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2016年5月30日 (平成28年5月30日)平成28年度第1回化学物質のリスク評価検討会(有害性評価小検討会) 議事録

労働基準局安全衛生部化学物質対策課化学物質評価室

○日時

平成28年5月30日(月)13:30~


○場所

中央合同庁舎第5号館共用第8会議室(19階)


○議題

平成27年度ばく露実態調査対象物質の有害性評価について 他

○議事

○平川化学物質評価室長補佐 本日は大変お忙しい中、御参集いただきまして誠にありがとうございます。定刻になりましたので、平成28年度第1回有害性評価小検討会を開催いたします。開催に際して、事務局から御報告があります。千葉委員から退任のお申出がありましたので御報告いたします。なお、本日は高田委員が所用により御欠席です。また、この度は事務局に異動がありましたので、紹介させていただきます。
化学物質対策課長の奥村です。
化学物質評価室長の穴井です。
有害性調査機関査察官の上月です。
化学物質情報管理官の米倉です。
それでは、座長の大前先生に以後の議事進行をお願いいたします。
○大前座長 今日は3物質ありますが、よろしくお願いします。最初に事務局から、資料の確認をよろしくお願いします。
○平川化学物質評価室長補佐 資料の説明の前に、本日の議事は、平成27年度ばく露実態調査対象物質の評価値、3物質についての評価です。
 資料の関係ですが、議事次第と資料一覧、その次に資料1-1から資料1-3、資料2、資料3を1点止めで付けております。参考資料については1、4-1、4-3、5、6、7、8を公開用資料ということで1点止めにしております。参考資料2も公開資料ということで、それのみ1点止めとしております。さらに机上配布資料として、参考資料3、参考資料4-2、参考資料9をそれぞれ1点止めとしております。
 資料1-1から資料1-3はA3横判で、それぞれ1枚ずつです。資料2の平成28年度リスク評価の実施予定については1枚、資料3の今後の予定はA4で1枚です。次に参考資料1から8です。参考資料1はA4で1枚表のみ、参考資料4-1はA4横判で3ページから1枚、参考資料4-3は5ページの1ページのみ、参考資料5は7、8ページの表裏1枚、参考資料6は9~18ページ、参考資料7は19~26ページ、参考資料8は27~32ページまでとなっております。
 引き続き机上配布資料の紹介です。参考資料3はACGIH、日本産業衛生学会の許容濃度等に関する資料です。酸化チタンのACGIHが1ページから、日本産業衛生学会の粉じんの許容濃度が5ページから、酸化チタン(ナノ粒子)が7ページから、ノルマル-ブチル-2,3-エポキシプロピルエーテルのACGIHが13ページから、最後に、2-ブロモプロパンの日本産業衛生学会が17ページからとなっております。参考資料4-2は、昨年度のリスク評価検討会で結論が得られたリスク評価書ということで、酸化チタン(ナノ粒子)を参考に付けております。参考資料9は、委託事業で行っているリスク評価事業における有害性評価手順ということで、1~20ページで付けております。資料に落丁・不備等がありましたら、事務局までお申し付けくださいますようお願いいたします。
○大前座長 資料はおそろいでしょうか。それでは早速、今日の1番目の議題に入ります。最初の議題では、詳細リスク評価物質で評価書の見直しが必要な酸化チタンについての検討を行います。それでは事務局から、御説明をよろしくお願いします。
○平川化学物質評価室長補佐 平成27年度ばく露実態調査対象物質の評価値(酸化チタン)については、既に一度初期リスク評価等を行い、その後、平成27年度にリスク評価書ということでまとめました。そのまとめの中で、改めてナノ物質以外のものと併せて評価することになりましたので、この度、酸化チタンについても平成27年度の委託事業において、改めて評価書の取りまとめをしていただきました。そのまとめを踏まえ、本日の評価値の決定ということでお願いできればと思います。
 資料1-1を御覧ください。物質名は酸化チタン、別名二酸化チタンです。酸化チタンとしてのCAS番号は13463-67-7です。化学式、構造式は次に示すとおりです。物理化学的性状は無色~白色の結晶性粉末。沸点は2,500~3,000℃、融点は1,855℃、密度は3.9~4.3g/cm3で水には溶けません。生産量等用途ですが、生産量は2013年現在17万3,904トン、輸入量は1万5,195トンです。用途については非常に広範で、塗料、化合繊のつや消し、印刷インキ、化粧品、乳白ガラス、有機チタン化合物原料、ゴム/プラスチックの着色、リノリューム用顔料、絵の具、クレヨン、陶器の釉薬、製紙、コンデンサー、溶接棒被覆剤、歯科材料、レザー、石鹸、なっ染顔料、皮革、アスファルトタイルとなっております。
 次に、重視すべき有害性、発がん性です。発がん性については、ヒトに対する発がん性が疑われます。その根拠ですが、ラットに0、10、50、250mg/m3のルチル型二酸m3チタンを6時間/日、5日/週、24か月間、全身吸入ばく露した実験において、250mg/群で細気管支肺胞腺腫、扁平上皮化生、肺嚢胞、扁平上皮がんがみられたが、10及び50mg/m3群ではばく露による肺の腫瘍はみられなかった。250mg/m3群でみられた腫瘍は、継続的な肺のクリアランスメカニズム以上の粒子取り込みによる継続的な炎症と、線維形成によるものと考えられた。以上の結果から、二酸化チタンは吸入ばく露により発がん性を有すると考えられたということです。各機関の評価ですが、IARCにおいては2B、産衛学会では第2群B、EU CLPでは調和された分類はない、NTP 13thでは設定なし、ACGIHではA4、DFGでは発がん性区分3Aとなっております。
 次に、発がん性以外の有害性です。生殖毒性については判断できないということになっております。根拠としては、吸入ばく露試験の情報が得られていない、また経口投与試験は1試験あるが、限度試験であることから生殖毒性について判断する情報が少ないとされております。神経毒性についても調査した範囲では報告が得られていないことから、判断できないとなっております。遺伝毒性も判断できないとなっております。根拠としては、in vitroの試験ではほとんどの試験結果は陰性であった、陽性結果は小核試験2試験、in vitro姉妹染色分体交換試験2試験でみられたが、これらは酸化ストレスによるDNA損傷の結果であると考えられた。in vivo体細胞試験の結果は陰性であったが、二酸化チタンの肺胞細胞を用いた非標準的なin vivo遺伝子毒性試験において、陽性の結果が得られていることから、in vivo遺伝毒性については結論できないとされております。閾値の有無も判断できないとなっております。根拠としては、「遺伝毒性」の判断を根拠としているものです。
 次に反復投与毒性に関する動物試験データです。ここではLOAEL=5mg/m3としております。その根拠ですが、実験動物でのLOAELが最小であった下記の試験の数値を用いるということです。先ほどの試験の結果を出させていただいております。全身吸入ばく露、ドライエアゾールでのばく露です。二酸化チタンばく露群では肺線維化の発生率が5%であった、ばく露後、BALFの細胞パターンに軽度な変化がみられた、二酸化チタンばく露群では肺付属リンパ節のリンパ過形成がみられた。以上の結果から、本試験におけるLOAELを5mg/m3と考えられるとして、不確実係数を100として評価レベルの計算を行ったところ、0.0375mg/m3となっております。
 許容濃度については、ACGIHではTLV-TWAが10mg/m3です。これは二酸化チタン全体を対象としています。根拠ですが、ラットに二酸化チタン粉末を0、10、50、250mg/m3の濃度で吸入ばく露させた慢性実験において、250mg/m3の投与群で肺への炎症及び扁平上皮がんの形成を認めた。なお、10mg/m3の投与群では肺の既存の構築は保たれており、線維化の進行や不可逆的な病変も認められない。疫学的調査では二酸化チタンのばく露と呼吸器疾患との間に関連性はなかったと報告されている。さらに二酸化チタンへの職業ばく露が肺の線維化、発がん若しくは他の健康影響との関連を示す確実な証拠はない。以上のことからTLV-TWA値として、10mg/m3を勧告することとなっております。また、二酸化チタンの発がん性を調べた動物実験は、陰性若しくは結論に達していないことから、これらの結果を基に、二酸化チタンをA4に分類する。SkinやSEN表記、あるいはTLV-STELを提言する充分なデータはないとされております。
 日本産業衛生学会では、第2種粉じんとして吸入性粉じん1mg/m3、総粉じん4mg/m3ということで設定されております。DFG MAKは設定なし、発がん性区分3A。NIOSHにおいては職業性発がん物質としての勧告が、1988年にされており、濃度として2.4mg/m3(微粒子)で0.3mg/m3(超微粒子)ということでの勧告が2011年にされています。
 最後に評価値の案です。一次評価値については、評価値なしとしております。理由は、発がん性を示す可能性があり遺伝毒性が判断できない場合で、生涯過剰発がん1×10^-4レベルに相当するばく露濃度が設定できないためとしております。二次評価値ですが、吸入性粉じんとして1mg/m3を設定していただければと考えております。理由ですが、日本産業衛生学会が勧告している許容濃度を二次評価値としたということです。以上、よろしくお願いいたします。
○大前座長 今回はナノ以外の酸化チタンです。それで一次評価値なし、二次評価値が1mg/m3という御提案ですが、先生方から御意見、御質問はいかがでしょうか。
○江馬委員 ナノ以外ということですが、参考資料2を見ると、3ページの79行目では一次粒径が25nm、80nm、84行目では一次粒径が20~30nm、89行目では一次粒径が71nmと書いてあるのです。ここにはナノの毒性情報も入っているということですか。
○平川化学物質評価室長補佐 評価書の中では情報として、このような情報があるということで書いておりますが、最終的な評価としてはナノ酸化チタン以外のものを含めて、全体評価ということで評価値を定めさせていただければと思い、本日、資料1-1としてまとめているところです。
○江馬委員 例えば、生殖毒性のところはナノをやったときのデータがかなり出ていて、実際にデータもあるのですけれども、ここではないということになっているのです。そうすると、ナノを評価したときの評価書とこちらの整合性が取れないのではないかと思います。
○大前座長 去年でしたか、ナノはナノで別個にやっております。この評価書自体はナノもナノ以外も全部含んでいますが、ナノはもう既にやっておりますので、今回はナノ以外ということで、今日はよろしくお願いします。
○宮川委員 今のところを確認します。参考資料の評価書のほうはナノも含めて書いてあります。ただ、ナノ以外について評価するということで、後のほうにある評価表はナノ以外ということでよろしいでしょうか。それに基づいたのがて今回のA3横の資料であると。見た人が誤解をしないように、これがナノ以外だということが分かるように、今日の議事次第のタイトルにはそう書いてあるのですけれども、この表でも左上の所には「酸化チタン」と書いてあるので、この辺りはナノ以外とはっきり書いていただきたい。
 それとともに、ACGIHのTLVについては、ACGIH自体がナノを区別しないで考えたのがそのままになっておりますので、ここには「ナノ粒子に限らない」というのが太字で入っているのですが、それはあくまでもACGIHのこの部分だけであって、ほかのところはナノを除いて書いてあることが明確に分かるような資料を作っていただければと思います。
○平川化学物質評価室長補佐 資料1の表現ぶりについては修正した上で、また御確認いただければと思います。
○津田委員 これに書いてあるIARCの分類2Bは、ちょっと違っていると思うのですが、一番新しいのはVol.93で、2010年のはずです。そのときの評価は二酸化チタンのナノ粒子と非ナノ粒子の両方を含めてのことで、そのときはナノ粒子は「ultrafine」と言っています。両者を含めての評価が2Bだったのです。ですから、そこをはっきり書いておかないと、あやふやになると思います。
 それと、表を見るとヒトに対する発がん性が疑われるというのと、可能性があるというのと2パターンの書き方がしてあります。IARCの文言を採るとすれば「可能性がある」です。ある団体の翻訳で誤解を招くものもあって、正しい翻訳を厚生労働省の担当の方が取り組まれて私がお手伝いしました。それがアップロードされているはずです。ですから、それに統一された方がいいと思います。
○大前座長 この文言は毎回毎回、何回かずっと問題になっております。この委員会とこの前の委員会のルール上は、「ヒトに対する発がん性が疑われる」というように使おうとなっておりますが、先生がおっしゃるようにIARCだと、「可能性がある」のほうが正しいと思うのです。そのほかに御意見はいかがですか。
○西川委員 遺伝毒性について確認させていただきたい。参考資料4-1では、ナノ粒子の酸化チタンでは遺伝毒性ありだけれども、そのメカニズムがフリーラジカルによる間接的なものであるので、結果として閾値がありという判断がされております。今回のナノ以外の場合も同じような試験結果ですが、遺伝毒性が判断できない、あるかもしれないとなっています。遺伝毒性のメカニズムは、これも先ほどと非常によく似た、酸化ストレスによるDNA損傷の結果であると考えられるとあるので、ナノで閾値ありであれば、これも閾値ありに非常に近いのではないかと思うのですが、その辺りの考え方を教えていただければと思います。
○大前座長 前、ナノのときはどういう表現をしていましたか。ナノのときもやはり判断できないということでしたか。
○平川化学物質評価室長補佐 ナノのときは遺伝毒性ありとしております。
○大前座長 今回は、ナノ以外に関しては判断できないと。
○平川化学物質評価室長補佐 平成27年度にまとめていただいた有害性評価書を参考にしたところ、判断できないとなっております。参考資料2の30ページに、カの遺伝毒性の項があります。こちらの判断できないというのを引用して、今回は判断できないということにしておりました。
○大前座長 今までに関しては先ほど言われたメカニズムで、一次的なメカニズムではなくて二次的なことであるが、遺伝毒性ありと判断したということですよね。
○平川化学物質評価室長補佐 はい。
○大前座長 陽性の式があるということが、2つくらいどこかに書いてありましたが、今回はそこに至ってないので判断できないと。
○清水委員 全部ではないですね。少なかったので、余りはっきりと言い切れなかったというところがあると思います。
○西川委員 分かりました。それから、もう1つは表記の問題です。資料1-1に反復投与毒性に関する動物試験データというのがあって、LOAELが5mg/m3ですね。これは吸入ばく露試験なので、正確にはLOAECです。LではなくてConcentrationのCです。これは結構頻繁に出てきますので、御確認の上、訂正いただけると有り難いです。
○大前座長 今まではConcentrationもみんなLでやっていたのです。それを吸入の場合はCにしたほうがいいかどうか。今まではみんなLにしてしまっていますから、これもLなのです。では、それをこれからCにするのか、あるいは同じ意味ではないけれども、意味合いは似ているのでこのままにするのかは、検討をよろしくお願いします。そのほかにありますか。もしなければ、評価値(案)について、一次評価値はなし、二次評価値は1mg/m3、吸入性粉じんについては、産業衛生学会の第2種粉じんという随分古い話ですが、これを一応使っているので1mg/m3という案です。よろしいでしょうか。
○西川委員 産業衛生学会の許容濃度は、何年のものですか。
○大前座長 私が卒業して数年後にできたと思うので、30年ぐらい前だと思います。このときは日本中のじん肺を集めて、物質を分けて1種粉じん、2種粉じん、3種粉じんにしたということで、取り立てて酸化チタンにフォーカスして作ったものではありません。ですから2種粉じんの中にたくさんの粉じんの名前が書いてあるのです。そういうことで、今の作り方とは随分違った作り方になっていました。そういう意味では精度がいいとは言い切れないのですが、数字としては吸入性で1mg/m3と既に出ております。ACGIHは、総粉じんかinhalableかこれですと分かりませんが、それでも数字としては安全評価だということだったと思います。
○西川委員 古いということはよく分かったのですが、年数は書いたほうがいいかと思います。
○大前座長 提案時の年数を。
○宮川委員 今の点で、確かに第1種、第2種、第3種の粉じんは古いのですが、吸入性の定義はしばらく前に入れ替わっています。ただ、実質的にはほとんど変更はなかったと思います。
○大前座長 そうですね。古いのは何年か前に、5μm50%カットが4μm50%カットになりました。数字自体は変わらなかったのですが、測定方法が少し変わっているということです。それでは、ナノ以外の酸化チタンに関しては一次評価値なし、二次評価値1mg/m3ということでよろしくお願いします。
 それでは2つ目の物質です。これは初期評価の対象物質の評価値に関してです。まず最初の物質がノルマル-ブチル-2,3-エポキシプロピルエーテルということで、説明をよろしくお願いいたします。
○平川化学物質評価室長補佐 資料1-2を使って説明いたします。先日、先生方に事前送付したときには、これと違う資料をお送りしておりました。実は、こちらを改めて調査したところ、平成26年度の有害性小検討会で一度御議論していたものがありました。それと内容を比べたところ、平成26年度でも今回の有害性評価書と同じものの議論がされておりますので、基本的な内容としてはほとんど同じ内容といたしました。
 あと、1か所違う所があります。資料1-2のその他です。今般、この物質の許容濃度等の数値を見ますと、ACGIHのTWAが3ppm、経皮吸収及び感作性に注意というところで、皮下吸収の観点でもそういった勧告がされております。そうしたことを踏まえて、リスク評価に当たっては、経皮吸収に留意する必要があるということで書いております。また、発がん性については平成26年度の有害性小検討会の中で、生涯過剰発がん1×10^-4レベルに相当するばく露濃度の記載をするように指示がありましたので、その指示内容を左下にばく露濃度に関する数字、それから評価値の一次評価値ということで書いております。その修正版ということで、資料1-2として書かせていただいております。内容的には平成26年度にやった内容と同じ評価書を使って、この資料を作っておりますので、平成26年度に合わせてその他のところの追加をしたということです。よろしくお願いいたします。
○大前座長 資料1-2の右下のその他の「経皮吸収にも留意」と、一次評価値を付けるということで0.83ppbを追加して、あとは前回と変わらないのですね。
○平川化学物質評価室長補佐 はい。前回御審議いただいたときに、これを付けるようにと言われて、修正版ということでこちらで御指示いただいた内容を反映させているということです。
○大前座長 ひょっとしたら経皮吸収もあるということで、あえてここに付け加えられたということです。よろしいですか。では、数字としては一次評価値を0.83ppbと加えて、二次評価値は変わらず、経皮吸収に関しては留意する必要があるというように記載したということです。ありがとうございました。
 では3物質目、2-ブロモプロパンです。以前は発がんがメインでしたので、生殖毒性のことは余り考えていなかったから、2-ブロモプロパンは挙がってこなかったのですが、数年前から発がん性だでなく、生殖や神経毒性もしっかり審査しようということで、非常に有名な2-ブロモプロパンが入ってきたという経緯があります。それでは事務局から説明をよろしくお願いします。
○平川化学物質評価室長補佐 資料1-3に基づいて説明します。2-ブロモプロパンです。名称は2-ブロモプロパン、別名2BP、イソプロピルブロマイド、臭化イソプロピルです。CAS番号は75-26-3です。化学式です。C3H7Brです。参考資料2の数値と若干違っていますが、確認したところC3H7Brが正しい化学式ですので、よろしくお願いします。構造式は、次のとおりです。物理化学的性状です。外観は無色透明の液体です。沸点59.5℃、融点-89℃、密度1.314g/cm3、蒸気密度は空気=1として4.52、溶解性は水に対して0.318g/100mL(20℃)です。また、オクタノール/水分配係数ですが、log Pow 2.14という数字です。
 次に、生産量等用途です。生産量は2011年推定で100トン、製造・輸入量が1,000トン(2011年)となっています。用途は中間体用途で、医薬中間体、農薬中間体、感光剤中間体とされています。
 次に、発がん性です。発がん性の報告が得られていないということで、各評価区分とも現在のところ情報なしとなっています。
 次に、発がん性以外です。今般、問題となっている生殖毒性ですが、生殖毒性ありとしています。根拠ですが、日本産業衛生学会2013年度許容濃度の勧告において、生殖毒性第1群(ヒトにおいて生殖毒性を示すことが知られている物質)に分類されています。ヒトの疫学調査では、ばく露濃度が必ずしも明らかでないものの卵巣毒性、精巣毒性が明白であり、動物実験の所見も一致するとともに胎児毒性もみられる。生殖機能の障害は、精巣細胞と卵巣の始原細胞が標的と考えられ、重篤な中毒では回復が困難である。以上より、2BPを第1群に分類するとされています。神経毒性は判断できないということで、調査した範囲内で報告は得られていないということです。
 次に、遺伝毒性です。ありとしています。2BPは、in vitro試験系では、復帰突然変異試験、染色体異常試験のいずれでも陽性を示しています。in vivo試験系では、小核試験では腹腔内投与では陰性、胎内ばく露では陽性であり、遺伝毒性ありと判断するものです。
 左下の閾値の有無ですが、「遺伝毒性」の判断を根拠として、なしとしています。
 次に、生涯過剰発がん1×104レベルに相当するばく露濃度ですが、調査した範囲内では報告は得られていないということです。
 次に、生殖発生毒性に関する動物試験データを出しています。NOAELは50ppmです。根拠ですが、Fischer344ラット各群雌6~9匹に0、50、200、1,000ppmの2BPを約3週間(8時間/日)吸入させた結果、200ppm以上の群で用量に依存した性周期の延長がみられ、6日以上の性周期を示した割合は1,000ppm群で対照群の2倍以上に認められたが、有意な変化ではなかった。また、各群の体重、卵巣及び子宮重量、排卵数には差がなかったということです。
 不確実性係数については、種差の10を採り10、評価レベルについては、それらを基にして、計算式=評価レベル1.6ppmということで、50ppmから時間補正、日数補正、試験期間補正、不確実性係数を入れ、1.6ppmとなっています。
 次に、許容濃度ですが、ACGIH TLV-TWAは情報なしです。日本産業衛生学会では、1ppm(1999年)、さらに経皮吸収に注意という勧告がされています。根拠ですが、(1)高濃度の2BPばく露を受けた労働者で、月経の停止、精子形成機能障害、造血器障害が発生しているが、その実際のばく露濃度の資料がなく、これらの健康障害とばく露量との量反応関係は不明である。また、16名中14名の女性労働者の月経は、ばく露中止後も回復していない。
 (2)2BPはラットで、100ppm以上、8時間/日、9週間のばく露で卵巣の障害が認められ、300ppm以上で精巣と骨髄の障害が認められ、1,000ppm、8時間/日、12週間ばく露で末梢神経障害が認められた。(3)生殖機能の障害は精巣の精祖細胞と卵巣の始原卵胞が標的と考えられ、重篤な中毒では回復が困難である。(4)動物実験で、胎児毒性、催奇形性も疑られる。(5)変異原性試験が陽性で、発がんの可能性も疑われる。
 さらに、(6)6.5ppm前後のばく露を受けた女性労働者では、卵巣機能や精巣機能の明らかな障害は認められなかったが、造血機能が軽度に抑制されている可能性がある。(7)類似構造のブロム化合物は生殖毒性、発がん性を有するものが多く、許容濃度は設定されていないか、0.5~5ppmと低く設定されている。最後、(8)です。2BP液に両手を1分間浸すと、1ppm、8時間ばく露の吸収量の約4倍の皮膚吸収量が予測される。
 以上の資料を考慮して、ラットの最小毒性量(LOAEL)100ppmから、動物からヒトへの外挿の不確実係数=10、亜急性ばく露から慢性ばく露への外挿および最小毒性量から最大無毒性量への外挿の不確実係数=10を考慮して、許容濃度として1ppmを提案するとされています。DFG MAKは設定がなしです。
 以上のことから、評価値(案)です。一次評価値については、一次評価値なしとしています。理由については、発がん性を示す可能性があり、閾値がなく、遺伝毒性がある場合で、生涯過剰発がん1×104レベルに相当するばく露濃度が設定できないためとしています。二次評価値ですが、1ppmとしています。理由ですが、日本産業衛生学会が勧告している許容濃度を二次評価値としました。その他ですが、こちらも経皮吸収に関する勧告とされているので、リスク評価に当たっては経皮吸収にも留意する必要があるとしています。以上、よろしくお願いします。
○大前座長 ありがとうございました。これは右上ですが、神経毒性、調査された範囲内では報告は得られていない。これはリスク評価書を作る年度によって、神経毒性をピックアップしなかった年度があると思うので、多分そのせいだと思います。というのは、許容濃度の(2)で「12週間ばく露で末梢神経障害を認められた」というのがあるので、多分、右上の神経毒性は判断できないというのは、今回外したほうがよろしいと思います。これはリスク評価書を作った年度で、もともとのリスク評価書に書いてありますので、そのとおりなのですが、それは年度の違いということだと思いまして、ここは外してください。
 もう1個、日本産業衛生学会の(6)、「6.5ppm前後のばく露を受けた女性労働者では卵巣機能や精巣機能」とありますが、精巣機能はないので、これはおかしいと思って許容濃度の提案理由を見たら、ここは書いてあるので、確かにこう書いてあるのですが、この部分は精巣機能は外してください。これは提案理由の間違いだと思います。
 この物質は、発がん実験の物質の候補にはなっているのでしたか。
○平川化学物質評価室長補佐 なっています。
○大前座長 そうですよね。だから、何年かしたらまた発がんの結果が出てくるかもしれませんが、現在ではまだ発がんの情報がないので、このような状態、発がん性の情報や報告が得られていないという状況になっています。先生方の御意見はいかがですか。
○江馬委員 生殖毒性が強いというのはいろいろな所に出てくるのですが、資料1-3の左の下の動物試験データは、余り生殖毒性が出ていない。出ていないというか、性周期の延長だけで、それほど大したことはないという感じがするのです。
 ところが、参考資料2の252ページでは、LOAELしか設定できていないのですが、卵胞への影響がかなり出ていて、それは産衛学会の根拠とされている所とよく似ているので、そちらをここへ挙げるのがいいのではないかという気がしたのですが、それだけです。
○平川化学物質評価室長補佐 252ページは、資料で言うと左下の66ページの所でよろしいでしょうか。
○江馬委員 はい。
○大前座長 その前の65ページでNOAELが50、それから出発したのがここに書いてあるのですが、今、先生の御意見はLOAEL=100から出発して0.97のですか。
○江馬委員 はい。
○大前座長 こちらをここに載せたほうがいいのではないかと、そのような御意見ですよね。
○江馬委員 毒性のプロファイルが、今のに載っているものでは余り似ていないので、強いというのが現れるのがいいのかなということです。
○大前座長 NOAEL=50から出発したデータではなくて、LOAEL=100から出発したデータが66ページに載っていたので、そちらに入れ替えたらどうかという、江馬先生の御意見ですが、よろしいですか。
                                   (異議なし)
○大前座長 では、これは入れ替えるということでよろしくお願いします。そのほか御意見はいかがですか。この物質は1990年代の半ばから韓国で起きた非常に有名な事件によって、先ほど出たように発がんではなくて生殖毒性も視野に入れたものですから、ようやく10何年たって挙がってきた話です。産衛の勧告自体が1999年ですから、もう17年前の勧告で、随分古い話ではあるのですが。よろしいですか。そうしたら、一次評価値はなし、発がんのデータもありませんので。二次評価値が、産業衛生学会の1ppmを使用すると。これは皮膚吸収が結構あるので、その注意書きをしっかり書いておく。修正は、先ほどの点、神経毒性は削除する、生殖毒性は入れ替える、産衛の精巣機能はこの資料から外す、ということでよろしいですか。どうもありがとうございました。
 今日、予定していた3物質は終わりましたので、その他です。事務局からその他の説明をよろしくお願いします。
○平川化学物質評価室長補佐 事務局から説明します。資料2を御覧ください。「平成28年度リスク評価の実施予定について」ということでまとめています。これについてですが、先般行われたばく露評価小検討会でも、一応、こちらの実施予定ということで表をまとめています。今後、ばく露評価小検討会においては、本日の評価値等を参考にしつつ、個別物質のばく露評価が行われる予定です。
 今年度のばく露小検討会に掛けられる3つの物質について、本日、有害評価値の決定としました。残りの物質について、平成28年度、○印が付いている所について、ばく露調査を実施し、データがそろったものから順番にリスク評価を行っていくということですが、○印は全てリスク評価が今年度実施されるかというと、調査結果次第ということで御留意いただければと思います。裏面も○印は付いていますが、ばく露調査の実施状況を踏まえて、データがそろったものから順次ということになります。
 資料3です。今後の予定です。第2回有害性評価小検討会は、当初、1回、2回と本日中にやる予定でしたが、物質数が3物質でしたので、本日は第1回のみとしました。引き続きの第2回は、6月23日(木)午後3時~ということで予定しています。場所はこちらと同じです。第2回の議題ですが、「がん原性試験結果の評価について」の内容について御検討いただくとともに、「平成27年度に実施した中期発がん性試験結果について」で、先般、発がん性評価ワーキンググループで御審議いただいた結果についての報告を予定しています。
 参考です。化学物質のリスク評価検討会を、ばく露評価小検討会の結果を踏まえ、合同会議ということで予定しています。第1回を6月24日(金)午後3時~予定しています。場所はこちらと同じ会議室です。議題については、「平成27年度ばく露実態調査物質のリスク評価書の検討(第1回目)」、ほかを予定しています。第2回も、第1回で終わらなければ7月7日午前10時~、場所は未定ですが、続きということで予定しています。評価の進捗状況等により検討会の日程が変更されることがありますので、また変更される場合には、御連絡します。事務局からは以上です。
○大前座長 ありがとうございました。資料2の裏ページの一番下の「1,1,2,2-テトラクロルエタン」ですが、今これは「クロロ」にしているのですよね。
○__ はい。
○大前座長 これは「ル」を「ロ」に直したほうがいいと思います。今の資料2、資料3の説明で、何か御意見、御質問はありますか。
○宮川委員 「クロロ」か「クロル」かは、行政で使われている法律や何かによって両方違ったものになっていることがあると思いますので、確認した上で、こちらで使うのがよいと思いますので。
○平川化学物質評価室長補佐 確認します。
○大前座長 最近、全部「クロロ」にしたのではなかったでしたか。違いましたか。
○__ 労働安全衛生法に記載されているものを含め、一部に「クロル」が残っています。
○大前座長 そうですか。失礼しました。特に今の資料2、3に御質問、御意見がなければ、今日の議事の予定は以上ですが、事務局からそのほか何かありますか。よろしいですか。早うございますが、今日、議事が終わりましたので、これでこの会を終了します。どうもありがとうございました。


(了)

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