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2013年2月14日 化学物質の発がん性と労働者の健康障害防止のためのリスク評価に関する意見交換会(リスクコミュニケーション) 議事録

労働基準局安全衛生部化学物質対策課

○日時

平成25年2月14日(木)13:30~16:30


○場所

東京慈恵会医科大学(大学本館1階西講堂)(東京都港区西新橋3-25-8)


○議事

○司会者(柳川) それでは、時間になりましたので、ただいまより平成24年度第2回化学物質のリスク評価に係るリスクコミュニケーションを開催いたします。
 私は、本日の司会進行を務めさせていただきます、中央労働災害防止協会労働衛生調査分析センターの柳川と申します。どうかよろしくお願いいたします。
 さて、このリスクコミュニケーションでございますが、これは労働者の健康障害を防止するために厚生労働省が行っている化学物質のリスク評価に当たりまして、関係者との情報共有、意見交換を行うために行うものでございまして、厚生労働省からの委託によりまして、私ども中央労働災害防止協会が運営させていただいているものでございます。
 本日のスケジュールでございますが、まず、「化学物質の発がん性評価について」というタイトルで、中央労働災害防止協会日本バイオアッセイ研究センターの福島所長より講演をいたします。
 次に、「健康障害防止のためのリスク評価と制度的規制」というタイトルで厚生労働省労働基準局安全衛生部化学物質評価室長の松井孝之様にご講演をいただきます。
 これらが終わりましたら、一たん20分程度の休憩時間をいただきまして、そのときに1回目のアンケートを回収させていただきます。本日、お手元にアンケート用紙を2枚お配りしていると思いますが、そのうちの1枚目、ピンク色のものでございますけれども、こちらのほうに基調講演をお聞きになられてのご感想、疑問点、さらにご質問をされたい点につきましてお書きいただきまして、私ども事務局の者が会場におりますので、お渡しいただきますようお願いいたします。いただいたご意見を踏まえまして、後半の意見交換を進めたいと思います。
 意見交換につきましては、基調講演をいただきました方に加えまして、厚生労働省の有害性調査機関査察官の大淵様にお入りいただき、疑問点等にお答えいただきます。意見交換は1時間程度で、あらかじめ会場からいただいたアンケートのご質問に回答する形で行いまして、その後30分ほどは会場からのご質問を直接お受けする形で行います。
 なお、もし差し支えなければ冒頭にご所属とお名前をおっしゃっていただいてからご質問をお願いしたいと思います。また、私どもがマイクをお渡しいたしますので、必ずマイクを通してのご質問をお願いいたします。
 なお、この講演会につきましては、後半の意見交換を含めまして議事録作成のための録音をしております。議事録につきましては、厚生労働に納付いたしますが、個人情報等は削除した上でホームページ等により公表すると伺っております。あらかじめご了承方、よろしくお願いいたします。
 また本日、報道の方が入っておりまして、後方より参加者の方のお顔がわからないような形でお写真を撮るということでございますので、あらかじめご了承ください。
 なお、お手元にお配りしております青と赤の紙がございますが、こちらにつきましては、この意見交換に当たりまして用いるものでございますが、この研修会終了後に私どものほうで回収いたしますので、よろしくお願いいたします。
 終了は4時半を予定しております。どうぞよろしくお願いいたします。
 それでは、福島所長、よろしくお願いいたします。
○福島  日本バイオアッセイ研究センターの福島でございます。どうぞよろしくお願いいたします。
 私に与えられた時間、このレジュメをみますと2時15分になっておりますが、最初にお断りしておきますが、少し長くなるかもわかりません。その点、ご了解いただきたいと思います。
 きょうの話題は3つございます。まず最初は、発がん性試験、2年間の試験をこれまで行っております。それに対して、相当前からですが、新しい流れができております。特に医薬品の世界で起こっております。それを中心にしまして、新しい発がん性試験法とはということについてご紹介し、そして今回、この発がん性試験についての検討会が行われました。その内容を2番目にお話しし、最後には、私が大学におりましたときに、研究のプロジェクトを6つもっておりまして、そのうちで一番大きなテーマ、発がん物質に閾値があるかどうかという問題ですが、我々の教室で行った結果を最後にご紹介させていただくということでございます。
(パワーポイント)
 それで、今回は化学物質の発がん性評価についてというざくっとしたテーマでタイトルをつけております。
(パワーポイント)
 イントロダクションとしまして、今さら釈迦に説法ですけれども、一体全体発がん物質というのはどうなのか、そしてヒトのがんに発がん物質がどれだけ絡んでいるかということでございます。
 これは教科書で既に30年前からいわれていることで、現在でもいわれておりますのは、ドールらの説であります。その前に、発がん物質、要するに生体に腫瘍、特に悪性腫瘍——この悪性腫瘍というのはがんとみてもらえれば結構ですけれども——を発生させる物質。ヒトのがんを考えたときには、80%は化学物質によるだろうということです。ただし、最近は、下のほうに書きました、20%はウイルスとか細菌などということで、しかも、このウイルスのパーセントがふえてきております。
 例えば典型的な例というのはC型肝炎の患者さん。C型肝炎の患者さんはやがては肝硬変になる。それから肝臓がんが発生する。これはあくまでウイルスが原因で起こっております。それから日本人に多い、恐らくきょうの皆様方をみますと、私も含めてですけれども、まず一番心配するのは胃がんということであります。その胃がんの原因は現在ではヘリコバクター・ピロリという細菌によるということがはっきりしてきております。
 そういうことで、ウイルス、細菌などのがんの原因として占めるパーセントがふえてきているということでございます。
 そういうことからいいますと、80%と書きましたけれども、これはもっと下がっておりますが、それでも依然として大半が化学物質によるだろうということであります。まずそのように理解しておいていただきたいと思います。
(パワーポイント)
 化学物質の発がん性はどういうことで決めるかということでございます。基本はあくまで我々ヒトであります。ヒトでがんができたかどうかということが基本であります。したがって、疫学データ、疫学的な調査によるものが当然であります。しかし、それに対しましては限度があります。したがって、疫学的なデータを補完するといったらおかしいですけれども、わからないものに対しましては実験的に発がん性試験というような方法で発がん物質を同定するということになります。
 一般的にはラットないしマウスというようなげっ歯類、しかも雌雄を用いております。こういう発がん性試験には世界の約束事がございます。OECDのガイドラインというのがあります。それに沿ってやることが基本的に義務づけられております。それは、データの信頼性を担保するということでございます。1群50匹というので、ここには高用量と書きましたけれども、原則的には何も与えていない対照群を含めて、低用量、中用量、高用量という3群、合計4群の試験。したがいまして、例えば雄ですと、ここだけで 200匹使うということになります。雌を入れますと全部で 400匹の発がん性試験ということになるわけであります。基本的には2年でラットの場合は2年、それからマウスの場合も基本的には2年ですけれども、1年半でもいいでしょうというのが現在のガイドラインであります。
 2年間動物を飼い、病理組織学的に、要するに顕微鏡標本をつくりまして、どの臓器にがんができたかどうかというのを検証いたします。それで発がん性がわかります。発がん性がわかった場合に、今度その発がん物質を2つに分けます。1つは遺伝毒性発がん物質、そしてこれでないというので非遺伝毒性発がん物質ということになります。要するにこれは遺伝子に傷害を与える、損傷を与えるというのを基本にしております。いわゆるAmesテストというような試験法を用いて、変異原性が陽性、現在は変異原性を含めまして、広い意味で遺伝毒性という言葉にしております。変異原性が陽性の物質、要するにDNAに傷をつける物質と、あと「非」ということですから、これは雑多であります。傷をつけなくても発がんを起こすような物質。基本的には細胞の増殖を強める物質ということであります。このような2つに分けているということであります。
 ここについては、後で詳しく述べたいと思います。
(パワーポイント)
 これは1つのサンプルであります。2年間飼育したときのラットでありますけれども、ここのところにこのような白色調、灰白色の固まりがございます。これはラットにある物質を与えて発生した肝臓がんであります。このような固まり状の肝臓がんができる。これをまず我々は肉眼的に結節というようなことで認識し、そして顕微鏡標本をつくって肝臓がんという診断をするということであります。今、最初に肝臓がんといいましたけれども、順序としてはそういう形になるということであります。
(パワーポイント)
 まず最初にちょっと宣伝を申し上げます。日本バイオアッセイ研究センターは神奈川県秦野市にございます。秦野市の丘陵地にございまして、このような建物であります。この4階建てが研究部門で動物室はここ、それからこれだけあります。ですから、我々の研究センターの建物の大半は動物室。電気など大半、80から90%は動物室のほうに使っているということになります。
 前のほうが経口投与室といいまして、化学物質を混ぜた水ないしえさで動物を飼育する。後ろのほうは吸入ばく露による動物室であります。我々の研究所というのは、特に吸入ばく露による発がん性ということについて重きを置いております。現在までのところ、厚生労働省から委託研究を受けまして、吸入ばく露の発がん性試験を行っているということであります。
(パワーポイント)
 これがその吸入設備でございます。先ほどのここのところにいろいろな動物室があります。その2階です。動物室の上のところに被験物質のガス発生室というのがあります。ここのところでガスを発生させます。これは装置でありますけれども、ここの中に化学物質が入っておりますが、ここで気化させまして、いろいろな濃度にいたしまして、そしてここからパイプで下のほうへ送るわけです。1階にこういう動物室がございます。4つチャンバーがあります。対照群、低用量群、中用量群、高用量群があります。それぞれの濃度がこれだけ入っています。その1つをみてみますと、このような形で、例えばこのチャンバーの中には、金網のケージですけれども、ラットが1匹ずつ入っているという状態です。このラットは2年間、このチャンバーの中で生活をいたします。我々は1日6時間、労働条件に合わせた時間のばく露を週5日、2年間行うという形でございます。こういうことで発がん性をみつけているということになります。このような設備をもっておりますのは、日本では我々の研究所だけでございます。
 そういう設備だということで、ちょっと宣伝させていただきました。
(パワーポイント)
 あと、新しい発がん性試験法ということですけれども、要するに、これは1990年代から始まっている問題であります。ここに書きましたように、すべての化学物質の発がん性を腫瘍を指標とする長期発がん性試験で検討することは時間的、経済的、技術的に困難であるということになります。後のほうに出しますけれども、現在、我々が扱っている化学物質というのは6万、7万、要するに無数です。その6万、7万というような化学物質を1つずつシラミつぶしに調べるということはまず不可能であります。先ほどいいました2年間ネズミを飼うということになります。今、私どもは厚生労働省から委託を受けまして、1年間1物質を行っています。1年間1物質、それがずっと積もっていくわけです。そういう意味からしますと、数が知れております。同じようなプロジェクトでアメリカも行っております。しかし、アメリカも同じような条件。数は多いですけれども、試験条件は一緒ですから数が限られます。それからあと、医薬品の開発とか、そのほか農薬の開発、いろいろなところの開発、そういうものについてもガイドラインですと2年間の試験をやるということになっておりますけれども、そういうのは非常に困難だということになってきます。それがこれでございます。
 例えば医薬品の話であります。ICHといいまして、日本、アメリカ、EUの医薬品規制調和国際会議、これは行政サイド、製薬メーカー、アカデミアが入って会議を開いております。従来の2年間、発がん性試験にかわる方法はないかということでずっと検討してきました。その結果、ここに1種と書きました。基本的には例えば医薬品があります。長期服用の医薬品があります。この場合には発がん性試験をラットとマウスと2本やるということに決まっております。このICHでは、そうではなくて、1種だけ長期をやろうと。1種だけ長期をやって、もう1種は——ここには短期・中期の代替法と書きましたけれども、こういう試験法をやるということが決まりました。ただし、その1種は、通常はラットを用いるということでございます。
 きょう詳しくお話しいたしますのは、短期・中期の代替法、もう1種のここのことについて、ここではイニシエーション、プロモーションモデル(2段階試験法)、それから遺伝子改変動物を用いる発がん性試験の2つについて、これからお話しいたします。
(パワーポイント)
 まず、イニシエーション、プロモーションという言葉ですが、発がんプロセスを漫画でかきました。我々が例えばものを食べます。そうすると、それは小腸、ないし一部は大腸から吸収されます。肝臓へ行きます。代謝されます。代謝された物質はある臓器へ行きます。そこでたまたまその物質が発がん性をもっている物質になると、正常細胞からある臓器の標的細胞に正常細胞が変異を起こした細胞ができます。先ほどいいました、いわゆる遺伝子の損傷を起こしたということになります。それを変異細胞といいます。もっと簡単にいえば、がん細胞です。ところが、我々は1個の細胞をみて、がん細胞だということはいえません。皆さんが病院に行きます。病院で胃がんですよとかいろいろな診断をされます。それは、こういう変異細胞が集まった固まりをみて、がんだとかがんでないとかと診断されるわけです。その固まりの中の1個だけの細胞をみて、これはがん細胞ですとは絶対いえないということになります。そこを話すと非常にややこしくなってきますけれども、そういうものだということです。がんというのはそういうもの。ここは2個かきましたけれども、ある程度集まったものを我々は前がん病変、前腫瘍性病変といいます。がんはここです。このように配列があるということです。だから、1個の変異細胞が4個、8個と増殖してある腫瘍になる、がんになる病変をつくる。
 ここでみてもらいたいのは、これはネズミ色であります。ネズミ色ですが、ここへ来ますと、今度はピンク色とか、こういう細胞になります。要するに、ここでいいたいことは、ここで遺伝子異常が起こっています。そして1個の遺伝子異常が固まりであります。その固まりの中にまた別の遺伝子異常が起こった細胞が出てくるということです。そして、さらにこれがふえていくという形になります。このような配列がわかっているということです。
 ですから、よくヒトのがんが出るとき、最近いわれておりますのは、遺伝子異常が6個とか7個ぐらいあったらがんになるでしょうというようなこと。また、ここのところをイニシエーション、起始といっています。この過程をプロモーション、促進。詳しく分けますと、プロモーション、プログレッションというような分け方も最近はしております。
 したがいまして、イニシエーションというのは、もう一度戻りますと、発がん物質によるDNA損傷を起こす段階までをイニシエーション。そして、あとは増殖という形になるということであります。こういう過程をまず覚えておいてもらいたいということです。
(パワーポイント)
 遺伝毒性発がん物質というものは、イニシエーション作用もあり、プロモーション作用、2つの作用をもっているものだと理論的に分けられます。
 非遺伝毒性、DNAを損傷させません。実は遺伝子損傷しなくても体細胞はリニューアルを起こしています。だから、何もなくても自然に突然変異が起こるのです。そして、突然変異を起こした細胞をプロモーションというか、増殖させる。だから、非遺伝毒性物質というのはこちらの作用だけをもっているという形になるということです。
 ここに書きました。手法としては既知の発がん物質でイニシエーションを与えます。とにかく強く与える。そして次に、プロモーション、被験物質を与えるという単純な経緯であります。そして、ここの被験物質のプロモーション作用をみつけようというのが2段階発がん試験法という方法であります。ここには8週から30週と書きましたけれども、簡単にいえばそういうことであります。
 こういうイニシエーション、プロモーションというのはいろいろな臓器であります。例えば皮膚であります。それから口、食道、胃、小腸、大腸、肝臓、みんなあります。それぞれの臓器でこういうことがいわれております。
 そのうちで、今回の発がん性試験法、ICHで採用した方法は、ラット中期肝発がん性試験法、伊東法と呼んでいるものです。それからラット中期多臓器発がん性試験法、これを医薬品の開発で使っていこうということになったわけです。
 この2つについて、これからちょっと詳しくお話しいたします。
(パワーポイント)
 ここで、もう1つ、こういう発がん性試験法にとって重要なことは、先ほどいいましたように我々は動物を2年間飼います。2年間飼うということは、正常から前がん病変、良性、がんと先ほどいいました。診断はいつもここでしております。そうすると、ずっと前へ行きますと、当然短い時間で勝負できるだろうと。例えば、前がん病変でこういう病変があります。これはラットでGST—P陽性細胞巣といって、前がん病変です。こういう固まりができます。ここで診断すると2年間かかるけれども、もっとこの段階で判定すれば、試験期間は短くなるなという考え方であります。
 大腸をみてみます。これは典型的な大腸がんです。膨らんでいますけれども、固まりがあります。これの前をみてみます。この前はぽこぽこと白い穴があいておりますが、これはクリプトといっておりますけれども、粘膜の表面を上からみております。そうすると、小さい、これは正常な穴です。ところが、おわかりだと思いますが、ここに大きな固まりがあります。これが変異クリプト巣といっておりまして、やはり前がん病変のマーカーとなるものであります。これをカウントする、数える。そうすると、ここよりかもっと前の段階で勝負をつけられるという考え方であります。
(パワーポイント)
 これから肝発がん性試験法(伊東法)について報告いたします。
 なぜ肝臓にフォーカスを絞ったかということですが、こういうデータがあります。IARCといって、フランスのリオンに国際がん研究機関があります。国際がん研究機関では、絶えず発がん性の評価をしております。そこの評価した物質、例えば 587になります。ここの中で総数、発がん物質が 147ありますが、そのうちの60%は肝臓を標的しているということです。
 NCI、これはアメリカであります。アメリカのがんセンターのデータでも54%肝臓を標的している。ですから、未知の化学物質があったときに、まず肝臓を選択的に調べることによって、発がん性がわかりますということになります。そういう意味で、この方法、肝臓を標的とする伊東法が選ばれたということです。
 ここでちょっと詳しくいいますと、伊東法というのは強烈な発がん物質であるDENを投与します。これが起始、イニシエーションです。プロモーションの段階で被験物質を与えます。ただし、この3週目のところに、3分の2部分肝切除を行うわけです。これは皆さんおわかりだと思いますが、よく生体肝移植を行っています。例えば親の肝臓を子供にやる、また子供の肝臓を親がもらう。その場合に、なぜ生体肝移植が可能かということは、肝臓の細胞というのは正常な場合、今、皆さん、ここにいる場合には成熟期の肝細胞ばかりです。したがって、これは機能を行っております。取り込んだ栄養分をいろいろなものに代謝したりしています。ところが、いざ何かが起こったときには、今度は一気に細胞増殖が起こります。先ほど生体肝移植といいましたけれども、大体3ヵ月、4ヵ月すれば正常の大きさになります。ラットの場合でも3分の2までとることができます。でも生きています。そして2週間から3週間でほぼ正常となってきます。細胞回転をとにかく強めてしまうということになります。そういうことで8週という短期間で判定しようということであります。
 こういう発がん性試験法、そういうときに重要なことは、1つや2つの化合物で陽性になったからよろしいというわけにいかないわけです。できるだけ多くの化学物質について、同じようなデータが得られるかどうかということが基本になります。
(パワーポイント)
 ここで我々が行った方法というのは、横に遺伝毒性、Ames試験——変異原性を中心に調べますけれども、陽性、陰性、わからないということにしました。こちらには肝発がん物質がある。ここだけみていただきたいのですが、肝臓を標的とする既存の発がん物質を伊東法で調べました。Amesテストで陽性なものの97%が伊東法で検出できた。陰性のものは88%検出できたということです。合計すると92%。ここのところで、こちらからいったらよろしいでしょうか。陰性、実は4つ検出できませんでした。その4つはここに書いてあります。ペルオキシゾーム増生作用をもつ物質、4つ書いてあります。このペルオキシゾーム増生作用をもつ物質は、先ほどのGST—P陽性細胞というGST—Pのインダクション、誘導を抑えてしまう。したがって、この方法では検出できないということになります。そういう物質であります。
 それから、4,4'-ジアミノジフェニルメタンですけれども、これに関しましては、陰性でしたが、実はこの発がん性が本当かどうかということを私は自分の研究から疑っております。そういう意味からすると、非常に効率よくみつかるということがいえるということであります。
(パワーポイント)
 ところが、次です。今は肝臓を標的とするということをお話をしました。そうすると、肝臓を標的としない発がん性があったときにはどうするかということになります。したがって、最初にいいましたように、すべての臓器において、食道なら食道、胃とか、そこのイニシエーション、プロモーションで実験をすればいいのですけれども、それは現実的には不可能であります。したがって、1つの実験系でいろいろな臓器に発がん物質を与えてイニシエーションさせようという方法であります。
(パワーポイント)
 その方法がこの方法であります。この方法は、イニシエーションの段階に5つの発がん物質をこのように投与します。そして、被験物質を投与して発がん性をみつけようという方法です。この5つを与えますと、ここには書いておりませんが、口、食道、胃、小腸、肝臓、腎臓、肺、甲状腺、いわゆる我々の主要臓器をイニシエーションすることができるという方法です。
 例えば脳はどうかといったら、実は脳はちょっと無理です。MNUというのは脳も標的としているのですが、この量ではどうも無理だと。そういったことはありますけれども、主要臓器をイニシエーションさせて被験物質を与えるという方法です。
(パワーポイント)
 この結果をみます。この結果をみますと、これも実はここのところにDENというのを打っております。したがって、肝臓を標的とする発がん物質だけをみますと、この実験系では 100%、先ほどのペルオキシゾーム増生作用をもつ物質をみておりませんので、 100%みられると。
 それから、発がん性はあるけれども、肝臓以外のところをみてみますと、このように90%とか80%というように効率的にみつけることができるということです。ですから、こういう方法を用いることによって、相当数の化学物質の発がん性をみつけることができる。もちろんここでまだ見逃しというのはあります。しかし、先ほどいった6万とか7万というような物質がある中で、発がん性をみつけるほうを優先させようという考え方であります。少々のことは見逃そうではないかということでございます。
(パワーポイント)
 それはここにまとめてございます。また後でお読みいただきたいと思います。
(パワーポイント)
 時間の関係上、最初のところで2段階発がん、もう1つは遺伝子改変動物ということでありました。
 遺伝子改変動物はマウスとラットであります。今、世界的に用いられているのは、 rasH2マウスと p53ノックアウトマウスという2つの方法です。 rasH2マウスというのはメイド・イン・ジャパンであります。ここに書きましたように、我々がもっている c-Ha-rasというのはがん遺伝子です。我々はがん遺伝子をもっています。それをマウスのDNAの中に一部組み込みましたという動物であります。これは勝木先生らが開発された方法でありますけれども、このマウスは発がんに感受性が高いということがわかっています。ここには書いておりませんが、先ほどいいましたようなICHで大体決まりまして、HESIという研究機関があります。これは製薬メーカーや化学メーカー等が会員ですけれども、そこで本当に rasH2マウスが感受性が高いかどうかというので、既存の発がん物質を用いて検証しました。約二十の物質を検証しました。そうしますと、ほとんどの既存の発がん物質はこれでみつけることができた。これは実は26週間です。ただし、ここに書きましたように鎮静剤として現在でも臨床で用いているフェノバルビタールは、普通のマウスで発がん性を示します。しかし、この試験ではネガティブだったということです。ですから、やはりここでも大体そうですけれども、90%ぐらいの一致率だということになります。
 一方、もう1つ、 p53ノックアウトマウスというのがあります。P53は腫瘍抑制遺伝子であります。これは自動車で例えますとアクセルと考えてください。こちらは自動車に例えるとブレーキです。ですから、この p53という遺伝子を増幅させるとブレーキがぎゅっときく。要するに細胞増殖が抑えられるということになります。だから、がんができませんねということ。反対にノックアウト、 p53というブレーキをつぶしてしまう。ブレーキが壊れてしまう。そうすると、アクセルだけがきいていてブレーキがきかないから細胞増殖が強くおこるという考え方です。
 これを使ってやりますと、遺伝毒性発がん物質に感受性が高いと書きましたけれども、これは事実です。しかし、鎮痛剤のフェナセチン、それは発がん性があるということで、禁止で今は使っていませんけれども、フェナセチンはこの実験で調べてみると陰性だった。そのようなデータがある。これもやはり90%弱。どちらかというと、現在のデータでは、rasH2のほうが p53よりかどうも確率的に陽性率が高いのではないかというような大体の結論が出ております。
(パワーポイント)
 ちょっと1つだけデータ。先ほどの p53ノックアウトマウスを用いた実験をやってみました。このような、一番低い用量で0.02%から高い用量で 0.025、このBBNという膀胱発がん物質、ネズミに当たりますと、みていただきたいのは、野生型と書いてあります。こちらが正常のネズミです。こちらがヘテロ、 p53ノックアウトですと、SCCと書いてありますけれども、この発生頻度がこちらでは全くみられないのに出てきている。実は病理的には非常に浸潤の高い、非常に悪性のがんです。要するに非常に悪性のがんがこちらでできるということがわかった実験系であります。ちょっと古いデータですけれども、これは p53ノックアウトマウスが世の中に出たときに我々が行った実験であります。
 非常に感受性が高いというのはこの実験でわかると思います。という2つの方法が現在ありますということをまず覚えておいてください。
(パワーポイント)
 次に、化学物質の発がん性評価の加速化ということについてお話しいたします。
(パワーポイント)
 私も委員ということで、この有害性の評価小検討会に参加させていただきましたけれども、例の大阪の印刷工場で起きました胆管がんを契機にいたしまして、厚労省としては——間違っていたらまた後で松井さんから訂正していただきますが、CAP10というプランを立てまして、より早く発がん性を評価しよう、加速の検討ということを打ち出しました。
 そのときに実際に行うのは、長期発がん性試験を効率よくしようではないかという考え方が1つ。現在はラット、マウスで2年間やっておりますが、それをもっとほかの方法でできないだろうか。もう1つは、スクリーニング。私が先ほどから何遍もいっていますけれども、よりたくさんの化学物質の発がん性をみようではないかという2つの柱にフォーカスを絞って検討いたしました。
(パワーポイント)
 慶応の大前先生を座長にして、このようなメンバーで行われたということであります。
(パワーポイント)
 まず、長期発がん性試験の効率化のほうです。またくどくいいますけれども、現在は、2種のげっ歯類、ラットとマウスで2年間、特に労働衛生の面からみると、我々労働者、ヒトは工場で鼻を介して吸入ばく露がメインです。それから皮膚ということもあります。さらに口の中に入るということであります。しかし、メインなのは吸入ばく露ということで吸入ばく露の2年間の試験をやります。これをやっておりますと、エンドレスの世界に入ってしまうということになります。
(パワーポイント)
 したがいまして、ICHのガイドライン、現在、アメリカ、日本、EUで医薬品の開発に用いられている方法で、長期試験に使用する実験は2種を1種にしようと。この1種のうち、ラットにするか、マウスにするかということで、原則としてラットをやりましょうという形になりました。そうすると、残りの1種はどうするかということになります。残りの1種は、先ほど説明いたしました2段階発がんモデル、それから遺伝子を改変した動物、マウスをやろうということであります。こういう方法でいこうと。したがいまして、原則としてラットといいますと、こちらのほうは実際にはマウス、遺伝子組みかえ実験動物とここでは書いておりますけれども、遺伝子改変マウスを使って行うということになる。もし、長期発がん性試験をマウスでやるとすると、今度は、こちらのほうは伊東法などを使ってやるということになるということであります。それが1つであります。
(パワーポイント)
 それでは、次に、今度はもう1つの柱です。スクリーニング法であります。これはチャート式に書いてございます。スクリーニング、いろいろな——いろいろなというのは、最初にいいましたように、6万、7万もある化学物質の発がん性をどのように検証するかということで、現在、1トン以上のものが 6,000ぐらいあるそうです。それについて、まず化学構造などをみて、発がん性がどうも疑われるというのを選択していこうという形であります。
 さらに、1トン以上のものの絞り込みをやります。まず、今の発がん性がどうも臭いなという1つとして、遺伝毒性の有無を検証しようということであります。この遺伝毒性をまず調べようと。そして、その遺伝毒性としては、あり、なし、遺伝毒性があるかどうかわからない、この3つに分けようということであります。それは、先ほどいいましたように、構造活性相関などを調べます。一番重要なのはこれであります。遺伝毒性ありという物質です。そうすると、遺伝毒性があるとしても強さはどうかということで、強いのか弱いのかということです。遺伝毒性の強さがわからないというのもあります。この3つに分けます。このパスウェイ、遺伝毒性の強さがわからない、また遺伝毒性が判断できないというのは遺伝毒性の試験をやりましょう、そして、強いか弱いかを判断しましょうということ。
 いずれにしましても、ここで強い、弱いとまず分けまして、強いのを優先的に短期・中期発がん性試験、先ほど伊東法といいましたけれども、その伊東法を実施していこうということであります。
 そうしますと、遺伝毒性なしのをどうするかという問題があります。実は、遺伝毒性がないのでも発がん物質はいっぱいあります。ただし、遺伝毒性がある発がん物質と遺伝毒性がなくて発がん性がある物質は重みが違います。したがいまして、遺伝毒性のあるほうを優先にやろうということで、遺伝毒性のないほうについては、ここではin vitroの形質転換試験と書きましたけれども、培養細胞を使ってまず調べよう。それから遺伝子の発現量測定による発がん性予測試験、これはカルチノスクリーニングといっておりますが、遺伝子解析をする。それで発がん性を予測しようという方法です。そこで発がん性がどうもありそうだというのは伊東法でやっていこうというような方法であります。
 そして、こういう結果をもって、ケース・バイ・ケースにこの後になりますけれども、長期発がん性試験を実施していこうということ。いずれにしても、ここのところが非常に大きなウエートを占めてくるということになります。
 予定の15分が来てしまいましたけれども、済みません。
(パワーポイント)
 あと、短期・中期発がん性試験の実施によるスクリーニングということをみますと、伊東法をとにかく優先的にやっていこうということで、陽性の得られたもの、陰性の得られたものについては行政サイドとしてはこのような処置をする。実際に研究としてはこういうのをやりますということであります。
(パワーポイント)
 遺伝毒性発がん物質の低用量発がん性ということについて、先ほど遺伝毒性があって発がん性があるのと、遺伝毒性がなくて発がん性があるというものは重みが違いますということをいいました。
(パワーポイント)
 それはどういうことかといいますと、ここに書きましたけれども、肝臓障害、一般の毒性です。そういうものは閾値があるのです。要するに作用しない量がある。非遺伝毒性発がん物質、これも閾値があるということです。作用しない量があるとはっきりしているのです。ですから、我々は作用しない範囲内で使うことができますということなのです。ところが、遺伝毒性の発がん性については閾値がない。要するに、この絵です。こちらは閾値のあるということで、ここの範囲内だったら作用しない、発がん性を出さない。ところが、この閾値のない毒性のほうはゼロ、ここへたどってしまうのです。ですから、このものをこの世界から葬らない限りは、この物質によってがんができますということになってしまうのです。これがゼロリスクという論理になります。現在、遺伝毒性の発がん物質についてはこのような評価で実際には行政は対応されています。しかし、いろいろな矛盾をはらんでいます。
(パワーポイント)
 そこで、私が大学時代に行った実験というのは、私は大阪市立大学におりまして、ここをみていただきたい。実は発がん性試験というのは赤く書いた高用量のところで行っております。この線をざっと落としてきて、最後、ここへ落としてきているのです。この遺伝毒性の発がん物質には閾値がない。ところが、これは実際には実験的に全く証明されていない。というのは、ここのゼロに本当に行くかどうかが非常に難しい。ネズミはほうっておいても何匹かがんができます。そうすると、低い用量でここをやったとしても、ほうっておいたネズミとの差がみつけられない。したがって、理論的に閾値がない。要するにDNAに傷を与えるというのは、戻らない、不可逆性の変化だということで閾値がないという仮説のもとで評価されております。
 ところが、科学は進歩しております。本当にそうなのだろうかということになります。ここで科学的な検証ということをやってみたわけです。
(パワーポイント)
 最初のところで説明したイニシエーション、プロモーションについて、もう一度ここで繰り返しますと、まず発がん物質というのは代謝されて最終的な究極発がん物質になります。そして、その最終的な発がん物質が臓器の標的細胞でDNA付加体というのをつくっている。もう1つ、最近よくいわれているのは酸化的ストレスということで、それによってDNA損傷が起こる。一般にここのところはみんなブルーで書きましたけれども、修復されてきます。ところが、修復のミスが起こる。この修復のミス、しかもそれは死んでいってしまえば何でもないのですけれども、それが固定化されると突然変異として存在する。ここまでがイニシエーションです。そしてあとは細胞増殖が起こっていく。ここで私が申し上げたいのは、こういう赤のラインのほかにブルーのライン、ここでは例えば突然変異と書きましたが、1個の細胞に突然変異が起こっても——アポトーシスと書いてあるのは、1個の細胞の死亡です。死んでしまえば突然変異が起こったってどうってことないねとなるのです。ですから、そのような考え方も頭にありまして、いろいろな研究を行いました。
(パワーポイント)
 これがそうです。
(パワーポイント)
 まず行ったのは、時間の関係であれですけれども、これだけはおみせしたいのはMeIQxといいます。国立がんセンターの名誉総長の杉村先生らがみつけた化学発がん物質であります。これはここに書きましたが焼け焦げ中に含まれます。魚の焼け焦げ、それから肉の焼け焦げなどに含まれております。特にこのMeIQxは、魚に多いといわれている。変異原性が陽性で、我々は 0.2から 0.6マイクログラム、食事を介して食べているということです。これは若林先生らのデータですけれども、100ppm以上でこのようにラットに肝臓がんができるというのがわかります。私が大学時代に知りたかったのは100ppm以下、ここのあたりはどうなのだということであります。それで実験を行いました。
(パワーポイント)
 細胞増殖が盛んだということで、3週齢のネズミをこの実験では約 1,200匹使いました。そして、それだけを対照群の0から 0.001ppmという非常に低い用量、この 0.001というのはネズミが食べるえさの量をみて、我々が1日にどうもばく露している量に相当するだろうというのがこれであります。それの10倍量、そして、最終的には100ppmをとりました。そして、ここに丸で囲んだ、単に前がん病変だけではなくて、こういうマーカーをいろいろ調べてみたわけです。
(パワーポイント)
 例えば、GST—P陽性細胞巣をみてみますと、これは横に用量をとって、こちらにGST—P陽性細胞巣の数を書いてありますけれども、統計上、がんができる100ppmはGST—P陽性細胞巣をふやす。16週の時点でこのようなカーブで、ここのところは統計上差がない。このように上がっていっておりますけれども、一応差がない。そして、32週のほうをみてみます。32週のほうもやはりこの範囲内では、GST—P陽性細胞巣をふやさないということがわかった。それはこのGST—P陽性細胞巣という前がん病変でみての結果です。
 MeIQxとDNAの付加体をみてみますと、用量、それから付加体量をこうとりますと、このように線状に上がっていく。この下ははかれませんでしたけれども、どうもこれからみると、この曲線というのはここのあたりに落ちるだろうということです。
 それから、酸化的ストレスといいました。そのマーカーとして、8—OHdGというのがあります。これをはかりますと、こういうフラット、それから直線状に上がるというカーブがあります。したがいまして、ここからいえることは、どうもこの3つのマーカーから調べると、いずれも作用しない量があるなということです。しかも、作用しない量というのは、それぞれのマーカーでどうも違いそうだということなのです。そういう結果が得られたのです。
(パワーポイント)
 Big Blueマウスというのがあります。これはBig Blueラットですけれども、これはLacIという遺伝子を組み込んだネズミなのです。
(パワーポイント)
 そして、変異原性をみるということで、時間がないから飛ばしますけれども、このLacI変異をMeIQxが起こすかどうかということでみてみると、やはりこのような曲線になっているのです。すなわち 1ppm以下は変異原性がネガティブである。GST—Pについては100ppmだけでやはり陽性になったということです。だから、この変異原性についても作用しない量があるということがわかったということです。
(パワーポイント)
 あと、イニシエーション、プロモーションという形で実験をしましてもこのような曲線になったということであります。
(パワーポイント)
 この我々のデータの結論をいうと、どうもMeIQxの用量をみてみますと、DNAに傷をつける量というのは、非常に幅の狭い、このあたりから出てくるだろうということです。
 そして、次のマーカー、酸化的ストレスとか遺伝子変異、変異原性、それからイニシエーション活性、今、説明を省きましたけれども、これはこのあたりから出る。要するに、ここの作用しない量にいろいろな違いがあるのだということです。前がん変化というのをみてくると、さらに作用しない量があって、このように出てくるだろうということ。
 そうすると、こういう3つの量を考えると、がんというのは、もっと幅の広い作用しない量があって、そして出てくるだろうというのが我々の結論です。だから、こういうことからみると、このMeIQxの発がん性には、私どもは閾値があるということを提唱します。
 しかし、これについては、まだまだいろいろな検証が足らないといわれています。ですから、私どもが今いっているのははっきりと閾値があるといいたいですけれども、実際的には閾値があるという形で対応しましょうというのを我々は提言しております。実際的閾値という存在を提唱しております。
(パワーポイント)
 それから、もう少し時間をください。もう1ついいます。ジエチルニトロソアミン、これはここに空気、水、食品などに存在とありますが、実は我々の胃の中でつくられているのです。亜硝酸、それから二級アミンとが生合成、反応しまして、この物質ができます。現実に胃液をとって調べると、DENがつくられているのがわかっております。そういう物質であります。
(パワーポイント)
 この物質については、フィッシャー系ラット3週齢というのを約 2,000匹用いて調べました。16週間投与して、GST—P陽性細胞巣をみますと、この0.0001というのは、胃の中で、ジエチルニトロソアミンがあるだろうという大体想定の量であります。ここのあたりではGST—P陽性細胞巣はできないけれども、ここからリニアに上がっていくということがわかります。
 先ほどのBig Blueラットというので、変異原性を調べてみますと、やはりこのような形で、一番低い用量では変異頻度が上がっていないということが一応統計上わかったと。このネズミでもGST—P陽性細胞をはかってみると、こちらと同じような形で高い、こちらは1ですけれども、ここまで 0.1、要するに高い用量のみGST—P陽性細胞巣が上がっているということになるということであります。
(パワーポイント)
 こういうことから、実際的な閾値が存在する。すなわちいろいろな修復機能が働いてこういう閾値があるということがいえるのだろうということであります。
 あと、マネジメントに貢献するだろうとか、いろいろなことが書いてあります。
(パワーポイント)
 最後に私どもが申し上げたいのは、化学物質の依存度が今後ますます高まることは確実です。これはもう事実であります。それとともに、化学物質へのばく露による健康影響、特にがん罹患への懸念を我々は多く抱いています。したがって、より多くの化学物質の発がん性を見出し、そしてそれをさらにリスク評価する。単に有害性としてあるだけではなくて、それでどれだけヒトはばく露しているのですかということを調査してリスク評価する。その結果でリスク低減策を早くとるということが必要でしょうということになります。
 もう1つは、このようなものをとったときにやはり大きな問題は、情報伝達をどうするかということであります。ここにはリスクコミュニケーションの重要さがあるということで締めくくりました。
(パワーポイント)
 それから、最後の2枚ですが、先ほどMeIQxの試験については、実は我々の教室だけでできません。したがって、プロジェクトをつくりまして、ここに書かれた8つのラボといろいろな共同研究をしたものでありますし……
(パワーポイント)
 それから、私どもにつきましては大学院生、みんないい年しているのですが、ぶーすかぶーすか文句をいいながら一緒にやった経過であります。それをきょう発表させていただいたということであります。
 ご清聴、どうもありがとうございました(拍手)。
○司会者  福島所長、ありがとうございました。
 次に、松井化学物質評価室長にご講演をいただきます。松井評価室長には、「健康障害防止のためのリスク評価と制度的規制」というタイトルでお話いただきます。
 なお、今、後ろのほうにお席のない方がいらっしゃるようですので、もしよろしければお隣に席があいている方は通していただけるとありがたいのですが、よろしくお願いいたします。
 それでは、松井室長、よろしくお願いいたします。
○松井  厚生労働省労働基準局化学物質評価室の松井といいます。よろしくお願いします。
 先ほど福島所長のお話の中で厚生労働省で行いました有識者の検討会で職場で使用される化学物質の発がん性の評価を加速化するというような検討についてご紹介いただいたところです。昨年の秋から年末にかけて検討いただきまして、検討がまとまりましたので、この段階で関係者のご意見を伺おうということで今回のリスクコミュニケーションの会合を開きました。
 従来ですと、何年か前からこのリスクコミュニケーション会合を労働基準局のほうで行っているわけですけれども、リスク評価について、個別の化学物質の検討がかなり進んで、そろそろ規制の内容について、あるいは規制をするかどうかについて検討しないといけないという段階で、関係者の方と意見交換をする場合が多かったわけですが、今回の意見交換会は、そのずっと前の段階の化学物質の有害性を調べるという段階で開いたものです。私ども有識者の検討結果を受けまして、25年度からこの発がん性の評価を推進していくということにしております。
(パワーポイント)
 検討いただいた発がん性試験の効率化ですとか、たくさんある化学物質の中から発がん性物質をどうやって効率的にみつけるかというようなところをどのようなことに反映させるかなのですけれども、労働基準局のほうでは、このスライドにあります労働安全衛生法という法律をもっておりまして、この中で、物によっては具体的な規制ですとか、物によっては情報伝達ですとか自主的な努力義務としていろいろな危険有害性を事業者が把握して対応していくというようなことを定めているわけです。
 いろいろな有害性の調査を反映していく中で、どういうところが考えられるかといいますと、この三角形の上から3つは、化学物質を具体に定めて規制を行っています。石綿などは製造禁止にしているのと、ジクロルベンジジンのようなものは製造に当たって許可をする必要があるというようなところ、3番目に、製造取り扱いに当たって、換気措置ですとか、そういった措置を具体に義務づけている物質がありますが、こういったものが 100物質以上あるのです。先ほど福島所長の話の中にありましたけれども、職場で使用されている化学物質というのは6万種類ぐらいあるということで、その中の 100ちょっとだということです。
 国のリスク評価が三角形の3番目の欄から左側に出ていますけれども、特定の化学物質について労働者の健康障害のリスクが高くないかどうかというようなことを判定するためにいろいろな調査をして有識者に検討いただいているわけですが、そういった対象物質にする場合に、発がん性のおそれのあるものは対象にしていかないといけないということが1つあります。
 2番目としまして、三角形の下のほうの右側ですけれども、法28条の技術上の指針などが書いてありますが、これは先ほどの福島所長の日本バイオアッセイ研究センターに私どもが委託して、その結果、発がん性が動物でみられたものについて指針をつくっているわけですので、こういったところにもつながってくる。それからスクリーニングの初期の段階で遺伝毒性、変異原性が強いものについては、三角形の下の右側の指針で指導しているというようなことがありますので、こういったところにもつながってくるということがあります。
(パワーポイント)
 まず、リスク評価ですけれども、従来いろいろ問題になった化学物質を後追い的に指定しまして、特別規則によって規制をかけてきたわけですが、平成18年度以降は先ほど申し上げた特定の有害性のある化学物質を選んでリスク評価をして、必要に応じて先ほどの特別規則による規制などを行っているということがあります。
(パワーポイント)
 リスク評価については、有害性の情報と実際の取り扱い現場、製造現場において労働者がどのくらいの濃度でばく露しているか。そういうところを比べて評価をしているということです。
(パワーポイント)
 平成18年度から始めまして、これまでに50物質についてリスク評価を実施してきておりまして、このうち48物質は発がん性のおそれのある物質です。これはどうやって判断したかというと、国際がん研究機関などは既存の発がん性の証拠の評価を幾つかの段階に分類しておりますけれども、その上のほうに位置づけられている物質を対象にしてきているということがあります。つまり、権威のある研究機関で上の分類であれば、発がん性のおそれがあるということはだれがみても多くの方面で認められているものを対象にしてきたということで、その結果、12物質ほどを規制対象にしてきているということがあります。
(パワーポイント)
 規制対象になると、先ほどいいましたように、局所排気装置で蒸気や粉じんの対策を行っていただいたり、ここに並んでいるような対策をしていただいているというような状況です。
(パワーポイント)
 今後のリスク評価の対象の物質なのですが、どうやっていくかというところで、きょうの会合の趣旨の一番にあります、発がん性物質をスクリーニングした結果を反映していく必要があるというのが一番大きいわけですけれども、先ほどのいろいろな機関の発がん性評価以外に日本バイオアッセイ研究センターの長期発がん性試験で、動物で発がん性が確認されたものも既に着手している。それから、有機溶剤中毒予防規則という規則がありますけれども、これは先ほどの局所排気装置などの発散抑制措置ですとか、いろいろな規制を既にかけているのですが、例えば健康診断結果の保存期間が5年であるとかそういったもの、保存期間が短いとか、そういう部分的な規制が少し足りないかもしれないというものもありますので、そういったものもこれから検討していくということがあります。
 2番目の欄の発がん性以外の有害性のある物質についても、既にこれはリスク評価を始めている。そのほかにナノマテリアルについてもリスク評価を始めております。
(パワーポイント)
 先ほど福島所長のお話の中にもありましたけれども、長期の発がん性試験を委託試験でやっております。これは日本バイオアッセイ研究センターに委託してきておりまして、約30年の間に49物質の試験を行ってきておりまして、そのうち28物質については事業者の製造取り扱いに当たっての指針を出して指導をしてきているというような状況です。
(パワーポイント)
 新規化学物質については、変異原性の調査などをしていただいて、指針による指導をしてきている。こういったところにもスクリーニング過程での情報が反映できるのかなと考えております。
(パワーポイント)
 これは先ほどの福島所長のスライドと同じものですけれども、さらに広く発がん性に関して労働者の安心を確保するために……
(パワーポイント)
 大前先生を座長にしまして、福島所長にも参画いただきまして、検討していただいたというような状況です。
(パワーポイント)
 とりまとめ結果はこのようなことで、先ほどの福島所長のスライドと大体同じようなものになっております。
(パワーポイント)
 1つは先ほどの福島所長の話の中で、短期・中期の発がん性試験をまず実施して、それで陽性になったものについては、さらに2年間の試験もやっていく。これは試験の対応能力というか、どれくらい物質ができるかというところもありますので、順次ということですけれども、そういう中で、短期・中期の発がん性試験で、陽性であったものなどについても、指針による指導というのが必要であろうということで、これは行政のほうに投げかけられている宿題ですので、どういった形でやっていくかというのはこれから検討していく。さらに、そういった短期・中期の発がん性試験で陽性であったものをリスク評価の対象にしていって、必要であればそれなりの規制が必要であるかなと考えているところです。
(パワーポイント)
 先ほどの福島所長のお話を今後、労働基準局のほうの対応に反映させていきたいと考えております。
 なお、一番最後の閾値の話は福島所長の研究分野ですので、これはどちらかというと、労働基準局の行政に直接今すぐ反映されるものではないのですけれども、発がん性試験の効率化ですとか、発がん性物質のスクリーニングについては、今後、労働基準局の行政のほうに反映させていく予定です。
 というようなことで、また後でご意見を伺いたいと思いますので、よろしくお願いします(拍手)。
○司会者  松井室長、ありがとうございました。
 ここで一たん休憩時間とさせていただきます。若干時間が押しておりますけれども、予定どおり3時に再開したいと思います。
 先生方にご質問等がある方は、お手元の1枚目、ピンク色のアンケート用紙にご記入をいただきまして、14時55分ごろまでに、私どもは会場の中におりますので、私どものほうまでおもちくださるようにお願いいたします。それでは、15時に再開いたします。よろしくお願いいたします。

     (暫時休憩)

○司会者  それでは、後半の意見交換に入りたいと思います。
 コーディネーターは、順天堂大学医学部公衆衛生学教室助教の堀口先生です。
 パネリストといたしまして、先ほど基調講演を行っていただきました福島所長、厚生労働省化学物質評価室の松井室長、また、大淵有害性調査機関査察官にご出席いただいております。
 では、まず16時ごろまで、あらかじめ会場からいただきましたアンケート用紙にご回答いただきたいと思います。それから、16時ぐらいから30分ほど会場からのご質問を受けたいと思います。
 なお、記録のために差し支えなければ、ご質問される方は最初に所属とお名前をおっしゃっていただければと思います。また、ご質問の方には係の者がマイクをもって伺いますので、必ずマイクを通してお話しいただきますようお願いいたします。
 では、冒頭のときに赤と青の紙を使いますので、ご用意してお待ちください。
○コーディネーター(堀口)  こんにちは。順天堂大学の堀口です。
 私も福島先生のパワーポイントで今、非常に勉強になりました。まず、皆さんに、このリスクコミュニケーションをここ3年ほど進めてやってきているのですけれども、皆さんがどのような方かというのを、私たちも少し把握させていただきたいので、済みませんが、赤と青のこれを手元に出していただいてよろしいでしょうか。
 会社としては、こういうリスクコミュニケーションにご参加している方が自分以外にもいらっしゃるかとは思うのですけれども、このようなリスクコミュニケーションの場に参加するのが個人として初めての方は赤、これまでも参加のご経験がある方は青を挙げていただきたいと思います。よろしいでしょうか。お手元に準備を。それでは、挙げてください。——半々ぐらいですね。ありがとうございます。
 それから、きょうは健康診断の話とかは具体的には何もなかったのですけれども、時々フロアから特定の物質のリスクコミュニケーションの場合、健診に関する項目が質問としてよく挙がってくるのですが、いわゆる産業医など、健診業務とかかわられている方は赤、そうではない方は青を挙げていただけますでしょうか。お願いします。——わかりました。後々また皆さんとコミュニケーションを進めるに当たり、この赤、青を使うかもしれませんので、よろしくお願いします。
 それでは、最初はいただいた質問を私が読み上げますので、先生方、それから厚生労働省の担当の方に答えていただきたいと思います。まず、資料の確認も含めてなのですが、11ページの下のスライドです。化学物質の発がん性スクリーニングによる迅速化において、遺伝毒性の強さの判断について、強い、弱いの明確な判断基準が既にあるのであれば教えてくださいということです。
○松井  具体的には、判断基準を来年度以降、専門家のワーキンググループの方に検討いただく、それを踏まえて情報収集を25年度、試験の実施も25年度からやっていくというようなところなのですけれども、今まで労働安全衛生法の新規化学物質の届け出において、Ames試験やin vitroの染色体異常試験については強い変異原性があるという判断基準がございます。
 それから、化審法においても同様に、これはマウスリンフォーマー試験の判断基準もあるかと思いますけれども、既にあるものが幾つかあります。これは厚生労働省などのホームページにも掲載されている部分がありますので、参考にしていただければと思います。
 そのような既存のものを参考にして、判断基準を明らかにして今後進めていくということを考えております。
○コーディネーター  それから、Amesテストで発がん性を見落とすことはありませんかという質問です。
○福島  Amesテストで発がん性を見落とすことはありませんかということですが、お答えになるかどうかわかりませんが、申し上げたいのは、Amesテストで陽性の物質は発がん性がある可能性が高いということです。Amesテストで陽性、しかし、発がん性がないという物質があります。ですから、イコールではありません。ただ、変異原性、Amesテスト陽性の物質の場合、発がん性がある可能性が高い、それはいえると思います。
 ただし、もう1つ申し上げますと、遺伝毒性、Amesテストの強さと発がん性の強さというものは、必ずしもパラレルではないということです。それには生体反応とかいろいろなものが加わってきます。
○コーディネーター  先生、非常に勉強になりましたとたくさんいただいています。それで、評価のスピードアップをよろしくお願いしますということで、遺伝毒性に関し、ガスばく露でのAmes試験での強陽性の基準は、比活性のような基準はありますか。
○松井  これについては、今後、専門家の方に検討いただく必要があると思っております。来年度には検討をしたいと思っております。
○コーディネーター  現在、新規化学物質の発がん性試験は一般にAmes試験が行われていると認識していますが、今後、伊東法などに移行する可能性はあるのでしょうか。
○松井  先ほどの労働安全衛生法の新規化学物質の有害性の調査においてはAmes試験を行っていただいているところです。これはあくまで発がん性がある可能性が高いということを調べるために、先ほどの福島所長のお話のとおり行っていただいているということです。
 今後といいますと、可能性はありますけれども、近い将来ではないだろうなと。というのは、Ames試験に比べると、中期・短期発がん性試験、伊東法の試験というのは、経費も手間も相当かかる試験ですし、実施する機関も今のところ、そんなに対応可能なところはたくさんないので、すぐに一足飛びに行くというわけではないのかなと考えられます。
○コーディネーター  実験動物を2種から1種としたとき、なぜマウスではなく、ラットが基本になるのですか。
○福島  医薬品、それから農薬、食品添加物、今まで発がん性試験を要求され、そして発がん性があるのが開発段階でたくさんわかってきております。まず、マウスの肝腫瘍という問題があります。マウスの肝腫瘍は比較的多い。そうすると、できたはいいですが、ヒトへ外挿したときに、マウスの肝腫瘍がヒトにそのまま当てはまるかという議論がたくさんあります。一般的に医薬品の開発などはメカニズムまで調べます。そうすると、マウスの肝腫瘍メカニズムの大きなパターンが3つあります。1つはP450という、解毒酵素系を非常に高める、その結果としてがんができる。これはフェノバビタールタイプです。フェノバビタールタイプは現在、ヒトに対する発がん性が否定されております。それで、先ほどいいましたようにヒトでは使われている。
 2つ目は、ペルオキシゾーム増生作用を示す物質であります。これに関しましてもヒトには外挿しない。マウスだと肝細胞にペルオキシゾームをふやして、その結果、酸化的ストレスが加わって肝臓がんができるだろうと。そうすると、その化合物はヒトでペルオキシゾームをふやすかというと、ヒトではふやさないということがわかっています。
 もう1つは、芳香族炭化水素受容体を介して発がんするだろうということです。これについては、一部のマウスの肝腫瘍が絡むだろうとわかっています。それに関してはヒトで起こる可能性があるというので、その物質は実際にヒトでは使いません。先ほどいいましたように、シトクロムP450が絡むもの、それからペルオキシゾーム増生に絡む。これらについてはヒトでは否定されているという形で、マウスの肝腫瘍よりかむしろラットのほうが発がん性としての結果はヒトに外挿するときに重要ですねということなのです。その意味でラットを使っていくということになります。ちょっと話が長くなりました。
○コーディネーター  先生、多分それに関連してくるのですが、物質によりヒトとげっ歯類で代謝経路の差が明らかになっているケースがあります。げっ歯類では、ラジカル発生、酸化ストレス、ガン化と進みますが、ヒトにおいては速やかに排泄されることが解明されているケースがあります。また、逆のケースも予想されるところです。最低限、安全衛生法規制候補は、霊長類での評価が必要なのではないでしょうか。
○福島  前半は確かにそうなのです。ヒトのパスウェイとラットのパスウェイ、代謝も違います。違うことはいっぱいあります。そうすると、最後の結論のところで、今お話しした霊長類の発がん性が必要ではないですか。私の答えは基本的にイエスです。ただし、そうすると、霊長類の発がん性試験というのを実際にできるかどうかという問題です。まずそれはノーです。したがって、そういう意味からすると、少なくともげっ歯類で発がん性を検証しようではないかというところに落ち着いてしまうのです。
 というのは、OECDもそうですけれども、統計的には1群50匹要求します。雄だけで 200匹、雌で 200匹、 400。霊長類で 400匹の実験を、しかもなぜ2年間やるかとなると、ラット、マウスの寿命は2年間ですねということなのです。そうすると、例えば猿を 400匹で、猿の寿命、10年、20年やるかということです。これは不可能であります。
○コーディネーター  その不可能な話から、動物を用いない評価方法の開発状況はどうなっているのでしょうか。
○福島  動物を使わないというので、きょうはお話をしませんでしたが、11ページの下の図のところで、遺伝毒性なしのほうで遺伝子の発現量測定による発がん性予測試験法。この方法は現在、動物を使っておりますけれども、同じように今度は培養細胞系にこの方法をもっていくことは可能です。
 あとは、最近は何でもiPSばやりです。最初はヒトのES細胞を用いて、またヒトのiPS細胞を用いて毒性試験、さらには発がん性試験をこれからやろうではないかという考えはあります。一部とりかかっている研究者もいます。
○コーディネーター  各国で重複した試験を行っていたとしたらもったいないと思うのですが、国と国の間でのコミュニケーションや協調などないのでしょうか。
○松井  まず発がん性試験、特に長期の発がん性試験については、実施している機関がある程度限られておりますので、私どももそうですし、日本バイオアッセイ研究センターのほうもそうですけれども、情報を得ながら、なかなかたくさんできる試験ではないので、そういった努力はしているところです。
○コーディネーター  がんにも悪性度にかなり差がありますが、実験データでは考慮されていますか。よく動物のがんの標本をみますが、かなり大きく、人間ならとっくに死んでいると思えるものが多くあります。これは悪性度が本当に高いのかなと思います。
○福島  確かにそうです。例えば動物の場合、ラット、マウスとヒトと比べますと、動物のがんのほうが組織像を我々病理医としてみますと、異型性が弱くて、今いいましたように固まり状で増殖しているのが多いのです。ヒトの場合は、固まり状ともう1つ浸潤タイプというのがあります。実はこの浸潤タイプのほうが多いのです。ですから、その浸潤タイプが多いというのは異型性が強く、しかも転移しやすいという特徴があるのです。動物のほうは、固まり状ですから転移しにくいという特徴があります。ですから、そういう違いはあります。その違いはなぜかということは、残念ながら実はまだ何もわかっていません。
○コーディネーター  中期多臓器発がん試験のスクリーニング評価の実力は理解したが、これをスクリーニングのみに使うのでしょうか。または、現在採用の発がん試験を代替も含めて行おうとするのか考え方を確認したい。日本国内のみならず、欧米においても同じ歩調の考え方でしょうか。さもないと、ダブル・トリプルスタンダードに国際的になることを心配していますということです。
○福島  お話しましたけれども、2つの方法で使います。1つは、長期発がん性試験をラットとマウスの2つやるかわりに、1つは代替法として使おうと。もう1つは、スクリーニングのほうで使うということです。医薬品についてはお話ししましたように、ヨーロッパ、日本、アメリカは同じ基準でいっております。イエスです。ただし、そのほかの分野でいいますと、今回、厚生労働省として労働衛生の面でこの方法を導入いたしました。この方法に関しましては、アメリカもまだ使っておりません。日本が初めての方法です。私はこれをむしろ評価すべきだと思います。
○コーディネーター  国際的にも注目されるかもしれないというところに一歩進んだということです。
 遺伝毒性の強さの評価について、従来どおりの考え方、比活性とかで実施されるのでしょうか。それとも、今後、新しい考え方が検討されるのでしょうか。
○松井  先ほど申し上げましたように、来年度初めに有識者のワーキンググループで検討いただきますけれども、その場合に、既存の基準、あるいは労働安全衛生法と化審法の共通部分、そういったことを考えるとAmes試験については比活性を考えていくというのが検討のベースになると思います。
○コーディネーター  閾値がないといわれている遺伝毒性発がん性物質においても、実際的な閾値が存在しているという発表と理解していいのでしょうか。発がん性がない化学物質は存在するのでしょうか。
○福島  まず、発がん性がない化学物質が存在するかどうか、これはイエスで我々が毎日飲んでいる医薬品もそうです。それから食品添加物もそうです。それはたくさんあります。
 それから、先ほど遺伝毒性発がん物質で実際的な閾値が云々ということですが、説明が悪かったのですけれども、まず、閾値というのは英語でいうとトゥルースレッショルド、本当の閾値、それからプラティカルな閾値、実際的な閾値に分けられると思います。プラティカルというのは、どうもわからないけれども、実際の——言い方を変えますと、我々が管理面で使うものに対しては、実際的に閾値があるねという形で使っていきましょうという考え方です。トゥルーのほうは、本当に閾値がありますよと。非遺伝毒性発がん物質はトゥルースレッショルドで、本当にあるのです。だから、それで管理しております。遺伝毒性発がん物質のほうについては、私は本当はトゥルースレッショルドというものがあるといいたいのですけれども、現実にはいろいろなディスカッションがあります。我々研究者の中でもあります。ですから、プラティカルスレッショルドということでこれからは対応すべきだろうというのが私の研究の結果の結論であります。
○コーディネーター  それから、作業者——労働者のことだと思うのですけれども——の発がんと、原因物質を関係づけることは可能ですか。
○福島  可能というと、文字どおりイエスですね。ただし、それを本当にしっかりと証明するまでには非常に時間がかかると思います。いろいろな手法、従来の疫学的なデータというのは何年もかかっての調査です。その結果、わかってきました。
 ただ、私は個人的なことをいいますと、ある化学物質によって起こるかどうかということになりますと、従来の疫学的手法にさらにプラスして、きょうちょっと話をしましたけれども、現在は遺伝子の研究が進んでおります。ですから、ある腫瘍をとってみて、それを遺伝子解析すると、Aという化学物質によってできたがんの遺伝子解析と、そのほかの物質によってできたがんの遺伝子解析の結果が違う可能性があります。そういう意味で、疫学データとともに遺伝子解析をすることによって、物質を特定することができるだろうと思います。ただ、いずれにしても非常に力仕事になることは事実であります。
○コーディネーター  疫学をやっている者として、皆さんにお願いがあります。日本人は、個人情報が漏れるということをいって、疫学調査になかなか協力してくれない国民でありまして、WHOのさまざまな疫学の会議でも回収率が非常に悪く、いつも怒られておりますので、もし皆さんが疫学の国際的な、例えばがんだけではなくメンタルヘルスとかいろいろあるのですけれども、調査対象者になられたときには、どうぞご協力をよろしくお願いいたします。
○福島  ちょっと追加、いいですか。まさしくそのとおりなのです。ぜひお願いしたいと思います。
○コーディネーター  なので、ご協力をよろしくお願いいたします。
 リスク評価の対象一覧や結果などは何を通して知れるのでしょうか。散発的な発表以外にまとめられていますでしょうか。室長、お願いします。
○松井  毎年度リスク評価の報告書をまとめておりますので、去年ですと、8月初めに公表しております。入手する方法が一番簡単だと思われるのは、厚生労働省の審議会検討会のホームページでリスク評価関係の検討会の配付資料、これらが全部ぶら下がっておりますので、最新のものをみていただくと、そういったものがわかると思いますので、よろしくお願いします。
○コーディネーター  複数の化学物質に起因する複合的な発がん性はどのように評価し、規制していかれるか知りたいということです。福島先生からお願いします。
○福島  複数の発がん物質の複合作用というと、実は行政サイドでも評価されておりません。これは未知の、全くわからない。いつも出るのはその問題であります。単独で評価しても複数だったときに発がん性が増幅されるのかという議論はあります。しかし、現実に——ちょっと話がそれてしまいますけれども、まず実験のことをいいますと、非常に難しいということです。高用量同士を組み合わせた実験というのはいっぱいあります。それによっては複合効果、いわゆる相乗作用とか相加作用とか、また反対に高用量で発がん物質でありながら、代謝を変えてしまってがんを抑制してしまう。そういういろいろな事実があります。しかし、低用量にもっていきますと、全くわからないというのが事実。わからないというか、私も限定的な実験をきょうお話しした閾値の中でやりましたけれども、限定的な結果だけを得ています。したがいまして、行政サイドで、例えばきょうは労働衛生の世界ですけれども、厚生労働省の食品安全委員会というようなところ、それから厚生労働省の有害性の評価のところで、複合については評価しておりません。不可能だということであります。単独の物質の評価をしっかりする。そこが優先される、重要だろうという格好で進められると思います。
○コーディネーター  先生、食品安全委員会は内閣府です。内閣府もなかなか大変なところで……。
 発がん性評価を行う化学物質の選定基準を教えてくださいと書いてあるのですが、きょうのスライドで何かありましたか。
○松井  先ほど話題になっておりました11ページの下のスライドがそれに当たるわけですけれども、こういったことで絞り込んでいくということで、ただ最後に当たってはさらに専門家のワーキンググループを設けまして、具体にどのように最後絞り込んでいくかを有識者の意見を聞きながら進めていくと考えております。
○コーディネーター  化学物質の発がん性評価の加速化の検討について、いつごろ検討結果が行政に反映させるのでしょうか。
○松井  スクリーニングなり、試験手法については、来年度から反映させていきます。ただ、中身は例えば先ほどの遺伝毒性のない発がん性物質のスクリーニングにどんな試験を使うかとか、さらにそういった検討が必要な内容もありますので、できるものは来年度から反映するということです。
○コーディネーター  強い変異原性が認められた物質の指針の見直しはありますか。30年間の記録をとるなど。また、これに関して、何か役に立った点を説明願いたいと書いてあります。
○松井  指針等については、今後どうやっていくかは考えていかないといけないということがあります。強い変異原性の指針につきましては、こういったものがあるので、気をつけてリスクを考えながら使用していただくということで出しておりますので、そういった意味で効果が上がっているものと考えています。
○コーディネーター  新しく発がん性のみつかった物質を法規制に追加する場合、具体的データを公表してほしい。どういう率で、どこに障害が出るかなど。今まで使用してきた物質が急に規制されても納得のいかない場合もある。
○松井  そういうことがないようにこういうリスクコミュニケーションの会合を開いたり、公開の検討会をしたり、あるいはバイオアッセイ研究センターで試験された物質の試験結果の概要などをホームページに掲載したりということをしてきておりまして、今回、今後スクリーニングですとか、新しい試験方法で試験を行った物質の結果などについては、すべてオープンにしてホームページにも掲載していきたいと思っております。
○コーディネーター  健康障害防止のためのリスク評価と制度的規制についてというところの質問なのですが、指針という努力義務にとどめている理由は何でしょう。なぜ義務化しないのでしょうか。
○松井  従来の考え方として、動物試験で発がん性がみつかった物質については、もう少し一歩進んだ情報がないと、法的規制まで進んでいないという状況があります。最近では先ほどご説明しましたリスク評価によって、動物試験で発がん性が確認されている物質について、労働者のばく露が実際に高い場合には、特定化学物質障害予防規則の対象にしてきているというようなところです。
 もちろん動物試験でみつかれば、何か規制をかけたほうがいいという考え方はあるかと思いますが、一方で、取り扱う事業者にすれば、そういったところまで急に行くのはいかがなものかという考え方がありますので、その辺、今後いろいろ検討していく必要があるかなと考えております。
○コーディネーター  大体関連した質問は今のででそろっているのですが、特定の物質など少しあるので、まだ時間があるので、一応書いてある質問をクリアにしていきたいと思います。
 25ページの今後のリスク評価の対象物質において、ナノマテリアルとありますが、具体的にどのように評価するのでしょうか。例えばMWCNTの場合、サイズが異なると毒性も異なるといわれていますが、各製品の評価ですか、代表製品のみですか。
○松井  多層のカーボンナノチューブについては、今まさにバイオアッセイ研究センターで長期の発がん性の動物試験をやっていただいているところです。ただ、長期の発がん性試験を製品ごとにやるわけにはいきませんので、代表的な物質ということになります。
 ただ、場合によっては規制の検討を今後リスク評価もやって行っていきますので、カーボンナノチューブなどについては、その構造によって有害性が違うという報告もなされているので、その辺、どうしていくかというのは有識者のご意見を伺いながら検討していくという必要があるかなと思っています。
○コーディネーター  女性則において特定の物質について作業環境測定の結果、第3管理区分になった場合、就業させることができないとなっています。有機則対象の物質Aと物質Bを使用しており、物質Aのみ女性則対象となっているとき、物質Bの濃度が高く、有機則の判定で第3管理区分となった場合、物質Aの濃度は十分低くても女性の就業禁止となるのでしょうか。
○松井  その場合も第3管理区分ですので、就業禁止ということになっております。
○コーディネーター  あと、個別の物質がいろいろ出てくるのですけれども、インジウムの管理濃度は決まったのでしょうか。もし決まっていないのならなぜなのでしょうか。
○松井  インジウム化合物については、昨年秋の政省令改正で特定化学物質予防規則の対象にしました。ただし、金属インジウムはまだ規制対象になっておらず、リスク評価を継続しているところで、規制対象にならないかもしれないという状況です。
 管理濃度については設定しておりません。なぜかというと、最近、管理濃度の設定に当たって根拠としているのがACGIHのTLV、それから日本産業衛生学会の許容濃度、いずれかということでやってきているのですが、ACGIHのTLVは、1960年代に出されているインジウム化合物の0.1?/㎥というのがありますが、それより低い濃度で動物実験でバイオアッセイ研究センターでやられた長期発がん性試験で発がん性が認められましたので、ちょっと古い数値ですし、それは使えないということで、管理濃度は設定されておりません。ただし、作業環境測定の結果に応じて、適当な呼吸用保護具を使用していただくという規制を行っているところです。
○コーディネーター  エチルベンゼンは、グループ2Bの発がん性であるが、2Bの物質はたくさんあるのに、エチルベンゼンを特筆して特化則に入れた理由を教えてください。全世界でこれだけキシレンが使用されていますが、キシレン使用者にがんの発生が高いという疫学データは聞いたことがありません。
○松井  エチルベンゼンについては、動物試験で十分な証拠があるということを根拠にIARC、国際がん研究機関で2Bという区分に分類されているということです。ですので、ヒトに関しての十分な証拠等があるわけではありません。ただ、先ほど来の話で、こういったものを労働者の健康障害を生じないように規制していくほうが適切ではないかと考えております。
 確かにIARCで1から2Bに分類されている項目は 400以上ありますけれども、必ずしも労働現場で使われている化学物質に限ったわけではなくて、例えば喫煙の習慣ですとか、先ほど福島所長のお話にありました病原菌への感染ですとか、抗がん剤ですとか、さまざまなものが含まれた上で 400項目以上ですので、その中で労働現場で使われていて問題になると考えられます物質として、労働安全衛生法でSDSといっている安全データシートの交付が義務づけられている物質の中でIARCの1から2Bの物質を順次やってきたところで、残っている物質は数えるほどしかなくなってきていると。今後さらに、先ほどの発がん性のスクリーニングの結果、いろいろな試験を行って、必要な物質が出てくると。そういったものを対象にリスク評価をしていくということで考えています。
○コーディネーター  コバルト含有の超硬合金の金型やダイスを湿式で研磨する作業で、発じんの可能性がなければ、特化則の適用外でよろしいでしょうか。
○松井  特化則の適用外ではありませんけれども、局所排気装置などは個別に空気中濃度を計測していただいて、労働基準監督署に届けていただいて、許可を取っていただければ局所排気装置をつけなくていいとか、そういった例外措置を設けております。
○コーディネーター  アンチモン及びその化合物の法規制はいつごろになると想定されているのか。最新の動向について知りたい。
○松井  まだ法規制の対象になると決まったわけではなくて、今、リスク評価検討会で昨年初期評価をやっていただいて、もう少し詳しく調べようということで、ことしの5月、6月の行政のリスク評価検討会で検討いただいて、必要な場合は規制を検討していくということを予定しております。
 なお、アンチモンについては、三酸化二アンチモンのみを今検討しているというような状況です。
○コーディネーター  1,2-ジクロロプロパンは、日本では発がん性について、知見なしとなっていたが、アメリカで十数年前に発がん性が疑われるとの文献が出ていたようです。厚生労働省として少なくとも文献では発がん性が疑われると注意を促すことが必要ではなかったでしょうか。
○松井  1,2-ジクロロプロパンについてはまさに日本バイオアッセイ研究センターで、先ほどご紹介した長期の発がん性試験、動物試験をやっていただいて、陽性の結果が出ましたので、これを健康障害防止指針というのを先ほどスライドでご紹介しましたけれども、それで指導をしているところです。確かにアメリカのNTPの試験のほうが早くやられていたようですけれども、アメリカのほうでも発がん性の評価がそれで定まっているとは聞いておりませんし、特に日本で試験をやっていなかったというのは事実誤認です。よろしくお願いします。
○コーディネーター  胆管がんについて評価と規制について今後のスケジュール(大体)を教えてください。
○松井  直接の担当でないので、余りはっきり申し上げられませんけれども、まず、労災請求については、担当部局で有識者の検討会を設けて検討されていて、その検討会の座長の方は今年度中というようなことをおっしゃっている。これは皆さんご存じの話かと思います。
 それから、今、通達で塩素系の有機溶剤を洗浄で使用する場合には、有機則と同様の発散抑制措置をとっていただきたいということで、指導をさせていただいているというようなところです。
 なお、あわせて疫学調査もやっておりますけれども、物質との因果関係というのはまだはっきり申し上げる段階にはないのですが、問題に上がっている物質は既に規制されていたり、今、リスク評価をやっていたりというような物質です。
○コーディネーター  発がん性のある物質について指定されていますが、過去にばく露などしたものについて、将来がんとなることがあり得るのでしょうか。
○福島  がんの発生過程からみてというお答えになりますけれども、基本的にばく露されてから先ほどの変異細胞、それから前臨床がんになって、それから今度、病院へ行ってがんですよという臨床がんになる。その間の平均は大体20年というのが一般的です。15年のもあります。ただし、非常に短いのもあります。胃がんなど、例えば、これは計算上ですけれども、1センチのサイズになるのに大体8年という計算になります。それから乳がんなどはむしろ25年という長いスパンであります。今回の胆管がんの場合ですと非常に早い。これは個々のケースですけれども、6年、7年ぐらいでもう発生しています。立派な臨床がん——立派なといったら申しわけないのですけれども、はっきりと臨床診断できる。ですから、そういう面からすると、ばく露期間がどれだけかということが1つの要因になります。そういう答えしかできない。
○コーディネーター  ばく露期間と量ですよね。
○福島  そういうことです。
○コーディネーター  大体書いていただいた質問はご意見等を含め読み上げました。それで、まだ時間がありますので……先生、どうぞ。
○福島  先ほどちょっと舌足らずなところがありましたので、つけ加えさせていただきますけれども、変異原性の強さと発がん性の強さは相関するかということで、必ずしもないといいましたが、一般的にみればあるといったほうがいいです。ただ、一般的にみるということであって、必ずしもすべてがそうではないということであります。
○コーディネーター  追加をありがとうございました。
 フロアから、今までの1時間弱ぐらいの皆さんからのご質問とご回答を含めつつ、追加でご質問やご意見がある方は挙手をしていただいて、マイクをと思います。もし名乗りを上げるのが問題があれば、事業者の立場なのかとか衛生管理者の立場とかといっていただければと思います。
○A氏  私はこのお話をさせていただきたいと思う仕事が、今の安衛研におりましたときの昔の仕事なものでございますから、安衛研のフェロー研究員ということでお話をさせていただきたいと思います。
 私がちょっと思いましたことは、今Ames試験で変異原性のないものでがん原性があるかということのご質問がございました。私が思いますには、Ames試験というのは細菌を使っております。それから、変異原性試験で細胞を使いましても、余り貪食性のある細胞は使っておりません。私が生涯というとおかしいですか、安衛研で主としてやってまいりました仕事は難溶性粒子状物質の細胞毒性と変異原性とか、そういったことをやってまいりましたので、当然シリカとかアスベストなどの表面構造の問題とか長さとかいろいろ処理したときの熱変化による問題とか、磨砕をしたときの問題とか、そういったことについての細胞毒性とかがん原性の問題をやってまいりました。
 感じますことは、シリカのようなものでございますと、ファーゴサイトをする、貪食するということがどうしても必要なものでございますので、細菌でみましても、それは無理だということだと思います。細菌でみているということは、そのものが溶けている状態での反応というように私は理解しております。粒子状物質が、ナノ粒子の問題もこれから出てくると思いますが、溶けるということは、培養液の条件でも変わってまいりますし、磨砕をするとか、そういった表面構造を変えることによっても変わってまいります。
 いずれにいたしましても、シリカは私の知る限りで、私も論文を書いておりますが、変異原性試験では陽性がほとんどございません。それは各国のデータでもそうでございますが、一たんシリカはマクロファージにファーゴサイトされますと、変異原性を非常に起こしてまいります。
 一方、シリカのがん原性というものは恐らくまたちょっと違った細胞の中性嗜好性白血球でしょうか、それがほかの物質に比べて気管の洗浄液のようなところに非常に高く出てくる。そういった炎症性の強いということに起因するのではないかと私は思っているのです。
 いずれにしましても、染色体異常試験には細胞を変異原性試験で使っていらっしゃいますけれども、これからナノの問題も起こりまして、粒子状物質を扱うということであれば、やはりマクロファージのような貪食性の細胞を、能のある細胞、それでマクロファージでも下部細胞のマクロファージとラットの腹腔でも気管内でもいいのですが、とりましたマクロファージとでは、全く違う作用を起こす。下部細胞は余りシリカとかそういったもののいわゆる肺内の変化との相関性がよくないということです。やはり採取したもののほうが私どもの実験では少なくともシリカの表面構造とか、磨砕をするとか、いろいろな条件をつけております。加熱するとかいろいろなことをやっておりますが、そういったことでの物質の性状と繊維増殖の、それからアスベストでございますと染色体異常、それからがん原性の問題、そういったものの相関が非常にみられますので、細胞を選ぶということが、これから粒子状物質がナノのようなものでも、吸入だけでなくて細胞で早くいろいろなことがわかるということを考えますと、私としてはぜひ使っていただきたい。
 私としては、溶けるということが今のフィラー細胞に対しての変異原性だと思っております。溶けるという条件が例えばアルブミンが入るとか、それから血清が入るとか、いろいろなある物質が入るということによって変わるということ。そういったことも考慮していただけたら今後いいのではないかと。私の非常に古い実験でございますから訂正するべき点もあるかと思いますが、ちょっと申し上げさせていただきました。ありがとうございました。
○コーディネーター  福島先生。
○福島  今のご意見についてちょっと。私は発がん屋で、変異原性、遺伝毒性のほうの専門ではないですけれども、我々のバイオアッセイがもっているデータも含めて簡単に申し上げますと、確かにAmesテストで粒子状、繊維状の物質の変異原性をみるのは不可能だと私は個人的に思っています。やはり染色体異常、要するに貪食能をもっているもの。どうも貪食して、今度細胞が分裂するときに分裂し切れないといろいろなことが起こると思うのです。
 それでは、染色体にどういう異常が起こるかといいますと、どうも数的異常は起こるけれども、構造異常はなかなかみられないと私は個人的に思っています。だから、どうもまず貪食能があると。全く同じ意見です。それでは、そういうものがどうして発がんに結びつくかということでいわれていますのが、酸化的ストレスによる二次的な発がんであるという方向でメカニズムが追求されておりまして、その方向に行っているのは事実だと思います。
○コーディネーター  よろしいですか。ほかにご質問……どうぞ、マスクの方。
○B氏  さらに法規制対象の検討をしてもらうのですが、例えばニッケル化合物が特化則に指定されているのですが、ニッケル化合物といった場合に例えばニッケルの合金はどうなのか、あるいは金属間化合物、合金と化合物の中間的な物理的、化学的特性をもつものの場合どうなるか。その線引きがはっきりしなくてちょっと困っているのですが、特化則の中でそういう線引きをかなりはっきりしていただけるとありがたいと思いますので、お願いします。
○コーディネーター  では、お願いします。
○松井  ニッケル化合物は、あくまで金属ニッケルは規制対象ではなくて、ニッケル化合物でかつ粉状のものというものを規制対象にしております。金属ニッケルを今後どうするかということですが、IARCでは2Bになっていますけれども、ACGIHではまた違う、相当発がん性がないことが示唆されるようなランクになっていますので、そういったものは今後、有識者のご意見を伺いながら検討していくということで、いずれにしても金属ニッケルは今対象ではない。
○B氏  そういう意味ではなくて、合金と化合物の間の物理的、化学的性質は線引きが明らかではないのです。要するに中間的な物質の場合にどちらに入れるのかという線引きを決めていただきたいという意味です。
○松井  どんな物質でしょうか。
○B氏  例えばNiAl3だったかな——とか、金属原子同士の化合物で原子数は定比なのですが、物理的特性が金属的というような化合物がかなりあります。
○松井  また細かく教えてください。NiAl3だと全部金属元素のように聞こえますけれども。
○B氏  ただ、原子数が定比なので、一般には金属間化合物と呼ばれているのですが、合金と化合物の中間的なものになってしまうのですが。
○松井  ちょっと後で教えてください。伺う範囲ですと、全部金属元素ですので、いわゆる化合物ではないように聞こえるのですが、ちょっとまた後で教えていただければと思います。
○B氏  わかりました。
○コーディネーター  では、終わってから、済みませんが、よろしくお願いします。ほかにご質問がある方はいらっしゃいませんか。
○C氏 ちょっとそれに関連した話かもしれませんけれども、例えばコバルト及びその無機化合物という形で規制されていますが、そもそも無機化合物って何ですかという話。多分最初の審議会などでは、コバルト及びその化合物となっていたのを、そうすると、例えばビタミンB12も入るのではないかとか、そういう話で多分「無機」という形を入れられたと思うのですけれども、では、酢酸コバルトはどうかというと、無機なのですか、有機なのですかみたいな話になってきますと、線引きが確かにできていない。その辺は金属化合物などの場合も、電子の移動があって、溶かせば溶けるような状態になり得るわけですよね。そうすると、リスクとしては本来同じはずなのに、硫酸コバルトのデータをもとにすべてのコバルト化合物、無機化合物を範疇に入れるというのはちょっと無謀なような、そこの線引きがどこかにないといけないように感じます。そのあたり、お願いいたします。
○松井  科学的事実と規制のラインというのがきっちりと一致していることが一番妥当なのですけれども、必ずしも、例えばニッケルカルボニルは有害なのですが、今回のニッケルの無機化合物に入っておりませんので、継続して自主的なリスク管理をお願いしているというところです。
 ただ、だからといって、コバルト化合物を全部入れてしまうと——ごめんなさい。ニッケルカルボニルではなくてコバルトカルボニルです。失礼しました。ニッケル化合物は粉状のものであれば規制対象になっております。だからといって、コバルトの化合物を全部対象にしてしまうと、先ほどいわれたようにビタミンB12も規制対象になってしまうということがありますので、今回は無機化合物としたと。ただ、無機化合物と有機化合物の境目というのは、どこかに必ず化学事典に書いてあるというとそうではないので、そこは施行通達で十分に書いておくべきだったのかもしれませんが、そこは以降、措置を考えたいと思います。
 ただ、金属元素の化合物については、諸外国でもそうですが、かなり大くくりな範疇で規制をしていますので、特に日本だけが特別広くとっているというわけではありませんことと、規制のラインはやはりどこかで引かないとしようがないということがありますので、その辺はちょっとご理解をお願いしたいと思います。
○コーディネーター  よろしいですか。私の研究からすると、無機というもののイメージと定義と有機というイメージと定義と科学の進歩に従って、そこの線引きもなかなか難しくなってきているのが事実なので、検討のときにどのような意味合いを持ち合わせて皆さんが検討していたかとか、プロセスなどわかるようにしていければと考えます。
 ほかにご質問のある方はいらっしゃいませんか。前から2列目の方。
○D氏 リスク評価というもの自体がリスクとベネフィットのバランスをとるという形で進めているものだと思っているのですけれども、それと同じで規制と経済面、ビジネスといいますか、そういうところもバランスが出てくると思うのですが、例えば規制をどんどんがんじがらめにかけていくと経済性が悪くなっていくというところもあると思います。だからといって、 規制を緩めてしまうとまた問題がたくさん出てくるというところもあって、現在はどちらかというと化学物質に対する規制がだんだんふえていくのではないかという状況、社会的な問題もあるとは思うのですけれども、そこでやはり規制のほうを重視していくと経済性が悪くなっていくのではないかと。
 どちらかというと、厚生労働省のほうはやはり労働者の安全性といったところをメインにしていくので、例えば化学物質に関しても製品に関していろいろな情報を開示していくという方向になって、今、例えばSDSに関しても混合物の組成を開示するような方向で、努力義務化されていくような話も出ています。そうすると、今度は混合物に関しては配合比等で製品としての能力を出していくような形で、それをやってしまうと経済性が失われていくというところも問題点としてあると思うのですけれども、その辺のビジネスと規制に関するバランスを今後どのようにとっていくのかというところをちょっと伺っておきたいと思います。
○コーディネーター  お願いします。
○松井  日本だけが突出して化学物質の規制が広くかかっているかというと実はそうではなくて、アメリカのOSHA規則の中に表を設けて規制しているのは 400物質以上あります。それから、EUではリスクアセスメントをそもそも労働安全衛生の分野で義務づけているのですが、例えばイギリスでは法的に許容濃度を設けて規制している物質というのもやはり 400物質以上あります。その数だけ比べると先ほど 100物質ちょっとの話ですので、日本だけが突出しているというわけではありません。ただ、規制の方法が日本のほうがいろいろやらないといけないことを列挙して規制するタイプの規制ですので、そういう面では、いろいろなバランスというのは、どういう規制がいいかというのは考えていかないといけないと思います。
 ただ、印刷の事業所で使っていた物質に特別規則の対象ではない物質も含まれているではないですかといわれた場合に、我々としては、そういったことはないようにしないといけないということもやはりご理解いただきたいと思います。
○コーディネーター  よろしいですか。ほかにありませんか。ここの4番目の方にお願いします。
○E氏 きょうはいろいろご説明をありがとうございました。
 ちょっと総論的なことをお聞きしたいのです。きょうは発がんを中心にお話を聞いたわけで、先ほども新規の部分はかなり物質がふえておりまして、その部分での発がん性物質をどう拾い上げていくかということを考えたときに、少ないケースだと 100で済むかもしれませんし、多いケースだと、何をツールに使うかによりますけれども、数千になるケースもあるかもしれません。そこのイメージが私自身でちょっとつかめていなくて、例えば構造活性相関のようなものを使ったときに、今の実情でいくとどれぐらいの数がひっかかってきそうなものかというイメージをもしご存じでしたら知りたいのです。それが質問の1つでございます。
○コーディネーター  では、1つ目。
○松井  ちょっと何ともいいづらいのですが、強い変異原性がある物質というのが新規化学物質の届け出のうち3%から4%ぐらいということをそのまま先ほどの 7,000物質なりに当てはめると掛け算で何百物質出てまいりますけれども、そういったものがすべて発がん性物質かというと、そうではないですし、強い変異原性がないものも発がん性物質、先ほどのお話のようにありますので、ちょっと何とも申し上げられないというところがあります。
 ただ、今申し上げました何百物質というような数はイメージとしてはあるのかなと。ちょっとちゃんとした答えになっていないですけれども。
○E氏  質問もちょっと悪かったと思うのですけれども、2020年までにありとあらゆる物質を評価するという意味からしたときに、行政としてそれがちゃんとできるのかというのを数字として把握したかったものでお聞きしたのです。
 それと、要望のほうは、前も申し上げたと思うのですけれども、今回のQ&Aのディスカッションの議事録を公開していただきたい。これは強く希望しますので、よろしくお願いします。
 多々ありますけれども、以上です。
○コーディネーター  議事録の公開は……
○松井  議事録のほうは、個人情報はとった上で一応録音は中災防のほうでしていただいていますので、今回は公表するということで、先ほど冒頭、中災防からお話ししたとおりです。もちろんご都合が悪いというようなことがあれば申し出ていただければと思います。
○コーディネーター  よろしいですか。
○E氏  ありがとうございます。
○コーディネーター  ほかにご質問は……では、一番後ろの方にお願いします。
○C氏  先ほどヒトとげっ歯類で代謝経路が違うのではないかという話を質問させていただいた者なのですけれども、例えばそういったことで、ヒトには長期使われていて、それこそちょっと失礼な話ですが、昔はそんな濃度の規制などない中で使用されていて、何の発がんとかがみられなかったものがある日いきなり規制になったりということが実際に起きる。そこで、先ほどのお話しのように、げっ歯類では確かにがんが出てきてしまうけれども、それが例えば人間でしたら医学的、研究的に速やかに代謝されることが認められている、証明されているような物質についてなのですが、そういったものについて、例えば今回の安衛法のところで特例措置ですとか、そういったものというのはないのでしょうか。
○松井  安衛法の今の特別規則の対象物質で、そういうことが証明されている物質、発がん性に着目して規制している物質でそういうものがあるのであればちょっと教えていただきたいということが1つあります。
 それから、IARCの2Bというのは、動物試験で発がん性の十分な証拠があるものであっても、ヒトに外挿されないという明らかな証拠がある、これらがIARCのワーキンググループで検討されて、明らかにヒトに外挿されないというものについては、2Bにならずに3になるという基準になっておりますので、そういうことが明らかなものは2B以上には少なくとも入らないだろうと。もちろん議論があるものはありますが、例えばDEHPが2Bだとかはありますけれども、明らかに外挿されないということがIARCのワーキンググループで認められれば2Bにはなっていないというようになっています。
○C氏  ということは、結局IARCの判断というのがベースになっているということになるわけでしょうか。
○松井  今のところはそうです。IARCの2B以上のもので、労働現場で多く使われているものをリスク評価の対象にしてきています。今後は、先ほど福島所長のお話のあったような試験方法を使って発がん性物質を拾っていくということを考えています。
○C氏  例えば論文ではヒトに対して速やかに代謝されると。ところが、IARCでは、ラット、マウスのように2種類のげっ歯類で発がん性があればそこで2Bというような評価をされるということなのですけれども、今、松井先生のお話にありましたように、そこで明らかにヒトには当てはまらないという答えをIARCが判断しない限り、日本の安衛法には生かされないということでよろしいのでしょうか。
○松井  いや、それはそういった証拠をいろいろな論文でこうではないかということを役所のほうでも結構ですし、出していただければ有識者の検討会のほうで検討していただきますので、私どもはIARCが2Bだから絶対といっているわけではありませんし、先ほどリスク評価を50物質やったうちの12物質を規制に追加してきておりますので、約7割は有害性があっても引き続き事業者の自主的管理でやっていただくと。お願いしているところです。
○コーディネーター  よろしいですか。また新しい知見も今後出てくることもあり得ると思いますが、福島先生、今の件について何か追加することはありませんか。
○福島  行政側とは違った見方というか、今のことですけれども、当然IARCで分類しているのが今は優先ですが、そのほかに新しいメカニズム、代謝を含んだ特にメカニズムですよね。メカニズムがはっきりして、それが認知されたら当然それはいろいろな行政サイドでもそれを用いて評価に入ると思います。
 ただ、IARCの分類にしても、評価はなかなか、次から次へやるわけではないですよね。例えばサッカリンのケースでも最初は2Bとなって、ずっと2Bで来ました。その後、メカニズムがわかって、そのメカニズムがわかっても相当たってからようやく評価に入って、その結果3。ラットに発がん性があっても3となっているのです。
 だから、そこら辺のところで、IARCにしてもやはり評価を新しいメカニズムがわかってきてもすぐするわけではないですからタイムラグはあるということです。
○コーディネーター  ほかにご質問はありませんか。では、追加で。
○A氏  たびたび話させていただきまして申しわけございません。私がちょっと教えていただきたいと思っておりますことは、私どももアスベストにつきましては加熱をいたしまして、大体 650度以上になりますとかなり毒性が減ったりいたしますが、 850度になりますと、大体フォーステライトになりまして、 1,000度ぐらいになりますとエンスタタイトというように変わってまいりますが、その 850度ぐらいのところで磨砕をしまして、形を変えますとほとんど毒性がなくなって発がん性もなくなってくるということを報告しているわけです。in vitroでも in vivoでも報告しているのでございますが、この間、私がちょっとテレビをみておりましたときにマイクロ波で京大の方がアスベストを照射なさいますと、線状のああいう形ではなくなってというような、形が変わって丸くなって、これは恐らく無害になるのではないかというようなことをおっしゃっていて、とても興味がありましたので、そういうことでもし先生方が何か知見をもっていらっしゃるのでしたら教えていただきたいと思います。
○コーディネーター  福島先生、お願いします。
○福島  我々は現在、多層カーボンナノチューブ、MWCNTを研究しておりますけれども、確かに繊維状の1本状のものと、絡まったもの。絡まったものについては、例えば遺伝毒性をみますと非常に弱い、ネガティブというような結果。むしろ線状のものが有害性を出すというようなデータをもっています。ほかの文献を調べましても大体そのような方向で、例えば同じカーボンナノチューブでもタングル、固まりのものについては遺伝毒性はむしろネガティブ。遺伝毒性、染色体異常がないというようなデータはあります。
○コーディネーター  よろしいですか。だんだん時間になってきたので、あと1、2問かと思うのですが、ほかにご質問のある方はいらっしゃいませんか。——そうしましたら、4時半までなので、そろそろ終了にしたいと思うのですけれども、最後、福島先生から何かコメント、ここだけは忘れないでほしいとか。
○福島  ここだけは忘れないでということで申し上げますと、きょう、私はこういうチャンスを与えていただきましたので、我々の閾値に対するデータを出させてもらいました。これを私は一方的に押しつけるつもりはありませんけれども、皆さんに考えていただきたいということなのです。いろいろなサイエンスが進むと同時にそれぞれに対する、リスクのところでもそうなのですけれども、有害性をどのように担保し、そしてそれをどのように行政サイドがもっていくかということにおきまして、私は化学物質の発がん性の閾値というものについて、いつもいっているのですが、皆さんが考えて、そしてそのまま従来の方向でいこうというならそれでよろしいですし、いや、やはり進歩とともに変わってきて、確かにそういうことをアグリーしていただけたら一刻も早く私はもっていきたいと思うのです。そのようなことを思っています。
 ですから、まず出だしとして、きょうの私の講演を聞いていただきまして、閾値に対する考え方を皆さん、まず整理していただきたいというお願いであります。
○コーディネーター  室長などからは何かありませんか。——特にありませんか。それでは、これにて意見交換を終了させていただきたいと思いますので、かわります。
○司会者  ありがとうございました。
 それでは、以上で化学物質リスクコミュニケーションを終了いたします。ご参加いただきまして、まことにありがとうございました。
 なお、今後の参考といたしますので、水色のアンケート用紙にぜひご記入をいただき、会場の出口付近にこの箱を置いておきますので、本日用いました赤と青の紙をここに入れていただくと同時にぜひアンケートもここに入れていただきたいと思います。なお、会場の外にももう1つ箱をご用意しております。
 それから、会場の外に中央労働災害防止協会の化学物質関連のパンフレット等を置いてございますので、ぜひお手にとってお持ち帰りいただければと思います。よろしくお願いいたします。本日はどうもありがとうございました。


(了)

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