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2012年10月17日 薬事・食品衛生審議会 一般用医薬品部会議事録

医薬食品局

○日時

平成24年10月17日(水)16:00~


○場所

厚生労働省 共用第8会議室


○出席者

出席委員(12名):五十音順

 岩 月   進、 小 澤   明、 川 原 信 夫、 鈴 木 邦 彦、

 西 澤 良 記、 廣 江 道 昭、  福 島 紀 子、 藤 原 英 憲、

 村 島 温 子、◎望 月 正 隆、 望 月 眞 弓、  吉 山 友 二

(注) ◎部会長

他参考人2名

欠席委員(3名):五十音順

 阿 曽 幸 男、 生 出 泉太郎、 橋 田   充

行政機関出席者

 平 山 佳 伸 (大臣官房審議官)

 赤 川 治 郎 (審査管理課長)

 矢 守 隆 夫 (独立行政法人医薬品医療機器総合機構審査センター長)

 森    和 彦 (独立行政法人医薬品医療機器総合機構安全管理監)

 山 本 弘 史 (独立行政法人医薬品医療機器総合機構審議役)

○議事

○審査管理課長 定刻になりましたので、ただ今から「一般用医薬品部会」を開催させていただきます。
委員の先生方におかれましては大変お忙しい中、御出席いただき誠にありがとうございます。現時点で委員15名のうち11名が御出席で、定足数に達しておりますことを御報告いたします。廣江委員より30分程度遅れる旨承っております。また阿曽委員、生出委員、橋田委員より御欠席の御連絡をいただいております。
 また、本日の審議事項議題3「医薬品エパデールT、エパアルテの製造販売承認の可否について」の参考人として、東京慈恵会医科大学附属柏病院総合診療部部長の多田紀夫先生に、審議事項議題4「医薬品セレキノンIBS、セノレックスIBS、アダプトコーワIBSの製造販売承認の可否について」の参考人として、国立国際医療研究センター消化器内科/臨床研究相談室室長の小早川雅男先生に、それぞれ御出席いただきます。
 医薬品医療機器総合機構においても幹部の異動がございましたので、御紹介いたします。9月10日付けで、重藤上席審議役に代わり山本弘史上席審議役、磯部審査マネジメント部長に代わり吉田易範審査マネジメント部長が着任しております。また、本部会の宗林委員が本年7月20日付けで消費者庁に就任されたことに伴い、本年7月31日付けで部会委員を退任されていることを御紹介申し上げます。
 それでは望月部会長、以後の進行をよろしくお願いいたします。
○望月部会長 それでは、まず本日の議題に入る前に、事務局から配付資料の確認をお願いいたします。
○事務局 資料の確認をさせていただきます。資料1-1~資料3は事前にお送りしております。当日配布資料として議事次第、座席表、委員名簿、競合品目・競合企業リスト、専門協議委員リスト、資料4「エパデール事務局資料」、資料5「医療用医薬品の有効成分のうち一般用医薬品としても利用することが適切と考えられる成分の開発状況等について(案)」を配布しております。また、追加の審議事項議題3の参考資料として、これまでの部会で提出されているエパデールT他1品目の部会資料を配布しております。不足等があればお知らせいただきたいと思います。
 審議順序については、廣江委員が遅れられることと参考人の御都合により、議題3を「エパデールT、エパアルテ」、議題4を「セレキノンIBS他2品目」とさせていただきます。よろしくお願いいたします。
○望月部会長 それでは事務局から、審議事項に関する競合品目・競合企業リストについて、報告をお願いします。
○事務局 本日の審議品目に係る「競合品目・競合企業リスト」を御覧ください。各品目について競合品目・競合企業及びその選定理由について説明します。
 議題1の「ストナリニZ、コンタック鼻炎Z、コンタック鼻炎24」は、抗ヒスタミン成分であるセチリジン塩酸塩を一般用医薬品の有効成分として初めて含有する経口製剤です。効能・効果はアレルギー性鼻炎用薬であり、類似の効能を示す競合品目として、大正製薬株式会社の「パブロン鼻炎カプセルS」、エスエス製薬株式会社の「アレジオン10」、ノバルティスファーマ株式会社の「ザジテンAL鼻炎カプセル」を選定しました。
 議題2の「ゲンタシンS軟膏、ポリベースG」は、アミノグリコシド系抗生物質であるゲンタマイシン硫酸塩を一般用医薬品の有効成分として初めて含有する外用製剤です。効能・効果は「おでき・とびひ」であり、類似の効能を示す競合品目としては、田辺三菱製薬株式会社の「フルコートF軟膏」、ゼリア新薬工業株式会社の「ドルマイシン軟膏」、グラクソ・スミスクライン株式会社の「ベトネベートN軟膏AS」を競合品目として選定しました。
 議題3の「エパデールT、エパアルテ」は、イコサペント酸エチルを一般用医薬品の有効成分として初めて含有する経口製剤です。効能・効果は「健康診断等で指摘された境界領域の中性脂肪の改善」であり、本剤と同様の効能・効果等を持つ一般用医薬品はなく、競合品目の該当はありません。
 議題4の「セレキノンIBS、セノレックスIBS、アダプトコーワIBS」は、トリメブチンマレイン酸塩を有効成分とする「過敏性腸症候群の諸症状の緩和」を効能・効果とする、一般用医薬品としては初めての経口製剤です。類似の効能を示す競合品目としては、大正製薬株式会社の「ストパン」、エスエス製薬株式会社の「ブスコパンA錠」、ライオン株式会社の「ストッパ下痢止めA」を競合品目として選定しました。説明につきましては以上です。
○望月部会長 ありがとうございます。ただ今の事務局からの説明につきまして、御意見はございますか。
よろしいですか。それでは、本部会の審議事項に関する競合品目・競合企業リストについては、皆さんの了解を得たものとします。では、各委員からの申出状況について御報告願います。
○事務局 各委員からの申出状況について御報告させていただきます。
議題1については、退室委員、議決に参加できない委員はいらっしゃいません。
議題2については、退室委員はいらっしゃいません。議決に参加できない委員は、小澤委員と村島委員です。
議題3については、退室委員、議決に参加できない委員はいらっしゃいません。
議題4については、退室委員はいらっしゃいません。議決に参加できない委員は小澤委員と村島委員です。以上です。
○望月部会長 ありがとうございました。それでは審議事項議題1「医薬品ストナリニZ、コンタック鼻炎Z、コンタック鼻炎24の製造販売承認の可否について」、医薬品医療機器総合機構より説明をお願いします。
○機構 御説明させていただきます。申請者は、ストナリニZについては佐藤製薬株式会社、コンタック鼻炎Zほかについてはグラクソ・スミスクライン株式会社です。これらは共同開発による申請であり、申請製剤は同一です。また、資料概要や添付文書等の添付資料についても、共同の内容となっております。
 審査報告1ページを御覧ください。本剤は1錠中にセチリジン塩酸塩10mgを含有する錠剤であり、医療用医薬品「ジルテック錠10」と同一の製剤を一般用医薬品とするものです。セチリジン塩酸塩は、抗ヒスタミン作用を有する抗アレルギー薬であり、効能・効果として、医療用医薬品ではアレルギー性鼻炎や蕁麻疹等の適用を有しておりますが、本申請においてはアレルギー性鼻炎のみとしております。
 審査報告5ページを御覧ください。審査の概略について御説明いたします。アレルギー性鼻炎に対する有効性については、医療用医薬品の開発では、重症度の高い患者を対象に有効性を評価されたと考えられました。一般用医薬品は、一般に軽度な疾病に伴う症状の改善を目的としていることから、比較的軽症例における本剤の有効性について検討いたしました。その結果は表5及び表6にお示ししたとおり、ケトチフェン群を対照群とした第III相臨床試験の再解析により、比較的軽症の患者においてもケトチフェン群と同程度の有効性が認められており、一般用医薬品の対象とされるべき患者群における本剤の有効性自体が否定されるものではないと判断いたしました。
 また、本剤の安全性については審査報告6ページの下段よりお示ししております。重大な副作用等、医療用医薬品で報告されている副作用情報を検討し、安全性の面からも本剤を一般用医薬品とすることに問題はないと判断しております。
 審査報告7ページの下段にお示ししているその他の副作用の項で、頻度不明として注意喚起されている「自殺念慮」について、申請者は国内で報告があった3例のうち、発現時の状況が不明であった1例を除く2例は、「抑うつ状態」若しくは「うつ状態」であったことから、「自殺念慮」と記載する必要はなく、抑うつの症状が現れた時点で直ちに服用を中止させ、医師又は薬剤師に相談するよう注意喚起をすることで、「自殺念慮」の副作用に対処することは可能と説明していました。機構は、医療用の添付文書に「自殺念慮」を追記した際、社会的な影響からあえて「抑うつ」では読み込まずに追記させた背景があることから、一般用医薬品においても「抑うつ」とは別に注意喚起することが適切であると考え、一般使用者にも分かりやすい表現である「自殺願望」に読み替えて注意喚起することが適切であると判断いたしました。一般用医薬品において、「自殺願望」を添付文書に記載し、注意喚起することは初めてであるため、専門協議でも本記載に関して議論がなされました。その結果、「自殺念慮」を医療用医薬品と同様に、一般用医薬品の添付文書においても記載すること、及び「自殺念慮」を一般使用者に分かりやすい表現として「自殺願望」に読み替えることは妥当であるとされております。
 現状のアレルギー性鼻炎の治療における本剤の位置付けについては、審査報告9ページよりお示ししております。本剤は1日1回の投与で持続的に効果を示し、選択的にヒスタミンH1受容体を阻害することから副作用軽減が期待されること、抗ヒスタミン薬で最も多い副作用である眠気についても、ケトチフェンフマル酸塩と比較し有意に発現率は低いこと、近年眠気といった主観的なものとは別に、自覚症状を伴わない認知機能障害とされている、いわゆるインペアード・パフォーマンスについては、あまりないとされていること、本剤のスイッチ元のジルテック錠10は、現在でも医療現場で使用されていることより、機構は本剤を一般用医薬品にスイッチする意義は高いと考えております。
 使用上の注意については、審査報告11ページよりお示ししております。「相談すること」の項に「気管支ぜんそく、アトピー性皮膚炎等の他のアレルギー疾患の診断を受けたことがある人」を設定させたことについては、これらの疾患を合併する、あるいは既往歴を有する人では、それらの疾患の存在を踏まえた専門的な治療を必要とする場合もあり、本剤によるセルフメディケーションの対象となり得るかは、それぞれの使用者の状況に応じて慎重に判断する必要があると機構は考え、追記させました。また、「相談すること」の項に記載されていた用法・用量に関する注意喚起は、「用法・用量に関連する注意」の項に記載させることで、使用者に分かりやすく注意喚起が行えると機構は判断し、記載を整備させました。
 以上のような検討を行った結果、機構は審査報告書に示した効能・効果及び用法・用量において承認して差し支えないと判断いたしました。なお、承認条件として「承認後、少なくとも3年間の安全性に関する製造販売後調査を実施すること」との条件を付すことが適当であると判断しております。説明は以上です。御審議のほど、よろしくお願いいたします。
○望月部会長 ありがとうございました。ただ今の内容に関して御質問、御意見等がございましたらお願いいたします。
○村島委員 添付文書の「してはいけないこと」の1の(4)として、「妊婦又は妊娠していると思われる人」となっているのですけれども、医療用医薬品の方では、多分禁忌ではなかったはずですし、この薬はシーズンになりますと、結構若い女性が使う可能性のある薬なので、かえって禁忌というか、服用しないでくださいとすることによる混乱が予想されます。この(4)をここに置いたその根拠をお教えいただければと思います。
○機構 審査報告8ページを御覧ください。中程から少し下に、「妊婦又は妊娠している可能性のある者への投与について」という記載をさせていただいております。申請者は、動物実験(ラット)で胎盤を通過することが報告されており、妊婦における安全性に関するデータが十分にないことから、使用上の注意「してはいけないこと」に記載するとしており、機構はこれが妥当と判断しております。
○村島委員 セチリジンは1,000例前後の疫学研究でリスクが否定されているはずですので、妊婦や、妊娠する可能性のある女性にはファーストチョイスになるような薬剤なのですが、いかがでしょうか。
○機構 医療用ではそのような取扱いもあるかと思うのですが、一般用医薬品ということで、一応セルフメディケーションという範囲内で使われることもありますので、慎重を期する意味で、こういった取扱いにしたということもあります。
○村島委員 そうすると、これを飲んでしまってから妊娠が分かった女性が青くなって、妊娠と薬情報センターを含めて、駆け込んでくるということが予想されるのです。セルフメディケーションであっても、「御相談ください」の項目では駄目なのでしょうか。セレキノンは「御相談ください」になっていると思うので、それと同じ扱いでいいように思います。
○機構 同じような抗ヒスタミン剤の内服薬が、一律で大体このような記載になっているので並べたというところもあります。
○村島委員 一律というのは、同効薬でということでしょうか。そうでなければ、今までに安全性が確立していないものは、このような表現になっているということでしょうか。
○機構 第2世代の抗ヒスタミン剤は、幾つか承認になっていて、それらについてはこういった記載になっており、合わせたというところもあります。
○村島委員 それに合わせたということですね。
○機構 はい。
○村島委員 合わせたということであれば、根拠としては理解できますが、現実問題として科学的に見たときには、納得できないところではあります。
○望月部会長 サイエンティフィックな根拠はないのではないか、ただ他の例に合わせればいいというのは、問題が違うのではないか、という御指摘だと思いますので、この点を申請者にお伝えください。
○機構 その点についてはもう少し調べて、検討させていただきたいと思います。
○望月部会長 ほかには、どなたか御意見はございますか。
○川原委員 審査報告10ページにも触れられているのですけれども、この原薬となるセチリジンはラセミ体を使用しており、その中で主薬であるR体、R-エナンチオマーのタイプが、現時点では「ザイザル錠5mg」という形で医療用として使われているのです。そういったことをユーザー側の立場になって考えた場合に、今はラセミ体しか供給できないということであれば、こういう場合も致し方ないところはあるかもしれませんが、仮に主薬であるR体が出ている場合、やはり主薬のR体の方がより効果も高いでしょうし、ラセミ体の場合、その半分は実質使っていない、あるいは効いていないということにもつながってくると思いますので、R体のみの方をOTCにした方が、よりユーザーフレンドリーなところはあるのかと思います。これがいろいろと出てきたのが最近ということもあって、非常にスイッチしにくい部分も当然あるとは思うのですけれども、こういった例はこの医薬品だけではなくて、特に抗ヒスタミン剤に関してはラセミ体が多いですから、その辺の今後の審査方針なども含めて、御意見をお聞かせいただければと思います。
○望月部会長 機構の方から御回答いただけますか。
○機構 川原委員の御指摘のとおり、私どもとしてもラセミ体のものをこの段階でということは、審査の段階でもいろいろ議論しました。ただ、これはスイッチOTCということで、今回承認申請がございました。医療用として広く使われてきて使用経験のあるものということで、その再審査期間等が終わって今度スイッチするという流れの中で、今回申請するものです。一方で、R体のみというものもあるのに、なぜラセミ体を出さなければならないかというところがあります。毒性等の観点から、R体とラセミ体で何か問題があるということではないと思いますし、ラセミ体自体、医療現場ではいまだに使われております。そういう意味ではスイッチするということは一つ意義があるかと思います。また、これまでスイッチされている第2世代の抗ヒスタミン剤の中でも特徴があり、選択肢を広げるという意味で、スイッチする意味はあると考えております。ラセミ体か、単体のR体だけにしたものかの審査方針ですが、スイッチについては基本的に医療用で長年使われてきたものを踏まえ承認します。新薬の方は考え方が違うかと思いますけれども、一般用医薬品としてはそう考えております。
○望月部会長 いずれ医療用としてR体だけになれば、このスイッチも変わってくるということだと思います。
○西澤委員 8ページに、本剤の排泄経路は腎臓であるということが記載されており、腎臓病を患った人たちは一応禁忌であると記載されております。問題は、高齢者はもちろん腎機能が悪いですから、かなり慎重投与になるということで、「御相談ください」のところに入っているのですが、この場合の高齢者というのは、どのぐらいを想定した高齢者ですか。
○機構 一般的に言われている65歳以上が該当してくるかと思います。
○西澤委員 私は、一般的には75歳とか80歳を実相していたのです。実際に腎機能が落ちるのは、65歳ぐらいから落ちてくるということで、若干の言葉のずれがあるような気がしたのでお尋ねしただけです。この辺りは整理しておいていただければと思います。
○機構 検討させていただきたいと思います。
○望月部会長 ほかに、どなたか御意見はございますか。
○岩月委員 季節性の場合に、アレルギー反応が起こる前から終了時まで継続して服用することが望ましいというのが、医療用の添付文書には書いてあるのです。そういった記載とか、包装容量などで何か工夫があるかということをお尋ねしたいと思います。
○機構 添付文書の裏側、「用法・用量に関連する注意」の(3)に、「1週間服用しても症状の改善がみられない場合又は症状の改善がみられても2週間を超えて服用する場合は、この文書を持って医師又は薬剤師にご相談ください」と記載しております。
包装容量については、10錠を考えられているようです。
○岩月委員 現実にはかなり長いこと服用する方が多い薬剤です。もちろん最初から30錠包装を出してくださいということは、多分ないだろうと思うのですが、出す以上は最終的にユーザーの方々に便利にならないと、意味がないと思うのです。折角こういう記載があるのなら、少し御指導いただいてもいいのかと思います。結局、1か月間飲もうと思うと、10錠包装だったら3回買いに来なければいけません。そのたびに薬局に来て相談されるから、安全性が高まるという考えもあるでしょうけれども、こういう使い方をすることが前提で分かっているならば、もちろん承認が下りてからの話ですが、その辺も含めて配慮していただきたいと思います。現場で取り扱う者の意見としてはそのように思います。要するに、あまり細かく小さい包装を作るなということです。10錠包装などではなくて、販売してしばらくしてから事故が起きていなければ、30錠包装も考えてもいいのではないかという意味で申し上げました。
○機構 今、岩月委員からのご指摘の件ですけれども、OTCの場合は、基本的に長期投与するものではないという前提があります。そういうことからも、基本的に1週間使い、2週間を超える場合は専門家に相談してくださいという縛りを設けております。そういう意味では、頻繁に薬局なりに行って、薬剤師の方から御指導いただくという観点から、使っていただくということを前提にしておりますので、まとめ買いのようなことは、OTCとしてはあまり望ましくないのではないかと考えております。できれば必要最低限の包装錠数にさせていただきたいと考えております。
○望月部会長 ありがとうございます。ほかには何かございますか。
○廣江委員 今、OTCは長期で使ってはいけないとおっしゃったようですが、それがかなりの縛りになると思います。そう判断してよろしいのでしょうか。
○望月部会長 いかがでしょうか。OTCの長期利用というのは、前提としていないということでよろしいのかどうかということです。
○廣江委員 かなりの足枷になる可能性もあると思うのですが、いかがでしょうか。
○機構 今後新しい分野もあるとは思うのですけれども、原則そういう立場で使っていただくものということで、今お話いたしました。
○廣江委員 OTCの場合は、頓用という意味合いが強いのですか。
○機構 解熱・鎮痛薬といったものについては、頓用しか認めていないものもあります。その薬の性質によるものと考えております。
○望月(眞)委員 第2世代、第3世代となってきて、昔からあるタイプの抗ヒスタミン薬より、眠気や尿閉が起こるといった副作用がより少ない成分がスイッチされていくということは、私は非常に有り難いことだと思っています。どうしてもルール上、再審査が終了し、ある程度医療用医薬品としての効果と安全の評価が行われた上でないと、スイッチできないということがあります。先ほど川原委員がおっしゃっていたような点に関して、まだまだ審査上の配慮ができない状況にあるというのは、今のルール上は仕方がないことではないかと私は思いました。それにつけても、従来のジフェンヒドラミンのようなものが風邪薬とか、いろいろなものに入っていて、御高齢の方などが飲んだときのリスクを考えると、こうした新しいタイプのものをスイッチしていただけるというのは、消費者にとって非常に有益なことではないかと思いました。
 審査そのものではないのですが、スイッチOTCに関しては、必ず販売店向けの情報提供資料と、顧客向けの情報提供資料というのが作成されます。今回、佐藤製薬の方から、ほかの品目で申請されている販売店向けの資料を拝見いたしますと、従来のほかの製薬企業の販売店向けの資料に比べて、使用者側にとって分かりづらい資料になっていると私は感じました。つまり、販売店向けの資料というのは、なぜそういう注意が設定されたのか、用法・用量、効能・効果になったのかという理由をきちんと理解した上で、販売者が販売していけることが必要です。それが後ろの方にまとまってしまっていて、前半の方には一切そういう記述が書かれていない形になっているのです。使う側としては、非常に使いづらい資料になってしまっていると思います。私も、こうした資料を各製薬企業で共通化するというところまで申し上げるつもりはないのですが、もう少しきちんと使う側に配慮した形の作り方というのを、機構なりで御指導いただけると有り難いと思います。
○機構 申請者に伝えたいと思います。
○藤原委員 先ほどの望月先生のお話と同じです。今回も患者向けというか、お客様用の説明書というのがあるわけで、それと一緒に副作用のところで「自殺念慮」をもう少し柔らかくして、「願望」というのを出してきたと思うのですが、これはある意味、センセーショナルなことだと思うのです。確かに因果関係は複雑でしょうが、この2例の自殺願望の背景に、本当に機能的・器質的なものがなかったかどうかというのが分からない中で、一応副作用とされていると思います。御存知のように、アレルギー性鼻炎等々のアレルギー症状を起こすときというのは、なった方は多分分かると思うのですが、気分も非常に優れない状況になるのです。ですから、そういうことを患者さん、いわゆるお客様向けに伝えておくことも大事ではないかと思います。そういう不安が助長される部分もあろうかと思うので、やはりアレルギー性の症状についてのいろいろな情報提供というのも、一緒にしておくべきではないかと思いました。
○望月部会長 ありがとうございます。他にございますか。
○小澤委員 先日から抗ヒスタミン剤がたくさん出てきていて、皮膚科でもたくさん使うのです。これはジルテックと一緒ですから、ものとしては蕁麻疹にも効くし、痒み止めにもなるわけです。たしか昔、町に買いに行くと総合感冒薬とか抗真菌水虫用薬とか、「何々薬」というように、見ればすぐに用法が分かるように書いてあったのが、これには一切書いていないですね。箱のパッケージを見ても「アレルギー性鼻炎用薬」などとは書いていないのですが、それはそれでいいのですか。
○望月部会長 これについてはいかがでしょうか。
○機構 パッケージについては、まだデザイン等が検討中です。申請者にはその点を記載するようにお伝えしようと思います。
○望月部会長 見ただけで何の薬か、すぐに分かるようにという御意見だと思います。ほかはよろしいでしょうか。
 ただ今委員から、2つの意見を頂きました。妊婦に対する考え方、高齢者というのがどういう定義なのか、というものと、説明文書、特に販売店向けの情報説明をもう少し詳しい分かりやすいものにしないと、薬剤師が患者さんに説明するのが難しいのではないかという御意見が出ましたので、その辺りを十分御検討いただきたいと思います。そういうことを前提として、審議品目について議決に入りたいと思います。議題1「医薬品ストナリニZ、コンタック鼻炎Z、コンタック鼻炎24の製造販売承認の可否について」、本剤は条件付きで承認して差し支えないとしてよろしいでしょうか。
 ありがとうございます。それでは、これらにつきましては薬事分科会にその旨を報告させていただきます。どうもありがとうございました。
○事務局 御審議ありがとうございました。今、審議いただいた品目は、現在、同成分のセチリジン塩酸塩を含有する医療用医薬品として、「ジルテック錠10」の名前などが出ておりましたが、こちらについては処方せん医薬品の指定を受けております。審議いただいた結果、一般用医薬品として承認して差し支えないという了解をいただきましたので、セチリジン塩酸塩につきましては、「処方せん医薬品」の指定解除を行いたいと思っております。
○望月部会長 ただ今説明がありましたように、医療用医薬品であるセチリジン塩酸塩については、「処方せん医薬品」の指定解除ということになりますが、これについて御意見等はございますか。
○小澤委員 適応症とは関係なくですか。適応を通ったのは鼻炎だけですよ。
○機構 成分的に指定されておりますので。
○小澤委員 そうすると、あのときに審査した意味が何もないのではないですか。処方せんなしということは、蕁麻疹にだって湿疹にだって何にだって効くのですから、それに全部使えることになりますよ。
○機構 いえいえ、一般用医薬品としての。
○小澤委員 現実問題として、処方せんなしだって買えるわけですよ。あのときは適応症としてアレルギー性鼻炎だけになったはずですよ。それでしたら適応症など、縛る必要はないじゃないですか。これも同じことですね。それは矛盾しているのではないですか。去年か一昨年でしたか、3剤が通ったときに結局、鼻炎だけしか適応がなかったと思うのです。
○望月部会長 いかがでしょうか。事務局の方でまとめていただけますか。
○審査管理課長 いずれにしても医療用医薬品については、保険診療においては処方せんを用いて、当然引き続き処方せんの中に医薬品名を書いて処方するわけです。ただ処方せん医薬品から外しませんと、一般用医薬品についても医師の処方せんがないと薬局では買えない事態になってしまいますので、そこは解除するということを今お諮りしたということです。
○小澤委員 適応症は、きちんとアレルギー性鼻炎用薬になっているのかと聞いているのです。
○審査管理課長 適応については承認事項になっておりますので、もちろん医薬品としては承認事項の範囲でしか表示できません。承認事項で使うということで、基本的に承認制度は成り立っております。仮に承認外に使っても、副作用救済基金の被害救済制度の対象にはなりませんので、法律上の被害救済の面では明らかに効果が違ってまいります。自己責任で薬事法上承認されていない効能、あるいは用法・用量で個人が使うことまで薬事法上縛ることができるかという御質問だとすると、それはできないかもしれません。
○小澤委員 現実にはできないですよ。あるものを買ってしまうのですから。だからこそ「これはアレルギー性鼻炎の薬です」と書いた方がいいのではないか、ということになるわけです。それは国として、国民の健康を何も考えていないですね。勝手に使ったのだから知りませんよということですから。そうでなかったら、なぜあのときにいろいろな効能・効果があったのに、鼻炎に絞ったのかということになりますね。
○審査管理課長 先生、それは法律上の効果から考えていただきたいです。指定の成分で仮に効能・効果だけ縛ったとしても、その法律上の効果において使用者に対する使用制限という法律上の規定がありませんと制限できません。
○小澤委員 それは分かりますけれども、それでしたら親切にそのように書いてあげたらどうかと言っているだけです。
○望月部会長 先ほどの小澤委員の御意見に出ましたように、外箱パッケージをこれから作るということですので、そこにはっきりと、アレルギー性鼻炎の薬だということが分かるようにしたらいかがかということですね。それを前提に、ただ今の指定解除ということが成り立つだろうというお考えですので、この点は御検討いただきたいと思います。よろしいでしょうか。
○機構 その点は申請者の方にきちんと伝えます。
○望月部会長 それでは以上でこの審議事項を終わらせていただきます。続いて審議事項議題2「医薬品ゲンタシンS軟膏、ポリベースGの製造販売承認の可否について」、医薬品医療機器総合機構より説明をお願いいたします。
○機構 それでは機構より御説明いたします。販売名はゲンタシンS軟膏他1名称、申請者は佐藤製薬株式会社です。
 資料2、審査報告書の審査報告1ページを御覧ください。本剤は、ゲンタマイシン硫酸塩を有効成分とする医療用医薬品「ゲンタシン軟膏0.1%」と同一の製剤を一般用医薬品とするものです。2ページを御覧ください。一般用医薬品の同種同効薬としては、「スルファジアジン」「ホモスルファミン」等のサルファ剤が販売されております。また、クロラムフェニコール、フラジオマイシン硫酸塩等の抗生物質製剤が昭和42年以前に承認され、現在第二類医薬品として販売されております。本剤を一般用医薬品とすることの意義について申請者は、現在販売されている抗生物質と異なる成分であり、セルフメディケーションの選択肢を広げること、医療現場において40年以上にわたる使用実績があり、既に有効性と安全性が確認されていること等を述べております。
 品質について本剤の規格及び試験方法は、医療用医薬品の規格及び試験方法によるほか、確認試験については実測値に基づいて設定されました。本剤の安定性、薬理、薬物動態及び毒性については、医療用医薬品申請時の試験成績がまとめられており、新たな試験は実施されておりません。同ページ下段を御覧ください。本項については、医療用医薬品申請時の臨床試験成績及び医療用医薬品が対照薬として設定された他剤の、二重盲検試験に関する研究報告の再集計結果がまとめられており、新たな試験は実施されておりません。
 有効性について、医療用医薬品申請時に提出された臨床試験成績のうち、本剤の対象疾患を対象としている試験について、疾患別にまとめた結果は3ページの表1にお示ししたとおりです。また、医療用医薬品を対照薬とした0.1%シソマイシン硫酸塩軟膏の二重盲検試験において、浅在性の毛のう炎に対する医療用医薬品の「有効」以上の有効率は、塗布3日目で46.2%、5日目で66.7%、7日目で81.8%でした。伝染性膿痂疹及び膿痂疹性湿疹に対する「有効」以上の有効率は、3日目で80.0%、5日目で79.3%、7日目で80.6%でした。また、重症度別総合評価において、一般用医薬品である本剤の対象と考えられる軽症に対する有効率は、83.8%でした。
 安全性について、医療用医薬品申請時にまとめられた臨床試験において、臨床効果判定不能例及び二重盲検試験症例を含めたすべての症例報告を集計した結果、2.4%に副作用が見られました。症状はいずれも発赤、掻痒感、紅斑等の一過性の刺激症状であり、重篤なものは報告されておりません。また、0.1%シソマイシン硫酸塩軟膏の対照薬として使用された二重盲検比較試験では、医療用医薬品塗布群の副作用発現率は1.3%で、症状として塗布時に刺激感が認められたのみでした。
 4ページ中段を御覧ください。本剤の申請時の効能・効果は「□□□□□□□とびひ、□□□□□□□□□□、□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□」とされており、機構はその妥当性について検討を行いました。「□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□」については、医療用医薬品承認時の臨床試験結果について、詳細な創傷の程度を確認することができなかったと申請者からの説明があったことや、医療用医薬品承認時の臨床試験の再解析の結果に示された皮膚の障害度が軽度の範囲内であるとは考えがたいこと等により、機構はこれらの効能・効果を標榜することは適当でないと判断いたしました。申請者はこれらを踏まえ「□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□」の効能・効果を削除することとしました。
 「□□□□□□□□とびひ、□□□□□□□□□□」の「とびひ」については、小児が罹患することが多いと予想され、非水疱性膿痂疹の場合は治療が遅れた場合、重症化し、糸球体腎炎を併発する恐れもあることから、一般用医薬品である本剤については、水疱性膿痂疹であって、かつ病変が局在している場合に使用を限る必要があると考え、機構は申請者にとびひにおける使用の制限を定めるよう求めました。申請者は、本剤の添付文書において水疱性膿痂疹に限ることとし、かつ、とびひの数が3~4までの場合に用いることとすると回答し、機構はこれを了承しました。また、機構は「□□□□□□□□とびひ、□□□□□□□□□□」の「□□□□□」及び「□□□□」については、専門的な用語であり、使用者に分かりづらい点があると思われること等から、見直しを求めました。申請者は、一般用医薬品の添付文書用語に関する理解度調査を基に、より使用者が理解しやすい一般用語である「おでき」に変更すると回答し、機構はこれを了承しました。
 続きまして、5ページ中段を御覧ください。機構は耐性菌の出現可能性等について説明を求めました。申請者は、0.1%ゲンタマイシン軟膏を皮膚に塗布すると皮膚表面には理論上約895μg/mLのゲンタマイシンが存在するが、ゲンタマイシン耐性ブドウ球菌の最小発育阻止濃度(MIC)は128μg/mL以下であったとの報告があることから、本剤が通常に使用されている場合には、新たに耐性菌を生じることや耐性菌を増やすことはほとんどないと考えられると説明しました。
 また申請者は、アミノグリコシド系抗生物質耐性菌の主な耐性機構は、アセチル化酵素等のアミノグリコシド修飾不活化酵素の産生による薬剤の不活化であるため、各薬剤に対する基質特異性があり、アミノグリコシド系抗生物質の間では、交叉耐性の出現頻度が低いと考えられていると述べた上で、内在性遺伝子の変異ではなく、外来性遺伝子のプラスミドが耐性菌から感受性菌へ伝播することによるものであるため、一般用医薬品の使用環境では、患者や医療従事者の多い医療現場に比べ、プラスミドが伝播しにくく、耐性菌が生じにくいと思われると説明しました。申請者は耐性菌の出現及び伝播を防ぐ対策として、使用上の注意に「本剤を3日間使用しても症状がよくならない場合は使用を中止し医師又は薬剤師に相談すること」及び「症状がよくなった場合にはできるだけ速やかに使用を中止すること」を記載し、一般使用者に適正使用を促すこと、また耐性菌は患部に触れた指等から伝播すると考えられることから、添付文書の保管及び取扱上の注意に、「使用前後によく手を洗うこと」を記載し、注意喚起を行うことを挙げております。さらに、申請者は耐性菌が生じた場合に早期に対応するための方策として、耐性菌の動向を常に把握するため、学会や文献等により情報を得ること、使用者や販売店から寄せられた有効性に関する情報を収集すること、医療用医薬品の製造販売を行っているMSD株式会社と耐性菌に関する情報を共有することを挙げ、耐性菌が懸念される場合には皮膚科専門医及び薬剤耐性菌の専門家に相談し、販売継続の是非を含めて、調査及び検討を行うと回答しました。
 機構は、申請者が耐性菌の出現に関する調査等及び検討を今後も継続して行いつつ、状況に応じて迅速かつ的確な対応を図ること、並びに、本剤の販売時・使用時に際しては、薬剤師から一般使用者に対し適切な情報提供が行われ、それに基づき、一般使用者において本剤の使用上の注意の記載事項等が遵守されることを前提に、本剤の耐性菌にかかる申請者の施策について了承しました。
 続きまして、6ページ~7ページを御覧ください。本邦における伝染性膿痂疹及び毛のう炎の治療に関しては、エビデンスに裏付けられた明確な指針が示されていることを確認できないものの、種々の皮膚科学領域等の成書等によると、伝染性膿痂疹の治療としては抗菌薬の内服、毛のう炎の治療としては、軽度で広範囲でない場合には原因菌に感受性の外用又は内用の抗菌薬が使用されているようです。
 機構は、外用剤である本剤の必要性について申請者に説明を求めました。申請者は、一般用医薬品は軽度な症状に対して使用されるものであり、軽度のおでき及びとびひには外用の一般用サルファ剤や抗生物質製剤が使用されていると回答しました。申請者は、とびひは感染の拡大や他者への感染の恐れがあるため、患部の増悪や全身への影響を軽減又は回避し、他の部位や他者への感染を考慮することは必要な対応であり、軽症のうちに早い対応をとることが大変重要であると説明しました。
 機構は、本申請に当たって提出された資料における症例数等からは、科学的かつ客観的な評価を行うことに限界があるものの、本剤が医療現場で非常に長年にわたって使用されてきた事実等を踏まえると、その有効性を否定することは困難であると考えました。
 「効能・効果」及び「用法・用量」については、7ページ~8ページに記載のとおりです。「使用上の注意について」は、8ページ~9ページを御覧ください。申請当初からの主な変更点は、「相談すること」の1の(5)に、「発熱などの全身症状がある人」が追記された点、「相談すること」の2に、「このような皮膚症状は本剤に感作された場合の初期症状としてあらわれるため、十分に観察を行ってください」が追記された点、「相談すること」の3に、「3日間使用しても症状がよくならない場合は使用を中止し、この文書を持って医師又は薬剤師にご相談ください。(本剤のようなアミノグリコシド系抗生物質の耐性菌又は低感受性菌による感染のおそれがあります)」が追記された点です。
 最後に、9ページの「3.総合評価」を御覧ください。以上の検討を行った結果、機構は以下の効能・効果、用法・用量において本剤を承認して差し支えないと判断いたしました。なお、承認条件として、「承認後、少なくとも3年間の安全性等に関する製造販売後調査を実施すること」との条件を付すことが適当であると判断しております。説明は以上です。御審議のほど、よろしくお願いいたします。
○望月部会長 ありがとうございます。引き続き、事務局からお願いいたします。
○事務局 事務局から追加いたします。本品目については、日本皮膚科学会及び日本臨床皮膚科医会より、これから申し上げる四つの理由により、一般用医薬品への転用に反対するとの意見が届いておりますので紹介いたします。
 一つ目が、ゲンタマイシン硫酸塩外用薬の一般用医薬品への転用により、更なる耐性菌の出現が危惧されるとのことです。ゲンタマイシン硫酸塩外用剤は、これまで安易に使われ過ぎてきたことで耐性菌が増加している薬剤であり、近年、皮膚科では使用を控え、耐性菌も減少傾向にあるとの報告がある。また、本剤の黄色ブドウ球菌に対する感受性は、50%程度しかないものと考えられる。一般用医薬品への転用は、更なる耐性菌出現の危険性を高める可能性が高いとの御意見です。さらに、日本だけ転用される必要性についても理解に苦しむとのことです。
 二つ目が、適切な治療法の選択には医師の関与が不可欠であるとのことです。ゲンタマイシン硫酸塩外用剤の適用によっては、外用剤のみでは効果がなく、内服が必要になるものもあり、またブドウ球菌でなく、溶連菌が原因の腎炎などを合併する場合も内服が必要であり、これらの診断には医師の判断が不可欠である。また、ゲンタマイシン硫酸塩外用薬では、耐性菌によって効果が期待できない菌種があり、症状が悪化すると危惧されるとの御意見です。
 三つ目が、最善の治療の機会を失う危険性があるとのことです。患者自身又はその家族の自己判断により、ゲンタマイシン硫酸塩外用薬を使用した場合、耐菌性のため症状が悪化し、他人への伝染拡大を含め重症症状に至る危険性がある。一般用医薬品を過信するあまり、医療機関への受診機会を失い最善の治療を受けられないことは、費用対効果の観点からも国民に不利益が及ぶ危険性が高いと懸念されるとの御意見です。
 四つ目が、他の一般用医薬品との配合で、国民の健康被害の拡大が懸念されるとのことです。本剤が承認された場合、既に第二類医薬品である吉草酸ベタメタゾンとの新たな配合剤が販売できる環境となる。医療用医薬品リンデロン-VG軟膏があまりにも有名で、知名度の高い薬だけに、安易に一般販売されれば、耐性菌を含めて誤った使用法、強力なステロイド外用剤での副作用による国民の健康被害の拡大が危惧される。以上の意見をいただいております。
○望月部会長 ありがとうございます。ただ今の学会からの意見に関して、機構は何か御意見ありますか。
○機構 大きく分けて4点いただいていると思います。審査報告の中でいろいろと説明させていただき、その中でも大分お答えしている部分があり繰り返しになりますが、もう一度説明させていただきます。
○機構 1点目の、ゲンタマイシン硫酸塩外用剤の一般用医薬品への転用により、更なる耐性菌の出現が危惧されるという点については、審査報告5ページ~6ページに記載のとおりです。まず、耐性菌が生じる可能性が非常に低い根拠として、申請者は次の2点を説明しております。
1点目は、外用剤である本剤は非常に高濃度であるということです。0.1%ゲンタマイシン軟膏を皮膚に塗布すると、皮膚表面には理論上約895μg/mLのゲンタマイシンが存在しますが、ゲンタマイシン耐性ブドウ球菌の最小発育阻止濃度(MIC)は128μg/mL以下であったとの報告があることから、本剤が通常に使用されている場合には、新たに耐性菌を生じることや耐性菌を増やすことはほとんどないと考えられるということです。
 2点目は、本剤に対する耐性機構そのものが耐性を生じにくいということです。アミノグリコシド系抗生物質耐性菌の主な耐性機序は、アセチル化酵素等のアミノグリコシド修飾不活化酵素の産生による薬剤の不活化であるため、各薬剤に対する基質特異性があり、アミノグリコシド系抗生物質の間では交叉耐性の出現頻度が低いと考えられ、その上で内在性の遺伝子の変異ではなく、外来性遺伝子のプラスミドが耐性菌から感受性菌へ伝播することによるものであるため、一般用医薬品の使用環境では、患者や医療従事者の多い医療現場に比べプラスミドが伝播しにくく、耐性菌が生じにくいということです。さらに、耐性菌の出現及び伝播を防ぐ対策として、申請者は次の2点を挙げております。使用上の注意に「本剤を3日間使用しても症状がよくならない場合は使用を中止し、医師又は薬剤師に相談すること」及び「症状がよくなった場合にはできるだけ速やかに使用を中止すること」を記載し、一般使用者に適正使用を促す。耐性菌は患部に触れた指などから伝播すると考えられることから、添付文書の保管及び取扱上の注意に、「使用前後によく手を洗うこと」を記載し、注意喚起を行う。また、耐性菌が生じた場合に早期に対応するための方策として、申請者は耐性菌の動向を常に把握するため、学会や文献等により情報を得ること、使用者や販売店から寄せられた有効性に関する情報を収集すること、医療用医薬品の製造販売を行っているMSD株式会社と耐性菌に関する情報を共有することを挙げ、耐性菌が懸念される場合には皮膚科専門医及び薬剤耐性菌の専門家に相談し、販売継続の是非を含めて調査及び検討を行うと述べております。
 機構は、申請者が耐性菌の出現に関する調査等及び検討を今後も継続して行いつつ、状況に応じて迅速かつ的確な対応を図ること、並びに、本剤の販売時・使用時に際しては、薬剤師から一般使用者に対し適切な情報提供が行われ、それに基づき一般使用者において本剤の使用上の注意の記載事項等が遵守されることを前提に、本剤の耐性菌にかかる申請者の施策について了承いたしました。
 さらに補足として、日本皮膚科学会等からの要望書に示されておりますゲンタマイシン硫酸塩の黄色ブドウ球菌に対する感受性は50%程度しかないという点についてですが、皮膚疾患患者由来の黄色ブドウ球菌に関するものと推測されますが、日本皮膚科学会等が提示した東京薬科大学の岩木らの論文に記載されているとおり、健常者由来の黄色ブドウ球菌のゲンタマイシンに対する耐性率は10%という報告もあり、市中感染によるという一般用医薬品の使用環境においては、黄色ブドウ球菌がゲンタマイシンに対して耐性が生じている確率は低いと考えております。
 2点目、3点目の、「おでき」「とびひ」の適切な治療法の選択には医師の関与が不可欠である。おでき、とびひに対する最善の治療機会を失う危険性がある。この2点についてまとめてお答えいたします。非水疱性膿痂疹や深在性の皮膚感染症の場合など、薬局で対応すべきでない症状、患者の場合には積極的に受診勧奨をすることとし、また、使用上の注意に「本剤を3日間使用しても症状がよくならない場合は使用を中止し医師等に相談すること」としておりますように、医薬連携を図ることを前提としております。審査報告4ページに記載のとおり、本剤の添付文書において、水疱性膿痂疹に限ることとし、かつ、とびひの数が3~4までの場合に用いることにしております。水疱性膿痂疹は水疱を形成するという特徴があり、薬剤師や一般使用者にも自己判断が可能と考えております。
 また、審査報告7ページに記載のとおり、軽度のおでき及びとびひには、一般用の外用サルファ剤や抗生物質製剤が既に使用されており、サルファ剤に関しては、現在も「□□□□□□□□とびひ、□□□□□□□□□□」の効能・効果で承認しております。申請者は、とびひは感染の拡大や他者への感染の恐れがあるため早期治療を行うことが大変重要であり、OTCとして価値があると述べております。なお、本剤のスイッチ化については、審査の過程において皮膚科専門医の教授から賛成の意見書が提出されております。
 4点目の国民の健康被害の拡大が懸念されるという点について、お答えいたします。一般用医薬品の場合、他剤との併用は想定しておりませんが、必要であれば、添付文書及び情報提供資料に明記いたします。一方、新しい配合剤が続々と承認されることを懸念されているのであれば、従来、一般用医薬品全般的に新規性の高い配合剤の承認については、審査の立場からも慎重に対応しているところであり、一般用医薬品としての必要性等が十分に認められない場合、承認はしておりません。なお、既承認一般用医薬品におけるステロイド剤と抗菌剤の配合剤については、非常に古い承認のものばかりであり、現在は新たに承認しておりません。以上です。
○望月部会長 ありがとうございます。これらの意見に対して、小澤委員から何かありますでしょうか。
○小澤委員 皮膚科ということで申し上げますが、今の学会からの質問に対する回答について、非常によく調べられているし、きちんと答えられていると大変感心いたしました。しかし、内容で多少理解が違うところが幾つかありますので、それだけはお伝えしておいた方がいいと思いますのでお話いたします。
 非常に濃度が高いということで895μg/mLという数字が書いてありますけれども、あれはワンフィンガーチップ以上のものを使っていて、それだけのものを臨床で使うわけはないのです。どのぐらいの量か、一度塗ってみてください。それほどベタベタ塗るわけはなくて、薄いはずです。そうすると耐性菌ができる可能性はあるということで、そこが書かれていないです。これは論文上にありますから、気を付けられた方がいいと思います。これはやり方が違うのではないかというのが一つあります。
 クエスチョン2と3に関してですが、3日間に対する薬効に制限をつけることは非常にいいことなので、是非制限してほしいのですけれども、現実に臨床や外来を毎日やってきますと、付け薬を付けている間に、一気に全身に広がってしまうのです。ですから、急性期の場合はまず病院に来てほしいというのが皮膚科学会の考えだろうと思います。慢性の疾患だったら、1週間、10日ですから別にいいですけれども、失敗すると2日か3日で高熱が出ますから、それを懸念するのだと思います。
 最後に、配合剤での懸念されることに関してもこのとおりだと思います。後ほど私の意見としてもお話したいのですけれども、リンデロン-VGというオバケのような薬があります。もう40年も経っていて、何科の先生も、あるいは素人も、私の娘であっても「VG付けて」と言ってくるぐらいよく知られています。これができたときの経緯は御存知かと思いますが、要するにステロイド外用剤としては非常によく効くけれども、それに対する二次感染あるいは感染症を含んだときに困るだろうというのでゲンタシンが入ったわけです。しかし、よく考えてみれば、ゲンタシンの最初の開発は緑膿菌に効く薬ということで、特殊な位置付けだったわけです。それを入れて使ったけれども、結局、10年後にG(ゲンタシン)が入っているリンデロンとGが入っていないリンデロンを比べたら、有効性に何の差もなかったのです。Gは何のためにあるのかと言ったら、あれは単に感作しているためだけにあるわけで、皮膚科ではほとんど使いません。ところが、VG軟膏が有名になり過ぎてしまい、ほかの科の先生が非常にたくさん使っていて、実際に感作を起こしているわけです。先ほどの説明の範囲で、ほとんど副作用はありませんと平然とおっしゃったけれども、ひどいものです、外来に一度来てみてください。VGとゲンタシンでたくさんかぶれを起こしています。しかし、私どもはそんなものは一々報告しません。毎日何百人といる患者さんの中の何例あったかなどというのは一々報告はしませんので、やるのであれば、副作用に関してはきちんと調査をしてからやった方がいいと思います。学会への回答に関しては、学会が何と言うか、また聞いてみてください。私は補足をさせていただいただけです。
 今度は委員として言いたいことがあるのですけれども、先ほども言ったように、ゲンタシンという薬は非常に緑膿菌に効く、今は50%ぐらいしか効かなくなってきたことも事実ですが、そのような使い方をする薬をむやみやたらに外用薬として使っていいのか。実は30年前、今の臨床の先生もそうかもしれないけれども、付け薬は大丈夫だという考えがものすごくあったのです。とんでもないことです。付け薬というのは感作しますし、浸透力が強いですから、体内に入っていろいろなことを起こします。そのように考えると、何が困るかと言うと、ゲンタシンでかぶれた場合、かぶれはいいのですが、そのとき抗体を獲得したら、将来、呼吸器内科、消化器内科、外科、その他で緑膿菌に感染したときにゲンタシンが使えない、今そういう症例がたくさん出てきているのです。しかし、会社は追跡調査をやっていない。30年分の追跡調査をしていれば出てきますが、出てこない。しかし、臨床の現場ではそうです。ですから、皮膚科の領域ではVGはもう使わないはずです、使っている人は専門医ではないはずです。そんな感作を起こすのならやめた方がいいです。私は40年近く臨床をやっていますけれども、傷にゲンタシンを出したことはないです。御存知だと思いますけれども、我々はバラマイシン、ネオマイシン、フラジオマイシンとか、内科や外科の先生たちが使わない薬を使っています。そうすればそれで感作しても、内科の先生が点滴をやっても当たりませんから、患者さんにとっては非常にいいことなので、我々皮膚科医、本当の専門医はそういうものを使っています。皮膚科の本当の専門医は、日本にはたった6,000人しかいないのですが、皮膚科を診ている人は20万人いるのですから、これはもう無理な話で仕方がないと思いますけれども、ゲンタシンをOTCとして認めれば、それを使う頻度が増加していったら更に感作します。皆さん、将来それでいいのですかと私は思います。ゲンタシンは緑膿菌にはよく効きますし、今でも50%効くのですから、そういう薬はきちんと使った方がいいのではないでしょうか。それが国民のためだろうと私は思います。これは私の意見ですけれども、再考された方がいいのではないでしょうか。
○望月部会長 ありがとうございます。そのほか何かあればお願いいたします。
○鈴木委員 小澤先生が言われるのはもっともだと思います。資料を見ますと、海外では同じものは発売されていないということですけれども、発売されていないのはどのような理由からか、教えていただけますか。
○機構 本剤が海外で一般用医薬品として販売されていない理由ということでよろしいですか。
○鈴木委員 そうです。
○機構 申請者が医療用医薬品の製造販売会社であるMSD株式会社に確認したところ、その理由は不明とのことでした。また、パブメドで検索しても、該当する文献はなかったと説明しております。
○鈴木委員 もしかすると、今、小澤先生が言われたようなことを懸念して海外ではそういうものは使わないとしているのかもしれません。一般用にしたら、更に安易に使われる可能性があると思いますので、是非お調べいただきたいと思います。今回ゲンタマイシンSが出ることになったわけですが、一般用医薬品部会に申請するルートとして、関連の学会に意見を求める場合と求めない場合があることが分かってきました。今回のゲンタマイシンSは、直前には上がってきましたけれども、事前に学会に御意見は伺っていなかったわけですか。
○事務局 本品については、申請者から直接申請がありまして、日本薬学会から出てくる報告書について、医学関係学会にお聞きするというルートの方は通しておりません。
○鈴木委員 直前とはいえ、こういう学会からの要望書が上がってきて、申請者とかなり異なる意見が書かれているわけです。申請者は売りたくて書いてくるわけですから、実際に使っている人の方が本当だろうと思います。こういうことが起きるので事前に学会の意見を聞かないルートは、私はやめるべきだと思います。すべて事前に学会の意見を聞いてから出していただくということに統一できませんか。
○審査管理課長 申請そのものを閉ざすことまではできないのですけれども、私どもも基本的には関係学会の先生方にコンセンサスを得ることは必要だと思っております。このような審議会であれば、有識者として関係学会の先生の意見をこういう形で聞かせていただいているという認識ではありますが、そこの調整はできるだけ図らせていただき、そうした工夫はしていきたいと思っております。
○鈴木委員 今のは非常に曖昧なお答えで、例えば小澤先生がいらっしゃるからいいではないかと言っているようにも聞こえるのですが、そうした個人の意見ではなく、個人に責任を押し付けることにもなりかねませんから、やはり学会や医会の意見を総意として聞くという前提が必要ではないかと思うのですが、それについてはいかがですか。
○審査管理課長 そういう努力はさせていただきたいと思います。
○鈴木委員 次回からそのようになると理解してよろしいですか。
○審査管理課長 今回のは非常に古くから使われている成分ですが、この点だけは御理解いただきたいと思います。一般用医薬品として申請する場合、どのような形で、どのような効能で申請するかというのは、ある意味では申請しないと分からないところがあります。申請したものについては製剤の創意工夫などがありますので、そのような意味では申請書の中身をそのまま学会にお諮りするというのは、正直申し上げて、それはできないと思っております。ただ、スイッチする成分の候補としてそれを選定するに当たっては、新薬として承認されて、再審査期間が終了した直後のようなものを対象に、これまで新しいスキームで関係学会に御意見を聞いてきたのですが、今後、古い成分についてスイッチするというものであれば、申請前に聞けるような工夫があるかどうか、そのような意味で検討させていただきたいと思っております。要するに、申請後に個別の審査を関係学会に委託してお願いするという形は、これは形式上できないと思っております。
○鈴木委員 もちろん、審査はここでやるわけですが。
○審査管理課長 その前の段階で、成分として御意見を伺うということができるかどうか、そこは検討させていただきたいと思います。
○鈴木委員 例えば、この薬は古いからいいではないかとおっしゃるけれども、そうではないのです。逆に、古いが故に、いろいろな問題点を引き摺ったまま今日に至っているわけです。スイッチOTC化は、これを更に野放しにしようという話ですから、やはり慎重にすべき話だと思うし、本日認めることはできない話だと思います。こういうことがあるから、企業の言い分だけを聞いていたのでは判断できないので、事前に関連学会の意見を聞いてはどうですかという、ある意味、当然の話だと思うので、是非そのようにしていただきたいと思います。
○望月部会長 ただいまのような意見があったということを残しておいてください。次に、藤原委員からお願いいたします。
○藤原委員 この抗生物質については、皮膚科の先生方はいろいろな懸念をされているとは思っておりました。ただ、現場としては、数はそれほど多くはないのですけれども、先ほどの合剤、ステロイドと抗生物質の入ったものを尋常性ざ瘡というか、にきびなどに簡単に使っているという実態が多少あると思います。そのような意味では、単体で化膿の初期、小さなおできなどのときに使ってもいい。薬剤師がこれぐらいだったらと判断して、先ほど、とびひならば三つなどと言われていましたけれども、初期ならば、一般者にとっては非常に利便性というか、初期のうちに対処できるということでは、特徴が非常にあると思っております。おできというイメージが、感覚的に大きなもの、かなり腫れたものを想定してしまうと思うのですが、そのようなときはすべて薬局では内服が必要だということで、医師の受診を勧めております。そのような防御もできると思いますので、是非お願いしたいと思っております。
○西澤委員 先ほどの学会からの御意見で一番重要なのは、やはり耐性菌の問題だと思うのです。耐性菌の回答は先ほどの審査報告の中にもあって、論理的な回答はされているのですが、皮膚科学会がおっしゃっていることと、すれ違いの論理なのです。皮膚科学会は耐性菌が発生していると言われています。その実態をきちんと報告して、それがどのようなものであって、それでもこれは大丈夫だと言わないと、耐性菌に対する回答にはならないと思うのですが、論理的にはいかがですか。
○機構 皮膚科学会の先生方から御提示いただいた論文にある50%というのは、恐らく皮膚疾患患者由来の菌株を用いた場合の耐性菌の率でして、同じ論文の中に、健常者の市中感染による耐性菌の率を調べたものも載っておりますけれども、それでは10%となっております。一般用医薬品が使われる環境というのは、基本的に市中で使われるわけですから、基本的に耐性菌の率はそれほど高くないと判断しております。
○西澤委員 一般的な健常者から出てくる菌で、耐性菌がほとんど発生していないというのは当たり前だと思うのです。
○機構 逆に、市中感染由来の菌株を用いた耐性菌の報告というのは、あまりないのです。そのような意味で、今後はそういうことをきちんと追っていってくださいと申請者にはお願いしておりまして、その上で適正使用していただきたいと考えております。
○西澤委員 ただ、先ほどの耐性菌が発生しないという論理とは合っていないと思います。
○望月部会長 そのほか何かご意見があればお願いいたします。
○鈴木委員 とびひですが、要望書にもありましたが、学校保健上、医師の治癒証明がないと登園、登校が認められないことになっています。そのような医師の関与が必要だということと、スイッチOTCとどのように整合性を取られるつもりですか。
○機構 学校保健の取扱いですけれども、医師の診断がなければ、学校に行ってはいけないというルールにはなっていないと認識しております。そうした部分が必ずなされなくてはいけないということではなくて、あくまでも事業所ごとにそういった取扱いをした上で、必要に応じて医師の判断が必要になると考えております。
○鈴木委員 医師の判断が必要なのですね。スイッチOTCは医師が関与しないのでしょう。そうだとしたら矛盾しているのではないですか。
○小澤委員 診断書がなかったら欠席になってしまいますから、お子さんはみんな行きます。行ったら、学校でみんなにうつしてしまいます。それだけの話ですが、おかしいのではないですか。診断した以上は、治癒証明が必要になります。
○望月部会長 その点は頭に入れておいていただいて、そのほか御意見があればお願いいたします。
○岩月委員 児童、生徒の場合、医師の診断があって、治癒したということがないと学校に来てはいけないと、そういうことを要求されるのであれば、OTCを買いに来るはずがないと私は考えます。
○鈴木委員 それは販売業者の論理であって、そのような規定があるということは、それだけ重要な病気だということですから、やはり医師の管理下で治療すべきだと思います。
○機構 ただ、この一般用医薬品の使用範囲というのが、とびひの場合ですけれども、鈴木先生が言われるような非常に広範囲の重症の患者に用いることが前提ではなく、あくまでも体に三つか四つ程度、それも3日間しか使わないのが前提です。重症のものに用いるのではなくて、あくまでも初期の治療として、バイ菌を殺す前提で用いるものですから、鈴木委員が想定されていることと、この品目の想定されている場というのが少し違うのではないかと考えます。
○鈴木委員 臨床を知らないと、そのようにおっしゃるかもしれませんけれども、最初から軽いものか、重くなるものかなどというのは分からないです。先ほど小澤先生もおっしゃったように、すぐに広がっていくわけですから、やはり早期の診断と治療が必要だと思います。
○機構 ですから、三つか四つ程度しかなければという話です。
○望月部会長 いろいろな意見があるようですが、いかがでしょうか。
○小澤委員 臨床的に三つか四つが軽症なんて、誰が決めたのですか。私は初めて聞きました。鼻の下にできているだけで、広がります。あなたはお子さんはいらっしゃいませんか。お子さんにそれがあったら、幼稚園もどこにも行けませんよ。例えば、とびひと診断されたことが確認できている人に塗るのであれば、これは分かるけれども、急性の発疹症ですから、少し違うと思います。
○審査管理課長 御指摘のとおり、適用というのは、基本的には申請者の考えによるところです。ここは大きな論点だと思いますから、御指摘の点は申請者にきちんと問いたいと思います。
○望月部会長 本日のこの場では委員の意見と噛み合っているとは思えませんので、ここで決定するのは無理だと思います。継続審議という形にしたいと思いますので、事務局は申請者に本日の部会の内容、特に先生方あるいは薬局の方の意見をよく説明して、今後どのように対応するべきかを考えて、もう一度出していただきたいと思います。そのようなことで、よろしいでしょうか。
 それでは審議事項議題3「医薬品エパデールT、エパアルテの製造販売承認の可否について」の審議に入りますが、参考人の東京慈恵会医科大学附属柏病院総合診療部部長であり、日本動脈硬化学会の理事でもある多田先生にも加わっていただきたいと思います。
── 多田参考人入室 ──
○望月部会長 どうぞよろしくお願いいたします。まず、審査管理課から説明をお願いいたします。
○事務局 審査管理課より説明させていただきます。エパデールT、エパアルテについての説明をさせていただきます。本品目の概要として、有効成分がイコサペント酸エチル、効能・効果が、健康診断等で指摘された境界領域の中性脂肪異常値の改善であるスイッチOTCであり、服用対象者は健康診断等で中性脂肪値が境界領域の範囲150mg/dL以上、300mg/dL未満であることとされています。また本剤は海外での承認はありませんが、DHAとEPAを有効成分とした高トリグリセリド血症等を効能とした一般用医薬品が、イギリス、ドイツ、フランスで販売されております。承認条件としては、通常課せられる3年の安全性に関する製造販売後調査に加え、市販後の薬剤師の関わりが特に重要となるため、一定数の症例データが蓄積されるまでの間は使用実態に関する調査を実施して、的確な服用対象が選択されているか、適切な受診勧奨が行われているかなどを調査することとしております。本申請は、平成22年11月24日と、平成23年2月24日の2回、本部会で御審議いただいており、これまでの御指摘を踏まえた対応策を事務局において検討することとされておりました。本日は前回までの審議資料に加え、当日配付資料4とした事務局で取りまとめた、エパデールT、エパアルテの審議に係る一般用医薬品部会での御指摘と対応、新たに改訂した添付文書、セルフチェックシートを配付しております。
 エパデールT、エパアルテの審議に係る一般用医薬品部会での御指摘と対応を、御覧ください。本部会において、これまでの審議におきまして本資料の四角で囲まれている3点の御指摘をいただいております。それぞれにつきまして御指摘の内容と対応を説明させていただきます。
 1点目ですが、本剤の対象である中性脂肪が高値の患者は、糖尿病等の疾病が隠れている場合があり、医療機関を受診せず、本剤を服用することは早期発見を妨げる可能性があるのではないかとの御指摘です。これにつきましては、お手元の添付文書の裏側の効能欄を御覧ください。効能欄の四角囲みに、「狭心症、心筋梗塞、脳卒中と診断されたことがある人、高脂血症、糖尿病、高血圧症で治療中の人や医師の治療を勧められた人は、この薬を服用しないでください」を追加することによって、注意を促すことといたしました。
 添付文書の表側を御覧ください。従前より添付文書に記載しているものですが、「してはいけないこと」の欄の「1.次の人は服用しないでください」にある、「高脂血症、糖尿病又は高血圧症と診断され現在医師の治療を受けている人、あるいは健康診断等で医師の治療を勧められた人」、その下の「相談すること」の欄の、「1.次の人は服用前に医師又は薬剤師に相談してください」とする項目にある、「(1)医師の治療を受けている人又は他の医薬品を服用している人」については、引き続き記載し注意喚起しております。
 また、お手元の「エパデールT購入時のセルフチェックシート」を御覧ください。このチェックシートは、本剤の購入時に薬剤師が服用の可否を購入者とともに確認するもので、初回の購入時のみならず、2回目以降についてもそのたびに確認をすることとしています。2.欄の6番目のチェックボックスに記載のとおり、脂質異常症(高脂血症)、糖尿病、高血圧症についても具体的な検査値を示して該当するかどうかを確認し、異常値がある場合には医師の診断を勧めることとしています。このチェックシートの裏側は購入2回目以降のものですが、こちらの方も同様に記載して、異常値がある場合には医師の診断を勧めることとしております。
 2点目ですが、中性脂肪が高値の場合、まずは食事管理や運動を勧めることが重要であり、薬の服用を安易に勧めるのは不適切ではないかとの御指摘です。これにつきましては、これまでも販売店用及び購入者用の情報提供資料に、食事管理や運動の実施についても情報を掲載していましたが、セルフチェックシートでの確認時にも指導できるように、セルフチェックシートを改訂しています。再度、「エパデールT購入時のセルフチェックシート」を御覧ください。セルフチェックシートの見開きのページに、食事や運動などの生活習慣の改善の重要性やそのポイントを簡潔に示し、購入時ごとに生活習慣の改善の指導と改善の意志の確認を行うことといたしました。
 3点目ですが、採血の前に食事摂取などによって血中の中性脂肪値は変化することから、健康診断の検査結果で服薬を判断するべきではないのではないかとの御指摘です。これにつきましては「エパデールT購入時のセルフチェックシート」を御覧いただき、1.欄に中性脂肪が境界領域の範囲にあることに加え、新たに該当検査が、検査前の飲食と飲酒の制限を行った健康診断等の血液検査値であることを確認することといたしました。なお、これまで購入前の健康診断等の結果が、2回連続で境界領域となったものを対象としておりましたが、検査時の飲食と飲酒の制限を購入前に確認することにより、直近3か月以内の検査結果のみで確認することとしております。事務局からの説明は以上です。
 続きまして、本日、御欠席されている生出委員より、エパデールの審議について事前にコメントをいただいておりますので、読み上げさせていただきます。
 イコサペント酸エチルを一般用医薬品として承認する件についてです。イコサペント酸エチルを一般用医薬品として承認する件については、妥当と考えます。以前、イコサペント酸エチルのスイッチOTC化が審議されたときには、漫然使用や医師への受診歴なしでの使用が問題とされましたが、こうした不適切な使用は薬剤師が使用に際して患者からの聞き取りや確認、また使用中の相談応需等のモニタリングを行うことにより十分防げると考えます。現に第一類医薬品として販売されている腟カンジダ用薬などでも同様に、漫然使用や医師への受診歴なしでの使用への注意喚起がなされておりますが、薬剤師が販売することにより適切な使用がなされております。
 一方、今回のイコサペント酸エチルについては、薬剤師への研修実施が必須となるなど、これまでの第一類医薬品以上に十分な販売体制が構築されます。さらに承認条件ではPMSのほか、一定数の症例データが蓄積されるまでの間、適正使用調査を実施となっており、販売後の一定期間については販売店の限定、使用者の行動調査などの適正使用調査が付与されており、発売後の調査についても十分に担保がなされています。こういったイコサペント酸エチルのような生活習慣病に対する成分のスイッチOTC化は慎重な議論が必要となりますが、今後のセルフメディケーション推進等を考えると、本部会においても積極的に取り組む必要があると考えます。生出委員からのコメントは以上です。
○望月部会長 ありがとうございます。次に多田先生から、申請品目のスイッチOTC化について御意見を伺います。
○多田参考人 慈恵医大の多田でございます。本日、お呼びいただきまして大変光栄に思っております。私の発言により、ここでいい形で物事が進んでいくことを願っています。私のスタンスですが、日本動脈硬化学会の医療・保険関連の担当理事でもありますし、また、こういったセルフメディケーションをどんどん進めていく立場にあります。御案内のように脂質代謝異常症というのはどうしても御自分の生活様式を変えていくということ、こういったものをしっかり進めていかないと根絶できないと思っていますし、そのための食事療法、運動療法といったものを基本として、その上に薬をオンしていくという立場で、これまで様々な方策を考えてきていました。
 本日、初めて部会資料を見させていただきましたが、ここに出ているそれぞれの審議、3つの項目に関して、非常に疑問に思っていることに関しては私も妥当だと思います。そういう中で、中性脂肪に対してどうやってアプローチしていくかということに関しては、ユーザーの意識向上というのが非常に大事になってくると思います。こういった過程を行うことによって、また患者さんの掘下げができて、本当に必要な患者さんが医療の中に入ってくる。受診勧奨も含めて広がりができるのではないかということも、一方では期待しているわけです。
 そういうことも含めてエパデールTですが、この薬を販売していくことに関して私はよろしいと思いますけれども、あくまでも基本として、薬効のチェックがしっかりされて有効性が担保されていることと、副作用のチェックをしっかりできるかどうか、この二つが必要です。そういうことで、今、お話いただいたような販売体制をしっかり構築していくための一つの試金石として、この薬そのものは最近JAMAにもメタアナリシスの結果が報告されましたけれども、使っている人と使っていない人で総死亡率は全く変わらないことが出ている一方、冠動脈疾患死に対する有効性は有意差をもってあるということで、こういった比較的副作用の少ない薬をうまく使いこなしていくという体制づくりが大切です。個人が使いこなしていければいいのですが、問題点を持っている患者さんの前面に立って薬剤師、栄養士といった職域がユーザーをサポートする体制作りも大切です。今回は薬で薬剤師が中心ですけれども、こういったところで患者さんの生活様式が変わっていき、またうまく薬を使って病態に陥らないように予防ができる。未病の段階で患者さんを対処できるシステムを、今回のように次々と構築していくことを前提として賛成です。
 ただ、その中でもう一つ強調させていただきたいのは、自分のデータを知る、どこでも分かるというシステム作りを推進していっていただきたいということです。例えば現在、糖尿病の患者さんのSMPG、Self Sugar Measurementのシステムがありますが、こういったものと同じように、比較的簡単なところで例えば中性脂肪などを測れるようなシステムです。こうした技術はドライケミなどを使い、Point of Care Testingということで一方では進んでいるわけですが、こういったものをより進めていくことを前提に、スイッチOTC化されるということに対して私は賛成です。
○望月部会長 ありがとうございました。続きまして循環器を専門とされております廣江委員から、御意見をいただけますでしょうか。
○廣江委員 多田先生、ありがとうございました。私、循環器の現場においてエパデールというのは重要な薬だと思っています。大体、最近は900mg、朝晩2回で1,800mgを投与することによって患者さんのQOL改善があがっています。そこで、これをOTC化するに当たって二つの点が大事だと思います。第1点は、使用する方の層別化、すなわちハイリスク群をいかにブロックするかということです。今、御説明がありました本日の参考資料4でクエスチョン例がかなり出ていて、初めての方のチェックポイントがありますね。もし使用する方がこれだけ理解なさって、これが全部ないとなればかなりの層別化、すなわち軽症であると判断すると、未病状態で、このエパデールを使える可能性があることが言えると思います。
 次に第2点、これが一番大事なのですが、今までは医師が全部患者さんに説明したのですが、今度は薬剤師の先生方が現場において、このエパデールというものの性格をよく知って、かつ生活習慣病、Cardiovascular Disease等々を理解していただき、院外薬局のレベルにおいて使用する方に、薬や病気について説明する義務が出ます。それがどのくらい可能か。その2点をクリアできれば、私はむしろ積極的に使っていただいて、できるだけ我々の外来に来なくていいような状態にしたいと思いますので、その2点をクリアできれば私は賛成です。以上です。
○望月部会長 ありがとうございます。ほかの委員の先生方、鈴木委員、どうぞ。
○鈴木委員 今のような御意見は、私は医療へのアクセスがよくないイギリスとか、あるいは医療費が高く、その意味でアクセスが非常に困難なアメリカのような国では、やむを得ずセルフメディケーションということで、医療費抑制のためもあって推奨されているわけですが、そもそもスイッチOTCの定義はあるのですか。どうですか。
○事務局 スイッチOTCについては、きちんとした定義というより、医療用で使われている医薬品を一般用医薬品として転用するというのが、一般的な考え方です。
○鈴木委員 スイッチOTC化の対象になるものの定義というのがあるのかと思ったのですが、特にないということですか。今すぐお答えにならなくてもいいのですが、ただ、今までの議論の中で先ほどのお話の中にも一部出てきましたけれども、スイッチOTC化の適用となる薬というのは、自覚症状があって、比較的短期間の服用でそれが改善することが分かって、自分で中止することを判断できるものに限定すべきだと思います。今までの議論もそういう議論で、長期の服用というのはあまり前提にした話ではなかったと思います。今回の生活習慣病薬は、自覚症状がないという特徴があります。自覚症状がないままに長期間にわたって服用を必要とする場合も多く、これはデータの管理が中性脂肪なら中性脂肪のみ、あるいは単に中性脂肪の数値を下げればいいということでなく、その背景にある全身管理が必要なものです。したがって、これは、かかりつけ医を中心とした医師の管理下で服用することが大前提であると思います。我が国の公的国民皆保険制度は、幸いにも気軽にプライマリ・ケアにアクセスできるという、国民にとって極めて優れた制度になっていますので、アクセスの悪い国のような形を取る必要はなく、生活習慣病薬をスイッチOTC化する必要、必然性はないと考えています。
○望月部会長 ありがとうございました。ほかの御意見はいかがでしょうか。多田先生、お願いします。
○多田参考人 OTC薬というものに関しては、2006年6月、改正薬事法の中で謳われていて、「一般の方が薬剤師から提供された適切な情報に基づいて、自らの判断で購入し、自らの責任で使用する医薬品である。軽度な疾病に伴う症状の改善、生活習慣病等の疾病に伴う症状発現の予防、生活の質の改善・向上、健康状態の自己検査、健康の維持・増進、その他保健衛生を目的とするもの」と、OTC化の薬を国としては定義しているようです。正しく生活習慣病に対して、医者がトータルに患者さんを診てチェックしていくことは非常に大事です。ただ、うまい具合に我が国の場合は特定健診という制度が進行しています。私どもがいる柏市で私もこれまで医師会理事として市行政、国保運営を手助けしようと特定健診指導分科会の一員として活動してきましたが、特定健診の受診率は39%ぐらいの受診率しかないです。しかし、トータルにみて皆が受診してくれると、原則的には毎年1回は値が出てきます。そして中性脂肪150mg/dL~300mg/dLの値の間にある人は受診勧奨せずに、「動機づけ支援」「積極的支援」といった様々な栄養指導や運動指導の中で、御自分で徴候を改善してくれということが制度としてありますから、こういう中に入ってくると、鈴木先生のおっしゃることは私も医師として分かるのですが、ある程度担保できるのではないかという気がしています。ただ、年に1回というのは私も不安なので、これを更にうまく御自分で測れるようなシステムで測定機会をたくさん作っていただきたいと思っています。以上です。
○望月部会長 ありがとうございます。藤原委員、どうぞ。
○藤原委員 先ほど廣江先生が言われましたように、薬剤師が現場でこういう生活習慣病薬を使うということは、責任と義務が非常に高くなると思います。そういう意味で今までのスイッチOTC薬と違い、メーカーも含めてしっかり研修制度を作った上で、是非進めていっていただきたいと思っています。私どもは受診勧奨や特定検診や人間ドックといったものを指導していくという立場で、もし支援させていただければ責任を持ってやらせていただきたいと考えていますので、よろしくお願いします。
○望月部会長 ありがとうございます。鈴木委員、どうぞ。
○鈴木委員 多田先生は動脈硬化学会の理事だそうですが、動脈硬化学会の2012年版のガイドラインがあります。これを拝見すると、「生活習慣の改善は動脈硬化性疾患予防の根幹であり、安易な薬物療法は厳に慎むべきである」と書いてあるのですが、これについて先生はどのように思われますか。
○多田参考人 おっしゃるとおりです。このエパデールだけでなく、ほかの脂質治療薬もこのOTC化の俎上に上がっているのですが、それに関してはさて置き、エパデールに関して、薬物は薬物ですけれども、多価不飽和脂肪酸ということで我々が日常生活で食している物質です。その生活習慣で奨める食物との間を埋めるような薬物ということも含めて、また安全性も比較的担保できるということで、先ほども申し上げたように一つの試金石として、先生も御心配されているような安全性確保の中で、このOTCシステムを今後うまく進めていけるよう体制構築するのに適切な薬の一つではないかと思っています。この薬に関しては、先生のおっしゃるとおりです。
○鈴木委員 要するにエパデールは効かないから、いいのではないかということでしょうか。
○多田参考人 現にこれは、御案内のようにTGの値を約14%前後下げている。ただ、総死亡率に対して有意な有効性は認められていません。しかし、総死亡率に対して有効性が認められていない薬はインシュリンもそうですし、御案内のとおり幾つかの降圧剤もそうです。ですからそれは意味がないというわけではないので、いずれの薬物も疾病に対してきちんと治療対応が可能な薬です。
○鈴木委員 そうすると具体的に、例えば150mg/dL以上の方が来られたら、先生が薬局におられたら当然薬を出すわけですね。エパデールを出せるわけですから。条件にセルフチェックシートなるものがあってですがね。
○多田参考人 まず運動療法と食事療法をやってからです。
○鈴木委員 やってからですと言っても、薬局ではいきなり薬を出すわけですね。
○多田参考人 それは、してはいけないということが書かれているのではないですか。いきなり一類OTC薬の出ることのないシステム作りが大切です。
○鈴木委員 では最初の日は、食事療法と運動療法をしてくださいと言って帰すわけですか。
○岩月委員 薬局に御質問がありましたので、先ほどのゲンタシンの軟膏もそうだったのですが、役割が違うということと、もう一つは対象になる利用者が違うのです。ゲンタシンの例で言うと、私が先ほど学校の罹患証明と治癒証明の話のときに少し口を挟ませていただいたのは、親の気持として、とびひになったかもしれないと思ったら、とびひだということを医師に確認してもらう方にインセンティブが働くのです。しかも10割個人負担で薬局に出かけてわざわざお薬を買い、子どもがそうかもしれないと、3日も臨床判断を待っている親は多分いないはずです。
 今回のエパデールに関して言うと、今、多田先生から御案内があったように、どういう間口の人を切り取って、その方たちがこれで駄目だったら受診勧奨ですとか、あるいは運動することによって良くなればお薬を使わなくていいわけですから、正にセルフメディケーションのための窓口として、切り口が違うのだということだけ私は申し上げておきたいと思います。薬局の店頭に来たら売り付けるとか売るということでなく、まずこういった御相談にお見えになる方は、少しきつい言い方をすれば医師にかかれば3割負担で済むのです。それをわざわざモチベーションを持って薬局に行って相談し、こういったもので自分の健康管理をしようという方の意志は、私はむやみに潰すべきでないと思います。
○望月部会長 ありがとうございます。鈴木委員、どうぞ。
○鈴木委員 薬局としては、とにかくこれは数年越しの願望のようですから、こういうセルフチェックシートなるものを作ってこられたわけです。これはものすごく完璧のように見えますが、これだけのものを理解される方だったら、このチェックシートの説明を受ける間に医療機関を受診したほうが、むしろ手っ取り早いのではないでしょうか。我が国の医療制度は非常にアクセスがよく、世界に冠たる制度ですので、遠慮なくかかりつけの先生を受診していただいて御相談いただくのが、よろしいかと思います。
 それと、先ほど薬局の方々が、きちんと研修をしますとか、あるいは販売するお店を限定しますとか盛んにおっしゃっていますが、そもそも平成22年度の一般用医薬品販売制度定着状況調査というのがあって、その結果では、第一類医薬品の購入の際に適切な説明があった方は、わずか31.5%しかないのです。このような杜撰な現場でありながら、そういうことだけやりますといくらおっしゃっても、現場は実際にやっていないのです。そういう状況の中で、いくらシートが立派だからといって認めるわけにいかないと思います。
○望月部会長 廣江委員、どうぞ。
○廣江委員 もう少しポジティブに考えてほしいと思います。今、薬学も6年制になりました。病院での実習も盛んになっています。多分先生がおっしゃったところだと思いますが、今まで欠除していた部分も2年の実習が増えて来年から卒業生が出ますので、更に薬剤師さんと先生方の力が強くなる。両方があって初めて医療というのは成り立つわけですから、医師ばかりが偉そうな感じでいるのでなく両方が協力する。さらにもう一つ、日本人は自己責任をとらない民族です。患者さん自身が病気になる前に、自分のことをきちんと考えていく。そういうことをもっと声を大きくして教えるためにも、こういうシステムをまず試金石として導入していく。そういう意味で私は優れた第一歩だと思っています。以上です。
○望月部会長 ありがとうございます。鈴木委員、どうぞ。
○鈴木委員 医師が偉いと言っているのではなくて、私は業務上の役割分担だと思います。6年制になったので病棟配置も中央社会保険医療協議会で決まり、是非、御活躍いただきたいと思いますが、それは少し先の話だろうと思います。まず現場の足元の改善から始めていただいて、それからこういったものを検討していくことが必要ではないでしょうか。
 我が国の医療制度は、外国の制度について何回も訪問調査した上で言っているのですが、非常に優れたものであると私は思っています。私たちの生命にかかわる病気に発展しかねない生活習慣病の治療というのは、私はその平等性を担保するためにも、非営利を原則とする医療の管理下に置くべきだと考えています。営利企業の方は売りたくてしようがないのでしょうけれども、そこはきちんと役割分担して、スイッチOTC化というのは最初に申し上げたように、自覚症状により比較的短期間の服用で改善して、中止を判断できるものに限定すべきだと思います。そういう議論で今までは議論してきたのだと思います。私もむやみやたらに反対しているわけではありませんが、ここはきちんと一線を画する必要があるところだと思っています。
○望月部会長 廣江委員が御指摘くださいましたが、薬剤師の能力というのが非常に大きくここに関わってきていると思います。6年制の薬剤師はこの4月に第1期生が出ています。そういう人が活躍すると、6年制薬剤師だけでなく周りにいる従来の薬剤師の能力もすごい勢いで能力アップしてくると思います。生活習慣病にも薬剤師が関わるのだ、薬局全体で関わるのだという意識だけでも、今、非常に強く出ています。それに沿って薬剤師の研修努力というのは素晴らしいものがあると、私自身は思っていますので、鈴木委員に申し上げたいのは、是非、薬剤師を信頼していただきたい。ただ営利企業だけでなく、患者さんを見つめる医療チームの一員として見ていただきたいと私は思います。
○鈴木委員 それはおっしゃるとおりだと思いますので、是非、まず第一線の現場の説明をきちんとしていただく。覆面調査での結果が出るような状況にしていただきたい。優秀な薬剤師が、早くそういった現場に出ていただいて底上げを是非図っていただきたい。今日の話はそれからだと思います。
○望月部会長 西澤委員、お願いします。
○西澤委員 私、実際に糖尿病診療をやっている立場から言わせていただきたいと思います。この未病に対する対応というのは非常に大事ですし、セルフメディケーションも、これからの方向性ということで非常に大切な方向性だろうと思います。エパデールに関しても、これは効かない薬ということは決してなく、かなり強力な薬剤と私自身は思っています。実際に出血の作用というのはかなりあるわけなので、薬理作用は十分あるのではないかと思っています。
 実は糖尿病に関しても、日本では約半数の患者さんが診療機関にかかっていないのです。それが一つです。もう一つは、実際に診療していても食事療法、運動療法を厳守できる方々のパーセントは非常に低い。これは医療機関の努力にもよるのですが、かなりそういった面が現実に存在しているということを踏まえ、先ほど対象が全く違うというお話がありましたが、その辺りとの整合性というか、本当に治療が必要な人たちがマスクされないようなシステムを明確にしていただきたいと思います。これはもちろんチェックシートで、自己責任ということになってしまうのでしょうけれども、単にそういったものだけで本当に層別できるのか疑問に感じます。
○望月部会長 ありがとうございます。これに関して事務局から何か御意見はございますか。よろしいですか。
○審査管理課長 折角このチェックシートというものがありますし、これまでスイッチOTC化について、こういった詳細なチェックシートまで作ったことはありません。多分第一類の医薬品にした場合にも、一通りの説明のようなものは作っているのですが、それを単に現場で渡すかどうか、そして二度目に来た方には、前に御説明しましたねということで説明を省略するといった意味で、恐らく実際に覆面のアンケート調査をすると、あまり高くない数字になっているのだと思います。今回はこういった明確なチェックシートがありますので、そういったチェックシートも活用し、さらに流通する側からチェックシートの活用状況について、製造販売業者からも初期の段階で調べることができないかどうか、申請者の方にそういったところも指導させていただきたいと思います。
○西澤委員 もちろん、この未病に関してやることに私は全然抵抗は感じていないのですが、先ほど言いましたように糖尿病患者の半分がまだ受診していなくて、それがマスクされることを恐れているのです。
○望月部会長 望月委員、どうぞ。
○望月(眞)委員 先ほどから試金石という言葉が何回か出ましたが、薬剤師の人たちが、こうした生活習慣病の未病の段階の薬物治療に本当に貢献できるかどうか、という意味での試金石なのだろうと私も感じます。一番御懸念があるのが、きちんと薬剤師が使っていくべきなのかどうかというところの判断、それから生活指導の食事や運動のところの確認等がきちんとできるのかというところが、一番の御懸念かと思います。先ほど藤原委員からもありましたが、日本薬学会が幾つかのスイッチOTC化の成分の提案を出されたときに、薬剤師に研修が必要だという提案があったものが、既にOTC薬として承認されたものの中にもあると思いますけれども、本当に研修をされたのかどうか私は確認できておらず、今回の場合は、きちんと研修を受けたことを確認する手続を取っていただくことが必要だと私は思います。医師の方の御指導も仰ぎながら、きちんとした研修プログラムを組み立て、どのようにしていくのが消費者の方にとって一番いい形なのか、組み立てていただけたらと思います。それを条件に承認していくことが必要かと思います。
○望月部会長 ありがとうございます。ただ今のような研修プログラムを作った上で研修したことを確認し、それでこのチェックシートを使うことについて、事務局の方として御意見はいかがですか。
○事務局 研修につきましては市販後、会社が研修を実施することになっていますし、承認条件として安全性に関する3年間の市販後調査のほかに、先ほどのチェックをきちんとしているか、適切に振分けをしているかといったことについて、使用実態調査も、PMS3年間の安全性調査のほかにやることになっていますので、そこについては市販後調査でも確認できる体制になっています。
○鈴木委員 もう何かやるような前提で話が進んでいますが、そうでなくて、日本の医療制度の良い点を是非、私は活かしていただきたいと思います。そういう意味では薬局の方の仕組みが非常に遅れているのです。ですから今後、6年制の薬剤師が現場に出て来て、きちんとそういうことに取り組む、あるいは実績が出てくればまた話は違うかもしれませんが、現状は、そういうことがすぐにできるとはとても思えませんので、アンケート調査をやりますからというのは条件にならないと私は思います。それと、覆面調査が現場の実態を物語っていると思います。まずここを改善していただくことが大前提だと思います。それがない限り、いくら立派なことをおっしゃっても、いくら立派にチェックシートをお作りになっても、意味がないと思います。もっと現場の底上げをしてから、そういう話をしていただきたいと思います。
○望月部会長 福島委員、どうぞ。
○福島委員 鈴木先生のおっしゃることもよく分かりますし、日本の医療制度というのは素晴らしいと思っています。ただ、今の財政やいろいろなことを考えると、これはある程度変わっていくのだろうと予想ができるわけです。やはり教育体制を変えていかないといけないし、一般の国民に対する消費者教育というところも、小さいころからやっていかなければいけないとも思います。これから変わっていく中で、今は絶対できないということではなく、一つずつ広げていかないと急にできるものではありません。先ほど望月先生が言われたように研修制度をきちんとやることを含めて、第一歩を踏み出していくということも大事ではないか思います。今、それこそ3か月分とか何十日分など、長い投与期間の処方せんが出たときに、医療機関には行かないで継続してそのままお薬を飲み続けていることも心配な部分があり、薬局などで確認している所もあります。これは医師と協働しながら進めていかなければできないことだと思います。みんながその方向に向かって動き出さないと、他の国に誇れる医療制度も潰れてしまうのではないかという気がしてなりません。ここは話を進めて、みんなで頑張るしかないと思います。
○望月部会長 ありがとうございます。ほかに御意見はございますか。岩月委員、お願いします。
○岩月委員 今、薬局がだらしないと御指摘をいただいて、私も薬局の一員でありますので、そのことについては深く反省する部分もあると思っています。ただ、31.5%の数字について、これは現場の感覚ですのでそのようにお聞きいただきたいのですが、例えば私の知り合いの薬局は第一類医薬品を販売していないので、覆面でお見えになった方に説明の仕様がないのです。そしたら説明がなかったという報告があって、後日、県の薬務課から指導が入り、置いてないことが分かったという例があったのです。すべてがそうだとは申し上げませんが、第1回目の調査でそういう齟齬もいろいろあったのだろうと思います。数字自体がインチキだとか怪しいと申し上げるつもりはありませんけれども、現実にはそういったことも起きています。私は今、日本薬剤師会の役員でも何でもないので、本来は藤原先生がお答えになることだと思いますが、仮に80%だとしても努力していく話だと思いますし、我々は勉強していかなければいけないと思っています。その上で、一つ付け加えさせていただきたいのは、医薬分業が始まって処方せん調剤を始めてからかなり時間が経っています。その間、我々も添付文書を読むだけでなく、相互作用や疾病との関係ということは、口幅ったい言い方で大変失礼かもしれませんが、勉強させていただいていると思っています。実際に相互作用を見つけたり、処方元の医師にそういった連絡を取ることも徐々に増えてきていますので、そういったことも含めて、駄目だということでなく、今、福島先生もおっしゃいましたけれども、第一歩だというところは是非お認めをいただきたいと感じています。
○望月部会長 藤原委員、お願いします。
○藤原委員 今は日本薬剤師会の一員の代表ということで、日本薬剤師会役員の立場で発言はしなかったのですが、実際に数字を追うと、実態調査というのは本当にいい加減で、例えば高知県ではたった3軒しか行っていないのです。非常に古い薬局に3軒行って、そのうち1軒しかできなかったということです。これは改正薬事法をまだ十分理解していなかった部分もあったので、それを指導した中で、実際に高知県では第三者機関として新聞社がもう1回実施しています。それは去年の6月、7月に第一類を販売している全薬局を対象にやりました。もちろん知らせずにやったわけですが、そこでは9割ができていたという結果も出ました。ですから数字を追ってどうこう言われるのは、甚だ私も寂しい思いがします。いずれにせよ私たちの使命は、販売、販売と言いますけど、現実の販売額というのは生活できるような販売額ではないのです。そこは全く考えていなくて、医療連携というか、医療提供施設として少しでも医師との連携が取れて、より良い国民の健康づくりができればいいという気持で、社会的な使命で行っているということは、是非、理解していただきたいと思います。もし販売だけを追うのであれば、多分医薬品以外のものにして販売体系もスーパーのような形にしていけばいいと思っていますが、そうではないものを薬剤師の使命と考えていますので、その辺は御理解いただきたいと思っています。
○鈴木委員 薬剤師の方を中心に、美しいお話をたくさん聞かせていただいて非常に私も期待したいと思いますので、是非、そういう覆面調査にも耐えられるような実績をまず上げていただきたいと思います。これまで私が何度も述べさせていただいたような状況について、外国は参考になりません。外国はアクセスの悪い国、医療費の高い国等いろいろあります。ただ、我が国では世界一高齢化が進んでいるにも拘わらず、これだけ低い医療費で済んでいるわけで、この仕組みを私は大事にしたいと思います。薬剤師の皆さんにも是非頑張っていただきたいと思いますが、生活習慣病というのは全身管理ですので、これは医師にしかできない。医師を中心としてやるべきものだろうと思いますので、私はエパデールのスイッチOTC化には明確に反対させていただきます。
○望月部会長 村島委員、どうぞ。
○村島委員 私も内科医の立場で、鈴木先生のおっしゃることはすごくよく分かって、以前、そのような発言もさせていただいたのですが、これはとにかく適用を冷静に見た場合に、150mg/dL~300mg/dLは保険適用にない範囲だということで、このOTC化をきっかけに薬剤師ないし製薬会社のプロモーションによって、国民に生活習慣病に関する関心とか、あと300mg/dL以上になったら受診して、きちんと医師にかかりましょうというような動きになれば、両者にとって一番いいことだという感想を述べさせていただきます。
○望月部会長 ありがとうございます。小澤委員は何か御意見はございますか。特にないですか。いろいろな御意見が出まして、鈴木委員は御反対というのは分かりました。これまで3度審議して先生方の意見もいただいたのですが、一応、部会としての総意というのを示すことが必要で、それを示す段階だと私は考えます。鈴木委員がおっしゃるように、確かにこれから薬剤師がよりよく育つべきであり、今はまだかもしれないということはあります。しかしながら、これからよりよく育つ途中で、こういうチェックシートを使って自分たちで育つ体制を作り、業者もそれを助けるような情報提供資料を更に詳しくすることを考えていただくことを前提に、この段階で結論を出したいと考えますが、いかがでしょうか。
○鈴木委員 私は時期尚早だと思いますので、本日結論を出すべきではないと思います。もう少し議論をした上ですべきだと思います。
○望月部会長 ほかの先生方は特にございませんか。一応、全会一致ということで今まできましたけれども、ある程度結論というか、部会としての総意を出さざるを得ないと私は考えます。ここで鈴木委員は御反対ということを理解した上で、この部会としては条件付きでこれを承認したいと考えますが、ほかの委員の先生方、よろしいでしょうか。
 それでは本部会として、議題3の医薬品エパデールT、エパアルテについて、条件付きで承認して差し支えない。ただし本部会の議論を必ずお伝え願って、必要な措置を全部取っていただくということが前提です。ありがとうございました。
 それでは、これらにつきましては、薬事分科会にその旨を報告させていただきます。ありがとうございました。また多田先生におかれましては、お忙しいところを御出席いただき誠にありがとうございました。
── 多田参考人退室 ──
○望月部会長 続きまして、審議事項議題4「医薬品セレキノンIBS、セノレックスIBS、□□□□□□□□□□の製造販売承認の可否について」の審議に入ります。参考人の国立国際医療研究センター消化器内科の小早川先生に加わっていただきます。
── 小早川参考人入室 ──
○望月部会長 どうぞよろしくお願いいたします。
○小早川参考人 よろしくお願いします。
○望月部会長 医薬品医療機器総合機構から説明をお願いいたします。
○機構 販売名、セレキノンIBS他2名称について御説明いたします。申請者は田辺三菱製薬株式会社です。資料3の審査報告1ページを御覧ください。本剤は消化管運動機能調整薬であるトリメブチンマレイン酸塩の医療用医薬品「セレキノン錠100mg」と同一の製剤を、過敏性腸症候群(以下「IBS」)の症状緩和を効能・効果として、一般用医薬品とするものです。1995年にトリメブチンマレイン酸塩を含む配合剤は、一般用医薬品の胃腸薬として承認されております。
 2ページを御覧ください。IBSの症状緩和を効能・効果とした本剤を一般用医薬品とすることの意義について、申請者は、「IBSは重篤な疾患ではないが、長期にわたり症状の寛解・再燃を繰り返す疾患であるため、QOLが低下し社会的生活に支障をきたす。本剤は便通型を問わず効果が認められることから、IBSに対する利便性が高い。また、一般用医薬品としての販売を通じてIBSに対する啓発、未受診の患者に適切な治療機会を与え、社会へ貢献できると考える。以上より、本剤は「生活の質の改善・向上」につながり、国民の新たな健康ニーズに対応し得る役割・機能を備えている。」と述べております。
 品質につきまして、本剤は医療用と同一製剤であるため、本剤の規格及び試験方法は医療用医薬品「セレキノン錠100mg」に基づき設定され、最新のガイドライン等に準じて整備されております。
 続きまして3ページを御覧ください。本剤の安定性については、医療用医薬品申請時の試験成績がまとめられており、新たな試験は実施されておりません。なお、平成12年2月8日付けの医薬審第39号通知に準じて包装材質が変更されております。以上、品質について特段の問題はないと判断しております。
 薬理、薬物動態及び毒性については、医療用医薬品申請時の試験成績がまとめられており、新たな試験は実施されておりません。同ページ中段のト項については、医療用医薬品申請時、IBS効能追加時の臨床試験成績、市販後調査結果が資料概要中にまとめられており、新たな試験は実施されておりません。
 5ページの「IBSについて」です。IBSとは、腹痛と便通異常を主体とする消化器症状が持続するが、その原因として、通常臨床検査で診断できる器質的疾患を同定し得ない機能的疾患であるという概念の症候群です。本邦では2006年にIBSの診断・治療ガイドラインとして「心身症診断・治療ガイドライン2006」(以下ガイドライン)が公表されました。ガイドラインによりますと、IBSの治療は重症度に応じて第一~第三段階に分けられております。
 戻りますが、4ページを御覧ください。有効性について、IBS効能追加時に実施されました二重盲検比較試験において、トリメブチンマレイン酸塩、1日300mg群、1日600mg群、メペンゾラート臭化物1日45mg群の全般改善度が評価され、4ページの表にお示ししたとおり、各群間に有意な差はありませんでした。
 6ページを御覧ください。ガイドラインによると、本剤は第一段階に用いることが推奨されているものの、重症度の判定基準は明確にされておりません。機構は一般用医薬品としての適正使用の観点から、IBSにおける本剤の対象を規定し、その対象における有効性を示すように求めました。申請者は、投与開始時の重症度と便通異常及び消化器症状の程度の関連を解析し、軽症例は軽度の便通異常を有し、下痢、便秘、下腹部痛、腹部不快感が極軽度と考えられると説明しました。その上で、これらの軽症例は6ページにお示ししましたIBS重症度判定表にある軽症と比較して大きな異同はないことから、本剤の対象を下痢の場合は排便回数が1日1~2回、便秘の場合は排便回数が1~2日で1回、腹痛・腹部不快感は軽度と定めると説明しました。また、IBS効能追加時の臨床試験及び臨床使用成績調査の軽症例における改善率を示し、軽症の患者においても十分な有効性が認められていると説明いたしました。機構は本剤の有効性について、特段の問題はないと判断いたしました。
 なお、専門協議において、委員よりIBSについて明確にバリデートされた重症度の基準はないが、激しい下痢や繰り返す下痢の患者等を除外することは、他疾患の可能性の高い集団を除外する意義として重要と考えるとの意見がなされました。機構は現時点ではIBSと診断された患者で他疾患の可能性の高い集団を除外した上で、本剤を使用することが適当ではないかと考えております。以上の検討を踏まえ、適正使用の観点から、本剤の対象であることを確認する手段が必要と考え、チェックシートを整備いたしました。
 9ページを御覧ください。チェックシートではIBSの再発であることの確認を行い、器質的疾患が疑われる患者を本剤の対象から除外して、医療機関に受診勧奨をすることといたしました。なお、本剤の製造販売後調査において、通常求められる調査に加え、使用状況に関する情報を収集して、適正に使用されていることを確認することが必要と考えております。
 少し戻りまして4ページの最終段落、安全性について、医療用承認時の副作用発現症例率は4.4%、使用成績調査時の副作用発現症例率は0.32%でした。重篤な副作用はIBS効能追加時に実施された二重盲検比較試験において、1日300mg群の1例に認められ、投与中止により軽快しております。使用成績調査において3例、再審査期間終了~2010年3月31日までに14例報告されました。これらの転帰は医師の協力が得られず不明となった1例を除き、いずれも軽快あるいは回復でした。
 8ページを御覧ください。本剤はガイドラインによりますと、4~8週間投与されておりまして、長期に使用される恐れがあることから、機構は申請者に対して、長期の安全性の考察を求めました。申請者は、医療用医薬品の使用成績調査における投与期間別の副作用発現状況を示し、長期投与しても副作用発現率は上昇しないこと、半年以上の長期投与例では副作用が認められていないことを説明いたしました。機構は、本剤の安全性について特段の問題はないと判断いたしました。
 9ページの効能・効果の設定理由について、申請者は「IBSの診断・治療は器質的異常でないことの確認等、医学的判断が必要であると考えられるが、IBSは重症ではなく、再燃寛解を繰り返す疾患であり、症状が腹痛、便通異常であることから、IBSと過去に診断された者にとって、再発した場合の症状は自己判断可能であると考え、一般用医薬品としての効能・効果は過去に医師の診断を受けた方に限定することにした」と説明しております。
 IBSの予後について、診断後にほかの器質性疾患が出現するのは5%未満であると報告があり、機構は申請者の説明も踏まえ、IBSの再発であれば器質性疾患が出現するリスクは低く、一般用医薬品の治療の対象になり得ると考えております。IBSの診断には医師による診察が必要と考え、設定された効能・効果について特段の問題はないと判断いたしました。なお、申請時に設定された「腹部膨満感」は専門協議の議論を踏まえ、「腹部不快感」に変更いたしました。
 10ページの「用法・用量について」は、医療用医薬品ではIBS効能において、1日量600mgまでの投与が認められておりますが、一般用医薬品とするに際し1日量300mgに限定されております。機構は一般用医薬品としてのリスクを最小限に抑える観点から、有効性及び安全性を踏まえ、低用量のみで差し支えないと判断いたしました。
 「使用上の注意について」は、11ページ~12ページです。長期にわたり漫然と使用されることがないよう、臨床試験の結果を踏まえ、投与開始後1週間及び2週間の時点で使用継続の判断を促すよう注意喚起いたしました。なお、適正使用の観点から包装単位は2週間以内の容量といたしました。4週間の継続服用で満足な改善がみられない場合は、ほかの疾患の可能性も否定できないこと、治療ガイドラインにおきまして第二段階に該当すると考えられることから、継続服用は最大4週間が適当であると判断いたしました。
 最後に12ページの「3.総合評価」を御覧ください。以上のような検討を行った結果、機構は以下の効能・効果、用法・用量において本剤を承認して差し支えないと判断いたしました。なお、承認条件として「承認後、少なくとも3年間の安全性等に関する製造販売後調査を実施すること」との条件を付すことが適当であると判断しております。説明は以上です。御審議のほど、よろしくお願いいたします。
○望月部会長 ありがとうございます。続きまして小早川先生より、審査品目のスイッチOTC化についての御意見を伺えますでしょうか。
○小早川参考人 IBSについてですけれども、先ほど事務局の方から御説明がありましたとおり、大雑把な疾患概念といたしましては、大腸癌や炎症性の腸疾患、感染症などの炎症そういった器質的疾患がないにも拘わらず腹痛がある疾患でありまして、それが便通の異常とか排便の状態によって症状が出たり治ったりするような疾患です。多くの日本人はこういった症状をもっていらっしゃる方はいると思いますし、この中でもそういった症状をもっていらっしゃる方が多いかとは思います。ただ、診断ということになりますと、ほかの器質的疾患を除外してから初めてIBSと診断されますので、薬局のところでは確定診断することができないということで、一度医療機関にてIBSということを診断された患者においては、薬局でOTC薬をもらうことに大きな問題はないのではないかと考えます。IBS自体は既に器質的疾患が除外されているというものがIBSですので、そのもの自体が非常に重篤化することはほとんどないです。命にかかわってくるようなことはまずありませんので、そういった意味でも、一度そのように診断されている方におきましては、薬局でお薬をもらうという使い方があってもいいのではないかと思います。簡単ではありますが、以上です。
○望月部会長 どうもありがとうございました。ただ今の内容に関して、委員の先生方から、御質問、御意見等がありましたらお願いいたします。
○鈴木委員 薬としては別に問題ないと思いますが、これにIBSという名称を付けることについて、以前に医師の診断・治療を受けた人に限るとあるのですが、このIBSというものが前面に出ると、以前に医師の診断・治療を受けた人に限るというところが曖昧になり兼ねないのではないかと思います。IBSというのは知っているようで知らないというか、診断しやすいようで実は除外診断が必要なそういう疾患ですから、やっぱりIBSを前面に出すというのは、私はどうなのかと思います。
○望月部会長 ただ今の点いかがでしょうか、機構からお答えいただきます。
○機構 先生の御指摘は、販売名にIBSを付けるのは妥当ではないという御質問ですね。これにつきまして、IBSは疾患名ですが、疾患名が付された販売名の既承認に一般用医薬品は多数ありまして、特段の問題はないと考えております。
○鈴木委員 そういう意味ではなくて、IBSというのが実は自分で判断できる疾患ではないわけです。ですから医師の診断をと言うのですが、それがIBSという疾患名が前面に出ると、以前にといっても、これは何十年前でもいいということにもなるわけですし、実際は炎症性腸疾患などが合併したりすることもあるわけですね。炎症性腸疾患の患者さんというのは、今若い人などには多いわけで、16万人以上いらっしゃるわけですから、そこがマスクされてしまう危険性があります。最初はIBSだったかもしれないけれど、後で炎症性腸疾患を合併するということもあるわけですし、これはIBSをあまり前面に出すべきではないのではないかと思います。下痢や腹痛や便秘といったものには問題ないと思いますけれども、そういう疾患名を前面に出すのはそこに営利的な要素を感じます。薬そのものは問題ないとは思うのですが、売り方として少しあざとい感じがするというところです。
○望月部会長 はい、分かりました。ほかに御意見はいかがでしょうか。
○小早川参考人 確かに過敏性腸症候群という言葉を世の中の人がどれだけ知っているかと言われたときに、恐らく知らない方も多いかと思いますし、こういった病名を付けると何となく先生のおっしゃるあざといという感じも受けなくはないかと思います。ただ、この分野に関しましては、疾患名に関して非常に誤解が生じやすい部分ではあります。過敏性腸症候群でよく誤解があるのは、「過敏性腸炎」という言い方をされる方が患者さんの中にも多いです。本来この疾患は、炎症がない疾患なので「過敏性腸症候群」で「炎」であってはいけないですので、すごく病名に関しての理解不足もあります。そういった意味では「過敏性腸症候群」という正しい病名をOTC化して、皆さんに知ってもらうことは、私は悪いことではないのではないかと考えます。
○望月部会長 外箱のパッケージは「過敏性腸症候群」と「IBS」の両方書いてあるのですね。ほかの先生方はいかがでしょうか。今の点に関してでもいいです。
○村島委員 小早川先生に御質問ですけれども、この「過敏性腸症候群の再発治療薬」という表現については適切でしょうか。いわゆる「再発」という言葉と「治療」が、その病気の性質からいうと少し違和感をもちましたので、専門的な立場からどうでしょうか。
○小早川参考人 確かに今回のこの効能・効果に初めて付けられたような形ではないかという感じはしますが、元々IBSというのは良くなったり悪くなったり、ストレスなどのそういったいろいろな要素で急に出てきたり、2、3か月ぐらいで治って再発がしばらくなかったり、また何かの拍子に出てきたりとかありますので、間違った表現ではないと思いますが、今までこういった表現をしてくることがなかったので、そういった面では違和感があるのかもしれません。
○西澤委員 これは慢性のもので、どちらかというと再発治療、治療というのは完治治療というイメージとしてなるのですが、これは症状改善薬ですね。
○小早川参考人 そうです。基本的にIBS自体原因がはっきりしない症候群で、本当はいろいろなものが原因としてあると思います。例えばストレスが要因であったり、腸の過敏性が問題だったり、腸の運動が問題だったり、いろいろなものが複合的に絡んでいる病気で、人によってファクターが変わってきたりするものです。確かに症状改善という意味合いが強いのではないかとは思います。これを飲むことによって、例えば腸炎みたいに完全に治りましたというものでは特にはないですね。
○望月部会長 ほかにはありますか。皆さんの御意見を伺うと、その中身、薬としてはいいのですが、名称が適切かどうか、いろいろと問題が出ておりますけれども、これに関しては小早川先生、いかがいたしましょうか。症状改善を主に目的とするとしたら、それに沿った名前はあるのでしょうか。
○小早川参考人 これまでのOTC薬は恐らく症状改善と書いてあることが多いですね。それからすると治療薬とまでは少し言い過ぎかという感じもします。「症状の改善」でもよろしいのかもしれません。
○機構 御指摘された点を踏まえまして、表現については検討させていただきます。
○望月部会長 では、表現については検討していただくことにいたします。ほかに御意見はありますでしょうか。
○鈴木委員 セレキノンIBSの「IBS」ということに関してはどうなのかということと、以前に医師の診断・治療を受けた人に限る、その「以前に」はどの程度の期間を指すのか、その辺が曖昧すぎるのではないかと思うのですが、もう少しはっきりしたほうがいいのではないかと思います。
○望月部会長 ただ今の点、いかがでしょうか。
○機構 販売名の「IBS」についても、委員の御指摘を踏まえて検討させていただきます。
 また、「医師の診断がどのくらい有効なのか」ですけれども、審査報告10ページの上から4行目に、El-Serag H.B.らの2004年の報告がありまして、IBS診断後の追跡期間中にほかの器質的疾患が出現する患者は、30年までの追跡期間を含めますと1.4~9%、6か月~6年の追跡機関に限ると2~5%と報告されておりまして、医師の診断は長期間有効ではないかと考えております。
○望月部会長 よろしいですか。長期間有効というのは、以前診断を受けた方だとそのままいいというお考えですね。
○機構 はい、そのように考えております。
○望月部会長 ほかに御意見はありますでしょうか。IBSの名称については申請者と相談して考えていただくことにいたします。
 ほかはよろしいですか。それでは、審議品目について議決に入りたいと思います。小澤委員と村島委員におかれましては、利益相反に関する申出に基づきまして、議決への参加を御遠慮いただくことになります。議題4の「セレキノンIBS、セレノックスIBS、□□□□□□□□□□」について、本剤は条件付きで承認して差し支えないということでよろしいでしょうか。
 ありがとうございました。これらにつきまして、薬事分科会にその旨を報告させていただきます。どうもありがとうございました。また、小早川先生におかれましては、お忙しいところ遅くまで御出席いただきまして、誠にありがとうございました。
○小早川参考人 ありがとうございました。
── 小早川参考人退室 ──
○望月部会長 そのほか、事務局から連絡ありますでしょうか。
○事務局 一般用医薬品関連の状況について報告させていただきます。本日資料5「医療用医薬品の有効成分のうち一般用医薬品としても利用することが適切と考えられる成分の開発状況について」をお配りしております。医療用医薬品の有効成分を一般用医薬品に利用することを促進するために、平成20年度より一般用医薬品としても利用可能と考えられる成分を報告書の形としてまとめ、それを公表し、さらにこの報告書について医学会及び分科会の御意見をお聞きしております。本部会において候補成分について御検討をしていただいております。平成20年度~平成24年度に公表した候補成分については、本年7月23日現在で延べ22成分になっており、申請中の4成分、既に承認された1成分を除く17成分について開発状況の確認を行いました。その結果、開発検討中のものが11成分という状況になっております。報告は以上です。
○望月部会長 ただ今の報告に関して御意見はありますでしょうか。
特にないということで、本日、座長の不手際で随分時間が延びてしまいまして申し訳ございませんでした。本日の審議事項、その他事項すべて終了させていただきます。
 次回の当部会は、11月26日(月)の14時からの予定となっております。改めて事務局から御連絡申し上げます。本日の一般用医薬品部会をこれにて終了し、閉会といたします。どうもありがとうございました。


(了)

備考
本部会は、企業の知的財産保護の観点等から非公開で開催された。

連絡先:医薬食品局 審査管理課 課長補佐 野村(内線2746)

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