ホーム> 政策について> 審議会・研究会等> 社会保障審議会(生活保護基準部会)> 第22回 社会保障審議会生活保護基準部会(2015年1月9日)




2015年1月9日 第22回 社会保障審議会生活保護基準部会

社会・援護局

○日時

平成27年1月9日(金)15:00~17:00


○場所

厚生労働省専用第14会議室


○出席者

駒村 康平 (部会長)
岩田 正美 (部会長代理)
阿部 彩 (委員)
岡部 卓 (委員)
栃本 一三郎 (委員)
園田 眞理子 (委員)
道中 隆 (委員)
宮本 みち子 (委員)
山田 篤裕 (委員)

○議題

・住宅扶助について
・冬季加算について
・その他

○議事

○駒村部会長 こんにちは。それでは、定刻になりましたので、ただいまから第22回「社会保障審議会生活保護基準部会」を開催いたします。

 まず、本日の委員の出欠状況について事務局より御報告をお願いいたします。

○大西保護課長 本日の委員の御出欠の状況でございますけれども、大竹委員より御欠席との御報告を受けております。また、園田先生が少し遅れておられるようですが、間もなく到着されるとの御連絡をいただきました。

 それでは、部会長、議事進行をよろしくお願いいたします。

○駒村部会長 それでは、本日の議事に入りたいと思います。

 カメラはこの辺で撤収していただければと思います。よろしくお願いいたします。

(カメラ退室)

○駒村部会長 前回の部会では検証結果と報告書案について御議論をいただきました。報告書案について幾つか御修正意見がありましたので、その修正結果を事務局より御報告いただき、報告書を取りまとめたいと思います。

それでは、事務局からお願いいたします。

○井上課長補佐 それでは、報告書修正案について御説明をさせていただきたいと思います。

 まず初めに、報告書案につきましては、前回、1226日の部会に提出をさせていただきまして、そこで委員の方々から御意見をいただきましたので、その御意見を反映したものを今回の部会の前に再度各委員に御確認いただき、追加の御意見もいただきました。各委員の方々には、大変短い期間で、また年末年始も含めて御確認をいただきまして、そしてまた調整にも御協力をいただきまして、まことにありがとうございました。

 では、説明に入りますけれども、お手元の資料は、前回の部会で提出した報告書案をベースとしまして、そこへ修正意見を反映させたものとなっております。本日は、前回からの主な修正箇所につきまして御説明をさせていただきたいと思います。

 まず、1ページから3ページにかけてですけれども、「はじめに」ということで前文を追加しております。

大まかに言いますと、1ページでは、生活保護制度の持つ役割、これまでの生活扶助基準の検証の考え方、今回の検証の考え方、2ページでは、住宅扶助ないしは冬季加算のそれぞれ固有の性格を認識しておく必要性があるといったこと、住宅扶助の検証を行う際には閣議決定されております住生活基本計画で定められている最低居住面積水準を踏まえて行う必要があるといったこと、その最低居住面積水準の達成率は一般世帯に比べると生活保護受給世帯のほうが下回っていて、より適切な住環境確保方策を検討することが必要であるといったようなこと、制度運用上の留意点、3ページでは冬季加算の検証の関係ですけれども、光熱費は生活必需費目でありますので、一般低所得世帯との単純な相対的な比較ではなくて、冬季の生活維持に不可欠な増加支出が加算額で賄えるかといったようなことも考慮して検証する必要があるといったこと、あるいは相対的な比較の留意点などを書いております。

その次の主な変更点でございますけれども、5ページの2の「()検証方針」の2ポツ目でございます。住生活基本計画で言います最低居住面積水準の前提条件、設備条件などを丁寧に追記しております。

7ページの3の()のところですけれども、今回使用した調査は幾つか種類がございますので、調査名、調査の時点、そういったものを追加しております。

次に、8ページでございまして、3の()の1の「a)世帯類型」のところですけれども、岩田先生の御指摘を踏まえまして、生活保護受給世帯全体の世帯類型だけではなくて、それと比較できるように、昨年8月に実施しました生活保護受給世帯の居住実態調査の対象世帯の世帯類型の表も図表2-2としてつけております。

それと同じように、10ページに参りまして、図表3-1の生活保護受給世帯全体の住宅の所有関係の内訳のグラフと比較ができるように、図表3-2としまして、8月の居住実態調査の対象世帯におきます住宅の所有関係の内訳のグラフを追加しております。

次に、11ページのc)の2ポツ目でございます。面積水準のほかに設備条件を満たす割合も追加しております。3ポツ目では、生活保護受給世帯の住宅の所有関係別の達成率も追加しております。

続いて13ページでございます。2の「a)単身世帯の家賃分布」の記述の一番最後の部分に「しかし、それだけでは数が十分ではなく、民間賃貸住宅市場で相対的に住宅水準の低いものを住宅扶助特別基準の上限額を条件に家主から借り受けているケースがあるとも考えられる」という記述があったのですけれども、この部分につきまして、根拠が明確でない臆測が入っていたということで削除しております。

続いて15ページでございます。b)の項目名が「生活保護受給世帯の家賃設定」となっておりましたのを「生活保護受給世帯特有の状況」という形に変更しております。b)の中は前回は黒ポツだったのですけれども、わかりやすく、ア)、イ)、ウ)という形にしております。

イ)の真ん中あたりになりますけれども、前回は「15世帯となっていた」という部分で終わっていたのですけれども、そちらの点につきまして追記しておりまして「15世帯となっており、家賃設定に一定の合理性が認められるケースもあった」という記述にしております。さらにその後に「また」としまして、「疑義あり」のうちの「その他」219世帯の主な内訳を追記しております。

「3単身世帯の住宅扶助特別基準」の項目の部分ですけれども、1ポツ目に、単身世帯が居住します「民営借家又はUR賃貸住宅であって、最低居住面積水準及び設備条件を満たす住宅」のうち家賃額が特別基準以下の割合は、生活保護受給世帯を含むデータでは全国平均で14.8%とまず記述した上で、16ページの1ポツ目になりますけれども、なお書きとしまして、一定の前提を置いた推計ではありますが、住宅・土地統計調査から生活保護受給世帯の分を除いたデータで見た場合の割合としまして、12.7%ということを記載しております。

次のポツのところに参考という形で、以前は右隣のページに載せていたのですけれども、単身世帯が居住する民営借家、UR賃貸住宅における最低居住面積水準の達成率の全国平均の率、同じく家賃額が特別基準額以下の住宅における最低居住面積水準を満たす割合、単身世帯が居住する借家全体のうち家賃額が特別基準以下の割合をこちらに参考として持ってきて掲載しております。

続きまして、17ページの「4住宅の質を反映した家賃関数の推定による検証」の部分でございます。a)の2ポツ目の2行目以降に「しかしながら」としまして、この関数を扱う際の留意点、精度を上げる際には別の手法を開発する必要があるといったようなことを追加しております。

続きまして、18ページのb)の4ポツ目につきましては、前回の位置でいいますと3ポツ目にあった記述の後半部分を独立させる形でこちらに4ポツ目を起こしております。それと例示を丁寧に記載しております。

「5住宅と居住の質に応じた住宅扶助特別基準の設定」の部分では、1ポツ目の民営借家のパーセントを39%に修正しております。前回お出ししたときには8月の居住実態調査の暫定集計のデータでの数値でございましたので、41%になっていたかと思いますけれども、そちらを最終集計データの数値としております。

続きまして、19ページでございます。一番上のポツで、無料低額宿泊所等で床面積が狭いにもかかわらず、特別基準額以上で家賃が設定されている割合が多目の理由としては2つのことが考えられるとしまして、1つ目の理由としては、いわゆる貧困ビジネスが考えられるということ、2つ目の理由として次のポツで個人の専用部分以外に共同的な生活を営むための床面積がある場合や、何らかの生活支援を行っている場合であるといったようなことを追加で記載しております。部会の作業班のほうでヒアリングを行った際にもそういったことが確認されたといったような記述を追加しております。

次のポツでは、真ん中あたりに「しかしながら」といたしまして、いわゆる貧困ビジネスは生活保護受給者本人ではなく、受け入れる側の問題が大きく、その是正に向けての取り組みは別途必要であるということを追加しております。

続いて20ページの「6個別の事情による住宅扶助特別基準の設定」の項目の1ポツ目の部分に関係しますけれども、単身世帯で車椅子使用の障害者等でより広い居室を必要とする場合、特別基準の1.3倍額の適用が認められておりますが、下の脚注を追加しまして、実態を見ると1.3倍額が活用されている世帯は多くはないということが確認されたということを記載しております。

同じページの4の「住宅扶助特別基準の検証結果に関する留意事項」では2ポツ目を追加しまして、今回の検証では全国の住宅や居住の状況を把握することができる最も大規模な公的統計である住宅・土地統計調査のデータを用いて最低水準を満たす民営借家等の家賃額と特別基準の比較を行ったと記述しまして、今回の方法自体は妥当な方法の一つと考えられるが、住宅・土地統計調査のデータはストックの状況をあらわすものであって、必ずしもフローの状況をあらわしているものではない、そういった限界があるということを記載しております。

21ページに参りますが、今回の検証手法は現実的に利用可能なデータの制約の中で選択した一つの手法であって、これが唯一の手法ということでもないことから、今回の検証結果や留意事項を踏まえて見直しを行った場合の民間賃貸市場や生活保護受給世帯の影響も踏まえた上で、必要なデータや検証手法を改善、開発していくことが必要であること、その際にはアメリカやイギリスのやり方を参考として検証・設定方法を検討することも課題であるということを追加しております。

続きまして、22ページの上から2行目でありますけれども、「加えて」としまして、家賃額の値下げ分が別の名目の費用として転嫁され、当該世帯の家計を圧迫していないか注意する必要があるといったこと、特に高齢者または子供を含む世帯などにおいては転居が健康への悪化やコミュニティからの孤立を引き起こす可能性があることに十分に配慮する必要があるといったことを追加しております。

さらに、大局的には住宅は供給過多であり、賃貸住宅の需給状況は緩んでいる。そうした中で、特別基準を見直した場合や毎年の改定により減額となった場合は、民間賃貸住宅市場に想定外の大きな影響を与える可能性があり、その点への配慮も十分に必要であるということ、一方、民間賃貸住宅が供給過多である状況は、生活保護受給世帯が特別基準の範囲内で適切な質を備えた住宅に居住できるようにしていく方策をとるのに適した状況であるとも言えるということも追加しております。

その次の「以上のように」で始まるポツのところでございますけれども、今回の見直しが与える影響について、今回の住宅扶助の見直しが民間賃貸市場や生活保護受給世帯に与える影響については、その実態を的確に把握し、今後の検証の際にはそれを踏まえる必要があるということを前回より明確に記載しております。

続きまして、23ページの「()公的借家の活用」の部分につきましては、なお書きを追加しまして、委員の方々からいただいた意見を記載しております。

()居住継続のための生活支援の必要性」の項目に2ポツ目を追加しまして、生活保護受給世帯に対して、あるいは一般高齢者施策として既にございます居住支援に係る施策の活用も図りながら、居住継続のための生活支援に取り組んでいくことが望まれるといったことを記載しております。

続きまして、25ページからは冬季加算の関係になります。2の「冬季加算の検証方法」の「()検証方針」に3ポツ目を追加しまして、寒冷地の冬季の需要で重要なウエイトを占める灯油について灯油消費額を推計したこと等を記載しております。

次の26ページの1ポツ目でこちらのポツの前半部分を追記しております。

28ページの「()消費支出額が増加する月」という項目に3ポツ目を追加して、検証結果から考えられる対応を記載しております。

29ページの「()住宅の状況等による冬季増加支出額の違い」の中の1ポツ目の後段のところですけれども、「さらに」ということで、それ以降の部分につきまして、前回は就業人員の有無で差が認められないと記載してしまっていたのですけれども、実際に差があるということから、その旨を記載しております。

続いて31ページでございます。4の「冬季加算の検証結果に関する留意事項」の項目のところでは1ポツ目を追加しております。今回の検証は、地区別に光熱費の支出額が増加する冬季の期間を検証した上で、冬季と冬季以外の光熱費支出額の差を見たものであり、この地区区分による実態を踏まえた結果であると考えられるということ、一方で、統計上の制約から、豪雪地域や山間部の検証が十分できなかったこと、本来は冬季加算と生活扶助本体の水準はあわせて検討されることが望ましいといったこと、より精緻なマーケットバスケット方式による検証など今回とは別のアプローチでの検証方法も考えられるといった課題があること、そのため、今回の検証結果を踏まえて冬季加算を見直すに当たっては、今回の検証では必ずしも十分に捉えられなかった地域特性を勘案して、留意事項を十分に踏まえつつ、生活保護受給世帯の健康に悪影響を及ぼすことのないようにする必要があること、また今回の検証手法が唯一の手法でもないことから、見直しによる生活保護受給世帯への影響も踏まえた上で、次回の生活扶助基準の定期的な検証の中で必要なデータや検証手法を改善、開発していくことが必要であるといったことを記載しております。

続いて32ページの5ポツ目でございます。なお書きとして追加をしております。国家公務員の寒冷地手当など一般に行われております手当との均衡に係る考慮の意見を記載しております。

「4その他」の部分でございますけれども、2ポツ目を追加して、有子世帯の扶助・加算に係る取りまとめを見送った経緯や理由を記載しております。

33ページ以降は、部会にお出ししたデータを参考でつけております。別紙1につきましては、本文で生活保護受給世帯を含む住宅・土地統計調査のデータから推計による生活保護受給世帯分を除いた集計結果を記載しておりますので、その順番でそれに関係するデータも掲載しております。

一番最後になりますけれども、45ページの表のところでサンプルサイズが入っておりませんでしたので、サンプルサイズを記載しております。

説明は以上でございます。

○駒村部会長 ありがとうございました。

 冒頭、事務局よりお話がありましたように、年末から年始にかけて各委員と文言の調整をさせていただいた結果になっていると思います。

 本日は、この報告書の最終確認の話と、今日で住宅扶助の検証は一応最後ということでございますので、時間にもよりますけれども、最後のほうで委員の皆様から、報告書のここを注目してもらいたいとか、コメントがありましたら見解をいただければと思います。前半部分、最後のコメント部分、いきなりコメントくださいというのもあれですので、あらかじめ申し上げたいと思います。

 それから、そういう個人的な見解については最後のほうでまとめていただきたいと思いますので、まず報告書について、誤解とか、修正がどうしても必要な表現があったり、あるいは誤った数字があるとか、あるいは是非ともということがありましたら、あるいは確認事項がございましたら、この場で発言いただければと思います。修正する場合については、なるべくここで文言も含めて修正を終わらせたいと思いますので、どうぞ委員のほうから今の点を踏まえて御自由に御発言いただければと思います。よろしくお願いします。

 岩田先生、お願いします。

○岩田部会長代理 15ページから16ページにかけての単身世帯の住宅扶助特別基準を住宅・土地統計に当てはめるとこういう分布になっていますというのが出ていますけれども、特別基準それ自体はもうちょっと細かい区分になっているので、その比較について意味があるのは別紙だということになりますか。これ自体は仮に勘定すると47になるので、5~10%に入っているのは何県と何県というふうになるのだろうとは思うのですけれども、あまり意味がないというか、どういう意味があるのかなという感じもしなくはないのです。

つまり、特別基準を作っている都道府県と級地等指定都市というような地区の中でどういう分布かというのは後ろの添付資料で細かく出ていますので、こっちが本物でそれをちょっと丸めたという感じなのですか。本物でというと語弊がありますけれども、私、ここのところがちょっと読みにくくて、平均かなと思ったら平均という意味ではなくて、たまたま住調の中で都道府県別に出ているのに当てはめるとこうなる、そういう意味ですか。そのときにどの住宅特別基準を使ったか。例えば1級地と2級地が神奈川県にあるとしますね。その場合にどういうふうに基準を当てはめたのか、伺いたいと思います。

○駒村部会長 そうしましたら、15ページから16ページ、16ページ冒頭の表についてどういうふうにつくったのか、先生はそこは説明文章を入れたほうがいいのではないかという趣旨ですか。

○岩田部会長代理 そうですね。本文中に出てくるので結構インパクトがあるので、逆に言うと別紙を見てくれというほうがいいのかなという感じもしなくはないのですけれども、見やすいといえば見やすいのですが、これでどうだというのはちょっとわかりにくい。

○駒村部会長 恐らく全国的にどうなのかということを見せたかったのだと思いますけれども、ちょっと解説をお願いいたします。

○村木課長補佐 算出の方法につきましては、各世帯の家賃の個別データがございますので、その地域に設定されています特別基準額以下かどうかを世帯個別に集計してこの表を作成しておりまして、県内の基準額を平均して用いたりはしていないということでございます。

○岩田部会長代理 では、丸めてやったのではなくて、一つ一つ当てはめたものを都道府県で丸めるとこうなりますよという感じなのですね。

○村木課長補佐 そうです。

○岩田部会長代理 もしも注か何かつけられれば、別紙1との関係、別紙1のほうに書いていただいても構わないと思うのですけれども、16ページとの関係はこういう関係ですというのがあると誤解がないかなと思います。

○駒村部会長 どうしましょうか。これについては、別紙1をまとめるとこうなっているというふうに修正を、別紙1の要約版がこれなのだということがわかればいいと思います。それでよろしければ事務局のほうでそういうふうにやっていただければと思います。では、そこのところ、1個、修正ですね。

 ほかにありましたら、どうぞお願いします。山田委員、お願いします。

○山田委員 3点ほど確認させていただきたいと思います。年末年始にかけて非常に細かいところの意見まで、いろいろなやりとりの中で反映していただいて、本当にありがとうございます。

その上での確認なのですけれども、まず19ページの下から2つ目の丸です。「住宅扶助費の支給額を住宅の質に見合ったものにするなどの措置」、これについてはこちらの委員のほうでは議論があまりなかった点なのですけれども、こういうような措置を例えば検討する場合にというところの「住宅の質」の「住宅」に係るというのは、これは流れからすると無料低額宿泊所とか簡易宿所という形になっているわけです。この住宅というのはどこまでを指しているのかということですね。あと、いろいろと留意事項とか何かを考えると、かちっとした額をこれで引き下げなさいというふうに言うのはなかなか難しいと思うのですけれども、勘案すると、ある程度基準というのは参照的なものになるかどうかということの確認です。

第1点目は2つがあります。住宅というのはどこの範囲を指すのかということと、もう1つは、いろんな留意事項を考えた場合に、かちっとした、この広さだと幾らというふうにはなかなか決められないと思うのですけれども、その基準というのを政策に具体的に落とし込むときには事務局はどういうふうに考えておられるのかということです。

2点目は、31ページの下から2段落目の「一方で」と始まる文章のうちの4行目から7行目の「精緻なマーケットバスケット方式による検証」というのは、確かにいろいろとやりとりの中で議論したとは思うのですけれども、その中でも一番気になるのは暖房器具、例えばプロパンを使っているのか、それ以外を使っているのかでやはりランニングコストというのが異なってくる。例えば地方とか、もしくは賃貸住宅でプロパンを使っている場合が多い。これはあくまでも例ですけれども、そうした燃焼機器というのですか、暖房機器によるコストというのはどういうふうに見ていくのか。これも具体的に政策を実現化するレベルでいろいろな議論があるかと思いますけれども、そこの部分はどういうふうに考えておられるのか。もしくは私が見落とした「など」という言葉の中にどこかで含まれているのかどうかという確認です。

3点目は、32ページの1行目に「見直しによる生活保護受給世帯への影響」とあるのですけれども、31ページの下から2行目には「生活保護受給世帯の健康に悪影響を及ぼすことのないよう」と、これは言うまでもないことですので、当然だとは思うのですが、この影響というのは具体的にはどういったものを考えられているのか。万が一、冬季の間に足りないということになったら、これは大ごとになるわけですから、そのような影響ということについては政策を具体化する上ではもちろん検討すると思うのですけれども、それを踏まえた上で、この影響というのは一体どういうふうに解釈すればいいのかということ。

この3点についてもう一度確認の意味を込めてお伺いできればと思います。

私からは以上です。

○駒村部会長 ありがとうございます。

 それでは、この順番で、最初のところ、範囲はどこまでかかっているのかということですけれども、文言修正が必要というより、まず、どういう意味なのか、この文章の意味をどう捉えればいいのかという解説を求めているということだと思います。では、事務局からお願いします。

○大西保護課長 19ページの住居の質なり面積なりということに応じた基準といったあたりの表現の御質問でございました。これにつきましては、全体として貧困ビジネスに対する対策の記述を中心に記載しておりますけれども、ここで言う住宅は、いわゆる無料低額宿泊所なり簡易宿泊所のみに限定的に考えるのではなくて、スコープとしてはそのほかのタイプのものもやはり質という面でいかがなものかというものがないことはないわけでございますので、そういうものまで一応対象とし得るものとして運用していくのではないかと現時点では考えております。

いずれにしましても、一律、機械的に減額の額を適用して、それで現場が、関係者がお困りになることがないようにという御心配の御趣旨の御下問と受けとめております。実施する場合には、実際には現場の福祉事務所、ケースワーカーの方々が円滑に動けるように、また実際に受給者の皆様、大家さん、その間をつないでおられるさまざまな活動されているような方々もおられると思いますけれども、そういう方々のお声も聞きながら、無用な混乱というか、トラブルがないような運用ができるように、これは施行までに具体的には細々とした通知・通達の類いを整理させていただくわけですが、弾力的な運用ができるように、検討、配慮事項を整理させていただきたいと思っております。

○駒村部会長 機械的、一律ではないという御解釈ですけれども、ただ、対象はこの2つに限定するわけではないということだと思います。この辺に関してほかの委員から何かございますか。岩田委員、お願いします。

○岩田部会長代理 やはりここは大変微妙なところで、つまり水準以下の場合はお金を下げることによって住宅の質に合わせる、つまり劣等処遇のほうにいくという可能性を感じさせてしまう。もちろん現実的な段階としてはこれだけ生活保護世帯の住環境が悪いということがわかってしまったので、それを一気に改善するというのは難しいと思うのですけれども、そのときにお金の問題としてそれに対応するとどうなるかということがあるので、「しかしながら」というのが多分続くのだと思うのですね。

そこで、私も大分考えたのですけれども、「必要があろう」とすると必要だということになって必ずやるということになるので、何かちょっと違う表現、「検討する余地もあろう」とか何とかいうぐらいに、うんと悪質な場合はむしろ下げるというより、そこから救い出したほうがいいわけですから、ちょっと言葉のあやみたいなところもありますが、それにもかかわらず全く住むところがないより、短期であればある場所に一時的にいて、その後きちっとした住宅に誘導する、そういう計画がきちっとあった上で、一時期そこにいるというような場合まで全部最低水準でやらないとだめだということにはならないとは思います。ここは本当に微妙なところなので「必要」という言葉を使うか使わないか。

○駒村部会長 ここの趣旨というのは、低いほうに流れるという趣旨には読まれないように、その前のところで「より適切な住環境を備えた住宅へ誘導していくという観点で」と書いてあります。引き上げるために、だめなところは引き上げなくてはこうなってしまいますよというトーンなのですけれども、「必要だ」というと必ずやるということになってちょっときついのではないか、ではほかの文言ということですけれども。

○岩田会長代理 「可能性もある」と。

○駒村部会長 「検討する可能性もある」というのも、まあ、ちょっとわかりにくいですね。最後までまだ時間がありますから、表現ぶりに関しては「必要」とまでいうと何か必ずやるということになるのではないかということですけれども、ただ、前段の意味は引き上げるためにやれということですから、そこの趣旨を現場や政策のほうに徹底していただく、その上でこういうこともやったらいかがかと言うことですね。

 ここは後ほどもう一度忘れずに戻りましょう。山田先生もここまではよろしいですか。

○山田委員 はい。

○駒村部会長 そうすると、もう2つのほうですね。31ページのマーケットバスケットについてですけれども、備えている機器によってコストに差があるのではないか、どうなのかということがまず1つ。

もう1つ、健康の悪化ということを留意するわけですけれども、具体的にどう把握したらいいか、あるいは次回の見直しでその手がかりは一体何なのかということを問われているわけです。

では、前半のほうから事務局に解説をお願いします。

○大西保護課長 例えば暖房設備がもともとの家の御事情とか何かで限られている場合なども含めて、特別な配慮が必要なケースというのがいろいろあるのではないかという問題意識の御指摘かと思っております。

 暖房設備につきましては、御自分で購入して部屋に置かれて使われる簡易なストーブやこたつ、そういうものにつきましては、御自分のやりくりの中で基本的には対応していただくこととなっております。また、長期入院から初めて保護に入られるようなときには、そういうものを一時期一挙にそろえられる必要がありますので、一時扶助という形で補助が出動することが今後あり得る。そういうことで手当てができるようにしていく必要があるだろうと考えております。そのほか、おうち自体が大家さんの事情でそういうものしかないといったような場合は、御本人がそういうものをすぐに買ってくるというわけにはいきませんので、また別の考慮が必要ではないかということも含めての御示唆だと思っております。

 そういう場合、例えばすぐ脇に同じようなお値段でもっといい設備の住宅が空いておれば、そういうところに転居していただくようなことも一つの考慮だと思いますし、また実際にどれぐらいそういう設備だと費用がかかり増しになるのかといったことをよく見極めた上で、実際には自治体のほうで把握いただいて、仮に特別基準の設定が必要だということであれば御相談いただき、対応を検討、判断させていただくという流れに一つはなっていく可能性の排除はしないのかなというふうに思っております。

 ここでは例示としましては、難病などで体温調節が難しい方、傷病・障害で常時在宅していて、一般よりも暖房費がかさむような方々などを中心に想定しているということで特別事情として書かせていただいておりますが、そのほかにも本当にさまざまなケースが実際にはあり得るということで考えております。その中では、一般のその地域の住民の方々とのバランスも当然、自治体、市役所、福祉事務所のほうではよく見極めをいただいて、その上で御相談いただく場合にはいただくことになるのではないかなというふうに考えております。

 影響につきましてですが、山田先生が引用していただきましたように「健康に悪影響を及ぼすことのないように」というのは、健康に悪影響がありましたか、それを後から教えてくださいというスタンスではもちろんなくて、まず及ぼすことがないようにということで、先ほど申し上げましたような、さまざまな配慮、対応をさせていただくことが一番でございます。もしそういうことがあったということであれば、それは当然、報告を上げていただいて把握させていただくということでございますけれども、結果というよりも、むしろそういう懸念があるのではないかというところの段階から含めて自治体のほうからはいろいろな情報を上げていただくことが重要ではないか。私どもも単に受け身で待つというよりは、日ごろのさまざまなコミュニケーションの機会を通じてそういうところのアンテナを高くして対応させていただくということではないかと考えております。

○駒村部会長 そうしましたら、31ページの下段のほうの「健康に悪影響を及ぼすことのないように」というのは当然のことながら、もし課題が出てきた場合は機動的に対応するというような考え方で、32ページの見直しによる影響というのは、これはもちろん中長期的に健康に与える影響、例えばどうしてもお金が足りなくて生活扶助にしわ寄せが来ていたというようなことが確認され、そういうデータをちゃんと把握した上で、また次の検証の中で生かしていく、こういう理解でよろしいのでしょうか。ちょっと確認まで、お願いします。

○大西保護課長 はい、部会長もおっしゃられたように、32ページ、本文の最後のページにつきましては、そういう御理解でありがたいかと思います。

 その中で、冬季加算分で足りなかったから生活扶助から持ち出す、持ち出さないという部分につきましては、そもそも生活扶助が基本的な光熱費分も含んだものとして設定されているということから、なかなか明確な線引きなり頭の整理が難しい部分があるのはこれまでの御議論の中で共有いただいたかと思いますので、まさに29年、30年検証に向けて生活扶助の検証の中でもあわせて御考慮いただければと思っております。

○駒村部会長 山田委員、いかがでしょうか。

 では、ほかの委員のほうからも、関連しても結構ですし、別の視点からでもいいですので、この際ですので、この表現について確認したいということがあれば御発言いただきたいと思いますが、いかがでしょうか。もし、気づきの点がありましたら御発言を、栃本委員、いかがでしょうか。

○栃本委員 前文の部分なのですけれども、多分それぞれの先生方の御意見などを踏まえて修正された結果、こういう形になったと思います。前文の2ページ目の下から2つ目の丸ポツで「もちろん実際に、どのような住居を確保できるかは住宅市場に負うところが大きいが、生活保護制度での居住水準はあくまで住のナショナルミニマム=健康で文化的な最低限度の住生活の保障にあり、人びとの心身等の状態によっても必要な住宅の質が異なることも生ずる可能性があり、これらのことを念頭において制度は運用されなければならない」と書かれて、これはすばらしいことだと思いますが、その続きで「特に、本人の意思に反した転居を強制するような運用はあってはならない」となってしまうと、今、口頭で申し上げた「これらのことを念頭に置いて制度は運用されなければならない」というのは、もう少し広いというか、大きい概念で積極的な意味を述べている形で制度は運用されなければいけませんよと現場は理解してくださいという形になっているのだけれども、特に本人の転居を強制するような運用はあってはいけないということを省けとか、そういうことを言っているのではなくて、この続き具合で、前の「制度は運用されなければならない」というので「特に」となってしまうとちょっといいのかなみたいに拝見して思いました。

○駒村部会長 場所というか、つながりが悪いのではないか、この一文はどこかもっとつながりのいいところに置いたほうがいいのではないのかと。

○栃本委員 それぞれ先生方が検討されたことを踏まえてされていると思いますが、ただ、これだけだと、なぜ「特に」なのだみたいな形になって、つながりが悪い話ではないかと思います。

○駒村部会長 つながりが悪いということですね。わかりました。では、これは最後までの間に検討したいと思いますが、コメントされた委員のほうで、どの辺がいいつながりなのか、前文に置いたほうがいいのかどうなのかも含めて、でも大事な文章ですから落とすということはないと思います。ほかに「例えば」は。

○岩田部会長代理 基準部会なので、本当は運用の問題と基準の設定の問題というのはレベルが違うので分けて考えたほうがいいと思うのですが、基準はこう決めるけれども、ケース・バイ・ケースなので、これは生活保護法の基本精神でもありますので、その精神にのっとってやるということと、「特に」以降のことは自由権の侵害になりますので、やはり非常に重要なことだと思います。しかし、「特に」と書くと、いかにもやっているようにも思われると怒る福祉事務所の方たちもいらっしゃるかもしれないので、「例えば」ぐらいでいかがですかね。

○栃本委員 「ただし」ではだめですか。

○駒村部会長 基準部会ですけれども、基準の評価をした結果、波及する効果に対しての留意事項ということで入れているわけですが、終わるまであと1時間ぐらいまだありますので、何かいいアイデアがそのほかあればと思います。今、2点ですけれども、ほかになければこの2点に戻りますけれども、いかがでしょうか。もし、なければ山田委員のほうから。

○山田委員 栃本委員がおっしゃったのと、前文からやや動かして、例えば19ページの下から2つ目の丸、多分こことかかわることだと思います。どういうことかと申し上げますと、いわゆる貧困ビジネスを意識した場合に、やはり受け入れる側の問題で、ある意味では囲い込まれてしまっているという問題があるので、本人の意思をあまりにも強調するとそこからの脱出が難しくなるという可能性もあるので、ここら辺に、例えば「しかしながら」の前に「見合ったものにするなどの措置も検討する必要があろう。ただし、本人の意思に反した転居を強制するようなことがあってはならない」と動かすか、もしくは前文のままで何かいいところに入れるかということなのですけれども、前文のどこに入れたらいいのかというのがあまり見当たらなかったものですから、ちょっと私も、あと1時間で。

○駒村部会長 道中委員、関連、別の件でもいいですけれども。

○道中委員 2ページのくだりのところでありますけれども、特段、本人の意に反した転居を強制というのは、強制というような言葉で具体的に強制はしませんので、物理的に動かしていくのを強制といいますから、ここは必ずしもなくてもいいのではないかと思います。具体的に現場で強制するようなことは実際ありませんからね。強制という段階は、ひょっとしたら27条の指導・指示というような形をとっていくだろうと思います。しかし、そういった実態はほとんどございませんので、あえてここで強調するということはつながりが非常に悪いですね。ここだけ強制というような言葉が出てくるのはイメージとして響きが非常に悪いので、そこらあたりは削除されたほうがいいのではないか、こういうふうに考えます。

○駒村部会長 阿部委員のほうから。

○阿部委員 私は、是非ここは入れていただきたい。それも特にこの前文で入れていただきたい。というのは、強制というような意思が事務所側にないにしても、ここのところは基準額より高くなっているので大家さんと交渉してくださいというような形で話すこと自体も、本人にとってはそういうふうに捉えられる可能性もあり、特にそれが貧困ビジネスの関連ではなく、長い間住んできた住居から、この住居はあなたにとって適切ではないですよというようなプレッシャーをかけられること自体があります。もちろんそれがないにこしたことはないのですけれども、前文ですので生活保護の意図といいますか、大前提として、このようなことはないのですよという意味でここの部分に入れていただきたいと思います。

前の「もちろん」からのパラグラフと別にして「特に」ということがなくても、後ろのほうでもそのようなことがありますけれども、住居というのは御本人の生活の継続性ですとか、そういう観点を勘案して、本人の意思に反した転居ということがないようにするべきであるというふうに、強制という言葉が強過ぎるのであれば、本人の意思に反して転居ということがないようにというような書き方にしていただければというふうに思います。住居の継続性、安定性というのは、生活保護の観点から、自立の観点から非常に重要だと思います。

○駒村部会長 今の御意見は、この流れではなくて、独立した丸にして、生活の継続性や安定性の視点から、本人の生活の質を下げるような形で本人の意思に反した転居を強いるようなという感じで入れるとどうでしょうか。強制という言葉がちょっと強ければ、広義の意味で強いるというのでしょうか、やむを得なくなるようなということがないようにしなさいというようなことにする。

○道中委員 そうですね。

○岩田部会長代理 強制という言葉が、やはり現場からは強いので、通常は転居指導と多分言うのですね。そうですね。

○道中委員 助言レベルでとどめるということのほうが。

○岩田部会長代理 法律の中では指導という言葉で多分出てくると思います。現時点では指導も非常に強い言葉ですけれども、法律がある以上使っていけないということはないので、2つに分けて、確かに上と下はちょっと違うかもしれないので、今、阿部委員がおっしゃったようなことを入れて、勘案して、本人の意思を確認した転居指導に努められたいというような、やっているでしょうけれども、念を押しておきますよと。

○道中委員 おっしゃるとおり、留意事項のレベルだろうと思いますので、支援の一環として、そういった助言、援助というような方向で記載されるといいかなと思います。

○駒村部会長 では、文面の確認です。「されなければならない」から下を改行して、丸を独立させて「生活の継続性、安定性の観点から、本人の意思を確認しない転居指導は行われないように留意されたし」、事務局こういう表現でいかがでしょうか。事務局はこういう修文で。

栃本委員、何かありますか。どうぞ。

○栃本委員 私は、「特に」という場所がよくないですよということを申し上げただけです。それにしても、ないことをあるみたいに書いたら、誤解されるような書き方はよくないから、そこはやはり現場の御経験のある、あと現場でされている方々のフィット感がいい形にしておくというのが必要だと思います。

○大西保護課長 今いただきかけたイントロは、受給者の生活の継続性、安定性の観点から、本人の意思を確認し、尊重した転居指導に努める必要がある、そういった趣旨でいかがでしょうか。

○駒村部会長 よろしいですか。

○阿部委員 転居指導が必要な場合は本人の意思を確認、尊重する。

○大西保護課長 そうですね。

○駒村部会長 これは強制という言葉ではなく、それはちょっと強過ぎたので、正確な表現に変えたということですけれども、栃本委員、いいですか。

○栃本委員 私は、「特に」を切り離すことによって最初の5行の意味がすごくいい感じになると思ったのです。それが趣旨で申し上げたことと、あともう1つは、繰り返しになりますけれども、指導が必要だから指導するのであって、指導が必要なければ指導しないという世界だから、文言が重複するような形というのは十分考えてつくられたほうがいいと思います。

○駒村部会長 そのとおりですね。

○岩田部会長代理 受給者の生活の継続性、安定性の観点からというより、それはどっちかというと割合、客観的な問題なので、「その観点から転居の必要性を十分把握し、なお本人の意思も十分確認した上で必要な転居指導を行うようされたい」というぐらいで、指導するほうとされるほうは、妙な言い方ですけれども、受け取り方が違う。されるほうはそうしなければいけないと思い込んでしまうというような話は時々聞きます。結果的にそれがよいことであることも、もちろんあるわけですけれども、とはいえ、やはり本人の意思確認というか、本人に十分説明し、納得し、転居指導していく。引っ越しの持つ、生活の継続性を不安定にさせるという意味は非常に大きいので、児童虐待や何かの問題も転居と非常にかかわっていますので、多分、阿部委員がおっしゃったと思いますが、そこらのニュアンスを入れて、なおかつ強制という言葉は使わない。「指導の際には意思を十分確認すること」というぐらいでいかがでしょうか。

○駒村部会長 道中委員のほうはいかがでしょうか。

○道中委員 よろしいと思います。結構だと思います。

○駒村部会長 では、今の趣旨で。

○大西保護課長 我々で練りまして、ちょっと時間をいただきたいと思います。

○駒村部会長 今の趣旨で直していただければと思います。

岡部委員、お願いします。

○岡部委員 居住の継続性、安定性ということを言われましたけれども、できましたら、継続性、安定性に加えて選択性を入れていただきたい、それを含めて検討していただきたいということが1点です。

 もう1つ、指導という用語について、法の条文からすると指導・指示と相談・助言という用語もあります。この

点、指導・指示という用語がいいのか、相談・助言という文語がよいのか事務局の方を含めて御検討いただければと考えます。

○駒村部会長 選択性を加えるということと、今のところですけれども。

○岡部委員 指導という文語は法的な強弱の問題で表現をどう考えるかというのを御検討いただければと思います。

○駒村部会長 では、その辺は前文にふさわしいような形の表現にしてください。

 ほかはいかかでしょうか。この際ですので。

○岩田部会長代理 内容ではなくてもいいですか。内容にもかかわるのですけれども。

○駒村部会長 最終的なコメントは最後に全員にお伺いしますけれども、本文に関しての個別の確認事項でしたら今やっていただいていいと思います。

○岩田部会長代理 24ページに「毎年の住宅扶助特別基準の改定方法」というのがあって、従来のやり方でやりますよということが6に書かれています。今回抜本的見直しをやったわけですけれども、つまり、どういうタイミングでこういう大きな改定をやって、その間は例年的な改定にしていくかということについては、生活扶助基準だけは、実は水準均衡にしたときに、全国消費実態調査の結果が出るのが遅いのですけれども、使えるようになった時点で、つまり5年おきに検証しなさいということを言っているのです。それを長いことしなかったわけですね。それが、あり方委員会に投げられて、かなり大変な作業になったわけです。生活扶助の本体については、一部の加算については全消が使えるようになるタイミングでやるということを前提に、こういう常設部会を設けてほしいという要望を繰り返し委員会で発言して、その実現を見たのですね。その意味は、投げられてやる部会ではなくて、使える資料ができたときにその常設部会は速やかに検証を行うということで、上げるとか下げるという何とも物騒な話をするために部会があるわけではなくて、定期的検証という意味でもともとこの部会はつくられたと私は理解しています。

そうすると、今の文言との関係でいうと、住宅扶助と冬季加算というのは今回初めてやったので、冬季加算は月ごとの問題なので、全消は使えない。そういう5年ごとの改定のときに扱えるかどうかわからないものである。住宅に至っては、今回の検証でもどういう方法でやるかということについてはかなり課題が残されたわけです。住調を今後も使っていくのか、使わないでアメリカやイギリス方式みたいなものを模索していくのかというようなことをどこでいつごろまでに考えて、その間はこれでいきますよということなのか。この部会の位置づけと、ここで書かれた検証の結果、こうですよ、しかし毎年の改定はこうですよというふうに言うことの責任といいますか、では次はいつどういう方法でやるのかということについての何か見通しがついたのかという意味では基本的に不安を感じます。

○駒村部会長 その点は私も最後にコメントしたいところだと思ったのですけれども、先生にそう指摘されていきまして、幾つかそれを感じさせる文章というのは中に入ってはいますが、特に今回の住宅扶助や冬季加算というものの検証が非常に間隔があいたというか、ほぼ初めてに近い。あまりにも間隔があいたりすると現状と制度のギャップが広がって大きな影響を与えることになるので、やはりデータの収集や手法の開発も含めて、あるいは検証も含めて継続的にやっていく必要があるのだということは最後に申し上げようと思ったのですけれども、そういうことは中にも書いてあるのですが、改めて前文あたりに書いておきますか。検証については、データ、検証方法の開発に努めて、全ての扶助について適切な間隔で検証を行う必要がある、こういうことを前文の終わりあたりに書いたらいかがか、岩田先生、そうすれば御趣旨はオーケーということですか。

○岩田部会長代理 今の点ですけれども、4ページに検討の経緯というのがあって、上から3番目の丸に前回報告書では云々というのがありますね。「順次、専門的かつ客観的な検証を進める必要がある」と書いてあるので、どんどんやれということになると思うのですけれども、やれというけれども、どういう方法でやるかということについての議論が深まらないために、今回でもちょっと歯切れが悪いといいますか、もちろんどんな方法を使っても唯一の方法ということはないと思いますが、住宅に関してはストックでやったということですね。フローのほうも限界はあるけれども、一応見ました、そういうことでやったのですけれども、速やかに進めるというのは、繰り返しですが、生活扶助基準と全消との関係だけでこれまで考えていたことなのですね。だから、これからほかの例えば医療扶助、教育扶助、いろんな扶助を考える場合に、速やかにできない可能性が高いですね。どういう資料を使ってどういうふうにやっていくかということについてまだ議論したことがない。ここのところを少し変えていただく。常設部会なので、順次進める必要があるのだけれども、どういうふうに進めるか、どういうデータを使うかについての議論が先行しないとまずい。

○駒村部会長 検討の経緯の文言に書き込むというのもしんどければ、前文あたりですね。これは学識者側の努力の問題ももちろんあって、諸外国でやっている検証情報や日本の制度にふさわしい検証方法というのは我々も考えなければいけないわけですけれども、経緯のところに入れるよりは、前文に全部、今後の課題としてカバーしてしまうほうがいいのかなと思いますが、ほかの委員、お願いいたします。

○栃本委員 当初、前文というのはなかったわけで、その後それぞれワーキングでいろいろ議論する中で、やはりこういう部分について指摘しておきたいというのを、本文に盛り込めない部分も含めて、なおかつ包括的なことも含めて学識経験者の方々が集まって入れられたと思うのです。非常に重要な前文だと思います。その上で今の議論というのは、少なくとも今回、住宅扶助と冬季加算について議論する中での形で、議論ではいろんなものにリファーしていますけれども、そういうことでいうと部会長の話された経緯のところはあくまで検討の経緯だから、むしろ先ほど岩田先生が話された21ページに言及されているアメリカ合衆国の住宅補助プログラム云々であるとか、そういう住宅扶助特別基準の検証結果に関する留意事項の丸ポツが幾つもありますが、20ページ以降で触れるべきなのではないですか。岩田委員が話されたのは、さっき委員自身が話されたように根本的なことですね。

○駒村部会長 ここだと住宅扶助にかかわることになってしまう。

○栃本委員 ああ、そうか、根本的なことだから前文。

○駒村部会長 根本的なことは全部カバーしないと。前文のほうがと思います。

ほかに委員のほうから意見があり、なおかつ事務局のほうからも対応についてコメントがあればと思いますが、いかがですか。前文のほうで、今、岩田委員がおっしゃったようなデータ、ツール、それから頻度について言及するということでよろしければ、事務局のほうはこれでどうですか。

○大西保護課長 今後の進め方に絡む問題意識かと思います。先生おっしゃられるように、5年に一度、生活扶助については定期的に見直すことが決まっている。全消や、時に家計調査なども使いながらですけれども、最近、3度ほどやってきた。ほかのものについてはどうなのかということだと思いますけれども、そこは順次やっていくということにつきましては、政府全体の方針としても示されておりますが、基準部会としても前回の取りまとめの中で御意思として確認いただいておりますので、やはり主体的に生活保護基準部会で御検討を進めていただくことも必要かと考えております。その中でテーマごとにどんなデータが必要かということをまず先に御議論いただいて、どういう角度から分析するのかということとあわせて御議論いただいてスタートしていくということになろうかと思います。

そういう意味では、岩田先生のほうから一度御示唆をいただいた御表現でもございますけれども、4ページの検討の経緯の3つ目の丸に「常設されている本部会において、順次、専門的かつ客観的な検証を進める必要がある」という表現がございますが、そこの「順次」の前に、例えば「利用可能な統計結果が得られ次第」とか「利用可能な統計結果を整理・活用し」というふうな形で入れさせていただければ一つの受けとめにさせていただけるのかなと思っております。

 もう1つだけ、すみません。生活保護基準部会のスコープでございますけれども、現物給付に当たります医療扶助と介護扶助につきましては対象から外れておるということを、立ち上げのときの部会でのやりとりで私の前々任の課長が確認させていただいているところでございます。

○駒村部会長 この辺の経緯というのは前回の報告書からもやや残っていて、どういうツールを使うというか、評価検証方法を使うかというのはもっともっと開発していかなければいけないし、データもできる範囲、さらには今回は作っていただいたというのもありますので、この経緯のところに入れるか、これまでの流れから見ると今の経緯だとちょっと弱いような感じもします。

○山田委員 そうすると、流れ的には、今、32ページの「その他」というのが、「はじめに」より、1、2、3、4という形で、下の項目になっているのですけれども、これを「終わりに」という形で1つ上の項目にして、今回の積み残しのようなものを書き込んではいかがでしょうか。

○駒村部会長 「その他」を「終わりに」とタイトルを変える。

○山田委員 ええ。

○駒村部会長 「その他」のままにして将来の課題ということを確認する。

○山田委員 ということで入れるというのもあるかもしれません。

○駒村部会長 それは前文ではなくて最後のほうで全体をカバレッジする。これでいいですか。事務局、いいですか。

○大西保護課長 同様の趣旨をこの場所に置くのは一つの落ちつきのいい形だと思っております。

○駒村部会長 岩田先生、それでよろしいですか。

○岩田部会長代理 それでも結構なのですけれども、ちょっとこだわると4ページの今のくだりは、私の中ではそんなことを言ったかなという感じもちょっとあります。多分、議論の中であった検証の意味が違うのです。基準の検証ではなくて、変更したことによってどういう結果が出たかを検証すべきだということは非常に強調したはずです。しかし、その検証はされていないのです。今回も検証すべきだということが入っていますね。この部会では、やはり部会でやったことの責任ということもあるので、決定するのはもちろん厚生労働大臣ですから、私たちの報告書はその素材にすぎないにしても、それがどういう効果を持ったのかということの検証、そういう意味の検証については議論した記憶があります。

 もちろん、やるなということは私も思っていなくて、定期的な見直しというのはどういう制度でも必要だと思うのですが、見直しというと一般的には、今日の社会情勢の中では、新聞はみんな「下げる」と書いてありますね。私たちが検討する前から「下げる」と書いてありますね。そうすると、下げるためにやるわけかなというふうに思ってしまう。前回もそうでしたし、今回もそうだと思いますが、下げる、上げるというよりは、合理的な基準の設定の仕方を模索するということであって、合理的なというのが、前回の生活扶助の場合はスケールメリットの問題を突き詰められたというのが一つの成果だったわけですが、実際の決定がどういう結果を及ぼしたかということについても検証してくださいねというか、その調査をしてくださいねというお願いをしてあって、それをやはりここでやるべきなのではないかと思います。

 今度の住宅と冬季加算については、なおさら非常に大きな影響が、つまりやりくりの余地が非常に少ないので、あると思うので、「順次」と言われても、こっちが順序を考えるのではなくて降ってくるのです。ちょっと極端な言い方で申しわけないのですが、降ってくるので、それにはそれなりの準備が必要で、今回、園田委員に入っていただいたのでいろいろ私たちも勉強になったのですが、かなり準備しないと難しいと思います。医療扶助についてはもっと難しいと思います。だから、速やかに順次いくかどうかというのは、その扶助の内容にもよるので、「順次」というのを取ってもらうといいかなというか、「順次」と誰が決めるのかなと。

例えば当初私の念頭にあったのは年金の数理部会なのです。この場合はっきりしているから、こんなに迷わなくて済むのですけれども、生活保護の場合は8つの扶助があって、細かい加算があって、一時扶助があってという非常に複雑なクリスマスツリーですから、これをどういうふうにほぐして検証するかということ自体が大問題になるところです。でも、前の報告書で「順次」と書いてあって、それについて私が異議を唱えてなければ、ここで蒸し返すのは甚だまずいわけですから、それはそうであればしようがないので、さっきの山田委員の案のような書き方をしていけばと。

○駒村部会長 岩田委員のおっしゃるような政策改定の影響も検証するということも確かに前から、それは前の報告書にも書いてあった話ですけれども、事務局のほうから、この辺、「順次」も含めていかがでしょう。

○大西保護課長 恐れ入ります。生活保護基準部会の設置のときの設置要領におきましては、細かく分けますと評価・検証という2つの言葉を丸ポツでつないで使っておりまして、これまでの影響などの評価をして、今のものはいい水準なのか、上げるべきなのか、見直すべきなのかといったような検証をしていただくということだと思います。

ただ、言葉の定義を今ここで議論するというよりは、そういう大きな意味でお願いをしておって、見直したものが次の見直しまでに、社会、世の中に、国民生活にどういう影響があったのかということをやはり御報告しながら次のことを考えていただくというのは、当然の流れだと思います。その中でできる限りの情報収集、整理を事務局としては、これまでも十分とは言えなかったかもしれませんけれども、引き続き努力を差し上げたいと思っております。

「順次」のスケジュール感につきましては、国民生活を支えております社会保障行政、社会保障だけではございませんが、それを裏打ちする財政もございますし、関連する他の施策、制度がございます。そういう中で一定の課題が順次、まさにめぐってくるというところもございます。そういうものとのすり合わせを行いながら、なるべく早い時期にそういうスケジュール感を私どもも政府全体の中で受けとめて、先生方と御相談しながら、スケジュール感を早目早目になるだけ御負担が少ないように組み立てていくという、まさに事務局のある意味、板挟み的なところでございますが、役割を今後とも果たさせていただきたいとお願いしたいと思っているところでございます。

○駒村部会長 この「順次」という表現が何かベルトコンベヤーで来るみたいな捉え方になると受け身になっているということだと思います。

○大西保護課長 もう1点、申しわけございません。先生がクリスマスツリーとおっしゃいましたけれども、本当に扶助の世界は細かいところまで樹形図のように積み上がっている仕組みでございまして、これを網羅的に全て全部やるのかどうかといいますと、そこはそれぞれ重みといいますか、当然おのずから整理していかなければいけないところが出てくると思います。私としましては、その節目として5年ごとの生活扶助の検証が柱として立っていると。その節目節目に向けて、ほかの扶助、加算で検証いただくべきものがあれば可能な範囲でお願いする。やはり一番の柱は生活扶助ということではないかと思っております。

 以上です。

○駒村部会長 そうすると「順次」というのはそういう意味で使いたいと。

もう1つ、改定の影響については事務局がきちんと情報把握に努めて、それについて部会に報告し、部会のほうでまたそれを評価・検証するということで一応回転していくのだということを「その他」のほうに書いて、「順次」は単に受け身で来ているのではなくて、開発も含めて、データも含めてというニュアンスを最後につけるということで、岩田先生、いかがでしょうか。よろしいですか。

○栃本委員 部会長、いいですか。

○駒村部会長 はい。どうぞ。

○栃本委員 前回の報告書の部分で4ページのその部分の生活扶助以外の扶助や加算制度についても速やかに検討を行うべきであって順次それをしなければいけないというのは、非常に積極的な意味で私は事務局に申し上げたと思います。まさに降ってきたからではなくて、本当に順次、今回の機会にやるのだというのが前の報告書の重要なポイントとしてきているわけです。この前文で先生方が言及されている、生活保護制度自身が「格差、不平等の是正や他制度との補完・補充を果たす最終的施策」であるがゆえに、社会保障制度の発展、充実、そういう中で、加算やその他扶助、そういうものを見ていくということで非常に積極的に書いたと思います。この部分は必ずしも降って湧いたということでの形ではなかったと思います。

○駒村部会長 では、ローテーションはちゃんとつけて、今のトーンでこの「順次」というのがあるのだと、最後に「その他」のところでそれを書く、再確認するということで、そこのところはまとめていく。ただ、事務局としては、必ず検証方法、データが手に入ったら、あるいはデータを今回のように作るということも含めて、あるいは改定の効果を評価するということを含めてポジティブに部会が動いていくようにという点がわかるように、あるいは実際になるように事務方にはお願いしたいと思います。

 ほか、なければ、私はさっきの「必要」が頭半分ぐらい占めていて、「必要」をどう文章化すればいいのだということなのですけれども、文言に案があればいただければと思いますが、どうでしょうか。さっきの19ページの「措置も検討する必要があろう」、岩田先生、「必要」ということではないのではないかということですか。委員の方からほかに代替案があればここで出して、ないとこのままになってしまいますので、具体的にこういう表記があればと思いますが、いいアイデアのある人はいませんか。お願いします。

○岩田部会長代理 「などの措置もあり得るだろう」ぐらい。「措置も考えられる」。

○駒村部会長 検討をする必要があるのですね。措置が必要ではないのですね。

○岩田部会長代理 「検討することも考えられる」。

○駒村部会長 「検討することも考えられる」、事務局としてはこの表現回りはどうなのですか。

○岩田部会長代理 「しかしながら」と続きますから。

○駒村部会長 いいですか。では、今のでここの表現は決まりということで、ほか、いかがでしょうか。もしこれでほかの分がなければ最後に、国民の皆様にも含めてこういうところをこの報告書はよく見ていただきたいという言葉や最後のコメントも含めて、これは個人的な見解にそれぞれなるかもしれませんけれども、進めたいと思いますが、本文についての意見というのはないと、よろしいですか。

 では、すみませんが、いつもアから始まってしまって、阿部さんからこっち、最後、私、話しますので、こう回っていければと思います。では、お願いします。

○阿部委員 コメントということで。

○駒村部会長 報告書に関する見解、あるいはその他に関する個人的な御意見を最後にいただければと思います。報告書としてはここで大体、文言も決まりましたので、今日でとりあえず住宅扶助、冬季加算のセッションは終わるわけですので、そういう視点でお願いできればと思います。

○阿部委員 私からは、全体の住宅扶助、冬季加算の検討を終えて懸念していることについて簡単に申し上げます。何遍も申し上げておりますけれども、住居の転居ということについて私たちは非常に配慮しなければいけないと思っています。特にこれから毎年の住宅扶助改定というのが行われ、今までもあったのですが、よりストリクトに行われるようになったときに、これだけ空き家というのがございますと全体的な市場としては家賃が下降していくというのが恐らく今後何年間かずっと続く傾向かと思われます。

そうしたときに住居の更新のたびに、自分はもしかしてここの住居に住むことができなくなるのではないかといった不安が常に生活保護の受給者の方々につきまとうということになります。特に高齢者の方々については転居というのが認知症の発症のきっかけになったり、健康の悪化になるということが既に指摘されておりますし、また何よりも、高齢者の方だけではなく全ての人にかかわることだと思いますけれども、自分はこの場所に住んでいていいのだという安心感というのは全ての人に必要だと思います。もしかしたらまた2年後動かなければいけないという不安感、この町に住み続けることができないかもしれないという不安感、特に高齢者の方にしてみれば、終の棲家といったことも考えたときに、私はこの終の棲家に住んでいていいのだと感じられるような制度にするべきだと私自身思っています。

それが社会的に包摂する。あなたはここの場所にいてもいいのだ」と、「今後また転々としなくてもいいのだ」というメッセージを発することは非常に重要だと思います。社会的な包摂という観点からも、たとえ指導であるかもしれませんし、助言かもしれませんけれども、転居指導する際には、その方々の何がベストイントレストなのかということを考えた上でやっていただきたいということを最後にもう一度申し上げさせていただきたいと思います。

 私からは以上です。

○駒村部会長 ありがとうございます。

次、岡部委員、お願いします。

○岡部委員 4点、感想と意見として述べたいと思います。

 まず、1点目は位置づけ。前文と本文を通して今回初めて住宅扶助に関する考え方、それとデータに基づいて検討・検証が行われ、それが事務費として出されたということは、生活保護基準を考える上で非常に意義があったのではないかということです。

 2点目は、考え方。住宅扶助に関する考え方をこれだけ明示的に示したというのは今回初めてです。そもそも人々にとって住宅とはどういう意味を持つかについて前文、本文を通してはっきり提示している。住宅をどう考えるかについては、一般低所得世帯との均衡で捉えるのではなく、実質的に健康で文化的な住生活保障ということを示した。特に住生活基本法に基づいて最低居住面積水準等を踏まえた上で行ったこと、そこで単に相対化して捉えるのではなくて、実質的に必要な絶対的な基準を設定するということを打ち出したことは非常に意義があると考えます。

 3点目は、技術的な話。私はこの点は不得手だったのですが、データからどの程度のことが言えるか。データの制約をうたった上で、データから言えることはどのようなことかと。極めて禁欲的な報告書になっていることです。基準の検討に当ってはどういうデータを活用、あるいは開発をしなければいけないのかについて、ある面では提示したということでもあります。この点については、今後、住宅扶助基準に限りませんが、この基準部会で考えなければいけないということをうたったということがあります。このように部会の中で一定の合理性を持つということを限界を踏まえ述べたことは意味があったのではないかと思っております。

 4点目は、住宅扶助あるいは冬季加算の中で留意事項として挙げられたことがどの程度留意されるかというのは今後の運用にかかってくる。このところは書いていただいたのではないか。例えば住宅扶助の場合には、場所によっては減額になる。減額になった場合についての配慮が必要であるとか、あるいは傷病者や障害、高齢の方について特別な需要が発生する場合については手当てをということが述べられている。冬季加算については、データ的な制約からすると例えば報告に書いてありますが、豪雪地帯や山間部の検証が十分できていない。あるいは傷病、障害者等の常時在室する方の暖房費用あるいは機器をどうするかということも述べられている。そういうことを考えると、そこのところをどういうふうに実行していくのかということも書き込んであるということでは意味がある。

特に留意事項の箇所に2つの方策を書かれています。1つは、特別な配慮が必要な方については考えてくださいということを書いています。それを実際に政策的にどのように行っていくのかということです。

先ほど岩田委員がちょっとおっしゃったように、これは引き下げありきというような議論がされているということなのですが、場合によってそういうことが起きるということになると、これまでの生活が激変するわけです。ここに書かれているように、前述の特別な配慮と共に激変緩和措置方策をとる必要があると述べています。留意事項と運用でより丁寧にやっていただくということが大事であると考えます。

最後に、個人的な感想なのですが、久しぶりにこの部会に参加させていただいて、非常に刺激を受けました。生活保護基準、とりわけ園田委員が述べられていますが、住宅の底が抜けないようにするにはどうしたらよいかということが熱く議論されたことはよかったと思っています。また、冬季加算について、今の時期に特にこの議論をするのはつらい。もう一つ個人的に言うと、私、北海道生まれでして、地域によって寒暖の開きがあります。これらの所で生活することがないよう、特に凍死者を出すとか、そういうことはないと思いますが、やはりそういうところに対して対応策が必要です。豪雪地帯や山間部の中のとりわけ暖房対策の必要な方、あるいは住環境によって暖房対策がより必要なところもあると思います。その手当てを是非やっていただきたいという留意点をお願いしたいということです。

全体でいうと冒頭に言った住宅あるいは冬季加算が俎上にのってこれだけ議論ができて、こういう報告書でいろんなことが盛り込まれたというのは、非常によかったのではないかと考えております。

長くなりましたけれども、以上です。

○駒村部会長 ありがとうございます。

園田先生、お願いいたします。

○園田委員 私は、ある意味、門外漢で、今回初めて参加させていただいて、今日は最後ですので、外側から見た目で率直な感想も含めて申し上げたいと思います。

 1つ目は、外側から見ると、今回いろいろこれまでの経緯を踏まえて議論されたのですが、いろいろ数字とか洗ってみると日本の高齢化率はもう25.9%です。これは阿部委員の御専門だと思いますが、国民生活基礎調査で日本の子供の貧困率は16.3%、片親世帯の貧困率も世界で最もすごい比率で、本当かなと思いますが、57%という数値が出ていたり、一方で昨年の失業率は4.0%で、最近の厚生労働省のホームページを見ると足元3.5%ですね。ということは、全く人手が不足しているときに生活保護の人たちはふえていく。それが一体どうなのかということは、皆さん御存じだからそこからスタートしているのだと思いますが、今まで決められたこの制度は、住宅扶助の方法論については1984年で、ちょうど30年前です。冬季加算は昭和49年(1974年)だから40年前で、高度成長期型に決めたルールを手直ししてこられたのだと思いますが、私から見ると、もうその間、バブルもあったし、失われた20年もあったし、制度疲労は明らかではないかと思います。今、必要なのは抜本的に見直す勇気ではないかと思いますが、先ほど申し上げた数値でいうと、日本国はそうはいっても世界一豊かな国なので、私たちはその豊かさを維持するために、一番困窮している人たちに最低限どういう生活の質と、今回の場合でいえば居住の質を保障するのかという、そこの底固めをしなければいけない時期だと思いますけれども、十分にそういう前提で議論できたかどうかということの懸念と、今風に言えば「やるなら今でしょ」という感じがいたしました。

 そういう意味で、もう一つ外側から、海外から見た目というのが、最近、日本は豊かになったのに逆に見習うものがないと結構内向きだと思いますが、外から見たときに、今回議論してきた住宅扶助や冬季加算がどうかというと、私、住宅分野なのですが、聞くところによると旧内務省が住宅については建設省と厚生省に分かれて、今は国交省と厚労省に分かれていますが、今回、数字でいろいろわかったのは、13ページにある居住面積水準は公営住宅のほうが圧倒的にいいのです。とはいいながら、大体、全体の8割の人は民間の住宅に住んでいて、厚労省は市場主義で国交省は社民的な政策をとっているというねじれた状況があります。これは外側から見るととてもおかしくて、例えばアメリカだったら住宅都市開発省というところが一括してやっているわけだし、イギリスだと多分、環境省という名前だと思いますが、やはり外側から見ると統合的にどういう仕組みなのかということを考えざるを得ないのではないかと思いました。

 もう一つは、先ほど来ずっと議論のあったこれをどうやって洗練させていくのかという方法論も、今、民間でビッグデータとかといっていて全然ここの議論とは関係ないみたいですが、家賃とかそういうことはまさにビッグデータの時代で、市場家賃というものをどうやって捕捉して、どうやって解析していくのかということは、そういうものを駆使すればかなりのことがわかるということと、もう一つ、それをもとに、では政策的にどうするのかというのはまた全然別次元の問題なので、そういうことをやって、プランしてドゥーして、検証には2つあったと岩田委員がおっしゃるように、チェックしてもう一回見直していくというPDCAサイクルを回すことももはや世界の常識だと思います。国だから遅れていていいということではなくて、むしろそういう最先端のことができるはずなので、そういうことをきちっとする必要がこれも待ったなしではないかと思いました。

 最後は、言わずもがなのことですが、1ページの「はじめに」の最初のポツと2つ目のポツに「国家が国民に対し」とか「国家が国民に最低生活水準として」と書いてありますが、この国家というのは国民国家ですから、何となく今の社会情勢を見ると「国家」と書いてあるところが「財務省」がとか、あるいは「厚労省」がと思い違いがあるかもしれません。これからこの部会の報告を踏まえていろんな政治的なプロセスを踏んでいくのだと思いますが、これは多分議員の先生に言ったほうがいいと思いますが、国民が国全体のルールとしてどうすればよいのかという趣旨で今回のこれを議論していただきたいということ。

もう一つは、今日、後ろのほうにもいらっしゃるので、あえて最後なので申し上げたいのですが、報道を見ると、ここにいてすぐ出た報道が全然違ったことが言われていて、私はすごく違和感がありました。非常にデリケートなことなので、こういうことを公開するというのは非常に意味があることだと思うのですが、報道はやはり公正な報道をしていただきたい。そういう意味で言うと、ムードで流していい問題ではないと思うので、私はフェアが大好きなのですが、フェアにやる、そういうこともちょっと感じました。

 すみません。最後なので結構言いたいことを言ってしまいました。

○駒村部会長 ありがとうございます。では、岩田先生、お願いします。最後ですから10分ぐらい延びるかもしれませんが、せっかくですから、あまり時間を急がせずに一応皆さんから。

○岩田部会長代理 2つだけ申し上げます。

 今、園田委員がおっしゃったように、定期的検証というのは必要なことで、結局、生活保護の位置が非常に低く、高度経済成長に追いつくために上げる上げるで来たので、それをどう検証するかという手法が十分練られなかった。水準均衡方式という言い方がまた誤解を与えて、水準は均衡しただけのお話なので、均衡しているかということを常に検証することが必要ということと、今回やって相対比較という方法の限界もはっきり出てきた。結局、住宅の質の問題が非常に浮き彫りにされたと思います。国土交通省におかれては是非頑張って住宅の最低限を確保していただく。それがあればこちらの基準額もきちっと決まってくる。そういう関係にあるということです。多分、医療なども同じことだと思います。

 もう1点は、先ほど申し上げたように、部会の位置づけを明確に今後していかないと順次言われたことをやっていると思われてしまう。我々の主体性が常に問われていきますので。生活扶助基準にしても今回の基準にしても、たどたどしいながらも別の方法の報告もしているのですね。今回、アメリカとイギリスの家賃の裁定の仕方、民間のデータを見ての家賃の裁定の仕方についての報告を園田委員も私も少ししました。こういうものが今後の課題であることは事実ですけれども、もっとスピーディーにそういうものを取り入れようという感覚が欲しいなと思います。生活扶助基準についてもいろいろな調査を4つぐらい報告したと思いますが、結局顧みられなかった。そのことについて研究者の中で我々に対して批判もあります。ですから、ガス抜きをする場ではなく、建設的に検証し、またそれを検証しというようなことを繰り返しながら、日本でどういう方法がいいか、この部会から少しでもいい方法を編み出していくという積極性が欲しいと思いますので、どうぞ今後よろしくお願いしたいと思います。

○駒村部会長 では、栃本委員、お願いいたします。

○栃本委員 まず、集中的にワーキングの先生方がこういう形でまとめていただいたことに感謝しております。その上で3点ぐらい。

 1つは、前回の12月にも指摘したのですが、4ページ目のところの先ほど来出ております住生活基本計画の「公平かつ的確な住宅セーフティネットの確保を図っていくことが求められている」という部分が書かれてあって、なおかつ今回いろんな調査をしていただいて、私が申し上げましたように、先ほど言及されましたが、13ページの民営と公営とURと給与で一般世帯と生活保護受給世帯の最低居住面積の水準を示す割合がこういう形で明確になった。私は常々この審議会で比較してほしいと言っています。比較してほしいというのは、別に下げるために比較してほしいと言っているのでは全くないのです。前回申し上げたように、比較によって明らかになるということなのです。こういうものが出たからこそこれからの展開が見られるので、しかも4ページが書いてあるわけだから、これは国家というか、国に対してボールが投げられたということだと私は思います。これが1点です。

 今回、ケースワーカーの方々がいろんな形で調査をして、政策とこういう議論の往復運動というわけではないのだけれども、その接続性、そういうのができたというのは、住宅扶助であるがゆえにということもあるかもしれないけれども、ある意味では画期的だったと思います。

 もう一つは、面積がもちろん重要なのはわかるのですが、それ以外に、障害者の方、高齢者の方ということでアクセスとか附帯的な部分、段差があるかとかないとか、そういうことについても調査ができたというのはこれからのいろんな議論をする際の重要な出発点になったと思います。

 もう一つは、先ほど岡部先生が話されたと思いますが、今回、住宅扶助の基準や冬季加算を検討することの中からそこの課題であるとか示し得たというのは、これもとても重要なアウトプットだと私は思っています。

 さらには、19ページ、20ページで、そんなことを書いていいのかと思うぐらいではありますが、「生活支援が維持されるような措置を講じることが必要である」とか、前回も申し上げましたが、20ページのところで「生活支援の提供にかかるコストに対応する扶助の仕組みを設けることなど検討することも必要である」、そういう新しい芽が出ているということもすばらしいと思います。

 最後に、比較ということで言うと、この議論の中で、ストックを持っている人と持っていない人は大変な違いがあるので、そのことについて考えなければいけないというのがあったと思います。そういう意味では、比較する中で、データを取り扱う、ないしはこれから検討するときに、最後に私が言いたかったのは、比較することによって、先ほどの13ページのデータにもあるように、一番不利益を被っている人がさらに不利益にならないようなロールズの「A Theory of Justice」の正義論の格差原理、そういう観点から最終的には見なければいけないということで私は申し上げたつもりです。最後に申し上げるつもりでいたので、今までとっておいたわけではないのですが、それを最後に申し上げたいということです。

 以上です。

○駒村部会長 ありがとうございます。道中委員、お願いいたします。

○道中委員 私のほうからコメントを2点と意見を1点。

 住宅扶助が一般基準と特別基準と2本立てということになっています。特別基準の検証ですが、実態はほとんど特別基準が一般基準という形で現場は運用しているということです。その関連性ということがあるのですが、まず1点は、今回、現場の福祉事務所の皆さん方が非常に忙しい中で細かい実態調査に御尽力いただいたということで、この調査結果をそういった細やかな形で丁寧に、あるいは今後の検証結果を良質な質への方向性まで言及しているということで、納得いただけるような報告になっているのではないかということで評価させていただきたいということが1点。

 今回、住宅と冬季加算に関しまして、これまでにないような新しい検証方法を用いた、果敢な、チャレンジしたそういった報告になっているということです。特に住宅・土地統計調査データとか、そういったところでの解析をしていただいたということで、こういうデータ、全てがパーフェクトではありませんけれども、少なくとも既存の制度の中で最も適切、妥当な方向性を見出したということで評価できると思います。それが2点目です。

 意見でございますけれども、部会を越えるようなことになるかもわかりませんが、岩田先生がクリスマスツリーという表現をされたのですが、生活保護制度は1950年に制度発足しまして、当時は8つの扶助はなかったのですが、1つずつ扶助がふえてきたということで、国民にとって非常にわかりにくい、使いにくい、出にくい制度、こういうことがございます。さらに、そこにさまざまな加算制度など入っております。戦後間もないころの何もない、社会福祉とかできていないそんな時期に発足した制度でございますので、ここに至ってそれをもう少しスリムな形で、例えば住宅の話がありましたが、それは国交省にお任せする、あるいは教育扶助だったら文科省にお願いするというようなもうちょっとマクロな視点でトータルな議論でそういったところの制度設計の見直しを政策的に議論するような場もぼちぼちあってもいいのではないかと思います。ここはあくまで基準部会ですので、ミクロなレベルで、あるいはそういった政策論議もあるのですが、そういった視点、いつかそういった時期で議論する機会があってもいいのではないか、こういうふうに考えます。

 以上です。

○駒村部会長 ありがとうございます。

では、宮本先生、お願いします。

○宮本委員 私は生活保護の制度に関しては全く素人なものですから、この部会に参加させていただきながら一番考えたことは、住宅扶助という制度の背後にあるもう一つの問題といいますか、制度の対象にならない住宅問題というのがこの検討の中から非常によく見えてくるように感じた次第です。

 一つ御紹介すると、ちょうど去年の12月にNPO法人のビッグイシューと神戸大学の平山洋介教授が20代と30代の低所得層を対象にして住宅調査をやっていまして、それが暮れに発表されているわけです。首都圏と関西、大都市部の未婚で年収200万未満(学生は除く)、その人たちのネット調査をやっております。

その結果を見ると非常に多くのことを感ずるところですけれども、8割の人は親と同居している。残った人は単身で民間住宅を借りている。この人たちの多くは地方出身者、親同居の多くは、当然ですけれども、首都圏、大都市部出身で、低所得あるいは無職が4割、こんな状態にあるわけです。本人は「暮らし向きが非常に苦しい」、58%がそう言っています。3年後の自分の状態に悲観的なのは、単身で住んでいる人よりも親同居グループである。先が見えず結婚はできないと大多数の人は言っている。

こういう状態で、平山教授が言っているのですが、もともと若い人たちの住宅というのは動的なものであって、順次、年齢とともに移動していきながら、最終的に持ち家を持てる時代があったけれども、今の光景は、若い人ほど静的状態にある。動かない。とにかく親の家がまさにシェルターみたいなもので、先の展望は全くないけれども、親の家にいるしかない、こういう状態になっているということを言っているわけです。

一番の懸念は、この制度の検討の中で思うことは、現時点の住宅扶助をもらっている方々にとって何が問題なのかを議論しておりますけれども、先ほど園田委員もおっしゃっていましたが、今のこの状況からするとこれから先、住宅はどうなるのかという問題で、低所得で親元同居している8割の人たちの中のかなりの人が親の所得も低い。そうすると5年か10年たつと住宅が老朽化する。老朽化したとき誰がどうやってその住宅を直すのかという話になり、まさに住宅の質ですけれども、そこに住み続けるとすると、仕事がない、お金がない、老朽化した木造住宅、親も年をとるか、親はいなくなってそこに住む、そういう状態になる。そのあたりの今日的な状況と、住宅扶助制度、このあたりのところはマクロな視点で議論すべき一つのテーマではないかという感じがしているということでございます。相対比較の限界ということは先ほどもおっしゃったとおりで、この委員会は、マスコミの捉え方、記事の書き方だと全体として引き下げだというような言い方で盛んに書かれていますが、そういう問題ではなく、もっと大きな目で議論する非常に重要なテーマだという感じがした次第でございます。

○駒村部会長 ありがとうございます。

山田委員、お願いします。

○山田委員 感想めいたものを私からは2つと、あと1つはお願いを申し上げたいと思います。

 今、宮本委員のお話にもありましたけれども、これまでは既存の統計を使って分析していたのが、今回は福祉事務所や事務局の大変な労力のおかげで生活保護受給世帯の住環境の問題が明らかになったということは非常に大きな意義を持つことだと思います。また、いろいろな比較で一般の低所得世帯においても劣悪な住宅問題があるというのが明らかになったというのは非常に大きな点であります。そういった意味では、今日の「はじめに」の2ページの最後に入っておりますように、単に住宅扶助の問題にとどまらず、今後、住宅確保に不利な低所得の非正規雇用者、不安定雇用者、単身高齢者も含め、住宅扶助よりも大きな枠組みで住宅問題を考えなければいけないということをちゃんと指摘できたというのは、一つ大きな意義があったのではないかと思います。報道では住宅扶助や冬季加算引き下げとか、園田委員がおっしゃったように、それ以外のところがどうしても注目されてしまいましたけれども、そこの部分が強調できたというのは一つの大きな意義だと思います。

 2点目は、先ほど岩田委員の「順次」というところと関係しますが、検証方法のあり方です。今回のようにデータを新たに作って検証できたことはよかったのですが、ただ、どういった影響があったかという検証も当然、非常に重要になってくるであろうと思います。これは既に皆さん御存じのように、前回のセッションのときにあれほど委員が懸念を表明して、文科省とか厚生労働省の申し入れにもかかわらず、やはり生活保護基準の引き下げに伴って就学援助を受けられなくなった人がいる。横浜市では1,000人近くいるということで、生活保護基準を何らかの政策で変えた場合にどういった影響があるのかというのはきちんと把握して、それによって対応すべき点というのも検証していく必要があると思います。

 それとともに、次はこのトピックスについて検証してください、データはこれですというような、材料はこれでやってくださいというのではなくて、やはり手法から、常設の部会ですから常日ごろから議論しなくてはいけないというのは、岩田委員がおっしゃった点、そのとおりで、この点についてはお願いしたいと思います。

 その中でも、1点目の繰り返しになりますけれども、住宅扶助や冬季加算といったものは必需費目にかかわるもので、そこを相対で決めてはならない、絶対的な基準で考えなければいけないということを訴えることができたのは今回の議論の一つのエッセンスであって、今後、政策に何か落とし込む際にはそこの部分を是非とも考えていただきたい。さっきロールズの話が出てきましたが、最も不遇な人の予算を削って全体的な予算の帳尻を合わせればよいというわけではないですし、最低生活基準未満の、より不遇な人との比較で不遇な人の基準を切り下げてはいけないと考えています。

 最後に、事務局にお願いの点ですが、こちらに出る前に確認したところ、第19回、これは201410月に行われた部会ですが、それ以降、議事録がまだ未掲載です。報告書は出るわけですけれども、行間とか、ここでどういうふうに議論していて、どういう思いで委員が議論しているのかということを明らかにする必要があると思います。報道では引き下げということしか議論されないのですが、それはどうなるかは政策改定でしかわからないわけですけれども、我々はもっとより客観的な広い観点から議論しているつもりなので、議事録がないとそういったことが全く国民の皆様にも伝わらない。通常国会が間もなく始まりますけれども、そういったところに間に合うように議事録を早急に公開して、この内容、行間とか委員の思いというのを明らかにしていただきたいと思います。

 私からは以上です。

○駒村部会長 ありがとうございます。

多少延びておりますが、間もなく終わりますので、皆さんおつき合いいただければと思います。今の山田委員の御指摘のところ、確かに部会長としても責任を感じております。報告書だけの話ではなくて、報告書がどのようにできたかというその議論のプロセスは極めて重要でありますので、事務局におかれましては、これをなるべく早く公表していただければと思います。

 しんがりになりましたけれども、私もずっと部会長で自分の意見は申し上げなかったのですが、今日これで報告書案が固まり、御賛同いただきましたので、一委員として部会長の立場をちょっと離れて4点ほどコメントしたいと思います。

 報告書については、住宅扶助の基準はどのように考えるべきかを明確にして、住生活基本法に基づく最低居住水準を目指すべき水準として確認したというのがまず1点目。

 2点目は、今までの皆様の発言がありましたように、生活困窮者、低所得高齢者がふえていく可能性が高い中で、政府を挙げてセーフティネットの拡充をしていただきたい、これはいずれも2ページ目に明確に書いてあると思います。

 3点目として、先ほど栃本委員が今後の期待として言及されましたけれども、生活支援コストに対する扶助の仕組みについて今後検討してくださいということも20ページに書いてあります。これはいずれも新しい、これまでになかったものだと思っております。

 4点目に、私、個人の委員として生活保護の今後についてです。昨年7月にOECDが発表した「今後50年の政策課題」というレポートによりますと、過去20年で下位と中位のグループと上位の所得階層の間でかなりの所得の格差の拡大が見られている。このペースで今後50年続くとかなり深刻な状態になるということが指摘されています。また、昨年12月のOECDの報告書で、所得格差は経済成長を損なうというレポートが出ておりまして、所得格差が拡大すると経済成長は下がる。その理由は、貧困世帯ほど教育や健康に対する投資が劣っている。格差問題に取り組めば社会を公平にして経済を強固にすることができるというレポートが出ております。199011月にサッチャー首相が国会で、お金持ちを豊かにすれば貧しい人も豊かになれるような趣旨の話もあったようですけれども、過去20年の先進国の成果はそうなってこなかったということで、OECDのレポートは、低所得者の教育や健康を充実させるということを通じて貧しい人を含めて社会全体が豊かになり、もちろんお金持ちも豊かになるという趣旨だと思います。政府におかれましては、社会全体が豊かになるために、生活保護制度や関連する生活困窮者制度に関して必要な部分の機能強化や充実を図っていただきたいと思っております。これは私の個人の委員としての見解でございます。

それでは、この後の予定について事務局に確認させていただきたいと思います。先ほども申し上げましたように、委員の皆様の御議論で報告書案はほぼ賛同いただいていると思っております。報告書につきましては、若干の字句修正を行い、公表させていただきたいと思います。

今後の予定について事務局から御説明いただきたいと思います。

なお、各委員からのコメントもしっかり受けとめていただきたいと思います。

では、厚生労働省のほうからお話をお願いいたします。

○大西保護課長 いただきました修正の箇所につきましては、先ほどの線で案文を固めまして、修正を加えまして、追って部会長に確認をいただきまして、厚生労働省のホームページに公表させていただきたいと思っております。

 また、本日いただきました先生方の各般の御助言、御指導につきましては、しっかり受けとめさせていただきまして、これからの対応、業務に生かさせていただきたいと思っております。本当にありがとうございます。

○駒村部会長 それでは、今回の基準部会での議論の終了に際して鈴木局長より御挨拶いただければと思います。よろしくお願いいたします。

○鈴木局長 一言御礼の御挨拶を申し上げたいと思います。

 今回、住宅扶助、冬季加算、2つのテーマにつきまして、初めて本格的な御検証をいただきました。委員の先生方におかれましては、幅広い論点につきまして本当に精力的に御議論いただきまして、心より御礼を申し上げます。

 また、私ども事務局、さまざま行き届かない点があったと思いますけれども、駒村部会長におかれましては、部会の円滑な運営に大変御尽力いただきまして、まことにありがとうございました。

 今後でございますけれども、本日お取りまとめいただきました報告書をもとにいたしまして、それから、さまざまいただきました御指摘、留意事項、これをきちんと踏まえまして、政府として基準の見直しの具体案を検討し、また決定をしてまいりたいと考えております。

 また、引き続き、先生方にはさまざまな場面で御指導、御意見を賜りたいと思っておりますので、引き続きそれをお願い申し上げまして、御礼の御挨拶にかえさせていただきます。本当にありがとうございました。

○駒村部会長 それでは、最後になりましたが、今度は私が部会長として御挨拶申し上げたいと思います。

 おととしの11月から長丁場の検討会になりまして、さらに作業部会もかなりの頻度で行いまして、委員の皆様には大変御負担をかけて大変恐縮でございます。また、今日も含めて何度か時間延長ということでございまして、私の運営の不手際ということで御容赦いただければと思います。

 今回いろんな委員から御指摘されていますようなデータや検証方法の開発、あるいは政策効果を評価するということを踏まえて、今後も基準部会でそういう問題意識は持って取り組んでいただければと、こういうふうに思っております。

 以上をもちまして、今回の生活保護基準部会における審議は終了させていただきます。

委員の皆様におかれましては、大変精力的に御議論いただきましてまことにありがとうございました。


(了)

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