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※毎月勤労統計の改善に関する検討会の第4回~第6回議事録の掲載が遅くなりましたことにつきまして、お詫び申し上げます。

2015年7月24日 第4回毎月勤労統計の改善に関する検討会 議事録

大臣官房統計情報部雇用・賃金福祉統計課

○日時

平成27年7月24日(金) 10:00~12:00

 

○場所

中央合同庁舎5号館 厚生労働省17階 専用第21会議室

 

○出席者

委員(五十音順、経歴略、◎:座長)

◎阿部 正浩
  土屋 隆裕
  津森 康之介
  永濱 利廣
 

構成員以外の関係者

  廣松 毅  
   小此木 裕二  
 

事務局

  姉崎統計情報部長
  久古谷雇用・賃金福祉統計課長
  手計雇用・賃金福祉統計課長補佐

○議事

 

○手計補佐 定刻より若干早いですが、ただいまから第4回「毎月勤労統計の改善に関する検討会」を開会いたします。
 委員の皆様におかれましては、お忙しい中、御出席いただき、誠にありがとうございます。
 本日の出席状況でございますが、小巻委員、樋田委員が御欠席でございます。
 また、本日は、構成員以外の協力者として、情報セキュリティ大学院大学情報セキュリティ研究科特任教授の廣松先生、及び内閣府経済社会総合研究所国民経済計算部分配所得課の小此木課長をお招きしています。どうぞよろしくお願い申し上げます。
 それでは、早速でございますが、以後の進行につきましては、阿部座長にお願いいたします。
○阿部座長 おはようございます。
 本日もお忙しい中お集まりいただきまして、ありがとうございます。
 早速ですけれども、議事を進めてまいりたいと思います。
 まず、議題1「第3回検討会における指摘事項等について」ですが、資料がございますので、事務局より説明をお願いしたいと思います。
○久古谷課長 それでは、事務局のほうから説明いたします。
 資料1-1に、前回の検討会における指摘事項等について、簡単にまとめてあります。まず、1点目は、抽出替えの際のギャップについて、産業別に要因分解をしてはどうかという御指摘がありましたので、産業別の要因分解を行っております。
 2点目ですが、前回、継続して提出している事業所、途中で提出がなかった事業所、その提出を再開した事業所の賃金について、分析を行ったのですが、これは事務局からの提案も一部入っていたのですけれども、規模が小さい事業所が事務体制等の問題で提出しない場合や、また再開する場合があり、賃金水準が低いというのは、提出しないという事業所の属性だけではなく、事業所規模が小さいということも影響しているのではないかというお話がありましたので、事業所規模別に見てどのようになっているのかを分析しました。
 3点目になりますが、これまではサンプル入れ替えを行ったときのギャップについて、どのように扱うかということを中心に話をしてきたのですけれども、毎勤の場合は、サンプル入れ替えを行った場合だけではなく、労働者数のベンチマークを変えたときもギャップが生じますので、それについての分析をするよう御指摘があり、労働者構成の変化による分析を行っております。
 4点目ということで、修正WDLT方式については、ギャップをどれぐらいの速さで収束させるかという係数、パラメーターαがあり、これについては、アメリカで実際に使用されている「0.9」という値を使って計算してみたところですけれども、0.9ではない他の値ではどうなのかという御指摘がありましたので、他の値についても計算を行ったところでございます。
 それでは、具体的な内容について説明いたします。
 まず、ギャップの産業別の要因分解について、次の資料1-2を準備しております。内容としては、直近3回の抽出替えにおけるきまって支給する給与のギャップにつきまして、資料の注に書いてあります要因分解式を用いて、産業別に与えた影響がどれくらいあるのかを計算したところでございます。
 ただ、1点注意事項ということで、足元の平成27年1月の抽出替えにつきましては、新旧のサンプルを入れ替えただけなのですけれども、平成24年と平成21年につきましては、労働者数のベンチマークの変更も同時に行っておりますので、両方の変更による影響が反映されたギャップということになっております。
 内容的には、数字を記載していますので、見ていただければ大体わかると思いますが、平成27年1月につきましては、調査産業計で3,000円弱のギャップが出ており、産業別に分解してみますと、製造業あるいは卸売業・小売業といった産業の寄与が大きくなっています。また、表の一番下の行にありますその他のサービス業についてはプラス要因で寄与しているというような状況になっております。
 平成24年につきましては、額としては比較的小さな、770円のマイナスと出ているのですが、このときは産業別に見ますとプラスに寄与している産業、マイナスに寄与している産業、それぞれあり、それらがキャンセルし合った結果、770円程度の大きさになったというような状況でございます。
 その前の平成21年につきましても、プラスに寄与する産業とマイナスに寄与する産業がありますが、結果的にはその他のサービス業や医療・福祉の産業でマイナスに寄与した影響が大きく、調査産業計では3,347円のマイナスとなりました。
 ただし、繰り返しになりますけれども、平成24年と平成21年については、労働者のベンチマークの変更も行っておりますので、そのあたりにつきましては、資料1-4をご覧ください。こちらの資料に、平成24年と平成21年のギャップ修正を行ったときの状況が記載されており、表の左側に、新サンプルの標本値に基づいて、一つは旧ベンチマークの母集団労働者数で加重平均を行った値と、もう一つは新ベンチマークの母集団労働者数で加重平均を行った値を載せております。
 実は新サンプルに基づく旧母集団労働者数で加重平均した結果というのは、これまで公表しておりません。基本的に公表していますのは、旧サンプルに基づく旧母集団労働者数で加重平均した値と新サンプルに基づく新母集団労働者数で加重平均した値なので、純粋なベンチマークの切替えだけでどれぐらいの影響が出るかということを把握するため、新サンプルに基づく旧母集団労働者数で加重平均した値を試算して、その母集団の変更がどれくらいの影響をきまって支給する給与に与えるのかを分析したものでございます。
 この結果によると、平成24年1月につきましては、調査産業計で491円、上方へ補正されております。
 参考として労働者数ベースではどれぐらい変わったかというのを表の右側につけておりまして、産業大分類別の構成比の比較と、あとは生(なま)の数字で見た場合の母集団としてどれぐらいの増減があったのかというのを計算しているところでございます。
 あと、要因分解式のところですが、式全体を産業大分類内構成比による変動の寄与と産業大分類間での構成比による変動の寄与に分けております。これは何を意味しているかといいますと、新サンプル同士の比較ですので、単位集計区分上では、平均賃金に変化はないのですけれども、この表は産業大分類別に記載されており、事業所規模の積み上げや産業中分類の積み上げ等を行って産業大分類を作成しているため、基本となる労働者数が変わると、産業大分類の中の構成変化により産業大分類としての平均賃金が変わってきます。あとは産業大分類間で平均賃金が高い産業と低い産業がありますので、平均賃金が高い産業のウエイトが高くなれば、当然平均賃金は高くなります。そのような影響がありますので、その2つの効果を分解して計上しております。
 同様に、平成21年につきましても、新サンプルに基づく旧母集団労働者数で加重平均した結果と新サンプルに基づく新母集団労働者で加重平均した結果による比較を行っておりまして、平成21年の場合はベンチマークの変更が、賃金に対してマイナス方向に働いているという結果になっているところでございます。
 続きまして、資料1-3について説明いたします。資料1-3につきましては、冒頭申しましたように、第3回の検討会において継続している事業所、当月提出したが翌月提出しなかった事業所、あるいは当月提出しなかったが翌月再開した事業所について、それぞれの賃金水準の比較を行い、その中での事業所規模ごとの構成比を計算しました。
 ただ、1点注意事項ということで、次月未提出事業所や当月未提出事業所というのは比較的数が少ないので、構成比については変動しやすいという傾向があります。そのため、少しばらついた結果になっているのですが、全体的な傾向として、やはり次月未提出あるいは当月未提出のグループにつきましては、継続事業所のグループに対して、30~99人という比較的小規模の事業所の構成割合が大きいということを、一応この資料から見てとることができると思います。
 ただ、グループの規模が余り大きくないので、500人以上の大きな事業所規模のところにつきましても、次月未提出あるいは当月未提出のグループの構成比のほうが継続事業所のグループより高いというような月も少数ですが、ございます。そのため、こういう状況を総括するのもなかなか難しいのですけれども、未提出あるいは当月未提出のグループの平均賃金が低くなる影響として、やはり事業所規模の影響も一定程度入っている可能性はあるということが分かりました。
 また、次月未提出事業所と当月未提出事業所は、いわば出ていった事業所と替わりに入ってきた事業所ということなのですが、傾向的に見てみますと、ぴったりとはいかないのですが、出ていったところの構成比にほぼ近いようなところがまた入ってきているように思われます。ただ、これで完全に相殺されているということまでは言えませんが、一定部分は相殺されている可能性が高いのではないかと思っているところでございます。
 最後に、資料1-5では、α=0.9でない場合について、幾つか計算しております。
 1ページめくっていただきますと、簡単なグラフをつけております。これはギャップに毎月毎月αをかけるため、αのn乗がどれぐらいの早さで0に収束しているかというスピードを表しているグラフなのですが、α=0.9より小さければ、一定期間が過ぎると、かなり速いスピードで0に収束しています。ただ、α=0.95だと収束スピードが遅いため、余り0に収束しておりません。
 実際計算した結果が次の3ページにグラフで描いてありますが、グラフで描いてもなかなか読み取りにくいと思いますので、次の4ページに具体的な増減率についての値を載せているところでございます。
 これを見ていただきますと、修正WDLT方式と従来のギャップ修正の数字の比較ということになるのですが、最初の年については、従来のギャップ修正を行ったものに比べて、最初の数か月は少々高目に出ておりますが、年の後半からは低目にずっと出ております。
 2年目になるとその差は少しずつ小さくなり、3年目の半ばあるいは後半からα=0.75、0.80、0.85と順にギャップ修正を行っているベースの値にかなり近づいてくるのですが、α=0.95については、3年目の最後になってもまだ少々乖離が残ったままというような状況になっています。アメリカでは、α=0.9として使われていますが、それより大きくしてα=0.95とすると少し乖離が残り過ぎてしまうと思います。
 あとは、αの値を小さくすると、当然収束は速くなるのですけれども、率直に申し上げますと、どのαにしても極端な差はないのではないかと思っている次第でございます。
 事務局からの説明は以上でございます。
○阿部座長 ありがとうございました。
 それでは、ただいま御説明いただきました資料等につきまして、御質問がありましたら、お願いしたいと思います。
○永濱委員 細かい質問で恐縮ですが、資料1-4の平成24年1月抽出替えの新母集団労働者数において、産業大分類別で見たところ、複合サービス事業の労働者数の減少が運輸業・郵便業の労働者数の増加に対応しているように思われますが、これは郵政民営化の影響ですか。
○久古谷課長 すみません。本来、この資料の説明のときに説明すべきだったのですが、これは郵政民営化の関係で、要するに、郵便局の中で複数の事業を行っていると、郵便局は複合サービス事業に分類されていましたが、郵政やゆうちょ等別々になると、それぞれが郵便業や金融業に分類されますので、郵政の組織変更の影響があって、ここだけ数字が大きく変わっているところでございます。
○永濱委員 ありがとうございます。
○阿部座長 ほかはいかがですか。どうぞ。
○津森委員 資料1-4についてですが、平成24年1月の抽出替えの前の抽出替えが平成21年1月となりますので、3年でベンチマークを見直した結果がこの資料ということですか。
○久古谷課長 はい。もう少し付け加えますと、平成21年までの事業所・企業統計につきましては、民営と官公営、両方の事業所を対象に5年間隔で実施しており、その調査に合わせてベンチマークを変えていたのですけれども、事業所・企業統計が経済センサスに切り替わるときだけ間隔が3年になってしまいました。そのため、ここだけ、平成21年と平成24年が両方ともセンサスとして民営事業所と官公営事業所を調査しているので、ベンチマークを切り替えたということです。
○津森委員 つまり、平成21年の抽出替えにおいては5年分のギャップがあり、平成24年の抽出替えでは3年分のギャップがあるということでよろしいでしょうか。
○久古谷課長 サンプル替えのギャップではなく、毎勤としての推計とセンサスの結果のギャップとしてあります。
○阿部座長 どうぞ。
○永濱委員 以前に御説明があったかもしれませんが、WDLT方式でそもそも何故アメリカはα=0.9にしたのでしょうか。
○久古谷課長 私自身がアメリカに直接聞いたわけではないのですが、過去に厚生労働省から問い合わせたときは、理論的なバックがあってではなく、実際に0.9でやってみて、それで問題ないので、0.9をずっと使っているというような回答だったそうです。
 ですから、アメリカ側も0.9が一番いいという話ではなくて、これでやってみて特に問題がないので継続しているという立場ではないのかと思っております。
○土屋委員 日本の場合は継続の期間が3年ですけれども、0.9としているアメリカの継続の期間、切替え期間はどのくらいなのでしょうか。
○久古谷課長 切替えにつきましては、第1回目の資料に書いたのですけれども、サンプル入れ替え自体は毎年行っています。半分ぐらいの事業所が入れ替わるように毎年行っているのですけれども、日本の場合のようにまとめてではなく、産業別に4つのグループに分けて、そのグループごとに抽出替えを行っているようです。詳細な仕組みについてははっきりと把握していないのですが、基本的にアメリカでは、失業保険の加入事業所を事業所データベースに使っていて、そちらのデータを利用しながら、抽出やベンチマークの推計を行っているということになっております。
○阿部座長 よろしいですか。
 資料1-2と資料1-4を見ると、資料1-2の平成24年1月抽出替えの旧サンプルの調査産業計は26万円、資料1-4の旧母集団労働者の新サンプルは25万8,739円となっています。この数値の差し引きがサンプルの違いということで間違いありませんか。
○久古谷課長 そうです。
○阿部座長 そうすると、資料1-2で見ているギャップはマイナス770円ですけれども、もしベンチマークを変えなかったら、更にマイナス491円下がっていたという理解でよろしいのでしょうか。
○久古谷課長 はい。
○手計補佐 今、阿部座長からの御指摘のとおり、ベンチマークを変更しなかった場合、491円分が抜け落ちますので、サンプル差は計算上1,261円ぐらいのマイナスになったということになります。
○阿部座長 平成21年の場合にはベンチマーク更新による影響により、マイナス1,184円となっていますけれども、ベンチマーク更新を行わなければ1,184円分のプラスの効果があったということでしょうか。
○手計補佐 資料1-2を見ますと、実際には全体で3,347円のマイナスとなっており、労働者構成の変化による部分が資料1-4にありますようにマイナス1,184円なので、残りのマイナス2,163円が新旧サンプルの差となるかと思います。
○久古谷課長 平成21年の抽出替えについては、ベンチマーク更新をしなければ、マイナス幅はもうちょっと小さかったはずだということになります。
○阿部座長 そのようですね。
○久古谷課長 はい。
○阿部座長 このベンチマーク更新に伴う補正についてですが、プラスに寄与するか、マイナスに寄与するかというのは、傾向としてはよく分からないということになるのでしょうか。
○久古谷課長 恐らく、産業間での賃金水準の差がありますので平均賃金が多い産業が増えたか減ったかの効きが大きいのではないか、と思っております。
○阿部座長 わかりました。ありがとうございます。
 では、もしほかに質問がなければ、次の議題に移りたいと思います。
 次に、「サンプル入れ替え方法とギャップの修正方法の今後の方向性について」ですが、資料がありますので、事務局から説明をお願いしたいと思います。
○久古谷課長 それでは、資料2-1「サンプル入れ替え方法とギャップの修正方法の今後の方向性について」ということで、何種類かの資料をまとめております。
 まず、ページをめくっていただきますと、2ページ目「検討会におけるこれまでの主な意見の一覧」ですが、これは事務局側の主観で選んだ主な意見をまとめたものでございます。
 ここに書いていない話も当然何点かあったのですけれども、総論として、まず1つは、毎勤において、賃金、増減率のうちで最も重視するものは何かというような問いかけがありました。これに対して事務局からは、現時点では増減率であると回答したところでございます。
 2番目として、重要視する項目によって、ギャップの補正方法が決まるのではないか、また、重要視する項目自体も、その時々の情勢あるいは利用者の立場等によって異なってくるものではないかというような御意見がありました。
 細かい項目について見ていきますと、1つは「サンプルのバイアスについて」ですが、脱落サンプルの賃金水準は存続サンプルの賃金水準よりやや低い傾向があるけれども、月々の変動もまた一定程度あるということと脱落サンプルの賃金への影響、つまり、賃金が低いところが脱落することによる上方バイアスはあるかもしれないが、再開する事業所もやはり賃金水準が低いので、その2つは相殺している可能性があります。完全に相殺されているというのは、恐らくないのでしょうけれども、一定部分は相殺していると思われます。
 「サンプルの入れ替え方法」につきましては、従来は第一種事業所のサンプル入れ替えについて総入れ替え方式を行ってきたのですが、部分入れ替え方式を導入する場合には、やはり人的コストや予算を含めたコストがかかりますので、そのコストと実務面での問題というのは当然考慮する必要があります。
 また、部分入れ替え方式を採用しても、何グループに分割するのかというのもありますが、分割グループ数には限度があるので、やはりギャップは一定程度残る可能性があります。
 ギャップがもし残るとしたら、それを把握して水準調整等を行うように重複期間は残すべきではないかという問いかけがありました。逆に言うと、ギャップが十分小さければ重複期間はなくても構わないのではないかということです。
 最後に、「ギャップの補正方法」についてですが、これは具体的な方法ではなく、基本的な考え方をまとめたものです。
 1つは、利用者にとってわかりやすく、納得性の高い補正方法であることが重要であることと利用者の立場からすると、過去の増減率が変わるのは望ましくないというような御意見がありました。
 また、旧サンプルの結果をその調査を実施した時点での情報と考えると、水準のみ調整すれば、あえて増減率を再計算する必要はないのではないかというような御意見もありました。
 また、ずばり、平行移動方式にしてはどうかというような御意見もありました。
 また、事務局の側からも幾つかの修正案を出したのですけれども、近づけるべき真の値というものが何かというのがわからないので、補正方法については、どれが良くて、どれが駄目だという補正方法間の優劣を比較するのはなかなか難しいのではないかというような御意見もありました。
 以上、これまで出された意見について、主要なものを取りまとめたものでございます。
 次の3ページからは、ベンチマーク更新時の補正方法について検討しております。これまではどちらかというと労働者数のベンチマーク更新がない、純粋にサンプル入れ替えを行ったときのギャップ修正の方法を御議論いただきました。御議論の中では、これまでまとめましたように、サンプル入れ替えがあったからといって、賃金や労働時間の前年同月比は変えないほうがいいのではないかという御意見が多数だったとは思うのですが、毎勤の場合、もう一つベンチマークとなる労働者数の変更がありますので、その扱いについても検討しておく必要があります。そのため、前から話しているところと重複する部分もあるのですけれども、あえてもう一度ここに書いております。
 これまでの検討会では、主に賃金、労働時間についての指数の補正方法について議論をしてきたのですが、雇用指数につきましては、従来の補正方法を踏まえた方法が望ましいのではないかと事務局のほうでは考えております。
 3ページに言葉で長目に書いてあるのですけれども、要するに「新・旧ベンチマーク間は三角修正、新ベンチマーク設定時から足下までは平行移動」と書いてあります。言葉だけでは少しわかりにくいので、参考資料1の18ページを開いていただき、図をご覧ください。この図は、ベンチマークの更新も同時に行った平成24年1月の抽出替えのときに、雇用指数について、どのような補正を行ったかを表しています。
 基準になる点が3点ありまして、1つは平成18年10月1日です。この日は事業所・企業統計の基準日で、センサスの結果により平成18年10月1日現在の労働者数の正確な値が分かります。この時点がまず1点目になります。
 2つ目の基準日は、平成21年7月1日です。この日は平成21年の経済センサスの実施基準日で、この経済センサスの結果により平成21年7月1日の労働者数の正確な状況が分かったという時点になります。
 最後に、平成23年12月末ですが、平成24年1月のギャップ修正なので、ギャップの補正をどこまで行うかというところの時点を表しております。
 考え方ですが、まず平成18年9月末、10月1日の値は正確な値が分かっています。現行の指数ということで、点線で書いてあるのが、毎勤の結果によってずっと推計してきた労働者数の水準です。毎勤で言えば、平成21年6月末の数字は推計してきた数値ですが、実線で書いてある「センサスの水準」の点はセンサスによる正しい値です。
ここでこれだけの乖離が生じていますので、毎勤でこれまで説明してきたような三角修正を行っております。これまで賃金の下方修正の図ばかりで説明していたのですけれども、この場合は上方修正なので、ちょうど上下がひっくり返るような状態になりますが、考え方としては同じです。
 ここで新しい水準に合わせ、その後は毎勤の結果でずっと伸ばすしか方法がないので、「現行の指数」という当時の指数を平行移動しております。雇用指数についてはこのような指数のギャップ修正をして、さらにこの補正した指数に基づいて増減率を再計算しているところでございます。
 注意点ということでは、足元では平行移動を行っておりますので、足元から一定の期間までの雇用指数の増減率は変わりませんが、三角修正を行った期間にかかる部分は増減率が変わってきます。このようなやり方で雇用指数の補正を行ってきたところでございます。
 平成21年6月においては、毎勤の調査結果とセンサスによる実際の結果があって、これだけのギャップがあると分かったのですけれども、考え方としては、7月に急激にこれだけの差が生じたのではなく、前のセンサスの時点から毎勤の推計と実際の動きに少しずつ差が出て、積み重なってこれだけのギャップが生じたとして、このギャップは少しずつ解消してあげましょうということで、三角修正という方法をとってきたところでございます。
 これまではサンプル入れ替えによって、調査対象の賃金水準がある時点で著しく変わったのですけれども、それは調査する対象を入れ替えたことによって起こる、ある意味必然的に発生するギャップで、それを特定時点だけ調整してやれば接続系列とみなせると思うので、そうみなすことにより、従来からやっていた調査結果の増減率をそのまま変えないほうがいいのではないかというお話があったのですが、雇用指数の場合は、基本になっているベンチマーク、ある意味絶対的に正しい結果ですけれども、その結果に毎勤の結果を近づける補正というのは行う必要があるのではないかと思っているところでございます。
 ただ、指数自体は変える必要があると認識しているのですけれども、これまでの議論を踏まえますと、増減率については、現在と同じように再計算して改訂するという考え方と、毎勤で継続的に把握してきた増減率なので、改訂しなくても構わないのではないか、そういった二通りの考え方があり得ると思っておりますので、3ページの資料の上から一つ目の枠囲みの最後の行に「なお、増減率については、(1)(再計算して)改訂する、(2)改訂しない、の2つの考え方があり得る」という記述を行っております。
 もう一つは、ベンチマーク更新時における賃金、労働時間の補正についてはどうするのかという話があると思います。
 これについても3ページに書いているのですけれども、それよりは、4ページのグラフを見ていただいたほうが何を考えているかわかりやすいと思います。
 グラフを見ていただきますと、サンプル入れ替えのときに、従来は「旧サンプル、旧ベンチマーク」と矢印で示しているこれまでの結果と「新サンプル、新ベンチマーク」と矢印で示している新しい結果の間で三角修正を行ってきたのですけれども、これまでの議論を踏まえますと、一気に「旧サンプル、旧ベンチマーク」から「新サンプル、新ベンチマーク」へ移るのではなく、中間概念として、「新サンプル、旧ベンチマーク」を作成し、「旧サンプル、旧ベンチマーク」と「新サンプル、旧ベンチマーク」の間はサンプル入れ替えだけの影響ですので、ここはこれまでの議論を踏まえて、平行移動方式により補正するというのが一つは考えられます。平行移動方式による補正を行った後、サンプル入れ替え時点では、新しい結果として、新ベンチマークによる新しい労働者構成で加重平均をやり直しています。
 加重平均をやり直すという立場から言えば、遡って各月の加重平均を新しい労働者ウエイトでやり直すというのが一つの方法として考えられるのですけれども、もし、労働者ウエイトで加重平均した指数が、いわゆるラスパイレス型の指数でしたら、固定した労働者ウエイトを明示的に出して計算することになるので、再計算を行ってしかるべきですけれども、毎勤の場合は、結果として加重平均されているため、労働者ウエイトの変化も含んだ形でギャップ修正をして解消してきました。旧ベンチマークの労働者ウエイトが徐々に変化して、最終的に新ベンチマークの労働者ウエイトに変わってきたので、そこは滑らかに接続させたほうが、毎勤の中での労働者構成の変化も反映しているだろうという考え方から三角修正を行ってきたところなので、労働者構成の変化については、指数に関して三角修正を行うべきではないかと考えています。4ページの囲みの中で書いてありますところで言いますと、(1)の部分につきましては、最初に申し上げたとおり「旧サンプル、旧ベンチマーク」と「新サンプル、旧ベンチマーク」の間ではサンプル入れ替えの効果だけなので平行移動方式により補正するということです。
 (2)のほうについてですが、先ほどから申し上げておりますベンチマークの変更による労働者ウエイトの変化なので、これまでの毎勤の考え方から、労働者構成の変化も滑らかに解消させるというアプローチをとりたいと思っているのですけれども、では、どこの部分を基準にして三角修正を行うかという問題がありまして、候補としては二通り考えられるかと思います。
 一つは、新ベンチマークを設定した時点から徐々に新ベンチマークに変わっていって、最終的なサンプル入れ替えのときの値になったと考えて、この期間で三角修正を行うというのが案1です。
 もう一つは、旧ベンチマークの値が正しいとわかっている時点を恐らく遡れる最大限度の時点と考え、旧ベンチマーク設定時まで遡って三角修正を行うというのが案2です。
 この2つの案の関係なのですけれども、補正期間と補正量というのがそれぞれトレードオフの関係になっていて、案1にすると補正を行う期間は短くて済むのだけれども、当然短い期間の中でギャップを解消するので、一月あたりの補正量は比較的多くなります。
 案2のほうでは、補正を行う期間が長くなるのだけれども、長い間でギャップを解消するので、一月当たりの変動は低くなるだろうと思っております。
 ただし、これまでの旧ベンチマークでずっと伸ばしていた期間というのは、そのとき行った調査結果ということで、前年同月比はそのまま使ったほうがいいのではないかというような議論がありまして、その議論を踏まえますと、今後サンプル入れ替えの後の賃金や労働時間の伸びを新ベンチマークで正しく評価するために指数のみ三角修正し、前年同月比については、過去に遡って再計算せず、今後の前年同月比につきましては、新しく補正した指数に基づいて計算するというのが、これまでの議論を踏まえて事務局として考えた新しい方式です。
 当然このほかにも、これまでの議論を考えると、ベンチマークの変更時においても、まとめて平行移動方式や修正WDLT方式で補正するという方法があると思いますが、ベンチマークの変更については、サンプル変更はある特定の時点で大幅な変更が生じたとみなせるのに対して、ベンチマークの変更による労働者数の変更は、長い時間かけて生じた変化が蓄積したものであるという解釈が、これまでの毎勤の推計の考え方から見れば自然なのではないかと思い、今回のような案を考えたところでございます。
 最後に、サンプル入れ替えの参考資料ということで、資料2-2をつけております。他省庁の統計で部分入れ替え等を実施している統計があるのではないのかというような御指摘も後でありましたので、事務局のほうで少しまとめました。事務局で調べた範囲ですと、法人企業統計、労働力調査、家計調査、この3つの調査で部分入れ替えを実施しているということでした。
 法人企業統計は四半期調査で2年間行うのですけれども、年1回2分の1ずつ調査対象を入れ替えています。ただし、備考にも書いてありますように、資本金の額が大きな企業については全数調査ということになっております。
 労働力調査については月々の調査なのですけれども、2か月間の調査を2回行います。調査方法につきましては、ある特定の連続した2か月を調査し、1年後にもう一度同じ月に対象の世帯を調査するという方法をとっておりまして、毎月半分の世帯が切り替わることになります。
 家計調査は、2人以上世帯と単身世帯、2つの系列がありまして、2人以上世帯の場合は6か月が調査期間となりまして、毎月6分の1ずつ対象世帯が切り替わっておりますが、単身世帯の場合は3か月が調査期間となり、毎月3分の1ずつ調査世帯が切り替わっているというような状況でございました。
 事務局からの説明は以上でございます。
○阿部座長 ありがとうございました。
 それでは、資料2-1と資料2-2につきまして、御意見あるいは御質問等があればお願いしたいと思います。よろしくお願いします。
○廣松特任教授 確認ですが、資料2-2で挙げられている調査に関しては、毎勤で言うギャップ修正はやっていないのでしょうか。
○久古谷課長 はい。ギャップ修正に相当する調整は行っていないというふうに聞いております。
○廣松特任教授 わかりました。
○永濱委員 よろしいですか。
○阿部座長 どうぞ。
○永濱委員 資料2-1の最初の「総論」のところに書いてあります、「毎月勤労統計において水準、増減率のうちで最も重要視するのは何か」ということで、先ほど増減率を重要視しているという話がありましたが、私の感覚としては、指数については増減率のほうが重要だと思うのですけれども、生(なま)の金額のデータについては、やはり水準が重要だと思うので、水準と指数で重要視するところが違うのではないかと思います。
 個人的にユーザーとしてはギャップ修正の方法に非常に関心があると同時に重要だと考えているのですが、恐らく私も含めた民間エコノミストのほとんどがそう思っていると思うのですけれども、参考資料1の9ページから12ページまでにある補正方法の中で、修正WDLT方式はまずいのではないかなと考えています。この補正方法は、過去の差の部分を将来にわたって調整していくことになるわけです。少し前までは賃金のデータというのは、そこまで政策判断などを考えるときに重要視されていなかったわけですけれども、日米ともにいわゆるインフレ目標政策というのを中央銀行が掲げたことによって、賃金のデータが非常に重要視されてきているということからすると、今後の政策判断に影響を及ぼし得る新しく出てくるデータに関して、過去の変化分を調整するというのは少し不適当かと思います。
 例えば具体的にこういうことが起こり得るのではないかと思います。賃金に関して、本来であれば賃金の上昇率が高かったのに、修正WDLT方式により公表したことによって賃金の上昇率が下がったため、日銀がもっと早目に出口戦略をとらなければいけなかったのが遅れてしまったというような事例が起こる可能性があるのではないかと思います。
 資料1-5の4ページの表について、過去のαを変化させたときの所定内給与の推移を見てみても、一番差があるところだと、賃金の変化率に1%ぐらい差が生じています。これは相当大きい差だと思いますので、それを考えると、修正WDLT方式はまずないのではないかというところです。
 一方で、従来の補正方法である三角修正方式によって、こういう議論が盛り上がり、こういう補正方法の検討になったわけですから、それを踏まえた単純な補正方法で言うと、私は、参考資料1の10ページの指数改訂、直近前年同月比無改訂方式か、11ページの平行移動方式でないと、多分指数を変更する当初の目的と合わないのではないかと思います。
 あと、資料2-1の4ページのところですが、先ほどベンチマーク更新時の雇用指数や賃金指数等の補正方法について、定性的な御説明をいただいたのですけれども、具体的に過去のデータについてこの方法で補正した数字は出せないでしょうか。
○久古谷課長 調査産業計等、幾つかターゲットを絞れば計算はできると思います。
○永濱委員 それがないと明確な差が分からないと思いましたので、お願いできればと思います。以上でございます。
○阿部座長 どうぞ。
○廣松特任教授 大変悩ましい点ですが、資料2-1の4ページについて、先ほどの御説明によると、平行移動方式によって、サンプル入れ替えの効果を補正し、ベンチマークの更新による効果については、三角修正で行うということだと思いますが、その2つの効果をうまく分けられて、かつそれを対外的にも説明できるかどうかが重要なのではないかという気がします。
○久古谷課長 そこに対する考え方は、先ほども少し申したのですけれども、サンプル入れ替え時に生じるギャップは、ある一時点でのギャップなので、水準調整さえすれば、ある意味ほかにデータが入手できないので、調整された従来の系列を接続系列とみなすことができます。一方、ベンチマーク更新による補正についてですが、ある時点においてこれまでずっと毎勤で推計していた結果とセンサスによる実際の結果の差なので、見かけ上、ある時点でのギャップではあるのですが、当然毎勤の結果もある時点で正しい値から出発して、徐々に伸ばしてきたので、そういった変化は、ある特定の瞬間で生じたギャップではなくて、長い時間かけて生じたギャップなので、水準についてはある一定期間をかけて解消するほうが正しいのではないかと思います。
 ただし、毎勤の中で把握して計算してきた増減率につきましては、それはそれで正しいのではないかというような整理になると思っております。
○廣松特任教授 ただ、そのような補正方法を行うには、「新サンプル、旧ベンチマーク」という値を求めなければいけないわけです。
○久古谷課長 はい。
○手計補佐 補足になりますが、今、言われた「新サンプル、旧ベンチマーク」という値は、少々言葉は違いますけれども、資料1-4の表にある「旧母集団労働者新サンプル」として試算しております。そのため、この値を用いれば、この補正方法で計算できますので、先ほど永濱委員からも御指摘があったように、過去のデータに対して、この補正方法を適用した場合の試算を次回までに準備できればと思っています。
○阿部座長 どうぞ。
○津森委員 おっしゃるとおり、サンプルによるギャップは、サンプルを入れ替えたその時点においてのみ生じるわけですから、それを平行移動で補正していくという考え方は非常に魅力的だと思います。また、ベンチマーク更新によるギャップは、急に生じたわけではなく、産業構造の変化が徐々に生じ、産業間の従業者の移動、労働者ウエイトの変化が徐々に生じていったはずだと考え、これについては過去に遡って補正するというのは、そのとおりだと思います。
 案1と案2のどちらがいいかというのはわからないのですけれども、一定の期間については同一のサンプルでずっと調査しており、しかも、母集団労働者数自身も雇用保険の統計に基づいて少しずつ補正しているわけですから、既に公表したものは、これはこれで直さないというやり方が適当なのではないかと思います。
 ただ、今後公表する数値については、補正後の指数に基づいてやらなければいけないのではないかと思います。
ちなみに、これは確認なのですが、過去、厚生労働省でもサンプル入れ替えだけのときには平行移動方式による補正、ベンチマーク更新も含む入れ替えのときには三角修正をやっていたということを耳にしたのですが、その辺は今回のやり方と同じなのか、違うのかというのがちょっとわからなかったのですがどうなのでしょうか。
○久古谷課長 過去にそういう補正方法を適用していた時期もありました。考え方としては、私も申し上げ、津森委員もおっしゃったように、サンプル入れ替えによるギャップというのは、ある時点での純粋な水準差なので、それだけ調整すればいいのではないかと思います。ただ、増減率も重要であるとの考え方から、増減率も正しく評価できるようにすると、うまくいかないので、三角修正で補正するようになったと思いますが、そこは正確な経緯等を記した文書がないので、想像でしか申し上げられないところでございます。
○手計補佐 それに関して少し補足なのですけれども、従前、昭和の時代において、当時総務省が実施していた事業所・企業統計調査(事業所統計調査)は3年を調査周期、民営事業所と官公営事業所を調査対象とする全数調査でした。そのため、過去の資料を見る限りでは、抽出替えごとに必ずベンチマークの更新もあって、基本的には三角修正で補正をしていたようです。平成に入ってからは民営事業所のみ調査対象とした事業所・企業統計調査が実施され、そのときはベンチマークの更新がない抽出替えとなり、三角修正方式や、先ほど申し上げたとおり、平行移動方式で補正したときもありました。
○津森委員 ありがとうございます。
○阿部座長 先ほど永濱委員が修正WDLT方式は不適当だというような内容をおっしゃっていたと思うのですが、多分それは過去に遡ってギャップを補正するのか、それとも将来にわたって補正するのかということを念頭においておっしゃっているのだろうと思います。ただ、どちらがいいのかは、立場によって変わる可能性があるのではないかと思います。
○永濱委員 もちろん、そうですね。
○阿部座長 だから、今後の金融政策等を考えたときに、現状を把握するためには、多分過去に遡ってギャップを解消して、これからの値につきましては、今のサンプルで出てきた値を真の値と考えるというふうにしたほうがいいかもしれないですけれども、研究者の立場だとどちらがいいかというのは、使い方によっても違うかもしれません。
 前回も同じような議論があり、ユーザー側の立場によって補正方法の良し悪しは違うのではないかということで、例えば毎勤はSNAでも利用されていて、補正の仕方によって、SNAに影響しないかどうかということを考えなくていいかといった内容を私からお話ししたと思います。
 本日は、先ほど冒頭でも御紹介いただきましたけれども、内閣府の小此木課長に御出席いただいておりますので、今の点も含めて、SNAの推計に毎月勤労統計調査の結果がどのように活用されているのかというのをお話しいただき、参考にさせていただきたいと思います。よろしくお願いします。
○小此木内閣府分配所得課長 ただいま御紹介いただきました内閣府経済社会総合研究所の国民経済計算部分配所得課長をしております小此木です。国民経済計算における雇用者報酬等の分配所得面の推計を担当しております。
 「国民経済計算における毎月勤労統計の利用について」ということでございますけれども、雇用者報酬以外にも、労働時間の推計やサービス産業の供給側推計、投入コストのデフレーター推計等いろいろな面で毎月勤労統計を利用させていただいております。本日は雇用者報酬での毎月勤労統計の利用方法について、簡単に説明させていただければと思っています。
 ご存じのとおり、国民経済計算(GDP統計)には、四半期別GDP速報(QE)と毎年年末に公表している国民経済計算確報がございます。
 四半期別GDP速報(QE)についてですが、例えば1-3月期の速報値であれば、5月に1次QE、6月に2次QEという日程で公表しており、QE公表のタイミングでは、十分な情報が入手できておりません。そういったタイミングで推定しているものでございますので、入手できる基礎統計等を使ってその増減率等を用いた延長推計をしているというのが、QEにおける雇用者報酬推計の考え方でございます。
 具体的に雇用者報酬のQE推計について、もう少し詳しく説明させていただきますと、雇用者報酬は、「賃金・俸給」と言われる部分、健康保険や年金等の保険料を事業主が負担している部分の「雇主の現実社会負担」という部分、あとは退職一時金等の「雇主の帰属社会負担」の大きく3つに分けられます。
 賃金・俸給につきましては、直近の年次推計で得られました値、具体的には1年ぐらい前の確報の1-3月の値というのが直近の数字になりますけれども、その値をベースに雇用者数の増減を労働力調査や毎月勤労統計を用いて把握し、また、雇用者1人当たりの賃金の増減を毎月勤労統計等から把握し、年次推計とのカバレッジの違いを調整して延長推計をしております。
 年次推計とのカバレッジの違いというのは、毎月勤労統計調査の対象となる労働者に農林水産業や公務で働く方、役員や日雇い等は含まれないため、そういった方々の賃金が入っていないことが挙げられます。そういった違いについて調整を行っているところでございます。
 例えば公務についてですが、人事院勧告等で給与法が改正されますと、その内容を反映するように延長推計するということでございます。
 雇主の現実社会負担につきましても、社会保険の保険料等事業主が負担する部分に関する各種統計があるのですが、QE推計のタイミングですと、これらの保険料データが入手できていません。保険料は給与額を基礎にして、賦課しているものがほとんどなので、こちらも同様に、直近の年次推計の保険料の金額をベースに、労働力調査や毎月勤労統計などを用いて給与額の増減を把握して、あとは、制度変更などによって保険料率を変更したような場合、そういった変化等を加味して延長推計をしているということでございます。
 雇主の帰属社会負担につきましては、これは大部分が退職一時金でございますが、毎月勤労統計では退職一時金額は把握していないのですけれども、QE推計のタイミングですと基礎統計がないため、こちらにつきましても、実は毎月勤労統計を使わせていただいておりまして、毎月勤労統計の離職率を用いて得られる離職者数の伸び率を利用して延長推計をしているということでございます。
 雇用者報酬のQE推計については、以上のようにいろいろな面で毎月勤労統計を使わせていただいているのですが、QE推計の観点でいいますと、延長推計をしているということから、賃金の増減率と水準のどちらを重要視するのか聞かれますと、増減率を重視しているということになるかと思います。
 一方、年次推計は、QE推計のような延長推計ではなく、考え方としては実額の積み上げということをやっております。
具体的に言いますと、賃金・俸給につきましては、賃金をさらに細かく分けていまして、現金給与、役員給与、議員歳費、現物給与等、ほかにもありますけれども、それぞれに区分して、それぞれ積み上げの計算をしております。このうち、現金給与につきましては、毎月勤労統計の調査対象でない農林水産業や公務の値は別に把握しておりますが、基本的には雇用者数と1人当たりの現金給与額を求めまして、それらを乗じて現金給与総額というようにしているということでございます。
 雇用者数につきましては、5年ごとの国勢調査を基本的なベースとし、中間年を労働力調査で補完するというようなことをしておりまして、1人当たり現金給与額につきましては、基本的に毎月勤労統計を使っております。
 雇主の社会負担等の年次推計につきましては、各制度の事業報告等で金額が分かりますので、基本的には毎勤の利用はしていないということでございます。
 このように年次推計でも毎勤を使わせていただいているところですけれども、利用しているデータというのは、QEとは違い、増減率というよりは実額そのものでありまして、実額をそれなりに重要視するということになります。
 ただし、毎月勤労統計でギャップ修正が行われたときは、実額をそのまま用いますと、ギャップ修正の前後で、雇用者報酬の伸び率に大きなずれが生じてしまいますので、そのときは毎月勤労統計で行われているギャップ修正の手法を参考に実額を補正して使っているというところでございます。
 簡単ではございますけれども、以上、SNAの雇用者報酬推計における毎勤の利用状況についての説明でございます。
○阿部座長 ありがとうございました。
 そうすると、SNAの推計については、水準、増減率どちらが大事かというわけではなく、どちらも大事だということになるでしょう。ギャップ修正した場合は、後で補正されるのでしょうか。
○小此木内閣府分配所得課長 確報の場合ですと、遡及は通常2年間、確報と確々報という形でやっていますので、そこの部分につきましてはある程度取り込みますけれども、それ以前について、ずっと過去まで遡るというのはなかなか難しいので、実は確々報より以前の水準と増減率で整合性が合うような形で補正した実額を使うということをさせていただいておりまして、基準改定のタイミングで過去に遡った一通りの改訂を行わせていただいているということでございます。
○阿部座長 わかりました。
○永濱委員 1つの案なのですけれども、2つの数値を出したらいいのではないでしょうか。同じような議論が消費者物価指数にもありまして、基準改定のときに急に過去の数字が変わってしまうので、問題だということになり、結局、元の数字と連鎖の数字の2つの数値を出すようになったわけです。
 消費者物価の対応を考えると、データを2つ出すという案もあるのではないかと思います。
○阿部座長 どうぞ。
○津森委員 内閣府のほうでは、例えば毎勤の計算方法がこうであるから、こういうような補正をすればいいといった工夫をしながらやられているように思ったのですが、いかがでしょうか。
○小此木内閣府分配所得課長 そうですね。実額等につきましては、ギャップ修正のようなものを自分たちで取り込みながらやっております。
○津森委員 そうだとすると、毎勤の計算方法等がはっきりすれば、それなりに計算していくことができるということでしょうか。
○小此木内閣府分配所得課長 それはそれで可能かと思います。そういう意味合いで言うと、余り複雑で難しい方法でないほうがいいということはあるかもしれません。
○久古谷課長 そういう意味からいうと、永濱委員から二通りの数字という話もありましたが、考えようによっては、一通りの数字及びここのギャップはこれぐらい発生して、そのギャップはこういう方法で調整しましたという、ギャップと調整方法の明示というやり方もあるのではないかという気もいたします。
○永濱委員 修正WDLT方式だと、間違いなく市場関係者から批判が出ると思います。今までの議論を踏まえると、2つ数値を出すことや誰でも調整ができるような公表をするなどいろいろな方法がありますので、そのようなやり方でお願いしたいと思います。
 ただ、市場関係者というのは政策決定やヘッドラインに飛びつきます。逆に言うと、ヘッドラインに載る数字は、市場関係者が重要視する数字ということになります。研究をされる方々はうまく調整できると思いますので、ヘッドラインに載る数値を重要視するようなやり方でしたら、一番市場関係者からの批判は出ないような気はします。
○久古谷課長 恐らく二通りの指標を公表すると、メインの分析はどちらでするのかという議論が必ず発生すると思います。
○永濱委員 それについては分析の方向性次第で選択すればいいと思います。
○廣松特任教授 今の議論と関連したことですが、現在、小売物価統計調査の審議をやっているわけですけれども、徐々に連鎖指数のほうに移りつつあります。一種の折衷案といいますか、妥協案として今まで出していた中間年バスケット方式を調査実施者側から取りやめたいというような話が出ているようです。今、まさにその審議中で、結論はどう出るかはわからないのですが、永濱委員がおっしゃったようなやり方ですと、研究者側からもいろいろ文句が出てくるでしょうけれども、研究者は、補正方法さえ公表されていれば、その補正方法に基づいて自分の研究目的に合わせた補正前のデータを復元できると思いますので、それができるようにしていただければいいのではないかと思います。
 同時に、先ほど小此木課長から、GDPの推計の中で毎勤がどのように使われているか、詳しい御説明をいただいたわけですけれども、私も、QEと確報とではかなり性格が違うように思います。お話のとおり、QEは四半期で動きを見るのがメインの目的で、確報、確々報では実額がメインであることは事実であり、QEのほうはかなり限られた期間内に公表しなければいけませんから、実額よりも増減率の精度を重要視されるというのは当然の考え方だと思います。
 あと、議論を複雑にするようで申し訳ないのですけれども、補正方法に関してはいろいろ御意見があっても、一つの方向性というのが見えつつあるのではないかと思うのですが、補正方法とサンプルを入れ替える話をどううまく組み合わせるかといいますか、サンプルの入れ替え方法を工夫すれば、補正方法をもう少し簡便化することができるのかどうか、その辺の議論も必要なのではないかという気がいたします。
○久古谷課長 サンプルの部分入れ替えにつきましては、御指摘のように非常に重要な問題だとは思うのですが、ただ、実際に実行しようと思うと、ショートタームでやるには少し荷が重い話になるだろうというのが正直な感想です。サンプル入れ替えに係る議論をすることや方向性を出すということは当然重要なことだと思っておりますけれども、ただ、短期の目標として設定するのか、中長期的な課題及び明確にすべきものは何かというような形で整理するのか、恐らく整理の仕方については考え方があるのではないかと思います。
○廣松特任教授 その点につきましては、周りの状況によって変わってくるかと思います。経済センサスでは平成28年に活動調査としては2回目をやることになったわけですが、同時に経済センサスの結果が中心ですけれども、統計局で事業所母集団データベースを構築し、それを年次で更新していくような計画がありまして、まだデータが蓄積されているわけではないのですが、もしそのようなデータが利用可能になれば、サンプルの取り方に関して考慮することが可能になるのではないかと思います。
○久古谷課長 そのようになれば、サンプルの取り方もそうですが、ベンチマークの更新につきましても、考慮する余地が出てくると思います。今までは民営事業所と官公営事業所を対象にした経済センサス実施時、つまり5年に1回と、比較的間が空くので、そのベンチマーク更新時のギャップも一定程度発生することになるのですけれども、データがもう少し足元で頻繁に参照できるようになれば、ベンチマークの更新についても、もう少し新しい考え方というのが可能になるのかもしれません。
○阿部座長 ほかにはいかがでしょうか。どうぞ。
○土屋委員 必ずしも修正WDLT方式を強く支持するというわけではないのですが、過去に遡って増減率を改訂する必要がないというのは、非常に大きなメリットとしてあると思います。現在、生じているギャップを将来にわたって解消していくというよりは、将来生じると考えられるギャップを先取りして解消している方法と私は捉えております。つまり、これ以外の方法ですと、サンプル入れ替えからしばらく経過し、既にある程度、実態とずれが生じている可能性があるものをそのまま公表して、抽出替えの時点で過去に遡って解消することになると思うのですが、修正WDLT方式は、今、生じていると考えられるギャップについては将来の時点で過去に遡って補正する必要はなく、今の時点でギャップを先取って解消させている方法なのではないかと私は理解しております。そのため、過去に戻って解消する必要はないかと思います。
 ただ、必ずしも増減率だけではなく、水準も同じぐらい重要だということになりますと、水準という点では修正WDLT方式は非常に不利といいますか、ギャップを残したままの方法ですので、その意味では必ずしも修正WDLT方式を強く推奨するというものではありませんけれども、一概に否定し切ることもできないのではないかと思います。
○永濱委員 今のお話について、値を2つ出すというのであれば、修正WDLT方式でもいいと思いますが、修正WDLT方式だけで出すのは絶対に良くないと思います。
○阿部座長 例えば平行移動方式やほかの補正方法でも同じだと思いますが、ギャップ修正した結果、過去の増減率が下がっていたということが後々分かった場合、それはそれで問題になるのではないでしょうか。もしかしたら過去の政策は間違っていたという評価をするということになるのではないでしょうか。
○永濱委員 可能性はあると思います。
○阿部座長 そういう意味では、どちらにもメリットとデメリットがあるということになるかと思います。
○永濱委員 過去のトレンドがその後も続くかというのは保証できないと思います。それを考えると、どうなのでしょうか。
 あと、先ほど水準も重要というお話があったのですけれども、金額のデータは水準だと思いますが、これでは駄目なのですか。
○久古谷課長 実額で計算した結果と指数で計算した結果の増減の方向が合わないという結果になります。
○永濱委員 今でも合っていません。
○久古谷課長 今は合っていないので、恐らくSNAでは、そういった実額で計算した増減率が合うように、実額自体も補正されて、計算されているということだろうと思います。
○永濱委員 SNAではなく、毎勤の場合についてはどうですか。
○久古谷課長 毎勤の場合は、増減率は実額からは計算せずに、指数から計算してくださいという言い方をしています。
○手計補佐 少し補足になりますけれども、幾つかの法律で毎月勤労統計調査の結果を使用しており、例えば雇用保険の日額の変更等において、毎勤の実額を用いています。そういった制度の内容では実額を使って実際に変更をしているという事実はあります。
○久古谷課長 特に雇用保険や労災の給付の参照データになっていますので、その額が変わると、給付額が過去の時点で実はもう少し払うはずだったということになり、追加で給付することや払い過ぎていたから返還せよというような事務的な作業も発生いたします。そういう混乱も回避するため、毎勤の場合は、実額は固定し、増減率は指数で調整というやり方をしております。そのため、雇用保険や労災で計算している増減率は、実額に基づく増減率を計算しておりまして、毎勤の増減率とは違う増減率を用いているということになっております。
○永濱委員 先ほどの補足なのですけれども、過去のデータが変わったため、当時の政策判断が間違いだったというような議論が出るのではないかというお話があったのですが、それを言うのであれば、GDPではQEと確報で全く変わりますが、変わったことに対して、政策判断が間違っていたというような議論は全くないわけです。その最たる例で言いますと、十数年前にGDP成長率が年率換算でプラス6.1%ぐらいになったときがあったかと思いますが、今、遡って見ると、確かマイナス成長になっていたと記憶しています。しかし、過去のデータでこれほどまでに変わったとしても、文句は出ていないのではないかと思います。
○久古谷課長 何年も前だといいのですが、恐らく今の毎勤のギャップ修正では、1月にギャップ修正を行ったときに、前の月の12月の増減率のプラスマイナスが逆転することも考えられ、足元で実施している政策判断のベースが違っていたのではないかという議論も発生する可能性があるかと思います。
○永濱委員 そうなると、直近の増減率は変えずに、サンプル期間の前のときにまた調整する、参考資料1の10ページの補正方法にすれば意外と一番文句が出ないのかもしれません。もしくは先ほど申し上げたとおり、データを2つ出すというのがいいのかと思います。
○阿部座長 文句は出ないというのは、考えにくく、絶対に文句は出ると思います。政策判断等に関わらなくても、研究している人たちからは、何故数字がこんなに変わっているのかという話は出てくると思います。あるいは今、やっていた研究が間違っていたということを言われる可能性があります。
○永濱委員 そういうことを考えれば、やはり2つ数値を出す方法がいいのではないでしょうか。
○阿部座長 それはあり得るかと思います。多分原系列を出すだけでいいとは思いますが、後で、こういう計算をしたらどうですかということを公表することになるのでしょうか。
 でも、公表値は一つしかないので、それをどうするのかというのは悩ましい問題です。
○永濱委員 はい。その方法が多分一番文句が出ないような気はします。そもそも今回のこの研究が立ち上がったのもそういう経緯と記憶しております。
○廣松特任教授 最近は、公表する系列は1つなのですが、公表系列に似たような系列を参考系列ということで公表している統計もあります。
○阿部座長 いずれにしても悩ましいわけですが、この点でほかに何かございますか。
 もしなければ、これまで4回にわたって検討会をやってきて、一応論点に出てきたものは議論させていただいたように思っています。まだ不十分なところはあるかもしれませんが、ただ、検討会もいつか閉めるときがやってきますので、とりあえず次回、中間報告案ということで、これまでの議論をまとめて、もう一度皆さんと議論して、今後の方向性、あるいは方向性まで行かなくても、ここで議論してきたこと、検討してきたことをある程度まとめて整理していきたいと思っています。
 次回どういう資料を作成するか、その案をどうするかというのは、今日の議論も踏まえまして、私と事務局の間で調整させていただいて、次回に中間報告案といったものを出したいと思っております。
 この案については私と事務局で調整しますが、よろしいでしょうか。
 (「異議なし」と声あり)
○阿部座長 また次回議論いただいて、まとめの方向に行ければと思っておりますので、よろしくお願いします。
 それでは、中間報告案は事務局と調整の上、次回検討会で提示したいと思います。
 少々早いですが、ほかに特に皆さんから何もなければ、このあたりで終わりたいと思います。
 ここから先は事務局にお返しします。
○久古谷課長 あとは、中間報告案と今日新しく提示した案について具体的に計算したらどうかというお話もあったので、どれぐらいの資料が準備できるか分かりませんが、何系列かについては計算してみたいと思います。
○阿部座長 では、よろしくお願いします。
○手計補佐 それでは、皆様、長時間にわたり御議論いただきまして、ありがとうございました。これをもちまして第4回「毎月勤労統計の改善に関する検討会」を閉会いたします。
 次回第5回の検討会の開催につきましては、8月7日金曜日の14時からを予定しています。正式な連絡につきましては事務局より後日行うこととしていますが、委員の皆様方におかれましては、日程確保等に御協力をお願いいたします。
 また、議事事項については、本日委員の皆様からいただいた御意見等を踏まえて、また先ほど阿部座長より御提案のありました中間報告案を含め、座長と相談しながら決定させていただきたいと思います。
 第2回の検討会の議事録については近日中、できれば本日中に御確認の依頼をさせていただきたいと思っていますので、あわせてよろしくお願いします。その後に第3回の議事録の確認もお願いすることになると思いますけれども、よろしくお願いします。
それでは、少し早いですが、今日はお忙しい中、ありがとうございました。

 

(了)
  <照会先>
政策統括官付参事官付雇用・賃金福祉統計室
企画調整係
電話 03-5253-1111(7609,7610)

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