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2016年11月25日 第27回 社会保障審議会生活保護基準部会

社会・援護局

○日時

平成28年11月25日(金)10:00~12:00


○場所

厚生労働省専用第21会議室


○出席者

駒村 康平 (部会長)
岩田 正美 (部会長代理)
阿部 彩 (委員)
岡部 卓 (委員)
栃本 一三郎 (委員)
山田 篤裕 (委員)

○議題

・加算制度における検証方針の基本的方向性
・これまでの生活保護基準部会における平成29年検証に関する議論の整理
・その他

○議事

■駒村部会長 おはようございます。それでは、定刻になりましたので、ただいまから第27回「社会保障審議会生活保護基準部会」を開催いたします。

 まず、本日の委員の出欠について事務局より御報告をお願いいたします。

■鈴木保護課長 事務局でございます。

 本日でございますが、宮本委員、小塩委員より御欠席との報告をいただいております。

 それでは、部会長、議事進行をよろしくお願いいたします。

■駒村部会長 それでは、本日の議事に入りたいと思います。

 本日は、第25回の部会で改めて議論することとした加算制度の検証と、平成29年検証に向けた各検討課題の議論が一巡しましたので、これまでの議論の状況について御報告いただきたいと思います。

 それでは、まず、事務局から提出された資料1についての御報告をお願いいたします。

■清水保護課長補佐 それでは、資料1について説明させていただきます。

 加算制度に関する検証方針につきましては、今、部会長から御紹介いただいたとおり、前々回第25回の部会でも議題とさせていただきましたけれども、その際に、加算のあり方の議論については、昭和50年当時に整理をしたものなど、過去の経緯も踏まえた上で、まず、その加算制度そのものの位置づけですとか、通常の基準額との関係性について整理をした上で行うべきではないかという御意見をいただいたかと思っております。

 本日は、その昭和50年当時の中央社会福祉審議会生活保護専門分科会の意見具申を抜粋して添付してございますので、資料のとじ方としては逆になってしまっておりますが、資料1の最終ページ、5ページからご覧いただければと思います。

 上の方が、昭和50年、中央社会福祉審議会生活保護専門分科会の意見具申ということで出されたものでございます。経緯としましては、それまで老齢加算、母子加算、障害者加算の金額については、それぞれ国民年金の創設時に、既に高齢であった方等に対する老齢福祉年金、母子福祉年金、障害福祉年金の各種福祉年金と加算の金額を同額といたしまして、福祉年金の効果が生活保護受給者にも及ぶような措置がされてございました。

 その上で、昭和50年当時でございますけれども、1の(1)のところで、福祉年金の金額が大幅に改善、増額をしたというところで、基礎的生活需要にも対応するという性格を強めていくということから、生活保護制度の最低生活費との重複について調整が必要になることから検討が行われたという経緯がございます。

 3の下線の部分がその加算の位置づけに関する部分となりますけれども、その加算の額については、本来、通常の基準額の範囲で賄うことができない特別な需要に見合うべきであるということで整理がされてございます。

 この検討の結果、その当時、老齢加算については1類費の基準額の半額程度までとどめるということで、この3の後ろのところでございますけれども、「一類基準額との間にある程度の均衡が保たれていることが望ましい」ということで、1類基準額の一定割合にするという方法が検討に値するということで整理がされてございます。

 以後、加算額については、生活扶助基準の改定率と同じ率で改定を行っていくという取り扱いがなされました。ちなみに「その際」というところに書いてありますけれども、「障害者加算、母子加算については、老齢加算との均衡等に配慮し、適切な水準とすべきである」ということで、障害者加算については老齢加算の1.5倍、母子加算については1.3倍ということで、当時、金額が設定されたという経緯がございます。

 次いで下の部分は、昭和58年の同じく中央社会福祉審議会の意見具申でございます。こちらについては、昭和58年、水準均衡方式の導入について検討がなされたときでございまして、その際に、あわせて、その加算のあり方についても再度整理がなされているというものでございます。

 (1)(2)については、これまでの経緯ということで整理されてございます。

 (3)のところで、当時の検討の経緯としまして、国民生活の変化ですとか保護基準の改善等の結果、加算額の妥当性について再検討が必要ではないかということで、検討が行われたということでございます。

 (4)でございますけれども、老齢、母子、障害の特別需要といたしましては、加齢に伴う機能の低下ですとか、ひとり親ということに係る負担、心理的障害等々、あと、障害によるハンディキャップに対応する食費、光熱費、もろもろの経費などについて検証して、おおむねその当時の現行の加算額で満たされているという検証が行われたということでございます。

 (5)が、同じく、加算の位置づけに関する部分ですけれども、「老齢、母子及び障害者加算については」というところで「これらの加算は特定の需要に対応するものであることから、その改定に当たっては、生活扶助基準本体の場合とは異なった取り扱いをするよう検討すべきである」ということが整理されてございます。

50年から58年までは基準生活費の改定率と同率で改定してきたものが、これ以降、物価等の指標を用いて改定をしていったということでございます。これによって、特別な需要に対応するものという位置づけがさらに整理をされたということかと考えております。

 それを踏まえて、1ページに戻っていただければと思ってございます。こちらについては「加算制度における検証方針の基本的方向性について」ということでまとめさせていただいております。

 一番上の○ですけれども、「生活扶助基準本体(1類・2類)については、『一般国民の生活水準との関連において相対的にとらえるもの』」ということで、今回の検証作業においても、その消費水準との均衡が保たれているか、差の分析を行うこととしてございます。

 一方、各種加算については、今、御説明をさせていただきましたとおり、過去からも「生活扶助基準本体では賄いきれない特別な需要に対応するもの」ということで整理をされてきたということがございます。

 3番目の○ですけれども、「この点を踏まえると」というところで、現行の各種加算の妥当性を検証する場合については、対象となっている生活保護世帯が抱える特別な需要(生活課題)が何かというのを把握した上で、その特別な需要に対応するためにはどのような費用が必要なのかという視点で検証してはどうかということでございます。

 一番下の○ですけれども、繰り返しになりますが、その特別な需要を把握した上で、その生活扶助本体を含めた最低生活費全体において、特別な需要、基礎的な需要を含めて各加算の対象者の生活費が賄えるかを考えてはどうかということで整理させていただいております。

 2ページ、3ページについては前々回の資料から抜粋をしたものです。また、机上に配付してございますファイルの中に、加算に関する議論を行った25回の資料もございますので、あわせて御参照いただければと思います。

 資料1の説明は以上でございます。

■駒村部会長 資料1について最初に議論をしたいと思います。今の事務局の説明について御質問やコメントがあれば。

 山田委員、お願いします。

■山田委員 最後の5ページ目の資料です。今、口頭でいろいろと御説明いただいたのですけれども、頭の整理のためにちょっと。

 老齢加算とか母子加算ができてから、例えば、今、1.5倍とか1.3倍とか口頭でおっしゃいましたけれども、もし可能であれば、まず、どのように決まって、昭和50年にしろ、昭和58年にしろ、変わる毎に、どのようなインデクセーションというのか、引き上げを何に基づいて行ったのか、ほかの加算とどういう関係にあるのかを一覧表みたいなものにしていただくと、もう少し理解が深まるのではないか。これは可能な範囲で構わないのですけれども、事務局にお願いでございます。

 もう一つは、コメントなのですけれども、重要なポイントは、同じく5ページ目の(4)です。単に消費水準というのではなくて、例えば母子加算であれば、片親不在という社会的・心理的障害も考慮するということ。前回、経済学は就労とか消費しか見ないというやや偏った見方を言われたのですが、経済学でいえば、要するに厚生水準の低下をちゃんと勘案していきましょうということだと思います。今回も、そういった視点というのは、単に消費額がどうのこうのとかというのではなくて、こういったことも考慮しなくてはいけないというのをコメントとして挙げさせていただければと思います。

 私からは以上です。

■駒村部会長 今の山田先生の御質問の資料の件は対応をお願いできますか。もう少し細かく、各分科会なり審議会におけるデータあるいは根拠、それからどういう数字が出たのかという点は次回の資料で整理してもらいたいと思います。

 先に阿部委員、次に岩田委員、お願いします。

■阿部委員 ありがとうございます。

 今の山田委員のコメントのところですけれども、この過去の資料ですと特別需要という言葉が何遍も出てきます。もちろん、私もその特別需要を見ていくということについては賛成しますし、その方向があるのかなと思いますけれども、そういった中で、先ほど山田委員が言った、同じ厚生の基準にまで持っていくように、つまりウェルビーイング的に同じぐらいのところ、最低生活を保障するという観点からすると、一般の母子世帯と被保護の母子世帯の間でも状況に様々な違いがあるということも考慮しなければいけないと思うのです。

 例えば片親不在というのは、普通の母子世帯の方々もそうですし、その前のところの「加齢に伴う精神的又は身体的機能の低下」ももちろんそうです。ですけれども、母子世帯の中でも生活保護にかかっていらっしゃる方は、DVの経験を持っている方が多かったり、様々な理由で自分たちで最低生活を保つことができないという状況もあって、それ以外のハンディというのもあり、お子さんが障害を持っているとか、ひきこもりがあるといったことも多いだろうし、高齢者の方々についてもそういった様々なものがあるのかと思います。

 ですので、一般のひとり親だけを見て、ここは違うねと言って、それをそのまま当てはめてよいのかというと、恐らく、それも違う。やはり、今、被保護になっている方々の生活状況をよく見て、それでこの方たちに最低生活を保障するためにはどうすればいいのかといった観点を持つべきかなと思いました。

■駒村部会長 前回も生活保護を受けている世帯はどういう特性があるのかと。被保護母子世帯特有というか、多い課題、ハンディもきちんと評価して、特別な需要を考慮するときにはそこも計算に入れるというか、頭に入れながら議論すべきだという話かと存じます。この議論は深めていく部分があると思います。

 岩田委員、お願いします。

■岩田部会長代理 今のお二方の委員の御発言も踏まえて。私、整理して何か書いてこようかなと思ったのですけれども、今回、あらゆる生活保護の扶助・加算、それから級地の問題、収入認定の問題が一応全部出てきて、何は検証したか、何は検証しないか、どういう問題があるかということを洗いざらい出されたという感じがするのです。これまで何度も申し上げていますように、基準部会はおおむね生活扶助基準と一部加算ということでやってきたのですけれども、もう既に住宅もやりましたし、今回、教育扶助も出てきている。それから、生業扶助の問題、収入認定の問題、いろいろなものがこれだけありますよというのが出てきたと思うのです。せっかくの機会ですので、それらがどういう性格の違いを持っていて、どういう議論が必要かということを、先ほど山田先生がおっしゃった一覧表といいますか、構造図にしておいて、頭をよく整理する必要があると思うのです。

 ちょっと申し上げてよろしいでしょうか。

 まず、生活扶助の本体というのは一般扶助の形式なので世帯類型別には出来ていません。標準世帯からの展開という形で、個々に当てはめる基準表というのはつくられています。この標準世帯については、一応、水準均衡で相対比較しているわけですけれども、基本の1類・2類表はマーケットバスケットがベースなので、年齢別のカロリーの差異というのがかなり強く反映されています。それから、世帯人員です。この辺はこれまでの議論でかなり補正をしてきたと思うのです。これが1つ。

 2番目ですけれども、加算です。加算は生活扶助についていくわけです。今、特別需要という言葉が出ましたけれども、カテゴリー別需要なのです。決して個々の世帯の特別需要ではないのです。だから、どういうカテゴリーかということで、一括してあるニーズをそこに認めてくっつけるというやり方で加算はできていると考えられます。これは何とか世帯という場合もあるし、人口栄養だとか放射線だとか、そういう様々なカテゴリーによって構成されているわけですけれども、これは阿部委員がおっしゃったように、実は他法他施策との関連が非常に強くて、例えば児童扶養手当とか、もちろん福祉年金、これらがかなり強い影響力を持ってこれをつくってきたという事情があります。

 ここで注意しなければいけないのは、特別需要だというので、素直に、それは何だろうというふうにやることがいいかどうかという問題。しかも、阿部委員がおっしゃったように、特別需要というのは、例えば母子家庭だったら共通に持っているのではないかと考えると、生活保護の議論なのか、児童扶養手当の議論なのか、就学援助の議論なのか、そういう見方がどうしてもここにくっついていかざるを得ない。

 昭和58年の特別需要の説明文というのは、私の解釈では、本来は他法他施策との関係で膨らませてきたものをどこに落とし込めるかというときに、特別需要ということで説明した文章だと思うのです。これに何か裏づけがあるというよりは、説明文だと思うのです。だとすると、生活保護の内部だけでこれをやっていいのかという問題が当然出てきます。これが2点目です。

 3点目ですけれども、級地の問題、住宅扶助の問題、葬祭扶助の問題、介護扶助の問題。介護扶助の問題は、もちろん介護保険それ自体とリンクしていますので、むしろ他法との関係で出てきます。これは医療扶助は出ていませんけれども、医療扶助も水準的には国保とリンクしていると思います。ですから、こちらがあれこれいじれるわけではないのですが、級地、住宅扶助、葬祭扶助に関しては一種の時価といいますか、そこの地域なりマーケットで必要生活財サービスがどういう価格体系で存在しているかということに関連してくる。これは3番目のカテゴリーといいますか、ちょっと違うもので、例えば葬祭扶助をどうしたらいいかというのを一から考えるというよりは、葬祭にかかわる一番簡素な価格は幾らかということで考えるしかないわけです。

 4番目がちょっと難しいなと思っているのですが、生業扶助と入院扶助と教育扶助なのです。今回、教育扶助をほかの加算と一緒に、要するに有子世帯の扶助・加算ということでグループをつくられていますけれども、これはどうかなと私は思っています。加算は加算の問題、教育扶助は教育扶助の問題なので、例えば生業扶助に入れた高校進学をこちらに持ってくるとか、そういう話なのかどうかもちょっとわかりませんけれども、これまでこういう議論はしたことがないです。有子世帯という形でつくられていないのですね、生活保護の体系というのは。だから、教育扶助は教育扶助、加算は加算なのです。このあたりをどう整理するかというのは私はちょっとよくわかりません。

 それから、生業扶助もかなりいじったので、生業扶助をどのように位置づけるか。それから、入院の場合、日用品の場合、これをどうするかというのは、ちょっと生活扶助とは性格が違うかなと思うのです。

 最後が勤労控除を含めた収入認定の問題。これは、先ほど他法他施策と言いましたけれども、例えば基礎年金や児童手当や児童扶養手当を丸々認定して新たに加算でくっつけるのか、それとも認定のときに一定の手を加えていくかというような問題もあるわけですね。それをやると、変な説明をしなくて済む。そして、前に山田委員がおっしゃったように、生活保護はユニバーサルの手当に補完的にくっついていくという生活保護の姿といいますか、そういうように変わっていく可能性も出てくるわけです。いずれにしても、今、ちょっと申し上げたような5つの異なったグループがあって、それらを全部相対比較でやるというわけではもちろんないと思うのです。ですから、今回、それでも教育扶助と有子世帯に対する加算を中心にやるというのは、それはそれで構わないと思うのですけれども、この2つをくっつけるのはちょっと危険で、しかも、有子世帯の家計簿から何か強引に持ってくるというのはまず無理だと思うのです。生活保護体系が非常に長い年月の中で大変複雑にできあがってしまっている。それを今回、1回ほぐして、一覧表にして、それぞれの性格をはっきりさせる。その上で、検証のときに何を基準に検証するかというのをそれぞれに当てはめてみるというのは大変有意義なことだと思います。性格の違うものをごっちゃにして、例えば子どものために何が必要かなどというのを真正面にやりますと、これは生活保護の子どもだけではなく子ども一般になりますから、それはそれでやる意義はあっても、生活保護の基準部会で独自にやったからといって子ども全体に利益が波及するとは思えないわけです。その辺をどう考えて議論を進めるかというのは、入り口できちんとしておかないと、何の議論をしているのか段々わからなくなる。議論のうちに、子どもはこうすべきだみたいなことがどうしても出てきます。ぜひそこの整理を入り口でした上で、いろいろな検証作業に入っていってはどうかなというのが私の意見です。

■駒村部会長 では、栃本委員、お願いいたします。

■栃本委員 最初に、5ページのところを説明していただいて、前回を踏まえてなのですが、先ほど私が誤解を与えたかもしれないけれども、やや偏った経済学に対する理解ということなのです。厚生概念については、経済学者はそうおっしゃるのだろうけれども、私は社会学なので、あと、社会政策なので、生存権とも違うので、やはり多角的に生活保護を見るという場合に申し上げただけなので、経済学、帝国主義に反抗しているわけではない。それが1点。

 その上で、前回も申し上げたし、加算についての考え方です。これについては、生活保護制度主体論というか、生活保護を基軸として考えた場合、一般的な生活扶助を初め、戦後、生活保護制度を組み立てた際の様々な扶助があって、典型的なのは生活扶助なのだけれども、それ以外にも。その上で、EU、ヨーロッパのそれぞれの生活保護制度を見たら、特別な需要に対する扶助というのはあるのです。私はドイツが中心だけれども。

 ちなみにもう一つ申し上げると、いわゆる生存権という概念は極めて重要なのだけれども、EUのそれぞれの国々の生活保護における算定の基準とか、それは本来何をもって見るかといった場合、最低の生活を営むということだけではなくて、例えばドイツであれば、人間の尊厳に値する水準とか、そういう形に変わっているのです。これは極めて重要な部分だと思うのです。そういった場合に、従来から議論されているように、社会的な部分とか、文化的な部分とか、そういうものを加味した形で基準をつくらなければいけないということだと思うのです。

 今申し上げた生活保護制度本体というか、それの構造を考えると特別な生活状態というのは、実は生保世帯に限らず、例えば生保世帯にいっていなかったとしても、障害を持たれている方の場合には普通の方よりも出費が増えるということは大いにあり得るべしで、そういう場合には、例えばドイツだったら、生活扶助基準の下限というか、そういうものとは違った形で基準を示して、ある程度幅広く、その特別な生活事情、障害であるとか、そういうものについて対応するということなのです。本体たる生活扶助の部分と加算の部分の比重というか、それを考えるのは極めて重要だと思うのだけれども、一方で、高齢でかつ、母子で、かつこれだというマトリックスというか、多様性が非常にあるわけです。若い母子家庭ではなくて、そうでない形とか、あと傷病もあるとか、そういう形があるので、非常にセグメント化した形で、特別な生活扶助に対する加算というものはきちっと見直すというか。そういう観点からそれぞれ見ていくことが必要だと思います。場合によっては、他法によってつくられたから加算という形になったというものも今まである。その一方で、他方にはないけれども、特別な生活需要というのが生活保護世帯にあるのではないかということで、新たにというと変なのだけれども、政策的には実際にするのは難しいかもしれないけれども、新たな加算があってもしかるべき。そういうこともあると私は思うのです。

 もう一つは、事務局にそれぞれの加算の経緯についてもう少し仔細にということがありました。例えば、従来の福祉年金といった場合、部会長は年金の学者でいらっしゃって部会長もなされていると思いますので、釈迦に説法ですけれども、年金制度を定着化させたときの国民年金の議論、あと基礎年金に移行するための議論、そして年金の早期成熟策をどのように図るかということ。国民に対して年金というものを定着化させるために実は様々な手法を昭和48年以降とったわけです。その中で組み立てられて、そして福祉年金という言い方をしているけれども、国民年金との関係で議論されてきたわけだから、その部分を十分理解しつつ議論しないとなかなか難しいと思うのです。例えば福祉年金1つ言って、その額が半分だとか、どうしてということであると、やはり我々の中に国民年金の創世記というか、40年代、50年代の国民年金と、その後の昭和61年の一部改正、そのような組み立ての中でこういう形を見ていく必要があると思います。

 以上です。

■駒村部会長 どうしましょう。岡部委員、関連する話ですか。それとも、岩田先生、今のに対応していますか。

 では、岩田先生を先にいいですか。その後、岡部委員。今のつながり方によってどうするか。

■岡部委員 岩田先生、どうぞ。

■駒村部会長 では、岩田先生、その後、岡部先生にいきます。すみません。

■岩田部会長代理 栃本先生の御心配のような、例えば社会的、文化的なことを全然考えないということはないので、心配ないようにというのが1つ。

 もう一つは、例えばドイツとかヨーロッパの場合に、日本のように、一般扶助というのは非常に強くなくて、もともとカテゴリー扶助です。もちろん、イギリスなどの場合、一番コアになる単身者の生活扶助部分だけみたいなものがありますけれども、どちらかというと、カテゴリー別に組み立てられている。もう日本もそうしてしまおうかという議論ももちろんあると思うのです。日本は、一般扶助の展開が非常に複雑で矛盾に満ちているのです。そこに加算をつけたので複雑です。

 もう一つは、栃本先生がおっしゃるように、例えば介護人加算のように、生活保護制度の中で生まれて、それが育って外に出た、そういういい制度もありますから、何もつくるなとは全然思っていないのです。ただ、むやみに複雑にしていくと、一般の国民の人たちも生活保護というのがよくわからないと思うのです。みんな自分の最低生活費は計算しないとわからない。それはある程度しようがないとしても、大体このぐらいというのがもうちょっとストレートにわかったほうがいいかなということもあると思うのです。

 要するに、言いたいのは、今の生活保護の基準体系は非常に複雑。日本はカテゴリー別扶助をやっていない。やっていないので、これを加算でつけて、やったような形にしています。実は、老齢加算のときに、まさにカテゴリー別で相対比較してしまったのです。私はそれはじくじたる反省点なのです。だから、今回申し上げるのは、それは違う種類のことだと。議論してもいいですけれども、違う種類のことだという議論をぜひしていただきたいというだけの話です。

■栃本委員 では、いいですか。その関係だけなので。

■岩田部会長代理 もういいです。

■栃本委員 いや、違う。その関係だけなので。

■駒村部会長 では、やりとりの関係ですから、すみません、先に。

■栃本委員 非常によくわかるのは。その上で、実は加算以外でも、加算ではなくて扶助ですね。例えば、私は生活保護制度の中で非常に画期的だったというか、日本の社会保障制度の中ですばらしいと思うのは、生活保護制度の中に介護需要というのを最低限度の生活を営む権利を有する中の需要として認めたということなのです。これは大変画期的なことだと私は思っているのです。これは、生活扶助という意味では、加算ではないのだけれども、カテゴリーではあるのです。しかも、それは、生活需要というのは、生活保護制度で最低限の需要だということを認めたというのは、国民にとっての生活保護ではなくてもという形で、私は、すごく前進しているところもあると思っています。したがって、非常によくわかるのですけれども、加算と、生活扶助以外の他の扶助、例えば今申し上げた介護というリスクと、個別性に応じてこれを出すというような、そういうものの組み立てが複雑になってはいけないけれども、よりきめ細かく、それぞれの年齢であるとか、世帯類型であるとか、疾病があるとか、障害があるとか、そういうものに応じてというか、そういう形のものが必要だと思うのです。通常の社会保険というのは、一般的な社会的リスクなので、典型的なパターンしか給付できない。生活保護制度というのは個別対応になっていますので、その部分がどのぐらい工夫できるかということがとても大事だと思います。

■駒村部会長 岡部委員、すみません、お待たせしました。お願いします。

■岡部委員 整理してくださりありがとうございます。最後に添付されている資料についてから入りたいと思います。お話ししたいことは2点です。

 1点目は、この加算の取り扱いについての考え方です。大きく3つぐらいの段階があるのではないかと考えます。資料に掲載されているように、昭和24年の母子加算、障害者加算の創設は、母親あるいは障害者の場合、岩田先生が述べられたように、1類のカロリーでは乳幼児の養育には十分に足りていない。養育する母親はカロリーが、また障害者あるいは病者に対して介護者が介護を行うにはカロリーが足りないということで、母子加算と障害者加算が出てきた経緯があります。そのため、1類にカロリー消費のベースがあったということが第1段階だったと考えます。

 第2段階は、他法他施策、特に皆年金の関係で福祉年金が出てきたことと、他法他施策で手当関係等が出てきたということ。それらの収入との見合いで第2段階で加算の整理をしたということです。

 第3段階は、昭和50年あるいは昭和58年では、特別な需要に加算をつけるということで整理をしてきた。この特別な需要がカロリーベースあるいは収入と相殺ではなくて、特別需要の種類・内容・水準をより丁寧にやっていきましょうということになったのではないかと考えます。これが要するに三大加算の中の考え方にあったのではないかと考えます。

 他の加算はいろいろな経緯が出てきていますので、加算のできてきた年次というのはばらつきがあり相当幅広くなっていますので、それはそれぞれの経緯の中で整理をする必要があろうかと考えます。

 加算はそもそもどういう考え方に基づいて行うのかについては、今の特別需要という考え方をとらない場合もあるし、とる場合もあるので、そこは個々の加算で見ていくのか、加算そのものを1回整理して捉えていく必要があると思います。冒頭に山田委員が述べたように、加算はどういう経緯で出されてきたのか、どのような考え方でどのように展開してきたかをどこかで整理をしておく必要があります。今回、見直しをするということは、消費需要の関係で見たときにそういうことをどう考えたらよいのかということの基礎的な材料になると考えます。

 2つ目は、この見直しを考える前提で、先ほど厚生経済学の考え方や生存権の考え方とか出ましたが、基本的に、生活保護法第1条の中で憲法25条をうたっております。生存権という基本的な概念をより具体化したものがこの生活保護法ですので、国民誰もが等しく社会的あるいは文化的な生活を営める水準でなければいけない。そのことで考え方に据えられます。その場合に消費水準と相対化して考えるという捉え方と同時に、もう一つは、基本的に考えて、理論的にこれはどうしても必要という絶対的な考え方では見ていただくことがあると考えます。

 例えば、母子加算に象徴されるかと思いますが、ひとり親の方の所得水準は全体的に高くない傾向にあります。というのは、一部高い方もいらっしゃるけれども、一般的に言うと低い。それと比較対照したときには、どうしてもそこで家計の圧縮がみられ、低い傾向になりますので、前回もお話ししましたけれども、どの世帯にいても、そこの子どもたち、あるいは母親は最低限これぐらいのものが必要だろうという基準の考え方を出した上で加算を見直していただく。そういうことが必要なのだということで合意が得られれば、基本的な方向性として、どのようなデータをどのような方法で把握していくかになるかと思います。

 加算についての意見ということですので、述べさせていただきました。

■駒村部会長 ありがとうございます。

 今、議論がありましたように、戦後の発展の中でいろいろな役割、ほかの制度の発展の中でいろいろバランスをとりながら出てきた部分が非常に多いわけです。先ほどの審議会具申も30年から40年前のもので、改めて加算とその他の扶助を、先ほど岩田先生もお話になったように少しばらしてみて、きちんと再整理をしてみる。あとは、性格ごとにも再度検討しなければいけないのではないかということ。この2ページから3ページのところをもうちょっと充実した整理をしておかないと、入り方が間違えてしまうと検証方法もおかしなことになるというお話が続いたと思いますので、きょうの議事録を後で丁寧に見て、各先生の御主張が、どこが共通していてどこが違うのかということを次回一度整理した方がいいのではないかと思いました。

 関係ですね。では、栃本委員。その後、課長、お願いします。

■栃本委員 2例あるのです。

 先ほど来というか、前回、岩田先生からいろいろな御指摘があったわけだけれども、もやもや感というか、そういうのがなぜあるかというと、消費を見ることによって最低生活というのを見るというのが基本なわけです。ところが、他法によって、福祉年金にしろ、うちのほうの関係の手当にしろ、消費ベースではなくて、当たり前なのだけれども、収入ベースというか、お金を加えるということになるのです。だから、収入ベースというか、入りの部分で最低生活というか、最低限の何とかという組み立てと、消費ベースで、あるべき生活というものを見るか、2種類の考え方がある。ヨーロッパでもそうですよね。その場合、まさに加算というのは他法がやっていたものだから。しかも、他法というのは、その額が理論的にどういう形で組み立てられたかというのは、年金制度などを見てもわかるように、かなり政治的というか、いろいろな事情でいろいろなものをリファーする形でつくられていますから。しかも、これは収入ベースですね。その収入ベースのものを消費で見る。生活保護制度の中に入れているから。その部分がどうしても、岩田先生からするとどのように考えるべきなのかというのが基本的なトーンとしてあるのだなと私は理解しました。

 その意味で、その時々の他法の政策上ないしは制度を組み立てたり、国民の合意を得るということからつくられた額とか、そういうものが手当であるとか給付金という形で組み立てられています。それが果たして本来的な意味での特別な需要というものとイコールかどうかということは、そうではない可能性が高いということだから、事務局がこれからしなければいけない検証作業というのは、まさにその部分を見ていくことだと思うのです。その上で、今、部会長がおっしゃったように、それぞれの意見を吟味していただいて、入念にしていただくということ。

 もう一つは、昔というか、数カ月前だと思うのだけれども、岩田先生は、いろいろなカテゴリーを全部つくってみて、それに対する対応関係というのをたしかおっしゃったことがあると思うのです。それというのは、先ほど言った高齢で母子で何とかとか、そういう組み立ての中でどこに加算とかそういうのがくっつくかなということでもあるので、その部分も図表みたいなものをつくるといいなと思いました。

 一方、それぞれ先生方は事務局のほうにそういうわかりやすいものをつくるようにという願望なのだけれども、委員の人もつくってもいいのではないか。それだけ言うのだったら。例えば、自戒の念を込めて言いますと、私について当てはめますとそのように思いました。

 それと、最後に細かい部分なのだけれども、いみじくもそれぞれの先生方、また部会長からお話がありましたけれども、資料1の5ページ目の(6)のところです。これは前も触れたのですけれども、昭和58年時点のことなので「医療機関や社会福祉施設に入院、入所する被保護者で老齢加算等の対象となるものにかかわる食費、光熱費、保健衛生費、介護関連費などは施設の機能からみて、それぞれの施設でカヴァーされている面が少なくないこと、また、これらの施設における処遇水準が向上したこと等を総合的に勘案すると、これらの者にかかる加算については、在宅者の加算との均衡が図られるよう見直す必要がある」ということが昭和58年レベルの時期においては議論されている。一方、現代では高齢者の領域などを見ても、障害者の領域を見ても、従来の施設と在宅という組み立てではなくて、施設ではないのだけれども、施設に近いというと変なのですが、そういうのがありますね。サ高住であれ、軽費老人ホーム。そういう場合、施設だけに着目して、施設の場合は適用だけれど施設の場合は適用しないとか、そういうことについてもきめ細かく見ていかないと、障害者であるとか高齢者、また子どもたち、児童についてもそうだと思うのだけれども、施設か在宅の区分けだけで見てしまうことになると、細かいことかもしれないけれども、見落とすというか落ちてしまう部分があるので、そこら辺も事務局のほうで心がけていただきたいと思いました。

 以上です。

■駒村部会長 栃本委員に整理していただいたように、戦後の流れの中で、他法他施策は別のロジックで動いているわけですから、その接着剤みたいな役割を果たしてきたわけですけれども、その部分の矛盾というか、複雑になってしまったので、多分、それが1つの理由でこれまでなかなか検証できなかったのではないか。ただ、これはいつまでもそうしているわけにもいかないということで、今回、評価しましょうと。ただ、もう今までの議論でも明らかなように、かなりいろいろな制度との関係を考えなければいけないので難しい作業ですねということだと思います。

 また、委員のほうも、関連する必要な材料、素材がありましたら、積極的に出していただくということで、もしよろしければ、栃本委員が隗より始めよということで、何かいい資料をお持ちであれば出していただいて、委員の皆さんから、こう整理している、こういう資料があるというものがあればどんどん出していただきたい。

 岡部委員、ありますか。お願いします。

■岡部委員 整理した簡単なものがありますので、次回、事務局にお渡しさせていただきたいと思います。

■駒村部会長 今回の部会の一連の議論というのは、その他の扶助・加算、それから級地という非常に広いこともあります。例えば、級地については、他分野でこういう実勢費用に関する研究やデータがありますとか、こういう新しいものをトライする部分ですので、今まで必ずしも普及・評価されなかったものも含めて、あるいは先生方の研究も含めていろいろと整理されたものが出てくれば議論が深まると思います。事務局のみ高い、険しい山を登れというのも大変だと思いますので、課長、どうぞ。

■鈴木保護課長 いろいろいただきまして、過去からのいろいろな経緯とか、そういう事実関係はできるだけわかりやすく整理するように努力してみたいと思います。

 それから、全体の体系につきましては、体系の見通しが必要だという御意見もごもっともだと思いますが、一方で、その体系そのものにいろいろな御指摘、御意見があると思います。それが完成しないと次の議論に進めないということではなかなか議論が深まっていかないので、ある意味、個別の課題を議論する中でも体系の議論に戻っていけるという、行きつ戻りつということだと思います。そこはできるだけ個別の課題、それぞれテーマになっているものを深めながら、また、少しずつそれを深めることに伴って全体の議論も深まっていくという有機的な議論ができるように少し工夫をしてみたいと思います。

■駒村部会長 この話になると、恐らく社会保障全体の話にもかかってきてしまうので、全部が見えなければだめというわけにもいかないのでということだと思います。社会保障の中で生活保護が果たしてきた役割の全てにかかわることになってくる議論です。最初、ある程度整理しないといけない部分はありますけれども、それが完成しないと全くできないというわけでは。そこまで待つとなかなか前に行かないということだと思います。ただ、最初の整理はちゃんとやっておいた方がいいと思います。個別の全部がきれいに埋まれというリクエストではないと思いますので。

 この第1の資料についての御意見、時間的にはまだ少し余裕がありますけれども、いかがでしょうか。もし引き続き何か。この加算に関する検証。まだ基本的方針についてはもう少し書き加えるということだと思います。

 阿部委員、ありますか。

■阿部委員 私が先ほど申し上げたことに誤解がないようにということでもう一度申し上げたいと思います。

 先ほどの特別な需要のところです。私が申し上げたかったのは、生活保護を受けていらっしゃる方というのは、本当に様々な御事情を抱えていらっしゃる。一般の人々の生活を見ただけではわからないような様々な事情を抱えている中で、その方々の特別な需要を検証することができるのかということ、それが可能なのかどうかということ自体がかなり難しいのではないかと思います。

 私がむしろ見ていただきたいのは、まず、生活保護にかかっている方々が、この間でも少しずつ基準が下がってきて、いわゆる最低生活を満たすことができているのかどうかという観点から見るべきではないか。特にお子さんに関して言えば、貧困の連鎖を断つような方向ができているのかどうか。それが、今の加算が多いのか少ないのかという議論の1つの大きな材料になるのではないかと思います。

 ということです。

■駒村部会長 先ほど私は、もしかしたら誤解したのかもしれないと思います。何が特別な需要かというのは、いろいろな要因を抱えているので、そこの部分は丁寧に評価しましょうと私は捉えましたけれども、先生はどちらかというと、その加算によってアウトカムとしてきちんと貧困の連鎖みたいなものがとまっているのかどうかも。「も」というか、そちらを着目しましょうという考え方ですね。

■阿部委員 はい。

■駒村部会長 ただ、貧困の連鎖は加算というお金の問題だけによって左右されるわけではなくて、いろいろな要素もありますので、そこもまた後できちんと議論する必要はあると思いますけれども、委員の考え方というのはそういう考え方であり、特別な需要を1個1個拾って集めようという話ではないということですね。

 わかりました。

 山田委員、お願いします。

■山田委員 私も、先ほど来の議論については、特に特別需要という形で何か特別な項目を拾い出して額がどうのこうのというのは。そういうことをお考えの方はいらっしゃらないと思うのですけれども、それは本旨から外れることではないかなと。特に、最低生活というのは、何らかの消費アイテムが満たされていれば満たされるものではなくて、結果として社会に参加できているか。その社会に参加できているかということ自体が、時代によっていろいろな消費項目が変わってきて、例えば、今、携帯は必要ですねということで変わってきているわけです。だから、何か消費項目に落とし込むのではなくて、文化的な生活として社会に参加できているかどうかということで、単に消費額ではなくて、アウトカムの方でも見ないといけない。貧困の連鎖までいくとなかなか難しいと思うのですけれども、例えば子どもが学校生活にちゃんと参加できているか、社会に参加できているのかとか、そういったところを最終的には見ていかないとどうしても。特別需要というと、特に過去の事例だと、特別需要とは何かという例示が挙げられて、その消費項目に落とされると変な方向に検証がいってしまうので、その意味でも、どういった考えでこれまでやってきて、どういったアップレーティング、引き上げ方をしてきたのかというのは、そういったことを考える上でもやはり必要かなと考えています。阿部委員の発言に関して。

■駒村部会長 岩田委員、お願いします。

■岩田部会長代理 それは、先ほどの栃本先生の議論もそうなのですけれども、非常に難しいと思うのです。ラウントリーの2本の貧困線にありますように、ある一定の最低生活費が所得保障として金額で示されたときに、その金額の使い方がうまくなくて、実質的に最低生活を下回るような生活をしてしまう、社会参加もできないというようなことがあるのだとラウントリーも言っているわけです。これはまさに個々の世帯の様々な事情があって、それを補正していくためにはサービスが入る必要があるのか。それとも、そこにだけ特別の所得のプレミアをつけることが必要なのか。子どもを離して子どもに対する給付を別枠で、例えば学校や様々な支援団体に渡すみたいなやり方もあるわけです。

 だから、最低生活費を満たしているかどうかという検証は、私は前回言いましたように、社会保障生計調査でしたか、そういうものを使ってやったほうがいいとは思っているのです。でも、その場合は、どうしても貨幣の検証になります。もちろん、同時に、国民生活基礎調査の特別調査のような形でやるというのも賛成なのです。生活保護というのは最終的には所得保障としての機能をどのように見るかということがある。しかし、それだけでは最低生活、特に子どものような場合とか要介護状態の高齢者とか障害者に対して実質的に保障するにはどうするかというのは次の議論であって、それを生活保護のプレミアでやるか、一般制度のサービスをより生活保護層まで浸透させてやるのか、生活保護におけるケースワークの充実でやるのかというのは手法の問題だと思うのです。その辺の議論までやると、これはかなり難しい。

 私が思うのは、まず、貧困線を決めるということです。その上で、特別需要の場合も所得保障でまず考えていく。同時に、今、それでは不十分なものがあるからこういうものが必要ではないかという議論はあるわけですから、当然、議論に乗せていく必要があると思うのです。いきなり全部広げてしまうと、生活保護とは何だということになってしまうので。

■駒村部会長 ちょっと待ってください。

 岩田先生の方は、私の理解だと、生活保護の政策目的というのがあるでしょうと。それから、所得保障の範囲で考えなければいけないというお話だったわけです。山田先生が今からこれにかかわるお話をすると。ただ、阿部先生と山田先生のお2人にも御理解いただきたいのは、この部会は具体的に検証をする役割がありますので、理念だけでは前に進みませんので、その辺は意識していただくということで。

 どうぞ。

■山田委員 もちろん、貧困線を引いてはいけないという話ではなくて、平均的なものを何か設定した場合にそれから外れてしまう、例えば家計のやりくりがうまくいかないというので外れてしまう人がいて、そちらについて何かサービスが必要だというのは理解しているところです。ただ、貧困線、いわゆるここだと社会で参加できるという線は平均的に消費額では決められると思うのです。もちろん、これは理想的にはという話で、現実にそういったことができるかできないかというのは、消費データを使わなくてはいけないので、何か別のものを持ってこなくてはいけないと思います。それは消費データを基本にしながらも、本当にそれでうまくいっているのかというのは、多分、次の資料2の方で議論があると思いますけれども、それを持ってきて、傍証として見ていく必要はあるのではないか。それぐらいのスタンスで私は申し上げております。

■駒村部会長 何かありますか。

 阿部委員。

■阿部委員 私はより具体的な形でこれができるのかが非常に不安で、いくら消費データを一生懸命にらんでいても、母子世帯の、しかも被保護の母子世帯の特別な費用は、例えば食費では幾らですというような数値は出てこないのではないかという、具体的なドゥアビリティーといいますか、そういう観点で、それよりも少なくても今のものが十分かどうか、被保護世帯とそうでない世帯と比べてどうなのかみたいな、ウェルビーイングの方を見た方がまだ、加算が多いか少ないかということに対して何らかのインディケーターが出てくるのではないかと思う次第です。

■駒村部会長 では、岩田委員、お願いします。

■岩田部会長代理 特別需要という言葉にかなり幅があって、それぞれの先生たちの御意見も、ある個別ケースにおける非常に複雑な需要という意味と、カテゴリーで見ていく場合と違うと思うのです。社会保障として見るときは、カテゴリーで見なければしようがないわけです。そして、ケースワークのような場合は、個別ケースということになり、生活困窮者とか、ああいう分野と生活保護がもうちょっとくっついていくということが大事になってくると思うのです。それは手法の問題だと思うのですけれども、ここで議論するのは加算の問題なので、加算をどう合理的に位置づけて、その金額を精査するかということに尽きると思うのです。そうすると、個々のケースを積み上げてもしようがないという感じを私は持っています。

 そのときは、阿部先生が前におっしゃったように、やはり理論値というのは必要で、単純に相対比較ではできない。この場合は、生活保護以外の母子世帯の検証も必要なのです。当然そうだと。もしも子どものことを本気でやるならここでやるべきだとも思うのです。ただ、生活保護の議論としてどこまでやるかという話はあります。栃本先生は政治的だとおっしゃったけれども、さしあたり、児童扶養手当と児童手当があるわけですね。これは生活保護世帯は権利として当然あるわけですけれども、一応それは収入認定されているので、この認定問題としてやるか、加算の問題としてやるかというのは議論になるかなと思うのです。

 個別ケースは、一時扶助とか、ワーカーの裁量の範囲でなされる場合もあります。非常に小さいと思います。でも、そういうのをもっと増やすとか。私は、余りいいことだとは思わないのですけれども。特別需要を余り拡大解釈しないで、どこかにたがをはめないと、加算の議論はちょっとできないかな。

■駒村部会長 具体的な検証をしなければいけないので、余り漠然とした話でこの方針を決めることはできないと思いますけれども、阿部委員のおっしゃる、どういう状態になっているのかというのはやはり把握しておかないといけないと思います。この議論、後でまた議事録を丁寧に整理しないといけない部分が多いと思います。もちろん、お話を聞いていて、阿部委員のおっしゃるようなウェルビーイングの把握というのはきちんと見つつ、では、検証はどうするかという話はまたやらなければいけない。今の特別需要をどう捉えるかということもちょっとブレークダウンしてやっていかないと、具体的に作業すらできなくなってしまいますので。

 ちょっと前に進めたいと思います。もし言い切れなかった、説明が十分にできていないというふうにお感じの方はメモを出していただいた方がいいと思います。ここのところは、今の議論を聞いていても、何通りかの、同じような議論になっているのか、それともここは明らかに違うなという議論があると思いますので、この部分を私はこうして主張しているのだ、そして具体的な検証方法としてはこういうことをやればいいのではないかという意見があれば出していただいた方が。多分、事務局も聞いただけで整理するのは大変だと思いますので、お願いします。

 では、申しわけないです、続けて資料2について入っていきたいと思います。よろしいですか。

 では、資料2について、事務局、説明をお願いします。

■清水保護課長補佐 それでは、資料2について説明させていただきます。

 今期、基準部会では6点の検討課題を提示させていただいて、これまで検討の方向性について一通り議論いただいたところでございます。今回につきましては、これまで御議論いただいた内容をまとめて整理をしておりますので、いただいた御意見、先ほど部会長からありましたとおり、ニュアンスが違ったり、不足する点等があれば、また追加でいただければと思ってございます。また、これを踏まえて、次回には来年度の本格的な検証作業に向けた方向性の整理を行いたいと考えてございます。

 それでは、資料を順番に説明させていただきます。

 まず、1ページ目でございます。生活扶助基準の水準の検証手法及び今後の検証手法の開発に向けた検討ということで、資料のつくりといたしましては、各課題について事務局から当初提示させていただいた論点、また、部会でいただいた主な意見と、それを踏まえて検証の方向性(案)ということで一旦整理したものでございます。

 まず、提示した論点といたしましては、水準の検証方法に当たってはどの所得分位との比較が適当か、比較の方法、世帯類型をどうするか、また、新たな検証手法をどのように進めていくのかという論点を提示させていただきました。

 部会での主な意見といたしましては、変曲点ですけれども、先ほどお話もありましたとおり、消費だけで見るのは不十分であり、生活実態、生活意識などをマッチングさせてみてはどうかという御意見、また、抵抗線という視点も重要ではないかということを意見としていただいたかと思います。

 それから、比較の方法といたしまして、世帯類型と関係せずに単純に1人当たりの計算になることは懸念されるとか、等価指数の考え方などを用いた良い方法が何かあれば議論してみることもいいのではないかという御意見があったかと思います。

 また、新たな検証手法ということに関して言いますれば、絶対的評価基準を考える必要があるのではないか。また、社会生活に参加できるといった視点も考えられるので、そういった家庭の生活実態、生活意識に関する調査の活用等も考えたらどうかというところ。あと、その検証手法の開発については、計画的に部会と並行して何か議論する必要があるのではないかという御意見をいただいたかと思っております。

 それを踏まえて「検証の方向性(案)」というところでございますけれども、下線部のところが、いただいた御意見を当初提示した論点に追加した部分ということでご覧いただければと思っております。

 検証の方向性。まず、分位をどうするかというところでございます。まずは、全国消費実態調査を五十分位別に細かく見てはどうかということで提示させていただいて、その際、その変曲点や抵抗線などの考え方も用いて分析を行うこととしたいということで整理しておりましたけれども、それに加えて、家庭の生活実態、生活意識に関する調査等も用いて、そういった生活水準の質を踏まえた多角的な視点からも検証が必要ということで整理してございます。

 2番目のポツでございますけれども、比較対象をどのように設定するかについては、1人当たりの消費支出の算出方法の検討ですとか、いろいろな世帯類型の中で確認を行うことなど様々な御意見をいただいたということでございます。これは、全国消費実態調査のデータ検証も行いながら、そういった多様な世帯類型の特性を踏まえる手法については引き続き検討を行いたいということで整理してございます。

 また、一番下のポツでございますけれども、新たな検証手法の検討に当たっては、経済が成熟した段階でどうするかといったところも考える必要があるというところで、また、現行の水準均衡方式を補完する手法の検討も含めて調査研究事業等を活用して検討を進めてはどうかということでまとめてございます。

 3ページは、先ほど加算の部分でも御意見をさらに追加していただいたかと思っておりますけれども、有子世帯の扶助・加算の検証でございます。

 提示した論点。単に一般世帯との均衡だけで考えるのではなくて、様々な視点から需要を把握してはどうかという論点を書かせていただきました。

 部会での主な意見としましても、子どものニーズを考えたときに、一般世帯と生活保護受給世帯で差があってはいけないのではないかというところですとか、就学などの機会が制限されているのか、また、経済的観点だけではなくて、文化的・社会的観点でも見ていく必要があるのではないかということ。

 あと、今、生活保護を受けている世帯の中で中学生以上の世帯が多くなっているということも踏まえて、そういった子どもの年齢ごとにニーズも異なってくるのではないかということかと思いますけれども、そういったことも踏まえて考える必要があるのではないかということで御意見をいただいたかと思っております。

 また、その際、子どもの健康状態、栄養摂取状態も見ていくとか、時間の使い方、友人の数といったところも視点として加える必要があるのではないかということであります。さらに、一番下のところですけれども、学校教育費用、クラブ活動の費用などの費目も丁寧に拾っていく必要があるのではないかという発言をいただきました。

 4ページは検証の方向性でございます。子どもの健全育成にかかる費用については、そういった生活保護受給世帯であるか否かにかかわらず、等しく保障されるべきという御意見がございまして、一般世帯との均衡だけではなくて、子どもの健全育成にかかる需要を把握した上で、どのような内容や水準が必要なのか。議題1の方でも様々な御意見がございましたけれども、多角的な視点から検証を行うこととしてはどうかとしております。

 また、その際、経済的観点だけではなくて、生活の質という観点も踏まえる必要があるということ。

 あと、その下のところですけれども、生活課題、傷病や障害の状態というところで、生活保護を受給する有子世帯の生活実態を把握して、特有の課題についても分析を行う必要があるのではないかということで整理してございます。

 また、子どもの就学・就労についても、子どもが自立をする時期、また自立に何が必要かという観点から、その扶助・加算の内容も検討する必要があるのではないかということ。

 一番下のポツですけれども、就学費用の把握については、学習費調査等を活用して、学校教育費用ですとかクラブ活動費用など学校外の費用も賄えているのかどうかとか、必要な範囲、その水準の検証を行う必要があるのではないかということで提示してございます。

 続いて、5ページでございます。勤労控除等の見直し効果の検証ということで、今あるデータ等の御報告をさせていただいたというところでございます。

 部会での主な意見といたしましては、一部、特に全額控除となる金額の引き上げなどについては見直しの効果がある程度あらわれているのではないかということで御意見があった一方で、就労日数や就労時間、また新たに就労した方がどれぐらいいるかということも分析が必要ではないかということ。また、高校生の就労について、学業の妨げになっている可能性もあるのではないかということで、そういった点も含めて考える必要があるのではないかということで意見をいただいたかと思っております。

 検証の方向性というところでございますけれども、新規に就労した方の増加に与える影響ですとか、その就労日数、時間の変化というところも着目して、さらに効果の検証、現状の検証も踏まえてさらなる見直しが必要かどうかということを行ってはどうかということでまとめてございます。また、未成年者につきましては、その就労インセンティブを設ける趣旨ですとかタイミングなども踏まえながら、自立助長に向けた観点から検討を行ってはどうかということで挙げてございます。また、就労自立給付金については、前回も提示させていただきましたけれども、アンケート調査等を実施しまして、その効果の検証を行ってはどうかということでまとめてございます。

 6ページ目は級地制度のあり方の検討でございます。これは、昭和62年に見直して、それから抜本的な見直しを行っていないというところを踏まえて提示させていただきました。

 部会での主な意見といたしましては、地域差をどう考えていくのか、どのような水準で比較するのかというところで、例えば、物価など地域ごとのマーケットの違い等も検証する必要があるのではないかというところですとか、消費水準で見る場合についても、各地域によってどういった消費費目がその最低生活に共通しているのかどうかというところも、違う可能性があるので、共通する費目で見るとかいうことも検証すべきではないかという御意見をいただいたかと思います。また、消費水準の差についても、世帯類型ですとか高齢化率、また現金が必要な度合いなど、そういった要因についても影響を考える必要があるのではないか。また、昭和62年の手法で理論値として出したものについても、その後どのような乖離が生じたかということも丁寧に見ていく必要があるのではないかとか、市町村合併による影響についても検証する必要があるのではないかというような御意見をいただいております。

 7ページ目は、それを踏まえた検証の方向性であります。生活扶助基準における級地指定、級地の区分を検討することを前提に、まず、昭和62年度の見直しで行われた方法についてどういった差があったかというものを丁寧に検証する必要があるのではないかとか、消費に係るデータの理論値を算出する方法についても、世帯類型、高齢化率、もろもろの関係についても幅広に検証する必要があるのではないかということでまとめております。また、その物価水準についても、地域差というものがどういった要因で生じているのかということも検証を行うとしてございます。また、その地域の単位につきましても、市町村合併の影響ですとか、どういった地域の単位で把握をしていくのかということも検討が必要ではないかということでございます。また、検討の方法につきましては、様々な基礎データの収集ですとか分析手法等を検討するため、まず、調査研究事業等を活用してはどうかということでまとめてございます。

 8ページにつきましては、先ほどの1つ目の議題のところでも御意見をいただきまして、また、部会長からもお話のありましたとおり、今回の議論を精査した上で、次回提示させていただきたいと思います。

 最後の9ページでございますけれども、基準見直しによる影響の把握ということで、それぞれ直近の見直しの影響検証でございます。部会での主な意見といたしましては、そういった保護が廃止された者への影響ですとか、受給額の減少状況についても把握する必要があるのではないか、また、保護開始に与えた影響についてもできる範囲で把握してほしいという御意見をいただきました。また、就学援助などの他制度の影響、また住宅扶助の見直しによる転居状況ですとか、冬季加算については、全体の生活費の中でどう影響があったかというようなところがございました。また、全体の生活保護受給世帯に与えた影響については、社会保障生計調査を使って把握してはどうかというような御意見もいただいたと思います。

 また、それを踏まえて、検証の方向性というところでございます。その生活扶助基準の見直し、また冬季加算の見直しの影響については、社会保障生計調査等をもとに、生活保護受給世帯の消費水準ですとか消費構造、また生活意識に対してどのような影響を与えたのかということで検証を行うということで整理してございます。また、住宅扶助基準の見直しについては、実際に転居となったケース等を調査することによって、どのような影響を与えたかということで検証を行うということ。これについては、今、自治体向けに報告を御依頼しているところでございますので、まとまった段階で部会のほうに御報告させていただければと思っております。3点目で、上記以外についても、関連データを幅広く活用して、そのほかの基準の見直しの影響の把握も行っていくということでまとめてございます。

 資料2の説明は以上でございます。

■駒村部会長 ありがとうございます。

 まとめていただくと非常に難しい重いテーマが続いていると思います。

 きょうのまとめは、これまでの部会の委員の皆さんの御発言を事務局でまとめていただいたということになっておりますけれども、発言の趣旨と違うのではないかとか、修正があるとか、こういう意味なのだという部分がございましたら、御発言いただければと思いますが、いかがでしょうか。これだけで見てしまうと、後で違う議論になるかもしれないので、コメントをきちんと入れておきたいという部分もあると思います。いかがでしょうか。

 岩田委員、お願いします。

■岩田部会長代理 前回も先ほどの議論でもちょっと申し上げた点ですけれども、検討課題2です。1は、これまでやってきたことですが、2は、これまでこういう形でやってきたことは一度もないものです。ここは生活扶助基準が入らないのか。つまり、1類の年齢別の子どものものが入るのか入らないのかということが1つ。

 それから、具体的に言うと、教育扶助、それから高校進学の生業扶助、それから児童養育費加算と母子加算の4つをやるということなのか。それとも、そういうものは一応こちらに置いて、白紙状態で、子どもの健全育成に係る需要というものをマーケットバスケット的に、あるいは社会的剥奪論か何かを引用しながらやってみるということなのか。検証の方向性はまだ具体的ではなくて議論だとしても、提示されたものをどのように捉えていいかというのをもう一回解説していただくとありがたい。

■駒村部会長 事務局でお願いできますか。

■鈴木保護課長 まず、生活扶助との関係ですけれども、生活扶助そのものを検証していく中で、当然、子どもの需要というのもその年齢に応じて入ってくるわけですから、それはそれでこれまでの議論の積み上げの中から検証していくことになると思いますが、それだけでは、子どもの育成にかかる費用、子どもの貧困防止の観点から必要と思われるものとか、有子世帯が持つそういった需要がどういう形で今の基準で満たされているのかということを評価する必要があるというのが大きな枠組みの考え方でございます。今、そこに一応4つのものがはまっていると。母子加算なり教育扶助なりがはまっているということなので、それが今のあり方でいいかということ。恐らく、この4つを基本に考えていけば、大きなところは満たされる可能性はそれなりにあるとは思うのですけれども、もしそれがその枠組みでは足りないということであれば、もちろん、その枠組みの不足分は何かということも議論の対象になってくると思います。ただ、そこを改めて全部、一から、本来どういうあり方かということではなくて、今までの歴史の中で積み上がって現在があるわけですから、そこを出発点にして、どういう形にすれば、今、考えている子どもの健全育成に向けて生活保護世帯の有子世帯の基準がどうあるべきかというのが恐らく見えてくる。そういう認識でございます。

■駒村部会長

 岩田先生、ありますか。

■岩田部会長代理 そうすると、1つの前提として、一種のマ・バ方式のような理論値を出していくというイメージでしょうか。

■駒村部会長 お願いします。

■鈴木保護課長 物によってはマーケットバスケット的な手法によるものも当然出てくると思いますが、多分、全部それでできるかということでもないと思います。先ほど特別需要という言葉もございましたが、子どもの健全育成なり貧困の連鎖の防止という観点から、どういうことが必要かを考えていく中で、部分的はマーケットバスケット手法もあり得るということで考えております。

■駒村部会長 では、栃本委員、お願いします。

■栃本委員 2ページ目のところで、検討課題の「生活扶助基準の水準の検証手法及び今後の検証手法の開発に向けた検討」というので検証の方向性が示されています。この部分は、1ページ目から始まって、提示した論点、部会での主な意見は丁寧に拾ってくださっていると思うのですけれども、その上で検証の方向性が示されています。最後の3ポツ目のところで「新たな検証手法の検討に当たっては、経済が下降している場合の最低限度の生活保障水準をどう考えるかといった観点から、現行の水準均衡方式を補完する手法の検討も含め、調査研究事業を活用して検討を進める」ということが検証の方向性の3番目に示されているのです。きょうの議論では別の部分の議論をしているわけですけれども、この部分も今までの議論からするととても大事なのです。

 ちなみに、この3ポツというのは発言順になっているのですか。検証の方向性で、1、2、3とつけていないけれども、黒ポツが3つ書いてある。この順番というのは何順なのですか。

■清水保護課長補佐 例えば、検討課題1につきましては、そもそも提示した論点にある程度対応するような形で、それぞれ御意見と検証の方向性をある程度対応するような形で順番に並べています。

■栃本委員 やはり並べ方というのも結構重要で、後々残るものだから。後々この議論を検証される立場にもなりますから。今までの議論の中でも、きょうは別の意味でホットな感じでやっているわけだけれども、デフレというか、そういう中で、今までのを見ていいかなというのはかなり基本的なトーンとして結構議論されていたことだし。

 もう一つは、前回かの検証のときにそれぞれ先生方から新しい手法とか、そういった議論とか研究の成果の御発表があったわけなので、これ、なお書きで例が置いてあるという意味ではないとはもちろん思うのだけれども、非常に細かいことなのですが、やはり上に上げた方がいいのではないかということ。

 もう一つは、現行の水準均衡方式を補完する手法の検討というのは、それにかわり得るものというのは難しいということだったので、こういう議論という形に落ちついたと思うのだけれども、その前のところで「経済が下降している場合の最低限度の生活保障水準」と書いてしまっているので、デフレ基調のときだからという形だけにとらわれると、別のメッセージというか。別のメッセージと言っても変なのだけれども、別の読み方をされる。時代が変わると別の読み方をするから、そこら辺をもうちょっと工夫した方がいい。

 手を挙げられているけれども、すみません、もう一点だけ。これはちょっと教えていただきたいのだけれども、6ページ目の「級地制度の在り方の検討」のところで、提示した論点、部会での主な意見ということで、これまた先ほども申し上げたように、一貫して非常に細かく議論を丁寧に誠実に拾ってくださっていると思うのです。「地域差を消費水準でみる場合、全ての消費費目が全ての地域の最低生活に共通して必要とは限らないので」というのは非常によくわかるのですが、その後の「どの費目で見るべきか検証すべき」ということは、全部洗いざらい見て、例えば高齢で過疎地である場合にとか、そういうところで実際の現金生活ではないとか、もろもろ含めてどの費目でということなのだけれども、この部分の説明を。これは委員の先生の御発言だと思うのだけれども、この部分をもう一回説明してもらえますか。

■駒村部会長 恐らくこの部分は栃本さんの御発言を受けているのではないかと私は記憶しています。

■栃本委員 そうですか。

■駒村部会長 まあ、ちょっと事務局に確認しましょう。地域によって共通費目にばらつきがあるよねと。

■栃本委員 そうそう。これはすごく重要なことなので。

 どの費目で見るべきかというのはどういうことでしたか。

■駒村部会長 お願いします。

■清水保護課長補佐 事務局で受けとめた趣旨としては、様々な地域差、消費費目にしてもいろいろな地域差があるので、例えばマーケット的な違いを見る場合にも、ある程度、基礎的な生活需要に限って見てみるとかという方法もあるのではないかという御意見ではないかと受けとめて記載したのです。もしニュアンスとか内容が違うということであれば、また御意見をいただければと思います。

■栃本委員 こういう形できちっと書いてくださったのはありがたいことなので、検証作業を新たにされるのでしょうから、ぜひしていただきたいと思います。

 最後に、5ページ目の「部会での主な意見」のところで、ここでは「高校生の就労率が上がることについて、生活保護制度からみて考えると、必ずしも良いこととは言えない」となってしまっているから、これはちょっと。「高校生の就労率が上がることについて、生活保護制度からみて考えると、必ずしも良いこととは言えない」というのとはちょっとニュアンスが違ったと思うのです。

 それと、申しわけありませんが、もう一つ。「検証の方向性」のところで。これもすごく重要だと思うのだけれども、今までそういう言い方をされていないので、最近の流行だということもあるのだけれども、実際にこういう形にしてどうだったかということを常々検証しなければいけないというので、PDCAサイクルで回してみてちゃんと見るということが今回の肝というか、重要な部分だったと思うのです。どういう形で変わったかというのを。今まで検証とは言いながら、今回議論されているほどの検証作業ではなかったので。PDCAサイクルを回していくということは重要だと思うのです。その上で、5ページ目の「就労を理由に保護脱却した者に対してアンケート調査を実施し、保護脱却した者の保護再開防止の効果を検証する」ということなのです。そのときに申し上げたと思うのですけれども、アンケート調査をするときに、意識というか意欲というか、そこら辺の選択肢をつくって調査されるとすごくいいと思うのです。客観描写も重要なのだけれども、意欲があってというか、客観的な条件とともに意欲というのもかなり重要なので、そういうものがとれるとするならばすごくいい形になると思うのです。技術的に難しいのかどうか私はよくわからないのですけれども、ぜひお願いしたい。

 以上です。

■駒村部会長 2ページの新しい検証手法の経済下降局面というのは、多分、私の発言だったと思います。問題意識としては、デフレからなかなか脱却できない、経済成長が極めて低い状態が随分長いこと続いていることと、所得格差が全ての世代で拡大傾向を見ているときに、従来のような考え方でやることの意味をもう一度考え直さなければいけない。生活保護の基準の見直しという非常に難しい議論が続いている。その上で、現行の水準均衡方式は、80年代にできた、プラス成長のとき、あるいは中間層が厚いときにつくったものなので、それを補うものはないのかという問題提起だったと思います。ただ、いきなり生活保護の基準を見直すルール、計算をドラスチックにあるときから変えてしまうと不連続性が出てくるので、開発は必要である。これはこの基準部会が始まったときからの宿題だったのです。栃本委員がおっしゃるように、従来はややなお書き的な部分があったのですけれども、これがもっと上がってきている。だから、決して3番目というわけではなくて、これは多分時間的なもので、事務局としては急ぐというか、今回やらなければいけない部分と、やはりこの部分も同時にやらなければいけないという趣旨だと思います。

 先ほど課長から手が挙がっていたのですけれども、お願いできますか。

■鈴木保護課長 今、部会長のおっしゃったポツの前半は、そういう意味では、そういう奥行きのある議論をちょっと平板化して、私どもの書いた意図もきちんと表現できていないですし、また、皆さん方の意見とも違うと思いますので、ここは修正をさせていただきます。

■栃本委員 特に重要だと思うのは、私もその審議会のときにお話ししたと思うし、事務局がこの間のワンペアレントファミリーであるとか、高齢者世帯のそれぞれの分位ごとの数年間の変化率を見たではないですか。ワンペアレントファミリー、母子家庭の場合、すごく格差が生じているとか、それについて不足している部分があるのではないかという指摘も委員からあったけれども、やはり非常に貴重なデータだと思うのです。そのとき言ったのは、今、いみじくも部会長の駒村先生が話されたように、こういう局面だけではなくて、今回の検証とか、今回の基準を考えたとき、非常に重要なポイントは格差なのです。格差社会というフレーズはすごく重要だと思うのです。だから、次回とか次々回とか整理するときに、少しだけ書き加えた方が。格差の問題というのは、生活保護の中でもそうだし、それについて言及した文章があるとすごくいいなというか、そのように思いました。

 以上です。

■駒村部会長 それでは、山田委員。

■山田委員 こちらでの議論を非常に丁寧に拾ってくださってありがとうございます。少なくとも私が発言した部分については細かく拾っていただいて大変感謝しています。

 その上で質問ですけれども、検討課題1から6まで、いわゆる個々の検討課題についての検証の方向性ということでは理解でき、また、こういったことをやらなくてはいけないということでは、示していただいたこの資料に私も賛成するのですけれども、一方で、この検討課題の1から6のどこからやっていくのかという全体の検証の方向性は一体どのようになっているか。もちろん、事務局としてお急ぎの検討課題もある一方で、私としては検討課題の6です。先ほど栃本委員からPDCAサイクルとありました。最後には書かれているのですけれども、やはりここの部分が近年の改革でどうなったのかというのが非常に気になっております。事務局的に急がなくてはいけない案件というのもある一方で、私はここも非常にプライオリティーが高いと思っていますので、全体の検証の方向性についてお伺いできればと思います。

■駒村部会長 課長、お願いします。

■鈴木保護課長 おっしゃるとおり、全体の進め方は現時点では書いておりません。これに関しましては、一旦、29年度にはどこかまでかは何らかの検証結果を導き出していただけるように私どもとしても努力したいと思っております。そういうことを考えますと、おっしゃるように、これを全部29年検証でやり切れるはずもなく、本質的な課題がたくさん入っていると思いますので、そういう意味では何らかの優先順位なりをつけて取り組む。また、息の長い取り組みが必要なものについては、取り組みながらもすぐの結論ではなくて、少し先も含めて結論の時期を得るとか、いろいろなことが必要だと思っておりますので、次回の部会に向けて私どもとしても整理して、今後、来年29年検証をどのようにやるかという提案をさせていただきたいと思います。

 なお、影響の評価に関しましては、これがなければ29年検証そのものの議論が深まらないと思いますので、これは、きちっと29年検証をする中でそれを評価した上でやる必要があると考えております。

■駒村部会長 時間も限られている中で優先順位を決めなければいけないわけですけれども、これまでの影響をまず把握しなければいけないというのは課長のおっしゃるとおりだと思います。そのほか、かなり重い問題もありますから、それはまた継続的にやっていただくという部分と、1年以内にやらなければいけない部分がある。また、検証方法を詰めていく中で、これはすぐにはできないかなというのも出てくるかもしれませんので、今後の議論で詰めたいと思います。

 いかがでしょうか。資料2について委員の皆さんからの議論はおおむね出尽くしたようなので、資料2について離れてしまっていいですか。よろしいですか。

 では、事務局から資料3について御報告をお願いいたします。

■清水保護課長補佐 それでは、資料3について御説明させていただきます。「生活保護基準部会検討作業班の設置について」ということで、今、掲げさせていただいた論点の中でも、データ等に基づいて基礎的なデータの収集ですとか分析について作業を行っていただく検討作業班というものを設置したいと考えてございます。作業スケジュールにつきましては、29年1月以降に設置いたしまして、全国消費実態調査等のデータ分析を開始いたしまして、また、そのデータ分析がまとまったものから順次この部会に報告、御提示させていただいて議論をいただく形にさせていただきたいと思っております。

 四角の中に「設置要綱(案)」を提示してございます。部会の委員の方から検討作業班にも御参加をお願いしたいと思っておりますので、メンバーについては部会長とも御相談の上でお願いしたいと思ってございます。

 資料3の説明は以上でございます。

■駒村部会長 この検討班設置について御意見、御質問あればお願いできますか。よろしいですか。

 作業を行うことになるわけですので、集中的というか、かなり込み入ったことをやっていただくことになると思います。多分、来年報告書をまとめることになるのだろうと思いますけれども、そのときには、報告書の中にどういう作業を行ったからこうなったのだという再現性を担保しないといけないと思います。同じデータで同じ段取りでやれば同じ結果になるのだと。この再現性の担保はちゃんと保証した上でこういう検討作業班を置くということだと思いますので、決してブラックボックスではないということになると思います。

 いかがでしょうか。よろしいでしょうか。

 岩田先生、何かありますか。

■岩田部会長代理 検討課題の何からどういうふうにやっていくかというのは、まだ議論ということになっているということですが、そうすると、1月からやるというのは、次回の部会である程度優先順位を決めてやっていくというようなことでしょうか。

 それと、先ほど書いてあった研究事業というのがこれに当たると考えていいのでしょうか。

■駒村部会長 事務局、御回答いただければ。

■清水保護課長補佐 1点目ですけれども、課長からも説明があったとおり、次回のところである程度のスケジュール案みたいなものもお示しできればと思ってございます。また、研究事業は別の形で、検討作業班は主に今回の議題で特に全国消費実態調査のデータ分析等、あと、前回の見直しの結果の基礎的なデータ等の分析を行っていただくことを予定しておりまして、検討作業班が2つございましたけれども、新たな検証手法ですとか級地の研究事業につきましては別な形で設けたいということで、今、考えてございます。

■駒村部会長 きょう言ったのは検討作業班です。研究事業の方は、また後日、詳細説明いただければと思います。

 資料3についていかがでしょうか。よろしいでしょうか。

 そうしましたら、ちょっと早いですけれども、ほぼ予定の時刻になってきましたので、本日の審議は終了したいと思います。

 最後に、次回の開催について事務局から御連絡をお願いします。

■清水保護課長補佐 次回ですけれども、現在調整中でございます。できれば1月中に実施させていただきたいと思いまして、今、スケジュール等の御確認をさせていただいておるところでございます。それを踏まえて日程を設定した上で、追って連絡をさせていただきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。

■駒村部会長 それでは、本日の議論は以上とさせていただきたいと思います。

 御多忙の中、ありがとうございました。

 


(了)

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