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2013年1月30日 第4回HTLV-1対策推進協議会 議事録

健康局結核感染症課

○日時

平成25年1月30日(水)
18:00~20:00


○場所

厚生労働省専用第22会議室(18F)


○出席者

伊川構成員 石母田構成員 岩本構成員 木下構成員 小森構成員
斎藤構成員 菅付構成員 塚崎構成員 永井構成員 林構成員
松本構成員 森内構成員 山野構成員 渡邉座長 石田参考人

○議題

(1)ATL対策について
(2)その他

○議事

○結核感染症課課長補佐 ただいまより、第4回HTLV-1対策推進協議会を開会いたします。開催に当たりまして、矢島健康局長より御挨拶申し上げます。
○健康局長 健康局長の矢島でございます。遅くなって大変申し訳ございませんでした。委員の先生方には、大変お忙しいところお集まりいただきましてありがとうございました。また、日ごろから厚生労働行政全般に当たりまして、いろいろな意味で御支援・御協力をいただいております。この場をお借りして、厚く御礼を申し上げます。
 HTLV-1総合対策に基づく重点施策を推進するため、平成23年7月に立ち上げた本協議会も、今回で4回目の開催となりました。毎回御出席の皆様方からはそれぞれの立場から貴重な御意見をいただきまして、大変ありがとうございます。第2回の協議会からは、毎回テーマを決めて、それぞれについて御議論いただいて、前回はHAM対策についての総合対策の取組状況を報告させていただくとともに、HAMに関する研究内容や都道府県及び難病相談支援センターでの相談の実施状況等について御議論をいただきました。また、前回、ATLに使用できる薬剤として、ポテリジオが薬事承認されたという明るいニュースがありましたが、今回はATL対策に焦点を当てて議論を深めていただきたいと考えております。より議論が活発なものになりますようお願いを申し上げまして、簡単でございますが、私の挨拶とさせていただきます。よろしくお願いいたします。
○結核感染症課課長補佐 カメラ撮りはここまでとさせていただきます。議事に先立ちまして、本協議会の構成員に変更がありましたので、御報告いたします。このたび、寺尾構成員が御逝去されたことに伴い、新たに日本産婦人科医会代表理事の木下構成員が就任されました。なお、木下構成員ですが、本日は所用のため遅れる旨の御連絡をいただいております。本協議会の構成員の本日の出席状況ですが、構成員15人中13名の方々に御出席をいただいております。西構成員からは御欠席との御連絡をいただいております。また、本日は参考人として名古屋市立大学大学院医学研究科腫瘍・免疫内科学准教授の石田高司先生に御出席いただいております。
 事務局にも異動がありましたので、御紹介いたします。健康局がん対策・健康増進課の宮嵜課長です。雇用均等・児童家庭局母子保健課の桑島課長です。
 続きまして、お手元にお配りした資料の確認をいたします。資料1「協議会構成員名簿」。資料2「ATL対策について」。資料3「がん対策推進基本計画」。資料4「塚崎構成員資料」。資料5「石田参考人資料」。資料6「菅付構成員資料」。資料7「平成25年度HTLV-1対策関連予算案」となっております。不足等ありましたら、お申し付けください。ここからの議事進行につきましては、渡邉座長にお願いいたします。
○渡邉座長 皆さん、本日はよろしくお願いいたします。お手元の議事次第に従って進めさせていただきます。皆様、御了承のとおり、本協議会では毎回テーマを決めて、より深く議論をいただくことにしておりますが、今回はATL対策をテーマとしました。まず、事務局から対策の現状やがん対策推進基本計画の閣議決定について、説明をお願いいたします。
○がん対策・健康増進課長 資料2「ATL対策について」、2ページの「医療体制の整備について」、皆さんもう何度か見られている資料、スライドかもしれません。ATLの関係で申し上げると、診療ガイドラインの策定と3つ目の欄ですが、いちばん下のポツにATLについて平成23年度からHTLV-1関連疾患研究分野にて、診療ガイドラインの検討班を平成23年、平成24年、平成25年も公募して、この検討班を設置しているところです。
 3ページですが、診療体制です。HTLV-1関連疾患に対応できる診療機関、臨床研究機関ということで、赤枠で囲ってありますが、ATL診療が可能な医療機関が平成23年度の厚生労働科学研究の研究班の結果で265医療機関、ATL関連の臨床研究参加医療機関数が17医療機関となっております。右側でHTLV-1情報サービスから医療機関情報ということで、疾患から検索でATLということで、検索できるような形になっております。
 4ページですが、普及啓発資材についてです。これも御案内のことと思いますが、平成22年度の研究班で作成して、がん診療連携拠点病院は全国で397ありますが、全ての拠点病院でATLに関わる医療相談に対応するようにできるようにということにしており、拠点病院での相談支援センターで普及啓発資材を使って相談しているという状況です。
 5ページですが、2ATLに関連する研究ということで、平成24年度の研究は資料のとおりですが、研究事業としては第3次対がん総合戦略研究事業の中で、お示しのような課題を採択して研究しているということです。がん臨床研究の課題の中で、平成24年度で終了するものが2課題ありますが、ここの部分については新たに公募課題を設定して募集して、平成25年度も研究に取り組むという形となっております。以上が資料2の説明です。
 引き続きまして、資料3「がん対策推進基本計画」という冊子ですが、前回の協議会のあと、平成24年6月に閣議決定されているものについて、簡単に説明いたします。目次ですが、平成19年に作った前の5年計画と変わったところとしては、第2の4.ですが、「働く世代や小児へのがん対策の充実」という項目が新しくなっております。その下の第3の全体目標でも、1.で「死亡者の減少」、2.で「QOLの向上の関係」ですが、3.として「がんになっても安心して暮らせる社会の構築」という項目が全体目標として新しく加わっております。第4の1.の(6)その他ということで、これまで5大がんを中心に取り組んできたところですが、希少がんについても記述が入ったところです。
 具体的には18ページです。(6)その他の<希少がんの現状>のところにもありますが、希少がんの1つとしてのATLについての記述もここの部分に記載されて、施策を推進していくという形になっております。
 23ページのがんの予防の関係ですが、2段落目、ウイルス感染が既往している、高い因子とされているものの例をいくつか書いてあります。その1つとして、ATLと関連するヒトT細胞白血病ウイルス1型についての記述があり、このような予防施策等に取り組んでいくという計画が策定されたので、報告いたします。以上です。
○渡邉座長 今の報告内容に関して御質問があるかと思いますが、あとの議論の時間の中で質疑応答の時間も併せて取っていただきたいと思います。
 続きまして、今回のテーマについて、構成員や参考人の方々から話題提供をいただきたいと思います。初めに、ATLそのものの概要と、現在、研究班で進められているATL治療ガイドラインについて、国立がん研究センターの塚崎構成員からお話をいただきます。
○塚崎構成員 私事ですが、昨年9月に長崎大学から国立がん研究センター東病院に異動しております。どうぞよろしくお願いいたします。今日は、関係の皆様と御相談する中で、資料4の1枚目にあるATLについて、4つのことについてお話をさせていただければと思っています。この資料を用いながら説明します。
 1枚目の上の写真のように、ATL(成人T細胞白血病・リンパ腫)は、基本的に白血病という病態をとるので、顕微鏡で見ると、そこにあるようなフラワーセル、花細胞と言われますが、核が花びら様の特徴的な形態をした白血病細胞が増えますし、頸部などのリンパ節が腫れることが多いです。左下にあるように、皮膚病変がかなり好発します。ということで、最初、血液内科医が診ることもありますが、皮膚科医が最初に診ることも多いです。
 右上の写真は特殊な肺炎ですが、こういう難治性の肺炎をよく合併します。すなわち、T細胞というリンパ球は免疫を司りますが、その細胞が白血病になるので、免疫不全が特徴的に起こります。この特殊な肺炎は、最近は長崎で見ることは希になっているのですが、千葉で私が最初にATLで診させてもらった患者がこういう状況で、かなり呼吸苦が強くて、きつい状況で診断されて入院をされて、幸いこの方は感染症の治療と元の病気であるATLの治療を併せて行うことによって、今、小康状態を保たれたという状況です。
 次ページですが、ATLの概要を説明します。先ほどからお話が出ましたように、HTLV-1というウイルスが原因となる成熟T細胞の腫瘍ですが、1977年に当時、京都大学にいらした高月先生がこの病気を発見されました。その当時から九州出身の人に多く地域偏在性があって感染症等の関与が疑われましたが、1981年にこのウイルスが同定されました。その後、疫学的なこととしては、西南日本、世界で申しますと中南米、アフリカを中心に、HTLV-1を持っている方をキャリアと申しますが、数千万いらっしゃって、そのHTLV-1のキャリアから、当時ですと、平均年齢は60歳ぐらいでATLを発症される方が数%いらっしゃることが分かっています。そして、当時、それから20年以上経った現在においても、日本で年間約1,000人が新たにATLを発症されていて、死亡者数で調べてみても、毎年約1,000人が亡くなられているという、極めて難治性の白血病リンパ腫です。いちばん下の丸ポツですが、これは臨床的に大変重要なのですが、臨床病型としては、急性、リンパ腫型、慢性、くすぶり型と、大きく異なる4つの病型に分かれるのですが、その4つの病型の経過は異なりますが、いずれも長期的にはなかなか治らない疾患であることも示されています。そのためATLを抱える患者・家族の皆様の悩みとしては、そこに書いてあるようなものがあります。それに対してのHTLV-1の総合対策を行っていくことを、渡邉先生、あるいは菅付さま、今日お見えになっている構成員の皆様と2009年に提言として作らせていただいたものが、右上のスライドです。すなわち、感染予防、感染者対策、そして疾病対策とありますが、疾病としてはHAMという神経難病とATLがあります。このHAMは慢性の疾患として患者に大変病悩を与えてしまっております。それに対して、白血病のATLは生命予後、命にかかわるというところが大変問題で、診断や治療が遅れると、急に患者の命が亡くなってしまう、そういう疾患です。
 提言の中でいくつかのことが疾病対策の中に書いてありますが、その中にも診療ガイドラインの作成。治療法としては、早期の新しい探索的な研究による新薬の開発。さらに、その下に書いてある集学的治療法の開発、そういういくつかのポイントが大事であることを提言しました。それに基づいて、下にあるようなATLを含むHTLV-1関連疾患に対しての患者やキャリアの方への情報サイトも作成されています。
 次ページには、HTLV-関連疾患がほかにもいくつかあることを示しました。その左下と右上のスライドでは、厚生労働省の平成20年度の研究班によりキャリアが九州からかなり関東等に広まったことを示しました。もう1つのポイントとしては、右上のスライドにあるように、キャリアの高齢化が大きな問題です。これに伴って、ATL患者の平均発症年齢も1980年には60歳代だったのが今は70歳代ということで、10年以上高齢化しています。
 右下のスライドは、世界においてHTLV-1のキャリアの方、ATLの方、HAMの方はどこに多いかと申しますと、中南アメリカ、アフリカ等におりまして、御覧いただくとお分かりのように、日本以外では発展途上国の国が多いので、先進国の日本が主体となってHTLV-1によるATL、あるいはHAMの対策にあたることが必要であるかと思われます。
 次ページですが、ATLの発症予防と治療法については、左上にあるように原因が分かっているので、感染予防、発症予防、治療があります。今日は詳しくはお示ししませんが、右上にあるHTLV-1の感染予防はかなり達成されており、それに対してATLを起こした場合の治療、あるいはATLの発症予防については未解決の点が多くあります。ただ、ATLの発症予防については、右下のスライドにあるように、ATLを発症するリスクが高い人が同定されてきているので、新しい良い治療法ができたら、発症予防も今後はその対象となるグループのHTLV-1キャリアに対して行える可能性があります。
 次ページではATLの臨床的な特徴を左上からお示します。先ほども申しましたように、リンパ節、皮膚の病変が多いですが、例えば胃腸にもかなり潰瘍を伴う病気を起こすことがあります。白血病細胞は、この患者では最初は小型だったものが経過中に大型になっています。これはどういうことかと申しますと、病型としてATLには4つあり、急性型が一番予後不良ですが、慢性型、あるいはくすぶり型というゆっくりした経過をとる病型から、経過中に同じ患者で病気が悪くなるときには、白血病細胞が大きくなり悪性度を増すことがあります。
 左下のスライドでは、我々血液内科にとってはATL患者を診療していく上で、一番大事なものの1つであるATLの臨床病型と予後、すなわちATL患者の生存をお示ししています。縦軸は生存されている方の割合、横軸は年を示しました。それで見ると、急性型、リンパ腫型の場合には、50%の方が1年もしないでお亡くなりになるという、極めて予後不良なのに対して、例えばくすぶり型の方ですと、半数以上の方が5年以上長期生存されるということで、同じATLという疾患であっても、病気の経過が違いますので、治療方針を変えていくことが必要になります。次のスライドで、右上にATLの日本での治療成績の現状をお示しします。ここで低悪性度ATLと高悪性度ATLと分けて書いてあります。すなわち、くすぶり型、予後不良因子を持たない慢性型のような低悪性度ATLの方の場合は、経過が緩徐ですし、現在、根治できる特効薬がないということもあるので、watchful waitingという治療方針が一般的です。これは病気が急性型に転化してしまったら、そこで抗がん剤を使って、しっかり治療をしないと予後が悪い。しかしながら、急性転化という急性型になるまでは、慎重に経過を診ているという方針ですが、そうしたところ、確かに5年、10年、15年と長期生存する方はいらっしゃいますが、やはり経過中に急性型に移行して、そのあとの患者の生命予後は極めて不良なことが示されています。
 一方高悪性度、すなわち急性型、リンパ腫型、予後不良因子を持つATLの患者の場合には、左側には抗がん剤治療、右側には骨髄移植治療の成績をお示しましたが、治療成績は少しずつですが、間違いなく良くはなっていっています。しかしながら、最新の治療で行っても、長期生存される方は20%から40%の方であるということで、ほかの悪性リンパ腫/白血病に比べると、極めて予後が不良です。患者さんにとりましては本当に命にかかわる怖い病気で、今でも診断されてから1週間、2週間でお亡くなりになる方もたくさんいらっしゃいます。そういう極めて厳しい疾患です。
 こういう疾患に対しての標準治療を作るためにはどうすればいいかということです。右下は日本臨床腫瘍研究グループ(JCOG)という日本の悪性腫瘍に対しての臨床試験のグループがあり、そこでの治療成績をお示ししております。JCOGのリンパ腫グループではATLを含むいろいろなリンパ腫に対しての治療法の開発を継続しています。ATLは左下の3つ目にありますが、当初はATLという診断がつかなくて、2つ上にある高悪性度非ホジキンリンパ腫という中に紛れて治療されております。そういう中で、治療成績が不良であることが分かりましたので、1990年代からは分けて治療をするようになりました。
 そこからいくつかの治療を行っていますが、次ページにJCOGのリンパ腫班によるATLに対しての第3相比較試験という、患者に参加していただいての臨床研究の結果をお示ししています。これは1998年から行って、全部で118名の患者にご参加いただいたのですが、有望であると考えられる2つの治療法を比べてみたところ、VCAP-AMP-VECPという3つの治療法を繰り返して行っていくという治療法が、完全に病気が見えなくなる割合が40%、もう1つの治療が25%、3年生存割合が24%、もう1つの治療が13%と上回っていたということで、現時点では少なくともほかの抗がん剤治療に比べると、この治療法が副作用は強いのですが上回っていることが示されたという、臨床研究、臨床試験によって、ある意味ATLに対しての標準治療法が確立しました。しかしながら、先ほども申しましたが、この治療成績はほかの白血病に比べると不良です。
 ということで、左下にあるように、同種の骨髄移植を行っていくと、この患者は抗がん剤治療では赤でお示ししているATL細胞が消えることは全くなかったものが、同種移植を行ったあと、それが消えて、極めて良い状態になられて、そのあと10年、全く再発をしていない、すなわち治っていらっしゃいます。右側のスライド2つでは骨髄移植を、上は比較的若い方に対しての一般的な骨髄移植、下の図は高齢のATLの患者に対してのがん臨床研究事業での継続的な岡村班、鵜池班でのミニ移植という形での抗がん剤を減らして移植を行っていく、そういう治療成績をお示ししています。
 次ページですが、そういう同種移植の効果は抗がん剤治療によるだけではなくて、免疫学的な治療が効くことから行われているので、免疫療法について、左上にあるペプチドパルス樹状細胞を用いた免疫療法も臨床試験で行われています。
 一方、左下にあるように、欧米においては、日本では全く用いられていないインターフェロン(IFN)とジドブジン(AZT)という2つの抗ウイルス薬を併用すると、ATLに対して良い治療効果があるということで、標準治療として用いられていますが、日本では保険適用がないために、これは使うことができないというのが現状です。
 そういう中で、右上のスライドのように、2009年に渡邉先生ほか、海外の先生方と御一緒に、ATLの治療についての国際的合意をこのような形で提言しました。そこにあるように、病型によって治療方針が変わっていますが、この中に抗がん剤治療、同種移植と並べて、IFN/AZT療法も記載があります。さらには、再発、難治の場合には、下にあるように新しい治療法が必要だということが示されています。右下にあるように、その新しい治療については、脱毛が起こるような抗がん剤治療のみではなくて、悪性腫瘍に対する分子標的療法が1から15まで、いろいろなところを標的にしてできることが模式図として示してあります。
 次ページですが、ATLの治療開発行う場合、どういうものを標的とすればいいかということについては、ATL細胞の特徴が基礎、あるいは生物学的に調べられる中で、いろいろなものが候補としてあることをお示ししました。その中でも、左上の表面抗原の中でのケモカイン受容体としては、皆さん御存じのように抗CCR4抗体が既に開発されましたが、これについてはこのあと石田先生からお話をいただきます。
 ATLに対しての新薬の開発動向について、左下にたくさんのものを並べています。たくさんのものがあるというのは、ある意味これから先ATLの治療を考える中で、新薬開発としては有望なものがあるといえますが、それをどういう形で開発するかということになると、第1相試験、第2相試験、第3相試験という一つ一つのステップを踏んでいくことが大事になってくるということが1つのポイント。もう1つは、左下のスライドの中にありますが、医師主導治験としてのプロテアゾーム阻害剤、さらには高度医療評価制度、最近、先進医療B制度と名前が変わっておりますが、そういうものを用いた治療法の新薬の開発ということで、医師が主体となっての新薬の開発も進んでいることをここで御紹介しておきたいと思います。その中で、右下のスライドにあるATLに対しての欧米では標準治療となっているIFN/AZT併用療法については、JCOG1111試験として臨床試験が1、2か月後に患者登録が始まるという状況です。
 次ページですが、今紹介した先進医療B(旧・高度医療)評価制度によって行うJCOG1111試験で、実際に臨床試験の成績が良かったときに、どういう形でそれが患者に対して薬として用いられるかの流れを示しました。実際、研究自体には5年かかります。5年かかった上でその有用性が検証されたら、そのあと実際にこれが薬事法上の適応拡大につながると考えておりますが、これを行っていくためには左上のスライドの右側に書いてありますが、学会あるいは患者団体からの要望が重要になりますし、さらにはその前に患者にこの試験に参加していただくことが大変大事になってまいります。70名の患者にこの試験に参加していただかないと結論が出ません。本当にこのIFN/AZT併用療法が良かったということが結論付けられたら、そのあと多くの患者にまた使っていただくことができるという流れをこのロードマップで示しました。
 続きまして、ガイドラインの整備を紹介します。診療ガイドラインがどういうものかは、右上のスライドにあるように、系統的に収集して整理した診療に関する情報、これは基本的には質の高い臨床試験の結果の論文とご理解ください。あるいは、検討結果を参照しやすい形にまとめたもので、ある状態の一般的な患者を想定して、適切に診療上の意思決定を行えるように支援することを目的とします。すなわち対象は医師を想定していますが、これは患者にとっても有用なので、既にいろいろな疾患で診療ガイドラインを患者も活用されているということを聞いております。例えば乳がんの場合には、一般的な患者も早期、進行期、あるいはHER2と言われる抗原を乳がん細胞上に持つかどうかで治療が変わるので、乳がんでは5冊、5つのガイドラインの本があります。そのぐらい患者の状況によって治療方針が変わるのです。
 一方、ATLに対しては、右下にあるATLの臨床病型分類によって(次ページ左側の臨床病型の診断基準参照)診療ガイドラインができます。左下のスライドは日本血液学会が今、作成中のもの。右上は、皮膚悪性腫瘍診療ガイドライン、これは既に皮膚科では2010年に作成されたもの。この2つをお示ししています。基本的に臨床病型に基づいて、右上の皮膚科のガイドラインは全身治療が必要な場合は血液内科で治療するようにという記載があります。その実際の全身治療をどうするかということについては、左下にあるようなATLの臨床病型に基づいて、経過観察(watchful waiting)をするというところから、抗がん剤を強力に使う、あるいは同種移植を行っていくというものが紹介されています。実際細かな点については、右下のスライドにあるように、いろいろなそれぞれの患者の病気の状況において、クリニカルクエスチョン、臨床的な疑問として、例えば初発の悪性度が高いATLに対して、推奨される治療はVCAP-AMP-VECP療法であるということが書いてありますが、このあと詳しい説明も実際のガイドラインの中にはあります。注目していただきたいのは、CQの1から5までに対して推奨しているカテゴリーが、1から3まであります。これはどういうことかと申しますと、実際エビデンスのレベルとして、標準治療として本当によいのかということについての臨床試験がどれだけなされているかによって、カテゴリーが小さい1はエビデンスのレベルが高い。それに対して、例えばATLに対してのIFN/AZT療法に関しては、まだエビデンスレベルが低いことがガイドラインに示されています。
 次ページですが、ATL関連の研究の進捗について少し紹介しています。これは先ほど厚生労働省の担当の方からも御説明がありましたように、左下に厚生労働科学研究費での今年度のATL関連研究領域ということで、先ほどは10お示しいただきました。私がここにお示ししたのは、全部で27の第3次対がん、あるいはがん臨床での研究が進んでいますが、ATLに関わるということでもう少しピックアップしています。もう1つ、ATLに対するボルテゾミブの医師主導治験は、臨床研究推進研究事業の中で行われていますが、ここに取り上げています。右上にお示ししたのは、この研究の中でも私が関わらせていただいている、がん臨床研究のATLの診療実態、指針の分析による診療体制の整備ということで、ここでは17名の血液内科、皮膚科、病理、ウイルス腫瘍学、あるいは疫学の先生方と御一緒に、ここにあるような形でいくつかにテーマを絞って、そのアウトカムとしてATLに対する適切な診療体制の構築を目指しています。
 右下のスライドにあるように、HTLV-1の総合対策を考えていくと、基礎から臨床までをしっかり総合的に考えて、ここにあるような5つの大きな項立てが必要かと思います。この中で右上の青で示したのは、薬の開発を既存の薬についてしっかり進めることです。それに対して、左下の緑で示したのは、基礎的なところからより良い薬を今後、更に開発していくことです。ATLという難治性の疾患を考えるときには、それぞれ青と緑で示したもう既に臨床に間近なところにある薬と、まだもう少し時間がかかるかもしれないけれども、やはりATLの分子異常を考えた上での新しい開発、その両方を並行して開発していく必要があると思います。
 次ページは、今日4つの話をするようにということで、ここにある「患者、あるいは行政の方々へ求められること」をテーマでいただきましたので、僭越ながら最後にスライドをお示ししました。左下にあるのは、ATLに限ったことではないのですが、がん臨床開発ネットワークというものについてです。2010年に厚生労働省では、臨床試験部会を国立がん研究センターの中に設けて、がん臨床開発ネットワークをこのように組んでいくことが提案されています。下に多くのぶら下がりがありますが、右側が後期開発ということで、もう薬となったものを何が標準治療かということで組合せを考えていくと。それに対して、左側が早期開発ということで、新薬の開発を行っていくには、両方をしっかり組み合わせてやっていくことが大事になっていくかと思います。特にATLは希少疾患ですので、年間約1,000例の患者により良い治療法を提供していくためには、多くの患者に臨床試験に加わっていただくことが大事になります。右上にあるように、ATLを含むHTLV-1関連疾患情報サイトを患者あるいはキャリアに見ていただければ、ここで公開されている臨床試験に患者が積極的に加わっていただけると思います。
 右下に今日のお話のまとめを書いていますが、ここの中にいくつかのステップがあります。ATLという希少で難治性の疾患に対してより良い標準的な治療を開発していくためには、皆様の御協力を得ながら進めていくことが大事かと思っております。以上です。
○渡邉座長 塚崎先生、どうもありがとうございました。非常に広い領域をコンパクトにまとめていただきました。いろいろ御質問等があるかと思いますが、先ほど申し上げましたように最後にまとめて質疑、議論をさせていただきたいと思います。
 次に、本日参考人として出席いただいております名古屋市立大学大学院医学研究科腫瘍・免疫内科の石田高司先生から、ATLの新規医薬品ポテリジオについて、御報告をお願いいたします。15分程度でよろしくお願いいたします。
○石田構成員 皆さん、はじめまして。名古屋市立大学の石田と申します。私は初めてこの場に参上しておりますので、簡単に自己紹介いたしますと、名古屋市立大学病院の血液内科の医師です。スライドの1枚目は名古屋市立大学病院なのですが、こちらで血液内科の医師として働いておりますが、大学病院の医師ですので、いわゆる試験管の中の実験、研究から、塚崎先生とともにATLにかかわる様々な臨床試験、新薬の治験などにも携わって、日々働いております。
 1枚目の下段、「本日の話題」ということで、本日はポテリジオ、CCR4抗体の話をさせていただきますが、まずはそれに至る歴史として悪性リンパ腫全般に対する抗がん剤治療について、簡単にサマライズいたします。今、塚崎先生から随分お話がされましたので、オーバーラップするところについてはスキップしていきますので、御了承ください。
 2ページ、3ページにかけてのスライドについて、まとめて簡単に説明いたします。悪性リンパ腫に対しては、CHOPといわれる抗がん剤治療、その後様々な抗がん剤の治療法がどんどん強度を上げる、抗がん剤の強度を上げるという形で開発されてきたのですが、結果としては第一世代といわれているCHOP療法が最も良い治療ということで、歴史的に残っております。すなわち、抗がん剤治療は強度を上げればいいというものではないということが、後に登場してくるリツキサンという薬が登場するまで、このCHOPという治療法は比較的副作用が少ないのですが、標準的治療として君臨しました。すなわち、我々血液内科医及び腫瘍を治療する医師が学ぶことは、抗がん剤治療は強度を上げればいいというものではないということです。ということで、西暦2000年ぐらいからよく見聞きするようになったがん分子標的治療についてのお話に移っていきます。
 4ページにその概念をお示しします。がん分子標的療法は、健常細胞に比較してがん細胞で質的又は量的に異常を来した分子を標的とした治療法になります。したがって、理論的に正常細胞には働きかけないということになります。したがって、4ページの下にあるように、従来からの抗がん剤治療が比較的副作用が高いのが特徴であったわけですが、分子標的療法にも副作用はありますが、がん細胞を特異的に狙っているために、比較的副作用が少なくて済みます。
 5ページですが、代表的な分子標的治療薬の成功例がイマチニブ、グリベックという薬です。このグリベックという薬は、私が医者になったころは、すぐに生きるか死ぬかという治療である骨髄移植を慢性骨髄性白血病の患者には実施しておりました。しかしながら、2001年にこの薬が市場に出てから、慢性骨髄性白血病に対する治療が一変しました。それまでは骨髄移植をしなければ決して治らないという病気であったものが、今は細かい生存期間等は示しませんが、高血圧や糖尿病に似た、正に慢性疾患という形で、我々は外来でコントロールする疾患となっております。
 6ページですが、そんながん分子標的治療の中で、代表的なものの1つががん抗体療法といいます。抗体というのは、私たちの体の中にある免疫、外部から入ってきたばい菌などをやっつける分子ですが、これをがんに特異的な抗体を作って、それを体の中に入れてやっつけるというのが、がんの抗体療法の概念です。抗体というのは、鍵と鍵穴の関係といいますが、標的に対して特異性が高いがゆえに、がんに特異的な抗体を作ると健常の細胞には働きかけないという特徴を持っております。以下、7枚目のスライドは参考にしておいてください。スキップします。
 8枚目のスライド、9枚目のスライドは、時間があったらお話しようとしましたが、今日はスキップします。抗体療法も様々な紆余曲折がありましたが、ここで申し上げたいのは2000年以降に、大きく様々ながんで成功し始めているということです。
 10枚目の上のスライドを示します。現在、様々ながん抗体療法が日常診療でなくてはならないものになっています。例えばトラスツズマブ、これはハーセプチンという薬で、乳がんや胃がんに対して、従来からの標準治療を変えています。ベバシズマブ、これはアバスチンという薬で、日本でも保険承認されていますが、大腸がんや非小細胞型肺がんの患者の生存期間を延長させております。10ページの下のスライドですが、セツキシマブ、これはアービタックスという薬になりますが、大腸がんや頭頸部の扁平上皮がんの治療法を根本的に変えております。イピリムマブについては、日本ではまだ保険承認されておりません。これら抗体療法の出現は様々ながんで劇的に標準的治療の変革をもたらしました。
 11ページですが、血液領域でも同様です。リツキシマブというCD20というB細胞に発現する抗原に対する抗体が登場しました。
 13ページですが、先ほど申しましたように、いくら抗がん剤治療の強度を強めていっても生存は延長しなかったわけですが、リツキシマブという薬が登場しただけで、CHOP療法にリツキシマブを上乗せすることで患者の予後が大きく改善することが、2002年の『ニューイングランドジャーナル』という雑誌に報告されたわけです。それ以降、私ども血液内科の医者で、B細胞リンパ腫に対してリツキシマブという薬はなくてはならない薬になっております。こういったことが、血液腫瘍のみならず、がん全てにおいてのある程度の流れと御理解いただければよろしいかと思います。
 こういった流れを踏まえて、ポテリジオ、CCR4抗体の開発の過程についてお話いたします。14ページの左上は英語のスライドで大変分かりにくいスライドです。私は今日、スライドを提示しながら説明するものと勝手に勘違いしておりましたので、配布資料とするには見にくいものがそろっておりますが、ご了承ください。14ページの左上については、2001年の春に、私の恩師であって現在も御活躍中の上田龍三教授の下に、私が大学院生として戻ってきて、上田龍三先生からCCR4抗体の基になる抗体を渡されて、「君はこれでリンパ腫と抗体の研究をしなさい」というところから始まって、昨年ポテリジオという形でATLに対する薬として保険承認されるまでの様々な私どもがしてきた仕事を示しておりますが、詳細は省きます。
 14ページ下のスライドですが、先ほど来、示しておりましたリツキサンの話と関連するのですが、このスライドで申し上げたいことはATLが属するT細胞リンパ腫はBに比べると予後が悪いということです。隠れたスライドになってしまいますが、T細胞リンパ腫の中でもATLは最も予後が悪い腫瘍であるということです。
 15ページの上のスライドです。そんな中、実際問題としては発表したのは2003年ですが、2001年の段階で、ATLの患者の腫瘍にはCCR4という分子が非常に高発現していることを見出して、2003年に『クリニカル・キャンサー・リサーチ』という雑誌に発表しました。
 15ページ下のスライドですが、これは先ほど塚崎先生からも提示がありました、現在の基盤的治療と言われているVCAP-AMP-VECP。この治療法も生存期間の中央値は13か月、約1年ということです。また、このスタディは69歳までの患者しか登録できない試験でありました。ATLの患者は現在70代の方が大変多いということで、実際には患者全体を見ると生存期間中央値1年はいっていないのが現状だと考えられます。
 16ページです。先ほど塚崎先生からも御説明がありましたように、ATLに対して既存の抗がん剤だけでは、ある一定の限界に突き当たっている、壁に突き当たっているというように我々は判断したわけです。左下は造血細胞移植の成績ですが、造血細胞移植によって一部の患者に完全な治癒を求めることができますが、やはり造血細胞移植を受けられる患者もごく一部です。具体的にいうと、今、年間発症1,000人を超えるといわれているATLの患者ですが、移植を受けておられるのは年間100名程度ということで、ATLの患者の中でも限られた方しか移植を受けられません。
 17ページですが、私どもはこういった現状を踏まえて、ATLでよく発現しているCCR4に対するリツキサンのような抗体療法を目指そうというプロジェクトで、上田先生の御指導の下、研究を開始しました。
 18ページ、19ページのスライドはまとめて説明しますが、抗体の作用機序にはいろいろありますが、このCCR4抗体は製造元である協和発酵キリン(株)が開発したADCCという抗体と、体の中の免疫細胞が協力して、腫瘍細胞をやっつけるという抗体の作用機序を著しく強めた、日本で開発された抗体のパワーアップをするテクノロジーを用いた治療抗体です。19ページの下ですが、その治療抗体を用いて、私どもの教室においてはATLの患者に強い抗腫瘍効果を認めることを見出すことができました。
 20ページ、21ページです。20ページ上のスライドですが、これは動物実験です。マウスの実験でもこういった抗腫瘍効果を確認して、21ページですが、ここにいらっしゃる塚崎先生、それから皆様とともに第1相試験を開始したわけです。第1相試験は薬物の安全性を確認する試験です。そして、低い濃度からやっていくのが第1相試験なのですが、21ページの下のスライドにあるように、0.01mg/kgという、例えばB細胞リンパ腫に使う抗体の濃度の1,000分の1の量で血液学的に完全寛解になるようなケースも経験して、私どもは大きく勇気付けられたわけです。
 22ページ上です。第1相試験は、推奨用量1.0mg/kgということと、ポテリジオが安全性と有効性が十分であろうということで、第2相試験に進んでいこうということになりました。
 22ページ下ですが、このような形で1.0mg/kgという量で第2相試験を行いました。
 23ページ上のスライドです。このように赤いATLの腫瘍が、ポテリジオを投与することによって、きれいに消える。
 23ページ下です。皮膚によく浸潤するという先ほどの説明ですが、このポテリジオによって皮膚病変も速やかに完全寛解に入るということです。
 ということで、24ページ上のスライドのリンパ節病変も、よく消えました。第2相臨床治験ですが、全体において患者登録された方のうち半分にこの薬が効いて、ATLという予後不良の疾患であることを考えると、半分のリスポンスというのは、奏効というのは非常に良い結果であるのと、生存期間の中央値が13.7か月、これに入ったATLの患者は、既に抗がん剤で再発したあとの状態の悪い患者ばかりでしたので、この13.7か月というのは、先ほどのVCAP-AMP-VECP、いわゆる初発のATLに対する標準的な治療の生存期間中央値とほぼ一緒で、抗体療法単独で、外来でできる治療でこういった生存期間が得られることは非常にプロミシングであるということで、この試験の結果をもって昨年の3月に保険承認がなされ、この薬は昨年5月29日から販売されたことになります。実際には5月29日に販売されたということなのですが、私どもの施設でもそうですが、どこの病院でもそのあと各施設の薬事審議会、薬審を通してから薬を使うようになりますので、多くの施設では7月とか8月から使い始めているわけですが、多くの施設で使い始められてから約半年ぐらいのところですが、今日、協和発酵キリン(株)のマーケティング部に確認したところ、現在までのところで発売から半年間で500名の方にもう既に使われているということです。年間の発症が1,000人ということを考えると、現在はATLを発症されている方のほとんどに使われている薬になっているわけです。
 26ページです。しかしながら、ポテリジオはよく効くのですが、私自身も経験しておりますが、皮膚障害を含め、非常に重篤な副作用が出る方もあります。これは育薬ということで、私どもは今後、最適な治療法を作っていきたいと思います。といいますのは、26ページ、27ページのスライドでお示ししているように、現在ポテリジオは欧米、ヨーロッパでも治験が始まっております。要するに日本で作られたこの薬が、今、世界に広がっていくところです。実はがんの抗体療法薬で日本から世界に発する薬はこのポテリジオが初めてです。先ほど前半の部分でお話した、今までのがん抗体薬は全て海外で治験をされたあとに日本に入ってきております。したがって、副作用の報告などは海外のものを参考にして、こちらはそれを患者にフィードバックすればよかったわけですが、このポテリジオに関しては我々が育薬をして、適切な使い方を確立して、海外の患者にも役立てていく必要があります。
 私どもはATL以外のT細胞リンパ腫に対するポテリジオの治験も終了しておりまして、適応は拡大していく方向にあります。このATLで現在既に保険承認されていて、繰り返しになりますが、育薬をしていきたいと考えております。
 28ページです。これは日本の薬事行政全体に言えることですが、日本のがん診療においてドラッグラグという言葉があります。海外で普通に使える薬が日本で使えないことは日常茶飯事です。しかし、これはポテリジオという薬が逆にドラッグラグはなく、日本から海外に輸出するということの成功事例を作ることができました。私どもはこういったことで、日本という国は必ずしもドラッグラグを常に受けなければいけない国ではないということを確信しておりますので、それ以外の今後の血液腫瘍のみならず、いろいろな腫瘍に対する創薬についても国を挙げて産学、国で開発をしていきたいと思います。そして、29ページの上のスライドですが、何よりもポテリジオはfirst in cancer patient、要するにがんの患者への最初の投与が日本に実施された唯一のがん抗体医薬品です。日本での育薬が必要不可欠で、ここにいる皆様方とポテリジオの最善・最良な使用方法を確立し、ATL患者に対して福音をもたらすようにやっていきたいと考えております。以上です。
○渡邉座長 どうもありがとうございました。日本発の新しい抗体薬で、ATLに対して今非常に効果が期待されているということで、様々な御質問等もあろうかと思いますが、これも全部最後にまとめて議論させていただきたいと思います。
 続きまして患者会の活動について、菅付構成員にお話をいただきたいと思います。菅付構成員が代表を務めていらっしゃる患者会スマイルリボンでは、ATLネットという患者支援の組織があります。その点も含めまして、よろしくお願いいたします。
○菅付構成員 菅付加代子と申します。「日本からHTLVウイルスをなくす会」という名称でNPO法人を鹿児島市で立ち上げたのが2005年の12月です。本日は、ATL患者の立場から、スマイルリボンの活動の中から、ATLネットのこと、ATL患者への支援についてお話させていただきます。
 2012年4月にスマイルリボン体制へ移行いたしました。スマイルリボン体制というのは、HAM患者会とATL患者会、キャリアママの会を統合したものです。現在、賛助会員は個人で545名、法人で19名です。全国HAM患者友の会を2003年に設立して、2005年11月に法人登録したものが「日本からHTLVウイルスをなくす会」です。このなくす会にはATL患者や遺族、家族、キャリア、賛同者を含めております。2011年にキャリアママの会を発足し、2012年にようやくATL患者会を作ることができました。現在は「なくす会」という名前を「スマイルリボン」という名前に名義変更手続中です。レッドリボンとか、イメージを分かりやすくするために変えようと考えております。
3ページですが、先ほどの体制を図に表すとこうなります。左の事務局本部の鹿児島の事業内容というところにありますように、会報を発行したり、講演会や会合のお知らせをしています。ネットを使われる方が少ないので中心になるのは電話相談と郵便、メール便等の発送作業になります。ATL対象事業のところで、代表を浅野史郎さんが快く引き受けてくださいましたので、ATL患者会を作ることができました。しかし、浅野さんはまだ治療途中ですので、インターネットでのメール交換などできることをしていただいており、事業の中心は鹿児島の本部がやっております。
 そういう相談体制をやっている中で、4ページになりますがATL患者と遺族の声が入ってきます。私が最初に出会った患者さんは悪性リンパ腫だったと思います。皮膚の症状がたくさん出ていて移植を受けられましたが、結局亡くなられて、私はずっとその治療を最後の瞬間まで見ておりまして、ATLの凄さというものを目の当たりにしております。その後も出会ったATLの患者さんのほとんどが亡くなりました。本当に大変な状況で、過酷な化学治療を受けられて、中には移植にトライされたのですが、それも予後が悪くて数か月後に。知り合った患者のほとんどはきっかけがネットからだったので40代の方がほとんどだったのですが、若い母親だったり1歳のお子さんを持つ父親だったり、遠方から治療を受けられていました。私がお見舞いに行き始めて治療を受けられたという過程をみながらお通夜に行くことになる・・・、とてもつらいことを経験しております。
遺族の方の声も本当に大変なものです。全くこの病気のことを知らなくて、あっという間に亡くなってしまったもので、何が何だか分からないという方が圧倒的に多いです。それを言うと、ほかにも厳しいがんがあると思われがちですが、大きな違いは何かなと思ったときに、血縁関係でATLを発症した家族のところは、ほとんど同じように家族の中に発症する方がおられるということです。、中には5人兄弟のうちの4人がATLで亡くなったという実態を電話で知らせしてくださった方もいました。
 現在、NPOを立ち上げて7年になりますが、相談を受ける上で難しいなと思うのは、くすぶり型、慢性型、皮膚型、急性型、リンパ腫型と、発症によって治療方法も違うし、進行の度合も違うので、比較ができないということがあります。また、同じような患者さんを紹介しても、相手の方はこの治療法をやっていたけれど、いつの間にか連絡が取れなくなってショックを受けさせてしまったということがありました。、それから、医師を信用できなかったというのはその病気自体が分からないからであって啓発が充分にされてキャリアの段階でこの病気のこともよく理解できていればもっとうまくいったのかなと思ったりいたします。
 ATL患者会をようやく発足させることができました。なかなか患者会というのができなかった理由は先ほど申し上げたように、10人いても連絡が取れるのは3か月後に1人や2人。6か月が経つと1人もいらっしゃらない状況の中で、患者会発足というのがとても難しかったのです。最初に出会った患者さんが「同じ病気の人と話がしたい。同じ病気の人からどういう治療をやっているのかを聞きたい」、それを強く願っておられて亡くなられたものですから、患者会発足は私にとっても一つの目標でもありました。会員の中には遺族の方もおられます。最初、亡くなられた家族のことを話したくないとおっしゃっていたのですが、時間が経ってある程度年数が経っていくと、自分の体験を生かして同じ病気で悩んでいる患者へアドバイスができればということで交流会に参加されるようになりました。この写真のうち17名が、実際治療を受けている患者や家族、遺族の方々です。他に関係者と医師に参加していただいて、合計24名でスタートしました。
 6ページです。スマイルリボンの活動として、平成23年度から平成24年度の1年間に各都道府県を回りました。鹿児島、大阪、福岡、長崎、北海道、神奈川、鹿児島に戻りまして、医師と協力をし合って医療講演会、パネルディスカッションといったシンポジウムを開催しております。7ページです。なぜシンポジウムを開催するかということですが、もちろん啓発をするためが1つですが、各県に行ったときにそこで知り合う患者やキャリアの方との情報交換がとても大事で、ネットワークを作るためにお話をしております。
 昨年6月、北海道に行きましたときには、4名のATLの患者とお会いしました。その中のお二人がミニ移植を受けられてから2年も過ごされてお元気にしていらっしゃいます。最初、そのお一人のAさんから「自分の奥さんがATLを発症して、医師はもうどうしようもないと言うんだ。どうすればいいんだ」と怒鳴るような声で、電話を何度もしてこられました。そのときに、「ミニ移植というお話は聞かれましたか」ということから、できる病院を探して紹介しました。実際そこの病院で移植を受けられて、今は海外旅行に夫婦で行かれるぐらいお元気になられました。その方とは電話で話をしてから5年かかって初めてお会いしました。、「あんたのおかげで命が助かったよ」とまで言ってくださって、感激したのですが「今後、同じ患者のためにお手伝いをしてもらえないですか」とお願いしましたところ、喜んで協力するとおっしゃっていただきました。そこで、今度はBさんという、同じように悩んでおられる患者さんを紹介して、相談に乗っていただきAさんが受けられた所で移植を受けることができて、その方も成功されてお元気になられたということがありまして、北海道は特別な感じがいたしました。そういう感じで福岡県や神奈川県でも、患者やキャリアの方とお会いして、ネットワークを作っております。
 平成24年12月23日に、NPO設立7周年の記念シンポジウムを開催することができました。ここにおられる齋藤先生から母子感染予防対策の重要性のお話をしていただきました。こうやってシンポジウムをしたことがきっかけになり、「カランコエ」という、母子感染予防対策に必要なピアカウンセリングの会を、まず東京で作ることができました。鹿児島県では、風土病という扱いをされていたこともあり、偏見を持つ地盤が根強くありまして、声を上げてくださる方がいらっしゃらなかったのですが、鹿児島での開催をきっかけに、自分から手を挙げて下さる方が見つかりました。3人の女性が映っておりますが、親子です。真ん中の女性が会の代表ですが、最初、くすぶり型と言われていたのですが、急性型に転化いたしまして、近く化学治療に入るそうです。先ほど石田先生が新しい治療方法の説明をされていましたがその治療を受けられるのではないかなと思います。この両脇のお二人は娘さんですが、キャリアで母乳を与えられなくて、先ほど齋藤先生がおっしゃっていたように3か月で離すというのがとても大変だったというようなことをお話してくれていましたので、体験者の声を反映していただければ、良い相談体制ができるのではないかと思います。ATLネットと交流会の情報交換は、新聞の協力を得てこういうふうに一般の会員だけではなく、会員以外の方にも募集をしております。
 最後にポテリジオについて、薬ができたおかげで生きる希望が湧いたという患者が多いです。この薬が全てではありません。一部の方は治っていかれる方もおられるけれども、死亡される方もおられる。でも、患者会の役割に大切なことがあると思うのです。先ほどから「育薬」という言葉をおっしゃいましたが、患者側の意識が人体実験をされると思えば、薬が効くものも効かないとも思うし、これが日本で作られた薬だけれども、私たちの病態を通して薬を良いものにしていくのだという意識づくりが大切だと思うのです。そのためには情報を隠さないで良いことも悪いことも教えてあげることが必要だと思います。先ほどの方も、「自分は治験に喜んで参加する。これで助かるかもしれないんでしょう。」活動を始めたのは9年前ですが、そのときには薬も何もなかったのです。死ぬしかない。ATLであれば、どうせ死ぬのだというような時代がありましたから、それに比べたら本当に希望の光がある時代でよかったとおっしゃっていました。
最後に、子どもの若い病気と違い、60歳以上に多い病気なので一般の方に賛同していただくことがなかなか大変です。手作りのバッヂを作り販売して活動資金集めをやっています。また、大きな事業はNPOの助成金事業に申し込んで実施しています。是非、国もスマイルリボンに対して資金支援をしていただければもっとうまく良い体制が作れるかなと思います。よろしくお願いいたします。ありがとうございました。
○渡邉座長 菅付さん、どうもありがとうございました。患者あるいはキャリアの立場、当事者の立場での幅広く粘り強くて、非常に活発なというか力強い活動の話をいただいて非常に参考になりました。ここまでATL対策の現状や研究内容、患者会の活動について御報告をいただいたわけですが、さらにATLの対策の充実や推進をしていくために、皆さんと議論を深めていくことをしたいと思います。これまでの御説明あるいは御報告に対する質問も含めて、構成員あるいは参考人の方で御意見のある方は御発言をいただければと思いますが、いかがでしょうか。
○森内構成員 私は小児科医ですので、普段関わるのはキャリアの方が圧倒的に多いのですが、これまでB型肝炎やC型肝炎のキャリアの場合には、治療法が進歩したことを受けてマスメディアなどを通じて、キャリアの可能性のある人たちを掘り起こし、その方たちがきちんと通院治療若しくは経過をきちんと追っていくように指導したことに比べ、HTLV-1の場合これまですることがないからということで、恐らく血液内科の先生方も、それほどキャリアの方が定期的な受診をすることに積極的ではなかったと思います。ただ、これだけだんだん進歩してくると、もちろんまだ道筋がきれいに立ったわけではなくて、飽くまでも臨床研究のレベルのことではあると思いますが、例えばくすぶっている方であれ、JSPFADで見つけられた何らかのハイリスクがある方、例えば身内の方がATLで亡くなられたとか調べてみたらコピー数が多いとか、そういうハイリスクの人で何らかの希望のある場合には、今後もっと積極的に、そういう定期的な受診を勧めたりしたほうがいいのか、そうであればそういうことの整備をきちんとしていかないといけないと思いますので、今日御発表いただいたような内容を踏まえて血液内科の先生方、渡邉先生ももちろん、塚崎先生も含めてですが、御意見をいただけたらと思います。あちこちで質問がよく来るもので。
○渡邉座長 私は現役ではありませんので、塚崎先生から今の点を。今は、キャリアのフォローアップガイドラインでは、定期的な受診は特に勧めていないというのが基本ですよね。
○塚崎構成員 今、渡邉先生からお話があったとおりです。それはどうしてかと申しますと、森内先生から御紹介がありましたように、ハイリスクのキャリアの方、要するにATLを発症するリスクが高いキャリアの方の同定というのはある程度できてきたかと思います。それに対して発症予防についての良い薬というものは、有望なものがあるかもしれませんが、それの臨床試験をどう組むかについては結構難しい問題がありますので、そういう観点からまだ今は掘り起こしまでは行っていない状況かと思いますが、どうでしょうか。ここは渡邉先生が今JSPFAD等でフォローアップされている方の中から、かなりハイリスクというものが同定されている中からは、最近いろいろな有望な分子標的療法薬があることを承知しておりますので、くすぶり型に対しての臨床研究が進む中で、数年先にはキャリアの方も同じ薬剤について、それを検討していくことがあるかなと思っております。HAMのほうでも臨床研究が進むということを聞いておりますので、ひょっとするとそういうところとの関係というものも今後構築できればと思っています。
○渡邉座長 私の立場から今のコメントを補足させていただきますと、まず全体のキャリアのうちの4分の1から5分の1の方にハイリスクグループを絞り込むことは、科学的にはもうできているわけです。ですから、そのキャリアの方たちからの発症率というのは、2、3人あるいは3、4人に1人というかなり高いものになっています。ただ、そのことに対して塚崎先生からお話がありましたように、現実には発症予防の介入ということは手段がまだないわけです。そういうことを含めて、キャリアの方のハイリスクのグループとそうではないグループをカウンセリング、あるいは相談のところの窓口で明確に伝えることは現実にはしない方針にしております。理由は、4分の3以上のローリスクの方に「あなたは大丈夫ですよ」と、これは非常にエンカレッジングの話ですが、ハイリスクの方に「あなたは危ないですよ」と言うことは、ほぼ死刑宣告みたいなことで手段がありません。したがって、どちらのコメントもしないというのが基本的な態度でおります。現状では、残念ながら我々はそこから先の責任が持てないということでこの様な態度を取っております。
 もう1つそこでの問題は、塚崎先生がおっしゃったように発症予防介入が臨床研究ということが可能になったらいいなというのはもちろん思いますが、少なくとも現在の定義でキャリアはキャリアでありまして、患者ではありません。つまり、病気がない健康人に分類されます。健康人を対象とした治療研究という概念は存在しないと理解しております。したがって、少なくとも研究レベルを進めていって、ハイリスクのグループの方々を一定の疾患として認定する。肝炎の例を上げますと、例えば慢性肝炎とかの状態があって、肝がんというレベルがあるわけですが、HTLV-1の感染者においても慢性HTLV-1感染症あるいは何々という適切な診断名を付けるということがなくては、予防介入の研究ということは成り立たないのではないかというのが現在の私の理解です。大変難しい問題だと思います。
○森内構成員 こういうお話を持ち出したのは、1つは発症予防につながることがあればということですが、もう1つは先ほど菅付委員からもお話がありましたように、患者の立場からすると、もっと早く知っていればもしかしたらという思いは当然あるわけで、そう言われれば思い当たることがあると症状について言われることがあります。ハイリスクの人を見てハイリスクという宣告をする必要はないにしても、その方たちについては発症したときに起こりそうな症状についてお話することは、果たしてメリットがあるのかどうか。患者から聞かれてしまいます~「そういうことの説明を受けていれば」というのは。でも本当にそうかなというのは私も迷いがありました。
○渡邉座長 その辺は微妙なところですので、塚崎先生に補足していただきたいと思います。
○塚崎構成員 重要な点ですが、HTLV-1のキャリアの方へのパンフレットと同時期に作成した医療従事者向けキャリア対応のマニュアルには先ほど渡邉先生からお話があったように定期的なフォローは推奨しないことが書かれています。その中でもHTLV-1のキャリアの方には、自分がキャリアであることは受診するときにはきちんとお話するほうがいいですよと。そして、いろいろな症状があるときには注意して、早めに受診するようにというところまでの指導もするようにということは、実際のキャリア対応のマニュアルには書かれていますので、現時点においても最低限、そういう形でキャリアの方へのフォローアップ体制としてはできると思います。長崎にいたときにたくさんのキャリアの方が御相談にお見えになったときには、ウイルス量というデータを我々は手元に持てたので、それをどうキャリアの方にお伝えするかというのは確かに難しい問題ではありますが、理解度の深い方には少し詳しくお話することは実際にはやっておりました。
○山野構成員 同じ話題で教えていただきたいのですが、くすぶり型とか慢性型とか、塚崎先生がお示しされたように最終的な予後は結構悪いというのが最近分かってきていることを考えると、まだくすぶり型、慢性型に対して、これまでは抗がん剤あるいは化学療法は余り意味がないというデータが出ていると思いますが、石田先生がお示しされたようなポテリジオなども、より安全な使い方を考えていくとか、これからくすぶり型や慢性型に対する治験や臨床試験というのが充実してくる可能性はあると考えていいですか。
○渡邉座長 塚崎先生。もし補足があれば石田先生からも後ほどお願いします。
○塚崎構成員 実際ATL以外のT細胞腫瘍の治療成績がも不良であることを石田先生から先ほど御紹介いただきましたが、ATLというものをほかのT細胞腫瘍と比較して考えるときに、実はT細胞腫瘍の中でリンパ節が腫れるT細胞腫瘍と皮膚のT細胞腫瘍がありまして、薬の開発がそれぞれ少し別立てで行われています。というのは、悪性度が低くてゆっくり、しかし難治性の皮膚病変を持っている皮膚のT細胞腫瘍に対しての薬の開発と、リンパ節が腫れながら急激に悪くなっていくT細胞腫瘍の治療開発は別立てで行われているので、有望な新薬も少しずつ違います。重なるところもありますが。そういう意味からいうと、少し分けて考えることが大事になってきて、皮膚を主体としたATLの患者に対しては、あとから石田先生からもお話が出るかもしれませんが、モガムリズマブの単剤の治療ということも場合によっていいかもしれないし、しかしそこはいろいろな臨床試験、しっかり組みながらやっていくことが必要になると思います。そのときにハイリスクキャリアの人をそこに組み込むことができるのかというのは、議論として重要だと思っております。
○渡邉座長 石田先生、補足がありましたら。
○石田構成員 特に補足はありません。
○山野構成員 ハイリスクキャリアでなくても、結局くすぶりや慢性の治療的な介入がないので、今はキャリアもフォローするメリットが余りないというところもあるのかなと思ったりします。ひょっとしたらキャリアをもう少しきちんとフォローしていたら、今は急性型という感じで激烈なのを発症した患者を診断として捉えていると思いますが、実際はくすぶり型や慢性型や血液学的な状態での患者というのは、もっとキャリアをきちんとフォローしたら、実数はもっといるのではないかなと思ったりしますが、そういうことはないですか。
○渡邉座長 その辺につきましては、たくさんのキャリアあるいはATL患者の診療の経験がある塚崎先生は、今ご指摘頂いたような可能性について実感としていかがでしょうか。科学的なデータでなくて結構です。
○塚崎構成員 重要な点だと思いますが、逆にくすぶり型、慢性型という診断が付いた方の中にも、watchful waitingと我々は申しますが、急性に転化するまで経過を見る中で、多くの方は早期に抗がん剤治療が必要になりますが、でも10年、15年と治療が必要でない方もいらっしゃいます。そういうことからすると、そこを識別することができる新しい方法、介入する、しないについて層別化できるようないいマーカーが出てくれば早期の介入はやりやすいと思います。言葉を変えると今の病期分類が有用だということを申しましたが、ハイリスクキャリアかどうかということだけではなくて、慢性型、くすぶり型という病気の分類自体をもう少し層別化できるようにしないと、なかなか難しい点もあるかと思います。
○山野構成員 補足ですが、結局HAMの場合は早期発見が明らかにいいです。ですからキャリアをフォローしていく中で、HAMの場合は早期発見できれば非常に治療介入を早めにすることで患者の予後の改善を図れるので、そういうことがATLでもあるとなると、よりキャリアのフォローアップというのがより重要になってくるのかなと感じました。
○石母田構成員 患者の立場として、私の弟がATLを発症して亡くなっていますが、当然キャリアというのが分からない状態で発症しています。ということは症状がいろいろ出ていますが、一般内科へ行ったときに全くATLという診断がされていません。結局どうにもならない状態で、やっと血液内科へ回されてATLという診断を受けている状態です。浅野史郎さんも言っていて、先ほど塚崎先生のお話の中にもありましたが、診断の遅れ、治療の遅れが即、命に関わる病気というのがATLということは、発症した患者としてはキャリアであるということをまず知っていることがものすごく大事。あとは、そうやってフォローアップをしていくことによって発症したときに、すぐ治療に入れる。HAMもそうですよね。ATLもそうだと思いますが、助かる可能性が少しは増えるのではないのかなと。そういうことも引っくるめて、今母子感染はおかげさまで国が主導でされるようになりましたが、一般の人たちはそれこそ献血でもしない限りは発見されない。これを肝炎と同じように、HTLV-1の検査も保健所なり毎年行う検査の中で受けられるような体制をなんとか国主導でやってもらえないかなと思います。
○齋藤構成員 私は産婦人科ですので、このウイルスが見つかって約33年が経ちますが、ずっと患者に対して母子感染の防止という面で説明していました。それは非常にいいのですが、必ず妊婦さんから「私は将来、どうなるんでしょう」ということは言われます。その中で30数年来、「あなたが発病する年代は良い薬もできているでしょう」ということで言ってきましたが、去年ポテリジオが認可されて、それは説明する側にとっても非常に朗報です。ただ、先ほど渡邉先生が言われましたように、明らかにATLを発病するハイリスクの方がいらっしゃるわけです。そういった方のフォローアップ体制を是非とも確立していただきたいと思います。今回、日本産婦人科医会木下会長の御協力で、全国の妊婦さんの調査をさせていただきました。約70万症例ぐらいのデータが集まりまして、日本における若い女性のキャリア率が初めて実数で分かったのですが0.16%です。ですから、毎年1,700人か1,800人ぐらいのキャリアの方が全国で見つかります。そういう方々が口々に自分の健康のことをどうされるのかということを質問されますので、是非この体制を整えていただきたいと思います。先ほど渡邉先生が言われましたように、プロウイルスが多い方について病名等を付けていただきまして、そういった方々のフォローアップができるような体制に持っていっていただきたいことを強く希望いたします。
○渡邉座長 石母田さん、齋藤先生の御指摘のフォローアップの体制、その中で例えば早期診断の方法をなんとか開発できないかという医療的、医学的な側面と、もう1つはフォローアップの相談体制、カウンセリング体制というか、医療提供の社会的な体制の問題と二通りあるかと思いますが、さらに適切な医療がなかなか受けられない。先ほど菅付さんからのお話がありましたように、実際にATLになられた方がどこで治療を受けていいのかということが治療の良い場所にうまくつながっていかない。そういう診療体制の問題もあろうかと思います。さらに診療体制、相談体制、カウンセリング体制に関して、患者キャリアの立場、医療従事者の立場から何か御発言はありますか。
○山野構成員 菅付さんの発表で、移植ができないと言われた患者がほかの病院で移植できると言われて助かったというお話がありましたが、病院によって移植の適用年齢が違うのは当然だと思いますが、患者はそこまで分からないと思います。ですから、どこの病院であれば自分が望むような治療が受けられるという情報の提示みたいなことをやっていく。例えば移植にしても、移植の上限の年齢はこれぐらい。うちの施設はこうですが、それ以上の移植をそれでも望まれる場合はこういう病院がありますよとか、そういう情報ネットワークみたいな構築というのはできているのでしょうか。ATLだけでなくても、血液のがんとか移植の分野全体で。
○渡邉座長 その辺の実態を塚崎先生から御説明をお願いします。
○塚崎構成員 施設によって移植の適用年齢が変わってくることからも、血液学会のガイドラインが作成されている中では年齢に少し幅を持たせています。そういう幅の中では日本の血液内科医全施設で同じような診療が行われるという意味から言うと、今後は施設差がこれまでに比べると減っていくと思います。しかし、その中でもいろいろな情報としてATLをたくさん見ている施設が大事になってくると思います。何をどのように公開していくかは難しい点もありますが、ATLに対してのいろいろな臨床試験に参加している医療施設というのは、そういう点を満たしていると言えると思います。そういう医療施設は先ほども御紹介したHTLV-1関連疾患の情報サイト、内丸班がそこのサイトの充実して進めておりますので、そういう中で患者にも見ていただけるようになると思います。
○渡邉座長 今のATLの治療の全国的なある意味では均霑化というか、どこで病気になっても同じような治療を受けるチャンスがある体制を組んでいくのは非常に大事なことだろうと思いますが、現実には経験のある施設とそうではない施設に違いがいろいろあるので、そこをどう情報提供して、患者側からうまくアプローチしていけるようにするか。あるいは医療従事者側から、そういうアドバイスができるようにするかが大きいかなと思います。
○菅付構成員 先ほどの移植の2例の話ですが、1つの病院では化学治療法を優先するので、移植はやらない方針だと言われたそうです。ただし、その化学療法も、これが効くとも言えないし助かる可能性は低いと言われて本当に放り出された状態で、移植があることも知らなかった方に私が現場での情報をお伝えして、その病院を探した形になります。だから、病院の先生方の方針によっても違うのではないかなと思うので、病院側の自分の主治医のお話だけではなくて、患者も情報をほかにも張り巡らしておくのが賢いやり方かなという意味で患者会はあるのかなとも思います。それからポテリジオも5月29日に発売されて、6月1日にすぐ使えた患者もいれば、その情報が無くて病院ではそのことも知らなかったと言われた患者もおりました。これも患者会の中での情報です。
○渡邉座長 そういう意味で、診療体制あるいは診療情報の提供とか、その辺のところを更に改善していく必要があることは明らかですね。
 話が変わりますが、今回はポテリジオの話があって、これは非常に大きな進歩だと思いますが、石田先生のお話にもありましたように10数年かかって最初のシーズから育ててきてここまで来たと。ATLに関しては、第2、第3のポテリジオに当たるものを作っていくというか、そういう努力も必要ではないかと思います。これに関連して、今私が申し上げたような治療に向けた研究開発体制についても、更に充実させる必要があるだろうと思っていますが、その研究開発体制に関して何かお考えとか、コメントがありましたらお願い致します。
○森内構成員 血液内科医でもない私で、ある意味では外野的な発言で恐縮ですが、再三この協議会でもお話が出ているように、日本は先進国で唯一のエンデミック・エリアであるということで、日本でやっていることはそれが何年先かは地域によって違うと思いますが、ほかの中南米とかアフリカとかいろいろな国でも、もう少し社会経済的にゆとりが出てくると、そのキャリアの人たちへの対応の仕方の指針となるかもしれない。そういうときに非常に役に立つことをやっているのだということです。この取り組みは、純粋に医学的または医療的なことだけではなくて、国際協力の観点でも将来役に立つというアピールは是非していったほうがいいだろうなという気がいたします。
○山野構成員 検査ですが、サザンブロット法やウイルス量もそうですが、まだ保険承認されていないと思いますが、そういうのは保険承認されていったほうが臨床にもとても役立つと考えてよろしいでしょうか。
○塚崎構成員 それは是非そういう形で、いろいろなツールが増えると実際の患者の診療の上で役立っていくことは間違いありません。今くすぶり型かどうかの診断というのは血液病変では、末梢血中のフラワーセルのようなATL細胞が5%あるかどうかということですが、どうしても目視になると、ぶれがあります。そこに別の方法としての遺伝子診断があると、臨床医はより確固としたものとして、この方はキャリアなのか。そうではなくて、くすぶり型ATLなのかという診断ができますので、その方法として遺伝子的なHTLV-1検査というのができればと思います。
○山野構成員 私もそういう保険承認は、いろいろな現場で必要性が高い検査だというのは聞いていたのですが、なかなかそれが実現しない問題というのはどこにありますか。例えばサザンブロットも、国主導で取り上げていただいたほうがそういうのに早道であるとか、企業の問題であるとか、そこはどうでしょうか。
○渡邉座長 それはどなたに聞けばいいでしょうか。厚労省の側で何かコメントはありますか。
○結核感染症課課長補佐 検査の保険適用は、以前もこの会で、特に抗体検査してウエスタンブロットして判断が難しいものについてPCRでやっているけれども、そもそもPCRがスタンダーダイズされていなくて判定がばらばらなので、まずはそこを標準化する。その研究班はもうスタートしていて、この前の研究班の発表では標準化はできていて、今はメーカーと一緒に薬事承認に向けて準備をしているので、保険適用になるにはこの前に薬事のプロセスがありまして、薬事承認を受けなければいけない。そのために、そういった標準化してデータを集めて薬事承認申請というプロセスがありますので、まずは確立してマーケットベースに乗せる研究を支援していく形になるかと思います。
○塚崎構成員 今のお話はPCR法によって、一次検査陽性の場合にHTLV-1のキャリアであるか、偽陽性ではないかを区別することです。もう1つサザンブロット法の場合には実際のHTLV-1の感染細胞がクローン性に増えているかどうか、すなわち、キャリアであることは既に分かっている方において、キャリアの状態なのか、くすぶり型ATLなのかということを区別するときの末梢血の目視に+αの診断法なので、実際の検査法としても違いますし目的も違います。日本血液学会からこれまで何回か実際のATLの診療においてということで、HTLV-1のサザンブロットについては要望を出しています。
○齋藤構成員 塚崎先生が言われるサザンブロットにしても、判定保留例に対してのPCRにしても症例数が少ないです。ただ、判定保留についても今回の日本産婦人科医会の報告によりまして、年間約400人弱の方が判定保留になっています。この方にPCRをしていただきまして陰性であることが分かれば、本当に一生涯にわたって不安を持たずに済みます。場合によったら母乳を与えることもできることになります。ただ、これが企業ベースになると毎年400例ぐらいしかないものに対して、PCRを保険収載しても企業ベースではうまくいきません。だから、何らかの国の支援などの形でできれば、企業ベースでやるにしろサポートしていただかないと公益性だけが企業理念ではありませんから、利益性ということもありますので、そういったあたりを配慮していただいて、是非御支援をいただきたいと思っております。
○渡邉座長 その点に関して私から補足ですが、難波江補佐から御紹介いただいたPCRの標準化というのは、基本的には定量系を使っておりますので、今言った判定保留のケースに対する確定診断の補助と、もう1つは先ほどから議論になっているリスクグループの評価の2つの方法で使用可能ですので、基本的には今研究開発というか商品化を目指している企業としては、十分マーケットがあるという判断で進めていただいているみたいで、それは順番に動いております。ただ、既存のそういう方法論に比べて、更に発症の危険を判定する新しいマーカーとかも含めて基礎的な研究、それの実際の臨床面での確認ということも引き続き必要な作業かなと理解しております。時間が過ぎましたが、ほかに御発言がなければ本当に大変貴重な御意見を多く頂いたと思いますが、これらの意見を具体的な取組に反映できますように総合対策の更なる推進を図っていきたいと思います。
 議題2「その他」ですが、事務局からの発言をお願いいたします。
○結核感染症課課長補佐 お手元の資料7を御紹介させていただきます。来年度のHTLV-1対策の関連予算案となっております。今年度と同様に、重点施策に取り組める事業については引き続き行えるように予算案として出していて、一番下にある研究開発の推進についても来年度も10億円を確保できるよう、現在予算案として計上しています。以上です。
○渡邉座長 では、次の協議会で取り上げるべきテーマは、どういうことについて議論するかに関して御意見のある方は御発言をいただければと思います。いかがでしょうか。
○山野構成員 これまで、いろいろな角度で協議会の中で発言があったと思いますが、その中でいろいろな課題がだいぶ浮彫りになってきたのではないかなという印象を持っていますので、これまで問題点として上げられた未解決な部分の課題をよりクローズアップさせていって、これまでの協議会の整理と今後の方針付けみたいな形がどこかの段階で必要なのではないか。今後、よりどういう課題に集中して、きちんと議論していくべきなのかを一度議論をする場があったほうがいいのかなという気がします。
○渡邉座長 つまり総合対策が始まって、協議会がこれまでいろいろ議論してきた。そうすると、何がどこまで進んだか、どういう状況かということを評価というか、進展と問題点を整理して課題を明らかにしていくという目的の会議がいいのではないかという捉え方でよろしいですか。言葉が分かりにくいですが、そういう趣旨で開催してはいかがかという御意見がありましたが、この辺は事務局側と具体的にどういうテーマというか課題で、次回の開催をするかを相談させていただきたいと思います。
 あと、今は私が発言いたしましたが、私どもは2年間の辞令をいただいておりますので今年度いっぱいということですが、この会議が継続するという前提で議論をさせていただいてよろしいのでしょうか。
○健康局長 もちろん、そのつもりで考えておりますので、引き続きよろしくお願いをしたいと思っています。こういう答えでよろしいでしょうか。
○渡邉座長 どうもありがとうございます。
 以上で、第4回HTLV-1対策推進協議会を終わります。どうもありがとうございました。


(了)

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