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2016年12月15日 第11回 透明かつ公正な労働紛争解決システム等の在り方に関する検討会

労働基準局

○日時

平成28年12月15日(木)10:00~12:00


○場所

中央合同庁舎5号館厚生労働省議室


○出席者

荒木 尚志(座長) 石井 妙子 大竹 文雄 小林 信 高村 豊
鶴 光太郎 徳住 堅治 中山 慈夫 長谷川 裕子 水口 洋介
村上 陽子 八代 尚宏 山川 隆一 輪島 忍

○議題

・司法による個別労働関係紛争解決について
・個別労働関係紛争解決システム間の連携について
・その他

○議事

○荒木座長 出席の委員の方はおそろいということですので、ただいまより第11回「透明かつ公正な労働紛争解決システム等の在り方に関する検討会」を開催いたします。

 委員の皆様には、本日も御多忙のところを御参集いただき、ありがとうございます。

 本日は、小林治彦委員、岡野貞彦委員、垣内秀介委員、鹿野菜穂子委員、土田道夫委員、斗内利夫委員、中村圭介委員、水島郁子委員は御欠席でございます。

 本日の議題ですけれども、「司法による個別労働関係紛争解決について」「個別労働関係紛争解決システム間の連携について」「その他」となっております。

 では、お配りしてあります資料の確認を事務局からお願いいたします。

○大塚調査官 資料の確認でございます。資料は2点ございます。

 資料No.1が、パワーポイントの横置きの資料でございます。

 資料No.2が、ワードの縦の資料でございます。

 不足がございましたら、お手数ですけれども、事務局のほうにお申し出願います。

 以上です。

○荒木座長 よろしいでしょうか。

 それでは、本日の進め方ですけれども、まず、事務局より資料No.1とNo.2を全体を通して説明いただき、その後に議論に入りたいと思います。

 議論に当たっては、まず、個別の制度として資料No.2の「検討事項」の1ページから2ページの「司法による個別労働関係紛争解決」の部分を御議論いただき、次に5ページになりますけれども、前回の検討会で御指摘がありました企業内の紛争処理に関する「その他」の事項について御議論いただきます。最後に、3ページから5ページにかけての「個別労働関係紛争解決システム間の連携」の問題について議論いただく。そういう形で進めさせていただきたいと思います。

 それでは、事務局からNo.1と2に基づいて御説明をお願いします。

○大塚調査官 それでは、資料No.1から申し上げます。No.1は大変分厚くなっておりますけれども、新規に追加した資料ですとか、リバイスした資料などを中心に御説明申し上げたいと思います。

 新規の資料は、まず9ページ、10ページは、民事保全手続の概要ということで、この検討会で中山委員のほうから御指摘がありましたので、追加させていただいたものでございます。

 上段のほうに書いてございますように、労働事件に関しまして、本訴の前にとりあえずの地位の保全とか、あるいは未払い分の賃金の仮払いなどを求める仮処分の手続というものが行われてきておりました。ただ、後ろの10ページの数字をご覧いただければと存じますけれども、平成18年4月から労働審判制度が施行されたことに伴いまして、この数字が減少いたしております。平成25年までの数字がございますけれども、平成25年当時は449件でございました。

 次に、ちょっと飛びまして、29ページは労働審判制度に係る資料でございます。29ページと30ページは、労働審判員の任命に関する資料でございます。一番上にございますように、労働審判員は労働関係に関する専門的な知識経験を有する者のうちから任命するということで、その下にございますように、原則として68歳未満の方から選任するということになっております。任期は2年でございます。

 なぜ68歳なのか、なぜ2年なのかという理由につきまして、次の30ページに記載してございます。いろいろ書いてございますけれども、要するに労働関係の法令ですとか、あるいは慣行というものは、かなり日々更新されるといいますか、常に最新の知識経験を持たれる方を任命する必要があるということでございます。そのため、定年退職後選任されるような場合には、その知識が陳腐化しないうちに選任する必要があるということで、このような68歳、あるいは2年といったようなことが規定されているところでございます。

 その結果、既存の資料ですが、22ページをご覧いただければと思いますけれども、上段が年齢別の労働審判員の方々の状況をまとめたものでございます。68歳以上の方につきましては、全体の14.5%を占めているということが最新の数値でございます。

 ページが前後して恐縮ですけれども、31ページも新規の資料でございます。31ページは、労働審判員の研修に関する資料でございます。労働審判員の研修につきましては、各地方裁判所の実情に応じて実施するということになってございまして、その下に各裁判所におきます研修の例を記載しております。

 続きまして、32ページも、これまで何度か議論になりましたけれども、労働審判の手続、特に書類に関しての資料でございます。労働審判制度は、御案内のとおり、一番上にございますように、3回以内の期日で解決を図るということに法律上なっております。そのため、1回目の期日から争点整理とか、証拠調べをしていくということになっておりまして、いわば第1回期日の前の当事者間の事前の準備と調整が非常に大事になってくるということでございます。

 それに伴いまして、個々の事案ごとに必要となる書類というのは変わってくるとは思いますけれども、申立書あるいは反論書のみならず、事実関係を裏つけるような証拠書類がある場合には、それも添付するということになってございますので、事案の内容などによっておのずと厚めになるということも考えられるところでございます。

 次の33ページでございますけれども、そういった書類などの手続に関して、労使の負担感を聞いたアンケート調査でございます。これをごらんいただきますと、「非常に大きかった」「やや大きかった」とする割合は、労使ともに7割にのぼる状況にあるということでございます。

 これを反映したのが22ページの下段の部分ですけれども、労使双方ともに代理人弁護士を選ばれるというパターンがかなり多くの割合を占めているということになってございます。

 前後して恐縮ですけれども、システム相互間の関連性などについての資料が35ページ以降続きますけれども、新規の資料といたしましては43ページでございます。これは東大社研の調査でございます。労働審判の手続に至るまでに、労働局等の行政手続を経由したかどうかを聞いたものがこの43ページでございます。左側が労働者側、右側が使用者側となっておりますが、労働者側は上の3段にございますように、労働局の相談ですとか、助言・指導、あっせんを経由したものが相当程度多い。それに対しまして、使用者側は多くは労働審判の場合は使用者側は受け身になることを反映しているものかとも思いますけれども、労働者側に比べて労働局等を経由した割合というのは相対的に少ないということになってございまして、一番下にございますように、労働局等の手続を利用(経由)したことはなかったという割合が7割を超えているという状況にございます。

 次の44ページは、労働審判手続をどのようにして知ったかということについてでございまして、同じく東大社研の調査でございます。真ん中あたりにございますけれども、労使双方ともに弁護士経由というものが相当程度高いことが見て取れると思います。その弁護士の3つぐらい下のところに、労働局、労働委員会を経由したかどうかというのがありまして、労使を比べると労働者側のほうがその割合が高いということになってございます。使用者側の一番下をごらんいただきますと、申し立てされるまで知らなかったという割合が4割近くにのぼっているというのが実態かと思います。

 次の45ページは既存資料ですけれども、消費者紛争に関しまして、いわば事案の中身、程度によって処理の機関を区分けている例でございます。消費者紛争の場合には、独立行政法人に設置されます紛争処理委員会と都道府県の消費生活センターのいわば2段構えになっております。重大事案だと、国民生活センター、国の機関が判断した場合には、独立行政法人の紛争処理委員会のほうでやる。それ以外の事案については、都道府県の消費生活センターのほうで処理する。そういうふうに、事案の中身によって処理の機関を分けているという例でございます。

 その次に47ページですけれども、新規の資料でございます。これは公害紛争処理に関する処理の例でございます。左側の図をごらんいただきますと、国の機関であります公害等調整委員会と都道府県の公害審査会等という、また2段構えになっております。そして、いずれにしても、あっせん、調停、仲裁を行うのですが、真ん中あたりに書いてございますように、重大事案とか広域事案につきましては公害等調整委員会のほうが、それ以外については都道府県の公害審査会のほうが行うということになっておりまして、何が重大か、何が広域かというのは、右側の下段のほうに記載してあるとおりでございます。

 このように、労働事件以外の紛争では、いずれも仲裁まで行うという意味では、事案の処理の仕方が異なるわけでございますけれども、事案の軽重によって処理の機関を、中央なのか、地方なのかで分けているという例でございまして、労働事件の場合には、御案内のとおり、都道府県労働局と都道府県労働委員会のほうで、こういったような法令上の仕分けというものは存在しないということでございます。

 また飛びまして、51ページは新規の資料です。これまでの検討会におきまして、民事調停につきまして御紹介していたところでございます。民事調停の場合は、IT訴訟ですとか、医療関係訴訟ですとか、そういう専門訴訟におきまして、いきなり訴訟というふうになった場合でも、裁判官の判断で調停のほうに付するという手続があったかと思います。

 家事調停についての資料が51ページでございまして、家事事件に関しましては、これは単に法令上の判断をすればいいというだけではなくて、感情のもつれですとか、あるいはプライバシーの問題ですとか、そういったさまざまな事情がございますので、いきなり裁判ということではなくて、まずは非公開の調停手続でやるということになってございます。その辺の概要を記したものでございます。

 次の52ページは、その件数の内訳等を示したものでございます。

 その次の53ページは諸外国の例でございまして、ドイツの流れを改めてお示しするものでございます。左側の図にございますように、労働裁判所という司法機関におきまして労働事件の処理をしております。右側の冒頭に書いてございますように、ドイツにおきましては行政機関における解雇紛争の処理などは行っていないというのが現状になっております。そうなりますと、年間40万件の事案をこの司法機関で処理しなければいけないということになっておりまして、ボリューム感を比較しますと、日本の場合には労働事件の裁判と労働審判で合わせて7,000件程度ですので、かなりのボリューム感の違いはあろうかと思いますけれども、この膨大な事案を処理するために、和解前置、和解優先の仕組みがとられているところでございます。和解弁論手続をまず試みる。それでだめだった場合には訴訟弁論手続に入るわけですけれども、その中でも裁判官は適宜和解を試みるというような取り扱いになっているのがドイツの例でございます。

 若干飛びまして、説明は割愛しますけれども、55ページはイギリスとオーストラリアの数字を最新のものにしてございます。それ以外は既存でございます。

56ページはイギリスの流れを改めてお示ししたものでございまして、2014年の制度改正によりまして、ACASという行政機関の早期あっせん手続を経ないと、司法機関であります雇用審判所のほうには提起できないというような制度改正が行われております。

 この行政前置の仕組みは、2枚後の58ページのオーストラリアも同様でございまして、オーストラリアも連邦公正労働委員会というところで早期あっせん等をやっているのですけれども、ここを経由しないと、司法機関であります連邦裁判所のほうには提起できないという仕組みになってございます。

 1枚戻っていただきまして、57ページ、韓国の例でございます。韓国も労働委員会のほうで労働事件の個別労働紛争の処理を行うという取り扱いになっているわけですが、ここではイギリスやオーストラリアとは異なりまして、必ずしも行政裁判所への提起の前に労働委員会を経なければいけないという前置の仕組みが法令上決められているわけではなく、行政裁判所のほうにいきなり提起することも妨げられないというような取り扱いになってございます。

 飛びまして、60ページ以降は、企業内の紛争処理に関する資料が続いております。こちらも新規資料を中心に御説明申し上げます。まず60ページですが、JILPTが調査いたしましたものでございまして、企業内の紛争処理の仕組みの事例でございます。それを例示的に挙げたものですけれども、左右ともに主な特徴は丸囲みしております。

 左側は、いろいろ書いてございますけれども、まず1つは人事評価等の仕組みの中で労働者側の不満を把握し、その解消を図るといったようなことですとか、あるいは下のほうにございますように、監査役直通のホットライン等の相談窓口を設けて対応しているというものでございます。右側の事例2でございますけれども、こちらは苦情処理のための窓口を設ける、あるいは苦情処理委員会を設けて対応しているという例でございます。

 次の61ページは、男女雇用機会均等法におきます法令、指針の例でございます。まず、法令のほうですけれども、第15条に紛争の自主的解決の規定がございまして、努力義務として使用者に課されているわけですけれども、その例示として2行目にありますように、苦情処理機関というものが例示されております。

 ちなみに、どういう場合にこの苦情処理機関などの自主的解決に努めなければならないかというのが冒頭の条文でして、第6条は配置の差別です。第7条は間接差別。第9条が妊娠、出産の不利益取り扱いで、第12条と第13条が母性健康管理措置の規定でございますけれども、セクハラはこの中には入っていないように見受けられます。セクハラに関しては、その下にありますように、別途指針が定められておりまして、ここで相談窓口の設置に関する、結構細か目のガイドラインが示されているところでございます。

 次の62ページは障害者雇用促進法に関する例でございまして、ご覧いただければと思いますが、男女雇用機会均等法と同様のたてつけになっています。法令上、自主的な紛争解決の努力義務が課されておりまして、指針の中で相談窓口等に係る具体的なガイドラインが示されているというものでございます。

 次の63ページも新規資料でして、公益通報保護法の例でございます。公益通報保護の法律自体には、相談窓口の設置等が別に義務づけられているわけではないのですけれども、このページの真ん中よりちょっと下に書いてございますように、内閣府のガイドラインにおきまして、通報窓口及び受付の方法を明確に定めて労働者に周知することなどが定められているところでございます。

 これに基づいてどれぐらいやっているかというのを示したのが64ページでございます。左上、1の部分をごらんいただきますと、その対応状況につきまして、そういった通報制度を社内に導入しているかどうかで、導入している企業割合は46.3%と相当数にのぼりますが、他方で導入の予定なしというものも39.1%と、これもまた相当数にのぼるというものでございます。その他、導入したときの社内外の設置状況等については、2、3などに書いてございますけれども、御注目いただきたいのは4番目、右下でございますが、公益通報ということは、企業のコンプライアンスに係る問題について社内で通報するという仕組みでございますが、実際にどういうものが寄せられているかというのを聞いてみますと、1番目が人間関係、2番目が人事労務関係など、必ずしも公益そのものというよりは、若干それよりも幅広い不満などを広く受け付けているというような実態にあるのかなと、これを見る限り見受けられるところでございます。

 その次の65ページ以降は、前回までに御提出した資料そのものでございますけれども、前回時間があまりなかったので、今日またということでございますが、社内の紛争処理の機関の導入状況につきまして、5割を超えるとか、あるいはどういうところに労働者が相談しているかとか、そういったような各種データをこの65ページ以降につけておりますので、適宜御参照いただければと思います。

 資料1につきましては以上でございます。

 続きまして、資料2に移りたいと思います。検討事項案につきまして、前回、行政について御議論いただきましたが、それと同じようなたてつけでこのペーパーをつくっております。1番目は、2とありますが、「司法による個別労働関係紛争解決」ということで、最初の丸2つは2回前のこの検討会で御議論いただいた現状認識をかなりコンパクトにまとめて書いたものでございます。一言で言いますと、労働審判制度は全体的に有効に機能しているという評価でございますが、改善すべき点があるとの評価もありましたので、具体的な御検討をここでしていただくというものでございまして、具体的に考えられる検討事項はこのページの真ん中から下にずらずらと書いてございます。

 まず、Iですけれども、労働審判諸手続の簡素化ですとか、あるいは労働審判員の専門性の確保についてでございまして、その下のアは手続に関するものでございます。先ほどご覧いただきましたように、労働審判制度は第1回期日までに相当程度の書類の準備等が必要、重要となってございまして、その負担感も相当程度大きいという実態があったかと思います。これらを踏まえまして、何か手続の簡素化等できるものがあるのかどうかというものを御議論いただくのがアでございます。

 次のイは労働審判員の専門性の確保についてでございまして、先ほどの資料1で、任命の考え方ですとか、年齢ですとか、そういったものをごらんいただきましたけれども、そのあたりを踏まえまして、68歳未満ルールといったもの、あるいは次のページにありますように、労働審判員に対する研修をどのようにして行うかといったようなことなども御議論いただきまして、その専門性の確保について意見交換していただければと思っております。

 次のIIでございますけれども、「時間的・金銭的予見可能性を高める方策」ということで、アは時間的予見可能性に関するものでございます。労働審判制度につきましては、3回以内、あるいは6カ月以内に終わるというのがほぼ全てということになってございまして、相当迅速な処理が行われているということでございますけれども、国民に対してそれが明らかになっているのかどうかといったような問題意識もございまして、こちらを記載させていただきました。

 次の下のイの部分でございますけれども、こちらは金銭的予見可能性に関する部分でございまして、労働審判事件のほとんどは金銭の支払いによって行われている。ただ、どのぐらいの金額で終わっているのかといったことなども含めまして、非公開手続で行われていることもあるため、国民にとっては必ずしも予見することが容易ではないといったような御指摘もここの検討会の場であったところかと存じます。

 この検討会では、下のほうに書いてございますように、JILPTの調査結果はお出しいたしましたけれども、あれは幾つかの裁判所をサンプル的にとったものでございまして、必ずしも全ての裁判所の状況などを調べたものではないということも前提としてございますので、この金銭的予見可能性を高めて、国民にとって労働審判制度を利用した場合にはどのようになるのかといったことがどうすればわかりやすくなるのかといったことを御議論いただくのがここの項目でございます。

 次のページでございますけれども、3「個別労働関係紛争解決システム間の連携」ということでございまして、これまでの議論の中では、労働局の振り分け機能などを中心にさまざまな御意見があったことかと思います。現状認識としては、この2つの丸にコンパクトにまとめさせていただきましたけれども、まず法令上、制度上、制度間の連携といったことが規定されているわけではないということもございますので、国民にとっては自分の事案がどの仕組みを活用すればいいのかということが必ずしも明らかになっていないのではないかといったような御議論があったかと思います。

 「考えられる検討事項」ですけれども、I、IIとありまして、Iのほうは運用上の話でございます。都道府県労働局では年間100万件を超える相談を受け付けているということで、各ADR機関の中では最も間口が広いということがありますので、ここで振り分け機能をどう果たしていくかというのが一つのポイントかなと考えられるところでございます。

 ただ、1つ目のポツの3行目ぐらいから書いてございますけれども、労働局に相談に来られる方の特徴といたしましては、労働者本人の方が来られることが多いわけですけれども、御自身の事情だけは話せる。ただ、必ずしもそれが法律的に整理された上で話されているわけではないし、使用者側と当たっているとも限らないので、使用者側の主張がどういう状況になっているのかは必ずしもわからない。そういう前提のもとで振り分け機能を果たすとすれば、いわば当事者の一方から一方的に言われことのみをもってどの機関が適切なのかというのを御案内しなければいけないというような事情がございます。

 そういうことを考えますと、事案に応じた振り分けというのは、なかなか困難な面はあるのですけれども、では具体的に振り分けるとなれば、どういったような基本指針といいますか、考え方でやっていくのがいいのかといったことを御議論いただくのがこちらの場面でございます。

 この下のところに、あっせん不調の場合というふうに書いてありますけれども、労働局で他の機関を御案内する場面としては、相談時に並んであっせん不調時もございます。あっせんが不調に終わった場合には、まだ争いたいという御希望を持たれる方もいらっしゃるわけで、そのときに裁判所などの手続を御案内することが行われているのですが、必ずしもそれが統一的に行われているわけではないという事情にございますので、このあたりをどう考えるかというのを御議論いただくのがこのところでございます。

 次のページのイでございますが、労働局の相談員のスキルアップ等、あるいは体制の強化についてでございます。今申し述べたような事情がございますので、相談員の人たちが総合労働相談コーナーに来られた相談者に対して御案内する際には、まず聞き取る能力ですとか、あるいは法律上の争点を整理する能力ですとか、他機関の性質を正確に理解した上で事案に即して御案内する能力ですとか、そういったものが必要になってくるのかなと思いますけれども、そのためのスキルアップには何をすればいいのかといったことなどを御議論いただいたり、あるいは体制の強化について御議論いただくといったようなことがこちらの部分でございます。

 次のIIの部分は、こちらは先ほど資料1のほうで諸外国、イギリスやオーストラリアにおきましては行政前置、ドイツにおきましては和解前置、和解優先であると。国内の例におきましても、家事調停のような事案につきましては調停前置である。さらには、他の紛争例でございますけれども、公害や消費者紛争の場合には、紛争の中身によって国か都道府県かを分けていますといったようなことなどを御紹介しましたが、これは制度論の話でございまして、制度的に労働関係紛争につきましてはそのような仕分けがなされていませんが、その点についてどう考えるのかというのがIIの部分でございます。

 駆け足で恐縮ですけれども、次のページでございまして、最後4でございますが、前回御提示しましたけれども、時間がなくて今回もということになりましたが、その他として企業内の紛争処理のことを書かせていただいております。ここに書いておりますように、5割を超える企業におきましては何らかの企業内紛争処理の仕組みを設けているところでございますが、その苦情処理委員会の利用はない現状というのがございます。そういったような現状も含めまして、何か一歩踏み出してやるべきことがあるのかどうかについて御議論いただくというのが最後のその他の部分でございます。

 説明は以上でございます。

○荒木座長 ありがとうございました。

 それでは、きょうの資料2によると、2と3と4と大きく3つあるのですけれども、まず2の司法による個別労働関係紛争解決について、どのような改善が考えられるか、考えられる検討事項等も記載されておりますので、これらを参照しながら御意見、御質問等があれば御発言いただきたいと思います。

 八代委員。

○八代委員 まず、単純なほうから。資料2の1ページの下のほうですが、「労働審判員の専門性の確保」というところで、68歳以下に限定するというやり方です。これは一言で言えば、諸外国では禁止されている年齢差別の規定が司法の機関においても堂々と現在使われているというのは、やはり見直す必要があるのではないか。定年退職が例えば65で、それから過ぎるともう知識が古くなって役に立たないというのは、経済学で言う統計的差別の典型的な例であって、高齢者というのは非常に個々の能力にばらつきがある集団ですから、当然ながら本人の能力をきちっと審査して、これは高齢者以外もそうですけれども、当たるべきであると思います。

 それから、特に今後、高齢化社会で高齢者の労働がますます重要になってきているときに、まず民間にそういう年齢差別的な慣行をやめてもらうためには、行政というか、司法のほうから襟を正すべきであって、こういう規定は速やかに撤廃する必要があるのではないか。あくまで個々の能力をきちっと審査した上でやるということは一つのわかりやすい解決法ではないかと思います。

 以上です。

○荒木座長 ありがとうございます。

 大竹委員。

○大竹委員 2ページの一番上の労働審判員に対する研修が各地方裁判所で行われているということですが、各裁判所でそれぞれの文化が形成されていってルールができる可能性があると思いますので、何らかの全国レベルの統一した研修、あるいはその次の話になるかもしれませんが、ある程度透明なルール、ガイドラインというのをつくっていく必要があるのではないかと思います。

○荒木座長 鶴委員。

○鶴委員 IIでもよろしいでしょうか。先にIにまとめたほうがよろしければ、後で発言しますけれども、よろしいですか。ありがとうございます。

IIのイにつきまして、「金銭的予見可能性を高めるための方策について、どう考えるか」というのがあるのですが、先ほど事務局の御説明にありました通り、再興戦略の要請を受けて、今回、あっせん、労働審判、訴訟について、この限定された裁判所に対して調査依頼をしていろいろ実態が分かりました。それで、そのデータを大竹先生と私のほうで少し分析もさせていただいて、こちらで御紹介もさせていただきました。

 今回、アドホックな要請で実態調査をやって、分析も行ったということですが、今後、制度設計をさらに進めていくためには、データベースの構築というのは非常に重要な課題ではないのかなと考えております。

 前回の分析結果を御報告したときも、大竹先生のほうから、分析自体にいろいろ問題があるということ自体も御紹介もしまして、解雇の効力の確度という、一番重要な変数ということも情報がない。それから、年齢、給与規模、退職金といったような変数も情報がない。

 例えば解雇効力の確度というのは、10段階でどうなるのかというのはなかなか難しいかもしれませんけれども、3段階ぐらいだったらどうなのか。ただ、我々の印象だと、その程度の情報でも分析上は非常に大きな意味があるなと思っておりまして、裁判所、法務省さんにとっては御負担等々、非常に大きなお話かもしれませんけれども、そういう情報をきちっとデジタル化していただきたいです。センシティブな情報でございますので、実際にその情報を公表しろとか何とかというのはもちろん考えておりませんで、今回のようなある検討委員会等々で限定的で分析しようと思えば分析できるような、そういう環境が確保できるような形をぜひ今後御検討をしていただきたいと非常に強く、この分析等の御紹介をする過程で思いましたので、お願いしたいと思います。

 以上です。

○荒木座長 大竹委員。

○大竹委員 今の鶴委員の御提案に私も全く同意します。分析した本人といたしましても、まず分析に当たって情報が非常に不十分であるということは間違いない。今、鶴委員がおっしゃったとおり、年齢だとか、退職金とか、制度があるのかどうかということもわからないで、金銭解決のレベルをどう評価するかというのは難しい。それから、効力、解雇無効かどうかという確度についてもわからないということで、課題はかなりある。

 ただし、不十分な情報だということを踏まえても、ある程度ルールはありそうだということはわかったのですが、問題点はばらつきがかなり大きい。そのばらつきが大きい理由が、情報が不完全なためなのか、あるいはケース・バイ・ケースで事件性が全くそれぞれ違うせいなのか、同じ事件だけれども、審判員、あるいは裁判官で大きく判断が違っているのか、ルールがはっきりしていないのか、そこが今の情報ではわからないというのは事実だと思います。

 ですから、もう少し、しかも4つの地方裁判所ということですから、先ほども申しましたが、地域ごとにかなりの違いがある可能性もまだまだあるというわけですから、やはり全国レベルでデータを整備していくという努力はぜひしていただきたいと思います。

○荒木座長 どうぞ。

○高村委員 今、鶴委員、大竹委員から御発言があった問題に関連して、実は私、この4月から労働審判員を任命いただいて、この間4件の事件に携わってまいりました。1件は、解雇無効の損害賠償請求、残る3件は地位確認等の請求ですが、そのうち2件は残業代未払いの請求も入る。実際の調停で解決する人の解決金は、これは解雇の部分です、地位確認の部分です、これは残業代の部分ですというふうに解決金を決めるわけではないのですね。全て一緒くたにして解決金幾らという形で決めるものですから、この金額をどう分析するかというのはなかなか難しい問題だろうということはまず申し上げておきたいと思います。

 それと、労働審判員の専門性の確保という問題で発言させていただきたいと思うのですが、労働審判制度というのは我が国で初めて民事司法手続に評決権を持った労使が参加をするという、日本型労働参審制になるわけですが、この労働審判制度がこれまで個別労働紛争の解決に大きな役割を果たしたことは申し上げるまでもないわけでありまして、よりこの機能をどう高めていくかという点で申し上げますと、今申し上げたように、私はこの4月から労働審判員に任命いただいて、4件の事件に携わってきているのですが、事件というのは事件ごとに顔があり、一律ではないわけです。非常に多種多様。そういう中で、法的判断に基づく実効的な解決案を示して解決を図るためには、そこに参加をする労使の審判員の専門性をどう高めるかというのは非常に大事だということは、私自身、実感をしております。

 例えば、東京地裁の場合は、年に1回、労働審判員研究会というのを開催するのですが、それだけでは労働審判員の専門性を確保するという点では不十分だろうと思います。さらに事例研究ですとか、労働審判員相互の経験交流といったことを含めて、研修体制の整備が必要ではないかと思っています。

 それから、先ほど八代委員から労働審判員の年齢の問題が出ました。そういう年齢制限があるものですから、これまで労働審判員として多くの事件に携わってきた方が、年齢的な問題からどんどんリタイアする方が今ふえてきているわけです。現状からいくと、そのリタイアされる審判員の皆さん個人レベルでの経験の蓄積というのがあるわけですが、そうしたリタイアされる皆さんの経験をこの制度の中にどう生かしていくかという意味での検討も必要ではないかということを申し上げたいと思います。

 以上です。

○荒木座長 輪島委員から手が挙がりました。

○輪島委員 ありがとうございます。

 今の点で、1ページのイの専門性の確保の点でございますけれども、私どもも労働審判員の方を御推薦申し上げている立場から言って、経験的に言うと、2年でございますので、2期4年、3期6年ということをイメージすると、御経験を踏まえて円熟味を増すのは、やはり3期6年以上になると考えております。できましたら、今のところ68ということになっているので、そういう意味で3期6年ぐらいできるような方をなるべく推薦しようとしているわけですが、実務的には、高年齢者雇用安定法の関係で65歳までの継続雇用制度がありますものですから、実際に推薦をするということになると、65を超えた方が可能性としては拡大する。そうすると、今申し上げた3期6年という射程のところに少し届かないということになっております。そういうことの関係で言うと、68歳という年齢の制限は実務的には非常に課題があるのかなと思っておりまして、その点、御検討いただく必要があるのではないかと思っています。

 もう一つ、今、高村委員もおっしゃいましたが、最近、労働法の改正が非常に頻繁に行われているということで、そういう意味でブラッシュアップすることの必要性を十分感じておりまして、その点で言うと、研修の機会とか経験の交流の機会が非常に大事なのではないかと考えております。

 その点も含めまして、ここに書いていただいたとおりでありますけれども、ぜひ、審判員全体のスキルアップという点、それから経験交流というような場を組織的に持っていただくということが必要なのではないかと思っています。

 そうすることによって、この労働審判制度が10年たって非常にうまく利用されている、それをさらに今後10年、20年うまく社会の中で定着をしていって、利用してよかったというようなことになるためには、もう少し制度的なフォローアップが必要なのではないかと考えておりますので、その点も含めて御検討いただきたいと思います。

 以上です。

○荒木座長 ありがとうございました。

 徳住委員。

○徳住委員 幾つか意見を述べたいと思います。

 まずIのアの点で、費用以外の手間の負担が大きかったということが紹介されたのですけれども、これをどう見るかだと思うのです。これはやはり労働審判等の利用をもっと促進するということと、都道府県労働局のあっせん等との連携性を強める意味で、この負担感をどう調整するかということも大変重要なことだと思うのです。

 ただ、これは現在の司法制度の中で裁判所が整備しようということで、結構大きな主張なり、証拠の提出を求めていますので、ここだけで議論することはできないと思うのですけれども、私は検討の余地があるのではないかと思います。

 その場合に、なかなか難しいのは、まず解雇事案だと何が解雇理由かということを特定しないと、規範的要件ですから、評価根拠事実になるか、評価障害事実になるかという、その事実が物すごくて、これが延々と広がっていく。労基法の22条が規定され、解雇理由をちゃんと示さなければいけないということですから、それをターゲットにすることはもう決まって、大変整備が進んできたのです。これは大変実務的に進歩があったと思います。

 ただ、その中で懲戒解雇事由については、最高裁判例があって、懲戒処分をしたときに認識したものしか争えないということですから、これもすごくターゲットが絞られているのですけれども、普通の解雇事件というのは、解雇理由について審理している中でどんどん理由が付加される可能性が大変あるのです。私が担当した解雇事件でも、評価根拠事実について100項目ぐらい労働審判にぶつけられたことがあるのですけれども、入社のときから協調性がないという事実をばっと並べてこられると、それに対する延々とした資料と反論が必要になってくる。

 そういう点では、私はこの問題について、争点に沿った的確な主張とベストエビデンスの証拠をお互いに出すという風土がないとなかなか難しいと思うのですけれども、その前提として、実定法の要件事実の不十分さが結構影響しているのではないか。解雇についても労契法の16条で法令がありますけれども、同条も大変広い窓口の判断、評価基準を含んでいますので、やはり実定法の要件事実の整備も進まないと、負担感というのはなかなか縮まらないので、解雇についても類型ごとにもう少し実定法的な整備を図る必要があるのではないかと思います。

 解雇理由の特定についても、懲戒解雇については特定されていますけれども、普通の解雇について、入社から全部のものを延々とやっているというのではなくて、解雇の意思表示をするに当たっての判断の時期とか内容等をもう少し特定するといった立法方策が図られる必要があるのではないかなと思っています。

 2番目の年齢の問題については、確かに定年が55から60になって、6065になっているところ、現在の高年齢の人は結構能力がある人が多いのですね。そして、現在、全部の裁判所の調停委員が70で頭打ちになっている関係があって、労働審判だけでなく、ほかの家事調停も全部70で頭打ちなのですね。ところが、先ほど輪島委員がおっしゃったように、65から労働審判員に任命される人もいて、この5年間だけではもったいないという意見が強くあって、例えば、私も山に登る関係でいろいろ先輩たちと登るのですけれども、「70で俺は頭打ちになったのだよ」という人も結構いるのですね。そうすると、もっとやれる能力と経験の蓄積があるのに、年齢制限はどうにかならないのかと言われたことがたびたびあるのですけれども、これはここだけの問題ではなくて、裁判にかかわる全部の調停とか労働審判員の年齢制限がかかっていますので、これをどうするかという問題が、今、高年齢化とともにあるのではないかと思っています。

 3つ目の意見としては、IIのイの金銭解決の基準についてですけれども、労働審判がスタートして10年になり、次第にできつつありますけれども、金銭解決の水準の相場観というのはまだ形成されていないのではないかと私は思うのです。労働審判官と労使の労働審判員それぞれの相場観のイメージがまだ調整されていませんし、使用者側、労働側の実務家も、群盲象をなでるという感じがしていまして、自分がなでた部分のものを論拠にして主張されていて、なかなか相場観が私は統一されていないのではないかと。その中で、一方的に解決金の基準を決めてしまうのは、難波元裁判官もおっしゃいましたけれども、すごく危険性を伴ってくる内容を含んでいるのではないかと思っているのです。

 難波裁判官は、「解雇無効のときには1年を前後して考える、有効の場合は3カ月を上限に考える」ということをおっしゃいましたけれども、あの話を裁判官がよく読んでいて、「いや、私と全然違う」という裁判官もいらっしゃるので、この点は相場観を合わせてやっていく必要があるのではないか。

 その場合に、ドイツの勤続年数の0.5という係数とか、そういうのと全然違って、我が国の場合は勤続年数はほとんど視野にないというわけではないですけれども、取り込む率が少なく、私の実感では解雇が有効か無効かということが決定的な要素になっています。そのほか、使用者の支払い能力とか、労働者の過去の貢献度とか、再就職の可能性とか、バックペイの期間とか、そういうものが考慮要素となっているので、その辺の全体的なものをどうするかということだと思います。

統計資料について、JILPTの行政あっせん、労働審判及び民訴(和解)の解決金額等の実態比較の調査結果は大変貴重な資料だと思うのですけれども、おっしゃるように対象が少な過ぎるのですね。各県とか地方裁判所毎で違ってくるでしょうし、しかもファクターが不十分なので、私はあの資料だけから分析するのはすごく危険を含んでいるのではないかなと思います。

 労働審判が非公開だということをどう考えるかですよね。この関係で、我々が例えば主文を開示してもらいたいといっても、裁判所は一切開示できない仕組みになっているわけで、分析が不可能なのですね。ですから、これをどう考えるか。ただ、家庭裁判所の扶養手当とか婚姻費用手当については、一定の基準に基づいて現在数値があるのですけれども、あれも非公開なのです。ところが、膨大な過去数十年の資料を最高裁が恐らく出したと思われるので、それに基づいて数値が出てきているので、やはり、10年、20年といった相当な情報を蓄積し、そのファクターが十分開示された上で分析をしないと的確な調査はできないのではないかと。分析するとしても、果たしてそれができるか疑問に感じますけれども、私は個人的にそういう感じを持っています。

 以上です。

○荒木座長 ありがとうございました。

 八代委員。

○八代委員 今の点について。最後に言われた労働裁判は非公開だからデータが集められないということについては、個人情報保護法の関係で、名前を消したり、実際の裁判が起こった関係者の名前が特定できないようにデータを処理すれば、公開することができるという原則を当然当てはめていいのではないかと思います。

○荒木座長 中山委員。

○中山委員 中山ですが、今、徳住委員のほうから話があった点について申し上げたいと思います。Iのアの費用以外の手間や負担の評価ということで、これは既に資料33ページで紹介された、労働審判制度についての意識調査の結果も踏まえて、書類の準備等の負担が大きくなっているということですが、もちろん負担が軽くなるほうがいいということですけれども、労働審判については、御承知のとおり、権利義務を踏まえた審判なり、調停ということになりますから、この書類の準備等の負担というのはまさに当事者双方の主張立証活動の問題であります。したがって労働審判の運用上は、第1回で基本的な主張なり、証拠を出す、心証もできるだけそこで委員会に形成してもらうという手続ですから、書類の準備等の負担がいっとき相当大きくなるというのはやむを得ない面があります。これを変えて手続きをより簡易にするというのは、そう簡単にいかないと思っております。

 例えば、解雇のケースであっても、確かにいろいろな主張をされるということですけれども、委員会の心証という面では、仮に会社が解雇した時点の10年も15年も前の採用時からの主張をしたとしても、それは解雇理由として心証形成で大きな影響を与えないと思われますから、労働審判の手続の中で当事者の負担を特に大きく取り上げて、これは問題だというのは当たっていないのではなかろうかと思います。

 それから、委員の年齢については、皆様からの指摘のとおり、やはり年齢制限を原則として解消の方向で慎重に検討するという方向で賛成でございます。

 3つ目、2ページのIIの部分ですが、金銭解決で、先ほど徳住委員のほうで相場観が形成されているとは言えないということがありました。もちろん、全裁判官、全労働審判員全てそういうものがあるかと言えば、そういうものはないということにはなりますけれども、私は労働審判を実務家として何件もやっている中では、このくらいの案件ならこのくらいかなというので、かなり相場的なものが意識されていると実感しております。これは以前この検討会に来られた難波裁判官もおっしゃったとおりです。ですから、難波裁判官が、こういう場合は1年かな、こういう場合は3カ月以内かなというのは、それが多少違う裁判官もいるかもしれませんが、だからといって相場観が何もありませんよということは言えないので、むしろかなり相場観というのが形成されてきている。それを統計上の分析の中で確認するとか、あるいはそういった内容を周知して、労働審判に行ったらどんな金銭解決をされているのだということであれば、大いに参考になるのではなかろうかと思っております。

 以上です。

○荒木座長 ほかにはいかがですか。

 水口委員。

○水口委員 1点目として、手続上の負担ですけれども、今、中山委員がおっしゃったとおり、労働審判の場合には、第1回期日前に十分な準備をして臨むからこそ、3カ月以内で解決というのができている。ここを簡単にしてしまうと、労働審判の3回以内での解決というのが非常に難しくなるので、労働審判の申し立てをする際のある程度の手続上の負担というのはやむを得ないのかなと。その準備をしっかりした上でやるからこそ、迅速に解決ができる。

 ただ、労働審判で100ページもの証拠を出すというのは、不適切、乱用的な問題であるので、それは是正されるべきだと思います。通常はやはりそういうことではないのだろうと思います。

 その意味では労働審判の解決までの時間的な見通しは出ているわけですが、2点目として、先ほどから議論されている金銭的解決の見通しですが、今までのヒアリングの中で私が受けとめているのは、鶴先生がおっしゃったように、今後、全ての情報を集めたデータベースを構築したらどんなものが出てくるのかというのは私も非常に興味があるのですけれども、現状、裁判所で個々の労働審判で情報を集めてデータベースを構築するというのは、非常に事務的な負担が多く無理だろうと思います。

 要するに言いたいのは、金銭解決というのは、既に繰り返し述べられてきたように、解雇が有効か無効かということをどうするのかという話です。その見通しがないと、あなたの場合にはどうなのだ、あるいは自分の場合にはどうなのだという見通しができない。となると、解雇有効か無効かを判断するのかは、今のところ、労働契約法16条の漠然とした客観的合理性、社会通念上相当性、これによって判断されるけれども、その具体的な中身は一般の素人の人が読んでもわからないということになっており、実体法の問題に戻ってしまうということで、相場と言う以前に解雇が有効か無効かを判断すること自体が難しい問題があると思います。

 3つ目、これは質問にもかかわるのですが、先ほどの厚労省の担当の方の説明を聞いていて聞きたいなと思っているのは、資料2の3ページの「考えられる検討事項」Iのアの黒ポツの2つ目、あっせん打切り時に、パンフレットなどを同封しているけれども、あっせんで合意しなかった際、その場での本人の意向を踏まえた他の制度の説明は必ずしも統一になされていないということですが、統一はされてないとして、具体的に何か口頭での説明をされているのか。そのときにどんな説明がされているのかという点についてお聞きするのは、紛争解決システム間の連携をするときに、現行制度を前提とすると、あっせん打ち切りになって合意されなかった当事者がどうなるかというのは非常に重要で、ここを改善すれば即効果があらわれるような気がしますので、統一的になされていないというのはどういう意味なのか、どのような説明をされているのか、ちょっと補足していただければと思います。

○荒木座長 大塚調査官。

○大塚調査官 今の御質問に対しまして御回答を申し上げます。

 あっせんの事務手続が各局で必ずしも統一されていない現状がございまして、あっせん委員の方は弁護士の方が大多数で、その方が行うのですが、それに相談員がついたりするわけです。あっせんが不調になって打ち切られるときに、まず当事者の方がどういうような御希望を持たれているのかを把握した上で、必要に応じてその手続の御案内をするわけですが、あっせん委員の方がみずから御案内することもあれば、そこに陪席している相談員から説明することもあるということで、まず、誰が言うかについても少しばらつきがある。

 その上で、何を使うかについてもばらつきがありまして、何も示さないでお話ししたり、あるいは前回の御議論のときにもごらんいただきました機関ごとの特徴などをまとめたパンフレットを示しながらお話ししたり、あるいはあれをもっとコンパクトにまとめて、裁判所とか一定のものに絞ったもの、独自につくったものをお示しして御説明したりといったように、何をもって御説明するかについてもばらつきがある。そういう現状にございます。

○荒木座長 今の点は3ですので、最後に議論しようと思っていた点ですが、関連する点は最後に議論したいと思います。

 大竹委員。

○大竹委員 2ページの先ほどの徳住委員、中山委員、水口委員からいろいろな御議論をいただいた、データを集めるかどうかということについては、多分難しいという議論というのはあったと思いますが、そういうのを集めていくことの必要性は多分合意ができているのではないかと思います。

 まず、現在どの程度の金銭解決の相場ができているかということについての御判断は、人によって違うというのはわかるのですが、相場が全くないところで審判を受けるというのは、審判を受けるほうにとっては不確実性が高過ぎるわけです。だから、裁判官、あるいは審判員がどんな人になるか、弁護士がどういう人がつくのかによって全然違ってくるというのであれば、それは信頼されないものになりますから、そこまでの話ではないというのは理解した上で、ある程度の相場は実際あるけれども、完全に一致しているかどうかというレベルの違いだろうと思います。

 ただ、それについてより早く相場を形成するためには、実態をできだけ集めていく。その情報を共有していくということが必要だと思いますから、ぜひデータを集めていくということについて要望したいと思います。

○荒木座長 石井委員。

○石井委員 Iのところでよろしいでしょうか。まず、負担の点についてですが、先ほど水口委員から言われてしまったという感じはあるのですが、使用者側が言うのも何ですが、使用者側で負担感があるというのは、やはり1回目までに出すものをそろえるようにと言われている点が大変です。ここの負担を軽くすると、迅速性のほうに影響するということはあるので、そこは念頭に置いた上で、議論する必要があるかと思います。

 使用者側の負担感について言えば、制度の仕組みとしては、答弁書を出した後は準備書面ではなくて、あとは口頭で丁々発止やるのだと規則もなっているのですが、実際には準備書面も出すし、出れば反論させてくださいということになるというのが負担増につながっているかと思います。

 東京地裁などでは陳述書は別に要らない、答弁書の中に書き込んでもらえて、当日、上司と本人が来てもらえばいいということだったのを、そこはあくまで運用の問題ではありましたけれども、だんだんそうでもなくなって、どうしても陳述書、書証を出したいという方向になってきていると思いますので、そこは運用上工夫していくという形で解決できるのではないかと、この負担感の点については思いました。

 もう一つは金銭解決の予見可能性の点ですが、さまざまな事例についてこういう解決がなされていますというのが、固有名詞は当然抜きで出されるというのは労使双方にとって役に立つことだと思いますので、事例についてはもっとオープンにされていいという気はしています。

 ただ、統計的処理について言うと、そもそも労働審判で調停で解決しましたというのは、白黒つかないうちに解決するものですし、この場に審判員を担当されている委員の先生もいらっしゃいますけれども、ずばり言うときもあれば、どっちだかわからないけれども、解決としてこれがいいのではないかというのも結構多いと思いますので、解雇の確度という切り口で調停の相場を統計的に処理していくというのは難しいと思います。むしろ、調停の解決としては柔軟性が大事な要素だと多分思っていらっしゃると思うのですね。個別事案に応じて。大体、判例ではこういう事例はあるけれども、本件はこうでというようなあり方だと思いますので、そういう仕組みも踏まえて検討していただければと思います。

○荒木座長 長谷川委員。

○長谷川委員 負担感の話なのですが、このアンケートで負担感があると回答したのは2011年時点の話ですよね。このころは労働審判が始まって5年間ぐらいの話で、制度創設当初から、どちらかというと、今、石井先生がおっしゃったように、使用者側代理人のほうが負担感が多いという意見もあったのです。それはなぜかというと、労働審判制度の仕組みがまだ周知徹底されていなかったので、そもそも労働審判というのはどういうものだろうかというところから始まったのです。とりわけ第1回目の審判に当たった代理人は、とにかく第1回期日までに証拠書類を全部そろえろと言われて物すごくびっくりした、何をやればいいのだろうと言っており、これは当時、非常に話題になったのです。

 その後10年も経過してくると、労働審判はとにかく第1回の期日までに証拠書類をそろえなければいけないということが、私はこの10年間で弁護士の中で定着してきているのではないかと思っています。ただ、それでも徳住委員が言った負担感の問題は、また少し別な話なので、この辺は分けて議論したほうがいいかなと思います。

 それと、労働審判制度創設のときも、民事訴訟法改正のときも言われたのですが、双方の弁護士の意識の変革が必要だと言われたのですね。やはり弁護士は、第1回期日から次に第2回期日、第3回期日まで時間をたっぷりとって、その間に準備するということになれていたので、日本の民事訴訟は時間がかかり過ぎると言われており、裁判の迅速化の議論の際にもっとスピードアップしようという議論がこの当時もされていました。労働審判は3回でやるわけですから、とにかく第1回目の期日が重要で、第1回期日に書面をそろえるということが言われており、制度ができて大体10年が経過したなかで、その点は労使双方の弁護士も理解してきているのではないかと思います。この点について、アンケートの結果と実情は少し違うのではないかと思ったので言っておきたいと思います。

○荒木座長 それでは、先に行ってよろしいでしょうか。村上委員。

○村上委員 資料2ページの時間的・金銭的予見可能性についてです。まず、時間的予見可能性について、国民にわかりやすく提供されているわけではないという声があるので、それをどう高めていくかという問題提起をされているのですけれども、これについては最高裁の統計でも、平均75日前後であるということは示されておりますし、3カ月以内に7割の事件が解決されて、6カ月以内にほとんど全ての事件が解決されているということがありますので、それを労働者が、使用者側もそうですけれども、双方の相談を受けるであろうと思われる方がそれをきちんと認識していただくということが大事なのではないかと思います。

 本日出されておりませんけれども、東大社研の調査においても、「労働審判手続が始まった時点で、労働審判手続が終わるまでにどのくらいの時間がかかるか事前に予想がついたか」という質問に対し、ある程度予想がついたと回答されている方が6割以上と3分の2ぐらいになっておりますので、恐らく代理人がきちんと説明されていれば、ある程度の時間的予見可能性はあるかと思いますので、そういった方策を考えていくべきではないかと考えます。

 また、先ほど来議論されている、金銭的予見可能性のデータの問題について、私も石井先生と同意見です。非訟事件でありますので、解雇に関する確度については記録がないという中で、データのとりようがないのではないかと考えておりますので、その点は石井委員と同じ意見だということであります。

○荒木座長 それでは、次のテーマ、5ページの4「その他」ですが、前回、企業内等でも自主的な紛争処理、苦情処理について、もう少し議論すべきではないかということがありまして、今回取り上げております。この点について御意見、御質問等があればお願いいたします。

 山川委員。

○山川委員 御要望の土田先生がきょう出てこられないので、別に代理人というわけでもないのですけれども、前回申し上げたことと一部重複するかもしれませんけれども、今回資料No.1の60ページに新しく事例の紹介がなされています。アンケートを使う。労使双方やっておられるようで、あとホットラインを設けるといったようなことが苦情処理の先進的な事例ではなされています。要するに、現場レベルで不満を把握して、それに対応する、そういうことが重視されているということがわかるかと思います。

 この調査研究にかかわったのですけれども、ほかにもいろいろ興味深いものが出てきまして、苦情、不満の解決や予防のための取り組みが必要であるかという企業調査をしましたら、必要が高い、あるいはやや高いが60%くらいという回答でした。

 それで、苦情処理に当たって管理職に必要なスキルということを聞きましたら、重視されるのは問題解決能力とかコミュニケーション能力ですが、不足していると思われる必要な能力としては、苦情処理に関する専門知識とか苦情処理の経験ということで、要するに、企業内での苦情、不満への対応のニーズはあるけれども、苦情処理に関する専門知識等のスキルは不足しているということを企業は考えているということがわかったのではないかと思っております。

 それで、一定のニーズはあるということで、あとはどうするかということについては前回も少しお話ししましたけれども、性質上、何かをかっちりと強制するということではないので、今のところは情報提供とか好事例の紹介、あるいは現状のさらなる把握。これは2008年のデータですから、パワハラの問題がまだそれほど強くは出てこなかった時期ですので、今はもうちょっと様子が違っているかもしれないという感じがいたします。いずれにしても、そういった実態の把握とか情報提供、ないし好事例による支援、あるいは管理職のスキル形成の支援ということもあるかと思います。

 あとは、この調査研究で比較的気がつきましたのは、労使団体といいますか、労使の役割も大きいと。組合も一定の役割を果たしていますし、労使協議の上でこういったものに対応しているものもあるということであります。

 さらに言いますと、ここからは調査研究とは別ですが、労使団体の役割もこういう点、特に紛争予防ないし不満の対応という点でも大きいような感じがいたします。前、新田先生がどこかのエッセーで、未組織経営者というような話を書かれておられまして、未組織労働者という課題もあるのですが、一方では経営者団体に入っている方は団体側で紛争の予防のための努力をいろいろされておられて、そちらの影響力も強いと思うのですけれども、未組織であるとやはり紛争が起こりやすいのかなという感じがしていますので、そういう労使団体の役割も重要ではないかと思っております。これも、公的にどうするのかというのは、また別の話かもしれませんけれども、例えば労使団体と紛争解決機関が一定の協力ないしは連携を図るということも、思いつきですけれども、考えられるのではないかと思います。

 以上です。

○荒木座長 ありがとうございました。

 徳住委員。

○徳住委員 企業内の苦情処理とか通報制度が機能すれば、将来、日本の企業の中における解決する道としては重要だと思うのですけれども、私たち労働側の弁護士から言わせると、秘密性と中立性が全く確保されていないという問題があり、労働者に勧めても労働者自身が拒否するのです。労働組合に言っても全部人事部に通知されるという現状があるので、労働者が労働組合とか企業内苦情処理制度に相談するのは秘密が確保されないということで、信頼性を欠いている。

 もう一つは中立性の問題で、これは労働審判制度ができるときに、労使の審判員が中立的に判断できるかという問題があって、これが大きな争点になったのですけれども、これは労働審判員の中で、労働側も使用者側も自分の考え方によって中立的にやる、使用者側は使用者側を勝たせるための審判員でなくて、労働側は労働側を勝たせるための審判員でないという、中立的な判断をするということを確認されてやって、それが機能しているわけです。しかし、どうも日本の場合、企業内の苦情処理とか通報制度は、そうはいかない。上司に言うと、全部本人の意見を抑え込む方向にしか行かないし、人事部に通報した場合、こいつがこういうことを言っているという形で、その後の人事評価で悪くなるという危険性が含まれているので、この辺を本当に解決できるかという問題があると思うのです。

 荒木先生も、最近、アメリカの仲裁制度のことをお書きになっていますけれども、私も30年前にアメリカの仲裁制度の調査に行って、なるほど、こういうものが我が国にも入ればいいなと思ったのは、アビトレーターでした。日本の場合、アビトレーターのように、相談を受けた人が中立的に、会社の人事とか何かは関係なく、本人と会社の仕組みを考えて適正に判断できる人がいるかというと、いないのですね。ですから、我が国の職場の中で、苦情処理を申し立てて、あなたの言い分は当然だから、会社も是正しなければいけないとか、上司も改めなければいけないとか、そういう中立的な判断ができる仕組みがあればいいのですけれども、ほとんど機能していない。ですから、私は今のところでは、労働側は企業内の苦情処理とか通報制度はなかなか利用しがたいのではないかというのが私自身の考え方です。

○荒木座長 高村委員、どうぞ。

○高村委員 今、徳住委員からお話があったのですが、私も全く同感なのです。厚生労働省が毎年6月に個別労働関係紛争解決促進制度の施行状況というのをまとめていますが、私が、日々受ける労働相談の中で、今、民事上の個別労働相談件数で一番多いのは職場のいじめ・嫌がらせなのです。それが4分の1ぐらいになっている。ですから、私が受ける相談でも、職場におけるいじめ・嫌がらせが一番多いのですが、さらに「そういうことを相談する窓口はありますか」というと、あるというふうには答えてくるのですが、「そこには相談しましたか」と聞くと、相談していないのですね。相談しても自分が不利益を受けると見ている労働者がやはり非常に多い。だから、社内にそういう制度があっても、社員自身、その制度が本当に公正に中立に運用されるというふうには見ていないという実態にあると、私は日々労働相談を受けて感じています。

○荒木座長 大竹委員。

○大竹委員 企業内の苦情処理委員会の利用が少ないということの評価は、1つは今御指摘があったとおり、信頼されていないという可能性はあると思うのですが、もう一つは、最後の手段として機能しているからこそ使われないというか、抑止力として機能しているという可能性もあって、理屈の上ではどちらの効果かわからないというところはあるかと思います。警察官が増えたら逮捕件数が増えたというのがいいのかというとそうではなくて、犯罪の発生率が減るのがいいわけですから、苦情というか、不満が減るようになっていれば一番いいわけです。この文章で、苦情処理を利用する人がふえればいいというように読めるというところだけは、解釈は複数あるのではないかということを指摘しておきます。

○荒木座長 企業内の苦情処理システムの信頼性の問題が指摘されたのですけれども、よろしければ、山川先生、アメリカなどで、オンブズパーソンとか、そういうものの活用状況と日本の状況の違いなどについて、御発言いただければと思いますが。

○山川委員 事実としては、そういった企業内のシステムに対する信頼がないということは、大竹先生の言われたようなファクターもあると思いますが、他方で現実にはなかなか行こうとしないというのは、日本の状況としては双方あり得るのではないかと思います。

 まず64ページですけれども、公益通報制度については比較的窓口が使われている傾向がある。しかも、本来の法令違反よりも人間関係とか人事労務関係、職場関係が多い。これは私の印象では、公益通報制度というのは、かなり守秘義務とかがしっかり定められている。これは企業側のニーズがそうならざるを得ないというか、現場で法令違反を潰されるのを防ぐので、トップに直結させるというようなニーズが多分公益通報にあるからだと思っています。

 社内外いずれにも設置しているところが半数以上を占めているということも、社内でもみ消されるようなことをむしろトップとしては防ぎたいのだと。そうでないと、企業が潰れるおそれもあるからだと。そういう意識でかなり厳格に遣われているために、安心して行けるということもあるのかなと思っています。

 事実認識としては共通する面があるのですが、むしろそこが守秘義務とか報復措置がないという点で課題になるのではないか。そういうものをつくれるかどうか。あるいは、そういう人材を育てるかどうかというのが将来的な課題であるから、逆に制度として何か強制されるような段階ではないであろうということです。

 アメリカでは2つの点がありまして、1つは荒木先生が御指摘のオンブズパーソンというものがあって、社内の独立相談室みたいなものがあります。この間もそこの役員の方がJILPTに来ておられたのですけれども、強制権限を持つわけではないけれども、従業員からさまざまな、あるいは上司からさまざまな相談を受け付けて、事実関係の把握と自覚、さらには社内の制度についてはこういうオプションがあると。抽象的な情報をたくさん集めた上で、経営者にアドバイスをする。例えば、職場でこういう不満がいろいろたまっているようですから対応したらどうですかという、個別の対応というよりも、社内の人事への改善提案を行う組織が、大企業中心ですけれども、かなり出てきています。

 それの背景の一つは、そういう人材がアメリカでは育っている。心理学専攻と法律専攻がいろいろあって、心理学専攻のほうが多いみたいですけれども、苦情に対応できる一種のプロフェッショナルで、かつ中立性も保持する。これはそういった専門職団体があって、そこで自律的なルールをつくっている。仲裁もそうだと思いますけれども、そういうものがあるので、そのような形のスキルなり、人材の形成ができてくるといいなといいますか、有効ではないかと感じがしますけれども、日本でもオンブズパーソンということで設置している企業も少しあって、実態を聞いたこともありますけれども、今後の課題ということになろうかと思います。

 もう一つ、アメリカの場合の特色は、要するに裁判に行かれると大変だと。陪審制度、懲罰的損害賠償制度、集団訴訟ということで、予見可能性もないし、コストも莫大ということで、外部に行かないことによる経済的合理性を企業のほうが積極的に感じている。日本だとまだそこまでは行っていないのですが、外部機関の利用が活発になると、社内での紛争苦情処理制度のインセンティブは使用者にとっても出てくる。そういう状況がアメリカではあるかなと思います。

 以上です。

○荒木座長 ありがとうございました。

 水口委員。

○水口委員 企業内の紛争処理システムについては、私も経験的に言うと、ほとんど役に立たないと思っているのですが、実はつい最近、非常に見事に解決された会社がありました。誰でも知っている大企業に勤める若い女性で、しかも有期の社員の方がセクハラ、パワハラということで相談においでになった。会社に在職していきたいという要望だったので、司法手続よりは社内のほうがいいだろうということで、その会社を調べてみると、相談窓口があり、その相談の処理機関には社内弁護士がいて、かつ企業側の人事部、それから労働組合の代表もいる処理制度が整備されていたのです。そこに申し立てをして、相談者は女性でセクハラの事案だったところ、社内弁護士は女性だったし、組合から出ている人も女性、人事部は人事の人からなる体制で聞き取りをして見事に解決をしてもらって、その後、正社員になって働いているということになった。これは労働審判とか裁判に持っていけばスムーズにいくとは限らないものを、そういう信頼されている制度を構築されている企業、これは大企業しかできないと思いますけれども、社内弁護士あるいは弁護士が体制に加わるということで信頼を得ていたと思うし、そういうふうに運用されていた。

 一方、うまくいかなかった事例でいったら、これも誰が聞いても知っているような大企業ですが、セクハラを訴えたところ、人事部の人が来て、第1回にいきなり加害者とされる人と同席をさせて、「あなたの言っているのはこの人はそうじゃないと言っているぞ、どうなんだ」という対応をするとんでもないところもありました。これは10年ぐらい前の話ですけれども、その意味では、そこの公平性を守る制度みたいなものを統一的なルールみたいなものが必要だと思います。

 あと、これは最近相談を受けたのですが、イクメンですね。男性で奥さんが働いていて、双子だと。労働者にとってみれば、残業ができないということで、ずっと査定が悪くされている。これを何とかしてほしいということでしたが、彼は正社員でそれなりの幹部候補生ではあったため、裁判をやるわけにいかないねと。その会社では、そういうセクハラとかハラスメントの窓口は弁護士に相談してくれということがホームページに出ているのですね。そのホームページを見て、私の知り合いの経営法曹の方がいたので、この人に当たると絶対うまくいくよということで、申し立てをしようかというところまで行ったのですが、それが人事部に伝わってしまい、自分の出世に影響するかもしれないと言われて断念したという方もいます。そのあたりの守秘義務を守るということと、企業が中立、公平な方を担当させる仕組みをどうつくっていくのかということの安心感がない限りはなかなか難しいし、まだ日本はアメリカのような形までは行っていないのかなと思います。ただ、きちんと運用しているところはうまくいっているようです。

○荒木座長 ありがとうございました。

 企業外での紛争処理のことを議論しておりますけれども、企業外紛争処理は雇用関係が切れた後の処理という傾向が多くて、在職中に雇用関係が切れずに紛争処理をするというのは実は非常に大きな課題で、その点についても十分留意すべきではないかということで少し議論いただきました。

 それでは、一番大事なことかもしれませんが、3の「個別労働関係紛争解決システム間の連携」について御議論いただきたいと思います。どうぞ、御自由にお願いします。

 小林委員。

○小林(信)委員 中央会の小林でございます。

 今までのお話を聞いていて、中小企業にとって、個別紛争でいきなり裁判に行くとか、そういうのが一番困るので、今お話に出ていたような、苦情処理とか不満解消のための適正な労務管理を企業でつくっていくこと、私どもも経済団体の一つでございますので、これは今後しっかりやっていきたいと思います。

 もう一方、資料1の43ページ、47ページにありますように、労働審判の手続とか、こういうことについてどこに相談に行ったかというのがありますけれども、前回もお話ししましたが、使用者の方々が労働局に相談に行っていないというのがすごく多いのです。労働者の方々はいろいろな形で労働局に相談に行くのですけれども、使用者の方々は労働局に相談窓口があるというのも全く認知していないという実情があるのだと思います。

 ふだんで言えば、中小企業にとって監督署の方々に入られるのが一番怖いところであり、一方でいけば、ハローワークというのは雇用保険の窓口があって、労働局関係では監督署とハローワークについては十分認知はしているのですけれども、労働の相談の紛争が起きた場合の相談窓口というのは、あること自体を知らないというのが現状だと思います。これは私どもの団体も一生懸命に広報しますけれども、労働局にこういう相談の部署があるということを周知するという工夫が必要であると感じているところでございます。

 先ほど申し上げたように、中小企業にとって直接裁判に提起されるのが非常に困る状況にあるというのは、そういう経験をした方々は多いと思うのです。そうでないような形にする、時間的、費用的にも裁判の手続に進むのではなくて、簡易な、迅速に進むような労働局のあっせんとか、そういうのを望んでいるところがあると思います。このため、可能であれば、裁判所の手続の前に、行政手続をチェンジするような方法が何かあるのかどうか、ぜひとも専門の方々に御検討をお願いできればと思います。仮に難しい場合であっても、労働局やそれ以外の相談窓口において、事案の内容や相談者の意向に応じて適切な振り分けができるようなことが重要だと思っています。

 先ほど、事務局のほうから説明がありましたように、相談員の方々とか事務局の方々によって振り分けが変わるというのではいけないと思いますので、ただ単にニュートラルに説明するだけではなくて、積極的に、簡易、迅速を求める方については労働局を紹介するとか、そういう形の制度ができたらと思っています。適切な振り分けができるような仕組みづくりを御検討いただければということでございます。

 以上でございます。

○荒木座長 ありがとうございます。

 鶴委員。

○鶴委員 ありがとうございます。

IIの部分の最後に、振り分けのような、例えばというところがありますね。「集団性の高いものと個別性高いものなど、紛争事案に応じて解決機関を分けてく」という御提案があります。

 それで、前回もそうなのですけれども、労働委員会の活用というのがいろいろな面で、この検討会でも議論されてきたと思います。できるだけ活用がなされるということで、ここの意図というのは多分集団性の高いものは労働委員会ということも少し御考慮されていて、そういう仕分けをすることによって、より活用の機会がふえるというような発想であればいいのですけれども、一方、余りこっちはこっち、こっちはこっちというような、例えば労働局と労働委員会を仕分けをするようなことは、必ずしもより活用していくという趣旨からするとちょっと違うのかなという感じを持っていますので、少し振り分けをやるということも、全体の活用をさらに促進していくということをきちっと担保した上でのお話であるべきなのかなと。そこがちょっと気になりました。

 もう一つ、この資料の中で気になった点は、その前の、要は諸外国の前置の話なのですけれども、ACASとかドイツなんかで前置を行われている背景というのは、とにかく物すごい多くの件数を処理しなければいけないので、そういうものが置かれているのだと。日本の場合は、処理件数を見たらかなりオーダーが違いますよねと。そういうものを処理するためにそういう制度があるので、日本の場合は余りこういうものを考える必要がないかもしれませんねと、私自身はそういうニュアンスでとったのですけれども、先ほど小林委員からのお話もあったように、例えば中小企業にとってはどうしても裁判というところになかなか行きたくないなと。そういうお立場というのはあるのだと思うのですね。

 そうした場合に、こういう前置の機関をどうしても設けなければいけないかどうかというのは、私はいろいろ議論があるところだと思うのですけれども、受付の数というところでその可否を決めるということではなくて、そういう新たな制度を導入するためのコスト、それを導入した後のベネフィットというのをきちっと勘案する中で、その新しい制度を導入すべきかどうかというのは議論すべきではないのかなと。

 何回も申し上げて恐縮なのですけれども、制度とこういう件数というのは、私は内生的に同時に決定してくると思っていまして、日本が少ないのは日本の今のこの制度、今のいろいろなあり方を前提とした数字であって、制度自体が変われば当然件数も変わるかもしれない。ドイツが40万件入ってきている。日本は7,000件程度である。では、ドイツのほうが40倍も50倍以上も労使の関係が悪いという数字ではないのだと思うのですね。

 そういうことを考えていくと、ちゃんとそれなりの迅速な制度ができてくると、もしかしてそういう件数というのはふえてくるかもしれない。でも、それをうまく処理ができるようになれば、そういう潜在的な需要を処理できているということで、国民経済的に考えればプラスであろうということなので、現実、今の制度を前提とした数字だけであり方を考えてしまうということはやや短絡的なのかなと。なので、もう少し制度をどうするべきかというのは、もっとほかの要因も含めて議論をすべきであると思います。

 以上です。

○荒木座長 ありがとうございます。

 水口委員。

○水口委員 先ほど、労働局であっせんが不調になったときの対応について質問してお答えいただいたので、それに関連して思うですが、あっせん打ち切りになった段階でアドバイスがすごく大事だと思うのです。その際に、あっせん打ち切りになった理由が、例えば重要な解雇事件であるか、重要な解雇に関する事実関係に大きな争いがあって打ち切らざるを得ないということなのか、それともそこはそんなに大きな争いはなくて、お金の問題で打ち切らざるを得なくなったのかとか、その理由をわかっているのはあっせん委員の方だと思うのですね。相談員も同席されているとなればその相談員かもしれません。その打ち切りになった理由も含めて、私が相談員だったら、弁護士として次の手段をどういうふうにしたらいいのかという点について、そのあっせんが成立しなかった事情に基づいたアドバイスができると思うのです。

 打ち切りになったときに次にどう進むのかということを、もちろんパンフレットなどを使いながら、委員が忙しければ、そのあたりをちゃんと委員と相談員が打ち合わせをしながら、一定程度、5分でも10分でもアドバイスをするということが非常に重要なのではないかなと思っています。そこは労働局のあっせん委員なり、相談員なりでそれぞれ相談して、統一的な方向性をぜひ出していただければと思っています。

 事実関係が本当にハードに争いがある、例えば横領したのかしないのかで労使が物すごく争っているということになれば、本訴ということになるのかもしれない。ただ、ミスは認めるけれども、横領と言うと語弊があるような、例えば何かの金銭的なトラブルミスがあったものの、そこまで金額が高くなくて、事案としてひどくなければ、労働審判での調停ということになるかもしれない。例えばそんな振り分けをできるのはやはりあっせん委員なのかなと思いますので、そのあたりは即効性がある工夫なのではないかなと思っているところです。

 それから、調停前置の話が少し出ましたけれども、労働審判をつくるときにまさにその話が出たのですね。その意味では、労働審判をつくるときに、当初は労働調停だけにしましょうかという話もありました。それを審判とビルトインしてつくる、かつ、本訴のように重い手続ではなくて、迅速につくるという制度設計で、労働審判は調停がビルトインしてつくられているということが議論の前提になっているということは、念頭から落としてはいけない。そういう労働審判が整備をされた日本において調停前置にするかということになるわけですので、労働審判は調停がビルトインされている以上は、私は調停前置というのは違うと思います。他の手続で生かすとすれば、労働局などの行政手続かなと思っています。

 以上です。

○荒木座長 大塚調査官。

○大塚調査官 水口委員の貴重な御指摘、ありがとうございます。前段部分について、若干補足させていただきますと、水口委員の御発言の冒頭に、事実関係について争いがあった場合なのか、それとも金銭に折り合いがつかなかった場合なのかによってというような御指摘がございました。労働局のあっせんにつきましては、前回の御議論でも御説明申し上げましたように、事実関係について認定するという仕組みはとっていませんで、そういう意味で、両当事者の事実関係の主張を突き合わせて、これがこういう事実関係だったからというふうに認定していくようなやり方は多くの場合はとっておりません。ですので、議論の前提といたしましては、金銭的な折り合いがつかなかったので不調に終わるということがかなり多いというような御理解の上で御議論いただければと思います。

 以上です。

○荒木座長 水口委員。

○水口委員 それは私はよくわかっていて、事実認定をするということではなくて、当事者があっせんを合意しないのは、最終的には金銭の折り合いがつかなくなるわけだけれども、なぜ金銭の折り合いがつかなくなるのかという理由が、事実関係での対立が激しいからなのか、事実関係としてはそんなに争いがないけれども、こんなお金は払えないよというような評価や心情のレベルなのかというのは、紛争調整委員をやっている法曹なら大体わかるので、事実認定とはちょっと違う話だというのはぜひ御理解いただければと思います。

 以上です。

○荒木座長 徳住委員。

○徳住委員 2つ述べたいと思うのですけれども、1つは集団性の高いものを踏まえた個別紛争の問題について、前回、労働委員会の調停とかあっせんがもっと活用されるべきではないかということをお話しして、土田委員がそれをフォローされたのですけれども、実は労働審判を始めるときに、裁判所が不適応事案ということで提示した幾つかの例があるのですね。もちろん公務員の処分のようにそもそも労働審判で扱えない事件もありますけれども、集団性の高いものは不適応事案だと。そのうちの整理解雇とセクハラについては、労働審判でやっても結構解決するものですから、これは労働審判でもやると。

 最初は、整理解雇の事案の申立人が13人いても、一人一人それぞれ審理ということをやっていたのですが、今、併合してやっている。セクハラの事案も密室性で事実認定が難しいから持ってくるなと言ったのですけれども、労働審判でやってみると、どうも使用者側も裁判所が言う解決金額で社内を説得するということで結構使われているのです。

 問題なのは、集団性が背景にあるような事案で、差別されているという場合の事案とか、就業規則の不利益変更とか、そういう集団を背景にした事案は労働審判に持ってくるなという中に入っていますので、私はこれらの事案は特色のある労働委員会できちっとやるべきではないかと。あっせんでの対応が適切なので、もっと労働委員会もそれを利用すべきではないか。

 もう一つは、労働審判委員会は権利義務を踏まえますから、権利紛争の機関だということになっているのですけれども、利益紛争のものも若干含まれているのです。つまり、配転させられて、私は6年間あるところに行ったけれども、戻してもらえないとか、賞与が低いとか、これは権利ではないのですけれども、そういう利益紛争的なものも労働審判委員会が扱っているのですけれども、趣旨から言うとちょっと違うのではないか。

 この間、土田委員がおっしゃったように、利益紛争的な、例えば自分の評価が悪くて昇給が少ないとか、賞与が少ないとか、そういう人事評価を裁判所で争うことはなかなか難しいのですよね。そういう点での妥当性も含めて労働委員会でやる点は十分あって、これらの群は労働審判だけでなく裁判で争うのもなかなか難しい点もあるので、ぜひ労働委員会で力を発揮してもらいたいということです。

 それと、都道府県労働局のあっせんの前置の問題ですけれども、これは相当慎重に考えるべきではないかなと。労働審判をつくるときも、あれは四審制になるのだと言われました。労働審判委員会に出せば、一審、二審、三審となって、四審制になって、労働者の救済が遅れるということで、これは大問題になりました。現在、労働審判は75日で解決して、異議訴訟に行く。異議を出した場合に通常訴訟に行っても、労働審判委員会で出た書証はそのまま移りませんけれども、そこで主張された証拠になったものを踏まえて、新たに訴状から準備書面を出して審理を図るという、そういう約束事でやっと労働審判を入れても時間的に不都合が生じないという制度設計出やっているわけです。それに前置をかませると、労働側から言うと、解決までの期間が長くなってくるのではないかと思って、私は慎重であるべきだと思っています。

 以上です。

○荒木座長 長谷川委員。

○長谷川委員 今、徳住委員がおっしゃいましたように、都道府県労働局を前置にすると、完全に解決までの期間が長くなるので、私は前置は取り入れるべきではないと思っています。

 それと、ちょっと話が前後しますけれども、企業内苦情処理制度について、セクハラや評価制度などの苦情処理では比較的活用されているのです。しかし、企業の苦情処理制度を議論するときに、私の頭の中ではそれも前置になるのではないか、訴訟のときの前置にされるのではないかと、そうした考えがすごく念頭にありまして、したがって労働局の前置とか企業内苦情処理制度の前置の扱い方については慎重にやらなければならないなと。

 特に、労働委員会の命令で、派遣先に相談をできるとなっているのに、それを利用しなかったということが書かれたことがありました。企業内苦情処理制度だとか、労働局のあっせんが前置だと言われると、解決期間が長くなってくるということに加え、そういう複雑な手続は入れないほうがいい。

 とにかく解雇されたら、労働者はまず一番先に労働局に行こうと思って行くわけですから、そこで相談したりとか、あっせんを受けたりするほうが私は早く解決できるのではないかなと思っています。

 もう一つは、相談員のスキルアップをすることだと思うのです。労働審判に持っていくか、労働局のあっせんでやるのか、労働委員会でやるのか、通常訴訟でやるのかというのは、相談を受けた相談員のスキルが十分にあれば、例えば水口さんのような方が窓口にいたら非常にいい交通整理をしてくれるのではないかと思うのですね。私はそういう人たちがこれから相談窓口に配置されていくべきではないかなと思います。

○荒木座長 山川委員。

○山川委員 担い手を図ることは大変皆さんの御指摘のように重要であると思います。その際につけ加えることですけれども、一つは労働局のあっせんのお話ですけれども、不調のときにこういう選択肢もあるというのは何らかの形ではされているかと思います。他方で、申し立て段階というか、申請段階というか、その段階でどのぐらい選択肢を把握しているのか、今の相談員のお話ともかかわりがありますが、それほどはっきりはしない。

 あっせん委員の経験上、差し支えない話ですけれども、聞いてみると、どうも裁判は最初から視野に入っていないことが多いのではないか。そもそも民事裁判に行ってしまったら手続外になってしまうということもあるのかもしれませんけれども、あっせんを勧める際にも、先ほどの水口先生のお話ともかかわりがありますが、事実関係に争いがあるという場合に、こういうのは裁判で行かざるを得ないのですねというのを、途中の段階で説明するようなことが割と多いのですが、最初からそういう選択肢もあるということを知っていたほうが、諸制度の活用についてはいいのかなという感じもいたします。これは相談レベルでのお話になるかもしれません。

 もう一つは、次にこれは先ほど鶴先生からお話のあったところで、今回の論点ペーパー、資料No.2の5ページ目の最後の丸のところで、事案の性格といいますか、紛争の性格というのはもちろん考慮すべきことではあるのですが、手続の性格みたいなものも暗黙のうちに含まれていると思うのですが、やはり労働委員会の場合は三者構成ということが大きいかと思います。これはやり方はいろいろですけれども、紛争解決システムで一つの重要な要素は、一般的に言えば、システムとか手続は信頼性のようなものかと思っていまして、労働審判が非常に好評で運用されてきているのも、やはり労働審判員という形で労使の経験者が入って、非常にバランスがとれた意見を言ってくれると。

 あと、中立性というのも非常に重要で、これはスキルアップとか、労使ともに交流する必要性ということになって、やや話が外れますけれども、そういう意味での信頼性を確保するということが重要でして、労働委員会の場合、やはり労使がかかわると、労側委員が説得してくれる、あるいは使側委員が説得してくれる。これは中立の公益委員よりはるかに説得力が高いのではないかと私は思っています。私が何か言っても余り聞いてくれないのですけれども、不当労働行為の手続ですと、労使の先生が控室に行ってくれると、よくわからないのですが、話をまとめて帰ってきてくれる。このぐらいは言っても差し支えないと思いますけれども、それはやはり経験と信頼のなせる技だと思いますので、その意味では労働委員会の手続面での特色も考慮した連携と。それを利用者、ユーザーの方々、使用者も含めてですけれども、アピールしていくということではないかと思います。

○荒木座長 ありがとうございます。

 ほかにはいかがでしょうか。事務局から。

○田村労働紛争処理業務室長 今の山川先生の御指摘についてですけれども、先生が御指摘のとおり、打ち切り時には必ず少なくとも文書で、こういうほかの制度がありますという書類はお送りしています。一方で、最初の相談の段階では、やはり相談者側の話しか聞いていない中で、相手方の例えば使用者側がどういうふうに主張されているかというのがわからず、どのぐらい事実関係の主張の隔たりが大きいのかということ自体もわからない段階で、どういう事案でどういう解決機関がなじむのかというところの判断がなかなかしにくいというところがあります。

 どうしても我々行政機関でたらい回しというような御批判は避けなければならないというようなこともありまして、労働局に何らかの支援を求めていらっしゃる方々に対して、労働局ではこういうことができますということをまず第一義的には御説明をして、ほかにどういう手続がありますかと積極的に聞かれた場合には、積極的に御説明をしているのですけれども、そういう御質問がないときには、場合によってはしないということも実態としてはあります。そのあたりをまた先生方のどういう場合にはどういう手続がなじむというような御意見を踏まえながら、現場にどういう形で示していくかというのは検討課題だと考えているところです。

○荒木座長 山川委員。

○山川委員 ありがとうございます。

 私も、特に相談の段階でこれはどの手続だというのも、そもそもこういうオプションがありますという、それくらいでの話ということでした。

○荒木座長 長谷川委員。

○長谷川委員 今の事務局は、もう少し自分たちの行政サービスはどうあるべきかというのをもうちょっと踏み込んで検討しなければいけない。解雇された労働者は、「私、解雇されたのですけれども、どうしましょうか」と自分のことだけを言うのです。「解雇された、解雇された、あさってからの生活が困る、困る、困る、職場に戻りたい、金が欲しい」とあっちにもこっちにもいっぱい言うのです。そういった相談者の話を「そうですか」としっかり聞き、そして「どうしたいのですか」ということも聞きながら、「これを解決したいのならこういうやり方もありますよ、こういうやり方もありますよ」と伝えることが大切なのです。そのためには話すことが重要です。先ほどの答弁では、ヒアリング能力と対応能力がないということを自分たちが言っているようなものですよ。だから、もっと相談員がヒアリング能力をつけて、いろいろな紛争機関があるなかでどういう解決をしているかという情報をしっかりと提供することが必要なのです。だから、私は水口さんがいいと言ったのはそういう意味なのです。水口さんのような人が窓口にいると、このときはこういうのができる、こういうのができると言ってくれる。私も相談員になりたいぐらいなのですけれども、そういう人を配置することが重要だと。だから、ここに相談に行けというのではなくて、相談内容に応じて、「こういう解決機関もあります、どれがいいですか」と言えば、その人は持って帰るのですよ。持って帰ったら、家族とか、友達とか、ざっと相談する相手は決まっているのだから、相談したりして自分で選ぶのです。その辺のことは行政の相談窓口でできるのではないかと思います。

○荒木座長 3ページのIのアのところで2つ、相談時と不調時の振り分けの話がありますけれども、これはまず担っている人の属性がかなり違うのですね。そこのあたりをもう少し説明いただけますか。

○大塚調査官 補足いたします。

 相談時におきましては、社労士の方が6割以上選任されております総合労働相談員、こちらの担当職員が御案内をするということになります。

 他方で、あっせん不調時におきましては、先ほども御説明しましたけれども、誰がその案内をするかというのはまちまちではございますけれども、弁護士の方が7割以上選任されているあっせん委員の方がみずから御説明することもあれば、そこに陪席している相談員が説明することもあるということでございます。

 また、先ほど田村が申し上げました、書面では必ず手続の御案内を送っているところでございまして、それに加えてあっせん不調のその場で説明するかどうか。それがまちまちであるという状況でございます。

 以上です。

○荒木座長 まさに紛争の当事者は労働局に行ってどうしようというところで、一番相談に乗っていただく方の説明は非常に重要で、その後の紛争がどういうふうに展開していくかということにかかわります。相談時にどういう解決ルートがあるのかということをきちんと説明して、そのときに山川委員がおっしゃったように、それぞれのルートは解決ツールも違いますし、解決にかかわる担当者の属性も違う。そういう中で、本人はまず自分の主張しかしませんけれども、それを客観化して、あなたにとってふさわしいのはどこかというのが本人にもわかるような形の相談をされれば、トータルで紛争の解決の期間も短くて済む可能性があるように思います。そういう観点から、現在の対応について改善点がないかどうかということは検討課題かもしれませんね。

 ほかはいかがでしょうか。よろしければ、ほぼ定刻になりましたので、本日の議論は以上としたいと思います。

 次回は、解雇無効時における金銭救済制度について議論に入るということになります。

 最後に、次回の日程等について事務局から御説明をお願いします。

○大塚調査官 次回の日程でございますが、現在調整中でございますので、また追って委員の方々に御連絡を申し上げたいと思います。

 また、最後に1点だけ御紹介なのですけれども、メーンテーブルではないのですが、当課課長補佐の都築玲子が人事交流で私どもの課に参っておりましたが、このたび離任することになりました。毎回出している裁判関係の資料などについては、彼女が結構つくっていたのですけれども、委員の皆様方にも大変お世話になったということを申しておりますので、最後に御紹介させていただきます。ありがとうございました。

○荒木座長 ありがとうございました。

 それでは、本日は以上といたします


(了)

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