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2016年7月8日 第10回HTLV-1対策推進協議会

健康局結核感染症課

○日時

平成28年7月8日(金)13:00~15:00


○場所

砂防会館 穂高会議室


○議題

(1)取組(自治体)ヒアリング
(2)HTLV-1 の啓発・普及活動について
(3)研究報告
  1. HTLV-1 の感染状況について疫学データの更新
  2.HTLV-1 関連研究について5年間の総括と今後の対策への提言
(4)今後の対策に関する意見交換
(5)その他

○議事

○結核感染症課長補佐 ただいまより、第10HTLV-1対策推進協議会を開催いたします。健康局結核感染症課の野田でございます。よろしくお願いします。

 始めに、構成員の出席状況を御報告いたします。本日は稲葉構成員、小森構成員、齋藤構成員、森内構成員、吉田構成員より御欠席の御連絡をいただいております。定足数以上の委員に御出席をいただいておりますので、会議が成立しますことを御報告いたします。

 本日は、参考人として4名の方に出席をいただいております。東京大学大学院新領域創成科学研究科メディカル情報生命専攻病態医療科学分野、内丸薫教授でございます。

○内丸参考人 内丸でございます。どうぞよろしくお願いいたします。

○結核感染症課長補佐 富山県厚生部健康課副主幹・母子歯科保健係、角園子係長でございます。

○角参考人 どうぞよろしくお願いいたします。

○結核感染症課長補佐 国立感染症研究所血液・安全性研究部、浜口功部長でございます。

○浜口参考人 浜口です。どうぞよろしくお願いします。

○結核感染症課長補佐 公益社団法人日本医師会温泉川梅代常任理事でございます。

○温泉川参考人 よろしくお願いいたします。

○結核感染症課長補佐 事務局の異動について御報告をいたします。審議官が橋本に、母子保健課長が神ノ田に、難病対策課長が平岩に、がん・疾病対策課長が渡辺に異動となっております。

 次に、事務局より資料等の確認をいたします。議事次第、配布資料一覧、構成員名簿、座席図のほか、資料14、参考資料12を御用意しております。配布資料一覧と照らして不足の資料がございましたら、事務局までお申しつけください。

 では、冒頭のカメラ撮りにつきましてはここまでとさせていただきます。御協力をお願いいたします。以降の議事運営については、渡邉座長にお願いをいたします。よろしくお願いします。

○渡邉座長 まず最初に、議題の確認から入りたいと思います。本日の議題ですが、議題(1)取組(自治体)ヒアリング、議題(2HTLV-1の啓発・普及活動について、議題(3)研究報告として1.HTLV-1の感染状況について疫学データの更新、2.HTLV-1関連研究について5年間の総括と今後の対策への提言、議題(4)今後の対策に関する意見交換を予定しております。構成員の皆様には円滑な議事進行に御協力をよろしくお願いいたします。

 それでは早速ですが、議事に入りたいと思います。議題1取組(自治体)のヒアリングについて、角参考人より資料1の説明をお願いいたします。

○角参考人 よろしくお願いいたします。富山県厚生部健康課からまいりました角です。

それでは資料12ページをお開きください。富山県でのHTLV-1母子感染対策の体制ができるまでということで、簡単にこちらのほうに掲載をさせていただいております。平成231月、本県は15市町村のうち中核市1市となっておりますが、妊婦健診のHTLV-1の抗体検査を平成231月より全市で実施をしているところです。その後、本県はHTLV-1の非感染地域ということですので、地域における保健師や医療機関の関係者に対しての研修会を23年、24年に開催させていただき、まずは関係者への知識の普及・啓発に努めてまいりました。その後、協議会を立ち上げて、富山県の方針というものを決めたところです。平成241月にマニュアルを作成し、その後、第2版を平成253月に作成しておりますが、これは母子保健が市町村のほうに移譲したことに伴う改定ということが主となっています。

 資料3ページ、富山県HTLV-1母子感染対策の体制図です。こちらのほうは協議会の協議の中で体制を決めたもので、現在の体制図です。左側から母と子の出産から3歳になるまでで、どのような関係機関が連携を取っているかというものがこの体制図で御覧いただけるかと思います。左からいきますと、産科の医療機関のほうでHTLV-1の抗体検査をして、ウエスタンブロット法等で陽性となった方に関して、御希望のある方について富山県におきましては、HTLV-1母子感染対策専門医療機関を富山大学附属病院、富山県立中央病院に指定しており、母と子に対するカウンセリングや、母乳指導、栄養方法の確認等ということで、切れ目ない支援をしているところです。左の産科医療機関の下のほうになりますが、紹介を実施、希望しない場合もお母様方の中にはいらっしゃいますので、地域の開業医の先生方におかれましてもカウンセリングや母乳栄養法についての指導も行っていただいております。

 右のほうは地域の連携の部分になっています。市町村に母子保健が移譲しておりますので、行政としては市町村の保健センターが主となって、母と子への支援を行っております。専門医療機関あるいは地域の医療機関のほうからは、HTLV-1の感染で希望、同意があった方に関しては、後ほど出てきますが、未熟児等出生連絡票というものを用いて、出産後、地域に戻られましてから市町村の保健師のほうでハイリスク児訪問等の支援をしております。

 一番右端が、富山県では厚生センターと申しておりますが、いわゆる県型の保健所、あとは中核市の富山市保健所となります。こちらのほうは広域的な支援で、周産期の地域連携ネットワーク事業等を通じて、市町村のサポートを、富山県の場合は4圏域ありますので、その中で圏域ごとの体制を作りながら、市町村への支援をしているところです。母子保健が市町村に移譲になったと言いますが、やはり市町村の保健師さんのほうでは極めて希なケースに関してはまだまだ不安があるということで、事例を共有しながら、県型保健所と一緒に訪問したり、事例検討をしたりということで、医療機関でどのようなカウンセリングが行われていたかというような情報も事前にもらいながら、切れ目ない支援をしている状況です。

 極めて事例が少ないですので、各市町村では地区担当制を取っているのですが、地区担当の保健師のほかにも全保健師で事例を共有し、県型保健所とも連携しながら、1事例1事例を大切に、支援方策を検討し、情報共有をしているところです。

4ページです。こちらからは少し具体的にお話をさせていただきます。富山県における体制の工夫の○1です。こちらは妊婦精密健康診査の受診申請書ということで確認検査、ウエスタンブロット法(WB法)を行った場合は市町村の妊婦精密健康診査を活用できるようにしたところです。これを活用することは、こちらのポツで書いていますが、市町村の保健センターの窓口に申請に行かれることになりますので、その申請に来られた段階で、窓口の市町村保健師のほうで、できれば地区担当の保健師になりますが、お母様と面接をして今後の訪問のお約束をしたり、支援ができるというような辺りを具体的にこの段階で、ファーストコンタクトを取って支援の開始となります。

 医療機関とも、また後ほど御説明しますが、未熟児等出生連絡票等も活用しながら、こちらの妊婦精密健康診査受診申請書等も活用し、受診結果の把握が可能となること、それを持って医療機関に不明な点がありましたら、これはどういうことですかというようなことでお問合せすることで、連携を取ることができます。未受診の場合には、申請書をもらっていかれたにもかかわらず、未受診でなかなか結果が返ってこないときは、地区担当保健師のほうで個別フォローをして、受診の勧奨をしたり支援を行っております。あとは経済的負担の軽減になります。

5ページです。富山県における体制の工夫の○2です。こちらは結構富山県で従来から実施している未熟児等出生連絡票ですが、先ほどの体制図の中にも出てきたのですが、病院から市町村へ連絡をするという連絡票になっています。こちらの左側に○2とありますが、出産後の母乳対応、特に短期母乳、凍結母乳が大変ですので、退院時に市町村保健センター、中核市保健所、県型保健所のサポートがあることを保護者の方にお伝えをし、同意を得られた方に関してはこの未熟児等出生連絡票に、こちらの右のほうに具体的に書いていますが、中ほどのところ、「入院中の経過」の「診断名」が少し不鮮明で申し訳ないのですが、こちらにHTLV-1を記載し、一番下のほうに「主な退院指導」等の欄がありますが、入院中の指導内容や、地域でどんな関わりをしてほしいなど、あとは母乳栄養法とか母乳管理法について、ここに具体的に病院のほうで記載をしていただきます。これを地域に連絡することで、サポートする体制を整えることができました。

 この体制によっていろいろな問題も明らかになってきたのですが、それらについては協議会で適宜諮ることになります。この連絡票を用いることにより、市町村と県型保健所とが積極的にキャリアの妊婦さんとコンタクトが取れるようになるメリットがあります。「訪問の結果」、これは病院から市町村へという連絡票ですが、反対に、訪問しましたら、市町村から結果を必ず病院に訪問の結果をフィードバックし、情報共有をしていることになります。こちらに関しても、富山県の場合は従来、昭和の時代からこの連絡票を用いており、もともと医療機関との連携がうまく取れていた状況でした。この連絡票を用いて、退院後の支援だけではなく、入院中から支援が必要な方に関しても院内面接をして、早期から関わることも体制として取っております。

 こちらはハイリスクのお子さんに関しての連絡票になっています。ハイリスクの妊産婦さんについても従来から連携を取っていて、適宜情報が入るようなシステムができておりました。

 左側の下のほうの箱の中の「結果」を見ていただきたいのですが、平成237月~平成273月の体制整備後に関して、では実際にこの連絡票を使って、どのくらいの事例があったかということで見ましたところ、19人中9人、47.4%の方が市町村保健師への連絡を希望され、市町村の保健師あるいは県保健師のほうで訪問をさせていただいております。9人全てで、やはり保健師の介入に好意的な意見があったと聞いており、例えばお母さんだけのフォローではなくて、長期的にお子さんのフォローですとか、精神的なフォロー、あるいは場合によっては御家族の方への支援というようなこと、幅広い育児支援など、そういった切れ目ない支援をしていただけるということで、とても良かったという御意見をいただいております。

 栄養法別の頻度では、この訪問連絡票を活用して、実際に短期母乳の方が4人、人工乳の方が4人、凍結母乳の方は0人、その他1人ということです。うち、この短期母乳で断乳が成功した方が4人中4人、全員ということで、一般的には短期母乳が長期母乳に移行することが多いと言われておりますが、本県では医療機関と地域が連携を取ることで、断乳の成功率が高くなっているのかなということを感じております。その他の1人ですが、長期母乳をお母様が最初から希望しておられ、医療機関のほうでは何度もカウンセリングをして、意思を確認しながら、お母様と御主人が合意されて、長期母乳に至った方がいらっしゃいます。カウンセリングを実施しての結果だったので、それはそれでよいのではないかということで、協議会の中では協議をしております。

6ページです。富山県における体制の工夫○3です。こちらは富山県産婦人科医会と全面的に協力をいたしまして、全施設44の医療機関がありますが、産婦人科の医療機関を対象に、HTLV-1の抗体検査の全例調査を実施しております。回収率は100%で、平成231月~平成273月までの抗体検査陽性の件数を掲載しております。この全例調査を実施することで、キャリアがいることが分かったということで、そのキャリアの方、全事例は協議会のほうで毎回協議をさせていただいております。

 一次抗体陽性では全例に確認検査が行われるようになったことと、確認検査の判定保留でもPCR法未実施事例があったのですが、全施設に通知した結果、全例でPCR法が行われるようになりました。これはやはり開業の医療機関の先生方も調査をすることによって、認識が高まったのではないかと思っております。陽性者のカウンセリング未実施の事例が1事例ありまして、やはりカウンセリングをしない理由をきちんと明確に教えていただく必要があるのではないかということで、平成26年度後期の調査より、カウンセリングをなぜしなかったかという項目を設け、記載していただくことになっております。協議会のほうでは、第2子以降についてもきちんとカウンセリングをしていただくということで、県の産婦人科医会を通じながら、先生方に周知をしていただいているところです。

7ページです。富山県における体制の工夫○4(研修会)で、平成23年~平成27年度までの開催状況を記載しております。こちらでは従来の知識を学ぶことも重要ですが、毎回富山大学の産科婦人科の齋藤教授のほうから御講義と、事例検討を行っています。やはり事例が少ないので、個別的なものとか、Q&A方式で具体的にどんなふうに対応したらいいかとか、対応がこれで良かったのかとか、そういったようなこともグループディスカッションを含めながら共有し、学びを深めているところです。

 最後のページを御覧ください。4、HTLV-1母子感染対策における評価及び課題を掲載させていただいております。本日具体的にお示ししなかったのですが、(3)普及・啓発では、厚生労働省さんのほうで出していただいております「母子感染を知っていますか」というようなリーフレットに、「保健師が個別に支援できます」ということを追記して、妊娠届出の際に全妊婦さんに配布をさせていただいたりしております。

 (5)、医療機関との連携ですが、こちらのほうはマニュアルを活用しながら関係機関の連携を深めていますが、今後の課題としては3歳児のフォロー体制をどうしていくかというような課題もまだ少し残っているということになります。

 (7)の陽性者への支援ですが、体制整備後におきましてはやはり地域と医療機関が連絡票等を通じながら連携をしておりますので、授乳の指導とか母子への継続したフォローが可能になっております。母乳管理法の地域への連絡とサポートも、新体制としては少しずつできてきているのかなと思っております。県といたしましても関係機関と連携を図りながら、今後も悩んでいる方ができるだけ早く相談をできるような窓口の明確化ですとか、切れ目ない支援ができるように、引き続き支援していきたいと思っております。ありがとうございます。

○渡邉座長 どうもありがとうございました。ただいまの御説明に関しまして御質問、御意見等ございましたら、お願いいたします。

○山野構成員 聖マリアンナ医科大学の山野です。素晴らしい発表をありがとうございました。3点ほどお伺いしたいのですけれども、富山県における体制の工夫○1で、WBをする場合に、こういうふうな形で公的なサービスでフォローしているということですけれども、実際にスクリーニング陽性の中で、こういうシステムを利用された方というのはどれぐらいの割合とか分かりますか。

○角参考人 すみません。本日データは持ち合わせていないので、具体的な割合は言えないのですけれども、できるだけ受けていただけるようにはしているので、利用される方は高い割合だと認識しています。

○山野構成員 開業医の先生方にこういうのが通知されていて、スクリーニングの場合はこれを渡してくださいみたいな感じになっているわけですね。

○角参考人 そうですね、はい。

○山野構成員 分かりました。あと○2のほうですがこちらの左のほうに、フォローアップ中の種々の問題点が明らかとなってきていると書いてあるのですけれども、非常に素晴らしい体制で、逆に分かってきたこの種々の問題点というところが何なのかと思ったのですが、そこをもし教えていただければ。

○角参考人 今回は短期母乳で断乳が成功した方が4人中の4人というような形で、成功率が高いということはあったのですが、お母様方の転出入があったりとか、里帰りがあったりということで、情報を市町村保健師のほうでは一生懸命取ろうと思っていらっしゃるのですが、途中で途切れてしまいそうになることもあったりするというような現状ですとか、最後に短期母乳で3か月までいかれて、その後どうなったかという確認が、当初体制整備前と比べますと確認が取れるようになってきたのですが、やはり意識しないと抜け落ちてしまうところがあるところも痛感はしております。

○山野構成員 それは3歳のときのチェックも含めて、そこら辺のその後が難しいという、抜けるところが多い。

○角参考人 それよりも、最初のほうに退院して来られまして、地域で支援する際に、当初は訪問ということで頻回に関わっているのですが、そのうちにお母様たちが仕事に働きに行かれたりとかすると、なかなか連絡が取れないようなことが出たりして、最後は何か月で終わられたかなというところは健診ですとか、電話を掛けたりとかで確認をしたりはしているのですが、そういう意味では、協議会の中で1事例ずつ毎回、年1回ですが、この人はどうなったのということで確認を取っているので、今のところは大きな漏れはないかなと思っております。

○山野構成員 分かりました。あと、一番最後のこの評価及び課題というところで、最終的に母子感染を予防するというところでの体制はかなり完璧な体制ができているなと、非常に感銘を受けたのです。そのお母さん、陽性というふうに告知された母親がどういう形でそのフォローされているのかとか、そこら辺受診の体制とか、連携の体制がどういうふうに構築されているかというのを教えていただければと。お母さんがキャリアで告知されたわけですが、自分側の健康を心配したときにどこに行くのか。

○角参考人 お子さんに関しては3歳まで一応小児科でということになっていますが、お母様に関してはその後やはりきちっと御自分の健康管理ということで、内科に掛かられるですとか、そういったことが継続的にできるようにということで、お話はしております。あとは市町村の健診では、少なくとも3歳児健診までは公的にやっておりますので、その中で必ずお母さんの健康についてその後の状況についても確認をしております。

○山野構成員 恐らく結構専門的な説明とか、そういうのがお母様に対して必要になってくると思うのですね。そうなったときに、そこまでその陽性者が多くない中で、例えば拠点みたいなのを決めて。そういう血液内科であるとか、そういう形で、その陽性者のお母様を、特に拠点でこういう医療機関に相談、各4つの医療機関があるとおっしゃいましたけれども、その医療圏ごとにそういう拠点を設けているかとか、そういうところはいかがですか。

○角参考人 資料の3枚目になります。母子感染の対策の体制図の中の真ん中になりますが、HTLV-1の母子感染対策専門医療機関ということで、富山大学附属病院と県立中央病院のほうに関わっていただいていることもありますので、そういった専門的なことに関しましては血液内科ですとか、神経内科のほうに受診を勧めたりというようなことで、協議会の中でも先生方に参画をいただいて、共有しているところです。

○山野構成員 ありがとうございます。

○木下構成員 産婦人科医会の木下と申します。このハイリスク妊婦の訪問という、そのハイリスクという意味はどういうふうな意味で使っていらっしゃるのでしょうか。

○角参考人 ハイリスクの妊婦さんというのは、結構若年の妊産婦さんであったりですとか、健診を余り受けていらっしゃらないですとか、精神的な疾患を持っていらっしゃるですとか。

○木下構成員 そこはHTLV-1におけるハイリスクという意味ではないのですね。

○角参考人 資料の何ページですか。

○木下構成員 資料の3ページですが、市町村保健センターに未熟児、ハイリスク児訪問とあるものですから。ハイリスクというのは、座長の渡邉先生も、このハイリスクをどう調べていくかというのはなかなか難しい問題があると、度々お話されておりましただけに、ハイリスクという言葉を使うにあたって、いわゆる産科的な意味でのハイリスクと混同しないようにしていただきたいと思います。

 それから、富山県では富山大学附属病院と県立中央病院の産科と小児科で全ての症例を集めて管理することが出来ているので、恐らくかなりしっかりしたデータが出ると思います。産婦人科医会としましても、それぞれの事情がことなっている各都道府県では、この協議会を中心にして、この体制をどうやって実現していくかということもいろいろと考えているのですが、大学病院など、なかなか1か所に集めるということは地理的な関係からも難しいところがあります。地元の小児科医界の協力を得て小児科の先生方とも協力してということを考えていますが、なかなか正直言って、実現しておりません。

 そういう意味で、この富山方式は、現実的かなという気がいたしますので、できるところは、さらに勧めてみたいと思います。それができないところは、地元の小児科の先生、産科の先生たちと協力しながら、更に核となる高度な医療機関を配置する体制作りをして、それに対して行政も保健所関係も全て関連してという仕組みができたらなと思っておりましたものですから、1つ参考にさせていただきたいと思います。

 一方、富山市から遠くに住んでいる方でも、現実的に富山の中央に出て来ることで、問題になることはないということですね。実行なさっているので遠くからでも市内の病院に来なさいということで、まとめていこうという話ですね。

○渡邉座長 今のお話は、結局富山県全体で見たときに、そういう専門家のいる施設というのを今2か所に指定していて、そういうことで十分そのセンターとしての機能が保つのか、果たしているか。それで大丈夫かというようなことになるかと思います。

○角参考人 富山県は比較的コンパクトでして。こちらの富山大学附属病院さんと中央病院さんは本当の中央に位置しているような状況でして、東から西から北から南から、大体1時間弱ぐらいで着けるような距離にはございます。ただ、先生に御指摘いただいたように、なかなか来られない、もちろん子育てをしているママになると、なかなか来られないという状況がありますので、そういう意味では協議会の中に小児科の先生、産婦人科の先生、開業医の先生にも入っていただきまして、共有しながら地域でも支援していただきます。でも必要なときにはこういった専門医療機関につなぐというところの御認識を、いつも持っていていただくというようなことを留意しております。

○木下構成員 ありがとうございました。

○渡邉座長 その他、菅付さん、どうぞ。

○菅付構成員 富山県はキャリアの方も非常に少ないところにもかかわらず、保健所との連携とサポート体制が非常にうまくいっているなと思います。19人中9人という、高い数字でフォローができているのですけれども、この連絡票というのは同意書とかいう形なのでしょうか。と言いますのも、鹿児島県の場合、昨年のデータでは75人のキャリアの母親がいたのですが、保健所への相談、保健所の保健師の方々はフォローアップをしようとして体制を整えているにもかかわらず、回ってきた数がわずか4名だったそうです。富山県は、産科の先生方との連携、フォローアップが非常によくできているのかなと思ったのですけれど、その辺を教えてください。

○角参考人 すみません、ちょっとこの未熟児等出生連絡票が不鮮明なので申し訳ないのですが。資料の5ページの連絡票の下のほうに、2行ほど書いてございます。こちらのほうに、市町村への連絡について同意されますかということで、ここの中でお母様あるいはお父様、保護者の方に同意をいただいているということです。同意が得られた場合は市町村のほうに連絡票を送付するということで、1枚の中で一応完結しているということになります。あとはこのHTLV-1のこの対策を始めたよりもずっと以前から、先ほどもちょっとお話したのですが、富山県ではもともと医療機関と地域とのその連携というのが従来よりされていたということで、風通しのよい連携があったということと、今回のこの協議会の中で、更にやはり確実にフォローしていかなくてはいけないという、皆さんの認識の下、支援をしているので、このような形で高い割合での連絡票と支援がされているのかなと思っています。

○渡邉座長 ありがとうございました。どうぞ。

○永井構成員 今御説明いただいた表で、全体で19人のうちの9人という話だったのと、次のページの陽性だった人が大体74人いて、期間を確認すると、このうちの74人のうちの最初の12人くらいは入っていないのだろうと思いますが、この辺りの連絡表を出す人と、ここで陽性になった人との違いはどうなのですか。

○角参考人 今、おっしゃっていただいた6ページの資料、平成231月から平成236月というのが、まだ体制整備を整える前の段階の状況で、私が今回、5ページに掲載の19人というのは、その後体制整備を一応整えた後のフォローの状況ということで19人になっております。トータルすると本当は25人いらっしゃるのですが、19人の状況を書かせていただきました。

○永井構成員 その後、これらの人たちについて、子供が結果的に感染しなかったという確認はどのようにして取られているのか、それはかなり難しいことだと思うのですが、その辺を教えていただきたいと思います。

○角参考人 先ほども申し上げましたが、体制を整えているというものの、3歳児の段階でどのような形でフォローするかというのは、いつも協議会の中で話題になっています。継続的に来られる場合は医療機関でしっかりと、小児科のほうで把握して支援していただいているのですが、受診が途切れた場合、医療機関からアプローチすることがなかなかできないという、個人情報の関係もありまして、そこは今後どのようにしっかりと最後の確認を取るか。市町村の健診も3歳児健診で公的な健診は最後になりますので、この辺りを今年度また少し深めていく予定にはしております。

○永井構成員 体制が出来上がっていない時期の、この表にある74人についてはかなり難しいだろうと思いますが、現在、確立していると考えられる体制においては、どのくらいの人について確認できるのか。例えば半分できるのかどうか、そのようなお考えはありますか。

○角参考人 紛らわしくて申し訳ありません。6ページのスクリーニングの変遷という全例調査は、抗体検査の結果の陽性で、その後のウエスタンブロット法やPCR法の最終結末まで掲載していない状況がありまして、一応、74名のうちの陽性になった方については、全て協議会に諮って、結果を追っているという状況です。

○永井構成員 ほぼ100%子供について確認できるということですか。

○角参考人 まだできていないところがあるので、そこは今後また体制をきちんとしていきたいと思います。

○永井構成員 ありがとうございました。

○渡邉座長 そろそろ時間ですが、基本的にいわゆるノンエンデミックエリアであるにもかかわらず、これだけのきちんとした体制を作って進めておられるということですが、問題としては、恐らく2つあって、1つは、ほかのノンエンデミックエリアでも同じような体制を構築することが、現実的に可能かどうかという問題。もう1つは、こういう体制がエンデミックエリアの体制としてもシステムとして適応可能なものかどうか。その辺が今後の議論の課題になるかという感じはします。

 私の感想ですが、やはり、こういうことができるためには非常にモチベーションを持ったリーダーシップを持って動いてくれる方がいて、初めて可能になることではないかと。ですから、機械的に同じことをいろいろな地域に適応しようとしても、そう簡単にはうまくいかないのではないかという感じはします。こういうものを1つのモデルとして、それをそれぞれの地域に合った形でどういうふうに構築していくかというのは、今後の個別の課題になると思いました。

 先ほど木下構成員から御指摘があったように、どういう施設でフォローしていくかという拠点といいますか、センターとなるべき場所ということに関しては、今後、全体としての大きな課題かと思います。富山県の場合はこういう形でうまくいっていると。しかし、それぞれの地域に合った実質的な体制を考えていかなければいけないだろうと、それぞれの地域の事情がありますので、それに合ったものをやらないとうまく機能しないという感じがしました。この課題に関しては、よろしいですか。

○塚崎構成員 今日、小児科の森内先生がお見えではないので、私は国立がん研究センターの塚崎ですが、短期母乳について、これは連絡表を活用した方においては、4分の4100%うまくいったということでしたが、全体でいかがだったのでしょうか。短期母乳を予定しても長期授乳となってしまう人が出てくる懸念があるのですが、全体のデータはありますか。うまくいかなかった人がどれぐらいいたか。

○角参考人 すみません、本日、そこの全体像のところはちょっと。

○塚崎構成員 本当に素晴らしい形で進められているところで、現状はどうなのか、もしまた分かりましたら教えてください。

○角参考人 はい。

○渡邉座長 それでは時間ですので、次の議題2HTLV-1の啓発普及活動について、菅付構成員から資料2の説明をお願いします。

○菅付構成員 先生、お願いがあるのですが、本日「すまいるんるんちゃん」というマスコットキャラクターがスタンバイしております。多くの記者の方に来ていただいておりますので、先に紹介をさせていただきたいと思います。

 「すまいるんるんちゃん」、入ってください。テーマミュージックも作ろうとやっているところですが、よろしければ拍手でお迎えいただけますか。

(拍手)

○菅付構成員 どうぞ入ってください。大丈夫でしょうか。来られるまでの間に13ページを先に開いていただけませんか。「すまいるんるんちゃん」のキャラクターについて説明をさせてください。どうぞ写真撮影をお願いします。

○事務局 座長、一瞬だけ、この間だけ写真撮影は許可したいと思います。

○渡邉座長 この間だけ写真撮影を許可します。

○菅付構成員 頭のハートは愛のハートパワーと言いまして、人を動かすもの、大切なものは、愛だよ、愛ということをアピールしております。思いやりのフードは、あなたを守ってあげる。大丈夫という気持を表しています。顔は黄色の希望の色で、希望の地球を意味しております。地球をくるんでいるのは、思いやりとやさしさのリボンです。腕のアームはオレンジ色ですが、夢を掴もうという意味合いで、赤の行動力と黄色の希望をミックスした色になっております。

 それを支える支柱のブーツは、紫色でるんるんちゃんの強い意思と、心と体のバランスを表しております。バランスと調整力です。これはお薬の開発に必要なことです。

 それから、活力のボディはハートを裏返して、血液の印でもあります。血液が流れることで、元気と勇気をいっぱいにしていこうと。そういうボディの意味と、色の意味を込めております。どうぞ、よろしくお願いします。

 それから、日本中にるんるんちゃんパワーを発信して、ゆるキャラとして愛される「くまもん」や「ふなっしー」をめざしています。どうぞよろしくお願いいたします。るんるんちゃん、ありがとうございました。

 それでは患者会からの報告、HTLV-1の啓発・普及活動について説明させていただきます。HTLV-1対策は、患者が訴訟を起こさず、国と協議しながら解決策を進めている前例のないケースであるにもかかわらず、治療薬の開発など、成果が上がっており、日本からウイルスの撲滅に向けて実現性の高い対策であると考えております。対策の推進が継続されるためには、国民に対して十分なウイルスへの啓発、理解が必要であると考えます。

 ほかの感染症との違いは、訴訟を起こしたわけでもない、身近に感じる危機感もない。世界的なメディアによる認知度も少ない。何より法律で縛られた施策がないことが一番のネックだと思います。なぜ日本にHTLV-1対策が必要なのか、国民へ理解してもらわなければいけません。母子感染予防対策は、ウイルスへの偏見をなくし、周囲が理解することが解決の大元であると考えています。

 ですから、スマイルリボンは啓発のために、国や地方の行政、マスコミの方、または民間企業として、医師や保健師などの協力の下に、そういう方たちを1つに動かしながら啓発を進めていく「媒体」という役割を果たしていると考えております。

3ページ、情報発信についてですが、ホームページとFacebookの活用をしております。イベントに参加して、できるだけアピールするように、オリジナルののぼりとTシャツやタオル、グッズの作成もしました。うちわも配付したり、スマイルバッジは手作りのバッジを作って、これを募金活動に当てております。

4ページ、2005年、法人を設立いたしましたが、それ以降啓発を目的とした広報活動をずっと継続しております。具体的には公的助成金事業を獲得して実績を作る。民間の助成金事業に応募して、助成金を獲得し実績を作る。常にマスメディアに新鮮な情報を伝え、報道していただいております。民間企業や民間団体との協力を得ることができて、今では民間の講演会開催主催や共催でお互いに協力し合って啓発活動をしております。国や地方との連携、医者や研究者との協力があり、シンポジウムの開催などを開いております。平成27年度の主な活動報告は、記載したとおりです。

5ページ、27年度の実績ですが、民間助成金を頂きまして、ATLのキャリアを含めた患者会の発足会を開催しました。まず、53日に福岡市からスタートしました。患者の掘り起こしとチラシ配付で、市民に啓発を訴えかけました。西日本新聞社からは告知記事を書いていただきました。

6ページ、次にたたみかけるようにですが、東京で患者会の発足会と講演会を開催しました。その発足の記事を共同通信によって全国へ発信することができました。7ページ具体的な様子の記事です。

 講演会や患者会などの発足をするイベントの意義としては、医療情報の発信と患者の掘り起こしのほかに、HTLV-1ウイルスへの関心を持ってもらうための啓発があります。そのためにはイベントを始める以前の宣伝、告知がキーワードになります。また、終了後の記事掲載により拡散されることが非常に影響力があります。啓発にはマスコミの力がとても大きいということです。

8ページ、これは地域のロータリークラブの主催で、HTL専門医の講演と活動について代表として講演をさせていただきました。このような地域との協力があり、啓発も進んできました。

9ページ、HTLV-1対策講演会は鹿児島県との共催で実現しました。ここにすまいるんるんちゃんも登場しております。

10ページ、53日の件は「ミラクル」という患者会を発足するための結束会のようなものでしたが、今度は先生方の協力を得て、HTLV-1対策講演会を開催しました。これによって駄目押しをしようと考えたわけです。HTLV-1を知らない人にも知っていただくように、NPOの設立10周年を大きく前提にして記事を書いていただきました。

 この講演会に関しては、内丸先生や山野先生、本当にこの協議会の先生方が協力してくださっております。塚崎先生も前回の講演会に来ていただきましてありがとうございました。講演会の様子の写真が11ページです。

12ページは雑誌記事の取材協力です。これも非常に大きな啓発になります。

13ページ、先ほど説明しましたが、色に形にと、愛情と願いを込めた、そういうキャラクターなので、この子が全面に立ってくれたら、きっとHTLV-1もポジティブな啓発活動として国民に入っていただけるのではないかと思っております。

14ページ、今後の予定ですが、すまいるんるんちゃんを使った広報活動をやりながら、鹿児島県の場合は11月をスマイルリボン月間と決めておりまして、鹿児島市の駅前にある観覧車を黄色に点滅してもらっております。10月にはシンガーソングライターの関島秀樹さんのチャリティーコンサートを計画しております。これからすまいるんるんちゃんが広報の先頭として活動をしていくつもりです。

15ページ、これは研究者と一緒にスマイルリボンも学会に参加して啓発活動をやっていこうと考えております。828日は市民公開シンポジウムで、患者の立場とキャリアが発表することになっております。3月の世界会議では、患者会の全国大会も一緒に予定しております。スマイルリボンのブースを持って、活動をアピールするつもりでおります。以上です。ありがとうございました。

○渡邉座長 ありがとうございます。大変アクティブな活動の状況をお伝えいただきました。この件に関して御質問、御意見等はありますか。

○石母田構成員 アトムの会の石母田と申します。菅付さんはスマイルリボンの活動を大変積極的に長い間に渡って続けてこられたのですが、なかなかその活動を続けていく上でも予算的にかなり厳しいと思うのです。もしできれば、厚労省などの後援などが頂けたら、もっと啓発が積極的にできるのではないかと思いますので、是非、御協力を頂けたらとお願いするところです。

○渡邉座長 そのほか、御発言はありますか。私から質問です。かなり全国いろいろ出掛けて、啓発活動をされておられる様子がよく分かったのですが、沖縄の取組はスマイルリボンのほうではどういう形になっているのですか。

○菅付構成員 今の書類の12ページに写真があるのですが、るんるんちゃんの中に入っているのは女性で、ATLの移植を受けられて、お元気になられた若い女性です。その方が7月の初めに沖縄で啓発の活動のために、るんるんちゃんを着てチラシ配りをしました。講演会などの話でしょうか。

○渡邉座長 例えば支部といいますか、そういう組織があるかとか、講演会などの活動を沖縄で進めておられるのかということです。

○菅付構成員 患者さんもキャリアも多くいらっしゃるのですが、特にATLの場合は本人が治療中で動けないので、第三者のフォローが必要だと思います。ですから、ミラクルというATLの患者会を作るのも非常に困難を極めて10年間たってしまい、考えた挙げく、元気なキャリアの方も含めた患者会を作ろうとやり始めたところです。しかしながら、沖縄は地域的に一番難しい所です。

○渡邉座長 質問させていただいた理由は、沖縄と鹿児島というのは、ウイルスの感染者の比率が一番多い地域ということになっていますので、こういう積極的活動を積極的にされているのを、エンデミックエリア全体にまず取組が広がっていくといいなと思ったもので、現状をお伺いしたわけですが、まだ、いろいろ事情があって、それほどうまくはいっていないというのが現状ということでよろしいですか。

○菅付構成員 そうです。

○渡邉座長 分かりました。そのほか御発言はありますか。なければ次の議題に移りたいと思います。

 議題3、研究報告にまいります。○1HTLV-1の感染状況について疫学データの更新ということで、浜口参考人から資料3の説明をお願いします。

○浜口参考人 国立感染症研究所の浜口です。資料3です。ただいまは、疫学のアップデートという話だったのですが、我々研究班の(1)の課題としてこれに取り組んでおります。研究班は、平成26年度よりスタートしております。この疫学研究に加えて、検査法の標準化をもう1つの大きな課題として取り上げております。今回は、検査法についての現状と、その後に疫学のアップデートについてお話します。

2ページです。平成26年度にスタートしたのですが、そのときの今後の課題として我々が考えていたものを4つ挙げています。1つは検査法の改善です。妊婦さんの診療・健診においてもこれが必要になってくるのではなかろうかということで、標準化を進めていく必要があると考えております。(2)は、HTLV-1感染の実態把握が必要です。特にこれをスタートしたときには、水平感染の実態については、ほとんどデータ解析が大規模に行われていなかったために、これに取り組んでみようということでやっております。併せて感染のメカニズムの解析についても、動物実験を並行して行っています。

 (3)と(4)については、その当時から大きな問題であろうと考えておりましたけれども、この研究班の中では取り扱っておりません。先ほどからありますハイリスクキャリアの早期同定を目指した、HTLV-1キャリアの前向き研究(JSPFAD)というのがありますけれども、こういうデータを活用して、実際にどういう方がHTLV-1関連疾患の発症をする可能性が高いのかどうかを明らかにしていくことが必要だろうと思います。(4)は、それに関連してですけれども、実際にハイリスクキャリアに対して発症予防をできるような薬剤の開発や実用化が望まれると考えています。(3)と(4)については、現状においても今後の課題だと考えています。

3ページです。我々の研究班の大きな成果として、核酸検査法の標準化を完了しました。先ほど来ありますように、妊婦さんの健診において陽性だった方、抗体検査で陽性だった方についてはウエスタンブロット法を確認検査で行っています。その際に大きな問題だったのは、黄色で示している判定保留例が非常に多いということです。例えば東京だと、その当時この確認検査を行った方の50%ぐらいが判定保留になってしまうという状況でした。この方々に対して、更なる検査法をきちんと準備する必要があるだろうということで、PCR法、核酸検査法の標準化を開始しました。

 標準化するというのは、どこの施設においても同じような結果が出る。しかも高感度でできるということを意味しています。その方法について研究班で検討し、この方法であれば間違いなく陽性である、若しくは検出感度以下であると診断できるようにし、それを報告いたしました。また、保険適用に持っていこうということで、関係学会にいろいろと働きかけをお願いし、本年4月に保険収載となりました。

 実際に保険収載に記載されている内容というのは、一番下の枠に囲んである所です。HTLV-1抗体(ウエスタンブロット法)によって判定保留となった妊婦を対象として測定した場合のみ算定するということです。全てのウエスタンブロット法、判定保留が対象とはなっておりませんけれども、まず第一歩として、妊婦健診においてこれが活用できるという状況になりました。

4ページです。一応現状においては何とか検査が先に進むということなのですが、我々としてはこのウエスタンブロット法の判定保留が多いというところにも手当てが必要だろうと考えております。ここでは、ウエスタンブロット法の判定保留例がどのぐらい課題なのかを実際に数値として表しております。解析したものは、日本赤十字社より提供していただきましたHTLV-1抗体陽性検体50本、陰性検体50本、日赤のほうで判定保留となった50本を研究班のほうに頂き、それについてウエスタンブロット法でその陽性・陰性・判定保留をもう一度検討いたしました。

 そうしたところ、日赤での50本の陽性は全て陽性、陰性のものは全て陰性。そして日赤のほうで判定保留としたもの50本に対して、我々の所で検討を行ったところ、陽性が10検体、陰性が3検体、判定保留が37検体となっております。一応ここで申し加えておきますけれども、日赤においてこの判定保留検体というのは、全て血液製剤には使われておりません。我々の所で判定保留とした37検体について、先ほどの核酸検査を行いました。そうしたところ、15検体が核酸検査で陽性、22検体が核酸検査で陰性となっております。したがってウエスタンブロット法において、この判定保留例をいかに少なくできるかということが、今後大きな課題となっております。これの代替法、若しくは改善が必要なのですけれども、代替法の開発が望まれております。

5ページは、現在国内で4社が、開発中のものも含めて11キットを検査法として開発しております。一番下の黄色の枠の確認検査開発品というのが、実はこのウエスタンブロット法の代替法になる予定のものです。この全てのキットについて、現在研究班では、同じサンプルを、それぞれのキットで測定していただいております。加えて、核酸検査も行うということで、どのぐらいそれぞれの判定にばらつきが出てくるのかを検討しております。

 一番のスコープとしては、ウエスタンブロット法と、一番下の確認検査の開発品とどのぐらいの差が出てくるのか。希望としては、非常に切れ味の良い、判定保留例が非常に少ない結果を得られるのではないかということを期待しております。これは、今年度中にまとめて御報告したいと思っております。こういったことによって、多分国内においてのHTLV-1検査法の充実が十分に図れて、今後10年ぐらいはこれらのキットを使うことによって、大きな問題がないような状況が実現できると考えております。

 こうしたデータを、一番下の括弧に書いておりますように、現在作られている妊産婦診療におけるHTLV-1感染症の診断指針の作成や、HTLV-1キャリア指導の手引きの改定等において、こういうデータをアップデートしていきたいと考えております。こういうところが、これまでに我々研究班の中の検査法の標準化のところでやってきた活動です。

6ページからが、疫学のデータとなります。数枚は、以前の研究班の中で行われてきたデータのおさらいをしたいと思います。1988年と2007年に、全国のHTLV-1キャリアの全体像を示すための疫学調査が行われました。ここにお示ししますように1988年、薄い青で示している棒グラフでは120万人のキャリアがいることが分かっていました。2007年に行われた調査では108万人がキャリアでいることが分かってまいりました。このグラフを見て分かるように、2007年の段階では、若年者においてかなりキャリアの方が減っていることが分かりますけれども、5060代、それ以降になると、まだまだキャリアの方がたくさんいることが見て取れます。明らかに少しずつ高齢化してきているというグラフになります。

7ページは、2007年当時現在と書いてありますけれども、そのときのデータはブルーの線です。年代別にどのぐらいキャリアが存在するかを示しております。これが5年後、10年後、15年後、20年後、どのぐらいキャリアの人数がこれから変化していくかを推定した予想図です。人口動態を加味することによって、この研究班で報告されています。これで見ると、2007年から10年後の2017年には83万人に減少するのではないかということがその当時推定されていました。

8ページは、本来は10年後ということですので2017年が我々としては妥当かと考えておりましたけれども、昨年このデータを急いで出すようにという指示があったので、実は我々としてはちょっと不安なところがあるのですけれども、まとめたデータをお示しいたします。何が不安かというと、検査法の中にウエスタンブロット法を用いているのが不安ということになります。前回2006年、2007年に行った108万人のデータというのは、陽性者を決めるのに、ウエスタンブロット法ではなくてIF法という方法を使っております。これは、実際に検査をする人が顕微鏡で見て、光っている細胞が陽性、光がない細胞が陰性というようにして、結構白黒がはっきり分かれるような形で判定しています。そういう方法を使って検討した結果108万人という数値が出ております。

 今回は、2014年、2015年のところでウエスタンブロット法を使っています。日赤はウエスタンブロット法を使うことによって、少し幅広に不適格血液を除外することができます。陽性血と判定保留の血液を外すことができるのですが、実際に判定保留の中には陽性もあれば陰性もあるということで、前回とは異なることになります。そこで、今回推定した数値というのは、そういう意味で正確な数値を出すことができません。赤枠で書いておりますように、もし判定保留者を加味せずに、陽性と出しているものだけを使って想定をしたときには、かなり過小評価となって716,000人と推定されました。

 一方で、明らかにこれよりもいらっしゃることは間違いないので、今度は少し過大評価になると思うのですが、判定保留者を全て陽性として算定した場合には、この数値は82万人になります。先ほど言いました2007年のときに推定していた、2017年の時の10年後のキャリアの数83万人と比べても、少し減少が進んでいることが、このデータから分かります。真の値はこの現状では分かりませんけれども、この間の716,00082万人の間にあると考えております。

 ただ、このデータはあくまでも献血の血液から結果を得ており、キャリアの方を確実にチェックしているデータからこれを算出したものではないということは申し加えておきます。

 実際に地域別、若しくは年齢別でどうかをデータとしてまとめてあります。データが複雑で見にくいのですけれども、2つ棒グラフがあって、下が前回2006-2007年の時の集計データです。地域ごとに男女別で棒グラフとして表しています。その上のほうに2014-2015年の時のデータを出しています。括弧書きにありますように「ウエスタンブロット法陽性者のみの集計」となりますので、これは少し少なめのデータと考えてください。ただ、地域ごとの比率を見る際には、このデータは非常に有効かと考えております。

 これが少し少なめであるということを加味して考えていくと、右のほうに私が文字で書いているように、九州で2006-2007年の時にはどのぐらいのキャリア率だったのか、それが今回どのぐらいのキャリア率になったのかを数字として出しております。九州では1.14%だったものが、今回は0.38%という感じになります。関東を見ていくと、前回0.15%だったのが0.05%ということです。ざっと見ていくと、今回のデータが少し過小評価していますけれども、3分の1から2分の1ぐらいのキャリア率になっていることがそれぞれ分かります。

 もう1つは、2006-2007年の時に問題とされた関東、中部地域において、その20年前よりも増えているというデータが一応あったのですが、今回のデータを見る限りにおいては、こういった大都市圏でのキャリアの比率がどんどん増えている傾向にはないということは言えると思います。

9ページです。年代別、年齢別のキャリアの比率です。同じように下段は2006-2007年の時の集計データです。今回のデータは上になります。同じくウエスタンブロット法で出しておりますので、今回のデータは若干少なめのデータと考えてください。そうして見ていくと、前回と同様に、年齢が高くなるに連れて、キャリア率は高くなっていくというのは前回と変わりません。ただ、例えば16歳~19歳の所を見ると、2006-2007年の時の、これで見ると大体0.1%ぐらいあるのが、今回はかなり少なくなっているのが分かります。同じく2029歳の所でもかなり少ないです。

 ただ、右に書いているように、2006-2007年の時に30代だった人は、今回は40代になっているわけですし、前回40代だった方は50代になっています。それを見る限りにおいては、例えば30代だった方は男性では0.22%から今回は0.27%、女性は0.27%から0.15%。女性のほうが減っているというのは後で申しますけれども、40代でも大体同じような形で、ほぼ2006年の時から今回にかけて、キャリア率は若干ですけれども少し増えているのが分かります。女性の30代、40代の2014-2015年を見るとちょっと少なくなっているのが分かります。これについて1つは、妊婦さんの検診が進んだために、妊婦さん検診のところで陽性者が一応ここから外れてしまって、その後は献血に来られていないのではないかという解析ができます。そのために、この分が献血のデータでは減っていると言えます。これが、全体のキャリアの現状についてのお話です。

 基本的にはHTLV-1の感染というのは、母親からお子さんに母乳で感染するというのがメインルートです。しかしながら、先ほどもありましたように、若干ですけれども、青年期若しくは成人になってから感染する例というのが、このグラフを見る限りにおいても少なからず存在することが分かっております。今回の検査としては、日本赤十字社に協力していただき、献血血液の検査によって、複数回献血に来られる方をずっとフォローしていると、それまで陰性でずっと来られていた方が、ある時点で陽性になってしまって、それからは陽性が続くというところがあります。それは何を意味するかというと、どこかの時点で感染を起こしてしまったということが推定されます。そういう疫学解析を行うことによって、実際に成人若しくは青年期に感染を起こした、それは多分水平感染ということになると思いますが、その数字を出すことができます。

12ページは、2005年~2011年までの間に、実際にデータを集めて、HTLV-1の検査で陽転化した方の年間推定値を出しております。献血検査ですので1669歳までとなります。そこで男性は青、女性は赤で示していくと、年間4,000人以上がどうも陽転化していることになりました。ポイントとしては文字で書いているように、例えば1519歳の枠の女性のところに陽転化しているバーが明らかに出てきております。もう1つは、年齢が経つに連れて男性の場合は徐々にこの陽転化が進んでいる。女性も基本的にはそうなのだけれども、50歳台の女性で、これが急峻に増えているというところがポイントになろうかと思っています。これは、この時の検査だけではなくて、その後にもう一度同じような検査を行っていますが、やはり50代の女性で陽転者が多いことが確認されています。これは、キャリアの率がもともと年代別に増えていっているという他に、また別のメカニズムが存在するのではないかと考えております。

 もう少し詳しく年代別、地域別で、この場合は水平感染と申しますけれども、陽転者がどうなっているのかを見ています。地域別に色が違います。九州が少し薄いブルー、近畿はちょっと濃いブルーという感じです。例えば20代(2029歳)の男性で見ると、九州での陽転者よりも、近畿、関東、中部圏の男性のほうが陽転者が多いことが分かります。ずっと年代を重ねていくと、最終的には九州が一番多くなってまいりますけれども、40代では近畿、九州が多いという数値も出てきています。

 女性のほうはどうかと申しますと、全体として九州がどの年代においても多いということが言えます。その後は関東も多いですけれども、近畿、中部が多いことが分かります。先ほど申しましたように、50代の女性がどうもここで1つのピークを作っているというのがこの図からも見て取れます。

 我々研究班で得られたデータはここまでですけれども、私ども残された期間、できるだけ力を発揮していきたいと考えております。14ページですが、ウエスタンブロット法による判定保留例の検出改善を図れないかということを、先ほどの性能調査を基に明らかにできればと思っています。これは我々の力だけではなくて、開発している企業の力というのもありますので、連携を含めながら研究を進めていきたいと考えています。

 ちなみにこの水平感染に関して、これまではっきりしていることとしては、ATLの発症例というのは、国内ではこれまで報告されておりません。しかし、HAMの発症例は報告されております。いずれにしてもリスク評価というものを、こういうデータを基に更に深めていく必要があろうかと考えておりますので、研究班の中でも、水平感染者がこの後どういう経緯を辿るのかというようなことを、与えられたデータの中から一応評価をしていきたいと考えております。

 このような結果から、一般的なことですけれども、陽転者に対する対策が必要になってこようかと思います。カウンセリングを含めて、一般のキャリアの方と同じような形で、キャリアフォローをしていく必要がありますし、リスク評価を更に進めていく必要があると思います。今後はリスク評価に基づいて、実際にどういう方が将来関連疾患を発症するのかということがもし分かってくるようであれば、そういう方をハイリスクキャリアとして同定することができるようになると思いますし、ハイリスクキャリアへの発症予防対策が必要になってくると考えております。残された期間は短いのですけれども、この中で少しでも更に進めていきたいと考えています。最後は謝辞です。どうもありがとうございました。

○渡邉座長 ありがとうございました。ただいまの御説明に関して、御質問、御意見等がありましたらお願いいたします。

○木下構成員 教えていただきたいのですけれども、HTLV-1にはタイプはあるのでしょうか。

○浜口参考人 タイプと申しましても、ジェノタイプでいくと基本的に日本では2種類のジェノタイプがあると考えられています。

○木下構成員 この話はデータですから事実ですけれども、陰性のものでも当然陽性化するのがあるわけです。例えば、これは途中から感染するのか、それとも最初に陽性妊婦から生まれた子供が、最初は陰性であっても、それが年代とともにある段階から陽性になるということもあり得るのか。そうであれば、延々とフォローアップしなければいけない。その辺のところはどう考えたらいいのでしょうか。

○浜口参考人 非常に重要なポイントだと思います。我々の所でも、陽転している方のデータを短期間、まだ数年間ですけれども見ております。そうすると陽性になったり、ある時にまたこれが陰性になったり、これはコピー数のレベルでもやはり上下があったり、抗体検査でも陽性になったり陰性になったりというところで、かなり動きがありますので、先生御指摘のように、非常に僅かなウイルスが感染している状況の中で、体の状況によって抗体を作ったり、抗体が検出できないような状況というのはあるのかと考えています。

 それをもってリスク評価をどうしていくか。我々が想定しておりますのは、これまでの報告では、ある程度ウイルス量がこのリスクファクターとして考えられるということが報告もされております。低いコピー数、若しくは抗体陽転者に関しては、基本的にリスクは余り高くないのではないかという目で一応現状は見ております。今後、それがそこから急峻に増えてきたりというようなことが、もしあるようであれば、それはどういう状況でそういうことが起こるのかということも、注意深く見ていこうと思っております。

○木下構成員 御指摘のとおり急峻に増える場合があるとなると、そうなると、本当に心配してしまうわけです。リスク評価というのがやはり極めて重要になってまいります。これだけ陽性の頻度が高くても、ローリスクであるから、陽性であっても別に心配ないと言うためには、ハイリスクでないと根拠を持って言わないと、やはり心配になります。それだけに、水平感染の意味と対策を是非検討していただきたいとおもいます。

○浜口参考人 我々も、これはやってみるまで分かりません。先生御指摘の点は水平感染というか、陽転者の話ですよね。これについて、これまではパートナー間だけの所でのデータはスモールスケールでの解析でした。今回は献血血液を用いて、全国で広くやったというデータは今回が初めてです。それだけに、このデータを基に今後どのように対策を取っていくかということは考えていく必要があろうかと考えております。

○渡邉座長 私のほうからちょっと補足させていただきます。感染が起こって、その後しばらくずっと抗体が検出されない状況で、ある時期陽転化する可能性については、全く現時点では否定はできておりません。ただ、我々がきちんとした判断をするデータはない。だから、可能性としてはいつまでも残っていると思います。

 もう1つは、HTLV-1のジェノタイプといいますか、ファミリーの問題ですが、少なくともHTLV-1と言われているもの、それからニホンザルなどが持っているSTLVというのも含めて、抗体検査等では全部同じように引っかかってまいりますので、タイプが違うことによって見逃すとか、そのようなことは起こり得ません。

○山野構成員 聖マリアンナの山野です。献血ベースで感染者数を類推するというところが、先ほど先生がおっしゃったように、妊婦健診で陽性と言われた方は、献血にも行かなくなるとか、家族に陽性者がいる場合に行かなくなる。少し過小評価するというリスクがどうしてもあると思うのです。例えば、検診などをベースに感染者数を割り出しているような他の感染症、例えば肝炎ウイルスであるとか、そういうのを献血で計算したときにはこれぐらいの数になると。だけれども実際に検診ベースで感染者数を出したときにはこれぐらいになるので、献血よりも、実際はこれぐらい多い可能性があるというような、他のウイルスと対比させながら、そういうことを検討するというのはいかがかと思いました。

○浜口参考人 御指摘をありがとうございます。私自身も感染研にいて、感染症法に基づいた報告義務のある感染症とこれがどう違うのかということは、常々考えております。先生が御指摘のように、肝炎のウイルスの場合、AとE以外の肝炎については第五類感染症ということで報告の義務があります。1週間以内に保健所を通して、最終的には感染研の疫学情報センターのほうにデータが来て、そしてそのデータをフォローするという仕組みになります。多分HTLV-1に関しても、もし第五類感染症という形で指定されることが今後あるということになれば、同じような形でデータとしては集計することは可能かと考えております。

 ただ、ここから先はまだ問題なのですけれども、肝炎についても、それで完全にその報告システムの中でフォローできているかというと、よくよく見てみると、肝炎の中でも無症候性のキャリア、全く症状のない肝炎の方というのは、第五類感染症には該当しないということになっていますので、どこまでのデータをフォローできるのか。ある程度症状が出て、なおかつ抗体検査陽性といった、肝炎の方の数は一応フォローはできるけれどもということになります。HTLV-1の場合は、症状が出るどこまでを第五類感染症という形で、まとめるのか、またキャリアの方全てをそこに入れるのかというようなことは議論が必要かと考えております。

○岩本構成員 12ページの複数回の献血者のデータと、8ページの初回献血者のデータの読み方を教えてください。他のデータを見ると、男女比はそう高くない。HTLV-1の感染者に対しては、全体的に見ると男女比はそう高くなくて、初回献血者で見ると、年齢の若いほうにピークがあって、だんだん年齢が行くごとに減っている。ところが、陽転者で見ると50代、60代に陽転者が重なっている。これをどう読むのですか。新しい感染が水平感染で4,000という数が実際に起こっていて、それが50代、60代で起こってきているのであれば、初回献血の人たちにも現れてきそうな気がするのですけれども、その辺はどう考えるのですか。

○浜口参考人 正確な回答になっていないかもしれませんが、先ほど申しましたように、大体キャリアの年代でいくと、50代、60代になっていくほどどんどん高くなっていくというデータがあります。他の性感染と比べて、HTLV-150代、60代で非常に高いというのが、どういう問題なのかというのを別の視点で解析したことがあります。例えばB型肝炎の場合だと、どちらかというと20代、30代ぐらいの方にピークがあって、その他は少し下がってくるようなところになります。HTLV-1の場合は、データだけ見ると50代、60代のほうが多いではないかという話になるのですけれども、これを今度はキャリア率で補正してあげると、やはり若いところでのピークというのは少しですけれども見えてくるような形になっています。それだけかどうかというのはちょっと分からないのですけれども、やはりある程度性感染で起こっているというファクターも1つあるかと考えますし、場合によっては先ほどありましたように、ずうっと陰性で来られた方が、ある年代から陽転化しているというファクターもあろうかと思います。それから、女性の50代の方の場合には、また別のファクターが加わることによって、そこの部分が出てきているのかと考えています。

○岩本構成員 1点確認ですけれども、先ほどウエスタンブロット法にはかなり問題があるという話でした。クロスリアクティビティは全然考えなくていいのですか。日本の性感染症で、女性だけが異様に感染率の高い性感染症は知られていないと思いますが。

○浜口参考人 そこも非常に難しいところです。これは答えになるかどうか分からないのですが、例えばB型肝炎だとか、HIVの場合にも感染のルートというか、感染する際には細胞は関係なくて、どちらかというと血症、体液です。それが一応感染になります。感染の材料になるわけですけれども、HTLV-1に関しては、どちらかというと、これは細胞ということになってきますので、若干他のものに比べても感染する環境だとか、感染するルートというのが異なってくるのかなと。それもあるかと思っています。ですから、一概に他の性感染と比べて、感染のルートが同じかどうかというのは分かりづらいかと考えております。

○永井構成員 8ページの図なのですが、これは陽性率ではないですよね。

○浜口参考人 すみません。これは説明しておりませんが、今回、解析に用いた日本赤十字社でこのデータを用いたときの年齢別の、どのくらいの方が献血で来られて、その方のデータを用いたかということを示している材料のデータということになります。

○永井構成員 献血者の年齢。つまり、ここで若い人が多いのは、若い人が献血しているというだけのことであって、若い人に問題があるという話ではないですね。

○岩本構成員 これは陽性数ではないのですか。

○渡邉座長 これは母集団の分布です。

○岩本構成員 異なる数値が同じようなデータとして示されているので誤解しやすいですね。

○浜口参考人 すみません。

○渡邉座長 恐らくは抗体陽性転化が起こるということは、水平感染が起こっているであろうという強いサジェスティブなデータなのですが、恐らく問題は、感染ルートがこういうふうに非常にはっきり別のルートがある。ですから、母子感染の実数が、今、年間4,000幾つという数字になっていたと思うのですが、ほぼ現状の母子感染の実数と、水平感染、抗体陽性者の数がほぼ拮抗する、同じぐらい存在するというところが見えてきたということになるのではないかとは思います。対策の方向性として、こういった部分についても、今後どのような取組が可能になるかということが検討課題として浮び上がってきたということだろうと思います。

 それから、病原性、病気を起こすかどうかということは浜口先生の御発表の中にもありましたが、ATLを起こすかどうかということに関しては、研究者の間では非常に否定的というか、これまで、大人になってから感染した方からATLが出てはこないだろうと、ほとんどの日本の研究者はそう思っています。ただ、ほかの炎症性のHTLV-1の関連疾患は明らかに水平感染で、輸血等で起こっていますので、そういうことが1つの対策等の問題です。

 もう1つは、御本人が発症しなくても、ウイルスをもらった方は子孫に伝え得るということにもなりますし、横にも伝え得る。そういったことで、これからの感染対策をどういうふうに取り組んでいくかということを、もう一回きちんと見直していく必要があるのではないか。いずれにしても、感染の実態をきちんと把握することは非常に大事だと思いました。

○菅付構成員 先ほど、先生のお話の中に、指定感染症という言葉が出まして、肝炎は第五類に分類されているというお話がありました。HTLV-1はなぜその中に入らないのかという素朴な疑問が起きまして質問させていただきました。

○渡邉座長 すみません。浜口先生のほうからお願いします。

○浜口参考人 すみません。私もこれまでの経緯をそれほど存じ上げていないというか、どうしてこれを入れなかったのか、あえて入れていないのかということについては、はっきりとした理由は分かりません。ただ、個人的な見解としては、多分これをどこまで感染症として考えるかというのが余りきちんと定まっていないのではないかと思います。一方で、無症候性キャリアといった場合には、「これは感染症ではないよね」というような社会的なコンセンサスもあったのではないかと思っています。現状においては、それがまた変わってきたということかもしれません。

 ただ、先ほど申しましたように、私としては、いずれかのところで、やはりこれは病原体があって、体の中でいろいろなことを起こしてくるということになれば、やはりこれは感染症として対応していくというのは1つありだろうと、一応、考えているところです

○木下構成員 いままでのお話のように、例えば50歳ぐらいでHTLV-1抗体陽性だったというのは、そのほかの疾患とは余り関係ないものだとすると、HTLV-1の抗体のチェックということ自体が、母乳感染との可能性について調べているものと、年齢が行ったところで調べるのは意味が違うのではないかと思えて、同じHTLV-1として扱っていいのかと考えてしまいます。その意味ではジェノタイプが明らかになって、本当に病原性のあるものというのは違うのだということまで分かっていかないと、この数値だけで、その意味を考えるのは、無理があるように思います。こういうことで水平感染が母乳感染と同じぐらいにあるのだというようなことを強調なさるとなると、予防のやり方も、再考しなければなりません。このデータに関してはどういう意味を持つのか、もう少しほかのデータも含めて、再度、ご教示をお願いいたします。

○浜口参考人 御指摘ありがとうございます。あくまでもこれは、こういうセッティングの中で、こういう数値として出すことができたということです。これで全部完結したとは考えておりません。先ほど来ありますように、実際にこれは本当にリスクがどうなのかというようなことをやはり加えて、データとしては完結させるべきだと考えておりますので、先生の御指摘のところも踏まえて、今後、対応を考えていきたいと考えております。

○菅付構成員 渡邉先生のお話で、母子感染以外ではATLの発症は否定的であるというように伺えたのですが、実際にHAMを発症して10年になる患者さんから、急性のATLを発症して、現在、血液内科で治療を受けているという相談があったばかりです。それに、過去にHAMの患者さんを調べた結果、2名にATLの死亡者がいるということが分かっていると思うのですが、その辺りはどうお考えですか。

○渡邉座長 問題は2つあるかと思います。つまり、HAMを発症しておられる方にATLが発症するかどうかということに対して、以前は否定的な考えがあったのですが、現在はHAMの患者さんの中からもATLは一定の頻度で発症すると、それほどリスクが高いとは言えないけれども、一定の頻度で発症するという認識になっています。

 それから、我々が申し上げているのは垂直感染で、母親からもらったウイルスを持っている人以外に、輸血やその他の理由で、後天的にといいますか、ウイルスをもらった方からATLを発症したということが血液内科の領域で確実に確認できている例は基本的にはない。特殊な状況は別なのですが、いろいろな別の病気の治療等に伴って免疫状態が非常に落ちた状態になるなどの特殊な環境の場合での発症例はありますが、それ以外は確認できていないということです。

○菅付構成員 過去に、輸血感染者の中で、ATLを発症して死亡されたという方が実際にいらっしゃるのですが。

○渡邉座長 それは、血液内科の領域では、正確にそういう症例があるという認識はされておりません。

○菅付構成員 そういう認識というよりも、これから研究や調査をする意義はあるのではないかと思います。

○渡邉座長 もちろん、これまでそう把握されていなかったというだけで、そういう目できちんと見直したり、調査をする必要性はあろうかと思います。

○菅付構成員 HTLV-1に関しては、継続的な調査と、研究は必要だと、思うのです。よろしくお願いいたします。

○渡邉座長 大変ホットな部分だったので、少し時間を取って議論させていただきましたが、次の議題に移ります。

 ○2「HTLV-1関連研究について5年間の総括と今後の対策」ということで、内丸参考人のほうからお話をお願いいたします。

○内丸参考人 ありがとうございます。東大新領域の内丸でございます。先ほど、議論がかなり盛り上がって時間が押しているようですので、少し急ぎたいと思います。資料4を御覧ください。

2ページです。これはもう、この場で申し上げるまでもありませんが、2011年からHTLV-1総合対策が開始されています。種々の推進体制、重点施策が上げられていますが、5の研究開発の推進では、実態把握、病態解明ということで、いろいろな研究班、研究費が付いたわけですが、その一環として、3ページ、HTLV-1の対策についての現状の把握と提言のため、平成23年から3年×2期にわたって研究班として組織させていただきまして、途中でメンバーを交替しながら、継続して私が研究代表者として研究を進めてきております。本日は、ここまでの5年間の研究成果のまとめと、そこから見えてくる今後の課題ということについて、少しお話をさせていただきます。

4ページです。当初、研究班発足当時、HTLV-1の総合対策で挙げられていました妊婦さんの抗体検査、それから、保健所における相談体制の整備ということが重点施策に挙げられていましたので、それでは保健所での相談の実態はどうだろうかというところから調査に入りました。御覧いただきますのは、平成23年度、5年も前の話になりますが、2011年度、2012年度辺りでは、6070%ぐらいの保健所では一度も相談経験がない。また、その左下の円グラフにありますが、これは全国の495か所の保健所を対象とした調査ですが、全体の4分の3の保健所では事実上、相談対応がゼロであるという回答を得ております。

5ページです。主にATLの患者さんに対する相談ということで想定されている、がん拠点病院の相談支援センターの実態ですが、ほぼ同様の状態で、保健所による相談、あるいは、がん拠点病院による患者相談とも、利用は限られていて、もしかしたら余りニーズがないのではないかということまで、この当時は言われました。ただ、実感として、私は東大医科研病院でHTLV-1キャリア外来というものをやっていますが、ニーズがそんなに少ないとは思えないという思いがありました。

6ページです。本日もお越しいただいていますが菅付さんの患者会「スマイルリボン」の御協力を得まして、ここに挙げたような幾つかの御質問についての回答を頂いております。実際に頂いた回答は200数十件と積極的にかなり多数の回答を寄せていただいたのですが、スマイルリボンは患者さんが多くいらっしゃいますので、キャリアの方だけのデータの抽出をやった分析をしますとN=31ということで、非常にpreliminaryなデータになってしまいますが、左上にありますように、やはり多くの方がキャリアと判明したときに相談を受けたいと思ったというお答えですし、下のグラフですが、これはある意味で、結果を見たときに「やっぱり」という思いがあったのですが、相談するとしたら保健所と病院のどちらが相談しやすいかという質問に対して、圧倒的に病院ということで、もしかすると、保健所に相談に行くという認識が余りなくて、一見、ニーズがないように見えているのではないかと、このデータからは推定できます。

7ページです。そこで、私どもの研究班では、上段にありますようなキャリアの皆さん、ATLの患者さん、行政、病院等医療機関を含めて、情報提供のための「HTLV-1情報サービス」というウェブを運営しておりましたが、情報提供だけではなくて、実際のキャリアの方の実態についての情報を収集できるような仕組みが必要であると痛感しまして、その下段にありますが、現在の研究班のほうでHTLV-1キャリアの方を主に対象にしまして、自主登録という形でいろいろな情報を寄せていただくという「キャリねっと」というウェブを昨年の10月から運営を開始しております。必ずしもどんどんという形ではないのですが、現在に至るまで一定のペースでずっと順調に登録は伸び続けており、登録者の数は今日現在で225名ということで、まだまだ数は少ないのですが、それでもこれまで200名以上の方の情報を集めたデータはありませんし、今のペースで行くと1,000名、2,000名というデータベースになっていくと思いますが、非常に貴重なデータベースになっていくことが期待されます。

8ページです。そこで実際にここまでの段階でのキャリねっとのデータを分析してみますと、まず妊婦さんに関してですが、妊婦健診で判明したキャリアとおっしゃっている方だけに限定して、そのときに相談を受けたいと思ったかという質問に対しては、ほぼ全員が相談を受けたいと思ったと回答していらっしゃいます。ここにはデータを出しておりませんが、実際に相談に行きましたかという質問に対しては、かなりの方が実際に相談に行ったとお答えになっているのですが、では、どこに行きましたかという質問をしますと、その下段にありますように、圧倒的に血液内科で、保健所のほうにはほとんど行っていないと。これが保健所での相談件数が少なかった理由だろうということが推定できます。

9ページです。それでは実際に受け皿になる血液内科のほうの実態はどうかということですが、以前の研究班でHTLV-1キャリアに対するキャリア対応が可能であると回答していただいた、主に基幹病院を中心とした全国の417施設に対して、実際にどのような対応をしていますかという対応の実態についての調査を行ったところ、相談対応まで対応が可能ですと回答いただいた施設は僅か40%で、血液検査をやって「問題ありませんね」というようなチェックはできるが、相談と言われると対応ができませんという施設が多い。実際にそういった所に相談に行った場合には、下に漫画で描きましたが、こんなことが起っている状況であることが分かってまいりました。

10ページです。HTLV-1キャリアというのは、ATLの発症予備群という考え方ができますが、そういった意味でATL側からHTLV-1キャリアのことを考えてみますと、ATLの患者さんの年間発症推定数は、以前の山口班の報告で、推定年間1,1001,200人程度だろうと報告されています。これは、いわゆる希少がんの定義に当てはめると、ATLは立派な希少がんであるということになりますので、当然ながら一般の血液内科ではATLに関する認識が低いだろうということは想像に難くありませんし、その発症予備群としてのHTLV-1キャリアに対する認識が低いというのもある程度やむを得ないところがあるかと。そういった意味では血液内科に実際にキャリアの方がたくさん行っておられるわけですが、血液内科の相談体制の整備ということを考える場合には、希少がん対策という発想が必要だろうということがここから推論されます。

11ページです。この点に関しては、キャリアだけではなく、実際にATLを発症した方々に対する対応という点でも問題点が見えてきます。ここに挙げていますのは2011年、厚労科研の渡邉班、座長の渡邉先生が代表だった班ですが、そこで全国のATLの患者さんに対する治療の実態調査を行ったときのデータの一部抜粋です。左側のほうは、いわゆる予後不良型の慢性型と言われているタイプに対する治療方針を問うたもの。右側のほうは、いわゆるアグレッシブタイプと呼ばれるATLに対して、造血細胞移植を行う場合、上限を何歳にしていますかという質問に対する回答ですが、いずれも御覧のとおり、施設によるばらつきが非常に目立つという状況があり、ATLの治療方針が、かかった施設によって大きくばらついている可能性が見て取れます。

12ページです。そういった現状を鑑みますと、ATLの治療であったり、HTLV-1のキャリアの方に対する相談対応を標準化するというようなことが必要だろうと考えられますが、そういった標準化のためには、希少がん的な発想で考えると、やはりどうしても中核となる医療機関の整備を進めることが必要なのではないかということが、こういったデータから見て取ることができます。ただ、その場合に、1つの候補としては、いわゆるがん拠点病院ということになるわけですが、左上の図は先ほども一度お出しした図ですが、相談支援センターに対して、現状で必要とされている情報にどんなものがありますかという質問に対して、ATLの専門医やATLを専門としている医療機関がどこにあるのかということを知りたいというものが、かなり高いポイントで挙げられており、ATLという病気の希少性というものを考えた場合に、がん拠点病院が必ずしも中核医療機関になることがふさわしいかどうかというのは検討の余地があるのではないかと考えられます。

13ページです。少し視点を変えます。もう1つ問題になるのが、本日の協議会でもしばしば話題になっていましたが、短期授乳の話です。現在、妊婦健診で抗体陽性になったお母さん方には、断乳と短期授乳、凍結母乳の3つが主に推奨されるわけですが、先ほど来お話がありましたように、実際に短期授乳の場合に断乳するのが3か月ということになりますが、このときは既に産科のフォローから外れており、お母さん方一人という状況で、適切な指導がないときちんと断乳ができなくて、長期母乳に移行してしまうというリスクがあります。右下にあるのは厚労科研板橋班で出されたデータですが、抗体陽性ということで短期母乳を選んだお母さん方が、その後どういった授乳になったかというデータですが、このデータからは、短期母乳を選んでも、1割ないしそれ以上のお母さんが結果的に長期母乳になっているのではないかと推定される状況があります。

14ページです。そういったことを考えますと、分娩後にも授乳の指導があることが望ましいのではないかと考えられますが、キャリねっとのデータでは、キャリアマザーに対して、分娩後に授乳の指導を受けられましたかという質問に対して、「はい」と答えた方は約半分です。「ノー」と答えたお母さんだけに限定をして、分娩後の授乳に関する指導が必要だと思いますかという質問に対しては、4分の3のお母さんが指導は必要だと思うということで、この点についての整備がまだ十分ではないのではないかと考えられます。

15ページです。献血のキャリアに関してですが、献血で日赤から通知が行った場合には、日赤の相談窓口の連絡先が記載されています。ただ、そちらの相談窓口の利用実態が低いのではないかと以前から推定はされていたのですが、研究班の日赤の佐竹先生の日赤における実態調査で、実際に日赤に相談を寄せている方は10%以下であることが分かっています。では相談をしなかった方がどのような行動を取られたかということに関するアンケート調査をやっていただいたところ、日赤には連絡をしていないが、既に医療機関を受診していたり、折を見て医療機関を受診したいと考えていたりというようなことで、それらを掛け合わせた比率で示したものが一番右側ですが、実際に日赤も含めた医療機関の相談等を余り考えていないという方は2割程度。右上がキャリねっとの登録データの集計データですが、登録された方のバイアスの影響だと思いますが、日赤に連絡したという方の割合が高いのですが、最終的には余り相談のニーズがないという方の比率に関しては、同様のデータが得られているというふうに考えられます。

16ページです。こういったこれまでのデータ等から考えますと、やはり妊婦さんに対する、あるいは献血その他の理由で分かったキャリアの方に対しても同様ですが、相談の中核になれるような、あるいは診療の中核となれるような医療機関を地域ごとに整備し、保健所の活動に対してもバックアップをする、そういった地域的な組織的な体制といったものの構築が必要になるのではないか。その場合に、その役割として1つは都道府県母子感染対策協議会などがその対応にあたるというのが、もしかすると適切かもしれないと考えております。

 また、本日は時間の関係で全く触れませんでしたが、本日の協議会でも少し話題になった子供の抗体検査の件ですが、これについては、どこで、どういう形でやるかということについて、ほとんど手付かずと言ってもいい状況で、これをこの枠組みの中にどう組み入れていくかということも重要な問題になってくるだろうと思われます。

17ページ、その他、私どもの研究班でやってきました実績ですが、キャリア、患者の皆様方への適切な情報提供ということで、ここに挙げてあるような冊子、パンフレットを全国の医療機関等に配布し、また、相談対応に当たる方々のためにということで、キャリア外来への相談で出てくる相談をほぼカバーしていると思われる、整理されたQ&A集を作って、全国の保健所、拠点病院等に配布しております。

18ページです。また、キャリア対応においてどのような対応をすべきかというようなことについて標準を示すために、全国のいわゆるHTLV-1キャリア専門外来における相談内容の実態についての調査をまとめて、論文発表という形で提示させていただいております。また、一般への知識の普及・啓発ということで、これは菅付さんには全然追い付かないのですが、私どもがやってきたのは全国における講演会、シンポジウムということでやってまいりましたが、これはキャリアの方々、あるいは行政の方々との意見交換の場としては非常に有用なものになったと思っておりますが、ある意味で考えてみれば当たり前だったかもしれませんが、一般の方の参加は極めて少なくて、そういった意味で、一般社会への普及・啓発という点では何かほかの方法を考える必要があるだろうと考えられます。

20ページ、以上をまとめまして、この5年間の研究の成果からの現状と提言ということですが、HTLV-1キャリアの方々には相談ニーズが確実に存在すると思われます。現状では、その相談対応が主に血液内科で行われています。ただ、ATLという疾患の希少性を考えますと、血液内科であっても、どこでも対応できるわけではないというのが実態だろうと考えられ、相談対応がどこで可能かということを明らかにするためにも、中核となる医療機関を整備していくことが必要ではないかと考えられます。ただ、その場合に、その中核となる医療機関がどのような役割を担うべきか、どういった形で運用していくかという体制については、今後検討が必要だろうと考えられます。また、先ほど挙げさせていただきましたが、短期授乳のお母さんに対する体制、あるいは子供の検査に対する体制に関して、まだまだ整備が必要だろうと考えられます。これら、関係する各施設を地域ごとに組織化していく枠組みが必要だろうと考えられます。

 最後のページです。今後の課題という観点から、一部重複しますがまとめてみますと、以下の4点が挙げられます。1つ目が、先ほどもお話いたしましたが、相談対応・治療の標準化というようなことを考えたときに、やはり中核となる医療機関の整備が必要ではないか。2番目に、この中核医療機関を中心に、実際にキャリアの方をフォローしていくべきなのかどうか、フォローするとすればどういった形でやっていくのがいいか、その辺りの検討と標準化が必要であろうということ。3番目が、先ほども挙げましたが、分娩後のお母さんに対する授乳の指導、あるいは子供の検査に対する体制の整備が今後の課題であるということ。4番目が、これも先ほどから話題に出ていましたが、これまでの研究で、キャリアの中でどういった方が発症のハイリスクであるかということが徐々に明らかになってきつつありますので、そういったハイリスクキャリアという方を同定するための診断基準等についての検討を進めていく必要があるだろうということ。先ほど御発表がありましたAMEDの浜口班や、その他関連した研究班が多数ありますので、こういった研究班の研究成果を統合して、今後のHTLV-1対策を進めていく必要があるだろうと考えられます。以上です。

○渡邉座長 ありがとうございます。司会の不手際で申し訳ないのですが、大分時間が押しております。今、御発表がありました内丸先生の説明の内容に関しまして御質問、御意見等ありましたら受けたいと思います。よろしいでしょうか。

 私のほうから、まず1つは、中核となる医療機関の整備を進めていくということは、これまでの議論の中で、皆さん大体そういう方向性に関しては了解というか、必要だなという了承をしていただいていると思います。それで、どうだろうかという伺いなのですが、地域によって事情がかなり、感染の状況も含めて、あるいは医療体制のほうも大分違うと思うのです。それをどういうイメージで進めていくのか、どういうお考えをお持ちかということをお聞かせください。

○内丸参考人 中核となる医療機関の整備というものに関して、当然ながらエンデミックエリアとノンエンデミックエリアでは違うと思いますし、これは私の個人的な見解ですが、全国一律である必要はないのかもしれないと。ある意味で、今、既にそういった体制ができている所を改めて壊してまでというようなことは考えてはおりません。ノンエンデミックエリアについては、逆に積極的に。その場合に、例えば中核拠点を配置する、いわゆる医療圏については、キャリアの数や必要度に応じて広げたり、狭めたりというような形での差別化は必要かもしれないと考えております。

 もう1つ付け加えるとすれば、特にノンエンデミックエリアでは専門家も少ないというようなことがありますので、我々この領域で研究している者として、どこに誰がいると分かっていますので、そういった方々を活用してネットワークを作っていければいいのではないかと考えております。

○渡邉座長 そうですね。私も今、最後の部分についてコメントしようかと思ったのですが、地域に機械的に割り当てるような形はなかなかうまくいかないのではないかというのが1つ。

 それから、医療に携わっている医者の側が、やはり専門性を持った人間、あるいは関心を持った人間が中核にならなければうまく機能しない。ただ、実態は、今、先生がおっしゃったように、結構偏在があるのです。HTLV-1ATLに関心を持っている内科医にしても、それ以外のお医者さんにしても。ですから、その辺りの実態をうまく踏まえてやる、あるいは、そういう人を育てるという方向が必要ではないかとは思いました。

○渡邉座長 ほかに何かありますか。

○塚崎構成員 塚崎ですが、11ページについて少しコメントというか、補足をさせてください。2011年の時点で渡邉先生の班がATLの診療の実態についてアドホックにされたアンケート調査の中では、左側に「予後不良因子あり 慢性型の治療方針」とありました。これは現在のガイドラインでは右側にある急性型、リンパ腫型と同様にアグレッシブATLとして積極的に強力な化学療法を行っていくことが標準として推奨されていますが、調査結果では地域によって大きく治療法がばらついていました。一方、右側のほうでは、急性型、リンパ腫型及び、今では予後不良因子ありの慢性型に対しては同種移植を積極的に組み入れていくということが推奨されていますが、副作用が強い移植は適用年齢をどこまでとするのかで結構ばらついていました。

 実は、この2011年のこの調査の後で2013年に今お話したようなガイドラインが日本血液学会から出ていますので、この後どのようにATLの治療方針が均てん化、標準化されたのかということは、現在進行中の全国調査などできちんと見ていく必要があるのではないかと思っています。

○渡邉座長 ありがとうございます。つまり、ATLの発症というか、患者の実際の発症状況というか現状の把握と、それに対する治療法の現状、それから、その治療成績というようなことを含めて、継続的な調査、フォローアップが必要であるということですね。

○塚崎構成員 おっしゃるとおりです。もう1つ補足しますと、左側の予後不良因子を持たない慢性型の診療には確かに難しいところがありまして、1つには、血液内科でフォローしている患者さんもいらっしゃいますが、半数近くの患者さんは皮膚科のほうでフフォローされているという、これは皮膚病変を有する場合は、なかなか患者さんにとっても病悩期間が長いのです。慢性の病態をとっていますが、皮膚病変となって、病悩として長い。しかし、そういう場合でも、基本は今の時点では全身的な抗がん剤治療をするのではなくて、局所の治療を行っていくということを、これは皮膚科のガイドラインでもそのように記載されています。この治療効果もなかなか不十分なところが多くて問題があります。それに対して、予後不良因子がある場合には、繰り返しになりますが、急性型、リンパ腫型と同様の積極的な治療を行っていく。

 言い換えますと、間がないのです。ウォッチフル・ウェイティングという、「治療せず」というのは何か言葉がよくないですが、医学用語ではウォッチフル・ウェイティングと言いまして、慎重に待つと。何を待つかというと、病状が急性に移行したら、そこで強力な抗がん剤の治療を始める。それまでは待っている。そういう大きな理由というのは、それこそ5年、10年と待っている方もいらっしゃる。そういうことです。

○渡邉座長 今お話がありましたように、血液内科のほうのATLの治療の指針というのは、かなりはっきり固まっております。1つの問題点は、別の診療科である皮膚科のほうでかなりの数のATLの患者さんがフォローされていて、そうすると、血液内科と皮膚科との間での情報交換、いろいろな連携といったことが、今でも大分、交流はしているのですが、更に必要になるであろうということですね。

 それから、今、御指摘がありましたように、治療の方針としては、じっと経過観察をするか、これはと思ったら強力な化学療法をする。実は、何もしない状態から、強烈に抗がん剤が投入される時期が、検査データによって医者の判断1つで、今、決まるわけです。非常に極端な変化になります。

 そういうことも含めて、ここから先は私のコメントになりますが、やはりATLという病態をきちんと層別化して、それぞれに合った治療法を開発していくということが大事だと思います。進展を予防するための薬や、アグレッシブなものに対しては更に有効な治療法を開発するとか、あるいは、先ほどから話題になっているハイリスクキャリアの人たちに発症予防のための介入をするとか、そういったようなことの体制がきちんと整っていくことが、将来像としては期待されるところではないかと考えております。今のは私のコメントです。

 それでは、座長に戻りまして、「今後の対策に関する意見交換」という時間が取ってありますが、これまでの御意見は、いろいろな議論の中でもかなり尽されてきているかと思いますが、今の議題とは離れまして、全般に御意見、コメント等がありましたら伺いたいと思います。よろしいでしょうか。

 そうしますと、今回の協議会では、実際の地域での取組の例や、患者、キャリアの当事者の方の活動状況、それから、これまでのHTLV-1総合対策の成果を取りまとめて紹介していただいて、今後の取組の課題をある程度、情報共有させていただいたと思います。それから、少なくとも今後、更にどういうことをやらなければいけないのかということに関しては共通の認識が得られたのではないかと考えています。

 先ほどから少し議論が紛糾したのが、感染ルートの問題です。新たに浮び上がってきた部分がありますので、そういったことを含めて、今後の対策に関して議論を更に深めていければと考えております。

 時間もまいりましたので、本日は以上で終了とさせていただきます。構成員の皆様におかれましては、御出席いただきまして誠にありがとうございます。次回の開催については、事務局といろいろ相談いたしまして、また御連絡を差し上げたいと思っております。以上です。


(了)

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