ホーム> 政策について> 審議会・研究会等> 労働政策審議会(職業安定分科会雇用対策基本問題部会建設労働専門委員会)> 第46回労働政策審議会職業安定分科会雇用対策基本問題部会建設労働専門委員会議事録(2015年12月16日)




2015年12月16日 第46回労働政策審議会職業安定分科会雇用対策基本問題部会建設労働専門委員会議事録

職業安定局雇用開発部建設・港湾対策室

○日時

平成27年12月16日(水)10:00~12:00


○場所

厚生労働省 職業安定局第1会議室(12階)
(東京都千代田区霞が関1-2-2)


○出席者

公益代表

鎌田座長、柴田委員

労働者代表

時枝委員、曽根崎委員、勝野委員、小倉委員

使用者代表

土屋委員、大木委員、福田委員、鈴木委員

事務局

広畑雇用開発部長、谷建設・港湾対策室長、富永建設・港湾対策室長補佐、佐藤建設・港湾対策室長補佐

○議題

(1)第9次建設雇用改善計画について
(2)その他

○議事

○富永補佐 皆様お揃いになりましたので、ただいまから、第 46 回労働政策審議会職業安定分科会雇用対策基本問題部会建設労働専門委員会を開催いたします。

 まず、配布資料の確認をお願いいたします。資料 1 、資料 2 、それから参考資料として参考資料 1 2-1 2-2 3 4 となっております。資料が資料 1 2 、参考資料が 1 から 4 となっております。もし、お手元に足りない資料がありましたら、お申し出いただければと思います。

 続いて、本日の委員の出欠状況の報告をさせていただきます。本日は公益委員の大橋委員から欠席の御連絡を頂いております。それでは座長、以後の進行をお願いいたします。

○鎌田座長 議事に入ります。議事次第にありますように、本日の議題は第 9 次建設雇用改善計画について、第 9 次建設雇用改善計画に関する論点等について御議論をしていただきたいと思います。事務局から資料の説明をお願いいたします。

○富永補佐 まず、今回の議論をいただく前におさらいといいますか、建設雇用改善計画についてざっと御説明したいと思います。参考資料 1 から 3 を御覧いただければと思います。

 まず、参考資料 1 に今回の建設雇用改善計画に係る建労法の関係条文を載せております。ここには第 3 条を載せておりますけれども「建設雇用改善計画の策定」となっており、厚生労働大臣は建設労働者の雇用の改善、能力の開発及び向上並びに福祉の増進に関する重要事項並びに建設業務有料職業紹介事業及び建設業務労働者就業機会確保事業の適正な運営の確保に関する重要事項を定めた計画、これが建設雇用改善計画となっておりますが、これを策定するものとするとされております。

 第 2 項で、建設雇用改善計画に定める事項は建設労働者の雇用の動向に関する事項、建設労働者に係る雇用状態の改善並びにその能力の開発及び向上を図るために講じようとする施策の基本となるべき事項、建設労働者の福祉の増進を図るために講じようとする施策の基本となるべき事項、それから建設業務有料職業紹介事業及び建設業務労働者就業機会確保事業の適正な運営の確保を図るために講じようとする施策の基本となるべき事項、この 4 点が定める事項として挙げられております。厚生労働大臣は、この建設雇用改善計画を策定する場合には、あらかじめ関係行政機関の長と協議するとともに、労働政策審議会の意見を聴くものとするというようにされており、皆様に議論していただいているところです。

 その次に参考資料 2-1 についてですが、現行の第 8 次建設雇用改善計画の概要を載せております。平成 23 年度から平成 27 年度、今年までの計画になっております。平成 23 年度からですから、平成 22 年度に議論をしていただいて策定しているわけです。まだ当時は震災前でもありますし、建設投資の減少、価格競争の激化等、建設投資が減っていて先行きがなかなか見えない時期に策定されたものでした。

 現行計画の課題としてそこに書いておりますけれども、高い意欲と能力を持つ建設労働者が安心して生活できる労働環境のための建設雇用改善を推進するとともに、建設産業の将来を担う若年労働者の確保を図ることを掲げております。

 施策の最重要事項として、「建設労働者の職業の安定、雇用の一層の近代化、魅力ある労働環境づくり」。それから「建設労働者の職業能力開発の推進、技能の継承」。「若年者の建設業への入職促進・定着、高齢者や女性が活躍できる労働環境の整備」。それから「建設事業主による新分野進出の支援、労働力需給調整システムの適正運営の確保」。この 4 点を最重要事項としているところです。

 具体的な内容は参考資料 2-2 として本文をお配りしております。具体的な施策、事項としては 6 ページから載せております。雇用の改善等を図るために講じようとする施策に関する基本的事項、各論といいますか、いろいろな事項を載せております。まず、 6 ページの半ばに魅力ある労働環境づくりに向けた基盤整備ということで、建設業の雇用関係の明確化に向けた取組、具体的には建設労働者の雇入れの主体、契約内容を明確にするための雇入通知書の交付など適切に指導監督、周知を行う。

6 ページの一番下、➁として一人親方に関する事項があります。 7 ページは労働者募集、請負が適正に行われるよう、偽装請負とならないよう指導監督を行う。その他にも長時間労働の実態の改善についてワーク・ライフ・バランスの推進、若年者等の入職・定着促進の観点等も合わせて重点的な指導を行う。それから、➅の災害やアスベスト対策等に関する方策などといった事項を載せているところです。

8 ページにも続きがあります。➆に労働保険・社会保険の適用促進ということで啓発・指導を推進する。➇には建退共加入についての周知・啓発を載せております。

8 ページの下のほう、職業能力開発の推進を載せております。事業主等の行う職業能力開発の促進、その中で事業主が行う教育訓練への支援、認定訓練、➂の個人ごとの適正なキャリア形成の必要性、その下の➃に若年労働者確保の点から現場見学会、職場体験、インターンシップ等のキャリア教育の推進を書いております。

10 ページの (3) 、熟練技能の維持・継承及び活用を載せております。高齢化が進む一方、若者 ( 入職者 ) は減少している。技能の継承をしていかなければならないということを載せております。

10 ページの下のほうには若年労働者の確保、建設業に対する理解の促進という項目を載せております。高齢化が進んで若者が入ってこないというところから、これも先ほども出てきましたけれども若者の職業意識を高める、見学会や職場体験、インターンシップ等に取り組むことを書いております。

11 ページの➂に若年労働者の確保の観点から、建設業のイメージアップにつながるような支援を行うことも載せております。 (2) の高齢者の活躍の促進、 (3) に女性労働者の活躍の促進を載せています。

12 ページ、 4 として、円滑な労働力需給の調整等による建設労働者の雇用の安定等という項目を載せております。この計画を策定したときには人余りといいますか、建設投資が減少して人が余っているということで新分野、建設業以外の分野への労働者の移動、就業機会確保事業を運営することによって人余りをできるだけ解消するといった項目を載せております。

 次の 13 ページに雇用改善推進体制の整備を載せております。建設事業主における雇用管理体制等の整備、事業主団体等における効果的な雇用改善の推進、 (4) 雇用改善の気運の醸成、 (5) 建設雇用改善助成金制度の活用、これは今の助成金の前身になります。そういった助成金を活用して雇用改善を進めるといったことを載せています。

 最後に 14 ページ、外国人労働者問題への対応として、外国人についても就労環境の整備を図るといったことを載せています。

 先ほど御説明した現行の課題について、実際どのような施策を行っているかをまとめたものが参考資料 3 となります。これは先ほど御説明した項目ごとに、実際どういうことを行っているかをまとめた資料になります。今回、第 9 次の計画については第 8 次の計画を修正する形で検討していくのかと考えております。以上、今回の議論の前提となる資料の御説明をいたしました。

○佐藤補佐 それでは、私から資料 1 と資料 2 について御説明させていただきます。はじめに、資料 2 のほうから御説明させていただきます。資料 2 7 28 日開催、第 42 回専門委員会から前回の第 45 回までの専門委員会で関係省庁や有識者、労働者団体、使用者団体、教育関係者、 10 名の方からヒアリングを行い、その結果の概要をまとめたものです。

 まず建設経済研究所、深澤理事からヒアリングを行いました概要です。まず、建設投資の動向について御説明があり、東京オリンピック・パラリンピック以降も一定の市場規模はあり、建設業に期待される災害時等の役割を果たしていくためには中長期に建設業の人材を確保していかなければならない。

 ○の 2 つ目、職種によっては年齢構成の違いがある。また地域によっても差がありますので、地域ごとに仕事を工夫しながら技能労働者の確保・育成に努めていかなければならない。

 一人親方については、雇用するのではなく独立させ、一人親方として専属的に使用するというスタイルがあるが、それで良いのか。発注者、元請、下請各階層ごとにそれぞれ一番最適な行動を取ってきたが、各階層別の部分最適化は全体最適化に結び付かない。根本的な改善のためには生産体制・産業構造まで遡った対応が必要である。

 続いて、国土交通省の長福室長からの御説明です。国土交通省の施策について御紹介がありました。○の 2 つ目、設計労務単価は 3 年連続で引上げを行っている。それから、社会保険の未加入対策を行っているという話がありました。

 次のページを御覧ください。女性についても今後 5 年間で倍増、上から 2 つ目の○、新技術・新工法の導入による省力化・効率化についての御説明もありました。就業履歴管理システムについては現在、コンソーシアムで議論を進めている。最後の○、営業利益はここ数年上がってきており、上がった部分を将来的な人材にいかに投資していくかの非常にチャンスの時期だと認識しているというお話がありました。

 続いて第 43 回、全建の中村理事からですが、全建として将来の地域建設産業の担い手確保のための行動指針を作成しているということで、行動指針の御紹介がありました。

 女性について、もっと女性が活躍できる建設業を実現するための道筋として、以下、 4 つのポツで書いてあるものを柱としたロードマップを作成しているというお話がありました。

 続いて日建連、山本常務からです。日建連で出しております建設業の長期ビジョンについての御説明がありました。まず 1 つ目、今後 100 万人規模の大量離職時代が到来する。これを乗り切るために世代交代を進めていかなければならない。入職者目標として 34 歳以下の若者を中心に 90 万人、うち女性は 20 万人、生産性向上により省人化 35 万人という目標を立てています。

2 つ目の○、社会保険加入については日建連の受けた仕事の現場では技能労働者が社会保険に入っていないことがないよう取組を始めているとのことでした。

 上から 3 つ目、一番の問題は雇用の安定である。元請としても、専門工事業者が社員を常時雇用するために必要な支援をやっていく必要がある。

4 つ目の○、重層下請構造を改善していこうという目標を立てている。一番最後の○、女性の活用について「けんせつ小町委員会」を作って取り組んでいるというお話がありました。

 続いて建専連、才賀会長からです。まず 1 つ目としては、国が建設業に期待している役割を計画に明示していくことが重要である。就労履歴管理システムについては業界団体を挙げて取り組んでおり、厚生労働省や文部科学省も関与すべき。

 小中高校生の現場見学、職場体験のため、工期の中に見学する期間を設けてもらいたい。インターンシップやキャリア教育等に取り組んでいる企業の支援が重要である。

 登録基幹技能者の処遇改善、建設業就業機会確保事業、それから高齢者の技能継承といったお話がありました。

 第 44 回、日建協の時枝副議長からのお話です。まず技術系職員の長時間労働が常態化しているというお話がありました。それから組合員アンケートの御紹介があり、「今すぐ転職したい」「今後転職を考えている」と答えた割合が非常に高い結果となっています。

 また、自分の子供に建設産業に就職させたいかという問いに対しては、「就職させたくない」が 8 割を占めているという御紹介がありました。 4 8 休にできない要因につきましては発注の問題、設計の問題、元請の問題、協力会社や技能労働者の問題という構造的な課題がある。日建協としても今、 4 8 休の実現、長時間労働の改善に向けて提言を行っているという御紹介がありました。

 基幹労連の曾根崎中央執行委員からのヒアリングです。まず、経済政策の安定的な運営やインフラの整備、修繕計画の策定によって中長期的なトレンドを見せていくことが必要ではないか。それから、公契約条例の広がりが必要ではないか。 36 協定延長時間の限度の適用除外業種からの解除が必要ということでした。ここについては宿題になっておりましたので富永から御説明させていただきます。

○富永補佐  36 協定延長時間の限度について、建設業が適用除外となっていることについて宿題になっていたと思います。参考資料 4 、「『時間外労働の限度に関する基準』関係条文」としてお配りしております。労働基準法第 36 条の協定で定める労働時間の延長の限度に関する基準ということで、平成 10 年に労働省の告示という形で出しております。その第 3 条には、労使当事者は、時間外労働協定において一定の期間についての延長時間を定めるに当たっては、当該一定期間についての延長時間は別表第 1 の上欄に掲げる期間の区分に応じ、下欄に掲げる限度額を超えないものとしなければならない。この別表第 1 を裏に載せております。期間と限度額を載せています。 1 年間だと 360 時間という限度時間がここで定められています。

 表に戻っていただいて、第 5 条の適用除外に列挙されている第 1 号で、「工作物の建設等の事業」というものが限度時間の適用除外になっています。担当している労働基準局に確認して、なぜこういうようになっているのか聞いたところ、工作物の建設等の事業については事業の性質上、天候上の自然的条件に左右され、限度時間の適用になじまないことから適用除外とされているという回答がありました。雨が降ったら休みなど、天候に左右されるので一律的に限度を適用するのはなじまないということのようでした。とりあえず、御説明は以上となります。

○佐藤補佐 そのほか、曾根崎委員からは適正工期、 4 8 休、安全衛生についてのお話がありました。

 続いて、全建総連の松岡賃金部長から、昨年の賃金調査の御紹介がありました。次のページは今年の調査の速報値で、設計労務単価が 3 年間で 28.5 %上げられている状況の中、実際の賃金は僅か 2 %しか上がっていない状況があります。それから建退共制度の問題、最後の○では建設産業全体で若年者、若年技能者を育成する取組をしっかりやっていくため、雇用保険料率の引上げをして、これを財源としてしっかり支援していくのが重要というお話がありました。

 続いて、芝浦工大の蟹澤教授から、 40 代でようやく熟練したときが賃金のピークで、その後は横ばい、ここに職人になりたがらない理由があるのではないか。賃金が低く、休みが取れない理由は低い生産性があるのではないか。○の 3 つ目、生産性を上げる一番の方法は教育訓練で人の能力を上げることではないか。 4 つ目の○、イギリスの Levy( レビー ) の御紹介がありました。

 次のページを御覧ください。今のシステムは分業化され過ぎている。生産性を高めるためには多能工化も考えられる。最後の○、全ての技能者を企業で 100 %雇用するには限界があるので、請負その他の形態で働く労働者が不利益を被ることがないような制度を構築していくことが重要であるというお話がありました。

 続いて、全国工業高等学校長協会の瀧上事務局長から、工業高校の人数もどんどん少子化などで減ってきており、職業科も減少している。業界団体から「人をくれ」と言われてもなかなか難しいという回答しかできない。

 下から 2 つ目、墨田工業高校の状況について御紹介がありました。 128 人の就職希望者に対し求人が 1,774 人、そうすると条件の悪いところは全部カットされて、社会保険に入らないなどというところは最初から相手にしないというお話がありました。

 最後、「その他質疑応答から」ということですが、生産性が上がらないのはいわゆる日給月給制に根本的な問題があるのではないか。次の○、処遇改善については重層下請構造を解消していかなければ難しいのではないか。女性の活用のためには、女性の持つ特質や能力がいかされるものがないと本人のインセンティブにつながりにくいのではないか。次の○、コミュニケーション能力がないと手戻りや望んでいるものができない、やり直しということで工期が延びる。長時間労働の解消、週休 2 日制の実現にはコミュニケーション能力の向上が必要ではないか。それから、コミュニケーション能力の欠如と言われるけれども、どのような技能のなさ、理解力のなさがあるかをきちんと分析して工程管理を行うことが重要である。最後、生産性の問題については待ち時間が多い状態を何とか改善できないのかという話がありました。ヒアリング要旨の説明は以上です。

○佐藤補佐 引き続き、資料 1 の説明をさせていただきます。はじめに、総論部分と個別論点の 1 番の建設労働をめぐる経済等の動向について説明したいと思います。

 まず、論点ですが、これまでのヒアリング等を踏まえ、事務局が論点の案としてまとめたものです。では、総論部分について御説明させていただきます。 1 つ目の○ですが、建設業に期待される役割ということで、国民が必要とする住宅・社会資本、産業基盤を造り、国民の安全・安心な生活、財産を守り、産業の活性化に貢献していくことが期待されているということ。

2 つ目の○については、建設業を取り巻く状況が、 5 年前の第 8 次計画の策定時から大きく変わっていることを記載しております。過剰供給構造を背景とした価格競争が激化、第 8 次計画策定時には、そういった価格競争が激化し、労働力も過剰感が見られるという状況でしたが、景気回復、それから東日本大震災からの復興需要、国土強靱化、オリンピック・パラリンピック等によって、建設投資は増加傾向が見られると。こうした中で、有効求人倍率については、平成 21 年度以降、年々上昇しており、雇用の過剰状況から人手不足の状況へと大きく変化しているという状況を記載しております。

 他方で、建設業では若年入職者の減少、高齢化の進展、それから今後 10 年間で 130 万人の技能労働者のリタイアが見込まれるという指摘もあるところです。これまでの長期にわたる建設投資の減少に伴って、競争が激化したことにより、技能労働者の就労環境の改善が低滞していると。賃金、労働時間等の処遇の改善、社会保険の適切な加入等、引き続き対策を講じる必要性のある課題が多い。これらの課題が若年者等の入職・定着の促進の障害になっている。建設投資が回復しつつある今こそ、若年者等、将来の建設業の担い手を確保するための取組を強力に進めていく必要があると。人材確保、雇用環境の改善のために対策を推進し、建設業が働く人にとって魅力ある職場となることが求められているということで、総論を記載しております。

 IIの個別論点についての 1 、建設労働をめぐる経済等の動向です。 (1) の建設投資の状況ですが、建設投資額は平成 4 年に 84 兆円に達したのをピークに、平成 21 年度は 42 兆円まで落ち込み、その後回復傾向となっているということです。 (2) 雇用状況についてです。建設業の就業者数ですが、技能労働者就業者数は、平成 22 年には、 331 万人と底を打った後、平成 26 年には 341 万人と増加傾向にあるということです。建設業の全産業に占める割合ということで、就業者数では 8.0 %まで低下したがその後は横ばいに推移、国内総生産に対する建設投資の割合は、平成 22 年に 8.7 %まで低下したが、平成 24 年以降 10 %で推移している。

 続いて、建設労働者の職種別有効求人倍率については、最近では高水準で推移している、記載のとおり、高い状況にあるということです。新規学卒者の就職状況については、平成 21 年の 2 9,000 人からその後増加傾向にあり、平成 26 年には 4 1,000 人となっていると。しかしながら、建設業の新規学卒者、就職者数の産業に占める割合は 5.8 %ということで、建設業の就業者数の全産業に占める割合の 8 %に比べると、低い状況ではあります。

 続いて高齢化の状況についてですが、平成 13 年以降、急速な上昇傾向にあると。平成 26 年は過去最高の 34.3 %となっていると。それから、建設労働者の平均年齢ですが、 44.4 歳ということで、職種別に見ると、左官 51.6 歳、土工 48.2 歳、型枠大工 47.2 歳という高い状況にあります。入職率と離職率の状況については、平成 24 年に離職率と入職率が逆転し、改善の兆しが見られる。ただ、新規高等学校卒業者の入職 3 年後の離職率については、平成 24 3 月で 50 %、全産業の 40 %よりも高い状況であるということで記載しております。

○鎌田座長 では、総論のところで皆さんの御意見を頂きたいと思うのですが、いかがでしょうか。それでは、課題のほうに行ってから、また戻ってきましょうか。課題も一通り全部、御説明頂けますか。それから、全体含めて、また御意見頂くようにしますので、よろしくお願いします。

○佐藤補佐 それでは、 2 番目の建設労働における課題について、御説明いたします。今回の計画の一番の課題は、若年労働者の確保だろうということで、課題の最初に持ってきております。➀の若年労働者の確保ですが、若年者等の建設分野への入職・定着促進のためには、以下に書いてあるポツの取組が求められるのではないか。 1 つ目のポツが若年者の職業意識の向上や、建設業の役割やその魅力を伝え、建設業への関心を高めるために小中高の教育現場や関係機関との連携した取組の推進。

2 つ目のポツですが、職場における労働者の年代ギャップによるコミュニケーション不足、技能指導方法の違いが、若年労働者にとって職場環境への適応、技能ノウハウの習得の妨げとなっているという指摘もあります。こういった若年労働者を育成する職場風土の醸成。それから、有効求人倍率が高水準で推移しているということで、引き続き未充足求人への対応、ハローワークにおけるマッチング支援の強化。入職者の減少、高い離職率については、低賃金、長時間労働、休暇等処遇の悪さも原因として指摘されている。そのため、他産業並みの賃金、休日・労働時間等の処遇改善、社会保険の加入促進を更に強力に推進。生産性の向上については、生産性向上の一方策として、教育訓練の充実、それから教育訓練、資格取得、能力評価等と処遇が関連付けられる望ましいキャリアパスの提示等を行う事業主団体の支援。

 一番下のポツですが、建設労働のイメージアップのための方策の推進。建設業が地域に不可欠な産業であることが社会的に再評価されるよう、建設業が社会資本の維持や、災害対策等に多大な役割を果たして貢献していることなど、建設業に関する正しい理解の促進が必要ではないかということで記載しております。

 それから、➁女性労働者の活躍促進ですが、女性労働者の活躍を推進するため、女性が就業しやすく、また、定着できる環境の整備が重要であるということから、仕事と家庭の両立を図ることができるよう、就労環境の整備を進めることにより継続就業を推進する。それから、作業方法や安全対策の配慮等、職域拡大のための取組、男女別トイレや更衣室の整備等、職場環境整備への支援が必要ではないかということで記載しております。

 ➂高齢者労働対策ですが、建設技能労働者の高齢化が進む中で、高年齢労働者の活用、高度な熟練技能者である高年齢者が、若年者等に対して技能継承を円滑に進めることが重要であると。このため、職場内における建設技能継承のための取組が促進されるよう、指導方法に関する訓練のための支援が必要ではないかということで記載しております。

(2) 労働条件、労働環境に関する課題の➀雇用関係の明確化ですが、依然として建設業は、重層下請構造の下で雇用関係、労働条件が不明確である等の問題が指摘されていることから、雇用関係の明確化に向けた取組を更に強力に進めるべきではないかと。これまで建設投資の減少の中、競争の激化に伴い、事業主が労務関係諸経費の削減を意図して、これまで雇用関係にあった労働者を対象に個人請負労働者として請負契約を結ぶことにより、いわゆる一人親方となる働き方が生じているといった指摘がなされてきたと。建設投資が回復しつつある中、不本意に一人親方となっている者の常用雇用化に向けた取組を進めるべきではないかということです。この一人親方ともいうべき働き方については、実態が雇用労働者である場合には、労働関係法令への適用があることについて、引き続き周知・啓発を行い、効果的な対応を図る必要があるのではないか。

 次のページに行きまして、賃金制度ですが、若年者が入職・定着しない原因の 1 つに、低い賃金水準、特に賃金カーブが 40 代をピークに下降するという指摘もされております。業界として、職種別に優秀な建設技能労働者の技能と経験に見合った報酬の確保に向けた取組も行われております。技能労働者が自らの職業生活の設計をできることが、若年者の入職・定着に重要と考えられ、こうした取組は技能労働者のキャリアパスと賃金体系の見える化に資する取組としても効果的であるので、更なる推進が必要ではないかと。

 ➂労働時間・休暇制度ですが、建設業における労働時間については、全産業や製造業に比べて長いと。それから、完全週休 2 日制の普及、労働者 1 人平均の年次有給休暇の取得状況についても、他産業と比べて低い状況にあること。若年者等の入職・定着推進や、ワーク・ライフ・バランス推進の観点からも長時間労働の解消等に向けた取組を更に進めるべきではないかということ。完全週休 2 日制の普及が重要であること。土曜閉所の労使の取組、段階的な方法としての 4 8 休制の導入に向けた取組等を推進していくべきではないかということで記載しております。

4 番目、労働安全衛生については、建設労働者の死傷者数、死亡者数については、建設業が多いということで、また、人材不足の中で経験年数の短い建設技能労働者の入職者、それから、いわゆる一人親方等の労働災害も発生しているとのことです。今、東日本大震災の復興需要、 2020 年の東京オリンピック・パラリンピック開催による建設投資の増加も踏まえ、建設業における総合的な労働災害防止対策の推進が必要ではないかと。

 次のページに行きまして、➄労働保険、社会保険等についてですが、労働保険の適用労働者数及び雇用保険の被保険者数は建設業において増加傾向にあると。国土交通省や都道府県担当部局との情報連携により、未手続事業の一掃に向けた対策を行っているところであるが、未手続のままとなっている事業の存在も考えられる。社会保険については、未加入対策により公共事業参加企業を中心に加入が進んでいるが、工事の下請企業や民間工事へも波及させていく必要がある。引き続き関係省庁等との連携を図り、加入促進に向けた周知・啓発が必要ではないか。一人親方に係る労災保険の特別加入制度について、引き続き周知に努める必要があるのではないか。それから、民間工事での建退共の活用促進を図ることが必要ではないかということで、記載しております。

 ➅番目、新技術・新工法の活用です。建設現場の生産性向上を図ることが求められているところであり、今、業界全体では 35 万人を生産性向上による省人化によって対応しようとする動きも出てきております。新技術・新工法の活用によって人材確保への対応や工期の短縮による休日の確保・長時間労働の解消など、雇用関係の改善につながる可能性もあり、こうした動きを注視していく必要があるのではないかということで、記載しております。

(3) 職業能力開発の課題です。技能労働者の確保、次代を担う労働者への技能継承への対応等様々な観点から、一層その重要性、必要性が高まっており、下のポツに書いてあるような取組が求められるのではないかということです。まず 1 つ目のポツに、熟練技能の継承、維持を図るための若年労働者への技能訓練の支援。次代を担う若年技能労働者の育成に当たっては、技能労働者が不足する職種等について教育訓練等の取組の支援。

2 つ目のポツ、事業主の行う教育訓練に対する支援や業界等が行う教育訓練等の取組の支援。下のポツ、関係機関の連携等による建設現場での職場経験等の実習の実施。業界のニーズを踏まえた教育訓練等の一層の推進。特に若年者に対し、インターンシップなどの取組を通じた職場体験や現場実習をさせることも重要。それから、職業能力開発大学校等の公共職業能力開発施設等の有しているノウハウ、資源等の一層の活用、職業訓練施設における訓練の支援。若年者等の人材確保の観点からも、教育訓練、資格取得、能力評価等と処遇等が関連付けられる望ましいキャリアパスを検討する事業主団体等の支援。これは再掲です。

 一番最後のポツですが、現在の情報技術を活用して、技能労働者の資格、工事経験等を蓄積し、技能評価等に活用できる仕組みについて開発し、今、国土交通省のほうで行っている、以前、就労履歴管理システムといわれた仕組みですが、そういった雇用改善につなげようとする取組について、官民により検討がなされていると。このような取組も注視していくことが重要ではないかということで記載しております。

 最後、その他ですが、建設業務有料職業紹介事業・建設業務労働者就業機会確保事業については、技能労働者の雇用の安定、それから業界内での円滑な企業間の労働移動を適切に行っていくことが、引き続き必要ではないかということで記載しております。説明については以上です。

○鎌田座長 それでは、小倉委員、どうぞお願いします。

○小倉委員 まず、論点についてです。基本的な内容については、 5 年前に計画のものと、かなり類似しているわけですが、課題自体が大きく変化しているわけではありませんので、基本的な方向性についてはこういう形でいいのではないかと思っております。

 その中で何点かの質問と要望をさせていただきたいと思います。 1 つ目が建設雇用改善大臣表彰についてでありまして、厚生労働省では平成 24 年度まで建設労働者の雇用の改善等について、積極的な活動を展開し、その成果が見られる事業所あるいは著しい功績が見られる個人に対して、大臣表彰の実施をしておりました。現在は行われていないわけですが、今般の情勢あるいは本日配布されている論点を踏まえて、今後、表彰を行っていくことを計画に盛り込んでいく必要があるのではないかと思っております。以上が 1 点目です。

2 点目が都道府県段階での技能者育成の連携体制についてです。建設雇用改善計画については、全体的な像として実際に策定されているわけですが、やはり、都道府県に対する何らかの影響力というものも必要かと思っております。取り分け、技能者育成で申し上げますと、今年の 9 月に、これは能開局になるわけですが、都道府県の職業能力開発主幹課長会議が行われ、その中で、行政を含めて、公共職業訓練施設、あるいは認定職業訓練校といった所のネットワーク化の必要性について、資料配布がされているところです。地域の実情を踏まえて技能者育成を図っていくという観点では、今、申し上げました、 3 者の連携体制強化といったことが重要だと考えております。本日の論点で近い表現はあるわけですが、しっかり計画策定に当たって、各都道府県でもこういうことをやっていく必要があるのではないかと思っております。

3 点目が、建設雇用改善計画の積極的な周知についてです。本日も参考資料で参考条文、建労法のものが配られておりますが、建設雇用改善計画については、例えば職業能力開発基本計画等と異なっており、各都道府県での策定が求められていないわけです。要は、国が作って、それを公表するだけになってしまっていると。今後、建設雇用改善の重要性を鑑みますと、単に国が策定したというだけではなくて、都道府県に対する、なお一層の周知あるいは都道府県としての独自の施策の推進ということも必要になってくると思っております。そういう観点から、今後どのような検討をしていただけるのかという見解をお伺いしたいと思っております。

 また現在、建設雇用改善計画に類するものが、都道府県で実際に策定されているのか。また、ここ 1 2 年、都道府県において、新規入職者や資格取得の支援制度を独自に創設されていますが、もし把握されているのであれば、教えていただきたいと。今申し上げた内容についても、今回の計画に盛り込むわけではなくて、定期的に各都道府県に対して発信していく。こういうことも必要ではないかと思っているところです。

 最後に、生産性向上の観点で申し上げたいと思います。本日の論点においても、例えば省人化であるとか、技術革新で今後、技能労働者が減っていくのを、しっかり穴埋めしていくのだという記載がされております。これはこれで当然必要なことではありますが、それだけでは十分な穴埋めはできないわけですので、例えば、今、多能的な働き方というのはどうなのかということを業界団体で検討しております。現在の職人は単能工化しており、待機時間が長く、なかなか有効的な働き方ができていないと。しかし、複数の技能を持つことによって、多能的な働き方ができると。結果、それによって、賃金が上がっていくということも考えられますので、是非、多能的な働き方についての言及も是非検討いただきたいと思っております。以上であります。

○鎌田座長 幾つか、特に都道府県の取組状況などについて、今、分かっているのであれば、教えてほしいという御質問もありましたが、その点どうですか。

○谷室長 最初に、 1 点目の建設雇用改善の企業への表彰の件ですが、今、小倉委員からもお話があったとおり、平成 24 年度で廃止になっています。これは当時、各労働局を通じて事業所を推薦してもらうのですが、なかなか推薦が上がってこなくなって、弾切れというか、そういう中で努力もしたのですが、なかなか上がってこないということで、そのときに業界団体の方や皆さんと相談して、ちょっとこれを 1 回、その時点で廃止した経緯がありました。というのが、平成 24 年ですので、これからやるに当たっても、その辺はまた応募した場合、上がってくるのかどうかも検討したいと思いますが、若年者の法律が今回できまして、 10 月から若者の採用育成に積極的で、雇用管理の優良な企業を認定して、認定された企業の情報発信を後押しするという制度がありますので、こういった制度も活用して、積極的な雇用管理に取り組む事業主を応援したいと思っております。今言った話は、その状況を見つつ、また検討していきたいと思っています。以上が第 1 点です。

 都道府県での連携ですが、能開局のほうでの会議で、ネットワーク化というお話があったということですので、ちょっと詳細は承知していないのですが、それについては後日確認したいと思います。私どもの関係では、各労働局ごとに協議会を設けて、その中に関係機関が入っております。そういった場で意見交換を十分にやっているところですので、引き続きその場を活用していきたいと思います。能開局の会議で考えている趣旨等も能開局に確認した上で、どういった形で都道府県との連携を更に深めることができるかについて確認したいと思います。

 策定の周知ですが、なかなかやはりちょっと皆さん、一般の国民に知られていないという面は確かに否定できないのかなと。大きく広く普及されていないとありますので、周知をしっかりやっていかなければいけないのは、そのとおりですので、今回、計画ができましたら、関係省庁と各都道府県等とももしっかりと連携しつつ、周知について再度しっかりやっていきたいという決意を新たにしたところです。以上です。

○広畑部長  1 つ新しい動きといいますか、まだ原案段階なのですが、御案内のハローワークの地方移管みたいな話がずっと言われてきております。それで地方分権一括法でどのように対応するのかというのは、今、取りまとめの時期に掛かってきています。委員の皆様は御存じかもしれませんが、個別に県と雇用関係の協定を結んで、例えば「わかハロ」とか、あるいはマザーズハローワークとかいろいろなことをやっています。あとは建設業の取組などもその中でやっていたりするのですが、その協定を法律にきちんと位置付けて、県と労働局がきちんと協定を結ぶことができるという職業対策法の改正みたいなことも考えていますので、担当部署とも相談して、そういったところをもう少し活用して、きちんと都道府県と連携するということがどこまで書けるのか、少し検討させていただきたいと思っています。

 もう 1 つ、小倉委員から言われました、県独自の取組ということで、御案内かもしれませんが、リーマンショック以降、緊急雇用対策などいろいろなことをやってきて、地域人づくり事業の一環として、幾つかの県で独自に建設業の入職促進みたいなことをやっている取組もあります。実際は富士訓練センターでやったりということもありますので、先ほど申し上げた都道府県との協定みたいな中で、そういったことももう少し実効ある取組ができるかどうか、担当部署と相談させていただければと思います。

○鎌田座長 小倉委員、この点についてはよろしいですか。では、別の観点からお願いします。

○鈴木委員 参考資料 3 で、第 8 次建設雇用改善計画の実施状況についてという資料がありますが、今度第 9 次建設雇用改善計画を作成するに当たり、これがプランいわゆる P で何をしたかが分かるのですが、 PDCA C 、すなわち評価がないと次のアクションも決定できないと思います。これについてはいろいろと助言・指導しましたとか、 2 回実施しましたとか、助成しましたと言うことですが、その助成金が予算に対し何パーセントぐらい使われたかという話など、それらのいわゆる効果を少し評価していただきたいと思います。今から評価する時間があるかどうか分かりませんが。

 それと、例の就労履歴蓄積システムについて建専連の才賀会長が、もっと積極的に関与してもらえませんかということでした。確か、コンソーシアムの中に入られていると思います、この「取組を注視」ではなくて、「積極的に関与する」というような表現ではどうでしょうか。やはり、国土交通省は余り予算がありませんので、この辺は私の推薦母体の全建などは、やはり厚生労働省に積極的かつ全面的に出ていっていただきたいという考えですので、その辺を一考していただければと思います。以上です。

○鎌田座長 この 2 点について、どうぞ。

○谷室長 参考資料 3 に、鈴木委員からお話のあった実施状況を数字というか、こういう形で出させていただいています。評価をしっかりやるべきではないかということなのです。私どもとして、この中で特に助成金等なり、事業の実施については、雇用保険 2 事業ということで予算措置されているものがほとんどです。そういう中で、毎年 PDCA サイクルで事業の評価をしています。そのシートもホームページに公開されています。今回は資料として御提示できなかったのですが、いろいろな意味でその施策を実施するに当たっては、正しく鈴木委員が言われたとおり、その事業をやったから終わりではなくて、それを PDCA サイクルで評価した上で、次の予算措置をどうするかというのを毎年議論しています。そういう議論の場でもありますので、その辺については個別にその中身については御説明させていただきたいと思います。それが第 1 点です。

 就労履歴については、私どもとしてもこのシステムが労働者の雇用管理改善又は技能の向上に役立つシステムとなることを非常に期待しております。国土交通省が中心となって、各業界又は組合の方を集め、コンソーシアムという形で具体的に検討が進められていることは承知しています。私どもも、オブザーバーとして参加しています。その中で我々も積極的に意見を言わせていただいております。そういう意味で、我々はしっかりとコミットしていると思っております。

 お金の話ですけれども、予算措置については今後この制度が、先ほど言った我々が目的とする趣旨にしっかり合った制度となるように、そういうものについてしっかりと評価しつつ、助成等の措置については検討していきたいと思っております。

 先ほど小倉委員から、生産性向上の関係で多能的な働き、多能工化の話がありました。これは、ここの委員会の場でも 1 度御議論があったと思います。手待ち時間等の話があったと思います。もしできれば、もう少し御議論していただいて、我々も参考にさせていただきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。

○曾根崎委員 若年労働者の確保という意味では、長時間労働の是正が一番のキーポイントだと思います。今回出された論点の中で時短の所を見ると、長時間労働ということが書かれているのですが、実労働時間で 2,078 時間という書き方をされています。日建協からもあったように、月平均 80 時間残業をしている実態からすると、内外勤の格差というのではなくて、全体の平均だとそういう数字が出てきても、実態はもっと高いと思うのです。外勤者の先ほどの 80 時間に 12 を掛けると 900 時間近いわけです。それを足していくと 2,600 2,700 時間の実労働時間があることになります。それも外勤者の平均でです。ここに書いてある内容でいくと、長いとは言いながら 2,000 時間ちょっとというような感覚だと少し違うかと思っています。もっと実態に即した表現がないかなと思っています。

 そういう職場に、女性に入ってきて働いてくださいと。均等法で男女が同じ働き方ができるわけですから、女性に男性並みに働けと言っても、それはちょっと無理かなという感じがします。労働時間のところは、現実に即した対応をしていかないと、そこのところは改善というような問題ではなくて、改革するような、今までとは違った考え方、今までの考え方の延長ではなかなかできないのかと思うのです。そこのところは、もう少し掘り下げて書くべきかという気がしています。

○鎌田座長 労働時間の実態把握について若干問題があるのではないかと。月に平均 80 時間の時間外労働。

○曾根崎委員 そういう調査結果になっています。

○鎌田座長 それは、すさまじい数字ですよね。

○曾根崎委員 すさまじいです。

○福田委員 この件は、気を付けなければいけないと思います。技術者と技能者と一緒くたにして議論するのは非常に危険だと思うのです。この間も蟹澤先生がおっしゃっていましたが、技能者の件で言えば手待ちが多いと思います。技術者はいろいろデスクワークもあって、夜遅くまでやっている。時枝さんがおっしゃったのは、技術者のほうの統計だろうと思うのです。それを技能者にも当てはめたらどうなるのかというと、やっている職種も違うので問題があると思います。

 技能者について言えば、そんなに長時間働いていたら体が付いていけません。それは多分適正な時間で働いているし、手待ちが多いから、働いている中で休んでいることも多いと思うのです。何が言いたいかというと、週休 2 日制になかなかなれないのは、手待ちが多くて、実労働時間にそういう濃さがないからだと思います。その辺は実態をきちんと把握して、調査をしてそういう申入れをするなりしたほうがいいのではないかと思います。

○曾根崎委員 ありがとうございます。

○柴田委員 私も正にそれを申し上げようと思っていました。先ほど多能工化の問題と長時間問題と効率化の問題は全部がすごく関連しているので、どれを取っても、どの問題にも行くというトライアングルになっているのだと思うのです。まずは、本当に一体何時間働いているのかをきちんと把握しないといけない。いわゆるスーパーのパートなどでは、時間把握が明白です。しかし、建設は、日給月給だから、数時間働く場合でも 1 日確保してしまえば、労働時間 1 日です。結果として、稼働時間以外の拘束時間にあたかも残業代を払っているような形になって、母数が1日なので時間当たりの生産性が低くなっています。

 時間単位で働いてもらって、他の現場に行くことになれば、今までの 2 日分働ける人が出てくるかもしれないのです。元請も時間管理ををきちんとしていれば、それは工事だから遅れることもあるしあれだけれども、少なくとも午前中に来てくださいねと、午後は開放しますよと、そして賃金も半額で済みます。そういうオペレーションが、製造業など他の産業ではきちんとできているのです。でも、建設業に関しては、そこは全く手を入れられていない。だから、現実が分からない中で議論をし始めてしまうとどうしようもないのです。

 労働組合がきちんとやってもいいし、手待ち時間がこの時間で、実労働はこれだからと。実際に実労働時間でやったら、意外と労働単価は高いではないかと。要するに手待ち時間も他の所で働いたら 2 日分働けるのだから、お給料が倍になるのではないかということが分かればいい。そしたら 1 日ではなくて、指示は半日にしてくれと。労働組合のほうから、 1 日拘束するのは遺失利益が出るのだからそれはやめてくれという交渉をする。労働者が、もうちょっと自分たちの主張をするようにしたほうがいいなと思いました。

 多能工化の問題も、社員だったら多能工化できるけれども、社員以外の人に多能工化させると言ってもなかなか難しい。そしたら組合のほうで、この職種の人たちは、これとこれをやれば待ち時間が減るというような形で、みんなで勉強するとか、もうちょっとお互いに歩み寄るみたいな形がいいなと思いました。

○福田委員 多能工化にするにしても何にするにしても、先ほど出たキャリアパスというのがあります。それは、建設業者の雇用保険が係数的には 1,000 分の 1 高いわけですから、その中の助成をしてもらって、システムを構築する。それをやることによって何ができるのか。現場に入ったときにカードを使います。そうすると出た時間もはっきり分かるようなカードシステムにすれば、仕事がない人は現場から出ていってもらう。これは大変厳しいことだと思います。嫌がるかもしれないけれども、出ていってもらえば、その実態の労働時間ははっきり分かります。

 そうすれば何ができるかというと、多能工化が解消できるかもしれません。あなたは、この職種で、もう要らないから出ていってくれと言われたときに、あの職種もやれるのですとなれば、職種が広がると思います。そうすると、現場にとってもプラスになる。そうするとキャリアパスが大事なことになっていくと思います。いろいろ難しいとは思います。専門工事業者も、そうなると曖昧な取り決めが出来なくなるとかその辺はあるかもしれませんが、職人のことを考えていけば、そういうシステムになっていくことが大事なのかと思います。

○鎌田座長 その労働時間の把握について、 2,078 時間というのは根拠を持って出されたと思うのです。実態として、技術者と技能者と違うとか、手待ち時間だとか、そのような建設業に特化したというか、実態を反映したような労働時間のデータはないのでしょうか。そうするといろいろなデータが出てきて、それぞれの立場で言っているだけで、柴田委員がおっしゃったように、本当のところどういう問題があるのだろうというのが見えてこないのかと思うのです。今はなくてもいいのですけれども。そういうものが、厚生労働省だけの調査でなくて、他の所でもいろいろな調査をされているのではないですか、これは分かりませんけれども。

○谷室長 分布も含めてということですよね。

○鎌田座長 はい。技能者と技術者という、大枠のグループ分けしたような形でも。

○谷室長 それは、時間を頂いて調べさせてください。

○鎌田座長 法律家の立場で言うと、手待ち時間というのが、労働時間になっているのか、なっていないのかというのがまず大きいです。タクシーは拘束時間なので、全部労働時間の中に入っています。でも、建設業は拘束時間ではないから、もしかしたら労働時間に入っていないかもしれない。それはどうなのですか。

○曾根崎委員 それは取決めというか、お金を決めるときに、後で常用精算などをしたときに、それだけ働いていなかったではないかと。そういう取決めをされていると思うのです。

○鎌田座長 その契約の中で話をしているわけですか。

○曾根崎委員 そうです。

○土屋委員 労働時間ですけれども、現場だと必ず業者ごとの人数と、要するに朝礼から始まって退社まで、それで労働時間を書いています。建築の場合には、業者が間に合わなくて夜間工事で来たとか、そういうことをみんな把握して入場を管理しています。働く職人というのは、外で働いている以上、 10 12 時間ぶっ通しで働けるわけではないです。そんなに極端に多いとは思わないです。昼夜で働くなどということはないはずです。会社の中を見たときに、設計部門などは時間が多いです。普通の社員だったら定時でみんな帰っています。

 論点にするところは福田委員が言われたように、労働者の本当の実態を見ないと。スポット業者は手待ちが多いのかと思います。例えば、アンカーを 20 30 本打ちに来ますので、そういう業者は現場を回っています。現場へスポット的に来る業者は人工で精算をします。極端にそこで手待ちうんぬんというのはないと思います。逆に現場の所長というのはうまくサイクルをやって、専門工事業者も利益を出さなければ駄目ですから、全体工程の中で皆さんが働けるサイクルをできるだけ作って、そのようにやるのが現場では良い所長なのです。そうすれば、業者とお互いに win-win の関係になれるので、そういう人で現場は運営しているはずです。

 手待ちでうんぬんという話があったときに、どういう業種で、どこの部門かなということを私も調べてみます。現場の中ではどうだと。私の把握しているのは、アンカー工など本当にちょっとしかなくて、来れば 1 時間とか 2 時間で退場してしまう業者もいます。そういうところがあります。ある程度は 1 日の請負になるぐらいの量があって、業者もそれを満たす人間で動いていますので、それ以上余分にかかることもないです。そうしていかないと、お互いに人工だけ増えて、手待ちになって、最終的には生産性が上がっていないという話に行ってしまいます。そういうところも、もう一回見ていただければいいかと思います。

○鎌田座長 そうすると、働き方とセットで労働時間を考えないと、問題が見えてこないのかなという感じがしますね。もし、そういうデータがあれば議論が深まるのかという感じがします。もちろん専門家の皆さんがいらっしゃるので。でも、技術者は結構長いですね。

○土屋委員 現場は長いです。あまり言うと怒られてしまいます。

○時枝委員 一般的な建築現場で想定すると、職人は夕方 5 時とか 6 時で普通は終わって、概ね 8 時間労働となっています。技術者は現場の最終確認の後、事務所に戻って書類をつくったり、明日以降の段取り、計画等を行います。技能者と技術者では、業態が全く違います。先ほどの年間 2,000 時間うんぬんというのは、技能者の数字になります。技術者について言えば、 2,500 時間から 3,000 時間を超えるところも実態としてある訳であります。

 先ほど来、職人は手待ちが多くて、待ちぼうけみたいな誤解があるようですけれども、決してそんなことはありません。請負という制度の中で、あるいはスポット業者で単価契約とか、非常に細かく無駄のないよう、決められた予算、厳しい条件の中でやっています。ですから、決して遊んでいる職人はほとんどいないと考えてください。ただ、当然待ち時間というのはあります。左官で言えば、壁をペロンと塗るためには下地が乾いていなければいけないとか、いろいろな工程があります。そのペロンとやるのは高々 5 分でも、その前工程にいろいろな段取りがあります。段取り 8 分に仕事 2 分ということで、いろいろな組立ての中でそれぞれのチームでやっています。日本の建築工事というのは、本当に生産性高くやられているというのが、私の今までの実感です。

 多能工もそうですし、もっと稼ぎたい人は、午前で終わったから、午後からはこっちの現場で働きたいと、そのような仕組みが求められています。技能労働者の経験蓄積システム構築にむけては、まずもってこれは技能労働者の処遇改善というところで第 1 段階はスタートしています。この先には労務のマッチングといった発展型を期待するところがあります。

 先ほど鈴木委員から、システムについて「注視していく」というのは消極的な表現だというお話がありました。私も、実感としては同じです。表現はこれきりなのかもしれませんが、思いとしては、厚生労働省にもは是非とも後方支援というか、このシステム構築を実現することで、様々な構造的課題が解決できる。元請にとっては QCDS 管理の向上、生産性向上に資するシステムでありますが、まずはユーザーである技能者をはじめとした関わる者のメリットを、いかに共有していくか、そこがまず第一歩となります。拙速な議論で、途中で頓挫することだけは絶対に避けなければいけないと思っています。そういうところで後押しをしていただきたいと思っています。

○鈴木委員 皆さんが言っているとおりです。弊社も建設会社なので、仕事は請負契約が前提です。その請負の中には待ちも入っているだろうし、下請が見積りを出すときは、その様ないろいろな条件を加味して請負をするわけです。ただ、来週の月曜日から来てくださいと言ったときに、例えば突発的な天候不良とか、その他の作業工程の遅れで入れなかった場合に、それをどう精算するかというのは会社によって違います。それを待ちと考えて精算することもありますし、先ほど福田委員がおっしゃったように常用で契約する場合もあります。それは 1 日幾らでやるとかいろいろな契約条件があるので一概には言えないと思います。ただ、待ちの時間がどうのこうのというのは、基本的に先ほど時枝委員がおっしゃったように、あまり問題にはなっていないと思います。

 もう 1 つは多能工の話です。生産性向上というのが、例えば 1 人当たりの出来高を上げるという考え方であれば、多能工化というのは確かに有効な手段です。重層下請の改善にもつながります。そういう場面では、多能工化というのは 1 つの考え方かと思います。ただ、それに対する登録基幹技能者の更なる優遇制度等がないと、多能工化というのは改善、推進していかないと思います。これは国土交通省のテリトリーですけれども、その辺もやっていただきたいと考えています。

○広畑部長 多能工化で個人的な経験を言うわけではないのですけれども、平成 10 年頃、多能工化を促進するということで、私は国土交通省で予算を付けていました。その後、建設投資の落ち込みがあって、むしろ専門化が進んでしまったのが実態だと聞いています。重層下請もそれで進んでしまったということがあると思います。あの頃は正しくおっしゃるように、基幹技能者の処遇改善とかキャリアパスのためにも多能工化を推進するのだということで、当時の建設省が旗を振っていたはずなのです。その辺は本日頂いた御意見を国土交通省にぶつけてみます。多能工化をそこまで踏み込んでいいのかどうか。目的というか、その効果は皆さん御存じのとおりなので、この場で御議論いただいたものを、国土交通省にぶつけて、どこまで書けるかを検討させていただきます。

 フェーズが変わって、総論のところにあるように、今までは多能工化どころか、専門化、専門化で、ゼネコンのほうもどんどん人減らしとかいろいろなことがありましたので、それで専門分化が進んでしまいました。それをもう一回多能工化に戻すのかについて、国土交通省の意見をよく聞いてみたいと思います。

○小倉委員 今の御指摘の内容ですけれども、建設産業担い手確保・育成コンソーシアムというのが結成されています。これは、建設業振興基金が事務局を務めています。その下に、プログラム・教材等ワーキングが設置されています。これは行政オブザーバーとして国土交通省の土建局、厚生労働省は能開局が出ています。鈴木委員もワーキングの委員をされております。その中では初任者教育を中心とした取組をどうするかということと、併せて多能工化の話も出ていますので、基本的な方向性については、双方が一致しているのではないかと考えています。

○土屋委員 待ち作業ですけれども、今私はスポット的な業者を言いました。例えば雨が降って仕事ができない職種というのは、外壁の塗装と屋上の防水は間違いなく乾くまでできないです。そのときに業者がいろいろな現場を持っていれば人を回せるわけです。ただし、どこも雨が降っていればできないです。結局は、業者が持っている人数が少なくなってしまうと余計そこしかない、現場が 1 つしかないよという話だと待ちになってしまいます。他の仕事があればいいですけれども。防水なら、中でやれる防水を持っていればね。そうなると、全体的にその企業の職人が待ちというのはあります。それを言われているのかなと思うのです。天候に左右されての待ちです。

○柴田委員 芝浦工業大学の蟹澤先生の調査ではという話で、日本の建設業は、工学的な生産性は高いけれども、労働生産性はすごく低い。それはなぜかと言ったときに、重層構造と、あとは待ち時間とおっしゃったのです。

○福田委員 業種が多いからです。

○柴田委員 そうです、業種が多いからです。その中では、場合によっては壁紙を貼るのに、下のヘリみたいなものを作る人と、分かれているからと。それが多能工化だと理解していたのです。あとはそれの待ち時間とおっしゃったのです。それは先生が調査したものと、皆さんがおっしゃっているものは若干違うのかなと今は理解しています。

○土屋委員 本来内装なら、その内装一式でやれる業者になってしまえば何でもできるわけです。理想はそこなのですけれども、 40 50 の職種に中で分かれてしまっているので、そこが今の経済状況でみんな下へ行ってしまったので、もう一回戻して一式という形でやってくれれば、解決できるのではないかと思うのです。

○鎌田座長 その待ちということの意味も、今おっしゃったのは、言ってみれば職人が違うというのは、要するに契約が一括でいけば、その待ちというのは効率化できるわけですよね。ただ、技術的に違うもので、順番があるから待っているというのは技術的な問題ですよね。

○土屋委員 それを現場はこなさないと駄目です。それは所長の技量です。

○鎌田座長 どういう点で言っているのかを、事務局も整理しながら、待ちの問題もあれば、多能工というのは待ちの問題が前提になっているはずだから、少し整理してもらったほうがいいと思います。

○谷室長 難しい宿題ですね。

○鎌田座長 そうなのだけれども。

○谷室長 蟹澤先生にももう一回個別に、本日頂いた御議論を踏まえて、どのように言ったらいいですかねみたいに。

○鎌田座長 私は、どちらかといえばまだ建設を知っているほうだと思うのです。一般の産業の方は、恐らく何が議論されているのだろうと。それで言っていることが違うでしょう。先ほどの労働時間 1 つ取っても、例えば月 80 時間といったら、どんな産業だろうと思いますよ。要するに、メンタル不調の人が続出しているのではないかみたいな。でも、そうでもないというような意見もあるとすれば、一体何なのだろうと。ただ計画ですから、そういうところのしっかりした共通のデータ等の見方を示していくということが正に周知、いろいろな方に理解してもらうことの前提になると思います。そこは苦労になると思いますが、よろしくお願いいたします。

○勝野委員  3 ページの「課題」の所を含め、要望も含めて発言させていただきます。今度の計画は、今後 5 年間の建設雇用の改善の計画ということで立てられるわけです。そういう意味で、ここで具体的な課題として、若年労働者の確保。担い手、取り分け若年労働者の確保を 1 番目に出していただいたことは正しいと申しますか、歓迎をしたいと思います。ただ、具体的な取組の項目がポツで幾つかあります。若年労働者が建設産業に入ってこない大きな要因として、この間に言われてきたことは賃金であったり、休日であったりというような、就労環境をいかに改善していくのかというところが一番大きな課題であったと私は認識しています。そういう点でポツがありますけれども、ちょっと順番が違うのではないか。明確にこの中で、賃金と休日を含めた「就労環境の改善」という言葉が入って、もうちょっとしっかりと最初に入れていく必要があるのではないかと思っています。それが 1 つです。

2 つ目は 5 ページの➃の「労働安全衛生」の所です。今後解体なりリフォーム、リノベーション工事がこれまでよりも増えていくと思います。そうした点から考えると、アスベストの記述がここには入っておりません。アスベスト対策の重要性ということを是非追加をお願いしたいというのが 2 つ目です。

3 つ目は、今後 5 年間の取組で言うと、大変大きなプロジェクトを 2020 年に迎えます。このプロジェクトは、建設業にとっても非常に大きな影響を与えるものだと理解しています。そうした点から、既に厚生労働省を中心に、競技施設の建設に関わる安全対策の協議会が来年 1 月には設置されるという動きが出ています。これは安全対策だけではなくて、例えば先ほど来出ている工期の問題であるとか、又は労働時間、賃金、女性の活用という点からも、オリンピックに関わる建設工事を、そうした総合的な対策と申しますか、言ってしまえば適正な労働、又は公正労働を目指す現場という位置付けの下に、オリンピック工事が進められるべきだと思っています。そういうことについても、是非何らかの方向性を出していただきたいと思います。

 最後ですが、先ほど計画の周知の点がありました。第 8 次のときにはこういう形で概要を出していただきました。正直言って、こういう形で字ばかりの概要だとなかなか分かりづらいと申しますか、インパクトがないということがあると思います。そうした点で、今度の第 9 次の概要については、もうちょっと見栄えのすると言ったら失礼ですが、目で見て、視覚的に分かりやすい概要を是非作っていただきたいという要望です。

○鎌田座長 今の要望と質問について事務局から何かありますか。

○谷室長 若年の対策で、処遇向上の観点とか、処遇関係の改善をしっかり書くべきであると。これは論点に明示的には書いてなかったのですけれども、計画のときにはしっかりと書いていきたいと、そういう案を作りたいと思っています。アスベストの対策については前回の第 8 次計画にも書いてありますけれども、これもしっかりと書いていく案を作りたいと思います。オリンピックの対策ですが、これは厚生労働省内で、オリンピック・パラリンピックに向けた厚生労働省の施策をまとめたものを、中でしっかり対策を打っていこうというものを、大臣を筆頭でやっています。その中で安全対策の面もありますし、私どもの政策で言えば人材確保の観点、あとは労働環境の整備の観点もその中に盛り込んでありますので、そういうのをしっかりとやっていきたいと思っています。計画の周知については、御指摘がありましたので、分かりやすい、見栄えのするものになるように頑張りたいと思います。

○柴田委員 私も若年労働者の所はすごく気になっていました。最初のポツに、「若年者の職業意識の向上や」と言われた途端に、何のことを言っているのと思ったのです。このブロックの意味が今ひとつ分かりませんでした。小中学校の教育現場や関係機関との連携も、現状の建設業の実態を連携してしまったら来る人がいなくなってしまうのではないかと思うので、どういうことかなというのがあります。

 ただ、一番下の「建設産業で働く魅力が感じられるよう」という所は、概論として、建設業の重要性を言っているので、建設業がすごく私たちにとって大切なものなのだよという意味での、職業意識を持っていただくという意味だったら、最初と最後のポツをうまく組み合わせて、要するに建設業はこんなに素敵なものなのよという意味のものをまず最初に持っていくのがいいのかと思いました。あとは、先ほどおっしゃったように、どれだけ本当に実質的に魅力的なものにしていくかというところを書き込んでいけばいいと思います。

 ➁の女性労働者の活躍推進も、単に表面的に、その人たちが働きやすいということではなくて、製造業とか他の業種もそうなのですけれども、異性が入ることにより、建設業の質の向上というか、新しい目線で良いものができるみたいなニュアンスがちょっと入ったらいいのかという感じがします。もちろん女性が入るというところには、現場が明るくなるというような話もこの前にはありました。それだけではなくて、きめ細かさなど、いろいろな気づきがあるような、そのようなニュアンスが若干入ればいいと思いました。

5 ページの賃金制度の下のブロックの所の、「職種別に優秀な建設技能者の技能と経験に見合った報酬の確保に向けた取組も行われている」というのはすごく重要なことです。能力に合ったお金、実績に合ったお金がもらえるということ。 7 ページの最後の「情報を活用し」というシステムの構築の所だと思うのです。システムの構築は本当に重要なのだけれども、まず「技能と経験に見合った報酬の確保に向けた取組」と言っても、誰がそれをオーソライズするのか。どういう仕組みでやっていくかというのが重要です。最後のほうでは、「資格と工事経験等を蓄積し」と書いてあります。これも客観的にこの人はこれだけの能力があってというところを、どうやってオーソライズしているかというのを決めないと、ただ、履歴があるだけでお給料に反映されないシステムになってしまいます。

 私も会社で社内のシステムを作るときにいっぱい失敗しています。大きく何でもかんでも入れても、使わないデータとか、使わないシステムをつくってしまったら、開発のお金もいっぱいかかるし、その後の維持にもすごくお金がかかってしまいます。システムというのは、設計しただけではなくて、これにはどんどんビッグデータが入っていくわけですから、これを維持していくために、またすごいお金がかかったりします。できるだけシステムは小さくして、他のサブシステムみたいな所から、ちゃんとデータが入力できるようにというか、流し込むことができるようにしていけば、必要な部分だけやればいいということです。

 あと、これは個人情報の関わることなので、データとして何を目的に、どのデータを活用して、こういうアウトプットを出すのだというイメージがないと、結局無駄なデータをいっぱいもらって、そのデータが流出してしまって、またすごい批判を浴びるみたいになります。最低必要限のデータを持つことを考えないと、お金も大変だし、セキュリティも大変だし、すごいことになってしまいます。何を目的に、どのデータを入手し、それをこんなふうに活用していくのだという基本設計みたいなものをちゃんと作っていかないとえらいことになります。支援をされるということですけれども、国民の税金をすごい無駄遣いしてしまうといけないので、それも併せてきっちり議論しないといけないと思いました。

 先ほど PDCA で第 8 次のチェックが必要だとおっしゃっていました。正にチェックされているということでした。せっかくされているのだから、第 8 次から得た教訓が、総論か何かに若干入っていると、ちゃんとやっているのだなという感じがすると思うのです。前回の計画において課題に残ったこれこれについてはみたいな感じのものが入ると心地よいと思いました。

○福田委員 柴田さんがおっしゃった、 5 ページの賃金制度の所です。建設業の高齢化というのは、絶対に避けて通れないだろうと思うのです。どうしても 40 歳、 45 歳をピークに下降していきます。これはかなり急降下で下がっていきます。そういう職種に若い人が果たして入るのかどうか。どうしても高齢化が進むとすれば、やはり 55 歳とかその辺にピークを持っていくような産業にこれからはしていかなければいけないと思います。

 そのためにはどうしたらいいのかということを考えていかないといけないのかと思います。高齢化は避けて通れないと思うのです。 60 歳をピークに下がっていくのだったら若い人も入るかもしれないけれども、 40 歳ぐらいの人が若い人を育てるというのは、忙しくてそういう気持ちもないのではないかと思うのです。 60 歳ぐらいになって、そろそろ後継者を育てなければいけないと思えば育てるかもしれないけれども、 40 歳の人では育てていたら、自分の職種を取られてしまうかもしれないと思ったら育てられないのではないか。最近私はそういう気がしています。その辺は真剣に考えていかないと駄目なのではないか。

○柴田委員 この前、すごく高齢化した中小企業なのだけれども、技術がある所をテレビでやっていました。 60 歳、 70 歳になったすごく技術のある人は、やはり口が重いから後継者を育てるのはすごく難しいらしいのです。そこの女社長は、いわゆるマクドナルドで働いていたとか、ホテルマンだったり、そういうサービス業で働いていた若者を入社させたのです。なぜそうしたかというと、若者にコミュニケーション能力があるから、うまくお年寄りの気持ちをほぐして、技能を伝承してもらうということらしいのです。

 その口の重い人たちに、こうやって教えるのだと言ってもなかなか難しいから、コミュニケーション能力のある受け手の若者が高齢者から技能の教えを引っ張り出すのです。若い人本人と高度な技能を持つ高齢者の間を取り持つ翻訳者がいて、ちょっとつないであげるとかでも良いのです。教えるノウハウまで年寄りに期待するのは難しいので、そこの仕組みも考えたほうがいいと思いました。

○鎌田座長 最終的には改善計画案を作っていただいて議論する予定です。今、いろいろな御意見が出ましたので、この論点で今までの御議論とは意見が違うところもあると思います。そういうところは、言ってみればどのようにまとめればいいのかという事務局からの問題提起も含め、次回は、そういう形で論点案をもう一度バージョンアップさせてもらえませんか。その上で計画案というたたき台を作っていただいたほうがいいのではないかと思います。事務局はいかがですか。

○谷室長 分かりました。

○鎌田座長 そういうことだとすると、言わばこの項目立てについて何か付け加えるものがあれば今おっしゃっていただく。あるいは項目立てはこういうところでいいのだということであれば、一応この項目、大きな枠の中で、いろいろ中身の議論としては、今までの御意見を付け加えるという感じで進めたいと思うのですが、いかがでしょうか。項目の所で、この項目を立てたほうがいいよというものがありますか。

 大体このような項目の中で、それぞれの項目に、今皆さんから御意見を頂いた部分を反映させる、あるいは事務局としてもどういう方向が適正なのか、少し御議論頂きたい論点の論点といいますか、そういうものもピックアップしていただいて、再度論点案をもんでみたいと思いますが、そのようなことでよろしいですか。ありがとうございます。また何か他に追加的なことがあれば、事務局のほうへメールでも結構ですし、お電話でも結構ですので言っていただければと思います。

○広畑部長 先ほどから何度か出ております国土交通省が中心になっている就労履歴、これは名前が変わります。中身については柴田先生から御指摘がありましたけれども、我々としても非常に意味があるものだと思っています。スケジュール的に、彼らは 3 月ぐらいまでに基本計画をまとめたいとは言っているのですが、そのスケジュールがちょっと遅れてくると、なかなかその仕様をお示しするのは難しいかもしれません。そのことだけはお含みおきいただければと思います。いずれにしても、私どもは受け止める気は満々です。もう少し急いでくれというお願いはしております。

○鎌田座長 そういう情報がありましたら、また頂きたいと思います。そのほかに事務局から伝えることはありますか。

○富永補佐 次回の日程なのですけれども、これから日程調整をさせていただいて、日時、場所等をお知らせいたします。日程調整に御協力をお願いいたします。

○鎌田座長 本日の委員会はこれで終了いたします。最後に本日の会議に関する議事録署名委員として、労働者代表は時枝委員、使用者代表は土屋委員にお願いいたします。本日はお忙しいところをどうもありがとうございました。


(了)

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