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2016年8月4日 薬事・食品衛生審議会 医薬品第一部会 議事録

○日時

平成28年8月4日(木)16:00~


○場所

航空会館702+703会議室


○出席者

出席委員(13名)五十音順

奥 田 晴 宏、 加 藤 総 夫、 川 上 純 一、 神 田 敏 子、
杉     薫、 鈴 木 邦 彦、 内 藤 幹 彦、 野 田 光 彦、
林   邦 彦、 古 川   漸、 増 井   徹、○松 木 則 夫、
村 田 美 穂
他参考人1名

欠席委員(8名)

金 子 明 寛、 木 村   剛、 佐 藤 雄一郎、 武 田 正 之、
平 石 秀 幸、 平 安 良 雄、◎松 井   陽、 山 田 清 文
(注)◎部会長 ○部会長代理

行政機関出席者

武 田 俊 彦 (医薬・生活衛生局長)
森   和 彦 (大臣官房審議官)
山 田 雅 信 (医薬品審査管理課長)
佐 藤 大 作 (安全対策課長)
林   憲 一 (独立行政法人医薬品医療機器総合機構審議役)
猿 田 克 年 (独立行政法人医薬品医療機器総合機構審議役)

○議事

○医薬品審査管理課長 「薬事・食品衛生審議会医薬品第一部会」を開催いたします。本日はお忙しい中御参集いただき、誠にありがとうございます。

 本日の委員の出席についてです。金子委員、木村委員、佐藤委員、武田委員、平石委員、平安委員、松井委員、山田委員より、御欠席の連絡を頂いております。現在のところ、当部会委員数21名のうち13名の委員の御出席を頂いておりますので、定足数に達していることを御報告申し上げます。

 なお、本日は審議事項議題1に関して、明海大学歯学部口腔生物再生医工学講座歯周病学分野准教授の辰巳順一先生を参考人としてお呼びしております。

 続いて、事務局に人事異動がありましたので、御報告させていただきます。まず、厚生労働省ですが、医薬・生活衛生局長の武田です。なお、621日付けで、事務局である審査管理課の名称が変更になり、医薬品審査管理課となっています。次に、安全対策課長の佐藤です。医薬品医療機器総合機構ですが、審査マネジメント部長の野村です。新薬審査第一部長の美上です。また、本日は欠席ですが、安全管理監が宇津となっています。よろしくお願いいたします。以上です。

 それでは、松木部会長代理に、以後の進行をお願い申し上げます。

○松木部会長代理 本日は松井部会長が御欠席ということですので、私が進行を務めさせていただきます。よろしくお願いいたします。

 本日の審議に入ります。まず、事務局から配布資料の確認と審議事項に関する競合品目・競合企業リストについて、報告を行ってください。

○事務局 席上に、議事次第、座席表、当部会委員の名簿を配布しています。議事次第に記載されている資料1から資料8-6をあらかじめお送りしております。このほか、資料9「審議品目の薬事分科会における取り扱い等()」、資料10「専門委員リスト」、資料11「競合品目・競合企業リスト」を配布しています。

 続いて、本日の審議事項に関する競合品目・競合企業リストについて御報告いたします。資料11を御覧ください。各品目の競合品目選定理由については、次のとおりです。資料11の1ページを御覧ください。リグロス歯科用液キット600μg、同歯科用液キット1,200μgですが、本品目は歯周炎による歯槽骨の欠損を予定効能・効果としており、同様の臨床的実績を有する、資料に掲げる品目を競合品目として選定しております。

 2ページです。ゼンタコートカプセル3mgです。本品目は、軽度から中等症の活動期クローン病を予定効能・効果としており、同様の効能・効果を有する薬剤として、資料に掲げる品目を競合品目として選定しております。

 3ページ、シグニフォーLAR筋注用キット20mgほか2規格です。本品目は先端巨大症、下垂体性巨人症を予定効能・効果としており、同様の効能・効果を有する薬剤として、資料に掲げる品目を競合品目として選定しております。

 4ページ、イニシンク配合錠です。本品目は2型糖尿病を予定効能・効果としており、同様の効能・効果を有する薬剤として、資料に掲げる品目を競合品目として選定しております。

 5ページ、アルチバ静注用2mg、同静注用5mgです。本品目は小児の全身麻酔の維持における鎮痛を予定効能・効果としており、同様の効能・効果を有する薬剤として、資料に掲げる品目を競合品目として選定しております。

 6ページは、オビドレル皮下注シリンジ250μgです。本品目は視床下部-下垂体機能障害に伴う無排卵又は希発排卵における排卵誘発及び黄体化、生殖補助医療における卵胞成熟及び黄体化を予定効能・効果としており、同様の効能・効果を有する薬剤として、資料に掲げる品目を競合品目として選定しています。

 7ページは、ランジオロール塩酸塩です。本品目は心室細動及び血行動態不安定な心室頻拍を予定効能・効果としており、同様の効能・効果を有する薬剤として、資料に掲げる品目を競合品目として選定しております。以上です。

○松木部会長代理 今の事務局の説明に、特段の御意見等はございますか。なければ、本部会の審議事項に関する競合品目・競合企業リストについては、皆さんの了解を得たものといたします。

 次に、委員からの申出状況について報告してください。

○事務局 各委員からの申出状況については次のとおります。

 議題1のリグロス歯科用液キット、退席委員、議決には参加しない委員は、共もになしです。

 議題2のゼンタコートカプセルは、退席委員なし、議決に参加しない委員は杉委員です。

 議題3のシグニフォーLAR筋注用キットは、退席委員なし、議決に参加しない委員は村田委員です。

 議題4のイニシンク配合錠の退席委員は鈴木委員、野田委員、議決には参加しない委員は杉委員、村田委員です。

 議題5はアルチバ静注用は、退席委員、議決に参加しない委員は、共になしです。

 議題6のオビドレル皮下注シリンジは、退席委員、議決には参加しない委員は共になしです。

 議題7のランジオロール塩酸塩です。退席委員は杉委員、議決には参加しない委員は野田委員です。

○松木部会長代理 今の事務局からの説明に、特段の御意見等はありますか。よろしければ、皆さんに御確認いただいたものといたします。

 議題に入ります。本日は審議事項が7議題、報告事項が1議題です。審議事項の議題1について、機構から概要を説明してください。

○医薬品医療機器総合機構 議題1、資料1、医薬品リグロス歯科用液キット600μg、同歯科用液キット1,200μgの製造販売承認の可否等について、機構より御説明申し上げます。

 歯肉の炎症が歯のセメント質や歯槽骨などにまで達した重度の歯周炎の場合、歯周外科治療が行われます。その術式の一つである歯肉剥離掻爬手術、いわゆるフラップ手術では、歯肉を剥離して深い歯周ポケットに蓄積したプラークや歯石等の除去を行います。本剤は、ヒト塩基性線維芽細胞成長因子であるトラフェルミンを有効成分とする液剤です。フラップ手術の際に歯周組織の欠損部に本剤を投与することにより、そこに存在する未分化の細胞の増殖が促進され、歯槽骨などの増加を促進すると考えられています。

 なお、海外では歯科用剤としての本剤の承認はされておりません。本邦では、褥瘡などを効能・効果とする外用剤としてフィブラストスプレー250ほかが、平成13年に承認されています。本品目の専門協議では、本日の配布資料10に示す専門委員を指名いたしました。

 審査の概要です。有効性に関して、報告書18ページの表17を御覧ください。プラセボを対照とした国内試験において、本剤群はプラセボ群に比べ、新生歯槽骨の増加率が高い傾向が認められました。また、報告書20ページの表21を御覧ください。本剤と同様の位置付けで使用されているエナメルマトリックスデリバティブを対照とした国内試験において、主要評価項目である新生歯槽骨の増加量について、本剤群のエナメルマトリックスデリバティブ群に対する非劣性が検証されました。以上より、本剤の有効性は示されたと考えました。

 安全性について、報告書23ページの表27及び報告書24ページの表28を御覧ください。国内試験において、プラセボ群に比べ本剤群で臨床的に問題となるような有害事象の増加は認められず、口腔内の有害事象についても、本剤群で多く発現する傾向は認められませんでした。また、報告書24ページの3段落目を御覧ください。国内試験では重篤な有害事象について、本剤の副作用と判断された症例はありませんでした。悪性腫瘍についても、国内試験では副作用として判断された症例はありませんでしたが、本剤と同じ有効成分の外用剤であるフィブラストスプレーの添付文書では、禁忌として、「投与部位に悪性腫瘍のある患者又はその既往歴のある患者」が注意喚起されていることから、本剤についても同様に、添付文書では、禁忌として「口腔内に悪性腫瘍のある患者又はその既往歴のある患者」を注意喚起することにいたしました。

 本剤の用法・用量について、報告書の26ページの1行目を御覧ください。歯槽骨の欠損の深さなどは患者により異なること、国内臨床薬理試験で、本剤0.6mLを投与した場合にも、特段安全性に問題を認められなかったことなどから、本剤の用法・用量は「歯肉剥離掻爬手術時に歯槽骨欠損部を満たす量を塗布する」とすることで差し支えないと考えました。なお、添付文書では、「用法・用量に関連する使用上の注意」及び「臨床成績」の項で、国内試験で用いられた本剤の投与量を目安として情報提供することにしています。また、具体的な本剤の塗布手順などは、医療従事者向けの資材で分かりやすく情報提供する予定です。以上のような審査の結果、歯周炎による歯槽骨の欠損を効能・効果とした本剤の有効性は示され、本剤の安全性は許容可能と考えられたことから承認して差し支えないと判断し、本部会で審議されることが適当と判断しました。

 本品目は、新投与経路医薬品に該当し、再審査期間は6年、製剤は劇薬又は毒薬のいずれにも該当せず、生物由来製品及び特定生物由来製品のいずれにも該当しないと判断しました。薬事分科会では報告を予定しています。

 なお、事前に金子委員より、添付文書案について3点御質問を頂いておりましたので、御紹介いたします。

 1点目ですが、「このような薬剤は臨床効果で個体差が大きいと思われるが、添付文書に初回投与で36週間後の骨増加量の改善傾向が認められない場合は、他の治療法などを考慮することを記載する必要はないか」との御質問です。

 こちらにつきまして、歯周病治療の医療現場では、通常フラップ手術による改善傾向が認められない場合にはほかの治療法を考慮する対応がなされており、本剤を用いる場合にも通常のフラップ手術と同様の対応がなされると考えられます。専門協議時の歯周病治療の専門委員からは、「仮に本剤で改善傾向が認められない場合、本剤を用いたフラップ術を繰り返し実施することは考えにくい」との意見もございました。これらのことを踏まえ、添付文書で、あえてほかの治療法などを考慮すると記載しなくても、添付文書の臨床成績の項に記した試験成績などを参照し、歯科医師などが個々の患者の状態に応じて最適な治療を御判断いただけると考えている旨を御説明しました。

 2点目として、「本剤と同じ有効成分の外皮用薬で、皮膚潰瘍や褥瘡の効能で承認されているフィブラストスプレーの添付文書の「その他の注意」の項には、「本剤を長期にわたって漫然と投与することがないよう注意する」旨が記載されているが、本剤で必要ないか」との御質問がありました。

 こちらについて、専門協議時に歯周病治療の専門委員より、「フラップ手術を同一部位に頻回に繰り返すことはないであろう」との意見があったことを踏まえ、毎日潰瘍部位に投与するフィブラストスプレーのように、長期にわたって漫然と投与しない旨の注意喚起は、現時点の本剤の添付文書では不要と考える旨を御説明しました。

 そのほか、添付文書案の2ページ目、「臨床成績」の項の表3の塗布量に関する表について、「もう少し詳しい用量の記載はできないか」との御質問を頂きました。

 こちらについて、現時点では表3の内容が臨床試験に基づき、最大限記述できる内容となりますが、製造販売後調査では患者背景とともに、本剤の塗布量と残存量を情報収集することを予定している旨を御説明しました。

 以上のように御説明し、金子委員からは御了承いただきました。

 機構の説明は以上です。御審議、どうぞよろしくお願い申し上げます。

○松木部会長代理 本議題については、参考人として辰巳先生にお越しいただいておりますので、本議題についての御発言をお願いいたします。

○辰巳参考人 本剤は再生療法に用いる材料の一つになりますが、歯周病の治療というのは、基本的には口腔内の汚れを可能な限り非外科的に取って、そして炎症を可能な限り取ることを基本にするのですが、その後、再度検査をした結果、外科的な対応をしない限りは再度症状が再発するとか、あるいは悪化するということが認められた場合には、外科的な対応をする。

 その外科的な対応をする大きな目的としては、歯と歯茎の間の溝の深さを浅くするということが一番の目的になります。

 どうして浅くしなければいけないかというと、その溝が深くなっている部分では、嫌気性菌の繁殖がしやすいからということがあるわけですが、その溝を浅くするための対応方法としては、切除する切除療法、その周囲の炎症状態を可能な限り改善して、その付着状態を改善するということで、組織付着療法があります。そして、元の状態に戻すということで再生療法という治療法があります。

 今回申請されている薬剤に関しては、再生療法に位置するわけですが、今までのこの再生療法に関する材料は自家骨や人工骨を使う、いわゆる骨移植という方法、組織遮蔽膜を使用し局所の再生スピードをコントロールする組織再生誘導(GTR)法、あとは今回競合薬品になっているエムドゲインという、アメロジェニンを主体とした蛋白を用いた再生療法、そして今回のbFGFを用いた材料ということになるわけです。

 これを使うことによって、水平的な骨欠損はなかなか改善しませんが、局所的に存在する垂直的な骨欠損に関しては、改善する可能性が非常に高いと。特に、このエムドゲインあるいは今回の臨床データからすると、この薬剤についても再生する可能性が非常に高い薬剤だということから、こういった薬剤を使うことによって、本来の元の形に歯周組織を戻すという意味では、非常に有意義な薬剤ではないかと思います。

○松木部会長代理 ありがとうございました。

 委員の先生方から、質問、御意見をお願いいたします。

○神田委員 再生療法に位置するものであるということでしたが、各種試験がなされているのは「20歳以上」という形で表現されています。年齢が高くなっていったときに、そういった再生する能力も落ちてくるのではないかとみたときに、試験が20歳以上ということで、高齢の方について何歳ぐらいまでなされているのかが分からないのでお聞きするのですが、そういった年代差による薬の効能の違いはあるのでしょうか。あるいは悪くなる具合が若い人と年を取った方では違わないのか、やはり高齢者にはひどい状態の人が多いのか、その辺がもう少し分かるといいなと思いましたので、よろしくお願いします。

○松木部会長代理 今の点について、年齢については機構からでしょうか。

○医薬品医療機器総合機構 実施した臨床試験には、65歳以上の患者も一定割合程度は含まれておりましたが、年齢による有効性及び安全性の違いは今のところ特段認められていません。

○辰巳参考人 理論上なのですが、末梢血あるいは局所にある未分化な間葉系の細胞数からすると、成長因子を用いたこういう材料の反応性に関しては、より若年者のほうが反応性がいいということは十分に考えられます。

 ただ、例えば競合医薬品であるエムドゲインに関しても、高齢者であるから有効性は非常に低くなるといった報告はございません。

○神田委員 ありがとうございました。先ほどの年齢のことなのですが、国内第II相試験の2002年については「65歳まで」という表現があったのですが、そのほかは「20歳以上」ということだったので。

○医薬品医療機器総合機構 国内第III相試験では、高齢者の方も含まれています。

○神田委員 ということは、満遍なく平均的に入っているということでよろしいですね。

○医薬品医療機器総合機構 はい。

○神田委員 それから、効能・効果の表現のことなのですが、「歯周炎による歯槽骨の欠損」という形で、申請時のときからは短くなっていますよね。そういったときに、「欠損」というところで切れると、これが効能・効果といったときに、欠損したものについてどういう効能があるのかというのが分からないのではないかと思ったのですが、欠損といった場合に専門家の方は、先ほどの御説明のように、再生医療に関わることであると分かるのでしょうか。欠損だと具体的な効能・効果が分からない、症状というかここの欠損の状態ですよね。

○医薬品医療機器総合機構 はい。

○神田委員 なので、その辺は再生ということを表現とすると、それは言い過ぎではないかという指摘があってそこを削ったということですが、言い過ぎにならない何らかの表現が必要なのではないかと思ったのですが、必要はないでしょうか。

○医薬品医療機器総合機構 薬剤の投与対象を明確にすることが重要と考えており、「歯槽骨の欠損」という記載が本剤を使用される先生方にも一番分かりやすいのではないかということで、そのような記載をさせていただきました。添付文書の「臨床成績」の項に記載している臨床試験のデータを見ていただくと、どういう効果が期待できるかというのは使っていただく先生に情報提供できているのではないかと思います。

○松木部会長代理 情報提供はできていると思うのですが、効果が「欠損」で終わってしまうと、欠損させる効果があるとなってしまうと思うのですが、それは辰巳先生いかがでしょうか、問題ないでしょうか。

○辰巳参考人 言葉としては正しくないと思いますので、例えば「欠損部に対する組織再生」「骨欠損の回復」といった一言を加えたほうがいいのかなと思います。

○医薬品医療機器総合機構 「組織再生」としますと、歯槽骨より範囲が広がってしまうことを懸念しておりまして、臨床試験で検証された主要評価項目が歯槽骨の増加量でしたので、私どもとしては歯槽骨というのがはっきり分かるようにという意図で、このような効能・効果としております。

○神田委員 どこかの資料に、「再生促進作用」というような表現があったのですが、それはぴったりではないのですか。

○医薬品医療機器総合機構 他の既承認品目における効能・効果の記載ぶりとの並びなども考えまして、そういう表現を使っているのがあまり見当たらなかったので、今回は使わなかったのですが、例えば資料概要の1.8の「添付文書案」の上部をご覧いただくと販売名の上の部分などには、「歯周組織再生剤」ということが書いてありますので、どういう目的に使うものかというのは分かるのではないかとは思いますけれども。

○松木部会長代理 多分間違えることはないと思うのですが、表現としてこれが適切だとなると、またこれが前例になって次々にそういう状態になってくると思うので、これは効能・効果というよりは適用で、こういう患者に適用するということですよね。だから、少し表現を考えていただいたほうがいいと思うのですが。

○医薬品医療機器総合機構 申請時の効能・効果から変更し、最終的な効能・効果を「歯槽骨の欠損」とすることについては、本剤の専門協議において歯周病の専門の先生と議論させていただきました。効能・効果に「再生」と書かれた薬剤にしてしまうと、今回臨床試験のターゲットとなった歯周炎に基づく骨欠損ではなく、再生させたいということでいろいろ適応外使用されてしまうのではないかと懸念されます。そのため、本剤の投与対象を明確にするという観点から、効能・効果の記載は「歯槽骨の欠損」が適切と考えました。

○医薬品医療機器総合機構 補足ですが、本剤の国内第III相試験の対照薬として使用されたエムドゲインゲルの添付文書の「使用目的、効能又は効果」にも、「組織再生」というような言葉は使っておりません。本剤も同じような位置付けで使われますので、本剤の効能・効果にそのような表現を用いなくても問題はないと考えています。

○松木部会長代理 いかがでしょうか。臨床の現場で混乱することはないし、むしろ欠損した状態のときに使ってほしいと。「歯槽骨の再生」とまで言ってしまうと、言いすぎだということで、ここで止まっているということですね。

○医薬品医療機器総合機構 はい。そこを懸念しています。

○松木部会長代理 その状況は分かるのですが、普通に考えると、これは非常におかしいですよね。いかがでしょうか。そういう状況を理解して、オーケーということでよろしいでしょうか。

○神田委員 分かりました。

○松木部会長代理 ほかに御意見、御質問はありますでしょうか。褥瘡に使っていたものが、歯槽骨の再生までいってもいいのか分からないですけれども、欠損のほうには効くということらしいです。

○内藤委員 今の効能・効果ですが、「欠損の改善」という表現ではまずいですか。

○医薬品医療機器総合機構 「改善」というのも、どのような状態が改善なのかというのは少し分かりにくいのではないかと思います。

○内藤委員 こういう公式な文章として皆さんに出すもので、効能・効果のところに対象症例みたいなものを記載するのは、少しずれているという気がするのですが。

○医薬品医療機器総合機構 医薬品の効能・効果は、基本的に、疾患名、症状名を記載することになっており、例えば糖尿病のお薬ですとか、そういうものは疾患名がそのまま効能・効果にもなっていますので、他の医薬品との並びを見ると特段違和感はないのではと思います。

○内藤委員 英語だとどういう表現になるのですか。

○医薬品医療機器総合機構 本剤は海外承認がないので。

○内藤委員 分かりました。

○松木部会長代理 表現の問題だと思うのですが、正確には適応症がこれだということだと思うのですが。よろしいですか。実情は分かるのですが、建前としては少し変だというところですかね。ほかによろしければ、議決に入りたいと思いますが、いかがでしょうか。

 議決に入ります。本議題について、承認を可としてよろしいでしょうか。ありがとうございます。御異議がないようですので、承認を可とし薬事分科会に報告させていただきます。辰巳先生、どうもありがとうございました。

 議題2に移ります。

○医薬品医療機器総合機構 それでは議題2、資料2、医薬品ゼンタコートカプセル3mgの製造販売承認の可否等について、機構より御説明申し上げます。

 クローン病の治療においては、重症度等に基づき治療法が選択されており、軽症から中等症の活動期クローン病に対してはメサラジン製剤やステロイド等が使用されています。

 本剤は糖質コルチコイドであるブデソニドを小腸及び結腸近位部で放出するよう設計された腸溶性徐放製剤です。

 本剤は、医療上の必要性の高い未承認薬・適応外薬検討会議を経て、20101213日に厚生労働省から開発要請がなされ、開発に至りました。

 今般、回腸又は上行結腸に病変を有する軽症から中等症の活動期クローン病患者を対象とした国内第III相試験により、当該患者に対する本剤の有効性・安全性が確認され、医薬品製造販売承認申請がなされました。

 なお、本剤は2016年4月時点において、欧米等35か国以上で承認されています。

 本品目の専門協議では、本日の配布資料10に示します専門委員を指名しております。

 次に、本剤の有効性・安全性について、臨床試験成績を中心に説明させていただきます。

 有効性に関しては、報告書14ページの表14を御覧ください。国内第III相試験の主要評価項目である「投与8週後の寛解率」について、本剤群のメサラジン群に対する非劣性が検証されました。

 以上より、機構は、本剤の有効性は示されたと判断しました。

 安全性に関しては、今、開いていただいています報告書14ページの表15を御覧ください。国内第III相試験における有害事象の発現状況を示しております。メサラジン群と比較して、本剤群では臨床上問題となるような有害事象の発現傾向は認められませんでした。

 以上より、機構は、本剤の安全性は許容可能と判断しました。

 ただし、本剤は糖質コルチコイド製剤ですので、糖質コルチコイド関連の有害事象の発現状況については製造販売後調査等で情報収集する必要があると考えました。

 以上、機構での審査の結果、軽症から中等症の活動期クローン病患者に対する本剤の有効性は示され、安全性は許容可能と考えられたことから、医薬品リスク管理計画に係る承認条件を付した上で、本剤を承認して差し支えないと判断し、本部会で審議されることが適当と判断しました。

 なお、本品目は新投与経路医薬品に該当し、再審査期間は6年、製剤は毒薬・劇薬のいずれにも該当せず、生物由来製品・特定生物由来製品のいずれにも該当しないと判断しました。

 薬事分科会では報告を予定しております。

 機構からの説明は以上になります。御審議どうぞよろしくお願い申し上げます。

○松木部会長代理 それでは、委員の先生方から御質問、御意見等をお願いいたします。クローン病に対する1日1回投与のステロイド剤ということですけれども、いかがでしょうか。

○神田委員 また効能・効果の所で申し訳ないですが、回腸又は上行結腸という所を省略しましたよね。このお薬は小腸及び結腸部において放出するように設計されたと資料で書かれています。ということは、この回腸又は上行結腸の辺りで溶けるというか、放出されるように設計されたものでありますので、ここを省略してしまうというのは非常に重要なことではないかとも思えるのですが、省略しても大丈夫なのでしょうか。海外の資料を見ますと、添付文書の所ではアメリカも欧州も、この回腸及び上行結腸に病変を有するというのはちゃんと表現されているのですが、いかがなのでしょうか。

○医薬品医療機器総合機構 効能・効果につきましては、審査報告書19ページより議論させていただいております。本剤は、御指摘のように小腸及び結腸近位部にてブデソニドを放出するよう設計された腸溶性徐放製剤であることから、国内第III相試験の対象としては、主な病変部位が回腸又は上行結腸に存在する患者とされていました。一方、本剤の吸収部位を検討した海外試験があり、クローン病患者の食後投与群における吸収率が検討されていました。吸収率につきましては、回腸到達時点では31%、回腸では17%、上行結腸では25%、それ以降では26%と、回腸及び上行結腸以外でも吸収が認められている結果でした。ステロイドの薬理作用を考慮しますと、本剤の効能・効果については必ずしも病変部位を回腸又は上行結腸に限定する必要はないと考えました。ただし、回腸と上行結腸以外の病変部位に対する有効性等のデータはないことにつきましては重要な基本的注意にて情報提供しております。

○松木部会長代理 今の説明で、いかがでしょうか。よろしいですか。ほか、いかがでしょうか。

○川上委員 製剤のことでお伺いしたいのですが、例えば添付文書の一番上の所を見ますと腸溶性顆粒充填カプセルという記載があります。カプセルの中に腸溶性コーティングされた顆粒が入っているイメージですが、さらに、顆粒は徐放化もされているかと思います。そうすると、腸溶性のみならず徐放化顆粒とか、徐放化の製剤加工もされていることが、添付文書上の製剤の特徴で分かるように記したほうが宜しいかと思いますが、いかがでしょうか。

○医薬品医療機器総合機構 1.8の添付文書を御覧いただければと思います。添付文書の2.性状の所に本剤の剤形について記載していますが、その剤形の欄において、本剤は白色~微黄白色の腸溶性徐放顆粒を充填したカプセル剤である旨情報提供しております。

○松木部会長代理 よろしいですか。ほか、いかがでしょうか。

○鈴木委員 この薬はステロイドが小腸及び結腸近位部で溶けるように設計されたとのことですが、ステロイドは従来からクローン病に使われています。何が新しいのでしょうか。投与方法が新しいのか、ステロイドの中でもブデソニドは今までクローン病には使われてこなかったのか、どちらが新しいのか教えてください。

○医薬品医療機器総合機構 既存のステロイドは全身作用が生じてしまうという問題点がありましたが、本剤は全身ばく露が少ない薬剤として開発された点が新しいところとなります。

○鈴木委員 ステロイドそのものが新しいということですか。

○医薬品医療機器総合機構 腸溶性徐放顆粒とすることで腸粘膜局所にて作用し、血中移行が少なくなるように設計された点が新しいと考えます。

○鈴木委員 血中移行して効くのではないのですか。

○医薬品医療機器総合機構 本剤は腸粘膜局所で作用する薬となります。

○鈴木委員 溶ける所以外でも効くということは、血行を介してではないのですか。

○医薬品医療機器総合機構 もう一度、お願いします。

○鈴木委員 溶ける小腸と近位結腸以外でも効くということですが、それはどういう機序で効くのですか。

○医薬品医療機器総合機構 小腸や近位結腸以降の腸粘膜にもブデソニドが多少存在し、そこで局所的に作用を発揮する可能性があると考えています。

○松木部会長代理 潰瘍のある粘膜の所に作用させたいので、でも、そこから吸収されて全身に回ってしまったら困るというところで、ただ、ステロイドは一般に初回通過効果が非常に高いので肝臓で壊されるはずですけれども、血中濃度がちょっと上がったりしているのは、多分、結腸の部分での吸収で肝臓を介さないものが出ているのではないかと思います。あと問題になるのは、クローン病の患者の粘膜でどのくらい吸収するかということで、それは先ほど機構の人に質問したのですが、表6のことだけが血中濃度でCmaxが結構高いのですけれども、審査報告書の9ページの表6です。これはクローン病の患者だということで、多分、患者の粘膜の所はかなり吸収しやすいのではないかと思います。ほか、いかがでしょうか。

○加藤委員 今のステロイドとしての吸収が少ないということですが、審査報告書の18ページ、血漿中コルチゾール値を検討した図1ですが、コルチゾール値の推移は図1のとおりで、ここに書いてある文章をそのまま読むと、「9mg群の変動は15mg群に比べて小さく、臨床的に問題となる変動ではないと考えられた」と1行だけで済ましているのですが、これはかなり大きな変動が起きていて、ここに書いてあるのは標準偏差ですから、グループとしてはかなり多くの割合の方が相当なコルチゾールの低下を示すのではないかと、私にはそのようなグラフに見えるのです。非常に大きな変化に見える。統計的な検討もこれはなされていないようですし、実際問題としてそこの下に書いてある説明だと、海外だとクッシング症候群の報告がかなりあるということ。もちろん注意喚起はするということですが、コルチゾール値の変化みたいなものは、先ほどの局所で分解されるということを前提にして話が進んでいますけれども、かなり全身性の効果はあると考えたほうがいいのかなという気がします。いかがでしょうか。

○医薬品医療機器総合機構 確かに本剤は血中に多少移行することから、この図1に示しますとおりコルチゾール値が低下する傾向があります。ただし、本剤は8週間投与が基本となりますが、8週間投与後、2週間経過しますと、この図1に示しますとおりプラセボ群と同じ値までコルチゾール値が回復することから、臨床上は問題ないと判断しております。また、先ほど御指摘いただいたとおり、糖質コルチコイド関連事象が発現する可能性が否定できないため、その旨添付文書で適切に情報提供しております。

○松木部会長代理 いかがでしょうか。プラセボに比べて、そんなには下がっていないという判断かと思います。

○加藤委員 了解しました。もう一つ、これは大した問題でないかもしれませんが、現時点では中程度から重程度になるとレミケードとか他の製剤があると思います。これはガイドライン上、今までのステロイドを使っているのと全く同じという考え方で切替えをするということなのでしょうか。そのことは明示的には添付文書に書いていないようですが、指導としてはどうされるのか教えてください。

○医薬品医療機器総合機構 本剤の位置付けにつきましては、既存のステロイドと同様と考えていますので、既存のステロイドと同じようにレミケード等に切り替えていただければと考えております。

○野田委員 この審査報告書の表13などに有害事象の両群の比較があるわけですが、例えば検査値異常などの両群間の差といったデータはないのでしょうか。

○医薬品医療機器総合機構 臨床検査値についても検討しておりますが、プラセボやメサラジンと比較して特段問題となるような差異は認められていません。

○松木部会長代理 ほか、いかがでしょうか。御意見がないようでしたら議決に入りたいと思いますが、よろしいでしょうか。なお、杉委員におかれましては、利益相反に関する申出に基づきまして議決への参加を御遠慮いただくことになっています。本議題について承認を可として、よろしいでしょうか。ありがとうございます。御異議がないようですので承認を可とし、薬事分科会に報告とさせていただきます。

 それでは、議題3に移ります。議題3について機構から概要を説明してください。

○医薬品医療機器総合機構 それでは議題3、資料3、医薬品シグニフォーLAR筋注用キット20mg他の製造販売承認の可否等について、機構より御説明申し上げます。

 本剤は、ソマトスタチンアナログであるパシレオチドパモ酸塩を有効成分とする4週ごとに1回筋肉内に投与する注射剤です。ソマトスタチンは、脳の視床下部などから分泌される14個のアミノ酸から成るホルモンであり、下垂体前葉からの成長ホルモン(以下、「GH」)の分泌を抑制することが知られています。

 本薬は、シクロヘキサペプチドのソマトスタチンアナログであり、ヒトソマトスタチン受容体への結合を介して内因性ソマトスタチンと同様にGHの分泌を抑制します。

 本申請の効能・効果である先端巨大症及び下垂体性巨人症につきましては、本邦における年間発症数がそれぞれ約700例、約20例と推定されている希少疾患となります。現在、それらの疾患の治療に用いられるソマトスタチンアナログとして、オクトレオチド酢酸塩が有効成分の連日皮下投与する製剤と4週ごとに筋肉内投与する製剤、そしてランレオチド酢酸塩が有効成分の4週ごとに皮下投与する製剤の3種類が我が国で承認されています。

 本剤は、2016年3月現在、欧米を含め世界40か国で承認されています。

 本品目の専門協議では、資料10に示す先生方を専門委員として指名させていただいております。

 以下、本剤の有効性及び安全性について、臨床試験成績を中心に御説明させていただきます。

 有効性につきましては、審査報告書45ページの表27を御覧いただければと思います。薬物治療歴のない又は既存薬でコントロール不良な日本人先端巨大症患者及び下垂体性巨人症患者を対象とした国内C1202試験におきまして、投与12週後に「血清GH濃度が2.5μg/L未満」や、「血清インスリン様成長因子I濃度が年齢・性別基準値範囲内」を達成した被験者の割合が一定程度認められました。また、薬物治療歴のない患者における有効性と、ソマトスタチンアナログによる前治療でコントロール不良な患者において、本剤に切り替えたときの有効性につきましては、国内外の臨床試験を比較したところ、審査報告書54ページの表37及び55ページの表39に示しましたように、国内外で有効性に大きな違いは認められませんでした。以上の国内外の臨床試験成績を踏まえ、本剤の有効性は示されたと解釈して差し支えないと判断いたしました。

 安全性につきましては、審査報告書56ページ以降の「7.R.2 安全性について」の項に示しましたように、国内外の臨床試験における有害事象や副作用の発現状況、並びに血糖関連事象等の個別の事象について検討した結果、適切な注意喚起等がなされれば、本剤の安全性は許容可能と判断いたしました。

 以上のとおり、機構での審査の結果、「先端巨大症及び下垂体性巨人症」を効能・効果として本剤を承認して差し支えないとの結論に達し、本部会で審議されることが適当と判断いたしました。

 本剤は新有効成分含有医薬品であり、再審査期間は8年、原体及び製剤はいずれも劇薬に該当し、生物由来製品及び特定生物由来製品のいずれにも該当しないと判断しております。

 薬事分科会では報告を予定しています。

 以上、御審議のほど、よろしくお願いいたします。

○松木部会長代理 ありがとうございました。委員の先生方から御質問、御意見等をお願いいたします。いかがでしょうか。ソマトスタチンアナログについてですが、いかがでしょうか。よろしいですか。特に問題ないでしょうか。

○野田委員 これは、審査報告書の57ページ辺りを見ますと、血糖関連事象が、オクトレオチドLARなどの対照群と比較して高血糖関連の有害事象が多いということは、薬効の性質の違いなのか、量的な違いの結果という理解でよいのか、ご説明ください。

○医薬品医療機器総合機構 この高血糖関連事象につきましては、先生の御指摘のとおり対照群よりも多い傾向が認められております。これにつきましては薬理効果と言いますか、ソマトスタチンレセプターのサブタイプが5種類ございまして、そのうちの一つであるSSTR5に対して本剤は高い親和性が認められております。本剤が膵臓のβ細胞にあるSSTR5にも作用しまして、インスリンの分泌を低下させることで、本剤の副作用といたしまして、高血糖関連事象が対照薬よりも多く発現しているというような状況です。

 これにつきましては、適切な注意喚起が必要であろうということもございまして、例えばですが、1.8の添付文書()の重要な基本的注意の()を御覧いただければと思います。ここでは、本剤の作用機序によりインスリン等の分泌が低下することで高血糖が起こることがある。投与開始前、投与開始後1か月までは週1回、投与開始後1か月から投与3か月までは1~2週に1回、また、その後も注意深く血糖値を測定して、患者の状態を注意深く観察する旨の注意喚起を行っております。

○松木部会長代理 よろしいでしょうか。今、ソマトスタチンの副作用として結構出てきてしまうというところだと思いますが、ほか、いかがでしょうか。よろしいですか。それでは議決に入りたいと思います。なお、村田委員におかれましては、利益相反に関する申出に基づきまして議決への参加を御遠慮いただくことにいたします。本議題について承認を可として、よろしいでしょうか。ありがとうございます。御異議がないようですので承認を可とし、薬事分科会に報告とさせていただきます。

 それでは議題4に移りますが、鈴木委員、野田委員におかれましては、利益相反に関する申出に基づきまして議題4の審議の間、別室で御待機いただくことといたします。よろしくお願いいたします。

                            ( 鈴木委員、野田委員退室)

○松木部会長代理 それでは議題4について、機構から概要を説明してください。

○医薬品医療機器総合機構 それでは議題4、資料4、医薬品イニシンク配合錠の製造販売承認の可否等について、機構より御説明申し上げます。

 本剤は、DPP-4阻害薬のアログリプチン安息香酸塩とビグアナイド系薬剤のメトホルミン塩酸塩を有効成分とする糖尿病治療薬の配合剤です。2型糖尿病の治療では、1剤で効果が不十分な場合、作用機序が異なる薬剤の併用が一般的で、アログリプチン安息香酸塩については、ビグアナイド系薬剤で効果が不十分な場合の併用療法が、既に承認されています。なお、本配合剤は、2016年4月現在、世界56か国で承認されています。

 本品目の専門協議では、資料10に示す先生方を専門委員として指名させていただいております。

 以下、本配合剤の有効性及び安全性について、臨床試験成績を中心に説明させていただきます。

 有効性については、審査報告書10ページの表2を御覧ください。アログリプチン安息香酸塩で効果不十分な日本人2型糖尿病患者を対象に、メトホルミン塩酸塩を併用投与するCCT-001試験が実施され、主要評価項目であるベースラインから最終評価時までのHbA1c変化量について、アログリプチン安息香酸塩単独投与に対するメトホルミン塩酸塩1日1回併用投与の優越性が示されました。また、ベースラインから最終評価時までのHbA1c変化量について、メトホルミン塩酸塩1日1回併用群のメトホルミン塩酸塩1日2回併用群に対する非劣性が示されています。

 メトホルミン塩酸塩で効果不十分な日本人2型糖尿病患者におけるアログリプチン安息香酸塩の併用効果については、併用効能追加時に確認されており、審査報告書12ページの表5に示しますように、主要評価項目であるベースラインから最終評価時までのHbA1c変化量について、メトホルミン塩酸塩単独投与に対するアログリプチン安息香酸塩併用投与の優越性が示されております。

 長期投与時の有効性については、審査報告書14ページの図1に示しますように、国内長期投与試験において、効果の持続性が確認されています。

 安全性については、審査報告書1722ページの「7.R.2 安全性について」の項に示しますように、国内外の臨床試験における有害事象及び副作用の発現状況、並びにアログリプチン安息香酸塩における国内の製造販売後調査や国内外の市販後の安全性情報等から、適切な注意喚起等がなされれば、本配合剤の安全性は許容可能と判断しました。

 医療用配合剤の承認要件への該当性に関しましては、審査報告書2223ページを御覧ください。「7.R.3 本配合剤の配合意義及び臨床的位置付けについて」の項に記載のとおり、アログリプチン安息香酸塩とメトホルミン塩酸塩の併用療法に一定の臨床的有用性が認められ、当該単剤併用時と生物学的に同等とされる本配合剤の配合意義の科学的合理性は示されており、また、患者の利便性についても、服薬アドヒアランス等の向上が期待できると判断しました。

 以上のとおり、機構での審査の結果、本配合剤を承認して差し支えないとの結論に達し、本部会で審議されることが適当と判断いたしました。

 本配合剤の再審査期間は4年、製剤は劇薬に該当し、生物由来製品及び特定生物由来製品のいずれにも該当しないと判断しております。

 薬事分科会では報告を予定しております。

 御審議のほど、よろしくお願い申し上げます。

○松木部会長代理 委員の先生方から御意見、御質問をお願いいたします。いかがでしょうか。

○内藤委員 メトホルミン単剤の場合は1日に3回の投与だけれども、今回、配合剤になった場合に1日1回の投与でいいということで、服薬のアドヒアランスは改善が期待されますが、もし1日1回の投与でよければ、何で最初のときにメトホルミンは1日に3回の投与となったのか。そこのところを説明していただけますか。

○医薬品医療機器総合機構 メトホルミン塩酸塩自体の用量幅と言いますのが、承認用法・用量として1日500mgからスタートし、2,250mgまで使用可能と、とても幅広い用量幅になっております。やはり2,250mgとかの高用量になりますと1回の投与量が最大でも1,000mg、基本的には750mgぐらいまでになりますので、1日1回とするのはなかなか難しいということもございます。今回、500mgを選択された背景としましては、複数の処方データベースとか、ネシーナ錠のビグアナイド系薬剤との併用療法が2011年2月に承認されており、そこで実施している特定使用成績調査において、1日量として500mgが一番多く使用されています。メトホルミンの一番多い使用が500mgであり、1日1回でも投与可能な量ということに加え、アログリプチン安息香酸塩が1日1回投与であるということもあり、今回、1日1回投与が選ばれています。

○松木部会長代理 よろしいですか。ほか、いかがでしょうか。

○川上委員 用法で教えていただきたいのですが、食直前又は食後に経口投与するとあります。ネシーナ錠にはそういう制限はないのですが、メトグルコには多分その旨があるので、記載されたかと思います。そうすると、類薬のエクメット配合錠に関しては、そういった用法の制限がないですけれども、なぜ類薬にはなくて、こちらの薬剤には食直前又は食後投与とするという、食事との関連性が用法に書かれているのでしょうか。

○医薬品医療機器総合機構 もともと、こちらの配合剤をつないでいる薬剤というのがグリコラン錠になります。ちょっと確認させてください。メトホルミン塩酸塩のほうで、メトグルコ錠などですと食直前又は食後が用法・用量に記載されており、申請者としてはメトグルコ錠を参考に食直前と食後を記載しています。本剤では食事の影響試験が最終製剤で行われており、そちらで食事の影響は認められていません。DPP-4阻害活性につきましても、空腹時投与と食後投与で変わらない結果ですので、より分かりやすく記載するという意味で食直前又は食後と記載されていると思っています。

○松木部会長代理 よろしいですか。ほか、いかがでしょうか。また配合剤ですけれども、DPP-4とメトホルミンが、これからいろいろ出てくるのかもしれない。一応、併用療法として認められているということですね。いかがでしょうか。

○加藤委員 この適用として、アログリプチン安息香酸塩とメトホルミンの併用による治療が適切と判断される場合に限るというのを、どういうふうに現場で判断されることを想定しているのかというのが、ちょっといくら読んでも分からないなと思います。1.8の添付文書()の所ですが、添付文書の一番最後、11ページを読むと効能・効果の設定根拠ということがあって、そこの前にも書いてあったことですけれども、一番下の2行の所に、「以上のことから、SYR-322又はメトホルミンの単独療法を受けているものの血糖コントロールが不十分な2型糖尿病患者、並びに既にそれぞれの併用療法を受けている患者が対象になる」ということで、この適用の所に書いてあるのは、併用による治療が適切と判断される場合に限ると言って、併用が何らかの有効性があることはもう既に証明されているというか、何らかのそういうことがあるような書き方ですけれども、単独でもう1剤、追加で増やしてみましょうというときにも、これを使っていいということなのか。それとも、その場合は別々の薬剤それぞれを2つ処方してというところから始めるべきなのかは、ちょっとこれだと分かりにくいと思いますが、どういうふうに指導されるのでしょうか。

○医薬品医療機器総合機構 1.8の添付文書()の4ページを開いていただきまして、効能・効果に関連する使用上の注意の所で、効能・効果に関しての説明書きをさせていただいています。その()におきまして2型糖尿病治療の第1選択薬として用いないということ。()で既にアログリプチンとして1日25mgと、メトホルミン塩酸塩の1日500mgを併用し状態が安定している場合、若しくはアログリプチンの1日25mg、又はメトホルミン塩酸塩の1日500mg単剤の治療による効果が不十分な場合に、本剤の使用を検討するということで、この効能・効果というものを、より詳しく説明させていただいています。

○加藤委員 そうすると、その3番の各単剤の併用よりも適切であるか慎重に判断することというのは、どう判断したらいいですか。

○医薬品医療機器総合機構 この()の各単剤の併用よりも適切であるか慎重に判断することというのは、配合剤になりますと用量調節ができないので、まだ安定していない患者さんですと恐らく単剤の併用のほうがよいかと思います。併用で安定してきたらこの配合剤に変えていただく。若しくは単剤の併用で初めて500mgを足そうというときに使っていただく。そこは患者さんの状態に応じて判断していただければいいかと思いまして、()というのを入れさせていただいています。

○松木部会長代理 ()の「あるいは」以降が必要かどうかというところだと思いますが、検討することということです。これは入れておいたほうがいいということですか。

○医薬品医療機器総合機構 そうです。単剤で効果不十分な場合、若しくはもう既にその薬剤を併用している方。

○松木部会長代理 併用して安定している状態というのは、既にということですので分かりやすいわけです。ただ、結局、単剤で効果がない場合に使用を検討することということで、だから、いきなりこの配合剤のほうにいっていいということですよね。

○医薬品医療機器総合機構 はい。そちらは今回、本配合剤の1日用量は500mgであり、メトグルコ錠におきましても開始用量が500mgになっているということもありますので、本配合剤を使用しても問題ないと考えています。

○松木部会長代理 ほか、いかがでしょうか。よろしいですか。それでは議決に入りたいと思います。なお、杉委員、村田委員におかれましては、利益相反に関する申出に基づきまして議決への参加を御遠慮いただくことといたします。本議題について承認を可として、よろしいでしょうか。ありがとうございます。御異議がないようですので承認を可とし、薬事分科会に報告とさせていただきます。それでは、別室で待機されている鈴木委員、野田委員をお呼びください。

                            ( 鈴木委員、野田委員入室)

○松木部会長代理 それでは、議題5に移りたいと思います。議題5について機構から概要を説明してください。

○医薬品医療機器総合機構 議題5、資料5、医薬品アルチバ静注用2mgほかの製造販売承認事項一部変更承認の可否等について機構より説明いたします。本剤は、選択的μオピオイド受容体作動作用を有する鎮痛剤であり、本邦では200610月に、成人を対象に全身麻酔の導入及び維持における鎮痛の効能・効果で承認されています。今般、小児の全身麻酔の維持における鎮痛に関する有効性及び安全性が確認されたとして、製造販売承認事項一部変更承認申請が行われました。

 なお、海外では2016年3月現在、成人に係る効能・効果は欧州、米国等83の国又は地域で、小児に係る効能・効果は欧州、米国等20以上の国又は地域で承認されています。本申請の専門委員として、資料10に記載されている4名の委員を指名しております。

 以下、臨床試験成績を中心に、審査の内容を説明させていただきます。まず有効性ですが、審査報告書別紙9ページ、表3を御覧ください。1歳以上15歳以下の小児患者を対象に、非盲検非対照試験として、国内第III相試験(以下3001試験と略す)が実施されました。3001試験の主要評価項目である、FASにおける皮膚切開の刺激に反応した被験者の割合は11.3%で、この結果は皮膚切開の刺激に対する反応が評価された、他の国内外臨床試験の結果と大きく異ならなかったことから、本剤の有効性は期待できると判断しました。

 次に安全性ですが、審査報告書別紙12ページ、表5を御覧ください。3001試験の結果、1歳以上6歳以下と7歳以上15歳以下では、有害事象の発現状況に大きな違いは認められませんでした。成人を対象とした過去の国内臨床試験成績と3001試験成績を比較した場合、小児と成人では、一部の有害事象の発現割合が異なる傾向が認められましたが、情報収集方法の差異や、特定の手術手技等の影響によるものと考えられ、全体として成人と比べて、小児に特異的な有害事象の発現は認められませんでした。したがって、現時点で小児患者に特有の注意喚起を行う必要はないと判断しております。

 最後に、用法・用量ですが、審査報告書別紙15ページ、「7.R.4.1 持続投与速度について」の項を御覧ください。3001試験において、最大投与速度が1.21μg/kg/分を超える投与例は認められませんでしたが、小児を対象とした本剤の海外臨床試験成績及び日本人小児と外国人小児で、本剤の薬物動態は大きく異ならないことを踏まえ、1歳以上の小児患者で、最大投与速度を1.3μg/kg/分と設定することは可能と考えております。

 また、審査報告書別紙17ページ「7.R.4.2 追加単回静脈内投与について」の項を御覧ください。3001試験で追加単回静脈内投与が行われたのは、80例のうち2例だけでしたが、手術中の鎮痛確保の必要性を考慮すると、小児でも成人と同様に追加単回静脈内投与を可能とすることの臨床的意義はあると考えております。

 また、小児対象の国内外臨床試験で、安全性上の懸念は示唆されていないこと、本剤は麻酔技術に熟練した医師の監視下でのみ投与され、リスクの管理は可能と考えることから、小児においても追加単回静脈内投与ができる旨を用法・用量に設定することは可能と判断しました。

 以上の審査を踏まえ、本剤の1歳以上の小児の全身麻酔の維持における鎮痛に関する効能・効果及び用法・用量を承認して差し支えないとの結論に達し、本部会で御審議いただくことが適当と判断いたしました。本申請は、新効能医薬品及び新用量医薬品に該当することから、再審査期間は4年と設定することが適切と判断しております。薬事分科会には報告を予定しております。説明は以上です。御審議のほどよろしくお願いいたします。

○松木部会長代理 委員の先生方から御質問、御意見をお願いいたします。奥田委員お願いします。

○奥田委員 1点教えていただきたいのですけれども、成人では肥満患者への投与量に関する注意があります。小児で肥満というのはどういうことか、きちっとした定義があるのかどうか分からないのですけれども、成人のときにしたような肥満の方に対する体重の考慮とか、そういうことは特に考慮されないのでしょうか。

○医薬品医療機器総合機構 小児においても考慮が必要と判断しております。CTD1.8の添付文書案の部分なのですけれども、括弧書きで「(肥満患者:成人ではBMI25以上)」という記載をさせていただいています。このような記載になった経緯について説明させていただきます。

 小児においてもBMIを用いる等の必要性を検討したのですけれども、小児の肥満の判定方法はBMI以外の指標があり、汎用されている方法が、患者の年齢や個々の医療機関で異なっておりますので、成人のように一律にBMIで規定することは困難と考えたことから、今回具体的な規定は添付文書上ではしていない状況になっています。

○奥田委員 了解しました。この肥満患者というのは後のことが書いてあったのですね。成人だけと思ったのですけれども、小児の部分についてはここには書き切れないということなのですね。

○医薬品医療機器総合機構 そうです。

○奥田委員 分かりました。

○松木部会長代理 他にはいかがでしょうか。内藤委員お願いします。

○内藤委員 基本的なことを確認させていただきます。こういう場合、成人と小児の線引きというのはどういう所で線を引かれているのですか。

○医薬品医療機器総合機構 グリーンブック等では、15歳未満が小児、15歳以上が成人とされております。

○内藤委員 資料を見ると、18歳以下の小児のデータとかいろいろ入っています。それは、15歳で区分けしてはいるけれども、まだ十分成熟はしていないから、そういうデータも含めて資料を作成したということでしょうか。

○医薬品医療機器総合機構 そうですね、年齢できっちり区切ることもなかなか難しいと思いますので、体格とか成熟度合を踏まえて実際には使われるかと思います。

○内藤委員 奥田委員の質問に関連したことなのですけれども、肥満患者の場合には、標準体重に基づいて行うことが望ましいというのは、具体的にはどういう補正をするのですか。身長から算出される標準体重をベースにして、血中濃度をコントロールするということをするのですか。

○医薬品医療機器総合機構 そのような御理解でよろしいと思います。

○内藤委員 それでいいのですか。ありがとうございました。

○松木部会長代理 他にはいかがでしょうか。当初の用法で「30秒以上かけて」というところがなくなったことを説明してください。

○医薬品医療機器総合機構 承認申請時には、追加単回静脈内投与について、30秒以上かけて投与するということを、用法・用量上に規定されていました。成人においても追加単回静脈内投与という用法はありますが、用法・用量ではなく、添付文書の用法・用量に関連する使用上の注意に「30秒以上かけて」という規定があります。今回は、特に小児において成人と比較して特段の懸念は認められないことから、成人と同様に、用法・用量ではなく、関連する使用上の注意に規定することで良いと判断しております。

○松木部会長代理 よろしいでしょうか。他にはいかがですか。ないようでしたら議決に入ります。本議題について、承認を可としてよろしいでしょうか。ありがとうございます。御異議がないようですので、承認を可とし、薬事分科会に報告とさせていただきます。

 それでは議題6に移ります。議題6について、機構から概要を説明してください。

○医薬品医療機器総合機構 議題6、資料6、医薬品オビドレル皮下注シリンジ250μgの製造販売承認の可否等について、機構より説明させていただきます。本剤は、コリオゴナドトロピン アルファ(遺伝子組換え)を有効成分とする遺伝子組換えヒト絨毛性性腺刺激ホルモン(以下hCGという)の製剤です。hCGは、卵巣のLH/hCG受容体に結合し、卵胞の最終成熟、排卵及び黄体化を促す作用を有するホルモンです。

 本邦では、妊婦の尿由来のhCG製剤が承認されており、30年以上にわたって使用されておりますが、遺伝子組換え技術により製造される本剤は、尿由来製剤と比較して安定供給が可能な製剤であると考えられます。

 本剤の国内開発では、排卵誘発及び黄体化の効果を検討する臨床試験が実施され、今般国内外の臨床試験成績を基に、排卵誘発及び黄体化並びに生殖補助医療における卵胞成熟及び黄体化を効能・効果とする製造販売承認申請がなされました。

 海外では、2016年5月現在、欧米を含む106か国で承認されています。本剤の審査に関し、専門委員として資料10に記載されております委員を指名しました。

 本剤の審査の概略について、臨床試験成績を中心に御説明いたします。まず、排卵誘発及び黄体化に関する有効性について御説明いたします。審査報告書19ページ「7.1 国内第III試験」の項を御覧ください。国内第III相試験は、第1度無月経、希発月経、無排卵周期症又は多のう胞性卵巣症候群、すなわちWHOグループIIの排卵障害に伴う無排卵又は希発排卵と診断された20歳以上39歳以下の日本人女性を対象に、尿由来hCG製剤に対する本剤の非劣性を検証する試験として実施されました。卵胞刺激ホルモン(以下FSHという)を用いた調節卵巣刺激後に、本剤又は尿由来hCG製剤を単回投与したところ、主要評価項目である排卵率は、本剤群、尿由来hCG製剤群のいずれも100%で、群間差の両側95%信頼区間の下限値は、事前に設定した非劣性限界値マイナス20%を上回り、尿由来hCG製剤に対する本剤の非劣性が示されました。

 また、この結果は審査報告書20ページ7.2の項にお示しました、海外第III相試験(8209試験)と同様であったことから、本剤の有効性に国内外で差はなく、既承認の尿由来hCG製剤に劣らないことが示されたと判断しました。

 次に、生殖補助医療における卵胞成熟及び黄体化に関する有効性について御説明します。審査報告書22ページ「7.3 海外第III相試験(7648試験)」の項を御覧ください。7648試験は、体外授精-胚移植を実施予定の20歳以上38歳以下の外国人不妊女性を対象に、尿由来hCG製剤に対する本剤の同等性を検証する試験として実施されました。性腺刺激ホルモン放出ホルモン、つまりGnRHのアンタゴニスト製剤及びFSH製剤を用いた調節卵巣刺激後に、本剤又は尿由来hCG製剤を単回投与したところ、主要評価項目である採卵数は審査報告書23ページの表13にお示ししたとおりであり、群間差の両側90%信頼区間は、事前に設定された同等性の基準プラスマイナス3個の範囲内であったことから、本剤と尿由来hCG製剤について同等の有効性が示されたと判断しました。

 生殖補助医療における卵胞成熟及び黄体化に関する国内臨床試験は実施されておりませんが、本剤は排卵誘発及び黄体化を目的とした場合と同じLHサージ様作用に基づき投与されるものであること、本剤の排卵誘発及び黄体化に関する有効性に国内外差はないこと、国内外で生殖補助医療の対象や適用される治療に違いはないことから、海外第III相試験(7648試験)成績を踏まえ、日本人での有効性は本邦で使用される尿由来hCG製剤と同程度と推定できると判断いたしました。

 安全性については、審査報告書32ページ「7.R.3 安全性について」の項を御覧ください。排卵誘発及び黄体化に関する国内外の臨床試験において、本剤又は尿由来hCG製剤で発現した有害事象の種類、発現割合及び重症度に大きな差異はなかったことから、本剤特有の懸念は認められず、日本人における本剤の安全性は臨床的に許容可能であると判断いたしました。

 また、生殖補助医療における卵胞成熟及び黄体化についても、海外第III相試験で認められた有害事象は、排卵誘発及び黄体化に関する国内外の臨床試験と大きな差異はなかったことから、日本人における本剤の安全性は臨床的に許容可能と判断いたしました。

 本剤の効能・効果について審査報告書42ページ「1.4 本剤の投与対象について」及び43ページ「1.5 効能・効果について」の項を御覧ください。排卵誘発及び黄体化に関する効能・効果について、WHOグループIの患者は、国内外の臨床試験に組み入れられたWHOグループIIの患者と同様に、黄体機能不全を除く視床下部-下垂体機能障害に伴う排卵障害を有しており、調節卵巣刺激後の排卵誘発には、本剤を含むhCG製剤の投与が推奨されております。

 したがって、WHOグループIの患者に対しても、本剤の有用性が期待されることから、WHOグループI及びIIのいずれも含まれる視床下部-下垂体機能障害に伴う無排卵又は希発排卵における排卵誘発及び黄体化とすることが適切と判断し、本剤の効能・効果は審査報告書43ページ中段にお示ししたとおりといたしました。

 本剤の用法・用量について審査報告書43ページ「1.6 用法・用量について」の項を御覧ください。いずれの効能・効果に関しても、国内外の臨床試験において、既承認の尿由来hCG製剤5000IU単回筋肉内投与に対する本剤250μg単回皮下投与の有用性が示されたことから、コリオゴナドトロピン アルファ(遺伝子組換え)として250μgを単回皮下投与する、とすることが適切と判断いたしました。

 以上の審査の結果、本剤を承認して差し支えないとの結論に達し、本部会にて御審議いただくことが適当であると判断いたしました。本剤は、新有効成分含有医薬品であることから、再審査期間は8年、原体及び製剤は劇薬及び毒薬のいずれにも該当せず、生物由来製品に該当すると判断しております。薬事分科会では報告を予定しております。御審議のほどよろしくお願いいたします。

○松木部会長代理 委員の先生方から御質問、御意見をお願いいたします。川上委員どうぞ。

○川上委員 教えていただきたいのですけれども、既存の尿由来hCG製剤と、効能・効果の表現がかなり違うようですが、なぜこういった効能・効果の記載になっているか、教えていただけますか。

○医薬品医療機器総合機構 既存の尿由来のhCG製剤は30年前に承認されており、そのときに適切な効能・効果として設定されているものと考えます。本剤の効能・効果として適切な表現を検討した際には、hCG以外の、不妊治療で使う類薬における疾患の表現等も参考とし、最新の表現に合わせたというところです。

○松木部会長代理 他にはいかがでしょうか。尿中から抽出していたものが、ヒト遺伝子組換えでほとんどできるようになったということです。特段の御意見、御質問がなければ議決に入ります。本議題について、承認を可としてよろしいでしょうか。ありがとうございます。御異議がないようですので承認を可とし、薬事分科会に報告とさせていただきます。

 議題7に移りますけれども、杉委員におかれましては、利益相反に関する申出に基づき、議題7の審議の間、別室で御待機いただくことといたします。

                                 ( 杉委員退室)

○松木部会長代理 議題7について、事務局から概要を説明してください。

○事務局 議題7、資料7、ランジオロール塩酸塩を希少疾病用医薬品として指定をすることの可否について事務局より御説明いたします。資料の事前評価報告書のタブをお開きください。申請者は小野薬品工業株式会社。予定される効能・効果は、生命に危険のある不整脈である心室細動及び血行動態不安定な心室頻拍で、難治性かつ緊急を要する場合となります。

 心室細動及び血行動態不安定な心室頻拍は、生命に危険のある致死的な不整脈です。治療戦略としては、胸骨圧迫や電気的除細動などの心肺蘇生を行いながら、致死的不整脈の停止及び再発を抑制するための抗不整脈薬などの静脈注射を行います。

 オーファン該当性に関してですが、まず対象患者数について御説明いたします。厚生労働省が公開している患者調査において、本邦における1年当たりの心室頻拍及び心室細動の総患者数は5,000~1万1,000人と報告されており、患者数が5万人未満という基準を満たしているものと考えております。

 2ページ目の医療上の必要性について御説明いたします。現在、本邦で生命に危険のある再発性の心室性不整脈に対する効能・効果を有する静注抗不整脈薬は、アミオダロン塩酸塩、ニフェカラント塩酸です。これらの薬物が無効であったり、新たな不整脈の出現や増悪を生じた際には、次の静脈薬物治療の選択肢は限られております。β遮断薬は、国内外の治療ガイドラインにおいて、心室性不整脈に対して広く推奨されております。発作性の上室性及び心室性頻拍の適応を有しているプロプラノロール塩酸塩と比較すると、本薬は短時間作用型のβ遮断薬であり、消失半減期が短く、調節性に優れ、心機能低下例に対しても投与可能となっております。以上より、医療上の必要性は高いと考えております。

 最後に4ページの開発の可能性について御説明いたします。本邦において、現在生命に危険のある再発性の心室性不整脈患者を対象とした多施設共同非盲検非対照試験が実施されていることから、開発の可能性は高いと考えております。以上より、希少疾病用医薬品の指定の3要件を満たしていると考えております。御審議のほどよろしくお願いいたします。

○松木部会長代理 委員の先生方から御質問、御意見をお願いいたします。加藤委員お願いします。

○加藤委員 心不全の患者さんに対しての使い方ということで、今の報告書の4ページで、まず一つ薬理学的に伺います。そのページの真ん中辺りに、「一方、本薬は心不全の悪化には十分留意する必要があるものの、『心機能低下例における下記の頻脈性不整脈』の適応症を有しており」ということが違いであると書いてあります。まず一つは、この薬理学的な違いということに関して、どのような作用機序の違いが考えられるか。

 もう一つは、「希少疾病用医薬品指定申請書及び別紙」というタブの付いている14ページの表ウ-2です。本邦で発売されている静脈用β遮断薬としてランジオロール、プロプラノロール、エスモロールと出ています。これに関して、ランジオロールの所を見ると、「うっ血性心不全のある患者に対する使用」という所は、「ただし、手術時・手術後の頻脈性不整脈に対する緊急処置は禁忌」と書いてあります。この表はインタビューフォームから取っているということなのですけれども、こういうある程度心不全が既にある場合には、更に心機能が低下しますので、それに対しての使い方というのはどのように。なぜ薬理学的にランジオロールだけが違うということが言えるのか。それがこのような書き方もされていますし、作用機序からいったら、当然ある程度は心機能を更に低下させることは予測されるケースもあると思うのです。それに対して今後どのように対応していくのかを教えてください。

○松木部会長代理 いかがでしょうか。

○医薬品医療機器総合機構 β遮断薬としては、心不全症例に対して投与した場合に、心機能を更に悪化させる可能性があるということで、薬理学的に作用機序が与える影響というのは恐らく異ならないのですけれども、先ほど御指摘を頂いた箇所にありますように、ランジオロールについては、消失半減期が短いといった、他の類似薬と比べてもそういう点があり、心機能低下例に対しても、心機能を悪化させるに有用な働きを期待できるのではないかということで、このような心機能低下例を対象とした試験を行っております。その際には用量を既承認のものより更に低いところから始め、慎重に上げるということで、心機能低下例に対しても、心房細動とか、そちらの効果に対して有用であるという成績が出ていることから、その部分については心機能低下例に対しても投与可能となっております。

 他のものについては、心機能低下例に対する有用性を検証した試験はなく、恐らく心不全例に対しては心機能を低下させてしまうであろうということから禁忌となっております。

○加藤委員 そのとおりだと思います。今の所の13ページの中の表現にあるように、心不全の悪化には十分留意する必要はあるが、2013年に心機能低下例において承認されているから、うっ血性心不全でも使えるのだという理屈ではなくて、今の理屈から私が理解した範囲だと、やはり半減期が短いので、ずっと心機能低下が続くリスクが少ないということであって、でも、それは患者さんごとに心不全の状態はかなり違うと思いますので、そういうことを見た上で判断しなければいけないということは、臨床現場で伝わるようにするべきかと思います。

○松木部会長代理 多分それは開発のときに十分留意していただくということで、希少疾病用医薬品として指定することに関しては問題ないのではないかと思いますが、他にはいかがでしょうか。よろしいようでしたら議決に入ります。なお、野田委員におかれましては、利益相反に関する申出に基づいて、議決への参加を御遠慮いただくことといたします。本議題について、指定を可としてよろしいでしょうか。ありがとうございます。御異議がないようですので、指定を可とし、薬事分科会に報告とさせていただきます。それでは、別室で御待機されている杉委員をお呼びください。

                                 ( 杉委員入室)

○松木部会長代理 報告事項に移ります。事務局から報告事項の説明をお願いします。

○事務局 報告事項議題1、医療用医薬品の再審査結果について御報告いたします。資料8-1から資料8-6で、こちらはいずれも医薬品再審査確認等結果通知書となっております。資料8-1は、一般的名称はメサラジン、販売名はアサコール錠400mgのものです。資料8-2は、一般的名称はレミフェンタニル塩酸塩、販売名はアルチバ静注用2mg、同静注用5mgのものです。資料8-3は、一般的名称はノルエチステロン/エチニルエストラジオール、販売名はルナベル配合錠LDのものです。

資料8-4は、一般的名称はダルベポエチン アルファ(遺伝子組換え)、販売名はネスプ注射液10μg/mLプラシリンジほか16規格のものです。こちらの資料に誤記が2件ありましたので御報告いたします。まず、表紙の結果通知書の販売名欄を御覧ください。正しい販売名は、1.が「ネスプ注射液10μg/mLプラシリンジ」。2.から8.も同様に販売名の最後は「プラシリンジ」が正しい販売名ですが、全て「プラ」が抜けておりました。もう1件は再審査報告書の2ページにある表中の再審査期間の記載ですが、資料では1.の「残余期間」という部分にのみ下線がありますが、正しくはこの欄に記載されている1...の全てに下線を付すのが正しい記載となります。大変申し訳ありませんでした。お詫びして訂正させていただきます。

 資料8-5は、一般的名称はオランザピン、販売名はジプレキサ錠2.5mgほか5規格のものです。資料8-6は、一般的名称はミチグリニドカルシウム水和物/ボグリボース、販売名はグリペス配合錠のものです。

 これらの品目については、製造販売後の特定使用成績調査等に基づいて、再審査申請が行われ、審査の結果、医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律第14条第2項第3号に掲げられております承認拒否事由のいずれにも該当しないこと、すなわち効能・効果、用法・用量等の承認事項について変更の必要はないカテゴリー1と判定したものです。

 再審査結果に関する説明は以上ですが、資料9、審議品目の薬事分科会における取扱い等の案の記載にも一部誤りがありましたので併せて御報告させていただきます。資料9の表のうち、上から4番目のイニシンク配合錠の右から2番目の欄について、製剤の劇薬指定が「指定済み」と記載されておりますが、正しくは「指定予定」です。こちらもお詫びして訂正させていただきます。長くなりましたが、事務局からの説明は以上です。

○松木部会長代理 委員の先生方から御質問等がありましたらお願いいたします。たまたま本日審議した薬が非劣性の対照薬だったり、あるいは追加効能の薬でしたけれども、再審査が通ったから、本日の審議は無駄ではなかったということになると思います。よろしいようでしたら、報告事項については御確認いただいたものといたします。本日の議題は以上ですけれども、事務局から報告はありますか。

○事務局 次回の部会は9月7日()の午後4時から開催させていただく予定ですので、よろしくお願いいたします。

○松木部会長代理 本日はこれで終了いたします。どうもありがとうございました。


(了)

備  考
本部会は、企業の知的財産保護の観点等から非公開で開催された。

連絡先:医薬・生活衛生局 医薬品審査管理課 課長補佐 清原(内線2746)

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