ホーム> 政策について> 審議会・研究会等> 労働基準局が実施する検討会等> 産業医制度の在り方に関する検討会> 「第4回 産業医制度の在り方に関する検討会」議事録(2016年7月14日)
2016年5月20日 「第4回 産業医制度の在り方に関する検討会」議事録
○日時
平成28年5月20日(金)14:00 ~ 17:00
○場所
厚生労働省 中央合同庁舎5号館3階 共用第6会議室
○議題
(1)諸外国の制度に関するヒアリング
(2)論点案の検討
-産業医に期待される役割について
-医師以外の産業保健スタッフの役割について
-小規模事業場における労働衛生管理の強化について
-事業者と産業医の関係について
○議事
○富賀見室長補佐 定刻になりましたので、ただいまより第4回「産業医制度の在り方に関する検討会」を開催させていただきます。本日は大変お忙しい中、御参集いただきましてどうもありがとうございます。
まず、出席の確認をさせていただきたいと思います。加藤部長がおくれての出席とさせていただきまして、あと、委員のほうですけれども、石田委員、小林委員、小松崎委員、高松委員からは所用のため欠席ということであらかじめ伺ってございます。また、井伊委員も30分程度おくれての御参加という旨、御連絡をいただいております。本日の議題でお話しになります鈴木先生もまだお見えになっていないようですけれども、定刻なので始めることにいたしますが、後ほど見えられる御予定でございます。また、御所用で途中退席されると伺っている委員の方もいらっしゃいますけれども、お時間が来ましたらどうぞ御退席していただければと思います。
4月に事務局で人事異動がございましたので、名前だけですが紹介させていただきたいと思います。瀧村労働衛生管理官です。
○瀧村労働衛生管理官 瀧村です。よろしくお願いいたします。
○富賀見室長補佐 あと、私なのですけれども、4月からお世話になっております産業保健支援室の室長補佐をしております富賀見と申します。どうぞよろしくお願いいたします。
以降の進行を座長にお願いしたいと思います。
○相澤座長 皆さん、こんにちは。
大分時間があきましたけれども、第4回目の検討会をこれから開催させていただきます。本日も活発な御意見をお願い申し上げます。
初めに、事務局から資料の確認と本日の検討会の進め方について、御説明をお願いいたします。
○富賀見室長補佐 私のほうで、資料の確認をさせていただきたいと思います。
お手元にクリップどめの資料がございます。確認の際にクリップを一旦外していただいたほうが確認しやすいかと思います。
一番上から次第、ホチキスどめで要綱と名簿が添付されております。
その次が資料1です。この後、事務局から説明をしますけれども、過去3回の御意見として提出されたものの論点を整理した資料でございます。
資料2としまして、これはこの後の議題1の説明資料になります。2枚ものになります。
その後、ちょっと分厚いですけれども、事務局提出の「参考資料」と右肩にございます。横向きの資料でございます。
それ以外に2部、委員より御提出のお申し出をいただきましたもの。まず上の横向きのホチキスどめの資料は、圓藤委員から御提出していただいた資料でございます。あと製本された資料は、日医の委員会の資料で、これは道永委員から御提出していただきました資料でございます。
お手元のクリップどめの資料は以上です。おそろいでしょうか。もしも不足がございましたら、事務局までお申しつけいただければと思います。
お手元に青いファイルもございますけれども、これは検討会のこれまでの資料になりますので、また適宜議論の中で御参考にしていただければと思います。
次に、本日の検討会の進め方について、簡単に御説明させていただきます。
先ほど、資料の一番上にありました次第の議事に沿って進めたいと思います。まず「2 議題」とあるのですが、議題のとおり、本日は初めに「(1)諸外国の制度に関するヒアリング」ということで、茨城大学の鈴木准教授からフランスの産業医制度を中心にお話をお伺いしたいと思っております。ここは質疑等も含めて30分程度を考えております。
議題の(2)として、「その他の論点について」ということで前回までの検討会で御議論できなかった残りの論点について、本日は時間の許す限りで御検討をいただきたいという予定になっております。
以上でございます。
○相澤座長 それでは、本日の議題に入りたいと思います。
事務局から御説明がございましたけれども、本日の1つ目の議題は諸外国の制度として、日本と同様に産業医の役割が法的に定められておりますフランスの産業医制度について、御専門の茨城大学の鈴木俊晴准教授においでいただいておりますので、先生から御説明をよろしくお願いいたします。
○鈴木准教授 ただいま御紹介に預かりました茨城大学の鈴木俊晴と申します。本日は急な所用がございまして、少しおくれてしまいまして大変失礼いたしました。このような機会を設けていただきありがとうございます。
レジュメは3ページ御用意してございます。早速中身に入っていきたいと思います。
フランスの産業医制度については、なじみのない方も多くいらっしゃるかと思いますので、できるだけ平易に御説明させていただければと思っております。
まず、ローマ数字の1のところをごらんください。「フランス労働医検討の意義」というところを書かせていただきました。主要先進国のアメリカ、イギリス、ドイツ、フランスを比べてみますと、産業医制度の選任義務が認められている国はドイツとフランスの2カ国となっております。イギリス、アメリカは自由選任の制度となっております。その中でも、企業に労働者の健康診断の実施義務があるというのは4カ国の中でフランスのみでございます。
このように考えていきますと産業医の選任義務があり、かつ、健康診断実施義務が企業に課されているという点で、我が国の産業保健制度の根幹部分が非常に類似しているところが指摘できるかと思います。ですので、フランスの産業医制度を参照する意義が非常に高いということで、私はフランスの産業医制度について研究をさせていただいております。
ただ、これから御説明いたしますとおり、フランスの産業医制度は我が国と異なりまして、非常に強い権限と専門性を持つ制度でございます。後から御説明させていただきますが、産業保健制度は類似しているにもかかわらず、フランスの制度がこれほどまでに強い権限を持ち、高い社会的地位もあわせ有しております。なぜそのような制度になっているかということを御説明させていただければと思います。
冒頭、軽く余談でございますが、フランスの産業医のことを労働医というのですけれども、労働医は極めて高い社会的地位を有しております。その証左といたしまして、フランスの一般の医師に比べて、フランスの労働医、産業医は年収が3倍ほどある。それだけ極めて高い社会的地位を持っているということが収入の面からもわかるということでございます。なぜそうなっているのかということをこれから御説明させていただきます。
ローマ数字2のところをごらんください。「フランスの労働医制度のあらまし」というところでございますが、フランスの産業医を労働医というのですけれども、6年間の医学教育の後にさらに4年間の産業医学教育・研修を受けた専門医でございます。日本でいいますと、産業医科大学の卒業生のような立場の方々がフランスでは全て産業医ということになっております。フランス全土で現在およそ7,000人おります。
我が国と大変大きく異なるところなのですが、フランスでは全ての企業で産業医の専任義務が課されておりまして、全ての企業で単一労働保健機関あるいは共同労働保健機関と呼ばれる労働保健機関の設置が義務づけられております。そのような機関を企業は必ず設置しなければいけない義務になっております。
そうしますと、費用の面からそんなことは無理なのではないかという話があるのですけれども、大規模企業ですと企業単独の労働保健機関を設置して、そこに産業医が常駐する。中小規模の企業ですと複数の企業、例えばグループ企業ですとか業界の似ている企業、また、事業所が近い企業が合わさりまして、保健機関を設置するということになっております。そこに産業医が勤務するという形になっております。
ここに書かせていただきましたとおり、労働者が500人以上いる企業は単一の労働保健機関を設置することができるということになっております。データによりますと、やや古いのですが、労働保健機関の数は工業、商業部門合わせて943ございまして、そのうち単一機関は659、共同機関は284ということになっております。労働医のうち80%が共同機関に勤務する。労働医の約9割が共同機関の管轄下にございます。労働機関の規模に応じて配置すべき労働医や看護スタッフの最低人数が決められております。これは法定の義務がございまして、受け持つ労働者の数が何人以上であるかによって労働医が何人か、看護師が何人かということが決まっているわけでございます。
こちらも我が国の産業医とは大きく異なるかとは思うのですけれども、次の黒丸のところでございますが、労働医はほかの医療活動との兼業が禁止されております。すなわち労働医は労働医療活動、産業保健活動しかやらないということになっております。かつ、必ず全ての産業医が先ほど申し上げました労働保健機関に勤務する形になって、そこから全ての企業に産業保健サービスを提供する形になっております。労働医が7,000人いて、労働保健機関の数が943ですので、大雑把に言えば一つの労働保健機関に7~8人ぐらいいるということになるかと思います。
法的には、企業の一組織あるいは企業が共同出資する非営利法人というのが労働保健機関でございます。その中で、産業医は労働者という立場で、そこに勤務する勤務医となっています。労働医の賃金は使用者から共同出資という形で支給されております。
こちらも日本の産業医と大きく異なるのですけれども、産業医の選任は職務の独立性確保という観点から、選任解任の際には従業員代表の同意が必要とされております。解任の際には従業員代表の同意を得た上で、「労働監督官」と書かせていただきましたが、日本でいう労働基準監督官の許可が必要であるということで、選任解任の際に労働者及び国の関与が極めて担保されている制度でございます。
以上が、法的地位になっております。
次が肝心な部分でございますが、「2.職務」に移らせていただきたいと思います。
職務は非常に多岐にわたっておりまして、一つ一つ説明させていただければと思うのですが、一番重要なものは各種健康診断を実施するということになっております。我が国と異なりまして、労働者の健康診断は産業医以外が行うことは基本的にはできないということになっております。4年前なのですが、2012年に定期健診の場合には若干の例外が設けられましたが、基本的には産業医が全て行うということになっております。下に米印で書かせていただきました定期健診は、フランスの場合は2年に一度で、日本よりもやや少ないということです。もっとも1年ごとに看護師による面談をするという条件があれば、2年を超える期間で産業医による健康診断を実施することができるというわけで、定期健診に関しては産業医の義務はやや薄まっているということになっております。
2ページをごらんください。
フランスの産業医は、個々の労働者それぞれの健康状態に責任を持ちます。その結果、健診等を実施したときに労働者それぞれの健康診断カードを作成いたしまして、産業医が独自に保管する制度をとっております。こちらも使用者が保管する我が国とは大きく異なる点であろうと思われます。
次の点なのですが、「職務の現状を知るため、作業場に自由に立ち入ることができる」とか「公的機関と連携して、労働環境の調査・研究を行う」と書かせていただきましたが、フランスの産業医は、企業内の産業保健活動に全労働時間の3分の1以上を充てなければならないと政令で決まっております。ですので、フランスは35時間労働なのですけれども、例えばわが国のように40時間だとすると13~14時間ぐらいは企業内の産業保健活動に充てなければならないということになっております。
企業内の産業保健活動は何をやっているかということなのですが、フランスの産業医は設立経緯から見まして、準公務員のような位置づけを与えられておりまして、例えば我が国でいう厚生労働省のような機関と緊密に連携をしております。企業環境をつぶさに調査をいたしまして、その調査結果を報告書にするという業務がメーンとなっております。そのほか、使用者あるいは労働者の労働環境整備のための諮問活動を主に行っております。
特徴的なのは、企業が新たに職場を設置するとか新たに工場をつくる場合には、産業医がかかわるということが決められておりまして、企業が新たな職場を設置する場合に、産業医が助言をおこなうということが想定されております。このような活動を行う結果、労働時間の3分の1以上が企業内活動に充てられるべきという形になっております。
次も重要な点かと思いますが、労働保健機関の構成員を決定するに際し、産業医が指導的役割を果たすことになります。先ほど申し上げたとおり、産業医は企業が共同で出資する労働保健機関という診療機関の中の労働者という位置づけなのですが、その中でも非常に高い地位を与えられておりまして、これは法的な義務ではないのですけれども、自分が所属している労働保健機関の構成員とか設備をどのようなものにするかということを決定する強い権限、イニシアチブをとるようにと法的に書かれております。その結果、労働保健機関のメンバーを誰にするかとか、産業とか企業の特性に合わせて企業環境を調査する場合にこういうメンバーを入れたほうがいいのではないかとか、例えば自動車メーカーであれば、自動車メーカー特有のトラブルに対応したスタッフを用意するということの発言権が産業医にございます。
そのことが下の米印にあるIPRPというものであります。これは技術的、組織的、医学的な専門知識を持ち、労働医の活動を補佐して職業上のリスク予防及び労働条件の改善を行う、国の承認を得た自然人あるいは法人のことでございます。専門的なコンサルタントという位置づけであろうかと思います。人間工学、毒物学、産業衛生学を初めとしたさまざまな専門家が想定されておりまして、共同機関では少なくとも1人以上のIPRPを雇用しなければならないという義務がついておりまして、このようなスタッフを決定するに際して産業医が主導権を握るようになっております。このように産業医は産業保健活動を主に行う医師でございますので、医療活動は行わないということになっておりまして、全員が専業の産業予防医学の専門家であるということになっております。
最後の3つ目なのですが、きょうは特に御説明させていただくようにという御要望がございました、労働者の傷病の復職判定に関して、産業医がどうかかわるかという点について御説明させていただきます。
以上のような活動のほかに、産業医は人事上の提案という重要な機能を果たしております。これは何かと申しますと、産業医はいつでも労働医の年齢、体力、あるいは健康状態に応じて、使用者に対して個別労働者の配転や労働ポストの内容の変更などを自由に提案することができます。ですから、労働者の健康状態に応じて、このような人に対してはこういう職務につけたほうがいいのではないかという提案を絶えず使用者に対して行うということになっております。
我が国でも、そのようなことは事実上行われている面もあるかと思いますが、これに対して強い法的義務が発生するというのがフランス産業医の特徴でございます。どういうことかといいますと、この提案が産業医からなされた場合には、使用者はその提案内容を考慮する義務が法的に生じまして、提案内容を実施しないときには労働者及び産業医にその理由を明らかにしなければならないという形になっておりまして、違反した場合には罰則ですとか、場合によっては使用者に損害賠償が課されるということになっております。
そうしますと、産業医の医学上の判断が極めて重い意味を持ってくるのですが、この内容の中立性というか内容の適切性をどう担保するかということが問題となります。それについては、フランスの制度はこのような手当てを設けておりまして、不服申し立て制度というものがございます。これは労働者の健康状態や変更されるべきポストにつき、産業医がくだした判断が適切か否かについて、使用者及び労働者は労働基準監督官に不服を申し立てることができます。仮に、余りないのですけれども、変な就業上の措置を提案した産業医がいた場合は、その産業医の判断はおかしいのではないですかということで労働基準監督官に不服を申し立てることが認められております。
この不服を申し立てますと、労働監督官は、労働監督医官と呼ばれる、フランス全土でもそれほど多くない数だったかと思いますが、地域ごとに配置されております、これも極めて社会的地位の高い、労働医のさらに上司というような形の統括的な労働医の方が公務員という立場でおりまして、労働監督官が、この方に対し、実際の労働医がくだした判断が適切かどうかについての意見を聞いて、審査いたします。その結果、労働監督官が判断をくだすということになっておりまして、産業医の判断の適切性を担保するという制度が設けられております。
次ですが、「2.不適格認定」のところに入らせていただきます。
労働者が傷病により休職するということがあろうかと思います。これは我が国との比較という面ではどうでもいいことなのですが、フランスでは「労働契約の停止」と言われております。これが我が国でいう休職に当たるものでございます。
3ページなのですが、米印のところの「労働契約の停止」、いわば休職が産休とか職業病による欠勤、30日以上の労災あるいは私傷病による欠勤の場合に、職場に復帰する際には必ず産業医の健診を受けなければならないということになっております。これは復職時健診と呼ばれているものです。この際に、産業医が労働者の復職は不可能という場合には、不適格認定と呼ばれている就労不能認定を行うということになります。使用者との関係で言いますと、就労不能認定が産業医から出ない限りその労働者を解雇することはできないことになっておりまして、産業医の判断がなければ、使用者は就業上の措置を決定することができない制度となっております。
この不適格認定ですが、判断の慎重性を担保するために、2週間の間隔をあけた2度の健診により実施することとなっております。この不適格認定は現在ついている労働者の職務に対して適格性がないという判断でございまして、不適格認定を行うと同時に先ほど申し上げました就業上の提案というものを行いまして、現在の職務には不適格であるが、ほかの職務にはつけるのではないかという提案を行うことが一般的でございます。このような不適格認定及び何らかの提案を産業医から受けますと、使用者は就業上の措置を決定することとなります。
これがまた非常にフランス独特で興味深いところかと思うのですけれども、(2)をごらんください。不適格認定あるいは就業上の提案というものを受けますと、使用者に再配置義務というものが生まれます。これはどういう義務かと申しますと、イメージとしては日本と同じような感じかと思います。
ただ、産業医の社会的地位、法的地位が極めて高いということから、産業医の提案を受けた使用者に課される義務が非常に重いものになっておりまして、太文字の「再配置等打診義務の物理的範囲」というところをごらんいただければと思いますが、条文上は企業に存在する業務について労働医の意見を考慮して行うとされておりまして、これはイメージどおりという感じなのでございますが、裁判例ではこれをどんどん拡大する傾向が見られます。複数の事業所に再配置等を検討しなさいですとか、フランチャイズ契約関係にある企業間においても配転を検討しなさいですとか、場合によっては海外のグループ企業に対しても、そこでは働ける職務があるから再配置を検討しなさいと裁判所が言うなど、使用者に課される再配置の義務が極めて重いということが特徴として挙げられます。
(2)の最後の右向き矢印のところなのですが、このように使用者に課される再配置等打診義務は、労働医の提案内容に沿うことを最低限の義務としつつ、とにかく労働者の雇用保護のために、使用者にできるだけのことを尽くさせる極めて重い義務ということで、これが判例上認められているところでございます。不適格認定を行うということで、そして、再配置義務を尽くすというところで、初めて使用者は労働者を解雇できるということとなっております。
レジュメに関しては以上なのですが、まとめといたしまして一言だけつけ加えさせていただきます。
まとめにかえて1点、こういうことが言えるのであろうと思います。我が国の産業医の改革議論と照らし合わせて考えますと、我が国の産業医の法的地位を高める、権限や責任を強くするという議論が絶えずあろうかと思います。その場合には、産業医がいろいろな法的義務を負うことによって、例えば安全配慮義務ですとか、極めて高いリスクを負うのではないかという懸念があろうかど思います。よく私のほうにも御質問に来られる方がいらっしゃいますが、フランスにおいてそのようなことはございません。
なぜかと申しますと、今、申し上げましたとおり、産業医の提案を受けまして、再配置、配転等を検討するのは使用者でございまして、配転等の間違いによって使用者に損害賠償が課されるということはあっても、産業医の提案内容が適切ではないことによって産業医が損害賠償を課されることはないということが1点目は言えると思います。
また、産業医の判断に問題があるという場合には、先ほど申し上げたような労働監督官に労働者または使用者が訴える方法が法的に用意されていますので、この点でも産業医の法的責任は回避されているという制度でございます。そして、労働医の中立性は、先ほど申し上げたようにしっかりと保たれているということでございます。
以上から何が言えるかといいますと、フランスからの示唆なのですが、産業医の位置づけをむしろ明確にして、かつ、中立性とか独立性をしっかりと保ってあげたほうが産業医の能力を自由に発揮できる。産業医の方にとっては、実はそのほうがいいのではないか。かつ、余分な法的責任は課されないシステムをつくろうと思えばつくれますので、そういう制度も参照に値するのではないかと私は考えております。
日本との違いが大きくあるというのは私も重々存じ上げておりますので、我が国の実情に合った制度をつくらなければならないのは当然のことなのですけれども、これだけフランスにおいて成功していると言われている産業医制度があるということを横目に見て、なぜ日本の産業医制度を検討しなければならないかということについては、フランスの制度をしっかりと比較検討しないと、それはよりよい制度にはならないのではないかと私は思っております。
長くなりました。以上でございます。
○相澤座長 フランスの労働医の制度について、詳しく御説明していただきました。ありがとうございました。
ただいまの御発表にどなたか御質問は。川上委員。
○川上委員 ありがとうございました。とてもよくわかりやすくて、いいところもわかりました。
すごく小さな確認だけの質問なのですけれども、フランスの労働保健機関の責任者は誰になるのですか。
○鈴木准教授 責任者は、企業単独の場合は使用者、複数の企業が共同して設置する場合には、企業から使用者側の代表者をそれぞれ出しまして、その中の代表者が責任者になります。
○川上委員 わかりました。
もう一つは、労働保健機関に雇用する産業保健専門職について、例えば産業医以外に保健師、看護師を何人というほかの職種に対する義務、法的な規制はあるのですか。
○鈴木准教授 ございます。
看護師に関しては、労働者何人当たり何名を雇わなければいけないという縛りが法律にございます。そのほかのスタッフについての縛りはございません。
○川上委員 ありがとうございました。
○相澤座長 どうぞ。
○甲田委員 私も簡単な質問なのですけれども、先ほど、単一と共同という形でつくるというお話だったのですけれども、実際に見ていくと労働者の人数的なカバー率がどのぐらいなのかはおわかりになりますか。
○鈴木准教授 統計上は、企業体を持っている会社であれば全てです。
○甲田委員 統計上は全てという認識でよろしいですか。
○鈴木准教授 そのように認識しております。
○相澤座長 ほかにいかがでしょうか。
どうぞ、森委員。
○森委員 最初のところで、フランスでは産業医の社会的地位が高いという話がありました。しかし、この制度だと7,000人を維持するというのは決して楽なことではないと思いますが、高いというよりは7,000人を維持するためには待遇を上げなければ維持ができないという背景があるのかどうか、そのあたりはいかがでしょうか。恐らく、医学教育の中では同じ教育を受けた後に、産業医のコースを選択することになっていると思いますが。
もう一点、技術的な話なのですけれども、健康診断と一言でいっても日本とは異なった仕組の場合があります。私はベルギーで、実際に健康診断の実施の場を見学させていただきましたが、産業医がそれぞれの受診者にどのような健診項目を行うのか、曝露状況に応じて決めているという仕組みがありました。フランスの健康診断というのも、項目は曝露に対して判断をするような仕組みなのか、健診項目が決まっていてそれを行うという仕組みなのか、どちらなのでしょうか。
○鈴木准教授 前者の件でございますが、数が少ないから待遇を上げているのか、社会的地位が高いから待遇を上げているのか、そのあたりはわからないところでございますが、フランスのお医者さんの制度は一般医と専門医の2つに分かれておりまして、専門医は内科医とか外科医、脳神経外科という形で普通のように専門医の方がいらっしゃって、その中に産業保健のための専門家として産業医、労働医が位置づけられておりまして、そこと同程度の地位を与えられているということは言えるのではないかと推測されます。
後者の点なのですが、法律上、どこの業界とかどこの暴露の度合いによって健診項目を変えるということにはなっていなかったと記憶しております。
○森委員 なっていない。では、判断ということですね。
○鈴木准教授 はい。
○相澤座長 土肥委員、どうぞ。
○土肥委員 幾つか質問をさせてください。
まず、2ページ目の「1.人事上の提案機能」についてでございますけれども、これは労働医の中立性を保持するという意味では、例えば労働者と事前の調整などをしないという理解でよろしいのでしょうか。つまり、Aという人の健康状態について、人事上の提案機能をする際に労働者と事前に話し合うのか、話し合わないのか。
○鈴木准教授 結論から申し上げますと、話し合うということになっております。
今回は説明させていただかなかったのですが、事前に健診を受けるという制度もございますし、労働者は要請によって、いつでも自由に産業医の健診を受けることができるということになっておりますので、そろそろこの企業にとどまれないぐらい健康状態が悪化しているという状態であれば、事前に何度も産業医がその労働者について健診を行っているということが想定されております。
○土肥委員 わかりました。
そうしますと、7,000人いる労働医がいろいろな判断をする際に当然大きくぶれていく可能性があって、それを補正するために労働監督医官という制度があるわけですけれども、多くの判断をしている中で、不服があったら全て労働監督医官に上げていくということは制度上非常に難しいと思うのです。そうしますと、その判断を修正するため、もしくは補正するために例えば何らかの手法、つまり、判断事例集というものによって判断を修正していかないと、かなりばらつく可能性を持っていると思うのですけれども、そこら辺の補正機能はこの制度の中に何かあるのでしょうか。
○鈴木准教授 あると言えばございまして、労働医のさらに上の労働監督医官なのですが、この方は判断を補正すると同時に、全国の産業医に対して指導するという役割も果たしておりまして、その中には、当然こういう場合にはこう判断するという指導が含まれているということになります。
○土肥委員 そうしますと、日本の産業医の場合、もちろん同じような責任を一部というか、私の感覚ではかなり果たしていると思っているのですけれども、一方、健康増進のような機能も日本の産業医は果たしているわけですが、フランスにおける労働医はいわゆる健康のプロモーション的な役割について、どのような役割を担っているのでしょうか。
○鈴木准教授 先ほども少しだけ触れさせていただいたのですが、労働者あるいは使用者の諮問機関としての機能を持っているのが労働医の中心的な役割でございまして、常日ごろから使用者の相談に乗る。あるいは、先ほど申し上げましたとおり、労働環境をつくったり、変えたりする場合には、労働医、産業医の判断を仰ぐことになっておりますので、そのような形を通じて貢献をしている。そのようなことが言えるかと思います。
○土肥委員 最後にもう一つ、先生がフランスにおける産業医の制度は成功しているのだと最後におっしゃったと思うのですが、どういう意味で成功しているのか。制度が非常にすっきりしているという意味なのか、労働者に非常に貢献しているという意味なのか、それとも、中立性を守ることによって産業医の仕事がやりやすいという意味なのか、いろいろな意味の「成功」という言葉があると思うのですが、先生の印象としては、どういう意味でフランスの産業医制度が成功していると感じておられるのでしょうか。
○鈴木准教授 お答えするのも難しいのですけれども、さまざまな意味があろうかと思うのですが、我が国と比較いたしまして、同じように精神疾患の増大による就業上の措置の判断が難しくなるとか、さまざまな困難にその時代によって直面するかと思うのですけれども、その時々で、我が国の場合は産業医制度を廃止も含めてどうしようかという形で議論がされるかと思うのですけれども、フランスの場合は産業医というすごい制度があるのだから、これをどう生かすかという議論がなされていて、マイナスの方向にどう産業医制度を持っていくかという議論が全くなされていないです。これがフランスにおいて、産業医制度が極めて信頼されているということの非常に大きな証左であろうと私は思っております。
○土肥委員 ありがとうございました。
○相澤座長 ありがとうございます。
ほかにいかがでしょうか。
どうぞ、明石さん、お願いします。
○明石委員 日本とは労働の意識とか働き方、システムが大分違うので、今聞いただけでにわかに全部のみ込めないのですが、幾つか御質問させていただきます。まず、健診カードを産業医が保管されるということであれば、事業者はどうやって労働者の健康状態を知るのですか。
○鈴木准教授 基本的には知ることができないことになっているので、だから、我が国と大きく異なるのでなかなかにわかに想像がしがたいのですが、産業医が労働環境とか職務内容について極めてよく知っているということが前提で、この職務であればこういうふうにつけるというその限りの提案をする。
○明石委員 それは産業別に職務があって、特定の産業医は、その産業には精通をしていますという意味ですよね。
○鈴木准教授 先ほども申し上げましたとおり、企業の内情にまでフランスの産業医は入ります。
○明石委員 先生が最後に、ある程度中立でなければいけないとおっしゃいましたのであえて申し上げますけれども、人事がわからなければ産業医が幾ら中立といってもいろいろな判断ができないと思うのですが、そこは若干矛盾があるように思います。
それともう一つ、今、おっしゃられた労働環境というのはどこまでを指すのでしょうか。
○鈴木准教授 どこまでを指すかというのはちょっとわからない。
○明石委員 現場の作業管理の状況とか、その人の健康状態と職務との関連みたいなところまでのずっと深く立ち入る話なのか。
○鈴木准教授 深く入り込むと考えていただいていいかと思います。
○明石委員 事業者が労働者の健康状態を知り得なければ、事業者は労働者に対して何もできないので、それはどういう解釈をすればいいのでしょうか。
産業医さんが健診カードを持っていて、事業者は知り得ない。事業者は労働者には何ら対応ができないということになりますが、それは労働者自身が自分の健康管理を行うということでよろしいのですか。
○鈴木准教授 はい。
就業上の措置が必要であれば、産業医から事業者に就業上の措置の決定について提案を行うという形になっております。必要なければ、それはないということになります。
○明石委員 最後に再配置の話をされました。フランスの労働者は職務給なので、ほかに配置するのは日本と違ってなかなか難しいのではないかと思うのです。その辺りは、どう解決されているのですか。
○鈴木准教授 それについては、裁判例でよく争われております。フランスの場合は、解雇が違法となったところで復職を認めるということではありませんで、解雇が違法になったら損害賠償で済ませるということになりまして、再配置するのにどこがいいかという形でトラブルになって解雇してしまったという場合であったら、本当はここの職務であればつけることができたのですけれどもと裁判所は言って、でも、復職はさせずに損害賠償で済ます。
○明石委員 金銭解決ができるということですか。
○鈴木准教授 そういうことになります。
○明石委員 基準はある程度決まっているのですか。
○鈴木准教授 決まっております。
○相澤座長 ありがとうございます。
まだ質問があるかと思いますが、時間の関係でよろしいでしょうか。
簡単にお願いします。
○浜田委員 一つだけ簡単に、実際に企業で働く労働者と労働医の関係というか、何か意見交換する場所はあるのでしょうか。
○鈴木准教授 意見交換の場所というのは、公式な形であるとすれば労働安全衛生委員会です。日本もあるかと思いますが、さらに強力な意味で産業医が必ずいるということになっておりまして、フランスでは安全衛生労働条件委員会だと思いますが、そちらに使用者側と労働者側、そして産業医が必ずいるという形になっております。
○相澤座長 竹田委員。
○竹田委員 制度の話ではなくて、御存じであれば教えてほしいのですけれども、日本の産業医は今負担感を感じているという話も出ているのですが、このような制度のもとで実際に働いている労働医の方々はどんな気持ちで働いているかという情報は、お持ちでしょうか。負担感があるとか、逆に給与が非常にいいということであれば、責任を持って生き生きとやられているのか。随分興味のある話なのですが、その辺を御存じであれば教えていただければと思います。
○鈴木准教授 2012年に私はフランスに行きまして、産業医の方あるいは産業医行政のトップの方と実際にお会いさせていただきまして、内実も含めていろいろお話しさせていただいたのですけれども、大変皆さん誇りを持って生き生きと働いていらっしゃる印象だったかと思います。森先生も多分御存じだと思います。
○竹田委員 ありがとうございます。
○相澤座長 よろしいでしょうか。
鈴木先生、大変貴重な御意見をどうもありがとうございました。
それでは、次の「(2)その他の論点について」議論を進めたいと思います。事務局におきまして、過去3回に出されました御意見を論点ごとにまとめておりまして、また、統計等の資料も用意されておりますので御説明をお願いいたします。
塚本室長。
○塚本産業保健支援室長 私から、最初にこれまでの御意見を論点別にまとめました資料1から御説明させていただきます。
まず、1ページ目です。「1 求められる労働衛生管理について」の1ですが、産業保健の目的は業務による健康障害の予防、労働者の健康状況に合わせた配置による健康状態の悪化の予防、労働者の健康増進を図ること。
2つ目ですが、労働衛生管理は多様性を増しており、労働時間、ストレス、業務管理、休暇管理など、従前の三管理だけでは対応できなくなっている。
次の丸ですが、有害要因への対応などは三管理でうまくいっているが、三管理では対応できない課題も生まれてきている。
ソリューションとしての三管理の枠組みの維持は重要。
高齢化の進展に伴い、基礎疾患を有する者の労働災害の防止も課題。
労働者が高齢期で元気に働くためには、前向きな視点が必要。
メンタルヘルス対策、過重労働対策に関するニーズが増加。また、これらの対策には高い専門性が必要。
治療と職業生活の両立支援も労働衛生管理の中で推進すべき。
事業場の自主管理を中心とすべき。
自主管理を基本とする場合、専門家の専門性を担保すべき。
規制の発達により産業保健の職務が増加。ヒントを規制に求める発想が必要。
健康経営的な視点からの評価がインセンティブとして必要。
2でございますが、非製造業においては作業環境管理・作業管理面での活動の重要性は相対的に低く、健康管理面がより重要。
業種別の産業現場のニーズを把握すべき。
業種の違いや規模の違いもあるので、その違いに応じた検討も必要。
「業種」より「業務」の違いからの観点が必要。
3でございますが、産業医の業務量は増加、チーム体制が適当との提言。
多職種の産業保健専門職によるチームでの活動が有効。
嘱託産業医と現場を結ぶコーディネーター、現場において産業保健サービスのコーディネーターが必要。
法律を現場に合わせて自律的に運用するコーディネーターの役割が重要。
精神疾患の観点からは、職場、家庭環境など労働者の全てを把握したコーディネーターが必要。
産業保健サービスの提供について、外部機関の活用を検討すべき。
ストレスチェック制度の面接も供給できるような労働衛生機関が必要。
行われた措置の効果を検証する仕組みも必要。
「2 産業医に期待される役割について」の1及び2です。
長時間労働者への面接指導等により、産業医の負担は増加。
ストレスチェックへの対応など、産業医の負担感も増加。
産業医の負担が増大している中、対処法を考えるべき。
産業医の究極の役割は、就業上の措置に関する医学的な判断。
労働衛生管理の職務を列挙し、そのうちどの職務が医師にしかできないのかという整理が必要。医師がやるべきことの明確化、方法論の明確化が必要。
産業医の職務を他の有資格者が代行することが必要。産業医の職務のうち一部は有資格者が実施し、産業医に報告する。
事業場には衛生管理者、作業主任者等の専門家がいることから、産業医について、作業環境管理、作業管理を産業医の選択科目にして、健康管理を必須の職務とするなどの柔軟な対応が必要。
産業医のメンタルヘルスへの関与は、コミュニケーター的な役割。
産業医に関する法令をこれ以上複雑にすることは避けるべき。
産業医として最も重要な職務は産業保健チームのリーダーであること。
嘱託産業医の場合は、月1回程度しか職場に来られないことから、小規模事業場においては衛生管理者がコーディネーターとなることが必要な場合もある。
専属産業医と臨床診察の傍ら活動している産業医を一緒に議論することに疑問。専門医の位置づけについて検討が必要。
産業医が健康管理を行うためには、作業管理、作業環境管理をも把握することが必要。
3でございます。
チームを組むことが適当との提言が学術会議からなされている。
産業医は、就業上の措置に関する医学的な判断ができ、また、全体を俯瞰して動かせる現場のコーディネーター。
産業医として、最も重要な職務は産業保健チームのリーダーであること。個別の業務に縛られるのではなく、経営者と対峙し、労働者のケアを行うことが重要。一方で産業医は事業者のためにもなるが、労働者のためとなる存在でもある。
安衛則第14条の産業医の職務は、産業医は関与すべきであるが、産業医だけが担うものではない。産業医が関与し総責任者となった上で作業環境測定士、衛生管理者等も担うことが必要。
フランスでは、産業医には、産業保健チームのリーダーであること、就業判定の機能を重視。産業医は産業保健のPDCAサイクルの核となるべき。
作業環境管理や作業管理に関しても、医師として関わる場面はある。
産業医の職務が多すぎ、作業環境管理や作業管理までカバーするのは難しいことから他のスタッフに任せるべき。
嘱託産業医の場合は、小規模事業場において衛生管理者がコーディネーターとなることが必要な場合もある。
治療と職業生活との両立支援においては、産業医と外部の医師や支援機関との連携も必要。
4です。
巡視の門的は就業上の判断を行うために、現場を知ることであるべき。
サービス業などで職場巡視の必要性に疑問。巡視よりもメンタルヘルスへの対応が重要。事業場によって優先順位は変わるので、巡視は月1回ではなく年12回にするなどフレキシビリティーを高めるべき。
月1回の職場巡視が意義のある職場とあまりない職場がある。
「3 医師以外の産業保健スタッフの役割について」の1です。
看護職、衛生管理者の法的な位置について検討すべきとの学術会議からの提言。
医師にしかできない業務は業務上の医学的判断であるが、その周辺の業務は保健師が通訳として対応可。
看護職を含むチームによるサポートが必要。
産業保健師を含めた産業看護職の活用を法律上明確にする必要。
2、3です。
日本では専門職が育成されていない。
多職種の産業保健専門職によるチームでの活動が効果。
小規模事業場においては、産業医がコーディネーターとなることが必要な場合がある。
衛生管理者の機能が形骸化されつつある。充実を図ることが必要。
衛生管理者の地位、権限の付与を実効性のある通達等で補完すべき。
「4 小規模事業場における労働衛生管理の強化について」の1です。
複数の事業場を地域ごとにまとめて管理する手法も一般化しつつあり、従来の事業所別の管理を前提とした手法には無理が出てきている。分散型小規模事業場における産業医選任のあり方を検討すべし。
企業の分散事業場の労働衛生管理が課題。労働衛生に関する事項は事業本部や本社に集約されている。
非製造業の場合、本社産業医が分散事業場の健康管理を支援する体制にて対応しており、事業場単位でない産業医活動の検討が必要。
分散事業場を持つ企業本社において、コーディネーターの配置が有効。コーディネーターは産業医の資格を持つ者が望ましい。
2と3です。
有害業務の事業場などとは、例えば30人以上の事業場でも産業医を義務付けるようにすれば、労働者はより安全が確保されるのではないか。一方で、産業医の選任基準の引き下げ案にエビデンスがあるのか。
小規模事業場でも健康診断の実施義務はあるのであって、例えば健診機関の医師が保健指導や就業上の措置について意見を言うことは、産業医サービスの提供にほかならないものであり、産業医の選任という形にとらわれなければ、より幅広く小規模事業場をカバーすることができる。
小規模事業場においては、企業外労働衛生機関との契約により、各種専門職が選任されているとみなせるような法制度が必要。
「5 事業者と産業医の関係について」です。
まず、産業医の立場について、ILO条約161号に基づいた中立的な立場での提供を確立すべし。
事業者が産業医を兼務してよいのか疑問。中立的な機関が衛生管理に携わるべき。
最後の「6 その他」です。
まず、(1)では、外部専門機関の実態調査を行うべき。
「(2)遠隔による労働衛生管理活動のあり方について」です。小規模事業場が多く、産業医がカバーできないケースもある。小規模、中山間部の事業場はサービスが受けられない。遠隔活動の在り方について議論すべき。
(3)です。
産業医の質を高める対策も考えていくべき。
産業医の教育訓練の充実が必要。
産業医のトレーニングの場が足りない。新たな制度に対応できる資質向上の仕組みが必要。
新たな枠組みを設けた際には、対応できる資質向上の仕組みをあわせて検討すべし。
資質向上については、認定産業医の生涯研修カリキュラム変更により対応可能。
「(4)その他」です。
国として労働衛生管理の数値目標を示すべき。
熱中症のための規則も必要。
特殊健診が複雑になっており、簡素化が必要。ハザードに基づいた健診からリスクに基づく健診への移行も必要。個人暴露を推進すべし。インダストリアル・ハイジニストのような資格者がリスクアセスメントをしながら化学物質管理を行う方法も考えられる。
産業医として働く事業場がないという医師がいる一方、産業医が見つからないという事業者側の悩みもあり、両者をマッチングする仕組みが必要。
以上が、資料1の概要です。
次に、論点を網羅的に御検討していただくための参考ということで、統計などの参考資料を用意させていただいております。
1ページ目ですが、業務上疾病全体の推移で近年は8,000名程度で推移と。
2ページ目ですが、職場でのストレス状況。強い不安、悩み、ストレスがある方の割合が5割を超えている。
3ページ目ですが、精神障害の労災認定件数が平成26年で497件。
4ページ目は過労死関係でございますが、脳・心臓疾患の補償認定件数が平成26年で277件といった状況。
5ページ目ですが、規模別の事業場労働者数ですが、50人未満の事業場が事業場数全体の9割以上、労働者数で7割弱を占めている状況。
6ページ目ですが、これは有害業務の有無です。事業場の規模にかかわらず、健康診断、異常所見者に対する医師の意見、当該意見を勘案した就業上の措置、あと、別の項になりますが、長時間労働者への医師の面接指導は義務とされております。ストレスチェックの結果に基づく面接指導につきましては、50人以上の事業場では義務で、それ以下のところでは努力義務といったところです。
7ページ目は、1回目で見ていただいた資料ですが、産業医制度の遍歴の中でも、昭和63年以降、幾つかの産業医の職務が追加されているかと思います。
8ページ目の産業医制度の概要ですが、規則におきまして、職務は1~7まで規定されております。また、少なくとも月1回以上の頻度による職場巡視及び有害なおそれがある場合の必要な措置の実施も規定されております。
なお、産業医の選任に影響を与えます事業場の考え方ですが、昭和47年の通達におきまして、場所的に分散しているものであって出張所などで規模が小さく、事務能力等を勘案して、一つの事業場としての独立性がないものは直近上位の機構と一括して、一つの事業場として扱うといった通知が出ております。
また、本来、その事業場のみに勤務する専属産業医の方が他の嘱託産業医を勤務することが可能な場合につきましては、平成9年の通達によりまして、専属産業医に所属する事業場と非専属事業場が地理的に密接な関係がある、労働衛生に関する協議組織が設置されているなど、労働衛生管理が密接に関連して行われている、また、労働の対応が類似しているなど、一体として産業保健活動を行うことが効率的である場合などにつきまして、また、対象労働者数の合計が3,000名を超えないことなどを条件に、専属産業医の方が嘱託産業医を兼務することを可能としております。
9ページ目が規模別の労働衛生管理体制。
10ページ目が産業医等の選任状況。
11ページ目ですが、産業医の選任状況でして、選任している事業場の割合が87%といったところです。
12ページ目が産業医の活動内容ですが、産業医の方が関与した業務、健康診断結果に基づく事後措置、再発防止に関するところが最も多く、74%となっております。
14ページ目ですが、事業者と産業医の関係に関する資料でございます。法人の代表者などが産業医を兼務した場合、労働者の健康管理と事業経営上の利益が一致しない場合も想定されることから、法人の代表者、委員長などの事業場において事業を統括、管理をされる方をみずからの事業場の産業医に選任してはならないといった旨の省令改正を平成28年3月に行い、4月施行の予定です。
15ページ目が一般健康診断の事後措置などの概要。
16ページ目ですが、定期健康診断の実施率が92%。実施機関の53%あたりが健診を主たる業務とする健康診断機関。4割弱、39%が病院・診療所です。
17ページですが、平成3年では23%だった有所見率が50%を最近は超えているというところ。
19ページ目をごらんいただけますでしょうか。定期健康診断の異常所見者に対する措置の統計でございます。表の左から3番目、所見のあった事業場のうち、健康管理等について医師等から意見を聞いた事業場の割合ですが、特に小規模事業場を中心に実施率が低く、27%にとどまっているといった状況です。
20ページ目、メンタル対策でございますが、取り組んでいる事業場の割合が平成25年の調査で61%、第12次労働災害防止計画では、平成29年に80%とすることを目標としております。
その後、21ページ目、22ページ目が平成27年10月に施行されましたストレスチェック制度の概要。
23ページ目が長時間労働者等に対します医師による面接指導制度の概要です。
この実施状況が24ページ目でございます。1カ月当たり100時間を超える時間外、休日労働を行った方がいる事業場の割合が4.7%、長時間労働者に対する面接指導を行った事業場の割合が4.3%といった状況です。
25ページ目は、本年2月に公表いたしました治療と職業生活の両立支援のガイドラインの概要です。
26ページ目は、産業保健活動総合支援事業の概要でございますが、産業保健スタッフへの研修とか情報提供、事業場への訪問指導などを実施しております。
27ページ目以降は関係法令でございますが、確認の意味で簡単に説明させていただきます。まずは産業医関係の条文でございますが、13条第1項で事業者は省令で定めるところにより産業医を選任し、省令で定める事項を行わせなければならないと規定し、3項で勧告することができる旨を規定しております。
28ページ目の規則14条で具体的な職務を示しております。
29ページ目の3項に、総括安全衛生管理者に勧告、または週1回以上の職場巡視等を行っております衛生管理者に対しましても、指導、助言をすることができるとしております。また、規則の15条ですが、産業医は少なくとも月1回以上の頻度で作業場を巡視し、有害のおそれがある場合は必要な措置を講ずることが義務づけられております。
31ページ目からが衛生に関する調査、審議を行います衛生委員会関係の条文でございますが、法の18条2項で産業医が構成員となっております。
35ページ目が長時間労働者への面接指導関係の条文でございます。規則の52条の2におきまして、時間外、休日労働の算出は毎月1回以上期日を定めて行わなければならないという規定がございます。
最後に、37ページ目からがストレスチェック関係の条文でございますが、66条3項で高ストレス者に対する医師による面接指導の規定がなされております。
以上が概要です。
○相澤座長 ありがとうございました。
後ほど、資料1については御議論していただく予定でございますけれども、その前に道永委員と圓藤委員から資料提出のお申し出がございました。両者から簡単に御説明をお願いしたいと思います。
まず、道永委員からお願いいたします。
○道永委員 それでは、「産業保健委員会答申」という資料を提出させていただきましたので、それをごらんいただきたいと思います。
日本医師会には産業保健委員会というものがございまして、2年間、その任期がございます。会長からの諮問に対し、議論をし、答申書を出しております。これが直近の平成28年3月に会長に回答した答申書になっております。
今回、会長からの諮問事項は「産業保健活動総合支援事業推進のための具体的方策と社会の要請に応える日医認定産業医制度」というものでした。大きく分けて5章までありますが、この検討会とは必ずしも一致しない部分もありますが、簡単に説明させていただきます。
第1章ですけれども、平成26年度から産業保健活動総合支援事業が始まりました。それを受け、都道府県産業保健総合支援センターとその地域窓口において、活発な活動が推進されるための具体的な方策について、まず検討いたしました。
平成27年3月に産業保健総合支援センター地域窓口に協力をしている郡市区医師会を対象にアンケート調査を実施しております。今後のあり方について提言を取りまとめてございます。5ページにありますが、その中で幾つかありますので後でお読みいただければと思います。
第2章をごらんいただきたいと思いますが、目次で結構です。近年、産業医に社会的動向を踏まえて、企業や労働者のニーズに対応できる資質を確保していくことが求められていると思います。そのために必要な認定産業医制度及び産業医学研修のカリキュラムのあり方について、更新条件やカリキュラム内容、データベースの活用等の検討を行っております。
第3章です。平成27年12月からストレスチェック制度が始まりました。産業医としての具体的な活動内容とストレスチェックに関与する際の課題について、平成27年5月に日医認定産業医の中から無作為で抽出しました1万人を対象にアンケート調査を実施し、ストレスチェック制度への関与を中心に、認定産業医の活動の実態や今後のあり方について検討を行いました。
第4章ですが、小規模事業場の労働者の健康を確保する方策について検討を行っております。事業場に産業保健活動を安定的に供給するためには、認定産業医が安定的に関与できる制度を確立すべきであるとしております。5項目挙げておりますが、この中で事業場における産業医選任基準を30人へ引き下げるべきであると。これは日本医師会がずっと前から主張していることでございます。
第5章が産業医制度のことになりますので、ここだけ少し説明させていただきます。17ページをおあけください。こちらも4つの項目について書かれております。
まず、「1)小規模事業場への産業医活動の普及」ということで、先ほども申し上げましたが、常時使用する労働者数が30人未満の事業場では、地域産業保健センターの活用について一層明確かつ積極的に行政指導をすべきである。特に有害業務のある事業場においては、業務上疾病の発生を確実に予防できるよう産業医活動の普及を徹底すべきである。一方、事業場の生産設備や面積が小規模である場合には、職場巡視や衛生委員会の頻度については緩和することについて検討してもよいと考えられる。
「2)産業医学を専門とする医師との交流の促進」が書かれております。産業医学を専門とする医師が大規模事業場で選任されている場合がありますが、これらの医師と地域における嘱託産業医との交流は一般に低調です。その知識や経験が共有されているとは言えない現状がございます。この専門とする医師と地域の嘱託産業医とが定期的に交流できる機会が設けられることが望ましい。このような機会があれば嘱託産業医がかかわる多くの事業場においても、産業医学の専門的な活動が普及することが期待できる。
「3)産業医活動の投入時間制」です。大規模事業場においては、1人の専属産業医が対象とする労働者数が数千人の規模となっている現状が認められます。さらに産業医が健康保険組合や医療機関などの業務に協力しているなどして、実際に産業医としての本質的な活動は十分にできていない事例も認められます。本来、労働災害の防止や労働者の健康確保にとって効果的な活動を優先して実施すべきであると考えております。産業医を選任する義務のある事業場においては、実際に産業医としての活動に関与する時間について最低基準を設け、それらを確保するような制度を検討するよう要望したいと書かれております。
「4)産業医活動のタスクシェアリング」ということで、産業医の職務のうち産業衛生技術者、産業看護職、心理職等の専門職に分担させることができる職務について整理し、チームとして産業医活動を推進することについて検討すべきである。産業医がそれらの活動を総括して事業場や労働者に対し、指導や助言を行う必要がある。このようにまとめられておりますのでちょっと御報告させていただきました。
以上です。
○相澤座長 ありがとうございます。
それでは、圓藤先生から簡単に御説明をお願いいたします。
○圓藤委員 資料をごらんいただきたいと思います。
1ページ、「表2 事業場規模別・業種別安全衛生管理組織」。
業種別の安全衛生の管理組織を、このように3つに分けているのは妥当であろうと考えております。ただ、規模別に関しては、50人未満に対しての管理組織が極めて弱いということが言えるのではないかと思います。
それにつきましては、2ページの「表1 産業別死傷年千人率(休業4日以上、2013年)」を見ますと、林業が一番高くて、順番に下がって製造業まで、非製造業についてはそれ以下でございますので、10倍以上の開きがあるというのはより一層の安全対策をとる必要がある。これにつきましては、今まで長い歴史で各分野がかなり努力しておりますが、なお、一層改善する必要があるのではないかと思います。
別の見方をいたしますと、次のページの労災保険料率を見れば、上位の事業と下位の事業に関して35倍の開きがある。これは非常に大きくて、労働者に対しての格差が事業の種類によって大きな開きがあるということを認識すべきであろうと思います。また、金額で言いましても、平均年収を440万円と仮定いたしますと、最大のところでしたら年間38万7,000円も保険料を支払っている。保険料は業務上疾病や、労働災害が起こったときの医療保障等に充てられるので当然支出されるべきでありまが、それに見合ったものを予防や安全に投資することが効率が大きいと思われますので、労災保険に支出するだけではなくて、予防や安全への投資をお考えいただきたいと思います。
もう一つは、事業所規模別での労働災害を度数率、強度率で見ますと、歴然と小規模事業場のほうが高い、労働災害が多いというのが明らかであります。したがいまして、小規模事業所により重点的に対策をとる必要があるというのは明らかであります。
そのことは労災保険で見られるほか、5ページに示すように、健康保険の見方もできるのではないかと思います。例えば協会けんぽの保険料率と大規模企業A社の健康保険組合の保険料率が違う。協会けんぽは小規模企業が加盟しておりますので、より高い保険料率になっている。それは裏を返せば、それだけ保険サービスができていないのではないかと思われます。
また、大規模企業B社の例で見ましても、200人以上の事業所には健康管理室を設置しておりますとのことでしたが、生活習慣病医療費を見ますと、同一企業グループの中においても大規模な事業場とそうでないところで年間6万円の差がある。ましてや、中小零細企業におきましては、生活習慣病に対する医療費はもっと多いのではないかと思われます。それは健康管理室の建物だけがあっても意味がなくて、そこには医師が来所し、あるいは保健医師、看護師が常駐する、そして、保健指導を十分に行っているということでもって、生活習慣病の1次予防、2次予防、3次予防を適切に行うことができる。その結果、医療費が下がってくるということであります。現実を見ますと、定期健康診断をしまして53.2%の人が有所見でありますので、ほぼ2人に1人は保健指導をする必要があると思われます。
6ページを見ますと、現実に所見のあった労働者数ですが、大規模なところほどたくさん人数がおりますので、所見のあった労働者がいる率が高くなって当然でありますが、次のカラムの「健康管理等について医師又は歯科医師から意見を聴いた」は大規模であればたくさん実施しておりますが、50人未満になりますと21.9%あるいは15.0%と非常に低い数字になっております。すなわち医師から意見を聞くチャンスがないのが現状であるかと思います。
次の次のカラムの「労働時間の短縮や時間外労働の制限の措置を取った」を事業者が行ったところは大規模なほどあるわけですが、50人未満のところが4.4%あるいは2.2%と非常に限られたところでしか行われていないということは、法的な義務があるにもかかわらず、実際は行われていないのが現状ではないだろうかと思われます。
「特に措置を講じなかった」は11.9%、19.2%とありますように、定期健康診断を実施したとしても、やりっ放し、本人任せ、単に結果を報告したにすぎないところが多いのではないか。それでしたら、行動変容、疾病の予防対策を行うということにつながらない。健康診断をせっかくやっているにもかかわらず、効果が薄いのではないかと思われます。
7ページ、法的には50人以上の事業場、50人未満の事業場はともに健康診断の結果について、医師等からの意見聴取をするとなっておりますが、50人未満の事業場に産業医を選任していないところは必ずしもそれを実施していない。健診機関からのコメントをそのまま本人に渡して、それが意見聴取なのだとすりかえている可能性もありますし、また、事業者はこれに基づいて「就業場所の変更、作業の転換、労働時間の短縮、深夜業の回数の減少等の措置を講ずるほか、作業環境測定の実施、施設又は設備の設置又は整備、当該医師又は歯科医師の意見の衛生委員会若しくは安全衛生委員会又は労働時間等設定改善委員会への報告その他の適切な措置を講じなければならない」と定められておりますが、先ほど述べましたように、特に措置を講じていないのが現状ではないだろうかと思われます。法的義務があるにもかかわらず、実施率が低いことについて改善する必要があろうと思っております。
それから、「心とからだの健康づくり」は厚生労働省が長年取り組んでおりまして、非常に成果があり、最近では、特定保健指導もありまして進められているところであります。産業医を選任しているところは保健指導を実施しておりますが、努力義務になっている関係上、産業医が選任されていない50人未満のところではほとんどやられていないのではないかと思っております。保健指導を実施する、実施していないことが疾病の1次予防、2次予防、3次予防につながる、つながっていないところに分かれるのではないかと思います。
「健康診断の実施及びその結果に基づく労働者の健康を保持するための措置に関すること(規則第14条(産業医及び産業歯科医の職務等))」ということで、50人以上の事業場では、産業医及び産業歯科医の職務として、「健康診断の実施及びその結果に基づく労働者の健康を保持するための措置に関すること」とございまして、産業医は健康診断の結果を見て、問題のある人をお呼びして、保健指導を行っていると思われます。
しかしながら、産業医の選任義務のないところに関しては、法律上は「労働者の健康管理を行うのに必要な医学に関する知識を有する医師その他厚生労働省令で定める者に労働者の健康管理等の全部又は一部を行わせるように努めなければならない」と努力義務になって、その中に、労働者の健康管理等を行うのに必要な知識を有する保健師等を入れていただいておりますが、現実として、実施している事業場と実施できていない事業場があるのではないかと思われます。産業医を選任するところはほとんどされておりますが、そうでないところの義務ではない関係上、ほったらかしになっているのではないかと思われます。
次は長時間労働に関してですが、これは面接指導の実施割合であります。当然、労働者数、規模が大きいところほど人数が多いですから実施しているところが多くなるのは当たり前ですが、これ以外に率で考えましても、長時間労働をしているにもかかわらず面接指導を実施していないところは小規模で多いのではないかと推定されます。
法律上は50人以上であろうが50人未満であろうが、同じように医師による面接指導を行わなければならないとなっておりまして、面接指導における確認事項として、当該労働者の勤務状況、当該労働者の疲労の蓄積の状況、その他労働者の心身の状況等を書かれております。産業医のおられるところでありましたら、これに基づいて実施しているところでありますが、産業医がいないところで面接指導を行う場合、例えば地産保において実施する場合はかなり苦しいところがございます。まず、法的義務があるにもかかわらず実施率が低いと思われます。それから、依頼が来たときに書面だけではわかりづらい。人間関係を含めた多面的な情報が必要。職場を見ずして、判断がしづらいというところがあります。そういうところが地産保で困難を伴っております。
地産保の産業保健活動をしている先生方からの意見は12ページにありますように、労働時間の制限以外の適切な措置についての意見が出しづらい。すなわち職場の中が十分見えていないためにこれが出しづらい。また、経過を追った意見が出しづらい。今月も100時間を超えた、次の月も100時間を超えたと、継続してこられたのかどうかというのがわかりづらい。そのことは事業場内の状況、作業環境、作業管理、人間関係についてわかりづらい。また、産業保健スタッフの協力が十分でないためにわかりづらいということで、非常に苦慮されているのが実情でございます。
産業医の職務に関しましては、法の中に復職面談等がございまして、法的な義務も含めてたくさんあろうかと思いますし、14ページの新たなこれらのことで過重になりました。
15ページを見ますと、産業医の職務に関して、私は産業保健専門職のチームとしての職務と考えれば適切であろうかと思っております。
整理しますと、16ページになりますが、法的に義務のあるもの、義務であるけれども実際は十分できていないもの、法定の義務になっていないがために十分できていないものを分けることができるのではないかと思います。
そこで、17ページにある「1.産業保健師・看護師の活用」、「2.産業医の選任」ということを考えました。
18ページの「1)産業保健師・看護師の活用」に関しましては努力義務になっておりますが、それをさらに活用していただきたいと思っております。ストレスチェックに関しましても、それらの組織、体制が十分できましたら保健師、看護師を活用する役割は増大していると思われております。
保健師に関しましては、第一種衛生管理者免許を無試験で与えられておりますし、看護師に関しましても、第一種衛生管理者の資格を得ることは可能であろうと思っております。現実に専属産業医のいる職場においては複数の保健師、看護師が在籍しており、活用は既になされております。また、事業規模が201人を超えるようなところにおいても選任されているところが数多くあります。
そのようなことを踏まえまして、提案は次のページにありますように衛生管理者が複数いるところに関しましては、資格のある保健師あるいは看護師が当たるということでいけるのではないかと思っております。
産業医に関しましては20ページ、50人以上のところに義務化されておりますが、労働者数が49人以下のところで、合わせまして2,880万人と全体の半数以上が産業医を選任していない状況はやはり異常であろうと思っています。それに関しまして、何らかの対策が必要であろうと思っております。
21ページ、提案ですが、産業保健サービスは対人サービスが多くありますので、活動時間は担当する労働者数におおむね比例すると考えていいだろう。およそ労働者1人当たり年間1時間程度、危険有害業務があれば2時間程度が妥当と考えられる。ただ、産業保健師、看護師の協力があればその半分、年間0.5時間~1時間程度でできるのではないかと思われます。事実、3,000人の事業場であれば専属産業医と保健師、看護師でもって対応して、それができていると考えますし、50人の事業場であれば月1回の出務でもってできていると考えられます。
それを考えますと22ページにありますように、50人未満に関しましても出務の回数を減らすことによって、負担を減らしながら全ての労働者に対して対応できるのではないかと考えております。
職場巡視に関しましても、単に職場巡視するだけでなく、いろいろな事柄がありますので、その都度、巡視する必要があろうと思っておりますが、少なくとも、毎月1回職場巡視をするということを柔軟に捉えてもいいのではないかと考えております。
50人未満の全ての事業場に産業医を選任するには、1~6までの方法があろうかと思っております。
「1.近隣の医師の中から産業医を選任する」。現在の50人以上で行っている事業をより広げていくという方法です。
「2.単一企業で分散事業場となっている場合は、主たる事業場の産業医が分散事業場の産業医を兼務する」。
「3.専属産業医が選任されている場合は、専属産業医のうち1名は統括産業医として、全社を統括する」。これは現実に既になされていると思われます。
「4.構内関連会社の場合、主たる事業場の産業医が兼務する」。
「5.地域産業保健センターあるいは郡市区医師会(地産保等)が産業保健サービスを提供する」。1つは、会費を納入するという形で各事業場が地産保と契約を結ぶ。これは先ほど、鈴木先生がおっしゃられたフランスでの方式の共同の場合が想定されると思います。地産保に関しましては、そこに産業医だけではなくて、産業看護師、保健師あるいはコンサルタント、あるいは毒性学の専門家等をプールしておきまして、事業場のニーズに合わせた対応が今後できるのではないかと思っております。そのほか、健診機関においても提供できると考えております。
衛生委員会も50人未満に関しても、毎月開かなくてもいいけれども開いていただきたいと考えております。
最後に「5)健康投資」になりますが、それらにかかる費用はわずかでして、その投資した額に見合った以上の成果が労災の減少あるいは健康の増進という形で返ってくると思われます。
以上でございます。
○相澤座長 ありがとうございました。貴重な御提案をお二人の先生からいただきました。
それでは、議事に従いまして、資料1をごらんいただきたいと思います。これにもう一度今まで出ていなかった意見等を加えて、きょう皆様から御意見をいただきたいと思います。
最初の「1 求められる労働衛生管理について」は既に3回にわたって議論しておりますので、もうよろしいですね。
何かつけ加えることがなければ、2ページ目の一番下のところの「2 産業医に期待される役割について」というところから御議論していただきたいと思います。論点が1から4までございますので、合わせて40分程度でやりますとちょうど時間内には終わる予定なのです。御意見をいただければと思います。
最初に、「1 全ての事業場において期待される役割は何か」というところはまだ黒丸がほとんどございませんので、これについて追加の御意見がありましたらお願いしたいと思います。全ての事業場において期待される産業医の役割と職務についてというところでございます。
どうぞ、川上委員。
○川上委員 今の点ですが、2の下のほうに全ての事業場において期待される役割が幾つか書いてあるので、これを移動するというか整理するのがまず必要かと思います。
○相澤座長 下のほうの4つか5つぐらいあると思いますけれども、これについても一緒にやってしまいましょうか。1と「2 有害業務のある事業場において期待される役割は何か」について、何か追加していただくことがあったら御意見をいただきたいと思います。いかがでしょうか。
先ほど一応読んでいただいたので、もう一度読む時間がないのですけれども、ストレスチェックとか対処法、就業上の措置等々ございましたが、それ以外に何かございますか、よろしいですか。
どうぞ、井伊委員、お願いします。
○井伊委員 言葉遣いなのですけれども、3ページの下から3つ目の丸のところの嘱託産業医の場合は月1回程度しか来られないことから、衛生管理者がコーディネーターになるというところの「コーディネーター」という言葉がありまして、そして、その次のページに今度はいろいろなスタッフがいる中で産業医が担うべき役割というところの上から2つ目に、産業医がコーディネーターとなるという書きぶりになっていて、これはちょっと違うのではないかと思います。
どちらかというと、産業医はこれまでの議論の中でリーダー、どちらかというとコンダクターの役割をしていただいて、それをするために必要な情報をとってくるとかその辺の調整をするコーディネーター、今まではそういう流れだったのかなと思いますので、ここの言葉遣いとしてはちょっと違えたほうがいいのではないかと思います。
○相澤座長 確かに3ページの下から4つ目のところには、チームのリーダーとなるということがありますし、ちょっと意味は違うかもしれません。
○井伊委員 ですので、4ページの上から2個目の修正が必要かと思います。
○相澤座長 わかりました。
4ページの3、黒丸の2番目ですね。産業医は全体を俯瞰して動かせる現場の「コーディネーター」よりむしろ「リーダー」でしょうか。
○明石委員 「コーディネーター」はこの後もいろいろと出てきます。早めに統一しておかないと、すごく使い方、考えていることが違うので、非常にわからなくなってしまいます。コーディネーターとは何ぞやというのも定義づけないと、混乱すると思います。
○井伊委員 少なくとも、産業医自身がコーディネーターで動き回るというイメージではないと思います。
○相澤座長 後ほど出てきましたけれども、トランスレーターというものがありました。
どうぞ、大神委員。
○大神委員 保健師の役割というところでお話ししようかと思っていたのですが、ここで少しお話しすると、私は過去3回の議事録をもう一度見直してみて、「コーディネーター」と「リーダー」と私が使った「通訳」という言葉の解釈が非常に多岐にわたっている感じがしました。私が意図したものについては後でお話しさせていただきます。
○相澤座長 「リーダー」と「コーディネーター」の定義をどういうふうに考えたらいいか、何か御意見はございますでしょうか。
先ほどの翻訳者というのはどういう意味なのですか。
○大神委員 通訳者です。
当初、意図した通訳というのは、かみ砕いて説明して物事を伝えるという意味合い以上のものを想定しておりました。私たちは個人にも集団にも責任を持ち、しかも、その人たちが自律的に動けるように考えます。まず、その人たちの当事者目線でなじみやすい言葉に変換をしながら、その人たちが納得できて動けるような表現を考える、自律的な活動に結びつけることを想定した意味合いも含めた通訳者を意図しました。
後でお話ししようと思っていたのですけれども、通訳者として医学的判断以外のところは言葉の前後が違っておりまして、医学的判断に関しては狭義の通訳者ですけれども、それ以外の業務は同様に行う意図でいました。
それと「リーダー」という言葉に関しては、私が第3回目にお話ししましたけれども、産業保健活動を行うときのリーダーはあくまでも産業保健活動全般を見渡し、どのような企画をもって優先順位づけしてプランニングができる立場の人がリーダーであって、それの多くは産業医になる場合もあるでしょうけれども、保健師がなる場合もあるのではないかということを、産医大の前学長の大久保先生がおっしゃっていた言葉もお借りしてお伝えしたつもりです。それも一つの考え方として、解釈をそろえていただくと良いのではないかと思います。
○相澤座長 なるほど、わかりました。
どうなのでしょうか、これは事務局で議事録からとった言葉なのですね。発言者が意図したことと必ずしも違うことはないということですね。
○塚本産業保健支援室長 まとめる際には精査をしていきたいと思います。
○相澤座長 わかりました。
恐らく、産業保健のスタッフの中では産業医がリーダーとなっているけれども、会社の中ではいろいろな職種がいて、会社の職員とか人事課といったところのコーディネーター的な役割もするといったことで、言葉の定義をしていくと大変なことになってしまいますけれども、意見を伺ったということにいたしましょう。
森委員、お願いします。
○森委員 ほかのところでもよろしいですか。
○相澤座長 はい。
○森委員 先ほどの有害業務か全ての事業場かという議論がありましたが、健康に影響を与える要因には、物理的要因とか化学的要因だけではなくて、ストレスとか、姿勢とか、さまざまな要因があります。有害業務というのは健康に与える影響の中で、一部のみを指していると理解しています。恐らく特殊健診が必要な業務という範囲なのではないかと思うのです。産業保健活動を行う際、有害業務を対象とする場合と、すべての事業場を対象とする場合には、本質的には差はないが、化学的要因や物理的要因など特定の有害要因がある職場には、そのリスクの程度や曝露形態には大きな差が存在します。
そのことを前提に職場巡視という話を考えたときに、決して事務職場の職場巡視が大事ではないわけではない。つまり、何がこの職場の中で労働者が曝露しているとか、どんな状態にあるかということを把握することにおいては、当然どのような職場でも有害業務があろうかなかろうがそれは大変重要なことだと思います。ただ、要因の曝露を把握する方法は、当然現場があって、そこで労働者が実際に曝露しているのであれば、現場に行ったり、データを見ないといけないし、それ以外の事務職場では違う方法で入手をしないといけない。そのことまで含めて職場巡視という概念を広げると、恐らく同じような考え方は必要だということになるので、先ほどの有害業務もそうですし、職場巡視も狭義で考えるのか、広い概念で考えるかによって、全ての事業場になるのか、特定の業務になるのかという違いが生じると思います。
○相澤座長 わかりました。
いかがでしょうか、甲田委員、お願いします。
○甲田委員 今の意見に非常に近いのかもしれないのですけれども、まとめ方として全ての事業場における期待される役割というのは、有害業務は法的なものと狭義のものにしないとごっちゃになって、何が言いたいかというと、ここに書いているものはかなり多くの事業所で共通されることなので1のほうに移動して、特に有害業務に関して、どんなスキルというかどんな能力が期待されるのかという形で絞ったほうがすっきりするような気はします。
○相澤座長 わかりました。
事務局としては、必ずしもこれにこだわらなくてもいいわけですね。
○武田労働衛生課長 この論点の柱立てでございますけれども、第1回目のときのまだ議論が始まる前に、ある意味でこういう論点があるのではないかということで、言ってみれば仮のような形で事務局からお示ししたものと思い出していただければと思っております。そういう意味では、これだけ御議論していただいた上で、今も御意見をいただきましたけれども、その中で論点の柱立ても含めて、また御検討していただくということは当然のことながらと考えております。
それから一つのことにつきまして、いろいろな部分から見る形にもなっていると思います。例えば1番目の最初の柱の部分のところと2番目、3番目の柱のところは、結局同じところを違う方向から見るということでもあると思いますので、そういうことも含めまして、柱立てをどういう論点にしていくのかということもあわせて御意見をいただければと考えております。
○相澤座長 今のお二人の意見も柱立てといいますか、進め方についても御議論していただいたわけですが、ほかに何か御意見はございませんでしょうか。
どうぞ、竹田委員、お願いします。
○竹田委員 今、柱立てのことについての御説明があったので、私がどこで発言していいかわからない内容があったので言わせていただきますけれども、きょうの道永先生、圓藤先生からの資料にもありましたように、投入時間をどうするかみたいなことを考えたほうがいいのではないかというのは非常に強く感じていて、3ページの下から3番目のところにも「月1回程度しか」と限定されているのですけれども、そのように限定する理由が何かという話です。それは今までの取り組みの中でそうしているだけであって、ここで産業医に期待される役割が何かが明確になると、それに必要な時間がどれぐらいかという話もとても大事なことなのではないかと思います。
もう一つ、これはここに入れるかどうかなのですけれども、産業医の負担は増加というか負担感があるという話も私がしましたが、その理由の一つにきょうのフランスの制度のお話を聞いてさらに納得したのですけれども、業務量や質の増加があるにもかかわらず、産業医のそれに対する報酬が見合ったものになっていないという感覚を言われる嘱託産業医の先生が非常に多いということです。要は月幾らで契約していて、業務量がふえているのに変わらない。産業医として契約しているから産業医の業務を果たしてくれというだけで、業務量はどんどんふえていく。
治療と職業生活の両立支援ももちろんやらなければいけないけれども、それをやるための主治医との連携の文書をいつ書くのか、クリニックに持って帰って書くのか、それに料金は発生するのか、みたいな心配をされる先生も少なからずいらっしゃるので、ここで議論するテーマかどうかが私はよくわからないですが、報酬のところについてもあわせて考えないと、負担感の話は永遠に解決されないのかなと思って、そこもつけ加えていただければと思います。
○相澤座長 なるほど。
どうぞ、三柴委員、お願いします。
○三柴委員 実は、法律の専門家の中では、産業医制度というと投入時間をどうするかという議論が実は出てくるのですけれども、これを強制的な制度として設けるのがいいかどうかというのは、なかなか難しいところだと思います。
それとの関連で申し上げると、あくまで一般論ですが、私は産業医の先生に、もう少し法と経営に関する知識については深めて頂いても良いのかなと感じています。確かに、安衛法やご自身の勤務先に係る公法に関する知識はお持ちの先生が多いと思うのですけれども、それらと民事責任とのかかわりについては、なかなか詳しくなりづらいように感じています。
例えば両立支援でもそうなのですけれども、安衛法だったら62条にその趣旨をくめる条文はある。民事に特化すれば、健康配慮とか解雇の回避、障害者雇用の公序という理屈が実はあるので、そういうものを考え合わせていくと、事業者としては、それなりの資質の産業医を投入せざるを得ない間接的な強制力が働いているはずなのです。だから、そういったことも考え合わせて、投入時間制度を強制的に枠づけるかどうかを要検討すべきかと思います。
○相澤座長 よろしいですか。
○竹田委員 御意見はよくわかるのですけれども、私の提案は論点にするという話であって、この中に位置づけようという話をしていませんので、論点として挙げるものという理解で発言させていただいていますのでつけ加えさせていただきます。
○相澤座長 ありがとうございます。
1と2について、ほかにいかがでしょうか。
増田委員、お願いします。
○増田委員 論点の追加という観点で、3ページの下から2つ目の黒丸のところで、専属産業医と臨床診療の傍ら産業医活動を行っている認定産業医と書かれていますが、ここを論点に挙げておくべきではないかと思います。先ほど、フランスでの産業医制度の御紹介がございましたが、あれは日本の専属産業医に相当する労働医がやっているからこそできるという前提がありますので、それをそのまま外挿することはできませんし、ここは決して認定産業医の先生の活動内容をどうこうと批評するつもりはないのですが、実態としてはすごくフットワークよく動ける産業医とそうでない産業医がいるというのは事実ですので、そのあたりを論点として入れて産業医の果たすべき役割について議論しないと、実態にそぐわないものができるのではないかと思いましたので御検討いただければと思います。
○相澤座長 嘱託産業医と専属産業医の違いといいますか、そこはいかがでしょうか。
甲田委員、お願いします。
○甲田委員 圓藤先生の御提案をつらつらと見ながらいろいろ考えているのですけれども、例えば先ほどのところが全体の事業所、2番目が有害な業務という形になっていますが、もちろん産業医の能力だとか、いろいろな研修を考えると、多分全てできるのだろうと思いますけれども、それがなかなかうまくいかないのが現状なわけです。
そういった産業医を、基本的に中小企業でいうと何人のところまで下げるかという議論も当然成り立つと思うのですけれども、例えばゼネラルな産業医という人たちが有害業務のある事業所、または小さな事業所で、どれだけ労働者に危険、健康な情報が把握できるのかというか、把握できる能力というか、そういうサービスと接することができる仕組みというか、そのときには極めてほかの職種の産業保健サービスを活用するだとか、共有することを考えたほうがいいのかな。
日本の法律で言えば、30人におろすという形で議論されていますけれども、それをうまくいかせるためには非常な力が必要だろうと思うのですが、そうではなくて、今の中でそういう産業保健サービスから得られる危険有害情報を活用できるような仕組みというか、そんなものを考えるのも一つの手なのかなという気はするのです。
○相澤座長 圓藤委員、お願いします。
○圓藤委員 論点とすれば、フランスとか私の提案は全ての事業場に対して、産業保健サービスができる体制を提供しましょうという考え方です。それが無理か無理でないかは考えましょうよということです。
次は事業場といっても、いろいろな事業場があって、有害業務ももちろんある。それに適切な指導ができる能力が全ての産業医に備わっているかどうか、それが備わっていなければならないのか。逆に言うと、私はその職種が苦手ですから別の先生に行ってもらいますというのもありと考えるならば、カバーできるのではないか。だから、誰もができないということはあり得ない。それは現実にフランスでもやられているし、日本でもできるというのが論点です。
3つ目に専属産業医でないとできないのか、嘱託では無理なのかの論点です。フランスは専属産業医という形でもって分けていった。ただ、日本の場合は専属産業医もいますが、嘱託産業医の果たす役割は今まで非常に大きかった。それを評価するのかしないのか。私は評価する立場で、今後も嘱託産業医の先生方のスキルを活用していきたいという論点にしておきたいと思っています。
○相澤座長 どうぞ。
○甲田委員 同じようなことを言っているのか、違うのかよくわからないのですけれども、基本的に嘱託産業医の方々がいろいろな産業保健サービスを活用できるような仕組みにできないかなというか、嘱託産業医の方々の能力を上げていくだとか、先ほど言ったように安衛法で決められている全ての仕事をやっていただく。これだけ仕事がふえていく中で、先ほどの話だと負担感などもあるわけですし、教育体制だとか研修体制も当然あるわけです。そういうことを考えてくると、もうちょっと嘱託産業医の先生方がいろいろな産業保健サービスを利用あるいは活用、または接することによって、労働者の産業保健サービスが充実するような方向という形で考えることも可能性としてはあるのではないかという提案です。
○圓藤委員 私も賛成です。
できていなかったけれども、こういう制度になって新たに学習した、研修を受けた、それでできるようになったということの繰り返しでここ20~30年はやってきたわけです。ストレスチェック制度ができて、こんなことができるのかと、ここ数年間誰もが勉強してきたと思うのです。そうすると、私は非常に楽観的に考えている。だから、必要なら研修機会を設けていくことによって可能だと判断しています。
○相澤座長 研修と外部の機関を利用してやる、両方でやったほうがいいかもしれません。ありがとうございます。
どうぞ、三柴委員、お願いします。
○三柴委員 2のところの下にある2つ目の黒丸は、たしか1回目の検討会の際に森先生がおっしゃったことだと記憶しているのですけれども、私も改めて賛同させていただきたいと思います。
今、圓藤先生が全ての事業場に産業保健サービスを行き渡せることが最終目的だとおっしゃられた。このご意見にも賛同させていただくのですけれども、現状、小規模事業場では健診等は何とかやっているが、それ以後の措置、医師への意見聴取であったり、事後措置までなかなか結びつかないということです。でも、嘱託産業医の先生方も、お忙しい中で関与しておられるという状況を踏まえて現実ベースで考えていくと、嘱託と専属の先生の仕事のありようの最終目標は一緒なのだけれども、特に嘱託の先生の場合、まずは健診や長時間労働面接、そしてその後の事後措置を確保して、一歩ずつ先へ進むというところが出発点になるのかなと思います。
○相澤座長 ベースになる仕事とプラスということですね。
森委員、お願いします。
○森委員 50人未満の議論をするときに、全ての労働者に産業保健サービスをというのは世界の方向なので、これをどうやって実現していくかはとても重要だと思うのです。
そのときに、産業医選任も一つの選択肢だと思います。しかし、少なくとも月1回の職場巡視をかけたまま、10人のところで産業医と言っていたらそれは無理なので、そこは多分柔軟にしたということも前提にする必要があります。現行の法令でも一般健康診断の事後措置などで事業者は医師の意見をきちんと聞かないといけないと義務化されているにもかかわらず、実施されていないところが多い。実施率が20%程度ということをどうするかがまず重要で、ある意味でちゃんと遵法しましょうという話だと思います。
ただ、意見を言う医師の質に関する議論が併せて必要で、当然産業医の資格を持っている人が望ましいという話にすれば、一定の質の確保が可能です。さらに踏み込んで産業医選任とするか、事後措置業務を実質化するかを比較した場合、産業医なのか産業医でないかの違いは、法律上の勧告権限といった話が残るわけです。そうすると、例えば段階的にそこを実質化して、産業医選任なしでも特定の先生にやってもらうことによって産業保健サービスがきちんとできるのか、医師にさらに勧告権限を持たせないと実は会社が動かないのかということが一度やってみるというワンクッションを置くということも、それはそれであり得るかなと思います。すでに法令で義務になっていることを、まずしっかりやってもらえるような方策も、当面の産業保健サービスを全ての人にという目標になりえると思っています。
○相澤座長 わかりました。
どうぞ、川上委員。
○川上委員 森先生の案は確かによい考えのお一つだと私も思いますが、産業医機能を考えると、今は法令で決まっていて、小規模企業でも決まっている医師の役割は限定されたものです。助言、勧告もそうですが、その事業者の産業保健の状況全体を見て、そして、労使と協調して、そこで行われる労働安全衛生のアクションを動かすということにはほど遠いような印象があるので、少しその辺はワンステップととるのであれば、その先を考えたプランの中で位置づけていただきたいという感じはします。
○森委員 恐らくこれは30人で切ってもまた同じで、1人まで行うかという話になっていくので、最終的には1人の人に産業保健サービスをするという、どこかで現実的で段階的な発展が必要だと思ってお話ししたということです。いろいろな選択肢があり得るということでいかがですか。
○相澤座長 どうぞ、圓藤委員、お願いします。
○圓藤委員 その点は、鈴木先生にお聞きしたほうがいいのではないか。フランスでは1人を雇用している場合でもサービスを提供できる仕組みをつくられていますよね。それがうまく機能しているのだと、すなわちその事業所まで見ているのだという実態があると思うのです。そういうものを参考にしていくとことが、私は大きいのではないかと思っています。
○鈴木准教授 ありがとうございます。
その点で申し上げますと、先ほど申し上げましたとおり、企業が共同で出資をして医療機関をつくって、そこからサービスをもらうという建前をフランスはとっております。そうすると、従業員が1人の企業でも労働者の数の分だけの出資を共同保健機関に入れれば、そこから産業保健サービスを漏れなく受けることができる。そういう形になっているので参考にはなるのではないかと思います。
○相澤座長 どうぞ、三柴委員。
○三柴委員 産業保健ですので、政策的にも実務的にも恐らくは1次予防にどう持っていくかということが重要なのだろうと思います。もちろん産業保健の1次予防と人事、経営マターはどこで分けるかという難しい問題が出てくるのですけれども、仮に嘱託の先生に関与していただく職場であっても業務についての情報は重要になってくる。かといって、お忙しい方々なので、全て自分の足で拾っていただくのは現実的でない。そうなると、まずは間接的な情報にとどまるかもしれないけれども、それを嘱託の先生にどうお伝えするかの工夫が求められるように思います。
○相澤座長 そうしますと、1と2については、時間の関係で進みたいと思うのですけれども、これに追加することはございませんでしょうか。
○川上委員 この論点がどのぐらい生きてくるのかがわからないので、一応気になる点で1点だけ御提案をと思って、下から6番目のところにメンタルヘルスへのかかわりが書いてあって「コミュニケーター的な役割」になっているのですけれども、産業医の役割は必ずしもコミュニケーター、つまり、こちらとこちらをつなぐだけではなくて、もっとケースワーク的なあるいは医学的に基づいた判断なので、どなたがおっしゃったかはわかりませんが、「コミュニケーター的な役割もある」ぐらいにしておいていただくとありがたいと思います。
○相澤委員 役割もある。言葉の定義はまた難しいですけれども、「ある」ということで訂正させていただきます。ほかはよろしいでしょうか。
それでは、4ページの3で、先ほども少し御議論がありましたけれども、ほかの医師あるいは産業保健スタッフ、あるいは労働衛生管理の実務に当たる者がいる場合に、産業医が担うべき役割は何かというところで丸が幾つかございますが、特にチーム体制あるいは就業上の措置といったことで、どういうふうにそこのチームワークを組んでいくかということで御議論していただいたことをまとめてあります。これについてはいかがでしょうか、よろしいですか。
どうぞ。
○井伊委員 先ほど柱立ての話がありましたが、圓藤先生の御丁寧な御提案の一つ一つを大変納得感のある内容だと思って私は拝聴いたしまして、15ページの産業医の職務、産業保健専門職の職務で、多岐にわたる求められる労働衛生管理の内容があって、産業保健師、看護師を含むその他の専門の方もいるわけですけれども、それを産業保健チームとして遂行して、産業医がその代表として責務を果たすという解釈は、これまでの議論でいろいろ出されたことからしても、この御提案でかなりいろいろなことが語られると思うのです。
この柱立てですと、求められる労働衛生管理があって、そして、いきなりそれを産業医が何の役割をとるかがあって、4ページの3ですと、たまたま誰かスタッフがいればどうするかという流れなのですけれども、そもそもがそういったチームで行うにはどうあればいいかという柱立てにするほうが、今後いろいろ機能していくためには大事なのではないかと思います。
○相澤座長 ある場合ではなくて、それをあるようにするということですね。
それは大神委員、どうですか。
○大神委員 実は、この後のお話ししようと思っていたのですが、これまでの議論の中で保健師の機能が狭義で解釈されて話が進んでいる感じがしました。そこでこのような書き方になったのかもしれませんが、この後で改めて保健師にはどういう機能があって、それをどのように組み込むかということも考えていただければと思っています。後程お話しさせていただこうと思います。
○相澤座長 わかりました。
3については、今の御意見がございましたけれども、後ほど御意見をいただくということで、ほかにはよろしいでしょうか。
どうぞ、道永委員、お願いします。
○道永委員 同じなのですけれども、3となると、これはもう大企業、かなり規模の大きいところしかないので、これだけを特出しして論点とするのはそぐわないような気がします。この後、チームのこととかほかの産業保健スタッフというものがあるので、すぐに思いつかないのですけれども、もう少し違う論点にしたほうがいい。ここだけを特出するのは妙な気がします。内容的には、別にほかのチームのリーダーとなるべきだというのと、産業保健スタッフを活用するみたいなことが書いてあるので、この論点はほかに移動したほうがいいのかなと思っています。
○相澤座長 経営者と対峙するとか。
どうぞ。
○三柴委員 ちょっと事務局の方に教えて頂きたいのですけれども、小規模なところの産業医の共同選任の仕組みは、方向性としてありなのでしょうか。
○塚本産業保健支援室長 従前は共同選任を行った場合の助成金制度がございましたが、例えば今年のストレスチェックの助成金のでは、共同選任を要件に助成していないところです。
○三柴委員 もし、ありというのがあり得るという意味だとすれば、ここの柱立てについても、共同サービスをする機関の中での役割として捉えることはできるかなと思ったのです。ご返答、ありがとうございました。
○相澤座長 どうぞ、圓藤委員、お願いします。
○圓藤委員 三柴先生の御提案は、共同選任もありかなしかの質問だったと思います。答えられたほうは行政の補助金制度として廃止しましたという話なのです。ちょっとずれていませんか。だから、補助金制度を抜きにして、共同選任事業は今後あってもいいのではないかというのは、ここの場で議論していいのではないかと思うのです。
○三柴委員 頂いたお答えにずれが生じたということではありませんが、私のお尋ねした趣旨は圓藤先生のおっしゃるとおりです。
○相澤座長 どうぞ、天木委員、お願いします。
○天木委員 今のお話は共同選任に補助金ではなくて、個別でも出しますと変わったのですよね。単一事業場でもちゃんと補助する。ですから、そこのニュアンスがちょっと違う。
○圓藤委員 私も間違っていました。
○相澤座長 森委員。
○森委員 ほかの職種まで活用するということは、確かに小さい事業場では難しいということがあります。一方で、サービスを提供する側だと日本でも労働衛生機関があって、先ほどありましたが、職域健康診断の半分は労働衛生機関などの専業で産業保健サービスや健診を行っているところが提供している。このことを考えると、労働衛生機関の機能をしっかり高め、健康診断に付随して多職種のサービスを受けられる仕組みを日本でもつくれるのではないかと思います。労働衛生機関の活用、または労働衛生機関の意識改革もあわせてやっていかないといけないのだろうと思います。
○相澤座長 甲田委員、お願いします。
○甲田委員 3の位置づけの話なのですけれども、この書き方で私は余り大企業をイメージしなくてもいいのではないかと思っています。なぜならば産業医がいて、がんになった方の主治医と情報をやりとりするだとか、他の外部機関と情報をやりとりするということを想定しても、やはり重要なことなのではないかと実は思っております。ですから、先ほど言ったのは産業医がいろいろな産業保健サービス、情報を活用するというか、自分ではとり切れない産業保健サービスを活用するスタンスで向かってほしいという意味合いから、ここのところは、論点としてはあってもいいというか重要なのではないかという気はします。
○相澤座長 どうぞ、川上委員。
○川上委員 今の甲田先生の部分も、3の論点を変えてしまって、「チームとしての産業保健における産業医の役割」にしたら今の議論と割とよく合っているような気がします。
○相澤座長 そうしますと、道永委員はこれをとるということですよね。
○道永委員 私が考えたのは、産保センターは非常に産業保健サービスが充実しているはずなので、そういったものを活用してほしいということもその論点の中に入れていただければ全然オーケーです。
○相澤座長 なるほど、どうぞ、天木委員、お願いします。
○天木委員 今のお話は、私も後のほうで出てくるのでずっと我慢して待っていたのですけれども、要するに50人未満の事業場に関しては、地域産業保健センターに相談窓口がありますので、そちらの利用率が非常に低いところが大きな問題で、地域産業保健センター自体はもちろん保健師を有しているところもありますし、東京では、その上の組織である東京産業保健総合支援センターにはきちんとした産業関係の保健師もいますし、そういったチームでちゃんと対処できる体制はできているのだと思います。それは皆さんのほうがずっと御存じだと思いますけれども、それをうまく利用できないといいますか、認知度が低いところが問題なのではないかと思います。逆に50人から100人はどうかというと、必ずしもそういったスタッフはそろえられないことも多いと思いますので、その辺ももうちょっと地産保を広げたり、そういう方針をとってもいいのではないかと考えております。
以上です。
○相澤座長 地産保の利用というのはすごく低いわけですよね。それは認知度だけなのか、規模の問題なのか、予算の問題なのかはなかなか難しいところがあります。
どうぞ、竹田委員。
○竹田委員 地域産業保健センターの話が出ましたので、利用の低さの一つの要因にもちろん認知度があると思うのですけれども、私もその運営に携わっていて思うのは、広く使いやすい制度ではないと思うのです。利用の回数制限がありますから一事業所が何度も使えないとなると、例えばストレスチェックの面接指導も今年から始まるのですけれども、2回までという制限はたしかあったと思います。そうすると、2人までしか面接ができないとか、その前に1回相談してしまうと1回しか面接指導に使えないという制約がかなりある中で運用されているというのもあります。あとは予算の話もありますから、広く広報して来ていただいたら予算を超えてしまうのではないかというバランスの中で運営しているというのもあるので、もしその辺を活用するのであれば、地域産業保健センターの活用全体をしっかり議論してつくっていかないといけないと思っています。
○天木委員 私も全く同感です。
私も東京産業保健総合支援センターの運営主幹をやっている関係で、都内の18の地産保の運営主幹を見ているわけですけれども、やはり予算の話はよく出てきて、先ほどのお話にあったストレスチェックは1事業所は2回までとか、こんなものができるのかという意見がよく出てきます。現実的には運営が変わってからは一応予算はあるけれども、もうちょっと頑張っていたら、それなりの予算をつけますという形にはなってきているようなのですけれども、それでもまだ予算が足りないのではないかと思っております。
以上です。
○相澤座長 よろしいですか、地産保は後ほどまた出てくると思いますが、3の産業保健スタッフの中での産業医が担うべき役割のところは少し言葉の修正が必要だということでございます。
事務局、そういうことでいいですか。
○塚本産業保健支援室長 はい。
○相澤座長 それでは、4に移らせていただきます。「現在は有害業務の有無にかかわらず一律の基準となっている、産業医や衛生管理者の職場巡視のあり方についてはどう考えるか」と。
職場巡視を特に事務職場と同じようにやっているわけですが、それの時間がかなり健康管理の時間に食い込んでしまうという御意見もあったと思いますけれども、これについてはいかがでしょうか。
どうぞ、森委員、お願いします。
○森委員 先ほどもお話ししましたが、この議論は職場巡視を何のためにやるのかという目的に関わることだと思います。リスクアセスメントが一般的な時代になってくると、問題点を指摘するだけではなくて、例えば職務適性の評価をするとか、いろいろな目的のために産業医が現場を把握したり理解をしたりするための職場巡視も極めて重要だと思います。そう考えると、先ほども同じ趣旨の発言をさせていただきましたが、営業職の職場巡視は何だとか、小売業の職場巡視は何だという話を議論するには、職場巡視の概念を広げることが必要だと思います。どのような職場でも、産業医が現場とか働き方すら理解できないから適正配置の判断ができないという話になってくるのです。
有害業務のある職場では、狭義の職場巡視が必要でしたが、それ以外の事業所でも、例えば会社の業務が変わったら産業医に事業者が知らせて把握させるとか、そのような概念を広げる議論をすれば、どんな業種でも職場の状況を把握するという目的の業務の重要性が低いという話には絶対にならないと思います。そのような考え方の整理ができないかと思います。
○相澤座長 いかがでしょうか、どうぞ、竹田委員。
○竹田委員 森先生の言われたことと同じ内容かもしれないですけれども、職場巡視はどういう目的でやって、どういう成果が得られるのかという共通の認識がない中でフレキシビリティーと言っていると、もしかしたらやらないでいい方向に動いてしまう可能性があるかと思います。ですから、そこをはっきりさせた上で、フレキシビリティーではなくて、必要性に応じた職場巡視の回数をそれぞれ設定していくみたいな話にするのであればよく理解できるのですけれども、他の事項が優先順位が高いということになると、巡視の優先順位が低い理由は何なのかというものを明確にしないといけないと思いますので、森先生の言われたとおりだと思います。どういう目的でやるか、何が得られるか、何を得るためにやるかかもしれないのですけれども、どういう成果を得るためにやるかということもはっきりさせる議論をした上で、その先に進んだほうがいいと私も思います。
○相澤座長 これは、5ページの1番目に書いてあります。
どうぞ、甲田委員。
○甲田委員 私は、事務職場より有害業務の工場のほうが多いので、職場巡視に行くと、得られる情報は事業者が隠しても産業医がいろいろな能力を持っている、引き出せるということがあります。ただ、例えばメンタルヘルスだとか長時間労働だと、なかなか見てもわからないという話になってくると、そういう情報を何かの形で引き出せれば多分いいのだろうと思うのです。現状だとそういう情報を得られるというか、開示するというか、引っ張り出せるようなものが余りないので、そうすると、事務職場だったら職場巡視の優先順位が下がってしまう。行かなくても話を聞けばいいのではないかみたいな話になってくるので、そこを何らかの形で担保して、産業医がそういう労働者の働いている環境、または働き方と言ったらいいのですか、そんなものの情報は提供できて、判断できるようなチャンスがあることが非常に重要なのではないかという気はするのです。
○相澤座長 ありがとうございます。
これは、そんなに意見が違うところがないかと思いますので、ほかに追加することがございませんでしたらば、次に行かせていただきます。
どうぞ。
○川上委員 念のためですけれども、今みたいな事業者からもらった情報だけだと、少し腹落ちが悪いので、せめて衛生管理者の巡視の報告をいただくとか、そういうものも入れていただけたらと思います。
○相澤座長 ありがとうございます。
それでは、5ページの「3 医師以外の産業保健スタッフの役割について」ということでお願いいたしたいと思います。2と3を一緒にやりましょうか。
これは、大神委員からですね。
○大神委員 これまでお伝えしていたつもりだったのですが、断片的にお話ししていたので話がつながっていなかった懸念がなりました。保健師に関しての共有認識が少し違っていたように思いましたので、あらためて補完したいと思っております。
フランスの産業医制度のお話がありましたけれども、日本の保健師制度も非常に特殊なものです。何が特殊かというと、国際的に見ても動きとして非常に独自性のある活動と言われています。少し私見が入っていることも前提でお話を聞いていただけたらと思うのですが、昔は保健婦と言っていましたけれども、昭和16年にできた保健師の制度の保健師助産師看護師法の中では、保健師は「保健指導する者」と書いてあります。その保健指導が近年、治療域ではない有所見等の疾病性軽減だけに指導を行うといった非常に狭い意味に捉えられている印象を受けます。
私は、昔の保健師をたどっていって、なぜ「保健指導」という仕事の表現をしていたのかとお聞きしたことがあります。「診断、治療以外のものは全部保健指導になる」と説明を受けました。そのコミュニティー、集団の健康度を高めるために、新たな健康問題が出てこないように、出てきたときには対応できるように、病気を持っていたとしても生き抜けるようにというところにかかわってきたのが保健師というように聞いておりました。
今日の歴史の話で、参考資料の7ページのところに「産業医制度の変遷について」という昭和13年から平成27年までのものがありますけれども、保健師の歴史もこの折々に出てきておりました。産業にかかわる保健師の歴史なのですけれども、もともと保健師は旧厚生省が養成しておりましたので、これはざっくりした統計ですが各都道府県で80人看護師を養成したら、その上に20人ぐらいの保健師を養成する課程があった。そのような養成課程で長くやってきたのですけれども、平成になって以降、保健師教育を行う大学が急激に増えて、保健師の養成数が増えてきた背景があります。
一方で、保健師の圧倒的多くは行政に勤務していました。産業の場にも保健師はいて、労働安全衛生法の中に保健師を位置づけてもらうようにという動きを諸先輩方がしたという記録があります。ただ、そのときには保健師の数が圧倒的に少ないといった理由から、衛生管理者の資格を付与するから、それで産業の中で活動してくださいと、位置づけの明確化には至らなかったと書かれておりました。
そして、もう一つ、大きな転換期として、これは私も実際に働き始めて目の当たりにした実感を持った感触です。1996年に労働安全衛生法で産業医に関する法改正があったときに、産業医業務が非常に目に見える格好になったときに、あわせて保健師が健康診断後の事後措置の対応として努力義務になりました。初めて保健師が労働安全衛生法の中に載って諸先輩方は喜んだものの、逆にそれが健康診断の結果で有所見者の対応と狭い意味にとられてきた実態もあります。
私が何を申し上げたいかというと、私が考えているコーディネーターはただ繋ぐという役割だけではなくて、集団だったり、コミュニティーに責任を持って、自律的な健康度を高める動きのところに関与していた興味深い活動をしていた機能というものに今一度着眼して、全ての人に産業保健サービスを提供するところにぜひこの機能を活かせて明文化したものが欲しいと考えました。保健師の業務が狭い意味に理解されてきて、結果的に国民への不利益も出てくるのではないか、非常に危惧するところなのです。このような内容には触れられていないし、薄まってはいけないと思ったもので発言させていただきました。
○相澤座長 ありがとうございます。
この項目についてはいかがでしょうか。
どうぞ。
○川上委員 具体的な提案をされたらいいと思うのです。今の趣旨はよくわかりましたが、こうしましょうという御提案をされるといいと思います。
○大神委員 具体的な提案を控えさせていただいたのですけれども、具体的には、産業保健サービス全般を見渡せられる立場であれば、リーダーになってよいこともあるでしょうし、産業医業務の中の本当にミニマムで医師しかできないこと以外は保健師がかわりにやっても良いと思います。
そのときには、個別の対応だけでなく集団の対応をしっかりできるといった主旨のもの含まれます。
○相澤座長 いいですか。
○川上委員 文字情報に落としていただいてからまた出させていただきます。
○相澤座長 ほかに「3 医師以外の産業保健スタッフの役割について」で追加の項目はございませんでしょうか、よろしいですか。
どうぞ。
○塚本産業保健支援室長 今の御提案の件でお伺いしたいのですが、現行の保健師の方は衛生管理者になって活動する場面もあるのですが、衛生管理者ではなく、独自の保健師という別の資格というか位置づけを設けて、別の仕事を担うことになるという考えなのでしょうか。
○大神委員 衛生管理者の仕事をやってもよいのですし、もう少し膨らませたイメージ、保健師の機能の独自性を追加するといったイメージを考えました。
○塚本産業保健支援室長 例えば、今、衛生管理者もかなり広範に業務を行うことになっているのですが、どういう仕事が衛生管理者プラスアルファで保健師の方が独自に行う仕事になるのでしょうか。
○大神委員 私がコーディネーターと思っていたものとしては、地域の行政にも保健師はいますので、そのような地域と連携も含め、もう少し幅広いコーディネーター役割を考えます。
○相澤座長 いいですか。
どうぞ。
○三柴委員 1点だけ教えてください。
今も既に一部は定めがあるわけですが、仮に今後、法令の中に保健師に関する規定、つまり、もう少しその位置づけを明確化するような規定が新たに設けられたとして、法的には当然責任も伴うのですけれども、その点についてはどうお考えでしょうか。
つまり、安衛法を直接の根拠とした責任追及は難しいかもしれませんけれども、例えば産業医の方でも今は労働者から民事訴訟を起こされるような事態も起きているわけです。それに類するようなことが保健師の方に起きたとしても、そこは構わないのでしょうか。
○大神委員 そこは、責任を持ってやられるように教育していくということが必要だと思います。どういう場面設定をされているかによって違ってくると思うのです。
○三柴委員 例えば、産業医の方ならば、口頭のやりとりのレベルでも、一定の専門性があればこんなことを言わないだろうということを言ってしまったりすれば、訴えられたりもするし、要するに、直接メスを握っていないから訴えられないということではない。
○大神委員 もちろんそこは責任を持ってやるということを考えています。責任を持てる人がやるという考え方です。
○井伊委員 現行でも、産業領域ではありませんけれども、例えば医師の指示で看護師が何らかの行為をやって、その場合にも実施責任が看護師に問われますので、保健師でも同じことだと思います。
○相澤座長 教育的には、保健師さんの中で産業保健をやる人を育てているわけですね。いわゆる専門的な知識を持たれるようなことは産業衛生学会で教育をしているということですか。
○大神委員 産業衛生学会でも教育はございますし、私どもの会でも教育はしております。
○森委員 先ほど、衛生管理者というところでもいいし、それ以外でもという話があったと思いますが、衛生管理者は、必ずしも事業者から独立性が担保されているわけではありません。そのほうが働きやすいのか、産業医に近いところで独立性を持ったほうが働きやすいのかについて、どちらでもいいということにはせず、一方だと何を失って、もう一方だと何かを得てということをきちんと整理していっていただいたほうがいいかと思います。
○大神委員 言葉が足りなくて失礼いたしました。
曖昧な言い回しになっていたかもしれませんが、私が想定したのは「衛生管理者として」となると、恐らく事業者の意向を受けて動く点と医療職としての判断が拮抗する場面が時にある場合を懸念しました。あくまでも衛生管理者の機能とか衛生管理者としての造詣の部分で、立ち位置は衛生管理者と同じというより、衛生管理者の職務といった内容をある程度持つ意味合いでお伝えしました。
○相澤座長 どうぞ。
○甲田委員 今の議論を聞いた印象なのですけれども、ここは医師以外の産業保健スタッフの役割についてという切り口ですので、法律にどう落とし込むかという話はかなり先のような感じがするのです。それぞれの多職種の持っている能力というかサービスというものをどう具現化すると産業保健サービスにつながってきて、それが全体の産業保健サービスの中でどう活用できるようになってくるのかというところをまずは出していく。そうでないと、今出たような衛生管理者はどちらかについて中立なのかという議論で、どこまでできるのかというところがかなり先に出てしまって、まず、足元をきれいにしないと議論できないみたいな話になってくるので、持っている能力をどこまで広げていけるのか。また、逆に言うと、きょうは産業医のあり方の検討会ですから、そういう能力を産業医がどうやって活用できるのかという形で議論を絞ったほうがいいような気がするのです。
○相澤座長 本当は大事なところなのですけれども、5時まであと20分です。
どうぞ、圓藤委員、お願いします。
○圓藤委員 先ほど、事務局から衛生管理者と保健師の関係とおっしゃられた。衛生管理者の場合は必ずしも看護師、保健師ではありませんので、健康情報を取り扱うのは非常に困難であると思われます。それに対して、保健師、看護師は既に法律で認められた健康情報を取り扱っていい、また、保健指導することは資格として認められているということでおのずと範囲は広い。法律的に保健師は衛生管理者を包括すると私は思うので、衛生管理者の業務は保健師が全て行っていいということは成り立つのではないか。
それ以外に、普通の衛生管理者ができない部分は、先ほど言った健康情報を取り扱うこと、保健指導をすること、プラスでまだあると思うのですが、そういうことのスキルを大神先生に恐らく次回整理していただけると思うので、そういうスキルを活用して、保健師の職務として明確化していくという作業はいいのではないかと思っております。
○大神委員 ありがとうございます。
○相澤座長 これについて、よろしいでしょうか。
それでは、先ほどもいろいろ御意見がありましたけれども、6ページの「4 小規模事業場における労働衛生管理の強化について」です。特に産業医選任義務のない50人未満の事業場の労働衛生管理の問題点と充実をどういうふうに図るかということでございます。先ほども、地産保あるいは日本医師会からの30人以上の事業所に産業医を設置するといった御意見もございましたけれども、ここに挙げられているところ以外に何か追加がございましたらばお願いしたいと思います。1がその問題点、2が法定事項、3が産業医、衛生管理者、衛生委員会等の設置基準のあり方についてというところでございます。いかがでしょうか。
どうぞ、土肥委員、お願いします。
○土肥委員 小規模事業所の労働衛生管理の問題というよりは仕組みとして、ある一定の役職を選任することによって業務をさせるのか、先ほどありました労働衛生機関によってさせるのか。要するに、これは一方的に決めることではなくて選択して、ある一定の規模であれば産業医のほうがいいのかもしれません。30人以上であれば既に42%の事業所で産業医が選任されているのであれば、それでよしでありますし、そこからまだ下に下げていく場合に、選任よりはいろいろな仕組みをつくったほうがいいというのであれば、もともと事業者が使いやすい仕組みがあることが重要で、それに法律が担保されていて、さらに最後にできないところに無料で何かのサービスが行くという仕組みがあるわけですから、小さな事業所に対して、一つの手法だけで産業保健サービスを提供するのではなくて、複数の手法を持っていて、それを法律で網をかけるという考え方をしたほうがたくさんのサービスが提供できるのではないか。その中でチームという考え方ができたり、ほかの産業医がリーダーであったりという考え方が出てくるのではないかと思います。
以上です。
○相澤座長 少なくとも医師であって、ある程度の産業医学のことについている医師の方にお願いする。どこの所属であってもいいということですか。
○土肥委員 労働衛生機関のようにお願いするのであったとしても、それは産業医が選任されているのと同等とみなしてしまう。ある一定規模以下のところはどちらを選択しても構わないのではないか。ある一定規模のところは、今、せっかく機能している産業医という制度以外の職種による選任制度が機能しているのであれば、それは今までどおりでいいと思うということです。
○相澤座長 地域の医師とかそういった。
○土肥委員 それはもちろん。
○相澤座長 そういう御意見ですが、いかがでしょうか。
どうぞ、増田委員。
○増田委員 特に新規でつけ足すところはないのですが、ここの論点は私が第2回の検討会で結構申し上げた内容だと思います。
圓藤先生に今回御提示していただいた資料の24枚目に、「50人未満の事業場のすべてに産業医を選任するには」と、6個ぐらい案を御提示いただいています。この中のうちのどれか1つでやると決めるのではなくて、こういったやり方の中から事業者の裁量で実態に即したやりやすい手法で実施することができるようにする。土肥先生が先ほどおっしゃったものと同じなのですが、そのような形でまとめていただけたらと思います。
○相澤座長 圓藤委員、よろしいですか。
○圓藤委員 企業の形態はさまざまですので、1から6までのどれが適切かは企業によるだろう。だから、それは企業に選んでいただくほうがいいのではないか。うちの会社はこのやり方が一番いいというものを考えていただいたらいいのではないか。例えば東京の専属産業医が大阪の100人程度の事業所の産業医を兼ねるということがあっても、対応することができればそれもよしだろう。東京の先生がどうして大阪の人を見られるのかということには、中身を見てできておればいいだろう。ただし、年1回ぐらいは行ってよねというのはありだと思うのです。
それから、50人未満に関してはもっと柔軟にしないことには、硬直化した制度であれば、限られた資源を全ての事業場に適用するというのは厳しいと思いますので、いろいろな手を使わないことには難しいだろうと考えております。
○相澤座長 ありがとうございます。
これは、明石委員はよろしいですか。
○明石委員 貴重な御提案なのですが、内容については精査をして、それぞれの事業場で使いやすいようにすべきです。そもそも50人未満の事業場の全てに産業医を選任するというのは、すぐにできる話ではありません。それを実現するには、いろいろな方策を一つ一つ考えていかないといけないのではないでしょうか。
○相澤座長 ありがとうございます。
ほかはいかがでしょうか、よろしいでしょうか。
どうぞ、お願いします。
○甲田委員 今の資料の中で、24ページのうちの「1.近隣の医師の中から産業医を選任する」というのはどういうことなのでしょうか。近隣の産業医から選任したらどうかという意図なのでしょうか。
○圓藤委員 例えば50人を超えているが、それほど大きくない事業場、しかも、単独の事業場の場合の多くは近くの開業医さんとかから嘱託産業医になっていただいて、今も産業保健サービスを提供していただいていると思うのです。その制度を50人以下であってもやっていただければいいので、何も難しくはない、その延長であると考えていただいたらいいと思います。
○甲田委員 特別なやり方をしようよということではないということですね。
○圓藤委員 特別なやり方というのは、月1回出務というのを少し柔軟にしましょうということでもって対応すれば、30人以上の事業所に関しては、それは実現可能だと日本医師会はおっしゃっておられるので、即いくのではないかと考えております。
○甲田委員 ありがとうございます。
○相澤座長 どうぞ、森委員、お願いします。
○森委員 選択肢がいろいろあるというのは賛成なのですが、先ほど圓藤先生もおっしゃったように大阪から東京へ行ってもいいだろうということも含めて、結果的に何ができていればいいか、全ての労働者がどういう形のサービスを受けられていればいいかといった目標を明確にすることがまず必要ではないかと思います。仕事を把握している医師がちゃんと健康診断の結果を見て就業上何が必要か判断する、それができるための要件というか、達成すべきものが何なのかということが明確であれば、選択肢がいろいろあっても、その選択肢が機能しているのかどうかというのは評価できるのではないかと思います。そのような議論がきちんとされると50人未満について「こうしましょう」という話を合意しやすいのではないかと思います。
○相澤座長 ありがとうございます。
ほかはいかがですか、よろしいでしょうか。
大分、時間が迫っておりますが、もう一つございますので、後でまとめてでも結構でございます。
どうぞ。
○塚本産業保健支援室長 2の法定事項の確実な実施の方策のところを若干掘り下げていただけるとありがたいです。
○相澤座長 「2 法定事項(健康診断及び事後措置、長時間労働の面接指導)の確実な実施のための方策として何が考えられるか」ですね。
どうぞ。
○甲田委員 質問というか、例えば健康診断、事後措置、長時間労働の面接指導もそうなのですけれども、実際問題よく聞くのは、面接はするのだけれども、本人と話していて、それ以外の必要な情報がなかなか得られないというかとれないということで、要するに、面接しても適切なアドバイスが要はできないという、苦情なのか、困ったことなのかよく聞くのです。
そうなってくると、先ほどの話ではないのですけれども、職場巡視以外のいろいろな情報をとれるという形で、先ほど、川上先生から衛生管理者も入れたほうがいいのではないかという話があったのですけれども、その人の働き方等に関してもうちょっと積極的に情報がとれるような仕組みがあったほうが、多分この辺の面接指導などが非常に生きてくるのではないかという印象は持っているのです。これは長時間労働だけではなくて、ストレスチェックだとか、基本的に持病があったりだとか、その働き方も含めて考える。その辺のところをもうちょっとアシストしていただけるような仕組みがあったほうがいいのではないかという印象を持っています。
○相澤座長 どうぞ、森委員。
○森委員 以前も発言したかと思うのですけれども、せっかく健康診断を全員が受けていて、それを実施している労働衛生機関の医師という資源があるので、健康診断を行った労働衛生機関の医師が事後措置までできないだろうとかと考え、労働衛生機関の医師にインタビュー調査を行ったことがあります。そのときに結果的にかなり産業保健分野の専門性が高い労働衛生機関の産業医であっても、事業場を1回も見ていないのに事後措置はできないとはっきり言っていました。裏返せば、今の甲田先生のお話と一緒なのですけれども、職場の状態を年に何回かわかりませんが、それを把握できていることとそのような法律事項が守られていることの両方があって初めて意味があるのではないかと思います。そうでなければ、結果的に何をやったかわからないし、そのような努力をしようとする医師も出てこないのではないかと思います。先ほどの話だとそこまで含めて要件とすべきかと思っています。
○相澤座長 職場巡視は問題点を見つけるのではなくて、働いている環境を1回見ておくための職場巡視ということですね。
三柴委員、どうぞ。
○三柴委員 法律論者としての私の理解では、事後措置は非常に絶妙な制度で、結局、業務管理なりにかかわってくる、つまり人事労務にかかわってくる面もあるのだけれども、あくまで健康管理の枠内でできるという意味で、非常に絶妙な制度だと思うのです。ですから、そこをまず担保する。そのために業務のあり方、組織のあり方など、必要な情報がきちんと事業者なり、適任な方から担当医に提供される仕組みがあるといいと思います。ありがとうございます。
○相澤座長 圓藤委員、お願いします。
○圓藤委員 先ほどの長時間労働に関しては、参考資料の35ページに労働安全衛生規則が載っております。「一週間当たり四十時間を超えて労働させた場合におけるその超えた時間が一月当たり百時間を超え、かつ、疲労の蓄積が認められる者であることとする」と書いてあります。一般の企業、特に大きな企業は、前半のその超えた時間が1カ月当たり100時間を超えた場合に面接指導をしております。そして、その人の疲労が蓄積しているかどうかを判断いたします。
ところが、この問題は「かつ」ですから、そうでないところは100時間を超えているのだけれども、本人が疲労が蓄積していると言っていないから面接指導に持っていっていないのだという形で、結果的に産業医あるいは産業医が選任されていない事業者においては地産保に渡していないということがあります。ですから、こういうところで現実と制度は違うのと、重要なのは100時間を超えていますか、そこの労働者数は何人ですかというのを調査する必要がある。その中で疲労が蓄積はしているのは何人ですか、それでまた面接したのは何人ですかというのが明らかであれば、大企業であろうが、零細企業であろうが、同じようにできます。現実はこの文言をどう解釈するかによってがらっと違っているというのが現状ではないでしょうか。
○相澤座長 どうぞ、明石委員。
○明石委員 今の点は「申し入れる」という行為が必要なので、それは一旦労働者が担保する話ですよね。そこは一つの山があります。
もう一つ、先ほどの話ですが、本人がどうあるかを産業者に訴えかけないと、それは事業者だけが一方的に情報を出してわかる話でもないので、「申し出」というのはそういう話なのだと、私は思っています。
○圓藤委員 おっしゃるとおりでございまして、身近に産業医がおれば申し出ることも簡単にできますし、また、申し出がなくても会社の方針として産業医面談をしましょうとなればすんなりいくのですが、身近に産業医がいないような50人未満の事業所の場合、申し出るというのはどこにどう申し込めばいいのだという戸惑いからスタートしていますので、結果的におっしゃったとおりになっているのではないかと思っております。
○明石委員 あと、最近、長時間労働が問題になっていまして、国を挙げて長時間労働を減らそうという運動があります。企業の側も労働時間を見ながら長時間になる前から注意喚起をしているところがふえていると思っています。
○相澤座長 どうぞ。
○甲田委員 小規模事業場に対してはいろいろな方法がありましたけれども、現在は地産保活動で小規模事業場の産業保健を担保しているのだろうと思うのですけれども、現実的に1%ぐらいしか利用されていないということで、これを例えば50%なり、理想で100%にしようと思ったら、現状では地産保が全く役に立たないと言ったら語弊がありますけれども、そうだろうなと思うのです。
実際、私も地産保のコーディネーターをかつてしていたことがあって、私は千葉の船橋なのですけれども、千葉の中でも9センターあって、健康診断に事業者が相談に来るときに、ある一つのセンターでは、事後措置について意見を全部書いて渡している。あるところでは、現場も知らないでそんな無責任なことは書けないから、これはしない。このように2つのやり方があって、その時点では私自身も余り詳しいことがわからなかったのですけれども、現実にはそういう判断というのが両方あり得るのではないかと思うのです。そのあたりも明確にしていかないと難しいのではないかと思います。ただし、そういう中でも、長時間労働による面談は報告様式が形として決められていたので、その中で事後措置とか幾つか書けることがあって、それはかなり書かれているのではないかと理解しています。
地産保については大いに利用していただきたいと思いますし、地産保がどうしたら使いやすくなるか。先ほど、竹田委員も言われていましたけれども、そういうことは大いに議論していただければと思います。
○相澤座長 ありがとうございます。
どうぞ。
○竹田委員 今の健康診断の事後措置とか面接指導の話ですと、地域産業保健センターの相談を受けている立場で実際にそれをやっていて思うのは、意見を出すということはします。でも、その後にどうなったかがわからないという状態があります。産業医の場合は必ず事後措置まで見られるのですけれども、就業区分判定だけで終わるという状態であると、本当に意見が尊重されているかどうかがわからないです。
産業医として意見を出したものが尊重されないと、もしかしたら勧告にまで至る可能性があるのですが、そういった違いがある中で産業医ではない医師が意見を出すときに、どうやってその意見が尊重されていくのか、後をどうやって追っかけていくのかというところもあわせて考えておかないと、判断する医師は無力感が出てきますし、あるいはやりたくないとかやらないという方向に行きやすいのではないかと思いますので、そこも議論していただければと思います。
○相澤座長 それは大事なところですね。罰則規定とかがあればきちんとなるのでしょう。
○塚本産業保健支援室長 医師の意見のところは義務にはなっていますが、罰則はないところです。
○相澤座長 ありがとうございました。よろしいでしょうか。
もう一つ、最後に「5 事業者と産業医の関係について」と「6 その他」でございますが、特にございましたらばお願いしたいと思います。あと2分ございます。よろしいでしょうか。
森委員。
○森委員 一つだけ、先ほど産業医以外の職種のところで言ってもよかったのですが、今回、化学物質のリスクアセスメントが義務化されて、多くの事業場でコントロール・バンディングを入れています。その際、最後のところで専門家の判断が必要となったとき、日本ではその専門家の受け皿がほとんどなく、専門にやっている産業医でもなかなか厳しいという状況です。今いる人材をどう使うかというだけでなく、有害要因の自主管理ができる人材を育てないと、自主管理の方向性が成り立たないのではないかと危惧しています。そのような職種として、既に日測協などでオキュペイショナルハイジニストの養成はしていいますが、それだけでは十分ではなく、真剣に考えていかないといけない職種だと思いますので一言言わせていただきました。
○相澤座長 ありがとうございます。大変大事な御指摘だと思います。ほかはよろしいでしょうか。
長時間にわたって、大変貴重な御意見をいただきましたので、これで終了したいと思います。
行政のほうはこれでよろしいでしょうか。何か足りないところはありませんか、大丈夫ですか。
3時間は長過ぎるという御意見も伺っていますので、次回から2時間に。
それでは、事務局から御挨拶をお願いいたします。
○冨賀見室長補佐 本日も本当に大変貴重な御意見をたくさん頂戴いたしました。ありがとうございました。
次回、第5回検討会の開催予定ですけれども、委員の皆様方には、事務局から日程については追って連絡させていただきたいと思います。引き続きよろしくお願いいたします。
本日の議事録は、皆様方に御確認していただいた上で、公表するという手続にさせていただきますので、その際はよろしくお願いしたいと思います。
それでは、本日の検討会はこれをもちまして閉会とさせていただきます。長くにわたってどうもありがとうございました。
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