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2016年9月9日 第1回「仕事と生活の調和のための時間外労働規制に関する検討会」議事録

労働基準局 労働条件政策課

○日時

平成28年9月9日(金)17:00~19:00


○場所

中央労働委員会講堂(労働委員会会館7階講堂)


○議題

時間外労働の実態等について(意見交換)

○議事

第1回仕事と生活の調和のための時間外労働規制に関する検討会

 

 

 

                                日時 平成28年9月9日 ( ) 17:00~19:00

                                場所 中央労働委員会講堂

                                      ( 労働委員会会館7階講堂 )

 

○中嶋調査官 島田委員の到着が若干遅れているようですが、定刻になりましたので、ただいまより「第 1 回仕事と生活の調和のための時間外労働規制に関する検討会」を開催いたします。委員の皆様方におかれましては、御多忙のところお集まりいただき、誠にありがとうございます。本検討会の進行について、座長が選出されるまでの間、事務局にて議事進行を務めさせていただきます。本検討会の開催に当たり、労働基準局長の山越から御挨拶申し上げます。

○山越労働基準局長 労働基準局長の山越でございます。委員の先生方には、大変お忙しいところお集まりいただきまして、本当にありがとうございます。この検討会は、本年 6 月に閣議決定されましたニッポン一億総活躍プランの中におきまして、労働基準法について、労使で合意すれば上限なく時間外労働が認められる、いわゆる 36 協定における時間外労働、その規制の在り方について再検討を開始すると盛り込まれましたことを受けまして、今後、開催が予定されております「働き方改革実現会議」での議論に資することになりますよう、我が国におけます時間外労働の実態把握などを検討することを目的といたしまして、設置をするものでございます。長時間労働の是正は、労働の質を高めて企業の生産性の向上につながりますとともに、働く方の健康やワーク・ライフ・バランスを確保することや、様々な事情を抱えた方を含め幅広い方々の就業参加を可能にするためにも、非常に重要な課題であると思っております。

 厚生労働省におきましては、これまで平成 26 年に厚生労働大臣を本部長といたします長時間労働削減推進本部を立ち上げまして、働き方改革について、企業のトップの方への働き掛けを行っておりますし、また、一定の時間外労働があります全ての事業場を対象といたしました監督署による重点的監督なども実施しておりまして、こうした執行強化を含めまして様々な対策を講じてきたところでございます。

 この検討会では、長時間労働の是正に向けました取組を更に進めていくため、幅広い観点から委員の皆様方のお知恵を頂きたいと考えております。是非、皆様方の活発な御意見を承ればと思っております。どうぞよろしくお願い申し上げます。

○中嶋調査官 続いて、本検討会の委員の皆様の御紹介です。東京大学大学院法学政治学研究科教授荒木尚志様。

○荒木委員 荒木でございます。よろしくお願いいたします。

○中嶋調査官 学習院大学経済学部経営学科教授今野浩一郎様。

○今野委員 今野です。よろしくお願いします。

○中嶋調査官 リクルートワークス研究所所長大久保幸夫様。

○大久保委員 大久保です。よろしくお願いいたします。

○中嶋調査官 京都大学大学院人間・環境学研究科教授小畑史子様。

○小畑委員 小畑でございます。よろしくお願いいたします。

○中嶋調査官 早稲田大学教育・総合科学学術院教授黒田祥子様。

○黒田委員 黒田です。どうぞよろしくお願いいたします。

○中嶋調査官 みずほ情報総研シニアコンサルタント小曽根由実様。

○小曽根委員 小曽根でございます。よろしくお願いいたします。

○中嶋調査官 ちょうど島田委員が、到着されました。御紹介させていただきます。早稲田大学法学学術院教授島田陽一様。

○島田委員 どうも遅くなりました。失礼しました。島田でございます。

○中嶋調査官 神戸大学大学院経営学研究科教授平野光俊様。

○平野委員 平野です。よろしくお願いいたします。

○中嶋調査官 一橋大学大学院商学研究科教授守島基博様。

○守島委員 守島です。よろしくお願いいたします。

○中嶋調査官 日本総合研究所調査部長 チーフエコノミスト山田久様。

○山田委員 山田でございます。どうぞよろしくお願いいたします。

○中嶋調査官 以上 10 名です。続きまして、お配りしました資料の御確認をお願いいたします。資料といたしましては、議事次第、座席表、開催要綱、参集者名簿、「我が国における時間外労働の現状」、参考資料 1 「現行の時間外労働規制の概要」、参考資料 2 「平成 27 年通常国会提出の労働基準法改正法案」の 7 点です。不足などがありましたら、事務局までお申し付けください。よろしいでしょうか。

 まず、開催要綱を御覧いただきながら、本検討会の座長についてお諮りいたします。開催要綱に、開催趣旨、検討事項、運営について整理させていただいております。この中で、 3. 運営 (3) において、「検討会の座長は、参集者の互選により選出する」としております。これに従い、座長の選出を行いたいと思います。座長の選出については、事前に事務局で委員の皆様にお伺いしましたところ、今野先生を推す声を頂いております。今野委員にお願いしたいと考えておりますが、よろしいでしょうか。

                                   ( 異議なし )

○中嶋調査官 ありがとうございます。それでは、今野委員に座長をお願い申し上げます。それでは、座長に御就任いただきます今野委員より、御挨拶を頂きたく思います。よろしくお願いいたします。

○今野座長 それでは、進行役を務めさせていただきます。今回の問題は大変重要な問題でございます。重要な問題はいつもそうですが、単純ではありませんので、多様な観点からいろいろな意見をぶつけて、いい方向を考えるということが重要だと思います。皆さんに活発に議論していただいて、何か少ししゃべりにくい雰囲気もありますが、遠慮なく意見を出していただければと思っております。早速、議事に入りますので、よろしくお願いします。

○中嶋調査官 ありがとうございました。カメラ撮りについては、ここまでとさせていただきます。お願いいたします。これ以降の進行は、今野座長にお願いいたします。

○今野座長 進め方ですが、今日は第 1 回ですので、事務局から資料に沿って時間外労働の現状や制度の概要について紹介をしていただいて、その後、今日は自由に議論をしたいと思います。次回以降は、今日の自由な議論を踏まえて、順に論点を絞っていきたいと、そういう進め方をしたいと思っておりますので、よろしくお願いいたします。事務局から、資料の紹介をお願いいたします。

○中嶋調査官 承知いたしました。私からの資料の紹介は、「我が国における時間外労働の現状」というタイトルを付したもの。これは 1 ページに年間総実労働時間の推移を示す棒グラフ、これは左右に並べたものですが、こちらを中心にさせていただきたいと存じます。こちらの束は、時間外労働の現状とか職場の意識などをまとめたデータ集です。なお、参考資料 1 とありますのは、労働時間に関する法令、告示、いわゆる 36 協定の記載例などを載せたものです。適宜、御参照いただけたらと存じます。それでは、始めさせていただきます。

1 ページは全体状況ですので、ごく簡単に述べさせていただきます。左側のグラフにありますとおり、我が国の年間の総実労働時間は減少傾向で推移をしておりまして、ここ 5 6 年は 1,700 時間台半ばです。これは一般労働者について、右側のグラフにありますとおり、ほぼ横ばいで総実労働時間が推移する中にあって、平成 8 年頃からですが、パートタイム労働者比率が高まったことなどが、その要因として考えられています。

2 ページです。こちらは国際比較です。左側の棒グラフは、年平均の労働時間となっております。日本は、アメリカとイギリスの間のポジションですが、ドイツ、フランスといった欧州の国と比べますと、フランスより年間で約 250 時間、ドイツよりは年間で約 350 時間ほど長くなっています。右側のグラフは、黄と赤で示されております時間外労働者の構成割合が高く、また、特に赤色で示しております週に 49 時間以上働いている労働者の割合が高くなっています。

3 ページに進みます。こちらも長時間労働者という切り口で、週の労働時間が 60 時間以上の者の割合を見たものです。上の表ですが、太枠で囲んだ所を御覧ください。これが週 60 時間以上の者の構成割合です。御覧のとおり、全体では低下傾向にありまして、平成 27 年では 8.2 %となっております。ただ、同じ数字をいわゆる働き盛りに当たります 30 代男性について見たものが下の表ですが、下の表の一番右の数字は、平成 27 年におきまして 16.0 %です。以前より低下はしているものの、高水準という状況が見て取れるところです。

4 ページに進みます。 4 ページからは、 36 協定の締結状況とその内容について見たものです。 4 ページは 36 協定を締結している事業場割合を見たものです。濃い赤色の所を御覧いただきますと 55.2 %とありまして、この数字で 36 協定が締結をされています。このうち特別条項付きの協定、すなわち大臣告示で定める通常の延長時間であります月 45 時間、年間 360 時間といった時間を超えるケースを想定した条項付きの協定、これを締結している割合を見たものですが、全体の 22.4 %という状況です。なお、企業規模別に見ますと、今、申しました特別条項付きの協定は、大企業で多く締結されているところです。

5 ページです。こちらは、今、見ました 4 ページで言いますと薄い赤色の部分でありまして、 36 協定を締結していない事業場について、締結していない理由を見たものです。時間外労働・休日労働がないとの回答が、 43.0 %と一番多く、一方、時間外労働・休日労働に関する労使協定の存在を知らなかった、時間外労働・休日労働に関する労使協定の締結・届出を失念したなどの回答も見られるところです。

6 ページです。こちらは、 36 協定で定める延長時間について見たものです。御覧いただきますと、通常の延長時間としましては、ほぼ 100 %の事業場において、月 45 時間、年間 360 時間といった限度基準の範囲内に収まっております。具体的には、上の表ですが、オレンジで色塗りをしましたとおり、全体で 99.1 %の事業場が月 45 時間以下のところで通常の残業時間の時間外労働の時間を締結しています。下の表ですが、同じように 98.6 %の事業場が年間 360 時間以下に収まっている旨、御覧いただければと存じます。

7 ページです。こちらは特別条項による特別延長時間の状況を見たものです。どの程度の特別延長時間がどれぐらいの割合で定められているかを、色分けして見たものが上のグラフです。割合として最も高いのは、青色の月 70 時間超 80 時間以下の区分、次いで緑色の月 50 時間超 60 時間以下の区分、オレンジ色の月 80 時間超 100 時間以下の区分となっております。なお、下の表ですが、こちらは全事業場を分母としたときに、上のグラフに示されておりますそれぞれの構成割合がどれぐらいの数字になるかを示したものです。適宜御参照いただければと存じます。

8 ページは、 7 ページと同じ作業を 1 年間における特別延長時間について行ったものでして、年 600 時間超 800 時間以下が最も多くなっています。

9 ページを御覧ください。特別条項がある企業の 36 協定からそうした特別延長を要する「特別の事情」について見たものです。最も多い事情としましては納期のひっ迫でして、続いて予算、決算対応となっております。このほかでは、業務の繁忙 ( ボーナス商戦など ) 、大規模なクレームへの対応などが挙げられております。 2 つの表で 80 時間超のもの、 100 時間超のものと、それぞれ分けて整理をしましたが、傾向の違いは特段ありません。

10 ページです。 10 ページ以降は、これまで見てまいりました 36 協定によって行われている時間外労働の実績を見たものです。 10 ページでは、月 45 時間以下を青色、それを超える時間外労働について別の色に塗り分けたものです。全体としまして、一番上の棒グラフのとおり、事業場の 9 割程度は 45 時間以下の時間外労働となっております。一方、業種ごとには、ややばらつきが出ておりまして、青い棒の短い所としまして、例えば印刷・製本、貨物取扱業といった所で、 45 時間を超える時間外労働が、相対的には多くなっています。

11 ページは、 10 ページで、今、御覧いただきましたブルー以外のカラフルな部分について、つまり月 45 時間を超える時間外労働について、数字で表したものです。業種別、時間区分別に数字をまとめておりますので、適宜、御参照いただければと存じます。

12 13 ページは、今、見ていただきましたものを 1 年間の実績について見たものです。月間の場合、 1 月の場合とほぼ同じような傾向でありますので、こちらも説明は省略し、適宜、御参照いただければと存じます。

14 ページ、こちらは、労働時間の実績を職種別に見たものです。この表の一番下が週の労働時間が 60 時間を超える割合を示したものですが、御覧いただきますと、医師や自動車運転従事者などで高い値となっております。

15 16 ページです。こちらは、特別条項による特別延長時間の設定と時間外労働の実績の関係を見たものです。表を見ていただきますと、協定で定める特別延長時間と比べれば時間外労働の実績は短い事業場が多くなっており、言わば保険的に特別延長時間を長く設定していることがうかがえるものです。

17 ページです。 17 ページからはアンケート調査を何点か御紹介いたします。 17 ページは、所定外労働が必要となる理由について、企業・労働者双方に聞いたものです。左側の企業調査では、業務量が多いため、仕事の繁閑の差が大きいため、顧客からの不規則な要望に対応する必要があるためが高くなっています。また、右側の労働者調査では、同様に、人員が足りないため ( 仕事量が多いため ) 、業務の繁閑が激しいため、予定外の仕事が突発的に発生するためが高くなっております。

18 ページです。こちらは、長時間労働の職場の特徴を見たものです。これは労働者に対しまして、自分の職場の特徴について、この表に記載しましたような様々な質問、これに複数回答していただきまして、その回答結果を 1 日の労働時間の長さに応じた 3 つのグループに分けて集計したものです。オレンジ色が最も労働時間の長いグループでありますが、このグループは自分の職場の雰囲気として、 1 人当たりの仕事の量が多い、突発的業務が生じやすい、一部の人に仕事が偏りがち、締切りや納期に追われがちと感じていることが分かります。反対に最も労働時間の短いグループに多く選択されましたのは、仕事の手順などは自分で工夫しやすい、仕事が終われば周りの人が残っていても退社しやすいといった項目です。

19 ページです。こちらは長時間労働者の意識について見たものです。労働者に対しまして、上司は残業している人に対してどのようなイメージを持っていると思うかとの質問をしまして、表に記載した選択肢から複数回答していただいたものです。結果を見ますと、オレンジで示されているような労働時間の長い人ほど、上司が残業している人に対して、頑張っている人、責任感が強い人などのポジティブなイメージを持っていると考えている傾向が強いことが分かります。反対に、ブルーで示されているような労働時間が短い人ほど、上司は残業している人に対して、仕事が遅い人、残業代を稼ぎたい人などのネガティブなイメージを持っていると考えている傾向が強いというものです。

20 ページです。こちらは若い人の意識についてです。現在の会社から定年前に転職したいと思っている若年正社員について、転職しようと思う理由を見たものです。労働時間・休日・休暇の条件がよい会社にかわりたいという項目が、 40.6 %という具合に 2 番目に高い項目になっております。なお、この調査は、平成 21 年を青、平成 25 年を赤い色としまして、 2 回の調査結果を載せておりますが、この項目を選択した方の割合は、平成 25 年調査のほうが平成 21 年よりも 3 ポイント以上高い結果になっています。

 最後に 21 ページです。こちらは長時間労働抑制の効果として、労働生産性の向上に着目したものです。これは企業に対しまして、自分の会社の労働生産性は同業他社と比べてどうかという自己評価を尋ねたものでして、その回答を 2 つの区分に分けておりますが、 1 つは、それまでの残業削減の取組の結果、所定外労働時間が短縮された企業、もう 1 つは、そうでない企業とに分けまして、生産性に関する質問への回答を 2 本の棒グラフでまとめたものです。御覧のとおり、残業削減の取組の結果、所定外労働時間が短縮した企業において、労働生産性が同業他社に比べて高いと回答する割合がやや高いという結果になっております。

 メインの資料は以上ですが、また、参考資料 1 についても、かいつまんで紹介させていただきたいと存じます。参考資料 1 7 ページまでは、冒頭に申し上げましたとおり 36 協定に関連した条文や告示、記載例などです。

8 ページの労働時間等設定改善法の概要について、ごく簡単に紹介させていただきたいと存じます。労働基準法が強行規定から成る法律であるのに対しまして、こちらの法律は労使自治を通じた労働条件の改善を図るものです。具体的には、労働時間とか、始業・終業時刻などの設定に当たりまして、事業主に労働者の健康面やワーク・ライフ・バランス、労働者が抱える様々な事情への配慮を求め、また、職場での話合いが進むように労使の代表者から成る委員会の設置などに努めていただいているものです。また、国においても、そうした具体的な取組が進むように、ガイドライン、指針を定めるとともに、環境改善に努める事業主への助成も行っています。御参照いただけたらと存じます。

 もう 1 つ、 10 ページ以降が、行政における取組をまとめたものです。当然、法執行の強化など、様々な取組を進めておりますが、昨今の取組例としましては、 12 ページ以降を御紹介させていただけたらと存じます。こちらでは、関係省庁間で行っております通報制度の取組とか、トラック業界において、事業者、荷主、行政が一体となって取引環境と労働環境の改善を進めるための取組をやっておりますので、それらについて概要を付けております。

12 ページだけ簡潔に説明させていただきます。こちらは、厚生労働省、公正取引委員会、経済産業省との間で行っている通報制度です。これは、監督署が労働時間に関する法令違反を把握した際に、その違反の背景に発注内容の不当な変更など、いわゆる下請けたたきの存在が疑われる場合に、公正取引委員会や経済産業省に通報するものです。これにより下請法、独占禁止法による適切な対応がなされることによって、違法な長時間残業の原因にまで踏み込んで対応していこうというものです。同様の取組を自動車運送事業について、監督署と地方運輸機関との間でも行っており、その概要については 13 ページに付けています。その他は、時間の関係上、説明は割愛させていただきます。私からは以上です。

○今野座長 ありがとうございました。それでは、今、資料の説明をしていただきましたので、皆さんの御意見を頂く前に、もし、この資料について御質問があったら、最初に出していただいたほうがいいかなと思いますが、いかがでしょうか。よろしいですか。

 私から 1 つだけ質問していいですか。これはどうやってデータを読むのだろうと思った所があったものですから。 9 ページ目です。これは表頭に理由が書いてあるのですが、その一番左側に予算、決算業務がありますね。これは商業と運輸交通業、接客娯楽業が高いですよね。予算、決算業務はどの業界にも同じようにあるのに、何でここだけ高いのだろうと思ったのですが、これは何か理由があるのですか。納期のひっ迫なども業種のいろいろな特性があるかと思うのですが。

○藤枝労働条件政策課長 このページの「特別の事情」の理由ですが、実際には、自由記述というか、それぞれの企業の個別事情を書かせるようになっており、大まかなくくりで今回、取ったものですので、若干、集計上ぶれているものもあるかもしれません。サンプルは限られますが、もう少し特別な事情を詳しく、より細かな分類にできないかということを別途作業しておりますので、また次回以降そろいましたらお知らせしたいと思います。

 ただ、先生がおっしゃるように、予算、決算業務は基本的には各業種にあることだとは思いますけれども、特に特別条項にわざわざ定める必要があるかどうかというところで、ばらつきがあるのかなと思っております。以上です。

○今野座長 よろしいでしょうか。それでは、今日は先ほども言いましたように、自由に議論したいと思いますので、今回、この研究会で与えられているミッションについてお考えを自由に開陳していただければと思いますが、いかがでしょうか。

 島田さん、先に帰られるのですよね。では、島田さんからですかね。それでは言いたいことは全部話してください。

○島田委員 突然の御指名ですので、まとまった考えがあるわけではないのですが、フリートーキングということですのでお話したいと思います。フィールドは労働法ですが、労働時間のことを考えると、やはりどうしても労働者ないし経営者の意識で、労働時間の規制をどう考えているのかということが非常に気になるところです。

 日本の働き方について JILPT の濱口さんは、メンバーシップ型であるということをおっしゃいました。あるいは無限定正社員という言い方を私どもはしていますが、それに出てくるのは、やはり労働時間についても無限定であると。無限定であるということは、時間決めで労働を商品として売っているという契約意識には必ずしもなくて、企業という共同体のメンバーシップとして、時間についても無限定的に働くといったことが当然視されてきていたのではないかということです。

 ですので、労働基準法が前提としている、例えば 36 協定にしても、建前としては、一応経営等の一時的、臨時的な状況に対して対応するために、言わば、本来は刑罰付きで禁止しているものを特別に認めるという立て付けなのです。しかし、実際にはしばしば、今日の御指摘にもありましたが、 36 協定というのが実際の労働時間管理との関係で作られているよりは、大分保険的に作っていて、実際にどの程度時間外労働をやるのかは、現場に任されているわけです。

36 協定の枠は作るのですが、実際の労働時間の管理との関係では、大分距離があるような感じがしております。これを一体どうやったら、本当に 36 協定によって労働時間外規制ができるのか。あるいはプラス何らかの方式を考えていかなければならないのか。そういうことがこの検討会での課題かなと思っているところです。

 もう 1 つは、この問題というのはどうしても現場での労使のコミュニケーションという中で、経営陣の意識改革を含めて実施しないと、実際にはなかなか進まないところがあるかと思います。その点についても、 36 協定はご存知のように、労働組合の監査代表との関係で結んでいる場合はともかく、そうでない場合はアドホックな監査代表者との協定を結ぶだけで、その後それがどう実証されていくのかについて、法制度の中では特段、それを追って監視していくような仕組みはないわけです。その点を一体どう考えていくのかということも、大きな課題になるのではないかと思います。

 もう 1 つは、労使で合意すれば上限なく時間外労働が認められるのが 36 協定だとしておりますが、いわゆる時間外労働の上限についてどう考えるのか。それがもう 1 つの課題になるかなと思います。現在の上限時間の限度基準については、私の記憶では 1997 年の男女雇用機会均等法の改正における女性労働者の時間外規制を撤廃するということとの関連で、男女共通規制という議論の中で浮上してきたと記憶しているのですが、それからほぼ 20 年近くたつ中で、そのときのことを上限基準ということで適正だったのか。あるいは今日の資料を見ると、ほぼそういうことで収まっているとすれば、言わばそれを法的に強制する条件ができた、土壌ができたと考えられるのかといった点も問題となってくるのではないかと思いました。

 ここは 36 協定のことが中心ではありますが、 3 番目には健康で仕事と生活の調和がとれた働き方の実現ということがありますので、トータルで見た年間での休暇取得も含めた労働時間規制をどうするのか。あるいは最近出ている生活時間の保障というか、インターバル時間ということも大分議論されていますので、これらについても諸外国の運用も含めて検討の課題かなという、総花的なお話で御勘弁いただいてよろしいですか。

○今野座長 ありがとうございます。ほかの方はどうしますか。今日は第 1 回目だから順番に聞いていきますか。山田さん、どうぞ。

○山田委員 私は法律は専門ではありません。民間のシンクタンクの研究員ということで、どちらかというとマクロの経済や労働経済などに近い、一方で実際に企業で働いている感覚の部分と、その辺のことを踏まえて、今回の問題をどう考えているかということを申し上げます。

 まず、日本でなぜ長時間労働が一般的になっているかという問題ですが、法律面というよりは、なぜかという実態面、恐らく経営的な観点と、ちょっとシステム的なというか、もうちょっとマクロなところの観点があるのではないかと思っています。

1 つは、島田先生も先ほどおっしゃられた意識ということで言うと、マネジメント上の問題があるのではないか。そもそも長時間というのは、これまで当たり前だったので、そういう意識の中でされているということ。逆に言うとマネジメントのやり方を変えれば、意識や方法を変えれば、かなり短縮できていける部分は多分あるのだろうと思います。

 実際に最近の事例でも、経営トップが、まず労働時間短縮を言って、現場のマネージャーがそこの仕事のやり方を見直していくということで、かなり成果を挙げているケースがありますので、そういうマネジメント上の問題が、まずあるのだと思います。

 ただ、恐らくそれだけではとどまらず、これも先ほど島田先生がおっしゃった、正に日本の雇用のメンバーシップと言われる在り方、これはシステムとして、ある意味、日本の雇用システムの中に長時間労働はビルトインされている部分が、恐らくあるのだろうということかと思います。

 日本の雇用の在り方というのは、基本的には雇用保護が労働法上かなり強く規範としてあるということかと思います。すると、特にいわゆる正社員といわれる人たちの雇用調整が難しいということになりますと、企業としては不況時にどう対応するのかということを考えたときに、 1 つの対応としては、平常時に少し労働時間を長くしておいて、いざ不況期になったときに、労働時間を短縮する、あるいは金銭面で言うと時間外の短縮によって時間外給与を大きく減らすことによって、バッファーを作っていくということがあります。

 もう 1 つは、いわゆる非正規といわれる人たちを増やすことによって、この不況期においてそこの調整をやってきたということだったのだと思います。ただ、今の問題というのは、非正規があまりにも増え過ぎて、しかも正規と非正規の格差の問題が大きくなる中で、やはり非正規の方々の雇用保障なり、処遇の改善ということが言われてくる中で、そういう調整の仕方というのは、今後、難しくなっていっているのだと思います。

 さらにその中で、時間外労働をなくしていくことになると、これはいいとか悪いとかは別として、企業の経営の柔軟性といったときに、人件費調整の余地をどういう形で残していくのかという問題はやはりあると思います。それを先ほども申し上げたマネジメントの問題のところで対応できればいいのですが、そこを超えてシステムの話になってくると、また単純に上限規制を入れればいいというような話ではなくて、端的に言えば雇用調整のバッファーをどう考えていくのか。

 欧米の場合は、特にヨーロッパも含めて、いわゆる余剰人員の調整に関しては、組合のほうが、しっかりしたいろいろなルールを作る前提ではあるし、社会的なセーフティネットを経ることを前提にして、そこの一定のルールを作ることで、雇用量の調整もやっているわけです。そこを考えると、もちろん上限規制は大きな選択肢になってきますが、今は恐らく上限規制でイメージされているヨーロッパの場合は、逆に言うと、余剰人員の調整のところにそれなりのルールを作っておりますので、そこをどう考えるかというのが、やはり論点になってくるだろうと思います。

 もう 1 点だけ申し上げますと、その背景にある雇用システムの裏側の問題の産業の問題というのも、私はあるのではないかと思います。産業システムといいますか、先ほども少し出た商慣行のようなことがあると思います。例えばヨーロッパは今は大分変わってきたとはいえ、ドイツはかつて一定以上の営業時間の規制というのがかなり強くあったのです。すると、それ以降働く必要はなかったということなのです。

 ところが日本の場合はあまりそういうこともなく、それからどんどん、どちらかというと競争が激しくなる中で、 24 時間営業する形が増えてきているわけです。そういう商慣行であり、あるいはもともと日本の場合はいろいろな形で雇用保障を強くしているということと表裏一体だと思うし、中小企業の保護政策とも関係すると思うのですが、不採算事業がなかなか整理しづらい。これはいいとか悪いとかは別として、するとどうしても長時間、薄利多売的なビジネスの在り方が一般的になって、その中で長時間労働になりやすいという関係もあるのではないか。

 いろいろ申し上げましたが、少なくともマネジメントの問題、それから雇用賃金システムの問題、その背景にある産業システム資質の問題、 3 つ目の論点はちょっと広がり過ぎるかと思いますが、その辺りの論点を意識しながら考えていくという視点が重要かなと思います。ちょっと長くなりました。

○今野座長 ありがとうございます。ほかにありますか。それでは私から質問をいいですか。黒田さん、労働経済から見ると 36 協定の労働時間規制機能は、どのように評価するのかを含めてお話しいただけますか。

 先ほど、 36 協定はいろいろあるけれども、 1 つは保険機能だという話もあったのですが、島田さんからは実際の労働時間管理からはちょっと離れてしまっているというお話があったわけです。では、労働経済の観点から見ると、 36 協定というのは労働時間の規制とも言っていいし、労働時間の長さと言ってもいいのですが、それはどういう機能を発揮しているのか。それも含めて、労働経済からお願いします。

○黒田委員 ちょっと難しい質問なのですが、続けて経済学の立場からお話させていただきます。先ほど島田委員と山田委員がお二人ともメンバーシップ型とおっしゃって、確かに経済学のほうでも雇用調整のバッファーとして労働時間を使ってきた歴史はあるかと思います。残業代ののりしろ説みたいな感じの言葉を使いますが、これについて実は数年前に研究したことがありました。雇用調整を弾力的に不況期に行った企業と、行わずに雇用を守った企業とで分けた場合に、雇用を守った企業のほうが、やはり労働時間が平均的に見て長いという研究結果が出ています。

 そういう意味では残業代ののりしろ説というのは当てはまることが分かったわけですが、ではどのぐらい長いのかというと、平均的に見て大体のざっくりベースですが、週に 1 時間程度なのです。ですので残業代ののりしろ説だけをもって年間 800 時間や 1,000 時間などといったものは、経済学的には説明できないのではないかと私自身は考えております。

 御質問の答えになっているかどうか分からないのですが、この 36 協定の効力というところは、今回、事務局が非常に分かりやすくまとめてくださった資料から見ても分かるとおり、 4 分の 1 の事業場が法律自体を知らないことになっていて、これは私のような法律の素人からすると、建て増しの三重構造のようになっていて、法定労働時間があり、更に 36 協定があって、更にその上に特別条項があって、更にそこに、適用除外という働き方もある。そんな複雑な法律を企業の一人一人の担当者が全部把握するのは非常に難しい状態になっているのではないかと思っています。

 そういう意味では、現在の 36 協定は、労働時間を規制する上では効力を完全に発揮していないだろうなと私自身は感じております。経済センサスによれば、現在日本には約 580 万事業所があります。労基署の方がすごく頑張って指導に入ってくださったとしても、全部の事業所に監督指導に入るのは不可能で、そうだとすると、誰がチェック機能を果たすのかと考えた場合に、これはやはり国民がチェック機能を果たすしかないと思うのです。そのときに余りにも複雑な法律だと、チェック機能として国民が動くことができないという意味では、できるだけシンプルにすることが重要なのではないかと私自身は思います。

 この点に関連して、御専門の先生方に、もし間違っていたら教えていただきたいのですが、 36 協定では 1 か月 45 時間と決まっているわけですが、一方で割増賃金率が 50 %になるのは月 60 時間以上となっていて、法律で 45 時間までと言っているにもかかわらず、 60 時間以上超えたら 50 %付けよ、という法律になっている。これはどう解釈すべきなのだろうと、経済学者から見ると思います。

 さらに言えば、過労死ラインと言われているのは月間の労働時間が 80 時間を超えた場合というものですが、 80 時間を超えている特別条項を結んでいる企業が、まあまあの割合でいます。これも法律的に大丈夫なのか。ある意味、矛盾しているような法体系が併存しているところをできるだけ整理することが、この研究会では重要になってくるのではないかと思っております。すみません、ちょっと長くなりました。

○今野座長 私も法律の専門ではないので、正確には分からないのですが、極端に言えば、 36 協定自体は労働時間管理の道具ではないということなのですか。もともとそういうことだと考えていいのですか。

○荒木委員 一応、法律を専門にしておりますが、よく日本で労働時間については無限定だと盛んに言われます。しかし、 1 8 時間、週 40 時間が所定時間で 36 協定を締結し労基署に届けた場合に、初めて例外的に時間外労働ができるという規制は厳然として昭和 22 年からあります。つまり労使協定を結ばないと時間外労働はできないわけですから、労働者側が時間外労働をしたくないと言えばできない法制になっています。これがまず出発点なのですが、では、なぜこんなに時間外労働が多いのかというと、それは労使が時間外労働の協定を結んでいるからということになります。

 しかし、これには問題が 2 つあって、 1 つは、過半数組合がいれば過半数組合と協定を結びます。この場合は比較的問題は少ないですが、その場合でも時間外労働が言わば生活給の中に組み込まれている場合には、時間外労働を削減するということは賃金の引下げに直結しますから、それを使用者だけやろうと思っても労働者側が同意しなければ、依然として時間外労働が減らないということになりかねない。そういう問題が 1 つあります。

 もう 1 つ、上限の議論をするときによく指摘されるのは、例えば 36 協定で時間外の上限が月 45 時間と決まっていたら、自己申告制だと 45 時間以上は申告してはいけないと。申告してもそのまま受け取られないという実態があるということです。 36 協定の時間外の上限がそのように作用している実態があるとすると、上限規制だけを議論しても単にサービス残業を助長することになりかねません。そうした実態があることも念頭に規制のあり方をよく考える必要があると思います。

36 協定の話に戻りますが、より大きな問題は、島田先生もおっしゃったように、過半数組合がない場合、今、組織率が 17 %程度ですから、 5 人のうち 4 人は組合がない所で働いているわけです。その場合は、労働者の過半数を代表する個人と労使協定を結ぶことになっているわけです。

 それを過半数代表者といいますが、組織的なバックアップもない、情報量にも格差がある過半数代表者が、全従業員の利益のために適正な労使協定を結べるかというと、そこには制度的な問題がある。問題がある点は既にいろいろな調査でも指摘されております。

36 協定を結んで時間外労働の上限があって、それから限度基準がある。これは全部 36 協定を結んだ上での議論になっているわけですから、大本の 36 協定を結ぶ制度自体が現状のままでよいのかというところをきちんと議論しないことには、制度の設計自体がうまくいかない可能性があると思います。

 この問題が非常に難しいのは、就業実態は非常に多様化して、労働者の属性も多様化している中で、最も中央集権的な国家の法律レベルで 1 つの基準を設定するのが、多様化した就業実態に適合するのかということです。実は 36 協定という制度があるのは、国が 1 つの基準を作ってもいいのだけれども、それが現場においてきちんとワークするために、現場の労使が納得するように基準を調整しましょうという考えが背景にある。ですから、 1 8 時間、週 40 時間の法定時間を超える時間外労働数については、我が事業場ではこれが妥当な労使が合意できる時間外労働時間です、ということで調整してくださいと。こうした労使協定を結ぶ手続がきちんとワークすれば、望ましい状況になる可能性が高いわけですが、現状ではその手続の担い手が非常に頼りない状況にある。そこをきちんと議論しないと、実は制度設計はうまくいかない可能性があるということです。

 これを我々は実体規制、つまり何時間を上限とするとか、最低賃金を幾らにするという実体規制を法がどこまで直接規制するか。それとも実体規制の比率を少し下げても現場における手続的な規制に比重を移して、労使が納得する労働条件を設定する。実体規制と手続規制をハイブリッドで両方組み合わせながら、より適合的な規制をすべきではないかといった議論をしています。

 政策目的を実現するためには、いろいろなアプローチがあるわけです。実体規制と手続規制のハイブリッド化もありますし、ハードローとソフトローの組合せもあります。様々な経済的なインセンティブを与えて、政策実現することもあります。最近よく使われているのは、市場のレピュテーションを使う手法です。ブラック企業や行政指導に従わない企業に対しては、企業名を公表するという悪い評判を活用する方法もあります。それから、良い評判もありますよね。良い企業には「くるみんマーク」や「えるぼしマーク」といったような表彰や認定をすることで、市場の評判を利用して政策目的を達成する。

 この長時間労働の規制は、日本人の働き方を変えようということですから、大変難しい問題だと思います。そのためにはいろいろな政策を総動員して取り組まないと、簡単に答えは出ないと思っています。長時間労働の上限という問題を議論するにしても、私は大切なことだと思っていますが、同時に様々な政策を総動員して、その中で最長労働時間や時間外の上限規制の位置付けを議論するのが適当ではないか考えています。

○今野座長 本当は質問したいことがあるのですが、ちょっと我慢をして、法律、経済と来て、経営の方は皆さん黙っていらっしゃるのですが、平野さんは企業で人事部長もされていましたので、 36 協定で労働時間のことでもいろいろと苦労されたと思いますので、その点も含めて何かお話しください。

○平野委員 基本的には 36 協定について、多分、企業はコンプライアンスの意識が結構高いのだと思いますね。今日の御説明を聞いていても、かなりの程度の会社、企業が、上限時間を厳密に守ろうという姿勢が出ていると思います。とりわけ、大企業においてはそういう傾向が多分あるのでしょうけれども、しかし、一方で、零細企業のところでは、 36 協定の存在そのものを知らないとか、そういった法律に疎くて、結局、そこが遵法できていない所が非常に多いというのは、改めて数字を見てびっくりしました。そういう意味では、大企業と零細企業とは、分けて考えないといけないのかなと、今、思いました。

 私の立場から、私はいわゆる経営学の立場で、企業の人事の現場に働き方を見に行くわけです。既に委員の方がおっしゃっていることをなぞるところもあるのですが、例えば今日、冒頭に今野座長が今日の資料の 9 ページを挙げて、業種ごとに、予算、決算業務において、随分構成比が違うじゃないかとおっしゃいました。例えば商業が 22.1 %で、接客娯楽業が 16.4 %だと。実態は全く分からないのですが、例えば大胆な仮説を言うと、いわゆる BtoC の業種であって量を調べて、すなわち、不特定多数のお客さんに商売をしているわけですよね。そうすると、決算月のところで、例えば非線形のボーナスを制度として作っている。例えば月末締めで決算ですと。このときあなたは予算を達成すると、ボーンとボーナスを非線形で積んであげますよということになりますと、月末しゃかりきになって予算を作らないと、というようなことですよね。それが当たっているかどうか全く分かりませんけれども、例えば商業とか接客娯楽業というのは、とりわけ BtoC の業種というのは、多分にそういう面もあるのかなと考えますと、労働時間の問題というのは、働く人たちのいわゆる収入を増加させようという、強いインセンティブに関連付いているのです。だから、法律を規定したとしても、実は、その受け手の労働者が、それはウェルカムかと言ったらそんなことはなくて、残業代が減るので困るのですよという声なき声が、場合によってはあり得る話だと思うのです。ですから、そういったところを目配りしていかなければいけないということが 1 つです。労働者にとって一体どうなのかという、労働者の意識のところを見に行かなきゃいけないという。

 あと、経営学の立場で言いますと、経営学ではいわゆる日本型雇用システムが盛んに議論されていて、例えば曖昧な分業であるとか、いわゆる製品アーキティクチャーですり合わせ型であるとか。したがって労働者が綿密なコミュニケーションをしていくとか、スキル給をベースにして、職能資格制度もインセンティブ制度も骨格にして、欧米企業がアウトプット、成果について、労働者を切り離し続けるのに対して、日本では、アウトプットではなくてプロセスをつぶさに見にいくと。そうしますと、プロセスで評価しますから、真面目に働いているという情意考課が、結構人事考課の中のウェイトが高くなってしまって、ポーズとしても一生懸命働いているというようなことが日本型雇用システムだと盛んに言われているわけです。一方で人事のマネジメントだけの閉じた世界ではなくて、国全体の制度的環境にも補完的な関係があるわけで、すなわち強い雇用保障の問題とか、一旦採用した社員はなかなか解雇できませんので、定年まで雇用保障をすると。そうすると、黒田委員がおっしゃったように、やや少なめのヘッドカウントをベースにして、繁閑については残業時間で調節するというような、いわゆるシステム的な対応があるのだと思います。そういうふうに考えると、現行のいわゆる長時間労働の実態というのは、ある意味、日本型雇用システムについては、一定の合理性があるということであって、今、ここでの問題というのは、日本型雇用システムに対応する、そういった負の側面というのでしょうか。典型的にはワーク・ライフ・バランスの問題とか、メンタルヘルスの問題、あるいは中核的な正社員ではない非正規労働者の問題とかいうような負の側面、すなわち、いわゆる社会学でいうところの「意図せざる結果」というのが、非常に大きくクローズアップされてきているというのがあります。

 したがって、この検討会で議論をしていかなければいけないのは、ある特定のシステムにアプローチをかけると、ある特定のシステムに影響がある。場合によっては、例えば日本型雇用システムの合理的な側面を毀損する可能性がある。毀損するからやらないのかというわけにはいかないので、毀損する可能性もあるということを、よく議論した上で、それを見据えて、更にその上でやっていくという。あるいはそういう対応を 1 つの糧として、日本のシステムを変えていくというような進め方といいますか、大きなプロモーション、運動につなげていくというようなことが、多分必要なのではないかと思います。

 そういう意味で言うと、企業のマネジメントを閉じた話ではなくて、山田委員がおっしゃったように、取引慣行ですよね。いわゆる取引において市場のスポット取引でいくのか、日本の場合は系列が典型的でしょうけれども、割と特定の顧客との長期な継続的取引にしていって、関係特殊的な投資をして、そして産業全体で競争力を作ってきているというところもありますので、そういった取引関係の慣行のところについてもどうするのか。これは先ほど言ったように、日本型雇用システムと同じようなことなのですが、そこに関しても場合によっては、労働時間規制のアプローチによってそこを毀損する可能性もありますので、それについてもどういう不利益、デメリットが生じ得るのかということを見据えた上で、それを糧にしていくということですね。

 最後に申し上げたいのは、現場で聞いていますと、要は、最近、帰れ帰れと言われると。盛んに職場で、帰れ帰れと言われる。帰りたくないのに帰らされた。要するに帰りたくないとは何かというと、自分の仕事を時間を気にせず思う存分やっていきたいわけですよね。それを 8 時になったので帰りなさいとか、残業はけしからんから、サービス残業はもってのほかだというようなことで、無理矢理帰らされて、それで非常にストレスがたまっているという面が多分にあると思うのです。そういうふうに考えると、ワーク・ライフ・バランスというのは、労働時間のバランスをとりましょうというのではなくて、むしろ大事なことは、仕事と私生活の境界の設定の自律性を、個人に委ねるということが重要だと思います。そういう意味でいうと、裁量労働制の問題とか、ここでの議論にならないかもしれないですけれども、ホワイトカラーエグゼンプションとか、例えばメンタルヘルスの議論であるのは、ディマンド・コントロールです。仕事のディマンドはたくさんあるけれども、実は仕事の裁量の余地は高いと、ストレスは軽減され、一方でディマンドが高くて、裁量の余地が低いと、メンタルに悪影響があるというような、ディマンド・コントロールの理論もあるわけで、ディマンドもあるけれども、しかしコントロールを個人の裁量に委ねていけば、個人の裁量で、ストレスの対応のコーピングの新しい戦略が個人個人でできると思うのです。

 そういう意味では、裁量労働の問題というのも非常に重要な問題だと思いますので、そこも併せて議論する必要があると思います。以上です。

○今野座長 先ほどからよく言われていることですが、日本は終身雇用なので、雇用で調整できないから労働時間で調整すると。したがってヘッドカウントを少なめにして、労働時間で調整できるようにするという話はよく聞きます。私もそういうふうに授業では言っているのですけれども、先ほど黒田さんの話は、そんな効果は大したことはないと。

○黒田委員 効果はないわけではないけれども、その程度はそれほどではない、ということを申し上げました。

○今野座長 私も前から思っていたのです。そういう機能はあるけれども、本当にどの程度調整力があるのかというのは、意外に調整力はあるのですけれども、程度の問題は大したことはないのではないかという気はしないでもないのです。その辺は研究上の問題ではなくて、平野さんは人事部長をされていたので、現場の感覚としてはどうですか。

○平野委員 私が人事部長をやったときは小売業ですので、いわゆる調整業務というのは、 1 つはまず正社員の自然減及び時間外のコントロールでして、それは当然やるわけです。もう 1 つは非正規の問題です。非正規に関しては、雇用量の調整をかけることができますので、私がいた業界では、業績が悪くなってくれば、非正規の雇用量の調整と正社員の残業時間規制で、何とかそこを乗り切ろうとしていました。インパクトといいますか、大きいのは、非正規のほうが実効性があるといいますか、影響力も少ないというのがあるわけです。一方で、今後のことを考えると、非正規が例えば限定正社員となってきて、今の非正規のままではなくなってくるというのがありますよね。いわゆる非正規の正社員化が進んできたときに、今までのように非正規の雇用量の調整でコントロールできるのかというと、将来的にはそうではなくて、やはりここは正社員のところが、今以上にバッファーとして問題が大きくなってくると思います。

○今野座長 極端なことを言うと、いわゆる正社員の労働時間で調整力をもっと増やさないといけないかもしれないということを、今、おっしゃられたのがそうですよね。

○平野委員 はい。

○今野座長 論理的に言うと。なるほど。

○黒田委員 ちょっと質問なのですが、残業時間だけではなくて、所定内時間も割ってもいざとなればいいわけですよね。雇調金とかを使うこともできますよね、雇用保護のために。所定内は割ることができなくて、残業代のところだけでしっかり調整しなくてはならないというロジックは、どうしてなのでしょうか。

○平野委員 固定給だからでしょうね。

○黒田委員 それは法律で駄目なわけではないですよね。

○今野座長 法的にという意味ですか。

○黒田委員 慣行としてという。

○今野座長 法律的にはどうでしょうね。

○島田委員 月給制だと。

○今野座長 賃金を下げられないと。

○黒田委員 その分を雇調金とかで政府が大不況のときには補填して雇用を守るということはやられているわけですよね。それが多分、月に 2 回とか月 4 回までと決まっているのだと思うのですけれども、それをもうちょっと拡張するとかという形で、雇用を保護するということはこうした別の制度を併用すればできるのではないかなと思うのですが。

○今野座長 昔は、ワークシェアリングでフォルクスワーゲンがやっていましたけれども、労働時間を下げて賃金を下げてしまうと。それができれば調整力はものすごく出ますよね。

○荒木委員 操業短縮を労使で合意して、所定労働時間を下げてしまえば下げられますが、所定時間を週 40 時間のまま、勝手に 30 時間に減らしたら、 10 時間の仕事を与えて働かせるべき部分を、使用者の責任で、使用者は責めに帰すべき事由によって働かせなかったら、民法の規定によって、使用者は賃金を払わなければいけないということになりますから、所定時間自体を労使が合意して、いわゆる操業短縮をすればできますけれども、操業短縮の合意をせずに一方的に減らすというのは、法的にはできない。その場合には賃金が発生するということになります。

○山田委員 長時間労働のところは、雇用システム的な話でいうと、そういう話になって、本当にどこまでかがってことが、正にあるのだと思うのですけれども、これは正しいかどうか分からないし、多分、産業とかによって違うのですけれども、長時間労働をすることが、産業の競争力につながっているという実感を持っている産業とか経営者というのは、比較的多いというのが実態なのだと思います。そこははっきり分からないのですが。ある意味、状況的に言うと、非常に日本の場合はスピーディーに対応するとか、あるいは品質に対して徹底的にこだわっていく。そうすると、やはりどうしても労働時間は長くなってしまうという部分ですね。これはどこまで正しいか分からないのですけれども、かなり思い込みの部分があるし、もうちょっといろいろ見直していくと、効率化できると思うのです。

 それとよく感覚的に、以前、年齢の高い人というのは、仕事の能力を形成してきたということなのでしょうけれども、何となく徹底的に一時期働いたほうが能力がつくのだみたいな。これも実は雇用システムの関係があって、多分欧米の場合は、要は企業外との産学の連携の中で、人材育成をするような仕組みが、日本よりもうちょっとうまく出来上がってきているわけですが、残念ながら日本のほうが、大学関係者は怒るかもしれませんが、ちょっとそこは違う分業のやり方をしてきたということだと思います。そこははっきり分からないのですけれども、そういう思いみたいなものが、事実かどうか別として、残っているという側面も実際はあるのではないか。答えは出しづらいのですが、そこの観点というのは、能力育成であったり競争力というところで、やっぱり考えておく部分があるのではないかなと思います。

○今野座長 ヨーロッパなんかではスーパーとかそういうところで、閉店時間直前に入ると怒られますよね、出て行けと。そういう点では、先ほど言われた、品質を少しでも上げよう、サービスを少しでも上げようというと、労働時間が長くなるというのは、ヨーロッパを広く知りませんけれども、思いました。営業時間規制もそうでしたけれども。

○山田委員 もう 1 つ言ってしまうと、北欧に行ったことがあるのですが、いろいろヒアリングすると、北欧のホワイトカラーというのは、基本的に、一旦 5 時とか 6 時に絶対帰れるわけですね。これは、子育てを夫妻で共同してとかってあるのですが、仕事のやり方を聞いていると、大分違います。例えば資料の作り方なんかは、特に日本の大手企業のホワイトカラーは、ものすごくきれいな資料を作っています。ところが、向こうはほとんどそういうのを作らない。パッと集まってディスカッションして決めてしまうみたいな。仕事のやり方に対する品質とか考え方みたいな。それは無駄なような気もするし、そういうところもあるのだそうです。

○今野座長 お客さんが要求しているかもしれない。上司がお客さんだから。

○守島委員 ちょっとぶち壊しになってしまうかもしれませんけれども、金曜日の 5 時から 7 時に、この会議をやっていることが常識的に受け入れられているということ自体が、やはり 1 つの大きな問題だろうなと。これだけお忙しい方々の調整をやられたというのは大変だと思うけれども、御苦労はよく分かるし、そういう意味ではしょうがなかったという面もあるのでしょう。

 私は、どういう企業が働き方改革、労働時間改革をうまくやったか、どういうことをやったからうまくいったかというのを調べているのですが、大体 3 つのことをやっているのです。 1 つは、仕事改革、仕事のやり方について変えていきましょう。その仕事改革という中には、お客さんとの関係も、ある程度変えていこうという努力も含めてやっている。

 もう 1 つは人事改革です。先ほど、残業代が浮いたところをどうするのみたいな話がありましたけれども、それに対する対応もきちんと考えている企業さんもいらっしゃる。これは大体やっています。

3 番目が先ほど島田さんが言ったことに関係するかと思いますが、意識改革であるとか、文化改革というのをやっている。この問題は、先ほど荒木先生が社会的に見ても総合戦略でやっていかなければいけないよという話をされましたけれども、そういう意味では、人事改革というか、企業の中の改革としても、結局、労働時間の問題だけを取り上げて何かできるかというと、できないことが多いと思うし、逆にそれをやることで、変な問題が出てきてしまう。先ほども議論がありましたけれども、特別条項若しくは 36 協定のキャップを設けたところで、それで問題が解決するかというと、実はそれはサービス残業に変わっていっただけだというのもあるかもしれないので、そういう意味では総合的に考えていかないといけない問題なのです。これも怒られるというか、次回から呼ばれないかもしれませんが、問題の立て方自体が、 36 協定をどうするかという話で入っていくと、絶対に何らかの解はあるのでしょうけれども、非常に難しい、更に大きないろいろな問題が出てきてしまうので、総合的にどういうことをやっていくのかを考えた上で、その中における 36 協定とか、新 36 協定を作るのであれば、その位置付けであるとか、そういう話に持っていかないと、変なことというのでしょうかね。いろいろな副作用が出てくるような、それも問題だなと思います。

○今野座長 最後の点ですけれども、開催要綱を見ていただくと、検討事項がありますよね。 1 2 3 とあるのですけれども、 36 協定をどうしろということを我々が決めろということはミッションになっていないので、自由に議論していいのです。一番重要なのは、ワーク・ライフ・バランスがとれるような働き方、もっと言うと、一億総活躍に資するにはどうしたらいいか。だから、そこは自由に。

○守島委員 分かりました。自由に発言させていただきました。

○大久保委員  1 回目なので、間口を広げるような役割をやりたいと思います。もともと私は 3 年ぐらい女性活躍のことをずっと考えていて、女性活躍をテーマで各企業に呼ばれることが多いのです。あまりにも長時間労働が日常的に行われていると、育児を抱えている女性が働くことができないということで、本当にいわゆるダイバーシティーを考えていこうと思ったら、時間が効率的で長時間労働でない働き方を作らないと、先がありません。そのため、長時間労働を圧縮するためのガイドブックを作ったり、改善策を企業と話をしたりとかしているのです。そうすると、何で長時間労働とか残業がこんなになくならないのかという、そもそも長時間労働の原因は何なのかという話になるのです。

 印象的に思った長時間労働の原因が何かというコレクションを共有したいのですが、いっぱいあるのです。 1 つ目は、下請構造です。コンプライアンスが重要になってきているので、上場企業は、自分の所をきれいにしようとするのですが、そのつけが下請に回って、分かっているよなと言ってポンと出すという。そこの先はコントロールできないので、来たものについてはやらざるを得ない状態なのです。それが突発的な残業につながっていくという、構造的な問題。特に、それは下請企業だけではなくて、雇用していない人たち、業務委託契約を結んでいるような人たちに投げるというのもポピュラーな方法です。先ほど議論があったトラックの業界はそうだし、建設業の下請とか、一人親方みたいなのもそうなのですが、いろいろな領域にその構造があるのではないかというのが 1 点です。

 それから、先ほど山田さんがおっしゃった、過剰品質の問題はすごく多くて、ホワイトカラーの過剰品質もあります。誰も読まない議事録を黙々と書いている人たちがいっぱいいるということも含めて、あるいはサービス業なんかで、現場の人に聞いてみると、 24 時間やっているのだけれども、夜、来ないよと言う。翌日配達しているのだけれども、本当に求められているのかなとか、あるいは営業の人なんかは、お客さんがいるから長時間労働で残業はやめられないと言うんですけれども、お客さん帰っているんですよね。というような状態の中で、割と過剰サービス、過剰品質になっていることが、結果的に残業につながっているという要素もあるような気がします。

 サービス業なんかで全体的に言われるのは、お店を閉めた後にやることがあまりにもいっぱいあるという。レジ締めの問題だとか、あるいは美容師も終わった後にトレーニングするとか、ああいうものがすごい残業構造を作っているということがある。

 一連で出た話でいくと、日本の人事慣行だと思うのですが、自分の担当業務が曖昧なので、どこまでやったら帰っていいかよく分からないという問題があるのです。そうすると、何となく残業を長くしているほうが、覚えがめでたい。多くの会社は生産性は評価項目に入っていないんです。アウトプットだけを見るのだったら、 10 時間で同じアウトプットを出した人と、 20 時間で同じアウトプットを出した人で、評価は変わらないので、本当は 10 時間でやった人を高く評価しなければいけないのですが、評価制度とのバランスというのがあると思います。

 それから、上司のジョブアサインメントというのですけれども、仕事の指示を出してやるところにむらがある。それはマネジメントスキルの問題で、このトレーニングは、それほどできていないのです。これが効率化されれば、思い付きでやらせたりとか期限を決めずに発注したりとか、そういうことがなくなって随分軽減されるのですけれども、その問題は日本の企業はほとんど解決できていないと思います。

 あと、人手不足の問題があって、辞めたときの補充ができないと、どんどん労働時間が長くなっていく。特に一部ネット上でブラック企業みたいに噂されると、人が採れなくなるので、どんどん悪循環条件にはまっていくという、そういう人手不足の構造があります。

 それから、人材育成に対する思い込み、これはミドルとかシニアの人に多いのですけれども、とことん仕事をすることによってしか仕事を覚えられないんだと思い込んでいる人がすごく多くて、自分もそうやってきたからそうやるのは当然だみたいな。もうちょっと科学的に教育訓練をするべきですし、もっと短い時間で一人前にできるはずなのですけれども、それを長時間労働で片付けてしまっているということです。

 それから、経営者が生産性を重視しているところとそうじゃないところの違いが激しい。残業代を払わないといけないのですから、投入する労働量、労働時間によって生産性は大きく変化するのですが、長く働かせる方が生産性が高いと思ってしまっている。

 モバイルの進化というのもあります。どこまで行ってもメールで仕事ができる。逆に言うと、多くの人は家に帰ってもメールをチェックしなければいけなくて、来たメールは急ぎだと返信しなくてはいけないという、手待ち時間的なものがモバイルが進化したことによって、無限に広がってしまっているというようなこともあります。

 あと、最後なのですけれども、単なる慣行や習慣だということがすごく多くて、実際に長時間労働をしている中間管理職の人たちは、残業を削減しましょうというと、大体皆さん反対する方が多いのです。何とか説得してやるのですけれども、ただ、思い切って時間を圧縮してみると、一番反対していた人が賛成派に回るというパターンが多いのですよね。実はやってみたらこっちのほうがいいという話になる。単なる慣習で反対している人たちがいっぱい存在しているということもあるような感じがしています。

 今、 10 個ぐらい挙げたのですが、私の中では、 36 協定よりもっとほかにいろいろな複雑な問題があるので、 1 個のことを操作するのではなくて、全体感を持って議論しないと、実際には長時間労働って変わらないのではないかなという気がしております。

○今野座長 先ほどの下請構造の話ですが、例えば小売なんかはそうですけれども、小売はお客の下請だから、お客が正月も買いたいと言ったら正月も店を開けるとかいうのもありますよね、下請は。広い意味で言うと。余計なことを言いました。

○小畑委員 それでは、少しお話をさせていただきます。私は黒田先生と平野先生がおっしゃった、よりシンプルで分かりやすい仕組みでなければ、使用者に浸透するのはなかなか難しいのではないかというお話は、非常に共感しました。

 例えば、最低賃金の制度というのは、使用者に共有されている部分が非常にあると思います。賃金は最低でも幾ら払わなければいけないというのは浸透しているが、労働時間は最長でも幾らで収めなければいけないというのはないという浸透の仕方をしています。でも、もしも賃金は最低でも幾ら、労働時間は最長でも幾らという簡潔な内容であれば、理解しやすいですし、忘れないだろうという御趣旨だと思います。それは本当にそうかと思います。それがそうなっていないということには理由があって、それも再三御指摘があったところですが、緊急事態が起こって対応しなければいけないとか、我が社の正念場だというときに、それを仕方がない、それが可能になる仕組みである必要がある。本来許容されていいはずの事業場が取り締まられても困るというのが存在しています。

 そういったことを鑑みますと、最長でも何時間ということには、いろいろ障害があるということは再三御指摘のあったところです。また、最長で何時間まで許容されるというところに注目して、そこまで長くなかった会社が、より長くなってしまうという恐ろしいことになっても困るので、その数値を選ぶのも非常に難しい。そこで荒木先生がおっしゃったように、ハイブリットにポリシーミックスを考えていくことも非常に重要かと思います。

 そして、守島先生がおっしゃったのですが、数値を守るのが困難な事業が長時間労働隠しをする可能性もありますし、島田先生、荒木先生がおっしゃったように、多様な職種や、多様な業種がある以上は、数値を一律に決めることが非常に困難を伴う。島田先生が 1 年とおっしゃったように、例えば、この 3 か月、半年は限界までスピードアップする必要があるが、その後 2 か月はバカンスだというケースを想定されているのかと想像して伺っていました。

 そうしたことを考えますと、例えば労基法 41 条の適用除外もあるような状況ですので、一律ではなかなか難しいという御指摘は、全くそのとおりかと思います。それは例えば月何時間が無理であれば、より長い時間について何時間という決め方はあり得るのかといった議論も、この研究会では行われるのかと想像しております。

 そして、ポリシーミックスな話も出ましたので、少しそうした点にお話を移しますと、大久保先生、黒田先生、荒木先生がおっしゃった情報の公開、例えば我が社の労働時間は何時間ですといったことを公開するという方策も考えられると思いますし、大久保先生が御指摘になった女性活躍推進の話の中でも、行動計画の作成に関連して、各企業が労働時間を把握して、その実情把握の上で、情報のうちの一部以上を公開する仕組みが盛り込まれております。そうしたことで公開された労働時間の数値や、またそういったことが優れているということであれば、公の調達で優先するとか助成金を出すといった仕組みも導入されておりますし、そういったことで横の比較ができるようになると、求職者にとっては有益な基準になりますので、ワーク・ライフ・バランスを気にする求職者にとっては非常に有益であるし、有能な人材が企業を選んでいくということに鑑みますと、そういったチャンネルも 1 つ有効ではないか。そして、国民がウォッチするということを黒田先生が言われましたが、黒田先生がおっしゃった国民による監視が本当に効果的にいけばいいと思いますし、そういったことも取引先の要求、顧客の要求に応え続けることが会社の生き残る道だという前提があるということを、山田先生、守島先生、大久保先生が御指摘になったところですが、社会全体としてこの問題についてどう考えるのかという根本のところとの関係でも、そういったことへの関心を、国民がどのぐらい持てるかということにもつながってくるかと思います。

 また、それがなかなかうまくいかないのであれば、誰がウォッチするのか。例えば財務については会計士という職業がありますが、労働時間をはじめとする労働条件遵守のチェックをしてお墨付きを与える第三者みたいなものを置かなければ、国民によるウォッチだと難しいのかどうなのかということも含めて、そういったソフトなアプローチとのポリシーミックスに関しても、幅広に検討していくということで議論するのはどうかと考えています。以上です。

○今野座長 そのウォッチの件ですが、先ほどからありましたが、特別条項などは大企業が多いのですよね。大企業は組合があるから、組合がウォッチしているのですよね。違うのですかね。一番身近な人がウォッチしていて、少し遠い国民がウォッチして、普通に考えると、組合のほうが有効に機能すると考えるのですが。ウォッチというのはあるのだけども、私も何かぼあっとしているのです。

○荒木委員 いろいろなウォッチがあると思いますが、企業の中で過半数組合があれば、過半数組合が 36 協定を結んで、あるいは特別条項のときは限度を超えた、しかし上限を設定するわけで、それを超える違法状態は締結当事者である組合がチェックすることになります。島田先生がおっしゃったように、組合からのウォッチが効くかもしれませんが、過半数代表者という個人と 36 協定を結んでも、その人がチェックできますかと。現行の労基法は 36 協定を結ぶときだけ過半数代表者であれば、その後、それが守られているかどうかをウォッチするという制度までは用意していないという、制度的な問題もあります。そこで研究者からは個人の過半数代表者ではなくて、複数化したり、常設化したり、さらに言えば、従業員代表みたいなものを作らなくてもいいのだろうかという提言がされているところです。これは企業内ウォッチですが、ほかにも市場のウォッチがあります。現在、時間外労働込みで給料幾らとして募集している例がありますが、実は働いてみたら、どこまでが所定給で、どこからが時間外なのか分からない。時間外労働をやったので「割増し賃金はないのですか」と言ったら、「込みで払っている」と言う。そういう募集はよろしくないということで、今は指導がなされています。これは正に時間外込みではない賃金額を比較できるようにして求職者によるセレクションというか、ウォッチがちゃんと機能するようにしようということです。ハードローによる規制も重要ですが、それを補完するいろいろな装置があるだろうから、それも動員しながらやる必要があるかと思います。

○小畑委員 ありがとうございます。

○今野座長 小曽根さん、いかがですか。

○小曽根委員 私は普段、厚生労働省はじめ、いろいろな省庁から調査研究を受託しております。そういった中で企業現場の人事の方だったり、実際に働いている方の御意見や実態を伺っています。私も一被雇用者で、企業に雇われている者なので、そういった観点から、いろいろお話ができればと思っています。

 今のお話だと、誰がウォッチするか、組合がウォッチするのかというお話があったかと思いますが、当社の場合も組合のウォッチの機能は非常に強いと思っています。決められた時間があるのですが、それを超えるときには随分前から組合に対して話合いをして、本当に超えなければいけないものなのかという辺りのチェック機能が非常に強く働いているというところがあります。

 私は大久保先生と同じようなところ、なぜ長時間労働というのは発生するのかという根本的なところで考えました。私自身がいる業界も長時間労働になりかけている業界です。大久保先生は 10 個程度理由を挙げてくださいましたが、私の中では同じところを含めて 3 個かなと当初は考えておりました。 1 つは管理職を含めての職場のマネジメントの問題です。 2 つ目は労働者側の意識の問題かと思っています。 3 つ目は、先ほどサービスという話がありましたが、顧客側の意識の問題があるのではないかと思っています。

 まず 1 つ目の管理職のマネジメントの問題です。私の職場の例を出して恐縮ですが、当社でも長時間労働になりつつあり、週に 1 回、毎週水曜日は 6 時半までには絶対帰りましょうというのを形式的なものではなく、昨年から始めました。これについては、好きで仕事をやって残っているという人が少なからずいるのですが、最初はストレスが高かったのです。なぜ帰らなければいけないのだ、やることがあるのにということだったのです。仕事の仕方を少しでも工夫するようにして、ほかの日に長くなってしまうことも若干出てきたりもしたのですが、意識を変えることで無駄なことはなくしていこうと考えるようになりました。職場のトップなのか、経営のトップなのか、部としての部長なのかは分かりませんが、そういったところからの働き掛けがあると大分違うのではないかと感じています。

 これは昨年度、短時間正社員の調査をしたときに出てきた話ですが、短時間正社員はきっちり御自身の決められた所定労働時間の中で帰られていることが多くて、残業も基本的にはないという契約でやっているのですが、実際にないということで見てみると、そういう方々の場合は上司のマネジメントが非常にしっかりしているのです。仕事の割り振りもちゃんとしているし、それの進捗状況も確認している。そのほかにも職場のコミュニケーションがしっかり取れているので、日ごろの声掛けで状況も把握しているということが、すごくきれいにデータ上で出ていました。ということから考えると、職場の上司のマネジメントというのは、長時間労働を防いでいくために大きく働いてくるのかと考えています。

2 つ目の労働者の意識です。先ほどのマネージメントの問題で大分変わってきたところもありますが、一方で、お客からの要求で、どうしても仕事が長くなってしまうというのは正直否めないかなと思っています。お客様から突然、明日のいついつまでにやってねということが多発することもありますし、それを逆に断ってしまうと次の仕事が受注できなくなってしまうのではないかという不安感で、少しぐらい遅くなってでもやるしかないかなといった意識が働いているかと思います。また、ほかの先生方の中で、産業システム、商慣行というお話も出てきたかと思いますが、「ちょっとやっておいて」という話の中で、本来的には自分がやるサービスではない。具体的に言いますと、トラックの運転手などの話ですが、荷下ろしの際に、その場まで持っていって、荷下ろしでその荷物をどこかに設置するのですが、設置するまでは契約上の仕事に入っていないが、お客さまのほうから「ちょっとやっておいて」と言われると、御自身のサービスの精神もあるのでしょうが、次の仕事を断られてしまうと嫌だというのもあるので、サービスでやってしまうというところがあります。仕事が曖昧になっている、担当業務の曖昧さという御指摘もあったかと思いますが、そういう意識がどうしても働いてくるのが長時間労働になってしまうところなのかと思っています。

 一方で、先ほど厚労省から説明があった資料の中で、企業側が中小企業を中心に 36 協定自体をあまり知らないというお話があったかと思いますが、企業側だけではなく、実際に働いている労働者に関しても、 36 協定を十分に知っている人が恐らく少ないのではないかと思っています。当社は先ほど申し上げたように、組合のチェック機能が働いているので、何となくそんなことがあるということは知っているのですが、実際に何時間までと規定されているかとかいうことはなかなか労働者まで落ちていないという事実があると思いますので、そういったことでこういう時間で働くということは決まっているのだという辺りも労働者のほうに意識付けていかないと、労働者の意識もなかなか変わらないし、結果として長時間労働が減らないのではないかと思っています。

3 つ目は顧客側の意識です。先ほど申し上げたトラックのサービスでやっているというのもそうなのですが、顧客側にサービスは無料だという意識も働いている面もあるのではないか。必ずしもそれが全てではないと思いますが、そういったところが働いてくる可能性があるのかと考えています。

 先ほどは 24 時間営業のお店の話もありましたが、ネットショッピングで次の日には届くということも、実際に次の日でなければいけないようなことばかりなのかというと、別に 2 3 日空いて届いても構わないようなものでも、次の日に届くのが当たり前という意識になると、逆に企業側としては、そうしないとお客様が逃げてしまうというところもあるので、全体として、ちゃんと必要なものなのかどうかという辺りで考えていくというのもあるのかと考えています。

 先ほど長時間になりつつあるということで、私も水曜日には 6 時半に絶対帰ることになっているのですが、どのように減らしているかというと、これは私の個人的なものですが、明日できることは明日でよい、というものは全部明日に回してしまおうという考え方の転換を図りました。昔は今日やれるのだったら、残ってでも今日やってしまったほうが気持ちよく明日を迎えられると思ったのですが、そういうところで意識を少し変えると、その日やる分が減っていくので、少しは時間が減っていったのかと思っています。以上です。

○今野座長 特に企業の中の原因について、大久保さんも小曽根さんも守島さんも言われたのですが、例えば過剰品質、あんなにきれいなパワーポイントを作らなくてもいいぞとか、これも大久保さんが言われたのですが、閉店後にしなければいけないことがいっぱいあるとか、評価制度が成果型ではないので、どうしてもプロセスが長くなってしまうとか、いろいろあったのですが、法律家の方たちが言うのは分かりますが、こういう問題というのは行政としては何ができるのだろうかと思います。私も経営なので、経営としてはやらなければいけないことというのはいろいろ考えられるとしても、行政としては何ができるでしょうね。その辺について、何か御意見はありませんか。それはもう企業の問題だから、企業へということですかね。大久保さんはどうですか。

○大久保委員 先ほど私が 10 個ぐらい申し上げた中でいくと、直接的にルールづくりによってできる話というのは、 1 つは下請けの話で、これは下請法とかいろいろありますから。

○今野座長 それはありますね。

○大久保委員 もう 1 つは、モバイルの件で言ったメールチェックのところは、フランスでも来月からそのことについては、合意したらやらないということを選ぶ権利を認めているように、これは労働時間の一部と言いながら、実際はこの中に多分反映されていないもので、これから更に拡大していきそうなものに対して、どのように法的に対処するのかという問題は、あまりまだ解決されていない問題だと思います。それ以外の問題については、情報公開という形を促進するような間接的な方法でなければ、現実的にはやりようがないので、直接的なルートと間接的な方法と、 2 つ組み合わせてやっていくことになるのではなかろうかと思います。

○今野座長 それは荒木さんが言われたのもそうですが、社会的な評価というか、社会的なレピュテーションがマイナスに落ちるから、企業は行動を変えるという効果を狙うということですよね。

○大久保委員 そういう効果だったりとか、あるいは経済産業省がやっているように、ダイバーシティー企業とか、あとは健康経営の企業とか、ポジティブに評価して、それを株主の評価につなげていくような仕組みを作るということですよね。

○今野座長 これについて守島さんはありますか。

○守島委員 大久保さんとほとんど同じなのですが、私たちはここしばらく、ワーク・ライフ・バランスという 1 つのポリシーに関して、必ずしも法律だけでそれを進めてきたというわけではないのだと思います。企業の意識改革、個人の意識改革、育メンという言葉が出てきたのはかなり前ですが、最近になると、企業の中でかなり一般的になってきています。そういう運動として展開していくという部分も、こういう問題のときには決して忘れてはいけないのだと思います。法律的なもので、大久保さんが言われたように、できるところはやるのは正しいのだと思いますが、そうではないところは様々な手法を使いつつ、意識改革とか、文化改革をどのように進めていくのかという話だと思います。

○平野委員 この委員の中に歴史学の方が入ったらいいなと思っていたのです。今まで世界の王様の中で、国民に「働かなくていいですよ」と言って、国が繁栄した国というのは歴史上あるのかなと思うのです。やはり働かなければいけないと思います。精一杯働くということと、何か今の国の挙げている全体のメッセージは、むしろ働かなくていいというような、決してそういうことはないのですが、そのようなトーンが入ってきています。だから、一生懸命働かなければいけない。

 そのときに先ほど守島先生がおっしゃったように、いろいろと成果を上げている企業というのは、例えば仕事改革、人事改革という、個々の所は確かにそうなのだと思いますが、基本的にいわゆる doable から deliverable というのですかね。例えば人事の仕事でこれがあるから doable でやっているのですが、それなりに忙しいわけです。ところが、 doable の仕事というのは、ボトムラインとか、どういう影響を与えるのかというと意識が希薄だと思います。

 一方で、欧米のビジネスマンなどの話を聞くと、 doable というよりも deliverable で、一体自分の仕事が付加価値にどうつながるのか、あるいは自分の次のバトンタッチをする部署に対して、どういう貢献ができているのかという、いわゆる deliverable の考え方ということの意識というのは相当強いのだと思います。

 そういうことから言いますと、いわゆる過剰品質の問題とか、会議できれいに資料を用意するというのは、全部 doable なのです。ここの doable から deliverable への意識改革が非常に重要なポイントでてあって、いわゆる生産性の向上に成果を上げた企業は、経営者がそこを強く意識しているという思想改革みたいなところがあるのではないかと思います。

○今野座長 いつもそういうときに思うのですが、日本の企業はそういう感覚がないと言うのですが、日本の工場というのはその辺はすごくきついですよね。だから、別に日本の企業はねっからないというのではなくて、日本は多分、世界のいろいろな国よりも、もしかしたら現場のそういうコストパフォーマンスがいいかどうかに、非常に厳しくやってきたと思います。そうすると、いわゆるものづくり系以外の所が遅れているということですかね。

○山田委員 その観点はすごく大事だというか、重要だと思っています。下手をすると、この話は働くなと聞こえると思います。多分働き方とか、もっと根本は、市場経済というのは価値を生んでいかないと存続できないというシビアな部分があって、価値の形というか、日本の場合は、例えば先ほどの議論の中でも、サービスは無料という感覚とか、良い物を安くするというのは、すごく良い物を世の中に出しているという感覚があると思いますが、これがあるとどうしても過剰品質や薄利多売のほうに行ってしまうと思います。

 話が飛びますが、日米欧というか先進国でマクロのパフォーマンスを見ているときに、物価がこれだけ持続的に下がり、賃金は最近上がっていますが、ほぼ 10 年以上下がっている国は日本しかありません。それは競争の仕方とか価値というのが物量的なとか、良い物を安くという感覚があるのですが、そうではなくて、本当に顧客が何を欲しているのか、そこに対して結果的に価格が上げられるようなサービスとか、価値を認めていれば、お客さんは高いものでも払ってくれると思います。そういう競争の仕方ができていない、そこは意識の問題もあるし、私は雇用システムなどを考えるので、選択肢としては今日の話で申し上げたように、どうしても価格調整というか、雇用量の調整が日本の場合は難しくなっているので、簡単な話ではないと思いますが、いかにうまく流動化が進むかということに関わってくると思います。

 根本のところは日本の企業として、日本の働き方としてどういう価値で勝負していくのか。従来の発想ではありません。顧客にとって、ある意味で高い価値を提供できるのであれば、それなりの価格をもらえるはずだと。これも単純な言い方はできませんが、量ではなくて質の競争みたいなところを考えていかなければ駄目だと思います。

○荒木委員 長時間労働の問題は、正に日本の働き方の改革の問題だと言ったのですが、島田先生がおっしゃったように、日本の場合はメンバーシップ雇用、すなわち自分のジョブディスクリプションが決まっていない。ここからここまでは自分の仕事と決まっていれば、ホワイトカラーの人は自分の仕事が終わったら帰ることができると思いますが、それが決まっていないがゆえに、自分の裁量で帰るのは非常に難しいと。ですから、労働時間を減らしていくという場合に、日本の雇用の在り方というか、そこも一緒に考えないとなかなかうまくワークしないだろうと思います。

 時間を限って働くということは、ホワイトカラーに厳しい働き方を要求することになる側面もあると思います。そうしないと生産性が上がりませんので。しかし、世の中全体としては、長い時間企業にずっと人が居残っていて、家庭に不在であるという状況をこのまま続けていいのかということを真剣に考え直して、働き方を改革する覚悟で労働時間問題に取り組まなくてはいけないと感じています。

○今野座長 今日最初に言いましたように、自由に議論していただいて、大久保さんではありませんが、バーッと間口を広げました。次回以降は少しずつ論点を整理しながら、議論をさせていただければと思います。この辺で終わりたいと思います。次回の日程について、最後に事務局からお話いただいて、終わりにしたいと思います。

○中嶋調査官 次回の日程につきましては、調整の上、改めて御連絡をさせていただきたいと思います。

○今野座長 次回以降は、こういう時間ではないことが重要だということでしたね。

○中嶋調査官 その点も含めて調整いたします。

○今野座長 それでは、終わりたいと思います。ありがとうございました。


(了)
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