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2015年7月22日 第1回厚生労働省国立研究開発法人審議会高度専門医療研究評価部会

医政局医療経営支援課

○日時

平成27年7月22日(水)15:00~18:00


○場所

厚生労働省 省議室(9階)


○出席者

委員

内山委員 斎藤委員 祖父江委員 永井委員 深見委員 福井委員 藤川委員

○配布資料

委員名簿
【国立長寿医療研究センター】
資料1-1 平成26年度業務実績評価書(案)
資料1-2 平成26年度業務実績評価説明資料
資料1-3 平成26年度監査報告書
【国立国際医療研究センター】
資料2-1 平成26年度業務実績評価書(案)
資料2-2 平成26年度業務実績評価説明資料
資料2-3 平成26年度監査報告書
(参考資料)
厚生労働省国立研究開発法人審議会令
厚生労働省国立研究開発法人審議会運営規程
部会の議決をもって審議会の議決とすることができる事項について
議決権の特例等について
厚生労働省国立研究開発法人審議会の会議の公開に関する規程
独立行政法人の評価に関する指針
7-1 国立長寿医療研究センター平成26年度財務諸表
7-2 国立国際医療研究センター平成26年度財務諸表

○議事


○医政局医療経営支援課長補佐

 ただいまから第1回厚生労働省国立研究開発法人審議会高度専門医療研究評価部会を開催いたします。委員の皆様方には、大変お忙しい中お集まりいただき、誠にありがとうございます。部会長選出までの間、議事進行役を務めさせていただきます医療経営支援課の藤岡と申します。よろしくお願いいたします。

 議事に入ります前に、本部会の開催に当たり、医政局医療経営支援課長の佐藤より御挨拶いたします。

○医政局医療経営支援課長

 医療経営支援課長の佐藤でございます。どうぞよろしくお願いいたします。委員の皆様方には、御多忙の中、厚生労働省国立研究開発法人審議会高度専門医療研究評価部会委員に御就任いただき、誠にありがとうございます。

 昨年6月に独立行政法人通則法が改正され、本年度より主務大臣が直接評価を行うことになり、評価を行うに当たっては審議会の意見を聴くこととされております。本部会は、厚生労働省国立研究開発法人審議会の下に設置された組織であり、厚生労働省所管の国立研究開発法人のうち、国立高度専門医療研究センター6法人について、評価に係る御意見を聴取するものです。各委員の皆様方には、各法人の事業実績について、御専門の立場から御意見、御助言を頂きますことをお願い申し上げ、簡単ではございますが私からの御挨拶にさせていただきます。よろしくお願いいたします。

○医政局医療経営支援課長補佐

 本日の会議資料の御確認をお願いいたします。長寿医療研究センターと国際医療研究センターと2部に分かれております。資料1-1から資料1-3が長寿医療研究センターの関係の資料です。資料1-1A3のもので、資料1-2は業務実績概要資料、ポンチ絵の綴りです。資料1-3が監査報告書です。同じようなセットで、資料2-1から資料2-3が国際医療研究センター関係の資料です。

 参考資料として、1から5までのホッチキス留めをしたものが1つ、参考資料6、独立行政法人の評価に関する指針、参考資料7-1、参考資料7-2は、それぞれ長寿医療研究センターと国際医療研究センターの財務諸表です。以上が配布資料です。資料の不足等がございましたら、お申し出いただければと思います。

 次に、委員の御紹介をさせていただきます。五十音順に委員名簿に沿って読み上げさせていただきます。内山聖委員です。斎藤聖美委員です。祖父江元委員です。永井良三委員です。花井十伍委員は本日欠席です。深見希代子委員です。福井次矢委員です。藤川裕紀子委員です。本田麻由美委員も本日欠席です。以上、9名の方々に委員として御就任いただいております。

 具体的な審議に入る前に、高度専門医療研究評価部会の役割について、若干の御説明をさせていただきます。昨年6月に成立した独立行政法人通則法の一部を改正する法律の施行に伴い、独立行政法人の業績評価については、本年度より主務大臣が実施するということになっています。評価の実施に当たり、外部有識者の知見を活用することなどがうたわれております。これらを踏まえ厚生労働省においては、所管する国立高度専門医療研究センターの6法人の評価に際し、外部有識者の知見を活用することを目的とし、「高度専門医療研究評価部会」を開催し、先生方からの御意見を頂くこととしております。

 本日は第1回目の会合となりますが、8月までの間に計5回の部会を開催する予定でございますので、どうぞよろしくお願いいたします。

 議事の(1)に入ります。部会長及び部会長代理の選出です。参考資料1の厚生労働省国立研究開発法人審議会令第5条第3項にあるとおり、「部会に部会長を置き、当該部会に属する委員のうちから、当該部会に属する委員が選挙する」と規定されております。したがって、部会長の選出をここでお願いしたいと思います。なお、選出の方法については委員の互選となっておりますので、よろしくお願いいたします。

○内山委員

 昨年までこの部会は高度専門医療研究部会ということで、各センターの評価を担当させていただきました。その際に部会長を務めておられました永井先生を推薦申し上げたいと思います。よろしく御審議のほどお願いいたします。

○医政局医療経営支援課長補佐

 ただいま内山委員から永井委員の御推薦を頂きましたが、いかがでございましょうか。

(異議なし)

○医政局医療経営支援課長補佐

 御異議がないようですので、永井委員に本部会の部会長をお願いしたいと存じます。

(永井委員 部会長席に移動、着席)

永井部会長

 部会長という大役を仰せ付かりました自治医科大学の永井でございます。非常に重要な使命を帯びている部会でございます。是非皆様の御協力を頂き、円滑に進めてまいりたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。

 それでは、参考資料1の厚生労働省国立研究開発法人審議会令第5条第5項に、「部会長に事故があるときは、当該部会に属する委員のうちから部会長があらかじめ指名する者が、その職務を代理する」と書かれております。この部会長代理については、前独立行政法人評価委員会の高度専門医療研究部会で部会長代理をされていらっしゃいました内山委員にお願いしたいと思いますので、どうぞよろしくお願いいたします。

(内山委員 部会長代理席に移動、着席)

永井部会長

 内山先生、一言御挨拶をお願いいたします。

内山部会長代理

 ただいま部会長代理に御指名いただきました内山でございます。部会長を補佐し、この部会の円滑な運営に努めてまいりたいと思いますので、よろしくお願いいたします。

○永井部会長

 それでは、国立長寿医療研究センターの平成26年度業務実績評価について、御議論をお願いいたします。初めに、「研究開発の成果の最大化に関する事項」の評価項目1-1から1-3に係る業務実績と自己評価について、御議論をお願いします。法人から御説明いただき、その後に質疑応答という流れの中で進めさせていただきます。ポイントを絞って御説明をお願いします。

○国立長寿医療研究センター理事長

 評価に先立ち、簡単に御挨拶だけさせていただきます。今回初めての委員もいらっしゃると思いますので、業務実績資料1-2の「概要」を御覧ください。センターは国立、独法、そして国立研究開発法人になって、今年で11年目です。一番最後にできた独法で、職員は545名、非常勤を入れて900名ぐらいです。加齢に伴って生じる心身の変化及びそれに起因する疾患で、高齢者の自立、日常生活を営むために特に必要を要するものに対する医療の調査、研究を行い、臨床に反映するという業務です。理念は、高齢者の心と体の自立を促進し、健康長寿社会に貢献するということです。

 築50年の病院などを抱えておりますが、研究、臨床研究及び臨床の業務の実績についての御評価をお願いいたします。本当に暑い中、毎年このような評価をしていただき、大変ありがとうございます。

○国立長寿医療研究センター研究所長

 研究所長の柳澤です。引き続き説明させていただきます。資料1-2を御覧ください。3ページです。当センターの使命、課題、組織を示しております。私どもは、高齢者の心身の自立を促進することを目指しておりますが、それが損なわれますと壮健な状態からフレイルを経て要介護に陥ります。このような老化に伴う退行を防ぐべく、私どもは認知症、そしてフレイルを主要課題に定め、研究開発を進めております。

 平成27年度以降の研究資金獲得の戦略と人材育成についても若干説明するようにという先日の御指示でした。最下段を御覧ください。研究資金に関しては、これまでにも増して競争的研究資金の獲得に努めると同時に、共同研究に係る企業よりの研究費獲得を目指したいと考えております。ちなみに、平成26年度においては、契約ベースで2億円を超える研究資金を企業から獲得することができました。比較可能な平成22年度比では87倍の増となっております。また、人材育成に関しては、連携大学院制度を更に充実させ、老年医学の研究者を育てていきたいと考えます。

4ページから6ページ、評価項目1-1「臨床を志向した研究・開発の推進」について説明いたします。自己評価はSとさせていただきました。研究所と病院等のセンター内連携、あるいは産官学連携を更に強化し、研究開発を推進いたしました。赤ポツの一番下を御覧ください。平成26年度においては、認知症・フレイル患者の全国的なレジストリ制度の構築に向け、作業を開始いたしました。右下のグラフを御覧ください。治験の実施数、センター内並びに企業との共同研究数とも、平成21年度に比して顕著に増加しております。以下、主な成果を御紹介申し上げます。

5ページを御覧ください。私どもは「包括的な認知症の予防とケアのモデル開発と情報発信」を広範囲に行っております。独法化に併せ、世界的にも最大規模のもの忘れセンターを開設し、年間1,000例を越える新患を含む受診者を対象に、基礎から臨床における研究を行ってきました。平成26年度においては、それらの研究成果を専門誌、GGIに特集を組んで報告するとともに、メディアでも広く紹介し、さらに、一般の方の認知症への理解を深めていただくために分かりやすいパンフレット、『認知症はじめの一歩』を刊行いたしました。また、昨年11月に東京で開催されたG8認知症サミットにおいても、広く情報を発信いたしました。

 加えて、家族教室での介護者支援を定着させ、内容の更なる充実を図りました。家族教室は平成24年度より始めておりますが、学習ニーズの把握、効果の検証を経て、新しいプログラムの改良を常に行っているところです。今回の資料には組み込んでおりませんが、これまでの家族教室の最大のアウトカムは非常に興味深いことに、介護者である家族の負担感の軽減ではなく、むしろ達成感あるいはやりがいといったポジティブな感情の変化であることが最新の解析で明らかになり、現在これを検証すべく、医学に関する講義、心理学に関する講義あるいは福祉に関する講義といった家族教室のコンテンツの工夫により、RCT解析を行っているところです。

6ページを御覧ください。高齢者の健康の阻害要因である歯科・口腔機能障害の解決に向けた取組の成果を御紹介いたします。平成26年度には高齢者の咀嚼、嚥下障害並びに歯周病の原因である口腔乾燥症の解明に向け、老化関連遺伝子の操作による新たなモデルマウスの開発に成功しました。今後、このモデルマウスを活用し、病態解明あるいは予防、治療法の開発を進めていきたいと考えます。

 次に、新たな歯科診断、治療機器の開発を御紹介いたします。初めに、平成26年度においては、ノーベル賞を受賞された赤崎、天野両教授の御指導を賜り、ごくごく小型の紫外線照射LED装置の開発に、世界で初めて成功いたしました。紫外線の波長をコントロールすることにより、口腔組織を傷つけることなく、歯周ポケット内の病原菌を選択的に攻撃することが可能であると期待されます。さらに、歯科用光干渉画像診断装置については、そこに試作機の5号機の写真をお示ししておりますが、平成26年度においては、いよいよ治験に向けたPMDAとの開発前相談の段階に至りました。

○国立長寿医療研究センター病院長

7ページを御覧ください。病院における研究開発の推進について御説明いたします。自己評価はAとしております。左側の黒い四角の最初の赤ポツです。臨床研究機能の強化が平成26年度の実績の中で、大きなものと考えております。

 右側の赤い枠の中の治験・臨床研究推進センターですが、もともと病院の一組織であった臨床研究部を理事長直属の治験・臨床研究推進センターに改組することにより、研究所、病院、事務の風通しは一層よくなり、それまで余りそういう部分のサポートができなかった体制が、この改組によってあらゆる面でサポートできる体制になりました。例えばプロジェクトマネージャを配置、CRC5名、その中に臨床心理士1名を含むような強化もできましたし、11月から生物統計の専門家を非常勤にし、気軽に相談ができるような体制を統計についても取ることができました。それまでは、こういう研究に対する臨床教育というものは余りなかったのですが、平成264月からは、特別講演を2回、統計学に関するセミナーを5回、名古屋大学の臨床研究セミナーのライブ中継等、非常に豊富に臨床研究の研修ができることになりました。また、それに加え多施設連携体制、多数の大学や企業、また治験ネットワークを整備し、強く連携することにより、治験研究開発の推進を一層強力に遂行することができました。

 結果として、治験申請時から症例登録までの期間は169日とありましたが、私どもの一番のテーマである認知症に対するフェーズ1からフェーズ3の治験は8件と、今までで最高の件数を得ることができました。

○国立長寿医療研究センター研究所長

8ページから11ページ、評価項目1-3です。「担当領域の特性を踏まえた戦略的かつ重点的な研究・開発の推進」について説明いたします。自己評価はSとさせていただきました。下段右下のグラフを御覧ください。論文発表数、学会発表数、臨床研究数とも、平成21年度に比して増加し、いずれも中期目標を超えております。論文被引用回数もお示ししております。平成21年度報告の論文が、5年余りで1,700回余り引用されたことをお示ししております。以下、主な成果を御紹介いたします。

9ページを御覧ください。私どもはアルツハイマー病の早期診断法並びに先制治療薬の開発を鋭意推進しております。病態解明に関しては、平成26年度においては、脳内におけるアミロイドの蓄積を脳波検査で、外部からモニターすることが可能なモデルマウスの開発に世界で初めて成功いたしました。真ん中上段の写真を御覧ください。右側に黒く見えるのがマウスですが、脳波がそこに接続されております。加えて、糖尿病を誘発したカニクイザルにおいては、早期にアルツハイマー病変が形成されることを見いだし、いずれも画期的なアルツハイマー病の病態モデル動物として、今後活用していきたいと考えております。

 次に、早期診断法の開発です。島津製作所と共同で、発症前にアルツハイマー病の脳内変化を正確に検出し得る血液バイオマーカーの開発に世界で初めて成功いたしました。さらに、創薬に関してはアミロイドβ蛋白、タウ蛋白を標的とする先制治療薬の開発を進め、いずれも前臨床試験までもう一歩の段階に至りました。黒い写真を御覧ください。ここには、当センターで開発されたアミロイドβ蛋白を標的とする先制治療薬リードの1つをお示ししており、平成26年度において行ったリード化合物の最適化の成果は、右側のレーダーチャートでお示ししております。御覧のように、赤線でお示ししたアドバンストリードの薬物特性は明らかに改善しており、人への投与可能な化合物へと成長したことがお分かりいただけるかと存じます。これらを含め、平成26年度だけで2件の物質特許を申請することができました。

10ページを御覧ください。「地域における認知症予防のスキーム構築」について御紹介いたします。NHK等で広く御紹介いただいているところですが、認知症予防、特に「コグニサイズ」と命名した運動介入による軽度認知障害、MCIから認知症への移行の予防に関する研究開発を行っております。開発に当たっては、介入試験に関わるスタッフの養成、認知機能障害の簡便なスクリーニング法の開発を経て、認知症予防プログラムを展開し、平成26年度においては、プログラム参加者数が累積で1,000人を越えました。現在、RCT試験を続行しているところですが、効果検証の結果が近く得られるものと期待されます。

 最後に11ページを御覧ください。「バイオバンクの実績」を御紹介いたします。診療情報を匿名化した上で厳密に管理し、検体情報と連結させ、その上で試料の効率的な利活用を可能とする独自のバイオバンク情報管理システム(BIS)を開発し、運用しております。運用開始後、まだ3年余りではありますが、登録者数は既に4,000名を越え、平成26年度においては試料・情報等の分譲実績においても、顕著な成績を上げることができたと考えております。

○永井部会長

 ただいまの御説明に御質問、御意見をお願いいたします。

 評価の基準が少し変わっており、昨年まではAが標準でしたが、今年からはBを標準にしていただきたいということで指示がきております。Sが「特に顕著な成果の創出、将来的な特別な成果の創出の期待等が認められる」です。「特に顕著」というのがSで、「顕著な成果の創出」がA、「成果の創出」がBです。このように言葉が使い分けられております。

 これから研究開発法人になられて、論文の数と引用数が求められると思うのですが、その辺りについては、論文の数は少し増えているのですね。2013年の引用は少し立ち上がりはよさそうなのですが、どうでしょうか、その辺の論文執筆の活性化というのは、何か取り組んでいらっしゃいますか。

○国立長寿医療研究センター研究所長

 ほかのナショナルセンターに比べて、そもそも研究者数が必ずしも多くないという中で、正直申し上げて論文数に関しては苦戦しているところですが、先ほど申し上げたように、連携大学院等で若手の研究者をどんどん動員し、論文発信力も高めていきたいと思っております。

 一方、やはり研究開発法人として、出口を今まで以上に明確にするということもありますので、論文と併せて、特許や企業への導出、そちらのほうも頑張っていきたいと思っております。

○永井部会長

 ある程度、センター内でそういう教育なり、研修というのか、そういう活動もされていらっしゃいますか。

○国立長寿医療研究センター研究所長

 教育というよりも、エンカレッジするということは日頃、センター、研究所、各研究部で、かなり活発にやっているところです。

○福井委員

 臨床を志向した研究・開発にしても、担当領域の特性を踏まえた戦略的かつ重点的な研究・開発の推進も、人での成果が出てくるのはいつ頃を想定されていますでしょうか。

○国立長寿医療研究センター研究所長

 例えば診断機器の開発は、先ほど申し上げたように治験に向けての具体的な準備が始まったということです。

 それから、私どもは認知症を中核として研究・開発を進めているところですが、例えば診断、血液バイオマーカーの開発に関しては、比較的早い段階で実用化に持っていけるのではないかなと考えています。

 一方、何といっても世界的にまだ一薬とも開発されていない根治的な治療薬に関しても、是非3年から5年以内には、臨床試験に持っていきたいと考えております。

○深見委員

 臨床応用というところでお伺いします。小型のLEDの開発というところで、多くのお年寄りの方々が悩まされている歯周病を、こういう形で治療に貢献できるということは大変評価できることだと思うのですが、実際にこのLED装置がどのぐらい使われるようになったのか、ほかの施設等を含めて、どのぐらい普及ができるのか、又はできたのかという辺りはどうでしょうか。

○国立長寿医療研究センター研究所長

 写真でお示ししたのは昨年度に試作しました1号機ですが、まだ私どものセンター以外の臨床の現場で活用するというところまでは至っていません。現時点では、この試作機を使って、先ほど申し上げたように歯周ポケットに照射して、そこの歯周病菌の消滅をもたらせるかどうかの予備的な試験が終わって、有効性が期待できるという結果が得られたところです。

先ほどご紹介した、もう1つの光干渉の診断装置に比べて、そもそもが非常に小型ですので、こちらのほうがより早く実用化の段階には持っていけるのではないかと期待しています。

○深見委員

 それは大体どれぐらいの見通しですか。

○国立長寿医療研究センター研究所長

 治験薬とか、治療法の開発に比べると比較的医療機器の審査というのは短期間であろうと思いますので、これは期待ですが、2年、3年以内には実用化に持っていければと考えています。

○祖父江委員

 非常に頑張っておられる面が見えてきていると思うのですが、1つお聞きしたいのは、一番最初のところで「認知症・フレイル患者レジストリ制度構築」というところがありました。フレイルはなかなか定義がはっきりしないところもあるので難しいかもしれませんが、認知症などはオールジャパンでレジストレーションして前向きに見ていくというのは、ナショナルセンターの非常に大きな使命だと思うのです。それを効率的にやるとなると、国のバックアップ、例えばがん専門病院はがん患者を法律的にというか、レジストレーションしないといけないわけです。そういうコンセプトというのは、このレジストレーションに対して非常に全国的なモチベーションにつながるわけです。

 ナショナルセンターは国の政策を背負ってやる所ですので、例えばがん、法律化というところまではなかなかいっていませんが、最近は循環器もそういう方向で動いています。何か、そういう国の施策を巻き込んだ形で、レジストレーションをやっていく方向はお考えになっているかどうか。私は是非やっていただくといいかなという気はしているのです。

○国立長寿医療研究センター理事長

 実際にAMEDに関して、調整費で募集中の24日の締切りのものに出しており、オールジャパンのプレクリニカル、前臨床からMCI、あるいはケアの技術などの一貫した、認知症になるまでの一貫したオレンジプランに合致するような、オールジャパンのレジストリを申し込んでいるところです。

 祖父江先生の御指摘のとおり、ほかの疾患に比べて国民的な登録システムに対する法的な整備のバックアップが弱いのではないかというのは、正にそのとおりでございます。いわゆる認知症基本法といったものに対する提言は、前から構想はありますが、また政治の中にもいろいろな議連の方もいらっしゃるとお聞きしておりますので、機が熟したということであれば基本法に向けて、またレジストリをバックアップするようなものを関係省庁の力も得ながら、提案できればいいと考えております。

○祖父江委員

 一気に基本法まで持っていくのはなかなか大変だと思うので、循環器もかなり苦労しているみたいですので、もしできれば特定機能病院的な指定をする病院を作って、そこでレジストレーションを義務化といいますか、そういう段階を踏んだやり方が大事だと思いますので、是非それをお願いできると有り難いと思います。

○永井部会長

 ほかによろしいでしょうか。続いて、「医療の提供とその他の業務の質の向上に関する事項」、評価項目1-4から1-9までの御議論をお願いいたします。御説明をお願いいたします。

○国立長寿医療研究センター病院長

12ページです。「高度先駆的な医療、標準化に資する医療の提供」で、自己評価はSとしております。最初の赤ポツの高度先駆的な医療の提供の下にある、認知症に関して、アルツハイマー病のPET診断に関する先進医療Bの承認と開始が、成功として挙げられました。それについては、また後ほど詳しく説明いたしますが、そのほか骨粗鬆症に関しては、先進医療「定量的CTを用いた有限要素法による骨強度予測評価」を継続、あるいは大腿骨補強臨床試験を開始などの運動器、皮膚科は褥瘡に関して、聴覚、視覚の感覚器のほうも、これまでの成果を更に伸ばしております。歯科領域に関しては、今御紹介のあった成果が挙げられたところです。

 その中の一部を示しますと、左下の所にある脊柱管狭窄症の黄色靭帯に着目した研究です。黄色靭帯を解析した場合に、DNAメチル化解析をしたところ、靭帯が肥厚しているかどうかで、きれいに2つに分かれることが分かり、新しい分類を提唱させていただきました。

 また、右の「MRIで耳垢栓塞あり」という図がありますが、通常標準的に脳のMRIはたくさん撮るわけですが、その中で耳垢栓塞を診断するという試みは、今までされていませんでした。それを放射線科医が診断し耳鼻科医に知らせて、耳垢の除去により聴力が15dB改善する。世界で初めての試みだと思います。

13ページを御覧ください。「認知症のPET診断に関する先進医療のBが承認」です。国立研究開発法人での成果の最大化を図る具体例として、ファースト・イン・ヒューマン、医師主導治験、そしてこの先進医療の開発がありますが、そのうちの1つを前倒しで開発できたと思っています。FDG、糖代謝を示すポジトロン断層撮影は、緑の枠の所にあるように、アルツハイマー病又は前頭側頭葉変性症の診断に有効とされており、米国では既に承認されております。これを私どもの施設でもアルツハイマー病の患者、前頭側頭葉変性症の患者の2つの患者群で評価し、FDG-PET検査をし、髄液バイオマーカーを調べるという検査をしてから、1年後に診断を再評価して、髄液のバイオマーカーの検査の診断能力より、同等かそれ以上にFDG-PETが早期診断のアルツハイマー等の2疾患の鑑別に有利ということが示されましたら、この保険診療に活用される、すなわち髄液のような負担のある検査などはなしでできるという意味では、アルツハイマー患者の福音になるかと思います。

 ちなみに、左下にPETの図がありますが、左下に正常加齢の脳があります。上の脳の部分はアルツハイマー病ですが、黄色く輝いている所が脳の糖代謝が落ちている。これは特有な場所にあるということで、アルツハイマー病と診断されるということです。

14ページです。筋肉の加齢による衰えにサルコペニアという病名が付いて、注目されているところですが、診断としては、国際的な標準の診断法である二重エネルギーX線吸収法による筋肉診断の定着化と、そのデータベース構築、またCTによる筋別評価、新型握力計での瞬発力評価、3D動作解析による評価等、筋肉の診断に対する新しい成果を上げています。

 治療に関しては薬剤が非常に興味のあるところですが、左側にあるアクチビンII型の受容体競合阻害薬の世界的治験を受託しております。アクチビンII型受容体は、ミオスタチンのシグナル伝達の主なものであり、これが負に働いて筋の合成を抑えているわけですが、その阻害薬によりポジティブに筋の量が増えるという作用が期待でき、筋ジストロフィーなどでもこの薬剤が治験されているところだと思います。そのほか、骨粗鬆症薬の筋肉効果を検証し、エルデカルシトールの筋力バランス効果の治験が120例で登録終了し、アレンドロネートやアルファカルシドールも筋肉の量が増えるということを、世界で初めて論文化しております。

 しかし、薬剤の治療はまだ先になるかと思いますが、実際的に始められているのは運動訓練です。その運動訓練のロボット化を右に示しております。装着型、バランス訓練型、上肢訓練型、様々なロボットがありますが、臨床試験でバランス訓練ロボットは26例の高齢者で、従来法よりも有意な改善を得ることを結果として得ております。

15ページです。「患者の視点に立った良質かつ安心な医療の提供」。自己評価はAです。左側の実績の黒ポツの最初の多職種構成医療チームの活動です。認知症のサポートチーム、栄養サポートチーム、褥瘡対策チーム、転倒転落防止チーム等のカンファレンスは、216回を数え、セカンドオピニオンの実施も5件を達成しております。

 認知症を患う人を支える家族の方への小冊子を配布し、患者の意思決定支援や患者家族のその他対応を推進しております。特に、平成26年の特徴のあった実績としては、右側にある入院時から地域ケアを見通した医療の提供があります。先ほど話題になったフレイルという病態は、高齢者にはかなりの割合で合併しております。例えば肺炎で入院して、肺炎の治療が済んだからすぐに自宅に帰れといっても、なかなかそれができない高齢者は多いわけですが、そういう方々を支えるために、平成24年から活動させている回復期リハビリテーション病棟がありますが、平成26年は地域包括ケア病棟を立ち上げ、回復期リハビリの適用にならないフレイルの患者をこの病棟で治療すると、そのグラフのような機能自立度の改善を得て、84%の在宅復帰率を得ております。

 次に進みます。16ページです。「その他医療政策の一環として、センターで実施すべき医療の提供」で、自己評価はAです。最初の黒ポツ、医療者・介護者・家族等を交えたカンファレンスの実施件数は235回です。平成21年度比で82.2%の増加です。認知症を持つ患者を介護している家族に対しもの忘れ家族教室も行っており、261名に開催しております。2番目の黒ポツは在宅医療支援病棟の新入院患者数で、225人にとどまりました。平成21年度比で8.6%の増加ということで、低下を示しております。これに関しては、赤ポツの2つ目、モデル的な在宅医療の提供という部分があります。これは在宅支援医療病棟を中心としたモデル的在宅医療の提供により、この6年で登録患者数は75名から172名、登録医も12名から107名と大幅に増えております。したがって、在宅療養を支える力が向上した背景があるかと思います。そして、6年間の在宅復帰率は平均90%、地域平均の3倍の在宅死亡率33%という結果を得ております。

 最後に、赤ポツのモデル的な人生の最終段階における医療の提供です。がんと違って、非がんの人生の最終段階における医療支援モデル医療を提供するエンド・オブ・ライフケアチームの活動を御報告します。平成26年度は104件で、累積508件がありますが、その解析を見ますと、非がんは40%、全国は3%という際立った違いを示しており、依頼内容も非がんは家族ケア、意思決定の支援が70%で1位です。苦痛緩和に関してはそれに次いだものとなっております。そういった際立った違いを持つ対象に対し、このチームが介入すると、疼痛や浮腫等の有意改善が得られております。

○国立長寿医療研究センター企画戦略局長

 次に1-7、人材の育成について御報告します。この分野での、日本全国の医療の実践者あるいは研究者に対する人材育成の要求はますます高くなっております。私どものセンターでは、「平成26年度実績」の冒頭にありますように、まず内部組織として長寿医療研修センターを設置いたしました。私どもは小さな独法ではありますが、機能別のこういったセンターを作ることによって、特にこの研修機能というものを高めていこうという形が実現したということです。現在、その研修センターに基づいて様々な研修を実施しております。

 その中で、特に平成26年度において目覚ましい業績であったものとして、赤ポツの所の「リーダーとして活躍できる人材の育成」、その下の、「人生の最終段階における医療に係る人材育成事業」を新しく実施したということを説明させていただきたいと思います。今ほど原田院長から、当院での取組として最終段階における医療の提供をしているということがありましたが、この実績を基にして、厚生労働省で平成26年度から実施しましたこのような人材育成事業の中核機関として長寿が位置付けられました。

 全国のモデル医療機関を対象としまして、そこで実際に最終段階における医療に携わる相談員の育成プログラムを開発し、実際に研修を行い、それぞれのモデル医療機関での進捗の管理といったことを私どものセンターで行っております。このような研修の成果を含めて自己評価を全体Aとさせていただいております。

 次のページについては院長からまたお願いします。

○国立長寿医療研究センター病院長

18ページです。「医療の均てん化と情報の収集・発信に関する事項」です。これは自己評価をSとさせていただいております。平成26年度実績の最初のネットワーク構築の推進という部分の黒ポツの最初、認知症サポート医の養成研修を5回開催ということです。右上の棒グラフを見ていただくとお分かりかと思いますが、平成21年度に402名で開始したこの研修は、平成26年度は右肩上がりで増えまして、642名の終了者を数えました。開始してからの累計は3,874名となりました。もともと平成29年度末に4,000名という旧オレンジプランの目標値がありましたが、それを前倒しで達成できる見通しとなりましたので、新オレンジプランでは目標が更に1,000人引き上げになっています。

 また、3つ目の丸ポツにありますように、認知症の初期集中支援チームの専門医師の要件にも、この認知症サポート医であることが必須になっており、この認知症サポート医の重要性がますます高まっているところです。

 また、このような認知症サポート医を教育するという活動は、そう世界的にもありませんので、それを英文論文にしまして、左下にありますが、GGIという雑誌に投稿して発信しております。

 真ん中の赤ポツの情報の収集・発信ですが、パンフレット等のホームページ掲載等の工夫を積み重ねまして、ホームページのアクセス数、110万に近い数が達成できました。下の真ん中のグラフを見ていただくとお分かりかと思いますが、平成21年度から徐々に右肩上がりでアクセス数は増えておりましたが、平成232425年度は上がり方はやや緩いということでしたが、平成26年度は前年に比べて20%、平成21年度に比べて300%の増加を達成しております。その効果の主たるものは、右にありますホームページの全面リニューアルが1215日に行われたことです。前の少し堅く古いホームページから非常にきれいで扱いやすいホームページになった結果で、アクセス数が増えたと考えております。以上です。

○国立長寿医療研究センター企画戦略局長

 最後になりましたが、1-9「国への政策提言に関する事項その他の事項」です。自己評価はSとさせていただいております。国への政策提言はセンターの大きなミッションですが、通常は様々な研究費を活用した研究の成果などにおいて、その報告書を基に提言をしておりますが、平成26年度においては、これを非常に大きく上回る実績がありました。そこにありますように、まず、認知症サミット日本後継イベントの開催です。201312月にロンドンでG8の保健大臣によるサミットが行われました。その中で様々なことが決まった中で、一度だけで終わらせないで、各国で後継イベントを開こうというのが認知症サミットの大きな成果として上げられました。

 その日本で行いました「新しいケアと予防のモデル」という後継イベントについて、厚生労働省が長寿医療研究センターなどと共催で行うということで、我々はこの後継イベントの開催において極めて中心的な役割を果たしております。平成261157日に開催されています。この場で安倍総理大臣が御出席になられまして、冒頭の挨拶の中で、認知症についての新たな国家戦略を策定すべしといった発言もなされるという極めて意義深い会議になったわけです。これを受けて、新しい認知症に関する国家戦略の策定が始まりました。私どもとしては、平成2612月にこの新オレンジプランの策定に向けて、様々な事項についての政策提言を行って公表させていただいております。これについても相当数の事項が成案の中に取り込まれていたと感じております。

 それから、「安倍内閣総理大臣との意見交換(H27.1.27)」とありますが、この日が新オレンジプランが策定された日です。右側の写真にありますように、当事者の方お二人を含めて、福祉の立場の代表の方、医療の立場の代表の方と共に研究開発を代表する機関として長寿医療研究センターから鳥羽理事長が出席いたしまして、今後の認知症施策の進め方についての提言を総理に直接させていただいております。これらの成果を踏まえましてSとさせていただいております。この項目一連について説明は以上です。

○永井部会長

 それでは、ただいまの御説明について御質問、御意見をお願いいたします。

○内山部会長代理

 直接関係ないのですが、サポート医研修を世界に発信等々で、この雑誌が2回か3回出てきますが、これはシンポジウムか何かをやられた特集ですか。サプリメントですよね。

○国立長寿医療研究センター病院長

 この雑誌は2014年に刊行されていますので、ちょうど平成26年度の実績になるかと思いますが、シンポジウムというわけではなくて、今までの経緯を報告したということです。

○内山部会長代理

 分かりました。

○国立長寿医療研究センター理事長

 先ほどのG8の後継イベントのときに、日本の認知症の研究、医療などについてまとめたものを資料として出したいということで、各国の方に、そのときに間に合うようにお配りした特集号です。

○内山部会長代理

 了解しました。これも論文数に含まれていると解釈してよろしいのですか。

○国立長寿医療研究センター理事長

 はい。

○内山部会長代理

 分かりました。

○祖父江委員

 どうもありがとうございました。人材育成のところでちょっと教えていただきたいのですが、連携大学院による研究者育成というのが出てきているのですが、これは非常にたくさんの大学と連携大学を結んでおられて非常に良いなと思ったのですが、名古屋大学の場合は私自身がよく知っているのですが、実際にはどれぐらいの大学院生が行き来しているのかというのを教えていただけると有り難いです。

○国立長寿医療研究センター研究所長

 修士課程、博士課程合わせまして、毎年大体4名から5名です。

○祖父江委員

 これは各大学ですか。

○国立長寿医療研究センター研究所長

 はい。学生は、やはり名古屋大学、名古屋市立大学がほとんどです。

○祖父江委員

 そうすると、九州とか北海道とかいろいろあるのですが、そこはまだこれからということですか。

○国立長寿医療研究センター研究所長

 そうですね。九大、北大も歯学関係なのですが、比較的まだ年数が経っておりませんので、これからというところだと思います。

○祖父江委員

 そうですか。もう1点よろしいでしょうか。これはナショナルセンター全体に関わる問題で、実はがんセンターのほうから確かこの間、要望書のようなものが出たと思うのですが、新しい専門医制度の中で、ナショナルセンターをどういうふうに位置付けていくのかというのは、かなり重要な問題ではないかと思っています。この長寿医療研究センターは、何かその辺りのお考えがあるかどうかお聞かせいただけると有り難いです。

○国立長寿医療研究センター病院長

 新専門医制度の変革に併せて、私どももまずは基幹施設になれるかどうか、あるいは連携施設になれるかどうか、施設内でアンケートを取って、大体の状況を把握しております。基幹施設のハードルはかなり高いものですから、私どもの所ですと、研修医もまだ数少ないような状況で、そこにレジデントでこういう状況に対応するということに関しては、まだまだ少し高い壁があります。ナショナルセンター全体でそういう取組基準等で私どももそこに入っていければ、それが一番良いかと思っております。連携施設になれることは間違いないのですが、基幹施設になるという部分に関しては、ある科は条件を整えておりますが、全部ではないというところが現状です。

○祖父江委員

 がん研究センターの場合には、一遍、基幹施設としてのプログラムを作ってみて、それで判断を仰ぐというような方向に今なりつつあるようですが、今、先生がおっしゃったように、基幹施設としてはちょっとなかなか難しいというお話が出ております。是非、教育はそこを含めて考えていただけると有り難いと思っています。

○福井委員

2点ほど伺いたいのですが、15枚目のスライドの左上で、セカンドオピニオンが5件と書いてありますが、これは1年間で長寿医療センターの病院全体で5件あったということですか。

○国立長寿医療研究センター病院長

 そうです。

○福井委員

 もっとあってもいいように思うのですが。

○国立長寿医療研究センター病院長

 私どもの施設に関してはセカンドオピニオンの内容は、認知症に関係するものがやはり多いと思うのですが、それはもうもの忘れセンターのほうがほとんど吸収してしまって、このセカンドオピニオン外来だった所には、初年度より本当に数が上がらなかったものですから、老年病とがんも含めてということで平成26年度は体制を立て直して、平成25年度よりは数が増えたという状況です。通常、例えばがんで、がんの専門の病院がセカンドオピニオンをたくさん受けるという意味とはちょっと違いまして、老年病あるいは老年のがんも含めた相談、セカンドオピニオンという立場ですと、ホームページ等での広報はしているのですが、このような数で、目標値は達成しておりますが、なかなか数が増えてこなかったという現状でした。

○国立長寿医療研究センター企画戦略局長

 少し補足します。病院全体でのセカンドオピニオンが何件あったかということではなくて、実は私どもの病院はセカンドオピニオン外来というものを特別の外来として持っていまして、そこの実績をここでは挙げてありますので、病院全体でセカンドオピニオンはこれだけかというと、ちょっと感じが違うかと思います。

○福井委員

 もう1点よろしいですか。16枚目のスライドの一番最後の所の「モデル的な人生の最終段階における医療の提供」で、エンド・オブ・ライフケアチームと言いますが、これは緩和ケアチームと似たようなことを、特に高齢者の問題について行っているということなのでしょうか。

○国立長寿医療研究センター病院長

 おっしゃるとおりです。いわゆる緩和ケアチームが、痛みだけではなくて倫理的な視点などを含めて、高齢者に対して依頼があったときに回って相談に乗っているという体制ですので、基本的に活動しているチームの構成は緩和ケアチームの方々です。しかし実際は、ここのグラフにありますように、がんの患者さんに対する依頼とかなり違いますから、対処する内容も異なっています。ですから、これから先、高齢者に対するこういう緩和ケアチームは、こういう内容に変わっていくという方向性を示せるのではないかと考えております。

○福井委員

 特別な病棟があるわけではなくて、全ての病棟に出掛けて行ってということでしょうか。

○国立長寿医療研究センター病院長

 そうです。依頼がありましたら、週に1回の巡回があるのですが、そのときに対処するという方式でやっております。

○藤川委員

16ページの在宅復帰率なのですが、これは地域平均の3倍と書いてあって、下のモデル的な人生のほうは、全国3%ということで、ちょっとエリアが違うのです。これは逆に、6年間在宅復帰率のほうの全国平均がどれぐらいで、下のほうは地域平均がどれぐらいということが分かるのであれば教えていただきたいというのが1点です。

 もう1点は、認知症サミットのことなのですが、これは私も新聞等で見て、地道に研究をやっていただくことも大事だけれども、認知度を上げることも非常に大事なことではないかと思ったので、頑張っていただきたいと思ったのですが、厚生労働省と認知症介護研究・研修東京センターとの共催ということなので、どれぐらいセンターがこれに寄与しているのかとか、何人ぐらいの方がこれに携わって努力されたのかということをアピールしていただければと思います。

○国立長寿医療研究センター理事長

 在宅死亡率の全国平均は2.5倍、地域が、あの地域が低いものですから3.3倍。非がんのその地域は分かりませんが、同じくらいだと思います。

 それから、G8サミットです。厚生労働省の方もいて言いにくいのですが、大体、全体の9割は長寿がやったと考えていただければ結構だと思います。

○深見委員

 人材育成のほうに戻りたいと思うのですが、18ページ前後です。いろいろな形でリーダーを育てる、また、認知症のサポート医研修を行うということで、非常に人材育成にも積極的なところは評価されるのではないかと思いますが、実際に受入れをするに当たっては、医学生というところも書いてあるのですが、研修医クラスなのか、それともリーダーを育てるときには実際にはどの程度のレベルのお医者さんを受け入れているのかということ。それから、研修を受けた後に、それがどういう形で反映されて、実際のキャリアとして生かされているのか。また、在宅との関係もありましたが、キャリアとしてのこういった実績等がどういうふうに生かされているのか、その辺りをお伺いしたいと思います。

○国立長寿医療研究センター企画戦略局長

 人材育成について、そのターゲットなり、育成した後についての御質問でした。幾つかの段階があると思っております。1つは、長寿の分野の医療に対して多くの理解あるドクターを育てたいというところから、まずスタートしまして、老年医学サマーセミナーのように、学生さんを対象として、老年学の分野にたくさん人が入ってくることを望むといった研修が1つあります。

 もう1つは、長寿の分野における先端とは何かということにも絡むわけですが、これから何しろ身体の病気で入院しても認知症を持っている人が少なくないという時代ですから、なるべく地域の中で認知症や高齢者に特有の医療の状況が分かるお医者さんを育てる必要があるだろうということで、地域の実践リーダーを育成するというのが認知症サポート医であり、それから、在宅関係の様々な医療に対する研修を行っています。

 特に基幹となるサポート医については、研修して養成するだけではなくて、養成した後の、実際どのくらい上がっているかということについても別途調査しておりまして、認知症の診断や、その後の予後について、サポート医研修を受けている人が相当、成果、成績が上がっているといったような実績も見られるようになっています。

 あとは、例えば看護では、この分野での最先端の看護を、本センターにおいて研修をしています。一様ではありませんが、要は、1つは、地域でこれから本当に必要とされる長寿医療の先端を担えるドクター、医療関係者を養成していくことが一番のミッションではないかと思っております。

○深見委員

 比較的若いお医者さんを対象にしたコースが多い、という理解でよろしいのでしょうか。

○国立長寿医療研究センター企画戦略局長

2つありまして、長寿医療研究センターの中に入っていただく方は、もちろん若い人が中心になっていますが、それだけではなくて、実際に活躍されていらっしゃる方に更に上乗せ研修をするというようなものも別途ありますので、そちらのほうについては必ずしも若い人だけということでもないと思います。

○斎藤委員

 今年から研究開発にウエートを置くという方針が決まりました。今まで御説明を頂いたところが、昨年との違いが私には余りよく分かりませんでしたので、どの辺りをフォーカスしてウエートを上げたのかというのを、私レベルに分かるようにお話を頂けたらと思います。

 論文数の引用の数をざっと拝見しますと、特に昨年増えてきたという傾向が見られない。どちらかというと漸減のほうが多いような気がします。ということは、新しい論文が余り出なかったのかなという気がしました。研究開発に対する方針のシフトがどういう形で表れているのか、もう一度御説明をお願いできますか。

○国立長寿医療研究センター研究所長

 平成26年度の業績の紹介というよりも、むしろ今年度からの研究開発法人としての姿勢というようなことの御質問かと思います。先ほど少し御紹介したかもしれませんが、やはり、出口が非常に重要だと思うのです。その出口としては、基礎研究をきちんと論文にすることはもちろん1つです。しかしながら、そればかりではなくて、実用化という非常に重要なテーマがあろうかと思うのですが、私たちセンターの中だけで完結する事業や研究開発というのは少ないと思われ、企業との連携等が極めて重要だと考えています。

 それで、昨年度辺りから、その辺のところは相当、私どもは意識しまして、先ほど申し上げたように、企業との共同研究で、例えば研究資金も御提供いただいて、一体としてやるということに関しては、ほかのナショナルセンターに比べても遜色のない実績が出始めているのではないかと考えています。

○内山部会長代理

 今のこととも関連して、職員数が500人ちょっとで、321床という、ナショナルセンターの中では一番小さな規模としては非常に頑張っておられると思うのです。この中で、結構、研究所のほうで、いわゆる純粋な、ベーシックな研究者という方もおられるのでしょうか。それとも、皆さん臨床の中でうまく研究を取り入れながらやっておられるのでしょうか。

○国立長寿医療研究センター研究所長

 ありがとうございます。企業との連携、共同研究に関しては、そこに携わる職員はほぼ病院と研究部門で大体半々ぐらいのイメージで考えていただければよろしいかと思います。

○内山部会長代理

 研究所だけに所属されている方もおられるのですか。

○国立長寿医療研究センター研究所長

 もちろんそうです。

○祖父江委員

 今の話とちょっと連続するのですが、研究所のほうの、特に基礎系を含めた研究所の方々の、今後はやはり研究型にシフトするとなると、もちろん臨床研究とリンクしてやるという方向が非常に重要だと思うのですが、やはり基礎系に軸足を置いた人も、今後、研究所も含めて、増やしていかないといけません。その資金をどこからどういうふうに持っていくか。多分、外部資金を獲得してということだと思うのですが、今、病院もものすごくもうかっているというわけではないですよね。それをどうやって捻出して、どういうふうにやっていくのかという何か構想は。研究型にシフトしようと思うとなかなかペイできない、お金を取ってこないといけないのですが、そこは何か方策を考えておられるかどうか。

○国立長寿医療研究センター研究所長

 それは非常に厳しいテーマかと思います。ただ、幸い、企業の方たちもかなり基礎研究、基礎老化研究の発展型として、いろいろな出口を考えてくださって、そこへの支援は結構あるのです。額こそものすごく多くないですが、恐らくここ12年、相当数の基礎研究、基礎老化研究が企業からの支援を頂いて始まったというところです。

○永井部会長

 よろしいでしょうか。それでは続きまして、「業務運営の効率化、財務内容の改善及びその他業務運営に関する事項」、評価項目で言うと2-1から4-1について御説明をお願いいたします。

○国立長寿医療研究センター企画戦略局長

 短時間で御説明させていただきます。平成26年度は、まだ旧の独立行政法人通則法で、何しろ効率化が最大の目標で、研究開発の最大化が目標になったのは平成27年度からということですので、平成26年度についてはまだ効率化優先の時代であったということを前提でお話させていただきます。

 まず2-1です。「効率的な業務運営体制」は自己評価Bとさせていただいております。業務運営体制の流動化ということで、新たに2つのセンターを創設しております。先ほども少し申し上げましたが、小さな規模の独立行政法人ではありますが、臨床研究推進センターや研修センターといった間接支援の部門を設けて、研究者や臨床家がそれぞれの役目に集中できる体制を作り、かつ、全国にもこの成果を反映していくといった方針での体制の見直しをしております。

2-2です。「効率化による収支改善と電子化の推進」ということです。平成26年度の決算は、交付金が減り、診療報酬の見直しが行われ、大変厳しい環境ではありましたが、結果的には経常収支率101.2%ということで黒字を確保しております。また、一般管理費比率については、15%以上減らすべしという目標に対して21%も減らしております。未収金比率は0.03ということで、右下の真ん中にグラフがありますが、平成23年度以降、黒字に転じまして、平成26年度まで黒字ということでした。

 次のページの平成26年度の財務内容です。今ほど御覧のとおりです。23ページにグラフにして示したものがあります。医業収支と医業外の収支に分けております。平成25年度と平成26年度を比較して、医業収益は微減しています。8,500万円の減少となっています。主な理由としては、外来のほうは人数が若干減って、単価が若干上がったということでほぼ同じですが、やはり施設基準の見直しの影響がありまして、全体的に入院のほうの単価が下がったということで、営業収益の引き下げにつながっています。一方、医業費用は、人員強化等による人件費の増があり、全体として3億余り増えています。結果的には33,200万円の収支差黒字を確保しております。これに医業外の収支を合わせまして、総収支差11,000万円ということでした。ということで、財務収支については自己評価はSとさせていただいております。

24ページです。評価項目2-3「法令等内部統制の適切な構築」です。例年に引き続き、会計監査人、監事と連携した監査の実施等を行いました。これらについては自己評価はBとしております。

 なお、ここで公表事項が1件ありましたので、口頭で恐縮ですが御報告させていただきます。平成26年度において、USBメモリが1本なくなったという事件がありました。これについて8月に公表しております。USBメモリの中には、患者さんのお宅を訪問したときの動画が入っていた可能性があるということで、探したけれども見つからなかったということです。患者様には経緯を御説明し、了承を頂きました。これまで情報が外部に流出した気配はありません。センターの中では、研修の実施、自己保管状況の確認等の再発防止策を取ったという案件を、昨年8月に公表しておりますので、ここで御報告させていただきます。

 次に3-1です。ここでは自己評価をAとさせていただいております。先ほどからもありましたが、平成27年度からの研究開発法人化を見越しまして、出口の戦略を強化した結果、

共同研究の獲得については、右のほうのグラフにもありますように、契約ベースで大きく増えております。16件、22,056万円ということで増えております。発足当時が極めて少なかったことと比べまして、100倍近い伸びになっているということです。なお、そのほか寄付金等も含めまして、外部資金の獲得を積極的に進めているといったところです。

 なお、剰余金については、当期剰余金11,000万円を含め、未処分利益については、その対象を次の計画期間の病院建設等も控えておりますので、繰り越しをさせていただくことにしております。

 評価項目4-1「その他主務省令で定める業務運営に関する事項」です。これも自己評価はAにさせていただいております。通常のものとしては人事システムの最適化、人事に関する様々な取組を進めておりますが、ここで1点御報告したいのが、老朽化した病院施設の更新整備です。最後のページに建替計画の概要があります。実は、この病院の建替計画については、国立時代にはまだ建替計画は全くありませんで、独法化した後、その経営状況等も見ながら、この建替計画を今回完成するに至ったということです。現在、実施設計に着手しており、本年度末、平成282月には、まずは外来棟の建替えに向けて建築工事を着工するといった運びになっております。運営に関する事項の説明は以上です。

○永井部会長

 それでは御質問、御意見をお願いいたします。

 最近は高価薬が非常に多いのですが、医薬品医療材料の経費率は変わっていませんか。何パーセントになっているか。特に外来に患者さんが移行すると、収入は増えても経費がかかってきます。その辺りの状況を教えていただければと思います。

○国立長寿医療研究センター企画戦略局長

 後で数字のほうは御説明しますが、幾つかの病院で、消費税の引上げの関係で、かなり大きな影響があったかと思いますが、当方はそういったことも特にありませんでしたので、経費率が急に上がっているというようなことは余り目立ってはおりません。

○永井部会長

 経費率はいつも把握しておくのが非常に重要だと思います。

○国立長寿医療研究センター企画戦略局長

 はい。恐れ入ります。

○祖父江委員

 病院の医業収入のことについてお聞きしたいのですが、黒になっているのは非常に喜ばしいことだと思います。今後、研究型にシフトするときに、病院をどう位置付けていくかという問題なのです。例えば国立がん研究センターや循環器病研究センターというのは、研究志向のパターンがそのまま患者に直結しているということで、病院イコール研究フィールドということなのです。まず、そこをどう考えるか。

 それから、収支の面から言うと、儲けがこの医業収入をアップさせて、その余剰金というか、それで研究に使うということはセグメントでできないのでしたね。ただ、そういうことを考えているセンターもどうもあるらしいのですが、その辺はどういうふうに今後、病院として考えていくのかというのが1点。

2点目は、新病院には非常に期待しているのですが、この間ちょっとお聞きしたのですが、出口志向ということをおっしゃっていたので、非常にそういう形の病院になるだろうという感じが見えているのですが、治験のための病棟やベッドはどれぐらいあるのかを教えていただきたい。

○国立長寿医療研究センター病院長

 最初の質問と2つの質問を重ねてお答えします。新病院の計画に、今度は2月から着工する予定なのは外来棟なのですが、そこのオペ室の所に、再生手術や感覚器センターというものを作る予定の部分にも、そういう再生医療を行うような部門を設ける。ただ、そこはお話もありましたように資金のかかることですので、そこに最初から資金を持つよりも、それが可能になった場合に、そういうことを実現できるような仕組みを整えていく。それが資金や人材がそろうまでは、研究所の既存の施設でそれをまかなうというような考えを持っております。

 やはり、医業収入をもって、それを研究に回すということはなかなか難しいと思います。病院における臨床研究の研究資金というのも、やはり外部資金等も含めて研究費をまかなうということが。

○祖父江委員

 ただ、外部資金は最近はAMEDなどだと、なかなかその目的志向型が非常に強くなっていて、研究そのものに使うのはいいのですが、基盤的な経費が非常に厳しい状況になってくると思うのです。だから、この病院の位置付けというのが今後、非常に重要かなと思っています。

○国立長寿医療研究センター病院長

 そういう意味では私どもに配付される長寿医療研究開発費は、病院に対する臨床研究に対する資金の非常に貴重な位置付けになっています。ただ、年々、額が減っていますので、そこがいつまで持つかどうかの疑問はありますが、やはり、開発費のシステムというのが、私たち病院が研究費をある程度そこで得ながら、通常の臨床研究の資金に乗らないようなものをそこで実現できるというようなチャンスがあるかと思いますので、そこを是非とも今後はむしろ伸ばしていただきたいと思っております。

○国立長寿医療研究センター理事長

 先生から病院の在り方というのですが、研究開発型法人になって、病院で利益を得るのではなくて、研究を助けるような病院でいいのではないかと。ところが、病院を建てるときには、病院の上がりで、何年計画でどれだけ返せるかということで財務省からお金を頂くわけです。したがって、病院が黒字でないと、今のところどの研究開発法人も、新しく外来も病棟も建ちません。ですから、そこの変換がない限り、病院は黒字を目指して、そこの中で新病院計画を立てていかなければいけない状態だということを、是非御理解いただきたいです。

○祖父江委員

 そこはどこも同じことなので。

○永井部会長

 この間、臨床研究中核拠点の案内がありましたが、あれはどのくらい満たせるか、御自身で検討されましたでしょうか。

○国立長寿医療研究センター企画戦略局長

 まず病床数が足りないので。

○永井部会長

 そこで駄目なのですか。

○国立長寿医療研究センター企画戦略局長

 はい。

○福井委員

 評価の参考にしたいのですが、スライドの212223に関わるところの自己評価がSになっていますが、今回の新しいクライテリアで、特に研究開発業務以外は、計画値の120%以上で、かつ、質的に顕著な成果が得られている場合にSとしているのです。これは目標値の120%以上を達成していると評価されているということでしょうか。

○国立長寿医療研究センター企画戦略局長

 特に2-2については、財務体質について評価してSとしたつもりです。20%ということですが、目標は100%なので、では120%を上げるとSなのかということになるか。算数だとそういうことになるわけですが、ナショナルセンターとして20%の利益を上げるというのは、それはそれでちょっと別の意味で違うのではないかという気もいたします。そこは必ずしも100×1.2というわけではないと。この全体の環境の中で、4年連続の黒字を達成し、通期として黒字を達成し、かつ、新病院の計画まで着手できるといったことについて、そういう収支を上げてきたということについては望外のものとして評価していいのではないかということで自己評価をさせていただいたところです。

○内山部会長代理

 お話を伺っていて、321床という病床で、病院の収益もずっと上げておられることに感心しています。この中で、病院の建替えというのは大変な事業だと思うのですが、今後の病院運営を考えるうえで、もうこれ以上患者数は増えない、というのは失礼な言い方ですが、やはりキャパシティに限りがあるわけですよね。収益も右肩上がりでずっとはなかなか難しいと思うし。一方で、研究開発法人としての役割を担っていて、しかも運営費交付金は年々減っている。このような状況で、重要なナショナルセンターの1つとして、どのような将来的なストラテジーを持っておられるのか。評価と直接関係のないことかもしれませんが、よろしくお願いします。

○国立長寿医療研究センター理事長

 病院は、これからも右肩上がりを目指しています。それは、各診療科がより疾患別に特色のある医療、研究で特色を出すことによって、医療圏の拡大、特殊な疾患の治療、診断などで、もっともっと増やしていきたい、右肩上がりにしていきたいと考えております。

○国立長寿医療研究センター監事(藤井)

 今、理事長・総長から、そういう姿勢なのですが、もう1つは、国立の時代からの医療未収金がありまして、そう多くはない3,000万円程度なのですが、それについて、全額回収できるように、これは今年度から取組を始める。回収するということは、そういう医療未収金を発生させないということにもつながりますので、漏れがない、漏れたものは回収するという姿勢で監事としても取り組んでいきたいと思っています。

○深見委員

 経営努力ということを非常に感じるのですが、診療の中で、PETを使ったり、MRI等々、非常に高度な医療を行って、アルツハイマー等の診断に役に立てています。そういう診断技術というものが一般的になっているということは、経営に対してはプラスなのでしょうか、それともマイナスなのでしょうか。実際に非常に高額な機械を入れなくてはいけないことと、そういったことを診療の中でどの程度回収できるのか。そういったバランスから考えると、こういった方向性を持っていくということが、経営の面では良いことなのでしょうか、ということをお伺いします。

○国立長寿医療研究センター病院長

 認知症、もの忘れセンターが成功しているのが示していると思うのですが、そういう認知症に対する診断に対して、通常の標準的な診断にプラスして、高度な技術を持つようなものをする。それは当然、保険診療の範囲内で行うことですので、それを基に患者さんにお返しできる情報はかなり質の高いものになります。私どももそうですが、患者さんや家族の方も満足した質の高い医療をお返ししているという関係では、やはり高度な技術を使うことで、研究もそこでレベルが上がるし、診療報酬上の収入も上がるという部分はあります。

 ただ、やはりそういう機器は非常に高いものですから、今度の新病院ですぐにそういうものを新しくするなどということは一切考えておりません。既存の物を使えるだけ使って、どうしてもというときにだけ新しい機器を使うというふうに、医療経済的な視点は厳しく考えて、そういうものの計画を立てたいと思っております。

○藤川委員

 先ほどの収支の問題なのですが、確かにこの状況で1億円以上のプラス、それで新しい病院の計画もやっていらっしゃるというのは評価に値する部分はあると思うのですが、運営費交付金の割合というのは、ほかのセンターに比べて非常に高いという点はどうしても無視はできない部分もあると思うのです。その運営費交付金の執行を着実にやっておられるということは確かだと思うのですが、その部分を考えてしまうと、なかなかSというのは難しいのではないかという感想を持つのですが、いかがでしょうか。

○国立長寿医療研究センター企画戦略局長

 運営費交付金の比率ですが、まずベースになるのは全体の事業費ですよね。それは例えば1,000何ベッドを持っている病院がある所と、300何十床の病院を持っている所では当然、分母が違うわけなので、それをもって率が高いからというような形になると、では研究所の研究勢力の維持というのも病床数に応じてやればいいのかというと、そこは必ずしもそういう運用ではなかったわけです。ですから、もちろん、いろいろ配慮を頂いているのだろうとは思いますが、病院の病床数の違いを捨象して、全体の率だけで判断するのはちょっと違うのではないかと思っております。

○永井部会長

 いかがでしょうか。今度は法人が変わるわけで、いろいろな経営的なことを整理しないといけないのでしょうね。多分、未払金などというのはあってはいけないのでしょうから、そういうところの整理は大丈夫でしょうか。未収金のお話がありましたが、未払金のことに対しては年度を越えて、多分、払えないと思うのですが。

○国立長寿医療研究センター企画戦略局長

 今回の独法通則法の改正で法人の名前が変わりましたし、目標とするミッションも変わりましたし、若干、随契ができる範囲が広がるなどといった違いはあると思いますが、拠って立っている会計基準は変わったという話ではないと思いますので、もちろんいろいろなもの、起きてはいけないものは小さくしていくのは当然のことですが、何かそれで急に変わったということではないと私どもとしては理解しております。

○永井部会長

 そこは特に問題はなかったということですね。

○国立長寿医療研究センター企画戦略局長

 はい。

○祖父江委員

 病院の収入をこれからどう上げていくかということと、研究の位置付けとして病院をどう位置付けるかということ。1つは、例えば国立大学法人などは、結構余剰金を作って、それを臨床の枠組みの中の研究にどんどん再回転しているというような、例えば人件費などにも相当使っているのです。ですから、そういうやり方はあり得るのではないかとは思うのですが、これは同じ法人でも厚労省と文科省はちょっと違うかもしれませんが。そういう、今後どう計画していくのかというのを是非また聞かせていただけるといいなと思います。

 研究型に行くものですから、今までのこの形だけでは、今は黒なのですが、今後それをどう持っていくのか。皆さん34人の方が質問されたと思いますので、是非またそれを聞かせていただけるといいなと思います。今すぐでなくても結構ですので。

○国立長寿医療研究センター企画戦略局長

 大きな方針の話は別としまして、御指摘のあった積立金のことですが、我々のNCの法律では、余った剰余金は返すというのが前提なのですが、次の中期計画期間中に具体的に何か使うものがあればそちらで使っていいということになっています。今回、病院の建設でいろいろな建物や医療機械の更新が必要になるということで、厚労省に財務省と協議していただきまして、ほとんどの部分が来期も使えることに変わったとなったところです。当面そういうことができたということは大きな成果だったと思います。

○祖父江委員

 最後のときのディスカッションのときに、そういう法律を変えろとは言いませんが、やはり研究型にシフトするには、今おっしゃったようなバックグラウンドを変えていくという作業が非常に重要ではないかと思っておりますので、是非また聞かせていただけると有り難いです。

○永井部会長

 ありがとうございます。時間になりましたのでヒアリングはここまでで、理事長、監事さんからのヒアリングということで、まず法人の監事さんから業務の監査結果等を取りまとめた「監査報告」について御説明いただくとともに、監査等を踏まえた現在の法人の業務運営の状況、今後の課題、改善方法についてコメントをお願いいたします。最初に事務局から、法人の監事及び監査報告についてお願いします。

○医政局医療経営支援課長補佐

 簡単に、法人の監事、監査報告について説明いたします。監事が監査等において把握した業務の運営状況や問題点について、直接、監事から意見を聴取するということ、こういう場を設けるということが主務大臣による評価に資するという観点から、独立行政法人通則法第19条第4項の規定に基づき作成される業務の監査結果を取りまとめました「監査報告」について御説明を頂くこととしております。

 それでは、監事のほうから監査報告についての御説明をお願いいたします。

○国立長寿医療研究センター監事(二村)

 監事の二村でございます。監事として監査をいたしました結果はお手元の資料1-3にありますが、参考資料7-1の財務諸表等の中に入っている監査報告が別掲されている形になっていますので、資料1-3の監査結果を御覧いただければ、そこに書いてあるとおり、適正である旨の意見表明をしております。これについては特に付け加えることはありませんが、藤井監事のほうから意見があればお願いします。

○国立長寿医療研究センター監事(藤井)

 藤井でございます。監査室による内部統制という点で、平成27年度からはますますそれが強まるということなのです。これはこの際というか、要望になることなのかもしれませんが、長寿医療研究センターにおいては、監査室はあるのですが、その監査室に室長さんがいらっしゃるのですが兼務なのです。この間、ナショナルセンター監事連絡会があった際に聞きますと、長寿を除いて5NCでは専任の室長、室員さんがいらっしゃる。1名ないし2名いらっしゃるのです。それで、理事長・総長にその辺りはお願いしているのですが、どうも難しいのは予算です。人員を配置したいのだけれども、枠があって、それがなかなか厳しいということのようです。是非、内部統制するには我々非常勤の監事が全てをやるということは非常に困難です。ですから、手足となって動いていただける専任の室員の方を配置できるような予算措置等をしていただくと、より国民の期待に沿える内部統制、質の構築、それの成果も期待できるのではないかと思っております。

○永井部会長

 ありがとうございました。それでは、法人理事長から、日々のマネジメントを踏まえ、現在の法人の業務運営の状況、今後の課題、改善方針等についてコメントを頂ければと思います。よろしくお願いいたします。

○国立長寿医療研究センター理事長

 ありがとうございました。キーワードは、研究開発法人になって、特に研究業績の最大化をどうするかということです。組織内部のセンター内センターを増やした理由は、3か月ごとにセンター長会議を行って、その一番成長分野に関してのセンター長から業績の評価だけではなく、研究成果の評価も3か月に1回受けております。何を言いたいかといいますと、限られた人員で、運営交付金も減らされる状況の中で、病院はもっと稼がなければいけないとなると、今いる現存の人たちが、より頑張っていただくしかないわけで、それは内部の競争を促すという意味で、センター内センターを作って、より活性化を図ったところです。

 今後も、研究成果を運営会議でも毎月、研究のペーパーの数を報告してもらっていますが、内部の競争と自覚を促しながら、研究成果の最大化といったものを、組織、そしてまた規律の中で、より図っていきたいと考えております。

 その中で、病院のほうは、実際に病院の業務の成績の良い所が、実は病院の医師も研究が良い。診療が終わった後に、夜911時まで研究している者もたくさんいるのですが、そのように、効率の良い所はより研究も出ているというような良い見本を診療科長会議などでもエンカレッジしながら、より最大化に努めていきたいと存じております。よろしくお願いいたします。

○永井部会長

 ありがとうございました。何か御質問、御意見はありますか。

○藤川委員

 監事の監査報告書についてお聞きしたいのですが、雛形が総務省から出てきたものがあると思うのですが、そこの中で、内部統制システムについての監査の方法及びその内容の記載と、監査の結果のところで、やはり内部統制システムに関する意見が書かれていなかったのは、これは施行日が来ていないという理解で、そうされたのかなと思うのですが、通則法上の附則の6条で、施行日前に生じた事項にも適用するということで、これは記載しなければいけないと総務省からも聞いているので、これを書かないと、省令違反になってしまうのではないかと思うのですが、いかがでしょうか。

○国立長寿医療研究センター監事(藤井)

 御指摘は、そういう御意見があるということは承知しております。ただ、我々としては、平成27年度から適用なものですから、それで、内部統制についての意見については、平成27年度から盛り込もうとは考えておりました。今の省令の御紹介を頂いたので、もう一度その辺りについて検討させていただいて、適切な対応をしたいと思っております。

○永井部会長

 よろしいでしょうか。それでは、以上で「国立研究開発法人国立長寿医療研究センターの平成26年度業務実績評価に係る意見について」は終了いたします。ありがとうございました。5分休憩して、その後再開いたします。

(休憩)

○永井部会長

 では、そろそろ再開したいと思います。国立研究開発法人国立国際医療研究センターの平成26年度業務実績評価に係る御審議をお願いしたいと思います。初めに、「研究開発の成果の最大化に関する事項の評価項目」、1-1から1-3に係る業務実績と自己評価について、御議論をお願いいたします。まず法人から御説明いただいて、その後に御議論いただきます。それでは、法人から御説明をお願いいたします。

○国立国際医療研究センター企画戦略局長

 国立国際医療研究センター企画戦略局長の宇都宮と申します。よろしくお願いいたします。資料が何種類かありますが、資料2-2、ポンチ絵の資料で御説明したいと思います。もう既に御存じかと思いますが、1ページに当センターの概要が書いてあります。その左下に「理念」と書いてあります。「当センターは人間の尊厳に基づき、医療・研究・教育・国際協力の分野において、我が国と世界の人々の健康と福祉の増進に貢献します」ということで、ここに「医療・研究」とありますが、特に臨床志向の研究を行っているのが特徴です。2ページにありますように、こういう理念の基に研究所、病院、国際医療協力局、看護大学校がそれぞれ組織としてあります。基本構造にありますように、特に感染症、糖尿病・代謝性疾患、肝炎・免疫疾患といったものの研究を進めています。

6ページが評価項目の1です。「臨床を志向した研究・開発の推進」ということで、自己評定はSを付けさせていただいております。その理由等について御説明いたします。まず、臨床を志向した研究については上のほうに書いてありますように、研究所と病院等、センター内の連携を強化します。1にありますように、平成26年度はバイオバンク科や臨床ゲノム診療科を設置し、更に臨床研究を推進する体制を作っています。2ですが日本で唯一、エイズのセンターであるACCと国際医療協力局が、WHO西太平洋地域事務所のHIV・エイズ分野のテクニカルパートナーに選定されたことが、特に顕著であると考えております。3、4、5はセンターの研究所、病院等が一体となった対応をするための体制作りです。5にありますように、研究所等と病院の共同研究は20件です。中期計画では毎年10件以上となっておりますが、右側のグラフにありますように年々増加傾向にあって、平成26年度は20件ということで、中期計画の2倍の実績があります。それから、産官学等との連携強化です。これまでも幾つかの大学と連携関係を結んでおりましたが、平成26年度には帝京大学・慶應義塾大学と、新たに協定を締結しました。2では日本医工ものづくりコモンズという、医工連携に取り組んでいる団体との連携協力協定も締結し、医学・工学の研究開発に努めています。3のJAXA、宇宙航空研究開発機構との間で共同研究を進めるということで、今年度のAMEDの調整費も獲得することになっております。そのほかにも企業向けセミナーを開催し、海外のニーズとのマッチングなどを行ったり、5にありますように、開発初期の外部機関等との臨床研究ということで共同研究を行っています。中期計画では毎年10件以上ですが、平成26年度は24件です。これもやはり右側のグラフにありますように、中期計画を大きく上回っています。その他、研究・開発の企画及び評価体制の整備、知的財産の管理強化及び活用推進という取組を行っています。以上より、評価はSとさせていただきました。

7ページが評価項目の2番、「病院における研究・開発の推進」です。これについての自己評定はBとなっております。Bとなっている大きな理由は、臨床研究機能の強化の6にありますように、治験申請から症例登録までの期間の中期計画が60日ですが、申請から契約までの期間を除いても63日で、僅かに届いていません。そのように、数値目標を満たしていないということがありますが、1のバイオバンク科や臨床ゲノム診療科の体制を作っていること、2のエイズ・B型肝炎共感染者に対する米国主催の新たな多施設共同臨床試験に参加しています。3では、先進医療の新規技術3件を取得しています。これについては右側の一番下に表があります。先進医療AB3件あります。こういったものを取得したということです。4が、医師主導治験を2件実施中です。これは右下の先進医療の上に表が書いてあり、その2件を実施しているということです。5が、JCRACデータセンターによるデータマネージメント業務の受託です。平成26年度は17件ありますが、右側の上から2番目のグラフにありますように、JCRACデータセンターによる受託件数は着実に増加しています。その上にグローバル(国際共同)治験数の推移というのもあり、これも着実に増加しています。

 それから倫理性・透明性の確保ということで、2に新しく「人を対象とする医学系研究に関する倫理指針」が定められていることを受けて、必要な規程や手順書の整備を実施・講習を義務化し、3倫理委員会の委員向けの研修を1回から3回に増やすと。5が臨床研究認定制度の運用による研究者への倫理に関する教育の充実です。一番下のグラフにありますように、平成26年度は1,318人の参加を得ました。そういうことで、目標は僅かに達成できませんでしたが、様々な取組を行っているということで、自己評定はBとさせていただいております。

8ページが評価項目の3、「担当領域の特性を踏まえた戦略的かつ重点的な研究・開発の推進」です。担当領域の特性についてはエイズ、感染症、糖尿病等といった領域について、その特性を踏まえた成果を上げています。疾病に着目した研究の1番ですが、日本におけるエイズ関連認知症の統一診断法をACC、エイズセンターの主導で確定しました。2では、HIV・エイズの新しい診断法開発のための乾燥血液を用いた郵送検査システムを立ち上げました。4が、C型肝炎の治療効果に関与するHCV薬剤耐性変異検出系を開発しました。5が、B型慢性肝炎の発症機序、B型肝がんの発症に関与するHLA領域を同定しました。7が昨年、エボラ出血熱の疑いのある患者の話がいろいろありましたが、エボラ出血熱に関して、ファビピラビルによる治療・予防に関する多施設共同研究を計画し、着手できるような体制を整えました。9に、治験を含む臨床研究の合計実施数が400件とあります。これは右の一番下のグラフを御覧いただきたいと思います。治験を含む臨床研究の実施数は着実に延びており、平成26年度は400件ということで、中期計画の236件を大きく上回っております。

 続いて均てん化に着目した研究としては、これも去年の夏に騒ぎになったデング熱について26例の診療を行い、その知見を公開しました。2がエボラ出血熱への対応として、診療の手引きを作成して公開しました。こういった熱帯伝染病について当センターがリードし、日本全体にその知見を普及させています。

 また、国際保健医療協力に関する研究としては、「グローバルヘルスワーキンググループ」で研究を進めており、来年度のサミットに向けて、ユニバーサルヘルスカバレッジ(UHC)についての研究を実施しています。また、右側のグラフには掲載論文数、論文被引用数があります。これらも着実に増加しており、掲載論文数は中期計画を大きく上回っています。以上より、こちらの評価はSです。説明は以上です。

○永井部会長

 それでは、御質問をお願いいたします。

○深見委員

 臨床研究又は病院における研究開発も、非常に推進しているというように考えられるのですが、平成26年度に新たにバイオバンク科と臨床ゲノム診療科を設置したということですね。実際に臨床ゲノム診療科というのはどういったことを目的にして、臨床研究においてどういった実績が出つつあるのかを、少し説明していただけますか。

○国立国際医療研究センター病院長

 バイオバンク科については、バイオバンク事業の各臨床科における活動の支援を主な任務として活動しており、外来にバイオバンクに入っていただく方のデスクその他を設けるとともに、各種医療科でバイオバンクに預ける検体を提出していただく方々の、様々な要望に応えられるような業務を行っております。それまでほぼ月30件程度だったものが、実際にこれを設置してから100件近くまで拡大してきております。そういった意味でバイオバンクの検体収集に非常に貢献していると思っております。

2番目の臨床ゲノム診療科というのは、非常にたくさんの知見が集積した分子生物学、その他の知識や成果を臨床に還元することが大きな目的です。実際には臨床遺伝学を発展させた形で、様々な遺伝相談をお受けするとともに、薬物に対する感受性、更に個人のがん発生についての危険性の評価までを目指して作られたものです。これについては平成26年度に計画し、体制を作り、平成27年度4月より実際に業務をスタートさせております。人員としては臨床遺伝学の専門医を持っている医師を4名併任して活動しているとともに、研究所において必要な検体について、例えば全ゲノム解析等も依頼できるような体制を構築しているところです。ただ、現在のところ、平成27年度4月以降の活動としては、従来のメンデル系の遺伝相談を中心に受けて活動をスタートしています。

○深見委員

 実際にゲノムベースの薬剤の選択というのは、これから大変必要になってくると思いますし、そういった個別化医療に向けて動き出したところだと思うのですが、実際にお薬の選択・選別に使えるだけのゲノム解析が、どの程度できると考えたらよろしいのでしょうか。

○国立国際医療研究センター病院長

 現在、それを目標に体制を構築しつつあるところです。欧米の大学病院等で実際に行われているレベルにまで、私どもも12年のうちに達したいと思っております。それでは現実に個人のレベルでどれぐらいの診断ができるか、薬物選択ができるかということについては、まだ現状では未知数であります。

○斎藤委員

 教えていただきたいのは、6ページにある「『グローバル医療戦略』を策定」ところです。それは当センターとしては大変重要なことだと思うのですが、その内容をもう少し詳しく教えていただけますか。それから、今までこういう戦略は特に立てていらっしゃらなかったのか、併せて教えてください。

○国立国際医療研究センター企画戦略局長

 グローバル医療戦略の概要ですけれども、これまでの国際医療研究センターでの国際協力というのは、どちらかというとJICAから受けてきた仕事を受け身で行うような状況でした。あるいは臨床に関する研究が多かったとか、協力局と病院・研究所が必ずしも一体になっていなかった。そういった反省からグローバル戦略の会議を設け、そこで医療戦略を取りまとめたということです。

 その戦略として、目標を5つ立てております。1番目が、新しい形の国際保健医療協力を展開するということでNCGM、当センターが一体となって、また主体的に国際保健医療協力を展開していきます。2番目として、日本の国際保健のシンクタンク機能を牽引します。この中では国際保健の政策科学的な分野も研究を進めて、そういうものを土台にして、今後のシンクタンク機能を牽引していこうということです。3番目として国内外の国際保健医療、国際協力に関する人材育成を行う、つまりグローバル人材を育成します。4番目として、国際保健医療課題に関するイノベーティブな実務研究を強化していきます。ここには自然科学的な研究に加え、社会医学的な研究も併せて進めていこうということです。目標の5番目としては、当センターの病院の国際化を推進し、日本の海外渡航者の健康管理の強化などをしていきます。こういった戦略を立てて、これに基づいて現在取組を始めているところです。

○永井部会長

 ほかのセンターとの論文の引用回数の比較があると思うのですが、がん研究センターは別格なのですか。がん研究センターと国際医療研究センターを比較したときに規模とか、どこがどう違うのか。国際医療研究センターはすごく伸びていると思うのです。それは分かるのですが、がん研究センターとの違いはどういうことなのでしょうか。何か分かりましたら。研究者が全然違うのか。

○国立国際医療研究センター理事(清水)

 がん研究センターとの正確な比較はできませんが、研究所の規模が相当違うと思います。私どもの研究所は技術職員も含めて150人ぐらいです。研究者の数が違うというのが大きな理由ですし、総合的な臨床を進める病院と研究所のマッチングも当初はスムーズではありませんでした。法人化以降、研究マインドというものが急速に強まってきたこと、また、病院と研究所や国際医療協力局などの間で、交流が進んで共同研究が増えてきたという、幾つかの理由でこのように増加してきているのではないかと思っております。

○永井部会長

 特に論文数も引用回数も、20141年だけで相当引用されているのです。これは活性化のいい根拠ではないかと思うのです。全体としても上がっていますし、恐らくこれからますます発展されるのではないかと思います。

○福井委員

 成果は大変上がってきていると思いますが、アピールの仕方なのです。何となくこれをやった、こういう研究をしたという書き方になっているものですから、例えば、デング熱への国立国際医療研究センターでのコントリビューションが、これ以上広がるのを妨げたというように、社会でのアウトカムに何となくうまくつながるような書き方ができるといいなと思うのです。プロセスだけにとどまっているところが、どうしても多くなるのだろうとは思いますが、少し社会への影響との関連で書かれたほうがアピールできるのではないでしょうか。1つの病気の関係で書くのはなかなか難しいと思うのですけれども、少し努力をしていただいたほうがいいのではないかと。非常に総論的な言い方で申し訳ないのですが、社会にこれだけ貢献しているというところに、つながっているというのが見えるといいなと思います。

○国立国際医療研究センター病院長

 ありがとうございます。病院のDCC(Disease Control Centre)では、確かにデングについては昨年、入院患者が18例でした。これは日本のデング発生例の約半分です。また、それらの経験を活かし、デング熱の診断及び治療に関するガイドラインと言いますか、パンフレットも製作しておりますし、それに対応して講演活動等もしております。そういった意味で、アウトカムとしての記載はありませんでしたが、事実はそういったことです。

○永井部会長

 よろしいでしょうか。それでは続いて評価項目1-4から1-11まで、「その他の業務の質の向上に関する事項」について、御説明をお願いいたします。

○国立国際医療研究センター企画戦略局長

 資料2-29ページを御覧いただきたいと思います。評価項目の4、「高度先駆的な医療、標準化に資する医療の提供」です。まず高度先駆的な医療の提供としては、1から3が感染症、45が糖尿病、6が先進医療です。2では、エボラ出血熱に対するファビピラビルの多施設共同研究を計画しています。1で「HIV・エイズ患者に対し個々人の病態に即したテーラーメイド医療を269例を実施」と書いてありますが、すぐ右側のグラフを御覧いただくと分かりますように、これは中期計画の150、年度計画の200を大きく上回っています。3が、C型慢性肝炎に対する抗HCV薬に関与するHCV遺伝子変異を高感度に検出する方法を開発しました。4が、連続血糖測定が可能なシステムを活用し、テーラーメイドの糖尿病治療を実施しました。右の上から2番目の表にありますように、平成26年度にはテーラーメイドの糖尿病治療延べ件数として414件実施しております。6が、先進医療の新規技術3件を取得したということで、その下に具体的なものが書いてあります。平成26年度は先進医療を148症例に対して実施しました。7が、医師主導治験を2件実施中ということです。

 そして、医療の標準化を推進するための最新の科学的根拠に基づいた医療の提供ということで、これまで当センターが直接的又は間接的に支援した臨床試験について、学会等が作成した診療ガイドラインに16件が採用されました。右側の一番下のグラフにありますように、これも昨年度から大きく伸びて16件が採用です。先ほど御質問のあったデング熱の診療ガイドラインは、厚生労働省に採用されました。そのすぐ下に「antiretroviral agents in HIV-1」と書いてありますが、米国の保健福祉省にこのガイドラインが採用されたと。こういった成果がありますので、こちらも自己評定はSとなっております。

10ページが評価項目5、「患者の視点に立った良質かつ安心できる医療の提供」です。これは昨年の評価委員会でも触れましたが、昨年4月に医療事故があった関係もあり、今回は自己評定Bとなっております。その事故を踏まえ、右側の下のほうから説明させていただきます。医療安全管理体制の充実ということでは、平成26年度は検査マニュアルの整備、研修医等への指導体制見直し等を行うとともに、医療安全マニュアルの大幅改訂・各部署への医療安全担当者、リスクマネージャー、ジュニアリスクマネージャーを置き、178人の大規模な配置増を実施しました。また、その下にありますように、客観的指標等を用いた医療の質の評価ということで、医療品質管理センターを設置しました。こういったことで医療安全、医療の品質管理に努めています。

 左上では患者の自己決定への支援ということで、表にありますように、セカンドオピニオンの実施が着実に増えております。また、患者等参加型医療の推進ということでは、そちらに記載されているとおりです。そのほかにチーム医療の推進、入院時から地域ケアを見通した医療の提供ということでは、左の一番下にありますように、地域医療連携の強化により、紹介率、逆紹介率を向上させています。右側の上のほうにグラフがあります。一番上にセンター病院の紹介率、逆紹介率があり、着実に増えておりますが、平成25年度から26年度に移るところで基準が変わった関係で、左側と右側の数値がちょっと違っております。これは基準を平成26年度に合わせて計算し直したということです。いずれにしてもセンター病院、国府台病院ともに紹介率、逆紹介率は伸びているということで、特定機能病院の役割を果たす状況になってきています。

11ページの「その他医療政策の一環としてセンターで実施すべき医療の提供」は、自己評定はSとなっております。これには大きく2つあり、左側が救急医療、右側が国際化に伴い必要となる医療の提供です。まず左側の救急医療です。東京都内の救急搬送件数は5年連続1位で、平成26年度は11,300人、そのすぐ下の棒グラフにありますように、都内の最多件数です。都内全体では三次救急の搬送件数が減る中で、左の一番下のグラフにありますように、平成26年度は1,075件と増加しています。また※で書いてありますが、救急搬送依頼の応需率は94.3%です。これは真ん中辺りの棒グラフにありますように、応需率も着実に伸びています。2ですが、国府台では精神科という特徴があります。中期計画では重症身体合併症の患者を5%以上受け入れるということですが、13.9%受け入れているので、救急における役割を非常に顕著に果たしています。右側の国際化の関係ですが、エボラ出血熱について疑い例、国内発症7例のうち4例を診療しております。それに伴い、平成26年度には毎週水曜日、全国各地の第一種感染症指定医療機関に出向き、講義・机上訓練等を含むワークショップを実施しています。3が、第一種感染症指定医療機関等の医療従事者を対象に研修会を開催ということです。特にエボラ出血熱については当センターがリードする立場ということで、全国にこういったものへの対応を普及・啓発しています。デングについても同様です。7が、海外渡航前健診とワクチン接種などの渡航相談を行っています。一番下にグラフが2つありますけれども、トラベルクリニックにおけるワクチン接種、初診患者ともに増加しているということで、こういった海外渡航者に向けての役割を非常に大きく果たしています。

12ページが「人材育成に関する事項」です。これも自己評定はSとさせていただいております。1つ目が、リーダーとして活躍できる人材の育成です。これには「総合感染症レジデントプログラム」、「国際臨床レジデントプログラム」、「国際保健医療協力レジデントプログラム」、「国際保健医療協力研修」・「短期集中講座」等という、当センターの非常に特徴的な研修プログラムを作り、それに基づいて多くの人材を育成しています。また9にありますように、学位取得支援として連携大学院は、平成26年度は帝京大学、慶應義塾大学、東北大学との協定を締結しています。

 下のモデル的研修については、エボラ出血熱に対する国内の担当者向けの研修・訓練と、3の西アフリカに派遣される医師を対象とする派遣前研修も行っております。その他の4以降、エイズ、肝炎、糖尿病、児童思春期、ユニバーサルヘルスカバレッジのいずれについても、精力的に研修を行っているということで、右側にグラフが4つあります。実際に研修を受けた人数がここに記載されております。なお、下2つのグラフは凡例にHIV、感染症、肝炎しか出ていないのですが、上のオレンジ色が精神で、その次の紫色が糖尿病関係の研修者です。その下の3つが肝炎、感染症、HIVです。いずれにしても中期計画の数を大きく上回っています。

13ページが「医療の均てん化と情報の収集・発信に関する事項」ということで、この自己評定はAです。まず、ネットワーク構築の推進です。HIV・エイズ、肝炎、児童精神、国際保健のそれぞれについて、拠点病院協議会などを開いてネットワークの構築を進めています。情報の収集・発信で、ホームページについては右上にグラフがありますが、NCGMのホームページアクセス数は着実に増加しており、中期計画の1,000万件を大きく上回っています。また「メディア等」と書いておりますが、特にエボラ出血熱、デング熱の発生などがありましたので、非常に大幅に増加しております。右側の下のほうにグラフがありますように、メディアの取材応需件数も非常に増加しています。そのほかに太字で書いてある感染症、エボラ出血熱についての研修なども行っています。

14ページの評価項目9が「国への政策提言に関する事項、その他我が国の医療政策の推進等に関する事項」ということで、自己評定はSとなっております。1つ目の国への政策提言ですが、健康・医療戦略推進専門調査会等、国の様々な委員会などに出席し、専門的な立場から提言を行っています。2は内部の話ですが、政策研究懇談会を開催し、今後の政策研究を進めていこうという姿勢を示しました。5はWHO総会・執行理事会、世界基金理事会等、国際会議に政府代表団の一員として出席し、対処方針の策定等に関与しています。

 公衆衛生上の重大な危害への対応で、やはりエボラ関係、以前の東日本大震災の復興支援なども継続しています。国際貢献としてはエボラ出血熱関係、2は、安倍政権の下で進めている医療の国際展開推進事業を医政局のほうから受託し、今年度行っているわけですが、昨年度はその準備を行ったということです。右上の絵に「NCGMの保有する国際ネットワーク」と書いてあり、下のほうに赤色で6つ書いてある四角い枠は、NCGMMOUを結んでいる所で、5か国6施設となっております。緑色の丸い輪が2つありますが、左のほうは仏語圏アフリカ、つまりフランス語を話すアフリカの人材育成のネットワークを作って支援をしているということです。右側の丸は、東南アジアの看護・助産師等の制度作りについて支援をしているワークショップのグループです。その下が専門家の派遣状況です。中期目標は5年間で400ですけれども、これも540人ということで、既に達成しています。その次の研修生の受入れ状況も、5年間で800というのを大きく上回っています。以上より、評価はSです。

15ページが「その他我が国の医療政策の推進等に関する事項(HIV・エイズ)」です。これも自己評定はSと書いてあります。まず左側ですが、エイズ患者の日本一の診療実績があります。2が、治療成功率はUNAIDSが推奨する90%を大きく上回り、97.7%です。3が、エイズ・B型肝炎共感染者に対する米国主催の新たな多施設共同臨床試験に参加しました。4が、日本におけるエイズ関連認知症の診断のため、日本で統一した神経心理検査バッテリを作成し、ブロック拠点を含む多施設によるネットワークを利用し、エイズ関連認知症の共同研究を開始しました。7が、エイズ拠点病院などへの研修の実施です。研修の受講者は1,000人を突破ということですが、右側の上のグラフにありますように、平成26年度は1,016人です。8が均てん化ということで、エイズの患者を全てセンターで抱えるのではなく、できるだけ拠点病院などに逆紹介をすることで、患者が自分の住んでいる地域に近い所で診療を受けられるようにすることを進めており、逆紹介率は31.5%にまで上りました。そのほかに一番右下にありますように、英文論文数も平成26年度は31件です。

 その上の被害患者等への対応ですが、こういった地道な対応もきちんと進めています。

○国立国際医療研究センター統括事務部長

 次のページ、評価項目11については、統括事務部長前田から説明させていただきます。6つのナショナルセンターの幹部看護師などの人材を育成している看護大学校について、説明をいたします。まず、教育の充実です。平成26年度の目標計画に計上しております、後期博士課程を開講するために、大学評価学位授与機構から平成26年度に認定を頂いています。それから看護研究、院内教育等の研修コース、6コースを実施しています。

 続いて、良質な学生確保のための情報提供ですが、オープンキャンパスについては中期計画期間中の各年の目標3回以上に比べて、7回実施しており、目標を上回っております。また、地域の中で教員の相互派遣や情報共有等を進めていくために、平成265月に地元の明治薬科大学、日本社会事業大学との連携協定を締結しております。また、研究の推進として、臨床看護研究推進センターにおいて、ナショナルセンターの看護職員に対して臨床看護研究の指導を実施する等の成果を上げています。このようなことから、自己評定Aとさせていただいています。この事項については以上です。

○永井部会長

 ありがとうございます。それでは、御質問、御意見をお願いいたします。いかがでしょうか。

○深見委員

 非常に中期計画と比べて、大幅に目標値を上回っているのですけれども、この計画との違いということでお伺いしたいのは、エボラやデング熱が計画よりも多かったのか。その他にこの計画と大幅に違ったためにこのような数値になったというのが、いろいろなところで見受けられるのですけれども、どういうことが原因で、大きく違ったのかをお伺いしたいというのが1つです。

2点目ですけれども、救急医療のところで受入れ件数、こちらも非常に伸びています。今、他のところではなかなか受入れができないことも社会問題になっていると思いますが、そういうことに反して救急医療の受入れが非常にスムーズになっているのは、どういう良い環境的な要因があるのか。前年度と比べての違い、また他の病院との違いで御説明いただければ有り難く思います。

○国立国際医療研究センター病院長

 それでは病院の関連で、救急についてお答えさせていただきます。当院の救急対応システムは救急医療センターが活動するとともに、もう1つ総合診療科というのがあります。受入れについては、いわゆる昼間の救急は総合診療科が主に対応する。夜は救急センターが主に対応する、ということで、昼も夜も一貫して直接来られた方も救急で来られた方も対応できるシステムが構築されているということが1つだと思います。

○深見委員

 それは前年度等と比べて変わったところですか。

○国立国際医療研究センター病院長

 前年度からこういう体制でやってきておりますので、5年連続救急受入れ台数が1位というのが維持されているということです。今年度、急激に何かが変わったかということですが、昨年度は診療報酬体系の変更があり、救急医療の均てん化ということが1つ大きな方針として施行されました。このために救急患者の受入れを様々な医療機関に分散するという効果が見えてきて、多くの医療機関で救急受入れ患者数は、均てん化されることによって個別の医療機関ではやや減少するという傾向になってきました。

 当院では、三次救急体制、これは特に総合診療で50近くの診療科を擁して、シームレスに対応できるということで、他院に比べて受け入れるキャパシティが多い。そういった背景においてもなお救急患者の数を維持、ないしは三次救急搬送件数については他の医療機関からの転送も含めて、増加を維持できている理由だと思います。

○深見委員

 そうしますと、そのシームレスに、昼と夜と分けながら、両方受け入れる。

○国立国際医療研究センター病院長

 昼と夜という時間的な分け方、シームレスな対応と、それから小児科から高齢者まで、50診療科を擁しておりますので、どの科にでも対応できるというシステムというか、そういう総合医療体制が機能していると考えています。

○深見委員

 例えば、それをモデルとして他の病院等に普及することはできるのでしょうか。

○国立国際医療研究センター病院長

 当院の総合診療科の位置付けが、先ほど申しました昼間の救急であるという、1つの位置付けなのですが、これはある意味では極めてユニークだと考えています。通常総合診療科というのは、プライマリケア科で、ただの発熱であるとかそういうことで、診断が付きにくいケースを受け取ることになっていますが、当院では発足以来、基本的な総合診療科の位置付けに昼間の救急というのを加えています。

○斎藤委員

 人材のことでお伺いしたいのですが、前に国立病院からお伺いしましたら、エボラ出血熱を受け入れることになった病院で、いろいろ怖いことがメディアで報道されているので、看護師が泣き出したということをおっしゃっていました。それだけ大変な新しい病気の患者を受け入れて、しかもすごい数です。それを淡々と受け入れているように、聞こえました。そういうような緊急時の対応に対して、いつも研修をしているのかどうか。他の病院と比べて大変なことをしていると思いますので、その辺りをもう少し詳しくお話いただけますか。

○国立国際医療研究センター病院長

 これは特殊感染症病床が4床、厚生労働省の指定によって設置され、それ以降18名の看護師の併任をかけていて、6か月ごとに救急感染症患者受入れのトレーニングを行っています。実際に、この機能がスタートしてから既に5年、これはSARSの時にスタートしたものですから5年近くは経っていますが、ずっと続けてやっています。併任をかけていて、今回のようなエボラ疑似症が来た場合には、全員が2週間のシフトを組むということで、ナースのシフトと医師のシフトを組んで、対応できるようにしています。私どもとしては、普通のこととして対応してきておりますが、他の医療機関でこれを行うとすると、さらに別に新たな工夫や人員の面での問題も出てくるかと思います。現在はそのようなシステムでやっています。

○福井委員

12ページの人材育成に関する事項です。上から2つ目の、「産婦人科及び小児科研修を対象とした国際臨床レジデントプログラム」と、「国際保健医療協力レジデントプログラム」。これはどれぐらいの人数で、実際に計画したとおりに進んでいるのでしょうか。

○国立国際医療研究センター病院長

 数字は、各学年で1名ですが、産婦人科、小児科ともにレジデントの教育を受けながらカンボジア等の母子センターなどに派遣をされて、そこでのデリバリーの立会いや、診療、教育に関与するということをしています。正確な数は後で。

○永井部会長

 よろしいですか。

○国立国際医療研究センター病院長

 すみません、2名です。

○内山部会長代理

HIVAIDSの感染症の治療、あるいは国際感染症の管理はさすがだと思います。救急医療に関して先ほど深見委員からも質問が出たことに関連するのですが、これだけの救急患者を受け入れて、しかも入院患者数を見るとだいたい一日平均1718人が、救急患者の中から入院している。

 ベッドコントロールの適正化と、地域の病院との連携が一番のポイントとなると思います。当然うまくいっているから、このような成果が挙がっていると思いますが、どのような工夫をされているのですか。ベッドは一般病床700床弱ですね、相当な御苦労があると思うのです。

○国立国際医療研究センター病院長

 救急センターで受け入れた後、救急センターの病床が30床近くあります。まず一旦そこに入れて、それから他科に振り分ける。

○内山部会長代理

 ナイトベッドみたいな形ですか。

○国立国際医療研究センター病院長

 ええ、そういう形にしていて、12日で入れ替わる。ほとんど毎日10人以上そこに入院する形になっています。ベッドコントロールは、状況によってベッドが空いているときは楽なのですが、混んでくると非常に大変だということは確かにあります。これはベテランの師長の個人的な努力によるところが多いと思っています。

 それから医療連携。これは特に新宿区だけではなくて、板橋区や豊島区の医療機関とも連携をしながら、患者のやりとりという言葉はあれですが、そういうことに努めています。

○内山部会長代理

 平均在院日数はどれぐらいですか。

○国立国際医療研究センター病院長

 直近のデータでは12.5日前後ですが、昨年は13日台の後半です。

○国立国際医療研究センター統括事務部長

 最後の22ページに、一応平均在院日数の資料があります。

○藤川委員

 テレビで、海外からの渡航者数がどんどん増えて、2倍になれば病気が2倍ということではなくて、病気はさらに何倍にもなって日本に入ってくる可能性があるということを聞くと、一般国民からすると非常に恐ろしいという感情を持つのですけれども、その中でこのセンターが持つ役割というのは、非常に大きいと実感しています。

 その中で、先ほどから皆さん淡々と、余りアピールをさほど積極的になさらない感じがするのですが、今までのところでおおむね医療がらみの評価項目があったと思うのですが、特にこれは、というアピールポイントがあれば教えていただければと思います。

○国立国際医療研究センター理事(上村)

 国府台病院の上村です。私は客観的に聞いていて、うちのアピールはまさしく今日余りアピールしないところです。どういうことかと言うと、私がこのセンターに来て、エイズ、HIVの患者さんを、私は内視鏡、消化器なのですけれど、普通に診療できるようになりました。エイズだからといって、特別な前処置をやるわけではない、特別なベッドを使うわけではない。普通にできるのですね。これは他の病院ではなかなか難しいのです。

 それからもう1つ、国府台病院で精神救急、この精神救急というのが日本では大問題になっています。これは身体合併症を有する方がいっぱい来るのですね。私が一番最初に国府台病院に5年前に行ったときに、精神科の患者を診て、これはちょっとおかしいのではないかと、なかなか上手に診られなかったのですけれど、それがだんだん診られるようになるのですね。外科の患者さんも精神疾患を合併していても、普通にオペをします。普通に対応できるようになる。これは国府台病院の文化なのです。

 医療センターの感染症に対する、先ほどお聞きになっていたエボラなどの怖いものも、看護師も医師も何ということはないのです。それは個々のNCGMの文化であって、この中で人材育成というのは、この組織の中にいると、何ともないことを体得、会得した人間が、全国に展開する。これがNCGMの臨床では、ものすごくアピールできるところではないかと思いました。

○永井部会長 

 去年、大きい医療事故があって、医療安全はだいぶしっかりできてきたと思うのですけれども、医療の質はいろいろなチェックポイントがあると思うのです。私はある大学病院とあるナショナルセンターで、カルテの提出率をチェックさせていただいたことがあるのですが、どちらもサマリーの提出が非常に悪かったですね。先生方のところは、そこはいつもモニターされていますか。

○国立国際医療研究センター病院長

 モニターはしておりますが、50近くの診療科があり、8割、40診療科はほとんど100%、2週間以内にサマリーはできますが、やはりあとの約10診療科は、半分ぐらいまでです。カルテのサマリーに何を書くかということが十分に教育できていなかったということ、最近そこに原因があるのではないかということで、カルテの記載内容の統一等は図ったところです。しかしこれは、いつも苦慮しています。

○永井部会長

 いろいろなところで、まだまだ同じような状況にあるのが事実ですので、おそらく国際だけではないと思いますので、ぜひそこは努めていただきたいと思います。

○福井委員

 今の点に関して、インシデント・アクシデントレポートが、全部出てきた中の何%がドクターからのものなのかというのが、病院によって随分違いがあり、この前、厚生労働省のある会議で出てきた数値が、病院によって1%から13%ぐらいまで、ものすごく幅があって、何しろドクターが無頓着だということが大問題だと思うのですが、いかがでしょうか。

○国立国際医療研究センター病院長

 おっしゃるとおりで、実は事故が起きたときの状況は、インシデント・アクシデントレポートの医師からの提出率は1%でした。それで、その後リスクマネージャーやジュニアリスクマネージャー等を増やして、約一割の職員がリスクコントロールに関わる、さらに医師に強力に働きかけを行い、直近のデータでは約10%が医師から出るようになりました。看護師やその他の業務の医師以外の方から出ていたインシデント・アクシデントレポートが、医師が関与していることが明らかになり次第、これは医師が出すべきだということを個人的に知らせるということを非常に強力にやりました。現在10%前後です。

○福井委員

 今の医療安全のところですけれども、いろいろな職種、特に医師についてはプリヴィリヂを文書化して、どういう資格を持っている医師が何ができるのかということを明示することが、随分行われてきていますし、外国はみんなそうなっていますけれども、医療センターではそういう方向に動いていませんでしょうか。

○国立国際医療研究センター病院長

 ありがとうございます。今現在、医師全体に共通する医療安全意識の醸成というところをやっていて、各医師の持っているサブスペシャリティやその他のライセンスによって、どういうことがやれるかということについての取組は、まだこれからです。またいろいろな例を参考に進めていきたいと思っています。

○永井部会長

 今のインシデントレポートですが、看護系と医師との間で壁があって、これもあるナショナルセンターでチェックさせていただいたのですが、医師が出したインシデントレポートは看護師が見ていない。看護師が出したものは医師が見ていないという、国の時代の縦割りが非常に強く未だに残っていたのですが、そこはいかがですか。

○国立国際医療研究センター病院長

 おっしゃるとおりで、そのことに気が付いたというか、そこを昨年かなり力を入れて、看護師や薬剤師が出してきたインシデントレポートを見て、これは実は医師が関与していたのではないかということをチェックする。これはジェネラルリスクマネージャー及び医療安全の人員を増やして、非常に彼らの努力によるものだと思います。

○永井部会長

 共通のフォーマットで、お互いに見えるようにしないといけないと思うのですね。是非そこの御検討をお願いします。

○国立国際医療研究センター病院長 

 ありがとうございます。

○永井部会長

 よろしいでしょうか、それでは次に参ります。「業務運営の効率化、財務内容の改善及びその他」です。

○国立国際医療研究センター統括事務部長

 評価項目12「効率的な業務運営体制」について、自己評定Aとさせていただいています。年度計画に掲げております、センターとしての使命を適切に果たすため、高度先駆的医療や臨床研究の推進などの体制の整備として、病院の臨床研究部門にバイオバンク科、臨床ゲノム診療科を設置しました。また、招へい型任期付職員、若手育成型任期付職員への年俸制を導入していまして、優秀な人材を公募により、平成26年度においては45名を採用しました。

 同じく年度計画の組織の適正化など、効率的な業務運営体制を構築することについては、副院長の役割に応じた複数設置について、ミッション達成に向け担当部門と責任を明確にしました。センター病院において4人、国府台病院において2人の副院長を設置しています。センター病院副院長を例に申しますと、1人目は診療・医療安全部門、2人目は経営・教育・研究部門、3人目は患者サービス・手術・IT部門、4人目は広報・国際担当というような業務分担をしています。事務部門の改革としては、看護師・薬剤師の確保・育成について、国府台病院、戸山地区、これらを一体化するために、人材企画統括職により運営をしています。また、看護大学校の事務の一部、国府台病院の事務の一部、これを戸山地区に一元化して、統括事務部による効率的・効果的な業務運営を行っています。また、センター病院のDPC室、今年の4月からは診療情報管理室に改組していますが、ここにおいてコーディングの適正化、ベンチマークによる他院とのDPC分析の比較等々によりまして、上位係数取得に向けた取組等を実施していまして、これらによって計画を達成しているものと考えています。

 更には定例の会議に加えまして、国府台地区と戸山地区において、事務部門の課長、部長、それぞれが週1回ミーティングを行うとともに、企画経営部に専任の部長を配置し、更に、センター病院には法令の専門家の配置も行っています。また、平成274月から、センター病院に国際診療部の設置を行うなど、平成26年度におきまして、組織の適正化などの効率的な業務運営体制を構築してまいりました。このようなことから、自己評定はAとさせていただいています。

 次に評価項目13「効率化による収支改善・電子化の推進」です。これについては診療事業における収益増加や費用削減など、効率化による収支改善をはじめとしまして、収支相償を目指した取組を推進してまいりました。結果については、資料17ページの中央右手にグラフがありますが、平成26年度の経常収支率については96.7%、5年間のトータルとして98.0%となっていまして、若干100%には届きませんでしたが、その内容について少し御説明をさせていただきます。

 左上に「効率化による収支改善」とありますが、2つ目のポツで、平成26年度の医業収益は293.5億円ということで、平成25年度に比べて7.7億円の増収でした。診療報酬改定等、大変厳しい中、右のグラフにありますように1日平均新入院患者数、センター病院で申し上げれば43.9人から、平成26年度は47.3人ということで増加を見ていますし、国府台病院についても増加をしています。収益の関係について、その下に記してありますが、2の新生児治療回復室入院医療管理料ほか、幾つかの新たな施設基準を取得しているとともに、費用関係については2にあるような後発医薬品の利用促進のため403品目を切り替えしています。また、4医療機器保守内容の見直し、5業務委託の内容を見直すことによるコスト削減等々のほか、その下のグラフにあるように、一般管理費については18.1%、これは平成21年度比較ですが、そこまで削減をしています。

 また、医業未収金については、その右のグラフですが、0.073%というところまで削減をしていまして、また、診療報酬査定率の推移についても0.36%というところまで数値を下げてきています。

 電子化の推進については、平成26年春から国府台病院も電子カルテを運用していまして、センター病院ともども電子化が大きく進んだところです。また、前年と同様に財務会計システムによる月次決算等の実施を行っているところです。このような取組の下、数値目標のクリアだけでなく、損益計算の100%以上という目標については若干下回るものの、ただいま申し上げたような取組の中で、医業収益についても7.7億円の増収を図ったことなども踏まえて、自己評定をBとさせていただいています。

 次に財務状況の要点について、若干御説明させていただきます。19ページの一番下の左ですが、運営費交付金の予算額の推移を示しています。平成22年度から始まりまして、平成26年度においては、対平成25年度で6.0億円の運営費交付金の削減でした。

 続いて20ページです。平成26年度の経営の状況について表で示していますが、上段右のプラス7.7億円というものが、平成25年度に比べて医業収益の増加を見ているところです。逆に費用に関しては、臨床研究、診療体制の強化などということで給与費の増加等々がありまして、左下に示すように、平成26年度の経常収支はマイナス13.1億円となっています。

 次に18ページにお戻りいただいて、評価項目14「法令遵守等内部統制の適切な構築」ということで、自己評定はAとさせていただいています。この内容については、法令遵守等の内部統制のため、理事長直下の監査室において重点項目を策定し、前回の監査の指導事項等に対する改善等々について内部監査をしています。平成26年度中に20件の内部監査を行いまして、そのうち7件の抜き打ち監査を行っています。また、監事による業務監査については、理事会、運営会議、各種委員会等の、法人の運営に重要な会議への出席、重要書類の閲覧、業務運営状況の実態把握のために、関係担当役職員からヒアリング等を含めて、監査をいただいています。そして会計監査、監査法人による外部監査についても実施がされて、年度計画の事項については達成していると考えています。

 加えまして、コンプライアンス部門に法令の専門家を配置し、体制の強化を図るとともに、職員に対しコンプライアンスの研修を実施しました。さらに、監事を中心として、監事監査規程の改正内容を検討し、必要に応じていつでも監事が監査をできる等、監査機能を大幅に強化した監事監査規程を新たに制定しました。さらに、研究の適正実施を図るために、センターの研究ガイドライン(実験系)を新たに作成したとともに、平成26年度には民間資金の活用を一層進めるため、企業等との連携ラボや民間研究費の適正管理のための規程を整備するなど、民間資金の受入体制についても整備をしました。

 また、契約事務についても年度計画に掲げています。原則として一般競争等により、公正性・透明性を十分確保する方法により実施しました。具体的には、手続に関わる執行体制や審査体制は、契約方法等の適切性等について、監事・外部有識者と関係者を除くセンター職員等で構成する契約審査委員会により審査・評価を行い、加えて、監事及び外部有識者で構成される契約監視委員会によりまして、競争性のない随意契約及び一者応札・一者応募については、より厳格な審査を行う体制を取り実施しています。

 加えまして、競争入札においては、仕様書の記載の工夫によりまして、多くの業者が競争できるよう取り組んだことから、一者応札について平成22年度は79件であったものが、平成26年度については23件と、大幅な減少を果たすことができました。これらによりまして、競争性のない随意契約については、平成22年度に16.2億円だったものが、平成26年度については14.7億円と縮減したところです。このような取組に関して、私どもは自己評定をAとさせていただいています。

 次に「予算、収支計画及び資金計画」についてです。自己収入の増加に関しては、民間企業等からの外部資金、寄附や受託研究等の獲得を推進するとしています。これについては、ホームページの記載内容や受託研究を依頼する企業側へ委託しやすいような配慮、規定を備えて、外部資金の獲得の増を図っております。その結果、自己収入として、ここに平成26年度と平成25年度の比較について記載してありますが、平成22年度と比べても競争的資金の受入れ、受託研究、寄附金を合計して、トータルとして外部資金の合計で、平成22年度は122,700万円程度から、平成26年度は181,900万円と、約48%の増加となっています。

 投資についても、センター病院において診療機能の更なる充実強化による新棟整備及び国府台病院の外来管理治療棟の整備を行うため、24億円の借入れを行いまして、固定負債については確実に返済を行っています。このように、自己収入の増加に向けた努力の結果、着実に伸ばしており、また、投資に関しても借入金の確実な償還を含めまして、自己評定はAとさせていただいています。

 最後、16「その他主務省令で定める業務運営に関する事項」です。施設整備等を行うことを含めて、職員が働きやすい環境を整えることで意欲の向上をし、センターの目的である研究業務や診療業務、人材育成等の業務がより良くなるよう、業績評価制度の導入や、平成26年度におきましても、看護師の2交替制度の拡大導入を行っています。看護師は御承知のとおり、非常に女性が多い職場でして、育児休業の取得件数についても、平成22年度の39件から平成26年度は56件で、約44%の増加となっています。

 短時間勤務の取得者も、平成22年度の6件から平成26年度の12件と増加をしています。また、幹部職員や専門技術者の公募、職員からの提案箱の設置、センターのミッション達成に向けた理事長特任補佐会議の開催、理事長と職員の意見交換を図る場であるタウンホールミーティングの開催等、様々な工夫を行って取組を進めてまいりました。自己評定はBとさせていただいています。以上です。

○永井部会長

 ありがとうございます。ご質問はいかがでしょうか。これは財務、あるいは決算ですが、病院ごととか、研究所と病院を分けては分からないのですか。

○国立国際医療研究センター統括事務部長

 セグメントとしては、そのように分けています。ここに記させていただいているのは、センター全体のトータルの決算です。

○永井部会長

 連結になっているわけですね。

○国立国際医療研究センター統括事務部長

 そうです。

○永井部会長

 これはどうなのでしょうか。全体としてはこれでいいのかもしれないのですが、センター病院の状況が分かりにくくなってしまって、例えば病院の経費率、医薬品材料費率は収入に対して何パーセントか把握されていますか。今は非常に高価薬が増えていて、経費率が結構どこも上がっているのですが。

○国立国際医療研究センター病院長

3435%です。

○永井部会長

 急激に上がっていませんでしたか。

○国立国際医療研究センター病院長

 上がりました、30%から。

○永井部会長

 この数年、23年でものすごく。

○国立国際医療研究センター病院長

 ずっと上がってきて、38%近くまで行くような気がします。

○永井部会長

 そうなんです。だから、そこの状況を見ながら運営しないと、増益になったからといって、結局、高価薬を使っているだけだということにもなりかねないのです。それは現場から言うと、すごく忙しくなって、余り純益が上がらないとなると、くたびれもうけになっていくのです。士気の低下になっていきますし、できればそこの差額を、増益引く医薬品材料費の伸びの差を、現場にフィードバックするようなシステムを作らないと、現場の消耗感が改善されないのではないかと、そこまで是非おやりになるといいと思うのですが。

○福井委員

 看護師さんの離職率は、1年間で何パーセントですか。

○国立国際医療研究センター病院長

 昨年度は高くて15%ぐらい。ですので、100110人採用して、だんだん減ってくる。

○永井部会長

 ほかにいかがでしょうか。

○内山部会長代理

 先ほどの経費の関係にも関連して、組織の概要の中では、肝炎・免疫研究センターと糖尿病研究センターが研究所のほうの枠ですよね。これは戦略的なものですか。それとも歴史的なものなのでしょうか。

○国立国際医療研究センター理事長

 どちらかというと歴史的なものだと思います。肝炎・免疫センターを作るときに国府台の敷地を使って、そこに研究所を建てるという発想でしたので、そういうことからだろうと思います。

○永井部会長

 国府台の材料費はどうですか。結構、高価薬をいろいろ使っていらっしゃると思いますが、何パーセントぐらいになっていますか。

○国立国際医療研究センター理事(上村)

 薬剤のですか。

○永井部会長

 薬剤と材料、両方加えてです。

○国立国際医療研究センター理事(上村)

 私はよく覚えていないのですが、数字は出ますか。センター病院と同じぐらいだと思うのですが、17.5%。

○永井部会長

 いや、そんなに低くないと思うのです。

○内山部会長代理

 精神科だけだったらそうですが。

○永井部会長

 特に肝炎。

○国立国際医療研究センター理事(上村)

17.5%ではないですよね。やはり17.5%ですか。

○永井部会長

 ちょっと計算、数字が書かれている欄が違うかもしれません。材料費、カテーテルとか、そういうのも全部入れて、ガーゼとか手術。

○国立国際医療研究センター理事(上村)

 精神科は材料費がかからないから一緒にすると、そのくらいらしいです。先ほどの福井先生の質問で、うちは看護師はほとんど辞めないのです。すごいなと思いますね。

○内山部会長代理

 看護師が離職しないという秘訣はあるのですか。

○国立国際医療研究センター理事(上村)

 私が行くまでは相当高齢の方とかがいて、若い人が辞めていました。それが、この5年の間にどんどん辞めなくなって、離職率がものすごく減ってきて、逆に困っているのです。回転が少なくなるという形で、少し困る部分も出てくるのです。それでセンター病院と人事交流したりとか、そういう形でやっています。

○永井部会長

 あと、ICUの看護師さんの体制はどうなっているのですか。これは21で夜勤体制を組む必要がありますね。そうすると、かなり膨大な数の看護師さんが必要になりますね。しかし日勤帯は、多分余裕が出てくるはずです。そこを、どう運用しているか。

○国立国際医療研究センター病院長

 ちょっと正確なのは。ICUHCU、重症病棟と3つに分けて、それぞれのユニットで看護師の数が充足できるように動かしているという。

○永井部会長

 それはいいのですが、要するに夜勤を充足させると、日勤帯が余るという落とし穴があるのです。そこを各病院がいろいろ工夫しないといけなくて、場合によっては夜勤専属の看護師さんを置くとか、計算されると分かると思うのですが、夜勤に必要な看護師の3.5倍を配置する必要があるのです。でも、そのまま休暇を取ったりすると、日勤帯は随分勤務しないといけないということが起こってくるのですが、その辺も細かく見ていただく必要があると思います。

○国立国際医療研究センター病院長

 ありがとうございます。少し見てみます。やはり全体としては、あそこには手厚く入れている。

○永井部会長

 だと思うのですが、日勤帯、効率よく勤務していただくことが大事だということです。

○藤川委員

 以前、施設整備に関して、やや滞っているような案件があったと思うのですが、今回これは全て解消したという理解でよろしいのでしょうか。

○国立国際医療研究センター統括事務部長

 今回は昨年の5月から、戸山地区のセンター病院の外来棟が新たにオープンしましたし、年度末には国府台地区の外来棟も完成していまして、現在においては、病棟・外来については、整備は終了しているという状況です。

○藤川委員

 終わっていないものに関しては、予定どおりに進んでいるということで間違いないですか。

○国立国際医療研究センター統括事務部長

 まだこの先、今年度から始まった新たな中長期計画の中で、整備について計画をしているものもありますが、病院の主な整備については今申し上げたとおりです。

○永井部会長

 ありがとうございます。時間が大分超えてしまいましたので、法人の監事より業務の監査結果等をまとめた報告をいただくことにします。

○国立国際医療研究センター監事(水嶋)

 監事の水嶋です。私から監査報告、業務運営状況、今後の課題ということで、3点について掻い摘んで説明をさせていただきます。まず私どもの監査報告ですが、資料2-3に添付されていまして、これを要約してご説明しようと思います。

 平成26年度の監事監査報告は、619日付で理事長宛に提出しています。その同じものが623日付で大臣宛に提出されています。監事の監査は独法通則法により、法人の業務運営全般を対象とする業務監査と、財務諸表を対象とする会計監査が求められているところです。平成26年度の監査報告は、私ども監事協議の結果、業務監査、会計監査とも特段の指摘事項はありません。業務運営は法令等に準拠している旨、財務諸表等に関しては、会計監査人の監査結果が相当である旨の監査意見の表明を行っております。

 次に法人の業務運営状況ですが、法人の重要な意思決定機関である理事会の構成メンバーは、理事長を除く6名の理事のうち4名は社外理事で構成されています。それぞれ医師、弁護士、企業実務の専門家の方々です。監事2名も、いずれも企業財務の専門家として理事会に陪席をしています。理事会は定例で月2回開催されていまして、主な審議事項は開催日前日までメンバーに通知をされています。理事会ではそれぞれの見識の下に活発な意見が出され、重要案件の審議決定がなされています。議事の要旨は院内のホームページで公開され、構成員との情報の共有が図られているところです。このように法人の理事会は、ガバナンスを意識した運営になっているものと考えています。

 最後に今後の課題ということですが、課題はいろいろな視点でたくさん存在するのではないかと思いますが、ここでは財務面から見た課題について触れておきたいと思います。この5年間、いわゆる平成26年度に終わる中期期間、取得額ベースで500億を上回る巨額の施設の整備が、集中的に当センターではなされてきました。これは当法人の業務運営上の特徴的なところでもありますが、これからは施設整備も一段落し、ペースダウンするものと思われます。今後は、これまで整備されてきた施設や医療機器類を最大限活用し、効率的な経営の下で収支の改善を図っていくことが求められているように思います。このことが、財務面から見た当法人にとっての課題の1つではないかと思っています。以上、取り急ぎご説明申し上げました。

○永井部会長

 ありがとうございます。何か御質問、御意見はありますか。

○藤川委員

 先ほども長寿医療センターでお伝えしたので、お聞きになったかもしれませんが、通則法の改正で、附則6条が遡って適用されるという話で、それからすると内部統制システムの記載がされていないという点は御確認いただきたいという点と、あと、雛形で言えば、閣議決定についての監事の意見を記載しろという話がありまして、ただ、あれは監事意見を出せばそれは含まれているという考え方もあるとは思いますが、入れなかった御趣旨をお聞かせ願えますか。

○国立国際医療研究センター監事(水嶋)

 まず内部統制の問題ですが、これは現在、制度としての内部統制は法人のほうで体制整備しています。したがって、制度化を急に省令で言われても、やってないものをやりましたとは書けませんので、それであえて外しました。これは6センターの監事が協議して、全て外していると思います。その点が1点。

 それから、閣議決定事項の話ですが、これについては全般的な監査意見、監査の結果の中に含まれるもので、個別事項をいちいちここへ羅列して書くというのは、監査報告書の体裁として如何なものか、個別事項に関する監査の基準も示されていませんので、特定の個別事項を取り上げて書けないのではないかと思います。これは総務省の通達、連絡にもありましたが、そこも意識して外しています。

○藤川委員

 御意見は私もよく分かるのですが、であれば事前の雛形作成のときに御意見を頂いたほうがよかったと思います。

○国立国際医療研究センター監事(水嶋)

 監査報告書の雛形に関しては、私も2,3意見を出したのですが、どうも総務省で一部ご理解頂けなかったようです。

○藤川委員

 分かりました。

○永井部会長

 よろしいでしょうか。それでは、理事長から日々のマネジメントを踏まえて、業務運営の状況、今後の課題、改善方針等についてお話いただけますか。

○国立国際医療研究センター理事長

 平成26年度に関しては、私が非常に残念だったと思うのは、第1に死亡に至った医療事故があったということ。それから、約13億円の経常損失があった。この2つはいろいろな理由がありますが、残念だったと思います。評価できる点は、先ほどから御評価いただいたと思いますが、エボラ出血熱並びにデング熱に対するいろいろな活動は、我が国を代表する医療機関として、その使命を果たしたのではないかと思っています。

 それから、臨床研究を本格的に推進する病院として、医師主導治験2件、先進医療新技術3件を始められたというのは、我々にとっては確かな第一歩だったのではないかと思っています。私どもの基本であります国際という立場から、センターとしてグローバル医療戦略を策定して、国際医療協力局のみならず、病院・研究所等が一体となって、国際医療協力を推進する。そういう気運といいますか、そういうことが再認識されて、実際に病院においては国際診療部、これは実際には本年の4月から動いていますが、そういう準備をしたり、あるいはトラベルクリニックが非常に充実してきたということは、評価していいのではないかと思っています。

 今後の課題としては、国立研究開発法人の中でも病院機能を持った国立研究開発法人ということで、我々ナショナルセンターにはどうしても病院機能を活用した研究成果の最大化が求められると思います。その際に、今までいろいろ御説明しましたように、やはり病院では安心・安全の医療、あるいは収支相償ということが求められて、これを行わなければいけないと同時に、臨床研究の成果の最大化ということを求められると、非常に両立が難しいことを2つ求められるというので、やはりこれに関してはいろいろな工夫をしていただかないと、今後なかなか我々が活動しにくくなるのではないかと感じています。以上です。

○永井部会長

 ありがとうございました。何か御質問、御意見はありますか。

いろいろ大変だと思いますが、やはり研究成果は非常に伸びているのではないかと思いますので、特にこれからの研究開発法人として非常に特色があるセンターになるのではないかと思いますが、よろしいでしょうか。

 それでは、どうもありがとうございました。国立研究開発法人国立国際医療センターの業務実績評価に係る御意見については以上といたします。本日の議事は以上です。事務局から連絡事項等をお願いします。

○医政局医療経営支援課長補佐

 今後の流れについて御連絡します。本日御議論いただきました平成26年度の評価については、この後、本部会における御意見、法人の監事及び理事長のコメント等を踏まえまして、厚生労働大臣による評価を行い、その評価結果について法人に通知することになります。それと、公表もその際に行うことになります。決定した内容については、各委員にも後日お送りすることとなります。

 最後に、本日お配りした資料の送付を希望される委員については、机の上に置いていただければ後日送付いたしますので、そのまま御退席いただくようお願いします。事務局からは以上です。

○永井部会長

 ありがとうございます。念のために評定の基準ですが、昨年度までは標準はAだったのですが、今年から標準がBだということで、その点をお含みおきいただきたいと思います。それでは、長時間の御議論、ありがとうございました。以上で終了いたします。


(了)

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