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2014年10月24日 第2回目安制度の在り方に関する全員協議会 議事録

労働基準局

○日時

平成26年10月24日(金)
10:00~11:25


○場所

厚生労働省12階専用第14会議室


○出席者

【公益委員】

仁田会長、鹿住委員、中窪委員、藤村委員

【労働者委員】

木住野委員、須田委員、田村委員、冨田委員、松田委員

【使用者委員】

小林委員、高橋委員、中西委員、横山委員、渡辺委員

【事務局】

谷内大臣官房審議官、松本大臣官房参事官(併)賃金時間室長
辻主任中央賃金指導官、久富副主任中央賃金指導官、新垣賃金時間室長補佐

○議題

目安制度の在り方について

○議事


○仁田会長 それでは、ただ今から、第2回目安制度の在り方に関する全員協議会を開催いたします。
 本日は、皆様、御多用のところ御出席いただきまして、ありがとうございます。
 本日、武石委員、土田委員、萩原委員、吉岡委員が御欠席です。
 前回の会議では、これまでの中央最低賃金審議会における目安制度に関する検討の経過等につきまして理解を深めるために、事務局から資料の説明がございました。そして、改正最低賃金法の運用状況、今後の進め方についてお諮りをいたしました。その際、次回は目安審議の後に再開をして、全員協議会の検討事項等について御議論を頂くということとしておりました。
 本日は、まず事務局で、平成23年の全員協議会報告で今後の課題として残されている事項について、また今後の進め方の案について資料を用意していただいておりますので、説明をしていただきたいと思います。
 では、お願いします。

○松本参事官 9月1日付で大臣官房参事官に就任いたしました松本でございます。この席を借りて、遅ればせながら御挨拶申し上げます。どうぞよろしくお願いいたします。
 それでは、資料を御説明申し上げます。資料No.1とNo.2を準備してございます。
 まず、資料No.1でございます。平成23年全員協議会報告で残された課題をリマインド的に整理してございます。お手元の「最低賃金決定要覧」も必要に応じて御参照くださればと思います。
 平成21年から平成23年に行われました全員協議会では、間に中断の時期があったこともございまして、幾つかの事項につきまして議論が尽くされなかったということで、引き続き検討することが必要であると合意された事項がございます。
 まず、資料No.1の1つ目の○ですが「ランク設定のあり方について」でございます。前回の報告書では、今日まで30年以上の間に全国的な整合性の確保にどのように寄与してきたのかという観点等からの検証と評価がなされるべきといった御意見や、長年労使が真摯な話合いを基に積み上げてきた経緯を十分に踏まえた上でランク制度のメリット・デメリットを十分に洗い出しながら慎重に検討していくべきといった御意見がございました。
 その上で、報告書では、「次回の目安制度のあり方に関する見直しの際には、今般の検討で議論が尽くされなかった点や「生活保護に係る施策との整合性にも配慮するものとする」規定が新たに加えられた最低賃金法改正法の施行をはじめとする目安制度を取り巻く近年の状況の変化等も踏まえ、ランク設定のあり方について引き続き検討することが必要である。」とされたところでございます。
 これが1つ目の○です。
 次に、2つ目の「賃金改定状況調査等参考資料のあり方について」でございます。賃金改定状況調査における調査対象事業所の選定につきまして、前回の報告書では、「賃金の低廉な労働者のほか、一般的な労働者の賃金改定状況を反映するよう、少なくとも企業規模100人未満まで対象を拡大すべきである」との御意見や、「労働者の就業実態を反映するよう業種の見直しを検討するべきである」との御意見、また、「地域の実態を反映するよう地方小都市の事業所の比率をふやすべきである」との御意見がございました。
 その上で、引用していますけれども、「次回の目安制度のあり方に関する見直しの際には、今般の検討で議論が尽くされなかった点も踏まえ、調査対象事業所の選定について引き続き検討することが必要である」とされてございます。
 1ページ目の下の四角でございます。その他、参考資料のあり方につきまして、「最低賃金法第9条第1項に規定されている」「地域における労働者の生計費及び賃金並びに通常の賃金の支払い能力に係る各種統計資料を収集・整備してきたところであり」「中小企業の生産性に係る資料」を加えることとされております。
 その上で、引用部分ですが、「次回の目安制度のあり方に関する見直しの際には、今般の検討で議論が尽くされなかった点も踏まえ、地域における労働者の生計費及び賃金の水準並びに中小企業の生産性について様々な観点からの検討及び評価を行うための資料など参考資料のあり方について引き続き検討することが必要である」とされてございます。
 資料1の次のページ、2ページ目でございます。「生活保護と最低賃金との乖離解消方法について」、「解消すべき生活保護との乖離額が年々大きく変動し得るという問題について」は、「被保護単身世帯総数において住宅扶助額が相対的に低い持ち家等及び公営住宅等に居住する世帯の割合が低下を続けている一方、住宅扶助額が相対的に高い民営住宅に居住する世帯の割合が増加を続けていることが寄与していると考えられる」とされた上で、「今般の検討では、具体的な乖離解消方法の見直しについて議論を尽くすまでには至らなかったことから、当面は現行の乖離解消方法を維持するとともに、解消すべき生活保護との乖離額が年々変動し得るという問題については、引き続き対応を検討することが適当である」とされてございます。
 最後に「次期のランク区分の見直しについて」でございます。平成21年から平成23年の全員協議会において新しい総合指数の算出を行い、それに基づく各都道府県の各ランクへの振り分けを行い、平成23年度の目安審議から現行のランク区分が適用されております。
 その際、平成16年の全員協議会において決定されたランク区分は5年ごとの見直しを行うに至らず、平成22年度の目安審議まで適用したのですけれども、それにつきまして、引用部分ですが、「次回の目安制度のあり方に関する見直しの際には、ランク区分については、平成7年の全員協議会報告に復して5年ごとに見直しを行い、平成28年度以後の目安の審議において新しいランク区分を用いることが適用である」とされております。
 以上が平成23年全員協議会報告で残された課題とされてございます。
 次に、資料2でございます。この全員協議会の今後の進め方の案でございます。
 まず、今年につきましては、本日を含めまして2回日程の調整をさせていただいております。ここにあります第2回、第3回ですけれども、本日と次回の2回で、先ほど御説明申し上げました、残された課題を含む全般について、網羅的に、しかし、本日はフリーディスカッションのような形で御議論いただければと思っております。
 この2回でそういった御議論をいただいた上で、年明けの進め方につきましては、この2回の議論を踏まえまして次回に御議論いただければと考えております。今の時点の案といたしましては、1月から4月までの間で3~4回の御議論をいただきまして、5月に論点を整理いたしまして、ここで来年度の目安審議のための中断を挟みまして、9月に議論を再開し、来年度中に取りまとめをするといったスケジュール案を想定してございます。
 資料の説明は以上でございます。

○仁田会長 どうもありがとうございました。
 それでは、ただ今事務局から御説明を頂きましたけれども、それにつきまして御質問、御意見等がございますればお出しいただきたいと思います。
 まず、御質問等があれば頂いて、その後、いずれにしろ今後の進め方を御相談しなくてはいけませんので、それについてはそれぞれのお立場を述べていただくというのが適当かと思っております。
 御質問については特によろしいでしょうか。

○中窪委員 では、1つだけ。
 生活保護の関係で、先日、住宅扶助について見直しをしているという記事を見たような気がするのですけれども、その点について何か情報があれば教えていただきたいのです。

○新垣室長補佐 申し訳ありません。ただ今は持ち合わせておりませんので、またお調べして次回御報告したいと思います。

○仁田会長 よろしいですか。
 他には御質問はよろしいですか。
 それでは、進め方についての御意見等をお出しいただければと思います。

○高橋委員 では、皮切りにお話をさせていただきたいと思います。
 今、御説明いただきました前回の全員協議会報告で残された課題を改めて拝見いたしまして、かなり技術的な課題が指摘されているところです。もちろん、今回の全員協議会の中でこれらの課題について議論して、できれば一定の結論を導き出せればと思いますけれども、せっかくの機会なので、いきなり技術論に入るというよりは、制度そのものの在り方について検討を深めることができればと考えている次第です。
 御承知のとおり、目安制度は昭和53年からスタートしているわけです。労使が合意して示された目安というのは最初の3年間だけで、あとは労使合意に至らず、公益委員の見解を地方に示すことについては反対しないという示し方がずっと続いてきているわけですけれども、本来でしたら、労使が合意したものを地方にお示しする制度であるべきであろうと思っています。
 前回の全員協議会でも確認いたしましたとおり、現在の目安審議は「法の原則及び目安制度を基に、時々の事情を総合的に勘案して行う」という形になっておりますけれども、とりわけ、ここ数年の審議では「法の原則」や「目安制度を基に」の後の「時々の事情」のウェイトが極めて高くなってきて、かなりいびつな形になっているのではないかという印象を持っています。
 その結果として、地方からは、どうしてこういう金額で決まったのかが理解しがたいという意見を多くいただくところでございます。これは私だけの受けとめかもしれませんけれども、目安制度に対する信任というか信頼感というものが大きく損なわれてきているのではないかと考えております。
 今回、審議に当たりまして、もちろん、この場で検討していくのですけれども、可能であれば、各地の最低賃金審議会の方々の御意見なども、どういう形で拝聴するかはわかりませんが、ぜひお寄せいただいて、地方の皆さんがこの目安制度についてどのようにお考えで、どのような御要望を持っていらっしゃるのかということも踏まえて検討していくことが適当ではないかと思っております。
 皮切りに、私からは以上でございます。

○仁田会長 ただ今の使用者側の御意見について、労働者側のほうで何かございますか。

○須田委員 おはようございます。再開しましたので、よろしくお願いいたします。
 冒頭、高橋委員から言われた、確かに前回積み残したのは技術論といえば技術論というか、その根っこのところの議論が本当はあって、その下で前回も議論した結果、絞り込んで残った課題なので、その前段のほうのそもそも論の論議が時間の無さもあって十分議論されていなかったという認識をしていますので、そこは言われるように、単にこれに特化したというよりも、その背景にあるものを含めて十分議論したほうがいいとまず思っています。
 その上で、若干の進め方といいますか、議論の仕方という意味で、目安に対して地方がどう思っているかというのは感じますけれども、例えば今日示されているような日程で、まずこの場で課題を整理した上で、ある程度絞り込んでから地方の意見を聞くなら聞く。今の段階から全く白紙で、何か意見があるかというと、いろいろなものがあり過ぎて、逆に聞かなくてもわかっているというのも含めて出てきそうな気がするので、この場で少し詰めてから地方に聞くのであれば聞く、聞き方はいろいろあるとは思いますけれども、そこは後で考えたらどうかなと思います。
 その上で、これは反論ではなくて労働側の意見ということで聞いていただければと思うのですが、高橋委員が言われました、前回まとめた「時々の事情」もあるのですけれども、第9条第2項の一個一個の定義についてきちんと確認してやってきたのかという反省があります。法改正で「類似の労働者」から「地域における労働者」に変わった。生計費については「生活保護との整合性」という項目が加わった。その「類似の」から「地域における」に変わったのに、例えば参考資料の集計対象は従前と変わらないでいいのか。それから「地域における労働者の生計費及び賃金」と書いているのですけれども、その「賃金」というのは水準のことを言っているのか、引き上げ幅のことを言っているのか、どちらでもとれる。
 これまでの目安審議の経過としては、上げ幅議論に終始していて、生活保護との乖離の問題についても、地域の一般的な、低廉な労働者の水準をどう考えるかという議論が余りなされない中で、世の中一般の春の労使の取組の結果を踏まえた上げ幅を重視した審議で本当にいいのだろうか。ワークペイという観点で、賃金はどういう水準がふさわしいのかという議論が本来あってしかるべきではないのか。
 考え方の一つの例として、成長力底上げ戦略推進円卓会議、円卓合意は高卒初任給という水準を目指すという考え方があった。雇用戦略対話合意は、800円、1,000円、という水準がいいかどうか、あるいは前提がいいかどうかは別として、目指すべき水準を示した。時々の審議会の中でどう上げていくのか、どうするのかという議論をしてきたと考えると、第9条第2項で言っている賃金というのは賃金の水準のことではないのかというのが我々の思いです。水準を議論すべきなのに上げ幅議論ばかりやっている。全国的整合性をとるということで、ランク区分を設定しているのだけれども、結果として同率で改定するのであれば、ランクを分けている意味が何もない。まして、今ある水準の上げ幅でいくことによって、結果として地域間格差は拡大する一方。ということが、昭和52年に合意したこの目安制度の在り方に関する全員協議会で審議していくという趣旨に沿った審議になっているのかどうかということについて非常に問題意識を持っている。その辺の第9条第2項の三要素をどう考えるのだというところの共通認識をまず整理して、だとすれば、どういう資料が必要なのかという議論にしていかないと、今のやり方を前提にして、ああいう参考資料、こういう参考資料と言っても、目的なく技術論だけに走ってしまうような気がしてなりませんので、その辺を深掘りしてやっていったらどうかと思います。
 それから、最初に言われた公労使合意した目安を示すということは望ましいことだと思います。一方、ありがたいなと思ったのは、目安制度は要らないと言われるのかと思ったら、目安制度を尊重していきましょうという趣旨だと思いますので、だとすれば、そのふさわしい目安審議をどうすべきなのかということについてしっかり議論していくことが重要ではないかと思っております。
 単純にランク区分は4つがいいのかとか、それぞれの47都道府県をどこのランクに振り分けるのがいいとか、それは最終的には必要だと思いますけれども、入り口はその議論以前の問題だろうという思いが強いので、できれば、今日と、先ほど事務局からもありましたけれども、11月に向けて、それぞれが具体的にどういうテーマについて問題意識を持っているのか、お互いに披瀝することで、余りにも議論が拡散することも防ぎつつ、年明け以降、ある程度的を絞った議論をできるような進め方をしていただくとありがたいと思っておりますので、御検討をよろしくお願いしたいと思います。

○仁田会長 進め方については、実質上、中身との関係でやり方が変わってくると思うのですけれども、ただ今労使双方でおっしゃられたことからいたしますと、全員協議会で何を議論するかということについては参会者の意思によって決めるということですので、今日お出しした資料についても、ここに一定のガイドラインとして何かを提出しているということではなくて、いってみればリマインダーであると思いますので、ここで合意したような形で進めてまいればよろしいかなと思っております。
 また、目安の見直しの議論をするということですから、目安のカスタマーである地方最低賃金審議会の御意見を何らかの形で伺うということは当然必要かと思います。ただ、それをどのようにやるのがいいかということについてはもう少し検討させていただきたいと思いますので、ただ今そういう御意見があったということで引き取らせていただいて対応を考えさせていただければと思います。
 よろしいでしょうか。
 それでは、ただ今、いわば皮切りの御議論があったと思いますけれども、実際には、今回と次回の議論の様子を踏まえてその後の進め方についてもう一度検討をさせていただければと思います。
 それでは、せっかくの機会でございますし、時間がとられておりますので、第1回目の議論、実質的には第2回目ですが、前回を踏まえて、我々は何を議論したらいいのかということを含めて、以後、御意見を自由にお出しいただいて、今後の議論の出発点にしたいと思いますので、よろしくお願いいたします。
 どうぞ。

○横山委員 せっかくの機会ですので、ふだんから少し気になっていることを申し上げます。もしそれが議題にふさわしくないというか、今後の進め方に関係ないとすれば、仕方がないのですが、今、須田委員からお話がありました点について、私もかなり似たような感じを持っています。そもそもここはどういう論議をするのか、どういう場なのかというところをもう一度原点に立ち返って確認したほうがいいのではないかと思います。
 というのは、少しまどろっこしい言い方をしましたが、ストレートに言いますと、ここは春季交渉の場ではないはずなのに、どうも審議が春季交渉の延長みたいになっている。労使交渉という場ではないでしょうと。その結果が、多分、結論とか思いは違うところにあると思いますが、須田委員が言われたように、上げ幅の話だけではないかと。これで延々とやって徹夜にまでなるというのはどうもおかしな感じがします。
 春季労使交渉の場と違うのではないでしょうか、というのは、そもそも、この審議会というのはどういう役割なのか。これは法律にも明記されているから、それはそれで後ほど確認するとして、お互いの立ち位置というのがどうしても賃金交渉みたいな話になっていることに違和感があります。私も長い間経営側としてやってきましたが、賃金交渉をやるときには、使用者側も労働者側も、それぞれ処分権限を持っているのです。使用者側として、決めたら決まったものについては払う。懐をちゃんと勘定して、ここまでなら払えるし、それ以上は会社の存続にかかわってくるから勘弁してほしい、こういう話ができるわけですが、この場では処分権限なしで人の財布に手を突っ込んでいる。しかも、それが、決まったら罰則つきの強制です。罰則つきの強制をするという決め方をしているのは、あくまで最低賃金の話であって、そこを踏まえた論議にならないとどうも違和感が残るという感じを持っているのです。
 したがって、最低賃金というのはあくまで最低の水準ですから、出せるところは幾らでも出したらいいのです。端的に言えば、今、例えば都内の外食などのアルバイト募集の張り紙は1,200円ぐらいです。20年ぐらい前はやはり1,200円ぐらいのときがあったのです。好景気のとき、1,200円ぐらいだった。だけれども、そのとき、最低賃金は700円前後です。それで1,200円ぐらい出ていた。その後どうなったかというと、世間の情勢が厳しくなったときには街中での募集賃金は800円とか。都内から外れて埼玉のすぐそのあたりでも750円などという時給があったのです。それが1,200円から下がったのです。そういう上がり下がりがある。でも、ここから先は下げてはいけませんよという最低賃金の縛りがあるはずで、それは下げられない。
 最低賃金以上であれば賃金の上下はある。そういう動きをするのが最低賃金だと。では、最低賃金というのは何のためにあるのかというのをもう一度確認しないと、ただ上がればいい、あるいは上げなければいけないということが立場上あるにせよ、労使交渉のようなスタイルでは少し違和感があるなと正直思っているところであります。須田委員の言われたことに若干近いかもしれませんけれども、目指すべき水準と言われると、そこはこれから先の論議ですが、いわゆる幅だけという話でもないし、罰則をもって強制する最低賃金とは何だというところをもう一度踏まえて論議を進めていくことが必要ではなかろうかと考えておりますので、御参考にしていただければと思います。
 以上です。

○仁田会長 何か御意見ございますか。

○田村委員 横山委員の意見を受けての話になるかと思いますけれども。
 最低賃金法の第9条が非常に重要視されているところがあって議論しているのですけれども、今の横山委員の話を含めて、私は第1条がものすごく大事だと思っています。第9条で見ますと、通常の事業の支払い能力ということが出てきて、そこが厳しいと今みたいに上がり下がりがあるという話になると思うのです。第1条は、賃金の最低額を保障することが前提にあって、労働条件の改善を図り、もって労働者の生活の安定、労働力の質的向上及び事業の公正な競争を確保する、それが日本経済に資するのだというポジティブな話と、第9条による支払い能力というネガティブな話と両方があって、私はむしろこの第1条というところをもう少し議論する必要があるのではないかという意見でございます。

○仁田会長 どうぞ。

○須田委員 全くと言ったら語弊があるけれども、そもそも論を議論しますよというのは、そういうのも含めて言っているわけで、ただ、受けとめ方として、今、田村委員が言ったようなこともあれば、ベースになっている労働基準法第1条の「人たるに値する」賃金とは一体何なのだと。昭和22年当時の労働省次官通達によれば、「本人だけではなくて世帯もカバーする賃金水準」だと。こういう人たちの最低賃金はどうあるべきだと、我々は立場上、そういう見解をどうしても主張してしまう。
 本来この場で最低賃金をどう議論するのだと。そういう意味合いにおいては同じ思いがありますので、ぜひともそこを議論した上で、第1条なり第9条なりの一定の解釈は、あえて言わせていただけば、双方が自分らにとっていい方向に解釈して議論しているような気がどうしても否めない。そこが全く一致するかどうか、やってみないとわかりませんが、同じ土俵の中でまず議論しましょうと。今、こちら側は相撲で、そちら側はレスリングをやっているみたいな、そんな議論をしていても答えは出ないではないかという思いがあるので、そこをまずきちっと同じ土俵に乗った上で、立場上、必ずしも意見が合うとは限らないと思うのですけれども、議論しているのだということを逆に地方最低賃金審議会にもみせる、社会にもみせるということがある意味で重要だと思うのです。答えも重要だけれども、議論プロセスをみせていくというのもこの場の役割ではないかと思っていますので、ぜひともそういう立場で議論させていただければと思っています。

○仁田会長 他にはいかがでしょうか。
 では、小林さん。

○小林委員 幾つかの宿題が全員協議会にはあるわけですけれども、中央最低賃金審議会から目安を出すときに、私が6年前から始めたときとは大きく変わってきています。5年前にランクの見直しをしたときのランクというものも含め、法律に基づいた三要素などで、最低賃金の目安を出しましょうというものとは、かけ離れた状況にここ2、3年なっていると思います。先ほど高橋委員が言いましたけれども「時々の事情」というのがすごく大きく作用していて、先ほど来、須田委員が言っている、上げ幅という議論で来ているのが本当にいいのかとずっと感じながら、今まで夏の審議会に出ていた感じがするのです。
 本会では各地方の地方最低賃金審議会の委員の方々に毎年集まっていただいて、内部で意見を聞きながら中央最低賃金審議会の目安審議に臨んでいるのですけれども、怒られるというのもあるのですが、去年、今年、ちょっと変わってきているのです。あきれているという感じか、わけのわからないという状況で、皆さん、とりあえず集まって帰っていくという状況がずっとあった。中央最低賃金審議会の目安審議に臨むに当たって、おまえ、これ、任せるぞというような言い方が、昔はここまではこういう感じで応えていこうというものがあったのですけれども、ここ数年は何も言わなくなった。見放された状況があるといっても過言ではないようなところがある。これは本会だけではなくて、恐らく、各団体ともあるのだと思うのですけれども、ここのところ数年の実感です。
 目安というのは、先ほど須田委員は、目安を出すことがいいのか、目安を審議することを存続するのがいいのか。いやいや、目安審議というのは重要だというのも含めて、今回、原点から公労使で話した上で発信していかないと、地方最低賃金審議会からの中央最低賃金審議会に対する信頼性という部分が失われてしまう可能性が非常に大きい。公益委員の見解を発信して、それが地方でどうなのだというようなところまで来ているような感じがするので、各ランクについて言う前に、中央最低賃金審議会から目安を発信する仕組みについて一度話し合ったほうがいいのではないかと感じています。
 私自身、枠にはまっているところはあると思うので、胸襟を開いて話し合いたいというのが感想です。長くなりましたが、そのような思いがあるということです。

○仁田会長 どうぞ。

○田村委員 我々も、労働側委員が地方で選任されたり代わったりしたときに、勉強会とかいうことをやって意識合わせをしたりするのですけれども、使用者側は、そういう意味での新任の地方の委員とかに対しての教育だとか意思疎通のための会議というのは、中身を含めてどのくらいの頻度でされているのですか。ちょっと教えていただければと思います。

○小林委員 各団体違うと思うのですけれども、本会は、地方最低賃金審議会が始まる前に1回やります。途中経過で2回やります。地方最低賃金審議会の委員と会議を持つのは年間3回です。その他、違った意味で、労働の関係の委員会というので地方最低賃金審議会の委員の方々が集まるケースがあって、その時々に話はするのですけれども、要覧を含めて、過去の経緯も含めてお話をするのは1回、最初しかないという状況です。その後は、進みながら3回ぐらいで、新任の委員の方々と連絡をとりながら、各地域の状況とかいうものも含めて相互に相談しながらやる会議を持っています。これは各団体違うと思いますけれども、本会ではそういう状況です。

○仁田会長 他にはいかがでございましょうか。木住野さん。

○木住野委員 御指名でございますので。
 論点といいますか、質問ということでもないのですけれども、考えていることということで発言したいと思います。
 目安制度というのは、これはずっと言われていることで、先ほど上げ幅か水準かという議論がありましたときに、結局、上げ幅で決めているわけですから、どうしても高い低いというところについて必ずお互い不満が残ってしまうという議論を重ねてきた。それで、おっしゃるような御意見が出てくるような気がしているのです。
 ただ、この間、法改正で生活保護基準というのが出てきたときに、非常に明確にここだけは守らなくてはいけないという社会的な水準の目安というものが出てきたときに、1つ流れが変わってきたという認識を持っているのです。ですから、いきなりそれを変えるということは難しいのでしょうけれども、何を決めているのかというときに、そういう一つの目安、目安制度の目安とは意味が違うのですけれども、社会的な目安を決めていく方向での議論をするためには何が必要なのかということを考えるべきだと思っています。例えば、その時々の情勢ということもあるのですけれども、そこはそこでいろいろな意味があって、その時々の情勢というものがあって、そこを我々は引き受けて、ある意味、議論をしていかなくてはいけない立場にあると思うので、そのときに、今、何が求められているのかといったときに、社会的な水準というのはどのように決めればいいのでしょうか。答えはないのですけれども。
 ただ、先ほどの議論、やりとりをお伺いしてきて、やはりそこら辺のところを目指していかなくてはいけないのかなというようなことをちょっと感じております。

○仁田会長 ちょっとまずいことを始めてしまったなと思っているのです。今までの審議会でこういうことをやったか、書いてはいないのではないかと思うのですけれども、始まってしまいましたので。では、実質上キックオフですので、皆さんに一通り。
 中西委員、いかがでしょう。

○中西委員 日本商工会議所では、最低賃金の改定につきまして、例年7月頃に地方最低賃金審議会の委員の方々にお集まりいただきまして、その方々を交えての意見交換を実施しております。
 その中で、地方における地域間格差等々についての理解、さらに現状の実態把握についても時間を割いて真剣に議論を重ねてほしいという意見を、いずれの地方の委員の方々からも再三再四いただいております。私どもは非常に深刻な地方の状況を直接委員の方々から聞いており、この会議の席でお伝えしなければならないことだと考えております。
 特に地方の委員の方々のみならず、中小企業の経営者の方々から異口同音にお話が出ますことは、県内の中で、県庁所在地のような都市部と周辺地域の企業の景況感に非常に大きな開きがあるのだという現状についてです。その現状認識をもう少し強めて、深く検討していただきたいということだと思います。
 具体的に申し上げますと、北海道などは非常に面積も広いわけですが、札幌周辺とその他の地域、または愛知県などでは豊田市を中心とするところとその他の周辺地域ではかなりの乖離、格差が広がっているのではないかということです。首都東京におきましてもそうですし、神奈川県は隣県でございますが、今年視察させていただきました折に、そういう神奈川県特有の事情についても各委員からの御意見等々をいろいろいただいておりますので、皆様もそのことにつきましては共通認識をお持ちでいらっしゃるのではないかとは思っております。
 また、アベノミクスの政策効果についてですが、円安の進行により輸出関連企業と内需依存型企業で温度差がかなりある中で、今後、議論をする際には、こういった格差が存在するということの共通認識を持った上で、非常に厳しい業種や地域についての理解と現状把握、分析をした上で、そこに目線を合わせた審議を行わなければならないのではないかと考えております。
 以上でございます。

○仁田会長 どうもありがとうございます。

○冨田委員 順番にということで御指名いただきました。
 もしかしたら個人的な所感になってしまって、必ずしも労働側を代表をした形ではないかもしれませんが、私、この目安の審議会に2度参加させていただいて、皆様方がおっしゃっていたように、その時々の事情が大きく振れたときに初めて参加をしてきたという状況ではないのかなと思っております。
 申し上げたいことは1つだけです。その2回の経過をみていましても、当然、主張もそうなのですけれども、相当の時間と相当の労力を使って最終的にはああいった形で出されているものが、例えば、そうした地方の、特に経営の皆様方が納得されていないことそのものが大変残念な気持ちであります。そのプロセスなりそのものが、我々日本に働く人たちの最低賃金はどうあるべきかというのを審議しているはずなのですが、もしそのプロセスだったり経過が世の中の皆さん方にうまく伝わっていないのだとしたら、それは非常に残念なことです。我々がこれだけのエネルギーを使ってやっていること、これは日本の中をよくするためにやっていることなので、それをどのように理解し伝えていけるものなのかということは、多分、先ほどから出ている、そもそも目安というのはどうあるべきなのかということにつながっていくのではないかと思います。私も皆様方の御発言を聞いていましても、やはりそこからスタートすべきなのではないかと思いましたので、そのことを申し上げておきたいと思います。

○仁田会長 では、渡辺委員、お願いします。

○渡辺委員 私は去年からこの審議会に参加していますけれども、過去の経緯だとか、法律の条文のことは余り勉強せずに参加しています。何で目安を決めるのに徹夜するのかといつも思っているのですけれども、もっと客観的な統計データを駆使して決められないものかと正直思っております。
 それから、日本商工会議所の代表として出ていまして、地方の委員からは非常に不満の声があるというのが現状です。意見交換の場では不満、不信、半ばあきらめみたいな意見が出てきます。
 それはどういうことかといいますと、目安の決定にあたり地方の実態が余り反映されていないということに対する不満で、企業間の規模の格差だとか、業種・業態間の格差だとか、エリアの格差だとか、ここで議論している以上に地方の実態はかなり厳しいという声を聞いております。
 また、検討のプロセスをもっとはっきりしてほしいということ、根拠を明確にしてほしいということを盛んに言われます。地方最低賃金審議会で議論するときも、そのプロセスを理解しないまま労働者側と公益側に押し切られてしまうといった声もあります。決定のプロセスと根拠を明確にすることは、データを明確にすることでありまして、それを示さない限り常に不満が残るのではないかと思っています。
 最低賃金法に三要素が規定されていますがこれらもデータがとれるわけでありますから、データの中身の入れかえや、どのデータを加味するかということは議論すればいいと思うのです。
 あるべき賃金水準と企業が支払える水準は違うような気がするのです。先ほど横山委員が言いましたように、審議会が労使交渉の春闘のようになっている感じがしてならないのです。そうではなくて、個々の企業が支払える能力の違いがあるわけです。賃金の最低水準はもちろん三要素などを基に決めなければなりませんが、実際に支払えるかどうかというのは、個々の企業の実情が加味されなければなりませんので、この点は根本的な議論として整理しなければいけないと思っています。
 それから、この最低賃金に関する審議の場で議論するのは限界がありますが、可処分所得を増やすという意味では、国の成長や社会保障、税の問題を含め、もっと大きな観点で議論をしなければならないと思っています。
 以上です。

○仁田会長 どうもありがとうございます。
 では、ラストバッターで。

○松田委員 発言の機会を与えていただきましてありがとうございます。私、昨年委員になってから、この間感じてきたことを少しお話しさせていただければと思います。
 この間、上げ幅の議論に終始しているというか、そういったことについても、私も非常に違和感というか、どうしてそのようになっているのだろうと非常に疑問にも思っていたところですので、今日、労使双方、もっと根本の議論をすべきだということで一致をしたという点について私も非常にうれしいといいますか、そういった議論をこれからできたらいいなと思います。このランクの意味とか、そういったところが本当にどうなのだろうと思っていましたので、労働側の立場としては、やはりあるべき水準を議論したいということは強く思っております。
 これは、労働組合、労働者側の立場から申しますけれども、日本の労働者で、特に私、女性の労働者の労働ということに関心を持ってずっとみてきていますが、働いていても貧困というような状況があるわけで、生活するためにはものすごい長時間労働をしなければいけないとか、夜に働かなければいけないとか、そういったことが現実としてあるわけです。諸外国と比べても最低賃金の水準が非常に低いということはやはり問題意識を持っております。労働組合の取組として、個別の企業と賃上げという話をしても、企業は競争をしているわけですから、自分のところの労働者だけ賃金を上げるということは非常に難しいわけです。そういった意味で、この最低賃金で水準が決まってくるというのは、影響がものすごく大きいですし、公正競争といったことを考えたときに、個別の企業との交渉ではできないことが、この最低賃金で決まることによって多くの労働者が影響を受けてくるということで、その社会的な意味もこの場は非常に大きいのだなと思っています。
 私の立場からそのようなことを感じておりました。

○仁田会長 どうもありがとうございます。
 考えてみると、労使の委員だけに当てるのは不公平かなという気もいたします。かといって、我々が全員しゃべっていると、大学の先生というのはしゃべるのが得意なものですから、オーバーしてしまうおそれがあります。でも、一番の経験者である藤村さんあたりから一言。

○藤村委員 8年間やってまいりまして、ちょうど4表を基準にして決めていたときから、その「時々の事情」というのが入り始めたときに委員になったのです。ですから、最初のころは徹夜二晩とかがありました。何でこんなことに時間をかけるのだという委員の御発言もありましたが、この間ずっと参加してまいりまして、労使双方で、例えば第1条あるいは第9条に書かれている文言の理解が相当違うのだなというのを感じています。
 例えば、第1条に書かれている労働者の生活の安定、あるいはどういう賃金水準であれば生活が安定するのかというところが、高卒の初任給とか、最低800円・平均1,000円という数字が出てきたりして、その辺を一つのめどとして労働側は考えていらっしゃる。しかし、使用者側のほうは、そういう水準というよりも、現状、これだけの金額を払っていて相当厳しい経営状況がある中でなかなか上げづらい。あるべき論というよりも、むしろ現状の厳しさというところから話が出発している。その辺の差が埋まらないまま毎年の目安の審議というのがあるのかなと思います。
 第9条の3つの項目。その中でも特に「健康で文化的な最低限度の生活を営むことができるよう」ということで、その基準として、生活保護の水準との整合性をとりなさいというのが法律改正で入ってきた。一応、今年度の状況において生活保護との乖離は解消された。しかし、それで本当に健康で文化的な生活水準を維持できるのかというと、これまた労働側はそうでないとおっしゃるし、経営側は、その部分については必ずしも明確に水準が幾らがいいのだということはおっしゃらない。現状の厳しさというところからスタートしていらっしゃる。
 今回、労使双方から、そもそも論が必要だよねという話が出てきたのはとてもいいことだと思います。毎年のベースの審議では、統計上のいろいろなデータ、数字が出てきて、これをどのように解釈して今年の目安を決めていくか、そこに終始してしまいますので、せっかく目安制度の在り方に関する全員協議会というこういう制度があるわけですから、この場でどんどん議論していただくというのはとてもいいことだと思います。
 その上で、経営側の発言で私が少し気になったのは、目安の決め方についての地方の信頼感が低下していると。これは公益委員に対する痛烈な批判かなと受けとめております。では、どうすればいいのだというところですね。統計上のデータというのは、とり方がいろいろあって、いいところをとってくれば非常に高い数字になるし、そうでないところを集めてくれば低い数字になるという意味で、割と操作ができる部分になってまいります。ですから、結局、数字が出てきても、それだけでは決められない。それがまさに労使の話合いというところになるかと思います。
 地方最低賃金審議会からちゃんと信頼してもらえるような目安を出す、しかも、それが説明できることが大事だというのは、おっしゃるとおりだと思いますので、公益委員としてもそこの部分はちゃんと受けとめてやっていかなければいけないと思います。
 以上です。

○仁田会長 考えてみたら、中窪先生も出戻りで、超ベテランという点では変わらないと思うので、一言。

○中窪委員 久しぶりに今年小委員会でやりまして、やはり大変な作業だなと改めて痛感いたしました。
 目安というのは一つ独特の難しさがあって、地方最低賃金審議会であれば、最低賃金そのものを決めるわけですから、法の三要素、いろいろな解釈はあるにしても、えいやっ、とどこかで決めないといけないわけですけれども、我々はそれを決めるわけではなくて、地方最低賃金審議会がやるときにその参考にしてもらうための目安を出すというわけですから、そもそもどういう趣旨でそれができて、それをどのように運用してきたというそれなりの歴史があるわけでありまして、この両方を考えないといけないところに難しさがあるなと改めて感じました。
 それから、その中で、これも一つの伝統なのでしょうけれども、やはり三者一致にはならずに、しかし公益委員の見解を出す、しかし、出すことについて一応労使の御了解を得るという非常に屈折したプロセスがありまして、公益委員の見解を自由に出して、それを説明しろというのなら、説明を書いて納得してもらえるかはともかく、一応我々はこう考えたというのであれば、ある意味で簡単な気もするのですけれども、本来、そうではいけない。やるのは簡単ですけれども、それについて後のことを考えれば、やはり労使がきちんとそれなりに納得していただけるようなものにしないといけないという名人芸の世界かなと。うまくいっているかどうかはよくわからないのですけれども、一つのこういうのがありますものですから、それを踏まえた上で、今、どのように我々がやらないといけないのかということを今から議論するわけですけれども、そういう問題のメタ情報みたいなところを改めて痛感いたしました。
 もう一つには、今、この前の目安制度の在り方に関する全員協議会のときの報告書を改めてみると、これをまとめるときに私はおりましたけれども、そのとき、法の原則と目安制度の趣旨と時々の事情というのはえらくラフな書き方をしているなと思うのです。そこにはいろいろなものが入っておりまして、毎年最善と思って考えながら、そのときそのときで積み重なっていくと、真っすぐ泳いでいるつもりでも、ふと気がついたら90度曲がっているとか、そういうこともありますので、たまには少し広い目からみて、自分たちは今どういう状況にあるのかと。それから、より広い制度の趣旨、それを適用する日本の社会経済状況において最低賃金はどうあるべきかということを少し広い視野からみる必要があって、そういうのがこの「時々の事情」の中にはかなり入っている気がするのです。
 もちろん、その中には、本来、法の原則の中に還元されるべきものもあると思うのですけれども、そういうところに収まりきらないものをそのときそのときで考えてやってきたということだと思うのです。ここの部分をもう少し精査しまして、その上で、今、私たちはどのようにやるべきかということを、もう少しコンセンサスが得られて、将来の方向がその中から出てくればと思っております。

○仁田会長 どうもありがとうございました。
 鹿住先生は新人で、この間たまたま大乱闘の延長戦みたいなものをごらんいただくことになってしまったのですけれども、もしフレッシュな御意見として何かございましたら。

○鹿住委員 本当に素人の意見というか、新しい見方ということで、そんなのお門違いだということでしたら無視していただいて結構なのですが、この目安制度そのものということからの議論をという御意見がありましたので。
 例えば、他の政策をいろいろみても、地方分権ということがもう10年ぐらい潮流になっていまして、政策の決め方というのも随分変わりました。昔は、中央省庁でかなり細かいところまで決めて、各都道府県でやってくださいという形で進められてきたかと思うのですが、最近は、かなり大まかなルートとか方針だけ中央省庁とか国で決めて、あとは地域で独自に、それぞれの実情に合わせて決めてくださいと。政策の実施方法もかなり変わってきたかと思うのです。
 それに照らして考えますと、皆さん地方の最低賃金審議会から、中央は何をやっているのだ、どうやって決めているのだ、実情は合っていないではないか、みていないではないかという御意見があるのであれば、逆に、地方で先に地域ごとの最低賃金を決めていただいて、それが適切なものかどうかというのを中央で審議するという審議会の在り方もあるのかなと。すごく突拍子もない意見かもしれませんが、地方の方が、中央が実態をなかなかわかってくれないとおっしゃるのであれば、そういうやり方もあるのかなと思いました。
 もう一点は「時々の事情」というのはいろいろあるかと思うのですが、働き方そのものが随分変わってきているのではないかとはすごく感じています。多分、ここ50年の変化でみると、かつてよりも自営業者が減って被雇用者が増えてきたというのは事実だと思うのですが、ここに来てまた、自営業者、ないしは自営業とまできっちりと税務署に開業届を出していないにしても、例えば在宅で仕事をされるとか、雇われないで働くという働き方が以前よりはちょっと増えてきているかなと。
 例えば数字で申し上げると、国土交通省さんで在宅ワークの実態調査をされているのですが、その中で独立型の在宅ワークの方の推計が220万人という数字が出ているのです。労働力調査では600万弱ぐらいの自営業者という数字が出ているのに、在宅ワークの自営業者が220万いるというのはちょっと驚異的な数字だと思うのです。副業も含めてだと思いますが、そういう働き方というのは無視できない数になってきているのではないか。そのときに最低賃金の意味というのは何なのだろうかと思うのです。
 例えば在宅ワークで被雇用者の方はもちろんいらっしゃいます。この間もちょっと問題になったのが、そういう方が深夜に在宅で仕事をしたときは割増賃金になるのかならないのかみたいな議論があったかと思うのですが、同様に、在宅ワークでどこかに雇われている場合、最低賃金というのはどうやって適用するのだとか、そういう話も出てくると思います。今までの工場とかオフィスで、決まった時間に働く以外の働き方もいろいろ出てきたときに、この最低賃金というのはどのように考えるべきなのだろうか。まだそこまで大きな問題ではないかもしれませんが、最低賃金の在り方を考えるときに、働き方の変化というのも念頭に入れる必要があるのかなと思いました。
 以上です。

○仁田会長 どうもありがとうございました。
 私だけ言わないというのは不公平でありますし、でも、司会役ですので、何か結論めいたことを申し上げる立場にはないのですけれども、今後の進め方について非常に重要な御意見が出されていると思います。
 確認ですけれども、これは目安制度の在り方に関する全員協議会となっておりまして、最低賃金法の改正を議論する労働政策審議会の場ではないということは、我々としては課されている前提条件だと思います。あくまで基本は、目安制度というのは今までのやり方でよろしいのか、あるいは今後どのようにしていくともっとよいものになるのかということを議論いたしましょうということであります。その中には、目安制度をやらないという考え方、そういう選択肢もないことはないのではないかと思いますが、直ちにそういう課題に我々が直面しているとは思っていないのです。ただ、目安制度を見直すときには、国際的にみると、これは独特の制度だということがあると思うのです。多分、こんなことをやっているのは世界中で日本だけではないかと思いますので、そういうことの制度的な制約というものが我々のほうにかかってくると思うのです。
 そういうことをいろいろ振り返り、反省して、それで可能性と限界を探るということであれば、法改正の審議会ではないですけれども、諸外国の最低賃金制度は一体どうやって賃金を決めているのかということについて一応振り返ってみて、それと比較して、余り使いたくない言葉ですけれども、日本的な最低賃金の決め方である目安制度の位置づけというのはどうあるべきなのかということはこの議論の中でちゃんとやって、先ほどどなたかの御意見にありましたように、我々としてはこういうことをちゃんと議論しているのだよ、こういう問題意識を持っているのだよということを国民の前に御提示申し上げることは必要ではないかと思いました。
 世界中を回って本当はどのように決めているのですかと尋ねることができると大変よろしいのですけれども、そうもいきませんので、できる範囲内で。申し訳ありません、事務局に御負担をおかけすることになると思いますけれども、もう既に集まっている情報もあると思いますので、諸外国の最低賃金制度について参考資料を御用意いただいて、我々の議論の便に供していただいたらいかがかなと思いました。
 もう一点は、目安制度の在り方を議論するということは、要するに、目安に関する小委員会の議論をどうするかという議論をしているだけでは済まないと思うのです。我が国の制度では、最低賃金は47あります。最低賃金を決めるのは地方の最低賃金審議会。我々はそれに、このよくわからない、英語に直したら何と訳したらいいのかなといつも考えてまだ名案がないのですけれども、厚生労働省は定訳というのを何か決めているのですか、あれば教わっておきたいですが、その目安と地方最低賃金審議会の審議があわさって、それで日本の最低賃金が決まっているということになっているわけですので、我々は地方最低賃金審議会での議論がどうなっていて、その結果、目安がどのように参考にされて、それで最低賃金が決まっているのかということについて一定の認識を持っていく必要があるのではないかと思います。もちろん、すべての地方最低賃金審議会について詳しく我々が知る余裕はございませんけれども、毎年、我々は○と△と色のついた絵は見ておりますが、その状況。それから、最終的には都道府県ごとの最低賃金。それこそ金額で決まっておりますので、それが一体どういう事情で各都道府県の最低賃金が決まっているのか、何でこういう差があるのかとか、そのように議論を詰めていけば非常に手間暇がかかってしまうと思うのです。地域間格差の実態とか、どこまでそういうことが分析できるかわからないのですけれども、我々としては、ランクの意味とかを議論するためには、実際に各都道府県でどういう最低賃金が決まってきているのか。それは、経済的にはどういう意味を持っているのか、どういう背景というか、賃金とか、第9条第2項にあるようなものがどのように勘案されてそこで決まっているのかということを一応検討する必要があるのではないか。目安の金額が毎年このようになってきましたよ、そういうことの議論だけでは済まないのではないかと今日の御議論を伺っていて思ったところでございます。
 事務局の負担を増やすような御提案ばかりで申し訳ないのですけれども。
 他に何か。今日、この際、発言しておきたいことがございますれば。

○高橋委員 先ほどの鹿住先生のお話に触発されて申し上げれば、前からずっと思っていたことは、これは組織としての意見ではなくて私の個人的な感想なのですけれども、一つの在り方として、地方の自主性発揮というのは昔から言われてきていることだと思うのです。そう考えると、可能性としては、この中央最低賃金審議会では目安は示さないで参考の資料だけ整える。そして、地方の審議に役立つような資料を配付するという在り方も決して否定されるべきものでないというのを先ほどの先生のお話を伺って思いました。これは個人的な意見です。
 2点目。これが最後なのですけれども、ぜひお願いです。今後、スケジュールをみると、回数も結構用意していただいておりますし、抜本的な制度の在り方、どうあるべきかという議論をするためにも、毎回でなくても結構なのですけれども、できればゲストスピーカーなどもお招きをいただいて、一緒に議論していくということも望ましいのではないかと思っています。
 とりわけ私の関心の強い部分は、近年、非常に大幅に最低賃金が引き上げられてきた影響がどのような形で出ているのかということについて、例えば実証分析などをされていらっしゃる研究者の方などがいらっしゃれば、そのような分析の御報告などをいただくこともとても大切なことなのではないかと思いますので、そうしたゲストスピーカーの招聘についてもぜひ御検討いただければと思います。
 以上です。

○仁田会長 ありがとうございました。
 他にございますでしょうか。

○田村委員 2点申し上げたいと思います。
 1つは、先ほど中西委員から、いわゆる都市と地方の違いというのがあったと思うのですが、私は逆のことを考えておりました。例えば東京への集中化だとか、県庁所在地への集中化というときに、少子化ということを考えると、どう地方で働く場所があって生活できる場所があるかということを考えると、地方で安定した生活ができるものをベースにしないとどうしても都市への集中が出てくる。ということも考えると、政治的配慮も必要なのではないかというのが1点目でございます。
 もう一つは、昭和53年から始まった目安等々がございますけれども、この間で、産業構造だとか、最近、女性が増えてきた、サービス業が増えてきたということも大きな変化になってきていますので、その辺もここの議論の中では少し取り上げていただければと思います。
 以上2点です。

○仁田会長 他にはいかがでしょうか。

○須田委員 関連して。

○仁田会長 どうぞ。

○須田委員 結局、最低賃金とはどうあるべきかというスタンスの違いだと思うのですけれども、田村委員が言ったように、我々の問題意識は、地域から都市に集中してくるということについて危機感があるということなのです。それが一つのファクターとして、最低賃金が高い県に若い人が移動している。このことをどう考えるかというのが1つあると思うのです。
 それから、そう簡単ではないですけれども、今、地域のというのは、別に県単位でとは決めていないので、昔の京都みたいに県の中に2つあってもいいのだけれども、逆にそうやって細分化するよりは、本当はブロックごとの最低賃金というのがあったほうが、若者が地元に根差して、その地域の活性化、あるいは地元の中小企業の活性化に寄与できるようにするという観点から言ったら、ブロック化みたいなことも発想としてはあっていいと思うのです。ただ、現実それができるかというとなかなか難しい。ただ、いろいろな視点というのはあると思いますので、現状を是として議論することも必要ですし、どうしたら定着するのかみたいなことも考えていかなければならない。
 被災地もそうです。結局、岩手、宮城、福島の関係をみても、結果として、最低賃金の高い隣の県に若い人が流出してしまっていることをどう考えるのだということも含めて、だから、最低賃金が結果として社会問題に大きくかかわっているということを考えながら議論させていただければありがたいと思っています。

○仁田会長 どうもありがとうございました。
 他に何かございますでしょうか。
 この後、何回か議論を積み重ねていくということでございます。進め方について幾つか要望が出されましたので、それを踏まえてちょっと検討させていただいて、次回は基本的には、全般的に御自由に御意見を頂くことにいたします。今日の議論を踏まえましてさらに議論を深めていただくというか、何らかの形で、すぐに方向性が出てくるかどうかはわかりませんけれども、そのような機会にしたいと思います。それでよろしければ、今日は画期的な会議で全員が発言したという会議でございますので、この辺で終了とさせていただこうと思いますが、よろしゅうございましょうか。
 それでは、議事録署名人を指名しなければなりませんので、木住野委員と小林委員にお願いしたいと思います。よろしくお願いします。
 それでは、次回の案内をお願いします。

○新垣室長補佐 それでは、次回の第3回目安制度の在り方に関する全員協議会は11月21日金曜日の10時から、本日と同じ専用第14会議室で開催いたします。よろしくお願いいたします。

○仁田会長 ここですね。
 それでは、これで終了とさせていただきます。


(了)
<照会先>

労働基準局労働条件政策課賃金時間室
最低賃金係(内線:5532)

代表: 03-5253-1111

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