ホーム> 政策について> 審議会・研究会等> 労働基準局が実施する検討会等> 平成27年度化学物質による労働者の健康障害防止措置に係る検討会> 第2回化学物質による労働者の健康障害防止措置に係る検討会(2015年8月31日)




2015年8月31日 第2回化学物質による労働者の健康障害防止措置に係る検討会

労働基準局安全衛生部化学物質対策課化学物質評価室

○日時

平成27年8月31日(月)13:30~


○場所

経済産業省別館104会議室


○議事

○北村化学物質情報管理官 本日は大変お忙しい中、御参集いただきまして、誠にありがとうございます。定刻になりましたので、ただいまより「第2回労働者の化学物質による健康障害防止措置に係る検討会」を開催いたします。本日は櫻井先生は御欠席という御連絡を頂いております。以下の議事進行につきましては、菅野先生にお願いいたします。

○菅野座長 本日もよろしくお願いいたします。議事の前に資料の確認を事務局からお願いします。

○北村化学物質情報管理官 では、お手元にあります議事次第を御確認ください。本日の議事は、1つ目が「平成26年度リスク評価対象物質の健康障害防止措置の検討について」、2つ目が「がん原性指針の検討について」、3つ目は「その他」となっております。裏は「資料一覧」です。お手元の配布資料ですが、資料の束でホチキス留めと、参考資料の束でホチキス留めとそれぞれ分かれております。

 まず資料のほうから説明いたします。資料1「健康障害防止措置の検討手順」が1ページから、資料2「健康障害防止措置の検討シート(三酸化二アンチモン)」が7ページから、資料3-1「健康障害防止指針(がん原性指針)の対象物質の追加について」が17ページから、資料3-2「がん原性指針に追加する物質について」が19ページから、資料4-1「指針対象物質の基本情報(MWNT-7)」が21ページから、資料4-2「試験結果概要(MWNT-7)」が23ページから、資料5-1「指針対象物質の作業環境測定の方法」が25ページから、資料5-2「指針対象物質において使用すべき保護具」が27ページから、資料6「今後の予定」が29ページとなっております。

 次に参考資料です。参考資料1「化学物質による労働者の健康障害防止措置に係る検討会開催要綱」が1ページから、参考資料2は先生方のみの机上配布としておりまして、「特定化学物質の障害予防規則」の抜粋を紙ファイルの最後にとじてあります。参考資料3-1「指針対象物質の基本情報(メタクリル酸=2,3-エポキシプロピル)」が5ページから、参考資料3-2「試験結果概要」が7ページから、参考資料3-3「がん原性指針結果概要」が9ページから、参考資料4-1「指針対象物質において使用すべき保護具(4-tert-ブチルカテコール)」が35ページから、参考資料4-2「指針対象物質の作業環境測定の方法」が37ページから、参考資料5-1-1「カーボンナノチューブ(多層カーボンナノチューブ:MWCNT)の測定・分析手法に関する検討結果報告書等」が39ページから、参考資料5-1-2「元素状炭素を含む粉じんの作業環境における測定法について」が47ページから、参考資料5-2「ナノマテリアルに対するばく露防止等のための予防的対応について」が59ページからです。このほか、先生方のお手元に配っております紙ファイルの中には「三酸化二アンチモンのリスク評価書」、今年の812日に公表したものを配布しております。もう1つ、三酸化二アンチモンのプロファイルについてもお配りしております。最後の机上配布資料として「MWNT-7の概要」ということでA4横長1枚の資料をお配りしております。配布資料は以上です。

○菅野座長 皆さんよろしいですか。それでは、早速、本日の議題に入らせていただきます。まず、議題1の「平成26年度リスク評価対象物質の健康障害防止措置の検討について」、御討論いただきたいと思います。事務局から御説明をお願いいたします。

○北村化学物質情報管理官 本日の検討物質に関する健康障害防止措置の検討会は初めてですので、まず、健康障害防止対策の検討手順について、資料1により御説明いたします。

1ページは、1.「基本的な検討の流れ」です。リスク評価を行った物質について、リスク評価結果のレビューから健康障害防止対策導入の方針を以下の図のような流れで検討をいたします。

2.「検討内容及び手順」です。(1)リスク評価結果のレビュー。ア~エに書かれておりますが、初期リスク評価書、詳細リスク評価書等の結果に基づき、リスクが高いと判断された物質について、規制を含めた健康障害防止措置の導入の必要性等を検討します。

(2)リスク作業実態の調査。詳細リスク評価の結果、リスクが高いと判断された作業については、事業者団体等からヒアリングを実施し、次の事項等について確認をいたします。ただし、ヒアリングが難しい場合は事務局が関係事業者等に聞き取り調査を行った上で、その内容をこちらの検討会に御報告することといたします。

2ページの(3)健康障害防止対策の検討です。先ほどのリスク評価等により、リスクが高いと判断された作業の分析及び以下の観点を踏まえて、事務局が必要な健康障害防止対策を、こちらの検討会に御提案をし、検討を行います。まず、効率的な検討方法として、1、個々の規制措置の要否を検討する方法、2、現行の規制における健康障害防止措置のセットを前提として検討する方法があります。()最適な規制措置のラインアップとして、現行の規制措置を前提に検討するだけではなく、例えば、以下のような新しい観点から健康障害防止措置があるのではないかということも踏まえて検討を進めることとします。

 イ.技術的課題と検討です。健康障害防止措置を導入する上での技術的課題が認められる場合にあっては、技術的対応、当該措置導入の可能性等について精査をするため、発散抑制措置や保護具のメーカー等から、関連技術開発の動向としてヒアリング等を行います。ただし、ヒアリングが難しい場合は事務局が関係メーカー等にヒアリングを行った上で、その内容を検討会に報告することといたします。

3ページです。ウ.規制化の必要性の検討。アで検討された健康障害防止措置ごとに規制化の要否を検討いたします。その上で規制化の要否に関わる整理として、規制化の要否の検討に当たっては導入が進まない場合もありますので、下のポツで幾つか列挙しておりますが、このような観点も踏まえて検討を進めることとします。

(4)最適な健康障害防止対策の検討です。ア.対策オプションの提案。最適な健康障害防止対策を策定するため、対策オプションを比較検討します。検討に当たっては事務局が3つの対策オプションを検討会に御提案します。3つの対策オプションは3つの方針で作成します。オプション1、原則、規制措置の導入を前提として作成。オプション2、現行の規制における健康障害防止措置のセットを規制によらずに行政指導により普及徹底させることを前提として作成。オプション3、関係事業者団体が妥当な健康障害防止対策を推進している場合には、当該自主的対策を維持すること(規制しないこと)を前提として作成の3種類です。

 イ.対策オプションの比較検討。3つの対策オプションの比較検討は、「化学物質等による危険性又は有害性等の調査等に関する指針」の中の「リスク低減措置の検討及び実施」において掲げられている優先順位でリスク低減対策の内容が検討されているとともに、必要な労働者の健康障害防止対策が図られていることを前提に、以下の考慮事項に基づいて行い、その結果を踏まえ、対策オプション中の健康障害防止措置の見直しを行い、最適な健康障害防止対策を取りまとめます。

 ウ.規制影響分析(RIA)の実施。イの検討の結果、規制の導入が必要と判断された場合は、当該規制措置の導入に係る影響を分析します。分析に当たっては、厚生労働省規制影響分析規定に基づき、選択肢を比較する手法で実施します。

 エ.留意事項。イの検討の結果、規制の導入が必要と判断された場合は、取りまとめた最適な健康障害防止対策については、当該対策を導入するに当たって留意すべき事項として、以下の()()の検討を行います。

 最後は、(5)健康障害防止対策の導入方針の検討です。ア.導入方針の提案として、(4)のイで取りまとめられた最適な健康障害防止対策について事務局は導入の方針を作成して、検討会に御提案いたします。当該方針には次の事項を盛り込みます。()導入する健康障害防止対策の内容、()導入する健康障害防止対策の管理方針、()今後期待される技術開発の内容です。イの導入方針の検討として、検討会において、アの方針を審議し、検討会としての健康障害防止対策の導入の方針を決定します。

 最後にウですが、具体的方針とスケジュールの検討です。イで決定した健康障害防止対策の導入の方針を踏まえて、その具体的方針及びスケジュールを作成します。なお、健康障害防止対策の導入のスケジュールについては、健康障害防止対策の導入に際して、取るべき手順、準備期間等の明確化を図るため、目安として作成するものです。資料1については以上です。

○菅野座長 ただいまの御説明につきまして、御意見、御質問があればお願いいたします。これは前回から変更点はないですよね。

○北村化学物質情報管理官 特に変更はありません。

○菅野座長 それでは、よろしければ次に今回の健康障害防止措置の検討を行う物質について、具体的には三酸化二アンチモンですが、リスク評価結果を中心に御説明をお願いいたします。

○北村化学物質情報管理官 それでは、先生方のお手元にお配りしております紙ファイルの中に、三酸化二アンチモンのリスク評価書を配布しておりますので、そちらを御覧ください。

 まず、1枚めくっていただき、三酸化二アンチモンの「物理化学的性質」です。名称は三酸化二アンチモン、化学式はSb2O3 、分子量は291.5。こちらは労働安全衛生法施行規則別表9の名称を通知すべき有害物です。物理的化学的性状ですが、外観が白色の結晶性の粉末、沸点が1550℃、融点が656℃、蒸気圧は574℃で、130Paとなっております。

(4)生産・輸入量等です。2010年のアンチモンの酸化物としての生産量は6,845トン、輸出量は1,616トンとなっております。用途は各種樹脂、ビニル電線、帆布、繊維、塗料などの難燃助剤、高級ガラス清澄剤、ほうろう、吐洒石、合繊触媒、顔料となっております。

2ページの2「有害性評価の結果」です。発がん性については、ヒトに対して恐らく発がん性があるとしております。IARCは三酸化二アンチモンを「グループ2B(ヒトに対する発がんの可能性がある)と分類しています。

 次に閾値の有無の判断です。こちらに試験結果を幾つか列挙しておりますが、陰性の結果と陽性の結果が複数あって、遺伝毒性は判断できないということで、閾値の有無については判断できないとしております。

(2)発がん性以外の有害性として、急性毒性等について列挙しております。3ページを見ますと、皮膚刺激性/腐食性はあり。目に対する重篤な損傷性又は目の刺激はあり。皮膚感作性は判断できない。呼吸器感作性は報告なし。反復投与毒性ですが、NOAEL0.51mg/m3 となっております。こちらは三酸化二アンチモンの動物実験の結果で、こちらの0.51mg/m3 をアンチモンの量として換算すると0.43mg/m3 となります。神経毒性は報告なし、生殖毒性は判断できない。遺伝毒性は、先ほど閾値の有無の所でも御説明したとおり、判断できないとなっております。

(3)許容濃度等です。ACGIHはばく露限界値(TLV-TWA)0.5mg/m3 、アンチモン及びその化合物として設定をしております。4ページの上側にある日本産業衛生学会の許容濃度は0.1mg/m3 で、こちらもアンチモン及びその化合物として設定されています。DFG MAKは設定なし、NIOSHOSHATWAについてはACGIHと同じく0.5mg/m3 となっております。

(4)評価値です。一次評価値については、発がん性の閾値の有無が判断できないため、設定はなし。二次評価値については、日本産業衛生学会が勧告した許容濃度0.1mg/m3 を二次評価値としております。

5ページは、「ばく露実態評価」の結果です。有害物ばく露作業報告の提出状況は29ページに詳細なデータが載っておりますが、平成21年におけるアンチモン及びその化合物の有害物ばく露作業報告については、360事業場から計869作業について報告があり、対象物質の用途は、主に「触媒又は添加剤として使用」「他の製剤等の原料として使用」「顔料、染料、塗料又は印刷インキとして使用」等で、作業の種類は、主に「計量、配合、注入、投入又は小分けの作業」「ろ過、混合、攪拌、混練又は加熱の作業」「成型、加工又は発泡の作業」等でした。

対象物質の取扱量の合計は46,685トンで、当該作業従事労働者数の合計は9,863人でした。全作業のうち、作業時間が20時間/月以下の作業の比率は65%、局所排気装置が設置されている作業は77%、防じんマスク、保護眼鏡を使用している作業は、それぞれ78%、55%でした。

(2)ばく露実態調査結果です。ばく露実態調査結果は、平成23年度と24年度の2か年にわたって実施しております。まず、平成23年度ですが、有害物ばく露作業報告のあった360事業場から、「労働者の有害物によるばく露評価ガイドライン」に基づき、ばく露予測モデル(コントロールバンディング)を用いて、ばく露レベルが高いと推定される9事業場を選定しました。対象作業場においては、製造・取扱作業に従事する31人について、個人ばく露測定を行うとともに、9単位作業場で作業環境測定基準に基づくA測定を、39地点でスポット測定を実施しました。アンチモン及びその化合物については、個人ばく露測定では、労働者31人のうち、4(13)0.1mg/m3 を超えており、最大値は0.40mg/m3 でした。当該作業は「三酸化二アンチモンの計量、投入、袋詰めの作業」「アンチモンメタルから三酸化二アンチモンを製造する作業」でした。

 これらのばく露実態調査結果とIARCの発がん性評価で「2B」とされているのが三酸化二アンチモンのみであることを勘案して、当面、リスク評価を行う対象を三酸化二アンチモンのみとすることが適当であるとされましたので、三酸化二アンチモンは、更に詳細なリスク評価を実施いたしました。その際、三酸化二アンチモンを取り扱う作業、特に当該物質の計量、投入、袋詰めの作業、揮発精錬により製造する作業を行う事業場に対して、当該作業に係る追加調査を行い、当該作業工程に共通した問題かを、より詳細に分析する必要があるとされました。

 平成24年度の調査です。三酸化二アンチモンについて、製造2事業場(J,K)及び成形用樹脂に添加剤として購入し、ペレットを製造する1事業場(L)の計3事業場で追加調査を行いました。これらの事業場の9人について個人ばく露測定を行うとともに、2単位作業場で作業環境測定基準に基づくA測定を、15地点でスポット測定を実施しました。ばく露実態調査の表については以下にまとめているとおりです。

 測定分析法ですが、詳しくは30ページの別添を御覧いただければと思います。サンプリングはメンブランフィルターを用いたろ過捕集です。分析法はICP発光法、ICP質量分析法等で行っております。

 次に、対象事業場における作業の概要です。調査対象事業場における三酸化二アンチモンの用途は、「三酸化二アンチモンを含有する製剤等の製造を目的とした原料としての使用」「三酸化二アンチモンの製造」等でした。2年間のばく露実態調査の結果、8時間TWAの値が二次評価値0.1mg/m3 を超える値を示したのは、平成23年度調査の9事業場のうち、4事業場の4名、平成24年度調査の3事業場のうち、1事業場の4名で、計8名でした。平成23年度の4事業については、8時間TWAの値が二次評価値を超えた労働者の主な作業は、三酸化二アンチモンの計量、投入、袋詰め、揮発精練の作業でした。また、これらの事業場のうち、3事業場4地点におけるスポット測定で、二次評価値を超える値が確認されました。

 また、平成24年度の1事業場において、8時間TWAの値が二次評価値を超えた労働者の主な作業は、粉体の投入、袋詰め等の作業でした。また、この事業場での11地点におけるスポット測定で二次評価値を超える値が確認されました。なお、全ての作業は屋内で行われており、局所排気装置は、約8割の作業で設置をされておりました。

 次に測定結果です。平成24年度の調査の結果、酸化炉、溶融炉の炉前作業、粉体作業を行うJ事業場において、5名中4名のTWA値が0.280.33mg/m3 の範囲となりました。また、K事業場は酸化炉に金属アンチモンを投入して発生したヒュームを空気酸化して三酸化二アンチモンとし、バグフィルターで回収する工程で、0.0813mg/m3 TWA値を示しました。また、L事業場では、粉体の三酸化二アンチモンを押出し成形機の混練槽に投入し、樹脂と混合し、ペレットを押し出して成形する作業を測定したところ、0.0440mg/m3 TWA値を示しました。

 このように、平成24年度に実施した調査でも平成23年度の結論である「粉体の取扱い(投入、袋詰め等)及び揮発炉作業等のばく露が高い」ということを追認するものでした。平成23年、24年度の2年間のばく露実態調査の結果は、上述のとおり、個人ばく露の測定値が二次評価値を超えた5事業場の8名のうち、最大値は0.40mg/m3 となりました。また、2年間のデータについて、コルモゴロフ・スミルノフ検定により正規性を確認の上、区間推定上側限界値を求めたところ、0.59mg/m3 となりました。

 ガイドラインによって、個人ばく露最大値と区間推定上側限界値のうち、大きいほうである区間推定上側限界値がばく露最大値となり、この値と二次評価値0.1mg/m3 を比較した結果、二次評価値を超えるばく露が確認されました。なお、個人ばく露最大値0.40mg/m3 も二次評価値を超える水準となっております。

4の「リスクの判定及び今後の対応」です。平成24年度のばく露実態調査の結果、酸化炉、溶融炉の炉前作業、粉体作業を行う事業場において高いばく露が確認されましたが、これは平成23年度における4事業場の調査において、粉体の取扱い及び揮発炉作業等のばく露が高かったことと同様の結果を示すものでした。このため、三酸化二アンチモンの製造、取扱作業においては、リスクが高く、ばく露防止のための措置が必要と考えられます。8ページは個人ばく露測定の結果をグラフにしたものです。

9ページの最後を御覧ください。前段は先ほどの説明と同じですが、なおアンチモンを含む樹脂の射出成形作業については、上記のガイドラインに基づくばく露実態調査とは別に、平成26年度に実態調査を実施しております。この実態調査については、今後こちらの検討会で議論を踏まえて、この作業についても検討を行っていただきたいと考えております。リスク評価書の説明については以上です。

○菅野座長 ありがとうございました。ただいまの御説明につきまして、御意見、御質問がありましたらお願いいたします。

 本文中には揮発炉という言葉がずっときて、揮発精練という言葉が出てきますが、8ページの作業の内容のどれに相当するのですか。8ページに個人ばく露を測定した方の作業内容が書いてあるのですが、揮発炉というのは、どの方に。

○北村化学物質情報管理官 8ページの上のグラフを見ていただくと分かるかと思いますが、g1の方です。 

○菅野座長 これはアンチモンを蒸発させてヒュームにするということでしょうか。

○北村化学物質情報管理官 はい。

○菅野座長 分かりました。どうもありがとうございました。

○平川化学物質評価室長補佐 菅野先生、今の話ですが、6ページのK事業場に関するものと理解してよろしいでしょうか。「アンチモンを投入して発生したヒュームを空気酸化して三酸化二アンチモンにする」という表現があります。

○菅野座長 揮発炉というのは、それのことでよろしいですか。

○平川化学物質評価室長補佐 資料の8ページですね。

○菅野座長 酸化炉という表現がありましたね。

○平川化学物質評価室長補佐 K事業場の話ということでしたら、結果については8ページのk1k2がこれに当たるということになります。

○中央労働災害防止協会 揮発炉と言っているものは、7ページの酸化炉とか溶融炉と書いてありますが、これと同等と思っていただければ結構です。そうしますと、高い結果のあるもの、酸化炉というのは結構いっぱい書いてありますが、高い所はそういった作業があったということです。

○小野委員 E社ですが、こちらは三酸化アンチモンを使った化合物の袋詰め等をしている作業場ということで、三酸化二アンチモンは入っていない。ただし、測るとアンチモンとして計量される濃度が、e1のグラフになるという理解でよろしいですか。

○中央労働災害防止協会 平成23年の調査については、三酸化二アンチモンに限定していなかったので、アンチモン及びその化合物ということでやっていた関係で、そのデータが残ってきているのだと思います。

○小野委員 分かりました。ありがとうございました。

○菅野座長 いかがでしょうか。よろしいですか。それでは、もし、御質問等があれば、後でも頂くことにしまして、続きまして、措置内容について、御説明をお願いします。

○北村化学物質情報管理官 続いて措置の内容について御説明いたします。資料の7ページ、資料2の「健康障害防止措置の検討シート」です。こちらは本日の日付が入っていますが、今後、事業者団体様等のヒアリングや先生方の御検討を踏まえて、内容をどんどん修正していくというものです。こちらの資料については、先ほど御説明しましたリスク評価書と重複している部分が少しありますが、御容赦ください。

 物質名ですが、三酸化二アンチモン、CAS No1309-64-4となっております。初期リスク評価を行ったのが平成248月、詳細リスク評価を行ったのが今年の8月ということです。物理化学的性質ですが、三酸化二アンチモンは固体で、白色の結晶性粉末、融点は656℃、蒸気圧は574℃で130Paとなっています。

  有害性評価の結果です。一次評価値については、発がん性の閾値の有無が判断できないため設定はしておりません。二次評価値は、日本産業衛生学会が勧告しました許容濃度を採用し、0.1mg/m3 となっています。主要な毒性としては発がん性、IARC2BACGIHA2となっており、ヒトに対しておそらく発がん性があるというものです。皮膚感作性/呼吸器感作性については、判断できない/報告なしとなっております。反復投与毒性については、呼吸器のところで、反復ばく露のGHS区分が1となっています。NOAELについては、リスク評価書で説明しましたとおり、0.51mg/m3 、こちらをアンチモン相当に換算しますと0.43mg/m3 となっております。

 ばく露評価結果です。有害物ばく露作業報告事業場数は360事業場ありました。次に、ばく露実態調査の事業場数です。表が2段に分かれていて少し見にくいですが、対象物質の製造を行っている事業場は4事業場、他製剤の製造を行っているのは7事業場、難燃剤、顔料としての使用は1事業場となっています。個人ばく露濃度の最大値は、それぞれ0.34mg/m3 0.40mg/m3 、難燃剤のほうは0.04mg/m3 となっており、これらから区間推定上側限界値を計算したところ、0.59mg/m3 となっております。

 高いばく露作業について、作業名をリスト化しております。まず、対象物質の計量、投入と他の原料の計量、充填作業等については、個人ばく露測定が0.40A測定値が0.162となっています。対象物質の製造、先ほどの揮発炉の投入の件ですが、こちらは個人ばく露測定が0.343、スポット測定が0.076です。酸化炉の発生粉体の回収、酸化炉メタルの追投入ですが、個人ばく露測定が0.327、スポット測定が2.54となっています。対象物質の製造のうち、調合、荷作り、清掃については、個人ばく露測定が0.3、スポット測定が0.578となっています。

8ページは、リスク評価の結果です。個人ばく露濃度の分布から、二次評価値以下のものと、二次評価値を超えるもので割合を出しています。二次評価値を超えるものは全体の21%という結果となりました。ばく露が高かったものですが、他の製剤等の製造を目的とした原料としての使用は二次評価値を超える高いばく露ということで、措置の要否は「要」としております。また、ばく露作業報告対象物質の製造も二次評価値を超える高いばく露だったので「要」としています。「その他」の作業でも、幾つか二次評価値を超える高いばく露がありましたので、措置の要否は「要」としております。

9ページ以降については、今後の事業者団体様のヒアリング結果等を踏まえて追記をしていくということになります。資料2の説明は以上です。

○菅野座長 ただいまの御説明、あるいはその前のリスク評価書の御説明について、御質問、御意見があればお願いいたします。

○小野委員 先ほどとも関係するのですが、しつこくて申し訳ないのですが、例えば配布資料のアンチモンのばく露測定結果のほうには、先ほど、アンチモンを測っているものが入っているというお話でした。今回、この二次評価値を計算するときには、例えばg1とかe1のように、三酸化二アンチモンだけではないものについてのアンチモンのデータというのは省いて計算なさっていますでしょうか。それとも入れた形なのか。どちらにしても濃度は高いので問題ないというか、やるべきことは変わらないのですが、数字を表に出すときに、そこのところをどうなさるかを御検討いただくか、確認していただいたほうがいいかと思います。

○北村化学物質情報管理官 はい。

○菅野座長 そうしますと、平成24年度の測定結果のみを使って数値を出したほうがいいと。

○小野委員 アンチモンの高い平成23年度と平成24年度、平成24年度の中でも、例えば揮発炉投入の所の最初はアンチモンを入れて酸化していますので、平成24年度はアンチモンだけを溶かして三酸化二アンチモンを溶かさない条件で分析なさっているのでなければ、アンチモンも入っている状態になると思うのですが。

○菅野座長 前年度のものは全部入っているのではないですか。

○小野委員 平成24年度は分けてとおっしゃっていましたが、投入に関してだけは作業が三酸化二アンチモンではなくて、違う作業になりますので、多めに見積ることにはなっているかと思います。その点、計算は難しいということでしたら、追加というか、コメントを付けておいていただいたほうが、紛れがなくていいかなと思います。

○名古屋委員 中災防さんが分析して出してくれているから、どうされているかは、出席していらっしゃる中災防さんに聞かれたほうがいいです。

○菅野座長 つまり、三酸化二アンチモンのみのデータと、そうでないデータがあるというお話でしたよね。それで、区別が可能かどうかという。

○中央労働災害防止協会 どちらも酸で酸化させながら溶かしていますので、みんな溶けてしまっていて。

○菅野座長 区別するのは難しいということですよね。

○中央労働災害防止協会 そうです。

○小野委員 サンプリングを分けているということもないのですね。

○中央労働災害防止協会 ありません。

○小野委員 そこの投入の部分だけ違うフィルターで取るとか、そういうことでもない。1日分ということで測っていらっしゃるということですね。

○中央労働災害防止協会 そうです。

○小野委員 分かりました。

○菅野座長 アンチモンの投入作業の際、区別すれば大丈夫なのでしょうか。

○小野委員 多分、ほかの所は、そこからはもう酸化して三酸化ニアンチモンになっていますので、あとの回収や袋詰めなどは三酸化二アンチモンで構わないと思います。

 あとは、先ほど申し上げましたe1の製剤の作ったほうのは入れないならば入れないほうが、不純物として三酸化二アンチモンがかなり残っているということでしたら別なのですが、恐らく製品の中にはそんなにないと思いますので、そこをもし可能でしたら、会社さんのほうに確認いただくとか、除くとか、そういったことでお考えいただければと思います。

○大前委員 今のお話ですが、酸化炉にアンチモンを投入する所の話なのですが、その辺りはいっぱい三酸化二アンチモンの粉がありますので、メタルは当然ある程度の大きさがありますからサンプルに掛かってこないと思うので、測っているのは三酸化二アンチモンだと思います。

○小野委員 いずれにしても、0.1を切るような状況にはなりませんので、コメントを付けていただくだけでも構わないかと思います。

○菅野座長 そうしますと、実際の測定ではアンチモンの妨害はそれほど大きくないだろうと見込まれるということと、そうは言っても、アンチモンの金属自体が含まれている可能性は除外できないというようなコメントを付けていただくということでよろしいのでしょうか。

○大前委員 先ほどの揮発炉と酸化炉ですが、これは同じものかどうか確認していただいて、同じだったら、どちらかに用語を統一したほうがいいと思うのですが。

○菅野座長 そうですね。いろいろな炉の名前が出てくるのもちょっと。ほかにはいかがでしょうか。

○保利委員 A社のこのばく露作業の情報の所に、局排の有効性「△」というのがあるのですが、「△」とはどういう意味でしたか。局排の「有」「無」は分かるのですが。

○北村化学物質情報管理官 プロファイルですか。

○保利委員 はい、そうです。あるけれども余り効いていないのだったら「無」になるかと思うのですが。

○中央労働災害防止協会 どこでしょうか。

○保利委員 プロファイルのA社の所です。局排の「△」というのがあるのですが、これはどういう意味でしょうか。

○中央労働災害防止協会 本当に有効だとは言えないけれどもというようなことを表しています。

○保利委員 多少効いているとか。

○中央労働災害防止協会 弱いとか、限定的に有効になっているとか。

○菅野座長 無効と有効の間ということですかね。

○中央労働災害防止協会 そうですね。全く無効とは言えない。ある程度は濃度を下げる役目はしているけれども、というような意味合いで使っています。

○名古屋委員 そうすると、そこの所の上から5番目は「囲い式 無」なのに「△」が付いているのはおかしいのではないですか。

○中央労働災害防止協会 これは本来、2段で書かなければいけないのを、囲い式のほうは「△」で、「無」のほうは、局排がないということです。

○名古屋委員 「×」は局排がないということですか。

○中央労働災害防止協会 そうですね。評価しないということです。

○菅野座長 このプロファイルは一般公開することはないのですね。

○北村化学物質情報管理官 そうです。作業内容がかなり具体的なので。

○菅野座長 分かりました。では「△」については、中程度の効率ということで御理解いただきたいと思います。

○保利委員 はい。

○菅野座長 よろしいでしょうか。それでは、先ほど小野委員から指摘がありましたが、最低限、アンチモンの金属が入っている可能性があるということだけ付け加えていただくと。もちろん、もし計算可能でしたら計算していただくのですが、多分不可能なのですよね。

○北村化学物質情報管理官 そうですね。

○菅野座長 よろしくお願いいたします。それでは、少し早いかもしれませんが、今後の流れについて事務局から御説明をお願いいたします。

○北村化学物質情報管理官 先ほども御説明しましたとおり、三酸化二アンチモンの関係の団体様のほうに、今後、書面等でヒアリングアンケートを取りまして、次回以降の検討会で、その御意見を先生方に御確認いただいたり、場合によっては、事業者団体の方から直接御説明をしていただこうと考えております。

○菅野座長 この点についてはよろしいでしょうか。では、そのようによろしくお願いいたします。

 続いて議題2です。がん原性指針対象物質の措置について、説明をお願いいたします。

○平川化学物質評価室長補佐 資料3-117ページから説明をさせていただきます。本日の議題、がん原性指針についての検討ということで、資料3-1では、直近の健康障害防止指針の対象物質の追加の状況についての説明資料です。過去3年間で見ますと、平成24年、平成25年、平成26年ということで、大体1年に1回、指針の追加をやらせていただいております。最新のものとしては、計34物質に関する指針ということで、指針公示の第25号を公表しております。II3の所です。今年度もこの指針の発出を予定しております。

III「今回の検討会での検討事項」ですが、指針対象追加予定物質について、指針を運用するための専門的事項、保護具、作業環境測定の方法・測定結果の評価指標といったものについて検討していただき、指針の施行通達への反映ということで予定しております。

 「最新の指針の内容」については、18ページに資料を付けております。趣旨ですが、対象物質及び対象物質の重量の1%を超えて含有するものを製造し、又は取り扱う労働者の健康障害を防止するため、事業者が講ずべき措置を定めるものです。対象物質については、先ほど申し上げましたとおり、現在は34物質が対象で、指針ではCAS番号も列挙しております。

3の対象物質によるばく露を低減するための措置についてですが、適用法令により、次の3つのグループに類型化しての措置ということです。3つのグループとは、有機溶剤中毒予防規則の対象物質、特定化学物質障害予防規則の対象物質、それ以外ということで、それぞれに作業環境管理、作業管理、排気・排液等による汚染防止、保護具、作業基準の策定を規定しているものです。使用すべき保護具については、施行通達で示しております。

4の詳細な内容のうちの作業環境測定ですが、適用法令により、次の2つのグループ、有機則、特化則の対象物質、それ以外の物質という2つのグループに類型化しての措置ということです。34物質の中には評価指標の設定できない物質がありますが、それらについては測定のみ規定をします。測定結果、評価結果の保存については30年間ということで、測定方法、評価指標については、施行通達で示しております。

5の労働衛生教育、6の労働者の把握については、全ての物質に共通です。7の危険有害性等の表示及び譲渡提供時の文書交付については、対象物質の適用法令により、(1)表示、SDS交付が共に義務付けられている物質、(2)SDSの交付のみが義務付けられている物質、(3)どちらも義務付けられていない物質の3つのグループに類型化して措置を規定しております。

 資料3-2です。今般、労働安全衛生法第57条の5の規定に基づくがん原性試験の結果、がん原性が確認され、指針に追加することとしている物質です。複層カーボンナノチューブのうちの1種類MWNT-74-tert-ブチルカテコール、メタクリル酸=2,3-エポキシプロピルの3つの物質です。真ん中の4-tert-ブチルカテコールについては、去る526日の第1回の措置検討会で議論を行いました。その結果については、本日配布しています参考資料4-14-2、参考資料の3537ページに取りまとめた内容を出しております。

 また、有害性評価小検討会を623日に行った結果、指針に追加することとしました2物質、MWNT-7、メタクリル酸=2,3-エポキシプロピルです。これについて、本日お諮りするものですが、まず、メタクリル酸=2,3-エポキシプロピルについては、現在、作業環境測定手法、保護具といったものについては、今年度の委託事業において検討しておりますので、御承知置きください。メタクリル酸=2,3-エポキシプロピルの試験結果等については、参考資料の5ページから試験の結果の取りまとめとして入れております。

MWNT-7についてですが、これについては複層カーボンナノチューブのうちのこの1種類のみ今回の指針の対象とする予定です。このMWNT-7ですが、資料3-219ページの一番下の※にありますとおり、製造事業者により当該製品の名称がNT-7NT-7Kに変更されたため、これら変更後の名称の製品も含めて検討するという形になっております。

 この製品の状況については、本日机上配布のA4横版1枚紙の資料で御紹介させていただきます。基本的には配布資料の下にあります※、樹脂等に分散させて販売することが主体であるが、自社で分散し、用途開発をしたいというユーザーに粉でのサンプル提供、販売等を実施したということで、今般、がん原性試験に用いましたものはMWNT-7NT-7の所の2、4の物が対象ということです。造粒をしていないものということで、研究用に限定的に提供したもので、今回、それで試験を行ったというものです。備考欄に記載のとおりです。なお、この物質ですが、当該製造事業者においては、事業性の理由により生産中止という形になっております。

 引き続き、本日、指針の詳細の事項検討ということで、資料4-1を御覧ください。「指針対象物質の基本情報」です。MWNT-7の情報ということではなく、主に複層カーボンナノチューブについて示しております。今回提供された物については、CAS Noの特定ができないということで、CAS Noについては今回省略させていただいております。がん原性評価については、IARCMWNT-7がGroup 2B、その他のMWCNTについてはGroup 3ということになっております。

 また、変異原性の有無ですが、MWNT-7については、ほ乳類培養細胞を用いた染色体異常試験で数的異常の陽性となっています。あと、MWNT-7以外の複層カーボンナノチューブは、in vitroの遺伝毒性については、ヒトリンパ球を用いて細胞質分裂阻害法による小核試験の結果、2種類のMWCNTでは明瞭な用量相関性は認められなかったが、1種類のMWCNTで比較的低濃度の1用量でのみ上昇が認められた。MWCNTをヒト気管支内皮由来の株化細胞と初代培養細胞にばく露し、細胞分裂への影響を検索したところ、紡錘体に対する障害は用量依存的に増加した。染色体の数的異常を初代培養細胞により調べたところ、1番染色体、4番染色体において数的異常を持つ細胞の割合は用量依存的に増加していたといったような、変異原性試験が出ております。

 その他の主要な有害性は、反復投与毒性において、今回の被験物質については、ラットを用いた13週間吸入ばく露試験において、肺における肉芽腫形成と炎症を確認というところがあります。

○角田化学物質評価室長 これは被験物質ではない。

○平川化学物質評価室長補佐 すみません、この反復投与毒性は被験物質ではありません。御了承ください。

 ばく露限界ですが、管理濃度は設定なし。ACGIH、日本産衛学会も未設定。NIOSHでは別のカーボンナノチューブでの試験の結果、REL1μg/m3 というのが勧告されているという情報があります。以上が主に複層カーボンナノチューブについての整理ということです。

 次に資料4-2です。当該被験物質に関する「発がん性試験結果の評価について」ということです。この被験物質については、ラットの雌雄に対して発がん性が認められるとの評価でした。遺伝毒性についても、委託実施した試験、染色体異常試験において、陽性の結果が出たことが報告されました。こういった結果、MWNT-7については、発がん性が認められたこと、遺伝毒性があるとされる試験結果が出ていることから、本件指針の対象とすべきとされたというものです。これらについての作業環境測定の手法等について、資料5-1以降で説明させていただきます。

 資料5-1が、「作業環境測定の方法()」ということです。これについては、複層カーボンナノチューブ(MWNT-7)のみ対象ということでの案ということです。案としましては2つの方法を出しております。炭素分析法と高速液体クロマトグラフ分析方法ということです。上段の炭素分析法については、参考資料5-1-247ページから試験方法についての詳細を出しております。これについては、平成25年のばく露小検討会で検討しました資料と同じものです。次に、高速液体クロマトグラフ分析方法です。これについても、参考資料5-1-139ページから詳細な資料を付けております。これについては、平成27年のばく露小検討会で使いました資料と同じものです。これらを取りまとめた結果ということで、参考例等をお示ししております。

 次に、資料5-2です。「複層カーボンナノチューブにおいて使用すべき保護具の()」ということです。これについては、平成21年にナノマテリアルに関する通達が出ており、その中でも保護具についての記載がありました。参考資料5-265ページから書かれています。基本的には、これに沿っての対応、新しい知見が得られればまた変わるかもしれませんが、現時点においてはこの65ページ以降の対応という形で進めていただければと考えております。私からは以上です。御検討をお願いいたします。

○菅野座長 ただいまの説明について、御意見、御質問がありましたらお願いします。後で配られた一枚紙のMWNT-7の名称変更品の概要ということですけれども、先ほど製造中止とおっしゃられたのはどれですか。

○平川化学物質評価室長補佐 MWNT-7が中止になっているということです。

○菅野座長 同じものではない。名称変更という。

○平川化学物質評価室長補佐 名称が変わっただけですので、基本は同じものです。

○菅野座長 製造はしているわけですね。

○平川化学物質評価室長補佐 製造は中止しております。

○角田化学物質評価室長 2009年に名称変更されました。2009年に名称を変更されたものも、昨年製造を中止していると聞いています。したがって、今は作られていないです。ただ、先ほど説明があったとおり、発がん性試験でがん原性が確認されたこともありますので、従来のものと同じように、その被験物質については指針で指導する必要があると、有害性の検討会で御判断いただきましたので、指針の対象にしようとするものです。作っていなくても、在庫などがありますので、そこは注意喚起をしていかなければいけないということです。

○唐沢委員 日本国内では、こちらのメーカーのみが製造していたと思います。それが製造中止になったという理解です。日本国内で、他のメーカーでは製造していないということですね。

○角田化学物質評価室長 この製品についてはそうです。

○唐沢委員 海外ではどうなのでしょうか、分かりますか。

○角田化学物質評価室長 海外でもがん原性試験が行われているものもありますが、吸入ばく露の長期で試験の結果が出たものはこれが最初ですので、それを指針の対象にしようということです。

○唐沢委員 私も、623日の検討会に出された、バイオの長期吸入毒性試験資料は大変興味深く見させていただきました。室長からもお話がありましたように、長期吸入試験で、マウスの雌雄にがんが出たということ。それも、単にがんが発生したとか、しないとかの有無だけにとどまらず、がん原性についてNOAELとか、がん原性以外の慢性毒性についてNOAELに関連するようなデータも得られたということで、大変貴重なデータだと思います。恐らく、こういう結果が出たのは世界で初めてなのだろうと思います。

 本日の本題のMWNT-7については、製造中止物質ではあるけれども、一応指針の対象にしようというのは必要なことだと思います。せっかく、厚生労働省の委託研究という、かなりお金のかかった吸入実験の結果が出たわけですから、それを何とか国際社会に情報提供してはいかがかと思うのです。漏れ聞いたところによると、バイオアッセイ研究センターにおいては、既に海外の専門誌に、これは厚生労働省の了解を取ってからだと思いますけれども、論文を出すように翻訳作業を進めていると伺っています。それは、それで大変必要なことだと思うのです。

 それ以外の専門の学会誌のみならず、ある意味ではより通俗的なといいますか、もし英文で発表できる機会があれば、そういうものを英文で発表することは意味があるかと思うのですが、何かお考えがあれば聞かせてください。

○森戸化学物質対策課長 昨年から、IARCの事務局よりバイオアッセイ研究センターの結果については、結果が出次第送ってほしいとお願いしています。それは日本語でも構わないということになっているので、結果を評価していただいた後は、速やかにIARCにそのデータを送ることになっています。

○唐沢委員 数年前でしたけれども、ITOのときに私も余計なことを言って、結果的にはIOHAのニュースレターに、当時の対策課長と相談して記事を載せてもらったことがあります。そういう方法もあるかもしれません。

○小野委員 カーボンナノチューブは各社がそれぞれの製法で作っていますので、同じものはどこにもないのが現状です。その中で、NT-7だけはこれまでにたくさんの毒性試験を行うために試料を提供してくださっていました。その結果として、長期ばく露試験というのが、現状ではこの物質にだけ実施されています。それで、いち早く毒性が確立してしまったために、こういう状況になってしまったということです。

 今まで厚生労働省にしても日本の国にしても、こういう物質がなかったこともありますけれども、A社のXという物質について規制をかけますということは、これまでは行われておりませんでした。それを、今回はデータが出たということで、こういう英断をなさったというのは評価されるべきかと思います。それ以外のCNTについても、実はIARCの評価では3になっています。ですから同じ実験をすれば、同じことが起こる可能性は十分あります。

CNTに関しては、日本の工業の未来を背負うものとして期待されていたので、皆さん通達にしたがって使用してくださっていました。NT-7の生産が減少すると、恐らく他のCNTで皆さんは製造を続けると思います。A社の何、B社の何というのを1つずつこれから規制していくのかということになってきます。これが実行されると、かなり深い問題提起を含む規制になるかと思います。

 それは前段なのですけれども、基本情報の所で、先ほどNIOSHRELを出してくださったのですけれども、これもACGIHとか産衛と同じで、法的規制のあるものではないということ。NHKが、基準値が米国にはあるが、日本にはないと報道していて大変びっくりしました。かつ、これはMWの複層のCNTだけではなくて、単層のCNTも全てを含んだ形で評価して、より厳しい条件ということで、1μg/m3 が設定されています。今後、もし規制に係わる濃度設定をなさるときには、NT-7ですから、今回のバイオの結果に対応する形で数値を出していくとすれば、1μgというのは、余りにも非現実的な濃度になりますので、その辺については今後また御検討いただければと思います。

○名古屋委員 小野委員が言われたように、リスク評価の企画検討会でも、複層カーボンナノチューブは一応候補に挙がったのですけれども、500kgを使っていないから、結果的にはリスク対象物質から削られてしまいました。だから、それと同じことが次の新しい情報が出てきても、500kgを超えないからということで、結果的にはリスクの所に挙がってこない可能性があります。がん原性物質としてはこのように測定するのでしょうけれども、リスク評価の中にはなかなか挙がってこない物質になってしまう可能性があります。

○小野委員 製造は別の会社もあり、製造が500kg以下ということは恐らくないと思うのです。規制値が厳しくなり過ぎるとコスト面でも厳しくなり、製造会社が製造をやめるということで使えなくなる可能性がありますので、輸入品を細々と使っていく形になるかと思います。

○名古屋委員 難しいなあ。

○菅野座長 小野委員のコメントで、特定の製品のみを規制するといいますか、指針に載せるというと、別の同等のといいますか、それは何もしないことになるという問題があるのは確かだと思うのですが、それについてはどのようにお考えでしょうか。

○角田化学物質評価室長 今回、このMWNT-7についてがん原性が確認されたので、他の複層カーボンナノチューブについてはどのように対応しようかということも検討いたしました。まず、発がん性評価のワーキンググループがありますので、私どもが委託事業でがん原性試験の情報収集を行った結果などもまとめ、ワーキングの先生方にも御議論いただきました。結論としては、MWNT-7についてはいろいろ試験データがありますが、他のものについては、発がん性についてまだ十分データがあるわけではないので、そこは引き続き情報収集する必要があるという御判断になりました。

 また、名古屋先生がおっしゃいましたような、リスク評価の対象とするかについても企画検討会で検討しましたが、量的な理由もあって、MWNT-7はリスク評価の対象にはならなかった経緯があります。データとしては他の複層カーボンナノチューブについてもいろいろ研究が進められているようですし、IARCもこの5年間で再度また評価するという情報もありますので、情報もかなり蓄積されつつあると理解しております。そこは引き続いて情報収集したいと考えております。

○菅野座長 先ほど、分析法として2種類ありましたけれども、これはどちらでもよろしいということでしょうか。

○平川化学物質評価室長補佐 基本的にはどちらでもいいという形の整理にはさせていただこうかとは考えておりますけれども、炭素分析法については、分析の機器の関係が、一般的に使えるかどうかの懸念があると聞いております。

○名古屋委員 高速液クロのものもまだ検討中です。バイオの動物実験では使えるけれども、一般的に使えるかというのはまだ検討段階ですので、案はなかなか取れないのではないですか。上は、小野さんが研究し使っているので全然問題ないと思います。

○平川化学物質評価室長補佐 今後、この内容を通達に出していくに当たり、この内容をそのまま通達に書けるかどうかというところの議論もあろうかと思いますので、通達に出すのは尚早だということであれば、また改めてこれらの内容について引き続き検討していくということで進めさせていただければと思いますが、いかがでしょうか。その辺りのところについては、先生方の御意見等を賜って、今後の検討の材料にさせていただければと思います。

○名古屋委員 下の液クロのほうは、ナノの分科会がまだありますので、そこでこれから議論されると思います。そこで分析法としてきちんと確定してから出されたほうがいいと思います。

○平川化学物質評価室長補佐 はい。

○名古屋委員 上は、小野さんに聞かれたほうが間違いないと思います。

○小野委員 今の件を一応申し上げておきます。上段の炭素分析装置というのは、日本の中では確かに台数は少ないですが、環境研究所、環境省系の全国の環境研究所のほとんどの所が持っている機械です。厚生労働省関係では、炭素についての規制やモニタリングの要求がありませんので余りないのですけれども、国内の分析会社でも何社かはこの装置を持っております。私どもも情報交換は常にしております。うちの研究所の中でも、必要とあれば一緒に測定をさせていただくということも対応可能な状況は作りたいと思っております。

 下の高速液クロはどこにでもありますけれども、かなりテクニックを必要とする分析法ですので、どっちも一長一短というところです。感度的にはどの辺に設定するかによりますけれども、同じぐらいの感度ではないかと思っております。

○菅野座長 感度については、先ほど1μg/m3 というのがありましたけれども、どの程度まで測れるものなのでしょうか。

○小野委員 測定自体は1μg/m3 は測れます。

○菅野座長 そうなのですか。

○小野委員 ただ、炭素のほうについては、一般大気でもディーゼル排ガスとか、そういうバックグラウンドの炭素があります。それが、東京近辺だと、1μg/m3 に近い0.51ぐらいのバックグラウンドが常にあります。そういう面で、ここに設定されるとかなり厳しいです。

 粉体だと、普通私どもがいろいろな所を見た感じでは多くても50μg/m3 ぐらいです。うんときれいにしていれば数μgというところで振れているとは思うのです。ですが、数μgのオーダーになってくると、バックグラウンドと分けるのは、炭素分析では難しくなってまいります。

 液体クロマトグラフ法のほうは、どういうものが妨害になるかについてとか、今後を見据えて違うCNTになったときも、同様に測れるのかどうか。その辺についてはまだ検証が進んでいないと聞いています。あくまでも動物実験のほうの、ばく露していたNT-7を測る方法ということで下のほうは開発されています。難しい問題はどちらもあると思います。

○平川化学物質評価室長補佐 今のところの整理としては、この被験物質を対象にと考えておりますので、まずはMWNT-7が測れるということを前提に作業環境測定の方法を示させていただくということで、今のところは考えています。

○菅野座長 お話によると、現時点ではまだ断定し難いということだと思うので、引き続き。

○平川化学物質評価室長補佐 そうですね。今の話も踏まえ、行政のほうで検討させていただければと思います。

○菅野座長 それでは、引き続き検討していただきます。

○田中委員 27ページのNT-7において、使用すべき保護具案が出ています。今のお話では、ばく露濃度の測定は実施されていないという理解でよろしいのですか。

○小野委員 環境濃度について、NT-7については、ほぼデータは出ていないと思います。

○田中委員 そういう意味で、使用すべき保護具ということで提示するのは矛盾ではないか。平成21年のは通達として出ているので問題ないのですけれども、NT-7についてという表現で出していいのでしょうか。御検討いただければと思います。

○名古屋委員 21年で分からないときの話ですね。

○田中委員 はい、環境測定も。

○名古屋委員 防じんマスクでどう取れるかというのは分からないけれども、拡散で取れるだろうと思いながら作ったもので、その関係の実験は今していますけれども、それまではしていませんでした。

○菅野座長 これは、呼吸用保護具だと、効率が99.9%以上と書いてあるだけで、他の制限はないことになっていましたね。

○田中委員 他も一応フローシートを作り、湿潤化している等、発じんはほとんどないと思われる作業のときには、指定防具係数を使って書いてありました。局所排気装置があれば、少し発じんするでしょうということで、電動ファン付き呼吸用保護具を中心とした内容を記載したと。全く工学的な対応をしていないときの対応ということで、大きく3段階に分けてフローシートを作って提示しました。

○菅野座長 そうですか。この通達しか見ていなかったものですから。

○田中委員 最初の通達は99.9%以上という形だけでしたけれども、その後フローシートで作れという指示がありました。ただ、それは測定方法が対応、確立していない条件でした。測定が対応したら検討しようということだったものですから。

○名古屋委員 参考資料の70ページにあります。

○角田化学物質評価室長 参考資料の70ページと71ページにあります。

○小野委員 あくまでも指定防護係数を使うときには、環境濃度がないと使用できません。形はあるけれども、まだ具体的にはそこにたどり着いていないのが現状だと思います。

○田中委員 そうですね。ただ、現場では。

○小野委員 一番厳しいのを使っている。

○田中委員 ナノを使い始めているということだったものですから、今の現状で考えられる対応ということで、ただ測定方法がまだ決まっていないということを前提で使っている。

○平川化学物質評価室長補佐 「このとおりやるように」という形でなくて、参考にこういう通達がありますということでの紹介ということで書かせていただくとということで進めさせていただいてよろしいでしょうか。

○田中委員 はい。

○菅野座長 呼吸用保護具については、参考資料70ページのフローチャートに従って保護具を選定していただく。他に方法がありませんので。

○平川化学物質評価室長補佐 他にもし何か実験があって、これ以外に何かあればと思いますが、恐らくなさそうです。改めて書きぶり等も含めて先生方に御相談させていただきたいと思います。

○菅野座長 保護衣、保護手袋、保護眼鏡というのがありますけれども、こちらのほうは通達どおりということでよろしいのですか。

○平川化学物質評価室長補佐 この場で、各委員の先生方の御了解が取れれば、ここの部分はそういう形もあります。呼吸用保護具と同じような扱いか、また改めて相談させていただきます。

○菅野座長 分かりました。保護衣とか保護眼鏡について御意見はありますか。

○名古屋委員 これを作ったときというのは、当時入手可能な情報から想定して作っているので、どちらかというとアスベストに近い形で作っています。現実とはちょっと遊離している部分はあります。現実的には、もう少し検討したほうがいいのではないかと思います。

○保利委員 一般的にはノーということですね。

○名古屋委員 そうです。

○菅野座長 アスベストなら、これで大丈夫ということですか。

○名古屋委員 いいえ。

○菅野座長 そういうことでもないと。分かりました。

○名古屋委員 一般的にナノと同じ形で、酸化チタンなどが出てくるので、その辺と同じに考えても、そんなに遜色はないのではないでしょうか。そんな気がしています。

○菅野座長 保護具については、もう少し検討が要るということなのでよろしくお願いします。

○平川化学物質評価室長補佐 分かりました。

○菅野座長 よろしくお願いします。最後に、その他について説明をお願いします。

○北村化学物質情報管理官 資料の29ページを御覧ください。今後の予定です。次回の第3回については107()3時半からを予定しております。第4回は112()3時半から5時半ということで予定しております。議題については、本日の三酸化二アンチモンについて、引き続き健康障害防止措置の検討を進めさせていただきます。今後の予定については以上です。

○菅野座長 全体について何かコメントがありましたらお願いします。よろしいようでしたら、これで第2回健康障害防止措置検討会を終わります。ありがとうございました。


(了)

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