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2014年8月20日 第23回ILO懇談会議事要旨

○議事

1.日時:平成26年8月20日(水) 15:30~17:30

 

2.場所:経済産業省別館108各省庁共用会議室

 

3.出席者:(敬称略)

(1)労働者側

  日本労働組合総連合会国際顧問              桜田 高明
    日本労働組合総連合会総合労働局長          新谷 信幸
    日本労働組合総連合会総合国際局長          吉田 昌哉

 

(2)使用者側

  日本経済団体連合会国際協力本部副本部長       松井 博志 

  日本経済団体連合会国際協力本部             間利子 晃一 

 

(3)政府側

  厚生労働省大臣官房総括審議官(国際担当)      伊澤 章
  厚生労働省大臣官房国際課長              井内 雅明

 

4.議題

○報告案件

議題1 第103回ILO総会について

1)政府からの報告

) 意見交換

 

○協議案件

議題2 2014年 年次報告について

 1)政府からの説明

    2)意見交換

 

5.議事要旨

議題1:第103回ILO総会について 

伊澤総括審議官(国際担当)からの挨拶、井内国際課長からの出席者紹介に引き続き、政府側より資料1に基づき第103回ILO総会の概要報告がなされた。

 

○ 基準適用委員会について

(労働者側)

 慌ただしかった面もあったが有意義な総会であった。ただ、基準適用委員会での個別審査が事実上頓挫したことは深刻な問題。来年も同じことが繰り返されないよう、本年11月の理事会では政労使三者で健全化に向け努力したい。

 

(使用者側)

 健全化は必要だと認識しているが、個別審査において深刻なケースとされる6件の個別事案以外の19件の結論が採択されなかった事実について、使用者側は労働者側と異なる見方をしている。労使が合意できなかったのは19件のうちスト権に関わる3件であり、全ての個別事案が合意できないわけではないという認識である。

 1930年の強制労働条約(第29号)の2014年の議定書は多くの国が受け入れられる内容になった。基本条約の1つである第29号条約に付随する議定書について、政府が毎年未批准である理由を説明しなければならないのではないか。

 

議題2:2014年 年次報告について

政府側から資料2-1から2-8、参考資料に基づき、第81号条約、第87号条約、第98号条約、第144号条約、第159条約及び第181号条約について説明がなされた後、意見交換が行われた。

 

○第81号条約

(労働者側)

 福島第一原子力発電所の廃炉作業に取り組む労働者の予防措置に関し、廃炉作業は数十年間要する一方、被曝線量は蓄積されるため、必要な技術を有する労働者の継続的な確保が重要である。また、事業主に限らず政府も労働者の確保体制を敷くとともに、労働者のメンタルヘルスに関する十分な対策が必要である。

 労働基準監督官の削減の問題については、国家公務員の定数削減の状況下において、監督官も例外なく削減されていることを危惧する。労働者の健康と命を守る監督官の十分な数の確保をお願いしたい。

 労働災害については、労働安全衛生法が改正され、第12次労働災害防止計画が動いているものの、労災による死亡者数が増加しているところであり、監督官の数の確保をお願いしたい。

 

(使用者側)

 福島原発で法令以上の取組を行い、退職した労働者へのフォローを行っている点も御理解いただきたい。本年度の基準適用委員会で本件が取り上げられる可能性があったが、仮に取り上げられた場合、福島県や近隣地域への風評被害につながるおそれがあった。

 労働基準監督官の採用数については、世界的に比較すると少ないかもしれないが、日本では相談センターや電話相談など、それを補う取組を行っている。監督官の数のみ増加させれば解決するものではない。

 

 (政府側)

 福島第一原子力発電所の労働者確保については、炉の設置者である東電が主体となって行っているところであるが、政府としても、廃炉・汚染水対策現地事務所が現地の関係企業にヒアリングを行い、労働環境改善に向けた作業員の要望を把握し、東電による労働環境の改善策への反映につなげる等の取組を行っている。

 労働基準監督官の人員確保については、これまでも必要な監督体制の確保に努めるとともに、創意工夫により監督指導を効率的かつ効果的に行っている。今後とも、現場の状況を見極め、厳しい行財政事情を踏まえつつも、必要な監督体制の確保に努めていきたい。

 労働基準監督官の増員よりも適正な配置が重要ではないかという御指摘については、各労働基準監督署における管内事情を踏まえ、労働基準監督官を適切に配置しており、今後とも、労働基準監督官の適切な配置に努めてまいりたい。

 

○第87・98号条約

 (労働者側)

 消防職員と刑事施設職員の団結権付与について、政府報告によれば、第87号条約と第98号条約は、ILOの1954年(第12次)と1961年(第54次)の結社の自由委員会の報告に基づき批准されたと説明している。しかし、これらの報告には誤解などの問題があり、これに基づき批准されたとすれば問題である。精査を求めたい。

 公務員の争議権については、専門家委員会も指摘しているように、「国家の運営に従事する公務員以外の公務員」については、これを認める措置を早急に検討していくべき。

 公務員制度改革については、4月の国家公務員法等改正法案の審議の際の国会の附帯決議に基づき、また、6月の結社の自由委員会第372次報告の第2177号案件に対して出された9回目の勧告に沿って、遅滞なく新しい法案を提出すべきである。

 地方公務員の給与削減については、結社の自由委員会も政府が地方自治体職員の給与削減を強制できないとしているところであるものの、実態上、地方交付税は地方自治体職員の給与削減を条件に交付されている状況にあることを注意喚起したい。

 

(使用者側)

 消防職員と刑事施設職員の団結権付与に関しては、政府のこれまでの説明が正しいという前提で使用者側として支持してきている。専門家委員会や結社の自由委員会から指摘があれば繰り返し日本の状況を説明するべきである。

 公務員制度改革については、専門家委員会や結社の自由委員会から度々指摘されていると認識している。自律的労使関係制度は国民の理解を得た上で対応するという日本政府の基本姿勢を貫いていただきたい。

 技能実習制度については、適正に活動を行う受入団体にはインセンティブを与えることを提案する。

 

 (政府側)

 消防職員と刑事施設職員の団結権付与について。消防職員の団結権を含む地方公務員の労働基本権のあり方については、国家公務員制度改革基本法附則第2条において「国家公務員の労使関係制度に係る措置に併せ、これと整合性をもって、検討する」こととされている。国家公務員の自律的労使関係については、担当の稲田大臣からも「これまでの経緯を踏まえれば、多岐にわたる課題があり、いまだ国民の理解が得られるような段階にはない。引き続き慎重に検討する必要がある」と答弁されているところである。また、民主党政権下の平成241115日に消防職員の団結権の回復を含む法律案が国会に提出されたところであるが、翌16日には衆議院の解散により廃案となったところ。その際には、全国市長会と全国町村会を含む地方六団体などから、「消防職員の団結権等の付与は指揮命令系統の混乱をもたらし消防活動に支障をきたす」、「議論を尽くすべきとの意見にかかわらず、法案の閣議決定を行ったことは遺憾である」といった反対の意見が表明されていたところ。このようなことから、消防職員の団結権を含む地方公務員の労働基本権のあり方については、今後とも国家公務員についての動向を踏まえ、関係者の御意見をよく伺いながら、対応する必要があると考えている。

なお、1954年と1961年の報告の御指摘は、もう少し確認させていただきたい。

 公務員制度改革については、政権交代以降も、自律的労使関係制度をはじめ、国家公務員を巡る各種の論点について、労働組合(職員団体)などの関係者と意見交換を重ねてきたところである。自律的労使関係制度については、多岐にわたる課題があることから、本年4月に成立した改正国家公務員法では盛り込まれなかったところであり、改正法により新たに創設されることとなった内閣人事局において、引き続き慎重に検討していく必要があると考えている。

 

 (労働者側)

 技能実習制度に関し、米国務省の人身取引報告書に、日本の技能実習制度は奴隷契約だと毎年のように記載されているが、これを放置したまま毎年同報告書に記載されると、大きな問題になる。

 

 (使用者側)

 技能実習制度は第98号条約の問題として挙げられているが、第29号条約の問題でもあると認識している。国内のエージェントの問題か、送り出し国機関の問題か、政府の対応の問題か。いずれにしても、適正な運営はどのようにあるべきか議論を深める必要がある。

 

 (政府側)

 米国務省の人身取引報告書は我々も認識しているし、技能実習制度がILO第29号条約とも関連していることも認識している。その中で、政府としても技能実習制度の見直しも適切に行うよう政府も努力していきたい。

 

○第144号条約

 (労働者側)

 ILO懇談会の運営に関し、審議する条約の選定について労働側の意見を反映させること、未批准条約を批准するために改正すべき国内法や慣行の公表、あわせて、当懇談会の公開や開催頻度の増加を引き続き求める。情報公開は時代の趨勢であり、懇談会の公開は議論の質の向上にもつながる。

 

 (政府側)

 ILO懇談会の運営は、平成13年の政労使申合せに基づき行われているところであるが、懇談会をよりよいものにするために引き続き御相談させていただきたい。

 開催頻度については、会合を意義あるものとするには十分な準備が必要であるとともに、その間に総会や理事会もあり、年2回が一番適切ではないか。

 

 (労働者側)

 ILO懇談会の政労使申合せの見直しに向けた具体的な作業を行えるようにしていただきたい。

 

 (使用者側)

 年次報告は正文の英文でILOに提出されるため、英文も暫定的なもので良いので適切に労使団体に提供いただきたい。

 

 (労働者側)

 使用者側と同意見。ILO事務局に対してより丁寧にする観点からは、法案や会議体等の名称の英訳は三者で同一の用語を用いるべきであり、英文を事前に提供いただきたい。

 

 (政府側)

 日本語がなかなか確定しないため、英文が追いつかない側面もあるが、できる限り早期にお示ししたい。

 

○第159号条約

 (労働者側)

 2013年は障害者雇用や障害者差別の分野で法改正がなされたが、具体的な方針や取組は労使並びに障害者の意見を十分踏まえて検討すべきである。

 

 (政府側)

 御指摘のとおり、障害を理由とする差別禁止、あるいは合理的配慮の指針策定にあたっては、今後、公労使障の四者で構成される労政審部会において十分な検討を行いたい。

 

○第181号条約

 (労働者側)

 先の国会で審議未了のため廃案になった労働者派遣法の改正法案は、労政審でとりまとめられた報告書がベースになっているが、世界標準である派遣可能期間の制限や均等待遇原則が盛り込まれていない点に反対である。労働者保護に資する抜本的な修正がなされるべきである。

 

 (使用者側)

 労働者側と全く逆の立場。今回の改正法案は登録型派遣あるいは製造業派遣の課題の解決に資するものであり、成立に向けた努力を期待したい。

 

 (政府側)

 派遣期間の制限については、今回の見直し案では、有期雇用の派遣労働については、直接雇用の労働者に比べ雇用の安定やキャリア形成が図られにくい面があること等、雇用と使用が分離した形態であることによる弊害があるとの考え方の下に、常用代替防止という考え方を基本的に維持することとしている。そのため、派遣労働は原則として臨時的・一時的な働き方と位置付け、派遣労働への固定化を防ぐ、派遣先の常用労働者を代替しないよう、派遣労働の利用は原則として臨時的・一時的なものに限る、という2つの観点から、雇用の安定やキャリア形成が図られやすい等一定の条件を満たすものを除いて、有期雇用の派遣労働を新たな期間制限の対象とすることとしている。この考え方を踏まえ、今回の見直し案では、労働者が派遣労働という働き方に固定されることを防ぐための個人単位の期間制限と、派遣労働者が派遣先の常用労働者を代替することを防止するための派遣先の事業所単位の期間制限の2つの期間制限を設けることにより、派遣労働への固定化の防止と常用代替防止を図ることとしている。

 均等待遇原則については、我が国の賃金制度は、職務給は主流ではなく、ある程度長期的な雇用・人材育成を想定して労働者の待遇を決定していることが多い。このため、職務の内容が同じ労働者は原則として待遇を同じにするという意味においての均等待遇は普及していないと承知している。このような現状では、正社員との均等待遇を求めるのではなく、個々の態様に着目して均衡待遇を推進していくことが、処遇改善に有効と考える。労働者派遣の場合、第1に、派遣先を異動する場合に、派遣先ごとに待遇が大きく変わる可能性があり得ること、第2に、派遣先の労働者との均衡を図ろうとすると、同じ派遣元で雇用される派遣労働者同士や、派遣元の内勤の社員との不均衡が生じ得ること、第3に、派遣先は雇用主ではないため、派遣労働者の労働条件を決定する権限がないこと等の特性があることから、今回の見直し案により、派遣先にも協力を求めることで一層の均衡待遇の確保を図ることとしている。


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