ホーム> 政策について> 審議会・研究会等> 労働政策審議会(労働条件分科会有期雇用特別部会)> 労働基準法第113条の規定による公聴会 議事録(2015年1月29日)
2015年1月29日 労働基準法第113条の規定による公聴会 議事録
労働基準局労働条件政策課
○日時
平成27年1月29日
○場所
共用第9会議室
○出席者
公益側
荒木 尚志 (東京大学大学院 法学政治学研究科教授) |
労働者側
安永 貴夫 (日本労働組合総連合会 副事務局長) |
使用者側
川口 晶 (日本経済団体連合会 労働法制本部長) |
事務局
村山 誠 (労働条件政策課長) |
武田 康祐 (労働条件政策推進官) |
○議題
1 開会挨拶
2 公述人公述
(1)公益側
(2)労働者側
(3)使用者側
3 挨拶閉会
○議事
○司会 それでは、定刻になりましたので開始させていただきます。
ただいまから、労働基準法第113条の規定に基づきまして「特定有期雇用労働者に係る労働基準法施行規則第五条の特例を定める省令案要綱」に関する公聴会を開催いたします。
公述人の方々には、お忙しい中、お集まりいただきまして、まことにありがとうございます。
公述をいただく前に、主宰者であります厚生労働省労働基準局労働条件政策課長、村山誠から御挨拶申し上げます。
○村山課長 本日は、大変お忙しいところをお集まりいただきありがとうございます。座って失礼させていただきます。
さて、本公聴会は労働基準法第113条に基づいて開催するものでございまして、本日は、公労使各側1名ずつ、合計3名の方々から御意見を伺うこととしております。
本日御意見を伺うこととしておりますのは、既に御案内申し上げているところですが、「特定有期雇用労働者に係る労働基準法施行規則第五条の特例を定める省令案要綱」についてであります。
本日の公聴会におきましては、公述人の方々の忌憚のない御意見を伺いたく存じます。
どうぞよろしくお願いを申し上げます。
○司会 それでは、引き続きまして公述人の公述に移らせていただきます。また、傍聴人の方々に申し上げますが、公聴会中は御静粛にお願い申し上げます。
最初に、公益側を代表いたしまして、東京大学大学院法学政治学研究科教授、荒木尚志公述人に公述をお願いいたします。
それでは、よろしくお願いいたします。
○荒木公述人 東京大学で労働法を担当しております荒木と申します。どうぞ、よろしくお願いいたします。
本日は「専門的知識等を有する有期雇用労働者等に関する特別措置法」の施行に当たりまして定めることとされております「特定有期雇用労働者に係る労働基準法施行規則第五条の特例を定める省令案要綱」について意見を述べたいと思います。
この省令案は、2つの法律の規制を前提としております。
一つは、平成24年の労働契約法改正によって導入された、有期労働契約に関する無期転換ルールであり、もう一つはこの無期転換ルールの原則の特例を定めた特別措置法であります。
そこで、まず今回の省令案の前提となっている労働契約の無期転換ルールについて述べ、次にこの特例である特別措置法について概観した後、今般の省令案について意見を述べたいと思います。
無期転換ルールは、平成24年の改正労働契約法18条により設けられた制度で、同一の使用者との間で有期労働契約が通算で5年を超えて更新された場合に、労働者の申し込みにより無期労働契約に転換するというものです。
有期労働契約は期間満了によって自動終了し、その契約終了は解雇ではないため、解雇権濫用法理の適用がないとされるのが原則であります。つまり、有期契約には雇用保障がなく、不安定雇用であるという問題点があります。
そして、更新されるかどうかが使用者の意思にかかっているという雇止めの不安がありますと、有期契約労働者が、例えば年次有給休暇の取得等、法の保障した権利の行使を控えたり、労働条件改善要求、職場における苦情の申し立てといった、労働者としての当然の主張も抑制されかねない、そういう問題点が指摘されておりました。
つまり、有期契約労働者は、雇用保障に欠けた不安定な地位に置かれる結果、使用者に対して交渉上著しく不利な立場に立たされることになります。
そうした関係を使用者が5年を超えて利用することは、有期労働契約の濫用的利用と評価できる、そういう考え方が、この無期転換ルールの根底にはあると解されます。
この点、判例法理である雇止め法理は、一定の場合に合理的理由のない雇止めに対して制約を課すものであり、平成24年改正で、労働契約法19条として立法されることになりました。
しかし、雇止め法理によって雇止め無効とされた場合も、当該契約は依然として有期契約として更新されるに過ぎず、期間満了ごとに契約更新問題が生ずるという状況は解消されません。
また、雇止め法理だけが立法化された場合、これまで雇止め法理を認識していなかった使用者が、その対策として、製造業等を中心に広がっておりました3年で雇止めをするという実例に倣って、更新上限を短期に設定するような事態も懸念される状況がございました。
こうした状況の中で、不安定雇用たる有期労働契約が5年を超えて反復継続された場合には、有期労働契約の濫用的利用とみなして無期労働契約への転換を可能とするルールを新たに設けるべきである、とのコンセンサスが労働条件分科会で形成されました。
こうして、平成24年の労働契約改正法により、5年無期転換ルールが導入されることとなったわけであります。
有期労働契約に内在する不安定雇用という問題点については、有期契約締結を正当事由がある場合に限定するべきとの議論もありました。しかし、有期労働契約は無業、失業状態にある者が労働市場に参入するに当たって、有用な契約形態であります。
欧州では、有期契約利用を厳しく制限した結果、労働市場が硬直的になり、高失業を招いたとの反省があり、入口規制と言われる締結事由規制は緩和し、出口規制と言われる濫用的な反復更新に対する無期転換規制に比重を移す国がふえてきておりました。
こうした諸外国の経験も参考に、平成24年労働契約改正法は、入り口規制は採用せず、出口規制である無期転換ルールを採用したところであります。
無期転換ルールの基準として、欧州諸国と比べるとやや長い5年という期間が設定された点は、有期契約が労働市場において果たす役割とともに、有期契約で雇用された労働者がその間に技能を十分に習得、発展させ、使用者としても無期契約に転換しても問題がないことが確認できる期間としての考慮があったものと推測されます。
そして、無期転換ルールは、不安定雇用問題の解消の第一義に考え、労働条件については別段の合意がない限り、有期契約におけると同一の労働条件で転換するものとしております。
このように、無期転換ルールは有期労働契約の労働市場における機能や意義と、不安定雇用問題の対処等を総合的に勘案して導入されたものと評価できます。
無期転換ルールは、一昨年4月1日に施行されたわけですが、その後、現政権のもとで、雇用戦略特区ワーキング・グループが設けられ、その検討の中で、無期転換ルールの特例を設けるべきであるとの議論が出てまいりました。具体的には、企業競争力の強化等のため、有期労働契約の締結時に労働者側から5年を超えた際の無期転換の権利を放棄することを、国家戦略特区において認めてはどうかというものでした。
その後、政府部内のさまざまな議論を経て、一昨年10月の日本経済再生本部決定において、特区に限らない全国規模の規制改革として、無期転換ルールの特例を検討することとなり、一昨年の臨時国会で成立した、国家戦略特別区域法附則に検討規定が盛り込まれたと聞いております。
その規定においては、5年を超える一定の期間内に完了することが予定されている業務につく、高度な専門的な知識等を有する労働者を対象に、労働契約法第18条の通算契約期間のあり方等について、労働政策審議会で検討を行い、所用の法律案の平成26年通常国会への提出を目指す旨が明示されました。
これを受けて、労働政策審議会の労働条件分科会有期雇用特別部会と職業安定分科会高年齢者有期雇用特別部会において、一昨年の12月から昨年の2月にかけて、集中的に合計6回の審議が行われ、審議会の厚生労働大臣に対する建議として「有期労働契約の無期転換ルールの特例等について」が取りまとめられるとともに、専門的知識等を有する有期雇用労働者等に関する特別法案の要綱に関する厚生労働大臣の諮問に対し、おおむね妥当と考える旨の答申が行われました。
この特別措置法案は昨年の通常国会に提出され、継続審議の取り扱いを経て昨年11月に臨時国会で成立し、本年4月1日から施行される予定であります。
特別措置法は、高度な専門的知識等を有する有期雇用労働者及び定年後引き続いて雇用される労働者が、その能力を有効に発揮し、活力ある社会を実現できるよう、これらの有期雇用労働者の特性に応じた雇用管理に関する特別な措置が行われる場合に、無期転換ルールにおける通算契約期間の特例を設けるものであります。
具体的には、高度な専門的知識等を有する有期雇用労働者については、一定の期間内に完了することが予定されている業務につく期間、定年後に引き続き雇用される労働者については、定年後に引き続き雇用されている期間のそれぞれについて、無期転換ルールにおける無期転換申込権が発生しないものとするという特例を設けるものです。
なお、高度な専門的知識等を有する有期雇用労働者に関する特定の期間は、10年が上限とされています。そして、特例の適用を受けようとする事業主は、対象労働者に応じた適切な雇用管理措置計画を作成し、厚生労働大臣に提出して、その計画についての認定を受ける必要があります。
認定を受けるには、その計画が厚生労働大臣が定める、対象労働者に応じた適切な雇用管理の実施に関する基本的な指針に照らして適切なものであること、が必要となります。
有期労働契約の濫用的な利用を抑制し、労働者の雇用の安定を図るという無期転換ルールの趣旨は当然尊重される必要がありますが、この点、特別措置法はその対象をエンプロイアビリティーが高く、雇用について問題の生ずるおそれの少ない、高度な専門的知識等を有する有期雇用労働者及び定年後引き続いて雇用される労働者に限定しております。
加えて、事業主が特例の対象となる労働者を特性に応じた雇用管理に関する措置についての計画を作成し、厚生労働大臣の認定を受けることを本特例の利用の要件としております。
こうしたことを考慮すれば、特別措置法は無期転換ルールの趣旨を尊重しつつ、高度な専門的知識等を有する有期雇用労働者の能力の有効な発揮や、高齢者の雇用の維持、拡大を目指したものとして評価できるように思います。
以上の経緯を前提としまして、今般、特別措置法の対象となる有期雇用労働者、これを特定有期雇用労働者と言いますけれども、これらの者に係る労働基準法施行規則第五条の特例を定める省令案が検討されているところであります。これは、さきに触れた労働政策審議会の建議「有期労働契約の無期転換ルールの特例等について」に盛り込まれた内容を踏まえてのことと聞いております。
その内容は、無期転換ルールの特例について、労使双方に無期転換申込権発生までの期間が明確となるよう、事業主は労働契約の締結、更新時に特例の対象となる労働者に対して、無期転換申込権発生までの期間を書面で明示するとともに、高収入かつ高度な専門的知識等を有する有期契約労働者に対しては、特例の対象となる業務の具体的な範囲も書面で明示する仕組みとするため、必要な省令改正を行うことが適当とするものであります。
今回の省令案要綱の内容は、特別措置法にいう計画対象を第一種特定有期契約労働者、これは専門的知識を有する有期雇用労働者のことですが、これと事業主、及び第二種特定有期雇用労働者、これは、定年後引き続き雇用される有期雇用労働者のことですが、これとその事業主との間の労働契約の締結について、特別措置法に基づく労働契約の特例に関する事項や、特例に係る特定有期業務の範囲を、新たに労働条件明示の対象事項とする旨を定めるものであります。なお、施行日は特別措置法の施行の日、すなわち本年4月1日となっております。
さて、この省令案の評価ですけれども、特別措置法の施行に当たっては無期転換申込権に関する特例の適用をめぐり、個別労働関係の紛争が発生するおそれも懸念されるところです。そこで、さきに触れた労働政策審議会建議では、特例の対象となる労働者との労働契約の締結、更新に際して、無期転換申込権発生までの期間等を、一般の労働者に明示すべき労働条件に加えて、書面で明示することを使用者に義務づけることとしておりました。このような措置がとられますと、対象労働者がみずからの無期転換申込権発生までの期間を明確に認識できるようになり、紛争の未然防止に資するものと考えます。
ところで、今回の案は、一般の労働者に関する労働条件の明示について定める労働基準法施行規則第五条とは別の省令として定めるという形式がとられております。
これは、今回の労働条件の明示の対象項目が、特別措置法の対象労働者に限られ、労働者一般に適用されるものではないことから、一般的な労働条件の明示の対象項目とは切り離して規定しようとしたもので、その区別が明確となり、労働者や使用者、労働基準監督の現場にとって、明確でわかりやすい形式であると考えます。ただ、労働基準法15条1項で明示すべき労働条件の明示方法として書面明示が要求されるのは、労働基準法施行規則5条2項、3項により指定された事項に限られますので、今回、法規則5条とは別の省令として定められるのであれば、書面明示についても、本省令においてその旨を明記されるべきではないかと考えます。
したがいまして、私としては本省令案に書面明示について追記することを前提とした上で、今回提案されている省令案要綱の内容を妥当なものと考えたいと存じます。
以上をもちまして、私の公述とさせていただきます。
どうも、ありがとうございました。
○村山課長 荒木公述人におかれましては、本日は大変お忙しい中にもかかわらず御出席いただき、貴重な御意見をお聞かせいただきまして、心より感謝を申し上げる次第でございます。
厚生労働省といたしましては、本日お伺いした御意見を十分に参考とさせていただき、特に公述人より御指摘のあった、書面公布等の明示に係る規定をめぐる対応を図りながら、今後、省令の制定作業を進めさせていただきたいと考えております。
今後とも、なお一層の御指導を賜りますよう、お願いを申し上げる次第でございます。
どうも、ありがとうございました。
○荒木公述人 ありがとうございました。
○司会 どうも、ありがとうございました。
続きまして、労働者側を代表いたしまして、日本労働組合総連合会副事務局長、安永貴夫公述人に公述をお願いいたします。
公述をいただく前に、主宰者より御挨拶を申し上げます。
○村山課長 本日は、お忙しいところをお運びをいただき、まことにありがとうございます。
さて、本公聴会は、労働基準法第113条に基づいて開催するものであり、本日は、公労使各側1名ずつの合計3名の方々から御意見を伺うこととしており、公益側公述人の公述を終えていただいたところでございます。
本日御意見を伺うこととしておりますのは、既に御案内申し上げている「特定有期雇用労働者に係る労働基準法施行規則第五条の特例を定める省令案要綱」についてであります。
本日の公聴会におきましては、公述人の忌憚のない御意見を伺いたいと存じます。
何とぞ、よろしくお願いを申し上げます。
○司会 それでは、よろしくお願いいたします。
○安永公述人 連合の副事務局長をしております、安永でございます。よろしくお願いいたします。
「特定有期雇用労働者に係る労働基準法施行規則第五条の特例を定める省令案要綱」につきまして、労働者を代表し、意見を申し述べさせていただきます。
まず、当該省令案要綱についての具体的な意見を申し述べるに先立ち、今回の省令案の前提となっております「専門的知識を有する有期雇用労働者等に関する特別措置法」、いわゆる有期特措法について、一言申し上げたいと思います。
この有期特措法は、高度専門労働者や定年後に引き続いて雇用される者といった、一部の労働者を対象に、労働契約法第18条に定めております無期転換ルールについて特例を設けるものであります。
御存じのとおり、無期転換ルールは、有期労働契約の濫用的な利用を抑制し、有期契約労働者の雇用の安定を図るため、2013年4月に施行されたばかりの仕組みであって、いまだ無期転換の実例がほとんど生じていない段階にあるものです。
すなわち、無期転換ルールは、まさにこれからその効果があらわれてくるというものでありまして、現時点では当該ルールの見直しが必要となるような、何らの立法事実も存在しておりません。
このような状況にあるにもかかわらず、今回、有期特措法によって早くも当該ルールについて特例を講じることとなったことについては、まことに遺憾と言わざるを得ません。このことが、第1点であります。
また、特例を講じるタイミングの問題だけでなく、労働契約法に特例を講じること自体についての問題も極めて大きいと考えております。労働契約法は、全ての労働者にひとしく適用されるべき基本的な民事ルールを定めた法律であります。
したがって、個別法によって特例を講じ、労働契約法が規定している基本的なルールに穴をあけていくという枠組み自体、民事ルールのあり方に照らし問題であると考えております。
さらには、こうした民事ルールの特例を行政庁の関与のもとに認めるという手法についても、同じく民事ルールのあり方としては問題があるものと考えております。こうした点を2点目として申し述べておきたいと思います。
これらの事項は、労働政策審議会や参議院厚生労働委員会での参考人質疑等の場を通じて労働側として繰り返し主張してきたものでありますが、本日の公聴会においても、まずもっての我々の前提認識として、再度申し述べさせていただきます。
さて、本日の主題であります省令案要綱の内容について、労働側としての評価を申し述べたいと思います。
今回の省令案は、昨年2月14日に取りまとめが行われた労働政策審議会建議の中の「(5) 労働契約が適切に行われるために必要な具体的措置」において「事業主は、労働契約の締結・更新時に、(1)特例の対象となる労働者に対して無期転換申込権発生までの期間を書面で明示するとともに、(2)高収入かつ高度の専門的知識等を有する有期契約労働者に対しては、特例の対象となる業務の具体的な範囲も書面で明示する仕組みとするため必要な省令改正を行うことが適当である。」と整理されたことに基づき起案されたものであり、その内容自体は建議に照らしても妥当なものと考えております。
ただし、無期転換申込権が発生しない期間がいつまでであるのか、といったことは対象となる労働者にとってみずからの雇用の安定に直結する重要事項であることから、使用者から確実にそれが明示されるよう、「モデル労働条件通知書」の改正を初め、省令の趣旨の徹底に向けた十分な措置があわせて講じられるべきであります。
また、契約期間中に無期転換申込権が発生しない期間に変更が生じたような場合の取り扱いについても明確化しておくべきだと考えております。
さらに、施行期日が本年4月1日とされていることから、施行までの時間が極めて限られている状況となっております。このような短期間の中で本省令の内容を含め、有期特措法の内容が正しく労使の関係者に周知徹底されるよう、万全の対策を講ずることが極めて重要であることも、強く申し上げたいと思います。
厚生労働省におかれましては、周知徹底に向け、さまざまな工夫を講じながら、しっかりとした取り組みを行っていただきたいと考えます。
最後に、今回講じられることとなった特例と集団的労使関係のあり方についても触れさせていただきます。
この点について、昨日、労働政策審議会の部会に提示された「基本指針案」を拝見いたしますと、「特定有期雇用労働者の特性に応じた雇用管理に関する措置を行うに当たっては、関係労働者の理解と協力が重要であり、~関係労働者の理解と協力を得るよう努めることが求められる」といった記載も設けられております。
私としても、この「関係労働者の理解と協力が重要」というのは、まさにそのとおりであると思っております。
そこで、より一層集団的労使関係に配慮した制度運用を行っていくためにも、有期特措法や省令案には含まれていないところではございますが、事業主の皆さんが第一種あるいは第二種の計画を作成・申請するに当たって、十分な労使コミュニケーションのもとで慎重にその内容を検討されるように促す観点から、「あらかじめ過半数労働組合に対して意見聴取を行う」よう義務づけるという点については、引き続き検討していくべきテーマであると考えております。
いずれにしましても、この有期特措法は、有期労働契約の濫用的な利用を抑制しその雇用を安定させることを目的として、労働政策審議会や国会での真摯な議論を経て設けられた無期転換ルールに特例を講じるものであります。
したがって、同法の施行に当たっては、そうした無期転換ルールの本来的な趣旨を後退させることのないよう万全の対策を講ずるべきでありますし、法施行後の特例の適用状況についても厳格に検証されるべきであります。
その結果、万が一にも労働者保護の趣旨が損なわれるような事態が生じているようであれば、同法の廃止も含めた制度の見直し議論が行われてしかるべきと考えております。
以上、有期特措法の内容も含め「特定有期雇用労働者に係る労働基準法施行規則第五条の特例を定める省令案要綱」について、労働者を代表して考えを申し述べさせていただきました。
趣旨をお酌み取りいただきますようお願い申し上げまして、公述を終えさせていただきます。
○村山課長 本日は、大変お忙しい中にもかかわらず御出席いただき、貴重な御意見をお聞かせいただきましたことにつきまして、心より感謝を申し上げる次第でございます。
厚生労働省といたしましては、本日お伺いした意見を十分に参考にさせていただきながら、省令の制定作業及び公述人より御指摘のあった周知徹底の取り組み等も含めまして、今後しかるべき対応を進めさせていただきたいと考えております。今後とも、なお一層の御指導を賜りますよう、お願いを申し上げたいと思います。
どうも、ありがとうございました。
○司会 ありがとうございました。
続きまして、使用者側を代表いたしまして、日本経済団体連合会労働法制本部長、川口晶公述人に、公述をお願いいたします。
公述をいただきます前に、主宰者より御挨拶を申し上げます。
○村山課長 本日はお忙しいところ、まことにありがとうございます。
さて、本公聴会は労働基準法第113条に基づいて開催するものであり、本日は公労使各側1名の合計3名の方々から御意見を伺うこととしており、公益側、労働者側の公述人の公述を終えていただいたところでございます。
本日御意見を伺うこととしているのは、既に御案内申し上げている「特定有期雇用労働者に係る労働基準法施行規則第五条の特例を定める省令案要綱」についてであります。
本日の公聴会におきましては、公述人の忌憚のない御意見を伺いたく存じます。
どうぞ、よろしくお願いいたします。
○司会 それでは、よろしくお願いいたします。
○川口公述人 経団連の労働法制本部長の川口でございます。よろしくお願いいたします。
「特定有期雇用労働者に係る労働基準法施行規則第五条の特例を定める省令案要綱」について、使用者側の立場から意見を述べたいと思います。
まず、有期労働契約に対する基本的な考え方について申し上げます。
我が国における有期労働契約の実態を見ますと、無期労働契約と比べて、就労期間や就労日数あるいは労働時間などの労働条件を柔軟に設定し、締結されることが多くなっております。
これは、例えば育児や介護など、家庭の事情を持つ労働者側のニーズと、業務の変化に迅速に対応しなければならない使用者側のニーズ、この双方を踏まえた結果であると考えております。
今後、女性や高年齢者など、多様な人材に労働市場へ参加いただき、その持てる能力を十分に発揮してもらうためには、引き続き有期労働契約を有効な雇用形態の一つとして位置づけ、その活用を図っていくことが重要であると考えております。
他方、2008年の世界金融危機の後、急激に景気が悪化する中、有期契約労働者の雇止め問題がクローズアップされました。有期契約労働者の雇用の安定を図るべきとの社会的要請を受け、労働政策審議会で審議が行われ、その取りまとめをもとに、無期転換ルールの新設を初めとする労働契約法の改正に至ったわけでございます。使用者側といたしましては、改正労働契約法の施行により、有期労働契約の適切な活用が一層進むものと期待しております。
しかし、無期転換ルールに関しては、例えば定年後、再雇用された方に5年を超えて有期労働契約で働いていただいた場合、再び無期労働契約へ転換するケースが想定されます。
この点につきましては、使用者側は労働政策審議会において、高年齢者の雇用実態等を踏まえ、特例を措置することを求めた経緯がございますが、改正労働契約法では措置されないまま施行されました。
こうした中、政府は国家戦略特別区域法案、いわゆる国家戦略特区法案を成立させ、我が国の産業競争力、立地競争力の強化を図る方策の一つとして、高度な専門能力を有する有期契約労働者を対象に、無期転換ルールの特例を措置する方針を打ち出しました。
これを受けて、労働政策審議会で審議が開始されたわけですが、使用者側は、高年齢者についても特例を措置すべき必要性について理解を求め、結果、高度専門労働者と高年齢者を対象とする特例の枠組みが取りまとめられました。
その後、専門的知識等を有する有期雇用労働者等に関する特別措置法案として国会に提出され、関係者の御尽力のもと、さきの臨時国会で成立したところでございます。
いわゆる有期特措法は、高度専門労働者(第一種)と、高年齢者(第二種)について、企業が適切な雇用管理を行うことを前提に、無期転換ルールの通算契約期間の特例を認めるものです。
これにより、有期労働契約の実態を踏まえた無期転換ルールの適切な運用が可能となり、国家戦略特区法附則第2条にある措置目的、すなわち産業競争力の強化や、グローバルな活動拠点の形成促進の実現はもちろんのこと、多様な働き方の促進や、雇用機会の創出にも寄与するものと考えております。
さて、今般の「特定有期雇用労働者に係る労働基準法施行規則第五条の特例を定める省令案要綱」は、有期特措法の特例の対象となる第一種及び第二種の特定有期雇用労働者に対し、無期転換申込権発生までの期間を明示すること、また、第一種特定有期雇用労働者に対して、業務の具体的な範囲を書面で明示することとするものです。
いずれも、使用者側にとっては規制強化となりますが、労働契約の締結の際、当事者である労働者と使用者がしっかりとコミュニケーションをとり、労働条件について認識を共有していくことは、個別労働紛争の防止を図る上で有効であると考えております。
そうした観点から、省令案の内容は必要かつ適切な措置と考えております。
なお、省令案を踏まえ、厚生労働省のモデル労働条件通知書の見直しがなされることと思います。企業実務では、このモデルを参考としている企業が多くございます。
モデルの見直しに当たりましては、企業実務に過大な負担が生じない様式としていただくとともに、わかりやすい記入要領を作成していただきたいと思います。
最後に、有期特措法の施行日は本年4月1日とされております。
各企業は、施行を見据えて準備を進める必要がありますが、余り時間がない状況であります。経団連といたしましては、施行に向けて会員企業、団体への周知に努める所存ですが、政府におかれましても、早急に周知活動を展開していただきたいと思いますので、何とぞよろしくお願い申し上げます。
私からは以上でございます。
○村山課長 本日は大変お忙しい中にもかかわらず御出席いただき、また貴重な御意見をお聞かせいただき、心より感謝を申し上げます。
厚生労働省といたしましては、本日お伺いした御意見を十分に参考にさせていただきながら、省令の制定作業を進めさせていただきますとともに、モデル労働条件通知書のわかりやすい見直しや、早急な周知徹底等も含めまして取り組んでまいりたいと考えております。
今後とも、なお一層の御指導を賜りますよう、よろしくお願いを申し上げる次第でございます。
どうも、ありがとうございました。
○司会 以上をもちまして、予定されておりました公述人の公述は全て終了いたしました。
公述人の方々におかれましては、お忙しい中お集まりいただきまして、まことにありがとうございました。御礼申し上げます。
それでは、これにて本日の公聴会を終了させていただきます。
どうも、ありがとうございました。
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