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2015年8月5日 第3回厚生労働省国立研究開発法人審議会高度専門医療研究評価部会

医政局医療経営支援課

○日時

平成27年8月5日(水)13:00~16:00


○場所

厚生労働省 省議室(9階)


○出席者

委員

永井部会長 内山部会長代理 斎藤委員 祖父江委員 花井委員 深見委員 福井委員 藤川委員 本田委員

○議題

(1)国立研究開発法人国立循環器病研究センターの平成26年度業務実績評価について
(2)国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センターの平成26年度業務実績評価について
(3)その他

○配布資料

【国立循環器病研究センター】
資料1-1 平成26年度業務実績評価書(案)
資料1-2 平成26年度業務実績評価説明資料
資料1-3 平成26年度監査報告書
【国立精神・神経医療研究センター】
資料2-1 平成26年度業務実績評価書(案)
資料2-2 平成26年度業務実績評価説明資料
資料2-3 平成26年度監査報告書
(参考資料)
国立循環器病研究センター平成26年度財務諸表
国立精神・神経医療研究センター平成26年度財務諸表

○議事

 

○医政局医療経営支援課長補佐

 それでは定刻になりましたので、ただいまから「第3回厚生労働省国立研究開発法人審議会高度専門医療研究評価部会」を開催いたします。委員の皆様方には大変お忙しい中をお集まりいただきまして、誠にありがとうございます。

 はじめに、本日の資料の確認をお願いします。循環器病研究センターの資料で、資料1-1が実績評価書()1-2が説明資料、1-3が平成26年度監査報告書です。次は精神・神経医療研究センターの資料で、同じく2-1から2-3までとなっております。それから参考資料として、循環器病研究センターと精神・神経医療研究センターの財務諸表等が付いております。資料の不足等あれば、お申し出ください。

○永井部会長

 それでは国立循環器病研究センターの平成26年度業務実績評価について、御議論をお願いいたします。はじめに「研究開発の成果の最大化に関する事項」の評価項目1-1から1-3に係る業務実績及び自己評価について、御議論をお願いします。法人から御説明を頂いた後、質疑応答をしたいと思います。では最初に、業務実績及び自己評価について法人から御説明をお願いいたします。

○国立循環器病研究センター研究開発基盤センター長

 まず最初に、資料1-267ページを御覧ください。評価項目1-1、「臨床を志向した研究・開発の推進」では、循環器病統合情報センターを建てたことや、創薬オミックス解析センターを設置したことなどにより、この分野では活動を開始しております。循環器病センターは、御存じだと思うのですが、全国5か所の指定された早期・探索的臨床試験拠点整備事業のうち、ただ1つ医療機器を担当していて、その中の活動としては、アカデミアで初めて総合的医療機器開発支援体制を整備しました。

7ページの右上です。開発の初期から最後の承認までを総合的に支援するということで、多くのいろいろな事業に関して、プロジェクトのパイプラインの支援をしております。開発プロセスです。医療機器を開発する上で品質保証をしっかりしていこうということで、ISO13485という基準があります。これは多くは医療機器の会社が持っている認証ですが、循環器病センターは、恐らくアカデミアで国内では初めてだと思いますが、設計・開発のところ、循環器病センターが担当するところですが、そのシステムを構築し運用を開始しております。これにより、循環器病センターで設計・開発されていたものは、そのまま薬事を通っていくという形のプロセスにするということで、非常に画期的な取組だと思っています。先頃、本審査を受け、マイナーな指摘はありましたが、ほぼ、きちんと運用されているということで、恐らくすぐに承認書がもらえるということになっております。

 数値的なことはグラフ12を御覧ください。研究所と病院が連携した共同研究に関しては、対平成21年度比で52.9%増えており、グラフ2の企業等との共同研究を見ると、平成21年度の3倍、それから中期計画の2倍を超える件数を得ることができています。これらに関しても、今、お話したような、いろいろな取組の成果だと考えています。企業との共同研究の中には、先端的な創薬であったり医療機器の開発だけではなくて、前回も話しましたが、「かるしお」、健康生活をしっかり維持していこうということで、循環器病センターの大事な役割である国民の健康寿命の延伸というところでも活躍させていただいております。

 さらに、健康生活認証事業も開始しています。国の医療研究開発推進本部、安倍首相が本部長ですが、その下で実施されているヘルスケア産業協議会の活動の実証事業の1つとして、健康生活認証事業を推進させていただいております。知的財産ですが、グラフ3です。数値目標としては、対計画をやや上回る成果が出ております。ただしこれは量的なもので、質的なものは非常に厳選した良いものを取っているということで、後で説明があると思いますが、大幅に知的財産収入が増加しているということもあります。

 評価項目1-2に移ります。89ページを御覧ください。ここで非常に重要なポイントは、いろいろな研究も含めて、データや品質管理をしっかりとすることだと思っております。臨床研究に関しては、REDCapという、安価で研究者の利便性を担保しつつ信頼性を確保するというシステムを導入し、この運用を介して臨床研究14課題、多施設が9課題というデータを得ております。

 右のページです。非臨床試験の所でも医療機器を手始めに、アカデミアではまれな信頼性保証システムを作りました。これは9ページの右側にもありますが、昨年、立ち上げ、今年は既に12試験に適応してデータの信頼性の確保を行っております。もう一つ、この項目で重要なのは教育ということになります。1つはEUで標準化された医薬品開発専門家養成コース、Pharma Trainというものがありますが、大阪大学と共同して、先頃、国際認定をアジアで初めてCOEとして受けたプログラムであります。これは製薬会社も含めて、多くの受講生を受け入れることで臨床研究の質の向上等を図っております。PMDAとの人材交流。これは革新的医薬品・医療機器・再生医療等製品実用化促進事業ということで、多くのPMDAの方と人材交流をして、我々もPMDAの実際に認可を受けたプロセスの例題を見ながら勉強させていただいておりますし、逆に、PMDAの審査官の方を我々の所で教育していくというプログラムでの交流も図っております。

 倫理に関しては右のページにあるように、内外を含めて多くの倫理的な問題に関するコンサルテーションを実施しております。それから数値的なことを言うと、治験等の実施で、9ページのグラフ1を見ていただくと、治験依頼から契約締結までの期間を大幅に短縮することができており、さらに、治験の契約金額が対平成21年度比256.6%増となっております。さらに国循で実施された医療機器の治験数を見ると、全国で行われているものは年間2532件の新規のものが出てくるのですが、循環器病センターは循環器領域に限られますが、かなりの数を我々の所で実施できていることになると思います。以上です。

○国立循環器病研究センター理事

 それでは1-3です。「担当領域の特性を踏まえた戦略的かつ重点的な研究・開発の推進」です。これは循環器疾患の解明と医療推進に大きく貢献する成果ということで、インパクトファクター15以上の雑誌掲載論文数として、概要資料10ページにありますように、8件挙げております。このうち15については、これはLANCETですが、国際共同研究の分担者となっていて、ただ、その中でもセンターは、その論文によりますが、かなり寄与している部分もあります。

 そのほかに6、7、8とありますが、6については記憶に関する研究です、7については不整脈です。Brugada症候群の不整脈に関する研究です。それから8は冠動脈のプラークに関するものについてMRで予測をする研究で、大きな成果を上げています。インパクトファクター15には届きませんでしたが、大きく貢献する成果として、3つ挙げていますが、そのうち特に1番の乳児の僧帽弁腱索の急性破裂に対して、全国調査をして、新しい疾患のカテゴリーをセンターが中心となって確立できたのは、非常に大きな成果ではないかと思っております。

 そのほかでは、昨年も紹介しましたが、私自身が進めているANPです。ANPを用いた血管制御による新しいがん治療法の開発です。これが今年の3月に国家戦略特区内での新しい制度を用いて、非常に短い期間で先進医療Bの承認を受けたということです。実際には、この9月から患者の登録をする予定になっており、コントロール群250例、それからANP投与群250例ということで、10の大学を始め全国の施設が参加して、2年間での登録を予定しております。ANPを用いた血管制御によるがん転移抑制に関する研究も論文発表したのですが、これは2015年に入ってからですので、今回の顕著な貢献する成果としての論文のリストには入っておりません。

 そのほか、循環器病の実態把握ということで、循環器病統合情報センターにおいて調査結果等を公表しております。それから医薬品・医療機器の開発の推進ということで、現在進行中ですが、関西地区にある同志社大学、関西大学といった大学、医学系、医療系ではありませんけれども、医療機器開発等において、連携して進めていく形にしております。それから最後に、文部科研費の採択に関しては、当センターはこれまでも高い採択率ではありましたけれども、昨年度も採択率約33%ということで、全国平均26.6%を大きく上回っております。以上から、評価としてSを挙げております。

○永井部会長

 ありがとうございます。それでは、御質問、御意見をお願いいたします。

○深見委員

 創薬オミックス解析センターの設置というのが平成272月、それと平成264月には循環器病統合情報センターの設置・運用というのが始まっておりますが、それが臨床研究等の推進に役に立っているのか、ちょっと説明していただきたいのですが。

○国立循環器病研究センター理事

 私自身は専門ではないのですが、循環器病統合情報センターにつきましては、日本循環器学会がこれまで持っていた登録データを、昨年、循環器病研究センターのほうにデータベースを全て移して今後もそれを集積していく、さらに、非常に使いやすい形にもっていくということです。もちろん解析についてはこれからですけれども、当初、この独法になったときに、永井先生からもこういった情報面の集積の中心的な施設になるようにということでしたが、それがこの5年間で、一応できつつあるのではないかと考えております。

 それから、創薬オミックス解析センターというのは、今、ゲノム解析あるいはブロテオーム解析、メタボローム解析と、いろいろ何々オームというのがありますけども、やはり循環器病の場合、遺伝子とかだけでは病因、その原因の因子の決定とかはなかなか難しいということです。独法になり、平成23年からですかね、センター内のいろいろな検体あるいは臨床データを包括的な同意を得て、とにかく研究にもっていくということで、バイオバンクという事業を始めています。そういったものを集積し、それを活用して創薬につなげるという意味で、ゲノムあるいはプロテオーム、メタボローム、そういったものを総合的に用いて新しい診断あるいは創薬につなげるということです。これは、まだ昨年スタートしたばかりですが、その基盤には、それまで5年間やってきた6ナショセンで階層的オミックス解析研究というのが基盤になっておりまして、今後もスムーズに進展できるのではないかと考えています。

○祖父江委員

 どうもありがとうございました。非常にいいお仕事が出ているかと拝聴しました。2つお聞きしたいと思ったのです。今の質問とも絡むと思うのですが、いろいろな基盤をきちっと整えていくという点では非常にいろいろなものをお作りになって、基盤整備、特に臨床研究とか治験に向けた基盤整備ができていると思いますし、論文もいい論文が出ていると思うのですが、Sと付けられておりますので、何かこれはという、この中で特にアウトスタンディングな成果、特にこの臨床研究、治験というところで何か大きな、LANCETなどにいくつか出ているのですけど、何かそういうものがあれば御紹介いただけるといいなというのが1つ。

2つ目です。これも今後のナショナルセンターの非常に大きな取組になってくると思うのですが、オールジャパンのレジストリシステムとかを構築していくと。特にオールジャパンでコントロールできる仕組みを作るということ、これは実態把握にもなると思いますし、治験にも結びつくと思うのですが、これが現在どういう。脳卒中のデータバンクというのはちょっと書いてあったのですが、どんな状況にあるのかということ、この2点を教えていただきたい。どちらからでも結構です。

○国立循環器病研究センター理事

 データベース的なことにつきましては、専門ではないので詳しくは理解していませんが、こういった今の循環器学会からのレジストリ、それとともに脳卒中の方も学会レベルでやっていたものを、現在データを移行しつつあると理解しております。日本の場合、いろいろなプロジェクトで予算が付く。ただ5年経つとデータが雲散霧消というようなことで、ミレニアムなんかもそうですけれども、大きな反省をしていまして、そういうことで、バイオバンクというものを独法になった時点でスタートしています。すぐに成果が出るかどうかは別として、積み重ねというのが極めて大事ですし、そういう形でこういったものをスタートさせることによって、今後確実に成果が出てくると私は信じています。

○国立循環器病研究センター研究開発基盤センター長

 追加ですが、臨床研究とか非臨床研究も含めて、ちょっと説明の中でも言わせていただきましたけれども、やはり品質管理というのはすごく重要だと思うのです。昨今いろいろな問題もあって、データをしっかり元データまで遡っていけるという体制を作っていくというのは、臨床研究、非臨床研究にかかわらず、すごく重要なポイントで、そのことに関しては我々はすごく注力してやったところです。これに関しては、取り扱っている件数であったり、着実に進行してるという点が先ず1つ挙げられます。

 もう1つは、それに関連して教育のというのもすごく大事で、今お話しましたように世界的な基準になるような臨床研究等も含めての教育をやるということをしっかり、循環器病領域だけではなくほかのことも含め、倫理面も含めて構築させていただいたというところは、すごくいい成果ではなかったかなと思っております。一応Sということにさせていただきましたが、件数、金額等も含めて、ある程度数字的にも出てきていると考えております。

○国立循環器病研究センター病院長

 病院長から少し追加をさせていただきます。今回オミックス解析センターと、それから循環器病統合情報センターという2つのコアファシリティーが新たにできたということは非常に大きいのですが、もともと理事長、執行役員会の下に病院、研究所、研究開発基盤センターという大きな組織が3つあって、それとは別の直轄のコアファシリティーが、バイオバンクだけだったのですが、そこに更に2つ加わったという形です。それぞれ役割があって、特に循環器病統合情報センターに関しては、後から病院の項目のほうで成果を発表させていただきます。

○祖父江委員

 そうすると、むしろ今後の研究法人化に向けた体制作りが整ってきつつあると解釈したほうが、今の段階としては非常にいいということでしょうか。

○国立循環器病研究センター病院長

 そのとおりです。

○永井部会長

 よろしいでしょうか。それでは、次にまいりたいと思います。医療の提供等「その他の業務の質の向上に関する事項」、1-4から1-9まであります。

○国立循環器病研究センター病院長

 評価項目1-4から1-9につきましては、病院長の内藤から報告させていただきます。まず、病院診療の基本的事項を要約の上で、これらの項目の平成26年度の成果を概要資料の1-2に沿って説明いたします。病院診療の基本的事項と申しますのは、まず、センターの理念は循環器病の究明と制圧です。これに従った病院診療のスタンスというのは、高度医療を安全・安心とともに提供するだけではなくて、高度医療を普遍化・標準化するとともに、次の医療を患者とともに作るということだと思っております。標的となる疾患は動脈硬化症とそれの関連疾患である心筋梗塞と脳卒中、これが現在は中心ですが、更に次のターゲットとして、難病指定の循環器病、重症心不全、成人先天性心疾患、それから高齢者の新興の弁膜症、こういうところが重要と考えています。医療のタイプとしては、急性期医療だけではなくて、予防・予測、先制医療、ケア医療、こういうものを低侵襲的に効果的に提供するというのが考えの基本です。

 それでは、評価項目1-4、「高度先駆的な医療、標準化に資する医療の提供」について、資料の11ページです。患者にやさしい(低侵襲的)医療では、カテーテルを用いた治療について、まず、我々が世界に先駆けて確立した慢性血栓塞栓性肺高血圧症に対する経皮的肺動脈形成術、これは平成26年度は44例の高い実績があり、特に現在まで死亡例がないというのは国内唯一です。それから高齢者の大動脈弁狭窄に対するTAVIの実績も国内トップクラスとなっております。

 次に、先駆的医療では、内閣総理大臣ものづくり日本大賞を受賞した心臓レプリカ、それから経済産業省の賞を受けた3D-CGモデリング法など、センター開発の用具や手法の臨床応用を推進しています。更に写真2のように、MRIを用いて心筋梗塞の原因となる冠動脈壁の不安定プラークの描出に成功し、世界で初めて手法の意義を確立したことを強調したいと思います。これは冠動脈疾患の先制医療への道を開くものと考えております。予防・予測的医療では、心臓リハビリテーション件数が飛躍的に増加したこと、また、救命救急医療では、高規格ドクターカーの使用実績が着実に増加したことを報告いたします。以上、承認された先進医療や後から述べます心臓移植等に加えて、最新の高度先駆的医療の推進や難易度の高い課題、例えば不安定プラークの描出といったような課題の解決は、計画を上回るものと考えて、A評価とさせていただきました。

 続きまして、評価項目1-5です。「患者の視点に立った良質かつ安心な医療の提供」について、資料12ページです。まず、体制整備ですが、医療安全室、感染対策室、褥瘡対策室など、7室を束ねる平成23年度に新設された医療安全管理部が推進の基盤となっています。患者支援の視点では、外来患者予約を従来の30分枠制から1患者1枠制に変更し、271月より開始して順調に好評な運用を続けております。この結果、待ち時間は266月の調査で29分であったものが、276月の調査では20分まで短縮しております。医療安全の視点では、副院長以下の多職種によるセンター特有の重症回診を網羅的に運用して、死亡症例や重症例に対する治療内容やプロセスを検証し、病院長は全死亡例を把握するという状態となっております。チーム医療・職種連携の視点では、国内初の取組である循環器病の終末期医療の緩和ケアチーム活動、これは飛躍的に活発化し、厚労省の医療体制整備事業にも採択されています。

 一方、医療連携の視点では、連携登録の順調増加、これはグラフ2ですが、さらに移転を前提とした吹田市・摂津市・吹田市民病院等との連携や、それに続く新規のコホートの立上げ等の協議を推進しています。医療の質・医療倫理の視点で、医学倫理研究室の今年度の報告としましては、未承認・適応外診療の検討フローを公開し、それに対する相談を21件受けたということを報告します。緩和ケアチーム、医学倫理研究室の活動は予想を上回っており、外来患者の予約時間制度変更も成功しております。また、吹田市・摂津市・吹田市民病院との連携も将来の新しい医療の形を期待させるものであることより、A評価とさせていただきました。

 評価項目1-6、「その他医療政策の一環として、センターで実施すべき医療の提供」について、13ページです。まず、センターが今後、最も力を入れるべき心不全/重症心不全の医療では、スペシャリストが共存するというセンターの特性を活かす、組織横断的な心不全クリニックを開設して、シームレスな心不全診療の基盤が整備されました。移植部を、移植部門・移植医療部の2階建構造にし、阪大から移植では非常に著名な福嶌教偉医師を部長招聘して体制を強化しております。それから心臓移植は国内の症例数トップを争っていますが、強調したいことは、我々の施設の生存率は推定で恐らく世界一です。植込型補助人工心臓の治療を推進して、重症心不全患者の著しいQOLの向上が実現しました。これは重症心不全治療に新しい局面をもたらして、今後の在宅治療、destination therapyの時代がスタートしつつあると考えられます。小児心臓移植については、態勢準備、従来型の補助人工心臓などの装着を実施した上で、4月に入って、小児用の補助人工心臓(Excor)の治験使用を行っております。

 その他の取組では3点を強調します。診療科の狭間におかれ医療難民化する、いわゆる成人先天性心疾患の対策はセンターの使命の1つです。専門外来を運営、専門修練医特別研修コースを設置し人材育成を開始、それから思春期教室の開催、さらに内科医の参画推進の提言等を行いました。高齢者・非リウマチ性の新興弁膜症については、組織横断的な弁膜症クリニックを開設し、TAVIなどのカテーテル治療、MICSと呼ばれる最小侵襲の心臓手術の推進を行いました。心臓病合併妊娠の取扱いは26年度も国内1位、世界3位ですが、今回特に強調したいのは、超重篤な循環器疾患合併妊娠3例の母体救命と児の無事な出産に成功しており、これは多分センターでなければできなかったことだと思っております。

 心不全、重症心不全の医療は本邦を先導して想定を超える新展開となっておりますし、高齢者・非リウマチ性の新興弁膜症のMICS治療や循環器疾患合併妊娠対応も国内のトップで、センターで実施すべき医療を大きく推進したことから、ここはSとさせていただきました。

 次は評価項目1-7です。人材育成に関する事項、14ページです。リーダーとして活躍できる人材の育成については、レジデント、専門修練医は高レベルの人数を維持、数値目標である教育研修プログラム数はグラフ1のように目標を達成しております。国内初となる国循特有の専門修練医特別研修コースを開設し、重症心不全移植部コースのほか、成人先天性心疾患、新生児小児集中治療、心血管リハビリテーションの各コースに相当数の応募があって、心臓病診療のスペシャリスト養成が予想以上に順調に進んだと考えております。それから若手医師/スタッフ等の研究支援については、従来、部長等の大型研究に使用される循環器病研究開発費を若手研究者にも配分する、若手開発費研究を23年度から開始し、応募数は著しく増加してきました。職員のキャリアパス充実と、学位授与機能の補完のため、連携大学院制度と社会人大学院進学を推進し、現在15大学と連携、大学院生19名となっています。今回の報告で最も強調したい点は、センターの最大の問題点の1つであった、病院の臨床に携わる医師の学位取得が上記の連携大学院制度の使用によって初めて達成され、26年度は2名が熊本大学から博士号を授与されております。

 モデル的研修・講習の実施に関しましては、循環器看護の均てん化について、シミュレーションセミナーや教育冊子の発刊を通じて、国循の看護の魅力を広く院外に発信しました。数値目標の教育研修プログラム数は2年目に中期目標を達成し、これを維持しております。センター外の医療従事者等に対する研修も中期計画を大きく上回っております。専門修練医の特別コースの設置、あるいは研究費の配分、大学院の入学に加えて、今回連携大学院で博士号の取得者が出たということから、レジデントや若手医師の士気向上が著しいと考えまして、A評価とさせていただきました。

 評価項目1-8です。「ネットワークの構築の推進、情報の収集・発信」に関する事項について、資料の1516ページです。まず、ネットワーク構築の推進については、最大の報告事項は先ほどからも少し話がありました、レジストリ/ビッグデータの管理・運用部局としての循環器病統合情報センターの設立。それと日本循環器学会の循環器疾患診療実態調査、JROADの管理をセンターに移管されたということです。JROADは全国1,325施設の調査で、情報の収集率は100%、入院後の24時間以内のアスピリン等処方率などの11項目のQuality Indicatorをまず設け、その達成率の解析結果を各施設に還元しております。

 情報の収集・発信については、大きく「国循の減塩プロジェクト」の推進とその他に分けて報告します。国循の減塩「かるしおプロジェクト」は国民の循環器病予防のヘルスケア戦略です。かるしお認定制度を開始し、食品業界と連携しております。16ページ、かるしおレシピ本は26年度に第4弾を出版し、累計出版数は37万部に到達しました。それから第2回御当地かるしおレシピ大会、S-1g大会を開催し、全国かるしおの輪を広げております。そのほかでは、ホームページのビュー数が予想を大きく上回り増加しました。22年度の6.6倍となっています。循環器病予防の啓発、研究の公開、地域貢献を目的とした第2回の「国循フェスタ」を2611月に開催しまして、隣接する府立高校の協力もあり、第1回の700名を大きく上回る2,500名の来場者を得ました。

 循環器病情報の普及啓発活動として、第一生命との連携協定を締結し、記念セミナーを開催しております。264月よりスタートした循環器病統合情報センターは予想以上に順調稼働をし、かるしお本と関連事業も継続発展しており、国民減塩という国循のヘルスケア戦略が大きく前進したこと、情報の収集・発信については、ホームページが画期的なビュー数の伸びを示し、「国循フェスタ」も大成功であったことから、S評価とさせていただきました。

 評価項目1-9、「国への医療政策提言、我が国の医療政策の推進等」に関する事項については17ページです。政策提言では、センター主導のガイドライン、提言について、2点を強調します。1つは、本邦における脳卒中関連の研究者主導国際共同臨床試験推進体制の構築。これは米国NIH Stroke Netと協調するものです。第2は、成人先天性心疾患診療への循環器内科医の参加促進の提言です。国際貢献については、センターが主導する3点を強調します。1つは、「明美ちゃん基金」による、ミャンマーの先天性心疾患治療発展のための医療支援。2つ目は脳出血超急性期の降圧に関するNIHの助成による国際共同試験の日本国内統括を担当し、最多登録を実施したこと。3つ目は国際血栓止血学会における活動です。

 公衆衛生上の重大な危害への対応につきましては、大規模災害時の医療についての厚労科研3班、内藤班、橋本班、木田班が連携して研究を推進し、内藤班では東日本大震災と阪神・淡路大震災の循環器疾患に及ぼす影響を分析。拠点病院向けと実施医家向けの2種類のチェックリストを作成し配布しております。実施医家向けのものはポケットサイズで好評と聞いています。日本循環器学会と3学会合同の「災害時循環器疾患の予防・管理に関するガイドライン」作成にも貢献いたしました。脳卒中関連では国際共同臨床試験の体制作りや日本の統括組織として大きく貢献し、ミャンマーへの医療支援も当センターが中心的役割を担い、大きな国際貢献に発展する予定です。また、大規模災害時の危機対応についても、チェックリスト配布などの実績があったということから、S評価とさせていただきました。以上です。

○永井部会長

 ありがとうございました。御質問、御意見をお願いいたします。

○内山部会長代理

 大変素晴らしい内容だと思います。特に循環器病疾患の診療は極めて多忙な毎日と推察しますが、様々な取組をされていることに、まず敬意を表したいと思います。その中で、2点ほど教えていただきたいのですが、1つは、連携病院が増えてきたということで、連携病院の数は増えてきていますけれども、連携の実績について何かデータがありましたら教えてください。例えばいろいろなクリニカルパスを運用されているとか、そういったことも年々やはり増えてきているのか、あるいは病院の入退院に際しても全く何の問題もなく地域で回っているのか。

 もう1つは若手医師、スタッフの研究支援というのも感心して拝聴しましたけれども、いわゆる勤務医の科学研究費の申請率、取得率について教えてください。それと関連しまして、博士号の取得者が誕生したということで、この方たちが常勤医師なのか、それとも非常勤医師なのか、この点についても教えていただければと思います。

○国立循環器病研究センター病院長

 まず、連携です。連携登録は順調に増えております。その内容ですが、紹介、逆紹介等も兼ねての話ですので、これも連携室で対応して順調に動いているところです。地域連携パスについては、豊能地域という大阪の北部の地域の中で、私どもの施設が心筋梗塞と脳卒中の2つの地域連携パスの主導をしております。これも地域の中で何回も会議をしまして、特に脳のパスのほうはかなり広く使用されるようになりました。ただ、地域の医師会からは連携パス用の冊子が幾つもあるとか、そういうことは統一してほしいという要望もありまして、パスを患者さんの基本情報に関する部門は持ち歩き用の小さなものにして、それに個々の疾患に対してのやや込み入った情報に関しては別冊子で扱うような形作りをしようかということで、今動き始めているところです。

 それから研修に関しては、今回博士号を熊本大学で取得した2人は若手のスタッフ医師ですが、更に大学院、専門修練医という立場で大学院生になっている方も今は既にいらっしゃいますので、このような方が取得することになれば、レジデント、専門修練医の中から博士号取得者が出てくるということになろうかと思います。

それから、研究開発費の配分ですが、これは全体枠の中から、1つは部長等の、ある科を統率する立場の方々に主としてテーマを出していただく、あるいはこちらからこういうテーマでお願いするということもあるのですが、そういう大型研究部分。それともう1つ、若手の1年ないし2年での単独研究者での申請。これは年齢制限がありまして、40歳以下の若手、これは医者だけではありません。コメディカルスタッフもOKと。研究所の研究者もOKですが、そういう方が1年ないし2年、本当に単独で申請されるという形のものです。これもかなり応募数が多いのですが、応募数の多分3分の1ぐらいしか採択になってないと思いますので、これを厳密に採択した上で進めているところです。

○国立循環器病研究センター理事

 質問にありました科学研究費の応募ですけれど、レジデントでは、3年の期間、またそれが終わればほかの施設への移動というようなことになりまして、現状ではレジデントの身分では特に文部科研などへの応募はなかなか難しい。ただ、中には応募している研究者はいますけれども、それが現状です。

○内山部会長代理

 私の質問は常勤のスタッフです。それだけ忙しい中で、どの程度科学研究費も出されるのかなと、ちょっと興味があったものですから。

○国立循環器病研究センター理事

 我々の施設、当然研究所の研究者はほとんど100%が科研費を申請します。病院のスタッフもかなりのパーセントになっています。ただ、独法になる5年前までは病院のスタッフは医療は職務であって、研究は職務ではないということで、科研費が申請できなかったのですね。そういうことだったのですが、独法になってからは年々スタッフの申請率も増えてきています。ですから少し大学病院でのスタッフのシチュエーションと違いまして、恐らく今後も増えてきて、我々としては採択されるされないに関わらず、100%そのようになるようにと進めています。

 それから先ほどの若手研究の支援ですが、これもやはり、いわゆる組織内への研究助成への申請だけでなく、外部資金へも申請をしているかどうか。採択されているかどうかよりも、申請をしているかどうかというのを支援する1つの基準にしています。

○国立循環器病研究センター企画戦略局長

 地域連携につきまして数的なことを申し上げたいと思います。こちらの厚い実績評価様式の9698ページにかけて書いてありますが、ちなみに連携登録医療機関数については、平成21年度190、すみませんこれは「回」になっていますが「機関」です。190から26年度は376に増えています。また、先ほど内藤病院長が申し上げました脳卒中の地域連携パスは、23年度からスタートしまして、23年度266件、これが26年度では421件という形で、着実に増えてきています。なお、移転、建替えで、他の医療圏にも移転後は広がっていきますので、そういう意味でも今後、連携登録医の数あるいは地域連携のパスの数というのは更に増えていくものと見込まれています。

○福井委員

3点ほど、簡単にお答えいただければと思います。かるしおレシピが普及したのは素晴らしいのですが、これを買ったあと本当に食塩摂取量が減ったというのは何かエビデンスがあるのでしょうか。

2点目が、1214ページの右下のグラフなどが典型的ですけれども、中期計画の目標値が最初から低すぎるのではないかと思います。これはどのように設定してこのようになっているのでしょうか。最初から目標値が非常に低いものですから、97%増えたというように数字上はなっていると思います。

3点目が医療安全のところで、「病院長は全死亡例を把握」と書いてありますが、これはどの程度把握しているのでしょうか。単に問題がありそうなケースがありましたというレベルなのか、個別の内容まで把握しているのか。

○国立循環器病研究センター病院長

 まず、かるしおの冊子が出たあとの実際の成果が、買われた方がどこまで反映されているかということを、ちょっと検証する術がありませんが、声としまして、冊子を買ってやってみたら非常によかったという声は多数聞いているところです。本当は、例えば地域の高血圧の率が下がるとか、何かエビデンスが出ればいいのでしょうけれども、なかなかそこまでのことはちょっと確認できない状況です。

2つ目の中期計画は、特に14ページの中期計画の4という数字自体は、なぜこうなったかは私もちょっと思い出せないのですが、多分、国の時代には、外からの研修というのはほとんどやっていなかったことを受けての話ではないかと思っています。

 それから医療安全で、特に病院長が全例の死亡を把握するというのは、どういう意味合いかということですが、これは本当に全例です。そのルートが2つありまして、1つは重症回診に係るところからくる情報。もう1つは、看護部長から前日の入院、救急患者、死亡例等の情報を必ず毎日受け取るようにしており、それによって一応、死亡例の情報は100%、大部分は亡くなった翌日、遅くとも数日後には捉えるような形になっております。

○国立循環器病研究センター開発基盤センター長

 ちょっと追加で、かるしおのことですが、資料の7ページをもう一度御覧いただけたらと思います。先ほどもお話しましたけれども、健康寿命延伸ということで健康生活認証事業というのを始めました。これの1つの大きな目的は、実際にそういう生活を送っている人たちが、どれだけできているかということを自分で確認しながら、よい生活を送っていくということで、認証マークの所に「周囲の円は毎日の生活サイクルを表し、継続により健康的な生活が送れることを表現」とあるように、認証していくということです。この事業でやっていこうと思っております。

 それから、予防医学・疫学情報室などでも、そのような毎日の塩分摂取量を測定できるような機器を自分の所で購入して、そういう新しいコホートというか、そういうものをデザインしていこうということをやっております。また現在できているかというと、そうではありませんが、流れとしてはそういうことを計画して、事業として作っていくということになっています。

○本田委員

 様々な取組に、本当に積極的に取り組んでいらっしゃって、大変有り難いなと思っています。2点質問なのですが、1つは、12ページのチーム医療です。確かこの緩和ケアチームの活動とか苦痛緩和と終末期医療のモデル確立については、昨年度もこのようなことに取り組んでいることの報告があったと思うのですが、このコンサルテーション件数がこれだけ上がっているという取組の積極性は大変素晴らしいと思うのですが、こういうことを続けていることで、例えば患者家族の行動とかがどう変わったとか、それをどう評価しているのかとか、若しくは、医療側の行動がどう変わったとか、やったことによる成果というのかどうか分かりませんが、そういうものもあるのでしょうか。

 もう1つが、15ページの評価項目1-8の、循環器病統合情報センターの設立は大変今後に期待できる取組だと思っているのですが、こういうことで現在の循環器医療の実態の把握ということと今後の医療の標準化というか、質向上につながると期待していますけれども、現状では、参加施設に対しての情報の還元、解析、Quality Indicatorの解析と、情報の還元ですが、こういうものは国民も広くいろいろな形で理解していきたいという部分があるのですが、そういう国民に対して、どういうものを今後出していけるのかとか、方向性とか、そのようなものがあるのでしょうか。

○国立循環器病研究センター病院長

 まず、緩和ケアチームの活動は特に内部の評価も非常に高くて、臨床現場から来てくださいという状況になってきていますので、これはうちの重症心不全、末期心不全の方の診療における本当に大きな位置付けになっています。特に多職種で関与していますので、それぞれ関与する医師、看護師、保健師、管理栄養士、理学療法士などの多職種がそれぞれ生き甲斐をもって関与するという形になっておりますので、チーム医療として非常にいい形になっているかと理解しています。我々の施設で重症の方の緩和ケアそれから終末期医療について、どういうところで議論するのが適当かという場が、今までは重症回診でやってきたところですが、現在は緩和ケアチームとプラス重症回診という形で、かなりしっかりした終末期医療のケアができるような状況になってきたので、非常に医療としてはいい方向に動いているものと思います。

 それから循環器病統合情報センターで得られたJROADのデータに関して、まず最初は出していただいたところにIndicatorの、お宅の様子はこうですというような情報を返すところから始めてはいるのですが、ただ、全体の情報というのは個別のもの、施設が利用するというよりは、日本全体の医療の進歩につなげるべきものだと思いますので、その個別情報を返すだけではなくて、全体情報を解析して、循環器病の医療はこういう方向でというところはメッセージとして出していきたいと考えているところです。

○本田委員

 センターでやって、今後出していかれるということですか。

○国立循環器病研究センター病院長

 国民にということですか。

○本田委員

 はい。

○国立循環器病研究センター病院長

 はい。今後出していきたいと考えております。

○祖父江委員

 簡単にお答えいただければいいと思うのですが、1つは、教育の人材育成で、これはナショナルセンターに共通すると思いますけれど、新しい専門医制度の中で、どういう位置付けを国循はお考えになって、どうやっていこうとされているのかと、その辺をちょっと一言お聞きしたいというのが1つ。

 それからもう1つは、先ほどのレジストリとかコホート、これは患者情報管理とか、データの質の管理とか、継続性とか、解析のシステムも含めてだと思うのですが、今、ナショナルセンターが全体としてそれぞれレジストリとかコホートを作っていこうという動きに、次の研究法人に向けて非常に重要な位置付けをしていると思うのですが、これは横糸的に共有できるノウハウが結構あるのではないかと思うのです。その辺はまだこれからお考えになるのか、国循は国循で独自でやろうという、自力かもしれないですけれども、その辺の何かお考えがあればちょっとお聞きしたいと思います。

○国立循環器病研究センター病院長

 まず、専門医制度に関しては、再来年の春から新制度で動き始めるというところから、我々の施設としても、ちょうど専門医の取得のための後期研修の時期が我々のレジデントの時期と全く重なってしまいます。しかも我々の施設で、なかなか1階層のところの領域のハブを取得するのが、脳外科などは頑張ればできるかもしれないですけれども、内科は結構難しいのですね。あと、我々の施設の専門医は、どちらかというと2階層なので、それが1階層のところからどう影響を受けるのかということもあって、今、本当にセンターを挙げてチームを作って検討を始めたところなのです。どういう形で落ち着くかという。

○国立循環器病研究センター理事長

 これはナショナルセンターにとっても極めて重要なことでして、この専門医機構がどう考えているのか、現在の進捗状況とか、そのような情報を入手しながらやっております。基本領域とサブスペシャリティの領域、ただ、ある領域によっては中高一貫型みたいな言い方でやったりしますので、うちはサブスペシャリティが多いから基本領域について余り関係ないと考えるのは大間違いだと思っています。ですから専門医機構に対しては、基本領域の機関病院としての要件を満たすことができれば、ナショナルセンターもその機関病院として認めてほしいという要望書を出しておりますし、またそういうことでコミュニケーションを取っております。ナショナルセンターに若い優秀な人に来てもらうためには、ここのところは大変重要なことだと思っております。

○祖父江委員

 もう1つ、横糸的なことだけ一言。

○国立循環器病研究センター病院長

 まず、クリニカルイノベーションネットワーク推進協議会というものがありまして、各NCの疾患登録システムを研究活用するためのネットワーク構築の動きがあるようですので、それに乗って動くことになろうかと思います。

 コホートに関しましては、我々は伝統的に吹田市民の吹田コホートというものを作ってきました。それに関してはコホート自体がもう年齢層が高くなって人数も減ったということもあって、今度の移転を機に新しいコホートを作ろうと考えておりまして、そのベースのところの調整を、もう始めています。特に今回は吹田市と摂津市という2つの市の接したところに病院が来ますので、吹田も摂津も合わせた新しいコホート、かつ今までのコホート研究の動きというのはコホートの経過を見て、ある病気に関する危険因子を見つけるというところですが、基本的にはマスとしてのデータなので、できるだけ危険因子を階層化して、個別医療につながるような形の新しいものを作ろうというように考えております。

○国立循環器病研究センター理事長

 疾患登録について、循環器疾患のJROADの管理をうちのセンターがやらせていただくことになりました。また、脳卒中もやらせていただくことになりました。ここで重要なのは、両方は全く違うシステムで動いてきましたので、それを1箇所でやることによって、共通のプラットホームを作ることが初めてできるようになると思うのです。これは循環器病研究センターがやるという、もちろん循環器学会と一緒にというか、そこの事務局のような役割をうちが果たすということと、もう1つは、別の種類の情報を1つのプラットホームでできるように作り替えて、新しく運営していくという意味で、センターの役割は大変大きいと思っておりますので、よろしくお願いいたします。

○藤川委員

 先ほど、かるしおレシピの効果はどうかというお話があったと思いますが、ここ何年かずっと、かるしおレシピを新しくしましたということはお聞きして、最初は非常に素晴らしいと思っていたのが、だんだん煮詰まり感をこちらとしても感じないではないというところが、失礼ですがややありました。そこで、例えばスマホのアプリで会員登録してもらい、相互的な情報交換ができるような感じにして、健康管理とか食の管理につなげることはできないのかなと思います。別に循環器だけでなく、そういうプロフェッショナル集団のNCが、みんなそういうところに絡んで大きなネットワークを作り、病気になった方だけでなく、予防という観点でそういうことをやる。収入もそれでつなげていただくということができないのかなと、素人考えですが思いました。

○国立循環器病研究センター企画戦略局長

 かるしお事業につきまして、私どもとしては、むしろ病院食という根本から始まって樹形図的にかなり拡大しているのかなという認識を持っています。というのは、病院食から始まって、病院から帰った一般の家庭の方々にも、同じかるしおのレシピを作っていただこうということで、まず本を出しました。それで実際に在宅に戻っておられる方々がそれにのっとってレシピが作れるようになりました。一方、先ほどS-1gのお話がありましたが、国循だけでやっていても全国に広がりはありませんので、各地方、北海道から沖縄まで含めて各チームに参加していただいていますけれども、全国に展開させていこうということで、そういうS-1gも開催しました。

 さらに事業者向けということでは、先ほどのアプリの話にも重なってくるのですが、いわゆる給食事業とか食事業を行っている事業者の方々の中で、ある企業に私どもがライセンスアウトし、電子媒体でレシピがそこに送られる。それを使って例えばお弁当を作ったり食事を作ったりということで、各事業者ごとに電子レシピを使って事業ができるということも始めました。そして昨年の26年度については、今度、そうは言っても皆さん、必ずしも家で作って召し上がるだけでなく、加工食品なども結構召し上がるわけですから、そういう加工食品業界にも減塩に取り組んでいただこうということで、具体的に企業名を出すのがいいのか分かりませんが、エースコックさんなど大手のカップ麺を作っている所とか、お弁当屋さんといった所にも取り組んでいただくということで、最初の病院食から始まって、家庭、全国、各企業といった所にも樹形図的に、かるしおの動きが広まっていると私どもとしては捉えています。

○藤川委員

 そこで、例えばアプリで日々の体重とか何を食べたかという情報まで集めていくことによって、もう少し違う展開もあるのかなと思いましたので、そういった観点から申し上げました。

○国立循環器病研究センター研究開発基盤センター長

 正に今、言われたことを我々は考えているところで、先ほどに戻りますけれども、健康生活認証というのは食の事業にとどまっていない話です。フィットネスクラブとの連携、それから今、正に言われたスマートフォンとかタブレット端末を使ったもの、ウェアラブルデバイスが結構出てきていますね。そういう事業者さんたちが、この健康生活認証事業にある程度の基準を設けて参加してもらうと、そういうマークを与えて国民全体の運動にしていく。要するに事業にならないと、こういうものは広がっていかないという観点から、正にそういう動きが出ています。ヘルスケアソフトウェア、医療ソフトウェアだけでなく、医療機器にならないそういうソフトウェアというのも、グッドヘルスソフトウェア協議会というのが業界団体の中でできていって、そういうものの認証をもらえるという形にも、我々、協力して整備しているところなので、正にそういうふうに事業展開していくという方向はしっかり認識しているつもりです。

○藤川委員

 循環器センターの方々、しっかり採算を取るということにかけては一番先端を行っていらっしゃると思いますので、是非、よろしくお願いします。

○国立循環器病研究センター研究開発基盤センター長

 正にそのとおりで、儲からないとあかんというところがあります。

○花井委員

 今の質問にも若干関係するのですが、基本的なところで申し訳ないですけれども、この自己評価は新基準で評価されているのですか。というのは、今、例えばネットワークの構築や情報の発信等々でSと付いています。今、いろいろ議論がありましたけれども、もちろんいろいろな運動をやったり広がっていく。それはいいことだねというのは分かりますが、ナショセンである限りは、例えば国民の意識やビヘイビアがどう変化したか。そういう疫学的研究とエビデンスにつなげて、それによってそういう運動をやること自体が、いわゆる公衆衛生上に寄与するのだと言い切ったところで、初めてそれが政策的に、ほかのナショセンも含めてやるべきだという話になっていきますから、今いいことやっているね、広がってきたねという話だと思います。もし新基準で書いてあるのであれば、Sは今度は去年のSSに当たるものなので、そこだけでなく、次の展開というのがあったほうがいいかなと思います。

 今、かるしおの話が結構出ましたが、このあたりでそういう疫学研究は、もちろん人文的研究も絡めて学際的でもいいのかもしれませんし、そういったことにつなげられたら、ナショナルセンターのアウトカムとして高い評価になると思いました。意見です。基本的には25年度の延長線上で、26年度にブレークスルーして民間と絡んだという点だと理解してよろしいですねというのと、評価基準はそれでいいですねという2つです。

○国立循環器病研究センター研究開発基盤センター長

 評価項目1-1の所で、企業との共同研究の数が圧倒的に増えているというところがあります。これはそういうところの現れだと私たちは思っていて、かるしおの事業にしても今のアプリの事業にしても、アプリだけでなく在宅で使える医療機器のウェアラブルデバイスも含めて、そういうような研究・開発がこういう中に入ってきているのです。そういう意味で成果が十分に出てきているかと言ったら、まだそうではないですが、方向としては民間も含めて、こういう事業に対して取り組むという方向がいっぱい出てきて、そのお陰で当初の3倍ぐらいの共同研究の数になってきていると私たちは思っています。もちろん定性的には、将来的にどういうアウトカムを求めるかということになると、社会全体が動かないといけないというところですが、現象として出てきているのはこういうことかなと思います。

○花井委員

 評価は新基準でしょうか、旧基準でしょうか。

○国立循環器病研究センター企画戦略局長

 全体のお話ですが、私からお答えさせていただきます。評価につきましては新しい基準でやらせていただいているものです。1-8についてのポイントは、今、内藤病院長から申し上げたとおりで、かるしおに議論が飛んでいましたけれども、従来までですと、ネットワークについてはかるしおを前面に押し出しています。特に今回強調させていただきたいのは、循環器病統合情報センターを中心とする情報のネットワークです。がんセンターなどは例のがんの登録法の法律がありますので、結構やりやすいのだと思いますけれども、如何せん、循環器につきましては、そういう法律的な根拠がない中で何とか学会と協力して、こういうネットワークを作りつつある。その中心となるセンターを設立したというのが第1のポイントです。

 そして、かるしお事業に関して言えば、加工食品メーカーと組んで、こういう「かるしおマーク」、これも実は26年度はまだ数件ですが、27年度はかなりのメーカーさんから、是非、マークを取得したいということで、いろいろな所にも広がっていくのだろうと思います。そういうことで、繰り返しになりますが、まず循環器病統合情報センターの設立、それから企業との連携によるかるしお事業というところがポイントで、恐縮ですが、S評価とさせていただきました。

○永井部会長

 最後に私のほうから、外来の一人一枠、ありがとうございます。やはり、大分短くなったということだと思いますが、クレームとかはあまりなかったですか。

○国立循環器病研究センター病院長

 はい。先生の御指示を受けて、「えい、やっ」とやってみると非常に順調にいきました。

○永井部会長

 あれ、考えてみたら当たり前なのです。

○国立循環器病研究センター病院長

 当たり前なのですが、何かクレームが出るかと思ったら、全くありませんでした。どちらかというと、時間が決まってよかったという意見のほうが現在では。

○永井部会長

 ただ、それでも詰め込むドタクーが必ずいるのです。

○国立循環器病研究センター病院長

 そうなのです。29分が20分になったのですが、ただ、中身をよく見てみますと、自分の能力以上に詰め込むドクターは依然としています。

○永井部会長

 そこは是非、個別指導で、どうせ見ていないし、見られていないのだから減らしなさいと。あるいは、もうちょっと遅くまで予約を入れるとかですね。

○国立循環器病研究センター病院長

 次は多分、それだと思っています。

○永井部会長

 是非お願いします。

○国立循環器病研究センター病院長

 それをやると、多分15分ぐらいには縮まるだろうと思っています。

○永井部会長

 あれは非常に悪しき医者の慣習ですね。全国、皆さんがこれに抵抗するのです。非常に面白いです。自治医大もそうだったのですが、ここを医者が直さないと患者のための医療なんてできないと思います。ありがとうございます。それでは、次の項目2-1からお願いいたします。

○国立循環器病研究センター企画戦略局長

 企画戦略局長の三石です。私のほうから残りの項目について説明させていただきます。まず全体の共通事項ということで、19ページの「平成26年度の経営状況」です。数字ばかり並んでいて大変恐縮ですが、ポイントを御説明したいと思います。左上の所ですが、26年度のセンターの経常収支につきましては31,200万円の赤字でした。経常収支率は99.0%です。

 私どもの分析ですが、左下の枠囲いの所です。外的要因として大変大きな要因が4つあります。1つは運営費交付金の収益の減少、これが当センターの場合には17,400万円、前年と比べて減っている。逆に費用増加のほうの要因ですが、人件費の増、消費税が5%から8%に引き上げられた影響、さらには電気料金、これは全国ですが、特に私どもの関西電力さんは全国で最も引き上げ率の高い電力会社さんであり、そんな影響もあります。それらを合わせると前年度に比べて47,800万円悪化したわけですが、一方、医業収益で83,800万円、研究収益のほうで46,300万円増加し、結果的には25年度に比べて9,400万円の減に何とかとどめたところです。

 特に強調させていただきたいのは医業収支の所です。右側の欄で、結果的に医業収支は83,800万円の黒字でした。ただ、ここに至るまではいろいろあって、そこにありますように上半期については、ちょうど昨年の4月に診療報酬のマイナス改定がありました。そういった影響もあって患者数の減少という問題もありました。そういうことで、下のグラフの所にありますように患者数も右下がり、収支差についても右下がりという状況でした。私ども内部でいろいろ検討して具体的対策を講じた結果、ようやく下半期になって患者数も戻り、収支差のほうも、ちょうど赤字の所を御覧いただくとお分かりのようにV字回復を達成したところです。

 特に具体的な対策につきましては、そこにありますように緊急入院患者を断らない。できるだけ増やしていくということ。それから近隣との、地域連携というお話が先ほどありましたが、医療機関の方々とのコミュニケーションを密にして、さらに紹介患者さんを増やしていただく等々を実施しました。特に影響として大きかったのは、一番下にありますハイケアユニットや特定集中治療室の上位基準を取得するということで、これですと年間ベースにしますと3億円の増収になります。その分、専門のドクターの確保、構造設備の改修といったものが必要でしたが、何とかこれを下半期にやることができ、V字回復を図ることができたというところです。結果的に医業収支については、26年度83,800万円の黒字であったということです。

 具体的な評価項目ですが、20ページの左の欄から御覧いただきたいと思います。「効率的な業務運営体制」についてですが、情報システムの関係については、昨年度も高い評価を頂きました国循独自の4階層ネットワークシステム、正に利便性と昨今話題になっているセキュリティ、こういったものを両立させた独自のシステムですけれども、これを更に拡充させていただきました。特に赤字で書いているシンクライアントシステム、これは例えば研究者の方々がデータを使う場合に、画面上のイメージだけが転送されるような仕組みで、研究者、操作者の端末にはデータが残らない形で研究データが使えるということで、情報保護上、セキュリティの効果が高いシステムです。これを昨年度は正式に稼働させ、実際にその利用者も増えたところです。さらには電子化の推進ということで、eラーニングシステムのコンテンツについても、25年度2件でしたが、昨年度は10倍の20件に増えています。こういったような情報システムの改善を実施しています。

 もう1つ強調させていただきたいのが事務部門の改革で、研究支援室を設置しました。これによって、冒頭に研究部門のところで御説明しましたけれども、対前年度比119%とあるのは19%に訂正させていただきますが、145件から172件に共同研究の数が、こういった体制整備もあって増えたところです。ここに書いていませんが、経営的にも共同研究の結果、共同研究の収納額ですけれども、25年度は約4,600万円であったものが、26年度には13,600万円と、対前年度比197%増える形となっています。その基盤を作ったというところです。こういうようなことを総じて、こちらのほうはA評価とさせていただいているところです。

 続いて、評価項目2-2の「効率化による収支改善、電子化の推進」です。先ほど申し上げたように経常収支率が26年度は99.0%で、22年度からの累計で見ますと、計画100%に対して実績99.71%ということで、残念ながら若干下回るという結果です。ただ、先ほど御説明させていただきましたように、26年度の、特に医業収支のところについては私どもなりに自助努力をして、V字回復を達成したところは強調させていただきたいと思います。また、他のデータについてですが、医業未収金の比率については、対21年度に対して縮減を図っています。また、昨今話題の後発医薬品の使用ですが、厚生労働省の目標では29年度末までに数量シェアを60%にすると、この時点ではなっていましたが、私どもでは既に26年度は68.1%、そして今年度については新たな目標の80%に、ほぼ達する見込みになりつつあります。併せて調達コストの削減の所で、医事室の業務委託の契約ですが、ここについて参入業者の要件緩和をしたこと。契約の締結から実際に契約の履行までの期間を長くすることによって、多くの業者に参画していただき、その分、競争性が高まり、3年間で総額5,200万円の契約費の削減を図ることができました。ということで、経常収支率は計画を若干下回りましたけれども、今、申し上げたような点を考慮して、私どもとしてはA評価とさせていただいています。

 続いて、評価項目2-3の「法令遵守等内部統制の適切な構築」です。ここにありますように、昨年12月に元情報統括部長が官製談合防止法等違反という形で起訴されました。御本人は現時点でも全面否認していて、まだ裁判も始まっていないということで、結果、どういう形になるか分かりませんが、少なくとも嫌疑をかけられたということに対して、センター全体として再発防止、あるいは原因究明を図るべきということで直ちに第三者委員会を設置し、今回の原因検証、それから再発防止に取り組んでいるところです。既に26年度に実施済みのものだけここに抜き出していますが、1つは、できるだけ外部の目を入れるという形で、弁護士さんを含め内部監査体制の強化を図るということ。それから契約審査委員会についても、従来、外部委員が1名でしたが、そこに新たに公正取引委員会のOBの方にも入っていただき、2名体制で審査をしていただく体制を整えたところです。

 次のページの左の所に移りますが、さらに業者との接触のルール化ということで、特に医療情報のような専門的な分野については、企業の御意見を聞く機会が多くなるわけですが、偏りや不透明さがあってはならないわけです。そこで大変手間のかかる作業ですが、実際に仕様書などを作成する前段階に、幅広く企業の方々の意見を何回かに分けて聞く。聞いた上で仕様書を作るなり公募作業に入るという作業を行っています。これを俗にマーケットサウンディング(市場調査)と呼んでいますが、私どもが把握しているところでは、恐らく6ナショセンの中でも、ここまでやっている所はないと思います。そのような他に例を見ない手法も導入したところです。さらに兼業の関係については、従来の兼業委員会に加え、利益相反マネジメント委員会にて厳正に審査することを行い、既に幾つかの再発防止策を講じているところです。その上で、定期的な検証ということでコンプライアンス委員会において、具体的にそれが機能しているかどうかの検証を実施しているところです。こういった嫌疑がかけられるようなことはマイナス材料ですが、一方で他のナショセンに先んじた再発防止等を実施しているというところを総合判断して、Bとさせていただいているところです。

 続いて、評価項目3-1の「財務内容」に関してです。特に外部資金の受入状況について強調させていただきたいと思いますが、特許収入額については、そちらに数字がありますけれども、26年度は対前年度に比べて447%、5倍以上の金額に増えています。21年度に比べると1,100%を超えるような金額です。その主な内訳としては、先ほど寒川所長からお話がありました、がんの転移抑制のANPの契約一時金が約3,800万円ほど入ってきたこと。血液の難病であるTTPの測定法という形で、その特許使用料が約700万円入ってきたこと。さらに心血管障害発症リスクの評価用キットの使用料として、650万円ほど入ってきているという形で、26年度は飛躍的に特許収入が増えたところです。さらに企業などからの寄付金収入についても、対前年度21%増えているところです。先ほど口頭で申し上げましたが、共同研究の収納額についても対前年度197%増えている。こういったことを総合して、飛躍的に外部資金の受入れが増えたことをもって、S評価とさせていただいているところです。

 最後に、評価項目4-1の「その他」ですが、ここは2点強調させていただきたいと思います。昨年度も検討に大分時間がかかっていた建替方針について決まったということで、評価をしていただきましたけれども、26年度については更にその骨格部分をかなりしっかりさせました。1つは医療クラスター形成会議を昨年5月に設置し、単に私どもセンターのみならず、あるいは大阪のみならずオール関西を挙げて、経済界、医療産業界、さらにはアカデミア、中央省庁からの支援組織を設置し、次の22ページに基本理念がありますが、今度移転する先での医療クラスターを形作る上で、3つの基本理念のもう少し詳細なものをこの会議において承認、そして推進するという形になっています。

 併せて、21ページに戻っていただきますが、病院建替の基本計画の策定を今年2月に実施しました。また今年の3月には、他に例を見ないオープンイノベーションセンターの基本計画を策定しました。これは正に将来構想にも関わってくるわけですが、新しいセンターの中には外部の企業、大学の方々と、私どもの研究者が共同で研究あるいは機器の開発が行えるようなスペースを整備する計画を立てています。これによって、正に基本理念でうたっているオープンイノベーションを、具体的な姿として推進することができると考えているところです。このクラスターですが、次ページに図が出ていますけれども、単に研究所、病院を移転するだけでなく、その周辺には企業の誘致、さらには商業施設、住居系の施設といったものも全部含め、全体として健康医療の街という形で、街そのものを形成していく。これまたナショセンとしては初めてのプロジェクトと考えていますが、そのようなゾーニングなども策定したところです。

2つ目に女性の活用ということで、また21ページに戻っていただきますが、昨年度については監事に女性の弁護士の方、執行役員として先進医療・治験推進担当として理事長特任補佐、お2人の女性を任命しているところです。さらに特に若い看護師さんの早期離職を防ぐために、特にメンタル面でのいろいろな工夫をさせていただき、結果的には新たに採用した看護師さんの退職率について26年度は4.3%と、2年前の10%から大きく低下させているところです。さらに管理職に対しては、ハラスメント研修を全員に受講していただき、100%の受講率を達成したところです。このような医療クラスターにおける大きな骨組みを策定させていただいたこと。それから女性が働きやすい職場、さらにその実績としての数字が挙がっているということで、こちらのほうをS評価とさせていただきました。以上です。

○永井部会長

 ありがとうございます。それでは御質問、祖父江委員、どうぞ。

○祖父江委員

 時間がないので簡単にしますが、この最後の医療クラスター形成会議を作って、こういうまちづくりをやられたというのは、本当に素晴らしいと思いますし、今後のナショセンの一つのお手本になるのではないかと思います。特にこの中で病院もあり、いろいろな施設があって、横に長いのがちょっと難点かなと思いましたが、非常に素晴らしいと思います。1つ、オープンイノベーションセンターとイノベーションパークというのは、具体的な中身の御説明はなかったのですが、具体的にはどういうことが、今、考えられているのか、ちょっと教えていただければ有り難いと思います。それから、こういう企業とか大学との間で、中身だけでなく資金面でのやり取りというのもあり得るのかどうか。

○国立循環器病研究センター理事長

 これは、まだ構想段階のものもございます。ただ、1つは、センターの中にオープンイノベーションセンター、つまり企業や他のアカデミアの組織が中に入ってくる。これは組織として別組織にするのかどうかは今後の検討ですが、基本的には共同研究です。この中で共同研究をやっていただく。だから全くセンターと関係なく、循環器疾患に関係のある共同研究をするアカデミックな組織と企業が来ても構わない。それはいろいろなものがありますが、基本的には共同研究です。イノベーションパークには、これもまた、ある意味で大学院大学のようなものを作るという構想も出ていますが、基本的には企業に来ていただいて、そこで循環器病研究センターの研究者が一緒にそこに入ってやる。ですから、主体が若干変わることになると思います。

○祖父江委員

 今、そうすると、まだ仕込みを考えながらやりつつあるということですか。

○国立循環器病研究センター理事長

 そういうことです。

○福井委員

 センターが行うべきことという意味では必ずしもないのですが、最後の評価項目4-1の「その他業務運営に関する重要事項」の所は、計画を策定したとか、人を任命したことがS評価となっていますが、私自身はプロセスでS評価というのは難しいのではないかと思います。プロセスはこうしたと、それでアウトカム又はアウトプットとしてこうなったというところまでいかないと、なかなか難しいのではないか。個人的な意見です。

○永井部会長

 私から財務状況、病院の財務ですが、これは連結で決算が出ていて、病院だけがよく分からないのです。この収支率が良くなったとか、医業費用が213億とか、一体、これはどこから出てきた数字なのか。人件費、医薬材料費、材料比率、あとは積立金、減価償却費、この辺が一体どうなっているのかが、これだと全然分からないのです。それはどうなのですか。

○国立循環器病研究センター企画戦略局長

 また別途、追加資料で出させていただければと思いますが、基本的にここで言っている病院収支というのは、例えばドクターの方で診療も行ったり研究も行ったりというのがありますので、そういった場合の人件費についてはタイムスタディを行って、その方が何時間診療に当たり、何時間研究に当たったか。そういう形で計算し、診療に当たっている部分についての人件費は病院に入れる。研究に当たっている部分は研究に。

○永井部会長

 それはいいのですが、2点、減価償却費は幾ら積んでいるかということと、医薬材料費は医業収入に対して何パーセントか教えていただけますか。

○国立循環器病研究センター企画戦略局長

 ちなみに、26年度でよろしいですか。

○永井部会長

 はい。

○国立循環器病研究センター企画戦略局長

26年度につきましては、材料費に関して申し上げると96億円です。比率的には43.5%です。

○永井部会長

 ここは改善する何か、もうしようがないという数字なのか、循環器ですからしようがないのか、もうちょっと改善できるのか、そこの取組はどうなのですか。

○国立循環器病研究センター企画戦略局長

2つあるかと思います。1つは、私どもは心臓移植を含めた循環器病研究センターとして、どうしても材料費の比率は、診療の特性からして高くならざるを得ない部分はあろうかと思います。ただ、その材料費の比率も、ここ数年を見ますと若干ながら上がってきていますので、例えば心臓埋め込み装置やカテーテルなど、そういったものを本当に一番安く買っているかどうかの検証は必要かと思いまして、早速、そういうプロジェクトチームを設けて、今、業者と交渉を行っているところです。

○永井部会長

 医師は忙しくなると割と高い物を使いたがる傾向があります。もう1つ、減価償却費の積立ては幾らなさっているのですか。

○国立循環器病研究センター企画戦略局長

 減価償却費自身は、26年度においては16,000万円です。これは逆に非常に減ってきています。というのは移転建替もありますので、移転建替まではできるだけ新たな機器の購入などは必要最小限に収めようということです。

○永井部会長

 でも、常識的に国循ほどの組織が、毎年16,000万円の減価償却費なんて、世間の常識では考えられないと思います。そもそもそういうことを予算化しているかどうか。そういうことが、この会計から全然見えないのです。そこをどう考えるか。別にこれは国循だけでなく、ナショナルセンターも自治医科大学も同じ問題が実はあって、これが見えないために現場は非常に苦労するのです。黒字になったら黒字になったで全部持っていかれるのです。先生方が頑張った部分がですね。そういう会計で本当にいいのかどうか。

○国立循環器病研究センター監事

 監事のほうから説明します。附属の財務諸表を見ていただきたいと思います。計算書がありますね、それの13ページを見てください。そこに、御指摘の当センターの減価償却を累計を含めて書いています。当期減価償却額は、251,600万円です。当センターの医療も研究も含めた全体の。

○永井部会長

 全体の何ですか。

○国立循環器病研究センター監事

 減価償却費の当期の償却額。

○永井部会長

25億。病院としては。

○国立循環器病研究センター監事

 病院は、このうち上を見ていただいて、医療用機器のそれぞれを見ていただいたら、有形固定資産の場合に建物でしたら93,000万円、下の有形固定資産のこれは足したものですね。ですから、ざっと見て約半分ぐらいでしょうか。参考資料1になります。

○永井部会長

 さっき言っていた16,000万円というのは、あとでちょっと。実は国循に固有の問題ではなくて。

○国立循環器病研究センター監事

 この表に出ている全体で25億円ぐらいです。

○永井部会長

 まず目標があるべきだと思います。そこがどうもいろいろな会計処理のバッファになっている可能性があって、あるときは全部そっちへ積まれるし、ないときはうんと減ってしまって誰も何も言わない。

○国立循環器病研究センター監事

 それは私のほうから、よく内容を知っていますので御説明しますと、今、ちょうど移転の建替が3年先なのです。ですから本当にほとんど物を買っていないのです。逆に言いますと、ある意味では新年度になって、おっしゃるように減価償却費が増えますけれども、今は抑えている段階なので、どちらかと言えば減価償却費は横ばいから減っていっている状況なのです。

○永井部会長

 でも、これから建てるのだったら、今、積んでおかないといけないのではないですか。

○国立循環器病研究センター監事

 それは、また別に資金手当する問題です。

○永井部会長

 それは資金手当でやる。

○国立循環器病研究センター監事

 そうです。これは全く別で、金額が全然違いますし何百億とかかるものですから、これは。

○永井部会長

 そういうのは、あって越したことはない。

○国立循環器病研究センター監事

 もちろん、おっしゃるとおりです。

○永井部会長

 その辺のバランスが、どうもよく分からない。

○国立循環器病研究センター監事

 分かりました。今、おっしゃるとおり、減価償却の特に診療部分については従来のもので貯めておいて、当然ながら新病院の建設費に充てると。これは当然、部分的にはそれが充てられます。

○永井部会長

 それは、ある程度計画を立てて、それに向かって現場が努力して、それをクリアしたら御褒美が出るという仕組みにしていただかないと。

○国立循環器病研究センター監事

 月次決算とかセグメントは、私のほうから月次でかなり厳しく申し上げていますので、お手盛りとか抑えるとか、そういうことでなく、本当に皆さんには厳しく申し上げています。御心配ないと思います。

○永井部会長

 逆に経営が悪いときに、減価償却が減ったという形で会計処理されると誰も痛みを感じないのです。そういう問題もあるのです。

○国立循環器病研究センター監事

 そうですね。私も同じようなことを申し上げています。

○斎藤委員

 最後に一言、コメントを申し上げます。全般的に、国循は大変時代の要請にセンシティブな組織だなと思って、感心して伺っていました。例えばシンクライアントに移るというのは、情報セキュリティがこれだけ叫ばれているときですから、誰でもが今、やらなければと思いつつ、なかなか移れない。そこを、いち早く導入なさったというのはすごいことだと思います。また、新しい病院を造るに際し、コミュニティを作るという大変大きな構想を持っていらっしゃる。それと、かるしおの出版をして未病、まだ発症していない人たちの予防という意味からも、個人を巻き込みながらの活動をしていらっしゃっています。さらに、企業を巻き込んでいく広がりを持った活動は、今、とても求められているところですが、なかなかそういう視野の広さを持つ方がいらっしゃらない。特にこれだけの専門性をお持ちの先生方の集団では難しいのではと思います。視野の広さ、そして時代の流れをいち早く感じ取る感受性を、私は大変高く評価したいと思っています。

○藤川委員

20ページの評価項目2-3の所ですが、元情報統括部長に対する起訴の話です。第三者委員会を設置されたということで、これはまだ結論が出ていないということかなと思いますが、結論が出ていない中でも対策を幾つか立てて、それで実行されているということだと思います。対策をそれなりに練られて厳しくやられているということは、重大な問題が起きたという御認識なのかなと。少なくとも起訴の結果がどうかというところは置いておくとしても、そういう部分があると思いますが、とすると、これがBでいいのかなという判断はあるような気がいたします。

 あと監事の意見は、ちょっと先取りしてしまいますけれども、法令等に反することが特にないと、適正に執行されているという御意見だと思いますが、そのあたりはまだ結論が出るまでは、そのように特に問題はないという監査意見になるということでしょうか。

○国立循環器病研究センター監事

 これは、私も当局の契約監視委員会の委員長もしていますから、本事件に関してはヒアリングを受けました。そのときに担当官にも申しましたが、もともとこの事件が起こったのは、国循がITの関係で、ITの関係自体は1つの業者が取りますと、基本的には後の付属したものが随契、随契といってしまうということで、独法化が始まって、それに対して国から、そういうものはできるだけ契約を切り離し、競争にさらしなさいということで、それが発端なのです。そして専門家も入れ、今、事件で問題になった人、専門家ですが、入っていただき、現に随意契約、仕様書等いろいろアイディアを組んで、間違いなくセンターに大きな貢献をされた方です。ただ、そのやり方のときに、その方がコンプライアンスとかいろいろなことに関しての知識が薄かったものですから、後でこんな大問題になることを自分が犯していると思わず、ただ、善意で一生懸命やったことが後から、という事件です。

 そのことも私は当局に言いました。非常にこの方は気の毒ですよと。本当に自分のものをそこから得ようとしたり何かしたのではない。これは何か他の事件も1つあるようで、ある所でいろいろ人のためにやって、その人は何も利益を得ていないけれども、結果としてどこか特定の人が利益を得たということで起訴された件があるのです。その案件と類似したことなのです。ただ、そうは言っても、センターとしては起こったことに対しては真摯に、これに問題があったということではなく、薬とは全く関係なく契約審査ということについて、私は契約監視委員会、契約審査委員会に出ていますから中身をよく知っていますが、さらに、よそに誇れるようなものを作りたいという前向きな意味でなさったことです。したがって、今、おっしゃったようにこのことがあってという、このことは切り離してもっと良いものを作ろうということで、サウンディングとかも含めて進んでいるということです。そういうふうに理解してください。ですから監査報告書に、おっしゃっているようなうんぬんということは、全然問題にしていません。

○藤川委員

 重大な法令違反とかではないと。

○国立循環器病研究センター監事

 全然、全く。

○藤川委員

 ただ、現実には、そのほかでも入札不正とかそういうものがあったときに、大体、自分の懐を潤そうということよりも、組織のために善かれと思ってやってというケースが比較的多い。ただ、それはどうしても法令に反する。コンプライアンス上、問題があるということで事件化することになるのかと思いますが、それはそれで法令とかルールに反する行動なのではないかと私は思うのです。

○国立循環器病研究センター監事

 結果として、センターが利益を得ているのです。別の意味で契約も安くしている。そのこと自体の大きさ、事件のセンターに与える大きさ等を判断しても、別にこのことによって法令違反で厚労大臣あるいは理事長に、私が重要な違反として書かなければいけないということではないと判断しています。

○永井部会長

 よろしいでしょうか。大分時間がオーバーしてしまいました。ここで業務監査結果について法人の監事から御説明をお願いいたします。

○国立循環器病研究センター監事

 私どもは毎月、理事会、執行役員会、それから今申し上げた契約審査委員会、コンプライアンス委員会を開催の都度、原則的に全て参加しています。それ以外に研究所で行われる部長会、病院のほうで行われる部長会、これは議題を見て適宜出ています。監査室との連携につきましては、まず計画を聞くときに私たちが監事としての要望をお伝えするとともに、問題になりやすい競争的資金の内部監査に私は必ず立ち会って、監事として留意すべき事項等は、その研究者等に私のほうから直接申し上げています。会計監査の関係につきましては、監査計画の時期、監査が終わった時期に必ず詳細な監査法人からの説明を受けますとともに、監査法人に質問があれば随時行っています。そういうことを総合いたしまして、基本的には、お手元の資料1-3のとおり特に問題ないと監査報告させていただいています。

 今後の課題ということですが、1つは3年先に近づいてきた建替移転、これは数十年に1回起こることですから、もちろん契約等もありますし効率的にいかなければいけませんし、資金の問題もあります。そういうことで、これを最重点課題として幹部諸氏の皆さんが認識するように啓蒙するとともに、自分たちも関係者としていろいろ協力しています。もう1つは、本年4月から施行される通則法に基づく内部統制の運用状況、今、ほとんど規程はできていますけれども、それに基づいて適正に内部統制が本年度実施されることを最大の課題としています。この2つを現在、最大の課題としています。以上です。

○永井部会長

 ありがとうございます。続いて、理事長さんからコメントをお願いいたします。

○国立循環器病研究センター理事長

 申し上げたいことはたくさんあるのですが、時間がありませんので簡単に述べさせていただきます。情報統括部長逮捕の件ですが、これは先ほどからもありましたようにセンターのセキュリティ、ITのコスト、あるいは使いやすさという意味で、今まで解決できなかった問題を大きく改善してくれました。ただ、結果的にこのようになったということについて、特にIT関係においてはいろいろな所でグレーゾーンが極めて多いということだろうと思います。それを第三者委員会あるいは内部での検証を踏まえて、組織を守るということもありますが、個人を守りたい。そのためのいろいろな整備をしっかりやっていきたい。センターのために頑張っている人が逮捕、起訴されるということが、今後、あってはいけないと思いますので、この辺にはしっかり力を入れていきたいと思っています。

 先ほど、医療クラスター形成会議について、会議を立ち上げて何か効果があるのかというお話があったと思いますが、こういうものを介してあそこ一帯を「健都」という名前にいたしました。それは国循を中心にして市民病院、商業施設あるいは住宅地、そして高齢者用の住宅地、そういうもの全部を通して医療、研究だけでなく、そういう所から来た情報を還元して介入することにより、どういうふうに健康が保てるかということを発信する。そういうゾーンにしたいと思っています。そういうことが、こういう医療クラスター形成会議という所で、ほかの産官学のいろいろな所とコンセンサスを得ることによって、着々と進んでいるというふうに思っています。

 あと、独法化していろいろ御評価を得て、それで我々に大変建設的な御意見を頂き、それによって改善した部分も随分ありますので大変有り難く思っています。ただ、その中で、常にいろいろな評価が右肩上がりでなければいけないというようなパターンに、どうしてもなりがちだろうと思います。もちろん、それは実績を証明するのに大事なことだと思いますが、これからは右肩上がりということよりも、中長期的にいかにセンターのミッションを達成するのかというところを明確に出していって、そのために1年ごとの実績はさほど上がらないかもしれないけれども、着実にそっちに向かって行くのだというメッセージが出せればいいのではないかと思っています。

 そして中長期的ということと、数ではなくて質というところで、これは若い医師の質もそうですし医療の質もそうで、質を数字で表現できる部分はもちろんありますが、そうでない部分もあります。ですから、我々のやるべきことの質をどう高めるかを中心にやっていきたいと思います。ただ、それはこういう委員会のみならず、ミッションとして質を上げたということを、どういうふうに証明できるかの手法も考えなければいけないと思っています。いずれにしても委員の先生方の、時に非常に厳しく、また温かい御意見を頂いて我々も着実に進歩したと思っています。改めて感謝申し上げたいと思います。ありがとうございました。

○永井部会長

 ありがとうございました。何か御質問、御意見はありますか。よろしいでしょうか。それでは、以上で国立研究開発法人国立循環器病研究センターの業務実績評価に係る意見は終了いたします。今後の流れについて事務局から御連絡をお願いいたします。

○医政局医療経営支援課長補佐

 今後の流れについて御連絡いたします。本日、御議論いただきました平成26年度の業務実績評価につきましては、この後、本部会における御意見や法人の監事、また理事長のコメントを踏まえ、厚生労働大臣による評価を行います。その評価結果につきましては法人に通知するとともに公表いたします。決定した内容につきましては後日、委員の皆様方にお送りいたします。事務局からは以上です。

○永井部会長

 それでは、どうもありがとうございました。休憩を入れて交替いたします。

(休憩)

永井部会長

 お待たせいたしました。ただいまから、国立精神・神経医療研究センターの平成26年度業務実績評価に係る意見について質疑応答したいと思います。最初に、評価項目1-1から1-3についてポイントを絞って御説明をお願いいたします。

○国立精神・神経医療研究センター理事長

 その前に12分、時間を頂戴してよろしいでしょうか。

○永井部会長

 お願いいたします。

○国立精神・神経医療研究センター理事長

 本日はよろしくお願いいたします。国立精神・神経医療研究センター理事長の樋口でございます。センターの概要は説明する必要はないと言われておりましたが、新しい委員の方が加わっておられるということですので、本当に一言二言、概要について説明させていただきたいと思います。資料2-2の見開きの所にセンターの概要が記してあります。細かいことは申し上げませんが、左の下の四角の中に、私どもの主な職員の数や、組織や、運営状況が書いてありますので、御覧いただければと思います。

 病床の数は468床ということと、私どもには研究所が2つ、病院が1つという構成になっています。そのほかに、トランスレーショナルメディカルセンター、脳病態統合イメージングセンター、認知行動療法センターというセンター内センターを設置しております。そこには書いていませんが、つい最近、メディカルゲノムセンターも立ち上げました。

 そして2枚目の下の、センターの行う事業という所で、上の四角の箱の中に私どもの行うべきミッションをまとめております。私どもは、精神疾患、神経疾患、筋疾患、そして発達障害の克服を目指した研究や開発を行う。その成果を基に、高度先駆的な医療を提供して、全国に均てん化を図るというミッションを持ってやらせていただいております。

 その下の緑の四角に、4つの柱が記してありまして、これはいずれのナショナルセンターも共通かと思いますが、研究・開発、医療の提供、人材育成と情報発信、適切な業務運営のための組織と予算ということです。これも中身は後で御覧いただくことにいたします。以上で、私たちのやっておりますセンターの概要とさせていただければと思います。

○永井部会長

 それでは、1-1から続けてお願いいたします。

○国立精神・神経医療研究センター神経研究所長

 評価項目1-1から1-3について、神経研究所長から御説明させていただきます。最初は評価項目の1-1「臨床を志向した研究・開発の推進」で、資料の3ページです。理事長の説明にありましたが、研究所と病院とを結んで共同研究をすることが一番基本になっており、そのために専門疾病センターを作ってきたことを今まで話してまいりました。そのページの数値目標を見ていただくと、研究所と病院との共同研究実施数が右肩上がりに増えていることがお分かりいただけると思います。平成21年度は25件でしたが、平成26年度は70件に達しております。その内容については、上のほうに戻っていただくと、70件のうち、専門疾病センターの1つである多発性硬化症センターが、神経研究所の免疫研究部と協力しまして、多発性硬化症に対する新しい治療薬であるOCHの医師主導治験を行い、順調に経過しております。

 もう1点、今度は筋疾患センターが、やはり神経研究所の遺伝子疾患治療研究部と協力しまして、デュシェンヌ型の筋ジストロフィーに対する最も先進的な治療であるエクソン53スキップについて医師主導治験を行い、これも順調に進行し、次期治験の準備を開始しているところです。

 次のポイントになりますが、こうした研究開発の推進の一番中心として、私どものセンターではバイオリソースの収集・保存と利用促進をしてきております。数値目標を見ていただくと、順調に増えてきていることがお分かりいただけると思います。平成25年度の赤で示している1,502件というのは、病院の既存の検体を移したもので、青が新規検体を表しております。平成21年度に779であったものが平成26年度は2,117に達しております。その内容としては2つ申し上げたいと思います。1つは、こういったバイオリソースに関しては、収集・保存が基本になりますが、それをどのように利用を推進したかということが大事だと考えております。それを推進しておりまして、実際に九大、理研、長寿医療研究センター等にバイオリソースを提供しているところです。

 次に具体的な成果を4ページに書いております。特に脳脊髄液を世界有数のレベルで収集しておりまして、それを使ってうつ病等の病態解明が進んでおります。左のほうですが、うつ病はたくさんの患者さんがいらっしゃるわけですが、その中に、髄液中のフィブリノーゲンが上昇している、いわばサブタイプを見いだすことができました。フィブリノーゲンは、炎症に関連があります。したがって、うつ病に抗炎症薬を使えるのではないかという発想が生まれてきております。

 もう1つは、エタノールアミンと言う、余りなじみのない言葉かもしれませんが、脂肪酸の一部を構成していてメタボロミクスという脂肪の解析をしたことで分かってくるわけですが、うつ病の患者さんの髄液の中でエタノールアミンが低下しているサブタイプがあることが分かってきました。いずれも論文にしております。このように、新しい発想の下に病態を考え、治療法を進めていくことができるようになります。

 この部分のまとめとしましては、特に精神疾患に対して、世界最大級の脳脊髄液の試料を収集しており、それを使った研究を進めております。これが、脳の中で起っていることを検知するバイオマーカーであると同時に、このバイオマーカーの動きを使って病態を解明し、新しい治療法を開発することにつながっていくと思っております。

5ページ、この項の3.です。治験の推進をしております。数値目標を見ていただくと、一時なかなか数が伸びないということがありまして、医師主導治験をやっていますとお話してまいりました。ただ、平成25年度から伸びてまいりまして、平成26年度は合計260という治験実施症例数を得ております。平成21年度に176であったことを考えますと140%に達しております。内容的には、例えば多発性硬化症に対するOCH、あるいは筋ジストロフィーに対するエクソンスキップというような医師主導治験が特記されます。

4.は知的財産取得の取組ですが、数値目標を見ていただくと、平成21年度は9件であったものが、平成26年度は24件になっております。内容的には、24件の中には、例えば精神疾患の患者さんの腸内細菌数を測定することによって、精神疾患の有無や重症度を判定できる可能性が出てきまして、これは共同出願を進めております。もう1つ、是非申し上げたいのが、数値目標の他の研究機関との共同研究実施数です。これも平成21年度に16件であったものが平成26年度には59件に達しております。このように、研究所と病院、センターと外の研究施設あるいは医療施設との共同研究を様々に進めているわけです。

 こういったことを背景に、5.に、先ほど理事長から説明がありました脳病態統合イメージングセンターにおいてホットラボ、これはサイクロトロンを用いてアイソトープをGMPの基準で作ることができまして、その結果として、治験用のPET製剤を製造受託開始できております。そのために、9件の製造によって4,900万円の収入を獲得した。すなわち、共同研究を進めて、医療の質、研究の質が上がっただけではなく、収入にまで結び付けていると言えるかと思います。

 最初に戻りますが、1-1に関しては、数値目標で大きく伸びていること、特記すべきこととして、バイオリソース、あるいは最後のホットラボのこと等がありますので、自己評価としてSを書かせていただいております。

 続いて1-2です。「病院における研究・開発の推進」ですが、これについても、これまで申しましたように、医師主導治験・多施設共同臨床研究を実施してきております。その背景としまして、数値目標を見ていただくと、それを担っている臨床研究コーディネーターをずっと10名以上確保しております。逆に言えば、こういった人数で、先ほど述べましたような治験を十分に行っています。また、それに関連しまして、いわゆるファースト・ペイシェント・インと言いまして、治験の申請から最初の症例登録までの期間を、目標として100日以内としており、十分に達成できております。

 こういった臨床研究機能の背景として、言わば足場として、私たちは、特にTMCを中心に、早期臨床開発の支援部門を作ってまいりました。病院には推進部があります。やってきました一番大きなことが、患者登録制度でした。筋ジストロフィーについて患者登録制度を始めたのですが、昨年度からは、筋強直性ジストロフィーと言って、成人では一番多いタイプのジストロフィーについて、阪大に事務局を置いて、私どものシステムを使って患者登録制度を進めております。また、ミトコンドリア病についてもプラットフォームができており、平成27年度には登録が開始できる予定です。すなわち、筋ジストロフィーで始めたものが、ほかの疾患にも及ぶような趨勢にあります。また、実際に患者登録制度を行っても、それで臨床試験を行っていくためには、医療機関のネットワークを作ることが必要です。筋ジストロフィーに関しては「筋ジストロフィー臨床試験ネットワーク」を作って運用してきたのですが、更に発展させるとともに、ほかの病気に及ぼすことが必要です。そこに赤字で書いておりますが、パーキンソン病についての全国多施設共同研究の推進、それから、一番大きな標的である精神疾患に関する第2相治験ネットワークを構築できたところです。

 こういった臨床研究の背景としては、倫理性・透明性の確保が極めて重要です。私どもは、TMCを中心にして倫理委員会を整備しまして、外部委員や一般の市民の方に加わっていただいて、しかも、講座等を開催して、高いレベルで、倫理性・透明性が確保されるように努めてきたところです。昨年度、厚労省によって、「人を対象とする医学系研究に関する倫理指針」がまとめられました。従来の疫学研究、臨床研究の統合と考えられますが、そのときに厚労省より倫理審査委員会認定制度が発表されました。非常に短い申請期間でしたが、234の施設から申請があったと聞いております。私どもは9つの内の1つとして認定を受けております。右下に認定証のコピーを付しております。

 こういったことから、やはり数値目標も十分に確保し、なおかつ、内容におきましても、患者登録制度その他に顕著なものがあると考えて、自己評価Aを付しております。なお、患者登録制度、それから臨床試験ネットワークについては、政府により、その意義を十分理解していただくことができまして、平成27年度に入ってから、成長戦略にクリニカル・イノベーション・ネットワークという1項が盛り込まれたことを特記させていただきたいと思っております。

1-3の担当領域の特性を踏まえた戦略的かつ重点的な研究開発の推進については、疾病に着目した研究を進めております。先ほどは治験の症例数を申しましたが、7ページの下段に、臨床研究及び治験実施件数を書かせていただいております。平成21年度の138に対し、平成26年度は248まで伸びてきていることがよくお分かりいただけると思います。もう1つの大事な点として、どのように原著論文に発表したかが出てきます。特に8ページの下のほうで、「インパクトファクターが付与された学術雑誌収録論文」を見ていただければと思うのですが、インパクトファクターが付与された学術論文は、平成21年度に197であったのに対して平成26年度は248まで達しております。また、インパクトファクター10以上に限ると、平成21年度が1プラス56であったのに対し、平成26年度は6プラス62倍に達しております。また、こういった論文が順調に引用を受けていることがお分かりいただけると思います。

 では、平成26年度にどういう研究をしたかです。その中から2つだけ取り上げております。それが910ページです。9ページは、細管集合体ミオパチーという難病の患者さんについて、次世代シーケンサーを使って、新規の原因遺伝子を同定できております。これは現在、AMEDによってうたわれている未診断の患者さん、UDPに直接つながるお話ではないかと思います。UDPでは、難しい患者さんの臨床情報がある、その方を次世代シーケンサーを使って診断するというプロジェクトですが、私たちはその中間に、バイオリソースが重要ではないかと思っています。9ページの左のほうですが、青いのは筋の細胞です。そこに紫色の異常構造物があります。この異常構造物を手掛かりに、同じ異常構造物を示す方を集めてきて、次世代シーケンサーで解析したところ、共通してORAI1という遺伝子に異常があったことが分かったわけです。遺伝子変異が見つかったのだけれども、それが本当に病気の原因かどうかを確かめるために、患者さん由来の細胞を使って、それがどういう異常を呈するか確認しております。これはUDPの顕著な例だと私たちは考えています。その結果として、Hum Mol Genetという優秀な雑誌に発表できているところです。

 もう1つ成果があります。それが10ページです。皆さんはAUTS2という遺伝子のことをお聞きになったことがあるかもしれません。実はAUTS2という遺伝子は、これまでの遺伝学の研究によって、自閉症、ADHDや統合失調症や薬物依存のような疾患の原因になることが分かったのです。ところが、AUTS2という遺伝子及びその産物が何をしているかは分からなかったわけです。それを、遺伝子改変マウスを駆使することによって明らかにしました。正常な脳ではAUTS2は、ある意味ではアクセルを踏んだり、あるいはブレーキを踏んで正常な脳神経ネットワークを作っています。ところが、このAUTS2という遺伝子に異常があると、このアクセルとブレーキのバランスが崩れ、異常な脳神経ネットワークができて、その結果として各種の精神疾患が生ずることを明らかにできました。これは極めて重要な研究で、こういった幾つかの疾患が、ある共通の基盤に立って発症してくること。それから、恐らくは、それぞれの疾患でやはり特有の部分があること。また、それらについて、どうやって治療法を開発したらよいか、大きなヒントを与えているものと思います。

 もう1回だけ7ページに戻ります。では、こういう研究をやってきたのはよいが、ナショナルセンターとすれば、均てん化する必要があります。厚労省の皆さんからも、エビデンスを基に、学会の皆さんと協力してガイドラインを作りなさいと言われています。その例としまして、昨年6月、デュシェンヌ型筋ジストロフィー診療ガイドラインを作成しました。学会の先生方の多大な御助力によります。右下にコピーを付けております。また、後で福田先生からお話があるかもしれません。地域精神科医療モデルについても、就労支援、多職種アウトリーチチームでの在宅生活支援ということをポイントに、ガイドラインを作成しております。こういったことから、1-3については、数字としても十分にクリアしておりますし、顕著な進歩があったことで、自己評価としてSとさせていただいております。以上、1-1から1-3まで説明させていただきました。

○永井部会長

 御質問はいかがでしょうか。

○深見委員

 バイオリソースの収集というのは、今、多くの所で促進しているのですが、それを実際に利用して脳脊髄液からバイオマーカーとしてフィブリノーゲンの上昇を見つけてきたというのはとても面白いことだと思います。

 今後の展開の所でも少し触れているのですが、実際にモノアミンの低下という、こういったフィブリノーゲンの上昇、これは独立して起こることなのでしょうか。またこういう原因を特定することによる個別化医療、現在では、うつ病ではドーパミン投与等が多いのだと思いますが、そういった中で、実際の薬を使うという視点から、こういった個別化医療につながり得るものなのかというのはいかがなものでしょうか。

○国立精神・神経医療研究センター神経研究所長

 重要な御指摘だと思います。うつ病だと御説明しやすいのですが、皆様御存じのように、うつ病の頻度は著しく高いわけです。したがって、神経難病のように、遺伝子1つ異常があるとその病気になることとは違って、多因子によると考えています。そういった多因子による疾患に対して、同じ方向の治療をしていても、やはり効く方と効かない方がいることも理解できるだろうと思います。

 今回の私たちのバイオリソースを使った研究は、そういったことの端的な例ではないか。すなわち、一口でうつ病と言われても、幾つかのクラスター、グループがある。それぞれのグループについては別の治療が考えられる。しかし、この発端となった成果を更に広めていくためには、新たな臨床研究が必要であろう。場合によっては、それを前提とした動物実験を組んで、その確証を得た上で次に進めていく必要があるだろう。すなわち、バイオリソースを使った研究は、治療の発端を与えたものであり、なおかつ、バイオマーカーを与えたものである。しかし、それを患者さんたちに治療としてお戻しするためには、臨床研究及び、実験動物を用いた研究等が必要ではないかというのが私どもの考え方です。

○祖父江委員

 どうもありがとうございました。非常に素晴らしい成果が出てきているなという感じを強く受けました。特に、研究所と病院の共同研究推進というところで、いろいろなインターフェース的な仕込みを今までシステムとして作られてきたのが成果に結び付いてきつつあるなというのを実感したところです。

1つお聞きしたいのは、この前の予備的なときにも少しお伺いしたのですが、このレジストリやバイオリソースのデポジットをずっと今、構築、進展させていただいているのですが、これは今後、ナショナルセンターの非常に重要なミッションになってくると思うのですが、特にネイションワイドでこういうものをきちんとやれるというのは、どこがやれるかというとナショナルセンター以外にはなかなかないのではないかと思っているのです。先ほどもおっしゃったように、データの質管理、あるいは継続性や個人情報の保護のシステム、解析のやり方など、いろいろなノウハウが結構共通しているところもあって、6つのナショナルセンターで、多分これは今年度ぐらいからいろいろな局面で起こり出すと思うのです。先生の所は非常に前からこういうことを手掛けておられるので、例えば、ナショナルセンター6つのいろいろな所でいろいろな疾患についてやられるのですが、それを何か共通化してやっていこうというようなお考えをどうお持ちか。もしできたら、そういうこともお考えになっていただけるといいなと思っているのですが、いかがでしょうか。

○国立精神・神経医療研究センター理事長

 ありがとうございます。武田から後で具体的なことを申し上げますが、先生が御指摘のように、これはもう、我々NCNPだけの課題ではなくて、6つのナショナルセンター共同でバイオバンクのシステム構築を、すでにスタートさせておりまして、その中央機関を国際医療研究センターに置くということで、もうその組織もできております。ただ、物そのものはそれぞれのナショナルセンターで管理して維持していくということですし、臨床データも、その疾患の特異性がありますので、ナショナルセンターそれぞれで管理します。しかし、外部からのご希望については、中央のセンターに外から申し込んでいただいて、そこで受付をして、その物がどこのナショナルセンターが管理しているかというのをお伝えして、そことのやり取りをしていただくということで進めているところです。

○国立精神・神経医療研究センター神経研究所長

 今、理事長からバイオリソースに関してはお答えがありましたので、私のほうからレジストリとネットワークについてお答え申し上げます。確かに私ども、特に希少性疾患については長年努力してまいりましたが、現在は、ほかのナショナルセンターにおいてもレジストリ、ネットワークについて努力が続いているところです。

 ただ、委員の御指摘のように、各センターが進めている内容には重なる部分もありますので、厚労省の皆様にお世話を頂きつつあるクリニカル・イノベーション・ネットワーク構想が重要ではないかと思っています。すなわち、スタートとしては希少疾患ですが、多くの疾患に対して有効なレジストリのひな形を提出すべきではないか。それから、レジストリの真の目的は何かを考えてみますと、臨床試験を行って、新たな医薬品を開発することにありますので、こういったノウハウをどうやって統合していくか。

 患者さんの臨床試験をやるためには、恐らくレジストリだけでは不十分で、医療機関を結んだネットワークを作って、更に詳しいデータを得て、臨床試験に結び付けるべきではないか。希少疾病の場合には、先生も御努力されたかもしれません。いわゆるナチュラルヒストリー(自然歴)の集積が非常に大事だろう。これは、レジストリと、医療機関を結んだネットワークを構造化することによってはじめて可能となるのではないか。ナショナルセンターはアカデミアの先生とともに重要な役割を果たすべきではないかというのが、今のところの私どもの考え方です。

○永井部会長

 よろしいでしょうか。それでは次の1-4から1-9について御説明をお願いいたします

○国立精神・神経医療研究センター理事

 病院長をしております水澤のほうから御説明させていただきます。資料2-211ページから御覧ください。医療に関して、今、既に病院ということでは、研究所と病院が一体になるという性格上、いろいろな点で触れられましたが、医療という側面から3つの評価項目に従って御説明いたします。

11ページの評価項目1-4です。「高度先駆的な医療、標準化に資する医療の提供」ということで、資料2-1では72ページから詳細に記載があります。その中で、今回この11ページには4点挙げさせていただきました。まず最初が、光トポグラフィ検査を用いたうつ症状の鑑別診断の補助ということで、その件数が書いてありますが、平成21年度の129件から平成26年度の416件まで、3倍以上に増えております。昨年度は、これが保険収載されたということで、そのときに我々のセンターの講習会を修了するということが条件となっております。そういうこともありまして、平成25年度から平成26年度にかけて少し減ってはおりますが、非常にたくさんの数をやっております。今後、この講習を受けて、診療を行う施設との共同研究等で、その効果の検証を進めていきたいと思っております。

2番目が、薬剤血中動態モニターに基づく高度先駆的治療で、これはパーキンソン病のL-dopaによる治療です。これは非常に個人差が大きくて、血中濃度によって症状の変動が激しいものです。それを詳細に血中濃度をモニターすることによって、個々の患者さんに応じた、正にテーラーメードの医療を行うということで、これも平成21年度の59件から3倍以上の180件に数が増えております。先ほどパーキンソン病の所でネットワークの御紹介がありましたが、関連してJ-PPMIという、これは米国で行っているParkinson's Progression Markers Initiativeの日本の分担研究を紹介いたします。これは革新脳という文科省の研究プロジェクトに採択されていますが、そういう研究が進む背景としても、こういう高度先進医療でパーキンソン病の患者さんが非常にたくさん来ておられるということが背景になっているということをお伝えしておきたいと思います。

3番目は、認知行動療法(CBT)です。これは認知に働き掛けて、精神症状の緩和を図るという、一種の精神療法ですが、それの公的には日本で初めてのセンターが当施設にあります。そこと病院の臨床心理室で協働しまして、通院しておられる患者さんに対してこれを施行いたします。この有効性が確認されているのがうつ病等の精神疾患ですが、非常に有効であるということで、需要が多く、そこから更に認知症、パーキンソン病といった疾患に広がっておりますし、更にそこから、患者さんのみならず、患者さんを介護する御家族の方々への有効性というものも知られてきており、平成25年度は1,000件余りでしたが、それが2,000件を越える数まで増えております。

4番目が、反復経頭蓋磁気刺激装置です。TMSと略します。これは薬剤抵抗性のうつ病に対する革新的な治療ということで大変期待をしており、先進医療制度を活用して実施することについて、厚生労働省との話合いを開始いたしました。そして、昨年度、専任の医長を、名前も精神先進医療科という科を作り、その医長として配置することを決定しまして力を入れているところです。この最後の点を少し詳しく御説明したいと思います。

12ページです。うつ病の話が今ありましたが、非常に高率で、かつヘテロジーニアスな、多種多様な疾患が含まれていると思われます。米国のデータですが、破線の枠の中を見ていただくと、第一選択薬による寛解率は僅か36.8%ということで、階層的に第4段階まで、一番トップまで多くの薬を使うというところまで努力をしても、累積の寛解率は67%にとどまるということで、非常に不十分な状態にとどまっています。このことは、右側の棒グラフがありますが、1100%として見ていただくと、この抗うつ薬、お薬では49%しか効果がないというところです。そこで、右端のほうのECT、これは電気けいれん療法ですが、これは非常に有効で、かなり高率に寛解をもたらしますが、全身麻酔が必要だということで、当然、入院が必要になってきます。また、そのあとで認知機能障害を起こすといった副作用の問題、あるいは持続が短いといった問題があり、なかなかこれを普及させることも難しいのです。ちょうどその中間ということで注目されているのが、TMS(磁気刺激療法)です。左側のほうに図が描いてありますが、これは現在、例えば伝導速度等といった検査には非常によく使われている機械で、それを用いることにより、右側の中ほどの四角に書いてありますが、様々な刺激の仕方、刺激の強度、刺激の部位を選ぶことで、期待する効果を上げられる可能性を秘めている治療法です。また、刺激強度を上げることによって磁気けいれん療法(MST)というものもありまして、電気けいれん療法に近い成果を上げることも可能ということになっています。そういうことで、一番下の四角にまとめておりますが、極めて有効性が期待できるうつ病に対する治療方法として期待しているところです。

13ページ、評価項目1-5、「患者の視点に立った良質かつ安心な医療の提供」ということです。これは資料2-1では85ページからの記載になっています。その中で4点というか、主には2点ですが、ピックアップいたしました。1つは、院外の保健所、市役所、地域生活支援センター等との連携で、それによる訪問看護を進めてまいりました。この数は非常に増えてきまして需要が多く、平成21年度の371件に対して3,800件を超える非常にたくさんの需要があります。また、2番目に書いておりますが、デイケアセンターに、就労支援の専門スタッフを配置しまして、かなり重い精神障害を持つ方に対しても就労支援を展開しまして、そこから一般企業への就労の方々も出てきております。平成23年度からの開始ですが、13名から始まり、近年では30名を越える数の方々に支援を行い、累積では100名を越える方々に就労支援を行っております。それには、センターに配置しました就労支援専門のスタッフが非常に有効に機能しているかと思います。そういう、今申し上げた2つのことから、訪問看護ステーションの運営を地域からも求められており、それを今年度から開始するということで準備をしておりましたが、これは実際に今年度、開始しております。また、そういうことのために、地域における登録医療機関制度に登録いただきました医療施設は、平成22年度の125施設から378施設と、これも非常に数が増加しているところです。

 関連しまして、14ページの数値目標を御覧いただくと、例えばセカンドオピニオン外来に関しても、平成21年度の55から122ということで、非常に高い達成率を示すことができました。また、多職種のケースカンファレンスというのは精神科領域で非常に重要になってきますが、それも182から250ということで、非常に数が増えてきております。左下の紹介率・逆紹介率もそうでして、中期計画に対する達成率は非常に高いものがあります。さらに、医療安全あるいは感染症対策に関する研修会の開催回数も、680%というのもすごい数字だと思いますが、最初の20回程度から70回近くの回数を行い、安全の徹底に努めております。

15ページは評価項目1-6、「その他医療政策の一環として、センターで実施すべき医療の提供」ということで、資料2-1では105ページから詳しく書いておりますので御覧ください。2つに大きく分けていまして、1つは医療観察法対象者への医療の提供ということです。これは先ほども少し触れましたが、多職種によるケアプログラムアプローチということで、下のほうに数値が書いてありますが、これは近年では対象者全員、全例に対してこれを行っておりまして、昨年度は268で平成26年度は250件ですが、非常に多くの方々に行っているということです。そして、身体合併症に対する治療も、これは我が施設が我が国で唯一の身体合併症対応施設ということになっておりますが、自分の施設でやるだけではなくて、これは人工透析が1つのモデルですが、近隣の一般の透析センターの方々にお願いしまして、そこと連携して透析を行っていただくというモデルを構築しまして、その均てん化に努めているところです。また、今ほどは入院治療でしたが、通院治療についても、我々が提唱しました「重層的包括的多職種チーム医療モデル」ということに基づいて医療を実践しております。これは下に書いてありますように、医師、看護師、精神保健福祉士、作業療法士、心理療法士からなるチームですが、このような医療を行うことで、例えば再犯率というのが1つ関心であるかと思われますが、欧米では5.6%というデータが出ています。この医療法を施行してからのデータとしましては2.4%ということで、これは外国で発表しましても非常に低い値というか、とても素晴らしいことだと評価を受けていると聞いています。また、死亡率等で見ましても、普通の措置入院の場合に7.5%といった数字が出ていますが、この医療法施行後は3.8%ということで、非常に良い成績が残せていると思っております。我々の所は日本で最初の医療観察法病棟ができた所で、かつ、2つの病棟の66床からなる最大の病棟になっており、全国の医療観察法医療の中心として活躍しているところです。

2番目が重症心身障害児、あるいは重症心身障害者への医療の提供です。これは、お子さんだけではなくて、その方々が成人になっておられるということで、50歳、60歳の重症心身障害者の方も数多くおられるということから、このような名称になっております。在宅で非常に重症の方々で、家庭でのケアが大変だという方々のレスパイト入院の受入数の数値が下に書いてありますが、平成22年度の115名から、平成26年度は566名ということで、非常にその数が多くなってきておりますし、入院に際しては病棟医長、副医長あるいは看護師長、医療相談室等からなる会議を開きまして、非常に公平な形で受入を行っております。また、家族の方、個人の方だけではなくて、近隣の医療施設からの受入要請も多くあり、そういうことにも対応しております。病床利用率は常に100%です。こちらで、例えば骨折といったことが長期入院でありますが、私は昨年に参りまして、骨折の方がおられました。医療事故ということで少し調べてみたところ、発生率は0.02%で、通常の報告によると2%ということで、100分の1ということです。実は私は多いかと思ったのですが、極めて手厚く診療が行われているということが証明できたかと思っております。

 以上をもちまして私からの説明は終わりますが、そういうことで、この評価項目の1-4から1-6に対しては、自己評価としてA評価を付けさせていただきました。以上です。

○国立精神・神経医療研究センター精神保健研究所長(企画戦略室長)

 評価項目1-7から1-93つについて、精神保健研究所長の福田から御説明いたします。16ページです。評価項目1-7、「人材育成」についてです。大きく2点あります。1つは、精神・神経疾患等の医療・研究における専門家の養成ということです。こちらはTMCで行っている臨床研究研修制度の枠組みの中で16回の研修会を開催しております。特にEBMにおいて大変重要となってくるメタ・アナリシスについての入門講座などを開催することにより、更に内容の充実も図っているところです。また、こういったTMCで行われている各種セミナーがあるのですが、こういったものをアウトリーチして、いわゆる外の学会、国内学会や国際学会でセッションを設けて、そこにおいても研修を行うなど、新たな取組を進めているところです。

2番目のポイントです。各種モデル的研修・講習の実施についてです。こちらは、医療従事者等に対する各種モデル的研修、これは先進的なものや、指導者を養成するようなものを中心に行っており、こういった講習会を85回、外部の受講者数は2,000名を超える形になっております。そのほか、こういった研修の1つの例として、平成26年度から診療報酬に収載された光トポグラフィ、先ほども説明がありましたが、こちらの診療報酬上の施設基準、算定するための条件ということになるわけですが、これは当センターでの研修を修了している常勤医師の配置が条件となるなど、そういった医療政策面でも大きな貢献をしているということです。

 下のほうですが、一つ一つは御説明いたしません。数値目標は全て、若干の上下はありますが、中期計画を大幅に上回る高い水準で推移しているということです。こういった内容面、数値面を含めて、自己評価としてはA評価としております。

18ページです。評価項目1-8、「医療の均てん化と情報の収集・発信」についてです。こちらも大きく2点について御説明いたします。1点目が、ネットワーク構築の推進、医療の均てん化です。先ほども病院長のほうから御説明がありましたが、医療観察法においては、私どもは病床を多く持っておりますし、研究所も持っているということもありまして、厚生労働省が新たに実施する「重度精神疾患標準的治療法確立事業」において、病院と研究所が一体となって、必要な診療情報の収集・分析・提供を行うといった意味での幹事病院という形になっており、ネットワークの中心として機能しております。また、下の2つのポツは、いずれも平成26年度からの厚生労働省のモデル事業ですが、依存症について、依存症治療拠点機関設置運営事業というものが新たに開始され、私どものセンターにおいて、薬物依存に関しては治療・回復プログラムや支援ガイドラインの開発及び支援体制モデルを確立することになっており、全国拠点機関として指定されております。また、行政や医療の狭間に落ちている神経性やせ症、アノレキシア・ネルボーザや過食症といった摂食障害についても、厚生労働省が新たに摂食障害治療支援センターを設置するということで、そういったセンターの中で得られた知見を集積し、治療プログラム、支援ガイドラインの開発及び支援モデルの確立を行うために、全国基幹センターを設置したわけですが、私どものセンターがこれに指定されたということで、今後このようなセンター的な機能の中から均てん化を進めていくという形になろうかと思っております。

 次に情報の収集・発信についてです。19ページです。こちらについては、平成26年度から新たにNCNPメディア塾というものを開催いたしました。これは精神・神経・発達・筋の疾患については、やはり内容が難しい、取っ付きにくい部分もあるというところもあり、しかしながら、それを適切に広報していくことが、研究においても医療においても非常に有効であるということで、メディアの方々と、単に一方通行の講義をするのではなく、ディスカッションをしながら、さらには人間的な交流も含めてやっていこうということで、これはアメリカのNIHで行われているものをモデルとして、平成26年度から新たに開始したものです。メジャーなテレビ局や全国紙の新聞社、通信社などの記者さんに参加していただき、非常に成果を挙げたところです。

 また、情報発信そのものについては20ページを御覧ください。こちらは、医療従事者・患者向けのホームページのアクセス数で、毎年御報告させていただいておりますが、経年的な変化を御覧いただいても分かるように、中期計画の目標は大きく超える形で、なおかつ、トップページ、患者向け、医療従事者向け、それぞれ伸びて、そして高い水準で現在、維持されているということを御報告申し上げたいと思います。このように、内容面、数値面においても一定の高い水準を維持しているということで、自己評価としてはAということで評価しているところです。

 続いて21ページです。評価項目1-9、「国への政策提言、その他我が国の医療政策の推進等」ということです。大きく3点です。1の国への政策提言については、東日本大震災を契機に体制が整えられつつありますが、災害派遣の精神医療チームの活動マニュアルの作成や、その通知というものは私どもの研究がベースになっております。その中で、日々見直している中で欠けているもの、今年度については携行する薬剤や資機材のリストを御提案して、国が策定するマニュアルの中に追加されたということです。また、危険ドラッグについても、包括指定の枠組みも私どものほうで提案したものですが、その具体的な薬物指定の内容についても新たなデータを提供して、具体的に指定も進んでいる状況です。またそのほか、平成286月までに施行される予定になっていますが、薬物使用等の罪を犯した方に対する刑の執行の仕方が一部変わります。要するに、社会内処遇を中心に行う形に変わるということで、その刑の一部執行猶予に関する法律に対応する、いわゆる社会の中での支援機能を高める必要があるということで、これについては、法務省が主催する研究会において、私どものセンターが中心となって検討を行い、報告書、提言を出しております。今年度においては、この提言を踏まえた形で国の予算事業などを含めて、様々な活動が施策に結びついているということです。

2として、22ページです。公衆衛生上の重大な危害への対応ということで、1でも御説明いたしましたが、災害時の心のケアということでの対応を的確に行うため、日頃からの訓練が重要ということでの、先遣隊の研修事業というものを行っておりますし、また、昨年度は広島や御嶽山など幾つかの事例があり、そういった面では、国と連携して連絡調整や情報収集、その評価といったものを行ってまいりました。

3の国際貢献です。これは自殺対策で、自殺対策レポートの作成そのものにも平成24年度、平成25年度と協働して行ってきたわけですが、平成26年度については、世界自殺レポートがWHO9月に世界で同時に発表になるということで、それに併せてWHOと連携して日本語訳の作成や普及に取り組むなどの対応をしてまいりました。こういったWHOや世界の様々な機関との連携実績も認められ、私どものセンターは、WHOの自殺対策に対する協力研究センターとして新たに指定されたことを御報告申し上げたいと思います。それから、海外からの研修生及び研究者についても、その下の中期計画の所にありますが、年間の目標を大きく上回る形で受入を行い、相互の研鑽と研究の発展に協力、努めているところです。このような内容面、数値面を総合的に評価しまして、自己評価としてはAということで評価しております。御説明は以上です。

○内山部会長代理

 永井部会長は所用で中座されましたので、この後、部会長代理が進行を務めさせていただきます。よろしくお願いします。ただいま評価項目1-4から1-9まで説明がありましたが、委員の皆様から御質問、御意見等がありましたら、よろしくお願いします。

○福井委員

11ページの評価項目の1-4ですが、光トポグラフィ検査も薬剤血中動態モニターも件数が増えてきたということは了解しましたが、これらを行うことによって、患者さんのアウトカムと言いますか、診断の精度が高まった、あるいは早期に診断がついて患者さんにとってこういうメリットがあったとか、何か患者さんのアウトカムについて改善したというデータはあるのでしょうか。

○国立精神・神経医療研究センター理事

 光トポグラフィにつきましては、昨年度から全国の施設を対象に講習会等を始めているところです。先ほど申し上げましたが、今後の検証については、これからそういう所と協力をしてやっていきたいと思っております。それが1つです。

 薬物血中濃度のモニターにつきましては、私自身も回診等で見ておりますが、パーキンソン病の患者さんたちは、個人個人の変動が非常に激しく、そういう方々に対して血中濃度を測定して対応することで、薬を飲む時間あるいは薬を飲むときに、例えば牛乳等を一緒に服用するということで、血中濃度をうまくコントロールすることで、副作用を非常に少なくして効果を最大限に引き出すという効果は得られていると思います。

○福井委員

 そのことを証明するような数値データを出されるとよいと思います。コメントです。

○国立精神・神経医療研究センター理事

 ありがとうございます。

○祖父江委員

16ページの人材育成の1.に書いてある専門医の養成というか、研修会をやっていただいているのは、私は非常にいいと思っております。特にナショナルセンターは疾患に特化していろいろ深くシステム化しているということで、これをナショナルセンターは今後ミッションにしていくといいなと考えています。要望ですが、ちょっと短いのではないか、もう少し本格的なものをやっていただくと、1日か2日ぐらいではなかったですかね。ですから、もう少し本格的なものも中に入れていただけるといいなというのがあります。

 質問ですが、今の専門医制度の中で、各ナショナルセンターがどうするのかというのは、今、議論の最中だと思います。がんセンターなども1つの提言をされているようですし、いろいろな所から出てきているのですが、先生の所はどういうスタイルで、どういう方向性で行くのかというのは、何かお考えがありますか。

○国立精神・神経医療研究センター理事

 うちのセンターだけのお答えではないのですが、先日の理事長会議、6ナショセンの会議でも話題になりまして、病院の課題ということで、来週でしょうか、6ナショセンの病院長会議を開いて、ナショナルセンターとして協力していけるところと、先生御存じのように、各診療科で大分対応が違ってくると思われますので、そういう違った対応はどういうものがあるのかといったことについて協議する予定です。

 もう一点は、国立病院機構の病院とも関連がありますので、そういう所との協力関係をどうしていくかといったことが、多分来週の会議でも相当議論が深まると思っております。

○祖父江委員

 今、議論されているのは、1階部分の基幹病院としてやっていけるのかどうかというとこが非常にクリティカルなところだと思いますが、その辺は何か感触は持っておられますか。

○国立精神・神経医療研究センター理事

 これは先生がお詳しいと思いますが、全ての科が総合病院としてそろっている所は、多分国際医療研究センターでしょうか。それ以外は非常に専門領域に特化しておりますので、単独ではなかなか難しいのではないかという印象を、私は個人的には持っております。そういうところは来週ディスカッションできればと思っています。

○国立精神・神経医療研究センター理事長

 追加させていただきます。先日理事長会議がありまして、そこでこの話題が出ました。既にがん研究センターと循環器病研究センターからは要望書が出ております。御存じだと思います。そこの骨子は先生がおっしゃったように、いわゆる初期研修プログラムを整備している所が、これの基幹として認められると、今のところ考えられているようです。しかし、ナショナルセンターの場合は、専門に特化している所があるので、単独では難しいかもしれないが、周りの医療機関、総合病院と連携して体制をとれば、それも基幹として加えていただきたいというのが1つの要望の点でした。

 もう1つは、ある1つの地域なら地域に、あるいは施設に限定されて、そこの中でなければレジデントが動けないというのが案の中にあるということで、それはちょっと不都合ではないかと。例えば地方から来ている人が途中で地方に戻りたいということも許されないとなると、非常に硬直してしまうのではないかと。そこをフレキシブルにしてほしいという、この2点についての要望書が出ておりまして、これを6ナショセンで統一したものとして要望書を出そうというのを検討中です。

○祖父江委員

 よろしくお願いします。

○内山部会長代理

 ほかにありませんか。よろしいですか。それでは続きまして、業務運営の効率化、財務内容の改善及びその他の業務運営に関する事項の評価項目2-1から4-1について、法人から説明を頂きたいと思います。

○国立精神・神経医療研究センター財務経理部長

 財務経理部長の中澤です。よろしくお願いいたします。私からは資料23ページの「業務運営の効率化、財務内容の改善、その他に関する事項」について説明いたします。

 まず、効率的な業務運営体制ですが、診療情報管理士を常勤させることにより、診療報酬基準の維持等を行うことができました。旅費については一元管理を実施し、研究開発費については研究所、病院、各センター等、別々に研究を選択しておりましたが、見直しによって組織の垣根を越えた統一した研究を選択できるようにしました。これらのことを評価して、B評価といたしました。

 次に、効率化による収支改善・電子化の推進について説明いたします。経常収支率については、平成25年度と比較して幾らか落ちた結果となりました。また、一般管理費は中期計画の15%縮減は達成しております。医業未収金比率については、多職種との連携によって0.011%と減少しました。また、医薬品など共同購入によって材料費率の縮減がなされました。電子化の推進については、Remudyの患者登録をWebにより本格稼働し、教育研修等のネット環境整備を行いました。これらを評価いたしまして、B評価といたしました。

 次に、法令遵守等内部統制の適切な構築について説明いたします。監事等により監査を行い、ガバナンス強化では監事による施設長面談を実施しております。契約については、監視委員会を実施し、原則一般競争で行い契約状況を公表しております。また、研究については、研究不正防止規程を制定しました。これはあくまでも不正発生しないために、必ず教育を受けて登録を行い、実験ノートもセンター独自のものを使用することとしております。仮に不正があった場合は、どのように対応し、どのように処分を行うかなども定めております。これらを評価いたしまして、B評価としました。

 財務内容の改善について、資料の27ページの表にもありますが、寄附や受託研究等の外部資金獲得額が43,500万円と平成25年度を大幅に上回ることができました。ちなみに平成22年度と比較した場合は37%の増加となりました。要因としては企業治験の増加、PET治験薬製造受託の開始が外部資金獲得の増加に寄与しました。これはGMP基準のホットラボの整備と脳病態統合イメージングのプロの方が在籍していることにより、将来的な期待が認められ、9件の製造受託の受入がなされたのではないかと考えております。厚労科研等の競争的研究資金の全体的な予算額については、年々減少の推移をたどっておりますが、当センターの獲得額は208,600万円と平成25年度を上回ることができました。また、平成22年度から資金の予算が全体的に減少しているところですが、獲得額はその減少額ほど大幅な減少には至っていない状況です。外部資金の獲得については、疾病内容は、ある意味でがんなどとは全く違って、我々の分野で資金の増加ができているということは、非常に顕著な成果と考えており、ここについてはA評価に値すると判断させていただきました。

 最後に、その他の業務運営に関する重要事項についてです。業務評価制度を引き続き実施しております。また、他の機関との人事交流についても引き続き実施しております。今回は、新たに日本医療研究開発機構への医師・看護師の出向を決定しました。年度計画については進捗管理・報告を行っております。これらを評価し、B評価といたしました。以上です。

○内山部会長代理

 御質問、御意見等はありませんか。それでは私からですが、あとのほうの図で未収金が年々減っているのですが、継続した工夫によるものですか、それとも新たにほかでやっていないことを取り入れたとか、そういった工夫はあるのでしょうか。

○国立精神・神経医療研究センター財務経理部長

 当センターは基本的に公費負担が多いことにより未収金が少ないこともありますが、いわゆる一般的な督促業務等を継続的に行っているというところかと思います。

○内山部会長代理

 パーセントは少ないのですが、その中で更にまた減っているものですから。

○斎藤委員

 評価項目3-1の所を自己評価Aとしておられます。企業からこれだけの金額を獲得なさったというのは大変素晴らしいことだと思います。その一方で、赤字に終わったことから、Aにするのはちょっとためらわれるのですが、その辺りはどのようにお考えですか。

○国立精神・神経医療研究センター財務経理部長

 そうですね。我々のセンターとしては、赤字の改善、計画では赤字を何とかしようということになっているのですが、今回Aにさせていただいたのは、我々がかなり努力しているというところを自己評価をさせていただいたということと、平成22年から徐々に増えているのと、平成25年度が38,400万円の全体の資金の獲得でしたが、今回は43,500万円という、数字だけでも一応評価に値するのではないかということです。

○国立精神・神経医療研究センター総務部長

 総務部長の長谷川です。なかなか成績が上がらないということで赤字があるのですが、その中で、新たな取組としてホットラボの施設でGMP基準に適合した施設ということで、きちんと整備をして、それによって放射性同位元素の薬を自分の所で精製できると。それで委託を受けてということで、それを収益として計上することも昨年度はできました。そういった新たな取組を含めて、A評価にさせていただきました。

○藤川委員

 私も今、拝見したのですが、27ページで、どこが伸びたのかというと、ホットラボの製造受託の所なのかなとは思ったのですが、ホットラボは5ページで「GMP基準に適合させたホットラボを活用して治験用PET製剤の製造受託を開始した」ということで、これは今期からということですから、この先、この金額はもっと伸びるのかどうか。

 それから、これによって生じる損益というか、作ったはいいが余り儲からないというのでは意味がないのですが、その辺りのこと。これをやることによって、ほかにも何かメリットがあったりするのかを教えていただけますか。

○国立精神・神経医療研究センター神経研究所長

 科学的な側面につきましては神経研究所長からお話させていただきます。財政的なことは後から補足があると思います。御指摘のとおりで、平成26年度からホットラボを活用して、受託ができております。今後の見通しとしては、スペシャリストがおり、製造についての十分な知識・経験を持っておりますので、今後とも受注は伸びるという予想をしておりまして、今年度前半の報告を聞きましても、そのとおり経過しているものと考えております。

 付加的なこととして、アルツハイマー病に関するアミロイドPET及びタウに関する核種の製造が多いということがありますので、こういったホットラボの活用を介して画像診断、アルツハイマー病の研究が進展していくことが期待されます。財政的なことに関しては担当者にお願いしたいと思います。

○国立精神・神経医療研究センター総務部長

 具体的に今後何件伸びて、どのような収支という数字は持ち合わせていないのですが、これを作るときに、IBICというのは、所長が説明されたとおり画像診断で相当程度強い施設で、そういったところで共同研究という形で、これが伸びていくのかと思っています。昨年度立ち上げたところで、今後の見通しは、もう少し落ち着いた段階できちんと整理をしていきたいと思っています。

○藤川委員

 では、これは今後に期待、芽が出たなというところなのかと思います。他方、経常収支がここずっと赤が続いているということで、いろいろ環境が悪いことは重々承知しておりますが、先ほど斎藤委員もおっしゃったように、ホットラボ等により自己努力で収入を増やしてきているものの、それをAだと言うまでのプラスと言えるのか、この赤字を今後どのように解消していく見込みなのかを教えていただきたいと思います。

○国立精神・神経医療研究センター理事長

 私から全体的なことを申し上げますと、御指摘のとおりでして、これは既に前年度の評価の中で御指摘を頂いたところです。そして、この5年間が終了する段階で、これまでの累積された赤字を今後どのようにして返済するのかという返済計画を立てるようにと御指導いただきまして、その返済計画は既に提出しております。

 その中で、具体的にはいきなり一気に赤字を黒字転換するのは、なかなか困難ですので、経年的に計画を立てて、最終的には黒字化するという計画でお認めいただいているわけですが、当面、今、私どもが取り組むところとしては、収支ですので、一方は収入を最大化するという努力です。これに関しては、ただいま計画をしておりまして、これは病院長の領域ですが、病院の患者数は今は年間平均414を目標として立てております。これを達成しますと、89%ぐらいに至るであろうと。これがほとんどマキシマムに近いのではないかと思っています。是非、それを達成するということで、現状を見ますと、ほぼその数値を達成しつつあると言えると思います。

 あとは、今のホットラボも含めて治験の絡みですが、これをどこまで伸ばせるかということです。実情を申し上げますと、先ほど見ていただいた10名ほどのCRCで行える治験の数としては、ほとんど一杯一杯になっている。更にこれを増していくためには、人的な補強をしていく必要があるということなので、それが実際に経営上どうかという判断も必要かと思います。我々が行える収入源としては、外部資金、研究資金を更に獲得するのはもちろんですが、こういった所にメインなものがあるかと思っております。

 一方、考えなければならないのは、御覧いただきますとお分かりのように、医業収益は平成22年から比べますと19億円ほどプラスにしてきておりまして、今年度も414を達成できるとすると、80億円台に乗るであろうということです。

 一方、支出のほうは常に、稼げども稼げども出るほうが出ていく。これを何とかしないと、幾ら稼いでもプラスにならないということです。これに関しては今年度に入って、病院、研究所の全職員を挙げて、再度支出をいかに節減できるかの見直しの取組を開始しました。現状では約100ほどの項目が挙がっておりまして、その一部は既に具体的に取組を進めております。どこまでそれを落としていくことができるかというところがこれからの問題ですが、既に8,000万円ぐらいの縮減はできてきているかと思いますので、1年を通して、残る課題の100項目の中のどこまで切り込めるかということで、この収支の支出の部分を落とすことに最大の努力を払うよう、全員で取り組んでいるところです。

○祖父江委員

 今の議論と多少関係するのですが、今後、研究独法として今までのものより、より研究型にシフトしていこうという方向ですね。そのときに、先生がおっしゃったように、今まではシステム上の仕込みをかなり作られた感じがしているのです。TMCとかIBICとかCBTとか、最近ではメディカルゲノムセンターですか。そういうものは臨床ももちろん入っているのですが、どちらかというと研究型で、そういうものをどんどん広げていくというスタイルです。これはどんどん広げてほしいと思っているのですが、そういうことで今の収支決済という観点からどのようにお考えなのか。これを見ると、いわゆる競争的外部資金もずっと平行状態できています。ですから、今後そういう研究的なところの予算、人員とか、いろいろなものが広がってくると要ると思うのです。それをどう計画されようとしているのか。コンセプト的なところかもしれませんが、教えていただけると有り難いのですが。

○国立精神・神経医療研究センター理事長

 実際問題として、御指摘のように、私どもは研究開発型を進めていく上で必要な新たな仕組みを幾つか立ち上げてまいりました。さらに今後も場合によっては幾つか必要になってきそうですが、付いて回るのは、先生御指摘のようにお金の問題です。ここまでは人を増やすということはまかりならぬという発想で、累積の赤を考えますと、むしろ減らさざるを得ないのではないかというところまで来ておりますので、とても人を増やして新たな組織を作ることはできません。ですから、あとはスクラップをやるということになろうかと思います。スクラップをやって、得られたものを新たな仕組みの中に投入していくということしかないだろうと、基本的な線はそのように考えております。

 ただ、現状においても増やすことはできないどころか、減らさないと場合によってはマイナスを解消できないかもしれないというところまで来ておりますので、人減らしということに、かなり手を付けざるを得ないかなというところもあります。それをやりますと研究の質に影響してきますので、できるだけそれはやりたくないと。だから、スクラップ・アンド・ビルド方式で対応することを目標としてやっていきたいと思っています。

○祖父江委員

 そうしますと、今まで幾つかそういう仕組みというか、基盤的な研究型のものをお作りになっているのですが、それを今後は見直していく作業も当然必要だということですか。

○国立精神・神経医療研究センター理事長

 それも必要だと思います。それから、今まで作ったものは人を配置していないで、併任で全てやっております。ですから、1人の研究者が幾つか併任するという現象が全体に出てきておりまして、これがまた場合によっては質を落としかねないので、そうなってくると、見直しをかけて、作ったものをもう一度見直しをしてというのはやらざるを得ないと思っています。

○祖父江委員

 もう少しポジティブな感覚のものがないかなと思うのですが、スクラップ・アンド・ビルドは確かに1つの方法だと思います。

○国立精神・神経医療研究センター神経研究所長

 恐らく励ましていただいていると思いまして、研究所長から少しお答えさせていただきます。この5年間、投資をしていただいて、TMCはじめIBICCBT、その他整備していたのは事実だと思います。ただ、御指摘のように、競争的研究資金を見ますと、今年度は208,500万某ですが、ほぼ横並びで、余り増加しているとは言えませんし、平成27年度に入ってからはAMEDからの研究取得を目指しておりますが、これも楽観を許さない状況です。

 そうすると、どうしても出てくるのがスクラップ・アンド・ビルドということですが、研究は日々進歩しておりますので、私たちはそれに何とか追い付いて、更に伸ばしていきたいと思っております。今日も聞いていただきましたように、こういった新しい切り口で成果を上げましたのも、この数年間の投資が効いていると思っております。

 それでは、どうすればいいかということですが、研究費というのは、宿命的にプラマイゼロで、頂けばそれだけ出ていくということです。では、どうするかというと、2つ今年度初頭から考えていまして、1つは共通機器を大事にしようと思いました。これまで比較的潤沢な研究費でかなり機器を入れています。それをセンターの中で多くの研究部で共通に使用していき、これから買う機器を抑制できないか。

 もう1つは、消耗品を使っていく場合にも、センター全体、少なくとも研究所全体で共通して消耗品を入れていくシステムができないか。そういったことによって、少なくとも効率化を図って、余ったお金を、更に新しく伸びていく所に投資できないか。研究というのは、先生の御指摘の趣旨だと思いますが、新たな投資をしていかなければ成果を望むことは非常に難しいだろうと思います。こういった財政の難しい中で、そういったことの努力をしたいと思いますし、理事長はじめ、皆様の御理解をお願いしたいと思っております。

○内山部会長代理

 よろしいですか。

○国立精神・神経医療研究センター総務部長

1点だけ。経営の関係はなかなか難しくて、いきなりホームランというのはなかなかないのですが、きちんと短打をつなげていくという格好で、先ほどIBICの関係でホットラボと。今まで就労支援といったことで実績を上げていたのですが、それに再就職の支援といったプログラムを新たに始めようということで、できること、望まれていることをこつこつとやっていくという取組もしていきたいと思っています。

○内山部会長代理

 よろしいですか。それでは、法人の監事より、監査報告についての御説明とコメントをお願いしたいと思います。

○国立精神・神経医療研究センター監事

 監事の長崎です。お手元に監事の「監査報告」といたしまして、資料2-3を配布してあるかと思います。監査報告の内容は、正にこのとおりですが、御覧いただいて、監査の結果の所だけを読ませていただきたいと思います。

 「1 法人の業務は、法令等に従い適正に実施され、また、中期目標の着実な達成に向け効果的かつ効率的に実施されているかについても重大な指摘事項はない。2 役員の職務の執行に関する不正の行為又は法令等に違反する重大な事実は認められない。3 財務諸表及び決算報告書に係る会計監査人新日本有限責任監査法人の監査の方法及び結果は相当であると認める。4 事業報告書は、法令に従い、法人の状況を正しく示していると認める。平成27623日 監事 長崎武彦、監事 林哲治郎」。

 監査報告は以上です。あと監事として、今後の課題等についてということもお尋ねですので、12申し上げさせていただきます。1つは、先ほど来話題になっておりますように、このセンターの収支の改善をどのように行っていくかということが、大変重要な課題であろうと思います。過去5年間の中期計画期間において、20億円の未処理損失があるわけですから、これを今後の中長期6年間で解消していかなければならないということです。

 先ほど来お話いただいておりますように、理事長を筆頭に、収支の改善に鋭意取り組んでいただいていることを私どももよく承知しております。収入の増加につきましては、いろいろな新たな診療活動というか、そういうものも始めておられますし、病院の病床利用率の増加等にも病院を挙げて取り組んでおられるということです。また、収支ですから、片方で費用の支出についても、先ほど理事長の話にもありましたように、経営改善の計画を立てて、センターを挙げて皆さんで取り組んでいただいています。これにつきましては、私どもも大変関心を持って、この平成27年度、どのように成果が上がっていくのかを見守っていきたいと思っているところです。

 そして、もう1つ課題というか、これについてはどのナショナルセンターも同じかと思いますが、平成274月から通則法が改正になり、内部統制システムの整備が求められております。当センターにおきましても整備・運用に取り組んでいるところですが、まだ一部規程等の整備が終わっていないものがあります。9月末までに整備をするということですので、確実に整備をされて、その運用に取り組んでいただきたいと思っているところです。以上です。

○内山部会長代理

 続きまして、法人の理事長より、日々のマネジメントを踏まえまして、現在の法人の業務運営の状況や今後の課題、改善方針等について、コメントをお願いいたします。

○国立精神・神経医療研究センター理事長

 評価委員の皆様、本日はありがとうございました。先ほど来、御質問いただきまして、それにお答えする形で既に述べさせていただいているところです。少し重複するかもしれませんが、お許しください。

 本日は平成26年度の御評価を頂いたわけですが、現在、平成27年度に入りまして、新たな国立研究開発法人という組職として再スタートをして、全員一丸となって気持ちを新たに、研究開発法人の行うべき、力を注ぐべきことは何かを、もう一度みんなで捉え直しております。それは研究成果の最大化ということであろうと考えております。

 私どもが現在抱えております課題としましては、先ほど来申し上げましたように、2つあります。その1点は研究開発法人として、その疾患の克服であるとか根本治療法の開発に向けて力を注いでいくことはもちろんのことです。私どものみがその研究開発法人として研究を行い、その開発をしていくということだけにとどまらず、ナショナルセンターの1つの役割として、先ほど来少し申し上げましたが、その研究の基盤を充実させて、しかもそれは全国の研究者の研究に役立ててもらうという役割も持っていると思っております。それが先ほど述べましたリサーチ、リソース、バイオバンク、疾患の登録、ネットワークの構築といった所、正にそういった内容を示しておりまして、これも私たちの大きな役割として今後充実させていくということでやってきております。最初に申しましたように、その中では、メディカルゲノムセンターを直近では立ち上げてきております。

 もう一点は、先ほど来御指摘いただいている経営改善です。これは繰り返しになりますが、いかにして経費を節減していくか、いかにして少しでも収入を増加させるかということで、現在、取組を始めております。1年目の目標がどこまで、2年目、3年目、次の6年の最後までにどこまでという数値目標を一応立てておりますので、それを達成すべく努力してまいりたいと思います。

 ただ、削減、削減と言って、職員の士気が下がってしまうのは研究をしていく組織としては良くないと思いますので、一方では大いに発展させるべき所を発展させながら、しかし、一方の意識としては、節減をするという意識をみんなに持ってもらおうと思っております。引き続き、どうぞ御指導のほどをよろしくお願いしたいと思います。ありがとうございました。

○内山部会長代理

 ありがとうございました。ただいまの御発言内容につきまして、御意見、御質問等はありませんか。

○花井委員

 本当に努力されているということがよく分かりました。これは特に精神だけではないのですが、6ナショセンにしても、ある程度稼ぎやすい所と、稼ぎにくい所があって、そういった所は政策的な研究の方向性とか、そういうものがあるのだから、公的支援という在り方、そういう観点があって然るべきだとは思いますが、その辺が国として余りにも一律にやりすぎているように私たちも思っているところです。

 これは意見ですが、特に精神と神経の研究所、研究所にしても2つの研究所を、統合ではないがコストダウンする努力は、今までほとんど削り切ってやられているというのはよく承知していますし、そういう2つの研究所を持っている所も、本来、非常に重要ですが、そういう所がもっと独自性を発揮できるようなサポートがあればと思います。だから、AMEDがどうなのかとか、臨床研究中核が、ナショナルセンターでは今のところはがんセンターだけが認定されたようですが、そういったところで国の支援が、こういう所には重要になってくるかなと意見として思いました。以上です。

○内山部会長代理

 ほかにありませんか。それでは、「国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センターの平成26年度業務実績評価に係る意見について」につきましては、以上といたします。

 以上で本日の議事を終了いたしました。事務局から今後の流れについて連絡をお願いします。

○医政局医療経営支援課長補佐

 今後の流れについて、御連絡いたします。本日、御議論いただきました平成26年度業務実績評価につきましては、このあと本部会における御意見等を踏まえまして、厚生労働大臣による評価を行い、その評価結果について、法人へ通知するとともに、公表いたします。決定した内容につきましては、後日、委員の皆様方にお送りいたします。

 最後に本日配布いたしました資料の送付を希望される委員につきましては、そのまま机上に置いていただければ、後日事務局より発送いたします。以上です。

○内山部会長代理

 それでは、本日は以上とさせていただきます。長時間にわたり熱心な御議論を頂き、ありがとうございました。


(了)

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