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2015年10月21日 第45回労働政策審議会職業安定分科会雇用対策基本問題部会建設労働専門委員会議事録

職業安定局雇用開発部建設・港湾対策室

○日時

平成27年10月21日(水)10:00~12:00


○場所

中央労働委員会 第612会議室(6階)
(東京都港区芝公園1-5-32)


○出席者

公益代表

鎌田座長、大橋委員、柴田委員

労働者代表

時枝委員、曽根崎委員、勝野委員、小倉委員

使用者代表

土屋委員、大木委員、福田委員

参考人

蟹澤芝浦工業大学工学部建築工学科教授、瀧上全国工業高等学校長協会事務局長

事務局

広畑雇用開発部長、谷建設・港湾対策室長、富永建設・港湾対策室長補佐、佐藤建設・港湾対策室長補佐

○議題

(1) 建設業の現状と課題について
(2) その他

○議事

○富永補佐 皆様おそろいですので、ただいまから第 45 回労働政策審議会職業安定分科会雇用対策基本問題部会建設労働専門委員会を開催いたします。まず、配布資料の確認をお願いいたします。資料は、蟹澤先生の資料 1 及び、瀧上事務局長の資料 2 となっております。資料 2 は、印刷された紙とパンフレットがクリップ止めされたものになっております。もし、お手元に足りない資料がありましたらお申し出いただければと思います。

 続いて、本日の委員の出欠状況の報告をいたします。本日は、使用者側委員の鈴木委員から欠席の御連絡を頂いております。それでは、以後の進行は鎌田座長にお願いいたします。

○鎌田座長 それでは、議事に入ります。議事次第にありますように、本日の議題は建設業の現状と課題について、ヒアリングを行います。今回は、有識者と教育機関からお話を伺うことにしております。最初に、芝浦工業大学工学部建築工学科の蟹澤教授からお願いし、次に公益財団法人全国工業高等学校長協会の瀧上事務局長からお話をお伺いいたします。本日は、お二人ともお忙しいところ誠にありがとうございます。どうぞ、よろしくお願いいたします。

 それでは、初めに蟹澤先生から御報告をお願いいたします。

○蟹澤教授 ( 芝浦工業大学 )  おはようございます。芝浦工業大学の蟹澤と申します。本日は、建設業の現状と課題ということで、建設労働問題を中心にお話をさせていただきます。お手元に資料を配布しておりますが、プロジェクターも併用しながら説明させていただきます。これまでも、何人かの専門の方のヒアリングをされているということですので、人がどれぐらい減っていくかという数値的なものは今日は割愛した上で、その先の話を少しさせていただければと思います。

 まず最初に、この委員会の課題は、建設業の雇用改善だと思います。雇用という問題に関して、建設業は特に国土交通省の社会保険未加入対策がここ 5 年ぐらいかなり進み、私もこの間ずっと委員等を務めさせていただきましたが、かなり改善はしたという状況にあります。ただし、雇用という話でいうと、本当に雇用されている、しかもその中でも、いわゆる技能者、職人はまだまだ少ないです。具体的な数を予測するのは難しいのですが、多分ここにいらっしゃる皆さんの意見も一致すると思いますが、多く見積もっても雇用という枠組みの中にきちんとはまっている建設技能者は半分ぐらいで、実際から言うとそれより少ないという前提でお話をする必要があるのではないかと思います。それから、社会保険未加入対策問題の中で私がずっと主張してきたのは、よく社会保険加入の厳格化が進むと一人親方が増えるという言い方がずっとこの業界ではされてきましたが、実は、その一人親方が増えるという主張をよく聞きますと、その大部分は一人親方ではなくて偽装請負という問題なのではないかと、この間ずっと感じてきました。これについても、国交省のいろいろな取組等により、偽装請負の排除も具体的にうたっていますので、改善されてはきていると思いますが、実態としてはそういう問題もたくさん含まれております。

 ここは、この産業自体の非常に大きな問題なので、今回の委員会で具体的にすぐに御検討いただくことになるかどうかは別で、一人親方にしろ、偽装請負にしろ、建設業の場合には何らかの指揮命令を受けて、実態としては労働者として働いている方がかなりいるという問題も、遠からず正面切って議論、検討をする必要がある課題なのかなと感じております。

 それから、この間、例えば川崎のほうで火災で亡くなる方がいたり、いろいろな問題が起こってきましたが、引退した後にもう即生活保護というような形で余生を過ごしているような、高度成長期に頑張ってこられたような技能者がものすごくたくさんおります。なぜそうなってしまうのかというと、そういう方々のほとんどが無年金者ということがあります。これは、これからまた団塊の世代のそういう方々がたくさん出てくるので、その対処療法としてどうするかという問題と、やはり予防として今、現役の方々にはきちんと保険に入っていただくというような制度をもう一度しっかりと考えるようなことが必要ではないかと考えております。

 そういった上で、今日は幾つかのお話をさせていただきます。まず現状認識ですが、ここに日建連も全建総連も全建もいらっしゃるので、こういう話はされてきたのかと思いますが、直近の状況でいいますと、技能者の減少は下げ止まりつつあるのかなという感じがいたします。業界といろいろなお話をしたり、いろいろな数値をいじっておりますと、恐らく 2012 3 年ぐらいが底で、その後最近は少しずつ高卒の新規入職者も増えているとか、統計上のいろいろなデータを見ても増えているようなことがあると思いますが、まだまだこれから潜在的に減る数はものすごくあります。日建連は、その中で、今後 10 年間で 128 万人減ると予測をされ、そのうちの 90 万人を何とかして、残りの 30 数万人分は生産性の向上をしないと対処ができないだろうとおっしゃっております。これは、非常に厳しい数字だと認識する必要があると考えております。

 特に業界の中では、入職促進や女性に活躍していただくなど、いろいろなことが言われておりますが、これは非常に厳しいです。特に、大工、左官というような伝統的職種は、仕事の内容が変化していることもあるのですが、それ以上に減少が激しく、恐らく今後 10 15 年ぐらいで、バブル崩壊以降既に半減近く減っておりますが、何もしないと更に半分ぐらい減ってしまうのではないかと思います。その要因は、若い人がほとんどいなくて、ものすごい高齢化が進んでいることにあることは明らかかなと思います。

 そういった前提で、今日はいろいろなお話をさせていただきます。まず、何でこの世界に人が入ってこないのかですが、第 1 に賃金が低いことなのだと思います。レジュメの 2 枚目の紙にありますが、これは日建連ハンドブックから取った賃金比較の数値ですが、ピンク色の部分が建設業です。その上が製造業、その上の緑が全産業ですが、製造業比で年収は約 50 万円低いです。これは、技能者だけではなく建設業全体ですが、一般産業と比べると 100 万円以上安いというような実態になります。これは、もう皆さん御存じのことだと思います。その辺りをもっと細かく見ていくと、私はその辺りに根本的な理由が見えるのではないかと思います。

 よく、職人になって一人前になるには 10 年掛かるのだという言われ方をしますが、これは幾つかの職種を取って見たものです。これはいわゆる建築大工の年収の推移です。ピーク年収は、約 440 万円ぐらいで、これは賃金構造基本調査の 2014 年度データです。それから、比較対照としてそれほど技能が要らないと言われる土工ですが、これはピークが 400 万円です。これもまた比較対照ですが、電気工事の方ですが、ピークはもう少し上で 550 万円ぐらいです。それから、これは製造業の旋盤工の賃金カーブですが、これもピークは 500 万円となっております。それから、一番賃金が高いのは、これは統計を毎勤調査から取った値ですが、高卒で 1,000 人規模の総合工事業に入ったときの賃金ですが、実はこの年は例年より低くて、この前の年まではずっと 1,000 万円を超えていたのですが、それぐらいの賃金カーブになります。このピーク賃金の安さも 1 つの要素かと思うのですが、私が最大の問題かと思っているのは、賃金ピークの年齢の違いです。

 例えば、ゼネコンや旋盤工もそうですが、電工も割と後ろ側にありますが、賃金のピークは 50 代後半ぐらいにあるのに対して、大工、土工はもっと早いのですが、大体 40 代ぐらいで賃金のピークを迎えてしまいます。その後は、平行線か下がっていく状況があります。これは、従来から、一人前になるのに 10 年、熟練するのには 20 年、一生修行だと言われるわけですが、例えば、これを大工で見てみると、ようやく熟練したかなというときが賃金のピークで、あとはそれほど伸びない。横ばいか落ちていってしまうような実態があります。これは 2014 年だけの特殊な事情かなと思われるかもしれないので、何年分か用意してきました。 2005 年、 2009 年、 2013 年を持ってきましたが、後ろに 2 つ目のピークがある場合もありますが、どれを見ても最初のピークは 30 代後半から 40 代半ばぐらいで来てしまいます。ここに、特に職人になれない、なりたがらない理由、それからあとで申し上げますが、親が子供を職人にはさせないという理由が明らかにあり、業界にいる人はこの実態を知っていることが背景にあるのではないかなと思っております。

 今お話をしたことを文章でまとめたのが、次になります。体力のピークが賃金のピークという実態があります。これは、統計を見ても、実際にインタビューをしていても明らかな実態ではないかなと思います。これは、明らかに一人前になるには 10 年というこの業界の通説とは非常に矛盾をする。もともと矛盾していたというより、矛盾するようになってきたというほうが、もしかしたら正確かもしれませんが、そういう実態があります。

 それから、ここ 10 年ぐらいで、ものすごく仕事の内容が変わりました。特に、木造大工の世界では、大工が墨付けをして刻むというのがほとんどなくなり、全部工場機械のプレカットになってしまいました。それから、ビルの工事などに行っても、左官工事はほとんどなく、みんな乾式のクロスを貼るような仕事になってしまったのもあり、いわゆる付加価値のある仕事が職人の所から離れてしまった結果、賃金も安くなっていることもあるのかもしれません。

 もう 1 つは、私はこの業界で社会保険問題をずっとやってきましたが、職人は請負業を指向する、それが上がりのモデルなのだということが非常に根強くこの業界では思い込まれておりまして、昔はゼネコンの監督の倍ぐらいもらっていたとか、バブルの頃には大企業の課長、部長ぐらいの収入があったという言われ方がしますが、それ自体もよく聞いてみると、やはり社会保険に入っていないとか、場合によっては税金を納めていない分が手取りになっているということも含めての話であった可能性もあるということを考える必要があるのではないかと思います。それから、今後は新築工事がたくさんあって、請負であればものすごく儲かるというモデルは、これは絶対に成り立たないだろうなという前提でいろいろな話をする必要があるのではないかと思います。

 今日の後半のメインの話になりますが、日本の職業能力開発制度というのは、最初に入るときの訓練・教育制度はたくさんあるのですが、入った後に継続訓練をするとか、より上を目指していくというものが、非常に少ない問題です。要するに入って、あとは見て覚えろという世界で、どうやってその人がより高い技能や知識を身に付けていくのかというところがありません。この辺りが、外国などを調査していますと、大きな問題かなと思うわけです。それから、社会保険問題でいいますと、そもそも建設業は雇用保険に入っていないので、制度に乗った訓練が受けられないということが昔からあったわけですが、そのようなことも改めて考えなければいけないのではないかと思うわけです。

 前提が長くなりましたが、もう 1 つ、どういうことがこの業界に人が入ってこない問題なのかということで、よく 3K 問題と言われます。それについても今日は、皆さんのお手元には答えが出ているのですが、昔から建設業で働いている人は子供を入れたがらないという話をずっと聞いているものですから、去年から研究室で調査をしております。まだサンプルが少なく、今年はもっと増やすつもりです。最初のものは、大手ゼネコンの超高層を 2 本建てているようなすばらしい看板現場での職長に話を聞いた結果です。仕事にやりがいはありますかということでは、ある意味逆のびっくりをしたのですが、 8 割以上の人が仕事にやりがいはあるという実態がありました。それに対して、賃金に満足していますかというのは、「とても」はゼロでした。「ある」が 3 割ぐらいで、あとは「あまりない」ということで 7 割ぐらいというような結果でした。

 これが一番聞きたかったことなのですが、子供に継がせているか、それとも継ぐことを勧めるかを聞きました。たまたま大手ハウスメーカーの現場をやっている大工 37 人にも同じことを聞けたのですが、その結果、明確に「 Yes 」というのは 1 割。ハウスメーカーのほうは「まあ」というのもあるのですが、それを含めてもこれぐらい( 1 割)です。残りはみんな子供には継がせないと言っている実態があります。要するに、この業界は、もともと一般の方からイメージが悪いのに、中にいる人自体が子供に継がせないと言っているということは、これは若い人が入ってくるわけがないというようなことであります。これも蛇足ですが、昔は職人にならないで建築学科を出てゼネコンへ行けという話だったというのですが、最近はゼネコンへ行っても別に大したことないから、コンピューターでも学んでプログラマーになれとか、経済学部へ行って銀行にでも入れという話が多くなっていると、冗談でよく聞くことです。

 ただし、私はこのデータの中で、やはりこれは気に止めなければいけないのは、仕事にはやりがいがあると言っている人が非常に多いと。それに対して、子供には勧めたくないと言っているのは、やはりここには賃金問題や、休日がない問題があります。よく現場で聞くことですが、若いうちはデートの予定も組めない、突然土曜日仕事になったりする。子供ができてからは、運動会に行ったことがない人がほとんどなどというところが、この業界に入りたくない一番の理由だと思われます。ですから、世の中でいうような 3K 問題が必ずしもこの産業の問題ではなく、やはりそこから先の本質的な問題を検討する必要があると思います。

 その 1 つが、私は低賃金、長時間労働問題ではないかと思います。簡単に言いますと、生産性の問題で、賃金が低く休みが少ない理由は、低い生産性にあると思っております。このときに考えなければいけないのが、要するに日本の建設業は工学的な生産性は世界でトップレベルで、例えば、ビルが早く建ち上がるとか、工期どおりに終わるというのは、私はいろいろな国で見ておりますが、まだまだ間違いなく世界のトップレベルにあると思いますが、いわゆる経済学的な労働生産性の観点で比べると、国内産業間で比較しても低いですし、今回はデータはなかったのですが、海外と比べても低いと言われております。これが、私はこの国の建設業の本質的な問題ではないかとも思っております。

 これも日建連のデータですが、労働生産性というのは、バブルの頃には建築業が一番高かったのですが、どんどん下がってきて、今は時間当たりで製造業の半分ぐらいになっております。それから、ほかの統計をいろいろといじってみても、建設業の生産性は非常に低く、統計上の労働時間も非常に長いという問題があります。ただし、この時間問題に関しては、実は実際の労働時間は短いのではないかというような話もあり、いろいろと複雑なのですが、少なくとも労働生産性が低く、統計上、他産業と比べて労働時間は非常に長い。結果として、時間当たりの労働生産性が非常に低いのが、この産業の実態です。

 釈迦に説法になってしまいますが、労働生産性というのは付加価値額を働いた人の数で割ったということで、なぜこれが低いのかというと、第 1 に分子が小さいという問題があります。これは、この間ずっと建設業の問題として取り上げられてきた、いわゆるダンピング受注。要するに、低い金額で取っていくという問題です。バブルの頃にこの産業の労働生産性が高かったのは、やはり受注単価と儲けが大きかったのがあるわけです。分母のほうが大きいということは、今は人手不足と矛盾するじゃないかと思われるかもしれませんが、これは私は、延べ人数が多過ぎるという問題があるのだろうと思っております。今日は細かい話をできないのですが、私は工学部の人間ですから、よく現場に行って生産性の調査をやります。建築現場にいて、丸 1 日そこで仕事がある人は非常に少なく、半日分しか仕事がないとか、 2 3 時間しか仕事がない、場合によっては、例えばマンションの現場に行って 1 時間以下ぐらいしか仕事がないと。次に移動できればいいのですが、次の現場も遠くて、行ったとしても 1 日に 2 つなどという人が非常に多いのです。これが、延べ人数が非常に多いという問題です。なぜそうなるのかというと、簡単なことで、 1 つは分業化が進み過ぎている問題。簡単に言うと、重層構造が深過ぎるということです。タイムリーな話題でいいますと、杭打ちが 3 次下請まであったという話でしたが、一般的に全建総連に聞けば分かりますが、 4 次、 5 次はこの国では当たり前で、場合によっては 10 次下請までいると。私は、東南アジアや先進国など、いろいろな現場に行って、直接何次下請ぐらいまでいるかを調べているのですが、途上国に行っても先進国に行っても、せいぜい 3 次ぐらいです。 4 次、 5 次とか 10 次と出てくるのは、残念ながら日本だけの非常に恥ずかしい特徴といいますか、この産業の特徴になっております。

 延べ人数が多くなることには、重層化の問題もありますが、もう 1 つは工学的に考えてみると、やはり技能レベルが低下しているので、 1 人ができる数が減っているという問題もあります。それは、工学的な世界では、歩掛という、 1 人の職人が 1 日にどれぐらいの出来高を稼げるかという指標がありますが、それが次に書いてあります歩掛という計算式です。これは、 1 人の人がたくさんの作業量をこなせればいいわけですが、これが低くなっている要因は、次のスライドに歩掛を向上させるにはどうしたらいいかが書いてありますが、これを良くするための一番の方法は、やはり労働の質を向上させる問題が 1 つです。もう 1 つは、最近言われていますプレハブ化、要するに現場での人の手による生産を減らして、なるべく工場生産や機械化をすることです。これも今日はそんなに話ができないのですが、日本の現場でプレハブ化や機械化を進めると、余計に人間のやる仕事が難しくなってしまう部分が残るという問題もあり、これは非常に複雑です。という意味では、この生産性を上げる一番早い方法は、やはり教育訓練で人の能力を上げることがいえると思います。

 能力向上の問題は、全部が教育訓練に絡んでくる話だと思うのですが、これはよくヨーロッパのマイスターやアメリカのユニオンの制度が対比に出されますが、私はその辺りの研究を今しているところです。教育訓練の充実には何が必要かという場合に、三位一体の制度なのだと言われます。これは、教育訓練制度があり、それによる能力評価があり、その能力評価に応じて処遇が上がっていく仕組みです。これが PDCA サイクルにうまく回っていくと、職人で頑張った人はどんどん賃金が上がっていくとか、そういうものに憧れて若い人が入ってくるという良いサイクルができるわけです。その制度をどうやって作ろうかと、私は今いろいろな所で業界団体と考えているのですが、日本にはそもそも前提となるものが何もないではないかということに、随分前から気が付いております。

 ないことをここに並べておりますが、ドイツのマイスターであれ、アメリカのユニオンであれ、イギリス的なギルドであれ、そこの構成員ははっきりしています。組合員か組合員ではないかです。組合員であれば、 ID 番号を持っていて、その人のいろいろな職歴などは登録される仕組みがありますが、日本にはこれがありません。それから、能力評価の基準ですが、皆さん御存じだと思いますが、例えばイギリスの NVQ などがありますが、日本には一応厚労省で作ろうとしておられる職業能力評価基準がありますが、国民全体が知っているような制度はもともと日本にはありません。ですので、例えば国交省の設計労務単価も、大工の能力の高い人は幾ら、低い人は幾らではなく、東京都の大工は幾ら、千葉県の大工は幾らというように、県単位で一職種一単価、要するに一物一価のような形になっているのが、それの象徴と考えられるのではないかと思います。

 それから、教育訓練制度ですが、これも皆さん頑張って構築されたものがあるのですが、やはり今、詳しく調べてみると、訓練指導員のノウハウによるところが大きく、それがマニュアル化されているとか、別の場所でも同じように教えられるという仕組みがほとんどないことが分かっております。また、先ほど申し上げましたが、入職時のみならず、継続的な教育訓練制度はほとんどありません。最近でいいますと、例えば大林組が職長向けに学校を作ったというのは結構画期的なことで、特に上位レベルの人がより上位に行くという教育訓練制度は、この間ずっとこの国にはなかったことが現状だと思います。

 入口の所でいいますと、近代徒弟制度が、私の調べた限りではアメリカにもありますし、イギリス、オーストラリアなどいろいろな国にあるのです。いわゆるアプレンティス制度ですが、それが日本には旧来の徒弟制度のままでしかないこと。あとは、ユニオンやギルドが持っているような制度確立・運用のための基金が日本には一応ありますが、外国ほど大きなものがないというような実態があるのではないかと思います。

 最初の ID に関しては、先般、国土交通省で就労履歴管理システムのコンソーシアムもできて検討が進められ始めたところですが、私が前から主張している具体的な事例としては、イギリスの CSCS というシステムがあります。これは建設業で働く人が職人だけではなく、現場監督も設計者も全員がこういう身分証明書を持っていて、これがないと大規模な現場には入れないのです。オリンピックの工事のときには非常に厳しかったと聞いておりますが、要は移民などが入ってきて労賃を下げるとか、品質管理上問題が出る、ましてやテロの人が入ってくることを排除するための仕組みを随分前から作っているということです。これも、大昔からあるわけではなく、イギリスがリーンシンキング、パートナリングなどと日本から学んで新しい制度を検討していた 1990 年代のサッチャー政権の頃から作り始めて、最近ようやく確立してきた制度です。

 このような ID 登録制度があり、次に能力評価基準があります。これは、余り細かい説明をするまでもなく、皆さん御存じのことだと思います。要するに、教育訓練に明確な目標がある。例えば、イギリスで教育訓練の専門学校に行くと、この講習はレベル幾つのための講習ですということが全てに明記されております。そういう分かりやすい指標があり、例えば大工の NVQ3 を持っていますよと言うと、これは労働協約がある・ないは国によって違いますが、イギリスやオーストラリアでいうと、それは労働協約がなくてもそのレベルの人はこういう賃金だよねということが市場的にコンセンサスがあり、それなりの賃金がもらえるという仕組みができております。

 私が前から主張しているのは、外国人技能実習制度をうまく制度設計すれば不可能ではないということです。東南アジア地域も含めて、イギリスは旧植民地国に自分たちの能力評価制度を輸出して囲い込みを図っているわけですが、日本も是非そのような戦略も含めてこれを確立する必要があるのではないかと考えているところです。レベルがどいうものかというのは、一番有名なのは NVQ ですが、レベルが 4 段階プラス 1 5 段階くらいのもの。それから、ついこの間、アメリカのユニオンに行ってきたのですが、すごく細かく技能者の区分が決まっていて、それぞれに賃金が対応しております。当然、マイスター、マスターが一番高くて、マスターぐらいになると、多分日当にして 4 5 万ぐらいの規模ではないかと思いますが、かなり高い賃金がもらえるというような実態があります。それから、ヨーロッパでは、イギリスは今までは NVQ 、今は QCF という 8 段階評価でやっております。参考資料に EQF を入れてありますが、ヨーロッパ、ないしは世界の国で共通化しようというような動きもあります。これは、日本でいうと文科省的な制度と厚労省的な制度をシームレスに扱うもので、一番トップが博士レベル、次が修士レベル、その次が学士レベルで、例えば訓練校を出てその単位認定で大学に行くということも、アメリカやイギリスなどはやりやすい制度ができていると、私の研究では分かっております。

 そのようなこともあり、今は業界団体で、例えば大工の能力レベルを作ろうということや、昨日もこの委員会があったのですが、少なくとも標準大工、しかも今の時代の標準的な大工とは何かを定めた上で、見習いが終わった人がこれぐらいのレベル、それより上の人がこれぐらいのレベルというものを作って、それに対応するような賃金も払えるような仕組みを作ろうと。最上級レベルは、国土交通省が基幹技能者を作っておりますし、例えば厚労省にはいろいろな表彰制度がありますが、ああいうものでもいいと思うのですが、そういったものときちんと対応させて、業界が認知し得るものを作らなければいけないのではないかと思っております。これは、大工だけではなく、今、建設業振興基金が窓口となり国交省の土建局の政策のひとつとしてでは、とび、型枠、鉄筋、左官をとっかかりにして、これに準じた形を作ろうとしているところです。

 それから、マニュアルの話は今日の本筋ではありませんが、やはりマニュアルもきちんと作っていかなければいけないだろうということを今、建設業界では取り組み始めております。これは、アメリカなどに行くと、非常に充実したマニュアルをユニオンが作っており、これを全国に普及させて、どこに行っても同じレベルの教育が受けられるような仕組みを構築しております。

 近代徒弟制度について、これは、少し分かりにくいかもしれませんが、要するに例えばイギリスでいいますと、入口の制度、建設業に入りたいという人は、昔でいうギルドのような所に申し込む。若い人が欲しいというような会社はそこに登録をして、そこでマッチングが行われて、若い人が産業に入っていく。かつ、アメリカもイギリスもみんなそうですが、 2 3 年は修行期間と決まっていて、その間の処遇というのは最低ラインや一定ラインが決まっていて、どこの会社に行っても同じような処遇で徒弟教育が受けられます。例えば平日は働いて、週末は学校とか、年に何回かは集合訓練が受けられるという仕組みが確立しており、日本のようにいつまでたっても親方に付いて見て覚えるのではなく、私は近代徒弟制度と言っておりますが、そういうものができている実態があります。私は、 3 年ぐらいで一人前という考え方は、よく考えれば外国人実習制度と同じではないかと。外国人技能実習制度を日本人にも適用すれば、こういうことができて、しかも外国人技能実習制度というのは、日本人はなかなか保険に入れてもらえないのですが、全員保険にも年金にも入って税金も払っているというすばらしい制度ですので、何かこの辺りを手本にすればできやしないかと思っております。

 そのための基金ですが、これはもう少し先の話になるかもしれませんが、しかし基金は必ず必要になります。考えなければいけないのは、これはいろいろな国で見ていますが、もともとは産業全体の仕組みであったものが、今は建設業だけの仕組みとして残っているというのが、ドイツもイギリスもアメリカもほとんどそうだと思います。やはり、終身雇用という形で職人が個別企業に雇用をされて、その中で上に上がっていく。例えば製造業は、それが日本だけではなく、どの国でも成り立っています。一方、建設業は人が流動的ですし、どこかの会社が一生懸命育てると引き抜かれてしまうなどのいろいろな問題があるので、産業全体という仕組みが残ったと。その中でお金も必要なので、例えば私は、イギリスのようなレビーという請負代金のうちの何パーセントはプールしておくという仕組みが絶対的に必要になってくるなと思います。

 最後になりますが、とはいっても、この産業をこれから皆さんに御検討いただくのは非常に難しい問題があり、雇用推進といいましても、 100 %を雇用という制度の下に置くのは非常に難しい部分もあるのではないかと思います。それを考えた上で、偽装請負や今までグレーゾーンで片目をつぶってきた部分もたくさんあるのですが、そこをやはりきちんと遇するにはどうするか。特に、労働法でいうところの労働者であることは確実ですので、これをある立場に置かれたから不利益を被るというようなことがないような制度を是非構築していただきたいなと思います。これは、この産業が持続可能、要するに若い人に入ってきてもらえるために他産業との競争もありますので、大きなテーマではないかと思います。

 これが本日最後ですが、私は、夢を持とうよということで業界団体に、最近講演するといつも言っていることですが、何でも 2 倍にしようと。まず、賃金 2 倍を目指そうと。そのためには、この国は社会主義国ではないので、生産性も 2 倍にしなければいけませんし、生産性を 2 倍にするためには稼働率も 2 倍にしなければいけません。そのためには、仕事の範囲も増やさなければいけませんし、そのためには重層構造は日建連がおっしゃるように、 2 次以下にしなければいけないということがあります。それから、やはり休日は週休 2 日を目指しましょうと。これは、 2 倍、 2 倍と言っていましたが、「蟹澤さん、今ゼロなのだから、何倍しても 2 にはならないから、 2 日と言ったほうがいいよ」と言われて、 2 日と言っています。実際に、私は大工にインタビューをしてびっくりしましたが、この 1 か月で日曜日に休んだかと言ったら、 1 日も休んでいない人がたくさんいるような実態もあります。今の技能者水準を維持していくためには、若い人の入職者が少なくとも 2010 年の国勢調査の倍ぐらいいないと、どんなに頑張っても減ってしまうので、若い人は 2 倍と。日建連がおっしゃる女性 2 倍、 3 倍というのも実現しませんし、これが実現しないとこの産業がもたないことを認識する必要があるのではないかと考えているところです。少しオーバーいたしましたが、以上でお話を終わります。

○鎌田座長 ありがとうございました。大変貴重なお話を頂いて本当に参考となりました。それで先生、 15 分ぐらい質問時間を取りたいと思いますので、よろしいでしょうか。

○蟹澤教授 はい。

○鎌田座長 ということですので、皆さん、どうぞ御自由に御質問があればお願いしたいと思います。

○福田委員 先生、どうもありがとうございました。日建連も先生のお力を借りて、いろいろ資料をまとめたりしております。最後に技能者の賃金を 2 倍に、建設業の生産性を 2 倍にという大きな題目があります。私もこのためにはどのようにしたらいいのかと考えているのですが、そのためには、先ほど先生がおっしゃった生産性をどのように上げたら良いか、そのためには、やはり多能工化が良いと考えます。大工の仕事もやるし鉄筋の仕事もやる、左官の仕事もやるし土工の仕事もやる。その様に 1 つのチームでやっていけば、その倍の賃金をもらえるのではないか、生産性も上がるし、今のシステムだと分業化され過ぎています。

 例えば、鉄筋屋が入って次に大工さんと、手配するのに時間が掛かってしまう。みんなすごく待ちが多くて、どちらかというと施主から何でそんなに効率の悪い仕事をやっているのだと言われます。実態がそういう感じです。多能工教育などで改善していくしかないのかという気がしますが、先生はいかがですか。

○蟹澤教授 途中でも申し上げましたが、バブルの頃にも多能工化議論が散々あり、そのときにうまくいかなかったということがあって、この業界は非常に多能工という言葉に抵抗感が強いのです。その当時、多能工がなぜ駄目だったかというと、要するに外注のまま、社員化ではなくて外注化のまま多能工化にしようと非常に都合のいいことを考えたので、うまくいかなかったということがあります。

 ですから、私は、まず多能工化を成り立たせるためには、 1 つは社員化です。やはり時代背景としては、新築が右肩上がりでたくさんあれば、とびならとびという形で次から次へと現場を移動していくことがいいわけですが、それが減ってしまえば、いろいろなことをやらなければいけないということがあります。ですから、そのためには社員化を推進するということと、重層化を低く抑えるということが重要です。

 重層化を低く抑えるということは、社会保険問題を突き詰めていくと重層化のほとんどの目的は、社会保険に入らなくてもいいようにごまかすための問題ですので、これは、おのずと解決していく部分もあるのではないかと思います。テクニカルには、アメリカのユニオンでもそうですが、新しい多能工を目指していくためには、常に新しい教育訓練を受け続けなければということがあります。

 特にアメリカのユニオンは、ノンユニオンなどとの価格競争は、完全に負ける、すごく高いわけですから。それでも受注競争に勝つためには常にそういう能力を磨き続ける必要があります。やはり、手法としての教育訓練制度を充実させ、かつ、それもずっと古いままではなくて新しいものを開発する、かつ、多能工といっても技能の水平展開だけではなくて管理もやる、その人のコンピューターをバリバリ使って経理もやるなど、そういう方向も目指そうということです。教育の充実ときちんとした技能者の組織化がキーになるのではないかと思っております。

○鎌田座長 そのほかにございませんか。

○柴田委員 私は素人なので、基本的な質問ですみません。今の多能工化というキーワードなのですが、海外のほうが、僕はこれしかやらないと、自分の専門性を極めて主張する人が多い気がしますが、逆に日本のほうがむしろ単能工なのですか。

○蟹澤教授 ユニオン、ギルドでは自分達の職を守るための組織という側面があります。しかし、ゼネコンでビルを作るときの発注単位は、躯体、要するに骨組みという単位なのです。その後は湿式工事、例えば塗り壁の工事、それから乾式の工事というくらいの単位で、日本みたいに何十種類にも分かれていないのです。そうすると、例えば、ある個人が壁を塗る専門の人であっても、そのチームの中でやっていくので 1 日に働ける量が増えるなどメリットがあります。それが日本は全部ぶつ切りにされていますので、実態で言いますと、マンションの 1 室を作るのにどれぐらい細かく分かれているのかと細かく調査したことがあるのですが、 200 くらいあります。

 日本では、笑ってしまう話ですが、壁の裏側の下地を建て込む人、壁のボードを貼る人、表の仕上げをする人、ここから下が木になっていますからこれをやる人、幅木だけを貼る人、回り縁だけを貼る人と全部違います。多能工というのは必ずしも 1 人が全てやるという違いではなくて、その会社が、そういう単位くらいで受ければ、個人もおのずと仲間を手伝うということもできるし、いろいろな可能性が広がっていくということがあるわけです。

 あと、アメリカで言う大工ユニオンという場合の大工は、範囲が広いのです。日本の木工事だけではないのです。屋根工事、床工事、架設も含めて大工と言っていて、当然、個人の能力としては木工事が得意な人などがいますが、その塊で仕事を受けるという辺りの違いです。日建連がおっしゃっている重層化を低くしていくということでいうと、そういうことがこれから起こってくると思います。

 あと、技能的な点では、別にこれを貼るのも木を貼るのも変わらないことですし、やろうと思えばできるのですが、今までの日本の職人の世界は、むしろ外国のギルド、ユニオン以上に俺は専門職何とかだという意識が非常に強かったのですが、これも今後、意識も制度も変えていく必要がある部分だと思っています。

○柴田委員 あともう 1 つ。生産性の問題で、待ち時間が多いというご報告がありました。待ち時間の間は体が楽なわけです。だから休んでいないといっても実質労働はそんなに多くないと考えてもよろしいのですか。

○蟹澤教授 だから無駄なのです。

○柴田委員 そうですね。

○蟹澤教授  1 日現場にいて、何かこれも変な日本の掟があって、鉄筋工が仕事をしているうちは次が入らない、マンションの部屋で前の人が壁を貼っているうちは次の人はできる仕事があっても入らないなど、その間、たばこを吸って待っているのです。

○柴田委員 例えば、どこか地区ごとに待合ステーションのようなものがあって、ここで仕事があったらビューンと行って、協同組合のような、そういう考え方も別に会社ではなくてもできるということですか。

○蟹澤教授 例えば、そういう請負制度ができればそういうこともできますし、昔の宅急便屋さんは同じ人がいつも来たのですが、最近は時間帯によっていろいろな人が来ます。それは、丸 1 日いなくても最後の集配所は半日勤務の人がいたりとか、しかも女性が多くなっているということはそういうことなので、私は建築現場もそういうことというのは、いろいろな組合せでやろうと思えばできるのではないかと思います。

○柴田委員 百貨店やスーパーは、人手不足をパートタイマーにしたときにものすごく時間の、同じような業務をいろいろな人がいろいろな所でできるようにしました。建設はそれが一番お得意だと思うのですが、きちんと計画を立てて人員配置の余裕を持ちながらやっていたはずなのに、いつの間にかみんな下請に丸投げして、結局、自分の首を絞めているという状態なのですね。

○蟹澤教授 そうですね。しかも 1 日幾らという体系です。外国のギルド、ユニオンは時間給です。

○柴田委員 所要時間単位にすれば、ひょっとしたら生産性はもっと高くなっている。だから少し計算の仕方も難しい。

○蟹澤教授 そういうことはあると思います。

○柴田委員 分かりました。もう 1 つは、もともと分子になる賃金というか請負金額自体は、日本は諸外国に比べて低いのですか、それとも高いのですか。

○蟹澤教授 労働生産性を求めるときの分子は、いわゆる利益の部分ですので、最近ようやく改善してきましたが、特にバブルからリーマンの頃までは非常に利益率が低くて、日本のゼネコンもようやく最近粗利で、建築工事で 1 割いっていますが、その前は数パーセントと非常に低い利益率で、しかも利益が低いということは経費も低いということです。日本は経費の見方が低いというか、いい加減なのです。例えば、外国はそこに保険料が入っていないというのは、多分、許されないことなのだと思います。いわゆる単価でいうと決して安くはないということはあると思いますが、ただ、スペックが全然違うので比較が。

○柴田委員 できない。

○蟹澤教授 日本はどう見てもスペックが高くてオーバースペックという言い方もありますが、日本では普通ですが、外国でやった場合には価格競争をしたら非常に厳しいです。すごく高いです。

○柴田委員 もう 1 つは、今回の事件もいろいろありましたが、普通の会社は下請の責任は元請の責任ということがあって、 10 次や 10 何次の下請が問題を起こしたときには、日本の場合は元請がきちんと責任を取る体制になっていないのかと半分思ったりするのですが、そういうところは。

○蟹澤教授 建設業法上は、上のほうにもきちんと責任が及ぶということがあるのだと思います。多分その辺も急速に変わってきているところで、日本の良かったところは、信頼関係が成り立っていたところがあり、悪意による手抜きなどはなかった。それが、多分、急速に成り立たなくなってなってきているという悲しい事実があります。それゆえにきちんと制度は作らなければいけないと思います。今、 3 次、 4 次下請ぐらいの人も 1 次下請のヘルメットをかぶったりするので見た目では分からないのです。そうなったら 1 次下請が当然責任を持たなければいけなくて、今までそういうリスクがなかったのですが、今回のようにまさかあのようなことをやるとは誰も思わないことなので、その辺も状況が変わってきているので建設業はしっかりしなければいけないということはあると思います。

○柴田委員 最後に資格の件です。建設の技能検定を拝見するとものすごく細かいのです。先ほどおっしゃった多能工よりも、もっとスペシャリティを極めるみたいなものなので、逆に受検が減ったりしているので、先ほどおっしゃったようなシームレスに文科省も関わるし建設業も関わるし、もう少し技能を大くくりにするための策はあるのでしょうか。

○蟹澤教授 今、いろいろな国交省の委員会で作っている、先ほどの大工のレベルを決めているという中には、技能検定 1 級はここに位置付くということは一応意識して入れています。もう 1 つは、技能検定はすごくいい制度だと思うのですが、大部分の職種で課題が 30 年ぐらい変わっていないという問題があります。アメリカのユニオンに聞くと、それはどんどん変わっていかなければいけないということを言っています。

 もう 1 つは、名称独占資格というものです。厚生労働省の制度上はそれでもいいのですが、例えば、建設業界でもう少しそれに、法律上の業務独占にはならないにしろ 1 級を持っている人が就くべきだとか、国交省の法律の中には一応技能士が要件になっているものが幾つかあるのですが、もう少しシームレス化を図るとか、業界団体も、よりもっと新しい課題にするということを努力するなど、制度としてはいいものなので、いかすためにも更新していくという流れができればいいと思っております。

○柴田委員 ありがとうございました。

○小倉委員 資料の 15 ページの基金制度についてです。日本の場合、建設労働者確保育成助成金が事実上基金となっており、年間大体 50 億ぐらいの予算になっております。例えば、諸外国の基金制度を日本でもやるという場合に蟹澤先生のお考えですと、どれぐらいの予算規模が必要だと思われていますかということが 1 つです。

 仮に諸外国並みの内容で実施するという場合、おそらくは 50 億よりさらに予算規模は当然膨らむわけですが、どのようにして資金を集めていくことが考えられるのかという 2 点について教えていただければと思います。

○蟹澤教授 ドイツの基金が余りにも大き過ぎるので、そこまで目指すことは現実的ではないと思います。例えば、イギリスでいうと外注費、人件費の 0.5 %や 1 %ぐらいのものを集めておりますが、それでもかなりの金額になると思います。おそらくイギリス型の、業界団体が政府に代わってレビューを取りなさいという仕組みは日本ではできないので。これは是非何らかの形で、今の 0.1 %を少しでも上げる。おそらく、日建連さんもあれが 0.5 %になったからといって大反対はしないのではないかと思います。

 要するに全体からしたらそれぐらいの金額で、しかも雇用保険二事業の料率が 1/1000 上がる度に 50 億増えていくというのは非常に貴重なものであります。多分、今、国交省では雇用保険をきちんと払ってくださいという方向で活動しているので、分母も増えてくるということがありますが、今の制度の中では、料率が法律に明記してあるので、いろいろいじくるのは大変だということは理解しますが、現状活用できる制度はあれしかない。

 私は前から全建総連が基金を作ったらどうかと言っているのですが、それでも全建総連が全体を組織しているわけでもないし、諸外国のセンスでいうと、ゼネコン団体もそれによって利益があるのだから、ゼネコン団体もお金を出そうとなったときに、全建総連に日建連がお金を出すのも変だというように、いろいろ考えていくと、是非今の制度を拡充していただくということを御検討いただけるといいと思います。

○時枝委員 日建協でございます。蟹澤先生、今日はどうもありがとうございます。建設業の仕事というか、ものづくりの世界では、段取り 8 分仕事 2 分と古くから言われていますが、正に生産性向上が命題でございます。生産性向上のためには、特に建築は非常に細々とした仕事をつないでいくのですが、設計情報の確定作業をとにかく早めるということが非常に重要だと思っております。最近ではフロントローディングという言葉も使われるようになってきております。

 あと、先ほど柴田委員から待合ステーションのお話がありましたが、例えば、東京 23 区内でしたら、いろいろな仕事がありますから、そういう発想もありなのかと思います。前田建設工業の子会社 JM さんでは、全国の専属職人に 3,000 台のタブレットを配布し、セブンイレブンやユニクロなどの店舗修繕、ある意味パターン化された仕事ですが、例えば午前で仕事が終わり、午後からは仕事がないから「近くで仕事がありませんか」と検索すると、すぐに紹介情報が取れて「午後からは俺が行く」みたいな仕組みが既にあります。

 こうした ICT 技術の活用が期待されるところです。高校生の大半がスマホを持っているという時代、若い人たちを建設産業に入れていくということは、そういうツールをうまく産業に取り込んでいくという視点が非常に重要だと思います。

 現状の建設現場でも、職長のほとんどがスマホを持っています。 LINE などの SNS で画像付きのコミュニケーションツールを活用しています。これまでですと職人から「監督さん、仕事が終わったから見に来てください」と言われて 13 階まで駆け上がって確認して OK なら、次工程の職人を探しては「あそこ入れるよ、やってください」という指示伝達を、大げさに言えば先ほどのマンションですと 200 職種のプロセス管理を行っていくという膨大な業務がありました。現在は LINE を職長らと活用している現場もあると聞いておりますが、そうした ICT の民間技術をどんどん取り入れていくことが必要だと思います。

 それから就労履歴管理システム構築のコンソーシアムが設置されましたが、国交省のスケジュールでは、システムの制度設計に 1 年しかないということです。本当にこんなに短い時間で出来るのかという点が心配です。重層下請の改善にむけては、原則 2 次までということで超フラットな登録会社を作っていくというイメージで認識しています。マイナンバーとの将来的な連携については、まずはマイナンバーがきちんと運用され、国民的な認知が進むことが前提です。マイナンバーの民間活用にはまだまだ課題があります。なかなか言いにくいですけれども、消えた年金問題や建退協の証紙貼りなど、非常にアナログな世界をいかにシステムに取り込んでいくかということを、本当に短期間ですがやっていかなければいけないと認識しております。すみません、だいぶ個人的な見解をはさんでしまいました。

○蟹澤教授  1 つ、フロントローディングは世界的な関心で、私はこの間の夏にアメリカのシリコンバレーへ行ってきましたが、建設業は今の BIM とか ICT を使いながら、とにかくフロントローディングをどのようにするかということを非常に熱心にやっています。考えなくてはいけないのは、前のパートナリングのときもそうでしたが、彼らがモデルにしているのは日本の現場なのです。

 フロントローディングの話を聞いていると、大部屋や調整みたいな日本語が完全に彼らに定着していっている。実は日本の建設業が絶頂期に作ってきたシステムは非常にいいものがあって、それを見直しつつ ICT をどれだけ使っていくかということを考える必要もあるということです。

 それから 1 つ忘れてはいけないのが、職人は IT スキルが結構高いです。あの人たちが使えないからとよく言うのですが、実際は高いのです。ヒアリングをされたかどうかは分かりませんが、元三菱商事で ICT のしっかりしているシステムを作っている所の、今は別会社になった MC データの社長がおっしゃっていましたが、建設業の IT スキルはすごいと、いろいろなごまかし方やら不正な操作の仕方は、他産業には絶対できないようなことをものすごくこの業界は考える人たちだと、だから、建設業の IT スキルが低いと思ってはいかんとおっしゃっていました。職人も LINE で人を集めたりといろいろやっています。

 要するに人を集めるということで言いますと、昔、日建連が労働プール化構想を発表しましたが、あのようなことも考えなければいけないとか、ただ、労働法上、職業安定法上の問題があって、この業界はその辺の意識が低いというのも大きな問題です。その辺もにらみつつ、ただ、雇用改善法をどれだけうまく運用できるようにしていくかというところはとても大事なところで、社員化が進んでこそ初めてできることになりますし、あとは、もともと許されている労働組合の役割も大事になるのではないかと思っているところです。

○鎌田座長 時間をオーバーしてきているのですが、私も 1 点だけ先生に質問いたします。偽装請負の話を非常に警告されていて参考になりました。理論的には発注者が指揮命令をする偽装請負ということなのですが、偽装請負が現場で問題になる、あるいは何らかの形でトラブルになるというのは、どういう場面を想定したらよろしいのでしょうか。

 なぜ、こういう質問をするかといいますと、御存じかもしれませんが派遣法の申込みみなし制度があって、いわゆる建設業務の派遣は労働契約申込みみなし制度の適用があり、労働者は派遣先への直接雇用を強制できるのです。ところが、建設業で偽装請負でトラブルになって、このことがどのレベルや規模で問題になるのかということが私には予想がつきません。もしかしたら組合の方に聞いたほうがよろしいのかもしれませんけれども。

○蟹澤教授 絶対そういうことは詳しいと思います。でも、昔から常にこの問題になるのは、やはり労災の問題が起こったときにその人は実際どちらなのだと。私は前からこれは申し上げている、せっかくの機会ですから、要するにゼネコンの仮囲いの中にいるのにその中に指揮命令を受けないことが前提の特別加入の一人親方がたくさんいるというのは、どう考えてもおかしいのではないか。これは多分ゼネコンの方に考えても、それはおかしいよねということになると思います。

 それから、いわゆる町場に行くと工務店と大工の関係は、ほとんどが請負なのにその工務店の加工設備を使って加工して、その工務店の服を着て現場で働いているという人がたくさんいます。これも実は現場で事故が起きると、この人はどうなの、労災に入っていなかったとか、今、大手のゼネコンの現場は一人親方が労災に入っていないということはあり得ないのですが、ただ、中小へ行ったり町場の工務店に行くと無保険で、その場合にどうするのだという問題もたくさん起きます。

 あとは、これは余り言っていいのかどうか分かりませんが、今も実際に遡って入るということもあるようですし、要するに、そういう対症療法でやるのならば、そろそろ正面突破しなければいけない問題ではないかと。

○鎌田座長 どうもありがとうございます。よろしいでしょうか。時間をオーバーしてしまいましたが、先生には本当に貴重なお話を伺い、ありがとうございました。

(蟹澤教授 退席)

○鎌田座長 時間も押しておりますので、それでは、もう一方、瀧上事務局長から御説明をお願いしたいと思います。よろしいでしょうか。お願いいたします。

○瀧上事務局長 ( 公益社団法人全国工業高等学校長協会 )  ただいま御紹介を頂きました、公益社団法人全国工業高等学校長協会事務局の瀧上です。工業高校の課程があるほとんどの学校の校長先生が社員である社団法人です。工業高校の活性化のための事業を展開している団体です。これから大変寂しい話をしなければならないので、御容赦いただければと思います。

 まず、「きらめく工業高校」というのを開いていただいて、「将来を保証する工業高校」の所をお開きください。工業高校生の就職内定率は、この 10 年来ずっと 99 %、 98 %を維持しています。大学生が 7 割、 8 割と言われた時代も、工業高校生は一貫して非常に内定率が高い業種です。 99.2 %というと、 100 名のうち 1 人が卒業できるかどうかというレベルの話で、全員が就職しています。

 どういう所に就職しているかという問題になるのですけれども、基本的には進路指導部が、子供たちが行きたい所、保護者等が納得する所に、職業安定所の代わりに、ハローワークの代わりに職業をあっせんする業務を高校が請け負っています。先ほどから保険がどうのとかいろいろ言っておりましたけれども、まず高校生が目にするのは、給料が高い、ボーナスがある、休みがある、女性が多いというような様々の条件をクリアした所を選んで親に見せて、親が「ここは将来危ないから違う所を探してきなさい」というやり取りを何度かしながら、進路指導の先生と一緒になって、本当は幾つ受けてもいいのですけれども、大体 1 つの会社に 1 人を送るというシステムです。 1 人が何社受けてもいいということにはなっているのですけれども、高校と会社の関係で、そこのところは 1 人しか送りません。 1 人が何社も受けて就職する状況にはないということです。

 次は、横の所に離職率調査というのがあります。これは東海地区の工業高校の調査ですが、 3 年後の離職率が 17.3 %、大卒が 31.0 %、高卒全体が 39.2 %です。大卒と高卒全体については厚生労働省調べで、本協会が調べたのは 17.3 %というのが、東海地区の卒業生を調べたものです。今年は近畿圏でやりましたけれども、 22 %程度の離職率でした。大学生に比べても 10 %低い状況が出ています。本協会の施策についてはその後にいろいろ載っていますが、それはまた別のときに御覧いただければと思います。

 そういう内容を理解した上での話になります。 2 ページで、卒業生の職業別就職者数です。平成 26 年度ですから、平成 27 3 月卒業生に対しての就職者数です。工業高校はたった 5 2,621 人しか就職していないという、非常に少ないレベルにあります。高専はその 10 分の 1 程度ですので、そういう意味では高等学校の工業に関する学科については、就職者数が非常に少ないということです。これは、普通高校が増えてきて、工業高校が減少してきたために起こったことです。それとともに、昔は工業高校の大学進学率等は低いレベルにありましたけれども、現在は 3 分の 1 が大学進学、専門学校上位の学校になっていますので、 3 分の 2 は高等学校の生徒は就職する状況です。

 この就職をどこでするかということですが、工業高校生は大体 70 %が地元志向です。地元に 7 割残るというのは非常に特徴的な内容です。これが大学に行ってしまったら、どこに回されるか分かりませんので、地元で就職したい場合には、工業高校生の場合には地元での就職を優先します。むしろ成績の良い生徒は大学に行かないで、地元の良い所に就職して、成績が 2 番目、 3 番目の生徒が大学へ行くという状況になっています。最近、内閣のほうでは困ったことに 18 年問題というのがあります。職業系の大学を増やして、大学を潰さない施策を打ってきていますけれども、多分工業高校の場合には、そのような大学には進学しないと考えています。地元志向で、高校で就職するのが 7 割います。 3 割は県外に出ています。県外に出ている一番大きな所は沖縄、北海道、東北が県外に出る確率が高く、東海地区や関東、近畿辺りではその割合は非常に低い状況にあります。

 学科別生徒数の全体に占める割合は 3 ページにあります。昔は、普通高校が大体 6 割、職業科が 4 割ありましたが、大学進学の希望が増えると同時に、職業科が減り、普通科が増えたという状況があります。普通科が増えたことにより、職業科が減少し、世の中に技能職として生徒を送り出した立場からすると、このことにより技能職の生徒が激減したことになります。特に工業高校は学科別全体の 13.4 %という、昭和 40 年半ばぐらいのところでピークがあって、今現在では全体に占める割合が 7.9 %で、 13.4 %から 7.9 %で、これは学科全体に占める割合です。生徒の数が少子化により非常に減少していますから、極端に言うと 4 分の 1 になったという状況です。

 私は、公益社団法人の事務所に座っていると、各業界団体が毎日のように押し掛けてきて、「何とか人をくれ」と。建設業も同じですけれども、トラック業界、造船業界をはじめ、いわゆる技能が欲しい団体については、何しろ人をくれということです。答えは「やれない」ということです。お分かりのように、 100 %就職が決まって、覚悟を決めて、土建業なら土建業にみんな就職しているわけですので、パイの奪い合いでしかないのです。ですから、人を他に移すことぐらいしかできなくて、それも学科編成群によって、専門性がある程度ありますので、これは、「工業高校からお宅の業界に生徒を多く入れることはまずありません」と、非常に冷たい回答しかできないのが大変残念です。

 この原因としては、文部科学省中央教育審議会が、 10 数年前に 1 つの答申を出しています。中学生が自ら学びたい学校を選び、そこで学べば豊かな将来、そしてしっかりとした学習に移行できるという答申を出しました。大学進学の希望とともに、そういう学校群の倍率が上がり、工業高校の人気、商業高校の人気は低下してきました。各教育委員会が設置者でありますから、教育委員会は工業や商業を潰し、普通科の割合を増やしたという状況です。

 逆に出口的には、工業高校は相当な出口を持っています。この前も東京都の教育長と話してまいりましたけれども、その時に議論になったのは、「入口は」と教育長は聞くわけです。入口の人気はどうだと、これが文部科学省の考え方です。「そうではなくて出口を見ろ」と、これが押し問答になり、 30 分の予定を 1 時間半議論してまいりましたけれども、どうも理解がなかなか進まない状況があります。何のために世の中で働くための教育をするのかというと、国民全員が食って、そして税金を払い、ニート、フリーターをなくして、豊かな将来を築くためではないですか。

 中堅以降の普通高校が、ニートやフリーターを大量生産しています。そして、国の補助金をばかばか消費しているような学校群制度でいいのですかと、そこまで言ってまいりましたが、なかなか厳しいです。工業高校の費用は、普通高校の 2 倍から 3 倍掛かりますので、そういう意味では普通高校を増やせば、教育委員会では、生徒を卒業させるときの費用は半分で済むという費用対効果を選ぶわけです。違うでしょう、工業高校を卒業すれば税金が納められるのに、全く情ないことだという話が進んでいるところです。理解は頂いておりません。

4 ページは、高校卒業者が 100 万人いますが、そのうち就業者が大体 18 7,000 人で、全体の 17.5 %が就職しています。この中で一番大きいのが、普通科高校の卒業の就職希望者が一番多いです。建設業協会が、今後若年者の就職をゲットするためには、普通科高校にウイングを広げる以外に人は増えません。工業高校については 5 4,000 人程度で、ほぼコンクリート状態で移行しています。普通科高校並びに総合学科高校の就職希望者を、建築業、建設業に移行する以外にこの問題の解決策はないというように、学校の立場から言うとそういうことになっています。

5 ページは、工業科の産業別就職者数です。建設業に 16.9 %、製造業に 52.3 %、卸・小売というものも工業製品かと思います。基本的に工業高校の生徒の多くは、工業に関する品物を売ったり買ったり、その他何かしらのことで役立っていると思われます。このデータをまとめてびっくりしたのは、建設業界に 16.9 %も行っているということです。建築・土木系の学科編成群は、大体 8 %程度だと思います。工業高校卒業生の土木・建築業の学科の人数に比べると、倍以上の生徒は建設業に入っているというデータが出てきました。これは予想外で、多分電気系や機械系が建設業の中でしっかり働いていると考えたほうがいいのだろうと思います。

6 ページは、産業別就職者数です。ここは、製造業ではなくて、建設業にすべきだったのですが、私は半月ばかり家に帰っていなくて、昨日やっと家に帰って、本日出てきました。これは、旅先であちこちのデータを収集して印刷に掛けたものですから、ここが建築業になっていなくて大変申し訳ありません。産業別就職者数で、製造業ですけれども、多くの生徒が製造業に工業科から入っています。

 建設業については、先ほど見ていただきましたけれども、それなりのパーセントが入っています。これは、実数とすると 8,000 人ぐらいが工業高校から建設業に入っています。そういう意味では、技能職を求めている建設業界に対して、 2 万、 3 万、 4 万、 5 万欲しいところですけれども、 1 万人いない状況で建設業界に工業高校から就職している状況です。ですから、今現在建設業で働いている人たちの多くが、違う所から入ってきているのかと考えています。

 あとは、文部科学省の施策が書いてありますけれども、 9 ページです。地域産業を担う人材の育成の真ん中の所ですが、 70 %が地域に生きていきますので、地域産業を支えるのは、やはり工業高校生だろうと考えています。地域の活性化等々、その基盤を担う人材については、今後も工業高校生がそれなりの活躍をしているのだろうと思います。地域創生という言葉も、そういう中でいきてくるのかと思います。

9 11 ページについては、文部科学省が考えている内容をまとめたものです。職業能力を地域でいかすというところです。それとともに大学入学者選抜改革の全体イメージです。ここで全く忘れ去られているのが就職という所です。 11 ページに、高等学校から就職がほんの僅かしか出ていないし、大学に行った後で、大学から何人行くかというところの選抜イメージができていない限り、大学の質的な断行もできませんので、この辺がキャリア教育なり、大学入学者選抜に関わって考えている偉い大学の先生方の弱点かと思っています。これが、就職にイメージされていないところが、今の教育の残酷なところと私自身は考えています。あとは入試制度とか、様々なデータがあります。

14 ページです。平成 25 1 月に出た中央教育審議会の高校部会の中間取りまとめのイメージです。その中の真ん中に丸が書いてあって、太字で「社会・職業への円滑な移行に必要な力・市民性」と書いてあります。この意味合いがここで入ってきたのは、工業の委員が相当力を入れたためにこれが入ってきました。工業高校は先ほどお示ししましたように、社会や職業へ円滑に移行している。また、一市民として企業に勤め、そこそこ国民として責務を果たす教育が行われている。しかしながら、職業に一番多く行っている普通科高校の生徒については、大体 45 %ぐらいは 3 年ぐらいで辞めてしまうのかなと、 5 割ぐらい辞めてしまうのかなと考えると、普通科の生徒は、職業教育がなされず、社会・職業への円滑な移行に必要な力がない、市民性もないというような分析の下にここに載ったものと思っています。

15 ページは、現在本協会が、工業高校生の資質・能力という観点から、社会人基礎力を中心に研究・調査をして 3 年目になり、今後社会人としてどういう能力が必要かというところを今年まとめます。文部科学省からはこの表を使わないで、文部科学省のキャリア教育の資質・能力を使ってほしいと言われていますが、どうも工業高校にとってはキャリア教育の資質・能力よりは、こちらの社会人基礎力のほうがぴったり合っているものですから、こちらを使って研究を進めている最中です。

 研究の内容については 19 ページです。 15 年前までは、工業高校においてものづくりの力や、あとは社会に出ての資格制度です。資格というのは先生方も非常に希薄で、工業高校生も資格が 1 つか 2 つあればいいぐらいの状態で卒業してきました。不景気になった後、企業で子供を育てる意識が希薄になり、即戦力が求められることとなりました。それに対応するために資格取得指導の充実ということをやっています。現在 200 ぐらいの資格を挙げて、工業高校生として取るべき資格を提示し、機械、電気、建築・土木、化学、各学科編成群により、その中から選択して選ぶような研修制度を入れたところ、現在では多くの生徒が 4 つや 5 つの資格を持って世の中に出ていくことになります。

 しかしながら、それが世の中のニーズに合っているかどうかは別問題です。工業高校生が今後生涯にわたってどういう職業生活をするかによるかと思いますけれども、高校のレベルではそれを保証するための基本的なテクニックを教えるという状況で、今現在工業高校の資格顕彰制度が進んでいます。 30 点以上でシルバー、 45 点以上でゴールドというジュニアマイスター認定制度をやっていますが、電気工事士 2 種が 7 点ですので、 30 点を取るというのは非常に大変な努力です。それが、 9 人に 1 人がジュニアマイスターを認定して卒業してまいりますので、その意味では工業高校生の広範な知識・意欲は高く評価されてきたと意識しています。

 どういう資格認定制度があるのか。その中で国家資格に準ずるものしか挙げておりませんが、本来はこの 5 倍、 6 倍の資格が挙がっているのですけれども、国家資格です。例えば 22 ページの上の所で、危険物乙 4 類は、ガソリンや灯油を取り扱う資格ですが、 5 7,000 人が受けて 1 1,000 人しか受かりません。ただ、チャレンジしていることにより、一番多いのは電気・機械系の生徒がこれを受けています。ガソリンや灯油等の知識も持ちながら、あとは専門的な知識に移行しているということです。ここの建築的な要素からすると、相当後ろのほうになりますが 26 ページ、 27 ページ辺りには技能士が並んでいます。技能士 3 級があり、その中にも様々なものがあります。建築大工が 1,000 名チャレンジして 931 名が受かるとか、とびが受かるとか、左官もやっています。このように出ておりますが、この資格が直接建築、大工、とび、左官に結び付くとは考えていません。これは、それぞれの学科編成群に従った学習内容を、自らの能力を社会的評価に求めるところから受検し、そしてこういう資格に合格しています。 3 級が取れると、 3 年生で 2 級も取れますので、 2 級についても何人もが受かっています。その中でも建築大工やとびについても少数ですが、技能士 2 級に高校生がチャレンジしていることが分かります。

29 ページは、ノーベル賞学者の大村先生が教員をやっていた、都立墨田工業高校です。私どもの協会から一番近い工業高校ということで、その求人数と求職者数を並べた数字です。平成 26 年度が 128 名の就職希望者に対して 1,774 名の求人が来ています。条件の悪い所は全部カットです。保険に入らないなどというのはとんでもない話です。そういう所は初めから相手にしていません。そういう点では、建築業界はかなり厳しく、逆に先ほどの 16 %が業界に入っているという所は、それなりの会社に入っています。総合建築業に入っていると理解したほうが正しいと思っています。

 中小には、よほど趣味が合ってここでなければ嫌というのがたまにいるのですけれども、それはパーセントの中には入ってきませんので、かなり条件の良い所に入っているということです。極端な例だと、今 IT 産業では、高校生、大学生の区別なく、初任給はほぼ大学並みの給料を初めから支給されるという所も出てきています。工業高校のスキルアップに従い、そういう会社も出てきました。高卒ではなくて、大卒とほぼ同じ給料で出てきた所もあります。各業界団体から、「是非くれ」と言われても、この数字を見せると、唖然として帰っていくような状況です。

 この前、松山工業へ行ってまいりました。松山工業高校では、一昨年の倍の求人があって、 9 16 日が高校生の解禁日ですが、そこで試験を受けに行って、一次内定率が 95 %だったそうです。他の所の校長先生も来たけれども、「うちは低いぞ、 93 %だ」と言っていました。昨日までいた富山工業高校も 90 %を超えていました。そういう意味では金の卵、プラチナの卵状態になっています。そういう状況の中で、製造業を中心としての就職は安定して大きいことになります。

31 ページは工業高校の状況です。先ほど示しましたが、建設業に 16.9 %、農業高校と水産が建設業に入っていましたので、そこだけ拾ってパーセントを示しました。農業の場合には 1 4,000 人で、建設業に 9.2 %です。農業で、農業をやっている人はいないというのはちょっと問題です。次は水産高校の問題です。 1,896 人しかおりませんが、ここでも水産業で、漁港での建設業に入っているのかという推測は成り立ちますけれども、 10 %ですので 180 人足らずの人数です。

 そういう状況の中で、建設業については、工業高校でも大体 3 年で半分が辞めます。建設業は半分が辞めますので、 3 年後の離職率は、建設業を除くと相当低い状況になります。なぜ建設業を辞めることになるのかということですが、それは先ほど蟹澤先生がお話されたとおりの内容を含んでいるかと思います。

 この前テレビを見ていたら、カンブリア宮殿というのがあって、現在、日光東照宮を補修している小西美術工藝社という割合有名な会社が潰れかかったのです。日本の社長から、株などをやっていたテービッド・アトキンソンさんが社長となり、小西美術工藝社の内容を精査したところ、休みもなければ何もない。仕事をやるのは神社とか仏閣ですので、相当家から離れた所で仕事をするので飯場がある。

 びっくりしたのは、その飯場から会社の車を使って、働いている人が 1 年間で地球 4 周半するほど町に買物に行く。この社長は、車を使うときには名前を書いてくれと言ったら、 4 周半が 1 周半になった。今まで、シャンプーとかリンスが腐るほど並んでいたのが非常に少なくなった。その理由というのが、月に 1 4 5 日まとめて、会社のお金で無理やり休ませて家に帰す。そして、家庭を充実させなければしっかりした仕事ができないと言っています。日本の建設業界が学ぶ 1 つの覚悟かと思います。各家庭の子供も増え、豊かな家族が待っているわけです。そういう社風に変えていきました。

 この社長が入って一番大変だったのが、昔の人たちは背中を見せて育てていって、若い人が入ってきても教えないのだそうですが、見て学べという社風を変えて、若い人が入ってきたら、漆の取扱いから何から様々ベテランから指導できるような体制を作ったというように、私がこのカンブリア宮殿を見ていたときにお話をされていました。

 今後の建設業界が、例えば川上のほうで橋を架けるとか、社員を遠くに行かせるような所もあるし、雨が降れば仕事がない、又は納期が迫ってくる、そういう中で社員を、言葉は大変失礼ですが、社員をこき使う。迫ってきているから、そこで仕事をしてもらわなければならないというのは分かるのですけれども、それをどうにか払拭しないと、会社自身の立て直しはできないだろうと思います。若い人たちも、意欲的に仕事を始めているということで、感想として、最後に日本の中小企業の人たちが学ぶべき社長かと思ったものですから御紹介させていただきました。大変雑駁でしたけれども、説明を終わらせていただきます。

○鎌田座長 ありがとうございます。 10 分ほど質疑の時間を取りたいと思いますので、よろしくどうぞお願いいたします。それでは皆さん、自由に御発言をお願いしたいと思います。

○小倉委員 お配りいただいています資料の 26 ページ、 27 ページ、在学中に保有する資格について、取り分け技能士のことについて資料として記載されておりますが、例えば在学中に技能士の 3 級あるいは 2 級を取った方が実際に建設業に入る、そのような割合は調査されているのでしょうか。

○瀧上事務局長 調査はしておりません。

○小倉委員 していない。

○瀧上事務局長 はい。というのは、先ほど説明しましたように、例えば、電気系や建築系が危険物を卒業後 5 万人も受けているというような状況からして、これは化学ではないのです、むしろ機械や電気のほうが多いのです。ですから逆にいうと、工業高校における資格とか何かというのは、先生方は職業に結び付けばいいなという気持ちで指導していますが、それに捕らわれない。いろいろな知識を持って社会に出て、自分がある意味で自己実現して学んだところで働ければ、それはもっと幸せですし、そうではなくて、こういう知識を持って違う業態に行っても、こういう知識がいきてくると思っております。そこを意識して、無理矢理建築大工とか何かということはしておりません。

 ただし、建築大工を受ける生徒たちは建築科とか、左官だったら、左官ぐらいまでは建築科の生徒が受けているかなというようなことです。機械系や電気科の生徒は、この辺は受けていないです。

○小倉委員 何で今この質問をしたかといいますと、実際、技能検定 3 級なり 2 級を受検した方がどれぐらいその就職に結び付いているか、技能検定の所管は能開局になるわけですが厚労省も、例えば中央職業能力開発協会も、そういう調査をこの間してきていないのです。もちろん、 3 級を創設して、この間、受検数は非常に増えているわけですが、それは将来的な就職を見据えたキャリア教育の一環でというのも施策の目的としてあるとお聞きしていますので、例えば、今後、そのような調査を厚労省としてやっていく必要もあるのかなという感じがしているところです。

○瀧上事務局長 中央職業能力開発協会からお問合せがございまして、「この技能士を取った生徒がどういう業態に入っているのかというところはデータがありますか」というお問合せでした。「現在ございません」とお答えいたしましたが、確かにお話のとおり、こういうものを取った後でどういう所に入って活躍されているか、将来的には本協会の資格認定制度がどのように有効に使われているかにも結び付く内容ですので、近々にそういう調査も掛けてみたいとは思っております。私どもとしては、一般的な形で技能士は推奨してきておりましたが、本当に結び付いているのかというところについて調査を掛けてみたいとは思っております。また、分かりましたら、中央職業能力開発協会等に御連絡をさせていただきたいと思っております。

○鎌田座長 ほかにございますか。

○福田委員 事務局長のお話を聞いてちょっと驚きました。私の感覚と役所の考えは違うのかなと思ったのです。工業高校を卒業して建設業に行くのが 16.9 %。事務局長のお話だと、ああ、こんなにいたのかなということだったのですが、私からすると、ああ、これしかいなかったのかなという、もうちょっと多いのかなと思っていたので。その辺がちょっと、意外でした。社会保険にも入っていない所には生徒を送り出せないと、根本的にそういうことがあるのかと思いました。教育者の立場からすると、そんな業界には行くなよと言っていると感じました。処遇改善というか、当たり前のことをもっとやっていかなければいけないのかなと感じました。

○瀧上事務局長 話がちょっと違いまして、実は。先ほど冒頭で話をしましたが、結局、工業高校が人気がないという入口の問題だけで減っているわけですね。出口はものすごくあるのです。ですから、世の中のニーズからすれば、減らしてはいけない学校を減らしているわけです。一番減ってきたのが建設・土木系なのです。ですので、これだけ減ってまだこれだけあるのかという、そういう感想なのです。逆の意味です。

 あと、化学系もちょっと減っているのです。最近増えているのは余り世の中で活躍できない、こんなことを言っては大変失礼ですが、少数でいいのですが、デザインであるとかそういう、中学生にとって口当たりのいいところが増えてきています。本当であれば、建築・土木とか自動車整備、そういうところは絶対に残さなければいけないのです。ところが自動車整備は、本協会は 9 ブロックあるのですが、全国を 9 つに分けて、それぞれ、ブロック長を置いているのですが、その 9 ブロックのうち 2 つで自動車整備の学校がなくなりました。これはちょっとおかしいと思うのです。どの地域でも自動車産業で修理工は必要なはずなのに、これをなぜなくすのかというのが分からないです。そういう、本当に、ここに勤めていて世の中に説明できない矛盾点がたくさんあるなということで、建築・土木系もしかりなのです。

 ただ、 1 点危惧するのは、現在、建築・土木系は非常に少ないのです、足りないのです、これはまた今後の設計になるのでしょうけれども。この前、 10 年ぶりに土木教育研究会の全国大会がありまして、そこでも挨拶させていただいたのですが、東北復興とオリンピックが終わった後で、では、その後、建設業協会にきちんと将来にわたって就職できるような制度設計はなされているのでしょうかという疑問はちょっと持ったものですから、発言させていただきました。これも大きな問題だと思います。しっかりした若い人を採るためには、今は足りないけれども将来どうなるのかという、将来を見据えた制度設計がやはり必要かなとは思っております。

○鎌田座長 よろしいですか。ほかにございますか。

○土屋委員 いろいろな資格を取られているのですが、この技能講習とかは、要するに、普通の人ですとお金を払って受けないと駄目なのですが、学生さんというのは学校の補助か何かがあって技能講習を取られているのですか。

○瀧上事務局長 講習は教員がやっております。あとは、厚生労働省が今、派遣事業をやっていますので、その中に一部はありますが、原則的には教員がやっています。資格取得指導については、これは教育課程上位置付けられていない内容ですので、生徒を 7 時から登校させ、夜 5 時まで先生方が集めて徹底的に指導しているというのが実情です、本来的には授業の中でやりたいのですが、文部科学省からきついお叱りを受けまして。そのような状況です。

○土屋委員 私はお話を聞いて、工業高校の生徒さんというのは本当に大変だなと。要するに、勉強にしてもいろいろなことをやっている、社会人の基礎をベースにして本当に学んでいるなということをつくづく感じたのです。最初の話の中で地元に帰る方が多いとお聞きしたのですが、建設業を考えてみれば地域の、本当に地場産業が一番建設業で残っていただかないと、やはり若い方が残っていただかないといろいろな面で、日建連でも言っている防災力、いろいろな、被災者の支援とか復旧、復興の要になる基幹産業として、建設業はそこに人がいないというのが一番、いろいろな面を見てもうかがえてくるので、是非本当に。先ほど話を聞いた中で、結局、生徒数というか、土建が縮小してきているという話を聞くと一瞬、それは淋しい話で、そこは、やはりこれからの流れで増えていくような方向性に是非いっていただければうれしいかなと今感じています。

○瀧上事務局長 文部科学省の中にキャリア教育に関する所はあるのですが、キャリア教育の成果というのは、大学生が 10 年間 30 %プラスマイナス 1 %で、成果というのは数字的には全然上がっていないのです。まだキャリア教育をやるかというのが私の考え方です。多分、キャリア教育が一番有効的なのは工業高校のみです、自ら学んでいる所にキャリア教育でいろいろな所に行きますので。そういう意味では、有効なキャリア教育は工業高校だけかなという感じは持っています。

 それとあと、例えば冬、雪が降る所においては市役所が一生懸命に雪かきをいたしますが、あまりにたくさん降ったときには、地域の建設業の方にブルドーザーを出してもらって雪かきをするわけです。それでもブルドーザーはもう地域にないということから、年寄りが大きな道まで出る所の細い道まで雪かきができないということです。これは、地域創生を考える、地域を活性化するためには、そういう産業を地域ごとに置いておくというのが、原則というか、当たり前のことだと私は思います。人間の命を守るとか、そういうことをきれいごとのように言うのですが、そこには、やはりそういう産業があって初めて細い路地まである程度雪かきができて、それでお買物に行けるような、そういう考えを持っておりますので、協会としても、今後も全力で対応していきたいとは思っています。

○土屋委員 福井市に行ったとき、地元の建設業の方と話したとき、地元で 200 台のブルドーザーを保有しており、あとは工場等で 50 台あるとのこと。しかしながら、福井市内で、 100 台足りないので市が毎年リース会社から借りている状況と聞きました。逆に言えば地元の建設業で、後 100 台保有できればリース代金が不要になります。 5 年のリース代金で、 1 台の機械が買えると思います。そういう意味も含めて、地場の建設業が育たなければ、防災・応災力が育ちません。

○瀧上事務局長 これ以上工業高校が減らないように文科省と喧嘩沙汰で今やっているのですが、力足らずで大変申し訳ございません。今後も全国の先生方と考えながら、建設業界に必要な人材を輩出させていきたいとは思っておりますので、また御指導いただければと思っています。よろしくお願いします。

○鎌田座長 ありがとうございます。

○柴田委員  2 つ聞いていいですか。

○鎌田座長 コンパクトでお願いいたします。

○柴田委員 まず、入学する生徒は中卒でストレートで来る人のほかに、寄り道をした人はいるかどうかということ。もう 1 つ、 2 番目の質問は、皆さん、地域に就職されて、学校の時代はいろいろお勉強をされたけれども、しばらくしてステップアップしたいと、だけど、地域なので別に近所に行きたい大学があるわけでも何でもないということになると、その後の高度な技術を取得するためのアシストみたいなことをやっていらっしゃる高校はあるのかという、この 2 つです。

○瀧上事務局長  1 番目はほとんどありません。途中から入ってくる子はほとんどいないということです。あと、今、大学ではなくて、工業高校で学んで、更に上位の技術、技能を働いた後にチャレンジしたいという子はおります。実は、この 17.3 %のうちの半分がすぐ正社員として次の仕事に行きます。ですので、実際にこの 17 %の離職率の半分は次の正社員としての雇用が待っていますので、これはもっと低くなります、 10 %いかないです。そして、残りの半分が大学やポリテクセンターとか、そういう所に新たな技術を求めていっても、 4 分の 1 が離職していくようです。ですので、逆にいうと、あとの 4 分の 1 がプータロー予備軍になるわけです。ですので、この 17.3 %が高くはなくて、そのうちの 4 分の 3 は、自ら発展的に次のステージにいくという形です。ですので、大学卒がどういう形で、その後、どう選ぶのかというのは分からないのです。

 あと、ちょっと極端な話をします。実は、ある専門学校に行ったところ、何々君はどこに受かりましたとかと書いてあるのです。そのうちの専門学校の 10 何パーセントは、実は大学生だという話なのです。大学生が技術がなくてお勉強だけで終わってしまって、自分に技術がないので専門学校に来て学び直すということをやられているという話も聞いております。それであれば、工業高校に来れば初めから安くていいのになと思うのですが、なかなか。中学、高校からは、保護者も子供もなかなか選ばないというところが非常に厳しいところです。

 ただ、 1 つだけ。お兄ちゃんが工業高校に来ると、兄弟も大体、工業高校に来るのです。親が見ていて、やはり思ったことがあって、兄弟で来ている例が割合多いです。

○鎌田座長 どうもありがとうございました。予定していた時間も過ぎましたので。本日は大変貴重なお話を伺うことができ、ありがとうございました。

 それでは、本日予定されていました議題は以上です。これまで関係者の皆様から一通りお話を伺いましたので、次回は、これまでのヒアリング結果と第 9 次計画の策定に向けての基本的な論点ということで御議論をお願いしたいと思います。事務局からほかに何かありますか。

○富永補佐 次回の委員会の日時等ですが、また皆様に日程調整を送らせていただいて、調整させていただいた上で、追ってお知らせしたいと思います。以上です。

○鎌田座長 それでは、本日の委員会はこれで終了させていただきます。最後に本日の会議に関する議事録の署名委員につきましては、労働者代表は小倉委員、使用者代表は福田委員とさせていただきたいと思います。よろしくお願いいたします。

 では、本日はお忙しいところ、ありがとうございました。また瀧上事務局長、ありがとうございました。


(了)

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