ホーム> 政策について> 審議会・研究会等> 労働基準局が実施する検討会等> 透明かつ公正な労働紛争解決システム等の在り方に関する検討会> 第9回透明かつ公正な労働紛争解決システム等の在り方に関する検討会 議事録(2016年10月12日)
2016年10月12日 第9回透明かつ公正な労働紛争解決システム等の在り方に関する検討会 議事録
労働基準局
○日時
平成28年10月12日(水)10:00~12:00
○場所
中央合同庁舎5号館厚生労働省議室
○出席者
荒木 尚志(座長) | 石井 妙子 | 大竹 文雄 | 垣内 秀介 | 鹿野 菜穂子 |
高村 豊 | 土田 道夫 | 鶴 光太郎 | 徳住 堅治 | 斗内 利夫 |
中村 圭介 | 中山 慈夫 | 長谷川 裕子 | 村上 陽子 | 水口 洋介 |
山川 隆一 | 輪島 忍 |
○議題
・検討事項(案)について
・現行の仕組みの評価について
・その他
○議事
○荒木座長 それでは、定刻となりましたので、ただいまより第9回「透明かつ公正な労働紛争解決システム等の在り方に関する検討会」を開催いたします。
委員の皆様におかれましては、本日も御多忙の中、お集まりいただきありがとうございます。
本日は、岡野貞彦委員、小林信委員、小林治彦委員、水島郁子委員、八代尚宏委員が御欠席です。
また、土田委員はおくれて到着されるという御連絡があり、徳住堅治委員には所用により途中退席の予定と伺っております。
本日の議題ですが、第1に、前回の検討会で事務局に整理するようにお願いしておりました「検討事項(案)について」、第2に「現行の仕組みの評価について」でございます。
それでは、お配りしました資料の確認を事務局よりお願いいたします。
○大塚調査官 資料でございますけれども、本日は3点、お手元にお配りしております。
1つ目が資料No.1の「検討事項(案)」、2つ目が参考資料1の「現行の個別労働関係紛争解決システムについて」、3つ目が参考資料2の「参集者名簿」でございます。
「参集者名簿」につきましては、斗内委員の役職が変わりましたので、改めて配付するものでございます。
もし、遺漏などがございましたら、事務局のほうにお知らせください。
以上であります。
○荒木座長 ありがとうございました。
それでは、本日の進め方ですけれども、まず、事務局より「検討事項(案)」について、資料No.1に基づき御説明をいただきます。そして、これに関する議論を行います。
次に、事務局より「検討事項(案)」のうち、1の「(1)現行の仕組みの評価」について、参考資料1に基づき御説明いただき、これに関する議論を行うという形で進めたいと思います。
それでは、事務局より、議題「検討事項(案)」について、資料No.1に基づいて御説明をお願いします。
○大塚調査官 それでは、資料No.1に基づきまして、「検討事項(案)」の御説明を申し上げます。
こちらの資料の位置づけですけれども、これまでの検討会の議論などを踏まえまして、今後、各項目について御議論を深めていただく際のいわば論点のようなものをお示しするものでございます。
順に御説明いたしますと、大きく柱建て3本ございます。1点目の柱が「1 現行の個別労働関係紛争解決システムの改善について」ということで、「(1)現行の仕組みの評価」と「(2)改善の必要性」の2つの小柱を立てております。
「(1)現行の仕組みの評価」でございますけれども、内容的には3点ございまして、1点目が、労働局あるいは都道府県労働委員会などで行っております、あっせんなどの紛争解決システムについて、こちらが「簡易で迅速かつ低廉な仕組みとして有効に機能している」のかどうかという評価についてでございます。
2点目が「司法による個別労働関係紛争解決」ということで、労働審判の仕組みにつきまして、「着実に制度の利用が進み、全体的には有効に機能していると評価できるか」どうかという点でございます。
3点目が「個別労働関係紛争解決システム間の連携」ということで、これまでの議論にもありましたように、司法あるいは行政、そして民間におきまして各種の個別労働関係紛争解決システムが整備されてきたわけでございます。これにつきまして、「制度間の連携が制度的に担保されておらず、国民にとってどの仕組みを利用したらいいのかわかりにくいのではないか」というような御指摘もあったところでございますけれども、こういったシステム間の連携についてどう評価するのかというのが3点目でございます。
4点目は「その他」でございますけれども、「その他の個別労働関係紛争解決システム」につきまして、どう評価するかということでございます。
「(2)改善の必要性」は、今、申し上げました「(1)現行の仕組みの評価」を踏まえての御議論をいただければと思っておりますけれども、これも内容的には3つございます。
1点目が「行政による個別労働関係紛争解決」についてでございますけれども、その特性といたしましては、先ほど申し上げましたように、簡易・迅速・低廉といったような特徴があるわけでございます。特にスピード重視でやっているというのが労働局の仕組みでございますけれども、労働審判に比べますと事実認定を必ずしも行わないですとか、あるいは任意性を重んじているといったようなこともございます。こういったような違いに留意しながら、国民にとってさらに身近で利用しやすい仕組みとするためにはどうすればいいのかということを御議論いただければと思っておりますが、「考えられる検討事項」としてその下に詳述しております。
労働局の取り組みにつきましては、1つ目としては「より納得の得られる解決を促すための方策」として、現行の「あっせんや助言・指導」につきまして何か改善すべき点あるいは新たな仕組みといったものが検討できるのかどうかといったことが1点目でございます。
2点目が「時間的・金銭的予見可能性を高めるための方策」といたしまして、括弧書きで例示しておりますけれども「処理機関に係る目標期間の設定」ですとか、あるいは「解雇紛争の解決金額のデータの公開等」が考えられるのかどうかということが2点目です。
3点目は「紛争当事者に対する情報提供」に関してでございますけれども、特に振り分け機能などの御議論がこれまでの検討会にあったかと思いますが、ほかの紛争解決システムも含めて、その事案の内容に応じてどういうような情報提供を行うべきかといった情報提供の内容の充実ですとか、あるいは職員のスキルアップといったものが御議論いただければと思っております。
その下のポツは、都道府県労働委員会に関するものでございますけれども、そこが行うあっせんにつきまして、認知度向上のためにどういうことが考えられるのかといったようなことがあろうかと思います。
2つ目が「司法による個別労働関係紛争解決」ということで、もともとは労働審判制度などは法務省・最高裁が御所管されているものでございますけれども、「さらに個別労働関係紛争の円滑な解決に資するようにする」という観点で、労働政策の観点から改善を求めていく点があるのかどうかといったことを御議論いただければと思います。
「考えられる検討事項」としては掲げてあるとおりでございますけれども、1つ目は「労働審判員の専門性の確保」ですとか「労働審判諸手続の簡素化等について」。
2つ目は、労働審判制度につきましては、労働審判法第15条第2項で「3回以内の期日で処理する」といったようなことがうたわれているわけでございますけれども、さらに「時間的・金銭的予見可能性を高める」ためにどういうことが考えられるのかといったことを御議論いただければと思います。
3点目の柱が「個別労働関係紛争解決システム間の連携」についてでございます。これは、「紛争の内容に応じて適切な個別労働関係紛争解決制度を利用することができるようにするために、改善が必要な点はあるか」ということでございまして、「考えられる検討事項」として挙げております1点目は運用面についてでございます。都道府県労働局は、年間100万件を超える総合労働相談を受け付けているわけでございますけれども、「相談時やあっせんの不調時に事案の内容や当事者の希望に応じて案内する情報充実させること」ですとか、あるいはその情報を適切に案内するためには、相談員などのスキルアップが不可欠かと思いますけれども、そういったスキルアップですとか体制の強化についてどう考えるかというのが1点目でございます。
2点目はどちらかといえば制度論なのですけれども、これまでの検討会の場におきまして、諸外国や我が国のほかの紛争解決制度の仕組みについて御紹介してきたところでございますけれども、それらを参考にいたしまして、「何らかの個別労働関係紛争解決機関間の連携の仕組みを導入すること」が考えられるのかというのが2点目でございます。
4番目は「その他」でございますけれども、その他の個別労働関係紛争解決システムについて、何か改善すべき点が考えられるのかどうかということでございます。
以上述べましたところが、現行の仕組みに関する改善策でございますけれども、これまでにペーパーに掲げられております検討事項のほかに、何かほかにもこういう視点がある、こういう改善策についての論点があるといったようなことがございましたら、あわせて御議論いただければと思います。
2本目の柱が「解雇無効時における金銭救済制度について」ということでございます。
1つ目の○は、今の評価についてでございますけれども、解雇をめぐる紛争につきましては、ここの下の3つ掲げたような現状があるのではないかということで、それをどう評価するのかというのが1つ目の検討事項と考えられます。
1点目が「解雇が裁判によって無効となった場合であっても、職場復帰せず、退職する労働者が一定数存在」しているのではないか。
2点目が、行政組織によるあっせんにしても労働審判制度にしても、民事訴訟上の和解にしても、金銭による解決が多く図られているのではないかという実態。
3点目が「解雇無効の地位確認訴訟に代えて、解雇を不法行為とする損害賠償請求訴訟に訴え、それが裁判で認められる例も出てきている」のではないかという点。
こうした現状についての評価をまず1つ目の課題として挙げております。
2つ目は「『日本再興戦略』改訂2015」によってこの検討会は始まったわけでございますけれども、その内容は次のページに掲げておりますが、それらで掲げられております「解雇無効時における金銭救済制度」について、これまでの検討会の場におきましては、賛成の立場の方と反対の立場の方の双方の御意見があったところでございます。この仕組みを我が国に導入することについてどう考えるかというのがまず1点目でございます。
また、それにつきましては「制度導入の可否を判断するためにも必要な個別の検討事項についてしっかりと議論するべき」との意見もあったところでございますけれども、これについてどう考えるのかということでございます。
最後の柱が最後のページの一番下でございますけれども、「3 その他個別労働関係紛争の予防や解決を促進するための方策について」ということで、具体的に例示しておりますのは、労働基準法第20条の「解雇予告期間のあり方」ですとか、あるいはこの検討会でも御意見があったところでございますけれども「紛争当事者の負担を軽減するための方策等」につきまして御議論いただければと考えております。
事務局からの説明は以上でございます。
○荒木座長 ありがとうございました。
ここでの議論ですけれども、今後の検討を進めていくに当たって、この「検討事項(案)」に検討すべき事項が抜けているとか、こういう視点が抜けているといった点があれば御意見をいただきたいというものです。
今後、各個別のテーマの議論をする際には、本日の議論を踏まえた上で具体的な検討に入りたいと考えております。この「検討事項(案)」については事項について御意見をいただきたいということで、事項の中身の具体的なところについては事務局からもしかるべき資料を出していただいた上で議論を深めたいと考えているところです。
それでは、この「検討事項(案)」について、御質問・御意見等があればお願いします。
長谷川委員、どうぞ。
○長谷川委員 長谷川です。
2点ほどあります。1点は、都道府県労働委員会の紛争解決についてです。労働委員会も個別紛争解決を行っていまして、最初のころに土田先生もその経験を披瀝したと思うのですけれども、労働委員会の紛争解決については、検討項目(案)の1の中に入れてほしいと思います。検討項目1の(1)[1]にある「行政による個別労働関係紛争解決」の中で検討するということであれば、それで結構です。
2点目は、今後の進め方でありますけれども、検討事項1が「現行の個別労働紛争解決システムの改善について」、2が「解雇無効時における金銭救済制度について」、3が「その他個別労働関係紛争の予防や解決を促進するための方策について」となっているところ、私の過去の経験ですと、議論を分けずに進めると第8回検討会のように議論が混線するので、できたら次回検討会は1の紛争解決システムの改善について集中してやりましょう、その次の回は2の解雇の金銭解決制度についてやりましょう、その次は3のその他についてやりましょうと分けてやってほしいのです。そのようにしないと、過去の労働条件分科会で労働契約法と労働時間法制を議論した際に、一方で労働契約法のことをやって、一方が労働時間をやったところ、労働契約法ばかりに関心が行ってしまい労働時間は全然議論しないで終わってしまったという経験がありました。ぜひ一回一回ごとに、今回は1、次は2、次は3と一巡して、次にまた1、2、3というような進め方をしていただいたほうが、議論があっちに行ったりこっちに行ったりしないでいいのではないかと思います。
○荒木座長 ありがとうございます。
では、事務局からお願いします。
○大隈労働関係法課長 事務局です。
2点いただきましたけれども、1点目の都道府県の労働委員会の関係も検討事項の中には入っておりまして、例えば1ページ目の1の(1)の[1]です。「行政による個別労働関係紛争解決」の途中の「地方自治体」というところの中に「労政事務所・都道府県労働委員会」と書いてございますように、現行の仕組みの評価の中でも、自治体が行う、労働委員会が行う紛争解決も含めておりますし、それから、今後の改善の必要性についても、2ページの1つ目の白丸の中の「考えられる検討事項」の2つ目の黒ポツのところで「都道府県労働委員会のあっせんについて」ということで、ここは認知度向上を例として掲げていますけれども、都道府県労働委員会についても議論の対象と考えております。
2点目ですけれども、進め方としては、本日もまずはこの「検討事項」についての御意見の後に、1の「(1)現行の仕組みの評価」という形で区切ってさせていただければと思っておりますし、次回以降も「今回は現行のシステムの改善についてです」という形で議論の対象は区切りながら進めていければと思っております。
以上です。
○荒木座長 長谷川委員、どうぞ。
○長谷川委員 失礼しました。「地方自治体」のところに入っていまして、申しわけございませんでした。
それともう1点ですが、検討事項1のシステムの改善のところで、行政と司法に分けて項目立てしていまして、司法関係の項目もあり、この司法関係の紛争解決では労働審判についていろいろな議論がされると思いますが、都道府県労働局のあっせんは個別紛争解決促進法が根拠法になるわけですけれども、労働審判の手続だとか、労働審判員の教育だとか研修だとかは比較的、労働政策ということで議論できるのだと思うのですけれども、労働審判法に関することだとか、審判制度そのものに関することなどを議論した場合のその扱い方というのはどうなるのでしょうか。
○荒木座長 事務局からどうぞ。
○大隈労働関係法課長 司法の関係の部分は、この「検討事項(案)」で言いますと2ページの真ん中あたりです。[2]の「司法による個別労働関係紛争解決」のところですが、そこの柱書きにもちょっと趣旨を書かせていただきましたけれども、あくまでも司法制度ということではあるのですが、今回「個別労働関係紛争の円滑な解決に資するように」ということで、システム全体を議論する中で労働政策の観点から何か改善を求めていく点はないかということで議論いただいた上で、もしそのようなことがあった場合には、司法当局、法務省なり最高裁に提案なり提言していくことになろうかとは思いますけれども、その提案をどのように扱うかということになると、そこはあくまでも所管であります法務省あるいは最高裁において適切に御判断いただくというような形かと思っております。
○荒木座長 よろしいでしょうか。
ほかにはいかがでしょうか。中山委員、どうぞ。
○中山委員 中山ですが、この「検討事項(案)」の「2 解雇無効時における金銭救済制度について」のところですが、「1 現行の個別労働関係紛争解決システムの改善について」は、これまでの議論を踏まえて「考えられる検討事項」ということで、今後の議論に資する具体的な検討事項が掲げられておりますが、2の金銭救済制度については、「考えられる検討事項」というのが特になくて抽象的で、2つ目の○のところで見ますと、2段落目が「これについては、制度導入の可否を判断するためにも必要な個別の検討事項についてしっかりと議論するべきとの意見もあったが、これについてどう考えるか」というので、「個別の検討事項」が挙がっていないので、これ自体がどういう意味がよくわからないと思うのです。
「個別の検討事項」については、これまでの議論で、例えば前回、これは土田委員からも出ましたが、4つの論点ということでも出ておりますし、具体的な論点を挙げて、それに絞って順次検討していくというところで行きますと、1の論点整理と比べると、2の中身が極めて抽象的で、ここでもこれまでの議論で出ているものを掲げて明確にするということが必要ではないかと思いますが。
○荒木座長 前回、フリーディスカッション的な形でいろいろな論点を出していただきましたが、大半は金銭解決についてで、いろいろな議論がございました。それはもちろん踏まえた上でこの整理がなされているのですが、整理の仕方として1のほうのテーマが具体的に書いてあって、2のところは抽象的ではないかという御指摘かと思います。
この検討会自体は紛争解決システム全体のパフォーマンスを上げるというのが大きな検討事項の一つでありまして、もう一つとしてこの金銭解決の問題があります。前回の議論は、かなり金銭解決に集中しましたので、前回最後に、システム間の連携とかパフォーマンスを上げるという観点も重要な課題であろうと指摘しましたけれども、それについては余り議論がなされませんでした。そこで、その点について、私から事務局に、これからの議論に役立つように少し具体的に書き込んでいただきたいとお願いし、今回の「検討事項(案)」の提示となったものです。
2については、前回、具体的な論点をいただきました。今後、これはこの場で十分議論していただきたいと思いますが、それについてはしかるべき資料もあわせて提示して御議論いただきたいということです。前回の議論については十分にテークノートしているということで、御理解いただきたいと思います。
○中山委員 金銭解決制度については以前からも議論がありますので、これまでの検討会での意見と、それからそれ以前の金銭解決制度についてのいろいろな考え方がありますので、それらも踏まえて「個別の検討事項」は別途、具体化させると、こういう趣旨でお聞きしてよろしいのですね。
○荒木座長 そういう趣旨です。
○中山委員 わかりました。
○荒木座長 ほかにはいかがでしょうか。
鶴委員、どうぞ。
○鶴委員 ありがとうございます。
先ほどの長谷川委員のおっしゃった点も、私も労働委員会の件についてはかなり当初、議論をやって、まさに認知度向上が重要だということはあるのですが、都道府県によってかなりうまくやられているところ、また非常に信頼感を得てやっているという評価も聞いておりますので、もう少し労働委員会のあっせんが活用できるための方策ということについては、もちろん労働委員会という言葉が1ページにあって、2ページにその認知度向上とあるのですけれども、これだけだと余りにも少なすぎるなという印象を持っていますので、少なくともこの検討事項というところには、もう少し踏み込んだものを書いていただいて、具体的に検討したほうがよろしいのではないかなという印象を持ちました。
以上です。
○荒木座長 ありがとうございます。
斗内委員、どうぞ。
○斗内委員 ありがとうございます。斗内でございます。
1ページ目にある「現行の個別労働関係紛争解決システムの改善について」というところで、労働審判制度についてどう評価するかというところが問いとして一つあると思うのですが、私はこれまでも発言をさせていただいておりますとおり、基本的には労使双方の意見、事情、事実関係等々を確認しながら調停をさせていただいてきているというところでは、また、参考資料にありますように件数もふえてきていることからすれば、ある程度、私は労働審判制度というのは評価ができるものになってきているのではなかろうかと思ってきております。
その上で、2ページにありますように、労働審判制度をさらによくしていくための方策として何が考えられるのかということで、[2]の「考えられる検討事項」等々があります。
この検討会でも、これまでも御議論がありましたように、労働審判員の研修体系の整備や、研さんを高める方策ですとか等々の御議論もあったと思います。そういう意味では、「労働審判員の専門性の確保」それから「労働審判諸手続の簡素化」というものを検討事項に挙げられるというのは非常に理解をさせていただくというところなのですが、次のポツにあります「労働審判法上3回以内の期日で解決すること」「さらに時間的・金銭的予見可能性を高める方策」というところが、どう考えるかということなのです。これまでにも議論がありましたように、参考資料1の「8.司法による個別労働関係紛争解決」のところでは、労働審判では3カ月以内での解決が70%を超え、平均的には75日程度で解決していること、また、26ページの「労働審判事件の既済件数」というところでは、調停成立はおよそ7割にあるというところからすると、それぞれの労使双方もある程度、納得性が高まってきているというものではないかと思っておりますので、ここで言う「さらに時間的・金銭的予見可能性を高める方策」ということは何を一体指すのだろうかなと思っております。それよりは上のポツに記載がある点、すなわちそれぞれの機能をどううまく発揮させるかということが検討事項に挙がるのではないかなと思っております。
○荒木座長 ありがとうございます。
土田委員、どうぞ。
○土田委員 きょうの進め方ですけれども、例えば2ページで「考えられる検討事項」というのがあって、これについてどう考えるかということで、この問いかけに対する答え方としては、こういう点が改善点として考えられるということを発言していいのでしょうか。
○荒木座長 資料No.1の「検討事項(案)」というのは、先ほど長谷川委員からありましたけれども、きょうは、具体的には1ページの1の(1)について、まさに御意見を伺うというのをこの回の後半で予定しております。次回はまた、その次の事項について議論していくということで、今、御意見をいただきたいのは、今後この検討会で検討していく事項について、この点が抜けているのはないかという事項があれば挙げていただき、取り込むかどうかということで、そういう今後の進め方の検討事項について御意見をいただくということです。
今、御指摘の2ページの例えば[2]の、どう考えるかということについては次回以降、資料も提示した上で具体的に御議論いただきたいと考えておりますので、今はどう考えるかというよりも、考える事項について、これが抜けているのではないかとか、そういうことがあれば御指摘いただきたいという趣旨です。
○土田委員 そうすると、例えば1ページの1の(1)の[1]の○の、先ほど御説明があった「簡易で迅速かつ低廉な仕組みとして有効に機能していると評価できるか」ということについての評価は、きょうは発言しないほうがいいと。
○荒木座長 これは、この事項案についての話が終わりましたら、きょうの2番目の議題として、参考資料1をこれから御説明申し上げます。その後、議論いただきたいということでして、まずは全体のアジェンダとして、こういうことでよいか。何か抜けている旨があれば御指摘いただきたいというのが、きょうの前半部分です。
○土田委員 先ほどの2ページ目の「考えられる検討事項」についてこういう改善点があるとかないとかということについては、後半、発言してもいいのでしょうか。
○荒木座長 それは、きょうは1ページのところで大分議論が必要かなと思っておりますので、次回以降に2ページ以降については議論できればと考えております。
○土田委員 わかりました。
そうしましたら、いいですか。
○荒木座長 どうぞ。
○土田委員 先ほど、長谷川委員、それから鶴委員からもお話が出た「都道府県労働委員会のあっせんについて」。これは、お二人のおっしゃるとおり、私も初期にプレゼンテーションしましたけれども、労働委員会のあっせんはさまざまな点で労働局とは異なる特色がありますので、これについては本格的な検討事項として取り上げていただければと思います。
それから、先ほど中山委員からありました、3ページの2の2つ目の○の「解雇無効時における金銭救済制度について」については、先ほどの座長の御説明で趣旨はよく了解できましたので、改めて「個別の検討事項」をどんどん出していただいて、そこで議論をできればと思います。
3ページの[4]のすぐ上のところの、諸外国や我が国の他制度を参考にして、連携の仕組みを制度的にどう考えるか。これは前回も発言しましたが、2ページにあるような個別的な論点とはちょっと次元の異なる論点で、相当本格的な作業が必要になるわけですので、ここをどう進めるのかと。2ページの幾つかの個別な論点については改善点はこうだということが割と認識が共有できるし、進めることができると思うのですけれども、3ページのこの[4]のすぐ上の制度の改善は、ここは大きい論点でどう議論していくのかということについて、座長に何らかのお考えがあれば伺いたいと思います。
○荒木座長 3点目はまさに制度間の連携とかシステムにかかわるところですけれども、諸外国についての情報もこの検討会でヒアリングをしております。そういう資料も出していただきながら、システム自体を本当に変えなければいけないのかとか、運用で似たような機能を発揮させることができるのかとか、そういったことがいろいろと議論できると思います。そのことは実はほかの運用とか相談業務の中で受けとめてできるかどうかとも関係してくると思いますので、そういう制度間の連携の問題も視野に入れながら議論していく必要があろうかということで、こういう形で挙がっていると理解しています。
中村委員、どうぞ。
○中村委員 私は30年ほど前の調査なので、今は違っているのかどうかを聞きたいのですけれども、労政事務所で労働相談に乗るのは職員の方ですね。労働局も多分、職員の方。私は30年前に調べたときに、都労委の多くの事案は職員の方が対応していて、問題がありそうなのが上に上にというか三者構成のところにのるというのが私の調べた昔の話ですけれども、そういうことをやっていたのですが、今でもそうなのですか。もしそうだったら、それこそ教育訓練というか研修というのを重視しないといけないという論点が出てくるかなと思うのですが。
○荒木座長 事務局で何か実態については御存じでしょうか。
○大塚調査官 今、中村委員の御指摘にあった事項につきましては自治事務でございまして、各都道府県によって運用はさまざまであろうかと思います。中には、職員の方が一次的な相談に乗っているというような自治体もあれば、そのようなことは特にしていない、相談業務は労働委員会事務局ではしていないといったような自治体もあって、そこはまさにまちまちなのだろうなと認識しております。
○高村委員 よろしいですか。
○荒木座長 高村委員、どうぞ。
○高村委員 中村委員から今、御発言があった問題で、私は東京都労働委員会の労働委員をしていたものですから少しお話をさせていただきますと、御存じのように、東京都労働委員会は集団的労使紛争のみで、個別の労使紛争については扱っておらないのですが、集団的労使紛争のあっせんについては、申請人から三者委員あっせんという申請があった場合には、三者委員あっせんという対応をして、それがない限りには基本的には事務局が対応するというシステムになっています。
○荒木座長 私も都労委を経験しましたけれども、あっせんの場合は今そういう形で原則は職員あっせんですが、事案によって公・労・使の三者委員で対応してもらいたいということがあれば、それが対応することもあるという形で運用していますね。これも各都道府県まちまちかと思いますが。
ほかにはいかがでしょうか。石井委員、どうぞ。
○石井委員 石井です。
余り項目をふやすのも問題なのかもしれませんが、1の[2]の「司法による個別労働関係紛争解決」の項目なのですけれども、紛争解決制度としては労働審判だけではなくて、通常訴訟における解決もあれば調停もあるわけでして、特に解雇の金銭解決の制度は実際には訴訟になって判決が出てからということで、むしろ舞台としては通常訴訟の場面になりますので、労働審判にだけ限った議論をするのは少し範囲がずれるところがあるのではないかと思います。
調停についても、以前、付調停は余りない。通常訴訟を申し立ててから調停に回されるのは余りないという話をしましたが、調停自体は労働調停という制度があるわけではありませんけれども、調停による個別紛争の解決に大分、力を入れているようでして、弁護士会にも調停委員の推薦について労働事件に詳しい者を何名かお願いしますというリクエストも来ている状況ですので、調停も項目に挙がってもいいのではないかと思います。
○荒木座長 そうですね。司法としては調停もやっているし、まさに通常訴訟についても視野に入れるべきだという御指摘かと思います。
どうぞ、中山委員。
○中山委員 中山です。
その関係ですが、この次の参考資料の説明のときに申し上げようと思っていたのですが、今の中で訴訟と調停がありましたけれども、労働仮処分というのもあって、以前ほど多用されていませんけれども、要するに、司法の解決システムを考える、それぞれの連携も含めて挙げるとすれば、訴訟と保全処分それから民事調停とこの3つは並列して挙げていただければと思います。
○荒木座長 ありがとうございました。
ほかに御意見はありましょうか。山川委員、どうぞ。
○山川委員 検討事項で言うと、最後の3にかかわるかもしれませんし、また1の(2)の[4]にかかわるかもしれませんけれども、以前も申し上げたことはありますが、企業内あるいは私的な紛争解決予防の促進ということも、3で言いますと、括弧の中に入れていただいてはどうかと思います。今回、また後で詳細は申し上げますけれども、参考資料で「企業内における自主的な紛争処理の状況」というデータが出ておりますが、例えば通しページの32ページで、苦情の内容で一番多いのが人間関係で、2番目が「日常業務の運営に関すること」と、パワハラになって退職とかになれば別でしょうけれども、ということが多くて、かつ34ページに行きますと「わからない」が多いのですが「外部の機関等を利用したいと思わない」が15.7%のうち、「自社の実態に即した解決ができない」が47%。では、どうするかというと、次の35ページで「直接上司へ」が78.2%で「苦情処理委員会へ」が0.2%にすぎません。
次の37ページを見ますと、不平や不満を伝達するとどうなったかというと「納得のいく結果は得られなかった」が49.9%という状況ですので、ここは企業内の紛争解決・予防をやはり何とか、これまでの議論では制度的に何かを強制するということではないとしても、企業内の紛争解決・予防を促進するですとか、あるいはいろいろな情報を提供するですとか、さらには調査をさらに深化するということも含まれるかもしれませんが、そういうテーマを挙げてはいかがかと思います。
解雇についても、昔、外資系企業について研究会をやったとき、何か解雇しやすそうだというイメージがあるのですが、ヒアリングの対象者からは解雇はしません、何とか合意解約というか、合意退職にもっていきますということを言われていましたので、そのような観点からも含めてですけれども、項目としては、企業内の自主的な紛争予防・解決を入れてはいかがかと思います。
以上です。
○荒木座長 ありがとうございました。
これは大事な論点ですね。
ほかにはいかがでしょうか。
それでは、今お聞きしたところだと、紛争解決システムの中で、この司法部によるものについて、保全と調停と通常訴訟といったものも視野に入れてはどうかということと、それから企業内の紛争処理も重要な項目ではないかということがあったように思います。
それから、労働委員会における紛争解決ですね。これについて、より正面から取り上げる、という趣旨だったと思いますけれども、より大きな項目として明示してはいかがかといった点があったように思いますので、これらについてさらに整理をしたいと考えております。
項目についてはほかにはよろしいでしょうか。
それでは、きょうの2番目の議題ということになりますけれども、個別のテーマについての議論に入っていきたいと思います。
本日は、「検討事項(案)」1ページの1の「(1)現行の仕組みの評価」というところについて議論していただきたいと考えております。
現行の仕組みの状況については、これまでもヒアリング等を行ってきたところですが、どのような改善が考えられるかという議論に先立って、改めて現行の仕組みの評価について制度全体を通して御議論いただければと思います。
事務局には、関連する資料を準備していただきましたので、まずこの説明からお願いします。
○大塚調査官 それでは、参考資料1に基づきまして御説明申し上げます。
この参考資料1は、現行の各種紛争解決システムにつきまして、これまで検討会で提示してきたシステムの概要ですとかデータなどを再編さんしたものでございます。データが平成26年度の数字になっていたり、一部最新ではないものもございますけれども、現行システムの改善策の御議論をするに当たりましては、改めて最新版の資料を御提供する予定でございますので、御容赦いただければと思います。
最初の2ページでございますけれども、こちらは「集団的労働紛争」が労働組合と企業との間の紛争である。そして、その下の「個別労働関係紛争」が、労働者個々人と企業との間の紛争ということで、その特徴を述べたものでございます。
続きまして3ページでございますけれども、それら2種類の紛争につきましての解決手段を述べたものでございます。右側は後に詳述した資料をつけておりますけれども、個別労働関係紛争の行政のシステムについて限ってみますと、労働局の仕組みは、相談と助言・指導とあっせんの三本柱であります。
これに対しまして、左側の集団的労働紛争におけます労働委員会の調整制度は、「あっせん」のほかに「調停」「仲裁」といったような構成になっております。
4ページでございますけれども、集団と個別の紛争につきましての件数の推移を示したものでございまして、先ほど、中山委員から御発言がありました仮処分についても、件数は示しております。
5ページ目でございますけれども、訴訟以外の紛争処理システムの根拠法を並べたものでございます。一番上のいわゆる「ADR法」につきましてでございますが、これは民間ADRに関するものでございまして、この法律に基づきまして弁護士会の一部や社労士会などが法務大臣の認証を受けて活動をしているというのが現状でございます。
6ページでございますけれども、労働関係のトラブルが起きた際の各解決手段の全体を俯瞰した図になってございます。
駆け足で恐縮です。7ページでございますが、同じく各解決手段の特徴やデータ等の全体を表にしたものでございます。右のほうに「平均審理期間」と、解決金の水準の中央値が記載されておりますけれども、労働局のあっせんは労働審判に比べまして、事実認定などをしない分早い、しかし安いといったような特徴があろうかと思います。
なお、解決率につきましては労働局のあっせんと労働委員会あっせんの数値を並べておりますけれども、過去の検討会でも御説明申し上げましたが、分母の定義が異なりますので労働委員会のほうが高く出ております。同様の計算をした場合には労働局あっせんの解決率は大体6割を超えるということになってございます。
8ページ目でございますけれども、こちらは労働局での取扱件数につきまして、経年推移のデータを並べたものでございます。
9ページでございますけれども、こちらは行政ADRや労働審判につきまして、取扱件数の経年データを並べたものでございます。下の解決状況のグラフについてですけれども、労働審判の調停成立率は行政ADRに比べて高い状況が見てとれるかと思います。
10ページでございますが、民事訴訟の解決状況につきまして、下のグラフにありますように「和解」が約半数を占めております。
11ページでございますけれども、各システムの制度利用者の雇用形態別割合を示したものでございます。労働局のあっせんは、正社員以外の利用が相対的に高くなっていることが見てとれるかと思います。
12ページですけれども、こちらは解決内容や金額の傾向を比較したものでございます。労働局のあっせん、労働審判、裁判所の和解とともに、ほとんどのケースで金銭解決されているという現状が見てとれるかと思います。
13ページでございますが、こちらは処理にかかる期間を比較したものです。時間を要する順に、裁判所の和解、労働審判、労働局あっせんとなっております。
14ページでございますけれども、こちらは解決金額と処理期間の中央値を並べたものでございます。処理期間と解決金額が何となく正比例の関係になっているようなことが見てとれるかと思います。
15ページでございますが、こちらはそれぞれの解決システムにおける雇用終了事案の割合を並べたものでございます。
16ページでございますけれども、こちらはそれぞれの解決システムでの「月収表示による解決金額の分布」を示したものでございます。いずれも、広く分布しておりますけれども、山の位置が労働審判や裁判所の和解のほうが右の大きいほうに寄っていることが見てとれるかと思います。
17ページ、18ページは、労働局での紛争処理の仕組みの特徴などを詳述したものでございます。労働局の仕組みは、「相談」「労働局長による助言・指導」「紛争調整委員会によるあっせん」の3本立てになっております。あっせんは弁護士などによるあっせん員が両当事者からそれぞれ意見等を聞いて解決を図るものであります。
一番下のポツにありますように、任意性を重視しているため、不参加による打ち切りの割合も4割近くと高くなっているのが現状でございます。
また、18ページのほうに手続の流れを記載しておりますけれども、右側があっせんについてです。真ん中の「あっせん期日」のところに記載しておりますように「事案に応じた具体的なあっせん案の提示」を行うこと。これが法律上、書かれておりますけれども、現実にはこちらのほうはほとんど行われていないというのが運用の実態でございます。
続きまして19ページでございます。19ページは、労働委員会あっせんの特徴を述べたものでございます。自治事務ですので運用方法はさまざまであります。労使三者構成の委員会であっせんを行うことが特徴でございます。
他方で、先ほどの労働局のあっせんのところに書いてございましたけれども、あっせんが不調になったときの時効の中断効などは、こちらの労働委員会のあっせんの仕組みにはないといったような違いが行政ADR間でも幾つかあろうかと思います。
20~21ページは、労働審判制度の特徴や手続の流れを詳述したものでございます。御案内のとおり、裁判官であります労働審判官に加えまして、労使の労働審判員が関与して、原則3回の期日で適宜調停を試みるという仕組みになってございます。
特徴のところに記載しておりますように、当事者の出頭を罰則を背景に義務づけているといったようなことですとか、あるいは民事訴訟同様に証拠調べを行うといったことなどは行政ADRにはない特徴となっております。
続きまして22ページでございます。上段は労働審判員の年齢構成別等の任命状況を示したものでございます。下段のほうは代理人の選任状況を示したものでありまして、申立人で弁護士代理人を選任している割合が83.6%になっておりまして、申立人が弁護士代理人で、かつ相手方も弁護士代理人を選任している割合は72.7%ということで、大多数の事案で双方共に弁護士を選任しているという現状が見てとれます。こちらは、原則3回の期日のため、24ページにありますように、1回目から双方の主張やそれを裏づける証拠等を整理するのが必要になっているということが背景になっているものと思われます。
23ページは、労働審判の件数を記載したものでございまして、24~25ページは、労働審判の手続の流れですとか、審理期間などに関するデータを記載したものでございます。先ほど申し上げましたように、1回目の期日から証拠調べあるいはその心証固めをして積極的に調停を試みるという仕組みになってございます。3回以内に調停が成立しなければ、労働審判に移行するというような手続の流れとなっております。
26ページでございますけれども、「労働審判事件の既済件数」のデータを示したものでございます。ここにありますように、調停成立率は約7割となっておりまして、調停不成立で労働審判に移行した割合が2割弱あるのですけれども、そのうちの約4割は両当事者が異議申し立てをせずに、裁判に至らずに解決しているということで、極めて高い解決率を誇っていることが見てとれるかと思います。
27ページでございますが、こちらは民事紛争の究極解決手段であります「民事訴訟」の特徴を述べたものでございます。
28ページが、先ほどの話にもありましたように「民事調停」に関するものでございまして、右側のほうをごらんいただきますと線が引っ張っておりますが、「建築訴訟・IT訴訟・医療訴訟など、いわゆる専門訴訟について裁判所が専門家調停委員の専門的知見を得ながら話し合いを進めたい場合など」に職権で調停に付する、いわゆる「付調停」についての記載をしているところでございます。
続きまして29ページですが、こちらは民事調停の件数関係のデータを示したものでございます。
30ページ以降でございますけれども、その他として「企業内における自主的な紛争処理の状況」につきまして、事業主・労働者双方から実態を把握しました労使コミュニケーション調査に関するデータが30~37ページまで記載しております。
また、38ページ以降は主に大企業に多くあります「早期退職優遇制度」につきまして、最後の45ページまで各種データを記載しているところでございます。
駆け足で恐縮ですけれども、参考資料1についての事務局の説明は以上でございます。
○荒木座長 ありがとうございました。
大部な資料ですけれども、短時間で御説明いただきました。
それでは、御質問・御意見等があればよろしくお願いします。
中山委員、どうぞ。
○中山委員 御説明ありがとうございます。
先ほど、触れたのですが、労働仮処分というのは、ある意味では紛争解決の制度としては特殊で、本案訴訟に先行する暫定的な処分なのですが、解雇とか雇いどめの紛争を対象にすることが多いわけです。したがって、労働審判も含めて司法制度を考える場合には、労働仮処分についても触れておくべきだと思います。労働仮処分については資料の4ページで統計上の件数が出ております。労働仮処分制度はわかりにくいかもしれないので、できれば「民事訴訟」の27ページのところに、労働関係仮処分というのがどういうものか、それから紛争内容の内訳ですね。仮処分では解雇事件が非常に多いと思います。また、労働審判と仮処分の選択肢というのも、申立人の立場からすると重要な検討事項なので、そういう意味で、この「民事訴訟」の27ページのところの後でもいいですが、補足的に申し立ての種類だとか、その制度的なものを簡単に説明いただく資料を添えてもらえばと思います。
なお、労働仮処分件数についての資料が平成25年までしか出ておりません。私も統計を見ているのですけれども、最近は最高裁の統計からも仮処分が抜け落ちているので、あるいは25年以降は統計上の数値が公表されていないかもしれないのです。もしそうであれば25年まででやむを得ません。最高裁がどうして出さなくなってしまったのかわからないのですが、その辺をちょっと確認していただいて、資料として補足していただければと思います。
○荒木座長 徳住委員、どうぞ。
○徳住委員 最高裁の統計の仮処分の件は平成25年で打ちどめとなっており、26年から発表しないとされており、再々、弁護士会から発表を求めてきました。参考資料の何ページかに、グラフが出ていますよね。
○荒木座長 4ページ。
○徳住委員 弁護士会からは、4ページのグラフの統一性が欠けるし、制度を検討していく上で不十分だからと言っているのですけれども、最高裁は断固としてもうやらないみたいな形になっているので、この点統計の取り方を今後、ちょっと考えなければいけない。労働関係仮処分は、平成25年の時点で400件か500件ぐらいあるのです。事件数は減っているけれども、まだ、先生がおっしゃるように、個別労働関係紛争の重要な位置を占めており、この中で解決する割合も結構多いので本当はデータに入れなければいけないのですが、裁判所としては仮処分のかわりに労働審判のほうに移行させたいという意向があるのかどうかその理由はわかりませんけれども、発表しない。最高裁は断固として再開しないという意向らしいです。
○中山委員 そうですか。ありがとうございます。
○荒木座長 これは日本の労働訴訟の統計をグラフにしたときに、平成26年以降減っているように見えるものですから、非常に問題だなと私も思っているところなのですけれども、仮処分の実態について把握できるようであれば把握していただいて、検討したいと思います。
ほかの点はいかがでしょうか。村上委員、どうぞ。
○村上委員 ありがとうございます。
資料No.1の「検討事項(案)」のところで、1の[3]個別労働関係紛争解決システム間の連携についてどう思うかということなのですけれども、「制度間の連携が制度的に担保されていない」ということと、「国民にとってどの仕組みを利用したらいいのかわかりにくい」というのは別の次元の話ではないかと思っております。どの仕組みを利用したらいいのかわからないということを課題として挙げるのであれば、それは制度の説明をきちんとしていく、周知していくということになるでしょうし、きょう、土田委員もおっしゃっていましたけれども、制度間の連携はまた別の少し大きな議論かと思いますので、ここは違う議論ではないかと思っております。
以上です。
○荒木座長 水口委員、どうぞ。
○水口委員 評価の中身についてはこの後ということで、参考資料1についてちょっと気になったのが7ページなのですが、「司法」の「労働審判制度」のところで、「調停:調整的」「労働審判:判定的」と書いてあるのですけれども、労働審判制度の特徴は、調停であっても第1回に権利義務関係を踏まえて調停案を考えるということになるので、判定的調停というような言葉を使ったりします。
その意味では、労働審判制度の調停を、労働局などと同じように「調整的」というのはちょっと実態にそぐわないかなと。判定的調整と私どもは呼んでいますけれども、そういう特徴があるということ自身は念頭に置いていただければと思います。
○荒木座長 ありがとうございます。
斗内委員、どうぞ。
○斗内委員 ありがとうございます。
1点だけ、やはり御説明のところでちょっと気になったので御確認をさせていただければと思うのですが、参考資料14ページのそれぞれの制度における解決金額と制度利用期間の中央値と期間をお示しいただいているところなのですが、その点について先ほど「制度利用期間が長くなることによって、解決金が上がるという正比例の傾向が見てとれる」という御説明があったような気がしたのですが、そういう御見解なのでしょうか。
○荒木座長 事務局からお願いします。
○大塚調査官 説明時間の関係で中途半端な説明で大変恐縮でございます。今までの検討会でもございましたように、労働審判ないしは裁判上の和解などにつきましては、これはある程度事実認定を進めた上でやっておりますので、おのずと時間もかかっているのだろうという認識でございます。
それに対しまして、労働局のほうにつきましては、ちゃんとした事実認定というのはやっているかといったら余りやっていなくて、両当事者の主張やその背景を可能な限りは探りますけれども、はっきりとした心証形成までは全然していない。その分、期間も短くなっている。時間がかからない、期間が短い分、事実認定もしないわけですから、おのずと解決金額も低廉になっている。それを時間の都合で丸めてひっくるめて正比例という表現をしてしまいましたけれども、認識としてはそういうことでございます。
○斗内委員 ありがとうございます。
○荒木座長 資料についてはよろしいですか。
よろしければ、先ほど村上委員からは「検討事項(案)」1ページの1の(1)についての御発言もありましたけれども、どう評価するか、どう考えるかということについても御意見をいただきたいと思います。
斗内委員、どうぞ。
○斗内委員 たびたび済みません。斗内でございますけれども、先ほど私が一番最初に発言させていただいたのは、制度の評価に関する発言ということの扱いにさせていただければと思います。一番最初に議論をすることだろうと思って発言をさせていただきましたが、1点目の指摘させていただいた点は制度の評価に関する発言ということです。
○荒木座長 わかりました。
土田委員、どうぞ。
○土田委員 1ページの1の(1)の[1]、さっきも少し言いましたけれども、幾つかの「個別労働関係紛争解決については、裁判に比べ簡易で迅速かつ低廉な仕組みとして有効に機能していると評価できるか」ということについては、総論として言えばまさしくそういう評価になるのでしょうが、「簡易で迅速かつ低廉な仕組みとして有効に機能している」かという、「有効に機能」という評価を含めると、どうしても各論的なシステムの実情のところに踏み込まざるを得ないので、これは結局1ページの問いかけは2ページの各論的事項を踏まえないとなかなか生産的な議論にはならないと思うのです。ですから、もしも2ページについては次回以降ということでしたら、1ページについての「有効に機能していると評価できるか」というのはなかなかお答えしづらいというのが実感です。
○荒木座長 評価ですから、有効とは言えないのではないかという問題点があればぜひ御発言いただければと思いますが。
水口委員、どうぞ。
○水口委員 (2)の「改善の必要性」は今、土田先生が御指摘されたのと関連すると思うのです。有効かどうかというのは課題があるかどうかということと表裏一体なのだろうと思います。私はざっと説明された資料で今までの経過でみると、有効かどうかというのは(1)の[1]の行政についてですけれども、資料の9ページに個別労働関係紛争の解決システムにおける解決率が出ています。「労働局あっせん」の解決率が40数%だという点について、強制力がある手続でないので、40数%ということが解決すること自身をマイナスに評価する必要はないのかなと思います。しかし、労政主管部局だとか労働委員会のあっせんなども同じように強制力がないわけですけれども、それに比べて解決率が低いということについては特に相手方、使用者側の出頭の勧告について課題があるのだろうなと思っていますので、その点の有効性については疑問符がつく。さらには、解決の内容、金銭解決についてもどうしても判定的な事実調べをしないということがあって低い傾向になっている。この点について指摘はされてきただろうと思っています。
次に、[2]の「司法による個別労働関係紛争解決」ですが、労働審判については斗内委員もおっしゃったように、非常に高く評価すべきだろうと思うのですが、本案訴訟については13ページの下に平均審理期間が出ており、「民事訴訟における労働事件の平均審理期間の推移」ですが、平成26年で14.3カ月です。平成20年は10カ月ぐらいまで短くなったのが長くなっている傾向にある。これは労働審判が普及してきて、労働審判で解決しない難しい事件が本訴に多く係争しているのかなと思わないわけではないのですが、やはりこれは必ずしもそうだという具体的なデータがないと言い切れません。労働事件の本訴については審理期間をもう少し迅速化するという課題があるのだろうなと、審理期間についてはそう感じられるところです。
今度、弁護士会や東京裁労働部との間で本訴についてどういう傾向にあるのかという意見交換会をする予定ですけれども、この点については、厚労省にはわからないことだと思うのですが、労働関係の本訴すなわち民事訴訟が長期化の傾向があって、迅速化はまだ課題になっているということ自身は、今後、有効性について考える際に疑問符があると思っています。
以上です。
○荒木座長 ありがとうございます。
事務局、どうぞ。
○大塚調査官 水口委員から御指摘のありました前半の部分につきまして、議論のために補足して説明させていただきます。
有効性の議論をする際には、解決している割合などが重要かと思います。それに関して補足いたしますと、あっせんにつきましては、まさに今、御指摘がありましたように、参加率が低いというのが一つの論点になろうかと思いますけれども、平成27年度の数字で申し上げますと、労働局のあっせんの参加率は57%になっておりまして、裏を返せば4割ぐらいが不参加で打ち切りになっております。
あっせん期日が開かれた場合の解決率についてですけれども、実際に両当事者に参加していただいて、あっせんを行った件数は2,666件が平成27年度の数字でございます。この2,666件のうち、あっせんが成立した件数ですけれども、こちらが1,720件となっておりまして、大体その6割以上が、あっせん期日が開催されれば解決・合意に至っていると見てとれます。
もう一つ、労働局の仕組みとしては労働局長の助言指導の制度がございます。助言指導の制度に関しまして申し上げますと、ほとんどが口頭の助言を行って終わっているのですけれども、その実施件数は平成27年度で8,616件となっております。8,616件のうち、その後その紛争がどうなったのか、労働局の職員のほうでフォローしておりますけれども、解決に至ったとされる件数は4,490件。他方で、まだ労働者側が納得していない、さらにほかの紛争処理手段などを求めたいとしているのが4,126件ということで、大体その半分以上は何らかの形で解決しているけれども、半数近くはまだそれでは納得せずに、別の司法などに移るというようなことが見てとれるかと思います。
以上、申し上げましたようなデータにつきましては、次回、行政の改善の必要性を議論する際に詳細に資料を提出させていただきますので、よろしくお願いいたします。
以上です。
○荒木座長 ありがとうございます。
高村委員、どうぞ。
○高村委員 ただいまの御説明で、平成27年度のあっせん期日が開かれた件数が2,666件、そのうち、あっせんが成立したのが1,720件ということで、私は前回の検討会でも申し上げましたが、やはり当事者が向き合えば解決する率は高くなると思っています。ですから、この行政のあっせんの当事者の出頭が担保できるのかどうかというのが一つの課題になるのではないかと思っています。
それと、[3]の「個別労働関係紛争解決システム間の連携」の「制度間の連携」の問題は別にしまして、「国民にとってどの仕組みを利用したらいいのかわかりにくいのではないかという指摘もある」という、ここに加味して申し上げますと、先ほど御説明いただいた参考資料1の8ページをごらんいただきますと、平成18~26年度まで「総合労働相談件数」が一番左側にあるわけですが、たしか平成27年度も26年度に比べて微増、たしか103万4,000件ぐらいだったのではないかと記憶しているのですが、要は、8年間連続してこの「総合労働相談件数」は100万件を超えているということが実態としてあるわけです。
そういう意味から言いますと、この総合労働相談コーナーというのは、身近な労働相談の窓口として社会的に定着をしてきていると言えるのではないかと見てとることも私はできるのではないかと思います。年間100万件を超えるこれだけの相談が寄せられる総合労働相談コーナーが、実際にあった相談を、各相談に応じて適切な解決のためにどう振り分けるか、やはりこれだけの多くの労働相談が寄せられている総合労働相談コーナーには、そういう役割・機能というのが求められてきているのではないかという、そんなことを現状に対する評価として申し上げることができるのではないかと思います。
○荒木座長 ありがとうございます。
長谷川委員、どうぞ。
○長谷川委員 私は、平成13年に施行された個別労働関係紛争解決制度のあたりから、こういう個別紛争の解決制度はどうあるべきかという議論や制度設計にも携わってきました。今、高村さんが言ったように、労働相談は約100万件あると言われていて、それはほとんど厚生労働省の総合労働相談コーナーに行っているわけですね。平成13年のこの紛争解決制度と一緒にこれらの制度が整備されたのですけれども、その結果、労働局のあっせんにいろいろな事件が持ち込まれるようになったのは一つの成果だと思うのです。それまでは、通常訴訟しかなかったのですから、本当に裁判をやるしかなかった。解雇された、雇止めされたという場合にも裁判しかなくて、東京だと東京都の労働局しかなかったのですけれども、ある意味では平成13年の個紛法で、総合労働相談コーナーに行った人たちが労働局あっせんというものを使えるようになったのです。
このとき、あっせんの制度をつくるときのポイントは、やはり簡易で迅速で低廉だったのです。この3つのキーワードは重要で、「なるべく簡単に、そして速く、お金がかからない制度をどうするか」というのでこのあっせん制度ができて、当初の目的のところに沿ったような形では、やはりその制度が役割を果たしているのではないかと思います。
ただ、「有効に」とか言われると思うところがあるわけですけれども、当初考えたように何とかこの紛争を解決しなければいけないという意味では、この制度は非常な役割を今日まで果たしてきたのではないか。
その後、労働審判制度ができるわけですけれども、労働審判制度はやはり裁判所における労働事件をどんなふうに処理しようかということで制度ができまして、平成13年、平成18年というのは増加する個別紛争に対して、行政の紛争解決制度と司法の紛争解決制度がそれぞれ整備されていった時期なのだと思います。
今日的には、それぞれの制度がかなり利用されていますけれども、今議論しているように解決率の問題だとか、どのぐらいの期間で紛争処理がされているかだとか、納得性だとかそういうところから見たときに改善点いいますか、見直すべきところは何点かあるのではないかなと思います。今回、論点整理もされてきますので、各論点の中でもっと議論していけばいいのではないかなと。
1つは、先ほど鶴先生がおっしゃった労働委員会なのですね。労働委員会は平成13年の個別紛争解決制度と一緒にできたわけですけれども、労働委員会というのはマンパワーが要るのです。一番小さな県でも公益委員が5人、労側委員が5人、使側委員が5人の計15人でやっているわけですけれども、意外と事務局だけであっせんをやっているところがあって、必ずしも三者構成ではないのです。そういう意味では、マンパワーだとか何かを考えると、もっと労働委員会の個別紛争のあっせんを活用する方法があるのではないかと思います。全体的には都道府県の労働局のあっせんについて、それから労働審判は現在まではうまく制度が機能し、利用されてきているので、その上で何をするかということは次回の改善の必要性のところで議論してほしいと思います。
やはり、労働委員会は、マンパワーは必要であること、そして、制度が完全に活用されていないのではないかなと思います。もう少し労働委員会の個別労働関係紛争解決システムがもっと利用されてもいいのではないかなというのが、私は労働委員会の評価のところで申し上げておきたいなと思います。
○荒木座長 土田委員、どうぞ。
○土田委員 その点に関連してなのですけれども、今の御指摘に賛成で、地方の労働委員会にいる身としては、労働委員会をもっと利用して欲しいというのが実感です。一方、1ページの1の(1)の[1]の、先ほど来出ている「簡易で迅速かつ低廉な仕組みとして有効に機能している」かについては、今、言われたとおり労働局の紛争解決制度の大きなキーワードは簡易・迅速・低廉だと思うのですけれども、ただ逆に、現にあっせんを行っている経験からすると、簡易・迅速・低廉だから有効性にマイナス作用しているというところはあると思います。改善点は次回の議論ということですから省きますが、「簡易で迅速かつ低廉」である、要するにスピード重視であるがゆえに、必ずしも当事者、特に労働者の納得を得た解決にならないという課題はあると思います。
それと、参加率については、使用者が参加した場合の解決率というのは、先ほど説明があったように労働局は相当高いですね。したがって、参加率をどうするかということは、先ほども御指摘があったとおり重要な課題になるのだろうと思います。
労働委員会についてですが、2ページで先ほど来出ていますが、[2]のすぐ上で「認知度向上が必要との意見があるが、どう考えるか」。これでは先ほど来あるとおり、項目設定としては不十分なので、今の点を踏まえますと、そのすぐ上のところで労働局の取り組みについては[1]、[2]、[3]とあります。ですから、労働委員会についても、少なくとも[1]と[2]は同様に大きな検討課題になると思うのです。
例えば、先ほどのあっせんが公・労・使の三者の参加で行われていない場合があるということについては[1]の課題になると思いますし、また労働委員会は[2]についても各都道府県の自治で、いろいろな方策を既に講じているところがある。ですから、そういったものも含めて、労働委員会についてはどうなのかという検討事項を含めていただければと思っています。
以上です。
○荒木座長 ありがとうございます。
中村委員、どうぞ。
○中村委員 行政によるシステムに有効性という概念を持ち出すのは反対です。要するに、そういう事件が起こった労働者は、どこに行っていいのかわからないからそこで行くわけで、そういう窓口はいろいろあったほうがよくて、それで解決できないからだめだとか、そういうことは論ずるべきではないと私自身は思っています。いろいろなところに窓口があったほうがよくて、問題はたらい回しにされることで、例えば、私の聞いている範囲なのですけれども、連合の労働相談をやっていますけれども、労働局から言われて来ましたとか、それがいいのかどうかはわかりませんけれども、そういうたらい回しにしないような仕組みを考えればそれで十分で、財政の範囲内で窓口がいっぱいあるほうがいいと考えています。
○荒木座長 ありがとうございます。
中山委員、どうぞ。
○中山委員 行政の個別紛争解決について「有効に機能していると評価できるか」という点で申し上げたいと思います。先ほど、都道府県労働委員会の個別紛争についてのあっせんのお話がありましたが、これは有効に機能していないと私は前から思っていますし、そもそも個別労働紛争の解決をやるのであれば、それなりに組織を見直さないといけないと考えています。というのは、御承知のとおり、都道府県労働委員会というのは、本来、集団的労使関係のために組織された仕組みでありまして、先ほどマンパワーという話が出ましたが、そこで公・労・使の委員の選任は集団的労使紛争に適した方という観点で選ばれているのです。権利義務関係に基づく個別紛争を取り扱うという適任者であることを前提に選ばれていないのではないかと思います。現在、都道府県労働委員会で東京都と大阪府などは不当労働行為の集団的申立件数が非常に多いのですが、他方でいわゆるゼロワン労委と言って、年間に全然事件の申し立てがないあるいは1件ぐらいしかないという労働委員会が半数以上なのです。ですから、ここにマンパワーをどうするかというところで個別紛争のあっせんが出てきているので、それは、言い方は悪いですけれども、組織をそのままにして、余裕があるから個別紛争も一緒にやってよという程度の話であれば、これは本格的な個別労働紛争のシステムとして考えるのであれば安易ではないかと思っています。
実際に、先ほどの参考資料1の9ページをごらんいただきたいのですが、2で労働委員会の個別紛争のあっせん件数というのは、21年度はリーマンショックの影響で500件台になっていますが、その前後で300件台なのです。(注1)を見ていただければわかるとおり、これは44の都道府県労委での合計件数が300件台なのです。つまり、平準化すれば各労委は年間に、申し立てが10件も満たないのです。
それと比較して、その次の「労政主管部局等あっせん」を見ていただくと、25年度は710件です。これは(注2)を見ていただくと、6つの都道府県で710件なのです。平準化すると1つの県で100件以上来ているのです。労働局のあっせん申立件数はさらに多いので言うに及ばずです。したがって、労働委員会のあっせん件数だけみてもどのくらい有効に機能しているか疑問です。件数だけを見ても他の紛争解決機関と大きな落差があって、これが何でかというのはいろいろな事情があろうかと思いますけれども、現状認識として、労働委員会の個別紛争のあっせんを有効に評価するということは、私はできないのではないかと思っております。
以上です。
○荒木座長 では、垣内委員、お願いします。
○垣内委員 垣内でございます。
今、制度の評価について行政あるいは司法による紛争解決制度は有効に機能していると言えるかということが問題となっておりますけれども、有効性ということを考える場合に基本的には2つの観点があろうかと思います。
1つは量の観点でありまして、どれぐらいの数の紛争を当該制度が受けとめていて、そして、そのうちどれぐらいの数のものを解決に導いているかということ。ですから、件数、受理件数とそれから解決率ということが重要な指標だということになるかと思います。
もう一つは、言うまでもないことですが、解決の質の問題であり、この質の評価については先ほど来、解決金のレベルと申しますか、金額がひとつ重要な論点として認識されているかと思いますけれども、解決の質の評価の指標として金額が唯一の指標ということでもなかろうかと思います。例えば、迅速に解決ができるということも当該制度における解決の質の一つの評価指標だろうと思いますので、そのあたりも含めて評価を考える必要があるのではないかという気がしているところです。
第1点の量に関してですけれども、これは本来ですと、おおよそ日本の社会で解決を要求している労働紛争というものが潜在的なものも含めてどの程度発生しているのかということを踏まえませんと、既存の制度が量の面でどの程度有効に機能しているのかというのはなかなか即断できないところがあるかと思いますけれども、現在、御提供いただいている資料の中で一番裾野の広い数字を示しているものとしましては、参考資料1の8ページの「総合労働相談件数」というのがひとつ挙げられるのではないかと思います。
もちろん、この相談自体がどの程度実際に発生している問題を受けとめ得ているのかという問題はあるかと思いますけれども、ここで挙げられているさまざまなものの中では一番間口が広いものだと見えるわけですが、この数字を拝見しますと、先ほども御指摘がありましたように、ここ7~8年程度は100万件前後で推移しているということで、変化のベクトルとしては、ここ10年程度は激増するとか激減しているということではなく、一定程度の紛争が実際に日本で発生しているのではないかということを推測させるのではないかと思います。
これを前提として「助言・指導申出件数」とか「あっせん申請件数」が現在のような数字になっている。その中での解決率が先ほど御紹介のあったようなものであるというのをどの程度これが有効に件数を受けとめているかということで評価するかというのが論点なのだろうと思いますけれども、「有効」という言葉はなかなか難しいのですが、「一定の」機能を果たしているということであれば、私自身としては特に異論のないところかと考えているところです。
また、量の面で、労働審判制度に関して既に資料No.1の1ページで「年間3500件の利用実績」というのが挙げられておりますけれども、これは訴訟との比較という観点で申しますと、こちらのほうは参考資料1の4ページのところでしょうか。仮に全体として労働紛争そのものの量が変わっていないということを仮定いたしますと、訴訟が減って労働審判に移行しているのか、それとも訴訟自体は同数あって、労働審判が純増なのかということが評価の一つのポイントになろうかと思いますけれども、4ページのグラフですと訴訟のほうは特段減少していない。その上に労働審判の件数が訴訟と同数程度に現在ではなっているということを考えますと、資料No.1での原案のとおり、量の面で一定の、有効にと言ってもいいかと思いますが、機能しているという評価が妥当するのではないかという感じを持っています。
とりあえず、私のほうは以上です。ありがとうございました。
○荒木座長 ありがとうございました。
鶴委員、どうぞ。
○鶴委員 ありがとうございます。鶴でございます。
これまでの議論がいろいろございまして、この「現行の仕組みの評価」というところで今、このタイミングで何を議論すべきことなのかなということを少し考えていたのですが、委員にどういう評価をしますかというような質問を出せば、個別でこの点は評価できるけれども、この点は評価できない。それから、この基準で考えれば評価できるけれども、この基準で考えれば評価できない。多分、それぞれの委員の皆様で出る意見が違うのだと思うのです。今回、ここの(1)の役割は、私なりにこの検討事項の全体の紙を見ると、次回以降、(2)の改善の話に入っていく。この前段階としてこの部分があるのではないかということになれば、ここで考えなければいけないのは「有効に」という言葉が問題になっているのですけれども、個別労働関係紛争解決や労働審判について、おおむね機能しているかどうか、そこのコンセンサスをどう考えるのかということだと思うのです。
つまり、100%も全く問題がありません、どこも手直しする必要がないということがあれば、次回以降はもう議論は進まないわけですし、これまでやってきたことについて全くこの制度はだめだったのだ、大失敗だったのだという評価であれば、根本に次回以降つくり直さなければいけないのだと思うのです。そうではなくて、それなりに機能してきたのだけれども、いろいろ個別の問題がある、改善点がある。それは、それぞれの委員によって濃淡があるかもしれませんけれども、そういうことがあるということの確認はやはりすべきではないのかなと。
[3]については、ここはちょっと[1]・[2]と違うのですが、制度間の連携が担保されているか、どういう仕組みを利用したらわかりにくい。これは、今はわかりにくいことなんて全くないとか、十分連携がとれているのでそんなこと考える必要はない。この中にそういう意見をお持ちの方がいれば、前に進めることはできないのだと思うのですが、何らかここに少し問題点があるかもしれないので、少しどういうことができるかを今後、議論していきましょうということであれば、次に進めるのだと思うのです。
なので、ここでやはり考えなければいけないのは、私も申し上げた、要は、意見は皆さんで議論は違うと思うのですが、おおむね機能してきたという評価がこの中でできるかどうかということを確認して、次のステップへ行くべきではないのかなと思います。
以上です。
○荒木座長 ありがとうございます。
山川委員、どうぞ。
○山川委員 私も今の鶴委員に基本的に同感です。また、先ほど長谷川委員が言われたように、これまで基本的に個別紛争に適切な受け皿がシステムとしてなかったということが長年議論されて、その結果、受け皿をつくったというようなことが挙げられています。その受け皿としては整備されたという点では有効に機能していると言えるかと思いますが、なお改善する点はいろいろあるだろうと、そこは鶴委員のおっしゃったとおりかと思います。
あと、個別的なお話になりますけれども、受け皿という点ではやはり労働局のあっせんはデータから見ても非典型の労働者の利用が多いとか、あるいはしたがって係争額も少額であるということで、これまで恐らく行き場のなかった紛争の受け皿となっているという意味はかなり大きいのではないかと思っております。
もちろん、課題もあるわけですけれども、印象的なというか感覚的な言い方になりますが、労働審判ですと、紛争の組み立てが、弁護士の方が関与する事案がほとんどですので、こういう権利義務の紛争だとして整理されて上がってくるのですけれども、あっせんの場合は必ずしもそこが整理されていないといいますか、根本的には何らかの不満とか苦情があって、それが必ずしも法的に整理されていない段階であっせんに上がってくる。一応、権利紛争が対象であるということにはなっているのですけれども、それをどうやって紛争として整序していくのかということになろうかと思います。
出頭率というか参加率の点もあるのですけれども、今のものとの関係では事例によっていろいろありますが、どうも出てこられる、特に相手方がそもそもあっせんで合意しようというつもりで出てこられるケースが結構多いのではないか。そもそも解決する気がなければ出てこないとか、そういうこともあろうかと思います。それはやはり紛争の組み立てというか、どの程度問題点を相手方のほうで認識しているかという観点があるのかと思います。その点では、このシステムについてあっせん員はもとより職員あるいは相談員の方々の努力が非常に大きい要素を占めていると思っていまして、その意味ではスキルアップということが重要になるかと思います。
今後、これを検討する際に、例えば相談員にはどういう方々がなられていて、どういうトレーニングをされているのかとか、もしかしたら既に口頭で出てきたかもしれませんけれども、そのあたりもデータで用意していただければと思います。
情報提供についても、例えば労働相談員のところで紛争の内容を整理する際に、細かいことですがどういう書式を用いて、どういう整理をされているのか。実際には難しいケースもあります。実際にやっていると、この事件を要件事実的に組み立てたらどうなるのだろうかと考え出すときりがなくて非常に難しいという事件もないではないですが、そこまで行かないで対応するのがあっせんの特色かと思いますので、そもそもどのような情報提供ないし整理の仕方をしているのかが分かればと思います。
あと、場合によっては、労働審判もありますとか、労働委員会を紹介しているというところもあるようです。出てこなかったという事案については労働委員会には個別紛争あっせんもありますから、そこでは三者構成を活用するの道もありますということを紹介しているということもありますので、書式とも係るのですが、どのような情報提供、特に他のシステムの利用についてされているのか、そのあたりの実態も知りたいところだと思います。
今、労働委員会の三者構成のお話もしましたが、そこが大きい特色ですけれども、この点もデータとして、各都道府県別の違いについて、先ほど、中山委員からも御紹介がありましたが、参考資料1の9ページで、件数が少ない労働委員会としてはかなり個別紛争にシフトを置くような形の方向になっているかと推測しますけれども、東京があっせんを行っているところに含まれていないのみならず、やや特別といいますか、大阪府は基本的には労働委員会と主管部局の両方がやっているのですが、あっせんを主としてやるのは主管部局であるということだったと思いますし、東京都・神奈川県・大阪府が抜けているということですので、地域別のデータを出していただければと思います。
たしか、都道府県別の労働審判の申立件数と労働委員会へのあっせんの申請件数を比較すると、都道府県によっては余り差がないようなところもあったように記憶していますので、やや地域的な違いがあるかと思います。ちょっと記憶が定かでないのですが、そういう意味で今後、改善を考える際にはそうしたデータや、相談員の体制あるいはどういうトレーニングをされているのか、それから利用者についてどういう情報提供をしているのか、労働委員会のあっせんの地域別件数とかそういうものを出していただけるとありがたいかなと思います。
以上です。
○荒木座長 ありがとうございます。
大竹委員、どうぞ。
○大竹委員 ありがとうございます。
私も鶴委員の意見に賛成で、有効か無効か、100点満点で0点か100点かという話だと思います。長谷川委員からもありましたとおり、制度をつくった目的が個別紛争の受け皿の整備ということであれば、ないよりはあったほうがいいという意味で0点ではないということだと思います。
ただ、今までの議論でも出てきましたとおり、100点かと言われるとそうではない。点数の低い組織もあるだろうとは思います。ですから、どれも改善の余地があると思います。その際、改善点を考えるときに、それぞれのあっせんあるいは解決手段によって解決率が違うというのは、担当者のスキル・能力の問題もあれば、持ち込まれる問題の難しさの問題もあれば、そもそもの仕組みの問題もあると思います。たとえば、当事者が両方出てくるかどうかという仕組みの問題、それからルールの問題とやはり切り分けていく必要があると思います。
山川委員がおっしゃったとおり、地域別の話というのは、仕組みそのものは同じところで地域差があるということであれば、そこはひょっとすると地域によって違う仕組みをつくっているのか、あるいはスキルが違うのか、問題の難しさが違うのかということがもう少し明らかにできるかなとは思います。
以上です。
○荒木座長 ありがとうございます。
土田委員、どうぞ。
○土田委員 1についてのトータルの評価については今、言われた評価に私も賛成です。有効には機能しているけれども、さらに個別的に見ていけば改善点があるだろうから、それを次回で議論していくということになると思います。個別の点にちょっと入りますと、先ほど中山委員が言われた労働委員会のあっせんについて、これは評価の問題になりますが少し反論させていただきますと、確かにもともと労働委員会がこのあっせんを行うことについては賛否両論があった。もともとは不当労働行為の審査ですから、集団的労使関係の紛争を扱うための機関だったわけです。あっせんを扱うことについても賛否両論がありました。しかしながら、ある意味マンパワーの利用という必要に迫られてではありますけれども、現在、あっせんは労働委員会のかなり主要な役割になっているわけですから、先ほど言われた、そもそも公・労・使の参与委員が集団的労使関係の解決に適した人材を人選しているのだろうということでは恐らくないと思います。そこは個別あっせんを含めた人材の活用を考えて、例えば労働団体が推薦をして来られているでしょうから、そこは必ずしも言われたような認識は当たらないだろうと思います。
労働委員会のあっせんの思わざる効果は、公・労・使の三者構成というのはあっせんという調整的な手続については相当有効なのです。そこが以前も言ったとおり労働局と違うところで、まさしく調整的な手続に適しているというところはあると思いますから、その有効性の評価については先ほど垣内委員がおっしゃったように、量と質で考えると質の面ではきちんと評価すべきかなと思います。
一方、労働委員会のあっせんが何でこんなに件数が少ないのかというのは要するに認知度の問題で、少し区別して考えるべきかなと考えています。
それから、1ページの[2]の「労働審判制度」ですけれども、これをどう評価するかについては、やはり労働審判に実際に携わっておられる方々、ここの委員にもたくさんおられますけれども、その方々の御意見をぜひまた伺いたいと考えています。といいますのは、前回も少し言いましたが、労働審判制度の特色からすると携わっていない人間からすると実態がよくわからない点が多いので、実際に携わっておられる方の御意見を伺えればと思います。
[3]については、「制度間の連携が制度的に担保」されているかどうか、それから「どの仕組みを利用したらいいのかわかりにくいのはないか」。これは村上委員が言われたとおり別の問題だと思いますけれども、いずれにしても、どちらについてもそういう問題点はあるだろうという評価はできるでしょうから、したがって、これも次回以降の具体的な改善の話になるだろうと思います。
[4]については、どの程度まで取り上げられるかはわかりませんが、やはり企業内紛争処理システムについて検討する必要があると思います。最近では、公益通報者保護法の改正との関係で内部通報制度についても議論が本格化していますので、そういった点も含めて検討できればと思っています。
以上です。
○荒木座長 ありがとうございます。
ほかにはいかがですか。中村委員、どうぞ。
○中村委員 きょうはちょっと発言し過ぎですけれども、[3]の「国民にとってどの仕組みを利用したらいいのかわかりにくい」というのは、こんなものを知っている国民なんてほとんどいませんよ。こんなことを言ったらパンフレットを充実させてホームページを充実させてとなると思うのですけれども、そんなものみんなやっていますよ。別に事前に国民が紛争が起こったときにどういう仕組みが使えるかなんていうのを、そういうことはほとんど知らないので、実際に自分がそういうことになったときにどうするかということなので、こういうことを検討しても余り意味がないのではないかと思います。どうせ出てくるのはパンフレットとかホームページを充実せよとか、そういうことになるので。それはみんなやっていることなので、これを検討して何が出てくるのか、ちょっと私は思い浮かばないですけれどもね。
○荒木座長 恐らく、ここで言われている趣旨は、いろいろな制度がたくさんある。それで、たくさんあったほうがいいという議論もありますが、いざ自分がある紛争に直面して、どうしたらいいだろうといったときに、その紛争にふさわしい解決機関に行けばいいのですが、きょうも議論があったように、その事件の性質によっては別の機関に行ったほうがよかったということがあり得ると思うのです。そういうことが実はわからないのではないかという意味だろうと思います。その問題があるので、個別労働紛争解決促進法をつくったときもワンストップサービスということが盛んに言われました。
ある問題があって労基署に行ったら、労基署ではこれは所管が違いますということで、あちこちたらい回しにされるということではなくて、ある1つの部署が、その事案だったらここに行くのがベストですよと振り分けることができる。あそこに行けば、自分がどこに行けばいいかを教えてもらえると、そういうことがわからないというのが「どの仕組みを利用したらいいのかわかりにくい」という趣旨ではないかと思います。自分の抱えている問題とか事件の性質に照らして、自分はどうすればよいか。そういう意味での制度間の連携といいますか、そういうことも含めて検討すべきではないかという問題提起ではないかと理解しております。
水口委員、どうぞ。
○水口委員 労働審判制度が基本的に有効に機能しているというのは争いがないところということになっているのですが、やはり課題はあると思うのです。参考資料1の14ページを見てみると、解雇についての相談件数は個別労働紛争労働局については38,966件あるなか、あっせん申請件数が1,392件です。これは全部解決しているわけではないでしょう。半分は解決しているとしたら、半分は未解決です。また、労働審判の新受件数が1,670件。解雇についての相談件数からして全てが労働紛争に扱わなければいけないとは思いませんけれども、母数の39,000ぐらいから見て、労働審判の新受件数が1,670件、あっせん申請件数が1,392件、裁判における解雇等の訴えの新受件数が966件ということをどう見るかと考えると、本来、労働紛争手続で解決すべき事件が全て、例えば労働審判に出ているかというと、これは出ていないと私は評価すべきではないだろうかと思います。
不思議なことに、労働審判の新受件数が4年目から大体3,500件前後で頭打ちと言うと変なのですが、大体3,500件ぐらいなのです。雇用情勢と余り関係なく大体3,500件。この統計資料や私の相談の実感から見ると、やはりもっと有効に解決できる労働審判の件数が増えたほうがいいと思っているのですが、それがなぜ3,500件前後で頭打ちになっているのかということは、何らかのアクセス障害があるのかなと私自身は思っているところです。
中山先生の先ほどの指摘とも関連するのですが、資料には出ていないのですけれども、全国の47都道府県で労働委員会、労働局それから労働審判の件数の一覧表をたしか中労委かどこかがおつくりになってましたね。労働審判が新受件数が少ない地域では、労働局のあっせんや労働委員会の手続が増えているのです。たしかそういう傾向があったと資料を見て思っているところで、そうなると労働審判というのはやはり弁護士のところに行ったり裁判所に行ったりするのにハードルが高いから、労働局や労働委員会のほうに流れているのかなという感じもしますので、それぞれ地域性に応じて相互の制度のすみ分けがあるのかもしれない。ただ、すみ分けができるのはいろいろなアクセス障害の結果そうなっているのかどうなのか、地域性についてもそういう表があればもっと検討できるのかなと思いますので、改善点を考えるときにたしか中労委がそのような資料をつくられたと思いますので、厚生労働省で見つけていただければと思います。
以上です。
○荒木座長 ありがとうございます。
ほかにはいかがでしょうか。村上委員、どうぞ。
○村上委員 今の水口委員の御発言にも関係するのですが、労働審判の新受件数が何で伸び悩んでいるのか、3,500件から増えないかという話にも関連しますけれども、紛争を抱えて解雇された人がどんな解決を望んでいるのかということが、その制度を利用する際の大きなポイントではないかと思います。紛争の性質というだけではなくて、その当事者がどんな状況に置かれているのか、例えば、非正規雇用で働いていて、費用が出せないから無料の労働局のあっせんを使うのかとか、あるいはある程度の費用も時間もかけてちゃんと解決したいと思っている方なのか、そういった事案がどんな事案かということだけではなくて、その当事者がどういう方なのか、またどういう解決を望んでいるのかというところが制度の利用の分岐点にはなっているのではないかと思っておりまして、必ずしも事案の性質だけではないのではないかと考えております。
○荒木座長 中山委員、どうぞ。
○中山委員 たびたびきょうは発言するようで恐縮ですが、今、水口委員のほうから、この参考資料1の14ページで「相談件数」と労働審判の件数との落差を見ると、労働審判申し立てについて弁護士に依頼しなければならないとか、いろいろ障壁があるのではないかと言われましたけれども、私はこれらの件数について必ずしもそういう感想を持っていません。1点、事務局に確認したいのですが、ここの「相談件数」というのは100万件の中の解雇に関する相談ということなのですか。つまり、相談は電話一本でも相談件数が1になっているはずなので、これは解雇だと言っても電話一本で相談件数は1件になっているのか、それとも何かより紛争性が明らかなものをピックアップしているのですか。
○大塚調査官 100万件の内訳について御説明したく存じます。
まず、御質問に最初にお答えしますと、この解雇事案の38,000件につきましては、これは民事上の個別労働紛争に係る相談という類型の中で内訳としてカウントされたものが計上されております。電話か来所か問わず、1人の方が1つの事案について相談に来られた場合には、行政内部の手続といたしまして相談票を起こします。その相談の票の数を1件とカウントしていると御理解いただければと思います。
100万件の内訳なのですけれども、100万件は全部が全部、民事上の紛争が勃発している状態ではなくて、最も多いのが単なる法令・制度の照会に係るものでございます。これが大体63万件ほどです。
あとは、労働基準法等の違反の疑いがある事案というのもございまして、これが平成27年度ですと19万8,000件ほどございます。こういった事案は監督署ですとかハローワークですとか行政指導の権限を持っている部署のほうに取り次がれます。民事上の個別労働紛争というのはまさに、先ほど来、受け皿というお話がありましたけれども、従来であれば行政指導という対応をできずに何とかしなければならないとして、受け皿として設けたもの。これに相当するのが民事上の個別労働紛争に係る相談と御理解いただければと思いますが、こちらが平成27年度ですと24万5,000件ほどあります。この全部が全部、紛争状態になっているかというと必ずしもそうではございません。ざっくり申し上げて、当事者間の主張が既に対立して具体化しているものは大体7万件ぐらいです。残りの17万5,000件ほどはどちらかが不満に思っているあるいはおかしいなと思っているのだけれども、まだ相手方に伝えていなくて紛争状態に至っていない。そういったものが17万5,000件あります。
ちなみに、3万8,000件の解雇事案についての紛争に至っているかどうかの内訳というのは、申しわけございませんがとっておりませんのでお答えすることはできませんけれども、大体同様の傾向なのではないのかなと思われます。
以上でございます。
○荒木座長 鹿野委員、どうぞ。
○鹿野委員 鹿野です。
意見ではなく質問なのですが、先ほど、私の聞き間違いでなければ、19ページのところで「行政による個別労働関係紛争解決」の制度については、時効の中断効はないとおっしゃったように伺いました。個別紛争解決に関する幾つかの制度があるのですけれども、改めて、それらについて時効の取り扱いがどのようになっているのかということをお伺いしたいということと、もし制度によっては時効に関する特別な手当がないということであれば、それによる支障が生ずることは今までなかったのかどうかということなどについても、もしおわかりになれば、あるいはもう時間がきょうはありませんので次回でも結構なのですが、教えていただきたいと思います。
○荒木座長 事務局からお願いします。
○大塚調査官 時効の中断効につきましては、個別労働紛争解決促進法に基づきます労働局のあっせんについては、ございます。それに対しまして、行政である中でも労働委員会のあっせんにつきましては、時効の中断効は自治事務ということもあって規定されていないというのか現状でございます。なお、民間ADRにつきましては、ADR法に基づく法務大臣の認証を受けた機関が行うあっせんにつきましては、時効の中断効があるとなっております。
以上でございます。
○荒木座長 参考資料1の7ページに表がありまして、そこで時効の中断があるものとないものが○と×で示してあります。特に議論となっているのは、労働委員会がこの個別紛争をやるときに、時効の中断効がないということで、これはこれでよいのかというのが議論となっている状況ではないかと思います。
○鹿野委員 済みません。7ページの記載を見落としておりました。そういうことで議論となっているということは、やはり問題となるような事態が従来あって、それで議論ともなってきたというように理解してよろしいでしょうか。
○荒木座長 具体的にどうかというのはわかりませんが、特に労働委員会だと、これは若干推測が入りますが、三者で割と懇ろに対応する。その間にどんどん時間がたってしまう。でも結局、解決がつかなかったというときに実は時効にかかっていた。それで民事訴訟も提起できないということになっては問題ではないか、そういう認識はあるのではないかと思います。
○長谷川委員 よろしいですか。
○荒木座長 長谷川委員、どうぞ。
○長谷川委員 先ほどの労働委員会の個別の時効の中断効をどうするかという議論は、労働委員会改革の中で議論されたのです。そのときに、労働委員会の個別のあっせんに時効の中断効を入れるというところが合意形成できなかったので、労働委員会の活性化の中で継続してこの問題について検討するとされています。あと、債務名義についても検討事項という扱いになっています。
今のところ、時効の中断効がないことでの問題はないわけではないのですけれども、ただ、時効の中断効を入れるということについてまだ合意形成がついていないということです。
○荒木座長 それでは、ほぼ定刻になりましたので、きょうの議論はこのくらいにしたいと思います。大変活発な議論をいただきありがとうございました。
次回ですけれども、きょうは「検討事項(案)」の1の(1)を御議論いただきましたので、次回は1の「(2)改善の必要性」の項目について、きょういただいた御意見も踏まえ、資料等もそろえた上で議論していただきたいと考えております。
では、次回の日程について事務局からお願いします。
○大塚調査官 次回の検討会の日程につきましては調整中でございますので、追ってお知らせしたいと思います。
以上です。
○荒木座長 それでは、本日は以上といたします。どうもありがとうございました。
ホーム> 政策について> 審議会・研究会等> 労働基準局が実施する検討会等> 透明かつ公正な労働紛争解決システム等の在り方に関する検討会> 第9回透明かつ公正な労働紛争解決システム等の在り方に関する検討会 議事録(2016年10月12日)