当該物質によるばく露が懸念されることから、これらの措置以外の措置については、措置を講ずることが必要ではないかとさせていただいています。

 少量取扱作業については、屋内作業において当該物質を小量取り扱う作業ということですが、こちらは「健康障害防止のためには、当該物質又は当該物質を一定量以上含有する製剤を常時取り扱う場合については、取扱量の大小にかかわらず、ばく露防止措置等をとる必要があり、継続的に管理されていることを確認する必要あることから、全ての措置を講ずることが必要」ではないかとさせていただいています。

(4)規制の影響分析です。選択肢123ですが、先ほどのオプション123と同様です。それぞれの措置をとった場合に期待される効果ですが、労働者の便益としては、選択肢1が規制した場合ですが、労働者にとっては、現状維持より望ましい効果が期待される。選択肢2についても同様ですが、選択肢3の指導で行う場合については、現状維持と同程度というところです。

 関連事業者の便益としましては、選択肢1の規制した場合は、現状維持より望ましい効果、選択肢2でも同じですが、選択肢3だと現状維持と同程度であろうとさせていただいております。

 社会的便益についてですが、規制した場合については、「オルト-トルイジンによるがん等の発症を防止することにより、労災保険財政に寄与する等、社会全体の健康障害防止に資する」というところで、現状より望ましい効果。選択肢2でも同じようにさせていただいております。選択肢3の行政指導でやりますと、現状維持と同程度しか見込めないというところです。

11ページ、想定される負担ですが、選択肢1の規制した場合については、その分コストが増大しますので、事業者に対しては負担が増加します。一部規制する場合についても同様です。選択肢3の行政指導のみでやる場合については、取り組む事業者については、当然、コストがかかるわけですが、やらない事業者に対しては、現状と同程度のコストが発生するということです。行政コストで見る場合については、規制でやろうと行政指導でやろうと、現状と変わらないコストでやれます。その他の負担については、オルト-トルイジンによるがん等の発症を防止することを通じて、労災補償保険法による保険給付を抑えることができるので、規制した場合については、負担が軽減されるが、指導で行った場合については、現状と変わらない状況になるのではないかということです。

 こういったことから、丸3便益と費用の関係の分析結果として、選択肢1のとおり規制する場合については、全体として、労働者保護のため、ベンゼン等他の発がん性物質に対しても既に規制を課し健康障害防止の防止を図っており、今般のオルト-トルイジンについても、放置した場合に多数の労働者を健康障害のリスクにさらすことになるため、従来と同様の規制を課し事業者の費用負担の増を考慮しても、本ばく露防止対策の実施は必要なものとして判断できるのではないかとさせていただいています。選択肢3のとおり行政指導でやる場合については、必ずしもがん等の発症を防止することができない可能性もありますので、その分は労災の保険給付を抑えることができないということです。選択肢2については、その中間程度になろうというところです。こういったことから、費用等いろいろ検討した結果、規制をするのが一番最適ではないかということで、案とさせていただいています。

12ページ、最終的な結論ですが、5(1)です。「オルト-トルイジン及びオルト-トルイジンを含有する製剤その他の物を製造し、又は取り扱う作業については、当該物質の有害性情報、製造・取扱状況、福井県の化学工場における膀胱がん発症に関する調査などを踏まえ、健康障害防止のための特定化学物質障害予防規則の「特定第2類物質」と同様に、作業環境測定の実施、発散抑制措置、特殊健康診断の実施等を講じることが必要である。加えて、当該物質については、特に経皮吸収が大きく、全身に健康影響を及ぼすとされており、福井県の化学工場における膀胱がん発症に関する調査において、当該物質に皮膚接触し、長期間にわたり労働者の皮膚からの吸収していたことが示唆されていることから、当該物質に対する不浸透性の保護衣、保護手袋及び保護長靴並びに保護眼鏡の使用が必要である」とさせていただいています。

 また書きですが、「オルト-トルイジンは、ヒトに対して発がん性の可能性があることを勘案し、作業の記録の保存(30年間)等が必要となる特化則の特別管理物質と同様の措置を講じることが必要である」ということで、案とさせていただいております。

 仮に、規制するとした場合のスケジュールについては、その下で書いていますが、平成288月、改定案についてパブリックコメントを実施して、平成2810月頃、改正政令、規則の公布、平成291月に改正政令、規則の施行(一部経過措置)がありますが、こういったスケジュールで行くことができるのではないかと考えています。以上です。

○菅野座長 今御説明がありました健康障害防止措置の案について、御質問、御意見等あればお願いいたします。

○唐沢委員 オルト-トルイジンのほうではなく、オルト-トリジンのほうは、もう既に規制対象物質になっていて、しかも第一類物質で、製造許可対象物質になっているわけです。私が冒頭に、日本国内で製造する所はありませんかと少しくどいぐらいお聞きしたのは、もしも日本国内で目的的に製造していらっしゃる事業場があれば、これは第一類物質として製造許可対象物質に追加することもあり得るかもしれない。現段階では目的的に製造されている所はないということですので、事務局の御提案のとおり、特定第二類物質に位置付けるというのも理解できると思います。

 それから、私は化成品工業協会さんに聞き忘れたことがありまして、今お尋ねしてもいいでしょうか。こういう発がん性物質などについて製造・取扱いをする場合には、これは恐らくグローバルスタンダードになっているのだと思いますが、まずリスクを避けるということからすれば、オルト-トルイジンの代替品というのはないのでしょうか。非常に難しい質問ですが、いかがでしょうか。

○化成品工業協会 先ほど申し上げたように、私が知っている多くの用途は、色を限定する用途で使われています。例えば黄色の特殊な色というか、ある限定された色。色というのは、非常にスペックが厳しいので、なかなか同等の色が出せない、あるいは、ほかの原料で同等の色を出すということがよくあるのですが、同じ色を求められて、同じ釜というか、同じ製造者が同じ色を出していくのは、多分、極めて難しいだろう。原料の切替えというのは、逆にお客様のほうが、ある程度その原料の振れ幅の結果、アウトプットとして若干変わっても、ある程度許容していただければ切り替えることは可能かと思うのですが、全く同じスペックで持ってこいと言われたときには難しいだろうと考えます。

○藤間委員 私の知っている限り、これは染料などのところもあるのですが、一方で農薬などの原料に使われているのが結構あります。その辺りは合成ルートはなかなか変更ができないというのがありますので、それはなかなか難しい用途もあるかと思います。

○菅野座長 ありがとうございます。

○保利委員 これは、ばく露形態としてはほとんど経皮がメインと考えてよろしいのですか。

○米倉化学物質情報管理官 そこについては資料の4ページに、また書きで書いてある所ですが、事業場では20年近くにわたり、オルト-トルイジンではないですが、別の有機溶剤に関して、労働者の尿中代謝物測定を実施するとともに、作業環境測定を実施しており、それらの結果から、当時は有機溶剤に関し、呼吸器からのばく露、経気道ばく露を含めたばく露レベルが高かったことが推察されており、このため、オルト-トルイジンについても皮膚からのばく露だけではなく、経気道ばく露があったことが推察されているような状況です。

 具体的な有機溶剤のデータについては、75ページのA3のデータですが、上のほうのデータが新しくて、下に行くほど古いデータになるのですが、下のほうのデータについては、この有機溶剤に関してはかなり高いという状況がありますので、オルト-トルイジンについても、経気道ばく露についてもあったのではないかということで推察されています。

○保利委員 これは「有機溶剤等」となっていますが、基本的にはオルト-トルイジンが結構メインの有機溶剤と考えてよろしいですか。

○米倉化学物質情報管理官 そうではなくて、ちょっと物質名は伏せさせていただいているのですが、左上に書いている物質についてはこういう状況だということです。

○名古屋委員 7ページに書かれていて、間違いなくこれでいいのだと思うのですが、このままだと、今までの物質は何も変わらないではないですか。要するに、多分ここで作業環境測定をやっていたとしても、今の所のばく露濃度にしても、リスク濃度にしても低いのですよね。ここで、このままの規制だと従来と何も変わらなくて、ただ、より経皮吸収があるから、作業環境の中で手袋や長靴という形の規制をかけますよね。やはりここのところは従来とは少し違う形態による原因があると思うので、多分ここでは議論できないと思うのですが、やはり一番のところは、特殊健康管理のところで、いかに特殊健康診断をどう行うかということはここで議論することではないと思うのですが、何か今までとは違った形のアイディアを1つ入れていかないと、従来と同じでは防いでこられないのではないかと思います。このままだと、ただ測定していて、「手袋したら大丈夫ですよ」という形だったら、今までと何も変わらないで、ここで検討することも昔と変わらないので。やはり少し違うので、健康措置のところでもう少し踏み込んだ形で、何かこういう形で提案していただけると有り難いのかなと。

 ここで議論することではないと思うのですが、この前の福井県の工場のデータを再現しているのを見てみると、確かに経皮は低いのですが、では経皮だけで来ているかというと、思うのは、多分あの模擬実験の中では、ばく露が余りにも低い値だから。そうすると何かに頼らなくてはいけない。なぜ起ったのだろうと。やはり経皮を測ってみたら、経皮が多かったというけれども、過去の事例を見てくると結構高いばく露があり、そのことも要因の一つと考えられるから、経皮だけではなくて、ばく露も高いはずなのです。それはこれで防げるのだけれども、もう少し何か踏み込んだ対策がここで提案出来ないと、健康措置でやらないと、今までどおりでこのまま規制をかけていたら防ぎきれないのではないかと少し思うのです。何かその辺りを検討していただければ有り難いと思います。

○米倉化学物質情報管理官 今の先生の御意見だと、今まで以上に特殊健康診断というところが大事になってくると。

○名古屋委員 多分、現状よりもう少し踏み込まなくてはいけないのかなと少し思います。要するに、今までどおり作業環境測定を行っていると、多分、作業環境測定結果は第一管理区分でしょうと。では、経皮吸収が高い化学物質ですからマスクより手袋をしましょうという取扱い。でも、やはりそこだけでいいのかなと。もう少し尿検査といった経皮対策、例えば生物的モニタリングなどという形のものが入るのはなかなか難しいのだと思いますが、何かその辺りのところが、少し経皮に対してもう少し踏み込んだ検診があってもいいのではないかという気が少しします。

○大淵職業性疾病分析官 労働衛生課の大淵と申します。健康診断の関係は、先ほど参考資料5のほうで緊急の検診の関係を御説明いたしましたが、そちらでは、既に規制されているベンジジン等と同じような検診項目を取りあえず緊急対策ということでやってくださいということを業界のほうにお願いいたしました。

 ただ今後オルト-トルイジンの検診項目は、また別途検討する予定ですので、このままの項目で行くのか、今おっしゃられているような、もう少し工夫した対策が必要なのかについては、特殊検診の検討会の中で議論させていただければと思っております。

○菅野座長 確認ですが、特殊検診を行うことについては問題ないですね。

○名古屋委員 問題ないです。従来のところと、もう少し何か踏み込んだものがあってもいいのか、よく分からないのですが、要するに従来のままだったらそう変わらないので、今までとばく露形態が違うので、やはり違った形のものが検討されてもいいのではないか。ただ、その結果が従来と同じでよかったら、それは全然問題ないのですが、何かもう少し違った角度や、発症のメカニックから考えてはどうか、そういう検討のところから何か考えてもらえたら有り難い。

 特にこの場合、喫煙の影響も膀胱がんに入ってきますので、従来はそういう形のものはなかったですよね。そうすると、喫煙のところはどうするのかなど、そういう形のものが特殊検診に入ってくるのかどうかよく分かりませんが、何か違った切り口があるのかなと思ったので。ただ、作業環境測定やばく露測定によるリスク評価による環境管理だけだったら従来と変わらないので、そうすると、大丈夫という結果しか出てこないので、どうなのだろうと少し疑問に思っただけです。

○菅野座長 質問ですが、一般人の膀胱がんの発生確率には喫煙者も入っているのですよね。

○櫻井委員 入っていますね。喫煙者は45倍。

○菅野座長 高いですよね。

○菅野座長 これもただ単なる確認ですが、10ページの(3)留意事項の「少量取扱作業」の所で、右側の「検討」の3行目に「製剤を常時取り扱う場合については」という記述があるのですが、常時取り扱うというのは、定義としてはどのようなものになるのですか。

○米倉化学物質情報管理官 個々の状況を確認させていただかないと「常時」に当たるかというのは何とも言えないのかと思うのですが、ただ、今までの中で、いろいろと定義付けというか解釈等はされていますので、それと同様な考え方でいいのかなというところです。

○菅野座長 些末なことですが、ここに「常時取り扱う場合については」と入っていると、常時取り扱わない場合については除外されるように見えるのではないかと思ったものですから。常時か否かにかかわらず、「減免不可」ということであれば、それで構わないと思いますけれど。

○大前委員 今の所なのですが、せっかくリスクアセスメントで定量的な概念を入れてきているのに、また定性的になる気がするのです。何か進歩しないなという感じがするので、少量取扱いに関しては、今の「常時」とかいろいろなことも含めて、もう少し前に進めないといけないのではないかという気がします。

○米倉化学物質情報管理官 今回の特化則の関係で言うと、特に管理が必要なものを規制しているところですので、今回こういった状況ですので、やはりそこはしっかり管理していただく必要があるということで、強制的な規制が必要なのではないかというところで提案させていただいるところでおります。

○大前委員 管理するのはもちろん大事なことなのですが、管理の基準は何にしたらいいのかになってしまうのです。一般的には何かすごくこう、もう少し考えるべきところなのではないかという気がします。

○名古屋委員 エチルベンゼンだって多くの事業所があってリスク評価をして、ガソリンスタンドは著しく低濃度のため外しましたよと言うように、低濃度のものを全部外しましたよね。その流れはやはりあってもしかるべきだと思います。ただ、きちんとしたデータがないと何とも言えませんが。そのために皆さんがデータを取ってきて見て、「ではそれは外していいね」となっているので、やはりそのプロセスはちゃんと生かしたほうがいいです。ただ、要するに危ないからというので、少量だからといって入れるというのは、今までの流れと少し違ってしまうので、やはりきちんと濃度を測っていて、リスク評価されたものは外していくというのが今までの流れなので、そこは踏襲してほしいと思います。

○菅野座長 そういうことは可能なのですか。つまり、作業環境測定を義務付けて、何らかの作業環境測定を行っていて、ずっと問題ない濃度であるとみなせるというときに、規制を外すということは可能なのでしょうか。

規制を外すというのは、つまり、作業環境測定はしなくてもよいとか、そういうこと。

○名古屋委員 1つは、今までと少し違うのは、今まではエチルベンゼンは経皮吸収がなかったから、要するにばく露だけ測ればよかったのだけれども、今回はそうではないから、やはりそこも加味して除くか、除かないか。だから、そこが今までと違って一番難しいところなのです。今までは、要するに、ばく露濃度が低かったら、全部大丈夫だという形にしたのだけれども、経皮吸収のある化学物質の場合は、ばく露が低いから第一管理区分だから除けるかというと、そこが難しいので、やはりほかのところでチェックする方法があって、そこで加味して除いてあげるという方法を模索しないといけないと思います。これから経皮吸収がいっぱい出てきたときに難しいので、そこはお願いしたいなと思います。要するに、ばく露だけで、濃度が小さいから外すのではなくて、経皮吸収をどう評価して外す物質をつくるかという形のロジックをちゃんと考えておかないとまずいのではないかという。それが、多分、ここで試されていることなのではないかと私は思います。

○菅野座長 経皮吸収というか、検診の結果という意味ですか。

○名古屋委員 それでいいのかどうかが分からないので。

○保利委員 言われたような形で、ばく露量を評価できるようなということですよね。

○名古屋委員 だから、リスク評価のところもそうだったのですが、本来的にはリスク評価で私たちが今までやってきたのは、ばく露濃度が低かったらそのままでオーケーでしょうとはしていた。でも、今のような形で、ばく露濃度のリスク評価の方で一回除かれた化学物質が、その化学物質に経皮吸収があるからという形で再度リスク評価の対象物質として登場してきて、健康措置や詳細リスク評価で検討するときに、ではリスク評価の検討に経皮吸収をどう評価するかというのは、恐らく、リスク評価だけではなくて健康措置と併せて検討したいという形で、今回お願いしている部分もあるので、やはりここで、そこのところをちゃんと結論を出してもらわないと、その前のリスク評価のところにもつながってくるのです。経皮吸収をどう評価してくれるかということを、ここできちんと筋道を付けてもらいたいというのが、今回、措置検討会にお願いした1つの大きなところですので、そこは何か検討してほしいと思います。

○唐沢委員 ただいまのいろいろな御議論を聞いていて思い出したのですが、ベンジジンのときには、IARCの評価でも、オンリーワンドーズでがんが出来ると。たった1回の枠でもがんが出来るという記述がありましたよね。私は本日の検討会の前に、2012年のIARCNo.100のレポートの今回の対象物質を一応、ざっと目を通してきたのですが、それには確か、オンリーワンドーズとまでは書いていなかったのですが。ただ、遺伝毒性がある物質で、現に日本で明確に1人にがんが出ているわけですから、恐らく菅野座長が大変憂慮されたのは、この10ページの「少量取扱作業」の事務局案の「検討」の所で、「一定量以上含有する製剤を常時取り扱う」と。「常時」ということが付いてしまうと、余り毎月定例的に予定はしていないけれども、何回かある程度一定量以上のこういった物質を取り扱う場合が規制の穴から逃げてしまうということは、やはりあってはならないことだと思うので、この「常時取り扱う」という「常時」は余り気にしないほうがいいのではないですか。作業の内容、あるいは量によって、リスクがあれば必要な措置は講じていただく必要があるような気がしております。

○田中委員 9ページの表の下から3段目の「作業管理」の所です。経皮吸収によるばく露が問題だというところを踏まえて、この物質によって「浸透性が異なる」からという表現が先ほどの工業会のほうからも出ていましたが、「透過性」なのです。もし検討していただければと思うのですが、行政はずっと「浸透性」「不浸透性」という言葉をお使いなので、これを直すというのが、また議論があるのだろうと思うのですが、permeationという意味での透過性が異なるから、オルト-トルイジンに対して、対透過性の物を選択することが必要、また、不適切な保護具の使用によりばく露することがないよう適切な管理が必要というようなことで、可能かどうかを検討していただければ。「透過性」という言葉が記載されていると、事業場に、透過しにくい素材とは何かなどという形での保護具の指導が、今まで以上にできるかなと。「浸透性」では、ただ液が抜けていくということでの使い方になるものですから、御検討いただければと思います。

○穴井化学物質評価室長 「透過性」という言葉が正しい使い方なのであれば、そういうふうにします。

○米倉化学物質情報管理官 過去にどういう使い方をしているのかというところも含めて、少し確認をした上で検討させていただきたいと思います。

○藤間委員 「透過性」「浸透性」いろいろあるかと思いますが、「不浸透性」という、要は、全然定量的な話ではないのです。何をもって透過しないというのかという、やはり、このクラス分けなどに従って、そこはきっちりと規制の中に入れ込んでいくべきところだと思うのです。そのためのいろいろな材料と物質との透過の具合についてのデータを、田中先生が御用意いただいたこういうようなものをもう少し一般的に出していかないと、何をもって。多分、先ほどの化成協さんの中で、不浸透性の手袋を15分の15使っていると。自分たちでは透過していないと思っているわけですよね。その辺りで、やはりミスアンダースタンディングがあるような気がいたします。

○田中委員 それを白黒で印刷していただいたので、よく分からなくなってしまったのです。もし、インだけ後ででも見ていただければということで、カラーで色分けされているのです。真ん中辺りにオルト-トルイジンに対しての手袋の素材に対する透過性能が書いてあるのです。先ほども工業会から御紹介があったナチュラルラバー(天然ゴム)が、実はオルト-トルイジンではノットでは困るので。1時間以内で透過するという形での情報なのです。だから、そういう意味で、「天然ゴムをなぜ多くの事業場が選択しているのですか」という質問をしたかったのですが、そこまで考えていないかもしれない。そういう意味では、これはまだ一例というか、情報として、ほかのブチルやバイトンなどのシルバーシールド色は8時間以上透過しないというデータも報告されているということで、そのようなことを踏まえた形で、今、経皮吸収のばく露を防ぐための手袋や保護具というものを、もう一度考えていただければという、その1つの資料として本日配布させていただきました。

○菅野座長 ありがとうございます。今回は、経皮吸収を防護するための防護具を用いるとなっていますので、間違って選択をされると、確かに「用いていたのに何でだ」ということになりますので、何か具体的に材質等を指定して、これこれを用いるというふうにはできませんでしょうか。

○米倉化学物質情報管理官 やはり値段や使用方法など、いろいろなことによって変わってくるのではないかというところはあるのです。田中委員の資料の次の白黒の資料ですが、こちらは保護具メーカーさんのほうに、オルト-トルイジンに対してどれぐらいの性能があるのかということで出していただいたデータです。これは1社だけのデータですが、表面が呼吸用保護具、裏面が化学防護服や化学防護手袋ですが、こういったデータは、今後、保護具メーカーさんのほうでもいろいろと検討されるのではないかと思います。そういったデータを用いて、事業者のほうで選択などもあるかと思いますが、そういった選択の方法や管理の方法はいろいろ考えられるのではないかというところではあります。

○菅野座長 何か具体的な商品名というわけにはいかないと思うのですが、田中先生の表では、何時間ぐらいは有効というような記事がありますので、実際の選択に当たっては、何時間以上有効なものを使用するなどというような。

○米倉化学物質情報管理官 個別の製品を見ていくと、値段がいろいろ違ったりしてくるので、そこは一律に示せるのかどうかというのはあります。実際の具体的な検討というか、具体的にどうするのかというのは、保護具メーカーさんや使っている事業者さんとの意見交換の中で、どうしていくのかというのは少し考えられるのではないかというところではあります。

○菅野座長 分かりました。ありがとうございます。

○小野委員 保護具に関連してなのですが、恐らく先ほどから、反応の途中や、反応が終わってそこからというお話で、大量の有機溶剤と同時に共存する形でトルイジンが使われるということで、トルイジンの量が割合としてパーセント以下になってしまうというところで、トルイジンだけの評価で本当に手袋などが大丈夫なのかというところに、まだ懸念は残るのです。そういうことも含めて、共存物質による影響も注意が必要ということが必要ではないかというのが1点です。

 あと、先ほど少量のときの措置の低減があり得るのかどうかというお話があったのですが、例えばドラフトの中でサンプリングしたものを取り扱うときに、ドラフトの中ならば対策は取られているのですが、対策が取られているからそこで手袋はしませんなどといったように、要するに幾つかのものの一部は環境測定はもしかすると余り意味がないかもしれないけれども、手袋は絶対にやめられないなどといった、本当はそういう順位付けがあるのかもしれないのです。ただ、この措置のところで、その順位付けを表に出すことはできないと思いますので、本当は低減したいのだけれどもできない。その低減をするために何が必要かということで、バイオロジカルモニタリングのお話が先ほど出たのですが、アミンに関しては、やはり就業前と就業後という2段階で取らないと、個人差等があってなかなか難しいということも聞いております。ただでさえBEIで負担が増えるところで2回やってくださいというのはなかなか難しいということもあると思いますので、今後に向けて、健康への影響が出てからではなく、どうすれば見つけられるのかということを次の議論として考えていただけると有り難いと思います。

○櫻井委員 追加なのですが、生物学的モニタリングで、ばく露の状況をどうやったら把握できるかという課題です。それは健康診断の項目を検討する会に任されている状況です。まず、オルト-トルイジンはかなり複雑に代謝されるので、ばく露した量と尿中へのオルト-トルイジンそのままで排泄される量との関連性は、当然、相関はあるけれども個人差などが大きいということが1つあるので、明確な共通の基準を設けることは多分難しいだろう。今までも努力したのだろうと思いますが、できなかったのではないかと思います。それで、ほとんど常に、作業前と作業後の比較に頼っているのです。

 ところが、そのデータを見ますと、随分はっきりと差が付いているのが多いのです。今回もそうですよね。ただ、喫煙者は最初から高くて、その作業によって余り増えることがないわけです。喫煙者も尿中のオルト-トルイジンが高いのですね。それから、やはりほかに尿中オルト-トルイジンを高める要因として、リドカインや、何種類かの局所麻酔剤をどこかに使ったり何かすると、それで高くなるなどということがあるのです。でも、それは頻度が少ない。圧倒的に多いのは、やはり喫煙との鑑別ということですが、それを鑑別するのは、喫煙している人が多いですから、実は前後で測るしかないだろうと小野委員がおっしゃったとおりだなと。それをやればいいのではないかと。正直それしかないという感じですね。

 それをずっと記録も取るわけですよね。記録の義務もかかるわけです。そうすると、過去にそういうばく露がなかったなどと確認できるわけです。たまにあったら、すぐに手を打つことによって、継続的にいつもずっとばく露していたというおそれがないということが後で分かる。だから、喫煙による膀胱がんや、その他の原因による膀胱がんと、これのばく露による膀胱がんとの区別というのは、それしか判別できないのではないかというのがあります。私の個人的な意見ですが。

○菅野座長 なかなか難しいですよね。その1日のばく露のパターンも変化するおそれがありますから。

○櫻井委員 非常に難しいと思いますが、でも、年2回普通の通常作業で生物学的モニタリングをやっていくということであれば、それでも見逃す可能性はあるかもしれないけれども、全然違うと思います。

○菅野座長 バイオロジカルモニタリングに関する重要な御提案だと思いますが、別の会で検討されることになっておりますので、よろしくお願いいたします。

○櫻井委員 それはそれで皆さんの意見がどうなるか。分析機関の問題等ですが、それはやろうと思えばできますよね。

○小野委員 極端に難しい分析法ではないと思います。

○菅野座長 ほかにいかがでしょうか。措置の中身についてはいろいろ御意見もありましたが、事務局が取りまとめられた12ページの導入方針はこれで御了承いただけますでしょうか。

○藤間委員 やはり発散抑制についての効果ですよね。便益の部分で本当にどれだけなのかというのがいま一つ、2つの経気道と経皮とのリスクの切り分けという点が何か分からないまま、そのまま行ってしまっていいのかというのが少し疑問に思うところです。

○菅野座長 私としては、それを区別できるデータがないので、現時点ではこれをやるしかないというふうに解釈しているのですが、いかがでしょうか。

○藤間委員 一度入ると、多分なかなかそう変わることがないというところもありますので、意見までです。

○菅野座長 それでは、御意見はありましたが、一応この導入方針でやっていただくということでよろしいでしょうか。

(各委員了承)

○菅野座長 それでは、大分時間が過ぎていますが、今後の事務局から報告書の公表について御説明をお願いいたします。

○米倉化学物質情報管理官 報告書については、本日御議論いただきました資料1の措置の検討シートを基本として作成し、各委員にも御確認いただき、報告書として公表することとさせていただきたいと考えております。

○菅野座長 この点についても御了承いただけますか。

(各委員了承)

○菅野座長 それでは、最後に今後の予定について御説明をお願いします。

○奥村化学物質対策課長 その前に、いろいろ行政に対して御指摘というか、宿題を頂いたと思っておりますので整理したいと思います。経皮ばく露等を防ぐ保護具については、やはりきちんとしたクラス分け等が必要だと思いますので、保安用品協会等の業界団体と話をして、メーカーさんと協議しながら、何か呼吸用保護具のようなきちんとした明確な分かりやすい使い分けができるようなものを、もう少し充実する方向でこれから検討していきたいと思っております。

 あと、大前先生からも御指摘いただきました少量の取扱いについては、従来どおりですねという御印象を頂きましたが、リスクアセスメントというものを事業主に求めていることがありますので、このような場合分けによる規制の在り方の検討についても、もう少しエビデンスベースの議論をするように、今後対応していきたいと思っております。

 あとは、健康管理の充実については繰り返しになりますので省略いたします。以上です。

○名古屋委員 本日でこの議論は終わりということでいいですか。

○穴井化学物質評価室長 はい。

○名古屋委員 こんなに簡単でいいのですか。要するに、リフラクトリーセラミックファイバーのときだって議論がいろいろあって7回か8回検討会をやりましたよね。これは経皮吸収をどうしようかということの中で、何か結論らしいものは余り出てきていないように思って、これで終わって、このまま表が出てきていいのかなという気はするのです。では手袋の基準はどうするのかという規格や、マスクはどうするのかと。その議論も何もしないで本日終わって、この報告を出しますよという形で終わることで本当にいいのですか。

○奥村化学物質対策課長 経皮吸収の保護具については、やはり事業主に対して使いやすいもののデータを示すのにも時間が掛かりますので、それを待っていると対策がどんどん遅れてしまうことになりますので。

○名古屋委員 先に特化物として扱ってしまって、その後に、要するに手袋や保護具の規格のほうは後追いでもいいという形ですね。

○奥村化学物質対策課長 はい。

○名古屋委員 それなら分かりました。これで全て終わってしまうのかなと思ったら、それは少し早いのではないかと思ったので。

○菅野座長 追加の検討事項というか、御要望についてはよろしくお願いいたします。それでは、今後の予定についてお願いいたします。

○米倉化学物質情報管理官 37ページに「今後の予定」ということで記載しております。第4回の検討会については、822()1517時で、議事としましては、継続事案となっておりました三酸化二アンチモンに係る健康障害防止措置の検討を予定しております。第5回の検討会については、その1週間後の829()1517時で、同じように三酸化二アンチモンに係る検討を予定しております。

○菅野座長 ありがとうございました。次回、次々回もよろしくお願いいたします。それでは、これにて第3回化学物質の健康障害防止措置に係る検討会を終わります。ありがとうございました。


(了)

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