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2015年1月16日 第11回社会保障審議会福祉部会 議事録
社会・援護局総務課
○日時
平成27年1月16日(金)16:00~19:00
○場所
航空会館大ホール7F
(東京都港区新橋1-18-1)
○出席者
田中滋 (部会長) |
石橋真二 (委員) |
猪熊律子 (委員) |
鎌倉克英 (委員) |
川井太加子 (委員) |
(代理:西條由人参考人) |
(代理:大橋正行参考人) |
関川芳孝 (委員) |
高橋英治 (委員) |
武居敏 (委員) |
橘文也 (委員) |
花井圭子 (委員) |
福間勉 (委員) |
藤井賢一郎 (委員) |
藤野興一 (委員) |
堀田聰子 (委員) |
松原由美 (委員) |
松山幸弘 (委員) |
柳川純一 (委員) |
○議題
業務運営・財務運営の在り方について
○議事
○田中部会長 それでは、定刻となりましたので、まだ2~3お見えでない方もいらっしゃいますが、ただいまより第11回福祉部会を開催いたします。
委員の皆様におかれましては御多忙の折お集まりいただきまして、どうもありがとうございます。
委員の出欠状況について、事務局より説明をお願いします。
○西辻総務課長 それでは、本日の委員の出欠状況について御報告させていただきます。
本日は、黒岩委員、小林委員、高橋福太郎委員、対馬委員、宮本委員、三好委員から御欠席の連絡をいただいております。
また、黒岩委員の代理といたしまして、神奈川県保健福祉局福祉部の西條由人参考人、小林委員の代理として、日本介護福祉士養成施設協会副会長の大橋正行参考人にお越しいただいております。
なお、猪熊委員、藤井委員、堀田委員からは、若干遅れて出席されるとの連絡をいただいております。
以上でございます。
○田中部会長 ありがとうございました。
議事に入る前に、ただいま紹介のありました欠席委員の代理として出席されている参考人について、皆様の御承認をとりたいと存じます。本日御欠席の黒岩委員、小林委員の代理として、西條由人参考人、大橋正行参考人が出席されています。御異議はございませんか。
(異議なしと声あり)
○田中部会長 ありがとうございます。
続いて、同じく議事に入る前に、資料の確認を行います。事務局から説明をお願いします。
○西辻総務課長 それでは、お手元の資料につきまして確認をさせていただきます。本日は、配付資料といたしまして、
資料1 地域公益活動について
資料2 会計監査人の設置等について
参考資料1 第9回福祉部会における主な意見(概要)
参考資料2 第10回福祉部会における主な意見(概要)
を配付させていただいております。御確認をよろしくお願いいたします。
○田中部会長 ありがとうございました。
早速、議事に入りましょう。事務局より、資料1地域公益活動についての説明をお願いします。
○岩井福祉基盤課長 それでは、資料1地域公益活動に関する資料につきまして御説明申し上げます。
冒頭でございますが、資料の訂正についてお願い申し上げます。『地域公益活動』についての資料のうち、8ページにございます再投下計画の作成に係るガバナンスという資料でございます。
このうちの左の箱内部留保の明確化のうち○1いわゆる内部留保(利益剰余金)とございますが、その下に=繰越収支差額とございます。これにつきましては、正しくは資産-負債、いわゆる純資産でございます。資産-負債が正しゅうございますので、大変恐縮でございますが、訂正をお願い申し上げます。
それでは、資料につきまして御説明申し上げます。
資料の2ページをごらんください。基本的視点でございます。福祉ニーズが多様化、複雑化し、既存の制度では十分に対応できない者に対する支援の必要性が高まっている中、社会福祉法人については、その本旨に従い、他の経営主体では対応が困難な福祉ニーズに対応していくことが求められるという第1の視点でございます。
他方、第2の視点でございますが、社会福祉法人は社会福祉事業の実施を主たる目的とする法人であることから、いわゆる余裕財産の活用に当たっては、地域ニーズに応じて社会福祉事業の新規事業や拡充に優先的に、さらには地域における公益的な取り組みに再投資することが必要という点でございます。
第3の視点でございます。余裕財産の保有・使用のあり方については、公益性を担保する仕組みが必要。これは、公益財団においても同様でございますが、公益性のある法人といたしまして余裕財産をどのように保有し、使用するかについては、公益的な担保が必要でございます。例えば、公益財団法人におきましては、遊休財産保有制限がありますように、公益財団法人におきます公益認定制度がございます。また、一方で、社会福祉法人の財務会計に係る実務につきましては、当部会におきましても、その点におけます困難性などが指摘されております。これらの点を踏まえまして、社会福祉法人の自立支援に考慮しつつ、所轄庁が関与することが必要ではないかということが基本的視点の第3点でございます。
次に、3ページの参考でございますが、これは地域公益活動に関する過去の会議等におきます指摘でございます。
一番上でございますが、規制改革会議におきます規制改革に関する第2次答申、昨年6月13日に出されたものにつきましては、社会福祉法人は財政上の優遇措置を受ける背景として、慈善的な福祉サービスや低所得者への福祉を提供し、地域のセーフティネットとして機能することが期待されている。しかしながら、これらのサービスを提供している社会福祉法人は必ずしも多くなく、財政上の優遇措置の根拠が乏しい実態が見られるとしております。したがって、厚生労働省は、全ての社会福祉法人に対して社会貢献活動の実施を義務づけるべしという点でございます。
これを受けまして、同年6月24日の規制改革実施計画閣議決定におきましては、厚生労働省は、全ての社会福祉法人に対して、社会貢献活動(生計困難者に対する無料・低額の福祉サービスの提供、生活保護世帯の子どもへの教育支援、高齢者の生活支援、人材育成事業など)の実施を義務づけるとされております。
また、厚生労働省におきます社会福祉法人の在り方等に関する検討会報告書におきましても、社会福祉法人は、社会福祉事業を主たる事業とする非営利法人であり、制度や市場原理では満たされないニーズについても率先して対応していく取り組み(以下地域における公益的な活動という。)が求められているとしております。
このような指摘がある背景といたしまして、現行の社会福祉法の規定を紹介しております。
そもそも社会福祉法の第22条におきまして、社会福祉法人とは、社会福祉事業を行うことを目的とする法人とされております。
また、第24条、経営の原則におきまして、社会福祉法人は、社会福祉事業の主たる担い手としてふさわしい事業を確実、効果的かつ適正に行うため、経営基盤の強化等を行うとされております。
ここにおきます社会福祉事業の主たる担い手としてふさわしい事業につきましては、下の社会福祉法の解説のコンメンタールにございます。社会福祉法人は、地域におけるさまざまな福祉事業にきめ細かく対応し、あるいは制度の狭間に落ちてしまった人々を救済していくということが書かれておりまして、これが立法者の意思であるということでございます。
戻りますが、第26条、公益事業というものが社会福祉事業とともに位置づけられておりまして、公益事業を行うことができるとされております。
5ページをごらんください。考え方でございます。
1つ目の○は、いわゆる社会貢献活動の義務づけ、当部会におきましては地域公益活動の義務づけとして議論されていたことにつきましての一つの提案でございます。社会福祉法人の本旨に従い、日常生活・社会生活上の支援を必要とする者に対して、無料または低額な料金により福祉サービスを提供することを社会福祉法人が事業を行うに当たっての責務として位置づけてはどうか。また、その実績についての所轄庁への報告及び公表を義務づけてはどうかということでございます。これにつきましては、社会貢献活動を無料または低額な料金により福祉サービスを提供することを社会福祉法人が事業を行うに当たっての責務として位置づけるという形で具現化してはどうかという点でございます。この考え方につきましては、後ほど資料で御説明申し上げます。
第2の点でございます。ただいま申し上げました責務につきましては、全ての社会福祉法人に対する責務として義務づけることをここに書いておりますが、第2の○でございます。これは当部会で議論いただきました再投下対象財産、これにつきましては注書きにございますように、利益剰余金から事業継続に必要な財産額を控除した額でございます。このようなものを保有する社会福祉法人に対して、社会福祉事業または公益事業の新規事業拡充に係る計画、ここでは再投下計画と呼ばせていただきますが、その作成を義務づけてはどうかという点でございます。すなわち、再投下対象財産を持つような法人につきましては、公益性の高い法人である社会福祉法人の趣旨から、これを計画的に再投下し、地域に還元していただく仕組みをつくるというものでございます。
その際に、再投下対象財産の投下先の順位につきまして、当部会においても過去何度か議論いただきました。これを整理したものが中段でございます。再投下計画には、社会福祉法人の目的・責務を踏まえ、社会福祉事業、地域公益事業、その他の公益事業に係る事業内容・規模を、社会福祉事業、地域公益事業、その他の公益事業の優先順位で検討し、その上で記載することとしてはどうかという点でございます。
再投下計画におきます地域公益事業は、1つ目の○におきます責務とは多少範囲を変えておりまして、すなわち、既に優先順位1番の社会福祉事業がありまして、その中で例えばいわゆる社福減免とか、利用の減免等の措置を講ずることも考えらますので、ここにおきます地域公益事業は、その際という段落でございますが、再投下計画における地域公益事業は、地域の福祉ニーズを踏まえた無料または低額な料金により行う公益事業、すなわち社会福祉法第26条に規定する公益事業としてはどうかということでございます。
3つ目の○でございますが、再投下計画は、国のガイドラインに基づく公認会計士または税理士の確認を受け、評議員会の承認を経た上で、所轄庁の承認を受けることとしてはどうかということでございます。再投下計画におきます作成の手順、ガバナンスにつきまして記したものでございます。
これらにつきましては、まず、当部会におきましても議論がありましたように、国がガイドラインをきっちり示す。さらに、先ほど申し上げましたように、社会福祉法人におけます財務会計の実務の現状を踏まえまして、公認会計士または税理士といった会計の専門家による確認というものでガバナンスを確保すると。
さらに、当部会におきまして議論いただきました経営管理組織の最重要点でございます議決機関である評議員会におきまして、再投下計画は中期的な投資計画でございます、大変重要な計画でございますので、承認を受けると。
そして、所轄庁の承認でございますが、これは先ほど申し上げましたように、公益財団法人におきまして公益認定制度があることなど、基本的には大変重要な公益性を担保する仕組みでございますので、所轄庁の承認を設けることとしてはどうかという点でございます。
また、所轄庁の承認につきましては、当部会におきましても所轄庁の承認のあり方が大変議論がございました。これらにつきましては、審査事項を明確化することが必要であろうということでございます。このような観点から、所轄庁の承認につきましては、以下の視点から計画の妥当性をチェックすることとしてはどうかという点を提案しております。
第1の点でございます。再投下対象財産と事業規模の妥当性でございます。再投下対象財産は、いわゆる事業計画に必要な財産、控除対象財産をどのように計算するかによって算出されます。これにつきましては、国がガイドラインを示しまして、このとおり再投下対象財産が計画上計上されているかどうかという点でございます。
また、社会福祉事業または公益事業を事業計画として計上するに当たりまして、その事業規模、例えば店員等の規模に応じまして、妥当な範囲の規模であるかをチェックすることとしてはどうかということでございます。
ただ、これらにつきましては、国がガイドラインを示しますし、また先ほども申し上げました公認会計士または税理士のチェックがあります。したがいまして、所轄庁におきまして、裁量性をもって一から内容を審査するという内容にはならないものと考えております。極めてシステマティックに審査できるものとして考えております。
第2の点でございます。自治体計画、例えば、介護保険事業計画等や地域協議会等における意見等、地域の福祉のニーズとの整合性でございます。社会福祉事業につきましては、例えば介護保険事業で申しますと、介護保険事業計画等の自治体計画がございます。短期的には、このような自治体計画との整合性を承認におきます審査事項としてはどうかということです。また、長期的なものといたしましては、例えば、地域におけます人口動態などを勘案してはどうかということです。ただし、これらにつきましては、事業や施設の許可ではございませんので、そこで確定するような審査ではなく、人口動態等から見て妥当性があるかどうかという観点から判断する必要があるのではないかと考えておりまして、そのような基準を示してはどうかと考えております。
一方、地域公益事業につきましては、自治体計画等があるわけでもございませんし、また、人口動態などで把握できるものでもございません。当部会におきましては、これを地域協議会等の場でニーズを把握するという議論をいただいております。したがいまして、地域協議会等における意見との整合性などを見るという観点から、承認するという形にしてはどうかということでございます。
なお、以前、当部会におきまして地域公益事業の範囲を議論いただきましたが、今回は定義にありますように、社会福祉事業または公益事業を無料または低額で提供することを責務といたしますし、再投下計画におきましては、無料または低額の料金で行う公益事業となっておりますので、従来の社会福祉法に基づく社会福祉事業、公益事業という範囲以外に、地域公益事業という範囲は設けないという判断でございます。
したがいまして、あくまで事業の種類としての例えば承認の際の審査といたしましては、従来の社会福祉事業あるいは公益事業に当たっているかという点に限られるということでございます。
次のページをごらんください。これは先ほど申し上げました地域における公益的な取り組みの責務、社会貢献活動に関する責務について、無料または低額によって行う社会福祉事業または公益事業についての考え方でございます。
まず、福祉ニーズの多様化・複雑化でございます。これにつきましては、社会環境の変化に伴い、福祉ニーズが多様化・複雑化し、既存の制度、ここでは基本的には社会福祉事業と考えておりますが、十分に対応できない者に対する支援の必要性が高まっております。例えば生計困難者や独居高齢者、認知症高齢者などでございます。
社会福祉法人の役割でございますが、このような既存の制度では対応できない者に対する対応は、基本的にはさまざまな事業主体、社会福祉法人に限らず、例えば営利法人やNPO法人なども含めて、さまざまな主体がおのおのの創意工夫により対応することが必要であると考えております。ただし、その中で社会福祉法人につきましては、社会福祉法人の本旨に従い、他の事業主体では対応が困難な福祉ニーズに対応していくことが求められるのではないかということを書かせていただいております。
その社会福祉法人の本旨とは何かでございますが、先ほど御紹介しました社会福祉法の第24条の解釈になりますけれども、社会福祉事業に係る福祉サービスの供給確保の中心的役割を果たすだけではなく、既存の制度の対象とならないサービスに対応していくことを本旨とする法人と考えられております。
このような社会福祉法人の性格・役割を考えますと、社会福祉法人の本旨に基づく無料または低額な料金により福祉サービスを提供する責務というものが導き出されるのではないかという点です。
これにつきましては、下の箱の波線の○でございますが、営利企業等では実施することが難しい、すなわち市場で安定的・継続的に供給されることが望めないサービスを供給すること。これはすなわち、既存の制度の対象とならないサービスを、無料または低額な料金により供給する必要がある場合の事業の実施でございます。このようなものが社会福祉法人が率先して対応すべきではないかという点でございます。
また、このような取り組みにつきましては、下の※にございますように、高齢者の生活支援や成年後見人受任事業など、既に社会福祉法人がさまざまな形で取り組んでおられるところでもございます。
また、このような取り組みにつきましては、規制改革実施計画すなわち閣議決定におきましても、社会福祉法人のあり方を徹底する観点から、生計困難者に対する無料・低額の福祉サービスの提供などの社会貢献活動の実施を義務づけているという閣議決定にも一致するものでございます。
このような考え方から、地域における公益的な取り組みを実施する責務につきましては、先ほど御紹介いたしましたように、日常生活・社会生活上の支援を必要とする者に対して、無料または低額の料金により福祉サービスを提供することとして社会福祉法人の責務を位置づけてはどうかということを御提案させていただいております。
7ページをごらんください。社会福祉法人の財務規律についての全体像でございます。
この資料につきましては、この部会におきまして何度も御議論いただいております。これに、ただいま御紹介いたしました内容を組み入れて書いております。
社会福祉法人について公益性を担保する財務規律については3本柱、第1に、適正かつ公正な支出管理、これは前回御議論いただきました。その上で、社会福祉事業を展開していただいて利益が出た場合につきましては、余裕財産の明確化、さらに福祉サービスへの再投下という仕組みで財務規律を確保するべきではないかということで御議論いただいております。
これにつきまして、先ほど申し上げましたように、社会福祉法人につきまして財務会計を初め、さまざまなガバナンスを必要とするという観点から、当部会におきまして御議論いただいた内容をここに整理しております。
まず、余裕財産の明確化でございますが、この明確化に合わせまして会計制度の整備、評議員会による内部牽制、外部監査、すなわち会計監査人等の導入、財務諸表の公表等をガバナンスとして構築することが必要ではないかという点です。
そのような中で内部留保につきまして、事業継続に必要な財産を控除する形で余裕財産を明確化すると。それを再投下するわけでございます。
再投下の順位につきましては、先ほど御紹介いたしましたように、社会福祉法人の主たる目的であります社会福祉事業が第1番目、第2番目に地域公益事業、これは無料または低額の料金により行う公益事業でございます。そして、その他の公益事業が第3番目という順位づけでいかがかという点でございます。
そのような考え方で再投下計画を作成いただきます。そして、その対象先は、地域のニーズに対応した新しいサービスへの展開、人材への投資、無料または低額な料金による福祉サービスの提供でございます。この際、再投下計画の策定等に当たりまして、公認会計士または税理士による計画の記載内容の確認。そして、地域公益事業につきましては、地域協議会による地域の福祉ニーズの反映。そして、最終的には再投下計画についての所轄庁による計画の承認。そして、実績の所轄庁への報告と公表という形でガバナンスを確立してはどうかという点でございます。
8ページをごらんください。ただいま御紹介いたしました再投下計画の内容につきまして整理したものです。再投下計画につきましては、まず、その利益が蓄積された場合に内部留保となります。内部留保、いわゆる利益剰余金でございまして、冒頭御説明いたしましたように、繰越収支差額とあるのは資産-負債の誤りでございます。いわゆる純資産でございます。資産-負債から基本金と国庫補助金積立額を除いたものでございます。このようなものがいわゆる内部留保でございますが、この中から控除対象財産、事業継続用財産、これは当部会におきましても議論いただいたものでございますが、これを控除する。当然、この際に負債との重複分については調整いたします。
このような作業を法人におきまして使途を明記した財産目録、既に財産目録は提出いただいておりますが、それに使途を明記していただきます。また、控除対象財産計算書を作成いたします。このような中で、○1から○2を引いたもの、すなわち再投下対象財産がある法人につきましては、以下のような再投下計画を作成いただくという形になっております。
当然、控除対象財産の計算に当たりましては、公認会計士または税理士が国のガイドラインに照らしてこれをチェックするという形になります。そして、公認会計士等の確認書を添えて所轄庁に提出いただく形になります。
再投下計画につきましては、○3社会福祉事業等投資額、○4地域公益事業投資額、○5公益事業投資額の順に検討いただきまして、再投下計画の案を作成いただきます。当然、この内容につきましては、公認会計士または税理士がその額等つきまして国のガイドラインに照らし確認いただきます。
また、○4地域公益事業につきましては、事業を行おうとする区域の地域住民等関係者の意見を聞く、すなわち地域協議会等におきます意見などを聞いていただきます。
そのようにして再投下計画を法人でつくるに当たりまして、評議員会での承認を得ていただきます。そのようにして法人で作成した再投下計画に公認会計士等の確認書を添えて、所轄庁に出して承認を申請していただきます。所轄庁におきましては、右の箱でございますが、以下の視点で審査をしていただきます。それは事業規模の合理性、これにつきましては公認会計士や税理士が既にチェックしております。その上で、地域の需要を踏まえた合理性、これは社会福祉事業についてでございます。先ほど申し上げましたが、自治体の計画や長期的な人口動態等を踏まえまして合理性があるか、著しく合理性を損なっていないかという視点で見ていただく形になろうと思います。
また、地域公益事業につきましては、地域協議会との協議結果等の整合性を見ていただくという形になります。
事業の範囲につきましては、新たに地域公益事業の範囲は設けませんので、公益事業として妥当かという従来の範囲でございます。
また、公益事業として妥当性があるかという点でございますが、当部会におきましても、所轄庁におきます公益事業としての承認につきまして、課題がさまざま議論されました。これにつきましては、国におきましても制度改革に合わせまして、公益事業の範囲をもう少し明確に示しまして、そういう混乱がないよう、言ってみれば当部会におきまして議論がありましたように、ローカルルールというものでさまざまな取り扱いがされているようでございますが、あくまで法定受託事務でございますので、そこをきっちりと基準として示したいと考えております。
そのような審査を行っていただいて承認を受けられた場合は、承認された再投下計画に沿って法人が事業実施をいたします。そして、毎年度その実績を報告いただきます。その実績報告に踏まえまして、所轄庁による指導監督・助言等が行われる形になります。
これが再投下計画の全容でございます。
9ページをごらんください。先ほど再投下計画の対象事業と充当順位につきまして御紹介いたしましたが、その考え方でございます。すなわち社会福祉事業に加えまして、公益事業に含まれます小規模事業、内容は社会福祉事業と一緒でございますが、その規模が小さいことから社会福祉事業になっていないものでございます。これらがまず第1にあろうと今考えております。これがなぜ第1位かと申しますと、右の充当順位にございますが、社会福祉法人は社会福祉事業の実施を主たる目的とする法人であるからでございます。
第2位にございます地域公益事業は、無料または低額な料金により行う公益事業でございます。これにつきましては、社会福祉法人は社会福祉事業の主たる担い手であるとともに、既存制度では対応できない地域ニーズにきめ細かく対応することを本旨とする法人であるということ。そして、規制改革実施計画、すなわち閣議決定におきまして、社会貢献活動の実施を義務づけるとされていることを踏まえまして、第2位という形になっております。
その他の公益事業は第3位でございます。
なお、いわゆる社会福祉事業におきまして、いわゆる社福減免等と言われております特養での施設利用料の軽減等につきましては、社会福祉事業の中で読んでおります。したがいまして、第1順位のところで取り組んでいただくという考え方でございます。
資料の説明は以上でございます。
○田中部会長 ありがとうございました。
皆様のこの部会における議論を踏まえて、資料の中見が大分整理されてきました。この資料についての皆様の御意見・御質問をお願いいたします。
高橋委員お願いします。
○高橋(英)委員 日本保育協会の高橋でございます。
2点ほどなのですけれども、1点目は地域公益活動として、考え方として無料または低額な料金により福祉サービスを提供することを責務として義務づけることは理解できるわけですけれども、そこには計画上出てくるものと突発的に対応しなければならないケースや、個別に対応しなければいけないさまざまなケースが出てくる可能性もありますけれども、問題は、現在の例えば措置及び保育所についての運営費などでは、前回も申し上げましたけれども、使途制限がかかっておりますので、そこの緩和措置がなされないと監査でさまざまなことも指摘されかねないということがあります。
例えば、無料・低額とは少し意味合いが違うかもわかりませんけれども、私は地元で実はほかの法人の監事をしておりまして、先般監査に立ち会ったわけですけれども、補助が出ていなくて、例えば、地域のニーズが非常に高くて放課後児童をお預かりしている保育園がありまして、監査のときに本来、保育所の運営費は保育所の事業に使うのであって、放課後児童の部分に経費が流れているのはいかがものかという指摘もあったところでございます。それですらそういうことがありますので、まして今後、無料・低額なという意味合いで地域ニーズに応えてしていく場合に、現在使途制限がかかっている部分の緩和措置についても、ぜひ御検討いただければと思っております。
2つ目ですけれども、8ページのガバナンスの図ですが、たしか財務運営のあり方の1回目の議論のときに、8ページの図の一番左上のいわゆる内部留保後(利益剰余金)という表現がありますけれども、この件についてたしか藤井先生が、この表現はどうなんだろうかということを述べられていたかと思っております。単に利益をたくさん出してほかに使うみたいな発想になってしまうのはいかがなものかという発言をされていて、次の資料から利益剰余金という表現は消えていたと思うのですが、今回また利益剰余金という表現で出されたのは、どういう意味なのかをお尋ねしたいと思います。
以上でございます。
○田中部会長 質問が2点ございましたので、お答えください。
○岩井福祉基盤課長 地域公益活動と保育の委託費等におきます使途制限につきましては、基本的には別の制度ではございますが、今回、社会福祉法人のあり方がこのように議論され、今後、法律改正等が行われることになりますので、これは関係部局と議論していきたいと思います。基本的にはそういうことが求められているという要請を踏まえてどのように対応するかという点かと思っておりますので、今後の検討にさせていただきたいと思います。
それから、利益剰余金は初めに載せておりまして落としたのですが、実は全然範囲は変わっておりません。一般的に通称こういうものを利益剰余金と言っておりまして、そのときの御議論では、そもそも内部留保をこういう形で設定するかということについての御議論がありました。しかしながら、その後の議論ではこの範囲で基本的には議論をいただいておりますので、内容としては問題はないと思いますが、利益剰余金のイメージについては、あくまで一般的な読み方で利益剰余金ということでございますので、間違いではないと。ただし、範囲も変わっておりません。
○田中部会長 福間委員、お願いします。
○福間委員 何カ所か出てまいりますが、8ページのガバナンスのところに出ておりますもので質問いたしますが、控除対象財産の算定の2つ目の○の1つ目ですけれども、公認会計士または税理士がガイドラインに照らして記載内容を確認と、前の文言にもございますが、公認会計士、税理士が当該法人の監事を兼ねている場合にどうかということです。対象となるこうした再投下計画を立てる法人というのは、かなりあるとは思いますので、そうすると、監事を兼ねている税理士さん、場合によっては公認会計士もいらっしゃるし、その外にそれを頼むというのも法人としては人探しもあったりなかなか大変だと思うのですが、これはどうなのかをお伺いいたします。
○田中部会長 お答えください。
○岩井福祉基盤課長 これは次の資料でも出てまいります会計監査人との関係でもございます。控除対象財産の計算あるいは再投下計画の策定に当たりまして確認いただく業務と監査の業務というのは対照を意味しますので、その点は、例えば会計監査人が計画を作成することについての整理は別途できるのではないかと今議論しております。ただ、これは法制的な内容なので、まだここで確答できません。
今、福間委員からございました監事による控除対象財産再投下計画についてでございますが、これはいわゆる公認会計士法等の業法との関係では特段何も書いておりません。できないというわけでもありませんが、一方、監事の性格からして監事監査を行いますので、監事監査を行う立場の方が控除対象財産再投下計画を別途契約に基づきまして作成することができるかどうかについては、大変恐縮ですが、これも法制的に詰めたいと考えておりますので、今後の検討にさせていただきたいと思います。
○福間委員 今の御説明の中で1つわからないのは、課長が今作成とおっしゃいましたけれども、ここに書いてあるのは会計士または税理士は法人が作成した計画の確認ですので、自ら作成するとなると利益相反か何かわかりませんけれどもあるのかもしれませんが、業務上の確認、チェックであれば、それは可能なのではないかというのが意見かつ質問ですので、もう一度確認させてください。
○岩井福祉基盤課長 失礼しました。私は意見書、確認書作成のつもりで申し上げておりました。そういう点で監事ができるかどうかということは法制的に詰めさせていただきたいと思っています。基本的には、現場がなるべくスムーズに運営できるようにしたいと思っておりますが、一方で、規律という観点からむしろ法制的な意味でできるかどうかを詰めたいと考えております。
○田中部会長 きょうの段階ではわからないけれども、法律をつくるまでには確定させるとのお答えですね。
西條参考人どうぞ。
○西條参考人 きょうの議論のテーマが、5ページに書いていますように、再投下対象財産を保有する社会福祉法人に対して、再投下計画の作成を義務づけるという話だと思うのですけれども、そもそもその前提としまして、再投下対象財産があるかどうかをだれがどのような方法で判定していくのかということについて、例えば、公益法人制度改革のように、移行の認定とか認可のようなことを想定されているのかどうか。再投下対象財産の使い方について今までも数々議論があるのですけれども、そもそもその法人に再投下対象財産があるのかないのかは、だれがどのように判定していくのかについて、以前説明があったかどうか記憶にないのですけれども、教えていただければと思います。
○田中部会長 いかがでしょうか。
○岩井福祉基盤課長 再投下対象財産があるかどうかは、基本的には財務諸表と財産目録等の付属書類の中で計算ができる、ガイドラインの中で計算ができると。それを公認会計士または税理士がチェックいたしまして、それを所轄庁に提出する中で、正しく計算されているかどうかで判断できると考えております。
○西條参考人 再投下対象財産を保有する社会福祉法人に対しというのが前提ですよね。そうしますと、一律に今すべからく社会福祉法人がこういった再投下対象財産があるのかどうか、今はわからない状態になっているわけですよ。計画作成については、今課長がおっしゃったような方向で算定はしていくのですけれども、保有する社会福祉法人に対しですから、それが保有しているかどうかというのは、いつ、どこで、だれが、どのような方法でやるのかを御質問させていただきます。
○岩井福祉基盤課長 資料の8ページにございますように、各法人は財産目録及び控除対象財産計算書を作成し、所轄庁に毎年度提出いたします。この中で控除対象財産作成書と財務諸表、再投下計画財産があるかどうかが明確になるので、そこでプラスであれば再投下計画をつくらなければならないという形になります。
○西條参考人 わかりました。では、そういった点を毎年度の財務諸表提出の際に、所轄庁が判断するということになるわけですか。
○岩井福祉基盤課長 最終的にはそうなります。
○田中部会長 ただいまのは8ページの右上の手順になるので、作成後、外部の確認を経て提出ということのようですね。
石橋委員どうぞ。
○石橋委員 西條参考人がおっしゃったことと関連しますけれども、現実に社会福祉法人の中で再投下対象財産を持っている法人の区別の話が出ましたけれども、それとあわせてですが、例えば、ある法人はかなりの額を保有している、ある法人は少額しかないというときに、金額の多寡によって計画を義務付けするのかどうか、ということなども検討する必要があるのではないかという気がしないでもありません。やはり、現実に地域公益活動を行うとなれば、基本的には社会資源の一つとして、ハード面では施設などを活用しますけれども、ソフト面ではそこで働く社会福祉法人の職員が現実的に地域公益活動に大きくかかわってくるのではないかと思いますので、余り余裕がないところにおいては職員に関してかなり負担がかかってくるのではないかという気がしますので、その辺も考慮したほうが良いと思います。
○田中部会長 御意見でよろしいですか。
では、川井委員どうぞ。
○川井委員 地域公益活動について、多様化・複雑化する地域の福祉ニーズとなっていますけれども、社会福祉法人が地域公益活動として提供するサービスと、今言います多様化・複雑化する地域の福祉ニーズとのバランスも非常に大切になってくるかなとは思うのですけれども、一法人一法人の再投下計画と、その中でニーズをきちんと聞いてということは今の御説明で理解できたのですけれども、市町村全体としてのチェック機能というものはどうなるのでしょうか。
○田中部会長 5ページのところだと思いますが、もう一度説明していただけますか。
○岩井福祉基盤課長 地域公益活動事業でございますが、きっちり答えになっているかどうかわかりませんが、当部会におきましても地域公益活動事業につきましては、地域ニーズを踏まえたものにする必要があるという形で、地域協議会というものを設置すると。それは既存のさまざまな会議を活用したり、あるいは意見が出てまいりましたのは社協を活用したいという議論がございました。そういう中で地域のニーズを把握すると。それ踏まえた地域公益事業を社会福祉法人が実施するという仕組みにするという形で、地域でのニーズとあるいは社会福祉法人等と事業提供主体との関係の調整がそういうところでできると期待されるのではないかという議論で今進んでおりまして、そういう方向で今後検討したいと思っております。
○田中部会長 よろしいですか。自らの法人の規模と、地域のニーズと両方ともチェックされるという書き方になっていますね。
柳川委員、お願いします。
○柳川委員 6ページをご参照ください。地域包括ケアシステムでは、公助や共助がうたわれておりますども、権利擁護のところをいきなり地域に入れると、匿名性が担保できないのではないかという御意見をお持ちの地方自治体の首長が多いです。
認知症高齢者などの具体例な福祉ニーズが書かれていますが、いわゆる権利擁護や生活保護についてもニーズがあるからよろしくということで判定されるのかどうかが、まず1点目の質問です。
2点目は、本業として活性化させていく意味でも無料や低額料金というのは必要だと思うのですが、同時に事業の継続安定性も大事だと思います。例えば、ちょっとうがった見方ですけれども、余剰がなくなったのでやめますという場合、後継をどうするのかとか、あるいは事前に公営やどこかの民間企業がやっていたとところを無料だからといってはがした後、その事業体ができなくなったらどうするのかということについてのお考えとが厚労省さんにあるかどうかを確認させてください。
以上2点です。
○田中部会長 課長、2点よろしくお願いします。
○岩井福祉基盤課長 第1点目、権利擁護の受任事業等についてでございますが、私、御質問の趣旨が理解できていないかもしれませんが、ニーズは個別の方のニーズというよりは、地域において足りないというか、必要性があるということを地域協議会で御議論いただきまして、それを事業主体がやると。それを実施するときは当然、匿名性等を配慮した形でやることになるのではないかと思っております。
第2点目でございますが、この事業の継続性につきましては、当部会におきましても何度か御議論いただいたところでございまして、その議論も踏まえますと、第1には、各法人の再投下計画も事業等も、ある程度持続性のある計画としていただくことが必要なのかなと思います。
第2点が一番重要でございますが、先ほどの地域協議会におきまして、社会福祉法人間あるいはほかの団体との連携で取り組みをしていただくという形で、持続性のある事業にしていくということで、そういう意味で地域協議会というものが地域福祉の新たな基盤を形成するものとして期待できるのではないかと考えております。
○柳川委員 私の説明が悪かったかもしれないのですが、権利擁護の場合、今言ったとおり匿名性を担保するといっても、例えば、社会福祉法人さんは地元にいらっしゃるので心理的な障壁があり、通報や相談をしづらいという意見が特に都市部の方は多いということを地方自治体の首長はおっしゃっているんですね。ですから、基本的に公助の部分は中核市なり政令市がやっていくような方向で、最終的には補助も含めてというような意見がありました。
○田中部会長 花井委員、お願いします。
○花井委員 私からは2点ほど意見を述べたいと思います。
6ページですが、福祉ニーズの多様化・複雑化の、既存の制度では十分に対応できない者の例として、生計困難者、独居高齢者、認知症高齢者などとなっているのですが、やはり子どものことが大変気になります。例示なのでこれが全てとは思わないのですが、できればひとり親世帯の子どもとか、子どもに視点を当てたようなことも追加していただきたいと思います。
次に、7ページの右下の○1社会福祉事業投資額に人材開発という言葉が使われていますが、人材能力開発とか人材育成という観点からすると、人材開発という言葉は少しなじまないのではないかと思います。新たなサービスやこれから多様化・複雑化したサービスが求められるとすれば人材能力開発や、社会福祉法人であれば人材確保、処遇改善は違うというお話がありましたが、そういった観点から書かれたほうが、能力開発的な意味合いになりますので、人材育成という言葉のほうがなじむのではないかと思います。
以上です。
○田中部会長 御意見ありがとうございます。いかがですか。
○岩井福祉基盤課長 ただいまの点、まず、既存の制度では十分に対応できない者につきましては、当然子どもなども含まれると思いますので、今後こういうガイドラインなどを示すに当たっては、その辺十分に注意したいと思っております。
また、人材開発につきましては、御指摘の点も踏まえまして適切な用語を今後検討していきたいと思います。これにつきましても、今後のガイドライン等の中では、より正確に表せるような用語を考えたいと思います。
○田中部会長 藤野委員どうぞ。
○藤野委員 まず、児童虐待の問題に代表されるように、少子化の中にあって子育てが非常に厳しい状況になっており、社会的養護の分野では措置制度をぜひ残してほしいと思っております。母子生活支援施設は若干違いますけれども、原則として都道府県知事が措置権を持っており、最近では、児童養護施設入所児童の60%ぐらいが被虐待児ですが、行政処分として措置を行っています。たとえ、保護者が虐待をしていないと話をしたとしても、やはり虐待があるとして母子分離が必要だということになれば措置をするわけです。こうしてみると、措置事業そのものがまさに公益事業なわけです。
もう一つは、施設には、いわゆる児童を預かって育てるという役割だけではなく、施設が持っている専門性やノウハウを地域の拠点として展開していくという役割が非常に重要になっています。そういう意味では、例えば、虐待に関して要保護児童対策地域協議会の設置が市町村に義務づけられていますが、施設が中心となって現にいろいろな活動を行っております。
私は前から、社会福祉事業の本体部分に加えそれを周辺部分まで広げて地域のニーズに応えているのが、児童分野の施設の実態だと思っております。ところが、それに対して、先ほど高橋委員も言われましたが、措置施設だから余分なことをするなといったような指摘が、具体的な監査等の場面では出てくるのです。措置のお金をよそに回してはならない、職員をそういうところに使ってはならないなど、非常に硬直しております。だから、どうしてもそれは緩和してほしいと思っております。
今回、9ページで整理されておりますが、社会福祉事業等が本来の事業、それと地域公益事業が無料または低額な料金により行う、従来は補助金が入っているかどうかとか、公的お金が入っているかどうかということが議論されていましたけれども、こういう形で整理されたのはいいと思います。
ところが、その他の公益事業という場合、公益事業というのが初めのころの議論のように、どこかとってつけたようなものであってはならないと思います。特に児童分野で言えば、本来事業とその周辺事業をもっときちんとやれる体制をつくっていくということが、課題ではないかと思っています。その辺について、いかがなものでしょうか。
○田中部会長 範囲は今回の報告ではきちんと明確に絞られましたし、措置児童についての御心配もわかりますので、改めて御説明をお願いします。
○岩井福祉基盤課長 ただいまいただきました御質問・御意見に対してですが、措置費の使途制限につきましては、先ほど高橋委員に御回答いたしましたとおり、現在の社会福祉法人に対します社会的要請も踏まえまして、このような制度改革が行われることを踏まえて、今後、関係部局ともよく相談し、検討していきたいと思っております。
それから、公益事業の範囲等につきましては、社会福祉事業、地域公益事業、その他の公益事業としていますが、その他の公益事業というのは公益事業の中で無料または低額な料金で行うものでないものでございます。社会福祉法人は各地におきまして、例えば、児童擁護であれば対象者の生活支援ですとか、介護であれば介護保険の対象にならないような高齢者の支援など、実質的には地域社会の地域福祉を支えておられる事業をされていると思います。それらは通常、無料または低額でされていることが多いと思っております。そのようなものを今後とも展開していただくというのが、ここの趣旨であろうかと思います。一方、公益事業の中には社会福祉を目的とする事業として、そのような無料または低額でないものもございます。それも社会福祉の事業としてはあろうかと思います。そういうものがその他の公益事業という形になるという考えです。
いずれにしましても、公益事業の範囲につきましては既に通知等でも示しておりましたが、先ほど申し上げましたように、各地域、地域で混乱がありますと大変問題がありますので、国としても明確な方針等を示させていただきたいと思っております。
以上でよろしいでしょうか。
○田中部会長 武居委員どうぞ。
○武居委員 8ページの再投下計画に関する部分でございます。
ある程度計算の上で再投下計画の有無については出てくるということですが、現時点で曖昧に思われるものは、○2の控除対象財産のうちの2番目、建物の建てかえ・修繕にかかわる部分ではないかと思われます。もちろん、大変規模の小さいところでは、自分のところで建物の建てかえ・修繕の計画を立てる能力が低いような法人もある。そこについては、ある程度のガイドラインのようなもので単純計算ができるようなものが必要かなと思われる一方で、これについてちゃんと専門家の意見を入れ、法人として将来計画を立てているような法人もあります。そして、そういう法人については、往々にして経営上の判断として、ある種の質の向上を図るような計画を持っている、そのことによってサービスの質の向上が今まで果たされてきたという実態もあると思います。
したがって、一律にガイドラインで終わらせろということではなくて、ちゃんとした専門家を入れた計画を持っているような法人の主体性、この辺はぜひ尊重していただきたいと思います。
以上です。
○田中部会長 御意見ですね。
福間委員どうぞ。
○福間委員 社会福祉法人の本旨が6ページの図の中でも真ん中ほどにございまして、その元が第24条ということでずっと出されているのですが、私は基本的に全体の考え方をいいと思っている中で自分なりの整理をしていくと、第24条はこちらに紹介されている文言でも、社会福祉法人としての経営の自主性や透明性を確保しろという書きぶりですので、社会福祉事業をする本旨という意味が、ここで展開する本旨とどうしてもなじまないなというのがずっと引っかかっております。
もう一つ、社会福祉法人の審査基準という局長通知を読んでいくと、そこには法人は、福祉法の第4条の趣旨を踏まえて地域福祉の推進に努める使命を有するとあります。そして、社会福祉事業に支障のない範囲において、地域のさまざまな福祉事業に応える広域的取り組みを積極的に実施することが求められる。社会福祉法人設立の審査をする基準ですから法律ではないのですが、第4条は地域福祉の推進ということで社会福祉法の本文にありまして、こちらは福祉サービスを必要とする地域住民が参加する福祉の推進に努めなければならないということを社会福祉を目的とする事業を経営する者に求めているという意味では、ここで言う本旨に第4条は、または審査基準もそれを踏まえて社会福祉法人にそれを求めているというのは大変意味があることだと思いますので、今後の整理の中で、法律上どういうふうに責務を書かれるのかがまだよくわかりませんが、こうしたことも踏まえた、だれでもわかるような書きぶりが最終的には欲しいと思います。
と申しますのは、先ほど来の議論にもありますように、当然これは法人そのもののそれぞれの再投下計画を策定する際の基本的な理念をちゃんと理解していなければいけないし、そのことを評議員会できちんと皆さんに理解して承認していただくことも必要ですし、最終的には所轄庁がそれを理解することが必要ですので、法律の書きぶりもちゃんと理解できるような文言なり工夫をしていただきたいというのがお願いです。
○田中部会長 大変重要な御指摘ですが、いかがですか。第4条と第24条の関係を尋ねられています。
○岩井福祉基盤課長 ただいまいただきました社会福祉法人への審査基準あるいは社会福祉法の第4条、地域福祉の推進の規定等は、社会福祉法人に限らない話ですけれども、全体の社会福祉に当たります大原則であるということでございます。そして、社会福祉法人につきましては、おっしゃるとおりストレートには書いていないのですが、これは基礎構造改革のときにも整備されたものですが、それ以前から趣旨としてはございまして、基本的な社会福祉法人の本旨として、そのような取り組みが必要だということがありましたので、御紹介した次第でございます。
今回の改正におきましては、今回の地域公益に関します責務等をよりわかりやすくという趣旨で明記したいと考えておりますので、今いただきました委員の御意見を踏まえまして、そのような改正を行っていたきいと考えております。
○田中部会長 ありがとうございます。
関川委員どうぞ。
○関川委員 私も藤井委員と同じように、社会福祉法人の新たな責務については、総則で押さえていただいた上で、あわせて第24条の経営原則の中でも、社会福祉法人の経営とは、事業を効率的に行うだけではなく、既存の制度の対象とならないサービスに対して積極的に社会的に起業していく役割を経営的にも成り立たせていくということも経営原則で明記していただきたいと思っております。
総則の部分では、国の責務の後あたり、総則の最後あたりに社会福祉法人の責務として、社会福祉法人の本旨に基づき、無料・低額な料金による福祉サービスを提供する責務があることを、地域福祉の目的と関連させて、明記する。あわせて、定款準則の中で検討されてきた社会福祉法人の本旨を具体的に第24条において明記していただくというような法律改正のイメージをもって、基盤課長の説明をうかがっておりました。
次に、地域公益活動の位置づけについて伺いたいことがございます。9ページになりますが、再投下計画の対象事業を今回、社会福祉事業、公益事業、その他公益事業の3つに分けていただいて、社会福祉事業から優先順位をつけていくという考え方については賛成でございます。ただ、地域公益事業で今回、地域ニーズを踏まえて無料または低額な料金による公益事業とありますが、非課税優遇措置を受ける社会福祉法人の地域に対する貢献として行う公益事業を国民に理解を得やすいものとして考えた場合には、具体的に例示をしていただいたほうがいいのではないかと思っています。
特に、社会福祉事業が第1順位ですので、第2順位として行う事業としては、どこに優先的に支援を投下するかが問題となります。厚生労働省の側で、現在行われているものの中で重要な事業を例示していただいた上で、その他所轄庁が必要と認めるものというような定めをしていただければ、何をもって無料・低額な料金による公益事業というのか、分かりやすくなると思います。非課税優遇を受ける社会福祉法人が取り組むべき公益事業とは何なのかを、国の側でガイドラインなど作成する場合には、具体的に例示していただいたほうが、社会福祉法人の存在意義について、国民の理解と信頼を得やすいのではないかと思われます。
従来、地域公益事業を具体的に例示すると、例示されていない制度の谷間のニーズに十分に対応されないということを心配していましたが、今回、新たにその他公益事業を挙げていただいておりますので、地域公益事業で具体的に例示したものに漏れるものがあったとしても、その他の公益事業の中で柔軟に、制度の狭間にあるニーズについても対応していただけるのではないかと考えております。地域公益事業、特に無料または低額な料金による公益事業を具体的に例示することは可能かどうか、事務局のお考えをお聞かせいただければと思います。
○田中部会長 お願いします。
○岩井福祉基盤課長 今幾つかの点、委員から御質問いただきました。これは釈迦に説法になりますが、法律の構成といいますのは、やはり趣旨をそのままストレートに法文に書けるものではないということがございます。権限の配分ですとか義務というものでございますので、趣旨をそのまま書けるものではないということがございます。また、社会福祉法の構成からいたしますと、社会福祉法人のことだけ言っているわけではございませんで、社会福祉事業あるいはその他の社会福祉を目的とする事業全てを提供するさまざまな主体についての法律でございますので、これを総則で社会福祉法人を書くということにはならないです。それは省がございますので、そういうところで対応していく形になろうかと思います。
また、公益事業を例示することについては、この部会でもいろいろな議論がございましたが、法律レベルの問題と、そうでない地域におけますさまざまなニーズや非常に技術的な事項は、それぞれの段階で示す形になりますので、ここは例示という形はなかなか難しいのではないかと思っております。それは、基本的には法制的な議論でございますので、今後私どもの世界で言えば法制局といろいろと詰めさせていただきたいと思っております。
○田中部会長 西條参考人どうぞ。
○西條参考人 何か社会福祉法人の本旨を拡大して解釈するような議論に進んでいることを非常に危惧しておりまして、もともと第24条は、社会福祉法人は社会福祉事業の主たる担い手として自主的に経営基盤の強化を図りながら進めていただくという、要は、行政が社会福祉法人に社会福祉事業をやることをお願いしたという経緯が今までだってずっとあるわけですよ。もともと社会福祉法人制度のなりわいというのは、初めから新たな地域福祉ニーズに対応した事業を自主的に制度創設に先駆けて展開して、その後、県・市町村のいろいろな助成などを受けながら地域レベルでつくり上げてきたと。それが全国レベルで展開するに当たって制度化されてきて、それで初めて社会福祉事業の体系の中で位置づけられてきたという経緯がある中で、その辺がすごく違和感があります。私ども自治体としても、まだまだ社会福祉資本というものは足りないと思っていますし、再投下財産があるのであれば優先的にと書かれていますが、全面的に社会福祉事業に投下していただきたい、そういう気持ちでいっぱいです。
サービス提供につきましても、社会福祉事業が一般的に住民サービスの利用向上にきちんと使われていますかということを考えますと、我々が社会福祉法人に対して期待するのは、あくまで社会福祉事業を推進していただく、それが本旨でございます。そこを、ほかの地域貢献のために地域貢献事業という新たな定義をつくって、そこにまで投下しろと。そうなると、社会福祉事業へ投下するべきものが失われていく。さらには、社会福祉法人の本旨がすごくゆがめられるような印象を持っていまして、その辺は危惧されるところです。
○田中部会長 危惧に対してお答えになりますか。
○岩井福祉基盤課長 ただいま危惧いただいたのでお答えさせていただきますが、社会福祉法人につきましては、制度発足以来もともとは御存じのとおり慈善事業等から始まりまして、民間の社会事業として展開されたものでございます。今、委員からもありましたように、戦後措置制度というものの主たる担い手であったことは確かに事実でございます。一方、制度発足以来、社会福祉法人というものは、あくまで公私分離の原則に基づきまして、自立的な経営で地域のニーズを拾って対応していく主体として期待されておりました。これは社会福祉事業法の時代から当然前提とされた制度でございます。特に、介護保険あるいは基礎構造改革などの中で、社会福祉事業というものがさまざまな経営主体が参入する形になりました。そのときに至りまして、社会福祉法人の本来の本旨を再確認するということで基礎構造改革のときに、ただいまの第24条ができましたし、あるいは公益事業というものも位置づけられたわけです。
こういう状況を考えれば、そもそも本旨は、もちろんおっしゃるとおり社会福祉事業が主たる目的でございますが、社会福祉事業を主たる担い手であるにふさわしい事業というのは、当然、社会福祉事業を中心的に担う中で経営基盤を強化し、効率的に運営する中で、さまざまな工夫により社会福祉事業では対応できないニーズもとらえていくということが本旨であるということは一貫したものでございますし、解説などにもそう書いてあるわけです。厚生労働省としても制度発足以来60年ぐらいだと思いますが、これは一貫したものでございます。それを今回確認いたしまして、ただし、今委員もおっしゃいましたように、社会福祉事業が主たる事業でございますので、優先順位を明確にしたということでございますので、本旨は変わらないということは言えると思います。
○田中部会長 西條参考人どうぞ。
○西條参考人 法改正を考えていらっしゃるというところで危惧した話でございます。現行法上の第24条というのは、基本的には守っていただきたいというのが私の意見です。
○田中部会長 ありがとうございます。
ほかはいかがでしょうか。ほかに御意見・御質問はございませんか。懸念の点なり、危惧の点なり、あるいは理解が十分でない点については皆さん発言いただきましたが、この考え方全体がけしからんとかいかんという意見はなかったように思います。方向としては、よい方向に進んできたと感じます。皆さんもそのような理解であると考えております。
それでは、もう一つのほうに移ってよろしゅうございますか。
(はいと声あり)
○田中部会長 では、資料2会計監査人の設置等について、説明をお願いします。
○岩井福祉基盤課長 それでは、資料2会計監査人の設置等について、御説明申し上げます。
会計監査人の設置等につきましては、当部会におきまして第2回、経営管理組織を御議論いただきました回におきまして、この設置の必要性について方向を示していただいた次第でございます。
資料の2ページをごらんください。まず、現状でございます。
社会福祉法人につきましては、現在、外部監査を推奨しております。ここで言います外部監査と申しますのは、外部の専門家によるチェックを通じて、法人運営の透明性の確保を図ることを目的としたものでございます。
いわゆる公認会計士法第2条第1項に基づきます財務諸表の監査及び証明という、いわゆる監査法人等によります監査に限らず、広く税理士、その他の会計の専門家や社会福祉事業について学識経験を有する者による監査を実施し、推奨してまいりました。端的に言えば、いわゆる会計監査というよりは、どちらかというと外部評価に近いものでございまして、そういうもので透明性を確保するという趣旨で推奨しております。
また、公認会計士法に基づくような監査証明を受けるような監査等を受ける法人につきましてはデータはございませんが、極めて限られていると認識しております。
参考資料、社会福祉法人審査基準、それから、社会・援護局関係主幹課長会議資料につきましては、今、御説明しました現在推奨しています外部監査についての内容を示したものでございます。説明は省略させていただきます。
4ページをごらんください。ただいま出ました公認会計士あるいは税理士につきまして、その業務を示したものでございます。公認会計士法の第2条でございますが、公認会計士は財務諸表の監査または証明をすることを業としております。
税理士につきましては、税務代理等の業務に加えまして、第2条第2項でございますが、税理士は前項のほか、税理士の名称を用いて税理士業務に付随して財務諸表の作成、会計帳簿の記帳の代行、その他財務に関する事務を業として行うことができるとされております。
次に、5ページの課題でございます。
第1点、社会福祉法人の公益性を担保するため、ガバナンスの強化、財務規律の確立を図る観点から、一定規模以上の法人に会計監査人の設置を義務づけることが必要。これにつきましては、第2回の当部会におきます御議論で方向性を出していただいております。
その際でございますが、会計監査人の設置を義務づける法人の範囲については今後の検討となりました。これにつきまして今回提案させていただいていますのは、監査に対応できる事務処理の体制と、監査費用の負担能力を考慮して基準を設定するということでございます。それとともに受け入れ体制の整備を促進することが必要という認識を示しております。
第3点でございますが、ただいま申し上げましたのは会計監査人を設置する法人についてですが、会計監査人の設置義務化の対象とならない法人が出てまいります。これらにつきましても、ガバナンスの強化の観点から、外部の専門家によるチェック体制を整備することが必要ではないかということを挙げさせていただいております。
6ページにつきましては、第2回、第8回におけます資料を参考につけさせていただいております。
7ページをごらんください。今回提案いたします考え方でございます。これまでの御議論を踏まえまして、このようにしてはいかがかということでございます。
会計監査人の設置を義務づける法人の範囲については、監査の受け入れ体制や監査費用の負担能力を考慮し、一定規模以上の法人とすることが必要。その基準については、以下の要件のいずれかに該当する法人としてはどうかということでございます。
まず、第1の要件でございますが、収益は事業活動計算書におけるサービス活動収益でございますので、いわゆる損益計算書におけます収益、収支ではない収入の方でございますが、7~10億円以上の法人としてはどうか。規模に応じて段階的に義務化してはどうかということでございます。すなわち、まずは10億円程度からこれを義務化してはどうかということでございます。
これは、さまざまな考え方がございます。ただ、当部会におきましても御議論がありましたが、社会福祉法人の場合は、一施設一法人のような小規模の法人が大変多うございます。このような法人におきましては、事務処理体制なども大変弱いものがございます。会計監査人のような監査を受ける場合は、当然受ける側もさまざまな準備を含め体制が必要です。また、ガバナンスの強化も必要でございます。現在の状況を踏まえますと、このような会計監査人の設置を義務づけする法人といたしましては、やはり複数施設を経営する程度の事業規模を持っている法人であるべきではないかということでございます。
ここに掲げておりませんが、調査等におきますと、例えば、介護事業や障害の事業におきまして一事業所、例えば特養等でございますが、大体年間の収益が3~4億円の間でございます。そのようなことを考えますと、複数事業所以上を持つ法人といたしましては、やはり7~10億円程度ではないかということでございます。
第2の要件でございます負債でございます。これは貸借対照表における負債でございます。これを20億円以上の法人としてはどうかということでございます。当然、負債というものは事業体の経営の安定性をはかる上で重要な指標でございます。一方、社会福祉法人につきましては、施設整備等につきましては従来より補助制度というものがございます。それまたその補助制度が一般財源化される中で、地域によって水準がさまざまでございます。そういう状況を考えますと、当然重要な指標ではございますが、先ほど申し上げました受け入れ体制とか監査費用の負担能力を考えるに当たりまして、負債だけで見るのは個別差もございますので非常に難しいという状況でございます。また、今後の補助金の水準なども不透明なものでございまして、今後負債というものが高まっていく可能性もあります。
そういうことを考えますと、負債というものは余り厳しい水準にするのではなくて、ある程度高めの水準にしておく必要があるだろうと考えております。
一方で考え方でございますが、やはり合理性のある水準にする必要があろうかと考えております。1つの考え方でございますが、○1の要件で10億円の要件とした場合、この法人が借入金の返済負担可能額がどれくらいかという考え方でございます。もちろん補助金等もございますが、理論的な数値といたしまして、平均的な減価償却比率、さらに、収支差を考えますと、大体収益の1割程度を借金に返済することは可能ではないかと考えられます。10億円といたしましたら年間1億円となります。仮にこれを20年償還と考えますと、そして、金利の影響を除外いたしますと、単純に20年であれば20億円程度までは借りられるという形になります。逆に申し上げますと、10億円の収益規模でこれ以上借りているとなると大変厳しいのではないかということでございます。そのような観点から、20億円を一つのラインとしてはどうかということでございます。
8ページをごらんいただければと思います。この資料は、三菱総合研究所におきまして社会福祉法人に対して調査したデータを収集・分析されたものでございます。これらについて見ますと、折れ線グラフの一番左上の全体でございますが、約3,700法人。これは三菱総合研究所が収集されたデータの中で、財務諸表として明らかな誤りがないものを収集・分析されたものでございますが、これにつきましては10億円以上の収益の法人は全体の約9.8%でございます。7億円ですと17%となっております。
一方、保育所、児童養護施設は単体でございます。保育所のみを経営する法人、あるいは児童養護施設のみを経営する法人につきましては、ほぼございません。大変小さい法人が多いということでございます。
特別養護老人ホームを単体で経営する法人につきましては、10億円以上でございますと6.6%となっております。障害の場合は1.2%でございます。
やはり多いのはその他でございまして、複数事業所、例えば介護と障害に関する事業を行っているような法人の場合は、大きな法人がある程度ございます。10億円以上であれば15.5%、7億円以上では25.7%でございます。
大体このような規模、先ほど申し上げましたような観点を考慮しまして、このような10億円程度から義務化してはどうかということです。
一方、9ページをごらんください。先ほど申し上げました負債についてでございます。これにつきましては20億円というラインで申し上げますと、全体では0.3%でございます。大変低い水準でございますが、先ほど申し上げましたように、社会福祉法人におきます補助等があるという状況の特殊性を踏まえまして、負債につきましてはこの辺のラインで大体義務化してはどうかということです。
ちなみに、この折れ線グラフの中で、全体が紫でございまして、収益7億円以上の法人の割合が青のライン、□の点が打ってございます。10億円以上がオレンジのライン、○の点を打ったものでございます。これは何を表しているかと申しますと、この負債の要件で義務化される法人に対しまして、収益の要件では義務化の対象外の法人ですが、負債要件では対象になるケースがどれくらいあるかということです。収益の要件では義務化の対象外、例えば、収益10億円未満であるけれども、負債要件では対象になるようなケースがどれくらいあるかを示しております。大体10億円のラインで見ますと、ほぼございませんし、もっと下になりましても、そういうところはなかなかということでございます。
先ほど間違えましたが、20億円以上が0.3%と申しましたが、間違いでございます。20億円以上の法人の割合は全体で1.5%となっております。
資料7ページにお戻りいただきたいと思います。このような範囲で会計監査人の設置を義務づけてはどうかということを提示させていただいております。
そして、7ページの2番目の○でございますが、会計監査人による監査を受けるためには、法人において会計処理や内部統制の体制を整える必要があることから、円滑な導入に向けた準備を促進する。すなわち、各法人に対しまして、そのような準備を促していくことが必要ではないかということでございます。
3つ目の○でございます。今まで申し上げましたのは会計監査人の設置を義務づける法人でございます。一方で、会計監査人による監査の義務づけの対象とならない法人でございますが、これにつきましては、公認会計士、監査法人、税理士、または税理士法人による財務会計に係る体制整備状況等の点検、あるいは監事への公認会計士または税理士の登用、こうしたものを指導いたしまして、こうした取り組みを行う法人に対しましては、所轄庁による監査の効率化を進めることとしてはどうかという点でございます。
当然、会計監査人の設置を義務づけされない法人のほうが多く占めておりますので、こうした法人の会計面でのガバナンスを強化する必要がございます。従来からの外部監査を見直しまして、会計のより高い見地からの監査ができるように、公認会計士、監査法人、税理士、税理士法人による財務会計に係る点検、体制整備状況等の点検あるいは監事への公認会計士または税理士というものを進めていってはどうかという点でございます。
資料については以上でございます。
○田中部会長 ありがとうございました。
ただいま説明がありました資料2についての御質問・御意見をお願いします。
武居委員どうぞ。
○武居委員 ただいまの7ページのところでございます。前段の会計監査人を義務づける法人の範囲については特にございませんが、一番最後の○、会計監査人による監査の義務づけの対象とならない法人というところについてでございます。規模が小さい、したがって、事務処理をちゃんとできる人も事によったら少ないのかもしれない。そういう法人に対して外の目を入れる、これは会計処理の正確性等にとって必要なことというのはわかります。ただし、外部の評価、外部の目を入れる方法のレベルというのがありますので、大体どのレベルをお考えなのか、教えていただければと思います。
○岩井福祉基盤課長 このレベルにつきましては、これはある意味運用で行う世界でございますので、今後施行までに詰めていきたいと思っております。ただし、一般的な財務諸表の照合やそのレベルというよりは、もう少し実効性があるレベルが必要ではないかと考えております。一般的な公認会計士または監査法人による監査等であれば、ある程度そのような財務会計の内容までチェックいただけるとか、あるいはもう少しガバナンスの内容までチェックいただけるような内容、会計監査人による監査程度ではありませんが、そういうものができるのではないかと考えておりまして、その点はもう少し今後詰めていきたいと考えております。
○田中部会長 松原委員、お願いします。
○松原委員 資料の6ページの会計監査人の設置義務付けというところに、具体的には、上場企業における監査費用の対売上高比率を参考に設定するとありまして、これを見ますと売上高10億円以下の上場企業における監査証明報酬の対売上高比率は、約0.5%となっているとございます。一般の事業であれば、例えば為替リスクだ何だといろいろなリスクを見ていかなければいけないのに対し、社会福祉事業というのはそんなことはなく、変化も他産業よりはずっと少ないと言えます。例えば、ベッド数を知れば売り上げも費用もだいたいわかるような事業ですので、他産業の監査の費用、売上高比率というのは、そのままは当てはまらないと思います。これをこのまま参考にしないように、できれば最初はどのくらいかかるのか積み上げてみるなどをして価格設定をしていかないといけないだろうなと。まさに公費が入った事業において、ここでどんどんとられるようなことがないような仕組み、工夫が必要だと思います。
○田中部会長 御意見ですね。ありがとうございます。
藤井委員、お願いします。
○藤井委員 今の松原委員のおっしゃるとおりだと思いまして、それに重ねてでございますけれども、会社法における会計監査人監査とは目的がかなり違うし、起こり得る事態も相当違うということですから、この資料そのものにどうのこうのということではないのですけれども、ここをどうつくっていくかというつくり込みが非常に重要になるのではないかと思います。会社法の場合には、ステークホルダーであります株主あるいは債権者に対して適切な情報をいかに伝えるかということでございますが、社会福祉法人の場合は株主がいない、債権者というのは福祉医療機構と協調融資をしている銀行ということでございますから、かなりきちんとつかんだ上で融資されているということでございますので、むしろ目的は、公的な資金というもの、補助金資金というものが適切に使われているのだろうかという視点のチェックになろうし、その大前提で残念ながら財務諸表が適切につくられていないというケースも散見されるということでございますので、財務諸表がちゃんとつくられているかという、レベルもちょっと違う中身になると思いますので、目的及び具体的に何を明確にしていくか。再投下対象財産を明確化するというのが私は非常に重要なことだと思っているのですけれども、再投下対象財産の明確化というのを具体的にどのようにやっていくか、特に会計監査人による監査でこれをきちんと間違いないとしていただくのかというところも大きいと思いますし、これは今、議論ではないのかもしれませんけれども、松原委員のおっしゃったとおりに会社法の会計監査人監査というものとは、会計監査人が行う監査であっても基本的に違うものだという視点で見ていただきたいですし、さらに以前申し上げましたけれども、やはり公認会計士さん、税理士さんというのは一般の営利法人でやっておられることが多うございまして、営利法人であれば利益が上がれば上がるほどすばらしいということでシンプルにいけるのだと思いますが、非営利法人、社会福祉法人ではそうはいきませんので、考え方とか見方も違ってまいります。私の知る限り、非常に変なことが起きているところというのは、会計の専門職の方が入っておられて、それでいいのだとおっしゃっているケースもございますので、前から申し上げておりますように、公認会計士協会等々と検討していただいて、社会福祉法人にふさわしい会計監査のあり方を地道につくっていただく必要があるのかなという点を、繰り返しになる部分がございますけれども、申し上げたいということでございます。
もう一点でございますが、売り上げ規模にしろ、借入金にしろ、売り上げですとそう変動はないのですけれども、借り入れですと変動がございます。売り上げも1つ施設をつくったがゆえに監査の対象になったということもございますので、どの時点で会計監査人監査と呼ぶかどうかは置いておいて、監査を入れるかということの詰めが法律をつくられる上では重要になろうかと思いますし、さらに言いますと、法人の立場に立ちますと、いきなりその条件になったときに監査をしなければだめだと言われるよりは、そういった長期計画を持つところはあらかじめ会計監査を入れておくといったような、会社法の規定にも任意設置というものがございますから、任意設置を可能とするような規定にしていただければと思います。
それから、1点質問ですが、7~10億円となっておりますが、当面は10億円の線でやられて、将来的には7億円ということにするという意味なのか、7~10億円と書いてある点について御説明いただけますでしょうか。
○田中部会長 確認をお願いします。
○岩井福祉基盤課長 7~10億円の趣旨でございますが、今おっしゃられましたように、当面10億円で考えて、いろいろと状況等も踏まえまして順次拡大していくべきではないかという趣旨でございます。
○藤井委員 7億円に拡大するということですか。
○岩井福祉基盤課長 そうです。7億円というのは現段階の数字でございますので、7億円が将来も生きるかは別ですけれども、現時点で見ると大体そのあたりのラインが妥当ではないかということを今お諮りしておりまして、まずは10億円から義務づけまして、段階的に拡大を検討してはどうかということでございます。
○田中部会長 関川委員どうぞ。
○関川委員 会計監査人の設置についての基本的な考え方は賛成でございます。ただ、位置づけ等について、もう少し社会福祉法人の自主性を尊重するような位置づけができないかと思っています。社会福祉法人が社会的信頼を得るためには、やはり自ら財務規律を遵守し、内部統制の仕組みが確立されていることがとても重要だと思います。そのことは、会計規模にかかわらず、小さなところにおいてもやはり重要なのだと思っています。
2ページにありますように、従来も外部監査の実施を奨励してきましたけれども、審査基準で一定以上の規模の社会福祉法人は積極的に行うことが適当であるという書きぶりでしたが、やはり社会福祉法人の会計規模、大小にかかわらず全ての社会福祉法人に外部監査の実施を法律上義務づけられないかと思っています。
ただ、御配慮いただいているように、実施体制や費用の負担能力を考えると、会計監査人の設置については、一定以上の7~10億円の規模で義務化していただいて、それ以外の法人については、外部監査の実施を努力義務として位置づけていただきたいと思います。
整理して御提示いただいた8ページの資料でございますが、調査対象全体として3,700法人のうち、7億円以上が17%になります。たとえば、2025年くらいには、社会福祉法人の約6割、会計規模2億以上の法人において、なんらかの外部監査が実施されているというような状況をあるべき姿として目指して、外部監査の実施を努力義務として定め、10年ンかけて社会福祉法人の間に外部監査を広げていくことができないだろうかと考えます。
自主的に受ける外部監査に関しましては、会計監査人の設置に限られるものではありません。2ページの審査基準に従って幾つかの都道府県社協では、経営協をベースにして自主監査を事業化しております。自主監査といいましても、やはり審査基準にもありますように、公認会計士や税理士の方が実際に財務諸表等を点検して、不備の箇所があればそれを確認・指摘し、改善を求めて、公表に足る財務諸表の整備に努めてきたという実績がございます。
現在、大阪府のほかに秋田、神奈川、兵庫、岡山でこうした自主監査事業が制度化されています。例えば大阪では、昨年度45法人が外部監査を受けております。こうした努力義務というものを法律上の根拠にして、国として10年かけて6割から可能であれば、8割ぐらいのところまで、外部の会計の専門家が入ってチェックして、それを公表する体制をつくっていただきたいと思っております。
そういう観点から、改めて7ページの資料で考え方がございますけれども、○の2つ目、会計監査人による監査を受けるためにはと限定するのではなくて、すべての社会福祉法人に対し、ガバナンスの確立に向けて法人において会計処理や内部統制の態勢を整える必要があることからとした上で、外部監査の導入に向けた態勢整備を指導ではなくて、支援すると表現されたらいかがだろうかと思います。
また、会計監査人による監査の対象とならない法人にあっても外部監査を実施するという努力義務に基づいて、公認会計士、監査法人、税理士又は税理士法人による財務会計に関する体勢整備について外部評価を指導するという部分は、公認会計士、監査法人、税理士又は税理士法人による外部監査を奨励し、こうした法人については監査の効率化などをして、一定のメリットを与えていただいたらどうだろうか。このように考える次第でございます。意見でございます。
○田中部会長 ありがとうございました。
藤野委員どうぞ。
○藤野委員 7ページのところですけれども、収益というのは前は売上高といったように書いてあった気がするのですが、措置施設であれば措置費の投入額、或いは受入額という意味で理解していいのかというのが1つです。
もう一つは、措置施設では、例えば第三者評価の受審が義務化されています。この収益7~10億円以上の法人というのは、複数事業を行う法人であれば、ごく少数ですけれどもあるかもしれません。社会的養護関係施設は、このたび何年ぶりかで職員の配置基準が大幅に上がる見通しとなり、保育所も含め職員処遇の3%アップという話もあります。こうしたなか、10億円というのはなかなかないかもしれませんが、7億円とか8億円までは、措置費の大幅な改定があれば上がっていくのではないかと思います。先ほど言われましたけれども、例えば、5%といったら外部監査の公認会計士などに払う金額はすごい金額になりますし、措置の性格から言うと、そういうものを払う余裕はなかなか出てこないのではないかと思っております。
売上高は、前回あったような考えでよろしいのでしょうか。
○田中部会長 確認の答えをお願いします。
○岩井福祉基盤課長 間違いがあると困りますので正確に申し上げますと、社会福祉法人の新会計基準におきます事業活動収支計算書、一般の企業会計で言えば損益計算書でございますが、その収益です。ですから、今、委員がおっしゃいました、例えば措置費のみの収益、旧基準では収入と言っておりました。措置費しかなければ、もちろん措置費だけですが、措置費以外の収益、旧基準で言えば収入があればそれも含まれますが、いわゆる事業活動収支計算書の収益です。
○田中部会長 先に松山委員、次に藤井委員、お願いします。
○松山委員 確認なのですけれども、今、御質問の中で5%という数字が出ていたのですけれども、これは0.5%という理解でよろしいのですよね。そうすると、先ほどの上場企業の場合と社会福祉法人の場合で監査の考え方が違うというご指摘は正しいと思うのですけれども、事務局のほうで10億円という数字を出されたのは0.5%、つまり10億円の500万円の負担ということですよね。通常の監査費用というのが大体それぐらいの相場らしいという推定のもとで、とりあえず10億円でやってみて、もし社会福祉法人の監査が普及して、場合によってはコストダウンなども図ってもらえるのであれば、基準を少し下げてもいいのではないかと理解しました。そのような理解でいいのかどうかを確認させていただければと思います。
○岩井福祉基盤課長 以前御議論いただいたときに、今申し上げました0.5%というのを一つの参考として出させていただいております。ただ、今、松山委員からもありましたように、実際、社会福祉法人が監査を受けているケースが非常に少ないので、大体どれくらいの水準かというのはこれから、言ってみれば市場が形成されると思います。したがいまして、資料でそれを挙げておりません趣旨は、企業におきます監査証明費用との比率ではなかなか難しいだろうと。先ほど私が申し上げましたのは、複数事業以上と考えれば7億円から、もう少し大きくなると10億円と、付随事業もございますので、そういう考え方で考えております。
○藤井委員 何億円にするか、どこの線にするかというのは、今御説明があったように、複数事業をやっているという線が一番説得力があると思います。と申し上げますのは、そもそも行政、監査主体である都道府県、市といったところが、本来であればきちんと公的な費用が間違いなく使われているかということを見ていただくと。ここがしっかり見ているというのが社会福祉法人の制度のベースにあるのだと思いますが、複数法人にあり、あるいは他県にわたるとか、さまざまな事業をやるということになりますと、今の行政の専門性だけでは十分見がたい、あるいは財務諸表というものでチェックするという点においては、行政の職員が複式簿記のような財務諸表になれていないがゆえに、ちょっとわかる人間から見るとつじつまが合わないものがまかり通る場合があるといったような、行政がやっておられる部分を私はある意味補完するという観点もあるのではないかと思っております。
そういう観点からいきますと、本来全ての社福に外部の会計監査人監査が必要かという点に関して言うと、私は小規模な法人に関していえば、行政がかなりきちんと見られるのではないか。財務諸表を見るというよりは、きちんと公費が使われているかどうかということで十分足りる規模と考えられるのではないかと思っております。このあたりは私が日々おつき合いをしていたり、頼まれて見にいった法人の感覚で申しておりますので、これが正しいかどうかこちらで議論していただきたいのですけれども、本来、会計監査人監査を全部にすべきなのだけれども、大変なので10億円に線を引くということではないのではないかと私は思っておりまして、もし、大変であるがゆえに10億円で線を引こうという話であれば、この中では共感を得るかもしれませんが、今の社会福祉法人が非常に批判されかねないという状況の中では、小規模で大変だから無理だという理屈では、関川委員のおっしゃるような話になると思いますので、やはりここで言っている会計監査人監査においてどういう目的で何を求めているかということから積み上げて、どこまでやるべきかという議論をしていただかないといけないのかなと思います。
○田中部会長 世間に公表するときの理由の説明をきちんとしないと、かえって問題になってしまうと。
松山委員どうぞ。
○松原委員 今御指摘のところは非常に重要な論点で、なかなか結論が難しいと思います。というのは、私はどちらかというと関川委員がおっしゃったように、原則論としては外部監査の義務化であって、とりあえず制度を定着させるためにスタート時点では10億円で切るという考え方も実務的にはしようがないのかなという考えです。なぜかというと、厚労省で、たしか財務諸表の開示の通知を各所轄庁に出してもらうように措置をなさっていると思うのですけれども、今、実態がどうなっているかというと、多くの社会福祉法人はホームページで必ずしも開示していません。開示していると思って見てみると、2つのパターンがありまして、2012年度は出したけれども、それ以降は出していない。それから、出しているけれども貸借対照表と事業活動収支計算書は出さずに、資金収支計算書と財産目録だけ出している。ということは、データを見にいった私からすると実態がわからない資料を出しているということになるんです。どうも開示に対する姿勢が甘いという印象を持っていまして、これだと厳しくやらざるを得ないのではないかという考えで今はいます。
○田中部会長 藤井委員どうぞ。
○藤井委員 今の点は私も全く同感です。
ちょっと言い忘れたのですが、7ページにお書きいただいている会計監査人による監査の義務付けの対象とならない法人についてはというところが結構肝になると思っておりまして、会計監査人の監査というのをどうイメージして、何をどこまでやるのかということにかかるのですが、やはり基本的には伝票からいって利益操作がないかみたいなことまでをやっていくのが会計監査人監査でございまして、これは行政は結構やっておられるケースが普通なのではないかと思います。小規模法人において変なお金の使われ方をしていないかどうかというのは行政がチェックできている、しかし、財務諸表にそれがうまく反映されていないケースがある。これは何が悪いのかというのはよくわからないのですが、財務諸表がおかしいというチェックはすぐできますので、このレベルのチェックは財務会計に係る態勢整備状況等の等で、まず、財務諸表をぱっと見て怪しげなところがないと。このレベルで怪しげなところがあるのが問題でございまして、これで怪しげなところがなくて、行政がきちんとチェックしている小規模法人に、私の感覚で言うと公的な費用を変な使い方をしているとか漏れるということはないと思っておりますし、ここに例えば、会計監査人専門職である公認会計士や税理士が入ってチェックしたから、よりよいチェックができるとも余り思えないんです。しかし、これが大規模になっていけばいくほど行政がチェックする能力を超えますし、財務諸表との一致についても、ますます行政がチェックできる範囲を超えてきますので、そこはやはり会計の専門職にチェックしていただくという考え方になるのではないかと。
今おっしゃっておられたホームページへの開示についての意識がまだまだ薄いというのは、私も現にそういうふうに見受けますし、大変残念になっているわけでございますが、まずこういった形で会計監査人による監査の義務づけの対象でない法人についても、頻度の問題はありますけれども外部からざっと見ていただいて、おかしい、おかしくないというやりとり、これは、しばしばあると申し上げますけれども、私の感覚で半分もあるわけではないので、1割と言い切れないのが残念なところなのですが、ある一定割合あるといったところが、やりとりを通じることによって意識が高まっていくと。意識が高まっていく中で、さっき申し上げたように自主的に外部の会計監査人監査をやってみようじゃないかというところがふえてくるということを積み上げることも、実は今の時点でいろいろなところに義務化の線を下げますと、わけもわからないでやらされるという意識が強くなりはしないかという懸念もございまして、今はそれぐらい厳しい状況なので、外から土足で入るぐらいのことをやらなければいけないという意見もあるかと思いますが、私は基本的に効果の面から言いまして、行政がチェックするというのをベースにしている中では、財務諸表の形式をチェックすれば会計の専門職の見る力を十分活用することになるということで、そういったことを積み上げながら、社会福祉法人全体を外部にきちんと見ていただく、あるいは社会福祉法人自身がそういうことの重要性や意味を理解していただくという仕組みを当座つくると。10億円という線を徐々に下げていくといったお話がありましたけれども、それもそういった流れの中にあるということで考えていけばいいのではないかと思います。
以上です。
○田中部会長 西條参考人、お願いします。
○西條参考人 今、行政の監査が十分か十分でないかというお話も出ましたが、確かにそれも一方ではあるのですが、何よりも法人自身の経営基盤の強化のために、例えば本部機能を強化することが大事だと思うのですが、そのためには財源と人材が必要です。その人材を育成すると言っても、人件費も含めて財源を捻出するのに苦労されている法人がとても多いわけです。ですので、先ほどの議論にあった余裕財産を法人本部職員、施設職員もそうですけれども、人材育成に使うといった活用の仕方も考えられますし、何より監査機能の強化というよりも、まず法人の経営基盤の強化という観点からは、法人自身の本部機能の強化といった観点で我々は指導させていただいているところです。
その中で、資料の7ページの監事への公認会計士または税理士の登用、これは既に要綱に基づいて各法人とも1人は会計が見られる人、もう1人は施設運営を見られる人、これは義務づけておりますので、形上はそういった監事が配置されているというのが実態です。ただ、機能していないというのが一方でございますので、これからは両面で、我々の監査機能の強化とともに法人の本部機能の強化が必要と考えています。
それから、先ほど第三者評価のお話もありましたけれども、あれはあくまでサービスの質を見る評価でございまして、財務を見るといった趣旨・目的ではないです。ただ一方で、監査の効率化には現状では運用では役立てている。つまり、2年に1回の監査を、第三者評価を受ければ4年に1回とする緩和措置があります。ただ、それよりも先ほど来議論があります外部監査を実施した法人につきましては、そういった監査の周期を2年に1回を4年に1回にすることで監査の効率化ということは達成可能だと思っています。
以上でございます。
○田中部会長 ありがとうございます。会計監査の話とサービスの質の評価の話と情報公開の話はそれぞれ別であり、それぞれが補完し合って全体として質を高めるとの理解が私たちの部会での議論でした。整理をしていただきました、ありがとうございました。
ほかはいかがでしょうか。柳川委員どうぞ。
○柳川委員 7ページですけれども、従前より出ておりますとおり、基本的に原則は全ての法人で外部監査をすべきだというのが私どもの考え方です。ただ、措置費や事業規模があるので、ゴールは原則全法人ですが、そこに向けての経過措置といったものは今後検討する必要があるのかなと考えています。
体制整備については、やはり内部にお金のことがよくわかる人材がいるのはとてもいいことだと思います。ので、組織力を上げるという意味合いで前向きにとっていただいていいのではないかと思います。また、専門である監査法人に任せるケースが出てくると思いますが、所轄庁のほうも本当に財務諸表などをきちんと見ているのかなと首をかしげるケースも正直なくはないので、社会福祉法人にやれやれと言うのであれば所轄庁のほうも本当にちゃんと研修とかやっているのかなとちょっと感じることもございますので、その辺の人材育成もあわせて同時にあるといいのかなと考えています。
3点目は、内部統制という話が出ているのですが、お金の観点からも大事なのですが、従前私も申し上げたことがあるかと思いますけれども、やはりコンプライアンスは重要です。お金のことが見えてくれば、当然不正や労務管理における行き届かないところという課題が出てくるので、これを小規模事業所でやるとなると誰が何を言ったかばれてしまいますが、例えば、団体とか協会で何とか引き受けができないかとか、あるいは公的機関で内部通報の窓口ができないのかということは今後、検討していく必要があるのかなと考えております。
最後に余談ですけれども、ここのところ北欧とか開発途上国の大臣、通商代表部の方が弊社にお越しになったのですけれども、皆さん共通して家族制度に頼ることはできないと。開発途上国も思ったよりインフラが進んでいるわけではない。ただ、少子高齢化は日本が一番進んでいて、今改革をやっているようですねと、三者三様皆さんおっしゃっていました。ここは日本のやり方がアジアのほかの開発途上国に対してインプリケーションを与える可能性があるので、苦しいかと思いますが、順番を追って随時改革をしていっていただきたいと感じております。これは余談でした、失礼しました。
○田中部会長 西條参考人どうぞ。
○西條参考人 今の御発言に行政として看過できない部分がありますのでお話しさせてもらいますけれども、監査の役割と言いますのは、先ほど藤井委員もおっしゃっていただいたように、介護保険給付も含めて公費が適切に運営されているかということを主眼に置いてやっているわけです。各法人の経営分析や財務分析まで、なぜ行政が面倒を見なくてはいけないのか。それは翻せば、社会福祉法人の自立性を損なう趣旨にもなりますので、会計は職員全員が読めるわけでもないし、行政にそこまで求められている話でもないと、そこだけは整理させていただければと思います。
○柳川委員 神奈川県さんを名指しにしたわけではないのですけれども、基本的に役割は当然そのとおりだと私も思います。ただ、そういう付随したところも見る力というのは、仮に役割ではなかったとしても必要なのかなと感じます。というのは、実態として正直言うと本当に伝票などをチェックして、このまま報告のとおりですねという自治体さんが一部あるというのが私の指摘事項だったのですけれども、役割は役割でやっていただく一方で、もう少し付随のところについても、社会福祉法人の経営者やスタッフだけではなく、所轄庁などにも少し担っていただいてもいいのかなという意見です。
○田中部会長 福間委員どうぞ。
○福間委員 外部監査人の義務化の議論がいろいろございますけれども、先ほどの整理の中では、現実に機能のあり方云々は別にすれば、専門の会計がわかる方を入れるというのは法人の体制であると、これまでの法人指導からいってもそうだと思います。今回の議論の中では、理事会の機能と権限あわせて責任と。そこには倍賞責任も全部発生するとなれば、結果的に会計の不祥事があって、それが法人に損害を与えれば倍賞責任を当然問われると。そのための評議員会が議決機関として性格も変えるということであれば、そこの機能がきちんとすれば、当然そこが求めるという行為が発生するわけですので、全体のガバナンスの中で牽制効果も評価した上で、何を義務化するかということをしていかないと、何でもかんでも義務化すればいいものでもないし、先ほど藤井委員がおっしゃったような、本来行政の公の責任の中で社会福祉法人が位置づけられているという関係もありますので、その上での実勢とガバナンスであるということもしておかないと、屋上屋を重ねて首だけが絞まっていくことでは、結果的にきょうの議論にある地域公益活動の主体的能力がそがれてしまうことになるのではないかと思いますので、ぜひ、その辺も御配慮いただきたいと思います。
○田中部会長 ありがとうございます。
藤井委員どうぞ。
○藤井委員 結局、今いろいろ会計監査人監査ということで議論しているのですが、皆さん方のお話を聞いて改めて思ったのは、会計監査人監査だけではなくて、外部からの監査をどう考えるかという話であり、当然のことながら、監事監査あるいは内部監査のバランスといいますか、それぞれがどのような根拠をもとに何を求めているのか。特に今、社会福祉法人では内部監査に関する規定というのは通知を含めてなかったと思うのですけれども、内部監査の考え方をどう取り入れていくかということも議論があるのでしょうし、内部監査、外部監査、監事監査以外に、今、福間委員がおっしゃっておられたガバナンスという観点から言いますと、評議員がチェックするということが理事、監事に対して損害賠償責任を負わせましょうという話があったときに、株式会社の場合には株主代表訴訟なるものが可能になっておりますけれども、評議員が裁判に訴えることが可能な仕組みにするのかしないのかといったことも含めて、他の非営利法人とのバランス及びこれらの監査が相まって、適切な社会的に信用のある、社会に必要とされる法人としての監査ができ上がっているかどうかということだと思いますので、会計監査人監査ということだけをしっかり議論する必要はあるにしても、やはり全体像の中でこれをお示しいただいたほうがいいと思います。皆さん方それぞれのお立場でそれぞれのことを議論する中で、ちょっと議論が混乱しているのはその点ではないかと思いますので、会計監査人監査は会計監査人監査だけで議論できると思いますけれども、ほかのものとのバランス及び根拠及び目的・役割分担みたいな一覧表とかそういうまとめ方は一度していただいたほうがいいのではないかと思います。
○田中部会長 最終まとめは、もちろんしなくてはならないですが、この部会の責務として会計監査人の話だけしているわけではないので、トータルに組織のガバナンスの話も、内部の話も全部含めて統一的な報告にするように、皆さんで協力してまいりましょう。ありがとうございます。
ひとあたりよろしゅうございますか。先ほど柳川委員が言ってくださった点は私も賛成で、社会福祉法人の公益性からこういう会をきちんとつくって法律を変えなくてはいけないとの了解がスタートだったかもしれませんが、でき上がってみれば実はアジアの国々にとって参考になるような、あるいは北欧の国々にとっても参考になるような、少なくとも一歩でも先に進んだような結果になるような報告を書き、あとは法律にしてください。それは事務局にお願いするしかありませんが、私たもちそういう気持ちでおります。
本日は、ここまででよろしゅうございますか。ほかに一言がなければ、用意されていました2つの議題についての議論はここまでといたします。ありがとうございました。
では、次回の開催について、説明をお願いいたします。
○西辻総務課長 次回でございますが、1月23日金曜日、10時から開催を予定しております。
以上でございます。
○田中部会長 御議論ありがとうございました。これにて本日の審議を終了いたします。御多忙の折お集まりいただきまして、どうもありがとうございました。
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