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2016年5月30日 薬事・食品衛生審議会 医薬品第二部会 議事録

○日時

平成28年5月30日(月)15:00~


○場所

厚生労働省専用第15・16会議室


○出席者

出席委員(15名)五十音順

○新 井 洋 由、 奥 田 真 弘、 川 崎 ナ ナ、 菊 池   嘉、
 清 田   浩、 鈴 木 邦 彦、 関 水 和 久、 田 島 優 子、 
 田 村 友 秀、 中 島 恵 美、 濱 口   功、 半 田   誠、 
 増 井   徹、 山 口 拓 洋、◎吉 田 茂 昭
(注)◎部会長 ○部会長代理

欠席委員(5名)

大槻 マミ太郎、 川 上 純 一、 前 崎 繁 文、 森 田 満 樹、
山 本 一 彦

行政機関出席者

森   和 彦 (大臣官房審議官)
山 田 雅 信 (審査管理課長)
宇 津  忍 (安全対策課長)
矢 守 隆 夫 (独立行政法人医薬品医療機器総合機構審査センター長)
俵 木 登美子 (独立行政法人医薬品医療機器総合機構安全管理監)
林    憲一 (独立行政法人医薬品医療機器総合機構審議役)
猿 田 克 年 (独立行政法人医薬品医療機器総合機構審議役)

○議事

○審査管理課長 定刻になりましたので、ただ今より「薬事・食品衛生審議会医薬品第二部会」を開催させていただきます。本日はお忙しい中を御参集いただきまことにありがとうございます。

 本日の委員の出席状況ですが、大槻委員、川上委員、前崎委員、森田委員、山本委員より御欠席との御連絡をいただいております。現在のところ、当部会委員数20名のうち15名の委員の御出席をいただいておりますので、定足数に達しておりますことを報告いたします。

 それでは、吉田部会長、以後の進行をよろしくお願いいたします。

○吉田部会長 早速、本日の審議に入りたいと思います。まず、事務局から配布資料の確認と、審議事項に関する競合品目・競合企業リストについての報告をお願いします。

○事務局 資料の確認をさせていただきます。本日、席上に、議事次第、座席表、当部会委員の名簿を配布しております。議事次第に記載されている資料1~8を予めお送りしております。

 このほか、資料9として「審議品目の薬事分科会における取扱い等の案」、資料10として「専門委員リスト」、資料11として「競合品目・競合企業リスト」を配布しております。

 続いて、本日の審議事項に関する競合品目・競合企業リスト(資料11)に基づき御報告いたします。

 まず、資料11の1ページ目を御覧ください。トルツ皮下注ですが、本品目は既存治療では効果不十分な乾癬を予定効能・効果としており、同様の効能・効果を有する薬剤として、資料に掲げる品目を競合品目として選定しております。

 2ページ目を御覧ください。ルミセフ皮下注も既存治療で効果不十分な乾癬を予定効能・効果としており、同様の効能・効果を有する薬剤として、資料に掲げる品目を競合品目として選定しております。

 3ページ目を御覧ください。リフキシマ錠ですが、本品目は、肝性脳症における高アンモニア血症の改善を予定効能・効果としており、同様の効能・効果を有する薬剤として、資料に掲げる品目を競合品目として選定しております。

 4ページ目を御覧ください。ゲンボイヤ配合錠です。本品目は、HIV-1感染症を予定効能・効果としており、同様の効能・効果を有する薬剤として、資料に掲げる品目を競合品目として選定しております。

 最後、5ページ目を御覧ください。レナリドミド水和物ですが、本品目は、再発又は再燃の成人T細胞白血病リンパ腫を予定効能・効果としており、同様の効能・効果を有する薬剤として、資料に掲げる品目を競合品目として選定しております。以上です。

○吉田部会長 ただいまの事務局からの説明に特段の御意見等ありますでしょうか。ないようですので、本部会の審議事項に関する競合品目・競合企業リストについては皆様の御了解を得たものといたします。

 それでは、委員からの申し出状況についての報告をお願いします。

○事務局 各委員からの申し出状況につきましては次のとおりです。まず議題1のトルツ皮下注ですが、退室委員なし、議決には参加しない委員は田村委員となります。議題2のルミセフ皮下注ですが、退室委員なし、議決には参加しない委員は山口委員です。議題3のリフキシマ錠ですが、退室委員なし、議決には参加しない委員は田村委員と山口委員です。議題4のゲンボイヤ配合錠ですが、退室委員は菊池委員、議決には参加しない委員は奥田委員と山口委員です。議題5のレナリドミド水和物ですが、退室委員なし、議決には参加しない委員は山口委員です。以上です。

○吉田部会長 今の事務局からの説明に特段の御意見等ありますでしょうか。よろしければ、皆様に御確認いただいたものとし、議題に入りたいと思います。

 本日は、審議事項5議題、報告事項3議題となっております。それでは、審議事項の議題1に移ります。議題1について機構から概要説明をお願いします。

○医薬品医療機器総合機構 議題1、資料1、トルツ皮下注80mgシリンジほかの製造販売承認の可否等について機構より説明いたします。

 本剤の有効成分であるイキセキズマブ(遺伝子組換え)は、炎症誘発性サイトカインの一つであるヒトインターロイキン-17Aに対するモノクローナル抗体です。インターロイキン-17Aは、乾癬の病態形成及び皮膚の慢性的な炎症誘発に関与していると考えられていることから、乾癬の治療薬として本剤の開発が進められ、今般、尋常性乾癬、関節症性乾癬、膿疱性乾癬、乾癬性紅皮症に関する効能・効果で申請されました。

 本申請の専門委員として、資料10に記載されております9名の委員を指名いたしました。主な審査内容について、臨床試験成績を中心に簡単に説明いたします。審査報告書29ページの「7.2.1 国際共同第III相試験」の項を御覧ください。中等症から重症の局面型皮疹を有する尋常性乾癬及び関節症性乾癬患者を対象としたプラセボ対照無作為化二重盲検並行群間比較試験では、有効性の主要評価項目である投与12週後のsPGA(0又は1)達成率及びPASI75達成率は、31ページの表28のとおりであり、プラセボ群と本剤80mgを4週間に1回投与(以下、Q4W)群、及び2週間に1回投与(以下、Q2W)群との各対比較において統計学的に有意な差が認められ、プラセボに対する本剤Q4W及び本剤Q2Wの優越性が検証されました。

 日本人部分集団の成績は、31ページの表29のとおりであり、全体集団と同様の傾向が認められました。以上より、尋常性乾癬及び関節症性乾癬患者における局面型皮疹に対する本剤の有効性は示されたと判断いたしました。

 また、関節症性乾癬の関節症状、膿疱性乾癬、乾癬性紅皮症について、いずれも国内患者数が限られていることからそれぞれの病型で検証的試験を実施することは困難でありますが、審査報告書40ページの表39のとおり、国内長期投与試験において本剤投与後にいずれの有効性評価項目においても改善傾向を認めていること等を踏まえ、いずれの疾患についても本剤による一定の有効性は期待できるものと判断いたしました。

 続いて、審査報告書の61ページ以降の「7.R.3 用法・用量について」の項を御覧ください。開始用量については、62ページの図5のとおり、海外第II相試験において投与2週後に150mgQ4W群で高い反応性が認められ、63ページの図6に示します母集団薬物動態解析を用いたシミュレーションにより、開始用量として160mgを投与した場合、より早く定常状態に達することが示唆されました。

 第III相試験における導入投与期の各有効性評価項目の結果は、46ページの表45のとおりであり、Q4W群と比較してQ2W群で高い改善が認められ、日本人部分集団でも同様の傾向が認められました。また、65ページの図7のとおり、維持投与期の各評価時点で導入投与期に本剤80mgをQ2Wで投与した場合の有効性がQ4Wで投与した場合を上回る傾向が認められました。更に65ページの表60のとおり、維持投与期における有効性はQ12W群と比較してQ4W群で高い改善傾向が認められました。以上の結果を踏まえ、本剤の用法・用量を、初回は本剤160mgを皮下投与し、投与開始2週後から12週までは本剤80mgを2週間隔、以降は本剤80mgを4週間隔で皮下投与すると設定することは可能と判断いたしました。

 次に審査報告書の49ページ以降の「7.R.2 安全性について」の項を御覧ください。国内外の臨床試験における有害事象の発現状況は50ページの表48、及び表49のとおりでした。また、感染症、好中球数減少、悪性腫瘍、注射部位反応等の発現状況についても確認し、乾癬に対する既承認の生物製剤を大きく上回る安全性上の懸念は示唆されていないと考えております。なお、既承認の生物製剤と同様に、本剤においても、免疫機能への影響により発現が懸念される重篤な感染症等に対して十分に留意する必要があり、既承認の生物製剤と同様の安全対策を講じる必要があると判断しております。

 以上の審査を踏まえ、本剤を承認して差し支えないとの結論に達し、本部会で御審議いただくことが適当と判断いたしました。本剤は新有効成分含有医薬品であることから再審査期間は8年、原体及び製剤は劇薬に該当し、生物由来製品に該当するものと判断しております。薬事分科会では報告を予定しております。以上です。よろしく御審議のほどお願いいたします。

○吉田部会長 ありがとうございました。それでは、委員の先生方から御質問・御意見をお願いします。

○関水委員 今の説明では、Q4WとQ2Wで結果が違うとなると思います。これは統計学的に有意な差があることを違うと言われたのですか。

○医薬品医療機器総合機構 もともと用量間で統計学的に有意な差があるかを検討する臨床試験ではございませんが、結果として。

○関水委員 統計学的に有意な差がないものについて、差があるということは不適当だと思います。両者に差があると言って、ゆえにQ2Wを取るのだという論理は正しくありません。

○医薬品医療機器総合機構 海外臨床試験も含め、有効性の結果は、Q4Wに比較してQ2Wが高い傾向が。

○関水委員 高い傾向があるというのはいいですが、統計学的に差がないものについて高いと言うことは言えませんよね。

○医薬品医療機器総合機構 これらの臨床試験については、用量間で統計学的に有意な差があるかを確認する試験として実施されたものではありませんので。

○関水委員 やるべきなのです、統計学的有意差があるかどうかを見て、違いがあったらこちらのほうが高いというのが科学として正しい態度ですね。統計学的に有意な差がないのに、こちらのほうが高いというのは、たまたま高い数字があって、こちらのほうが大きいと言っているだけなのです。ゆえに、この審査会で、Q2Wを取ることに正当性があるということを認めることはできないのではないですか。

○医薬品医療機器総合機構 46ページの表45を御覧ください。国際共同試験が行われたRHAZ試験以外にも、RHBA試験、RHBC試験と海外で臨床試験が行われておりますが、これら3試験で同様にQ2Wの有効性が高い傾向が認められておりますので、Q2Wのほうがより効果が高いものとの判断は可能と考えております。

○関水委員 それは何回やろうと、統計学的有意な差がないものについて差があるというのは科学的ではありません。そこのところは統計学的に有意な差はない、と認めればよいのではないですか。

○医薬品医療機器総合機構 これらの臨床試験については、用量間で統計学的に有意な差を議論することは困難と考えております。補足ではございますが、これら3試験を併合した事後的な解析では、統計学的に有意な差が認められております。

○関水委員 では、統計学的に有意な差があるのですね。

○医薬品医療機器総合機構 3試験を併合して解析した場合は、統計学的に有意な差は認められております。

○関水委員 それはどこを見れば分かるのですか。最初は統計学的な有意な差はないと言って、最後に統計学的な有意の差はあると言っておられるから御発言が矛盾していますよ。

○医薬品医療機器総合機構 各試験では用量間の統計学的な有意差は検討することは困難ですが、3試験を併合して解析すると、統計学的に有意な差は認められております。

○関水委員 それでは、とにかくQ4WとQ2Wとは統計学的に有意な差があり、Q2Wのほうが有効であると言っていいのですね。

○吉田部会長 今の表45ですが、山口先生、95%信頼区間が重なっているものと、重なってないものがありますね。重なってなければ差があると言えるのが、そうでないものには差が認められないという判断になりますか。例えば出方がQ4W群とQ2W群でのPASI90達成率のプラセボとの差を見ると、Q4Wのほうが64.1で信頼区間が59.6から68.7ですよね。Q2Wが70.4で信頼区間が66.1から74.8なので、二つの信頼区間がかぶっています。そこら辺の判断はどうしたらいいですか。

○山口委員 かぶっていなければ差はあると言っていいと思います。でも、かぶった場合でも差がある場合もあるので、ちゃんと検定結果を出すか、差の信頼区間とかを出してもらわないと分からないと思います。

 ただ、総合的に解釈してQ2Wがより良いというのが総合機構の判断だと個人的には理解しております。なので、先ほど言っていたとおり、核となる国際共同試験では特にQ4WとQ2Wの直接の比較は、もともと試験計画ではなされていないですよね。もし、フォーマルで全試験の結果、例えば統合的に解析して結果を出しているようなところがあれば、多分それを御説明したほうがいいのではないかと思います。

○医薬品医療機器総合機構 申し訳ございません。今、お配りしている資料の中に記載はございませんが、CTDには記載があり、先ほど御説明差し上げたとおり、試験を併合した解析では統計学的に有意な差は認められております。

○吉田部会長 だから、特別な有意差があって有効であるというのではなく、ある程度、数値の良いものを取ってQ2Wにしたと書けばいいと思いますが。

○医薬品医療機器総合機構 はい。

○吉田部会長 ただ、通常なぜQ4WとかQ2Wの比較をするかというと、できるだけ注射の回数を減らしたいということがあります。要するに、2週に1回注射するより4週に1回で済めば、そのほうが患者さんにとっては楽だし、病院に来る機会も減るので、もし変わらなければ、Q4Wの方を選択しようということになります。そういう意味で言えば、今の関水先生のお話ではないのですが、本当に有意差がないぐらいの差で、もし4週に1回でも、それほどの有意差がないのであれば患者さんにとって、例えば遠くから来る患者さんなどには好都合だと思います。その辺の解釈をどうしたのかを、もう1度申請者に聞いてもらえますか。

○医薬品医療機器総合機構 一応、本剤に関しては、自己投与も可能と考えておりますので。

○吉田部会長 自己投与だから。

○医薬品医療機器総合機構 通院という部分の負担は軽減されるかと思います。

○吉田部会長 痛いだけということになる。

○医薬品医療機器総合機構 そうですね。

○吉田部会長 いずれにしても、その辺の解釈をどういうようにしたかに関しては、書くとか、明確にしておいたほうがよいような気がします。2週間隔を選んだ基準を。

○医薬品医療機器総合機構 はい。

○吉田部会長 確か、投与法を2週に1回にするか、4週に1回にするかについては成績の良いほうを取りますということで、別に有意差の検定まではしないということになっていたのでしょう。

○医薬品医療機器総合機構 はい。

○吉田部会長 成績の良いほうを取りますということにしたのでこうしました、有意差は検定していませんと。

○医薬品医療機器総合機構 審査報告書の63ページの下から3行目以降を御覧ください。今、申し上げた3試験に関しては、PASI75に加えて、更により高い改善性を示すPASI90、PASI100、であったり、sPGA(0又は1)と、sPGA()について、Q2W群ではQ4W群と比較して高い改善が認められておりますので、総合的に勘案してQ2W群が優れていると考えております。

○吉田部会長 その辺りの書き方が問題だということなのでしょう。

○田村委員 12週以降4週おきに変わるのは、この試験ではQ4WとQ12Wしかやっていないのですね。

○医薬品医療機器総合機構 はい。経緯を申し上げますと、62ページにございますが、海外の第II相試験の結果、16週まで投与した時に投与中止後の有効性が投与中止後も維持されたことを勘案して、ある程度の改善が認められた患者さんに対してはより長い投与間隔でも有効性が維持できるのではないかという仮説を立て、今回投与12週のところでQ4Wに投与間隔を変更する計画としております。そのような臨床試験の結果、Q4Wである程度の症状の維持が確認されております。

○田村委員 Q12WよりQ4Wがよかったからということですね。

○医薬品医療機器総合機構 はい。申請者は、□□□□□□□□□□□□□□□□□□、□、□□□□□□□□□、□□するとしております。

○鈴木委員 まず、資料を見ると議題1の薬はトルツ皮下注となっているのですが、審査報告書を見るとタルツ皮下注となっています。これはどちらが正しいのか、教えていただきたいのが一つです。

 それから、この薬は尋常性乾癬の薬として試験が行われたということですが、比較試験を行ったエタネルセプトは日本では関節リウマチの薬です。同じ適応のヒュミラなどがあると思うのですが、そちらと比較しないで、どうして違う適用の疾患の薬と比較試験をしたのか、その理由について教えていただきたいと思います。

○医薬品医療機器総合機構 まず名称に関してですが、当初はタルツ皮下注で申請されておりますが、申請後、名称が似ている薬剤との取り違え等のリスク等を勘案して、トルツ皮下注に変更されました。ですので、現在の時点ではトルツ皮下注が申請の名称と御理解いただければと思います。

 エタネルセプトの比較について、エタネルセプトは、海外で乾癬の効能を有しております。海外で行われた臨床試験ですので、比較対象として選ばれたと理解しております。

○鈴木委員 そうしたことは一般的に行われているのですか。

○医薬品医療機器総合機構 はい。海外試験において、海外で効能を有している薬剤との比較は一般に行われるものと思います。

○鈴木委員 なるほど、分かりました。

○吉田部会長 ほかにありますか。

○新井部会長代理 この抗体はマウスの抗原認識部位にヒトの定常部位をくっ付けた抗体だと思います。わざわざIgG4フレームを使って、227番目のSerがProとし、またLys(リジン)が除去されているというように書いてある理由は、定常部位は最近、これが非常によく使われているようになっているのか、それとも後のほうに書いてあるように、この抗体は補体活性化反応のhCG抗体への結合反応も低いので、そちらの副作用は少ないのではないかと書いてあると思います。その原因としてミューテーションと言いますか、アミノ酸変異を入れているのか、その辺は何か因果関係があるのか全く因果関係がないのかを教えてください。

○医薬品医療機器総合機構 もう一度御質問をお願いできますでしょうか。

○新井部会長代理 ヘビー・チェーンのほうは定常部位なので、逆に言えばいろいろな抗原認識部位と周辺をくっ付けて使えると思います。今までは余りこういう記載はなかったのですが、1ページに、227番目のSerがProに置換され、C末端のLysは除去されているというようにわざわざ書いてあるのは、こういうように定常部位のほうがなってしまったのか、それとも薬の進化としてこういう定常部位を使うほうが補体活性化やFcRと抗体の結合が弱くなってきて、こういうもののほうが副作用は少ないとなって、このように記載されているのか。その辺、最新の抗体に関する知識がなかったもので、偶然この商品が遺伝子組換えの中で遺伝子上、ミューテーションが起きてしまったのか、それとも積極的にこのように入れたものを今では使うのが結構いいことになってきているのか、その辺の情報を教えてほしいのですが。

○医薬品医療機器総合機構 御質問ありがとうございます。機構からお答えいたします。本製品はIgG4由来になります。IgG4由来ですと、そのままの形ですと、H鎖とH鎖間のジスルフィド結合が切断された、切断体が生じやすいため、こういうところを変異させる工夫がされています。

○新井部会長代理 では、むしろ抗体を安定させるためにミューテーションを積極的に入れた結果であるということですか。

○医薬品医療機器総合機構 はい、積極的に変異を入れているものです。

○新井部会長代理 なら、いつもこういうものを使うというわけでもない、IgG4だったら使う可能性もあるかもしれないけど。

○医薬品医療機器総合機構 そうですね、IgG4は古く開発されたものですと、そのままのものがあるのですが、やはりそういうものですと切断体が多いのですが、現在開発されているIgG4抗体だと、このような変異をすることによって、そういった切断体の含量というのはかなり減ってきているということで、傾向としてはこのようなミューテーションを起こしているということはよくあります。

○新井部会長代理 分かりました、ありがとうございます。

○吉田部会長 要するに、インテンショナルにやった成果であるということですね。ほかにございますか、よろしいですか。

○菊池委員 これは痛いのですか、注射としてかなり痛い薬ですか。

○医薬品医療機器総合機構 有害事象として、注射部位反応はプラセボに対しては高い傾向が認められております。

○菊池委員 尋常性乾癬などの人は、皮膚の正常部位がほとんどありませんから。最初2発打ちますよね。その2発を打つのもかわいそうだから、160の製剤を1ミリぐらいのものを作るとか、企業努力はしているのでしょうか。あと、これは多分オートインジェクターでやるのでしょうが、打てない所が多い人などは家族に打ってもらったりするのでしょうか。

○医薬品医療機器総合機構 臨床試験の中で、注射部位反応は全体で15.2%に認められておりますが、重篤な事象は認められず、投与継続ができない事象も少なく、一過性の患者さんがほとんどでした。

 また、国内臨床試験で自己投与が実施されておりますが、特段の問題は認められておりませんので、本剤投与において注射部位反応が問題になることはないと考えております。

○菊池委員 申し上げたかったのは、製剤をもう少し改良して、初回のみ160mgで、2回目以降80mgであることは分かりましたが、痛みを伴う製剤ですので、注射量を減らす努力を申請企業は開発しているのですかということをお伺いしたいのです。この製剤が何ml打っても痛くなければそれは良いのですが、痛そうなので心配した訳です。

○医薬品医療機器総合機構 62ページを御覧ください。申請者の検討では、本剤の濃度としては80から120mg/mLの範囲が安定性を考えると適切であることと、1回当たりの液量として1mLまでが望ましいというところを考慮して、今回の80mg製剤という形で申請がなされております。160mgの場合、そのまま薬液を使いますと2mLを1か所に打つことになりますので、申請者としてはなかなか難しいと判断しているものと思います。

○吉田部会長 その先を考えているかどうかを訊いているのだろう、とは思いますが、今の話は分かりました。これは仕方がない。

○医薬品医療機器総合機構 はい。

○吉田部会長 今後、そういう情報のところを開発してもらえますかということについては。

○医薬品医療機器総合機構 部会において160mg製剤の開発に関してコメントがあったこと自体は申請者に伝えさせていただきますが、恐らくこれまで検討されていないのではないかと考えています。

○吉田部会長 世界中で、こうやれとなると中々難しい話にはなりますので、答える方もなかなか大変だと思いますが、一応、訊くだけ訊いておいてください。ほかにありますか。

○奥田委員 先ほど御説明があった内容で、名称が安全性の面から変更になったということでした。理由は分かるのですが、どういう基準でそういう判定をされているのかというのは何かルールがあって、既存の薬品名称との比較で、例えばこういう基準で類似性が指摘されるとか、そういった検討をされた上でのことなのか。全然知らないものですから、その件について教えていただければと思います。

○医薬品医療機器総合機構 名称のルールには様々ございます。ブランド名の部分に関して言いますと、頭文字3文字が既存の薬剤と同じではないというところをチェックさせていただいています。

○吉田部会長 いや、その説明は分かるのですが、今までも申請途中で名前が変わることがあったではないですか。その場合、どういう資格の人がどういうようなスクリーニング法でやって、このように変更したということを知りたいということなのだろうと思います。例えばですが、厚生労働省のどこの部署のこういう人がチェックをしていて、どこどこからこういった意見が上がってきて、最終的に申請者が変更届けを提出することになる、ということを言っていただければ。

○審査管理課長 販売名につきましては、売られている医療用医薬品の販売名のデータベースがあります。その販売名と比較するプログラムを利用できるようになっています。ルールとしてはいろいろあるのですが、先ほど申し上げたように頭文字3文字が全く同一であれば、それを認めないというようなルールとか、どれか一文字を変えると全く同じになってしまう時は認めないなどのルールがございます。

 判定はプログラムを使って自動的に出ますので、もちろん申請者は申請前にやりますが、申請の後で機構のほうでもそれを調べます。機構のほうは市販品だけでなく、申請中の品目も含めてそういうチェックを行っております。

○奥田委員 判定の考え方自体はどこかで公開されているのですか。

○審査管理課長 はい。

○奥田委員 ありがとうございます。

○医薬品医療機器総合機構 機構より補足させていただきます。今回の事例に関しては、もともと決まっているルールに抵触したということではございません。臨床現場で使用されている他の薬剤と語感が似ていたので、それに関して申請者が申請後に検討し、変更が行われました。

○吉田部会長 ということだそうです。ほかにございますか、よろしいでしょうか。そろそろ議論も出尽くしたようですので、議決に入りたいと思います。なお、田村委員におかれましては利益相反に関する申し出に基づき、議決への参加を御遠慮いただくことといたします。

 本議題について、承認を可としてよろしいでしょうか。御異議がないようですので、承認を可とし、薬事分科会に報告とさせていただきます。議題2に移ります。議題2につきまして、機構からの概要説明をお願いします。

○医薬品医療機器総合機構 議題2、資料2、ルミセフ皮下注210mgシリンジの製造販売承認の可否等について、機構より説明します。

 本剤の有効成分であるブロダルマブは、インターロイキン-17の受容体Aに対するモノクローナル抗体です。今般、既存治療で効果不十分な尋常性乾癬、関節症性乾癬、膿疱性乾癬及び乾癬性紅皮症を効能・効果として申請されました。なお、米国及び欧州では昨年11月に申請され、現在審査中です。専門委員として資料10に記載の10名の委員を指名しました。

 審査の概略について臨床試験の成績を中心に説明します。審査報告書53ページの図5を御覧ください。本申請はブリッジング戦略に基づいています。局面型皮疹を有する尋常性乾癬及び関節症性乾癬患者を対象とした国内第II相試験が実施されました。

 次の54ページの図6を御覧ください。PASIスコア改善率について、国内第II相試験と海外第II相試験を比較した結果、用量反応関係は類似していることから、ブリッジングは成立し、海外第III相試験の成績を利用して評価できると判断しました。

 同じく54ページの表45を御覧ください。主要評価項目である投与12週後のPASIスコア改善率について、本剤各用量群とプラセボ群との各対比較で統計学的に有意な差が認められております。また、海外第III相試験でプラセボに対する本剤の優越性が検証されていることから、尋常性乾癬及び関節症性乾癬の局面型皮疹に対する本剤の有効性は示されたと判断しました。

 関節症性乾癬について、56ページの5行目以降を御覧ください。国内第II相試験及び長期投与試験に組み入れられた関節症性乾癬患者において、関節症状に対する有効性が評価されました。その結果、関節症状の指標であるACRコアセットの評価などについて、改善の傾向が認められたことから、先ほどの局面型皮疹に対する有効性も踏まえ、関節症性乾癬に対する有効性は期待できると判断しました。

 続いて、57ページの表47を御覧ください。膿疱性乾癬及び乾癬性紅皮症の患者を対象とした非盲検試験が実施されました。その結果、全般改善度などについて改善傾向が認められたことから、膿疱性乾癬及び乾癬性紅皮症に対しても、本剤の有効性は期待できると判断しました。

 次に安全性について、67ページの「うつ病及び自殺・自傷行為」の項を御覧ください。海外の臨床試験では、自殺・自傷行為に関連する有害事象が報告されています。しかし、症例ごとにその詳細を検討したところ、多くは精神障害を含む自殺に対するリスク因子を有しており、自殺・自傷行為の発現と本剤投与との関係を明確に示唆する情報は得られていないと判断しました。ただし、事象の重篤性を考慮して、自殺・自傷行為の発現については重要な潜在的リスクに設定し、引き続き情報収集するとともに、うつ病などのリスク因子を有する患者は慎重投与に設定することが適当と考えています。

 このほか、重篤な感染症、好中球減少症、悪性腫瘍などの発現状況について検討した結果、既に承認された生物製剤を上回る安全性上の懸念は認められませんでした。よって、既に承認された生物製剤と同等の安全対策が講じられるのであれば、本剤の安全性は忍容可能であると判断しました。

 以上の審査を踏まえ、本申請を承認して差し支えないとの結論に達し、本部会にて御審議いただくことが適当と判断しました。本剤は新有効成分含有医薬品であることから、再審査期間は8年、原体及び製剤は劇薬に該当し、生物由来製品に該当すると判断しています。薬事分科会では報告を予定しています。よろしく御審議のほど、お願いいたします。

○吉田部会長 ありがとうございました。それでは、委員の先生方からの御質問、御意見をお願いします。先ほどのトルツ皮下注薬と、ほとんど似たようなタイプの薬だと思いますが。

○菊池委員 ちょっと意地悪なことをお伺いするのですが、珍しい疾患ですよね、尋常性乾癬という病気自体が。それが今回、議題1と2と同時に申請されているというのは、何か意図があるのでしょうか。

○医薬品医療機器総合機構 現在、インターロイキン-17受容体に対する抗体製剤の開発が盛んに行われているというところです。一つには乾癬という病態に対して反応性が高いことが分かってきていることも、開発を促す要因になったのではないかと考えております。今回、同一の部会となったことは、偶然です。

○菊池委員 尋常性乾癬とその類縁疾患は、皮膚科の領域でも非常に難しい病気で、今回もいろいろと勉強させていただきました。議題1,2の資料を読んで、意地悪な言い方をすると、議題1が、中等症や重症の尋常性乾癬に対して当初申請してきていながら、最終的には2剤とも既存治療で効果不十分な尋常性乾癬と、効能効果が同じになっていますが、その辺は何か配慮があったのでしょうか。また、申請時期という点で、難病二つの申請が、今回同時になったというところに、どういう意味があるのですかということです。

 前にインフルエンザのときにもそうでしたが、季節性の流行があったりするときには仕方ないと思って、むしろ製薬会社などにも同じようなことをやっているのであれば、一緒に出してもいいと思いますし、専門家が多分この病気の診察をされて治療されるので、この薬が同時に出ても、どちらを使うかというのは迷われるのか、そこはお任せしていけば大丈夫だと思いますけれども、その辺はどういうことがあったのかと、ちょっと感じた次第です。

○医薬品医療機器総合機構 ありがとうございます。最初の効能・効果ですが、こちらは先ほどのトルツと同じく生物製剤に該当し、重篤な感染症などの重篤な副作用の発現の恐れもありますので、既存治療で効果が不十分であったような患者においてのみ、ベネフィットとリスクのバランスを考慮して使用されるようにということで、同じような効能・効果を設定する必要があると考えました。

 同じ部会でということについてですが、この品目とトルツは申請の時期もたった2日しか違っていないということで、各社の競争の中で同時期に申請に漕ぎ着けたのではないかと想像しております。

○菊池委員 この2社しか、たまたまというか、出していないのですね。ほかのものはちょっと遅れている所とかいるわけではないのですね。大丈夫なのですね、それは。何度も申しますが、ネイチャーでもサイエンスでも、特集号で、いい記事があると合併して出ることがあるわけです。違うグループがやっていたときに甲乙つけ難いと、そういうことがあります。例えば、この病気は30万人ぐらいいるはずですが、治療がないような病気なので、そこは認可する側では、もちろん情報をいろいろと御存じだと思うので、選択肢が増えるという意味では非常にいいと思うのですが、そういうことはきちんと行われたのですか。たまたま二つ並んでいて、それぞれの会社で、違う切り口で物事も書いてあるので、ちょっとそのように思ったところです。

○医薬品医療機器総合機構 今現在、ほかの製剤が開発されているかという点については、少し把握できていないのですが。

○吉田部会長 調整したわけではないですよね、ということですよ。

○医薬品医療機器総合機構 そこは調整しておりません。

○吉田部会長 でも、日本の場合だと、やはり横並びが好きではないですか。実際に海外の状況を見ると、トルツのほうが先に承認されていて、本薬はまだ申請中ですよね。海外では、トルツが先行しているのに日本では同時承認ということになったら、やはり何かしているのかと菊池先生が思われたのは不思議でも何でもないのです。「わが国では似通った申請は、平等主義の立場から調整して一緒に承認するようにしているのです」、というような説明があるのかなと思ったのですが、本当にそういうことは一切ないのですか。

○医薬品医療機器総合機構 一切ありません。

○吉田部会長 これは偶然としか言いようがない。

○医薬品医療機器総合機構 偶然です。

○吉田部会長 ということだそうです。それと質問をもう一つ、トルツとの使い分けはどうするのですか。別にそれぞれ同じものを、これは効かなかったからといって向こうが効くわけではないと思うのだけれど、その辺は現場に任せてしまうということですか。

○医薬品医療機器総合機構 そうですね、臨床的な位置付けは全く同一と考えておりますので、臨床現場での判断になると考えております。

○吉田部会長 ということだそうです。ほかにありますか。よろしいでしょうか。

 では、議論もないようですので、議決に入りたいと思います。なお、山口委員におかれましては利益相反に関する申出に基づき、議決への参加を御遠慮いただくことといたします。本議題について承認を可としてよろしいでしょうか。

 御異議がないようですので、承認を可とし、分科会に報告とさせていただきます。

 それでは、議題3に移ります。これについて、機構からの概要説明をお願いします。

○医薬品医療機器総合機構 議題3、資料3-1、3-2及び3-3、医薬品リフキシマ錠200mgの製造販売承認の可否等について、機構より説明します。

 本剤はリファマイシン系抗菌薬の一つであるリファキシミンを有効成分として含有する製剤で、経口投与しても有効成分が腸管からほとんど吸収されないことを特徴としております。肝性脳症は、循環血中アンモニア濃度の上昇が発症機序の一つとされていることから、現在、肝性脳症に対する薬物療法としては、アンモニアの吸収抑制及び排泄促進作用を有する合成二糖類等が使用されています。

 しかしながら、合成二糖類は1日量が数十グラムと多く、便通状態によって用量調節が必要であり、服薬の手間、下痢等の副作用や味の問題により、服薬アドヒアランスの維持が困難な場合があります。本剤は合成二糖類と比較して、患者自身による用量調節が不要であり、副作用の面からも服薬アドヒアランス低下を回避できることが想定され、長期にわたる管理が可能となることが期待されています。なお、本剤は20155月時点で66の国又は地域で承認されています。本申請の専門委員として資料10に記載の8名の委員を指名しました。

 審査内容について、臨床試験成績を中心に説明します。有効性について、審査報告書35ページの表27、表28を御覧ください。この表は肝性脳症に対する国内外の診療ガイドラインの記載を示しています。表に記載のとおり、腸管非吸収性抗菌薬であるリファキシミンは、合成二糖類等とともに肝性脳症に対する使用が推奨されています。

 続いて、審査報告書37ページの表29を御覧ください。肝性脳症患者を対象とした国内第II/III相試験における有効性を示しています。表の1列目である血中アンモニア濃度に関して、主要評価項目である投与14日後の血中アンモニア濃度の平均値は、本剤群で119.46μg/dL、対照薬の合成二糖類であるラクチトール群で125.4μg/dLであり、両群間に統計学的に有意な差は認められませんでした。ただし、本剤投与時の血中アンモニア濃度推移は、既承認のラクチトール投与時の血中アンモニア濃度推移と同様の傾向であったことから、ラクチトールと同様に本剤の血中アンモニア濃度の低下効果が示されたと判断しました。

 以上より、本剤は国内外診療ガイドラインで推奨されている合成二糖類と同程度の高アンモニア血症の改善が認められており、本邦の医療現場において肝性脳症の症状改善の効能を有する抗菌薬は未承認であることを踏まえると、本剤を医療現場に提供することに意義があると判断しました。

 次に安全性について、審査報告書38ページの表31を御覧ください。この表は国内臨床試験における安全性の概要を示しています。本剤の安全性について、ラクチトール群と特段の差異は認められておらず、認められた重篤な有害事象についても、本剤の投与中止により軽快しています。これらの結果から本剤の忍容性に問題はないと判断しました。ただし、国内臨床試験で得られた情報は限定的であること等から、製造販売後において、本剤の投与症例全例を対象とした使用成績調査の実施が予定されています。

 以上の審査を踏まえ、機構は、本剤を承認して差し支えないとの結論に達し、本部会で御審議いただくことが適当と判断しました。本剤は希少疾病用医薬品であることから、再審査期間は10年、原体及び製剤は、毒薬、劇薬、生物由来製品及び特定生物由来製品のいずれにも該当しないと判断しています。薬事分科会には報告を予定しています。なお、審査報告書45ページの総合評価において、本品目が希少疾病用医薬品である旨を記載しておりませんでしたので、適切に修正の対応をいたします。以上、御審議のほど、よろしくお願いいたします。

○吉田部会長 ありがとうございました。それでは委員の先生方からの御質問、御意見をお願いします。

○関水委員 37ページの表29にベースラインとありますが、これはどういう意味ですか。投与前という意味ですか。

○医薬品医療機器総合機構 投与前ということです。

○関水委員 ベースラインから投与14日後で、134から119になると。これは統計学的有意の差があると見てよいのですか。

○医薬品医療機器総合機構 投与前後の比較で言うと、統計学的な有意の差は認められていると説明されています。

○関水委員 134±49と書いてある意味は何なのですか。±49というのは、最大誤差ですか。

○医薬品医療機器総合機構 ±の数値は標準偏差を示しています。

○関水委員 このデータから差があるという検定法があるはずはないと私は思います。t検定をしてp値は幾らだったということになるのですか。

○医薬品医療機器総合機構 確認しますので少々お待ちください。

 投与前後ではt検定でp値が0.0204という結果になっています。

○関水委員 それはここに書いてありますか。0.02というのが、医薬品で効くというのを証明されたとするかどうかは議論が分かれるでしょうけれど、とにかくこの値はt検定でp値が0.02になるのですね。

○吉田部会長 でも、この場合の趣旨はそうではなくて、ラクチトールは既に承認を受けているわけですよ。それと比較したときに、同様のアンモニア濃度の低下が見られたから有効としました、という説明なのでしょう。

○医薬品医療機器総合機構 そうです。

○吉田部会長 ですから、ベースラインからの低下が有意だからというわけではなくて、下がる方向に向かっているからということなのでしょう。と言うのは、肝性昏睡というのは、肝臓が解毒機能を失ってアンモニアがどんどん産生されている病態ということになりますが、治療薬といっても、要するに腸管内の窒素産物が分解吸収され、血液に乗って肝臓にくるのを防ぐために、窒素産物を腸管から排出させるだけの作用しかありませんので、肝臓のダメージが強いと、それでも間に合わなくて、どんどんアンモニア濃度は上昇してしまうわけです。

 つまり、この薬自体が肝不全に対する原因療法ではなく、対症療法でしかないため、そういったアンモニアの濃度を下げるような方向に向かっているということが判断されれば、一応、有効と考えざるを得ないという背景があるのだと思います。また、本薬のような抗生物質を使うのは腸管内容物の腐敗を防いで、更なる窒素成分の生成を抑制しようということですし、ラクチトールを併用するのは、そのまま腸管から出してしまうという意味ですよね。

 そのような治療法が実際に有効かというと、一応ガイドラインに載っているわけですよね。そうすると、これは半分以上が公知申請なのではないかと思うのですよ。ガイドライン通りにやってみて、同様の傾向が出ましたということですし、申請の依頼元が消化器病学会ですよね。ですから、そういう意味でも、いわゆる未承認薬の検討会と似たような形なのではないかと思うのですが、その辺は違うのですか。

○医薬品医療機器総合機構 御説明いただいたとおり、確かに学会からの要望書というのは出ておりますが、それは未承認薬検討会議のスキームに載せるための要望ではありませんでしたので、通常の申請スタイルに沿って審査を進めたというところになります。

○関水委員 134±49で、49が標準偏差で、t検定でp値が0.02というのは計算間違いではないのですか。そんなことがあり得ますか。

○山口委員 前後比較なので、多分、対応のあるt検定をやっているのだと思います。49とか59はあくまで80人全体での標準偏差だと思います。ですので、個人ごとに差を取って、そのばらつきを考えれば、かなり小さくなっているのではないかと。

○関水委員 これは表記の仕方として適当ではないと思いますよ。これは134±49というデータについて、t検定をしたのではないわけです。山口先生、そうですよね。

○山口委員 先生がおっしゃるとおりで、群間差はないですよね。有意差がなくて、先ほど座長がおっしゃられたとおりで、そういう状況でも周囲の状況を鑑みて、持ってきたということなのです。

○関水委員 それは分かりました。では、アドバイスというか、この表から、t検定で0.02という統計学的な差が出るとか、下がっているということを言うのは適当ではないので、あらためて、個々の患者さんについて差があるというデータを出すべきです。

○新薬審査第四部長 御説明します。もともとこの試験というのは、ラクチトール群と本剤群を比較するという形の設定になります。先ほど、先生から投与前後では下がっているのかという御質問があったので、下がっているという検定結果はあると説明しましたが、もともとの試験の設定としては対照群と本剤群との比較なので、この表を出しているというところです。

○関水委員 それは分かりました。ただし、初めてこのデータを見れば、ラクチトールだって効いていないということになります。こういうものが商品にされていて、それに比べて非劣性だから、本剤を認めなさいという話であると一般の人は思うわけです。そのような誤解をさけるためには、表記の仕方について、ちょっと大変かもしれないですが、努力をされるべきだと思います。ラクチトールが効いていないと、この表からは判断するべきことになってしまいます。

○新薬審査第四部長 この試験ではプラセボコントロール群が設定されていないので、ラクチトールが効いていないと見えるかもしれませんが、先ほど吉田部会長がおっしゃられたように、アンモニア濃度はどんどん上昇していく病態です。プラセボコントロール群が設定されていませんが、仮に無治療の場合にはこの数字がもっと上がっているという観点で見ていただければと思いますが。

○関水委員 ベースラインは投与前なわけです。今、山口先生が言われたように、個々の患者さんを見ればラクチトールは効いているということになると思うのです。

 私が問題だと思うのは、表29を薬事審議会に出して、ラクチトールは効いていると。それに対して非劣性だというので、この薬を認可するべきであるという論理が一般には認められない点です。ラクチトールが効いているということを、この表29からで納得する人はいないと思います。

○新薬審査第四部長 ラクチトールについては、先ほども担当からもお話したように、日本をはじめ海外でも古くから使われている薬剤です。プラセボコントロールが設定されていない試験ですが、このデータから効いていないと判断することはなかなか難しいのではないかと。

○関水委員 いやいや、一般の人はこのデータを見たら、効いていないと見るわけです。実はラクチトールは効いている薬ですよと、これはエスタブリッシュされていますと言われても、このデータはそうではないから、ゆえに、そうではないものについて、その前提の上で本剤について効いていると認めなさいというわけにはゆきません。

○吉田部会長 これは表記の仕方が悪いんじゃないかな。肝性昏睡では無治療のコントロールを置くわけにはいきませんが、何も治療しなければ、アンモニア値はどんどん上がっていくわけですから、右肩上がりの想定ラインが引けます。例えば、14日の時点でこのように上がっていくとします。ラクチトール群では少し下がっているケースがこれだけあって、上がっているものももちろんありますよね。そういった対応をしながら本薬群を見ていけば、下がっている部分もあるから有効と見えるけれど、こうやってパッケージで出されてしまうと読めないのではないですか。

○新薬審査第四部長 各症例毎に投与前後の値を線で結んで表記してはどうかというアドバイスをいただいたものと思いますが、100例近くの症例数の場合には、それぞれの直線が重なりあって、なかなか見づらいグラフになってしまうのではないかと思いました。

○吉田部会長 そういうこともあり得ますね。今回の場合、肝性昏睡の人には少なくともラクチトールは投与しているので、それと同じように下がるかどうかを見ているだけなのでしょう。その説明が難しい。何でこんな風になるのだろう。

○山口委員 すみません。本当は事前にコメントすればよかったです。もともとのデザインはどういうことを証明するデザインだったのですか。

○医薬品医療機器総合機構 もともとは、投与終了後に、ラクチトールよりも本剤で血中アンモニア濃度の低下効果が優れているという優越性を検証することを目的としていました。

○山口委員 そうすると、試験としては失敗ですか。

○医薬品医療機器総合機構 試験としては失敗です。

○吉田部会長 優越性を検証しようとして有意差が出なかったから非劣性かと言えるかと言えば、そうではないので、もう一回、非劣性のスタディを組まなければいけなくなりますが、そこまで求めるのかということですね。

○医薬品医療機器総合機構 もう一度試験をやり直すことよりも、国内外のガイドラインで推奨されているところをもって、より早期に医療現場に提供することに意義があるのではないかという判断をしております。

○吉田部会長 ということは、先ほどから申し上げているように、公知申請としての対応を考えられないか、ガイドラインにもあるのでということですね。鈴木先生いかがですか。

○鈴木委員 臨床的に言えば、肝性脳症に一定の効果はあります。現場では、ラクツロースや、カナマイシンを使っていました。アンモニア産生菌が腸内細菌の中にいて、それを抗菌剤で抑制するか、分解できないような糖類を投与することによってアンモニアの産生を抑制し、排泄も促進するという作用機序だと思います。私の質問は、35ページの海外のガイドラインを見ると、適応が再発予防となっています。ところが、日本では肝性脳症は初発でもよいわけです。その違いはどうしてなのかというのが一つの質問です。

 それから、臨床的には少なくとも我が国ではカナマイシンを使っていたのですが、なぜ今回はリファマイシンなのか。これは同じような種類だと思うのですが、どこが違うのか教えていただきたいと思います。

○医薬品医療機器総合機構 海外ですが、国によって適応は少し違うのですが、今回の日本の開発のように治療を目的とした開発を行ったものと、再発抑制を目的として開発を行ったものがありまして、海外の診療ガイドラインでは再発抑制が記載されている状況です。なぜ治療で書いていないのか分かり兼ねる部分ではあるのですが、基本的に治療と再発予防の二つの開発を海外では行っていた。日本では治療のみを開発したという違いになっています。

 カナマイシンと何が違うのかという御質問ですが、カナマイシンも腸管内で非吸収性の薬物として肝性脳症に使われているのだと理解しています。カナマイシンは腎障害等の有害事象が特徴とされておりますので、より安全性で優れているだろうと思われているリファキシミンが医療現場で望まれていると理解しております。

○清田委員 資料の13ページには、薬剤耐性に及ぼす影響とありまして、その対照薬としてリファンピシンが挙げられています。リファンピシンは、耐性菌をすぐに出してしまうというのはよく知られておりまして、結核などは、リファンピシンの適応としては結核だけという考え方は日本の行政は画期的な方針なのです。つまり、リファンピシンの耐性菌を出さないと、ほかのブドウ球菌などを使ってしまうと耐性菌をどんどん出してしまうから、結核に限られているという考え方です。日本の行政はそこがすごく優れた点なのです。

 本剤が濫用された場合、リファンピシンの耐性まで交差耐性が出てしまうと、本邦の結核の考え方を見直さなければいけないような、リファンピシン耐性の菌が増えるのではないかという心配はなさらないのですか。

○医薬品医療機器総合機構 その点は、審査報告書の16ページの3.R.2で議論させていただいております。先ほども申し上げたとおり、本剤が腸管であまり吸収されないため、基本的に全身性で耐性菌が発現する可能性は低いだろうというのが一つです。さらに非臨床の検討になるのですが、結核菌の感染モルモットを用いた試験で、本薬投与後の本薬とリファンピシンのMICというのは、変化がなかったというデータは今のところ得られています。あと海外のサーベランスの状況になるのですが、海外は既に本剤が承認されていて、結核菌に対するリファンピシンの感受性の経年変化を取っているのですが、特段の耐性化の傾向というのは現時点では認められていないという状況があります。

○清田委員 ただそれは短期的な観察で、もっと長期的な観点から言うと、どんどんリファンピシンに対しての結核菌を含めて、他菌種もリファンピシン耐性が増えてきて、13ページを見ますと、耐性菌の発現率というのは割と高いのです。2MICで10-8乗~10-5乗と、発現頻度は結構高いのですよね。これを低いと思ってはいけないのです。結構高いと思わないといけないと私は思うのですが。その辺、これは全然、だからどうだというような解釈をされていませんよね。例えばリファンピシンを耐性コントロールとするなり、耐性の獲得頻度です。これはどんどん培養を継代していくと、どんどん耐性菌は出てくるわけですが、割と高い頻度だと思わなければいけないのではないかと私は思うのですが。

 ということは、海外がどうのという話をしているのではなくて、我が国の姿勢です。抗菌薬は使わないようにしましょうという、この前わざわざアクションプランを出されているわけですから、そういうバックグラウンドで、こういう薬を認めてはいけないというのが私の意見です。これは余り賛成できないです。

○医薬品医療機器総合機構 本剤を濫用しないようにという注意喚起は、添付文書上でしているところです。通常の抗菌薬でもされている注意喚起ではあるのですが、用法・用量に関連する使用上の注意の部分において、治療に際しては効果を十分確認し、投与を疾病の治療上必要な最小限の期間に留めることと記載はさせていただいております。

○清田委員 苦しいお立場は理解しますが、割と生物のバイオロジーからしますと、余り賛成できないです。ほかに治療法があるのだったら、そちらにするべきです。積極的にこれを採用する理由がどこにあるのかというのが分からないのですが。つまり、ほかのリスクも十分理解して、添付文書上でいろいろな制限を加えているということは、耐性菌発現のリスクも十分に理解されているわけですよね。そのリスクがある限り、これを認めるのかというのは、それでも認めるのかというのは、どこに根拠があるのですか。

○医薬品医療機器総合機構 既存の治療としては、冒頭でも説明したとおり、合成二糖類というものが一般的に用いられているものだと理解しています。この合成二糖類の問題として、服用量が非常に多いことと、副作用の問題等があって、その長期的な管理が難しいということで、代わって本剤が管理可能になるのではないかということです。

○清田委員 分かります。それは私も聞いていましたから。ただし、国家戦略として、国防に関わるような耐性菌対策をお考えになっている一方で、こういうのを認めるというのはいけてないのではないかと思うのです。お分かりになりますか。そこら辺から先は資料がないのです。資料がないというのは、短期間のin vitroの成績で耐性菌の発現頻度は低いとか、海外のもので結核菌に対するリファンピシンの感受性が落ちているとか、短期的な視野ではなくて、もっと長期的に心配されることではないのですかということです。

 逆に言いますと、これを使い始めてリファンピシンの結核菌に対する感受性率が低くなった場合、これをやめようかとかという議論までされているのかと。そこまで考えて通そうとしているのかというのが私の質問です。結構、耐性菌というのは国防に関する問題なのです。

○吉田部会長 17ページの上の段落の最後に、例えば「リファマイシン系抗菌薬と本薬との交差耐性について、引続き情報を収集し、得られた情報は医療現場に適切に提供する必要がある」と書いてありますが、こういうことではなくて、ここにもし何があった場合は、こうするとかということが、国としてもっとあってもいいのではないか、ということですね。

○清田委員 今、歴史的に見て、とても責任ある御説明をしていると私は思っているのです。歴史的に見てですよ。これは是非、議事録に残していただきたいのですが、私はこれは反対です。というのは、リファンピシンはとても大事に、この国では使っているではないですか。なぜかというと、耐性化がすぐ起こるからなのです。特に結核に対してです。これが一番肝なのです。これを決めた厚労省の方々の考え方というのはすごく優れた発想なのです。それを崩すという考え方があったのだというのをお忘れになっているのかどうか、まず一つあります。

 ほかに治療薬や方法があればそれでいいではないかとなぜ考えないのか。これも私には少し不思議です。この会議は歴史的に見て、この薬を通したのがどういうふうに歴史的かということを振り返ってくれるかどうか分かりませんが、私はとても心配なところだと思っています。ですから、ある程度リファンピシンの耐性化が進んだ場合、この薬までストップするのか。しかし、ストップするに当たってその根拠が要りますよね。この薬のせいなのか。あとになってそれが議論になった場合、誰にもそれは説明つきませんよね。そこまで責任を持たれて発言されているのかということです。

○医薬品医療機器総合機構 我々としては、耐性菌のことを軽く考えていたわけではありません。現時点で得られている情報を基に、耐性に対する評価をします。今後の対応に関してですが、市販後の調査の計画として、本薬に対する耐性菌が増えているかどうか、それに伴ってリファンピシンに対する耐性菌が増えているかどうかと、申請者に今後情報を収集するように指示しているところです。

○清田委員 これを通す前に、in vitroの成績が少し足りないのではないですかというのが私の意見です。あとになって申請した後に、申請者に調査させるという話ではなくて、耐性獲得関係の専門家はたくさんいますから、その人たちの意見を聞いたのですか。よく分かりませんが、これは耐性の発現頻度が高いのではないかと私は思っていますので、これをもって良しとするというのは少しいけてないですよね。そう思いますけれども、どうでしょうか。

○医薬品医療機器総合機構 専門協議でご意見を伺いました。

○清田委員 専門協議とかではなくて、リファンピシンの感受性が落ちてからでは遅いのですよ。遅いのです。後戻りできないですよ。ですから、これはあなた方の責任はすごく重大だということです。私もこの会議に出ていてすごく重大です。ですから発言しているのですよ。

○関水委員 今の議論で、カナマイシンとリファンピシンは全く違う抗生物質だということを理解されていますか。それは先ほど鈴木先生の話のときに、余りクリアではなかったので指摘しますが、カナマイシンとリファンピシンの作用は全く違います。従来はカナマイシンを使っていたということですが、それに比べて、リファンピシンは有効であるのかが問題だと思うのです。カナマイシンで耐性になってしまって、どうしても治らないというものについて耐性菌が出たときにリファンピシンを使えば治るかもしれないというのであれば、それはひとつの論理だと思います。その点は全くここには書いていません。そこを明らかにすれば、つまりカナマイシンが耐性になって効かなくなったものについて、リファンピシンを使うということはありうる議論だと思います。リファンピシンをわざわざ新たなものとして、新薬としてこれを認めるというわけですが、何でそんなことをするのかを明らかにするべきです。

○医薬品医療機器総合機構 カナマイシンですが、医療現場で使用されていることは事実だと思うのですが、実際は肝性脳症に対する効能を有しておりません。ですから、比較をすること自体があまり意味のないことと考えております。

○関水委員 ちょっと私が間違えていたようです。ラクチトールというのは何ですか。ラクチトールの化学構造は何ですか。

○医薬品医療機器総合機構 ラクチトールは合成二糖類というものに分類されて、抗菌薬ではありません。

○関水委員  カナマイシンを使えることを示した例はないのですね。確認させてください。

○吉田部会長 例がないわけではなく、過去の使用例はそこそこあると思います。現場の考え方として、未承認であっても、ほかに有効な治療手段がなかったから、とにかく腸内細菌をインアクティブにしようということで使っていました。

○関水委員 清田先生も今、言われましたが、なぜリファンピシン誘導体を新しくここで出してきているのかという論理が明らかになれば良いのではないですか。なぜカナマイシンを使わなかったのですか。

○医薬品医療機器総合機構 それは毒性の問題で、カナマイシンは腎障害が特徴的に認められるということもあったので、腸管であまり吸収されない特徴を持つ本薬で、より安全性で優れているというデータが示されるのであれば、本剤のほうがより良いのではないかと。

○関水委員 本剤は経口ですか。

○医薬品医療機器総合機構 はい。

○関水委員 カナマイシンも経口ですよね。

○医薬品医療機器総合機構 はい。

○関水委員 経口でないと効かないわけですよね。その点でわざわざリファンピシンというのが出てくるのかが問題です。リファンピシンは腸管吸収されいろいろ問題を起こしうるわけです。ですから何で、こんなところでリファンピシンが出てくるのかというのは、疑問に思います。腸管吸収のないカナマイシンを使えばいいのではないですか。

○吉田部会長 議論が思わぬ方向に展開してしまって、なかなか収拾が難しいのですが、カナマイシンの話について整理すると、カナマイシンは世界的に見て標準治療でも何でもなく、エビデンスもありません。従って、腎障害だけが出てくるだけで、期待される効果が出ないのではないかと言われたら、そうかもしれないのですよ。実際問題として現場で使われていましたが、劇的に良くなったという治療成績があるわけでもないし、経験的に使われていたという背景があるだけです。

 一般的に、がんや慢性の肝障害をベースにした肝性昏睡の患者さんは予後が非常に悪いので、様々な治療をやっても結局は亡くなる方がほとんどです。ですから、実際問題として治療が劇的に効いてよかったねというケースはかなり限られており、非可逆的にどんどん進行する場合がほとんどです。一方、急性に高度の肝障害がどんと来たことで肝性昏睡になり、血漿交換や薬物療法で良くなることもありますが、その場合は、肝臓の病勢も収まっていますので、肝機能が戻ったために治ったのか、薬が効いたために死なずに済んだのか、なかなか判断が難しくなります。

 そういう意味で言うと、肝性昏睡については、これまでエビデンスがなかなか取れないところで、いろいろな治療が行われてきたと言わざるを得ませんが、その中で、世界的にコンセンサスが得られる治療としてリファマイシン系の抗生剤の話が出てきて、それを学会としても申請したいということで今回の審議に至ったわけです。

 ですから、本件を議論する場合、有効性は元よりですが、エビデンスレベルとか、広く使われているかどうかということも重要な視点になろうかと思われます。従って、それを抜きに話してしまうと、あれでもいいではないか、これでもいいではないかという話になって、収拾がつかなくなります。ということで、今のカナマイシン等の話はなしにしたいと思います。

 もう一つ清田先生からのご指摘で、同じような系統の薬なので、リファンピシンに対して交差耐性を引き起こす可能性が懸念されるのではないかという点につきましては、「vitroのデータが一体どうなっていて、どれぐらいのチャンスで起こっているのか、起こらないのかを明らかにしてからでないと承認作業に進めないのではないか」という清田先生のお考えはもっともだろうと思われます。ですから、ベースラインとしてどれぐらいのことが明らかになっているのか。単に、疫学的な調査だけで、心配ないから大丈夫だと言っているレベルなのか、そうではなくて細菌学的解析でも心配がないレベルなのかを明らかにしておく必要はあると思います。世界標準ということならば、恐らく日本だけではなくて各国で試験や調査がなされているでしょうから、この辺のデータをあたることは可能だろうと思います。

そこで、申請者に対して、例えば、次回の部会開催までに、交差耐性の可能性について基礎的なデータを示して頂き、その確率がどれほどなのか、あるいは可能性がほとんどないと考えていいならば、その根拠を明らかにしてほしいということを伝えて頂くということで如何でしょうか。そこのところのリスクが全然分からないで議論しているだけだと、危ないのではないかと言えば、そうかもしれませんという話になってしまって、全然進まない。

○清田委員 材料が足りないのです。それを決める材料が足りないと思います。ですから、本当に慎重にして、ここはとても大事なところだと思っていますので、海外が使っているからというのは理由にならないです。海外はバチャバチャ使っているから、今カルパペネム耐性腸内細菌はバチャバチャ出てきているのです。日本もあるのですが、それほどでもない。日本の方は歯止めが効いているからです。せっかくアクションプランまで出されているわけですから、ここは少し慎重になって構わないと思いますが。歴史的な会議にならないように願っています。よろしくお願いします。

○吉田部会長 あすか製薬というのが、どれぐらい体力があるのか分かりませんが、例えば、耐性が出やすくて、しかも、海外でワンワンと使われているのだったら、耐性菌に関する情報も出ているだろうし、そういったことを含めて、要するに、我々が判断できる情報が欲しいのです。

 海外で使えるのだから、つべこべ言わずに行ってしまえという考えもあるかもしれませんが、リファンピシンに関して慎重に対応している厚労省がそんなことで良いのか、と指弾されても具合が悪いということもありますので、次回までに資料の収集をお願いしたいのですが、できますか。

○医薬品医療機器総合機構 どれほど情報が集まってくるかというのは現時点で分かり兼ねる部分はあるのですが、リファンピシンとの交差耐性の可能性、どれぐらい出やすいかというのもリファンピシンと比較したようなデータがあれば、そのデータも必要だということですね。

○関水委員 リファンピシンとの交差耐性が出るのは当たり前です。

○医薬品医療機器総合機構 出やすさということだと思っているのですが。

○関水委員 今問題になっているのは、耐性変異出現の頻度と交差耐性の有無です。本剤に対する耐性菌がリファンピシン耐性になるのは当然のことだと思います。

○医薬品医療機器総合機構 現時点で提出されている情報では、耐性のメカニズムとしては、リファキシミンとリファンピシンは似ているのではないかということは言われております。

○関水委員 その点についての情報を得ても、進展はあまりないと思います。リファンピシンは、細菌のRNAポリメラーゼに結合して、増殖を阻害することがわかっているわけですが、リファンピシンの誘導体である本剤がそのようなメカニズムの抗菌剤であることは十分予想されることであり、それが示されたからと言って問題が解決することにはなりません。

 今問題になっているのは、耐性菌の出現頻度、特に人が服用したときに耐性菌がでてくるのかを明らかにすることが必要です。それを検証する実験は簡単なはずです。飲んで、便からリファンピシン耐性菌がどれぐらい出てくるかというのは直ぐにでも分かるわけなので、データは当然出すべきです。

○医薬品医療機器総合機構 結核の人が本剤を投与されるということが、どれぐらいあるかが分からないところなので。

○吉田部会長 腸内細菌がどれぐらいの確率で耐性菌を起こして、結核菌がどういうふうになるかということまではなかなか把握できないということですね。

○医薬品医療機器総合機構 そうなのです。

○吉田部会長 それは確かにそのとおりです。しかし、結核菌にまではとてもとても辿り着くような話にはなりませんよということだったら、それはそれでいいのです。

○清田委員 ただ歴史的に見て、我が国の厚生行政はリファンピシンを制限したことで、あれがすごく画期的だと評価されているのです。これはよく知っておくべきだと思いますよ。以上。

○医薬品医療機器総合機構 はい。

○吉田部会長 ですから、結核菌の耐性にまで影響するリスクがどれぐらいだとか、影響するとすれば、どの様な状況が想定されるのか。例えば結核の患者が肝性昏睡になって、という状況にでもならないと、そういうふうなストーリーにならないのかどうか。あるいは、一般論としてリファンピシン耐性菌が出現しても結核菌にはほとんど影響が及ばない、という話になれば、それはそれでもいいので、そういったところを教えてほしいのです。難しい注文ですか。

○審査管理課長 今の御議論を聞かせていただきまして、どれだけのことができるか分からないですが、一度引き取らせていただきまして、我々のほうでも清田先生とも御相談させていただきまして。

○吉田部会長 それと、結核感染対策の立場から疾病対策課のご意見も伺っておいて下さい。よろしくお願いします。

○審査管理課長 我々のほうでも、専門の部署、それから学会等の御意見を聞けるかどうか分かりませんが、そういうことも含めて考えてみたいと思います。

○吉田部会長 部会としては、不安を抱えたまま承認したくないということなので、その辺もご理解とご協力をお願いしたいと思います。例えば、疾病対策課の方から結核感染対策上、全く心配は要らないというコメントを頂けるのであれば、それはそれでもいいのです。少なくともそういった何らかの根拠を示して頂き、我々が熟慮した上で決めたということであれば、全く問題にはならないと思います。一応、本件は保留にして、次回にそういうデータを頂いた上で、もう一度議論するということにしたいと思います。よろしいでしょうか。

○鈴木委員 継続審議にするということですね。

○吉田部会長 そういうことですね。保留というのは、今は判断しないで次回にいろいろと情報を頂いた上で、もう一度議論したいということですから。

○鈴木委員 部会長もおっしゃっていますが、肝性脳症は亡くなる病態です。肝硬変の三大死因は、昔から癌と、食道静脈瘤の破裂と、肝性脳症です。臨床家としては、今まではカナマイシンを使っていたわけですが、効くものは何でも使って、取りあえず乗り切らせて、救命するということをずっとやってきたので、何で薬が変わってしまったのかは別にして、そういう臨床現場の実践は重視すべきです。耐性の専門家と同時に、消化器、肝蔵の臨床家の意見も是非聞いていただきたいと思います。

○吉田部会長 学会の要望もありますから。現場として適応が欲しいということは間違いないのだと思います。ですから、できるだけ早くに情報を収集していただいて、結核菌との関係と、耐性菌の出方、耐性菌が結核菌に及ぼす影響、あるいは我が国のリファンピシンに対する方針との齟齬にならないかということについて、何らかの根拠なりコメントを示して頂ければと思います。よろしいですか。そういうことで、本件は継続審議ということにしたいと思います。

 それでは議題4に移ります。菊池委員におかれましては、利益相反に関する申出に基づきまして、議題4の審議の間は別室で御待機いただくことといたします。

(菊池委員退室)

○吉田部会長 議題4について、機構からの概要説明をお願いします。

○医薬品医療機器総合機構 議題4、資料4-1及び4-2、医薬品ゲンボイヤ配合錠の製造販売承認可否等について、機構より御説明します。本剤は、既承認の抗HIV薬であるスタリビルド配合錠に含有されているテノホビル ジソプロキシルフマル酸塩をテノホビル アラフェナミドフマル酸塩に置き換えた配合錠です。新有効成分であるテノホビル アラフェナミドは血漿中で安定であること等を特徴とし、既承認のテノホビル ジソプロキシルフマル酸塩と同程度以上の抗ウイルス活性を示すのに必要なテノホビルの投与量を抑えることが可能です。なお、本剤は、昨年11月に米国及び欧州で承認されています。本申請の専門委員として、資料10に記載の7名の委員を指名しました。

 審査内容について臨床試験成績を中心に説明します。有効性について審査報告書45ページの表29を御覧ください。未治療の成人患者を対象とした国際共同第III相試験において、投与後48週時のHIV-1 RNA量が50copies/mL未満の被験者の割合は、本剤群93.1%、及びSTB群と記載しているスタリビルド配合錠群92.4%であり、スタリビルド配合錠に対する本剤の非劣性が検証されました。

 続いて、審査報告書48ページの表33を御覧ください。抗HIV薬によりウイルス学的抑制が得られている成人患者を対象に、本剤投与に切り替えた際の有効性及び安全性を検討した海外第III相試験において、投与後48週時のHIV-1 RNA量が50copies/mL未満の被験者の割合は、本剤群97.2%及び前治療継続群93.1%であり、他の抗HIV薬に対する本剤の非劣性が検証されました。

 小児の有効性について、審査報告書53ページの下から6行目を御覧ください。未治療の12歳以上18歳未満かつ体重35kg以上の小児患者を対象とした海外第II/III相試験において、投与後48週時のHIV-1 RNA量が50copies/mL未満の被験者の割合は92.0%でした。これらの成績に基づき、成人、及び12歳以上かつ体重35kg以上の小児患者に対する本剤の有効性は期待できると判断しました。

 次に、安全性について審査報告書56ページの表39を御覧ください。この表は、未治療の成人患者を対象とした第III相試験2試験の併合解析において、5%以上の発現が認められた有害事象及び副作用を示しており、本剤群とスタリビルド配合錠群で特段の差異は認められませんでした。また、小児の安全性について、成人と比較して、新たな安全性上の懸念は認められませんでした。

 腎機能への影響について、審査報告書57ページの表41を御覧ください。この表は、未治療の成人患者を対象とした第III相試験における腎機能関連の有害事象の発現状況を示しており、本剤群及びスタリビルド配合錠群で特段の差異は認められていないこと等から、本剤投与による腎毒性のリスクは否定できないと判断しました。これらの成績より、本剤の安全性は許容可能であるものの、腎機能障害等について、スタリビルド配合錠と同様に注意喚起する必要があると判断しました。

 以上の審査を踏まえ、機構は、本剤を承認して差し支えないとの結論に達し、本部会で御審議いただくことが適当と判断しました。本剤は希少疾病用医薬品であることから、再審査期間は10年とし、原体テノホビル アラフェナミドフマル酸塩及び製剤は劇薬に該当し、生物由来製品及び特定生物由来製品のいずれにも該当しないと判断しています。薬事分科会には報告を予定しています。なお、こちらも先ほどと同じなのですが、審査報告書65ページの総合評価において、本品目が希少疾病用医薬品である旨を記載していませんでしたので、適切に修正の対応をいたします。以上、御審議のほどよろしくお願いします。

○吉田部会長 ありがとうございました。それでは、委員の先生方から御質問、御意見をお願いします。基本的には、改良と言っては何ですが、薬ですよね。ですから、どういうメリットになっているのかということだけちょっと摘んで教えていただけますか。

○医薬品医療機器総合機構 既存の既承認のスタリビルド配合錠ですが、投与開始前のクレアチニン・クリアランスが70mL/分以上であることを確認する必要があります。

○吉田部会長 腎機能ですね。

○医薬品医療機器総合機構 はい、腎機能です。本剤の場合は、30mL/分以上であれば投与できるというのが、一番の特徴だと考えています。

○吉田部会長 ですから、腎毒性を軽減できるということですね。

○医薬品医療機器総合機構 腎毒性が明らかに少ないというデータは現時点では得られていないのですが、本剤を軽度や中等度の腎障害の患者に対して投与しても、安全性に特段の問題はなかったという成績が得られています。

○吉田部会長 ところにメリットがあると。失礼しました。ありがとうございます。

○関水委員 いや、何のメリットがあるかは説明されていないと思います。この新しい薬が出てくると、何かメリットがあるのですか。今、腎障害を起こすことがないということについては何のデータもないということを前提にすると、この薬を使うメリットは何もないということになりませんか。

○医薬品医療機器総合機構 腎障害を有したHIV感染症患者に対する試験は実施されていて、そこで安全性で特段の問題はないという成績が得られたので、既存薬のスタリビルド配合錠よりも、投与前に腎障害が悪かった人に対して本剤を投与することは可能だろうと判断しています。

○吉田部会長 使える患者さんの枠が広がったということですが、この薬自体が腎障害を起こすわけではない、かどうかは分からないということですね。

○関水委員 法律、政令があるから、そういうことを承認しろと聞こえているのですが。実際には、この薬は腎障害に対して影響が軽微であるという証拠は何もないと。ここまではよろしいですね。

○医薬品医療機器総合機構 はい。

○関水委員 いいのですね。

○医薬品医療機器総合機構 はい。

○関水委員 そうすると、当然するべき質問は、なぜこの薬を新しく承認する必要があるのか。あるいは、何のために、使う医師はそれを使うのかです。

○医薬品医療機器総合機構 スタリビルド配合錠では、投与開始前にクレアチニン・クリアランスが70mL/分以上の人しか投与できません。本剤は、それよりも低い人に対しても投与した経験があるので、投与できるというのが一つのメリットになっています。

○関水委員 その前の薬で試験をしたらどうなるのですか。それについては全くデータを示さず、こちらをやったら特段の問題はなかった、よってこちらを新しい薬として承認しようということになりますが、この論理は認められません。

○吉田部会長 なるほど。

○医薬品医療機器総合機構 既存のスタリビルド配合錠で新たに試験をやれば、もしかしたら使える可能性はあるのかもしれませんが、有効成分の特徴として、本剤のほうがスタリビルド配合錠よりも投与量が少なくて、血中濃度も既存のテノホビル ジソプロキシルフマル酸塩を投与したときのテノホビルの濃度よりも低く維持ができるという特徴を持っている薬剤であり、本剤の一つの特徴は示されているのではないかと考えています。

○吉田部会長 本剤は腎排泄なのですか。

○医薬品医療機器総合機構 はい。

○吉田部会長 両方とも。スタリビルド配合錠そのものは。

○医薬品医療機器総合機構 そうですね。

○吉田部会長 ですから、片方が肝臓で、とかという話ではないのですね。

○医薬品医療機器総合機構 はい。

○吉田部会長 同じような腎排泄なのだけれど、片方に腎機能障害があると、前のものは恐らく血中濃度がドーンと上がって。

○医薬品医療機器総合機構 そうです、はい。

○吉田部会長 毒性が出てしまうのだけれど、今回のは血中濃度が上がらず安定だったというわけですね。

○医薬品医療機器総合機構 長期投与時に腎障害が少ないことが期待されていると。

○吉田部会長 でも、前の薬を使ってみて、本当にそういうデータがあったのではない、最初から患者さんを除外してしまえば、前の薬も本当は使おうと思えば使えたのではないかというのが関水委員のお話ですね。

○関水委員 そうです。それで、それを期待する学術的な、この構造上の、この薬の剤型とかそういうものが、薬の化学構造から見て期待されるという論理が何もないのです。こちらのほうが、より有効だということが期待されるという証拠があるのですか。

○医薬品医療機器総合機構 有効性に関しては、非劣性が検証されているところで有効性が示されたと判断しています。

○関水委員 そのような非劣性などを議論しているのではなくて、この薬の有効性です。ですから、前の薬に比べて、腎障害の患者さんに与えると、こちらのほうが非常によいのだという説明をしていますが、それを支える科学的な証拠は何もないと私が断言したら反論できますか。

○新薬審査第四部長 先ほど、スタリビルド配合錠を、クレアチニン・クリアランスがもう少し低い人に投与したらどうなるのかというのは、試験をやっていないので不明です。

○吉田部会長 何とも言えないということなのですね。

○新薬審査第四部長 クレアチニン・クリアランスが70mL/分以下の患者に対してスタリビルド錠での検討をやればよかったではないかと言われても、そのような患者さんに積極的にスタリビルド錠を投与しなさいというデータを私どもは手元には持っていません。ただ、本剤の場合ですと、もう少し腎機能が最初から悪い方でも投与しても問題はなかったというデータはあるというところになります。

○吉田部会長 では、最初の、スタリビルド配合錠は腎機能の悪い人には使っては駄目といった根拠はどこにあったのですか。

○医薬品医療機器総合機構 先ほど部会長も言われていたように、テノホビルの血中濃度が非常に上がるというところで注意喚起されています。

○吉田部会長 分かりました。

○医薬品医療機器総合機構 本剤は、テノホビル ジソプロキシルフマル酸塩を投与したときよりもテノホビルの血中濃度が10分の1ぐらいに下がるというところの確認は取れていますので、そういう差別化はできるかと考えています。

○吉田部会長 という差のようですよ、先生。いかがですか。

○関水委員 この新しい薬は腎臓障害が軽減できると期待されるという結果があれば良いのですが。

○医薬品医療機器総合機構 軽度から中等度の腎機能障害を伴っているHIV感染症患者に投与したときの安全性データですが、それは審査報告書の。

○関水委員 いや、私が言っているのは、既存の薬よりもこちらのほうが優れているという証拠ですよ。それは全然ないのだけれども、もう1個承認してもいいのではないか、という話でしたらそれはそれで良いのです。前の薬よりも優れていることを示すエビデンスがあって、それは腎機能の患者を救えるので新しく承認しましょうと、それに賛成してくださいと言われるから、そのようなエビデンスはどこにあるのか、と私は質問するのです。

○医薬品医療機器総合機構 血中濃度の説明であればデータは記載していますが、それでもよろしいでしょうか。

○関水委員 よろしいですよ、それはどこですか。

○医薬品医療機器総合機構 審査報告書42ページの6.R.4で腎機能障害者における薬物動態についてという点を議論しています。テノホビル アラフェナミドを重度の腎機能障害の被験者に単回経口投与したときに、腎機能が正常の被験者と比べてテノホビル アラフェナミドの血中濃度は2倍程度の上昇率であったというところのデータが得られています。

一方、テノホビルの血中濃度は、腎機能正常被験者と比べて6倍程度上がっているというデータが得られていますが、これは、既存のテノホビル ジソプロキシルフマル酸塩を腎機能正常の被験者に投与したときのテノホビルのばく露の範囲内であり、本剤のほうが既存のテノホビル ジソプロキシルフマル酸塩に比べてばく露の程度は低くなっているというところを記載しています。

○吉田部会長 どこに書いていますか。

○医薬品医療機器総合機構 ここに書いてあります。

○吉田部会長 6.1倍ね、はい。

○医薬品医療機器総合機構 はい。

○吉田部会長 よろしいでしょうか。それぐらいの差があったからということなのです。腎機能の悪い人にも使えるのではないかということで、それをメリットとして評価しましたと。よろしいですか。

○奥田委員 今の議論に関してちょっと確認になるのですが。結局、スタリビルド配合錠を投与したときのテノホビルのピーク時の血中濃度に比べて、今回のゲンボヤ配合錠を投与したときのテノホビルのピーク濃度が低くなるということで、要するに腎機能が悪くなって血中濃度が上がっても、そのピーク濃度が比較的上がりにくい、そのために安全性が確保できるだろうという理屈で開発されたというのはよく分かります。ただ、それをデータとして、ではPKでもいいとは思うのですが、腎機能が例えば30mLの患者さんの今回の薬のピーク濃度と、それからスタリビルド配合錠で腎機能が70mL/分の患者さんのピーク濃度と比較したときに、大体比較できるような値になってくるのか、それによって腎機能障害を起こしにくいという、その辺りの指標が比較できるのではないかと思うのですが、その辺についてはいかがでしょうか。

○医薬品医療機器総合機構 これも先ほどの審査報告書42ページに記載しています。2段落目の下から4行目です。「これらの軽度及び中等度の腎機能障害を伴う」という所になります。ここで重度の腎機能障害被験者で認められたテノホビルのばく露量は、腎機能正常の健康成人やHIV感染症患者にテノホビル ジソプロキシルフマル酸塩300mgを投与したときのAUCの範囲内であったというところの確認は取れています。

○奥田委員 なので、血中濃度は腎機能30mLの患者さんでも許容範囲内であったという理解でよろしいでしょうか。

○医薬品医療機器総合機構 はい、そういうことです。

○吉田部会長 ほかにありますか。よろしいでしょうか。それでは議決に入りたいと思います。なお、奥田委員、山口委員におかれましては、利益相反に関する申出に基づきまして、議決への参加を御遠慮いただくことといたします。お諮りします。本議題について承認を可としてよろしいでしょうか。

 御異議がないようですので、よろしければ承認を可として、薬事分科会へ報告とさせていただきます。別室で待機されている菊池委員をお呼びください。

                                 ( 菊池委員入室)

○吉田部会長 それでは議題5に移ります。議題5について事務局からの説明をお願いします。

○事務局 議題5、資料5、レナリドミド水和物を希少疾病用医薬品として指定することの可否について事務局より御説明いたします。配布資料の機構による評価報告書のタブをお開きください。報告書1ページ中段を御覧ください。申請者はセルジーン株式会社、予定される効能・効果は、再発又は難治性の成人T細胞白血病リンパ腫です。

 2ページの対象患者数です。成人T細胞白血病リンパ腫(以下ATLLと略す)の総患者数は約2,000人と報告されており、患者数は5万人未満という基準を満たしているものと考えております。

 医療上の必要性についてです。ATLLにおいて無治療経過観察が基本とされている一部を除く病型は、治療介入の対象となっております。化学療法未治療のCCR4(CCchemokine receptor)の陽性のATLLに対しては、モガムリズマブの投与等が行われ、CCR4陰性例の初期治療としては、多剤併用化学療法等が行われますが、いずれの場合でも多くは奏効せず、再発良性腫瘍を経て、予後不良となることから、モガムリズマブ不応の患者及びCCR4陰性の患者に対する新たなATLL治療薬の開発が望まれております。以上より、本剤の医療上の必要性は高いと考えております。

 開発の可能性についてです。本邦では、化学療法歴を有する再発又は難治性のATLL患者を対象に、本剤の有効性及び安全性を検討することを目的とした国内第II相試験が実施中であり、当該試験の主要評価項目とされた奏効率は42.3%でした。以上より、本剤の開発の可能性は高いと考えております。以上より、本品目は希少疾病用医薬品の指定の3要件を満たしていると考えております。よろしく御審議のほどお願いいたします。

○吉田部会長 委員の先生方からの御質問、御意見をお願いいたします。疾病頻度、医療上の必要性、CCR4陽性だけでなく、マイナスの人たちに対する期待もあるということ。開発の可能性についても、近々申請予定と聞いておりますので、非常に高いということだと思うのですが、よろしいですか。3条件そろっていると思います。よろしいですね。議決に入ります。なお、山口委員におかれましては、利益相反に関する申出に基づき、議決への参加を御遠慮いただくことといたします。お諮りいたします。本議題について、指定を可としてよろしいでしょうか。

 御異議がないようですので、指定を可とし、薬事分科会に報告とさせていただきます。

 それでは報告事項に移ります。事務局から説明をお願いします。

○事務局 報告事項について御説明いたします。議題1、医薬品サイラムザの一部変更承認についてということで、資料6です。

 本剤は、ヒト血管内皮増殖因子受容体-2に対する免疫グロブリンG1サブクラスのヒト型モノクローナル抗体であるラムシルマブを有効成分とする抗悪性腫瘍剤です。現在は、治癒切除不能な進行・再発の胃癌及び治癒切除不能な進行・再発の結腸・直腸癌について承認されております。

 今回は、日本イーライリリー株式会社より、切除不能な進行・再発の非小細胞肺癌の効能・効果及び用法・用量を追加する一部変更承認の申請がなされました。機構における審査の結果、本品目を承認して差し支えないと判断しました。

 資料7で、医療用医薬品の再審査結果です。再審査については資料7-1から資料7-5まであります。資料7-1で、一般的名称はセチリジン塩酸塩、販売名はジリテック錠です。今回の再審査に係る効能・効果は1ページの承認の効能・効果のアンダーラインの付いている所のとおり、小児のアレルギー性鼻炎と、じん麻疹皮膚疾患に伴う掻痒です。資料7-2で、一般的名称はルリオクトコグ アルファ、販売名はアドベイト静注用です。効能・効果については1ページの承認の効能・効果にあるとおり、出血傾向の抑制になっています。資料7-3で、一般的名称はバルガンシクロビル塩酸塩、販売名はバリキサ錠です。効能・効果は1ページの承認の効能・効果にあるとおり、サイトメガロウイルス感染症です。資料7-4で、一般的名称はホスアンプレナビルカルシウム水和物、販売名はレクシヴァ錠です。効能・効果は1ページにあるとおり、HIV感染症となっています。資料7-5で、一般的名称は肺炎球菌ワクチン、販売名はニューモバックスNPです。承認の効能・効果は感染の発症予防です。

 こちらの品目については、製造販売後の使用成績調査、特定使用成績調査等に基づき、再審査申請が行われ、審査の結果、医薬品、医療機器法第14条第2項第3号に掲げる承認拒否事由のいずれにも該当しないこと。すなわち効能・効果、用法・用量の承認事項について変更の必要はないカテゴリー1と判定したものです。

 報告議題の3番目は、医療用医薬品の承認条件についてです。資料8です。イトリゾールカプセル50ほか7品目に係る承認条件に係る報告書の評価です。2ページで、今回の対象となる承認条件は承認条件欄にあるとおり二つあります。一つは、爪カンジダ症等に対するパルス療法の検討。二つ目は、爪白癬に対するパルス療法の市販後調査です。

 3ページで、承認条件が付与された経緯です。1.の3行目ですが、本剤については、平成11年6月8日に、爪白癬、爪カンジダ症等の効能・効果で追加承認されています。次の段落で、海外では爪真菌症に対してパルス療法が承認されていたことから、本邦でもその療法の導入の検討を行う必要があると判断し、パルス療法の用法・用量に関する承認条件がまず付与されたところです。3段落目で、爪白癬についてはパルス療法が平成16年2月19日に承認されており、その段落の最後の文章ですが、市販後調査の承認条件が新たに付与されました。次の段落ですが、今般イトラコナゾールの承認取得者から、この二つの承認条件に関する検討結果が提出され、機構において評価されましたので御報告いたします。

 5ページの3.機構における評価の概要です。爪カンジダ症等におけるパルス療法についてです。5ページの一番下の文章のとおり、爪カンジダ症を対象に、パルス療法の臨床試験が実施されたのですが、安全性について特段の問題は認められなかったものの、パルス療法の有用性については確認できませんでした。

 6ページでは、これを踏まえて企業は症例規模を拡大した追加試験の実施可能性について検討しましたが、爪カンジダ症等の患者数は少なくて、特定の医療機関に患者が集中するケースも希であることから、追加試験の実施可能性は低いと判断し、機構はこの企業の説明は受入れ可能と判断しております。

 二つ目の承認条件については()です。市販後調査ですが、機構は本調査の結果からも、安全性について特段の懸念は認められていないと考えております。以上から総合評価にあるとおり、これら二つの承認条件については対応されたものとして判断しております。以上です。

○吉田部会長 適応拡大が1件と、カテゴリー1の再審査結果が5件、それから承認条件の解除が1件です。

○鈴木委員 確認をします。議題1のサイラムザ点滴静注液ですが、先般の中医協において、当会の中川副会長が、効能・効果、適応の拡大をするときには薬価を見直すべきだという発言をしております。このように、限られた適応で、高い薬価を取得しておいてから、後から適応を拡大していくというやり方が果たして適切かという趣旨です。これについて事務局に検討するようにという発言もしておりますけれども、それについて審査管理課か、機構か、どのような状況かを分かっている範囲で教えてください。

○審査管理課長 審査管理課です。効能の追加については、試験の進捗状況が効能によってかなり異なっていることもあります。当初、新薬として承認された後、何か月か、あるいは何年かのインターバルを置いて効能の追加が行われることについてはやむを得ないものと考えております。

 御指摘の点については、私どもは保険局とも相談をさせていただいております。今現在、この場で具体的なことを申し上げる段階ではありませんけれども、承認審査に当たってどういうことを考えていくかについては検討させていただいております。

○鈴木委員 皆さんの多くの方は、他の薬食審にはお出になっていないでしょうが、私は他もかなり出ていて、前回の医薬品第一部会でも二つが継続審議になっています。一つは、2回連続で継続審議になっており、以前に比べて審議が慎重かつ厳密になってきている気がしています。非常に高額な薬剤が出たために、そのような状況になっているのだと思います。従来は薬食審はリスクベネフィットを議論する場であって、コストベネフィットを議論する場ではないと言われましたけれども、それだけでは済まされず、責任を問われかねない状況になっているのではないかと思いますので、是非協議を進めていただきたいと思います。

○関水委員 サイラムザについて、図1のデータでは、治療効果はないことになります。治療効果が得られたのはOSの1次検定で、p値が0.02、これだけなのです。このようなものについては、効いていない薬と考えるべきでないのですか。

○新薬審査第五部長 新薬審査第五部です。ただいまの御指摘ですけれども、先生が御覧になられた図1に関しては、PFSの主解析の結果です。その後ろのほうの海外臨床試験の第III相試験のデータを見ると、表6、図2でOSの解析結果、先ほど言及を頂きましたことで、海外の臨床試験の成績としてOSが有意に延長しているという結果が得られております。それにプラスして、国内のほうではPFSの解析結果が出されておりますけれども、表5と、図1という結果になっております。これらの結果を合わせて、有効性が認められるのではないかとこちらでは判断しております。

○関水委員 これを見て有効性があるかどうかは主観的な解釈だと思います。表5では、P値が0.5となっています。これは、むしろ効いていないということを示していると言うべきではないのではないですか。この結果は制がん剤としては治療効果を示していないと解釈するべぎでないでしょうか。

○吉田部会長 表5は国内データで、表6が全体のデータなのでしょう。

○医薬品医療機器総合機構 部会長から御説明いただいたとおり、表5については国内試験になります。国内試験ですので、多くの患者を組み入れることができないこともあります。この試験の目的としては、PFSのハザード比が1を下回ることを90%の確率で保証することを目的として症例数を設定しております。

 御指摘のとおりハザード比の信頼区間は広くなっておりますが、この試験は統計学的有意差が示せるように計画された試験ではありませんでした。

○関水委員 分かりました。そのことははっきり明記すべきです。これを見て、よく問題になるのですけれども、表5、あるいは図1についてしっかり考察しないで、もっと数をやったら有意の差が出てきたと、有意の差が出るまで頑張ったのだという、そういう経緯が実際にはあるわけです。その点を明確に示さなければ誤解を生むと思います。

 これはN=80程度でやったら、治療効果について有意の差が出ないという薬なのだと思います。まず、それをみんなが理解すべきだと思うのです。N数を増加させて、600にしたら差が出てきたということについて明示しないと、一般の方は誤解します。

○医薬品医療機器総合機構 御指摘のとおり、有効性が示された試験は、海外第III相試験になります。

○関水委員 有効性が示されないところの結果の記述において、フェアに、これでは有効性は示されなかったと書けばいいのです。

○吉田部会長 国内データを出すから駄目なのだ。出す意味は全くない。統計学的にも評価に耐えられないデータを出して、根拠がなくて不安だけ煽るというのは本当によくない。

○吉田部会長 ヒトに投与する薬なら、日本人だろうが、外国人だろうが基本的には関係ないのです。米国などは、西洋もいれば東洋もいれば黒人もいるという国ですが、白人のデータでなければ駄目だという人はいません。しかも、白人ならまだしも、日本人という、これまた人種的に定義の曖昧な集団を取り出してきて、安心しようとしているのだか、心配しようとしているのだか分からないけれども。ちょっと言いすぎましたが、そういう限られた対象例の、しかも統計学的に何の根拠にもならないような成績をことさら持ち出してきて、わざわざ不安材料のように出してくるような書き方はよくない。参考データだったらいいですよ。市販後の参考にしてくださいと。それを小さく、新聞で言えば隅のほうに、日本人ではこうでしたというのならまだいいのですが。

○医薬品医療機器総合機構 審査報告書の14ページを御覧ください。機構の審査方針として、海外第III相試験が最も重要な試験であると判断したことはこちらに記載しております。

○審議役 機構の新薬審査担当の審議役です。いつも、特に抗がん剤の分野では、全集団と日本人集団との一貫性ということが問われるケースが数多く出てきます。ただ、基本的には私ども日本の医薬品の規制当局として、日本人の健康を守る責任があります。そこのところのデータを全く見ずに、この医薬品はオーケーですというのはなかなか言いにくいということがあります。ただし、日本人集団は症例数が限定されているということもありますので、その辺のところの説明については、誤解を招かないようなやり方を考えていきたいと思っております。

○吉田部会長 まあ議論し出したらきりがないので。

○関水委員 今、説明があった点ですが、日本人について調べて、それでは差がなかったわけです。だから、日本人についてはひょっとしたら効かないかもしれないと普通の人は思うわけです。この点はどのように考えるのですか。数を多くしたことによって有意差が出たのか、それとも日本人だから差がないのか、この点は明らかではないと思いますがいかがでしょうか。

○審議役 理想的には、もっとたくさんの日本人の症例数を入れた上で試験を行うというのがいいと思うのですけれども。

○関水委員 私はそんなことを伺っているわけではなくて、現在この結果を薬事審議会の結論として、どうやって示すかなのです。なぜ日本人には効かなかったと書かないのですか。

○審議役 今のように一貫性が認められていないということが、直ちに日本人で効かないということを意味するというふうには考えておりません。そこは、どうしてそうなったのかということを、いろいろな要素を考慮して、慎重に評価をするという、そういうシグナルであると審査側では考えております。

○関水委員 効いたものだけ適当にピックアップして、都合が良いものだけ結果がポジティブだったと書くのは科学態度とは言えません。なぜ日本人では差が出なかったと、ちゃんと書かないのですか。

○吉田部会長 それは違います。70例だから差が出ないのです。だって、もともと600例ぐらいで差が出るようにデザインしているので、日本人であろうと何であろうと、70例や80例では差が出ないのです。だから結論も出ない。結論の出ないものをここへ出してくるということが問題だと言っているのです。だから、最初にアイディアがちゃんとできていて、スタディデザインがあって、エンドポイントがはっきりしている試験をしたら、こういうことが科学的に証明されましたと、それはいいですよ。だけど、それに付随していろいろなサブ解析をやって、しかも、600例、1,200例のところに80例、70例ぐらいの人たちを集めてきて、解析をしたらこうでしたというのは、ほとんど意味がないと言いたいのです。

○山口委員 ここにいる先生方は、どういう根拠とか、どういうデザインで国際共同試験を設定しているかで、日本人の成績をどのように出すことを考えているかというのを、多分御理解されていないのだと思います。基本的には部会長がおっしゃるとおり数が少ないのですが、ただ傾向だけはちゃんとひっくり返らないようにしようと。それから、全体として日本人だけ変なことが起こっていないと、そういうことを証明するという、そういう基本的なデザインで考えられています。だから説明として、もうちょっと御理解いただくような説明は必要なのではないかと思います。私は、日本人の成績を出さないというのは、日本ではあり得ないのかなと。ただ、きちっと説明をして、そこはちゃんと理解していただくのが大事かと個人的には思っています。

○吉田部会長 そもそも、新薬開発では動物実験のデータを基本として臨床に繋げています。ですから人種を越えた多くのヒトのデータを解析できるのであれば、みんな一緒にして考えましょうというのが、国際治験の前提だと思っています。勿論、多少の人種間差はありますが、イヌほどは違っていないだろうと。そうしたヒトのデータを集めて、しかも国際化して、大きな数でもって、意味があるかないかを決めようとしているときに、昔の時代に逆戻りするような、そういう解釈は私にはとても理解できませんが、この件はもうやめましょう。議論していると時間がないので。他に、この報告事項の件について何かありますか。

○医薬品医療機器総合機構 先ほどの国際共同試験の一貫性の話があったかと思うのですけれども、今回については国内試験として、別途、実施された試験であり、国内試験において予め設定された目的が、ハザード比が1を下回ることですので、その点については、本試験で達成されているものと判断しております。

○吉田部会長 分かりました。

○医薬品医療機器総合機構 先ほど、国際共同試験の議論があったかと思います。今回のデータパッケージは、海外第III相試験と国内第II相試験のデータパッケージになっています。国内の第II相試験においては、ハザード比が1.0を下回ることを検討するということが事前に規定されていた仮説になります。それを満たしたので、国内第II相試験においても有効性が示唆されていると判断しております。

○吉田部会長 要するに、逆向きの結果は出ていないということが多少分かったということですね。

○山口委員 先生、これはあれなのですよ。国際共同試験の一部が表5とか図1ではなくて、国内だけでやったのが表5とか図1で、そこの目的はハザード比が1より小さく、ひっくり返らないということを、ある程度の確率をもって証明しようということを言っているだけなのです。だから、その説明がないので、多分混乱されているのだと思うのです。だから、国際共同試験の中から、日本人の成績を取り出すという話とは別です。

○吉田部会長 出してきたわけではないのだ。

○山口委員 別です。

○吉田部会長 そうすると、関水先生が言われたように、日本人だけやったら、効いているか効いていないか分からないから、よそから助っ人を頼んできて300例にしたら差が出ましたということなのですかと訊かれたら、そのとおりだという話になりますよ。

○田村委員 私は試験をやった立場なのですが。日本は、開発が遅れてグローバル第III相試験に参加できませんでした。日本だけで承認審査に耐えうる大規模試験を再度実施することは不可能であり、以前から指導を受けているように、海外の第III相試験結果を外挿、日本に導入するため、日本でも同様の小規模試験、ブリッジング試験をやって、日本の医療環境での日本人の安全性を確認する、これを一番の目的でやりました。効果については、厳密に評価するだけの患者数は無理ですので、海外試験と大きく食い違う結果ではなさそうなことを示しています。

○吉田部会長 分かりました。ベクトルが反対を向いていないということだけは分かったということですね。確かに国際共同試験における日本人に対するデータの評価というのは、いろいろなやり方があるのだろうけれども、ある程度統一的にというか、根拠のあるものにして欲しい。例えば今だったら、マイナスを向いていないだけに意味があるのだという説明があって、それでこのように出してくるといいと思うのです。それを0.5とかとやってしまうから、おかしな話になるのだと思います。他にありますか。手元の進行表がどこかへ行ってしまったのですけれども、本日はこれだけだったような気もします。そうですね。

○事務局 はい。

○吉田部会長 報告事項については、御了承いただいたものということでよろしいでしょうか。本日の議題は以上ですが、事務局から何か報告はありますか。

○事務局 次回の部会は8月5日()の午前10時から開催させていただきますので、よろしくお願いいたします。

○吉田部会長 本日はこれで終了させていただきます。御苦労さまでした。


(了)

備  考
本部会は、企業の知的財産保護の観点等から非公開で開催された

連絡先:医薬・生活衛生局 医薬品審査管理課 課長補佐 清原(内線2746)

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