ホーム> 政策について> 審議会・研究会等> 社会保障審議会(年金積立金の管理運用に係る法人のガバナンスの在り方検討作業班)> 第3回 年金積立金の管理運用に係る法人のガバナンスの在り方検討作業班議事録(2014年11月14日)




2014年11月14日 第3回 年金積立金の管理運用に係る法人のガバナンスの在り方検討作業班議事録

年金局

○日時

平成26年11月14日(金)13:00~15:00


○場所

東京都千代田区平河町2-6-3
都道府県会館(101大会議室)1階


○出席者

植田 和男 (座長)
伊藤 隆敏 (座長代理(専門委員))
岩間 陽一郎 (専門委員)
柿木 厚司 (委員(代理出席))
菅野 雅明 (専門委員)
出口 治明 (委員)
花井 圭子 (委員)
堀江 貞之 (専門委員)
山口 修 (委員)

○議題

GPIFのガバナンス体制について

○議事

○植田座長 それでは、ほぼ定刻で皆さんおそろいのようですので、ただいまから第3回のGPIFに係るガバナンスの在り方検討作業班を開催いたします。

 皆様方におかれましては、お忙しい中お集まりいただき、大変ありがとうございます。

 それでは、事務局から委員の出席状況等について御確認をお願いいたします。

○大臣官房参事官(資金運用担当) 担当参事官の森でございます。

 本日の会議の出席状況でございますが、いつもながら急な御参集の呼びかけだったわけでございますが、本日は柿木委員と藤沢委員から御欠席との御連絡を受けております。また、出口委員でございますけれども、14時ごろにこちらに御到着予定という御連絡をいただいております。

 それで、御欠席の委員のかわりに御出席ということで、柿木委員の代理としまして日本経済団体連合会から阿部参考人に御出席をいただいております。

 それでは、お手元の資料につきまして確認させていただきます。

 本日は、配付資料といたしまして、資料1でございますが、論点整理(案)でございます。

 資料2でございますが、これまでの議論におけます「GPIFのガバナンスについて」の主な意見(未定稿)でございます。

 あとは資料3で、前回、委員のほうから事務局に対して、いろいろ調べてくれという話がございましたので、委員からお求めのあった事項。

 あと、机上配付資料としまして、これは未定稿でございますが、第2回の検討作業班議事録。

 あと、論点整理につきまして、菅野委員と出口委員のほうから御意見いただいていますので、それも席上配付させていただいております。

 以上でございますが、もし不足等ございましたら、適宜事務局までお知らせください。よろしいでしょうか。

 また、今回、弊省の大臣の指示によりまして、こちらの山崎審議官をヘッドとしまして、外部の弁護士の先生にも御参画いただきまして、特別にプロジェクトチームを設けたところでございます。このチームの担当である三浦企画官も、本日から事務局といたしまして、この会議に参加させていただきます。よろしくお願いします。

 あわせて、本件につきましてアドバイスをいただくために、野村修也先生を厚生労働省顧問としまして、弊省大臣のほうから任命いただきましたので、御報告させていただきます。

○植田座長 それでは、カメラの方は退室をお願いいたします。

(冒頭カメラ撮り終了)

○植田座長 では、議事に入らせていただきますが、きょうは前回に引き続き、GPIFのガバナンス体制について御議論いただきたいと思います。これまでの論点を事務局に整理していただきましたし、また前回、お求めのあった事項についての資料も提出していただいておりますので、事務局からあわせて御説明をお願いいたします。

○大臣官房参事官(資金運用担当) それでは、資料が前後いたしますが、委員の先生方からお求めのあった事項につきまして、最初に御説明させていただきます。

 めくっていただきまして、まず諸外国の年金につきまして、運用と給付の調整について、カナダとスウェーデンと、対象としまして日本につきまして、3カ国がどのようになっているかということで資料を用意いたしました。

 カナダでございますけれども、2階建ての年金になっていまして、1階部分は税による方式。それで、運用していますのは2階部分でございまして、これがカナダペンションプラン、CPPになっております。カナダの年金につきましては、1995年、日本の財政検証に当たる報告書が出まして、それによりますと、当時は年金保険料3.6%だったのですが、これを2016年に10.1%、約3倍に上げましても、年金制度については十分な給付ができないという内容で、これがカナダ中で大議論になりました。

 この解決策としまして、1つは、給付に関してもその執行の在り方につきまして見直したのですが、一番大きな対処策は、あらかじめ保険料をある程度上げて徴収いたしまして、年金積立金をあらかじめ蓄え、それによりまして年金財政を賄っていこうというやり方に変えたということでございます。それで、先回も御説明しましたCPPIBという組織ができて、そこが年金積立金の運用。目標としましては、物価上昇率プラス4%ぐらいの運用益を稼いで少子高齢化に対応するという形の制度になったわけでございます。

 その際の運用と給付の調整の関係でございますけれども、この改正によりまして、従前、財政検証は5年だったのですけれども、3年という形で短くいたしました。さらに財政検証は財務大臣が行うのですけれども、州と連邦財務大臣の共同の制度でございますので、給付を上げるのか、負担を上げるのか、いろいろな議論が起こります。

 このため例えば、運用が悪くて財政調整をしなければいけない場合におきましては、運用と給付との調整の関係、1と2に書いてございますが、保険料率につきましては、最低保証料率と保険料率の差の半分相当を3年かけて引き上げる。年金給付の物価スライドを3年間凍結するという形で、仮に運用が悪かった場合でも自動的に運用と給付の調整がつくようなシステムを導入したところでございます。

 スウェーデンも年金危機ということで、1990年代から与野党で大きな議論をいたしまして、基本的に賦課方式でございますが、支払った保険料にみなし運用利回りがつくという観念的な拠出建て方式ということで、大きく制度を変えたわけでございます。

 その中で、みなし運用利回りの関係でございますけれども、年金につきましては、持っている資産、持っている資産というのは、年金積立金の金額と将来の保険料の原価のようなものでございますが、その資産と将来の年金給付の関係で、一種、みなしのバランスシートみたいなものをつくりまして、そこが債務超過になった場合においては、先ほど申しましたみなし運用利回りを減額していくという仕組みによりまして、給付調整を行うという仕組みを導入したわけでございます。なので、人口動態とか、そこで資産として算入されているような年金積立金の額に仮に大きな損が生じた場合におきましては、年金給付が自動的に減額していくという仕組みになっておるところでございます。

 他方、日本でございますが、これもスウェーデンのように、基本的には平成16年改正におきまして収入ということから考えていく制度になっておるところでございますが、運用と給付との関係は、将来の少子高齢化等を考えましてマクロ経済スライドが導入されておるところでございます。これにつきましては、今、申しましたように、基本は少子高齢化等の対応でございまして、運用に関してはどういう考え方かといいますと、短期的な年金の損失は即座に反映させるべきではないという考え方でございます。

 ただ、5年に一度、財政検証のときには、おおむね100年後に年金給付額1年分の積立金を持つことができるように調整するということでございますので、この5年に一度の財政検証の際に、仮に大きな積立金の毀損等があれば考えていくという仕組みになっております。

 これが運用と給付等に関するところの比較でございます。

 次に、2ページ目でございますが、我々、20年ぐらい前は、国際比較する場合には、日本と英仏独とか欧米の主要国と比較したわけでございますけれども、英国とかドイツはどうなっているのかという御質問がございました。英国につきましては、そもそも基礎年金額が少ないということもございますし、ドイツの給付につきましては、日本の年金のマクロ経済スライドのように持続性ファクターというもので調整していき、必要に応じて保険料を上げていくということで、積立金がなくてもそういうところで調整していく仕組みでございます。

 2ページは、OECD2013年のレポートでございますが、現在、賦課方式、税方式も含みますが、その中で積立金を持っている国、大きなものから順番にOECDが把握しているものについて書いてございます。1番はアメリカ、2番が日本、3番目がサウジアラビアで、4番目は少子高齢化が急速に進んでいる韓国等でございます。右のほうに、資産の金額もございますが、もう一つの観点といたしましては、GDPにどれだけの規模を示すかということでございます。日本は、額としてはアメリカに次いでいますが、GDPに占める割合は23.6%でございまして、例えばお隣の韓国は28.2%でございますので、比較すれば、絶対額は多いのですけれども、GDPに占める割合は韓国よりは小さいという形になっております。

 3ページ目は、前回、OECD等のガイドラインを示しまして、そこで統治機関、つまり年金積立金の運用について基本的なことを決めるところはどんな形になっているのかという御指摘を受けました。事務局で整理するのも、一体どこを選んでいいのか、あと、考え方に恣意性があるのではないかということも考えまして、既存の研究をお示ししています。世界銀行も年金につきまして長年調査をやっていますが、パブロ・ソート先生がそこの補助金を受けまして、先生のほうで把握できます80ぐらいの年金基金につきまして、統治機関がそもそも社会保障機関の内側にあるのか外側にあるのか。仮に合議制である場合には、どんな形でやっているのか。専門性もしくは政府からの関与はどういう形になっているかということで、並べたものでございます。

 これは、先ほどのOECDのものだけじゃなくて、いろいろな国があるわけでございますけれども、先生の分析によりますと、調査対象の中でわかったもので68%が政府系の機関でやっておるということでございまして、社会保険関係の機関、もしくは社会保険大臣が管轄している場合が多いというのが、そこのStatutory Statusというところでございます。サイズにつきましては、独任制のところは14%で、そのほか合議で決めているものにつきまして、構成員の数の平均は9名程度ということでございまして、構成につきましては、73%ぐらいが政府の代表と労働組合の代表、あと雇用主の代表という三者構成でございます。

 専門性につきましては、判明しないものが多いということでございますが、例えば前回も御紹介いたしましたカナダ等につきましては、拠出者性にプラスしまして、専門家から選ぶような形で、Expertsの欄でございますが、専門性が強いという形になっています。

 政府との関係で、人選等につきまして政府の意向がどれだけ入っているか。Government Powerでございますが、64%は政府等の力がかなり強い。部分的というのが31%でございまして、カナダのように選出過程も含めて独立の委員会をつくってやっているところは「no」と書いてあるところでございます。御紹介でございます。

 4ページ目で、説明責任につきまして、カナダ(CPPIB)の例を出しております。CPPIBにつきましては、先ほど申しましたカナダの年金危機を踏まえて、運用益、運用できちんと年金財政に貢献していくという形でつくられたところでございます。年金危機を踏まえまして、説明責任がかなり徹底していると言われています。年次報告書とか財務諸表については、ほかの国にもあるところでございますが、4番目の、2年に一度、カナダの年金制度に加入する9つの州で一般国民向けの公開ミーティングをしろと法律に書いてあるということでございまして、ここは非常に特徴的だと考えております。

 これは、法律では10日前に、例えば政府広報とかではなくて、一般の新聞でこういうミーティングがありますよということを公告して、国民の方もちゃんとコメントできることを保証しまして、そこにCEOの方がみずから出向いて投資方針などについて説明しまして、直近のアニュアルレポートをお配りするということでございます。9つの州で2年に一度でございますので、かなり一生懸命やっているのかなと存じます。

 それで、5ページ目以降は年金部会で1回御説明した話でございますが、以前の特殊法人である年金資金運用基金から、独法でございます独任制の年金積立金管理運用独立法人にどうして変わったかという話でございまして、年金部会の先生方については2度目になるかと思いますが、ちょっと御説明させていただきたいと思います。

 年金の自主運用につきましては、財投制度の見直しにおきまして平成13年から発足したわけでございますが、その前に財投制度の見直しも視野に入れまして、厚生労働大臣のほうで年金自主運用検討会というものを労使のトップも含めて実施したところでございます。これは、運用の基本方針とか、いろいろなことを御報告いただいているわけでございますが、ガバナンスにつきましても、今、皆様方に御議論いただいていますように、何を、誰が、どのように決めるかというのが非常に重要でございまして、ここでも報告がされたところでございます。

 報告書の内容でございますけれども、年金積立金の運用基本方針につきましては、誰が、何がというところでございますが、厚生労働大臣が決める。ただし、どのようにの部分でございますが、年金積立金の運用につきましては、将来の保険料水準に影響を与え、保険料拠出者の利害に直結するので、保険料拠出者や金融・経済の専門家の意見を反映するように、検討会を設けて決めなさいという形になっておる。その際には、年金審議会との十分な連携を確保しろという話をいただいています。

 めくっていただいて6ページでございますが、では具体的な執行につきましては、国でやったほうがいい、自主運用だから厚生労働大臣がやるべきだという話ではございませんで、国とは別組織の運用管理機関を設けて運用管理業務を行うことが現実的だということでございまして、行政の運用管理機関に対する関与は必要最小限にとどめて、業績評価を徹底的にやる。

 その内部組織につきましては、中立性を確保するとともに、運用管理機関に数名の専門家からなる投資委員会を設置しなさい。そこで実際の投資政策の決定なり、民間運用機関の選定。これが何をということでございますが、そういう形で専門家による投資委員会を設けて決定しなさいというのが、この報告書のたてつけでございました。

 ということでございまして、右側の図でございますが、厚生労働大臣のもとで、年金資金運用分科会ということで、労使の代表、もしくは金融等の専門家からなる分科会で諮問・答申を得まして、そのままで基本ポートフォリオ等に関する基本的事項については決定する。

 その下の特殊法人、ここは理事会があったのですけれども、理事会にプラスしまして3名の投資専門委員が加わり意思決定するという仕組みでございまして、拡大理事会といいますか、投資委員会みたいなもので実際の執行業務を負う形になったところでございます。

 では、それがどうしてGPIFに変わったかといいますと、それが一番最後のページでございます。平成16年の自民党の報告書があるのですけれども、今、株価は1万7,000円程度でございますけれども、平成15年ぐらいは7,600円程度まで下がりまして、国民の方々から、市場運用で株で運用して大丈夫かということで非常に御心配いただいたときがございます。その中で、自民党におきまして「年金積立金の運用及び運用体制の在り方」というものを提出いただきました。

 新法人の業務実績は厳正に評価し、適切に責任を問う仕組みとしろ。あと、専門性の徹底及び責任の明確化を図りということで、独法でやらせる。あとは、パッシブ運用中心とか国内債券中心という運用体制でございますので、効率的な運用体制に向けて大幅な人員縮減を図る。あと、それまでは厚生労働省で年金運用に関する課が2つあったのですけれども、今や厚生労働省では年金運用に係る課はなくて、私が大臣官房参事官として担当するということでございまして、厚生労働省の年金運用に係る組織・人員体制を縮小する形になったわけでございます。

 そのときの自民党の議論としましては、専門家を理事長に任命して、その方が国会でもきちんと説明すると、この人が責任を負うのだなという形で明確になるということがございまして、GPIF法の提案理由説明でも、特殊法人等整理合理化計画を実施するため、専門性の徹底及び責任体制の明確化を一層図る観点からということで、このときの改正につきましては、年金運用の責任というのが国民的な議論になりましたので、この観点が強調されたものと考えております。

 委員からお求めのあった事項につきましては以上でございまして、引き続き、きょうのメーンテーマでございます論点整理につきまして、資料1で御説明差し上げたいと存じます。

 私ども、事前に配付させていただいた論点整理につきましては、前回、一番最後に座長のほうから、前回の議論を踏まえまして、「ガバナンスの観点からは、PKOのようなものを含めまして政治からの独立性をどう担保するか、運用機関としてリークがないようにとか、より有効な説明責任をどうやって達成するかを含めて、健全な行動基準に資するような組織の在り方はどういうものかという観点からいろいろ議論がされた」。

 もう一つのポイントとしましては、「独任制がいいのか合議制がいいのか」ということだったと思いますので、「次回に向けて事務局から論点整理をしていただいて、次回会議のときに議論」したいと思いますということで、事務局として論点整理(案)としてまとめさせていただいたものでございます。

 それで、論点につきまして、合議制か独任制か。これは、さっきも御説明しましたけれども、何を、誰が、どのようにの、どのようにの部分でございます。前回、運用の独立性、政治からの独立性ということがございまして、この観点。あとは、年金制度に対する責任ということがございまして、拠出者の関与の在り方も含むという御意見が出まして、これを大きな一括りの論点1。

 論点2としては、基本的事項の意思決定・監督と業務執行との分離。

 あとは、内部統制、まさに法人内の話でございますが、情報管理、コンプライアンス等ということで、大まかに3つの論点にまとめさせていただいたところでございます。

 これにつきまして、席上配付資料でございますが、委員から意見を賜っているところでございます。

 菅野先生の1枚紙でございますけれども、論点整理につきましては、以下のように並べかえるべきだということでございます。論点1、合議制か独任制か。論点2としましては、「基本的事項決定および業務執行の監督」と「業務執行」の分離につきましては、内部統制。論点3として、説明責任の在り方。論点4としまして、運用の政治からの独立性と、年金制度に対する責任の在り方。

 その理由としまして、運用の政治からの独立性は全てに関する論点だという話。あと、これを論点1で議論すると、議論が発散するのではないかとお示しいただいたところでございます。

 2つ目の合議制か独任制かにつきましては、ある程度メンバーの意見表明が行われているので、意見集約も比較的容易に行われるのではないかということ。

 3番目でございますが、論点2につきましては、基本的な事項と業務執行につきまして、単に分離するだけじゃなくて、そこは相互連関みたいなものを考えていく必要があるのではないか。リスク管理の観点も機能を十分に果たしているのではないかという問題意識を持つべきだということ。

 説明責任については、別途、独立項目として立てるべきという話でございます。

 あと、政治からの独立性の話。あと、損失責任というのは、前回、最後に議論がございましたが、この問題につきましては、別途、年金部会で議論するという形の整理の仕方はどうかということでいただいております。

 また、出口先生、きょうおくれるということで、1枚紙の意見陳述書がございました。論点整理の1、2、3はこれで結構かと存じますが、幅広い意見が幾つも出されたので、論点4としまして、その他ということで、運用と給付等の調整。先ほど御説明した内容でございます。それと、厚生労働大臣が年金制度について全責任を負う法体系の下での独立性の在り方等につきましても、論点に加えたほうがいいのではないかという御意見をいただいております。

 それで、資料2でございますが、「これまでの議論における『GPIFのガバナンスについて』の主な意見(未定原)」。恐縮でございますが、これは本来でしたら論点の在り方について事前に十分調整いたしまして、それに基づきまして主な意見につきまして分類すべきだったと思いますが、何せ時間等の関係、もしくは事務局の能力の関係から、事務局が大括りにした論点1、2、3という形でまとめさせていただいています。下線部を中心に御説明させていただきます。

 論点1、合議制か独任制か。運用の独立性についての委員の意見でございます。

 2つ目の○でございますが、公的は国。年金というのはマーケットの中のプレーヤーということがございますので、これをいかにうまく調和させていくかというのが議論のかなめだと。

 3つ目の○でございますが、GPIFに独立性を与えるというのは、受託者責任と相反するように聞こえるかもしれませんけれども、そうではないと思っている。受託者責任を全うするためには独立性というものをはっきり定義する。はっきりというのは、あやふやではなくて、具体的に何を意味するのか、同時に国の役割というのは何なのか。これをはっきりさせる必要がある。年金という意味では市場の中のプレーヤーで、これは私的年金、ファンド、個人、いろいろなお金がある中で非常に大きなプレーヤーであるから、そこで市場を乱してはいけないという問題もあるという御発言。

 4つ目の○でございますが、委員の認識からすると、一言で言うと現在のGPIFではPKOはできる。一番の問題は、理事長の独任制であり、アセット・アロケーションは運用委員会の議を経て決定するとあるが、最終的に理事長がそれを排除することもできるので、対外的には別の説明をしても、政治的な圧力を受けて、執行の範囲内で株の比率を上げることはできる。現行制度でPKO100%できないとは言えないという御意見。

 下から2つ目でございますけれども、基本ポートフォリオを決めた後、大臣の認可が必要であって、あり得ないと思うが、大臣に変なバイアスがかかって認可しないという圧力をかけられ得るという点も、とりあえず論点としてはあると思う。

 幾ら法律で担保されていても、新聞各社の社説の共通の指摘は、少なくともPKOを疑われる体制であれば、受託者責任を全うしようとして株式比率を引き上げても、PKOと誤解されてしまうというもの。理事長の独任制を改めるのが何と言っても必要であるということ。

 次の○でございますが、説明責任の最たるものはPKOのリスクがあるかどうか。政治的影響をどれだけきちんと排除しているかどうか。独任制で大丈夫だというのであれば、そこの説明がきちんとできるということが最大のポイントだと思う。

 どのような組織をつくってもPKOの疑いは晴れないのではないか。理事長の任命等の人事など人選をするのは政府であり、組織の中だけで全て問題を解決するのは違うと思う。

 3つ目の○でございますが、一番重要なのは理事会を設置して合議制にすること。理事会設置にも関係して、独任制である以上、PKO等政治的な圧力を受ける可能性が高い。PKOをゼロにすることはできなくても、そうする努力が必要であって、複数の理事がいれば、政治的圧力を全員にかける確率は低くなるだろう。PKOを防いでいることを内外に示す上でも重要だと思っている。第79条の2、受託者責任の中立的義務でございますけれども、説明があったが、年福時代からあるようだが、法律で書いてあるだけでは担保にならないと思う。

 そこの一番最後でございますけれども、GPIFの「独立性」という言葉に疑問を感じる。GPIFの独立性は、市場のプレーヤーとしての側面だけからの議論で、受託者責任を分担する政府機関という視点と違う。これは年金部会での御意見でございまして、当作業班の意見ではございません。

 次に、年金制度に対する責任ということでございますけれども、GPIFの役割は、言われた目標利回りとリスク量でどれだけ効率的に運用するかということ。

 その次の○でございますが、GPIFは言われた目標利回りでやるだけだという説明があったが、担当大臣は理事会の理事や理事長を任命すると同時にGPIFは受託者責任がある。そうなると誰が国民に対して責任を負って国民に対して説明をする枠組みになるのかわからない。

 一番最後でございますが、公的年金と企業年金は全く違うということで、3ページに行っていただきますが、強制加入であるということ。国が運営しているからということでみんな信用して払っているという御意見。

 年金の負担と給付ということを考えると、最終的に損失が出たときは税を入れるか、給付額を下げるかが起こり得るという御指摘。

 その次の○でございますが、年金のお金なので、ガバナンスだけを議論して、損失が出たときの議論というのは他のところでというのは、国民の納得は到底得られないという御意見。

 4つ目でございますが、運用で損失が出た場合の最終責任は厚生労働大臣、事実上は政府が責任を負うということ。予定利回りをどうして達成できなかったのか、あるいは予定利回りを上回ったのかという説明については、GPIFの理事長が説明するものと理解。

 1つ飛ばしまして、これは今回、私ども事務局から説明させていただきましたが、年金財政との関係、諸外国、GPIFが年金制度に対してどういう責任があるかという御指摘。

 あとは下から2つ目の○でございますが、今後独立性を高めて、自由度をふやしていくときに、今後、これまで以上に独立性を高めていくということになれば、年金制度に対してどのような責任があるか、ちゃんと整理しないといけない。

GPIFそのものの在り方とか年金制度全体の中でのGPIFの在り方というのも重要だと思うが、独任制でなくて合議制のような形で、例えばリスクとして理事長が勝手な方向に行かないように組織としてリスクを最小限とすることを担保する。それがここでの議論だと思うという御指摘。

 めくっていただきまして4ページ目でございますけれども、あくまでもここでの議論は、そういうものも含めた上で、リスクをいかに最小にするガバナンス体制が望ましいかというのが我々が与えられたマンデートではないかという認識。

 次の○は、基本的にはガバナンスのレベルというのは、リスクをどうとるかによって上下するので、この作業班でしっかり議論した上で、ガバナンスを検討するというマンデートを受けている。

 他方、その次の○でございますが、基本的にこの委員会のマンデートは政治的な影響力を遮断して法人が運営されていくのかという在り方ということで認識しており、そのような観点で言うと、今の独任制がいいのかということで、財政検証につきましては、当然ずっとやっていかなければならない話であって、その前提条件もいろいろ変わってくると思うが、その話とこの話は切り離して考えていいのではないか。

 年金財政とGPIFがどのくらいのリスクで運用するかは、必ずしも完全に分離してはいけないと思うので、ガバナンスにかかわる限りにおいて、ある程度そういった話に入り込むことも大事だという御指摘。

 あとは、公的年金は賦課方式であり、全国民強制加入の仕組みである。議論の中で、こういう特性をどういうふうに考慮していくのかという年金部会での御意見があったということでございます。

 続きまして、年金部会の御意見でございますけれども、公的年金という性格を踏まえて、労使がどのように参画するか。

 あと、積立金は被保険者が拠出した年金資金であって、厚生労働大臣は保険者でもあるので、厚生労働大臣に最終的な責任があるのは当然。そういう意味で、厚生労働省がGPIFのガバナンス体制に関与していくのも当然という年金部会での御意見。

 あと、次のページの5ページでございますけれども、保険料を拠出している労使を含めたステークホルダーを明確に位置づけ、きちんと拠出者の意思が反映できる運営が行われるような組織に改革していくべきという年金部会での御意見でございます。

 大括りの論点2でございますが、これは基本的事項の意思決定・執行監督と業務執行との分離についての御意見でございます。

 執行する機関というのは、いわば最強の部隊をそろえて、最大の効果が出るような仕組みをとって、それをしっかりと監督できるような体制を同時につくり上げるのが重要だと。

 2つ目の○でございますが、執行部隊の持つリスクというか、オペレーションに対して、どういった形でチェックができるかということが、1つ、ガバナンスの要素だと思うし、執行部隊というのはマンデートというか、どういうことをやれと言われて、それを実行するということになるが、ガバナンスをとるほうは長期の戦略と暴走を防ぐ、リスクマネジメント、この2点に集約される。

 あと、報酬体系の話でございますが、いわゆる理事長など理事会のメンバーは、経験値はあるがそんなに高い報酬をとっていない。むしろ執行部隊がどれだけのパフォーマンスを長期にわたって上げるかということについて、全うな評価をするというのがキーポイントではないか。

 一番最後の○でございますけれども、チェック・アンド・バランスの仕組みをガバナンスの中に入れるというのが一番重要なポイントであって、めくっていただきまして、どの年金ファンドも理事会を設置して執行の暴走を防ぐという監督と執行の役割分担を図るのがグローバルスタンダードであって、そこに行くのが最初という御意見。

 論点2の最後の御意見でございますが、執行を分けること。組織体制として、普通に海外でやっている体制を採用することで、多くの問題が解決に向かうという御指摘でございます。

 最後の論点3、内部統制についての委員の御意見でございますが、これは2つ目の○でございますけれども、情報をとるためにはそれなりのコストも必要であって、人員も必要であって、システムも必要だという御意見。

 6ページの一番最後でございますけれども、GPIFの体制強化を早期に図る点については、いささかも異存がないということで、これは年金部会の御意見でございました。

 最後でございますが、7ページ目、透明性や説明責任が求められるという話が、これも年金部会で御意見としてございました。

 長くなりましたが、私からの説明は以上でございます。

○植田座長 ありがとうございました。

 それでは。はい。

○花井委員 済みません、議論に入る前に2つの要望と1つの質問を事務局にさせていただきたいと思います。

 2つの要望というのは、1つは、前回、資料を要望いたしまして、アメリカの社会保障信託基金については伊藤先生から、日本の財投と同じだというお話がありまして、そこは理解しました。ただ、もう一点要望いたしました、国共済と地共連の資料をぜひ出していただきたいということです。

 それから、今日出されている資料で英文の資料がありましたが、英語ができないと全く読めません。したがいまして、大変お忙しいことは承知しておりますが、情報共有という意味では、みんなが共通言語で理解できるような資料の提出をぜひお願いしたいと思います。

 それから、1つ質問です。これはちょっと驚いたのですが、冒頭の森参事官の説明の中でプロジェクトをつくられたというお話がありました。通常、いろいろな審議会がありますが、政府の中に例えば政務官をトップにして医療とか介護とか、いろいろありますけれども、推進本部をつくるというのはよくあります。しかし、そういうときはきちんと組織図とか、担当はどの大臣なのか、政務官なのか、どういうメンバーが入るのかということが提出されるのが普通です。口頭で突然言われたのですが、どういう内容のプロジェクトなのか、簡単で結構ですので教えていただければと思います。

○総務課長 総務課長でございます。今、御質問ございましたプロジェクトチームの件でお答えいたします。

 まず、GPIFのガバナンス体制につきまして、改訂日本再興戦略で法改正の必要性も含めて、この検討作業班で鋭意御議論いただいているところでございます。大臣から、この第1回目の作業班の会合のときに、年金部会において法改正に向けた新たな法人のガバナンスの骨格について、年内に結論が得られるように議論をお願いするという挨拶がございました。大臣指示によりまして、しっかりと検討を進めていくために事務的に事務方の作業部隊を整えたということでございますので、そういう趣旨のものと御理解いただければと思います。

○大臣官房参事官(資金運用担当) 御要望の国共済と地共済につきましては、関係省庁に今、問い合わせておりますので、できましたらきちんと出したいと思います。

 英文の資料につきましては、まことに恐縮でございました。今回、できましたプロジェクトチームにも御協力いただきまして、日本語にするように努力いたしたいと存じます。

○花井委員 よろしくお願いいたします。

○植田座長 それでは、論点整理のほうに入ってしまうといろいろ大変ですので、その前に事務局から御説明がありました、特に我々から求めのあった事項に対する回答みたいなものについて、何か御質問等があれば最初にお願いしたいと思いますが、いかがでしょうか。はい。

○堀江委員 独立行政法人をつくったときに、独任制に関しての課題については特段議論をせずに独立行政法人にしたという認識でよろしいのですか。

○大臣官房参事官(資金運用担当) 申しましたように、1つは、そのとき政府の方針で、特殊法人につきましてはイギリスのエージェンシーを基礎としました独立行政法人に移行させることが原則であるという考え方でございました。あと、このときの政治状況、国民の御議論としましては、責任の明確化ということがありましたので、そういう形から理事長の独任制というのが非常にすんなりと受入れられたということでございまして、本来あるべき、何を、誰が、どのように決めるかの独任制における弊害みたいな御議論というのは余りなかったかと記憶しております。

○植田座長 どうぞ。

○岩間委員 今の点についてですけれども、独立行政法人をつくるときの基本的なスタンダードとして、理事長の独任制ということが広くあって、それに基づいて行われた。したがって、ガバナンスの面でどういう問題が起こるかとか、あるいは今後の方向性としてどういう問題点が残るかということも整理されていなかったということでよろしいのでしょうか。

○大臣官房参事官(資金運用担当) 当時は合議制ですと誰が一体責任を持っているのかみたいな御議論、あとは理事長がちゃんと責任を持つ体制がいいのではないかという御議論がございました。ただ、おっしゃるとおり、基本は独法制度に移行するということで独任制が採用されたという形で理解しております。

○植田座長 どうぞ。

○花井委員 そうしますと、逆に言いますと、いかに無責任、と言ったらいけないのかもしれませんが、そういう体制であり過ぎたからこそ、独任制でいいのだとなったのではないでしょうか。さほど議論がなくおさまったということは、そういうことがあったという捉え方もできるということでよろしいでしょうか。無責任というと大変失礼な言い方ですが、国民の目にはそんなふうに映った、だから、責任を明確にするために独任制がいいのだということになったのではないでしょうか。それと、背景にイギリスのエージェンシーがあったということはあると思いますが、国内的にはそういう社会的な雰囲気だったと捉えてよろしいでしょうか。

○大臣官房参事官(資金運用担当) 当時の状況を申しますと、年金積立金はいつもそうなのですけれども、損失した場合の責任についてどう考えるかということが大きな議論になったということだと理解します。

○植田座長 出口委員。

○出口委員 おくれて参りましたので、多分説明いただいたかと思うのですけれども、この資料を拝見しますと、損失負担といいますか、運用と給付等の調整については、カナダとスウェーデンの例では、どちらも先送りせずに自動均衡措置、自動均衡機能が導入されているという理解でよろしいでしょうか。たまたま2国の例がありますけれども、多分この2つを挙げていらっしゃるのは、このほかの国でも運用と給付等の調整については、ほとんどの国が先送りせずに自動均衡措置がきちんと決められていると理解してよろしいでしょうか。その点だけ御教示いただければありがたいと思います。

○植田座長 どうぞ。

○大臣官房参事官(資金運用担当) まず、カナダとスウェーデンがグローバルスタンダードかと申しますと、先回、オランダの企業年金もございましたが、必ずしもカナダ、スウェーデン、オランダみたいな取り組みがグローバルスタンダードとは考えません。

 カナダにつきましては、年金の運用もしくは運用益等で年金財政をちゃんと支える。スウェーデンは、年金積立金だけじゃございませんけれども、少子・高齢化に加えまして、年金積立金につきましても資産という形で年金負債と比べて調整するという仕組みが自動的にとられているということで、非常に明確でございますので、今回、カナダ、スウェーデンという形で対処させていただいたところでございます。

○植田座長 どうぞ。

○大臣官房審議官(年金担当) カナダとスウェーデンの場合、それぞれ現在の保険料率で現在の給付を、基本的には将来に向けて安定的に賄っていけるという状況になっているところでございます。

 カナダは、森から説明ございましたように、以前はそこが財政均衡していないということで、それが問題になって保険料を上げていきまして積立金を形成するということで、現状2階部分につきまして労使折半で9.9%という保険料率をとることによりまして、75年間で財政検証を見ているわけでございますが、その間、安定的に給付の約5年分程度の積立金を維持していけるというのが中位の見通しになっておりまして、3年ごとの財政検証でその状況が崩れていることになった場合には、保険料と給付、両方で調整を図る。それ以前に財政均衡を保つように、まずは制度改正する必要があるということで、その制度改正が十分できなかった、間に合わなかったときには、緊急措置ということで、ここに書いてあるようなことをやるという仕組みになっている状況であります。

 スウェーデンのほうも、基本的に保険料を固定した状況のもとで、将来にわたって、あちらはそもそも寿命が延びていきますと、自動的に給付のほうが除数という仕組みで変わっていくということで、概念上の拠出建ての仕組みが給付のほうに入っておりますので、それによって調整されていく仕組みになっているところでございます。

 我が国の場合は、それで申しますと、マクロ経済スライドという仕組みで徐々に給付水準を調整していくということになっておりまして、5年ごとに将来の見込みを財政検証によって新しいものを出していくという仕組みになっておりますので、このマクロ経済スライドの期間が伸び縮みすることによりまして、将来の最終的に財政が均衡する時点というのは変わってくるということでございます。

 カナダやスウェーデンとの違いと申しますのは、日本の場合は、最終の保険料に比べまして、現在の給付水準というものがやや高いという状況でございますので、長期的に調整する必要があるということで、マクロ経済スライドという仕組みが入っているということで、その辺の財政状況の違いが両国との違いかなと考えているところでございます。

○植田座長 いろいろ御議論が出ましたけれども、ロスが出たときにどうするかという仕組みは、日本の年金制度には、御説明があったように、一応あるということだと思います。

 山口委員。

○山口委員 今の山崎審議官のお話をちょっと確認させていただきたいのですが、我が国のマクロ経済スライドの調整率というのは、支え手側の被保険者の数の変動と平均余命の変動といったものも加味して計算されているのではないかと思います。

 そういう意味では、人口動態的な要素がこの調整率の中身になっていると考えておりまして、先ほど来出ているように、たまたま運用が非常に悪い結果が出た場合に、いわゆる財政上の利回りと実際の利回りの利差損の処理にかかわる要素というのは、現行のマクロ経済スライドの要素に入っていないと思います。したがって、先ほどおっしゃったように、利差損償却見合いの期間が延びることで全体としてのマクロ経済スライドの調整期間も延びるという形になっている。つまり、運用の損失が先送りされるという構造になっているという見方もできるのかどうかということについて、教えていただきたいと思います。

○植田座長 どうぞ。

○大臣官房審議官(年金担当) ただいまの点でございますけれども、財政検証を行います際には5年ごとの財政検証でございますので、その5年間、単年度ごとでは資金運用がかなり波があるということがございますが、直近の時点での資産がどれだけあるかということを基礎といたしまして、それ以外に向こうおおむね100年間の人口の見通しとか経済の見通しによりまして財政検証を行うということで、それまで5年間の財政の状況、その中には、当然運用というものが入ってくるわけでございますが、その結果が財政検証を行いますときのスタート時の積立金のところに反映している。

 ただ、それによりまして、その影響というのは、向こう100年間にわたって、ある意味平準化された形で全体の年金財政に織り込まれるということでございまして、それによりまして定まってきます財政フレームのもとでどこまで給付を調整していけば、財政が100年ベースで見て均衡するかということで、マクロ経済スライドがいつまで続くかということが決まるということでございます。

 御指摘のように、マクロ経済スライドの率そのものにつきまして、これが運用によって、例えば損が出たときにはマクロ経済スライドの率を大きくするとか、そういう形で反映していないということは事実でございますけれども、一方で、運用の実績というものが将来の年金財政に及ぼす影響というのは、向こう100年間の非常に長期間の財政均衡期間全体にわたる財政の中に織り込まれるという形で、ある意味長期的に見る必要があるということを反映した形になっているということでございます。

○植田座長 どうぞ。

○岩間委員 今の点に関連しての御質問でございますけれども、要するに運用の結果というのは、その時点では反映されているということでございますね。そうすると、それに至るまでの5年間の運用の巧拙といいますか、もちろんリスクをちゃんとコントロールしなきゃいけない前提でございますけれども、そこの高度化を図って改善されるということがあれば、それは当然ながら、その結果に反映されるという理解でよろしいですか。

○大臣官房審議官(年金担当) 毎年の運用につきましては、まずは財政検証上で賃金に対してどれだけ上回る運用実績を見込んでいるかというものと、現実に賃金に比べてどれだけの運用利回りがとれたかということを持って、毎年、一応評価をしているところでございます。それが例えば5年間、幸いにして常に予定を上回っているという状況であったといたしますと、積立金運用という意味では、その5年間にわたって予定以上の結果が得られたということでございますので、それは次の財政検証におきまして、運用の面でのプラスの寄与として将来の年金財政に反映されるという構造でございます。

○植田座長 それでは、よろしければ、事務局でおつくりいただいた資料1、論点整理(案)の下の箱のところ、論点1から3までありますが、こういう整理でよいかどうか。あるいは、その整理を前提として中身を詰めていくという作業に入りたいと思います。

 私が拝見しますと、組織づくりをどうするかという部分と、できた組織のパフォーマンスがどうなのかということ、両方あるように思います。例えば、合議制か独任制か。意思決定・監督と業務執行の分離というのは、組織づくりをどうするかという話ですが、そういうことをある形で定めると、例えば政治からの独立性、前回議論になったPKOみたいなことがやりにくくなるのか、そうでないのかというパフォーマンスの問題が出てくるかと思います。

 両方を見ながら議論していかざるを得ないと思いますが、パフォーマンスのところ、あるいはその種類に関しては、この作業班のマンデートを超える部分が非常に多いわけですので、その辺、御了解いただいて、なるべく決められる範囲に最終的には収束させていけたらと思いますが、とりあえずこういう整理でよろしいかどうか、御意見を。菅野さん。

○菅野委員 先ほど、森参事官のほうから私の意見ということで、この1枚紙の案を御紹介いただいたわけですが、こちらの横長の論点整理(案)で気になりましたのは、論点1の中にだけ運用の独立性ということが書かれてありますが、これが何を意味するのか、分かり難いと思います。例えば情報管理という点を議論する場合にも政治からの独立性というのは非常に重要なポイントになりますし、まさに独立性というのは、GPIFの組織を議論するときにいろいろなところで頭を出してくる問題ですので、あとでまとめて議論すべき議題かと思います。 また、理事長の暴走的な行動をどうやったら牽制できるかというテーマは、政治からの独立性とは関係ない観点が沢山ありますので、ここで政治からの独立性について議論して、議論が発散しないようにお願いしたいと思います。むしろ1、2、3が終わったところでもう一回、それを議論してもいいのではないかと思って、提案した次第でございます。

 あと、説明責任の話がここにはどこにも出ていないので、ぜひそれも取り入れていただきたいと考えております。

○植田座長 どうぞ。

○阿部参考人 論点1から3までにつきましては、これから議論すればいいと思いますが、もう一つ追加していただきたい論点として、もともとのガバナンスの在り方の検討ということであれば、運用の基本的な在り方とか原則みたいなものは、ここである程度議論しておくべきではないかと思っております。単なる組織の話ではなく、その組織がどのような運用を果たしていくのかの在り方もガバナンスも大事な側面でありますので、ここではどのような形であれ、パフォーマンスさえ上げればいいという話ではないと思いますので、基本的な運用の在り方というのはぜひ論点として追加していただきたいと思います。

○植田座長 はい。

○出口委員 メモを出させていただいたのですけれども、私、1回目の会合で、ガバナンスというのは少なくとも2つあるのではないか。1つは、新しくつくる箱のガバナンスと、今の運用体制、運用の在り方のガバナンスというものがあるのではないかと申し上げたのですけれども、あれからいろいろつらつら考えますに、ここで議論すべきガバナンスは3つあるのではないかと思い至りました。

 まず1つは、この前、山口委員がおっしゃったことともかかわるのですけれども、今の年金制度の中で、これはこの前、たしか堀江委員でしたか、指示された利回りをどのようにやれば実現できるのか一番いい方法を一所懸命考えておられるというコメントをいただいて、よく理解できたのですけれども。

 今の年金制度という制度の中で、そこで運用を担当する機関はどうあるべきかということを実は議論しているので、私の表現ではちょっと稚拙ですけれども、論点4と書かせていただいた、「厚生労働大臣が年金制度について全責任を負う法体系の下での独立性の在り方」という、この表現がいいかどうかはよくわからないのですけれども、今の年金制度という大きい箱の中で、しかも財政検証があり、マクロ経済スライドがあるという枠組みの中で運用を行うべき機関をどのように位置づけるかというガバナンスが1つある。

 それから、1、2、3は別に順不同ですけれども、新しくつくる箱のガバナンスをどのようにすれば一番ワークするのかというガバナンスがあり、3点目には、今、既に運用の多様化が進んでいて、そのリスク管理体制については前回詳しく説明いただき、堀江委員からも追加説明いただき、今の80名ぐらいのスタッフで本当に一所懸命やっておられることはよくわかったのです。

 でも、これから運用の多様化、ポートフォリオが発表されましたけれども、それを進めていく上で、本当にこのリスク管理体制で大丈夫かというガバナンスの問題があり、この3つの問題がガバナンスという意味ではあるような気がしましたので、私自身は論点の中にも運用のリスク管理が含まれている気はするのですけれども、例えば論点4という形で、今、申し上げた大きいガバナンスもきちんと位置づけておかないと、少しまずいのではないか。

 それから、マクロ経済スライドの中に、結果としてスタート時点の資産額という形で運用の成果は反映されていくというのもよくわかりましたけれども、それは今までの運用を前提にしての考え方ですから、これだけ運用が多様化していく中で、従来のマクロ経済スライドでいいのかどうかということもちょっと議論しておかなければいけない。そういう観点から、その他という中で、運用と給付等の調整、それから厚生労働大臣が全責任を負われている中で、独立性の在り方という大きいガバナンスの話も一応整理しておかないと、うまく議論が整理できないのではないかと思った次第です。

○植田座長 済みません、その大きいガバナンスの在り方というのが、もう一つはっきりわからないのですが。厚労大臣が全責任を負うという中で、どうしてGPIFにある種の独立性を与えるのか、与えていいのかという。

○出口委員 大臣が全責任を負うという考え方と、運用を独立してやるという考え方の中で、どのようなガバナンスを考えるのか。この前の国会での大臣の答弁を資料として頂戴したのですけれども、年金制度については厚生労働大臣が全責任を負うというのは不動の原理であるとおっしゃっていて、これはそのとおりであると私も思いますが、そういう全責任を負う中で、運用は専門家でやる。それは、そのとおりだと思うのです。その全責任を負うということと、運用の独立性ということの中で、それはどういうふうに整理したらいいのかということを確認しておく必要があるのかなと、そういうふうに思った次第です。

○植田座長 大臣に責任があるのだけれども、運用という部分については外部に委託したということですか。

○出口委員 例えば年金制度に対する全責任と、運用の責任というのは、どういうふうに整理したらいいのだろうか。制度について全責任を負われるというのであれば、運用についても最終的に責任を負うと考えるべきです。ただ、実際の運用の執行というのはプロがやるのが合理的だというのは、私も少し運用をかじったのでよくわかりますけれども、一つの法体系の中で全責任を負うという形の中で、その独立性というのはこういうふうに考えるのですという整理がなくてもいいのでしょうか、そこのところが。

○植田座長 法律的な。

○出口委員 はい。法律的な整理あるいは普通の国民の皆さんがそこをどういうふうに考えるのだろうかと思いましたので、仮に大きいガバナンスと申し上げましたけれども、1、2、3はどちらかといえば箱のガバナンスであるように思いますので、そういう全体の制度の中での整理みたいなものもきちんと共通認識を持っておいたほうがいいのではないかと思った次第です。

○植田座長 堀江さん。

○堀江委員 今の出口さんの質問に関連し、また山口先生の先回の財政の運用との関係に関連し、前回の繰り返しになりますが意見を申し上げます。今回、GPIFが示されたマンデートは、賃金上昇率プラス1.7%で、全額債券100%の場合に賃金上昇率を下回るリスクより確率を下げることだと理解しています。さらにそれに付け加えて、その条件だけでは株式に非常に大きな比率が与えられる可能性があるので、下方リスクにも注意することという条件が加えられたマンデートが与えられ、今回の決定になったと理解しています。

 年金部会を別に批判しているわけではないのですが、マンデートの決定方法が少し曖昧だったのかなと私は思っています。具体的には、リスク許容度の定義が非常に曖昧で、本来であれば、カナダはそうやっていると思いますが、CPPIBが年金財政のデータをもらって、将来のキャッシュフロー、このぐらいの期待リターンでリスクを取ったらどうなるかをちゃんと検証した上で、その結果をちゃんと報告した上で、キャッチボールがされているわけです。

 例えば期待リターンを賃金上昇率プラス1.7%と設定すると、今のポートフォリオだとこれぐらいの下方リスクがあるといった検証をするわけです。例えば、5年後の次の財政検証の際、要求された期待リターンを達成しようとすると下方リスクがどの程度あるかをGPIFから年金部会にお知らするという情報のやりとりをすることが考えられます。その結果を見て、その下方リスクではちょっとまずいのではないかということが年金部会でも理解され、だったら、このケースは1.7%だが、違う経済シナリオのケースだと1.2%swも良いという相互のキャッチボールがあって初めて、財政と投資の責任分担が明確化すると思います。

 今回の年金部会のGPIFに与えたマンデートは若干曖昧だったので、GPIFの決定に対して、何でそのような結果になったのかといった批判があったと思っています。次回の財政検証が5年後かどうかわからりませんが、GPIFも関係者として、財政データを渡した上で計算させ、その結果を年金部会にお知らせする。その結果を見て、それだったらまずいなと年金部会が判断し、そうであれば、期待リターンを若干下げないと、次のときにまずくなるといったキャッチボールがされて、そこで初めて厚生労働大臣が財政と投資を一体として責任を持つという体制になると思います。

 財政の責任と、投資の責任の線引きが今回曖昧だったがゆえに、年金部会の先生方にえっという感じの印象を持たれたのかなというのが私の個人的な感想です。両者の責任の線引きをクリアにしておけば、運用に対して勝手なことをするのではないかといった懸念をもたれることなく、リスク許容度と期待リターンを決めてもらって、その中でリスク許容度を守りながらベストを尽くし、少しでも高いコスト控除後のリターンを上げれば、国民に対して非常にいいことになるわけですから、そういう形でマンデートをいただくのが私は正しい財政と投資の責任の分担の仕方だと思うのです。

○植田座長 それは私も途中のプロセスにかかわっていたので、おっしゃるような方向を当初から目指していたはずなのです。ですけれども、キャッチボールが十分できないうちに、ややばたばたと決まってしまったというのがなきにしもあらずだと思います。ただ、この中身にここで立ち入るわけにも必ずしもいかないですから、どういうガバナンス組織体制をつくれば、今のようなプロセスもうまくいくのかという観点から議論していただければと思いますが、岩間委員、どうぞ。

○岩間委員 私も、堀江委員が今おっしゃったことをちょっと考えていて、それを御質問しようと思ったのですけれども、それに加えまして、そもそもGPIFのガバナンスをどういう角度で考えなきゃいけないのかということについて、これは私見でございますけれども、要するに公的年金というのは受給者は最終的に国民になるわけで、国民からの委託を受けて受託を厚生労働大臣がなさっている。それをGPIFに委託しているという構造であるのは間違いない。

 一方、現実的には120兆円を上回る積立金が蓄積されていて、実際にその運用というのは、先ほどのお話もありましたけれども、リスク許容度が与えられて期待リターンを示されて、それを実現するということになっている。しかも、投資対象のアセットというのは徐々に拡大されているということであるのは現実の姿だと思います。そのときに執行部隊がリスク管理をしなきゃいけない。それもちゃんときっちりやらなきゃいけない。さらに言えば、それについて内部統制もきっちりとれていなきゃいけない。

 これは当たり前の話だと私は思いますが、実際、その執行部隊そのものが独任制であるときに暴走するリスクがある、あるいは政治的な影響力を受けるリスクがあるとなったときに、どうコントロールするのがいいのかという話なので、これは実は私は箱の問題だと思っておりません。一番大事な点だと思っております。ニュートラルで、しかもチェックが有効にきくことがちゃんとできる体制を担保しない限り、危険であると私は思っておりまして、そこを議論するのがこの作業班だと私は理解して参加させていただいているわけでございます。

 そういう意味で言うと、議論の対象が余り拡大しますと、そこのところの取りまとめというか、構成とか結論が出ないということで、役割を果たせないことになるのではないかと危惧する次第でございます。

○植田座長 出口委員。

○出口委員 逆に言えば、堀江委員に言っていただいたことが、私の語彙が足らなかったのですけれども、まさに大きいガバナンスだと思います。大きいガバナンスというのは、年金制度と今度できる箱との関係をきちんと、まさに堀江委員が言われたように整理することからスタートしなければいけない。だから、私が申し上げた、全責任を負う中での独立性の在り方というのは、まさに堀江さんに言っていただいたような、どういうふうに相互の関係を設計するのかということをきちんとお互いにシェアしておかなければ、議論が進まない。

 今、言われましたように、論点を広げることが議論を拡散させるのではなくて、論点をきっちり拾っていくことが、かえって集約させやすいと私自身は思っていますので、3つのガバナンスはきっちり議論したほうが集約は早いのではないかと考えております。

○植田座長 山口委員。

○山口委員 ありがとうございます。

 さっき堀江さんがおっしゃったのは、すごく大事な点だと私も思っています。これからのガバナンスの設計を考える上でも、その目的は1つでありまして、年金制度をいかに持続可能性を高めて、今後も運営していくか。国民に安心してもらえるような体制でやっていくかということだと思っています。そういう意味では、運用をやっている側と年金財政の側がうまくキャッチボールしながら、マンデートが出て、それに従ってやって、その結果がまた財政のほうに反映していく、フィードバックしていく仕掛けがビルトインされていくようなものであれば、お互いに理解できる話だと思います。

 もしそうだとすれば、例えば理事会の構成なども、財政などもわかる人が入ったほうがいいねという話になってくるわけですから、おっしゃるように、最初にそういうキャッチボールが必要で、そういう仕掛けを前提にして考えていくのですよとなっていれば、お互いに共通の土台の上で議論ができると思いますので、非常にいい御意見だったと思います。

○植田座長 どうぞ。

○菅野委員 出口委員が出された問題意識は、私も全く同感で非常に重要な点であるとこは疑いのないことでありまして、私もこの問題については、厚生労働大臣が年金制度について全責任を負うという、その全責任というのは一体何なのか。それから、そもそもどうやって責任をとるのかというところは、私自身も個人的によく理解できないところです。この点に関し、何らかの統一見解があるのであれば、それを先に御説明いただければありがたいです。

 それを踏まえた上で、私見を述べさせていただきますが、厚生労働大臣が全責任を負うというのと、GPIFが独立性を持つということが、あたかも何か相対立する概念のように受けとめられてしまうのは、やや不適当なのではないかと考えます。むしろ、厚生労働大臣が全責任を負うために、GPIFに独立性を与えると考えるべきでしょう。ただし、その独立性を担保するためには、1つは国民に対する説明責任、今一つは、内部での牽制体制をしっかりつくる、と言う点が重要です。それが岩間委員が先ほどおっしゃられた、例えば理事長の暴走を防ぐということかと思います。これは、諸外国の例を見れば、全部同じとは言いませんけれども、どこの国も同じような問題意識を持っているわけです。

 それと、新たに出てきたのは、先ほど堀江委員の、そうは言っても、大臣あるいは政府との間でキャッチボールする必要があると言う点ですが、これは当然のことだろうと私は思います。厚生労働大臣の責任というのは、国民に対する説明責任を全うできる体制、内部の牽制体制ができ上がっているかどうかをチェックするのが一番重要だろうと考えております。

○植田座長 伊藤先生。

○伊藤座長代理 堀江さんに質問ですけれども、キャッチボールするとして、今の体制で十分なのか。どうしたらもっと有効なキャッチボールができるようになるか。GPIFの中の人数、それから出口さんのあれで言えば狭い意味でのガバナンスの体制ということについて、御意見があったらお聞きしたい。

○堀江委員 その論点は極めてシンプルです。GPIFは期待リターンとリスクを決めていただくわけで、例えばこのリスクのレベルで、この期待リターンはできませんということを年金部会のほうにお伺いする。その結果を見て、年金部会では、期待リターンを再考するという程度のものですので、何百人もスタッフが要る話ではありません。今の体制でもちゃんと年金財政のデータをいただければ、GPIFのメンバーの中にもそういう資格を持っている方がおり、年金部会の中で十分議論できると思っております。

 これは執行の話ではなく、年金財政と運用の関係を決定する話です。大括りの期待リターンとリスクのレベルを決める中、決めることが出来る変数は、掛け金と給付と運用益、3つしかないわけです。この3つのバランスをどう考えるかにおいて、投資リターンのところに余り過度な要求をされても、それはできませんということを年金部会の財政サイドに対してお返しするだけなので、そこについて、今の体制でできないということはないと思います。

○伊藤座長代理 ただ、リスク、量を決める場合に、どういうアセットクラスを持ってという計算も必要になるわけですね。

○堀江委員 そこは資産クラスの考えが全くなくてもいいわけです。この期待リターンで、このリスクで可能ですかという質問にどう答えるか。その後ろの計算に、例えば株式債券等を入れたら、このリスクの量では、この期待リターンが達成できませんといった非常にざっくりしたところを決める議論です。掛金と給付と運用の関係の線引きが、果たしてこれで可能なのかというところをきっちり議論していただくというのが、私の言っている趣旨です。

 そこを決めていただければ、そのリターン・リスク比よりもさらによくすることが、GPIFサイドのマネジメントになるわけです。そこに執行サイドのエクスパティーズが生きるわけで、同じリスクのもとで、もちろんコスト控除後で、よりリターンを高めれば、国民に対して非常に貢献できるという役割分担をさせてもらえれば、よりいい投資ができると私は思います。

○植田座長 そこは、一応ちゃんとやっていたのですね。ただ。

○堀江委員 キャッチボールがどのくらいされたのかというのは、私はちょっとわからないです。

○植田座長 ある程度やっていたけれども、不十分だというぐらいにさせていただいて。

 どうぞ、岩間委員。

○岩間委員 堀江委員にちょっと御質問ですけれども、実際に許容リスクと期待リターンが来て、それができるかできないか。それを大まかにと言っては怒られますけれども、こうだというのを出すのはできる。しかしながら、そのできるという前提に、もしそれをやるとしたら実際どういう運用をするのかということが頭にないと、それは実行可能なのかどうかということですね。そうすると、伊藤先生の御指摘が関連してくるのではないかと思いますけれども、今の実態の中でどこまでできるのかという話になってくる。もし全体のマンデートが達成可能だと御判断されても、実施できるかできないかという話は、また別問題かなと思うのですが、そこはいかがでしょうか。

○堀江委員 いえ、それはそんなことないと思います。私が今、ポイントとして議論させていただいているのは、あくまで資産クラスベースの、パッシブでやった、長期で達成可能なリスク・リターン比の話です。パッシブ運用を全面的に採用したと仮定して、これぐらいのリスクであれば、これぐらいの期待リターンが、例えば20年ぐらいであれば可能ではないかということを過去のデータ等を使って検証するわけです。今回の10年先の金利については、政府のデータをそのまま使わせていただきましたけれども、そういうことですので、余りそこにアクティブ運用を前提に計算するようなものではないので、今のスタッフでできるのではないかと思います。

○岩間委員 そうすると、次の質問ですけれども、例えばインフラ投資をおやりになるとか、ほかのオルタナティブをおやりになるということになると、それぞれのアセットクラスに必要なスキルというか、そういう異なるところがあって、もちろん外に出すということが当然あると思いますけれども、そこは今の議論には入ってこないわけですか。

○堀江委員 そうです。今は、最低限のレベルのマンデートをいただいたので、それをさらにリスクを下げるとか、同じリスクで、さらにリターンを上げるというものを我々のマンデートとしていただいて、そのレベルに到達するために努力するのがGPIFの正しい運用の仕方だと認識しています。ですので、リターンを上げる場合は、当然リスクを許されているリスク許容度以上はとらないことが前提で、同じリターンであれば、もっとリスクを下げるという意味です。

○植田座長 どうぞ。

○岩間委員 そうすると、CPPIBの在り方などとはそこが全く違うということですね。

○堀江委員 いえ、同じです。

○岩間委員 でも、実際に参照ポートフォリオをどういうぐあいに動かしていくかということについては、エンハンスするために、それはCPPIBである程度できるわけですね。

○堀江委員 はい。ですので、レファレンスポートフォリオを年金部会等で与えていただくのか、理事会が決めるのか、そこは私はわかりませんけれども、あくまで線引きをしていただいた役割は、今のGPIFでも十分にできる。

○植田座長 どうぞ。

○伊藤座長代理 私ももう一回申しますけれども、今の4つのアセットクラスに限り、パッシブ運用ということに限り、それでその間のポートフォリオのシェアをどうするかということだけが変数として、それでどこまでできますかということをキャッチボールするということが、今の狭い意味の関係ではそれで済むので、それは認知されたのだということですね。

○堀江委員 そうです。

○伊藤座長代理 ただ、私は財政検証も含めて、財政の側からGPIFに要請するのは、そういうことは最低限の話であって、アセットクラスをどこまで広げたらどうなるか。言ってみれば、あなたが書いている効率性フロンティアは、本当はグローバルな効率性フロンティアじゃないのではないですか。フロンティアそのものがシフトできるのではないですか。あとは、リスク管理あるいは分散投資というものをうまくやれば、リスク量を変えないで、もうちょっと上までいけるのではないですかということは、どこで議論するのですか。

○堀江委員 そこは、私はこれまでどこで議論されているか存じませんけれども、年金部会の財政の側の方とGPIFが入った中で議論する。

○伊藤座長代理 だから、新しい、1つ上の段階のキャッチボールが必要だということですね。

○植田座長 インフラ投資を始めるとか、そういうものはGPIF独自で決めたのではないですか。

○堀江委員 でも、最低限のレベルのマンデートをいただいているだけなので、それより改善するのがGPIFのマンデート。それを超過リターンを得る、それよりもリスクを下げる。それが我々の目標です。そのためには、今の体制では不十分だということは明確です。

○植田座長 ただ、今のところオルタナティブは、GPIFのサイドにしますと、額が非常に小さいので、それを新たなアセットクラスとして認識して、ほかのアセットと混ぜたときにどういう分散効果になるかとか、そういうところまではやっていないですね。試験的に始めているという段階だと認識しています。

○堀江委員 ですので、そこの線引きをして、それをいかによりよくするためにはどうするかというのが、今回のこの主題のテーマだと私は認識しているのです。そこの議論がないまま、次へ行けないと言われてしまうと、ちょっと困ったなというのが私の正直な感じなので、そこは年金部会とGPIFで議論していただくという前提で、先に議論を進めたい。

○出口委員 前提というより、そこを私どもが共通認識を持つ、例えば堀江委員、山口委員が言われたように、どこまで、どうキャッチボールするのか。こういうことを前提として、こういう箱の話に入るということで、私はそこを議論するというよりか、そこの確認を全員で年金制度の中でこういうふうにキャッチボールする。こういうことが望ましいのだということを共通認識で持った上でないと、そこで箱の話をしても、みんな考えていることが違ったらということを申し上げているのです。

○植田座長 今回、不十分だったと私が思う点は、前回、前々回も申し上げましたけれども、年金部会でやってきた作業は、どちらかというと長期の見通しをどうつくるか。その場合にどういう利回りが可能かという議論だったのですが、結局出てきたポートは、ここ10年の経済の姿を前提とすると、こういうものが望ましいというのに近い結果で、そこのすり合わせが十分できていなかったということだと思います。

 以上、いろいろ議論を大きな問題も含めていただきましたが、改めてそういうあたりを前提にして、この論点の組織づくりの問題について、合議制か独任制か、あるいは意思決定、業務執行の部分等について踏み込んで何か御意見がある方は、おっしゃっていただけると。では、どうぞ。

○阿部参考人 まず、論点1の合議制か独任制というのは、合議制の在り方によると思います。GPIFは、国民から預かった保険料を運用していく限り、合議制のメンバーの中には拠出者の代表ということで、現状であれば労使あるいは国民年金の代表も当然必要だと思いますし、先ほど堀江先生おっしゃったとおり、年金財政や年金制度のプロも必要になると思います。そういう意味で、きちんとした監督ができるような体制を組めるという前提で、これは合議制でいくべきだと思っております。

 それから、まさに責任ですね。みんなでとるしかないわけであります。そういう意味だと、拠出者や、それにかかわるさまざまなステークホルダーを幅広く合議制のメンバーに入れておくことが必要かなと思っております。

 それから、論点2も、意思決定・監督機能と業務執行機能が必要なわけでありますが、きちんとした意思決定・監督ができるような体制を組むとともに、業務執行側は一任を受けて、白紙委任を受けて何でもできるという発想ではないと思います。ここはあくまでも意思決定・監督のもとに、プロとしての運用の専門家が業務執行を行う形になるかと思いますので、当然分離だと思うわけでありますが、意思決定・監督機能を果たすところが上にある、委託指示を受けて業務執行を行うということが当然かなと思います。

 それから、内部統制も、行動規範みたいなものをきちんとつくって、国民に説明して納得を得る必要があると思っているわけであります。そういう意味では、今のさまざまな海外での事例なども参考になるところは参考にしていただいて、もう少し細かいものなのかわかりませんけれども、GPIFの行動規範なるものをつくり、さらに投資原則についても国民が納得できるようなものにしていく。これは年金部会で合意が必要になると思いますので、そこはぜひ御検討願いたいと思います。

○植田座長 花井委員。

○花井委員 合議制か独任制かということにつきまして、私は前回もなかなか判断がつかないという内容のことをお話ししました。その上で、ここに記載されているのは「運用の独立性(政治からの独立性)」となっているのですが、括弧の前段の「運用の独立性」というのはあり得るのでしょうか。独立性という意味合いがよくわからなくて、年金制度と全く別個にあるのかととらえてしまうのです。堀江先生は、先ほどそうじゃないとおっしゃったのですが、独立性の中身についての認識をもう少し共有化できないかと思います。

 政治からの独立性については、それは合議制にしようが、独任制にしようが、この間のずっと二、三十年の年金制度をめぐる動きを見れば、どんな形であっても、今まで政治からの介入的なことはたくさんあったわけですので、合議制にしたからそれがなくなるとは決して思いません。ただ、よりいいのではないかとは思いますけれども、そういう意味で言うと、もう少し合議制か独任制かということについて、何が変わるのかということを明確にしておく必要があるのではないかと思っています。

 先ほど事務局から説明いただきました、年金資金運用基金から今の体制に変わるときにあったように、責任を明確にするために独任制にしたのだという、その組織をつくってから、まだ8年しかたっていないわけです。平成18年からスタートして、こんな大きな組織を、こんな短い期間で変えるという。この間に独任制であるがゆえの問題点は一体何が起こったのか、あるいは、将来に向かって何がまずいから変えるのだとか、何らかの明確な回答というか、納得できる材料が欲しいと思います。「政治からの独立性」というのは、多分ないと思います。あとは、どうやって防ぐかという組織体制をつくるしかないのだろうと思っております。

 それから、GPIFというのは年金制度の一部だと思っております。国民は、GPIFにお金を預けたわけではなくて、国が運営している公的年金制度であるからこそ、毎月保険料を払っているのであって、それを集めた保険者である国、厚生労働大臣がそのお金の運用をGPIFに委託しているのだと思います。ですから、GPIFは受託機関として、預けられたお金の運用の責任を果たし、その説明については、政府に対して、大臣に対して行い、大臣が国民に対する説明責任と結果責任を負うのだと、仕組みとしてはそういう構図なのではないかと思っております。ですから、国民はGPIFにお金を払うわけではないので、GPIFが国民に対して説明責任を持つというのは、ちょっと違うのではないかと私は認識しております。

 それから、もう一つ、拠出者の関与というのは、当然、拠出している労使ということもありますし、忘れてならないのは、国民年金の被保険者も、受給者もいらっしゃいます。そういう意味では、多様なステークホルダーで構成されるべきだろうと思います。「関与」という言い方も、もう少し意思反映できるとか、そういう表現に変えていただけたらと思います。

 とりあえず、論点1について意見を述べておきたいと思います。

○植田座長 菅野さん。

○菅野委員 花井委員のおっしゃられた独立性というのは、どうもGPIFが勝手に運用することを独立性と御認識されているような印象を私は持ちましたが、それは少し違うのではないか、と思います。では何が独任制と合議制の違いかというと、第1は、既にこれまで議論が出てきましたように、理事長が暴走した場合のリスクを誰がどのようにチェックするのか、という点があります。今の体制では、厚生労働大臣がチェックする形かもしれませんが、日々起こり得るリスクを厚生労働大臣が常時見ているというのは、やや非現実的な前提かなという気がします。

 第2に、前回、この作業班のかなりの方が御指摘されたPKOというリスク。すなわち、PKOと見られてしまうリスクをどのように防ぐかという点です。今のままですと、前回、堀江委員が御指摘のように、PKOとなり得るリスクがあります。それは、組織上、排除しないといけない。これは、かなり強い要請だと思います。

 第3番目ですが、6年前に独任制を決めたのだから、そのままでも良いのではないかという点については、前回、事務局のほうから配付された資料「現行のGPIFの体制について」の2ページ目に、リスク管理等に関する体制という横長の資料がございます。確かに理事長の独任制ですから、GPIFの組織の各部署の責任者が全て理事長にになっております。実際に運用リスク管理委員会とか、いろいろな委員会、会議があり、これは全て理事長が責任者になっているようですが、果たして1人の理事長が、執行も監督も全部できるのでしょうか。

 しかも、これから運用資産が多様化し、スタッフの数がどんどんふえていき、部署もこのまま拡大するのか、さらに複雑になっていくのかわかりませんけれども、現在の理事長が全ての部署の責任者になるというのは、あるべき姿ではないと思っております。執行と監督の分離のような形になってくれば、理事長の責任というのをはっきりと規定することができます。 実際に現実の会社組織でも、執行と経営の分離というのは、今度、コーポレートガバナンス・コードという形でも出てきますけれども、そういう方向が目指されているわけです。これは、組織論としてかなり普遍的な、グローバルな方向だろうという気がいたしております。

 それと、大臣の責任とGPIFの責任というのは明らかに分けて考えるべきです。国民に対する説明責任というのは、両者間で異なると思っております。先ほど来、堀江委員から御指摘がありましたように、GPIFという組織は、運用目標に関するマンデートを受けて、それは今ですと賃金上昇率プラス1.7%ですが、これを実現するために、専門家集団としていかに知恵を発揮して目標を達成するか、ここにかかっているわけですね。GPIFは運用結果についての責任があり、そのために内部の牽制というのは必要になってくるということです。これとは別に、GPIFの運用目標自体についての責任は大臣にあります。大臣は、運用目標を策定し、それを踏まえた運用の部分はGPIFに委託しているということで、何ら問題はないのではないかと考えます。

○植田座長 ちょっとクラリフィケーションですけれども、理事長が暴走したり、あるいは前回からPKOという話がありますが、例えばきょう議論になったように、年金部会でリスク、リターンのトレードオフをちゃんと示して、ここですと最終的には大臣が決めることになった場合に、暴走というのはどういう形で起こり得ますか。もちろん、1つは基本ポートは幅があるので、この幅をある程度利用するという自由度は残されていますから、そこを恣意的に利用してしまうという可能性はありますが、やや大きく恣意的に動くというリスクは、現行でも少ないように思うのですけれども、いかがでしょうか。

○菅野委員 今座長がおっしゃられたのは、あくまでも一つのリスクで、このほかにも、例えばGPIFの中で何らかの不正といっていいのでしょうか、あってはいけないようなことがあったときに、理事長もそれに仮に加担していたようなときに、内部牽制体制をしっかりしておかないと、発見までに時間がかかり手遅れになってしまいます。したがって、考えられる様々な事態を想定した上で、そういうリスク、事故と言ってもいいですけれども、リスクを最小限にする体制が求められているのだと思います。

○植田座長 山口さん。

○山口委員 ありがとうございます。

 いろいろな事故ということまで考えた場合、それらを組織の問題だけで全部解決できるのかというのは多分疑問があると思います。ですから、私は政治からの独立性についても、前回も議論がありましたように、必ずしも組織だけで解決できないのではないかと思っているのですが、きょうのお話の中であったように、財政と運用のキャッチボールをきちんとやっていくという前提の中で考えるとした場合には、前回、伊藤先生からもお話がありましたように、政治的な圧力に対してはたくさんの人が理事として関与して合議で決定するほうが、確率的にそういった独立性が保ちやすいのではないかという御指摘がありました。

 私もそれはそうかなと考えておりますので、そういう意味では、合議制といったことを基本にするという考え方でよろしいのではないかと思っています。

 ただ、先ほど申し上げたように、キャッチボールをきちんとしていくという話の中には、理事会なりの中に公的年金の財政・制度に詳しい人が必ず関与して、その状況を常にウオッチしていける、あるいは理事会の下の下部組織として、年金財政の委員会みたいなものがあって、そこでの検討結果がきちんと厚生労働大臣に報告されて、そして厚生労働大臣がさらに年金部会なのか、年金数理部会かもしれませんけれども、そちらに諮って財政の状況をチェックし、年金数理部会のほうで警鐘を鳴らしていただくという流れ、つまりマンデートから始まって、その結果についても、また戻ってくるようなキャッチボールができるような仕掛けみたいなものも、同時にその中にビルトインしていくということがなければいけないのではないか。

 それから、ここから先は多分ここでの議論ではないとも思うのですが、この機会なのでちょっと申し上げさせていただきたいのですが、私はマクロ経済スライドの調整率の中に、さっきの人口動態的な要素以外にも、運用の問題とか、そのほかの経済的な問題についての調整要素もある程度入れて、そして後の世代に先送りするというのはできるだけやるべきではないと考えておりますので、マクロ経済スライドの調整率の要素を見直す必要があるのではないか。これは多分ここでの議論ではないと思います。年金部会でやればいいと思うのですけれども、そういったことも意見としてあったということで申し上げておきたいと思います。

○植田座長 はい。

○花井委員 私が言いたかったのは、大きな議論をして組織改革をしてGPIFをつくったわけですが、責任を明確にするということで独任制にしたということではないのでしょうか。そのことをもし今変えるのであれば、変える理由を共有化しておく必要があると思っているということです。暴走するというのは、では合議制にしたらそれが防げるのかということもあると思いますし、合議制にしたら完全に政治からの圧力を防げるのでしょうか。それは、独任制よりは少なくなるとか、そういうことがきちんと整理される必要があるのではないでしょうか。絶対ということはあり得ないので、ベターなものとして、将来に向かって、今、そういうふうに組織改革するのがいいのだということで、もう少し整理していただきたいという思いだということを、ぜひ御理解いただきたいと思います。

 ですから、合議制にしたから政治からの圧力がないということは、まずあり得ません。いつだってあるわけですから、それをより防ぐためのものではないでしょうか。それから、先ほど来出されていますが、今回の財政検証とポートフォリオのところでもう少し対話があったほうがよかったというのはそのとおりですので、そういうことの改善策は何があるのかといった議論ができればと思います。

○植田座長 出口委員。

○出口委員 きょうは、論点がこれで適当かどうかという議論をする場と理解しましたので、論点1、2、3の中身については意見を申し上げなかったのですが、先ほど山口委員が言われたことに私も賛成で、私自身が論点4をつけ加えてくださいと申し上げたのは、私も次の世代に先送りをするということはあってはならないと思いますので、この部会の共通認識として、例えばマクロ経済スライドの項目の中に、GPIFの運用で損失が出たときは、そのことを入れることが望ましいので、その方向で検討してくださいということを前提に箱の話をしたということであれば、それが皆さんでシェアできるのであれば、運用と給付との調整の問題というのは論点から外してもいいと思います。

 それから、申し上げた、厚生労働大臣が年金制度について全責任を負う法体系のもとでの独立性の在り方につきましても、今のようなキャッチボールを前提にして、こういう仕組みの中できちんとやっていくということを、我々メンバーが共通で認識した上で箱をつくりますと整理していただけるのであれば、それなら問題がないと思っています。そこの大きい枠の共通認識を持っていないと、この話はなかなか進まないということを申し上げたので、私も山口委員の意見に基本的には賛成です。

○植田座長 岩間さん。

○岩間委員 先ほどの独任制云々という話は、私、質問申し上げて、独立行政法人ができるときの仕組みに乗ったということで、今の形でなければならないということであると、そのお答えで理解したのですが、それが合議制と運営上のリスクを、今の体制がいいという前提での御意見でいらっしゃいますか。

○植田座長 花井委員。

○花井委員 今の体制がいいという前提ではないです。ただ、あの当時は、多分、グリーンピア問題とか、さまざまなことがあって、誰が責任をとるのかという議論があったという記憶があります。ですから、責任体制を明確にするべきだという議論があったということも私は記憶の中にあるものですから、そのことが独任制につながったのだと思うのです。ですから、何も議論がなくて独任制になったのではなくて、背景があって独任制になったと思いますので、もしそれが今後に向かって、そうじゃないほうがいいのだというのであれば、そこの基本的な合意がこの検討作業班の中で要るのではないかという意味合いです。

○植田座長 どうぞ。

○伊藤座長代理 今の点は、まさに花井委員がおっしゃったとおり、いろいろなことがあって、それから、そのときたまたま出てきた独立行政法人の話で、独立行政法人になればいいやということで、独立行政法人の独任制というのがあれば全部解決するという議論で、それがベストという結論で独任制が出てきたという話ではないと思います。まさにグリーンピアの問題。

 それから、株が下がったときに誰が責任をとるのだということで、官僚組織では責任がとれないわけですし、大臣が国会に行って謝れば、それで済むのかという話もありますし。いや、ここはむしろ運用の専業機関というものをつくって、運用をきちんとやる組織をつくって、そこの組織が説明責任をとることが適当ではないかということだったと思います。ただ、そのときたまたま独立行政法人の話が、先ほど森さんの説明にあったようにあったので、それに乗ったということであって、きちんと議論して、これがベストという結論を出したわけではないと私も思います。

 そういう意味では、きちんと説明責任があって、グリーンピアのようなことが決して繰り返されないというリターンをちゃんと考えましょうということができる組織を、今でも我々は探さなきゃいけないということだと思います。そういうことも全て勘案した上で、それから、山口委員に私の今週の月曜日の議論を繰り返していただきまして、ありがとうございます。100%か0%かということではなくて、PKOをさせない、PKOと思われないような確率をできるだけ減らすということが非常に重要だということで、私は合議制がいいと思います。

 それから、菅野委員が言われたように、決めるほうと執行するほう、全部兼ねるというのは、まず能力的に無理なので、これは執行部隊は分離するという形に持っていくのが重要。それから、内部統制が重要だというのは、これは皆さん合意があるのではないかと理解しています。

 少しコメントをしますと、暴走しないとはどういうことかですけれども、ファイナンス、金融機関の話で言うと、例えば損失が出ました。来年、財政検証が迫っています。このままいくと物すごく責任を追及されるので、リスクは高いけれどもリターンが高いというインフラ投資なり、何投資でもいいですけれども、そういうものに手を出すということで、リスク、リターンのところでちょっと大きなかけに出るというのが、通常、金融機関で暴走するということの意味だと思います。

 それだけに限らないですけれども、きちんとガバナンスの合議制のチェック・アンド・バランスがきいている、菅野さんが従来繰り返していることですけれども、そういうことをつくっておくと、いろいろ意味で我々が想像できないような暴走というものが起きるかもしれないのを防ぐごとができるので、暴走とは何かというのを余り定義する必要はなく、合議制できちんとチェック・アンド・バランスがあるものをつくるのが非常に重要だと思います。もちろん内部通報者システムとか、そういうものをきちんとつくらなきゃいけないというのもそのとおりだと思います。

 それから、1つ、どういう決定を避けなきゃいけないか、それからリスクとは何かということを考える上で一番重要と私が思うのは、株はリスクがあるのですけれども、それは1年1年のリスクがあるわけですね。これは第1回のときに私、申し上げたと思うのですけれども、リーマンの後に海外の年金は軒並みマイナス20%から30%。GPIFはマイナス7%で済んだわけですけれども、マイナス20%のときに必ず批判は出るわけです。何でこんなだめなものを持っていたのだ、売ってしまえという感情論が必ず出てくる。でも、そこで売ってはいけないのです。どんと下がったから、ここは買い場だときちんと説明して圧力に屈しない、感情論に流されないことが重要。

 ただ、それができるには、マイナス50%はさすがにまずいだろうというのであれば、1年で最大落ち込むときのリスクというのはどれくらいあって、それが許容できるかどうか、それを説明できるかどうかということを、フェールリスクを考えるのが重要で、しかもそこで売らない。下がったら買う、上がったら売るという長期的な戦略をきちんと決定して実行できる独立性ですね。感情論に流されない独立性というのは、私は非常に重要だと思います。

 持ち続ければ、2010年にみんなV字回復したわけですから、そういう意味で長期的な視点を貫くことができる、インフラ投資もそうだと思います。だから、それが公的な年金にしかできない、公的な年金の特徴であるというのを生かせる。そういったガバナンス体制をつくりましょうということが重要だと思います。

 将来世代に先送りをしないというのは、私も出口委員、山口委員と全く同じ意見です。拠出者の代表が入るというのも、広い観点から意見を言っていただく限り結構だと思いますが、前回も言いましたけれども、GPIFというのが少子高齢化、人口減少していく将来世代につけ送りしなくても、もともと将来世代は非常に不公平な生涯拠出、生涯受け取りに直面しているわけです。

 まだ生まれていない人たちが声を挙げても、ちょっとリターンを上げて今の給付のパターンで我々に残してよと叫んでいるところだと思うので、将来世代に先送りをしないというのは、損失が出たら給付を下げるということだけではなくて、できるだけGPIFをうまく使って将来世代に大きな資金を残してあげるということも含んだ意味で、将来世代に先送りをしないというのが重要な点だと思います。

 それと絡めて、堀江委員から説明があった、マンデートは賃金上昇率プラス1.7%だけれども、それは最低限として、リスクをコントロールした上で、だけれども、できるだけ上を目指す。フロンティアそのものが動かせるのだったら動かすことも考えるということであれば、それは私としては非常にウエルカムで、そこが公的年金と企業年金の違い。企業年金の場合は、将来のライアビリティをカバーできると思った途端に積極運用をやめてしまうというところも、最近は出てきている。なぜならば、年金財政で黒字が出ていると、基本的にテイクオーバーになりやすいのです。

 そうならないためには、むしろリターンを頑張るのをやめてしまうということがあります。公的年金の場合には、将来世代にできるだけたくさん送っていく。だから、将来世代が不公平になるような人口動態になっているということを我々としては認識していかなくてはいけないということだと思うので、議論としては、だんだん収束してきたと私は感じていて、非常に結構だと思います。ありがとうございます。

○植田座長 それでは、まだ御意見がおありの方もいらっしゃると思いますが、時間になりましたので、今、伊藤先生がまとめてくださいましたように、きょうは狭い意味のガバナンスだけではなくて、広い問題もある程度議論していただいて、狭い意味のガバナンスを議論する際に前提としたほうがいい、いろいろな問題、特に年金財政との関係等、ある程度の共通理解ができたような気がします。

 その上で、狭い部分のガバナンスの話についても、ある程度議論が進みましたが、出口委員のようにまだ十分意見を言っていないとおっしゃる方もいらっしゃいますし、次回以降、引き続き議論したいと思いますが、若干収束の可能性は出てきたように思いますが、花井委員が幾つかもっとはっきりさせてほしい点もあるとおっしゃいましたから、その辺も含めて次回以降で議論して、もう少し詰めていければと思います。

 それでは、事務局から何かお知らせがあればお願いします。

○大臣官房参事官(資金運用担当) 本日は、本当に熱心な御議論ありがとうございました。

 また、次回の開催日程につきましては、いつも恐縮ですが、直前になるかもしれませんが、追って御連絡させていただきますので、よろしくお願いいたします。

○植田座長 それでは、きょうはここまでにさせていただきます。ありがとうございました。


(了)

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