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2015年3月31日 第63回社会保障審議会年金数理部会 議事録

年金局

○日時

平成27年3月31日(火)13:00~15:00


○場所

全国都市会館 第1会議室


○出席者

山崎部会長、宮武部会長代理、浅野委員、牛丸委員、翁委員、駒村委員、佐々木委員、田中委員、野上委員

○議題

(1)公的年金財政状況報告-平成25年度-について
(2)その他

○議事

○清水首席年金数理官 定刻になりましたので、ただいまから第63回「社会保障審議会年金数理部会」を開催させていただきます。

 審議に入ります前に、お手元の資料の確認をさせていただきます。

 議事次第、座席図のほか、次のとおりです。

 資料1は「公的年金財政状況報告-平成25年度-(案)」。

 資料1-1、1-2、1-3、1-4、1-5の5つに分けておりますが、資料1-1は「表紙、委員名簿、目次、はじめに」。

 資料1-2は「第1章」。

 資料1-3は「第2章」。

 資料1-4は「第3章」。

 資料1-5は「付属資料」。

 資料2は「公的年金財政状況報告-平成25年度-(要旨)(案)」。

 配付資料は以上です。

 次に、本日の委員の出欠状況について御報告いたします。本日は、全員が御出席です。

 それでは、以後の進行につきましては、山崎部会長にお願いいたします。

○山崎部会長 委員の皆様には、御多忙の折、御出席いただきましてありがとうございます。本日は、平成25年度の公的年金財政状況報告に関して審議を行いたいと思います。

 カメラの方はここで退室をお願いいたします。

 

(報道関係者退室)

 

○山崎部会長 平成25年度の報告書の作成に当たりましては、検討作業班、技術作業班の2つの作業班において作業を行い、本日の資料である報告書案を作成いただきました。

 それでは、事務局から、本年度の報告案につきまして、そのポイントとなる点の読み上げをお願いいたします。

○清水首席年金数理官 それでは、資料1-1からお願いします。

 まず、表紙をめくっていただきまして、年金数理部会の委員名簿がございます。

 その後、目次がございますが、第1章の「2 国民年金と被用者年金との関係」の部分について若干加筆がされています。次に、第2章の2節の「(5)標準報酬月額別被保険者数の分布」は、今回新たに書き加えられた部分です。第3章の「2 財政収支等の実績と将来見通しの比較」では、「(1)人口要素」の部分が今回新たに書き加えられた部分であり、この部分との関係で「(2)経済要素」「(3)被保険者数等」という構成にされています。それから、(3)につきましては「労働力率」がつけ加えられています。その次ですが、第3章の章末、参考3「『評価の基準となる積立金額』の算出方法」で技術的補遺が加えられています。

 次に、「はじめに」をご覧いただきたいと思います。

 第2段で年金数理部会の位置づけについて述べられておりますので、ここから読み上げさせていただきたいと思います。「社会保障審議会年金数理部会は、閣議決定に基づき、被用者年金制度の安定性及び公平性の確保に関して、財政検証・財政再計算時の検証(レビュー)を行うほか、毎年度、各制度の財政状況の報告を求めることとされている。また、年金数理部会は、被用者年金制度の一元化の具体的な措置が講じられる際の具体的な費用負担の在り方等についても、年金数理的な観点から検討及び検証を行うものとされている。」。

 次の段ですが、「年金数理部会では、こうした要請を受けて、毎年度、公的年金各制度の財政状況について制度所管省から報告を求め、各制度の財政状況を専門的な観点から分析・評価するとともに、各制度の財政検証・財政再計算時には、将来推計の方法、推計の基礎となるデータの取扱い、推計結果の分析のあり方、制度の安定性・公平性に係る分析・検証、今後の財政検証・財政再計算において考慮すべき事項等について、報告を行ってきた。また、これらの内容については、詳細な報告書の作成、部会審議の公開、報告資料や議事録の厚生労働省ホームページへの掲載、セミナー形式の年金数理部会の開催等を通じて、幅広く国民に提供してきた。」。

 以下省略させていただきますが、このように述べられているということです。

 次に、資料1-2「第1章」をご覧いただきたいと思います。

 ここでは、先ほど少し申しましたが、4ページの1-4をご覧いただきたいと思います。「国民年金と被用者年金は、2-36で述べるように、基礎年金給付費を被保険者の頭割りで分担する基礎年金拠出金の仕組みを通じて、給付面でも財政面でも深く関係している。例えば、基礎年金の将来的な給付水準は、自営業者等の制度たる国民年金の財政均衡が、マクロ経済スライドにより、いつ確保されるのかということに応じて定まる。したがって、サラリーマンの受け取る(基礎年金を含めた)年金の給付水準は、国民年金の財政均衡が確保されるまで確定しない。基礎年金拠出金の負担についても同様であり、被用者年金の財政均衡は、国民年金の財政均衡の見通しが基礎となっていることに留意する必要がある。」と述べられています。

 その後、9ページの1-21をご覧いただきたいと思います。このなお書きですけれども、3行目でございます。「平成26(2014)年7月3日に『積立金の管理及び運用が長期的な観点から安全かつ効率的に行われるようにするための基本的な指針』(平成26年総務省、財務省、文部科学省、厚生労働省告示第1号)が公表されている(章末の《参考》を参照)。」ということで、章末にその告示が掲載されています。

 次に、「第2章」をごらんいただきたいと思います。

 第2章につきましては、まず、16ページに図表2-1-1「財政収支状況 —平成25年度—」が掲載されておりまして、これについて、14ページの2-3ですけれども、「収入面では、公的年金制度全体の保険料収入が31539億円、国庫・公経済負担が114,605億円、運用収入が簿価ベースで3兆7,332億円、時価ベースで135,594億円などとなっている。国共済及び地共済の収入項目にある追加費用は1兆373億円、厚生年金及び国民年金(国民年金勘定)の収入項目にある独立行政法人福祉医療機構納付金は2,630億円、厚生年金の収入項目にある職域等費用納付金は1,594億円、解散厚生年金基金等徴収金は1,449億円となっている。」と述べられています。

 この財政構造についてわかりやすくまとめたものが19ページにあります図表2-1-3でして、これについては、その前の18ページの2-10から記載されています。「図表2-1-3は、平成25(2013)年度の単年度収支状況である。これは、年金数理部会が、公的年金の財政状況を年金財政状況の把握の観点から制度横断的に比較・分析するため作成しているものである。収支状況を『運用損益分を除いた単年度収支残』と『運用による損益』の2つに分けて分析している。」。

 続きまして、「公的年金制度全体の平成25(2013)年度の運用損益分を除いた収支総額は441,632億円、支出総額は507,009億円、収支残は△6兆5,376億円となっている。一方で、運用による損益は時価ベースで135,594億円のプラスとなっており、公的年金制度全体の時価ベースの年度末積立金は、対前年度で8兆1,461億円増の1863,310億円となっている。」。

 ここで脚注11がございまして、厚生年金、国民年金(国民年金勘定)、地共済及び基礎年金勘定について、前年度末積立金に運用損益分を除いた単年度収支残と運用損益を加えたものと当年度末積立金に、若干ずれが生じていることの内容が説明されています。

2-12に参りまして、「単年度収支状況を制度別にみると、すべての制度で、運用損益分を除いた単年度収支残はマイナス、運用による損益(時価ベース)はプラスとなっている。結果として、時価ベースの年度末積立金は、国共済で減少する一方、その他の制度では増加している。」。

 「平成25(2013)年度の単年度収支状況の特徴としては、時価ベースの運用収入が、平成24(2012)年度に引き続いて、平成23年度と比べ大幅に増加していることなどが挙げられる。」、このような記述になっています。

 次に、「(3)収入の推移 (i)保険料収入」ということで、20ページの2-14ですが、「平成25(2013)年度は、地共済が0.9%減少している一方、その他の制度では、厚生年金3.7%、国共済1.6%、私学共済3.7%、国民年金0.3%と増加している。公的年金制度全体の保険料収入は、対前年度で3.0%増の31539億円となった。」と述べられています。

 その下の2-15、3行目からですけれども、「各制度とも平成25(2013)年度中に保険料率が引き上げられたことが保険料収入を増加させる方向に大きく寄与している。」ということであり、次の21ページに参りまして、2行目からですが、「厚生年金と私学共済では被保険者数の増加の寄与も大きい。また、国共済は、被保険者数と1人当たり標準報酬額が減少したものの、保険料率の引上げによる増加がこれを上回り、保険料収入は増加している。一方、地共済では、1人当たり標準報酬額の減少が大きいこと(寄与分△2.5%ポイント)に加え、被保険者数も減少したことなどから、その影響が保険料率の引上げの影響を上回り、保険料収入が減少した。」という記述になっています。

 次に25ページ、「(iv)運用収入」でございます。2-23ですが、「平成25(2013)年度の時価ベースの運用収入は、公的年金制度全体で135,594億円となっている。これは、時価ベースの値を把握している平成15(2003)年度以降で3番目に高い水準にあり、平成24(2012)年度に引き続き、運用環境がよかったことがうかがえる。」という記述になっております。

27ページ、「(v)運用利回り」でございます。2-24ですが、「平成25(2013)年度の時価ベースの運用利回りは、平成24(2012)年度には及ばないものの、厚生年金、地共済、私学共済及び国民年金(国民年金勘定)で、引き続き高い水準にある。」という記述になっております。

 次の28ページからは、「(4)支出の状況」です。

2-25は給付費について述べているところですが、「平成25(2013)年度の公的年金制度全体の給付費は、対前年度1.3%増となっている。被用者年金では、私学共済(2.4%)は増加が続く一方、厚生年金(2.5%)、国共済(2.5%)及び地共済(1.5%)は減少している。」。

 続きまして2-26ですが、「国民年金では、基礎年金勘定で給付費の大幅な増加が続いている。」、3行目のところで、「一方、国民年金勘定では平成25(2013)年度11.1%減となっており、一貫して減少傾向が続いている。」という記述になっています。

30ページ、「(6)積立金」ということで2-29ですけれども、「平成25(2013)年度末の時価ベースの積立金は、国共済で減少する一方、その他の制度で増加している。」、「基礎年金勘定の積立金は、平成25(2013)年度は平成24(2014)年度に比べ0.7兆円増加し、3.0兆円となっている。」という記述になっています。

33ページは資産構成に関して述べられているところですが、2-32で「平成25(2013)年度末の積立金の資産構成は、例えば国共済で預託金と国内債券の2つで75%以上を占めるなど、制度により違いが見られる。1-20で述べたように、被用者年金一元化の際には、共済年金の積立金のうち厚生年金の積立比率(平成26(2014)年度末の積立金を用いて算出)に相当する額を厚生年金部分の積立金として仕分けすることとされている。したがって、当面、各制度の資産構成の違いにより生じる短期的な運用状況の相違についても注視していく必要がある。」という記述になっています。

 次に、「2 被保険者の現状及び推移」ということで39ページをご覧いただきたいと思います。まず「(1)被保険者数」で、2-40のところです。「平成25(2013)年度末の被保険者数は、図表2-2-1に示すとおり、公的年金制度全体で6,718万人であり、うち、被用者年金制度の被保険者が3,967万人、国民年金第1号被保険者が1,805万人、国民年金第3号被保険者が945万人であった。」といった記述になっています。

 1人当たり標準報酬額(月額)につきましては、43ページの2-47をご覧いただきたいと思います。「図表2-2-7は1人当たり標準報酬額の推移を示したものである。平成25(2013)年度における総報酬ベースの1人当たり標準報酬額は、厚生年金では増加、他の制度では減少した。特に地共済の減少が大きいが、これは、国家公務員の給与の特例減額に準じた地方公務員給与の減額要請を受け、平成25(2013)年度に引下げが行われたことが影響しているものと考えられる。」という記述になっています。

 次に、「(5)標準報酬月額別被保険者数の分布」という46ページ以降の部分について読み上げさせていただきます。グラフが47ページ以降に4枚ございまして、文章は46ページの2-48からです。「図表2-2-8は、平成25(2013)年度末の標準報酬月額別の被保険者数の分布を示したものである。この5年間の動向を見るために、平成20(2008)年度末の分布も併せて示している。」。

2-49は、厚生年金について記載している部分ですが、4行目からです。「平成20(2008)年度の分布と比較すると、男性では、32万円以下で被保険者数が増加する一方、34万円以上では減少している。女性では、12.6万円以下で被保険者数が減少する一方、13.4万円以上では増加しており、男性とは逆の動向を示している。」。

2-50は、国共済について記載している部分ですが、4行目からです。「平成20(2008)年度の分布と比較すると、男性、女性ともに、50万円以上で減少しているのが特徴的である。」という記述になっています。

2-51は、地共済についての記述ですけれども、4行目からです。「平成20(2008)年度の分布と比較すると、男性では、41万円以上42万円未満にあったピークが39万円以上40万円未満へ2区分下がるとともに、男性、女性とも、41万円以上で減少している。」という記述になっています。

47ページの2-52は、私学共済についての記述です。3行目からですが、「平成20(2008)年度の分布と比較すると、男性は50万円以上で減少しているのに対し、女性は、概ね全ての標準報酬月額で増加している。」という記述になっています。

50ページの「(6)標準報酬総額」でございます。2-53の3行目からですが、「標準報酬総額の推移をみると、平成25(2013)年度は、厚生年金及び私学共済で増加する一方、国共済及び地共済では引き続き減少しており、特に地共済では2.9%の減と大きく減少している。」といった記述になっています。

 こうした減少の要因分析は53ページ以降で行われていますが、時間の関係で省略させていただきまして、56ページの「3 受給権者の現状及び推移」のところに進みたいと思います。

 「(i)受給権者数」ということで、2-64ですが、「平成25(2013)年度末の受給権者数は、図表2-3-1に示すとおり、厚生年金3,456万人、国共済125万人、地共済292万人、私学共済42万人、国民年金3,196万人であった。」とあり、2-65に参りまして、下から2行目のところですが、「重複を除いた、何らかの公的年金の受給権を有する実受給権者数は、3,950万人である。」という記述になっています。

57ページに参りまして、2-66ですが、「受給権者数の推移をみると、各制度とも増加傾向が続いている。」ということでして、平成25(2013)年度の増加率は、厚生年金1.5%以下の数字となっており、「平成24(2012)年度に比べ伸びが鈍化している。これは、平成25(2013)年度から厚生年金の男性並びに共済年金各制度の男性及び女性において、報酬比例部分の支給開始年齢が61歳となったことが影響していると考えられる。」という記述になっています。

61ページの「(3)年金総額」をご覧いただきたいと思います。2-74ですけれども、受給権者の年金総額につきまして、「平成25(2013)年度末の年金総額は、厚生年金27.0兆円、国共済1.7兆円、地共済4.7兆円、私学共済0.3兆円、国民年金21.0兆円となっている。公的年金制度全体では54.7兆円であった。」ということです。

 次の2-75に参りまして、「平成25(2013)年度末の年金総額は、平成24(2012)年度末に比べ被用者年金各制度において減少している。これには、平成25(2013)年度から厚生年金の男性並びに共済年金各制度の男性及び女性において報酬比例部分の支給開始年齢が61歳となるとともに特別支給の定額部分がなくなったこと(2-88参照)、平成25(2013)10月から特例水準の解消が行われていることなどが影響していると考えられる。国共済及び地共済については、被用者年金一元化法により、平成25(2013)年8月から恩給期間に係る給付の引き下げが行われたことも影響していると考えられる。」との記述が加えられています。

 続きまして、「(v)老齢・退年相当の平均年金月額の推移」ということで、70ページ、2-91です。図表2-3-11の老齢基礎年金分を含む平均年金月額を見ると、被用者年金各制度の数字が並んでおりまして、2-91では「引き続き各制度で減少している。一方、国民年金の平均年金月額は、平成24(2012)年度まで増加していたが、平成25(2013)年度から減少し、対前年度0.4%減の54,544円となった。」という記述になっています。

72ページには「(vi)老齢・退年相当の平均加入期間」についての記述があります。2-93ですけれども、「受給権者の平均加入期間の推移をみると、各制度とも、年々長くなってきている。」ということであり、図表2-3-12が示されています。73ページ以降では、新規裁定者について平均加入期間の推移を見ています。

2-94からですけれども、「新規裁定者について平均加入期間の推移をみたのが、図表2-3-13である。」とあり、「新規裁定者の実績は、当該年度に新たに裁定され年金受給権を得た者に係る実績となっている。」という注意が述べられていいます。

2-95では厚生年金について述べられていますが、男性については、4行目ぐらいから「平成18(2006)年度以降は減少傾向にある。なお、平成25(2013)年度に7月減少し、平成24(2012)年までに比べ減少が大きくなっているが、2-88に述べたとおり、厚生年金の男性、国共済、地共済及び私学共済では報酬比例部分の支給開始年齢が61歳に引き上げられており、平成25(2013)年度の新規裁定者数が17.6万人と平成24年度の54.4万人から大きく減少していることに留意する必要がある。」と述べられています。女性については、その次の行ですが、「平成9(1997)年度から増加し続け、平成25(2013)年度は357月となっており、平成9(1997)年度に比べて45月長くなっている。」と述べられています。

2-96に参りまして、「なお、厚生年金の男女計については、平成25年度に20月減少し、平成24年までに比べ減少が大きくなっているが、これは、上記のとおり、男性の新規裁定者数が大きく減少する一方で、女性の新規裁定者数は19.6万人と平成24年度の20.7万人からの減少が小さく、その結果として、新規裁定者に占める女性の割合が大きくなっていることの影響が現われていることに留意する必要がある。」という記述が加えられています。

75ページには「平均年金月額の減少要因」について記述されておりますが、時間の関係から省略させていただき、次に、財政指標に進みたいと思います。78ページの図表2-4-3に「年金扶養比率の推移」のグラフが掲載されています。これについて、その前のページの2-105ですが、「平成24(2012)年度末までは各制度とも一貫して低下してきたが、平成25(2013)年度末は、厚生年金及び私学共済が0.04ポイント、国共済が0.02ポイント上昇し、地共済は平成24(2012)年度末と同水準となっている。一方、国民年金(基礎年金)は0.08ポイント低下した。」という記述になっています。

81ページに「総合費用率の推移」のグラフが掲載されております。文章のほうはその下の2-110ですけれども、「厚生年金は、平成20(2008)年度以降上昇傾向にあり、平成23(2011)年度及び平成24(2012)年度は低下したものの、平成25(2013)年度は上昇に転じた。」という記述となっています。

 その下の2-111のところですが、「国共済及び地共済の総合費用率についてみると、平成25(2013)年度は、地共済で1.7ポイントと大幅な上昇になっている。これは、同制度における標準報酬総額の減少等によるものと考えられる。」となっています。

 さらに、82ページですけれども、2-112で「私学共済の総合費用率は、おおむね上昇傾向が続いているが、平成25(2013)年度は、平成24(2012)年度と同水準となっている。」と述べられています。

 そして、2-113で、「総合費用率と保険料率を比較すると、図表2-4-9に示すとおり、各制度とも総合費用率が保険料率を上回る状況が続いている。」という記述になっています。

 次に、「(4)保険料比率及び収支比率」についてご覧いただきたいと思います。87ページ、2-124ですけれども、「平成25(2013)年度の保険料比率は、図表2-4-13のとおり、厚生年金(実績及び実績推計)、私学共済、国民年金(国民年金勘定)が85%程度、国共済が69.2%、地共済が68.3%となっている。すべての制度で、実質的な支出のうち自前で財源を賄わなければならない部分が保険料収入より多くなっており、運用収入や積立金の取り崩し等により財源を補わなければならない状況となっている。」と述べられています。

 次に、「(ii)収支比率」です。グラフは91ページの図表2-4-15です。本文のほうは2-13089ページですけれども、時価ベースの収支比率につき、「図表2-4-14のとおり、国共済以外の制度で100%を下回っており、自前で財源を用意しなければならない分を保険料収入と運用収入で賄うことができている状況である。」という記述になっています。

 財政指標の最後は「(5)積立比率」ですが、グラフは95ページの図表2-4-17です。92ページの2-132をご覧いただきたいと思います。「平成25(2013)年度の積立比率(時価ベース)は、図表2-4-16及び図表2-4-17のとおり、地共済及び私学共済が高く、厚生年金及び国民年金(国民年金勘定)が低い。平成24年度に比べ、私学共済及び国民年金で上昇し、他の制度は概ね横ばいとなっている。」という記述になっています。

 以上が第2章でございます。章末の《参考1》から《参考3》については省略させていただきたいと思います。

 次に、資料1-4「第3章」をご覧いただきたいと思います。

 はじめに、126ページの「1 平成21年財政検証・財政再計算と比較することの意義と手法」でございます。3-1、3行目からですが「平成26年財政検証・財政再計算の結果が各制度から既に公表されている中、平成21年財政検証・財政再計算の結果と比較するのは、長期的な制度である公的年金においては、原則として5年ごとに実施される財政検証・財政再計算のあいだの5年間について実績を将来見通しと比較・分析し、5年間を総括することが、公的年金の財政運営に係るPDCAサイクルの中で不可欠の要素と考えられるからである。」という年金数理部会の考え方が述べられているわけです。

 続きまして、「2 財政収支等の実績と将来見通しの比較」の部分ですが、まず「(1)人口要素」につきまして、最初のところに合計特殊出生率の実績と仮定の比較が示されております。127ページの3-4の最後のところですが、「平成21(2009)年から平成25(2013)年までの実績は、中位推計の仮定値を上回る水準で推移している。」という状況です。

 「(ii)平均余命、生残率」につきましては、3-5ですけれども、65歳の平均余命について「平成21(2009)年及び東日本大震災の影響により一時的に低下した平成23(2011)年を除き、男女とも中位推計の仮定値よりやや低い水準で推移している。」という状況です。

 図表は、3-2-4128129ページにかけて掲載されています。

 次に生残率、3-6129ページですけれども、「図表3-2-5は、現役世代の死亡状況をみるために、20歳に達した者が65歳に達するまで生存する確率(生残率)について、日本人全体の実績を18年推計と比較したものである。」とあり、「男性は、平成24(2012)年と平成25(2013)年において中位推計をかなり上回る一方、女性は、平成23(2011)年以外の年では概ね中位推計と同じ水準で推移している。」という記述になっています。

130ページからは「(2)経済要素」についてでして、まず「(i)物価上昇率」について図表3-2-7に示されており、文章は3-7の3行目からですけれども、「平成25(2013)年は、平成24(2012)年までと同様、実績が経済中位の前提を下回っている。なお、平成25(2013)年は、平成21(2009)年以降では初めてプラスの値となっている。」と述べられています。

 次に「(ii)賃金上昇率」につきまして、131ページの3-9に参りたいと思います。2行目からですけれども、「平成25(2013)年度は、前年度までと同様、被用者年金各制度において、名目・実質ベースとも、実績が将来見通しを下回っている。乖離幅を前年度と比較すると、国共済は縮小する一方、地共済では拡大している。」という記述になっております。

 グラフは132ページの図表3-2-10に掲載されています。

 「(iii)運用利回り」につきましては、133ページの3-11です。134ページの冒頭からですけれども、「図表3-2-12及び図表3-2-13は、運用利回りの実績を将来見通しの前提と比較したものであるが、実質的な運用利回りについてみると、平成25(2013)年度は、被用者年金各制度とも、実績が将来見通しの前提を大幅に上回っている。」という記述になっています。

 グラフは135ページの図表3-2-13です。

 次に、137ページ、「(3)被保険者数等」のうちの最初の「(i)労働力率」でございます。

 グラフは138ページに掲載されておりまして、文章は3-13からですが、「平成21年財政検証では、被保険者数の将来推計を行う上で、独立行政法人労働政策研究・研修機構による『労働力需給の推計』を用いており、そのうち『労働参加が進むケース(ケースC)』を推計の前提としている。」とあり、3-14に参りまして、3行目からですが、「平成25(2013)年の実績を平成24(2012)年の推計値と比較すると、男性は、すべての年齢階級で実績が推計を下回っており、24歳以下及び5059歳で他の年齢階級よりも差が大きく、2%ポイント以上の差となっている。女性は、3039歳及び50歳以上では実績が推計を上回っており、特に、55歳以上では3%ポイント以上の差となっている。」という記述となっています。

139ページ、「(ii)被保険者数」でございます。図表は3-2-173-2-18ですが、3-15の3行目から「平成25(2013)年度は、各制度とも実績が将来見通しを上回っている。特に、国共済+地共済、国共済及び私学共済では、その乖離が大きくなっている。」という記述になっています。

 続いて「(iii)標準報酬総額及び1人当たり標準報酬額」について、3-16、2行目からですが、「平成25(2013)年度は、被用者年金各制度とも実績が将来見通しを下回っている。」という記述になっています。

 「(iv)受給者数」につきましては、141ページ、3-17ですけれども、「平成25(2013)年度は、被用者年金各制度とも実績が将来見通しを下回っており、平成24(2012)年度までと同様の傾向を示している。国民年金(基礎年金)では、実績が将来見通しと概ね同水準で推移してきている。」という記述になっています。

 次に、「(4)収入」でございます。143ページの「(i)保険料収入」ということで、3-18です。「平成25(2013)年度は、各制度とも実績が将来見通しを下回っている。特に、国民年金については、実績が将来見通しを大幅に下回る状況が続いている。」という記述になっています。

 「(iii)運用収入」については、144ページの3-20ですけれども、「平成25(2013)年度は、各制度とも、前年度に引き続き、実績が将来見通しを大幅に上回っている。」という記述になっています。

 一方、「(5)支出」につきましては、146ページの「(i) 給付費」、 3- 21 ですが、「平成25(2013)年度は、被用者年金各制度で実績が将来見通しを下回っている。これは、受給者数の実績が将来見通しを下回っていること、また、年金改定率が将来見通しではプラスであるところ、実績はマイナスであったこと、加えて、国共済及び地共済においては、追加費用削減のため、恩給期間に係る給付の引下げが平成25(2013)年度から行われたこと等によるものである。」と述べられています。

 「(ii)基礎年金拠出金」については、 3- 23 ですけれども、「平成25(2013)年度の基礎年金給付費及び基礎年金拠出金算定対象者数をみると、ともに実績が将来見通しを下回っている。」という状況です。

3-24ですけれども、基礎年金算定対象者数について、「平成25(2013)年度は、厚生年金及び国民年金では、実績が将来見通しを下回り、国共済、地共済及び私学共済では実績が将来見通しを上回っている。」と記述されています。

 そして3-25ですけれども、「図表3-2-27は、基礎年金拠出金の実績を将来見通しと比較したものである。平成25(2013)年度は、被用者年金各制度では実績(確定値ベース、以下同様)が将来見通しを上回り、国民年金では実績が将来見通しを下回っている。」という記述になっています。

149ページに参りまして、「(iii)実質的な支出」ということで、3-26、2行目からですが、「平成25(2013)年度は、厚生年金、国共済+地共済、地共済及び国民年金では実績が将来見通しを下回り、国共済及び私学共済では実績が将来見通しを上回っている。」と述べられています。

 最後の「(6)積立金」ですけれども、3-27、2行目からですが、「平成25(2013)年度末は、国共済では実績が将来見通しを下回っているが、国共済を除く各制度では実績が将来見通しを上回っている。地共済では、平成24(2012)年度末までは実績が将来見通しを下回っていたが、平成25(2013)年度末では上回った。」との記述になっています。

 「3 財政指標の実績と将来見通しの比較」については省略させていただき、「4 被用者年金制度にかかる積立金の乖離の分析」、160ページ以降のところに進みたいと思います。「(1)乖離分析の方法」については省略させていただき、「(2)乖離分析の結果」についてのみ読み上げさせていただきたいと思います。163ページをご覧いただきたいと思います。

 図表は、164ページ以降に掲載されている図表3-4-2及び図表3-4-3です。

3-41にありますように、「以下、時価ベースの乖離分析の結果をみていく。」ということでありますが、3-42で「平成25(2013)年度末においては、国共済では実績が将来見通しを下回る一方、厚生年金、国共済+地共済、地共済及び私学共済では実績が将来見通しを上回っている。」という状況になっています。

3-43に参りまして、「これらの乖離について発生年度別の寄与をみると、平成25(2013)年度は各制度でプラスの寄与となっている。」という分析結果になっています。

 さらに、3-44で「平成25(2013)年度の寄与を要因別にみると、各制度とも以下のとおりとなっている。」ということで、「名目運用利回りの実績が将来見通しの前提から乖離したことの寄与(B_2013 )は、プラスとなっている。」「そのうち、実質的な運用利回りの乖離による寄与(B_2013-1)はプラス、名目賃金上昇率の実績の乖離相当の寄与(B_2013-2 )はマイナスとなっており、前者の影響(B_2013-1)は後者の影響(B_2013-2 )より大きい。」「運用収入以外の収支残の実績が将来見通しから乖離したことの寄与(C_2013 )は、マイナスとなっている。」との記述になっています。

3-45では「平成22年度から平成25年度までの通期でみると」ということであり、その1番目のところですが、「各年度における名目運用利回りの乖離による寄与の合計(B_N の合計 、図表3-4-2下段参照)は、各制度ともプラスとなっている。」「このうち、各年度における実質的な運用利回りの乖離によるプラスの寄与(B_N-1 の合計)が、各年度における名目運用利回りのうち名目賃金上昇率相当分の乖離によるマイナスの寄与(B_N-2 の合計 )を上回っている。」結果となっており、次のページに参りまして、「各年度における運用収入以外の収支残が将来見通しから乖離したことの寄与(C_N の合計 )は、マイナスとなっている。」という分析結果になっているということです。

 図表は166ページまで続いています。

167ページからは「5 被用者年金各制度に係る財政状況の評価」ということで、(1)で財政状況の評価の考え方が述べられておりますが、ここでは3-51のところから読み上げさせていただきたいと思います。「したがって、

(ア)財政検証・財政再計算による将来見通しに、賃金上昇率に係る平成25(2013)年度までの実績の前提からの乖離を単純に反映させた場合の積立金の推計額、に加えて、(イ)賃金上昇率に係る乖離を物価上昇率に係る乖離に置き換えたときに生じる差額分の将来キャッシュフローを、将来見通しの前提とした運用利回りで割り引いた一時金相当の積立金、を余分に保有していれば、有限均衡期間の終了時点における積立金(見込み額)は、その翌年の給付費(見込み額)と同じになる。」と述べられております。

3-52に参りまして、「『評価の基準となる積立金額』は、このような考え方に基づいて上記(ア)の額に補正を加えたものである。年度末積立金の実績が同年度末における『評価の基準となる積立金』と同額の場合、次のからまでの前提のもとでは、当該年度の財政状況は、財政検証・財政再計算による見通しによるものと概ね同程度であると評価される。」と述べられており、具体的な評価結果については、169ページ以降で述べられています。

 図表は、171ページ以降の図表3-5-2から図表3-5-4です。

 評価結果について文章を読み上げさせていただきますと、169ページの3-54ですが、「平成25(2013)年度末の財政状況について、上記の方法により評価を行った結果が図表3-5-2である。各制度とも、積立金の実績額が『評価の基準となる積立金額』を上回る状況になっている。具体的には、厚生年金は11.5%、国共済+地共済は11.5%、私学共済は15.6%、それぞれ実績額が『評価の基準となる積立金額』を上回っている。」と述べられています。

3-55に参りまして、「相対的に運用利回りの高い厚生年金の方が、国共済+地共済及び私学共済に比べ、3-54で述べた比率が同程度又はより小さくなっているのは、国共済+地共済及び私学共済では、賃金上昇率の乖離が厚生年金よりも大きく、そのため、『評価の基準となる積立金額』が将来見通しの額よりも、相対的に、より小さくなるためである。」と述べられています。

 そして、3-56に参りまして、「平成25(2013)年度末に関する限り、3-54の比率は、すべての被用者年金制度において、実質的な運用利回りに係る過去の単年度の下振れよりも大きいものとなっている。」と述べられています。ここで、「過去」ということの具体的内容については、脚注49にありますけれども、図表3-5-5に掲げる期間について見ているということで、図表3-5-5174ページに掲載されていますが、その「C.実質的な運用利回り」の部分を見ているということです。

170ページに戻っていただきまして、3-57ですけれども、「ただし、既に行われた平成26年財政検証・財政再計算では、3-543-56で述べた積立金の状況を含め、直近の平成25(2013)年度までの状況を可能な限り織り込んだ上で将来見通しが作成されていること等には注意が必要である。」と述べられています。

3-58に参りまして、「また、制度によっては、既に積立金運用に係る基本ポートフォリオの見直しが行われており、3-56で述べたような過去の運用実績が、将来に向けては必ずしも参考にならない面があることにも留意が必要である。」。

3-59に参りまして、「加えて、積立金の運用利回りは、経済金融情勢の動向により変動するほか、債券や株式等の資産ごとの変動性(ボラティリティ)や資産間の相関についても、変動していくことが考えられる。このため、第1章章末の《参考》に掲載した告示により指示されているような、フォワード・ルッキングなリスク管理を行っていく以上は、これらについて、今まで以上に注視していく必要があることは言うまでもない。」と述べられております。

 そして、3-60、3行目からですが、「財政検証・財政再計算における基礎率設定の在り方については、平成27(2015)年度以降、年金数理部会において行う公的年金の平成26年財政検証・財政再計算時の検証作業において、必要な検討を加えていく予定である。」といった記述が加えられているということです。

 章末に《参考1》《参考2》《参考3》とありまして、これらは省略させていただきますが、《参考3》につきましては、今回新たに加えられた部分です。

 資料1-5の「付属資料」は省略させていただきます。

 最後に資料2「要旨(案)」ですけれども、1枚目(iページ)をご覧いただきたいと思います。「公的年金財政状況報告-平成25年度-(要旨)」とあり、「1 財政収支」ということで図表1が掲げられております。公的年金各制度の決算によれば、平成25年度の財政収支状況の概略は、以下のとおりであるということであり、「公的年金全体の財政収支状況」が収入面、支出面についてまとめられ、その後、「保険料収入」「給付費」「積立金」について、それぞれ制度別の数字が記載されているという形でまとめられています。

 2枚目(iiページ)に参りまして、「単年度収支状況」です。図表2に単年度収支状況の表が掲げられておりまして、「図表2に示す単年度収支状況は、公的年金制度の財政状況を年金財政の観点から制度横断的に比較・分析するため、年金数理部会において作成しているものである。図表1と異なるのは、損益を『運用損益分を除いた単年度収支残』と『運用による損益』に分けていることである。具体的には、図表2の収入では、図表1から運用収入、厚生年金・国民年金の『積立金より受入』を除き、支出では、国共済・地共済、私学共済の有価証券売却損等を『その他』から除いている。」と述べられています。

 そして、第3段落で「公的年金全体の時価ベースの年度末積立金は8.1兆円増の186.3兆円となった。」と述べられていますが、ここで脚注の5でご覧いただきますと、前年度末積立金に運用損益分を除いた単年度収支算及び運用による損益を加えても、平成25年度の当年度末積立金に一致しないことについて説明が加えられています。

 単年度収支状況については、図表3に制度別の数字が掲載されており、「制度別にみると、被用者年金及び国民年金のすべての制度で運用損益分を除いた単年度収支残はマイナス、運用による損益はプラスとなっている。」という状況であり、結果として、図表3の上にあります記述のとおりの状況になっているということでございます。

 「2 被保険者」については「被保険者数」「1人当たり標準報酬額」についての記述が、「3 受給権者」については「受給権者数」「老齢・退年相当の年金の平均年金額」についての記述がまとめられております。

 「4 財政指標」では「年金扶養比率」と「総合費用率」についてまとめられております。

 最後は「5 平成21年財政検証・財政再計算との比較」ですけれども、最初の5行は、先ほど申しました平成26年財政検証・財政再計算の結果が公表されている中で平成21年財政検証・財政再計算の結果と比較することの意義について述べられています。

 「積立金の乖離分析」については、3行目からですけれども、「乖離を発生要因別にみると、22年度から25年度までの通期でみて、賃金上昇率との差である実質的な運用利回りが将来見通しの前提を上回っていることの寄与が大きい(本文図表3-4-2)。」と述べられております。

 最後の「財政状況の評価」ということで、vページの2段落目からですが、「すべての被用者年金制度において、積立金の実績額が評価の基準となる積立金額を上回る結果となっており、平成25(2013)年度末に関する限り、その大きさは実質的な運用利回りに係る過去の単年度の下振れよりも大きいものとなっている。ただし、既に行われた平成26年財政検証・財政再計算では、直近の平成25年度までの状況を可能な限り織り込んだ上で将来見通しが作成されていること等には注意が必要である。」というまとめ方になっています。

 以上でございます。

○山崎部会長 ありがとうございました。

 それでは、報告書の案に対する御意見などがありましたら、お願いいたします。

 野上委員。

○野上委員 御説明ありがとうございます。

 2点ほどコメントさせていただきたいと思います。

 1点目は、3-52 のように、経済前提に変化がないことを前提とした分析の説得力というのが毎年減少しているのではないかという点です。特に、26年度財政検証のように足下の10年と長期の経済前提を分けて設定されている場合、こういう分析、長期を含む経済前提の妥当性を含む分析が今後求められてくるのではないかと思います。これが1点目でございます。

 2点目は、本年度も昨年度に続いて運用成績がよく、また、26年度も本日が最終日ですが、さらによい結果になるのではないかと思っております。これは率直に年金財政にとっては大変よいことだと喜んでおります。この運用成果を途中で消滅することなく、実際に年金給付に結びつけていくためには、 3- 59 に書かれているようにフォワード・ルッキングなリスク管理をしっかりやっていく必要があると思っております。今後、年金部会などでガバナンス検討の重要要素としてリスク管理の充実についても議論が深まっていくということを期待しております。

 今年度、年金数理部会で私はテールリスクに関してたびたび発言、質問させていただきました。といいますのは、普段は再保険会社として保険会社さんのテールリスクを引き受けること生業にしておりますので、どうしてもその観点から心配が出てくるということでございます。一種の職業病のようなものだと理解いただければと思っております。

そういう経験を踏まえて発言させていただきますと、まずリスクの率直な認識が重要ではないかと思います。平成のバブルの崩壊のように回復に数十年を要するようなテールリスクがあり得るということを、まず認識すべきだと思っております。また、数年我慢していれば必ず回復するというものを裏書きするような経済理論がないのではないかと思っております。

 今、異次元の金融緩和ということで、その出口の場面では当然金利が上がっていきます。先般のポートフォリオ見直しでは、金利上昇による債券価格の下落に備え、債券を売り、株式や外貨建資産へのシフトを行いました。ところが、いわゆるアベノミスクを支えるリフレ派の経済理論では、金融引き締めによって株価は下落し、円高になるというのが基本シナリオであると理解しております。このあたりの認識の統一を行って、リスクを整合的、統合的に認識することが必要ではないでしょうか。

経済情勢の変化、あるいはそれに伴うリスクの変化の認識の見直しを継続的に行って、その結果、ポートフォリオを適時適切に見直していくこと、いわゆるPDCAサイクルを回していくことがフォワード・ルッキングなリスク管理の背骨になってくると思っております。

 その場合、心配な点が2つございます。1つ目は、株式市場などで俗に言われることですが、売りは買いの数倍難しいということでございます。リスクオフはリスクオンより数倍難しいということです。私のような一民間人でも、リスクオフを実行するときはさまざまなフリクションが発生するというのは容易に想像できます。GPIF等の運用担当者の方がそのようなノイズを気にしないでリスクオン、リスクオフの判断を適時適切に行えるような、いやしくも逃げおくれることがないような体制をつくるべきだと思っております。

 2つ目は、リスクオン、リスクオフの適時適切な判断をGPIFなどが自律的に行うことが理想ではございますが、高度な運用を目指して人員の拡充が図られつつあるGPIFにとっては、リスクオフの判断を躊躇する心配があると思います。といいますのは、リスクオフはある一面、高度な運用を否定するような面があるからです。このような場合は、やはりトップダウンでリスクオフに限って指示を出せるようにしておいたほうがいいのではないかということでございます。

 以上、参考になるのではないかと意見を述べさせていただきましたが、今後、財政状況報告の手法改善、2点目のリスク管理の充実が図られるという期待を込めて、本年度の報告書は原案どおり私としては承諾したいと思っております。

 ありがとうございました。

○山崎部会長 ありがとうございました。

 将来に向けて、今後の部会としての課題をコメントいただいたものだと思います。

 ほかにございますでしょうか。

 駒村委員。

○駒村委員 ありがとうございます。

 全体としてはこの報告で結構だと思うのですけれども、ちょっと細かい部分で2つほどコメントさせていただきたいと思います。

70ページから71ページなのですけれども、この部会の役割としては、年金財政が安定的に継続しているのかどうかをチェックするという点と、適切な給付が行われているかどうかというのを2つチェックしなければいけないのだろうと思います。そういう意味では、この70ページ、71ページ、平均年金月額の推移なのですけれども、確認ですが、これは既裁定の方だけで、新規裁定の方は別立てで出しているわけではないということでいいのでしょうかと、新規裁定の動きをフォローする必要はなかったのだろうかということを確認させてもらいたいと思います。まずそこが1点目です。

 2点目ですけれども、73ページの2-95です。男性の新規裁定者の平均加入年数について平成9年と比較しているというのが、なぜ平成9年との比較にしているのかなと。ピークというか、平成14年が一番長くなっていて、そこから短くなっているという読み方もできるのですけれども、長くなっていると表記しているのですが、この比較対象の時期がなぜ平成9年を選ばれているのか。長くなっているのと短くなっているのでは印象が違うのではないかと思います。

 次のパラグラフで、図表2-3-13を見ると、24年と25年の間で平均加入期間が20年近く落ちている。これはなぜなのかということの解説なのですけれども、もうちょっと丁寧に書かれないとすぐにはわからないのではないかと思いました。これは支給開始年齢が男性については61歳になって、女性が60歳のままなので、おそらく新規裁定の中の男女のバランスが変化して短くなったように見えるのだということではないかと思いますが、この時期に新規裁定者の構成が変化したということを明確に、注にでも、あるいは本文にでも書いていただいたほうが、54.4万人から17.6万人に変化したというだけだと数字的な変化しか読めないのですけれども、これが構成の変化も意味しているのだということを説明されたほうが、よりこの気になる部分についてはわかりやすくなるのではないかと思います。

 以上2点です。

○山崎部会長 事務局のほうからお願いします。

○清水首席年金数理官 今、駒村委員御指摘の1点目でございますが、70ページのところです。この平均年金月額というのは、当然、新規裁定分ではなくて老齢・退年相当の受給権者全体ということです。新規裁定について分析しなくてもいいのかという御指摘に関しては、今年度については73ページ以降で平均加入期間について分析を加えているということです。もちろん、平均加入期間だけで年金額が決まるわけではないわけですけれども、前年度に比べれば、年金額の分析としては一歩前進しているのではないかと思います。事務局的に申し上げれば、年金額についての一層の分析は、次年度の課題とさせていただければと思っております。

 次に、73ページの記述についての御指摘ですけれども、なぜ平成9年と比べるのかということにつきましては、これは年金数理部会として報告を受け始めたときからということで、他に理由があるということではありません。ただ、本文の書き方につきましては、平成18年以降は減少傾向にあるといったように、平成9年とだけ比較した記述にはなっていないのではないかと思います。

 直近の平成25年度につきましては、特に男女計の数字でみるとかなり減少しております。その点を今、御指摘されたと思うのですが、ここは先ほど読み上げさせていただきましたけれども、もちろん2-96のところだけで100%説明できるかどうかということまでは言っておりませんが、男性と女性の数字を比べていただくと、男性が419月で女性が357月となっており、男女計の数字はこれらの加重平均になるところ、女性のウエートが高まっているので、その影響が出ているということが記載されています。

 それ以外で申しますと、男性が426月から419月になっている、そこの部分の要因が説明できれば大体その変化というのは説明できるわけですが、426月から419月になっていることについては、その上の段の2-95にございますけれども、支給開始年齢の引き上げで男性の新規裁定者数が大幅に減少している中での動きだということでございます。そうなりますと、本当に男性全体としてどうかということについては、そこはもう少し見ないと何とも言えないのではないかということで、このような記載振りになっているのではないかということです。

○駒村委員 この2-96だけで図表2-3-13の変化を全部パズルのように解析できるのかなと思って悩んでいたのですけれども、わかりました。結構です。

○山崎部会長 年金額については来年以降の課題にしたいと。後段のほうは、もう少し丁寧な説明をとおっしゃったのですが、駒村委員はそれでよろしいですか。

○駒村委員 今の解説で結構です。

○山崎部会長 わかりました。場合によっては修文してもいいと思っているのですが、本人がよろしいとおっしゃるから。

 ほかにございますでしょうか。

 牛丸委員。

○牛丸委員 事前に検討会がありまして、そこでいろいろコメントをいたしまして、それで直していただいておりますので、今回提出された案に関しては了承いたします。かなりいろいろ委員からコメントがあって、直していただいたということですので、事務方は大変だったと思います。ありがとうございました。

 毎年この財政状況報告ができ上がった際にこの部会で申し上げるのですけれども、今年も同じように申し上げるのですが、今回はさらに去年よりよくなった報告書だと思います。毎年このようにでき上がって、情報がかなりたくさん入っているものですので、いろいろ活用していただきたいのです。せっかくこれだけのものができ上がっているのに、どうも私の実感としてはそれほど活用されていないような感じがしますので、事務方でどの程度できるかわかりませんが、できる限り活用できるような方法を考えていただきたいということをお願いいたします。了承の後の話ですが、お願いいたします。

○山崎部会長 ありがとうございました。

 佐々木委員。

○佐々木委員 報告書は、今回、段落番号を表示していただいたとか、図解も駆使していただいて非常にわかりやすくなったと思います。いろいろ努力いただいてありがとうございます。

 特に修正点はないのですが、今回の平成26年度の財政検証とも絡みますので、1点わかれば、私の勉強不足かもしれませんが、先ほど野上さんからもあったフォワード・ルッキングなリスク分析の点です。この告示のほうも、今後、経済見通しを踏まえてフォワード・ルッキングなリスク分析をするということで、例えば給与ですと、第3章の133ページ、厚生年金ですと実績の5年間の累計がマイナス1.3%で見通しが7.2%ということで、相当乖離があったということですね。一方で、運用のほうは、136ページに厚生年金で実績が32.6%に対して見通しのほうは5%と、これはよかったということで、21年の検証時と相当乖離があります。運用の部分で言われるフォワード・ルッキングなリスク分析というのは、例えばパッシブ運用とかアクティブ運用というのは運用の基礎的な概念として非常に明確になっているのですけれども、フォワード・ルッキングなリスク分析というのは一般的に行き渡った手法なのででしょうか。

 私の勉強不足かもしれませんが、今回、過去5年間の累計結果も出ているのですが、それを踏まえて具体的にどのようなことがフォワード・ルッキングなリスク分析なのか。リスク分析はいろいろなやり方があると思うのですが、もし、こういうことだよということで、今のケースも含めて御説明いただければありがたいのですが。

○清水首席年金数理官 私は運用の担当ではありませんので、なかなかお答えすることは難しいのですが、フォワード・ルッキングなリスク分析ということについては、先ほど御指摘になった告示に書かれているということがあるわけですね。どういう内容のものをフォワード・ルッキングなリスク分析だと考えるのかということについては、オフィシャルな説明がされているということはありませんので、GPIFを初めとする各管理運用主体が、この指示を受けとめて実施していかれるのだろうと思います。

 従来の公的年金等のリスク管理というのは、どちらかといえばフォワード・ルッキングには敢えてしないというか、ある意味、基本ポートを遵守していくという形のリスク管理を行ってきたと思います。だから、従来とは違う管理になるのだろうと思いますけれども、例えば、諸外国で行われている例を一つ申しますと、基本ポートフォリオは基本ポートフォリオとして、実際のポートフォリオが基本ポートフォリオからある程度乖離しているときに、今の経済情勢で見るとこの乖離はこのままでいいのだとか、そういった判断が入ってくる部分があるということが1つ、フォワード・ルッキングな管理の要素としてあるのだろうと思います。日本でどうなるのかはわかりませんけれども、乖離しているから常に基本ポートフォリオの中心値に戻していくというだけの管理であれば、それはフォワード・ルッキングではないですね。具体的にどのようにやっていくのかというのはなかなか難しい要素もあるでしょうし、それについて私がどうこうということはないのですが、ただ、それぞれの管理運用主体におかれては、告示によりフォワード・ルッキングなリスク分析と指示されているわけですから、それぞれそれを受けとめてやっていかれるということだろうと思っています。

○佐々木委員 今言われたことを解釈すれば、例えば、株式20%プラス・マイナス5とかいうのは今もそうだと思うのですけれども、今後上昇過程にあるとすれば、上方乖離幅のほうにシフトして、運用しているとか、そういうことはやっていたのではないかと思うのですが、20%へ戻すというのは基本にはあると思うのですけれども、そういうことではないのですか。その判断をするのをフォワード・ルッキングなリスク分析ということで考えてよろしいのですか。

○清水首席年金数理官 実際どのようにしてそうした管理をしてきたかというのは、それぞれの年次報告、業務概況書の中に書かれている以上のことは開示されていないと思います。これは資産運用管理について一種の手の内をさらすような部分なので、資産運用する側としてはとりわけナーバスになっている部分ではないかとも思います。ですから、実際にどのように管理されてきたのかということについては、それぞれの制度で開示しておられる年次報告なり業務概況書の中で記載されている内容しか、私どもとしては知るすべはないということではないかと思います。

○佐々木委員 いずれにしろ、平成26年の財政検証は今回の5年間の実績を踏まえたものが一つの判断基準になると思いますので、具体的にそういった部分も含めて検討していただければと思います。

 以上です。

○山崎部会長 ほかにいかがでしょうか。

 田中委員。

○田中委員 先ほど佐々木委員からも御指摘がありましたが、非常にきれいな図表が入って、非常にわかりやすくなったと思っています。事務局の御努力に感謝いたします。これを見て率直に言いますと、高位、中位、低位と3つラインが引かれているのですが、その中に入っているものもあるのですが、明らかにかなり乖離しているものもあって、これは人口前提、経済前提をつくるときに、例えば財政検証のときにこういうものを参考にして変更していくとかいったことがあるのか、ないのかということを感じました。つまり、前提の決め方に実績が反映しているのか、その連携がどうなっているのかがよくわからないということが1つです。実際には連携をしたほうがいいと思うのですが、その辺はどのようにお考えかということが一つの疑問です。

 あと、少なくとも高位と低位の間に入るように、例えば、ストカスティックなシミュレーションなどをやる場合には、明らかに信頼区間の95パーセンタイルの中に入るとか、そのようになっているほうが美しいのかなと思うのです。これはアメリカの例などでもそうなっているのかどうかわかりませんけれども、どういうお考えで高位、低位というのを決めているのでしょうか。

○清水首席年金数理官 これは平成21年の財政検証ですので、例えば、人口については社人研の推計の高位、中位、低位という各推計、それがベースになっていたかと思いますし、経済前提に関しては、経済前提委員会でいろいろ議論された結果として設定されている。そういったものと、その後、5年間の実績というものが一定解離するものも乖離しないものもある。その中で、26年財政検証の中では、どのように設定されたのかということについては、今年の夏以降にこの年金数理部会でヒアリングを行っていただき、今後この年金数理部会で御検討していただくという予定になっておりますので、そこでぜひ御議論いただければと思っています。

○田中委員 ありがとうございました。

○山崎部会長 いかがでしょうか。よろしいですか。

 それでは、特に修文が必要だという御意見がないようでございますし、一通り議論を尽くしたと思います。したがって、これをもちまして本部会の平成25年度公的年金財政状況報告とさせていただきたいと思いますが、よろしいでしょうか。

 

(「異議なし」と声あり)

 

○山崎部会長 異議がないものと認めます。

 それでは、これを本部会の報告とさせていただきたいと思います。

 皆さんのほうから特に何かございますでしょうか。

 それでは、事務局より今後の日程等についてお願いいたします。

○清水首席年金数理官 今後の日程でございますが、調整して御連絡申し上げたいと思っております。よろしくお願い申し上げます。

○山崎部会長 それでは、本日はこれで終了します。どうもありがとうございました。


(了)

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