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2015年3月4日 2015年3月4日 第8回厚生科学審議会健康危機管理部会 議事録

厚生労働省大臣官房厚生科学課

○日時

平成27年3月4日(水)10:00~12:00


○場所

厚生労働省 共用第9会議室(中央合同庁舎5号館 19階)


○出席者

(委員)

大野部会長 明石委員 石井委員 大石委員 大友委員 加茂委員 吉川委員 倉橋委員 黒木委員 野村委員 山本委員

○議題

1 部会長選出及び部会長代理の指名について
2 健康危機管理調整会議の開催報告について
3 国際保健規則(IHR2005)に基づく活動について
4 世界健康安全保障イニシアティブ(GHSI)について
5 化学災害・テロ対応医薬品備蓄等事業について
6 その他

○配布資料

資料1 健康危機管理調整会議の主な議題について(平成26年4月~27年2月)
資料2 IHR(国際保健規則)に基づく我が国の連絡窓口(NFP:national Focal Point)の平成26年度の活動内容について
資料3 「第15回世界健康安全保障イニシアティブ閣僚級会合」の概要
資料4 化学災害・テロ対応医薬品備蓄等事業
参考資料1 国際保健規則(IHR2005)について
参考資料2 第15回世界健康安全保障閣僚級会合共同声明(英文・仮訳)
参考資料3 世界健康安全保障イニシアティブ(Global Health Security Initiative : GHSI)について
参考資料4 化学テロリズム対策についての提言

○議事

○姫野健康危機管理・災害対策室長 ただいまから第 8 回厚生科学審議会健康危機管理部会を開催いたします。私、厚生労働省大臣官房厚生科学課健康危機管理・災害対策室長の姫野でございます。

 委員の皆様には、本日御多忙のところお集まりいただき、御礼を申し上げます。本日、事前に古米委員、工藤委員から、御欠席との御連絡を頂いております。また、大野委員、吉川委員、加茂委員からは、少し遅れるとの御連絡を頂いております。また、前回まで部会長を務めていただいた宮村部会長については、本年 1 31 日付けで任期満了のため、厚生科学審議会委員を御退任されましたので、御報告申し上げます。委員 13 名のうち、出席委員が過半数を超えておりますので、会議は成立しておりますことを御報告いたします。

 前回の開催から事務局に異動がありましたので、御紹介いたします。鈴木技術総括審議官です。椎葉厚生科学課長です。亀山原子力災害対策調整官です。事務局を代表し、鈴木技術総括審議官より、一言御挨拶を申し上げます。

○鈴木技術総括審議官 おはようございます。昨年 7 月に厚生労働省の技術総括審議官を拝命しました鈴木でございます。本日はお忙しい中、また電車等の遅れがある中、お集まりいただきまして、誠にありがとうございます。

 この健康危機管理部会は第 8 回ということで、これは基本的には原因が明らかでない公衆衛生上の危機に対し会議を開催し、事態の対処への御相談を行うということですが、ほかに特段の事態がなくても、定期的に会議を開催しており、本日は定期の会議ということですので、前回、昨年 3 月に開催させていただいた以降の様々なトピックについて御報告をし、御相談をしたいということです。

 私が昨年 7 月に拝命して以来、西アフリカではエボラが起こっておりますし、国内でも渡航歴のない方のデング熱ということがございました。また、広島の豪雨、御嶽山の火山噴火等、健康危機と言われるものが頻発しておりますので、そういう対処も先生方に御指導いただきたいと思っております。また、 2020 年には東京でオリンピック、パラリンピックが開かれますが、その際のテロの観点でありますとか、前回の 1964 年のオリンピックは 10 月でしたが、今回は 7 月という、非常に暑い中ですので、おそらく熱中症の対策等が必要になると思いますが、今後はその辺についても是非御相談をしていきたいと思っております。

 昨年 7 月に先生方に御議論いただいた化学テロの対策についての御提言に基づき、平成 26 年度の補正予算で、私ども 8,800 万円で化学テロに対応する医薬品を購入させていただくことになり、大変ありがとうございました。このようなことをいろいろと御相談、御指示をいただき、我々も対応をきちんとしていきたいと思っておりますので、本日もよろしくお願い申し上げます。

○姫野健康危機管理・災害対策室長 続いて、本日の会議資料の確認をいたします。資料 1 から資料 4 、参考資料 1 から参考資料 4 8 種類です。御確認をお願いいたします。資料の欠落等がございましたら、御指摘をお願いいたします。

 これより議事に入ります。本来でしたら議題 1 「部会長の選任及び部会長代理の指名」ですが、部会長については厚生科学審議会令において、「部会に属する委員の互選により選任する」となっております。部会の委員として皆様に来ていただいておりますが、厚生科学審議会の本委員の方、臨時で指名されている臨時委員の方といらっしゃいまして、この部会に所属する厚生科学審議会の委員は、大野委員と野村委員のお二人ということになっております。大野委員が電車の遅れにより、遅れて来られるということですので、議題 1 は後にさせていただき、それまでの間は便宜上、事務局で議事を進行させていただければと思っております。

 それでは、議題 2 「健康危機管理調整会議の開催報告」です。資料 1 を御覧ください。まず、この健康危機管理調整会議の位置付けについて、改めて簡単に御説明いたします。厚生労働省においては、健康危機管理基本指針を定め、関係部局における健康危機管理に関する取組についての情報交換を行うとともに、迅速かつ適切な健康危機管理のための調整を行っております。このために、健康危機管理調整会議を設けております。

 こちらには、省内の関係課、国立試験研究機関の先生にも御出席いただき、課長クラスの健康危機管理調整会議を月に 1 回、課長補佐クラスの幹事会を月に 1 回ずつ開催し、保健所や研究者、海外の関係機関から、関係課あるいは当室に直接寄せられた情報の共有、対策の検討あるいは対応の調整などを行っております。

 具体的に取り上げた議題ですが、 1 の食品関係については、ベトナムから輸入されたししゃもに汚物や殺鼠剤が混入していた事例がありました。輸入業者が自主回収し、検疫所においても貨物保留措置を取るなどしており、健康被害は生じておりません。同様に、中国で製造された期限切れの鶏肉の混入などについても、情報共有しております。

3 つ目ですが、静岡県で開催された花火大会の露店で販売された冷やしキュウリが原因となり、食中毒が大規模に発生したという事案もありましたので、そういった情報共有も行っております。

2 の感染症関係です。昨年 3 月から、西アフリカを中心に流行が拡大しているエボラ出血熱についても情報共有を行っております。昨年 8 8 日に、 WHO が国際的な公衆衛生上の緊急事態と宣言しましたが、その前から流行状況を注視しながら、対策等の確認を行ってきています。また、 H7N9 の鳥インフルエンザのヒトへの感染事例が中国などで見られておりますが、その状況についても注視してきております。

 それから、中東で流行が続いている MERS ウイルスについても、昨年 4 月以降、状況把握を続けております。また、昨年、デング熱については 60 年ぶりに国内感染がありましたが、流行状況や対策について、関係者の情報共有を行っております。

3 の通報のあった健康危険情報としては、がん治療に関する研究事業の中で、定期的に報告を求めている有害事象について扱っております。また、厚生労働科学研究の中で、ヒト T 細胞白血病ウイルス 1 型、いわゆる HTLV-1 の感染者をドナーとする生体腎移植により、レシピエントが HTLV-1 に新たに感染し、難治性疾患を高い割合で発症している可能性があるという報告がありました。この情報を受け、担当課室とも調整し、更に詳細な調査を行うこと、そして調査結果が出るまでの間、臓器移植ドナーの HTLV-1 の全例検査等を行うことを、日本移植学会等に対して要請している状況です。

4 のその他として、省内の初動対応訓練の実施の結果について協議したほか、本部会で昨年 7 月に取りまとめていただいた化学テロリズム対策についての提言について、報告するなどの対応を行っているところです。説明は以上です。

 今の説明について、御意見や御質問などがございましたらお願いいたします。

○石井委員 食品の 3 番のキュウリですが、原因菌は何だったのですか。

○姫野健康危機管理・災害対策室長  O157 と特定されています。

○倉橋委員 デング熱についてですが、今年度に発生が明らかになりましたが、来年度以降にまたシーズンが始まると同様のことが危惧されますので、今後の対策等についての状況はどうなっているのでしょうか。

○姫野健康危機管理・災害対策室長 厚生科学審議会の感染症部会で、来年度以降の蚊を媒介とした感染症の対策の指針を取りまとめ、夏が始まる前に各自治体にも周知をするということで、対策が講じられていると伺っております。

○倉橋委員 温暖化ということが騒がれており、今後日本に定着というか、常在状態になるのが心配されますので、それも併せて検討されることが必要かなと思っております。

○大石委員 感染症部会のメンバーとして参加しております。感染症部会の下に小委員会が設置されて、今お話のあった蚊媒介感染症に関する特定感染症予防指針が策定されました。現在は案の段階ですが、パブコメを募集中です。 WEB で詳細が見られますので、是非見ていただければと思います。

 その中で、基本的には今回国内発生が起こった 1 つの要因は、デングを媒介するヒトスジシマカの分布が日本において、温暖化の影響というかが多少はあって、北上しているということです。岩手県盛岡市までにその分布が確認されています。今回の発生の要因は、ウイルス血症を伴うデング熱の患者さんが、海外から日本に来られて、代々木公園などの国際的な観光スポットに来られて、その人を蚊が刺して、ヒト - - ヒトの感染伝播がありました。デング熱ではヒト - ヒトの感染は起こらないので、そういう感染伝播が発生したというところがポイントです。

 何が一番問題かというと、デングウイルスに感染した人が国内に侵入する可能性と、蚊が公園などのホットスポットに生息していることです。

 特に、そういったリスクの高い場所についての対策を未発生時期から対策を実施していく必要があります。蚊の活動は 5 月から 10 月ぐらいなので、その前から蚊の幼虫の発生をチェックして、また成虫の数をモニターする対策を取っていく必要があります。

 また、症例が発生したら、速やかに患者さんを診断し、医療をしっかりと提供していく。

 これまで、蚊媒介感染症というのには余りスポットが当たっていなかったのです。以前には西ナイル熱とか、日本脳炎の問題もあったのですが、日本脳炎は予防接種でしっかり抑えられており、西ナイル熱というのは、ヒト - - ヒト感染が起こりにくいということで、そのリスクは低いです。従って、ヒトスジシマカが媒介し得るデング熱とチクングニア熱にフォーカスして、これから対策を取っていくことを、指針では国民に向けてメッセージを発しています。また、指針では自治体と医療機関で連携して、周知徹底を図っていくことを、述べています。

○鈴木技術総括審議官 この点で、私は 4 つの点が大事だと思っています。 1 つは、通常輸入のデング熱というのは 200 例弱ぐらい毎年起こっています。これは明らかに海外に渡航されて、海外で感染されたものです。今回の特異的な例は、渡航歴のない患者さんが、あれだけ出られたということが 1 点です。

2 つ目は、去年の発生というのが去年たまたま起こったことなのか、それとも毎年起こっていたけれども気がつかなかったのかというところが、大きな分析の分かれ目だと思います。おそらく蓋然性としては後者の可能性が高いのではないかと思います。たまたま気付きの早いお医者さんが検査を感染研に依頼されて分かって、ある意味で騒ぎになって、皆さん測られたということだと思うので、そういう意味では定常的にもし国内で感染が起こっているとするとどうするかというのが 2 点目です。

3 点目は、大石先生ははっきりおっしゃられませんでしたが、今回は公園をベースに感染されたということで、もちろん水たまりとか池という問題はありますが、それとともに公園で長時間過ごされる方たちが刺されて、体内でウイルスが増殖して、その方を刺した蚊がまたほかの方を刺したときにどうするかという問題もありますので、これは人権上の問題もありますし、様々な難しい問題がありますが、対策として、そういう方たちのためにも健康上きっちりと手を伸ばしていくというのが大事だと思います。

 最後は、このデング熱でウイルスタイプは 4 つぐらいだと思うのですが、異なるウイルスに重複感染すると、出血熱になる可能性は高くなると思うので、単に熱が高くなるというだけではなくて、相当生命予後にも影響するような場合もあり得るということだと理解しています。今般の場合は、おそらく全てがアジア系のウイルスだったのですが、中南米系とかいろいろなものが入ってくると、ある意味でいうと非常にリスクが高いことになるので、この 4 点を今後の対策に生かすべきだと思っております。

○野村委員 今ので気になるのでお願いします。住居を持たないホームレスの方の話が出ました。感染症対策をきちんとするというのは、ものすごく聞こえのいいことなので、それは非常に世の中の理解も得やすいのかもしれないのですが、そちらだけポンと対策をして、皆さん、なぜここの公園に住まなければいけないのかという、そういう方たちのほうとは全然課が違うということを理由に、そういうことをやらずに、すごく説得力のあるほうの理由だけを探して、出して、排除的な施策を一方的に取らないでいただきたいと思っていますので、よろしくお願いします。

○大石委員 その点について、疫学調査もしているところですので、調査で得られたエビデンスを示しつつ、公園の長期利用者の方々に健康管理を提供し、そういった方々が不利にならないような対応をしていきたいと考えているところです。

○石井委員 私は国際的部門の担当もしているので、アジアの医師会の人たちと話をしていると痛感するのですが、日本というのはアジアの海の中に浮いた島なのです。ですので、日本の特異的な事象だけを探しても、対応は限局的かなという感じがします。

 アジアで起こっていることは日本でも当然起き得るし、むしろ起きているのではないかと想像したほうがいいのではないかと思います。

 したがいまして、日本だけの非常に特殊な対策というよりは、全体を見ながら対策することと、そういう情報をシェアすることが大事ではないかと思います。

 そういう意味では、エボラ疑いで発熱の患者さんを手繰っていくと、マラリアとかほかのいろいろなものが見えてきたりしているわけですから、そういうことに対する備えというものを、これは製薬メーカーであるとか、いろいろなところを含めてですが、これから一緒に考えていかなければいけない時点にきているのではないかと思います。

 そういう意味では、対策というのも例えば代々木という視点からその公園のどの辺という限局的な話ではなくて、かなり幅広に見ていかないと、実際の対策というのは打てないのではないかなと思っております。

 もう 1 つは、誰でもタッチできるところに、もしかしたらと疑うという情報があることも大事だと思いますので、その辺はまたよろしくお願いできればと思います。

○姫野健康危機管理・災害対策室長 感染症対策の問題ではありましたが、野村委員からございましたように、公園でのホームレスの方の対策など、そういった広がりもございますし、また石井委員からございましたように、日本だけの問題でなく国際的な広がりがあるということで、そういった意味で、この健康危機管理調整会議の中には様々な関係部局を入れまして、そういった情報共有をしているところです。今日頂いた御意見なども参考に、引き続き連携を密にしていきたいと思っております。そのほかにございますでしょうか。

○大友委員 エボラウイルス感染に対するこの部会若しくは厚生労働省の立場の確認です。実は、先々週ジュネーブで開催された WHO の会議に出席してきたのですが、これは JICA の国際緊急援助隊の私は総合調整部会長という立場で、 Foreign Medical Team 、国外の災害時に被災国に派遣される医療チームの標準化という会議なのですが、そこでエボラの話題を 3 日間のうち 2 日間やっていたのです。

 世界各国から西アフリカに医療チームを派遣して協力していたわけですが、中国が 500 600 人、韓国が 30 人のチームを派遣していたのですが、我が国はどういう立場なのかというところを、もしお考えがあればお聞きしておきたいと思います。

○鈴木技術総括審議官 担当は健康局ですが、私の知る範囲で申し上げると、もちろん人だけの問題ではなくて資金的援助、物品的援助、例えばガウンとかマスクです。それから、日本はアビガンという治療薬もありますので、そういう協力もあります。

 人的な貢献について言わせていただくと、確かに先生が御示唆されたように、国の規模、立場から考えると、少し寂しい状態になっております。我が国は WHO のロースターというリストに、 35 名の専門家に登録していただいております。これは、多くは WHO の専門家で行く場合は、直接診療に携わるというよりは、むしろ現地の方が診療される、その指導をする、ガウンの付け方とか、疫学の取り方、ラボのテクニックなどです。そういうことで行っていただいておりますが、現在のところ 14 名ですかね。後で間違いがあれば訂正しますが、 14 名ほど WHO からの依頼で出ているということで、私としては 2 つの点が欠けていると思っています。

1 つは、圧倒的に母数となる人材プールが小さいということです。これをもう少し、例えばウイルス学会なり、感染症学会なりの先生方にもお願いをしつつ、ある意味でいうと、専門家の先生が出られるときに、少し若い先生も一緒に付いて行って、人材をどんどん増やしていくことで、なるべく早い機会にもう少し桁の大きな援助をする必要があろうというのが、まず 1 点です。

2 点目は、これは中国の場合もアメリカの場合もそうですが、基本的には自己完結的な派遣ができるのです。自己完結的というのは、例えば住む所、食べ物など、一定程度自分で全部手当をできるということです。もちろん医者だけではなく、ロジの方とか、マネジメントの方も含めて、チームを組んでいるということですが、残念ながら今のところ、日本は、そういうチーム構成のものになっていないということです。ですので、これも人数の母数を増やしていくと同時に、チームとして自己完結的な活動ができるように、なるべく早くしないといけないということで、正に外務省の国緊隊とどう組み合わせていくのか。国緊隊の場合は、基本的には災害医療のようなところは、今まで非常に見ていただいていましたが、こういう感染症のエピデミックというときに、日本としてどうするかということで、特にエボラの場合もそうかもしれませんが、もし万が一感染してしまったときのエバケーションをどうするか。その辺も含めてきちんとしないと、なかなか協力は得られないということですので、省を挙げて、それから省だけではなくて外務省、館邸とも協力をしながら、前に進めたいと思っております。

○大友委員 韓国は、にわか仕立ての、 2 週間の感染対策を受けたチームを派遣しているということでした。 JICA の緊急援助隊医療チームは 30 年の歴史がありますので、 JICA との連携も勘案しつつ、是非御検討いただければと思います。よろしくお願いいたします。

○大石委員 感染研の感染症疫学センターは、既に 10 月の時点でシエラレオネに疫学の専門家を 2 人、派遣しました。初期の段階では受入先とか、チームをどう組むかとか、どう機能するかということについては、困難があったと聞いています。

 その後、 WHO はリージョナルオフィスごとのチームを作って、今は西太平洋事務局からチームを派遣するという戦略が立てられています。主には日本、中国、オーストラリアといった国から、比較的若い人を入れてチームを構成して、現場で貢献するということで、現在、感染研の感染症疫学センターから 3 月から 6 月にかけて 2 名を派遣する予定にしています。それとはまた別枠ですが、感染研ウイルス一部からも 2 名派遣する予定です。

 大事なことは、チームで活動するということで、若手を育てていくという視点で、日本のキャパシティを増やしていくという考えで進めているところです。

○石井委員 今のに関連して、実は Disaster Medicine and Environmental Health という所に去年の暮れに投稿した日本医師会が関与した論文があることは報告しております。

 世界医師会の総会が昨年南アフリカのダーバンという所で行われたものですから、アフリカの人たちとの触れ合いがそこで非常に強くあり、緊急決議をしなければいけないという話になり、その 1 つは、あらゆるリソースが頑張らなければいけないというアピールでした。

 もう 1 つが、未承認薬もアフリカの大変な状況に鑑みて、使えるようにしてくれということを緊急決議にしたのです。ヘルシンキ宣言の第 37 項に、最後の修正のときに入った項目があって、それにのっとってやるのであれば、未承認薬使用が認められるべきではないかと決議しまして、持ち帰って、厚生労働大臣にそれをお見せして、即決で「分かりました」ということで、そういうアクションを取っていただいたと思っています。

 ペーパーにまとめてありますのでお読みいただければいいのですが、行くチームというだけの議論ではなくて、支援体制というのは、特に行政、国家としてはいろいろなことを考えて、いろいろな手を打つというのが求められるのではないかと思いますので、コメントしました。

○姫野健康危機管理・災害対策室長 そのほかに御意見はございますでしょうか。

○倉橋委員 今の派遣についてです。職員の派遣についてインセンティブがないというか、派遣される人間が現在の職場を休みにくいという問題があり、今はようやく DMAT については短期ですので、派遣するという合意はできているかと思いますが、それ以外の長期の派遣になると、例えば今回の東日本大震災への支援についても、長期はなかなか派遣したくても派遣できる人間が出せないという状況が、自治体でもありましたし、民間病院でもあったように聞いております。

 ですから、行く本人のキャリアとしてのインセンティブというか、本人の評価がきちんとされるということも大事ですし、それを派遣した側の自治体なり民間病院なりの派遣元の組織についても、何らかのインセンティブが働くような評価も大事で、金銭的なものもあるかもしれません。そのようなインセンティブがあった上で、それで社会的な義務というか、社会的な役割をきちんと果たすという世論作りをしていく。そういう、制度面での評価サポートと、普及啓発というか、雰囲気作りというか、世論作り、そういうものが必要なのかなと感じております。

○姫野健康危機管理・災害対策室長 先ほど技術総括審議官からも申し上げましたように、人材育成なども含めて、これから省内でも関係課で、こういった問題意識を共有して、対応していく上で、非常に貴重な御意見をたくさん頂いたと思いますので、今日の御意見もまた関係部局で共有していきたいと思います。

 大野委員が到着されましたので、ここで議題 1 に戻りまして、部会長の選任の手続をしたいと思います。

 先ほど少し御説明いたしましたが、部会長については、厚生科学審議会令第 6 条において、「部会に属する委員の互選により選任する」となっております。部会の委員は大野委員と野村委員のお二人ということですが、部会長の選任について御意見がございましたらお願いしたいと思います。

○野村委員 厚生科学審議会の委員として申し上げさせていただきます。大野先生は医薬品の研究にずっと関わられていた方で、この部会の御経験としても、ずっと関わっていらっしゃるということなので、大野先生にお願いできたらと思うのですが。

○姫野健康危機管理・災害対策室長 大野委員、いかがでしょうか。

○大野委員 ありがとうございます。

○姫野健康危機管理・災害対策室長 それでは、大野委員から一言御挨拶をお願いできればと思います。まず、部会長の席に移動していただけますでしょうか。

○大野部会長 野村先生、御推薦ありがとうございます。皆さん、御承認いただいたと思っていますが、どうもありがとうございます。

 私は薬理と毒性、また薬物動態環境を中心に研究をやってきました。その分野ではお役に立てるかなと思っていたのですが、実際の臨床の問題とか、感染症の問題はほとんど知りません。ところが、この委員会にはそういう先生方がいっぱいおられますので、先生方の御協力を得て、会を運営していきたいと思っております。

 私の認識では、この会は緊急時の対応というよりも、緊急時にどのように対応するか、その枠組みを作ったり、事前に準備しておいて、想定外のことがあるとか、起こったとか、そういうことがないようにするのが役目かなと思っています。そういう認識でよろしいでしょうか。本当の即時的な対応は行政の方々がやらざるを得ないと思うのですが、そういうことで、先生方が普段からいろいろ思っておられること、このように緊急時に対応したほうがいいのではないかとか、こういう準備をしておくべきではないかとか、そういう意見を頂いて、この会でまとめさせていただいて、行政の方々を通じて、そういうところに反映することができれば、非常に有り難いと思っています。どうぞ、皆さん御協力をお願いいたします。

○姫野健康危機管理・災害対策室長 ありがとうございました。それでは、今後の議事進行は大野部会長にお願いしたいと思います。よろしくお願いいたします。

○大野部会長  30 分も遅れまして、申し訳ございませんでした。危機管理部会ということで、本当に十分な時間をもって来なくてはいけないところを、 30 分は見込んでいたのですが、 1 時間も遅れるとは思っていなかったので、どうも申し訳ございませんでした。

  部会長代理の指名です。部会長代理は、私は感染症のことは非常に苦手ですので、感染症について非常に詳しい経験を持っておられる大石先生にお願いしたいと思いますが、いかがでしょうか。

                                  ( 異議なし )

○大野部会長 それでは大石先生、よろしくお願いいたします。

 それでは議題 3 「国際保健規則 (IHR2005) に基づく活動」についての報告です。よろしくお願いいたします。

○姫野健康危機管理・災害対策室長 それでは、 IHR に基づく我が国の連絡窓口の活動内

容について御説明いたします。まずその前に、 IHR について簡単に御説明いたします。参考資料 1 を御覧ください。

IHR は、 WHO 憲章 21 条に基づく国際規則です。全ての WHO 加盟国が遵守することになっています。加盟国の責務としまして、自国で発生した国際的な公衆衛生上の脅威となるおそれのある、あらゆる事象を WHO に報告する義務を負っております。 WHO IHR 事務局は、受理した情報を各国で共有すべきと判断した場合には、各国の窓口に周知することになっています。 IHR の日本の窓口は、当室、厚生科学課健康危機管理・災害対策室が担当しております。

 資料 2 に戻ります。 1 点目は、 WHO との間の情報共有ですが、今年度、日本から WHO に報告した事項はありませんでした。

2 点目は、他の IHR 参加国連絡窓口との個別の情報交換ですが、結核や麻疹等の感染者、接触者が我が国に渡航した場合など、出発国の IHR 窓口から通報を受けた事例などがあります。合計で 40 件程度やり取りがありました。

3 点目は、 APSED 会合への出席です。 APSED というのは、 WHO の西太平洋地域事務局 (WPRO) の管内の WHO 加盟国が、 IHR への対応能力を強化するためのロードマップとして策定したものです。これに関する会合が昨年 7 月にフィリピンで開催され、我が国からも職員を派遣しております。会議では、各国の IHR 窓口との意見交換などを行っておりますが、日本からは、我が国の危機管理体制やヘルスセキュリティ分野での国際貢献について発表いたしました。

 最後の点は、訓練への参加です。 WHO IHR の窓口を対象として定期的に行っている訓練ですが、今年は国際食品安全当局ネットワークとの合同訓練で、食中毒事案をテーマに、各国及び関係機関の間で連絡訓練を行っております。また、 10 月には、エボラ出血熱の疑い事例が自国内で発生したという想定の下、連絡訓練を行っております。資料の説明は以上です。

○大野部会長 ただいまの御説明について御質問、御意見はありますか。

○大石委員 感染研の大石です。私も APSED に出席して、その中で Global Health Security Agenda という、米国から発信されたメッセージがあったと思います。我が国もこれに対応していくという話で、その中には、薬剤耐性菌の問題も、感染症の課題としてで取り上げられていたと思います。この問題は、前ページで示された健康危機管理調整会議の中でも余り取扱いがなかった、目立たないものではあるのですが、薬が効かない耐性菌がジワッと国民の中で広がってきているという事態が発生しており、重要な課題であると認識しております。 WHO 2011 年の世界保健デーでは、この重要性を説いていますし、昨年の WHO 総会でも議題に上がっていると思うのです。

 昨年も国内で大きな院内感染事例があり、最近もまた同様の院内感染が発生しているのです。そういったことを受けて、昨年 9 月に感染症法上においてカルバペネム耐性腸内細菌感染症が五類全数把握になりました。その結果、 CRE 感染症の国内の実態が少し見えてきていて、かなりの届け出数があるということが分かってきています。今後、 CRE を含む薬剤耐性菌のアウトブレイク等には注目して、対応、対策を進めていくべきではないかと考えております。

○大野部会長 ありがとうございます。何か行政のほうから御意見はありますか。

○鈴木技術総括審議官 この耐性菌の問題は、 3 つの点が非常に大事だと思っています。 1 つは、今、大石先生におっしゃっていただいたように、サーベイランスとして、どこにどういう耐性菌が生じて、どのぐらい影響があるのかという実態をきちんと把握することが 1 つです。 2 つ目は、大野先生が御専門ですが、新しい抗生剤等が出てこないのですが、それにかかわらず、やはり新世代の開発を進める努力はしなければいけないということです。 3 つ目は、これはなかなか難しい問題ではありますが、抗生物質を臨床の場面で使う、その使い方や、もう 1 つ私は非常に問題だと思っているのは、抗生物質の多くが動物の飼料に混ぜられて、動物の発育を増すために使われているということです。ここで相当多くの耐性菌なり耐性ウイルスが出てきてしまうということだと思いますので、そういう意味では、動物の飼育の場面でも、臨床の場面でも、なるべく耐性菌が出ないような意識の徹底が大事ではないかと思っております。

○大石委員  1 つ付け加えるとすれば、抗菌薬適正使用です。 antibiotic stewardship とも言われていますが、これについては、日本はかなり先進的にやっているところで、国内の耐性菌感染症の頻度はいまだ低い状況です。低いと言っても、比較は周囲の東南アジアの国々との比較ですが。やはり、それが輸入感染症としてどんどん国内に入って来得るということで、むしろこの抗菌薬適正使用というメッセージを伝えていく必要があります。抗菌薬適正使用の教育を、如何に進めるかということを、やはり日本から途上国に指導することが必要です。抗菌薬適正指導のノウハウの輸出が今後、日本としては大事なのではないかということを考えています。

○石井委員 今の話はすごく大事な話で、実は日本の食品の輸入が、特にアジアの生産地からのものに頼りつつあるという状態からすると、アジアの現状がどうなっているかということにコミットしないと、いくら国内だけで対策をやっても限界があるわけです。

 また、日本は製薬メーカーのある国なので、どのぐらいのものがそうやって海外の飼料に使われるという形になっているのか、日本からそういうことにちゃんとメカニクスで全体を網掛けしないと。最初に申し上げたような概念と同じになると思いますが、日本だけの問題でもない、アジアだけの問題でもない、これは関連しているという概念を持つのが大事なのではないかと思います。

 もう 1 点、同じ流れの話で言うと、昨年、アジアの医師会連合会がマニラであったのですが、 WHO WPRO と連携しながらやったのです。その場で大きな問題として取り上げられたのは、多剤耐性結核菌がインドの中で大問題になってきている、これを一緒に考えてもらわないと大変だという危機感がありまして、緊急で WHO WPRO から来てもらって、講演と質疑をやってもらうタイミングを作りました。これもまた我々のところにやって来得る問題としてお考えいただければと思います。

○大野部会長 非常に重要な事を御指摘いただいてありがとうございます。日本に中国、東南アジア、インドからどんどん人が来ますので、薬をどういうふうに使うかという問題は、やはり医療制度と非常に絡んできていると思います。そういうところにも目を配っておかないと、普通の人がそういう強い抗生物質を簡単に買えて使うことになると、どうしても増えてしまいますから、その辺りも考えたほうがよろしいのではないかと思いました。

 ほかに先生方からありますか。耐性菌の問題以外に何か御意見はありますか。

○山本委員 訓練の参加のところで、食中毒事案となっているのですが、これにはどういう部局が参加されて対応されたのかを聞かせていただきたい。

 それから、私としては、やはり食中毒の問題は、食中毒だけで取り上げるのではなくて、最近はやはり、感染症の面も含んでいる部分が大きくあるので、その辺りも、チームとして地方自治体で、食中毒だとなったら食中毒の班がやって感染症対策は手を引くとか、そういうことではなくて、もう少し連携がうまくいくようにもっていくほうがいいのではないかとは、前から思っております。

○関谷国際健康危機管理調整官 ありがとうございます。私がこの訓練に参加しました。今回、食中毒事案が、とある仮想の国におけるパーティーで発生し、そのパーティーに来た人たちが、その後、胃腸炎を起こしたというシナリオです。結局、その食べ物自体が実はまた別の国から来ていて、ほかの国も関わった輸入食品の例でした。それに自分の国ではどう対応するかという訓練で、こういうことが自分の国で起きたことを WPRO に報告するというコミュニケーションの訓練で、情報のやり取りをメールやファクスで行いました。

 日本国内で言いますと、私の今の厚生科学課健康危機管理・災害対策室と、あとはここにも書いてありますが、医薬局の食品安全部に、 INFOSAN という国際食品安全当局ネットワークの担当者がいるので、その人と、私がそれぞれ IHR INFOSAN のフォーカルポイントとして、 WPRO と連絡を取り合うという訓練をさせていただきました。

○山本委員 ありがとうございました。

○大野部会長 ほかに訓練のことで御質問、御意見はありますか。

○黒木委員 日本中毒情報センターの黒木です。こちらの食中毒訓練の案件では、今、いろいろ、食品の異物混入や殺鼠剤などの化学物質混入も問題になっているかと思いますが、訓練上はそういったものはありましたか。

○関谷国際健康危機管理調整官 訓練上は物質混入ではなくて、感染症のほうです。

○黒木委員 計画的には、そういったものもやるといったことがあるとか、そういったものは対象外などというのはあるのでしょうか。

○関谷国際健康危機管理調整官 これ自体は WPRO が行っている訓練ですので、 WPRO が計画を立てています。シナリオも WPRO が考えています。ですので、そういった計画があるかどうかは、すみませんが私も分かりません。ただ、私自身、 WPRO APSED の会議に出ていますが、 IHR においては化学物質や放射性物質にも対応しなければいけませんし、やはり chemical radio nuclear のところは、各国、キャパシティがなくて、なかなかそこまで対応できていないことが結構、指摘はされているので、今後、訓練でそういうシナリオを入れる可能性はあるのではないかと思います。

○黒木委員  IHR が改正されて、化学物質や放射線などが入ってきていると思いますので、是非そういった訓練の場でもできるといいなと思っております。意見として述べていただければと思います。

○関谷国際健康危機管理調整官 また、会議に出席することがあって、 WHO 担当者と話すことがあれば、そういった意見も伝えたいと思います。

○大野部会長 ほかにいかがですか。

 私から 1 つ。以前、私が国立衛研にいる頃に、国立衛研の安全情報部の山本さんという方が強く関係していたのですが、日本全国の危機管理に関係する人たちに集まっていただいて、少なくとも 1 年に 1 回は情報交換のようなことをやっていたのです。その人が退官されて、あれがその後どうなったのだろうと。そういう危機管理の場、日本国内で消防庁や警察庁や、ほかの省庁の専門家が集まって話し合う場というのは、もう消えてしまったのか、どうだったのかなと思ったのですが、そういうものはやはり維持しておかないとまずいのではないかと思うのですが。

○関谷国際健康危機管理調整官 維持されています。今は内閣官房の危機管理担当の部局がその名簿を持っています。 NBC の専門家の先生方の名簿は作っていまして、年に 2 回ほど会議はしています。その会議に、今おっしゃったように、消防庁や海保といった、ほかの関係機関などもみんな集まっています。現在、その会議の開催をしてくださっているのは、災害医療センターの近藤先生です。

○大野部会長 ありがとうございます。そういう日常的な情報交換は、何か起きたときに、すぐにちょっと聞いたり、調整したりするのに重要ですので、是非、維持してくださるようお願いいたします。ほかにありますか。 3 番目の議題はよろしいでしょうか。

 では 4 番目の議題です。「世界健康安全保障イニシアティブ (GHSI) 」ですか、これでよろしいですか。では、これについて説明をお願いいたします。

○姫野健康危機管理・災害対策室長 先ほど大石先生から GHSA というお話がありましたが、これは 1 字違いですが GHSI 、イニシアティブということで、これは大分長く続いている会議です。まず、参考資料 3 に、この GHSI の概要を添付しておりますので、そちらを御覧ください。

 この GHSI 2001 年の 9.11 、同時多発テロを契機としまして、各国のテロに対する準備と対応を話し合う場として発足しています。 GHSI の参加国は G7 、メキシコ、 EU となっていまして、オブザーバーとして WHO も参加しています。このイニシアティブの枠組みとしましては、一番上に閣僚級の会合があり、その下に事務レベルの範囲のネットワークである世界安全保障行動グループ (GHSAG) といったネットワークがあります。正に今、大野部会長からありましたように、日常的に国際的なネットワークを作って、いろいろな情報交換をするという枠組みです。我が国からは、国際保健担当の審議官が参加しておりまして、その下のリスク管理、コミュニケーションなどの様々なテーマごとのサブワーキンググループに、専門家が参加しております。 GHSI の閣僚級会合については、概ね年に 1 回開催していまして、昨年 12 月に 15 回目の閣僚級会合が東京で開催されています。

 資料 3 に戻ります。 1 が、 12 月の東京で開かれた会合の概要です。こちらは塩崎厚生労働大臣が議長を務めております。会議の概要ですが、今回はエボラ出血熱の流行が国際的な関心事でもありましたので、エボラ出血熱に対する各国の国内対策、そして国際協力の取組について意見交換をしております。また、日本での開催ということで、東日本大震災への対応なども題材として、緊急事態から回復していくステージでの保健システムの強化など、長期的な対応を行うことの重要性についても、福島県立医大の安村先生、地域医療機能推進機構の尾身理事長をスピーカーとしてお招きして、議論いたしました。最終的には、エボラ出血熱に対する各国の協調した対応を強化していくことなどを確認した共同声明を、成果文書として取りまとめております。詳細は、参考資料 2 に付けておりますので、後ほど御覧いただきたいと思います。

2 が、共同声明の概要です。 (1) 「西アフリカにおけるエボラ出血熱流行 (2014) に対する協調した対応の強化」ということです。国際社会として支援を継続することを確認したほか、エボラ出血熱に対応した医薬品、ワクチンなどについて情報共有などを進めていくことを確認しております。

(2) 「公衆衛生上の緊急事態からの長期的な復興の取組の強化」ですが、緊急事態からの回復期については、予防や緊急事態の備えなどを強化していく、次の事態に備えるチャンスであるということを強調しております。

(3) 「長期的な視点に立った備えの強化」ですが、医薬品やワクチンを迅速に世の中に提供するための取組の必要性や、未知のウイルスの検査方法の確立などに向けて情報交換、協力関係の構築が重要であるということを確認しております。

 次のページの 3 で、今回の閣僚級会合の意義を整理しております。意義の (1) は、今般のエボラ出血熱の流行に対する国際社会としての支援姿勢を共有できたことです。また (2) として、日本での開催でしたので、東日本大震災の経験も踏まえ、西アフリカにおいても今後、緊急時の対応だけではなく、長期的な視点での保健システムの強化が重要であるということを、各国が共有するきっかけとなったと思っております。 (3) として、先ほどもアジアの中での日本という位置付けが大事だというお話もありましたが、国立感染症研究所が、アジアを中心とする国々に対して感染症対策の研修会などを行っているということも、この会議の中で披露いたしまして、アジアで唯一の GHSI 参加国としての、日本のリーダーシップをアピールできたのではないかと考えております。

 今年はアメリカがホスト国となる予定ですが、引き続き日本としても積極的にこの会議に貢献していきたいと考えております。以上です。

○大野部会長 ただいまの御説明について御意見、御質問はありますか。

○野村委員 教えてほしいのですが、意義のところの (2) の、震災の経験を踏まえ、長期的な視点で保健システムの強化を行うことの重要性とあります。これは、各国が自国でという意味でよろしいのですか。まずはその前提の確認です。

○姫野健康危機管理・災害対策室長 ここは主に西アフリカでの話をメインに議論しておりますが、西アフリカでの対応も、今は流行が拡大している局面で、緊急時の対応に注力しておりますが、今後、蔓延を防止して、再び感染が広がらないようにするためには、長期的なシステムの整備が必要だというような議論となっています。

○野村委員 西アフリカでのことですか。

○姫野健康危機管理・災害対策室長 はい、西アフリカです。

○野村委員 分かりました。では、西アフリカでの長期的な視点のシステム強化において、日本は取りあえずどんなふうに関われるかというのは、まだあれなのでしょうか。

○姫野健康危機管理・災害対策室長 それはまた今後の話になってくると思いますが、日本も、これまでも途上国での保健システムの強化といったことに、外務省、厚生労働省が連携して取り組んできております。例えば母子手帳の配付などといった事業もこれまで展開してきておりますので、西アフリカでどういう展開ができるのかというのは、また新たな視点で考える必要があろうかと思いますが、そういった点では、日本は引き続き貢献していかなければならない立場であると思っております。

○野村委員 具体的にはこれからということですね。

○姫野健康危機管理・災害対策室長 そうです。

○大野部会長 私から伺います。一時、自衛隊を派遣しようという話が新聞に出ていましたが、あれは取りやめになったと聞いています。そのいきさつや理由などを教えていただければ有り難いのですが。

○姫野健康危機管理・災害対策室長 我々も報道ベースで知っているような状況ですが、防衛省と外務省といったところで協議をされて、現時点で正式に決めたかどうか、我々は承知しておりませんが、現時点では送っていないという状況かと思います。

○大野部会長 もう 1 つ、エボラ出血熱の感染の疑いのある人が日本に帰ってきたとき、それを検査する体制ですが、分からないから、普通の何というか、 P3 ぐらいでやってもいいのだと、分かったら P4 にしなくてはいけないのだということですが、その辺りの対応は、今どうなっているのですか。感染研のほうで P4 施設がありましたよね。使っているかどうか、多分、使っていないと思うのですが。あの辺りの状況はどうなっているのかと。

○姫野健康危機管理・災害対策室長 大石委員からまた補足していただければと思いますが、現在の状況で申し上げますと、患者さんから検体を取りまして、エボラ出血熱の疑い例の患者さんの検体については、感染研の村山にある庁舎に搬送しまして、そこでバイオセーフティレベル 3 の実験室で PCR 検査をしているという状況です。部会長が御指摘の点は、バイオセーフティレベル 4 の実験室がないということだと思いますが、仮に本当にエボラのウイルスがあるとなりましたら、そういったバイオセーフティレベル 4 の実験施設で扱わなければならないという決まりになっています。今のところは陽性事例がありませんので、そういった必要性はありませんが、今後、エボラ出血熱も、いつ日本国内で発生するか分かりませんので、そういった意味では、感染研の施設をバイオセーフティレベル 4 として使えるような状態にすることが必要だと考えております。そういった意味で、昨年 11 月に大臣が地元の市長さんにもお会いして、感染研の今ある施設、機能的には 4 レベルで使える施設ですので、 4 レベルで使えるように、地元の理解を頂くような取組を、現在、進めている状況です。

○大野部会長 ありがとうございます。外国などを見ると、街の中に持っている国もありますので、是非その準備を進めておいて、緊急事態に対応できるようにしておいていただけると有り難いと思います。

○大石委員 私から、知る範囲での補足です。私の認識では、 BSL3 の施設で、ウイルス検査、遺伝子検査はそこでできるわけですが、もし陽性になった場合に、ウイルスを増やす。いろいろな目的、例えば抗体を調べるために、蛍光抗体法でウイルスと患者さんの血清を合わせたりなどということをしなければいけなくなる。そういったウイルスを増やすプロセスというところに BSL4 が必要になってくることになります。逆に言うと、 BSL4 が稼動しないと、陽性になった検体は廃棄しなければいけないことになるのです。ですから、そこのところを、いつ入ってくるかもしれないというところで、できるだけ地域の住民の方々の了解を得ながら、 BSL4 が稼動できる体制を、国から支援していただいていると理解しております。少しずつ話は進んでいるのではないかと思っております。

○大野部会長 私も P3 の施設を作るということで、非常に苦労したのです。 P3 ぐらいでです。ただ、 P4 は本当に緊急事態のときに欠かせないことですので、是非、対応を進めてくださるようお願いいたします。ほかに何かありますか。議題 4 についてはこれでよろしいでしょうか。

 それでは議題 5 「化学災害・テロ対応医薬品備蓄等事業」について御説明をお願いいたします。

○姫野健康危機管理・災害対策室長 資料 4 です。昨年の 7 月に本部会において化学テロリズム対策についての提言を取りまとめいただいたことを踏まえまして、今年度、予算の確保をいたしましたので、本日はその御報告です。

 なお、昨年 7 月の部会では、こういった提言の取りまとめに関する議事のみでしたので非公開で開催させていただきましたが、今回は公開の会議ですので、詳細に触れない概要の御報告となりますことを、あらかじめお断りさせていただきます。

 1「施策の必要性」については、昨年 7 月の提言のポイントをまとめたものです。化学災害・化学テロへの対応については、薬物治療の迅速性が特に必要とされること、通常の市場流通の中では、短期に大量の医薬品を調達することが難しいという特徴があります。このために、医薬品の備蓄が必要であるという御提言を頂きました。

 2「施策の概要」です。今回、国において医薬品を購入しまして、複数の医療機関にあらかじめ配備することといたしました。備蓄する医薬品の種類や量、場所の詳細については、危機管理上の理由から、公表は差し控えるということにしておりますが、予算規模としては約 0.9 億円で、今月中に配備する予定です。また、今回、医薬品の備蓄については、委員の皆様の御意見、御指導によりまして 1 つ前進したわけですが、迅速かつ適切に危機管理に対応するためには、不断の体制の点検や検討といったものが必要になると考えております。連絡体制や情報共有の在り方などについて強化していく必要性があると考えておりますので、引き続き関係省庁とも連携しながら対応していきたいと考えております。以上です。

○大野部会長 これについては去年の会議で、そういう提起がなされて、それについて案がまた提起されて、それを御審議いただいて、その結果がこういった形の予算につながったということで、先生方の御議論が行政に反映されたということで、行政の対応にお礼申し上げたいと思います。

○黒木委員 この度は、化学災害・テロ対応の医薬品備蓄事業について、我が国で初めて予算確保ができて、実施される見通しになったことを大変喜ばしく思っています。まず、担当された行政の皆様、そして健康危機管理部会の先生方、関連諸機関の先生の御尽力に対しまして、サリン事件以降関わってきた者としてお礼を申し上げたいと思います。ありがとうございます。

 一方、今回の予算措置は、補正予算であり、かつ、 27 年度概算要求額の 3 分の 1 ですので、もちろん量も不足ですし、その後、新たに国内承認された解毒剤もありますので、来年度は補正予算、再来年度は年度予算として再び上げていただいて、 2016 年のサミットや 2020 年東京オリンピックまでには万全の化学テロ対応体制となるように、整備を強化していただきたいと強く思っています。

 それまでに、備蓄の整備のみならず、部会でも話は上がりましたが、緊急時に使用しやすい薬剤の剤形の開発や、備蓄薬剤の配送体制、使用等でのマニュアル整備、医療機関における救急医療体制など、まだまだ課題は山積しておりますので、今後とも引き続き、おっしゃっていただいたように、行政の方々のみならず、専門家を交えて体制の整備を進めてほしいと思っております。

○大野部会長 ありがとうございます。行政のほうから何かありますか。

○姫野健康危機管理・災害対策室長 まず、この提言を踏まえて我々は対応したわけですが、提言をまとめていただきました委員の皆様に改めて御礼を申し上げたいと思います。

 そして、今回、非常にクローズアップされて、新聞などでも取り上げられていますが、これまでも備蓄については、いろいろな形で取り組んできましたので、正確に言うと、今回初めてということではないのです。ただ、これだけ大々的にしたということで、 1 つ大きな成果が上げられたのではないかと考えています。

 備蓄の種類や量については、詳細をここで、なかなか申し上げられる場面ではありませんが、黒木委員からもありましたように、そういった医薬品についても日々進歩していますので、これで終わりということではなく、危機管理対応については完成するということはありませんので、日々検証しながら対応を充実させていきたいと思っておりますので、引き続き、御意見、御指導いただきますようお願いしたいと思います。よろしくお願いいたします。

○倉橋委員 意見というよりも感想になりますが、この提言が今後実現していくというのを大変うれしく思っております。保健所業界としても、行政の中の専門家の一員として、全面的にこれをバックアップしていきたいと考えております。

 質問というよりも要望ですが、要点が 2 つあるのではないかと考えております。 1 つは、もう既に黒木委員からも御指摘がありましたとおり、長期的にこれを継続して、より良くしていく。継続性をきっちり担保していただきたいということが 1 点です。

2 点目は実効性というか、実際に動く仕組みを作っていくべきではないかと考えております。国、都道府県、医療機関という流れの中で、きっちり役割分担を、今後、定めて、明確にしていく。これは明らかに時間のファクターが一番重要ですので、 24 時間対応を含めて、そういう形の合意と、訓練を重ねて、実効ある仕組みを作っていくことが今後の課題かと考えております。

○明石委員 放医研の明石です。これはきっと、いわゆるナショナルストックパイルと言われるようなものになっていくと思うのですが、これは要するに、他の機関がどういう薬を独自に持たなければいけないということではなくて、これを中心に全国的に、ここが薬を備蓄していくのだという考え方になるのでしょうか。当然、必要なものですが。

○姫野健康危機管理・災害対策室長 昨年 7 月にまとめていただいた提言の中にも、こういった対応については国だけではなくて、都道府県など自治体の対応も必要であるというようなことも頂きました。また、倉橋委員からも、実効性あるようにするために、関係機関の連絡体制なども必要だというお話もありましたので、 1 つの中核になるものだと思っておりますが、ここだけが備えればいいというものではなく、それぞれの機関が役割分担をしながら対応していくべきものだと思っております。そういった意味で、これからも関係省庁、関係機関と連携しながら、実効性あるものにしていきたいと考えております。

○大野部会長 備蓄する場所は日本国内に幾つか作るわけですね。東京にだけというわけではないですよね。

○姫野健康危機管理・災害対策室長 具体的な場所については公開しておりませんが、東京だけではなくて、複数箇所に配置していくということで考えております。

○石井委員 昨年度議論にも加わった人間の一人として、本当に良かったなと思っています。今後のことがもっと大事だと思っています。というのは、やはり、補正で予算が付いたというのは一時的なことだということなので、やはりこれが通常の予算の中に組み込まれて、これから新しい剤形などというお話が黒木先生からもありましたし、また、期限切れということもありますから、普通に更新されていかなくてはいけない。そして、だんだん充実させていかなければいけないという概念の中に入っていかないと。ちょっとまだ入口だなという感じはします。

 もう 1 つは、例えばインフルエンザの薬ということで通った、先ほど鈴木審議官からもお話があったような、エボラに効くかもしれないというアビガンなどという薬も、やはり特殊な機関の備蓄というだけではなくて、そういうアウトブレイク対策も含めて、十分な備蓄をこの国は持つということをしないといけない。逆に世界的なイベントを主宰したり、そういうことにコミットするという意味では、もう少し先までやっていく必要があると思っています。

 明石先生がおっしゃらなかったので私からも言いますが、安定ヨウ素剤を含めて、そちらのほうの薬剤も、今のところは 30キロメートル 圏とか何とか言っていますが、それは原発から見ればの距離感であって、実際は放射線の災害にしても、どこで起きるか分からないわけですし、テロだと言えば余計にそうなります。ですから、そういうことをもう少し幅広に、予算や政策を作ってもらって、必要なときには届くという状態をやっていただければ有り難いと思います。

○大野部会長 ありがとうございます。貴重な意見をいろいろ伺いました。

○野村委員 当然、まだ決まっていないことかもしれませんが、 1 つは質問です。詳細のほうの、参考資料 4 の一番最後にある部分です。留意点の一番最後の、原因不明のまま受診することも考えられるため、高度専門医療機関だけでなく、地域の医療を迅速に提供する必要があるという所なのですが、これは実際に、発生前にどういう形でやるのか、発生時にどういう経路でやるのかというのがもしあれば教えていただきたい。

 あと、危機管理上の理由から情報は公開しないというふうにやっておりますが、現実に、実際に何か起きた場合の一般への情報提供の仕組みというのは、もう決められていないといけないかと思うのですが、どんなものがあるのですか。

○姫野健康危機管理・災害対策室長 テロなどが発生した場合の医療の提供ということについては、厚生労働省の国民保護計画というものがありまして、そういった中で救急医療チームの派遣や、事案発生地への医薬品の供給といったものも計画の中に盛り込みまして対応しているということです。

 今回の新たな備蓄について具体的にどうするのかということも、当然、我々の中で、今後、詰めていかなければいけない課題だと思っておりますので、それぞれ担当部局、関係省庁などとも連携しながら詳細を詰めていきたいと思っております。

○野村委員 これからということですね。

○黒木委員 化学テロの場合には、日本中毒情報センターでは、その化学物質の情報提供機関として、医療機関や一般市民の方に情報提供していくわけですから、そういったものも行政と協力しながら整備していきたいと思います。現在でも、ホームページのほうに大規模化学災害が起こった場合は情報提供しておりますので、こちらでも御協力して、尽力していきたいと思います。

○大野部会長 よろしくお願いいたします。ほかに御意見はありますか。よろしいですか。

 本日予定していた議題までは終わったのですが、「その他」について何かありますか。準備していたものなどはありますか。先生方から「その他」について何か御意見はありますか。よろしいでしょうか。

 特にないようでしたら、次回の開催について、事務局から御説明をお願いいたします。

○姫野健康危機管理・災害対策室長 次回の開催につきましては未定ですが、緊急に開催を要することがなければ、年に 1 回程度、定例で開催したいと考えております。その際は、また、追って日程調整などの御連絡をさせていただきますので、よろしくお願いいたします。

○大野部会長 それでは、本日はこれで閉会させていただきます。お忙しいところ、どうもありがとうございました。


(了)

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