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2013年5月9日 第2回産業保健を支援する事業の在り方に関する検討会 議事録

○日時

平成25年5月9日
17:00~18:30


○場所

厚生労働省専用第23会議室(19階)


○議題

(1)地域産業保健事業、産業保健推進センター事業及びメンタルヘルス対策支援事業の課題について(関係者よりヒアリング)
(2)地域産業保健事業、産業保健推進センター事業及びメンタルヘルス対策支援事業の効果的・効率的な実施について
(3)その他

○議事

○職業性疾病分析官 ただいまより、第2回産業保健を支援する事業の在り方に関する検討会を開催いたします。カメラ撮影はここまでとさせていただきますので、よろしくお願いいたします。本日は、土肥委員が御欠席です。ほかの委員の先生方は御出席いただいております。
 最初に、配布資料の確認をいたします。議事次第が1枚ものです。資料1から資料3までですが、このあと御紹介いたしますが、本日はこの後ヒアリングを予定しております。ヒアリングをさせていただく方から御提出いただいた資料です。資料1が東京産業保健推進センターの吉田様御提出の資料です。資料2がメンタルヘルス対策推進アドバイザーの古山様からの資料です。資料3が大阪府医師会理事の藤森様からの資料です。資料4は、検討会の第1回のまとめです。資料5は、「産業保健推進センターの集約化の推移とその影響」ということで、労働者健康福祉機構の資料です。資料6は、道永委員御提出の資料です。資料7は、中板委員御提出の資料です。参考資料1として、開催要綱と委員の名簿が付けてあります。資料は以上です。今後の議事進行については座長にお願いいたします。
○相澤座長 皆さん、こんにちは。本日は、産業保健を支援する事業の課題について、各事業の関係者から事業利用者の意見も踏まえてお話を承ることになっております。まず、事務局から本日のヒアリングの御説明者を紹介していただきます。よろしくお願いします。
○職業性疾病分析官 ヒアリングは3名の方を予定しております。まず、東京産業保健推進センター特別相談員の吉田守様です。労働者健康福祉機構メンタルヘルス対策推進アドバイザーの古山善一様です。大阪府医師会理事の藤森次勝様です。以上の3名の方です。
○相澤座長 早速ヒアリングに入りたいと思います。お一方ずつ順番に御説明いただいて、その都度、質疑の時間を設けたいと思っております。御説明については、お一方10分程度でお願いしておりますので、よろしくお願いします。まず、吉田守様からお願いします。
○吉田様(東京産業保健推進センター特別相談員) これからお話をさせていただきます。初めてこの様な場所に来まして、傍聴人の多さに想定外の状態になっておりますから、言葉が届かないかもしれませんが、よろしくお願いします。私は今、産業保健推進センターで講師のようなことをさせていただいていますが、その以前には実際に活用させていただきました。企業の一員として活用する狙いとか目的の部分と、実際に私が講師としてお話する中で、どんなことに気付いたかということを含めて、これからお話をさせていただきたいと思います。
 労働安全衛生法が運用強化されてきた時代、2000年の少し前から、私自身も安全衛生活動の取組みを実際に始めました。企業の安全衛生体制作りの業務命令を受けました。いきなり言われてもなかなか様子が分からない為、どこに聞けばいいのか判らず、一番、最初に勧められたのが東京産業保健推進センターでした。無料でいろいろなことを教えてもらえるから行きなさいということで、半年ぐらい毎月通って、いろいろな情報を集めました。同時に、初めて取り組む中で何から手を着けていいか悩んだ結果、社内外の企業を含めて、安全衛生にかかわる仕事をどのように進めておられるかを確認(ベンチマーク)したことで、貴重な意見を頂くと共に意外と、お話を聞いていても実際にできていない所が非常に多かったということが判りました。そのできていないところをどうするか自分なりに考え安全衛生活動に取り組みました。
 1998年頃から実際にその活動が始まったわけですが、そのような中で安全衛生活動の法律上の進め方として、2000年に企業の安全配慮義務違反を問われた大きな事件があり、その裁判の判決の中で事業者の責務として、安全配慮義務を明示された。安全配慮義務をきちんと捉えていく前提から、私どもの会社も安全衛生の体制作りを進めてまいりました。一番、最初に東京産保センターにかかわったことで、受講する企業の側から見たときに良い資料、専門書、DVD、測定器等機材の借受から相談に至るまで有意義に活用させて頂きました。その中で一番良かったのは、今、統廃合という話がありますが、私自身が感じたのは、ベースのところの「労働衛生のハンドブック」という分かりやすい冊子が、配布されました。今でも配布されていますが、それを上の経営層と直属の上司に見せて、安全衛生活動の最低限やらなければならないことをしつこく話した結果、理解度がどんどん高くなった。大きな事件があり、結果的に多額の損害賠償で和解が成立した。損害賠償額が非常に大きかったということで、私どもの会社もそれと似たようなケースが起き始めていた、同じことが起きてはまずいということで、安全衛生体制作りに取り組んだことがそもそもの動きです。
 そのような中で、実際に安全衛生の活動を進める上において、特に企業の規模によって、私どもの会社は企業規模が大きく産業保健スタッフが自前で調達でき、そこで教育も進められたということですが、東京産保センターに縁があって、人事・労務・衛生管理者研修で現場の実務を紹介してほしいという依頼があって、リタイアした後、お手伝いで始めさせていただいて4年を経過したのですが、座学的に説明するのではなく、現場で実際に実施・体験してきた話を踏まえ説明をさせていただいたことで、4年も継続したものかと思っています。
 そういう中で、今、地域産業保健センター、産業保健推進センター、メンタルヘルス対策支援センター、これを継続するかどうかというお話があるようですが、今、実際に私自身が東京産保センターで教育にかかわって約4年です。今日も研修があったのですが、104回の研修をやらせていただいて、その間に参加いただいた企業の担当の方にいろいろお話を聞いたところ、企業の中でも非常に力の入れている企業と、そうでもない企業ある。安全衛生活動については、全般的にはトップダウンで動けるところが非常によく動いていると言われています。ボトムアップで安全衛生活動をやらなければならない所については、なかなかうまく動いていないという声を聞いております。
 今日の資料の最後のページに企業の規模による違いというところで、大企業、中企業、小企業という分類で見ていったときに、私どもは従業員が1万4,000人近くいましたので大企業と言われるわけですが、そういった企業については安全衛生にかかわる専門の部署と専門の人がいることで、自前でそれらの現場の教育・研修等がうまくできたということなのです。中小企業の方々からお話を聞いていますと、なかなか思うとおりに人と物と金と時間が動かせないというところです。このような中で、この産業保健推進センターという所がなくなると、この先どうしたらいいのと言われており、やはり企業の中で活動できるような人をどうやって育てていくのかというのが、皆さんの声の中からは非常に多く出てきております。
 特にここ2年ぐらい非常に感じているところは、事業場規模50人未満、あと3人、4人増えれば50人になるという事業所の担当の方々が産保センターにお出でになられているわけです。数年前に事業仕分けで産保センターがなくなってしまうなどという声を聞いたときがあるのですが、そのときなども、なくなったら我々はどうしたらいいのだろうと。特に中小企業と言われる中で、自前でできない、教育する人もいない、お金も出せない、時間もとれないという所はどうするかということが非常にクローズアップされております。今日も産保センターの研修が終わってこちらに来たのですが、やはり質問が出て、小企業の場合にどういうことをどこでお願いしたらいいのか、そこがよく見えない。地域産業保健センターと産業保健推進センターとメンタルヘルス対策支援センターという組織があるわけですが、どうしたら良いのかかよく分からないという声も聞いております。
 このような状況の中で、統廃合は必要かと思いますが、現場と、企業の産業保健スタッフの声を正しく聞いていただいて、本当に統廃合すればいいものかどうかということを含めて、是非御検討いただければと思っております。資料は作ってきたのですが、説明全体を、10分でお話ということで、かなり端折っておりますが、実際に今日、私がここに来ていいものかどうかということも含めて、感じているところをお話させていただきました。以上です。
○相澤座長 ありがとうございました。産保センターのユーザーから、現在は指導員をされているという御経験から、将来に対して不安に思っていらっしゃるということです。委員の方々から、何か御質問がありませんでしょうか。
○堀江委員 産業医大の堀江と申します。どうもありがとうございます。お話を伺いますと、大企業の経験をお持ちのうえで、小規模事業場へのサービスを産業保健推進センターの活動を通じて行われてきたと伺いました。大企業から小規模事業場といった幅広い業態の中で、いずれも経営者の理解によるトップダウンが必要ということをおっしゃっていました。その場合のトップというのは、法律上で規定された事業場の単位で安全衛生組織のトップという意味でしょうか。それとも小規模事業場といっても大企業の営業所や支店といった所があったり、本当に独立した企業の事業所もあったりすると思いますが、企業単位のトップということなのでしょうか。
○吉田様 今お話しているのは事業所単位ということで見ていましたので、事業所単位ということでいろいろお話は聞いているのです。企業の中の出先の話ではなくて、出先でも例えば50人以上の場合はこういうことをやらなければいけないというのが法律であります。そこに該当するということで、事業所単位でトップダウンという事業所長に対して意識を高めてもらう必要があります。
 私自身も最後の1年だけ、我が社の一番小さな関連会社なのですが、従業員規模が80人の会社に1年間出向して、安全衛生の体制を1年間でやれと言われたのです。前にいた事業所は人もお金も時間も十分与えていただけたのです。ところが、そこに行って1年間で一番感じたのは、時間がとれない、人がいない、お金も出せないということで、非常に苦労したのです。1年でできることは何だと思って考えたときに、まず私の後をやってくれる人(後継者)を作らなければいけないということで、とりあえず3名、半年かけて衛生管理者の資格取得を持ってもらうことから始めたのです。その後、継続して後任の方にやっていただけたので、何とか形が整ったと思います。産保センターにお出でいただいている企業の担当の方は、なかなかそういうところがうまくいかないという声を随分出されているのです。ですから、トップダウンがいいというのは、ボトムアップしても途中で提案した話しを切られてしまうという声がいっぱい出ているのです。全てではないですが、そういう声が非常に多いということです。
○堀江委員 大企業の出張所や支店も小規模事業場であったりしますが、そういう所よりは、会社そのものが小さい所のほうが産業保健の支援は一層難しいのか、と思っていたのですが、そういう印象はありますか。
○吉田様 おっしゃるとおりです。企業の中の事業所という考え方と、法律でいう事業所の捉え方が、今、法律では安全衛生法で事業所と捉えていますよね。企業という捉え方をしてしまうと、全体の中で大きい・小さいという事業所がありますから、そこについては同じような扱いの中で、同じ企業の出先であっても、例えば50人以上であればこういうことをちゃんとやらなければいけないということで動いている。逆に、小さい事業所は49人とかという企業のお話ですね。
○相澤座長 ほかの先生方はいかがでしょうか。よろしければ、どうもありがとうございました。古山善一さん、よろしくお願いします。
○古山様(メンタルヘルス対策推進アドバイザー) 私もこういう場所は初めてなので、ちょっと上がっておりますが、よろしくお願いします。ペーパーは1枚です。私の仕事は機構の非常勤職員で、事業場訪問支援専門スタッフからの相談、そしてその者たちに対する情報提供を行っております。ですから、今日の発言はそういった人たちからの声、現場目線でのお話をさせていただきたいと思っております。「現状」と、「課題」を3つ挙げております。これは日頃から感じていることです。
 現状の部分ですが、事業として4年過ぎました。5年目に入っております。その中で、いろいろな成果を挙げております。例えば今、集計中ですが、平成24年度の実績も相談件数が1万3,000、訪問支援が2万2,000、管理者教育も5,800、6,000近くという形で、これは毎年目標達成できた数字になっております。利用者の満足度も、初年度、満足が67.2%だったのですが、平成24年度では79.3%まで上がって、これが現状です。
 この中でどういう教育を行っているかと申しますと、マニュアルとして労働衛生課が行政官向けに作った業務処理要領を支援専門官に配布して勉強してもらっています。それで分からなければ私に聞いてくださいと、こういうスタンスで進めております。訪問支援は飛び込みセールスみたいなところがありまして、ドアに片足を突っ込んで閉めさせないと。そこまでやりませんが、「間に合ってます」と断られることは結構多いです。それをどうやって「メンタルヘルス対策は必要なんですよ」というように事業場を説得できるか。これが事業場支援専門家の能力なのです。その面が向上してきたから、要するに実務によって向上してきたから、満足度が高まっているということだと思います。
 課題として、「継続性のある支援へ」と掲げました。これは事業が単年度であるため。はっきり申し上げて、この辺の悩みが現場では一番強いです。事業場の取組みは年度で決まっていきますから、「来年度こういうことをやりたいんだけど、相談に乗ってくれますか」の話は、「来年度うちが受けているかどうかも分かりません」と、残念ながらこういう話になってしまうのです。ということだと、支援の話もできないわけです。ここのところが現場としては一番困っている。単年度区切りですから、年度が変わって、実は現在もやっと動き始めたというところです。そのようになってしまう。そのことは、専門家の雇用というか、委嘱の問題にもかかわってきていて、その委嘱もできるかどうか蓋を開けてみなければ分からない。北海道のように産業カウンセラー協会に取られたりすると、こっちではできないということになりますので、そうするとその人たちは職を失う。これがすごく動揺を招きます。したがって、私は事業を見ていて、その辺のところが一番のポイントだろうと考えております。そもそもメンタルヘルス対策が、そういう長期的に見ていかなければいけないところがあります。
 「点から面への支援」ということで書かせていただきましたが、これは個別事業場からの要望に応じての支援ですから、どうしても点になってしまう。それをもっと効率的にやるためには、面の支援、つまり地域、あるいは業界、それをつかまえた支援を展開していかなければならない。そのためには、地域産保などの関係組織とともに、行政のテコ入れがとても必要なのです。
 ここで申し上げることではないかもしれませんが、現状では労働局からの事業場支援の情報提供を見ると、年間で100事業場を超える情報提供がある局が14局ある反面、0件、全く通報無しが7件。20件未満が12局。合わせても19局が通報がとても少ない。専門家の側は、監督署との連携でとてもイメージが上がって、事業場の対応も変わってきたと、とても評価しているので、是非ともその辺の連携を強めていきたいと考えております。
 3点目が「小規模事業場の支援」ということです。小規模事業場では、まだ知らないという所が多いです。ですから、これはいろいろな情報を得ながら、利用促進を働きかける必要がある。地域で健康祭りとかいろいろありますので、そのような機会をつかまえて、広報面での連携とか、企業情報の交換、あるいは出張相談、管理職研修、管理者教育といったものを共同でやるという形がいいのではないかと思います。実際に支援数は、初年度、規模50人未満は29.2%だったのですが、平成24年度は集計中ですが、39.4%と10ポイント上がっています。これからはこの層、50人未満層が支援の中心になってくると考えているところです。
 専門家の反応を見ても、規模が小さい所でも管理職研修は4、5人でしか研修できませんが、管理職研修などがとても喜ばれている。つまり、人数が少ないとそれだけの費用を掛けられないけれども、支援が受けられるのが喜ばれている。それから、小規模でもニーズは同じだと。管理職研修の無料実施とか、不調者対応の相談とか、情報提供、職場復帰プログラムの情報提供が喜ばれている。これは規模の大きい所と比べても同じです。そういったことから労使で問題を共有すること。企業者の人重視の考え方が浸透すること、管理・監督者に部下を見守る意識が高まる。そういう中で、これは支援専門家の感じているところなのですが、心の健康問題だけでなく、安全衛生全般にも意識が広がる。そして、大きな労働災害がなくなり、結果、生産性が良くなった。その結果については、大勢の専門家が学ばせていただいております。以上で発言を終わります。ありがとうございました。
○相澤座長 3つの提言をいただきました。単年度でなくて通年度であるということで、行政の支援が必要だということと、小規模事業場も特に重要であるということです。ありがとうございました。御質問がありましたらお願いしたいと思いますが、いかがでしょうか。
○栗林委員 小規模事業場とかかわりをもちますと、大体平均どのぐらいの間お付合いが続くものなのでしょうか。
○古山様 それはやはり相手によりけりですね。経営者の熱意と担当者。小規模というと、大体30人未満を考えていますが、そのぐらいですと経営者が1人でやってしまう所があります。そうすると、支援の手間は余計かかります。担当者がいて、その人に教え込んでという形になると、手間は余りかかりません。それは担当者が会社で決められた仕事だから、自分でどんどんやるというところがありますから。お答えになっていますでしょうか。
○栗林委員 期間的に言えばものすごく、1回で終わってしまう所から、2年、3年と続くような所まであると。
○古山様 そうですね。2年、3年はあるかもしれないですね。全体の訪問支援の8割が初回です。だから、2割がリピーターになっているということでしょうか。
○相澤座長 先ほどの平成24年度の相談件数1万3,000件の8割は1回で。
○古山様 これは延べ件数です。
○相澤座長 8割ぐらいは1回ということですかね。
○古山様 そうです。今8割と申しましたのは、個別訪問支援です。この事業の最大の特色は、専門家がお伺いして、いろいろなニーズを伺って支援をしていくというところですので、その訪問が初回が8割ということです。
○諸岡委員 ありがとうございました。私は茨城県医師会の諸岡といいます。よろしくお願いします。メンタルヘルス対策支援事業は本当に大事なことだと思っています。利用者の満足度が、4年の間に67から79%に向上したということですが、満足度というのは非常に漠然としていると思うのです。どういう内容の満足度なのか、満足度に関するアンケートはどういう内容なのでしょうか。
○古山様 アンケートの中身は4項目で取っていて、大変満足している、やや満足している、満足していない、無回答という形になっています。
○諸岡委員 全体的な漠然とした満足度ということですね。
○古山様 そうです。
○諸岡委員 特別詳細ないろいろな細かい項目などは出していなくて、トータル的な満足度ということですか。
○古山様 そうですね。満足度としてはトータルです。
○相澤座長 ほかにはいかがでしょうか。
○労働者健康福祉機構 労働者健康福祉機構で委託を受けて実施している昨年度事業の利用者アンケートですが、満足度ということだけではなくて、この事業で支援を受けることによって事業場内でのメンタルヘルス対策の取組みが進んだかどうか。それから、今後、何か取組の予定があるかどうか、この事業が効果があったかどうか、そのような幾つかの質問を聞いておりまして、そういう中では事業場において何らかの「取組みが進んだ」と答えた所は9割以上に上っているという状況です。これについては、具体的な結果を、次回に宿題として提出させていただければ1枚お示ししたいと思います。
○諸岡委員 ありがとうございました。
○相澤座長 ほかになければ、古山さん、どうもありがとうございました。3人目の藤森次勝さんです。よろしくお願いします。
○藤森様(一般社団法人大阪府医師会理事) 大阪府医師会の藤森でございます。産業保健に対して堪能な先生方がほとんどですが、一部そうでない先生もおられますので、最初に説明をさせてください。
地産保事業の「目的」ですが、小規模事業場は産業保健サービスを労働者に提供することは困難なので、地産保センター事業を使って労働者のためにサービスを充実させる事です平成8年の法律は事業者所に医者等に行わせてほしい。国の援助の規定、そして地産保事業利用に努めていただきたいという根拠が規定されているということです。
 「問題点」があります。我が国では、民間事業所の96%、全労働者の56%が就業している。その割には経済的基盤、産業保健知識が少ない。あと専門職の関与が薄いということで、産業保健活動の実施が困難・必然的に災害の発生率が高いということで、できれば小規模事業所、若しくは独自に産業保健活動が実施するのが困難な所に関して、外から安定的にそのようなサービスを供給する必要があるのではないかということです。
 現在の地産保事業です。私は平成11年から堺市で地産保事業を産業保健担当理事として運営してまいりました。平成22年、ちょうどこの事業が都道府県に移行するときに大阪府医師会に入り、産業保健の担当としてこの運営に携わってきました。1年して諸事情がありまして、平成23年より現在のように労働者健康福祉機構に受託委託していただいて、各地区センターを運営しているという現状です。平成5年から平成21年までは、労働局の依頼により郡市区医師会が受託しており、単年度であり、事業内容として健康相談窓口、情報提供、個別訪問、産業保健指導、長時間労働に対する面接指導、働き盛り層のメンタル相談ということでした。ところが、平成22年からは都道府県単位ということで、企画競争入札、これも本当に数日間に提出というので、私自身も非常に慌てふためいて急いだ記憶があります。
 事業内容も変わりました。4種だけに限って、それも予約制をとってほしい。昼だけで昼個別訪問はしないでという原則でした。相談内容ですが、特定健康相談、定期健康診断に対する意見聴取の対応、心脳卒中等のリスクの高い労働者に対する保健指導、メンタル相談、長時間労働に対する面接指導ということが主です。
 メンタル相談が非常に分かりにくいところは、地産保事業としてはメンタル相談OKですが、メンタルヘルスの支援事業については事業所の人数には関係なく、労働者に対する健康相談は受け付けないということで、そこのところが地産保事業とメンタル相談支援事業とオーバーラップしているということで、非常に分かりにくい。
現在のセンターの仕組みです。一番上の労働局から都道府県地域産業保健センターが統括コーディネーターを主に受けて、都道府県のセンターは、その下の地産保センターから報告書を受けて、簡単なチェックをして、それに対してお金を出すというところです。
地産保センターは地区コーディネーターが産業医、保健師、事務の補助員を使って、依頼をして執務をして、都道府県に報告書を上げて、それでお金をそれぞれに直接払っていただく。ここには郡市区医師会も基本的には入っておりません。都道府県医師会も、入っているような、入っていないような、非常に微妙なところです。
 そうすると、都道府県のセンターとしては再委託が非常に問題になりました。また、地区でやっているセンターの内容が果たして評価できるのかどうかは非常に難しい問題です。地区は地区のコーディネーターが主なのです。センター長ではないのです。コーディネーターに上から下りてくるのです。コーディネーターの負担が非常にひどくなって、しかも裁量が非常に増えるのです。務評価とか事務手続きが非常に煩雑になります。
 そしてコーディネーターが主ですから、地区医師会の関与が少なくなってきて、モチベーションが下がり、果たしてその地産保事業の方向性がどうだろうということになってきます。
監査は我々医師会はこのようなものは苦手です。
 問題点?には、3事業が抱える課題として単年度事業です。問題は3月末から4月、5月、6月、いつになったら予算が決まるのだというところです。それによって事業者が出務してくれと言っても、「ちょっとごめん、今あきまへんねん」。コーディネーターにも、「ちょっと4月は給料ありませんよ。5月もありません。いつか分かりません。予算、決まりません」ということです。
 それで、事業の信用はガタ落ちになりますから、健診事業後の措置とか、長時間労働面談、これは期間内にできないことも出てきます。コーディネーターの給料も払えません。そうすると、やはり辞めていく。そして、人材の能力がだんだん落ちてくる。仕方なければ、必要な人に対して医師会が独自に金を出して、そのままつなぎ止めることもします。そういうことによって、産業医、医師会、ともにみんなモチベーションは下がっていきます。そうすると、地産保事業とは何だという疑問にもつながってきます。
 事業の対象範囲です。基本的に50人未満なのですが、労働者が50人から80人の事業所では8割ぐらいの産業医しかいないというデータが厚生労働省から出ておりますから、そういう事業所から、やはり執務してほしいという話も出ています。ただ、地産保事業を利用しているのは、言ってみれば良い所だけです。定期健診をして、自分の所の職場環境に対してある程度自信がある所です。また、定期健診後の事後指導だけはしても、職場巡視は断られることもあります。「あんたは、定期健診だけ見とったらええんや」的な事業所もあるのも事実です。そのようなことで地産保事業の関与をしていない、もうちょっと環境の悪い所もいかに対応するべきかというのは、非常に大きな問題であるかと考えております。
 下に胆管がんでの印刷業の通信調査がありますが、これによると50人未満の所が68%なのですが、そうすると3割強はそれ以外、いわゆる本来、産業医を選任うんぬんです。産業医・衛生管理者・衛生委員会を行っているのは11%しかありません。しかも有害業務ですので、特殊健診とか作業主任者等々をしなければならないのは74%、58%等々に終始しているところです。
問題点?です。目標設定ですが、実際問題でこれだけの事業所、労働者に対して非常に少なすぎると。昨今、職場個別訪問をしなくてもよろしい。定期健診のみすればよろしい、若しくはメンタル相談とか長時間労働の面談に、産業医はそこの事業所の環境を全く知らずに判断し意見を述べよ、ということになります。これは普通の簡単な仕事で健診に異常ない人であればいけるかもしれませんが、ちょっとこれはどうかという人にも判断しろという話になりますと、これはなかなか無理なところがあります。
 長時間労働の面談に関しては、再度同じ人が面談に来ることがあって、産業医としてはどうして作業環境を変えていただけないのかと。そこが地産保事業の限界ということも考えます。メンタル相談も時間もかかり、何回も繰り返します。私のときは、うちのクリニックに来ていただいて、事業主と本人と、主治医からのいろいろな書類を持って「どないしようか」と、何回かに分けて相談をしました。そのようなことにならざるを得ないこともあります。
 また、事業主はいろいろな相談を持ってきて、「何回ぐらい職場復帰の試みをすれば辞めさせられる?」ということを明からさまに、若しくは内々に相談されている方も来られます。
個別訪問、事業所の巡視や作業環境管理を項目にしていただきたいと思っているのです。胆管癌の件でも、有機溶剤なとの有害業務は労働基準監督署では一部把握をしていると思うので、環境管理の悪い所には健診後の保健指導や巡視に地産保事業を勧めて頂きたい。
 また、相談窓口は現在ほぼ廃止されているのですが、奥深い部屋の中で待っていても全く来ないこともあります。私ども堺でどうしたか。一般の市中に出て行って、駅、スーパー、デパートなどで、看板を出してやっています。一部産業保健に関係ない主婦も老人も来られます。しかし、それによって逆に認知度が上がって、タクシーの運転手さん、近くにしている小売業の従業員さん等々の人が相談にお見えになります。そのような方法も対象に入れながら、地産保事業をいかに知名度を上げていくか。全く知名度が低いのが非常に大きなネックです。
 そのような相談窓口も、各地区でのいろいろな催しがあります。堺ですと刃物まつりとか農業祭とか、地区祭り地区での催し物があります。それにあらかじめポスターやいろいろなお知らせを入れますと、特にメンタル相談などは来ます。それはOKということの方向性で考えていただきたいです。
 問題点?は事業周知の不十分さ、人・物・金が足りないのかなと。言われたらそれまでですが、いろいろなところが原因だと思います。やはり世の中がだんだん厳しくなっているのかなと思います。ある企業では、コーディネーターが毎年のように、「もうそろそろ定期健診終わりましたやろ。そろそろ事後指導や保健指導しましょうか」と言ったら、「私、今度変わったんやけども、そんなん聞いてへん。今年はよろしいわ」。「言うたって、やっぱり法的な義務はありますし、もし何かあって民事的になったら、もう大変ですよ」。それでもやはり結果は変わりません。コーディネーターはそこまで説明をしています。
 その他の問題点は、事務作業が煩雑化、入札が非常に忙しい。しかも、入札するのは1件だけ
 また、都道府県レベルで受託し実際やっているのは郡市区医師会ということから、会議とか書類、報告書等々が非常に煩雑化しております。それにも増して大切なのはシステム作りです。これがうまくいけば非常に効率的になるかなということです。
 最後に大阪府の担当をさせていただいたときに、大阪府医師会、地区センター、地域それぞれの郡市区のコーディネーターとか産業医、それぞれのメリット・デメリットが書いてあります。大阪府医師会としては、再委託にならないような統一システム、これは一番気を遣って、一番大きなエネルギーを使いました。郡市区から上がってくる事業のでチェックが非常に難しい。都道府県に上がってしまうと、それぞれの地区は何をしているかということは、書類だけしか分かりません。
 メリットとしては、1つのセンターにとどまらずに、センター間を超えた産業医の派遣、精神科医の派遣、催し物をセンターを通していくつかのセンターかでできます。
○相澤座長 地産保事業についての現状の問題点等を指摘していただきまして、どうもありがとうございました。いかがでしょうか。御質問はありますでしょうか。
○堀江委員 詳しくご説明をいただき、ありがとうございました。ヒアリングでの問題点の?という文書ですが、上から2つ目の項目については、私も先生と全く同じ意見です。医師は、職場も見ずに、「就業できる」「就業できない」の意見は書けないと、正にこのとおりだと思うのです。実際には、地域産業保健センター事業で、それでも就業上の意見を書いてほしいという事業者の要求があって、「意見を書く」「意見を書かない」というのはトラブルになりそうな気がするのですが、現場がどうなっているのかということが1つです。それから、将来はどうあるべきかという先生のお考えがあれば、聞かせていただけますか。
○藤森様 私が堺でやったときはどうしたか。これは通常勤務でよろしいと、もう1つは、これだけでは判断できない、という判子を1つずつ作らせていただきました。これは事業所を見ないでこんなのは判断できない時にその判子を押します。これは地産保事業の限界です。地産保センターで誰がやると書いてはいるのですが。「この判子も用意したから、ちゃんと必要なときにこれを押してください」という話をし、判子を使わせていただきました。
 そのところは長時間労働もメンタルもそうかもしれません。定期健診の事後措置は個別訪問と込みでそこの事業所へ行って、そこで従業員の話を聞いたり、定期健診の事後指導をしたりということは絶対必要だと思います。
○相澤座長 ほかにはいかがでしょうか。先生、どうもありがとうございました。これでヒアリングを終了いたします。
 前回に引き続き、各事業の効果的、あるいは効率的な実施について、御議論いただきたいと思います。まず、事務局から前回いただきました議論の整理について説明をお願いします。
○中央労働衛生専門官 資料4ですが、前回、第1回の御議論のまとめを事務局で作成しています。「まとめ」を中心に御説明したいと思います。
1は「産業保健支援事業の現状と課題について」です。前回の検討会のときには「産業保健を取り巻く現状と課題」も論点となっていましたが、こちらは議論が少なかったので、後ろにまとめています。
 3ページを御覧ください。地域産業保健事業の支援の内容・対象についてです。小規模事業場であっても、大企業の支店や営業所等を支援対象とすることについては検討が必要ではないか、という御意見がありました。それから、事業者に義務付けられた活動について、直接支援をしている場合がありますが、これについては検討が必要ではないか、胆管がん等有害要因への対策の支援が十分ではないのではないか、という御指摘がありました。
 (2)事業の調達・実施方法についてですが、事業の調達方式は、単年度ごとの企画競争や一般競争入札の最低価格落札方式のため、事業の質の確保や円滑な実施に課題があるのではないか、ということです。地域産業保健事業については、労働基準監督署単位の事業に戻してはどうか、という御意見でした。
 「その他」です。近年の様々な制度の変更によって産業医のモチベーションが下がっているとの御指摘。地域産業保健センターの小規模事業場への周知が不十分ではないか。小規模事業場の健康管理が不十分なので、更に支援の強化の必要がある、といった御意見でした。
4ページ以降は、今後の産業保健支援事業の在り方についての御意見をまとめています。7ページを御覧ください。まず支援の目標設定の仕方についてです。そもそもの支援の目標は良好な職場環境を形成することこそが、健康を保持・増進するという、実質的、本質的な成果にあるべきであるので、件数だけではなく、健診の医師の意見、それに伴う就業の措置、保健指導等の実施状況、具体的にどれだけ労働者の健康が保持・増進されたかを管理指標として事業を実施すべきではないかという御意見がありました。
 前のページと同じことですが、(2)地域産業保健事業の支援対象としては、大企業の支店・営業所等よりも独立した中小企業、企業としての規模の小さい小規模事業場を重要視すべきではないかという御意見がありました。
 (3)支援の範囲については、事業者が実施すべきことをどう支援するかは整理すべきであるという御意見。法律上の義務と努力義務ということも、1つの整理の目安ではないかということです。それから企業としてどのように産業保健活動を行うかというのは、最終的に企業内で判断するものなので、支援としては企業の活動の枠組みの方向性を示すところまでが適当ではないか、という御意見。それから、事業者、労働者にとって利用しやすい、分かりやすいというのも重要な視点なので、効率的な体制とする一方で、きめ細かなサービスの提供を行う、あるいは小規模事業場は数が多いため、マンパワーが必要といったところも踏まえて方向性を出す必要がある、という御意見がありました。
 コンサルティング機能については、企業のメンタルヘルス活動の支援という中では、コンサルティング機能が重要である。これを一貫して提供することを目指すべきだという御意見。一方、コンサルティング機能について、事業として行う支援の範囲は一定レベルまでなので、事業として行う範囲を越える部分については、そういうことができる方を別途御紹介するというのが支援の在り方ではないか、という御意見がありました。
 8ページの「事業の実施体制について」です。産業保健推進センターを、47センターの体制に戻すこと。それから3事業を一体化して、都道府県医師会が主導してやっていくのが望ましいのではないか、という御意見がありました。また、将来、3つのセンターがよく連携して統活的に運営されていくことは、非常に良いのではないか。産業保健サービスについては、労働者の健康管理ですので、サービス提供については、労働者の健康に関する業務を行っている労働者健康福祉機構が主体となるべきではないか、という御意見がありました。
 保健師ですが、地域で産業医を効果的にサポートする機能を有しており、総合調整機能を果たしていくことができる。保健師が常時配置されれば、労働者の心身両面への健康支援を常時対応ができるので、一元化されるセンターにおいても、保健師の配置、その予算の確保が望ましい、という御意見でした。
 9ページ以降は関連の意見をまとめてあり、10ページへ進みます。産業医制度の在り方等についての御意見です。産業医の選任義務の範囲は、現在事業場当たり労働者数50人以上ということになっていますが、これを下げることも検討が必要ではないか。大規模事業場においても、産業医の人数の基準、人数を増やすことも含め、見直していくべきではないか。一方で、グループ企業での選任の在り方、事業場単位ではなく企業単位での健康管理といったことも視野に入れるべきではないか、という御意見がありました。産業医を選任すべきであるということについて、国の指導を強化することが必要ではないか。産業医の選任状況についてもデータベースを設けて選任状況を把握することが必要ではないか、ということでした。
 保健師の機能について、保健師は産業医との連携で適切に医療につなぐなどの活動例が多い。産業医と連絡し、対応できるということは産業保健師の果たしている機能であるということです。
 事業者の自らの取組の方向ですが、心身両面から労働者を全人的に捉えて適切な指導を行うことが労働者の健康度を上げ、生産性を高める。事業者は労働者に対して、作業関連疾患の予防を切り口に、直接的かつ継続的、計画的に健康へのアプローチをする必要がある。精神面と身体面を切り離すことなく、常時相談できる体制が必要である。メンタルヘルス活動についてはストレスチェック、相談窓口、職場改善活動、メンタル研修、復職プログラム、労務の6つの枠組みが必要で、これらの活動がばらばらではなく、有機的に結合する必要がある。このような御意見をまとめております。
資料4の説明は以上ですが、関連で前回の検討会のときに御質問のあった、地域産業保健事業において、従事されている方のうちの保健師の人数について回答いたします。
 平成23年度の地域産業保健事業の実績報告書によりますと、従事者について、産業医は1万4,205人、保健師は223人ということで報告を頂いております。ただ、こちらは従事している方の人数ということで報告を頂いておりますが、具体的にどのような活動をしているかは把握しておりませんので、活動のボリュームまでを反映する数字ではないのではないかということです。
 それから、産業保健推進センターの集約化の影響について、委員から御質問を頂いております。これについては資料5をお出ししております。
○労働者健康福祉機構 労働者健康福祉機構から「産業保健推進センターの集約化の推移とその影響」について資料5で御説明いたします。1にありますように、集約化は平成22年度から平成25年度までの間に3年に分けて集約化が進み、今年度は15センターと32連絡事務所になっております。
 その違いは下の表にありますが、推進センターには常時、私どもの職員が配置されており、事業部門と事務管理部門の両方があり、所長は非常勤の方が大半ですが、労働局から機構の職員に出向した形で副所長に着任してもらっている常勤職員、そして業務課長、係長・課員という構成で職員が配置されています。
 一方、連絡事務所の方は、事業部門は同じ事業をしていながら、事務管理部門はなく、所長に当たる代表という方が同じく非常勤で都道府県医師会の会長や担当理事の先生に着任していただいているケースが一番多いのですが、こういう形で代表は同じような形でいらっしゃるわけです。副所長以下の配置がなく、嘱託職員が産業保健推進員という形で1人いるのみということで、こういう配置になっております。
 その中で研修講師や相談の対応など実働は誰がやっているかというと、専門スタッフ、ヒアリングでも東京都の産保センターの特別相談員として御活動の吉田さんに、今日お話いただきましたが、こうした相談員は、特別相談員を含め、全国で1,231人に委嘱しておりますが、もちろん常勤というわけではありません。このうち産業医とドクターは320名、保健師が85名、そのほか安全衛生管理者を経験された方、カウンセラー、衛生工学の専門家といった方々にお願いをしているという状況です。
 こういう産業保健推進センター事業とは別に、先ほど藤森先生から地産保事業を毎年委託でということでしたが、メンタルヘルス対策支援センター事業も毎年受託し、昨年までは北海道を除く地域について、私どもが受託していたわけですが、そこにも相談員として精神科の先生をはじめとするドクター、促進員に社労士やカウンセラーの方を委嘱して進めているのが現状です。
 裏のページにいろいろ問題点を挙げておりますが、連絡事務所になって、何が違うかといいますと、全てのスタッフの代わりに推進員が1人いるだけです。この推進員にものすごい負担があるため、2年間で16か所の連絡事務所のうち、既に7か所で推進員が交代しているというぐらい、激務になっております。細かく書いてありますが、時間がありませんので、後ほど読んでいただければと思います。ともかく推進員1人の制度で同じ事業をやるというのは無理があるというのが明らかになってきたわけです。
 4に件数を挙げており、件数としては2ページの4「集約化前後の研修実施件数の増減」です。件数だけ見ると、さほど減っていないように見えますが、上の3に細かく書いており、件数をこなすのがやっとで、本当に必要な研修が何なのか、本当に必要な相談がどこまでできるかという質の面、クオリティーの面、扱う課題の面では、なかなか十分な対応ができていないという現状が既にこの3年間にして出てきています。
 利用者については、先ほどヒアリングでもそれぞれにおっしゃっていただいたように、利用する人は産業保健についてある程度認識のある事業場であるという前提ではありますが、そういう中では産保センターに対しては図書の貸出し、DVDの貸出し等教材への需要が非常にあった。つまり、そういう教材を使って何かしようというような事業場は利用しているというのが現状ですが、このようなことも連絡事務所ではとても十分にはできないというのが現状です。
 まとめますと、件数としてはそんなに下がっていないように見えますが、人的に非常に薄い体制であるために、内容的な厚みがなくなってきていること、推進員に非常に過重の負担が掛かっているという現状があります。以上です。
○相澤座長 前回、質問が出ましたので、それに対するお答えでした。それでは、資料4の第1回目のまとめの各項ごとに前回の議論の整理を踏まえて御議論をお願いしたいと思います。本日は道永委員と中板委員から資料が提出されておりますが、お二人の委員の提出資料の御説明は項目2でお願いいたします。まず、項目1の「産業保健支援事業の現状と課題」について議論をしたいと思います。
 先ほど御説明がありましたが、3ページにまとめが(1)から(3)までありますので、これについて御発言をお願いしたいと思います。いかがでしょうか。後ほどまた戻っていただくことにしまして、項目2の「今後の産業保健支援事業の在り方」について、御議論をお願いいたします。道永委員と中板委員から提出資料の御説明をお願いしたいと思います。両委員からの御説明に対する質問、御意見等はまとめて後の議論の中で御発言いただきますようお願いいたします。道永委員からお願いします。
○道永委員 それでは、資料6を御覧ください。前回の検討会において、昨年9月に日本医会の産業保健委員会が行った都道府県医師会に対するアンケート調査の結果を御報告いたしました。産業保健委員会においては、この結果を踏まえ、提言を取りまとめ、中間答申として提出しております。それについてお話をさせていただきます。
 地域産業保健センター事業ですが、再三お話がありましたように、単年度事業のため、事業運営が不安定であり、年度が変わる時期には事業が中断され、利用者の理解が得にくい状態です。また、経理事務や連絡調整のための作業が煩雑であり、産業保健活動を実践するという本来の目的に力を注ぐことができておりません。そこで、現在の単年度ごとの事業実施方式を見直し、小規模事業場はもとより、独自に産業保健活動を実施することが困難な事業場を対象に産業保健活動を支援する事業として安定的かつ継続的に実施できる方式にすべきであると考えております。
 次に、産業保健推進センターですが、集約化に伴う体制の縮小により事務機能が低下したほか、地元関係機関との連携に支障を来し、実質的な機能が大きく低下しております。都道府県単位のセンターを復活し、十分な職員が配置された組織として再構築すべきであると考えます。
 メンタルヘルス対策支援センターについてもお話がありましたように、単年度ごとの事業実施ですので、それを改め、事業者にとって利用しやすい体制とすべきです。現在、3事業が抱えるこれらの課題を解決し、事業の効率化を図りつつ、これらの事業が本来目指している機能、ワンストップサービスとして安定的、継続的に発揮できるようにするためには、3事業を一元化すべきであると思っております。
 また、産業保健の支援については、国が主体的に関与すべきであること。これまで全国で産業保健を推進してきた実績などから、一元化に当たっては独立行政法人労働者健康福祉機構を設置主体とし、都道府県医師会及び郡市区医師会が主体的に関与して事業を運営すべきであると考えております。以上です。
○相澤座長 それでは、続きまして中板委員から御説明をお願いします。
○中板委員 前回日本看護協会からは、3事業を一元化し、それにより、特に小規模事業場の健康管理体制を強化していくということにつながっていくという保証をもって、一元化に賛成いたしますということで表明いたしましたが、本日はもう少し具体的な事例をお話させていただきたいと思っております。資料を用意しておりますので御覧いただきたいと思います。
 私は保健師ですが、産業保健師ではありません。そこで、この事例については、日本産業保健師会が産業保健の職能団体としてありますので、日本看護協会からそちらに事例提供の依頼をいたしました。そこからたくさんのグッドプラクティスが出てきましたが、本日はその中でも更にベストプラクティスに近いのではないかと思われる事例を御報告させていただきたいと思います。
 標題は「小規模事業場の健康改善事例」とさせていただきました。まず、左側の下の方に「A事業場における個々の問題の把握」というのがありますが、地域産業保健センターのW保健師が訪問したA事業場では、人生で初めて健康診断を受けたという人に出会ったり、有所見率が8割以上になっている、職場の上司からの暴言に悩んでいて夜も眠れない、月100時間以上の時間外労働によって過重労働が全然改善されていない、妊婦がいらっしゃる所でしたが、タバコの煙が非常につらいといったことが悩みとして挙げられました。これらの悩みを把握してW保健師は、心身両面からいろいろ判断をし、健康診断を全員が受診できることが必要であるということを社長に提案したり、過重労働等により労災発生のリスクが非常に高まると、生産性も落ちるということで、情報提供をしたりしております。
さらにタバコの煙については、分煙もできておりませんでしたので、産業保健推進センターの環境測定等の資材の活用と同時に、産業保健推進センターのY保健師に相談をしております。
 Y保健師はその話を聞いて、A事業場にこれから関与する地産保のW保健師に対して、A事業場が実現可能な形で継続的に、かつ直接的に労働者を支援できるような仕組みを作っていくことが必要だということで、Y保健師とW保健師で相談をしながら、A事業場に関わっていっております。
 その中で「事業場全体への健康支援の仕組みづくりへ」と書きましたが、組織の中で勤務時間を調整して全員が健康診断を受けられる体制を作ったり、健診結果が、産業医から意見を付けて本人に返されることができるようになったりしました。職場のメンタルヘルス対策についても、取組を検討するようになりました。各部署の管理職が、意見交換をし合う場を作ったり、100時間以上を超えた労働に対して、多忙職場を応援できるような業務調整会議を作り上げて、それを開催しました。
 このようなことを3年ぐらい掛けて徐々に徐々に作り上げていき、労働者や事業主の変化としては、100%の健康診断受診率を担保したということ、この事業場の課長が衛生管理者の資格を取得して、通過点としてですが、心と体の健康相談窓口を作ったということです。更に事業場全体が禁煙になり、自主的に禁煙に臨む者も増えてきていると言われておりました。
 また、メンタルヘルス対策として管理監督者への研修、社員全体と言っても、45人のIT関連企業ですが、社員全員が年間で研修が受けられるようになりました。それから地域産業センターの医師と面接のルートを確立して、保健師等との連携もうまくいくようになったということが出されております。
 これらを踏まえて、保健師は、A事業場の労働者1人1人の悩みの問題を全人的に心身両面から捉えて、医学的側面からも情報を整理して、それを組織の問題として捉えて、産業医に情報提供をしていく。作業環境の改善を踏まえた対策を練り、その企画立案によって、いろいろ必要な機関を活用しながらネットワークを作り、事業場内の三次予防ではなく、一次予防からの活動の仕組みを作り上げるといったことができるので、一元化になった暁には、その事務処理だけではなく、機能を含めて一元化していただいて、そこに保健師の常時配置を求めたいというところで事例を紹介させていただきました。
○相澤座長 どうもありがとうございました。お二人の委員から良い意見をいただきました。それでは、項目2について、資料4の7ページにまとめがありますので、御意見を頂きたいと思います。
○堀江委員 8ページの(4)の3つ目の項目ですが、ここは、文章がよく理解できません。私の認識が間違っているのか確認をさせていただきたいのですが、「産業医サービスは労働者の健康管理である」とありますが、そういうことではなくて、「産業医は事業者の行う労働衛生管理を支援する」ということかなと私は思うのですが、このように直接的な表現にしている理由はあるのでしょうか。
 同じ項目の後半もよく分かりません。「労働者の健康に関する業務を行っている労働者健康福祉機構」は正しいのでしょうか。事実と違うように思うのですが。多分、「労働者健康福祉機構は、労働者の健康に関する業務を行う事業者等を支援する」と言いますか、「研修や情報提供や広報普及活動をする」とか、そういうことをしているのではないかと思います。いずれも主体は事業者ではないかと思います。
○職業性疾病分析官 労働者健康福祉機構の機構法で労働者の健康に関する業務を行う者、産業保健スタッフに対する研修や相談、それらに付帯する業務も入っておりますので、ここの表現が多少曖昧な点はあろうかと思いますが、大筋でそんなに外れていることではないとは思っております。
○堀江委員 主語と述語の関係がちょっと分かりにくい。これは修正していただいたほうがいいと思うのです。このようにまとめられてしまうと誤解を招くかと思います。私の事実認識が間違っていなければいいのですけれども。
○相澤座長 後ほどこれは修正していただきますかね。
○職業性疾病分析官 はい、確認します。
○中板委員 (4)の産業保健を支援する事業の実施体制の○の二番目についてです。一番目は47センターの体制に戻した上で3事業を一体化するのが望ましいというところで、私たちも賛同しているところです。
 二番目の、将来3つのセンターがよく連携して統括的に運営していくことは非常に良いという「よく連携して」ということと、「統括的に運営されていく」という「統括的」のところが、どんな内容が入るのか。機能とか事務処理とか、いわゆる統括的にとは何を統括していくのかというところが、この検討会の趣旨ではないかと思いますので、ここをもう少し具体的に表現していただいたほうが非常に分かりやすいのです。私の中ではなかなか分かりにくいなと思ったのですが、いかがでしょうか。
○堀江委員 今、中板委員からあった点は、私もちょっと漠然としているなと思いました。私が思っていることは2つあって、「統括的」という言葉の中に入っている1つが、先ほどの医師会からのヒアリングの中にもありましたし、資料5にもありましたが、まず、地域産業保健センター事業については地域の医師会では事務処理に非常にやりづらい点があり、産業保健推進センターが産業保健連絡事務所になって事務部門が抜け落ちてしまっているという指摘もありましたので、事務処理を統括していくのかなと思ったのです。すなわち、都道府県レベルの産業保健推進センターと地域レベルの地域産業保健センターの事務処理を一体的にやることが効率的にもなるのではないかと思ったのです。
 もう1つは、労働者健康福祉機構が主体となるべきという結論自体に私は賛成しますが、労働者の健康管理をするからという理由ではなくて、これまでの産業保健推進センターの運営での実績から労働者健康福祉機構が地元の労働局と地域の医師会などとの連携をうまく取れるからという理由です。「統括的」にというのは、事務部門としてのノウハウのある労働者健康福祉機構が、行政と医師会とを上手くつなぐパイプ役も果たしながら一体的に行えば効率性もあるという意味かなと思いました。
○相澤座長 中板委員、統括的というのはそういう意味で、連携だと独立したという意見ですが、いいですか。
○中板委員 統括的というのは、事務機能というところに特化した話だということなのでしょうか。それとも、そもそも本質的な、メンタルヘルスセンター、地産保、産保センターのそれぞれの役割機能をうまく連動していける、有機的に連動して本質的な機能が果たせるような形での統括も含めているのでしょうか。
○堀江委員 本質的な機能については、中板委員がおっしゃるとおりだと思います。専門職側の立場からすると、地域産業保健センターでは、メンタルヘルスから有害業務の管理まで、いろいろな労働衛生の専門職をそろえることはできないと思いますので、そういったことは産業保健推進センターのある都道府県レベルに相談していくとか、正に中板委員の事例があったようにやっていくことが良いのではないかと思います。
○相澤座長 事務的なことだけではなくて、運営面でもある程度統括的なことでやっていこうという話ですが、何かそれでまずいとか。連携というのは実際にはなかなか難しいですよね。今までも連携するとは言っても。
○中板委員 現状は難しいわけですよね。現状はその3センターがそれぞればらばらです。私がこれまでずっと申し上げているように、心身両面で労働者を支えていくという体制がなかなか築きにくいという状況の中では、事務処理の問題だけではなくて、役割機能的にも連動できるような仕組みにしていく必要があるのではないかと思います。
○相澤座長 統括的という、それについてはそれほど御異論があるということではないようです。項目2についてはよろしいでしょうか。
○堀江委員 ページ7に戻って申し訳ないのですが、(1)の文章も確認させていただきたいのです。冒頭にある「良好な職場環境を形成し労働者の健康を保持増進するという本質的な成果」と書いてあり、言葉として理解はできるのですが、労働安全衛生法の第1条によく似ている文章なので、そうであれば条文は「快適な作業環境」だったように思うのです。「良好な職場環境」と言い換えたところに何か意味があるのかどうか気になりました。同じことであればどちらでもいいのですが、条文どおりのほうがいいかと思います。
 それから、後半に「就業上の措置、保健指導等の実施状況を管理指標として」と書いてあるのですが、「等」がありますので、保健指導のあとの「等」に様々なものが入るのだと思いますが、できれば作業環境の項目を入れていただきたいと思います。といいいますのは、有害な業務というものもこれまで十分に対応できていなかった。特に地域産業保健センターのレベルでは、実際には一番問題のある小規模事業場の作業環境についての対応が、様々な理由でできなかったということもありますので、これをアウトカム指標とすべきと思います。法律上で罰則が厳しいものを入れるべきと思います。作業環境測定がどれくらい実施されるようになったかということとか、同じように安衛法の第119条が罰則になっているものとして、作業主任者がどれくらい選任されるようになったのか。それから、第120条になりますが、健康診断がどれくらい実施されるようになったとか、そういったことが優先されるべきと思います。ここには罰則にないものが例示されていますので、順番としてはそれ以上にやらなければならないことを例示すべきなのかなと。そういったものを表に出していただくほうがいいのかなと思いました。
○相澤座長 よろしいですか。それでは、項目3に移りたいと思います。10ページにまとめがありますので、これについて御意見がありましたらお願いいたします。
○堀江委員 9ページの「保健師の機能」の冒頭ですが、「衛生管理者でもある保健師」とあります。衛生管理者というのは選任されて衛生管理者の職務を行うことになりますので、ここは衛生管理者の非選任要件を有するということではないかと思うのです。このように書きますと、衛生管理者として選任された保健師はという意味に取られるような気がします。そうすると、選任された衛生管理者がたまたま保健師だった場合を指しているように思えてしまうのです。この文章全体はそういう意味で書かれたものではないのではないかと思います。衛生管理者としての非選任要件を有する保健師はということであれば問題はないのかなと思います。一方、保健師が衛生管理者に選任されて活躍するということもあるとは思いますが、ここでは具体的に触れる必要はないのかなと思います。
○相澤座長 そうですね。衛生管理者ではない保健師も、こういったことは該当するということですね。
○堀江委員 保健師に資格はあるのですが選任されている人もいますが、実態は衛生管理者の職務をしていない人のほうが多いのかなと思います。
○相澤座長 ありがとうごいます。ほかにはいかがでしょうか。そろそろ時間がまいりましたが、全般的な項目1についても結構ですが、何かあればお願いしたいと思います。
 ヒアリングをしていただきました3人の委員の皆様方には、厚く御礼申し上げます。時間がまいりましたので、本日の議論はこれで終了させていただきたいと思います。
 いよいよ3回で最後になりますので、事務局には報告書の文案を作っていただきまして、次回は更に議論を深めたいと思います。それでは事務局から次回の予定について御説明いただきます。
○職業性疾病分析官 第3回検討会は6月18日(火曜日)の午前10時から開催いたします。場所につきましては、追って連絡をさせていただきます。
○相澤座長 以上で第2回産業保健を支援する事業の在り方に関する検討会を終了いたします。


(了)

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