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2015年12月9日 2020年東京オリンピック・パラリンピック競技大会に向けた障害者の芸術文化振興に関する懇談会

障害保健福祉部企画課自立支援振興室

○日時

平成27年12月9日(水) 10:00~11:30


○場所

文部科学省東館3階 3F1特別会議室
(東京都千代田区霞が関3-2-2)


○議題

障害者の芸術文化振興について

○議事

 

○本郷座長

 それでは、定刻になりましたので、ただいまから、2020年東京オリンピック・パラリンピック競技大会に向けた障害者の芸術文化振興に関する懇談会を開会いたします。

 構成員の皆さんにおかれましては、本日も大変御多忙の中、お集まりいただきまして、ありがとうございます。

 最初に、事務局より、本日の資料の確認をしてください。

 

○益居芸術文化課長補佐

 お手元の議事次第を御覧ください。その下部に配付資料とございますが、資料1としまして、障害者の芸術文化活動に関する平成28年度の概算要求の状況、厚生労働省の資料でございます。資料2としまして、平成28年度概算要求の文化庁の状況として、お配りしております。資料3としまして、東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会さんより、「アクション&レガシープラン(文化)の現状と文化プログラムについて」という資料をお配りしております。資料4としまして、「2020年東京オリンピック競技大会・東京パラリンピック競技大会の準備及び運営に関する施策の推進を図るための基本方針」、1127日に閣議決定されました基本方針をお配りしております。そのほか、参考資料としまして、開催要項及び構成員の名簿と、本日御報告いただきます、埼玉県立近代美術館の「すごいぞ、これは!」展のリーフレット、同じく本日御報告いただきます滋賀県立近代美術館の「生命の徴」のリーフレットをお配りしております。

 資料に過不足がございましたら、事務局にお申し付けください。

 

○本郷座長

 ありがとうございます。

 それでは、最初に、今回初めて御出席の田端委員から、自己紹介とともに、これまでされてこられた取組など、簡単にお話しいただけますでしょうか。

 よろしくお願いします。

 

○田端構成員

 おはようございます。田端です。かけさせていただきます。

 前回、630日だったと思いますけれども、新幹線の事件の影響で新幹線の中に閉じ込められまして、間に合いませんで、今回から参加させていただきます。よろしくお願いします。

 滋賀県から来ておりまして、社会福祉法人グロー(GLOW)というところに勤めているのですけれども、うちの法人では、近江八幡市にボーダレス・アートミュージアムNO-MAという博物館相当施設を運営しておりまして、そこで障害のある方の作品と現代アーティストの作品を並列で見せていくという、ボーダレス・アートということを試みております。特に、障害のある方を含む、プロのアーティストではない方の作品をアール・ブリュットとして紹介するという取組をしておりまして、国内だけではなくて、国外の美術館などとも連携した取組を進めております。本日はよろしくお願いします。

 

○本郷座長

 ありがとうございました。

 それでは、厚生労働省、文化庁より、資料1、資料2に基づき、障害者の芸術文化振興に関する平成28年度概算要求の状況について、説明してください。

 お願いします。

 

○道躰自立支援振興室長

 厚生労働省の自立支援振興室長の道躰でございます。よろしくお願いいたします。座って説明をさせていただきます。

 厚生労働省関係の障害をお持ちの方の芸術文化活動に関する予算ということで、概算要求の中身につきまして、資料1に従って御説明をさせていただきます。

 私どもの事業といたしましては、大きく三つございます。まず、1点目でございますけれども、全国障害者芸術・文化祭の開催ということで、これは平成13年度から実施しておりますが、各県持回りで、障害をお持ちの方の芸術・文化の祭典をやっていただいております。厚労省も、共催ということでやらせていただいております。芸術・文化活動への参加の機会を作るということと、こういった活動を通じまして国民の皆様に障害への理解と認識を深めていただくと、こういった趣旨でやらせていただいているものでございます。平成28年度は愛知県で開催をさせていただく予定でございまして、文化庁さんの国民文化祭と同じ開催県ということで、やらせていただいております。27年度予算は下に書いてございますようにおよそ3,000万ほどだったのでございますけれども、28年度要求では5,000万ということで、増額のお願いをしているところございます。具体には、マル2にありますが、オリンピック・パラリンピック競技大会の文化プログラムにつなげるための事業ということで、どのようにレガシーとしてこの事業を残していくか、こういったことを考えていただく経費について要求しているところでございます。

 次に、2点目でございますけれども、これはモデル事業でございますが、障害者の芸術活動支援拠点モデル事業の実施ということでございます。これは26年度から実施しているものでございまして、現在9,700万の予算を28年度要求では12,000万ということで、やや野心的な要求をしているところでございます。これは、人知れず芸術に携わっている障害をお持ちの方がいらっしゃいますが、こういった活動を広く、ノウハウなどを蓄積して、活動の幅を広げていく、参加を増やしていく、こういったことで支援の拠点を作っていこうということでございます。具体の事業の中身でございますけれども、マル2のところにございますが、ポツが二つございます。障害をお持ちの当事者、その御家族、あるいは事業所等で、障害をお持ちの方の芸術活動を支援する方に対する支援をしっかりやっていきましょうということで、どのように出展をしていくか、機会を設けていくか、あるいは著作権の問題もございますので、こういったことに関する相談支援をやりましたりとか、あるいは支援者の人材育成などをこの事業で進めていこうと思っております。次のポツにございますけれども、具体に展示会を催していただきましたり、あるいは関係者のネットワーク構築をやっていただく、こういったことを進めているところでございます。マル3でございますけれども、リオで開催されます障害者の芸術文化活動に関する文化プログラムについても、この事業の中で研究を進めていただこうということで、要求しているところでございます。

 最後、3点目でございますけれども、これは1点目と関連しますが、芸術・文化祭を各地で開いていただこうということで、サテライトという形で開催をしていただこうということで、要求しているところでございます。これは統合補助金ということで470億円の地域生活支援事業補助金の要求をしておりまして、その内訳の中で実施をしていただこうということで、要求しているところでございます。

 簡単でございますが、厚生労働省関係の説明を終わらせていただきます。ありがとうございました。

 

○本郷座長

 ありがとうございました。

 お願いします。

 

○加藤芸術文化課長

 続きまして、私、文化庁芸術文化課長の加藤でございます。よろしくお願いいたします。

 文化庁におきましては、資料2を見ていただければと思いますが、障害者の芸術文化活動に関する予算といたしまして、来年度概算要求においては、まず、障害者の優れた芸術活動に関する調査研究及び試行的展覧会等の実施ということで、事業名は戦略的芸術文化創造推進事業というものでございます。この4.3億円の内数でございますが、障害者の優れた芸術作品の展示・普及を促進するため、作品の所在や制作活動の現状、普及施策等に関する調査研究や広く一般の鑑賞機会の充実を図る展覧会の開催に係る事業、これを平成26年度から実施しております。今年で2年目ということでございます。具体的には、本日御発表いただきます埼玉県立近代美術館さんですとか滋賀県立近代美術館等のお取組を、今、実施しておるというところでございます。後ほど御発表いただけるかと思います。

 それから2点目は、障害者が芸術作品を鑑賞しやすい環境づくりの中で、映画製作支援事業、アニメーション映画製作支援事業とございまして、これはもともと、文化庁におきまして、優れた日本の映画、アニメーション、映画の場合には、劇映画、記録映画、アニメーション映画、この3分野ありますけれども、従来はこれにバリアフリーの字幕を付ける支援をさせていただいておりましたが、28年度要求としては、視覚障害者の方にも楽しめるように、音声ガイドの制作部分を新たに支援できるよう、今、要求をしているところでございます。こういう形で、映画制作に関連して支援をしたいと思っておるところでございます。

 それから、その他関連施策ということで幾つか並べさせていただいておりますけれども、五つ挙げてございますが、簡単に申し上げますと、地域の美術館等で実施されます障害者の芸術作品の展示等に対する支援ということで、文化芸術による地域活性化・国際発信推進事業とありますが、これは、各地域の地方公共団体が実施主体となって、その地域でのいろんな文化芸術資源を使って、地域の活性化ですとか、芸術活動を通じた発信を行う。その中に障害を持たれた方の芸術作品等を展示・紹介する事業というものも含まれている場合に、それも支援していくというものでございます。それから、地域の核となる美術館・歴史博物館支援事業というのもございます。この中でも、そういった障害者の芸術作品の展示等について、支援させていただいております。

 それから、二つ目になりますが、全国高等学校総合文化祭、これは各県持回りで毎年行っておるのですけれども、その中で、特別支援学校の生徒さんによる作品の展示ですとか、実演、芸術の発表の場を提供するということを実施いたしております。

 その次の文化芸術による子供の育成事業、これは52.4億円ということで要求しておりますけれども、子供たちに質の高い文化芸術を鑑賞・体験する機会を確保するということで実施いたしておりますが、これにおいて小学校・中学校に障害のある芸術家の方を派遣する。具体的には、例えば、車椅子ダンスの披露ですとか、車椅子ダンスの体験等の機会を提供しております。

 それから、人材育成の関係でございますけれども、新進芸術家グローバル人材育成事業というのがございます。新進芸術家や芸術活動を支える人材の能力向上を目的とする事業ですけれども、障害を持たれた方の芸術活動を支援する人材育成事業に対して、この事業の中で支援を実施いたしております。

 それから、最後になりますけれども、芸術文化の世界への発信と新たな展開という事業、我が国の優れた現代美術の国際発信力・競争力の向上を目的として実施いたしておりますけれども、その中で、障害を持たれた方の優れたアート作品を海外のアートフェア等へ出展する、その際の経費等について助成をいたしております。

 簡単でございますが、以上でございます。

 

○本郷座長

 ありがとうございました。

 それでは、文化庁戦略的芸術文化創造推進事業の実施状況について、埼玉県立近代美術館、滋賀県立近代美術館より、まず御発表いただきます。御発表いただいた後に、それぞれ質疑応答の時間をとりたいと思います。

 それでは、よろしくお願いします。

 

○前山氏

 ただいま御紹介いただきました、埼玉県立近代美術館の前山です。実施状況について、御報告させていただきます。

 

○益居芸術文化課長補佐

 構成員の皆様、恐れ入りますが、スクリーンが見やすいところに少し御移動いただいてもよろしいでしょうか。申し訳ありません。

 

○前山氏

 私どもの事業名は心揺さぶるアート事業という名称なのですけれども、今年2年目になります。昨年度は障害をお持ちの方の芸術活動に関する全国調査というのをやりまして、今年度はその成果を基に展覧会を開催するというのが、大きな枠組みになっています。

 まず、昨年度の調査についてですけれども、ここでは、一番肝心だったのは、網羅的な調査をやらないということを決めたことですね。これは一つ大きな決断だったと思います。幾つか理由があるのですが、まず第一は完全に現実的な理由です。調査期間が、3か月ぐらいしかなかったのですね。10月から翌年の2月ぐらいで終えなければいけないという状況で、お正月を挟み、なおかつ、全国の調査研究員の方、9名の方にお願いしたのですが、それぞれ皆さん、美術館の学芸員だったり、大学の先生だったりということで本職をお持ちの方ですから、なかなか調査だけに関わっていられないというような実情がありまして、途中でサポートしていただく方を増やすような方もいらっしゃいました。さらに、冬場ということもあり東北・北海道は比較的厳しい状況にあったというようなこともあるのですが、そういうことで、最初からサンプル数を、大体、事務局を入れて10人ぐらいなので、200ぐらいのサンプルを目標にしようということで、110から20あればいいかなというような感じで始めました。最終的には、二百五、六十いったと思います。

 網羅的な調査をやらなかったということの主な理由ですけれども、これは今年度の展覧会に向けてという調査でしたので、調査のための調査ということではなくて、あくまでも展覧会をやるための調査ということにしたわけですね。その際、展覧会の持ち方で私たちが考えたのは、調査研究員が推薦者として1人のアーティストを推薦するという枠組みです。結果的には、調査研究員プラス事務局、12人の推薦者がいて、12人のアーティストを選び出すというような形で考えたわけです。で、推薦者の名前もはっきり出す。選ばれたアーティストと等格ではもちろんないのですけれども、名前をはっきり出すことでキュレーションの形を示すというような意味合いがありました。

 今御覧いただいているのは広報用に作られたスライドショーですけれども、お手元にチラシのカラーコピーがあると思います。そちらを御覧いただくと分かるのですけれども、推薦者とアーティストの名前をセットにしています。ですので、誰が推薦したかといこうとは、そのチラシを見ていただくと、既にそこで分かるということです。こちらが望んでいたのは、推薦者が、本当に自分がいい、今回の展覧会で言うと「すごいぞ」と思う人を1人選んでもらい、その人に向かって愛を語ってもらうというような構図を考えたわけです。つまり、どうしてこの人がいいのだということを語ってもらおうという、それを展覧会の枠組みにしたのです。

1人の人が、1人を選ぶ、好きな人を選ぶというのは、構図としては最強なのです。誰からも文句が言われない。つまり、この人はこの作家が大好きなのだということで言えますので、通常の現代美術展でもこの方式を何度かとっていますけれども、このやり方をとると、誰も何も言えないと言うと変な言い方になってしまいますが、例えば、今回の展覧会の会期中に来館者から、どうしてこの作家を選ばれたか、推薦の方式みたいなことを聞かせてくださいということで、会場から呼ばれたのですね。いろいろ話を聞いていると、何で私は選ばれないのですかということが言いたかったらしいのです。その人は、私は作品もいっぱい売れているのに何で選ばれないのかということで疑問に思われたのだと思うのですが、こういう方式ですよということでお話ししましたら、納得していただけたというようなこともありました。

 最終的に、展覧会をにらんでいましたので、調査の方も、調査して好きな作家を1人選ぶでも構わないのですけれども、さすがにそこではちょっと少ないので、大体10人ぐらいの作家を調査して、そこの中から1人選ぶというような構図でやりました。その結果、意外だったことが一つと、想定内だったことが一つあります。

 まず、意外だったのは、調査期間が短かったので、恐らく、アート活動で有名な施設からの作家が多くなるだろう、ほとんどになるのではないかというふうに想定していたのですけれども、意外なことに、自宅でやられているような作家さんが、かなりの割合含まれてきました。つまり、そこまで調査が届かないと思ったのが、実は皆さん頑張ってそういうところまで調査に行かれていたというようなことがあります。

 それから、想定内だったのは、美術館の学芸員とかの基本的な考え方なのですが、珍しい人を出そうとかいうような気持ちがあるのですね、どこかに。ですので、恐らくこれまで展覧会とかに出てこなかったような人が現れてくるだろうという、発掘的な意味合いもちょっと期待していました。それは、実際、何人かの方が初めて展覧会に出すような方でしたので、予想どおりと言ってもいいと思います。一番有名だったのは、沖縄の喜舎場さんでしょうかね。何名かの方は展覧会によく出されている方ですけれども、かなりのところが初めて出品される方です。

 実際の展覧会に関してですけれども、最初から考えていたのは、これは推薦にもつながるのですけれども、作家数を少なくしようということです。障害者アートの展覧会というのは比較的作家数が多くて、1人当たりの点数が少ないという展覧会が多い傾向にあると思いますけれども、今回の展覧会は、1人の点数をかなり多く、まとめて見せる。そのことによってアーティストとしての全体像が見えるような展示をやりたいというのが、一つあります。それから、そのために、後で会場の写真をお見せしますけれども、それぞれブースにしました。11ブースというような感じで、通常の現代美術展であるような形で展示構成をしていったわけです。さらに、推薦者の方に展示まで面倒見ていただきましたので、例えば展示台をどういうものにするとかいうのも推薦者の方が考えていただきましたし、さらに現場で展示の作業というのも指示をしていただきましたので、結果的に、推薦者とアーティストのコラボレーション的な色彩が強くなり、ブースごとに特色がかなり分かれている。制作しているところの映像を上映する人もいるし、そうじゃない人もいる。それから、本人の姿が出てくる人、出てこない人、いろいろな形になりましたが、そういう意味では推薦者の個性も会場に表れていたというふうに思います。

 ちょっと、時間もありますので、会場写真を映させていただきます。

 こんな感じでブースに分かれています。私の写真が余りうまくないので、ちょっとはっきりしてないかもしれないですが。それぞれの人が完全に独立したような展示ということで、しろさんという方なんかは、初めて展示された方です。こちらは、映像もあるし、正面の場など、御本人が大きく映っているというような形です。

 それぞれの推薦者が会場で展示しましたので、こういうふうにアクセントを付けながら上下にしたりとか、比較的、こういうことも自由にされる方が多かったですね。

 この感じをできるだけ巡回館の方にも踏襲していくというようなつもりでおります。大体、雰囲気がお分かりかと思います。これで最後です、埼玉会場は。

 続いて、札幌会場になります。これは、現在開催中ですが、札幌芸術の森美術館です。札幌は、当館よりも美術館自体が非常にきれいで、天井が高いものですから、更にアート展の雰囲気が増しているかと思います。きれいな展示になっていました。空間も広いし、それから天井が高いということで、ゆったりとした展示になっていますが、これは、それぞれの推薦者は行っていませんけれども、私と芸術の森の担当の人でいわば再現みたいなことを考えて展示をしたわけです。

 巡回の方は、札幌さんが1225日に終わります。その後、高知の藁工ミュージアムで年明けの17日から114日という短い会期なのですけれども行われて、その後、福山の鞆ノの津ミュージアムで22日から210日というふうになります。藁工ミュージアムさんと鞆の津ミュージアムさんに関しては、アール・ブリュット専門館という位置付けになると思うのですけれども、会場が非常に狭いものですから、第二会場を借り受けして、第一会場、第二会場で展示をするということで、全点、作品を減らすことは恐らくないのではないかというふうに思います。もし御覧になられる機会がありましたら、よろしくお願いしたいと思います。

 私の発表は、これで終わります。

 

○本郷座長

 埼玉県立近代美術館の前山さんからの発表でした。ありがとうございました。

 それでは、ただいまの御発表について、御質問ありましたら、お願いします。どなたかいらっしゃいませんか。

 どうぞ。

 

○柴田構成員

 柴田でございます。非常にすばらしいプレゼンテーション、ありがとうございました。

 この期間中の来館者数、来場者数はどのくらいあったのかということと、そのお客様の属性、それから、障害を持った方々のアクセスというのはどのくらいあったのか、簡単で結構ですので、教えていただけますか。

 

○前山氏

 すみません、今、正確な数字を持ってないのですが、7,000人ぐらいだったのではないかと思います。印象としては、メディアの取材が始終あったなという感じです。五大紙も、1回ではなくて複数回やっていただいたり、それぞれ皆さん熱心で、アーティストのところまでわざわざ訪ねて行って制作状況を取材するという、私もやってないようなことをやられたりとか、あと、地方紙はやっぱり、それぞれの地元の作家さんが出品しているということで、熊本の日日新聞とか、そういう地元紙が結構記事に載せてくれたというのがあります。主に出品施設さんのグループが多かったですけれども、それ以外は御近所ですね。埼玉県内になりますけれども、幾つかの施設さんがバスで来られるようなことも何度かあったと記憶しています。

 私、美術館に30年ぐらいいるのですが、初めて、これを買いたいのですけれどもという質問を受けました。それを何度か受けました。支援したいとか、本当にこれが好きだから欲しいとか、いろんな理由があると思うのですけれども、これに関しては、想定外の質問だったので、驚きました。

 そのぐらいで大丈夫でしょうか。

 

○柴田構成員

 はい。ありがとうございます。

 

○本郷座長

 よろしいですか。

 

○柴田構成員

 はい。

 

○本郷座長

 ほかに御質問あれば、ください。いかがですか。

 私が指名してもよろしいですか。保坂構成員、いかがですか。

 

○前山氏

 保坂さんは内輪の人なので、なかなか難しいところが。

 

○保坂構成員

 推薦者として関わっていたので質問というよりは感想になってしまうのですけれども、自分が責任を持って作家を推薦するということは非常に面白かったのと、要するに、前山さんと渋谷さんという埼玉のキュレーターの方がいらっしゃるわけですけれども、僕も同じキュレーターだから分かるのですが、独りの目で選んでいたら、独りだけの目で展覧会を構成したら、どうしても偏りが出てくるのですけれども、その偏りが面白く出るときもあるのですが、この障害者の芸術創作活動に関しては、そこは結構注意しなければならないポイントだと僕自身は感じていて、今回のこのやり方は、11人が偏りを持って選ぶのですけれども、全体としては多様性が確保されるという、非常に面白い試みになっていたなというふうに感じました。感想ですけれども。

 

○本郷座長

 ありがとうございました。

 ほかに。日比野構成員。

○日比野構成員

10人の推薦人、調査員。

 

○前山氏

 こちらが依頼した人が9人で、プラス事務局3人です。当館の館長を含めて3人が推薦していますので、全部で12人が推薦者になりました。

 

○日比野構成員

9名プラス1名プラスという推薦の、決めるポイントとか、どのようにして。

 

○前山氏

 両面ありまして、まず、美術館の規模から逆算していって、大体12人の作家ぐらいでやると。通常の現代美術展なんかも、12人のグループ展というのは、割とやりやすいぐらいのサイズなのですね。ですので、大体12人前後かなというのが、まず第一です。

 それから、さっき話し忘れましたが、それぞれの調査研究員に、およそその地域というのを分けているのですね。例えば、北海道の人には北海道、九州の方には九州・沖縄というような感じで分けていまして、分けていくと、9ブロックぐらいに分けるのが比較的現実的だったということですね。これは内輪の話になってしまうのですが、調査をするのも、自分の本分の美術館の仕事ではないので、やりたくてもなかなか受けられないという人も多かったのですね。ですので、調査研究員をたくさん選ぶというのは、現実的にちょっと難しかったということもあります。言い忘れたのは、その際、ブロックを限定しないと言うと変ですけれども、自分のブロック以外でもどんどん調査に行ってください。どこでも関心のあるアーティストがいたら調査に行って、自分のブロック以外のところから推薦してもいいですよというような、割と緩い形で考えました。ですので、埼玉の人が推薦したのは九州の人だったりというようなことが起こっています。

 

○日比野構成員

 九つのブロックに分けて、その中の人をどのように選んでいったのですか。

 

○前山氏

 巡回をやる館は簡単に決まるのですけれども、巡回をしない地域の調査員の選定はかなり苦労しました。この世界で割と有名な人たち、研究者とかがいますので、そういう方は頼んでお願いできたのですけれども、そういう方がいない地域だと、全くこれまでこういう領域に関わったことがなくても、キュレーターとして、この人なら多分面白いことをやってくれるだろうという人を選ぶような形で選定していきました。

 

○日比野構成員

 じゃあ、その方々から、あの作品、この作家はどうとかっていうリストが上がってきて。

 

○前山氏

 最初は調査の段階ですので、調査の段階では、調査カードが、10とか、20とか、とりあえず来る。その中から、多分途中でもう決めているのだと思うのですけれども。

 

○日比野構成員

 全体調整というのはどこかで。

 

○前山氏

 全体調整は特にしてないです。大体候補が出そろった段階で、こういう人たちをほかの人は選んでいますよというのはみんなに投げましたけど、それによって、じゃあ私は変えますという人はいなかったです。

 

○日比野構成員

 ありがとうございました。

 

○本郷座長

 日比野構成員、よろしいですか。

 

○日比野構成員

 はい。

 

○本郷座長

 ほかに、御質問あるでしょうか。

 それでは、前山さん、ありがとうございました。

 

○前山氏

 どうもありがとうございました。

 

○本郷座長

 それでは、引き続きまして、滋賀県立近代美術館の渡辺さんから、御発表をお願いします。

 

○渡辺氏

 御紹介いただきました、滋賀県立近代美術館の渡辺と申します。こちらからで、失礼いたします。

 私から、まず、去年と今年で行った文化庁の事業について、簡単に説明をさせていただきます。その後、県庁の木村の方から、新生美術館と呼んでいますが、当館は2019年にリニューアルいたしますので、そちらの概要の説明をいたします。

 平成26年度、昨年度と今年度、滋賀県立近代美術館と滋賀県では、こちらの二つの事業を行いました。昨年度のものは、ちょっと長いタイトルなのですけれども、一言で言いますとインタビューです。インタビューと福祉施設さんの現場調査というのを中心に行いまして、そこから聞いたり考えたりした内容を報告書にまとめるということをやりました。ちょっと文字が小さいのですけれども、こちらが大きな流れになっております。この中で力を入れてやったところが、今申し上げました2の聞き取り調査というところになります。昨年度の調査では、私と、あともう1人、近代美術館の学芸員が調査担当として、全国いろいろなところに行きました。調査した施設は滋賀県内と県外含めて25か所、聞き取り調査をさせていただいた方が10名で、あと、聞き取り調査ではなくて、もう少し長いインタビューという形で内容をまとめさせていただいた人が7名で、このような報告書を作りました。

 現場の調査に関しましては、県内・県外問わずいろいろなところに行ったのですけれども、当館にはこういった障害のある方の作品について詳しい学芸員というのが特におりませんでしたので、この調査をする際に、4名の方にアドバイザーとして就任をしていただきまして、いろいろ、調査先ですとか、この人に会ったらいいよというような相談をさせていただきながら、進めました。今、写真で御覧いただいているのは、上の段は二つとも滋賀県の施設です。下の段は県外の施設ですけれども、左下が栃木で、右下が高知になります。県内だけではなくて県外もいろいろ回ったことで、滋賀だけではなくて、各県でいろいろな取組をやっていたということが実感として分かったのが、すごく大きな財産だったかなと思います。

 こうした中で今年度の展覧会につながっていくのですけれども、2014年度の調査の中でいろんな方にお話を聞いていたのですが、その中ですごくいろいろな方に言われたのは、滋賀県の福祉施設における造形活動には非常に独特な歴史があるということが、まず一つありました。また、滋賀の、地方の近代美術館ですので、地元の施設との信頼関係を築くというのが美術館としては非常に大切じゃないかということも、すごくたくさん言われました。こうした話を聞いたということもありまして、今年度行った展覧会に関しては、滋賀県というのを中心にして構成をしていくということになりました。

 これは一番最初の入り口の部屋なのですけれども、「生命の徴-滋賀と『アール・ブリュット」-』という展覧会を開催しました。会期は、もう終わってしまいましたが、103日から1123日まで。来館者数は4,491人でした。この展覧会は全部で5章構成になっていますので、今から簡単に概要を説明したいと思います。

 第1章では、滋賀県で戦後間もなく行われた、粘土による製品作りを取り上げました。今御覧いただいているのは、その代表的なもので、汽車土瓶になります。こちらの汽車土瓶は、かなり早く、50年代以降から作られていたものですけれども、現在でも復刻版というのが作られていまして、いまだに、滋賀県の中の非常に重要な文化財といいますか、ちゃんと製品として作られていることが、調査で分かりました。

 第2章は、製品作りだけではなくて、造形活動というのもかなり早く、40年代後半以降から行われていたということを紹介しました。今、写真で見ていただいているのは、実際に調査で伺った落穂寮という滋賀の施設ですけれども、こちらの作品は、50年代の半ば頃に出版された『美術手帖』に取り上げられていた作品です。50年代の絵というのはほとんど残っていなかったのですけれども、こちらの作品が唯一、実際に掲載されていた作品として残っていたものなので、展示をしました。こちらは、『美術手帖』に載っていた、同じ作家さん、池田さんという方の作品です。

 並行しまして、滋賀県では粘土による造形活動というのがかなり盛んなのですけれども、その中で陶芸家の八木一夫さんがかなり早い段階から関わっておりましたので、八木さんの功績というのも取り上げました。この写真の中で言うと、一番左の方が八木一夫さんです。右に写っている子たちは、滋賀の近江学園というところの子供たちだそうです。初期の、50年代以降の流れというのを、こうした形で展示をしました。ほかにも、粘土であったり、染色であったり、いろいろな表現というのが滋賀の福祉施設で行われていたということを第2章では紹介しました。

 続きまして、第3章では、プロの作家と福祉施設の作家であり作品たちがどのように関わっていたのかというのを紹介していきました。とりわけ、絵本作家の田島征三さんと、信楽というところに信楽青年寮という福祉施設がありますが、そちらの関わりというのを、ワンコーナー設けて作りました。展示室はこのような形になっています。上の作品に関しては、信楽青年寮で作っていた和紙に田島さんがペインティングをしたもので、下の作品は、青年寮の作家が作った粘土のオブジェに田島さんが絵付けをしていったものです。こちらの写真は、2004年に、ボーダレス・アートギャラリー、今はボーダレス・アートミュージアムNO-MAと言いますが、こちらがオープンしているのですけれども、そうしたところも少し研究をしたコーナーでして、上の作品は、その第1回目の展覧会に出展していた、現代アートの高嶺格さんという作家さんの作品で、下は、同じく第1回目の展覧会に出展されていました、信楽青年寮の伊藤喜彦さんという方の作品です。

 続きまして、第4章は、こうした滋賀の作品が90年代半ば以降にアール・ブリュットと交わっていったという流れを紹介しました。真ん中の展示台の作品は、マッジ・ギルの作品です。このコーナーでは、日本で一番早くアール・ブリュットコレクションに所蔵されました、みずのきの作品も展示をしました。こちらは、現在の滋賀県のアール・ブリュットの流れに非常に影響を与えた、2011年の「アール・ブリュット・ジャポネ」展という大きな展覧会がありますが、そこに出展していた作家さんたちの作品を御紹介したコーナーです。

 一番最後の第5章では、もう一度、近年の滋賀県の作家さんをきっちり御紹介して終わるという構成になっております。

 この展覧会を担当して実感として思ったことというのは、滋賀県の独自性というものがあるとしたら、それは恐らく、いろいろな表現の在り方というのを認めて、守ってきた歴史があるということではないかなというふうに感じました。造形活動に関しては、50年代とか40年代後半ですとかなり風当たりが強かったというふうにいろいろな方がおっしゃっていたのですけれども、八木一夫さんですとかのプロの目であったり、あと、施設さん主体の展覧会活動というのを通じて自分たちの取組をちゃんと発信していったというところは、決して閉ざされた世界だけの取組ではなかったということが分かりました。また、そうした作品の見せ方に関しても、プロの作家と一緒に見せたりと、かなり独自の視点というのを大事にしながらやってきたということが分かりました。今後の課題としましては、こうした歴史を持っている滋賀県ですので、今回の展覧会・調査ではまだ及ばなかった施設さんですとか、もうちょっといろいろな方にお話を聞きながら、地道な調査というのを行っていくというのが大事なのではないかなというふうに感じました。

 それでは、新生美術館の方の説明に入りたいと思います。

 

○木村氏

 私、滋賀県庁の文化振興課新生美術館整備室の木村と申します。今回、文化庁の御支援を頂きまして受けました「生命の徴」展ですけれども、この展覧会は、滋賀県立近代美術館がアール・ブリュットも新たな柱として今後運営していこうということで、これからリニューアルを予定しているのですけれども、そういうステートメントをお示しする展覧会という位置付けでございましたので、少しお時間を頂戴いたしまして、新しい美術館が目指しているものを御紹介させていただきたいというふうに思います。

 簡単に今の滋賀県立近代美術館の紹介をさせていただきたいと思うのですけれども、これは1984年に開館いたしまして、地図がございますけれども、滋賀県南部、琵琶湖の南部の方にございます公園の中に立地している、郊外型の美術館になります。

 これが今現在の代表的なコレクションということで、日本画、工芸、滋賀にゆかりのある作家ということで志村ふくみさんですとか、あと、アメリカの現代美術といったものも、今、収蔵しているというような状況になります。

 これが今後どういうふうに変わっていくのかということで、ここに「美の滋賀」の魅力を伝える拠点として美術館が生まれ変わりますということで書かせていただいているのですけれども、本日、皆様のお手元の方にも、こういう折り畳まれた、「美の滋賀」と書かれたパンフレットのようなものをお配りさせていただいております。これは、私ども、「美の滋賀Mandala」というふうに呼んでいるのですけれども、見ていただきますと、ここに、いろんな分野の、滋賀県の美の資源の写真が載ってございます。この中には、自然の美もあれば、暮らしの中の美もありますし、実はアール・ブリュットも混ざっております。歴史的な仏教美術の美というものも滋賀県にたくさんございまして、そういったものがこの中に掲載されているのですけれども、滋賀県では、こういった美の要素・資源を生かした地域づくりですとか、あるいは魅力の発信というのを、「美の滋賀」という名前で展開をしております。この新しい美術館といいますのは「美の滋賀」の拠点というふうな形で位置付けておりまして、これまでの近代・現代美術のコレクションに、新たな柱として、滋賀の誇る仏教美術、それからアール・ブリュット、こういったものを、滋賀の県民性ですとか、あるいは風土の結晶として、特徴的な美と捉えて、作品収集ですとか、展示の柱としていこうというふうに思っております。こういった時代、古いものから新しいものまで、アール・ブリュットって本当にまさに今、各地で創作活動が行われて、今生み出されている美というふうにも言えるのですけれども、そういったものを、既存の美術のジャンルですとか価値観の枠を、特には結んで、あるいは取り払って、私どもの言葉で「編み直し」というような言い方をしているのですけれども、いろんな人が関わって議論をしながら、それを編み直して新たな魅力を伝える場に、この美術館をしていきたいというふうに思っているところです。こういった中で、アール・ブリュットは、美術館の在り方の象徴としても、大きなポテンシャルを秘めた存在ではないかというふうに思っているところです。

 新たな美術館の姿ということで、金沢21世紀美術館の設計をされて有名ですけれども、SANAA事務所をプロポーザルで今年3月に設計者に選定させていただきまして、今、まさに基本設計を行っているところです。今の美術館に新たな展示室あるいは収蔵庫といったものも増築して、全部一体、今の美術館、新しく増築するものも含めて、全体で回遊式の庭園美術館というコンセプトで、今、設計を進めているところになります。

 先ほど御紹介させていただきました「生命の徴」展で滋賀県のこれまでの軌跡というものを紹介させていただいたのですけれども、昨年度の調査、あるいはこの展覧会を通じまして、滋賀県の特性として、多くの先人の努力によって、障害者の福祉施設で自由な造形活動の取組が行われてきたと。さらに、その背景には、滋賀県には信楽という陶芸の一大産地があるのですけれども、そこは、粘土、いわゆる陶芸活動をする土壌があったというようなことも、一つ特徴的なわけでございます。さらに、県内各地で現在も活発に作品の創作活動が行われていること。また、今、滋賀県には、ボーダレス・アートミュージアムNO-MA、あるいは社会福祉法人グロー(GLOW)さんといったような存在もあるのですけれども、アール・ブリュットをつなぐ人、あるいは、支える人、それを伝えようとする方々の県内外のネットワーク、つながりが非常に充実していること、こういうことも特徴かというふうに思っております。

 こういうような滋賀県の厚みのある土壌、あるいは特性を踏まえつつ、先ほど申しました、2019年には新しい美術館でアール・ブリュット作品の収集・展示といったような活動を行っていきたいということで、アール・ブリュットの発信拠点を目指していきたいというふうに思っております。

 今回、文化庁さんの御支援を頂きまして、こういう調査ですとか展覧会が実現できましたことを非常にありがたく思っておりますし、また、きょうもこういった懇談会で障害者の芸術文化活動についての御議論あるいは検討をしていただけるということを大変心強く私どもとしても感じておりまして、今後とも、御支援、御協力を賜ればというふうに思っております。どうぞよろしくお願いいたします。

 どうもありがとうございました。

 

○本郷座長

 ありがとうございました。

 ただいまの渡辺さん、木村さんの発表について、御質問等ありましたら、挙手をお願いいたします。どなたか。

 日比野構成員、お願いします。

 

○日比野構成員

 すごくすばらしいというか、新生美術館も含めて大変期待が大きいところだと思うのですけれども、渡辺さんに聞いた方がいいのかもしれませんが、展覧会をやるに当たって、調査、地元の県内の施設、いろいろ聞き取りとかインタビューとかをされて、それを基にして展覧会を作られて、それを基にして新生美術館の骨組みというか、いろいろ出てくると思うのですけれども、コレクションもされながら、美術館が作品収集とか発信基地になるのと、あと美術館と地元の施設の関係がどんなふうになっていくのかとか、より新生美術館が発信力を持てば持つほど、逆に地元からすると、その辺のバランスはどうなのかなという、苦慮するところもあるような気がするのですが、その辺のイメージ等はどんなものを描かれているのかなと。ちょっと漠然とした質問ですが。

 

○渡辺氏

 どうもありがとうございます。作品の収集に関しては、現段階ではかなり白紙の部分が多いのですけれども、施設さんによく伺っている実感として、今回の展覧会みたいに作品をお借りしたというのは、コンセプトさえ共感していただければ、そこはどうぞという感じでウエルカムな雰囲気を感じたのですけれども、特に、作品にお金が絡んでくると、「うーん」という方が多いかなと思いました。例えば、作品をお借りするときに保険を掛けるのですけれども、そのときに評価額を教えてくださいみたいなことを言うと、そうした観点で作品を見たことがないから答えられませんというようなところが、少なからずありました。なので、どういう形になっていくか分からないのですけど、とにかく信頼関係を築いていくしかないのかなあというふうなことを思っています。

 ちょっとお答えになっているか分からないのですけれども、何か、木村さんからありますか。

 

○木村氏

 今、日比野委員の方からも、地域性というものと、全国に発信していく、そのバランスということをおっしゃっていただいたのですけれども、私どもとしても、今回の調査ですとか展覧会を通じて、やはり、滋賀県のこれまでの歩み、あるいは関わってこられた方々の御努力ということを改めて実感をしたというようなこともありまして、滋賀県の美術館としても、軸足をそこにしっかりと置きながら全国も視野に入れた活動をしていく必要があるということを改めて、この2年間を通じて感じたところではないかというふうに思っております。

 

○日比野構成員

 じゃ、もう一つ。新生美術館の中でそういう創作活動をするような計画とかもあるのでしたっけ。

 

○木村氏

 今の滋賀県立近代美術館はそういった機能が非常に弱いのですけれども、創作室といいますか、その場で創作ができる環境というのは充実していこうということを、今、計画しております。

 

○日比野構成員

 ありがとうございました。

 

○本郷座長

 ありがとうございました。

 ほかに。柴田さん、お願いします。

 

○柴田構成員

 失礼いたします。興味深いお話、どうもありがとうございました。新生美術館について、質問がございます。この美術館は地の利の部分でちょっと不便なところもあったりとか、それから、滋賀県の場合は、琵琶湖を中心にして、その周りをぐるっと囲まれている、そういう特殊性のある地域性だと思うのですけれども、この美術館の教育普及プログラムというのをどういうふうに考えておられるのかということと、それから、学校教育との連携ということなどはお考えになっていらっしゃるのか、どうなのか、そこら辺をちょっとお伺いしたいと思います。

 

○木村氏

 ありがとうございます。柴田委員がおっしゃっていただきましたように、美術館というのは県の南部の方にありまして、さらに琵琶湖があって、なかなか地理的には厳しい部分もあるのですけれども、これから建物の設計を進めていくという段階で、具体的なプログラムというところまでは至ってないのですけれども、圏域的にどういうふうに美術館が関わりを持っていくかというのは非常に重要なポイントになってくるかというふうに思いますので、そういった部分というのは充実させていく必要かあるというふうには思っております。

 

○本郷座長

 よろしいですか。

 ほかにどなたか、御質問ありますか。上野構成員、お願いします。

 

○上野構成員

 上野でございます。埼玉県さん、滋賀県さん、非常に貴重な情報をありがとうございました。ちょっと全体的な質問になるかと思いますけれども、冒頭、文化庁さんの方からお話がありました、これの支援の基となりますのは戦略的芸術文化創造推進事業の一環でというような御紹介がございましたけれども、先ほど前山先生のお話にもありましたが、予算の関係ということと、調査の期限が3か月ほどしかなかったというようなお話。それから、これは26年度の調査研究事業ということと、今、当該年度の27年度、それから、先ほど28年度の予算の概要の方でも申請されているということですけれども、前山先生、渡辺先生含めて、これが単発的に終わるのではなくて、我々としても障害を持った方々の作品を広く多くの方々に知っていただきたいというような形の中で、この支援以外で、また美術館独自で考えていらっしゃるようなことがもしもあれば、ちょっとその辺のお話を。それからまた、この懇談会を含めて、いろんな関わりのある方々が一堂に会していますので、それぞれのコラボレーションといいますか、できるようなことの何かヒントになるようなことがあれば、ちょっとお教えいただければと思います。

 

○本郷座長

 前山さん。

 

○前山氏

 じゃあ、私の方からまず。昨年度の調査に関しては、その調査票自体を、今後、いろいろな研究者とか、一般公開はしませんけれども、展覧会の調査というか、準備に際して見たいという人があれば、お見せするというような形で活用していく予定です。どこまで話していいか分かりませんけれども、調査研究員をされたある美術館の方が調査した人を来年か再来年の展覧会に出品したいというような話もありましたので、今後、そういう形で活用していただくのが一番望ましいと思っています。

 それから、地域によっては施設間の連携とかが余りない地域とかがまだあって、そういう地域に独り調査員として入っていくことによって、取り込まれるじゃないですけれども、その中のキーパーソンになっていくことでその地域が活性化していくというようなことが現実に起こりつつあるというように、東北の方だったかな、聞いていますけれども、こちらが何を今後展開していくかというところは具体的な像はないのですけれども、2か年の事業をやったことによって、もう既に、コネクションというか、ネットワークが生まれてしまったというような感じがありますので、この中から何かが今後育っていくというような予感というか、実感というのはありますね。

 あと、これは埼玉県の特殊例と言ってもいいかもしれないのですけれども、埼玉県の福祉部の方では、毎年、障害者アートフェスティバルというのをやっていて、県内の作家調査と、それから、展覧会、パフォーミング系の舞台のダンスとか、そういうイベントを毎年やっているのですね。もう5年ぐらい続けていますけれども、それの方にも私はちょっと関わっていますので、それを充実させつつ、ちょっと広げるというようなことは、考えてはいます。ともすると行政というのは、やめたがると言ったら変ですけれども、事業に年限を付けたがるので、例えば5年か10年やったら、これは完了したというような言い方になりやすいので、埼玉がやっていることは、実はすごくいいことというか、全国的にも福祉部の中に障害者アートの専門チームがいるというのは比較的珍しいとも聞きますので、やめないで続けてくれというようなことを側面から後押しをするというようなことを、ちょっと話が小さくなっちゃいましたけれども、そういうこともやりながら施設さんともネットワークを広げていくというような感じで、漠然とですけれども、考えています。

 

○本郷座長

 滋賀県の方はいかがですか。

 

○渡辺氏

 私たちの館も、昨年の調査を本格的に始めたのが10月以降で、余り時間がない中で展覧会というので、正直、かなり厳しい部分がありました。あと、長期的な計画がなかなか立てにくかったので、少なくとも当館にとっては全く新しい領域にどういうふうに取り組んでいったらいいのかというのが、館としても計画が立てにくかったという部分は、正直あるかなと思います。

 また、今、前山さんがおっしゃっていたみたいな、施設に、コネクションというか、関係性が嫌でもできてしまってきた。嫌じゃないのですけれども、もちろん。できてしまってきていて、今年、施設の方に言われたのは、今、障害者アートがかなり注目されるようになって、いろんな方が施設にいらっしゃるみたいですけれども、ゼロから全部説明するのではなくて、例えば近代美術館だったら私ともう一人担当がいますが、そちらの二人が言ってきたことを与えるみたいな形で蓄積していった上でプラスアルファのことという形だったら、こっちも気持ちよく調査に協力できるみたいなことを言われたのですね。なので、やってきたことに関しては、今回、報告書みたいなのも作らせてもらいましたが、そういった形でアーカイブ化していくというのは、すごく大事かなと思います。短い時間でなかなか大きな成果をというのは難しいなというのもすごく思いましたので、そこはもうちょっと長い目で見ていただけたらなというふうに思います。

 

○上野構成員

 どうもありがとうございます。

 

○本郷座長

 よろしいですか。ありがとうございました。

 それでは、時間もありますので、後ほどまた意見交換をする時間が少しありますので、次に移りたいと思います。ちょっと、席へ戻らせていだたきます。

 それでは、次に、2020年東京オリンピック・パラリンピック競技大会に向けた、情報共有に移りたいと思います。本日は、東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会と、内閣官房東京オリンピック競技大会・東京パラリンピック競技大会推進本部事務局から、御報告があるとのことです。質疑や意見交換は、御報告の後にまとめて時間をとらせていただきます。

 それでは、東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会の田中課長、お願いします。

 

○田中課長

 失礼いたします。東京オリンピック・パラリンピック組織委員会で、アクション&レガシー担当課長、文化・教育の担当課長をしております、田中と申します。

 それでは、お手元の資料3を御覧いただければと存じます。配付させていただいた資料、表紙を1枚おめくりいただきまして、現在、組織委員会でのアクション&レガシープラン、その中での文化プログラムについての検討状況ということで、御説明をさせていただきます。

 「アクション&レガシープラン策定のための連携」というタイトルが付いておりますけれども、組織委員会、現在、文化・教育を含めまして、全部で5本の柱でアクション&レガシープランの策定ということを今行っているところでございます。その中で、文化・教育、下の5色に色分けをされている柱の中の真ん中の黒の部分でございますけれども、この文化・教育も含めて、専門委員会というふうに書いておりますけれども、組織委員会の中に専門委員会を立ち上げてございます。12月中旬ぐらいに、この専門委員会において、各柱、文化も含めて中間報告をする予定でございます。その過程におきましては、政府、あるいは、東京都、自治体、その他、文化団体・スポンサー企業等々といった方々からいろいろ御意見を頂戴しながら、現在、そのプランをまとめているところでございます。

 また1枚おめくりいただきまして、今後のスケジュールについて、御説明をさせていただきます。今ほど申し上げましたように、アクション&レガシープランについて、その中で中間報告を現在取りまとめしているところでございますけれども、来年以降、中間報告が取りまとまった以降でございますが、その中間報告をベースにいたしまして、その他、有識者からの意見聴取、あるいは、引き続き、都、国、スポンサー企業等々、各ステークホルダーとの意見交換をしていきながら、最終的に、来年のリオの大会の前、2016年の夏にはアクション&レガシープランの公表ということを予定してございます。このアクション&レガシープラン、特に文化・教育のところにおきましては、文化プログラム、あるいは教育プログラム、そのコンセプト、あるいはその実施体制みたいなものを最終的なファイナルズの段階でお示しできればというふうに考えてございます。そして、リオの大会の後に、全国的に文化プログラムはキックオフしていくということでございます。ロンドンの大会、御案内の方もいらっしゃるかと思いますけれども、ロンドンの大会におきましても4年前から、北京の大会の終了後、4年間かけて文化プログラムは実施をされてきたところでございます。とりわけ2020年の大会開催の直前期、おおむね12週間、三、四か月ぐらいになると思いますけれども、そこのところにクライマックスということで、直前期にフェスティバルの展開ということを記載させていただいているところでございます。

 おめくりいただきまして、最後のページでございます。今後の基本的な活動の方針でございますけれども、先ほど申し上げましたように、来年夏にキックオフということでございますけれども、真ん中の部分でございますが、来年夏に策定するアクション&レガシープランにおいては、文化プログラムのコンセプト、これをまず御提示したいというふうに考えてございます。また、多くの方々から御意見頂いておりますけれども、文化についてのマーク、OCOGマーク、あるいはノンコマーシャルマークの作成というふうに書かせていただきました。ノンコマーシャルマーク、資料の一番下のところに参考で注釈を入れておりますけれども、ロンドン大会で使われた、いわゆるインスパイアという形のマーク、こういったものも作成・開発をしながら、全国一体となってオリンピックに取り組んでいくムーブメントを進めていければというふうに考えてございます。そういった形で、全国的に文化プログラムを展開するために、国や東京都、あるいは各道府県などと連携と協力の体制も、文化庁さんと相談をさせていただきながら、構築の検討をしていきたいというふうに考えてございます。

 最後になりますけれども、一番上の部分でございます。2020年までの4年間、様々な主体における多様な取組をTOKYO2020大会文化プログラム(仮称)のコンセプトの下で一体的に展開をしていくということを今後4年間にわたって行っていくというふうに考えてございます。

 当方からは、以上でございます。

 

○本郷座長

 ありがとうございました。

 続けて、内閣官房東京オリンピック競技大会・東京パラリンピック競技大会推進本部事務局の清水参事官の方から、お願いします。

 

○清水参事官

 ありがとうございます。内閣官房オリパラ事務局で文化担当の参事官をしてございます、清水と申します。よろしくお願いいたします。

 本日は、お手元に資料4ということで、基本方針をお配りしてございます。これは、オリパラ特別措置法に基づき閣議決定されたものでございますが、オリパラ大会の関連施策の立案と実行に当たっての基本的な考え方、施策の方向性をまとめたものでございます。こちらの資料、閣議決定されました基本方針の中で、関連する部分につきまして、ポイントを御説明させていただければと思います。

1ページ目、「1.はじめに」とございますが、こちらの「はじめに」というところで、ほぼ全体像が分かる形になってございます。平和の祭典の意義、それから1964年大会の成果ということでございますが、一番下のパラグラフのところ、今回の大会の意義ということでございますが、世界中の多くの人々が夢と希望を分かち合える歴史に残る大会にしたいということでございますが、特に、日本を再興し、成熟社会における先進的な取組を世界に示す契機となる大会とするという、大きな方向性が示されてございます。

 ページをおめくりいただきまして、2ページ目の一番上の部分でございますが、特に、パラリンピック競技大会の開催につきまして、障害者の自立や社会参加を促す大きな力となる。パラリンピックという言葉でございますが、1964年の東京大会の際に初めて使用されたものであること、また、2020年の東京大会は夏季のパラリンピック競技大会が同一都市で2回開催される初めての都市となるという意義がございます。参加数・地域数についても、オリンピック競技大会との差が縮まるよう、過去最多となることを目指して、大会を世界中の障害者をはじめ全ての人々に夢を与える大会とするという、大きな方向性が示されてございます。

 次の運営の成功のための体制というところでございますが、これは、国際テロでありますとか、サイバー攻撃の脅威の高まり、セキュリティをめぐる情勢の変化など、セキュリティの万全、それから防災・減災等の安全安心の確保ということは、今回の大会に向けての大きな課題となるわけでございます。後ほどの後ろの部分、かなりこのセキュリティ対応等に充てられてございますけれども、今回は説明を割愛させていただきます。

2ページ目の真ん中のところに「復興五輪」・日本全体の祭典ということが書いてございます。今回の大会、「復興五輪」として、東日本大震災からの復興の後押しとなるよう被災地と連携した取組を進めるとともに、被災地が復興を成し遂げつつある姿を世界に発信するということを、重要な課題だと位置付けられております。また、スポーツ、文化・クールジャパン、その他の様々なイベントを通じて、オールジャパンで日本の魅力を発信し、大会の開催に向けた機運の醸成を図っていく。外国人旅行者の方々の地方への誘客拡大による観光振興でありますとか、このような取組を通じまして、大会が、国民全ての方々、東京の方のみならず日本全国民参加が可能になる、日本全体の祭典としていくこと、大会の効果を日本全国津々浦々に行き渡らせ、地域活性化につなげていこうという方針が示されてございます。

 また、2ページ目の一番下のところで、有益な遺産(レガシー)の創出ということがうたわれてございます。次のページ、3ページの頭のところでございますけれども、若干まとめのような形で、「強い経済」の実現、文化プログラム等を活用しました日本文化の魅力の発信、スポーツを通じた国際貢献、健康長寿、ユニバーサルデザインによる共生社会、生涯現役社会の構築に向け、成熟社会にふさわしい次世代に誇れる遺産(レガシー)を創り出していきたいということでございます。

 内容の方、少し飛んでいただきまして、8ページ目でございます。特に、本懇談会に関係するパートといたしまして、4ポツの大会を通じた新しい日本の創造ということでございます。(1)は大会を通じた日本の再生ということでございまして、見出しだけ飛ばして紹介をさせていただきます。8ページ目の一番下、被災地の復興・地域活性化、先ほど申し上げた内容のことを記載されてございます。9ページ目にお移りいただきまして、マル2、日本の技術力の発信、マル3、外国人旅行者の訪日促進ということでございまして、その次でございますが、(2)日本文化の魅力の発信ということが、かなりスペースを割いてうたわれてございます。大会はスポーツの祭典のみならず文化の祭典でもあること。また、日本には非常に多様な文化がある。伝統的な芸術から現代舞台芸術、最先端技術を用いた各種アート、デザイン、クールジャパンとして世界中が注目するコンテンツ、メディア芸術、ファッション、9ページから10ページに移って、地域性豊かな和食・日本酒その他の食文化、祭り、伝統的工芸品、和装、花、さらには、木材・石材・畳等を活用した日本らしい建築など、多様な日本文化がある。文化プログラムの推進も含め、こうした多様な文化を通じて日本全国で大会の開催に向けた機運を醸成し、東京におけるショーウインドー機能を活用しつつ、日本文化の魅力を世界に発信するとともに、地方創生、地域活性化につなげる。「また」ということで、特に障害者の芸術振興についての記載が盛り込まれてございます。障害者の芸術振興については、共生社会の実現を図る観点も含め、障害のある人たちがその個性・才能を生かして生み出す芸術作品を世界に発信するため、大会に向けて障害者の文化芸術活動を推進するということで、しっかりと、こうした障害者の文化芸術活動をオリパラ大会に向けた施策の位置付けとして、こちらに記載がなされているというわけでございます。

 残りの分で関連いたしますところ、10ページ、(4)健康長寿・ユニバーサルデザインによる共生社会の実現ということで、11ページ目のマル2、ユニバーサルデザイン・心のバリアフリーということで、一番最後のパラグラフのところ、障害の有無等にかかわらず、誰もが相互に人格と個性を尊重し支え合う「心のバリアフリー」を推進することということも、大きな方向性としてこちらの方に位置付けられているというものでございます。

 障害者の芸術文化振興に関するオリパラ基本方針の位置付けはこのようになってございますが、政府といたしましても、こうした基本方針をしっかりと進捗させていく枠組みといたしまして、1125日に文化を通じた機運醸成策を検討するための関係府省庁等連絡会議というものを立ち上げてございます。文化に関します関係府省庁、それから、東京都、組織委員会を構成員といたしまして、関係団体が広くオブザーバーとして御参加を頂く、連絡の会議を立ち上げてございます。文化庁長官が副議長として、また厚生労働省障害保健福祉部長さんにメンバーとして、御参加を頂いております。障害者の芸術文化振興に関する様々な政策につきましても、政府としてはしっかりと取り組んでまいたいと考えてございます。

 よろしくお願いいたします。

 

○本郷座長

 ありがとうございました。

 それでは、本日の御報告を踏まえて、自由に意見交換をお願いします。御意見のある方は、挙手をお願いいたします。どなた。

 日比野構成員、お願いします。

 

○日比野構成員

 確認になるかと思うのですけれども、資料3の方です。オリンピックとパラリンピック、大会は二つあって、文化プログラムに関してはオリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会。いわゆる文化プログラムで、これはオリンピックの文化プログラム、これはパラリンピックの文化プログラムというふうに分かれるのか、分かれないのかというのは、何か、今、決まりというか、そういう議論とかはあるのでしょうか。

 

○本郷座長

 いかがですか。

 

○田中課長

 お答え申し上げます。今の検討の状況までは、具体のプログラムの構成について深まった議論をしているわけではないのでございますけれども、各専門委員会での議論なんかを踏まえても、少なくとも分けてやらなければいけないというような意見というのは今のところ頂いてないということでございまして、IOCの方の考え方としても、なるべく一体として融合させて、ただ、完全に融合するのではなくて、ある程度独立してそこは考えなければいけないというような示唆も頂いておりますので、そういったことを踏まえながら、障害者芸術が全体の中で埋没しないようにということを意識しながらプログラムは組んでいく必要があるのかなというふうに考えてございます。

 

○本郷座長

 日比野構成員、どうぞ。

 

○日比野構成員

1ページ目の実務検討会議の次の専門委員会というのは、もう何度か開催されているのでしたっけ。

 

○田中課長

 専門委員会自体でございますけれども、今年5月にキックオフで一回ミーティングをしまして、その後、小グループで5回ほど、教育2回、文化3回に分けて、小グループでディスカッションを行いまして、1214日に2回目の専門委員会を開催するというような形になってございます。

 

○日比野構成員

 そこで具体的な文化プログラムの話が出てくるのですか。

 

○田中課長

 まだ中間報告という段階でございますので、具体的な構成については、今後、6月までの段階でお示しをするという形になるかというふうに考えてございます。

 

○日比野構成員

 ありがとうございました。

 

○本郷座長

 それでは、ほかに。どうぞ、小林構成員。

 

○小林構成員

 鳥取県の小林と申します。資料3についての質問でございます。鳥取県では、現在進めているのですけれども、東京オリパラに向けまして障害者の芸術文化振興を地方でも盛り上げる必要があるということで、有志の都道府県、今のところ13都県を予定しているのですけれども、こちらの方で何かしら、例えば、舞台芸術の持回りの開催ですとか、アール・ブリュット展の巡回展示とか、そういったものを考えるとともに、既存の各都道府県の障害者の芸術文化振興策のブラッシュアップを図っていくとか、そういったものを考えているのですけれども、この文化プログラムにそういった振興策というのを登録するという場合には、組織委員会に申し出で、こういったプログラムを登録してくださいというような手続が必要なのか、若しくは各都道府県でそういったことをやるということが自動的に文化プログラムになるのかという点をお教えいただきたいということと、仮に文化プログラムに登録された場合に何らかの財政的な支援といったものがあるのかどうかというのを、お聞きしたいところでございます。

 

○本郷座長

 お願いします。

 

○田中課長

 お答え申し上げます。まず、文化プログラムに登録されるかどうかという点でございますけれども、マークの使用とも密接に絡むところでございますが、まだ、詳細についてはこれから詰めるという段階。とりわけマークについては、ブランドの関係と非常に密接に絡みますので、IOCと密接な協議をしていく必要かあるというふうに考えておりますが、基本的には、事業ごとで具体にこれは登録する・しないというような、県がやるから自動的になるというふうな形には恐らくならないのではないかというふうに考えてございますというのが1点。

 もう1点、登録されると財政的なというものでございますけれども、登録されたものに対して財政的な支出が出るというところについては、今のところ、検討しているという形にはなってございません。

 以上でございます。

 

○小林構成員

 分かりました。

 

○本郷座長

 ほかに、御質問ございませんか。

 田端委員、お願いします。

 

○田端構成員

 すみません、私、1回目欠席したので、多分、1回目に出た話なのだと思うのですけれども、ちょっと最初のところに戻ってしまうと思うのですが、この懇談会の開催要綱を見ると、関係者相互の情報共有ということもあるのですけれども、あとは意見交換ということで、交換された意見って、どこかにつながっていくのか、それとも、それぞれ、そういうことに今なっているのだねということで終わるのか、その辺をちょっと教えていただきたい。すみません、基本的なことですが。

 

○本郷座長

 これは事務局がよろしいですか。

 お願いします。

 

○佐伯文化部長

 基本的な趣旨といたしましては、先ほどのオリンピック・パラリンピック組織委員会の資料にありましたように、それぞれいろんな主体がこの大会に向けて盛り上げていきましょうというのがありますので、まずは関係者の間で、お互いがやっていること、あるいはどういうレガシーを共有していくかということの土台をしっかり作っていくというものが、基本的にこの場だと思っています。その反映の仕方としては、例えば、我々、文化庁、厚労省が入っていることからも、政府の中ではそういったところに対してのインプットにもなります。ただ、何か報告書をまとめて、それでもって直ちにというところまで、今のところ考えているわけではないという理解でよろしいかと思います。

 

○田端構成員

 ありがとうございます。

 

○本郷座長

 よろしいですか。

 

○田端構成員

 はい。

 

○本郷座長

 どうぞ。

 

○保坂構成員

 質問ではなくて、意見というか、感想ですけれども、今回発表いただいた滋賀と埼玉がそれぞれ地域にサーベイしていたように、障害者の芸術活動というのは地域と密着しているわけです。それは僕らがふだん関わっている現代美術の世界とちょっと違って、現代美術ってやっぱり、どこか一極集中的というか、都市が重要になってきているのですけれども、それとは違うというのが、一つ特徴としてあります。だから、その意味でもオリンピックで今目指されている地方創生とか地方活性化というものと非常に親和性が高いなあというふうに感じているのですね。

 あと、都市の問題でいくと、今、世界中にいろんな美術館ができていて、欧米に巨大な美術館があると。そこは、現代美術の中心というか、発信地になっていて、実は今、シンガポールとか、韓国とか、香港が、巨大な美術館を建設しています。正直言って、今、日本は現代美術の世界に関しては遅れています。だからこそ、文化庁がサポートもしてくださっているわけですけれども。

 ちょっと爆弾発言しますけれども、現代美術だけを推進していては、欧米から見ても、下手するとアジアのほかの国から見ても、日本は遅れているとしか思ってもらえない可能性があるのですね、オリンピックで何をやったところで。一発逆転を狙うのでしたらこれをやった方がいいなという気がしていて、欧米の場合には、アール・ブリュットと言われる場合、あるいは障害者の芸術活動と言われる場合には、精神障害者を集中的に紹介しているという傾向・歴史があるのですけれども、日本の場合には、レガシーとして、それこそ知的障害者もサポートしてきたし、身体障害者の創作活動に関しても美術館ができたりしているようなところがあって、非常にソーシャル・インクルージョン的な、包括的な形で進んできたということがあるわけですね。これは日本の特性と言ってもいいと思います。その状況を、世界中から人が来るときに、新しいモデルというか、我々が提示できるモデルとして提示するというのが一発逆転の在り方だなと思っているところがありまして、そういうところもあるので、是非とも、文化庁、厚労省さんには頑張って予算を獲得していただきたいなというふうに思いますし、割と重要なプログラムではなかろうかというふうに感じている次第です。

 

○本郷座長

 御意見ということです。

 ほかに。どうぞ。

 

○野澤構成員

 野澤です。今の保坂さんの御意見に、大変勇気付けられるといいますか、刺激されました。

 先ほどの発表を聞いていて思ったのですけれども、障害者の芸術活動って福祉施設が中心・拠点になってやっているケースが多いと思うのですが、ほかにも、学校とか、家庭とか、病院とかでもされている可能性ってありますよね。むしろそちらの方が、既存の価値観の手あかが付いてないというか、何かびっくりするようなものがあるのかもしれないなあと思って。だとすると、そういうところには誰がどんなふうに調査とか発掘とかをしていったらいいのだろうと。せっかく2020年に向けてやるのであれば、施設だけじゃなくて、全国各地のそういうところにこういう情報が届いて作品が表に出てくるような仕組み、それをどんなふうに作っていったらいいのだろうかというふうに思っているのですが、どなたに聞いたらいいのでしょうかね。どうでしょうか。

 

○本郷座長

 どなたでしょうかね。これは意見交換……。

 どうぞ。

 

○前山氏

 「すごいぞ」展の話と埼玉の話をちょっとさせていただきますけれども、「すごいぞ」展に関しては、さっきちらっと映った、しろさんという人は、普通の展覧会には出てこないような、例えば学校でのいじめみたいなものをかなりダイレクトに表現している作品なのですけれども、これは、塩田さんという推薦者の方のところにお医者さんから直接連絡があって、作品を見に行ったというような感じです。ですので、基本的には個人的なコネクションの中から出てくるというのが、一番現実的な感じではないかと思います。

 それから、病院なんかでも、まだ非常に警戒をしている、なかなか見せてもらえないというようなところも、調査員の方から聞いた話ですけれども、そういうような状況もあることは事実です。

 それから、埼玉県で毎年やっている県内のアート調査に関しては、「知り合いの方で芸術活動をやっている人はいませんか」という聞き方でアンケート調査をとっています。ですので、御本人というか、その御家族から来て、なおかつ知り合いの人からも紹介されて出てくるというふうな形、芋づる式ですかね、そういうようなこともあるというふうに聞いていますが、いずれにしても個人的なつながりが基本になるのではないかなというふうに思います。

 

○本郷座長

 この議論を始めますと、またどんどんなるのですけれども……。

 どうぞ。

 

○道躰自立支援振興室長

 厚生労働省の自立支援振興室長でございます。まさにこの課題につきましては、資料1で御説明いたしましたモデル事業で大きな課題として捉えておりまして、今、2年目でございますけれども、様々な関係者、ネットワークを作って、そういった発掘、あるいは展示の機会を創出するといったことについての議論をしておりますので、そういった成果をこちらで御披露させていただくなどの機会を作っていただいて、また皆さんとともに考えていきたいと思っております。

 以上です。

 

○本郷座長

 座長がお話ししていいのかどうか分からないのですが、こういう懇談会が開催されているというところで、私の知っている教育委員会等では、特別支援教育の中でこういうものを活性化させていくような動きも出てきているということは聞いております。今年度からスタートしている都道府県があるようにも聞いております。また、そういう詳しい情報があれば、ここで誰かに発表していただければとも思っております。

 よろしいですか、野澤さん。

 ありがとうございます。そろそろというか、時間がちょっとオーバーしてしまって、申し訳ありません。時間も参りましたので、本日はここまでとしたいと思います。

 事務局から、何かございますか。

 

○益居芸術文化課長補佐

 御議論、ありがとうございました。次回の会合の予定につきましては、構成員の皆様の御予定を調整させていただきまして、事務局より追って御連絡させていただきたいと思います。ありがとうございました。

 

○本郷座長

 次回の予定につきましては、構成員の皆様の御予定を調整の上、事務局より追って連絡するということです。よろしくお願いします。

 それでは、本日はこれで閉会といたします。ありがとうございました。

 


(了)

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