第101回労働政策審議会職業安定分科会雇用保険部会 議事録

日時

平成27年8月4日(火) 15:00~17:00

場所

厚生労働省 専用第23会議室
(東京都千代田区霞が関1丁目2番2号 中央合同庁舎5号館6階)

議題

・雇用保険制度について
・その他

議事

議事内容
○奈尾雇用保険課長 それでは、ただいまから第 101 回労働政策審議会職業安定分科会雇用保険部会を開催いたします。皆様におかれましては、本日お忙しいところを御参集いただきまして、誠にありがとうごさます。本日は委員改選後第 1 回目ですので、冒頭につきましては、私が司会を務めさせていただきます。雇用保険課長の奈尾と申します。よろしくお願いいたします。

議事に移ります前に、 4 月 27 日及び 6 月 16 日に委員の交替がありましたので、交替された委員の方々について御紹介いたします。使用者代表委員としてパナソニックソリューションテクノロジー(株)取締役人事担当の深澤委員に、労働者代表委員として、 JAM 中央女性協議会議長の秋元委員に御就任いただきました。

本日の出欠状況ですが、阿部委員、山本委員が御欠席です。

続きまして、当部会の部会長を選出いたします。部会長の選出については、労働政策審議会令第 7 条第 6 項におきまして、当該部会に所属する労働政策審議会の公益委員のうちから、労働政策審議会の委員が選挙することになっています。当部会におきましては、公益委員として阿部委員、岩村委員、田島委員の 3 名が該当されます。御推薦等がありましたら、御発言をお願いしたいと思います。

○田島委員 当部会委員の御経験豊富で、これまでも部会長として、当部会を負って企画に際してこられました岩村委員を推薦させていただきたいと思います。

○奈尾雇用保険課長 阿部委員におかれましては、本日は御欠席ですが、事務局のほうで御意見を伺ってきたところ、岩村委員が適任でないかという御意見を頂いております。

それでは、岩村委員に部会長をお願いしたいと思います。これをもちまして岩村委員を当部会の部会長として選任いたしました。部会長におかれましては、以後の進行をよろしくお願いしたいと思います。

なお、カメラの頭撮りは以上でございますので、撮影の方は御退室をお願いいたします。

○岩村部会長 ただいま部会長を仰せつかりました岩村でございます。引き続き皆様の御支援などを頂きながら、部会を運営してまいりたいと思いますので、どうぞよろしくお願いいたします。

次に、部会長の就任に当たりまして、労働政策審議会令第 7 条第 8 項におきまして、部会長代理を公益委員から部会長があらかじめ指名することになっております。この規定に基づき、野川委員を部会長代理に指名させていただきたいと思います。よろしくお願いいたします。

次に、事務局に異動がありましたので、御紹介いたします。 4 月 16 日付けで職業安定局雇用保険課調査官に着任された長良健二さん、 4 月 1 日付けで職業安定局雇用保険課長補佐に着任された倉永圭介さん、同じく雇用保険課長補佐に着任された仙田亮さん、同じく雇用保険課長補佐に着任された松本直樹さんです。

それでは、議事に移りたいと思います。お手元の議事次第にありますように、本日の議題は「雇用保険制度について」です。まず本日の議事を始めるに当たって、職業安定局長から御挨拶を頂きたいと思います。よろしくお願いいたします。

○生田局長 皆さんこんにちは。職業安定局長の生田でございます。本日は、皆さん、本当にお忙しいところ、お集まりいただきまして、ありがとうございます。 4 月 27 日と 6 月 16 日付けで労働政策審議会の委員の改選がありまして、新たに委員に御就任された方々におかれましては、今後よろしくお願い申し上げます。また、引き続き委員をお願いしている先生方につきましてもよろしくお願い申し上げます。

雇用保険制度につきましては、これまでもこの場で制度の見直しの議論をしていただきました。法改正等の措置も行ってまいりましたが、そのときどきの議論の中でも、今後の検討課題として残されたものがございます。そういったことも含めまして、今後、雇用保険制度の給付、負担の全般につきまして、御議論いただければと思っております。

また、 6 月末に閣議決定をされた日本再興戦略改訂 2015 などの中でも、今後の雇用政策につきまして種々の議論がされております。例えば、高齢化が進む中で、 65 歳以降の高年齢者についての雇用保険の在り方等についてどうするのかといった課題についても、織り込まれています。このような点につきましても、当部会において御議論いただければと考えております。

さらに、現在の雇用情勢を見ますと、先月末に発表いたしました 6 月の完全失業率が 3.4 %でして、有効求人倍率が 1.19 倍ということで、現在の雇用失業情勢は、非常に良い状況です。一部に厳しさはありますが、非常に良い状況になっております。このような雇用失業情勢あるいは雇用保険の財政状況等も踏まえながら、今後の財政運営につきましても御議いただく必要があると考えております。

雇用保険制度につきましては、この部会での御議論あるいは御指摘を踏まえまして、今後の国会への法案提出も見据えて対応していきたいと考えております。何とぞよろしくお願い申し上げます。

○岩村部会長 ありがとうございました。それでは、事務局から御提出いただいている資料に沿って説明を頂き、その後、質疑というように進めてまいりたいと思います。では、どうぞよろしくお願いいたします。

○長良雇用保険課調査官 本日は今年度 1 回目ですので、雇用保険制度全般にわたる資料を提出いたしました。これに基づいて御議論いただければと思います。説明に先立ちまして資料の確認をいたします。資料は 1 ~ 5 までありまして、資料 1 は「雇用保険制度の概要」、資料 2 が「雇用保険制度の主要指標」、資料 3 が「制度改正の経緯」で、ここまではホチキス留めです。資料 4 が 1 枚紙で「雇用保険部会の主な論点 ( 案 ) 」、資料 5 が、平成 25 年 12 月 26 日付けの「雇用保険部会報告書」です。

参考資料 1 は、 1 枚紙で「日本再興戦略改訂 2015 」、参考資料 2 も 1 枚紙で「経済財政運営と改革の基本方針 2015 」です。以上の資料です。不足などがあれば、申し付けいただければと思いますが、よろしいですか。

それでは、資料 1 から順に私から説明いたします。資料は全体が大部になっておりますので、ポイントだけかいつまんで御説明いたします。

資料 1 は、雇用保険制度の概要をまとめたものです。 1 ページは、雇用保険とは です。雇用保険は、労働者が失業してその所得の源泉を喪失した場合などに、生活及び雇用の安定並びに就職の促進のための失業等給付を支給するというのが 1 つです。それから失業の予防、能力開発及び向上等のための二事業を行う。これを柱とした、雇用に関する総合的機能を有する制度という特徴があります。

体系をまとめたのが 2 ページです。今申し上げた失業等給付、二事業に加え、求職者支援制度に基づく就職支援法事業がそれぞれあり、失業等給付の財源は労使折半の保険料、給付に関しては一部国庫負担が付いています。二事業については、保険料は事業主負担のみとなっています。就職支援法事業については、保険料は労使折半、国庫負担 2 分の 1 です。こういう枠組みの制度体系になっています。

3 ページは雇用保険適用事業、被保険者の定義をまとめています。適用事業については、一部の事業、農業水産業の個人事業を除いて、原則労働者が 1 人以上雇用される事業を強制適用事業としております。この適用事業に雇用される労働者を被保険者としております。被保険者については、一部適用除外が法定されておりまして、週所定労働時間 20 時間未満の方、 31 日以上雇用されることが見込まれない短期間の被雇用者、一定の短期間の季節労働者、 65 歳に達した日以後に雇用される者、一定の日雇労働者、公務員、学生といったところが適用除外になっています。

4 ページは、雇用保険の被保険者の類型をまとめており、 4 種類ありまして、大部分の方は一般被保険者に区分されます。 (2) の高年齢継続被保険者ですが、 65 歳に達した日前から引き続いて雇用されている 65 歳以上の被保険者について、特別の被保険者類型を設けています。一定の季節労働者については、短期雇用特例被保険者、日雇労働者については、日雇労働被保険者と、それぞれ特別の類型を設けております。

給付についてです。まず、「求職者給付」は 6 ページです。一般求職者給付 ( 基本手当等 ) ということで、いわゆる失業給付と呼ばれるものです。この基本手当の受給要件を 6 ページにまとめています。一般被保険者が失業した際に、原則離職日から 2 年間に被保険者期間が 12 か月以上ある場合となっています。なお、倒産、解雇などによる離職者又は有期労働契約が更新されなかったことなどによる離職者に関しては、離職日から 1 年間に被保険者期間が 6 か月以上という場合でも認められることになります。なお、雇用保険上の「失業」については、被保険者が離職し、労働の意思及び能力を有するにもかかわらず、職業に就くことができない状態にあるという定義が法律上、定められており、こうした失業の確認のために、 4 週間に 1 度、公共職業安定所において失業認定を行うという制度になっています。

基本手当の給付水準については 7 ページです。支給の日額、日数については、それぞれ離職前賃金や年齢、離職理由によって変わっています。まず、日額についてですが、賃金日額×給付率という計算式になります。賃金日額については、離職前 6 か月の給与をベースに 1 日平均にした額となります。 2,300 円を下限、年齢別に 1 万 5,620 円などを上限という制度になっています。給付率については、 60 歳未満については 50 ~ 80 %の間。 60 歳以上については 45 ~ 80 %の間で定められることになっています。

8 ページは給付日数の原則です。給付日数について、倒産、解雇などによる離職者 ( 通称、特定受給資格者 ) については、 90 ~ 330 日までの間、一般の離職者、自己都合あるいは定年退職で辞められる方などについては、 90 ~ 150 日までの給付日数が定められております。障害者などの就職困難者は 150 ~ 360 日までの間という形でまとめております。

今御説明したことが給付日数の原則で、 9 ページに特例があります。(( ローマ字)1) ~(( ローマ字)4) までありますが、 ((ローマ字)1 ) が訓練延長給付で、職業安定所長の指示により、公共職業訓練などを受講する場合には、訓練終了までの間、給付日数を超えて基本手当が支給される制度です。

((ローマ字)2) の広域延長については、広域職業紹介により職業のあっせんを受けることが適当と安定所長が認定する受給資格者について、 90 日超えて支給される。((ローマ字)3) の全国延長給付については、失業の状況が全国的に著しく悪化した場合について、全ての受給資格者について、所定給付日数を 90 日超えて支給されるという制度です。

((ローマ字)4 ) の個別延長給付については、平成 29 年 3 月 31 日までの暫定措置となっており、一定の年齢あるいは地域などを踏まえて、重点的に再就職の支援が必要である方に関して、原則 60 日超えて基本手当が支給されるという制度です。

10 ページです。基本手当に付随する手当としては、公共職業訓練などを受ける場合の受講手当、通所手当を定めた技能習得手当、あるいは訓練を受けるために同居の親族と別居する場合の寄宿手当、求職の申込みをした後に、病気あるいは怪我などで職業に就くことができない場合の傷病手当といったものがあります。

11 ページは、高年齢求職者給付金です。これは先ほどの 65 歳以上の高年齢継続被保険者が失業した場合の給付で、基本手当と異なり、 30 日又は 50 日分の一時金という形の給付になります。短期雇用特例被保険者、季節労働者の失業の場合は、特例一時金という形で、当分の間、 40 日分の一時金が支給されます。日雇の方に関しては、日雇労働求職者給付金ということで、失業した日に関しての給付が支給されるという形になっています。

続きまして、 13 ページの「就職促進給付」です。受給資格者の再就職促進に関連する給付で、幾つかの種類があります。イの就業手当は、受給資格者が職業に就いた場合に支給されます。これはロで再就職手当がありますが、こちらは 1 年超の雇用見込みのある職業という、いわゆる安定した職業に就く場合が給付対象になっているのに対し、それ以外の職業に就いた場合が就業手当の対象になっております。就業手当については就業日ごとに日額の 30 %相当額が支給されます。

今、御説明した再就職手当については、安定した職業に就いた場合で所定給付日数の 3 分の 1 以上を残して再就職した場合に、支給残日数の 50 %の相当額、支給残日数が 3 分の 2 以上の場合は 60 %の相当額が一時金として支給されます。

ハの就業促進定着手当は、平成 26 年改正によって創設された手当で、早期再就職して、再就職後 6 か月間職場に定着した場合に、離職前の賃金から再就職後の賃金が低下しているケースにおいて、低下した賃金分を補填するという制度です。

ニの常用就職支度手当は、障害者あるいは 45 歳以上の再就職援助計画対象者などが安定的な職業に再就職した場合に、支給残日数の 40 %の相当額を支給する制度です。ホの移転費は、安定所の紹介した職業に就くなどのため、住居所を変更する必要がある受給資格者の移転費用を支給する制度です。ヘの広域求職活動費は、安定所の紹介により、広範囲の地域にわたる求職活動をする場合の交通費などを支給するものです。

続きまして、 15 ページの「教育訓練給付」です。教育訓練給付は被保険者である方、又は被保険者でなくなってから 1 年以内である方、つまり在職者、離職者両方が給付対象となるものです。一般教育訓練に係る教育訓練給付金の支給要件は、被保険者 3 年以上、初回受給の場合は 1 年以上となっており、給付水準は教育訓練に要した費用の 20 %相当額、上限 10 万円となっています。給付の対象となる訓練については、大臣が指定するという制度になっておりまして、現在 9,000 余りが対象講座として指定されております。

➁の専門実践教育訓練の教育訓練給付金については、平成 26 年改正で創設されたもので、支給要件については、被保険者期間 10 年以上、初回は 2 年以上。給付水準については費用の 40 %相当額、上限 32 万円、加えて訓練修了後 1 年以内に資格を取得して、被保険者として雇用された場合に、 20 %相当額を追加支給という制度になっています。対象となる訓練は、業務独占資格の養成施設の課程あるいは専門職大学院など、一定の、 1 年以上掛かる長期間の訓練を対象としているものです。指定講座は平成 26 年 10 月で 16 講座、平成 27 年 4 月で 1,575 講座が指定されております。なお、専門実践教育訓練を受講する 45 歳未満の若年離職者に関しては、基本手当の 50 %を訓練受講中に支給するという教育訓練支援給付金を、平成 30 年度までの暫定措置として設けております。

続きまして、 17 ページの「雇用継続給付」です。高年齢雇用継続給付には 2 種類あります。高年齢雇用継続基本給付金は、 60 歳以上 65 歳未満の方で、 60 歳以後の賃金が 60 歳時点の賃金の 75 %未満となった状態で雇用を継続する方に対する給付です。高年齢再就職給付金については、基本手当を受給した後、 60 歳以後に再就職をした場合、再就職後の賃金が基本手当のベースとなった賃金日額の 75 %未満となった場合に支給されるものです。給付額は各月の賃金の 15 %分を補填するという形式をとっています。支給期間は 65 歳までです。

18 ページの育児休業給付及び介護休業給付です。育児休業給付は、 1 歳あるいは 1 歳半未満の子を養育するために育児休業をした方に対しての給付で、支給額は育児休業開始から最初の 6 か月は賃金の 67 %相当額、それ以降は 50 %相当額を支給するという制度です。

介護休業給付については、家族の介護を行うために介護休業をした方を対象として、休業開始時の賃金日額の 40 %相当額を支給するという制度です。

続きまして、 20 ページの「雇用保険二事業」です。二事業の個別の事業は非常に数が多いのですが、法律上、雇用安定事業と能力開発事業の 2 つに分かれています。雇用安定事業については、失業の予防、雇用状態の是正、雇用機会の増大など、雇用の安定を図るためということです。典型例としては雇用調整助成金あるいは特定求職者雇用開発助成金といった事業主の助成金などがあり、実施しています。

能力開発事業については、公共職業訓練の実施あるいは能力開発に関する助成金などが対象となっています。

「その他」でまとめておりますが、 22 ページの費用の負担です。雇用保険制度は保険料と国庫負担を財源として実施しておりますが、保険料については、法定の料率が 17.5/1,000 となっております。財政状況に照らして一定の要件を満たす場合は大臣の権限で料率を変更でき、これを弾力条項と呼びますが、現在はこの弾力条項が適用されて、料率が 4/1,000 引き下がった状態になっています。平成 27 年度の料率、失業等給付分は 10/1,000 、二事業分は 3.5/1,000 となっています。

国庫負担については、給付の種類ごとに国庫負担の有無があり、現在のところ、一般求職者給付、短期雇用特例求職者給付については、費用の 4 分の 1 、日雇労働求職者給付にあっては 3 分の 1 、育児休業給付及び介護休業給付にあっては 8 分の 1 を負担することになっています。ただし、当分の間、国庫負担の額は、今申し上げた負担額の 55 %とされている状況です。

23 ページに失業等給付に係る保険料率の推移をまとめたグラフを提示しております。平成 11 年度以降は赤い折線で示しておりますが、一番低いときは 1,000 分の 8 、一番高いときは 1,000 分の 16 の範囲で料率が増減しており、平成 24 年度以降は基本料率は 1,000 分の 14 から 1,000 分の 4 下がった 1,000 分の 10 で推移しております。

24 ページに雇用保険料の弾力条項の計算式をまとめております。分母が失業等給付費等、分子が積立金に単年度収支をプラスしたもの。これが 2 倍を超える場合は保険料を引き下げることができ、 1 倍を下回る場合は、逆に引き上げることができます。雇用保険二事業については、保険料収入を分母として、当該年度末の雇用安定資金に単年度収支をプラスしたものが 1.5 を超える場合は保険料率を 3/1,000 に引き下げるものとされております。

25 ページは積立金残高と受給者実人員の推移をまとめております。受給者実人員の推移は後ほど資料でも出てきます。長期の時系列で見ますと、平成 10 ~ 14 年、青の折線グラフの部分がありますが、 5 年程度、実人員 100 万人を超えた時期があります。そこからずっと下がって平成 21 年にリーマンショックの影響で実人員は 85 万人になりましたが、トレンドとしては、また実人員は下がっているという状況にあります。

これと反比例する形になっていますが、棒グラフで平成 5 年以降の積立金残高まとめてあります。平成 5 年には 4 兆 7,000 億円強あったものが、平成 14 年度には過去最低の 4,064 億円。そこから持ち直して平成 25 年度の決算では 6 兆円余りという状況になっています。

最後に、 26 ページは求職者支援制度です。雇用保険を受給できない求職者に対して、訓練期間中に給付金を支給して、早期就職を支援するもので、雇用保険の受給終了者や学卒の未就職者等々が対象者となっています。訓練については民間が実施する訓練を大臣が認定する形式をとっておりまして、訓練実施機関には奨励金を支給します。受講者に対しては、職業訓練受講給付金という形で、月 10 万円 + 交通費を支給する制度になっています。これについての費用負担は、原則は国庫負担 1/2 、労使負担 1/2 という制度ですが、現在、雇用保険と同様の国庫負担の暫定措置があって、国庫負担が 27.5 %、労使負担 72.5 %という制度です。

続きまして、資料 2 「雇用保険制度の主要指標」をまとめております。 1 ページは先ほど局長も挨拶で申し上げましたが、現在の雇用情勢です。直近で見ますと、今年の 6 月の完全失業率は 3.4 %、有効求人倍率 1.19 倍で、近年で言いますと、平成 21 年に有効求人倍率 0.42 倍という最低の水準があったのが、ずっと回復基調にあったということです。その逆に、完全失業率は平成 21 年 7 月に過去最高の 5.5 %を記録して以降、低下傾向にあり、平成 27 年 6 月は 3.4 %という状況です。

続きまして雇用保険に関する各種データです。 2 ページは雇用保険被保険者数の推移です。過去 10 年の被保険者数の推移をまとめておりますが、おおむね一貫して増加傾向にあって、平成 26 年度一般被保険者 3,862 万人程度、高年齢継続被保険者が 143 万人程度で、合計 4,000 万人程度の被保険者がいるという状況です。

3 ページは基本手当の受給者実人員です。過去 10 年の一番大きかった数字が平成 21 年度の 85 万人で、以後ずっと低下傾向で、平成 26 年度は 46 万 7,000 人程度で、前年度比でも 11.4 %の減という状況です。

同様の状況が受給資格決定件数にも見られ、 4 ページですが、平成 21 年度の受給資格決定件数は 226 万 5,000 人余りで、それ以後はずっと低下傾向で、平成 26 年度は 156 万 4,700 人程度で、前年度比でも 6.1 %の減という状況です。

5 ページは、個別延長給付、平成 29 年 3 月までの暫定措置の給付ですが、この支給状況です。平成 23 年度以降をまとめており、平成 26 年度の初回受給者数は 10 万人で、平成 23 年度からいきますと、前年度比でずっと 3 割減の状況が続いています。

6 ページは高年齢求職者給付金の支給状況です。これは 65 歳以上の方が失業した場合の給付ですが、過去 10 年、ほぼ一貫して増加傾向となっており、平成 26 年度は 22 万人余りの受給者数で、前年度比でも 11.2 %の増となっています。

7 ページは、短期雇用特例求職者給付金、季節労働者に対する給付ですが、こちらは逆に前年度比は一貫してマイナスの傾向があって、平成 26 年度の受給者数は 12 万 2,000 人余りです。

日雇労働者に関しては 8 ページですが、こちらは被保険者数自体が減少傾向で、平成 26 年度の被保険者数 1 万 7,000 人余り、受給者実人員は 1 万 1,000 人余りとなっています。

9 ページの再就職手当等の支給状況です。平成 17 年度以降、再就職手当については、少しずつ増加傾向があると言え、平成 26 年度については、前年度比では 2.7 %減ではありますが、 38 万 4,596 人の受給者数となっています。左下の就業促進定着手当は平成 26 年 10 月から支給が開始され、まだ 1 年たっておりませんが、受給者数を月ごとに見ると、おおむね月 1 万人強の数字で推移しているという状況です。

10 ページの常用就職支度手当です。これは平成 21 年度の改正で、暫定的に年長フリーターを対象に追加した関係で、平成 21 年度の受給者数が激増しております。以後、 1 万人余りの数字で推移しています。

11 ページは教育訓練給付です。一般教育訓練給付については平成 17 年度以降、若干減少ですが、近年は 12 万~ 13 万人程度で受給者数が推移しております。専門実践教育訓練給付については平成 26 年 10 月から講座指定ということですので、その分の受給者が出てきているという状況です。平成 26 年 10 月の講座指定数が非常に少ない関係で、受給者数 46 名、支給金額 1,100 万円余りというのが今出ている数字です。

12 ページは高年齢雇用継続給付です。過去 10 年のトレンドを見ますと、平成 21 年 22 万 2,000 人余りをピークとして、近年は若干の減少傾向で、平成 26 年度は 17 万 8,000 人余りの受給者数となっております。

13 ページは育児休業給付です。こちらは初回受給者数が過去 10 年、ほぼ一貫して増加の傾向があります。平成 26 年度の初回受給者数は 27 万 4,900 人余りとなっております。男女別に分けておりますが、平成 25 年度と 26 年度を比較して、男性の休業取得者数は、母数は少ないのですが、伸び率としては大幅に伸びていることがうかがえると思います。なお、育児休業給付の支給金額については、制度改正で給付率を引き上げた影響もあって、平成 26 年度の業務統計値としての支給金額は 3,457 億円となっています。

14 ページの介護休業給付は、受給者数は僅かですが、過去 10 年では増加傾向で、平成 26 年度は 9,600 名です。

続きまして、「財政運営関係指標」として、 16 ページに失業等給付の関係の収支状況を、平成 7 年度以降の長期時系列でまとめています。収入については保険料収入と国庫負担となっておりまして、保険料率や国庫負担の率の制度改正に伴って、収入額には増減があります。平成 25 年度、右から 3 番目の決算数値を見ますと、保険料収入は 1 兆 6,000 億円程度です。これは保険料率で言うと、 1,000 分の 10 ですので、 1,000 分の 1 当たりに直すと、おおむね 1,600 億オーダーとなります。支出については、基本手当の受給者実人員の増減に大変強く影響を受け、例えば平成 10 ~ 14 年度は、先ほど受給者実人員が 100 万人を超えた年度と申し上げましたが、その頃の給付費を見ると、 2 兆 5,000 億~ 2 兆 6,000 億円程度で推移しています。一方、平成 25 年度の実人員の減少を反映して、給付費については 1 兆 4,900 億円程度で、かなりの増減の幅があることがうかがえます。

単年度の差引剰余を御覧いただくと、おおむねその傾向を反映して、今申し上げた平成 10 ~ 14 年度は大幅なマイナス、そこから平成 16 、 17 、 18 年度で大幅なプラス基調となっており、近年は若干のプラスで推移しています。一番下の積立金の残高は、先ほどグラフでも御覧いただきましたが、平成 14 年度の過去最低の 4,064 億円から大幅に上昇して、平成 25 年度決算上の数字では 6 兆円を超えているという状況です。

17 ページは雇用保険二事業の収支状況です。平成 21 年度に雇用調整助成金の支出増に伴い、大幅な赤字となった関係で、平成 22 年度に特別措置として積立金からの繰入れを行うという制度を設けました。それについては平成 24 年度で積立金に返していまして、現在、平成 25 年度決算値が最新ですが、雇用安定資金の残高は 6,045 億円と、大分回復基調にあります。

続きまして資料 3 、「制度改正の経緯」をまとめたものです。平成元年以降の制度改正項目のみを列挙しております。重要な部分と思われる所をピックアップいたしますと、 2 ページ目、平成 12 年の改正です。厳しい雇用失業情勢を背景といたしまして、基本手当の所定給付日数に関して、特定受給資格者区分を設けて、離職を余儀なくされた方に対しての基本手当の重点化などの改正を行っております。同様に、雇用情勢の厳しい平成 15 年改正では、基本手当の給付率、日額上限額などについて、再就職時賃金との逆転を解消するなどの観点から、給付率をこれまでの「 60 ~ 80 %」の範囲から、「 50 ~ 80 %」の範囲に引下げなどを実施したものであります。

続きまして 3 ページ目、平成 19 年改正です。先ほどから国庫負担の説明をさせていただいておりますが、一番上の欄に、「失業等給付に係る国庫負担の在り方の見直し」ということで、本来の国庫負担率 4 分の 1 を、当分の間 55 %とするとともに、高年齢継続給付に係る国庫負担について廃止をするという改正を平成 19 年改正でやっております。

その下の平成 21 年の改正については、リーマンショックなどの厳しい雇用失業情勢を踏まえた給付の充実がメインです。特定理由離職者区分を設けて、受給資格要件について、いわゆる雇止めの離職者の方などについて、解雇等の離職者と同様の扱いとするとともに、給付日数についても暫定的に拡充をしております。また、個別延長給付を創設する、常用就職仕度手当の対象範囲に年長フリーターを加えるなどの改正を行っております。

4 ページ目、平成 22 年改正は 2 回やっておりまして、 1 回目は平成 21 年度の補正予算関連という法律になっております。このときには当面の雇用保険制度の運営を確保するために、国庫負担として平成 21 年度補正予算で 3,500 億円の一般財源を措置するとともに、検討規定を設け、雇用保険の国庫負担については平成 22 年度中に検討し、平成 23 年度において安定した財源を確保した上で、暫定措置を廃止するという規定が盛り込まれております。同じ年の改正では、非正規労働者に対する適用範囲について「 31 日以上の雇用見込み」に緩和するといった改正をやっております。

5 ページ目ですが、平成 23 年改正のときには、賃金日額についての引上げを行うともに、 21 年改正のときに暫定措置として行った給付改善について、再就職手当の給付率を 50 %、 60 %とした上で恒久化、それから常用就職支度手当について 40 %を恒久化、といった改正をやっております。また、先ほど申し上げた平成 22 年改正における検討規定の改正をやっており、雇用保険の国庫負担については引き続き検討を行い、できるだけ速やかに安定した財源を確保した上で、国庫負担に関する暫定措置を廃止するといった規定としております。

続きまして、平成 24 年の改正については、先ほど申し上げました平成 21 年、いわゆる雇止め離職者に関する暫定的な給付日数の拡充措置を平成 25 年度末まで延長する。個別延長給付についても、平成 25 年度末まで延長するといった改正をやっております。

6 ページ目、平成 26 年改正です。これは、一番直近の制度改正となりますが、このときには育児休業給付の充実ということで給付率を最初の半年間 67 %に引き上げる、あるいは専門実践教育訓練給付金や教育訓練支援給付金を創設する、再就職手当について就業促進定着手当を創設するといった改正をやるとともに、平成 25 年度末までとされた給付の暫定措置を更に 3 年間、平成 28 年度末まで延長するというような改正をやっているところです。

7 ページ目以降は、各給付についての制度変遷をまとめております。基本手当については、今申し上げました大きな改正として、平成 12 年、所定給付日数を見直し、平成 15 年で賃金日額と給付率を見直し、平成 21 年改正で特定理由離職者区分を設けて個別延長給付を創設。平成 23 年改正では賃金日額の引上げといった改正をやっております。

8 ページ目の再就職手当の制度変遷ですが、平成 21 年に支給残日数の 40 %又は 50 %という暫定措置を設けて、平成 23 年改正で、その給付率を更に 10 %ずつ引き上げて恒久化。平成 26 年改正では、就業促進定着手当を創設という改正を行っております。

次の教育訓練給付、これは、一般教育訓練給付の関係です。平成 15 年改正以前、制度創設時は 80 %であった給付率を、平成 15 年改正によって最大 40 %とし、平成 19 年改正においては 20 %と給付率を引き下げてきております。

9 ページ目は、高年齢継続給付についてですが、大きな改正は平成 15 年改正にありまして、それまでの給付率を 25 %としていたものを 15 %に引き下げております。

育児休業給付については過去、給付率を徐々に引き上げてきてまいりました。平成 7 年制度創設時は 25 %であった給付率が徐々に引き上がってまいりまして、直近の平成 26 年改正では最初の半年間を 67 %とし、以降 50 %とするという改正をやっております。

10 ページ目は雇用保険料及び国庫負担の推移を長期の時系列でまとめたものです。保険料率については上から 2 段目で、昭和 54 年以降 11/1,000 という、率が比較的長く続いたのですが、平成 4 年以降頻繁に料率の改正を行っております。平成 5 年に 8/1,000 となって財政状況の悪化を受けて平成 13 年に 12/1,000 、それから以後 16/1,000 まで引き上げた後、平成 19 年以降引き下げ傾向となっており、現在は 10/1,000 ということです。

雇用保険二事業については、 3.5/1,000 あるいは 3.0/1,000 という形でしか制度上はありませんで、弾力条項が適用される年に料率が 3/1,000 に引き下がっているということであります。直近の年度でいうと、平成 19 年から 21 年の間 3/1,000 に二事業の保険料率が下がっていて、現在は 3.5/1,000 という状況になっております。

国庫負担については、失業保険制度発足時は 3 分の 1 あったものが、昭和 34 年に 4 分の 1 となって、随分長く続いたのですが、平成 4 年に 22.5 %、平成 5 年に 20 %、平成 10 年 14 %という形で徐々に引き下がっていき、これも雇用保険財政の悪化を受けて、平成 13 年に本則 4 分の 1 に戻すと改正を行っています。それが、平成 19 年、直近の改正で 4 分の 1 に 55 %を掛けて 13.75 %ということで、現在の国庫負担の割合が 13.75 %となり、推移しております。

続いて資料 4 で、今後の本部会においての論点を ( 案 ) という形で、 1 枚紙で提示させていただいております。基本手当の水準、平成 28 年度末までの暫定措置のあり方 ( 個別延長給付等 ) 、就職促進給付、 65 歳以上の者への対応、教育訓練給付、雇用継続給付、求職者支援制度、財政運営、マルチジョブホルダーへの対応、その他といった形で整備しております。それぞれについての説明は省きますけれども、論点の根拠となっておりますのが資料の 5 にあります、前回の平成 25 年 12 月に取りまとめた雇用保険部会報告です。例えば基本手当の水準、あるいは 65 歳以上の方への対応、マルチジョブホルダーへの対応などについては、いわゆる積み残しという形で整理をされており、そういったものを論点にしております。また、前回、平成 26 年改正で就職促進給付、教育訓練給付、雇用継続給付などに関して制度見直しを行っておりますので、そのフォローなどの観点から論点に加えているものがあります。

加えて参考資料を御覧ください。参考資料 1 は 1 枚紙で日本再興戦略改訂 2015 、➀と➁、両面でまとめております。➀については、教育訓練給付に関する記述です。「セルフ・キャリアドック」の導入促進、定期的に自身の職務能力を見直し、今後どのようなキャリアを歩むべきかを確認した上で、身につけるべき知識・能力・スキルを確認する機会、これを「セルフ・キャリアドック」と呼んでおりますが、こういったものを整えていきましょうと。その一環として、下から 3 行目で、「働き手個人が「セルフ・キャリアドック ( 仮称 ) 」を受けた際の経費の一部について、一般教育訓練給付の対象とすること等個人への支援策について検討をし、本年度中に結論を得る」といったものが日本再興戦略に盛り込まれております。

続きまして裏面は、高齢者の関係です。一番下の段落ですが、「さらに、 65 歳以上の高年齢者の雇用が一層推進されるよう、企業側のインセンティブや雇用保険の適用の在り方等について、必要な検討を進める」という形でまとめられております。

続きまして、参考資料 2 、「経済財政運営と改革の基本方針 2015 」です。これは、いわゆる骨太の方針と言われているものです。一番上がこの骨太の方針 2015 となっておりますが、その背景ともなっている 2 つの事項を併せて資料に提示しております。 1 つ目は、一番下の段、 6 月 1 日付けの財政制度等審議会の建議、この部分では歳出改革、社会保障の歳出改革の一環として雇用の記述があり、労働保険特別会計の雇用勘定については、約 6 兆円の積立金が生じており、国庫負担が停止されても直ちに雇用保険の財政運営がひっ迫するような状況にはないということなどを踏まえて、当面の措置として雇用勘定への国庫負担を停止すべきであると。なお、「労働行政に対する国の責務の重要性やこれまでの雇用保険法改正の経緯などを踏まえ、一定の負担を維持すべきとの意見が労使双方からあった」というようなまとめがされております。

また、自民党の財政再建に関する特命委員会報告では、これは、雇用保険に特化した記述ではありませんが、一般論として「経済情勢の好転を反映して多額の積立金・剰余金の生じている特会等について、当面の一般会計繰入のあり方などについて検討すべき」といった記述があります。

以上のような背景が一番上の骨太の方針の中の「経済・財政再生計画」、いわゆる財政健全化計画ですが、それついての項目に盛り込まれており、社会保障分野の中で、雇用保険の国庫負担の記述があります。「雇用保険の国庫負担の当面の在り方について、国庫負担について規定した平成 23 年改正による雇用保険法附則第 15 条の規定、経済雇用情勢の好転、雇用保険財政の状況、これまでの経緯、公労使での議論も踏まえ、検討する」と、こういう記述が盛り込まれております。なお、この平成 23 年改正による附則第 15 条というのは、下の段にもありますが、先ほど御説明した 55 %に引き下げている国庫負担に関する暫定措置を廃止するという法律の条文のことを指しているものです。

以上のような背景等々踏まえて、資料 4 という形で、今後の雇用保険部会の論点の ( 案 ) を提示させていただきました。資料の説明は以上です。

○岩村部会長 ただいま説明いただきました事柄に関して、御意見あるいは御質問などがありましたら、お願いしたいと思います。

○新谷委員 御説明ありがとうございました。今日は、部会で雇用保険の在り方について検討していくにあたっての初回の部会ということですので、雇用保険制度の見直しにあたっての労働側としての総論的な考え方を中心にお話をしたいと思います。

まず、数字の確認をさせていただきたいのですが、資料 2 の 16 ページに、失業等給付の収支状況の記載があります。先ほども説明がありましたが、平成 25 年度の決算値では積立金残高は 6 兆 621 億円とのことですが、平成 26 年度については予算ベースでしか数字が示されていません。予算上は 6 兆円を切るような数字が示されていますが、平成 26 年度も終了してから 4 ヵ月以上が経過しておりますので、もしお分かりになれば、収支の速報値や、積立金残高が一体どれぐらいの数字になっているのかということをまず教えていただきたいと思います。

○長良雇用保険課調査官 給付の関係の決算については、決算数値が平成 26 年度はまだ固まっておりませんので、固まり次第、この部会にも御報告申し上げることができればと考えております。先ほどの資料の説明の中で、受給者実人員については平成 26 年度は減少傾向にありましたので、給付に関しては若干の減少傾向で数字としては取りまとめを行っているところで、全体の収支としては若干の黒字になるのかなというような状況です。

○新谷委員 以前から労働側は、このまま毎年度剰余が生じる状態を放置すると積立金残高は 6 兆円を超えてしまうと何回も懸念を申し上げてきたところです。現状では数値が確定していないということであるものの、全体収支としては黒字の見込みであるということからすると、平成 26 年度決算では 6 兆円を更に超えて、平成 25 年度の決算値の 6 兆 621 億円よりも更に積み上がっていくという認識でよろしいのでしょうか。

○奈尾雇用保険課長 先ほど、資料 2 で受給者実人員あるいは初回受給者数、受給資格決定件数の数字を説明申し上げましたが、実人員で申しますと平成 26 年度は前年度比で 11 %の減でした。この部分を見ますと、支出の減が見込まれるわけです。一方、雇用保険の収支の支出を見ていく場合に、育児休業給付のように景気に変動しない部分もありますので、そういった部分の評価も一方で必要だろうと思っております。あるいは、平成 26 年改正の財政影響の辺りも十分踏まえて見ていく必要がありますが、現段階で私どもとして見ておりますのは、支出、収入を総合勘案すると、平成 26 年度については黒字基調で推移する可能性が高いと思っております。平成 25 年度は、約 6 兆 600 億円の積立金があったわけですが、これより上振れする可能性は高いと現在見ております。

○新谷委員 今後雇用保険制度を検討するに当たって大事なことは、客観的な事実、ファクトに基づいて検討を行う、ということであると思います。事務局の説明を聞いていて私は疑問を感じたのですが、資料 1 の 25 ページにあるような積立金の残高と受給者実人員の相対的な関係、つまり失業情勢等の変化によって受給者実人員がこういう変動したので積立金も積み上がった、という非常に短絡的な説明がありました。しかし、そうではないだろうということを、まず客観的なデータとして示すべきではないかと思うのです。資料 3 に過去の制度改正の経緯が示されていますが、今日の積立金残高は、単に受給者実人員の変化だけで 6 兆円を超えるまで積み上がったわけではないのです。この点の説明が抜けているわけですが、もともと 4 兆 7,000 億円もあった積立金が雇用情勢の悪化により約 4,000 億円まで減った平成 12 年と 15 年に、当時の労使の苦渋の判断によって給付の削減と、保険料率の大幅引上げを行ったわけです。保険料率は、 1,000 分の 8 だったものを 1,000 分の 16 まで引き上げていく。給付については、給付率や給付日数の大幅な引下げを行ったのです。こうした構造的な要因によって、その結果として今日のこの 6 兆円を超える積立金残高に至った、という説明が全く欠落をしているわけです。今後、客観的な事実に基づいて雇用保険制度のあり方を判断していくに当たって、単に雇用情勢の変化によって受給者実人員が変動したから 6 兆円を超えるまで積立金残高が積み上がった、そんなものではないだろうということをまず押さえておかないといけないのではないか。昨今、厚労省はいろいろなデータも作られ、いろいろな資料を配られていますが、客観的な事実に基づく説明を頂きたいと思います。

労働側としてこうした事実に基づいて考えたときに、今日、積立金残高が 6 兆円を超えるまでに積み上がったのは、平成 12 年改正と平成 15 年改正で行った大幅な給付のカットが今日まで続いているということが要因であると考えています。平成 12 年頃に IT バブルが弾けて、我が国で初めて失業率が 5 %を超え、 5.4 %まで上がったときに、給付の引き下げと保険料率の引き上げを行ったのです。ところがその後、保険料率は弾力条項を発動して下げて今は 1,000 分の 10 まで下がってきたわけですが、給付は全く触わっていないのです。こうした背景の下では積立金残高が積み上がってくるのは当たり前です。

労働側としては、この分析、つまり積立金残高が 6 兆円を超えるまで積み上がったことに対する過去の法改正の寄与度を分析すべきだと考えます。過去の法改正のどういった要因に基づいて 6 兆円まで積み上がったかの分解をして検証いただきたいと思います。単なる受給者実人員が減ったから 6 兆円を超えるまで積み上がった、という短絡的な説明で終わることのないようお願いしたいと思います。

今後の検討に当たって、改めて労働側として申し上げたいのは、給付の在り方をどうするのか、ということです。雇用保険制度は、皆様に申し上げるまでもなく、国が雇用、失業に対してどこまで責任を負うのかということで、国と労使で財源を分担しながら作ってきた制度です。やはり第 1 に考えるべきは、失業というリスクに対して国が保険制度でセーフティネットを張って、その中で安心して求職活動をしてまた労働市場に戻っていく、こうした役割を雇用保険制度は担っているのだと思います。ところが、昨今、雇用保険制度の根幹となる給付項目である基本手当などについては紐付きで国庫負担が付いてくるものですから、国の財政が厳しい中で、なかなか国庫負担との関係で見直すことができないという状況が続いております。労働側としては、雇用保険制度の検討に当たっては、セーフティネット機能強化の観点から、純粋に給付の改善をどうするべきか、というのを中心的な論点として組み込んでいただきたいと思います。

その上で、昨年の雇用保険法改正の中で、専門実践教育訓練給付の創設や再就職手当の拡充等を行いました。まだこの法改正の影響の数字は完全に出てきていませんが、前回改正がどういう影響を与えたのか等も含めての検証しながら、検討を進めていくべきだと思います。以上、まず冒頭に、労働側としての基本的な考え方を申し上げました。

○岩村部会長 そのほか、いかがでしょうか。

○遠藤委員 先ほど説明がありましたように、資料 4 については、積み残しの議題と、直近の制度見直しのフォロー、私どもの言葉では検証ということになるかと思いますが、そういう形で議論を行っていくことであり、方向性そのものについては、賛同したいと思います。

事務局にお尋ねしたいのですが、「基本手当の水準」から「その他」まで並んでいて、今後具体的に検討するに当たっては、どのテーマをどのような順番で検討していくのか。あるいは、年内まとめということが先ほどの局長のお話にありましたが、年末を見越した形でどの程度のスケジュール感をもって検討していくことを予定されているのかをお尋ねしたいと思います。

○奈尾雇用保険課長 資料 4 においては、全体的な項目を列挙しております。私どもとして現在考えておりますのは、まずは雇用保険制度の根幹は基本手当、求職者給付かなと思っており、この在り方、現状の分析について、まずは御議論いただきたいと思っております。この求職者給付に関連すると、受給者の再就職の促進は同じような目的の中の話ですので、例えば再就職手当の就職促進給付の在り方、あるいは暫定措置になっております延長給付といったことも、最初のほうで御議論いただければと思っております。

それから、参考資料で付けておりますが、日本再興戦略等を踏まえた対応を一方でやらなければいけないということで、例えば 65 歳以上の者への適用給付等の在り方や教育訓練給付といったものがあるわけですが、これらは高齢者雇用や能力開発など他の分科会とも関連するものですので、その辺りの議論も必要に応じて御紹介しながら、御議論いただくのかなと思っております。例えば、 65 歳以上の適用給付等の在り方については、現在私どもで調査を行っておりますので、そういった調査の結果が夏から秋にかけて上がってくるのではないかと思います。そういったものも御紹介しながら、十分実態を踏まえて御検討いただくということで、この辺りは秋に考えております。

例年ですと、冬にかけて労政審の雇用保険部会で、財政、料率の在り方を毎年御議論いただいているわけですが、この辺りについては秋に決算が出てから、あるいは前回平成 26 年改正の状況がある程度明らかになった後で御議論いただければと思っております。年末、年内のスケジュール感ですが、これは仮に財政負担の在り方を考えて、それが来年度から動く場合においては、年内に一定の結論を得ることが必要かなという意味で言っております。今は 8 月ですが、時期的に若干タイトで恐縮ですが、そういったスケジュール感で現在考えております。

○遠藤委員 そうしますと、他の審議会での動きを見ながら検討するテーマが、これは私の理解不足なのかもしれませんが、 4 つ目の 65 歳以上の者への対応、 5 つ目の教育訓練給付、 6 つ目の雇用継続給付、 7 つ目の求職者支援制度ということになり、かなりの数に上っていると思います。他の審議会の動きが必ずしもただ今御説明いただいたようなスケジュールに合う形で動くとも限らないわけですので、その場合はどのようなことを考えればよろしいのでしょうか。

○奈尾雇用保険課長 例えば、高齢者の適用等については、かなりテーマとしても大きいものがあります。労働政策としての高齢者への対応をどう考えるかは、場合によっては他の分科会、部会等の議論を紹介する必要があろうかと思っております。 1 つ別の例を申しますと、教育訓練給付については成長戦略に記述があるわけですが、この辺りの検討は近々には始まらないと側聞しているところです。そこは、雇用保険制度の中でできることはないかという観点から、議論することも可能かなと思っております。その辺りは、他の分科会の進捗状況を見ながら、私どもの部会としてできることは何があるのかという観点から議論していきたいと思っております。

○岩村部会長 よろしいでしょうか。

○新谷委員 遠藤委員から御発言があったスケジュール感を含めて、非常にタイトな日程の中で多くの論点が示されたわけです。もちろん、他の審議会の検討状況とも絡んできますが、やはり私どもとしては雇用保険法の目的に沿った形で、失業というリスクに対するセーフティネットとしての雇用保険制度がどうあるべきか、という点を中心に検討の優先順位を付けていただかないと、時間切れになりかねないと危惧しています。全ての論点をまんべんなく論議していくとなると、非常に底の浅い論議になり兼ねないという懸念があります。よって、セーフティネットとしての雇用保険制度を充実させる観点から、各論点の優先順位を付けるべきではないかと思います。全ての論点を網羅的に論議するということではなく、濃淡を付けていただいて検討していくように方向付けしていただきたいと思います。

○亀崎委員 論点の関係とスケジュールが報告されましたが、その上で労働側から論点の追加要望ということで、被保険者要件の在り方について意見を述べさせていただきます。 2014 年改正の際、本部会で労働側から、 1 つ目として 1 日 3 時間、週 5 日間勤務といったパートタイムで働く者がいること、それから 2 つ目として、平成 24 年の就業構造基本統計調査では、 1 週間の所定労働時間が 20 時間未満の者の約半数が、 15 時間以上 20 時間未満の者で占められている実態などを上げて、被保険者要件の 1 つである 1 週間の所定労働時間が 20 時間以上という要件の引下げなどの被保険者要件の拡大について、課題を提起してきたところです。これに対して、当時の課長からは、大きなテーマであるために必要な資料を準備、整理するために、若干時間が欲しいという答弁がなされたわけです。さらに部会長からは、部会として議論すべきテーマが多くあるために、扱いについては事務局と相談をしたいというまとめがあったと思います。

しかし、その後の部会の論議は、専門実践教育訓練給付の議論が大半となって、結果的にその課題について資料を含めて何ら出てきているものはありません。つきましては、これについても先ほど新谷委員が述べたように、労働者側としては雇用保険の生活安定機能という雇用保険のセーフティネットという本来機能を強化する観点で、見直しを行うべきであると考えています。その意味では、資料 4 の論点表には記載がありませんが、雇用保険の被保険者要件の見直しについても、検討の 1 つのテーマとして追加していただくよう意見として申し上げておきたいと思います。

○奈尾雇用保険課長 資料 4 については、あくまでも主な論点ということで、全般的に特にその中で主なものをピックアップしたものです。今、亀崎委員がおっしゃったような点についても、次回以後、求職者給付の検討等を行う中で議論していければと思っております。

今の考え方を申しますと、週 40 時間というのがある中で、雇用保険はその就労によって生計を維持している人を対象にしているということで、その半分程度働く場合に適用するという考え方があり、こういったものについてどう考えるかは次回以降の議論かなと思っております。

○岩村部会長 よろしいでしょうか。ほかにいかがでしょうか。

○青山委員 皆様からいろいろ御意見が出ましたが、私も賛同というか、同感のところがあります。 1 つは、非常に議論すべきテーマが多いという点。それから、そのテーマがどちらかというと非常に重要なテーマであるという点ということで、 1 つお願いですが、先ほど新谷委員から出ました何を優先して議論するのか。もう 1 つは、他の労政審でやっている、いろいろな議論がこれからどのようになっていくのか。それから、労政審以外の審議会、例えば 65 歳以上ですと年金との関係はどうなるのかというような動きも併せて、実は考えて議論していかないと、この場だけではなかなか結論を出しにくいことが考えられるのではないかと思います。そのような観点で議論を進めていただきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。

○奈尾雇用保険課長 議論の論点が多いのは、恐縮ですが御指摘のとおりかと思っております。その中で、限られた時間ですので、できるだけデータを示しながら実態に即して効率的に進めていただく必要があるかなと思っております。他の部会あるいは労政審の分科会等についても、必要に応じて御紹介しながらと考えております。

今、 1 つ個別のお話がありましたので付言しておきます。 65 歳以上の方の適用給付については、あくまでも労働政策という観点で、働きたくて、しかも 65 歳以上で働きたいけれども、それで生計を維持しているのだけれども、今適用除外になっている状況をどう考えるかといった辺りから考えていく必要があろうかと思っております。その観点からいくと、年金との関係は私どもとしては直接の関係が今のところないのではないかと思っておりますが、その辺りは今後の御議論の中で十分議論いただければと思っております。

○遠藤委員 優先順位を付けることについては、異論はありません。ただし、優先順位の意味合いなのですが、当該テーマの結論が出ない限り次のテーマにいかないという考え方に、私どもは立っておりません。議論する優先順位は立てていただいて結構ですが、一定の時間の中で結論が出ないような場合については次のテーマに移っていく中で、年間のスケジュールをこなしていくというような方向性で、是非御議論をお願いできればと考えております。

○岩村部会長 ほかにいかがでしょうか。

○三島委員 私からも、資料 4 の論点についてです。

先ほど青山委員からもあり、課長からも回答がありましたが、 65 歳以上の方への対応に関しては、 6 月 5 日に、厚生労働省の有識者会議である「生涯現役社会の実現に向けた雇用就業環境の整備に関する検討会」の報告書で、生涯現役で働けるという社会を実現しようとするのであれば、現在の雇用保険の適用年齢が適当であるかどうかなどについて、検討が必要ということが取りまとめられています。仮に、この課題を議論するとしても、先ほど年金についてはないというお話もありましたが、やはり年金の支給開始年齢の問題とは完全に切り離して議論を行うことと考えております。また、 65 歳からは公的年金で所得保障がなされるという前提に立てば、仮に議論する場合であっても、そもそも雇用保険に加入させるべき対象はどういった層であるか、更には、その保険料や給付の在り方などについても、現行の適用対象者とは異なる工夫が必要であるとも考えます。具体的には今後の議論になると思いますが、こうしたことを数点、問題提起をさせていただきたいと思います。

もう 1 点は、 7 つ目の求職者支援制度についてです。労働側は 2014 年改正の議論の際にも、求職者支援制度では職業訓練受講給付金として 1 か月当たり 10 万円が支給されることから、それよりも低い雇用保険の基本手当の給付額となっている者への対応、つまりは両者の逆転現象を解消すべきということを主張しました。雇用保険未加入者が職業訓練受講給付金の 10 万円がもらえる一方で、雇用保険料を支払い続けてきた者が 10 万円よりも低い基本手当しか受けられないということについて、自らの賃金から雇用保険料を支払っている被保険者に対して、こうした逆転現象の説明責任を果たせるのか、と考えます。 2014 年改正にあたっての労政審の建議では、「雇用保険の給付とバランスを取るために具体的方策について引き続き検討すべき」ということで検討課題として整理されておりましたが、 2013 年 12 月に建議を取りまとめてから 1 年半以上が経過しております。また、 2011 年 10 月にこの求職者支援制度がスタートしてからも 4 年近くが経過をしている状況です。こうした状況に照らせば、この課題は検討事項として整理すべきではないと考えておりますので、今回の見直しに当たっては一定の結論を得るべく論議を進めるべきと強く意見を申し上げさせていただきたいと思います。

○奈尾雇用保険課長 2 点ほど御意見を頂きました。まず、 65 歳以上の方の適用給付等については、現在の制度から申しますと、一時金という形で高年齢求職者給付金を払っております。この一時金については、現在年金と併給される、併給調整はかからない仕組みです。これは、 65 歳以上の方の一時金については、その一時金を活用していろいろな形で多様な就業を図っていただきたい、就職活動をしていただきたいという趣旨です。その就職活動については、就職の促進という趣旨が高いので、年金とは趣旨が異なるから併給してもいいのではないかということで、現在制度ができているというものです。

こういった制度を今後、どう考えるのかということで議論しなければいけないわけです。先ほど年金との関係については直接関連しないと考えているという趣旨は、この一時金の趣旨は今後そんなに大きく変化させる必要があるのかという問題意識が現在あるからで、この辺りは当然皆様方に御議論をいただく部分かと思います。そういった趣旨も踏まえながら今後検討していく必要があるかと思っております。

2 点目の求職者支援訓練の受講給付金 10 万円とのバランスですが、これも今回の資料 5 で付けております報告においては、基本手当の水準について、いろいろな要素が書いてありますが、引き続き今後の在り方について検討すべきであるという中にも含まれるであろうと思っております。したがって、次回以降御議論いただければと思っておりますが、仮に 10 万円とのバランスということですと、バランスですので、両方について検討が必要かなと思っております。それが、本来のバランスの検討かと思います。いずれにしても、今の基本手当の水準について、それが生活の安定、早期再就職の促進にどう影響しているのかという辺りは、御議論いただければと思っております。

○岩村部会長 よろしいでしょうか。ほかにはいかがですか。

○秋元委員 私からは、資料 4 の論点表の 6 番目に挙げられている、雇用継続給付について意見を申し上げたいと思います。雇用継続給付の1つの育児休業給付については、 2014 年の改正によって給付率の拡充が行われておりました。これは、私の職場でも皆さん大変喜んでいただいておりますが、この論議の中でも労働側から意見として申し上げておりますが、子育てや介護と仕事との両立支援を行い、もって就業人口の維持、少子化対策を行うという政策は、超少子高齢・人口減少社会を迎えている日本にとって、大変重要な課題であって、国としての政策課題そのものであると言えます。そうした国の政策課題について、失業時の生活安定、あるいは失業予防を主たる目的とする雇用保険を財源として施策を講じることが、果たして馴染むものなのか。その意味で、介護休業給付や育児休業給付については、本来国費で賄うべきではないかということを意見として申し上げたいと思います。

この点については、今回御提示いただいております資料 5 の 9 ページに、 2014 年改正の基となりました建議で、労使の一致した意見という形で明確に記されているものですので、今後の論議に当たってもこの趣旨に沿った議論をお願いしたいと考えております。

○岩村部会長 ほかにはいかがでしょうか。

○亀崎委員 論点の 8 つ目に掲げられている、財政運営について意見を申し上げます。

先程来、雇用保険の財政運営、とりわけ国庫負担の在り方については様々な指摘がされておりますが、これまで主張してきたとおり、失業等給付に係る国庫負担の割合は、 1 日も早く確実に本則に戻すべきであると申し上げておきます。これは、 2014 年の改正の際の建議にも記載されておりますが、公労使の一致したものです。ましてや、国庫負担の凍結、割合引下げなどはあってはならないということで、そのことは強く申し上げておきたいと思います。

先ほども新谷委員からありましたように、憲法において勤労権が保障されており、失業者の生活の安定を図ることは国の当然の責務であるわけです。それがゆえに、雇用保険制度の前身の失業保険制度が設けられました。こうした制度創設の趣旨をしっかりと受け止めた上で、労政審としての建議、さらには 2011 年度の改正による附則第 15 条で「できるだけ速やかに安定した財源を確保した上で、国庫負担に関する暫定的措置を廃止するものとする」とされたことの重みを政府全体でしっかりと受け止めた上で対応を図ることを強く意見として申し上げておきます。

○奈尾雇用保険課長 国庫負担については、今御発言がありましたとおり、資料 5 の 11 ページにもありますが、雇用保険法附則第 15 条の原則復帰という趣旨の規定に基づく措置を講ずるべきである、と前回御意見を頂いているわけです。また、私どもとして特に重視しなければいけないと思うのは、国会の意思で、雇用保険法附則第 15 条の規定で、できるだけ速やかに原則復帰という条項がありますので、これは立法府として行政府に宛てられた意思表明であろうと、私どもとしても理解する必要があるわけです。そういった点を踏まえて、財政運営の在り方を考えていくべきだろうということで、今後の議論をしていきたいと思っております。

○小林委員 今、国庫負担の在り方について、労働側から御意見がありました。これは、過去の経緯で使用者側も同様の意見を持っていますので、安定的な財源確保ということで、是非とも本則復帰をお願い致します。

もう 1 つは、以前からも使用者側と労働側が言っているのは、料率の引下げです。先ほど、新谷委員から積立金の話がありましたが、こんな額になっていると、いろいろな意味で違った、先ほどの子育ての支援の財源や、今後を考えていくと、介護関係も引上げになるのか分からない。雇用保険はそういうものに使われるのではなく、本来の趣旨は失業等のリスクの管理です。本来の趣旨に合わせた制度を中心的に考えていくべきでしょう。また、国が責任を持つのも当然ですし、労使がそれぞれ払っている保険料で成り立っているわけですから、この料率を下げることについて今後とも検討をお願いしたいと思います。

○奈尾雇用保険課長 まず財政運用については、本日の資料 4 でも主な論点として書かせていただいております。ここは、今の給付適用の在り方を考えた後で、あるいは今後明らかになる平成 26 年度の決算、それから前回の改正効果を見据えた上で料率をどう設定していくか、秋から冬にかけての検討かなと思っております。

現在も、御案内のとおりですが、弾力条項が発動されており、弾力でぎりぎりまで下がっているということで、今後これをどうしていくかを秋から冬にかけて検討をお願いできればと思っております。

○岩村部会長 ほかにはいかがでしょうか。

○遠藤委員 重ねての意見をお許しください。改めて、参考資料 2 にあります財政制度等審議会の一部抜粋の資料を見ているのですが、雇用保険への国庫負担の繰入れについては、多くの方が御指摘されているように、政府の雇用政策の責任を明確化するものです。参考資料に書かれているように財政状況が厳しいとか、積立金が 6 兆円を超えているなど、積立金の多寡により、国庫負担を一旦停止すべきだということが正当化されるべきものではない。改めて強く申し上げておきます。

○新谷委員 財政運営について、改めて労働側の意見を申し上げたいと思います。

先ほど、失業等給付の積立金残高が 6 兆円を超えている現状について意見を申し上げましたが、残高が積み上がった要因を分解して、検証していくことは大変重要であると思います。端的に言えば、収入と支出のバランスが狂って、毎年剰余が生じ、それが積み上がって 6 兆円を超えるまでとなったということです。今後、収支のバランスをどうするかといったことを議論するにあたっては、雇用保険のセーフティネット機能に照らして、給付の在り方の見直しを第一義的に考えて論議するべきだと思います。その上で、給付を賄うだけの保険料が相対的に幾らであるべきなのかという中で、現在は弾力条項の発動により下限で張り付いている保険料率について論議する、という順番になるわけです。

小林委員も同じ意見だと思いますが、労働側としては、料率の引き下げありきではないと考えております。まず、給付の在り方がどうあるべきかという制度設計の中で、おのずと料率の在り方も決まってくるのではないかと思います。先ほど、優先順位を付けてほしいと言いましたが、雇用保険法の目的に沿った形で、雇用保険の給付がどうあるべきか、その上で、料率がどうあるべきかという順番で論議をするべきだと思います。

それから、財政審の意見は遠藤委員がおっしゃったとおりですが、現に 6 兆円超という、毎年必要とされる給付の数年分の積立金残高が貯まってしまっているわけです。こうした積立金残高の現状に至るまでに、厚生労働省として本来もっと前の段階で手を打つべきであったと思います。ここに至れば、対応が遅かったことは否めませんが、今回の論議は非常に大事だと思いますので、我々も真摯にこの論議に参画をしたいと思います。

その上で、 1 点意見を申し上げます。参考資料 1 に 6 月 30 日に閣議決定された「『日本再興戦略』改訂 2015 」の内容が紹介され、その中で、「セルフ・キャリアドック」制度の導入が盛り込まれています。厚生労働省も政府の一員としてどのような論議をされたのかは知りませんが、政府の意志としてこうした制度を創設するというのであれば財源は国庫で賄うのが当然であると思いますが、この「セルフ・キャリアドック」は「一般教育訓練給付の対象とすることを検討する」との記載があります。当然、雇用保険料は労使が積み立ててきたものですが、労政審で何ら論議していない中、労使拠出の保険料を活用することを政府が独断で決めてしまっているわけです。

今回と同じことが 2 年前にも起こりました。 2014 年の雇用保険法改正で創設した専門実践教育訓練給付ですが、これは 2013 年の「日本再興戦略」で社会人の学び直し支援措置として閣議決定されたことに端を発しています。「日本再興戦略」では、社会人の学び直し支援措置は、厚生労働省、文部科学省、経済産業省の 3 省が、それぞれの思惑の中で社会人の学び直し支援措置の創設を提起しました。それが正しく雇用保険の積立金残高が着目され、結果として専門実践教育訓練給付を創設し、労使が拠出してきた雇用保険料を財源として活用するとされたわけです。専門実践教育訓練給付は、年間の支出が予算上は 890 億円という、能開行政の年間予算の半額近くに相当する巨額の給付を新たに創設することになったのですが、こうした巨額の給付の創設が、労使の参画のない会議体で決定されてしまったわけです。さらに労政審の論議の中でも、その財源について、労使ともに国庫負担でやるべきだという意見を大きな声で主張したわけですが、結局、雇用保険の保険料を使うということで制度ができてしまいました。

このように、専門実践教育訓練は労使のニーズに基づき創設された仕組みではなかったわけですが、実際に蓋を開けてみると、もちろんスタートが遅れたが影響はあるものの、初年度の受給者は 46 人、受給額は約 1,100 万円となっています。当初 890 億円という支出を想定したものの、桁が全然違う形でスタートしているわけです。もちろん、こうした制度ができた以上は充実させて、非正規労働者を含むすべての労働者の自己啓発のための訓練に資する制度として活用されるよう、職業能力開発分科会で論議をしてきましたし、これからも論議をしていきます。

ただ、申し上げたいのは、やはり労使の参画しない会議体で制度導入の方向性自体が閣議決定されて、詳細部分の論議についてのみ労政審に下ろしてくる、こうした雇用労働政策の基本的な枠組みが官邸で決められて労政審に下りてくるという枠組みは改めるべき、ということなのです。厚労省に申し上げても難しいかもしれませんが、意見として申し上げておきます。

○岩村部会長 ほかにはいかがでしょうか。今後の議論の進め方については、本日労使それぞれの意見もありましたので、更に優先順位の問題もありますので、そこは事務局と相談しつつ進めていきたいと思います。冒頭、課長からも説明がありましたように、年末までのかなりタイトな時間の中で、結構多くのテーマについて御議論いただかなければいけませんので、その辺りはそれぞれの委員の皆様に御協力いただきながら、効率よく議論をできればと思っております。また、最後に労使それぞれからお話がありましたし、今、取り分け新谷委員からもお話がありましたように、労働政策の立案に当たっての労働政策審議会、 3 者構成の労働政策審議会の役割は私も非常に重要だと思っております。そういう意味でも、この雇用保険部会で雇用保険の在り方について、いろいろな形で活発に御議論いただければとお願いする次第です。ほかに、特に御意見はよろしいでしょうか。

○青山委員 お願いなのですが、毎回大変詳細な資料を出していただいて、これは大変貴重な資料で有り難いです。これからの議論のことで、毎回膨大な資料をめくっていくのもちょっと大変だなと個人的に思い、 1 つの紙で、ある程度理解できるような資料を作成できないか、御検討いただければ大変有り難いなと。要は、いつどういう改正があったからこういうファクツが出てきているというような表があれば、大変有り難いなと思っておりますが、御検討いただければと思います。

○岩村部会長 雇用保険課長、いかがでしょうか。

○奈尾雇用保険課長 ありがとうございます。にわかに、どういうものを作成すればいいか知恵がないわけですが、確かに資料が多く、特に何がどこに書いてあるか分かりにくいという御指摘かなと思いますので、少し何ができるかは考えてみたいと思います。

○岩村部会長 冒頭、新谷委員からもありましたように、ある程度いろいろな具体的統計資料その他を踏まえて議論する必要がありますので、どうしても雇用保険部会の場合は資料が多くなってしまうのは避けられないところです。確かに、青山委員のおっしゃることも分かりますので、具体的にどういうことをイメージするかは、事務局と青山委員との間で少しお話しされて、何か具体的なものが考えられれば、工夫を頂ければと思います。よろしいでしょうか。

○遠藤委員 次回の会合予定は頂いているのですが、次回の検討項目は上から 3 つということになるのでしょうか。

○奈尾雇用保険課長 現在のところ、求職者給付から考えていただきたいと思っておりますので、基本は上のほうの 3 つの論点ということで考えております。

○遠藤委員 ありがとうございます。

○岩村部会長 よろしいでしょうか。それでは、最後に本日の署名委員ですが、使用者代表については小林委員に、労働者代表については新谷委員にそれぞれお願いをしたいと思います。委員の皆様、暑い中、またお忙しい中、今日はどうもありがとうございました。以上をもちまして、本日は終了といたします。先ほど遠藤委員からもありましたが、次回の日程は 8 月 25 日 ( 火 ) ということで既に予定されております。開催場所については、事務局から改めて各委員に御連絡をお願いいたします。それでは、今日はどうもありがとうございました。
 

(了)

照会先

厚生労働省職業安定局雇用保険課企画係

(TEL)03-5253-1111(内線5763)