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2014年11月10日 第2回 年金積立金の管理運用に係る法人のガバナンスの在り方検討作業班議事録

年金局

○日時

平成26年11月10日(月)9:00~11:00


○場所

東京都港区新橋1-18-1
航空会館(大ホール)7階


○出席者

植田 和男 (座長)
伊藤 隆敏 (座長代理(専門委員))
岩間 陽一郎 (専門委員)
菅野 雅明 (専門委員)
出口 治明 (委員)
花井 圭子 (委員)
堀江 貞之 (専門委員)
山口 修 (委員)

○議題

GPIFのガバナンス体制について

○議事

○植田座長 ちょっと早いですけれども、皆さんおそろいですので始めたいと思います。

 ただいまから、第2回のGPIFのガバナンスの在り方検討作業班を開催いたします。

 皆さん、御多忙の中をお集まりいただきどうもありがとうございます。

 では、事務局のほうから出席状況等の御確認をお願いいたします。

○大臣官房参事官(資金運用担当) おはようございます。担当参事官の森でございます。

 本日の会議の出席状況でございますけれども、本日は柿木委員と藤沢委員から御欠席との御連絡を受けております。

 それでは、まずお手元の資料につきまして確認させていただきます。

 本日、配付資料といたしましては資料1でございますけれども、「現行のGPIFの体制について」という横長の資料。

 資料2でございますが、「諸外国の年金基金(運用組織)のガバナンスについて」という横長の資料。

 あとは参考資料としまして社会保障審議会年金部会第26回、これは「GPIFのガバナンス体制」について議論したところでございますが、その関係部分につきましての抜粋。

 あとは、机上配付資料としまして、これは皆様まだ見ていただいているという段階で机上だけでございますけれども、第1回の検討作業班の議事録、そして新聞の社説が置いてございます。

 以上でございますが、もし不足がございましたら適宜事務局までお知らせください。

○植田座長 それでは、カメラの方はここで退室をお願いいたします。

(プレス退室)

○植田座長 では、議事に入らせていただきます。

 前回に引き続いて、GPIFのガバナンス体制について御議論いただきたいと思います。初めに、事務局から御用意いただいた資料の説明をお願いいたします。

○大臣官房参事官(資金運用担当) では資料1、横長でございますが、「現行のGPIFの体制について」、これは前回の御議論におきまして、そもそも今GPIFというのはどういうリスク管理体制、ガバナンス体制なのかという御質問がございましたので用意させていただきました。

 合わせて、諸外国の年金基金は一体どうなっているかという話もございますので、引き続き説明させていただくことといたしたいと思います。

 まず資料1でございますが、1ページめくっていただきまして「現状のガバナンス体制と有識者会議提言の具体的内容について」というものがございます。

 まず、左側のポンチ絵がございますけれども、厚生労働大臣、これは強制的に被保険者、事業主から保険料を徴収いたしまして、その積立金につきましてGPIFに寄託、これは法律上、銀行預金と同じ形式でございますが、寄託いたしましてGPIFのほうで運用していただくという形になっております。

 この薄い水色がGPIFのところでございますけれども、このGPIFに対して厚生労働大臣は下の矢印でございますが、中期目標という形で指示をいたしまして中期計画、先日も1031日にポートフォリオを認可いたしましたが、中期計画を認可するという関係になっています。

GPIFのほうでございますが、これは独立行政法人でございますが、ちょっと普通の独立行政法人と違いまして厚生労働大臣が任命する運用委員というのがございまして、そこの方から構成される運用委員会というものが設置されているところでございます。

 「構成」でございますが、「経済・金融に関し高い識見を有する者」ということでございまして、その中に労使推進の委員1名ずつが含まれております。ここは何をするかといいますと、基本ポートフォリオ等、資金運用の重要な方針につきまして審議等を行うところでございまして、実はだんだんこの機能が膨らんできまして、現在は実態としまして運用機関の選定等につきまして1次、2次、3次の審査等にもかかわる。もしくは、執行にかかわる事項についても議論していくという形で機能が膨らんでいるところでございます。

 もう一つの法律に定められた事項としましては執行監視、きちんとGPIFのほうで管理運用業務をやっているかということで執行監視をするという機能でございます。

 その下の理事長でございますが、独法でございますのでここは独任制の機関、理事長が最終的に責任を負うという形の組織になっております。「権能」としましては中期計画を策定しますし、日々の運用執行を行うということでございまして、基本ポートフォリオにつきましても運用委員会で審議いただいた後、最終的な意思決定というのはこの理事長が行うという形になっています。また、日々の執行につきましても理事長が責任を持って行うという形になっておるところでございます。

 これにつきましては右側でございますが、有識者会議の提言、これについては先回伊藤先生から詳しく御説明いただいたところでございますが、かいつまんで申しますと右のところでございまして、保険料拠出者である労使の意思が働くガバナンス体制が求められる。それから、合議制機関である理事会に重要な方針の決定を行わせるということ。あとは、これは独法でという話でございますけれども、今、運用委員会につきましてはいろいろ執行に関する議論を行っているところもあり、常勤の運用委員を配置いたしまして、常勤の専門家が中心的な役割を果たす合議制により実質的な決定を行う体制が望ましいということが言われまして、GPIFのほうは8月でございますが、基本ポートフォリオ等、資金運用の重要な方針については運用委員会の議決による事前承認制を導入させていただいたところでございます。

 それから本体のほうでございますが、理事長と別に業務執行の責任者を置き、理事会による監督機能と業務執行機能を分離することが望ましい。あとは、GPIFの専門性を重視しまして、適切な情報開示を前提に高い自主性、独立性を認めるべき。あとは、運用スタッフにつきましても現行4割、運用経験者はおりますけれども、もっと専門性のある運用スタッフの強化を図るべきということで、報酬等の制約につきましても現在の公務員並びというものの制約を除きまして、弾力化、報酬体系の見直しを行うという形で御提言いただいているところでございます。

 めくっていただきますと、リスク管理等に対してどのような体制を今とっているかということでございます。ちょっと見にくいのですけれども、ピンク色の中の緑色の部分というのがGPIFの内部の組織でございます。

 まず、右上に厚生労働省独法評価委員会というものがございます。これは今GPIFにつきましては独法でございまして、特殊法人と違いまして年度計画の承認は要らないのですが、5年間の中期計画等の承認を受ける必要がございますので、ここが独法評価委員会ということで関与しているところでございます。

 緑色の部分でございますけれども、まずは最初に左上の「業務の有効性・効率性の確保体制」というところをごらんください。一番上に経営管理会議と企画会議というものがございますけれども、ここがGPIFの中でマネジメントの会議ということでございまして、経営管理会議ですと月1回、企画会議は毎週のような形でGPIFのスタッフ、理事長以下議論をしているところでございます。

 その下に、契約審査会というものがございます。GPIFは契約の適正化ということが求められているのでこの審査会、ちょっと飛んで右側のところに契約監視委員会というものがございます。ここの外部有識者のほうで契約の点検見直しをいたしますが、このような契約につきましても内部、外部ということでチェックをしているところでございます。

 また、左側の「業務の有効性・効率性の確保体制」に戻っていただくのですが、情報システム委員会ということで後ほど御説明いたしますけれども、GPIFは運用管理ということでかなり膨大なシステムを持っていますが、そのシステムの効率化ということでチーフインフォメーションオフィサーを中心に情報システム委員会を立ち上げておりまして、樹系図の右側になるのですが、他方、やはりこの情報セキュリティの関係はかなり機密情報も扱いますので重要でございますので、この情報セキュリティ委員会と並びまして情報システム、情報の管理を行っているところでございます。

 また左側に戻っていただきたいのですが、「法令等の遵守体制」ということでは中にコンプライアンス委員会を設けまして、また内部通報制度がございまして、中の役員等に言いにくいことでも弁護士事務所に直接通報いたしまして、その訴えをもとに中の問題等につきまして対処するようなシステムをつくっています。

 監査システムでございますけれども、GPIFは独法でございますので厚生労働大臣が任命した監事、または外部監査ということで会計監査人、あとは一番下のほうの「財務報告等信頼性の確保体制」のところにございますけれども、最近このような法人ですとインターナルオーディットというか、内部監査の重要性というものが言われていますので、監査室のほうでその内部監査を行う。これは、三様監査体制という形で体制をつくっています。

 では、具体的な運用のリスクなりはどうしているかといいますと、右側の真ん中のところに「損失危機管理体制」というものがございます。そこに2つ、運用リスク管理委員会と運営リスク管理委員会がございます。運営リスク管理委員会というのはGPIF自体の体制等のリスクでございますけれども、運用リスク管理委員会というところで運用に関するリスク、ここを中心的に管理しているところでございます。

 めくっていただきまして、ではリスク管理は具体的にどういう項目についてやっているかにつきまして表をつくっています。運用のリスクといいましても、皆様ここは金融の専門家が非常に多いので御存じだと思いますが、なかなか市場関連リスクというのは消去できないのですけれども、やはりアンインテンディトというか、意図しないリスクをどれだけ回避するかというのがリスク管理の一つの本質であると言われていますが、運用資産のリスク管理ということで資産全体のリスク管理、これはGPIFの中で例えばアクティブマネージャーの取引とか、市場変動はございますと、ポートフォリオのリスク自体が日々変動しておるところでございまして、こういう基本ポートフォリオとの乖離状況とか資産全体のリスク測定をきちんと行っていく。これは、後ほど申しますガンマというソフトを使ってやっているわけでございますけれども、そういうものを測定している。

 あとは、各資産のリスクにつきましても、それぞれ金利等のファクターによってどれだけ変わっているか。もしくはアクティブリスク量がどうなっているかを測定する必要がございますので、これは株式でいうとバーラシステムとか、債券ですとポイントとか、そういうシステムを使いましてリスク管理をしている。

 その他、こういう市場リスクのほかに信用リスクといいまして、例えばエマージングとかやっていますとカントリーリスクについて気をつける。もしくは、格付につきまして管理するとか、そういう信用リスクの管理ですね。あとは、マーケットインパクトの関係もございますので、市場に対してどれだけ1日で投資しているかどうかという流動性リスク等の管理というものも行っているところでございます。

 もう一つのところで運用受託機関等に対するリスク管理でございますが、GPIFは資産ごとに委託運用ということで個別にガイドラインを示していまして、あなたのところは例えば株式でいうと成長株だとか、あなたのところは割安株だという形でスタイルを決めているところでございます。

 また、それぞれ運用する資産につきましてあなたのところはJPX400をベンチマークでやってくださいとか、エマージングのベンチマークをやってくださいという形でガイドラインを提示しています。それで、このガイドラインをきちんと守っているかどうかにつきまして遵守する、監視確認することは重要でございまして、これにつきましては後ほど申しますけれども、定期的もしくは日常的にリスク管理データを報告、確認しているところでございます。

 あとは、運用につきましては、運用哲学、運用プロセスのほかにまさに運用している人がどういう人かを確認し、それがパフォーマンスにつながるということで、4つのPとか言われていますけれども、この運用体制というものが変わることはございますので、こういう運用受託機関のCIOとかファンドマネージャーとの体制変更が行われた場合に、それは一体どういうことかということで確認する。これは非常に重要な業務になっております。

 4ページ目は、先ほども申しました資産全体のリスク管理とか各資産のリスク管理、その他のリスク管理についてちょっと専門的な用語を交えて書いていますので、ここは飛ばさせていただきます。

 5ページ目でございますけれども、リスク管理ということになりますと一番なかなか判断が難しいのは、例えばそこに1つ書いてございますが、平成23年度でございますと東日本大震災が起こったとか、S&Pが米国債をAAAからAA+に変えて世界的な株安になったとか、そういうイベントが起こったときに、このイベントが短期的な話なのか。それとも、本当にGPIFみたいな長期の運用機関が考えるべき長期的な経済金融環境の変化なのか。これを判断するというのが非常に難しい話でございます。

 それで、平成23年度の例をちょっと申しますと、GPIFについては分散につきましては確率論的なモデル、SVモデルといいますが、それによってモニタリングをしまして、分散というのが本当にどういうイベントのときに変わっているのか。もしくは、そのときに分散投資効果が本当に発生しているのかどうかみたいなことについてモニターするとともに、もう一つは「マクロ的な観点からの検討」ということで、エコノミストとかスラテジストにいろいろヒアリングしまして聞いてみました。

 具体的にいいますと、東日本大震災のときは日本もどうなるかということでかなり国民の間にも御不安はあったわけでございますけれども、日本の腰折れは考えにくい。もしくは、先ほども申しました米国債のダウングレートにおきます株式の株安時におきましては、ユーロ崩壊のリスクは低い予想ということで運用委員会に報告いたしまして、運用委員会におきましても東日本大震災のときには今のところは大きな変化はないのではないか。もしくは、「世界同時株安時」におきましては市場の構造変化が起こっていないのか。

 実は、こういうときには株は非常に安くなりますので、基本ポートフォリオを維持しようとすると市場と逆方向の取引等もしなければいけないことで非常に勇気が要るところではございますけれども、このときは下の緑のところにございますように、短期的なリスクのモニタリングに加えてエコノミスト等のヒアリングにマクロ的な観点から検討を行いまして運用委員会の御意見をいただきまして基本ポートフォリオを維持したという形で御判断いただいたところでございます。

 6ページ目でございますけれども、「データシステムによるリスク管理等」ということで、GPIFのデータシステムというのは実は世界でも有数なんですけれども、資産管理機関から全て銘柄別のデータとかファンド系のデータとかをいただきまして、情報提供ベンダーからもベンチマークをいただく。それによりまして日次でデータを収集しまして、オペレーション上のリスク等のチェックもできるようなシステムになっておりまして、それを先ほど申しましたポートフォリオ全体につきましての分析ツールであるガンマとかバーラとかという形で分析をする。

 あとは帳票ということでございまして、運用リスク管理委員会等にレポートをつくったりという形で分析しております。

 ただ、このシステムにつきましては現在、国内株式と外国株式を両方またぐような運用機関につきましては対応できない等、陳腐化みたいなものも指摘されているところでございます。

 めくっていただきますと、GPIFは委託運用が中心でございますが、「運用受託機関の管理及び評価」ということでどのようなことをやっているかということでございます。左側、「運用受託機関の管理」でございますが、まず「定期ミーティング・リスク管理ミーティング」ということでチェックをする。あとは「月次報告」ということでいただきまして、運用上問題が発生した場合には随時ミーティングをいたしまして、これはその結果、問題点があった場合においては警告なり、資金回収なり、場合によっては解約という形で1年ということであっても対応しているということでございます。

 ただ、運用に応じた機関の評価につきましては短期で評価してはなかなか難しゅうございますので、原則3年の運用結果を踏まえまして評価するということで総合評価、これは特にアクティブマネージャーですとずっとパフォーマンスがよかったら次もパフォーマンスがよくなるということでもないので、普通は「定性評価」と「定量評価」を半々くらいでやるというのが業界では言われていますけれども、「定性評価」ということで先ほどもちょっと申しましたが、フィロソフィー、投資方針なりそれを決定する運用プロセス、それからは組織・人材というパーソンです。あとは「定量評価」ということで、これまでのパフォーマンス。パッシブですとどれだけきちんと市場に追随できたか、アクティブですとリスクをとった割にどれだけパフォーマンスがとれたかというインフォメーション・レシオとかいいますが、そういうものも踏まえまして総合評価し、資金配分等を行っているというところでございます。

GPIFの8ページ目でございますが、国内債券につきましては自家運用をやっております。今は10名に足りない組織でございますけれども、ここにつきましても運用部のほうでガイドラインを与えてチェックをするという形で、ほかの委託運用機関と同様な立場でチェックをしていくというような形の管理体制を行っているところでございます。

 9ページ目はさらにということでございまして、先ほども申し上げましたし、先回のこの会議でもちょっと話題に上りましたけれども、1031日にGPIF基本ポートフォリオの申請をいたしましてそれが承認されたところでございます。その際に、やはり運用委員会のほうからガバナンス体制の強化について建議がございまして、「内部統制の強化」「リスク管理体制の強化」ということでこれを図っていくことにしているところでございます。

 まず、ガバナンス会議ということでございまして、これにつきましては運用委員会のほうにガバナンス会議というものを設置いたしまして、そこにおきまして投資原則、諸外国の運用機関ですとインベストメントビリーフというか、そういう形で示しているところはありますし、GPIFも今までは法律とか中期計画の中ではいろいろ書いてあるところでございますが、改めて投資原則なりという形で示す。

 また、行動規範につきましても、日本の場合は就業規則みたいな形にはなっておりますけれども、改めてエシカルコードみたいな形で策定をするということがうたわれております。

 あとは、コンプラインスにつきましても会議なりはございましたけれども、コンプライアンスオフィサーを任命いたしまして、より責任を持った形で内部統制の強化を図る。リスク管理体制の強化につきましては、GPIFにつきましてはカリキュラムの中で確たる根拠がある場合にはティルトといいますか、ある程度機動的な運用をしてもよろしいことになりましたので、そのマクロ経済分析とか市場予測につきまして充実させていく。

 年金給付につきましては5年に1度の財政検証がございますが、その間も経済状況は変わっていますので、GPIFにおいて独自で年金給付と運用資産につきまして一体的に分析できるようなツールを開発する。

 リスクにつきましては、先ほどからどれだけベンチマーク、市場平均から変わっているかというところのトラッキングエラーみたいなものを申しましたが、それだけではなくいろいろな形のリスク管理というものを強化する。複線的という形でございます。

 あとは専門人材の強化ということでございまして、このような建議を踏まえまして現在GPIFのほうで取り組んでいるところでございます。

10ページ目は「運用委員会の概要」でございまして、ここは省略させていただきます。

 引き続きで恐縮でございますけれども、諸外国の年金基金のガバナンスにつきまして説明させていただきます。

 1ページ目は概括表でございますので、2ページのポンチ絵をごらんいただきつつ御説明させていただきたいと存じます。

 まず米国でございますが、「カルパース」です。非常に従前から先進的な運用機関として有名であったところでございますが、カルパースにつきましてどんなガバナンスであるか、ポンチ絵をつくっております。

 カルパースはそもそもカリフォルニア州の職員の退職制度でございまして、今は主としてアメリカの公務員の2階建て部分、昔は1階部分からやったんですけれども、2階建て部分をやっている積み立て方式の年金制度でございまして、被保険者であるカルパースがそのまま運用を実施しているというところでございまして、資金規模は約30兆円ということでございます。

 カルパースには理事会が設けられておりまして、この理事会は基本的には公務員の年金でございますので、雇用者である州政府を含めまして拠出者代表であります理事、これは非常勤の方から構成されているものでございまして、加入者代表が6名、知事等による任命が3名、州政府の代表が4名という形でございまして、加入者代表につきましてはそれぞれの母体からの選挙による選出みたいな形にもなりまして、そのままステークホルダーが生の形で理事会に入っているような組織だと理解しております。

 ここにおきましては基本ポートフォリオ等、基本的な事項を決めまして、その下に投資委員会とか報酬委員会、もしくは監査委員会とかが置かれまして、大体カルパースでいくと理事会は月に1回程度、投資委員会も理事会とメンバーは全く同じなんですけれども、月に1回程度という形で理事会が開催される。

 その下にCIOがいらっしゃいまして、運用のほかに保険給付も実施しているのでCEOもいますけれども、ここにおいて常時270名くらいの職員が運用をしているという組織でございます。

 右側のカナダのほうでございます。カナダも1階部分は税による年金なのですが、2階部分につきましては、これは連邦と州の共同の制度なんですけれども、カナダ年金プランというものがございまして、ケベック州以外は参加しているのですが、被保険者、事業者から保険料をいただきまして財務大臣が監督する組織としてCPPIB、カナダ年金プラン投資理事会と略していますけれども、そういう組織がございます。ここは資金規模20兆円でございまして、カナダの場合は財政検証とか、あとはそれに基づくところの保険料なり給付の引き上げ、変更等については財務大臣が責任を持っているわけでございますけれども、そのもとでかなり政府から独立性が高い組織として設置されているところでございます。

 ここにつきましては理事会が設けられまして、どのようなメンバーが選ばれているかを見ますと、カナダのさまざまな地域からの代表となるよう、かつ金融等の能力を持つものが十分確保されるよう指名された12名の理事、これは非常勤でございますが、そういう方から決定されている。

 これにつきましては、実質的な任命は連邦の財務大臣が各種の財務大臣と相談してという形になっていますが、理事の指名委員会というものをつくることができることになっておりまして、実質的にそこの指名委員会で理事を選出するような形にはなっております。

 そこで、その下にCEO等、実際の運用組織がございまして、先回も申しましたけれども、理事会のほうは非常勤でございますので給与はそんなに高くはないのですが、CEOの方々というのは金融のプロの方という形で実施している。ここのインハウス比率もかなり高いので、1,000人くらいの職員が運用に携わっているというものでございます。

 めくっていただきますと、お隣の韓国でございます。韓国は国民年金制度ということで保険者は政府、被保険者は一般の国民でございまして、ここは保険福祉部長官、厚生労働大臣に該当するんですけれども、この人が基本ポートフォリオをつくっている。ただし、これにつきましては審議会といいますか、国民年金基金運用委員会というものがございまして、ここは20名の委員がいますけれども、雇用主なり従業員なり、自営業者もいらっしゃいますので、そこの代表者が12名入って基本ポートフォリオについて議論をする。

 そのもとにNPSという組織、ここは年金の給付等も行う組織なんですけれども、年金の運用につきましても受託をしておりまして、年金運用のための特別のCIOというものを設けまして執行している。最近はロンドンなりドイツなりのインフラの投資とか、積極的に動いているところでございますが、投資部門の人員が199名という形で実施されているところでございます。

 スウェーデンでございますけれども、これも公的年金ということでございまして、これは賦課方式の年金であるわけですが、国民年金基金、スウェーデンは政府は非常に小そうございまして、別途中央行政庁という租税庁とか年金庁というものがあるのですが、それと並びましてやはり国民年金基金というものが第1~4、もしくは第6という形があるんですけれども、独立した行政機関ということで年金の運用をやっているということでございます。

 各行政機関、スウェーデンでは国民年金基金に限らず理事会があるわけでございますけれども、そこにつきましては労使の推薦の方が9名中それぞれ2名ずつ4名いるということでございます。カナダと似ていまして、労使そのままではございませんで、労使の推薦する専門家という形でそれぞれ2名ずつ入っているということでございます。ここは基本ポートフォリオ等にかかる意思決定を行いまして、CEO等が執行するということでございまして、AP1AP4に分かれていて、最近余り分離するのも非効率なので統合するという議論があるんですけれども、全体では213名という形になっております。

 最後のページでございますけれども、オランダとオーストラリアの例でございます。オランダは2階部分の年金でございますけれども、ほぼ国民の9割以上が何らかの職域年金に入っている。その中でABPというのは公務員と教職員の年金でございまして、世界でも有数の規模を持っておるというところでございます。ここも理事会自体は労使の代表者がそれぞれ6名で、あとは独立した議長が1名いまして計13名で、ここで基本ポートフォリオ等を決めている。

 ここのおもしろいところは、全額出資の子会社というオールペンショングループというんですけれども、それをつくりましてここに運用を委託するような形になっている。このオールペンショングループにつきましては、ABPという公務員の職域年金だけではなくて、ほかの年金の基金の運用も受託できるような形でかなり柔軟な発想だと言われております。運用資産額は44兆円でございまして、全体でこのオールペンショングループのアセットマネジメント部分の人数も含みますと680名くらいの組織になっております。

 最後はオーストラリア、これは非常に分権的な運用のやり方ということで入れてみたのですけれども、いわゆるスーパーファンドというものでございまして、オーストラリアにつきましては雇用主が9.5%、従業員のために拠出してあげるという強制貯蓄的な制度になっているわけでございますが、その運用の組織のために企業別、産業別、公共部門別に分かれて、全国で500程度のファンドがございまして、ここは被保険者との関係では信託ということで、被保険者がスーパーファンドが持っていると、今度は大体DCといいますか、確定拠出になってしまったんですけれども、確定拠出のメニューを選んで運用するというようなシステムになっています。

 以上が諸外国個別の話でございますが、では年金基金につきまして国際的にどんなガイドラインがあるかということで2つつけてございます。

 1つは「OECDの年金基金のガバナンスに関するガイドライン」ということで何回か改正いたしましたけれども、現在のものは2009年6月の私的年金に関する作業部会で採択したものでございまして11項目ございます。

 1つは「責任の識別」ということで、「監督と執行の責任を明確に識別かつ分離」。

 2番はちゃんと「統治機関」というものを設けて、そこがちゃんと責任を持つような形にしろ。

 3番目は「説明責任」ということでございまして、この統治機関というのはステークホルダーに対して説明責任を負う。

 あとは「適合性」ということでございまして、統治機関のメンバーにつきましては年金ガバナンスを受ける高度な信頼性、能力、経験を担保するために適合性基準の対象となるし、専門能力の維持・向上が求められる。

 5番目でございますが、統治機関は内部スタッフ等に権限委譲が可能ということでございまして、専門知識が欠けている場合には専門家の助言を求める。

 監査につきましては独立の「監査人」を選任するし、「年金数理人」につきまして確定給付の場合には年金数理人を選任する。

 あとは、「カストディアン」という資産管理機関を置く場合には自分のところの年金資産とカストディアンの資産を、当たり前なんですけれども、分別管理することを法的に担保する。

 内部統制につきましては、ちゃんと行動規範なり利益相反に関する方針を策定するとともに、正確な情報の伝達のための報告チャネル、「情報開示」等を行うことがうたわれております。

 めくっていただきますとISSA、これは社会保障制度を管掌する各国の団体でございまして、厚生労働省とか年金機構、あとは各国のそういう政府関係団体が入っているところでございますが、ここもそういう組織の団体でございますので、昔から組織のあり方についてのガイドラインを出しています。これは一番新しいガイドラインでございますけれども、社会保障基金の投資に関するガイドラインにつきましてはISSAの技術委員会において取りまとめまして、ガバナンス構造につきましては「投資ガバナンス構造」で3原則、細則はもっと「構成」と「メカニズム」ということで詳しいのですが、3原則を紹介させていただきます。

 「諸組織とその責任」ということでございまして、投資の機能は異なる組織、または機関によって担われるということでございまして、ガバナンスの過程を効果的にするためにはそれぞれの組織の役割及び責任や相互の関係について明確に定め、周知される必要がある。

 「受託者責任」ということでございまして、理事会等運営主体とその執行幹部は社会保障機関の基金の管理・運営につきまして受託者責任を負う。

 または、「社会保障機関のガバナンス構造と組織面での視点」ということでございまして、社会保障機関の投資構造と組織は当該機関を設立した法令、または政府の行為、「良いガバナンスについてのISSAガイドライン」、本ガイドライン及び投資についてのベストプラクティスと整合的でなければならない。また、投資機関につきましては社会保障全体を執行する機関でも、制度の基金を運用するために明確につくられた機関でも構わないとしておりまして、最初の総論にあるところでございますけれども、本ガイドラインについてよい投資ガバナンスにつきましては、社会保障基金の保有基金というのは補足的な年金と共通な原則も多いけれども、投資目的に典型的かつしばしば重大な違いがあり、この違いを反映させたものと自分たちのガイドラインは位置づけております。

 それで、OECDガイドラインと比べたときの記載が異なる点は、例えば3点挙げていますけれども、「ガイドライン3の推奨例」でいいますと、社会保障機関というのは世代間の公平を基礎とし、さまざまなステークホルダーが負担するリスク量を管理する責任を持つことを推奨しておりますし、運営主体としましては理事会なり政府の省庁なり法定の主体である民間機関なり、いずれもあり得るということでございまして、その上で投資判断とその実施について政治的影響から独立であることを推奨しておるということでございまして、ISSAは伝統的には政府と雇用主、もしくは労働者というトリパーティーといいますけれども、三者構成というものを推奨してきたという経緯がございます。

 あとは、投資方法につきましては、米国の社会保障基金のように投資対象の制限が可能であることを明記しているという、そんなガイドラインもございます。

 最後にお手元の最後の新聞記事でございますが、最近、公的年金の運用の信頼を高める改革を急げということに関する新聞記事が出ていまして、見ていただくものにつきましてやはりGPIFにつきましてガバナンス改革が重要だということを言っています。

 3段目の3つ目の段落でございますけれども、「GPIFの本格的な改革の第一歩は、公的年金への信頼が高まるような組織の見直しだ。年金や運用に詳しい人たちを常勤委員に迎え、結果責任を課したうえで、専門家の見地から資産の構成比などを決めてもらう。そんな体制を築くことが必要だ。組織を変えるために法改正が必要ならば、そちらをこそ急ぐべきだ。」ということで、そのような社説もあらわれております。

 私のほうからは、以上でございます。

○植田座長 ありがとうございました。

 それでは、本日は前回に引き続き「GPIFのガバナンス体制について」、一般的な議論を続けたいと思いますが、その前に今の御説明について特にあればどうぞ。

○出口委員 御説明ありがとうございました。たまたま前回私のほうから、今どうなっているのか教えていただきたいと申し上げたので、これに関する質問を3点お聞きしたいと思います。

 まず第1点は、先ほど御紹介いただいた日経新聞にも、今読んでいただいた次に、GPIF改革で欠かせないもう一つの点は独立性だ。意図はなくてもPKOのように受け止められることは避けたい。私自身は、このGPIFのガバナンスの議論はやはりPKOのリスク、これは大臣も立派な方ですからあり得ないと思うのですけれども、諸外国から考え見ていうふうに見られることはこの国のレピュテーションの問題でもありますので、一番大事なガバナンスのポイントはPKOのようなことができるか、できないかであると思います。

 そこで1点目は事務局と、それからたまたま堀江委員がこの運用委員会のメンバーでいらっしゃるので、仮に今のガバナンス体制で、例えば大臣がこういうふうなことをやりなさいと言ったときに、要するにPKOのようなことができるのか、できないのかという点について、お話を聞いていますとできないような気はするのです。大臣の御指示というのは中期目標の策定指示、中期計画の認可だけですからできないと思うのですけれども、現行リスク管理体制の下でPKOのようなことができるのか、できないのか、防げるのか、防げないかについて事務局と堀江さんからもしコメントをいただければありがたいというのが1点です。

 それから2点目は確認なのですが、前回現行のリスク管理体制をお聞きしたいということに加えて、ほかの委員の皆さんからも5年単位、10年単位でいいんですけれども、仮にリスクが生じたときにどのような対策があるのか。これも諸外国には幾つか例があるというお話もいただいたのですが、それは次回また御説明いただくということで、よろしいでしょうか。その点の確認です。

 それから3点目はすごくつまらないことで、権威主義的にこんなことを言っていると思われたら大変心苦しいのですけれども、今日出ている資料は全て年金局の名前で出ておりますね。そうであれば、たまたま今日は局長がいらっしゃいませんけれども、当然お忙しいので公務が優先されると思いますが、やはり年金局の名前で資料が出ている限りは局長にも極力出ていただきたい。これは決して出ないのがけしからんとか、そういう権威主義的な点で言っているのではないんですけれども、私自身もこの会合は大変大事だと思っていますので、希望として申し上げたいと思います。以上、3点です。

 それからもう一つ細かい点で、常勤の運用委員は今いらっしゃるのかどうかだけ事実関係として教えていただければと思います。以上、4点です。

○大臣官房参事官(資金運用担当) 事務局のほうから御説明させていただきます。

 まずPKOにつきましては、私どもは従来の年金福祉事業団のときから大臣等が答弁しているところでございますけれども、厚生年金保険法の第79条の2に、年金積立金につきましては厚生年金保険の被保険者から徴収された保険料の一部であり、かつ将来の保険給付の貴重な財源になるものであることに特に留意し、専ら厚生年金保険の被保険者の利益のために長期的な観点から安全かつ合理的に行うことにより、厚生年金保険事業の運営の安定に資することを目的として行うということでございまして、これは英米法で言うところの受託者責任のところの忠実義務の中核でございますけれども、専ら被保険者のためにということでございましてPKO等は行っていない。いわゆる他事考慮といいますか、経済等を活性化とか、そういうものについても考えてはいない。

 ただ、専ら被保険者のための利益に運用することが日本経済の活性化にもつながるということにつきましては、日本再興戦略等にも書いてあるところでございますが、専ら被保険者の利益のためという形で運用させていただく結果と認識しています。

 堀江先生のほうからお願いします。

○堀江委員 私の見解はちょっと違います。PKOができるかどうかという観点について一言で言うと、これはでき得るというのが今の一番の問題点だというのが私の認識です。

 それはなぜか。一番の問題は先ほどリスク管理の体制を見ていただいたとおり、理事長の独任制にあります。独任制とは、理事長がアセットアロケーションについて今回運用委員会の議を経て決定すると書いてありますが、最終的にはそれを排除することもできるわけです。三谷理事長は非常に良識のある方で、そういうことが起こり得るとは思いませんが、やはり独任制であるということが一番大きな問題点です。当然、受託者責任はありますが、独任制ということは何か政治的な圧力があり、株の比率を若干上げるといったことは執行の範囲内でやることですから、それがどういう理由かは建前前上違う理由で言うことはできるかもしれませんができるということになるかと思います。基本的には独任制であるということが一番大きな問題です。PKOができるのかどうか。

 できませんと明確に100%言えるというと、それは言えないというのが一番大きな課題です。ですので、今GPIFのリスク管理体制や、海外の体制の説明もありましたが、そこでチェックアンドバランスの仕組みを入れることが一番重要なポイントになります。どの年金ファンドもそうですが、理事会を設置し、そこに執行の暴走が起きないように防ぐ。そういう監督と執行の役割分担を明確にすることが、私は世界で見るとグローバルなスタンダードで、そのような体制にまずいくのが最初ではないでしょうか。

 監督と執行の権限を分けたとき、厚生労働大臣から何を監督権限の機関に委託するか。これは第1回の議論の中でもいろいろな形があり得ると議論されたと思います。どんな形になるかは別にして、まず独任制を正すということは一番の重要な問題点、課題です。独任性を変えることは、今の独法制度のもとではできないというの、伊藤座長の有識者会議の席で、総務省の方が、今の独法制度の中では理事長の独任制を変えることはできないと明確にお答えになっておられました。厚労大臣が何をGPIFに対して何をマンデートとして与えるかは置いておいても、GPIFの中での理事長の独任制をまず変えるというのが一番の課題というのが私の見解です。

○出口委員 今の御意見は、例えば大臣が理事長を個別に呼んで何かを言われたと仮定したら、今のシステム上はPKOはでき得るというのが堀江委員の御意見という理解でよろしいですね。

○堀江委員 99%ないとは思いますけれども、排除できないのではないか。

○出口委員 よくわかりました。

○大臣官房参事官(資金運用担当) 引き続きまして、2番目、3番目、4番目の話でございますけれども、2番目のリスクが生じた場合にどうなるか。これは、年金積立金の自主運用を始めたときからの話でございますけれども、年金積立金は長期的に損失が出た場合にはやはり給付の引き下げなり、もしくは保険料の引き上げみたいな形になります。

 そういうことにつきまして、諸外国の例としましてはスウェーデンなりカナダなりの例、実はきょう御紹介したオランダのAPG、積み立て方式でございまして、積み立て比率が低くなった場合にどうするかということで御議論がございまして、積み立て比率が低くなった場合にはその分、給付を調整するような仕組みになったかと思いますので、私どもの知る限りで次回にでも御紹介させていただきたいと思います。そんな観点から、オランダはたしか新しい改正では理事会のメンバーには年金を受給している方も加えるという法律が通ったかと思います。

 それで、局長が出席していない話につきましては、まことに申しわけありません。また相談させていただきたいと存じます。

 最後の4番目でございますが、常勤の委員につきましては現在手当てしていません。また、この点につきましては運用委員会の役割等、もしくはこの席での御議論みたいなものを踏まえまして、あとは前々から申しておりますけれども、専門家という形になりますと報酬体系の話もございますので、そういうものも踏まえてまた考えていきたいと存じております。

○植田座長 今の1番目の点はすごく大事だと思うんですけれども、御議論いただいて堀江さんのほうから独任制かどうかが一つのポイントであるということですが、形式的には現在ですと、例えば基本ポートを決めた後、大臣認可は必要ですよね。だから、大臣が非常に変なあり得ないことだとは思いますが、ここにバイアスがかかっていれば、そこで認可しないということで圧力をかけることは幾らでもできるのではないかという論点はあるのではないのでしょうか。議論し出すと大変な問題になりますからあれですけれども、とりあえず論点としてあるように思います。

 では、菅野さんお願いします。

○菅野委員 まずPKOについてコメントと、あとは質問をさせていただきたいと思います。

 先ほど事務局の森参事官のほうからお話がありましたけれども、特にこの日経新聞の社説もそうですが、ほかの社の社説もざっと目を通したところ、やはり共通の指摘は少なくともPKOと疑われるような組織になっていると、「PKOはやりません」と法律で担保されているからといっても、仮に受託者責任を全うしようとして例えば株の比率を上げても、PKOをやっているのではないかと誤解されてしまう。ここがやはり一番大きなところですので、このような誤解を抱かれない組織をいかに作るか、というのが一番重要な点なんだろうと思います。そこは堀江委員がおっしゃったように、まず今の理事長の独任制というのを変更することが何と言っても必要だという、そこは私も賛成でございます。

 次に2点ほど質問と、コメントを1つさせていただきたいと思います。

 ガバナンスについては、先ほどOECDのガイドラインについての説明がございました。これが日本に全てこのとおり当てはまるということではないのですが、ガイドラインの3番目に説明責任の項目があって、ステークホルダーに対して説明責任を負うというのがあるわけですけれども、現在のGPIFにおける説明責任について先程は十分な御説明がなかったようなので、ここについてもう少し詳しい御説明をお願いいたします。

 2番目ですけれども、いろいろな現在のGPIFの中でデシジョンメーキングをするときに、やはり基礎的な情報というのは非常に重要かと思いますし、先ほど御説明いただいた中にも、例えばいろいろな外的ショックがあったときにそれが一時的なものなのかどうなのかというのを5ページ目のリスク管理の3のところで御説明いただいたと思います。

 現在のGPIFの体制で、そのための情報収集というのがどのようになっているのかをお教えいただけますでしょうか。先程のご説明の中では、エコノミスト、ストラテジストからヒアリングされたということですけれども、GPIF130兆円近いお金を運用する機関ですから、GPIFの中でそういう情報を常に一つの部署が責任を持ってフォローするというのが重要かと思います。勿論、外部のエコノミストとかストラテジストからヒアリングを受けたりすることは、当然だと思いますけれども、GPIF自信での情報収集についてはどうなっているのでしょうか。特にこれから運用はかなりグローバル化してきますので、海外の情報というのをどのように今、集めておられるのか。この点をちょっとお伺いしたいと思います。

 最後に3番目はコメントになるんですけれども、現行のGPIF体制についての2ページ目ですが、このチャートを拝見するといろいろなところで目配りされているというのはよくわかりますが、例えばリスク管理委員会の委員長は理事長になっていますよね。これは理事長の独任制だからこうならざるを得ないと思うんですけれども、この中では基本的にチェックアンドバランスというのが十分効いていないなという気がいたしました。

 もちろん事後的に監事とか監査とかというのはありますけれども、OECDのガイドライン、あるいは先ほどあったISSAのガイドライン、これも共通しているのはやはり理事長ではなくて理事会で合議制の下で物事を決めています。その理事会の下に例えば、運用リスク委員会というのがここにありますけれども、このチーフは普通はCRO、チーフリスクオフィサーというのが、大概どこにも存在すると思います。そのチーフリスクオフィサーを、理事会ないしは理事長がチェックするというチェックアンドバランスという機能があるわけですけれども、この図を見る限りにおいてはそういうチェックアンドバランスという機能は組織としては存在しないというように私はこの図を理解しています。海外の例もありましたが、ほとんどの国が理事会を置いています。GPIFの組織はやはり海外の例とはかなり異なるなという印象を持ちました。

○大臣官房参事官(資産運用担当) まず、GPIFの説明責任につきまして御質問いただきました。GPIFにつきましては独立行政法人でございますので、独立行政法人共通ということでございまして、これは厚生労働省の独法評価委員会でございますけれども、毎年かなり分厚い実績報告、実績評価という形でここに資料を示していますし、5年に1度の中期計画期間が終わっていますと、また別途、中期計画のリファランスということで資料を開示している。

 また、厚生労働省におきましては保険者の立場ということでございまして、GPIFの運用実績につきましては年金財政に与える影響ということで毎年報告書を出しております。

 あとはもう一つ重要なのは、国民に対してどうあるべきかということでございますが、これはガバナンス、まずはホームページという形でGPIFにつきましては今回のポートフォリオにつきましてもその日に詳細なものを出していて、今回の英文につきましても海外からもいろいろ御照会がございましたので英字でも出させていただいたところでございます。

 また、ホームページ上は一応分散投資効果、よくあるのは株を持つとなぜリスクが低下するのかとか、そういう御質問がございますので、そういうものについても説明させていただいているところでございます。国民に対してまさに金融リテラシーを上げるというのはなかなか難しい話でございますが、GPIFとしてもできることはやらせていただいているという理解でございます。

 もう一点でございますけれども、情報収集でございます。情報収集につきましては、確かにこの社会保障審議会の年金部会にございました経済前提、もしくはその積立金のあり方検討会でも、より情報収集体制については強化しろという話をいただいております。

 現在のところですと、先ほどのバーラなり、ポイントなり、そういうシステムがございますし、あとはコンサルタントという形でいろいろ各種情報を周知しているところでございますが、これは先生も御存じだと思いますけれども、いろいろな情報というのは多種多様でございまして、むしろそれを整理統合していくしっかりとした内部の組織というのが必要だというのは、おっしゃるところだと存じております。

 私からは以上でございます。

○植田座長 今のことに1つつけ加えますと、説明責任のところですけれども、日銀の政策委員会などと同じように割と早いタイミングで議事要旨を出して、それから大分おくれますが、全体の議事録も発表するということは一応やられているということだと思います。

○菅野委員 GPIFは、御指摘のように、最近、英文の資料も即時に出しておられるので、その点は私ども非常に助かっておりますので、御礼申し上げたいと思います。

 ただ、それでも英文での発表文というのは非常に限定的ですので、やはり通常の四半期ごとの報告書も含めてもう少し詳細な情報公開が求められます。今、非常に海外から関心が高まっていますので、是非お願いしたいと思います。

 あとは、やはり説明責任については、私は残念ながら極めて不十分だと思います。先ほど議論になった、国民の間でかなりPKOじゃないかという疑問を持たれていることに対して、何ら具体的な説明がGPIFサイドから出されているとは私は思えません。

 それと、直近の例で言うと、一番大きな議論でありましたリスク資産ウエートを上げることについて、残念ながらこれも国民の間で十分な理解がなく、何か非常に大きなリスクをとるようになったとの受け止め方が多いようです。こうした点を考えると、結果として十分に説明責任が果されているということではないのだろうと思っています。

○植田座長 では、岩間先生。

○岩間委員 ちょっと感想めいたこともあるんですけれども、私の感想を申し上げますと、説明責任の最たるものというのは執行部隊が何をやっているか。もちろん、それはクリアに説明があるというのは適時必要なのだろうと思いますけれども、一番大事なところはやはりPKOのリスクがあるかどうか。政治的な影響力をどれだけちゃんと排除できているのかということについて、納得できる説明がどれだけできるのかということなんじゃないかと思います。そこが一番、先ほどの堀江委員のお話にもありましたけれども、独任制の限界ということについて、やはり独任制で大丈夫だということであればそこの説明がきちんとできるということが最大のポイントなんじゃないかと思います。

 あとは、そのリスク管理とか執行部隊がどうするか。内部監査の問題とか、そういうものは私は執行部隊がきっちりとかなりやられているんだろうと思います。もちろん、ポイントで見ていろいろこれから運用の形態が変わってくる。新しいアセットクラスが入ってくる。あるいは、国v際的な経済情勢がどうなるか。マクロ、ミクロ、いろいろなものが即時に把握されて、さらにはそれがフォワードルッキングな形で反映されるような能力というか、そういう体制というのは必要になると思いますし、そういうものも説明責任の中に含まれると思いますけれども、やはり根本のところはそこが一番大きいのではないかと思っております。

○堀江委員 GPIFのリスク管理体制の補足説明を、委員という立場ではなくGPIFの運用委員として補足させていただきたいと思います。先ほど森さんからGPIFの9ページ目の資料の中で、基本ポートフォリオを非常に大きく変えたことと同時に、ガバナンス体制の強化を打ち出しております。

 1回目の議事録も読ませていただきましたが、今GPIFが国民からなかなか信頼を得られていないというのは事実であると考えています。そういうふうに謙虚に受けとめてGPIFの運用のあり方を国民の方にわかりやすく説明しようという意図でこのガバナンス会議を設置し、私が議長を務め、1回会議をやらせていただきました。ここで明確にお伝えしたいのは、ちょっと嫌な言い方ですが、運用というのはあくまでも年金財政の附属物だと考えています。あくまで厚生労働大臣から示されている年金財政上の要件を満たすために運用しているのであって、別に年金資産で大きなリスクをとろうとか、そういうことは全く目的ではなく、年金財政上の要件を満たすことが最も重要です。このガバナンス会議の中で一番重要なのは投資原則を決めることです。

 投資原則は平たい言葉で言うと、まず一番大事なこととして、国民の方に明確にGPIFはどういう形でリスクを定義しているかを決めることを考えております。これは一言で言うと年金財政上の要件を中長期的に達成できないこと、これが唯一最大のGPIFのリスクの定義であると示そうと考えています。単純に年金資産のリターンを高めることが目的ではありません。あとは、元本毀損も年金財政上の厳密な意味でのリスクではなくて、あくまでも年金財政上の要件を中長期的に達成できないことがリスクであると考えています。

 例えば、年金積立金の将来推計額、これは年金財政上のいろいろな経済シナリオを想定して複数示されているわけですが、年金財政上要求されている積立額が示されています。その年金財政上要求されている積立額を、我々として中長期的に下回ることが最も大きなリスクであって、そうならないためのリスク管理をしていこうということを投資原則の中で決めていこうと考えています。

 もう一つは、GPIFの年金資産は非常に大きな資産額であり、特に日本の株式では最大の投資家になります。最大の投資家、アンカー投資家としての責任を明確に意識したいと思います。パッシブ運用が主で、直接投資ができないということが、何ら投資先企業にポジティブなインパクトを与えなくていいということにはなりません。我々は取引先企業に対し運用会社を通じて、キャッシュフローの生成能力を高めてもらうことが、ひいては被保険者のため、中長期的な年金制度の安定性に寄与すると考えています。取引先企業がキャッシュフローを生成する能力を高めるため、運用会社に対してどういう指図をすればいいのかを、責任ある投資家として考えていかなければいけないと思います。

 そういったことも含めて投資原則の中に明確に書き込んで、国民の方にGPIFが被保険者のために投資をしていることを明確に理解していただく形で示したいと思っております。

 もう一つは、行動規範を決めようと思っています。なぜ行動規範なのかという理由ですが、これは非常にシンプルで、先ほどカルパースの例が出ていました。カルパースは、ガバナンスが最もひどい例だと私は認識しております。なぜなら、理事会のメンバーの方が出身母体の利益のみを代表して意思決定をするからだと聞いています。確定給付年金ですから誰しも掛け金は少なく給付は多くもらいたいということです。従って利害が出身母体の立場によって対立します。出身母体の利害だけを代表して意見を言うものですから、カルパースのガバナンスは非常にひどいというふうに私は認識しております。

 そういうことにならないよう運用委員の方、これもいろいろな出身母体の方がいらっしゃいますが、あくまで被保険者の利益を最大限考える。これは受託者責任として当たり前のことですが、どの出身母体の代表の方であってもあくまで被保険者の利益のためだけに意思決定をしてくださいということを明確に行動規範の中に書いて、全く他事考慮がない被保険者のためだけに意思決定をするということを運用委員会としては明確に行動規範としてつくる。そういったことをやろうと思っています。

 国民の方に年金運用に対して安心をしてもらうことが運用をする場合の大前提です。これまでの規定の中でそういったことが明確になっていなかったということを踏まえまして、今、言ったような投資原則と行動規範をまずつくって、広く公開して国民の方の安心を少しでも高めようということを努力していきたいと考えております。以上でございます。

○出口委員 1点だけですが、今の御説明を聞いてすごくよくわかって安心したのですが、もし行動規範をつくられるんだったら1つお願いしたいことは、今のGPIFは国民の信頼を失っているという御指摘もありましたけれども、今の人数を考えればそこそこよくやっているんじゃないかという意見もあるような気がします。

 それは私には判断できないんですが、ただ、1つ非常に気になったのは、今回のポートフォリオの発表の1週間ぐらい前、日本株については20%半ばぐらいという情報が新聞に出ましたね。これは多分、観測記事で別に犯人探しをしようとか、そういうことは全く言うつもりはないのですけれども、やはり130兆円の規模を考えたら関係者がその数字を言うこと自身が、どなたが言われたのか、あるいは記者の方の類推かもしれないんですけれども、これは私はやはり日本という国の信任を失うことだと思いますので、ぜひ、その行動規範のときには、やはり130兆円の重みということをしっかりと捉えていただいて、ああいう記事がもう二度と出ないような風土をつくっていただきたい。これは堀江さんが議長なので、お願いしておきたいと思いました。

○堀江委員 1点、今のGPIFの規模の中では、私も職員の方とよく接していますけれども、あの人数の中で本当によく働いておられるなということは申し上げたいと思います。

 2点目の部分は我々も非常に怒っておりまして、どうしてああいう形でリークされるのか。これは誰がリークしたかというのは私はもちろん存じませんけれども、やはり今のたてつけの中ではその配分比率の議論がGPIFの中だけで閉じているわけではなくて、当然厚労省の方も入っておられますし、最終的には財務大臣と厚労大臣の認可が要るということですので、GPIFの中だけで情報がクローズしていることではありません。どこで漏れたか私は全く存じませんけれども、GPIFの中だけで今、行動規範をつくって、そこだけが情報漏えいされないとしても、ほかでもいろいろ漏えいする箇所は今のたてつけですとあるということは申し上げたいと思います。

○植田座長 それは、リークに関して調査委員会みたいなものは立ち上げたんですか。

○堀江委員 立ち上げていません。

○菅野委員 只今、出口委員が御指摘になった情報漏えいは非常に重要な問題だと思います。今、堀江委員から若干追加的なその点に関する御説明をいただいたわけですけれども、むしろ現体制でどうして情報漏えいがあるのか。別に犯人探しをしろということではないですけれども、少なくともまだしばらく現体制でいくわけですから、その現在の体制の中でああいうことが絶対に起きないようにするにはどうしたらいいかということをGPIFの現体制の下で考えることが必要です。私は機密情報は運用委員会の中で完結すべき、運用委員会の外には絶対に出さない、ということが重要だと思います。GPIFの中で完結せず、その情報がGPIFの外に事前に出るということ自体、あるべき行動規範が遵守されていないということだと思います。

GPIFの職員の行動規範の中に、情報漏えいが出ないような規程をしっかり組み込んで行くことが必要だと思います。

○植田座長 では、山口委員お待たせいたしました。

○山口委員 ありがとうございます。このPKOと見られるんじゃないかというような話を組織で担保しようという議論は、どのような組織をつくっても100%それがなくなるということは私はないと思うんですね。独任制に問題があるというのは確かに御指摘のとおりだと思いますけれども、理事の協議制にしても、人選をするのはやはり政府であったりすると、理事長の人事とか、あるいはぜひこういう方向でといったような要請をすることによって、そういったことを達成するということはできないわけではないわけですので、組織だけで全てその問題が解決するというのはやはり違うのではないかと思っております。

 それで、先ほど堀江さんのお話があって私も少し安心したんですけれども、やはり年金財政というものと運用というものをきっちり結びつけて考えていかなければいけないという点が非常に大事だと思うんですね。そういう意味では、前回の最後に植田座長から、10月の末に出ました新しい基本ポートについてコメントをいただいたわけです。私はこれについては確かにそういうことなんだなということで、今回の基本ポートというのは当面の短期、数年から10年くらいまでのところについて多少なりとも、あるいはかなりの程度、債券価格が下落するというリスクがあるので、普段ならばもっとリスクの高い資産である株、あるいは外貨建ての資産を持っているよりも、債券のリスクが高い面があるかもしれないという中で出された姿が今回の基本ポートだったといったお話がありまして、確かにそのように考えていかないと今回の基本ポートについてなかなか納得ができない面があるというのは私も全く同感でございます。

 ただ、それについては、そうするとある意味、基本ポートの運営というものがこれまでと少し変わってきているのではないかと思うわけです。ある種、こういう言い方はよくないかもしれませんが、一定のシナリオに基づいてアセットをタクティカルに動かしていくといったようなマネジメントに変更していくといったようなことがあったのか。そういう方向を示唆するようなGPIFの運営体制の転換といったことを意味するのかと思ったりしているわけでございます。

 そういう意味では、まさにガバナンスをここで今、議論しているわけですが、ある意味、既にそういった正しいマネジメントのステージに入っているということだとすれば、GPIFはその点についてもっと十分な説明をすべきではないか。説明責任がきちんと果たされているのかどうかというようなことを非常に疑問に思った次第です。

 そういう意味で、堀江さんがこれからのガバナンス強化の話をされたんですが、もしかしたらもう既にあの基本ポートを採択して進めているという中で、そういったことが含意されているのではないのかなといったようなことを、座長のお話の中から私なりにちょっと考えたといったような次第でございます。

○植田座長 その点は、私は今回決めるところに立ち会っていませんので、ただ、外から見ている個人的な感じとしましては、これまでは長期的な経済の姿にあった長期的なポートフォリオという考え方で基本ポートをつくっていたんですが、今回はもう少し目先の経済の姿に関するある種強い見方を持った上で、当面といってもそこそこの長い期間ですが、ポートを決めたということで、考え方がそこそこ変わっているという面はあると思います。それがGPIFの内部でどういうふうに消化されたのかという点は私にも見えないので、確かにおっしゃるように説明責任というところでもうちょっと説明していただくべきことかなという気は私も持ちます。

 では、伊藤先生どうぞ。

○伊藤座長代理 幾つかの点、繰り返しになる点もあるんですけれども、まず海外の例を事務局から説明いただきまして、あとは堀江委員の話等も聞いて、有識者会議は昨年の11月の報告書の中で我々も海外のヒアリングを公式にも非公式にもしたわけですけれども、やはり共通項として一番重要なのが理事会を設置して合議制で自由な決定を行うということと、それからそこと執行部隊を分けるという点だと思うんですね。組織体制として、こういった普通に海外でやっている体制というものを日本でも採用することによって、多くの問題が解決に向かうということだと思います。それが第1点です。

 第2点は、やはり理事会設置とも関係してくるわけですけれども、独任制である以上、PKOあるいはそれ以外の政治的な圧力ということで影響を受ける可能性が高い。100%ないとか、100%あるというような二分法ではなくて、やはり確率的に考えれば独任制の1人を説得する、あるいはそこに政治的圧力に屈しやすい人が来る可能性というのはかなり残るわけです。

 そういう意味では、PKOをゼロ%にすることはできないけれども、限りなくそれを低くするという努力が必要であって、それはやはり複数、多数の理事会でそれぞれの意見を持っていて、そこで重要な決定をする。それら理事を全員政治的圧力で説得するというのは確率はかなり低くなるわけですから、そういう意味では理事会をつくってそこで重要な決定をするということについて、あるいは行動規範をつくってその内部体制をしっかりするということがPKOを防ぐ、あるいはPKOを防いでいるということを内外に示すという意味で非常に重要な意味を持っていると思います。それで、第79条その2を森参事官のほうから説明されたわけですけれども、図らずも年福時代からというふうに一言おっしゃったんですけれども、その年福のときもいろいろ問題があって、政治的な圧力があったんじゃないかというようなことも言われているわけで、そういう意味では条文で専ら被保険者の利益のためにと書いてあっても、これはほとんど担保にはならないと私は思います。

 リークの件に関しては、私は堀江さんが言ったことが正しくて、関係者が多過ぎるということがまず1点あって、さらに行動規範、あるいは利益相反等々の内部の管理体制がきちんとできていないということだと思います。

 同じような問題は、かつての日本銀行の公定歩合を引き上げるか、引き下げるかなどというときに、リークが出る、出ないというようなことで問題があったわけですけれども、これは日銀法で金融政策決定会合だけで決めるということになって、ほとんどこれは解消された。リークがなくなった。ゼロ%ではないですけれども、そういうことになった。

 昔の日銀の場合には結局、財務大臣のところまでいって根回しをして、ひょっとすると総理大臣までいって根回しをしないと公定歩合の引き上げは認められないというようなことだと、関係者がどんどん多くなっていって、どこからリークが起きたかというのはわからない。わからないのであれば、リークしたい人はそのインセンティブが高まる。ペナルティがないわけですから、そういったことは組織論、あるいはそのインセンティブの問題からいっても、やはり関係者が多ければ多いほどリークの可能性というのは高いわけですね。

GDPの発表というのも、つい最近というか、10年ぐらい前までは前の日にリークがあったり、数時間前にリークがあったりということがあったわけです。これも、内閣府のほうで情報管理を徹底する。根回しというか、根回しじゃないんでしょうけれども、事前に聞いていないと言われるのが嫌だからというので、少し事前に教えていた先にも教えなくなったというようなことで、今はほとんどリークはあり得ないということになってきた。そういったこともありますので、やはり重要事項の決定については関係者の数を絞って、そこの人たちには守秘義務を課していくということが非常に重要であると思います。

 それから最後の点ですけれども、被保険者の利益というのが条文にも出てきますし、我々の議論で当然のように出てくるわけですが、私は前回の第1回でも強調させていただいたと思いますけれども、被保険者というのは今、年金を受け取っている人、今、保険料を払っている人だけではなくてこれから保険料を払い始める人、あるいはまだ生まれていない人というのもこのシステムの被保険者という分類にきちんと入れるということで、世代間の不公平をできるだけ和らげるということが、今もう既に人口減少が始まっている、特に厚生年金でカバーされている、国民年金でカバーされている人の総数がだんだん減っていく国であるからこそ、そこの点というのは非常に重要だと思うんですね。

 だから、そこを十分に考えて広い意味での被保険者の利益というのを考えなくてはいけないと思っています。以上です。

○植田座長 どうぞ、花井さん。

○花井委員 ありがとうございます。幾つか質問と意見を述べさせていただきたいと思います。

 1点目は前回もお話ししたかと思いますが、私たちにとって最大のリスクというのは、やはり運用の結果です。大きく毀損が出たことによって年金受給額が大幅に減少するということ。それだけは何としても避けたいと考えるわけですが、先ほど森参事官のお話で、スウェーデン、オランダでかつてそういう経験があって実際に引き下げたことがあったとのことでした。聞き違いだったら済みませんが、そういうお話があったかと思います。

 そうしますと、そういうリスクというものをどういうふうに管理するかと同時に、そのことをどう国民に納得させるかということも大変重要ではないかと思います。

 その上で、きょう諸外国の事例を説明いただきましたが、先ほど堀江委員からカルパースについての評価が出されました。カルパースというのは積立方式で2階部分のいわゆる企業年金の一種だという説明があったかと思います。ほかの諸外国の事例を見ましても、それらしきものが結構あったりします。

 日本の場合は、被保険者の強制加入と賦課方式ということがあるわけです。そこからいいますと、公的年金を運用しているもう少し近いような国、例えば日本は社会保障を語るときに必ずドイツ、イギリスや、OECDとの比較が出てくるのですが、ドイツ、イギリスなどはどうなっているのでしょうか。また、足元のところで国共済が7.8兆円ぐらいの運用、そして地共連は38.4兆円ということで、カルパースよりもっと大きな運用をしているわけです。あるいは、私学共済といった、国内のこれらの年金基金の運用がどうなっているのかということについて、また、リスク管理がどうなっているのかということについても一度説明していただけたら、資料を出していただけたらということをお願いしたいと思います。

 それから、先ほど来PKOのお話が出ておりますが、運用については、パッシブ運用中心にされてきたことが少し変わりつつあるのではないかと思っております。前回だったかと思うのですが、場合によってはアクティブを認めるということで、方向転換するとすれば、アクティブ運用の場合の手数料が大変大きな課題になってくると思います。その上で、結果責任もどうするのか等々、そういう問題もセットで考えていかなければならないのではないかと考えております。そうしますと、運用対象の拡大というものをどこまで認めるのか、それはどこで認めるのか、その説明をどういうふうにして果たしていくのか等々の組織体制が相当必要になってくるかと思います。

 それから、先ほどの行動規範というお話は大変重要だと思っております。当然、運用委員会の皆様には守秘義務がかかっているかと思いますが、今後、組織改革の中でもう一つどうしても入れてほしいのは利益相反の問題です。それに違反した場合の罰則のあり方ですとか、そういうことも諸外国がどうなっているのかを含めて、諸外国で日本と近い運用をしているところの事例、あるいは国共済、地共連がどうなっているのかなど、そういう資料と説明をお願いしたいと思います。そのことは可能でしょうかという質問を最後にしたいと思います。以上です。

○植田座長 事務局のほうからお願いします。

○大臣官房参事官(資金運用担当) 国共済、地共済等、共済関係の資料につきましては関係省庁とも御連絡いたしまして次回出させていただきたいと存じます。

 ただし、27年の10月に一元化という形になりまして、これはモデルポートフォリオをつくりまして、2階建て部分の被保険者年金の分でございますけれども、これにつきましては同じような形の運用にしていくことになる方向性だということにつきましては申し沿えておきたいと思います。

 あとはイギリス、ドイツとございましたが、イギリス、ドイツは年金水準等の関係もございますけれども、実は余り積立金を持っておらずに、例えば英国ですとキャッシュフローに対するバッファーファンドみたいな形でしか持っていなく、年金積立金を多額に持っていないので、この例からは落とさせていただいたところでございます。

 日本の場合におきましては少子高齢化ということで、ある程度将来の年金給付の水準を支えるということでございまして、最大でいいますと所得代替率10%程度の貢献をするということでございまして、あらかじめある程度の積立金を賦課方式をやりながら持っているという仕組みでございますので、そこはイギリス等とはちょっと違うのかなと存じております。

○花井委員 1つ言い忘れたのは、アメリカの社会保障信託基金というものもあるかと思いまして、今、森参事官が言ったことかと思うのですが、ただ、知りたいのはリスク管理がどのようになっているのかということです。金額の多寡ももちろんあるかとは思いますが、そういう意味で、どこの先進諸国でもリスク管理ということについては相当徹底した対策がとられているのではないかと思うものですから、そういう観点からアメリカのことも含めましてぜひ御説明いただけたらと強く要望しておきたいと思います。以上です。

○大臣官房参事官(資金運用担当) 世界の賦課方式等の年金の一覧表がございますので、そういうものをお出しさせていただきたいと存じます。

○植田座長 今、花井委員の3番目でしょうか、パッシブ、アクティブの問題ですけれども、私の知り得る範囲で申し上げれば、GPIFは普通の資産、株とか国内、海外の債券ですね。これについては、両方の運用を外注でやってきています。

 ただ、アクティブのほうのパフォーマンスが余りよくないということで、比率としてはパッシブの比率を上げるという方向できている。ここまでは、そういうことだったと思います。

 手数料については普通はアクティブが高いので、ますますネットのリターンは低いんですけれども、GPIFの場合はかなり大きなロットで発注するということもあって、それほど高い手数料でなくてこれまで済んでいるということだと思います。

 その上で、最近もうちょっと広い範囲の資産に運用対象を拡大していくという動きが少しずつ出てきて、この前の発表にも含まれていたわけですが、そちらへいったときに手数料がどうかというのはまた別の問題で大きな問題としてあるように思います。

○堀江委員 コストについて御質問が出ましたので、どういうふうに考えているか、私の考え方を述べさせていただきます。

 先ほど、投資原則の中にもコストの項目は入れようと考えています。これまでGPIFはコストを最小化するという発想だったと私は考えていますが、国民のことを考えると、コストを最小化するということは必ずしも正しくないというのが私の理解です。あくまでもコストを控除した後のリターンを高めることが国民に対する正しい投資原則ではないかと私は考えています。

 オルタナティブも今回5%まで組み入れることになりましたが、オルタナティブは、伝統的な上場株式等の手数料に比べるとかなり高いことが想定されます。

 手数料が高いということは非常に気をつけなければならず、我々も同業他社と比べて手数料が適正なプライシングになっているかということはチェックいたします。しかし、我々がやるべきことはコストを控除した後のリターンを高めることですので、これまでと違ってコストを最小化するというふうな形で、投資原則をつくらないでコスト控除後のリターンを最大化することとしたいと思っています。

 当然、コスト控除後のリターンがパッシブ投資よりも下がった場合は非常に大きな問題になります。そこはちゃんとしたチェックをいたしますけれども、投資原則としては手数料を控除した後のリターンを高めるということで運用会社等の選定等についても考えていきたいと思っています。

○伊藤座長代理 アメリカのソーシャルセキュリティファンドのお話ですけれども、基本的にはファンドはない。将来これだけ払いますよ、お金がありますよと政府が言っているだけで、実際にそこにはお金はたまっていない。そういう意味では、運用しているわけでもないし、リスク管理をしているわけでもないというのが正しい理解です。

 ではどういうことなのかというと、結局、日本でいうと昔の自主運用をする前の全額資金運用部に預けていたという時代の考え方とほぼ同じで、似ていると思うんですね。政府は約束しているけれどもそこにお金はないわけですから、では将来ソーシャルセキュリティファンドを引き出すというような時代がきたときに何が起きるかというと、増税によってそれを賄う。足りなければ増税によって賄うということを政府が約束しているということなんですね。

 ただ、アメリカの場合には人口はふえています。それから、経済成長率も多分2%ぐらいでいけると思っている。ということは、そのときの集めた税金で昔約束した給付をするということを繰り返していったとしても十分な給付をすることができると信じている。それが実現するかどうかわかりませんが、そういうことがアメリカの実態です。

 そういう意味では、ファンドはない。ただ、会計上そういうものがたまっているかのように見せている。何人かに私は会ってきましたけれども、アメリカの年金を研究している人たちの95%ぐらいの人がそういうふうに考えている。ファンドではない。アカウンティングギミックと言いますけれども、会計上そういうふうに見せているということだと思います。

 これがなぜ、日本に適切ではないか。100%国債で運用すればいいじゃないかという人がいるんですけれども、なぜ日本でそれが極めて不適切かというと、まさに少子高齢化で人口構成が変わっているからなんですね。

 日本で多分、年金を導入したとき、企業で見ても国民で見てもそうなんですけれども、年金を導入したときに6人が働いていて1人の年金生活者を支えている。6対1ぐらいだったと思うんですね。今は3対1ぐらいまできていて、それが騎馬戦型とか、将来は肩車とか言われていますけれども、6人で1人を支えているのであれば1か月皆1万円拠出すれば年金を受け取る人は6万円もらえるわけですね。政府が集めて渡すだけで、年金基金は積み立てない。

 それで、月に6万もらう。だから、1万円払うのは40年、6万円もらうのは20年というふうに考えたら、これは物すごく割のいい年金制度ということで、別に何もしなくても右から左にお金を渡すだけで年金制度というのはできていたわけですね。1万円を40年払うというのは計算すればわかりますけれども480万円で、6万円を毎月もらって20年暮らしていけば、それをはるかに上回る年金をもらっているわけです。

 今は3人を切っていると思いますけれども、2.5人で1人とか、そのうち1.5人で1人というのがあと20年、30年後ぐらいで、1.5人で1人を支えるということは、働いている人が1万円払って40年で、20年間もらえるのは1万5,000円ということですから、これは計算すればわかりますけれども、生涯所得からいうと割に合わないんですね。

 だから、こういうところでは今、言ったような右から左への年金制度というのは成り立たない。それは、将来世代になればなるほど割を食うというか、これが先ほど言った世代間不公平の最たるもので、先見の明のあった人がこういうことになっちゃ困るというので、6万円を渡さすに2万円ぐらいちょっと差し引いて積み立ててきた。これが積み立て126兆という金額になったので、これをいかに使って1.5対1になったときにそれなりの給付ができるかということを考えようというのがGPIFで、もともとアメリカの置かれている立場と日本が置かれている立場、20年前に予測した姿よりもっとひどい姿に今、日本はなりつつある。人口構成という意味で、なっているわけです。

 だから、この126兆をいかにうまく使ってまだ生まれていない人にも年金を届けるかということが課題なので、長くなって済みません。結論をいうと、アメリカは全く参考にならないということだと思います。

○植田座長 どうぞ、菅野さん。

○菅野委員 きょうの議論でいろいろ私も勉強することが多くて、理解が深まった部分もありました。1つお願いになるのですが、本日諸外国の年金基金のガバナンスに加え、資料の5ページ目でOECDの年金基金のガバナンスに関するガイドラインについてのご説明がありました。OECDのガイドラインには1から11までありますが、私は最初の3つが一番多分重要だと思うんです。 責任の所在の識別、監督と執行の分離、それから統治機関の設置とその説明責任の3つの点について諸外国の年金がどうなっているのか、違いがあるのかどうかという点をぜひ教えていただきたいと思います。

 特に、先ほど説明責任について御質問させていただきましたが、この説明責任の取り方については知恵を働かす部分なんだろうと思うんです。もちろん、日本は日本独自のやり方があってしかるべきだと思いますけれども、まず諸外国がどのような知恵を働かせているのか。先ほど花井委員からも、国民への理解という御指摘がありました。言葉で言うのは簡単ですけれども、実際には結構大変なんだろうと思います。

 例えば、先ほど伊藤座長代理から日銀の例を出されましたけれども、日銀もいろいろ地方に行って日銀の政策を審議委員等が講演したり、いろいろな機会を設けてやっていますが、日銀が行っています生活意識アンケート調査というのがありますけれども、アンケート結果を見ると、日銀の政策を理解している人はかなり少ないのが実情です。

 ですので、説明責任を全うするというのは、かなり苦労してやっているわけですが、、現実はあるべき姿とのギャップがありまして、これは多分、諸外国でも似たような問題意識でやっているのではないかと思いますので、まず特にその説明責任についての海外の事例をお教えいただければ、と思います。

 それから、資料を見る限り、理事会設置という国が大半で独任制のようなところはないという理解ですが、そこも含めて諸外国でもし違いがあるならば1、2も合わせて、あるいは4以下で重要な点がもしあるとお考えであれば、あるいはその特色があるということであれば、それもぜひ教えていただければ幸いでございます。いろいろ勝手ばかり言って申しわけございませんがよろしくお願い申し上げます。

○植田座長 花井委員、どうぞ。

○花井委員 伊藤先生の発言に対して少し私の感想を述べさせていただきたいのですが、日本が超少子高齢社会で最終的には肩車型の1対1になるというような人口推計が出ており、そのことも組み込んで今回経済前提が置かれて、人口動態も中位推計をとって、そして、財政検証が行われたと認識しております。

 伊藤先生は、年金を1人1万円で例えば20年、40年払った場合という具体例も述べられましたが、減っていくということはもう織り込み済みで、いろいろな評価があったとしてもそのためにマクロ経済スライドが導入されたと思っております。

 したがいまして、それ以上のリターンをとるというのはどういうことなのかやはり疑問です。

 それから、先ほど来出されております独任制の問題です。私は今の時点で独任制がいいか、悪いかという判断は少し難しいと思っているのですが、かつて運用していたときに責任体制が曖昧だということで独任制が導入されたと聞いています。したがいまして、それぞれ課題になっている点について、特に独任制についてはなぜ前の組織から今のGPIFに変わるときにそういう制度を盛り込んだのでしょうか。独法だからということもあったかとは思いますが、もっといろいろな要因があって独法という組織にして独任制をとったのではないかと思いますので、もう少し今後の検討課題を示していただくときにはその辺も丁寧に教えていただけたらと要望しておきたいと思います。以上です。

○出口委員 今、菅野さんが言われたので、それにつけ加えてということですけれども、確かにこのOECDのガバナンスの中では1、2、3が大事だと思うのですが、でも、本当にこのガイドラインの中でトータルで考えたら何が大事かといえば、私自身はちゃんとリスク管理ができることと、それからやはりPKOのようなことができない。もちろん100%ということはできませんが、それを担保するような仕組みが重要だと思います。

 それから非常に大事なことは、1、2、3に加えて、この4番の適合性というのはやはりすごく大事で、これは堀江委員が言われたようにあくまで年金制度の一部ですから、年金資金をどういうふうに扱うかということで、前も申し上げましたけれども、運用の基本はマッチングにあると思いますので、箱の形も大事ですが、箱のファンクションということも考えていろいろ教えていただければと思います。

 菅野委員の御意見の否定ではなくて、つけ加えてということで一言申し上げたいと思います。

○植田座長 お二人は、次回にもう少し御説明を事務局からいただきたいということでよろしいですか。

(菅野委員、出口委員、うなずく)

○大臣官房参事官(資金運用担当) 今の点でございますけれども、今回私どもOECDのガイドラインなりISSAのガイドラインも踏まえまして、最初の「責任の識別」につきましては色でございますが、各ガバナンスにつきましてオレンジ色と青ということで、監督、基本的な事項と意思決定と執行の点につきましては大体分かれているというもので御用意させていただいたところでございまして、「統治機関」につきましては各機関におきまして基本的な事項の決定機関ということで理事会なりということで示しているところでございます。

 説明責任につきましては申し上げましたように、諸外国におきましては被保険者の代表みたいな形で、それが推薦なのか、そのまま入っているのかとか、いろいろ違いがございますけれども、そういう形で果たしてまして、カナダのCPPIBでは、地方で公聴会をやっているケースとかあると存じますので、そういう特殊なものにつきましてちょっと御報告差し上げたいと存じます。

○植田座長 それでは、きょうはいろいろ貴重な御意見をいただきましたが、私なりに目についた点を2、3申し上げますと、やはりガバナンスという観点からはPKOのようなことも含めまして、政治からのある種の独立性をどう担保するか。

 それから、運用機関としてリークがないようにとか、より有効な説明責任をどうやって達成するかを含めて、健全な行動基準に資するような組織のあり方はどういうものかというような観点からいろいろ議論が出されたと思います。

 そんな中で1つのポイントは、独任制がいいのか、合議制がいいのかということだったと思います。合議制がいいという意見の方も多くいらっしゃいましたが、必ずしもそうでないという意見の方もいらっしゃったので、これは引き続き御議論いただければと思います。

 それから、堀江委員から現在のGPIFのリスクマネジメントの根本は、単純にアセットリターンの振れ幅の度合いを見るということではなくて、年金財政上の要件を中長期的にどうやって満たしていくかという点にあるんだということを御説明いただきまして、これは多くの方から評価いただいたということだと思いますが、これについても今回の基本ポートの考え方も含めて、もう少し説明を外に対してわかりやすくやっていっていただけたらという要望も出されたということのように思います。

 ほかにもいろいろ御議論はあったかと思いますが、それも含めて次回に向けて事務局から論点の整理をいただいて、次回以降それに基づいて議論するということにしたいと思いますが、山口委員、何かございますか。

○山口委員 次回以降の話ですけれども、堀江先生からも財政との関連ということを言及していただいているわけで、私は諸外国の例なども報告される中で、GPIFが年金制度に対してどういう責任を負うのかということについて、次回以降の議論としてぜひ入れていただきたいと思っております。

 今、財政検証という形で5年に1度やっているわけですけれども、その時点までの運用結果を踏まえて行われているわけですが、今後そのリスクが拡大していって運用成績の振れが大きくなって不幸にして、所得代替率の見込みが50%を切って、保険料の引き上げとか給付水準の更なる引き下げが必要になってくる可能性もあるということで、運用と年金制度、財政運営がリンクしている。

 仮にその50%を切らない場合でも、運用成績の不振によりマクロ経済スライドの調整期間が延びるというような事態も考えられるわけですので、現在、我々年金部会のほうでいろいろ議論しているわけですけれども、特にその基礎年金においてマクロ経済スライドで調整期間が延びるというのは非常に大きな影響があって、そこを何とかしなければいけないという議論を随分しているわけです。これまでの議論では、特にカナダの例などを出される方は多かったんですが、カナダの場合には積み立て比率がストレートに次の財政安定化政策と結びついて、保険料の引き上げとか給付の引き下げという議論につながっておりますので、ぜひそういった点も含めて財政運営、制度運営と、それからこの運用の関係といったようなものが諸外国でどうなっているのか。

 カナダの場合、特にそういった大きな責任を負っている中で、非常にストレスのある中で非常に高い運用成績を上げておられて、私も拝見して運営については参考になるところが多いとは思っているのですが、その裏には財政との関係が非常にあるということなので、そこのところをぜひ次回以降で結構ですので議論していただけるようにしていただきたいと思っております。

○植田座長 それは極めて大事なポイントだとは思うんですが、ただ、ここの委員会は一応ガバナンスのことを議論するという建前ですので、それとどういうふうに関係していきますか。

○山口委員 ですから、多分諸外国でやっておられる先進的な事例を参考にする。そういった運用活動の背景になっている状況についても現作業部会で一応調べるといったようなことで、部会に報告していただきたいという意味でございます。

○堀江委員 ちょっと誤解があったかもしれませんが、我々は年金財政上の要件を中長期的に満たすということをリスクの定義と考えております。今回の財政検証でもその点は明確に与えられていると考えています。年金財政上の要求は賃金上昇率プラス1.7%を上回ること、国債100%で運用したときに賃金上昇率を下回る確率よりはリスクを下げてください。

 3点目として、下方リスクに十分配慮してくださいという極めてクリアな年金財政上の要件を与えられた中で我々はベストを尽くすというふうにリスクを定義しているということです。そこは年金財政上の問題を全部運用サイドが考えているということではございませんので、それはクリアに定義をされているという理解でございます。

○山口委員 それは、現状のGPIFに対してそういう要請をしているのであって、今後GPIFが独立性を高めて、そして自由裁量の余地をふやしていくという議論があって、GPIFが運営体制が変化していく中では改めてそういった財政運営との関係性を考えなければいけないですよと私は申し上げているんです。

 ですから、今のGPIFの状態を前提とする議論ではなくて、今後この当作業部会での議論の推移の中で従来以上にGPIFの独立性を高めていくといったような話になっていくのだとすれば、その背景としてこの問題はちゃんと整理しておかなければいけないですよと申し上げているのでありますから、今後の議論の中で意見交換すればいいんじゃないですか。

○菅野委員 山口委員の御指摘というのは、GPIFそのもののあり方、あるいは日本の年金制度そのもの全体の中でのGPIFのあり方を考えるときには非常に重要な点だと思います。

 ただ、我々がこの作業班でやる議論というのは、私が理解する限り、既に新しいポートフォリオが決まったわけですので、そうした中で新しいガバナンス体制というのをどのように築くのか、と言うことだと思います。そして、これはほかの委員の方々も御指摘のように、そうした中でチェックアンドバランスの仕組みを確立し、定着させることが必要です。

また、独任制ではなくて合議制のような形にして、例えばですけれども、非常に小さいリスクかもしれませんが、理事長が勝手な方向にいくリスクを最小限、あるいはなくすという形で担保するようにする、というのがここでの議論なのだろうと思います。

 それから、出口委員から、諸外国の例で一時的な損失が発生したときにどうするのか、という御質問が冒頭ありました。確かにこれはこれで非常に重要な点ですが、たしか前回の会議だと思いましたけれども、基本ポートフォリオが決まると、運用成績は、90%ぐらいのところはそれでもう決まってしまって、あとの10%ぐらいのところがファンドマネージャーの運用次第、ということかと思います。GPIFの資産規模は130兆円ですから、10%という幅も金額にするとかなり大きくなりますが、我々の作業班で議論すべきは、運用に関する内部管理体制をガバナンスの観点からどのように考えるか、を議論すべきと思います。。

 こういう基本的なフレームワークで今、議論をしていると思いますが、一時的な損失の扱いについては個人的には関心がありますので、次回以降、事務局のほうからそういう意味では諸外国の例も教えていただけると、私は個人的には非常に助かります。

 ただ、あくまでもここでの議論というのは、そういうものを踏まえた上で、そういうリスクをいかに最小にするガバナンス体制が望ましいか。これが、我々が与えられたマンデートではないかと理解しております。

○出口委員 それはちょっと違うんじゃないですか。今、山口委員が言われたように、また、リスクについても運用にお詳しい岩間委員からも前回出たと思いますけれども、箱の話はどういうリスクが出る可能性、言い換えれば、基本的にはガバナンスのレベルというのはリスクをどうとるかに関連するので、損失が出たときの処置や、山口委員の御指摘にあった関係性は個人的な興味ではなくて、この委員会でしっかり議論をした上でガバナンスを検討するというマンデートなはずなので、そこはちょっと私は認識が違うと考えておりますが、これはまた次回以降議論させていただければと思います。

○岩間委員 私の申し上げた問題点というのは、リスク管理というか、そういうものは当然必要であって、特に新しい運用を始めたときのリスク管理のあり方というのは、その観点で完全なものにしていかなければいけないという意味で出口委員と全く同じ考えであるわけでございますが、基本的にこの委員会のマンデート、作業部会のマンデートというのは政治的な影響力をどれだけきっちりと遮断して法人が運営されていくのかということのあり方ということで私は理解しております。

 そういう観点でいますと、今の独任制がいいのか、欧米のいろいろなモデルケースで通底している組織のあり方の価値観といいますか、そういったものの中から反映させて日本としても取り組んでいくことが大事なんじゃないかという観点も含めて議論しなければいけないということだと受けとめております。

 そういう観点でいますと、やはりガバナンスのあり方というのが先にくるんだろう。その上で、財政検証というのは当然ずっとやっていかなければいけない話でしょうし、その前提条件もいろいろ変わってくると思いますが、その話とこの話は切り離して考えていくのが筋じゃないかというのは私の意見でございます。

○植田座長 難しいところですが、この委員会のマンデートはガバナンスを考えるということですが、山口委員、出口委員がおっしゃったように、それは年金財政とか、あるいはGPIFがどれぐらいのリスクの運用をするかということと必ずしも完全には分離できないということだと思いますので、ガバナンスにかかわる限りにおいてある程度はそういう話に入り込むということも不可避かと私はちらっと思います。

 それも含めて、事務局に先ほど申し上げましたように、これまでの論点を次回までに整理していただいて、それに基づいて議論させていただくということでよろしいでしょうか。

 それでは、事務局より何か御連絡があればお願いいたします。

○大臣官房参事官(資金運用担当) 本日はありがとうございました。

 次回の開催日時につきましては、またいつものとおり直前になるかと思いますが、御連絡を差し上げますので、よろしくお願いいたします。

○植田座長 それでは、きょうはこれまでにいたします。どうもお忙しい中ありがとうございました。


(了)

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