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2016年10月31日 「第2回平成28年度労働安全衛生法における特殊健康診断等に関する検討会」議事録

○日時

平成28年10月31日 13:30~15:30


○場所

労働委員会会館 講堂


○議題

(1)労働安全衛生法における特殊健康診断について
  ○三酸化二アンチモンに係る特殊健康診断について
  ○3,3’-ジクロロ-4,4’-ジアミノジフェニルメタン(MOCA)
   に係る特殊健康診断について

○議事

 

○大淵職業性疾病分析官 大変お待たせいたしました。

 本日はお忙しい中、御参集いただきまして、まことにありがとうございます。定刻になりましたので、ただいまより第2回「平成28年度労働安全衛生法における特殊健康診断等に関する検討会」を開催いたします。

 本日は、大前委員が御都合により欠席されております。

 本日の配付資料について事務局から冒頭に申し上げます。議事次第がございまして、その裏側に配付資料一覧がございます。資料が1、2、3、資料2が3,3'-ジクロロ-4,4'-ジアミノジフェニルメタン(MOCA)に関するもの。それから、資料3が三酸化二アンチモンに関するものです。参考資料のほうが、参考資料1から参考資料4-2までございますけれども、このうち、参考資料3の枝番の関係、こちらが上でいう(MOCA)に関係するもの、それから参考資料4の枝番の関係、こちらが三酸化二アンチモンに関係するものとなっております。

 事務局からは以上でございます。

 それでは、以下の進行につきましては、座長の櫻井先生にお願いいたします。

○櫻井座長 それでは、議事進行を務めます。よろしくお願いいたします。

 早速議事に入るわけですが、個別の議題に入る前に、今年度の本検討会の検討内容及びスケジュールについて確認をしたいと思います。事務局から説明をお願いいたします。

○大淵職業性疾病分析官 それでは、説明をいたします。

 資料1をごらんください。前回もスケジュールを説明させていただきましたが、その後のスケジュールについて、決まったものと、あるいは予定として考えているものとございますので、御説明をさせていただきます。

 1ページ目の第1回は前回8月26日のものですので、説明は省略させていただきます。

 続いて第2回、本日1031日でございますが、本日は議題を2つ予定しています。1つめは、3,3'-ジクロロ-4,4'-ジアミノジフェニルメタン、通称MOCAの関係です。この物質の健康診断が既に特化則で規定されていますが、健康診断の項目の見直しのための検討を予定しております。

 続きまして、本日の2つ目の議題は、三酸化二アンチモン関係です。こちらは平成27年度にリスク評価がなされ、それに基づいて、ことしの8月まで約1年間かけまして、健康障害防止措置の検討がなされました。その結果を踏まえて三酸化二アンチモンの健康診断に関して、対象業務の範囲や健診の項目等について御議論いただきます。

 続きまして、裏側2ページ目でございます。第3回以降の検討会ということで、時期についてはまた今後調整させていただきますけれども、議題として予定しているものを挙げております。

 1つめは「オルトトルイジン関係」ということでございまして、8月のこちらの第1回の検討会で、オルト—トルイジンの健診項目の検討をしていただき現在も労災の業務上外の検討会が進行中でございますけれども、そちらの結果が出ましたら、できるだけ早く、健康管理手帳の検討をさせていただきたいと考えております。

2つめは「他の膀胱がん物質関係」ということで、ベンジジン、ベーターナフチルアミン等、既に特化則でぼうこうがんに関係する健康診断を実施している物質がございますけれども、先日のオルト—トルイジンの関係の検討、それから今回のMOCAの検討と関連して、健診項目の整合性を図るための見直し等をさせていただきたいと考えております。

 3つめは「その他の物質の特殊健康診断関係」ということで、上記以外の物質につきましても、健診項目の見直しを順次行ってまいりたいと考えております。これが第3回目以降の予定ということでございます。

 以上です。

○櫻井座長 ありがとうございました。

 ただいまの事務局からの説明につきまして、何か御質問、御意見がございましたらどうぞ。

 スケジュール等、よろしいようでございますので、それでは早速本日の議題の検討に入りたいと思います。

 最初に議題1、3,3'-ジクロロ-4,4'-ジアミノジフェニルメタン(MOCA)、今後MOCAと呼ばせていただきますけれども、MOCAに関する特殊健康診断についてであります。

 まず事務局から説明をお願いいたします。

○大淵職業性疾病分析官 それでは、主に資料2を使いまして、適宜参考資料も参照していただく形で、御説明をさせていただきます。

 まず、資料2の「これまでの経緯」というところから説明してまいります。

 「1 健康診断項目の設定」でございますが、MOCAは、昭和50年の労働安全衛生法施行令、特定化学物質等障害予防規則(特化則)の改正により、特化則の「特定第二類物質」及び「特別管理物質」、がん等の遅発性の健康障害を生じる恐れのある物質を特定特別管理物質ということで位置づけられ、MOCAを製造し、または取り扱う業務(以下「製造・取扱い業務」)と申しますが、これについては、特殊健康診断、具体的には業務従事者の健康診断、それから配転後の健康診断の対象とされました。

 「特化則では、MOCAの特殊健康診断に関し、MOCAによる呼吸器系の障害(腫瘍等)、消化器系の障害、腎臓の障害を予防・早期発見するため、これらに関する項目が設定された」ということで、これが昭和50年の改正で、MOCAの健診項目が設定されたという経緯でございます。

 続きまして「2 MOCA取り扱い事業場における膀胱がんの発生」。平成2712月の福井県のオルト—トルイジン取り扱い事業場の膀胱がん事案を契機としまして、オルト—トルイジンを取り扱ったことのある全国の事業場について、労働局・労働基準監督署が調査等を行ったところ、別の事業場において労働者、退職者に膀胱がんが認められ、オルト—トルイジンの取り扱い歴がない者も含まれていたため、労働安全衛生総合研究所が原因究明のための調査を行いました。

 この調査によりまして、膀胱がんに罹患した7名中5名の労働者でMOCAの取り扱い歴が判明したこと。また、MOCAが国際がん研究機関(IARC)でグループ1(ヒトに対する発がん性あり)と評価されていることを踏まえ、MOCAを取り扱ったことのある他の事業場にも健康障害防止措置を徹底するため、平成28年9月21日に関係業界に対して要請しているところでございます。

 詳しい内容は、参考資料の3-1です。9月21日付で関係団体に要請したということについて、プレスリリースをした資料を添付しております。

 続きまして「3 膀胱がんに係る特殊健康診断(オルト—トルイジン)の検討」ということですが、前回8月のことになりますけれども、平成2712月の福井県のオルト—トルイジン取り扱い事業場の膀胱がん事案を契機に、オルトトルイジンの製造・取扱い業務のリスク評価及び健康障害防止措置の検討が行われ、特殊健康診断の実施等が必要とされたことから、平成28年8月26日、第1回「平成28年度労働安全衛生法における特殊健康診断等に関する検討会」において、オルトトルイジンの健康診断項目等について検討を行いました。こちらにつきましては、参考資料3-3をご覧ください。参考資料3-3の最初にベンジジン等、既存の特定化学物質障害予防規則の健診項目を抜き出した資料をお入れしております。 その後4ページ目、5ページ目に、前回8月の議論を踏まえて先生方に御検討していただいたものを整理したものをお示ししております。

 関連して申し上げますと、参考資料3-2にプレスリリースの資料をお入れしております。オルト—トルイジン関係の政令、省令につきまして、労働政策審議会に諮問をし、答申を得たという資料です。1018日に審議会があり、諮問、答申が行われたものでございます。

 資料の2に戻りまして、2ページで「本検討会での検討事項等」ということでございますが、MOCAの特殊健康診断に関し、下記の事項について検討等を行うということで、特殊健康診断の項目について、「1 業務従事者健診の項目」、「2 配転後健診の項目」ということでございますが、その下に補足をしております。

 1としまして「現行の特化則で規定されているMOCAの健診項目には、膀胱がんに関する項目が含まれておらず、また、業務従事者健診と配転後健診で差異が設けられていない。」ということでございます。そのため、前回議論しました「化学物質に関する特殊健康診断の基本的な考え方」、本日の資料としましては参考資料2という形でお入れしておりますけれども、そちらに基づいて、MOCAの健診項目をどうすべきかということについて、本日御議論いただきたいと考えております。

 前置きとしては以上でございますが、ここで一旦、説明を区切らせていただきます。

○櫻井座長 今までの説明の内容について、何か御質問、御意見ございましたらどうぞ。

 特にないようでございますので、それでは説明のほうを続けてくださいますか。

○大淵職業性疾病分析官 それでは、具体的なMOCAの健診項目の検討に移ります。

 別添1の資料、少し後ろの別添2の資料で御説明いたしますけれども、まず、別添1の資料が、健診項目の検討候補案ということで、事務局で幅広めにまとめた案ということでございます。

 全体像を見ていただくため、6、7ページをごらんください。6、7ページは表形式になっておりますが、一次健診それから二次健診それぞれにつきまして、表の左側が現行の特化則の健診項目、それから右側が、今回検討していただく見直し案ということでございます。

 7ページの後が別添2ということで、今、挙げた健診項目について、事務局で検討の際考慮すべき事項について、それぞれどんな対応関係になっているかというのを整理したものでございます。

 資料の6、7ページに戻っていただきまして、健診項目のどのあたりを変更するかを中心に説明します。

 見直し案を中心にごらんいただければと思いますが、(1)が「業務の経歴の調査」でございますけれども、これは既存の項目ですが、今までは業務従事者健診、それから配転後健診の両方に入れていたのですが、業務の経歴の調査につきましては、業務従事者健診のみとさせていただきたいと考えて提案したものでございます。

 「(2)作業条件の簡易な調査(業務従事者健診のみ)」でございますが、これは今回、新たに御提案するもので、ここ最近特化則に追加した物質では共通に入れさせていただいている項目でございます。

 (3)がMOCAの自覚症状、他覚症状に関連する既往歴の有無の検査ということでございますけれども、現行のものでは、症状として上腹部の異常感、倦怠感、せき、たん、胸痛、血尿までが従来入っておりましたけれども、ここに膀胱がんに関連する項目の追加ということで、頻尿、排尿痛を追加するというものでございます。

 (4)が、同じく自他覚症状でございますけれども、こちらは現在の自他覚症状について尋ねるものでございます。

 (5)として尿中の潜血検査、それから(6)として、医師が必要と認める場合で、尿沈渣検鏡の検査、尿沈渣のパパニコラ法による細胞診の検査、肝機能検査、尿中のMOCAの測定というところがございますけれども、このうち肝機能検査は、現在は必須項目として、現行の項目では入れておりますけれども、見直し案では医師判断の項目に入れようというものでございます。

 それ以外のアンダーラインのついている項目については、共通して膀胱がんに関連するものということでございますが、この間のオルトトルイジンのときに、ばく露を把握するために尿中オルトトルイジンを測定すべき(医師判断項目として)となりましたので、MOCAにつきましても、医師判断項目ではございますけれども、尿中MOCAの測定をこの中に入れております。

 二次健診の項目ですが、「(1)作業条件の調査」、こちらは現在、既に入っておりますけれども、これを業務従事者健診のみに限定するというもの。

 (2)の医師が必要と認める場合の検査項目ですけれども、こちらは膀胱がんに関係する膀胱鏡検査、腹部の超音波による検査、尿路造影等の画像検査、こういったものを追加するという案としております。

 全体像をざっと見ていただきまして、補足的なものは中のほうになりますけれども、ページを戻っていただきまして、別添1の1ページからが、今のものを項目ごとに補足説明をしているものでございます。

 ページの真ん中あたりに、一次健康診断と書いておりますが、(1)が先ほど申した業務の経歴の調査、(2)が作業条件の簡易な調査、(3)が自他覚症状の既往歴の関係で、こちらに頻尿、排尿痛を追加するという案でございます。

 2ページにまいりまして、(4)のところで、自他覚症状の現在の症状の把握のものということで、先ほどの(3)と同じように、頻尿、排尿痛を追加するものでございます。

 新しく追加するものとして「(5)尿中の潜血検査」、前回オルトトルイジンを議論していただいた際にも、膀胱関連の必須項目として入れましょうということにさせていただきましたので、今回も同じような形で、一次健診の必須項目ということでの御提案でございます。

 次でございますけれども、(6)以下が【医師が必要と認める場合に実施する検査】項目ということで、(6)が尿中のMOCAの量の検査ということでございますが、こちらは括弧書きで、尿中のクレアチニンの量の検査を並行して行うという案をお示しさせていただきました。

 こちらは説明文の補足もさせていただきたいと思います。

 【目的等】のところを読み上げさせていただきます。

 「有害物の体内摂取状況を把握するもの」。MOCAは経皮吸収性が高い物質であり、気中濃度の測定のみではMOCAのばく露評価を適切に行うことができないため、生物学的モニタリングの検査として、尿中のMOCAの量の検査を行うものということです。ただ、検査体制、検査費用等に課題があるということで、検査も現在いろいろなところで行われているという状況にございませんし、検査費用的にもやや高目のものということで、留意が必要ということでございます。

 その下の(注)のところで、MOCAの測定に関する技術的な留意事項ということでございます。「MOCAは蓄積性が推測されるため、採尿時期は、連続する作業日の最終日の作業終了時が適当」。

 それから「尿中にはMOCAの様々な代謝物と少量のMOCAが含まれていることから、尿をアルカリで加水分解を行った後に、ガスクロマトグラフ分析、液体クロマトグラフ分析等により測定する。これにより、尿中のMOCAの量と代謝物の加水分解により生じたMOCAの量の総量を測定する」ということになります。

 それから評価に関することでございますけれども、「日本産業衛生学会や英国の「生物学的許容値」は、クレアチニン補正した数値が示されていることから、評価指標としてこれらを使用する場合には、尿中のMOCAの量だけでなく、尿中のクレアチニンの量も測定する必要がある」ということで記載をしております。測定したものについて、補正をして評価をするかどうかといったあたりについて、後ほど議論をしていただければと思っております。

 「(7)尿沈渣検鏡の検査、尿沈渣のパパニコラ法による細胞診の検査」、こちらは前回のオルトトルイジンのときにも、一次健診の医師判断項目という形で整理をしていただきましたので、今回も同様としております。

 「(8)肝機能検査」でございますけれども、こちらは肝臓の障害を早期に把握するものでございますけれども、これについては従来、一次健診の中で必須項目という形でやっておりましたが、今回の健康診断項目の見直しで、作業条件の簡易な調査というのを追加しようという、先ほどの項目ですと(2)になりますが、こういったもの等が入り、ばく露の情報が一次健診の中でも、従来よりも把握できるということで、それに伴って、現行は必須項目にしておりますけれども、医師が必要と認める場合に実施する検査に変更してはどうかというのが、今回の案でございます。

 また、MOCAは動物実験では肝障害が認められているようですが、ヒトでは余り肝障害や肝機能異常の知見というのはないということもあります。そういったことをトータルしまして、現行同様、一次健診ではあるのですけれども、必須項目から医師判断項目に変更してはという提案でございます。

 続きまして3ページの下の二次健診の関係のところでございますけれども、(1)が作業条件の調査でございます。

 次の4ページの(2)以降が医師判断項目ということでございます。

 「(2)膀胱鏡検査、腹部の超音波による検査、尿路造影検査等の画像検査」でございますが、こちらについては前回のオルトトルイジンのときに、こういった検査を二次健診の医師判断項目として実施すべきということで入れましたので、今回も同様としております。

 「(3)胸部のエックス線直接撮影若しくは特殊なエックス線撮影による検査」、こちらは現行で入っておりますけれども、現行で入れている趣旨としては、呼吸器系の障害、具体的には腫瘍等を早期に把握するものという目的で入れているものでございます。

 5ページにまいりまして、「(4)喀痰の細胞診」というところで、こちらも現行で既に入れている項目で、目的としましては、「呼吸器系の障害(腫瘍等)を早期に把握するもの。」ということでございます。

 このあたりにつきましては、肺がんの診療ガイドラインでも、必要な検査だということが期待されております。

 「(5)気管支鏡検査」、こちらも現行どおりの項目で、これも目的としましては、「呼吸器系の障害(腫瘍等)を早期に把握するもの。」ということでございます。

 「(6)腎機能検査」、こちらも現行どおりの項目で、目的として「腎臓の障害を早期に把握するもの。」ということでございます。

 以上が案でございまして、重複しますが、ポイントとしては、膀胱がんに関係する検査の項目を入れるということと、それからばく露把握のための尿中のMOCAの測定を医師判断項目のところで入れる。

 それから、肝機能検査の位置づけを、一次健診の必須項目から、一次健診の医師判断項目に位置づけるという変更。

 以上が、事務局の案のポイントでございます。これらにつきまして、御検討をよろしくお願いいたします。

○櫻井座長 ありがとうございました。

 今MOCAの特殊健康診断案について説明がございました。それぞれの項目がこれで適切であるかどうか、御議論いただいていくわけでございます。

 一次健診の初めのほうから順次、御意見をいただきたいと思いますが、余りこだわらず、後で思い出して振り返っていただいても結構でございます。

 まず、一次健診の業務の経歴の調査、作業条件の簡易な調査、そこについてはいかがでしょうか。括弧して(業務従事者健診のみ)とするということになっていることも含めて、もし何か御意見がありましたら。これは前回のオルトトルイジンもこれと同様でございまして、よろしいでしょうか。

 どうぞ。

○堀江委員 「(2)作業条件の簡易な調査」ですが、前回のオルトトルイジンのときと同様に、作業条件以外によるばく露についても、尋ねるべきではないかと考えます。アウトカムが肺がんであれば、喫煙歴は当然に尋ねる必要があるのではないかと思います。作業条件以外の要因も含めた「作業条件の簡易な調査」と理解できますでしょうか。そうでなければ、喫煙歴という項目を別に立てて尋ねるべきと思います。

○櫻井座長 確かに、前回もそういう御指摘をいただきまして、どうしますか。

○大淵職業性疾病分析官 恐らく前回も発言させていただいたと思うのですけれども、

喫煙歴等についても、必要性があるということであれば、そのあたりを施行通達などで明示させていただければと考えておりますけれども、いかがでしょうか。

○櫻井座長 考え方のいかんでは、発がんに係る場合には必ずそういう項目を入れておくほうが親切だなという気はいたします。何か、先延べするようでございますが、全体の見直し等も今後のスケジュールの中であると思います。どうしても既存の項目に引っ張られる傾向がございますが、改めて皆さんに考えておいていただいて、そういう項目を入れるかどうかということは、課題として残させていただくということでいかがでしょうか。

 ありがとうございます。今回はこのままで、施行通達等で明らかにしていただくという方向でお願いしたいと思います。

 どうぞ。

○圓藤委員 その結論に賛成でございます。

 喫煙とがんとの関係というのは、たくさんの事例があり、当然問題になりますが、果たしてMOCAと喫煙と相互作用があるのかということになると、証拠は不十分ではないという気がいたしますので、ここで取り上げるのは余り適切ではないのではないでしょうか。

 ただ、化学物質の中には、例えば石綿のように、相乗作用のあるものでしたら、喫煙歴を十分考えていく必要があります。喫煙の影響は特化則全体にかかわりますので、もう一度場を改めて御議論いただけるとありがたいです。

○堀江委員 私も結論はこれで結構だと思います。ただ、今回IARCがグループ1に見直したときの経緯を読みますと、台湾の事例でMOCAによる膀胱がんの事例があったという報告が一つの根拠になっているようですが、その事例がわざわざ非喫煙者であることが記載されています。呼吸器がんだけではなくて、膀胱がんについても、喫煙歴に留意して論述しています。したがって、発がん物質の健康診断では、喫煙歴をルーチンに聞くべきと考えます。

○櫻井座長 今、圓藤委員がおっしゃったように、相加作用だけではなくて、それよりも強い相乗作用のようなものがある場合には、必ず入れる方向に意見がかなり一致するかと思いますけれども、そうでない場合まで広げるかどうかは、今後の検討課題とさせていただきたいと思います。それでよろしいでしょうか。

 そのほか、(1)と(2)について何か御意見がありますか。特になければ、(3)と(4)、これらは実質的に同じでございますが、MOCAによる他覚症状または自覚症状が列挙してある部分で、何か御意見ございましたらいただきたいと思います。

 どうぞ。

○柳澤委員 このMOCA、冒頭に呼吸器系の障害、消化器系の障害、腎臓の障害を予防・早期発見と書かれていますが、自他覚症状のところを見ますと、「上腹部の異常感、倦怠感」、これは消化器系の症状でよろしいかと思います。また、「せき、たん、胸痛」、これも呼吸器系の症状でよろしいかと思うのですが、「血尿、頻尿、排尿痛」これは腎障害というよりは、どちらかというとぼうこう障害の徴候で、腎臓障害自体をあらわしていません。二次健診のほうで、腎機能検査の項目があって、一次健診のほうで腎臓障害をチェックする項目がないと、非常におかしな話だと思います。ですから、尿たんぱくは腎障害のチェック項目として一次健診に入れるべきではないかと思います。

○櫻井座長 今、何を入れると。

○柳澤委員 尿たんぱくです。

○櫻井座長 たんぱくですね。これについて何か御意見ありますでしょうか。

 実は、現行項目にも最初から血尿が入っていたのですね。血尿を特に取り出している理由は、膀胱がんではなく腎障害と解釈できるケースの報告があったからですね。例えば、ACGIHもたんぱくに触れず血尿について記載しているので、こうなっているのだと思うのです。

 今回もそれを踏襲しているのですね。

○柳澤委員 恐らく「血尿、頻尿、排尿痛」の3つは、上部尿路ではなく、下部尿路の膀胱を中心とした障害の症状だと思います。

 にもかかわらず二次健診のところで、腎機能検査の項目があります。二次検査で、腎機能検査をやるのであれば、一次検査でも腎臓の機能障害の有無をチェックする項目がないとおかしな話だと思い、御質問させていただきました。

○櫻井座長 通常、常識的にこれを見ると、先生と同じ印象を持たれると思います。

 動物実験では腎腫瘍も起こったりしているのですけれども、それで何か血尿と結びついた可能性もあると、これを正当化しようと思えば正当化できるのですが、それにしても理解してもらいにくいところがありますが、どういたしましょうか。尿たんぱくを入れるかどうかです。

 実は今まで尿たんぱくに関する記載がないのですよ。そもそもヒトのデータは余りなくて、いくつかの症例報告が主なものですから、こういう健診項目等を取り上げるときに、ヒトについての過去の報告を尊重すると自然にこういう形になってしまうのです。

 どうぞ。

○圓藤委員 その辺の項目は芳香族アミン全体に係ってきます。前回のオルトトルイジンのときの議論に合わせた形ですね。

 血尿というのは、検査の結果の血尿なのか、肉眼的な血尿も含めての検査なのか。それを意味しているのと、櫻井先生がおっしゃったように、悪性腫瘍の結果の血尿なのか、あるいは炎症反応としてのものと思われます。ところで、たんぱく尿となりますと、むしろ糸球体腎炎的なものを意味しているように思われ、主たる症状としてたんぱく尿があるのかというと、証拠が少ないのではないでしょうか。ただ、全くなくしてしまうのはいかがかということで、二次のところの腎機能検査でたんぱく尿の検査が含まれているのではないでしょうか。それで足りていると私は理解しています。

○柳澤委員 今の御説明、非常によく理解できるのですけれども、今まで肝機能検査が、一次健診の中にあって、それが今度、医師が必要と認めた場合ということになった訳です。この化合物は、有機塩素化合物ですから、肝腎障害が起こりやすいわけです。現在までに、ヒトでは肝障害の知見はないということですから、恐らく腎障害もないのでしょうけれども、有機塩素化合物ですから、肝機能検査を一次健診に入れるのであれば、やはり腎機能検査も一次健診に入れないとおかしいと思います。

 例えば血尿と言ったときに、既往歴、自覚症状から判断する場合、肉眼的血尿だと思うのです。膀胱腫瘍、尿管腫瘍、腎腫瘍、糸球体腎炎で言えば、IgA腎症などは肉眼的血尿でスクリーニングできます。

 しかし、有機塩素化合物に起因する腎障害をスクリーニングするのであれば、尿たんぱく検査ぐらいは入れておかないと、早期に発見するのは難しいと思います。

○櫻井座長 いかがいたしましょうか。

 左側の現行項目で血尿が入っているのは、今、言ったように、下部尿路のことを考えていなくて入れているのです。

 右の方は両方入っている感じなのです。前回この会議で、オルトトルイジンでも「血尿、頻尿、排尿痛」としました。そこまではそれで整合性が取れているのですけれども、肝機能検査を一次健診の医師が必要と認める場合ということで、今回入れているので、そこに肝機能検査と腎機能検査と両方入れてしまうという手があります。それだといいような気がしますけれども、どうでしょうか。

○圓藤委員 医師の判断で。

○櫻井座長 二次健診ではなくて一次健診における。

○圓藤委員 はい。二次から一次へ持っていくことも、実質上ほとんど変わらないので、あとは各物質の特健の整合性と思いすので、私はこだわっているわけではございません。

○櫻井座長 柳澤委員の御指摘も大変妥当性がありますので、今のようなことだとうまくいくかなと。

 現在、二次で医師が必要と認める場合に入っている腎機能検査を、一次の(6)の医師が必要と認める場合の肝機能検査の下に腎機能検査と入れるという案です。

 特に御異存がないので、一応、そういうことで結論とさせていただきたいと思います。

 あと、いかがでしょうか。(5)の尿中の潜血検査、これはオルト—トルイジンと同様ですね。(6)で医師が必要と認める場合、これの尿沈渣とかあるいは尿のMOCAの量の測定、これもオルトトルイジンと同様でございます。

 特に尿中のMOCAの測定については、尿中のクレアチニンの量の検査というようなことも丁寧に入れてありますけれども、このあたり何か御意見がありましたらどうぞ。

 クレアチニン補正、今のところはそうなっているようです。

○圓藤委員 産衛学会はクレアチニン補正をしています。まず、論文がそちらに多いからということですが、必ずしもクレアチニン補正が正しいというわけではなくて、クレアチニン補正のほうがいいという考え方の人と、補正せずにリットル当たりで表した方がいいという人もありますので、必ずしもこだわる必要はないと思っております。ただ、法律上の文書になりますと、そっちでなかったらいけないということになります。果たしてこういう書き方のほうがいいのか、クレアチニン補正をしてもしなくても別に問題ないと思っています。

 というのは、今までクレアチニン補正をすると明記したのがなかったもので、MOCAだけしなければいけないという必然性はないように思っています。ただ、あっても悪いことではないと思っています。

○大淵職業性疾病分析官 済みません。事務局の資料の関係で補足です。

 今の、クレアチニン補正云々の関係につきましては、参考資料の3-4ですね。横長のA3の資料に関連する記述がございますので、参考資料の3-4をごらんいただきたいと思います。

 上段下段ありますが、下段の真ん中のところで「許容濃度/生物学的許容値」という記載がございまして、その中で上から順にACGIH、日本産業衛生学会、ドイツのDFG、アメリカのNIOSHOSHAそれからイギリスと書いてありますが、このうちクレアチニン補正について記載がございますのが、上から2番目の日本産業衛生学会の最終行のところです。「尿中総MOCA濃度 50 μg/g クレアチニン」というのがございます。

 それから一番下のイギリスでございますけれども、こちらにつきましては「15 µMOCA/㏖ クレアチニン」というような記載がございます。

○櫻井座長 実は、ACGIHは数字を示していないのですね。有効であるということで、推奨しているけれどもね。今、調べていらっしゃるかもしれない。

 どうぞ。

○柳澤委員 今後のことなのですけれども、基本的に尿中の化学物質をはかるときには、クレアチニン補正はすべきだと思います。というのは、人によって尿量が違いますので、1日の蓄尿を用いて測定するのであれば、かなり正確な値が得られます。しかし部分尿では、1日500mlしか出なかったときと、1,500ml尿が出たときでは、1,500mlの場合には希釈されて出るので、当然1,500mlのほうが化学物質の濃度は低くなります。

 尿中クレアチニンは、1日一定量出ることがわかっていますので、クレアチニン補正することによって、尿量に関係なく、部分尿でも化学物質の1日排出量を推定できると思います。

 ですから、もし今後、改定していくようであれば、尿中代謝産物測定の評価に当たっては、尿中クレアチニンで補正したもので比較していくべきだと思います。

○櫻井座長 いかがでしょうか。

 比重補正という手もありますね。比重補正のほうが適切な場合もあると思います。尿量が多い場合、洗い流し効果で代謝物などが多く排泄され、結果としてクレアチニン補正値が大きな値になってしまうということもあります。

 それから、全然補正しないほうがいいというのは、どういう場合があるのでしょう。それでも十分であると。もちろん、その場合に濃縮の影響は当然受けます。

○圓藤委員 一般の人は、柳澤先生のおっしゃられた考え方でいけるのですが、たまにクレアチニンが非常に高い人というのがおられるので、必ずしもクレアチニン補正が絶対正しいというのは言えないのではないか。もちろん比重補正もいいし、その辺は、研究者によって言うことが微妙に違います。研究機関もACGIHは余りクレアチニン補正はしてなかったでしょうか。

○櫻井座長 余りないですね。

○圓藤委員 ないですね。

ACGIHがもしMOCAの基準とだしたら、クレアチニン補正しないので出してくる可能性もある。MOCAに関するいろいろな論文の中で、しているのもあれば、していないのもあるということです。絶対クレアチニン補正をするべきだとは、私はとらない。しても悪くはないと思っています。

 問題は行政としてやる場合それだけの根拠があるのか。ほかの化学物質にクレアチニン補正をしていないにもかかわらず、これだけにすべきかというと、消極的です。

○櫻井座長 私も、クレアチニン補正のもう一つの欠点は、筋肉量で影響を受けるのですね。ですから老齢化するにしたがって、クレアチニンの排せつ量が少なくなるので、むしろそれで割り算するから、クレアチニン補正値が高くなってしまうのですね。

○柳澤委員 まあ、作業強度が強い場合には、筋肉を使いますから、尿中のクレアチニンはふえてきますね。

○櫻井座長 なので、総括的にはそれが一番優れている場合が多いけれども、必ずしもそうでもないので、あえてそれを指定するかどうか。

 どうぞ。

○清水委員 今、御意見を伺って、私も理解できないところがあるのですけれども、測定するのは、連続する作業の最終のところで採尿して調べろと。つまり、尿中にばく露して絶対量がどのぐらい出ているか見ているわけですね。

 だから、そこで補正する意味がどういう意味を持ってくるのかが疑問でわからないのです。

○櫻井座長 大体終わりのころの、最終日の昼以降に排尿させないで、最後に仕事が終わったときに尿をとる。それも薄い場合と濃い場合とありますから。尿量が、水をたくさん飲んでいれば薄くなりますので、尿量の補正をクレアチニンでやることはよくありますね。カドミウムとか、ああいう重金属の場合、非常にクレアチニン補正が多いのです。

 でも、あえてそうしなくても検出、何と言うのですかね。

○清水委員 わからないのですけれども、例えば参考資料の3-4の右側の特記事項の上のほうの体内動態ですと大体48時間で、ラットでしょうけれども相当量が糞便中にマックス69%、それから尿中にマックス29%ですか。かなりの量が排せつされてきてしまいますね。非常に代謝も早いわけですね。

 ですから、産業衛生学会では生物学的許容値で、クレアチニン補正をやっているということですからね。どちらが本当に正しい評価ができるか、私には厳密にはわからないのですけれどもね。

○櫻井座長 時間尿をとるということをおっしゃっているのですか。

○清水委員 ええ。

○櫻井座長 おっしゃるとおり、それはまた一つの方法ですね。実際余りやっていることは少ないのですけれども、いかがですか。

○圓藤委員 私は、できるならば時間尿が一番いいと思っています。

 ただ、時間尿の場合は、何時に排尿した、次の排尿は何時ですというのをきっちり作業者に周知徹底することは難しいです。いいことはいいですけれどもね。だから、こういうことは法令の中に書くのではなくて、説明文として、ガイドライン的なところでこういうやり方がある、こういうのが一番望ましいということ、クレアチニン補正をするのは意味があるということを書いていただくのはいいのではないかなという気がします。時間尿がとれればもっといいと思っています。

○櫻井座長 確かにそれが一番いいと思います。だけど世界中を見ても時間尿の標準値というのは一つもないですね。実際、現実にはやりにくいものです。しかし、独自に標準値を決めることは可能ですし、やるにこしたことはない。そういう点からいきますと、クレアチニンと書かないでおいたほうがいいかと思いますけれども、どうでしょうか。

 皆様、同意していただいていますので、ここでは単に尿中のMOCAの量の測定ということにとどめさせていただきたいと思います。それでよろしいでしょうか。

○大淵職業性疾病分析官 わかりました。

 では、クレアチニンの量の測定というのは書かずに、尿中MOCAとします。今、お話に出てきた時間尿というのを教えていただいてもよろしいでしょうか。2回はかるとかという話がありましたが。

○圓藤委員 1日尿というのがありますように、24時間蓄尿してはかるのですが、それは入院患者のような場合であったら比較的やりやすいと思います。労働者の場合は、かなり無理がある。24時間は無理だけれども、例えば、午後の一番に排尿して、そして作業終了時の4時半とか5時に採尿すれば、3時間、4時間の間の時間がわかれば、1回目は時刻をはかるだけ、2回目は時刻と尿量と濃度をはかる。そして、前回の排尿のときから現在までの時間、何時間何分で割り算するということで、1時間当たりのMOCAの排泄量、それを24を掛ければ1日当たりのMOCAの排泄量というのであらわすことができる。これが労働者の場合、どれだけばく露してどれだけ排せつされているかというのが、時間当たりというのがわかりますので、一番いい方法です。

 ただ、中には、作業終了時の前にもう一回行っていましたという人がおったりして、完全に把握し切れないところがあり、管理するのが実際は大変な仕事になる。

○櫻井座長 そうですね。いずれにしても、尿量掛ける濃度でもって総量がわかる。その総量が一番いいということなのです。

○大淵職業性疾病分析官 ありがとうございます。

○櫻井座長 だから、時間尿という表現は正確ではないですね。一定時間内のその物質の排せつ量ということですね。

○圓藤委員 時間当たりですね。

 

○堀江委員 少し話題が変わりますけれども、よろしいでしょうか。

MOCAの代謝物質についてですが、特殊健診では、ばく露は常に把握すべきで、健康影響や健康障害はばく露が認められた人に生じることなので、対象者の負担等を考えながら項目を追加する。原則はこういう考え方だと思います。

 ところが、現在の案はばく露を評価する客観的な指標が、医師が必要と認めた場合に行う項目になってしまっています。そこで、その理由といいますか、ここでなぜそうした考え方にしたのかについて皆さんで合意しておく必要があると思います。資料を拝見しますと、まだ実施方法、検査体制、検査費用等に課題があるという記載もありますし、別添2の「5 成果と手間・費用」ところを見ますと、この項目だけ△がついています。これらの現状を踏まえて、選択項目にしたということでよいでしょうか。本来、これらの実施体制が整い、費用の問題が解決すれば、ルーチンに実施する項目に入れるべきものだということでよろしいでしょうか。

○櫻井座長 基本的にはそうですね。今、見ている別添2の「4 判断の基準」が○になっているのですけれども、これは△になる可能性が。今、そこまでいくと議論が出るかもしれないけれども、産衛とイギリスで出していますが、それは一定のばく露との相関的な関係がないのですね。おおざっぱな目安だったと思いますが、覚えていらっしゃいますか。ACGIHもそういう意味で出し切れていないのですね。だから、ここは△ではないかなと。

○圓藤委員 私も記憶が怪しいのですが、一つはどれだけ体の中に入れれば、1時間当たりこのぐらいのMOCAが排出されていくかという計算でやっていたように思います。

 先生がおっしゃられたばく露指標として、作業環境濃度と、尿中濃度との関係で明確なものは余りありませんのでね。

○櫻井座長 ないですね。

 これは、作業環境はばく露限界値も結構低いですね。その割に尿中の排せつの数値は大きいですね。

○圓藤委員 それは、多分げたを履いている部分がありますので、そういう意味では基準を幾らに設定すべきかというのは、きょうは決められないのではないか。

○櫻井座長 そうですね。

○圓藤委員 だから、法律をつくっていただいて、実施する事業場のデータを蓄積する中で決めていいのではないかと思っています。きょうの段階で基準を決めず、先ほどのクレアチニン補正のほうがいいという話も出てくるかもわかりませんが、データが蓄積された段階でいいのではないかと思っております。

○櫻井座長 どうぞ。

○松岡委員 医師が必要と認める場合の中では、優先順位が最も高いと思われますので、これで並立だと思いますが、トップに挙げていただくといいかと思います。

○櫻井座長 この前のオルトトルイジンのときも、優先順位のトップに挙げさせていただきましたが、そういう御意見に賛成でそうさせていただきたいと思います。

 どうぞ。

○土肥委員 三井化学の産業医の土肥でございます。

 前回の議論に参加できておらず、経緯が少しわからない部分がある中での質問だと言うことを御了解ください。

 今回のMOCAでは、医師が必要と認める場合の検査がだんだんふえていっている。もともとのベンジジン等の検査から、オルトトルイジンに移ってまたふえて、今回のMOCAでまたふえるのですね。具体的には健診をされているドクターが判断をされていく。どれが追加で必要かというのをですね。これを皆さんが正しく判断していけるのだろうかという疑問を感じるのですが、その点について何か、今の御意見では、尿中代謝物が一番であるべきだということでございますが、実際に測定したら、結果の判断については今後の議論を待たなければいけないというものが一番に書かれていて、現場の健診をする医者はどのような順番で何を選択していったらいいのかについて、かなり迷うのではないかと思うのです。これだけ書かれるのであれば、何か示さないと、現場が混乱するような気がするのですが、いかがでございましょうか。

○櫻井座長 実はオルトトルイジンは使っている事業場が割合少ないので、そこの人たちに丁寧に勉強していただければできると思います。MOCAは使う場所がやや多いですね。ですから、その部分が一番気になっているのです。よほど丁寧にガイドラインを書いて、かなり頻繁に研修の機会を設けるとかですね。

 どうぞ。

○圓藤委員 土肥先生がおっしゃるところで一番重要なのは「(2)作業条件の簡易な調査」であろうかと思っております。そこでどれだけばく露している事業場なのか、現場は作業状況を見ているだろうかというところが問われると思います。それがほとんどなされずに、健診さえしておればいいというところではやはり、どんな検査項目をしても無理でしょう。

 それから当然、6番目の尿中のMOCAを測定するとなれば、測定機関が責任を持つだろうと思います。うちではこういう値でもって評価しておりますというのを出してくるだろうと思います。国が基準地を出すのではなく、測定機関が社のデータ並びに諸外国のデータをもとにして、我々はこの辺が妥当であるという基準地を提供するであろう。そして各機関の基準地が固まりましたら、国のほうでは医師が必要とする部分を外していただいて、必須項目にしていただきたいと思います。現時点ではそこまで固まっていないので、医師が必要と認めるという条件付きになっているのではないでしょうか。だから、検証が進めば、医師が必要と認める場合という条件を外してもいいのではないかと思っています。

○土肥委員 おっしゃるとおりのことは十分理解できます。

 もちろん私どもでもMOCAを使っておりますので、実際には作業条件の簡易な調査によって、どこまで検証するかということを階層化して分けたいと考えているわけですが、具体的にそういうことができる産業医なり健診機関の医師が必要な場にいるかどうかという疑問でございまして、いればやると思いますが、いないのであれば何か示さないと、非常に難しいかもしれないという危惧を持つというだけでございます。

○櫻井座長 基本的にはほとんど検出されないところを狙う、でも、データの蓄積が必要ですね。

○圓藤委員 両方のデータの蓄積、尿中のMOCAの量のデータと、作業環境のデータ並びに作業の仕方を含めたデータの照らし合わせが必要だろうと思います。MOCAを取り扱っている事業場がべらぼうに多いわけではありませんので、それに関与する産業保健スタッフはチームを組んで取り組む必要があるのではないかと思っています。

○櫻井座長 私はかなり多いかと思いましたけれども、ある程度限定されていますね。そんなには多くないのではないですか。

○堀江委員 一番気にしなければいけないのは、小規模事業所だろうと思います。そういうところに誰が指導するかということを、これは体制づくりの問題だと思いますけれども、今後ともよろしくお願いいたします。

○櫻井座長 それではほかに二次健診について、まだ御意見があるかと思いますが、いかがでしょうか。

 二次健診の腎機能検査は、二次から省いて一次に上げるということにいたしましたので、それ以外はこのままでよろしいでしょうか。

○圓藤委員 腎機能検査の具体的な項目は、尿たんぱくのほか、幾つか決まっているのでしょうか。それとも全体を指して言っているのでしょうか。

○櫻井座長 これは、どうしましょう。一次の医師判断項目にした場合、腎機能検査と書いてあったときに何をやるかということです。

○圓藤委員 ごめんなさい。医師が必要と認める場合の腎機能検査という形は残るのですね。

○櫻井座長 はい。

○圓藤委員 失礼しました。

○堀江委員 言葉の問題で細かいのですけれども、二次健診の胸部エックス線直接撮影の次は「又は」ではないでしょうか。

○大淵職業性疾病分析官 ここの位置づけでは「または」のほうが正しいです。法令のときに、ほかのものと全部並べて書いてあるので、ここは「若しくは」というように法令がなっているのですけれども、ここ単独で見れば、「または」という書き方が本来は正しいです。済みません。

○櫻井座長 ありがとうございました。

 では、その他特にないかと思いますので、事務局のほうで確認をしていただきたいと思います。

○大淵職業性疾病分析官 そうしましたら、事務局で確認させていただきます。資料の6、7ページの表で順番に確認します。

 見直し案のほうで見てまいりますが、(1)(2)(3)(4)(5)はそれぞれ事務局案のとおりです。(6)の医師が必要と認める場合というところで、今、議論をいろいろしていただきました。尿中のMOCAの測定の関係は、括弧書きの「尿中のクレアチニンの量の検査」は削除するということで、評価の方法などについては、この中では書かないという形でございます。

 同じく医師判断の項目ですけれども、二次健診から移動するのが、7ページにある二次健診の最後の項目の腎機能検査。これは、一次健診の医師判断項目に移動する。

以上でよろしいでしょうか。

○櫻井座長 それとあと、尿中のMOCAの4測定を(6)の最初に持っていくということですね。

○大淵職業性疾病分析官 わかりました。

○櫻井座長 それで、腎機能検査は、肝機能検査の下にということでよかったと思いますが、委員の先生方、それでよろしいでしょうか。

 ありがとうございました。それではMOCAについての案はこれで決めさせていただきました。

 早速次の議題「(2)三酸化二アンチモンに関する特殊健康診断について」に進みたいと思います。

 事務局から説明をお願いいたします。

○大淵職業性疾病分析官 それでは、資料3をメインに使いまして説明させていただきます。

 資料3の「これまでの経緯」というところからです。まず「1 リスク評価の実施」ということで、三酸化二アンチモンにつきましては、平成27年8月12日の「化学物質のリスク評価検討会」において、三酸化二アンチモンに関するリスク評価が行われまして、その結果が次のとおりとされたということで、読み上げさせていただきます。

 4 リスクの判定及び今後の対応

24年度のばく露実態調査の結果、酸化炉、溶融炉の炉前作業、粉体作業を行う事業場

において、高いばく露が確認されたが、これは、平成23年度における4事業場の調査に

おいて、粉体の取扱(投入、袋詰等)及び揮発炉作業等のばく露が高かったことと同様

の結果を示すものであった。このため、三酸化二アンチモンの製造、取り扱い作業にお

いては、リスクが高く、ばく露防止のための措置が必要と考えられる。

  三酸化二アンチモンは、その物性等から、飛散しやすいと考えられ、その製造・取り

 扱い作業において、吸入によるおそれがあるものと考えられる。高いリスクが作業工程

 に共通して確認されたことから、労働者の健康障害防止措置の検討が必要と考えられる。

  この場合、三酸化二アンチモンの計量、投入、袋詰め及び炉前作業等において高いば

 く露が確認されたことから、製造・取扱い作業全般について健康障害防止措置の検討

 が必要と考えられる。

  なお、アンチモンを含む樹脂の射出形成作業については、上記のガイドライン(※)

 に基づくばく露実態調査とは別に、平成26年度に実態調査を実施しているので、健康障

 害防止措置の検討に当たっては、その結果も踏まえて検討する必要がある。

:「労働者の有害物によるばく露評価ガイドライン」(平成2112月)

というところで、具体的なこの検討会の報告書が、資料4-1というところでリスク評価書というのをお配りしております。

 本日、事細かな説明は省略いたしますけれども、この中で、三酸化二アンチモンの有害性に関する情報が書いてございますので、そのあたりだけ御紹介しておきます。

 参考資料4-1の2ページから「2 有害性評価の結果」あります。

 「(1)発がん性」、2ページの下のほうで「(2)発がん性以外の有害性」、急性毒性等々から始まりまして、様々な情報が書かれています。

 同じ資料の3ページにまいりまして、真ん中あたりに「(3)許容濃度等」と記載されておりまして、最初にACGIHの評価、それから次の4ページのほうにまいりまして、日本産業衛生学会の評価というものが出てまいります。

 こちらの三酸化二アンチモンですけれども、リスク評価の結果としては、人では知見が不十分ですけれども、動物ではがんが出ているということで、IARCでは発がん性がグループ「2B」という評価を受けております。

 がん以外の健康障害についても、として3ページに「アンチモン皮疹」という特徴的な皮膚症状が見られるとか、その次のところでは、目に対する重篤な損傷性刺激性というようなもの等も書かれております。

 それから、4ページの産衛学会の提案理由ですけれども、こちらは比較的最近の2013年に許容濃度が示されています。この中では、今述べたようながんとか皮膚障害以外に、心臓の関係の記載がございまして、三酸化二アンチモンではなく、硫化アンチモンのところですけれども、「8カ月から2年にわたってばく露された労働者125名の中から、6名の突然死と2名の慢性心疾患による死亡が見られた。心電図検査では、75名中37名の異常(ほとんどがT波の異常)が認められた」というところがございます。

 ここの続きを見ますと「アンチモン導入以前にはこのような死亡例はなく、アンチモンの使用の中止後は、突然死の症例は見られなくなった」ということで、産衛学会で0.1mg/m3 を提案するときには、この心臓毒性を重視すべきということで0.1を提案し、ACGIH0.5mg/m3 ですけれども、産衛学会は心臓毒性のほうを重視して、それよりも厳しい数値を提案しています。

 このリスク評価書の情報をもとに後ほど御説明する健診項目を御提案させていただいております。

 資料3「三酸化二アンチモンの特殊健康診断について(案)」に戻っていただきまして、1ページの「2 健康障害防止措置の検討」というところでございます。

 こちらはリスク評価検討会の結果を受けまして、具体的にはどういった措置が必要かということを検討している会議でございます。

 評価書が出てから約1年間検討されて、その最終回、済みません。こちらの日付が直っていなくて申しわけございません。アンチモンの議論の最終回は、8月29日です。そちらで最終的に結論が出ておりまして、詳しい資料としては参考資料の4-2がございますが、重要なポイントは、後ろのほうに出てきております。

 同じ資料3の中の3ページにポイントのところを記載しておりますので、あわせて資料3の3ページのほうをごらんいただきたいと思います。

 資料3の3ページの真ん中からになります。28年8月29日開催の健康障害防止措置検討会の検討結果ということで記載してございます。これをそのまま読み上げさせていただきます。

 ○三酸化二アンチモン及び三酸化二アンチモンを含有する製剤その他の物を製造し、又

  は取り扱う作業については、リスク評価における有害性の評価及びばく露評価の結果

  を踏まえ、健康障害防止のため特定化学物質障害予防規則(昭和47年労働省令第39号。

  以下「特化則」という。)の「管理第2類物質」と同様に、発散抑制措置、作業環境

  測定の実施、特殊健康診断の実施等を講じることが必要である。

ということです。

途中省略いたしまして、

 ○また、三酸化二アンチモンは、ヒトに対して発がん性の可能性があることを勘案し、

  作業の記録の保存(30年間)等が必要となる特化則の特別管理物質と同様の措置を講

  じることが必要である。

 〇特殊健康診断の実施等具体的事項は別途検討すべき。

こちらについては一部適用除外についても結論の中にございまして、「○発じんのおそれのない次の作業については、健康障害防止措置の適用除外とすべき。」ということです。具体的には樹脂等で固形化されることにより、粉じんの発散する恐れがない三酸化二アンチモンを取り扱う作業という、固まり状で取り扱って、そこから発じんがないようなもの、そういう取り扱いについては、健康診断もそうですし、それから発散抑制措置、作業管理測定、こういったものを適用除外とすべきという形で、8月29日の検討会ではそういった結論が得られております。

 今、見ていただいている資料の2ページに進んでいただきまして「II 本検討会での検討事項等」ということでございます。こちらにつきまして、本日御検討、確認をいただく事項ということで、「事項1:特殊健康診断の対象について」ということで、このあたり、前回のときの記載とほぼ同じような形で書かせていただきました。

 1としまして「特定化学物質障害予防規則(特化則)の「管理第2類物質」かつ「特別管理物質」(がん等の遅発性の健康障害を生じるおそれのある物質)を製造し、又は取り扱う業務(以下「製造・取扱い業務という。)について、特殊健康診断の項目が設定できる場合には、健康診断の実施等について次の事項を義務づけている。」ということで、一般論としてどういう法令上のスキームになっているかということを記載してございます。健康診断項目が設定できるような場合については健診の実施をし、配転後健診も実施、あるいは記録の保存とか、医師の意見聴取云々という、ここの(1)から次のページの(9)までの措置を義務づけるという形になっております。

 もし、健康診断の項目が設定できなければ、こういった規制はできないので、健康診断の項目がきちんと設定できるかというのを後ほど御議論いただくということで、その際、前回のオルトトルイジンの場合には、製造取り扱い業務全般に網をかけるという形だったのですけれども、今回はただいま読み上げさせていただきました健康障害防止検討会のほうで、一部適用除外の業務を設定すべきという御意見をいただきましたので、今回の健康診断のほうでもその検討会の結論のとおりでいいかどうかということを、念のため御確認していただくという趣旨でございます。

 以上が一区切りとして、ここまでの前提というところでございます。

○櫻井座長 では、ここまでで一応議論をしていただきたいと思います。

 特殊健康診断の項目を設定できるかできないかということにつきましては、できないということはないということだろうと思いますが、特に何かそれについて御意見ございますでしょうか。

○大淵職業性疾病分析官 今、事務局の説明の仕方が悪かったと思います。済みません。

 同じ資料の4ページをごらんいただいて、以上の1と2を踏まえて3として、これらからというところでございます。三酸化二アンチモンの製造・取扱い業務、今、申し上げた発じんしない適用除外業務です。そういった適用除外も除いた場合の製造・取扱い業務について、特殊健康診断の項目が設定できる場合には、管理第2類物質かつ特別管理物質として1の(1)~(9)の各事項を行うこととしてよいかということでございますので、まず、大きな流れとしてはこういうストーリーがあるので、そういうことを御確認させていただいて、それで健康診断を議論してみて、項目をちゃんと設定できますねということがこれから確認できれば、ここのところはイエスという、そういう回ってくるような形で済みません。申しわけございません。

○櫻井座長 それでは、これから項目について御検討いただくのですけれども、それができる場合には、まず対象として適用除外作業があるということを確認していただき、それから(1)~(9)までの通常の特殊健康診断の取り扱いについてそのとおりでいいかということについての御確認をお願いしたいと思いますが、それでよろしいでしょうか。

 特に御異存がないので、そのように確認いたしました。

 それでは、特殊健診の項目に入りたいと思います。ではそれの内容案について説明をお願いいたします。

○大淵職業性疾病分析官 それでは、今説明した資料3の続きの別添1等で説明をさせていただきます。

 こちらも先ほどと同じように、最初に4ページの一覧表の形でごらんいただきたいと思います

 「三酸化二アンチモンの健康診断項目の検討候補(案)」と書いてございまして、表の上側が一次健康診断、下が二次健康診断でございます。こちらは先ほどのMOCAと違いまして、今回初めて健診項目を検討するというものでございます。

 まず、一次健康診断の項目を順に、事務局の案を御説明してまいります。

 「(1)業務の経歴の調査」、「(2)作業条件の簡易な調査」、(3)として自他覚症状の既往歴の有無の検査なのですけれども、具体的な症状としては「アンチモン皮疹等の皮膚所見、せき、たん、頭痛、腹痛、下痢、嘔吐等の他覚症状又は自覚症状の既往歴の有無の検査」というところで、このうち下線の引いてある「アンチモン皮疹等の皮膚所見」それから「頭痛、腹痛、下痢、嘔吐等」につきましては、基本的には急性の症状ということで、業務従事者健診のみで行うという提案としております。

 (4)については、現在の自他覚症状ということで、項目としては、ただいまの(3)と同じものを列挙しております。

 それから次が、【医師が必要と認める場合に実施する検査】ということで2項目を挙げております。「(5)心電図」、「(6)尿中のアンチモンの量の測定」ということでございます。

 次の二次健康診断として「(1)作業条件の調査」、(2)以下は医師判断の項目でございますけれども、1つ目(2)が「胸部のエックス線直接撮影による検査若しくは特殊なエックス線撮影による検査」、「(3)喀痰の細胞診」、「(4)気管支鏡検査」です。この一覧表でざっと全体を見ていただきましたが、一覧表についての健診の考え方との整理表は、その次の別添2に記載してございますが、説明は省略させていただきます。

 前のほうに戻っていただきまして、別添1の1ページ「三酸化二アンチモンの健康診断項目の検討候補(案)」ということで、また順に説明させていただきたいと思います。

 今回のこちらの健診項目を考えるときの前提としましては、今回は改正ではなくて新たに定めますので、三酸化二アンチモンがどのような健康障害を起こすかというところ、主に呼吸器系の障害、肺がんなどを念頭に置き、また産衛学会の提案理由にありました心臓への影響や皮膚障害も考えながら立てております。

 一次健康診断というところで、「(1)業務の経歴の調査」、それから「(2)作業条件の簡易な調査」ということでございます。(3)のところは少し補足しながら御説明をしたいと思います。

 ここに書いてある症状はいろいろございますけれども、アンダーラインのうちの「頭痛、腹痛、下痢、嘔吐」につきましては、アンチモンのヒュームを高濃度ばく露したときにこういった頭痛や腹痛等の症状がでるというような知見がございまして、その情報をもとに記載している項目でございます。

 続きまして、2ページ目にまいりまして、医師が必要と認める場合に実施する項目ですけれども、「(5)心電図」のところにつきましては、心臓の障害を早期に把握するためのものということでございまして、こちらは先ほどの産衛学会の提案理由を参考に設定しているものでございます。

 それから「(6)尿中のアンチモンの量の測定」ということでございますけれども、これも、先ほどのMOCAの場合と同じように体内摂取状況の把握のための項目ですけれども、文献によりますと、三酸化二アンチモンの場合には、経口によりばく露した場合は主として糞便中に排出、一方ばく露、吸入によりばく露した場合、代謝物は主として尿中に排出されるということであり、労働での主なばく露経路は吸入ですので、今回は尿中のアンチモンの量の測定を提案しております。

 それから、この測定についても意事項を書かせていただきました。金属系の物質でかつ代謝物も三酸化二アンチモンと別の形のものも含まれていますので、まずは尿試料を酸で前処理し、総アンチモン量を原子吸光分析ですとか、ICP-MSなどで分析をするということになります。

 それから、半減期等の情報でございますけれども、「三酸化二アンチモンの吸入ばく露での肺からの排出の半減期は、ヒトでは600日以上であるが、体内に吸収されたアンチモンはヒトでは尿中の半減期は3~4日」というような情報がございます。ここまでが、一次健診の関係でございます。

 次が二次健診でございますが、必須項目ということで「(1)作業条件の調査」でございます。

 次の3ページからが【医師が必要と認める場合に実施する検査】ということでございまして、こちらは呼吸器の障害(腫瘍等)に関する項目がまず並んでおります。

 「(2)胸部のエックス線直接撮影若しくは特殊なエックス線撮影による検査」、「(3)喀痰の細胞診」、それから「(4)気管支鏡検査」は、いずれも呼吸器の腫瘍を念頭において設定している二次健診の医師判断項目ということになります。

 こちらも、先ほどのMOCAと同様、肺がんの診療ガイドラインの解説の文章を若干引用しております。

 以上が三酸化二アンチモンの健診項目の事務局としての候補案ということでございます。

○櫻井座長 ありがとうございました。

 それでは早速、この項目につきまして御意見を賜りたいと思います。まず、一次健診について、(1)(2)(3)(4)あたりはあわせていかがでしょうか。

 では次、医師が必要と認める場合の心電図と尿中のアンチモンの量の測定、これも(5)と(6)は順番を変えるのですね。変えますか。変えますね。5番目が尿中のアンチモンの量の測定で、(6)が心電図。

 どうぞ。

○圓藤委員 実は、その心電図を入れる根拠が、1954年の論文のようでして、確かに一応T波が起こるということと、ばく露を中止して心電図異常が減ったということで、やはり心電図検査は入れるべきであろうと思いますが、それ以降大きな報告が出てこないということで、順位としては下げてもいいのかなと思います。むしろ尿中のアンチモンの量の測定のほうを今後モニタリングとして重視していくという意味では、心電図を下げてもいいのではないかと思っております。

○櫻井座長 やはり、産業衛生学会で心臓に対する影響を重要視しているということについて、ほかのばく露限界値等やや大き目の数字を出しているところでは、これを取り入れていないのですね。ただ、ことしの2月にアメリカのNTPで動物実験の結果が出ておりますけれども、それでは肺がんとかあるいは肺の炎症、繊維化がはっきり出ているほかに、心臓に対する影響が動物で見出されておりましたので、やはり高濃度ばく露ではあり得るのだろうなという気がしております。大体3 mg/m3 で肺に対する影響がポジティブになっているのです。だから、結構低い。

○土肥委員 今のお話をお伺いしながら思ったのですが、一次健康診断の医師が必要と認める場合の検査に胸部エックス線を入れなくてもよろしいのでしょうか。

○櫻井座長 ところが、今まで一度も肺に対する影響としては出ていないのです。ケースとして、肺の線維化が報告されているぐらいなのですね。それで、他の金属のコバルトとか、あるいはニッケル等も動物実験で肺がんが認められておりますけれども、大体同じぐらいのレベルですね。1ミリとか。

 しかも、ニッケルとかコバルト等ではヒトの肺がんのデータが余り認められていないので、二次に回しておりますね。ですから、整合性がとれているとは思っております。

○土肥委員 わかりました。了解いたしました。

○櫻井座長 ただ、医師判断として、確認していただくことはやっていただきたいとは思います。アメリカのNTPのデータはまだ最終報告になっていないのです。レビューを受ける前のものだから引用ができないのですが、実験をすごく丁寧にやってあります。

 では、二次健診のほうはいかがでしょうか。作業条件の調査、それから医師が必要と認める場合ということで、肺がんを念頭に置いた項目を3つ挙げてございます。特に御異存ないようですが、よろしいでしょうか。

 それでは、一応御意見が出尽くしたようですので、事務局のほうで確認をお願いいたします。

○大淵職業性疾病分析官 わかりました。

 そうしましたら、今ご覧いただいている資料3の4ページにございます一覧表で確認をさせていただきます。

 項目の中身的には事務局案のとおりで、記載の順番としては、一次健診の項目のうち、「(5)心電図」と「(6)尿中のアンチモン」の順番を逆にするという御意見でよろしいでしょうか。

○櫻井座長 そうですね。それでよろしいでしょうか。

 どうもありがとうございました。

 それではこれで、健康診断項目の案が確定いたしました。したがいまして、元へ返って健診の対象あるいは9項目の健康診断に関する取扱い等もそのまま採用するという結論になると思いますが、それでよろしいでしょうか。

 どうぞ。

○土肥委員 適用除外作業の中で「樹脂等で固形されることにより」とわざわざ記載がされているのですが、「等」には何が入るのかということと、それ以外の固形化が一般的に三酸化二アンチモンでされているのかどうかについてはどうなのでしょうか。こういう記載が最も適切だということであればよろしいと思うのですけれどもね。

○櫻井座長 ではよろしく。

○奥村化学物質対策課長 化学物質対策課の奥村と申します。

 適用除外とすべき発散の恐れがないものとして、確認されているのは樹脂ペレットですとか、樹脂に限られておりまして、「等」というのは特段念頭にあるものはございません。

○土肥委員 ガラス等で固形化されることはない物質ですか。

○奥村化学物質対策課長 そこはあるかもしれませんが、樹脂以外は確認できていません。ほかのものもあるかもしれないという意味で「等」と入れたものです。

○土肥委員 ということは、この文章は固形化されていればいいという意味で書いておられるということですね。

○奥村化学物質対策課長 そうですね。

○土肥委員 樹脂等という意味は余りないのですか。

○奥村化学物質対策課長 参考資料4-2の17ページにおきましても。

○櫻井座長 参考資料の4-2。

○奥村化学物質対策課長 4-2ですね。下の通し番号で17ページ。(5)の考慮が必要な事項の真ん中あたりに適用の範囲及び保護具による管理基準の緩和の措置ということで、衛生的なリスクは、粉末を扱うことに限られると考えられるということでございまして、さらに次のページ、18ページの一番上の表におきましても、樹脂ペレットでの取り扱いの揮発性は非常に低いというような記載がございまして、ガラスで固定化されている場合にも、同じようにリスクが低いと当然考えられます。

○土肥委員 わかりました。ありがとうございます。

○櫻井座長 いずれにしても、恐れがないということを確認するということが念頭にあったと私は理解しております。そうですよね。

○奥村化学物質対策課長 はい。

○櫻井座長 よろしいでしょうか。ありがとうございました。

 それでは、本日予定されておりました2物質の健康診断項目についてはこれで議論が終わりました。なお、先ほど追加するのを忘れてしまったのですけれども、動物実験で3 mg/m3 でポジティブになっているというのは、一応重く受けとめる必要があるでしょう。

 ですから、ばく露限界値が0.5でなくて0.1であるというのは妥当性が高いと感じております。それは先ほどのコバルトやニッケルとの整合性から見ても、コバルトやニッケルは0.1よりもさらに低い数字になっております。だから、それは感作性はあるとはいえ、何か。

○圓藤委員 発がん分類も、動物実験のデータが不十分であったということで2Bにしていたのですが、NTPのデータが評価できますので、いずれ2Aに昇格するのではないかと思います。

○櫻井座長 そうですね。多分そうだと私も思います。ありがとうございました。

 そのほかに何か特に御発言がないようでしたら、今日の予定はほぼ終了しますが、その他として事務局から何かありますでしょうか。

○大淵職業性疾病分析官 それでは、事務局からのご連絡です。

 最初のところで、今後の予定についてということで、第3回以降の説明をさせていただきましたが、第3回以降の日程につきましては先生方と別途、日程調整をさせていただいて、開催日を決めてまいりたいということでございます。

 それから、もう一点連絡事項です。本日の議事録につきましては、取りまとめた案をまた先生方のほうにお送りいたしまして御確認をいただき、その後厚生労働省のホームページに掲載する予定でございますので、確認の御協力をよろしくお願いいたします。以上でございます。

○櫻井座長 それでは、本日の検討会を以上で終了いたします。

 お疲れさまでした。

 


(了)

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