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2015年12月15日 「第2回 産業医制度の在り方に関する検討会」議事録

○日時

平成27年12月15日(火)14:00 ~ 17:00


○場所

厚生労働省 中央合同庁舎5号館19階 共用第8会議室


○議題

(1)産業医制度に関する委員からのヒアリング
(2)求められる労働衛生管理について

○議事

○中村室長補佐 本日はお忙しい中、御参集いただきましてありがとうございます。

 定刻になりましたので、第2回「産業医制度の在り方に関する検討会」を開催させていただきたいと思います。

 今回、1名の方に委員の交代がございましたので、まず、その方を御紹介させていただきたいと思います。日本経済団体連合会から輪島委員が就任されていたのですけれども、今回、明石委員のほうに交代されましたので御紹介いたします。

○明石委員 経団連の明石でございます。よろしくお願いします。

○中村室長補佐 それから、本日は、川上委員、小林委員、道永委員が所用のため欠席となっております。

 それから、事務局のほうも人事異動がありましたので、名前だけですけれども御紹介させていただきたいと思います。

 加藤安全衛生部長でございます。

 秋山計画課長でございます。

 塚本産業保健支援室長でございます。

 労働衛生課長の武田は、公務がありまして少しおくれての参加となりますので御了承いただければと思います。

 では、以降の進行は座長のほうにお願いしたいと思います。よろしくお願いします。

○相澤座長 皆さん、こんにちは。第2回目になりますけれども、よろしくお願いいたします。

 きょうは、歳末でお忙しい中お集まりいただきまして、どうもありがとうございます。

 きょうは、ヒアリングといいましても、委員の先生方から御意見をいただくということと、求められる労働衛生管理について御議論をいただく予定になっておりますのでよろしくお願いいたします。

 きょうはマイクがないそうですので、大きい声でよろしくお願いします。

 それでは、事務局から資料の確認と本日の進め方について御説明をお願いいたします。

○中村室長補佐 まず、お手元に資料を3種類お配りしております。次第をめくっていただきまして、資料1としまして、前回意見をいただきました概要をまとめたものでございます。

 それから、資料2以降が、きょう、先生方に御発表いただく資料になっておりまして、初めが天木委員の資料、石田委員の資料、竹田委員の資料、土肥委員の資料、増田委員の資料、大神委員の資料になっております。

 あと、もう一つ参考資料として統計資料をこちらのようにおつけしておりますので、御確認いただければと思います。

 それから、本日の進め方ですけれども、6名の先生方からヒアリングをするということですので、前半1時間半から2時間ほど先生方からヒアリングをさせていただきまして、その後、前回論点案として示したもののうち一番初めのもの、求められる労働衛生管理は何かということを中心に皆様の御意見をいただければということを考えております。

 以上でございます。

○相澤座長 ありがとうございます。

 それでは、本日の議題に入ります前に、第1回の検討会で要望がございました資料について、今回の資料に入れていただいておりますので、簡単に事務局から説明をお願いいたします。

○中村室長補佐 お手元の資料の参考資料をごらんいただければと思います。1枚おめくりいただきまして、前回議論の中で幾つか宿題をいただいておりまして、1つは、50人未満の産業医の選任義務のない事業所で医師の活動というのがどのぐらい行われているのか。それから、産業医の選任率というのはどういった状態になっているのか。

 もう一つは、そもそも規模別の事業所数というのはどういう状況になっているのかという宿題をいただいておりましたので、事務局のほうからこの3点について資料で御説明したいと思います。

 まず初めに、2枚目の下のところに書いてございます定期健康診断の異常所見の有無と医師の関与ということで表にしておりますけれども、下の2つが50人未満の事業所における関与の度合いということになっておりまして、この表を見ていただきますと、所見があった方に対する医師からの意見聴取ということで見ますと、50人未満のところは21%とか15%とか低い割合になっているということがわかる資料になってございます。

 さらに裏をめくっていただきまして、上のほうの表が規模別の事業所の数、そこに属する労働者の数ということになっております。特に50人未満ということで考えますと、事業所の割合としては96%ぐらいが50人未満ということになっておりまして、これを労働者数で見ますと、一番右のパーセントになりますけれども、約55%が50人未満ということになっております。それぞれ規模別の事業所の数というのは、ごらんのとおりになっているということでございます。

 それから、最後に下の表を見ていただきますと、これは産業医の選任状況がどうなっているかというものでございまして、国が調査している統計調査では、裸で産業医の選任状況を聞いているのではなくて、定期健康診断を実施したところについて産業医を選任しているか。特に50人未満は産業医選任義務制度がありませんので、産業医に匹敵するような健康管理を行うための医師を選任しているかどうかということで聞いているものでございますけれども、この結果をごらんいただきますと、例えば30人から49人というところでは約4割、こういった医師の選任が行われている。さらに10人から29人のところでもおよそ3割はこういった選任が行われている、こういった数字になっております。

 以上になります。

○相澤座長 これは、御質問があったのは土肥先生からでしたかね。

○土肥委員 ありがとうございます。

○相澤座長 これについてはよろしいでしょうか。ありがとうございます。

 それでは、本日の議題に入らせていただきます。

 御説明がありましたように、本日は産業医制度について、現場の産業保健活動に携わっておられる6名の委員の皆様から、産業現場において必要とされる労働衛生管理、あるいは、最近の労働衛生管理の特徴や変化、今後の見通しについてヒアリングを行いたいと思います。

 まず、事務局からヒアリングの要旨について御説明をお願いいたします。

○中村室長補佐 前回提示させていただきました論点というのは、非常にさまざまな論点があったわけでございますけれども、その中でも議論の中で、まずは現場のニーズとか実態を知るべきではないかという御意見もいただきまして、座長とも御相談させていただきまして、まず初めに産業保健の現場に携わっていらっしゃる先生方から、今、現場でどういったことが課題になっているのか、その現場のニーズとか課題についてお話をしていただこうということになりました。本日、6名の先生方にお願いしているわけですけれども、それぞれ産業医、もしくは保健師、コンサルタントとして現場で活動されていると思いますけれども、それぞれの立場というよりは、むしろ日ごろ産業保健に携わっている現場において何が起こっているのか、そこにおいてどういう課題があるのかという視点で御意見をいただきながら議論を進めていければと考えておりますので、どうぞよろしくお願いいたします。

○相澤座長 ありがとうございます。

 それでは、順番に事前にお配りしております資料を使いながら御説明をいただきまして、質問につきましては議論が進んで時間が長くなってしまうと困りますので、事実確認ぐらいにとどめていただいて、質問をさせていただければと思います。

 それでは、まず、天木委員からお願いできますでしょうか。

○天木委員 それでは、しょっぱなということで、私、前回出られなかったものですから流れがわからない中でのお話になります。

 私たち現場でやっている医師としては、嘱託産業医をやっている人間が多いのですけれども、どうしても本業である医師としての地域住民とのかかわりの時間を割いて嘱託産業医として働いていくということで、1番目のテーマの「産業現場において、必要とされている労働衛生管理とは何か」というときに、まず大事なのは、産業医が元気で活躍でき、現場で皆さんと一緒に地域の人たちと活発に動けることが大切である、それが大前提であるということでこのような文章にしてみました。読んでいただければわかるのですが、まず、嘱託産業医は、ある意味、いろいろな日常的ないわゆる医師としての働きのほかに、嘱託産業医としていろいろな事業場を回っているということで、ある程度、時には非常に疲れてしまうことがあるということで、まず、嘱託産業医の負担の軽減策ということを考えました。

 その中で、いわゆる共通のフォーマットやツールの開発などによる業務と多職種などの効率的な仕事ができるようなこと、また、規模にもよるけれども、産業保健活動を統括的に俯瞰できるようなコーディネーターというものがいてくれると私たちとしては助かるということです。

 もう一つは、産業保健版、ちょっと表現が悪いのですが、いわゆる私たちの世界では医療連携、あるいは地域医療連携、地域との連携というのが非常に重要になっていまして、それと同様のものが産業保健の中でできないものであろうかと。つまり、自分の専門分野でない事案とか、あるいは、より専門性の必要な事案に対して支援が受けられるようなシステムがあればいいなということです。また、産業保健とは、今お話ししたように、いわゆる医療の現場では病院の専門医と何の分け隔てもなく一般の開業医が相談できるような体制ができているということで、そういった専門の産業医と嘱託さんとの、表現がちょっと微妙なのですけれども、意見交換を自由にきちんとできるような場があればいいなというふうに考えました。

 次に、地域との連携を維持するために何が必要かというのは、まずは、医師会の中でネットワークを構築して、今、言いました産業保健版の医療連携のように、医師会が主導的な立場に立って専門医と産業医の連携を何かうまくつないでいくようなシステムができないものかということです。というのは、いわゆる会社の人たちを見るのは産業医だけではなく、多くは、いわゆる患者さんとして地域の医療機関にかかっているわけですから、その辺の連携をうまくできるようなシステムができないものかということです。

 2番目は、もうちょっと広げて地域とのネットワークの連携ができないものだろうかということです。それは、専門医と産業医ではなくて、その他、いわゆる精神科なら精神科であるとか、あるいは、先ほど言いましたように労働安全衛生法に基づく健診と国民健康保険法に基づく特定健診・特定保健指導に関しては、必ずしも同じ医療機関がやっているとは限らないのですね。それの情報がうまく流れるような形になってくれれば、いわゆるかかりつけ医としては働く人の健康もきちんと見ていけるのではないか、また、その家族をよく知っているのはかかりつけ医であることも結構多いので、そういう意味で働く人の健康をより維持できるようになるのではないかというところであります。

 次のページになりますが、次のテーマは、「以前と比べた最近の労働衛生管理の特徴・変化と・今後の見通しについて」ということで、嘱託産業医の業務が非常に増えているということは、私たちの中ではみんなが言っていることです。20年前と比べると、今ぐらいちゃんとやると表彰ものではないかぐらい最近の業務は非常に多くて、これをまじめにやったらみんなが表彰されてもいいぐらいのものになっているというような感覚でいます。

 また、事業所側としても、2番目になりますが、長時間の労働対策とか、いわゆる過重労働ですね、そういったもの、また、メンタルヘルスなど、義務化もされたりして非常に大変で、それに対して産業医にいろいろ言ってくるということで、事業者側から産業医に対するニーズも非常に増えているということが言えると思います。

 それから、産業医がある意味のゲートキーパー的になって、メンタルヘルス不調を訴える方を精神科の専門医に送ったり、いろいろなものをするに当たって、どうしても医師同士ではなかなか難しいということで、いわゆるコメディカルスタッフなどがうまく活躍してくれて、例えば保健師、看護師の方々がぜひ一緒に協力してやれればいいなと思うのですが、その中でこういったスタッフの方は研修の方法としてきちんと研修を受けていただいて、産業医と一緒にそういったシステムをつくっていければいいなと考えております。

 嘱託産業医派遣事業の拡大ということです。これは微妙なところかもしれませんけれども、最近はストレスチェック制度の導入でいろいろな事業所が混乱しているところに、面接の担当の医師を事業所に派遣して研修のオプションとしてさまざまなサービスを展開するビジネスモデルが拡大しています。事業所はよくわからないまま高額なオプション料金を支払ったという話も、あるいは、そういう契約をしたという話を聞きます。ですから、この辺のところに関してある程度質の担保と、相場価格という表現が適切かどうかわかりませんけれども、そのようなところをモニターできる、あるいは公開できるような仕組みがあればいいなと思いました。

 今後の見通しとしまして、先ほど言いましたように、産業医は大変忙しくて機能不全を起こして、医師会の中の産業医離れが進んでいるという状況も多少あるようです。また、これから新たなビジネスモデルが拡大して、地域事業所や地域医師会と無関係に事業所の健診が進められている可能性もあります。

 また、派遣事業は収益性から高収益を求める大企業などに対してのみ働きかける可能性があり、50人未満の事業所では労働者健康福祉機構の産業保健総合支援センターと地域産業保健センターが対応しているのではあるけれども、地産保は余り予算がないということで、最近、条件が悪いということでコーディネーターをやめる方が多いのです。そういったものでコーディネーターの確保が困難な状態になってきているということです。

 お話を聞いていると、ボランティア的な感じでコーディネーターと登録産業医が協力しているような形でやっていますが、この状態が続くと地産保自体が少しよろしくない状態になるのではないかということが危惧されるということです。

 次は、「現在の法制度の課題について」ということですが、先ほどからしつこいようですけれども、産業医の内容に応じて柔軟な産業医職務が必要であると考えています。例えば、私は看護学校の産業医をやっていますけれども、そちらは教務員室に皆さんが集まっていて、あとは教室しかないのです。それを毎月1回職場巡視というのも何か意味がないような感じもしますし、逆に、非常にいろいろな危険物を扱うようなところでは、月1回と限らず数回やってもいいのかと。そういった巡視月1回という固められたルール、実際にいろいろなアンケートを見ると、必ずしも実際に行われていないようなので、実際に即したような形でやれるようになれば、より意味のある、また、例えば毎月職場巡視が義務づけられているところを毎月同じように同じ部屋を見て、そんなのではつまらないということで、それよりも、いわゆる健康相談に力を入れたりすると、むしろ罪悪感にとらわれて、職場巡視をしなかったとか、そう思われること自体もありますので、ぜひこの辺のところは柔軟な法令になっていただきたいと思っております。

 次は、地産保の話なのですけれども、これは、御存じのように、平成26年から管轄が変わったわけですけれども、これからはもうちょっと地産保を盛り上げるためにいろいろな基金みたいなものがあってもいいのかなという、ちょっと相談したらそういう方がいらっしゃいました。

 実際にこれは結構大きな問題というか、私もすごく感じているところですが、長時間労働や過重労働の相談をして面接を行っても、その面接の結果を事業所にうまく反映できないですね。事業所に出向いていって、こういう状況があるということを言ってはいけないということになっているらしくて、ですから、この辺のところをうまく連携できるようになればいいかなと思っております。

 最後のページになりますが、また、嘱託産業医の選任についても、現在、常時従業員が50人以上の事業場については産業医の選任が義務づけられていますけれども、有害業務のある事業場などでは、例えば30人でも産業医の選任を義務づけるようになると、労働者はより安全が確保されると考えています。

 それから、4番目です。産業医を未選任の事業場への対応ですが、この未選任の事業場については、監督署が当該事業場に告知して、群市区医師会にそのことをお話ししていただいて、産業医の候補者をあっせんするような活動をもうちょっと積極的に支援していただいてもいいのではないかと思います。

 私は東京都医師会にいますけれども、東京都医師会では、こういった産業医をお探しの方用のあっせんのようなものもやっておりますし、私は板橋区の地域産業保健センターのセンター長を以前にやっておりましたので、板橋区医師会でも、やはりこのように産業医をお探しの方に対するあっせんといいますか、御紹介をしているところです。

 ですから、産業医は疲弊してどんどん減るようなことがないようにしつつ、かつ、広くいろいろな事業場に行けるように、実際に産業医の資格を持っていながらも働いていない方はいっぱいいらっしゃるので、そういう方を有効的に活用できればよろしいかなと考えているところです。

 以上です。

○相澤座長 ありがとうございました。

 先生は、嘱託産業医からの現状の産業保健活動について、現状と御提案をいただきました。大変貴重な御意見だと思いますが、この内容について何か疑問のところがございましたら御質問いただければと思います。いかがでしょうか。

 どうぞ、増田委員、お願いします。

○増田委員 イオン株式会社の増田です。

 有意義な御提案だったと思います。1点だけ瑣末な点ですが、1枚目のイの2の「地域でのネットワーク連携」のところで「個人の健康診断情報を『かかりつけ医』は把握しづらい」とありまして、その理由としまして安衛法に基づく健診と保険者が実施する特定健康診査の実施主体が違うということが挙げられているのですが、そもそも健康診断を受診する医療機関とかかりつけ医が合致しない例のほうが多いと思いますので、ここは特定健康診査と安衛法に基づく健康診断の実施主体が異なるからという理由ではないように思っておりますが。

○天木委員 私の認識では、安衛法に基づく健診の場合は企業が健診機関を決めてしまっている関係で、あるいは、どうしてもそちらとはかかわりづらい。保険者によっては医師会に投げてくれるところもあるのです。医師会の中でできるのですけれども、病院に投げるところが結構多いものですから、そういう感じでしょうか。

 例えば、いろいろな国保ですと医師会と協定をしていろいろやるというのが結構多くて、ふだんかかっている方が健診も受けられるということが結構多いのですけれども、社会保険の方は健診する医療機関が決まってしまっている関係で、いわゆる医師会の健診、病院では中には受けられるところもあるのですけれども、その他の普通の医療機関ではなかなか受けられない状況になっています。もうちょっと幅広く受けてもいいのかなと思います。

 ただ、もちろん企業としては全部の方を同じフォーマットで、同じ形でデータの結果を得たいということが多分あるのでしょうから、そうなると一医療機関に限定したほうが企業としてはいいのかなと思います。

○増田委員 ありがとうございました。

○相澤座長 どうぞ、明石委員、お願いいたします。

○明石委員 3ページ目の2)の地産保事業について、「基金の創設が望まれる」と書かれていますけれども、ここに出ているお金の大半は労災特会なので、事業者がほとんど負担をしているということでございますので、予算としては国から出ているかもしれませんが、相応の負担はしているつもりでございます。

 それともう1点が嘱託産業医の選任の3)でございますが、まず、50人から30人という、これはエビデンスがあっておっしゃられていることなのかなというのが1点と、今、数が少ないとおっしゃられて、さらに増やしたらもっとひどいことになるのではないかと思うのですけれども、そこら辺はいかがなのでしょうか。

○天木委員 産業医の数が少ないということですよね。

○明石委員 そうおっしゃったのではないですか。

○天木委員 産業医の数ではなく、産業医の資格を持ちながら働いている人も少ないのです。そういう方の活躍できる場があってもいいのかなということが1つです。産業医が少ないのではなくて、産業医の、いわゆる従来よりも負担が増えているので産業医を継続する気もなくなっている人も増えているということなのです。ですから、要するに、産業医がもうちょっと働きやすい状況であれば健全に産業活動ができるけれども、現状ではちょっと難しいので産業医離れをしている人がいる、産業医として働かなくなっている人がいるということです。ですから、産業医の条件をもう少し良くしていけば、もっと活躍の場があるということです。産業医が少ないというわけではありません。

 それから、30人、50人というのは、もともと50人は法で決まっていますよね。30人というのは、昔、30人以上というのがあったのです。

○明石委員 存じています。

○天木委員 その流れがあるので、30という数字が単に出てくる。

○明石委員 そのころに比べて事業場は大分変わっていますし、それを今、ここで当てはめて先祖返りする意味がどこにあるのかと思います。

○相澤座長 その辺の議論は置いておいて、今、発表された内容についての質問ということにとどめておいたほうがいいと思います。

 ほかにいかがでしょうか。よろしいですか。

 よろしければ、次のヒアリングをしたいと思います。石田委員からお願いいたします。

○石田委員 では、発表させていただきます。

 まず、テーマは、私に与えられたのは「産業現場において必要とされる労働衛生管理」ということで、資料の3コマ目を見ていただきたいと思います。

 労働者の健康というのは外的要因と労働者のスキルのせめぎ合いの結果に左右されるというふうに思っております。厚生労働省の文書を見ていますと、要因ではなくて因子という言い方をされているのですが、どちらでもいいのですけれども、働く上で作業者にはいろいろな因子、人間に悪さをする要因がいっぱいあって、それに対して教育を受けたり、あるいは、資格を取ったり、自分自身が防衛するための力を身につけたり、会社が組織的に労働者に健康障害を及ぼさない仕組みをつくって運用していくというような形でやっている。このディフェンスラインはアメーバー状で日々刻々と変化する。午前中いい状態であっても、午後は一変するということもあるわけでありまして、このディフェンスラインを超えているかいないか、作業者に危害を及ぼすレベルになっていないかどうかをチェックするために法的に衛生管理者の毎週1回の巡回、あるいは産業医の月1回の巡回ということを少なくとも定めているのだというふうに私は理解をしております。

 機械設備による要因としては、例えば本来なら点線で示したパワーが働くべきところ、圧倒的な要因がディフェンスラインを打ち破って入ってきている。例えば機械設備の点検をしっかりやらなかったということでひどい粉じんが発生し人間に相当悪さをする、という切り口で労働衛生管理をとらえることが出来るのではないでしょうか。

 5コマ目を見ていただきたいと思います。今度は違う切り口で作業方法、作業条件によっても相当人間の心身に悪さをするような要因というのは結構あります。ここで少し訂正をお願いします。「発汗を伴う重筋作業」というところに、左45度あたりに「下」と書いてありますが、これは削除をお願いしたいと思います。

 発汗を伴う重筋作業が思った以上に非常に気温の高い状況でこういう作業をしなければいけないこともあります。例えば外国から入ってくるコーヒー豆を茶ぶり作業という、港湾なんかで見かける作業ですが一袋が60キログラムの袋を人で立っている足元にどんどん積み上げていかなければなりません。はい積み作業はなかなか機械化が難しいので衛生管理が難しいと思います。

 それから、3つ目の切り口で作業環境の面を見れば、これは明らかに絵にもありますように粉じんがもうもうとしている職場というのはまだまだあります。局所排気装置等工学的な対策ができない工程もあるものですから、これは個人で最終的には防ぐしかないというような状況の職場もある。

 そして、4つ目に切り口は労働者本人の生活の中で、大体8時間あるいは10時間職場にいるわけですので、図の上は職場での負荷、下は、職場生活が終わって家に帰った後の自分自身の生活を示しています。私の生活でもいろいろ酒を食らい過ぎたり、偏った食事になったりというようなところで労働者のディフェンスラインが破られていると捉えています。

 8コマ目で言いたいことは、つまり産業現場においては、労働者自身の力で、あるいは組織の力で人間に危害を及ぼす要因を人為的にコントロールしてディフェンスラインに入ってくるのを防いだり、あるいは、入る回数を減らすのが労働衛生管理であろうというふうに思っております。この労働衛生管理が有効に働くためには、組織の中で労使が一体となって取り組むべき要因の目標となる数値、これは数多く出ているのですが、まだまだたくさん出して公示をしていただきたい、これは厚生労働省にお願いしたい。

 更に、ほぼ全ての要因に数値目標を公示するためには、関係する研究機関や団体にテーマを与えて、スピード感ある回答を得て施策に反映させてはどうかというのが私の思いであります。現在の委託事業も、例えば産業衛生学会にはこういうことを急いで回答してくれ、あるいは、コンサルタント会には、こういうテーマを与えるので急いでやってほしいというような形で入札させる。企業や団体というのは数値を示されると俄然目標に対して頑張りますので労働衛生管理においてもどんどん数値目標を出していただければ、企業の担当者というのは、これに向けて何とか繰り合わせをしようとする動きが働きますので、ぜひ数値というものにこだわっていただきたいというふうに思います。

 最近の数値目標のよい例としては、こういう労働時間等見直しガイドラインでは2020年においてというようないろいろな数値目標が出ております。

 それから、2つ目のテーマである「労働衛生管理の今後の展望」ですが、昭和54年(1980年)当時から10年ごとに平成22年(2010年)まで順番に見ていくと、いろいろな流れが、時代の変遷がよくわかるかと思います。現在、15コマ目でありますが、少子高齢化のスピードは世界一だということで、日本の生産年齢の労働者人口が激減していく予測がなされております。厚生労働省も雇用政策研究会で、1か月ぐらい前ですか、就業者数がこのように変わっていくだろうという予測もされております。私は、高齢化社会なら逆手にとって高齢者の能力をどんどん活用してはどうか思います。17コマ目にありますように、トヨタなんかではこういう熟練ラインというものを導入していくということで、あるいは、OBの方たちが中小企業に行って、安全衛生全般も含めてものづくりというものの指導に入っています。

 将来的な今後の展望と課題でありますが、19コマ目です。地球の温暖化という、この間、パリのCOP21条約が締結されましたけれども、私は熱中症による被害の拡大というのは今後ますます大きくなるであろうというふうに思っております。

 2つ目の予測は、ロボットや無人化装置による人間とロボットとの協働作業がこれからますます進むのではないか。実3つ目は、ストレスチェック制度の導入によって、どうも専門医の先生と産業医の先生同士の話し合いというのを嫌うためか、あるいは、本業が忙しくて、もうこんなに手の込んだ制度になってくるのだったら産業医をやめましょうかという動きがあるということも非常に懸念をしております。4つ目は、高齢化が進むことによる基礎疾患と災害との関係の問題点で、これは産業現場においては非常によくある話です。例えば血圧の高い人を知らずに高所作業に上げて落ちてしまった。あるいは、溶鉱炉の作業につく人が、実は心電図で所見があったというようなパターン。あるいは、オートバイでお金を集めたり、預金を集めたりする金融機関の人たち、あるいは郵便配達の人たちの中に、1,000ヘルツのところの聴力が非常に落ちている人たち、こういう人たちが運転中にブブッと鳴らされてもなかなか気がつかずに交通事故に遭ってしまうパターン。こういう基礎疾患と災害との関係についてもっと鋭く突っ込んでいろいろな研究をしないと災害はなかなか減らない。ますます高齢者の方の労働者が多くなってくるということを考えれば、とても大事な課題だと思います。このことについて12次防の中で取り上げている労働局が1つだけありました。岐阜労働局がこの基礎疾患と災害との関連について重点項目に取り上げていましたので、と私は関心をしております。

 最後にリスクアセスメントの対象となった640物質の化学物質については、サンプリングや分析の技術を上げて頂き測定対象物質の数をどんどん増やさないと実際の換気中の濃度もわからない状態で単純にリスクアセスメントの予測だけでいいのかというところがございますので、ここら辺も課題だと思います。

 課題の一端を紹介しましたが産業医の先生方は、かなりの内容になってきますので、とても今の制度の中では大変だというふうに思います。そこで、できるだけ産業医の先生の職務をいろいろな形の有資格者に代行させるということが必要なのではないか、もっと法律の柔軟性といいますか、運用の柔軟性ということで、こういうものについてはコンサルタントに委託してもよろしい、ただし、報告はもらいなさいというような形でどんどん産業保健スタッフ等に権限を移譲するという形が望ましいのではないかというふうに思っております。

 最後のテーマでありますが、現在の法制度に関しては、体系を22コマ目に載せております。この中で、産業医の今の話と若干離れるかもわかりませんが、特別規則が有機溶剤中毒予防規則以下は、左側は全部特別規則なのですが、これに私は熱中症障害防止規則なるものを入れてほしい。といいますのは、酸素欠乏等の防止規則で、これの適用によって、それでも現在、平成10年から26年の間に酸素欠乏で亡くなられた方は81人、それから、硫化水素中毒によって亡くなられた方は、この17年間の間に48人、合計129名の方が17年間の間にこの防止規則のもとであるけれども亡くなられた。

 一方、熱中症のほうはどうかということなのですが、熱中症は平成10年から26年の17年間の間に339人の方が死亡されています。酸欠で129、それに対して熱中症が339人の方も見えるのに防止規則がない。建設業、警備業、製造業というところで熱中症は多く出ておりますけれども、産業医の先生が熱中症が心配だからと巡回に来て、事業所にいろいろ申し上げても、なかなか具体的に現場で実践してくれないと思います。作業主任者的な人がリーダーとなっていろいろな巡回をしたり、頻繁に温熱環境を測定したりとタイムリーに実務で動かないと、さらに温暖化が予想される中でこの死亡者数は、ますます増えるのではないかと思っています。

 産業医の職務が14条、15条でこのように7つほどやれということになっておりますけれども、私の提案としては、規則の第14条の第1項のうち、二、三、六号の一部については、条文の空文化を避けるため、必要な知識を有する他の有資格者が実施し、その内容を産業医に報告することによって実を上げるという柔軟性を持たせてはどうかというふうに思います。

 労働者の健康の保持・増進という安全衛生法の中で、66条から66条の10と以前に比べ増えてきましたので、この法体系の中で産業医制度法みたいな形で安全衛生法の周りにある作業環境測定法、あるいはじん肺法と同様に抜き出して一つの法律としてあってもよいのではと思います。

 以上です。

○相澤座長 ありがとうございました。

 歴史的な労働環境をめぐる由来因子から、現状を踏まえて産業医のあり方について御提案いただきました。どうもありがとうございました。

 石田委員は、労働安全と衛生のコンサルタントを両方お持ちの先生でございますので、コンサルタントの立場からも御議論いただいたと思います。

 これについて、内容に限って何か御質問、どうぞ。

 甲田委員。

○甲田委員 安衛研の甲田と申します。

 大変わかりやすい提案で、我々にとって非常に勉強になったので、ありがとうございます。

 2つだけ教えてほしいのですけれども、熱中症を規則にするという御提案だったのですけれども、熱中症を規則にしてどういう予防効果を期待されますか。

○石田委員 実際に労働衛生に関する特別規則は大抵作業主任者制度になっているかと思います。その中には必ず作業主任者は何をしなければいけないかという職務の内容が定められています。例えば熱中症の作業主任者制度をつくるのであれば、その職務として 1 午前2回、午後2回の作業場の温熱環境を測定すること 2 その結果に基づいてこまめな休憩や給水を指示すること 3 日陰の構築や送風機の導入等安全対策を行うこと 4 作業場を巡回し作業者の健康管理を行うこと 等定めると良いと思います。

○甲田委員 もう一つ教えてほしいのですが、ちょっと早口でよくわからなかったので、「産業医の職務」の中で二と三と何とかと何とかは代替の職種に移行できるのではないかと言ったのは、聞き間違えかもしれない、二と三と六と七でよろしいですか。スライドの23

○石田委員 二、三、六。六は一部。

○甲田委員 二、三、六だけですか。

○石田委員 二、三、六です。

○甲田委員 わかりました。

○相澤座長 ほかにはいかがでしょうか。よろしいでしょうか。

 それでは、どうもありがとうございました。

 では、続いて大神委員から御説明をお願いいたします。産業保健師のお立場からですね。

○大神委員 日本産業保健師会の大神と申します。

 今後求められる労働衛生管理について、産業保健師会が認識している実態と意見についてお話しさせていただきます。

 資料はパワーポイントスライドで10枚程度のもので、資料の最後3枚はアペンディクスとして御参考までの資料構成になっております。

 まず、冒頭でおことわりしておきたいのは、産業保健師という資格はないということです。資格は保健師です。保健師の国家資格を持って、労働者や事業者等を対象とした保健活動の仕事に携わっている者を私たちは便宜的に産業保健師と呼称しています。その職能団体が日本産業保健師会です。設立からの歴史は浅くて8年程度ですが、会員数を順調に増加させています。

 アペンディクスの2、スライド番号の9が私たちの団体の概要で、その目指しているものと歩み、中長期的展望を示しています。

 次に、前提としてお話ししておきたいのは、私たちがどのような視点を持って現状を認識して活動しているかということです。

 スライドの右下の番号、2のスライドを御高覧ください。保健師を知っている方は、保健師という資格を持っている人を知っていることはあるのですが、保健師の仕事はどのようなものか聞くと、大抵「よくわからない」と言われることが多い実態です。ということで、あらためて私たちの職種がどのような視点を持って、どのような活動をしているかということをまずお話しさせていただいて、進めさせていただこうと思います。

 保健師の資格は、一言で言うなら公衆衛生看護活動の専門家であり、実践家と定義できると思います。アペンディクスの1に、日本公衆衛生看護学会が定義した、公衆衛生看護とは何か、公衆衛生看護学とは何かという、保健師に関する用語を掲載しました。この文章でもわかりにくいようなので、もう少しかみ砕いて、私たちの実践知であり、暗黙知であるところから、保健師の職能が何かをお話ししたいと思います。

 保健師は、保健師助産師看護師法では、厚生労働大臣の免許を受けて保健師の名称を用いて保健指導に従事することを業とする者と定義されています。この法令ができたのが昭和23年で、おそらくこの時代は保健指導というのは「診断治療以外の活動の総称」であった可能性があります医師法の医師の定義と重ねて考えられます。つまり、保健指導というのは、昨今では、投薬治療に該当しない有所見者への保健指導といった狭い意味にとらえられることもありますが、そういった狭義の保健指導にとどまらないものを指すというように私どもの中ではとらえております。

 お示しした職能というのは、長く暗黙知であり実践知として引き継いだものから考えております。過去、現在、未来の時間軸から個人と集団を把握して、個人、集団が自律的に動けるための対応を意識しています。また、産業保健師は労働者、事業者の身近な専門職というように表現されることもあります。身近というと物理的に近くに存在するというようにとらえることもありますが、それだけではなくて、アクセスしやすく相談しやすさを意識した体制づくりを考えながら、医療の判断を考慮した上で生活の枠組みから実際的な解決に向けられるよう支援するというスタンスで捉えております。

 まず、保健師はどのような職種かということを簡単にお話しさせていただきました。もう1点、話題提供の前提として、産業の保健師が従事している業務についてスライドの3でお示ししております。

 これは、平成26年の日本看護協会の調査結果に基づくものです。回答数が全産業保健師数を反映しているものではありませんが、おおよその傾向を把握することができます。

 表1は、産業領域における就業所属別人数を示しています。約半数が企業や事業所勤務、次いで医療保険者、健診センター・労働衛生機関が多く、自治体の安全衛生や職員健康管理に携わっている者もいます。

 表2は、保健師が最も時間をかけている業務と次いで時間をかけている業務を示しています。保健師が労働安全衛生法に明解に記載されている箇所が「健康診断実施後の特に健康の保持に努める必要があると認める労働者に対しての保健指導」であるために、それに該当する業務が特に多いのですが、それ以外の労働衛生に関連する業務やマネジメントや調整にかかわる業務にも時間を割かれているという実態があります。歴史の古い通達ではありますが、昭和48年の衛生管理者としての保健師の活用についてという通達の解釈から、保健師である衛生管理者としての活躍例をよく聞いております。

 それでは、本題に入らせていただきます。

 これまでお示ししたような視点や業務を持つ当会の理事に、あらためて今後求められる労働衛生管理について現状と課題と今後の見通しについて意見を聴取しました。細かく多岐にわたった内容を得た中で、私たちの職種の独自性が反映されたものを重視して大きく3種類に分類しました。そして、今後の見通しにつながりそうな手がかりとして、現在手探りで対応している内容について簡単にお示ししました。

 その3点というのは、1点目が、保健医療職が健康管理だけを取り出した活動では対応しきれない広範で多様化した問題が増えてきたという内容。2点目が、事業者が職場の現状に応じた労働衛生活動の展開に困難や混乱を感じていたり、あるいは、法令等の理解が難しく着手しづらい現状が増えてきたという内容。3点目が、次世代の労働力確保にかかわる健康対策に懸念があるという内容です。

 1つずつ見ていきたいと思います。スライドの右下番号4を御高覧ください。

 保健医療職が健康管理だけを取り出した活動では対応しきれない広範で多様化した問題が増えてきました。この具体例には次のようなものがあります。以前は主に工学的視点からのアプローチである作業管理、作業環境管理が多く、労務管理や労働問題等と切り離して、その労働者の対応については保健医療専門職と人事労務部門で明確な役割分担ができていました。しかし、職場のメンタルヘルス対策の比重が大きくなるに従って、上司のマネジメントや労働者の仕事の適正配置がうまくいかないこと、個人のライフイベントや身体上の疾病、家族の問題等が複雑に絡み合った問題に対応することが増えてきました。

 少子高齢化、晩婚化の影響もあると思います介護と育児の重複、独身男性管理職社員で要介護者を複数抱える者の対応、障害者雇用等、周囲の労働者や制度も含めて検討の必要な多様な課題が増えてきたのを実感しています。

 業務の細分化、専門化による労働者の孤立化もあります。

 では、そのような状況にどのように保健師が対応しているか手短にお伝えするなら、次のような方法です。

 そのような労働者に対して、仕事とプライベートの課題の整理、労働者が対応すべきことへの後押し、状況によって家族等への連絡を行いながら、労務管理上必要な事項を人事労務部門と産業医に報告するだけでなく、関係者の調整役として機能したり、類似の課題を持つ者の実態把握の方法を検討し、時機を見計らって人事労務部門や労働組合等と一緒に施策も考慮するように動いております。

 スライド番号の5を御高覧ください。

 続いて、事業者が職場の現状に応じた労働衛生活動の展開に困難や混乱を感じていたり、あるいは、法令等の理解が難しく着手しづらい現状が増えてきたことについての具体的状況をお示ししています。

 労働者数50人未満のある非製造業の企業の事業者は、衛生管理者の選任が必要になった際に、衛生管理者の受験準備講習を受けてきた社員から、事業主責任で行うべき対応、配慮すべき事項等を聞かされて、事業主がやるべき事項の多さに圧倒されて思考が停止したとこぼされていました。

 大企業においても、少人数の分散事業場の増加や、速いスピードでの統廃合がしばしば行われています。組織がフラット化してきたため、一事業場の事業主的立場の者が抱える業務も膨れ上がって、労働衛生の法令遵守事項は後手になりがちになってきているという実態です。

 労働基準監督署の臨検があった際に、本社の人事労務部門からの指導を受けて、その後に契約している産業医にも相談したところ、指導助言内容が多岐にわたってしまい、何をどこから手をつけていいのかわからなくなってしまったという声を聞いたこともございます。

 また、旧厚生省からのがん対策や特定健診・特定保健指導の勧奨、旧労働省からの労働安全衛生法の遵守、経済産業省からの健康経営と、各省庁から届く要請事項にその内容を理解して整理するのが難しいとの衛生管理者の声を聞くといった声も聞いております。

 現状で、私たち保健師が対応していることとしては、事業者の困り事を聞きながら行うべき事項のかみ砕いた説明を試みて、その職場の状況を丁寧に聞き、今後行うべきものについて整理や優先順位づけを支援しています。

 スライドの右下番号6に移ります。3点目として、次世代の労働力確保にかかわる健康対策に懸念があるということ。これは、現在直面して切実に困っているものというよりも、今後の対応いかんで非常に困ることになるのではないかという課題です。具体的には、市町村、保健所においては、国保の特定健診・特定保健指導制度の導入やデータヘルス計画が導入され、団塊世代の健康対策に比重を置くようになってきました。結果的に40歳未満の住民への健診等健康対策が縮小されることがふえたと聞きます。一方で非正規の労働者割合が4割弱になり、その約半数が健康保険に加入していないことが指摘されています。産業保健師が市町村や保健所の保健師と話し合う中で、こういった話題が出てきました。

 1つ目が、頻繁に短期間で職場を移る非正規の労働者の健康保険の加入状況が把握しづらい。健診を全く受けたことがない者にも出会うことがあるという課題とともに、2つ目として、就労時期にあまり健診を受診しなかった者は、退職後もほとんど健診を受診することはなく、健康状態のよくない者がその中に一定数含まれる感触があるといったような話題を共有しました。

 これについては、保健師が対応していることとしてまだまだ模索中です。市町村によっては40歳以下の住民にも特定の年齢で健診受診勧奨を行っているところもあります。健診の形態でなくとも、地域職域連携等で若年労働者層への介入の仕組みを検討中のところもあります。

 ところで、このスライドの下に小さく挙げさせていただきました表3は、我が国の年齢別人口と雇用労働者数に関するデータを合体させたものです。石田委員からの御報告と重複するのですが、この資料では20年を一つのスパンとしてお示ししました。皆様方の中でも20年前に働いていた方であれば、この20年間の変化というのはリアルに思い浮かべることができると思います。この20年間を思い浮かべることで、この先20年の変化もイメージできるのではないかと思い御提示いたしました。20年前からこれまでの変化について、その数字とともに経験してきた具体的事象を重ねてお話ししてみたいと思います。

 雇用労働者は増加しました。これは失業者対応によるものではなくて、自営業や第一次産業の従事者が雇用労働者に変わったと考えるのが適当ではないかと思っております。シャッター商店街が増えたり、使われなくなった田畑が見られたりするようになりました。あわせて、非正規の労働者は約1,000万人増えております。でも、生産年齢人口である15歳から64歳の構成比は1割減って、65歳以上人口が1割増えています。

 団塊の世代の方の体力や健康度は、これまでの年代の世代よりもよいとも言われているのが現在です。一方、介護の担い手は、20年前は長男の嫁モデルというのがありました。それから、長男の嫁以外にきょうだいの数が今より多かったという実態があったとも聞きます。でも、現在は男女問わず実子が担うとか介護者も高齢者だったり、担う者がいなくなってきています。また一方で病院も在院日数が縮小の方向になっています。働きながら介護に携わっている人の悩み事がしばしば聞かれるようになりました。

 そのような現状から、さらに20年経つと65歳以上が3人に1人です。今後急速に少子化対策の効果があったとしても働き盛り世代の人数が劇的に増えるわけではありません。生産年齢人口は半数強になります。その時代、20年後に、生産年齢の人の最も基盤である健康が担保できるようにするためには、今これからの対策が喫緊で、広く労働者の健康を確保できるような対策が必要と考えました。

 最後に今後の見通しについてまとめます。現在の働き方の多様性や流動性は今後なくなっていくとは考えづらく、継続するのだろうと考えます。労働に関連する健康影響は一見してわかりづらく、労働と心身の健康の調整はチームでの多職種連携が有効ではないかと考えます。

 また、法令の整備が必要に思います。当面は現場に合わせた通訳等が必要でしょうか。労働衛生管理を支援するワンストップサービスを目指して、法規制が欠かせないものと、目的がかなえば方法を問わないもの(事業者や事業場の自律性を育むようなもの)に分けられるとよいのではないかと考えます。

 さりげなく仕事と健康に関してしっかり聞き取りができて、周辺の事象とつなげられる能力を持つ産業保健専門職の活動が実態把握の鍵になると考えます。

 異なる専門分野の多職種によるチームでの対応、そして、それが成立するための組織化やコーディネート機能が重要になるでしょう。多職種が絡んだだけだと逆に混乱が広がってしまうこともあることを想定する必要もあります。

 特に専属産業医のいない事業場においては、保健師が中核となって事業場の労働衛生管理に助言したり、調整的に活動できることが有効と考えます。

 なお、アペンディクスの3については触れませんでしたが、こちらは労働者や事業者の課題ではなくて、産業保健師の業務上の課題なので御説明を割愛させていただきました。

 しかしながら、今後の見通しを考える際に参考になる内容が含まれていると考えまして、掲載のみとさせていただきました。

 以上です。

○相澤座長 ありがとうございました。

 産業保健師の立場から、現状の問題と御提案をいただいております。どうもありがとうございました。

 今の内容について、どうぞ森委員、お願いします。

○森委員 関連した話で2つ教えていただきたいと思います。1つ目は、保健師の資格者の中で産業保健に従事する方の割合というのはどの程度なのでしょうか。

 2つ目が、基本的には保健師資格を取ってそれぞれの業務をなさるわけですが、本質的に地域保健における保健師業務と産業保健の業務は同じものなのか、違うものなのかを知りたいと思います。その背景は、新しい保健師のカリキュラムの中で、かなり大学が、保健師養成数を絞らないといけなくなっています。産業医科大学も70名の看護学科の学生を毎年とっていますが、地域保健の実習がネックになって18名しか保健師養成ができなくなっているのです。同質であれば、例えば地域でなくて産業で実習をやりながら、もっとたくさん育てることができる可能性があります。私は、今後の産業保健活動の展開において保健師の方には大変期待をしているのですが、そのような保健師全体の養成が減る中で、優秀な保健師さんが産業保健分野に来ていただけるのかを、極めて危惧しています。そのあたりはいかがでしょうか。

○大神委員 貴重な御質問、ありがとうございます。

 産業保健師の就業者数というのは、およそ4,000から5,000ぐらいだろうと言われています。なぜ「だろう」かといいますと、法的な選任制度がないということと、保健所等であれば間違いなく就業届をとりまとめる仕組みが機能して数が確実に把握できるのですが、産業領域では保健師一人職場が多く、当該保健師に委ねた届け出になるため、それを失念してしまうことがあったり、産業領域で働いている保健師は、一番非正規雇用が多いそうで、短期での流動性もあったりという背景から、数が明確に把握しづらい点がございます。

 しかし、保健師を採用しようとすると、大体の感触なのですけれども、1人採用したいといったら40人ぐらい集まるとも言われていることがあり、産業領域の保健師になりたい者は多い実態があるとも聞きます。

 2点目の御質問なのですが、地域の保健師と産業の保健師、私は目線だったり職能は同じだと思います。ただ、活動の実態として、いわゆる三管理がわかっていたほうがよいとか、あるいは組織論的なものがわかっていたほうがよいということと、一方で保健所、市町村では行政で標準化された行うべき目前の業務が非常に多く、一見した違いがあるので、フィールドが変わって、すぐ応用できるかといえば、そこは少し難しいものがあるのではないかと思っています。このあたりを考慮したキャリア形成の仕組みについて、今現在、検討しているところでございます。

○相澤座長 保健師さんで、産業保健師は何割ぐらいおられるのですか。

○大神委員 今、就業している保健師の総数は、ざっと、45,000ぐらいと認識しているので、1割くらいかと思います。産業領域で働いている保健師は、先ほど申し上げたような選任が義務づけられていない背景などから、数に曖昧さがあります。

○相澤座長 ありがとうございます。

 甲田委員、お願いします。

○甲田委員 私も今の職場に来る前に地域の保健師さんとおつき合いがあったのですけれども、スライドで言うと3枚目のところで日本看護協会の調査があるではないですか。nの回答数が1,500で、どこに所属するかというのでいろいろと書いてあります。これは、所属別の切り口なのですけれども、地域の切り口で切った場合に、例えば企業の保健師さんと市町村の保健師さんだとか、それから、病院の保健師さんだとかいうような保健師さん同士のネットワーク、先ほどの医者のネットワークが非常につくりづらいという話があったのですけれども、そういう保健師さん同士のネットワークで好事例というか、何かうまくいっているよというのはあるのですか、教えていただきたい。

○大神委員 まさに、今、ネットワークが稼働してきているところといいますか、日本看護協会も含めて日本保健師連絡協議会というのが8年前に設立されまして、そこで現在、領域を超えて自分たち保健師が課題としていること、今後あるべき姿について、年間2ヶ月に1回程度の割合で情報共有や意見交換をしております。そこから派生して、地域と産業とでお互いの状況を知らなかったということもあり、考え方や地理的に近い職場であれば地域職域連携の事業ではないけれども、自分たちでモデル事業的にできるところからやってみようと活動を始めた地域はあります。

○相澤座長 ほかによろしいですか。

 どうもありがとうございました。

 それでは、次に竹田委員からお願いいたします。

○竹田委員 労働衛生コンサルタント事務所オークスの竹田です。

 私からは、資料に沿って説明をさせていただきますけれども、ちょうどこの後、3人連続して産業医をしている者からプレゼンテーションがあるのですが、1ページ目の資料の構成がほぼ一緒なので、まず代表して下の部分。

 まず、求められる労働衛生管理についてということで、依頼された内容を整理してみました。日ごろの活動において感じている以下の事項を中心にプレゼンテーションをということで、3つの点について改めて確認ですが、産業現場において必要とされている労働衛生管理とは何か。2番目に、以前と比べた最近の労働衛生管理の特徴・変化と今後の見通しについて。3番目に、現在の法制度の課題についてということで御依頼をいただいていて、それに対して、私は、どちらかというと総論的な話を中心に、私の経験していること、今まで経験したことをもとに感じていることを中心にまとめさせていただきました。

 ページをめくっていただいて、まず最初に3つに分けてお話をさせていただきますが、「専属産業医と嘱託産業医の違い」というスライドをつくりました。これは私の経験が専属産業医を15年間した後に、今の形で開業して、一方で多くの会社と嘱託産業医契約を結んで仕事をしている関係もあって、そこで感じていることです。

 ここに挙げましたように、嘱託産業医は専属産業医と比べて限られた時間、限られた(人的)資源というのは事業場側の資源ですが、そのもとで産業保健活動を行っているということに尽きると思います。ただ、ここには挙げていませんけれども、実施しなければいけない事項の数は専属産業医と基本的に変わらず、従業員数が違うというだけで、そこは同じだと思います。

 そこで、時間をかけられないために何をしなければいけないかというと、課題を抽出して優先順位をつけて対応することであったり、あるいは、事業場内の産業保健スタッフと連携して事業場の自主的な取り組みに働きかける。産業医自身が動くだけではなくて、事業場で自主的に取り組んでいただくことのサポートをするということが必要になるのではないかというふうに思っています。「これに対応する能力が求められる」と書きましたけれども、私としては専属産業医をしていたときよりも嘱託産業医のほうが質的には高いものが求められるだろうな、大変だなというふうに考えています。専属産業医の時代には、まだ時間をかけるという手段があったのですけれども、時間をかけるという手段なしで対応していくというところにかなり難しさを感じています。

 そういった中で、2番目ですけれども、「法令で実施が義務づけられる事項が増加している」というのを挙げました。この2とか3というのは、1ページ目の3点にかかわるところがこれに相当するなと思ったので、その下にも少し同様のものがついていますけれども、参考までにしていただければと思います。

 これは既にお話は何度も出ていますけれども、確かに私も25年前に産業医大を卒業して最初にもらった産業医の職務に関するQ&A本、初版本でしたけれども、今はそのボリュームは、多分倍では済まないぐらいになっていると思います。産業医業務は2倍では済まないぐらいの量になっている。そういった中で、先ほども言ったように、限られた時間とか資源のもとで行うに当たって、実は法令で実施が義務づけられた事項は必然的に優先順位を高くしなければいけないというのは当たり前のことかと思います。そうすると、その事業場にどのような産業保健活動が必要かという発想よりも、義務事項をいかにこなすかということに、そういった考え方が中心になりがちです。こういうふうに私も感じていますし、そうせざるを得ない部分は多くの場面で出てきているのではないかと思います。

 そして、その次にあるように、産業医も法令対応のためのハウツーを求める傾向にあるのかというふうに多くの産業医の先生と話していて思いますし、私自身もハウツーを先に考えないと進まなくなるかなというような思いもしょっちゅう出てしまいます。こういったことが、事業者の自主的な取り組みが進むほうがいいと思うのですけれども、それを妨げる要因になってはいないだろうかというところを感じています。

 ちなみに、次のページから参考として、先ほどのスライドにあった項目で、私なりに産業保健活動の目的は何だろうと、今の形で仕事をし始めてから整理してみたものですけれども、大きく3つあるかなと思っていて、1つ目が、労働者に業務による健康障害が発生することを予防することでしょうし、2つ目に、労働者の健康状態に合わせた配置を行うことによって健康状態の悪化を予防すること。3つ目に、労働者の健康増進を図ることで、労働者が安全で健康に業務を行えることに加え、生産性の向上に寄与すること。こういうことが産業保健活動の目的だろうというふうに私が考えて実務を行っていると御理解いただければと思います。一般的にこういうふうに考えられているかどうかはわかりませんが、私なりの整理です。

 もう一つ関連する事項として、産業医の役割とは何だろうかということで、実は次のページにわたって4つ項目を挙げていますけれども、これは産業医としての職務の中での優先順位を含めて1番から並べているつもりです。特に産業医の役割として重要なのは、就業に関する判断を行うことだと思っています。そして、2番目に挙げているのは健康障害リスクの評価ということで、その場合、労働者の評価もありますし、作業や作業環境の評価というのも産業医の役割の中に含まれているというふうに理解しています。

 そして、そこまでは評価ですけれども、3番目に挙げているのが健康障害要因への予防的なアプローチということで、労働者個人の生活習慣病等の疾病予防も入ると思いますし、危険有害要因による職業病とか作業関連疾患の予防というのも含まれると思っています。

 そして、4番目に挙げているのは、ここまでできればという理想ですけれども、「労働・健康へのポジティブなアプローチ」という書き方をしました。単なる健康増進だけではなくて、病気で就業能力が少し落ちた場合の回復のサポートというのも含んで、こういったポジティブな方向へのサポート、アプローチができればというのが産業医の役割として考えて活動しているというところになります。

 戻りますけれども、こういった考え方があるのですが、先ほどの法令で実施が義務づけられている事項が増加しているということによって、こういったものを置いておいて、とにかくストレスチェック制度が始まったら、それをどうやってこなすかとか、その前の時代には、過重労働の面接指導が入ったけれどもどうやってこなすか。今は、それらを全部どうやって限られた時間の中でこなすか。限られた時間というのは、必要な時間はさらにとればいいのですけれども、事業場当たりの時間を増やすと、私の時間は限られているので契約数を減らすか、みたいな話になってくると、それもまた本来の目的とずれるかなと思っていて、そういったところを悩みながら実務に当たっています。

 最後に、小規模事業場の産業保健の課題ということで、地域産業保健センターの活動から感じていることを挙げさせていただきました。

 私は東京中央地域産業保健センターで地域運営主幹を担当させていただいています。ほぼ10年近くになりましたけれども、そこで活動していて感じるのは、いろいろな地産保の利用の仕方がありますけれども、例えば小規模事業場でも本社あるいは親会社からの指示で利用する場合もあれば、積極的に産業保健活動をやりたいということで利用していただける場合もあります。

 一方で監督署から指導を受けたのでお願いしますといってくる事業者も最近は増えていて、そういった意味では、そういった利用自体はいいかなと思うのですが、でも、小規模事業場のサポートを地域産業保健センターがどの程度担えているかというと、非常に心もとない数字になるかと思っています。

 東京中央地域というのは、働いている方の数が、これは平成21年のデータですけれども、50人未満の事業場の労働者数は68万人以上いるということになります。それに対して、私のかかわっている地域産業保健センターの1年間の実績は1,664件です。データが次のページにありますけれども、どんなことをしているか、これは地域産業保健センターごとに活動の特徴に偏りがあるなとは思うのですけれども、東京は18センターありますが、そのうちの1センターである東京中央と、両方を表示しています。上の段、下の段がありますが、下の段を見ていただくほうがわかりやすいのですけれども、実施件数が出ていますが、東京都内でもここに書いてある状況で、数字を合計はしていないですけれども、全部足していただければ東京都内、あるいは東京中央地域産業保健センターの実績、対応した延べ人数の実績になります。

 このような数であるとともに、その下、最後になりますけれども、その内容です。地域産業保健センターの活動をしていると十分なサービスを受けられていないケースにしばしば遭遇します。ここに例を出しましたけれども、健診結果に関しては意見聴取の依頼で見ると、糖尿病や高血圧などで早急に治療が必要だなという労働者がいても、治療を受けずに就労している。治療を受けずに就労しているというのはなぜかというと、3年分の結果がついてきたりします。3年前からすぐに治療を受けたほうがいいというレベルの方が健診結果で上がってくるというのを見るのはしばしばです。これはほかの委員の方からもお話がありましたけれども、では、それに対してどの程度のアプローチができるかというと、依頼されたことに対して1回答えるだけです。さらにサポートしますよと言っても、事業者のリクエストがないと地産保としては動けないということで、大抵の場合はそこで終わってしまう。あの治療が必要な方はどうなったかというフォローは、現実的にはできていないという中で活動をしています。

 このような小規模事業場、地域産業保健センターがあるからといっても、そこの活用の実態と、もっと活用したらいいのだろうとなると、予算とかマンパワーのバランスがどうとれるかというところもあるので、こういったところの問題を感じているというところを最後につけ加えさせていただきました。

 以上です。

○相澤座長 ありがとうございました。

 竹田先生は、コンサルタントとして多くの嘱託産業医として事業場を持っておられて、いろいろな問題があるということの御指摘をいただいております。

 今の内容について御質問ございませんでしょうか。よろしいですか。

○清宮委員 いろいろと貴重なデータをありがとうございました。

 1つ質問です。このデータについてではないのですけれども、ごく最近、地域産業保健センターのほうでストレスチェックへの対応は、システム的には行わないということが労働者健康福祉機構から出ているのだということを耳にしたのですけれども、そういう方向に行っているのでしょうか。

○竹田委員 私も聞いているだけなのですけれども、指示を受けているというのでしょうか、今年度12月1日以降は、ストレスチェック制度の中で面接指導は地域産業保健センターの事業として行うと聞いていたのですけれども、まだ面接指導にかかわる意見書作成マニュアルに関しての教育とかが行われてない実態の中では、今年度中は面接指導を行わないという通知を東京の産業保健総合支援センターからいただいているという状況です。ですから、その文言を見ると来年度からはするのかなというふうには心づもりを持っております。

○清宮委員 ありがとうございます。

○相澤座長 ほかにはいかがですか。よろしいでしょうか。

 それでは、竹田先生、どうもありがとうございました。

 引き続きまして、産業医の立場から、土肥委員からお願いいたします。

○土肥委員 三井化学の産業医をしております土肥でございます。

 私の背景というか、これを書いている背景といたしましては、専属産業医が6人、看護職が15人、さらに衛生管理者が七、八人という体制の中で、1万5,000人の健康管理をしているという状態の中の背景として、私が考えていること、感じていることを書かせていただきました。

 1ページ目、2ページ目はほとんど同じでございますので、1枚めくっていただきまして、スライド番号の3から始めたいと思います。

 今、必要とされている労働衛生管理という意味では、実際に私どもも小規模な関係会社さんをどうするかとか、下請さんとの関係というのは非常に難しいのですけれども、少なくとも小規模な事業所、関係会社についてどうしていったらいいのだろうというふうに見るときに、当然の考え方ですが、グループ会社として一定のレベルの産業保健を供給するというのがごく自然の考え方だろうなというふうに思っています。

 そういう意味では、労働衛生ですから働いている人に対するサービス、産業保健も働いている人に対するサービスということを考えますと、働いている人全員にできるだけ同じような、同一でなくていいと思うのですが、同じような労働衛生サービスを供給できるということが、今、望まれていることであろうというふうに思います。

 そういう意味では、今まで議論になりましたように、50人未満の事業所の産業医の選任義務がないということ、それから、一次産業の労働者の労働衛生サービスというのは一体どうするのだろう。非正規労働に関して明らかな格差が出ていると言われながら、これをどうしていくのだろうかというふうに思いますと、やはり同一な労働衛生サービスを供給していく、こういう視点が非常に重要ではないかというふうに思います。

 さらに、今までの御議論もありましたように、産業保健スタッフの充実、正直申し上げまして、産業保健スタッフのそれぞれを充実させることによって、今ある課題が解決されていくかということには疑問を感じます。それは、やはり統合していくというような形が必要な部分もあれば、逆に充実していくことの必要性もあるかと思います。そういう意味では、今まで議論されましたように、産業医の量的な充実と質的な充実が必要である。

 それと、産業保健師さんを含めた産業看護職のさらなる活用を法律上明確にしていく必要があるのではないかと思います。

 さらに、弊社は化学メーカーでございますので、衛生管理者の活躍というところもたくさんございます。ただ、全体で見てみますと、衛生管理者の方々の機能というものがだんだん形骸化されつつあって、もっと充実させていく必要性があるのではないかというふうに考えています。

 さらに、3番目、スライド番号の4番でございますが、実際にこれから多くの産業保健サービスを供給する際に、Aという職種が頑張る、Bという職種が頑張るということで本当にやっていけるのだろうかというふうに思います。私どもの企業がとっている体制といたしましては、三井化学として関係会社の労働衛生サービス等を包括的に請け負うという契約を結んでいます。当然、その契約に基づいてお金をもらって、我々はサービスを提供するという形になります。そうしますと、同じ事業所の中で産業医として選任されながら、看護職は同じように働く、データベースも同じになるということになります。そうすると非常に効率的になります。そういう意味では、できるだけ包括的な契約の中で産業保健サービス、もしくは労働衛生管理体制が確立されるほうが効率的ではないかというふうに考えます。

 そういう意味で、健康診断機関はたくさんあるわけですが、健康診断のみならず、事後措置や長時間労働に関する面接指導とか、当然、ストレスチェック制度の面接も供給できるような労働衛生機関が必要だろう、もっと増えるべきだろうというふうに思います。

 一方で、作業環境測定だけをやっているというイメージ感が作業環境測定機関は強いので、化学物質管理を含めた、これからはさらにもっと職場有害要因がクローズアップされてくる可能性があります。そういうものを指導できる労働衛生機関の充実、こういうことが今必要とされている部分ではないかというふうに思います。

 さらに、4番目として労働衛生管理における努力義務を推進させるインセンティブが必要だと思います。簡単に言いますと、努力義務から義務に変更していくのかと言われると、かなり抵抗があるのではないか。義務になったらやることが増えるわけですから、そうすると、努力義務を推進するインセンティブとは何かということを考えていかないと、なかなか今の仕組みがうまく回っていかない。特に健康増進に関わる部分はほぼ努力義務が全てで成立している部分です。これを進めるに当たってインセンティブを考えなくて何ができるのかというふうに思います。

 そういう意味では、健康経営的な視点で努力義務へのインセンティブを労働安全衛生法の枠組みを超えた中からつくっていくというような、もう少し幅広い取り組みがないとここのインセンティブはできないのではないかというふうに思います。

 5番目に、労働衛生も産業保健もそうですが、エビデンスに基づいた労働衛生サービスをするべきだと思いますし、その中からエビデンスが出てくるべきだと思うのですが、そういう枠組みや仕組みが非常に少ないというふうに感じます。そういう意味で、エビデンスをつくり出す、もしくは、エビデンスに基づいたことをやっていくというのが必要とされている労働衛生サービスかというふうに考えております。

 次に移りまして、スライド番号の5でございます。最近の労働衛生の特徴と変化、今後ということでございます。

 これは、ほとんど多くのことが言い尽くされているというふうに思います。まず、変化としましては、簡単に言いますと作業関連疾病が、いわゆる業務上の疾病に移行してきたということでございます。簡単に言えば、長時間労働によるものであるとか、メンタルヘルスがそういうふうになってきたということだと思います。

 それから、長時間労働による健康障害の防止とかメンタルヘルス不調の未然防止など、比較的高い専門性を必要とする。高い専門性を必要とするという意味は、判断基準を数値で切れないというのが一番簡単な表現かと思うのですが、明確にできないので対応が難しい、こういうものが増えてきた。

 さらに、化学物質の管理は強化されてくる。化学物質の管理が強化される中で、正直、労働衛生に関する法令が複雑化していっている。特別有機溶剤というものが出てくる。これで特化則と有機則が複雑に絡み合う、こういうことが起こってきている。

 それから、健康管理に関する指針・ガイドライン。先ほどの話にもありましたが、産業医Q&Aがふえるということは、簡単に言うと指針やガイドラインで出てくるものが厚くなっている、読むのが大変だから簡単なものを求めるということが起こるわけです。簡単に言うと、複雑なことをやらなければいけない状況になってきているということかと思います。

 今後としては、安全配慮義務がどんどん強化されていく。これは社会的要請として、本当にいいことかどうかは別にして、安全配慮義務が強化されていくという流れになっていくのかというふうに思います。

 一方で、これからの社会を考えますと、元気で長生きをしていくということが必要になりますから、当然、努力義務をどうやって本当の行動につなげるかという意味では、健康経営的な視点で健康管理が評価されるということが望ましい姿で、そうなってほしいなというふうに思います。

 3番は、化学物質管理に伴って、法規制から企業の自主的な促進の方向性に進んでいかないと、多分、今の法律をくっつけていっているだけでは管理ができなくなっていくと思いますので、そういう方向性が進んでいくのではないかと思います。

 次に、現在の法制度の問題点ということでお話を進めたいと思います。スライド番号6でございます。

 今までの話したことの重複になりますが、労働安全衛生法全体という意味では、事業場の規模に基づく労働衛生管理体制の格差が大きい、この是正をいかにしていくかということが1つ。

 それから、事業者ごとではなく事業場ごとの規定であるということで、企業内における労働衛生に差が生じる。もちろんこれは企業の問題だと言われればそこまでですが、現実はそうかもしれないと。

 さらに、労働安全衛生法の目的の中には、「労働者の健康の確保」と書いてあります。でも、実際に条文を読んでいって、第66条を読めば、この法律が健康の増進を目的としていることは明白だと私には思えます。そういう意味で、これから働いていく人の健康を増進していくのだということをきちんと目的に書き加えることによって、はっきりとした努力義務の遂行というものを求めていくという方向性もあるのかというふうに思います。

 次に、事業者の自主管理の促進ということで、方法はいろいろあるかと思うのですが、やはり法令の規制内容の簡素化と事業者に対する結果責任の追求ということをやっていかないと、実際に規制の内容だけが増えていくとやるのが大変になっていくだけですので、ぜひこういう方向性の改正が望まれるかというふうに思います。

 それから、労働安全衛生法の体制の中で、やはり今までも議論がありましたように、産業看護職の位置づけが非常に部分的な位置づけになっているということがございますので、法の中で明確にしていくことが必要か。

 それから、衛生工学衛生管理者が十分活用されていないのではないか。衛生管理者の位置づけはかなりはっきりしているものの、この部分で位置づけはあるものの活用が余り明確ではない部分がある。

 それから、労働衛生を担う者として衛生管理者や産業医の資格というのは明確化されているわけですけれども、この資格を更新するということなしに、1回取ったらずっとオーケーということで本当にいいのだろうか。質的向上の一部分としては、やはり更新などを考えていくことが必要なのかというふうに思います。

 さらに、日本産業衛生学会の専門医・指導医などという制度がある中で、産業医制度と何かリンクをさせるのか、させないのかということも体制の中の位置づけとしては必要なのかというふうに考えております。

 それから、小規模事業所においては、企業外労働衛生機関との契約により、各種専門職が選任されているとみなせるような法制度の改正をすることによって、労働衛生サービスの拡充を図り、なおかつ、労働衛生機関の適切な認定をすることによって、その質を担保するという制度が必要ではないかというふうに考えております。

 次のページに参りまして、法制度の課題という中で3番でございますが、健康管理という部分で、これは私が感じている部分があるのかもしれませんが、特に一般健康診断と特定業務従事者の健診をもう少しうまく分ける必要があるかと。特に特定業務従事者の健康診断というのはかなり古い法律から出てきているので、既に非常にわかりづらくなってきている部分がある。

 さらに、特殊健康診断がどんどん複雑になっています。昔は物質を聞いたら項目が言えたと思います。私が産業医になった20年前はまだそれぐらいだったと思いますが、もう既に物質を聞いても項目が言えなくなってきている可能性があります。コンピューターでないと、就業歴を入れてコンピューターが考えないと項目が出てこないという状況になりつつあるという意味では、やはり簡素化する必要があるのかと。

 さらに、今の全ての健康診断は、増進という面とハザードという面から法律が制定されているというふうに思っています。つまり、ハザードがあるから健康診断をしようと考えている。それは、もちろんハザードがあるのは当たり前ですが、今はリスクアセスメントしようとみんなで言っているわけですから、そうであれば、本当はリスクに基づいて健診を行っていくという考え方が妥当ではないか。だから、ハザードに基づく健診からリスクに基づく健診への移行ということを考えていくという意味で、健康管理の部分の変更が必要かと思います。

 さらに、作業環境管理につきましては、個人暴露測定の推進、作業環境測定と個人暴露測定には両方とも大きなメリットがたくさんあります。今の日本の法律では作業環境測定だけを義務づけているわけですが、やはり個人暴露の推定ということによって作業環境測定の省略や簡単にできるようにとか、もう少し両方のメリットを取り入れるような仕組みがあると、化学物質としては取り扱う者として非常にやりやすい。

 もしくは、これは決して化学物質だけではなくストレス調査と同じかもしれないというふうに思います。暴露する側の量によって対応を変えていくというのは当たり前のことなのだから、そのように集団的分析の中から出てくるもの、そういうものによって対応を変えていくというような考え方に移っていくことが必要かというふうに思います。

 そういう意味では、作業環境測定と個人暴露測定、特殊健康診断というものが連携していくということがあれば、多分、効率的でコストパフォーマンスのよい健康診断、全ての考え方に共通してくる部分ではないかというふうに思っております。

 5番目に、私どもは化学メーカーでございますので、化学物質管理といたしましては、今の法律という意味では、いわゆるいろいろなハザードについて、危険性について、事業者が知らせる努力義務をたくさん課しているというふうに思います。だから、事業主が説明するのだよというふうに一生懸命法律に書かれているのではないか。でも、本当は、これは労働者が知る権利をきちんと担保していくというところへの移行が必要で、そういうことがないので事業主は一生懸命説明をしていかなければいけないということが起こっている。したがって、こういう部分をいかに移行していくかということも考えていただけると非常にありがたいというふうに思います。

 さらに、化学物質管理の中では、作業環境測定士の役割を拡充させるのか、もしくはインダストリアル・ハイジニストのような資格をつくって、もっと厳密にリスクアセスメントをしながら対応していく、そういう方向性の両方があるかというふうに思います。

 さらに、一般的な健康管理はオールオーバーな一定の枠組みが重要だというふうに思います。ただ、化学物質管理になりますと、もしくは有害要因の管理というところを取り出せば、実は事業者の自主管理を推進するほうがいい面もあるのか。そういう意味では、法令準拠型を選ぶのか、実は自主管理でいきたいのかということは事業主が選択しながら、自主管理でいくのだったら全て結果責任だというようなやり方もあり得るのかと思うのです。法令準拠型でいっていれば、当然、法令準拠していれば法律としてはオーケーですよと。なかなか法律的には難しいテクニックかもしれませんが、そういう考え方を取り入れることによってコスト自体が下がる可能性を持っているというふうに思います。

 さらに、8ページ目に行きまして、非正規労働への問題です。これは幾つも今までに言われてきたことでございますが、労働安全衛生法の枠組みだけではなく、労働基準法を含めて各種法令の中で非正規労働をどう考えていくのか。少なくとも一定のものは合わせなければいけないだろうということ。

 それから、長時間労働対策も労安法の枠組みでは非常に難しく、労働基準法を含めて見直しが必要だということと、それに合わせてILOの条約にもう少し批准をしながら改正を進めていくというスタンスが重要ではないかというふうに考えるところでございます。

 以上です。

○相澤座長 ありがとうございました。

 土肥先生は、専属産業医の立場から、特に法制度に対する課題と御提案をたくさんいただきまして、どうもありがとうございました。

 ただいまの内容について、何か御質問ございませんでしょうか。

 どうぞ、森委員、お願いします。

○森委員 土肥委員からいただいた意見は、ほぼ全面的に私が考えていたことと同じようなことだったのですが、言葉の中で2点だけ、何を意図してしゃべられたかということを確認させてください。1つは、「産業保健スタッフの充実」の1、2、3というところで、先生は充実だけではなくて統合という言葉を言われたのですけれども、この「統合」は何を意味されたのかということです。それから、その次のスライドの4番で「健康経営的な視点で努力義務へのインセンティブを強化する」ということで、現在の健康経営の議論の中では、経済産業省とか保険局が、どちらかというと低利子融資など、民間ベースでできるインセンティブを考えているようですが、ここで言うインセンティブは、法令の適用除外とか、何か公的なことを意図されているのか、教えてください。

○土肥委員 御質問ありがとうございます。

 まず、産業保健スタッフの有機的な結合という意味では、実は、やはり産業保健サービスを一塊として供給する仕組みの中に取り込んでいくべきだ。その中で充実を図っていくということが最も合理的ではないか。つまり、産業医だけを充実したらいいというものでも、保健師さんが活躍すればいいというものでもないはずなので、そういう方向性がもっと明確に出る方法がいいのではないかと考えているということでございます。

 2番目の健康経営的な視点の努力義務、インセンティブを強化するというのは、手法は幾つでもやろうと思えばあるのかと。表彰もそうですし、もっと言えば、今は融資ですけれども、税制だってあり得るかもしれないというふうに思います。法人税制の中で健康経営を推進してほしいと思うのだったら、総合的には税制をいじれば不可能なことではないと思います。さらに、ほかに自分でやりたいというならやってください、企業の全責任においてやっていきますと、もしもそれがはっきりと言える企業が出てきて、それのほうがコストが安ければ、そちらに向かう企業も当然出てくると思うわけですから、それは先ほど申し上げた自主的な健康管理というものが本当にできるという自信を持ってやっていくのだったら、そちらのほうがコストが安いので、そちら側に向くという方法もある。だから、確かにここはいろいろな議論があるかと思います。

○相澤座長 よろしいですか。ほかにいかがでしょうか。

 ありがとうございました。

 それでは、増田委員から最後にお願いいたします。

○増田委員 トリを務めさせていただきます、イオン株式会社で産業医をしております増田と申します。よろしくお願いいたします。

 お手元の資料1枚目と2枚目は、竹田委員、土肥委員とほぼ同様ですが、私は非製造業の産業医を代表する立場として本検討会に参画しておりますので、私が普段産業医をしている小売業、第三次産業での活動経験を踏まえて意見を申し上げたいと思います。

 事務局から頂戴した2枚目のスライドの3つの項目の順番で話したかったのですが、うまくまとめることができませんでしたので、話が所々前後するかと思います。御了承ください。

 3枚目のスライドをご覧ください。こちらは、先月27日に公開された労働力調査、今年10月分の速報値となります。先ほど石田委員からも説明がありましたが、卸売業、小売業の就労者数が1,066万人で、製造業の1,024万人を上回っております。既に御案内のとおり、小売業以外のサービス業等を含めますと製造業の就労者数をはるかに凌駕しています。労働衛生分野において第三次産業、特に小売業は第二次産業、製造業に比肩する一大活動領域になっていると言えるかと思っております。

 4枚目のスライドです。さて、その非製造業の労働衛生上の特色としまして、資料に列挙しましたとおり、まず、有害業務、重大災害が少ないという特徴があります。したがって、安全を重視する文化が醸成されにくいという困った特性もあります。重大災害は少ないのですが、軽微な災害の件数が減っておらず、第12次労働災害防止計画で重点対象業種に指定されるに至っております。ただ、災害の中身につきましては、転倒、動作の反復、無理な動作といった、設備面よりも行動面に起因する災害が多いという特徴がありまして、労基署からしばしば御指導を頂戴するリスクアセスメントではなかなか件数減少に繋がらないのではないかと感じております。

 そして、従業員が少人数単位で点在する分散事業場という特徴があります。労働安全衛生法は工場など、一定の従業員を擁する規模の事業場単位を想定して整備されてきておりますので、50人未満の規模で事業拠点が数多く散らばっている企業の労働衛生管理がなかなかうまく進みにくいです。このように製造業の安全管理手法・基準が必ずしも効果的とは言えない点が顕在化してきております。

 また、産業医に求められる活動の優先順位が製造業とは異なってきておりまして、例えばIT企業では頭脳労働が主体でしょうし、サービス業では対人スキル、コミュニケーション能力が特に要求されます。よって、肉体的健康もさることながら精神的健康がより一層重要視されております。現場では作業環境管理・作業管理よりも健康管理(特にメンタルヘルス)が喫緊の課題となっています。ところが、産業医の職務として職場巡視は則15条に明記されているものの、メンタルヘルスに関しては明確な記載がありません。ストレスチェック関係は産業医の職務について定めた則14条に追加されましたが、職場復帰の際の面接は依然として明示されたものがありません。したがいまして、主治医と産業医の意見の相違による混乱で人事労務はしばしば頭を抱えています。

 また、産業保健の現場ですと、産業医にメンタルヘルス対応をもっと実施してほしいと思っていても、労基署の指導は職場巡視を重要視していることが多かったりしまして、嘱託産業医の限られた活動時間が有効に活用できていないということも起こってきているかと思います。

 5枚目になります。大手の非製造業ですと、しばしば全国で事業展開しておりまして、単一企業分散事業場という形態をとることになりますが、その場合、生産性・合理性追求の観点から、事業本部などに後方業務(人事・総務・経理等)の機能を集約させて、各事業場(店舗等)は営業活動に専念する体制をとっています。この場合、各事業場に十分に権限のある事業者がいません。例えば、以前、某大手外食チェーンの店長が管理職でないので会社に残業代を支払うように命じた判決が話題になったことがありますが、このように分散事業場の場合、労働衛生の重要なキーパーソンである総括安全衛生管理者も労働者ですので、労働衛生管理を的確に遂行するのに十分な権限がなく、産業医からの指摘・就業意見に十分対応できないということも起こります。

 どうしているかといいますと、もちろん小さな規模の事業場における健康管理の医師についての規定もあるのですが、労働衛生に関する事項は、結局、各事業場から事業本部とか本社に集約されまして、そちらで対応しているということになります。弊社でもほとんどそのようにして対応を行っています。

 このように労働衛生に関する対応が各事業場で完結しません。単一企業分散事業場の各事業場は、安衛法が定める事業場単位の要件を厳密には満たしていないということとなりますが、法令では事業場単位での労働衛生管理が要求されておりまして、実態に十分そぐわない体制で労働衛生活動を実施するよう求められている状況となっております。

 6枚目のスライドになります。非製造業では、先ほど申し上げましたとおり、健康管理、特にメンタルヘルス対応がより優先順位の高い課題となりますが、事業場単位での実施体制は十分とはいえないと感じております。特に50人未満の分散事業場の健康管理はどうしたらよいか。法令上は法13条の2に規定されている労働者の健康管理等を行うのに必要な医学に関する知識を有する医師が対応することとなっておりますが、十分対応できているか。この点につきまして、第1回の検討会で土肥委員から質問がありまして、先ほど参考資料でお示しいただいたとおりなのですが、あまり機能していないのが現状かと思います。

 私も弊社のグループ企業から50人に満たない店舗の従業員の健康管理をどうしたらいいかと質問された場合に、本部に産業医がいる場合は、その産業医に店舗の健康管理も実施してもらうような契約に切り替えて対応してくださいというように指導して、なんとかしのいでいる状況となっています。

 このように単一企業分散事業場の場合、法律で示された事業場単位ではなくて、会社単位、あるいは事業エリア単位での独自の活動体制で労働衛生管理(健康管理)を実施しているのが現状かと思います。

 厳密には法令に抵触するところもあるかもしれませんが、それを違反だと糾弾するのではなくて、逆に後押し、支援するような法改正などについても御検討いただければ、現場としては風通しのよい活動に繋がるのではないかと思っております。

 7枚目のスライドです。もっとも、それはきちんとした活動をしていないところの言い訳ではないのか。50人未満の事業場にも産業医を配置して、労働衛生管理を一層充実させるべきではないのかという御意見も既に挙がっておりましたし、それは一介の産業医としては理解できるのですが、非製造業につきましては、先ほど申し上げましたように、各事業場で対応が完結できませんので、やみくもに産業医を配置してもあまり意味がないと考えます。

 会社のコスト負担についても斟酌する必要があるかと思います。小規模事業場を対象とした産業医の共同選任事業は、今のところ残念ながら終了しております。また、ちょっと申し上げにくい内容なのですが、産業医の実際の活動状況に関しても考慮すべき点があるかと感じております。

 ストレスチェック制度の検討会委員を拝命したおかげでセミナーなどで呼ばれて、ストレスチェック制度について説明する機会があるのですが、質疑応答の場で人事労務の方から寄せられる声としまして、「精神科は専門外なのでメンタルヘルス対応はお断り」と産業医に言われて、ストレスチェックについても対応してもらえず困っているとか、そもそも普段から産業医の先生が現場に足を運んでくれない、年1回ぐらいしか来てくれないのでストレスチェックがうまく運用できる見込みがないといった切実な声は数多く頂戴します。

 あと、ちょっと特殊な事例だとは思いますが、1回の訪問で10分間しか事業場に滞在しない、 touch-and-go で済ませてしまう産業医とか、1人で150事業場の産業医を兼務している実質名義貸し状態という話も複数回聞いたことがございます。このような状況下で非製造業の企業が求める活動、特にメンタルヘルス対応に十分対応しない、できない産業医の活動頻度を増やす意義は乏しいのではないかというのが率直な印象です。

 8枚目のスライドです。ちなみに、第1回の検討会で道永委員から(本日御欠席ですが)御紹介のあった産業医活動に対するアンケート調査の結果を紐解きますと、職場巡視の実施状況は、年12回が594件で最多ですが、年1回、年2回という回答もかなり多いです。半数以上の産業医が法令で定められた月1回の職場巡視を実施していない、あるいはできていないという結果となっております。

 スライドの9枚目をご覧ください。衛生委員会の出席状況につきましても同様に、衛生委員会に毎回出席していない、できていない産業医が半数近くを占めているということが読み取れます。ですので、まずは現在の選任要件、労働者数50人以上のもとで月1回の活動が充足できるようにするのが先決ではないかと感じます。

 あるいは、産業医の先生方の多くは専門家の判断として月1回の活動という法令要件に囚われる必要はないと判断して現場の実態に即した活動配分を行っているのかもしれません。そうであるなら尚更、法令要件の見直しを積極的に検討してもよいのではないかと考えました。

10枚目のスライドです。まとめになりますが、非製造業におきましては、製造業の労働衛生管理手法が全てうまくいくとは限らないと考えます。作業環境管理・作業管理面での活動の重要性は相対的に低く、健康管理面がより重要となります。

 業務特性に応じて産業医活動項目の優先順位とか、活動頻度を設定できるよう事業者に裁量を持たせるということも考えていいのではないかと思います。

 また、非製造業でしばしば見られる単一企業分散事業場の場合、労働衛生に関する対応が各事業場で完結しませんので、産業医の選任基準の厳格化よりも事業場単位に依拠しない産業医の選任、活動体制についての検討が必要かと考えます。

 本社産業医、あるいは平成19年8月に公開された「産業医・産業医科大学のあり方に関する検討会」報告書で示された総括産業医・統括産業医が分散事業場の健康管理を支援する体制でしたら、各事業場の産業医選任要件は逆に緩和しても非製造業の場合は可能かと思います。

 総括産業医・統括産業医の担い手としましては、日本産業衛生学会専門医・指導医の高い専門性を活用しない手はありません。

 第1回の検討会で森委員から、専門医の位置づけをどうするかという意見が出されていましたのと関連して、総括産業医・統括産業医に関する法整備も踏まえた検討も行えればいいのではないかと思います。

 最後の11枚目になります。産業医の選任要件の厳格化での対応で議論していくのであれば、産業医のメンタルヘルス対応の強化が急務と感じます。特に非製造業でメンタルヘルス対応をしてくれない産業医の出務頻度が高くなっても現場は喜びませんので、例えばストレスチェックの共同実施者は産業医が必ず兼務することにはなっていないのですが、それを義務化するといった具合に、メンタルヘルス対応を断ることができないような要件をセットとするのが望ましいかと思います。

 ちなみに、ストレスチェックの行政検討会の第2回検討会で、御欠席のところで引用して恐縮なのですが、道永委員から、「産業保健スタッフは必ずストレスチェックの結果を把握するようにすべき」、つまり、共同実施者を兼務すべきだという御意見もございましたので、今後、産業医が担うべき役割の議論の論点として挙げていただいていいのではないかと思います。

 また、先ほどは極端な例をお示ししましたが、50人の事業場と999人の事業場とで産業医に求められる活動内容や時間は異なるでしょうし、実態の伴っていないと思われる選任件数も看過すべきでないと思いますので、活動基準や担当事業場の条件などを設定して、それを管理する仕組みも必要と思います。

 突き詰めれば、事業内容が多岐にわたり、事業場の特性が多種多様であるにも関わらず、産業医の選任要件が1種類しかないという点が様々な歪みを招いているようにも感じます。例えば業種ごとに産業医の選任要件、活動要件を柔軟に設定できるようにすべきと思います。

 実際、総括安全衛生管理者や衛生管理者は既に業種ごとに選任要件が階層化されていますので決して不可能ではないと思います。そうしますと、産業医はまだまだ充足していない状況ですので、例えば非製造業の選任要件を緩和した分で有害要因が著明な製造業の産業医を充足させるといった業種特性に応じた産業医の再分配、再配置といったことにも繋がるのではないかと思います。そのような観点での議論についても御検討いただければと思います。

 私からは以上です。

○相澤座長 ありがとうございました。

 非製造業の専属産業医として分散事業場についての非常に具体的な御提案をいただいたと思います。

 内容について何か御質問。

 どうぞ、土肥委員、お願いします。

○土肥委員 非製造業の実態といいますか、率直な御意見かなと思いますが、1つ、ぜひ非製造業と製造業と一刀両断に切らないでいただきたいと思っています。それは、労働者の働く形態の違いであって、業種の違いではないと思っています。そういう意味では、ここに、非製造業においては製造業の労働衛生管理手法は必ずしも有効とは言えないというのは、逆に言うと、作業環境管理とか作業管理が少ないよねとおっしゃっているだけなのか、根本的に違うものがあると言われているのかというのがわかりづらかったので、もし本当に製造業と非製造業で健康管理において根本的な違いがあると言われるのであれば、これはこのとおりだと思うのですが、それがないというのであれば、あくまでも働き方の違いによって産業医の選任要件を分けるべきだという意見のほうが適切ではないかというふうに感じたのですが、いかがでございましょうか。

○増田委員 御指摘のとおりでして、表現につきましては行き過ぎた感があるかもしれません。ただ、この検討会委員のお話を頂戴したときに、非製造業の産業医の代表としてということでしたので、そのカテゴリーにこだわって今回はお示しさせていただきました。

○相澤座長 よろしいですか。

 ほかには。どうぞ。

○甲田委員 先ほどから職場巡視の話が大分出ていて、それでいろいろと12回に満たないというお話だったのですけれども、衛生委員会の数値を出されて満たないというお話をされていたのですけれども、私、この数字自身は衛生委員会を月1回やっている事業所があればという前提で、やっていなければ多分こういう分布になるのかなとも思うのです。ただ、そうはいっても、衛生委員会における産業医のリーダーシップ、役割と言ったらいいのですか、ないと考えていいのか、いや、そうではなくて、もうちょっとあると考えていいのかというところのお考えをお聞きしたいのと、特に非製造業、先ほどから分けるなという話だったのですけれども、非製造業の場合にメンタルヘルスの業務はウエートが非常に高いといったときに、衛生委員会でどういう指導というかリーダーシップをしたらいいのかというところでお考えがあれば教えていただきたい。

○増田委員 そもそも衛生委員会が開催されていないのではないかという点は考えが及びませんでしたので、そのとおりかと思います。

 そして、基本的に衛生委員会の機能をないがしろにする意図は全然ございませんでして、開催されていないのであれば、まずは衛生委員会の定期開催を産業医から促すのがあるべき姿だと、それはもちろん思っております。

○相澤座長 ほかにいかがでしょうか。

 どうぞ。

○竹田委員 それでは、質問させていただきます。単一企業分散事業場の問題は、私も非常に強く感じていて、問題があるなと思っているのですが、今回、非製造業でしばしば見られるということでこういったプレゼンをしていただきましたけれども、実際、こういった事業場というのはどれぐらいの割合を占めるのかというようなことについて何か御存じであれば、要は、こういった問題はどれぐらいの事業場の中に占める割合なのかというのは私は皆目検討がつかないので、御存じであれば教えていただければと思います。

○増田委員 統計を行ったわけではありませんので正確な数字は持ち合わせておりません。ただ、私の同窓で、一緒に勉強会をやっている産業医、そして、小売業ではないのですが、同じように全国に事業拠点を抱えている本社の産業医から聞く課題はほとんど共通しているので、普遍性が結構あると思って発表させていただいております。

○竹田委員 わかりました。問題としての普遍性は私も同意するのですけれども、これは一体どれくらいの事業場の数の問題なのかというのがちょっと気になったのが1つあります。

 あと、10ページ目のスライドの後半で提案されているのですけれども、本社に産業医あるいは総括・統括産業医がいた場合みたいなお話を出されているのですが、これは先生のように専属の産業医がいることを想定されていらっしゃいますか。私がかかわっているところなんかは、嘱託産業医で、本社は四、五百人規模で全国展開している会社は幾つかあるのですけれども、そういったところで期待されるとどの程度できるのだろうというところはかなり不安になるのですが、前提を教えていただければと思います。

○増田委員 前提は、御指摘のとおり専属産業医です。これは月1回の嘱託産業医が総括機能をやるというのは厳しいかなと思っております。できなくはないのかもしれませんが、そのような形態で活動している事例を聞いたことがないですし、私は自信がないです。

○竹田委員 月1回とは限らないかと思うのですけれども、嘱託産業医でもやらなければいけないかと私は感じているのですが、ここでは専属産業医を前提とされたという理解でよろしいですね。

○増田委員 そうです。

○竹田委員 ありがとうございます。

○相澤座長 ありがとうございました。

 ほかにいかがでしょうか。よろしいですか。

 ヒアリングを提供いただいた先生方、どうもありがとうございました。大変すばらしい内容だったと思います。

 ちょうど2時間たちまして、ちょっと過重労働的になりますが、あと1時間ほど予定しております。このヒアリングを踏まえまして、議題の2つ目でございますけれども、「求められる労働衛生管理について」の議論に進みたいと思います。

 事務局のほうで前回の検討会での意見概要をまとめていただいておりますので、簡単に御説明をお願いしたいと思います。お願いいたします。

○中村室長補佐 資料1をごらんいただければと思います。むしろ意見交換は、きょう、先生方に御発表いただいた内容に基づいたほうがいいのかなと思うのですけれども、一応、前回幾つか御意見をいただいておりますので、資料1に基づいて簡単に御紹介させていただきます。

 今日御議論いただきたい論点は、1つ目の「求められる労働衛生管理について」ということでございまして、前回出た御意見を4つほど挙げておりますけれども、今日先生方の御発表にもありましたけれども、業種別に産業現場のニーズを把握するべきだという御意見が1つございました。

 2つ目でございますけれども、労働衛生管理は多様性を増していて、従来の労働衛生の三管理、いわゆる製造業を念頭に置いたものだと思いますけれども、その枠組みでは対応できなくなっているのではないか。労働時間とかストレスとか業務管理、休暇管理、いろいろな今日の御発表にもありましたけれども、多様な要素が組み合わさってきているのではないかという御意見です。

 それから、3つ目としまして、何をやればいいのかということだけではなくて、それによってどういう効果を期待するのかといった視点も必要なのではないかという御意見です。

 4つ目としまして、労働衛生管理の中には、今は法令上入っていませんけれども、治療と職業生活の両立支援、こういうこともきちんと含めるべきではないかという御意見をいただいております。

 以上でございます。

○相澤座長 ありがとうございました。

 今、前回の御議論をまとめていただきましたが、それでは、これにとらわれず、今日は「求められる労働衛生管理について」の議論にしたいと思いますので、御自由に御意見をいただければと思います。

 先ほど御質問された先生でももちろん結構ですし、内容についても反論があればそれについても結構でございますし、どうぞお願いします。

 かなり意見が尽くされたという感じですかね。

 どうぞ、森委員、お願いします。

○森委員 私は、竹田先生が示された産業保健活動の目的を労働衛生管理の目的と基本的に読みかえれば、このとおりだと思っています。全体像を整理すれば、職業病の予防とか作業関連疾患の予防をやっていくためには、適切なリスク評価をもとにリスク管理をやるべきであり、一方、健康増進や健康生産性の向上というのは、任意に会社の方針でやっていくといったように、活動の仕方とか計画の仕方が違っており、これが一つの軸です。もう一つの軸は、先ほどの業種のお話もありましたけれども、業種ごとに働き方とか、そこで労働者が暴露する諸要因の違いといったように、二軸で整理すればいいといったことではないでしょうか。竹田先生はひょっとしたら皆さんの意見は違うかと思いますがと言われましたが、私はそのまま同じことを考えています。

○相澤座長 竹田先生、いいですか。

○竹田委員 私はこう思うというところで出させていただいて、森先生から御同意いただいたのですが、それよりももうちょっと手前に大事なことは、何のために産業保健活動をやっているのかというような認識をみんなで持つことかなと思っています。その辺は先ほど説明し切れなかったのですが、法律があるから産業保健活動、労働衛生活動をやるのだというわけではなくて、その手前に、もともと事業者であったり、あるいは産業保健スタッフが何のためにあるのかというところを、一致させるのは無理だとしても、ある程度共有しておかないと、その先の議論がばらつくだけかなというふうに思って提示させていただきました。

 追加で発言させていただきました。

○相澤座長 ありがとうございました。

 ほかに。どうぞ、圓藤委員、お願いします。

○圓藤委員 資料1の意見でまとめていただきましたので、大筋は合意しており、●の2のポイントの労働衛生管理についての指摘はそのとおりだと思っております。

 ただ、「三管理という考え方そのものを見直すべき」となりますと言い過ぎと思われます。三管理という考え方でうまくいっている、特に有害要因に対する対策の仕方とかがありますので、残すべきものもあろうかと思います。だから、三管理という考え方で対応できない課題も生まれてきているという認識のほうが妥当ではないかというふうに思っております。

○相澤座長 三管理という、全てを行うのはちょっと難しくなってきているということですね。

○圓藤委員 全てに対してではなくて。

○相澤座長 その基本は変えてはいけないという御意見ですね。

○圓藤委員 三管理で対応できないものもあるというふうに理解して。

○相澤座長 対応できないと、そういう意味ですね。総合的な管理とか、そうという意味ですか。わかりました。

 ほかに、それについて。どうぞ、森委員。

○森委員 これまでの会議で、すでに発言したか、していないか忘れたのですが、全てを三管理で整理しようとするとすごく矛盾が出てくるように思います。例えば、いわゆる今まで健康管理といっているものでも、職場環境を変える方向で改善をしたほうがいい場合と、個人の健康管理を中心に考えた方がいいものなど多様化しています。ただし、ソリューションとして三管理の枠組みは重要で、個人の健康改善が目的の場合にも、全てが健康管理に分類される対応をするのではなく、作業または職場環境管理も、作業管理もありうるのです。どこに働きかけて改善をしたらいいかといったソリューションの分類の枠組みにおいては、三管理というのは、単に有害要因管理だけでなくて、それ以外の要因の管理においても極めて有効な整理の仕方だと思います。

○相澤座長 土肥委員、お願いします。

○土肥委員 求められる労働衛生管理についてということでいいますと、誰が求めるかということも重要ではないかと思います。労働者が求めている、事業主が求めている、それとも、それ以外の人たちが求めているという前提も必要か。ここで、今、意見として書かれていることは、つまり、労働安全衛生法に関係する人たちは直接書くとこうなるのかと思うのですが、本当は法律というのは国民全体のためにあるというのが基本的な理念でございましょうから、そうしますと、高齢期で元気に働くということがもしもこれから求められる日本の像であれば、やはりもう少し前向きな視点を入れておかないと、単純に守るとかこれも入れるとかいう議論ではないのではないか。

 ですから、生まれてからいろいろな法律の中で生きていく中で、やはり長年元気で働いていけるということを目指すような法律のものを労働衛生管理として求められているというふうに考えたほうがいいのでないかというふうに思って、漠然とした考え方ですが、もっと前向きな部分が必要ではないかというふうに思います。

○相澤座長 ありがとうございます。

 4番目の●の治療と両立支援というのも一種の、この場合は病気ですけれども、高齢者の働いていく環境ということも入っているのかもしれませんが、非常に大事な視点で、現在と将来にかけてどういう労働衛生管理をすべきかということも大事だと思っております。

 どうぞ、井伊委員、お願いします。

○井伊委員 治療と職業生活の両立支援については、ぜひ入れていただきたいと思っています。産業保健領域で病を持ちながらも働く人というのは、その職場で生じた病ではなくて、もともと障害があったり、疾患を持っていて働く人の支援について、ぜひ論点として入れていただきたいというふうに思います。職場において生じる課題にはとどまらないというのが、今の求められている労働衛生管理だというふうに思いますので、ぜひ取り上げていただきたいと思います。

 それと、1つ、前回欠席しておりましたので質問なのですけれども、ここで取り上げていくものの中に、産業保健スタッフというのは出てくるのですが、外部機関の活用ということについては、今回はここでは論点に上がらないという整理としたということでよろしいでしょうか。事務局に聞けばいいのですね。済みません。

○相澤座長 最後のほうで「その他」のところに、6ですか。

○中村室長補佐 事務局のほうからお答えしますけれども、論点の一番後ろのページ、「その他」の(1)のところに「産業保健サービスを提供する外部機関の質の確保について」という論点を挙げさせていただいておりまして、ここでどういった外部機関があるのかとか、こういった機関はどういう課題があるのかといったことを論点として挙げてはどうかということで前回示させていただきました。

○相澤座長 きょう御発言いただいた労働安全衛生コンサルタントというのも一つの外部機関ですかね、それも含めて、きょうは議論が分散してしまうので、現在あるいは将来の労働衛生管理ということで議論いただければと、後ほどやります。何かそういったことで御意見おありですか。

○井伊委員 本当にこれは、本日の先生方のお話を伺って、産業医のお仕事が大変幅広く多岐にわたって量が多いというのがひしひしとわかりましたので、こういう外部機関の活用ということは検討しないといけないのだなと改めて思いました。

○相澤座長 ありがとうございます。

 ほかにはいかがでしょうか。どうぞ、三柴委員、お願いします。

○三柴委員 私は、専門からいって最後のほうで発言をさせていただこうかと、要は法制度にかかわるところで発言させていただこうかなと思ったのですけれども、あえて最初に認識すべき現場課題として規制の発達ということを述べて良いのかなと考えました。きょういただいた御報告の中でも、要は規制が発達したことで産業医の方の職務がふえている面もあるというお話があったと思います。これは、もちろん規制ができる理由があるわけですから、そこを言うべきではあるのだけれども、実は今、私個人は科学研究費をいただいてイギリスの関係法事情の調査などをしているのですけれども、向こうでも規制を守ればいい、特に仕様基準、箸の上げ下げまで規制するようなものを守ればいいという時代があったけれども、それは未熟な時代状況であって、その後、でき上がった規制の考え方は大事にしながら所期目的、竹田先生がおっしゃったような、産業保健とは何のためにあるのかということを考えて、自分の頭で考えつつ、でも、ヒントは規制に求める、そういう両輪的な発想が必要だと考えられていることが分かりました。ですので、産業医業務をめぐる変化についても、その背景として規制の発達が掲げられてもいいのかなと思いました。

 以上です。

○相澤座長 それはどうですか。規制の発達というのは、規制がどんどん増えてくるという、いろいろなものに対してということですね。そういうのを発達というのですね。

○三柴委員 言葉遣いは難しいのですけれども、発達かなと。

○相澤座長 産業医の先生方からは、これはどうでしょうか。規制が多くなって、忙しくなってしようがないという。

 よろしいですか。どうぞ、甲田委員。

○甲田委員 少し戻るかもしれないのですけれども、業種別の産業保健現場のニーズという話で、先ほど増田先生のほうから非製造業のメンタルヘルスの活動の重要性というお話があったのですけれども、そういう観点から言うと、例えばそういうところから逆に非製造業の産業医の活動として、こういうことをもうちょっと増やして、産業医の活動と言ったらいいのでしょうね、どういうことを増やしていくというか、その辺でイメージとしてもうちょっと具体的に教えていただきたいのですが。

○増田委員 非製造業に限定する必要はなくて、これは全ての業種で共通だと思うのですが、やはり分散事業場の場合は全く頼りどころがないのです。ですので、例えば弊社の例ですと、店舗で何か問題が発生した場合、店舗ではなかなか対応できません。そうなりますと、今度は地域の事業拠点に対応要請が上がってきます。それでもだめだったら、グループ会社の本社に上がってきます。それでもだめなら、親会社の私が勤務しているところに、というふうになっていまして、件数はある程度途中で淘汰されているとは思うのですが、難しい問題ばかりが残っていまして、件数はそれほど多くなくても結構苦労する対応が要求されています。

 全て自分で対応する必要はなくて、その場合に、こういう問題についてはこういう専門家につないだらいいとか、そのようなコーディネート機能ができるようになればいいのではないかと感じます。もちろん、全て独りで1から10まで全部解決できるのが理想だとは思いますけれども、むしろ分散させるところかなと思います。それは他職種との連携にも繋がる話かもしれません。そのように思っております。

○甲田委員 そうすると、業種別という聞き方ではなくて、4番に小規模事業所とか分散事業所というもう一つのキーワードがあるので、そういった場合に、産業医活動の中でどんなサービスを効率的にサプライするのかという話で視点を変えて考えたほうがもうちょっと効率的なことができるということですか。

○増田委員 例えば、健康診断を実施した後にすぐ産業医が来てくれないという場合がありまして、その場合はいっそ本社に健康診断の結果を全部集めて、本社で健診の判定を実施するとか、そういうことができればもっと効率的なのかもしれないなと思います。ただ、法律上はそのような活動の妥当性が担保されていないので、本当にこれでいいのかなと思ったりもしています。

○甲田委員 50人未満で言うと、義務がないわけですから、どういう形で産業医活動なのか、または、産業保健活動を活用するというか、そういう視点で考えていけばいいのかなとも思うのです。そうなった場合に、産業医活動の中で、もっと言うと、それは分散すると産業保健活動なのかもしれない。ほかの産業保健スタッフがカバーできる活動とかいうのももうちょっと立てていけば、もう少し効率的に、先ほど労働者の側からどういう活動が欲しいのかという観点からいうと、そちらのほうが大事なのかなという感じもしたのです。

○増田委員 実際に何を求めているとか聞いてみないといけないですが、例えば産業保健スタッフと気軽に相談できる体制が求められているのであれば、産業医を廃止するのは厳しいかもしれませんが、例えば保健師さんとかを雇って巡回していただく、それを事業エリアごとに担当していただいて、そこのところを重点的に担ってもらうとか、そういうことを考えていくことになるのかと思うのですが、ただ、それはニーズによりけりだと思いますし、また、先ほど大神委員から御説明ありましたように、単なる健康相談だけが保健師の仕事ではないと思いますので、そこは語弊がある言い方になるかもしれませんが、ちょっと悩んでいるところです。

○相澤座長 どうぞ、高松委員。

○高松委員 労働側の立場からお聞きしておりましたが、きょうは大変参考になりました。ありがとうございました。

 働く側の立場でお話いたしますと、今、御説明の中に出たところであるのですが、小規模事業場と大規模事業場との差というのはまさしく存在します。その点は4のほうに出ているということですけれども、それ以外に業種別の差というのは確かにしっかりと見ていかなければならないのではないかというのはございます。私も増田委員と出身が同じ産業で、昔は現場にいたのでよくわかるのですけれども、特に非製造の中でも、例えば長時間労働が多い、あるいはサービス残業が多い、さらには、数字的なノルマがきついとか、さらに言えば、対人・対面の仕事でストレスがたまるとか、そういうものというのは業種によってかなり違いが出ております。

 さらには、例えば運輸などの業種でいえば、長時間労働になっている上に、職場に相談相手がいなかったりというところもありますし、化学物質を扱う職場ではまた違う問題があります。そういうところでは、業種別の産業現場の把握とニーズの把握というのは必要だと思いますし、前回も経営形態とか雇用形態、就業形態が多様化している中でどのように見ていくかという議論もあったと思いますので、その辺については十分に我々も意見を言っていきたいと思います。特に安全管理の問題、今、労災の問題が第三次産業でかなり増えているのは、製造の現場で働く人たちと比べると労働災害に対する意識の点も、増田委員もおっしゃっていましたけれども、自らの反省に基づけば、製造系の方よりは意識が低かったのではないかというようなところもございます。

 そのほか、同じ職場で働いている方でも、例えば小規模事業場でも全員が正規の社員で働いている職場と、非正規あるいは派遣とか嘱託とかいろいろな雇用形態の人が入り乱れて働いている職場では、かなり違ってまいります。ストレスチェック制度が導入され、派遣先・派遣元のそれぞれの役割や責任が明確化されてきたように、労働衛生管理のほうでもかなり細かく複雑化してきているものを見ながら分析をしていっていただければと思っております。

 感想めいた話で済みませんが、以上です。

○相澤座長 ありがとうございました。

 ほかにいかがでしょうか。どうぞ、大神委員、お願いします。

○大神委員 先ほど甲田委員が増田委員に御質問されていたことに若干の追加をさせていただきます。産業医の在り方の検討会なので、私どもの仕事のことをどこまで言うかと躊躇していたのですが、実際、分散事業場等で産業医の先生がフルに働きにくいところでは、私たち保健師の中で調整的に活躍している者がいます。今日も資料を提供させていただきましたけれど、そこでは、法律の通訳に加えて産業医の先生と職場の通訳もしております。職場の社員が、言葉にできなかったり、言葉を端折られたり、今目の前で困っていることと、今後困りそうなことをごちゃ混ぜに話されることもあったりするのを、社員個人に加えて周囲の複数名や集団の特性や状況も併せて考えながら、「おそらくニーズはこういうことだと思いますよ」といったその根拠となるものとその要約した内容を伝えて、産業医の先生には、職場に伝えるとよいと思われることを提案するようなことも行っております。私たちはできるだけ労働者、事業者が自律的に動けるように支援したいと思っておりますので、微妙なところではありますが、たとえば社員の主治医の先生への情報提供書の書き方に関しての事例があります。専属ではない産業医の先生だと時間的な制約や目配りの難しさから十分に把握できていなくて書きづらいところを保管すべく、「こういう仕事の状態で、こういうところは職場で配慮できるところで、御本人はこのような状況です」と御本人にも確認してもらい納得してもらって医療機関にも通じるようなものを、一緒に相談しながらつくっていくということもあります。このような働き方を活かしてチームとして動くことで事業者、労働者が自律的に動けるというのは今後考えていただけるとよいのではないかと思いました。

○相澤座長 ありがとうございます。

 いかがでしょうか。どうぞ。

○土肥委員 求められる労働衛生管理を考えるときに、私としては、ぜひ法律をこれ以上複雑にしないでほしいなといつも思います。これで衛生委員会とか、衛生委員会は50人以上の事業所は全てやるべきだと決めたわけですか。例えば、ここでまた製造業と非製造業を持ち込んで分割していくとか、法律が複雑になればなるほどやりづらいものに見えてしまうという側面が非常に強いので、ぜひ法律はシンプルに、実行するべき部署での仕組みが包括できるような、いろいろなことができるような仕組みに変えていかないと、法律で細かく決めれば決めるほどわかりづらくてやりづらい労働衛生管理になっていく可能性があると思っていますので、ぜひそういうふうに考えていただいたほうがいいかなと思います。

○相澤座長 森委員、お願いします。

○森委員 ここにまとめられる労働衛生管理に当たるのか、当たらないのか分かりませんが、他に該当する部分がないので、ここで発言したいと思います。今の話も含めて、昨今の労働者の健康保持を、これまでの法令管理の枠組みで進めていこうとすると、かなり窮屈になる。一方で自主管理をやっていこうとすると、本当に事業者の自主性に任せて大丈夫かという問題がある。しかし、世の中の動きとして自主管理をしないという方向になっている。この問題を今後、どのように考えていくかが重要です。自主管理を基本とする場合、何をもって大丈夫だという担保とするかが、課題になってくると思います。そのような担保方法の可能性として、専門家の専門性があります。たとえば、産業医の場合は専門医、保健師の場合には産業衛生学会で始まっている産業保健看護専門家といったように、体系的な教育プラス試験といった方法によるものです。もう一つの担保する方法は、事業者の結果責任をしっかり問うといった方法です。このような自主管理の推進と、労働者の健康保持を両立する仕組みの議論を一度チャレンジしてみる時期に来ているのではないかと思います。

○三柴委員 法令の話が出てきたので、ではということで申し上げると、イギリスは伝統的に安全衛生法体系が発展してきた国なのですけれども、調べていると5点リスク管理関係では要点がある。規制なりシステムの発展に要点があります。

 1つはめり張りです。あめとむちがはっきりしています。罰則は重いですが、その一方で、事業者に最大限安全衛生の実現のやり方は任せているという意味で結果責任的です。

 2つ目は単純明快さです。法律を見れば、大体やるべき事柄の方向性がわかる。他方でガイドラインが発達していて、新しい化学物質とかそういうものへの対応は、ガイドラインはつくりやすいし柔軟でもあるので、そういうところで定める傾向です。実は法律とガイドラインの間に行為準則というグレーなものがあるのですが、あえてグレーなルールをつくったのですけれども、これは結局法律みたいなものではないかということでメリットがあまり感じられず、今、ガイドラインがふえてきているという状況があるのです。

 3つ目は多角性とか多面性です。要は、安全衛生というのはこれだけやっていればいいというのではないので、いろいろな方向からアプローチをする方法が進められています。

 4番目は自律性と労使協議の重視なのですが、これは伝統的にイギリスでは労働組合が強いから、産業医を選ぶにしても、イギリスに公的な産業医制度はないのですが、専門家を選ぶにしても労使が協議する。階級的な社会階層の背景もあって、労働者が自分らの安全衛生は自分で守るという発想が強いからそうするわけです。

他方、日本の場合はそういう素地が基本的にはないので、あまり深刻な問題が拡がれば横で連帯したりはしますが、産業医などの高権的な存在を設けて、その方の言うことだったら説得力を感じて聞き入れるとか、そういう動きで解決していくことが多い。そのため、産業医制度の発展は特に重要な鍵になると思います。

 5番目が専門性とか柔軟性なのですけれども、行政機関も含めてかなりビジネスに親和的なところがあって、行き過ぎると批判を受けるのですが、事業の事情に通じた専門家が尊ばれているし、行政に至るまでかなりビジネスに親和的な部分があります。

 最後にそれらを支える物的、人的資源の充実ぶりがある。伝統的に安全衛生を大事にする気風があるので、必要なコストはかけるのです。コストを避けるのではなくて、かかるものはかかる。だから、そこには投資するのだけれども、投資の発想だからトータルではパフォーマンスになるというやり方になっています。

私自身、ただイギリスの仕組みにならえばいいというような発想は全く持っていないのですが、参考にはなるかなと思いお伝えしました。

 以上です。

○相澤座長 ありがとうございました。

 ガイドラインの場合は、ガイドラインに従わなくて、何もなければいいのだけれども、何かあったら法的な責任がとられるという感じなのですかね。

○三柴委員 ご指摘の通りです。結果責任的な体系ですので、そういうことになります。

○相澤座長 ありがとうございました。

 いかがでしょうか。どうぞ、高松委員、お願いします。

○高松委員 天木委員に1つ質問させていただいてよろしいですか。天木委員の先ほどの御説明の中で、大企業においては産業保健業務全般を俯瞰的に見ていくコーディネーターみたいなものが有効ではないかというお話があったと思います。私はそのお話を聞いておりまして、大企業だけではなくて、小規模多店舗のような企業で本社部門が全社的にコーディネートするようなものも含めて、かなり参考になるのかなと思ったのですが、もう少し「コーディネーター」とはどういうものかというのを教えていただければと思います。

○天木委員 一言で言うと、いろいろなそれぞれの職種をまとめ上げて中心になって動く人間ということでしょうか。ですから、職場職場でコーディネーターの形は大分違うのではないかと思うのですけれども、先ほどのお話のように、いろいろな小さな出先の事業所を持っているようなところでは、恐らく大もとになる会社にコーディネーターが1人いらっしゃって、産業医も何人かいらっしゃるでしょうから、そういう方もひっくるめて産業医以外の職種も全体を見てうまく配置していくような立場のコーディネーターというイメージだと思います。

○相澤座長 ちょっと物足りないですか。

○高松委員 例えば、どういう資格を持っている方がなっていくものとお考えなのでしょうか。

○天木委員 恐らく、理想的には産業医の資格を持つ方がよろしいのではないかと考えております。

○相澤座長 いかがでしょうか。

 業種別にやるということについてはかなり意見が分かれていると思うのですけれども、違う業種でも、例えば製造業でも事務作業をしている人なんかは現場の人と違いますよね。業種で余りやらないほうがいいという議論は、非常に複雑になるからという意味ですか。

○土肥委員 まずは、業種という切り口が、今、どれだけ日本の企業の労働実態を語るのに機能しているのかということだと思っています。もちろん大きな集団は違うと思うのですけれども、例えば私どもの会社の中で、本社機能の部分なんてほぼ非製造業だと思えるのです。あれが製造業ではないというふうに思うので、労働形態に応じた産業保健というものの供給の仕方はあると思うのですけれども、それを一概に製造業とか業種で切ってしまうということを法律で決めていくのは法律が複雑になるだけで、実態的効果に乏しいのではないかと思います。

 だから、どういう働き方をするかというのは、基本的には有害要因は何があるかということにかかわってくるので、例えば製造業であっても有害要因が非常に低ければ、それは製造業でない扱いをしていくような考え方があっていいのかなと思うので、法律にどうという部分では難しいのですけれども、そういう考え方が実際の労働実態に合った産業保健サービスの供給という意味では重要で、単純に業種とかで切るのは、今までのやり方を変えたほうがいいかなというふうに思っているところでございます。

○相澤座長 わかりました。それはもっともだと思います。

 いかがでしょうか。どうぞ、石田委員、お願いします。

○石田委員 求められる労働衛生管理というのは、きょう、役所のほうでつくっていただいた最後の数字が物語っているかと思います。業務上の疾病者数の推移とかいろいろな数字が出ております。我々は非常に重いこの数字を受けとめなければならないと同時にこの数字を何とか減らすためにどうするかというのが労働衛生管理の目的ではないのかと思います。

 今、第12次防の真っ最中でありますけれども、災害については数値目標というのが出されているのですが、労働衛生に関するこういう数字に対して目標となる数字が余り示されていない。定期健康診断の有所見率を減らしましょうみたいな形で出ているのですが、もっともっと踏み込んで、5年間の間にこの数字をこれだけの数字に減らしていくのだという数値目標を厚生労働省が上げていただくということをぜひお願いしたいと思います。

 企業の安全衛生委員会に出ていますと、嘱託産業医の場合は、お客さん的に参加している、あるいは腰掛け的に会議に参加している先生もいる。産業医の先生は年に1回か2回出てくる程度というのが多く、特に中小企業のこういう数字の悪さを何とかするためのアドバイスをしていこうとする意気込みを感じる先生が少ないように思います。企業の中で頑張っているのは衛生管理者だと思いますが、衛生管理者というのは企業の中では規則第11条の2で定めている地位と権限が余り与えられていないと思います。衛生管理者の地位、あるいは権限の付与というところをもっと実効性のある通達等で補完していただけると、この数字も少し改善されるのではないかと思います。

○相澤座長 大変大事な指摘だと思います。先ほど天木委員が言われたコーディネーターというのは、例えば衛生管理者が中心になるということでもいいかなと聞いていたのですけれども、どうなのですか。

○天木委員 今の話で、1つは産業医が腰掛け的という御発言があったのですが、そういう方もひょっとしたらいらっしゃるかもしれませんが、それぞれかなと。今の御発言だとみんながそのようなイメージにとられるかもしれませんが。

○石田委員 そんな意味ではないです。

○天木委員 もしそういうような産業医のいる場所でしたら、当然コーディネーターとしては不適切だと思いますので、その辺のところはぜひ。ただ、基本的には産業医はきっちりとお仕事をして、たとえ衛生委員会に出られない日があったとしても、その報告をきちんと聞いて対処する、そういうことが必要だと思っています。

 実際に私も衛生委員会に毎月は出ていませんが、衛生委員会を毎月やっていただいて、その中で事後報告なり、あるいは出た人はまとめて全部処理する、そういうような形をやっております。ですから、規模によっていろいろ違って、私は、本日、一産業医として参加しておりますので、余り大きな企業の話はよくわかりませんけれども、少なくとも産業医は職場の健康にはきちんと責任を持つという義務がありますので、それは徹底していくべきであると思います。

 仮に形どおり毎月遵守をしないにしても、遵守しなくてもそのときにはいろいろなそこの職場の方の心の相談も受けています。実際に心の相談が僕の手に余るときはアウトリーチみたいな感じで精神科の先生に御紹介する、そういう形が産業医の役割だと思っておりますので、産業医は決して病気を治療する立場ではありませんので、できるだけ職場の環境をよくする方向で事業主の方の仲介役みたいな形、そのために衛生委員会はその場としてあるわけですから、そこでいろいろな意見を上げていただくということでよろしいのではないかと思います。

○相澤座長 ありがとうございます。

 どうぞ。

○清宮委員 日本労働安全衛生コンサルタント会の清宮です。

 今、皆さんがいろいろとこれからの問題、あるいは、今抱えている問題を議論されているわけですけれども、ただいまコーディネーターの有効性とか、あるいは衛生管理者、産業医そのものの仕事量が多くなって大変だというような状況は、日常的に私たちも事業場、いろいろな業種の事業場に行く機会がありますので、常にそれは感じております。産業医でも、今、天木先生が言われているように、熱心にやっていただける産業医の先生もいらっしゃいますし、全く時間がなくて、10分ということはないのですけれども、1時間、2時間で帰られる先生も当然いらっしゃいます。

 今、石田委員が衛生管理者をもっと活用するというようなことのお話がありましたけれども、衛生管理者も現在、目いっぱい業務を抱えているのですね。それで、ストレスチェックをどうしようかということも考えていまして、新しい問題点として、当初から石田委員が言われていますように、過労死の問題もありますし、長時間労働あるいは労働時間管理というのが非常に重要な課題になっているのではないかと思うのです。ですから、そういった中で、新しい管理体制として労働時間などを管理する者として、衛生管理者に任せていくことではなくて、労務管理者に、名前が適切かどうかはわかりませんけれども、そういったことを任せられるようにされたらいいのではないでしょうか。また、そういう方々には、当然、労働安全衛生についても勉強していただかないといけないので、そういった教育も含めて検討していただけたらということが1点ございます。

 あと、コーディネーターというお話がありましたけれども、これからは、専属産業医がいるような事業場は別として、多岐にわたるニーズに対応するには外部の機関を有効に活用していかなければ立ち行かなくなるのではないかと思っています。労働安全衛生コンサルタントというのは安全と衛生と、また、衛生でも保健衛生のコンサルタントと衛生工学のコンサルタントというそれぞれ専門があるのですけれども、いずれにしても全体のコーディネートを労働安全衛生マネジメントの適切な構築・運用の支援という形でかなりお手伝いができるのではないかと考えております。実際に今でも各事業場の中でコーディネートに近い支援をしているのです。ですから、そういった点ではコンサルタントを活用ができるのではないかと考えます。

 ただし、今の法律の中ではそういったことが具体的に求められていませんので、立場としては、それぞれがコンサルタントとしての仕事をしているわけですけれども、衛生管理者や産業医のように事業場の中での安全衛生管理体制には組み込まれていないと思っております。

○相澤座長 どうぞ、大神委員、お願いします。

○大神委員 今の清宮委員のお話で、具体的な事例としてこういう展開方法もあるというお話をさせていただこうと思います。

 衛生管理者の質の担保は、衛生管理者を長くやっている方に関しては、ある程度できているものと思います。一方で、今、こういう時代が来ているのかと感じる例として、5年たったら社員総入れ替わりになるような職場もあります。そこではどのようなことがなされているかといえば、例えば従業員数が50人を超えそうだから、衛生管理者を受けさせなければいけない、それが精いっぱいで、衛生管理者としてのノウハウの展開も蓄積も難しい。それで、私が職場で請われて取った方法は、「大神さん、労働衛生コンサルタントの資格を持っているのだったら、200人以上の事業場なら2人目の衛生管理者はお願いできるよね」と言われて、それに応える格好で分散事業場を対応するというような方法でした。その職場の衛生管理者の活動を後押ししながら体制を整備する支援をしたことがあります。今の法律の中でもそのような方法も使えます。

 ただ、1点、コンサルタントの動き方として、やはり今後重視していかなければいけないのは、法律を現場に合わせながら、加えて自律的な方向に持っていくというコーディネーターの役割です。どうしてもこれまでの日本の法体系から、労基署から言われたところをどうするか、に終始しがちな実態がありました。もちろんそれは大事なのですけれども、さらに職場の持っている力を活かして、どう自律的な方向に動かすか、これはかなり難しいコーディネートだとは思うのですが、でも、今後ますます必要とされているものではないかと思います。

○相澤座長 ありがとうございます。

 そろそろ時間が迫ってまいりましたが、まだ御意見をいただいていない。

 どうぞ、竹田委員、お願いします。

○竹田委員 きょう、議論を通じて2点ほど感じたことがあって発言しておきたいことがありますので言わせていただきます。

 まず、産業医の働き方なんかについてはいろいろな意見が出ていて、熱心に働いている方から、腰掛け程度とか名義貸しとかも出ていますが、これは自戒を込めてですけれども、この検討会はまだまだ続くので、自分が体験したことはわかるけれども、世の中全体をそれぞれの委員の意見で見通せるのかなというような疑問と不安はあります。ですから、そこを私自身は混乱しないように整理しながらこの検討会に参加したいなと思っています。それが1点。

 もう一つは、業務上、疾病者の数とか数値目標の話もされていて、数値で管理していくことの大切さは私もわかりますが、それに加えて、今後はクオリティーですね、これは産業医の働き方もそうです、数だけではわからないこと、衛生委員会に出席している回数だけではどういう働き方、衛生委員会のかかわり方がわからないので、そういった面も含めて、あるいは、産業保健活動に関しても、労働衛生管理に関しても、クオリティーを高めていくこともあわせて考えていかないと成熟した社会に産業保健活動を提供できるということにはならないかなという感じがしたので、この辺は特に具体的な話ではなくて、きょうの議論を通じた印象ですので、例えば今年の産業衛生学会のテーマの中でもQOWL(クオリティー・オブ・ワーキング・ライフ)というのを取り扱っていましたし、そういった面も含めてこの検討会に意見を出せるようにしていきたいなという、私の決意と考えを整理させていただきました。

○相澤座長 ありがとうございました。大変大事な指摘だと思います。

 前回は、行われた措置の効果を検証する仕組みも必要ではないかという提案も出ていました。これについては、きょうは議論が出なかったのですけれども、ほかに何か最後に。

 どうぞ、浜田委員、お願いします。

○浜田委員 きょうは大変勉強させていただきました。ありがとうございました。

 私のほうからもどちらかというと感想めいた話になってしまうのですけれども、竹田先生がおっしゃった、産業保健活動が何のためにあるのかということをしっかり考えながら今後も参加していきたいと思っております。

 議論の中に少しありましたように、業種別の話になるのですが、確かに土肥先生がおっしゃったように、業種別だけで分けるのは危険だなということではっと気づかされ、なるほどと思いました。現場のことしかわからないので感想めいたことになってしまうのですけれども、どなたかの先生がおっしゃったように、安全衛生委員会自体を開いていないとか、そういう現実的な話が出てくるときに、増田先生の最初のお話の中にありましたように、製造業とは異なり、小売業やフードサービス業、飲食業などでは、安全衛生に関する風土や文化的なものが全くないというのが私の個人的な現場での感覚としてあります。例えば安全衛生に取り組みましょうねという話をしても、実際に現場で何を話しているかというと、例えば飲食業などであると、対お客様のために食品衛生のことは一生懸命話すのですけれども、自分たちのけがや転倒したりということに対しての話し合いがほとんど出てこないというような報告があります。労働安全衛生に関する文化を考えるという意味では、この労働衛生管理で話し合うことかどうかはわからないのですけれども、少し労働安全衛生の文化を整えていくという面では業種という切り口は全くなしにはできないのかなという気はしております。

○相澤座長 ありがとうございます。

 ほかに。どうぞ。

○小松崎委員 私も本日、先生方のお話を聞かせていただきまして非常に勉強になったところが多々ございました。

 1つ、私ども働く職場の立場から言わせていただければ、やはり求めるものは、自分が将来にわたって健康で安全に働いていくための適切な指導をいただきたい、こういったものを求めているのだというふうに思っております。

 ただ、きょう、先生方のお話を伺っていた中で、非正規と正規の問題、非正規と正規の間で格差があるのではないかという土肥先生のお話、このあたりは今、非正規の方が約4割という中で、これからまだまだ非常に大きな問題になってくるのだろうと思っていますので、このあたりについてもこれから検討していかなければいけないというところが強く感じた部分でございます。

 それから、きょうのお話を聞かせていただく中で、前回の産業医の皆さんのアンケート調査の結果にもありましたが、産業医の皆さんも負荷が非常に高くなり過ぎているのではないかということを非常に強く感じました。ですから、ここの負荷をどのように軽減できるのかということも含めて考えていく必要があるのかと思ったところでございますので、次回以降もまたこういった論議をさせていただきたいと思います。

○相澤座長 ありがとうございます。

 ほかによろしいですか。

 それでは、大変貴重な御意見をたくさんいただきまして、また、提供いただいたプレゼンターの先生方、ありがとうございました。

 これでそろそろ時間になりますが、武田労働衛生課長が見えておられますので、きょうの感想とかいただければと思いますが、いかがでしょうか。

○武田労働衛生課長 10月1日付で着任いたしました労働衛生課長の武田でございます。よろしくお願いいたします。

 私は、本日の検討会に関しましては、前回は9月中ということでありましたので今回初めて検討会で先生方のいろいろな御意見、基本的な考え方等をいろいろな観点からお聞かせいただきました。

 その中でも先ほどもいろいろと御指摘がございましたように、まず、何をどうやってやるかの前に、なぜこういうものを進めていかなければならないのかということをあらためて明確にしていかないと、持続性のある力強いものになっていかない、これはいろいろな分野においても共通のものではないかと感じております。ただ、そういう中におきましても、やはり基点となるのは、それぞれのお立場で日ごろから御努力いただいている現場であり、その実情等を考察するところからいろいろな考え方というのはスタートしていくのではないかと考えております。

 今後また引き続きましていろいろな分野、角度から幅広く御議論をいただければ大変ありがたいと思っております。

 本日は他の用務がございまして、途中からということで遅参いたしまして大変恐縮ではございましたけれども、また今後引き続きよろしくお願い申し上げます。

○相澤座長 ありがとうございました。

 加藤安全衛生部長は一言いいですか。

○加藤安全衛生部長 私も10月1日付で着任したばかりでございまして、本日が第2回ということで初めてでございます。きょういろいろ御意見があったのでございますが、若干事務局の課題の提案の仕方に問題があるのかなというところも、そこは、まさに土肥先生も言われた、求められる労働衛生管理、誰が求めるのか、労働者であり、事業者でもあるのかもしれませんので、そこら辺も含めて広い意味で少し御議論いただいて、最終的な着地点をどこにするのかというのはまた議論の中で法律にできること、あるいは、ガイドラインにするべきこと、その他さまざまな手法があるのだろうと思いますけれども、いずれにせよ、皆様方がそれぞれ現場で今考えておられること、あるいは、抱えておられる課題、そういったことを少し御議論いただければと思っていますので、どうぞ熱心な御議論をよろしくお願いいたします。

○相澤座長 ありがとうございました。

 秋山計画課長はいいですか。

 それでは、事務局から今後の進め方について御説明をお願いいたします。

○中村室長補佐 本日は、いろいろ熱心な御議論をありがとうございました。非常にたくさんの示唆をいただきましたので、事務局のほうで議論の整理をさせていただいて、次回の議論に続けていきたいと思います。

 前回、今後のスケジュールといっためどを御説明していなかったので、今回補足として御説明させていただきたいと思うのですけれども、一応この検討会の今後のめどとしまして、年度内はしばらくはヒアリングということでさまざまな方から御意見をお伺いしながら論点を整理していきたいと考えております。具体的にどういう方からヒアリングをするかは、また座長と御相談しながら決めていきたいと考えております。

 年度内はそういう形でヒアリングを続けさせていただきまして、年度を明けたところで一度議論の整理ということで、どういう方向を目指していくのかという中間的な整理をさせていただきまして、来年度いっぱいで結論を目指して議論をまとめていくということを事務局としては予定をしておりますので、回数が少しふえてしまい、かつ、長期間にわたってしまうかもしれませんけれども、御協力いただけますと幸いでございます。

 それでは、本日の検討会はこれで終了させていただきたいと思います。どうもありがとうございました。


(了)

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