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2014年9月10日 第115回労働政策審議会労働条件分科会 議事録

労働基準局労働条件政策課

○日時

平成26年9月10日(水)17:00~19:00


○場所

共用第8会議室


○出席者

【公益代表委員】

岩村委員、権丈委員、田島委員、野崎委員、山川委員

【労働者代表委員】

新谷委員、高松委員、冨田委員、宮本委員、神田委員代理

【使用者代表委員】

秋田委員、池田委員、小林委員、鈴木委員、田中委員、平岡委員、宮地委員

【事務局】

岡崎労働基準局長、大西審議官、鈴木総務課長、村山労働条件政策課長、古瀬調査官

○議題

1 報告事項
2 その他

○議事

○岩村分科会長 それでは、ほぼ定刻ということと、冒頭から御出席の方がほぼおそろいであるということですので、ただいまから、「第115回労働政策審議会労働条件分科会」を開催することにいたします。

本日御欠席と承っている委員は、公益代表につきまして、村中孝史委員、守島基博委員、労働者代表につきまして、工藤智司委員、八野正一委員、春木幸裕委員でございます。

使用者代表の田中恭代委員は少々到着が遅れると伺っております。

本日は、工藤委員の代理で、日本基幹産業労働組合連合会事務局長の神田健一さんが出席されております。

また、事務局に異動があったということでございますので、議事に入ります前に、定足数の報告と併せて事務局からお願いしたいと思います。よろしくお願いします。

○古瀬調査官 それでは、事務局に異動がございましたので、御紹介申し上げます。労働基準局長の岡崎です。

○岡崎労働基準局長 労働基準局長になりました岡崎と申します。よろしくお願いいたします。

○古瀬調査官 引き続きまして、定足数について御報告いたします。

労働政策審議会令第9条により、委員全体の3分の2以上の出席、または公労使各側委員の3分の1以上の出席が必要とされておりますが、定足数は満たされておりますことを御報告申し上げます。

○岩村分科会長 ありがとうございました。

それでは、カメラ撮りにつきましてはここまでとさせていただきたいと思います。

(カメラ退室)

○岩村分科会長 本日の議事ですが、お手元の議事次第にございますように、最初の議題は、「今後の労働時間法制の在り方について」でございます。事務局で、今後の検討課題と、そしてスケジュールについての資料を用意していただいております。まず、その説明をいただきたいと思います。よろしくお願いいたします。

○古瀬調査官 それでは、お手元の資料No.1「労働時間法制の今後の検討について」を御覧ください。

 まず趣旨は、「健康確保を図りつつ、労働者が創造的な能力を発揮しながら効率的に働くことができる環境を整備することによって、生産性の向上と仕事と生活の調和を図る観点から、以下の項目を重点として労働時間法制の調査審議を進めてはどうか」で、スケジュールは、「次期通常国会を目途に所要の法的措置」とさせていただいております。

 また、検討課題は、1番目が「長時間労働抑制策・年次有給休暇の取得促進策について」で、(1)の「長時間労働抑制策」として、「中小企業における月60時間超の時間外労働に対する割増賃金の在り方」、「時間外労働の限度の在り方等」とさせていただいております。

 次の(2)が「年次有給休暇の取得促進策」、(3)が「その他」として「労働時間等設定改善法の活用等」とさせていただいております。

 2番目が「フレックスタイム制について」で、「清算期間の延長」、「清算の際の事後的な年休取得」、「完全週休2日制の場合における月の法定労働時間の特例」とさせていただいております。

 3番目が「裁量労働制の新たな枠組みについて」で、「対象業務」、「健康確保等のための措置」、「手続の見直し」とさせていただいております。

 4番目が「新たな労働時間制度について」で、「法的効果」、「手続」、「対象業務(時間ではなく成果で評価される働き方)」、「対象労働者(一定の年収要件(例えば少なくとも年収1,000万円以上)、職務の範囲が明確で高度な職業能力を有する労働者)」、「健康確保等のための措置」とさせていただいております。

 また、最後に5番目として「その他」とさせていただいております。

 以上です。

○岩村分科会長 ありがとうございました。

それでは、ただいま説明いただきました資料1につきまして御意見をいただく前に、字句の確認等の御質問がありましたらお願いしたいと思います。御意見は後ほど十分にお伺いしようと思っておりますので、字句の修正等、気になるところがおありでしたら御質問いただきたいと思います。

 また、本日は労働者代表委員から資料の提出をいただいているところでございます。これにつきましては、この資料1についての御質問の後に御説明いただこうと思っておりますので、よろしくお願いいたします。

 それでは、字句の修正等について、何か御質問等はございますでしょうか。

 よろしゅうございますか。

 そうしましたら、労働者代表委員から御提出いただいております資料につきまして御説明いただきたいと思います。よろしくお願いいたします。

○新谷委員 それでは、分科会長のお計らいによりまして、私ども労働者代表委員が提出した資料につきまして説明を申し上げたいと思います。

 今日の資料の一番後ろに、資料を1枚つけさせていただいております。本日が、先の閣議決定以降、実質的な本格論議のスタートに当たる分科会でございますので、今後の労働時間法制の在り方について論点を設定するにあたり、私ども労働者代表委員の総意として、「労働者代表委員として実現すべきと考える主な施策」をまとめた資料を提出した次第です。

 資料の上部に枠囲みで書いてございますように、私どもとしては、労働者の健康・安全確保といった視点、それと生活時間を保障するといった観点から、労働時間規制は緩和するのではなく、長時間労働の抑制に向けて、以下の施策を実現するべきであるということを改めて申し上げたいと思っています。

 これまで申し上げてきた内容と重なる部分もございますし、順不同でもあります。1つは、週44時間労働制の特例措置があるわけでございますけれども、これの早期廃止を求めたいと思っております。2点目は、時間外労働にかかる上限時間規制の導入ということでございます。これも、これまでも申し上げてきた、いわゆる「時間外労働限度基準」告示を法律に格上げするとともに、特別条項付き36協定を適用する場合における上限時間規制を法定化するなど規制を強化すべきである、ということです。また、前述しました告示の適用除外業務についても規制を強化すべきである、ということを主張したいと思っております。

 あと、休息時間(勤務間インターバル)規制を導入すべきであると思います。

それと、これも申し上げておりましたが、労働基準法第37条の中小企業への猶予措置の早期廃止です。いわゆる労働基準法第138条によって、中小企業に対しては月60時間超の時間外労働にかかる割増賃金率の適用が猶予されておりますが、これを早期廃止すべきであるということです。

また、年次有給休暇の取得促進ということでは、現在の法制では、労働者の権利として時季指定権があり、これを行使するということになっております。しかし、現在の低い年休の取得率にかんがみ、年次有給休暇のうち一定日数につき、使用者が労働者の希望も踏まえてあらかじめ具体的な取得を決定することにより確実に取得させることを義務づける、といった仕組みについて検討を進めるべきではないかということを提起申し上げたいと思います。

 それと、実労働時間の把握義務の問題であります。これは、私どもとしては、「健康管理時間」という制度を創設するべきであるという概念で申し上げておりますけれども、現在、行政通達として出されております「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関する基準」について、この措置を労働基準法上の義務として法文化した上で、罰則をもって実効性を確保するべきであると考える次第です。これについては、今、適用除外となっております管理監督者や裁量労働制の適用労働者についても、「健康管理時間」としての実労働時間の把握義務を使用者に課すべきである、という点も申し上げたいと思っております。

 次に、労働時間規制と労働安全衛生法の過重労働対策との整合性の確保という問題です。これは御存じの方は御存じなのですが、いわゆる法定休日労働の扱いが労働安全衛生法の過重労働対策と労働基準法の労働時間規制とではカウントの仕方といった点でずれております。もちろん、労働安全衛生法上、医師による面接指導が行われる要件とされている「月100時間超」という時間そのものが異常に長いと感じるわけですが、「1カ月45時間」とされている時間外労働の限度時間との間のギャップについても整合的に見直しをするべきであると思っております。

 あと、管理監督者について定めた労働基準法第41条第2号の要件の内容、これは判例や行政通達で管理監督者性の判断基準が示されておりますけれども、この判断基準を法律で明確に定義するべきであると考えております。

さらに、法定休日でありますけれども、これについては、少なくとも週1日の法定休日付与が義務づけられておりますが、いずれの日に法定休日を付与するかを特定することまでは義務づけられておりません。これは2008年の労働基準法の改正に伴い、月60時間超の時間外労働に対して50%の割増賃金率が導入されたこととの関係で、セミナー等で、直前になって法定休日を特定したり変更したりすることによって月60時間超の特別割増率50%での賃金支払いを逃れ、法定休日労働の割増率である35%だけを支払うことで差分の15%についての支払いを回避する、といった誘導が見られております。そういった意味からも、法定休日の特定を義務づけるということが必要です。それと、変形週休制(4週4日以上)についても、現在何も手続要件が課されておりませんので、下手をすれば28日あるうちの24日間を連続で働かせるということも、現在の法制度では可能な状況になっていますので、これの手続要件の厳格化(労使協定化)を求めたいと思います。

それと、全ての労働基準法のいわゆる集団的な合意形成の基礎となっております、過半数労働組合がない場合の過半数代表の問題、これもさまざまな研究機関から指摘されておりますが、適切な運用に向けて、制度の厳格化、選出手続きの厳格化、適正化を行うべきであるということを申し上げたいと思います。

資料の裏面の内容については、本日以降論議されることに関する内容でございます。先日の政府から出されました「日本再興戦略改訂2014」の中に盛り込まれた4つの労働時間に関する方針についてはこれから論議させていただきますので、今日は資料の提出だけということにさせていただきたいと思います。

お時間をいただきまして、ありがとうございました。以上です。

○岩村分科会長 ありがとうございました。

それでは、先ほど事務局から説明のありました資料No.1、そして、ただいま新谷委員から説明をいただきました労働者代表委員提出資料につきまして御意見等をお伺いしてまいりたいと思います。

では、鈴木委員、どうぞ。

○鈴木委員 ありがとうございます。

ただいま、新谷委員から健康・安全の確保の重要性についての御発言がございました。その点は全く私ども、意見が違うところはありません。もとより安全・安心で生き生きと働ける環境を整えることは経営の大前提であり、多くの企業では労働者の恒常的な長時間労働の見直しや、休日・休暇の取得促進に取り組んでおります。

ただ、これまでも議論させていただく中で、我が国は、例えば欧州のようなバカンスというような慣行はなく、また、運送業を中心に各種インフラの制約ですとか商慣行などに起因する手待ち時間も多く発生しているなど、取組を進める上での課題も多くあることを確認して参りました。したがいまして、個別企業労使の対応、これも大変重要ですけれども、それに加えて、社会的な意識改革や長時間労働の実態の分析・研究も含め、社会全体の問題として捉えて対応することが重要ではないかと思っています。

また、個別企業労使の取組につきましては、長時間労働の原因や背景が業種・業態、あるいは業務内容によって異なりますので、個別企業労使が話し合いの場を持って、職場実態に合った対策をPDCAを回しながら継続することが実効性のある取組になろうかと思います。

特に従業員30人以上の企業で時間外労働の削減について話し合う場がまだ4割の企業で持たれていないという実態もございます。その意味で、企業労使の話し合いや取組を支援するということを目的に設けられております労働時間等設定改善法の活用を検討する必要があろうかと思っております。

それに加えまして、個別企業からの要請によって、労働時間短縮の専門家がコンサルティングを行うような制度でありますとか、あるいは宿泊業や、あるいは情報通信業において先行して行われております産業別の時短ハンドブックの作成・活用など、そういった政策というのが、一見遠回りに見えても、実効ある打ち手になるのではないかと思っているところでございます。

資料1を拝見させていただきますと、労働時間等設定改善法というのが1.の「(3)その他」ということで位置づけられております。これは設定改善法が(1)の長時間労働抑制、あと(2)の年休の取得促進の両面にかかわるということで、(3)という位置づけになっているかと思うのですけれども、この(1)(2)と同列か、それ以上にプライオリティが高い論点だと思っているということを強調したいと思います。

また、フレックスタイム制や裁量労働制の見直しにつきましては、例えば共働き夫婦が、ある月は奥様が仕事忙しいので、旦那さんが主に家事や育児を担当し、翌日は逆に奥様のほうが主に家事や育児を担当するというような柔軟な働き方の選択肢を増やすという効果も期待できるところでございます。そうしたワーク・ライフ・バランスに資するというプラスの面があるということも念頭に置きながら、皆様と引き続き議論を進めてまいりたいと思っております。

次に、新たな労働時間制度についてでございます。大半の仕事は時間に比例して評価するということが適しており、そういう意味で通常の労働時間を適用することがふさわしいと思いますが、他方で、成果で評価すべき働き方というのもございます。例えば総合研究開発機構がホワイトカラーの正規職員、従業員を対象に実施した調査によりますと、仕事の特徴として、時間をかけた分だけ成果が出るかという質問に対して、「そう思わない」と「余りそう思わない」の合計が約3割と、それなりの回答があるところでございます。働き方の多様性というものを正面から認め、実態をよく知る個別企業労使が成果で評価する働き方に合った労働時間制度を選択できるようにするということが求められていると思っております。

そして、創造的で効率的な働き方を支援し、イノベーションを通じた我が国全体の競争力強化につなげられるような議論を深めたいと思います。

最後に、2点ほど事務局に確認させていただきたいと思います。代替休暇制度というのが、私どもとしては、時間外労働をした後にしっかり休みをとってもらう一つの選択肢となり得るものと思っておりますが、ここには記載がされておりません。1の「(3)その他」の「等」という中に含まれるという理解でよろしいのか、お伺いしたいというのが1点でございます。

それから、先ほど新谷委員から労働安全衛生法上の措置との整合性についての御提案があったところでございます。労働安全衛生法上の措置については本分科会の所掌の外だと理解しておりますが、その扱いについて事務局にお伺いしたいと思います。

以上でございます。

○岩村分科会長 それでは、事務局に2点お尋ねでしたので、事務局からお答えをお願いします。

○村山労働条件政策課長 ただいま使用者代表委員からの2点の御質問に回答いたします。

 まず1点目の代替休暇制度です。この制度は、これまでも議論してきておりますが、1の(1)の月60時間超の時間外労働に対する割増賃金率を50%とする前回の改正で一体的に導入された新たな制度です。その評価については、労使からさまざまな御意見をいただいており、本日の参考資料にもその概要を示しておりますが、引き続きこの点についても、制度の在り方、または見直しの余地等があるのか、実態も踏まえながら御議論をお願いしたいと考えております。

整理としては、1の(3)の「等」の中に含まれるという理解で、そこもまた一つのテーマとするときに論点とさせていただければと考えております。

 2点目の労働安全衛生法との関係です。健康確保措置という言葉が今回の資料にも何カ所か出てきますが、例えば労働安全衛生法上の面接指導制度など、最近の法制度の改正の中で、安全衛生の確保、とりわけ健康確保の観点から、労働時間の状況に鑑みた制度も導入されてきております。

 今後の議論次第とはいえ、当然、そうした政策も労働時間法制の検討という観点からは抜いては語れないところですし、また、安全衛生分科会との関係については、事務局は同じ役所ですので、十分局内で連携を図りながら、遺漏のないよう対応してまいりたいと考えております。

 以上です。

○岩村分科会長 鈴木委員、よろしいでしょうか。

○鈴木委員 2点目の説明につきましては納得をしたわけではありませんが、そういう御説明だったということで承りたいと思います。

○岩村分科会長 ありがとうございます。

それでは、新谷委員、どうぞ。

○新谷委員 ただいま鈴木委員から、議論の冒頭に当たって、労働者の健康・安全を守るという点については使用者側も異論がない、という力強い御発言をいただきました。私どもとしては、先ほど申し上げたように、今回の労働時間法制の見直しに当たっては、まず最優先で検討するべきは、こうした労働者の健康と安全をどう守るのかという点であるべきだと考えております。これは、御承知のように、本当に痛ましい内容でありますが、心身の限界を超えた長時間労働によって過労で亡くなる方が毎年100人を超えているという実態があるわけです。たとえば、2年前の平成24年ですと123名の方が過労死の認定をされたという現実があるわけでして、やはり労働政策審議会の責任として、この過労死をどれだけ減らせるのか、ゼロにどう近づけるのか、そのための労働時間法制をどうしていくべきであるか、ということを今考えるべきであると思います。

 ちょうど6月には、御承知のように、過労死等防止対策推進法が国会の全会一致をもって成立したわけでありまして、立法府から行政府に対して、国の責務としてきちんと過労死等を防止するための対策を講ずるように要請がなされたところです。したがって、私ども労働政策審議会の責任としては、まずその論議をするべきではないかと考えております。

 そういった意味では、今日示されました資料1の論点ペーパーの1点目に長時間労働の抑制策ということが書かれておりますけれども、先ほど私どものほうから意見を述べさせていただきましたように、年次有給休暇の扱いや休日の扱いといった点が、この論点ペーパーの中には一言も書かれておりませんので、この休日の取り扱いも含めて論点に加えるべきであるということを申し上げたいと思います。

 また、先ほど、(3)の「その他」に書いてある、労働時間等設定改善法を活用するべきではないかという御意見がございましたけれども、労働時間等設定改善法についても、私どもとしては課題があると考えております。これはもともと「労働時間の短縮の促進に関する臨時措置法(時短促進法)」が平成17年に法改正されて労働時間等設定改善法になっているわけでありますけれども、この中には、実は労使協定をこの労働時間等設定改善委員会の決議によって置きかえることが可能となっており、さらに衛生委員会の決定で代替させうるというというみなし規定が入っております。このみなし規定は非常に問題であると私どもでは考えておりますので、もしこれが論議の俎上に上ってくるということであれば、当然その規定の見直しも行われるということにならなければ、我々としてはそもそも論議に乗れないということも申し上げておきたいと思います。

 以上です。

○岩村分科会長 ありがとうございました。ほかにいかがでしょうか。

 池田委員、どうぞ。

○池田委員 先ほどの御質問と重なるかもしれませんが、私どもも2点ほど質問させていただきたいと思います。

この(3)の労働時間等設定改善法の活用につきまして、現時点で具体的にどのように活用するかというイメージがあれば少し詳しく御説明をお願いしたいというのが1点です。

 もう一点は、フレックスタイム制につきまして、清算の際の事後的な年休取得ということでございますが、この点に関して、事業主、あるいは労働者のニーズがどれだけあるのかということで、もし調査などが行われているのであれば、その調査結果を御紹介いただきたい。

以上の2点であります。

○岩村分科会長 ありがとうございます。それでは、お尋ねということですので、事務局でお願いいたします。

○村山労働条件政策課長 お答えいたします。

ただいま御質問のあった2点のうち1点目、労働時間等設定改善法の活用についてです。先ほど労使それぞれの委員から御発言があったように、この法律に努力義務、あるいは労使協定の代替決議機能を持った特例法的な枠組がある一方で、現実には労働時間について労使で話し合う場が政府目標として掲げるところまでは広がっていない実態も踏まえながら、どのような点がこの法律の枠組の中で残された課題なのか、今後の御議論いただき、その上で、先ほど御提起のあった問題も含めて制度の在り方について御議論いただければと考えております。特定の結論が先にあってということではなく、今後よくこの場で議論を積み重ねていただきたいと考えております。

 2点目のフレックスタイム制の中で特に「清算の際の事後的な年休取得」についての具体的なニーズのお話がございました。フレックスタイム制について御議論いただくときに、個別のヒアリング事例や法定労働時間まで達しない場合の給与の取扱等の統計的なデータをお示しながら議論を深めていただければと考えております。

 以上です。

○岩村分科会長 池田委員、よろしいでしょうか。

○池田委員 はい。

○岩村分科会長 ほかにはいかがでしょうか。では、高松委員、どうぞ。

○高松委員 ありがとうございます。

 資料1について、これからの議論の進め方について少し御意見申し上げたいと思います。資料1には4つの具体的な大きな論点が並列で記載されてございますが、結論から申し上げますと、1の長時間労働抑制策、これについて、まず先行議論を行って、一定の結論が出た後に2以下の論点について議論をしたほうがいいのではないか、このように考えています。

 なぜかと申しますと、先ほど新谷委員からも発言がございましたとおり、既に過労死等防止対策推進法が成立しておりますし、「働き過ぎ防止のための取り組み強化が改革の前提」である旨は安倍総理の発言や日本再興戦略の中でも触れられております。したがって、このような議論の順序とすることについては、事務局としても御異論はなかろうと思っていますので、労働時間法制を今後議論するに当たっては、労働者の健康・安全、これを守るためにまずは働き過ぎ防止、この観点からの実効性ある手法を確立する、そのことが最優先とされるべきではないか、このように考えているところであります。御意見として申し上げておきたいと思います。

○岩村分科会長 ありがとうございます。進め方についての御意見ということでございますので、今のを御意見として伺った上で、事務局と相談しつつ進行については考えてまいりたいと思います。

では、小林委員、どうぞ。

○小林委員 今、高松委員から、過労死というものの観点というのは確かに労働時間の問題とのかかわりは大きいのですけれども、過労死等防止対策推進法ではたしか別に協議会をつくって、そちらで議論するということでございます。過労死という観点で、当然ながら、先ほど来、新谷委員からいろいろ説明で、健康確保という点とか安全という側面では労使ともに考えなければならないことではあるのですけれども、労働時間抑制というのがイコール過労死という問題ではないのではないかと。それとまた専門的に、過労死については法律の中で労使とか過労死の家族の会等交えた協議会等をつくるような動きもありますので、そちらで十分御検討いただければいいのかと思っているのが感想でございます。

 それから、労側から出されたペーパーについて御意見申し上げたいと思うのですが、おっしゃったこと、幾つかわかるところもありますし、ちょっとこれはというのは感ずるところもあるのですが、1番目の週44時間労働制の早期廃止についてです。今現在、44時間制があるのは商業とか映画、演劇業とか、保健・衛生業とか接客業、幾つかに残された業種というのがございます。それなりに残った理由があると思うのです。40時間に向けた努力はしていかなければいけないとは思うのですけれども、それぞれの業界、業種の抱える実情があると思うので、これは分科会でというよりか、できたら事務局で、これら関係する業界の方々と、業界団体があれば業界団体、それから、その業についている方の代表者の方でも結構ですので、いろんな形でヒアリングをしていただいて、実情がどうなのか、また週40時間に見直すことはできるのかどうなのか含めて、業界の方々から個別に意見を聞いていただきたいというのがお願いです。

 それから、同様に中小企業の猶予措置の月60時間超のことがまた出ていますけれども、これも、現在のところ、全ての中小企業について猶予措置がなされているのですが、これも解決のつかない業界というのがある。先ほど鈴木委員もおっしゃっていましたけれども、運送業初めIT産業とか、幾つか業界があると思います。今までの分科会の中で出てきた幾つかの資料の調査結果の中に、こういう業界だとちょっと難しいなという部分があると思うので、それも分科会の場で呼んでもいいのですけれども、個別に事務局でできればヒアリング等実施していただいて、実情がどうなのかというのも聞いていただきたいと思います。

 それと、根本的には、適用を猶予されている部分というのはそれなりに理由があるわけです。何度も申し上げているとおり、一つの会社では解決がつかない、もしくは業界を挙げていろいろ取り組んでもなかなかできないという部分があるので、これはひいては、強制的に廃止という措置をとった場合、逆に労働者の皆さんも非常に苦しむ部分であることも、もしくは企業存続という部分で非常に難しくなる部分も出てくるかもしれないという影響も十分考慮した上で考えていく必要があると思いますので、ぜひとも業界の意見いろいろ個別に聞いていただきたいというのがお願いでございます。

 以上です。

○岩村分科会長 ありがとうございました。今、御要望が1つありましたが、事務局いかがでしょうか。

○村山労働条件政策課長 ただいま、小林委員から週労働時間44時間の特例措置、あるいは月60時間超の時間外労働の割増賃金率50%の中小企業への適用の問題等について、分科会での調査審議の前提として、まず個別の関係のの業界の実情について率直に御意見を伺うべきであるとの御指摘をいただきました。この御指摘を受けとめ、この分科会の運営上どのようにその結果を反映していくか等について、各側の皆さんともよく御相談していきたいと考えております。

 以上です。

○岩村分科会長 ありがとうございました。

それでは、新谷委員。

○新谷委員 今、小林委員から、私どもから提出した資料に関する御意見を頂戴しましたので、それについてもあわせて少々申し上げたいと思います。

 まず過労死の件です。「過労死等防止対策推進法に基づき過労死等防止対策推進協議会が設置される予定なので、そちらで過労死関連の議論をしてはどうか」といった趣旨の御発言があったかと思います。これは事務局のほうで明確にご答弁をいただきたいのですけれども、過労死等防止対策推進法の公布についての通達(基発062712号)が出されておりまして、この協議会の設置目的についても、それに書かれていたように思うのです。

私の理解ですと、この協議会は、過労死を考える家族の会の方を初めとする当事者の方も委員とし、労使、それと公益の委員で構成するということになると思うのですけれども、その設置目的は、あくまでも政府が制定する大綱の策定に向けての検討をするにとどめられていると考えております。すなわち、協議会には何らかの法改正に関する議論を行うといったミッションは与えられていないと私は理解しておりますので、その認識で間違いがないか、事務局にお尋ねしたいというのが1点です。

 それと、これは私の聞き間違いかもしれませんけれども、労働時間抑制というのがイコール過労死撲滅ということにはつながらない、過労死と労働時間の法制は関係ないのではないかといった趣旨の御発言が聞こえたように思います。私は、過労死はまさしく、私どもが繰り返し主張しておりますように、今、長時間労働を抑制する措置、強制力を伴う規制が何も入ってないことに起因していると考えます。これは、7月に行われたこの審議会においても、政府が出された「日本再興戦略改訂2014」の中でも、第1番目に長時間労働抑制の取組というのが書いてあって、長時間労働を行っている法違反のところについて監督指導を強化すると書いてあるのですけれども、監督指導するための法律の根拠規定が何もないわけでありますから、そんな中でどのように監督指導するのだといった指摘を申し上げたところであります。

 私どもとしては、今やるべきことは、そういった長時間労働を抑制するための具体的な枠組、これを監督行政とマッチする形で導入するべきであり、それによって過労死等を防止するべきであるというのが、この過労死等防止対策推進法が定める国の責務であると私は理解しておりますので、その点申し上げておきたいと思います。

 それと、特例措置である週44時間労働制の扱いであります。これは、御承知のとおり、86年にまとめられた前川レポートを嚆矢とした87年の労働基準法の改正から始まり、法定労働時間が週48時間からどんどん短縮してきた中にあって、改正から取り残されてしまった領域であると思います。これは、もともと憲法第27条第2項に定める労働条件法定主義、それに基づく労働基準法が人たるに値する生活を営むものを満たすための最低限の労働条件を定めるべきものであることを踏まえますと、まさしくダブルスタンダードであります。中小・零細だからといって、なぜ週44時間制がこのまま放置されていいのか、ということを改めて考えないといけないと思います。

 小林委員がおっしゃるように、業界の実態をヒアリングする必要があるという点はそのとおりだと思います。十分にヒアリングをして実態を把握していく中で、実は現在も9割以上の業種では既に週40時間制を導入しているといった実態もたしかあったように思いますので、それらも踏まえた上で、ぜひ今回の検討の中では週40時間制を一歩でも二歩でも前進させていくべきであるということを私どもとして重ねて申し上げたいと思います。

 以上です。

○岩村分科会長 ありがとうございます。では、事務局にお尋ねありましたので、鈴木総務課長、お願いします。

○鈴木総務課長 総務課長の鈴木でございます。

 過労死等防止対策推進法第12条に基づき設置する「過労死等防止対策推進協議会」は、政府が作成する過労死等の防止のための対策に関する大綱についての意見を聞くための協議会でございます。

○岩村分科会長 ありがとうございました。小林委員、何かございますか。

○小林委員 新谷委員、誤解を招いているような発言をしたのだったら謝ります。決してそういう意味で言っているのではないのです。ただ、実情と実態とを合わせて、過労死の部分というのが時間外労働というのが月80時間以上何カ月か続けばというのはあるわけですから、その部分は十分わかる気もしていますし、その抑制というのは企業内でも努めていかなければいけないというのは十分承知していますし、それなりに考えていかなければならないという部分は承知しています。

 ただ、先ほど言ったように、業界ごといろんな実情があるので、聞いてくださいと。聞かずして、話を強制的に机上の空論みたいな形で進めるのは嫌だと私は申し上げているので、実態の生の声を聞いていただいて進めていただく。それをここのテーブルの場で御議論いただいて、どうだというような形で、週44時間のものについても、週40時間で進めなければいけないと思いますし、できるだけ月60時間超の時間外のものについても進めていけばいいと思うのですけれども、全てが全て、一遍にやるというのはいかがなものかということを申し上げているので、これは業界の御意見を聞いた上で進めてくださいというお願いでございますので、よろしくお願いします。

○岩村分科会長 ありがとうございました。

今日、もう一つ大きな問題を議論する予定がございますので、今お手が挙がっているのが宮本委員ですが、資料1については、宮本委員の御発言で一旦終了させていただきたいと思います。

 では、宮本委員、どうぞ。

○宮本委員 ありがとうございます。

 事務局にお尋ねをしたいと思います。この資料No.1の4行目に<次期通常国会を目途に所要の法的措置>という一文が記載されています。この一文がここに記載されているということは、この資料の1から5まで含めて全ての項目について、次期通常国会を目途に所要の法的措置を講じるというふうに解釈できますね。そこで、今日別紙で出ています資料No.2の参考資料にある改訂成長戦略の資料ですけれども、この1ページを見ると、「2時間ではなく成果で評価される制度への改革」では、この4行目のところに、「次期通常国会を目途に所要の法的措置を講ずる」という記載がありますし、それから「3裁量労働制の新たな枠組みの構築」のところでは、これも3行目に「次期通常国会を目途に必要な法制上の措置を講じる」とあります。そして「4フレックスタイム制の見直し」のところでは、4行目に「次期通常国会を目途に所要の法制上の措置を講じる」と書かれております。

 しかし、1のところの「働き過ぎ防止のための取り組み強化」、この文中には、次期通常国会を目途に云々というこの記載がありません。2、3、4それぞれ微妙に表現は違いますけれども、先ほどの資料No.1の4行目に書かれている<次期通常国会を目途に所要の法的措置>という一文に当たるものと推測できます。そうであるとすると、今回示された資料No.1の4行目を見る限り、事務局は、来年の通常国会で長時間労働抑制策などについても何らかの法的措置を講じるという決意があらわれていると解釈できますが、そのような解釈で間違いないでしょうか。

 この資料No.1の4行目の一文が仮にそのような前提ではないのだということであれば、なぜそうなっているのか御説明いただきたいと思いますし、一方で、長時間労働抑制策だけ、期限を定めずに労働政策審議会で議論だけを行って、結論をずっと先送りにするようなことが意図されているのであれば、労側委員としては今後の議論に応じるのは非常に難しいと言わざるを得ない、と思っております。

 それから、あわせてもう一点、これは意見でございます。資料No.1で、労働時間法制を検討する視点として、「生産性の向上と仕事と生活の調和」が挙げられておりますが、そもそも長時間労働を抑制する最大の目的は、この資料にもあるとおり、「労働者の健康確保」ということでございますから、仕事と生活の調和を図るということを前提にしていることは極めて当然なことと思っています。

 ただし、「生産性」については、何も労働者の働き方改革だけで向上するものではないというように思うのですね。私自身、生産現場で工程管理の経験をしたことから言えば、生産性を向上させるためには、熟練技能の伝承ですとかIT技術の活用、さらには職場を管理するマネジメント能力、それら企業としての総合力でもって生産性というのは向上していくものだと思っています。

 上司が部下の健康や家庭環境に気を使わずに、労働時間管理を部下自身に全て丸投げをして、成果だけを求めるようであれば、生産性の向上はおぼつかないと思います。しかし、この日本再興戦略に掲げられた4点の項目を見ますと、どれも「働き方改革」という大項目にまとめられていまして、そこでは、「とにかく労働者の働き方を変えれば生産性も上がるし、仕事と生活も調和するのだ」といった意思ばかりが非常に強く打ち出されているように思います。

中小企業も含めて我が国の企業が国際競争力を高めていくために生産性向上が不可欠であることは労使ともに共通した認識を持っていますけれども、それだけ重要な課題であるだけに、「労働者の働き方改革」といった視点からだけでなく、経営トップも含めた管理者のマネジメント改革といったことも含めて議論を進めていかなければこの問題は解決しないと思っています。これは意見でございますので、よろしくお願いします。

 以上です。

○岩村分科会長 ありがとうございました。それでは、第1点目がお尋ねでしたので、事務局でお願いします。

○村山労働条件政策課長 1点目の御質問は、資料にある「<次期通常国会を目途に所要の法的措置>」の位置づけについてです。改訂成長戦略の閣議決定の本旨は、明らかに法律の改正が必要な2、3、4は、労働政策審議会で御議論を積み重ねていただいた上で結論をとりまとめていただき、法的措置を講じるようにということなのだろうと思います。

 1に関しては、さまざまな法令のレベルで対応策はあり得るのだろうと思います。一方で、労働条件分科会では、もう既に昨年の9月から、例えば月60時間超の時間外労働に対する中小企業の割増賃金の在り方や(2)に掲げている年次有給休暇の取得促進策について、まだ議論の途上ではありますが、公労使各側委員による真摯な議論が着実に重ねられてきている経緯があります。

その上で、私どもとしては、仮にそれらの議論がとりまとまるならば、次期通常国会を目途に所要の法的措置を講ずる際には、2、3、4と一体的に講じるのが道筋ではないかと考えております。あくまで、この場でとりまとめていただけるかどうかが重要であると考えています。

 2点目は御意見として頂戴しましたが、資料には、健康確保、あるいは生産性の向上と仕事と生活の調和を趣旨として書いております。これも、昨年の9月から、昨年の6月に閣議決定された日本再興戦略において、ワーク・ライフ・バランスや労働生産性向上の観点から総合的に労働政策審議会で御議論をいただきたいとの閣議決定がなされ、それに基づいて1年間、真摯な議論を積み重ねていただいております。

 その基本的な考え方は、日本再興戦略の閣議決定においても、「改訂2014」というタイトルが示すように、昨年の内容が受け継がれて、今年はより具体的に上書きされているのだと理解しております。そのため、基本的な理念として、引き続き、健康確保、あるいは生産性向上と仕事と生活の調和という点について御議論を深めていただきたいと考えておりますし、宮本委員からマネジメントの部分についても、具体的な議論の在り方はこれからよく詰めていかなくてはいけないとの御提起をいただきましたが、例えば労働時間等設定改善法はまさに労使の話し合いも含めて御議論していただく一つのテーマであると考えております。何卒引き続きの御審議をお願いいたします。

 以上です。

○岩村分科会長 よろしいでしょうか、宮本委員。

 どうぞ。

○宮本委員 今の御答弁、確かにそのとおりと思いますが、ぜひ長時間労働抑制策についても、そのような場合、ぜひ期限を決めて早期の解決・結論をお願いしたいと思います。

 以上です。

○岩村分科会長 ありがとうございました。資料No.1について一通り御議論いただきまして、今日、労使各側から幾つか御意見もいただいたところでございますので、それを踏まえつつ、この資料No.1にもありますように、ここで掲げられている項目を重点としてこれから審議を進めさせていただきたいと思います。

 次に取り上げる議題でございますが、事務局から、改訂成長戦略において検討を求められております「新たな労働時間制度」についての説明をいただきたいと思います。よろしくお願いいたします。

○古瀬調査官 それでは、お手元の資料No.2に基づき御説明いたします。

 まず、1ページ目、「新たな労働時間制度」については、去る6月に閣議決定された改訂成長戦略において、2のとおり盛り込まれました。

具体的には、「時間ではなく成果で評価される制度への改革」として「時間ではなく成果で評価される働き方を希望する働き手のニーズに応えるため、一定の年収要件(例えば少なくとも年収1,000万円以上)を満たし、職務の範囲が明確で高度な職業能力を有する労働者を対象として、健康確保や仕事と生活の調和を図りつつ、労働時間の長さと賃金のリンクを切り離した「新たな労働時間制度」を創設することとし、労働政策審議会で検討し、結論を得た上で、次期通常国会を目途に所要の法的措置を講ずる」とされております。

 2ページ目は、改訂成長戦略の策定に至るまでの産業競争力会議での御議論の中で安倍総理からあった御発言をまとめたものです。

上から○の3つ目、「新たな選択肢については、『長時間労働を強いられる』あるいは『残業代がなくなって賃金が下がる』といった誤解もありますが、そのようなことは、絶対にあってはならないと考えます」、4つ目、「まずは『働き過ぎ』防止のために法令遵守の取組強化を具体化することが、改革の前提となります。その上で、新たな選択肢は、1.希望しない人には、適用しない。2.職務の範囲が明確で高い職業能力を持つ人材に、対象を絞り込む。3.働き方の選択によって賃金が減ることの無いように適正な処遇を確保する。この3点の明確な前提の下に、検討していただきたいと思います」との御発言がありましたので、御議論の出発点として御紹介いたします。

 次に、3ページ目から、このような働き方が求められている背景のデータ等を御紹介いたします。

3ページ目は、我が国経済について、左のグラフは、財貿易・サービス貿易の合計額の対GDP比、右のグラフは製造業の海外生産比率ですが、いずれも趨勢として上昇しているなど、経済のグローバル化が進展しております。

 そうしたグローバル化の中で働く人一人一人が創造力や開発力を発揮することが重要と認識されております。

 4ページ目は、「商品企画・マーケティング」や「研究開発」などの工程について、3年前と比較して付加価値貢献度が高まったと製造業の企業が認識しているとの結果です。

5ページ目は、青の棒が現在の自社の競争力の源泉であると考えているもの、赤の棒が今後競争力をさらに高めるために強化すべきものです。「今後」が「現在」を上回っている項目を丸で囲っておりますが、「新製品・サービスの開発力」や「人材の能力・資質を高める育成体系」「従業員の意欲を引き出す人事・処遇制度」が企業において求められていることが現れております。

 6ページ目は、現行の制度上最も弾力的な労働時間制度である企画業務型裁量労働制を導入している事業場へのアンケート調査の結果です。左側にあるとおり、制度は「今のままでよい」とする割合が高くなっております。その上で「変更すべき」との回答をした事業場の意見としては、右側のグラフのとおり、「一定以上の高い水準の年収が確保されるなら、労働時間規制を適用除外すべき」等が挙げられております。

 7ページ目は、企画業務型裁量労働制が適用されている労働者に対するアンケート調査の結果です。制度は「今のままでよい」とする割合が高くなっておりますが、その上で、「変更すべき」との回答をした者の意見としては、「一定日数の休日・休暇が確保されるならば、みなし労働時間ではなく労働時間に関する規制を適用除外してもよい」、あるいは「一定以上の高い水準の年収が確保されるならば、労働時間に関する規制を適用除外してもよい」等が挙げられております。

 8ページ目は、適用労働者に満足度を聞いた結果です。「満足」、「やや満足」とした労働者は76%となっており、「不満」、「やや不満」との回答をした労働者の具体的な不満な点としては、「労働時間が長い」、「業務量が過大」、「給与が低い」等が挙げられております。

 9ページ目からは「新たな労働時間制度」の検討の論点を4つに分け、論点ごとに現行制度等について整理しております。まず、「対象業務・対象労働者についてどのように考えるか」です。

表の一番上に、裁量労働制について、専門業務型・企画業務型をまとめて記載しております。対象業務については、専門業務型は、業務の性質上、使用者の具体的な指示が困難な業務として省令・告示で列挙する19の専門的業務となっており、具体的には、個別企業の労使協定で対象業務を定めることとなっております。

 また企画業務型は、事業運営の企画立案調査分析業務であって、労使の判断で、使用者が具体的な指示をしないこととする業務となっており、具体的には労使で決議をしていただくことになっております。

 また、右側の対象労働者については、対象業務を適切に遂行するための知識・経験等を有する者として、その範囲を専門業務型では労使協定で定め、企画業務型では労使で決議をすることとされております。

 2段目は自己管理型労働制です。平成18年から19年に本分科会において検討された自己管理型労働制について、その内容がどうであったかを示しております。当時、対象労働者等については、「管理監督者の一歩手前に位置する者」を想定するとされ、具体的には、この下の4つのポツにあるとおり、「労働時間では成果を適切に評価できない業務に従事する者」、「業務上の重要な権限・責任を相当伴う地位にある者」、「業務遂行の手段・時間配分について使用者が具体的指示をしないこととする者」、「年収が相当程度高い者」という労働者について、その範囲を個別企業の労使で決議することとされておりました。

 その上で、今般、御議論いただく「新たな労働時間制度」については、一番下の欄に、御議論いただく際のベースになる事項として、改訂成長戦略やこれまでの国会答弁等で示された内容を示しております。「新たな労働時間制度」では、「時間ではなく成果で評価される働き方をする者」を想定しており、1点目の改訂成長戦略の文言を引用している部分は、説明を省略させていただき、2点目として挙げている「対象は、職務の範囲が明確で、高い職業能力を持つ人材に限定をしていく。それ以外の一般の勤労者の方々は対象にしない」とは、安倍総理の国会答弁です。また、3点目の「基本的には時間で測れない、成果を定量的に測れるものに関して導入しようということ」は、田村前厚生労働大臣の国会答弁です。

10ページ目、「労働時間の長さと賃金のリンクを切り離した『新たな労働時間制度』」と改訂成長戦略には盛り込まれておりますが、その具体的な「法的効果についてどのように考えるか」です。この表においては、時間外労働、休日労働、深夜労働、年次有給休暇に分けてまとめておりますが、原則(通常の労働時間制度)については、表のとおりですので説明は省略いたします。

 2段目の裁量労働制については、みなし労働時間が法定労働時間を超える場合、労使協定の届出や割増賃金の支払が必要となってきますが、それ以外は原則と同じです。

自己管理型労働制については、時間外労働、休日労働、深夜労働の3つについて原則の適用除外とした上で、休日については4週4日かつ週休2日(年104日)の休日確保義務を課すという異なる規制としておりました。

11ページ目は、「手続についてどのように考えるか」です。この表の左側が労使協定などの集団的な手続、右側が個別の本人同意についてです。裁量労働制では、専門業務型では、下の※印の項目のうち企画業務型のみとしている項目を除いた項目について、労使協定を締結し、本人同意については不要としております。

 また、企画業務型では、※印にある対象業務、対象労働者の範囲等々の項目について、労使委員会の5分の4以上の決議をし、本人同意についても必要としております。

 管理監督者については、これらの手続は不要となっております。

また、自己管理型労働制については、※印にある対象労働者の範囲、賃金の決定、計算方法、週2日相当以上の休日確保、健康・福祉確保措置、苦情処理措置、本人同意の項目について、労使委員会の5分の4以上の決議をし、本人同意も必要とされておりました。

「新たな労働時間制度」については、「本人が了解しなければ適用にならない」との総理の国会答弁がございました。

 最後に12ページ目は、「労働時間の把握・健康確保等のための措置について、どのように考えるか」です。原則(通常の労働時間制度)では、労働時間の把握について、平成13年に出された通達の中で定められたいわゆる「適正把握指針」において、1現認による確認、または2タイムカード等客観的な記録を基礎とする確認が原則とされております。

 裁量労働制の対象者については、「適正把握指針」は適用外となっておりますが、対象者の労働時間の状況に応じた健康・福祉確保措置の実施について、専門業務型では協定、企画業務型では決議することが要件となっております。また、指針において、どの時間帯にどの程度在社したか等、出退勤時刻の記録等により、事業場の実態に応じて勤務状況を把握すること、また、健康・福祉確保措置の例としまして、代償休日や特別の休暇の付与、健康診断の実施、年休取得促進、配置転換、産業医等の保健指導等が規定されております。

 管理監督者については、「適正把握指針」は適用外とされております。

 自己管理型労働制については、労働時間の状況の把握と、それに応じた健康・福祉確保措置の実施について決議することが要件とされており、具体的には「『週当たり40時間を超える在社時間等が概ね月80時間程度を超えた対象労働者から申出があった場合には、医師による面接指導を行うこと』を必ず決議し、実施すること」を指針において定めることとされておりました。

 「新たな労働時間制度」については、今般の改訂成長戦略に「健康確保や仕事と生活の調和を図りつつ」とされており、また、「労働時間等々が過重になってはいけないので、防止策は入れていかなければならない」と田村前厚生労働大臣の国会答弁もありました。

 以上、駆け足ですが、御議論いただく際の素材として御説明いたしました。

○岩村分科会長 ありがとうございました。

それでは、事務局から資料2について説明をいただいたところですが、これにつきまして御意見、あるいは御質問ありましたらお願いしたいと思います。

ではまず新谷委員、どうぞ。

○新谷委員 今日は参考資料ということでありますし、先ほどの資料1に記載されておりますように、今後論点として論議していくことになろうかと思います。また、先ほど冒頭に鈴木委員から、この「新たな労働時間制度」についての考え方が示されました。私どもとしては、冒頭にお配りいたしました「労働者代表委員として実現すべきと考える主な施策」の裏面にこの「新たな労働時間制度」に対する考え方を整理してございますので、それに基づいて意見を申し上げておきたいと思います。

 「労働時間の長さと賃金のリンクを切り離す」ということでありますけれども、これは私ども再三申し上げておりますように、現在は労働時間の量的上限規制が設けられておりません。そんな中で「新たな労働時間制度」が導入されますと、これは労働者を保護するためのルールが全部適用除外とされてしまうということでありますから、そのような中で成果だけが求められるということになりますと、本当に長時間労働に歯止めがかからなくなってしまう懸念があるわけです。まさに、再三申し上げているように、長時間労働を助長してしまうことになりかねないと思っております。一部では、この「新たな労働時間制度」は過労死促進法ではないかという声も既に挙がっているわけでありまして、私どもとしては、こういった制度は到底容認できるものではないということをまず申し上げておきたいと思います。

 それと、ここに示されている年収要件、今、「少なくとも1,000万円以上」と出ているわけでありますけれども、過去の労働法制の例を見てみますと、典型的なのは労働者派遣法であります。そこでは、もともと85年に成立した際には派遣の対象業務は13業務のみで始まっていたものが、気がついたら26業務が対象業務となり、ついにはそれも全部ひっくり返ってしまって、4つの禁止業務以外は全部対象にしてしまうという変遷が現にあったわけです。また、近年では、有料職業紹介における求職者からの手数料徴収について、年収要件を1,200万円と決めたにもかかわらず、翌年には500万円も下げられてしまって700万円という水準まで下げられてしまった、という例も見受けらるわけです。今回も、国会での質疑の中で、安倍総理からは「この1,000万円という数字については、将来的には当然下がり得る」といった答弁がなされたのではなかったかと思います。このような例を見ますと、私どもとしては、今は1,000万円ということにしているだけであって、これは労働者を分断する出し方ではないかといった見方もしております。つまり「1,000万円以上が対象になるのであれば、私たちには関係ない」と、多くの労働者は最初に思わせているのではないか。今後年収要件が引き下げられる懸念が非常に大きいのに、それを隠して労働者を分断する出し方ではないか、と思っています。しかし、そもそも、一定の年収があればなぜ労働者を保護する規制が外されてよいのかという点について合理的な説明を毎回求めているのですけれども、何の説明もございません。このような点に非常に懸念があるということを再三申し上げているところであり、「新しい労働時間制度」については到底容認できません。

それと、鈴木委員もおっしゃっていたことですが、この資料2の1ページに記載されている改訂成長戦略の中には「時間でなく成果で評価される」という記載があります。これについては、私、毎回聞いていておかしいなと思うのですけれども、なぜ労働時間だけで評価されていると言われるのか、非常に不思議です。企業の実態から言いますと、労働時間だけで評価しているわけではないと思うのです。これは各社の人事処遇制度の中で、当然成果を上げた方は処遇制度上の高い評価を得て、社内でどんどん評価されて上がっていくということになっているのではないか。つまりは、先ほどのマネジメントのあり方につながる話だと思うのです。使用者側は、「効率が悪くて生産性が悪い方と生産性のいい方の選別をこの労働時間の規制を外すということで行いたい」といったことをおっしゃるわけですけれども、それはそうではないだろうと思います。

労働者が仕事をするのに時間がかかっているのであれば、上司は、部下がどこでつまずいているか、それはやはり中に入っていって課題を解決する、そのアドバイスをするというのが上司としての責任ですし、それがマネジメントであろうと思います。仕事を労働者に丸投げしてしまって、「おまえはこの仕事をやれ。仕事ができなかったのなら、おまえが悪い。」といったものではないと思うのです。したがって、成果と労働時間のリンクを切るというのは、労働時間制度の中でこれを実現するということでなくて、今申し上げたようなもの、すなわち各社の人事処遇制度やマネジメントを通じて実現するべき内容であると、私は思います。このように、冒頭、私どもの考え方として申し上げておきたいと思います。

以上であります。

○岩村分科会長 ありがとうございました。

では、平岡委員、どうぞ。

○平岡委員 企業の側から申し上げたいと思います。私ども、日本の企業がやはりこれからグローバルに勝っていくということが必要だと思っておるのですが、これまでもそうであったように、日本の企業が勝っていくというのはやはり人の力で勝っていくのだと、そのように思っています。そういった意味で、人材の生産性を高めていくというのは必須であります。そうした中で、人材の生産性というのは、もちろん、おっしゃるように、さまざまなファクターがあるわけなのですが、一つの取組として、労働時間を含めた働き方の柔軟化、そうしたものは大変有効ではないかと考えております。

 働き方の柔軟化と申しますのは、労働時間管理だけではなくて、勤務形態、例えば短時間勤務や限定日数勤務等の選択肢をふやすとか、あるいは勤務場所を柔軟に行えるようにするとか、それらを支えるITを駆使した業務支援の仕組みをつくるとか、さらには個々人の職務やその成果を正しく把握できるような仕組みを整備するとか、そういった総合的な取組であります。

 そういった取組をすることによって、例えば同じ量、質の仕事をするに当たっては、柔軟な働き方ができるほうが効率が上がって、結果として総労働時間が短くなるというのは十分に考えられることだと思っています。現在でも裁量労働適用者の満足度というのはかなり高いレベルにありますが、そうしたことも一つの証左ではないかと考えています。また、子育てですとか介護等の事情を抱える方々、そういった方々が活躍しやすくするという観点からも柔軟な働き方は大切でありまして、女性の活躍支援、ダイバーシティの観点からも取り組むべきテーマだと思います。

 一方で、労働時間管理を緩めると長時間労働を助長し、従業員の方の健康確保、ワーク・ライフ・バランスの確保上から問題が生じかねないとの御指摘もありますが、企業にとりましては、人はまさに貴重な財産、資源でありまして、人的生産性を高める、優秀な人材を確保していく、社会的責任を果たす、そうした視点から、企業としても従業員の健康確保、ワーク・ライフ・バランスの向上というのは大切な課題でありまして、現実に個々の企業においてはその実現に向けて労使で知恵を出し合って具体的な施策を展開しております。

 要は働き方の柔軟化と健康確保、ワーク・ライフ・バランスの向上は二律背反するものではなくて、いかにそれを両立させていくか、さらに言えば、その2つが有機的に結合してお互いを高め合っていくべきものだと、そのように考えております。もちろんこうした取組の外にあるような企業がないということではないと思いますけれども、そうしたものにつきましてはきちんと監督官庁等から指導是正も厳正に行うべきものだと思いますし、そうした一部の実態のみを重く捉えて、日本経済全体の変化にストップをかけていくというのは大きな損失になりかねないと危惧いたします。

 裁量労働ですとか新しい労働時間制度を議論する際には、ただいま申し上げましたような視点を持っておくことが必要だと企業側としては思っております。

 以上でございます。

○岩村分科会長 ありがとうございます。

それでは、高松委員、どうぞ。

○高松委員 ありがとうございます。

 事務局のほうから、今、資料の説明を受けたわけですが、「新たな労働時間制度」が必要となる背景として「経済のグローバル化」が挙げられています。今ほども使用者側のほうから御発言があったわけですが、私、個人としましては、今の日本の労働の実態を見たときに、果たしてグローバル化と労働時間のあり方というものがどうリンクしていくのかという点については、ストンと腑に落ちないところがございます。

つまりは、日本の労働時間を他の先進国と比較した場合に日本のほうが短いという実態があるのであれば、いろんなことについて議論していくことも納得ができるわけですが、以前のこの分科会で示されたデータにもあったと思いますが、我が国の労働時間は国際的に見て長いというのが実態である中で、今どうして「新たな労働時間制度」を議論しなければならないのか、というところがなかなかストンと腑に落ちない。これが率直なところでございます。

 確かに識者の中には「経済がグローバル化したのであれば、労働規制もグローバル化すべき」と言われる方もいらっしゃったと思います。しかし、グローバル化ということであれば、今の我が国の労働時間が長時間となっている実態、この辺をまずは国際標準レベルにまで短縮をする、そのことこそ真のグローバル化ではないのかな、という気がしています。また、前段の議論にもありましたとおり、安全なり安心、あるいは健康というものについて、長時間労働の実態を踏まえて問題をどう解消していくか、そういう議論をしていくことが重要ではないのかと考えておりますので、意見として申し上げたいと思います。

○岩村分科会長 それでは、秋田委員、鈴木委員という順番でお願いいたします。

○秋田委員 ありがとうございます。

いろいろな御意見が出ているわけですけれども、今日御説明のありました資料No.2の産業競争力会議等での総理の御発言等にもありますように、まず、労働時間制度の新たな選択肢を示す必要があるということです。この後のページのデータでも出ておりますが、データだけを見ると裁量労働制は現行のままという意見が多いという数字に読み取れますが、重要なのは、新たな制度についてここに一定程度のニーズがあるということです。であれば、あくまで選択肢として示すということが必要だと考えております。

 さらに労働時間と成果の問題ですが、現状の選択肢として新たな労働時間制度が示されていない状況であれば、結果として労働時間多い方のほうが、成果とは関係なく、報酬が高いということが起こり得るということです。そういうことを働き手として望まない人もいるというニーズがあるのです。1ページ目の成長戦略の2のところにもありますが、成果で評価される働き方を希望する働き手のニーズに応えるということでございますので、これは全労働者に適用するということではなくて、あくまで選択肢として示すということが、それぞれの個々の意欲と能力を発揮して生産性を高めて国際競争力をつけるというためには是非必要だと考えております。

○岩村分科会長 ありがとうございます。

それでは、鈴木委員、どうぞ。

○鈴木委員 ありがとうございます。

 ただいまの秋田委員の発言と少しかぶるかもしれないのですけれども、先ほど新谷委員から、丸投げはいかがなものかというような御指摘をいただいたところでございます。この話は話を分けて考えたほうがいいのではないかと思っておりす。すなわち、裁量が小さくて、成果ではなく時間で評価するにふさわしい方、これはたくさんいらっしゃるわけであります。そういう方々には、先ほど宮本委員からも御指摘のございました、上司のしっかりとしたマネジメントをしていくというような対策をとっていく、それを個別企業でとっていく、これは大変重要だと思います。他方で、裁量があって成果で評価するのにふさわしい方がいらっしゃるわけですので、その話を分けて考えるということが重要と思っております。

 それから、本日事務局よりお示しいただいた資料2の3ページでございますけれども、ここで経済活動のグローバル化を背景に、これまで以上に魅力ある製品・サービスを提供するということが求められている実態をお示しいただいたものだと思っています。これが大変重要な指摘だと考えておるところでございます。

 あわせて申し上げたいのは、将来の我が国の事業活動を見据えた場合に、総労働人口が減少して、需要そのものが減っているということにどう対応するのかというのが大きな課題になっております。最近では、企業規模、産業問わず、初めて海外に展開を図っていくというようなところもございますし、付加価値をつけていくという工夫が各社行われているところでございます。加えて、少子高齢化が進み、家計消費市場全体に占める60歳以上の消費割合というのが、2012年で約4割だったものが2030年には約5割に高まるということが見込まれております。そうした中、少子高齢化に伴う市場環境の変化にどう対応していくかということも多くの企業にとって喫緊の課題です。

 例えば高齢者向け商品の代表作であるらくらくホンを初め、高齢者向けの住宅ですとか、高齢者向けの医療ブランド、それから在宅配食サービス、スポーツジムなど、高齢者にとって魅力ある製品・サービスを提供するでありますとか、新たにそういった分野に進出するという動きがあるところでございます。

この点に関しましては、資料2の4ページを見ますと、左側の商品企画・マーケティング、研究開発ということもさることながら、右から2つ目のサービス提供や営業・販売といったものも付加価値貢献度が高まっている業務に挙げられているところであります。

 また、5ページを拝見いたしますと、左から3つ目の顧客ニーズへの対応力ということで、絶対値としては高く、その中には提案力も含むということが書かれているところでございます。御案内のとおり、研究開発がすぐれているだけではものが売れなくなったと言われて久しいわけでございます。お示ししていただいたデータというのは、例えば研究開発それ自体に注力するとともに魅力ある製品をめぐるマーケティングを行って、顧客のニーズを捉えた商品開発、あるいは提案を行うなど一連の対応が求められているということをあらわしているのではないかと思っております。言いかえますと、高い職業能力を有する担当者全員がそれぞれの役割を果たして初めて、魅力ある製品・サービス、そういった提供に結びつくという実態があるのではないかと思っておるところでございます。

 したがいまして、新たな労働時間制度の対象者というのは、当初想定されておりました世界レベルの高度専門職、あるいは為替ディーラーというようなごく一部の業務に限定されることなく、研究職、技術職、市場調査担当者、さらには高度な専門知識を用いて新たなサービス・製品の導入を提案したり、付加価値の高いビジネスモデルを創造するソリューション型ビジネスの担当者も含めて幅広いスキームとすべきものと考えているところでございます。

 また、成果で評価するというコンセプトを考えますと、法的効果としては、時間外、深夜、休日の原則を適用しないということが適するのではないかと思っているところでございます。

新たな労働時間制度については、残業代ゼロをもたらすというような見方、あるいは長時間労働を助長するのではないかという御懸念が出ているところでございます。しかしながら、安倍総理がおっしゃられたように、働き方の選択によって賃金が減ることがないように適正な処遇を確保する、また、長時間労働を強いられることがあってはならない、そういった思いは使側も全く同じでございます。

もとより労働契約法第10条というのは、不利益、不合理な就業規則の変更は効力がないとするルールを定めているところでございまして、賃金の引き下げということについては、法的な歯止め策として十分機能すると思っております。制度設計に当たりましては、そういった点の周知徹底を改めて行うということが重要ではないかと思っております。

 また、対象労働者に対する健康確保するための要件、これは当然であり、十分な健康確保措置を手当てすべきものと考えております。

 私からは以上です。

○岩村分科会長 ありがとうございます。

それでは、冨田委員のお手が挙がっていますので、冨田委員、次に新谷委員ということでお願いします。

 では、冨田委員、どうぞ。

○冨田委員 ありがとうございます。

 今ほど鈴木委員のほうからも、我が国が少子高齢化社会に突入している中でさまざまいろいろな施策が必要だという御発言をいただきました。そこに関連して1点お尋ねしたいということもありますので、発言させていただきたいと思います。

 まさにこれからの我が国にとって一番大事なのは、子供を育てられる環境を社会全体としてどうつくっていくのかということではないかと思っております。女性の活躍促進だけではなく、社会全体、そして、当然のことながら働き手の主なるものを担っていらっしゃる男性の方々がいかに子育てに参画していくのか、こうした視点も含めて男女の協働的な社会参画が必要で、求められているのではないかと思います。

 そうした中に考えますと、この「新たな労働時間制度」というものに関しましては、幾つか御発言もありましたが、我々労働側としては、どうしても長時間労働につながるのではないかという懸念を払拭できないわけであります。そうした懸念がある中で、我が国の労働人口の減少を押しとどめるために使用者としてはどのような責任を果たされていくのかという点について、お考えがありましたら、ぜひお聞かせいただきたいと思います。

 それから、あと全く別の観点から、1点、事務局に要望させていただきたいと思います。先ほど御提示いただきました資料の6ページから7ページ目にかけまして企画業務型裁量労働制の資料が提出されているかと思います。これらの資料は以前の分科会資料の再掲でございますけれども、今回提出いただいたのは、恐らく「労使がどういった点での改定を望んでいるのか」という点を明らかにするために再掲されたものと理解はいたします。しかし、改めてこの資料を見ますと、先ほどもありましたとおり、労使双方ともに7割前後の方が「今のままでよい」という回答をされております。「今のままでよい」という回答が圧倒的多数を占めているわけです。こうしたデータをお示しいただきながら、どうして何らか新たな枠組を検討していく必要があるのかという点に大いに疑問を感じるというか、なかなか納得がいかないというところが率直な思いでございます。

 なお、同じ回に提出された資料の中には、この企画業務型裁量労働制で働く方々の実労働時間の把握の方法について聞かれたものがあったかと思います。先ほども御説明いただいたとおり、健康確保の措置から考えますと、この実労働時間の把握というのは大変重要なポイントを占めていると思いますが、以前示されていたデータを思い返しますと、「労働時間の把握の方法が不明」、もしくは「自己申告」という形で十分に行われているとは言えない実態が示されていたように思います。健康確保の視点に立ってこの制度を見直すということであれば、こうしたデータについてもあわせて提示いただきたいと考えますので、よろしくお願いしたいと思います。

 以上でございます。

○岩村分科会長 ありがとうございます。1点は使側の御意見に対する御質問ということで、もう1点が事務局に対する御要望ということだと思います。

それでは、最初に事務局からお答えをお願いしたいと思います。

○村山労働条件政策課長 冨田委員から事務局に御質問いただいた点についてお答えいたします。

 先ほどの御指摘で、労使双方、現行で最も弾力的な労働時間制度である企画業務型裁量労働制を導入している事業所の方々、あるいは適用されている労働者の方々を見ても、現在の裁量労働制について、「今のままでよい」との比率がそれぞれ68.6%、75.1%であり、具体的に制度を変更すべきという意見もあり、その内容も掲げられているものの、全体の数字からみて、なぜそれが「新たな労働時間制度」の必要性につながってくるのかとの御質問です。

 このデータについて、確かに、現行の満足度が高い制度であることを示しておりますが、変えたほうがよいとの意見も一定数あり、そうしたニーズに応える選択肢の必要性の一つを裏打ちするものにはなっているのではないかと考えております。

 その際に、「新たな労働時間制度」については、現行の弾力的な労働時間制度等と比べて対象者を絞り込むことは産業競争力会議等の議論でも、ある程度の方向感で皆さんのコンセンサスを得ているものと考えております。逆に言えば、そうしたニーズがあるところについて、御懸念の健康確保措置等も十分に講じながら新しい道が開けないのかということについて御議論いただきたいという趣旨でこの資料を提示していると御理解いただければと考えております。

また、4月3日の分科会の資料の中では、専門業務型、企画業務型それぞれの裁量労働制、フレックスタイム制、管理監督者、その他の労働時間制と一般労働時間制度それぞれに分け、実労働時間をどのように把握しているかのデータをお示しいたしました。本日の御議論を踏まえ、このテーマについて改めて御議論を深めていただく機会があれば、そうした点も含めて改めて資料について各側と御相談したいと考えております。

以上です。

○岩村分科会長 よろしいでしょうか。

それでは、鈴木委員、お願いいたします。

○鈴木委員 ただいま冨田委員からの御質問ということで、十分お答えできるか、ちょっと自信がございませんけれども、まず育児参加ができるような環境整備をしていくということにつきましては、大変重要な経営課題だと思っております。例えばということでお聞きいただければと思いますが、労働政策研究・研修機構が2010年に行った調査によりますと、上司の特性によって部下の労働時間が変わり得るということのデータがございます。具体的には、例えば必要以上に会議を行うとか、仕事の指示に計画性がない、指示する内容が明確でない、それから、残業する人ほど高く評価する、社員間の仕事の平準化を図ってない、そういったことが当てはまる上司のもとで働く部下の方ほど月間の総労働時間が長いという結果になっております。

本日、宮本委員からも御指摘されております、いわゆるマネジメントの問題は大きいと、私ども、大変共通するところでございまして、各社とも労使で話し合って、例えば管理職に対するマネジメント研修を改めて実施したり強化するということが行われているところでございます。私どもからすると、だからこそ、実効ある形で恒常的な長時間労働を見直すためには、一律画一的な規制ではなくて、職場実態に合った取組が重要であり、冒頭申し上げた労働時間等設定改善法の活用を図るなど、企業の取組を支援することが重要ではないかと思っているところでございます。これが1点です。

それからもう一点でございますが、新たな労働時間制度の対象者について、これはやはり十分な健康確保措置をとるということが重要だと思っております。今後引き続き議論を深めさせていただければと思っておりますけれども、各社では、例えば裁量労働制対象者などに対する先進的な健康確保措置として、長時間労働の予防是正措置、あるいは休日休暇の取得促進措置、法定を超える産業医等の面接指導、あるいは深夜労働の制限など実にさまざまな形で運用し、実効を上げられていると聞いております。

新たな労働時間制度の健康確保措置については、こうした実態として行われている措置内容を十分参考にしながら、企業実態に沿った措置を選択できるようにしていくことが、これも労働者保護の実効性を担保するものと思っております。

私からは以上です。

○岩村分科会長 ありがとうございました。

では、新谷委員、どうぞ。

○新谷委員 この資料の3ページ、先ほども論議されたのですけれども、「新たな労働時間制度」の検討に際して、なぜ「我が国のグローバル化の進展」という資料が出てくるのか、私には全くわからないのです。それはなぜかと言いますと、こういった、いわゆる専門職に対して労働時間の規制を外している国というのは、私の知る限りだとアメリカしかないと思うのです。グローバル化、グローバル化と言い、グローバルスタンダードといったことも言われますけれども、これは実際には、アメリカンスタンダードを我が国に導入しようというだけのことなのではないか、と思うわけです。

それで、労働時間の規制というのは各国が設けておりますが、労働時間の規制を適用除外にしている対象者を見ますと、確かに「上級の幹部職員」については世界各国で適用除外とされていて、我が国の労働基準法第41条と同じやり方で適用を外しているように思えますが、一方で、専門職や高度な職業能力を持っている労働者に対しても、同じように労働時間の規制の適用を外している国がほかにあるのか。その点は疑問に思っているところです。事務方には、アメリカ以外にもしそのような国があるのであれば、教えていただきたいと思います。

なぜ「グローバル化」の資料が出ているのか理解できないというのはそういう意味でありまして、ぜひ諸外国の実態、もう少し詳しい比較資料を提出いただきたいということをお願いしておきたいと思います。

それと、柔軟な働き方の選択肢を増やすということが資料2にも書いてあって、政府の方針にも書いてあるのですが、自己管理型労働制というのは2006年のこの部会の中で報告書・要綱がまとめられたものでありまして、法案になって提出されようとしたのはたしか第一次安倍内閣のときだったと思いますけれども、あのときに「家族だんらん法案」という名前がつけられて喧伝されたものの世間的にはそういう受けとめ方をされず、「残業代ゼロ法案」という世論が沸騰してしまって、政府として法案の提出を見送ったという経過があったように覚えています。

ここで、私が非常に気になるのは、労働時間の規制を外すことがなぜ柔軟な働き方につながっていくのか、という点です。歯止めがなくなって過重労働につながりかねないというところに対しては何の手当てもなされていません。例えば、マネジメント層の管理者においても悲惨な過労死の事案というのが幾つもあって、皆さんもひょっとしたらお読みになっていると思いますけれども、「過労自殺」と題する岩波新書が最近出版されており、過労自殺の事例が幾つか書いてあります。この中に管理職が過重な労働をコントロールできなくて自死に追い込まれてしまうという事例が幾つもあるわけですね。

先程から申し上げているように、確かにプロセスについて裁量があるという方はいるのでしょうが、そのうち与えられる業務量をコントロールできるという人がどれだけいるのか、過大な仕事を与えられた場合にはね返すだけの能力ある方がいるのか、という点については、全く年収とは関係がないのではないか、と私は思っております。その辺の説明がいまだにしていただけないということになると、我々としても、この問題を論議することはできないと言わざるを得ないと思っております。

それと、「健康確保等のための措置」についても、この資料の中に記載がございます。先ほど冨田委員が申し上げたように、現状でも、労働基準法第41条の管理監督者は「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置」の適用除外とされておりますし、労働時間を把握する際にもその方法として自己申告という形が許容されております。また、企画業務型裁量労働制については労使委員会で決議をするということになっているのですけれども、以前の分科会資料に示されたように、企画業務型裁量労働制を行っている事業場のうち42%もの事業場から「どのような形で労働時間を管理しているのかわからない」といった回答がなされたような実態にあります。

いずれにしましても、この労働基準法第41条の管理監督者であろうが、裁量労働制のもとで働く労働者であろうが、そういう者に対しても労働契約上の付随義務としての安全配慮義務は存在しているのであり、使用者としては、労働時間の適切な把握をして労働災害を発生させないように健康と安全を守っていくべき義務を負っているわけです。私どもとしては、対象者を限定した形での実労働時間の把握ということではなく、全ての労働者を対象に適切な実労働時間の把握をきっちりと行うということがまず認められた上で、それから様々な論議がはじめて可能になるということを改めて申し上げておきたいと思います。

以上です。

○岩村分科会長 ありがとうございます。では、事務局にお尋ねがありましたので、お願いします。

○村山労働条件政策課長 ただいまの前段の御質問の部分にお答えいたします。

確かに、アメリカの公正労働基準法に定めるいわゆるホワイトカラーエグゼンプションに関しては、職務の要件はかなり広範ですが、その中の専門職のエグゼンプトに関しても、主たる要件は年収となっております。アメリカの場合はそもそも長時間労働の抑制の仕方が専ら割増賃金規制によっている国ですが、そのルールの適用除外になっていることは事実です。

その上で、委員の御念頭にあるのは、多くのヨーロッパ諸国の例だろうと思います。これらの例について、ドイツの管理的職員やフランスの上級カードルの判断の基準は、主として人事管理権限と、もう一方で自律性であると思います。

同時に、そういう方々と一般の絶対上限規制等が適用される方々との間に、その他のカードルや協約外職員もおり、そういう方々の実際の働き方や仕事がどのような形になっているか等も、大変重要な点であると思います。公益委員の御指導も仰ぎながら、次回以降に向けて、各側とも御相談した上で資料等を考えていきたいと思っております。

そして後段について、改訂成長戦略の閣議決定でも「健康確保を図りつつ」という言葉は入っております。これまでの御議論の過程で注目は年収要件に集まってきたのは事実としてありますが、制度設計の上では、本日の資料でも、健康確保を大きな論点にしていただきたいと掲げております。今、御指摘のあった仕事の進め方だけでなく、仕事のボリュームコントロールの点も含めて、年収要件等と併せてどのように考えるか、またどのように健康確保のための措置を考えていくのかということについても御議論を深めていただければと考えております。

以上です。

○岩村分科会長 ありがとうございます。ほかにはいかがでしょうか。

では、御発言されてない田中委員、その後、鈴木委員ということでお願いいたします。

○田中委員 ありがとうございます。

今回いただいた資料No.2の、改訂成長戦略をおまとめいただいている抜粋の2についていろいろ議論がされていると思うのですけれども、私自身、これは意見として聞いていただければと思いますが、これはある一つの選択肢の提案ではないかと理解してまいりました。先ほど新谷委員御指摘のとおり、労働時間だけで評価するということはあり得ない話でありまして、企業としても、いろいろ総合的な側面から人の評価をしていくことになるのだと思います。

ただ、一方で、そういう評価査定とは別に、労働時間に対する賃金というのは上乗せされていくわけですから、中には、自分は短い時間だけれども、ちゃんとした成果を出しているのだからそれを評価してほしいという声もあるのも事実だと思います。ですから、ここの部分は、こういう選択肢が労働時間を、時間外を助長するのではないかという御心配がある一方で、もう一つの側面としては、短い時間でも成果を出していることについて、よりそこをフォーカスして評価してほしいという声があるのも事実ではないかと思っております。この選択肢というのは、実務的には非常に難しいところがあると思っているのですけれども、よりそういう人たちのニーズに応えた柔軟性のある制度という選択肢がもう一つあってもいいのではないかと、こういう一つの御提示ではないかと理解して、その選択肢の是非をぜひ議論させていただきたいと思っております。

労働時間だけで評価するというのは現実問題ありませんので、逆に言えば、そこに埋もれてしまっている、評価されていないという思いがもしこういった層の方たちの中にあるのであれば、そこをきちっと評価することによって、より生産性が高い、あるいは、先ほど来グローバルという議論もありますけれども、より強い人材というものを育てていくということに寄与していくのではないかなと思います。

意見として申し上げました。

○岩村分科会長 ありがとうございました。

それでは、鈴木委員、どうぞ。

○鈴木委員 先ほど新谷委員から労働時間把握についてのお話がありましたので、発言をお許しいただければと思います。

御指摘のように、管理監督者でありますとか裁量労働制対象者に対しては、時間外割増率を払うための1分単位の時間把握義務は労基法上は課せられていませんが、他方で、安全配慮義務を履行するために、それとは別に健康確保のために把握する義務が課せられているおり、この点において労側の皆さんと同じ認識に立っていると思っているところでございます。ただし、1点、十分御承知の上かと思いますが申し上げたいのは、一般労働者の話として申し上げると、例えばタイムカードですとか、パソコンのログオン、ログオフなどで把握するといっても、外勤で直行・直帰する場合にはどうしても自己申告の方法によらざるを得ません。これは管理監督者、あるいは裁量労働制の方も同じかと思っていますし、あるいは社内で本人が自発的に勉強するということもあるわけでございます。最近、イントラネット上で語学等の研修機会を提供するような企業もありまして、その際、自分のパソコンを使いますので、当然パソコンのログイン、ログオフで把握した時間は、その自主学習という時間も入ってしまいます。

そういう意味では、自己申告を併用せざるを得ないような実態もあることは御理解いただきたいと思っております。働き方が多様化していることに伴いまして、労働時間を管理する方法もやはり実態に合った方式であるべきと思っておりまして、上司が部下の帰るのを確認して管理する、いわゆる現認が、46通達では大原則として位置づけられているようにも読めますけれども、その一方で、自己申告を例外として位置づけて峻別するという考え方は果たして実態に合っているのかなあという疑問を持っており、これは意見として述べさせていただきたいと思います。

以上です。

○岩村分科会長 ありがとうございます。

それでは、新谷委員、どうぞ。

○新谷委員 今、鈴木委員がおっしゃった労働時間の把握の点について、私どもが考えているところを申し上げたいと思います。

今お話の中にもあった、「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき基準」(いわゆる46通達、基発第339号)でありますけれども、この通達では、一般労働者については厳格な労働時間の管理が求められている一方で、適用除外というカテゴリーが設けられてしまっておりまして、管理監督者や裁量労働制適用者については適用除外とされています。

その結果何が起こっているかといいますと、これもアンケートの中に出てきた内容でございますが、裁量労働においても自己申告であるというところが3割ぐらいあるわけです。こうなると、本当に適切な労働時間の把握ができているのかという点については、非常に疑問であります。

申し上げたように、安全配慮義務というのは、この通達が出される前からもともと労働契約に付随する義務として存在しているわけであります。今我々として見直すべきは、この労働時間の把握義務のあり方でありまして、何も管理監督者や裁量労働制の適用者について労働時間に応じて賃金を払え、というように言っているわけではないのです。賃金の支払いの時間と健康管理時間という概念は別であります。私どもが提起しているのは、在場時間なり在社時間なりという形であったとしても労働時間が一体何時間あるのかということをきっちり把握すること、そのための把握義務の強化を行うべきということです。この点は、鈴木委員からは私どもに賛意をいただけるような御発言もありましたので、ぜひ「健康管理時間」に関する論議を深めていきたいと思います。

以上です。

○岩村分科会長 ありがとうございました。

どうぞ、高松委員。

○高松委員 すみません。ありがとうございます。

1つだけ、よくわからないのですが、先ほど田中委員から「新たな労働時間制度」は選択肢の一つだろうとの御発言がありました。そしてまた、現在も労働時間だけで評価しているわけではないという御発言もございましたし、あわせて、短時間で一定の成果を出した者をどう評価していくのかという疑問も挙げられたところです。しかし、なぜ「新たな労働時間制度」を導入しなければ評価ができないのかという点が、私にはわからないのです。今も、労働時間だけで評価されているわけではありません。当然、短時間で一定の成果を出した方、このような方については、現行制度でも十分に評価することはできると思うのです。それにもかかわらず、この「新たな労働時間制度」を導入しないと評価ができないといった論理がどうしても理解できませんので、その点についてどうお考えになっているのか、少し教えていただきたいなと思います。

○岩村分科会長 田中委員への御質問ということでしょうか。

○高松委員 どなたでも。

○岩村分科会長 いかがでございますか。

平岡委員のお手が挙がりました。お願いします。

○平岡委員 一つの柔軟化としての裁量労働制を採用している企業としてお答えしたいと思います。裁量労働制の場合ですと、みなし労働時間ということで、ある程度賃金とのリンクが切り離れてはいるわけですが、そうはいいましても、例えば深夜ですとか法定休日ですとか、別に把握して時間外を払うということを行っております。やはり働き方、働く時間帯、本人の選択に任せるわけですが、それによって、いつ働くかによって賃金が変わってくるというのは、成果の評価ですとか、あるいは人に仕事を任せていくときのマネジメントをゆがめる要因であると思っております。成果で処遇ができる方々については、そういった本人の就業時間帯の選択によらず、同じような評価が行われる、そういったことが前提になると考えております。

 以上です。

○岩村分科会長 ありがとうございました。

秋田委員、どうぞ。

○秋田委員 なぜそういう制度が必要なのかということを申し上げますと、例えば人事査定等で成果評価をしますと。それは、日本の大体の企業でいけば、年に1度、人事評価があるということになってます。それでまた翌年に基本給が上がるとか、あるいは役職が上がるとか、資格が上がるとか、そのようなことになると思うのですが、ここで出ているニーズは、そのように、1年先に上がるから君頑張ってくれということでは意欲とかそういうニーズに応えられないというような労働者もいるということでございます。そういうニーズに応えるための選択肢として、もっとダイレクトに成果に反映するような制度があってもいいのではないかということでございます。

○岩村分科会長 新谷委員、どうぞ。

○新谷委員 やはりわからないですね。労働時間と賃金を切り離す制度というのは、おっしゃったように、裁量労働制という形でもう既にできるわけです。また、秋田委員が「人事評価は年1回であるので、成果を出している労働者を十分に評価できない」といったことをおっしゃいましたが、処遇制度の在り方は法律で決まっているわけではありません。それは使用者の皆さんと労働組合が一緒になって処遇制度の在り方を考える中で、成果反映をどういう形でするのかということについては考えておられると思うのです。だから、そういう実態があるのに、「新たな労働時間制度」を導入して労働時間の規制を適用除外とすれば成果に見合った働き方が実現する、といった主張をされるのは、私には理解ができない。

それと、先ほども田中委員がおっしゃったように、生産性が悪い人との関係でいえば、早く帰れる人には所定内で帰ってもらって、その人に1,000万円払っても別にいいわけです。それは企業の中でどう評価するのかという、まさしく評価制度の問題であると思うのです。そのように考えると、生産性の悪い人について労働時間規制を適用除外に、今まで払っていた時間外労働への割増賃金を全く払わないようにする、すなわち、「新たな労働時間制度」を導入する目的とは時間外手当を削減することにあるのではないか、というふうにしか思えないのです。ですから、その辺りについても、使用者側のおっしゃりたいことをもう少し整理していただいてから発言して頂かないと、我々は全く理解ができませんので、一言申し上げておきます。

○岩村分科会長 ありがとうございました。

 神田委員代理、どうぞ。

○神田代理 すみません。代理で出てきておりますが、これからしっかり参画していくという前提で発言させていただきます。今日のお話を伺う中で、客観的なデータの話は、先ほど新谷さんのほうからもありましたけれども、国際比較のデータについては、ぜひ事務局より提出いただくよう、お願いしておきたいと思います。

 それから、経営者側も労働者側も、「安全、健康、安心」というフレーズは一緒だといった発言が冒頭にありました。まさにそのとおりだなと思っているところです。私は実はこの9月から東京へ出てまいりましたが、それまではいわゆる製鉄所の組合長をやっていました。製鉄所では「ご安全に」という言葉を使うのですが、これは地方の労働局も文書で使っている言葉です。この「ご安全に」という言葉の背景にあるのは、「健康と安全があって初めて生き生きとした職場がありますよ」、また、「職場の活力があって企業が発展し、企業の発展があって、私たちの雇用と生活の安心がありますよ」ということだろうなと思います。そのように考えると、今ほどあった「健康と安全と安心」といったフレーズは本当に労使に共通するものだなと感じます。

 また、先ほど新谷委員からも発言があったとおり、「新たな労働時間制度」については、どうもすっきり落ちてこないなあと感じております。人事処遇制度というのは、それぞれの産業、企業、あるいは事業体、そして企業の中で、どうすれば自分のところの従業員が生き生きとやっていけるのかということを考えて作るわけですが、こうしたものは今あるこの労働法制の中でも、あるいは労働時間法制の中でも十分にやっていけるものであり、「新たな労働時間制度」は必要ないのではないか、と先ほど来より受けとめているところです。

 それと、6ページにあるアンケート等を見させてもらいますと、これは少しアンケートのやり方もあるかもしれませんけれども、「一定以上の高い水準の年収が確保されれば労働時間規制を適用除外すべき」と挙げた回答も見受けられますが、けっして労働者の命を削るような事態が起きないように、本当に今ある労働時間法制を含めてしっかりと議論していくべきであります。改めて皆さんにお願いしておきたいのは、「安全、健康、安心」という観点をどう捉えるのかを考えていただきたいということです。これから私も議論に参画させていただきますが、自分の中でもしっかりと整理をして対応していきたいと思っております。

 以上です。

○岩村分科会長 ありがとうございました。

今日、「新たな労働時間制度」について、かなり核心にわたる部分についても御議論いただいたと思います。今日の議論はここまでということにさせていただきたいと思います。

 今日、資料No.1についての御議論の中で、長時間労働抑制策、あるいは年次有給休暇の取得促進策についても御議論を頂戴しまして、また、今後の進め方についても、宮本委員からお話があったところでもございます。先ほど、進め方については座長と事務局で検討してということを申し上げましたけれども、次回については、既に先取りしておりまして、長時間労働抑制策等について御議論いただきたいと考えているところでございます。そういう意味では、先ほど御発言があった宮本委員の御要望に結果としてはお答えするという形になろうかと思います。

 それでは、事務局から次回の日程についての説明をいただきたいと思います。よろしくお願いします。

○古瀬調査官 次回の労働条件分科会の日程・場所につきましては、追って御連絡させていただきます。

○岩村分科会長 ありがとうございます。

それでは、最後に本日の議事録の署名でございます。労働者代表につきましては新谷委員に、使用者代表につきましては秋田委員にそれぞれお願いをいたします。

 それでは、今日の分科会、これで終了させていただきたいと思います。お忙しい中、ありがとうございました。


(了)

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