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2013年6月10日 第72回労働政策審議会安全衛生分科会

労働基準局安全衛生部計画課

○日時

平成25年6月10日(月)16:00~18:00


○場所

厚生労働省 省議室(中央合同庁舎第5号館9階)


○出席者

委員:五十音順、敬称略

明石祐二、犬飼米男、岡本浩志、小畑明、勝野圭司、栗林正巳、桑野玲子、城内博、新谷信幸、鈴木睦、瀬戸実、辻英人、角田透、土橋律、中村聡子、中村節雄、縄野徳弘、半沢美幸、三柴丈典、山口直人

事務局:

宮野甚一 (安全衛生部長)
井内雅明 (計画課長)
半田有通 (安全課長)
椎葉茂樹 (労働衛生課長)
奈良篤 (化学物質対策課長)
毛利正 (調査官)

○議題

(1)分科会長の選出及び分科会長代理の指名について
(2)第12次労働災害防止計画を踏まえた検討について
(3)その他

○議事

○井内計画課長 本日はお忙しい中、お集まりいただきましてありがとうございます。定刻より早いですが、今日御出席予定の方は皆さんおそろいですので、安全衛生分科会を始めたいと思います。
 本日は、委員改選後の初めての分科会になります。分科会長選出までの間は、私、安全衛生部計画課長の井内が議事進行を務めさせていただきます。本日は、公益代表委員の水島委員が所用のため、御欠席という連絡をいただいております。議事に入る前に、委員に就任された皆様方を紹介させていただきます。お手元にお配りの資料4に委員名簿を付けていますので、御覧いただければと思います。順に紹介をさせていただきます。公益代表の土橋委員、桑野委員、城内委員、角田委員、三柴委員、山口委員、労働者代表の新谷委員、犬飼委員、小畑委員、勝野委員、辻委員、縄野委員、半沢委員、使用者側代表の明石委員、岡本委員、栗林委員、鈴木委員、瀬戸委員、中村聡子委員、中村節雄委員です。
 1つ目の議題である分科会長の選出に移らせていただきたいと思います。労働政策審議会令第6条第6項の規定に基づきまして、分科会長は分科会に所属する公益代表委員のうち、親審議会である労働政策審議会委員から選挙して選出することになっています。当分科会の公益代表委員のうち、労働政策審議会の委員でいらっしゃるのは土橋委員お一人です。したがいまして、土橋委員に分科会長に御就任いただきたいと思います。以降の議事進行は、分科会長にお願いしたいと思います。よろしくお願いします。
○土橋分科会長 御指名いただきました土橋です。適切にこの分科会を進行したいと思いますので、是非委員の皆様の御協力をよろしくお願いいたします。これより議事進行を務めさせていただきます。
 最初に、分科会長代理についてです。これは労働政策審議会令第6条第8項において、分科会に属する公益を代表する委員又は臨時委員のうちから分科会長が指名することになっております。私としては角田委員に分科会長代理をお願いしたいと思いますが、よろしいでしょうか。
○角田委員 了解しました。
○土橋分科会長 よろしくお願いします。
 もう1つは、当分科会に置かれているじん肺部会の委員についても分科会長が指名することになっております。資料4の名簿の2ページにじん肺部会の委員の案が出ておりますが、この内容で私としては指名をしたいと思いますが、いかがでしょうか。
                  (異議なし)
○土橋分科会長 そのようにさせていただきたいと思います。ありがとうございます。
 本日の議題の2番目に入りたいと思います。「第12次労働災害防止計画を踏まえた検討について」です。内容については、事務局から御説明をお願いします。
○宮野安全衛生部長 まず先般の委員の改選によりまして、新たに御就任をいただいた委員の皆様、是非よろしくお願いいたします。また、引き続き委員をお願いしている皆様方にも、昨年来、12次防の御審議では、大変長時間にわたって精力的な御審議をいただきました。改めて御礼を申し上げたいと思います。引き続きよろしくお願いをいたします。
 さて、本日より次第にある「第12次労働災害防止計画を踏まえた検討について」ということで、再び精力的な御審議をお願いしたいと考えております。まず私から、事務局として御審議をいただきたい内容について、簡単に概略を御説明させていただきたいと思います。
 労働安全衛生法の一部を改正する法律案は、この分科会での御議論を経て、3年前の12月に労働政策審議会の建議として取りまとめをいただきました。さらに2年前の10月に、労働安全衛生法の改正案の要綱という形でこの審議会に諮問をして御答申をいただき、国会に提出をしましたが、また詳しく御説明をしますが、残念ながら昨年の11月の衆議院の解散によりまして廃案となりました。
 この廃案になった法律案については、メンタルヘルス対策の拡充あるいは受動喫煙防止対策の推進といった重要な内容が含まれております。私どもとしても、是非この法案について再提出をさせていただきたいと考えておりますが、その一方で今申したとおり建議をいただいた時点あるいは法案の答申をいただいた時点から、だいぶ時間がたっていることもあります。さらに、今申しましたとおり、この4月からは第12次労働災害防止計画も始まりました。この12次防の中では、具体的に事業として進めていくという内容に加えて、こういった点について検討するといったようなものが幾つか含まれております。そうした12次防で検討するとした事項についても、この分科会において御検討いただきまして、法律事項となるようなものがあるとすれば、それについても追加をした上で法案を再提出していきたいと考えております。
 また、前回の法案に盛り込んでいた内容は、基本的には分科会として一度意見の一致を見ております。したがいまして、大きな状況変化がない限りは、基本的にそれを尊重すべきものと考えておりますが、その一方で法案を国会に提出した以降についても、メンタルヘルスの問題あるいは受動喫煙の問題についても、国会内で内容を含めて様々な御意見をいただいております。そうした御意見も紹介をしつつ、状況の変化なども踏まえて、こうした項目についても見直すべき点があれば併せて御意見をいただきたいと考えております。
 以上、12次防の策定を踏まえて、事務局としてはただいま申し上げたような事項について安全衛生分科会での御検討をお願いしたいと考えております。内容詳細については、計画課長から説明をいたします。
○井内計画課長 先ほど部長の検討依頼にもありましたように、労働安全衛生法の改正案については、平成22年12月に当分科会で取りまとめていただいた建議を基に、その後の提出に至ったわけですが、資料1を御覧いただきたいと思います。平成22年12月、労働政策審議会の建議「今後の職場における安全衛生対策について」において、メンタルヘルス対策や受動喫煙防止対策が盛り込まれていたことも踏まえて、震災等の影響もありまして若干時間が開きましたが、翌平成23年10月に「労働安全衛生法の一部を改正する法律案要綱」について諮問・答申を行って、その下の段の12月に法案を国会に提出しました。
 法案の内容については、資料1の裏面を御覧いただきたいと思います。大きく分けて3点です。1点目はメンタルヘルス対策、2点目は型式検定の対象の追加、3点目は受動喫煙防止対策です。メンタルヘルス対策については、事業主に対して労働者の精神的健康の状況を把握するための検査、私ども「ストレスチェック」と呼んでおりますが、この実施を義務付けるものです。また、通常の健康診断であれば、健康診断の結果は事業者に通知され、事業者から各労働者に配布されることとなりますが、このストレスチェックの結果についてはメンタルヘルスに関わるものでもありまして、プライバシーの保護の観点から労働者に直接結果を通知することとなっておりまして、労働者の同意がある場合には事業者にも結果が通知されることとなります。そのストレスチェックの結果を通知された労働者が面接指導の申出をしたときには、医師による面接指導を実施することを事業者に義務付けておりまして、これを理由とした不利益取扱いを禁止しております。最後に、事業者は面接指導の結果、医師の意見を踏まえ、必要な場合には作業の転換、労働時間の短縮といった措置を講ずることとなります。
 2点目の型式検定については、電動ファン付き呼吸用保護具という粉じん濃度が高い場所で使用される高性能のマスクについて、型式検定の対象としてこれ以外のものは譲渡できないとするものです。
3点目は、その下の受動喫煙の防止対策です。これについては、事業主に対して原則全面禁煙又は空間分煙を義務付けるものです。空間分煙の場合は喫煙室について、外部にたばこの煙が漏れないようにといった条件を満たす必要があります。なお、飲食業等の客が喫煙するような業態については、当分の間、煙の濃度を一定以下にするか、換気量を一定以上確保することでよいということにしております。
 内容は以上ですが、資料1の表の面に戻って、その続きです。平成23年12月に国会提出をした後の状況ですが、この国会提出後、臨時国会では継続審議となりまして、※の平成24年の通常国会では、期間中に受動喫煙防止対策について与野党間で修正の動きがありました。具体的には、当時の与党であった民主党と当時の野党であった自民党との間で、政府案では義務となっていたものを努力義務として、国が事業主の取組を援助するという修正の動きがありました。このような修正の動きなどもありながら、8月には衆議院の厚生労働委員会において提案理由説明を行いまして、審議される直前までいきましたが、その後、内閣不信任案提出の動きなどによりまして国会が不正常化して、最終的には11月に衆議院の解散により廃案となったわけです。現在、平成25年通常国会には未提出となっています。私どもとしても、この法案については当分科会での議論を踏まえて提出したものですので、再度国会に提出したいと考えております。
 ただ、一方で前回の建議から時間もたち、その間、昨年度時間をかけて御議論いただいた上で、第12次労働災害防止計画も取りまとめていただいたところです。この12次防においては、平成25年度から5年間の様々な取組について記載しておりますが、この中で検討するとされている事項が幾つかあります。先ほど部長から申しましたが、法案の国会の再提出に当たってはこれらの検討事項について、今後更に検討を進めていただいて、法案に盛り込むべき事項があればそれらも追加した形で、再度国会に提出することを考えております。したがいまして、今後12次防で検討することとされた事項のうち、現時点で検討が可能なものについて検討を進めていただいて、議論の状況を見ながらではありますが、秋から冬にかけて一定の取りまとめをお願いしたいと考えております。
 資料2は、今申し上げた12次防での検討事項という資料です。この資料は、12次防において今後検討するとされている事項について網羅的に記載して、項目ごとに右側に現時点で検討可能かどうかについて記載したものです。順番は、12次防の記載順になっております。上から見ていただくと、規制・届出等の見直しです。記述にあるように、技術革新が進む中で危険有害要因が多様化している。あらゆる危険有害要因に対して、個別具体的な規制を設けることは困難になりつつあることに加えて、そのような規制方法では、規制が膨大なものにならざるを得ない。このため、労働災害を防止するために達成すべき労働現場の安全衛生の水準を明確にした上で、具体的な手法は一定程度、事業者の自主的取組に委ねるという考え方を導入することも含めて、今後の労働安全衛生規制のあり方を長期的な視点から検討していく必要があるということです。これについては右のところですが、現時点で一部検討可能ということで、規制の在り方は長期的に検討していくわけですが、着手可能なものから順次見直しをしていってはどうかということです。
 2つ目は、企業における安全衛生管理体制の適正化です。上の安全衛生管理体制の強化ですが、労働災害防止対策を進める上で責任者を明確にする観点から、現在の安全管理者制度を参考に、小売業等の実態に即した効果的な安全管理体制の構築を検討することが1点目です。その下は、外部専門機関の育成と活用ですが、企業で安全衛生を担ってきた人材や労働安全・衛生コンサルタントを含む安全衛生に関する専門人材を集約化し、企業の安全衛生管理責任を側面支援する外部専門機関として育成するとともに、事業者が自らの事業者としての責任を果たす上で、外部専門機関を利用しやすい制度・環境の整備を図ることがうたわれております。こちら2つの点について、現時点で検討可能であると考えております。
 その下は、新たな職場改善手法で、メンタルヘルス対策の関係です。1つは、職場環境の改善・快適化を進めることによって、メンタルヘルス不調を予防する観点から、職場における過度のストレスの要因となるリスクを特定、評価して、それに対して必要な措置を講じてリスクを低減するという、リスクアセスメントのような新たな手法を検討するということです。こちらについては、現状、平成25年度から3年計画で、厚生労働科学研究費補助金により、新たな手法に関する研究に着手していて、具体的な検討はその研究成果を踏まえて進める必要があるということです。
 その下のメンタルヘルス対策の職場復帰支援については、事業者がメンタルヘルス不調者の職場復帰支援に積極的に取り組むよう、事業者に対する支援措置を検討し、その充実を図るものです。こちらについても右側の平成25年度の委託事業によって、職場復帰支援の事例収集あるいは好事例集の作成、モデルプログラムの作成を行う予定です。支援の充実の検討については、それらの完成後の普及状況を見ながら進める必要があるということです。
 次に、化学物質管理のあり方です。有害性が明らかになっていない化学物質について、発がん性に重点を置いて、有害性評価とその結果等に基づく必要な規制を迅速に行う仕組みを構築する。行政機関が行う有害性調査の情報だけではなくて、化学品メーカーなどの事業者が保有する有害性情報を広く収集して、蓄積・共有する仕組みを構築する。有害性情報の収集に当たっては一定の基準を設けて、事業者に対して情報の提供を義務付けることも検討する。それから、規制対象であるか否かにかかわらず、危険性又は有害性の高い化学物質が適切な管理の下で使用されることを確保するために、化学物質に関するリスクアセスメントを促進する。併せて、リスクアセスメント等による事業者の自主的な化学物質管理に資するために、危険有害性の表示と安全データシート(SDS)の交付の促進を図る。リスクに基づく合理的な化学物質管理の一環として、発散抑制装置の性能要件化の普及を図るとともに、個人サンプラーによる作業環境中の化学物質濃度測定の導入を検討するというものです。いろいろと御議論いただいた上で、こういった形で化学物質の管理のあり方について提案いただいていますが、これは現時点で検討可能だということです。
 裏面を御覧いただくと、重量物取扱い業務の規制ということで、腰痛予防対策です。腰痛の発生要因となるリスクを除去する観点から、諸外国の状況等を踏まえて、重量物取扱い業務の腰痛予防に資する規制の導入を検討するということです。これについては、平成25年度から労働安全衛生総合研究所において諸外国、北米・欧州・アジア諸国の状況等に関する調査研究に着手していて、その研究結果を踏まえて具体的な検討を進める必要があります。
 その下は、屋外作業の規制で熱中症の予防対策です。熱中症の発生状況を勘案して、夏季の一定の時期の屋外作業について、作業環境の測定、評価と必要な措置を義務付けることを検討するということです。これについては、熱中症が多発する業種で重点的に取組を進めるように、毎年都道府県の労働局あるいは関係業界に対して通達を発出して、行政指導ベースでの対策は取っていますが、今後の熱中症の発生状況等を踏まえて更なる検討が必要だということです。
 非正規労働者対策です。パートやアルバイトなどの非正規労働者に関する雇入れ時教育あるいは健康診断の実施などの安全衛生活動の実態や、労働災害の発生状況の把握を進めて、その結果を踏まえて必要な対策を検討するとまとめました。これについては、平成25年度に実施予定の労働安全衛生に関する全国統計調査において、非正規労働者に対する安全衛生活動や労働災害の発生状況について調査を行う予定にしていて、その調査結果を踏まえて具体的な検討を進める必要があります。
 その下は、安全・健康に対する意識変革の関係です。上の段は、労働環境水準の高い業界・企業の積極的公表の関係です。労働災害の発生状況や労働災害防止のための取組だけでなくて、労働者の健康に影響する項目を総合的・客観的に評価する手法を開発する。業界別や、個別企業の評価を労働災害防止団体あるいは労働安全・衛生コンサルタントなどの専門家が行って、企業の同意を得た上で、良い評価を得た企業は積極的にホームページ等で公表することを推進して、求職者が労働環境の良い企業を容易に把握できるようにするというのが1点目です。その裏面になるわけですが、重大な労働災害を発生させ、改善が見られない企業への対応ということで、法令違反により重大な労働災害を繰り返し発生させたような企業について、一定の基準を設けて着実に労働環境の改善を図らせるために、企業名と労働災害の発生状況をホームページ等で公表することも含めて検討するということです。この両面については右にあるように、現時点で検討可能です。
 大学教育における安全衛生教育のあり方については調査研究を行って、その結果を踏まえて、大学教育への安全衛生教育の取入れ方策を検討するということでまとめました。これについては、平成24年度から厚生労働科学研究費補助金で大学における安全衛生教育プログラムの検討を実施している最中です。事例の収集や学生を対象とした安全教育、分野としては科学安全工学、環境安全工学、材料安全工学といったようなものについて研究を進めていて、その研究成果を踏まえて具体的な検討を進めていく必要があります。
 下から2つ目の第三者に施設等を使用させる施設等管理者の管理責任です。施設等の管理者等が、自ら管理する施設等を第三者に使用させる場合の安全衛生管理責任のあり方を検討するということで、これについては現時点で検討可能ということです。
 一番最後は、機械の回収・改善の対象範囲と違法な機械の公表についてです。2点あって、上の方は機械関連業界と連携して、機械の種類ごとの安全基準・規格を評価して活用する仕組みの構築を検討するということです。これは平成25年度から労働安全衛生総合研究所において、欧州の関係等、諸外国の安全規則等に関する調査研究に着手していて、その研究結果を踏まえて検討を進める必要があるということです。下の2点目は、機械による労働災害の情報を基に、機械の重大な欠陥によって重篤な労働災害が発生して、当該機械の販売先が特定できないような場合等、同種災害を防止する必要がある場合は、発生した労働災害の内容、機械の製造者名等の公表や、製造者による機械の回収・改善を図る制度を検討するということです。これについては、現時点で検討可能ということです。
 これを基に資料3は、資料2において現時点で検討可能とされた項目について項目ごとに論点を記載したものです。項目の順番が資料2から変わっておりますが、これは検討に当たって、場合によって専門家の検討が必要となるような可能性のあるもの、あるいは労使で御議論いただくのに時間がかかりそうなものについて議論の時間を確保する観点から、前に持ってきています。
 その各項目ですが、1点目は化学物質管理のあり方です。皆さん御存じだと思いますが、ここでも御報告をさせていただきましたが、昨年、印刷事業場における多数の胆管がんの発症が明らかになりまして、厚生労働省としても再発防止策の徹底と速やかな労災認定を今行っています。この胆管がんの問題については、1,2-ジクロロプロパンという化学物質に高い濃度でばく露したことが発症の原因と推定されておりますが、1,2-ジクロロプロパンという化学物質は人に対する発がん性が明らかになっていなかったために、これまで特定化学物質障害予防規則等による規制の対象とはなっていなかったわけで、現在、法令での規制に向けて作業を進めています。これらの特別な規則では、局所排気装置の設置等によるばく露防止措置が義務付けられているなど、非常に厳しい規制が掛けられておりますが、この特別な規則の対象以外の物質であれば今申したような場合ですが、事業者に対するばく露防止措置は義務付けられていないわけで、特別の規則の対象となるかどうかで事業主の義務は大きく異なってくるわけです。
 その一方で、特別の規制の対象となっていない化学物質であっても、人に対する有害性がまだ明らかになっていないものも多いわけで、これらの化学物質の管理のあり方について見直す必要がないのかという点を御議論いただきたいと思っております。特に先ほど申したとおり、現在は特別の規則の対象となるか、ならないかで事業者に課される義務が大きく異なる仕組みとなっておりますが、これを個々の化学物質についてその時点で分かっている有害性やばく露の実態に応じて、段階的な管理のあり方もあり得るのではないかと考えていて、そのような点についてもこの場で御議論いただければと思っております。
 2点目は、安全健康に対する意識変革を促進するための取組です。1つ目のポツは、労働環境水準の高い企業の積極的な公表。先ほど御説明した12次防の記載にもあるように、安全衛生対策に取り組まれている企業を何らかの客観的な基準で評価をして、高い評価の企業を積極的に公表していこうというものです。このような企業が社会的に評価されるようにしていこうということについては異論のないところだと思いますが、実際にどういった基準や方法で評価あるいは公表をしていくのかといった点についてはいろいろと御意見があると思いますので、この場で御議論をいただければと思います。
 2つ目のポツは、法令違反により重大な労働災害を繰り返し発生させた企業への対応については、12次防の議論の際もこの場で非常に時間をかけて議論をいただいたとおり、12次防においても着実に労働環境の改善を図らせるために、企業名と労働災害の発生状況をホームページ等で公表することを含めて検討するとされています。12次防の議論の過程においても、法令違反により重大な労働災害を繰り返し発生させたような企業について、労働環境の改善を図ってもらう必要があることについては、ある程度共通認識が得られているかと思いますが、今後は改善を図らせるという観点からどのような方策が考えられるかという点について議論を進めていただきたいと思います。
 3点目は、機械の回収・改善についてです。現在、労働安全衛生法令においては型式検定制度や構造規格を定めることによって、一定の規格を備えた機械がなければ譲渡等をしてはならないという仕組みがあります。このような機械については、規格を備えていないものが出回った場合には、回収や改善を命令することができますが、規格が定められていないような機械については回収・改善を命令することができない。しかしながら、規格が定められていないような機械であっても、安全上の問題があるまま販売されたことが原因で、労働災害が発生してしまうような場合もあります。このような例も含めて、現在回収・改善命令の対象とされていない機械についても、回収・改善を行うべきものがないか御検討をいただきたいと思います。また、産業用の機械については、製造販売者が販売先を把握していることが多いですが、その一方で産業用の機械であっても大量に販売しているなどの理由によって、製造販売者が販売先を把握できていないこともあります。このような場合には、仮に製造販売者に回収させようとしても回収が難しくなることがあります。こういった場合に回収を円滑に進める観点から、機械名等を公表することについても御検討いただければと思います。
 4点目は、施設等管理者の責任についてです。例えば、荷役作業については荷下ろし場での災害が多くなっております。荷下ろし場に原因があって労働災害が発生しやすくなっているような場合には、荷役作業を行う労働者を雇用する運送事業者では、労働災害の原因となるものを改善することができないという問題があります。労働安全衛生法の体系においては、原則として労働者を雇用する事業者に対して様々な災害防止のための義務を掛けていますが、今申し上げた荷役作業の場面のように事業者では責任を果たせない所について、その場を管理するものの責任をどう考えるかについて議論をいただければと思います。
 5点目は、安全衛生管理体制の適正化です。業種別の労働災害発生件数の長期的な推移を見ると、建設業や製造業では大きく減少している一方で、ここでも御議論いただきましたが、小売業や社会福祉施設などの第三次産業における労働災害は就業人数の増加以上に増加をしています。12次防においても、このような状況を踏まえて第三次産業を最重点業種と位置付けて、様々な対策を取ることとしております。このように、第三次産業における労働災害防止対策が重要となっている中で、企業における安全衛生管理体制の状況を見ると、建設業や製造業などの業種においては企業の規模に応じて、安全、衛生それぞれの管理体制を整備することとなっているのに対して、第三次産業のほとんどの事業者は安全の管理体制については義務がなく、衛生の管理体制のみを整備すればよいということとされています。このように、業種によって安全衛生管理体制、特に安全管理の体制に差があることについてどのように考えるか、皆様に御議論いただきたいと思います。
 また、これを議論するに当たって、例えば第三次産業で多店舗展開をしているような企業の中には、事業場に正社員が1人しかいないような所もあります。このような事業場が多いような業態の場合は、現在事業場単位で選任することとされている安全衛生管理体制について、複数の事業場を同じ管理者が担当するなど、実態に応じた体制の構築が考えられないかという点も併せて御議論いただきたいと思います。
 6点目は、規制・届出等の見直しです。12次防においては、危険有害要因が多様化する中で、個別具体的な規制を設けることでは規制が膨大なものになってしまうことから、長期的な観点から規制のあり方の見直しをしていただくこととしております。このような問題意識に対しては長期的に検討していくこととなりますが、一方で、現在設けられている規制や届出であっても状況が変化する中で、実態に合わなくなっているもの、あるいは事業者の自主的な取組などのほかの手段で規制等の趣旨が代替できるものなどもあります。
 今回は計画届をここに出しておりますが、これは一定の機械の設置等についてこれを行う場合は、30日前までに労働基準監督署に届出をしなければならないという制度があります。この計画届については、工事等の計画が労働安全衛生上、問題ないかを事前に審査する観点から設けているものですが、これについて実態に合わないなどの理由によって、見直す余地がないのかという点についても御議論をいただきたいと思います。また計画届に限らず、このような観点からほかの規制や届出についても皆様からの御意見をいただきながら、見直しの必要があるものがないかを議論いただきたいと思っております。
 7点目はその他です。前回の建議後の状況変化を踏まえて、議論する規定がないかということを挙げています。12次防を踏まえた議論としては、これまでの1から6の各項目で議論いただくことになろうかと思いますが、前回の建議をいただいてから2年間近くたっていて、その間様々な状況変化があったと思います。このような状況変化を踏まえて議論すべき点があれば、皆様からの御意見を頂きながら議論していきたいと考えております。
 以上、資料1から資料3まで、これらの項目が論点となっている背景も含めて御説明をさせていただきました。本日は1回目ということもありますので、資料3の各項目ごとに皆様からの御質問等がないか、また御意見がないか簡単に確認させていただいて、次回以降、項目ごとに、より詳細な議論をしていただければと思っています。説明は以上です。
○土橋分科会長 繰り返しになりますが、12次防については、昨年度長い期間を掛けて取りまとめに至っております。12次防は今年度からスタートしておりますが、12次防で検討するとされている項目について、これからしっかり議論をして、建議を出し、法案の再提出に当たって盛り込むものがあれば盛り込んでいきたいということです。
 また、部長からもお話がありましたが、前回法案に盛り込まれた事項は、当分科会でかなりの時間を掛けて議論した上で、労使双方とも合意ができるところまで内容を取りまとめて、建議と答申を行っております。そうしたことを踏まえれば、基本的には尊重すべきものと考えております。ただ、その後の状況変化等を踏まえ、見直す必要があれば、その辺りは議論していきたいということです。
 それでは、今の説明の内容について、これから審議に移ります。ただいま説明がありましたように、資料3について各項目ごとに話をしていきたいと思います。今回は第1回の顔合わせ的な部分ということもありますので、詳細な具体的議論は次回以降に時間を取っているので、本日は項目1個ずつについて御意見があれば頂く形で、時間の中で進めていきたいと思っております。1「化学物質管理のあり方について」のところで、御質問、御意見がありましたらお願いします。
○小畑委員 資料1で確認をしておきたいと思います。労働安全衛生法の改正法案が廃案となった経緯については、先ほどの御説明のとおりですが、この法案の内容である職場におけるメンタルヘルス対策、あるいは受動喫煙防止対策の推進は、非常に重要な内容であると考えております。今年も、間もなく昨年度の状況が発表されると思いますが、精神障害による労災補償状況を見ても、請求件数、支給決定件数、いずれも過去最高を記録しているように、職場におけるメンタルヘルス対策は待ったなしの状況にあると認識しております。また、受動喫煙防止対策も、受動喫煙の有害性については「職場における受動喫煙防止対策に関する検討会」の報告書でも述べられているとおりです。
 したがって、ここからがポイントになりますが、先ほどの御説明で、受動喫煙防止対策については与野党間で修正の動きがあったとのことですが、受動喫煙の有害性からすれば、2010年12月の建議の内容に沿った法案の中身、つまり全面禁煙、あるいは空間分煙を事業者に義務付けることを原則とする内容で、法案を国会に提出すべきであると思っております。労働安全衛生法の改正法案は、本来、労働者の命と健康を守るためには最優先法案だと思っていますので、厚生労働省におかれましては、是非この法案成立のために御尽力をお願いしたいと思います。
○土橋分科会長 何かありますか。
○宮野安全衛生部長 今の小畑委員の御発言の点ですが、これは冒頭に申し上げたとおり、あるいは分科会長からも今お話があったとおり、基本的にはメンタルヘルス対策の部分についても受動喫煙防止対策の部分についても、この分科会で時間を掛けて御議論いただいて、労使双方とも合意できる内容ということで取りまとめて建議をいただき、その建議の内容を踏まえる形で法案にしたという経緯があります。したがって、再提出に当たっては、当然ながらそうした経緯を十分踏まえて考えていかなければならないと考えております。さはさりながら、一方でメンタルヘルス対策についても受動喫煙の問題についても、法案を提出してから、あるいは建議を取りまとめてから、かなり時間がたっていることも事実で、先ほど来申し上げているとおり、例えば国会においても、いずれの事項についても様々な御意見を頂いております。ですから、そういった御意見も紹介しつつ、再度確認的なことになるかもしれませんが、この2つの項目についても御議論いただいた上で取りまとめをいただくことになろうかと考えております。
○小畑委員 状況の変化という点では、法案成立の必要性の度合いが増していると思っていますので、是非よろしくお願いします。
○犬飼委員 資料2で確認したいことがあります。2ページの熱中症予防対策について、「現時点で検討可能」とする項目からは外れていますが、「今後の熱中症発生状況等を踏まえて検討が必要」と右の備考欄に記載されており、この表現ぶりが気になります。今年5月21日、5月28日に、今日の報道資料にあるように通知が発出されていて、厚労省として既に熱中症については対策を打っておられるのですが、12次防策定の議論の段階で、確か第68回の分科会だったと思いますが、労働衛生課長から、熱中症による死亡災害は防げる災害であるという力強い答弁も頂いて、現在に至っていると思います。この「発生状況を踏まえて」という意味が、まだデータ的に蓄積が足りないということなのか、今年は屋外作業だけでなく製造業も含めて対策を取られていることは大変画期的なことだと思いますが、対策を実施し、評価も経た上で、今後状況を踏まえてということなのか、この言葉の表現をみると、発生しなかったら対策は今のままで進めることになってしまうのかという危惧があります。その辺りのことが1点です。
 また、12次防では「夏期の一定の時期の屋外作業について」と限定されています。今回の通知が昨年の発生状況を踏まえて製造業を含めているということを考えると、発生状況を見つつ、屋内作業も含めて少し大きく捉えてやっていく方向にあるのかということです。この2点について御説明をお願いします。
○椎葉労働衛生課長 熱中症ですが、先ほど計画課長から御説明したとおりで、職場における熱中症の予防については、平成21年に基本対策を示した通知を発出しており、今日のファイルの資料の中に、5月21日付けで発出した安全衛生部長名の熱中症対策の文書もあります。こういったことで、夏季の重点的な対策についてはこのような啓発・普及をしております。
 熱中症予防対策ですが、暑さ指数の活用が大事だと。自ら測定して、また環境省が提供している様々な推定値を利用するなどして、作業中の暑さ指数を把握して基準値と比較するなど、評価して実効ある対策を行うことが重要ということで、こういった対策を取れば防げるということです。
 委員から屋内作業場について御質問がありましたが、安全衛生規則においては、屋内作業場については半年以内ごとに1回の測定の義務付けがあります。また、有害なおそれのあるものについては、冷房や通風等適当な湿度・温度の調整の措置を講じなければならないという規定がありますが、それは屋内の作業場で、屋外についてはこういった規定がありません。12次防については、屋外についてきちんと対策を取るようにということですが、冷房や通風といった対策はなかなか難しいところです。そういった中で、当面基本対策の通知に基づく対策を推進したいということです。
 また、熱中症の死亡災害が多発するような状況になった場合については、安衛則による義務付けを検討したいということで、まずはこの通達に基づいて対策をしていこうということで、何もやらないということではありません。
○半沢委員 資料2について質問なのですが、非正規労働者対策についてです。検討の可否の欄に「平成25年度に実施予定の労働安全衛生に関する全国統計調査」という記載がありますが、これがどのような調査なのかということです。5年に1回は労働安全衛生基本調査をされていて、直近では平成22年に調査、平成23年に公表されているわけですが、ここに書いてある全国統計調査というのは、こういった調査を臨時に実施するものなのでしょうか。また、これをどのぐらいの頻度でやっていこうとお考えなのでしょうか。非正規労働者対策を実施する上では、必要な調査を行うとともに、丁寧な分析、早急な対応が求められると思っていますが、これらについてお考えをお聞かせください。
○井内計画課長 今お話いただいた統計調査の関係ですが、この分科会の場においていろいろと御議論があって、御意見を頂いて、最終的には非正規労働者対策についてはこういう形でおまとめいただいたわけです。これを受けて、私どもとしては、今年度から統計法に基づく一般統計調査として、非正規労働者の実態、安全性の実態を調査したいということで、関係省庁とも調整をしてきております。これまでは、パートやアルバイトを含めた正社員以外の方々、契約社員、パートタイム労働者、臨時日雇、派遣労働者といったところまで細分化して、安全衛生のデータとして実態を見てこなかったわけですが、12次防を受けた形で今年度から調査を行いたいということで、今、手続を進めております。
 その中では、これまでなかったそれぞれの正社員以外の形態の労働者について、過去1年間で労働災害がどれぐらいあったのかを調べたいと思っております。また、非正規労働者それぞれに対して、労働安全衛生の教育がどのようなタイミングや方法で行われているか、あるいは安全衛生教育を実施しているのかいないのか、実施していないとしたら、どのような理由で実施していないのか、労働安全衛生の推進活動に非正規労働者を参加させているかどうかといったところにも踏み込んで、我々としては調べたいと思っております。調査の頻度としては今後の結果も踏まえながら考えていきたいと思っておりますが、まず今年度、急ぎでこれだけの実態と取組状況について調べたいということで、鋭意進めております。
○新谷委員 今のは大事なポイントだと思っています。今日は、机上配布で平成24年の労働災害の発生状況が配布されておりますが、残念ながら、死亡災害、死傷災害、重大災害はいずれも増加という結果になっています。今、計画課長からも御答弁いただきましたが、例えば労働災害発生状況が雇用形態別にどのような状況になっているのかについて、多分調査、統計がないので分析ができないと思いますが、職場での10年間の変化を捉えたときに、非正規労働者の数が非常に増えてきているのです。1,800万人を超える方が非正規雇用労働者として働いておられるので、安全教育、衛生教育をどのように実施しているか、それが労働災害とどのような因果関係にあるのかというところは非常に重要なポイントだと思いますので、是非きちんとした調査をしていただいて、労働災害との因果関係について詳細な分析をしていただくことを重ねてお願いしたいと思います。
○辻委員 資料3の1つ目の論点の「化学物質管理のあり方」について申し上げたいと思います。印刷事業場における胆管がん事例については、厚生労働省として検討会を設置して、早期に検討結果を取りまとめるなど迅速に対応いただき、労災認定されるようになったことは評価できると思っております。しかし、労働者の犠牲の下、ようやく対策が取られるようになったことや、危険有害性を未然に発見できなかったことについては、残念であると言わざるを得ません。今回の事例が繰り返されないよう、化学物質の有害性の把握について積極的な対応策が求められると思っております。
 一方で、職場で使われている化学物質は6万種類もあると言われている中で、その危険有害性の有無をいかに効果的・効率的にスクリーニングしていくかは大きな課題であると思っております。労働側としても、有効な対策の検討に協力をしていきたいと思っておりますので、よろしくお願いします。
○新谷委員 資料3の検討項目と論点の2点目、「安全・健康に対する意識改革を促進するための取組について」という項目です。これも先ほど御説明いただいたように、12次防策定の際にかなり時間を掛けて論議をして盛り込まれた内容です。安全第一(Safety first)という考え方は、長らく取り組んできているので職場に定着してきているはずなのですが、それでも残念ながら安全よりもコストを優先するとか、最近ではブラック企業のような、極端な長時間残業で精神的にまいってしまうとか、パワハラをやるような企業が散見されるわけです。そういった繰り返し繰り返し労働災害を発生させる企業は、何らかの社会的制裁を加えなければいけないと私どもも思っております。それは、単に労災保険料のメリット制を超えて、何らかの社会的な公表が重要だと思っております。
 特に、パワハラが最近非常に増えてきているということは、個別労働紛争に関する厚生労働省の調査結果でも出ております。従来、個別労働紛争で件数が一番多かった事案は解雇でしたが、今年はこれを上回って、個別労働紛争で最も多い事案はパワハラ、職場のいじめの問題です。これが原因で心を病んでしまう方も非常に多いということです。また、長時間労働から精神的に負い込まれた状態になってしまう方も非常に多いということで、きちんと企業の責任として、こういう状況を発生させないということを定着させていく必要があると思っております。
 現行の安衛法78条では、都道府県労働局長が事業主に対して安全衛生改善計画の作成を指示する権限が与えられているわけですが、ここの論点に挙がっているような、特に飴と鞭というか、プラス方向での企業名の公表とともに、繰り返し繰り返し労働災害を発生させる企業に対する企業名の公表についても、より実効性のある対策を講じていく必要があると考えております。労働者の健康と命を守るというのは労使共通の目的だと思いますし、安全第一という考え方も労使で共通の認識だと思いますので、そういった認識の中で、是非政府も実効性ある対応を検討いただきたいということを要望申し上げます。
○土橋分科会長 資料3の論点を1つずつ議論しており、まず論点1を議論していますが、論点2の内容も入ってきました。論点1については、ほかにはありませんか。
○明石委員 論点1で、これは「胆管がんの問題の発生を踏まえて」と書いてあるのですが、今、胆管がんはまだ疫学調査中ではないかと思うのです。1,2-ジクロロプロパンが疑わしい状態であって、その発生機序はまだ出ていないと把握していますが、こういうことをやるのであれば、その機序をきちんと押さえることが大切なのではないかと思います。
○土橋分科会長 論点1について、ほかにありますか。
 それでは、論点2については既に新谷委員から御意見を頂きましたが、ほかに御意見、御質問等はありますか。よろしければ、後ほど全体について伺いたいと思います。論点3「機械の回収・改善の対象範囲と違法な機械の公表について」はいかがでしょうか。
○奈良化学物質対策課長 先ほど、「化学物質管理のあり方」の部分について御意見を頂きましたが、明石委員から、胆管がんの問題の発生を期にということであれば、その機序が明らかになることが先なのではないかという趣旨の御発言がありました。私どものこれまでの労災補償の認定に係る検討会の中で、今回問題になっている1,2-ジクロロプロパンに長期間、高濃度でばく露していたことが、今回の胆管がんを発生させた蓋然性が高いという結論が得られております。私どもとしては、胆管がんの場合もそうですが、特別の具体的な規制がなされていない、他の有害性のある化学物質を含めた管理の在り方を、今一度御検討いただく良い機会ではないかということで、この論点を整理しました。御理解をいただければと思います。
○土橋分科会長 論点3については、特にありませんか。
 それでは、論点4「第三者に施設等を使用させる施設等管理者の安全衛生管理責任」について御意見等はありますか。
○縄野委員 先ほど、荷役作業中の事故防止、あるいは件数の削減に向けて、施設管理者の何らかの責任について検討するということでした。理想としては、何らかの責任を求めたいというのが考え方としてありますが、ただ、現実の問題として、特に陸上貨物運送の場合、荷主と輸送事業者の力関係が如実に出ており、荷主側が非常に大きな力を持っています。例えば、荷主側の施設でトラックの運転手が怪我をして、荷主側が何らかの責任を問われることになった場合、後々荷主側から運送事業者に対して「もう、あなたの所には仕事はお願いしません」という副作用というか、いろいろな問題、課題が発生する可能性が非常に高いのが現実で、一概に責任を求めるかどうかは非常に難しい問題だと捉えております。
○小畑委員 今、縄野委員からもお話がありましたが、もちろん法律論として見れば、これは問題ないとは思っていますが、危惧されることは何かといえば、実態としては付帯料金なしで客先において作業をせざるを得ない実態にあるのだということです。そうなると、「うちの施設内で事故を起こすような会社は出入り禁止だ」と、あるいは「安全に対する管理責任はうちの会社が持つので、この付帯作業については全部無償でいいよね」といった圧力が掛かってくる可能性が高い。したがって、現状無償で行っている付帯作業が、法改正が実施されることによって、追認、あるいは固定化されてしまうというのが、非常に恐れているところです。今、国交省で書面契約の義務化も検討していますし、この12次防でもまとめていただいたモデル運送契約の進捗状況を見極めた上で、慎重に判断すべきであると思っております。
○土橋分科会長 ほかに、論点4について御意見等はありますか。
 それでは、論点5「企業における安全衛生管理体制の適正化」について御質問、御意見がありましたらお願いします。
○縄野委員 各企業における安全衛生管理体制の確立は非常に重要だと思っています。ただ、事業場の中には、効率性やコストが優先されて、職場における安全衛生管理がおろそかになっている所もありますし、名前ばかりの管理者もいます。こういったことでは、労働者の安全、健康を確保することにはつながらないのではないかと思います。したがって、今後いかに有効かつ実効性の伴う安全衛生管理体制を構築するかが大きな課題ではないかと思っております。
 また、5.に「企業の実態に応じた体制」と記載されておりますが、ここは企業の規模、あるいは事業場の規模、業種・業態に即したきめ細かな検討が今後求められるのではないかと思います。
○三柴委員 労働側の委員の方に確認したいのですが、4.の項目については何らかの対策が必要だという認識は共有しておられるのですね。現状でも、民事の安全配慮義務や不法行為という論法を使うと、施設管理に問題、瑕疵があって起きた労災については、荷主側でも責任を負わざるを得ない場合があります。ですので、たとえ仕事を失うとか無償化の圧力が掛かるということがあったとしても、規制がどうあるかという問題と、それを使うかどうかという適用、運用の問題は別の話なので、そういう意味で何らかの対策が必要であるという認識を共有しておられるのであれば、そういうこととして理解したいのですが、よろしいでしょうか。
○小畑委員 もちろん、そこは次元の違う話だということは重々承知の上で、実態としてこういうことがあるので、そこをわきまえた上で、きっちりと対策をしていかないといけないという意味です。
○土橋分科会長 論点5について、ほかにありますか。
 それでは、論点6「規制・届出等の見直し」に関して、御質問、御意見はありますか。あとは論点7「その他」ですが、既に初めに6項目以外のその他のお話も頂いているかと思います。そういった意味で、全体を通して何か御質問、御意見がありましたらお願いします。
○明石委員 素朴な質問ですが、「廃案」というのは、言葉から見ると1回なくなったという意味のように取られるのですが、先ほどの御説明では、いつでも出せるという感じですね。なくなったわけではなくて、いつでも取り出せるというように聞こえるのですが、それはどこか法律で担保されているのですか。
○井内計画課長 法案のこれまでの経緯を、この審議会との関係でお話しますと、今回廃案になった労働安全衛生法の一部改正法案の御議論としては、これまでにいろいろな検討会等で議論された上で、なおかつ安全衛生分科会でも多岐にわたる項目について御議論いただいて、建議をおまとめいただいたということです。その建議には、この項目についてはこうすべきだとか、義務化をすべきだとか、努力義務にすべきだとか、それが法律、若しくはそれ以外の規則等々、あるいは行政指導ベースでやるべきなのかがはっきりするものもあれば、はっきりしていないものもありますが、幾つかの論点を頂いて、建議として安全衛生分科会でおまとめいただいたわけです。そのときの御議論は、当然、今の労働災害の状況や労働安全衛生施策の現状を踏まえて、こういう部分が足りないので、更にこういうことをすべきではないかと、国際的な状況や背景を基に御議論いただいてできた成案だと思っております。その建議いただいたことを基に法案をまとめ、要綱をまとめて、ここにお諮りして諮問・答申をいただいたわけです。
 そういう形で、おまとめいただいた審議会の意見を受けて法案ができ、提出したわけです。先ほど御覧いただいたような経緯で、廃案にはなりましたが、もう少し細かく言うと、平成25年の通常国会においても、検討中の法案ということで検討はしてきたわけです。これは先ほども申し上げたように、建議をいただき、審議会で諮問・答申をいただいて、法案としてこのような内容のものを出すべきだということでいただいて、それを受けてやっているわけです。
 通常国会は、御案内のとおり、会期の関係やいろいろな特殊な事情もあって、法案としてたくさんの法案が出せないという状況もあり、今現在まで未提出のままで来ているわけですが、私ども安全衛生分科会の事務局としては、安全衛生分科会で頂いた諮問・答申、考え方をこれからも改正法案の形で提出したいということは先ほど申し上げました。その間に非常に大きな「第12次労働災害防止計画」という5か年計画を、8回にわたって御議論いただいた上でまとめていただいて、この5か年計画の中で、こういった項目については更に施策を取っていくべきだということでおまとめいただいたので、この中で今回のフェーズで御議論いただいて、これまで頂いた3項目に加えて、法律事項を追加すべきものがあるのかないのか、あるのであれば追加をして、再度国会に提出したいという考えでおります。
 お答えになっているかどうか分かりませんが、国会に提出された法案は、継続審議にならなければ廃案にはなりますが、事務局、厚生労働省としては、審議会で御議論いただき、まとめていただいたことを踏まえた上で再提出を目指していくことは通常のことと思っています。
○明石委員 「廃案」ということがよく分からなかったのでお聞きしましたが、通常の「廃」とは、意味的には少し違いますね。
 ただ、これは先ほどから話に出ているように、大分環境が変わったので、一度この環境にのっとって、それがいいのか、考え直すところがあるのか、これは行政のトップである厚生労働大臣も新しいものを出し直すとおっしゃっているので、一度きちんとしたエビデンスを出していただいて、それにのっとって慎重に審議をした方がいいのではないかと思いますし、そう望みます。
○新谷委員 今、明石委員から安衛法の取扱いについての質問があって、見解を述べられましたが、私ども労働側委員が冒頭に申し上げたように、平成22年の労政審の建議で政労使共通の認識として建議を挙げて、内閣提出法案として国会に提出されました。残念ながら国会の情勢で廃案になったわけですが、内容的には非常に重要なものを含んでいると思います。おっしゃるように、建議をまとめてからかなり時間がたっていることは確かですが、私どもとしては慎重にということとともに、早急にこの法案については成立させるよう、政府としても努力をしていただきたいと思っています。
○土橋分科会長 冒頭に述べたように、一応合意が取れたという形でここまでやってきております。ただ、状況変化によってということが納得できるものであれば、その辺りは検討するということかと思います。全体を通して何かありますか。
○角田委員 前回の労働安全衛生法改正案についてのご議論があって、廃案ということについてもお話がありました。「再提出」という言葉の意味ですが、そのまま同じものがまた出るようなイメージを抱かれる可能性もありますが、御承知のとおり法案提出後にもさまざまな議論があったかと思います。そうしたことを生かしていくのかどうかについて気になっております。
 12次防についても、先ほど熱中症の議論があって、屋外作業についてのことがありますが、プレスリリースで厚生労働省本省から提示された熱中症の事例についても、30例ほどあって、室内での死亡例もそのうちの5例ほどの報告がありました。そうしたことについてもご配慮があるのか少し気になりますが、その辺りはいかがでしょうか。
○井内計画課長 今、角田委員から御意見を2点頂きました。1点目については、冒頭から御説明しているように、基本的に2年半はたちますが、前回この分科会で御議論いただいてまとまった改正法案については、厚労省でそのように意見が集約されたので、それを受けて国会に法案を提出したいと思っております。「再提出」という言葉が、全く同じものというイメージを持たれるというお話がありましたが、ここで今回第1回としてキックオフして御議論をいただきたいと思っているのは、正にその点に関わってくるわけですが、前回までの3項目の法案の内容に更に付け加えるものがあるのかどうか、そのときに議論をするのは、この2年半の間に起こった状況変化については、当然踏まえて御議論をいただきたいとは思っております。次回以降、資料3にあるようなそれぞれのテーマごとに、もう少し詳細な資料やデータもお示ししながら御議論をいただこうと思っております。
 ただ、前回まとめていただいた段階では、公労使の委員でこの審議会としては同意が得られていました。その後の状況変化を受けて12次防で御議論いただいたことも踏まえて、今後追加で御議論いただいて、更に追加する項目があるのであれば、それを踏まえた上で、労働安全衛生法一部改正法案という同じ名前ではありますが、国会に提出しようということで御審議をお願いしております。
○椎葉労働衛生課長 2点目の熱中症ですが、プレスリリースの資料については、平成24年の1年間の死亡者数ということで、詳細にどういった場所で、どういった業種でといったことが分かるような形でお示ししました。その中で、屋内作業の方も5件ありました。
 ただ、先ほど御説明したとおり、労働安全衛生規則の中で、事業者に遮熱多湿の屋内作業場については、気温等の測定義務やその他の措置を講じなければならないという規定がありますが、屋外に対してはこのような規定がないということで、12次防においては屋外作業場に対する規制の導入ということで熱中症の発生状況を勘案し、「下記の一定の時期の屋外作業について、作業環境の測定・評価と必要な措置を義務付けることを検討する」と入れましたので、これに基づいた御説明でした。
○土橋分科会長 全体を通して御質問、御意見はありますか。よろしいでしょうか。
 それでは、いろいろ御意見を頂きましてありがとうございました。本日の議論はここまでとします。事務局より連絡事項をお願いします。
○井内計画課長 次回の日程は、6月27日(木)の13時から15時を予定しております。次回以降は、今回の御意見を踏まえつつ事務方で資料を作成し、論点ごとの掘り下げた御議論、御審議をお願いしたいと考えております。本日、まだ御意見を言い足りないとか、今回は抽象的な部分もあったかと思いますが、キックオフということで御意見を頂きましたが、今回出た意見についても次回以降また御意見を頂ければと思っております。次回も一層の深い御議論を進めていただきたいと思っておりますので、どうぞよろしくお願いいたします。
○土橋分科会長 それでは、本日の分科会はこれで終了いたします。なお、議事録の署名については、労働者代表は縄野委員、使用者代表は瀬戸委員にお願いします。本日は、お忙しい中ありがとうございました。


(了)

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