- ホーム >
- 政策について >
- 審議会・研究会等 >
- 労働基準局が実施する検討会等 >
- 機械譲渡時における機械の危険情報の提供のあり方等に関する検討会 >
- 第2回機械譲渡時における機械の危険情報提供のあり方等に関する検討会 議事録
第2回機械譲渡時における機械の危険情報提供のあり方等に関する検討会 議事録
日時
平成22年6月14日(月)14:00~
場所
経済産業省別館1020会議室(10階)
議事
○安達副主任中央産業安全専門官 定刻になりましたので、第2回の検討会を始めたいと思います。本日はお忙しい中、お集まりいただきましてどうもありがとうございます。第2回の検討会ですが、畑委員は所用でご欠席となっております。労働安全衛生総合研究所の梅崎委員も欠席というご連絡をいただいておりますが、学識経験者として同研究所を代表して参画していただいておりますので、本日は斎藤研究員が臨時委員として参加しております。
○斎藤臨時委員 梅崎の代わりに出席させていただいております。あくまでもオブザーバーとして出席している斎藤です。よろしくお願いします。
○安達副主任中央産業安全専門官 では向殿先生、よろしくお願いします。
○向殿座長 お忙しいところお集まりいただきまして、ありがとうございました。まずは事務局から、資料の説明をお願いいたします。
○安達副主任中央産業安全専門官 それでは資料の確認をいたします。配付資料が5点、参考資料が2点あります。1枚ものの議事次第の次に、少し分厚い「第1回検討会議事録」があります。資料2として1枚紙で、「リスクアセスメントの普及状況」という資料があります。資料3として「残留リスク情報の提供事例」ということで、3-1、3-2の2点の事例を添付しております。資料4として、「第1回検討会の議論を踏まえた論点整理」という資料が出ております。資料5として、「検討会報告書骨子(案)」という1枚紙があります。あとは参考資料として2点あります。これは前回の資料と同様のものですが、「検討会開催要項」が参考資料1です。「参集者名簿」として、参考資料2を添付しております。
○向殿座長 今日は資料4がメインテーマですが、まずは資料1と2について、事務局からご説明をお願いいたします。
○安達副主任中央産業安全専門官 資料1は前回の議事録です。各委員におかれましては、短時間のご確認をどうもありがとうございました。この資料は少し分厚いので、こちらでは詳細にご説明しませんが、資料4の「論点整理」で、前回出た主な資料は反映させておりますので、そちらでご確認いただきたいと思います。
続いて資料2をご覧ください。ポンチ絵が書いてある「リスクアセスメントの普及状況」という資料です。こちらは現在のリスクアセスメントの普及状況についてご説明したものです。上に大きく円が3つあります。これは厚生労働省が平成17年に調査をした、労働安全衛生基本調査結果に基づくものです。この中で規模別のリスクアセスメントの普及状況が調べてあります。調査年度は少し古いのですが、規模別の実施状況の傾向として見ていただけ れば結構かと思います。300人以上の事業場は、数としては非常に少ないのですが、この規模でいきますと大体51%、50人以上300人未満の事業場規模においては25%です。あと、事業場数として最も多い労働者数10人から50人未満の事業場においては、20%弱という規模別の状況になっております。
左下にもう1点、直近の実施状況をもう少し詳しく調べたものがあります。こちらは全国50人以上の事業場のうち、私どもの第一線機関の監督署において4,000数事業場に対し、個別にリスクアセスメントの実施状況を調査したものです。調査結果を見ますと、「リスクアセスメントを実施している」と回答したのが38.1%、「実施を準備中」が14.2%、「実施予定」が25.6%、「予定なし」が22.1%となっております。以上のことから、特に「実施準備中」と「実施予定中」を合わせたものが、全体の大体4割を占めております。この層が今後リスクアセスメントに取り組むことによって、一層の災害減少が見込めます。今回の制度化に当たっては、こういった層へのアプローチをどうするかということも、念頭に置く必要があると考えております。
○向殿座長 資料1、資料2をご説明いただきましたが、よろしいですね。40%以上はこれからやろうとしているところですので、非常に有効ないい時期だと思います。それでは資料4の「論点整理」です。資料3にリスクアセスメントのいろいろな提供例があります。これは資料4の中で説明するのですね。これは前回と同じで、第1と第2の2つのグループに分かれています。第1の中に論点1から論点5まであります。まずは資料4について、また安達さんからご説明をお願いいたします。
○安達副主任中央産業安全専門官 前回、非常に活発なご意見をいただきましてありがとうございました。また、前回の検討会終了後も、多くの委員からいろいろなご意見をいただきました。時間の関係上、十分反映し切れていない部分もあるかもしれませんが、ご容赦いただきたいと思います。
第1の論点としては、「機械の危険情報の提供のあり方」ということで、論点を細かく5点に再整理しております。後段の論点の第2は、「機械の危険情報の提供制度の効果的な運用について」として3点の論点があります。まずは「提供のあり方」の5つの論点についてご説明したいと思います。
1つ目の論点は、機械メーカーが機械ユーザーに機械の危険情報を提供することが、機械ユーザーにとってどのように効果的又は有効なものであるかということです。ここで「検討の方向性」と書いてあるのは、前回の議論でおおむねコンセンサスが得られたものや、さらなる議論が必要と思われた点を抽出しております。1つ目としては、機械ユーザーのリスクアセスメントに必要な情報である、機械の危険情報を適切にユーザーに提供した結果、ユーザーにおいてリスクアセスメントが行われるならば、労働災害の減少効果が見込めることから、機械の危険情報の提供とユーザーからの新たなリスク情報などのフィードバック、この相互のリスクコミュニケーションを進めることが効果的であることがまず確認されました。
この点については、コンセンサスが得られたと考えております。一方、施策として展開するには、この情報がユーザーにとって効果的なものであり、かつ実効性が確保されることが必要とされました。情報として十分であるか、十分に使いこなせるものか、そういったご意見があったかと思います。
「主な意見」ということで、議論のうち主な意見を抜粋しております。アとして、詳細な情報を提供しても労働安全衛生法第28条の2を実施する上で有効に活用できるものか、ユーザーが十分に使いこなせるものであるかを見極める必要があるというご意見がありました。イとして、ユーザーの特性です。これは事業場の規模や実施能力を踏まえて、実効性のあるものとする必要があるとされました。資料2にあった規模別の実施状況も、少し念頭に置く必要があるということだと思います。ウとして、提供された情報についてはユーザーで活用されなければ意味がない、ユーザーの具体的なリスク低減に寄与できるものでなければならないという話もありました。エとして、国際比較についてご意見がありました。EUのような機械の流通規制の観点からではなく、労働安全衛生法の枠組で考えることにも留意する必要があり、単純に真似をすることはできないということであったと思います。
2頁です。論点の大きな2は、機械ユーザーがリスクアセスメントを実施する際に必要な情報とは何かということでした。「検討の方向性」として、1番目では非常に多様な意見をいただきました。論点1で述べたとおり、有効に活用されるためには、まず情報を使用するユーザーの特性にも配慮する必要があるというご意見でした。2番目として、リスクアセスメントにこれから取り組もうとするユーザーに対しては、このような情報の入手が取組の契機となるだろうというご意見です。あと、総じてユーザーのリスクアセスメントに必須の情報とは何か、つまり次の論点である残留リスクの範囲等を明らかにしておくことが必要であろうというご意見でした。3番目として、こういった必須の情報と、ユーザーの要求に応じた必要な情報を区分し、使用目的に応じた提供が行われるようにすることも効果的ではないかというご意見がありました。4番目として、仮にメーカーの企業機密に係る情報がユーザーにとって必要となる場合には、当事者間の契約等に基づいて、提供する情報の範囲を決定することが適当ではないかというご意見がありました。5番目として、こういった情報の程度論と言いますか、範囲のお話があった中で、このような取組を展開する際に先進的な機械メーカー等については、別途、「機械包括安全指針別表第5」に基づく全般的な取組の推進を図っていくことも、当然言うまでもなく、段階的に全体の底上げを図っていく必要があるのではないかというご意見でした。
「主な意見」です。1つ目として、リスクアセスメントに必須の情報というのがありました。必須の情報としては、まず情報の内容を少し絞り込んだらどうかというご意見がありました。一方で、「機械包括安全指針別表第5」の項目すべてを提供すべきではないかというご意見もありました。この点については、指針では警告ラベル等の多様な提供を許容しているもので、ここでは論点4にある提供の方法、情報の一覧性といったものを検討しているという違いにも、留意する必要があるというご意見でした。必須以外の情報等は、要求されたら提出するという整理もあるのではないかというご意見もありました。メーカー・ユーザー双方のニーズに応じ、2段階又は複数段階の提供もあるのではないかというご意見もありました。
2として、本質的安全設計方策が講じられた危険源の情報の取扱いについても、多くのご意見がありました。アでは、メーカー段階で本質的安全設計方策が施されたリスクについては、許容できない残留リスクがないということであるならば、一義的に提供の必要はないとのご意見が多くありました。一方、そのリスクのハザードを提供すべきという意見もあり、これについては無条件に提供するのではなく、ユーザーのリスクアセスメントに必要であるとの要求に応じ、開示していくのが適当ではないかというご意見がありました。
3頁です。2の本質的安全設計方策にかかわる部分で、企業機密にかかわる情報である場合、当該情報が必要であるならば守秘義務を締結するなど、当事者間の契約の下で提供すべきであるとのご意見がありました。なお、本質的安全設計に係る部分であっても、ユーザーに危険源の情報を伝える必要がある場合もあるものの、一律に提供することまでは要さないのではないかというご意見もありました。本質的安全設計方策が施された箇所の危険源情報が必要になる場合は、機械の修理・保全をする場合が考えられるが、当該作業はメーカーが担う場合とユーザーが担う場合があることにも、留意する必要があるというご意見がありました。
大きな3番としては、用語の定義です。本検討会では「機械の危険情報」とか「残留リスク」という用語が使われておりますが、この用語の適否やその意味する範囲について、いろいろな意見がありました。適切にその趣旨が伝えられるものとすることが望ましいとのご意見がありました。これらが論点の2つ目です。
4頁です。3つ目の論点としては、いまの論点2に関連するのですが、機械の危険情報のうち、残留リスク情報として必要な項目は何かということでした。「検討の方向性」です。1つ目として、法第28条の2に基づくリスクアセスメント指針においては、機械ユーザーのリスクアセスメントの実施に当たり、機械メーカーから使用する機械設備に係る危険性又は有害性に関する情報を入手するよう求めています。機械ユーザーのリスクアセスメントに必要な情報である残留リスクについて議論をしたところ、さまざまなご意見が出されたところです。
2つ目として、残留リスク情報の作成プロセスは危険源に対し、メーカーが防護措置を講じ、残ったリスクは何かというケガ・疾病に至るまでのストーリーを作成していくこととされたところです。ここでユーザーが必要とする情報というのは、JIS等に定義があるとおり、危険源の危害のひどさと、その危害の発生確立を組み合わせた情報とされました。一方で、この具体的な情報は何かということも、また議論を深めていく必要があるというご意見でした。
3つ目として、残留リスクの必須の情報の範囲としては、現行のメーカーの取組事例から見て、例えば対象とする作業を運転作業、点検・保全作業など、ユーザーにとって優先順位の高いものを必ず含めるという整理ができないか、また残留リスクに基づき、ユーザーが行うべき防護方策のうち、安全防護、付加的防護、個人用保護具の使用に係る情報も必ず含めるという整理ができないかといったご意見もありました。
4つ目として、ユーザーの実効性を確保するという視点に、引き続き配慮することが必要であるというご意見でした。
途中ですが、ここで資料3をご説明したいと思います。前回、残留リスクの範囲について議論をしたところ、具体的な提供方法のイメージが湧かないというお話がありました。資料3-1と資料3-2は各種調査研究の取り上げられたリスクアセスメントの実施事例をピックアップしたものです。ですから、この事例が良いとか悪いということではなくて、イメージを持っていただければと考えております。
まず資料3-1です。これは鉄鋼業B社が情報提供を受けたリスクアセスメント事例です。鉄鋼業のユーザーであるB社がメーカーからNC加工機を購入した際に、どのような情報をもらったかというものです。具体的に2頁をご覧ください。「残留リスク情報の詳細」です。これは実際にユーザーに提供した情報です。これが十分か不十分かということは別として、メーカーの方でどういった作業にはどういった危険があるか、どういった注意事項が必要で、どのような回避方法が必要かという形で情報提供をしたという事例です。ユーザーにおいては作業手順などに反映して活用したというようになっております。
もう1点は資料3-2です。これは合板を切断する切断機へ材料を投入するロール機のような投入機の残留リスク情報です。いろいろな機械のリスクアセスメントのやり方を見ていますと、このシートは割合よく使われているシートです。左から危険な動作あるいは危険状態、危険事象、リスクを見積り、あるいは低減させたプロセスが書いてあります。そして右端にありますように、残留リスクの回避の方法といった一連のものが、メーカー段階で実施されています。
こういった取組で、実際の残留リスク情報にはどういうものがあるかというと、資料の3枚目をご覧ください。この投入機の残留リスク情報を抜粋したものがこちらです。例えば上から4つ目の運転中の作業においては、装置のフレームに身体がはさまれる恐れがある。回避の方法としては、危険区域の安全柵の設置とか、別の項目では耳栓等保護具を付けて作業を行うとか、ユーザーにおける作業管理に必要な情報が出ております。各種調査研究における事例のシートの中では、1枚目、2枚目のようなメーカー段階でのシートを作るケースが、かなり一般的に見られるところです。
こういった実際の取組事例なども見ながら、資料4に戻って、「主な意見」です。この辺りは非常にたくさんのご意見をいただきました。1つ目として、リスクアセスメントの実施に当たっての必須の残留リスク情報の項目です。アですが、ユーザーが必要とする情報とはJISの定義にもあるとおり、機械源の危害のひどさ、その発生確立を組み合わせた情報ではないかというご意見です。
2として、一方で危険源情報をどう考えるかということです。例えばパワーショベルは、それ自体が重いとかパワーがあるという危険源があります。こういった危険源自体を提供するかどうかということで、危険源とするかリスクとするかという話もありました。残留リスクについては、危険源に対しては危ないのである防護措置を講じたが、リスクが残っているという災害発生シナリオを書いていくことだろう、というご意見もありました。こういった取組については、メーカーとユーザーが議論し合うことが必要であるというお話がありました。危険源で見ると、すべてについて記載するのは難しいのではないかというご意見もありました。ユーザーが知り得ることが困難なリスクについては、メーカーが提供可能な情報であるならば、当然提供すべきであるというお話もありました。
5頁です。リスクのレベルの話もありました。アの危害の大きさにより、提供すべき情報か否かの分類ができないかという考え方については、リスクの大きさによらず、情報提供をしてほしいというご意見がありました。また、この意見については実効性を保つのは難しいのではないかというご意見もありました。リスクに関しては、危害の大きさと危険源の大きさを混同してはいけないというお話がありました。例えば鉄粉が飛んでくるようなものについては、身体に当たる場合と目に当たる場合と重篤度が異なる、つまりユーザー段階でリスクが異なることから、メーカー段階においてどこまで情報を求めるかということも考えておかなければいけないというご意見でした。ウの講ずべき方策の内容については、ユーザーにおけるリスクの見積もりに応じて変わり得ることから、特定することはできないが、想定される保護方策を提供することは効果的であろうというご意見でした。
(3)は危険源の情報についてです。残留リスクではなく、危険源の大きいものは情報としてほしいというご意見がありました。発生頻度が極めて小さくても発生する恐れがあり、頻度はユーザーで決定される理由によるというご意見でした。この意見についてはユーザー>における安全を確保するために、メーカーは合理的なアシストを行う必要があるとのご意見もありました。危険源自体の大きさでいきますと、エネルギー、速度、有害性などに応じて区分できるのではないかというご意見でした。
2の実効性の確保については、若干重複になりますが、アとして、情報提供はユーザーにおける機械労働災害防止のために行うものであり、その目的にかなった内容であるかを、まず精査する必要があるのではないかというご意見でした。イとして、ユーザーが効果的に活用できるものとする必要があるのではないか、ウとして、設計者が行うリスクアセスメントはユーザーから事前に与えられる情報量、例えばユーザーにおける使用状況・頻度によって、その精度が向上するのではないかというご意見でした。
3はハザードの種類についてです。安全関係のハザードのみならず、エルゴノミックス系などの労働衛生の観点からの中長期的に発病するリスクをどう考えるかというご提案がありました。現在はあまり考慮されていないが、発病すれば重態となる恐れのあるものもある。
一方で、すべてのハザードに対処することはなかなか困難ではないかというご意見もありました。
6頁が論点4です。これはどのように情報提供すべきかというものです。「検討の方向性」ですが、どのような危害がどのような時に発生するか、どのような対応が必要かという情報を明瞭に一覧できるものにすることが、ユーザーにとって使いやすいとされました。この点については特段、ご異論はなかったかと思います。ただしイメージしにくいので、普及に際しては具体的な例示をすることが必要であるとされました。
「主な意見」です。1の具体的な提供方法のアでは、イメージしにくいので例示する必要があろうと。特に簡潔明瞭のみならず、どのような危害がどのようなときに発生するか、どのような対応が必要かという情報を、明瞭一覧できるものに融合するというイメージが、なかなかしにくいというご意見でした。あと、フォーマットについてのお話もありました。限定的なものではなくて多少柔軟なものにして、使いやすい雛形を与えておくことが良いのではないかと。この雛形には必須のものが記入できるようにしておく必要があるというご意見でした。
(2)として情報の一覧性、別途交付ということでした。危険情報をバラバラではなく、一覧表の状態が使いやすい、取扱説明書と別途にという位置づけは、現場で使いやすいものであり、かつ現場でも紛失しにくいということに留意する必要があるということでした。ウとしてアンケート結果から、ユーザーにて残留リスク情報を受け取ったという認識されないケースが多いことから、ユーザーが明確に認識できるような示し方が必要であり、取扱説明書とセットにする場合で一覧性を確保し、わかりやすい所に添付するとよいのではないかというご意見でした。
7頁の2は、情報提供が必要となる場面です。アとして、機械の新規譲渡時のみならず、実際の機械の流通というのは、中古品や海外からの輸入品の取扱いもあります。これは今すぐということではなかったかと思いますが、一定の整理が必要であろうというご意見でした。
イでは、機械にすべての段階、製造、設置、運搬、廃棄などにかかわる事業者がすべて法28条の2の義務対象となるならば、すべての段階で情報が必要とのご意見がありました。
8頁が論点5です。機械の危険情報が提供されるべき機械はどのようなものかという、機械の範囲についてでした。これは総じて検討の方向にありますが、リスクアセスメントの促進、ひいては労働災害防止という目的に照らして、基本的に労働現場で使用される機械が、ユーザーに譲渡される場合を考えればよいのではないかというご意見でした。意見として、除外すべき範囲があるかどうかというところでは、アとして、EU機械指令においても除外されている機械があり、対象機械としては、そのことも考慮する必要があるのではないかというご意見でした。括弧内にその例示が書いてあります。イとして、労働安全衛生法令で規定されている特定機械等は、除外できるのではというご意見がありました。
2番目が、労働安全と消費者安全の観点についてです。アとして、主として一般消費者の用に供する機械等とのデマケについては、労働安全のために労働者が使う機械に限ると考えられる、また、厚生労働省の施策であるので、労働安全衛生法での範囲で考えるべきであり、制度の運用の効率化も考慮すべきであるとされました。イとして、一般消費者向けではなく、B to Bの契約下で納入される機械が主となるのではないかというご意見がありました。参考1では化学物質のMSDSの法条文を参考に書いてあります。ただし書きにありますように、化学物質のうち、主として一般消費者の生活の用に供される製品というものは、この限りでないということで除外されているという状況です。大変駆け足の説明で恐縮ですが、大きな5つの論点でした。
○向殿座長 「論点整理」をまとめた資料4の第1グループと第2グループとあるうち、いま第1グループの話をしました。それでは一つひとついきましょう。まず1番、機械メーカー側がユーザー側に機械の危険情報を提供することは、機械のユーザーにとってどのように効果的又は有効的かという話です。これについて、何かご意見等はありますか。よろしいですか。ここで言っていることは、メーカー側からユーザー側にちゃんと機械の情報をいただければ、ユーザー側のリスクアセスメントは非常に効果的にできるし、労働災害を減らすことができると。逆に言うと労働災害というのは、現場で得たいろいろな情報をメーカー側にフィードバックすることによって、お互いにリスクコミュニケーションがうまくいくだろうという内容ですね。これは明らかに有効だろうと思って、我々は一生懸命やってきているわけで、あまり提供の仕方が悪いと使ってもらえないということは注意すべきだというのは聞いています。どうですか、折角ですから。
○高岡委員 1番とは直接関係がないのですが、前回の検討会が終わってから考えたことです。この場というのは、事業者あるいは労働者の立場での検討会ですから、こういう論点の整理でいいと思うのです。しかし残留リスクを提供するメーカー側のメリットを考えておかないと、有効に提供されないのではないかと思います。私は法律家ではないのでよく分からないのですが、例えば残留リスクを明示したことによって、その対応がメーカーからユーザーに移るということが明確であれば、メーカーは残留リスクを提供しやすくなると思うのです。そうでなくて、いくら提供してもメーカー側に責任が残ってしまうのであれば、それはメーカーにとってあまりメリットがないので、残留リスクの明示ということに積極的にはならないのではないかと思うのです。その点も少し考えておく必要があるのではないかと思います。
○向殿座長 いままでの論点はユーザー側に、労働災害を減らすためには有効であるから、是非機械メーカー側も協力してちゃんと出してくれ、それについては法律である程度規制するというか、明示するから従いなさいというイメージだけれども、いまのお話は、出す機械メーカー側にとってもメリットというか、喜んで出すようにするためには、残留リスクはここだと明示したならば、それに従っておきた事故その他についてのメーカー側の責任は、ある程度軽減されるとか、そういう法律的な対応をしっかりしていれば、メーカー側も喜んでちゃんと出すだろうということですね。
○高岡委員 そういうことだと思うのです。
○向殿座長 これは弁護士の話とか、きっといろいろな話が出てくるでしょうね。
○佐藤委員 私もメーカーなのですが、メーカーとしても都合の良すぎる話のような気がしますね。ですから、もう少し考える必要があろうと思います。
○石坂委員 リスクコミュニケーションというものが、ここの根底にはあるわけです。どういうときにリスクコミュニケーションがあるかというと、まず理想的に言えば、購入交渉時においてユーザーがきちんと安全条件を提示できるようになっていけば、いちばん理想的なわけです。それでメーカーがその条件に合わせて、こうだよ、でもその機能をやるとどうしてもこれだけのリスクが残ると。しかしユーザーのほうが、生産に必要だからその機能は是非入れたいと。例えばそのリスクに関して、少し高いリスクがあるとすれば、労働者を教育して資格を与えた人だけに使わせようかなとか、いろいろなバリアを設けて、そういうことが起こらないように施すから、やはり提供してほしいという形で合意がなる。そこのやり取りが一種の契約交渉時のリスクコミュニケーションです。
今度は実際に物を作って引き渡したとき、「譲渡時」と言っていいでしょうか。それが最終的にやった結果として、こういう残留リスクになりました、契約時の交渉からちょっと修正が加わりますが、こうですよと。そうすると、そこでリスク情報が本当に相手に引き渡されるわけです。これは杉本先生がよく言われることですが、リスクコミュニケーションでリスク情報を伝達するということは、「責任の伝達」なのだと。譲渡時に情報を渡してそれを受け取ったということは、そのリスクで我々はやりますよということなのです。
前回、中災防の委員会で出されたもので、リスクアセスメントをしなくても情報はほしいと。もらっているうちの6%ぐらいしかやらないということは、厳密に言うと本当は非常に厳しい危険なことなのです。そこをもらっておいて何もアンサーバックもしないで、そのままだったら、それはもう了解したことになりますから、現場で事故が起こったときに、「これは機械の責任だ」と言って民事訴訟になっても、何もリアクションがなかったではないか、これはもうユーザー側がそれを是としてOKしてしまったということになってしまうと思うのです。そういうことは不幸なことです。
ただ、情報を多く与えておけば、ある意味、メーカーはそれでもって責任を果たして相手に受け渡したことになるので、身を守るわけです。その代わり、メーカーにとって出したくないいろいろな性能にかかわる情報も出てしまうから、そこの兼合いがあるでしょう。これはどちらが良いか悪いかではなくて、単にメリット論でいけば、メーカーにとってはそういう責任の引渡しができるし、ユーザーもいっぱいもらうということは、それだけ責任を引き取ることでもあるのです。ですから、そこのこともよく認識しながらやる。使いもしないのに、いろいろな情報を持っても放置するということは、ユーザーにとってもあまりよろしくないことです。やはり実効性のあるものにするということが、メーカーとユーザー双方にとって、メリットのある情報の引渡しだろうと私は思うのです。
ここのメンバーは高岡さんにしろ宮川さんにしろ、ユーザーとしてはある意味では理想的な、よくやっているトップクラスのユーザーの立場でしょうから、よりシャープな高度な情報をもらえれば、それをしっかりと活かす術があるし、体制もある所です。しかし多くの場合がそうでないとすると、そういう問題もよくよく考慮しながら、やはり実効性のある情報の引渡しを考える必要があるというのが、私の意見です。
蛇足ですが、リスクコミュニケーションで言えば、前回ここにも資料がありましたように、ユーザーのほうに引き渡された後、稼働後のいろいろな不具合発生などの情報、危険事象の問題あるいは想定外の事象ということも含めて情報をフィードバックすれば、よりメーカーとユーザーの間で安全の向上につながる、いいコミュニケーションだと思います。譲渡時の問題で言うと先ほどのことがあるので、実効性という部分ではそういうことも少し念頭に置く必要があるだろうと思います。
○宮川委員 いま石坂さんが言われたように、コストの面も含めて、やはりメーカーがやったことの妥当性を主張することでしょうね。先回もお話いたしましたが、本質的安全まで下げたようなところも含めて主張するというメリットはあると思います。それから当然、メーカーも労働安全衛生法第3条第2項の適用を受けるわけです。安全配慮義務を果たしたと主張する根拠になるということは間違いないと思うのです。そこは明確にしておかなければいけない。先ほど石坂さんが言われた実効性というところが、私はうまく理解できなかったのです。一生懸命リスクアセスメントをやっているから、そういう所はきちんと情報を出してもいいだろう、そうでない所は適当にというような表現で言われたら、若干意見があるのですが、そういう意味ではないですよね。
○石坂委員 違います。実効性というのは、別なニュアンスも1つあるのです。厚生労働省という政府がこういう制度を作ると、それが本当にちゃんと回っていることが必要でしょう。その法律を出しただけで後は知らないということになると、やはりそれは無責任だろうと。通達や指針もそうです。そういうことが本当にちゃんと回っているように動かし得るのか、そういうものを作ってやったけれども、実際には行われないと。つまり実効性というのは、実際に行う意味での実行性もあるだろうと思っているのです。もう1つは、「有効」の「効」のほうです。情報提供したものが本当に使われる情報になるのか。
○佐藤委員 結局、日本を考えると、機械安全に対してユーザーとメーカーのどちらが理解しているかです。ユーザーというのは、日本国内にしかいないわけですよね。そこがいつも言うことです。根本的に機械安全の醸成が必要だ、足りないというのは、いまの日本のメーカーというのは、ほとんど輸出が多いわけです。輸出をしていると、どうしても機械安全というのは避けて通れない。ですからメーカーというのはある程度、残念ながらユーザーと比べると、機械安全に対する認識が非常に高いわけです。今日出ていらっしゃるユーザーさんは一流企業ですから、全然問題ないのですが、特に中小企業云々ということも後ろのほうに書かれていましたので、そういう実情を考えると、情報は全部与えました、それでいいのですねというような無責任なことは、実際問題として石坂さんが言われたように、非常に実効性がないという感じがします。ですから、その辺をもう少しきちんと配慮する必要があるでしょう。
○向殿座長 おっしゃるとおりですね。先ほどはたまたまユーザー側としてメーカー側のことをおもんぱかって言われたけれども、逆に言うとそんなに情報をもらっても、「後の責任はユーザー側」と言われたらユーザーは、「じゃあ、要らないよ。はっきりさせないでくれ。」と、当然逆手に出てきますからね。そうではなくて全体を上げようという話のところで、いまの話を表に出すとなると、なかなか難しいことになりますね。
○宮川委員 佐藤さんも石坂さんも言われたように、やはり情報を提供するだけではなくて、使いこなせるようなアプローチが必要であり、つまり「使いこなせる情報ソフト」が必要ということです。
○石坂委員 そういうことです。
○向殿座長 本来、そういうことですね。それに対して厚生労働省がちゃんと定着するように努力してほしい、という石坂さんの話も入っています。私が国際会議でISOの機械安全規格が出来たときのデータを見ると、メーカー側の責任とユーザー側の責任をちゃんとはっきりさせたいというのがバックにありました。そしてメーカーがやるべきことをやって合意したならば、ユーザー側はそれをちゃんと受け取って自分の責任でやってくれと。それで事故が起きた場合は、合意したところの先まで、メーカーまで戻らないようにしようというのがバックにあったと、私は議論をしていて思ったのです。ただ、日本でそのまま使えるかというと、日本国内ではそう簡単ではないと思っています。メーカー側とユーザー側が非常に密着してお互いにコミュニケーションができる、ある意味ではいい環境にあるので、そこでリスクコミニュケーションをしながら、お互いの労働安全を上げていこうというところに主要目的があるように私は思います。どうですか。
○安達副主任中央産業安全専門官 高岡委員の先ほどのご指摘に、責任の移動を法制化というお話がありました。
○高岡委員 いやいや、法制化とまでは言わないですが、メーカーのメリットがどこにあるかというのを考えておく必要があるかなということです。
○安達副主任中央産業安全専門官 わかりました。確かに労働安全という視点の中でそのことを法制化というのは、なかなか難しいと思うのですが、やはりこの制度を動かしていくメリットというものは、当然考えていかなければいけない。その点は第2の論点として、またご議論いただきたいと思います。
○向殿座長 いろいろな問題点があって、考えるべきことはたくさんあるけれども、メーカー側が危険情報というか、残留リスクをちゃんとユーザー側に提供するということは、日本の労働安全も含めて、機械安全も含めて、大変いい方向であるということは、皆さん意見が一致していると思います。その中で考えるべきことはいくつかあります。責任の話、その法制化の話になると、そう単純ではないのではないかという感じがしますね。その場合には契約で、残留リスクは本当にこれでいいのかという合意をお互いにするという話になって、たぶん非常に難しい問題が起きると思うのです。ただいまの議論の中で論点1に関しては、効果的、有効的なやり方で、こういうことに注意しながらやりましょうと。特に中小企業なども含めて使いこなせるかどうかという視点は、大変大事だということですね。ちょっと中途半端な気もしますが、方向性としてはこの辺でいいですか。
○石坂委員 あと、資料2で先ほど安達さんが言われたことですが。
○向殿座長 「普及状況」ですね。
○石坂委員 今回の情報提供というのは、あらゆる事業規模の全体のと言うよりも、平成21年の下の円グラフのうち、「実施予定」25.6%、「実施準備中」14.2%の層を、よりリスクアセスメント実行に向かわせることが、当面非常に効果的であると。こういうところに焦点を当てることも一つあるというニュアンスだったように、私は受け取ったのです。もっと議論をしないうちにそういうことを言うのは別として、折角この資料2が出たので、そういうように見ているのですが、安達さん、そういうことで理解してよろしいのでしょうか。
○安達副主任中央産業安全専門官 別の調査においても、リスクアセスメントを実施しているユーザーとしていないユーザーの労働災害の年千人率の比較などがあって、例えば、実施していない方が発生率が2倍程度あるとか。
○向殿座長 ユーザーでリスクアセスメントをやっているほうが、グッといいというデータもありますからね。
○安達副主任中央産業安全専門官 リスクアセスメントをしているということは、もちろん安全に対する理解が高いということもあるのですが、全体を引き上げるということもありますし、いま石坂委員から言われた、「実施準備中」のユーザーの背中をうまく押すというのも、政策としては非常に効果的だと思います。
○宮川委員 感覚的な話で申し訳ないのですが、この背景(資料2のリスクアセスメント普及状況)について。日本の労働災害の多くは、中小企業で占められると言われています。それは間違いないのです。大企業は少ないと言われています。しかし逆に個々の事業場単位で見ますと、例えば1年間に1件も災害を経験したことのない事業場の数はというと、残念ながら大手企業高岡さんの所も弊社も、1年に何件かは経験しているでしょう。
○高岡委員 経験しています。
○宮川委員 この辺のクラス(300名以上50名未満)になってくると、10年に1件などとなってきて、特にここら辺(50名未満)になってくると、おそらく20年に1件というイメージになってくるわけです。先ほど佐藤さんが「機械安全の意識が低い」と言われたけれども、その背景が実はこの点にあるのです。その背景を打破するためにリスクの概念で考える必要があるということです。
リスクアセスメントの話を頼まれるときに「トヨタのような程度の高いリスクアセスメントの話はしてくれるな。宮川は中小企業を相手に、豊田労基協会でリスクアセスメント推進委員会をやっているだろから、その話をして欲しい」とよく言われます。この発言に対して私はいつも言っているのです。先回も言いましたが、「リスクアセスメントというのは、災害の発生のプロセスで行うものです。このプロセスで災害が発生することは大企業も、中小企業も、零細企業も、父ちゃん母ちゃんの家内企業も変わらない」と言います。ですからアセスメントのプロセスはきちんとやろうねと。見積もりのレベルは情報量などによってバラつきがある。しかしアセスメントのプロセスがしっかりしていれば、議論をすればある程度通じる部分があるのです。災害発生のプロセスで見るということです。こういう言い方をしてはいけないのですが、災害の経験が少ない人たちに対しては、やはりきちんと災害の発生過程で見るということのほうが重要だと思うのです。どうでしょうか。
○高岡委員 危険源の明確化に重きを置くべきだということですね。
○宮川委員 そういうことです。どういうようにして災害が起きているかということです。
○高岡委員 それはやはりメーカーからの情報が重要だということですね。
○向殿座長 確かにここの見方はそうです。大きいほうがリスクアセスメントをちゃんとやっているとは言うけれども、従業員が多いから、事故に遭う確率も高くなっているという話ですよね。中小のほうは人数が少ないから、何年に1回というか、10年に1回しか起きない。そういう意味では経験していないということになります。
○宮川委員 極端な話、死亡災害などが起きて労災防止指導等で企業に行きますと「創業以来初めて起きました」と言うのですが、その創業が大正年代の場合もあります。トヨタ自動車の創業より古いのです。
○向殿座長 全体的にリスクアセスメントは非常に重要だと。中小もどこも変わりなく、全部必要だという意見は非常にごもっともです。ただ、やり方としては大手に対するリスクアセスメントの内容の話と、中小に対するやり方とでは、少し焦点を変える必要があるということですか。
○宮川委員 ベース(アセスメントのプロセス)は一緒だと思います。ベースは変わらないということです。
○佐藤委員 そういう意味では、日機連の機械安全リスクアセスメントの調査のときに、イギリスなどの先進国に調査に行ったことがあります。HSEで「5 steps to risk assessment -CASE STUDIES」というリスクアセスメントの実施例というか、どういうようにするのかという中小企業向けの簡単なガイドがあるのです。そういったものを作って配布すれば、そういう所の底上げには非常に役に立つのではないでしょうか。その辺が日本でいちばん欠けているところです。大企業はISO 12000でも読んでいればみんな分かるわけです。
○向殿座長 リスクアセスメントは非常に重要で、中小も大手もない、特にベースはほとんど同じだと。ただ、中小などにはガイドをちゃんと親切に作って、導入の手助けをするという視点が大事だということですね。わかりました。この点については、大体この辺でよろしいですかね。
では論点の2に行きましょう。機械ユーザー側がリスクアセスメントを実施する際に必要な情報とは何か、何が必要かということです。先ほどのお話を聞いてみると、この中の分け方は必須であるような情報と、ここまでは要らないのではないか、場合によっては付加的な情報ではないかという話もここには入っています。情報を使用するユーザーの特性も十分に考えろと書いてありますね。これについて何かご意見はありますか。
○宮川委員 先回もお願いしましたが、リスクは残留リスクだけではなくて、「別表5」の情報がほしいのです。例えば法第28条の2でもリスクアセスメントをやって、まずは法律を遵守して、それ以外に必要な措置を講じろと言っているわけです。異論があったら高岡さん、また後で意見を言ってほしいのですが、ユーザーは何をやるかというと、まずはこの機械が法律に適合するかどうかです。そのためには何が要るかというと、まず法律は特定機械とか、機械ごとに適用している部分がありますから、それに該当するか該当しないかということです。クレーンに該当するのか、エレベーターなのか、プレスなのか、あるいは、危険物乾燥設備なのか、一般の乾燥設備なのかということを判断しなければいけないのです。そうすると、構造や性能などの情報も欲しいわけです。
また、使用上の制限というのもあります。法律の中には、作業内容によって法規制しているものもありますので、どういう人たちにどういう作業管理が必要かという様なことを検討し、決定しなければいけません。安全防護についても、特定機械の絡みになるのでしょうけれども、検定を受けている安全装置かどうか、防護の機能がこれで本当にいいのかどうかとか。リスクに関係なく法律が適用されますから、法対応の観点からは残留リスクの情報は関係ないのです。安全プレスも法律が適用されるわけです。安全プレスは、極めて低いリスクの低いプレス機ということでいいですよね。しかし法律は適用されるわけです。
もう1つは、どこかに散りばめられているのかもしれないけれども、別表5にはない危険源に関する情報が欲しいのです。これは先回、高岡さんとも言ったことです。危険源については法律の中にも、はさまれたとか、感電だとか、爆発火災だとか、全設備に適用される項目が結構あるわけです。衛生関係でも有機溶剤を使うとか、全部設備に適用されるわけです。ですから、どういう危険源があるのか、そこから適用される法律は何なのか、必要な就業制限をどうするのかです。また、就業制限の中でも知識・技能だけではなくて、健康管理面での就業管理もしなければいけない。難聴やじん肺などを見るとそうなってきますので、そういうことをやっていかなければいけないのです。そうすると、やはり残留リスクだけではなくて、危険源情報がほしいのです。
2点目は許容不可能であり物的リスク低減策を講じて許容可としたリスクも、ユーザーとして妥当性確認のためにほしい。そして残された防護できないリスクは人でカバーしなければいけないので、やるべきルールを決めなければいけないというのが3点目にあります。もう1つは、安全防護の機能を維持しなければいけませんので、そのニーズ、必要性、そのやり方を決めるために、やはり防護装置の情報はほしいわけです。私たちユーザーとしてやらなければいけない主な項目は、この4点ぐらいあるので、それはやはりきちんと分かるように情報をもらわないと、ユーザーとしてはたまったものではない。「メーカーさんから情報提供がなかったから知りませんでした。やりませんでした」と言ったときに、厚生労働省や労働基準監督署が許してくれるかといったら、そうではないですから、ここのところはもう一度ご確認いただきたいと思うのですが、いかがでしょうか。
○向殿座長 もっと出せ、出すべきだということですね。
○宮川委員 きちんと出してほしいということです。
○石坂委員 基本的には理解できるのですが、こう思うのです。いまは2項の話をしているけれども、3項にも全くある話です。要するに、今回は残留リスク情報をきちんと伝えようということです。3の2番目にありますように、ここでユーザーが必要とする情報とは、JIS等の定義にもあるとおりの危険源の危害のひどさと、その危害の発生確率を組み合わせた情報とされたと。つまり、ある程度考慮すべき残留リスクについて残留リスクとしたときに、残留リスク情報はそこにかかわるハザードのことまで言及しないと伝わらないものは当然入るのです。ですから「ハザードは全部出せ」という言い方ではなくて、「残留リスク情報として出せ」と言えば、自ずと必要なハザードは入るのだろうと思うのです。そういうように私は理解します。
○宮川委員 先回も言ったかと思うのですが、メーカーはメーカーのシェアの中で標準的な範囲の中で前提条件を決めてリスクアセスメントをやって決めていきますよね。それで、これぐらいならば許容できるし、可能ですということでいけますよね。ところが受けるユーザーとしては、自分たちの職場の実態に合わせて、本当にそれが許容できるかどうかを決めていかなければいけないのです。そのときは、やはり先ほど言ったような仕様や性能などの情報がないと、その適否の判断というのができないのです。どこで判断するのか、何をベースに判断するのか。
○石坂委員 私に言わせると、そこまで情報がほしいのなら、購入時にそういう要求をきちんとやって、契約のときにやっておくべきではないですか。
○宮川委員 いまは機械包括安全指針をベース検討しているから。機械包括安全指針もスペックに関するもの、使用上の情報に関するもの、防護に関するもの、そして残留リスクと分けて、その残留リスクの中での話をしているのです。
○石坂委員 そうです。ですから残留リスクとして情報を出さなければいけない。出せば関連するハザードは当然説明しないと、リスク情報が説明できないのです。
○宮川委員 それは当然あります。しかし、それが本当に許容できるかどうかということを判断しなければいけないわけです。
○石坂委員 それはそうです。情報をもらったのだから。
○宮川委員 そのときにそういう情報がほしいわけです。ですから先回、高岡さんも特に危険源情報についてはほしいとおっしゃったのです。
○石坂委員 要するに、そうではないと思っていたけれども、そういうものが危険になるかもしれないから、別途、また全部詳しくやりたいから、情報を出せという話になってしまうでしょう。
○宮川委員 「詳しくやりたいから」という言葉が、私はよくわからないのですが。会社として受入れ可能かどうかということを判断するということです。
○石坂委員 私はいま、法律に準拠してそういう話をしようと言うから、指針でも何でも残留リスク情報を流しなさいと言っているわけです。
○向殿座長 その前にいっぱい出すべきで、最後に残留リスクを書くと。それだけでは駄目だと。
○石坂委員 そういうことです。
○高岡委員 この問題は、やはり本質的な問題だと思っています。安達さんから説明していただいた資料の「残留リスク情報の詳細」とか、「リスクアセスメント評価表」を改めて見ると、このメーカーは相当やられていますよね。よくやられているのですが、例えば、残留リスク情報のB社が提供を受けたものを見ると、「全作業中で床で滑るとか、障害物につまづきケガをする、機械の周辺はきれいに清掃しておいてください」と記載されていて、これらは機械そのものではないのです。「機械の周りをきれいにしておけ」と言っている。これはすでに労働安全衛生規則544条に、作業場の床面は滑り、つまずきなきこととありますよね。
その次に、「運転前に刃物を取り付けるときには、他人が刃物の回転動作をしてしまって手を切るとか、切断をするなどの重傷事故を起こすから、作業の表示をして他人が刃物の回転操作を行えないように、警告板等を用意してください」と。これも労働安全衛生規則107条に、錠を掛けたり表示をしたりという規則があるわけです。こういう法律に決まっていることまで記載しないといけないのかということを考えると、私はここまでは必要ないのではないかと思うのです。実際に刃物とかワークとか、重いものが危険源としてあったり、あるいは騒音とか切削音とかそういうものがここに書いてありますし、給電の充電部とか残圧とかも書かれていますので、こういった情報がもう少し定量化されて記載されていれば十分ではないかなと思ったのです。
また、リスクアセスメント評価表を見ると、例えば運転準備のところで吸着ベルトの使用確認中に、材料と吸着ベルトの間に手を挟むと。このメーカーが採用した方法は、注意マークを貼るということになっています。残留リスクの回避方法としては、「手を吸着ベルトの下に入れないようにしてください」と書いてあるのですが、これは国際安全規格で言えば手が入らないようにカバーをするとか、そうでないといけないのです。この評価表や残留リスク情報を見ると、改めてもう少し明確にしておかないと、メーカーとユーザーの間のリスク情報の受渡しはできないのではないかと思ったのです。これは相当レベルの高いメーカーだと思うのですが、それでもこういう情報だというところに問題があるのかなと思います。
○向殿座長 たぶん、現実はこうなのです。
○高岡委員 そう思います。
○石坂委員 私がこの事例を見て思ったのは、メーカーがこういうリスク情報を出すときにあらゆることを想定して、自分たちは考慮したと言うためにいろいろウォーニングを出したりしますが、一目でわかるようなことだって書いておくと。それはメーカーが身を守る立場で過剰なまでに出す情報と、本当にユーザーがユーザー側でリスクアセスメントをする必要のある情報は、少し違うと思うのです。逆に言うと、例えば刃が出ている所を、刃が出ているから危険ですよと言われなかったから、ちっとも知らなくてケガをしたなどということは本当にあるのかと。そんなものは、物理的に刃があるとか狭い所に手がいくとか、現場でリスクアセスメントをやるような話ですよね。
そういうことでもちゃんと出す必要はあると思いますが、要するに何がわからないかというと、目に見えて形状から明らかに危険源やリスクもさることながら、パワーが大きいとか、電子制御関係で高圧電源があって、通常のメンテナンスで外したときに、そこに触わると大変だよということがわからない。そういう所は、目に見えてそこは危険だということがわからないわけです。あるいは、そこのスイッチを切ったり、安全に立ち上げるときの操作方法はロジカルなものですから、そのロジカル情報を提供してあげないと、普通の人はわからないだろうと。
先ほどレーザーと言ったのは、そういうレーザーパワーがあって、普通は何も問題ないのだけれど、うっかり反射する金属などを挟んだら、そこから光が反射して目に入ったということがあるかもしれない。そういう意味での情報はきちんと出さないと、ユーザーはわからないから出さなければいけないけれど、角があるからとかいうのは、それは出さなければいけないけれど、そういうものも何から何まで事例として出さなければいけないというのは、今回の趣旨から言うと良い例でもないなと思います。
○安達副主任中央産業安全専門官 念のため申し上げますと、この事例の精度がどうかというのは事務局としては問いませんで、是非イメージを持っていただきたいということです。この事例を選んだのは、ユーザー側で何をしたらいいかという物語風に書いてある部分もありまして、前回のご議論ではユーザーが使いやすいという視点がありましたので、この中身は別として、どういう項目が必要であるかを考えるのに参考にしていただければと思います。
○森戸主任中央産業安全専門官 資料3-2で、最初の2枚はメーカーが作ったもので、このメーカーのものがそのままユーザーに渡っているのではなくて、3枚目のものがユーザーに渡っているということです。したがって、メーカーのほうで再評価が「可」となったものについては情報を提供せずに、「不可」、いわゆるメーカーとして危険が残っていると判断したものを伝えることになっているというのが1つです。
また、メーカーは回避方法を提案しておりますが、これはユーザーが必ずやるのではなくて、ユーザーはあくまでリスクアセスメントをしなければいけません。もちろん、メーカー段階で安全な機械となるのがいいのですが、必ずしもそうではないので、ユーザーがリスクアセスメントを行う際には、改めてユーザーが危険の大きさと頻度とを自分なりに評価し、リスクレベルを決定し、対策を考えていくことになります。したがって、ここにはでてきませんが、ここにカバーを設けようということが当然ユーザーのほうでなされることになります。それに必要な情報として、こういう危険があるということをユーザーに伝えるとご理解いただければと思います。ここで全部完結して、この回避方法をユーザーが行うのではなく、ユーザーはこれを元に、リスクアセスメントを自らやるというのが前提になっているということで見ていただければと思います。
○宮川委員 残留リスクという意味について確認したいのですが、これは許容可能なリスクなのか、不可能なリスクなのか。
○向殿座長 これは不可能ですが、一応出したのです。
○宮川委員 不可能ですよね。不可能なのだけれど、使用上の情報で措置を委ねたものが残留リスクということですね。この事例の中にはリスクがないのです。これは許容できないリスクだけれど、いわゆる防護レス状態で、技術的な手を打てないから、使用上の情報に委ねるがどうですかということで議論ができなければいけない。その為にはリスクがないといけないのです。これはリスクがない。
○高岡委員 リスク評価がないということですか。
○宮川委員 リスクレベル評価がないということです。
○向殿座長 こちらに提供するほうですね。メーカー側から見ると、ちゃんと評価して不可能な所だけ出したわけですね。
○宮川委員 まずこちら(資料3-1)のほうですね。さらに言うと、先回確認をお願いした災害のストーリーで網羅的にやろうと言ったときに、例えば刃物の取替え云々とありますが、機械のリスクアセスメントから言うと、たぶん主軸の危険源に暴露されることを言っているのでしょう。主軸の危険源に晒される作業は、刃物の取替えだけではないですね。ワークのセット、測定だってありますし、溜まった切削くずを清掃する作業もあります。たぶん、刃物の取替えよりもこれらのほうが頻度が高いはずなのです。そういうもののリスクは一体どうなっているのか。
あるいは、同じ動力にしても、モーターがあり、動力伝達部があり、主軸があります。主軸はリスクが高いからそれなりに防護しました。でも、動力伝達部やモーターは高い所にあるし、接触頻度も少ないため、リスクが低いから、色彩表示による注意喚起措置としました、ということがわからなければいけない。
主軸以外にも、人から接触するのではなくて、危険源が人に接近して暴露されるケースがありますね。切削くずが飛んでくるとか、刃物が接触して飛んでくるとか、それに対して防御装置はどういう防護をしているのか、たぶん、カバーを付けているのだろうと思うのですが。カバーを付けて、インターロックが付いているような付いていないような記述があります。もし仮にインターロックが付いていて、作業中に常時インターロックが機能していて、他人の誤操作防止ができるのであれば、他人の誤操作防止の表示は要らないのです。だから、一つひとつきちんと見て、メーカーは実際やっているのです。やらないと設備など作れるわけがないので、だからその情報は外に出してくれればいいのではないかと思っているのです。先ほど石坂委員が言われましたが、メーカーは実際やっているのだから、それを出せばいいのです。
○石坂委員 だから、リスク情報というのはそういうことでしょう、と言っているのです。
○宮川委員 だから、まとめ直すというよりも、これそのものを出してくれればいいのではないかなと。先ほど言ったように、これが防護レス状態で許容できないリスクについて防護策を講じたもの、使用上の情報に頼ったものを出してくださいと言えば、情報の提供の仕方としてはこれ(資料3-2)でいいのではないかなと。ただ、このリスクアセスメントの内容は、機械のリスクアセスメントはこんなことはできるわけがありませんので、これは間違いなく大いに問題があります。そういうことでいいのではないかと思うのですが、違うのですかね。
○向殿座長 どうですか。要するに、D社のこういうパターンで出てくると、これはリスクのレベルがわからないということですね。
○宮川委員 議論もできない。
○黒澤委員 残留リスクという言葉に捉われると、そうなってしまうのです。アセスメントをして、だんだんリスクが低減させるということを考えていくわけですね。最後は対策を講じますから、リスクが減っていって、最後は管理的手法でやったり、いろいろやり方があるわけです。リスクを低減していく方法には、機械的な手段もあるし、管理的な手段もあるし、あるいは人間工学的な手段もあるし、さまざまなのです。
「本質的安全」という言葉がありまして、ここにも事例が挙がっていたのですが、人間の本質的安全というのは、小さい人が作業しやすいように合わせる、あるいは大きい人には大きいように合わせる。こういうものを本質安全的だと言っている人もいるのです。ですが、私に言わせれば「本質的安全」とは少し違うなと思っているのです。「本質的安全」という言葉をそういう意味合いで使う方がたくさんいるのです。つまり、グラスでも何でもいいのですが、体の大きい人は大きいグラスを使えばいい、小さい人は小さいグラスを使えばいいという考え方なのです。機械の使い方にはそういう考え方があるのです。サイズに合わないものを使うと危険だという考え方があり、そのことを「本質的安全」と言っているのですが、それは本当の「本質安全」とは違うと私は理解しています。用語の概念が変わり、その辺で混乱が起こっているという感じがあります。
○向殿座長 ここでは、明らかに本質的安全はハード的な手を打つと。あとは管理に任せたという表現があるわけです。
○斎藤臨時委員 リスクアセスメントのこのような表が情報として提供されると、非常に理解が得やすいという話なのですが、1つは宮川委員がおっしゃるように、そのような条件でというのはわかるのですが、それは残留リスクというよりも、むしろメーカーが行ったリスクアセスメントの前提条件、簡単に言うと、どういう使用を標準として考えて、どんな人でどんな環境で使うという前提でアセスメントを行って、いま市場に出している状況にあるのかを説明しろと言っているのだと思うのです。確かにそれは残留リスク、あるいは使用上の情報だと思うのですが、より突っ込んで、自分たちがやったリスクアセスメントの想定条件を説明してくれと。なぜかというと、現場に行ったときに、ユーザーは自分の環境で自分のやり方で改めてやるからだと思うのです。
もう1つは、このリスクアセスメントですが、出ているのは抜粋だと思うのです。現実に1台の機械でも、NCだったらこんな量で収まるわけがないのです。これが50頁とか100頁という桁で、下手をするとキングファイルとか、何冊分といった状況になると。すべてその情報を、何か1つ欠けてもあれだと思いますので、果たしてどのように提供されるのかというのを、1つ情報として是非ご認識いただきたいと思います。リスクアセスメントは、たぶん現実にこんな量では済まないと思うのです。
○黒澤委員 この表は現場で現実にリスクアセスメントをやる方法なのです。一覧表の形にまとめています。これはこれでいいのですが、これをユーザーにそのまま提供しても役立たないと思います。ユーザーと言っても、特に大企業で暇な人がたくさんいる所は、じっくり読んで内容を点検しますが、中小企業ユーザーにとっては、こんなものを出されたら、かえってありがた迷惑で、混乱が起こってしまうのです。大変なことなのです。そういうビジネス環境がほとんどの中小企業の現状です。
○斎藤臨時委員 確かに、これを読み取るのに当然の知識と経験がある程度ない人、つまりリスクアセスメントできる人がこれを読まないと解釈できないと思いますし、また誤解を生む可能性が非常にあると思います。
○向殿座長 ユーザーにもリスクアセスメントをやってもらおうということで、いま話をしているわけです。これだけの情報をもらったのでは、ユーザーでも何をしていいかわからないと。ここに書いてあることはやるにしても、どのぐらいのレベルだということはわからないですね。
○黒澤委員 特に、中小企業でもメーカーとしての対し方と中小企業のユーザーとしての対し方とあるのですが、中小の機械メーカーは一生懸命やっているのです。技術者として、また設計者としてやっているのですが、設計者はものすごく忙しいのです。図面から取扱説明書まで自分で全部書いているのです。だから、大変な作業をやっておられるわけです。中小企業の機械メーカーですと、実際は数10人しかいないのです。そういう人たちの中で設計者は5、6人いて、その人たちが分担してやっておられるわけです。取扱説明書からマニュアルからいろいろ作りますね。それだけで手一杯で、とても細かいところまでやっていられないと。残留リスクを提供してくださいと言われたときには、中小メーカーの場合は対応は難しいと思うのです。その点の配慮が必要です。 大企業の機械メーカーの場合は割と量産的な機械が多いので、丹念にやっています。例えばNCパンチプレスなどは大量に売れていますから、安全マニュアルで危険情報の開示は必ずやっています。立派なマニュアルができています。マニュアルの中には、残留リスクとは書いていませんが、こういう使い方をしては危ないですよとか、こういう使い方をしては駄目ですよと書いてあるのです。それは説明的に書いてあるだけで、すべて残留リスクなのです。残留リスクと謳っていないのだけれど、実態は残留リスクのことを説明しているということです。
○向殿座長 それを残留リスクの表としてまとめようという話になっているのですが、「不可」と書いてあるものだけ、ある意味そういう感じですね。
○宮川委員 確認させてもらったのは、初期段階で、要するに防御レス段階で許容できないものについては、防御したものも含めて出しましょうと。ただ、それだけだったら、前回言ったのは労働衛生関係の難聴等といったものが出てこないものだから、リスクは低いのだけれど、難聴低減の為にサイレンサーを付けたとか、安全衛生上何か措置を講じたというぐらいのものはせめて出してねと、あとは聞かれたらわかるようにしておいてねと。レベルとしては。それでどうなのかと。
○斎藤臨時委員 そもそも視点として、1つは法にすでに規定されていることに対して情報が必要だという観点は、いままでなかったと思うのです。それをここで同様に扱いべきなのかなと。別に扱うべきではないかと思うのです。
○宮川委員 それは前回も言ったように、今回の対象のジャンルとは違うけれど、機械に関する情報としては別表5の情報をもらえば、そういうものも担保できますよということを言ったのです。
○斎藤臨時委員 もちろんそうなのですが、私が言いたいのは、もしそういうものがあるなら、それこそ早急に法整備すべきであって、法の準拠に必要な情報をメーカーからもらわないと準拠できない状況があるのでしたら、別に対応すべきだと思うのです。ここでは、おっしゃっているようにもっと大きい包括支援での話ということで。
○宮川委員 要するに、リスク低減ですね。
○斎藤臨時委員 リスク低減の話ということです。ただ、法に準拠するのに必要な情報という視点は非常に重要だと思ったので、逆にいままで語られていなかったものですから。
○向殿座長 必要なのは、ユーザーがリスクアセスメントをするときに、どういう情報が必要かという話になったときに、どこまでメーカーから出してほしいと。宮川委員の立場から言うと、もともと危ないものはメーカーが手を打ってリスクを下げたとしても、どういうものがあって、どういう手を打ったかぐらいは出してくれと。それがユーザーにとっては非常に役に立つし、改良するのにも役に立つと。
○斎藤臨時委員 それを聞いて、許容リスクというものがはっきりしていないことによっていると思うのです。それはあくまでも自主的という意味を込めて、自分で決めるものなのです。果たしてユーザーが許容できるレベルに、メーカー側でしてもらったのかどうかを図る、あるいは改めて考え直すということをおっしゃっているのだと思うのです。それが、もしこのレベルなら全員がいいという、はっきりとした数値が決まっているならば、もはやそこでの疎通は必要ない。ところが、メーカーが言った標準のところで禍がっています。これは残りましたという話をした、その区分けもよくわからない。説明してほしいというところも含めると、全体を見たいという話になると思うのです。
○宮川委員 メーカーは、先ほども言ったように、メーカーのシェアの中で標準的な前提条件を設定してやっているのだと思うのです。だから、メーカーはその標準の中である程度許容可能なリスクを見積もってやるのでしょう。そうでないと設計できませんので、それはやると思うのです。労働安全衛生法は使用者の責です、まして自分の従業員がケガをするわけですから、本当にこれでいいかと。ひょっとして、メーカー側の標準より外れたところに自社の職場環境があったならば許容できない場合があり、別の措置を講じていかなければいけないので、最終的には使用者自身で決めなければならない。そのためには、メーカーの前提条件がある程度判らないと、それは判断できない。
○斎藤臨時委員 それ以前に、どういう対策で、どこまでのレベルで減ったのかという情報がほしいという話ですかね。そのときに、これは外れているのだから、たくさんお金をくれと言えば払わなければいけないし。だから、ここに書いてある「不可」は、すでにメーカーの判断基準で決めた「不可」で、この「不可」がカットされたものが本当にカットになっているのかどうかも知りたいという話だと思います。
○石坂委員 いま労働安全衛生法を改正して、第28条に則っていろいろ指針が出て、そういうものを円滑に、より効果的に回していくにはどうするかという枠組みの中での議論だと理解しているのだけれど、それと離れて、もっとこうなったら世の中いいんだよね、という論議に入れば、私もそうだと思うことは多々あるわけです。それで冒頭に、つまりこれは法律の問題ではなくて、リスクコミュニケーションが理想的に行われるのは、購入交渉時にユーザーのほうもしっかりと要求の条件を出し、条件における安全使用を要求し、ユーザーがそれはできないとかできるとか言ってやると。それが国際の規格などで言うAccessibleではなくてTolerableな状況ですね。それはいろいろな条件の中でTolerableであるところを決めていくわけです。
ところが、日本ではほとんどそういう環境にないから、Tolerableである状況を設定することができていないわけです。そうすると、ユーザーがそういう条件を出してこないから、メーカーはある想定をしてリスクアセスメントをせざるを得ないわけです。そうすると、残留リスクのことがあって、これが大きいときには、先ほど私が言った3項の少し先のことを言えば、どういう頻度だとか何とかというのは、メーカーがこう設定したということを残留リスクがあるとある程度、そのときの説明は我々はこういう頻度と設定したと、あるいはこういう人が使うということは設定したと、ハザードはこうだよということを説明せざるを得ないでしょうと。そうすると、そういうことで残留リスクとして大きいと見たのですねと受け取れば、ユーザーは「実際は違うんだけどな、うちはこういう条件でやるのだけど、それでやり直してみましょう」という齟齬がある。
でも、それだと必要な情報の内乗りしかこないから、宮川委員が心配されるように少し枠を広げて、ユーザーが実際やる条件でやるともっとリスクが大きくなってしまうこともあるかもしれないから、そこをどうするかという問題はあるのですが。
○向殿座長 それは、宮川委員と同じことを言っているのです。
○石坂委員 だから、出してくれなければ、メーカーの条件で出したのだから、ユーザーがどう使うかの条件が違うから、チェックし直すためには。
○宮川委員 だけど、そこをとことん出せという話に行くのか、どういうところでこの程度だったらそうだなというところで折り合いを付けるかの話なのです。
○向殿座長 石坂委員が先ほど説明した話と、言っていることは同じではないですか。
○佐藤委員 その辺は契約上の問題で、何もかもが最初から全部出したって、ありがた迷惑なところがあるので。
○向殿座長 判断基準としては先ほど言ったように、必要に応じて出す必要があると。言っていることは同じということはわかりました。そうすると、どこまで出すかという話になるのですが、あまり出しても有効性もないだろうし、無駄だろうし、出したくない所もあるかもしれないという話になるし、もらうほうとしては自分のリスクアセスメントが有効な情報がほしいということで、この論点の落とし所はどこなのか。
○井上委員 「労働災害の重大さ」とあるところの、労働災害の発生確率の基準が、メーカーとユーザーで実際変わってくるのではないかと思います。この表の中でも、同じ項目でもユーザーとメーカーで評価が変わってくる可能性があるのかなと、いま話を聞いている中で思ったのです。その辺をある程度統一した判断、基準が必要なのかなと、ここで思っていたのです。今後細かく決めていかなければいけないことかもしれませんが、その辺が必要なのかなということが1つあります。
また別の話なのですが、例えばこれをユーザーがメーカーからもらったとして、ここまでもらったら、実際ユーザーがリスクアセスメントをしなければいけないのですが、ここまでもらったら本当にするのかなと。たくさんの情報をもらって、自分に合わせてという、先ほどの話の繰返しになりますが、実行性というところまで入れると、やるのかなというのが疑問に思うところがあります。
○宮川委員 いま判断基準を決めなければいけないみたいな話をされましたが、判断基準を決めるというか、そもそも「リスクアセスメント」という言葉は最近使われましたが、言葉がないときからリスクアセスメントをやっていましたよね。最近、豊田労基協会会員の中でよく話すのは、飛行機が墜落したら死ぬと。何で飛行機に乗るのかというと、落ちる確率が低いからですよね。確率の程度を組み合わせて、危ないけれど、この危なさなら許容できると。最初の程度と確率をリスクと定義をして、この危なさならいいかというところを、ガイド51の「安全」という言葉で定義している。昔は、危なさを評価して語るプロセスが全部主観的、情緒的、曖昧にやっていたのですが、リスクという言葉を用いて、災害のストーリーに従って評価し、語ることを決めたわけです。そして、もともと許容リスクは人によって違うから、会社の中だって新入社員とベテランと職制と、ひょっとしたら社長とも違うから、お互いに話をしてリスク認識を共有化しましょうと。今回問題になっていることは、メーカーもユーザーも含めて議論をして、リスク認識を共有化しましょうということで、共通認識を得られる状況をリスクコミュニケーションが図られている状況と言うのではないかということです。
リスクの定義で何が新しいかというと、いちばん新しいのは確率のところなのです。程度は大体昔から似たようなものです。いままで、安全を確率で語ることはタブー視されていたのです。
○高岡委員 そうですね。
○宮川委員 「確率の話をすると「お前何を言ってるんだ」ということで、語れなかったのです。今は確率を勘案して語ろうではないかと。その確率はと言ったら、危険状態や危険事象の発生確率であり、且つ回避の可能性であり、これを見てやるのだということです。資料3-2を見ると、全部古いままのリスクアセスメントになっていて、これでは危なさの語りができない(主張できない)なということです。
こういうことですから、時間がかかる。特に時間がかかるのは災害の程度です。これはドクターだって難しいです。せいぜい3段階ぐらいです。重傷か軽傷か、真ん中を取って中程度かぐらいです。休業か不休か、休業か障害か等、ドクターに判断しろといっても無理ですよ。ドクターも判断しないですよ。そういうことを要求しているのです。そこで時間がかかるのです。
○向殿座長 そうすると、議論としては、宮川委員の立場から言うとどのぐらいのレベルを出したらいいとお考えですか。
○宮川委員 前回から言っていますように、災害の危険源は何なのか、その危険源はどこにあるのか。先ほど言ったように、上にあるのか下にあるのか、どこにあるのか。その危険源を主語にして危険状態がある。そのときにどんな危険事象が起きるか。逃げられるのか逃げられないのか。ケガの程度。そのストーリーで、メーカーが分析、見積もった情報をいただければいいでしょう。メーカーだって経験していないものもあり、経験していないものは我々が追加すればいいし、我々が経験していないものはメーカーから教えてもらえばいいし、結論から言えばそれでいいのではないかと思います。
○向殿座長 それは、全部やると相当の数になりますよと。そこで、どこで切るかという話。
○宮川委員 そのときに、先ほど言ったような1つの判断もありますよと。
○向殿座長 問題はどこで切るかという話ですよね。
○安達副主任中央安全専門官 資料4の2頁だと思いますが、「検討の方向性」の3の必須である情報とユーザーの要求に応じた情報、いまの実効性の話と確率のところは、最終的にはある程度折合いをつけなければいけないのかなというのが1点です。
「主な意見」の1のアの「一方」という所ですが、機械包括安全指針別表第5のすべての項目を提供すべきという意見があった点については、指針では警告ラベルとか取扱説明書とか、教育で何とかしてくれといった方法で、何かしら提供すると。これは厚生労働省としても別表第5の取組の旗を下ろすわけではありません。ただ、論点4で検討する提供の方法で情報の一覧性とかユーザーですぐ活用できるものということも重ね合わせて、法第28条の2につなげるということで、両方うまく共存するのか、一対一で同じものでやるのかという視点も出てくるのかもしれません。これが必須かどうかということと、少しリンクしてくるのかなと思います。
○向殿座長 こう見ると、論点2で大事なことは、前に言われたどこで切るか、どのレベルを出すかという話になるのですね。そうすると、3の必須である情報とユーザーの要求というのは、あるレベルでこれ以上出してくれという場合は契約などでやる可能性がる。しかし、最低限はここは出しましょうというときは、はっきりしましょうと。基本的にはそれでいいのではないかと思うのです。
では、どこまで出すかと言ったときに、私の知っているリスクアセスメントの表は、1つの機械だけでも何十枚になっていますが、それを出部出されて、ユーザー側としては危険源として、その危険源で許容不可能なところまで至るような危険源は、一応全部出すと。それに対してどういう手を打ったかを出して、メーカー側が想定した条件内で、残ったリスクはこうですよというのを出すというぐらいでいいのではないかと思うのですが、妥協案としてどうですか。
○高岡委員 世の中全般に通じる規定にしようとすると、2段階にせざるを得ないと思うのです。斎藤委員がおっしゃったように、このリスクアセスメント評価表を受け取って使いこなせるユーザーは相当少ないと思いますから、ここで残留リスクとして抜粋しているレベルで十分だと思うのです。
ただし、この中で欠けていることは、騒音と言っても何デシベルなのかわからないし、ステージと言っても何メーターなのかわかりません。納入後見ればわかりますが、それは設計段階ではわからないですね。
重大だなと思うのは、リスクアセスメント評価表の9で、運転中の材料供給車が、ローラー駆動用チェーンに袖口が絡み、腕まで巻き込まれると。カバーを付けたので、「可」としているのです。「可」なので、ここの残留リスクには載ってこないのです。でも、これは保全のときにカバーを外せば、当然袖口が巻き込まれますから、それは載せないといけないなという具合のものです。
○佐藤委員 運転中だから載っていないのでしょう。
○高岡委員 そうなのですが。
○佐藤委員 左の項目の、もっと下にある。
○高岡委員 でも、この抜粋の中には載っていません。
○佐藤委員 これは一部だから、全部ではないから。
○宮川委員 許容できないリスクについて、防護策を講じて許容しましたと。最初のリスクアセスメントの結果を出してくれれば、高岡委員のいまの解になるのです。
○高岡委員 それがあればいいのですね。
○向殿座長 だから、確かにどこまでかは条件によって違うけれど、大事なことは、この危険源で不可になる可能性があるのならば、一度出していただいて、メーカーとしてはこういう手を打ったから、ないですよ、ありですよと、それでいいのではないかと思うのです。細かいものを出してもしょうがないから、本当に大事な、第1レベルで。
○高岡委員 それでやってみて、お互いにユーザーもメーカーも賢くなってきたら、やり取りをする中で、石坂委員が言われたようにリスクコミュニケーションの中で、だんだんとレベルが上がってくるのではないかなと思います。
○佐藤委員 そういう話ができるのは、大変いいと思います。
○宮川委員 逆に、それに向かっていろいろなことをやっていかなければいけない。だから、いまやれないからやらないのではなくて、それに向かってやっていくことが大事だと思うのです。
○高岡委員 これを受け取ったら、騒音と言っても何デシベルですか、という質問が交わされると。
○石坂委員 それは、そのデシベルを出さないと駄目ですね。
○向殿座長 そういうことで、この辺は一応2段階ぐらいにしておいて、最低限必要ないま言ったようなものは出していただくと。それ以上出したい場合は、契約とか、メーカーごと、ユーザーごとの交渉ということにしましょう。時間がなくなってしまうので、論点2に関してはこれぐらいでよろしいですか。
( はい )
○向殿座長 それでは、論点3にいきましょう。いまのと連携しますが、機械の危険情報のうち、残留リスク情報として必要な項目は何かということです。これはいまの話とほとんど同じですが、いかがですか。宮川委員が前から主張されていたのは、事故におけるプロセスをちゃんと明らかにしてほしいということですが。
○宮川委員 そうです。何のためにリスクアセスメントをやるかというところの、いちばん重要なキーワードなのです。危険源の同定と言っても、ピンとこない。先ほど言ったように、災害は大企業も中小企業も零細企業も関係なく、リスクの定義に従って起きる話なのだから、この手順で考えましょうと。
私が現場でよく言っているのは、現場でこの手順で考えることを絶対やりなさいと。あとの見積りは、赤信号もみんなで渡れば恐くないと。悩んだ時は上の人が決めなさいと言っています。高岡委員の所や弊社などは情報量がたくさんありますから、結構リスクを高く見積もるケースはあります。中小企業へ行けば、我々からすれば高いリスクだけれど、中とかそれ以下に見積もるケースはあります。でも、それはしょうがないのです。その会社の中でみんな知らなければ。レベルアップは世の常ですから、そこは長い目で見て、レベルアップするようにしていきましょうと。
リスクの定義で見るということは災害を語るということで、リスクを語るということはそういうことなのだということは共通認識しておかなければいけないし、リスクコミュニケーションはメーカーとの間でも共通しておかなければいけないルールだと思うのです。野球とかゴルフで交流試合ができるのは、道具が一緒でルールが共通だからなのです。いまの状態は、機械は共通なのだけれど、ルールがないのです。そこのルールをきちんとしましょうということです。
○向殿座長 これは先ほどの議論とほとんど同じで、まず危険源をはっきりさせなければいけないと、これは当然です。プロセスで言うと、頻度もあるし、ケガの状態もあるし、逃げられるかどうかというステップで話をしていけばいいと。そうすると、いちばん大事なのはどういうケガになるかという、ひどさは非常に重要なファクターで、それに対して頻度が出てきたら、逃げられるかどうかという確率の話が展開されていくわけです。それで残ったリスクはこうだという話、それを評価して、こういう手を打って、またこう残りましたというのがリスクアセスメントの情報だとすると、前の結論のとおりもともと危険源で人が死ぬようなもの、かなりひどい被害になるようなものについては全部出してくれと。いま言ったステップを、メーカーがやったリスクアセスメントのストーリーはちゃんと示して、どういう残留リスクが残ったかを出してくれという、先ほどの話とたぶん一致するのだと思うのですが、これについてはどうですか。
○高岡委員 もう1点は、残留リスクと判断した根拠ですね。何をもって残留リスクだと評価したのかを明示してもらわないと、ユーザーとしては使えないと思うのです。シビアリティは高いけれどポシビリティが低いからなのか、シビアリティは低いけれどポシビリティが高いからなのかによって、相当対策は違ってくると思いますから、何をもって許容可能としたのか、そこは明示しないといけないと思います。
○向殿座長 そうすると、例のマトリックスを明らかにしてみたり、その状況を出さない限りわからないわけですね。
○宮川委員 高岡委員が言われたのは、見積もったリスクの妥当性の話だろうと思うのです。許容可能かどうかとはまた違うのです。
○向殿座長 リスクのレベルというか、それを出した根拠でしょう。
○宮川委員 はい。
○向殿座長 根拠というのは、定義によると頻度と確率と、ひどさと確率とすると、どういうときリスクレベルIIにしたか、どういうときIIIにしたかというベストマトリックスの表みたいなものを明らかにしてもらって、それでうちはIIにしました、IIIにしましたというのを示していただければ、ユーザーとしてはありがたいという話ですね。
○宮川委員 リスクの妥当性を高岡委員が言われているならいいのですが、許容かどうかと言ったら、これはそういう話ではなくて、ある意味においてはベンチマーキングの話なのです。いろいろなものに比べてこんなものですよと、こういうことを言われているのだと、その整理をしたと。
○向殿座長 高岡委員が言われているのは、妥当性ですよね。
○高岡委員 妥当性もありますが、許容可能かどうかを判断するのは、別に社会的な線引きがあるわけではなくて、それはメーカーが判断することですよね。ですから、メーカーが何をもって判断したのかということが必要なのかなと思うのです。もちろん妥当性も必要ですが。
○向殿座長 リスクアセスメントのステップを考えると、リスクIIIは許さないけれど、リスクIIはOKということをメーカーが決めなければならない。
○高岡委員 許容可能かどうかの線引きをIIに置いているのか、IVに置いているメーカーもあるかもしれません。それを明示する必要はあるのかなと思うのです。
○宮川委員 それはまさにこういうプロセスで私は判断したのですと説明してもらえばいいし、CEマーキング認証の本質的な精神はそこなのではないですか。
○井上委員 労働安全衛生法からは外れてくるかもしれませんが、自動車を買った場合、どんなリスクがありますかという情報をもらうかどうかという話が、具体的に機械に置き換わっただけだと思うのです。実際自動車が事故を起こした場合、いろいろな事故の状況があるのですが、全部情報を開示するかどうか、それは路面状況にもよるし、天候もあるし、そのときに履いていた車のタイアの状況とか、最初から付いていたタイアでないものに履き替えていたからとか、いろいろ原因があると思いますが、そういうのを渡しなさいという話が大きくなってきつつあると思うのです。その中で、1つ前の話ですが、必須な情報かそれ以外の情報かというところ、例えば交通ルールを守らなかったらというところから始まって、交通ルールを守っても事故は起きるはずなので、その辺の中身で具体的に言ったときに、本当にどこまで譲歩するのかは、私の中で身近な例で車かなと考えていたところはあるのですが、 それ1つ考えても非常に難しい。道路を走るだけではなくて、いろいろな所で使われるものが全部包括されているような案件なので、たぶん皆さん悩んでおられるところだろうと思います。具体的に1個の機械だけで見ていっても、ものすごく難しいなというところがあると思います。
○向殿座長 ある意味、それはあえて覚悟でやっていて、機械の場合は危険源というところからそれをやる。しかも、ユーザーはその1つだけではなくていろいろな機械を集めてきて、自分でラインを組んで、また新しいリスクができてということを考えていますので、マッチしたものに対してどういう危険源があるか、リスクがあるかがわからなければ、組み合わせたときにまた新しい危険源が出るのかよくわからない。だから、その情報がほしいというのがストーリーの中の流れですね。
○森戸主任中央産業安全専門官 資料3-2の中で、危険詳細、危険の対象、危険状況、危険事象、被害の状況とあって、その次にリスクの見積とありますが、これについては先ほどありましたように、ユーザー企業によっていろいろ違うかもしれないという話がありました。
そうなると、リスクアセスメントをするときに、この情報が本当にユーザーにとって必要なのかどうか。ユーザーが判断するものというのであれば、参考にはするのかもしれませんが、
必ずしも必須とは言えないのではないかと思います。ユーザー企業の中でも、リスクアセスメントのときには当然使用者側と労働者側が危険のひどさをどのように見るのかは、相互の話合いの中で決まってくる部分が非常に大きいと思うのです。ですから、メーカーに義務を課すのか課さないのか、必須のものにするのか、参考にくださいとするのか、制度として設計する際には非常に大きなことになるのです。
ここではあくまで、ユーザーがリスクアセスメントを事業場で行う際に本当に必要な情報はどんな情報ですかというところは、しっかり制度として押さえて、追加するものはメーカーとユーザーの間で、契約の中で話し合っていただければと思います。そのように考えていただいて、どこまでが必要なのかについてご議論いただきたいと思います。
○向殿座長 おっしゃるとおりで、いままでの議論はどういうことを言っているかというと、メーカー側がどのような根拠でこういうリスクを「可」とか「不可」にしたかを知りたいと。
そうすると、どういう条件でということを知らないと、結果を見たって我々のと違うから、メーカー側の条件がどうで、どういう根拠で残留リスクがこうだと判定したかを知りたいとすると、これが出てくるとものすごくわかるというのが、いままでの流れですね。当然、ユーザー側はこれをこのまま使う気はないにしても、メーカーはどういう根拠でリスクIIとかIIIとしたのかを知りたいと。どういう条件の使用状態を想定してやったかを知りたいと、それに役に立つという話ですね。
○宮川委員 そうですね。リスクアセスメントをやるとしたら、メーカーもこれだけ見て、ユーザーも同じような点数を付けるとか、そういう話をしているわけではないので、メーカーの妥当性とか設定要件とか、妥当だったらそれはそれでいいわけで、違う所があったら議論してやっていくという話なのです。
○向殿座長 森戸主任の意見は、そんなに違うのならば、こんなに細かいことを出す必要はないだろうということですね。
○森戸主任中央産業安全専門官 必須とするかどうか。
○向殿座長 必要である必要はあるか、ないのではないかということでしょうね。必須かそうでないかに分けたときに。
○高岡委員 必須なのは、抜粋の残留リスク情報をもう少し定量化して、わかりやすくしたものが必須だと思うのです。
○向殿座長 その辺だと、かなり動きやすいですね。
○佐藤委員 たぶん、そういうところではないですかね。本当は、ユーザーとメーカーと、どの評価基準を使ってやるかを契約時に決めておかないと話がまとまらないので、両方で話し合って決めて、承認して納めるということをしないと。
○向殿座長 わかりました。
○宮川委員 困るのは、メーカーの立場でなければわからないところがあるのです。事故の発生確率とか、そういうものはメーカーでないとわからないわけです。
○向殿座長 その情報は知りたいですね。
○宮川委員 それはないとわからないですよ。
○向殿座長 それはそうですね。
○宮川委員 それはメーカーでないとわからない。リスクアセスメントを導入した初期の頃は社内のメーカー的立場にある生産技術部の連中もこの点が判らなかった、最近は言わなくなりましたが、そういう議論が出てきました。いま言った事故の発生確率とか、そういうことはメーカーでないとわからないだろうなと。
○向殿座長 宮川委員がおっしゃるのは、発生の確率みたいな情報は、必須としてあったほうがいいということですね。
○宮川委員 もう1点、資料3-2で「危険対処者」と書いてありますね。これはいいのですが、メーカーの立場で言うと、これはいけないのではないか。項目はいいけれど、不十分なのです。前回も問題になりましたように、製造段階、運搬段階等廃却までに各段階があるわけです。それも含めてメーカーは決めるわけです。例えば、トヨタでも、トヨタ標準でロボットにはホークガイド(フォークリフトのフォークを差込む治具)を付けてもらうようにし
ているわけです。メーカーがロボットの生産工程の中には積出工程があって、ホイスト付クレーン等が設置され、クレーンを使用して積出しています。しかしユーザーの現場に行ったら、ロボットが行う作業は、昔は手作業でやっているわけですから、そこにはホイスト付クレーンなんか無くて、フォークリフトを使用して降ろすわけです。従って極めて不安全な危ない状態ですね。この為トヨタでは、トヨタの安全仕様としてフォークガイドを付けようということをトヨタ標準で決めましたがが、こんなものは本当に許せるかみたいな話はあるわけです。
メーカーは製造から廃却までの各段階を考慮してリスクアセスメントを行い、その結果と措置について、情報を提示しなければならない。関わりのない段階の事業者からは、この段階では不要だからと言って仕様変更やコスト低減を求められるケースがあると思う、その時、こういう理由で仕様、構造としたとしゃべらなければいけないのです。そういうものがあるので、ただ危険源情報だけでは不十分で、どういう根拠で見たのかというのがないと。だから、逆に言えばメーカーは困るのです。
○高岡委員 宮川委員がおっしゃったメーカーでなければわからない情報というのは、例えばB社が提供を受けた残留リスク情報の詳細という表があって、そのいちばん下に「保守点検及び異常のときに、NC装置の暴走により機械が暴走し、不用意な事故になる」とあるのです。これを言われると、ユーザーとしてはものすごく困るのです。レベルの高いユーザーであれば、このノイズ耐性は何ボルトなのですかと質問したり、自分の工場のノイズを測定したりできますが、そこまでレベルの高いユーザーは数少ないと思いますから、中小企業
でこれを言われてしまうとお手上げですね。暴走することはわかっているのだけれど、暴走するかもしれないですよと言われてしまうと、非常に困ると思うのです。
○向殿座長 そうすると、また元に戻りますが、資料3-2にあるように、頻度やひどさはある程度出していただかないと、ユーザー側としては情報不足で、自分のリスクアセスメントがちゃんとできないと。だから、必須として頻度やひどさは入れてほしいと。
○石坂委員 それはユーザーがリスクアセスメントをやるという意思がはっきりして、その求めに応じて提供する必要があるとか、提供する努力義務を負うとか。いまはユーザーだって努力義務で、必須ではないですから。それに対して、少なくともメーカーの責任として最低限このぐらいの情報は、有無を言わさず提供しなさいと。でも、それ以上ユーザーがやる気で、そういうことまで遡ってしなければわからないというのだったら、その求めに応じて
提供すると。
○向殿座長 そこは一致しているのですね。最低限何がというところでもめているわけですね。
○石坂委員 そうです。そこの最低限をあまり広げてしまうと、それだったらユーザーも努力義務ではなく絶対にして、全体の体系としてそういうふうに組み立てないと、ちょっとおかしいという気もするのです。
○黒澤委員 重篤な災害が想定されるということが、アセスメントをする最大の理由だと思うのです。もう一方で、頻度が多くて、小さなケガだけれどたくさん起こるということも、現実問題としてあるのです。両方の面があって、どちらが良し悪いということはないのです
けれど、優先するのは重度の災害でしょう。死亡災害とか、それにつながるような災害はいけないということですから。
○向殿座長 それも大体一致しましたね。重篤なものから始まって、そのときに必須条件として、メーカー側は頻度とか、ひどさは大きい順から出すと。確率に相当するもの、逃げられるかどうかということで相当する情報を、必須情報として入れるか入れないかというところに絞られてきましたね。
○宮川委員 そうですね。あと、一瞬の間にどんなアクセスをするかは、当然メーカーでないとわからないケースがありますから。高岡委員が言われたことも、ある意味では重要なことだと思います。
○安達副主任中央産業安全専門官 必須かどうかということでご議論いただきまして、ありがとうございました。繰り返しになりますが、機械包括安全指針がありまして、これを全体的に取り組んでいくという旗は決して下ろすわけではありません。今回は、その中でも次の論点4がありますが、提供の方法がありまして、いろいろな形で本指針の取組を進めていく中で、さらにユーザーが取り組みやすいというか、使いこなせる情報として、一覧性をもって出すということです。
一覧性という情報を考えると、どうしてもある程度情報量が限られるので、先ほど井上委員からありましたように、分厚いものが出たら、すべて対応できるかということもありますし、レベルに応じるという話もあるかもしれませんが、一覧性を念頭に置いて、論点4のほうもご議論いただければと思います。
○向殿座長 いまは、どこまで出すかはUnknownなところがありますが、最後に一覧表と一覧性をもって出すことを考えると、あまり細かいものを出してもしょうがないので、論点4にいきましょう。
論点4ですが、残留リスク情報の機械の危険情報は、どのように機械ユーザーに提供すべきかということです。これは先ほどの話だときっちりしたフォーマットというよりは、少し柔軟性のある使いやすいひな形を与えておくこと、明瞭に一覧できるものということで、ある意味では取説とは別個に作って添付しましょうというところまでは、大体一致していると思います。
○安達副主任中央産業安全専門官 先ほどの予備的調査の中の意見で、もらった中小事業者の感じでいくと、何をすぐやればいいのかわかるものが欲しいと。そういった意味では、一覧性とか優先順位の高いものは、必ず入れておかなければいけないなというご意見もありました。
○黒澤委員 私も一覧表を添付するのは非常にいいことだと思います。ただ、一覧表にするには機械の種類を区別して、それによってリストアップしていかないと駄目だと思うのです。
例えば、プレスならプレスの機械、旋盤なら旋盤と。いろいろな機械があります。また一品料理的な機械もありますから、一台あるいは一セットしか造られない機械もあり、それぞれ特徴があるのです。ですから、機械機種ごとに一覧表を想定してかからないと、まとめて一緒というわけにはいかないと思います。プレスはプレス、旋盤なら旋盤、マッシングセンターとかです。機械の種類に応じて仕分けをしてまとめていかないと、一覧表といっても何でもかんでもみんな載せると、大変なことになってしまうという感じがします。機械の種類によって危険情報はかなり違うのです。
○佐藤委員 その件は、私も全く賛成です。先ほどのHSEの話ではありませんが、ケーススタディ的に、それぞれ機種によって特徴が違うということがあるので、できるだけ多くの事例というか、参考例という形で提供しないと、ユーザーとしても理解しにくいのではないかという気がします。
○向殿座長 機械の特色を作り出そうと。
○石坂委員 ただ、どのぐらいまで機種の細かさでどのように整備していくかは、少し気が重くなりますので、私がやるわけではないかもしれないけれど、大変だなと思います。結局、いままでの議論は取説に折り込まれたいことでは埋もれていってしまうし、抜けもあるかもしれないから、そこを危険情報としてリストアップしましょうという精神に戻るしかないのではないかと。そうすると、それなりにそれぞれの機種に合って、それぞれのやり方で出されると。
そういうことを回していくうちに、だんだんいろいろな業界ごとにリスクアセスメントのガイドが整ってきて、やれるようになってくるのではないかと思います。そうなっていればいいというのは大賛成なのですが、できるかなと。
○佐藤委員 実際問題として、それ以前にそういうことを受け入れる姿勢がユーザーにあるかどうかのほうが重要なのです。その姿勢が、まだ日本ではユーザーにないのではないかという心配があるわけです。ですから、今回は譲渡された機械という話になっていますね。本当は譲渡されていない、いまある機械でリスクアセスメントの練習をしなさいという指導をするべきだと思うのです。新しい設備を入れないと、それはやらなくていいよと言っているようなもので、それはおかしいのではないかと。時限でここまではいいけれど、これ以後は既設の、イギリスの例ではたしかそうなっていたと思うのです。2015年からは、既設の機械もリスクアセスメント云々という話をしないと、すれば底上げができるのだと思います。
その辺で、古い機械で練習ではないですが、そういう指導が国としても必要ではないかと思います。
○向殿座長 これは別の視点で定着させるという意味で、どこまで必要なのかと。
○佐藤委員 そうしないと、いまいろいろやっていますが、せっかくやって出しましたといっても、「これは知らないよ」と「ああそうですか」と受け取っただけで終わりのようなこともありますから。
○石坂委員 今回の議論からは外れますが、日機連も中心になって、13個別業界でメーカー側としてのリスクアセスメントガイドを作ったわけですが、いま何がないかというと、ユーザーの事業場側の本当に役立つリスクアセスメントガイドはないのです。だから、それなりにやっていると。意欲的な所は宮川委員にご講演いただいてご指導いただくというような、そこまで意欲的な所は、高岡委員のようにずっと以前から進歩に合わせて社内体制を整えてきた所はできるのですが、これからどうしようという所はどのように取りかかっていいか。
そういうことを考えるコストというか、そこは非常にハードルが高くて、もう少しうまい促進策が必要なように思います。
○向殿座長 少し話があった定着させるという意味では、また別途考える必要があると。いま論点4で必要なのは、残留リスク情報を機械ユーザーにどのように提供すべきかということで、一覧表はいいけれど、これも度合いですが内容の細かさという話になって、機械ごとに変えなくてはいけないということになると。そうすると、しょうがないから共通に必須項目と、あとは機械ごとに変えてもいいという分かれ方しか、ここでは答えが出てこないと思います。最低限必要なのはこれとこれであると。あとは機械ごとに業界で検討したり、実習や実験を通しながらだんだん決めていくという話になるのだと思います。
○宮川委員 A規格、B規格ではないですが、要求事項は一体何なのかと、おおむねの要求レベルは何なのかというものがまずあって、一覧表にできるものは一覧表にしていくと。そういうことなのではないかなと思うのです。
○向殿座長 一覧表を作るとすると、全部共通のA規格に相当する必須項目と、あったほうがいいというもの、あと個別のものということを考えたほうが、一覧表でもいいでしょうというのが皆さんのご意見ですね。
それでは、論点5にいきましょう。今度は、機械の危険源情報が提供される機械は、要するにどこまでやるか、どういう機械までやるかということです。また、残留リスクは調べたけれど、ないものはないと書くか。残留リスクはありませんと書いてあったら恐いですね。
○宮川委員 それはないでしょう。メーカーは書かないでしょうから。
○向殿座長 しかし、何も書いてないと、やったのかやっていないのかわからないので、やった結果がないのか。
○石坂委員 メーカーもそういうことは書かないでしょう。
○宮川委員 「許容できないリスクはありません」とか、「最低条件をクリアする危険源はありません」とか、そういうことは書いたほうがいいですよね。
○向殿座長 書いたほうがいいですよね。やったけれど、いまのところ見つかっていませんというニュアンスで。「絶対ありません」だと、これは何が起きるかわからないから。
○佐藤委員 「以上」みたいなものですね。終わりと。
○向殿座長 そうですね、何もなければ「以上」と。それから、どのような機械をどこまでやるべきか、要するに特定機械というか、決まったものだけにするのか、作業の現場で使うものはすべてという話だと、EUの機械指令とか、ある意味では機械包括的安全基準と言っているからには包括的に、作業の現場で使う機械は全部対象にしようと考えていいのではないですかね。
○斎藤臨時委員 この範囲で除外すべきという意見で言うと、機械包括安全指針が根底になったとするならば、機械包括安全指針は限定していないので、これに当てはまると。それが対応しているのと、クロスするとなれば、すべての機械ということになるかと思います。
○向殿座長 これはいいと思います。残留リスクがない場合は、いま言ったように「絶対ありません」などと書くのは非常に難しいので。何と書くのか、当方のリスクアセスメントで言うと、「注意すべき残留リスクが見つかりませんでした」と。
○宮川委員 「許容不可能なリスクはありません」とか、「大きなケガを生ずるような危険源はありません」とか。
○向殿座長 いまのところ見つかりませんでしたと。
○黒澤委員 肯定的な表現をされるといいと思います。積極的にやったけれど、見出せませんでしたと。そういう表現なら受け入れられるのではないですか。
○向殿座長 ということで、第1については大体議論は終わったことにします。第2ですが、時間がだいぶ迫ってきましたので。
○安達副主任中央産業安全専門官 それでは、資料4の9頁です。大きな論点の第2ということで、「機械の危険情報の提供制度の効果的な運用について」ということです。各委員から寄せられた意見を簡単にまとめてありますので、ご紹介します。また次回までにお気づきの点があればお願いします。
1つ目としては、メーカーの取組み促進方策ということで、いろいろご意見をいただきました。イにありますように、人材の養成、特に中小企業に対するコンサルティングのような支援、ウにありますように、論点4にあった情報提供の必須事項を決めること自体が有効ではないか、また、ガイドライン作成のお話がありました。
2つ目は、ユーザーに求められる取組み・支援等です。主な意見ですが、イにありますように、「ユーザーからも積極的にメーカーに対し情報を要求していくことが必要であろう」ということです。これは、おそらく必須項目以外の項目が該当するのではないかと思います。
また、ユーザーにおいても人材の育成、あるいは機械安全の妥当性を評価できる人材に対する認定制度というか、全体的な底上げを図る必要があるのではないか。ウにありますように、「機械発注時にユーザーサイドから安全使用をメーカーに提示する」とか、こういったコミュニケーションを進めることが提案されております。
10頁です。3つ目の論点ですが、想定していないリスクに対する対応ということでした。現行では、なかなかユーザーからメーカーへ情報をフィードバックすることが行われていないのではないかというご意見もありました。そこで、例えば行政が持っている「労働者死傷病報告書」のようなデータを、データベース化することが望まれるとか、ここには書いてありませんが、災害発生情報以外にヒヤリ・ハットといった情報も、機械災害の設計段階の情報として役に立つのではないかというご意見もありました。
時間の関係上、簡単にご説明しましたが、またお気づきの点があれば、次回以降お知らせいただければと思います。
○向殿座長 いまの議論でもかなり出ていますね。特に中小企業のメーカーがやる気になるような促進策がないかということで、いくつかご意見が出ているということです。また、ユーザー側も慣れていないユーザーがたくさんいますので、人材の育成も含めて必要な支援策は何かということで、いくつかご意見が得られたと。
最後に、フィードバックについては先ほどコミュニケーションという話が出ていましたが、大事なのはそこだと思います。いかにユーザー側のいろいろなヒヤリ・ハットも含めて事故情報を設計側にフィードバックするか。行政側もうまくデータを集めてという支援策が必要だという意見ですね。何かこれ以外にありますか。
○宮川委員 石坂委員がおっしゃったように、実効性については、まさにここでキチンとしておかないと、いろいろな制度をつくっても屋上屋を重ねるようなもので、情報を出したってきっと処理するには、人の問題はものすごく大きいので、いままでやってきたこと(リスクアセスメントの展開に関して)も含めて、ちょうど良いタイミングだと思うのです。いままでは違いを説明しなければいけないから、手法論を中心にやってきたと思うのです。それはしょうがないのです。
では、本当に何のために何をやるのかというところを議論していかなければいけないし、いままでの再発防止型の安全施策を、リスクアセスメントという未然防止型に切り替えたときに、どういう見方をするのかと。前回、安全状態、安全行為と言っていましたが、これは再発防止型で、未然防止型で見ると不安全状態は許容不可能なリスクよる災害とか、不安全行為は、合理的に予見可能な誤使用による災害とか、そういう見方、表現をしないといけない。冒頭の説明の中で、安全装置の欠陥による災害とありましたが、欠陥だって許される欠陥と許されない欠陥があるのだとか。また安全衛生マネジメントシステムとリスクアセスメントは別個という雰囲気があります。こうした面での整理も必要であり、2つの見方があるような気がするのです。
○石坂委員 例えば、何か事故が起こったときのフィードバックの仕方だって、単に事故原因をやって、再発防止というのは従来もやってきたことなのですが、今度のリスクアセスメントで「リスク」というものを入れたのは、将来起こるかもしれないことに対して予防的に、事前に抑えるということ。それでも事故が起こったということは、どうして予想できなかったのかというところの反省に戻らないと、このシステムの改善にはならないのです。だから、こういうものをやっていくときのやり方は変わってくるはずなのです。1つひとつそういうものを整理しておかないと、次のステップにグレードアップする必要があると思います。
○向殿座長 これはユーザー側もメーカー側も、行政側もそうですが、再発防止から未然防止へという話ですね。それから、リスクベース、リスクでものを考えるという思想的な転換がここで起きていると。そのための潜材育成もきちんとしないと、民間も追いていけなくなってきているところがあると思います。
○石坂委員 それから、だんだんわかってきたことは、そういうやり方とかガイドでも何でも、そういうことをしてやり方を普及させる努力をもっとしないといけないですね。
○宮川委員 本質的なところは、何のためのリスクアセスメントかというところがわからないと、情報処理はできないのです。メーカーからのヒアリング結果のコメントを見ても、ほとんどわかっている様には思えない。
○向殿座長 そうですね。まだいろいろあるかと思いますが、是非いろいろご提案を出していただいて、ルールは作ったけれど、ザルにならないように、実効性のあるものにするようにやりたいと思います。
それでは、資料5が残っております。報告の骨子案ですが、これもご説明をお願いします。
○安達副主任中央産業安全専門官 資料5をご覧ください。第1回、第2回でご議論いただきましたので、第3回には報告書をお出ししようと考えておりますが、大体こういう形で考えています。
1は「はじめに」です。2としては「機械安全に係る現状と課題」、災害の発生状況とか、今日お示ししたリスクアセスメントの実施状況、あるいはアンケート調査等から見た現状と課題のようなものを浮き彫りにしていきたいと思います。
3で、今日ご議論いただいた論点整理を書き込んでいきたいと思います。今日も実効性のお話や情報の範囲などいろいろご議論いただきましたので、ここをまとめていきたいと思います。事務局でとりまとめて、後日、事前に資料をお送りしたいと思います。
4としては「今後の課題」ということで、少し長期的に見ていかなければいけないような課題もまとめていきたいと思います。以上です。
○向殿座長 どうもありがとうございました。こういう形で、次回辺りにまとめた提案をここで議論していただく予定です。よろしくお願いします。
進行が下手で、もう10分オーバーしていますが、かなり本質的な議論もあったと思いますので、是非いろいろ提案していただいて、次回のまとめの報告書の中に、今日の意見も含めて入れていただきたいと思います。次回の予定は、7月5日ですか。
○安達副主任中央産業安全専門官 皆様から日程をいただきまして、全員のご参加は難しいかもしれませんが、7月5日(月)15時から17時を予定しております。
○向殿座長 どうもありがとうございました。事務局に進行をお返しします。
○安達副主任中央産業安全専門官 長時間ありがとうございました。本日の議事録も後日ご確認をお願いしたいと思います。今日の資料1の議事録につきましては、今週中には厚生労働省のホームページにもアップする予定ですので、まだご確認が終わっていない方は、お気づきの点はあとで事務局までお知らせ願いたいと思います。
それでは、大変長時間ありがとうございました。第2回検討会はこれで閉会いたします。
○斎藤臨時委員 梅崎の代わりに出席させていただいております。あくまでもオブザーバーとして出席している斎藤です。よろしくお願いします。
○安達副主任中央産業安全専門官 では向殿先生、よろしくお願いします。
○向殿座長 お忙しいところお集まりいただきまして、ありがとうございました。まずは事務局から、資料の説明をお願いいたします。
○安達副主任中央産業安全専門官 それでは資料の確認をいたします。配付資料が5点、参考資料が2点あります。1枚ものの議事次第の次に、少し分厚い「第1回検討会議事録」があります。資料2として1枚紙で、「リスクアセスメントの普及状況」という資料があります。資料3として「残留リスク情報の提供事例」ということで、3-1、3-2の2点の事例を添付しております。資料4として、「第1回検討会の議論を踏まえた論点整理」という資料が出ております。資料5として、「検討会報告書骨子(案)」という1枚紙があります。あとは参考資料として2点あります。これは前回の資料と同様のものですが、「検討会開催要項」が参考資料1です。「参集者名簿」として、参考資料2を添付しております。
○向殿座長 今日は資料4がメインテーマですが、まずは資料1と2について、事務局からご説明をお願いいたします。
○安達副主任中央産業安全専門官 資料1は前回の議事録です。各委員におかれましては、短時間のご確認をどうもありがとうございました。この資料は少し分厚いので、こちらでは詳細にご説明しませんが、資料4の「論点整理」で、前回出た主な資料は反映させておりますので、そちらでご確認いただきたいと思います。
続いて資料2をご覧ください。ポンチ絵が書いてある「リスクアセスメントの普及状況」という資料です。こちらは現在のリスクアセスメントの普及状況についてご説明したものです。上に大きく円が3つあります。これは厚生労働省が平成17年に調査をした、労働安全衛生基本調査結果に基づくものです。この中で規模別のリスクアセスメントの普及状況が調べてあります。調査年度は少し古いのですが、規模別の実施状況の傾向として見ていただけ れば結構かと思います。300人以上の事業場は、数としては非常に少ないのですが、この規模でいきますと大体51%、50人以上300人未満の事業場規模においては25%です。あと、事業場数として最も多い労働者数10人から50人未満の事業場においては、20%弱という規模別の状況になっております。
左下にもう1点、直近の実施状況をもう少し詳しく調べたものがあります。こちらは全国50人以上の事業場のうち、私どもの第一線機関の監督署において4,000数事業場に対し、個別にリスクアセスメントの実施状況を調査したものです。調査結果を見ますと、「リスクアセスメントを実施している」と回答したのが38.1%、「実施を準備中」が14.2%、「実施予定」が25.6%、「予定なし」が22.1%となっております。以上のことから、特に「実施準備中」と「実施予定中」を合わせたものが、全体の大体4割を占めております。この層が今後リスクアセスメントに取り組むことによって、一層の災害減少が見込めます。今回の制度化に当たっては、こういった層へのアプローチをどうするかということも、念頭に置く必要があると考えております。
○向殿座長 資料1、資料2をご説明いただきましたが、よろしいですね。40%以上はこれからやろうとしているところですので、非常に有効ないい時期だと思います。それでは資料4の「論点整理」です。資料3にリスクアセスメントのいろいろな提供例があります。これは資料4の中で説明するのですね。これは前回と同じで、第1と第2の2つのグループに分かれています。第1の中に論点1から論点5まであります。まずは資料4について、また安達さんからご説明をお願いいたします。
○安達副主任中央産業安全専門官 前回、非常に活発なご意見をいただきましてありがとうございました。また、前回の検討会終了後も、多くの委員からいろいろなご意見をいただきました。時間の関係上、十分反映し切れていない部分もあるかもしれませんが、ご容赦いただきたいと思います。
第1の論点としては、「機械の危険情報の提供のあり方」ということで、論点を細かく5点に再整理しております。後段の論点の第2は、「機械の危険情報の提供制度の効果的な運用について」として3点の論点があります。まずは「提供のあり方」の5つの論点についてご説明したいと思います。
1つ目の論点は、機械メーカーが機械ユーザーに機械の危険情報を提供することが、機械ユーザーにとってどのように効果的又は有効なものであるかということです。ここで「検討の方向性」と書いてあるのは、前回の議論でおおむねコンセンサスが得られたものや、さらなる議論が必要と思われた点を抽出しております。1つ目としては、機械ユーザーのリスクアセスメントに必要な情報である、機械の危険情報を適切にユーザーに提供した結果、ユーザーにおいてリスクアセスメントが行われるならば、労働災害の減少効果が見込めることから、機械の危険情報の提供とユーザーからの新たなリスク情報などのフィードバック、この相互のリスクコミュニケーションを進めることが効果的であることがまず確認されました。
この点については、コンセンサスが得られたと考えております。一方、施策として展開するには、この情報がユーザーにとって効果的なものであり、かつ実効性が確保されることが必要とされました。情報として十分であるか、十分に使いこなせるものか、そういったご意見があったかと思います。
「主な意見」ということで、議論のうち主な意見を抜粋しております。アとして、詳細な情報を提供しても労働安全衛生法第28条の2を実施する上で有効に活用できるものか、ユーザーが十分に使いこなせるものであるかを見極める必要があるというご意見がありました。イとして、ユーザーの特性です。これは事業場の規模や実施能力を踏まえて、実効性のあるものとする必要があるとされました。資料2にあった規模別の実施状況も、少し念頭に置く必要があるということだと思います。ウとして、提供された情報についてはユーザーで活用されなければ意味がない、ユーザーの具体的なリスク低減に寄与できるものでなければならないという話もありました。エとして、国際比較についてご意見がありました。EUのような機械の流通規制の観点からではなく、労働安全衛生法の枠組で考えることにも留意する必要があり、単純に真似をすることはできないということであったと思います。
2頁です。論点の大きな2は、機械ユーザーがリスクアセスメントを実施する際に必要な情報とは何かということでした。「検討の方向性」として、1番目では非常に多様な意見をいただきました。論点1で述べたとおり、有効に活用されるためには、まず情報を使用するユーザーの特性にも配慮する必要があるというご意見でした。2番目として、リスクアセスメントにこれから取り組もうとするユーザーに対しては、このような情報の入手が取組の契機となるだろうというご意見です。あと、総じてユーザーのリスクアセスメントに必須の情報とは何か、つまり次の論点である残留リスクの範囲等を明らかにしておくことが必要であろうというご意見でした。3番目として、こういった必須の情報と、ユーザーの要求に応じた必要な情報を区分し、使用目的に応じた提供が行われるようにすることも効果的ではないかというご意見がありました。4番目として、仮にメーカーの企業機密に係る情報がユーザーにとって必要となる場合には、当事者間の契約等に基づいて、提供する情報の範囲を決定することが適当ではないかというご意見がありました。5番目として、こういった情報の程度論と言いますか、範囲のお話があった中で、このような取組を展開する際に先進的な機械メーカー等については、別途、「機械包括安全指針別表第5」に基づく全般的な取組の推進を図っていくことも、当然言うまでもなく、段階的に全体の底上げを図っていく必要があるのではないかというご意見でした。
「主な意見」です。1つ目として、リスクアセスメントに必須の情報というのがありました。必須の情報としては、まず情報の内容を少し絞り込んだらどうかというご意見がありました。一方で、「機械包括安全指針別表第5」の項目すべてを提供すべきではないかというご意見もありました。この点については、指針では警告ラベル等の多様な提供を許容しているもので、ここでは論点4にある提供の方法、情報の一覧性といったものを検討しているという違いにも、留意する必要があるというご意見でした。必須以外の情報等は、要求されたら提出するという整理もあるのではないかというご意見もありました。メーカー・ユーザー双方のニーズに応じ、2段階又は複数段階の提供もあるのではないかというご意見もありました。
2として、本質的安全設計方策が講じられた危険源の情報の取扱いについても、多くのご意見がありました。アでは、メーカー段階で本質的安全設計方策が施されたリスクについては、許容できない残留リスクがないということであるならば、一義的に提供の必要はないとのご意見が多くありました。一方、そのリスクのハザードを提供すべきという意見もあり、これについては無条件に提供するのではなく、ユーザーのリスクアセスメントに必要であるとの要求に応じ、開示していくのが適当ではないかというご意見がありました。
3頁です。2の本質的安全設計方策にかかわる部分で、企業機密にかかわる情報である場合、当該情報が必要であるならば守秘義務を締結するなど、当事者間の契約の下で提供すべきであるとのご意見がありました。なお、本質的安全設計に係る部分であっても、ユーザーに危険源の情報を伝える必要がある場合もあるものの、一律に提供することまでは要さないのではないかというご意見もありました。本質的安全設計方策が施された箇所の危険源情報が必要になる場合は、機械の修理・保全をする場合が考えられるが、当該作業はメーカーが担う場合とユーザーが担う場合があることにも、留意する必要があるというご意見がありました。
大きな3番としては、用語の定義です。本検討会では「機械の危険情報」とか「残留リスク」という用語が使われておりますが、この用語の適否やその意味する範囲について、いろいろな意見がありました。適切にその趣旨が伝えられるものとすることが望ましいとのご意見がありました。これらが論点の2つ目です。
4頁です。3つ目の論点としては、いまの論点2に関連するのですが、機械の危険情報のうち、残留リスク情報として必要な項目は何かということでした。「検討の方向性」です。1つ目として、法第28条の2に基づくリスクアセスメント指針においては、機械ユーザーのリスクアセスメントの実施に当たり、機械メーカーから使用する機械設備に係る危険性又は有害性に関する情報を入手するよう求めています。機械ユーザーのリスクアセスメントに必要な情報である残留リスクについて議論をしたところ、さまざまなご意見が出されたところです。
2つ目として、残留リスク情報の作成プロセスは危険源に対し、メーカーが防護措置を講じ、残ったリスクは何かというケガ・疾病に至るまでのストーリーを作成していくこととされたところです。ここでユーザーが必要とする情報というのは、JIS等に定義があるとおり、危険源の危害のひどさと、その危害の発生確立を組み合わせた情報とされました。一方で、この具体的な情報は何かということも、また議論を深めていく必要があるというご意見でした。
3つ目として、残留リスクの必須の情報の範囲としては、現行のメーカーの取組事例から見て、例えば対象とする作業を運転作業、点検・保全作業など、ユーザーにとって優先順位の高いものを必ず含めるという整理ができないか、また残留リスクに基づき、ユーザーが行うべき防護方策のうち、安全防護、付加的防護、個人用保護具の使用に係る情報も必ず含めるという整理ができないかといったご意見もありました。
4つ目として、ユーザーの実効性を確保するという視点に、引き続き配慮することが必要であるというご意見でした。
途中ですが、ここで資料3をご説明したいと思います。前回、残留リスクの範囲について議論をしたところ、具体的な提供方法のイメージが湧かないというお話がありました。資料3-1と資料3-2は各種調査研究の取り上げられたリスクアセスメントの実施事例をピックアップしたものです。ですから、この事例が良いとか悪いということではなくて、イメージを持っていただければと考えております。
まず資料3-1です。これは鉄鋼業B社が情報提供を受けたリスクアセスメント事例です。鉄鋼業のユーザーであるB社がメーカーからNC加工機を購入した際に、どのような情報をもらったかというものです。具体的に2頁をご覧ください。「残留リスク情報の詳細」です。これは実際にユーザーに提供した情報です。これが十分か不十分かということは別として、メーカーの方でどういった作業にはどういった危険があるか、どういった注意事項が必要で、どのような回避方法が必要かという形で情報提供をしたという事例です。ユーザーにおいては作業手順などに反映して活用したというようになっております。
もう1点は資料3-2です。これは合板を切断する切断機へ材料を投入するロール機のような投入機の残留リスク情報です。いろいろな機械のリスクアセスメントのやり方を見ていますと、このシートは割合よく使われているシートです。左から危険な動作あるいは危険状態、危険事象、リスクを見積り、あるいは低減させたプロセスが書いてあります。そして右端にありますように、残留リスクの回避の方法といった一連のものが、メーカー段階で実施されています。
こういった取組で、実際の残留リスク情報にはどういうものがあるかというと、資料の3枚目をご覧ください。この投入機の残留リスク情報を抜粋したものがこちらです。例えば上から4つ目の運転中の作業においては、装置のフレームに身体がはさまれる恐れがある。回避の方法としては、危険区域の安全柵の設置とか、別の項目では耳栓等保護具を付けて作業を行うとか、ユーザーにおける作業管理に必要な情報が出ております。各種調査研究における事例のシートの中では、1枚目、2枚目のようなメーカー段階でのシートを作るケースが、かなり一般的に見られるところです。
こういった実際の取組事例なども見ながら、資料4に戻って、「主な意見」です。この辺りは非常にたくさんのご意見をいただきました。1つ目として、リスクアセスメントの実施に当たっての必須の残留リスク情報の項目です。アですが、ユーザーが必要とする情報とはJISの定義にもあるとおり、機械源の危害のひどさ、その発生確立を組み合わせた情報ではないかというご意見です。
2として、一方で危険源情報をどう考えるかということです。例えばパワーショベルは、それ自体が重いとかパワーがあるという危険源があります。こういった危険源自体を提供するかどうかということで、危険源とするかリスクとするかという話もありました。残留リスクについては、危険源に対しては危ないのである防護措置を講じたが、リスクが残っているという災害発生シナリオを書いていくことだろう、というご意見もありました。こういった取組については、メーカーとユーザーが議論し合うことが必要であるというお話がありました。危険源で見ると、すべてについて記載するのは難しいのではないかというご意見もありました。ユーザーが知り得ることが困難なリスクについては、メーカーが提供可能な情報であるならば、当然提供すべきであるというお話もありました。
5頁です。リスクのレベルの話もありました。アの危害の大きさにより、提供すべき情報か否かの分類ができないかという考え方については、リスクの大きさによらず、情報提供をしてほしいというご意見がありました。また、この意見については実効性を保つのは難しいのではないかというご意見もありました。リスクに関しては、危害の大きさと危険源の大きさを混同してはいけないというお話がありました。例えば鉄粉が飛んでくるようなものについては、身体に当たる場合と目に当たる場合と重篤度が異なる、つまりユーザー段階でリスクが異なることから、メーカー段階においてどこまで情報を求めるかということも考えておかなければいけないというご意見でした。ウの講ずべき方策の内容については、ユーザーにおけるリスクの見積もりに応じて変わり得ることから、特定することはできないが、想定される保護方策を提供することは効果的であろうというご意見でした。
(3)は危険源の情報についてです。残留リスクではなく、危険源の大きいものは情報としてほしいというご意見がありました。発生頻度が極めて小さくても発生する恐れがあり、頻度はユーザーで決定される理由によるというご意見でした。この意見についてはユーザー>における安全を確保するために、メーカーは合理的なアシストを行う必要があるとのご意見もありました。危険源自体の大きさでいきますと、エネルギー、速度、有害性などに応じて区分できるのではないかというご意見でした。
2の実効性の確保については、若干重複になりますが、アとして、情報提供はユーザーにおける機械労働災害防止のために行うものであり、その目的にかなった内容であるかを、まず精査する必要があるのではないかというご意見でした。イとして、ユーザーが効果的に活用できるものとする必要があるのではないか、ウとして、設計者が行うリスクアセスメントはユーザーから事前に与えられる情報量、例えばユーザーにおける使用状況・頻度によって、その精度が向上するのではないかというご意見でした。
3はハザードの種類についてです。安全関係のハザードのみならず、エルゴノミックス系などの労働衛生の観点からの中長期的に発病するリスクをどう考えるかというご提案がありました。現在はあまり考慮されていないが、発病すれば重態となる恐れのあるものもある。
一方で、すべてのハザードに対処することはなかなか困難ではないかというご意見もありました。
6頁が論点4です。これはどのように情報提供すべきかというものです。「検討の方向性」ですが、どのような危害がどのような時に発生するか、どのような対応が必要かという情報を明瞭に一覧できるものにすることが、ユーザーにとって使いやすいとされました。この点については特段、ご異論はなかったかと思います。ただしイメージしにくいので、普及に際しては具体的な例示をすることが必要であるとされました。
「主な意見」です。1の具体的な提供方法のアでは、イメージしにくいので例示する必要があろうと。特に簡潔明瞭のみならず、どのような危害がどのようなときに発生するか、どのような対応が必要かという情報を、明瞭一覧できるものに融合するというイメージが、なかなかしにくいというご意見でした。あと、フォーマットについてのお話もありました。限定的なものではなくて多少柔軟なものにして、使いやすい雛形を与えておくことが良いのではないかと。この雛形には必須のものが記入できるようにしておく必要があるというご意見でした。
(2)として情報の一覧性、別途交付ということでした。危険情報をバラバラではなく、一覧表の状態が使いやすい、取扱説明書と別途にという位置づけは、現場で使いやすいものであり、かつ現場でも紛失しにくいということに留意する必要があるということでした。ウとしてアンケート結果から、ユーザーにて残留リスク情報を受け取ったという認識されないケースが多いことから、ユーザーが明確に認識できるような示し方が必要であり、取扱説明書とセットにする場合で一覧性を確保し、わかりやすい所に添付するとよいのではないかというご意見でした。
7頁の2は、情報提供が必要となる場面です。アとして、機械の新規譲渡時のみならず、実際の機械の流通というのは、中古品や海外からの輸入品の取扱いもあります。これは今すぐということではなかったかと思いますが、一定の整理が必要であろうというご意見でした。
イでは、機械にすべての段階、製造、設置、運搬、廃棄などにかかわる事業者がすべて法28条の2の義務対象となるならば、すべての段階で情報が必要とのご意見がありました。
8頁が論点5です。機械の危険情報が提供されるべき機械はどのようなものかという、機械の範囲についてでした。これは総じて検討の方向にありますが、リスクアセスメントの促進、ひいては労働災害防止という目的に照らして、基本的に労働現場で使用される機械が、ユーザーに譲渡される場合を考えればよいのではないかというご意見でした。意見として、除外すべき範囲があるかどうかというところでは、アとして、EU機械指令においても除外されている機械があり、対象機械としては、そのことも考慮する必要があるのではないかというご意見でした。括弧内にその例示が書いてあります。イとして、労働安全衛生法令で規定されている特定機械等は、除外できるのではというご意見がありました。
2番目が、労働安全と消費者安全の観点についてです。アとして、主として一般消費者の用に供する機械等とのデマケについては、労働安全のために労働者が使う機械に限ると考えられる、また、厚生労働省の施策であるので、労働安全衛生法での範囲で考えるべきであり、制度の運用の効率化も考慮すべきであるとされました。イとして、一般消費者向けではなく、B to Bの契約下で納入される機械が主となるのではないかというご意見がありました。参考1では化学物質のMSDSの法条文を参考に書いてあります。ただし書きにありますように、化学物質のうち、主として一般消費者の生活の用に供される製品というものは、この限りでないということで除外されているという状況です。大変駆け足の説明で恐縮ですが、大きな5つの論点でした。
○向殿座長 「論点整理」をまとめた資料4の第1グループと第2グループとあるうち、いま第1グループの話をしました。それでは一つひとついきましょう。まず1番、機械メーカー側がユーザー側に機械の危険情報を提供することは、機械のユーザーにとってどのように効果的又は有効的かという話です。これについて、何かご意見等はありますか。よろしいですか。ここで言っていることは、メーカー側からユーザー側にちゃんと機械の情報をいただければ、ユーザー側のリスクアセスメントは非常に効果的にできるし、労働災害を減らすことができると。逆に言うと労働災害というのは、現場で得たいろいろな情報をメーカー側にフィードバックすることによって、お互いにリスクコミュニケーションがうまくいくだろうという内容ですね。これは明らかに有効だろうと思って、我々は一生懸命やってきているわけで、あまり提供の仕方が悪いと使ってもらえないということは注意すべきだというのは聞いています。どうですか、折角ですから。
○高岡委員 1番とは直接関係がないのですが、前回の検討会が終わってから考えたことです。この場というのは、事業者あるいは労働者の立場での検討会ですから、こういう論点の整理でいいと思うのです。しかし残留リスクを提供するメーカー側のメリットを考えておかないと、有効に提供されないのではないかと思います。私は法律家ではないのでよく分からないのですが、例えば残留リスクを明示したことによって、その対応がメーカーからユーザーに移るということが明確であれば、メーカーは残留リスクを提供しやすくなると思うのです。そうでなくて、いくら提供してもメーカー側に責任が残ってしまうのであれば、それはメーカーにとってあまりメリットがないので、残留リスクの明示ということに積極的にはならないのではないかと思うのです。その点も少し考えておく必要があるのではないかと思います。
○向殿座長 いままでの論点はユーザー側に、労働災害を減らすためには有効であるから、是非機械メーカー側も協力してちゃんと出してくれ、それについては法律である程度規制するというか、明示するから従いなさいというイメージだけれども、いまのお話は、出す機械メーカー側にとってもメリットというか、喜んで出すようにするためには、残留リスクはここだと明示したならば、それに従っておきた事故その他についてのメーカー側の責任は、ある程度軽減されるとか、そういう法律的な対応をしっかりしていれば、メーカー側も喜んでちゃんと出すだろうということですね。
○高岡委員 そういうことだと思うのです。
○向殿座長 これは弁護士の話とか、きっといろいろな話が出てくるでしょうね。
○佐藤委員 私もメーカーなのですが、メーカーとしても都合の良すぎる話のような気がしますね。ですから、もう少し考える必要があろうと思います。
○石坂委員 リスクコミュニケーションというものが、ここの根底にはあるわけです。どういうときにリスクコミュニケーションがあるかというと、まず理想的に言えば、購入交渉時においてユーザーがきちんと安全条件を提示できるようになっていけば、いちばん理想的なわけです。それでメーカーがその条件に合わせて、こうだよ、でもその機能をやるとどうしてもこれだけのリスクが残ると。しかしユーザーのほうが、生産に必要だからその機能は是非入れたいと。例えばそのリスクに関して、少し高いリスクがあるとすれば、労働者を教育して資格を与えた人だけに使わせようかなとか、いろいろなバリアを設けて、そういうことが起こらないように施すから、やはり提供してほしいという形で合意がなる。そこのやり取りが一種の契約交渉時のリスクコミュニケーションです。
今度は実際に物を作って引き渡したとき、「譲渡時」と言っていいでしょうか。それが最終的にやった結果として、こういう残留リスクになりました、契約時の交渉からちょっと修正が加わりますが、こうですよと。そうすると、そこでリスク情報が本当に相手に引き渡されるわけです。これは杉本先生がよく言われることですが、リスクコミュニケーションでリスク情報を伝達するということは、「責任の伝達」なのだと。譲渡時に情報を渡してそれを受け取ったということは、そのリスクで我々はやりますよということなのです。
前回、中災防の委員会で出されたもので、リスクアセスメントをしなくても情報はほしいと。もらっているうちの6%ぐらいしかやらないということは、厳密に言うと本当は非常に厳しい危険なことなのです。そこをもらっておいて何もアンサーバックもしないで、そのままだったら、それはもう了解したことになりますから、現場で事故が起こったときに、「これは機械の責任だ」と言って民事訴訟になっても、何もリアクションがなかったではないか、これはもうユーザー側がそれを是としてOKしてしまったということになってしまうと思うのです。そういうことは不幸なことです。
ただ、情報を多く与えておけば、ある意味、メーカーはそれでもって責任を果たして相手に受け渡したことになるので、身を守るわけです。その代わり、メーカーにとって出したくないいろいろな性能にかかわる情報も出てしまうから、そこの兼合いがあるでしょう。これはどちらが良いか悪いかではなくて、単にメリット論でいけば、メーカーにとってはそういう責任の引渡しができるし、ユーザーもいっぱいもらうということは、それだけ責任を引き取ることでもあるのです。ですから、そこのこともよく認識しながらやる。使いもしないのに、いろいろな情報を持っても放置するということは、ユーザーにとってもあまりよろしくないことです。やはり実効性のあるものにするということが、メーカーとユーザー双方にとって、メリットのある情報の引渡しだろうと私は思うのです。
ここのメンバーは高岡さんにしろ宮川さんにしろ、ユーザーとしてはある意味では理想的な、よくやっているトップクラスのユーザーの立場でしょうから、よりシャープな高度な情報をもらえれば、それをしっかりと活かす術があるし、体制もある所です。しかし多くの場合がそうでないとすると、そういう問題もよくよく考慮しながら、やはり実効性のある情報の引渡しを考える必要があるというのが、私の意見です。
蛇足ですが、リスクコミュニケーションで言えば、前回ここにも資料がありましたように、ユーザーのほうに引き渡された後、稼働後のいろいろな不具合発生などの情報、危険事象の問題あるいは想定外の事象ということも含めて情報をフィードバックすれば、よりメーカーとユーザーの間で安全の向上につながる、いいコミュニケーションだと思います。譲渡時の問題で言うと先ほどのことがあるので、実効性という部分ではそういうことも少し念頭に置く必要があるだろうと思います。
○宮川委員 いま石坂さんが言われたように、コストの面も含めて、やはりメーカーがやったことの妥当性を主張することでしょうね。先回もお話いたしましたが、本質的安全まで下げたようなところも含めて主張するというメリットはあると思います。それから当然、メーカーも労働安全衛生法第3条第2項の適用を受けるわけです。安全配慮義務を果たしたと主張する根拠になるということは間違いないと思うのです。そこは明確にしておかなければいけない。先ほど石坂さんが言われた実効性というところが、私はうまく理解できなかったのです。一生懸命リスクアセスメントをやっているから、そういう所はきちんと情報を出してもいいだろう、そうでない所は適当にというような表現で言われたら、若干意見があるのですが、そういう意味ではないですよね。
○石坂委員 違います。実効性というのは、別なニュアンスも1つあるのです。厚生労働省という政府がこういう制度を作ると、それが本当にちゃんと回っていることが必要でしょう。その法律を出しただけで後は知らないということになると、やはりそれは無責任だろうと。通達や指針もそうです。そういうことが本当にちゃんと回っているように動かし得るのか、そういうものを作ってやったけれども、実際には行われないと。つまり実効性というのは、実際に行う意味での実行性もあるだろうと思っているのです。もう1つは、「有効」の「効」のほうです。情報提供したものが本当に使われる情報になるのか。
○佐藤委員 結局、日本を考えると、機械安全に対してユーザーとメーカーのどちらが理解しているかです。ユーザーというのは、日本国内にしかいないわけですよね。そこがいつも言うことです。根本的に機械安全の醸成が必要だ、足りないというのは、いまの日本のメーカーというのは、ほとんど輸出が多いわけです。輸出をしていると、どうしても機械安全というのは避けて通れない。ですからメーカーというのはある程度、残念ながらユーザーと比べると、機械安全に対する認識が非常に高いわけです。今日出ていらっしゃるユーザーさんは一流企業ですから、全然問題ないのですが、特に中小企業云々ということも後ろのほうに書かれていましたので、そういう実情を考えると、情報は全部与えました、それでいいのですねというような無責任なことは、実際問題として石坂さんが言われたように、非常に実効性がないという感じがします。ですから、その辺をもう少しきちんと配慮する必要があるでしょう。
○向殿座長 おっしゃるとおりですね。先ほどはたまたまユーザー側としてメーカー側のことをおもんぱかって言われたけれども、逆に言うとそんなに情報をもらっても、「後の責任はユーザー側」と言われたらユーザーは、「じゃあ、要らないよ。はっきりさせないでくれ。」と、当然逆手に出てきますからね。そうではなくて全体を上げようという話のところで、いまの話を表に出すとなると、なかなか難しいことになりますね。
○宮川委員 佐藤さんも石坂さんも言われたように、やはり情報を提供するだけではなくて、使いこなせるようなアプローチが必要であり、つまり「使いこなせる情報ソフト」が必要ということです。
○石坂委員 そういうことです。
○向殿座長 本来、そういうことですね。それに対して厚生労働省がちゃんと定着するように努力してほしい、という石坂さんの話も入っています。私が国際会議でISOの機械安全規格が出来たときのデータを見ると、メーカー側の責任とユーザー側の責任をちゃんとはっきりさせたいというのがバックにありました。そしてメーカーがやるべきことをやって合意したならば、ユーザー側はそれをちゃんと受け取って自分の責任でやってくれと。それで事故が起きた場合は、合意したところの先まで、メーカーまで戻らないようにしようというのがバックにあったと、私は議論をしていて思ったのです。ただ、日本でそのまま使えるかというと、日本国内ではそう簡単ではないと思っています。メーカー側とユーザー側が非常に密着してお互いにコミュニケーションができる、ある意味ではいい環境にあるので、そこでリスクコミニュケーションをしながら、お互いの労働安全を上げていこうというところに主要目的があるように私は思います。どうですか。
○安達副主任中央産業安全専門官 高岡委員の先ほどのご指摘に、責任の移動を法制化というお話がありました。
○高岡委員 いやいや、法制化とまでは言わないですが、メーカーのメリットがどこにあるかというのを考えておく必要があるかなということです。
○安達副主任中央産業安全専門官 わかりました。確かに労働安全という視点の中でそのことを法制化というのは、なかなか難しいと思うのですが、やはりこの制度を動かしていくメリットというものは、当然考えていかなければいけない。その点は第2の論点として、またご議論いただきたいと思います。
○向殿座長 いろいろな問題点があって、考えるべきことはたくさんあるけれども、メーカー側が危険情報というか、残留リスクをちゃんとユーザー側に提供するということは、日本の労働安全も含めて、機械安全も含めて、大変いい方向であるということは、皆さん意見が一致していると思います。その中で考えるべきことはいくつかあります。責任の話、その法制化の話になると、そう単純ではないのではないかという感じがしますね。その場合には契約で、残留リスクは本当にこれでいいのかという合意をお互いにするという話になって、たぶん非常に難しい問題が起きると思うのです。ただいまの議論の中で論点1に関しては、効果的、有効的なやり方で、こういうことに注意しながらやりましょうと。特に中小企業なども含めて使いこなせるかどうかという視点は、大変大事だということですね。ちょっと中途半端な気もしますが、方向性としてはこの辺でいいですか。
○石坂委員 あと、資料2で先ほど安達さんが言われたことですが。
○向殿座長 「普及状況」ですね。
○石坂委員 今回の情報提供というのは、あらゆる事業規模の全体のと言うよりも、平成21年の下の円グラフのうち、「実施予定」25.6%、「実施準備中」14.2%の層を、よりリスクアセスメント実行に向かわせることが、当面非常に効果的であると。こういうところに焦点を当てることも一つあるというニュアンスだったように、私は受け取ったのです。もっと議論をしないうちにそういうことを言うのは別として、折角この資料2が出たので、そういうように見ているのですが、安達さん、そういうことで理解してよろしいのでしょうか。
○安達副主任中央産業安全専門官 別の調査においても、リスクアセスメントを実施しているユーザーとしていないユーザーの労働災害の年千人率の比較などがあって、例えば、実施していない方が発生率が2倍程度あるとか。
○向殿座長 ユーザーでリスクアセスメントをやっているほうが、グッといいというデータもありますからね。
○安達副主任中央産業安全専門官 リスクアセスメントをしているということは、もちろん安全に対する理解が高いということもあるのですが、全体を引き上げるということもありますし、いま石坂委員から言われた、「実施準備中」のユーザーの背中をうまく押すというのも、政策としては非常に効果的だと思います。
○宮川委員 感覚的な話で申し訳ないのですが、この背景(資料2のリスクアセスメント普及状況)について。日本の労働災害の多くは、中小企業で占められると言われています。それは間違いないのです。大企業は少ないと言われています。しかし逆に個々の事業場単位で見ますと、例えば1年間に1件も災害を経験したことのない事業場の数はというと、残念ながら大手企業高岡さんの所も弊社も、1年に何件かは経験しているでしょう。
○高岡委員 経験しています。
○宮川委員 この辺のクラス(300名以上50名未満)になってくると、10年に1件などとなってきて、特にここら辺(50名未満)になってくると、おそらく20年に1件というイメージになってくるわけです。先ほど佐藤さんが「機械安全の意識が低い」と言われたけれども、その背景が実はこの点にあるのです。その背景を打破するためにリスクの概念で考える必要があるということです。
リスクアセスメントの話を頼まれるときに「トヨタのような程度の高いリスクアセスメントの話はしてくれるな。宮川は中小企業を相手に、豊田労基協会でリスクアセスメント推進委員会をやっているだろから、その話をして欲しい」とよく言われます。この発言に対して私はいつも言っているのです。先回も言いましたが、「リスクアセスメントというのは、災害の発生のプロセスで行うものです。このプロセスで災害が発生することは大企業も、中小企業も、零細企業も、父ちゃん母ちゃんの家内企業も変わらない」と言います。ですからアセスメントのプロセスはきちんとやろうねと。見積もりのレベルは情報量などによってバラつきがある。しかしアセスメントのプロセスがしっかりしていれば、議論をすればある程度通じる部分があるのです。災害発生のプロセスで見るということです。こういう言い方をしてはいけないのですが、災害の経験が少ない人たちに対しては、やはりきちんと災害の発生過程で見るということのほうが重要だと思うのです。どうでしょうか。
○高岡委員 危険源の明確化に重きを置くべきだということですね。
○宮川委員 そういうことです。どういうようにして災害が起きているかということです。
○高岡委員 それはやはりメーカーからの情報が重要だということですね。
○向殿座長 確かにここの見方はそうです。大きいほうがリスクアセスメントをちゃんとやっているとは言うけれども、従業員が多いから、事故に遭う確率も高くなっているという話ですよね。中小のほうは人数が少ないから、何年に1回というか、10年に1回しか起きない。そういう意味では経験していないということになります。
○宮川委員 極端な話、死亡災害などが起きて労災防止指導等で企業に行きますと「創業以来初めて起きました」と言うのですが、その創業が大正年代の場合もあります。トヨタ自動車の創業より古いのです。
○向殿座長 全体的にリスクアセスメントは非常に重要だと。中小もどこも変わりなく、全部必要だという意見は非常にごもっともです。ただ、やり方としては大手に対するリスクアセスメントの内容の話と、中小に対するやり方とでは、少し焦点を変える必要があるということですか。
○宮川委員 ベース(アセスメントのプロセス)は一緒だと思います。ベースは変わらないということです。
○佐藤委員 そういう意味では、日機連の機械安全リスクアセスメントの調査のときに、イギリスなどの先進国に調査に行ったことがあります。HSEで「5 steps to risk assessment -CASE STUDIES」というリスクアセスメントの実施例というか、どういうようにするのかという中小企業向けの簡単なガイドがあるのです。そういったものを作って配布すれば、そういう所の底上げには非常に役に立つのではないでしょうか。その辺が日本でいちばん欠けているところです。大企業はISO 12000でも読んでいればみんな分かるわけです。
○向殿座長 リスクアセスメントは非常に重要で、中小も大手もない、特にベースはほとんど同じだと。ただ、中小などにはガイドをちゃんと親切に作って、導入の手助けをするという視点が大事だということですね。わかりました。この点については、大体この辺でよろしいですかね。
では論点の2に行きましょう。機械ユーザー側がリスクアセスメントを実施する際に必要な情報とは何か、何が必要かということです。先ほどのお話を聞いてみると、この中の分け方は必須であるような情報と、ここまでは要らないのではないか、場合によっては付加的な情報ではないかという話もここには入っています。情報を使用するユーザーの特性も十分に考えろと書いてありますね。これについて何かご意見はありますか。
○宮川委員 先回もお願いしましたが、リスクは残留リスクだけではなくて、「別表5」の情報がほしいのです。例えば法第28条の2でもリスクアセスメントをやって、まずは法律を遵守して、それ以外に必要な措置を講じろと言っているわけです。異論があったら高岡さん、また後で意見を言ってほしいのですが、ユーザーは何をやるかというと、まずはこの機械が法律に適合するかどうかです。そのためには何が要るかというと、まず法律は特定機械とか、機械ごとに適用している部分がありますから、それに該当するか該当しないかということです。クレーンに該当するのか、エレベーターなのか、プレスなのか、あるいは、危険物乾燥設備なのか、一般の乾燥設備なのかということを判断しなければいけないのです。そうすると、構造や性能などの情報も欲しいわけです。
また、使用上の制限というのもあります。法律の中には、作業内容によって法規制しているものもありますので、どういう人たちにどういう作業管理が必要かという様なことを検討し、決定しなければいけません。安全防護についても、特定機械の絡みになるのでしょうけれども、検定を受けている安全装置かどうか、防護の機能がこれで本当にいいのかどうかとか。リスクに関係なく法律が適用されますから、法対応の観点からは残留リスクの情報は関係ないのです。安全プレスも法律が適用されるわけです。安全プレスは、極めて低いリスクの低いプレス機ということでいいですよね。しかし法律は適用されるわけです。
もう1つは、どこかに散りばめられているのかもしれないけれども、別表5にはない危険源に関する情報が欲しいのです。これは先回、高岡さんとも言ったことです。危険源については法律の中にも、はさまれたとか、感電だとか、爆発火災だとか、全設備に適用される項目が結構あるわけです。衛生関係でも有機溶剤を使うとか、全部設備に適用されるわけです。ですから、どういう危険源があるのか、そこから適用される法律は何なのか、必要な就業制限をどうするのかです。また、就業制限の中でも知識・技能だけではなくて、健康管理面での就業管理もしなければいけない。難聴やじん肺などを見るとそうなってきますので、そういうことをやっていかなければいけないのです。そうすると、やはり残留リスクだけではなくて、危険源情報がほしいのです。
2点目は許容不可能であり物的リスク低減策を講じて許容可としたリスクも、ユーザーとして妥当性確認のためにほしい。そして残された防護できないリスクは人でカバーしなければいけないので、やるべきルールを決めなければいけないというのが3点目にあります。もう1つは、安全防護の機能を維持しなければいけませんので、そのニーズ、必要性、そのやり方を決めるために、やはり防護装置の情報はほしいわけです。私たちユーザーとしてやらなければいけない主な項目は、この4点ぐらいあるので、それはやはりきちんと分かるように情報をもらわないと、ユーザーとしてはたまったものではない。「メーカーさんから情報提供がなかったから知りませんでした。やりませんでした」と言ったときに、厚生労働省や労働基準監督署が許してくれるかといったら、そうではないですから、ここのところはもう一度ご確認いただきたいと思うのですが、いかがでしょうか。
○向殿座長 もっと出せ、出すべきだということですね。
○宮川委員 きちんと出してほしいということです。
○石坂委員 基本的には理解できるのですが、こう思うのです。いまは2項の話をしているけれども、3項にも全くある話です。要するに、今回は残留リスク情報をきちんと伝えようということです。3の2番目にありますように、ここでユーザーが必要とする情報とは、JIS等の定義にもあるとおりの危険源の危害のひどさと、その危害の発生確率を組み合わせた情報とされたと。つまり、ある程度考慮すべき残留リスクについて残留リスクとしたときに、残留リスク情報はそこにかかわるハザードのことまで言及しないと伝わらないものは当然入るのです。ですから「ハザードは全部出せ」という言い方ではなくて、「残留リスク情報として出せ」と言えば、自ずと必要なハザードは入るのだろうと思うのです。そういうように私は理解します。
○宮川委員 先回も言ったかと思うのですが、メーカーはメーカーのシェアの中で標準的な範囲の中で前提条件を決めてリスクアセスメントをやって決めていきますよね。それで、これぐらいならば許容できるし、可能ですということでいけますよね。ところが受けるユーザーとしては、自分たちの職場の実態に合わせて、本当にそれが許容できるかどうかを決めていかなければいけないのです。そのときは、やはり先ほど言ったような仕様や性能などの情報がないと、その適否の判断というのができないのです。どこで判断するのか、何をベースに判断するのか。
○石坂委員 私に言わせると、そこまで情報がほしいのなら、購入時にそういう要求をきちんとやって、契約のときにやっておくべきではないですか。
○宮川委員 いまは機械包括安全指針をベース検討しているから。機械包括安全指針もスペックに関するもの、使用上の情報に関するもの、防護に関するもの、そして残留リスクと分けて、その残留リスクの中での話をしているのです。
○石坂委員 そうです。ですから残留リスクとして情報を出さなければいけない。出せば関連するハザードは当然説明しないと、リスク情報が説明できないのです。
○宮川委員 それは当然あります。しかし、それが本当に許容できるかどうかということを判断しなければいけないわけです。
○石坂委員 それはそうです。情報をもらったのだから。
○宮川委員 そのときにそういう情報がほしいわけです。ですから先回、高岡さんも特に危険源情報についてはほしいとおっしゃったのです。
○石坂委員 要するに、そうではないと思っていたけれども、そういうものが危険になるかもしれないから、別途、また全部詳しくやりたいから、情報を出せという話になってしまうでしょう。
○宮川委員 「詳しくやりたいから」という言葉が、私はよくわからないのですが。会社として受入れ可能かどうかということを判断するということです。
○石坂委員 私はいま、法律に準拠してそういう話をしようと言うから、指針でも何でも残留リスク情報を流しなさいと言っているわけです。
○向殿座長 その前にいっぱい出すべきで、最後に残留リスクを書くと。それだけでは駄目だと。
○石坂委員 そういうことです。
○高岡委員 この問題は、やはり本質的な問題だと思っています。安達さんから説明していただいた資料の「残留リスク情報の詳細」とか、「リスクアセスメント評価表」を改めて見ると、このメーカーは相当やられていますよね。よくやられているのですが、例えば、残留リスク情報のB社が提供を受けたものを見ると、「全作業中で床で滑るとか、障害物につまづきケガをする、機械の周辺はきれいに清掃しておいてください」と記載されていて、これらは機械そのものではないのです。「機械の周りをきれいにしておけ」と言っている。これはすでに労働安全衛生規則544条に、作業場の床面は滑り、つまずきなきこととありますよね。
その次に、「運転前に刃物を取り付けるときには、他人が刃物の回転動作をしてしまって手を切るとか、切断をするなどの重傷事故を起こすから、作業の表示をして他人が刃物の回転操作を行えないように、警告板等を用意してください」と。これも労働安全衛生規則107条に、錠を掛けたり表示をしたりという規則があるわけです。こういう法律に決まっていることまで記載しないといけないのかということを考えると、私はここまでは必要ないのではないかと思うのです。実際に刃物とかワークとか、重いものが危険源としてあったり、あるいは騒音とか切削音とかそういうものがここに書いてありますし、給電の充電部とか残圧とかも書かれていますので、こういった情報がもう少し定量化されて記載されていれば十分ではないかなと思ったのです。
また、リスクアセスメント評価表を見ると、例えば運転準備のところで吸着ベルトの使用確認中に、材料と吸着ベルトの間に手を挟むと。このメーカーが採用した方法は、注意マークを貼るということになっています。残留リスクの回避方法としては、「手を吸着ベルトの下に入れないようにしてください」と書いてあるのですが、これは国際安全規格で言えば手が入らないようにカバーをするとか、そうでないといけないのです。この評価表や残留リスク情報を見ると、改めてもう少し明確にしておかないと、メーカーとユーザーの間のリスク情報の受渡しはできないのではないかと思ったのです。これは相当レベルの高いメーカーだと思うのですが、それでもこういう情報だというところに問題があるのかなと思います。
○向殿座長 たぶん、現実はこうなのです。
○高岡委員 そう思います。
○石坂委員 私がこの事例を見て思ったのは、メーカーがこういうリスク情報を出すときにあらゆることを想定して、自分たちは考慮したと言うためにいろいろウォーニングを出したりしますが、一目でわかるようなことだって書いておくと。それはメーカーが身を守る立場で過剰なまでに出す情報と、本当にユーザーがユーザー側でリスクアセスメントをする必要のある情報は、少し違うと思うのです。逆に言うと、例えば刃が出ている所を、刃が出ているから危険ですよと言われなかったから、ちっとも知らなくてケガをしたなどということは本当にあるのかと。そんなものは、物理的に刃があるとか狭い所に手がいくとか、現場でリスクアセスメントをやるような話ですよね。
そういうことでもちゃんと出す必要はあると思いますが、要するに何がわからないかというと、目に見えて形状から明らかに危険源やリスクもさることながら、パワーが大きいとか、電子制御関係で高圧電源があって、通常のメンテナンスで外したときに、そこに触わると大変だよということがわからない。そういう所は、目に見えてそこは危険だということがわからないわけです。あるいは、そこのスイッチを切ったり、安全に立ち上げるときの操作方法はロジカルなものですから、そのロジカル情報を提供してあげないと、普通の人はわからないだろうと。
先ほどレーザーと言ったのは、そういうレーザーパワーがあって、普通は何も問題ないのだけれど、うっかり反射する金属などを挟んだら、そこから光が反射して目に入ったということがあるかもしれない。そういう意味での情報はきちんと出さないと、ユーザーはわからないから出さなければいけないけれど、角があるからとかいうのは、それは出さなければいけないけれど、そういうものも何から何まで事例として出さなければいけないというのは、今回の趣旨から言うと良い例でもないなと思います。
○安達副主任中央産業安全専門官 念のため申し上げますと、この事例の精度がどうかというのは事務局としては問いませんで、是非イメージを持っていただきたいということです。この事例を選んだのは、ユーザー側で何をしたらいいかという物語風に書いてある部分もありまして、前回のご議論ではユーザーが使いやすいという視点がありましたので、この中身は別として、どういう項目が必要であるかを考えるのに参考にしていただければと思います。
○森戸主任中央産業安全専門官 資料3-2で、最初の2枚はメーカーが作ったもので、このメーカーのものがそのままユーザーに渡っているのではなくて、3枚目のものがユーザーに渡っているということです。したがって、メーカーのほうで再評価が「可」となったものについては情報を提供せずに、「不可」、いわゆるメーカーとして危険が残っていると判断したものを伝えることになっているというのが1つです。
また、メーカーは回避方法を提案しておりますが、これはユーザーが必ずやるのではなくて、ユーザーはあくまでリスクアセスメントをしなければいけません。もちろん、メーカー段階で安全な機械となるのがいいのですが、必ずしもそうではないので、ユーザーがリスクアセスメントを行う際には、改めてユーザーが危険の大きさと頻度とを自分なりに評価し、リスクレベルを決定し、対策を考えていくことになります。したがって、ここにはでてきませんが、ここにカバーを設けようということが当然ユーザーのほうでなされることになります。それに必要な情報として、こういう危険があるということをユーザーに伝えるとご理解いただければと思います。ここで全部完結して、この回避方法をユーザーが行うのではなく、ユーザーはこれを元に、リスクアセスメントを自らやるというのが前提になっているということで見ていただければと思います。
○宮川委員 残留リスクという意味について確認したいのですが、これは許容可能なリスクなのか、不可能なリスクなのか。
○向殿座長 これは不可能ですが、一応出したのです。
○宮川委員 不可能ですよね。不可能なのだけれど、使用上の情報で措置を委ねたものが残留リスクということですね。この事例の中にはリスクがないのです。これは許容できないリスクだけれど、いわゆる防護レス状態で、技術的な手を打てないから、使用上の情報に委ねるがどうですかということで議論ができなければいけない。その為にはリスクがないといけないのです。これはリスクがない。
○高岡委員 リスク評価がないということですか。
○宮川委員 リスクレベル評価がないということです。
○向殿座長 こちらに提供するほうですね。メーカー側から見ると、ちゃんと評価して不可能な所だけ出したわけですね。
○宮川委員 まずこちら(資料3-1)のほうですね。さらに言うと、先回確認をお願いした災害のストーリーで網羅的にやろうと言ったときに、例えば刃物の取替え云々とありますが、機械のリスクアセスメントから言うと、たぶん主軸の危険源に暴露されることを言っているのでしょう。主軸の危険源に晒される作業は、刃物の取替えだけではないですね。ワークのセット、測定だってありますし、溜まった切削くずを清掃する作業もあります。たぶん、刃物の取替えよりもこれらのほうが頻度が高いはずなのです。そういうもののリスクは一体どうなっているのか。
あるいは、同じ動力にしても、モーターがあり、動力伝達部があり、主軸があります。主軸はリスクが高いからそれなりに防護しました。でも、動力伝達部やモーターは高い所にあるし、接触頻度も少ないため、リスクが低いから、色彩表示による注意喚起措置としました、ということがわからなければいけない。
主軸以外にも、人から接触するのではなくて、危険源が人に接近して暴露されるケースがありますね。切削くずが飛んでくるとか、刃物が接触して飛んでくるとか、それに対して防御装置はどういう防護をしているのか、たぶん、カバーを付けているのだろうと思うのですが。カバーを付けて、インターロックが付いているような付いていないような記述があります。もし仮にインターロックが付いていて、作業中に常時インターロックが機能していて、他人の誤操作防止ができるのであれば、他人の誤操作防止の表示は要らないのです。だから、一つひとつきちんと見て、メーカーは実際やっているのです。やらないと設備など作れるわけがないので、だからその情報は外に出してくれればいいのではないかと思っているのです。先ほど石坂委員が言われましたが、メーカーは実際やっているのだから、それを出せばいいのです。
○石坂委員 だから、リスク情報というのはそういうことでしょう、と言っているのです。
○宮川委員 だから、まとめ直すというよりも、これそのものを出してくれればいいのではないかなと。先ほど言ったように、これが防護レス状態で許容できないリスクについて防護策を講じたもの、使用上の情報に頼ったものを出してくださいと言えば、情報の提供の仕方としてはこれ(資料3-2)でいいのではないかなと。ただ、このリスクアセスメントの内容は、機械のリスクアセスメントはこんなことはできるわけがありませんので、これは間違いなく大いに問題があります。そういうことでいいのではないかと思うのですが、違うのですかね。
○向殿座長 どうですか。要するに、D社のこういうパターンで出てくると、これはリスクのレベルがわからないということですね。
○宮川委員 議論もできない。
○黒澤委員 残留リスクという言葉に捉われると、そうなってしまうのです。アセスメントをして、だんだんリスクが低減させるということを考えていくわけですね。最後は対策を講じますから、リスクが減っていって、最後は管理的手法でやったり、いろいろやり方があるわけです。リスクを低減していく方法には、機械的な手段もあるし、管理的な手段もあるし、あるいは人間工学的な手段もあるし、さまざまなのです。
「本質的安全」という言葉がありまして、ここにも事例が挙がっていたのですが、人間の本質的安全というのは、小さい人が作業しやすいように合わせる、あるいは大きい人には大きいように合わせる。こういうものを本質安全的だと言っている人もいるのです。ですが、私に言わせれば「本質的安全」とは少し違うなと思っているのです。「本質的安全」という言葉をそういう意味合いで使う方がたくさんいるのです。つまり、グラスでも何でもいいのですが、体の大きい人は大きいグラスを使えばいい、小さい人は小さいグラスを使えばいいという考え方なのです。機械の使い方にはそういう考え方があるのです。サイズに合わないものを使うと危険だという考え方があり、そのことを「本質的安全」と言っているのですが、それは本当の「本質安全」とは違うと私は理解しています。用語の概念が変わり、その辺で混乱が起こっているという感じがあります。
○向殿座長 ここでは、明らかに本質的安全はハード的な手を打つと。あとは管理に任せたという表現があるわけです。
○斎藤臨時委員 リスクアセスメントのこのような表が情報として提供されると、非常に理解が得やすいという話なのですが、1つは宮川委員がおっしゃるように、そのような条件でというのはわかるのですが、それは残留リスクというよりも、むしろメーカーが行ったリスクアセスメントの前提条件、簡単に言うと、どういう使用を標準として考えて、どんな人でどんな環境で使うという前提でアセスメントを行って、いま市場に出している状況にあるのかを説明しろと言っているのだと思うのです。確かにそれは残留リスク、あるいは使用上の情報だと思うのですが、より突っ込んで、自分たちがやったリスクアセスメントの想定条件を説明してくれと。なぜかというと、現場に行ったときに、ユーザーは自分の環境で自分のやり方で改めてやるからだと思うのです。
もう1つは、このリスクアセスメントですが、出ているのは抜粋だと思うのです。現実に1台の機械でも、NCだったらこんな量で収まるわけがないのです。これが50頁とか100頁という桁で、下手をするとキングファイルとか、何冊分といった状況になると。すべてその情報を、何か1つ欠けてもあれだと思いますので、果たしてどのように提供されるのかというのを、1つ情報として是非ご認識いただきたいと思います。リスクアセスメントは、たぶん現実にこんな量では済まないと思うのです。
○黒澤委員 この表は現場で現実にリスクアセスメントをやる方法なのです。一覧表の形にまとめています。これはこれでいいのですが、これをユーザーにそのまま提供しても役立たないと思います。ユーザーと言っても、特に大企業で暇な人がたくさんいる所は、じっくり読んで内容を点検しますが、中小企業ユーザーにとっては、こんなものを出されたら、かえってありがた迷惑で、混乱が起こってしまうのです。大変なことなのです。そういうビジネス環境がほとんどの中小企業の現状です。
○斎藤臨時委員 確かに、これを読み取るのに当然の知識と経験がある程度ない人、つまりリスクアセスメントできる人がこれを読まないと解釈できないと思いますし、また誤解を生む可能性が非常にあると思います。
○向殿座長 ユーザーにもリスクアセスメントをやってもらおうということで、いま話をしているわけです。これだけの情報をもらったのでは、ユーザーでも何をしていいかわからないと。ここに書いてあることはやるにしても、どのぐらいのレベルだということはわからないですね。
○黒澤委員 特に、中小企業でもメーカーとしての対し方と中小企業のユーザーとしての対し方とあるのですが、中小の機械メーカーは一生懸命やっているのです。技術者として、また設計者としてやっているのですが、設計者はものすごく忙しいのです。図面から取扱説明書まで自分で全部書いているのです。だから、大変な作業をやっておられるわけです。中小企業の機械メーカーですと、実際は数10人しかいないのです。そういう人たちの中で設計者は5、6人いて、その人たちが分担してやっておられるわけです。取扱説明書からマニュアルからいろいろ作りますね。それだけで手一杯で、とても細かいところまでやっていられないと。残留リスクを提供してくださいと言われたときには、中小メーカーの場合は対応は難しいと思うのです。その点の配慮が必要です。 大企業の機械メーカーの場合は割と量産的な機械が多いので、丹念にやっています。例えばNCパンチプレスなどは大量に売れていますから、安全マニュアルで危険情報の開示は必ずやっています。立派なマニュアルができています。マニュアルの中には、残留リスクとは書いていませんが、こういう使い方をしては危ないですよとか、こういう使い方をしては駄目ですよと書いてあるのです。それは説明的に書いてあるだけで、すべて残留リスクなのです。残留リスクと謳っていないのだけれど、実態は残留リスクのことを説明しているということです。
○向殿座長 それを残留リスクの表としてまとめようという話になっているのですが、「不可」と書いてあるものだけ、ある意味そういう感じですね。
○宮川委員 確認させてもらったのは、初期段階で、要するに防御レス段階で許容できないものについては、防御したものも含めて出しましょうと。ただ、それだけだったら、前回言ったのは労働衛生関係の難聴等といったものが出てこないものだから、リスクは低いのだけれど、難聴低減の為にサイレンサーを付けたとか、安全衛生上何か措置を講じたというぐらいのものはせめて出してねと、あとは聞かれたらわかるようにしておいてねと。レベルとしては。それでどうなのかと。
○斎藤臨時委員 そもそも視点として、1つは法にすでに規定されていることに対して情報が必要だという観点は、いままでなかったと思うのです。それをここで同様に扱いべきなのかなと。別に扱うべきではないかと思うのです。
○宮川委員 それは前回も言ったように、今回の対象のジャンルとは違うけれど、機械に関する情報としては別表5の情報をもらえば、そういうものも担保できますよということを言ったのです。
○斎藤臨時委員 もちろんそうなのですが、私が言いたいのは、もしそういうものがあるなら、それこそ早急に法整備すべきであって、法の準拠に必要な情報をメーカーからもらわないと準拠できない状況があるのでしたら、別に対応すべきだと思うのです。ここでは、おっしゃっているようにもっと大きい包括支援での話ということで。
○宮川委員 要するに、リスク低減ですね。
○斎藤臨時委員 リスク低減の話ということです。ただ、法に準拠するのに必要な情報という視点は非常に重要だと思ったので、逆にいままで語られていなかったものですから。
○向殿座長 必要なのは、ユーザーがリスクアセスメントをするときに、どういう情報が必要かという話になったときに、どこまでメーカーから出してほしいと。宮川委員の立場から言うと、もともと危ないものはメーカーが手を打ってリスクを下げたとしても、どういうものがあって、どういう手を打ったかぐらいは出してくれと。それがユーザーにとっては非常に役に立つし、改良するのにも役に立つと。
○斎藤臨時委員 それを聞いて、許容リスクというものがはっきりしていないことによっていると思うのです。それはあくまでも自主的という意味を込めて、自分で決めるものなのです。果たしてユーザーが許容できるレベルに、メーカー側でしてもらったのかどうかを図る、あるいは改めて考え直すということをおっしゃっているのだと思うのです。それが、もしこのレベルなら全員がいいという、はっきりとした数値が決まっているならば、もはやそこでの疎通は必要ない。ところが、メーカーが言った標準のところで禍がっています。これは残りましたという話をした、その区分けもよくわからない。説明してほしいというところも含めると、全体を見たいという話になると思うのです。
○宮川委員 メーカーは、先ほども言ったように、メーカーのシェアの中で標準的な前提条件を設定してやっているのだと思うのです。だから、メーカーはその標準の中である程度許容可能なリスクを見積もってやるのでしょう。そうでないと設計できませんので、それはやると思うのです。労働安全衛生法は使用者の責です、まして自分の従業員がケガをするわけですから、本当にこれでいいかと。ひょっとして、メーカー側の標準より外れたところに自社の職場環境があったならば許容できない場合があり、別の措置を講じていかなければいけないので、最終的には使用者自身で決めなければならない。そのためには、メーカーの前提条件がある程度判らないと、それは判断できない。
○斎藤臨時委員 それ以前に、どういう対策で、どこまでのレベルで減ったのかという情報がほしいという話ですかね。そのときに、これは外れているのだから、たくさんお金をくれと言えば払わなければいけないし。だから、ここに書いてある「不可」は、すでにメーカーの判断基準で決めた「不可」で、この「不可」がカットされたものが本当にカットになっているのかどうかも知りたいという話だと思います。
○石坂委員 いま労働安全衛生法を改正して、第28条に則っていろいろ指針が出て、そういうものを円滑に、より効果的に回していくにはどうするかという枠組みの中での議論だと理解しているのだけれど、それと離れて、もっとこうなったら世の中いいんだよね、という論議に入れば、私もそうだと思うことは多々あるわけです。それで冒頭に、つまりこれは法律の問題ではなくて、リスクコミュニケーションが理想的に行われるのは、購入交渉時にユーザーのほうもしっかりと要求の条件を出し、条件における安全使用を要求し、ユーザーがそれはできないとかできるとか言ってやると。それが国際の規格などで言うAccessibleではなくてTolerableな状況ですね。それはいろいろな条件の中でTolerableであるところを決めていくわけです。
ところが、日本ではほとんどそういう環境にないから、Tolerableである状況を設定することができていないわけです。そうすると、ユーザーがそういう条件を出してこないから、メーカーはある想定をしてリスクアセスメントをせざるを得ないわけです。そうすると、残留リスクのことがあって、これが大きいときには、先ほど私が言った3項の少し先のことを言えば、どういう頻度だとか何とかというのは、メーカーがこう設定したということを残留リスクがあるとある程度、そのときの説明は我々はこういう頻度と設定したと、あるいはこういう人が使うということは設定したと、ハザードはこうだよということを説明せざるを得ないでしょうと。そうすると、そういうことで残留リスクとして大きいと見たのですねと受け取れば、ユーザーは「実際は違うんだけどな、うちはこういう条件でやるのだけど、それでやり直してみましょう」という齟齬がある。
でも、それだと必要な情報の内乗りしかこないから、宮川委員が心配されるように少し枠を広げて、ユーザーが実際やる条件でやるともっとリスクが大きくなってしまうこともあるかもしれないから、そこをどうするかという問題はあるのですが。
○向殿座長 それは、宮川委員と同じことを言っているのです。
○石坂委員 だから、出してくれなければ、メーカーの条件で出したのだから、ユーザーがどう使うかの条件が違うから、チェックし直すためには。
○宮川委員 だけど、そこをとことん出せという話に行くのか、どういうところでこの程度だったらそうだなというところで折り合いを付けるかの話なのです。
○向殿座長 石坂委員が先ほど説明した話と、言っていることは同じではないですか。
○佐藤委員 その辺は契約上の問題で、何もかもが最初から全部出したって、ありがた迷惑なところがあるので。
○向殿座長 判断基準としては先ほど言ったように、必要に応じて出す必要があると。言っていることは同じということはわかりました。そうすると、どこまで出すかという話になるのですが、あまり出しても有効性もないだろうし、無駄だろうし、出したくない所もあるかもしれないという話になるし、もらうほうとしては自分のリスクアセスメントが有効な情報がほしいということで、この論点の落とし所はどこなのか。
○井上委員 「労働災害の重大さ」とあるところの、労働災害の発生確率の基準が、メーカーとユーザーで実際変わってくるのではないかと思います。この表の中でも、同じ項目でもユーザーとメーカーで評価が変わってくる可能性があるのかなと、いま話を聞いている中で思ったのです。その辺をある程度統一した判断、基準が必要なのかなと、ここで思っていたのです。今後細かく決めていかなければいけないことかもしれませんが、その辺が必要なのかなということが1つあります。
また別の話なのですが、例えばこれをユーザーがメーカーからもらったとして、ここまでもらったら、実際ユーザーがリスクアセスメントをしなければいけないのですが、ここまでもらったら本当にするのかなと。たくさんの情報をもらって、自分に合わせてという、先ほどの話の繰返しになりますが、実行性というところまで入れると、やるのかなというのが疑問に思うところがあります。
○宮川委員 いま判断基準を決めなければいけないみたいな話をされましたが、判断基準を決めるというか、そもそも「リスクアセスメント」という言葉は最近使われましたが、言葉がないときからリスクアセスメントをやっていましたよね。最近、豊田労基協会会員の中でよく話すのは、飛行機が墜落したら死ぬと。何で飛行機に乗るのかというと、落ちる確率が低いからですよね。確率の程度を組み合わせて、危ないけれど、この危なさなら許容できると。最初の程度と確率をリスクと定義をして、この危なさならいいかというところを、ガイド51の「安全」という言葉で定義している。昔は、危なさを評価して語るプロセスが全部主観的、情緒的、曖昧にやっていたのですが、リスクという言葉を用いて、災害のストーリーに従って評価し、語ることを決めたわけです。そして、もともと許容リスクは人によって違うから、会社の中だって新入社員とベテランと職制と、ひょっとしたら社長とも違うから、お互いに話をしてリスク認識を共有化しましょうと。今回問題になっていることは、メーカーもユーザーも含めて議論をして、リスク認識を共有化しましょうということで、共通認識を得られる状況をリスクコミュニケーションが図られている状況と言うのではないかということです。
リスクの定義で何が新しいかというと、いちばん新しいのは確率のところなのです。程度は大体昔から似たようなものです。いままで、安全を確率で語ることはタブー視されていたのです。
○高岡委員 そうですね。
○宮川委員 「確率の話をすると「お前何を言ってるんだ」ということで、語れなかったのです。今は確率を勘案して語ろうではないかと。その確率はと言ったら、危険状態や危険事象の発生確率であり、且つ回避の可能性であり、これを見てやるのだということです。資料3-2を見ると、全部古いままのリスクアセスメントになっていて、これでは危なさの語りができない(主張できない)なということです。
こういうことですから、時間がかかる。特に時間がかかるのは災害の程度です。これはドクターだって難しいです。せいぜい3段階ぐらいです。重傷か軽傷か、真ん中を取って中程度かぐらいです。休業か不休か、休業か障害か等、ドクターに判断しろといっても無理ですよ。ドクターも判断しないですよ。そういうことを要求しているのです。そこで時間がかかるのです。
○向殿座長 そうすると、議論としては、宮川委員の立場から言うとどのぐらいのレベルを出したらいいとお考えですか。
○宮川委員 前回から言っていますように、災害の危険源は何なのか、その危険源はどこにあるのか。先ほど言ったように、上にあるのか下にあるのか、どこにあるのか。その危険源を主語にして危険状態がある。そのときにどんな危険事象が起きるか。逃げられるのか逃げられないのか。ケガの程度。そのストーリーで、メーカーが分析、見積もった情報をいただければいいでしょう。メーカーだって経験していないものもあり、経験していないものは我々が追加すればいいし、我々が経験していないものはメーカーから教えてもらえばいいし、結論から言えばそれでいいのではないかと思います。
○向殿座長 それは、全部やると相当の数になりますよと。そこで、どこで切るかという話。
○宮川委員 そのときに、先ほど言ったような1つの判断もありますよと。
○向殿座長 問題はどこで切るかという話ですよね。
○安達副主任中央安全専門官 資料4の2頁だと思いますが、「検討の方向性」の3の必須である情報とユーザーの要求に応じた情報、いまの実効性の話と確率のところは、最終的にはある程度折合いをつけなければいけないのかなというのが1点です。
「主な意見」の1のアの「一方」という所ですが、機械包括安全指針別表第5のすべての項目を提供すべきという意見があった点については、指針では警告ラベルとか取扱説明書とか、教育で何とかしてくれといった方法で、何かしら提供すると。これは厚生労働省としても別表第5の取組の旗を下ろすわけではありません。ただ、論点4で検討する提供の方法で情報の一覧性とかユーザーですぐ活用できるものということも重ね合わせて、法第28条の2につなげるということで、両方うまく共存するのか、一対一で同じものでやるのかという視点も出てくるのかもしれません。これが必須かどうかということと、少しリンクしてくるのかなと思います。
○向殿座長 こう見ると、論点2で大事なことは、前に言われたどこで切るか、どのレベルを出すかという話になるのですね。そうすると、3の必須である情報とユーザーの要求というのは、あるレベルでこれ以上出してくれという場合は契約などでやる可能性がる。しかし、最低限はここは出しましょうというときは、はっきりしましょうと。基本的にはそれでいいのではないかと思うのです。
では、どこまで出すかと言ったときに、私の知っているリスクアセスメントの表は、1つの機械だけでも何十枚になっていますが、それを出部出されて、ユーザー側としては危険源として、その危険源で許容不可能なところまで至るような危険源は、一応全部出すと。それに対してどういう手を打ったかを出して、メーカー側が想定した条件内で、残ったリスクはこうですよというのを出すというぐらいでいいのではないかと思うのですが、妥協案としてどうですか。
○高岡委員 世の中全般に通じる規定にしようとすると、2段階にせざるを得ないと思うのです。斎藤委員がおっしゃったように、このリスクアセスメント評価表を受け取って使いこなせるユーザーは相当少ないと思いますから、ここで残留リスクとして抜粋しているレベルで十分だと思うのです。
ただし、この中で欠けていることは、騒音と言っても何デシベルなのかわからないし、ステージと言っても何メーターなのかわかりません。納入後見ればわかりますが、それは設計段階ではわからないですね。
重大だなと思うのは、リスクアセスメント評価表の9で、運転中の材料供給車が、ローラー駆動用チェーンに袖口が絡み、腕まで巻き込まれると。カバーを付けたので、「可」としているのです。「可」なので、ここの残留リスクには載ってこないのです。でも、これは保全のときにカバーを外せば、当然袖口が巻き込まれますから、それは載せないといけないなという具合のものです。
○佐藤委員 運転中だから載っていないのでしょう。
○高岡委員 そうなのですが。
○佐藤委員 左の項目の、もっと下にある。
○高岡委員 でも、この抜粋の中には載っていません。
○佐藤委員 これは一部だから、全部ではないから。
○宮川委員 許容できないリスクについて、防護策を講じて許容しましたと。最初のリスクアセスメントの結果を出してくれれば、高岡委員のいまの解になるのです。
○高岡委員 それがあればいいのですね。
○向殿座長 だから、確かにどこまでかは条件によって違うけれど、大事なことは、この危険源で不可になる可能性があるのならば、一度出していただいて、メーカーとしてはこういう手を打ったから、ないですよ、ありですよと、それでいいのではないかと思うのです。細かいものを出してもしょうがないから、本当に大事な、第1レベルで。
○高岡委員 それでやってみて、お互いにユーザーもメーカーも賢くなってきたら、やり取りをする中で、石坂委員が言われたようにリスクコミュニケーションの中で、だんだんとレベルが上がってくるのではないかなと思います。
○佐藤委員 そういう話ができるのは、大変いいと思います。
○宮川委員 逆に、それに向かっていろいろなことをやっていかなければいけない。だから、いまやれないからやらないのではなくて、それに向かってやっていくことが大事だと思うのです。
○高岡委員 これを受け取ったら、騒音と言っても何デシベルですか、という質問が交わされると。
○石坂委員 それは、そのデシベルを出さないと駄目ですね。
○向殿座長 そういうことで、この辺は一応2段階ぐらいにしておいて、最低限必要ないま言ったようなものは出していただくと。それ以上出したい場合は、契約とか、メーカーごと、ユーザーごとの交渉ということにしましょう。時間がなくなってしまうので、論点2に関してはこれぐらいでよろしいですか。
( はい )
○向殿座長 それでは、論点3にいきましょう。いまのと連携しますが、機械の危険情報のうち、残留リスク情報として必要な項目は何かということです。これはいまの話とほとんど同じですが、いかがですか。宮川委員が前から主張されていたのは、事故におけるプロセスをちゃんと明らかにしてほしいということですが。
○宮川委員 そうです。何のためにリスクアセスメントをやるかというところの、いちばん重要なキーワードなのです。危険源の同定と言っても、ピンとこない。先ほど言ったように、災害は大企業も中小企業も零細企業も関係なく、リスクの定義に従って起きる話なのだから、この手順で考えましょうと。
私が現場でよく言っているのは、現場でこの手順で考えることを絶対やりなさいと。あとの見積りは、赤信号もみんなで渡れば恐くないと。悩んだ時は上の人が決めなさいと言っています。高岡委員の所や弊社などは情報量がたくさんありますから、結構リスクを高く見積もるケースはあります。中小企業へ行けば、我々からすれば高いリスクだけれど、中とかそれ以下に見積もるケースはあります。でも、それはしょうがないのです。その会社の中でみんな知らなければ。レベルアップは世の常ですから、そこは長い目で見て、レベルアップするようにしていきましょうと。
リスクの定義で見るということは災害を語るということで、リスクを語るということはそういうことなのだということは共通認識しておかなければいけないし、リスクコミュニケーションはメーカーとの間でも共通しておかなければいけないルールだと思うのです。野球とかゴルフで交流試合ができるのは、道具が一緒でルールが共通だからなのです。いまの状態は、機械は共通なのだけれど、ルールがないのです。そこのルールをきちんとしましょうということです。
○向殿座長 これは先ほどの議論とほとんど同じで、まず危険源をはっきりさせなければいけないと、これは当然です。プロセスで言うと、頻度もあるし、ケガの状態もあるし、逃げられるかどうかというステップで話をしていけばいいと。そうすると、いちばん大事なのはどういうケガになるかという、ひどさは非常に重要なファクターで、それに対して頻度が出てきたら、逃げられるかどうかという確率の話が展開されていくわけです。それで残ったリスクはこうだという話、それを評価して、こういう手を打って、またこう残りましたというのがリスクアセスメントの情報だとすると、前の結論のとおりもともと危険源で人が死ぬようなもの、かなりひどい被害になるようなものについては全部出してくれと。いま言ったステップを、メーカーがやったリスクアセスメントのストーリーはちゃんと示して、どういう残留リスクが残ったかを出してくれという、先ほどの話とたぶん一致するのだと思うのですが、これについてはどうですか。
○高岡委員 もう1点は、残留リスクと判断した根拠ですね。何をもって残留リスクだと評価したのかを明示してもらわないと、ユーザーとしては使えないと思うのです。シビアリティは高いけれどポシビリティが低いからなのか、シビアリティは低いけれどポシビリティが高いからなのかによって、相当対策は違ってくると思いますから、何をもって許容可能としたのか、そこは明示しないといけないと思います。
○向殿座長 そうすると、例のマトリックスを明らかにしてみたり、その状況を出さない限りわからないわけですね。
○宮川委員 高岡委員が言われたのは、見積もったリスクの妥当性の話だろうと思うのです。許容可能かどうかとはまた違うのです。
○向殿座長 リスクのレベルというか、それを出した根拠でしょう。
○宮川委員 はい。
○向殿座長 根拠というのは、定義によると頻度と確率と、ひどさと確率とすると、どういうときリスクレベルIIにしたか、どういうときIIIにしたかというベストマトリックスの表みたいなものを明らかにしてもらって、それでうちはIIにしました、IIIにしましたというのを示していただければ、ユーザーとしてはありがたいという話ですね。
○宮川委員 リスクの妥当性を高岡委員が言われているならいいのですが、許容かどうかと言ったら、これはそういう話ではなくて、ある意味においてはベンチマーキングの話なのです。いろいろなものに比べてこんなものですよと、こういうことを言われているのだと、その整理をしたと。
○向殿座長 高岡委員が言われているのは、妥当性ですよね。
○高岡委員 妥当性もありますが、許容可能かどうかを判断するのは、別に社会的な線引きがあるわけではなくて、それはメーカーが判断することですよね。ですから、メーカーが何をもって判断したのかということが必要なのかなと思うのです。もちろん妥当性も必要ですが。
○向殿座長 リスクアセスメントのステップを考えると、リスクIIIは許さないけれど、リスクIIはOKということをメーカーが決めなければならない。
○高岡委員 許容可能かどうかの線引きをIIに置いているのか、IVに置いているメーカーもあるかもしれません。それを明示する必要はあるのかなと思うのです。
○宮川委員 それはまさにこういうプロセスで私は判断したのですと説明してもらえばいいし、CEマーキング認証の本質的な精神はそこなのではないですか。
○井上委員 労働安全衛生法からは外れてくるかもしれませんが、自動車を買った場合、どんなリスクがありますかという情報をもらうかどうかという話が、具体的に機械に置き換わっただけだと思うのです。実際自動車が事故を起こした場合、いろいろな事故の状況があるのですが、全部情報を開示するかどうか、それは路面状況にもよるし、天候もあるし、そのときに履いていた車のタイアの状況とか、最初から付いていたタイアでないものに履き替えていたからとか、いろいろ原因があると思いますが、そういうのを渡しなさいという話が大きくなってきつつあると思うのです。その中で、1つ前の話ですが、必須な情報かそれ以外の情報かというところ、例えば交通ルールを守らなかったらというところから始まって、交通ルールを守っても事故は起きるはずなので、その辺の中身で具体的に言ったときに、本当にどこまで譲歩するのかは、私の中で身近な例で車かなと考えていたところはあるのですが、 それ1つ考えても非常に難しい。道路を走るだけではなくて、いろいろな所で使われるものが全部包括されているような案件なので、たぶん皆さん悩んでおられるところだろうと思います。具体的に1個の機械だけで見ていっても、ものすごく難しいなというところがあると思います。
○向殿座長 ある意味、それはあえて覚悟でやっていて、機械の場合は危険源というところからそれをやる。しかも、ユーザーはその1つだけではなくていろいろな機械を集めてきて、自分でラインを組んで、また新しいリスクができてということを考えていますので、マッチしたものに対してどういう危険源があるか、リスクがあるかがわからなければ、組み合わせたときにまた新しい危険源が出るのかよくわからない。だから、その情報がほしいというのがストーリーの中の流れですね。
○森戸主任中央産業安全専門官 資料3-2の中で、危険詳細、危険の対象、危険状況、危険事象、被害の状況とあって、その次にリスクの見積とありますが、これについては先ほどありましたように、ユーザー企業によっていろいろ違うかもしれないという話がありました。
そうなると、リスクアセスメントをするときに、この情報が本当にユーザーにとって必要なのかどうか。ユーザーが判断するものというのであれば、参考にはするのかもしれませんが、
必ずしも必須とは言えないのではないかと思います。ユーザー企業の中でも、リスクアセスメントのときには当然使用者側と労働者側が危険のひどさをどのように見るのかは、相互の話合いの中で決まってくる部分が非常に大きいと思うのです。ですから、メーカーに義務を課すのか課さないのか、必須のものにするのか、参考にくださいとするのか、制度として設計する際には非常に大きなことになるのです。
ここではあくまで、ユーザーがリスクアセスメントを事業場で行う際に本当に必要な情報はどんな情報ですかというところは、しっかり制度として押さえて、追加するものはメーカーとユーザーの間で、契約の中で話し合っていただければと思います。そのように考えていただいて、どこまでが必要なのかについてご議論いただきたいと思います。
○向殿座長 おっしゃるとおりで、いままでの議論はどういうことを言っているかというと、メーカー側がどのような根拠でこういうリスクを「可」とか「不可」にしたかを知りたいと。
そうすると、どういう条件でということを知らないと、結果を見たって我々のと違うから、メーカー側の条件がどうで、どういう根拠で残留リスクがこうだと判定したかを知りたいとすると、これが出てくるとものすごくわかるというのが、いままでの流れですね。当然、ユーザー側はこれをこのまま使う気はないにしても、メーカーはどういう根拠でリスクIIとかIIIとしたのかを知りたいと。どういう条件の使用状態を想定してやったかを知りたいと、それに役に立つという話ですね。
○宮川委員 そうですね。リスクアセスメントをやるとしたら、メーカーもこれだけ見て、ユーザーも同じような点数を付けるとか、そういう話をしているわけではないので、メーカーの妥当性とか設定要件とか、妥当だったらそれはそれでいいわけで、違う所があったら議論してやっていくという話なのです。
○向殿座長 森戸主任の意見は、そんなに違うのならば、こんなに細かいことを出す必要はないだろうということですね。
○森戸主任中央産業安全専門官 必須とするかどうか。
○向殿座長 必要である必要はあるか、ないのではないかということでしょうね。必須かそうでないかに分けたときに。
○高岡委員 必須なのは、抜粋の残留リスク情報をもう少し定量化して、わかりやすくしたものが必須だと思うのです。
○向殿座長 その辺だと、かなり動きやすいですね。
○佐藤委員 たぶん、そういうところではないですかね。本当は、ユーザーとメーカーと、どの評価基準を使ってやるかを契約時に決めておかないと話がまとまらないので、両方で話し合って決めて、承認して納めるということをしないと。
○向殿座長 わかりました。
○宮川委員 困るのは、メーカーの立場でなければわからないところがあるのです。事故の発生確率とか、そういうものはメーカーでないとわからないわけです。
○向殿座長 その情報は知りたいですね。
○宮川委員 それはないとわからないですよ。
○向殿座長 それはそうですね。
○宮川委員 それはメーカーでないとわからない。リスクアセスメントを導入した初期の頃は社内のメーカー的立場にある生産技術部の連中もこの点が判らなかった、最近は言わなくなりましたが、そういう議論が出てきました。いま言った事故の発生確率とか、そういうことはメーカーでないとわからないだろうなと。
○向殿座長 宮川委員がおっしゃるのは、発生の確率みたいな情報は、必須としてあったほうがいいということですね。
○宮川委員 もう1点、資料3-2で「危険対処者」と書いてありますね。これはいいのですが、メーカーの立場で言うと、これはいけないのではないか。項目はいいけれど、不十分なのです。前回も問題になりましたように、製造段階、運搬段階等廃却までに各段階があるわけです。それも含めてメーカーは決めるわけです。例えば、トヨタでも、トヨタ標準でロボットにはホークガイド(フォークリフトのフォークを差込む治具)を付けてもらうようにし
ているわけです。メーカーがロボットの生産工程の中には積出工程があって、ホイスト付クレーン等が設置され、クレーンを使用して積出しています。しかしユーザーの現場に行ったら、ロボットが行う作業は、昔は手作業でやっているわけですから、そこにはホイスト付クレーンなんか無くて、フォークリフトを使用して降ろすわけです。従って極めて不安全な危ない状態ですね。この為トヨタでは、トヨタの安全仕様としてフォークガイドを付けようということをトヨタ標準で決めましたがが、こんなものは本当に許せるかみたいな話はあるわけです。
メーカーは製造から廃却までの各段階を考慮してリスクアセスメントを行い、その結果と措置について、情報を提示しなければならない。関わりのない段階の事業者からは、この段階では不要だからと言って仕様変更やコスト低減を求められるケースがあると思う、その時、こういう理由で仕様、構造としたとしゃべらなければいけないのです。そういうものがあるので、ただ危険源情報だけでは不十分で、どういう根拠で見たのかというのがないと。だから、逆に言えばメーカーは困るのです。
○高岡委員 宮川委員がおっしゃったメーカーでなければわからない情報というのは、例えばB社が提供を受けた残留リスク情報の詳細という表があって、そのいちばん下に「保守点検及び異常のときに、NC装置の暴走により機械が暴走し、不用意な事故になる」とあるのです。これを言われると、ユーザーとしてはものすごく困るのです。レベルの高いユーザーであれば、このノイズ耐性は何ボルトなのですかと質問したり、自分の工場のノイズを測定したりできますが、そこまでレベルの高いユーザーは数少ないと思いますから、中小企業
でこれを言われてしまうとお手上げですね。暴走することはわかっているのだけれど、暴走するかもしれないですよと言われてしまうと、非常に困ると思うのです。
○向殿座長 そうすると、また元に戻りますが、資料3-2にあるように、頻度やひどさはある程度出していただかないと、ユーザー側としては情報不足で、自分のリスクアセスメントがちゃんとできないと。だから、必須として頻度やひどさは入れてほしいと。
○石坂委員 それはユーザーがリスクアセスメントをやるという意思がはっきりして、その求めに応じて提供する必要があるとか、提供する努力義務を負うとか。いまはユーザーだって努力義務で、必須ではないですから。それに対して、少なくともメーカーの責任として最低限このぐらいの情報は、有無を言わさず提供しなさいと。でも、それ以上ユーザーがやる気で、そういうことまで遡ってしなければわからないというのだったら、その求めに応じて
提供すると。
○向殿座長 そこは一致しているのですね。最低限何がというところでもめているわけですね。
○石坂委員 そうです。そこの最低限をあまり広げてしまうと、それだったらユーザーも努力義務ではなく絶対にして、全体の体系としてそういうふうに組み立てないと、ちょっとおかしいという気もするのです。
○黒澤委員 重篤な災害が想定されるということが、アセスメントをする最大の理由だと思うのです。もう一方で、頻度が多くて、小さなケガだけれどたくさん起こるということも、現実問題としてあるのです。両方の面があって、どちらが良し悪いということはないのです
けれど、優先するのは重度の災害でしょう。死亡災害とか、それにつながるような災害はいけないということですから。
○向殿座長 それも大体一致しましたね。重篤なものから始まって、そのときに必須条件として、メーカー側は頻度とか、ひどさは大きい順から出すと。確率に相当するもの、逃げられるかどうかということで相当する情報を、必須情報として入れるか入れないかというところに絞られてきましたね。
○宮川委員 そうですね。あと、一瞬の間にどんなアクセスをするかは、当然メーカーでないとわからないケースがありますから。高岡委員が言われたことも、ある意味では重要なことだと思います。
○安達副主任中央産業安全専門官 必須かどうかということでご議論いただきまして、ありがとうございました。繰り返しになりますが、機械包括安全指針がありまして、これを全体的に取り組んでいくという旗は決して下ろすわけではありません。今回は、その中でも次の論点4がありますが、提供の方法がありまして、いろいろな形で本指針の取組を進めていく中で、さらにユーザーが取り組みやすいというか、使いこなせる情報として、一覧性をもって出すということです。
一覧性という情報を考えると、どうしてもある程度情報量が限られるので、先ほど井上委員からありましたように、分厚いものが出たら、すべて対応できるかということもありますし、レベルに応じるという話もあるかもしれませんが、一覧性を念頭に置いて、論点4のほうもご議論いただければと思います。
○向殿座長 いまは、どこまで出すかはUnknownなところがありますが、最後に一覧表と一覧性をもって出すことを考えると、あまり細かいものを出してもしょうがないので、論点4にいきましょう。
論点4ですが、残留リスク情報の機械の危険情報は、どのように機械ユーザーに提供すべきかということです。これは先ほどの話だときっちりしたフォーマットというよりは、少し柔軟性のある使いやすいひな形を与えておくこと、明瞭に一覧できるものということで、ある意味では取説とは別個に作って添付しましょうというところまでは、大体一致していると思います。
○安達副主任中央産業安全専門官 先ほどの予備的調査の中の意見で、もらった中小事業者の感じでいくと、何をすぐやればいいのかわかるものが欲しいと。そういった意味では、一覧性とか優先順位の高いものは、必ず入れておかなければいけないなというご意見もありました。
○黒澤委員 私も一覧表を添付するのは非常にいいことだと思います。ただ、一覧表にするには機械の種類を区別して、それによってリストアップしていかないと駄目だと思うのです。
例えば、プレスならプレスの機械、旋盤なら旋盤と。いろいろな機械があります。また一品料理的な機械もありますから、一台あるいは一セットしか造られない機械もあり、それぞれ特徴があるのです。ですから、機械機種ごとに一覧表を想定してかからないと、まとめて一緒というわけにはいかないと思います。プレスはプレス、旋盤なら旋盤、マッシングセンターとかです。機械の種類に応じて仕分けをしてまとめていかないと、一覧表といっても何でもかんでもみんな載せると、大変なことになってしまうという感じがします。機械の種類によって危険情報はかなり違うのです。
○佐藤委員 その件は、私も全く賛成です。先ほどのHSEの話ではありませんが、ケーススタディ的に、それぞれ機種によって特徴が違うということがあるので、できるだけ多くの事例というか、参考例という形で提供しないと、ユーザーとしても理解しにくいのではないかという気がします。
○向殿座長 機械の特色を作り出そうと。
○石坂委員 ただ、どのぐらいまで機種の細かさでどのように整備していくかは、少し気が重くなりますので、私がやるわけではないかもしれないけれど、大変だなと思います。結局、いままでの議論は取説に折り込まれたいことでは埋もれていってしまうし、抜けもあるかもしれないから、そこを危険情報としてリストアップしましょうという精神に戻るしかないのではないかと。そうすると、それなりにそれぞれの機種に合って、それぞれのやり方で出されると。
そういうことを回していくうちに、だんだんいろいろな業界ごとにリスクアセスメントのガイドが整ってきて、やれるようになってくるのではないかと思います。そうなっていればいいというのは大賛成なのですが、できるかなと。
○佐藤委員 実際問題として、それ以前にそういうことを受け入れる姿勢がユーザーにあるかどうかのほうが重要なのです。その姿勢が、まだ日本ではユーザーにないのではないかという心配があるわけです。ですから、今回は譲渡された機械という話になっていますね。本当は譲渡されていない、いまある機械でリスクアセスメントの練習をしなさいという指導をするべきだと思うのです。新しい設備を入れないと、それはやらなくていいよと言っているようなもので、それはおかしいのではないかと。時限でここまではいいけれど、これ以後は既設の、イギリスの例ではたしかそうなっていたと思うのです。2015年からは、既設の機械もリスクアセスメント云々という話をしないと、すれば底上げができるのだと思います。
その辺で、古い機械で練習ではないですが、そういう指導が国としても必要ではないかと思います。
○向殿座長 これは別の視点で定着させるという意味で、どこまで必要なのかと。
○佐藤委員 そうしないと、いまいろいろやっていますが、せっかくやって出しましたといっても、「これは知らないよ」と「ああそうですか」と受け取っただけで終わりのようなこともありますから。
○石坂委員 今回の議論からは外れますが、日機連も中心になって、13個別業界でメーカー側としてのリスクアセスメントガイドを作ったわけですが、いま何がないかというと、ユーザーの事業場側の本当に役立つリスクアセスメントガイドはないのです。だから、それなりにやっていると。意欲的な所は宮川委員にご講演いただいてご指導いただくというような、そこまで意欲的な所は、高岡委員のようにずっと以前から進歩に合わせて社内体制を整えてきた所はできるのですが、これからどうしようという所はどのように取りかかっていいか。
そういうことを考えるコストというか、そこは非常にハードルが高くて、もう少しうまい促進策が必要なように思います。
○向殿座長 少し話があった定着させるという意味では、また別途考える必要があると。いま論点4で必要なのは、残留リスク情報を機械ユーザーにどのように提供すべきかということで、一覧表はいいけれど、これも度合いですが内容の細かさという話になって、機械ごとに変えなくてはいけないということになると。そうすると、しょうがないから共通に必須項目と、あとは機械ごとに変えてもいいという分かれ方しか、ここでは答えが出てこないと思います。最低限必要なのはこれとこれであると。あとは機械ごとに業界で検討したり、実習や実験を通しながらだんだん決めていくという話になるのだと思います。
○宮川委員 A規格、B規格ではないですが、要求事項は一体何なのかと、おおむねの要求レベルは何なのかというものがまずあって、一覧表にできるものは一覧表にしていくと。そういうことなのではないかなと思うのです。
○向殿座長 一覧表を作るとすると、全部共通のA規格に相当する必須項目と、あったほうがいいというもの、あと個別のものということを考えたほうが、一覧表でもいいでしょうというのが皆さんのご意見ですね。
それでは、論点5にいきましょう。今度は、機械の危険源情報が提供される機械は、要するにどこまでやるか、どういう機械までやるかということです。また、残留リスクは調べたけれど、ないものはないと書くか。残留リスクはありませんと書いてあったら恐いですね。
○宮川委員 それはないでしょう。メーカーは書かないでしょうから。
○向殿座長 しかし、何も書いてないと、やったのかやっていないのかわからないので、やった結果がないのか。
○石坂委員 メーカーもそういうことは書かないでしょう。
○宮川委員 「許容できないリスクはありません」とか、「最低条件をクリアする危険源はありません」とか、そういうことは書いたほうがいいですよね。
○向殿座長 書いたほうがいいですよね。やったけれど、いまのところ見つかっていませんというニュアンスで。「絶対ありません」だと、これは何が起きるかわからないから。
○佐藤委員 「以上」みたいなものですね。終わりと。
○向殿座長 そうですね、何もなければ「以上」と。それから、どのような機械をどこまでやるべきか、要するに特定機械というか、決まったものだけにするのか、作業の現場で使うものはすべてという話だと、EUの機械指令とか、ある意味では機械包括的安全基準と言っているからには包括的に、作業の現場で使う機械は全部対象にしようと考えていいのではないですかね。
○斎藤臨時委員 この範囲で除外すべきという意見で言うと、機械包括安全指針が根底になったとするならば、機械包括安全指針は限定していないので、これに当てはまると。それが対応しているのと、クロスするとなれば、すべての機械ということになるかと思います。
○向殿座長 これはいいと思います。残留リスクがない場合は、いま言ったように「絶対ありません」などと書くのは非常に難しいので。何と書くのか、当方のリスクアセスメントで言うと、「注意すべき残留リスクが見つかりませんでした」と。
○宮川委員 「許容不可能なリスクはありません」とか、「大きなケガを生ずるような危険源はありません」とか。
○向殿座長 いまのところ見つかりませんでしたと。
○黒澤委員 肯定的な表現をされるといいと思います。積極的にやったけれど、見出せませんでしたと。そういう表現なら受け入れられるのではないですか。
○向殿座長 ということで、第1については大体議論は終わったことにします。第2ですが、時間がだいぶ迫ってきましたので。
○安達副主任中央産業安全専門官 それでは、資料4の9頁です。大きな論点の第2ということで、「機械の危険情報の提供制度の効果的な運用について」ということです。各委員から寄せられた意見を簡単にまとめてありますので、ご紹介します。また次回までにお気づきの点があればお願いします。
1つ目としては、メーカーの取組み促進方策ということで、いろいろご意見をいただきました。イにありますように、人材の養成、特に中小企業に対するコンサルティングのような支援、ウにありますように、論点4にあった情報提供の必須事項を決めること自体が有効ではないか、また、ガイドライン作成のお話がありました。
2つ目は、ユーザーに求められる取組み・支援等です。主な意見ですが、イにありますように、「ユーザーからも積極的にメーカーに対し情報を要求していくことが必要であろう」ということです。これは、おそらく必須項目以外の項目が該当するのではないかと思います。
また、ユーザーにおいても人材の育成、あるいは機械安全の妥当性を評価できる人材に対する認定制度というか、全体的な底上げを図る必要があるのではないか。ウにありますように、「機械発注時にユーザーサイドから安全使用をメーカーに提示する」とか、こういったコミュニケーションを進めることが提案されております。
10頁です。3つ目の論点ですが、想定していないリスクに対する対応ということでした。現行では、なかなかユーザーからメーカーへ情報をフィードバックすることが行われていないのではないかというご意見もありました。そこで、例えば行政が持っている「労働者死傷病報告書」のようなデータを、データベース化することが望まれるとか、ここには書いてありませんが、災害発生情報以外にヒヤリ・ハットといった情報も、機械災害の設計段階の情報として役に立つのではないかというご意見もありました。
時間の関係上、簡単にご説明しましたが、またお気づきの点があれば、次回以降お知らせいただければと思います。
○向殿座長 いまの議論でもかなり出ていますね。特に中小企業のメーカーがやる気になるような促進策がないかということで、いくつかご意見が出ているということです。また、ユーザー側も慣れていないユーザーがたくさんいますので、人材の育成も含めて必要な支援策は何かということで、いくつかご意見が得られたと。
最後に、フィードバックについては先ほどコミュニケーションという話が出ていましたが、大事なのはそこだと思います。いかにユーザー側のいろいろなヒヤリ・ハットも含めて事故情報を設計側にフィードバックするか。行政側もうまくデータを集めてという支援策が必要だという意見ですね。何かこれ以外にありますか。
○宮川委員 石坂委員がおっしゃったように、実効性については、まさにここでキチンとしておかないと、いろいろな制度をつくっても屋上屋を重ねるようなもので、情報を出したってきっと処理するには、人の問題はものすごく大きいので、いままでやってきたこと(リスクアセスメントの展開に関して)も含めて、ちょうど良いタイミングだと思うのです。いままでは違いを説明しなければいけないから、手法論を中心にやってきたと思うのです。それはしょうがないのです。
では、本当に何のために何をやるのかというところを議論していかなければいけないし、いままでの再発防止型の安全施策を、リスクアセスメントという未然防止型に切り替えたときに、どういう見方をするのかと。前回、安全状態、安全行為と言っていましたが、これは再発防止型で、未然防止型で見ると不安全状態は許容不可能なリスクよる災害とか、不安全行為は、合理的に予見可能な誤使用による災害とか、そういう見方、表現をしないといけない。冒頭の説明の中で、安全装置の欠陥による災害とありましたが、欠陥だって許される欠陥と許されない欠陥があるのだとか。また安全衛生マネジメントシステムとリスクアセスメントは別個という雰囲気があります。こうした面での整理も必要であり、2つの見方があるような気がするのです。
○石坂委員 例えば、何か事故が起こったときのフィードバックの仕方だって、単に事故原因をやって、再発防止というのは従来もやってきたことなのですが、今度のリスクアセスメントで「リスク」というものを入れたのは、将来起こるかもしれないことに対して予防的に、事前に抑えるということ。それでも事故が起こったということは、どうして予想できなかったのかというところの反省に戻らないと、このシステムの改善にはならないのです。だから、こういうものをやっていくときのやり方は変わってくるはずなのです。1つひとつそういうものを整理しておかないと、次のステップにグレードアップする必要があると思います。
○向殿座長 これはユーザー側もメーカー側も、行政側もそうですが、再発防止から未然防止へという話ですね。それから、リスクベース、リスクでものを考えるという思想的な転換がここで起きていると。そのための潜材育成もきちんとしないと、民間も追いていけなくなってきているところがあると思います。
○石坂委員 それから、だんだんわかってきたことは、そういうやり方とかガイドでも何でも、そういうことをしてやり方を普及させる努力をもっとしないといけないですね。
○宮川委員 本質的なところは、何のためのリスクアセスメントかというところがわからないと、情報処理はできないのです。メーカーからのヒアリング結果のコメントを見ても、ほとんどわかっている様には思えない。
○向殿座長 そうですね。まだいろいろあるかと思いますが、是非いろいろご提案を出していただいて、ルールは作ったけれど、ザルにならないように、実効性のあるものにするようにやりたいと思います。
それでは、資料5が残っております。報告の骨子案ですが、これもご説明をお願いします。
○安達副主任中央産業安全専門官 資料5をご覧ください。第1回、第2回でご議論いただきましたので、第3回には報告書をお出ししようと考えておりますが、大体こういう形で考えています。
1は「はじめに」です。2としては「機械安全に係る現状と課題」、災害の発生状況とか、今日お示ししたリスクアセスメントの実施状況、あるいはアンケート調査等から見た現状と課題のようなものを浮き彫りにしていきたいと思います。
3で、今日ご議論いただいた論点整理を書き込んでいきたいと思います。今日も実効性のお話や情報の範囲などいろいろご議論いただきましたので、ここをまとめていきたいと思います。事務局でとりまとめて、後日、事前に資料をお送りしたいと思います。
4としては「今後の課題」ということで、少し長期的に見ていかなければいけないような課題もまとめていきたいと思います。以上です。
○向殿座長 どうもありがとうございました。こういう形で、次回辺りにまとめた提案をここで議論していただく予定です。よろしくお願いします。
進行が下手で、もう10分オーバーしていますが、かなり本質的な議論もあったと思いますので、是非いろいろ提案していただいて、次回のまとめの報告書の中に、今日の意見も含めて入れていただきたいと思います。次回の予定は、7月5日ですか。
○安達副主任中央産業安全専門官 皆様から日程をいただきまして、全員のご参加は難しいかもしれませんが、7月5日(月)15時から17時を予定しております。
○向殿座長 どうもありがとうございました。事務局に進行をお返しします。
○安達副主任中央産業安全専門官 長時間ありがとうございました。本日の議事録も後日ご確認をお願いしたいと思います。今日の資料1の議事録につきましては、今週中には厚生労働省のホームページにもアップする予定ですので、まだご確認が終わっていない方は、お気づきの点はあとで事務局までお知らせ願いたいと思います。
それでは、大変長時間ありがとうございました。第2回検討会はこれで閉会いたします。
照会先
厚生労働省労働基準局安全衛生部安全課
〒100-8916 東京都千代田区霞が関1-2-2
TEL 03-5253-1111(内線5486,5504)
FAX 03-3502-1598