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2015年6月26日 第2回毎月勤労統計の改善に関する検討会 議事録

大臣官房統計情報部雇用・賃金福祉統計課

○日時

平成27年6月26日(金)10:00~12:00


○場所

中央労働委員会5階503会議室
(東京都港区芝公園1-5-32 労働委員会会館)


○出席者

委員(五十音順、敬称略、◎:座長)

◎阿部 正浩
  小巻 泰之
  土屋 隆裕
  津森 康之介
  樋田 勉
  永濱 利廣

構成員以外の関係者

  廣松 毅

事務局

  姉崎統計情報部長
  久古谷雇用・賃金福祉統計課長
  手計雇用・賃金福祉統計課長補佐

○議事

○手計補佐 それでは、皆様おそろいですので、定刻より若干早いですけれども、ただいまから第2回「毎月勤労統計の改善に関する検討会」を開会いたします。

 委員の皆様方におかれましては、お忙しい中、御出席いただきまして誠にありがとうございます。

 はじめに、申し訳ありませんが、企画課長の三富は所用により本日は欠席となります。

 委員の皆様方におかれましては、全員御出席ということであります。

 また、構成員以外の協力者として、情報セキュリティ大学院情報セキュリティ研究科の特任教授の廣松先生をお招きしています。どうぞよろしくお願いいたします。

 それでは、早速でございますが、以後の進行につきましては阿部座長にお願いいたします。

○阿部座長 おはようございます。本日もお忙しい中、お集まりいただきましてありがとうございます。

 早速ですが、議事を進めていきたいと思います。

 まず、議題1「第1回検討会における指摘事項等について」、事務局より説明をお願いしたいと思います。

○久古谷課長 第1回の検討会で委員の方から幾つか御質問、あるいは御指摘がありましたので、それらについてお答えしたいと思います。

 1点目は、ギャップ修正がSNAに反映されているかどうかという御質問がありまして、内閣府のほうに確認しましたところ、ギャップ修正があれば反映させているという回答でした。ただ、作業自体は非公表なので詳細は確認できておりません。

 2点目は、調査対象の事業所の産業や規模の属性変更があった場合の扱いはどうかという御指摘については席上配布資料3に簡単に取りまとめております。

 まず、産業分類の変更につきましては、新しい産業の区分で集計することにしております。

 規模の変更につきましては、資料にありますように、30人以上の第一種事業所については、基本的には規模の概念として生の人数の数字を使っているわけではなく、3099人、100499人、500人以上という区分のどこに属するかということで規模別集計には反映されているのですけれども、これらのものの1段階の規模変更については、基本的には変更は反映させずに前の区分で集計したままにしています。

 基本的には、境界線上の場合はちょっとしたことで人数が行ったり来たりして変わることもありますので、そこは安定的な集計ができるようにということで、1段階の規模変更については反映させないけれども、2段階の規模変更については新しい規模区分で集計しております。

 ただし、第一種事業所につきましては、30人以上ということで第二種事業所とは抽出方法等が異なりますので、基本的には29人以下になるような状態が3カ月以上続いた場合は、第一種事業所の対象外ということで調査対象から除外しております。

 第二種事業所につきましては、基本的には人数変更が生じても、原則5~29人規模ということで扱っておりますが、こちらについても規模縮小、4人以下になった状態が3カ月以上続いた場合は、調査対象から除外することにしております。基本的にはこういう扱いでやっているところでございます。

 3点目ということで、今回、平成27年1月のギャップ修正のときに、パートタイム労働者が多くなった影響で一般労働者の賃金が下方改訂されたのではないかというような御質問がありました。

 それにつきましては、資料1「一般労働者の賃金の推計方法について」でまとめているところでございます。

 (第1回検討会における指摘内容)ということで、一般労働者の支払賃金については、毎勤の調査票上では全体の支払賃金からパートタイム労働者の支払賃金を引いた形で定義されているので、パートタイム労働者が増えると一般労働者の支払賃金が低くなるのではないかというような御指摘だったと認識しております。

 概要については、資料1の指摘内容の下の(事実関係)に書いてございますが、御指摘のように、今回の抽出替えでは労働者数に対する改訂自体は行っておりませんが、新旧サンプルの集計方法ということで計算式等を確認すると、新集計での一般労働者の減少というのは新サンプルでの集計結果に反映されています。

 ただ、そうは言っても、一般労働者の産業別や規模別の分布がギャップ修正の前後では変わってくるので、加重平均ということで積み上げ区分には一定の影響があることは考えられますが、それについて要因分解を行ってみたところ、影響はあるにはあるのだけれども、それはサンプル差に比べればかなり小さいものであって、御指摘のような大きな影響があったとは認められないということでございます。

 具体的には1ページから3ページまで計算式等を交えて書いているのですけれども、1ページの計算式につきましては、Fがフルタイム、一般労働者を表して、Pがパートタイム労働者ということで、一般労働者の1人当たりの平均賃金というのは、一般労働者に対する賃金支払い総額を一般労働者の人数で割って計算しております。

 分子のほうの全体の支払い総額からパートタイム労働者の支払い総額を引いたものに関しましては、仮にパートタイム労働者の部分が大きくなったとすれば、当然、分子は小さくなります。ただ、それは一般労働者の人数についても少なくなっておりますので、分母のほうも小さくなっているということで、一般労働者の人数の変化そのものは平均賃金の算出に対しては中立的となっております。したがって、一般労働者の平均賃金が下がったのは、サンプルにおける平均賃金が下がっていることを反映していると考えられます。

 1ページ目から2ページ目にかけては「2.積み上げ集計区分(調査産業計、製造業計等)の集計について」ということで、先ほどの話は単位集計区分での話なのですが、積み上げ集計区分につきましては、基本的にはベンチマークで使っている労働者数で復元して全体を集計しているということになるのですけれども、これにつきましても、全体の構成比の変化というのは、当然、積み上げ区分に対しては影響を与えます。

 3ページ目のほうで要因分解を行っておりますが、具体的には調査産業計で新サンプルと旧サンプルの一般労働者の賃金について、3,077円の下方改訂となっております。

 これを産業ごとの賃金の変動と、産業ごとの労働者の新旧での変動要因に分けて要因分解したところ、産業ごとの平均賃金の変動の部分が2,923円ということで、労働者構成比の変動分の182円に比べれば15倍近い値になっておりますので、基本的には変動は産業ごとで一般労働者の賃金が主に下方修正されたことが要因になっております。

 個別の産業について見ますと、「(参考2)」の表の一番下のその他のサービス業については、産業単独で見れば上方修正されているのですが、この金額自体が調査産業計の平均賃金に比べると低い金額なので、ここの産業の労働者が多くなったということは、調査産業計に対しては引き下げ効果を持つということで、その引き下げ効果が255円となっております。産業別にみると、労働者構成の変化のほうが全体に対し大きく寄与している産業もありますが、全体的に見れば、個別の産業における賃金の変動のほうが労働者構成の変化よりは大きな値になっているという結果になっております。

 事務局からの説明は以上でございます。

○阿部座長 ありがとうございました。

 では、ただいま説明のありました内容について、御質問等あればお願いしたいと思いますが、いかがでしょうか。

 先ほどの席上配付資料3での規模の変更の話なのですけれども、第二種事業所については30人以上になると調査対象から除外するのですか。

○久古谷課長 除外しません。

○阿部座長 その場合はどうするのですか。

○久古谷課長 30人あるいは40人になっても、規模区分5~29人の調査票の平均賃金や平均労働時間の算出に使っています。

 労働者数自体については、ベンチマークによるリンク・リラティブですから、そこに対する労働者数の変動の影響というのは全体でみるとかなり小さくなっております。もちろん、筋からいうと大きくなったので、大きい区分で計算すべきではないかというような話は当然あるとは思うのですけれども、基本的に毎勤の集計の仕組みだと、単位集計区分ごとは同一の抽出率で集められたいわば均質な標本が集まっているということが前提で調査全体を設計しておりますので、ある意味、規模を変更するというのは、本来は異なる抽出率で引っ張られたものが別な抽出率の扱いになるということで、そういう意味では規模変更は余り望ましくないと思っており、1段階程度の規模変更であれば前の区分で集計するというような方式で考えているところでございます。

○阿部座長 わかりました。

○永濱委員 よろしいでしょうか。

○阿部座長 どうぞ。

○永濱委員 そもそも論なのですけれども、経済統計で法人企業統計や短観というのは、企業規模において大企業、中堅、中小と資本金で分けており、短観については、最初、毎勤と同じように人数で分けていたのが資本金に変わったことは御承知のとおりかと思います。しかし、毎勤は人数で分けています。それはどういう違いでこのようにしているのですか。

○久古谷課長 まず、単純な話で言えば、規模に関する情報として人数しか集めていないので、それしか集計材料がありません。そのため、これを使っているというのが一番直接的な理由ですけれども、なぜ資本金規模ではないかという話になると、毎勤自体は賃金、労働時間、雇用の変動を明らかにするというのが一番の目的ですので、ベースになるのは人数がどれだけ変化したかというのをつかみたいためです。

 基本的に労働時間や賃金については、労働者数の加重平均という形で出していますので、統計の推計方法ということでも、規模別で区切って集計するのが一番シンプルだということでございます。

○土屋委員 確認なのですが、規模の移動があったときに、そもそも抽出率が違うわけですけれども、移動した先でもとの抽出率を事業者が持ったまま移動しているのか、先の抽出率に合わせて変えてしまうのか、どちらなのでしょうか。

○久古谷課長 結果的には単位集計区分内では生(なま)の調査票情報を足し上げておりますので、そういう意味では全部が同じ抽出率という仮定で計算されて、具体的にどういう抽出率だったかというのは、そこの区分のベンチマークの労働者数で事後的に全体に対する抽出率的なものが計算されるという仕組みになっております。そのため、基本的には移動先の抽出率で集計されているという解釈になろうかと思います。

○土屋委員 ありがとうございます。

 大規模なところから2段階下がったときに、一般にどうなるかわからないのですが、給料も高いままで下がっていくと、そこの部分は、小規模になればそれだけ拡大されるということもあるかと思いますが、いかがでしょうか。

○久古谷課長 小規模といいますか、それは調査票情報をそのまま足し込みますので、逆に言うと、それだけたくさんいたということにはなるのですが、ただ、2段階の変更というのは、ないわけではないのですけれども、そんなにたくさん出る話ではないので、御質問のような御懸念は当然あると思いますが、実務上はそんなに懸念するほどの影響は出ないのではないかと思っております。

○土屋委員 ありがとうございます。

○廣松特任教授 よろしいですか。

○阿部座長 どうぞ。

○廣松特任教授 実際にこの基準に基づいて変更しているのは、どれぐらいの割合ですか。

○久古谷課長 月に数件とか、その程度です。

○廣松特任教授 その程度ですか。

○久古谷課長 正確な値ではないのですけれども、何十件というレベルではありません。

○廣松特任教授 そうですか。分かりました。

○阿部座長 よろしいですか。ほかにいかがですか。

 では、もしなければ、前回の検討会で御要望がありました「毎月勤労統計調査第二種事業所における所定内給与等の断層の要因解明及び解消手法に関する調査研究」について、樋田委員より説明をお願いしたいと思いますが、よろしいでしょうか。

○樋田委員 獨協大学の樋田と申します。よろしくお願いいたします。

 今回御説明させていただくものは、「毎月勤労統計調査第二種事業所における所定内給与等の断層の要因解明及び解消手法に関する調査研究」という、平成24年の厚生労働統計協会の委託研究として行った研究の内容です。

 研究の際には、ここにいらっしゃる小巻先生や阿部先生ほか、厚生労働省の多くの職員の方々の御協力をいただきました。ありがとうございました。

 簡単に研究の結果について、お話をさせていただきたいと思います。

 お配りいただいている席上配布資料1の1ページ目をご覧ください。

 こちらの委託研究では、主に3点の内容について研究を行いました。

 この研究では、テーマを3つ定めました。1つ目が、毎月勤労統計調査の所定内給与の推計において、現行の推定方法を維持したまま推定精度を高められないか、ということです。

 例えば、断層が発生している可能性があるということで、サンプリングの方法を変えてしまうと、その変更に多大なコストがかかります。そこで、まずは現行の方法を維持しながらも、推定の精度を高めることが可能ではないかということについて検討しました。そちらが「1.3.1 毎月勤労統計調査の所定内給与等の推定におけるsampling on two occasionsの適用可能性の検討」の内容です。

 2つ目に、そもそも「断層」と言われているものがどのような要因によって発生しているのかということを検討いたしました。それが「1.3.2 毎月勤労統計調査第二種事業所の所定内給与の前月比における標本替えの寄与についての検討」というところです。

 次に、「1.3.3 毎月勤労統計調査第二種事業所調査における事業所の脱落状況の検討」では、事業所の脱落というのがどういう状況になっているのかということを検討いたしました。これが3つ目の内容です。

 最後に「1.3.4 分析のまとめ:『断層』解消の方法について」で3つのテーマの分析結果をまとめて、今回どのようなことが言えるのかということを簡単にまとめています。

 最初に、1.3.1のところなのですけれども、こちらでは、標本替えという仕組みを利用して推定精度を高めることができないか検討しました。二相抽出または二重抽出と言われている方法の応用として「sampling on two occasions」という方法がありまして、その手法を標本替えという時期に適用したら、推定精度の向上につながるのかどうか検討しました。

 この標本替えのときには、一部の標本は標本から外されて新しく一部の標本が入ってくるので、今期の情報はないのだけれども、前期の情報がある標本がデータとして存在します。もしも今期の情報があったとしたらどのような値が得られるかを、前期と今期の両方の情報があるデータと回帰モデルを使って予測して、今期の推定精度を高めるということを考えています。

 アメリカのCurrent Employment Statisticsではweighted difference-link taperという方法を利用していますが、その方法を使うことによって精度が向上するというような理論的な根拠は、私が探した限りでは特にありません。けれども、このsampling on two occasionsという方法は二相抽出という方法に基づいているので、適切に利用できれば精度が向上するという理論的な根拠があります。

 今回、この方法を試したところ、標本替えが行われる時期においては推定精度の向上が図れそうだという結果が得られました。

 推定精度については、単純な標本平均で行うよりは、かなり大きな推定の精度の向上が見込まれるということがわかりました。

1.3.2は、標本替えが断層の原因だということが「基本計画」で言われているわけなのですけれども、本当にそうなのか検討しています。内閣府の方や阿部先生を初め、有識者の方にヒアリングさせていただいて、まずは状況を確認しました。

 ヒアリングでは季節性は余り考慮していなかったということだったのですが、データを見ますと、強い季節性があることが推測されました。そこで、所定内給与の前月比の寄与度分解を行いまして、標本替えの寄与による部分と季節性やその他の要因による部分に分類しました。

 それを分解した結果が「図表等資料の抜粋」の3枚目の裏面でページ番号が38とついているページになります。こちらが前月比を要因分解した結果になっていまして、その中で「Replacement」と書いてあるところが、標本替えに対応する前月比の変化分です。

 カラーでないため、少し見づらいのですけれども、標本替えの寄与が前月比に占める割合というのは、季節性を考慮しても、考慮しなくても、かなり小さいことがこの分解から分かりました。

 最後のページの表は、標本替えが行われる月について要因分解の結果をまとめたものになっています。

 上の表は季節性の寄与をまとめたものです。前月比の変化が上の表の3列目にあります。例えば2007年1月の場合、前月比が-2.234という数字になっておりますが、例えば月末締めというところを見ていただくと、季節性の寄与というのが-2.21であるというような意味です。

 下の表は標本替えの寄与の大きさです。月末締めと書いてあるところを見ますと、季節性の寄与というのは-2.2なのですが、標本替えの寄与というのは-0.227ということでかなり小さくなるということです。

 この上の表と下の表を比べていただくと、季節性の寄与が前月比にかなり大きな影響を与えていて、標本替えの寄与というのは相対的には小さいというようなことがわかりました。

 ここでいう15日締めや20日締めなどというのは、事業所の給与締め日になります。ヒアリングを行ってみると事業所によって給与の締め日が違うため、集計に上がってくるデータが何月のものなのかというのが少しずれてくることがあります。そういったことを考慮しまして、15日締め、20日締め、25日締め、月末締めというような、締め日の違いにより休日数に差があります。そこで、その休日の差を季節調整時に調整して計算したのですが、余り大きな差はありませんでした。これが2つ目の研究結果です。

 簡単にまとめさせていただくと、季節性の寄与というのはかなり大きくて、標本替えの寄与というのは相対的には小さいということがわかりました。

 3番目の「1.3.3 毎月勤労統計調査第二種事業所調査における事業所の脱落状況の検討」についてです。

 脱落の状況については、最後のパラグラフを見ていただければと思うのですが、標本替えが行われる以外の時期については、脱落事業所と新規事業所の所定内給与や所定内労働時間の水準というのは、継続事業所の水準より低い傾向があるということがわかりましたが、標本替え時期にはそれほど際立った差はないように思われます。

 最後に、3点の研究結果をまとめてどのようなことが言えるのかというのが1.3.4というところなのですけれども、読みながら補足をさせていただきたいと思います。

 まず、1つ目の研究結果は5ページの1つ目のパラグラフですが、論文Aというのがsampling on two occasionsの内容で、論文Bというのが標本替えの要因分解の内容です。こちらの2つでは「断層」について異なるアプローチを用いて検討を行いまして、論文Bでは「断層」の要因のほとんどは季節性によるものだということがわかりました。したがって、所定内給与等の系列から「断層」と言われているような変動を取り除くには、季節調整を適切に行えばいいのではないかと考えました。

 一方、論文Aのsampling on two occasionsのほうでは、その手法を用いることによって現在の推定方法よりも所定内給与等を精度よく推定することができますので、精度の向上を通じて結果的に「断層」と言われるような変動を抑えることが可能であろうというような結論を得ました。

 最後の脱落については、脱落の状況が論文Aと論文Bの妥当性に対して問題を投げかけないかというような検討を行いまして、検討を行った範囲では問題はないだろうという結果を得ました。

 そのような形で、第二種事業所については、「断層」と言われる部分のほとんどは季節性の影響であろうということと、推定方法を変えることによって現在の推定値よりも精度が高いものが得られる可能性があるという結論を得ました。

 研究から少し時間がたっているので、不十分な説明になってしまって申し訳ありませんけれども、何か御質問等があればお願いできればと思います。

 以上です。

○阿部座長 ありがとうございました。

 何か御質問等がございましたらお願いしたいと思いますが、いかがでしょうか。

○永濱委員 では、1ついいですか。

 結論の中で、断層の多くの要因が季節性だというお話だったのですが、実際問題、直近の毎月勤労統計で、ある意味、断層だと思うのですけれども、賃金の水準が多分下がったのだと思うのですが、それは恐らく最近のいわゆる働き方の多様化や産業構造のいろいろな変化みたいなものが結構著しくなってきているのではないかと考えると、あくまで可能性かもしれませんけれども、季節性以外の断層の要因が何か直近で大きくなってきている可能性というのはあるのですか。多分このデータというのは、結構直近のデータまでというよりも、少し前のデータだと思いますが、いかがでしょうか。

○樋田委員 平成24年までの最新のデータを使いました。

○永濱委員 それが時系列によって、確かに季節性の要因は大きいのかもしれませんけれども、それが時系列的に少しずつ小さくなっているなど、そういう可能性はありますか。

○樋田委員 その可能性はあると思うのですけれども、きちんと分析をしたわけではないので何とも申し上げられません。例えばこの研究を行った以降のデータについても、同じような分解を行ってみれば、そういった傾向は出てくるのかもしれません。あとは、働き方の多様化が進んで、年末年始の休業日数が昔と比べてだんだん増えているということもあると思います。そうすると、季節性の要因が大きくなるということもあり得ると思います。検討することは価値があるのではないかと思います。

○阿部座長 今の話に関連するのですが、所定内給与の季節性とは一体何なのかというのが少しイメージしにくく、例えば、今お話しになった休日が増えたということだと、日給月給や時間給月給と言うのかどうかわからないですけれども、そういうことだったら理解できるのです。しかし、ここでそういう人たちが増えているのも事実なのでしょうけれども、ただ、「断層」と言ったらいいのでしょうか、「断層」の大部分が季節性だということになると、相当の人たちはそのような給与の支払われ方をしていないとおかしいと思いますが、いかがでしょうか。

○樋田委員 そういうことになるかと思います。

○久古谷課長 よろしいですか。私ども厚生労働省が行っている就労条件総合調査というのがありまして、そこでは各労働者に対する賃金制度の適用状況というのを調査しております。ちょっと大き目のところで、30人以上の事業所を対象にして、パートタイムを除く雇用期間の定めがない労働者に対する賃金制度の適用状況については、正確に数字を覚えていないのですが、確か時間給が4.5%、日給制も同じぐらいかもう少し大きくて5.数%です。そのため、全体の10%程度の方は日給制、あるいは時間給制で働いております。30人以上の規模別の状況を見ると、規模が小さいところほどそのような時間給ないし日給の方が多くなっております。

 ここで樋田先生が分析されたのは5~29人以上規模なので、時間給や日給で働く労働者のパーセンテージはもっと大きくなるだろうと思われ、先ほど申しましたように、就労条件総合調査で調べているのが雇用期間の定めがなく、パートタイムではない者ですので、当然、ほかのパートタイムの方あるいは有期雇用の方を考えれば、もっと割合は高いと思われますので、そういう意味から所定内給与についても、労働時間あるいは出勤日数による影響というのは一定割合あらわれてくるのではないかと思っております。

○阿部座長 わかりました。

○永濱委員 もう一つよろしいですか。

 私も素人なのですけれども、sampling on two occasionsのこれが標準誤差を小さくするという統計的に有意な結果が出たということになるかと思いますが、一方で、実際に実務で適用するとなると、それなりに労力が増すことになるのでしょうか。

○樋田委員 それほど大きな労力は増さないと思います。推定方法は難しい方法ではないので、多大な労力の増加ということはないと思います。

 ただ、今回の研究は、乗率とかを使わない単純無作為ならばどうなるかというような設定でやっているので、実際にどのぐらいうまくいくのかというのは、乗率を使った試算等、もう少し細かい検討が必要だと思います。

○久古谷課長 若干補足いたしますと、樋田先生の研究結果としてはそういうことだったのですけれども、実際これを毎勤に適用するかどうかにつきましては、sampling on two occasionsというのは、基本的に私どもの理解としては、もし脱落したところが継続的に出しているとしたら、これぐらいの賃金額で計上されるだろうというのを計算して、それを補うような形、未提出事業所が提出したらどうなるだろうかということで推計しています。

 一般的に言って、ある意味、大きな固まりがずっと継続的になっているときに、脱落する部分の補正手段としては当然考えるべき方法なのですけれども、ただ、サンプル替えで新しいサンプルに切り替えたときに旧サンプルで継続して推計するという方法をとるのは、今の毎勤の全体の体系から見て適用するのは少し難しいということで、適用するという結論にはならなかったということでございます。

○阿部座長 どうぞ。

○土屋委員 大変興味深い御研究だと拝見いたしました。2つ教えてください。

 1つは、先ほど御説明のあった4ページの1.3.3の最後の段落のところで、脱落事業所と新規事業所の水準が継続事業所の水準よりも低いということですが、これは脱落事業所の給与が低いということかと思うのですが、一方で、5ページの1.4の上の部分は、ランダムな脱落になっているという評価になっているのですけれども、ランダムというのは給与にかかわらずランダムということでしょうか。

○樋田委員 ちょっと御紹介する部分が適当ではなかったようなのですが、4ページの1.3.3の下から2つ目のパラグラフの水準が低いというのは、標本替え以外の時期についての入れ替わりです。標本替えの時期には3分の1のサンプルが入れ替わるのですけれども、それ以外の時期にもサンプルの脱落があったり、追加があったりすることがあります。

 標本替え以外の時期については、サイズは少ないのですけれども、入れ替えがそれなりに生じていまして、それについて見ると、脱落事業所や新規事業所というのは、継続事業所よりも水準が低い傾向があります。しかし、3分の1が入れ替わる標本替えの時期については、大きな差はないというような意味です。

○土屋委員 つまり、脱落というのは、今まで標本になっていたものを標本にしなくなるものも含めて脱落という表現なのですか。

○久古谷課長 提出されない理由はわからないのですけれども、調査実施者として見れば、調査票が回収できなくなっている状態ということです。それは実際に存続しなくなったのか、ただ単に提出されなくなったのかまでは判別はできません。

○樋田委員 そういう意味で「脱落」という言葉を使っております。

○土屋委員 5ページのほうの脱落というのは、標本から外すということでしょうか。

○久古谷課長 結果として外れているということです。

○土屋委員 結果として外れているとはどういうことでしょうか。

○久古谷課長 要するに、調査実施者が調査票を入手できなくなっているという状態です。

○土屋委員 今の樋田先生の御説明ですと、標本から意図的に外すものも脱落という表現を使用しているのでしょうか。

○樋田委員 ここではそのように使っています。サンプルから何かの理由で外れているということです。標本替えもあるし、それ以外の理由もあるということなのですが、標本替えの時期ではそういうものが大量に発生することは御承知のとおりかと思います。標本替えの時期に発生したものとそれ以外の時期に発生したものを比べると、それ以外の時期の場合はサイズが少ないのだけれども、継続しているものと、入ってきたものと落ちたものの差がありますが、標本替えの時期についてはほとんど差がないというような状況です。

○土屋委員 ありがとうございます。

 もう一つは、今回の御研究の対象というのは第二種事業所ですけれども、第一種事業所に関しては、この結果というのはどれぐらい言えるのでしょうか。

○樋田委員 それはわかりません。この研究では第二種事業所についてのみ検討を行ったので、第一種事業所についてはサンプリングの方法も違うことに加え、処理の仕方もかなり違いますので、どのようなことになるかは全くわかりません。

○土屋委員 ありがとうございます。

○阿部座長 ほかはいかがですか。廣松先生、どうですか。

○廣松特任教授 私が言い出したといいますか、樋田委員がせっかくこういう形で研究なさったものを伺いたいということでお願いして、実現して大変よかったと思います。そして、内容的にもおもしろい御発表だったと思います。

 2つありまして、1つは、この結果としてアメリカ方式というのは、精度の面からいってもそれほど特筆すべきものではないといいますか、必ずしもsampling on two occasionsに比べてもよくないという評価ということですか。

○樋田委員 ほぼ同等ですが、理論的な精度向上の根拠は見出せなかったということです。

○廣松特任教授 見出せないということですか。なるほど。

○樋田委員 そうではありますが、先ほどおっしゃられましたように、アメリカの方式ではリサンプリング法を使って精度評価を行っているのですが、今回そのような細かな計算はしていませんので、もしかしたらそういった点でメリットがあるのかもしれませんけれども、今回の研究の範囲ではなかったということです。

○廣松特任教授 その点、アメリカ方式に関しては、前回もちょっとコメントがあったとおり、αの選び方が必ずしも根拠があるものではなくて、どちらかというとかなり恣意的な側面が強いというお話だったと思います。

 もう一つは、先ほどの参考資料の一番後ろ、46ページのところで、15日締め、20日締めとあるのは、要するに賃金台帳を締めるのはいつかということなのだと理解しました。そうしますと、特に表3.4を見る限り、両者はほとんど変わらないのに対して、表3.3では少し違いが見られるところもあるのですが、その差は何なのですか。

○樋田委員 ちょっと説明が不足していたのですが、この締め日の違いというのは、締め日が何日であるかによって、1月扱いにされる時期に含まれる休日の差が出てくるということです。15日締めだったら休日が何日あるのか、20日締めだったら休日が何日あるのかというのを全部カウントしまして、その差によってどう違いが出てくるのかというのを見ています。

 そのため、季節性については、休日が何日あるかによって多少の差が出てくるのですが、標本替えの効果については、休日の数の違いというのを動かしながら計算してもほぼ一定の結果が出ています。そこで、標本替えの寄与については、季節性とは全く別の要因として安定的な結果が得られているのではないかというような解釈をしました。

○廣松特任教授 現実の話として、私もよくは知らないのですけれども、例えば給与をもらってすぐ辞めてしまうというような人もいるかと思います。そのようなひとは、数ではどのくらいいるのでしょうか。

○樋田委員 数は持ってきていないのです。労働者数ということでしょうか。

○廣松特任教授 はい。

○樋田委員 計算はしたのですけれども、報告書に載せたかは定かではありません。

○久古谷課長 前月末と当月末と調査票には書いておりますので、人数については歴月で把握しており、賃金や労働時間については、給与支払いのサイクルで書いてくださいと書いております。平均賃金、平均労働時間については、前の月の月末と当月末の平均値の労働者で除して、平均賃金あるいは平均労働時間として計算しております。

 そのため、先ほどおっしゃったように、当月の半ばで辞めた人は、前月末にはカウントされていて、当月末にはカウントされず、要するに人数的には0.5人とカウントされていて、給与が何日分出たかは少々微妙なところがあるのですが、一応、途中で辞められた方もいることを考慮して、前月末と当月末の労働者の平均値で賃金、労働時間を計算するという方法になっております。

○廣松特任教授 先ほどの資料1で御説明いただいた、分母に2分の1が入っているというのはそういう趣旨なのですか。

○久古谷課長 そういうことです。

○廣松特任教授 ありがとうございました。

○阿部座長 大変興味深い研究でとても参考になりました。ありがとうございました。

 時間もございますので、次の議題のほうに進ませていただきたいと思います。

 次は「サンプル切替え、遡及改訂等の課題について」です。

 では、事務局より資料の説明をお願いしたいと思います。

○久古谷課長 まず、資料2-1について御説明いたします。

 これにつきましては、表題にもありますように「サンプル入れ替え方法とギャップの修正方法について」ということで書いております。

 まず、2ページ目で「これまでの経緯と今後の検討事項の整理」ということで書いておりますが、初めの枠囲みは、現在どのような考え方でやっているかということで、サンプルは長期間固定して安定性を図っておりますが、総入れ替えをしているのでギャップが発生して、それを技術的に補正していますということです。

 「検討事項」ですけれども、1つは、厚生労働省としての考え方ということで、サンプルを一定期間固定することについては、統計の安定性を図るということもありますので、今後も継続したいと思っております。

 ただ、サンプルの入れ替えについては、現在、第一種事業所については、あるタイミングでの総入れ替えをしているのですけれども、これを第二種事業所のように幾つかのグループに分けて、部分入れ替えを継続して行うという方法も考えられます。

 いずれにしても、サンプルを替えたときには新旧のサンプルでギャップが生じるのですけれども、グルーピングを細かくすれば1回当たりのギャップは小さくできると考えられますので、一定以上のグルーピングをした場合は、そのギャップを積極的に把握せずに、今の第二種事業所のように、言い方が適切ではないかもしれませんが、自然に流すという形での改訂も可能性としては考えられるのではないかということです。

 次の3ページが、先ほど説明したものを概念図としてまとめたものであります。

 まず、現行の総入れ替え方式というのは必ずギャップが生じますので、ギャップを検出するために重複期間が必要となります。現在、1カ月間重複させてギャップを検出して、それに対する修正を行っています。

 修正方法については、「三角修正」と言っているのが現在の修正方法で、ほかに考えられる方式としては下の3つが考えられるだろうということです。具体的な方式については、また後ほど御説明いたします。

 一方、部分入れ替え方式については、幾つかのグルーピングをかけてローテーションで回すというのが考えられます。ローテーション化しても一定の補正すべきギャップが残っているという判断であれば、現行と同じように重複期間を設けて、ギャップを検出して何らかの補正を行う必要がありますが、かなり小さなギャップで補正する必要がないと思われるぐらいにグルーピングが細かくいできたら、あえて検出する必要はないだろうというのが概念的には整理できると思っております。

 次の4ページが「部分入れ替え方式に関する留意点」ということで、先ほどから、話しているところなのですけれども、グループ数を十分多くすればギャップはかなり小さくできるのではないかということを表した資料になります。

 ただし、実際の業務を考えますと、グルーピングを細かくするということは、入れ替え作業の回数が多くなるということになり、また、調査対象期間をどれぐらいにするかというのもありまして、それぞれトレード・オフの関係にあるかと思います。サンプルを6組に分割した場合で調査対象期間を3年にすれば、年2回のサンプル替えが必要になりますし、調査対象期間を6年にすれば年1回で済み、今の第二種事業所のように調査対象期間を1年半にすると、年4回替えないといけないということになるでしょう。

 このあたりは実査のこと等を考慮に入れながら、グルーピングの基準をどうするのかについて、慎重に検討する必要があるのではないかと思っております。

 5ページから8ページまでにつきましては、ここで申したように、グルーピングのグループ数や期間について、あるいは重複期間の有り、無しに分ければ、このようなイメージになるであろうというものをつけているところでございます。

 9ページから修正方法について説明しております。

 9ページは、現在行っているギャップ修正の方法ということで、旧サンプルの結果を新サンプルの水準に合うようにくっつけてあげるという方法です。これがちょうどくさび形、三角形に見えるので「三角修正」と言っているのですけれども、そのような方法があります。

 ただ、これにつきましては、抽出替えを行った直後、足元の数字が大きく変わってしまう可能性があるということで、事務局として考えた微修正というのが次の10ページでございます。

 基本的には現在の三角修正と同じことをやるのですけれども、指数の改訂時期と前年同月比の改訂時期をワンサイクルずらしてみてはどうかというのがこの方式でございます。

 サンプル期間1の図の下の説明にありますように、サンプル期間1から抽出替えを行ってサンプル期間2に移行する際には、サンプル期間1の指数は改訂するのですけれども、この期間の前年同月比は再計算せずに、前に公表したままとします。次のサンプル替えがあってサンプル期間3に移行する際には、適用しなかった前年同月比の再計算をこのタイミングで行い、サンプル期間1の部分については、修正済みの前年同月比に置きかえていくという方法が一つ考えられるのではないかということです。

 次の11ページが「平行移動方式」ということで、これはある意味、ほかの統計でもよくやられているような接続係数、あるいはリンク係数というような一定係数を掛けて、水準合わせを行ってあげようという考え方はあり得るかと思います。ただ、これは一定係数を掛けての調整なので、原理的には前年同月比は変わりませんということです。

 過去には毎勤も平行移動方式によるギャップ修正を行っていたケースもあります。そのあたりは、席上配布資料2「過去のギャップ修正の例」という資料を配付してあるのですけれども、これでいうと、2番で書いてあります「平成19年1月分調査における抽出替えに伴うギャップ修正」では、賃金・労働時間指数に一定の数を掛けて水準合わせだけを行うというギャップ修正を行ったことがあります。これが平行移動方式でございます。

 次に、資料2-1の12ページのほうに戻っていただきまして、アメリカで行われているというWDLT方式を適用する方法が一つは考えられるかと思います。

 ただ、アメリカで行われているWDLT方式をそのまま適用するのではなくて、別紙のほうで準備してあります「WDLT方式について」は第1回目で配付したものと内容的には同じものなのですが、アメリカでは、前月、当月の2カ月連続で提出された調査票に基づいて集計するという方式でやっているのですけれども、別紙の下のほうに、枠で囲った部分の直前に書いてある文章のように、XcXpについて「当月と前月ともに回答した」という制限を取り除き、通常の標本復元値、つまり、回収できた標本全てを使った復元値と考えてWDLT方式を適用すると、このように変形できるといった、変形式を適用するという方法も考えられるでしょうということで、具体的に計算等を行っております。

13ページの「ギャップ修正と修正WDLT方式の比較」で、従来行っていたギャップ修正と修正WDLTというのは、イメージ的にはどのように違うかというのが書いてあります。

 従来行っていたものは三角修正方式ということで、旧サンプルの結果をあらかじめ下方修正しておいて、そこを出発点にして新しい結果を計算していくということで、下方改訂があった場合、過去に遡って下方改訂します。

 一方、WDLTというのは、出発点を旧標本の水準まで上げて、ここで出てくるギャップを段階的に1カ月ごとにαを掛けて、この場合は0.9で試算しているのですけれども、ある一定率でギャップを未来に向かって解消していくという方法になります。

 試算した結果がその下のグラフでして、実線で描いてあるほうが現在のギャップ修正の値で、前回、平成24年1月のギャップ修正について記述したものです。

 これをWDLT方式に変えると、平成24年1月より過去のものについてはギャップ修正前の値ということになります。足元では少しプラスマイナスはあるのですけれども、平成24年7月以降だと一貫してWDLTのほうが低い値が出てきています。ただ、低い値なのですけれども、この場合、ギャップ自体はα0.9で解消していきますので、増減率で見ると、平成26年7月ぐらいからはもうほとんど差はないというような状況になっております。

 それを具体的な値で表示しているのが次の14ページです。

 平成24年1月のギャップは比較的小さいギャップだったので、まだ月数は足りないのですけれども、仮に今回のギャップ修正に適用したらどうなるかというのを試算したものが次の15ページでございます。

 従来のギャップ修正に比べて、足元の2月から3月については、WDLT方式のほうがまだ高い伸びをしているのですけれども、4月でひっくり返って、今後、同じ方式を続けていくと、恐らく5月以降はWDLT方式でやったほうが低い伸びを示していくことになろうかと思います。

 これが標本替えの仕方、あるいは標本替えに伴うギャップ修正ということなのですが、1点、留意事項ということで16ページを見ていただきたいのですけれども、毎勤の場合のギャップ修正は、標本替えのギャップ修正とともに、雇用者数のベンチマークの更新があったときにもギャップ修正を行っております。

 留意事項ということで「労働者数のベンチマークの更新時には、サンプルの入れ替えとは独立して、指数、前年同月比の再計算が必要となる」と書いております。「独立して」とは書いてあるのですけれども、これは概念的に独立してという意味で、標本替えの時期に合わせてベンチマークの更新もやっておりますので、実際の実務作業としては重ねて実施しております。

 この場合は、雇用指数の補正については従前の方法を踏襲することとし、労働者ウエイトの変更に伴って積み上げ産業区分の値が変わってきますので、そこで出てくるギャップについては、もし修正方式を変えるとしたら、新しい修正方式を適用した形で修正したいということで考えているところです。

 雇用指数のギャップ修正のイメージにつきましては、参考でつけております「平成24年1月分調査における指数の改訂の考え方」の2ページの図を見ていただくのが一番早いと思います。

 基本的にはセンサスでベンチマークが得られた時点の月の雇用指数に対して、通常の賃金や労働時間で行っているギャップ修正、三角修正をして、それ以降の期間については平行移動をするという三角修正と平行移動方式を併用した方法で、雇用指数については従来からギャップ修正を行ってきておりますので、基本的な考え方については、これを踏襲したいと思っているところでございます。

 以上が資料2-1についての説明です。

 もう一つ、資料2-2ということで「毎月勤労統計調査における第一種事業所の脱落の傾向について」ということでまとめたものがございます。

 先ほど樋田先生から第二種の脱落についてのお話があったのですけれども、第一種事業所について、現在でいう旧サンプル、平成24年1月から平成2612月までの第一種事業所のサンプルの内、脱落している事業所について分析したものでございます。

 ただ、脱落というのをどのように定義するのかが少々難しいところで、非常に典型的な例ということで、何カ月か継続して調査票を出していたのだけれども、あるタイミングから提出されなくなった事業所だけに限って分析を行いました。

 これらの事業所のきまって支給する給与の平均の賃金水準について分析を行い、規模別、産業別によっていろいろ賃金水準が異なっているので、そこに書いてあるCase1からCase3のように3通りの考えで標準化を行ってみました。

Case1というのは、産業別、規模別のセルの中での平均に対して高いか低いかを、Case2というのは、規模については30人以上ということで全体をカバーするのですけれども、それを産業別に見たときの平均に比べて高いか低いかを、Case3というのは、30人以上での本当の全産業にわたる平均に比べて高いか低いかを表しております。

 細かい分布については、3ページ以降に、連続提出月ごとに脱落した事業所で一番低い水準のところ、一番高い水準のところ、賃金水準の標準偏差と、あとは、100より高いサンプルの割合と低いサンプルの割合ということでつけており、それを全体で集約した結果を1ページ目の一番下につけております。3通りの標準化を行ってみたのですけれども、3ケースとも余り差がない結果になりまして、平均より高い賃金水準で脱落した事業所の割合が大体43%から45%、低い賃金水準で脱落した事業所の割合が55%から57%ぐらいという結果になっております。

 評価するのが少し難しい数値なのですけれども、2ページ目に書いてありますように、脱落事業所の賃金水準は、平均値よりも低い事業所の割合がやや高く、賃金水準が低い事業所であるということは傾向としては言えるとは思うのですが、賃金水準が高い事業所も一定割合脱落しているということなので、全体的には低いところというのは間違いないのですけれども、個別に見ると結構高いところも脱落しているので、一概に低いところだけが脱落しているわけではないという状況であることが分析できました。

 事務局からの説明は以上でございます。

○阿部座長 ありがとうございました。

 では、ただいまの御説明に関して、質問、御意見等がございましたらお願いしたいと思いますが、いかがでしょうか。

○小巻委員 よろしいですか。2点だけ確認をさせていただきます。1つは、過去から、系列の中で、毎勤の最も重要な政策変数は、もちろん全て重要だと思いますが、何でしょうか。指数ですか、水準ですか、変化率でしょうか。つまり、どの変数を重視するかによって、ギャップ修正の仕方が変わってくると思われます。

 今のやり方ですと前年同期比が変わってしまいますが、、それであれば前年同期比は変わってもいいのだという判断にもなるかと思います。また、指数水準、あるいは月30万円もらっているといった給与の水準、その数字を継続的に見ていくべきなのでしょうか。それによってこれは変わってくると思うので、御省としては何が一番重要だとお考えなのかということを伺わせていただきたい。

 もう一つは、いわゆるグループ分けをすることによって入れ替えをしていこうというお話が今ありましたけれども、私も樋田先生の研究会に御一緒させていただいて、鳥取県等いろいろな地域に行く機会があったときに、1月、7月にやっているというのが、向こうとしては少々やりにくいというような意見も若干ありました。それは置いておいても、どうして1月と7月にサンプリング替えをされているのかという理由もあわせて確認だけさせていただければと思います。

○久古谷課長 まず、何を重視しているかということでは、一応、前年同月比を一番重視しているということになります。

 ギャップ修正を行った場合は、現在のものにつながるような形での分析ということで、過去の前年同月比を修正して、過去から将来に向かっての分析が必要だということでやってきました。ただ、そういう考え方はわかるのですけれども、足元で判断していたものについて、プラスと言っていたものがマイナスに変わる場合、そのときはマイナスだったのかと言われれば、旧のサンプルで調査していたときのプラスというのは、そのときの政策判断で使える材料としては、それはそれで間違っていなかったということがありますので、過去で考えていた話は話としてあるのですけれども、毎勤の今のギャップ修正自体がわかりにくいということで、国民から見て、あるいは分析されるユーザーから見て、今後どういう形で考えたらいいのかということで、このような検討会を行っているということで考えております。

 グループ分けにつきましては、現在、第二種事業所については1月と7月で、第一種事業所についても大体1月で標本替えしているのですけれども、かなり過去においては確か4月で替えていたこともあったかと思います。ただ、恐らく4月に替えるとなると都道府県、要するに実務を行う者の体制として年度変わりの人事異動で新しいメンバーに変わること、あるいは準備作業がありますので、そういった準備作業から実行する段階で担当者が変わるということだといろいろ混乱が起きる可能性が高いということで、今の1月と7月に落ちついたのだろうと思いますが、そのあたりは明確な資料としては残っておりません。

 部長のほうから何か補足はございますか。

○姉崎部長 多分そうだと思います。

○久古谷課長 何を重視すべきかという話では何かございますか。

○姉崎部長 何を重視するかということについては、前年同月比が大事なのではないかと思っております。

 第1回の検討会でも申し上げたのですけれども、アベノミクスの効果、特に今回は賃金の伸びがどうだったかということですごく注目されておりまして、そういう中で今回、新サンプルと旧サンプルの間で3,000円程度平均賃金が下がり、過去3年間にわたって下方修正したために、平均賃金が上がったと言っておきながら実は上がっていなかったではないかという指摘がありました。あくまでも統計の処理上と申し上げているのですが、そうしますと、では、過去のあの数字は一体何だったのか、新しく改訂したときにプラスだったのがマイナスになって、どちらが正しいのかと詰め寄られるのですけれども、両方とも正しいは正しいわけですが、その時点は過去の数字が正しかったので、こちらはあくまでも統計的な数字ですと言わざるを得ないのではないかと思っており、いずれにしても、そのようなことがわかりにくいので、よく考えてみてはどうかというようなことでこの検討会を開催させていただいている次第です。

○阿部座長 ほかにいかがですか。どうぞ。

○永濱委員 今の小巻先生のお話は非常に重要だと思っていて、いろいろなユーザーがいると思いますが、民間エコノミストの立場からすると、これは前にも言ったかもしれませんけれども、多分、指数と実数で重視しているところが違っていて、実数は実数であまり前年比とは関係ないと思います。何万、何十万といった本当の水準というのが知りたいのはないかと思います。

 それに対して、指数のほうは、おっしゃるとおり、前年比または変化率が非常に重要なので、我々が分析するときも、はっきり言って実数はほとんど使っていなくて、指数を基準値で戻して寄与度分解等をしているわけです。

 そういう立場からすると、突然、前年比が長期間変わってしまったりすると結構困ってしまうので、それが実態をあらわしているかどうかというのはまた別の問題かもしれませんけれども、ただ、同じサンプルの中で見たのであれば、実際に賃金は上がっているわけですから、そういうことを考えるとサンプル替えによって、それをマクロの数字ということで重視して直近の変化率を変えるというのはいかがなものかという感じがしますが、それはあくまで民間エコノミストの一般的な立場です。

○姉崎部長 世の中的に、物価統計もそうですが、GDP統計でも基準年を改定したときに、基準年改定で遡って改訂というのはあるのですけれども、サンプル入れ替えで改訂する統計は政府統計の中で多分毎勤だけではないかというのもあり、それもわかりにくいと言われる要因なのではないかと思います。

○永濱委員 質問なのですが、前回も聞いたかもしれませんけれども、そもそも今回の改訂というのは第一種事業所のサンプル替えがメインということですか。

○久古谷課長 そうです。

○永濱委員 ということは、やはりサンプル替えをもう少し頻繁にやったりすれば改善される可能性があるということですか。

○久古谷課長 サンプル替え自体ではランダムサンプリングで標本事業所を抽出しますので、標本事業所が変われば集計値は必ず水準差が出ると思います。ただ、替える部分を狭くすれば、影響は比較的小さくなるかと思います。

 それの参考という意味では、資料1の3ページ目で要因分解をしております。実際にやるかどうかは別にして、仮に産業大分類別にグルーピングして、産業大分類ごとにサンプル替えをしたとしたら、これは全体ではなくて一般労働者なのですが、全体で一遍にやると3,000円ぐらいの差が出るのですが、産業ごとに分割すると、製造業が一番大きいのですけれども、1,200円ぐらいには抑えられ、ほかの産業だったらもっと小さなギャップになるので、全部積み重ねれば当然3,000円という水準にはなるのですが、細かくすれば1回当たりのギャップ小さくなると思います。

 ただ、これもランダムサンプリングなので、はっきり言って期待値としては低くなるのですけれども、実現値を考えると一定の幅を考えないといけません。、そのため、期待しているのと反対方向にぶれてしまうと結構大きなギャップが出ることになり、恐らくグルーピングをかなり細かくしても、一定割合ではギャップが出るのではないかと思います。

 労働者数だとかなり安定しており恐らく労働者数や労働時間数は安定していると思いますが、賃金だと変動要因が大きいので、賃金の変動というのは必ず残るのではないかと思っております。

○永濱委員 もう一つ、過去に平行移動方式で調整したこともあったと思いますが、なぜ平行移動方式で改訂したのですか。段差が少なかったからですか。

○久古谷課長 すみません。そこはあまり明確な文章が残っていないので、平行移動方式を行った根拠自体はわかりません。

○永濱委員 逆に言うと、今回、平行移動方式で改訂した場合、ここまで変化率が変わらなかったということですか。

○久古谷課長 変化率は変わらないということでございます。

○永濱委員 そうだと思います。それなのに、なぜ平行移動方式で改訂しなかったのですか。

○久古谷課長 ただ、平行移動方式で改訂すると、ある意味、無理やり現在の水準に変わるので、過去の部分がかなり大きくぶれてくるのではないかと思われます。

○永濱委員 いろいろ考え方はあると思うのですけれども、指数だとあまり水準が変わるというのは重要ではないと思いますが、逆に言うと、例えば商業販売統計などで、それこそ指数の前年比とかで店舗調整済みなどやったりしているわけではないですか。それは同じお店で比較するというのがやはり正しい判断だと思うのです。ただ、それはそれで下方バイアスがかかるというのはあるのかもしれませんけれども、ある意味、毎勤の賃金の指数の変化率もそのように割り切って、一方で水準のデータもあるわけですから、そちらのほうがわかりやすい気がします。

○久古谷課長 一応、平行移動方式も選択肢としてはあり得るとは思っていますが、そのあたりについて、いろいろ御意見をお伺いしたいと思っているところでございます。

 あくまでもこの修正方法というのは事務局として考えたアイデアですので、ほかにも何かこういったやり方があるのではないかというような御提案があれば、それについても事務局のほうで試算等は行ってみたいと思います。

○廣松特任教授 今の永濱委員の御意見に関して、確か平行移動方式から現在言っている三角方式に変えたときだったか、その時点で私も議論に関わっていたと記憶していますが、そのときの判断は、どちらかというと、まさに水準が動くということに関してかなり気にしたというような記憶があります。

 多分これもその時期の社会的な関心やまた別の何かにもよるのでしょうけれども、みんなが水準のほうに着目するというタイミングもあれば、前年同月比のほうに注目するというタイミングもあり、どちらを重視するかは確かになかなか難しいと思います。

○永濱委員 指数でも水準が注目されるということですか。指数というのはあまり水準が注目されないような感じがしましたが、どうなのでしょうか。

○廣松特任教授 これは特にCPIなどについて典型的にそうですが、本来あまり意味はないのですけれども、指数の下げ幅や上げ幅といったものに注目する場合もあるかと思います。

○阿部座長 先ほど小巻委員が発言されていましたが、現在、第二種事業所は1月、7月がサンプル替えになっていて、第一種事業所も1月になっています。先ほどの樋田委員の研究では1月に相当季節性があるらしいとのことでした。平成24年も1月でしょうか。

○久古谷課長 第一種事業所については、最近はほとんど1月で実施していますが、かなり過去だと確か3月または4月の頃もあったかと思っています。

○阿部座長 そのときに、この1月の季節性の影響というのはどのぐらいだと認識すればいいのですか。もし影響があれば、抽出替えの時期を変えるだけで相当変わってくる可能性もあるということですか。

○久古谷課長 季節性ということでは、樋田委員からお話しいただいた断層というのは、確か前年同月比が前月に比べて1月とか7月で極端に変わるという話だったと思います。

○阿部座長 そうです。そうなのですけれども、これの話もギャップというのは断層だと思いますので、同じ話ではないかということです。

○久古谷課長 そういう意味では、先ほど季節性はあると申し上げたのですけれども、私どもが基準にしているのがきまって支給する給与で、所定内給与と所定外給与が入っておりますが、特別給与は少々変動が大きいので、それのギャップを検出して全期間に当てはめるのはさすがにリスクが大きいだろうということで、特別給与は除いております。

○阿部座長 そうです。承知しております。

○久古谷課長 ターゲットをきまって支給する給与から、より変動が少ないであろう所定内給与に変えるというのは、考え方としてはあり得るかとは思います。

○阿部座長 ただ、先ほどの樋田委員の話は、所定内給与でもあれだけ大きな季節性があるということで、そのお話を聞いて私は驚きました。

○久古谷課長 ただ、季節性による変動とサンプル替えしたときの変動であるかというのは、また別の議論ではないかと思っております。

○阿部座長 例えば、以前1月ではない月に抽出替えをしているとおっしゃっていたかと思います。そのときのギャップ修正というのはどれぐらいあったのかというのを見せてもらえれば、ある程度何か推測はできるような気がするのですがいかがでしょうか。

○手計補佐 そこは、どこまで、どういう資料が残っているかは確認しないとわかりません。

○久古谷課長 恐らく昭和の頃になると思います。

○手計補佐 私が認識している限りは、平成に入ってからは1月ということは断言できるのですけれども、確かに昭和で4月というのは実際にあります。

○阿部座長 4月もどうかとは思います。

○手計補佐 そうですね。過去の資料は確認させていただいて、もし必要があれば、次回、御報告できる範囲でしたいとは思います。

 今、阿部座長のおっしゃられたことで少し補足なのですが、第二種事業所のほうは、今回の資料でいうと1月と7月で入れ替えているのですけれども、重複期間がありません。それに対しまして、第一種事業所の場合は重複期間を設けて1月は新と旧を両方調査しているので、そのギャップというのがある程度検出できるのではないかと思います。

○久古谷課長 ですから、逆に言えば、ギャップがあるということを認識して、積極的に検出して補正しようという方向ではあるのです。

○手計補佐 第二種事業所のほうは3分の1の入れ替えなので、ギャップがある可能性は否定いたしませんが、それを変えなくてもいいだろうということです。

○阿部座長 わかりました。そういう意味では、第一種事業所のほうは、このギャップには季節性はほとんどないですね。

○久古谷課長 第一種事業所のほうは、サンプル差によるものが大きいと思っております。

○阿部座長 そうですね。すみません、失礼しました。どうぞ。

○樋田委員 サンプル替えが、結果の変動や精度に対してあまり強い影響を与えないような時期を選ぶことができるのであれば、例えば1月とか7月というのは、今のところ季節性みたいなものが発生しやすい時期なので、その時期は避けるということは一つの案ではないかなと思います。

○久古谷課長 そうですね。標本替えの時期をかえること自体はできなくはないのですが、やるとしたら、そのタイミングをどうするのかというのが議題になるかと思います。今、実施している調査なので、もしかえるにしても、それは一定の準備期間がないとできない話なので、恐らく中期的な目標ということで検討せざるを得ないのかなと思っております。

○阿部座長 ほかにはいかがでしょうか。どうぞ。

○樋田委員 先ほど1月以外に標本替えをしたことがあったということなので、1月以外に標本替えした時期と、その直近、その前後で1月に標本替えをしているところの差は、検討する価値があるのではないかなと思います。

○久古谷課長 ただ、今、平成になってからは1月のパターンでずっとやっているのですけれども、今回、5人以上、調査産業計のきまって支給する給与で大体3,000円ぐらいのギャップが出て、その前が1,000円に届いていなかったと思います。。

○手計補佐 770円です。

○久古谷課長 その前が7,000円ぐらい出ていますので、恐らく時期というよりは、先ほど申しましたように、そのとき対象となる事業所によっての変動もかなり大きくなるのではないかと思っております。

○樋田委員 それはあるとは思うのですが、給与だけではなくて、例えば入れ替えの時期の最後に残っていた事業所の従業員数であるとか、給与以外の情報もあるかと思います。それが1月に入れ替えたときと1月以外に入れ替えたときで違いがあるのかどうかは、チェックしてもいいのではないかと思います。

○久古谷課長 過去のものについて、特に昭和のものについては、実質もう集計値しか残っておらず、労働者数についてはリンク・リラティブでやっていますので、標本のレベルは基本的に反映されずに変化率だけしか反映されませんので、今おっしゃられたことを分析するのは難しいのではないかという気がしておりますが、そのあたりは資料等を確認して、できる範囲内で少し検討したいと思います。

○阿部座長 どうぞ。

○小巻委員 今のことに追加して、もし可能であればということで、今回は改訂前後の乖離は3,000円でした。しかし、時期によって金額が違うとのことでしたが、産業別に過去の改訂状況はわかるのでしょうか。

○久古谷課長 わかります。

○小巻委員 では、もしその資料も御用意できるのであれば、用意していただきたいと思います。

○久古谷課長 かしこまりました。

○廣松特任教授 少し単純な質問なのですけれども、資料2-1の10ページのところにある、御提案いただいた修正方法の考え方についてですが、この説明でいくと、サンプル期間2のデータが出てきたときに、サンプル期間1の指数は改訂するが、同期間の前年同月比は再計算せず、サンプル期間3になったときに前年同月比を再計算するとあります。その意味がよくわからなかったのですが、どういう意味なのでしょうか。

○久古谷課長 意味としては足元での判断、特にサンプル期間2に移った直後はサンプル期間2の頭とサンプル期間1の増減率しかないわけですから、そこでギャップ修正をして前年同月比を変えてしまうと、要するに、利用できる足元から過去にさかのぼる時系列が。

○廣松特任教授 それはわかるのですけれども、サンプル期間3に入ってから前年同月比まで再計算するとありますが、ここで、サンプル期間と言っているのは大体2年ですか。

○久古谷課長 2年ないし3年です。

○廣松特任教授 そうすると、4年ないし6年たってから変えるということになるということでよろしいのでしょうか。その意味がちょっとよくわからなかったのです。

○久古谷課長 足元でのいろいろな分析・判断になるべく影響を与えないようにしつつ、過去からしている系列もずっと継続したいという考えです。

○永濱委員 では、調整によって、過去の数字が何年後かに変わるという理解でよろしいのでしょうか。

○廣松特任教授 そういうことになるかと思います。

○久古谷課長 ワンサイクル遅らせて、足元での状況判断は比較的長期間継続できるようにして、足元の判断から少し重要性がなくなった部分について、遅れて修正を提供したいという、どちらかというと、これもロジックというわけではなくて、要するに足元の判断はなるべく変えたくないというのと、従来から提供している系列についても継続的に提供したい。その2つの折衷案というような性格のものです。

○永濱委員 ほかで何かやっている事例とかはあるのですか。

○久古谷課長 もともとこのギャップ修正をやっているのは毎勤だけですので、ほかの事例はないかと思います。ただ、そういう意味だと、直接の比較はできないのですけれども、タイミングを後でやるというのはないとは思います。

○廣松特任教授 過去の遡及計算というのは、結果的にかなり遅れて出てきてしまうというのはあるかと思います。

○久古谷課長 だから、平成27年1月にギャップ修正を行って、今は4月分まで公表して、6月30日に5月速報を公表するのですけれども、要するに足元の何カ月分しか新サンプルでの接続期間がなくて、かなり過去の判断する部分の数字が急に変わってしまうというのは、いろいろな判断に対する影響が少々強過ぎるのではないかということです。

○阿部座長 どうぞ。

○土屋委員 ギャップをどう修正するかということを考えていく根拠としては、なぜギャップが生じるのかというところをよく見きわめるべきではないかと私は思うのです。その原因としては脱落と標本替えのときの新規が入ってくる。新規というのは、新しくできた事業所が入ってくるという意味での新規ということだと思うのですけれども、今回、資料2-2で脱落事業所の傾向というのを調べていただいて、先ほどのお話ですと、脱落するものは全て低いわけではない。それはもちろん高いところも脱落はするのでしょうが、平均的には水準が低い事業所が脱落していくという傾向がそれなりに見えたのではないかと思うのです。

 この傾向をもう少しはっきり見るために、例えば毎月、毎月で、4月では回答があったけれども、5月では回答がなかった事業所と、5月にも回答があった事業所の2つの水準平均が、4月についてはどちらもあるわけです。4月の回答事業所の中で、5月の回答と5月の脱落に分けて、4月の水準の平均を見るというようなことを時系列で見ていただいたら、もう少しわかるかなという気がします。

 そうしたところ、例えば、次の月に脱落していくものは、次の月に継続していくものと比べて平均的な賃金の水準が毎月一定程度低いということであればギャップが生じる理由になるかと思います。賃金指数は、本当はもう少し公表値よりも低いのだけれども、それが上がっていくというような仕組みかどうかということがもう少しよくわかるのではないかなと思いましたので、お手数ですが、そういった資料についても作成していただけると、よりはっきりするのではないかなと思います。

○久古谷課長 そういう意味では、今、準備しております資料2-2の3ページから5ページで連続提出月数ということでやっていますので、これが何月に脱落した事業所かというのをほぼあらわしているものにはなっております。

 先ほど説明が不足したところはあるのですけれども、あくまでも脱落したものの直前、要するに、最終提出されたときの提出事業所平均を100とした値にしていますので、そういう意味でも、今、土屋先生がおっしゃった資料にかなりイメージ的にはこちらが近いのではないかという気がします。

 ですから、逆に言うと、残存のところの分布はつけていないのですけれども、そういう意味では、残存のところの平均を100にしたときの落ちたタイミングでの分布というのは、これを見ればある程度の見当はつくという形にはなっております。

○手計補佐 3ページのところを見ると、一番初めに説明の中で申し上げたのは一番下の計のところなのですが、これをどう見るかというのはいろいろ判断があるかと思いますが、連続提出月数のところの違いによって、結構割合も顕著に差が出ているようなところも実際にはあるので、確かにある月の前後では少し低いほうが抜けていくとか、逆に高いほうが抜けていくというところもあるのではないかと思います。計で平均をとると大体45%と55%ぐらいになるというような状況だとは思うので、これである程度傾向は見えるものと思います。

○久古谷課長 だから、そういう意味で、これで見る限りは、何か一定程度の傾向が出るというよりは、少しランダムな状況が起きているのではないかと思います。ランダムな状況が起きつつも、全体としては低目のところに少しシフトしているのではないかと思います。

○樋田委員 今の点なのですけれども、第二種事業所の委託研究のときにはそういった計算をしています。次の月に標本からはずれる事業所の当月と、次の月も標本に残る事業所の当月の差がどのぐらいあるかというのを比較したほうがいいと、私も思います。月ごとにみたら差は小さいかもしれないのですが、その傾向がずっと継続しているということがあれば、トータルとすればかなり大きな影響が残り得ると思うのです。第一種事業所の場合には調査期間も長いですから、そのような検討はされておいたほうがよろしいのではないかと思います。そうすると、もしかすると、今のような一括入れ替えではなくて、部分入れ替えのほうが安定的な数字が出るかもしれません。

○久古谷課長 そういうことでは、今まで十分に説明できていなかったと思うのですが、今、これで脱落のものをやっているのですけれども、こうやって脱落したところは放っているのではなく、1年単位で、要するに調査開始して1年経過して脱落したと判断されているところでは、また次の年の1月に追加サンプルを投入して、3年で回すときは2年目の終わり、つまり、3年目の頭にまた脱落サンプルの補充分ということで抽出したサンプルを加えています。

 そういう面では、脱落したところはずっと放っているわけではないのですけれども、即、補充しているのではなくて、補充するタイミングが1年間隔になっているということでやっております。

○阿部座長 ただ、毎回、抽出替えのときのギャップが、マイナスに落ちる、新サンプルのほうが落ちるというのがずっと続くというのは、普通、ランダムに抽出していたら、毎回マイナスに落ちるということはなかなかないと思います。そうすると、今、お2人がおっしゃったことを丁寧に調べて、脱落するサンプルが出てくることによって、調査時点の結果に上方へのバイアスがあるというのをにらんでいったほうがいいのではないかという気はします。過去、ギャップが上に出たというのが何度かありましたか。

○久古谷課長 何回かはあります。

○阿部座長 そうだとしたら、その効果はそのときはなかったということなのかもしれないということになるかと思いますが、いかがでしょうか。

○久古谷課長 マイナス改訂が多いのですが、記憶だと確か10回のうちに2回ぐらいプラスで、8回ぐらいマイナスということで、マイナス寄りではあるのですけれども、プラスが皆無かというと、そういうわけではありません。

○土屋委員 それこそランダムにそういうことは生じるかもしれません。

 それから、今のお話ですと、毎年追加しているということは、毎年、追加した時点でギャップをなるべく減らそうという努力をされているということになるのだと思うのですが、もしそうであれば、過去に遡ってギャップを修正するときにも、そうやってギャップをなるべく減らそうとしたときに、一律にギャップは大きくなっていくわけではなくて、もしかすると、その時点でギャップは少し減っていたのかもしれないということも考慮に入れないといけないという気がします。

○久古谷課長 ギャップというのが何を指すかで少々話は微妙なところはあるのですけれども、長期固定化によるバイアスという話と、サンプル替えしたときに、ランダム抽出による標本差とバイアスの解消が同時に行われているかというお話だろうと思います。

 そういう意味では、バイアスということでは、一定の低いところが抜けているということで、プラスバイアス自体の発生というのはありそうなのですけれども、ただ、それを定量的に評価して補正するというのは、恐らく一定期間のデータの蓄積がないと定量的な評価ができないので、そうすると、果たしてちゃんと次の標本替えまでに修正できるタイミングがあるのだろうかというのも、今後、そういう方向で考えたときの実務上の検討点になるのではないかと思っております。

 樋田先生の研究も、最小二乗法等を使って、もし脱落したところが継続していれば、これぐらいになりますというのを確か推計されていたと思うのですけれども、未来に向かって延ばすのであれば、ある程度の期間がないと延長というのはなかなか難しいと思っております。

○阿部座長 わかりました。大変なことになるかとは思いますが、一応、できれば両面で見ていく必要はあるかとは思います。

○久古谷課長 何もやらないという話ではなくて、当然、可能な限り、いただいた御意見で一定のデータは調査なり、分析はしたいと思いますが、その後のステップを考えると、私が今申し上げたようなことも考えながらやらないと、実際の業務として反映できるかどうかというのは、少し検討する必要があるのかなと思っております。

○阿部座長 わかりました。ほかにありますか。そうしましたら、本日はこのあたりで終わりにさせていただきたいと思いますが、よろしいでしょうか。

 では、ここからは事務局へお返ししたいと思います。

○手計補佐 皆様、長時間にわたり御議論いただきまして、ありがとうございました。

 これをもちまして、第2回「毎月勤労統計の改善に関する検討会」を閉会いたします。

 次回、第3回の検討会の開催につきましては、7月10日金曜日、14時からを予定しています。正式な連絡につきましては、事務局より後日行うこととしていますが、委員の皆様方におかれましては、日程確保等に御協力くださいますようお願いします。

 なお、第1回目の検討会の議事録について、先日、御確認の依頼をさせていただいています。既に御回答いただいた方もおりますけれども、7月1日水曜日を締め切りとしていますので、こちらのほうもよろしくお願いします。 

○久古谷課長 第3回の議事事項については、本日、皆様から寄せられた御質問とか資料作成のサジェスチョンについて、なるべく対応したいとは思いますが、それを含めて、新たに作成するような資料等については、後日また座長と御相談しながら進めていきたいと考えております。

○手計補佐 それでは、本日はお忙しい中、どうもありがとうございました。


(了)
<照会先>

大臣官房統計情報部
雇用・賃金福祉統計課
企画調整係
電話 03-5253-1111(7609,7610)

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