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2015年3月31日 第1回雇用仲介事業等の在り方に関する検討会

職業安定局派遣・有期労働対策部需給調整事業課

○日時

平成27年3月31日(火)
10:00~


○場所

厚生労働省 職業安定局第1・2会議室(12階)


○出席者

委員

阿部座長、安藤委員、大久保委員、竹内(奥野)委員、松浦委員、水島委員、水町委員

事務局

坂口派遣・有期労働対策部長、代田企画課長、富田需給調整事業課長、
岩野派遣・請負労働企画官、戸ヶ崎主任指導官、木本需給調整事業課長補佐

○議題

雇用仲介事業等の在り方について

○議事

○木本補佐 「第 1 回雇用仲介事業等の在り方に関する検討会」を開催いたします。座長が選任されるまでの間、事務局で進行を務めさせていただきます。

 まず初めに、派遣・有期労働対策部長の坂口より、本検討会の開催に当たっての御挨拶を申し上げます。

○坂口部長 おはようございます。本日は雇用仲介業等の在り方に関する検討会ということでお呼びかけ申し上げたところ、委員の皆様方におかれましては御多忙のところをこの検討会の委員に御就任いただき、誠にありがとうございます。また、本日は第 1 回ということで、お忙しいところを御出席を賜りありがとうございます。

 雇用状勢のほうは、先週発表しました平成 27 2 月の状況で、失業率 3.5 %、求人倍率も 1.15 と改善傾向ではあるということですが、やはり地域であったり職種での、まだまだミスマッチというようなことが起こっているわけです。

 また、御案内のとおり、少子高齢化での労働力人口の減少が今後大幅に見込まれます。ここ 1 2 年ということではないわけですが、 IT 化であったりグローバル化の進展であったり、求職者・労働者の方の意識の変化もいろいろ見られるわけです。そういった中で、先ほど申し上げたような短期的、長期的なミスマッチの改善ということは、労働力需給調整の中でも非常に重要なテーマであるわけです。

 私ども労働局やハローワークでも、こういった形についていろいろな取組をしているわけですけれども、もう一方の柱である民間の雇用仲介事業というところも、その役割をしっかり果たしていただくことが重要になってきます。この雇用仲介業、いろいろな民間の職業紹介であったり派遣事業、求人広告と、いろいろな対応があるわけです。それぞれがそれぞれの特性を活かしながら、マッチング機能の向上をどうとらまえていただくかを議論していただくことが、肝要なのかなと思っている次第です。

 先ほど申し上げたような時代の背景、変化の背景ということに、どう応えていくかも含め、今後の雇用仲介事業の在り方について皆様方に忌憚のない御検討をいただければということが今回の趣旨です。こういったテーマについて、いろいろ制度の見直しも含めての御議論をしていただくわけです。事業者であったり、求職者・労働者にも資することでありますし、事業そのものをビジネスとしてやっておられるわけですから、民間ビジネスの活性化ということにも資するのかなと思っております。

 今日はフリートーキングで御議論いただくわけですが、事業者の方々からのヒアリングも含めて皆様方にはいろいろ御議論いただければと思いますし、求職者・労働者の保護の観点も含めて、この制度のあるべき姿について忌憚のない御検討をいただければと思うわけです。

 今後、だんだん熱くなってくるのかもしれませんけれども、熱心な御議論をいただければと思うわけでございます。簡単ですが、私からの最初の御挨拶とさせていただきます。どうぞよろしくお願いいたします。

○木本補佐 本日は第 1 回目ですので、まず本検討会の開催要綱を御説明いたします。資料 1 を御覧ください。資料 1 が、雇用仲介事業等の在り方に関する検討会開催要綱となっております。検討会の趣旨、検討事項などについてまとめております。趣旨につきましては、雇用仲介事業については、平成 26 6 24 日に閣議決定された「規制改革実施計画」において、有料職業紹介事業等の規制の見直しについて平成 26 年度に検討を開始することとされております。このため、今回この検討会を開催し、有料職業紹介事業等の規制の今後の在り方について、法的・制度的な観点から専門的な検討を行うことにした次第です。

 主な検討事項としては、 2 に書いております。健全な就労マッチングサービスの発展の観点から、下記の事項を含め、職業紹介、求人広告、委託募集、労働者派遣等の有料職業紹介事業等に関する制度の整理・統一を含めた必要な見直しを中心に、幅広く検討を行うというものでございます。検討会の構成員などについては、これから御紹介申し上げます。

 引き続き、お集まりいただきました委員の皆様の御紹介をさせていただきます。資料 2 が、雇用仲介事業等の在り方に関する検討会構成員名簿です。順次御紹介申し上げます。阿部委員です。安藤委員です。大久保委員です。竹内委員です。松浦委員です。水島委員です。水町委員です。

 合わせて事務局の御紹介も申し上げます。先ほど挨拶いたしました担当部長の坂口です。担当課長の富田です。私は担当補佐の木本と申します。よろしくお願いいたします。

 次に座長の選任に入ります。要綱 3(2) に基づき、「検討会の座長は、参集者の互選により選出する」こととなっています。事務局としては阿部委員にお願いしたいと考えておりますが、よろしいでしょうか。

                                ( 異議なし )

○木本補佐 異論がないようですので、本検討会の座長を阿部委員にお願いしたいと思います。それでは、阿部座長におかれましては座長席にお移りください。報道陣の皆様の頭撮りはここまでとさせていただきますので、よろしくお願いいたします。阿部座長、これからの議事進行についてよろしくお願いいたします。

○阿部座長 阿部です。どうぞよろしくお願いします。この検討会には、それぞれの専門分野で雇用仲介事業に非常に学識ある、知見のある方々にお集まりいただいて、非常に心強く思っております。皆様からいろいろ忌憚のない意見をいただいて、検討会での報告書作成、取りまとめに向けて頑張っていきたいと思いますので、どうぞよろしくお願いいたします。

 まず、議事の公開について申し合わせをしておきたいと思います。事務局から説明をお願いいたします。

○木本補佐 資料 3 を御覧ください。議事の公開について ( ) というものです。本検討会の議事については原則として公開とする。ただし、以下に該当する場合であって、座長が非公開であることが妥当と判断した場合には、非公開とするとなっています。

 例えば個人情報を保護する必要がある。あるいは公開すると、外部からの圧力や干渉などの影響を受けることなどにより、率直な意見交換ができなくなってしまう。あるいは、公開することで市場に影響を及ぼすなど、国民の誤解や憶測を招き、不当に国民の間に混乱を生じさせるおそれがある。あるいは、公開することにより、特定の方に不当な利益を与え又は不利益を及ぼすおそれがある。こういった場合には、座長の御判断により、非公開とさせていただくという取扱いにさせていただければと考えております。以上です。

○阿部座長 この会議の公開方法について何か御意見はございますか。特に御意見がなければ、そのように取り扱うことにさせていただきたいと思います。

 それでは、本日の議題である「雇用仲介事業の現状について」に入りたいと思います。まずは事務局より、資料 4 から 8 まで説明をお願いしたいと思います。

○木本補佐 資料 4 から資料 8 まで順に御説明申し上げます。まず資料 4 をおめくりください。資料 4 は、先ほどの開催要綱の際にも御説明いたしましたが、平成 26 6 24 日に閣議決定された「規制改革実施計画」の抜粋になっております。以下、詳細な論点等については後ほど御説明申し上げたいと思います。

 次に資料 5 をおめくりください。こちらは雇用仲介事業等の現状についてという資料になっています。簡単ですが御説明申し上げます。資料の 2 ページでは、先ほどの「規制改革実施計画」におきましても、制度の整理・統一も含めた見直しをすることとされていますので、現行の需給調整システムの全体像をお示ししております。上から労働者の募集、職業紹介事業、労働者供給事業、労働者派遣事業、募集情報提供事業について主な規制と根拠法をお示ししています。

3 ページは職業安定法の制定・主な改正についてという資料になっています。改めて簡単に整理をした資料となっています。職業安定法につきましては昭和 22 年に制定され、その後数次の改正を経て現在に至っています。

 一番初め、昭和 22 年には職業安定法の制定ということで職業紹介、労働者募集、労働者供給について規定いたしました。昭和 60 年には労働者派遣法の制定に合わせ、労働者派遣を労働者供給から除外するということになっています。有料職業紹介事業の取扱職業について、制定当初からポジティブリスト方式がありましたが、平成 9 年の職業安定法施行規則の改正により、ポジティブリスト方式からネガティブリスト方式に変わっております。その後、所要の改正を経て現在に至っております。

4 ページです。職業紹介とはという資料になっています。これは基本的な資料ですので説明は省略させていただきます。 5 ページ、職業紹介事業の概要 (1) です。職業紹介は有料と無料に分かれております。有料の職業紹介事業につきましては、港湾運送業務と建設業務の取扱いが禁止されています。有料も無料も原則的には許可制になっていますが、無料については一部例外的に届出制が認められる形になっています。

6 ページは職業紹介の許可の欠格事由・許可基準ということになっています。これはやや細かい内容となりますので説明は省略させていただきます。 7 ページは、職業紹介事業の概要 (2) ということで、手数料について記載しています。求人者からの手数料については、上限制の手数料制度と届出制の手数料制度の二つがございます。一方、求職者からの手数料については、原則として徴収することを禁止しておりますが、一部専門的な職業の方などにおかれましては、例外的に徴収することができることになっています。

8 ページ、職業紹介事業の概要 (3) です。職業紹介事業者には労働者保護や需給調整の円滑化のため、様々な責務が課されているというものになっています。こちらもやや細かい内容となっておりますので説明は省略させていただきます。 9 ページ、職業紹介事業の概要 (4) です。相談・援助、報告及び法違反の是正措置を記載しています。こちらにつきましてもやや細かい内容となっていますので説明は省略させていただきます。

10 ページは労働者募集とはということで、労働者募集について記載しています。労働者募集については文書募集、直接募集、委託募集に区分されております。うち、委託募集につきましては、有料で委託する場合には許可制、無料で委託する場合には届出制という形になっております。 11 ページは労働者供給とはということで、労働者供給事業について説明しています。労働者供給を事業として行うことについては、原則として禁止となっています。

12 ページ以降はデータの説明となっています。まず 12 ページ、入職経路別入職者数の推移ですが、民営職業紹介による入職については、平成 12 年から平成 24 年にかけて約 3.3 倍増加しています。 13 ページは民営職業紹介事業所数の推移です。有料の職業紹介事業所数は、平成 12 年度あたりから大きく増加しています。平成 20 年度あたりからはほぼ横ばいとなっています。無料の職業紹介事業所については、徐々に増加する傾向となっております。 14 ページは労働者供給事業許可組合数の推移です。足下で、やや増加傾向が見られます。

 続いて資料 6 、職業紹介事業者、求人企業、求職者を対象に行った、職業紹介事業に関するアンケートの調査結果の概要になっています。大部に渡りますので、ポイントの説明とさせていただきます。

5 ページを御覧ください。職業紹介事業所の者を対象に行った調査となっています。まず、事業所における職業紹介事業の許可の状況です。「有料職業紹介事業の許可を受けている」が 74.7 %、「無料職業紹介事業の許可を受けている」よりも高くなっている形になっております。 6 ページ、こちらは職業紹介事業の他に行っている事業について確認しております。「労働者派遣事業」が 47.1 %で最も高く、次いで「請負事業」となっています。職業紹介事業の売上高別に見ると、全ての売上高で「労働者派遣事業」が最も高いという形になっています。 7 ページでは事業所で行っている職業紹介の形態について聞いています。「登録型 ( 登録している求職者と求人企業の職業紹介を行うもの ) 」が 67.9 %で最も高くなっています。 8 ページは事業所の常用求人に関する職業紹介の実績となっています。年収で「 300 500 万円未満」の常用求人が最も高く、職業紹介を行った件数は総計で 4 4,009 件、うち就職に結びついた件数は 1 2,526 件であったとなっています。

9 ページは求人企業から徴収する手数料の制度となっています。「届出制手数料を採用している」が 53.2 %、「上限制手数料を採用している」よりも高くなっています。 10 ページでは紹介手数料率について確認しています。「 20 30 %未満」が 28.1 %で最も高くなっています。以下「 30 40 %未満」が 20.3 %、「 10 15 %未満」が 17.5 %となっています。 11 ページは紹介手数料額になっています。「 80 万円以上」が 27.4 %で最も高くなっています。次いで「 20 50 万円未満」が 16.4 %となっています。

12 ページ、事業所の紹介により就職した求職者に対して金品を贈る制度の有無について聞いております。「特に金品を贈る制度はない」が 78.6 %で最も高くなっています。 13 ページ、紹介先に就職した求職者が一定期間内に離職した際の補償を行う制度の有無について聞いております。「特に補償を行う制度はない」が 45.7 %で最も高くなっています。次いで「紹介手数料の一部又は全部を返還する制度がある」が 30.0 %となっています。 14 ページでは補償等を行う一定期間の長さについて確認しています。「 5 6 か月」が 45.9 %で最も高くなっており、次いで「 3 4 か月」が 38.1 %となっています。

15 ページでは今後 5 10 年の職業紹介事業の市場規模の見通しを聞いています。「わからない」が 33.6 %で最も高くなっています。次いで「現状のまま」が 29.0 %となっています。売上高別に見ると、売上高が高くなるほど「今後拡大する」の割合が高くなる傾向にございます。

16 ページでは民間職業紹介事業が他の採用方法と比較した場合に持っている強みについて聞いています。「求人企業が希望する能力を持った求職者を紹介できる」が 55.4 %で最も高くなっています。以下、「専門性の高い人材や熟練した人材を紹介することができる」が 35.4 %、「迅速に求職者を紹介することができる」が 30.5 %となっています。 17 ページ、民間職業紹介事業とハローワークによる職業紹介の違いについて聞いています。「対象とする求職者層が異なる」が 44.7 %で最も高くなっています。以下、「提供しているサービスが異なる」が 35.1 %、「対象とする求人企業の層が異なる」が 27.2 %となっています。 18 ページでは職業紹介事業に関して、国への要望について聞いております。「職業紹介事業をより行いやすくするための規制改革」が 25.9 %で最も高くなっています。以下、「求職者への民間職業紹介事業者の PR 」が 23.0 %、「悪質業者に対する取締りの強化」が 21.1 %となっております。

19 ページからは求人企業に対する調査という形になっています。 19 ページ、 1 件あたりの平均採用コストについて聞いております。民間職業紹介事業者は 51.8 万円となっています。 20 ページ、最もよく利用している採用方法について聞いております。「正社員」、「パート・アルバイト」、「その他」につきましては、「公共職業安定所」が最も高いという形になっています。一方、「契約社員」については「民間職業紹介事業者」が 10.7 %で最も高く、次いで「公共職業安定所」が 10.1 %という形になっています。なお、この調査につきましては、民間職業紹介事業者を利用している求人企業が対象になっている点について御留意いただければと思います。

21 ページ、民間職業紹介事業者を利用する理由について聞いています。「希望する能力を持った求職者を採用できる」が 52.3 %で最も高くなっています。以下、「迅速に求職者を確保することができる」が 34.4 %、「専門性の高い人材や熟練した人材の紹介を受けることができる」が 32.2 %となっております。

22 ページ、職業紹介以外の人材ビジネスの利用状況について聞いております。全てにおいて「利用しておらず、利用する予定もない」が最も高くなっておりますが、「労働者派遣」につきましては「利用している」が 29.3 %でほかの方法と比較すると高くなっています。

23 ページ、民間事業者に対する要望について聞いております。「経験やスキルなどの条件に合った求職者を紹介してほしい」が 51.2 %で最も高くなっています。以下、「即戦力になる人材を紹介してほしい」が 42.3 %、「入職後、きちんと定着してくれる人を紹介してほしい」が 35.6 %となっています。 24 ページ、国に対する要望について聞いております。「公共職業安定所 ( ハローワーク ) による職業紹介の充実」が 38.0 %で最も高くなっております。以下、「民間の職業紹介をより使いやすくするための規制改革」が 27.7 %、「悪質業者に対する取締りの強化」が 27.0 %となっています。

25 ページからは求職者に対する調査になっております。現在の求職活動の状況について聞いてございます。「在職したまま仕事を探している」が 40.4 %で最も高くなっています。次いで、「前の仕事を辞めて仕事を探している ( アルバイト、通学もしていない ) 」が 21.7 %になっています。 26 ページです。こちらは現在の求職活動の状況の性別・年齢別・最終学歴別の詳細集計という形になっております。 27 ページでは求職活動期間について聞いています。「 1 ヶ月」が 14.0 %で最も高くなっています。以下「 3 ヶ月」が 13.1 %、「 2 ヶ月」が 11.3 %となっております。

28 ページを御覧ください。求職活動期間の性別・年齢別・最終学歴別の詳細集計です。 29 ページは求職活動にあたり利用している方法について聞いております。「よく利用する」と「たまに利用する」を合わせた「利用する」が最も高いのは、民間職業紹介事業者の 58.6 %で最も高い。以下、「インターネットの求人情報サイト」が 48.2 %、「公共職業安定所 ( ハローワーク ) 」が 46.8 %となっております。 30 ページ、民間職業紹介事業者を利用する理由について聞いております。「希望に合った求人を紹介してもらえる」が 71.4 %で最も高く、以下「求人企業の詳しい情報を知ることができる」が 54.1 %、「求人件数が多い」が 32.1 %となっております。

31 ページ、民間職業紹介事業者に対する要望について聞いております。「職種や条件などの希望に沿った紹介先を紹介してほしい」が 51.7 %で最も高く、以下「登録求人企業の数を増やすなどして、できるだけ多くの紹介先を紹介してほしい」が 41.0 %、「できるだけ早く紹介先を紹介してほしい」が 30.9 %となっています。最後に 32 ページ、国に対する要望についております。「悪質業者に対する取締りの強化」が 35.4 %で最も高くなっています。以下、「公共職業安定所 ( ハローワーク ) による職業紹介の充実」が 27.5 %、「苦情やトラブルが起こった時の相談窓口の設置等の対応の充実」が 26.9 %となっております。長くなりましたが、アンケート調査の結果説明は以上になります。

 続いて資料 7 は、この検討会で御議論いただきたいと考えております主な論点を、事務局でまとめたものになっております。「規制改革実施計画」として閣議決定された内容と重なっております。 [ ] は「多様な求職・求人ニーズに対し業態の垣根を越えて迅速かつ柔軟にサービスを提供することを可能とする制度の在り方」ということで、職業紹介事業と周辺的な事業との関係の整理、時代の変化に対応した規制の見直しなどの点について御議論いただきたいと考えております。

[ ] は「 IT 化等による新しい事業モデル・サービスに対応した制度の在り方」で、 IT 化の進展への対応や国際化の進展への対応などの点について御議論いただきたいと考えています。 [ ] は「その他有料職業紹介事業等をより適正かつ効率的に運営するための制度の在り方」で、求職者等の保護の強化等について御議論いただきたいと考えています。 [ ] は、「規制改革実施計画」にはない内容ですが、 [ ] で申し上げました求職者等の保護の強化と重なる部分もございます。「募集内容をめぐるトラブルを防止するための制度の在り方」について記載させていただいています。その他、議論・検討を進めていくに当たって、委員の先生方から論点として問題提起された事項などについて御議論をいただきたいと考えています。

 最後に資料 8 です。この検討会の今後のスケジュール ( ) を事務局でまとめたものです。第 2 回以降は 4 月以降、まず関係者からのヒアリングを実施して、その後、個別の論点について御検討をいただきたいと考えています。細かい日程や場所などについては、また改めて御連絡申し上げたいと考えております。こちらのスケジュールにつきましても、何か御意見がありましたらいただければと考えております。資料の説明は以上です。

○阿部座長 事務局から事前にお願いがあったと思いますが、今回は第 1 回目の会合ですので、まずは委員の皆様から 1 5 分程度で結構ですので、「雇用仲介事業等の現状について」、それぞれのお立場から御自身が持っておられる問題意識など御自由に御意見を頂き、委員の皆様の御意見を一通りお伺いした後で、フリーディスカッション形式での議論をしていきたいと思っております。

 今、事務局から資料の説明がありましたが、資料の説明に関する御質問は、事前にお願いしていた、皆様からの問題意識についての御意見を一通りお伺いした後で、お願いしたいと思っております。まず、問題意識等について、あいうえお順で恐縮ですが、私から始めて安藤委員、大久保委員、竹内委員、松浦委員、水島委員、水町委員の順で御意見をいただければと思います。

 早速ですが、私から「雇用仲介事業等の現状について」のところでお話をしたいと思います。

 現状、事務局からも冒頭説明があったと思いますが、労働市場は活況を呈しておりまして、有効求人倍率も 1 を超えております。ただ、その一方で失業率自体は 3 %台半ばということで、ある意味この辺りが自然失業率の状態で、完全雇用の状態であっても 3 %半ば程度までしか失業率は下がっていない。多分、 80 年代ですと自然失業率は 2 %の辺りにあったと思います。そういう意味では構造的な要因による失業というのが、かなり高くなっているということになっているわけです。

 先ほどミスマッチがあるのではないかということがありましたが、多分、今の労働市場政策では、そういう問題をかなり大きく取り上げてもいいのではないかと思っております。労働市場は活況を呈していますが、ミスマッチ問題にはかなり慎重に対応していく必要があると思っています。

 今後、超高齢化社会になっていったときに、労働者の年齢属性がどんどん上がっていって高齢化していきます。今まで日本の企業というのは新卒を中心に採用したりして、もちろん中途採用もやっていましたが、労働力の再配置を若年層を中心にできたわけですが、今後、それがだんだん難しくなってくる。そうすると当然、中高齢者で再配置ということも視野に入れていく必要があると思います。

 若年よりも中高齢者のほうがキャリアの幅もありますし、質、仕事の内容、知識などに幅があるのは当然でして、なかなかマッチングするのが難しくなっていくのではないかと思っております。そういう意味で労働市場の機能を高めていくためにも、仲介事業が効率的に働き、そして高度化していく必要が非常にあると考えています。

 私の考えとしては、仲介事業というのは、もちろん紹介、派遣、求人広告などいろいろありますが、学校や知人や友人というのも、含めれば仲介になるわけですが、仲介する際に、それぞれの事業で行っている正確な情報の流通をどのようにするかや、求職者と求人企業のそれぞれをどのようにきちんと評価していくか、求職者でしたら、求職者のキャリア形成との関係でどのようにマッチングしていくか、あるいは職業紹介だけではなくて能力開発をどのようにしていくかなど、そういうところまでを含めて今後やっていく必要があると思います。

 そういう意味で、そのためにどのような枠組みが今後、必要になるのかというのは、今後の労働市場の在り方等を含めて考えていく必要があるのではないかと思っています。今回、論点に出ているものには含まれていませんが、例えば、職業評価を仲介事業者の所でどのようにやっていくのか、それを効率的にするためにはどのようにしていくか。あるいは、学校は職業紹介機関ですのでいいのですが、知人、友人など、よく縁故というものがあります。縁故というのはかなり使われていますし、よくマッチングの精度は高いと言われます。そういうところも含めながら、民間、公共の仲介事業に今後どのような在り方が必要なのかなど、私自身はそういう問題意識を持って今後検討していきたいと思っております。以上です。

 それでは安藤委員、お願いします。

○安藤委員 先ほど坂口部長からもありましたように、少子高齢社会において限られた人材をどのように有効に活用していくのか、また、技術進歩に伴う技術的失業にどう対応するかという問題が最近よく注目されていますが、そのような観点からも人材の再配置というか労働移動というのは、今後さらに重要になっていくと思います。今回、雇用仲介事業に光が当てられたのは、とても有意義なことだと思っておりますが、この問題を考える際に 2 点ほど注意したいと思っている点があります。

 まず、事業者の視点ではなく利用する労働者の視点から、利便性が高く、また、安全性、透明性の高い仕組みになっていなければならないということです。それに加えて言うのであれば、例えば、仲介事業の中にヘッドハンターなどという役割もあったりするわけですが、そういうのは比較的エリートと言ったら何ですが、能力も技能も年収も高い人を相手に扱っている。こういうところが注目されがちなのですが、やはり重要なのは、普通の能力を持っている人にとって、うまく活用できるような仕組みであることだと思っています。

 もう 1 点、大事だと思っておりますのは、仲介事業を行う事業者についての問題です。より良いマッチングをうまく実現するためには、やはり能力と意欲、この両方がそろう必要があるでしょう。よいマッチングを実現させるための意欲の面で言ったら、先ほど資料により御説明いただきましたが、ある程度の期間は雇用が継続しないと紹介料の一部を返さないといけないといった仕組みがあるように、様々なものが民間の中でもうまく生み出されています。そういうものをいかに活用していくのかということが大事かなと思っております。

 また、これは少し余談になりますが、出会いを支援するというのは別に労使関係に限らず、例えば、住宅の市場や結婚の市場など様々なところで仲介者による支援活動が行われているわけです。制度の設計を考える際には、諸外国の事例等を参考にすることが多くありますが、労働以外の他の市場における仲介の仕組みと比較した時に、どのような点が似ていて、どのような点に違いがあるのかも参考になるはずです。例えば優良な事業者を見つける又は悪質な事業者を廃除するというメカニズムが、どのように機能しているのか、こういった面からも議論ができたらいいかなと思っています。

 現在、大企業でも先行きが不透明な時代になっております。人間は様々な面での安定を求めるものではありますが、誰もが安定した仕事に就けるとは限らない時代になっています。そういったことを踏まえて、 1 社での長期雇用に限らず、途切れることのない雇用をいかに実現するかという観点から、円滑な労働移動を実現するための手段について、また、雇用仲介の役割はさらに重要になっていくと思うので、今回の検討会で、将来の役に立つ議論ができたらいいと考えております。以上です。

○阿部座長 ありがとうございました。それでは、大久保委員、お願いします。

○大久保委員 まず、大前提として認識しておかなければいけないと思っているのは、民間の職業紹介事業というのは、現状において入職経路の中でのシェアが非常に低いわけです。求職者からすれば、自分に合った仕事を紹介してくれる所としての期待は、先ほどアンケートにあったように大きなものがあるのですが、実際には量的に言えば、それほど大きなシェアを持っているわけではないですし、あるいは、先ほどの事業者に対するアンケートの結果を見ても、今後の市場の動向に関して言えば、必ずしも市場が大きくなっていくと言っているわけでもなくて、かなり両面の見方がある状態なのだろうと思います。

 なので、要は、まず大前提として確かに規制は必要なのだけれども、きちんと民間の職業紹介事業者が必要な役割を果たしていくということが、どのようにしたらできるのだろうかということを、同時に考えておかなければいけないと思います。特に私がこのサービスに関してずっと問題意識を感じているのは、現在のビジネスの枠組みや規制の枠組みで考えたときに、大きな都市とか政令指定都市クラスの所であれば、そういうサービスを必要なユーザーが利用することができると思うのですが、それ以下の地方の都市になっていくと、極めて少ないですね。余りビジネスが成り立っていない現状があるのだろうと思います。

 そういう所にも当然、求人したいという事業者がたくさんいるわけですが、 1 つは規模の問題です。もう 1 つは、地方都市になれば都市の近隣県内だけで求人、求職者を探そうとしてもなかなか賄いきれなくて、もう少しほかの地域から連れてくるという、ある種の広域な職業紹介ができないと、そのニーズを満たすことができないのですが、実はそのようなサービスをしている事業者はそうはいないということがあります。現状、全国、津々浦々、民間の職業紹介事業者が必要な役割を果たしているかというと、そうではないと思います。

 そのことに関して、どのようにこの職業紹介事業者を位置づけていくことができるのかということを考えなければいけない。特に私はこの 1 年ぐらいは、東京に集中している優秀な人材が地方に還流することによって地方の経済が活性化する、まち・ひと・しごと創生ということが出ていますが、そのようなことに資するのではないかということをずっと言い続けてきているわけですが、その仕組みにおいて民間の職業紹介事業者が一定の役割を果たすということも、積極的に考えていったほうがいいのではなかろうかと思うわけです。そのときに、職業紹介の在り方はどのように在ればいいのだろうかということを考えながら、同時に利用者の保護ができる方法は、どのような方法なのかということを思っていきたいということが、 1 つ目の視点です。

 もう 1 つは、この 10 年ぐらいの大きな変化だと思いますが、もはや求人サービスや職業紹介という事業の領域は、既に独立して閉じた業界ではなくなってきているということであります。特に IT を活用した求人、求職、職業紹介という領域が一気に拡大しまして、既にもう国境すらなくなってきている。この領域における主要なプレーヤーは日本企業ではない、既に日本企業ではない所が相当な比率を持っているわけで、その戦いに嫌でも何でも参入しなければいけないという状況になってきているわけです。

 いわゆる普及している SNS のサービスなどは、人材紹介業とは言っていませんが、かなりの収入を人材紹介に依存している所もあります。そのほかネット上の様々なマッチングサービスの領域の 1 つとして、人材の領域もやっていて、ややもすると運営している側が人材サービスをやっている認識すらないような中で、全ての領域の中にたまたま人材も含んでいるという状況すらあります。そこの領域で IT 技術が日進月歩しておりまして、もう既にそういうサービスをやっている事業団体は、大体エンジニアの専門のプロのチームを持って、ビッグデータのマーケティングをやり、 AI を取り入れやっているという状況になってきている。

 そうすると、そのようなサービスの日進月歩の進化に、規制がキャッチアップしていくということはほとんど不可能な領域で、そこについて細かいオペレーションを規制することは現実的ではないと思います。そういうときに、 IT を使った一種の職業紹介に対してどのように向き合えばいいのか。私は、そこに対して全く何もしなくていいとは思っていなくて、当然、そこから起こってくるトラブルもあり得ると思いますので、そういうことが起こったときに対応できるだけのルールは持っていかなければいけないと思います。

 同時に、今まで持っているルールのような各論と、実際に机を前に置いて向き合ってみたいな感じとは全く違うITの世界になったときに、どういうルールを作るのかというのは、もう 1 つの大きな柱だと思っています。今、私が問題意識として申し上げた 2 つの観点では、今までの有料職業紹介のルールの延長線というのではなく、もう少し基本的なところから考え直さないと、いい枠組みができないものだと思っていまして、私としてはこの 2 つの論点については、この機会にきちんと議論すべきではないかと思っております。以上です。

 

○阿部座長 ありがとうございました。竹内委員、どうぞ。

○竹内 ( 奥野 ) 委員 この検討会は、多様な求人や求職のニーズに柔軟に対応できるようにしていく必要があるということで、開催要綱に照らせば、規制改革の実施計画を基本的には踏まえて検討していくこととされていると理解しております。もちろん、それには限られていない検討事項等も示されておりますが、基本的にはそれを踏まえて検討していくということになっていると了解しています。

 そうした求人や求職のニーズに応えていくという必要があって、それに対してどのようなことが考えられるかということについて、もちろん検討すべきことであり、その必要性を否定するわけではありません。但し,この手の議論に関しては常に言われることではありますが、具体的にどのような要望があるとか、具体的にどのような改善をする必要があるかということについて、今回もアンケート調査等が示されておりますが、こういう種々の事実,証拠をきちんと確認した上で検討する必要があると思います。これは総論的なものですが、そういう必要があると考えております。

 また,私は法律が専門ですが,法の観点からは,制度の設計をして、求職されている方々や人を求める事業者の方々、その仲介をする事業者の方々、そのような人たちがいかにより良い活動ができるかということを考えるということも、もちろん法政策として重要な事柄であります。もちろん,これに関しては,法が何もしなくとも、市場の力により実現されるということであれば、法としては特に何もしないという選択の仕方もあります。

 こうした観点から考えることが重要であるとともに,法律の専門家としては,こうした制度の設計や見直しをしようという場合に、そういうことによってどのような問題が生じ得るかという、先ほど大久保委員も問題が起こった場合の対処ということをおっしゃっていましたが、そのような問題としてはどのようなことが考えられるかということが特に気になります。ですので、より良い制度にしようというときに、それに伴って生じる問題についても目配りをして、それら問題点への対応も念頭において、私としてはこの検討会で考えていきたいと思っております。

 更に,論点案の中では様々の事柄が示されておりますが、職業紹介事業と周辺的な事業等の関係整理ということが挙げられています。初めのほうに示された資料の中では、類似する機能を営んでいる所でも様々に規制が分かれているということもあり、そもそも規制がないという所もあります。もちろん全部規制を掛ければいいというわけでもないかもしれませんが、規制のない所については不要なのかということを含めて、もちろん,規制がある所については過剰なものであれば、それは見直す必要があると思いますが、考えていく必要があろうと思っています。

 この周辺的な事業等との関係の整理に関して、法的には法律の中で職業紹介とはこういうものである等として、定義があるというものも多くございます。とすると,そういう定義のある種々の概念の整理という作業になっていくのであろうと考えます。これはかなり学問的には根本的なことで、例えば職業紹介と派遣は、実態として共通している機能を営んでいる側面もあるところ,職業紹介と解すべきか派遣と解すべきか、それによって規制が違っているから、どのように解すべきであるかということが議論になるといったことがございます。そういう根本的な概念整理については、この検討会が取り扱うかどうか,それ自体議論すべきことではあると思います。とはいえ,私としては,せっかくこのようにして議論する機会あるということであれば、できればそうしたことにもきちんと踏み込んだ、先ほど大久保委員から基本的なところという話がありましたが、そういう基礎的な概念にも立ち入るということが、あって良いと考えております。

 加えて、「規制改革実施計画」の中では示されていませんがという話で、先ほど事務局からも説明があったと理解していますが、また,資料 7 の主な論点案の中の [ ] にも関係すると思いますが、 [ ] の募集内容をめぐるトラブルを防止するための制度の在り方の点に関して,申し上げます。特に今日よく言われていますが、以前からも求人票の内容と、会社に行ってみて契約しようとして言われた内容、あるいは契約した内容が違っていたということは,裁判例になっているものもあって、非常に重要な問題であろうと思います。

 労働条件の明示の義務付けにも係るところであろうと思いますが、こういう問題にもこの検討会としてはきちんと対応していくということができればと思います。私としては、もちろん [ ] [ ] [ ] についても関心はございますが、 [ ] についても関心を持って参加していきたいと思っております。

 その他、繰り返しの側面もありますが,また,参考資料等でもいろいろ言われていたりしますが、先ほども申し上げました、職業紹介とその他の関連する類似の仲介者がいる,すなわち,働く人と働いてもらう側と、その間に立っている仲介者がいるという 2 当事者以外の当事者がいる形態の、働き方をめぐる関係に係る基本的な概念の整理が必要だと考えています。同じ概念であれば同じような規制をしていくということは理解できますが、同じものとして扱ってはいけないと考えられるものも出てくるのではないかと思っております。こうした基本的な概念の整理も含めて、きちんとやっていくことができればと思っております。以上です。

○阿部座長 ありがとうございました。では、松浦委員、お願いします。

○松浦委員 まだ考えがまとまっているわけではなく、冒頭、阿部座長がおっしゃったことと一部共通しているかもしれませんが、今後、マッチングがより重要になってくること、より難しくなってくることは間違いないと思います。要は、マッチしているものを探してマッチングするというよりも、マッチしていないものをマッチングさせることが重要になってくる。マッチしていないものをマッチングさせるためには、マッチングだけでは不十分で、育成やキャリア・カウンセリング等が非常に重要になってくると思います。

 雇用仲介事業等の在り方は、今までのお話を聞いていても、非常に複雑かつ難しいテーマだと思っています。ただ、制度というものには必ず最適解というものがあるはずです。最適解に近づけていくような議論が、この場でできればと期待しています。最適解に少しでも近づけるかどうかは、多様な企業の人事、多様な事業者、いろいろな事情を持つ多様な労働者等、制度に関わるさまざまな登場人物の現状を、どれだけつぶさに想像できるかにかかってくると思います。

 事業者について言えば、先ほど大久保委員からご指摘があったように、民営は非常にシェアが低いです。どうしてこれほどシェアが低いのでしょうか。これまでの経緯からやむを得ない面もあると思いますが、ハローワークと民営の職業紹介との住み分けが、ビジネスになるところは民営で、ならないところはハローワークで、というような曖昧な住み分けになっていたことも、関係している可能性があります。民営の職業紹介は、サーチ型のイメージが強いですが、実際には登録型が多く、紹介の中身もエグゼクティブというより、アンケートの中にもありましたように年収 300 500 万円ぐらいの方々がメインターゲットになりつつあります。ハローワークと民営のターゲットが、少し近づいてきて、住み分けがより曖昧になっている面もあるかもしれません。そういう現状が、民営が思い切ったパフォーマンスを発揮できない、遠慮のようなものにつながっている部分も、もしかしたらあるのかもしれません。

 一方、利用者である労働者の観点からみると、ハローワークも民営の職業紹介も、そもそも必要に迫られないと行かない所なので、敷居が高いイメージがあるうえに、両者の住み分けは、利用者側からすると分かりにくいのではないのかと思います。

 私がここにいるのは、もともと東京大学の社会科学研究所にあった、人材ビジネス研究寄付研究部門で派遣制度の研究をしていたのが 1 つの理由だと思うのですが、そこでの研究等を通じて多様な登場人物に直に接してきた経験を、多少なりとも役立てられればと思っております。どうぞよろしくお願いいたします。

○阿部座長 ありがとうございました。では、水島委員、お願いします。

○水島委員 今回の検討会ではマッチングが 1 つのキーワードになると思います。非常に耳触りの良い言葉ですが、注意して使っていかなければならないと思います。

 先ほど松浦委員がおっしゃっておられましたように、作られたマッチングと言いましょうか、そこにマッチしていないものをスキルアップさせて無理にマッチングさせるようなマッチングも、 1 つの在り方として将来的に出てくると思います。反対に、形式的にはマッチングしていても実際にうまくいかないということもあるはずです。スキルや能力、職歴を見て申し分ない、マッチングしているはずのケースでも、職場で長く勤務することができないという問題があることも、見ていく必要があるように思います。

 民間事業所を経由した職業紹介等は適切にマッチングされ、したがって職場に定着しているという印象を持っていたのですが、先ほどご紹介いただいた調査からしますと、必ずしもそうではないとうかがえるところもありまして、そうした現状も知りたいですし、また、単にポストが見つかるだけではなくそこで長く就労ができることが、労働者、また、使用者にとっても有益ですので、そうしたことも考えていく必要があると思います。

 専門的なスキルの高い雇用については、民間の雇用仲介事業が大いに活用できるのではないかと思います。また、頂いた資料の調査から、在職したまま仕事を探す人が多いということが分かりまして、そうなりますと、民間のほうがフレキシブルに御対応いただけるのではないかと思うので、民間の雇用仲介事業の役割を拡大する、そのための規制の見直しは必要であると思います。

 その反面、専門的なスキルの高い雇用だけではないところにも進出されるということなのかと思って、私は今日参りました。つまり、スキルが必ずしも高くはない、専門的ではないところの問題をどのように考えていかなければいけないのかということです。これも資料の調査の結果ですが、年収が低い職でも民間の紹介の件数が多いわけです。その辺りにどのような問題があって、その部分にきちんと対応できているのかということも考えていけたらと思います。

 また、ハローワークだけではなくて、いろいろな入口があり複数のチャンスがあることは、良いように思われる反面、スキルの高くない労働者がいろいろな所にアクセスしないと仕事が見つからない、そういうことにならないような工夫が必要なのではないかと思いました。

 なぜ、そのように申し上げるかと言いますと、派遣労働者の方の中には、複数の派遣会社に登録して仕事を探されている方がいる。それが、より良い、より自分に合った仕事を探すということであれば、もちろん良い話なのですが、そうではなく、複数の派遣会社に登録しておかなければ、なかなか仕事が得られないという方もいるようです。それはその方のスキルが低い、その方の問題なのかもしれませんが、働く意欲がある人は、できるだけ働けるという社会のためにも、スキルの高くない人が困ることにならないように考えていきたいと思います。

 論点 [ ] で御提示いただきました IT 化ですが、何が現在の規制の中でできて、何ができないのかというところをまだ私は把握しておりませんが、そこは勉強していきたいです。先ほど安藤委員がマッチング、出会いというのは労働の場面だけではなく、いろいろあるとおっしゃっておられましたが、例えば、大学の入学試験でも基本は対面ですが、最近ではビザが容易に取得できない海外の留学生等との間でテレビ電話等で面接を行うということも聞いております。

 より効率的な形での運用が可能と思いますので、労働者の保護に欠けることがないことを踏まえ、できるだけ IT 化に対応した制度というものを御検討いただければと思います。以上です。

 

○阿部座長 ありがとうございました。それでは、水町委員、お願いします。

○水町委員 雇用仲介事業等の在り方に関する検討会という、非常に間口の広い検討会を設置いただいて、ここで議論をさせていただくに当たって、少し大きな視点から 3 点申し上げたいと思います。

1 番目は、この検討会の背景にあるものですが、先ほど来、坂口部長等からもありましたので、社会が大きく変化している、グローバル化、情報化など非常に早いスピードで社会が変化しているということは繰り返し申し上げませんが、そもそも、この問題に関する法規制の立て付けが、やや悪くなってきている状態が続いているのではないか。先ほど御説明がありました資料 5 2 ページを御覧ください。我々は縦割と呼んでいますが、これは横に書いてあるので縦割若しくは横割でもいいですが。実態として、背景にある規制の根拠なり社会の雇用仲介事業のビジネスや実態の動きは連続的なものであるにもかかわらず、左の 1 2 3 4 5 のどの定義に当てはまれば右のほうのどの規制ですよということで、立て付けがやや縦割、横割になっている。社会の変化が急速に変化する中で、立て付けの悪さがより広くなって実態でやや混乱が見られている。ここの時代に合わなくなったものを、社会の変化に対応する形に適切に抜本的に見直す必要があるのではないかというのが、 1 点目です。

 資料 1 の開催要綱の 2 、検討事項の 1 行目の終わりの所から、「職業紹介、求人広告、委託募集、労働者派遣等の有料職業紹介事業等に関する制度の整理・統一を含めた必要な見直しについて検討を行う」とあります。これらの規制の整理・統一を含めた見直しを検討するというのは、今、私が申し上げた観点から、必要なのではないかと思います。

2 番目は、抜本的に見直す際の見直しの視点です。まず重要なのは、なぜ法規制が必要かという法の基本に遡った観点から考える。もう必要がない、理由のない規制は基本的になくしたほうがいいのではないかということもありますが、そもそも、なぜ、雇用仲介事業等について規制が始まったかというと、例えば、人身売買、強制労働、中間搾取を原則として禁止する、その他法令違反の防止等のためです。その法の趣旨に遡ってどのような規制が必要かという点を、まず根本から考えるという視点が重要ではないか。

 他方で、同時に、雇用仲介事業とか、いわゆる人材サービス事業と言われている分野では、歴史的に見ても法令違反とか脱法行為という濫用的な行為が多いというのも事実です。先ほどから悪質業者ということがアンケート等でも出てきますが、歴史的に悪質業者がたくさんはびこったから、職業安定法等の法律が出来た。しかし、前近代的社会が近代、現代になって、なくなっているかというと、悪質業者等、濫用的な行為が出てくるという弊害の根本的な部分は今も変わっていないと思います。さらに、先ほど言ったような IT 化、情報化の中でそれが形を変えた形で、いろいろな形で、濫用的な行為が身の周りに見られるようになってきているので、その濫用を防止できるような適切な規制を講じるという視点が、同時に必要になってきます。

 今、社会が非常に多様化、複雑化する中で、どのような規制をしたら濫用的な行為を規制できるかについては、これまでの経験とか知見が蓄積されてきているので、余り形式的な規制にするとすぐ裏をかかれて脱法雇用がでるということも出てきています。そういうことを考えながら、ここでは単純な規制緩和という観点ではなく、適切な規制を時代の社会状況に合った形でどのように適切に考えながら講じていくかという視点を意識しながら、見直しを行っていくということが、 2 番目に重要ではないかと思います。

3 番目の法規制の在り方は、今日、この場では出てきませんでしたが、例えば、法規制現場を見てみると職業紹介事業については、業務運営要領とか、労働者派遣事業だと業務取扱要領という非常に詳しい要領が役所で作られていまして、これで現場の規制がなされています。この要領たるものの法令上の根拠が、どこかに明確に書かれているかというと、必ずしも法令上の根拠が明確にないまま役所が定めている規制で、それで現場の規制が行われている。その中で、例えば、行政裁量的な運用も見られるので、現場の混乱とか困惑の声というのも我々の所に上がってきています。

 これは形式的に言うと、法律による行政の原理とか、もっと大きく言うと民主主義にかなった規制になっているかという点から重要なポイントになりますので、そういう意味で、先ほどの濫用を防ぐような適切な規制を講じるという法規制の在り方については、法的な根拠を明確にしながら、透明性のある形で規制を講じていくということも、併せて御検討いただければと思います。

 今言った 3 つのことは、必ずしも両立不可能で、ハスリに入り込んでいくという議論ではなく、きちんと適切に議論していけば、あるところで最適解が見つかるような出口も見えてくるかもしれません。ただ、 1 か月、 2 か月の議論ですぐに答えが見えてくるということではありませんので、押し切りを意識したような拙速な議論ではなくて、やや腰を据えて、例えば、この検討会ではここまでできたけれども、この点についてはまた次の検討課題として持ち越すということも踏まえながら議論する。せっかく間口の大きいテーマの大きな検討会が設置されていますので、今言ったようなことを少し整理しながら、腰を据えた議論ができればと考えております。以上です。

○阿部座長 ありがとうございました。皆様から一通り御意見を伺いました。これからですが、事務局の資料に対する質問、皆様から今お話しいただいた御意見を受けて、それぞれからのコメントなどあれば、自由にディスカッションをしてまいりたいと思っております。まず、どこからでも結構ですし、どなたからでも結構ですので、質問やコメントなどありましたらお願いします。いかがでしょうか。

○竹内 ( 奥野 ) 委員 どちらかというとつまらないというか、議事進行的な話かもしれませんが、本日配布の資料の中で、参考資料として付いているものは、どのような位置付けとして理解すればよろしいでしょうか。多分、事務局への質問だと思いますが。

○富田課長 参考資料といたしまして、 1 28 日の規制改革会議から出されました意見を配布させていただきました。資料のほうは、閣議決定のものですので、私どもも拘束されるものです。参考資料につきましては、規制改革会議としての御意見ということで、もちろん、水町委員も委員になっておられるわけなのですが、そこで出されたもので、当然私どもが検討する上では、規制改革会議の意見としてこういうものがあるということで御紹介させていただくと。ですから、会議としての意見ということですので、私どもとしては、この検討会ではこの意見に縛られる必要はないと思っていますが、参考にしていただければと思っております。

○竹内 ( 奥野 ) 委員 どうもありがとうございました。

○阿部座長 ほかにいかがですか。

 私も整理していないのですが、アンケート調査のことで少しお聞きしたいところがあります。まず 5 ページ目なのですが、事業所における職業紹介事業の許可の状況で、「上記のいずれも該当しない」という回答があって、これはどういった事業所なのかというのが少し気になったのです。

 続いて、 8 ページ目なのですが、職業紹介の実績で、紹介件数と就職件数で、就職件数が多いケースが幾つかあります。これは一体どういうことなのかということです。

 あとは、これは多分間違う方はいないと思いますが、 13 ページ目なのですが、紹介先に就職した求職者が一定期間内に離職した際の補償を行う制度の補償の対象は、求人企業でいいと思うのですが、求職者も補償するということはあるのでしょうかというところです。あるいはあったのか。以上、質問なのですが、分かる範囲で結構ですので。

○木本補佐 まず 5 ページについてお答えさせていただきます。調査した段階のタイムラグもありまして、「すでに廃止している」であったりだとか、「届出を行っている」などが該当したということで聞いております。

○阿部座長  8 ページの紹介よりも就職件数が多いのは、どういうことですか。

○木本補佐 それにつきましては、確認させていただきたいと思います。

○阿部座長 特に何か、年収が高い所でそういう傾向があって、驚いたのですが、家政婦、マネキンの所でそういうことが多くて。分かりません。どういう紹介なんだろうかというのがちょっと気になったのですが。あとは、 13 ページ目の補償の対象者は、求人企業が一般的だと思うのですが、そういう理解でよろしいのでしょうか。

○木本補佐 はい、そのとおりです。

○阿部座長 ありがとうございました。

○大久保委員 冒頭にミスマッチの拡大の話、あるいはハローワークの棲み分けの話が出ていたのですが、 1 つは求人・求職の条件が折り合わなくて、マッチングに至らないという比率は非常に増えてきていると思うのです。実際、お互いの需給バランスがとれていないと。具体的には、仕事内容について折り合わない。それは求人数の多い、今、逼迫している職域において。個人側はそういう仕事をやりたいと思っていないというのが、典型的にあるわけですけれども。その職種におけるいわゆるミスマッチが、例えば労働時間、 3 時間だけ働きたいのだけれども、そういうのはないというものや、あるいは地域をまたいでいる勤務地の問題とか、恐らく年齢の問題などもあるでしょうし、いろいろな種類のミスマッチが現状では発生している。その中で折り合わないものをお互いに必要な妥協しながらつなげていくためには、企業側の人事管理の一部の考え方、在り方を変えるとか、個人側も当初描いていたキャリアプランニングの内容の修正を少し加えるといったことが必要だ。

 そういうことを調整しながらマッチングをしていくところに、恐らく民間の強みと言われるところがあるのだろうと思うのですけれども、ただ、現状でいくと、民間の職業紹介事業者、先ほどシェアが非常に低いということをお話しいたしましたが、それによっても、あるいはハローワークによっても、どちらによってもカバーされていない人というのが、非常に多いということが問題なのです。ハローワークと民間はどうやって折り合うのだというような議論を昔はしたのですけれども、そうこうしている間に、そうじゃない領域が余りにも広がってきて、例えば、出産とともに 1 回退職した女性が、再就職しようとしたときに、どこがサービスしてくれるのだと。定年退職した人にはどこがサービスしてくれるのだと。ミドルで雇用保険の失業給付が切れた人たちに誰がサービスしてくれるのだと。外国人のマッチングを誰がしてくれるんだとか。

 要するに、実はちょっと一歩引いてみると、できていないことだらけなのです。その問題にどうやって切り込んで、本当に働きたいと思っている人たちに仕事を紹介するのかというのを、もっと原点の発想としてはあって、その辺りを前提として忘れずにルールの在り方を考えたいというのが、先ほど申し上げたことです。

○阿部座長 ありがとうございました。先ほど、水町委員が、悪質業者などが歴史的にみて、はびこっていたというのが、法規制が必要な理由として挙げられていたわけですが、経済学の立場だと、市場が失敗しているだとか、外部性があるだとか、そういった観点からも政府が介入する必要性があると、よく教科書的には書かれているわけですよね。今、大久保委員がおっしゃった、ハローワークも、民間もどちらも対象としていない層が増えてくると。そういう意味では市場が失敗している層が増えているということですので、その辺りをどう対応するかというのは、やはり政府のある程度の介入は許されるだろうと思うわけです。そういったところも、やはり議論していく必要はあるだろうと、再度確認させていただきました。ほかにはいかがですか。

 では、私のほうから。大久保委員から言われた SNS などを活用したマッチングが増えているということなのですが、例えば固有名詞を出していいかは別として、フェイスブックで、よくこういう人を採用したいのですが、誰かいませんかという、個人的なメッセージが出てくることは、私も結構あります。あれというのは、運営会社が直接やっているのか、それとも個人がやっているのかというのがよく分からないということも結構増えている。そういう意味ではグレーなところかなと思うのです。先ほど、大久保委員に御紹介いただいたのは、多分 SNS などの運営会社自体が紹介をするという、仲介をしてくるというパターンだと思うのですが、 SNS 自体を使って、それの利用者が直接ダイレクトに皆さんに広めるというのもあるのではないかなと。先ほど大久保委員は日進月歩で進む状況にどう対応するかということをおっしゃっていましたが、正にそういったところをどうするかというのは、非常に難しいなと思います。

 コメントというか感想ですが、先ほど私が言った、知人や友人だとか、縁故というのだと思うのです。縁故は大体近くにいた人たちが縁故だったのですが、 SNS だとか何とか、全然知らない人が縁故だと言ってくる感じが出てきて、縁故ではないですけれども、知人だと言ってやってくるケースがあって、そういった問題をどうするかとか、ある程度のルールは決めておくべきなのかどうかというのは、考えておく、皆さんのお知恵をお借りしないといけないなと思っています。

○大久保委員 今の話に補足していいですか。 IT をベースとしたいろいろなものが人のネットワークの領域を大幅に広げていくことになりましたので、別に SNS も当初から人材紹介をやっているわけではない。ただ、そこで、中のユーザーの人たちが広がることによって、実は職業紹介の領域における、リファーラル、縁故的な紹介の領域というのは、どの国においてもウエイトが高まりつつあって、リファーラルが再評価されているのです。やはり個人のつながりで募集したほうが、もともと長く知っている人だったら、今までの業績などについても、割とはっきりと理解しているだろうと。縁故で来た人だったら、すぐに辞めずに勤めてくれるだろうという期待もあって、リファーラルの再評価は進んでいます。もともとは、 SNS のユーザー同士が、個人的にそういうコミュニケーションを取って、結果としてまとまるということがあったのだと思うのですけれども、当然そういうトラフィックが増えてくれば、運営会社としてはそれをビジネスチャンスと捉えるのは当たり前の話で、それがどんどん広がっているというのが現状なのだろうと思います。それは別に SNS の今の具体例だけではなくて、いろいろな IT の領域で広がってきているということだろうと思っていて、そういうものを考えると、それを職業紹介事業者というカテゴリーで見ようとすると、見誤ってしまうという。しかもそのウエイトが急速に増えていって、もしかしたらあっという間に、今、民間職業紹介事業者としてここに出てくるような数字を上回ってしまうのではないかと思っているわけです。そういう状況なのです。

○阿部座長 これも射程に入れるかどうか分かりませんが、個人請負を仲介するサイトというのもありますよね。あれもここの射程に入れるのか、いや、あれは違うんだと考えるのかとか、そういう意味では新しい分野というのは非常に裾野が広がっているなと。

○大久保委員 その辺りのところは、スタートは業務委託なのですけれども、その人が、特定の業務委託を繰り返し繰り返し受けて、パイプが太くなっていくと、一定の労働者性が出てくるのではないかということもあります。もともとそういうものは、最低賃金は守られずに、実際には普及していることも含めて、これは職業紹介の問題というよりは、労働の問題、もっと広い問題として考えなければいけないテーマなのです、そういうのも全部絡んでいることだと思うのです。

○水町委員 今の問題については、例えば現行法の縦割の枠組みの中では、どのように位置付けられて、規制が及んでいるのか、規制が及んでいないのかという整理を一旦した上で、だけど、縦割だと実態に合わなくなってくるので、それが広がって横行していった場合に、どういう弊害が出てくるのか。不適正表示とか、プライバシー侵害とか、いろいろなものが出てくる。そういう弊害が出てくる可能性に対して、それをどう調整するのか、どう規制するのかという観点からアプローチしていくということであれば、この検討会の延長線上にある問題ですし、今の現行法でここの所管ではないから外すということをせず、そういう意味で、きちんと議論すれば、何らかの適切な対応は出てくるのではないかと思います。

○阿部座長 ありがとうございました。ほかにはいかがでしょうか。

○松浦委員 少し戻るのですが、大久保委員がおっしゃった、ハローワークも民営の事業者もカバーしていない領域が増えてきている点。私もそのように思いますが、そういう現状は、利用者側からすると、どこへ行けばいいのか分からない状態であり、困った状態だということになります。そこで確認したいのですが、どちらもカバーしていない領域に、民営の事業者が入っていかない一番の理由は何ですか。

○大久保委員 一番大きな理由は、先ほどの棲み分けとも関連するのですが、もともと民営の事業者の収入は、求人側からの採用の成功報酬によって賄われていて、つまりその成功報酬がビジネスを運営していくのに十分な報酬である対象者以外には、ビジネスとしてはいかないわけです。

○松浦委員 やはりそういうことなのですね。

○大久保委員 そういう問題です。求人側からすると、それほど高い成功費を払う人材とは認められない、採用はするけれど。個人側からももちろん手数料を取るわけにもいかない。一定の難易度が間違いなくあるという状況が放置されているという構造になっています。

○松浦委員 なるほど。分かりました。

○阿部座長 ただ、マーケットが成立すれば、そこに入っていくというのは当然あって、最近ある中小企業の方とお話をしていたら、パートタイマーを募集したくてハローワークだとかで広告を打ったのだけれども、応募してくる人たちにいい人がいないと。なので、派遣に切り替えたら、すぐにいい人がやってきてマッチングした。これからは、パートではなくて派遣でやっていこうかなと言っておりましたので、ある意味、時給換算で言えば上がっていくわけですよね、企業側も。そうしないと人が取れなければ、上の層にどんどん上がっていくわけですから。マーケットができてくれば、今は利用できなくても、そのうち利用できるかもしれませんが、ただ、今それをほったらかしにしておいていいかという問題はまた別としてあると。

○松浦委員 実際にカバー領域が限定されているということは、現状のままではマーケットとして成立する領域が限られている面もあるということですね。

○水町委員 例えば、労働者派遣であっても職業紹介であっても、実態としては連続的なのに、労働者派遣と職業紹介についての規制が連続的にはなっていないし、人々の意識が違うものだと認識している。だから、そういうそごが生じているとすれば、どのように規制の在り方を実際の連続性ある形で、かつ弊害が生じないような形で調整していけば、職業紹介のほうにもいっぱい求人登録があり、適切な人を紹介できるというふうになっていくのか。規制の在り方を変えることで、どこまでできるのか。先ほど大久保委員がおっしゃったように、例えば地方の活性化のために、職業紹介を利用して、どうマッチングをしていくかという観点で、今ある不必要な、必ずしも法的な根拠とリンクしていない規制を除いて、中央が地方にもたくさん事業所を置きながら職業紹介事業を広げていこうという動きも見られるので、そういう中でいくのか、それとももう少し政策的にインセンティブを与えるとか適切な法的な施策、支援をしていかないと、そこまでたどり着けないのか、どうしたほうがいいのかなというところで、少し検討したほうがいいかもしれませんね。

○阿部座長 そうですね。

○大久保委員 今の水町委員の観点に関してなのですが、いろいろな角度からの検討が必要だと思いますが、全体的に民間の職業紹介の事業者というのは、小規模です。アメリカなんかを見に行っても、アメリカで職業紹介をやっているのは、日本とは状況が違って、個人コンサルタントがやっているケースが非常に多いのです。良いかどうか分かりませんが、規制がないからなのですが。アメリカと日本の風土は同じではないので、参考程度なのですが、その人たちは、協会を作って、求人に接している人と、求職に接している人が情報交換し合いながら知り合っていくという形なので、全米でかなり広く網羅的にできるという状況があります。

 実際には、ちゃんとマッチングできれば、それなりにビジネスが成立しやすい領域ではあるのですが、固定費がかかるとやはりきついわけですよね。ですから、小規模事業者が運営しやすい。運営しやすいというのは、固定費がかかりにくいということと、 IT を活用できるということ。もう 1 つは、必要に応じてほかの事業者と連携が取れるという辺りのことが担保されると、比較的いろいろな領域で展開しやすくなるということはあるのだろう。海外のケースなども参考にしながら、よく考えてみたらいいのではないかなと思います。

○阿部座長 ありがとうございました。ほかに、安藤委員、何かないですか。

○安藤委員 大久保委員と水町委員が先ほど言われていた、地域を移るという問題についてなのですが、労働移動には様々なタイプがあります。仕事内容は同じまま会社を移る、又は仕事を変える、産業を移るということもありますし、地域を変えることもあります。その中で、個別企業が自主的な採用活動を行ったとしても、なかなか取り扱うのが難しい領域の 1 つとして、地域間の移動というものがあると思います。例えば、建設業では人手不足がとても大きいものになっていますが、なかなか移動しないのです。現場の人に話を聞いたことがあるのですが、地域を移ることを嫌がる人が多いようです。それは、地域を移ると、環境が変わる、友人、知人関係が切れてしまうことなどが理由のようです。

 このような事例から分かることとして、大事だと思うのは、労使間のマッチングとは技や知識の面だけではなく、地域や言語、文化的な背景であったり、様々な要因によって、マッチが成立するか、また継続するかが決まるのだと思います。このような観点から、仲介事業が果たす役割を考えたときに、マッチングの阻害要因を整理していくことは、とても大事なことだと感じました。特に水町委員がおっしゃっていたような不要な規制、又は時代に合っていない規制があるとしたら、それはどういうものなのか。こういうものをきちんと精査することが重要かなと考えました。

 あと、もう 1 点別の話なのですが、松浦委員のおっしゃっていたように、相性が良いはずの労使を出会わせるだけではなくて、いかに、良いマッチングを育て上げていくかという観点は、とても重要な視点だと思って、目からうろこが落ちる思いをしました。

 皆さんもご存知のように、高校生の就職活動と、大学生の就職活動には、大きなギャップがあります。高校生の場合には、学校の先生などが支援をしてくれます。そして、だんだんとそのルールは崩れつつありますが、生徒に 1 社を紹介して、面接を行う。そして、うまくいかなければ次が紹介されるというような形で、ある程度道筋がはっきりした形でおこなわれます。これが大学生になると、いきなり全て自分でやらないといけなくなることから、就職活動で苦労する大学生もいるという実態があります。したがって、いかにマッチしている労使を出会わせるのかだけではなくて、教育などを通じて、よりよいマッチングを作っていく、育て上げていくというのは、大学の役割としても重要なのではないかなと考えます。

 あと、最後に 1 点、最初に阿部座長から、最近労働市場の状況がいいというお話がありました。有効求人倍率も 1 を超えているという話がありましたが、今 30 代、 40 代の人たちで、俗に就職氷河期と言われていた時代に働き出した人のことも考える必要があります。なかなか望むような安定した、また教育訓練をしっかり受けられるような雇用形態に就くことができなかった人たちが、依然として安定した仕事を探しているのです。これから働き出す若い 20 代の人たちは、雇用環境が上向いているのに、就職活動した年時が 1 2 年違うだけで、長期的に悪影響が続いているという実態もありますので、先ほど申し上げた教育の観点、又はマッチングをより良いものにしていくために育てていくという観点、こういうことから職業紹介というような事業がどのような役割を果たせるのかということも、今後、検討していきたいと思っています。

○阿部座長 ありがとうございました。多分、安藤さんが言った地域間移動だとか、労働移動に関して、マッチングを阻害する要因というのは何なのか、 1 回整理をするというのは、もちろん大事ですが、安藤さんが最初に言った出会いというのは、別に労働だけではなくて、結婚とか不動産市場でもありますよね。それでの規制だとか、規制があることによってどういう問題があるのか、あるいは規制がないことによってどういうことが起こっているのかということを整理するというのも、多分参考になると思いました。

 最近、読んだアメリカの論文で、 IT の求人広告が日本でも増えていますけれども、それによって労働市場のマッチングの効率が高まっているのかどうかという研究があるのです。 IT の広告が増えているのは、労働市場だけではなくて、実は不動産業界でも相当増えていて、不動産業界では、マッチングの効率を改善するのですが、労働市場では、改善できていないという結論なのです。何でだろうということで、いろいろな理由はあると思うのですが、多分、不動産市場と生身の人間を扱う労働市場では、ややどこか違うということが全面に書かれていたように記憶しているのですけれども、そこの違いというのもありますが、一応出会いというのをやっている市場で規制がどうなっているか、整理することは大事かなと思っています。

○安藤委員 すみません。今の研究はアメリカの話でしょうか。

○阿部座長 アメリカで。

○安藤委員 日本でではないのですね。

○阿部座長 日本でではないです。日本では、まだそういう研究は私は見たことはありません。

○安藤委員 例えば日本の不動産市場であれば、全国を網羅した REINS というデータがあって、不動産事業者だったら、アクセスすることができます。売物件、買物件のデータが全国的に網羅されているわけです。これに対して労働市場については、やはり小さな事業者が個別にやっているという実態があります。このような市場による違いはあるのだろうと思います。また、仲介の手数料などでも、賃貸住宅であったら、貸し主、借り主合計で 1 か月までという取扱手数料の上限があったりと、有料職業紹介よりも規制が厳しいと思われるところもあるわけです。市場によって、労働市場よりもうまくいっている点もあれば、うまくいっていない点、また規制の内容や程度の違いなどもあるので、一概に緩和すればいいという問題ではないというのは、興味深い点だと思われます。このような点についても今後考えてみたいと思います。

○阿部座長 ありがとうございました。ほかに何か。

○水島委員 感想めいたものになりますけれども、住み分けの議論お話で、余り層に分けるのはよくないのですけれども、 3 つの層があるという感じがします。スキルの高い層と、先ほどお話がありました、出産で一旦離職して戻られた人、外国人の方とか。その間に、事務職ですとか、専門的技術を要しない労務従事者のような方が、いらっしゃる。 3 つ目の層に対しては、今マザーズハローワークとかもございますし、外国人向けのハローワークも確かあったと思いますけれども、行政、ハローワークに委ねることになるのかなと思います。他の層が恐らくビジネスになるところですが、スキルの高い層だけではなくて、間の層を、気をつけて見ていかなければいけないと感じました。

 もう 1 つは、事務局に伺いたいのですが、資料 6 で頂きました、アンケートは非常に興味深く読ませていただきましたが、職業紹介事業所経由で、調査票を交付しているとか、あるいは回答率が省の調査としては、あまり高くないようです。もしほかに民間や研究所等で類似した調査がありましたら、また教えていただければと思います。よろしくお願いします。

○竹内 ( 奥野 ) 委員 最後の点と関連しますが、水島委員からも御指摘があったと思いますが、このアンケート自体は、民間の事業者ないしはそれを利用している人に対してのアンケート調査だと思います。それ以外の入職経路も含めて、どのように環境を整備していくかということですので、もちろんあればということではありますが、民間の事業者を利用していない人についても、同様のアンケート調査ないしその他の調査というのがあれば、今後御紹介いただければと、関連するそのような然るべきデータに基づいて議論ができればと思っております。

○阿部座長 今、竹内委員から。多分これでよろしいですか。

○竹内 ( 奥野 ) 委員 資料 6 として示されている、今回御紹介いただいたアンケート結果は、多分民間の職業紹介事業を経由している人に限ったデータだと思います。民営の職業紹介を利用している人の割合は低いというデータが、今回の説明の中でありました。ですので、それ以外の入職経路を利用している人のデータというのも含めて考慮し、全体の中で民営の事業をどう位置付けていくかという議論になっていけばと思い、そのために,そうしたデータもあれば,ということです。

○阿部座長 分かりました。もしあれば、お探しいただいて、情報提供していただければと思います。ほかはいかがですか。追加的に御発言されたい方いらっしゃいますか。

○大久保委員 もう 1 つ、今回の大きな論点が、先ほど水町委員からも御指摘があった、事業形態を越えたルールの問題です。求職者の意向を聞くと、正社員として就職する、有期雇用でパートタイマーで就職する、派遣で仕事を探す、業務請負で仕事を探すとかという、この境界というのは、個人側の境界線はわりと低いのです。特に失業期間が長くなればなるほど、これに関するこだわりは、非常に低くなります。一方で、勤務地、勤務時間みたいなこだわりは比較的高いですけれども、形態に関するこだわりというのは、それほど実は高くなくて、事業団体としても、個人の希望に応えるために、例えば家の近くで通勤 30 分以内で、こんな仕事でこんな時間に働けるものと言ったら、どんな形態でもいいからと。そういうものを紹介することが、最もユーザーの希望にかなっていることなのです。なので、必然的に求職者のニーズに応えようとすると、業態は複合化していくというのが大きな流れだと思います。そういう中で、 1 つの事業者がいろんな種類の違う規制を受けるというのは、大変事務効率的にも手間な問題があって、しかも考え方が違っていたりすると、大変混乱を来たすということで、長期的には、解決しなければならない問題なのだろうと思います。方向性については事業者も反対しないのではないかと思っていて、問題は道筋の問題、これをどのように考えていくかというところが重要なのかなと。テーマとしては大変大きなテーマなので、この問題についてはしっかりと分析、議論をしたほうがいいと思います。

○阿部座長 まだ時間がありますので、他の方いかがですか。

○松浦委員 おっしゃるとおりだと思います。特に専業主婦で求職活動されている方々のお話を聞くと、雇用形態に対するこだわりがないケースが多いです。それよりも、勤務時間や制服の有無等のほうが、優先順位が高い傾向がみられます。雇用形態のみならず、どの事業者から入職するのかという点についても関心は低く、むしろ労働条件本位で判断されるということなのだと思います。ですから、利用者側からすると、実利にかなった提案をしてくれる所がどこなのか、どこに行けばいいのかということが分かるということが、非常に重要です。多様な事業形態を、いかに効率的に利用いただけるようにしていくかというのも、重要な視点だと思います。補足になりますが。

○阿部座長 ほかにいかがですか。よろしいですか。ほかにもいろいろと意見があるかもしれませんが、この辺りで本日の議論は終了したいと思います。今後の進め方についてですが、先ほど事務局より資料 8 でスケジュール案が示されています。職業紹介事業者などからヒアリングを行うという提案がありましたが、我々にとってもいいと思いますが、何か御意見があれば。特になければこの形でめていきたいと思いますが、よろしいでしょうか。

                                ( 異議なし )

○阿部座長 では、このように進めさせていただきます。

○水町委員 今の点で職業紹介事業者等と書いてありますが、大久保委員から話があったように、なるべく対応に大きなビジネスをしている所とか、小さな所とか、いろいろな意見を聞きたいと思います。

○阿部座長 そのようにお願いします。ほかに、事務局から連絡事項があればお願いします。

○木本補佐 次回の検討会の日程は、決まり次第、御連絡させていただきますので、よろしくお願いいたします。

○阿部座長 では、予定の時間もまいりましたので、本日の検討会はこれで終了したいと思います。本日はお忙しい中ありがとうございました。


(了)

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