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2015年6月19日 平成27年度第1回化学物質のリスク評価検討会 議事録

労働基準局安全衛生部化学物質対策課化学物質評価室

○日時

平成27年6月19日(金)15:30~


○場所

中央合同庁舎5号館専用第14会議室


○議事

○平川化学物質評価室長補佐 本日は、大変お忙しい中御参集いただきまして誠にありがとうございます。定刻になりましたので、ただいまより第1回化学物質のリスク評価検討会を開催いたします。本日の出席状況ですが、津田委員、西川委員、宮川委員は所用により御欠席です。それでは、以後の進行を名古屋先生にお願いいたします。

○名古屋座長 それでは、事務局から議事資料の確認をお願いいたします。

○北村化学物質情報管理官 お手元の議事次第を御確認ください。本日の議事ですが、平成26年度リスク評価対象物質のリスク評価についてです。裏をめくっていただきますと、資料一覧です。資料1は、酸化チタンのナノ粒子。資料2は、三酸化二アンチモン。資料3は、グルタルアルデヒド。資料4は、クメン。資料5は、塩化アリルです。それとは別に、A41枚紙で、資料6として今後の予定です。

 次に、参考資料のタブがあります。参考資料1から参考資料6までを一まとめにしております。右下に通し番号がありますので、御確認ください。参考資料1「化学物質のリスク評価検討会開催要綱・参集者名簿」が1ページから。次の参考資料2と参考資料3が入れ違っており、参考資料3とあるのが参考資料2「これまでのリスク評価の進捗状況」で、5ページから。参考資料2となっているのが参考資料3の誤りで、「平成27年度リスク評価の実施予定について」が11ページから。参考資料4は机上配布とさせていただいており、「労働者の有害物によるばく露評価ガイドライン」が13ページから。参考資料5も同じく机上配布で、「ばく露実態調査の結果」として、参考資料5-1から5-5までが55ページからです。参考資料6「平成26年度ばく露実態調査対象物質の評価値について」が6-1から6-11まであり、69ページからとなっております。資料については以上です。

○名古屋座長 それでは、本日の議題に入ります。今日は5物質ありますが、各物質ごとに事務局から説明をお願いいたします。

○平川化学物質評価室長補佐 本日は、酸化チタンの勧告に関する資料と、後ほど使いますアンチモンの関係の勧告に関する資料を机上配布とさせていただいております。資料1を御覧ください。1ページは、物理化学的性質の基本情報です。名称は酸化チタン、別名は二酸化チタンです。分子量は79.9です。CAS番号は、酸化チタンとしては13463-67-77、ルチル型は1317-80-2、アナターゼ型は1317-70-7ということで、労働安全衛生法施行令別表第9の物質となっております。

 物理的化学的性状ですが、外観は無色から白色の結晶性の粉末です。沸点は、2,5003,000℃、融点は1,855℃で、水には溶けないものです。生産量、輸入量、使用量、用途ですが、酸化チタン(ナノ粒子)としての数値などになっております。生産量は、ナノ粒子のものでは1万トン前後で推移をしております。用途ですが、ルチル型とアナターゼ型で異なっており、ルチル型は化粧品、塗料、トナー外添剤、ゴム充填剤、反射防止膜の用途があり、アナターゼ型は光触媒、工業用触媒担体塗料となっております。さらに、アリル誘導体化合物、農薬原料、医薬原料、香料原料、その他有機合成原料にも活用をされております。製造業者ですが、石原産業、堺化学工業、チタン工業、テイカ、富士チタン工業です。

 次に、2の有害性評価の結果です。(1)の発がん性ですが、酸化チタン全ての粒子に対する分類で、ヒトに対する発がん性が疑われるということです。根拠ですが、IARCではヒトに対する証拠は不十分であるものの、動物実験で発がん性の証拠があったとして、グループ2Bとなっております。各評価区分については、以下のとおりです。

 次に、酸化チタン(ナノ粒子)における閾値の有無です。遺伝毒性試験で、in vitro及びin vivoで陽性反応が得られているが、2次的な遺伝毒性と考えられること、及び肺内保持量がoverloadを超えており、閾値をもって肺腫瘍発生率が増加することから、閾値ありと考えたものです。毒性試験によるLOAELについてですが、Wistarラットに二酸化チタンナノ粒子を乾式分散により平均10.4mg/m3 の全身吸入ばく露を行わせた結果、腫瘍発生に関し、有意に高かったところです。これは、二酸化チタンのクリアランスに関するデータはないが、恐らく過負荷の状態であり、腫瘍形成には粒子の過負荷が関与すると考えるものです。しかし、唯一の長期吸入ばく露試験であるので、LOAELとして採用したものです。

 これを踏まえて種差、LOAELからNOAELに変換、がんの重大性といったものを10ずつ不確実係数として、トータルで1,000、更に時間の補正を行ったところ、評価レベルは0.023mg/m3 となります。

 次に、(2)の発がん性以外の有害性です。ここでは、急性毒性では経口毒性が確認されておりますが、ヒトへの影響については報告が得られていない状況です。皮膚刺激性・腐食性は、判断できない。眼に対する重篤な損傷性・刺激性も判断できない。皮膚感作性も判断できない。呼吸器感作性は報告なしということです。反復投与毒性ですが、ナノ粒子を用いて雌性ラット、マウスに対して13週間の吸入ばく露を行い、10mg/m3 では肺炎症を認めたが、2mg/m3 以下の気中濃度では、ほとんど影響が認められなかった。さらに、2mg/m3 では肺内のクリアランスも遅延していない。0.5mg/m3 では、肺への影響が認められず、肺内のクリアランスも遅延していない。2mg/m3 群ラットの13週ばく露終了直後に見られたBrdU-ラベル肺胞細胞の有意な増加は一過性と見なし、炎症性反応は10mg/m3 群で明らかに認められ、更に酸化チタン(ナノ粒子)ばく露に関連した肺反応であることから、NOAEL2.0mg/m3 であると判断し、これに種差による不確実係数を10とし、時間や日数の補正を行うと、評価レベルは0.15mg/m3 となっております。

 次に生殖毒性ですが、判断できないとなっており、遺伝毒性については複数のin vitroの小核試験、in vivoの小核試験及び遺伝子欠失試験で陽性を認めるので、遺伝毒性はありと考える。ただし、酸化チタンのように難溶性の粒子における遺伝毒性は、核に対する直接作用よりは、フリーラジカルが引き起こす間接的遺伝毒性が関与するとされております。

 次に、(3)の許容濃度等です。ACGIHでは、酸化チタン全体を対象として、1992年に10mg/m3 の勧告値を設定し、発がん分類をA4としております。根拠としては、ラットに酸化チタン粉末を吸入ばく露させた慢性実験において、10mg/m3の投与群では、肺の既存の構築は保たれており、線維化の進行や不可逆的な病変も認められないことや、疫学的調査では酸化チタンのばく露と呼吸器疾患との間には関連性がなかったとの報告があり、さらに、酸化チタンへの職業ばく露と肺の線維化、発がん若しくは他の健康影響との関連を示す確実な証拠はないということによるものとなっております。また、発がんの分類においては、酸化チタンの発がん性を調べた動物実験でも、陰性若しくは結論に達していないことが報告をされております。

 一方、酸化チタン(ナノ粒子)についてですが、前回の平成24年度の中間報告では、ACGIH、日本産業衛生学会とも勧告がされていないという状況でしたが、中間報告後の2013年に日本産衛学会が0.3mg/m3 を勧告しております。根拠ですが、Bermudezらの13週間の亜慢性試験において、2mg/m3 のばく露濃度はoverloadではないこと、肺にほとんど影響もないことから、NOAELと考えた。Workshop reportに基づいて、種差の不確実係数を3としたこと、さらに、ばく露期間が短いことによる不確実係数を2とすると、ヒトに影響を及ぼさないばく露濃度は、0.33mg/m3 と推定される。こうした疫学的研究や動物ばく露研究から総合的に判断して、二酸化チタンナノ粒子の許容濃度は0.3mg/m3 と設定することとなっております。その他の勧告については、以下のとおりです。

 次に、(4)の評価値です。一次評価値から申し上げます。一次評価値は、0.023mg/m3 と算定しております。閾値のある発がん性の場合で、発がん性に関する動物試験により導き出された最小毒性量から不確実係数を考慮して算定した評価レベルを一次評価値としたものです。次に、二次評価値です。これについては、日本産業衛生学会が疫学的研究や動物ばく露研究から総合的に判断して勧告した濃度0.3mg/m3 をその値としております。

 次に、3のばく露実態評価です。(1)有害物ばく露作業報告の提出状況ということで、後ろの別添3を付けております。改めて申し上げますと、平成2111日から331日までの間に提出された有害物ばく露作業報告ですが、集計対象期間は平成1941日から平成2031日までで、920事業場から計4,123作業の報告がありました。主な用途ですが、「顔料、染料、塗料又は印刷インキとしての使用」、「他の製剤等の製造を目的とした原料としての使用等」です。主な作業の種類ですが、「計量、配合、注入、投入又は小分けの作業」、「吹付け塗装以外の塗装又は塗布の作業」等でした。

 次に、(2)のばく露実態調査の結果です。平成22年度に、有害物ばく露作業報告を基に、ばく露予測モデル等によって酸化チタンのばく露レベルが高いと推定される事業場を選定して、ばく露実態調査を行いました。その結果、以下の1,2の作業で高いばく露が見られたということです。このため、関係業界団体からヒアリングを行い、酸化チタン(ナノ粒子)を製造し、又は取り扱っている事業場から、ガイドラインに基づき、平成24年度に9事業場を選定してばく露実態調査を実施いたしました。対象事業場においては、製造又は取扱い作業に従事する25人について、個人ばく露測定を行うとともに、1単位作業場において作業環境測定基準に基づくA測定を行い、26地点においてスポット測定を実施しております。個人ばく露測定の最大値ですが、ナノ粒子を製造している事業場における包装作業場での袋パレット積み作業で、1.644mg/m3 という結果が出ております。また、全データを用いて信頼率90%で区間推定した上限値(上側5)は、2.887mg/m3 となっております。スポット測定結果においては、酸化チタン(ナノ粒子)を製造している事業場で粉砕後製品の袋詰めの作業で最大値が0.733mg/m3 となっており、この作業時間は1回当たり40分間であったということです。ばく露測定の結果、区間推定上側限界値及び8時間TWA最大値が、当時、設定していた二次評価値である0.15mg/m3 を上回っていたことから、酸化チタン(ナノ粒子)については今後、更に詳細なリスク評価が必要とされたということです。

 次に、平成25年度の状況です。初期リスク評価でリスクが高いとされた酸化チタン(ナノ粒子)を取り扱う作業、特に当該物質の製造工程における充填、梱包作業を行う6事業場に対して追加調査を行い、21人について個人ばく露測定を行うとともに、2単位作業場所についてのA測定、28地点についてのスポット測定を実施しております。個人ばく露測定結果については、ガイドラインに基づき8時間TWAを算定しております。

 測定分析法ですが、サンプリングはメンブランフィルターを用いたろ過捕集、分析法は黒鉛炉原子吸光法を活用し、前処理として酸化チタン表面にコーティングがなされているものについての溶解処理を行い、吸入性粉じんとしての測定を行っているところです。

 対象事業場における作業の概要ですが、対象事業場における酸化チタン(ナノ粒子)の用途ですが、「他の製剤の製造原料としての使用」、「対象物質の製造」ということです。酸化チタン(ナノ粒子)のばく露の可能性のある作業は、「袋詰め」、「分取・微調整」、「梱包」などの作業で、1回当たり1時間から2時間の作業を1日に数回繰り返すというものでした。また、作業環境ですが、全ての作業が屋内で行われ、ばく露防止対策は84%の場所で局排が設置され、全ての場所で呼吸用保護具が使用されていたというところです。

 測定結果ですが、追加調査での個人ばく露測定の最大値は、ナノ粒子を製造している事業場における分取・微調整作業で、1.502mg/m3 であったということです。トータル2年間のばく露実態調査の結果、8時間TWAの値が二次評価値を超えたのは、平成24年度の4事業場で10名、平成25年度の1事業場で3名であり、全体での個人ばく露測定最大値は、酸化チタン(ナノ粒子)を製造している事業場における包装作業場での袋パレット積み作業で1.644mg/m3 でした。

 次のページに、図と表でまとめております。平成24年度と25年度の8時間TWAの上位25データをグラフとして示しております。いずれの年度とも、二次評価値を超えている個人ばく露測定の結果が出ており、更に全データについてコルモゴロフ・スミルノフ検定を実施した結果、対数正規分布に適合するとなって、上側限界値を求めたところ、1.353mg/m3 となりました。スポット測定結果においては、追加測定では酸化チタン(ナノ粒子)を製造している事業場における袋詰め作業で、0.509mg/m3 と最大であったが、2年間の全データでは、最大値が0.733mg/m3 となっており、作業時間が1回当たり40分間であったということです。次に、8ページです。ばく露測定の結果、ガイドラインの規定によるばく露最大値である8時間TWA最大値については、今般まとめられました二次評価値0.3mg/m3 を上回り、高いばく露が確認された状況です。

 そういったものをまとめまして、4番のリスクの判定、今後の対応です。まず、酸化チタン(ナノ粒子)については、ばく露の高い作業の詳細と要因分析の結果、リスクの高い作業としては、ナノ粒子を製造している事業場における充填・袋詰め業務が確認をされております。当該業務のばく露レベルは、二次評価値0.3mg/m3 を超えるものであったということです。また、その要因を解析したところ、このナノ粒子の持つ物性や作業の態様から、これを製造している事業場における充填又は袋詰め業務においては、作業工程に共通する問題と考えられるということにしております。

 次に、酸化チタン(ナノ粒子)以外ですが、ナノ粒子以外の酸化チタンについては、平成23年度にACGIHTLV-TWA10mg/m3 を二次評価値としておりますが、日本産業衛生学会での設定状況等も加味しつつ、労働現場での酸化チタン粒子の状態を考慮し、評価値の再検討を行う必要があるものと考えます。平成22年度のばく露実態調査で高いばく露が確認された粉体塗装の作業については、平成26年度にばく露実態調査を実施したところであり、評価値の再検討と並行して、他の作業とともにばく露評価を実施する必要があるとしております。

 以上、まとめて(3)ですが、平成248月に公表した中間報告に基づき、今後、今回のナノ粒子に係るリスク評価と酸化チタンの評価結果を併せ、両者の整合も図りながら、粒子の大きさと労働者の健康障害リスクの関係を踏まえた対応を検討することとしております。

9ページにばく露実態調査の集計表を整理し、以下のページとしては、別添として、有害性総合評価表を10ページから、26ページからは有害性評価書、54ページにばく露作業報告の集計表、56ページから測定分析法ということで、コーティングを処理する場合、処理しない場合等の測定分析法を示しております。以上です。

○名古屋座長 従来、酸化チタン、特にナノについては、中間報告が出ていたのですが、二次評価値が決まっていなかったということで、中間報告という形でとどまっていました。ナノ粒子以外の酸化チタンについても、また粉体塗装もそうですが、もう1つは二次評価値が決まっていないということで、そこが出てきましたら、これを合わせて、もう一度総合的な評価をしていこうという形で、今回はナノ酸化チタンの二次評価値が出ましたので、こういう形で皆さんに御報告していこうということだと思います。何かありますか。

○江馬委員 ナノとナノ以外というのは、どういう定義で分けるのですか。分布があると思うのです。何パーセント含んでいたらナノですよなどというものは記載はありません。

○平川化学物質評価室長補佐 1つとしては、径の大きさで、100nmという数字があったかと思いますが、そうしたことで1つとしては分かれるということがあります。

 今回の実態調査においては、あくまでも、ナノ粒子を使っているという申告があった事業場に対しての調査ということで御理解いただければと思います。

○名古屋座長 多分ナノ粒子は3辺が100nmという定義がありますよね。

○江馬委員 分布があると思うのですが、全部ナノでしょうか。

○名古屋座長 ナノ粒子を扱っているので凝集体は全て、どんなに大きくてもナノ粒子にしています。だから、分布がどうなっているかは残念ながらそこまではできませんが、多くの場合はナノ粒子として単体で飛んでいるだけではなくて、凝集体として飛んでいますので、サンプルも吸入性粉じんとして捕集して評価しているという形に測定のほうはしています。

○角田化学物質評価室長 事前に御意見等を出していただいた先生の御意見を紹介させていただきます。資料の評価書の4ページの、日本産衛学会の2013年の0.3mg/m3 はナノ粒子の許容濃度ということで出たものです。これをもって先ほどの説明のとおり二次評価値にしている。御指摘は許容濃度の根拠、ちょっと読みますと、「二酸化チタンナノ粒子に関する疫学的報告はない。動物ばく露試験では10mg/m3 の長期吸入ばく露により、ラットでは肺腫瘍の発生が増加したが、マウスでは増加しなかったことから、ラットにおける発がんはオーバーロードにより慢性炎症から上皮化生を由来するラット特有のものであると考えられるので採用しない」と。これは産衛学会の御判断なのですが、有害性の小検討会を先般開催しましたときに、ここの部分の議論がありまして、今回も御意見として出てきたというものです。

 意見は、津田先生と西川先生から出てきているのですが、ラットにおける発がんが慢性炎症から上皮化生を由来するラット特有のものであるということについて、津田先生は、実際にほかの腺腫・腺がんも出ているという意見で、IARCのモノグラフが引用している試験で、扁平上皮がん以外に腺腫等が発生している例を幾つか挙げられ、それについても言及すべきではないかという御意見がありました。

 西川先生からは、この部分について、扁平上皮化生でも腺様化生でも、ヒトにも当てはまることで誤りではないかという御意見がありましたので、御紹介します。

○名古屋座長 これも多分有害性小検討会の話だと思いますが、大前先生、これはこのままでよろしいのでしょうか。どうなのでしょうか。

○大前委員 これはIARCのものからの引用の部分だったと思います。慢性炎症から上皮化生由来という所ですが、これは引用文献の原文を見せていただきましたが、確か、上皮の過形成及び化生と書いてありまして、恐らく産衛のこの訳がまずかったのではないかと思いますが。

○角田化学物質評価室長 補足で事務局から申し上げますと、机上配布資料の中に、英文で始まっているTITANIUM DIOXIDEというのがお手元に配布されているかと思うのですが、そのACGIHの次の部分で、3枚目から産衛学会のものが出ております。9ページですが、5番に「許容濃度(生物学的許容値)の提案」ということで、左下から右上にかけて書いてあります。御指摘の部分は右の上から5行目までの所で、ここで動物ばく露実験では10mg/m3 の長期吸入ばく露があると書いてあります。これは8ページの右側の「発がん性」にあるHeinrichの試験に平均重量濃度10mg/m3 と書いてあって、この試験のことに言及しているのだと思います。

 ご指摘のようにここのところが若干正確性を欠く表現であったとしても、この部分を使って許容濃度を計算しているわけではありませんので、事務局としましては、ルール上、実は産衛学会かACGIHかどちらかの許容濃度等があれば、それを基本に二次評価値に採用するということになっていまして、それに基づくと、ここの産衛のほうの数値が正にナノの数値ということで出ましたので、基本的にはこれを採用したいと考えております。

 今の0.3という産衛学会の数字は、9ページの上から5行目にBermudesらの亜慢性試験(13週間)というのが出ていまして、これは2mg/m3 のばく露濃度がオーバーロードでないこと、肺にほとんど影響が出ないことからNOAELとしているということで、この結果を持ってきて、産衛学会は0.3という数字を計算しています。上の先ほどの部分が若干正確性を欠くという部分があるのかもしれないのですが、直接的にこの許容濃度0.3の算定にかかってくるものではないと考えられますので0.3を採用しないということにはならないのではないかというのが事務局の考えです。そういう御質問がありましたので、御意見を伺えればということで御紹介した次第です。

○名古屋座長 これは有害性小検討会で出された二次評価値ですからこのまま採用という形でよろしいのではないかと思います。

○大前委員 今のにもう少し追加しますと、産衛がベースにした数字は2という数字で、これは影響が見られていないというNOAELをベースに持ってきています。そこから計算した数字ですので、この0.3自体は問題ないと思いますが、10の所でオーバーロードあるいは上皮化生うんぬんという所で少し訳にまずいところがあったかなというところです。0.3という数字自体はNOAELから出ていますから、これは問題ないと考えています。

○名古屋座長 若干表現の中でということですね。では、数値はそのまま0.3を二次評価値という形で行こうと思います。

○櫻井委員 追加ですが、ラットで特にオーバーロードが起こりやすいというのは、ほぼ常識で、イナートな粒子でも高濃度だと発がんするものですから。ヒトでも当然あるかもしれないけれども種差が随分あって、ラットが特にオーバーロードしやすい、マウスは起こるけれども、もっと高い濃度でないと起こらないということが、かなり一般的に言われているのです。例えばIARCでも、動物実験で閾値を持っている可能性はあるかもしれないけれども、一応2Bにしているわけです。ただ、オーバーロードに基づく2Bであるとするならば、ちょっと2Bの中でも比較的ハザードとしては弱いほうなのではないかと考える人が多いと思います。そういうようなことから採用しないと言っているのだと思います。

○名古屋座長 補足説明していただきましてありがとうございます。

○花井委員 先ほどの江馬委員の御意見と同じようなことなのですが、やはり、毎回言うことですがナノ粒子を扱うときは、サイズをもっと意識しなければいけないと思うのです。この産衛学会の提案理由を見ても、最初からサイズということを意識してちゃんと書いていますよね。それで、今回のこの案を見ても、サイズなどが全然出てこなくて、8ページの一番最後に粒子の大きさ等うんぬんと、そこで初めて出てきて、それだけということなのですが、昨年度の終わりの報告書か何かにはもう少しサイズ依存性を議論してとか、検討してとか、何かそのような表現があったように思うのです。ナノ粒子をもっと一次粒子がどのくらいで、それが凝集体でどうなのかという議論をしないと本当の議論にならないのではないかという気がするのですが、事務局としてどうですか。

○角田化学物質評価室長 ナノの部分というのは、先ほど少し説明しましたが、実際に三次元の中で100nmまでのものということで、今まで指導もしてきておりまして、今回もそれを踏まえて、実際の現場でのナノを使っている所について調査をしたという形になっています。

 今の御指摘は、そこの部分の、ナノとしてどういうものを捉えて今回やっているのかというのが、少しクリアに書かれていないという御指摘ではないかと思いますので、そこは、書ける範囲で少し整理をしたいとは思います。

○名古屋座長 多分、中災防さんが測定されているときには間違いなくナノ粒子を取り扱っている事業場の中で測定していますから、間違いなくそこでナノを取り扱っています。ただ、そのときに凝集体がどのぐらいで、分布は分かりませんねという形だと思います。そうですよね。

○中央労働災害防止協会 今回の調査をやった所は全て、一次粒子径が100nm未満の製品を取り扱う所をナノ調査という形でやらせていただいております。

○花井委員 それは、例えば電顕写真か何かで確認されているのですか。

○中央労働災害防止協会 そういうものを使っていますという。

○花井委員 使っていますということなのですね。

○中央労働災害防止協会 はい。事業場の申請の下でやらせていただいております。

○花井委員 事務局としてもそれでいいのですか。申告でやればいいと。

○中央労働災害防止協会 それしか分かりようがないと思いますので。

○花井委員 分かりようがない。

○中央労働災害防止協会 はい。数社については我々でも電顕で確認をしています。

○花井委員 ちょっとそれに関連してなのですが、この別添3の資料に酸化チタンと書いてありますが、これは酸化チタン(ナノ粒子)と書くべき表ですよね。

○平川化学物質評価室長補佐 この別添3は、全ての酸化チタンということで。

○花井委員 全て入っているのですか。

○平川化学物質評価室長補佐 一番最初に有害物ばく露作業報告を行って集計したものです。ですので、全てです。

○花井委員 そうすると、ナノを扱っていない所のデータも入っていると。

○平川化学物質評価室長補佐 そうです。こちらの別添3についてはそのとおりです。

○花井委員 そこは分けて書かなくていいのですか。

○平川化学物質評価室長補佐 有害物ばく露作業報告の後に、ナノの安全対策の動向を踏まえてナノマテリアルについて検討すべきだという意見が、当時の検討会で出てきましたので、改めて酸化チタン(ナノ粒子)の評価を進めています。したがって、有害物ばく露作業報告をこの酸化チタン(ナノ粒子)について改めて行っているわけではありませんので、ナノ粒子について、このような形の表は用意がないということになります。

○花井委員 この表のどれはナノ粒子として測ったか、どれはそうでないかということは分かっているわけですよね。前回のばく露小委員会でも申し上げたのですが、それをここに書く必要はありませんか。全然ないですか。

○中央労働災害防止協会 すみません、私どもはその内容についてはよく分からないのですが。調査としましては、実際に一次粒子径も何社か確実に電顕で確認してやっております。

○花井委員 それはそうでしょう。

○中央労働災害防止協会 それで、事業場申請が間違いないなというところでやらせていただいております。今回のサンプリングについては、有害性を見ていただいたら分かるように、酸化チタンが肺の中に入って悪さをするということでしたので、二次粒子径も含めて、ナノサイズ酸化チタンの粒径を肺の中に入る粒子ということに決めまして、吸入性粉じんとしてサンプリングさせていただいております。

○花井委員 吸入性粉じんだけでしたら、200300nmの顔料タイプのものでも吸入性には入りますよね。

○中央労働災害防止協会 空気力学的粒径についてはそうなります。ナノ粒子は凝集して空気中には漂っていることが非常に多いですから。

○花井委員 それは、最初に言ったナノとは違うのではないですか。

○中央労働災害防止協会 いいえ、一次粒子径がナノですので、二次粒子もナノ粒子ということになります。

○花井委員 でも、顔料タイプだったら、一次粒子が200とか300ではないですか。

○名古屋座長 それはあくまでも吸入性粉じんとはまた別の測定方法で今やっています。ここに書いてありますように、ナノ以外の粒子のときはそういう形にしていますが、サンプリングは同じ形で吸入性粉じんを取っていますが、ナノの対象のときは必ず一次粒子がナノのところしか取っていません。ナノで分けてしまうと、凝集体の大きいところを見逃してしまって過少評価してしまいますので、サンプリングとしては吸入性粉じんを測りましょうという形にしています。

○花井委員 それはいいです。

○名古屋座長 もう1つの2番目に書いてあるのは、酸化チタンはあくまでも顔料のような300nmなどの大きいものを使っていますので、それはまた別途、この前やりましたように、別の報告が出てきます。後日2つの報告が出てくるので、今回はナノ粒子の報告だけでしょうというわけです。最終的に措置に持っていくときには、この2つの報告書を合わせて検討した結果を健康措置に持っていきましょうという約束になっているという形です。

○花井委員 では、その合わせた議論に期待します。

○櫻井委員 ナノ粒子は元をたどると、製造している場所はそんなに多くはないわけですよね。

○名古屋座長 ここにありますように4社ぐらいです。

○櫻井委員 多分、それぞれ固有名詞が付いていると思いますが、それぞれナノ粒子の定義に合致するわけですが、先ほど江馬先生がちょっと気になされたのは分布ですよね。本当に100%全部ナノかという疑問ですよね。

○江馬委員 100%ナノか、むしろ100%ナノでないのかということが気になりました。

○櫻井委員 むしろ、ほんの僅かにナノがあって、ほかはそうでないのではないかというお考え。それはあり得ないと私は思いますが、つまり、小さいものであるから商品価値があるので、そういうものを作っている。固有名詞で出されたものの粒度分布等はもう完ぺきに調べられているはずですから、大部分が100nm

○中央労働災害防止協会 一次粒子径はそうですね。

○櫻井委員 粒径は大部分がそういうものだと信頼しているわけですが、ここにそのデータがあるわけではないので、一遍、それは見たほうがいいかもしれません。

○花井委員 信頼しているからとか、何々のはずだからというのは、それはそれで分かりますが、それは科学や技術の報告にはならないのではないですか。そこを確認しないと。

○櫻井委員 ですから、どこどこで製造した何というような固有名詞を出してもいいのかもしれませんね。

○名古屋座長 ナノ粒子を取り扱っている現場で、我々もナノサンプルを取って粒度分布は取っているのです。ただ、それは凝集体の分布であるという話で、ナノのもともとが一次粒子でありますよということであって、ナノ粒子を扱っているけれどもサンプリングするときは、その凝集体がどうなっているかで分布ができるだけの話であって、扱っているものは全部見れば、ナノの集合体であることは間違いないからナノ粒子ですよという形になるということです。

○花井委員 それは電顕写真で見ていますよという。

○名古屋座長 それはちゃんと見ています。

○花井委員 ですから、全部見ているのですねと。

○名古屋座長 それは見ています。ただ、一番困るのは、多分これから起こるのは、ナノ粒子を買ってくるのと、ほかの大きな酸化チタンを買って混ぜてやる作業もあるわけです。そのときにどうするかということになってくると、やはり難しい。ただ、今回のデータに関しては一次粒子がナノであることは間違いないので、凝集体を含めて間違いなくナノの場所で測定しているということだけは間違いないですよということを言われているのだと思います。

○花井委員 ですから、自分で作るにしろ、買ってきて混ぜるにしろ、何か作業で使っているときは、どういう粒子を使っているかというのをちゃんと、少なくともナノ粒子に関してはサイズを確認する必要があるでしょうと言っているわけです。

○名古屋座長 ただ、この製造の所は多分間違いなく、先生が言われたように商品ですから、きちんと取り扱っているので、そこまでしなくても大丈夫でしょう。ただ、先ほど言ったように、混合されたときにどうするか。これは多分大きな議論になってくるのではないかと思います。

○櫻井委員 このばく露限界値を示して、評価レベル、許容濃度を産業衛生学会が勧告している、基になっているデータはBermudesという人のデータですね。これはP25というものを使っていると書いてあります。

○花井委員 そこははっきりしているし、電顕写真なども出ているわけですから。

○櫻井委員 その他、例えば産業医大の森本先生などが動物実験をやっているときにも使っているものは明示しているわけです。だから、多分それと同じようなもの、P25そのものもあるかもしれませんが、固有名詞ですよね。それぞれが全く同じということはないです。

○花井委員 それはそうです。

○櫻井委員 ですが、我々はそのうちの1つであるP25のデータを使ってばく露限界値を決めているわけです。それは常に起こり得る不確実性で、基本的にはそう違わないという判断です。

○鷹屋委員 恐らく花井先生は、使っている人たちがナノだとして使っていても、実際に買ってきたらそうではない可能性もあるのではないか、だからちゃんと、常に測定のときに押さえなくてはいけないのではないかとおっしゃっているのだと思うのですが、恐らく今の工業製品として流通しているナノ二酸化チタンの製品のコントロールから言えば、使っている人がナノ二酸化チタンとして買ってきて使っていれば、商品としてざっくりとナノと言っていますが、例えば一次粒子径が10何ナノメーターのもの、30何ナノメーターのもので、プラスマイナス何ナノメーターと、非常に精度よくコントロールされていて、粒径分布も非常にシャープなものを、それを前提として今、使われているので、櫻井先生がおっしゃるように、使っている商品名を調査のときに正しく聞いて、情報として持っていることは大切だと思いますが、全てのケースで、別途、そこの工場がナノだと思ってナノを使っていたということを確認する必要があるほど、今のナノ二酸化チタンは信用がないものではないと、経験上は思います。

○花井委員 それは信用するのはいいのですが、ただ、買ってきて何かするときに、また、表面処理などいろいろな後の加工があるわけですよね。ポリマーに入れたりなどがあり得るわけですよね。ですから、私は基本的にはナノ粒子という場合には、有害性を評価するものと、実際に使うものというのは同じでなければいけない。それが大原則だと思うのです。そんなことを言っていても、実際はなかなかできないからそれはいいのですが、そうではないとすれば、やはり、有害性評価のときにどういう特性の粒子を使ったデータなのか。そこをちゃんとしておかないと、後で使えないのではないかという、そこの心配です。そこはもうメーカーを信用してやればいいということも1つありかもしれませんが、そこはやはり、私はもう少し技術的な押さえが必要ではないかと思います。

○中央労働災害防止協会 よろしいでしょうか。ばく露評価については、どのような製品を取り扱っているかというのは、全部、調査するときには押さえていますので、それは分かってはいます。ただ、こちらにお示ししたプロファイルのように企業を特定されるおそれのあるものについては書いていません。それで花井先生はその様な情報をお目にしたことがないので、そういうことを言われていらっしゃるのではないかと思っています。製品名は我々のほうでは、調査するときに押さえていますので、それについての情報はあります。

○花井委員 分かりました。それだったら、そういうことを評価書のどこかに書いておいてほしいと私は思います。

○角田化学物質評価室長 少し記載方法を考えたいと思います。

○名古屋座長 我々も一緒に行くと、必ず電顕写真は撮っていますし、知りたいことは全部取っていますので、一次粒子は凝集体だということもちゃんと確認していますよということです。

○花井委員 ナノの評価書だったら、その辺りのことは当然ここに何行か、そんなにたくさん書く必要はないですが、基本的なところは書く必要があると私は思いますが、皆さんがそうでないなら、それはもうしょうがないですが。

○名古屋座長 

多分この次に出てきますので、その辺りはちょっと考えてみましょうということでよろしいでしょうか。

 それでは、酸化チタンのナノ粒子は、今までなかった二次評価値が出てきて、一応、ナノはこういう形になりました。先ほど言いましたように、あとは酸化チタンのナノ粒子以外の報告も出てきます。これはまだ残念ながら二次評価値が決まっておりません。それが決まると、また新たに報告書が出てきます。そこで、二つの報告書を合わせて検討し、その検討結果を健康措置検討会に持っていきたいと思います。よろしいでしょうか。

○角田化学物質評価室長 三酸化二アンチモンの説明をいたします。物理化学的性質は、名称は三酸化二アンチモン、別名は酸化アンチモン(III)、化学式はSb2O3 です。物理化学的性状は白色の結晶性粉末ということで、以下、御覧のとおりのデータです。物理化学的危険性ということで、火災危険性は不燃性、火災時に刺激性若しくは有毒なフュームやガスを放出するということです。化学的危険性は、加熱すると分解し、有毒なフュームを生じる。ある状況下で水素と反応し、非常に有毒な気体を生成するということです。生産量は6,845トン、輸入量は報告なし、輸出量は1,716トン(アンチモンの酸化物として)です。生産・輸入量としては、1,000トンから1万トン未満というデータもあります。用途は、各種樹脂、ビニル電線、帆布、繊維、塗料などの難燃助剤、高級ガラス、清澄剤、ほうろう、吐酒石、合繊触媒、顔料で、製造業者は書いてあるとおりです。

 有害性評価の結果です。発がん性については、ヒトに対して恐らく発がん性があるということです。根拠として、IARCは三酸化二アンチモンをグループ2Bと分類しております。ヒトにおける発がん性の証拠は不十分であるが、動物における発がん性の証拠は十分であるということで2Bということです。ACGIHはアンチモン工程に従事する労働者の職業がん疫学調査報告を評価して、三酸化二アンチモンの発がん性をA2、ヒトに対する発がん性が疑われるということで分類しておりますので、そういったことを踏まえて、ヒトに対して恐らく発がん性があるというまとめをしております。

 閾値の有無の判断です。判断できないという結論でまとめております。これはin vitroの復帰突然変異試験ではS9の添加の有無にかかわらず陰性であったということ、また、以下に書いてあるとおり試験結果をまとめて整理しております。

 次のパラグラフでは職業ばく露した男性労働者23人のデータがあります。これは遺伝毒性の調査結果ですが、リンパ球の姉妹染色分体交換試験と小核試験結果は、全ての群で陰性でしたが、酸化的DNA損傷を検出する酵素処理コメットアッセイでは、高ばく露群で有意に高い陽性を示したところです。これらの結果は、酸化的ストレスを引き起こして、DNAに酸化的損傷を起こしていることを示しているが、アンチモンと遺伝毒性の関連については更に研究する必要があるとされているということです。以上より、遺伝毒性は判断できないと整理をして、閾値の有無についても判断できないとしているところです。

 ヒトでDNA損傷が出ていることをどう評価するということもあるのですが、この試験についても更に研究する必要があるとされていることを踏まえて、判断できないとしているところです。

 発がん性以外の有害性ということで、急性毒性はLD50で御覧の数字が出ております。

 健康影響で実験動物への影響ということで、ラットに三酸化二アンチモンを4時間吸入ばく露した試験で、肺の軽度の限局性変色、白色巣が見られたということです。皮膚刺激性/腐食性はあり、根拠はアンチモンフューム及び三酸化二アンチモン粉じんは全身ばく露によってアンチモン皮疹と呼称される皮膚炎を発症するということで、以下、症状などが書いてあります。眼に対する重篤な損傷性又は眼刺激性は、三酸化二アンチモン100mgを眼に適用した試験で重度の刺激性が認められたということから、「あり」としております。皮膚感作性は判断できない、呼吸器感作性は報告なしということです。反復投与毒性ということで、NOAEL0.51mg/m3 というデータがあります。これは肺クリアランス機能低下を踏まえて判断したものです。神経毒性は報告なしで、生殖毒性は判断できない。遺伝毒性は、先ほどの閾値の所で書いてありましたとおり、判断できないという整理をしております。

 許容濃度等です。ACGIHはばく露限界値ということで、アンチモン及びその化合物を0.5mg/m3 と設定しております。根拠は、アンチモン及びその化合物のTWA0.5mg/m3(アンチモンとして)は、上気道の刺激、腹痛及び食欲減退発現の可能性を最小限にする意図で設定したということです。当該TLVは、生物学的に活性なアンチモン化合物の中の1つである五塩化アンチモンで特定できる健康影響からの外挿によって設定されたところです。

A2の三酸化二アンチモン製造現場は、TLVが勧告されていないが、「発がん性が指定される化学物質については、全てのばく露経路による労働者のばく露は注意深く管理され、ばく露濃度は可及的に低くしなければならない」という注が付いております。根拠としては、ヒトの発がん性やその他の健康障害についての情報が不明確である英国及び米国のアンチモン製造工場の労働者の研究から得られたデータに基づいて三酸化二アンチモンの製造現場環境について数値的なTLVを勧告しない。アンチモンの製造工場の労働者におけるアンチモンへのばく露と肺がんに関する歴史的なデータに基づき発がん性をA2に分類するということです。

 日本産業衛生学会の許容濃度は、2013年に提案がなされて、昨年決定したものです。1999年に同じ数値0.1mg/m3 で設定されており、新しいデータを踏まえて再度整理して勧告されたものです。1991年の提案理由書においては、Briegerらの報告を引用し、硫化アンチモン()8か月から2年にわたってばく露された労働者125名の中から、6名の突然死と2名の慢性心疾患による死亡が見られた。心電図検査では、75名中37名の異常、ほとんどがT波の異常が認められた。この工場ではフェノール樹脂に硫化アンチモン(III)を混合して、グラインダーの研磨盤を製造しておりましたが、アンチモン導入以前にはこのような死亡例はなく、アンチモンの使用の中止後は突然死の症例は見られなくなった。しかし、数年後に心電図を再検査された56名中12名に異常が残存していた。「心臓毒性については、Briegerらの報告を見る限り重要視すべきと考えられる」として、1991年に0.1mg/m3 が提案されているところです。

 ろう付け棒製造工場でアンチモンの溶融作業に従事した労働者3名に皮膚炎が発症し、その作業場の空気中アンチモン濃度が8時間-時間加重平均として0.39mgSb/m3 と推定していることから、許容濃度はその値より低いことが望まれる。三酸化二アンチモンに職業ばく露した男性労働者のリンパ球における酸化的DNA損傷を検出する酵素処理コメットアッセイでは、0.12μgSb/m3 群で陽性を示したが、ばく露濃度が極めて低く他の要因が考えられ、採用できない。雌雄のF344ラットを用いた三酸化二アンチモンの1年間吸入ばく露試験により、肺クリアランス機能低下が4.5mg/m3 群で認められ、0.51mg/m3 群で認められていない。以上を総合すれば、1991年に提案された許容濃度0.1mg/m3 は妥当なものと考えられるということで、2013年に0.1が提案されたものです。これが去年確定したところです。ほかの機関の許容濃度はこのような形で整理されています。

(4)評価値ですが、閾値の有無が判断できないことから、一次評価値はなしとしております。二次評価値は、ACGIHか産衛学会の値がある場合は、そのいずれかを選定するということで、日本産衛学会が勧告した許容濃度の0.1mg/m3 を二次評価値としているところです。

 ばく露実態評価です。有害物ばく露作業報告の提出状況ということで、平成21年において360事業場から869作業について報告があり、用途は「触媒又は添加剤として使用」、「他の製剤等の原料として使用」などです。主な作業は「計量、配合、注入、投入又は小分け」、「ろ過、混合、攪拌、混練又は加熱の作業」などでした。取扱量合計は46,685トンで9,863人の労働者が従事しています。作業時間は、月20時間以下の作業の比率は65%ということで、局排の設置状況は御覧のとおりです。

 ばく露実態調査結果ですが、この360事業場から絞り込みを行って、9事業場を選定しました。対象事業場においては、31人について個人ばく露測定を行って、A測定、スポット測定についても実施したところです。個人ばく露測定では、労働者31人のうち4人が0.1mg/m3 を超えていて、最大値は0.4mg/m3 でした。当該作業は、「三酸化二アンチモンの計量、投入、袋詰めの作業」、「アンチモンメタルから三酸化二アンチモンを製造する作業」です。これらのばく露実態調査結果と、IARCの発がん性評価で、三酸化二アンチモンが2Bとされていることを勘案して、当面評価を行う対象を三酸化二アンチモンにすることが適当であるとされましたので、三酸化二アンチモンについて、更に詳細なリスク評価を実施することにしたところです。その際、三酸化二アンチモンを取り扱う作業、特に当該物質の計量、投入、袋詰め、揮発精錬により製造する作業を行う事業場に対して追加調査をしたところです。平成24年度については、製造2事業場及び成形用樹脂に添加剤として混入しペレットを製造する1事業場の計3事業場で、追加調査を行ったところです。上記のばく露実態調査の結果及び有害性評価結果を取りまとめ、詳細リスク評価の中間報告として平成257月に公表しましたが、中間報告の時点では評価値についての結論が出ませんで、引き続き情報収集を行うこととして、翌平成26年度に評価値の検討を行って、先ほどの0.1に設定したところです。ばく露実態調査の概要はこの表のとおりで、測定分析法も御覧のとおりです。

 対象事業場における作業の概要ですが、調査対象事業場における用途は「三酸化二アンチモンを含有する製剤等の製造を目的とした原料としての使用」、「三酸化二アンチモンの製造」でした。2年間のばく露実態調査の結果、8時間TWAの値が二次評価値を超える値を示しているのは、平成23年度調査の9事業場のうち4事業場の4名、平成24年度調査の3事業場のうち1事業場の4名で、合計8名でした。平成23年度の4事業場について、8時間TWAの値が二次評価値を超えた労働者の主な作業ですが、三酸化二アンチモンの計量、投入、袋詰め、揮発精錬の作業です。これらの作業場のうち3事業場の4地点におけるスポット測定でも、二次評価値を超える値が確認されています。平成24年度の1事業場において8時間TWAが二次評価値を超えましたが、その作業は粉体の投入、袋詰め等の作業でした。また、この事業場での11地点におけるスポット測定でも、二次評価値を超える値が確認されています。全ての作業は屋内で行われていて、局所排気装置は約8割の作業で設置されていたところです。

 測定結果です。平成24年度の調査の結果、酸化炉、溶融炉の炉前作業、粉体作業を行うJ事業場において、5名中4名が0.28から0.33mg/m3 の範囲となったところです。また、K事業場は酸化炉に金属アンチモンを投入して発生したフュームを空気酸化して、三酸化二アンチモンとしてバグフィルターで回収する工程で0.08TWA値を示しました。L事業場では粉体の三酸化二アンチモンを押出し成形機の混練槽に投入し、樹脂と混合し、ペレットを押出し成形する作業を測定したところ、0.04TWA値を示したところです。このように平成24年度に実施した調査でも平成23年度の結論の、三酸化二アンチモン主体の粉体の取扱い(投入、袋詰め等)及び揮発炉作業等のばく露が高いという結果が出たところです。

 平成23年、平成24年度の2年間のばく露実態調査の結果、個人ばく露が二次評価値を超えた5事業場の8名のうち最大値は0.4mg/m3 となりました。また、2年間のデータについて、コルモゴロフ・スミルノフ検定によって正規性を確認して、区間推定上側限界値(信頼率90%、上側5)を求めたところ、0.59mg/m3 となりました。ばく露評価ガイドラインでは、個人ばく露最大値と区間推定上側限界値のうち、大きいほうをばく露最大値とするとなっておりますので、区間推定上側限界値0.59がばく露最大値となり、この値と二次評価値を比較することになり、二次評価値を超えるばく露が確認されたところです。なお、個人ばく露の最大値0.4も二次評価値を超える水準になっているということで、その結果が下に表として整理されております。

 リスクの判定及び今後の対応ですが、平成24年度のばく露実態調査の結果、酸化炉、溶融炉の炉前作業、粉体作業を行う事業場において、高いばく露が確認されましたが、平成23年度における4事業場の調査において、粉体の取扱い及び揮発炉作業等のばく露が高かったことと同様の結果を示すものでした。このため、三酸化二アンチモンの製造・取扱作業においてはリスクが高く、ばく露防止のための措置が必要と考えられるものです。

 次ページの上にあるのがばく露測定の結果で、下のほうに横線で二次評価値の0.1が書かれておりますが、それを超えるばく露が確認されたものが右の8つの棒グラフです。年次も四角で書き込んでおります。これが結果です。

9ページですが、三酸化二アンチモンはその物性等から飛散しやすいと考えられ、その製造・取扱作業において吸入によるおそれがあるものと考えられる。高いリスクが作業工程に共通して確認されたことから、労働者の健康障害防止措置の検討が必要と考えられるという整理をしました。この場合、三酸化二アンチモンの計量、投入、袋詰め、炉作業等において高いばく露が確認されましたので、製造・取扱作業全般について健康障害防止措置の検討が必要と考えられるという結論を出しております。

 なお、アンチモンを含む樹脂の射出成形作業については、上記のガイドラインに基づくばく露実態調査とは別に平成26年度に実態調査を実施しておりますので、その結果を踏まえて健康障害防止措置の検討を行う必要があるとまとめております。以上が本文です。

 以下、別添1として有害性総合評価表、これは先ほどの有害性について判断している部分の根拠となる資料です。16ページ以降が有害性評価書で、今の有害性総合評価表をまとめるに当たっての根拠です。別添3は、ばく露作業報告の集計表です。別添4は、測定分析法です。資料は以上です。

○名古屋座長 通常の作業ですと、二次評価値を超えていますし共通性もあるということで、このまま健康措置にいくという形になるかと思います。ただ、射出成形については、ここではそのまま持ってきましたが、ナフタレンのときもそうだと思いますが、健康措置検討会の中で除外してもらうかどうか検討するので、ここでは一応このままの形で健康措置に送りたいと思います。何か御意見等ありますでしょうか。三酸化アンチモンについては、ここでは健康措置の所へ持っていって、再度検討していただくという形にしたいと思います。どうもありがとうございました。

 次は資料3、グルタルアルデヒドをよろしくお願いします。

○角田化学物質評価室長 資料3です。物理化学的性質ですが、名称はグルタルアルデヒドです。構造式は御覧のとおりで、物理的化学的性状としては、刺激臭のある透明無色の液体です。生産・輸入量、使用量、用途ですが、平成25年度は1,000トン未満です。電子顕微鏡用試薬、2%水溶液で低温滅菌剤、架橋剤、なめし剤、一部のX線現像液の硬化剤、以下、御覧のとおりの用途に使われているものです。

2の有害性評価の結果です。(1)発がん性です。ヒトに対する発がん性は判断できないということで、根拠は「調査した範囲で動物実験、ヒトでの疫学調査ともに発がん性に関する報告は得られていない」ということです。次ページにほかの機関の評価が載っておりますが、分類できない、情報なしといった整理になっております。

(2)発がん性以外の有害性ということで、急性毒性はLC50480mg/m3/4hrs.(ラット)です。経口毒性はLD50ですが、ラットとマウスで御覧の値になっております。

 皮膚刺激性/腐食性はありということで、実験動物の皮膚に対して25%以上の水溶液で刺激性を示す。ヒトの皮膚に付着すると、発赤、水疱を生じるほか、のどや鼻粘膜への刺激症状が見られるというものです。眼に対する重篤な損傷性/刺激性は「あり」。実験動物の眼に対して濃度依存的な刺激性が認められ、5%以上の水溶液では重度の角膜損傷が見られる。ヒトの眼粘膜に接触すると発赤、痛みを生じ、高濃度では角膜炎や結膜炎を発症する場合があるということです。

 皮膚感作性も「あり」ということです。動物の耳介部裏皮膚や有傷皮膚に適用した実験、皮内投与実験でいずれも感作性が示されているということです。グルタルアルデヒドの殺菌消毒に携わる作業者では、手、腕、顔、頸にそう痒性皮膚炎や湿疹、アレルギー性接触性皮膚炎を発症することが報告されております。呼吸器感作性は「あり」です。ヒトにおいて、殺菌消毒剤等に使用されるグルタルアルデヒドに反復ばく露されることにより、鼻炎、息切れ、喘鳴、喘息等の呼吸器への感作を起こすことがあるということです。

 反復投与毒性です。LOAEL0.0625ppmということで、マウスにグルタルアルデヒド、御覧の濃度で6時間/日、5日間/週の頻度で13週間吸入ばく露した実験で、鼻前庭の炎症、体重増加抑制、鼻腔呼吸上皮の扁平上皮化生を影響指標とした場合、LOAEL0.0625ppmと推定される。これに基づいて評価レベルは4.7×10^-4ppmと計算されております。生殖毒性、遺伝毒性、神経毒性については、いずれも判断できないとしております。

 許容濃度ですが、ACGIHTLV-TWASTEL0.05ppm(Ceiling)SEN(感作性物質)です。活性又は不活性グルタルアルデヒドへの職業ばく露について、TLV-天井値として、0.05ppmを勧告する。この値は鼻、のど、皮膚及び眼への刺激の可能性を最小にすることを意図して設定されたものです。

 次に日本産業衛生学会です。0.03ppmということで、これは最大許容濃度です。感作性分類は気道第1群、皮膚第1群です。根拠ですが、眼・皮膚・呼吸器の症状は、個人ばく露濃度の幾何平均が0.032ppmの群で有意に多い。職業性喘息の発症が短時間個人ばく露濃度の中央値が0.039ppmである病院で認められており、特に内視鏡洗浄時の気中濃度が36.1ppbで咽頭痛の訴えがあることから、ばく露濃度は0.032ppmより低濃度であることが望ましいとされる。以上からグルタルアルデヒドの毒性として眼、皮膚及び呼吸器への刺激性と感作性を考慮して、最大許容濃度として0.03ppmを勧告するとなっております。他の機関の許容濃度等は御覧のとおりです。

 評価値ですが、一次評価値は先ほど反復投与毒性のLOAELから算定した4.7×10^-4ppmです。日本産業衛生学会が提言された最大許容濃度0.03ppmを二次評価値としております。

3のばく露実態評価です。(1)有害物ばく露作業報告です。平成23年におけるグルタルアルデヒドの有害物ばく露作業報告については、20事業場から計32作業について報告があり、「他の製剤等の原料として使用」、「除草、殺菌、剥離等を目的とした作業」でした。作業は、主に「計量、配合、注入、投入又は小分けの作業」、「充填又は袋詰めの作業」です。年間製造・取扱量は、「500kg未満」が19%、「500kg以上1t未満」が19%、「1t以上10t未満」が47%と一番多い区分です。当該作業従事労働者数は、「5人未満」が59%、「5人以上10未満」が31%、「20人以上」が9%でした。1日の作業時間も御覧のとおりですが、「15/日未満」が25%、「15/日以上30/日未満」が9%、「30/日以上1時間/日未満」が31%と一番多い区分です。局排設置作業は47%でした。

 この結果を踏まえて、ばく露実態調査を実施したところです。平成25年度に5事業場を選定しました。対象作業場はグルタルアルデヒドを含有する製剤を製造する事業場で、11人について個人ばく露測定、3単位作業場所について作業環境測定のA測定、15地点についてスポット測定を実施しました。個人ばく露測定結果については、ガイドラインに基づき、8時間加重平均濃度を算定しました。測定は11人の労働者で、TWAの最大値は0.0317ppmです。これはグルタルアルデヒドを他の製剤の製造原料として使用しているC事業場における製品の自動充填機のセッティング・トルクチェック作業(廃液処理等)で測定されたものでした。調査で得られたデータのKS検定の結果、対数正規分布への適合性は棄却されたので、最大ばく露値は、ばく露評価ガイドラインの規定により、0.0317ppmとなったものです。これが二次評価値を上回ったことから、更に詳細なリスク評価を行って、ばく露の高かった要因等を明らかにする必要があるとされたところです。なお、詳細評価の際には、二次評価値を上回るばく露が確認された充填作業等について、作業工程に共通した問題かをより詳細に分析すること、実態調査を行った作業以外に高いばく露の可能性があるかどうかを確認する必要があるとされたところです。その際、二次評価値が日本産業衛生学会の最大許容濃度を根拠に設定されていることを踏まえると、二次評価値を超えるスポット測定値が確認された作業を調査するとともに、併せてグルタルアルデヒドを使用した医療現場での消毒等の作業も調査作業に加えることにされたところです。

5ページですが、これを受けて、平成26年度において、対象物を含有する製剤の製造原料として使用している2事業場と、消毒・殺菌に使用している1事業場の計3事業場において、ばく露実態調査を実施しました。10名について個人ばく露測定を行って、スポット測定を9か所で実施したところです。測定分析法については、ここに書いてあるとおりです。

 対象事業場における作業の概要ですが、用途はグルタルアルデヒドを含有する製剤等の製造の原料としての使用、及びその他(医療機関における洗浄・消毒作業)です。2年間のばく露実態調査において、二次評価値を超えるばく露が確認されたのは1事業場における1名で、他の製剤等の原料として使用している事業場における自動充填機のセッティング・トルクチェック作業でした。また、同じ事業場におけるサンプリング作業が二次評価値には達していないものの、それに次ぐばく露水準でした。作業環境については、全ての作業が屋内で行われており、24%の作業で局所排気装置が設置されていたところです。

 測定結果です。平成25年度、平成26年度の2年間の個人ばく露測定の結果、21名のうち1事業場の1名のみが二次評価値を超える値となりました。スポット測定のデータを見ると、同事業場の充填作業は作業時間や頻度が少ないものの、最大値が0.446ppmと高く、個人ばく露測定結果と同様の結果を示しております。当該作業場所のA測定結果についても、最大値が二次評価値を超える値となっております。個人ばく露測定のデータのうち、定量下限未満のデータを除く17データについて、KS検定によって正規分布への適合性を確認の上、信頼率90%で区間推定した値を算出したところ、0.018ppmとなりました。これは二次評価値の6割の水準でしたので、個人ばく露最大値と区間推定上側限界値のうち、大きいほうの前者、個人ばく露最大値がばく露最大値になりますので、この最大値0.032ppmと二次評価値0.03ppmを比較したところ、二次評価値を超えるばく露が確認されたところです。次ページの表に表しております。

 リスクの判定及び今後の対応です。平成26年度においては、平成25年度において高いばく露が確認された充填作業等について事業場を追加して調査しましたが、追加調査事業場では二次評価値を超えるばく露は確認されませんでした。この結果、二次評価値を超えたのは平成25年度調査における1事業場ということで、グルタルアルデヒドを含有する製品を容器に充填する作業に従事する1名でした。具体的には、製品容器の蓋のトルク圧を確認して、確認したものを容器(バケツ)に廃棄する等の作業でした。しかし、この作業では廃液を密閉していない等、当該作業の管理面での改善の余地が考えられるのではないかということ、また、他の事業場における同様の充填作業では、トルクチェック後の廃棄製品を保管して、別途処理しており、充填時のばく露は高くなかったので、この1つの事例をもって作業工程に共通した高いばく露があると結論付けるところまでは言えないのではないかと考えて、このような整理をしております。また、追加して調査を実施した医療現場での消毒作業におけるばく露実態は、二次評価値を下回る水準でした。6ページの下に個人ばく露測定結果ということでデータを整理しておりますが、一番右のc3というc事業場のデータのみ、二次評価値を超えているところです。

7ページです。上記のようにばく露の高い作業とその要因解析の結果、グルタルアルデヒドの充填の作業について、二次評価値を超えるばく露が見られたものの、作業工程に共通のものとは言えないと考えられる。ただし、リスクの高い作業が確認された事業場においては、作業方法の改善等、事業者の自主的管理による指導が必要と考えるところです。なお、グルタルアルデヒドは、皮膚・呼吸器の感作性、眼・皮膚の刺激性がある物質ですので、事業者は製造・取扱作業に従事する労働者等を対象として、自主的なリスク管理を行うことが必要と考えるという結論です。以下の資料については、先ほど説明したものと同じものを添付しております。資料の説明は以上です。

○名古屋座長 初期リスクのときにこの作業場が高くて、それと同じものを見てくださいということと、初期リスクのときは医療現場がなかったので、我々が最初にグルタルアルデヒドに注目したのは医療現場でしたが、今回測定してもらいましたから、そこのところは大丈夫だったということ。従来の中で1つ超えている所を超えると健康措置なのですが、今、説明がありましたように、共通性は余り認められなくて、特殊な作業で、この工場だけで対応できるという形なので、今回の場合は措置に持っていかずに、このまま詳細リスク評価で終了という結論だと思いますが、どうでしょうか。御意見はありますでしょうか。

○千葉委員 このグルタルアルデヒドの代謝酵素は、アルデヒドデヒドロゲナーゼでしょうか。事前に調べたのですが、産業衛生誌の2006年には1行ですが、アルデヒドデヒドロゲナーゼで代謝されると書いてあります。通常アルデヒドデヒドロゲナーゼ2という酵素はアルコールが代謝されて出てくるアセトアルデヒドの代謝酵素で、遺伝的な多型があります。完全に酵素活性が欠損している人が日本人では大体510%ぐらい、ヘテロが4050%、正常が50%ぐらいなのですが、白人種はほとんど正常です。そのため、よく知られていることですが、アルコールを飲んだときに出てくるアセトアルデヒドが血管拡張を起こして顔が赤くなる、また二日酔いを起こすのはアセトアルデヒドのためなので、日本人がアルコールに弱いのはアルデヒドデヒドロゲナーゼ欠損症が多いためとされています。もしこのグルタルアルデヒドの代謝酵素がアルデヒドデヒドロゲナーゼであれば、日本人の場合代謝にかなり個人差が大きい可能性があります。ここで出てくる毒性がどちらかというと急性毒性のため、遺伝多型は関係しない可能性もありますが、感作というのがちょっと気になります。グルタルアルデヒドを被ばくしたとき、日本人の場合、出てくる毒性に個人差が大きい場合には、平均的に一定の安全基準を作っても、日本人の場合510%の欠損者に非常に大きなリスクが出てくる可能性があると思うのです。これはあくまでも仮定の話で、グルタルアルデヒドの代謝がアルデヒドデヒトロゲナーゼでかなりの部分が行われているという事実があれば、そういうリスクも大きいと思います。アルコールの代謝の場合は、アセトアルデヒドデヒドロゲナーゼの欠損者の場合は血漿中のアルデヒド濃度が正常の人の19倍ぐらいになります。ヘテロの人は6倍ぐらいになります。食道がんのリスクが完全欠損の場合10倍ぐらいになります。だから、急性と慢性毒性というか、発がんの場合ですが、かなりリスクが違います。従って、ここで問題になるのは、どのぐらいの割合でグルタルアルデヒドがアセトアルデヒドで代謝されるかという割合が問題になります。逆に言うと割合が少なければ問題にならないのですが、主な代謝酵素であると問題かなと思います。

○角田化学物質評価室長 今、御指摘のものについては、資料等がありませんので、調べられれば調べて、また皆さんに御報告するという形にはしたいと思います。

○名古屋座長 先生が言われたのは、原液で使ったときと、あるいは希釈して使ったときの含有率の問題と理解してよろしいのですか。

○千葉委員 いや、入った後のことです。

○大前委員 代謝のことは分からないのですが、今回、刺激Ceilingで決めているので、数字を刺激症状で決めていますので、それは代謝と余り関係ないのではないかと思うのです。だから、この決め方自体は、今のALDHの異型とは関係ないのではないかと思うのですけれども。体の中に入る前の刺激でCeilingといいますか、二次評価値の許容濃度を決めていますので、余り考えなくてもいいのではないかという気がするのですけれども。

○千葉委員 眼の刺激などは先生がおっしゃるとおりだと思います。多分ばく露で決まることなので、毒性が急性毒性であるとき、例えば触れたときに起こる毒性などについては全く問題にならないと思うのです。しかし入った後、例えば感作とか、そういったところに差がある可能性があるのではないかという可能性は気になります。

○名古屋座長 そうすると、入る前の濃度を変えなくてはいけないということになるのですか。

○大前委員 いや、この0.3という濃度は反復毒性ではないので、刺激で見ている濃度ですから、これは変える必要はないと思います。

○鷹屋委員 ばく露のときも気になったのですが、Ceilingで決めて、結局8時間TWAとしては十分に低いのですが、これをCeilingだと決めると、ばく露のほうを見ると、ざっと計算してみると超えているわけではないのですが、瞬間値で見ると0.03に近い例もあるようなので、そういった意味で注意喚起的なことはやはり必要なのではないかと。

○名古屋座長 事業場の自主的な管理という形の中で、指導は必要だと書いています。それはあると思いますね。このところは今までどおりでは、1社はちょっと超えていますが、これは先ほど出た要因分析した中では、この中に入れるのとはちょっと違う形です。これは濃度も低いですし、取扱いの所も多いと思いますので、自主的な管理で必ず指導するという形を置いて、リスク評価の中では健康措置まで持っていかずにこれで終了でよろしいでしょうか。どうもありがとうございました。

4番目のクメンをよろしくお願いいたします。

○北村化学物質情報管理官 資料4、クメンでございます。物理化学的性質ですが、名称はクメン、別名はイソプロピルベンゼンです。化学式、構造式は記載のとおりです。分子量は120.19CAS番号は98-82-8、別表9の対象物質ということです。物理的化学的性状ですが、外観は特徴的な臭気のある無色の液体、蒸気圧は20℃で427Paです。嗅覚閾値があって、0.4ppmとなっています。生産・輸入量、使用量、用途ですが、製造・輸入量は492,595トン(2013)です。こちらはクメンというわけではなく、分枝アルキルベンゼン(C336)のグループとして、この量があるということです。用途は有機合成、航空ガソリンに混用、過酸化物、酸化促進剤などの原料として使用されています。製造業者として三菱化学、三井化学、東ソーとなっています。

 続いて、有害性評価の結果です。発がん性ですが、ヒトに対する発がん性が疑われるとなっています。根拠として、IARC2012年に2Bの分類を与えていますが、EU、産衛学会、ACGIH等の機関では発がん性の分類はされていません。NTPは、クメンには動物に対する発がん性の明らかな証拠があると結論しています。

 発がん性以外の有害性ですが、急性毒性は吸入毒性、経口、経皮ともに幾つか出ています。皮膚刺激性/腐食性は軽度の刺激性、眼に対する重篤な損傷性/刺激性は軽度の刺激性、皮膚感作性、呼吸器感作性については報告はありません。反復投与毒性ですが、NOAEL62.5ppmとなっています。2ページの下から4行目からですが、125ppm以上の濃度にばく露された雄ラットにα2μ-globulinの有意な増加、腎臓の顆粒状円柱及び腎皮質における硝子滴の蓄積が認められることから、NOAEL62.5ppmであると判断したとなっています。

 ただ、こちらを補足させていただくと、昨年5月の有害性小検討会で評価値を決める際に、この反復毒性について確認したのですが、ここの記載にあるα2μ-globulinの有意な増加というのが雄ラットに特異のものであることから、ヒトには外挿できないということで採用していません。今、見ていただいている資料の12ページ、クの神経毒性の所にありますが、こちらを採用して評価値の検討をしました。参考ですが、LOAEL2,000ppmというデータを用いて評価値を検討したところです。ただ、3ページに戻っていただくと、遺伝毒性を判断できないというのがあり閾値が判断できなかったため、結局、2,000ppmというのも採用はしていないところです。

 本文に戻ります。生殖毒性は判断できない。遺伝毒性も判断できない。神経毒性については「あり」ということで、CFW雄マウスにクメン2,0004,0008,000ppm20分間吸入ばく露し、機能観察試験をマウスに適用したところ、2,000ppm以上のばく露群で覚醒レベルの減少、歩行障害、運動障害、正向反射抑制、神経運動障害、前肢握力の低下、その他神経行動障害が見られたということです。

 許容濃度等ですが、ACGIHTLV-TWA50ppm(246mg/m3)となっています。根拠として、眼、皮膚及び呼吸器の刺激性及び中枢神経抑制による障害を最小限に維持するために、クメンのTLV-TWA値として50ppmを設定したとなっています。産衛学会は設定なし。DFG MAK10ppmNIOSHOSHAは同じくTWA50ppmとなっていて、こちらは上のACGIHの値と245でずれていますので確認し、あとで訂正させていただきます。

 評価値ですが、一次評価値については、先ほど御説明したとおり閾値の有無が判断できないため評価値はありません。二次評価値は50ppmACGIHが提言している、クメンによる眼、皮膚及び呼吸器の刺激性及び中枢神経抑制による障害を最小限に維持するため50ppmを二次評価値としました。

 ばく露実態評価ですが、有害物ばく露作業報告の提出状況はA3の別添3にまとめているとおりです。平成23年におけるクメンの有害物ばく露作業報告については、96事業場から計9,834作業について報告があり、対象物質の用途は主に「クメンを含有する製剤、その他の物の製造を目的とした原料としての使用」、「顔料、染料、塗料又は印刷インキとしての使用」、「溶剤、希釈又は溶媒としての使用」で、作業の種類は、「計量、配合、注入、投入又は小分けの作業」、「ろ過、混合、攪拌、混練又は加熱の作業」、「サンプリング、分析、試験及び研究の作業」となっています。対象物質クメンの年間製造・取扱い量ですが、「500kg未満」が33%、「500kg以上1t未満」が11%、「1t以上10t未満」が31%となっています。作業1回当たりの製造・取扱量は、「1kg未満又は1l未満」が33%、「1kg以上1t未満又は1l以上1kl未満」が63%となっています。作業従事労働者数ですが、「5人未満」が53%、「5人以上10人未満」が19%、「10人以上20人未満」が11%となっています。局所排気装置が設置されている作業は57%ということでした。

 次に、ばく露実態調査の結果です。有害物ばく露作業報告のあった14事業場を選定してばく露実態調査を実施しています。対象作業場においては、製造・取扱い作業に従事する28人について個人ばく露測定を行うとともに、9単位作業場所について作業環境測定のA測定、35地点についてスポット測定を実施しました。個人ばく露測定結果については、ガイドラインに基づき、8時間加重平均濃度(8時間TWA)を算定しています。測定分析法は別添4を御覧いただければと思いますが、サンプリングとして活性炭チューブ又は活性炭固相カートリッジを用いて捕集し、分析法はガスクロマトグラフ水素イオン化検出法を使用しています。対象事業場における作業の概要ですが、クメンの用途としては「クメンを含有する製剤その他の物を製造するために原料として使用」でした。作業としては、「充填」、「洗浄」、「混合」等の作業でした。作業環境については98%の作業が屋内で実施されていて、ばく露防止対策は83%の作業で局所排気装置が設置され、64%の作業で呼吸用保護具(うち46%が有機ガス用、18%は防じんマスクを使用)が使用されていました。

 測定結果ですが、測定は28人の労働者に対して実施し、個人ばく露測定の結果から、8時間TWAの最大値は0.19ppmという結果でした。また、定量下限値より高い濃度となった23名のデータを用いて信頼率90%で区間推定した上限値(上側5)0.21ppmとなりました。ガイドラインの規定により、区間推定上側限界値のほうを取り、0.21ppmとなりましたが、8時間TWAの最大値、区間推定上側限界値、いずれも二次評価値50ppmを大きく下回る結果となっています。

 最後に、リスクの判定及び今後の対応ですが、以上のことから、クメンの製造・取扱事業場においては、最大ばく露量(区間推定上側限界値)は二次評価値を下回っており、リスクは低いと考えられるが、当該物質はヒトに対して発がん性が疑われることから、事業者は当該作業に従事する労働者等を対象として自主的なリスク管理を行うことが必要と考えるとまとめています。

 補足ですが、本日、御欠席の西川先生からコメントを頂いています。ページでいきますと2ページ、先ほど御説明したNOAELの件です。西川先生からも、この表記はラット特有のものということで雄ラットに特異的な変化であるので、この濃度で計算するのはどうかということで御指摘を頂き、62.5ppmではなく、もう1つ上の125ppmではないかということです。こちらを用いて計算しますと、計算式自体は3ページの上側に書かれていますけれども、62.5125に変わるので単純に2倍となり、9.4ppmという結果となります。ただ、先ほど説明しましたとおり一次評価値はありませんので、参考の情報ということになろうかと思います。事務局からは以上です。

○名古屋座長 そういう形に直すということですね。

○北村化学物質情報管理官 そうです。

○名古屋座長 分かりました。ありがとうございます。ここを見ていただくと分かりますように、二次評価値が50で、ばく露の最大値が0.19、区間推定値も0.21ですから、このままいつもどおりリスクが低いとして、初期リスク評価で終わりということでまとめたいと思います。よろしいでしょうか。ありがとうございました。次、最後の資料になりますが、塩化アリル、よろしくお願いいたします。

○平川化学物質評価室長補佐 資料5を御覧ください。1ページ、物理化学的性質ですが、名称は塩化アリルです。別名については、非常に使われている物質ということで別名のところにあるとおりです。分子量は76.5CAS番号は107-05-1、労働安全衛生法施行令別表9で指定されている化学物質です。物理的化学的性状ですが、刺激臭のある無色の液体、沸点が45℃、蒸気圧は20℃で39.3kPaです。嗅覚閾値は1.26ppmです。生産・輸入量、使用量、用途ですが、製造・輸入量は6万トンです。用途については多様な用途で使われているということで、アリル誘導体化合物、農薬原料、鎮静剤、麻酔剤などの医薬原料、香料原料等で使われています。製造業者はダイソー、鹿島ケミカル、住友化学です。

 有害性評価の結果ですが、発がん性で、ヒトに対する発がん性が疑われるということです。根拠ですが、F344/DuCrjラットでは、雄の膀胱に移行上皮がんの発生増加が認められ、がん原性を示す明らかな証拠であると考えられました。また、甲状腺の濾胞状腺腫の発生増加も認められたということです。一方、雌には腫瘍の発生増加は認められなかったところです。Crj:BDF1 マウスについては、雌雄ともがん原性を示唆する証拠であると考えられたとなっております。各評価区分については以下のとおりです。

 次に、発がん性以外の有害性です。急性毒性については、吸入毒性、経口毒性、経皮毒性のものが指摘されています。皮膚刺激性/腐食性は「あり」で、根拠は、実験動物において限局性の皮膚炎が指摘され、さらに、ヒトにおいて気道、鼻粘膜、皮膚への刺激が報告されているということです。眼に対する重篤な損傷性/刺激性は「あり」で、これも実験動物においての根拠、ヒトにおいての刺激性があり、高濃度での眼の痛み、羞明を生じるとの報告があるということです。皮膚感作性は判断できない。呼吸器感作性は判断できないとなっていて、反復投与毒性についてはNOAEL100ppmということです。根拠としては、F344ラットに塩化アリルを6時間/日、5/週、90日間の吸入をさせたばく露試験で、著者は100ppmで見られた変化は生理的適応反応の範囲とみなし、ラットのNOAEL100ppmと結論付けています。これに不確実性係数を入れ、あとは労働時間の補正も加え、評価レベル7.5ppmとしております。

 また、神経毒性ですが、アリルスルホン酸ナトリウム製造工場における塩化アリルへの慢性ばく露で、慢性多発神経障害が認められたという根拠が示されています。生殖毒性については判断できないということです。遺伝毒性については「あり」ということで、根拠ですが、ネズミチフス菌、大腸菌、UDS試験で陽性、CHL染色体異常試験で強い陽性、in vivoの優性致死試験でも陽性を示したことから、「変異原性あり」と判断するものです。さらに、塩化アリルについては労働安全衛生法有害性調査制度に基づく既存化学物質変異原性試験の結果でも、変異原性が認められていることから、「変異原性が認められた化学物質による健康障害を防止するための指針」の対象物質として指定されています。

 次に許容濃度等です。ACGIHにおいて、TWA1963年に1ppmSTEL1976年に2ppmSkinについても勧告がされています。根拠については、労働環境でのばく露から推奨されており、この値は、動物への吸入ばく露実験において、肝毒性と腎毒性が認められていることによるということ。STELについてはまた、肺と眼への刺激を最小限とするためのものということです。日本産業衛生学会については設定がされていません。以下の勧告については記載のとおりです。

 評価値ですが、一次評価値については0.056ppmとなっています。この根拠ですが、発がん性を考慮した場合で閾値のない場合において、ユニットリスクを用いたがんの過剰発生率に相当する濃度ということで出しています。この根拠の実験ですが、下にある塩化アリルのラットでの吸入ばく露発がん試験の結果における雄の膀胱の良性、悪性腫瘍の合計をエンドポイントとして、生涯過剰発がん 10-4 レベルの濃度を定めているということです。二次評価値ですが、1ppmということで、ACGIHでの勧告値を二次評価値とさせていただいています。

 ばく露実態評価ですが、(1)の有害物ばく露作業報告の提出状況です。調査については別添3A3の資料で付けています。内容を申し上げますと、平成24年における有害物ばく露作業報告では、21事業場から計34作業について報告があり、対象物質の用途は主に「他の製剤等の原料として使用」、「対象物として製造」で、作業の種類は、「計量、配合、注入、投入又は小分けの作業」、「サンプリング、分析、試験及び研究の業務」、「充填又は袋詰めの作業」、「ろ過、混合、攪拌、混練又は加熱の作業」でした。対象物質の年間製造・取扱量は、報告ごとに量の少ない方から「500kg未満」が12%、「500kg以上1t未満」が6%となっていて、一番多いのが「1000t以上」で47%でした。作業1回当たりの製造・取扱量は、「1kg未満又は1l未満」が39%、「1kg以上1t未満又は1l以上1kl未満」が33%、「1t以上又は1kl以上」が28%でした。当該作業従事労働者数は、「5人未満」が83%、「20人以上」が17%です。さらに、1日当たりの作業時間は、「15/日未満」が39%、「15/日以上30/日未満」が11%、「30/日以上1時間/日未満」が28%、「1時間/日以上3時間/日未満」が17%、「3時間/日以上5時間/日未満」が6%でした。局所排気装置については37%の設置でした。

 ばく露実態調査の結果ですが、有害物ばく露作業報告のあった6事業場を選定して調査を実施しました。対象作業場においては11人について個人ばく露測定を行うとともに、28地点についてスポット測定を実施しました。個人ばく露測定結果については、ガイドラインに基づき、8時間TWAを算定しました。測定分析法については別添4に添付していますが、サンプリング方法については球状活性炭捕集管を用いて捕集、ガスクロマトグラフ質量分析法による分析を行いました。

 対象事業場における作業の概要ですが、主な用途としては「塩化アリルを含有する製剤その他の物を製造するために原料として使用」だけでした。塩化アリルのばく露の可能性のある主な作業としては、「サンプリング」、「分析」、「充填」、「計量」、「ストレーナー洗浄」等の作業で、1回当たり数分から数十分間の作業が多くを占めていたということです。

5ページに移りまして、作業環境の状況ですが、37%の作業が屋内、ばく露防止対策は58%の作業で局排が設置され、53%の作業で呼吸用保護具(全て有機ガス用防毒マスクを使用)が使用されていました。

 測定結果ですが、11人の労働者に対して実施し、個人ばく露測定の結果から、8時間TWAの最大値はストレーナー洗浄作業中に測定された2.2ppmであり、さらに、全データを用いて信頼率90%で区間推定した上限値は2.3ppmでした。測定結果の詳細については下の表に書かれていて、KS検定においても対数正規分布に適合するとなっています。

6ページのばく露最大値ですが、ばく露評価ガイドラインの規定に準拠し、区間推定上側限界値の2.3ppmとなり、これが二次評価値を上回っています。なお、個人ばく露最大値も二次評価値を上回っているということです。また、スポット測定の実測データは、最大でサンプリング作業で3.489ppmであり、この作業については3分間で、11回ということでした。

 以上のことから、リスクの判定及び今後の対応ですが、塩化アリルの製造・取扱事業場においては、上記のとおり二次評価値を上回るばく露が見られたことから、更に詳細なリスク評価を行い、ばく露の高かった要因等を明らかにする必要がある。その際には、比較的高いばく露量が確認されたストレーナー洗浄作業、計量作業等について、当該作業工程に共通した問題をより詳細に分析するとともに、実態調査を行った作業以外に高いばく露の可能性があるかどうかを確認する必要がある。なお、詳細なリスク評価の実施にかかわらず、当該物質はヒトに対する発がん性が疑われる物質であり、当該作業に従事する労働者等を対象として自主的なリスク管理を行うことが必要と考えるとまとめています。

 残りの資料ですが、7ページにばく露実態調査集計表、別添1として有害性総合評価表、12ページからの別添2が有害性評価書、別添3がばく露作業報告の状況、別添4が分析法となっています。以上です。

○名古屋座長 ありがとうございます。実態的に見ていただくと、初期リスクの中でばく露も超えていますし区間推定も超えていて、一応、最大ばく露が2.3と二次評価値を超えていますので、このままいけば詳細リスクにいくという形になりますが、よろしいでしょうか。

○花井委員 1つ教えてほしいのですが、例えば3ページに一次評価値で0.056という低い数字が出ていますけれども、これはどこで使って。

○圓藤委員 バイオの結果ですね。バイオアッセイがやって論文で書いたものではないですか。

○平川化学物質評価室長補佐 根拠としては、その試験の結果を根拠とさせていただいています。

○花井委員 根拠はどうでもいいのですが、低い値が出てきて、これを使わないのですか。

○名古屋座長 二次評価値を超えたものについてリスク評価しましょうと、ガイドラインで決められています。

○花井委員 ガイドラインで決められているから、こういう値があっても無視するということですか。

○角田化学物質評価室長 一次評価値と二次評価値の整理ですが、一次評価値は行政指導の参考ということで整理しているものです。こういったかなり低い値で出てきていますから、こういったことも考慮し、必要な指導は行っていくということで活用しています。

 二次評価値の設定だけですと、要するに、それを超えてしまうと制度的に規制をかけることになりますから、そこの部分だけを設定するということではなく、もう1つ、一次評価値を設定し、それを指導の目安にしているということです。考え方としては、要するにガイドライン上の規定では一次評価でまずスクリーニングをして、その上で更に二次評価でスクリーニングする形になっているのですが、実質的には一次評価値と二次評価値を同時に決めているところもあります。ただ、要は一次評価値は先ほど申し上げたとおり指導の目安ということで、こういう数字も計算して参考に提示しているところです。私どもも、そういう一次評価値を超えたりしている所については、そういった意味で注意喚起をしていくというところで扱っています。

○花井委員 ガイドラインの考えが、まだちょっと私の頭にはすっきり入っていないので、もう1回、よく考えてみます。

○名古屋座長 参考資料にガイドラインの資料がありますので。

○花井委員 前から見ている話ですが、ただ、こうやって出てくると、これだけ違う値が評価に使われなくて過ぎていくというのが、ちょっと不思議な気がするのです。

○名古屋座長 よろしいでしょうか。そうしましたら、これは詳細リスク評価にいきますので、そこのところに書いてありますように、このストレーナーの洗浄とか計量というのが共通性があるかどうか、きちっと実態調査するときに参考にしながら実態調査してほしいということ。また、これ以外のところでも高いリスクがあるかもしれませんので、そのことも考えながら実態調査に進んでいただければということです。よろしいでしょうか。では、ここのところは詳細リスク評価にいきますよということでまとめたいと思います。

5物質が終わりました。一応、酸化チタンについては高いリスクがあることが確認できましたが、措置の必要性についてはナノ以外の粒子を含めて再整理し、継続審議としました。三酸化二アンチモンについては、リスクが高いということで健康措置検討会にいくと決めました。グルタルアルデヒドについては、二次評価値を超過して事業場が1点ありましたけれども、これは特異的なことでかなり注意喚起等は必要だと思いますが、一応、リスクの中では終了とし、健康措置にいかないという結論になったと思います。クメンについてはリスクは低いという形で、初期リスク評価で終了とします。塩化アリルについてはリスク評価が高いということで、詳細リスクにいくとまとめてよろしいでしょうか。時間が過ぎてしまいましたが5物質が終わりました。ありがとうございました。

 その他ということで、今後の予定について事務局からよろしくお願いいたします。

○平川化学物質評価室長補佐 本日、資料6として今後の予定を配布していましたが、本日の審議状況で、5物質について終わったという形で整理をさせていただければと思います。残りの77()721()につきましては、なしとさせていただければと思います。

○名古屋座長 5物質がもう少し延びたら2つあったのですが、今日、ちょっと時間は超えましたけれども、うまく終わりましたので。

○角田化学物質評価室長 今日、御指摘等ありましたので、修正をいたしまして、委員の先生方に確認していただきます。その後は公表に向けた準備を進めていくことになりますので、よろしくお願いいたします。

○名古屋座長 1回で無事に終わったということで、皆さんの協力だと思います。今日の審議、ありがとうございました。


(了)

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