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2016年8月3日 第5回新型インフルエンザ対策に関する小委員会

健康局結核感染症課新型インフルエンザ対策推進室

○日時

平成28年8月3日(水)13:00~15:00


○場所

航空会館 501+502会議室(5階)
(東京都港区新橋1-18-1)


○議題

(1) 新型インフルエザ対策における H5N1 プレパンデミックワチの 備蓄 方針 について
(2) その他

○議事

○山崎新型インフルエンザ対策推進室室長補佐 定刻となりましたので、ただいまから第 5 回新型インフルエンザ対策に関する小委員会を開催いたします。本日の出席状況は委員 12 名中、 11 名の出席です。吉川委員から欠席の連絡を頂戴しております。定足数に達しておりますので、会議が成立しますことを御報告いたします。

 私は、結核感染症課新型インフルエンザ対策室室長補佐の山崎と申します。よろしくお願いいたします。

 それでは、新委員を御紹介します。公益社団法人日本医師会常任理事の釜萢敏様です。国立病院機構三重病院臨床研究部長の谷口清州様です。

 なお、大変悲しく残念なことですが、感染症やワクチンの研究の第一人者として、この新型インフルエンザ対策に関する小委員会及びワクチン作業班の審議に御尽力いただいた庵原俊昭先生におかれましては、 2 19 日に御逝去されましたことを御報告します。謹んでお悔やみを申し上げ、御冥福をお祈りします。

 また、前回の開催以降、事務局に人事異動がありましたので御紹介します。結核感染症課新型インフルエンザ対策室長の野田です。結核感染症課新型インフルエンザ対策推進室長補佐の山岸です。健康課予防接種室長補佐の坪井です。室長補佐の山崎です。

 申し訳ございませんが冒頭のカメラ撮りにつきましては、ここまでとさせていただきますので、御協力をお願いいたします。

 それでは、ここからは岡部委員長に進行をお願いいたします。

○岡部委員長 岡部です。どうぞよろしくお願いします。暑い中、お集まりいただいてありがとうございました。それでは、これから審議に入るわけですが、私から提案というか、お願いです。庵原先生がお亡くなりになって、半年ぐらいたっているのですが、この会に大変御尽力いただいて、私としては手痛い思いなのですが、その後の開催ですので、もしよろしければ黙祷を捧げたいと思いますが、よろしいでしょうか。御起立ください。後ろの方もよろしかったら御一緒にお願いします。それでは、黙祷。

                                     ( 黙祷 )

○岡部委員長 ありがとうございました。どうぞお直りください。庵原先生も随分いろいろな提言あるいは新しい考え方を残していっていただいたと思いますが、我々はそれを、良い所を引き継いで、また淡々と新型インフルエンザ対策に取り組んでいきたいと思いますので、どうぞよろしくお願いいたします。

 それでは、最初に事務局から、この審議参加に関する遵守事項についての報告をお願いいたします。

○山崎新型インフルエンザ対策推進室室長補佐 審議参加について御報告します。本日御出席された委員の方々の過去 3 年度における関連企業からの寄付金・契約金などの受領状況について申告を頂きました。本日の議題では、沈降インフルエンザワクチン及び抗インフルエンザウイルス薬の各品目に関して調査審議を行います。これらの製造販売業者は、一般財団法人化学及び血清療法研究所、北里第一三共ワクチン株式会社、武田薬品工業株式会社、デンカ生研株式会社、一般財団法人阪大微生物病研究会、中外製薬株式会社、グラクソ・スミスクライン株式会社、第一三共株式会社、塩野義製薬株式会社、富山化学工業株式会社、ノバルティスファーマ株式会社です。皆様の申告内容については、机上に配布しておりますので、御確認をお願いいただければと思います。

 事務局では申告内容を確認しましたが、谷口委員の申告において、武田薬品工業株式会社から 50 万円を超え、 500 万円以下の講演料の受領があったと申告がありました。また、押谷委員の申告において、デンカ生研株式会社から 50 万円を超え、 500 万円以下の寄付金等の受領があったとの申告がありました。両委員のプレパンデミックワクチンに関する議決について、賛否を表明することはできません。このほかについては審議や議決に不参加となる基準に該当はありませんでした。また、薬事承認等の申請資料等の作成の関与についても該当はありませんでした。以上です。

○岡部委員長 今のことについては、何か御質問がありますか。谷口委員、押谷委員には議論には入っていただくわけですが、議決に関しては賛否を表明できません。これはルールどおりですので、よろしくお願いいたします。

 それでは、審議に入りたいと思います。私はあらかじめ気が付かなかったのですが、この委員会の名簿を拝見すると、私は委員長を拝命しているので、このまま進行させていただきますが、この会は副委員長は設けてありませんでしたか。一応規定では委員長が指名することになっているので、それを確認して、もし新しく構成されているので、副委員長という形のものが必要でしたら、後で指名させていただいて、事務局と相談ということでよろしいでしょうか。私がもし帰りに交通事故に遭ったときとか、そういうにときに備えていうところなので、それは御了承いただいてよろしくお願いします。

 それでは議事に入りたいと思います。今日の議題は「新型インフルエンザ対策における H5N1 プレパンデミックワクチン、いわゆる「プレパンワクチンの備蓄方針について」ということになりますが、事務局から配付資料の確認をしてから説明を頂きたいと思います。

○山崎新型インフルエンザ対策推進室室長補佐 配布資料は「議事次第」「委員名簿」「座席図」のほか、資料 1 から参考資料 3-4 までの配布となっております。議事次第に書かれている配布資料の一覧と照らして不足の資料等がありましたら、事務局にお申し付けください。

○岡部委員長 不足等がなければ、そのままお願いします。今の確認をして、そのとおり行きます。議題の確認は、今ここで議題 1 2 ということを申し上げましたので、議題 1 について行いますが、これについては前回の本委員会で検討課題とされましたので、作業班で検討をお願いしています。今日はその作業班の検討結果を頂いて、小委員会でそのことについて議論し、それをまた親会議である感染症部会に掛けるといった形になろうかと思います。事務局から資料の説明を頂いた後で、忌憚のない御意見を頂ければと思います。ワクチン作業班のほうは小田切先生が班長なので、事務局の後で補足的に御説明をお願いします。それでは、お願いします。

○山岸新型インフルエンザ対策推進室室長補佐 それでは、事務局から説明いたします。お手元に資料 1 と資料 2 を御準備ください。主に資料 1 の「 H5N1 プレパンデミックワクチンの備蓄方針等について ( ) 」で御説明します。まず H5N1 のプレパンデミックワクチンの備蓄方針について、製剤化の方針について、更に今後の臨床研究の方針について、順次説明いたします。

1 ページ、 H5N1 プレパンデミックワクチンの備蓄について、背景から説明いたします。今までの備蓄の背景ですが、平成 9 年に初めて鳥インフルエンザ A(H5N1) ウイルスによる感染者が報告され、 H5N1 のウイルス由来の新型インフルエンザが発生した場合、その病原性の高さから大きな健康被害が引き起こされると想定されたことから、我が国では平成 18 年度から H5N1 のプレパンデミックワクチンの備蓄を行うこととなっています。

 その後の大きな経過について枠に示して書いています。平成 18 年度から平成 26 年度の備蓄に関しては、複数のワクチン株について、それぞれ約 1,000 万人分の原液を備蓄するとともに、その一部を製剤化、 54 万人分をそれぞれの株について各年備蓄しています。有効期限の切れるタイミングで同じワクチン株を追加備蓄しておりました。平成 27 年度の備蓄については、平成 26 年度に実施された新型インフルエンザ専門家会議において以下のような議論がされ、そちらで検討されております。

 インドネシア株とアンフィ株が最も交差免疫性が期待できるという結果が示され、かつ細胞培養法の製造基盤の整備が進んだため、備蓄ワクチンの導入、細胞培養ワクチンの導入を検討することになりました。第 13 回の感染症部会で細胞培養ワクチンのインドネシア株が交差免疫性に優れているという研究結果を受けて、インドネシア株を備蓄株として選定しております。

 続いて行われた第 14 回の感染症部会で細胞培養ワクチンのインドネシア株の交差免疫性が野生株のウイルスに対しては十分ではない可能性がある旨を国立感染症研究所の検討結果から示されました。このため、平成 28 年度備蓄については、クレード 2.2 系統の H5N1 鳥インフルエンザのヒトへの感染の発生報告が急増しているという事実を踏まえて、危機管理上の重要性からチンハイ株 ( クレード 2.2) のワクチン株が備蓄株として選定されています。製造については、一部平成 27 年度中に前倒しして備蓄が実施されております。これとは別に、現在ワクチン原液の有効期限は 3 年と規定されていますが、その原液の有効期限が延長できるかどうか、引き続き検討を行っているところです。

 以上のような今までの議論を踏まえて、今後の H5N1 のプレパンデミックワクチンの備蓄方針について、ワクチン作業班会議で御議論いただきました。それが 1 ページの青い四角の提案マル1です。

 こちらで今後の備蓄方針として、近年の H5N1 鳥インフルエンザ発生の疫学的な状況、パンデミックの発生の危険性、パンデミックが発生した際の社会への影響及び発生しているウイルスとワクチン株の抗原性などを踏まえて、検討時点で危機管理上の重要性が高いワクチン株の備蓄を優先するという提案をしたいと、今までの議論を踏まえて整理したいということです。

 理由としては、ヒトへの感染を引き起こす H5N1 の鳥インフルエンザウイルスというのは多様化して、抗原性についても変化が見られる。それらに対して有効なワクチン株を備蓄することの効率性も問題になってきています。更に、新型インフルエンザ対策全般の整備が進んでいるということです。

 整備の全般というのは具体的に申しますと、まず抗インフルエンザウイルス製薬の備蓄が大分進捗しています。現在、目標量は国民の 45 %相当量となっていますが、それは充足しています。また、平成 28 年度から小児や重症患者等の多様な背景を持つ患者にそれぞれ最適な薬剤選択を可能とすべく備蓄薬の多様化を進めております。また、ワクチンに関しては、パンデミック発生後に、以前より早期に全国民へのワクチンを供給するために細胞培養インフルエンザワクチンの製造体制の整備を進めているところで、そちらも大分進捗しています。こういった背景からマル1の提案をさせていただくということです。

 こちらの提案をするに当たって、キーとなる所は、危機管理上の重要性が選択の基準になるわけですが、その高さについてはヒトへの感染事例が多い、ヒトでの重症度が高い、日本との往来が多い国や地域の感染事例が多いなどを総合的に評価して判断することになります。

 従前の備蓄株よりも新たに分離された野生株から作成されたワクチン候補株がありますが、その中で危機管理上の重要性が高い株についてはワクチン株としての適切な生産性や抗原性等が示唆されるかをさらに検討することとしています。更に、危機管理上の重要性を適切に評価するため、今後も WHO インフルエンザコラボレーティングセンターと日本では感染研に行っていただいておりますが、通じた流行株の情報収集や、調査研究及び新型インフルエンザに関する新たな治験、技術開発に関する情報収集を進めることとすると考えています。

 次に、今後の全般的な備蓄方針を踏まえて、平成 29 年度の備蓄の方針が提案マル2です。提案マル2はこの資料と資料 2 を適宜使って説明いたします。提案マル2としては、以上の考え方を踏まえて、クレード 2.2 のチンハイ株を優先して備蓄することを提案したいということです。

 理由は資料 2 2 ページ、 3 ページを参考にしながら御説明いたします。近年の H5N1 鳥インフルエンザのヒトへの感染発生状況として、エジプト等の中東で流行しているクレード 2.2 系統の鳥インフルエンザウイルスのヒトへの感染確定症例数について、平成 27 年度に急激な増加が認められております。資料 2 3 ページのグラフで赤く丸が付いている所です。

 一方、 (2) ベトナム、インドネシア等や中国への流行が懸念されたクレード 1.1 2.1 、クレード 2.3 系統におけるヒト感染症例数が減少しています。そちらは資料 2 2 ページで、 2015 2016 年に WHO に報告があった各国ごとの H5N1 のヒトにおける感染確定症例数が出ておりますが、基本的にはエジプトで流行しているのが非常に多いほかは、中国、インドネシア、バングラデシュ。 H5N1 ではありませんが、 H5N6 1 桁程度は出ており、それほど多い数は発生していません。それぞれで流行している株についても、エジプトではクレード 2.2 1.2 、チンハイ株で対応できるものが流行しています。ほかの所、例えば中国、インドネシア、バングラデシュでクレード 2.3 、クレード 2.1 といったインドネシア株やアンフィ株などへ対応するものについては、頻度が低いということです。そういった所でクレード 2.2 のチンハイ株を優先する。クレード 2.2 については、チンハイ株は中東で流行しているクレード 2.2 系統について、類似した抗原性を持ち、有効な免疫反応を得ることができると考えられています。

 留意事項としては、この議論をする作業班で検討の必要性について指摘があった新たなワクチン株としてクレード 2.3.4.2 に属する IDCDC-RG-36 及び IDCDC-RG-35 というワクチン株がありますが、そのクレードについては、近年ヒトにおける感染事例は少なくて、危機管理上の重要性の高いワクチン株とはみなさないために、現時点でワクチン株として適切な生産性や抗原性の検討は行わないこととするということです。数字が近いクレードで H5N6 でクレード 2.3.4.4 がありますが、抗原性は大分違うと評価されています。

 今年度中にチンハイ株を合計 1,000 万人分備蓄予定です。平成 29 年度のチンハイ株のワクチンの生産は、今年度の備蓄状況はまだ生産途中ですので、確認する必要があって、備蓄の準備途中ですので、確認した上で必要に応じて実施することと考えております。ここまでが備蓄株の選択の方針です。

 続きまして、製剤化について、今回整理し直した所について説明いたします。 H5N1 のプレパンデミックワクチンの製剤化についてですが、背景としては、新型インフルエンザ等政府行動計画で、パンデミックワクチンの開発、製造には一定の時間が掛かるために、その前の対応として、医療従事者や国民生活及び経済安定に寄与する業務に従事する者に対して、感染対策の一環としてプレパンデミックワクチンの接種を行えるよう、その原液の製造及び備蓄、一部製剤化を進めることとされています。

 製剤化の量というのは、ワクチン原液については現在有効期限が 3 年とされているのに対して、現在の製剤化したワクチンは有効期限は 1 年です。もともと製剤化の量というのは鶏卵培養ワクチンメーカーが生産可能な最小製剤化量等を勘案して備蓄している 4 株について、約 54 万人分製剤してきた。前の経緯としてはそうなのですが、平成 27 年度からは新たに備蓄用ワクチンとして細胞培養法ワクチンの製造を始めております。

 細胞法ワクチンは複数の会社で製剤していますが、製品ごとに生産可能な最小製剤化量は異なるということで、製剤化する量について改めて検討が必要ということで御審議いただき、 (2) の方針について提案いただくことになっています。

 提案マル3今後の製剤化方針ですが、備蓄株の選択方針と同様に製剤化対象となる備蓄株の製剤化、備蓄株を検討する必要があるという議論になりました。上述の提案マル1の備蓄方針と同様に、検討時点で危機管理上の重要性の高いワクチン株の製剤化を優先する。

 製剤化の量としては 10 万人分を基本とする。ただし、生産可能な最小製剤化量が 10 万人を超える場合は、当該最小製剤化量を基本とするということです。

 製剤化の量の理由としては、細胞培養ワクチンの生産体制が整備されて、医療従事者等に必要なプレパンデミックワクチンの製剤化の完了に要する期間は、鶏卵培養ワクチンに比べて短縮される。パンデミック発生後、直ちにプレパンデミックワクチンの接種が必要になると想定されるものは、パンデミック発生後早期の新型インフルエンザの診療等に係る業務に従事する者が見込まれますが、特定接種の登録事業からデータが得られていて、そちらから該当者数は約 10 万人程度に相当すると見込まれます。繰り返しになりますが、生産可能な最小製剤化量は細胞培養ワクチンの場合、各製剤会社によってかなり異なるということで、こういったことを提案させていただいています。

 最後に、これらのことについてデータをどう集めていくかということで、臨床研究の今後の進め方について説明いたします。背景としては、政府の行動計画で新型インフルエンザ発生時のプレパンデミックワクチンの有効な接種方法の検討に資するよう、最新の流行状況を踏まえて、製剤化済みのワクチンの一部を用いて有効性・安全性について臨床研究を進めることになっています。

 更に、パンデミック発生後にプレパンデミックワクチンを接種した者の保存血清を使ってワクチンの有効性を早期に判断することとされています。これもガイドラインのほうに記載されています。これを受けて、鶏卵培養ワクチンについては臨床研究を今まで実施しています。

 今後の方針として、今般新たに導入された細胞培養ワクチンについても、製剤化したワクチンの一部を用いて臨床研究を行い、有効性・安全性等について確認を行う。理由としては、先ほど述べたとおり、細胞培養ワクチンについては、鶏卵培養ワクチンでもやっていたのですが、細胞培養ワクチンについては、まだ株ごとの有効性や安全性、交差免疫性に関する治験が少なく、まだパンデミック発生時のプレパンデミックワクチンの接種の検討に必要な血清等材料がないということで、そのための試料として集めておく必要があるということです。説明は以上です。

○岡部委員長 それでは、小田切先生、補足がありましたらお願いします。

○小田切委員 ワクチン作業班で議論した点は、大体今、事務局から報告があったように、資料 1 に重要な要点は全て反映されております。

 まず、ワクチン株の備蓄株の選定の戦略としては、今、 H5N1 の流行はそれほどなくて、小規模にヒト感染事例はあるのですが、感染しているウイルスのクレードも多岐にわたっており、もちろんそれに伴って抗原性も違います。ですから、なかなかワクチン株を絞り切れないのが現状です。そういう背景を踏まえますと、ワクチン株を選定する時点で危機管理上、最も重要と思われるという評価がされるウイルスについて、ある程度絞り込んで備蓄株を決めていくべきだろうという備蓄戦略方針が議論されました。

 では、危機管理上の重要性とはどういうことを意味するのかをきちんと明確にするべき、という意見もありまして、それについて事務局の資料の 2 ページにある留意事項としてマル1マル2マル3に挙げたような点を危機管理上の重要性という、一応のクライテリアにするという結論になりました。

 では、実際にどれが危機管理上、重要かということで、今考えますと、 H5 の流行は全般的には下火であるが、クレード 2.2 であるエジプトでの流行が昨年度非常に多くて 100 を超える感染事例があったということで、クレード 2.2 のチンハイに相当するものが危機管理上は重要であることから、平成 29 年度の備蓄の方針としては、チンハイを選んだほうがいいだろうという結論に至りました。

 ただ、ここで 1 つ問題になるのは、備蓄ワクチンの株の選定に当たっては、薬事法上、 H5N1 と規定されており、今、実際にいろいろな所で流行しているのは H5Nx 、すなわち N6 であり、 N8 でありというように N の亜型が変わってきている。薬事法上 H5N1 のみに規定されると、備蓄ワクチン株を選ぶに当たって、最近の流行株の中から選びたい場合は、 H5N6 なので、最近の流行株からは備蓄ワクチン株は選定できないことになり、これを何とかしないと、いつまでも古い H5N1 ワクチン株しか備蓄できないことになり、この点を解決すべきということが指摘事項になると思います。これはやはりメーカーの承認上の問題もありますが、少し考えてほしいと思っています。

2 つ目の製剤化の方針については事務局から報告があったとおりで、提案マル3にあるとおり、これがワクチン作業班としても合意されております。

3 つ目、大事なのは臨床研究です。細胞培養ワクチンによる備蓄ワクチンが承認されて、今回のインドネシア株も細胞培養ワクチンで製造されて、新しい乳濁型のアジュバントを使ったものが使われているし、平成 29 年度の備蓄はチンハイ株で、これもやはり細胞培養法で製造することになっていますので、これらに関しての臨床研究のデータが全くない。接種後の血清が実際に流行している H5N1 、若しくは H5Nx にどのぐらい交差反応しカバーできるのかという情報が全くないので、製剤化したものを使って積極的に臨床研究をやって、そのデータを取っていかないと、次のワクチン株を選ぶときの情報がない中での議論となるので、是非、臨床研究を積極的に進めてもらいたいと思っていますし、ワクチン作業班でもそういう話が出ました。以上です。

○岡部委員長 ありがとうございました。それでは、今の事務局の説明あるいは小田切先生からの補足について、何か御意見がありましたら、信澤先生、どうぞ。

○信澤委員 今、気が付いたのですが、 1 ページ目の主な備蓄の状況・論点の背景の所ですけれども、平成 27 年度に細胞培養ワクチンで備蓄をすると確か決まったのですね。ここの平成 27 年度の所を見ますと、「細胞培養法による備蓄ワクチンの導入を検討する」とありますけれども、検討して、今後は備蓄ワクチンとしては細胞培養法で製造されたワクチンを使うと決定されているのであれば、「検討する」の後、決定した内容がここに記載されないまま、細胞培養法をいつの間にか使っているような印象を受けますので、どこかでそれを記載されたほうがいいかと思います。

○山岸新型インフルエンザ対策推進室室長補佐 当時の部会のほうでは、細胞培養法の備蓄を優先すると。細胞培養法に限ったところではないのですが、細胞培養法を優先するというところは決まったところです。確かに「検討する」だけだと議論の結果がどうなっていたかというところがありますので、そちらを適切な場所に追加、修正するように対応させていただきます。

○岡部委員長 私の記憶だけですが、どのぐらいの割合だというのは確か決められなくて、細胞培養も作ることができるというふうに決めたような気がするのですが、それでいいですね。

○山岸新型インフルエンザ対策推進室室長補佐 はい、おっしゃるとおりです。細胞培養法を入手できるのであれば、細胞培養法のほうを優先して備蓄する。ただ、細胞培養法に限るという形の話ではなかったと理解しています。

○岡部委員長 よろしいでしょうか。

○信澤委員 あと 1 点あるのですが、同じ平成 27 年度の所で、「細胞培養ワクチンのインドネシア株が交差免疫性に優れている」と書かれていますが、細胞培養ワクチンのインドネシア株というよりは、細胞培養ワクチンで AS03 入りのものであって、それ以外のものに関しては検討もしていませんし、交差免疫性に優れているかどうか分からないので、細胞培養で作ったインドネシア株であれば、全て交差免疫性に優れているという誤解を受けると、よろしくないような気がします。

○山岸新型インフルエンザ対策推進室室長補佐 御指摘のとおり、当該部会のほうで研究結果が報告されたのは、ある特定の製剤ですので、そちらのほうを誤解のないように追記する形で修正したいと思います。

○岡部委員長 アジュバントは入っていた、 AS03 。ありがとうございました。大石先生。

○大石委員 第 14 回の感染症部会で、細胞培養ワクチン AS03 を使ったインドネシア株の交差免疫性が優れているという話だったのが、野生株ウイルスについては十分ではないという結果が報告されたということで、今回はチンハイ株を使うということに話が進んでいますけれども、このチンハイ株でも AS03 を使うような細胞培養ワクチンであれば、野生株との反応性というのはかなり限られているということは、大体、推測できるものなのでしょうか。ウイルス株によって、やってみないと分からないというところがあるのでしょうか。その辺はどのようにお考えですか。

○岡部委員長 これは、小田切先生から。

○小田切委員 正に今の御指摘に関しては、最後の臨床研究を積極的に進めるべきというところに尽きるのです。 AS03 入りのチンハイ株がどうかというのは全く情報がありません。もちろん、これはやってみないと分からないというのが正直なところだと思いますが、インドネシアの経験だと、ワクチン株に対してはある程度反応するけれども、実際、流行するだろう野生株に対しての反応性というのは、同じクレードであればある程度確保できるのですが、異なるクレードのウイルスには AS03 入りであっても交差反応性は低いという結論なので、チンハイ株もその辺を見た情報が必要であると思います。

○岡部委員長 よろしいですか。

○大石委員 踏み込んで聞きますが、チンハイ株でも細胞培養ワクチンとして AS03 を使ったような強力なアジュバントを使ったものでも、そういう交差免疫性が出ないとなると、このタイプのワクチンはかなり使い勝手が悪いということになろうかと思いますが、そこまでちゃんと臨床試験をして確認した上で、その辺は結論を出していけばいいとは思いますけれども、そういったことも考えておく必要があるのかなと思います。

○岡部委員長 どちらのほうが、より関連していますか。信澤先生。

○信澤委員 今の大石先生の御質問に対しての補足ですが、インドネシア株は交差性が悪いと言いましたけれども、 AS03 を使って古いインドネシア株と同年代 (2005 年前後 ) に取れたウイルスに対しては、ワクチン株でしたけれども比較的交差性があるのです。野生株というのは新しい株、つまり 2013 年とか 14 年に取れたようなウイルスに対して充てていて、それに対しては交差性があまりない。なので、今、我々が考えているのは、いくら AS03 を入れても、 5 年、 10 年後のウイルスに対してまで交差性を示すというのは難しいかもしれないけれども、例えば、今、できたワクチン株に AS03 を入れればクレードを超えることは可能かもしれないということです。それは正に臨床試験の結果を見ないと分からないのですが、そう考えますので、ウイルスの変化には AS03 だけでは対応しきれないのではないかと思います。

○谷口委員 交差免疫性というのは非常に大事だろうと思いますが、例えば H1N1 pdm09 が流行した際に、過去の H1N1 と少し交差免疫というか、共通抗原のところがあったということで割と軽症例が多かったというのと、ワクチンも 1 回で済んだということがあります。そうすると、このプレパンデミックワクチンというのは、ある程度プライミングという効果も結構重要なところだと思います。そうしますと、いろいろな手段を使って交差免疫性をすごく広げるというよりは、プライミングの効果というのもあると思いますので、今、先生のおっしゃるように臨床研究を進めていくことは大事だと思いますが、現状の判断としてはこれでいいのではないかと思います。

○岡部委員長 ありがとうございました。いずれにせよ、小田切先生が強調されたように臨床研究が重要ですし、クエスチョンマークがどうしても、ないものについてあるので、ただ、それを作ったらいいだろうということではもちろんないし、引き続き臨床研究をして、それにはいろいろ関わるものがあると思います。それをきっちりやって新たなものが出れば早く対応できるとしていくことが、重要ではないかと思います。交差免疫性のところはそのぐらいでよろしければ、坂元委員、お願いします。

○坂元委員 今回、 27 年から細胞培養ワクチンが導入されたということで、ワクチンの製造期間が短縮されることが期待されるところから、この製剤化の量も少なくすると。そうすると、そもそも論として最初に 1,000 万人分ずつと決めたところは全く見直さなくていいのか。つまり、ここの備蓄方針という所にもう 1 つ項目を作って、細胞培養ワクチンの導入に伴い本当に 1,000 万人分備蓄する必要があるのか。そこも今後、検討することを 1 つ入れておいたほうが、このままずっと 1,000 万という単位でやっていくのか。そこの検討が必要ではないかと思います。

○岡部委員長 これは事務局、いかがですか。

○山岸新型インフルエンザ対策推進室室長補佐 プレパンデミックワクチンの備蓄については、新型インフルエンザ等政府行動計画のほうで、前も資料の中で説明しましたけれども、パンデミックワクチンができるまでの間、早くなったと言っても時間があるということで、感染対策の一部として原液の製造・備蓄を進めるように定められています。その政府行動計画に紐付いて作られているガイドラインのほうで、特定接種の対象者というものを 0 1,000 万人の範囲内と想定しています。そちらを踏まえて 1,000 万人分の特定接種が仮に実施された場合にも対応可能というところで、現在は 1,000 万人分備蓄しているということです。そういった大枠で決まっているところですので、今、すぐ議論することにはならないと思います。

 一方、新型インフルエンザに対する治験を新たに蓄積しているというのも事実ですし、新型インフルエンザ対策の整備、例えば抗インフルエンザウイルス薬の備蓄とか、パンデミックワクチンの生産体制の整備が進んでいるのも、現状としてありますので、これらの進捗を踏まえて、このプレパンデミックの備蓄のあり方をどう考えていくかは、今後の課題であると我々は認識しています。そういったところで今後、考えていきたいと思います。

○岡部委員長 ありがとうございました。これには直接の関係はないかもしれないけれども、シビアリティの問題であるとか、どのぐらいの入院等々があるかというのも、かなり以前から見直そうではないかということがあるし、そこら辺もベースとして十分必要なところなので、取りかかりつつあるとは聞いていますけれども、その辺についてもよろしくお願いします。どっちが関係ありそうですか。小田切先生。続いて押谷先生。

○小田切委員 今の坂元先生の御指摘は、 1,000 万人分というところで本当にいいのか検討すべきということですが、それを更に突っ込みますと、備蓄ワクチン戦略をこのようなやり方でずっと今後もやっていく必要があるかというのも、そろそろ議論する必要があると思います。備蓄ワクチンのこういう戦略をやめるというのも 1 つのオプションだと思います。それも検討する必要があると思います。

○押谷委員 今の話に関連してですが、そもそも H5N1 のパンデミックのリスクをどう捉えるかという、そもそも論がなければいけない話だと思います。これだけ税金を使ってやっている以上、ちゃんと国民に説明できる必要もあると思います。その上で、今、坂元先生もおっしゃったように、細胞培養ワクチンができて今までよりは早く作れるかもしれないという話になってきていて、どういうシミュレーションをして、このプレパンデミックワクチンの位置付けが、どういう状況だったら本当にあるのかということを、もう一度整理しなければいけない。それは 10 年ぐらい前に議論した話とは全く今は状況が変わってきているので、 H5N1 のリスクというのも変わってきている。見方というのも変わってきているし、ワクチンの製造過程も変わってきている。その中で本当にプレパンデミックワクチンという選択肢があり得るのかという議論は、どこかできちんと整理しておく必要があります。全く最初からプレパンデミックワクチンを持たないという国も先進国でたくさんありますから、そういう中で、日本はこれを続ける意味がどこにあって、どういうシミュレーションをしたから、プレパンデミックワクチンが本当に必要なのだと、そういうことが説明できるようにしておく必要はあると私は思います。

○岡部委員長 ありがとうございます。どっちみち、ベストチョイスは今のところないので、それを少しでもいいほうに近づけて、あり得ることを考えるというので全くおっしゃるとおりです。もう 1 回、そこら辺の議論はやらなければいけないのですが、それを含めて上の会議のほうにも、こういうことが必要であるという提言を、この委員会としてやっていきたいと思いますので、よろしくお願いします。大石先生、どうぞ。

○大石委員 備蓄をやめる、やめないという議論も大事ですが、今現在、ワクチン原液の有効期限は 3 年、製剤化したら 1 年ということですけれども、これがどうやって決まっているのか不明確なところもあると思うので、これがどのくらいまで有効なのかということについても、調査を継続して進めていくことが大事ではないかと思います。

○岡部委員長 小田切先生、何かコメントはありますか。

○小田切委員 基本的に、有効期限というのはポテンシーがどこまで下がるか。下がったものをどこまで許容できるかということがワクチンの有効期限を決める目安だと思います。そういう観点から当初は 3 年ということで切ったのだと思いますけれども、今、それを踏まえて調査を始めてもらっているところで、 3 年から 4 年、 4 年から 5 年になるのかという調査が進んでいて、その結果を踏まえれば延長というのは今後はあり得るだろうと思います。

○岡部委員長 事務局、どうぞ。

○山岸新型インフルエンザ対策推進室室長補佐 基本的には薬事承認の際に、力価のほうが保存原液でどれぐらい下がるかという実データを、メーカーのほうに取っていただき、当局のほうで最終的に評価し承認いただいているところです。現在、備蓄されているものについても調査という形で、 3 年以上延ばせるかどうか調査していただいていますが、 3 年と決まっているのは、そういったデータに基づいて適切な手続を経て認められているところですから、今後、検討はされるけれども、 3 年というのはある程度の根拠を持って決められているところです。

○岡部委員長 ありがとうございました。押谷先生、どうぞ。

○押谷委員 今日の議論の本質からずれるかもしれませんが、プレパンデミックワクチンの基本的な方針にも関連するところで、「危機管理上の重要性」について 3 つの指標を用いて総合的に評価するとあります。これってどこで議論され、どう決まったのか分からないですけれども、本当にこれでいいのかと思うのです。文章を読むと、この 3 つの指標しか検討しないみたいな書きぶりになっていますが、最大のポイントはパンデミックリスクがどのくらいあるかということで、ヒト感染事例が多いということは、パンデミックリスクを評価する上で重要な要因にはなるとは思いますが、それが全てではないと思います。日本との往来の多い国というのは、パンデミックということを考えたら全然重要ではなくて、それはアフリカで起きてもパンデミックは瞬く間に世界中に広がるだろうと言われている。そうすると、「日本との往来が多い国」というのを、なぜここに入れているのか。

 例えば、ウイルス側の要因、ヒトへの適応を示すようなミューテーションが入ったウイルスが出てきたときに、 WHO が言っているリスクアセスメントの中にはそういうことが入っていますけれども、リスクアセスメント上、重要になってくるのだと思いますが、ここにはそういうことは一切書かれていなくて、この 3 つの要因だけで決めると。本来は、パンデミックのリスクアセスメントをした上でということなのだと思います。その要因として、こういうこともあるかもしれないけれども、というのが正しいのではないかと私は思います。

 もう 1 点、気になったのは、パンデミックが発生したときのみこれを使うみたいな話が 3 ページに書いてあって、これも以前からいろいろな議論をしてきたときには、 WHO のフェーズ 4 5 6 というのがあって、フェーズ A のときはどうするのかいろいろな議論があったように記憶しています。あれはもうなくなりましたので、本当にパンデミックが発生というのを、どこでどう定義するのかというのは実は今、非常に難しくなっている。 WHO の新しいガイダンスを見ると、 may or maynot declare pamdemic とか書いてあり、 WHO はパンデミックと言わないかもしれないということです。そうすると、どういうときに使うのかということも、もう一度、きちんと整理をしておかなければいけない。ヒト - ヒト感染がどこかで起きたときに使用の検討を始めるのか。そういうことも含めてもう一度、この辺は整理をしておく必要があると思います。

○岡部委員長 山岸補佐、どうぞ。

○山岸新型インフルエンザ対策推進室室長補佐 先生がおっしゃるとおり、パンデミックの発生リスクというのは一番重要なところで、前提として含まれていると我々も資料作成の際に理解していました。その点は作業班の議論の中に当然入っていたところですし、ヒト - ヒト間の伝播が起きているといったところも入っていると思いますので、検討させていただきたいと思います。ただ、プレパンデミックワクチンで備蓄ワクチンですから、まだそこまで入っていない時点で備蓄されることもあります。必ずしも 100 %、そこの評価はできるかというところは、一番上に書けないかもしれないかと思います。そういったところも総合評価の中には入ってくる形で何か書ければと思います。

 それから、プレパンデミックワクチンの使用については特定接種として使用されますので、現時点では措置法の政府対策本部ができた後に、厚生労働大臣に対して指示がされることになります。 WHO の評価と、それがどのようにリンクするかという課題はあるかもしれませんけれども、一応、国内的な整理、プレパンデミックワクチンの接種を特定接種として始めるという実施のところは、ある程度決まっていると思っています。

○押谷委員 それは特定接種を始めるということですよね。だから、それは必ずしも WHO が、パンデミックを宣言するかどうかと、 100 %はリンクしない可能性があるということです。だから、ここでパンデミック発生後となっているのは本来は正しくないのではないかと思います。特定接種をすることを日本政府が決めるということと、パンデミックの発生の定義そのものが、グローバルにも非常に曖昧に今はなっているので、そこはきちんと整理をしておく必要がある。

○山岸新型インフルエンザ対策推進室室長補佐 現状の WHO などの宣言のされ方と齟齬のないような形で、こちらのほうを修正させていただこうと思います。

○岡部委員長 齟齬というより、これは WHO の現在のパンデミックの考え方としては、そこのところは各自が決めていいという形です。

○押谷委員 そうですね。それぞれの国がリサーチする。

○岡部委員長 だから、 WHO の言うパンデミックが宣言されないと使えないということでは、もちろんなくて、そのときの内閣の諮問委員会とかそこら辺が、これがパンデミックの可能性ありという議論をして、日本にとってはリスクが高いからという形です。

○山岸新型インフルエンザ対策推進室室長補佐 こちらのほうで確認させていただいて、国内の体制と齟齬のない形になるように確認いたします。

○岡部委員長 ただ、特定接種は、必ずしも特措法が出なくても使う可能性はあるわけです。

○山岸新型インフルエンザ対策推進室室長補佐 特定接種は、緊急事態宣言が出る前には接種できますけれども、政府対策本部ができて政府のほうから厚生労働大臣に指示があってされるものですので、広い意味でのパンデミックに対する体制そのものは、そのときできている状態にはなっています。

○岡部委員長 ちょっと複雑な体制の部分がありますけど、本当に起きたら複雑だなんて言っていられないので早くやらなければいけないのですが、丸井先生、どうぞ。

○丸井委員 今の議論ですが、資料 2 にあるように (1)(2)(3)(4) を踏まえて、その下の「危機管理上の重要性」を考えてということで、ざっと読んだときには上の赤い部分の (1)(2)(3)(4) は、どちらかというと発生の場所から世界的な状況の判断、下の「危機管理上の重要性」というのは、国内での政策上の判断という読み方を私は最初していたのですが、そういう読み方でいいのか。あるいは、上の 4 つのうちの (3) あたりも社会への影響というときに、これは非常に抽象的な意味での社会なのか、必ずしも日本社会への影響ではないのかということで、どちらかというと、先ほどのように (1)(2)(3)(4) は発生から世界的な状況を考えて、下の「危機管理上の重要性」は国内の判断を考えていいのかというのが、 1 つです。

 それから、パンデミックという言葉をどのように使うかというので、押谷先生の御意見は非常に大事だと思います。それはなぜかと言うと、これはプレパンデミックワクチンなので、パンデミックが予想される段階で使うと。ですから、そういう意味でパンデミックの宣言があった後で使うというのは、本来、プレパンデミックではないことを考えると、先ほどの押谷先生の御指摘をどこかでちゃんと整理しておかないと、プレパンデミックワクチンの役割あるいは規模というのも決めにくいのではないかと思いました。

○岡部委員長 ありがとうございました。その辺の議論は多分、この中の委員の方も何人か含まれるでしょうし、私も自分で首を締めるようですけど、公衆衛生のほうで議論しなくてはいけない部分になってきます。ですから、そういったようなことの検討事項がこの委員会で行われていることを、公衆衛生のほうで再度、課題として置いておくことにしたいと思います。よろしいでしょうか。毎回、こういうのを置くと言ってなかなか議論が進まないのも問題点ではあるのですが、 1 1 つ整理していく必要があると思いますので、よろしくお願いします。

 一応、基本方針としては、危機管理上の重要性というのが総合的にと言うのは非常に日本語的ですが、今言ったような、あるいは押谷先生がおっしゃったようなことも含めた上でのパンデミック、あるいはポテンシャルの高いときに考えられるものを今のところは優先して考える。そういうことから考えると、ワーキンググループのほうでは、 29 年度の備蓄株としてはクレード 2.2 でチンハイ株を使う。製剤化については同じように、結局、チンハイを優先する意味になると思いますが、現在の中ではこれが一番重要だろうと思われるチンハイについて製剤化をするけれども、その量は今のところ 10 万人分が基本であるということが作業班からの提言になります。ただし、これについては十分な臨床研究というのが、いろいろなものの想定でできているので必ずしも十分ではないことから、有効性、もちろん安全性に関しても検討を続けていく。あるいは今の製剤の問題は、多分、アジュバントの問題なども入ってくると思いますので、そういう臨床研究は続ける。ということで、これを感染症部会に上げるというところで、この辺はこの委員会として合意を得たとしてよろしいでしょうか。ありがとうございました。

○小田切委員 先ほど指摘しましたけれども、株の選定の所に戻ります。今現在の薬事法だと H5N1 しか選べないのです。そうすると、最近流行している新しいウイルスは H5N6 とか N8 であり、、そっちのほうが、むしろワクチン株に選ぶプライオリティが高い場合があったときには、薬事法の規定から H5N1 以外は選べないという状況なのです。これを何とかしないといけないと思うのですが、これに対して事務局のほうからきちんと説明しておいてもらって、それに対してどういうケアをするのか、しないのか、その辺を明確にしてもらいたいと思います。

○岡部委員長 山岸補佐、どうぞ。

○山岸新型インフルエンザ対策推進室室長補佐 今の薬事法上の承認ですと、 H5N1 のワクチン株に対して生産のデータ、品質のデータ、臨床試験のデータに基づいて承認されている。 H5N6 とかに対しては基本的にはデータがなく、しかも申請もされていないところなので、薬事承認上、使えるものはないと。こういったものを新たに開発していくとなると、それなりに新たなワクチンの開発になるので、ある程度手間とコストがかかるところですから、株の備蓄と同様に危機管理上の重要性というところを評価し、必要性が高いものに関しては今後、検討の課題になるかと思います。現時点で備蓄の対象にならないような株のところで、どんどんやっていくことができるかどうかは、また個別にそれぞれについて、その場で判断していくことになると考えています。

○岡部委員長 多分、突然出てきたならば個別に判断して、なるべくそれに対して早く対応するようにしていかなければいけないと思いますが、その他、時間をかけて議論することとしては、先ほどから話が出ていましたけれども、プレパンデミックワクチンそのものをどうするか。今のところは H5N1 が前提だけれども、 H5 に限らず、 HXNY が出たときにどうするのかということも含めてパンデミック対策というのは、一応、今のところ、できたものは幾つかあるわけですが、この先ということでは。

○山岸新型インフルエンザ対策推進室室長補佐 もう 1 つは、パンデミックが起きた際に関しては、今、プロトタイプワクチンの承認がされていますので、非常に迅速な対応が必要で、すぐ生産する必要がある場合は亜型によらず生産ができますから、そういうところも踏まえて備蓄ワクチンのための開発は考えていく必要があると考えています。

○岡部委員長 ほかに全体の御意見では、よろしいでしょうか。これで最後です。信澤先生。

○信澤委員 確認したいのですが、提案マル2の平成 29 年度の備蓄株ですけれども、ここにはクレード 2.2 のチンハイ株を優先するとしか書いていません。これは細胞培養法、鶏卵培養法、どちらも何も制限はない。

○山岸新型インフルエンザ対策推進室室長補佐 こちらの議論について、細胞培養か鶏卵かというところは、昨年、御議論いただいたところが全体の方針となっていると事務局で考えていて、それが継続されていると考えています。

○信澤委員 それは書いておく必要はないですか。

○岡部委員長 先ほどの確認で、一応、細胞培養優先にしてやるけれども、エッグベースを全部駄目としているわけではないというところです。要するにその比率や何かはまだ不明で、生産量、状況等に合わせて考えると。細胞培養はオーケーであると出したことは確認ができているということで、よろしいでしょうか。

○信澤委員 はい。

○岡部委員長 それでは、次の議論に進みたいと思います。その他ということで、メインは今のお話だったのですが、次の問題も実践的にはかなり大きい話です。抗インフルエンザ薬、今度は薬のほうですね。これの備蓄に関する進捗状況と今後の検討課題に話を持っていきたいと思います。これも山岸補佐から御説明をお願いします。

○山岸新型インフルエンザ対策推進室室長補佐 参考資料 2 は、昨年度、御議論いただきました内容を踏まえて、現在の進捗状況を御報告するというものです。 1 ページ目です。抗インフルエンザウイルス薬の備蓄方針に関する議論の背景と経緯を、平成 27 年度に議論いただいたところです。厚生科学審議会感染症部会及び新型インフルエンザ等対策有識者会議医療・公衆衛生に関する分科会のほうで、備蓄方針について議論を重ねて、昨年度、以下のとおり取りまとめられております。当面の備蓄方針としては、平成 21 年の備蓄方針を踏襲することとして、引き続き国民の 45 %相当量を備蓄目標とすると。ただし、近年の人口動態や市場流通の増加を鑑み、以下のとおり変更するということで、備蓄目標量は平成 21 年度 5,700 万人分だったところを 5,650 万人分とした。流通備蓄分のほうは、流通量の増加を鑑みて 400 万人分から 1,000 万人分に増加したと。備蓄薬剤の種類は多様化をもたせる。備蓄薬剤の切替え時期は下記のとおりとなっております。小児を主に対象としたタミフルドライシロップについては、迅速に備蓄すると。重症者等が対象となることが考えられる、静注薬であるラピアクタは優先的に備蓄。イナビルについては、既存の備蓄薬の期限切れのタイミングに備蓄するということにされております。備蓄薬剤の割合は、市場流通の割合や想定する新型インフルエンザウイルスによる疾病の重症度を踏まえるということとまとめられております。

 今までの備蓄の経緯と量について、 2 ページ目に示しております。備蓄を始められた平成 17 年度は、新型インフルエンザ対策として備蓄を開始して、国民の 23 %に相当する量が目標量とされております。薬剤はタミフルです。平成 20 年度に備蓄目標を 45 %に引き上げ、備蓄薬にリレンザを追加されております。平成 24 年度に備蓄薬のリレンザの割合を 2 割に引き上げております。昨年の御議論を受けて、平成 28 年度以降は備蓄薬に多様性を持たせるということでされています。また、国民の人口動態の変化に伴って、目標量は 5,650 万人分とされております。従来から備蓄されていたタミフル、リレンザに加えて、タミフルドライシロップ、ラピアクタ、イナビルを備蓄することとしています。そのほか、流通備蓄分を増やしているところです。

 昨年度の御審議を受けて、現在、抗インフルエンザ薬の備蓄方針、ガイドラインに反映させております。それが参考資料 2 3 ページ目、 4 ページ目です。ガイドラインにも備蓄目標量の人口動態の変化、備蓄薬剤の多様性を持たせるというところ、備蓄薬剤の割合、市場流通割合や新型インフルエンザウイルスによる疾病の重症度を踏まえるといった御議論のところを反映しております。

 参考までに 5 ページ目で現行の抗インフルエンザウイルス薬の備蓄目標の考え方をお示ししております。こちらは現時点で大枠は変わっておりませんで、国民の 45 %を目標として、患者の治療、予防・投与、季節性インフルエンザの同時流行などに使用する量を踏まえて、 45 %を目標とすると考えております。また、被害想定についても、従前の被害想定を用いて、抗インフルエンザ薬の備蓄の考え方に利用しております。

7 ページ目、現在、国内で承認されている抗インフルエンザ薬の種類と特徴という所で一覧しております。

8 ページ目から現在の備蓄の状況を報告いたします。 8 ページ目ですが、タミフルは平成 28 年度からドライシロップを 55 万人分、国のほうで購入予定となっております。タミフルの有効期限は、以前は 7 年だったところを 10 年に延長しています。小児の量は、 1 人当たりの治療量として 12 g、平均体重 18 gで換算した量です。

9 ページ目、吸入薬のリレンザ及びイナビルの備蓄状況です。リレンザは備蓄の目標量が国のほうで充足していますので、切替時に時期を見ながら、イナビルは順次切り替えていくというように考えております。ラピアクタは点滴静注薬であり、重症患者等に使用されることが想定されるため、優先的に備蓄を開始することとなっております。平成 28 年時点から購入いたします。

 最後に、抗インフルエンザ薬についての備蓄方針に関する検討事項として、審議会、分科会から御意見を頂いているところですが、継続して検討する事項として、以下のようなことに対して技術的な調査研究を進めるということです。検討事項としては、季節性インフルエンザとの同時流行、新型インフルエンザの被害想定と患者の治療、当初、現在の備蓄のほうで考えられた重症患者への倍量・倍期間治療についてのデータを収集する。

 予防投与、効率的かつ安定的な備蓄の在り方ということで、検討する事項の概要については 12 ページで示しております。基本的には研究班等で引き続き技術的な調査研究を含めて、効率的、安定的な備蓄の在り方等は事務局のほうで適宜、整理させていただきながら進めていきたいと考えております。事務局からの説明は以上です。

○岡部委員長 抗インフルエンザウイルス薬の備蓄になりますが、これについて御意見がありましたら、どうぞお願いします。

○大久保委員 抗インフルエンザウイルス薬の備蓄について、ただいま御説明のあったとおりなのですが、前回のこの会議で幾つか問題点もいただいたままになっているものがあります。国民の 45 %の問題、これが妥当な数字かどうかという点もありますし、倍量・倍投与はその必要性があるかどうかという御意見も伺いました。そういうことと、季節型との同時流行において、本当に我々が現在想定しているような患者数になるかどうかということもあります。日本の特殊性といいますか、かなり流通備蓄が多いという状況、増えてきているわけです。そういう諸問題がまだありまして、これは十分回答できる状況にはなっていなくて、先月、 7 月にも班会議をもったわけですが、具体的な数字を検討されたわけではなくて、新しい薬の説明を伺って知識を増やしたという状況で、その後、具体的な数字が出せない状況になっている次第です。

○岡部委員長 先ほど研究班会議で検討すると言ったのが、先生の所の研究班になるわけですね。これの前の委員会のときでも、ラピアクタなどについて議論があって、こういう実際の治験はパンデミックでなくて季節性インフルエンザを指標にしなくてはいけないのですが、一応、国産のものだとすれば、海外ではできないのだから、やはり日本としてはちゃんと良い、悪いの効果安全性について、きちんと出すべきではないかという議論があったと思います。そのようなことも先生の研究班のほうでテーマとして引き受けられているのでしょうか。

○大久保委員 そうです。

○岡部委員長 ありがとうございました。

○山岸新型インフルエンザ対策推進室室長補佐 厚生労働科研究と AMED の研究班で、当該の案件にかかっている研究班の先生方の所に、個別にそれぞれの案件についてお願いして進めているところです。まとまって、作業班、小委員会のほうに御相談できるタイミングになったときに、また御相談するという形にしたいと思っています。

○岡部委員長 なかなか明らかな成果が出てくるというのは難しいだろうと思うのですが、それはそれなりにどのような状況にあるのかというのは進捗を委員会に報告していただけると、委員会としてもその後の議論の進め方がやりやすいのではないかと思いますので、よろしくお願いします。その辺、事務局のほうからも資料として、データを頂くような形のことを求めるようお願いします。

○大石委員 ラピアクタなどの具体的な重症例に国家が合うのかどうか、そういった臨床研究がオンゴーイングということなのでしょうか。何かそういうスタディが組まれているのか、まず教えていただければと思うのですけれども。

○大久保委員 会議の中ではそういうスタディをしているというわけではないのです。そういう重症患者さんを扱っていらっしゃる治療経験についてのお話と、そういう状況です。

○谷口委員 抗インフルエンザウイルス薬備蓄の中で耐性が出た場合、つまりタミフル耐性、恐らくラピアクタにもクロス耐性だと思うのですが、その議論はなされているのでしょうか。あれば教えていただければと思います。

○大久保委員 それについても耐性についての議論はしていますが、具体的な数字等は出てきておりませんので、分からない状況です。

○岡部委員長 耐性に関するデータそのものは、治験でやって、感染研でまとめてというのは出ていますから、今のところ 1 %以下でしたか。耐性としては、現在の状況では季節性インフルエンザに関してはオーケーということですが、その新しいのがどうかというのは、まだそこは不明な状況なのですけれども。

○大石委員 亜型の違いで、季節ごとに多少は違うのかもしれないのですが、どのぐらいの重症例、入院例で抗インフルエンザ薬を使用していて、そういうケースがあるのかなどといったことについては、例えば谷口先生がもっておられる研究班とか、そういったことで何か資料になるものが取れていませんでしょうか。

○谷口委員 もちろん入院サーベイランスは感染症法の中でもやっていると思いますが、私の研究班でも一例一例詳しく見ているわけではなくて、いわゆるインディケーターとして全インフルエンザ退院患者数における全インフルエンザ死亡数という形で見ています。ただ、詳しいところまで一例一例検討していくというのも、今後 NHO のデータベースの中で考えているところではあります。

○大石委員 つながりでよろしいですか。今おっしゃった入院サーベイランスのほうからも、データは非常に限られているので、とりわけ抗インフルエンザ薬使用についての情報を取るのは非常に難しかろうとは思うのです。もう少し情報量が多くなるような、有用な情報が取れるような入院サーベイランスに少し変えていく必要があるのではないかとは我々も考えております。

○大久保委員 今の重症例について、我々の班の検討ではウイルス量が多いとか、そういう意味での重症化の問題と、もう 1 つは重症例若しくは易感染状態の方への感染という意味での重症化があるものですから、むしろそちらのほうが臨床的には大きく前へ出てきて、それに対する治療としてこのラピアクタなどが有用だろうと。そういう方向の意見が多いと思います。

○押谷委員 ここにラピアクタ点滴静注薬であり、重症患者等に使用されることが想定されるとかと書いてあって、使いやすいという意味なのだと思うのですが、重症化例に使って効いたというエビデンスは、現時点ではほとんどないと思うので、その辺の誤解がないようにきちんと整理をしておく必要があるのかなと思います。そういうエビデンスが出てくることが必要なのですが、本当に効くのかどうかという問題もありますが。国が重症例にラピアクタをエビデンスに基づいて推奨しているみたいな誤解を与えないようにする必要があるのではないかと思います。

 もう 1 点なのですが、薬の備蓄の幅が広がってきて、備蓄の 1 つの目的として、予防投薬がありますが、これまでの話というか、これまでの考え方としては、予防投薬にはタミフルを使うということで議論がされてきたように記憶しているのですが、ほかの薬剤を予防投薬、例えば 1 回投与のものを予防投薬に使うことが適当なのかどうかとか、そういうことも含めて、この予防投薬に対してどれを使うのかというような整理はできているのでしょうか。

○山岸新型インフルエンザ対策推進室室長補佐 単回ではないですが、 2 日間の投与で薬事承認されている薬剤はあります。ただ、薬が多様化する中で、どの薬をどのような位置付けというので、今まで検討してきたことは、先生がおっしゃるとおり、ないというのは現状だと思いますので、今後の課題かなと今考えております。

○岡部委員長 ガイドラインなどでも、予防投与は大々的には進めていなくて、やはりある一定のリスクの高いときであるとか、初期であるとかで、余り予防投与を前面に出してしまうと、あっという間にものがなくなってしまう可能性があるので、その辺は十分注意したほうがいいと思うのです。ただ、実際にやったところの事実を積み重ねていく必要はあるので、これもモデルとしては季節性インフルエンザをモデルにしなくてはいけないので、そういうデータは積極的に集めていただければと思います。ここのグループでの議論ではなくて、これも公衆衛生になるのか、どこになるのか、はっきり分かりませんが、限られた数の備蓄のときに、重症例に使う、どれが重症だというのは必ず起きてくると思うのです。臨床の現場でいれば、本当は重症になる前に使うべきだし、データを取ろうとすれば、重症化例であればあるほど、恐らく効果は悪くなるはずですから、その辺の判断が非常に難しくなるとは思うのですが、ある程度どういう症例のときに使えるのだという指標みたいなものだけでも出ていかないと、重症です、はいと言って、備蓄の薬がどんどん使われてしまうと、これはまたすぐなくなる可能性があるのです。その辺は非常にバランスの難しいところですが、ある程度メルクマールになるものも作り出していかなくてはいけないと思うのですが、これはやるとするとどの辺がやるのですか。この委員会ではなさそうな気がするのです。この委員会は備蓄量を決めたりするのですけれども。

○山岸新型インフルエンザ対策推進室室長補佐 重症の考え方ということですか。基本的には医療・医薬品作業班のほうで、臨床的な使い方、それぞれの薬の特性を評価した上での位置付けというところについては、まずは技術的なところはそちらのほうで検討されるのかなとは考えております。

○岡部委員長 では、この委員会としてはそちらの委員会、技術評価ですか。薬剤を使うほうの検討委員会のほうで議論していただきたいというお願いをしておきたいと思いますが、よろしいでしょうか。先ほど重症例を含めて、季節性インフルエンザにおけるというのは研究班でお願いすることになるので、その辺も蓄積をやると。それから、蓄積をやるためには、研究班がスムーズに動くようにしなくてはいけないので、そこは事務局のほうがサポートしていただかないと、多分動きにくいと思うので、是非よろしくお願いします。ほかに、今の備蓄のことに関してはいかがでしょうか。今日の議題としては一応このぐらいです。全体で何か比較的余裕をもって終わりそうではあるのですが、今回のプレパンの問題、それから抗インフルエンザ薬、パンデミック全体になると思うのですが、結論を出すとか議論でなくてもいいのですが、今の課題とか、あるいは問題点、何か御意見がありましたらどうぞよろしくお願いします。

○押谷委員 これは前にもちょっと言ったと思うのですが、この会議でも議論しているのは大半がプレパンデミックワクチンの話と抗インフルエンザ薬の備蓄の話で、特措法も新型インフルエンザ等となっていて、ほかのものの可能性もあって、非常に汎用性の低いところの議論が、特にプレパンデミックワクチンは H5N1 というパンデミックが起きたときに限定してしか使えないもので、抗インフルエンザ薬の備蓄は新型インフルエンザ、インフルエンザで、しかも抗インフルエンザ薬は効くものという限定でしか使えないもので、それ以外のところを本当はもっときちんと議論を。だから、先ほど岡部先生もおっしゃいましたが、公衆衛生部会でやるべきところが積み残った部分がかなりあって、今、都道府県がきちんと体制ができているのかとか、もし本当に起きたときに保健所のこととか、地域での対応がきちんとできているのかとか、そういう整理を一度きちんとして、何が足りなくて、どういうことが必要なのか。

 これも前に私も言ったと思うのですが、これだけのお金をプレパンデミックワクチンと抗インフルエンザ薬の備蓄に使っている、せめて 10 %でも、地域での対策などに使えたら、もっと何かができるのかなと。本当は 2009 年の新型インフルエンザ対策の反省会の最後の提言にも、そのことが書いてあると思うのですが、そこの部分が本当に今どれだけできているのか。人材育成だとか、そういうことがそこに書いてあったと思うのですが、地域での対策とか、そういうことが本当にどこまでできていて、この 10 年間でどこにどういう進展があったのかというのは、今よく見えてこないと。その辺りは、きちんとどこかで整理をして、何をしなければいけないのかということを、どういう予算を付けなければいけないのかということも含めて議論する必要があるのではないかと私は思っています。

○岡部委員長 内閣官房のほうでやっているのでも、総合的な話と言いながらも、今、実際は多くはシミュレーションであったり、住民接種とか、あるいは特定接種を動かすのにどのようにするか。それから、アウトブレークが起きて、それに対して今の特措法を使いながら、どのように行政が動くかということの議論のほうが多くなってきているので、先生がおっしゃったような根本的にパンデミックをどのように考えるのかというのはなかなか。以前からの流れで言うと、厚生労働省の会議でやっていることのほうが多かったので、余り突き詰めた会議は推測があるので、なかなかやりにくかったり、あるいは資料を取りにくいのかもしれませんが、そういったことを少しずつ、これは公衆衛生なのですか。公衆衛生か、あるいはその上の新型インフルエンザ委員会でしたか、その辺でラフでもいいから、いろいろな議論を積み重ねていって、そこで結論まで出なくても、現状などの分析はやったほうがいいと思うので、その辺も事務局のほうで少し調整を考えていただければと思いますから、よろしくお願いします。この委員会でそれをやるのは、ちょっと無理ではないかと思うので。

 そのほかいかがでしょうか。あるいは、今日余り御発言がなかった宇田先生、保健所の立場としては、今日の全体のところから見て、何か御意見がありましたらお願いします。

○宇田委員 ワクチンに関して、特に保健所のほうからコメントを申し上げるようなことはなかったのですが、最後に押谷先生に御指摘いただいた新型インフルエンザ、あるいは新型インフルエンザ等の新しい感染症が我が国に入ってきたときの地域の体制が果たしてどう動くのかということに関しては、保健所長会もそうですが、県も医師会も含めて、あるいは市町村も含めて、きっちりと評価ができているかというと、なかなか評価ができていないのが現状ではないかと思います。やれている所は、例えばいろいろなシミュレーションを、国が作ってくださったビデオだとか、そういうものを 1 つのフェーズごとに使いながら、消防だとか、医師会だとか、感染症指定医療機関だとか、そういう所と連携を図る訓練みたいなものはやっていますが、果たしてそれで我が国全体のパンデミックに対応できるかどうかということもありますし、そういう訓練をどのぐらいの所でどういう規模でやっているのかと。

 例えば大規模集団災害の場合などには、災害医療センターなどが広域で訓練をやったりしているのですが、そういう訓練は感染症に関しては余りやられていないのではないかという気もします。ですから、現状把握と、もう少し都道府県を超えた広域での訓練みたいなものもやりながら、現状評価をして、少し改善すべきところは改善していくといったことをしていく必要があるのかなというのは、先ほど御意見を伺いながら、ちょっと考えていたところです。また、厚生労働省のほう、あるいは私たちのほうでも、様々な研究事業などがありますので、その中で保健所長会として,どのように全体的な課題を評価して、シミュレーションを組んでいけばいいのかということも含めて検討する必要があるのかなと思いました。

○岡部委員長 坂元先生、自治体のほうは何かありますか。

○坂元委員 今、宇田先生が言われたとおり、自治体の中にもかなり温度差があって、比較的そういう訓練とかシミュレーションみたいなことをやっている所と、そうでない所があって、押谷先生が言うように、今どこまでそういう対策がやられて、各自治体でどのようにやっているかというのは、確かにそういう集積的なものは余りないような気がします。だから、どこかで例えば行動計画とか、行動計画に従って、各自治体がどんな対策を実際に取られて、どんなことをやったかとか、 1 回、発表と言ったら変ですが、まとめみたいなことをどこかでやっていたほうが、それぞれ進捗状況が分かると思います。保健所というのは非常にキーになる場所で、保健所の危機管理体制とか、そういうものがキーになると非常に思っています。なぜなら、一般の人が何か感染症とかあると、思いつくのはやはり消防署ではなくて、私は保健所だと思うので、保健所の在り方とか、もうちょっと保健所をちゃんと国民に見てほしいと。保健所というのは非常に重要なのだというところで、私は保健所というものをちゃんと見るべきではないかとは思っております。

○宇田委員 感染症法上は保健所、都道府県単位で様々な対策が講じられる。それをバックアップする国の役割が記載されているのですが、感染症、特にこのパンデミックとそれに類する広域感染症が発生した場合には、やはり都道府県単位での訓練もそうですが、集団災害みたいなものと同様に、複数の都道府県単位、あるいはブロック単位で対応することが現実的に求められるというシチュエーションもあると思うので、そういうシミュレーションなどもどこかが示していただいて、やりながら課題を抽出して、スキルを上げていくことも必要なのかと思いました。

 それと確かに保健所が感染症法上の前線基地ということで、法的には位置付けられているのですが、保健所も一生懸命頑張りますが、必ずしも感染症だけをやっているわけではないので、人材の育成という観点では自助努力も必要ですが、バックアップ体制があるといいなと思います。毎年、要望書等も出させていただいているのですが、例えば保健所の職員を感染研とかそのような所に一定期間、研修をさせるというアイディアはあるのですが、実際に出す必要な期間が結構長いと。例えば FETP なども 2 年。そうなると、職員を出すことが現実的には難しかったり、予算の都合もあったりします。なので、今いる保健所の職員、あるいは都道府県庁に勤務している MD などの技術職員を、どうやって研修に行かせられるのかということも、都道府県単位で考える話と、国が考えていただく話と、両方検討する必要があるのかなと思います。また,もしアウトブレークが発生したときには、 FETP など、外部のシンクタンクの方々にお出でいただいて、いろいろと調査をしてくださったり、あるいは調査の結果を解析して、然るべき対応について御助言いただいたりしていることもありますが,、麻疹だとかそういうような、割と限られたアウトブレークに関してはそれで対応できると思うのですが、国全体に蔓延するような非常に大きい感染症などが、それぞれの地域で同時発生的に起きた場合に、国のほうで FETP のような専門家の方々がそれぞれ県、地域をサポートしてくださるような、そういうバックアップ体制も、是非、国としても作っておいていただきたいと思います。バックアップしていただけるものがあると、地域のほうももうちょっと何とか頑張れるようなところがあるので、人材支援と育成に関するいろいろな取組はやはり国の役割だと思いますので、その辺をちょっと、どういう方法があるのかということも含めて、またいろいろとお知恵をお借りできれば有り難いなと思います。

○岡部委員長 エボラをきっかけに国際のほうは人材育成であったり、いろいろ動いていると思うのです。それはそれでいいと思うのですが、国内対策ができる人材をもうちょっと伸ばしていかないと、肝心なときに動ける人が少なくなってしまうといったこともあるので、是非その辺を含めて、その辺になると大石先生に一言言ってもらわないといけない。

○大石委員 突然、国内の感染症対策の話になって、あれと思ったのですが、宇田委員のほうから御指摘のとおり、地域の感染症対策について、感染研として支援していきたいという気持ちは大変ありますが、一方では 2 年間の研修期間では FETP の研修になかなか出せない状況があることは、我々もよく了解しております。仕組みについては、現在検討を進めているところで、ここでは明言はできないですが、いろいろな形で全国保健所長会、そういったところの組織から要望がありましたら、短期間でも結構ですし、初期導入コースというのは 4 月に 1 か月間、導入コースをやっておりますので、そういった期間でも一定の効果はあると思います。また、実際のアウトブレーク調査については、感染症法上の 15 条にのっとらない形でも、いろいろな形で支援はできますので、是非活用していただければと思っております。よろしくお願いいたします。

○谷口委員 またかと思われるかもしれませんが、パンデミック対策も危機管理の 1 つで、国際保健規則によって、 core capacity requirement というのはきちっと決まっているわけで、それを peripheral level から intermediate national level まで、一応、基準があるわけですね。我々はアフリカとかの国に行って、その国の core capacity requirement を充足するための予算を頂いてやっているわけですが、日本国内で peripheral level まで core capacity requirement ができているかというところも問題だと思いますので、そういったところからも考えていただければなと思います。

○岡部委員長 釜萢先生、担当になられてまだ日が浅いとは思うのですが、地元でもやってこられたと思うので、その辺も含めてお願いします。

○釜萢委員 今お話を伺っておりまして、 2009 年の新型インフルエンザのときには、地元の医師会長を務めておりまして、海外からの情報は非常に重症で、アメリカなどでもかなり最初の段階は死亡率が高いという情報の中で、どのように地元で動くかということで、 1 人出ると大騒ぎをしておりました。幸いに、あのときは日本国内の様子は落ち着いてきましたのでよかったのですが、その辺りのことを考えますと、今この委員会で議論されているプレパンデミックワクチンの位置付けについて、しっかり今の形で、こういうスキームができて動き始めると、なかなか見直すというのは大変なのですが、プレパンデミックワクチンを今後どのように動かしていったらいいかというところをしっかり見直す必要がありそうだなということを強く感じました。やはり用意はしなければいけない。だけども、本当にそれが意味がどのぐらいなのかということについても、きちんと考えなければいけないなと感じました。

 特定接種については、この委員会とはちょっと違うかもしれませんが、実際に接種を担当する立場になりますと、 2009 年のときもなかなかワクチンが供給されない中で、とても現場は混乱、苦労しました。今後そのように急激に大量のワクチンを投与しなければいけないという場面において、投与する医療の医師・看護師等の接種体制が十分できているとは、ちょっとまだ思えませんね。医療従事者等に対する最初の上のほうはいいのですが、社会基盤を混乱させないように、例えば企業などの人に一斉に打つというところも、実はまだ十分どのようにできるかというところまでの準備は各地域でできていないように思いまして、それは早急に更に体制を整えなければいけない、医師会としてそのために十分力を尽くさなければいけないと感じております。

 もう 1 点、今日も岡部先生からもお話がありまして、抗インフルエンザウイルス薬の予防投与については、余り積極的に進めないということで、そういう方針。そのために備蓄分がどんどん消費されてしまうのは、とても問題ということはおっしゃるとおりです。予防投薬の場合には、基本的には医療費は自費負担ということになるだろうと思いますので、そんなに増えないかもしれませんが、希望者はかなり出てくる中で、限られたワクチンをどのように使うかというのは、現場としてはとても大変、どのようにしたらよいのかというところがあります。

 ですから、治療に必要な抗インフルエンザ薬を、優先順位をどう付けるかということも、もちろんとても大事ですが、一方でまた予防というところで非常に希望者が増えてきた場合にどうするか。予防は基本的にはもう無理だという場面も出てくるだろうと思いますので、その辺りをもう少しきちっとした指針を幅広く周知させておく必要があるかなと感じました。以上です。

○岡部委員長 いろいろフリーなところのディスカッションもできたので、逆に課題が浮かび上がってきたようなところがありますが、先ほどの公衆衛生ワーキングであるとか、あるいはこの親の委員会であるとか、あるいは官房のほうとの話合いをやりながら、もうちょっと細かいところの議論のほかに、大きいこれからのパンデミック対策ということを、そういう室があるので、その中で議論を進めたり、我々もそれにできるだけ協力をして、新しいものを作っていきたいと思いますので、どうぞよろしくお願いいたします。

○野田新型インフルエンザ対策推進室長 事務局としましても、課題がまだまだ山積ということは認識しておりますので、引き続き事務局としてちゃんと整理をしながら、着実に解決していくようにやってまいりたいと思います。

○岡部委員長 よろしくお願いします。

○野田新型インフルエンザ対策推進室長  1 点、冒頭、委員長から御発言がありました、委員長が事故があるときに職務を代行する者についてですが、参考資料 3-2 と参考資料 3-3 を御覧ください。小委員会の設置についてと感染症部会の運営細則です。まず、小委員会の設置についての 3 ですが、小委員会の運営については、厚生科学審議会感染症部会運営細則に定めるところによると書かれており、更に参考資料 3-3 の第 4 条の第 3 項に委員長に事故があるときは小委員会委員のうちから、あらかじめ委員長が指定した者がその職務を行うという形になっております。これまでは委員長より庵原先生が指名されていたという状況ですので、また委員長から御指名を頂きましたら、その方が職務を代行するという形になりますので、よろしくお願いいたします。

○岡部委員長 それは私のほうが指名するという形で、事務局と相談して、先生方には後でお知らせして承認いただくというようにしたいと思うので、よろしくお願いいたします。今日のところの最初の作業班からの提案については、それをこの委員会では承認をし、それで感染症部会に上げるということ。それから、抗インフルエンザウイルス薬の備蓄については、現状について我々も情報も得たというところで、今日の会議のまとめにしたいと思います。課長のほうからは何かありますか。

○浅沼結核感染症課長 今日も盛りだくさんの議論をいただきまして、ありがとうございました。この新型インフル、特にパンデミックは 2009 年から考えれば、もう 10 年近くたっていまして、我々政府はそれからいろいろな準備をやってきました。特措法ができたり、備蓄もかなりするようにはなってきていますが、確かに 10 年たって、また見直さなければいけないタイミングに来ているのかなと。その根本になるのは、やはり被害想定がどうあるべきで、それに伴って自治体の皆さんと一体どのような対応をしていくかということに尽きるので、我々のほうも内閣官房をはじめとする関係の皆さんと調整して、また個別課題に取り組んでいきたいと思いますので、どうぞよろしくお願いします。

○岡部委員長 それでは、事務局のほうから次回、その他のお知らせがあったらお願いします。

○山崎新型インフルエンザ対策推進室室長補佐 次回につきましては、日程等が決まり次第、追って御連絡させていただきます。事務局のほうからは以上です。

○岡部委員長 それでは、今日の会議は終了したいと思います。どうもありがとうございました。


(了)

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