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2015年4月17日 第4回生涯現役社会の実現に向けた雇用・就業環境の整備に関する検討会

○日時

平成27年4月17日(木)


○場所

厚生労働省共用第8会議室


○議題

高年齢者の雇用・就業の現状と「生涯現役社会」の実現を図るための課題

○議事

○雇用開発企画課長 ただいまから「第 4 回生涯現役社会の実現に向けた雇用・就業環境の整備に関する検討会」を開催いたします。本日は清家座長が御都合により欠席のため、本検討会開催要項 4 (2) に基づき、座長より座長代理として指名されていらっしゃる阿部先生に進行をお願い申し上げます。阿部委員、よろしくお願いいたします。

○阿部座長代理 ただいま御紹介いただきましたとおり、座長代理として今回、進行役を務めさせていただきます。どうぞよろしくお願いいたします。

 議事に入ります。前回は高年齢者の多様な就業の場の確保について活発な御意見を頂きましたが、本日は現場において高年齢者の雇用就業機会の確保に取り組まれている企業、派遣事業者、シルバー人材センター及びシルバー人材センター連合、自治体、団体の皆様にお越しいただき、その取組状況等についてお話をお伺いしてまいります。

 それに先立ち、まず前回の議論で委員から要望のあった資料について、事務局から説明をお願いいたします。

○雇用開発企画課長 資料 2 を御覧下さい。前回の第 3 回検討会において、シルバー人材センターが高齢者の間でどれだけ認知されているのかということに関して資料を御説明いたしましたが、これについて「現役世代にどれだけ認知されているのかということについてのデータがないのか」という御要望がございました。

 資料 2 は、これに関して 3 つの調査から関連するデータをお示ししたものですが、このグラフの赤色から黄色までの暖色系で塗り潰した部分が、「シルバー人材センターを認知している」といっていいのではないかと考えられる回答の部分で、シルバー人材センターは現役世代でも広く認知されているということがいえるのではないかと思います。

2 点目ですが、シルバー人材センターのデータについてもう 1 点御要望がございました。これについては資料はありませんが、「いわゆるシルバー人材センターの臨・短・軽要件を緩和する要望が現場で強い」ということを前回の資料で申し上げたことについて、「どのような分野の仕事について、その要望があるのか」「緩和をすることにより、どのような仕事が拡大すると見込まれるのか」という問題がありました。これについては、既存の調査などを探索しましたが現状ではデータが見当たらなかったところでありました。

 ただ、この点について幾つかのシルバー人材センター連合に直接お尋ねしてみたところ、現状において既に就業希望者が多い清掃、施設管理といった職種においては、就業可能時間が増えれば、当然それに応じて、より長時間の就業を希望する会員も増加するであろうという意見が聞かれたところです。また、就業可能時間が増えると、従来のシルバー人材センターにおける一般的なイメージとは異なる自動車の運転、販売、事務などの職種においても、長時間の就業を希望する会員が増加する可能性があるという御意見がございました。

 このような職種を希望し、対応できるという会員が増えるならば、シルバー人材センターの発注のほうも増加することが期待できるのではないかと考えられるところです。事務局からは以上です。

○阿部座長代理 今の事務局からの説明について、何か関連して御質問はありますか。

○山田先生 今、清掃とか施設管理というのは、ある意味では民間と競合しているところであり、高齢者については 20 時間を超えた者についても拡大すると、被用者保険の適用があります。被用者保険適用の条件は御存じのとおり今後 20 時間以上にまで引き下げられますので、被用者保険の適用があるかないかによって、むしろシルバーの方が優位な条件になってしまい競合が懸念されるところがあるのではないかと、御説明を聞いて感じました。コメントです。

○阿部座長代理 今日はヒアリングが中心ですので、また何か御意見がありましたら別の機会でお願いしたいと思います。

 それでは、各団体からのヒアリングに移ります。初めに、平和産業株式会社代表取締役社長の八尾様から御説明を頂き、その後に質疑応答の時間を設けます。よろしくお願いいたします。

○八尾様 ( 平和産業株式会社 )   平和産業の八尾と申します。私どもの会社の説明を書き忘れましたので、簡単に申し上げます。私どもは製造業で、機械加工業という業種に属すると思います。大きくは飛行機や車両等の重工部品を製造する下請メーカーと認識していただければ結構ですが、もともと会社の生業は治具金型屋ということですので、いわゆる町工場をイメージされると、分かっていただきやすいかと思います。会社は創立約 50 年たっており、私は 2 代目の社長で、創業は私の父です。私が社長を始めて、ちょうど 10 年になり、私は 51 歳です。

 先に頂いた質問に基づき次の資料を作りましたので、御覧いただきたいと思います。まず、定年制度の概要、継続雇用の状況について説明いたします。私は平成 17 年に社長を始め、そのときに就業規則の改定をして、会社法等も変わり、それに基づいていろいろなことを考えてやってきた結果が、今日の姿です。

 弊社の定年制度は 60 歳以上で、退職 6 か月前に宣言した日を定年とさせてもらっています。これは全社員に共通です。次に、退職金の勤続年数のカウントが 60 歳までの期間ということを明確にし、退職時の基本給掛ける勤続年数と貢献度で定めておりますので、長く勤めると退職金は下がっていくということです。

 次に、 60 歳を超えて自分のペースで働きたいということで、高齢者にのみパート労働という形の仕組みを作っています。現在のパートでは 1 か月に 90 110 時間ほど働いている 72 歳の男性、正社員女性では 67 歳の方が最高齢です。私の父は 81 歳で会社の会長をしていますので、それを除かせて説明しています。

 あと、今年も新入社員が入ってきたのですが、入社したときの教育の 1 つに、自分の人生の転換期は自ら決めなさい、会社に属するということよりも、会社に定年がないので 42 歳、いわゆる介護保険が適用される時期になれば、おのずと全ての社員は社会人から個人に戻るのが人生と考えて、先輩を教師としなさいと指導しています。

 次のページです。私どもの会社の年齢構成と勤続年数構成です。棒グラフが左軸の年齢になっており、点のグラフが勤続年数です。私が 51 歳ですので、私より年齢が上の人は、私が入社した後に入っていただいた年上の先輩方です。折れ線グラフは勤続年数を示しています。一番右に棒が 1 本ポンとあり、私はこの点の中の 3 つ目で、会長、私の半年先に入った先輩の社員がいて、それから後ろは全部私の後輩になっています。

 このグラフを説明させていただきますと、私の少し後ろに縦の勤続年数に隙間がありますが、これはバブルの時代で、今から 25 26 年前の数字です。勤続 20 年から後ろは、毎年新入社員を頑張って継続して採用させていただいたということです。離職率の低い会社となっていますので、形は整っております。

 次のページです。私どもは定年廃止ということを社員に伝えていき、効果としてこのようなことが考えられるかと思っております。 1 つは、給与にピークがあり、下がるものであるということを全社員が認識しました。「認識しているのではないか」という社長の勝手な思い込みですが、そういうことを実感しております。

 もう 1 つは、給料が下がるということは、後輩への富の移動である。やはり子育て世代等が一番所得が欲しくて、先が不安であります。会社の中で、ある年齢を超えた人が自分のペースで働いている姿を見せることで、安心してもらうということにも役立っていると思います。

 次に、退職金額にはピークが存在して、退職金はだんだん下がるという考え方。退職金は老後のお金という概念でなく、次のステージに行くための準備であるということが大事かなと。これもきれい事かもしれませんが、もともと退職金を大企業並みの満足に構成することができないのが、私ども町工場の現実であり、作り上げた理屈です。

 もう 1 つは、現役継続の最低条件が健康であるということに気がつきます。そうしますと、私自身もそうですが、有給休暇取得や、有給無給にかかわらず、休暇を取得するということがリフレッシュ目的であり、それを罪悪視する上司がいなくなるという成果も出ています。

 もう 1 つは、若年層にとって全ての高齢者が教師、反面教師。この場合は正直言って反面教師のほうがいいです。ああいう形は、こういう形はと、自分のリタイアのある姿を想像するに、全ての先輩方は反面教師になっていると理解すればいいと思います。

 次のページです。弊社の中高年齢者の中途採用雇用状況について説明いたします。なぜこういう考え方をしているかと申しますと、私は防衛省の航空幕僚監部就職援護推進委員というものを 10 年ほどやっております。これは私どもが作る、いわゆる防衛省様向けの商品の多くが IHI だとか三菱重工さん、川崎重工さんという大手重工を経由し、納められているということもあり、防衛省に対する興味等もございます。実際に防衛省さんに納めるものはありませんので、その辺も加味し、ボランティアとして今年も継続することが決まっています。それにより、 10 年ほど前からそういう方々に来ていただいており、そういう方々の本当の能力を実感させていただいたのが現実です。

 一般的なマネージャークラス中途採用は、大企業からの縁故等、中小企業へのいわゆる天下りのような形、私どもの会社が生まれるもう一世代前、私どもは 50 年ですから、 70 年ぐらいの歴史を持つ会社は、そういう形が多い時代でした。今はそういう方々が紹介されてる事例は少ないです。癒着等を言われ、業務が関連した下請に行くということがだんだんなくなってきているということで、技術がどんどん継承しなくなっているという問題も、我々自身が抱えている問題です。

55 歳以上の定着率は、 1 年継続できれば、皆さん 5 年以上勤めていただいております。過去に、大体 15 6 名の方を採用させていただいておりますが、それが実績です。中小企業のオーナー会社として本音は、もともと地頭がいいという言葉がいいか分からないのですが、力のある方が 50 歳ぐらいで我々と握手をしてくれることが、その御本人にとっても経営に参加できるし、会社の成長に一役を担えるということがありますので、よいことだと思います。できることなら 40 後半ぐらいでそういう出会いがあることを私は求めるというか、勇気を持ってもらいたいと、多くの大企業等に勤める方々に求めております。銀行等は非常に健全で、支店長クラスになると 50 前後で出てまいりますが、そういう方が受け入れられるほどうちの会社も強くありませんので、世の中の考え方がそうなっていくことを期待しております。

 あと、最近は「社会人ドクター」というのが世間で言われており、私自身も 5 年ほど前に、東京農工大学という武蔵野にある理系の工科大学に入学し、 2 年ほど前にドクターを取らせていただきました。これも社員に向けて、私はリタイアするというか、次のステージを作ろうと思っていることをアピールするためにやっており、実際にそこで出会う学生を見て、「生涯現役」という言葉をつくづく考えさせられるというのが私の実感です。

 次のページです。これが私どもの会社の高齢者雇用の実態です。実際、事務系が多くなっております。とは言いましても、フォークリフトやクレーン等も扱ったり、機械を修理したりするという技能を使っていただいております。

 次は中高齢者の能力開発についてです。私ども自身が下請が長いせいもあり、若干嫌みが入ったバイアスがあるかもしれませんが、その辺は排除して聞いていただければと思います。基本的に新しい技能習得は期待しておりません。それよりも経験を組み合わせることが重要で、総合職を期待しないで、個別の作業処理能力の高さで実績を積めば、今いる現役の社員から感謝と尊敬を得られているというのが現実です。全ての先輩方は必ず知識人なのです。それを引っ張り出してあげるのは経営者の責任だと思っております。

 能力以前に、本当の高齢者の問題は、大組織から移動すると「社会人」ではなくて「会社人」であることなのです。企業人である「会社人」から、最終的に個人である「社会人」になるように導くというのが、我々の社会的責任だと思っております。要は、本人の心が能力発揮のポイントであるというのも実感しております。

 あとは生涯現役を考えますと、私は皆さんに言っていることですが、まずは個人事業主を考えてくださいと。個人事業主は最終的に生涯現役の方々ばかりなので、そういうことをベースに考えれば、平和産業というような中堅中小のオーナー会社のやるべき社会的責任は通過点である。これをうまく通過してもらい、組織を統治する能力さえ持てば、自治会だろうが地域の貢献だろうが、いろいろな形で生涯現役が形になっていくと思います。自身の社会的価値感が見えるような指導をしております。

 最後に、いよいよ私の愚痴になるのですが、私が考える課題と提案です。 1 つ課題は、なぜこのようなことを行ったかというと、雇用延長という話が 10 数年ほど前から言われ始めて、ますます人の流動化がなくなっています。大企業から我々のような会社への頭脳の流動化が妨げられ、 65 歳で社会に出てこられても、自力で事業などを起こすのは現実には無理です。どんなに頭のいい人でも、せいぜいコンサルタントです。また、各自の自己分析でも、社会の需要と供給のカン違いは非常に大きくなっています。よって、 65 歳まで大企業の雇用延長義務は、生涯現役の妨げだと私は考えております。

 退職金の理解、退職金というのは運用老後資金だとか、後は遊んで暮らすというベースで考えるのではなく、次の社会参加のつなぎだと思えば、どんどんお金の使い方も変わってくると思いますし、早期転職、第 2 社会人を促していただけるような施策を取っていただけると有り難いと。

 まずもって、我々が新入社員を選ぶときに、点数で能力を分けます。いわゆる大企業で区分けされた採用された人材は一生そのまま1社の中にうもれてゆくのです。そうすると、我々の所に入ってくる1ランク以上低い区分の新入社員に対しては、能力の多様性というものは社会に求めるしかない。それを、この 65 歳までの雇用延長により妨げられているとすると、私は経営上未来が非常に不安になるというのが 1 つあります。

 もう 1 つは、多分これは私の勉強不足で、いろいろな法律はあると思うのですが、労働災害についてです。自動車の免許、私の父も 81 歳にしてまだ車に乗っております、自分から「降りる」というのを待っているだけですが。メンタル等も含めて労働時間で物事が評価されていますので、高齢者を雇用するということは、労働災害の中に特別枠を作れとは言いませんが、ある種のネガティブな要素排除として必要になります。年齢が違えば体力も違うし、本人自身が免許を返納できないというような現状からすると、経営者が見なければいけない部分と、あと本人の判断に任せる部分というものを法的な指導いただけると有り難いと思っております。時間が過ぎて申し訳ございませんでしたが、以上です。

○阿部座長代理 ありがとうございました。御質問のある方はお願いいたします。

○山田先生  1 つお伺いしたいのは、「長く勤めると退職金が下がっていく」とおっしゃったのですが、その仕組みで大体どのぐらい下がっていくのかということと、定年制度は 60 歳以上で、退職 6 か月以上前に宣言で確定ということでしたが、社長から御覧になって、どういう人がこういう年齢でという、割と遅めに設定する人と早目に設定する人で、どのような違いがあるのかということについて、もしヒントを頂ければと思います。

○八尾様 まず、退職金が、民法上にしても労働法上にしても約束事であって、各社定義は様々であるという前提を働く人は考えていないのです。社会的通念上、これがもらえるものだと思っていたり、各社によって何千万円という所もあれば、 200 万円が出せれば満足する会社もある。これはなぜそういうことが起こっているのかというと、税法上のところでは退職金という明確な位置付けはありますが、それ以外の定義は自分たちが決めなければいけないというのが前提にあるからです。

 平和産業の退職金はどうあるべきかと考えたときに、先ほど書いた計数でありますが、 60 歳まではカウントします。だから、 20 歳で勤めれば 40 年です。 40 年で、 55 歳ぐらいで基本給のピークを迎えて、毎年 3,000 4,000 円ずつ下がっていきます。そうすると、 40 年で仮に 20 万円が基本給であった場合、 800 万円であるという前提で物事を考えたときに、 1 年たつと 3,000 4,000 円基本給が下がってくるベースで考えると、 12 15 万円ずつ毎年下がっていくと考えております。同時に基本給のテーブルはずっと最低賃金法のところまで持っていくと、大体 78 歳ぐらいまでつながって、大体 12 万何千円になると。それをあえてグラフで示して、いろいろなことを自分で考えてくれということを伝えているつもりです。

○山田先生 もう 1 点は、みんなどれぐらいの年齢で引退するのか。遅く引退する人と早く引退する人で、どのような差が、キャリアなどの面であるのでしょうか。ざっくり言って。

○八尾様 これはもともと 60 歳定年だったのですが、 62 歳、 64 歳まで勤めてもらうのですが、やめていく人が余りハッピーではないのです。何で幸せそうではないのだろうか、「出て行け」と言われる人はないのです。我々のような会社は周りがその人の存在を決めますが、大きな会社は定年がなければ、良いも悪いも切れないから、価値は分かるのですが、我々はコストを調整できるわけですから。そういう意味では、私が社長になった後に退職した人はどういうことかというと、自身の体調の都合です。がんが発見されただとか、本当に体が急にしんどくなったとか、そういうことでおやめになる人が多いです。

○阿部座長代理 先ほどの退職金のところですが、資料によると「退職金勤続年数カウントが 60 歳までの期間」となっているので、 60 歳までで勤続年数は上限なのですが、退職時の基本給が下がっていくから、勤続年数は 60 以上で変わらないけれども、退職時の基本給が下がるからという理解なのですか。

○八尾様 下がるのはそういうことですね。

○阿部座長代理 退職時の基本給を決めるということですね。

○八尾様 退職時の基本給で決めると。つまり長く勤められるということは、その先もそんなに長くないし、生涯現役を続ける方法を、みんなそれぞれ考えるわけです。生涯現役の仕組み、平和産業の退職金は大手のような何千万という単位は出せないけれども、次につなぐために皆さんに知識と考え方だけは学ばせる機会を作りましたというのが、退職金は少ないですが、退職へ導くための考え方だと思っております。まあ屁理屈ですが、そういうことにしたいと思います。

○阿部座長代理 いえいえ。

○北浦先生 今のことに関連してですが、退職給付で退職年齢をコントロールするという考え方は 1 つあると思うのです、これはアメリカでもあるのです。

 今の点で言うと、 60 以上で勤めていくと不利になるわけですね。

○八尾様 不利ですかね?

○北浦先生 今の話ですと退職金額が下がるということでしたよね。

○八尾様 でも、その間は長く労働対価の収入が継続する。

○北浦先生 給料は出ますが、退職金の金額が余り大きくないので、それは働いて収入を得るほうを選択するかどうかと。そういうことで長く続ける方がいらっしゃるということですね。

○八尾様 そうですね。長く続けるほうを選んでもらえるような会社を目指そうと思ってやっておりましたので、結果的に長いほうを選んでいただけると。

○北浦先生 そうすると、退職金が 60 歳のところでピークになるわけですね。それを理由としてやめるという方は、余りいらっしゃらないですか。

○八尾様 ないですね。

○北浦先生 いないですか。

○八尾様 はい。

○北浦先生 そのことを確認したいと思いまして。

○八尾様 私どものような会社の現実からすると、それを若いうちから計算している人もいないです。時代は変わるものだし、ルールは変わるものだという前提で。指導するのに、退職金の定義は法律では税法以外に見当たらないと、私の勉強ではそう思っておりますので、それをまず指導してから、考えろと。

 逆に、大手から来られる方の価値観を横で見ていれば、それがどういうことであるかを理解するようになってきます。

○北浦先生 もう 1 つです。定年制がない場合、あるいはフレックスな場合には、賃金制度がかなり重要な位置を持つと思います。そうすると、御社の場合には、 60 までの賃金制度と 60 以降の下がっていく賃金制度がある。そこは、例えば前者のほうが能力給で、その後が職務給になるというような形なのですか。

○八尾様 そうですね。 200 人ぐらいですので、私の目が届きますので。大事なのは、やはり基本給のベースなのです。ベースの上に付いているのは会社全体の成果であり、悪くなったときにはこちらに回ります。特に、今ベースアップというのがありますが、私どもでいうと 22 2,000 円の基本給のところまでの人が、先にベースアップがどんどんされていきます。このままずっと続けていくと、こういう形になるのではないかというようなことも思います。世代間格差というものは、私は知識格差だと思っておりますので、この格差が会社としてよほど埋められない限り、全体のベースを上げるというのは、弊社では、まだ先かなと思います。

○秋山先生 中高年から入られて、ホワイトカラー系から設備修理などへ、いろいろな分野、部門で働いていらっしゃると思うのですが、どのようなルートでその方たちをリクルートされるのでしょうか。

○八尾様  1 つは防衛省の佐官級の方々を中心にした、私のボランティア活動の御縁があります。

 もう 1 つは大手のお客さんです。お客さんの中で、過去においては 60 歳定年でしたので、それを見て、 60 歳を超えて弊社で「働かせてくれ」と言ってくれる方がたくさんおられました。ところが、今はまずおりません。所得を幾ら上げても、ブランドを取りたい。「 65 歳を超えたら頼むよ」という人はいるのですが、それはこちらから御遠慮するのが、今の社員に対する義理だなと思います。

○秋山先生 民間の派遣会社やシルバーなどもご活用ですか。

○八尾様 それ以外は使っておりません。そういうような手の挙げ方をしなければいけない状況には今までなっていなかったので、分かっていないです。

 シルバー人材の方のチームでたまにやる、大きな、例えば草刈りだとか、大掃除だというときにお手伝いいただくことはありますが、社員としてではないです。

○阿部座長代理 今のお話とも関連するのですが、 60 歳であったら受け入れたけれども、 5 年間遅れて 65 歳だと難しいと。お話では、 50 歳ぐらいであったら共同経営者として考えられる年齢だと。そういう区切りがあるようなのですが、 50 歳から 60 歳、 60 歳から 65 歳というのは、相当違うものなのですか。

○八尾様 相当です。実質は 55 歳が変化に対応するなら限界です。防衛省さんは 55 歳ですから、それと銀行系は 50 歳ぐらいでありますが、それだけ濃縮して若いうちに知識をつけたりとか、仕事をされていますので。ただ、防衛省の方はすごく苦労されていると思います。全く違う民間、まして下請ですから、そこの自分の心のコントロールの付いた人しか続けられません。それを乗り越えられたら、元のベースのレベルが高いですし、国家に対して忠誠を誓った人たちが、民間を通して国に対して何ができるのかを考えてもらうのは、理解すれば本当に力になります。あと 5 年早かったらと思う人たちばかりです。

○阿部座長代理 ほかによろしいでしょうか。それでは、本日はどうもありがとうございました。

○八尾様 ありがとうございました。

○阿部座長代理 続いて、株式会社高齢社社長の幸山様から御説明を頂きます。よろしくお願いいたします。

○幸山様 ( 株式会社高齢社 )  今日は時間が非常に短いということと、お手元に配った資料なのですが、今、私どもの会社はマスコミですとか、いろいろなところから取材などがあり、一般的に「こういう会社だよ」ということで説明するために、パワーポイントで作った資料ですので、皆様方の興味と少し外れているところがあるかもしれませんが、大体これで説明させていただいて、後ほど御質疑を受けさせていただければと思います。

 もう 1 つ、会社案内もお配りしましたので、これは今のところは使いませんが、後ほど質疑が出たときには使わせていただければと思います。

 まず、資料 4 の概要です。高齢社は定年になった人を対象とした、人材派遣業・有料職業紹介・請負事業ということです。今はメインは人材派遣業になっております。最初に会社が請負で始まったという経緯もありますので、一部、仕事を請けて、高齢の方を使うという部分もあるのですが、ベースは人材派遣です。

 創業者が上田研二という人間で、生年月日を見ると 77 歳で、元東京ガスの社員です。実は経営陣、私も含めてみんな元東京ガスの社員でした。後ほど話に出てきますが、仕事の多くが東京ガスないし東京ガスの関連会社に派遣したり、そこの仕事をするということで、大きな柱になっています。それだけではないのですが、ベースはそうなっております。

 この上田研二というのは、非常にユニークな人間で、東京ガスの子会社にいたときに、急な仕事だとか、単純だけれども人を集めてやらなくてはいけない点検業務が出たときに、社員が非常に忙しい思いをして、休日だとかにやっていたのを見て、高齢者で定年になった人、技能も時間もあるのに遊んでいる人がたくさんいるではないか、こういうところに目を付けて、起業できるのではないかということで、 2000 年に起業しました。

 こだわったのは、高齢社という社名と、 2000 年ということです。本当は 1 1 日に登記したかったのですが、要は世紀が変わるときにということです。ところが役所は、人間は受け付けてくれるのに会社の誕生日は受け付けてくれなかったということで、 4 日になったということです。

 今は本社が千代田区にあるのですが、本社は千代田、中央、港、そのどこかに置きたいということで、今は千代田区で、東京の真ん中に置いています。

 資本金が 1,000 万円です。これも会社からお金を取るのではなくて、個人で出資を願いました。年商は 5 3,300 万とありますが、平成 26 年は少し減って、 4 9,000 万円ほどになってしまいましたが、そのぐらいの年商です。

 次のページです。経営理念は 4 つあり、メインは一番上の、定年を迎えても、気力・体力・知力のある方々に「働く場」と「生きがい」を提供するです。それから「人本主義」という言葉があるのですが、これは資本主義に対抗していて、要は金儲けではないということで、人を大切にする会社にしたいということです。

 次のページの人材派遣の仕組みは省略させていただきます。登録社員がいて、就労先があって、会社が間を取り持って人を派遣するという仕組みです。ここは省略いたします。

 次のページです。高齢社の社員には 2 通りあります。上が登録社員で、登録していただき、実際に派遣して働いていただく人です。 650 700 人、月によって少し違いますが 680 人ぐらいの登録者があります。登録は原則として定年をした人、 60 歳以上 75 歳未満を条件にしています。無理なく働く仕組みでします。

 派遣者は原則的に定年制を敷いていません。つまり、向こうがよくて、自分もいいということになると働けるということです。ただ、実質的には 75 歳ぐらいになると、もうそろそろいいかなと。仕事によっては、運転をする人は 75 歳までという条件が付く場合もありますし、うちの会社もできるだけ運転は 75 歳以上はしないでということでいっています。最高齢でいったら、 80 歳の人もあります。

 下の本社のスタッフです。 20 人ほどの正社員と嘱託社員がいます。正社員というのは、 63 歳までのフルタイムの方々です。 63 歳を定年とし、それを過ぎると嘱託ということで、 70 歳の誕生日までは、原則半年契約です。嘱託社員になれば、選べるのですが、原則としては週 3 日、交代でいいということにしています。 70 歳を超えると、会社が必要とする場合には業務請負契約、あるいは登録社員となって外で働いていただくということになります。

 次は、高齢者、働く人、会社へのメリットを分けて説明しています。一番大きいのは、高齢者にとっては「きょういく」と「きょうよう」があるということで、行くところと、用があるというのは非常に大きなキーワードです。それから、居場所づくりです。通常はお金で買うことになるのですが、そういう意味でお金がかからない図書館というのは、今は高齢者で溢れているということです。結構大きいのは、奥様の生活圏を乱さないということで、定年になると「俺の飯はどうした」「どこへ行くのだ」とか、こういうことが非常に家庭不和の元になる。奥様は「監視しないで」「亭主元気で留守が良い」というようなことで、旦那がいなくなることは非常に喜ばれて、働くことが喜ばれるということです。

 次のページです。会社はワークシェアリングを取っております。同じ仕事でも、 A さんが月、水、金なら、 B さんが火、木、土だとか、 2 3 人で転がす仕組みということで、ベースはワークシェアリングをしていますので、交代できます。体力的には現役と違って、週に 3 日ぐらいだったら非常に有り難い。ゴルフもできるし、医者にも行ける、買い物もできる。完全リタイアはもったいないということで、 3 日ぐらいがいいと。それから、存在感があるのは大きいです。この中で、会話があることが非常に元気の素になると言われています。

 最後に、年金だけでなく自分の収入があるというのは、非常に嬉しいことで、生活設計が企業年金できちんとできている人であっても、やはりお金が減っていくのは本当に心細くなるということが言われております。あとは、自分が払うというのは非常に大きな喜びであるということです。

 次のページです。就労先についてです。仕事を取るときに盛んに PR しているのですが、非常に多いのは数週間で終わる仕事というのは結構あるのです。それから月末だけの仕事、あるいはこの仕事は今年度中に全部点検しなさいとか、仕上げてくださいという仕事が結構あって、これを社員が残業でするとか、そのために下請を探すというのは非常に大変です。そういうことの結果として、常用ではないので低コスト感のあるということで、そういう仕事が結構回ってきます。

 それから、即戦力ということで、会社の OB とかを、関係企業先に派遣することが結構多いので、急に人が間に合わないというようなところは、高齢の方を派遣したりします。ベースは教育指導の要らない仕事をやってもらうということですが、簡単な導入教育はいたします。何かというと、大体先輩が後輩の所に応援に行ったり、発注元の人が発注先に応援に行くと、「おい、何とか君」というようなことで、結構先輩風を吹かせて、「あの人、嫌だから来ないでくれ」というようなことがありますので、そこは受皿になるような教育を必ずするようにしています。

 会社としては土日の割増は取っておりません。「サンデー毎日」の人たちと、土日は空いているからいつでもいいという人を使うので、会社としては割増を取っていません。人生の経験者ということで、非常に柔和というか、受け身としては非常にいいです。

 次のページです。我が社にとって人は宝ですので、時間で契約して、働いた分だけ請求して、働いた分だけお支払いするということですから、赤字になりにくいです。利用者、派遣者の両者から喜ばれる。会社そのものが社会貢献です。労働力不足を穴埋めしたり、高齢者が元気になるというのは非常にいいことだと思っていますし、特に医療費削減で、本当に働いている人は元気で若く見えます。

 次のページです。ここは非常にさらっと書いてありますが大きなところで、課題があります。会社として一番大きな課題は、マッチングの難しさがあります。これはいろいろな業務があるのですが、行く人のできる仕事と業務の内容、経験、業務量。それから、今 70 歳前後の方はパソコンができるかできないかで、行けるとか、やれるとか、「俺は嫌だよ」という人もいますが、もう少したつとこの辺は解消されると思います。それから、勤務場所、距離です。若いときは 2 時間は平気なのだけれども、やはり 1 時間ぐらいでどうとか、期間とか曜日で、どうしても水曜日は行けないとか、ほかのことをしているからこの日は外してほしいとか、そのような話があります。

 それから、受入企業の先入観があり、資料で 70 歳ぐらいというと、「そんな高齢で大丈夫なのですか」というようなことを言う人が、まだ多いです。しかし、そこは「紙に書いてある年齢ではありません。人を見て判断してください」ということをお願いしています。

 健康問題というのもあり、環境と体力です。外回りをしたことのない人に外回りというのは非常に酷です。特に、夏場、冬場ということです。それから、高齢者で急に脳梗塞、心筋梗塞になった、糖尿病で低血糖になって倒れてしまったという人も出ますので、その辺にきちんと自覚を持っていただく、お互いに情報管理をするということです。

 最後に、労働法規、行政指導の矛盾というのがあります。人材派遣法で私どもは仕事をしているのですが、基本的には全て、若者の雇用安定、若者を正社員化しなさいということの前提で、こういう法律が成っています。だから、えっと思うのですが、定着問題について人材派遣のどうのこうので審議をするとかしないとか言っていますが、同一職種 3 年、同一人物は MAX 3 年ということで、 3 年たったら仕事をやってはいけませんという法律に、今はなっています。これは人を替えればいいというように変えようとしているのですが、定年した人に、「何で正社員になるのか」という話が堂々と言われている、おかしいではないか。これは言っています。

 それから、人を替えればいいという法律になっても、働く側にとってみれば、マッチングの問題で、あそこの職場には通えるけれども、ほかの同じような職場はないです。それは仕事をやめなさいということにつながるのです。これは何とかしなくてはいけない。 30 日未満の日雇労働者については 60 歳以上は例外になっていますし、離職者の労働者も 60 歳以上は例外になっていますので、それと同じように、高齢者は抵触日を除いてもらうような法律にしていただきたいというのは、心からの叫びです。次の職場はありません。

 それから、本当は難しさがあって議論になっていないのですが、今は最低賃金があります。東京都は 888 円です。「年金をもらっているのに、俺たちと同じ最低賃金なのか」と、よく突っ付かれるそうです。人によっては、そんなにもらわなくてもいいと考えている人もいますし、そんなに働けないのだから、あるいは無理できないのだから、あるいは楽な仕事なのだから、そんなにもらわなくていいという人も結構いますので、下げたほうがいいのかどうかというのは非常に大きな議論なのですが、議論のテーマとしてはあります。

 それから、有給休暇制度の課題。週に 1 回しか働かない人も有給休暇を取ることができる。これは人材派遣でいうと非常に難しいです。それから、季節で、 3 月だけ仕事をする人というのはどうなのか、それが 3 年続くというときに、有給休暇制度というのは非常に計算が難しいということです。

 ということで、具体的な派遣業務、最後ですが、冒頭に言いましたように、東京ガス本体、東京ガスの関係会社、あるいは東京ガスのライフバル、工事会社を中心とした業務が、アバウト 7 割ぐらいだと思いますが、そういったことで、派遣事例としても器具修理、設備工事、施工管理という仕事、それ以外にも積算、チェックという仕事を請けております。

 この中で珍しいのは、運転補助というのがあるのですが、簡単に言うと駐車禁止対策です。器具修理をしている間に駐車禁止で持って行かれてしまうと、器具修理にならないということで、隣に乗っていてくださいと。こういうのは若い人向きの仕事ではないですから、やはり高齢者が乗っていてあげる。クレームなどがこないように、すぐに動かせる状態、あるいは止まっていられる所にいるという仕事も高齢者向けの仕事としてあります。

 ということで、私のほうは大雑把な説明で申し訳ありませんが、このような形で動かしております。あとは質疑でお願いいたします。

○阿部座長代理 ありがとうございました。御質問のある方はお願いいたします。

○酒井先生 お話を興味深く伺いました。派遣される登録社員は、お話ですと男性がほとんどということでよろしいでしょうか。

○幸山様 今 680 人と登録社員数を申しましたが、女性が 70 人で 1 割です。

 ただ、今は完全子会社にしてしまったのですが、「かじワン」という家事代行業務の会社が兄弟会社としてありました。やりたいという仕事を聞いて、そういう仕事だったら「かじワン」で家事代行業務をと。これはベースは、若いお母さん方の仕事を高齢の女性が手伝うということで始めたのですが、必ずしも高齢の方だけでその仕事が回るわけではないので、高齢者と分けてしまいました。これは何とか元に戻って、一緒にしたいと思っているのです。

 そちらは 220 人ばかりの登録者がいて、その 9 割以上は女性です。だから、分けて紹介をしてしまうということで動いています。

○山田先生 「マッチングの難しさ」ということをおっしゃっていて、派遣業務事例が出てきていますが、どの辺に需要があって、どの辺に供給がたくさんあるのかを教えていただきたいと思います。マッチングが難しいということは、職種による需要と供給が一致していないので、そこの部分が難しいというもので、どういうところなのかということです。

 あと、先ほど最賃の話も出ましたが、大体どのぐらいの賃金を皆さんもらっているのでしょうか。

 あと、登録が 670 名から 680 名なのですが、そのうち大体どれぐらい月々働いているのでしょうか。ざっくりとお教えいただければヒントになるので、よろしくお願いいたします。

○幸山様 簡単なほうからいきます。今働いている 680 人のうち、月によって違うのですが、 45 %から 50 %です。つまり、今月仕事をやっていただいています。 50 %を切らないように一生懸命やっているのですが、先ほど言いました年度末の前後というときは増えるし、今ぐらいはだんだん減ってくるということで、 50 %を切らないように一生懸命やろうと思っております。

 賃金は非常に難しいのですが、平均でいうと、 1 時間 1,100 円ぐらいが払える金額です。人によって違います。人によっては、週 3 日で月にすると 12 日になりますので、 8 万円から 10 万円の間で手取りになりますと。税金を払いますから、それの 1 割とか 1 5 分は減りますが、そのぐらいの額です。週 3 日働いて、平均でそのぐらいですと。また、人によっては週 2 日とか、あるいは土日しか仕事がないと、その日数分になりますが、そのようなことで話をしております。

 それから、マッチングというのは、今は季節的に非常にニーズがあるのは、マンションの内覧会で、売出しをするとモデルルームなどでやります。これは 3 回やるのです。お客様を呼んで説明するとき、お客さんが決まって契約するとき、入る直前に使い方などを説明するとき。その 3 回目のときに、そこのモデルルームというのは終わってしまうとなくなってしまうのです。そこに、この土日にあてがえる人というのは、距離と、そういうことができる人ということです。土日に集中しますので、土日は向こうは対応できませんということ。そういう意味で場所的なもの。今マンションが多いのは川崎の多摩川沿いとか、江東区、港区も結構あるのですが、そういう場所が多いです。

 それから、あるライフバルさんから、定年になってしまったとか、急に人がいなくなってしまったから、これをできる人はいないかというので、ニーズがあると。通える人が近くにいればいいですが、ないときに 1 時間半かかるけれどもいいかというのと、お客さんにも交通費を出してもらえるかどうかという折衝をして、そのマッチングが合えばと。一番遠いのは 3 時間かけて行ってもらっている人もいます。それは毎日はできないけれども 1 日おき、あるいは 4 日に 1 日ならいいよと。 3 時間かけて行って、 6 時間仕事をして帰ってくる。 4 日後にまた行くということで、それは本人に了解を取っているからいいですと。ところが毎日はできませんということです。

毎日の仕事というのは少ないと言いますか。

○山田先生 マッチングや教育などをすれば、何とかなるというものでもないような。

○幸山様 うちの会社が得意としているのは、余り頭を使う仕事ではなく、いわゆる技術屋とか、事務の専門能力を持っている人の仕事をあてがうというのは得意としていないです。

○山田先生 そうすると、供給側もどういった人たちが登録されていて。

○幸山様 例えばお客様と話ができる程度の会話ができるとか、会社の中でも、倉庫だけの仕事だとか。内部だけの専門の仕事をやっていた人というのは、余りあてがいができないけれども、営業をやっていたとか、折衝をしていたというのは、必ずしも折衝の仕事で仕事を見付けるのではなくて、その職場を知っているから手伝いだとか、 2 人でやる仕事の片棒になるとか、そういうのだと楽に仕事をしていただける。

○秋山先生  2 つ伺いたいことがあります。 1 点は、東京ガス関連の仕事は、おそらく現役時代のご縁からだと思いますが、例えば先ほどのマンションの内覧会とか、ほかの仕事について、仕事を取ってくる専門の業務の方がいらっしゃるのでしょうか。その場合、その方のバックグラウンドなど、どういう方が有能な仕事開拓員だとお考えでしょうか。これが 1 点です。

 もう 1 つは、登録するときに能力評価の面接をやっていらっしゃるのかどうかです。それによってマッチングをするとか、不足しているスキルがあれば研修を勧めるとか、そういうことをしていらっしゃるのでしょうか。

○幸山様 開拓というのはほとんど口コミです。口コミで、そのお客様の先で、「ほかの会社でこういう仕事があるけれども、お宅の会社で同じようなできる仕事はありませんか」とか、その会社が隣の会社だとか、人を探しているよという話で、芋づる式が多いです。

○秋山先生 その仕事の開拓は、誰かが責任をもってやっていらっしゃるのですか。

○幸山様 そうです。東京ガス専門の担当者と、そうではない、あるいはテレビなどに出ると急に問合せがあるので、取りあえず行って、どういうニーズがあるのかというのを確認して、うちの中に派遣できる人がいないかどうかということでやる担当者と、大きく分けています。一応、どちらかというと、昔でいう営業マン、何の営業でもいいのですが、営業マンが向いています。お客さんの所へ行って話をして、ニーズを聞いてくるということです。

 それから、能力評価は基本的にはしていないです。例えば内覧会でも、そういう仕事をしていた、あるいは関わりがあった、例えばガス器具で言えば、ガス器具の用語が分かるとか、暖房機の TES といったときに TES が分かるというような形であれば大体できるのですが、全く知らない、例えば工場で育った人がそういう所へ行くというのはできないですから、そこは本人の希望と、こちらから「こういう仕事なのだけれども、できますか」と聞いてみる。もし駄目なら、お客さん側から変えてほしいという要望がありますから、人材派遣の大変苦しいところは、「変えてくれ」と言われると、どうしても違う人を見付けて派遣するということになります。それで行かなかったら、お断りするということになってしまいます。

○北浦先生 高齢者就労でワークシェアリングをやっていらっしゃるということです。これはほかでもよくやっているのですが、形としては、雇用でいえばペア雇用に当たるような形になるわけで、これの難しさというのも結構あるのかなという気がします。その辺については余り問題は出ていませんでしょうか。

○幸山様 契約自身は、この業務で 1 日当たりで時間給幾らだから、 1 時間幾らだから、幾らですねと。ただし、 2 人で伺います。だから、 1 日当たりにしますので、行くほうも 1 日働けば幾らで契約していますから、あとはそれほどは。向こうの受皿として、違う人が交代で来るのがいいのと、それは受けにくいという方はいらっしゃいますが、うちの会社はベースとしてそのようにやっていますから、お願いしますということなので、本人たちも割り切るし。

○北浦先生 比較的同じような形で仕事ができるということですね。

○幸山様 そうです。場合によっては、例えば電話受付みたいなものがあるのですが、それは 5 人ぐらいで、例えば 2 人か 3 人の電話受付をやるのですが、そこはチームを組んで、その中で交替者、リーダーを決めて調整をするという形です。

○阿部座長代理 時間もきました。今日は本当にありがとうございました。

○幸山様 ありがとうございました。

○阿部座長代理 続いて、滋賀シルバー人材センター連合中島様、松山市シルバー人材センター柳原様から御説明を頂きたいと思います。中島様、柳原様、どうぞよろしくお願いいたします。また、質疑応答については、全国シルバーセンター協会福島様にも後ほどお願いいたします。

○滋賀シルバー人材センター連合中島様 滋賀県シルバー人材センター連合会の中島と申します。よろしくお願いいたします。滋賀県において、県内就業ネットワーク事業と銘打ちまして、県内の 19 市町のシルバー人材センターをインターネット上でネットワークでつなぎ、就業情報、また会員の情報等を共有して活用しております。県内での広域就業や、未充足といいまして、できない仕事、まだ会員さんに行ってもらっていない仕事の情報なども共有し、それをネットワーク化することにより、県内の高齢者にリアルタイムに情報提供したり、また、広域でのマッチングを行うことを行っております。またそれに付随して、ネットワーク化により県内シルバー人材センターの事務なり業務の最適化を行うという、いわゆる事務集中を行っております。

 個別に説明申し上げますと、まず就業拡大分野としてはモザイク就業として、 1 つの事業所に複数の市町村、複数の会員がピースとなって一緒に働くというようなことを行っております。また、シルバー人材センターの場合は、御存じのようにいわゆる年齢が高齢でまだまだ進んでいきますので、シルバー人材センター活動の中で「働く」「学ぶ」「遊ぶ」というようなピースを設け、センターの中で緩やかな高齢化を迎えるソフトランディングとなるような形での活動を行っております。

 最後に、組織の強化として、個々のシルバー人材センターは非常に組織が脆弱で、滋賀県内平均職員数が 5 6 名ですので、事務の強化を図るために県内シルバー人材センターの事務を集中化して、業務の流れを標準化・簡素化することにより、最適化を行うような事業に取り組んでおります。以上です。

○松山市シルバー人材センター柳原様 続いて、松山市シルバー人材センターから説明いたします。資料 5-2 に移ります。松山市のシルバー人材センターは、松山市自体が 51 2 万人ほどの人口で、まだ人口の微増を続けております。その中で、会員約 2,300 、事業実績が約 11 億という状況の中で、事業を実施しております。

 具体的な説明に移ります。当センターでは、会員の皆様方の御意向を基に、こちらにあります 5 つの会員憲章を定めて、会員としての共通理解を図っていく状況を御理解いただいたらと思います。その上で、執行部体制については歴代商工会議所会頭 ( 法人会会長 ) を務めている方に理事長をお願いをしており、現理事長については女性活躍推進協議会の会長も務めている方にお願いをしております。また、理事には元経営者の方々に御参画を頂いております。企業目線での営業活動の先頭に立っていただけるなど、理事会が事業の先頭に立って活動できる体制を目指している状況です。

 次に、現在実施しております事業については、ここにあります 1 7 に分類をしております。これらは、国、地方公共団体の補助、委託を頂いて展開している受託事業等公益目的事業のほか、収益事業として実施しております介護保険事業があります。

 この中の 6 番目にも記載しておりますが、この事業は特に赤字になって当たり前というような事業です。これらについては、収益性は担保できない事業ですが、地方では深刻な問題になっております後見信託、買物弱者対策等に取り組むことは公益に資する事業として大変重要なものだと考えております。

2 枚目に移ります。先ほど申し上げました当センターの現状については、平成 22 年をピークとして会員が減少に転じました。やっと歯止めがかかった状況です。これは、会費の値上げや、働く機会が得られない、楽しむ機会が得られない等の要因により、入会者数の減少、退会者数の増加によるもので、現在その対策に取り組んでいるところです。特にこの表で御覧いただけますとおり、団塊の世代の方々がどんどん増えてくるのに、会員数が下がってしまった状況もあり、このようなことに対する対策を考えているところです。その具体的内容について、 3 4 枚目に対策と具体的事業を示しております。

 大きく大別しますと、 1. 企業での仕事の確保を一層推進する。 2. ホワイトカラー層の入会を促進する。 4 枚目に移り、 3. 団塊の世代が後期高齢者になるまでに、後期高齢者の生涯現役活動を実現する。 4. 首都圏・都市部の高齢者の I U J ターンを促進する。この大きな 4 つのテーマを掲げ、これからの具体的対策を練っていこうということで、その事業を展開しているところです。

3 枚目に戻ります。それぞれに 1 例ずつでも御紹介申し上げます。 1 番目の企業での仕事を促進するための具体的な内容については、 (1) にありますとおり、今年度事業開始となった高齢者活用・現役世代雇用サポート事業において、これからは特に大企業への営業展開を実施していきたいと考えております。 2 番目のホワイトカラー層の入会の促進ですが、この中で特に拠点センターとしての立場で具体的に中身を御紹介します。 (3) (4) 辺りの話なのですが、具体的にどういう形のホワイトカラー層の方に御入会を頂き、どういう活動をしていただくかということで、 (3) は御自身の経験をダイレクトに営業に活かしていこうということです。 (4) は、補足的な御説明をさせていただこうと思います。例えば、翻訳業務ができる会員が当センターにいらっしゃいますが、翻訳の世界ではそれぞれ専門分野への理解が必要なため、あらゆるジャンルの翻訳を 1 人の人がやることはまず難しいです。これからの展開の話ですが、例えば全国に点在する翻訳ができる会員の情報を一元化して、それぞれの専門分野の翻訳業務が受託できるよう、現在複数のセンターと準備を進めているところです。

4 枚目に移ります。団塊の世代の方々が後期高齢者になるまでに、生涯現役活動を実現することについては、後期高齢者という言葉がふさわしいかどうかはいろいろな議論があるところです。特に、団塊の世代の方々が 75 歳を過ぎて閉じ込もってしまうような世界にならないようにということを、シルバー人材センターの中でどう実現していくかについてです。この分野について現在取り組んでいるのは、センターに入会されていらっしゃる方の中には、経営や執行役員の経験者の方々が結構いらっしゃいますし、そういう方を意図して御入会ください、と営業展開してまいりました。そういう方々の経験とネットワークを活用して、中心的存在として地域高齢者の取りまとめと、生涯に渡り「自主・自立・共働・共助」の理念に基づいて働くステージを作ることを目指して、現在就労とサロンを融合したような形の事業を展開していただいている状況です。

 最後に、 4 枚目の 4. 首都圏・都心部の高齢者 I U J ターンの促進については、 I U J ターンする高齢者について、是非都市部での就業経験やネットワークを地方で活かしていただきたいと考えております。現実に、地方では東京から帰ってこられた方々が核になり、 NPO 法人を起こされたり、地域の活性化のために役に立っておられる例は多く見受けられます。その中で、 I U J ターンの実際の鍵を握っていらっしゃるのは、奥様であったり、御両親の介護のために U ターンされる方々で、結構多いです。そういう方々が U ターンされてきた場合に、特に男性の方が孤立しないように、何もしないでじっと家に閉じ込もるのは非常にもったいないですので、そういう方々、いろいろな事情も含めて帰ってきていただいた方々には、地方で働いていただく、それを 1 つの役割としていただきたいというようなことを、現在訴えているところです。これからは、都心部のセンターや他団体と連携し、希望高齢者のニーズの把握と実現に向けたコーディネートを展開していきたいと思います。

 このような取組を展開する上で、まずは会員の確保、増強に当たって、ひいては地域創生の一翼を担いたいと考えているところです。しかしながら、地方の 1 つのシルバー人材センター単体では、取り組むことができる事業の規模も範囲も限度があります。最近、シルバー人材センターのイントラで、全国シルバー人材センター協会が情報の発信を増やしてくれており、大変助かっているところですが、我々も自らが情報の収集と発信に努めて、都心部との連携、地域、都市間の情報交換を通じ、全国の各シルバー人材センターが団塊の世代をはじめ、高齢者の働く力を地域に活かす組織として、生涯現役社会の実現を目指していきたいと考えているところです。以上です。

○阿部座長代理 中島様、柳原様、どうもありがとうございました。では、御質問のある方、お願いいたします。

○酒井先生 松山市のほうなのですが、企業での仕事の確保を一層推進するということなのですが、これは登録された高齢者の方の要望として、やはりこういう企業での仕事をしたいということなのか。それとも、企業側からそういうニーズが多いのかという点を教えていただけたらと思います。

 もう 1 点は、私が全く無知なことから来る質問となってしまうのですが、後見信託推進事業ということで、具体的にどういうことをされているのでしょうか。どういう知識というか、どういう技能を持った方がこういうことに当たっているのか全く知らないもので、教えていただけたらと思います。

○柳原様 まず、企業の開拓の件ですが、これは基本的には登録制の高齢者の方々のニーズを満足させようということでの展開です。やはり、ホワイトカラー層の方々が入ってこられて、できれば同じ所で、ある一定量の仕事をしたいという要望は結構増えてきております。それに対応するための対策として、うちの理事長が商工会議所の会頭などをやっているものですから、中小の企業などには結構話がいっているつもりですが、やはり(大企業の)松山支店や愛媛支店などへの営業がまだまだということで、大企業への営業展開を実施していきたいと考えているところです。

 後見信託推進事業については、いわゆる専門後見と市民後見とに現在分かれておりますが、認知症等で経済活動等に制約のある方々のサポートをしていく上で、本来は法人として後見人になりたいというところですが、地方公共団体の首長等が後見申請をするお手伝いをすることも含めて、認知症等になった方々のサポートをしていく。これは、延ては登録会員が将来にわたってシルバー人材センターでの仕事ができなくなってしまったら、ではうちとの関係は終わってしまうのかと。いやいや、あなたが今後において生涯、シルバー人材センターと関わっていただきたいというようなことを実現していこうとする取組で、実際にはまだ後見受託はありません。首長申立てのお役に立てたというケースがあります。

○秋山先生 全シ協の方に質問いたします。東京大学の高齢社会総合研究機構も滋賀県連や松山のシルバーさんと情報交換などをしながら、シルバーの改革に取り組んでおります。団塊の世代を中心とする、これから高齢期に入っていく方のニーズに対応するようなシルバーを目指して、派遣などの職業紹介を拡充していく必要がありますが、変わりたくないシルバーが多いですね。こちらは例外的ですよね。今までどおりがいいというところが多い。

 そのときに言われるのは、今やっていることで手一杯なのに、企業に出向いて仕事開拓するような余裕はありませんということが 1 つですね。そういう実態に対して、全シ協はどのようにお考えでしょうか。柏の場合は、柏市役所が仕事開拓員を 2 人、市の予算を付けてシルバーに送ることを今年からやっておりますが、おそらく全国的には一般的ではないと思いますので、中央の全シ協で何か対策を取られる必要があると思っております。

 もう 1 つは、シルバー側の現状維持志向を口実にしているかなということも感じます。シルバーを市役所の高齢福祉課が所管している所と、商業や経済系の所が所管している所で違います。後者の場合には、仕事開拓員による新しい分野の仕事開拓は効率が悪いと。例えば、大企業などで一生懸命開拓を試みても取れる仕事は限られていますし、そこで働ける人数は限られているので、仕事開拓員の仕事のコストベネフィットとして、効率が悪い。それより請負の仕事をなるべくたくさん取ってくるほうがよいと判断をされて、市の指導でシルバーで新たな分野の仕事開拓をしない、できないところも出てきているます。その辺りのことは、どのようにお考えでしょうか。

○全国シルバー人材センター協会福島様 秋山先生からお話があった数点について、全シ協として全国のシルバー人材センターの実情を考えますと、おっしゃるとおり、実は非常に前向きにやる気があるセンターと、現状維持というか、むしろ後退をしている所に二極化されている状態が、年々際立っているのが現状だと思います。そういう意味では、全シ協として何ができるかは、私は 2 つほど考えております。

1 つは、全国に向けた情報をきちんと 1,300 を超えるシルバー人材センター間で共有できているかどうかという問題意識をもって、先ほど松山のセンターさんもおっしゃっておりましたが、就業開拓の情報をきちんと共有できるようにする。というのは、現状維持、あるいは後退、後ろ向きのセンターは、全シ協から一切情報が発信されていないので、自分たちは何をしていいかよく分からないのだという意見が実は多かったのですね。そういう意味では、きちんと情報を出そうと。情報ソースについては、新聞やセンターの機関紙やシルバー連合からの報告、その他あらゆる情報の中から、これはセンターの就業開拓に使える情報ではないかというものを、できるだけリアルに情報提供しようということで、昨年の 9 月から就業開拓情報で 66 事例を既に出してあります。

 それから、会員増強の事例として、これはなかなか難しいので 9 事例しかないのですが、今後とも積極的に続けていくという支援をしながら、現状維持派のセンターを少しでも支援していこうと考えております。

 それから、もう 1 つはやる気のあるセンターに一定程度、厚労省さんにもお願いしているのですが、少なからず補助金の額を上げてもらうと。頑張っているセンターは、頑張っているなりにきちんと国が支援するという制度も必要であり、今年度、派遣業務について一定程度の計画をきちんと出していただいているセンターには、その計画に見合った補助金が出ております。これは明らかに頑張っているセンターと、そうではないセンターとに差が付いていることを現実に示すことも必要であり、そういう状況になっております。今年度はそういう意味では、シルバー人材センターのやる気度等が試される極めて大事な年度ではないかと思っております。

 最後に、市町村によって、高齢福祉部局と産業経済あるいは産業労働部局との温度差は、常日頃感じております。その 1 つの例として、前回山田先生からもお話があったように、対人社会サービスとして、昨年 6 月に介護保険法等が改正になりました、そこで、要支援 1 2 、あるいはチェックリストでそのサービスを必要とする人たちについては、介護保険の枠ではなく、地域において市町村が主体的にサービスを行うと。その中で、実はシルバー人材センターに相当大きな期待を寄せていただいている市町村も数多くあります。全シ協の調査でいいますと、この 1 月ですが、全国のセンターのうち、この事業に参入していきたいと、いわゆる地域支援サービス事業、新総合事業に参入していきたいというセンターは 441 センターあるのです。そこをしっかり支援をするのも、全シ協としての役割なのです。同時に、その市町村の福祉担当部局も、センターと連携を取っていただき、そういう人たちに対する多様なサービスをしっかりやっていく仕組みを作っていただく。実は福祉担当部局はかなり前向きにやっていただいているのですが、どちらかというと産業経済や産業労働のほうはやや遅れぎみかなというのは、感じております。全シ協が市町村に対してどういうアプローチができるかはなかなか難しいのですが、これは厚生労働省とも協議をしながら、こういう事態について、きちんと市町村も新総合事業に名乗りを上げるセンターに対する支援をしっかりやってほしいと。協議体をつくっていただいて、必ずシルバー人材センターもそこに参画できるような仕組みを是非厚労省の力も借りて、全シ協は支援していきたいと思っております。

○山田先生 手短に 2 つです。 1 点目は、会員数が少なくなっていることについて、前回議論があったのは、やはり 65 歳までの継続雇用が進んでいく中で、シルバー人材以外の場所で活路を見出している高齢者が増えたからではないかと。別に、それは問題ないのではないかという議論があったのですが、それについてどのように全国を見渡して考えておられるのかが 1 点です。これは質問です。

2 点目としては、これは御意見を伺いたいと思うのですが、やはりこれも前回問題になったものとしては、もちろん民間ができるところと、対人社会サービスのように何らかの形で公的な部分が関わらないとできないところ。要するにサービスが二極化する。ものすごく高くていい品質のものか、ものすごく低くてプアな品質のものか。対人社会サービスは特にそういう性格をもっております。その場合に、一生懸命補助金のメリハリを付けるというような御意見が出るのですが、やはりそれはある程度区切ったほうがいいと思うのですね。例えば、対人社会サービスについては、もちろん何らかの公的な支援がないと、市場に任せるとどうしてもサービスが二極化してしまうから、といったことの実現性はあるのかどうかですね。とりわけ、先ほどの介護のところはともかくとして、今、自分も子育て世代で強く思うのは、放課後クラブ等で非常にクオリティーの高いものをどんどんこれから供給していかなければいけないと。 6 歳の壁は非常に大きいというのは未だにあります。

3 点目が出てきてしまったのですが、コメントとして、単に高齢者、要介護だけではなく、是非学童、保育サービスなどについても力を入れていただければうれしいです。

○福島様 なかなか難しい質問なのですが、 1 つは継続雇用の影響も私は確かにあると思います。ただ、最近の入会年齢を見ると、かつてのような 60 歳前半層は非常に少なくなっております。それは自明の理で、 65 歳までは企業が継続的に雇用しましょうという制度がもうほとんど定着しておりますので、当然ながら 65 歳未満のリタイアの高齢者の数が少なくなってきているので、当たり前なのです。それよりもむしろ、さらに 70 歳までという状況が、一般の労働市場の中で少しずつ芽出しができているといいますか、そういう状況の中で、シルバーの入会年齢がさらに高齢化していることは否定できないと思います。

 私どもが、よく団塊の世代がどこへ行ったのという議論をすると、団塊の世代イコールシルバーの会員の理想の人たちになっているのかどうかは、もう少し冷静に見てみないと、ただ年齢だけでは計り知れないなというのがあります。全シ協としては、この 2 月にホワイトカラー向けの調査をある団体にお願いをしてやっていただきました。必ずしも、ホワイトカラーの人たちが入会をして、ホワイトカラーの就業を希望しているかというと、そう短絡的な話ではないこともよく分かっておりますので、余りにもホワイトカラーの人たち、いわゆる団塊の世代を中心としたホワイトカラー層が入会していただけないのは、ホワイトカラー向けの職種がないからだと決め付けている部分が相当あるのかなというのもあります。むしろ、そこから少し洗い直しをしていったほうがいいかなという感じはします。

 そういう意味では、先ほど申し上げた会員増強の事例は、 9 事例に留まっているのですが、着実に実は微増の状況になっているのです。底を打ったかどうかは分かりませんが、確かに微増なのです。ですから、ここにきて全国で 72 万人から 74 万人まで約 2 万人近く増えていますので、その様子を少し注視をしていく必要があると私は思ってはおります。

 それから、おっしゃるように、介護だけではなくて、共働き世帯を中心とした保育支援、保育補助、学童保育も含めて非常に重要な課題です。今回、平成 27 年度の新規事業として、やはりシルバー派遣を使ってそこを支援をしよう、人手不足対応として、学童若しくは保育に対してシルバーの会員がそこへ就業することによって、働く世帯を支援をしていこうというところを、より重点的に今年度は取り組みたいと思っており、近々そういった会議を開催する予定です。

○高齢者雇用対策課長 補助金に関しては、格差を付けておりますので、そういうところをやる所について、一生懸命やった所には多くいくように、先ほどの家事援助、それから学童や介護補助などその辺りは、そういう形になります。

○山田先生 それは、スペシフィックに使えると。

○高齢者雇用対策課長 はい。

○阿部座長代理 では、お時間もまいりましたので、本日は中島様、柳原様、そして福島様、どうもありがとうございました。続いて福岡県庁新雇用開発課長の山田様、福岡県 70 歳現役応援センター長の南里様より、御説明を頂きたいと思います。

○福岡県庁新雇用開発課山田様 福岡県新雇用開発課長の山田でございます。今日はよろしくお願いいたします。

○福岡県 70 歳現役応援センター南里様  70 歳現役応援センターの南里でございます。どうぞよろしくお願いいたします。

○山田様 資料 6 が福岡県の資料です。この資料を 1 枚めくっていただきますと、 70 歳現役社会づくりのこれまでの経緯を簡単に書いております。まず、平成 22 6 月に「福岡県 70 歳現役社会づくり研究会」を創設いたしました。その研究会で有識者の皆様方から御意見を頂き、政策のフレームづくりをしております。そして平成 23 9 月に、 70 歳現役社会づくりのプラットホームとなる協議会を設立しました。平成 24 4 月に、この取組の中心となる 70 歳現役応援センターを開設しました。 1 年後の平成 25 5 月には、利用者の増加あるいは県民の皆様の御要望にお応えするということで、北九州オフィスを 2 番目のオフィスとして開設しております。平成 26 4 月には九州・山口“ 70 歳現役社会づくり”研究会を、九州地方知事会の事業として創設したところです。そして平成 27 6 月に、 3 番目と 4 番目のオフィスとして久留米オフィス・筑豊オフィスを開設する予定としております。

1 ページがなぜ「 70 歳現役社会」なのかということで、我々がこの施策に取り組んだ理由と言いますか、背景をまとめております。第 1 点目として、平均寿命の伸びと連動するように、元気で社会参加意欲の高い高齢者の皆さんが増えてきております。こうした高齢者の皆様の意欲やニーズ、あるいはお気持ちに応える施策が必要だということから取り組んでおります。第 2 点目としては、少子高齢化が進んで社会構造、人口構造が大きく変化しております。高齢者が支えられる側から支える側に変わる施策が必要だということで取り組んでいます。

2 ページが施策の概要です。福岡県が目指す「 70 歳現役社会」とはどういう社会かと申しますと、年齢に関わりなく、それぞれの意思と能力に応じて働いたり、 NPO ・ボランティア活動等に参加し、活躍し続けることができる選択肢の多い社会で、そういった社会を目指しております。みそは、「選択肢の多い」というところです。年を重ねると、どうしても一人一人の体力や健康、能力、知識といったいろいろなところで差が出てきます。それぞれの皆様の御希望や能力に応じて、多様な選択ができる、そういう社会を目指していきたいということです。

 施策の柱としては、大きく 2 つあります。 1 点目が、いきいきと働くことができる仕組みづくりです。例えば、 70 歳まで働ける企業を拡大しようという継続雇用の支援とか、転職・再就職の支援、シルバー人材センターあるいは派遣という多様な就労への支援といった、働くことができる仕組みづくりを進めていこうと。 2 点目は、共助社会づくりへの参加促進です。 NPO ・ボランティア、あるいは地域の社会活動といったものに参加していただく。こういうことに取り組もうという、この 2 つの柱で施策を進めております。

3 ページが施策の推進体制です。平成 23 9 月に、プラットホームとなる 70 歳現役社会推進協議会を設立しました。平成 24 4 月には高齢者のための総合的な支援拠点として、 70 歳現役応援センターを開設しました。この 2 つの組織を両輪として、その下にある多用な選択肢を提供していきます。一番下に右のほうから「継続雇用」「再就職」「派遣」とあります。これが施策の第 1 の柱のいきいきと働くことができる仕組みづくりです。そして左側の「地域活動」「ボランティア」「 NPO 活動」というのが、施策の第 2 の柱の共助社会づくりです。こういった多用な選択肢を提供していこうということです。

4 ページが推進体制の 1 つである 70 歳現役社会推進協議会についてです。労使、行政、ボランティア団体など、 17 の団体で構成しており、それぞれの関係団体で 70 歳現役社会づくりを進めていただきます。また、 70 歳現役応援センターの取組に御協力・御支援を頂くということで、官民一体となって取り組んでいるところです。

5 ページがもう 1 つの推進体制である、 70 歳現役応援センターについてです。今日はお手元にパンフレットもお配りしておりますので、参考にしていただければと思っています。このセンターですが、右のほうに福岡県の地図があります。 70 歳現役応援センターを平成 24 4 月に福岡市に開設いたしました。ここにはシルバー人材センターの窓口と、高年齢者雇用安定法で平成 8 年に民間主導で作った、高齢者専門の派遣を行う公益法人である高齢者能力活用センターの窓口を併設しております。そして平成 25 5 月に北九州オフィスを開設し、今年 6 月には久留米オフィスと筑豊オフィスをそれぞれ開設します。この体制で県内全域を網羅できる体制が整うことになります。この 70 歳現役応援センターは、大きく 4 つの機能を持っております。 1 点目が「高齢者の活躍の場の拡大」、 2 点目が「就業・社会参加支援」、 3 点目が「意識改革」、 4 点目が「ふくおか子育てマイスターの認定」です。

6 ページが第 1 の機能である「高齢者の活躍の場の拡大」です。 1 番目として、センター独自に高齢者向けの求人を開拓し、これにハローワークから提供していただいた求人情報を合わせて、高齢者の皆様に就職先を紹介・あっせんしています。 2 番目として、 70 歳まで働ける企業の拡大に取り組んでおります。企業を個別に訪問し、高齢者雇用のメリットや助成制度などを説明しています。今日はお手元に事例集をお配りしています。これで優良事例なども紹介させていただきながら、 70 歳まで働ける企業にしませんかという働きかけをしています。また、平成 25 4 月からは県の入札参加資格審査に加点制度を設け、県の事業を受注するときに少しメリットを付加しています。こうしたこともあり、この 2 11 か月の間に 314 社が新たに 70 歳まで働ける制度を導入されています。

7 ページをお願いします。こうした企業の雇用拡大の一例として、平成 25 11 月に福岡県とセブン - イレブンが包括提携協定を締結いたしました。提携の内容は県行政の 10 分野、いろいろな分野での協力があるのですが、その中の 1 つに、高齢者スタッフの導入を促進してくださいということを盛り込んでおります。コンビニエンスストアで高齢者の皆さんの目線でサービスを提供したり、あるいはセブン - イレブンでは宅配も行っていますので、宅配をしたりということで活躍されています。宅配の際には高齢者の皆さんのお宅を訪ねられたときに、何か異変があったらすぐに市町村に通報するという「見守りネットふくおか」の事業にも御協力いただいています。実際に助けられた例もあります。福岡県内のセブン - イレブン 361 店舗から求人を頂いて、現在 76 人がセンターの支援で採用されております。

8 ページがセンターの 2 番目の機能である「就業・社会参加支援」です。専門の相談員が高齢者の皆さんから経歴や技能や御希望をお聞きし、先ほど申し上げた多様な選択肢を御提案しております。また、個別に求人開拓を行って、相談者の皆様と企業の間をつなぐコーディネートの役割もしております。平成 24 年度の開所から 26 年度までの年度ごとの実績を、そこに挙げております。相談件数、登録者数、進路決定者数とも、毎年増加しております。当初は広報やマスコミの報道などで来てくださる方が多かったのですが、 1 年目の中頃から口コミによる利用者が増えており、今では口コミで来られる方が非常に多いという状況です。利用登録者は 5,756 名、このうち 36 %の 2,065 名の進路が決定されております。再就職の方が非常に多いというのが特徴です。

9 ページでセンター登録者の特性を分析しております。男女比は 2 1 、年齢は 65 69 歳が 44 %ぐらいで、 70 歳以上の方も 26 %ぐらいおられます。全体の就職者の 18 %ぐらいが 70 歳以上の方ですので、年齢だけではない部分もあるかなと思っております。利用の目的は、 99 %近くが「働きたい」という御希望です。この「働きたい」という方の動機をいろいろ伺ってみますと、「生活費が足りない」と言う方もおられるのですが、どちらかというと「生きがい」とか、「仲間づくり」とか、あるいは「自分の存在を確認する」ために働きたいと言う方が非常に多いという状況です。

10 ページが就職者の状況です。バラエティーに富んでおり、技能や資格を生かしてという方が大体 1 割ぐらいです。営業・販売もそうですね。事務職、警備、この辺も 1 割ぐらいです。それからマンション・駐車場の管理といった各種サービスが 26 %、清掃、運搬、倉庫作業といった作業員が 27 %等となっております。

 就職後の定着状況ですが、センターが独自に開拓した求人企業に就職された方に 3 か月後のフォローをすると、 4 人に 1 人が残念ながら離職されております。理由をお伺いしますと、例えば腰が痛くなったとか、体調不良や体力不足の方が 3 割ぐらい、職場の人間関係が 2 割ぐらい、仕事の適性、労働条件といったところが多い順になっております。これらについては、やはりマッチングの精度向上が重要ですし、その際には企業側の皆さん、就職する側の皆さん双方の意識改革が大事かなと思います。

 この資料の 8 ページに、相談件数が累計で 2 8,687 件とあり、利用登録者は 5,756 件です。なぜ違うのかというと、利用登録された方が平均 5 6 回は相談をされているからです。最初の相談から何回かお話をジワジワとお聞きして意識改革をしながら、これで大体就職は大丈夫かなというときにあっせんしていく、そういう手法を採っています。  11 12 ページに就職された事例を書いております。技能や資格があれば就職は非常に決まりやすいと。例えば、 12 ページの左側の上の一級土木施工管理技士の資格を持っている方は、正社員ですぐに採用されるという状況があります。給料も非常に高く、 15 万円を超えるような、 20 万円ぐらいの月給をもらっている方がおられます。ただ、そういう反面、 11 ページの右下の方はセブン - イレブンに就職されているのですが、明るく元気で前向きな方は、資格がなくても就職が決まります。人それぞれということではないかと思います。

13 ページでは、社会参加の事例を挙げています。どちらかというと市町村だけではなく、もうちょっと広域的に社会参加したいな、ボランティアしたいなという方が、私どものセンターのあっせんでボランティアに就かれています。

14 ページが 3 番目の機能、「意識改革」です。これは大きく 3 つの取組をしています。 1 点目は、商工会の中小企業経営指導員の皆様を対象に、「 70 歳現役社会づくり」について説明し、日頃の業務の中で企業の皆様の意識改革を働きかけていただいています。 2 点目は、商工会議所と一緒に企業経営者・人事担当者の皆様を対象に、県内 4 地区でセミナーを開催しております。また 3 点目、定年を控えた中高年の従業員の皆様を対象に、出前方式でセミナーを開催しています。こういった取組で意識改革を進めているところです。

15 ページが 4 番目の「ふくおか子育てマイスターの認定」です。子育ての豊かな経験を持っておられる高齢者の皆様に、最新の育児知識を伝授する研修をし、修了者をマイスターに認定して、その方々にいろいろな活動の機会を提供しています。シルバー人材センターでの家事・育児援助、あるいは保育所や放課後児童クラブの指導員、こういった所で活躍されています。これはシルバー人材センター連合会に委託をしておりますので、いろいろな形での取組ができるのではないかと思っています。

16 ページですが、県独自にも補助事業を設けて、各地域の取組を支援しています。

17 ページは飛ばして 18 ページです。多くの報道番組などで紹介されております。そうしたこともあって、利用者も増えています。自治体からの視察もたくさん来ておられますので、我々の取組を各自治体に広げていきたいと考えております。

19 ページをお願いします。九州地方知事会のほうでも私どもの取組を参考に、取組を広げたいということで、平成 25 10 月に開催された知事会議で、研究会を設置することが決まりました。昨年 4 月に研究会が発足し、今年 1 月には東京で中間報告会を開催します。今年 3 月に取りまとめたものが、お手元に配布している報告書です。今後は九州地方知事会で、この報告書に出された提言を実行に移していく協議会をつくっていきたい、九州一体として取組を進めていきたいと考えております。

 その中で今日はお手元に、行政の支援策及び制度や規制が必要となっている事項をお配りしております。九州・山口でこうやって取組をしておりますけれども、いろいろな市町村があります。まずは九州・山口をモデルとして推進の後押しをしていただければということで、この資料を作っております。大きく 3 つ書いております。 1 点目は、安定的な財政支援をお願いしています。 2 点目は、シルバー人材センターや職業紹介事業も含めた規制緩和をお願いしたいと。 3 点目は、企業の支援制度の拡充をお願いしたいということを書いております。

 最後に 20 ページです。 70 歳現役社会を進めるということで私たち福岡県では、真に幸福を実感できる長寿社会を実現したいと考えております。福岡発の新しい長寿社会を全国に広げていく。そして福岡は、アジアの玄関口として発展してきました。福岡から今後、高齢化が進むアジアに高齢社会の手本を示していければいいなと考えております。説明は以上です。よろしくお願いします。

○阿部座長代理 ありがとうございました。それでは御質問のある方はお願いしたいと思います。

○小畑先生 興味深い取組の御説明をありがとうございました。最後におっしゃった 3 つの課題の中の規制緩和というのが、大変注目されるかと思います。その規制緩和に関して、最も重要だとお考えのところを補足していただけますか。

○山田様 いろいろあると思うのですが、まず我々がすぐに「これが」となっているのが、 (1) の職業紹介事業に関する規制緩和です。事業所の要件がありますので、私ども地方自治体でも出張相談をやりますとか、合同会社説明会をやりますといったときに、その場で利用者の皆さんに仕事のあっせんや紹介が、なかなかできないという不都合が生じています。改めて登録していただくとか場所を変えてあっせんするというのは、利便性の面で非常に支障になっていますので、委託事務も含めて、せめて地方自治体が実施する部分については国と同様にしていただききたい、その辺の規制を緩和していただければと考えております。

 シルバー人材センターについても、 (2)(3) に書いていますが、シルバーについては、先ほどから会員数がなかなか伸びないというお話がありました。実は、私どものセンターに通う方は、「どうもシルバーじゃ物足りないんだよね。もっと長く働きたい」と言う方がおりますので、そういうニーズに対応できるような規制緩和も必要ではないかと思っております。

○北浦先生  2 つほどあります。福岡県の取組は、大変立派な取組だと拝聴いたしました。ただ、高齢者というのは活動領域が非常に狭い範囲になります。これは県としてお取り組みになっているわけで、いろいろなセンターを通っていますが、例えば市町村との関係はどういう形になっているのか。以前、福岡市が高齢者職業経験活用事業というのをおやりになっていました。これは確か厚生労働省の事業だったと思います。それで同じようなシステムを作っておられて、それがマッチングシステムですね。あれがこういうものとどういう関係になっているのかというのが 1 つです。

 もう 1 つは、これにはいろいろな出口、多様な就業を想定していて素晴らしいことだと私も思うのです。ただ、いわゆる起業の部分というのはほかとは性格が違うし、相談の仕方も違ってきます。ここについては現実的に本当にどれだけニーズがあるのか。それから、やっていらっしゃるのを見てみると、結局起業系は直接やっていらっしゃるわけではないですね。そういった機関にあっせんなどでつないでいくという形だろうと思うのです。その辺で多様な就業形態があるということですが、いわゆる起業系というのは本当にどれだけ可能性があるのか、その辺を教えていただけないでしょうか。

○山田様 まず、市町村との関係です。福岡県の場合は政令市が 2 つありますので、福岡市や北九州市といった大きな自治体が確かにありますけれども、多くの市町村はエリアも規模も限られています。ですから市町村を超えて、いろいろ仕事をするケースは非常に多いと我々も思っていますので、県レベルぐらいの規模でやるのがいいのかなと思っております。

 それから、起業の話がありました。実際にセンターに来られる方の多くは、就職したいという方がほとんどです。我々もソーシャルビジネスセミナーなどのセミナーもやっているのですが、自ら仕事を起こそうという方は、全体の割合としては非常に少ない。ただ、そういう方もおられますので、県では平成 23 年度からシニア創業資金という、起業のための融資の資金を設けております。実は、この研究会の報告書の中にも書いてあります。創業の場合には資金の問題もあります。例えばシニアの場合、特別に金利を一般の創業資金よりも 0.1 %下げると。金額もある程度身の丈に合った限度額 500 万円ぐらいで、担保不要で保証人も不要という創業資金を用意し、そういう資金の活用を紹介しているところです。結構活用されています。

○北浦先生 労働局の関係はどうですか。顧問で入っていらっしゃいますよね。いわゆるハローワークとの関係です。

○山田様 ハローワークとの関係でいきますと、私ども独自に求人開拓をしていますし、例えば 70 歳現役応援センターのあるビルの同じフロアに、中高年の就職支援センターがハローワークと一緒に入っております。ここから高齢者向けの求人を頂いたり、あるいは年配の方だと、こういうセンターがありますよという形でこちらに誘導していただいたりという連携をしています。例えば、北九州のオフィスでは小倉のハローワークと同じような連携をしたりと、そういう取組もしています。実は今年度からハローワークのスペースをお借りして、出張相談などもやっていきたいと思います。我々はこれを始めて何が良かったかというと、 60 歳以上の方に特化した窓口ができること、これが非常に良かったなと思っております。ですから安心して、あるいは効率的に相談に来られたり、自分の目的を達成できるということで、そういう専門の窓口を表示することが大事かなと考えております。

○阿部座長代理 私も興味を持って、非常にいい取組だとは思うのですが、今日の会議の前半で、高齢者から御報告いただいていますよね。例えば、福岡県のような自治体がこういうことをやり出してしまったら、逆に民業にそういうビジネス機会があるにもかかわらず、競争条件としては自治体がやるほうが非常にいいわけですから、そういう芽を摘んでしまう可能性があるのではないかと。今は確かに 60 歳あるいは 70 歳の雇用というのは、それほどビジネスにはならない、なりにくいのは理解できるのですが、将来的に変わってくる可能性がありますよね。そのときにどういうように考えるかというのは、どのようにお考えですか。

○山田様 我々が最初にこれを始めたときに、なんでそんなことをするんだという話がありました。それは商売に差し支えるからではなく、若者の雇用を奪うのではないかという話がありました。ただ、今はそういう話は余りないです。むしろ労働力が足りなくなってきているということで、必要だと皆さんおっしゃっています。民業との関係でいくと、現在職業紹介の利用者はありますけれども、恐らく金にならない。

○阿部座長代理 今はですね。

○山田様 そういう皆さんが中心だと思います。将来的にどのぐらいいけば、それが職業紹介事業として成り立つかというのは、分析してみないと分からないのですが、一方で住民の中には、事業者のほうで対応できる方と、もう少しいろいろなきめ細かな訓練をしなければ、就職までの能力や意識が出てこない方もたくさんいらっしゃるのです。そういう方については民間ではペイしないのではないかということで、やはり公共でやり続けるという考えはあります。どのレベルになると民間でペイするかというのはあるのですが、公共の役割とする、希望される人がそういうことをしたいけれども、民間ではなかなかない分野というのは、ずっとあり続けるのではないかと思っています。

○阿部座長代理 それでは時間がまいりました。本日は山田様、南里様、ありがとうございました。本当は最後にヒアリング全体を通して追加質問や感想、御意見などをお伺いしたいのですが、既にかなり時間を超過しております。それでもなおかつ御発言をしたいという方がいらっしゃれば、御発言をお願いしたいと思います。

○山田先生 今日はいろいろなヒアリングを聞かせていただいて、大変参考になりました。やはりどうしても 2 つに切り分けて考える必要があるのではないかということと、もう 1 つ大前提があるということだと思います。まず大前提から話しますと、これだけ健康寿命も伸びていますから、可能であれば社会全体の取組として健康寿命の延伸とともに、本格的な雇用を延ばしていく仕組みとして、何らかの大きな方向性を打ち出さなくてはならないということです。

 もちろん、そのためには最初のお話にもありましたけれども、健康のばらつきによって引退年齢も決まってくるような御発言もありましたので、やはり健康維持というのが重要になってきます。その中で就労を長く続けるためには、就労する中での健康維持というのを考えなくてはいけない。具体的にはこれから入るストレスチェックとか、もう 1 つは余りきちんと議論されていないというか、政策的に打ち出されていないものとして、上限のない長時間労働というのがあります。これではワーク・ライフ・バランスも崩しますし、心身ともにむしばんでいくという問題がありますので、長時間労働のようなものは必ずインターバル規制のようなもので、きっちり規制して健康維持をしていく必要があるということです。

 その上で、いろいろな雇用の在り方が出てくると思うのです。 1 つは、先ほどからの御発言を聞いていると、「規制緩和」と言う場合に民業との兼ね合いをどうするのかと。 1 つには、もちろんペイするような雇用については、当然ながら規制緩和をどう図るかというのは慎重であるべきだと思うのですが、再三私が申し上げているように、対人社会サービスについては、完全に民間に任せれば質は必ず二極化します。対人社会サービスはこれから非常に重視されている分野ですので、地域包括ケア等、また子育て支援の面に関しても、その点についてはいろいろ考え、そこを切り分け政策的に配慮していく余地があるのではないかと思いました。

○阿部座長代理 他の方はいかがですか。

○北浦先生  1 点だけ簡単に申し上げます。お話を聞いていると、やはり 70 歳まで限りなく現役的な働き方を求めるシステムづくりが大事だというのが、大体共通して言われていたことではないかと思います。その意味では現行のいろいろなマッチングシステムを使っていくとか、いろいろな方途や組合せの仕方があり、それをなるべくユニバーサルにやることが大事だというのはよく分かりました。そのときにポイントになるのは、マッチングシステムを活用はしているけれども、秋山先生がおっしゃっていたように、能力の見極めがまずきっちりできていないと、これがうまく回らないという感じがするので、長年培われた知識・技能・経験というものを、どうやって測定していくのか、そういった部分が内蔵された形のマッチングシステムにならないといけないという感じがありました。

 もう 1 つは、逆に出口も考えなければいけないというのがあります。先ほどシルバーの話もあったように、「なだらかな引退」というのは昔は 60 代のことを指したのですが、「なだらかな引退」というのは、これからは恐らく 70 代になっていく可能性があります。少なくとも 65 歳以上ということがあると思うのです。そういった流れの中において、就労以外のものとのスイッチングです。一遍にオンからオフになってしまうのではなく、なだらかにという流れの中で、就労対策もその 1 つではないかと。つまり前期・後期というわけではないのですが、そのようにディメンションを分けて考えていくことが大事かなと思います。

○秋山先生 最後に出た点で、高齢者の就業斡旋はまだ収益が上がらないけれども、民間の人材活用支援企業も関心を持っています。シルバー、県がやっているところ、豊中市では市役所が無料職業紹介をやっていらっしゃる。多くの窓口があるのはよいことですが、私は、民間ができるところは民間が担うべきだと思っています。できない部分をパブリックが担う。そのシステムをどう構築していくかが、これからの課題ではないかと思います。

○阿部座長代理 ちょうど時間となりましたので、本日の議題は以上で終了したいと思います。これまで 4 回にわたって検討を進めてまいりましたが、当初予定していた論点も一巡し、現場の取組に関するヒアリングも行いましたから、材料はそろいつつあると考えております。そこで次回の検討会では、事務局においてこれまでの議論を踏まえ、報告書のたたき台を作成していただき、それに基づいてまとめの議論をしていきたいと思います。それでは次回以降の日程等について、事務局からお願いします。

○雇用開発企画課長 次回は、当初は来週 24 日の開催を予定しておりましたが、都合により 5 8 日の金曜日、 14 16 時の開催とさせていただきたいと思います。議題としてはただいま座長代理からお話がありましたとおり、本検討会の報告書のたたき台に基づいたまとめの議論をお願いしたいと思います。

○阿部座長代理 そういうことですので、またよろしくお願いします。それでは、これをもちまして本日の検討会を終了いたします。本日はお忙しい中、ありがとうござい


(了)

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