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2013年1月24日 第6回 厚生年金基金制度に関する専門委員会 議事録

年金局

○日時

平成25年1月24日(木) 18:00~20:00


○場所

東海大学校友会館「東海の間」霞が関ヒ゛ル35階


○議題

これまでの議論の整理等

○議事

〇神野委員長 それでは、定刻でございますので、ただいまから、第6回社会保障審議会年金部会「厚生年金基金制度に関する専門委員会」を開催したいと思います。毎々でございますけれども、委員の皆様方には、お忙しいところ、しかも、本日は夕闇迫ってからお集まりいただきまして、本当にありがとうございます。
 本日は、森戸委員からおくれて御参加との御連絡をちょうだいいたしております。
 それでは、早速議事に入らせていただきますので、カメラの方は恐縮でございますが、ここで御退室をお願いいたします。御協力をよろしくお願いいたします。
(報道関係者退室)
 本日は、お手元の議事次第にございますように、議事を「これまでの議論の整理等」と設定させていただいております。
 この専門委員会は、これまで、第1回の委員会に提示されました厚生労働省試案の各論点について、3回にわたって議論を進めてまいりました。さらに、都合8団体から2回にわたってヒアリングを実施いたしまして、御意見をちょうだいしてまいりました。
 本日は、これまでのこうした議論やヒアリングの結果などを踏まえて、この委員会として取りまとめの段階に足を踏み入れていきたいと思っております。そこで、まず事務局から、大きく2つの資料について御説明いただければと思っておりまして。1つは、これまでの議論の整理ですね。もう一つは、これまでの委員会での議論やヒアリングの過程でもって御指摘をいただいた点にかかわる資料、いわば宿題に対応するような資料について、一括して御説明をいただいた上で議論をさせていただきたいと思っておりますので、まず、資料の説明については、よろしくお願いします。
〇渡辺課長 それでは、まず資料の確認をさせていただきます。本日は、5つの資料をお配りしております。まず資料1が、「これまでの主な意見の整理(案)」、資料2は「関係団体等からのご意見のポイント」、資料3が「これまでの専門委員会における議論及びヒアリングにおける指摘等に関する資料」です。また、本日は2名の委員から資料が提出されておりまして、山口委員からの提出資料は資料4、花井委員からの提出資料は資料5として、お配りさせていただいております。もし、乱丁等がございましたら、お申しつけください。
 それでは、私から、資料1から資料3まで、主として資料3になりますが、一括して御説明をさせていただきたいと思います。
 まず、資料1ですが、これは「これまでの主な意見整理(案)」で、当専門委員会において、これまで各委員から出された御意見について、主な論点に沿って整理をさせていただいたものです。また、本日この後も御議論をいただきますので、これを見ながら追加をしていっていただければと思います。一つ一つ細かくは申しませんが、簡単にポイントだけ申し上げたいと思います。
 まず、論点1の特例解散制度の見直しによる「代行割れ」への対応というところですけれども、これについては、基本原則としては、厚生年金本体の将来財政への影響を可能な限り回避すべきという御意見が多かったかと思います。
 その一方で、現下の情勢に鑑みて、中小企業の連鎖倒産というようなことは避けなければいけないということで、これについては、もちろん産業政策の問題もあるわけですけれども、何らかの対応も考えなければいけないのではないかというようなことであったかと思います。
 それから、2~3ページ以降は、具体的な中身で、試案の提示した中身について、それぞれ御意見をいただいておりますけれども、ここではポイントを2点だけ申し上げます。まず、2ページの「特例措置の見直し」の中で、特に②の「現行特例の適用」について、今回、「分割納付の特例」について、連帯債務を見直すことを提案しているわけですが、それについては、連鎖倒産等の懸念も考慮すれば取り入れるべきというような御意見が多かったかと思います。一方で、モラルハザードを防止すべきという御意見もございました。
 それから、具体的な特例措置「新特例」ということで、3ページですが、試案の中では2つの案、A案は期間の延長、B案は納付額の特例ですが、これを提案しています。これについては、特にB案について、これまで解散した基金あるいは代行返上した基金との公平性の問題、あるいは本体に与える影響という点から、慎重に考えなければいけない点が多いのではないかという御意見があったかと思っております。
 それから、4ページ以降は、論点2の「企業年金の持続可能性を高めるための施策の推進」で、これについては、大きく、企業年金の選択肢の多様化と、基金から他の企業年金制度への移行ということで、試案では示しております。この議論に加え、これまでの御意見の中では、公的年金と企業年金という関係について、これから公的年金制度の守備範囲が縮小していく中で、企業年金だけではなく自営業者も含めた個人年金的なものも含めて、これからの退職後所得保障で、私的年金部分をどう位置づけるかということを議論していかなければいけないだろうという御意見も出されていたかと思っております。
 それから、5ページからは、「企業年金の選択肢の多様化」ですが、個別の論点としては、6ページですが、「集団運用型DC(仮称)」という今回の試案で提示させていただいた新しい案ですが、これについては、投資教育の問題、あるいは、資産運用委員会、これが加入者の選択をサポートするという位置づけになっておりますが、この委員会そのものの法的位置づけ等について、委員の中からも幾つかの御指摘があったかと思っております。
 それから、基金からの移行に関しては、特に適年の移行のときのいろいろな課題が、今回、そこがきちんとクリアできるように、そういう轍を踏まないというような御指摘もあったかと思っております。
 それから、7ページの代行制度の見直しについては、特に代行の意義について、本日も、また、いろいろお話あるかと思いますけれども、全体として言えば、代行制度50年近くたつ中で、全体としての持続可能性を考えたときに、縮小・廃止という方向については、やむを得ないのではないかという御意見が大半であったかと思っております。
 簡単ですが、資料1の説明は以上でございます。
 それから、資料2は、関係団体から、先ほど委員長からのお話もございましたが、8団体から2回にわたり御意見をいただきました。それぞれの団体から、大変詳細なプレゼンテーション、資料を提出いただきましたが、ここでは、試案で提示している大きな3つの論点に沿ってポイントだけ、これは事務局の責任においてということで、少し簡略化した形でまとめさせていただいております。
 1点目の特例解散制度の見直しについては、特に、これは12月に行いました基金関係者の方々などからの御意見が主でございましたが、特例解散制度についての一層の緩和をすべきという御意見がある一方で、既解散基金あるいは代行返上基金とのバランスも考えなければいけないのではないかという御意見もございました。
 また、2点目の持続可能性を高めるための施策の推進については、具体的な御提案として、企業年金連絡協議会、生命保険協会や運営管理機関連絡協議会からは、幾つかの具体的な御提案もあったところでございます。
 また、3点目の代行制度の見直しについては、基金関係者の12月のヒアリングでは、一律の廃止については反対であるというような御意見が多数でございましたし、2ページ目の各業界団体からの御意見についても、慎重対応というような御意見が多かったかと思っております。
こういった点も参考に、また、後ほど御意見をいただければと思います。
 続きまして、資料3ですが、これは、これまでの専門委員会でも、幾つか事務局に宿題もいただいておりましたし、また、ヒアリングの中でも、試案をめぐって御指摘もございましたので、その中で、幾つかの事項について、また、資料を改めて用意させていただいております。
 ページをおめくりいただきまして、まず、最初の2ページからですが、代行制度の仕組みについて、これは1回目の委員会でも一度御説明をしておりますが、この議論の中でも言葉の問題も含めて幾つか出てまいりましたので、もう一度整理をさせていただいております。
 3ページ目は代行制度の仕組みでございますが、1点だけ申し上げますと、ヒアリングの中で、私どもが最初に出した資料(平成21年度の実績)で、基金の上乗せ部分が8,000円という、これは一時金も入れた数字ではないかという御指摘でございました。それはそのとおりでございまして、直近の数字で申し上げますと、一時金も入れたもので見ますと、月額平均では7,000円、年金をもらっている方だけの平均で見ますと、16,000円でございます。
 それから、次の4ページですが、これも改めてということですけれども、厚生年金本体と厚年基金との財政的な関係をもう一度ここで整理をさせていただいております。特に図で申し上げますと、右側ですが、基金加入者の場合でも、当然、厚年保険料は変わらずに、基金と本体にそれぞれ分けるということで、全体としての保険料は変わりません。また、積立金ということで申し上げますと、これは、基金の場合は、最低責任準備金が積み立てなければいけない額ですが、この基金の持っている積立金と厚年本体の持っている積立金、これらは全体として厚年の積立金という形で認識され、また、厚年保険料等も検証されております。したがいまして、最低責任準備金を持っていれば、厚生年金の財政に影響はないわけですが、逆に、これを持っていない、いわゆる代行割れは、厚生年金の積立金を毀損する可能性があるということで、その点は、改めて、ここで確認をさせていただくということでございます。
 それから、5ページですが、代行制度については、実は、過去何度か制度改正を経てきております。財政運営から申しますと、大きく3つのターニングポイントがございました。1つは平成8年4月、このときに、免除保険料率の個別化がされております。それから、11年10月に最低責任準備金の計算方法が変わり、17年4月に、さらに、それをもとに財政中立化の決定がされたということで、この免除保険料、最低責任準備金、それから、給付原価負担金、これは何度か議論の中でも出てまいりましたが、これが3つのキーワードになってございます。それを一つ一つ見てまいります。
 次の6ページですが、まず、免除保険料については、この図の左にもございますように、かつては、全基金一律に、全ての厚年基金全体で必要な代行保険料ということで計算をされておりました。したがいまして、個別の基金によっては、代行給付として給付する額は、免除保険料よりも低くて済むところがある。この左側の図ですが、この差分がまさに代行メリットであったわけです。基金をつくった当初は、制度創設としては、まさにこういうところが多かったわけですが、次第に、そういうところばかりでもなくなり、平成8年4月から、こういった一律の設定ではなく、基金のそれぞれの状況に応じて個別に設定する。これが代行部分の中立化の第一歩でございました。
 次は7ページです。これは平成11年10月、2番目のターニングポイントでございまして、ここのキーワードは最低責任準備金でございます。これは、第1回でも御説明しておりますが、以前は、将来の給付を予測して、そして、それを5.5%の本体の予定利率で割り引くという将来法と言われる方式で計算をしておりましたが、11年10月からは、その前の年の最低責任準備金の元利合計に利息をつけて計算する、いわゆる「転がし方式」と言っておりますが、こういう形で計算方法が大きく変わった。つまり、この時点で、事前積立という形ではなくなって、最低責任準備金は給付とリンクしない、預かり金的な性格が強くなったということでございます。
 これに伴いまして、次のページですが、基金の運用にも影響がありまして、基金の運用による利差損益をどう捉えるかということが、かつては、割引率でありました予定利率5.5%に勝っているかどうかということがポイントであったわけですが、11年10月以降は、まさに、本体の実質的な運用利回りがベンチマークになりまして、これに勝っていれば差益が出ますし、そうでなければ利差損が出て、代行に毀損が生じると、そういう運用に状況になってきたということでございます。
 それから、次の9ページは、もう一つ、運用という視点でこの代行を整理したものでございます。過去法に変わりましてから、代行部分はいわば国からの預かり金という性格でございますので、もともと上乗せ資産は、基金自身の自己資産ですが、これにいわば国からの預かり金、一種のレバレッジという形で運用をする。これが、もちろん運用がよければ、まさにレバレッジ効果でございまして、自己資金で運用するよりも大きな利益が取れるということでございます。ただ、近年は、なかなかそういった状況がない状況が続いておりまして、仮に、資産運用が悪かった場合には、当然、これはレバレッジ効果が逆に働くということで、不足も多くなるわけですし、また、厚生年金基金の場合は、後でも申し上げますが、代行部分が一種の優先債権ということになりますので、そこの部分に穴があきますと、上乗せ資産をそこに充当しなければいけない、上乗せ資産がなくなってしまうという可能性も出てきたということでございます。
 次の10ページは、これは「給付原価負担金」で、これはこの委員会の中でも、過去少し議論にもなりましたけれども、これはどういうものかと改めて整理をいたしますと、最低責任準備金の計算方法が過去法になったことによりまして、下の図の左にもございますように、基金が積み立てなければならないのは、最低責任準備金という給付とは関連しないものになっております。
実際に、給付に必要なのは、右にあります過去期間代行給付原価ですが、基金によってはここが非常に大きくなってしまって、当面のキャッシュに支障を生じるような場合がございます。その場合に、いわば厚生年金本体から追加で貸出をする。給付原価負担金というのは、負担金という名前がついておりますけれども、一種の貸出金でございますので、基金のものになるわけではなく、これが来れば、当面のキャッシュは助かるわけですが、負債も当然その分ふえるというものでございます。したがいまして、給付原価負担金はいわば貸付金をふやすことですので、厚年本体はそれが当然返ってくるという前提ですので、給付原価負担金を交付することによって何か厚年本体の財政が毀損されることはない。逆に、基金にとっても、交付された負担金はまた返さなければいけないので、積立不足を埋めるものにはならないということで、そういう意味では財政的には中立ということでございます。
ただ、給付原価負担金の今日的課題は、資産運用に影響が出てこようかと思います。と申しますのも、厚年本体は、今キャッシュ・アウトの局面にありますので、当然、ある程度流動性を確保した運用をしなければならない。そういう中で、給付原価負担金の時期・金額によっては、さらに、そこからキャッシュ・アウトをしなければいけないことになりますので、その意味での運用制約を受ける可能性がある。逆に、基金のほうは、さっき言いました、まさにレバレッジ率が上がるという形になりますので、もちろん厚年本体を超える運用益が得られれば、それだけ大きい益が得られるわけですが、逆になりますと、ますます積立不足が拡大する。そういう可能性もあるということでございます。
11~12ページは、過去期間代行給付原価の今の状況と、12ページは給付原価負担金の交付実績のデータでございます。
それから、13ページ以降は、柿木委員からであったと思いますが、代行制度についての定量的な持続可能性の分析がないかということで、委員長から、そういう論文検索をしてみろということで宿題をいただいていたと思いますが、私どもの事務局で検索をした限り、こういった定量的な分析は正直ございませんでしたので、それにかわるものとして、専門家による代行制度に対する分析・指摘の論文等について、整理をさせていただきました。その意味では、宿題に正面からお答えはできておりませんが、14ページ、15ページ。15ページの下には、参考とした主な論文も載せてございますので、ごらんいただければと思います。
それから、16ページ以降は、これは代行割れのリスクということで、第1回に私どもの資料を出しておりますが、17ページですが、過去10年間の実績データをもとに、1年あるいは2年の運用リスクに耐えられるいわばバッファーといいますか、代行にどのぐらいあればいいかということを見たものでございます。これについては、当初は、これは1年が1.3、2年が1.7で最初数字を示しましたが、先般のヒアリングの中で、こうした実績の分析をする過程において、最低責任準備金の精緻化がされてないのではないか。その意味でちょっとフェアではないのではないかという御指摘がありましたので、改めて、代行割れかどうかを判定する最低責任準備金、過去10年間のものをさかのぼって精緻化をしたもので、もう一度検証をしてみました。結果としては、1年間の運用リスクに耐えられるものとしては、最低1.3倍、2年であれば、最低1.5倍というような結果でございました。
それから、18ページですが、先ほどのページは、過去にさかのぼってということでございますが、今後の代行割れリスクに可能な限り備えるという観点で、どういうことが考えられるかということで、ここにもございますように、過去10年間の厚年本体と基金のポートフォリオをそれぞれベンチマークで出しまして、そういったデータをもとに、向こう5年間の基金と本体の利回りの差がどれぐらいになるかを見てみました。下の図にもございますように、平均で見ますと、▲2.99ですから、約3%基金のほうが低くなる。分布図で見ますと、左に行くほど下方リスクが高まるわけですが、最悪の状態に近い確率1%まで行きますと、資産が約37%減するということになります。これに備える、つまり、逆に言いますと、99%、代行割れリスクに備えるためにどれぐらいのバッファーがあればいいかということを理論値として計算してみました。少なくとも1.6倍程度という結果が出ております。試算の考え方等は右下に載せておりますが、もちろん、これは運用リスクだけでありますので、それ以外のリスクもあるということでございます。
19ページは、これまでの厚年基金と本体との利回りの差の実績でございます。平成11~24年までの12年間で見ますと、厚生年金本体よりも上回った基金は1基金、全体としては、▲2~▲3%ぐらい下回っているというところが大半ということでございました。
それから、20ページ以降ですが、厚生年金基金の積立状況。これも第1回に一度資料を御説明しておりますが、この間、いろいろ最低責任準備金の計算の精緻化について、前回も数理人会からも、政府負担金についても見直しをすべきではないかという御指摘もございましたので、そこも含めて、全て精緻化したデータで、改めて整理をしております。それが21ページでございまして、これも一度第1回の資料に出してございますが、今回の精緻化後で見ますと、23年度末ですが、代行割れ基金は210基金、積立比率1.3ラインを超えるのが74基金、1.5を超えるのが49基金という状況でございます。
それから、22ページは、これも、過去における代行割れの状況についても、やはり精緻化をして、もう一度全体を洗って見ております。この棒グラフの左側の薄い色が代行割れ基金数、右の少し濃い色が解散基金数、折れ線グラフは年度末の日経平均ですが、2005年、2006年のように、日経平均が18,000円近く行ったときにおいても、代行割れは0にはならなかった。精緻化後で見ましても、300~400億でございます。また、直近の足元の23年度、これは精緻化後で見ますと6,000億ぐらいで、平均的に見ますと、数千億程度の規模で代行割れが推移している。いわば代行割れが常態化をしているという状況であります。
次の23ページですが、今後のことは、予測はなかなか難しいところもございますが、過去のデータを見ますと、厚年基金の運用利回りは、日経平均と相関が高いこともございまして、そういった辺りの連関を見ながら、今から1年後ですが、25年度末で、日経平均の予測値、ここでは仮に8,000円、10,000円、12,000円と置いておりますが、その状況下での代行割れ基金数、代行割れ額を予測しております。日経平均が12,000円においても、200弱の代行割れ基金数、代行割れ額6,000億近くという状況でございます。
それから、24ページですが、これは、前回、前々回の議論でも、上乗せ部分の受給権に関するご議論がありましたので、上乗せ部分の受給権、今、不足が5兆円ぐらいあるという御指摘もございましたが、まさに、その見るべき受給権は、後で御説明しますが、非継続基準という基準がございますが、本来であれば、上乗せ部分用積立額としては8兆円近くがあるわけですが、実際には、そのグラフにもありますように、上乗せ資産があるのは約3兆円ぐらいで、代行割れ基金も含めますと、上乗せ部分5兆円近くが現時点においても、毀損といいますか、十分な積立ができていないということでございます。これも後で申し上げますが、上乗せ部分は、今の現行法上は、資産の範囲内でしか保全されないということでございますので、ここの不足を埋めていくことが、受給権保護という観点からも非常に重要であるということでございます。
25ページ以降は、今申し上げました非継続基準も含めて、26ページですが、どういう形で厚生年金基金の財政のいわば健康診断をしているかということですが、通常は、今後予定されている、これから入ってくる掛金収入も含めて、あるいは、これから発生する債務も含めて、全体としてのバランスシートが釣り合っているかというのを見る。これを継続基準と言っておりますが、これが通常のこれまで従来でやってきた方式でございました。ただ、この左下の図を見ていただいてもわかりますように、将来の掛金収入あるいは将来の給付債務全体を見ると、これはバランスしているように見えるのですけれども、実際にある時点でこの基金が解散をしてしまいますと、今後の加入期間の給付債務がなくなりますけれども、同時に、今後入ってくる掛金収入もなくなる。そうすると、既に発生をしているAという給付債務に見合う資産を保有していないという、こういう状況が生じる場合があります。そうしますと、上乗せ部分は、資産のある範囲でしか保全されませんので、こういう解散という事態も想定すると、継続基準だけではなかなか健全とは言えないということになります。そこで、平成9年度に、新たにもう一つの基準として、非継続基準という財政基準を導入しまして、左の図で見ますと、AとBを比較して、そこが不足していれば、継続基準よりは早期に積み増すという、そういうルールを規定しております。受給権保全という観点からは非常に重要な概念でございます。
次の27ページですが、これが、それぞれの決算時点でどのぐらいの状況かというものを見たものでございまして。①は、非継続部分で見た代行部分を保有しているところがどれぐらいあるかということで、直近で見ますと、577基金中290基金、50%。逆に言うと、この半分は代行割れでございます。それから、3階まで持っているところがどれぐらいあるかというのを非継続基準で見ますと、16基金、3%。それから、継続基準で見ましても、82基金、14%でございます。
次の28ページは、御参考までに、確定給付企業年金のほうでの継続基準、非継続基準の該当状況を見たものでございます。
また、29ページも、これも御参考までですが、マクロベースで見た積立状況で、継続基準で見ますと、いずれで見ましても、厚年基金のほうが確定給付企業年金よりは積立水準は低調という状況でございます。
それから、30ページからは、上乗せ給付の受給権、先ほど申しました、これまでの議論の中でもいろいろ出てまいりましたので、現行法上の考え方について、少し整理をさせていただいております。
次の31ページですが、現行法(厚生年金保険法)上は、基金が解散をした場合、これは解散命令が今も法律上はございますので、そういう強制的な解散も含めてですが、解散という事態になりますと、代行給付と上乗せ給付では、保全の度合いが、法的に異なっているということでございます。代行給付は、何を置いても必ず保全をされると。これはある意味では厚生年金全体が大きな支払保証になっているわけですが、何があっても保全をされるということでございます。
一方、上乗せ給付の場合は、これは基金の解散時においては、残余財産の範囲でしか保全されない。残余財産があれば、きちんと受給者に分配はできるわけですが、そうでない場合には、残余財産の範囲でしか保全されないということです。ちなみに、数としては非常に少ないのですが、今、上乗せ部分については、ほとんどが事業主100%というところが多いですが、加入者負担があるところもございます。ただ、現行法上はこういうことも想定した上で、上乗せ給付については、残余財産の範囲での分配ということになっているわけです。つまり、積立不足が生じている場合には、解散時には、代行部分の債権はいわば優先債権になるということですので、その意味では、先ほどもごらんいただきましたように、受給権保全の観点からは、解散という事態に至る前に、きちんと積立不足を認識して、早期に解消するという財政運営が何よりも重要であるということでございます。
次の32ページですが、これは御参考までに、司法の場でこういった受給権がどう整理されているかということですが、既裁定の年金受給権については、公的年金は当然ですが、企業年金である基金の上乗せ給付についても、憲法の財産権には該当すると。ただ、憲法の財産権には、29条2項で、一定の制約を課すことができるとなっておりますけれども、その際の判断基準は、昭和53年の有名な最高裁判決がありまして、そこにございますように、財産権の内容変更の程度とか、あるいは、それを変更することによって保護される公益の性質との比較考量といいますか、総合的に勘案して判断するという、そういう考え方になってございます。
そうしたことを踏まえて、33ページからは、今回の試案の中で、受給権関係で論点に受給権関係で論点になる点2つぐらいあろうかと思いまして、1点目は、今回新たな立法措置として、解散の前に、特例解散の申請時点から、受給者の方の上乗せ給付の支給を停止することを入れております。こういったそもそも立法措置を行うこととした背景には、代行割れ基金の場合は、受給者の上乗せを賄うための独自資産が実はない状態にある。実は、代行部分に充てるものも今欠けているわけですが、その代行給付に充てるべき資産を使って実際には受給者の3階も含めて給付しているというのが実態でございます。
こういった基金が特例解散を申請することは、分割納付であったり、あるいは減額特例であったりということで、これを企業年金を持たない厚生年金の本体に、これまでよりもある意味ではリスクを負っていただくことになると。さらに、今回は、この分割納付について、連帯債務を外すということで、できるだけ解散をしやすくするという観点からの見直しを考えておりますが、逆に言えば、それは厚年本体の方に財政リスクを一定程度より多く持っていただくことがあると。こういうことについて、全体としてのバランス、厚生年金保険者全体への理解をいただくということ。また、受給者自身にとっても、いわば自分の代行資産で3階まで出しているということですので、できるだけ代行資産の貴重なものを保全するという必要があるという観点から、今回、解散の申請から認可までですので、実際には1年少しの間ではございますけれども、支給停止を早めることを提案しています。その背景となる考え方は、今申し上げたとおりでございます。
それから、次の34ページですが、今も、解散という事態になりますと、これは解散命令による強制解散も含めて、残余財産の範囲でしか保全されないというのが今の法の規定ではございます。今回の試案の中では、さらに、施行日から5年経過後は、保有資産があって、最低責任準備金が一定倍を下回った場合には、解散命令を発動することを法定化をするとか、あるいは、10年経過後は、代行制度そのものを廃止することを提案しております。
これは、現行法上もこういう形になれば、残余財産の範囲内でということにはなるわけですが、こういう立法措置を行うこととした背景としては、今回、代行割れ基金について、これまでよりも本体の方々に多少リスクを負っていただくことをお願いしながら、解散をしやすくして、この問題を早期解決しようとしている。そのためには、逆に見ますと、本体の側から見れば、代行割れを生じるリスクを将来において軽減し、そして、究極的には解消することが当然必要であるということで、そういう観点から、今回このような法定措置を新たに加えたということでございます。
実際に解散になった場合には、上乗せ給付がきちんとある場合、次のページ、35ページで申しますと、①のような場合は、上乗せ部分を分配しても、これまでの加入者としての受給権は保全されているという状況ですが、しかし、多くの場合は、②のように、代行部分はあっても、上乗せ部分は足りないという場合がございます。こういった場合については、いわば、この不足分を抱えたままでも、例えばDBに移行して、従来よりも少し長期で償却できるような、そういうことも提案をしておりますし、移行については、ヒアリングの中でも新しい提案もございましたけれども、そういったことも含めて、できるだけ移行していくという措置をとりたいと考えております。
ただ、このように申しますと、代行部分が今ほとんど資産を占めているので、非常に薄い上乗せだけではなかなか企業年金をつくれないのではないかという御意見はよく伺います。それについては、次の37ページですが、これは横軸が資産の額で、棒グラフが基金なり企業年金の数でございます。厚生年金基金は、今で言いますと、100億以上500億未満というところが324基金で一番多いわけですが、確かに代行部分の資産が大体8割でございますので、それを取った上乗せ部分だけで見ますと、もちろん代行割れ基金は上がないので、287資産なしということになるわけですが、代行部分があっても、1億円未満とかいうところが結構出てくるということでございます。
ただ、確定給付企業年金のほうも、一番下にございますように、この規模で企業年金が全くつくれないかというと、それなりの数のところがあるということで、もちろん小さいところになればいろいろな事務手続の簡素化も含め、いろいろなさらなる工夫は必要でありますが、全くこういったものが不可能ということではないということかと思っております。
また、次の38ページですが、運用資産が多いほうが効率的な運用ができて、非常に運用利回りができるのではないかという御意見もあるわけですが、これは過去の平成22年度の計算データを使いまして、厚生年金基金、確定給付企業年金の資産規模と利回りの相関を見たものです。ちょっと見にくいのですが、左のほうで点々で囲んでいるところを拡大したのが右の図でございまして。横軸が資産規模、縦軸が運用利回りでございます。これで見る限りでは、資産規模と運用利回りの間に有意な相関は見られなかったということでございます。
最後に、39~40ページですが、小規模の企業年金になりますと、40ページですが、これは従業員の規模で見ておりますけれども、確定給付企業年金になりましても、100人未満というところが4分の1ぐらいございますし、確定拠出年金ですと、100人未満のところが5割くらいあるということで、繰り返しになりますが、こういう小規模のところはできるだけ制度を簡素化するとか、手続を簡素化する、さまざまな工夫はまだまだとる措置は必要あるかと思いますが、こういった小さいところの企業年金も現にございますし、また、こういうものを今後ふやしていくために、どういうふうにしていったらいいかということも、また、この後の議論の中でいろいろ御意見を賜れればと思います。
以上、ちょっと時間オーバーして恐縮ですが、私からの説明は以上でございます。
〇神野部会長 どうもありがとうございました。
 それでは、ただいま紹介した御説明をもとに御議論をお願いしたいと思いますけれども、その前に、取りまとめに向けた議論を生産的にしていただくために、私から幾つか念頭に置いていただきたい視点を提示させていただきたいと思います。3つばかりでございます。
 第1は、個別論点だけでなく、それを有機的に結びつけるという視点ですね。試案で提示されました3つの論点をもとにこれまで委員会は議論をしてきたわけですね。1つは、特例解散制度の見直しをはじめとする「代行割れ問題の早期解決」。それから、企業年金の持続可能性を高めるための「企業年金の選択肢を多様化」するなど含めた施策の推進ですね。それから、3つ目が、将来に向けて代行割れを発生させないための「代行制度の段階的縮小・廃止」を含めた見直しという3つの個別論点について議論をちょうだいしたわけですが、この委員会でもしばしば指摘がございましたように、この3つの論点は相互に連関をいたしております。つまり、ジグソーパズルの1つだけ個別に議論しているだけではなく、全体の関連を念頭に置きながら議論をすべきだという御意見もちょうだいしておりますので、そうした相互に関連づけた御議論をちょうだいしたいというのが第1点でございます。
 それから、第2点は、財政の健全性とか受益権という概念の規定にかかわる視点ですね。関係の皆様方からヒアリングをちょうだいしたときに、厚生年金基金の財政の健全性や受益権という概念に基づいてさまざまな問題が指摘されておりましたので、こういう財政の健全性や受益権をどう規定して、どう考えていくのかという点に御意見をちょうだいできればと思います。先ほど事務局から御説明していただいた資料でも、この2つの概念にかかわる御説明がございましたので、それを踏まえながら、各委員の御意見をちょうだいできればと思っております。
 3つ目は、私的年金と公的年金の役割分担などのあり方をどう考えていくかということですね。この委員会では、厚生年金基金制度を中心に議論をしてきたわけですけれども、これまでの議論の中から多くの委員の皆様方から御指摘がございましたように、企業年金を含む私的年金と公的年金の役割分担のあり方について御指摘がございましたので、こうした視点からも御議論をちょうだいできればと思います。つまり、現在生じている個別の問題だけではなく、あるべき姿を少し念頭に置いた御議論もちょうだいできればというのが第3点でございます。
 以上、3つの論点ですけれども、試案にございます個別の個々の論点の御意見とともに、今私のほうで御指摘をさせていただいた大枠と言いましょうか、枠組みにかかわるような御意見もちょうだいできればと考えておりますので、念頭に置かれた上で御議論をちょうだいできればと思っております。
 それでは、委員の皆様方から御意見をちょうだいしたいと思います。もちろん、御質問も構いませんので、いかがでございましょうか。
 もしも、あれでしたら、ペーパーをちょうだいしている方々から、まず簡単に御意見をちょうだいできればと思います。
〇山口委員 今の座長のお示しになりました視点を必ずしも踏まえておらない部分もあるのですが、次回が大体取りまとめの最終的なステージになるかと思いまして、自分なりの考え方を少し整理させていただきたいということで、資料を出させていただいております。既に、これまで部分的には申し上げてきたことの繰り返しになる部分もありますし、先ほど事務局から御説明がございましたお話と重なるところもあるのですが、ちょっと簡単に説明させていただきたいと思います。資料4でございます。
 代行割れの認識につきましては、これまで関係団体の方等からもいろいろお話がありましたが、私は、これは非常に深刻な状況と受けとめておりまして、そういう認識に基づいてこの紙を書いております。
 最初のところにありますのは、加入者とか受給者の観点から、厚生年金基金の存続の意義を考えた場合に、国の給付に加えて支給される上乗せ部分が受給できるという点が基金の意義であって、代行部分をもらえるのは当然の話なわけであります。したがって、逆に、基金の存立の基盤は、この上乗せ給付を確実に実行していくことこそが、基金の存続の基盤であるということだと考えております。しかしながら、約4割の基金が上乗せ給付に必要な積立金を全く保有しておらないということで、そればかりではなく、代行部分の必要な額も下回る状況だということでありまして、代行割れの非常事態に陥っていると見ております。いわば企業で申し上げると、これは債務超過の状態だということで、上場廃止、事業整理ということになるような事態と同列だと考えております。上乗せの資産がないということは、つまり、基金としての存立の基盤が失われているという状況だと認識しておりまして、そういう観点に立てば、代行割れになっているような基金は、速やかに解散できるような環境整備を行なうことが非常に重要であると言っております。
 それから、現在の厚生年金基金の年金制度モデルは、先ほど事務局からもお話がありましたように、資金を借り入れて、それを運用するといった仕組みとも取れるわけでありまして、それがうまく機能していた時代は過去のものになって、今は非常に市場のリスクは高まって、逆のレバレッジが効くといったような事態が出てきたわけです。これは資金調達をして運用をするといった観点からいえば、例えば銀行なども、預金をベースにする有価証券運用ではなく、外貨運用する場合に外国のマネーマーケットで資金調達をして有価証券運用をすることがあるわけですけれども、その場合には、必ず自己勘定で損失をカバーできるような水準で、リスクをコントロールするために一定の評価損が発生すれば損切りをして、投資を中止するといったような財政規律を維持するシステムがビルトインされております。そういうことをやることによって銀行経営の健全性を維持するということになっているわけです。しかしながら、基金の場合は、そのような自律的な財政規律の維持装置がない。専ら基金のガバナンスに委ねられているということでありますので、そのブレーキが効かない状態になることもあって、許容範囲を超える損失リスクが生ずる可能性が常に内包しているということを認識する必要があるのではないかと思っております。そういうような観点から、これまでいろいろ意見を申し上げてきたということでございます。
 それから、2ページになりますが、特に今回この紙を提出しましたのは、今申し上げたことは前文にあたるものでありまして、この紙のねらいは、どちらかといえば個別の今後の企業年金をどういうふうに考えるかといったような、持続可能性を高めるための選択肢の多様化に当たるわけですけれども、4つぐらい書いております。詳しい内容はちょっと省略させていただきますが、1つは、財政不足の発生しにくいDB制度といったようなものを考えられないかということ。それから、2つ目は、キャッシュバランス制度についても、できるだけ不足金が発生しないような制度を考えておりまして、3ページに書いておりますが、これまで事務局の案などで出ておりましたのは、①②と書いていますけれども、これまではどちらかといえば、②のほうの運用資産構成を前提に、利息クレジットの指標を拡大して、運用実績そのものを指標にするというような考え方などが出ていたのですけれども、どちらかといえば、指標は現在と同じような客観的な債券の指標等を使って、運用の資産構成の方をそれに合わせて変えていくという形で、リスクを発生させないようにするのが本筋ではないかといったようなことを書いているところでございます。
 それから、コスト低減のためのDC制度という中では、これは運用をする委員会をつくってといったような話がありましたが、ここでは、代替案としてというふうに書いてありますが、例えば中小企業に限っては、元本確保ファンドとバランスファンドの2つから、二者択一で選択する簡易な方式を認める。その際、バランスファンドのポートフォリオ構成については、例えばですが、厚生労働省が設置する運用委員会みたいなものがあって、そこでガイドラインを提示して、それに適合する商品を運営管理機関が提供するといったような仕組みで、加入者にとっての選択肢の確保と、受け入れやすい運用内容の提示といったようなものを両立できないものかといった中身のものを書いております。
 最後は、中小企業振興の観点から、税制優遇措置の検討ということで、これは駒村先生からもいろいろ公共政策の観点から私的年金制度の拡充の問題を議論していくということでお話があったところでありますが、この厚生年金基金の廃止をする場合には、とりあえず、今の上乗せ給付の受け皿の整備が急がれるわけでありますので、現行制度の枠組みの中でできる、そういった優遇制度といったものがないのかといったような観点で幾つか書いておりますのが、内容については、以前申し上げておりますので、省略をさせていただきたいと思います。
 以上でございます。
〇神野部会長 どうもありがとうございました。
 花井委員、もしも、よろしければ、どうぞ。
〇花井委員 資料5でペーパーを出させていただいております。この内容について、私どもは昨年AIJ事件が発覚してから、さまざまなレベルの会議で意見を集約してまとめてまいりました。本日の中央執行委員会で確認されたこともあり、配らせていただいております。
 前段のところには、これまで私が発言してきた内容が書かれてございますが、3つ目のなお書きのところですが、「企業年金は退職給付の一部をなすものであり、賃金の後払いとしての性格と老後の生活保障としての機能を有するため、受給権の保護が図られる必要があります。」と記載しております。
 さらには、下のほうには、基金の廃止によって中小企業が倒産に陥らないよう、何らかの支援策、あるいは金融機関との連携、関係省庁との連携が必要であるとしています。
 あとは、個別の内容について考え方をまとめております。ここで幾つか指摘させていただきたいのは、今まで試案に示された内容について、明確な意見を述べていなかったところがございますので、そこについて触れたいと思います。
 (2)の「特例解散のプロセス」です。このプロセスについては、理解できるというような内容でまとめております。
 それから、(3)の「特例措置の見直し」については、ここについては多くの意見がありました。新特例は設けるべきではない、現行特例の見直しでほぼ対応できるというような意見を受け、そのような考え方を示しました。
 さらに、連帯債務を外すこと、固定金利にすることについても、当初はそのことが厚生年金に影響を与えるのではないかというふうに疑問を呈しておりましたが、ここでは、やむを得ないのではないかというふうにとりまとめました。
 それから、下のところですが、先ほど渡辺課長から説明がありました、申請時点から3階部分を支給停止する点ですが、これについては受給者にとっての影響が大きいため、明確に反対という意見を述べておきたいと思います。
 それから、最後の3.の代行制度の見直しについてですが、0.875及び期ずれの問題については、これも影響が大きいのではないかと疑問を呈しておりましたが、このことについても理解できるというような内容にしております。
 (3)は代行返上の段階的縮小・廃止についてで、10年間という期限については妥当であると考えるということでございます。
 その上で、限られた期間で全ての基金を解散・移行させるよう、厚生労働省は責任を持って周知・指導等の対応を図るべきである、というようにまとめました。
 最後は、移行期間中の制度運営の見直しについてですが、全ての基金の解散・移行を促す観点から、ここで提案されている解散要件4分の3を3分の2にする等々の内容はやむを得ないということでございます。ただし、これは厚生年金基金に限るべきであるということ、また、積立水準が十分な基金が代行制度の廃止に便乗して支給を減額するようなことは絶対に認めるべきではないというような形で取りまとめを行ったということでございます。
 以上でございます。
〇神野部会長 それでは、ほかの委員の皆様方の御意見をちょうだいしたいと思いますが、菊池委員どうぞ。できたら、受給権、その他の問題についても触れていただければと思います。
〇菊池委員 前回欠席いたしまして、失礼いたしました。議事録(案)を事務局から送っていただきまして、大体議論はフォローしたつもりでございます。
 そこで、特に駒村委員がおっしゃっていたと思いますが、先ほど委員長もおっしゃっていましたけれども、3つの柱を選択肢として捉えることがないといけないなと思っておりまして。現行特例の改善に加えて新特例を入れて、しかも、そのまま基金制度が存続するなどというのは、これは厚年本体の加入者の理解を得られないわけでありまして、あれもこれもというのは、バランスを欠くのではないかと思っておりますので、先ほどの委員長の方向性のお話は非常に納得しております。
 その中でも、第1回に私ペーパーを出させていただきましたが、この基金は3階部分にかかわる制度でありますので、3階部分全体のあり方をどう考えるかという視点はやはり持つべきだと思っておりました。ペーパーにも書いたのですけれども、公的年金のほうが、多分見方はあるでしょうが、マクロ経済スライドは基礎年金にも入っているということで、将来的に老後の所得保障のあり方が、公的年金がますます充実するかというと、私は必ずしもそうではないのではないかと思っておりますので、そうすると、私的な企業年金を含めた生活保障と所得保障のありようが非常に重要になってくると思います。
 そうすると、厚生年金基金の加入者のみについてその救済を図っていくのは、やはりバランスを欠くのであって、自営業者の方なども含めた全体として、この3階部分の所得保障のあり方をどう考えるのかという視点を常に持ちながら議論していくべきだと思っております。今回も、私は基金廃止に賛成ということを申し上げており、それは第3の柱の話ですけれども、第2の柱である企業年金制度全体の改善と両輪で、具体的に提言していくべきであろうと思っております。その上で、例えば国民年金基金など私的所得保障にかかわる現行法制にはまだ検討すべき案件があると思っておりますので、その意味では、今回はその改革の第1段階というか、そういう位置づけで我々も考えていく必要はあるのではないかと思っております。
 廃止云々に関してですけれども、もちろん基金における労使自治を否定するものではない、そういった制度設計にもなっているわけですが、代行部分の公的年金たる性格を無視するわけにはいかないわけです。もうずっと議論してきましたけれども、昭和40年代とは大きく社会経済状況が変わっている中で、公的年金も社会保障制度の一部でありますので、その制度を支える考え方というか、我々「連帯」という言い方をしますけれども、制度加入者、制度の構成員が、その仕組みに納得をして、あるいは、そういった制度があることを許容している、そういったことが大前提になっていると思います。
 その意味で、今その社会経済的な基盤が崩れている中で、どこまで制度加入者の納得感というか、そういった制度のあることの許容性が認められるかというのはよく考えなければいけないと思うわけです。
 私、最近、別のものに書いたのですけれども、多くの場合、政策に当たって声を上げられないのはいわゆるマイノリティーといわれる方々で、多数決型の民主主義の中では意見が反映されない方々の場合が多いわけですが、今回に関しては、声を上げられないというか、上げる場に余り登場しないのは、厚生年金本体の加入者であり、事業主の方、もちろん代表の皆さんはこの場に出ていらっしゃいますけれども、個々の従業員、その他の方々の声が上がってくる機会がなかなかない。つまり、サイレントマジョリティーでありまして、その方々の声を無視した制度改革をしていくのは、非常に公平性を欠くのではないかと思っています。その意味で、私は、一定の期間において廃止ということしかあり得ないと思っていますが、その上での、それを前提とした上での第1の柱、特例措置が許容されるのではないかということであります。
 それから、委員長から御指示のありました財産権のことについてですが、私は、事務局の説明には一定の合理性があるのではないかと思いました。ちょうど森戸委員もいらっしゃったので、森戸委員は専門家でありますけれども、例えば自社年金が特にそうですけれども、企業年金における個別の不利益変更は、契約の解釈の問題でありまして、今回は、立法でその制度を変えていくという、いわば立法裁量の問題でありまして、裁量権の逸脱・乱用があるかどうかというのが法的には問題、特に解釈論としては問題になってくるということで、個別の不利益変更、契約レベルの問題のほうがむしろ変更は難しいと言える面もあるのではないかと思います。リーディングケースとして、最高裁判決が挙げられましたけれども、3つの要素、財産権の性質、内容変更の程度、公益の性質と挙げていますが、最高裁はあくまで総合判断なので、これらの3つの要素に限定して考えているわけではないということであります。ですから、例えば代償措置というか、代替措置というか、その引下げあるいは廃止だけではなく、一定の配慮をすることも含めた判断になってくる。そういった措置は一定程度とられているのではないかと考えます。
 御説明の中で、2つの点から財産権侵害が問題となり得るというお話もございましたが、私の考えでは、法的に問題があるのは、むしろ2番目より1番目のほうが、特に個々の受給者の方との関係では、より慎重に考える必要があることだと思っています。先ほども、16,000円という数字も出ていましたので、これは決して小さい数字ではないと思います。最高裁で言えば、内容変更の程度にかかわってくる部分です。ただ、これに関しても、公益の性質は、先ほどから申しているように、本体のほうにしわ寄せが行くという大きな問題があるということですし、また、財産権の性質に関しては、これも御説明ありましたが、代行割れを既に起こしている潜在的な受給権の上乗せ給付をどうするかという、そういう局面の話でありますし、そういったことを勘案すると、この支給停止もやむを得ないのかなと私は考えております。
 以上です。
〇神野部会長 どうもありがとうございました。
 ほか、いかがでございますか。
 駒村委員。財政の健全性、その他もちょっとお願いします。
〇駒村委員 はい。かなり重なりますので。
 まず最初に、これまでにヒアリングをお聴きして釈然としない部分があるのは、加入者自身のガバナンスというか、運営に対するかかわりが、依然としてよく見えなかったと。今回、どうしても基金加入者の方が被害者的なような見方をするところもあるかもしれませんけれども、一方では、きちんとガバナンスにかかわってきたのかどうなのかということ、そういうのはかかわれない、実際の上でかかわってこなかった。そういう仕組みをまだ漫然と残すのはどうなのかなというのは、最初はヒアリングを通じて、やはりそこの部分は依然として解明できなかった部分でありました。
 おおむね既に委員の方が、特に菊池委員が御指摘していただいた点でありますけれども、きょう、取りまとめの中にもまだ反映されていない、さっき委員長が御指摘されたところが必ずしも書かれてないのかな。つまり、特例、新特例、企業年金振興、制度廃止は、ある種どういう組合せをするかはセット販売であって、ばら売りはできないということだと思います。先ほどの資料3の18を見ても、健全な基金は残せばいいではないかというお話もありましたけれども、かなり条件は厳しいと思いますし、超長期に考えても、一度緩やかな特例、新特例みたいなものを認めてしまうと、将来、またモラルハザードが発生してしまう可能性があるということであれば、今回、ある種の緩いような対応をしてしまうならば、制度は残せないことになりますし、制度を残すというならば、かなり厳しい扱いを守らなければいけないのかなと思います。
 それから、公・私年金についてでありますけれども、さっき山口先生がおっしゃるように、まずやらなければいけないことがあると思いますけれども、基金の問題を超えてきちんと取り組まなければいけないテーマかなと思います。支給開始年齢の問題も、あるいはマクロ経済スライドをどこまでやっていけるのかとか、こういうことを今後公的年金のほうできちんと考えなければいけないときに、そのときに私的年金、企業年金にどういう役割を担ってもらえるのかということ。あるいは、正規・非正規、中小企業、自営業者にまで、あわせて、どういうふうな対応ができるのかと。そこにおいて税制上の優遇措置とか、公費の使い方が出てくると思いますけれども、その公・私年金のあり方についての議論が、10年以上ほかの先進国に比べるとおくれてきているのではないかと思いますので、これはきちんとまずこの場でやらなければいけない部分と、年金部会等々、あるいは、国のもうちょっと上の会議でやったところで、きちんと長期の課題として直ちに議論をしなければいけないのかなと思います。
 以上です。
〇神野部会長 どうもありがとうございました。
 ほか、いかがでございますか。
〇山本委員 山本でございます。やや所感に近いことになるかもしれませんが意見を述べさせていただきます。
 商工会議所の立場あるいは企業経営の立場から見ますと、連帯保証の問題については、ある企業が倒産した際のしわ寄せを他の企業が負うことは極めて困難だと思いますので、連帯保証の見直しについては皆様がおっしゃるような方向性は正しいのではないでしょうか。
 また、今後、企業年金の役割が大きくなる中、他の企業年金へのスムーズな移行を考えなければなりませんが、実際にはいろいろな障害もあります。もともと財政状況が厳しく、代行部分の積立不足が発生している中、上乗せ分の積立金をカバーすることは、財政上の圧迫が企業に対して及ぶことになります。上乗せ部分の積立不足の償却期間の延長等、いろいろな対策を考えていただいているのですが、うまく移行できる体制がとれないと、結果的に年金の3階部分をやめる決断をせざるを得ない企業が増える危険性があると思います。総合的に見ると、従業員に対する将来の社会保障をさらに欠落させることにつながる危険性があるのではないかと考えられます。現在の仕組みの改善や新しい考えも取り入れていくなどの必要があるのではないかと思います。
 また、厚生年金自体、今の仕組みの中でどこまでキープしていくのか、恐らく公的年金の受給額は今後、若干減る方向をイメージしなければならないかと思いますので、企業拠出型の年金でこれをカバーすることをある程度充実させていけるような仕組みを行政も考えていっていただかないといけないと思います。公的年金も減ってくる、企業年金はみんな撤退していくということになりますと、社会保障の厚みがさらにやせていく危険性があろうかと思います。とにかく今回の仕組みの変更については、他の企業年金に本当にスムーズに移行できるように、まだまだ個別企業のヒアリングというところまで行っていませんので、実際には、やってみるとどういう反応が出るかという点は多々あろうかと思いますが、慎重にやっていかないと、結果として、社会保障が総合的に減っていくことにつながる危険性があるのではないかという点を指摘したいと思います。
 それから、もう一つは、中小企業関係でいきますと、今の移行の問題と絡み、例えば大企業と中小企業の格差の問題がこれによって惹起されてくる危険性があるのではないでしょうか。大企業は年金を充足させていけるけれども、中小はなかなかそこまでついていけないので企業年金から撤退していくということになりますと、従業員の保障に関して差がこれまで以上に広がる危険があろうかと思います。企業の規模による格差が拡大しないようにという点を若干心配しております。
 最後に、ガバナンスの問題について申しあげます。それぞれの年金があり、そこでのガバナンスがあるのですが、国家のガバナンスという問題もあると思います。今回AIJの問題がありましたから、これだけの議論が行われたわけです。しかし、先ほど山口委員からの御指摘もありましたように、ビルトイン・スタビライザーが内蔵されていないということは、制度の仕組みとして適正なのかどうか、ある種の社会情勢の変動に対するリスクヘッジが内蔵された仕組みにしておかないと、何か事が起きて初めて気がついて、そこから議論が始まるということが再び起きる危険性があろうかと思います。この点を今後は考える必要があるのではないかということを指摘したいと思います。
 以上です。
〇神野部会長 どうもありがとうございました。
 では、柿木委員どうぞ。
〇柿木委員 それでは、私からお話をさせていただきます。
 経団連としては、1月22日に企業年金制度のあり方ということで、経団連の部会で取りまとめましたので、その資料を今はお配りしていませんけれども、その中から抜粋だけお話をさせていただきたいと思います。
 まず、全体の総論ですけれども、厚生年金加入者のうち、DB、DCの加入者が40%強になっているという事実がございます。そういう実態も踏まえて今後、企業年金を柔軟に見直していきたいというのが1点。その前提としては、先ほど来、出ていますように、公的年金については、現役世代を考えると、給付抑制は不可避であろうと思われます。そういう意味では、自助努力によって退職資産を準備する必要性はますます高まっているし、これは労使も同じように認めているところではないかと思います。ただ、経団連として、企業年金も労使合意に基づく自助努力に基づく制度とする位置づけですから、できるだけ税制措置の拡充、規制改革、それから、柔軟な多様性の制度設計を総論としてはお願いしたいということです。
 厚生年金基金については、業界団体から聴いていただきましたように、いろいろな御意見が経団連内部ではありますが、基本的に、半数以上の基金の積立水準が代行割れをしている状況を考えると、母体企業の負担能力にも問題があって、結論としては、問題はこれ以上先延ばしはできない。何らかの手を打たないといけないということでございます。ただ、基金も、企業年金の一つだと考えれば、本来、労使合意に基づく自己責任原則のもとで運営されることは不可欠です。そういう意味では制度運営面でも、母体企業の労使並びに受給者が最大限対応すべきものです。それから、これは何度も言っていますが、過去に代行返上、解散した基金、それから、厳しい状況にあっても返済してきている基金、こういった基金のことも考えなければいけないですし、基金の運営に対する厚生労働省、地方厚生局の監督責任、こういったことに言及する企業も多いことも事実でございます。ただ、特例措置云々いろいろありますが、厚生年金本体の積立金にツケを回すことは認められないのではないかというのが、会員企業の多数の意見でございます。
 続いて、代行制度の廃止については、いろいろな意見があって、なかなか決定的なことは言いづらいのですが、いずれにしても、厚生年金本体の財政中立化が進んで、厚生年金基金はますます公的年金の性格を強めている。そうした中で、厚生労働省は、厚生年金基金の財政運営の持続可能性は極めて厳しいのではないかと判断しているということですが、代行制度の最終的取扱いについては、第三者の評価も踏まえた上で、制度の持続可能性を十分検証し、廃止・存続の結論を出すべきというのが我々の意見でございます。最終的に廃止する場合は、十分な周知期間とか、丁寧な説明とか、資産売却に伴う金融市場への悪影響を回避するといったことが必要です。それから、存続する選択肢を残す場合は、運営面でのガバナンスの強化はぜひとも必要だろうという意見があります。それから、自己責任原則をさらに徹底して、厚生年金本体に及ぶリスクを遮断するという観点も我々は非常に必要だと思っております。
 現行特例の見直しについて、連帯債務を見直す提案については、連鎖・倒産等の懸念も考えれば、やむを得ない対応だろうということでございます。解散によって掛金負担が加わる各事業者の円滑な資金繰りを確保するためにも、金融庁、国税庁、中小企業庁と連携した対応をお願いしたいということでございます。
 それから、新特例についてはいろいろな意見がございましたが、今既に解散している基金とかいろいろございますので、モラルハザードの防止、そういったことを考えると慎重に判断したほうがいいのではないかというのが全体の意見です。ただ、A案、B案ございますが、B案は、負担額に上限を設けて、厚生年金基金本体の基金を流用して補填するという形になりますが、それについては反対というのが私共の意見でございます。
 細かくなりますけれども、他の基金制度への移行促進ですが、今回、厚生年金基金に関する改革が行われるということで、大きく言いますと、公的年金と企業年金の役割の分担が明確になるのではないかと我々は思っております。ほかの委員の方からも問題提起がございましたけれども、公的年金の給付抑制は長期的には避けられないという中で、自助努力としての企業年金を含む私的年金をいかに普及・拡大させるか、これが我々の従業員からも要望が強く出ていますし、国民の老後の生活の安心を支える意味でも極めて重要だと思っております。そういう意味では、今回いろいろと御提案もありますけれども、企業年金を含めた、私的年金の普及・拡大に向けて、いろいろな税制措置、規制緩和、こういったものをこの場で決まらないとしても、次の議論につながるような問題提起をぜひともお願いしたいということでございます。
 あとは、ちょっと細かいのもいろいろありますが、余り細かいのを言ってもしようがないので、1つ出たのは、キャッシュバランスプランの中で、基準利率に運用実績を加えるという案もいいのですが、会員企業から、年金資産の変動によるリスクを減らすという観点から、企年協さんが言っていた複合インデックスもぜひ認めてほしいということを明記してくれということもこの中に書いております。
 集団運用DCについては、結論から言うと、具体的な内容がわからないので、もう少し議論したいということでございます。
 厚生年金基金から他の企業年金制度への移行支援策については、もう既に経団連から出しているいろいろな要望、税制改正、規制緩和、中途脱退要件の緩和、いろいろありますけれども、こういったものについて、今回を契機として大きな議論をしてほしいということでございます。
 それから、意見としては、中小企業への企業年金の普及ということで、前の適年のように、廃止後、7割の企業の企業年金がなくなってしまうことを防ぐためにも、DB、DCに移行するに際して、あらゆる規制や手続の緩和に注力してほしいということです。具体的には、細かく試案は書いてございますけれども、ここでは御紹介しないという形にいたします。
 最後に、会員企業から出たのは、個人の自助努力に対する支援の拡充で、職域による制度だけで本当にいいのだろうかということです。例えば個人型DC制度に関しても今はいろいろな規制があって、必ずしもそれが十分に機能してない。ですから、例えば個人型DCについて、いろいろな要件を緩和してもらえないかという意見が出ております。例えば、中途の引出し要件の緩和とか、DBの加入者や専業主婦、公務員への加入対象の拡大といったことができないかという意見でございます。
 大体まとめるとそういう意見でございます。
〇神野部会長 どうもありがとうございました。
 宮本委員どうぞ。
〇宮本委員 中小企業労働者の立場でお話させていただきたいと思います。かつ、上乗せ部分の受給権がしっかりと保証されるという前提で、厚労省試案の「段階的に縮小・廃止していく」ということについて、賛成の立場で発言させていただきます。
 雇用労働者のほとんどが中小企業に働く労働者であり、そして、今皆さん方もおっしゃっているように、将来、老後の生活設計ができなければ、現役世代の一部を充当せざるを得ない、そういう状況に、今、中小労働者は陥っているわけです。公的年金は今後極めて不安定といいますか、これ以上よくはならない。そういうことを考えれば、ますます私的年金あるいは個人での積立、そういったところに所得を回さざるを得ない。しかし、そう言いながらも、今の制度で言えば、多くの中小、特に30人未満の、日本にこんなに多く存在する中小零細企業で、本当にしっかりとした企業年金制度が設計できるのか、運用できるのか、こういったところに非常に私は不安を持っております。
 きょうの資料3の37ページ等を見てみますと、幾つかのところで確定給付企業年金があるということです。特に一番最後の40ページを見ると、30人未満あるいは100人未満のところでもそれなりの割合であります。数としてはそんなに多くはないと思うのですが、こういった、確定給付企業年金のような制度をさらにしっかりと設計できるように、そして、そのことを中小企業労使に情報提供するシステム、仕組みをつくってもらいたいと思っております。特に中小企業は多くの数があり、そして、そこには社員数、規模あるいは業種、勤続年数の違い、退職金水準の違い等、条件は大変多くさまざまあるわけでありまして、そういったところに対して多様なチャネルを使ってしっかりとした情報を提供すべきです。そして、将来、老後の生活設計について一定のものがしっかりと見えるような、そういう状況でなければ、元気で非常に生産性が高くて世界で戦える、そのような中小企業がだんだん衰退していかざるを得ないのではないか。中小企業は人材が全てでありますから、そういった人材への投資も含めた観点から、ぜひこの問題を捉えてもらいたいと思っています。
 以上です。
〇神野部会長 どうもありがとうございました。
 どうぞ、花井委員。
〇花井委員 委員長が冒頭挙げられた論点に沿わないかもわかりませんが、ちょっと幾つか疑問点とかがありまして、そのことについて述べたいと思います。
 疑問の前に、先ほど、サイレントマジョリティーというお話が出たのですが、私たちがずっとこの問題について議論してきた際、解散手続や減額手続をとっているとかさまざまなことをやって代行返上しているところ、あるいは、今も受給者に対しては支給しているところ、そういうさまざまな労働組合の意見を聴いてきたわけです。さらには、企業年金が全くないところ、あるいは適格退職年金が廃止された後にどこにも入れてもらえなかったという中小零細のトラックの会社の労働組合もありました。そのような中で出された意見としては、「相当苦労して代行返上したり、あるいは今その申請をしているところの人たちからすれば新特例はいかがなものか、余りにも今までとは違い過ぎるではないか」ということで、非常に強い反対の声が出ました。一方で、企業年金を何とか従業員に提供しようということで努力してきた方たちからは、「集団運用型DC(仮称)について、「投資教育しなくてもいいというのは、本当にそれで確定拠出企業年金なのか」という声も強く出されました。
 そういう意味で言うと、この問題については、今、代行返上しようとしているところ、それから、そもそも企業年金がない厚生年金加入者の納得性は、どうしても必要だろうと思っております。その観点から言いますと、ヒアリングのときに伺えばよかったのですが、健全な基金は残せばいい、制度を維持すればいいという話が出されていたのですが、「健全」とは何ぞやというのが非常に疑問です。本日の資料を見てびっくりしたのですが、私は、3階部分を含めて確保していることが健全ではないかと思っていたら、何と、その3階部分まできちんと支払えるところが16しかない。これは一体どういうことなのだろうと。では、16だけで今後続けていくのですかということを聞けばよかったなと後で反省したのです。
 それから、受給権保護ということです。私どもは一番そこにこだわっていて、解散要件を4分の3から3分の2に引き下げることについても相当議論しました。しかし、解散を促していくということではやむを得ないのではないかということで一つの結論を出したわけですが、それだけ受給権にこだわってきたのです。その上で、解散あるいは制度廃止したら受給権がなくなる、というような意見がきょうのペーパーにも出ておりますが、きょう出された資料で見ると、既に受給権が確保されていないではないかということで、非常に驚いております。そういう意味で、一刻も早く、宮本委員が言ったように、中小企業労働者の受給権を何とか毀損させないためにも解散を急ぐべきであろうし、同時に、移行できる企業年金の創設が非常に急がれます。この点についてはさまざまな分析があるのですが、では、どういう企業年金が中小企業労働者にとっていいのか、そういうことについてきちんと議論する場が本当はあったほうがいいのではないか。駒村委員もおっしゃいましたが、ぜひとも、そのようなことも含めて今後検討していく必要があるのではないかと考えました。
 以上です。
〇神野部会長 森戸委員、御発言がもしもあれば、ちょうだいできればと思います。
〇森戸委員 ちょっとおくれて参りましたので、最初の座長の問題設定は聞いてないのですけれども、私の意見は、今回の資料にもまとめていただいていますし、それから、既に一応ペーパーも出したりしていますので、もう既にそこにありますので、特に繰り返し申し上げませんが、前回、駒村委員がおっしゃったのかもしれませんけれども、どこか決まらないと何か話が進まないので、要するに、代行制度をどうするかを決めないとほかの議論をできないかなと、もうすぐ廃止と言うのか、それとも、私は違う意見で出していますけれども、一応一定の線を引いて維持するというような方向で行くのか、それが決まらないと、その先の話はできないと思います。だから、そこはいずれにしても決めなければいけないと思います。その上で、どういう制度を受け皿で用意するかとかいうことが決まると思うので、そこを決めなければいけないだろうということだけ、一言だけ申し上げておきます。
 以上です。
〇神野部会長 ひとわたり御意見ちょうだいいたしましたが、その上で、御発言をちょっとちょうだいできればと思います。いかがですか。
 駒村委員、何かコメントはありますか。
〇駒村委員 先ほど申し上げましたように、主な意見の整理のように、森戸さんの意見に近い考え方だと思いますけれども、3つのファクターは一体であると。ですから、組合せは幾つかあり得るけれども、整合性がなければいけないということがちょっと書いてなかったので、次の整理のときには、きちんとそこを示した上で、まとめていきたいと思います。
〇神野部会長 あと、いかがでございますか。
 菊池委員どうぞ。
〇菊池委員 1つだけ。先ほど花井委員から、何をもって「健全」と言うのかという御発言がありましたけれども、数字に弱いのですけれども、1.3倍とか、1.5とか、1.7とか出てきましたけれども、いろいろな置き方によってその見方が変わっていくのだと思うのですが、これもどういう方向でまとめるか。廃止という方向なのか。それが原則だけれども、存続した場合云々ということになるのかわかりませんけれども、私の考えは述べさせていただきましたが、仮に、全て廃止ではないという想定でも、では、どこまでという、そういう基準、私は極めて厳しく、先ほど2年で99%とありましたけれども、これも数字はわからないのですけれども、先ほど言いましたように、加入者が全体として納得感が得られるとすれば、やはり10年後、20年後もまず健全だと。ですから、本体には迷惑をかけないんだと、そういうところが「健全」なのかなというふうに思いまして、それが1.3なのか、1.5なのか、あるいは、もっと高いところになるのかという辺りを、もし一定程度存続やむなしと仮になる、そういう部分も書き込むのであれば、私は厳しく具体的に書き込んでいただいたほうがよろしいのではないかというのが意見であります。
〇神野部会長 それなどに関連して、もう少し具体的なフェーズで御意見があれば、ちょうだいしておきます。
〇山口委員 今のお話で、厳しい条件で存続といったようなことをして、それで、非常に数の少ない基金が仮に残ったとして、それが企業年金制度としてどういう意味があるのかというのは私はよくわからないところです。ですから、さっき駒村委員がおっしゃったように、今回の新特例なども、制度廃止とセットにして考えて、制度廃止をするという局面であるから、そういったことをやっているのであって、そうでないというのだったら、新特例といったことをあえてやる必要はないのではないかと私は思っております。
 今回、先ほどの事務局の御説明の中で出ていた0.875という在職支給の関係の係数とか、あるいは、期ずれを精緻化するといったようなところで、実質的には解散しやすい環境の方向に現時点では修正できていると思いますから、それでもってやっていくということで、かなり実質的には話は進んでいるのではないかと理解しております。ですから、やはり廃止という話を前提にいろいろなものが組み立てられているので、それとセットで考えているというのが、これまでの私なぞの議論でありました。
〇神野部会長 あと、ほかに特に御発言はございませんか。
 どうぞ、山本委員。
〇山本委員 先ほど、連帯保証の見直しやスムーズな移行といった点についてお話を申し上げましたが、考え方としては、厚生年金本体に影響を及ぼす可能性のある代行制度そのもののあり方については、基金制度が設立された時代に比べて、世の中の価値観あるいは状況が変化してきているので、厚生年金本体に損失を与える危険性が高い以上は、全体的に廃止していくという方向性については、概ね賛成でございます。
〇神野部会長 ありがとうございました。
 あと、特に御発言がないようでしたら、どうもありがとうございました。本日、委員の皆様から建設的な御意見を多々ちょうだいしたことを深く感謝する次第でございます。
 次回は、意見の取りまとめに向けて、委員の皆様方の御協力を得て議論をちょうだいしたいと考えております。
 それでよろしいでしょうか。
(了 承)
〇神野部会長 では、そのように進めさせていただきます。
 では、本日は、以上をもちまして、この委員会を終了させていただきますが、事務局から、次回の日程など連絡事項がございましたら、よろしくお願いいたします。
〇渡辺課長 次回は、来週になりますが、2月1日(金)午後1時からを予定しております。場所等については、また、追って、御連絡をさせていただきます。
〇神野部会長 どうもありがとうございました。
 それでは、本日の審議はこれにて終了させていただきます。遅くまでお引きとめをしてお集まりいただきたましたことに重ねて感謝を申し上げる次第でございます。
 どうもありがとうございました。


(了)

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