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2016年8月19日 独立行政法人評価に関する有識者会議 年金WG(第3回)議事録

○日時

平成28年8月19日(金)15:29~18:02


○場所

厚生労働省専用第14会議室(12階)


○出席者

山口主査、大野構成員、川北構成員、園田構成員、引間構成員、光多構成員、安浪構成員

○議事

○山口主査

 定刻少し前ではありますけれども、独立行政法人評価に関する有識者会議年金ワーキンググループについて始めたいと思います。構成員の皆様方におかれましては、お忙しい中、また非常に暑い中お集まりいただきまして、誠にありがとうございます。

 初めに、酒光総合政策・政策評価審議官から御挨拶をいただきたいと思います。よろしくお願いいたします。

 

○総合政策・政策評価審議官

 総合政策・政策評価審議官の酒光です。この度は、構成員の皆様におかれましては、世間が夏休みのところも多い中、お集まりいただきまして、本当にありがとうございます。感謝申し上げます。

 御承知のとおりですが、この独立行政法人の評価については、昨年からやり方が変わってきています。参考資料2を御覧ください。いくつか書いてありますが、大きく変わりましたのは2点になります。1つは、従前、独立行政法人評価委員会で独法の評価を行っていたわけですが、昨年から主務大臣が評価を行うことになりました。それから、2点目は、評価の基準について、やや各省でばらばらなところがあったのですが、総務省として統一的なルールで行うこととなったということです。あと、1点目に関係していますが、主務大臣が評価を行うに当たり、専門家の意見を聞いて行うことができますので、この評価に関する有識者会議は、この主務大臣が評価するに当たっての参考となるような御意見を是非いただければと思っています。

 それで、評価については、次ページを御覧いただきたいと思いますが、評価の評語そのものは、SABCD5段階評価で、これは従前から変わってきていません。変わってきたのは、基準でして、従前はともすると頑張るとAのような感じがあったわけですが、昨年度から定量的・定性的双方の観点から評価を実施して、Bを標準とするということで、Bが標準となっています。Aを付ける場合は、定量的評価で120%以上、Sを付ける場合は、120%以上の定量的目標の達成と、それにプラスして、質的に顕著な成果があった場合ということになります。法人の方は、よく御存じだと思いますけど、適切に設定された目標120%を超えることはなかなか大変なことですので、基本的にはBが標準になると御理解いただければと思います。

 昨年、それをやった結果を総務省が点検をしています。それが、参考資料6になります。この中に、表がありますが、(1)の平成26年度評価の全省庁で見ますと、A以上の割合というのは、20.9%。一番下に平成25年度の参考値がありますが、平成25年度までですと、90%以上がA以上だったということですので、全く変わってきてるということになります。ただ、この(1)の全省庁で見ましたが、実は、一部の省庁ではかなり高くAを付けているということで、下の※にありますが、外務省、厚生労働省、経済産業省ということで、厚生労働省も名指しされているわけですが、これらの3省庁は半分ぐらいはAを付けていると。それを除きますと、(2)のところにありますが、各省庁大体14%ぐらいはA以上を付けているというような状況です。この辺が1つの目安になるのではと思っています。これらの点検を踏まえて、総務省では、以下のような指摘をしています。ここに4つの表がありますが、Aを付ける場合ですが、できる限り定量的な目標設定をして、それを120%超えたときにAを付けるということです。その根拠を合理的、明確に記述するということです。

2点目ですが、達成度が120%以上となる目標がないとか、少ないにもかかわらずAとするというのは、基本的にはないと。付けるのであれば、確実な根拠のようなものを付ける必要があるということです。

3点目は、主務大臣が評価を引き上げる場合も、同じように具体的に明確に根拠を示しなさいと。

4点目は、常に目標120%となっているような指標を持っている場合は、その目標自体が妥当かどうかを検証してくださいということです。

 要約しますと、基本的には、定量的目標120%を超えた場合にAを付けると。かつ、その目標が妥当であるかどうかを確認するということが基本的には必要になるのではと思っています。この辺をこれ以降の議論で、十分御確認いただければと思っています。以上でございます。

 

○山口主査

 どうも、ありがとうございました。それでは、本日の議事について、事務局から御説明をお願いしたいと思います。よろしくお願いします。

 

○政策評価官室長補佐

 政策評価官室長補佐の肥沼と申します。どうぞ、よろしくお願いします。

 御説明の前に、新任の構成員を御紹介させていただきます。71日付で、園田智昭慶応義塾大学部商学部教授に構成員として御就任いただいております。どうぞ、よろしくお願いいたします。また、事務局で異動がありましたので、御報告させていただきます。先ほど御挨拶のありました、総合政策・政策評価審議官の酒光と、政策評価官の玉川です。

 それでは、本日の議事について御説明いたします。本日の議事は、お手元に配布させていただいている議事次第のとおり、年金積立金管理運用独立行政法人の平成27年度業務実績評価に係る意見聴取です。評価項目ごとに法人側から業務実績及び自己評価について説明をいただき、有識者の皆様方から御意見、御質問をいただきたいと存じます。なお、独立行政法人の評価スケジュール全体については、参考資料110ページ別添6の図のとおりでして、本日の意見聴取等を踏まえて、主務大臣による評価を実施することとなります。なお、昨年度の評価の結果については、先ほど総合政策・政策評価審議官がお話ししましたように、参考資料6にあるような指摘を受けています。従いまして、本日御意見をいただく業務実績評価に関しても、改めて総務大臣が定める独立行政法人の評価に関する指針を踏まえ、B評定が標準であること、A標定以上を付す場合には、定量的指標において、120%以上の達成が求められていること、また、目標水準の妥当性等々に御留意いただきますようお願いいたします。事務局からは以上です。

 

○山口主査

 それでは、年金積立金管理運用独立行政法人の平成27年度業務実績評価について議論をしていきたいと思います。始めに、国民に対して提供するサービスその他の業務の質の向上に関する事項のうち、1-1管理・運用の基本的な方針、運用の目標について、年金積立金管理運用独立行政法人からポイントを絞って、ごく簡潔な御説明をお願いしたいと思います。よろしくお願いします。

 

○年金積立金管理運用独立行政法人審議役

 年金積立金管理運用独立行政法人の審議役をしております三石と申します。私から説明させていただきます。評価項目の1-1です。こちらのパワーポイントの資料の3ページを御覧ください。まずここでは管理運用の基本的な方針のところの総括をさせていただいております。枠囲いの所ですが、平成27年度の私どもの資産全体の収益率は-3.81%でございました。一方、基本ポートフォリオをベースとします複合ベンチマーク収益率、こちらも-3.81%で、超過収益率はちょうど0.00%でございました。

 その要因を分解しましたのが左下の表の所です。こちらでは資産配分要因、それからファンドの実力である個別資産要因、その他要因というような形で分解をしておりますけれども、赤枠の所を御覧いただきますと、資産配分要因の所で+0.21%を寄与しているということがお分かりかと思います。この理由について右側の円グラフですが、内側の円が基本ポートフォリオの資産構成割合、外側が年度末3月末の実際の資産構成割合です。国内債券が基本ポートフォリオ35%に対して37.55ということでオーバーウェイトです。残りの3つの資産についてがアンダーウェイトであったことから、ちょうど27年度につきましては唯一国内債券のリターンだけがプラスで、ほかの3資産についてはマイナスでしたので、相対的にリターンの高かった国内債券をオーバーウェイトしていたがために、資産配分の効果という形で+0.21%が出ていたということです。

 一方で、個別資産要因につきましては-0.15でございまして、これを更に細かく見ましたのが左下のところです。各資産クラスごとにそれぞれの資産のベンチマークと比較した超過収益率を並べておりますけれども、黒字のほうの国内債券、外国債券については残念ながらマイナスの超過収益率です。そして赤字のほうの国内株式、外国株式については若干ではありますが、ベンチマークに対してプラスの超過収益であったということです。

 これを更に細かく要因を分析しましたのが、45ページです。評価の視点としましては、昨年の有識者会議の際にも御議論ございましたように、要因を分析する際にはベンチマーク選択効果、あるいは運用受託期間選択効果を切り分けて分析せよというような指標がございました。そこで今回からは、まずは超過収益0.02%を獲得した国内株式以降、それぞれの資産クラスごとにそのような分析をさせていただいております。特徴としましては、国内株式について27年度は、スマートβ型の運用を伝統的なアクティブ運用と同程度に増加をさせております。具体的には26年度にこのスマートβ型の運用が36%でしたが、27年度は52%、約過半までに増やしております。そして27年度においては、その下の赤の枠囲いですが、野村RAFI、それとMSCI Japan small、それからSP GIVI Japan、これがスマートβ型の運用ですが、その中でも特にSP GIVIを御覧いただくと、ベンチマーク要因の(4)の所が0.11%という形で寄与をしております。正に、低ボラティリティ特性を有するファンドがTOPIX全体については下落局面でしたけれども、ここでGIVIにつきましては大きな超過収益を獲得するということで、これらも含めてスマートβ型運用全体では、TOPIXに対して+2.57%上回わり、その結果、国内株式運用における超過収益の確保にこのスマートβ型運用自身が+0.18%、ちょうどこの0.04から0.11を足した数字ですけれども、+0.1%寄与したということです。

 続いて外国株式ですが、超過収益が0.03%のプラスでしたが、これも要因分解をしますと、ファンド要因が0.03%寄与していたということです。更にこれを分解しますと、パッシブ全体、それからアクティブのエマージングの収益率がいずれも0.03%という形ですけれども、こちらの2つが寄与したということで、外国株式については若干のプラスの超過収益を得たということです。

 続いて5ページは、今度は逆に超過収益率がマイナスになった資産です。国内債券については要因がはっきりしており、その要因の大部分は物価連動国債の影響によるものです。先生方は既に御承知のように、私ども法人としましては、やはり年金については将来のインフレリスクをヘッチをするという目的で、政策的に物価連動国債の組入れを進めてまいりました。しかしながら27年度については、ちょうど円高、それから石油化学の下落、こうしたことを背景に、期待インフレ率が下落することになりまして、この物価連動国債が-0.22%という形で足を引っ張ったわけです。ちなみに、物価連動国債のベンチマークを従来のNOMURA-BPIの国債に代えて、NOMURAのチップスいわゆる物価連動国債インデックスのほうに代替をして測ってみますと、超過収益率は+0.07%に転じるということですので、正に物価連動国債によって国内債券全体のマイナスを招いたということです。

 続いて外国債券ですが、超過収益率が-0.58%でしたが、こちらのほうも理由ははっきりしております。2つございまして、まず1つは、外債については27年度にハイイールド債、エマージング債などに分散投資を進めることによって、超過収益率を獲得すると、こういう考え方の下でマネジャー・ストラクチャーの見直しを行いました。その結果、旧来の運用期間から新しい運用期間に資産を移管する期間、これが7月から9月、いわゆるトランジッションの期間が7月から9月でしたけれども、ちょうどその期間中の8月にチャイナショックがございまして、この市場の急変に対して、ベンチマーク、この場合はWGBYになりますけれども、これに追随できなかったというようなことから、まず上半期4月から9月については-0.45%の超過収益になったということです。一方、下半期10月から3月は、ちょうど欧州におきましてECBの金融緩和がございまして、ユーロ券の長期金利が大幅に低下をしたと、逆に言いますと債券額が上昇したわけです。その結果、ちょうどそのファンドマネジャーの多くがユーロ券の債券のアンダーウェイトしていましたけれども、これがマイナスに寄与したということです。一方、米国におきましては、多くのファンドマネジャーが米国の利上げを見越して米ドルにベットをするような形をとっておりましたけれども、実際には利上げ観測が後退をして米ドルが下落をしたことから、この米ドルのオーバーウェイトがマイナスに寄与したということです。この2つの理由から、下半期についても-0.14%の超過収益になったということです。

 項目の最後ですが、6ページを御覧ください。実際に私どもが運用受託期間に対してどのような評価を行い、その評価の結果どういう措置を講じているかということです。数字だけを御紹介させていただきますと、右下の所に総合評価結果及び対応とありますけれども、国内株式アクティブについては1ファンドを評価の結果解約をしております。また外国株式アクティブについても2ファンドを解約しております。更には外国株式アクティブについては、3つのファンドについては解約には至っていませんが、資金の一部回収及び資金の配分停止という措置を講じたところです。そして、これも昨年の有識者会議でもアクティブ運用についてもっとパフォーマンス、改善できないかという御議論がございました。それについても27年度、新たに2つの取組を実施しております。下の丸の所ですが、1つは実績連動型報酬を採用して増やしていこうということで、具体的には27年度に外債のマネストした際に、併せて全ての外債の運用受託機関には実績連動型の報酬を採用することといたしました。2つ目としましては、27年度に鋭意検討をして、実際のスタートはこの4月からとなりますけれども、マネジャー・エントリー制度を活用しまして、今までであれば過去3年間の実績を見て、4年目に入替をするというような形でしたけれども、機動的にいつでも入替ができる、あるいは評価ができるというような、いわゆるマネジャー・エントリー制度を採用することといたしました。このような2つの方策などを通じて、特にアクティブ運用期間のパフォーマンスの改善を更に図っていきたい、このように考えております。

 このような取組全体を評価いたしまして、1-1につきましてはB評価とさせていただいたところです。以上でございます。

 

○山口主査

 ありがとうございました。ただいま御説明がありました事項について、御意見、御質問をお願いしたいのですが、昨年と少しやり方が違っておりまして、本日の皆さんの御意見、御質問等、意見聴取を踏まえて、主務大臣のほうで評価を実施するということになっております。そういう意味では、多角的な観点からいろいろな御意見を頂きたいと思っております。ただ、時間の関係もありまして、参考資料7ですが、法人が27年度自己評価を「A」と付けている項目、あるいは重要度の所に「○」が付いている項目のところに時間をかけていろいろ進めていきたい。若干時間配分については、メリハリをつけながら進行させていただきたいと考えております。これで見ますと最初の4つ、それから1-6、4-1がそれらの部分が時間をかけていく項目になると思います。もちろんその他の項目も御意見を頂きますけれども、そのような時間配分をちょっと頭に入れておいていただきたいと思います。それでは早速1-1について、御意見あるいは御質問がありましたら、よろしくお願いいたします。

 

○引間構成員

 今回からこのように超過収益の要因分解をしっかりしていただいているので、非常に分かりやすくなったと思います。どこら辺に課題があるのかないのかという辺りは、この種の分析を毎年度毎年度続けることによって、課題があったときにそれがどこにあるかというのが非常に分かりやすくなったというのが印象です。そんな中で、1つこれは質問ですけれども、国内債券の超過収益23ベーシスのマイナスの要因分解で、物価連動国債の影響とあるのですが、これはこのとおりだと思いますけれども、お話あったように、GPIFのポリシーとして物価連動国債を採用したわけですから、これはベンチマーク要因に入るのかなとに考えるわけです。ベンチマークをあえてBPI国債にされているというところで数字が逆転していると。この辺りはどうしてなのかというのをちょっとお伺いしたいです。

 

○年金積立金管理運用独立行政法人審議役

 御指摘ありがとうございます。確かに27年度までは、こちらの5ページの真ん中の所とマネジャー・ベンチマーク等の要因分解の()の所にありますように、物価連動国債についてもマネジャー・ベンチマークがNOMURA-BPI国債としておりました。したがいましてここでファンド要因という形でマイナスが出てしまうのですが、やはり物価連動国債に対して、NOMURA-BPI国債を当てはめるというのはいかがなものかという問題意識がございまして、今年度からはここについては、正に資料にございますようなNOMURATIPSのほうをベンチマークとして扱うということにしておりますが、残念ながら27年度につきましては、従来どおり、NOMURA-BPI国債をベンチマークとして使っておりましたので、このような表記となっております。

 

○引間構成員

 修正されるということでしたので結構だと思いますけれども、マネジャー・ベンチマークが変わると、同じデータでも、その意味するところが変わってきてしまいますので、その辺りをちょっと指摘させていただきました。

 

○園田構成員

 評価に関する指針というのが出ていますので、それに合わせて発言させていただきます。評価に関する指針では、目標値に対する実績値で評価をまずするという方針だと思います。資料1-21ページを見ていただくと、この項目に関しては5つの目標があって、そのうちの2つが未達ですね。上のほうは方策について検討をするかどうかということですから、そんなに重要性はないかと思います。下の4つのベンチマーク収益率の確保というのが主要な指標だと思うのですが、これは半分が未達です。特に未達のものに関しては、未達率が結構高いと思います。それで未達ということはCにかなり近いのではないかというのが1つ。

2つ目は収益を考えると、53,000億円という巨額のマイナスになっているわけです。長期的には、というようなことを多分言われると思うのですが、今日やっているのは単年度、年度評価の話です。したがってこの巨額のマイナスをどう考えるのか。評価に反映させないわけにはいかないと思うのです。特にこの独法が使われている資金というのは、国民から制度として徴収している資金の運用をされているわけですから、ベンチマーク収益率を目標として、それがマイナスだったら実績もマイナスでいいのかということです。目標の見直しもということですと、私は目標自体もあまいと考えています。つまりベンチマーク収益率がマイナスであれば、こちらの運用としてはマイナスにならないように努力する。ベンチマーク収益率がプラスであれば、それ以上に収益率を高めるように努力する、それがこちらの目標ではないかと思います。実際に近い業種で、国内の大手の信託銀行ですとか、証券会社の業績ですけれども、悪くないですよね。そういった意味で、やはり評価としてはBではなくて、私はCが妥当だと思います。

 

○年金積立金管理運用独立行政法人審議役

 まず、最初の点についてですけれども、資料の1-2のところで確かに基準値に対して実績がどうであったかというところにつきましては、もともと達成目標が各資産ごとのベンチマーク収益率の確保ということでした。これは私どもが勝手に決めたわけではございませんで、もともと厚生労働大臣から私どもに与えられている中期目標、そしてそれに基づく中期計画の中で、この資産ごとのベンチマーク収益率の確保ということが言われておりますので、それを忠実に指標として捉えた場合に、今回につきましては国内株式、外国株式についてはプラス、国内債券、外国債券についてはマイナスであったということです。もちろんマイナスの幅のほうが大きいではないかというような御指摘がございますが、一方で最初の総括のところで申し上げましたように、ポートフォリオ全体で見てみますと、全体のベンチマークいわゆる複合ベンチマークは-3.81ですので、これに対して私どもとしては超過収益は0.00であったという、こういうことも加味しますと、私どもの自己評価といたしましては、正に目標が達成できたB評価ということではないかと考えております。

 後段の部分ですが、もともと基準に基づいて評価をすべきだというお話がございましたが、そういう意味では、今回私どもがあらかじめ与えられている評価尺度に基づいて忠実に評価をしますと、このような形になったということで、何か意図的に私どもの実績を過大視するというようなものではないということをちょっと御理解いただければと思います。

 

○園田構成員

 別に意図的に過大視しているとか、そんなことは言っていないので、それは訂正していただきたいのですが。忠実にというのであれば、そちらが出されている目標は4種類で、そのうちの2種類はマイナスですから、未達は半分だと、忠実に言えばそういうことだと思います。

 それからその他の目標以外の要因も定性的要因として考慮しているはずなのですね。この場合には収益というのは定性的要因ではありませんけれども、要は目標値として挙がっていないようなものも影響があるのであれば、それは評価に反映すると、そういうことだと思います。したがってこの巨額のマイナスに関してはやはり反映させないとおかしいのだと思います。

 

○年金積立金管理運用独立行政法人理事(管理運用業務担当)CIO

 園田先生、ありがとうございます。個別の資産の超過収益のプラスとマイナスがあることに関して申し上げますと、何のために各資産を別にポートフォリオで分散しているかというと、その年に応じてプラスのもの、マイナスのものが資産毎にばらつくからこういう分散投資をする意味がそもそもあるわけです。私どもとしましては、三石が申し上げましたように、4つの資産全体を足したもので、超過収益がマイナスにならないということが重要であると考えております。これは全てがプラスになることはほとんどないわけで、どういう形で分散してそこを平らにしていくかというのが我々執行部の仕事だということを是非御理解いただきたいと思います。あとは、絶対収益が単年度で出ていることが目標として未達であるかどうかということについて申し上げますと、先ほど信託銀行の業績がいいとおっしゃったのは、どこの業績のどの数字のことをおっしゃっているのか、ちょっと私は分かりかねますが、信託銀行の場合はその他銀行業務や信託手数料収入といろいろありますので、運用で多分同じようなポートフォリオでやられれば、似たような結果になったのではないかと思います。我々のこの仕事としましては、政府から与えられたポートフォリオに対して、先生がおっしゃったように、できるだけ市場が下に下がっているときにマイナスを抑え、上に上がっているときに少しでも稼ぐということで、それができているほどではないのですが、マイナスではございませんので、目標未達というのは、運用業務の観点からしますと、少し違和感があるというように申し上げたいと思います。

 

○園田構成員

 資金運用収支というのが多分類似の内容だと思うのですが、違うのですか。

 

○年金積立金管理運用独立行政法人理事(管理運用業務担当)CIO

 違いますね。元信託銀行の山口先生のほうがお詳しいかもしれません。

 

○園田構成員

 でも、それが巨額の赤字だとしたら、全体としてマイナスになるはずですよね。信託銀行、証券会社いずれも最終的には黒字を出していますので、どうなのですか。

 

○年金積立金管理運用独立行政法人理事(管理運用業務担当)CIO

 銀行業務の収益のほうが多分大きいと思いますが、ちょっと私が信託銀行の収益構造について、ここで商学部の先生と御議論するというのもどうかと思いますが、ちょっとそれは比較の対象としては違和感はございます。

 

○光多構成員

 これはマスコミでもいろいろ取り上げられているので我々も慎重に議論したほうがいいと思うのですが、確かに計画の所はベンチマーク収益率が確保されているかという、そういう表現になっているのですね。それでいくと0なので確保しています、したがってBだという形なのです。一応、さはさりながら、世の中がそうだったのでしょうがないのですが、5兆円以上の赤字を出したというのは事実ですよね。それで、先ほどの御説明で、ポートフォリオが若干そこのところが株式のところが低くなったので、結果的にうまくいったという御説明だったと思うのですが、これは国内株式の25%目標が21.75%、これは年度末ですよね。ここのところは月ごとに、年度末ではしょうがないので、いわゆる平均パーセントは分かりますか。

 

○年金積立金管理運用独立行政法人審議役

 それはその次の項目、リスク管理の所でちょうど乖離許容幅の管理をどうしていたかという資料が7ページにあります。これはグラフで恐縮でございますが、真ん中に引かれている線が基本ポートフォリオの中央値です。波線が乖離許容幅です。そこにどのように収まっているかということが書かれています。ちょっと具体的な数字がなくて恐縮ですけれども、大体の感じがこれです。

 

○光多構成員

 だから年度末がポコンと下がっているわけですよね。この辺が、例えばインテンショナルに、実際に株の動向を見て政策的に運用としてちょっと控えたとか、そういうお考えなのか、結果的にいろいろやり繰りしている中でこうなってしまったのか、ちょっと失礼な言い方かもしれませんが、インテンショナルなのか結果的なのか。それで結局そういう点でいくと、このポートフォリオという面でいくと、これはマイナスですよね。25%が達成できなかった。結果的にそれは収益にとってはマイナスにならなかったと。そういうことと理解してよろしいのでしょうか。

 

○年金積立金管理運用独立行政法人理事(管理運用業務担当)CIO

 基本ポートフォリオというのは、25%という中央値が決められておりまして、その上下に乖離許容幅というのが認められております。私どもの執行部の仕事としては、先ほどの御質問にもつながるのですけれども、その乖離幅の中でマーケットの環境を見ながら、できるだけマーケットが下がっているときには少しでもロスを抑えて、上がっているときには少しでも稼ぐというそういう仕事をしているわけです。今の先生の御質問に関しましては、株価が下がって下がった部分と、私どもがもともと25%に達しないつもりで持っていたところと両方ございます。ですからインテンショナルにアンダーウェイトにしていた分に加え株価が下がって更に下にいった部分があるというのが正確な答えになるかと思います。

 

○光多構成員

 何かその辺のところをもう少し説明されないと、坦々とポートフォリオがちょっと下がって、運用の面でプラスになりましたという話よりは、全体のマーケットを見ながら、こういう形で具体的に運用の工夫をしていきながら、全体としてポートフォリオを達成しましたとか、そういう形の御説明のほうがよかったのではないかと思います。

 それにしても先ほど園田先生がおっしゃった、やはりマイナスはマイナスでしょうがないです。マーケットがそういうことだからしょうがないのですが、このBの後がCというのが、その間がないのですね。だからBだけれども、非常に厳し目のBという感じということでは、私もそう思います。

 

○山口主査

 よろしいですか、ほかの構成員はいかがですか。

 

○川北構成員

 去年までは非常にパフォーマンスがよかったというか、絶対収益がよかったので議論にならなかった部分で、いつも絶対収益がマイナスになると議論になる部分です。GPIFの肩を持つわけではないのですが、基本ポートフォリオとして、株式のウェイトを上げろ、債券のウェイトを下げろと、そういう方向が出た中でのパフォーマンスなので、ある意味ではGPIF自身がコントロールできなかった部分が私は結構あると思うのですね。この責任、5兆円のマイナスが出たのが悪いのかいいのかという議論をしても私は仕方がないと思います。そもそもポートフォリオを変えたこと自身が、というか変えろと言ったこと自身がいいのかどうか、その議論だろうと思います。結果論として言うと、今議論にありましたように、また3ページの資産配分要因の分析にありますように、要は債券でそのままずっと持っていればほかの条件が変わらないかぎり、パフォーマンスがもっとよかったはずなのですよね。多分、絶対収益もそんなに悪くなかったと理解していますので、私としては複合ベンチマークに対する収益率として超過収益率が0.00、一緒だったというのは、それはそれなりにちゃんと与えられた条件の中でGPIFとしては、プラスでなかったのはある意味では多少残念ではあるのですけれども、B評価に相当する役割を果たされたのではないかと理解しています。

 

○園田構成員

 去年の超過収益率の数字も確かほぼ同じような感じでしたよね。

 

○年金積立金管理運用独立行政法人理事(管理運用業務担当)CIO

 資産クラスごとの超過収益ということですか。

 

○園田構成員

 そうですね、去年は全体のは出してないですよね。確か去年は3つがマイナスだったと思うのです。

 

○年金積立金管理運用独立行政法人理事(管理運用業務担当)CIO

 昨年は途中に基本ポートフォリオの変更があったものですから、前半と後半と数字を分けたものしか今手持ちがございませんので、昨年1年間でというと数字が手元に残念ながらないのです。多分、御覧になっての御質問だと思いますので、よろしければ御質問を頂戴できますか。

 

○園田構成員

 そのときの評価はAだったと思うのですけれども。全体としてAではなかったですか、違いますか。全体というかこの項目に関しては。

 

○年金積立金管理運用独立行政法人理事(管理運用業務担当)CIO

 私の記憶が正しければでございますが、実はこの項目というのは数値だけではなくて、先ほどおっしゃった定性も入っておりまして、基本ポートフォリオ変更後、速やかなリバランスが行われたとか、そういうことも評価されたという記憶がございます。

 

○園田構成員

 それだけではなくて、去年は収益が高かったからというのを多分評価されていると思うのですね。

 

○年金積立金管理運用独立行政法人理事(管理運用業務担当)CIO

 絶対収益がですか。

 

○園田構成員

 はい。

 

○年金積立金管理運用独立行政法人理事(管理運用業務担当)CIO

 それはないですね。

 

○園田構成員

 それはないですか。

 

○年金積立金管理運用独立行政法人理事(管理運用業務担当)CIO

 はい。

 

○園田構成員

 そうすると、去年は指標としてマイナスがあってもAにしてしまったということですか。

 

○年金積立金管理運用独立行政法人理事(管理運用業務担当)CIO

 それだけではなくて、その他定性要因があったというように申し上げたと思うのですが、それが先ほど厚労省の方がおっしゃったように、昨年は厚生労働省はAが多かったと評価を直したら、今年Bという判断も、今年のメンバーの方であればあるかもしれないとは思いますけれども、少なくとも昨年絶対収益が高いからということでAという御意見の委員の方はいらっしゃらなかったと私は理解しております。

 

○年金積立金管理運用独立行政法人審議役

 数字に関して申し上げると、基本ポートフォリオの変更する前、最初の4月から10月末までがのポートフォリオ全体の超過収益が+0.46%でして、10月以降から翌年の3月末までの下半期の超過収益率が-1.78%というのが一昨年度の数字です。

 

○大野構成員

 先ほど引間構成員から、国内債券でインフレ連動債が入るというのは、これはベンチマークのお話なのではないかという話がありました。この複合ベンチマーク対超過収益率という所も、ベンチマークとしてインフレ連動債を入れているわけではないもので測ったもので0.00というような数字になっているかと思いますので、小数点以下何位の数字の変更なのかどうかは分かりませんけれども、インフレ連動債をベンチマークとして扱った場合の超過収益率というのも括弧書きなどで追加されることも一案ではないかと思いました。

 あと、これはリクエストと言いますか、今後可能でしたら御検討いただきたいということですけれども、今回、このように要因分解を非常に細かくやっていらっしゃって、非常に分かりやすく提示されていらっしゃいます。その延長線上として、外国証券の要因分解として、為替の部分とそれ以外の部分というようなことも御検討いただけるかどうかということで、質問させていただければと思います。例えば、外国債券が振るわなかったということで、要因としてECBが金融緩和を行ったというようなことを記述されていらっしゃいます。金融緩和の影響というのは、その債券に対しては、キャピタルゲインということで発生しても、為替に対しては逆にユーロ安ということでロスが生じるということで、1つの要因に関しても与える影響というのは証券と為替で相反するものがあるかと思います。今後、為替ヘッジをこれから検討されていらっしゃるということを伺いましたので、それへの準備というか、そのような意味合いも含めて、為替の部分と証券の部分でいずれに超過リターンが発生しているのか分かるような要因分解の数値も、もしかしたら法人のほうで内部で既に管理されていらっしゃるところかもしれませんけれども、そういった数値も御検討いただければと思いました。

 

○年金積立金管理運用独立行政法人理事(管理運用業務担当)CIO

 先生、ありがとうございます。債券の収益に関しましては、やはり金利がここまでマイナス側まで落ちていく過程においては、債券はキャピタルゲインが出ると。2年前に新しい運用を開始したときには、どちらかと言えばマーケットのコンセンサスを含めて少なくとも金利は上がる方向だったと思いますので、それが逆に行く過程で、逆に債券の利益が出て、株がやられるというそういう状況が今回の結果になっていると御理解いただければと思うのですが。

 為替に関しましては、ヘッジは既に一部活用しております。そのような活用においては、今おっしゃったような器は分析としてはやっておりますけれども、我々がそういう数字を出す場合に、マーケット側がどちらサイドにヘッジを行うのではないかという予想が非常につきやすくなるものですから、今年の情報公開においてはいろいろな意味で情報の透明性を充実しているのですが、今の為替の所につきましては、どういう形で出すのがマーケットの関係においていいのかということはもう少し考えさせていただければと思います。

 

○安浪構成員

 マネジャー・エントリー制度というのが28年度から導入されるということなのですが、今、コーポレートガバナンス・コードとか、スチュワードシップ・コードというのが求められていて、それは中長期的な企業価値の向上を目指すということが目的です。中長期的な見方で投資してくださいという話があると思うのですね。このマネジャー・エントリー制度は常時公募するということですから、中長期的に企業価値の向上を見ていくという目と、常時公募するとなるとどうしても短期的な入替という話が出てきて、そこら辺の調和をどう考えておられるのか、お聞きしたいのです。

 

○年金積立金管理運用独立行政法人理事(管理運用業務担当)CIO

  ありがとうございます。まず、マネジャー・エントリー制度の最大の目的は、今までは3年に1度の見直ししか行われずに、他の委員の方からも御指摘がありましたように、アクティブのパフォーマンスが出ない場合も入替ができないという状況にありましたので、これは改善しなければいけないということで、常に我々は入替が可能な状況にしておくというのが一番の目的です。その前にマネジャーがショートターミズムに陥って、短期志向で運用してしまうのではないかというリスクに関しましては、我々とマネジャーとの間のコミュニケーションにおいて、どういうタームで企業の価値判断をしているかということを、マネジャーとの対話を進めております。一方で、アクティブ・マネジャーの場合は、どうしても短期の運用、売り買いというのは彼らの業務そのものですので、逆に企業との長期的な価値向上の関わりという意味では、パッシブのマネジャーのどういう活用をするかが重要だということを我々は認識しております。パッシブ・マネジャーの方々にどういう形で企業の持続的な成長に貢献してもらえるかということの提案を今求めているということです。マネジャー・エントリー制度を行うことによって、採用されるマネジャー側に、明日クビになるかもしれないから直ぐ利益を出さなければというようなことを誤解されることのないように、コミュニケーションには努めていくつもりでございます。

 

○山口主査

 ちょっと時間の関係もありますので、もし追加で今の部分について御質問がありましたら、後でも結構ですので、戻っていただいてもいいので、取りあえず前に進めていきたいと思います。

 次の項目について、簡潔に御説明をお願いいたします。

 

○年金積立金管理運用独立行政法人審議役

 ポイントを絞って説明いたします。7ページの評価項目1-2のリスク管理は、B評価とさせていただいております。評価の視点としては、ポートフォリオとの乖離状況を少なくとも毎月1回把握し、必要な措置を講じているかです。先ほども申し上げましたように、私どもは原則毎週1回投資委員会を開催しており、そこで乖離状況を把握し、例えばニューマネーなどが入ってきた場合にリバランスをするのか、しないのか。もしするのであれば、どの資産に配分するのかを、経済見通しをベースにして、当社判断を実施しております。年間で51回実施をしておりますが、その間、乖離許容幅に全ての資産については収まっており、特に問題がないことを確認しております。

8ページのその他のリスク指標についても、毎月1回運用リスク管理委員会を開催しております。こちらにあるのは代表的な指標ですが、このような指標のモニターをしており、平成27年度については特段の問題がないことを確認したところです。

 続いて9ページは、外部の運用受託機関等に対するリスク管理です。まず、運用受託機関に対するリスク等の報告とその評価です。実績としては、運用体制の変更の報告を11ファンド11件頂き、そのうちの運用統括責任者の変更といった重要な変更が6ファンド6件ありました。そのうち1ファンドについては、運用体制の重大な変更は看過できないということで、こちらは解約をしたところです。

10ページは、資産管理機関、トラスティに対するリスクモニターです。こちらも実績だけ御報告いたします。資産管理体制の変更は、49件からありました。こちらについては、私どもとしても特段問題がないことを確認いたしました。

 最後に11ページは、インハウスのリスク管理です。私どもは、国内国内債券についてのインハウス運用を行っておりますが、図の真ん中がインハウス運用室でやっているリスク管理です。単にインハウス運用室だけではなく、他の部局においても相互にチェックをすることによって、相互牽制を働かせる仕組みを取っております。例えば、右側に市場運用部がありますが、市場運用部は委託運用のリスク管理を行うとともに、インハウス運用室からも同じようにミーティング、あるいは報告等をしてもらい、リスクの管理に努めているところです。また、左側の運用管理室は、取引先とありますが、いわゆる債券のトレーディングを行う証券会社等の選定、それからそこにおいて特に何か問題がないかどうかについては、こちらの運用管理室がチェックをします。繰り返しになりますが、複数の部局で相互に牽制し合うような形で、リスクのモニターをしており、特に平成27年度については問題がないことを確認したところです。以上です。

 

○山口主査

 それでは、評価項目1-2について御意見、御質問等をよろしくお願いいたします。

 

○川北構成員

7ページに関連するのですが、ポートフォリオを変えられて国内債券を売って、ほかの資産を増やしていくプロセスの中で、国内債を売るというのは日銀が買ってくれているので全くマーケットインパクトはないと思うのです。ほかの所に関して、マーケットインパクトに対するリスク管理を、どのようにやっておられるのかを伺いたいのですが。

 

○年金積立金管理運用独立行政法人市場運用部長

 マーケットインパクトに関しては、配分の都度、運用機関に事後報告ということで、執行状況を報告をさせ、その際に現実的にどのぐらいのコストがかかったのかを聴取し、それをデータとして蓄えて管理をしてきたのが、この1年間の状況でした。

 

○川北構成員

 そうであれば、例えば事前に株式のファンドをプラスアルファで配分することが、マーケットに対してどのような影響を与え得るのかという辺りの計測や管理はされていなかったのでしょうか。

 

○年金積立金管理運用独立行政法人市場運用部長

 配分の計画を立てる際に、この程度の金額であれば経験的にマーケットインパクトは軽微であるという目途値を置いた上で、極力資金配分日が分散されるように執行してきたのが実情です。

 

○引間構成員

 これも前回申し上げたかもしれませんが、御説明をお伺いしているのと、書いてあるものを見ても、トラッキングエラーだったり、βだったり、デュレーションだったりということで、全て対ベンチマークの相対リスクの管理はしっかりやられているのですが、ポートフォリオ全体のトータルリスクの管理がどうなのかについて、何のデータも記述もないので、その辺りをどの程度やられているのか、やられていないのか。推定のトータルリスクは、当然基本ポートフォリオを作る際に出されていると思いますが、それに対してある一定期間での実績のリスクがどういう推移を示しているのかは、しっかりとモニターしていくことが一番大事なリスク管理ではないかと考えていますので、その点についてお伺いいたします。

 

○年金積立金管理運用独立行政法人企画部長兼運用リスク管理室長

 基本ポートフォリオ上のリスクに対して、実績のポートフォリオでどのぐらいのリスクになるかは、毎月リスク管理委員会で計算をして報告をし、その乖離を毎月チェックをしています。数字は全然入っていませんが、平成27年度で申し上げますと、基本ポートフォリオに対して測定されるリスクは少し小さめになっています。

 

○年金積立金管理運用独立行政法人理事(管理運用業務担当)CIO

 今の先生の御質問は、基本ポートフォリオとの乖離の管理はできているが、基本ポートフォリオそのもののリスク量の管理ができているかという御質問ですよね。ということであれば、毎月の管理においては、基本ポートフォリオを所与のものとして、そこからの乖離を確認しつつ、年に1回基本ポートフォリオの検証の作業があります。そのときには、基本ポートフォリオそのもののリスク量が課題になっていたり、マーケットの環境とずれてきているということがないかはそこで確認していくということで、基本ポートフォリオのリスク量の確認サイクルと、我々の日々、あるいはマンスリーの確認とは、確認しているものは違うのですが、数字としては持っております。今年、皆様にお配りしている業務概況書においては、10年の振り返りの中で、各年度のバリューアットリスクの数字も初めて公開しておりますので、そういう形で情報公開も進めております。

 

○引間構成員

 結構です。このペーパーの中でも記載があって、御説明があればよかったなと思います。

 

○山口主査

 ほかは、いかがでしょうか。私から1つ質問いたします。今の基本ポートフォリオのリスク管理の関連で申し上げます。3ページに書いてある短期資産が期末で5.14%あったという報告が出ていますが、2年前の基本ポートフォリオ策定のときに、それまでは短期資産はポートフォリオの中にあったのですね。アセットアロケーションの中にあって、2年前にこれをなくされた訳です。ですから、フルインベッシメントをやるのだといったような考え方であったのかどうかは知りませんが、要するにポートフォリオ管理上は、短期資金はない形で、マネージのベースができている。その中で、現実に短期資産が5%以上発生しているということですね。これは、多分投資のための待機資金もかなりあったと思うのですが、それはある種の投資判断に基づいて行われているわけです。したがって、こういうマネージメントをきちんと管理していくためには、短期資産についても某かの枠組みがあって、その中できちんとリスク量を管理していくような発想があったほうがいいのではないかと思うのですが、これについてはいかがでしょうか。

 

○年金積立金管理運用独立行政法人審議役

 まず、私から事実関係について説明いたします。3ページに、短期資産5.14%とあります。この中には、年金特会でもっている積立金も入っております。ちなみに、3月末ですと、約5.9兆円が年金特会の積立金です。したがって、この5.14%の大半が、それです。

 そして、一昨年10月の基本ポートフォリオを策定する際に、正に御指摘いただきましたように、その前のポートフォリオでは、短期資産の従来の構成割合は5%としておりましたが、基本ポートフォリオの見直しの際の運用委員会等における議論としては、この短期資産の必要額は年金財政の収支に応じて変化することも考えられるだろうということから、固定的な構成割合は置かないということで、ここでは短期資産について特段のパーセンテージを設定しませんでした。ただ、この後ポートフォリオの定期検証の所で具体的なお話はいたしますが、実際の基本ポートフォリオを作るときのシミュレーションとしては、一定割合短期資産を持つ前提で、基本ポートフォリオのシミュレーションは行っているところです。事実関係については以上です。

 

○山口主査

 この評価項目1-2については、いかがですか。

 

○川北構成員

 今の短期資産に関してですが、基本は山口委員長がおっしゃったことと一緒なのですが、短期資産を持つこと自身も、ある意味では投資なのです。バフェットではないのですが、株価が暴落したときに買う資金を持っているのも、極めて重要な投資判断だと思います。これは、ほかの公的年金の委員会のときにも言っているのですが、やはりここに短期資産をある程度ポートフォリオとして持つのだということを明示したほうがいいのではないかと、私自身は思っています。これは、急に変えることはなかなか難しいと思うので、将来の課題として少し考えていただければいいのではないかと思っています。

 

○山口主査

 ほかは、よろしいでしょうか。

 

○大野構成員

 今の点に関して、複合ベンチマークとの超過収益率を計算する場合には、この短期資産はどのような扱いになっているのでしょうか。

 

○年金積立金管理運用独立行政法人審議役

 入っていません。複合ベンチマークは、そもそも4資産で計算しておりますので、ここでは入れておりません。

 

○年金積立金管理運用独立行政法人理事(管理運用業務担当)CIO

 実際は、大半が今申し上げましたように、厚生労働省側で預かっている年金特会の資金になりますので、現実的に言いますと我々の運用対象ではないということで、外されております。

 

○光多構成員

 先ほど伺ったことと関係するのですが、3ページも年度末の割合ですよね。ただ実際には、全体として1年間やってこられるので、短期資産も含めて、何か平均残高みたいな形の構成費は、併せて出していただいたほうが分かりやすいのではないでしょうか。それで、年度末という形もあり得るわけですよね。そうではなくて、年度全体の平残としてどのぐらいかという数字も、併せて出していただいたほうが分かりやすいと思いますが。

 

○年金積立金管理運用独立行政法人審議役

 平残でのほうが分かりやすいということでしょうか。

 

○光多構成員

 それも併せて出していただいたほうが、例えばこれは3月末の時点ですよね。ですから、それぞれのポートフォリオにしても、短期資産も含めて、全体の併残としては何パーセントであったというほうが、運用としては分かりやすいと思います。

 

○年金積立金管理運用独立行政法人審議役

 分かりました。7ページが、それを示そうという我々の意図をもってこれが出ているのですが、これを平残計算で出したら分かりやすいのではないかと。

 

○光多構成員

 これを数値化していただくと分かりやすいと思います。

 

○年金積立金管理運用独立行政法人審議役

 分かりました。

 

○山口主査

 それでは、次の評価項目1-3に進みます。

 

○年金積立金管理運用独立行政法人審議役

12ページです。1-3については、運用手法、運用対象の多様化、株式運用における考慮事項、特にインハウス運用の活用、収益確保や運用の効率化のための見直しです。評価の視点としては、運用コストの低減等の観点から、インハウス運用の活用を検討したか。あるいは、収益確保や運用効率のための運用手法の見直しを行っているかです。平成27年度については、5つの柱について取り組んでいるところです。これらを総合的に評価し、自己評価はAとさせていただいております。

 まず、インハウス運用の活用ですが、国債のパッシブ運用のパフォーマンスを見ても、インハウス運用、外部委託先と比べても遜色のないパフォーマンスを上げていることから、平成27年度については経費の節減、更らにはインハウス運用の能力の活用を目的として、運用受託機関の1ファンドを解約をして、インハウスのほうのファンドに資金配分を行ったところです。その結果、パッシブについてもいろいろありますが、国内債券BPI国債型のパッシブのインハウス運用については、従来の30%から65.8%、約倍増するような比率となっております。これに伴う委託運用手数料が、約2,400万円の節減となっているところです。

 もう一つの柱が、スマートβの活用で、国内株式運用において超過収益を確保するということです。ここは、先ほど一番最初の項目で説明いたしましたので、簡単に説明いたします。スマートβ型の運用を取り入れる、特に国内株式アクティブ運用においては、過半を占めるような比率に引上げを図り、その結果国内株式運用におけるスマートβ型の超過収益の確保の寄与度が、プラス0.18%になったところです。

3番目は、この2月にマイナス金利が導入され、どこの機関投資家も大変苦慮しています。その中で、私どもは国内債券のパッシブ運用についても柔軟化を図るということで、具体的には単にベンチマークに追随するのではなく、マネジャーに与えているトラッキングエラーの範囲を活用していただき、ベンチマークから多少離れてもプラスのリターンが得られるように、柔軟な運用ができるような形に、運用ガイドラインを改正したところです。

4つ目は、外国債券アクティブ運用の多様化のことです。これも、一番最初の項目でも申し上げましたように、平成27年度は外国債券のマネジャー・ストラクチャーを行い、エマージング債券、ハイイールド債券、及びインフレ連動国債といった多様な運用プロダクトを新規に採用することとなりました。その結果、ファンド数は従来の83ファンドから95ファンドに増えております。併せて、こういった新たな債券についてのリスク管理についても、取組を強化するということで、特にデフォルトリスクやソブリンリスクといったものも定期的にモニターを行い、新たなこういった運用プロダクトのリスクについても、適切に管理をする体制を引いたところです。

 最後に、為替ヘッジです。外債運用において、平成27年度に実施をしたところです。このような取組を、新たに平成27年度に実施いたしました。

 続いて、13ページです。評価の視点としては、12ページの伝統的な運用手法のほかに、新たな運用対象について、運用委員会の審議をへるなどして、幅広に検討を行ったかというような視点。あるいは、オルタナティブについて十分な検討を行ったのかというような視点が示されております。こういった中で、既にオルタナティブについては、インフラストラクチャーの投資は平成26年度から開始をしておりますが、新たにプライベートエクイティ投資についても平成27年度に開始をしたところです。

 具体的なスキームとしては、世界銀行グループの一員で、新興国でのプライベートエクイティへの豊富な経験を有する国際金融公社IFC、更には国内では日本政策投資銀行との共同投資協定に基づいて、プライベートエクイティ投資を始めたところです。実際の投資規模については、当面約4億米ドル、日本円にして450億円と、規模的には小さいですが、これを枠として想定をしているところです。

 さらに、オルタナティブ投資全体の戦略の策定ということで、インフラストラクチャー、それからプライベートエクイティについては既に実施をしております。さらには、現在検討しているものでは、不動産投資があります。この3分野について、それぞれ専門のコンサルタントを公募によって採用をいたしました。このコンサルタントと一緒に、今の基本ポートフォリオの4資産に対して、このオルタナティブ資産を組み入れることによって、全体のポートフォリオのリスク・リターン特性がどのように改善するかというようなシミュレーションをし、その改善効果が表れるような形で、運用委員会に報告をしたところです。このような形で、オルタナティブ投資戦略全体の策定も、平成27年度に実施いたしました。このようなことを総合的に評価して、A評価とさせていただいたところです。以上です。

 

○山口主査

 ここは、自己評価はAとなっておりますので、委員の皆様方、御意見を頂くときに、できればこの評価が妥当かどうかという観点も含めて御発言いただければと思います。よろしくお願いいたします。

 

○園田構成員

 インハウスなのですが、資料の12ページで、26年度の30.7%から27年度は65.8%と書かれています。資料1-2では、30.7%は基準値で、これに関しては目標値は設定されていません。ですから、一見実際高くはなっているのですが、この65.8%が実際値として適当かどうかは、何とも判断がつかないということなのだと思います。

 それから、インハウスにされた理由として、運用コストの低減とおっしゃっていました。資料1-129ページを見ますと、管理運用委託手数料がグラフになっていますが、今年度は前年度と比較して92億円も増えています。そういった意味で、ここに委託運用から自家運用の資産移管と書いてあるのですが、実際には92億円のコスト増で、トータルのコストが413億円ですから、25%弱にも及ぶコストの増加になっているわけです。

 この項目はAにされているのですが、個々の内容がどうのこうのというよりは、こういったことの実施によって収益を獲得するのが実際の目的と思います。1-112ページの項目を見てみれば、確かに収益確保や運用の効率化ということが書かれています。先ほど言いましたように、収益は確保されていないですよね。マイナス53,000億円です。それから、運用効率といった意味でも、今言ったようにコストは低減されていません。ここは、そういった意味ではAではなくて、むしろCなのではないかと思いました。

 

○年金積立金管理運用独立行政法人審議役

 まず、事実関係について御報告いたします。管理運用委託手数料が増えていることに関しては、別途29ページで新たな評価項目があります。よろしければ、今説明いたします。簡単に言ってしまえば、そもそもファンド全体のボリュームが増えておりますので、そうしますと当然手数料率を引き下げる努力をしたとしても、全体の資産額のボリュームが増えれば手数料が増えると。幾つかの要因で増えておりますが、そういう中でも報酬率自身の引下げ努力は、今申し上げたような形でいろいろやっているところです。

 

○園田構成員

 ただ、これは資産に対する率で、0.02%から0.03%ということで、悪くなっていますよね。

 

○年金積立金管理運用独立行政法人審議役

 そこについても、今ボリュームのお話をさせていただきましたように、ボリューム以外にも、もともと基本ポートフォリオを一昨年の秋に改正をして、債券のウェイトを下げて、株式のウェイトを上げましたので、一般的には債券の手数料よりも株式の手数料のほうが高いものですから、そうしますと自動的に手数料は増えてきますし、別途の所でも御説明しておりますが、若干国内外の株式については、アクティブ比率を増やしております。そうしますと、またパッシブに比べて一般的にはアクティブのマネジャーの報酬率が高いです。そういった構造的な要因で増えています。また詳しくは、29ページを説明する際に申し上げたいと思います。

 

○園田構成員

 手数料率が株式のほうが高いのであれば、なぜその株式のほうをインハウスにしなかったのですか。

 

○年金積立金管理運用独立行政法人理事(管理運用業務担当)CIO

 法律で認められておりませんので。ついでに補足いたしますと、先生のおっしゃったとおりでいろいろとやっておりますが、今年の収益にただちに結果が見えていないのではないかという御質問に関しては、正に我々は長期の運用をしており、今年に関しては何とか超過収益0ということです。先ほど説明いたしましたが、この運用の多様化は、必ずしもその年に超過収益やパフォーマンスが出るわけではなく、分散の向上によるリスク・リターンの向上が運用多様化の最大の目的ですので、そこは少し定性的な評価をしていただかざるを得ないのかなと思います。

 

○園田構成員

12ページの項目は、超過収益率ではなくて、収益の確保となっていますから、ここは金額の話だと思います。

 

○年金積立金管理運用独立行政法人理事(管理運用業務担当)CIO

 もしそういうことであれば、今年絶対収益が出やすい投資は当然あるわけですが、これは言葉で業界で使われている用語と、若干違う行政用語が入っていることがあると思います。この収益の確保というのは、絶対額である、相対であるということは必ずしも定義をされてなく、いわゆる私どもの運用の執行部の仕事としては、やはり相対的な収益を上げていくことなのだろうと思っています。絶対的な収益は、このようなマーケット環境において、私どもだけがプラス5兆円を出すということは、逆にそれこそ相当なリスクを取りに行かなければできなくなってしまいますので、今我々が許されている範囲においてやっていくということかと思います。この収益確保には、どちらの意味もあるということなのだろうと考えております。

 

○大臣官房参事官(資金運用担当)

1点補足いたします。中期目標、中期計画等で収益という言葉を使っているのは、例えばこの項目で言いますと、1-2の評価の視点の中にもありますが、超過収益が獲得されているかというような書き方をしております。例えば、アクティブ運用について超過収益が獲得されているかということです。そういう意味では、絶対額の話ではなく、正に超過収益がどうなっているかという観点で収益の確保という言葉を使っていると理解をしております。

 

○引間構成員

 こちらの項目の評価の視点としては、例えばインハウス運用の活用を検討したか、あるいは収益確保や運用効率化のための運用手法の見直しを行っているかと。この点で言いますと、12ページに書いてある主に5つの項目をやられたということで、少なくとも評価としてはB以上でいいのかなと思います。ABかは若干悩ましいところで、そういう意味での質問、あるいは意見としては、特に非常に大きなテーマは、このマイナス金利という状況の中で、減ったとはいえ、基本ポートフォリオの35%を占める国内債券で、どのような工夫なり対応をしたのかは、大きなポイントとしてあろうかと思います。その点に関して、御説明の中では、パッシブ運用の柔軟化というお話がありました。お伺いする限りは、パッシブのマンデートでありながら、実はうまくやってインデックスを上回ってくださいというような話に聞こえたわけです。そうすると、実は要するにアクティブマンデートに切り替わったということなのかなと理解をしています。やはりマネジャーに与えるマンデートというのは、曖昧なものであると、それは評価の面でも問題になりますし、将来的に禍恨を残すということがあると思います。ここで必要なのは、現状の市場環境で、国内債券のパッシブ比率が80%を超えているのをどう考えるか。ちなみに、外債は60%台だったと思いますが、国内債券のパッシブ比率、あるいはアクティブハッシブ比率をどうするのが適切なのか。あるいは、どの程度アクティブの比率を引き上げるべきなのか、あるいはそれが可能なのかといったような議論を堂々とすべきであって、パッシブ運用の柔軟化というと言葉はいいのですが、それは非常にマンデート自体を曖昧にしてしまうのではないかという懸念を、少々持ちました。

 

○山口主査

 ほかにいかがですか。

 

○光多構成員

 運用対象の多様化の所です。昨年も申し上げたのですが、プライベートエクイティ投資の開始ということで、26年度もやっておられると思います。昨年にお伺いした件は、確かカナダの年金基金のものの一部で、私がかなり申し上げたのはGPIFの裁量が効かないのはないか。要するに、随意契約的になって、言われたままに通すのではないかということをかなり申し上げたので、その辺については慎重に運営していただきたいと思います。今回のこれについても、共同投資協定とありますが、具体的にこの中にいくと競争市場がないわけです。共同投資協定の中で、実際にGPIFがどういう形で収益が上がるのかどうか、きちんと見極めるのかということを具体的にこの中に入れないと、これは契約の話にもなってくるのですが、GPIFを決して信用しないわけではありませんが、こういうことを少しずつやっていくということはいいと思います。

 この辺については、かなり内部で知識のノウハウを蓄積して、なおかつ、IFCとの契約をきちんとやって、もしまずいときには途中でキャンセルできる形を含めてやっていただかないとまずいと思います。そこの辺は去年申し上げたのですが、よろしくお願いいたします。

 

○年金積立金管理運用独立行政法人理事(管理運用業務担当)CIO

 ありがとうございます。まず、オルタナティブの場合、先ほどのカナダの年金と今回のワールドバンク系列IFCとの共同においては、なぜ公募のプロセスを取っていないのかと申し上げると、彼らは我々が委託する運用業者ではなくて、私どもと同じような公的年金、あるいは公的に資金を運用している立場にある方々だということです。我々としては、投資のパートナーだということで一緒に進めてきた案件です。

 その先において、実際の運用については、例えばIFCの場合、その下にある彼らの子会社で、こういうファンドを専業として運用している所に運用を委託するということです。これは、正に先生のおっしゃったところで、我々も悩みの深いところです。GPIFの場合は、運用そのものに具体的に我々が手を出すなという制約を一方でされていて、こういう案件をするときには、できるだけ近くで見たいということも当然運用者としてはあるわけですので、その中で考えられたスキームが業務概況書にも出ておりますが、投資信託を間に入れて、そのほかのパートナーの方に見てもらいながら運用を進めていくという立て付けということです。

 公募のプロセスによって我々の条件がよくなると考えられる場合は、当然、我々も公募します。こういう形で単発で出てきて、我々と似たような状況にあり、我々よりもノウハウのある所と一緒に共同で物事を進めていくことが我々に有利だと判断する場合は、先ほどのようにオンタリオやIFCと共同投資という形でやっていくということになります。正直ケースバイケースと思っております。

 

○光多構成員

 分かりました。今おっしゃったパートナーという言葉で少し安心するのですが、最初の段階からきちんと同じ立場でやって、これはノーだとか、これはイエスという話をきちんとやらないと、昨年に申し上げたようなスキームだと、何か言われたとおりに投資するという話になるとこれはまずいので、ここについては、少ししつこいようですが、きちんとした形のスキームを作っていただきたい。

 

○年金積立金管理運用独立行政法人理事(管理運用業務担当)CIO

 エールだと思って受け取らせていただきます。私どもにはまだノウハウがないと思われておりますので、GPIFがいろいろ口を出すなという御意見も世の中にはあるわけです。今の御意見は、我々のノウハウを蓄積して、できるだけしっかり個別に見ろということだと思いますので、先生からのエールだと受け止めて努力いたします。

 

○川北構成員

 私も引間構成員の意見と余り変わらないので、この項目に関しては、ある程度評価できると思っております。ただ1点だけ、マイナス金利の導入を受けた債券パッシブ運用の柔軟化と書いてありますが、これも引間構成員と一緒で、もっと抜本的に見直す必要性があるのではないかと思っております。それに関連して最新のものを見ると、各資産ともパッシブの比率が下がっていて、アクティブの比率が上がっているというのは、かなり意図されているのか、それともたまたまそうなったのか、その辺りをお聞かせいただければと思います。

 

○年金積立金管理運用独立行政法人理事(管理運用業務担当)CIO

 ありがとうございます。まず、2つ目の質問から回答いたします。アクティブに関しては、我々はアクティブの比率を事前に決めているわけではありませんので、マネジャーを選ぶ中でアルファを取れるという確信が持てるマネジャーがあれば加えていくということかと思います。

GPIFの場合は、我々の資金サイズで受け取って、かつ今まで出しているアルファを出し続けられるマネジャーの数にも制約がありまして、そちらも制約要因になるということですので、あらかじめ幾らアルファを増やそうというつもりはありません。なのでアルファを出せなければ、またアクティブ比率を引き下げるということもあるでしょうし、積み上げの結果として、あのような数字になっていると御理解いただくのが正しいと思います。

 国内債券のパッシブ運用に関しては、先生方のアドバイスがあれば本当に受けたいぐらいなのですが、正直私どもがアクティブを3040%と増やした場合、国内債券のアクティブで我々の資金規模を受けられる所がどれだけあるのかという制約もあり、頭が痛いところなのです。自分たちがやったことを評価すると、今までであればパッシブ部分はしょうがないということで運用していて、全パッシブの運用者は同じような動きをしていたと思います。

 私どもがパッシブのマネジャーに対して与えてあるトラッキングエラーの範囲内においては、デュレーションだけ維持してもらえれば自由に動いていいという指示をしたことによって、実際、それぞれのパッシブマネジャーによって若干運用方針が異なってきております。これは、イールドカーブの一部だけが急激に潰れる等、そういうことを抑えるという効果は対市場に対して少しはあったかと思っております。

 確かに全体で国内債券をどのように運用していくのかということは本当に頭が痛いところなのですが、我々は今の制約条件の中で、できるだけマーケットに我々のネガティブな影響が出ないように、できるだけマーケットが活発に動くようにということを考えた上でこういうことをやっておりますので、できればそういうところは評価していただきたいと思っております。

 

○園田構成員

 先ほどの収益が収益率だとおっしゃっていましたが、もしそうだとすると、1-1で超過収益率が0.00%で、Bとおっしゃっているわけですよね。こういういろいろな手法を導入されても、結局、結果としてそちらがB評価とおっしゃっているのですが、なぜ結果がBなのに手法がAなのか教えていただきたいです。

 

○年金積立金管理運用独立行政法人理事(管理運用業務担当)CIO

 それは、今年の年次の成績に今年やったことが反映されていないのは何故かという御質問かと思います。それは、先ほど申し上げたように我々は、そもそも投資の期間が1年ではないのです。基本ポートフォリオも25年の想定期間でやっておりますので、長期の範囲内でこのような活動が、例えば、ヘッジは今年必ず結果が出るわけではなく来年結果が出ても構わないわけですので、そういう意味でヘッジをしております。なかなか、やったことが今期全て数字に出てくるということにはならないのかと思います。

 

○園田構成員

 ただ、これは単年度、年度評価ですよね。長期でという話をされてしまうと、年度評価という前提が崩れてしまいます。

 

○年金積立金管理運用独立行政法人理事(管理運用業務担当)CIO

 ただ、それは先ほどの所で、短期の評価をパフォーマンスの評価でしていただいております。ここは収益確保のためにどういう運用の見直しを行ったのかということですので、今後、収益の確保や運用の効率化の効果が出るような活動を今期できていれば、それは今期の数字とは別に評価していただけるというのが、そもそも項目が分かれている意味合いかと私どもは理解しておりますが、それは先生方の御判断かと思います。

 

○山口主査

 時間が大分たっていて未だ1-3までしかいっておりません。後で戻っていただいても結構なので、次に進めたいと思います。1-4を簡潔に御説明ください。

 

○年金積立金管理運用独立行政法人審議役

1415ページです。1-4、情報公開・広報活動の充実・強化ということで、こちらはA評価としております。ポイントは、ここに書かれているとおりです。実際の事例ということで15ページに、今回初めて記者会見などについてYou Tube動画にも掲載して、一般の方々が直接、私どもはどういうメッセージ、どういう解説をしているのかということを御覧いただけるように、これは、恐らくほかの独法でも見られないようなケースかと思いますが、このような試みを実施しております。

 また、15ページの所にありますが、基本ポートフォリオ変更の狙いが分りづらい、あるいはなかなか理解されていないという御意見がある中で、当時の理事長が対談形式で一般の方々でも分かりやすい平易な言葉で、なぜ今回、国内債券のウェイトを下げて株式のウェイトを引き上げる必要があったのかという解説をした動画をアップして、それなりのフォロワー数が出ております。

 また、右側にTwitterによる情報発信があります。今の若い方々はTwitter等をしているかと思います。一般の方々からよく聞かれる御質問は、例えば、株主優待権をどのようにしているのですか、GPIFは本当に運用の専門家集団なのですかとか、こういうことに対して端的に直接国民の方々に訴えかけるという試みも実施しております。数字については、赤字の所に幾つか書かれております。いずれも新しい試みですから目標値はありませんが、新たな試みを幾つか実施しました。また、その効果も私どもとしてはあるのではないかということでA評価としております。

 

○山口主査

 ありがとうございました。これについて御意見、御質問等はありますか。

 

○川北構成員

 これは、水野さんと議論したところです。いろいろ斬新なことをやっておられるということは評価していいと思いますが、透明性の向上、情報公開の充実という意味で抜本的なところができていないと思います。これは、後のコーポレートガバナンス・コードとかスチュワードシップ・コードの所とも関係するのですが、他機関に対してそういうことを要求される立場にあるGPIFとして、年度のパフォーマンスの公表が、なぜ7月末まで遅くなるのか、一般の上場企業であればゴールデンウィーク前後に決算単身を公表しているわけです。

 それができていないこと自身が、いろいろ制約条件はあると理解しておりますが、これは透明性の向上に全く反する状態であって、そういう意味では、私はA評価に納得できないと思っております。

 

○年金積立金管理運用独立行政法人審議役

 今回の業務概況書は、28729日に行われたものです。私どもが今説明しているのは27年度に行ったことについてです。ただ、729日に業務概況書を公表した経緯ですが、もともと、その前はどうであったのかと申し上げると、年度計画の中で業務概況書については7月末まで、第1四半期であれば8月末までに公表するとなっております。

 実際の公表日は、その近くになって決められていたわけですが、そうすると、それが国会との関係やいろいろな所から恣意的に、あるいは政治的な思惑で設定されているのではないかという御意見がありましたので、28年度については28年度の計画で7月末までにと書いていたものを特定の日を決めてしまおうと、基本的には最終金曜日のマーケットが閉まったときが一番マーケットに対する影響が少なかろうということで、7月末の最終金曜日がたまたま729日なので公表したという経緯です。

 したがって、何か意図的に遅らせたということではなくて、私どもとしては、むしろ公表日をあらかじめ年度計画で、7月に限らず今度の第1四半期、第2四半期の公表日も全て期日を指定しております。そういう、期日を明確化するという意味で一歩踏み出して行ったところです。いずれにしても、これは28年度のことではないかと思っております。

 

○光多構成員

 確かに729日は時点的には今年度だけれども、やはり27年度においてもそういう仕組みになっていなかったということは言えると思います。透明性の社内の体制ができていなかったということは言えると思います。これはAというのは、先ほど評価審議官が120%とおっしゃったのですが、どこが120%なのか分からないので、先ほどの収益の公開も含めて、この辺は承服し難いという感じがします。

 

○山口主査

 ありがとうございました。時間もありますので、この後の運営については進め方を変えたいと思います。1-5~1-8まで一括して御説明を頂いて、その説明も簡潔にやってください。その上でまとめてポイントを絞って質疑を行っていきたいと考えております。よろしくお願いいたします。

 

○年金積立金管理運用独立行政法人審議役

 それでは、特にA評価について丁寧に説明して、B評価はポイントを絞って説明いたします。16ページの1-5は基本ポートフォリオの検証でB評価です。基本ポートフォリオを一昨年10月に策定して、定期的に検証して必要があれば見直しの検討を行うということが評価の視点です。そういう意味では今年の2月のマイナス金利が導入された直後の市場データ等を取り込んで新たに検証いたしました。

 結果のみ紹介いたします。16ページの赤字の所です。今のポートフォリオを見直す必要がないという結論です。理由は2つあります。金利低下によって国内債券の期待リターンの低下にはキャピタルロスも含まれております。この影響が見られますが、現行の基本ポートフォリオでも、おおむね目標利回りを達成することができると確認したこと。

2番目として、年金財政で必要とされている積立金水準、これは基本ポートフォリオの場合、あらかじめ25年後に幾ら必要なのかという積立金水準があります。今のポートフォリオをやって実際の積立金を下回る確率、ここではリスクと書いておりますが、確率がどうなるのかということを検証した結果、これは、むしろ一昨年10月の基本ポートフォリオを作ったときよりも、その確率は低くなっているということで、逆に言えば必要な積立金水準を確保できる見通しが高まったということが理由です。

 ちなみに、確率が低くなった理由は、一昨年10月にポートフォリオを改正して26年度末の積立金が約15兆増えておりますので、シミュレーションをやる発射台が高くなったということから、この下回る確率が低くなりました。データ、その他を掲載しておりますが、もし御質問があったときにお答えしたいと思います。

 続いて、21ページの1-6、市場民間活動への影響に対する配慮をA評価としておりますので、若干、丁寧に説明いたします。ここでの評価の視点としては、コーポレートガバナンスの重要性を認識しているのかどうか。そして、運用受託機関における議決権行使の方針や行使状況等について報告を求めているのかです。21ページは、私どもの一般的な市場等への影響への配慮が書かれておりますが、特に一番下の所で、私どもは1つ大きな制約があり、株主議決権についての具体的な行使は運用受託機関に委ねるというスキームになります。

22ページです。そのような制約の中でも、一昨年に日本版スチュワードシップ・コードの受入れをして、具体的なコードへの取組を実施しております。問題意識としては、その下の枠の所のスチュワードシップ活動の状況の所に幾つか黒丸がありますが、下の2つの黒丸について申し上げます。

 アクティブ運用については、エンゲージメントが実施されている傾向にあります。一方で、パッシブ運用機関についてはエンゲージメントが余り実施されている状況ではない。しかし、そもそもパッシブ運用は持ち切りというものが多いわけですが、そういうケースこそエンゲージメントをやっていただいて、株主価値の長期的な拡大を図っていただくということこそが私どものミッションですので、パッシブ運用機関の今の現状認識について懸念があります。

 もう1つとして、運用受託機関自身のガバナンスです。運用受託機関が投資先の上場企業に対するガバナンスについていろいろモニタリングするわけですが、運用受託機関自身にも、例えば、親元の証券会社や銀行からの社外取締役の派遣を含めて、いろいろガバナンス、あるいは利益相反の問題があるのではないかという懸念を持っておりました。

 上の欄ですが、そういう中で、具体的に幾つかの取組を実施しております。まず、全ての運用受託機関に対してヒアリングを実施しました。そして、昨年の9月には責任投資原則PRIの署名も実施して、運用受託機関に対してESGを考慮した投資を促しております。また、スチュワードシップの専任担当者も採用して体制の強化を図りました。

 そして、先ほどの懸念の所で申し上げたように、私どもの評価項目として運用受託機関のガバナンス体制、利益相反の弊害防止体制を初めて具体的に明確化しました。また、パッシブ運用受託機関に対して、エンゲージメントを含むスチュワードシップ活動を促すために、消化ウェイトを高めることとしました。

 また、強調したいのが、今まで運用受託機関との間のコミュニケーションということですが、直接、投資先である上場会社に対して、運用受託機関のスチュワードシップ活動について、どのように見て考えているのかという点について初めてアンケートを実施しました。具体的には23ページです。左ですが、JPX日経インデックス400構成企業に対してアンケートをしたところ、初めてのアンケートでしたが回収率65%を得ることができました。

 その結果については左下に幾つかありますが、強調したいのが上場企業からも長期投資家としてのGPIFを含むアセットオーナーの役割に期待したい。あるいは、そういう所と直接対話したいというお話がありました。23ページの右側の図です。アンケートをきっかけとして、27年度だけで31社の上場企業とスチュワードシップやスチュワードシップ活動に関するコミュニケーションを実施しております。具体的には上場企業の財務、IR担当の担当者、役員の方とコミュニケーションを図っております。

 このようなスチュワードシップ活動に対する新たな取組、いろいろな制約がある中で私どもとしてはかなり思い切った取組を実施してきたと考えております。実際に運用業界、経済界を含めて、かなりのインパクトがあったのかと思っております。そういう意味で、これらを含めて私どもとしてはA評価としております。

 続いて、24ページの1-7、高度で専門的な人材の確保です。こちらはB評価です。数字だけ申し上げます。右下の所に数字があります。外部のコンサルタントの評価を加味した上で、私どもとして優秀な人材を、先ほど申し上げたスチュワードシップ・コード担当職員を含めて7名採用できました。

2526ページは、調査研究業務です。こちらはB評価です。27年度に新たにやったこととしては、25ページの真ん中にありますが、体制の整備ということで調査を担当する専任課として5月に調査課を設置しております。また、25ページの右下の所に赤字がありますが、委託先に対しても情報セキュリティ対策をしっかりしてもらい、評価する仕組みも併せて取り入れていただきました。

26ページです。実際に行ったテーマです。今回は海外年金基金等におけるインハウス運用に関する調査研究です。単にどのようにインハウスをやっているのかというだけではなくて、そこに至るまでの組織や職員の意識の改革を含めて、かなり海外の年金基金においては時間をかけて様々なインハウス運用にたどり着いているわけですが、そういうノウハウや考え方、歴史的な変遷を幅広くこの研究によって得ることができました。今後、私どものインハウス運用を進めるときに役立てるだけではなくて、組織全体のガバナンスの強化やリスク管理にも、この研究は役立つものと考えております。以上です。

 

○山口主査

 ありがとうございました。それでは、できれば評価項目1-6を中心に、もちろん、それ以外の項目も言及していただいて構わないのですが、自己評価Aとされている部分について、御意見を頂ければと思います。いかがでしょうか。

 

○安浪構成員

 企業株式の持ち株比率を5%以下にするという原則があるということですが、今回、個別企業の銘柄を公表されましたよね。概況書の最後のほうに上位10社ですか、個別企業の株式数を公表されており、それはほとんど5%を超えているのです。5%以下にするということは、受託運用機関にそれぞれ遵守を要求しているということだと思うのですが、全体として5%を超えている以上、GPIFとしては5%以下になるようにしていますという話は、実態と一致していないと思います。

 

○年金積立金管理運用独立行政法人審議役

21ページの点だと思います。おっしゃるとおりアグリゲートすれば当法人全体では5%を超えることがあります。運用受託機関ごとに、ファンドごとに見た場合に5%以下になるように原則求めているという意味です。

 

○安浪構成員

 実際は概況書の117ページで、保有株式銘柄をトヨタ自動車からキャノンまで10社出されておりますが、ほとんど5%を超えています。超えていないのは日本電信電話で、ほとんどの銘柄は5%を超えている。ほとんど超えているのだから、たまたま超えたということではないと思います。ほとんどトップ企業の大株主になられているわけです。運用機関別に5%以下にしていても、全体として5%を超える場合にどのように調整するのか。合算すれば5%を超えているということは、民間企業の経営に口を挟むことができる可能性があると外部から見られるように思います。

 

○年金積立金管理運用独立行政法人理事(管理運用業務担当)CIO

GPIFは直接株式を保有することを認められておりませんので、8%持っていてもGPIFが企業に8%の株主として影響を及ぼすということはありません。まず、これを第一の前提として御理解いただきたいのです。

 全体の企業に対して大体何%の株式の保有になるのかということは、基本ポートフォリオで株を全体でどれだけ持つのかということが決まった段階で大体決まってしまいます。それは、私どもの場合、マーケットの影響を抑えるためにパッシブを多めに持つことを考えると、必然的に78%の日本企業を全部合計した場合の株主になるということは基本ポートフォリオ段階で決まっているということを御理解ください。

 一方で、議決権の行使は各運用機関に個別に依頼して彼らが自由裁量でやっておりますので、その運用機関が5%以上持つということになると、その個別の運用機関が企業に与える影響が過大になるということで、それぞれの運用機関には5%以下にしてくださいというお願いをしております。それを全部足したときに5%を超えてしまうということについては、それによって我々が企業に影響を及ぼせませんし、かつ、基本ポートフォリオで決まってしまうということを御理解いただければと思います。

 

○山口主査

 よろしいですか。

 

○安浪構成員

 はい。

 

○川北構成員

 少し別の観点です。1-6に関して、いろいろ工夫されていることは非常によく理解できます。結論として、この自己評価は妥当ではないかと思いますが、その上での質問です。運用受託機関にいろいろ要求されているということは、コストが掛かってくる話だと思います。その運用受託機関自身が支払うコストに見合うようなフィーを払わないと、結局、歪んだマーケットを間接的に作ってしまうことになり得る。

 それに関連して、概況書の81ページに運用コストの時系列推移があり、海外の公的年金の平均とGPIFのものが比較されていて、かなり乖離しています。というか、ほとんどみすぼらしいほどのフィーしか払っていないように見えます。この必要なコストは払うという問題は、2-2のコストの削減にどのぐらい努めたのかというところと私は矛盾しないと思っております。払うべきものは払う、でも、無駄なものは払わないという、そういう方針でいいのではないかと思うのですが、その辺りはどのようにお考えなのか、お聞かせいただければと思います。

 

○年金積立金管理運用独立行政法人理事(管理運用業務担当)CIO

 ありがとうございました。フィーに関しては、先ほども他の委員の方からの御質問にもありましたが、絶対額として増えていると。過去においては、それをどのように抑えるのかという議論をしてきたという経緯があります。正直パッシブに関してはずっとコストを抑えるということだけを意図してやってきたわけです。

 川北先生が御指摘のように私どもから運用機関に対する要望といいますか、要求する業務水準も増えておりますので、それに関して正当なコストを運用会社側が要求してこられるということは、当然あり得ると思っております。運用会社に対しても、そういうことがあれば説明してくださいと求めております。

 一方で、アクティブに関しては、先ほど三石が申し上げたように昨年実施した外債のマネストからは、全マネジャーに対して実績連動のフィー体系を導入していただいておりますので、そういう意味では川北先生のおっしゃるコストに見合うといいますか、効率が上がる形でのフィー体系を作るということで全体にシフトしております。今後、各種3クラス、マネジャーを入れ替えるごとに新しい契約では、基本的に実績連動型のフィー体系を導入していくということを基本方針としたいと思っております。

 

○園田構成員

 資料から、いろいろ日本版スチュワードシップ・コードに対して対応されていることが分かりました。ただ、独法ですので国の方針に対して先陣を切ってやっていくのも、ある意味で役割なのかと思います。専任者を採用されていることを、積極的と捉えることもできるのですが、やはり、そのためのコストも掛けているわけで、そういう意味では専任者がいてやられていてということですから、私としては120%、100%は超えていると思うのですが、120%を超えてというところまではいかないのでBなのかと感じました。

 

○山口主査

 ありがとうございました。ほかによろしいですか。それでは、あとは一括して御説明していただきたいと思います。2-1~4-1まで、できるだけ簡潔にお話いただければと思います。よろしくお願いいたします。

 

○年金積立金管理運用独立行政法人審議役

27ページ、評価項目2-1、効率的な業務運営体制の確立は、自己評価をBとしております。下に具体的に平成273月末から平成283月末にかけて、どのように組織の見直しをし、効率的な体制を確立したかということが書かれておりますが、特に赤枠の所です。理事を2人体制にし、特に日米両方の法曹資格を有するリーガル・オフィサーを採用して、外国との契約書も含めて、きちんとしたチェックができるような体制をとったという改革をしております。

29ページ、2-2、管理運用委託手数料です。先ほどから御議論のありました手数料ですが、まず全体像としては、委員からも御指摘がありましたように、下のグラフにあるように、手数料率については0.02から0.03%に増えております。額としては約92億円の増です。この要因については、先ほど申しましたように、もともとのボリュームが増えているということで、このグラフの一番下の所に平均残高が書かれておりますが、131兆円から139兆円にボリュームが増えているということから、額が増えているという1つの要因があります。これも先ほど申し上げましたが、資産配分の影響ということで、基本ポートフォリオの変更で、債券から株式に増えたということ、あるいはアクティブの運用比率が高まったということから増えているところですが、そこに加えて、これはあくまでも例ですが、その上に書かれているような幾つか節減努力を実施したところです。これを踏まえてB評価とさせていただいているところです。

30ページですが、先ほどの続きの業務運営の効率化に伴う経費節減と財務内容の改善に関する事項です。どちらも内容としては共通項がありますので、併せて説明いたします。前年度の基準額に対して、平成27年度で1.34%の効率化を行ったかどうかというのが評価の視点となっております。そういう意味では、平成27年度にそういった予算の作成ができているということです。3-1の自己評価についてもB評価とさせていただいたところです。

 最後の項目が31ページから一番最後のページにかけてですが、その他の事項ということで、特に内部統制の強化に向けた体制整備について強調させていただきたいと思います。こちらをA評価としております。評価の視点としては、内部統制の強化、あるいは業務方法書に定めた体制の整備について、確実に実施をしたかという評価の視点になっておりますが、31ページにあるような4つの新たな取組を実施したところです。リーガル・オフィサーについては先ほど申し上げたとおりですが、それに加えて右側にあるように、私どもは行動規範をこと細かに作っておりまして、それを常時、携行するという形で、写真にあるようなポケットサイズのものを持っているわけです。そして、ここに書かれている項目、例えば役職員であれば65項目、我々職員でも61項目ありますが、定期的にきちんとそれが遵守されているかどうかという点検を実施しております。平成27年度については、点検をした結果、役職員、それから外部の有識者たる運用委員、いずれについても全ての事項について、特に違反事例がないということを確認したところです。

32ページは今申し上げたことを組織図に落とし込んだもので、33ページは内部統制の一環として、その他コンプライアンスの関係、あるいは情報セキュリティの関係等について触れたものです。

34ページはやはり内部統制の1つですが、監事監査の充実・強化ということで、1つだけ紹介させていただきますが、赤字になっている監事監査規程の改正を昨年9月に行って、新たに業務方法書の変更に合わせて、監事と理事長との定期会合、あるいは厚生労働大臣に提出する資料については監事が調査をするということについての明文化を図ったところです。

 最後に紹介させていただくのが、35ページから36ページにかけての情報セキュリティ対策です。特に枠囲いの所を説明させていただきますが、日本年金機構の情報流出事案が発生して、私どもとしても追加的な対策を講じたところです。そもそも私どもが持っている情報は金融機関の情報などもありますが、こういった要機密情報についてはインターネット、外部に接続したような環境には保管しないということを徹底した上で、緊急事後点検を追加的に実施するといった形で、実際に第1回目に行った遵守率に比べて、第2回目には100%に近いような遵守率を得たところです。また、標的型メールが実際に問題になったわけですが、この訓練を実施しました。第1回目の訓練において、残念ながら開封してそのままにしてしまった者が10名いたわけですが、第2回目の訓練においては、このうち6名は開封しなかった。誤って開封した者についても、残りの4名については私どものマニュアルに沿って、直ちに関係部局に報告をするということが確認されたところです。

 最後に36ページです。先ほどの情報セキュリティは内部の情報セキュリティ対策ですが、私どもはいろいろな委託先を持っております。運用委託先については、従来から様々な情報セキュリティ対策を講じていただいているところですが、それ以外にも例えばインハウスのトレーダーの先である証券会社であるとか、ビルの管理会社であるとか、人事コンサルの会社であるとか、そういったいわゆる外部に委託している事業者、全てについて情報セキュリティに関する覚書等を結ばせていただいたところです。具体的には※の所にありますように、独立行政法人の情報処理推進機構(IPA)が決めております情報セキュリティ対策ベンチマークによる自己診断を、その業者にいちいちやってもらい、その結果を当法人に報告をしてもらうと。その結果、問題があれば私どもからもの申すということを、契約の中に盛り込んだところです。運用委託先以外のそういった様々な業者の中には、なかなかこういった交渉に応じてもらえないような所もありましたが、そこは丁寧に交渉の努力をして、何とか170件、基本的な外部の業者全てについて、こういった情報セキュリティに関する覚書、契約書の締結をすることができたところです。以上です。

 

○山口主査

 ありがとうございます。一括して御説明いただきましたが、この中では4-1の内部統制であるとか、あるいは監事監査とか情報セキュリティ対策といったところについて、A評価をされておられますが、これについて御意見等ありましたらお願いしたいと思います。

 

○園田構成員

 4-1については、これだけの資金を扱われているところですので、これぐらいやっていただかないと、というように思いました。そういった意味では、AというよりはB評価なのかなと思います。

 2-1と2-2なのですが、B評価とされているのですが、やはりコストは結構増えています。運用の量が増えていることを理由としているのですが、平成25年度から平成26年度にかけて、それから平成26年度から平成27年度にかけて、管理運用委託手数料の増加が、約40億円から92億円、振れ幅が2倍以上になっています。損益計算書を見てみますと、一般管理費もその前の年度の4億円から8億円に倍増しているのです。そういった意味で、効率的な業務運営とか経費削減というのはできていないと思います。普通は、収益が増えれば費用もある程度増えるのは仕方がないのですが、ここは収益との対応でコストを評価しづらいところはあるのかもしれないのですが、そうするとやはりコストだけで見ざるを得ないので、少なくともコストに関して言うと、効率的ではないと思いました。

 

○年金積立金管理運用独立行政法人総務部長

 一般管理費の部分だけ説明いたしますが、私どもは昨年、移転を行いまして、それに基づく内部の造作費用であるとか、移転経費であるとか、そういった工事費関係も含めて、前年に比べてその分だけが増えたということで、これはもともと我々が予定している部分ですので、移転するということの関係で増えたものです。

 

○園田構成員

 それは賃借料のことですか。

 

○年金積立金管理運用独立行政法人総務部長

 いいえ、違います。

 

○園田構成員

 その他一般管理費も含めてということですか。

 

○年金積立金管理運用独立行政法人総務部長

 一般管理費の中に、ビルの工事費と、前に住んでいた場所を原型復旧しなければいけませんので、そういったものの費用がここに入って。

 

○園田構成員

 その他一般管理費も2億円増えているのです。

 

○年金積立金管理運用独立行政法人総務部長

 そうですね。人も増えていますし、専門家も7名。

 

○園田構成員

 人は給与手当ですよね。

 

○年金積立金管理運用独立行政法人総務部長

 はい、そうです。

 

○園田構成員

 だから、その他の一般管理費という項目が増えているのですけれども。すみません。会計の御担当の方ではないのですか。

 

○年金積立金管理運用独立行政法人理事(管理運用業務担当)CIO

 今、調べております間に、運用の責任者といたしまして1つ申し上げますと、私どもは運用の高度化と多様化という命題を有識者会議のほうからも与えられて、厚生労働大臣のほうからもそういう指示の中で高度化してきております。運用を高度化するに当たって、まずは人とかシステムの整備を先に行った後に運用を高度化していくという時間差はどうしても起きてしまいます。現在は中期計画上も人員も増やしていくフェーズにありますので、絶対額での人件費は当然のように毎年増えていくと。それに応じて、リスク・リターンの改善が出るのは、当然、人材の獲得を進めながら運用を高度化してまいりますので、そこのタイムラグが出るということは御理解いただきたいと思います。

 

○年金積立金管理運用独立行政法人総務部長

 その他の一般管理費ですが、私が先ほど来申し上げていますとおり、原状回復工事による増、什器・備品等も新たに買っておりますので、それら諸々を含めてここにあります35,000万円がかかっているということです。

 

○園田構成員

 一昨年と昨年を比べても、やはり1億円ぐらい一般管理費が増えていて、何かずっと経費は増やしている、増える傾向にあるように思うのです。平成26年末で約3億円、平成27年末で41,000万円ですよね。

 

○年金積立金管理運用独立行政法人総務部長

 はい。私どもは職員数も増えておりますし、専門職を雇用するためにはそれなりの高い給与を支払う必要がありますので、そういったもの。それと、そういった専門職を雇うために、コンサルタント等も雇って、一番適正な能力に応じた給料を払えるようにということで、コンサルタントを使って透明性を高めたフィーの設定等もやった、そういった諸々の経費が昨年来、積み上がっているというように御理解いただければと思っております。

 

○園田構成員

 賃借料も、移られたということで増えたということなのですが、今までの4,000万円から15,000万円に、かなり増えていますよね。その理由は何ですか。

 

○年金積立金管理運用独立行政法人総務部長

 引っ越したのは昨年12月ですので、この賃借料の中身というのは、もともとの旧事務所の費用がほとんどです。ただ、引っ越すときに、工事期間中というのは、旧事務所と新しい事務所を二重で借りている時間等がありますので、その分は若干かかっているということがあります。

 

○園田構成員

 ここでやめておきますが、ただ、経費削減とは言いながら、これだけの賃借料が増えるような所に引っ越されているのはどうなのかなと、そういう感じですね。

 

○年金積立金管理運用独立行政法人審議役

 もともと移転をした趣旨ですが、私どもの職員数、これはプロ職員を含めて職員の拡充・強化を図るということになりますと、旧来あった事務所では手狭であるということで、新事務所の移転をする必要があるというのがまず1つあります。さらに、BCPの観点からしても、例えば旧事務所の場合には、非常用電源等の設備がないと。ですから、もし何か災害等が起こった場合に、私どものいわゆる電子データなどについて心もとないような状況でしたので、そういった設備ができているような、あるいはセキュリティについても、旧来の事務所よりも相当ソフィスティケートされたセキュリティシステムを持っている事務所という形で、今回の所に移転をしたということですので、移転の必要性はそのような形で御理解いただけたらと思っております。

 

○安浪構成員

 物価連動国債の損失なのですが、去年、平成273月末では8,600億円お持ちで、平成283月末では19,000億円の物価連動国債。11,000億円ほど増加されて、増やされた期の期末に330億円ほどの損が出てしまったということで、この理由は何だという確認なのです。原油が下がり、資源価格が低下した。特に今年の年初めに資源価格が下がっている。投資するときに見込んでいなかった期待インフレ率が下落してしまったということが原因なのでしょうか。投資されるときに、その辺の見込みを取り入れることはできなかったのかどうかということなのですけれども。

 

○年金積立金管理運用独立行政法人理事(管理運用業務担当)CIO

 ありがとうございます。いろいろな要因があるのですが、結局は金利が下がってしまったということが最大の問題で、物価連動国債はインフレに対してヘッジ効果を発揮する投資商品ですので、そういう意味ではインフレどころか、マイナスに金利が下がっていく中においてはロスが出てしまったということですが、やはり私どもは年金の長期的な運用という観点からは、金利が上がる、インフレになるリスクというのは大変大きなリスクだと思っておりまして、それに対する抵抗力のある商品を持つという意味で、物国の購入を進めてまいりました。

 その進めていく中で、我々が購入を進めていく期間中において、残念ながら日銀の方が目標とされた金利の上昇が起きなかったということで、ロスが出ているわけですが、そこに関しては今後も金利が今後20年にわたってずっと低いまま、あるいはもっとマイナスに行くというように考えるのか、将来どういう見込みを持つかということによって我々も対応していきますが、ここはちょっと御理解いただきたいのですが、私どものようなサイズでありますと、ある程度1つの商品を買うにも、長期的に徐々に積み上げていくということしかできないということと、物国の場合、マーケットの流動性が低いものですから、私どもが今、方向性が金利が逆になっているので、売るというオペレーションを突然するというと、先ほど評価項目にありましたが、市場への影響という観点からも簡単にできることではないと。そういう制約の中で、できる限り長期的に年金財政の確保に資するような運用をしたいと心がけてはやっております。

 

○光多構成員

 先ほど来の議論で、一般の方から見ると、損益計算書を見るとやはりびっくりしてしまうと思うのです。経常収益がマイナス53,000億円から始まって、一般管理費とかいう形でずっと経費が下がってくるので、実際の管理費とかに見合う収入が立っていないわけですよね。ですから、ものすごい赤字がどんとあって、それからいろいろな経費があって、それでこれは独立行政法人として存立し得るかということになってしまうので、何かここのところが。だから、一番最初の昨年のベンチマーク等を収益率にすることになってしまうのです。全体の収益がプラスになれば、ここは黒になってきて、損益計算書として少しは見栄えがいいことになるのですが、安浪先生、しょうがないのでしょうけれども、全体として独法としては、やはり膨大な赤字でしたと。そこでこれだけの経費がかかって、全体としていろいろ努力して赤字をこれだけに減らして、それでこれだけの経費でやりましたと。独法の平成27年度の全体の経営の総括みたいなものがやはりほしいのです。

 先ほど来おっしゃっている経費の削減というのは、経費削減して全体の業務がまずくなると、これはまずいと思うのですが、独法という損益計算書を見ると、やはり赤字なのです。これを見ると、積立金があと33兆円で、今年度はマイナス5兆円ですから、この調子でいくと6兆円で、しかも資本金1億円しかないのです。これはなくなってしまうし、何となく損益計算書で見ると、この独立行政法人自体がどういう方向に行くのですかという話のところで、結局、今年度はベンチマーク収益を確保して、しかしやはり赤字だったと。来年度以降は全体としてこういう話だと、もうちょっと将来性がある損益計算書がないと、これを見ると国民全体が不安になってしまうという感じがしますね。

 

○年金積立金管理運用独立行政法人理事(管理運用業務担当)CIO

 ありがとうございます。やはり会計監査に対する損益計算書はもう決まったフォーマットがありますので、できるだけ一般の方に、今、先生がおっしゃったような観点を分かってもらいやすいようにということで、今年からこういう業務概況書を充実させて、こちらを見ていただきますと、今おっしゃったような長期的にどうなのかということとか、年金財政の関係が分かるようなものを入れておりますので、こちらのほうで今御指摘いただいたようなことは、できるだけコミュニケーションしようと考えておりますが、損益計算書の所は会計のフォーマットが決まっておりますので、少し難しいかなと。

 

○引間構成員

 今のお話に絡むのですが、情報公開とか透明性の向上という所で、従来以上に工夫されてきたというのは事実だし、その点は評価したいと思うのです。一方で、今の議論にもありましたように、例えば記者会見での質疑を見ても、あるいはメディアの報道等を見ても、やはりこれだけやってきても国民の理解というのは十分ではないなと。とても難しいのだと思います。業務概況書も非常に詳しく、従来以上に充実して書いているし、また理事長の説明などでも過去10年、過去15年といったような長期の数字も出したりしてやっているのですが、どうしても単年度の損失に目が行ってしまう傾向というのが、まだまだありますよね。そこのところが資産運用の基本中の基本、要するに単年度のぶれを許容することが長期で投資目標を達成するための大前提なのだという、そのことをいかに手を替え品を替え、一般の国民に分かりやすく伝えることができるかという、そこのところの工夫なのだろうと思うのです。分かる人が見れば、業務概況書をこれだけ詳しく書いていただければ十分分かるのですが、必ずしも投資の専門家でもない一般国民に対して、要するに長期投資というのはそういうことなのだと。単年度のぶれを許容することによって、GPIFが目指している、厚生労働省が目指している名目賃金上昇率プラス1.7%というのが初めて達成できるのだというところを、どういう形で分かりやすく説明していくかというところは、恐らくまだまだ工夫の余地があるのかなという気はしているので、ちょっとその点もお願いしておきたいと思います。

 

○川北構成員

 繰り返しになるのですが、パフォーマンスを公表されたのが7月末というのが、これはやはり非常にまずいと思うのです。背景はある程度分かります。水野さんの顔を見て分かるのです。でも、これはやはり後ろめたいことがあるから、去年に比べて1か月近く後ろ倒しにしたのだと思われても仕方ないと思うのです。だから、上場会社がゴールデンウィーク前後に決算短信を公表しているわけですし、実際の有価証券報告書を6月末に報告しているわけですし、そういう感じでやらないとこれはまずい、非常に誤解を生むと思うのです。私自身は今年度の損失は仕方ないものだと思っていますので、そこは理解しているつもりなのですが、やはり一般の国民から見ると、後ろめたいものがある、そう見えてしまう。それと同時に、支払受託手数料を増やしているとか、そういうのが見えてしまうと、何をやっているのだということになってしまうので、それは長期的なパフォーマンスの向上のために手を打っているのだと説明するのがいい。国立大学のように授業料は安いわけですが、講義の内容、教室は非常に悪いわけで、そのような安かろう、悪かろうの状態を作らない。お金を注ぎ込んだとしても良くなるという保証はないのですが、努力して長期的にパフォーマンスがプラスアルファが出るようになっているのだということを、やはりきちんと見せていく。その上でも、最初に申し上げたように、坦々とパフォーマンスが悪いときも良いときも、同じようなタイミングで、できるだけ早いタイミングで公表していくということが重要だと思いますので、繰り返しになりますが、少し申し上げます。

 

○年金積立金管理運用独立行政法人理事(総務・企画担当)

 いろいろと御意見ありがとうございます。1点、補足をさせていただきます。私どもは業務概況書で国民に分かりやすくという点について更に努力を重ねたいと思います。それから、私どもの運用の目標と組織のあり様をこれからどのようにしていくのかという、この辺りを通して説明するのは、これは中期目標・中期計画の中で、この組織を、例えば先ほど高度専門人材を増やしていくというような話を説明申し上げましたが、その上で更に経費の節減をしろということをまた中期計画の中でも位置付けているということです。こうした全体像について、また丁寧にバランスよく説明をするという努力をさせていただきたいと思います。

 

○山口主査

 最後になって恐縮なのですが、法人理事長、監事からのヒアリングということで、最初に法人の監事より業務の監査結果等を取りまとめた監査報告について御説明いただくとともに、監査等を踏まえた現在の法人の業務運営の状況、あるいは今後の課題、改善方針等について、コメントをお願いしたいと思います。

 

○年金積立金管理運用独立行政法人監事(吉江)

 監事の吉江でございます。資料1-4を御覧ください。1枚めくって、監査報告です。私どもの監事は吉江と小宮山ですが、監事は独立しておりますが、意見の一致を見ていますので、今こういう形で連名で監査報告をお出ししております。監査報告については、基本的には無限定の適正意見を出しております。監査の方法及びその内容と1番目に書いてありますが、こういう形でいろいろな情報を聴取し、話を聞きということをやっております。

 平成26年度と平成27年度との違いを申し上げますが、それは監事監査の強化ということです。1つ目は中期計画に明記された運用対象の多様化とか高度専門人材の確保、ガバナンスの強化が年度計画にちゃんと盛り込まれて実行されているかということを、監査計画にしっかり織り込んでみますということを周知したということです。2つ目は、従来からやっています理事長・理事との定期会合を増やしました。新たに組織として設置されているもの、コンプライアンス・オフィサー、リーガル・オフィサー等という主要な部室長との定期ミーティングの機会を増やして、新たな取組に関する情報収集をしました。3つ目は、高度専門人材として新たに採用された職員に、主として新たな取組に関して期待どおりの仕事ができているかどうかということをヒアリングして、検証に努めたということです。4つ目は、監事・監査強化の一環として置かれた監事付きの機能を活用して、法人内での情報収集に努めるとともに、業務監査、決算監査に関しては事前に質問表を配る等々、議事録を作る等、監査の業務の効率化と見える化を図ったということです。

 次ページ、裏ですが、その結果、先ほど申し上げましたような2番目の監査結果として、基本的に5つの項目について問題ないという監査報告を出しております。また、3の所で、独立行政法人に求められた事務・事業の見直し等についても、着実に推進されているものと認めます、という監査報告を出させていただいております。

 次に監査を踏まえた現在の法人の業務運営の状況ですが、平成27年度は先ほど当方からの説明にありましたように、2理事体制とし、組織を変更して、高度かつ専門人材を新たに採用したということですが、これがうまく動いていくためには、組織を超えたといいますか、組織間の連携、新たに加入した職員と既存職員のチームワークが醸成されることが不可欠でした。その点に関しては、法人はその実現に向けていろいろ努力をしてまいりましたので、組織間、職員間での情報の共有が質量ともに増えて、問題が深掘りされて、会合での議論が活発になったと認識しております。したがって、法人は運用の多様化に適応できる組織に向かって、着実に前進していると判断しております。

 今後の方針というか、課題ですが、今年度は平成27年度に検討したこと、あるいは着手したことがいっぱいありますので、これを確実に実行することが非常に重要です。それとともに、これらを通じて得られた知見を、今、予定されている新ガバナンス体制での業務運営に生かす仕組みを前もって作っていくことが非常に重要だろうと考えております。監事からは以上です。

 

○山口主査

 ありがとうございました。続いて、法人の理事長より、日々のマネージメントを踏まえて、現在の法人の業務運営の状況や今後の課題、改善方針等について、コメントをいただければと存じます。よろしくお願いします。

 

○年金積立金管理運用独立行政法人理事長

 今日はいろいろありがとうございます。時間も限られていますので、私のほうから2点だけ、簡単にコメントさせていただきます。1点目は、アセットの状況です。もう1点がガバナンスの話です。1点目のアセットの状況について申し上げますと、今の持っている比率から考えまして、日本の国内債が少なくなって、その他のものが大きくなってきたという比率の状況と、特に昨年度のお話をさせていただきましたが、今年度以降のことを考えますと、中央銀行の緩和が相当行きわたってきて、価格だけが増えるという状況がより一層激しくなってきておりますので、昨年は5兆円のぶれで済みましたが、今年はこれからしばらく各クオーターごと、アセットの状況を国民の皆様に開示しておりますが、価格の上下の幅が大きくなるのは避けられないのではないかと考えております。

 したがって2点ありまして、1つは当然、その内容等についても正確に説明すると。要するにデータの公開の部分と、リスク管理だろうと考えております。お話がありましたとおり、当然、個別もよく見ますが、トータルのアセットとして、どういう状況なのか。あるいは、リスク管理をどうしていくのかということについては、謙虚にこれからも引き続き考えて、うまくいけるように努力したいと考えております。

 ただし、皆さん御承知のとおり、よく説明しなくてはいけないと思っておりますのは、我々自身、例えば株が下がって、売って損を出しているわけではなくて、持っているものの評価損が膨れるだけですので、当然戻る部分もありますし、一方ではずっと長期で保有しておりますので、利息なり配当はかなりの金額が毎年、毎年入ってきておりまして、それが収益に貢献しているのもまた事実だろうと思っております。したがって、今年の業務概況書にもお示ししましたとおり、いわゆる利息配当で利益が上がった部分と評価損でロスが出た部分について、長期間のグラフをお示しして、なるべく皆さんに安心していただくような形、あるいはもっと言うと、利息なり配当をある程度長期で狙った投資を、これからも引き続きしていきたいということについても説明していきたいと考えております。それがアセット運用についてのコメントです。

 もう1点、ガバナンスについてですが、今現在、形式上は私の独任制ということで運用しているわけですが、今、法律を準備していただいていて、合議制に移るということです。ただ、今のGPIFの内部の運用について簡単に申し上げますが、私もこの4月に来たばかりで、本当に十分知っているかというところについては努力している最中ですが、内部の投資委員会なりの会議については、私が当初思っていたよりはずっとフラットに各人が意見を言っていただけますし、その多様な意見を生かした投資判断ができていると思っております。したがって、実質的に合議制でやっている今のGPIFの文化というものを、法律改正するまでの間どうやって維持して、このカルチャーを育てるかということが一番大きな私の使命だと思っております。今後とも一生懸命やっていこうと思いますので、引き続きよろしくお願いいたします。今日はありがとうございます。

 

○山口主査

 ありがとうございました。ただいまの御発言内容について、構成員の皆様のほうで御意見、御質問等ありましたらお願いいたします。また、やや足早な運営をやりました関係で、どうしても最後に言っておきたいという御意見等がありましたら、いかがでしょうか。よろしいでしょうか。それでは、年金積立金管理運用独立行政法人の平成27年度業務実績評価に係る今後の取扱いについて、事務局のほうから説明をお願いいたします。

 

○政策評価官室長補佐

 本日、法人から説明のありました業務実績及び自己評価に対して、構成員の皆様方から寄せられた御意見や法人の監事及び理事長のコメントなども踏まえ、厚生労働大臣による評価とし決定し、その評価結果について法人に通知するとともに公表いたします。決定した内容については、後日、構成員の皆様方にもお送りいたします。最後になりますが、本日、配布した資料の送付を御希望される場合には、事務局より送付いたしますので、机の上にそのままにして御退席いただきますようお願いいたします。事務局からは以上です。

 

○山口主査

 それでは、本日は以上とさせていただきます。本日、私の時間管理の不手際で、大幅に時間超過してしまいまして申し訳ございませんでした。長時間にわたりまして、熱心な御議論を頂きましてありがとうございました。


(了)

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