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2015年5月20日 第90回労働政策審議会安全衛生分科会

労働基準局安全衛生部計画課

○日時

平成27年5月20日(水)10:00~


○場所

厚生労働省 専用第12会議室(中央合同庁舎第5号館12階)


○出席者

委員:五十音順、敬称略

明石 祐二、犬飼 米男、小畑 明、勝野 圭司、栗林 正巳、城内 博、新谷 信幸、鈴木 睦、辻 英人、
角田 透、土橋 律、中澤 喜美、中村 聡子、縄野 徳弘、半沢 美幸、三柴 丈典、水島 郁子、
山口 直人、池田氏(岡本委員代理)

ヒアリング対象者:

甲田氏(全国電力関連産業労働組合総連合)、左藤氏(電気事業連合会)

事務局:

土屋 喜久 (安全衛生部長)
美濃 芳郎 (計画課長)
田中 敏章 (安全課長)
泉 陽子 (労働衛生課長)
森戸 和美 (化学物質対策課長)
井上 仁 (産業保健支援室長)
前田 光哉 (電離放射線労働者健康対策室長)
安井 省侍郎 (電離放射線労働者健康対策室長補佐)
濱本 和孝 (環境改善室長)

○議題

(1)分科会長の選出および分科会長代理等の指名について
(2)東電福島第一原発作業員の長期的健康管理等に関する検討会報告書について
  (報告及び関係団体からのヒアリング)
(3)労働安全衛生法の一部を改正する法律の一部の施行期日を定める政令案要綱、労働安全衛生法施行令及び厚生労働省組織令の一部を改正する政令案要綱及び労働安全衛生規則及び産業安全専門官及び労働衛生専門官規程の一部を改正する省令案要綱について(諮問)
(4)心理的な負担の程度を把握するための検査及び面接指導の実施並びに面接指導結果に基づき事業者が講ずべき措置に関する指針について(報告)
(5)職場の受動喫煙防止対策に係る技術的留意事項に関する専門家検討会報告書について(報告)
(6)独立行政法人に係る改革を推進するための厚生労働省関係法律の整備等に関する法律について(報告)
(7)その他

○議事

○美濃計画課長 お待たせしました。定刻を過ぎましたので、ただいまから第 90 回労働政策審議会安全衛生分科会を開催いたします。本日はお忙しい中、お集まりいただきまして、誠にありがとうございます。本日は委員改選後の初めての分科会となります。分科会長選任までの間は、私、安全衛生部計画課の美濃が議事進行を務めさせていただきます。よろしくお願い申し上げます。

 また、就任されました委員の皆様方におかれましては、お手元の資料 1 1 ページに「安全衛生分科会委員名簿」としてお配りしております。そちらを御覧ください。今後とも引き続き安全衛生分科会での御議論等、よろしくお願い申し上げます。

 本日の出欠状況ですが、公益委員では桑野委員、使用者代表委員では中村節雄委員が欠席されております。なお、岡本委員代理として JFE スチール株式会社の池田様が出席されております。

 議事に移ります。本日は分科会長の選出等の議題、続いて諮問案件が 1 件、報告事項が 4 件あります。円滑な議事進行への御協力をお願い申し上げます。

1 つ目の議題に入ります。議題 (1) の「分科会長の選出および分科会長代理等の指名について」です。まず、分科会長の選出についてです。こちらについては、労働政策審議会令第 6 条第 6 項の規定に基づきまして、分科会長は分科会に所属する公益代表委員のうち、親審議会である労働政策審議会委員から選挙して選出することとされております。当分科会の公益代表委員のうち、労働政策審議会の委員でいらっしゃる方は土橋委員お一人です。したがいまして、土橋委員に分科会長に御就任いただきたいと存じます。以降の議事進行につきましては、分科会長にお願いしたいと思います。よろしくお願いいたします。

○土橋分科会長 御指名いただきました土橋でございます。引き続きですが、よろしくお願いいたします。この分科会は非常に重要な案件の審議を担っていると考えておりますので、適切にこの分科会を進行したいと考えております。是非、委員の皆様の御協力をよろしくお願いいたします。

 これより、議事進行を務めさせていただきます。最初に、議題 (1) のうちの分科会長代理の指名についてです。これは、労働政策審議会令第 6 条第 8 項において、分科会に属する公益を代表する委員又は臨時委員のうちから分科会長が指名することになっております。私としては城内委員に分科会長代理をお願いしたいと思いますが、城内委員、いかがでしょうか。

○城内委員 お受けいたします。よろしくお願いいたします。

○土橋分科会長 ありがとうございます。よろしくお願いいたします。

 もう 1 つ、当分科会に置かれているじん肺部会の委員についても、分科会長が指名することになっております。資料 1 の名簿の 2 ページに、じん肺部会の委員の案が出ておりますが、この内容で私は指名したいと思いますが、いかがでしょうか。

                                   ( 異議なし )

○土橋分科会長 それではそのようにさせていただきます。ありがとうございます。

 次に、議題 (2) の「東電福島第一原発作業員の長期的健康管理等に関する検討会報告書について」です。本日は報告書の内容の報告を受けるとともに、我々の今後の議論の参考とするため、報告書の内容に関連の深い関係団体のヒアリングも行うことにしたいと思います。本日は労働政策審議会運営規程第 4 条第 4 項において準用される同条第 3 項により、関係者の意見又は説明を聞くため、電気事業連合会から原子力部副部長の左藤様、全国電力関連産業労働組合総連合から社会・産業政策局の次長の甲田様にお越しいただいております。

 議事の進め方ですが、まず最初に報告書について事務局から説明してもらい、続けて、左藤様、甲田様からの説明を賜りたいと思います。その後、報告書の内容や、左藤様、甲田様の御説明についての意見交換を行うという形で進めたいと思います。

 それでは、まず事務局から説明をお願いします。

○前田電離放射線労働者健康対策室長 資料 2-1 に添って、「東電福島第一原発作業員の長期健康管理等に関する検討会報告書の概要」を説明いたします。

1 ページです。「本検討会設置の目的」は、東電福島第一原発の緊急作業従事者に対する離職後も含めた長期的な健康管理、通常被ばく限度超えの者に対する線量管理を検討することと、今後、仮に緊急作業を実施する場合の健康管理、医療体制、線量管理、特別教育の在り方を検討することです。

 検討事項です。 1 つ目が「緊急作業従事者の長期的な健康管理」、 2 つ目が「緊急作業従事期間中の健康診断等」、 3 つ目が「緊急作業中の原子力施設内の医療体制確保」、 4 つ目が「通常被ばく限度を超えた者に係る中長期的な線量管理」、 5 つ目が「緊急作業従事期間中の被ばく線量管理」、 6 つ目が「特例緊急作業に従事する者に対する特別教育の在り方」の 6 点です。

 「検討会参集者」は、産業保健、公衆衛生、被ばく医療、放射線防護の専門家 8 名で構成され、昨年 12 月下旬から 5 回にわたって開催し、 5 1 日に報告書を公表したところです。

 「今後のスケジュール ( 予定 ) 」ですが、本検討会報告書に基づいた電離放射線障害防止規則等の改正案のパブリックコメントを 5 15 日から 6 14 日まで行っており、本審議会への諮問、放射線審議会への諮問を経て、秋頃までに省令公布、来年 4 月メドの省令施行を目指しているところです。

2 ページです。「緊急作業後の長期的健康管理及び緊急作業中の健康管理等」についてです。現在、平成 23 10 月に公示しました指針に基づき、一定以上の線量を被ばくした緊急作業従事者にがん検診などを実施しています。検診内容を最新の知見に基づき見直したところです。また、今後、仮に緊急作業を実施する事態となった場合に、その期間中に必要となる臨時健康診断の内容を検討いたしました。

 「緊急作業従事後の健康管理」については、大臣指針の改正が必要ですが、がん検診の項目に、胸部 CT 検査、大腸内視鏡検査を追加し、がんに関連の深い感染症検査として、ピロリ菌検査、肝炎検査を新設し、甲状腺検査で頚部エコー検査を必須化すること。更に慢性腎臓病の検査、禁煙指導を追加することとされました。ストレスチェックについては、可能な限り全員に実施すること。原子力事業者及び元請事業者が関係請負人を支援することが必要とされました。

 「緊急作業中の健康管理」については、短時間に 300 400 ミリシーベルト以上の線量を受けた者に、染色体異常の検査、白血球数等の検査を直ちに実施すること。通常被ばく限度を超える作業に従事している労働者に、 1 か月以内ごとに 1 回及び当該従事者が緊急作業から配置替え又は離職した際に健康診断を実施することとし、その項目は問診、血液検査、甲状腺ホルモンの検査、白内障検査、皮膚検査が必要とされたところです。

 原子力施設内の医療体制の確保については、有識者のヒアリングを 3 回実施いたしました。災害発生時に即応し、医師等を派遣できるネットワーク組織を新設し、医療スタッフの募集・養成・派遣、被災労働者の搬送や受入れ等の連携を強化するための協議組織の開催、搬送訓練等を実施することが必要とされました。

3 ページが「通常被ばく限度を超えた者の線量管理」の検討結果です。「基本的考え方」ですが、生涯線量として、 ICRP( 国際放射線防護委員会 ) の勧告の被ばく限度の前提となる生涯線量 1 シーベルトを採用し、緊急被ばく線量と通常被ばく線量の合算が、生涯で 1 シーベルトを超えないように管理するべきとされました。福島第一原発の事故により、 100 ミリシーベルトを超えた方は 174 人おられますが、雇用事業者が明確で、厳格に管理可能なため、個別作業者ごとに個別の追加の線量限度を計算することとされました。また、今後、仮に事故が発生した場合には、事故発生時を含む線量管理期間の 5 年間は、原子力施設の安全な運営等を担保するためにやむを得ない場合に限り、緊急作業後の通常被ばく限度の適用に一定の裕度を与えるとされました。

 具体的には、次の線量管理期間、すなわち平成 28 4 月からの線量管理ですが、 5 年当たりの線量限度を 1 シーベルトから累積線量を減じた残余の線量を、就労期間の最終年齢の 68 歳から現年齢を減じた残余の就労期間として 5 倍するという方法で算定することが適当とされました。

 さらに「事故発生時を含む線量管理期間内での通常被ばく適用作業での線量管理」ですが、事業者は、線量が 100 ミリシーベルトを超える方について、原子力施設の安全な運転等を担保するために必要不可欠な要員に限り、追加的に、年間 5 ミリシーベルトを超えない範囲で通常の放射線業務に従事させることができるとされました。

4 ページと 5 ページですが、「緊急作業従事期間中の被ばく線量管理のあり方」についてです。 4 年前の福島第一原発事故時の経緯ですが、事故直後に原子力緊急事態宣言が出され、労働者の健康リスクと周辺住民の生命・財産を守る利益を比較衡量し、特例の緊急被ばく限度として 250 ミリシーベルトを特例省令により設定いたしました。そして、被ばく線量の低減を踏まえ、段階的に適用作業を限定した上で、原子炉の安定性が確保された段階で、平成 23 12 月に特例省令が廃止されました。

 今後、仮に事故が発生した場合の基本的考え方ですが、 ICRP の正当化原則に基づき、 100 ミリシーベルトを超える緊急被ばく線量限度が正当化されるのは、原子力施設がメルトダウンするような破滅的な状況を回避するような場合に限られ、対象者を高度な知識・技能を有する者に限定するとされました。緊急被ばく限度の考え方については、検討会での議論の結果、 250 ミリシーベルトを超える線量を受けて作業をする必要性は、現時点では見いだし難いこと。免疫機能の低下を確実に予防するため、 250 ミリシーベルトを採用することは保守的であるが妥当とされたところです。

 破滅的な状況の発生の判断基準としましては、原子力災害特措法において、原子力緊急事態又はそれに至るおそれの高い事態が発生した場合が定められており、原子力災害の危機管理の観点からは、直ちに必要な対応を実施する必要があるとされております。

 さらに、 ICRP の最適化原則、すなわち、被ばく線量をできる限り少なくするという観点からは、作業の進捗状況等に応じて速やかな適用作業の限定、被ばく限度の段階的な引下げを実施し、原子炉の安定性が確保されれば特例的な限度を速やかに廃止するとされました。

5 ページは具体的な対応方針です。まず「特例緊急被ばく限度の設定」ですが、厚生労働大臣は、事故の規模、周囲への影響その他の事情を勘案し、緊急作業において 100 ミリシーベルトの被ばく限度によることが困難であると認めるときは、 250 ミリシーベルトを超えない範囲内で特例緊急被ばく限度を別に定めることができるとしています。

 原子力緊急事態又はそれに至るおそれの高い事態が発生した場合は、厚生労働大臣は直ちに 250 ミリシーベルトを特例緊急被ばく限度として定めるとしています。さらに、厚生労働大臣は、事故の状況、緊急作業の内容その他の事情を勘案し、特例緊急被ばく限度をできるだけ速やかに廃止するとしています。

 「特例緊急作業従事者の限定」です。原子力事業者により、原子力防災組織の要員として指定されている者に限るとしています。これは、原則は原子力事業者の社員ですが、法令に基づき、原子力事業者が原子力防災組織の業務の一部、すなわち損傷機器の復旧作業等を委託する場合は、当該委託事業者の労働者も要員に含まれるというものです。

 一番下の箱の、監視・作業終了後のフォローの点ですが、事故の状況に応じ、労働者が電離放射線を受けることをできるだけ少なくするように努めること。事業者は、被ばく状況、健康診断の結果、線量記録などを定期的に報告するとしております。

6 ページが特別教育の検討結果です。「基本的考え方」として、放射線による健康影響等のリスクを特例緊急作業に従事することが見込まれる方に理解させるとともに、作業内容、保護具の取扱い等を教育することにより、作業中の被ばく線量を低減させることを目的とし、通常の放射線業務従事者に対する特別教育を受講済みの方に対して実施するとしております。対象者は、緊急対応のための高度な知識や技能を有する者に限定し、先ほど述べた原子力防災組織の要員とされております。

 具体的には、事業者は特例緊急作業に労働者を就かせるときに行う特別教育の内容は、学科教育として特例緊急作業に使用する施設・設備の構造、取扱いの方法、作業の方法、電離放射線の生体に与える影響、被ばく線量管理の方法、関係法令としており、実技教育として、特例緊急作業に使用する施設・設備の取扱い、作業の方法としております。実施頻度は、学科については、教育実施後に変更が生じた場合には、当該変更箇所について再教育を実施し、実技は、その技能を維持するため、 1 年以内ごとに 1 回、定期的に再教育を実施することが必要とされました。説明は以上です。

○土橋分科会長 次に、電気事業連合会から原子力部副部長の左藤様から説明をお願いいたします。時間の関係上、 10 分以内でよろしくお願いします。

○左藤氏 ( 電気事業連合会 )  電気事業連合会の左藤でございます。

 初めに、東京電力福島第一原子力発電所において、多くの方が緊急作業に従事しております。その緊急作業従事者の作業管理や健康管理の在り方について、専門の方々の御議論を踏まえ、今回の報告書をまとめていただき大変ありがとうございます。我々電気事業者として、今後の運用に向けて、特定緊急作業従事者の限定に関して 2 点ほど御配慮いただければと思っていることがございます。

1 点目は、今回の検討会の報告書では、特定緊急作業従事者を限定することを認められておりますが、事故の状況によっては、より多くの特例の緊急作業従事者が必要になる場合もあります。そういった場合、発災発電所を運営する電力会社の本店の社員とか、例えばそのほかの発電所からの所員とか、そういった者が速やかに応援ができるような運用について、御配慮いただければと思っております。

2 点目は、福島第一発電所の事故において、メーカーの社員、下請社員、地元の協力会社といった方々が力を合わせて、事故の収束を図ったといった実績もございます。そういった電力社員以外の方においても、事故発生後に支援が必要となった場合には、原子力事業者の防災業務計画の記載の有無にかかわらず、必要な教育の実施、同意といったものが得られた場合には、緊急作業に従事することを妨げることのないような運用に御配慮していただければと考えております。

 電気事業者からとして、この 2 点について御配慮いただければと思っております。以上です。

○土橋分科会長 続いて、全国電力関連産業労働組合総連合から社会・産業政策局次長の甲田様に説明をお願いいたします。 10 分以内でお願いします。

○甲田氏 ( 全国電力関連産業労働組合総連合 )  ただいま御紹介いただきました甲田でございます。まずもって、福島第一原子力発電所の廃炉に向けた取組に関しましては、事故発生以来、厚生労働省をはじめ政府の皆様には多大な御支援を賜っておりますこと、この場をお借りしまして御礼申し上げたいと思います。また、本日はこのような場にお招きいただき、発言する機会を賜りましたこと、分科会並びに事務局の皆様の御配慮に感謝申し上げます。ありがとうございます。

 本件、標題は「福島第一原子力発電所」とありますが、内容は全国の原子力関連職場の労働者に関わるものと認識しており、電力総連に加盟する関係労組、関係する産業別労働組合の皆様と意思疎通を図ってきたところです。本日は事務局の御了解をいただき、資料を配布させていただきました。資料 2-3 に沿って、原子力関連職場で働く者を代表して意見を申し上げます。

 まず、基本的な考え方です。被ばくを伴う労働、放射線下労働は、基本的な労働安全衛生の問題であること、 ICRP の勧告、 ALARA の精神に基づいて、私たちも労働組合という立場で被ばく低減に努めてまいりました。また、福島第一原子力発電所のような事故が発生した場合、その対応に従事することは原子力関連職場に働く者の責務と認識しておりますが、労働安全衛生、労働者保護の観点で様々な条件整備が前提と考えております。

 これは緊急作業に伴う被ばくの在り方の見直しに当たっても同様であり、ただ単に被ばく限度を引き上げる、単純に国際基準に合わせるという乱暴な議論は、私どもとしては到底容認はできませんし、被ばくの在り方を見直すのであれば、事前の準備も含めた緊急作業に伴う線量管理や健康管理に加えて、労働者の意向や雇用への配慮、例えば家族の理解を含めた労働者の同意、緊急作業への同意の拒否、被ばく線量を理由とした雇用・労働条件の不利益変更の禁止、あるいは被ばくに関する個人情報の管理の徹底等、必要な措置が講じられなければならないと考えております。

 私自身、原子力発電所に勤務していた経験もございますが、福島第一原子力発電所の事故を目の当たりにして感じるところは、高線量の被ばくはもとより、暗所での作業や水素爆発など、過酷な環境での相当な緊張を伴った作業であったと思っておりますし、そこで生身の人間が入って作業していくということについては、相当な覚悟が求められるものと思っております。だからこそ、福島第一原子力発電所の事故から得られた様々な経験や教訓を十分に踏まえ、従事する労働者の意思を尊重するとともに、労働安全衛生に万全を期すということが求められると思っております。

 検討会におかれましては、労働者保護の立場でこうした点についても御検討いただいたものと受け止めております。その上で、今後、省令等の改正を進められていくものと思っておりますが、原子力施設での重大事故の拡大防止・収束に向けた対応と、そこに働く者の権利保障の両立が図られますよう、次の点につきましても御留意いただきたいと存じます。

 まず、健康管理等についてです。 1. です。既に福島第一原子力発電所で緊急作業に従事された方に対する長期的な健康管理に、引き続きお取組いただきたいこと。 2 ページ目です。緊急作業における原子力施設内の医療体制の確保について、関係各位の御協力を頂きながら進めていただきたいこと。それから、緊急作業に従事する労働者に対して、これら健康管理に関する措置について、あらかじめ御周知いただきたいと考えております。さらに、先ほど申し上げたとおり、緊急作業への従事というのは相当な緊張を伴うということであるので、ストレスチェックあるいはメンタルヘルス対策も十分に講じていただくことを、併せてお願いしたいと思っております。

2. です。 5 100 ミリシーベルトの通常被ばく限度を超えた労働者に対するその後の放射線管理についてですが、当該労働者の意向を尊重することはもちろん、心身の健康状態を確認することが何よりも重要と考えています。その上で、通常被ばく限度を超えたこと、あるいは超えそうなこと、あるいはその後の被ばくを伴う通常作業に従事を拒否したことを理由とした不利益な取扱いは、あってはならないと考えております。また、転職等の事情により他の職場で放射線下労働に従事する労働者に対しても、適切な線量管理が必要と考えております。

3. にまいりまして、緊急作業従事期間中の被ばく線量管理です。まず (2) の特例緊急被ばく限度の上限 250 ミリシーベルトというものが示されましたが、こちらについては専門家の皆様の知見に基づく検討の結果と受け止めておりますが、その考え方については、十分かつ丁寧な説明をお願いしたいと考えております。同時に (1) に戻りますが、決して 250 ミリシーベルト目一杯被ばくしてよいということではありません。福島第一原子力発電所事故においては、津波によって線量計が流されたり、事後の内部被ばく測定によって線量超過が判明するなど、こういったこともありましたので、こうした教訓、反省を踏まえて、事前の準備を含めた放射線健康管理に万全を期し、被ばく低減、被ばく防護の最適化を図ることは言うまでもありません。

(3) ですが、福島第一原子力発電所事故では、事故発生直後から今日まで、電力会社の原子力部門だけではなく、送配電部門や協力企業の皆様の御協力も頂きながら対応を図ってきました。特例緊急作業や緊急作業への従事に関して、まずは福島第一原子力発電所事故の実態を十分に踏まえて、原子力施設の重大事故への対応にどのような技術・技能を持った労働者がどのぐらい必要なのかをしっかりと把握した上で、 (4) ですが、対応に必要な労働者に対して、作業内容や健康影響、健康管理等、十分に説明し、同意を得ておくことが不可欠と考えております。

 その上で、 (5) ですが、同意を得た労働者に対しては、必要かつ十分な教育訓練を確実に行っていただくことをお願いしたいと思っております。決して、事前の同意を得ていない、あるいは十分な教育訓練を受けていない労働者が、急遽特例緊急作業等に従事すること、あるいは特例緊急作業、緊急作業への従事を拒否したことを理由とした不利益変更はあってはならないと考えております。

 また、 (6) ですが、放射線管理を十分に講じて被ばく低減に努めることは前提ですが、結果として被ばく限度を超える事態も想定しておくべきと考えておりますし、 (7) の特例緊急被ばく限度の段階的な引下げ・廃止に向けては、関係各位の連携、さらには (8) の被ばくに係る個人情報の管理の徹底についても、御配慮いただきますようお願いします。

 最後になりますが、省令改正施行後の運用に当たりましては、事業者が主体となって対応していくものと考えますが、電力会社はもとより御協力いただける協力企業においても、労働者に対する教育訓練や健康管理、雇用への配慮等十分な対応が図られますよう、監督官庁としても厚生労働省の皆様におかれましては、適切に御助言、御配慮など、フォローいただけますようお願い申し上げ、意見とさせていただきます。ありがとうございました。

○土橋分科会長 御説明ありがとうございました。ただいまの事務局からの報告書の内容、関係団体からの御説明について質問等を受けたいと思いますが、左藤様、甲田様におかれましては、委員の質問に対する説明等、御協力をお願いいたします。質問等はございますでしょうか。

○犬飼委員 今回、ヒアリングの機会を得ましたが、未曾有の事故に真摯に対応されていることに対して、まず敬意を表したいと思います。これを受けて、厚生労働省には現場で尽力されている方々の声を真摯に受け止めて、労働安全衛生施策を行っていただきたいということを、まずお願いしたいと思います。

 その上で、厚生労働省より資料 2-1 で説明がなされましたので、これについて意見を申し上げたいと思います。 3 ページの「通常被ばく限度を超えた者の線量管理」についてです。通常被ばく限度である 5 100 ミリシーベルトを超えた労働者には、確実に中長期的な線量管理が実施されなければならないと思います。中長期的な線量管理は、対象の方について 1 人でも漏れがあってはならない、許されないと考えています。したがって、同一事業者に雇用されている労働者については、中長期的な線量管理が厳格に適用されることをまず求めたいと思います。

 他方、中長期的な線量管理が必要となる労働者が仮に転職等を行い、他の企業等で放射線下の労働に従事する場合であったとしても、中長期的な線量管理が適切に行われなければならないと思っています。したがって、生涯線量の厳格な管理という観点から厚生労働省は施策を講じるべきであると思っておりますが、それについての見解を伺いたいと思います。

○土橋分科会長 事務局側、いかがですか。

○安井電離放射線労働者健康対策室長補佐  1F の事故を踏まえ、厚生労働省では緊急被ばく従事者全ての方を把握するためのデータベースを運用しています。仮に、今後同じような形で緊急作業が行われた場合については、この報告書の概要の 5 ページの一番下に書いていますが、作業終了後に健康診断の結果の写しと線量記録などを報告することを省令上義務付け、これによって住所などの個人情報も把握した上で、厚生労働省のデータベースに入力することで、確実なフォローアップを図っていきたいと考えています。

○犬飼委員 報告とヒアリングを受けたところですので、労働者の命と健康を守るということを第一義に、今後も必要な施策を講じるよう、再度十分な検討をされるように要請をしておきます。

○土橋分科会長 ほかにいかがでしょうか。

○勝野委員 先ほど御説明いただいた概要の 5 ページで、線量管理の在り方というか従事者の限定のところになりますが、原則として原子力事業者の社員であるけれども、当該委託事業者の労働者も要員に含まれるということで、ここの部分では下請の労働者も要員に含まれるという規定になっているかと思います。この中に、下請事業者の場合ですが、現場で作業に従事する下請の事業主等は含まれるのかどうかについてお聞きいたします。

○安井電離放射線労働者健康対策室長補佐 こちらについては、事前に原子力事業者防災業務計画の中で、必要とされる委託事業者の企業名を列記するというルールになっています。これは規制庁のルールになっており、そういった形で特定されると想定していますので、一定規模以上の規模はあるのかなという認識はしております。

○勝野委員 そうしますと、事前に名簿を提出するという形で、現場で作業に従事する事業主なり一人親方も、ここに含まれると考えていいわけですね。

○安井電離放射線労働者健康対策室長補佐 そうです。事前にきちんと特定されていて、教育などをきちんと受けた場合であれば、制度としては従事することは可能です。

○勝野委員 線量管理の対象者として、下請の事業主なり又は一人親方も含まれると考えてよろしいわけですか。

○安井電離放射線労働者健康対策室長補佐 現時点で 1F の経験から申し上げますと、構内に入った労働者について、全ての人間について線量管理を 1 人残らず行っておりますので、将来行われた緊急作業についても同じことになると考えております。

○新谷委員 勝野委員がおっしゃっていた原子力事業者の社員以外への目配りの点です。多分、原子力事業者の社員の方については、防災業務計画を作る際に原子力事業者だからきっちりと目配りはできると思うのですが、緊急事態というのが、将来どのような形で、どのような災害が発生するかは分からない中で、原子力事業者の社員だけでは対応できないようなケース、つまりプラントメーカーの社員であるとか、勝野委員がおっしゃったような一人親方などにも、場合によっては対応いただかないといけないケースも発生するのではないかと思います。

 お聞きしたいのは、防災業務計画というものが一体いつの段階で作られて、万が一事故が起こって災害が発生したときに、それが簡単に改定されて要員として簡単に認定されてしまって、いきなり災害現場へ行けということにならないのかどうか。その辺のチェックは一体どうなっているのでしょうか。

 それから、あらかじめ災害の範囲とか起こり得る対応というのは予想がしにくいというものの、万一の事故に備えて、なるべく広く要員を捉えて、それに対して事前の特別教育などを確実に実施しておかないといけないのではないか。先ほど電力総連の方が御指摘されていたように、原子力事業者の社員の中でも、原子力発電に関わる方以外、例えば送配電部門の方が緊急で対応してきたという実例もあるわけですので、プラントメーカーを含めて、あるいは建設関係の方も含めて広く捉えておく、そういった万全の対策をしておく必要があるのではないかと思いますので、その点についての意見としても申し上げておきたいと思います。

○前田電離放射線労働者健康対策室長 ただいまの防災業務計画の件ですが、実際の緊急事態が発生した場合に円滑に作業が実施できるように、委託範囲が過大とならず、また過小とならないよう、最適な範囲となるように防災業務計画を所管する原子力規制庁と原子力事業者に理解を求めていきたいと考えております。

○左藤氏 原子力事業者の防災業務計画ですが、こちらについては毎年見直しをかけており、関係の自治体などに照会しながら改定作業を行っていくというもので、結果は規制庁にお届けして見ていただく形になりますので、簡単には改定できるようなものにはなっておりません。

○角田委員 緊急事態の医療体制等、よく仕組みができていると思うのですが、被ばくした作業者について、その健康管理は長期的なものであるという認識に立った場合、厚生労働省のデータベースに登録すると。データを登録するのは大変よろしいことであると思いますが、具体的に個人個人の健康状態の変化を見るというのは、事業主の所に所属する産業保健の担当者ということではないかと思うのです。そういうことについてあまり明記されていないような気がするのですが、それについてはいかがなものなのでしょうか。しっかりと産業医なら産業医がデータをウォッチして留意するというようなことが、事業主の所に産業医がいる場合もあれば、中小・零細となると難しいことも出てくるのかなと。少し気になるところなのですが、いかがでしょうか。

○安井電離放射線労働者健康対策室長補佐 大臣指針において、健康管理に関することを各事業者に実施していただくように指導するわけですが、その中に御指摘の産業保健の管理体制をきちんと明確にした上で、メンタルヘルスも含めて事後措置指針、メンタル指針に基づいて、きちんと伺ってくださいということを大臣指針に明記していますので、それに基づいて事業者を指導していきたいと考えています。

○角田委員 私が気になっているところは、中小・零細のような所に所属する方もいらっしゃるかなと。そういうことについて、せっかく厚生労働省のデータベースということがあるなら、どこかで少し工夫がないかなということです。

○半沢委員 資料 2-1 について、意見を申し上げます。 4 ページ、 5 ページに、「緊急作業従事期間中の被ばく線量管理のあり方」があります。 4 ページを拝見すると、福島第一原発事故の際の特例省令において、 250 ミリシーベルトが設定されたということが記載されています。この点、この分科会においては、 2011 4 13 日の第 52 回安全衛生分科会において、特例省令が発出され、 250 ミリシーベルトに設定されたということが事後的に報告された経緯があると認識しております。当時の計画課長からは、今回の事態に限っての措置として 250 ミリシーベルトとしたという説明がなされた経緯はあるわけですが、基準自体について、この分科会において正面から議論がされたという現状にはないのではないかという認識をしています。

 今回は、検討会報告書の内容を踏まえて、 5 ページにあるように、特例緊急被ばく限度の設定について、厚生労働大臣が 250 ミリシーベルトを超えない範囲で被ばくの限度を別に定める。また、緊急事態、それに至る恐れの高い事態のときには、直ちに 250 ミリシーベルトを定めるという方向性が示されているわけです。

 電力総連さんの御意見にもありましたように、また改めて言うまでもないのですが、仮に特例緊急被ばく限度が適用されたとしても、被ばくは可能な限り少なくするべきでありますし、労働者 1 人当たりの線量を極力少なくするということ、それから被ばく者数を極力少なくすることについては、大変重要な観点であると考えています。検討会において、厚生労働省からも不要な被ばくは絶対に許さないとの発言がなされたことも確認させていただいております。報告書では、今後、福島第一原発の経緯を踏まえて、仮にそういった場合においても実際に 250 ミリシーベルトを超える線量を受けて作業する必要が現時点では見いだし難いという言及があります。

 また、 22 ページですが、当時 250 ミリシーベルトという限度を採用したことは保守的ではあるが妥当であるということが示されています。これらは医学的な見知からの意見と認識しています。

 そのほかにも、検討会においては全作業員の震災発生後からの累積の被ばく線量も示されているわけです。具体的には、 2011 3 月から 2014 10 月までの 3 年半の累積線量として、 250 ミリシーベルトを超えた方が計 6 人、 200 ミリシーベルトを超えた方が計 9 人、 150 ミリシーベルトを超えた方が計 36 人ということです。医学的な見知を踏まえたということは十分に理解しつつ、こうした実績等を見れば、基準値を定めるに当たっては 250 ミリシーベルトを踏襲するということは慎重に考える必要があるのではないかと考えております。

 急性障害の発生する恐れのない 250 ミリシーベルトを基準値とするに当たって、事務局はいろいろな場において、ここの場においても、更に十分かつ丁寧な説明を行っていただいて、その上で審議がなされるべきと考えているところです。この点についてお考えがありましたらお願いしたいと思います。

○前田電離放射線労働者健康対策室長 被ばく防護の最適化という、できるだけ被ばく線量を少なくするという考え方については、こちらの報告書の内容を踏まえて省令に、事業者が特例緊急作業者について被ばく線量をできるだけ少なくするよう努めることを規定する予定です。また、特例緊急被ばく限度の上限値の 250 ミリシーベルトについては、この報告書を踏まえて、東電福島第一原発の事故の経験と、免疫機能の低下の予防という観点から、定められたことを十分に説明していきたいと考えています。

○土橋分科会長 ほかに御発言はございませんか。

○鈴木委員 万が一、防災業務計画で定める防災組織の要員で足りないような事態が発生した場合に、規定された教育や本人の同意等を得られれば、ここに記載のない要員でも補強するようなお考えはあるのですか。そういう事が可能かどうかということです。

○前田電離放射線労働者健康対策室長 一応この電離則の考え方でいきますと、事前に特例緊急作業従事者を指名して、きちんと教育を行うということで、その要員の範囲内で対応していただくということを前提に考えています。

○安井電離放射線労働者健康対策室長補佐 先ほど半沢委員から 250 ミリシーベルトについて指摘のあった点について、 250 ミリシーベルトの根拠についてもう少し詳しく説明させていただきます。

 まず、報告書の 29 ページ以降に、医学的に被ばく線量と造血機能の低下、これは言ってみれば急性障害に関わる文献のレビューを行ったものがありますので、その内容だけをごく簡単に説明させていただきます。

31 ページに「考察」という所があります。まず、 ICRP 500 ミリシーベルトまで緊急の被ばく限度を認めています。これについては、 500 ミリシーベルトまでは急性障害は起きないのではないかという前提に立っているということです。ただ、今回のレビューで、この 31 ページの下のほうに書いていますが、 ICRP で引用されている文献の多くは、必ずしも急性被ばくではないということと、必ずしも人間に対する研究の結果ではなかったということがあります。また、非常に時期も古いものも多かったということです。

32 ページですが、結果的にはっきりしたのは、 600 ミリシーベルト程度の被ばくをすると、一定の造血機能に急性影響があることは間違いないということです。なおかつ、 250 ミリシーベルトを下回っていると発生しないという、この 2 点しか分からないということでして、リンパ球数の減少のしきい値は 250 ミリシーベルトから 500 600 ミリシーベルトの間に考えられるということですが、データ数が少ないためにしきい値が大体これぐらいだと定めるのは難しいという状況となっています。

 ここからは技術的な判断となるわけですが、 ICRP としては 500 ミリシーベルト程度であれば重篤な障害はないだろうという判断で 500 ミリシーベルトという判断をされたと思いますが、厚生労働省としてはしきい値がはっきりしないというところもありますので、 250 ミリシーベルトであれば確実にしきい値を下回るということが言えるのではないかという趣旨から、しきい値を確実に相当程度下回っているという意味では、保守的すぎるという御批判はありつつも、 250 ミリシーベルトで判断したということは妥当ではないかといった御検討の結果があります。

○新谷委員 報告書の本体の医療体制の点です。福島第一原発の経験を踏まえてということも説明を頂いたわけでして、私たちも福島第一原発の事故後に、当然、構内には入れなかったのですが、前線基地であった J ヴィレッジに行きまして、東京電力労働組合の代表者の方々と意見交換をしました。一番困ったのが医療体制に関してで、常駐の医師がいないということを意見交換の際に言われました。当時は福島第一原発へのアクセス道路もガタガタ道の状態で、患者とか病人が出たら 20km 離れた J ヴィレッジまで連れて来るのが大変だと。常駐の医師がいないということもありましたが、そういった経験を踏まえて、今回はあらかじめ登録医療スタッフを育成しておくということですので、かなり緊急事態の対処は進むと思います。

 ただ懸念するのは、これの実際の運営に際してです。医師も労働者ですので、緊急事態が起こったときには、国立病院機構とか労災病院などから医師を中心に派遣いただいて、初めは日勤で、その後に 24 時間という体制になったと思いますが、今後、運営主体に登録された方が実際に現地に入って医療という労働に従事した際、医師に対して万が一のことが起こったときの保障体制については、もともと雇用関係にある組織と運営主体との関係がどうなっているのか、それはもちろん労災の適用がどうなっているかということも関連するわけですが、その辺が分かれば教えていただきたいと思います。

○安井電離放射線労働者健康対策室長補佐 報告書の 13 ページをお開きいただきますと、 4 「医療スタッフ等の派遣と身分保障」という所があります。御指摘の、仮に何らかの事故などが派遣医療スタッフに発生した場合の保険などについては、派遣先となる原子力事業者の責務とするという方向で検討しており、こちらについては有識者の検討を行うときに電気事業者の方にも御参加いただいておりますので、このラインで御了解いただいているものと考えております。

○新谷委員 分かりました。ここの「身分保障」という中に保険というのは、労災相当以上の保険を含むという理解でよろしいのでしょうか。

○安井電離放射線労働者健康対策室長補佐 詳細につきましては、これから検討いたしますが、当然そういったことになるようにしたいと考えています。

○新谷委員 了解しました。

○城内委員  1 点気になっているのは、資料の中にもありますし、今までの御発言の中にもあったのですが、「丁寧な説明」「教育」ということが言われていまして、私もそれは重要だと思っています。

 実は、放射線の防護に関しては、一般的には事故の前までは 1 年間の被ばく量を 1 ミリシーベルトにしましょうというのがコンセンサスとしてあったと思うのです。それが、事故後はそれが何百倍にもなって、それぐらいだったらいいでしょうという数値が出ているわけです。これはもちろん対象とする影響が慢性影響か急性影響かということもありますし、いろいろなデータに基づいて出てきていることも分かるのですが、実はそこの 1 ミリシーベルトが緊急時は何百ミリシーベルトでいいのだというところの説明というのは、実は福島の原発事故以前も以降も、行政等からきちんとした説明がなされていないと思っています。そこのところを労働者に向けて説明することが、丁寧な教育とか説明に関わってくると思いますので、是非その辺を検討していただければ有り難いと思っています。

○安井電離放射線労働者健康対策室長補佐 先ほど「 1 ミリシーベルト」という御発言がありましたが、それは一般公衆の計画表の上限が限度ということですので、放射線業務従事者に関しては、生涯 1 シーベルトというのを前提にして 50 年間働くことを前提にした上で、それを 10 分割するという形で 5 100 ミリシーベルトということにしています。それを押しなべて平均すると、 1 年当たり 20 ミリシーベルトになるわけですが、一定の裕度を与えるという形で、年間当たりの 50 ミリシーベルトまでは認めるというのが ICRP の勧告となっています。

 緊急被ばく限度については、従来から ICRP において定めがあり、国際基準、 ICRP IAEA については 500 ミリシーベルトという数字があります。これについて、先ほど御説明いたしましたとおり、できるだけ線量は低くあるべきだということと、急性障害を確実に予防するという観点から、日本においては 250 ミリシーベルトを採用したという経緯がございます。それについて今回レビューを頂き、「保守的であるが妥当だ」という御判断を頂きましたので、ほかの原子力発電所においても、それを採用することを考えているというところです。

○土橋分科会長 ほかに御発言等はございますでしょうか。それでは、両団体から御説明を頂き、また委員の方々からいろいろ御意見を頂きましたが、全体を踏まえて事務局から何かございますか。

○前田電離放射線労働者健康対策室長 先ほどの電気事業連合会さんと電力総連さんからの意見に沿って回答させていただきます。

 まず、電力総連さんの意見の 1 の関係の健康管理と医療体制の確保についてです。緊急作業従事者に対する長期健康管理については、この報告書の第 1 の部分を踏まえ、大臣指針を改正し、新たながん検診の項目、ストレスチェックなどを盛り込む予定です。

 また、緊急作業期間中の健康管理については、報告書の第 2 を踏まえ、緊急作業期間中の健康診断を省令で義務付ける予定です。また、医療体制の確保については、報告書の第 3 を踏まえ、原子力事業者と連携を図りつつ、予算事業により医師等の派遣体制や緊急搬送体制の整備を図っていきたいと考えております。

 続いて、通常被ばく限度を超えた労働者に対する医師の面談や助言による健康状態の確認ということで、意見の 2 の関係です。通常被ばく限度を超えた方が事故発生時を含む線量管理期間で、年間 5 ミリシーベルト以下の範囲で放射線業務に就く場合については、この報告書を踏まえ、大臣指針においてあらかじめ医師による診断を受けさせることを規定する予定です。

 また、通常の被ばく限度を超えた方が次の線量管理機関で放射線業務に就く場合は、電離健診の実施により心身の状況を確認することを事業者に求めるとともに、この報告書の内容を踏まえ、大臣指針により 5 年当たりの被ばく限度を当該労働者に通知することを規定する予定で、十分な説明を尽くすように指導していきたいと思っております。

 また、被ばく防護の最適化、特例緊急被ばく限度の値とその引下げ廃止についてです。意見の 3 (1)(2)(7) の関連です。被ばく防護の最適化については、この報告書の第 5 の部分を踏まえ、省令に事業者が特例緊急作業者について被ばく線量をできるだけ少なくするように努めることを規定する予定です。

 また、特例緊急被ばく限度の上限値については、報告書の第 5 を踏まえ、東電福島第一原発事故の経験と免疫機能の低下の予防という観点から、定められたことを十分に説明していきたいと思っております。

 また、特例限度の値については、この報告書の第 5 の内容を踏まえ、厚生労働大臣告示で定める予定です。事故対応の進捗状況を踏まえ、関係省庁と連携を図りつつ、可及的速やかに引下げ又は廃止を行ってまいりたいと思います。

 続いて、労働者からの同意の取得、緊急作業又はその後の通常作業への従事を拒否した場合の不利益変更についてです。意見の 2 3 (4)(6) の関連です。緊急作業に従事させる場合については、報告書の第 6 を踏まえ、事前に特別教育を受講させた上で、原子力防災業務計画の防災要員であらかじめ指定されることを省令で規定する予定です。

 続いて、原子力防災要員の選定に当たっては、報告書の第 5 を踏まえ、事業者に対して労働条件を明示した上で、双方合意の上で労働契約を締結するとともに、実際の作業への配置に当たっては労働者の意向に可能な限り配慮すべき、と報告書に記載されていると考えておりますので、その旨を事業者に指導していきたいと思っております。

 また、緊急事業に従事することで通常被ばく限度を超えてしまった場合、労働者が不利益な取扱いがなされることがないよう十分配慮するとともに、その処遇、配置等については、本人の意向を十分に尊重するよう事業者を指導してまいりたいと考えております。

 続いて、意見 3 (3) と、電気事業連合会さんからの御意見にありました特例緊急作業従事者の限定についてです。特例緊急作業従事者を原子力防災業務計画上の防災要員に限定する趣旨は、あらかじめ緊急作業に必要な教育や緊急作業の準備を確実に実施するためであり、必要なことと考えています。この趣旨から、特例緊急作業の対象者となる原子力防災業務の一部を委託する場合は、報告書の第 5 を踏まえて、実際の緊急事態が発生した場合に円滑に作業が実施できるよう、委託範囲が過大とならず過小とならないように、最適な範囲となるように防災業務計画を所管する原子力規制庁と、原子力事業者に理解を求めていきたいと思っております。

 なお、報告書の第 6 にありますが、建設重機の運転手などの特殊技能者につきましては、通常被ばく限度の範囲内で作業に従事することは可能であり、特例緊急作業従事者と役割分担を行い一部の労働者に被ばくが集中しないよう、事業者を指導してまいりたいと考えております。

 続いて特別教育についてです。意見の 3 (3) (5) の関連です。特別教育については、本報告書の第 6 を踏まえ、従来の特別教育に対する上乗せ教育として省令で義務付けるとともに、指針により定期的な再教育の実施を指導していく予定です。

 最後に、被ばくに係る個人情報管理の徹底です。意見 3 (8) 関連です。雇用管理分野における個人情報保護に関するガイドライン、平成 24 年の厚生労働省告示です。そちらにのっとり、適切に指導していきたいと考えております。以上です。

○土橋分科会長 それでは「東電福島第一原発作業員の長期健康管理等に関する検討会」報告書について、報告を受けたということで議題 2 は終了します。なお、報告書の内容には関係の省令改正を要する内容も含まれています。今後、事務局においては省令案を検討していくに当たって、本日の御意見も参考にしていただければと思います。また、委員の皆様におかれましては、今後、省令案要綱を諮問する際には、皆様に御審議いただくことになりますので、よろしくお願いいたします。

 それでは、左藤様、甲田様、本日はお忙しい中ありがとうございました。

 次の議題に移ります。 3 つ目の議題、「労働安全衛生法の一部を改正する法律の一部の施行期日を定める政令案要綱、労働安全衛生法施行令及び厚生労働省組織令の一部を改正する政令案要綱及び労働安全衛生規則及び産業安全専門官及び労働衛生専門官規程の一部を改正する省令案要綱について」、事務局から説明をお願いします。

○森戸化学物質対策課長 化学物質対策課長です。私から説明いたします。資料 3-1 に諮問文と「労働安全衛生法の一部を改正する法律の一部の施行期日を定める政令案要綱」等の要綱が載っています。内容については資料 3-2 と資料 3-3 で説明いたします。

 最初に資料 3-2 「労働安全衛生法の一部を改正する法律の一部の施行期日を定める政令案概要」です。平成 26 6 25 日に労働安全衛生法の一部を改正する法律が公布されましたが、化学物質関係については、公布の日から 2 年以内に施行することとされておりました。このため、施行期日を平成 28 6 1 日とするという政令を定めたいということです。

 資料 3-3 の、労働安全衛生法施行令及び厚生労働省組織令の一部を改正する政令案要綱等についてです。この内容につきましては、大きく分けて 2 点あります。まず第 1 点目が「表示義務対象物の範囲の拡大等」です。 1 の「改正の趣旨」に書いてありますが、平成 25 12 25 日に当審議会で建議いただきました「今後の労働安全衛生対策について」において、労働者が化学物質を取り扱うときに必要となる危険性・有害性や取扱上の注意事項が確実かつ分かりやすい形で伝わるよう、表示義務対象物の範囲を一定の危険性・有害性が明らかになっている物質 (SDS 交付義務対象物質 ) まで拡大するという建議を頂きました。

 「改正の概要」は、現行の SDS の表示対象義務となっている 640 物質まで拡大をするという中身です。ただ、この建議を頂いたときに、国際的な整合性に留意するということを頂いておりますので、それに関連したものが (2) の「固形物の適用除外の創設」に関係するところです。

EU の表示品についての規制の CLP 規則においては、塊状の金属、合金、ポリマーを含む混合物 ( プラスチックなどの固定されているもの ) と、エラストマーを含む混合物 ( ゴムみたいなもの ) の中で、市場に出た状態において労働者に危険・有害性を有しないものについては、 SDS が提供されていれば表示対象から除くことができるという規定があります。これに対応するために設けるものです。

 具体的には 2 ページの下にありますが、いわゆる鋼材などについて除外するということです。ただし、固形物でもダイナマイト等の爆発物といった危険物、あるいは水酸化ナトリウムなども粒状で譲渡される場合がありますが、こういった皮膚腐食性のあるものについては、引き続き表示対象とすることを考えているところです。

 その結果、政令においては物質を指定しておりますので、 1 にありますが、先ほど申し上げた塊状の金属、合金の単体を除くという趣旨からイットリウム、インジウム、カドミウム以下の金属、フェロバナジウムだけが合金ですが、こういったものの単体については、粉体に限って表示対象にするとしております。他のものについては、混合物ですので、省令に下ろして、「譲渡又は提供の過程において固体以外の状態ならず、かつ粉状にならないもの」について適用除外をするということです。ただし、危険性のあるもの、また皮膚腐食性のあるものについては、引き続き表示義務の対象とするという内容です。

(3) は今回新たに表示義務を課しますので、裾切り値の新たな設定が必要です。この裾切り値の設定については、 GHS に基づく分離を踏まえて決定したいと考えております。具体的には 3 枚目に「表示対象物及び通知対象物の据切り値の考え方」と載せてあります。「表示」の所を見ますと、生殖細胞変異原性の区分 1 、発がん性の区分 1 といった非常に重篤な疾病を起こす恐れのあるものについては 0.1 、取扱いが非常に慎重でなければならないような呼吸器感作性を持つ気体については 0.2 、生殖毒性の区分 1 のものについては 0.3 、それ以外のものについては 1.0 を考えています。「通知」については、先ほど申し上げたような有害性の高いものについては 0.1 、それ以外のものについては 1.0 とする予定です。

1 ページに戻って (3) 2 つ目の○です。併せて既存の表示対象物及び通知対象物に係る裾切り値についても見直すということで、最新の GHS に基づく分類を踏まえて、既存のものについても新たな考え方による裾切り値を示すことを考えております。表示対象物については、 2 物質については規制を強化し、 2 物質については緩和をすることになっています。通知対象物については、 16 物質について規制が強化され、 18 物質については規制が緩和されることにしたいと考えています。

4 ページは、労働安全衛生規則改正の関係のリスクアセスメントの関係です。これは法 57 条の 3 に基づき、厚生労働省で定めるところにより、リスクアセスメントを実施しなければならないとされたことに伴う厚生労働省令の概要です。改正の内容としては、調査の実施時期、調査の実施方法、調査結果の労働者への周知の 3 点です。

 最初に「調査の実施時期」です。これは現行法第 28 条の 2 に努力義務としてリスクアセスメントが義務付けられておりますが、ここでは設備の新設あるいは変更のときに行わなければならないとされていますが、これを化学物質に移し換えて分かりやすくするということで、イ、ロ、ハの規定をしたいと考えています。

 イとして「調査対象物を新規に採用し、又は変更をするとき」。ロとして「調査対象物を製造し、又は取り扱う業務に係る作業の方法又は手順を新規に採用し、又は変更をするとき」。これは既に化学物質を使っていても違う用途に使うとか、作業手順を変えることを想定しているものです。ハとして「イ又はロのほか、調査対象物による危険性又は有害性等について変化が生じ、又は生ずるおそれがあるとき」。これは先ほど表示と SDS のところで申し上げましたが、 GHS に基づく分類については、ずっと固定ということではなく、新しい動物実験の結果や疫学調査の結果があれば変わることがあり得るということで、その場合について新たに有害性が、例えば発がん性が発見されたとなれば、そういった物質については、その時期にリスクアセスメントを実施していただくということです。

 次に (2) の「調査の実施方法」です。これについてはイ、ロ、ハの 3 つを規定することとしています。イは、労働者に危険を及ぼし、又は健康障害を生ずる恐れの程度 ( 発生可能性 ) 及び当該危険又は健康障害の程度 ( 重篤度 ) 。いわゆる発生の可能性と重篤度でやる方法。ロは、調査対象物にさらされる程度、作業環境におけるばく露濃度です。それと当該調査対象物の有害性の程度 ( 許容濃度 ) を比較する方法。ハは、その他、イ又はロに準ずる方法です。

 具体的には 5 ページです。イの方法としては、マトリクス法、あるいはその数値化による方法、枝分かれ図を用いた方法、こういったものが現行の指針にも示されておりますが、こういったものを新たに定める指針においても定めるという考え方です。例えば、 6 ページの例 1 ですが、これは発生の可能性と重篤度で評価するというものですが、発生の可能性については、例えば普段の作業でずっとそれがあるということになりますと「極めて高い」ということになると思いますし、月 1 回あるいは年 1 回の検査のときだけ、あるいは設備が故障した場合のみ生じるといった発生の可能性と、それに伴って実際に起きる災害の程度というか、死亡災害に至るのか、休業災害にとどまるのか、そういったもので判断をする方法です。

7 ページは有害物質の例で載せてありますが、有害性の程度が重篤度で、発がん性がどういう区分であるのか、急性毒性がどういう区分なのかで重篤度を見る。この場合は急性毒性が区分 2 ということで、下の 3 にありますように、有害性の点については B として見るという方法です。

 さらされる程度については、作業時間がどのぐらいあるのか、取扱量がどのぐらいあるのかということで、さらされる程度を判断し、この場合は 4 ということでリスクをするという方法です。

5 ページに戻ってロの方法です。いわゆる作業環境のばく露濃度と許容濃度を比較する方法です。これについては 1 にありますように、実際に物質の濃度を測定して許容濃度と比較する方法もありますし、労働者へのばく露濃度を推定して許容濃度と比較する方法があります。これはこれまでも御説明しましたが、いわゆるコントロール・バンディングといわれている化学物質リスク簡易評価法でもよろしいですし、日本化学工業協会 ( 日化協 ) がホームページで公開している ECETOC TRA はコントロール・バンディングよりも詳細にばく露濃度を推定する方法ですが、こういった方法でもよいと考えています。

 ハは、その他、イ又はロに準ずる方法です。 1 に書いてありますが、例えば特化則等で具体的に名称を挙げられている物質については、同規則において具体的な措置が規定されておりますので、そういった物質の場合には、具体的な措置がどのように規定されているのか確認する方法を採ってもよいということです。危険物についても、爆発物あるいは引火性のもの、発火性のもの、いろいろな形で別表 1 で規制されており、具体的な措置については労働安全衛生規則に書いてありますので、そこで確認する方法でもよいということです。

2 の危険物については、別表 1 は性能規定が全てなっておらず、物質指定もありますので、そういう意味で SDS に危険性があると書いてある、例えば爆発物ということで SDS に書いてあれば、労働安全衛生法上の爆発物に該当しなくても、労働安全衛生法上、爆発物に対して行う措置を確認して、その規定の対策を行うという方法でもよいとする予定にしています。

4 ページに戻って (3) です。これも建議にあった内容ですが、リスクアセスメントをした結果について、あるいは事業者がこれによって講ずべきとした措置については、作業場の見やすい場所に常時掲示する、あるいは備え付ける、パソコン等でいつでも見られるようにするといった方法により、労働者に周知しなければならないという規定を設けるということです。

 このほか、省令案要綱においては、法第 28 条の 2 の現在の努力義務に基づくリスクアセスメントに関連するいろいろな労働安全衛生法関係の規定があるわけですが、今回新たに義務化される法第 57 条の 3 のリスクアセスメントについても、同様の規定を設けるということで、総括安全衛生管理者の職務に追加する、あるいは安全委員会、衛生委員会の付議事項に追加するといった改正も併せて行っているところです。私からの説明は以上です。

○土橋分科会長 ただいま説明いただきました要綱案の審議に移りたいと思います。質問等はありますか。

○縄野委員 資料 3-3 4 ページの 2. (1) に調査の実施時期が記載されていますが、 1 点、確認をさせていただきます。事業者が今回、新たにリスクアセスメントの義務付け対象となる化学物質を既に使用している場合には、本制度の改正に伴い、リスクアセスメントの実施が求められるかどうかについて伺いたいと思います。

○森戸化学物質対策課長 この法におきましては「新たに」ということですので、従来から使用しているものについては、この法律による義務は課されないところです。

○縄野委員  4 ページの 1. にありますように、事業者については調査の結果に基づいて法令の規定による措置を講ずるほか、労働者の危険又は健康障害を防止するため必要な措置を講ずるよう努めることになるわけですが、仮にこうした必要な措置を講じない事業者が発生した場合、厚生労働省としてどのように法令違反を把握し、あるいは指導、対応を行うのか、お考えを確認したいと思います。

○森戸化学物質対策課長 法律に基づいている規制については、所定の措置をしなければ当然法違反になりますが、労働安全衛生規則に一般規定があって、事業者については有害な程度にならないようにしなければいけない、ばく露防止措置を講じなければいけないという規定がありますので、その規則を使って措置をやるように指導することになると思います。

○縄野委員 労働者の生命と健康を守るためには確実な取組が求められるところですので、今後の実施状況については、本分科会において御報告を頂くとともに、必要に応じて対応を本分科会で議論をしていただくことも併せて申し上げたいと思います。以上です。

○半沢委員 新たにリスクアセスメントの対象になる物質を既に使っている場合、それに対するリスクアセスメントを行う義務は生じないと御答弁いただいたように聞こえました。私の聞き間違いかもしれませんが、それでよろしいのでしょうか。

○森戸化学物質対策課長 そのとおりです。

○半沢委員 そうすると、リスクアセスメントが必要な物質であるにもかかわらず、そういった調査が行われないという状態が継続することを懸念するのですが、その辺りについてはどのようにお考えですか。

○森戸化学物質対策課長 その辺りにつきましては、国会でも問題とされたところですので、私どもは指針を出す予定にしておりますが、その指針の中に、これまでリスクアセスメントを実施していない所については実施するようにすべきであるということを設けて、今回、法令の周知を行いますが、併せてその指針の周知を行うことによって、これまでリスクアセスメントを行っていない所がありましたら、実施するように指導をしていきたいと考えています。

○城内委員  1 つだけお願いですが、資料 3-3 の中で「危険性又は有害性等を調査 ( リスクアセスメント ) 」という文章が出てくるのですが、危険性又は有害性等を調査することは、リスクアセスメントの一部ではあると思いますが、これはリスクアセスメントそのものではないと思いますので、文章の書き方を工夫していただいたほうがいいかと思います。というのは、こういう言葉の使い方が行政から出ますと、多分、危険性又は有害性の調査をしただけでリスクアセスメントだということになりかねないかなと思っていまして、懸念しています。リスクアセスメントというのは 5 ページ以降に書いてあるようなリスクがあるかどうかを評価する言葉として使われていると思いますので、検討していただければと思います。よろしくお願いします。

○森戸化学物質対策課長 法令におきましても、危険又は有害性等の調査で「等」を付けてリスクアセスメントということだと思いますので、今後はリスクアセスメントの内容が明確になるようにしたいと考えます。

○新谷委員 政令案要綱並びに省令案要綱についての諮問案件ですので、労働側としての見解を申し上げたいと思います。今回の施行時期及び必要な措置を定める内容については、妥当な内容であると受け止めてはおります。ただ、先ほども論議、やり取りがありましたように、今後、出される指針あるいは改正内容の周知等、施行の準備を進められているとは思いますが、化学物質を扱っている最前線の職場において混乱が起きないように、十分な周知等の取組をお願いしたいということを 1 点申し上げたいと思います。

 それと、今回の改正内容については、これまでのこの分科会での論議を踏まえてということになりますが、重要なリスクアセスメントの実施結果について一定期間の保存を義務化する等々、まだまだ論議する内容が残っています。今後、この取扱いが終わったあと、労働側としては本分科会での論議をお願いしたいということを申し上げまして、この諮問内容については了承したいと思います。以上です。

○土橋分科会長 ほかにいかがですか。使用者側から何かありませんか。

                                    ( 異議なし )

○土橋分科会長 ほかに御発言ありませんか。それでは、当分科会としては、議事 3 の「労働安全衛生法の一部を改正する法律の一部の施行期日を定める政令案要綱、労働安全衛生法施行令及び厚生労働省組織令の一部を改正する政令案要綱及び労働安全衛生規則及び産業安全専門官及び労働衛生専門官規程の一部を改正する省令案要綱」につきまして、妥当と認めることとしてよろしいでしょうか。

                                    ( 異議なし )

○土橋分科会長 ありがとうございます。それでは、事務局で手続をお願いいたします。最後に議題 4 「心理的な負担の程度を把握するための検査及び面接指導の実施並びに面接指導結果に基づき事業者が講ずべき措置に関する指針について」、議題 5 「職場の受動喫煙防止対策に係る技術的留意事項に関する専門家検討会報告書について」、議題 6 「独立行政法人に係る改革を推進するための厚生労働省関係法律の整備等に関する法律について」の 3 つの報告案件について、まとめて報告を受けたいと思います。事務局から 3 つの報告について、続けて説明をお願いします。

○井上産業保健支援室長 まず、資料 4 の「心理的な負担の程度を把握するための検査及び面接指導の実施並びに面接指導結果に基づき事業者が講ずべき措置に関する指針」について、御説明したいと思います。この指針の案については、本年 2 17 日から 3 18 日までパブリックコメントの手続を取りました。その後、 4 15 日に官報により公示を行い、指針として公表したものです。この指針については、改正労働安全衛生法に基づくストレスチェック制度が、適切かつ有効に実施されることを確保するために、その制度の具体的な運用について示したものです。

 内容としては資料 4 のとおり、この制度が労働者のメンタルヘルス不調の未然防止であるという基本的な考え方、ストレスチェック制度の実施体制や実施方法を衛生委員会において調査・審議していただくこと、ストレスチェック、面接指導の具体的な実施方法などについて、集団ごとの集計・分析結果、分析の実施方法、そのほか労働者に対する不利益な取扱いの防止の件、労働者の健康情報の保護について定めたものです。

 この指針の内容については、法律と 4 15 日に公示した省令・通達の内容と併せて、ストレスチェック制度全体の周知を図っていきたいと思っております。 4 20 日、 5 7 日には本省においても説明会を開催し、その内容について周知をしたところです。今後、全国的に各都道府県の労働局、労働基準監督署においても様々な機会を通じて、関係者並びに事業場に対して周知を図っていきたいと思っております。また、ストレスチェックを実施する医師、保健師等に対しても、全国の産業保健総合支援センターにおいて研修を実施したいと思っており、 12 1 日からのストレスチェック制度の円滑な施行に万全を期したいと考えております。

○泉労働衛生課長 続いて資料 5 に基づき、「職場の受動喫煙防止対策に係る技術的留意事項に関する専門家検討会報告書」について御報告いたします。資料 5 2 枚目を御覧ください。改正労働安全衛生法の中の受動喫煙防止部分については、平成 27 6 1 日からの施行になります。内容は、労働者の受動喫煙を防止するために、事業者及び事業場の実情に応じ、適切な措置を講ずることを事業者の努力義務とするものです。つまり、改正法では事業者の自主的な取組を求めるわけですが、具体的にどのような取組をしたら、より効果的に対策できるのかといったことについて、技術的な手法等について、情報を提供する必要があるだろうということで、有識者を参集し、受動喫煙防止対策の技術的な留意事項について検討する場を設けました。参集者は、資料の (2) にあるとおりです。

 配布資料の後ろに添付しています検討会の報告書の内容については、次の (3) で御説明いたします。この報告書の検討に当たっては、受動喫煙防止対策について 3 つのパターンに分け、具体的な内容を検討しております。 1 つは、屋内を全面禁煙とし、屋外に喫煙所を設ける場合です。もう 1 つは、屋内において喫煙室を設けて空間分煙とする場合です。それから、飲食店や宿泊業における換気措置とする場合です。この 3 つの場合に分けて、設置場所や施設の構造、措置の効果の確認方法、効果的な使用方法の周知について検討し、その内容を報告書にまとめております。このスケジュールについては平成 26 10 月から検討を開始し、 3 回の検討会を行い、報告書はこの 5 15 日に公表したという経緯になっております。

 配布資料の 1 枚目に戻ってください。この報告書を踏まえ、今回の改正法に関する関係法令の整備を行いました。まず、「局長通達」という形でこの法律の解釈等を示していまして、努力義務の内容は、それぞれの事業者が実情を把握・分析し、実施可能な措置のうち、最も効果的なものを講ずるよう努めることであるといった解釈を示しています。その実情の例としては、妊婦、未成年等の労働者がいる場合に配慮することなどを記載しております。また適切な措置として、施設・設備面だけでなく、ソフト面の対策も含まれると記載しており、様々な措置を決定する際の手続としては、衛生委員会等で検討することとしています。ここでは、衛生委員会等の付議事項の中に、職場の受動喫煙防止対策が含まれるという解釈も併せて示しております。

 また、今回の局長通達を出すに当たり、もともとあった「職場における喫煙対策のためのガイドライン」は廃止し、その内容のうち引き続き必要な事項は、新たな局長通達・部長通達に移行させております。もともとこのガイドラインは、受動喫煙防止対策が快適職場の規定に基づき作られていたものでしたが、今回、健康保持増進対策に移行しましたので、ガイドラインを廃止し、この形にしております。

 それから、局長通達の下に「部長通達」があります。ここでは更に局長通達をブレークダウンした具体的な内容を記載しております。先ほど御紹介した報告書に盛り込んだ具体的な取組方法とか職場の空気環境の測定方法については、部長通達の一部という形で具体的な情報提供をするという形にしています。

○美濃計画課長 続いて資料 6 を御覧ください。前回、この分科会において「独立行政法人に係る改革を推進するための厚生労働省関係法律の整備等に関する法律」案について、その概要を御報告申し上げました。その後、衆参両院の厚生労働省委員会による審議を経て、 4 24 日の参議院本会議において可決成立し、 5 7 日に公布されたので御報告申し上げます。なお、この法律案については資料 6 5 ページを御覧ください。

 御覧のように、参議院厚生労働委員会より附帯決議がなされております。研究に関しては 2 点の指摘がなされております。 1 点目は、労働安全衛生総合研究所の労働災害防止に係る基礎・応用研究機能と、労災病院が持っている臨床機能との一体化による研究の充実です。もう 1 点は、労働安全衛生総合研究所における調査研究業務が統合によって後退することがないよう、十分な体制を維持するための必要な措置を講ずることという内容です。この附帯決議を踏まえ、来年 4 月の統合に向けて、今後、具体的な業務の実施体制等を検討していきたいと思っているところです。

○土橋分科会長 それでは 3 つの報告を受けましたけれども、質問等はありますか。

○小畑委員 資料 4 の指針の関係で申し上げたいと思います。この指針の内容については、労働側委員も参画して取りまとめた労働安全衛生法に基づくストレスチェック制度に関する検討会報告書の内容を踏まえたものと認識していますので、本年 12 月の施行に向けて、厚生労働省においては引き続き周知啓発等に万全の体制で臨んでいただきたいと思います。

 また、今回の法改正では従業員 50 人未満の事業場では当分の間、努力義務ということになりましたが、労働側から再三再四申し上げていますように、建議を取りまとめた労働政策審議会の総意は、あくまでも 50 人未満の事業場を含めた全ての事業場において実施するというものでした。この点を踏まえ、地域の産業保健事業の拠点である地域産業保健センターの支援を強化するなどし、 50 人未満の事業場においてもストレスチェックが実施されるよう、積極的な取組を進めていただきたいと思います。

○土橋分科会長 ほかにいかがでしょうか。

○辻委員 資料 5 の受動喫煙防止対策について、意見を述べさせていただきます。先ほどの説明にありましたとおり、本年 6 月より受動喫煙防止対策の努力義務化がなされることを踏まえ、厚生労働省より通達が出されました。この対策を実効あるものとするために、本当に受動喫煙防止対策が各職場で実施されているのか定量的に確認し、課題があれば必要な措置を講ずることが重要と考えております。 12 次防では職場で受動喫煙を受けている労働者の割合を、目標年である 2017 年度までに 15 %以下にすることとしております。受動喫煙防止対策の進捗状況について、本分科会に適宜報告を頂くとともに、 12 次防で掲げた目標が必ず達成されるように、本分科会での議論を踏まえ、必要な措置を講じていただくべきと考えております。

 なお、これまでも繰り返し申し上げているとおり、今回の改正労働安全衛生法では、受動喫煙防止対策は努力義務とされましたが、労働側としてはあくまでも義務化すべきであると考えていることを、意見として申し上げておきます。

○明石委員 ストレスチェックの省令告示が、厚生労働省のホームページ上に出されていると思います。その中に、検査後の労働基準監督署への報告があります。そこに集団分析の有無を書く欄があるのですが、これは努力義務なので、義務としての報告の中に入れるのはふさわしいのですか。

○井上産業保健支援室長 報告について私どもは、今回のストレスチェックの制度がどういうように運用されているかということについて、全国的に把握したいと思っております。その報告をもって、やっていないからといって事業場のほうに伺って確認したり指導したりということまでは、当面は考えていないのです。取りあえず、今回の努力義務の部分がどういった状況にあるかということを把握させていただきたいということで、今回報告の中に入れているわけです。

○明石委員 前から申し上げているように、ストレスチェックについては、義務と努力義務は分けていただかないと、事業場は混乱します。そこはしっかりと分けていただきたい。それと労働基準監督署に出したときに、誤った監督が行われないようにお願いします。

○土橋分科会長 ほかにいかがでしょうか。それでは、ただいま 3 つの議題について報告を受けたということで、議題 4 6 は終了いたします。

 最後に議題 7 の「その他」です。何かありますか。よろしいでしょうか。

 それでは、これで全ての議題を終了いたしました。本日も熱心な御議論をありがとうございました。最後に、事務局から連絡事項をお願いします。

○美濃計画課長 本日も熱心に御議論いただき、感謝申し上げる次第です。御了解いただいた諮問案件については、早急に所要の手続を進めさせていただきたく存じます。次回の分科会については追って御案内いたしますので、何とぞよろしくお願いいたします。

○土橋分科会長 それでは、本日の分科会はこれで終了いたします。なお、議事録の署名については労働者代表委員が半沢委員、使用者代表委員が中澤委員にお願いしたいと思います。よろしくお願いします。本日はお忙しい中、ありがとうございました。


(了)

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