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2013年1月10日 第5回 厚生年金基金制度に関する専門委員会 議事録

年金局

○日時

平成25年1月10日(木) 15:00~17:00


○場所

都道府県会館101会議室


○議題

関係団体からのヒアリング

○議事

○神野委員長 それでは、定刻でございますので、ただいまから第5回社会保障審議会年金部会「厚生年金基金制度に関する専門委員会」を開催したいと存じます。
 本日の会合は、新しく年が明けて初めての会合でございます。新年の御挨拶の言葉とともに、毎々のことでございますが、お忙しい中を御足労いただいております委員の皆様方、また本日、ヒアリングのためにわざわざお越しいただきました皆様方に、伏して御礼を申し上げる次第でございます。
 本日は、菊池委員から御欠席との御連絡をいただいております。また、駒村委員、森戸委員からはおくれて参加する旨の御連絡を頂戴いたしております。
 それでは、議事に移らせていただきたいと思います。
 大変恐縮でございますが、カメラの皆様方におかれましては、御退室をお願い申し上げます。御協力をちょうだいできればと思います。恐縮でございます。
(報道関係者退室)
○神野委員長 本日は、議事次第にございますように、関係団体の皆様方からヒアリングをさせていただきます。信託協会、生命保険協会、日本年金数理人会、運営管理機関連絡協議会の4つの団体の皆様方からヒアリングを頂戴したいと考えております。
 まず、事務局から資料の確認をお願いしたいと思いますので、よろしくお願いします。
○渡辺課長 それでは、資料の確認をさせていただきます。
 本日はたくさん資料をお配りしておりますが、まず、議事次第に続きまして、
 資料1は、きょう意見陳述をいただきます4つの団体の方々のお名前でございます。
 資料2-1は、厚生年金基金制度の見直しについて
 資料2-2は、厚生年金基金制度の見直しについて(説明資料)
 これは最初に意見陳述をいただきます信託協会の提出資料でございます。
 資料3は、持続可能な企業年金の実現に向けて
 これは2番目に意見陳述をいただきます生命保険協会の提出資料でございます。
 資料4-1は、「厚生年金基金制度の見直しについて(試案)」に対する意見
 資料4-2は、厚生年金基金の最低責任準備金について
 これは3番目に意見陳述をいただきます日本年金数理人会の提出資料でございます。
 資料5は、「厚生年金基金制度の見直しについて(試案)」に関する意見
 これは最後に意見陳述をいただきます確定拠出の運営管理機関連絡協議会の提出資料でございます。
 以上、落丁等がございましたら、事務局のほうにお申しつけください。
○神野委員長 どうもありがとうございました。
 よろしいでしょうか。お手元を御確認いただければと思います。
 それでは、順次、関係団体の皆様方からヒアリングを頂戴したいと思います。大変恐縮でございますけれども、御説明は15分程度でお願いしたいと考えております。
 初めに、信託協会の荒海様から御発表をお願いいたします。よろしくお願いいたします。
○信託協会年金専門委員長 荒海様 三井住友信託銀行の荒海と申します。
 本日は発言機会をいただき、大変感謝しております。信託協会年金部会を代表して、意見を申し上げたいと思います。
 まず初めに、趣旨から申し上げます。
 信託協会としては、去る11月26日に当専門委員会に対して、別添の資料2-1の意見ペーパーを提出させていただいております。これは厚年基金にかかわる立場として、当専門委員会での議論を当初より見守ってまいりましたが、議論の中心が厚年本体の財政問題からの視点によるものが非常に多く、もう一方の重点テーマであります基金解散時における加入員・受給者の財産権については、なかなかテーマになりづらく、また当初は、ほとんど議論の遡上にも上がらない状態だということを大変心配しまして、大きな危惧を感じたゆえに、この意見ペーパーを提出させていただいております。
 もちろん、厚労省試案では、ほかの制度への移行を支援する特例措置も盛り込まれていますが、総合型基金の大半を占めます中小企業におきましては、その特例措置をもってしても、他の制度への移行は規模面の問題等で非常にハードルが高いのが実態でございます。厚年基金制度自体が一律廃止となりましたら、結果として、多くの中小企業の年金制度が消滅に向かうことになり、多くの加入員・受給者の財産権が損なわれるおそれが強いというのが現実でございます。
 本日の手前どもの資料では、現在の厚年基金制度の年金制度としての持続可能性の実情を改めてお示しするとともに、強制的な制度廃止が実施されることによって損なわれるであろう加入員・受給者の財産権の総額レベルをイメージとして認識いただけるように内容を構成いたしております。
 厚年基金の加入員・受給者の財産権の問題は、決してささいなものではなく、大きなテーマであるということを再認識いただいた上で、今後の専門委員会の議論を進めていただきたいというのが趣旨でございます。
 それでは、2ページの【ポイント1】と書いてあるところをごらんください。
最初に、ポイント1、代行制度の持続可能性、すなわち年金制度の持続可能性についてお話しします。
 厚労省試案では、厚年基金制度の持続可能性を一時的な代行割れの可能性のみで論じた上で、制度の一律廃止ということを提言していらっしゃるわけですけれども、ここでは制度の持続可能性は継続基準によって図るべきと主張したいと思っております。
 3ページをごらんください。
 こちらは、第1回専門委員会で事務局様から御説明のあった持続可能性に関する検証の資料を抜粋させていただいております。
 中段右の「厚生労働省による検証で延べられていること」をごらんいただけたらと思います。この試案では、持続可能性の検証基準として、いわゆる0.875見直しの効果と期ずれ調整効果を考慮した上で、23年度末時点の積立水準に着目。それが1年ないし2年後に代行割れしない可能性でその検証を行っているということでございます。
 手前どもは、この検証に関する問題点として、総じて言えば、一時的に代行割れが発生する可能性のみで年金制度の持続可能性を図ろうとしているところにあると思っております。決して代行割れの問題を軽んじるつもりはありませんが、これまでの実績を見ても、一時的に代行割れを起こすケースというのは相応に発生してきております。特にリーマン・ショック直後は大多数の基金が代行割れの状態となりましたが、その後の掛金アップや給付減額あるいは運用成果の積上げにより、現在の水準まで回復してきた経緯がございます。また、次のページでも御説明しますが、制度の持続可能性を図るのであれば、将来の掛金収入も加味した継続基準で図るべきと考えております。
 ここもあくまで参考まではということですが、この試案にあります1.3あるいは1.7という数字についても、0.875の見直しや期ずれ調整の効果が反映されているものでもなく、将来の代行割れ確率を論じる上でも適切な検証ではないのではないかと考えております。
 繰り返しますが、年金制度の持続可能性を図るのであれば、一時的に代行割れが発生するという可能性のみに論じるのは適切ではなく、次ページにあるようないわゆる継続基準で図るべきというのが主張でございます。
 4ページをごらんください。
 継続基準について、改めてお話ししたいと思います。
 継続基準というのは、現行の厚年法及びDB法で定められております財政検証の基準でございます。将来にわたって年金給付を行っていくために必要な積立金が確保されているかどうかを図る基準です。
 その際、将来の掛金収入も考慮するわけですけれども、それは今後とも厚年基金が継続していくことを前提にしているため、継続基準と呼ばれている基準です。
 そして重要なのが、将来の掛金収入を含めて考えるという趣旨でございますけれども、これは年金制度を将来にわたり継続していくという強い意思のもと、該当基金が掛金アップ等を決断して対応する。こういった背景をもとに判断しているということが、この趣旨になるわけであります。
 このように年金制度の持続可能性を図るのであれば、継続基準より検証することが適切だと考えております。
 5ページをごらんください。
 これは23年度末時点の継続基準での財政検証結果です。言わば直近の厚年基金の姿ということになります。ここでは信託銀行が総幹事をしています全439基金のうち、約7割の298基金が継続基準を満たしている状況だと御報告いたします。
 真ん中の右のグラフを見ていただきますと、横軸が代行割れしているか否かを示す軸で、1以上である場合はこの代行をクリアーしている。1未満は代行割れの状態ということです。縦軸は継続基準を満たしているかどうかを示す軸で、1以上であれば継続基準クリアー、1未満は満たさずというプロットでございます。
 第1回の専門委員会資料では、代行割れ基金が約半数、また、総額1兆円超過の代行割れというところにスポットが当たっておりました。これによって、厚年基金制度の持続可能性が低いという印象を与えておりましたけれども、この継続基準で見る限り、むしろ全体の3分の2を超えるマジョリティーがこの基準を満たしているということでございます。
 これは彼らが先ほど申し上げたように強い意思を持って、掛金アップ等の施策を図り、年金制度として持続可能性を堅持しているところ、これが数多く存在しているという状態を示していると思います。特に今、申し上げた右のグラフの4分割の左上の部分、三角印でプロットがしてある部分なのですが、これは代行割れしているけれども、継続基準はクリアーという基金の部分です。ここに81基金が存在します。これは23年度末には代行割れしているが、掛金手当の継続によって、年金制度の持続可能性は問題ないと認められた基金でございます。まさに強い意思を持って制度を継続しようと努力している代表例の部分でございます。
 6ページをごらんください。
 また、そうした基金の中で、今後、制度を持続させるべく検討している代表的に施策をさらに実施した場合にどう状況が変化するか。これは試算にすぎませんけれども、示したものが6ページ目のものでございます。
 あくまで試算ですので、簡単に見ていただくだけの資料でございますが、ここでは給付減額、これは現状上乗せ部分の比率が大体30%強ございますけれども、これを一律20%に引き下げる。また、掛金のアップを特別掛金0.5%を20年続けるという施策を実施した場合に、この状態がどうなるかというものを示したグラフでございます。
 具体的には、そういった施策をとった場合には、この継続基準をクリアーする基金数は約9割に達するということでございます。あくまで試算にすぎませんので、これは参考までということですが、ちなみに現在、基金様の中でこうした施策をいろいろ検討されている中でいうと、この20%まで減額、さらに特別掛金0.5%というのはごく代表的な数値であるということを申し上げておきたいと思います。
 7ページをごらんください。
 これはポイントの2つ目でございます。厚生年金基金制度を実質的に強制的に廃止した場合の影響というところであります。
 ここまでお話したとおり、厚年基金制度の持続可能性ということは、継続基準で見る限り、相応に高いことが御理解いただけたと思います。しかし、この状況下で期限を区切って厚年基金制度を強制的に廃止した場合にはどんなことが起こるかということであります。現実的には、大多数の中小企業の年金制度は廃止に追い込まれ、DB制度ですとか、DC制度などのほかの受け皿に移行できるところは、ほんの一握りになると想定してございます。
 このあたりの状況は、前回のヒアリングの中でも既に全総基様や企年協様のほうから説明がありましたので、余り詳しくは触れませんけれども、簡単に言えば、中小企業の企業年金にとって5年あるいは10年という期限の中で、厚年基金の器がなくなってしまった場合には、この代行部分までの積み立てができる精一杯というところが現実でございまして、上乗せ部分までの対応が可能な中小企業は非常に一握りであるということでございます。
 8ページをごらんください。
 左上のグラフの実線は、厚年基金の受給者の推移でございます。グラフが示すとおり、受給者は増加傾向にありまして、23年3月末で283万人に達しています。また、同じグラフで点線の部分は厚年本体の1人当たりの年金月額でございます。老齢年金の特別支給の支給開始年齢が引き上げられていることもあって、1人当たりの国の年金額は年々縮小している状況でございます。
 一方で、その右にある厚年基金の上乗せ年金月額は、平均1万4,000円となっています。1回目の専門委員会の資料では8,000円程度となっておりましたけれども、これは一時金選択者の人数まで含んだ平均値ということで、実態の年金額という意味では、1万4,000円という水準でございます。
この水準をどうとらえるかという問題ですが、このように公的年金が縮小傾向にある中にありまして、今後も相応の役割が期待できるレベルと言えるのではないかと思っております。
 9ページをごらんください。
 この月額1万4,000円という数字を加入者、受給者の財産権、ここでは将来にわたる受給総額の現在価値として、最低積立基準額で示させていただいておりますが、この加入員・受給者の財産権として見てみることにしたいと思います。
 ここでは信託銀行が総幹事をしている基金に限定しておりますけれども、この上乗せ部分の財産権の総額は7兆7,000億。総合基金だけに限りますと6兆5,000億に上ります。もちろん、この中の一部の基金は新たな受け皿に移行して、その分の上乗せ財産権は保全されることになりますが、先ほども申し上げたとおり、一律廃止の中では、かなりの多くの基金が解散に追い込まれ、制度を閉じることになります。
 その下の表の数字ですけれども、仮に現在、負債総額が積立資産を上回っている年金制度で見ますと、この上乗せ部分の財産権が全て失われた場合の総額は5兆円。総合基金だけでいいますと4兆4,000億円。また、仮にですが、代行割れ基金に限って上乗せ部分の財産権が消えたといたしますと、この総額は2兆1,000億ということになります。
 これはあくまで信託銀行が総幹事を担っている基金だけの数字でございますけれども、概して申し上げますと、ざっくり見積もったとしても、兆円単位の財産権が失われる可能性があるというところの御認識を持っていただきたいと思っております。期限を区切って強制的に厚年基金制度を廃止するということは、このような単位での上乗せ財産権にかなりの危惧が発生するということと同義だということであります。一律廃止を決断するということは、こういった結果を招くことも全てやむを得ないという判断と同じであるという中での御判断をしていただけたらと思います。
 最後に、11ページをごらんください。
まとめを掲載させていただいております。
 改めて申し上げれば、現在の厚年基金の状態というのは、さまざまな状態の基金さんが混在している状況です。地域産業の没落とともに、財政面で窮地に至って、解散決議をしながらも、解散がなかなか実現できない基金さんもいらっしゃいます。また、従業員拠出部分があるために、現実的に解散が困難で、身動きがなかなかできない基金というのもいらっしゃいます。
 一方で、財政が健全で元気な基金さん、また、現在、財政が回復過程にあって、従業員の年金のために懸命に回復努力をしている基金さんもいらっしゃって、さまざまな状態が混在しているというところです。
 こういった状況下で今回の厚労省試案全般につき申し上げれば、まず、解散時に各事業所の債務を確定する施策ですとか、解散時の積立不足に関する母体企業の資金調達を平準化させる施策など、いわゆる財政が苦しい状態でも解散がスムーズに進められる施策が盛り込まれている。こういった内容については、非常に評価をすべき内容であると考えています。
 一方で、先ほど申し上げたとおり、年金制度の持続可能性という意味で言えば、この一時的に代行割れする可能性のみで図ろうとして、まるで厚年基金制度全体が持続可能性が低いという印象を与えることで一律廃止論につなげるというのは適切ではないと思っています。
 そして、継続基準で見れば、約7割の基金が基準をクリアーしているわけですから、これにもかかわらず、試案どおりに一律廃止ということになれば、月額1万4,000円の上乗せ年金の多くが、すなわち先ほど見ていただいたとおり、兆円単位の財産権が危険に陥る。結果的にはそういった状況も発生し得る。この問題を軽んじることはあってはならないと思っております。
 試案でもうたわれておりましたけれども、今後とも厚年基金制度は自己責任原則を崩さないという方向であるならば、この加入員・受給者の財産権に直結する問題である年金制度の存廃というところは、厚年基金自身のガバナンスのもとで、労使の協議で決定されるべきものと考えております。
 ここにいらっしゃる専門委員の方、また、年金局の方々には、もう釈迦に説法ということになりますけれども、一律廃止あるいは実質的な強制解散というものを進めるということになれば、将来、受給権、財産権の問題をより大きなテーマとして浮上させることになると思っております。すなわち、強制的な解散の色彩が濃くなればなるほど、代行部分の債権、これは厚年本体が持つ債権ということですが、それと上乗せ部分の債権、これは中小企業の従業員の方々、受給者が持つ債権、この債権順位に上下があるのか、また、同順位なのかというところが浮上してまいります。しかも、これは基金や事業主だけが抱える問題ではなくて、ある意味、行政サイドにも同様の問題が降りかかるのだろうと思います。
AIJ事件発生までは、厚年基金制度を終身年金を中心とする理想的な企業年金として捉えて、安易な解散や受給者減額を現に戒めてきたわけです。これが現状は厚年本体を傷つける制度なので、基金制度は廃止やむなしとするということは、180度の方針転換になるわけですから、こうしたスタンスの変更についても、先ほどの受給権、財産権の問題は重くのしかかるのであろうと思っています。そうした点も十分留意して、慎重な議論をぜひお願いしたいと思っています。
 最後の最後ですけれども、今後もしこの一律廃止論が後退して、制度が存続方向になった場合でも、実質的には多くの基金を解散に追い込むような法令や施策というものが行われれば、これは強制的な解散と同じ意味だと思っております。これはやはり問題になるのだと思っています。例えば解散時の債務確定の施策についても、時限立法にしてしまえば、多くの中小企業オーナーは債務確定の権利を将来にわたって失いたくないため、期限までに一斉に解散に向かうということも予想されます。これでは一律廃止と変わらないということになりますので、同じく受給権、財産権の問題が噴き出すということになります。この点も含めて、各専門委員におかれては、ぜひ慎重な御議論をお願いしたいと思っております。
 私からの説明は以上でございます。
○神野委員長 どうもありがとうございました。
 代行制度の持続可能性、受給者からの視点などを御説明いただいた上で、御主張を頂戴いたしました。
 それでは、委員の皆様方から御質問があれば頂戴したいと思いますが、いかがでございましょうか。
 駒村委員、どうぞ。
○駒村委員 おくれて着いたものですから、2番目に遠慮しようかと思ったのですけれども、御指名されてしまいましたので、幾つか質問させていただきます。遅参しまして、申しわけございません。
 資料の3ページを拝見いたしまして、確かに1.3、1.7という数字には、期ずれ問題や0.875の問題を反映しなければいけないのですけれども、それを反映した上で、この辺の数字をどう考えていらっしゃるのか。
 その下の文章もやや気になっていて、代行の問題が出てきたのは、代行割れの状態のまま解散されてしまうと本体に深刻な影響を与えることになる。従来は大企業が中心だったので、きちんと自分たちである種、その部分は責任を持ってやっていただいたわけですけれども、近年は代行割れのまま解散する蓋然性が高くなってきているということで、いかに本体に影響を与える確率を下げるかというのが重要なこの政策のテーマになってきているのではないかと思います。そういう意味では、本体の加入している人のある種財産権というものを重視しなければいけないのかと思います。
 そういった意味で、一時的に代行割れする可能性があるけれども、本体との相対的な運用成績によっては取り返せるかもしれないし、取り返せないかもしれない。この辺は、どのぐらいの確率で、例えばある一定の基準を変えれば取り返せるのかというのを何かシミュレーションとか、数理的なアプローチをやったりしたことに基づくのかどうなのかというのが、この一時的というのが恒久的にならない保証はどこにあるのかというのが、ひとつ気になっております。
 もう一つですけれども、4ページの継続基準です。厚労省のホームページにはこう書いてあるようですが、継続基準だけでしょうか。非継続基準のことはいかがでしょうかというのが少し気になりました。
 次に5ページですけれども、縦軸について、許容繰越不足額と純資産額の合計を分子に入れて計算されていますが、この許容繰越不足金というのは、これを入れてしまうとやや甘めではないのかと思います。これを抜いたほうが実態がよくわかるのではないかと思います。これは抜くとどのぐらいまで下がってくるのでしょうか。この辺をお願いできますか。
○神野委員長 4点ばかりでございますが、よろしくお願いできますか。
○信託協会年金専門委員長 荒海様 まず最初のところなのですけれども、一時的にと申し上げたのは、これは冒頭に申し上げたように、軽んじているつもりはないのですが、当然、例えば相場の大きな変動があったときに、リーマン・ショックの直後というのは、かなり従前まで健全に運営していたようなところも、この継続基準に引っかかるというのは単年でもよく起きていることであります。
 そういったことがあるので、結果、掛金をアップさせたり、あるいは減額をしたり等々の対応をして、いわゆる健全な形に持っていこうというのが現状の財政検証の仕組みと理解しています。
 ですから、長期的に年金制度を持続させていくという観点では、まさに継続基準という将来の掛金収入も考慮した形で見ていくというのが今の考え方、年金制度を考える上でも中心に置かれていると手前どもは理解しております。
 その際に、一時的にと申し上げているのは、当然、相場で稼ぐまでは何もしないとかそういうことではなくて、当然、その分は掛金を上げながら、時間をかけてそこに回復させていくというのが、まさに財政検証の考え方ですし、それに基づいて各基金が努力をしているというのが、実際ここ数年、現場で起きている状況だと思っております。私が一時的な代行割れだけの可能性をもって図るべきではないということを主張させていただいたのは、現実、一時的にでも代行割れしてしまえば、それがもう既に不健全であって、その確率をゼロに持っていくのだ、あるいはそれを可能な限りなくしてしまうのだというのは、やはり相当厳し過ぎる基準ではないかということをここでは申し上げたいつもりで申し上げました。
 それから、継続基準、非継続基準というのは、確かに非継続のところもございます。これは当然あるいろいろな事情で、その時点で年金制度をやめなければいけないような事情が起きたときに、現状のその状況はどうなっているのかというのを見る基準がございます。それは別途ございます。
ただ、ここで申し上げたかったことは、年金制度の持続可能性を図る基準としてまず何を見るべきなのかというところであります。その上で、恐らく現在の法体系の基本的な考え方は継続基準をメーンに据えて財政検証をしているのだろうというところを改めて申し上げて、ここに触れずして年金制度の持続可能性を論じるというのはおかしいのではないかというのを申し上げたかったということであります。
○三井住友信託銀行(株)年金数理部長 井出様 最後のところの許容繰越不足を除いた場合の継続基準の状況についてでございますけれども、5ページのところにあります足元のところの継続基準につきましては、最低限の情報収集をしておりますので、439基金分というのはございませんで、厚生労働省様が発表されております数字で申し上げれば17%程度になります。
 一方、6ページでございますけれども、今度は手当をしたらどうなるかというところで申し上げれば、そこにあります給付減額と掛金増額を両方やった場合で、約70%程度でございます。
○信託協会年金専門委員長 荒海様 済みません、3つ目の質問が飛んでいたと思うのですけれども、もともとここを外す、外さないというところなのですが、不足のところを入れる、入れないというのは、まさに今の継続基準の考え方として、これを入れて考えるという考え方になっています。
それは何かというと、やはり3月31日の相場水準だけで見た場合に、ある程度相場の動きを見るためには、そういったクッションが必要だという判断のもと、今こういう基準が入れられているという理解でおります。
 ですから、そもそも継続基準としてこれを入れるのがふさわしいのか、ふさわしくないのかという議論は別にあるのだと思いますけれども、少なくとも現状、継続基準をクリアーする、クリアーしないという見方としては、それを含めた形で見るのが現状の見方であるということでございます。
○神野委員長 よろしいですか。
○駒村委員 幾つかありますが、こういう難しい時代なので、本体の受給権、財産権というのもあるわけですので、そこをまず努力はされるというものの、努力と運用のところに期待をするというのは、本体にもそういうリスクを共有し合う。
つまり、改正案の中の連帯責任のところを外すことをどう評価されているかによりますけれども、そこはリスクを本体も担わなければいけなくなる。何も関係ない人たちがリスクにさらされるというのは、やはり簡単には理解しがたい部分もあるかとは思いますが、お話は承りました。
○神野委員長 ほかにいかがでしょうか。
 花井委員、どうぞ。
○花井委員 3点ほど質問させていただければと思います。
 まず、3ページの一番下に「一時的に代行割れする可能性のみをもって…」との記載がございます。私たちのような専門家ではない人間からすれば、一時的であっても代行割れの可能性があるということを前提にしていいのかと思います。
それから、6ページの右下に「給付減額+掛金増加:90%」とあり、左上に「給付減額・掛金増加という一定の前提を置けば、信託銀行総幹事の9割の基金が継続基準をクリアできる」とありますが、その前提として、<給付減額の前提>として「20%まで引き下げる」、<掛金増加の前提>として「0.5%を20年間追加で拠出する」とされています。まず、この前提条件が現実的なのか。これができるのだったら中小企業はこれほど悩まないで済んでいるはずです。実現可能かどうかわからないものを前提条件にして、それで90%というのはどうなのか、というのが1点目です。
 次に、「受給権の毀損」という話が先ほどから出されておりますが、現状、既に相当の方の受給権が毀損されていて、今後続けばさらにその可能性が高まると思います。現状で既に1.1兆円です。その計算数字に対して大変御不満なようですが、既に相当毀損してしまっている状態にあることについてどのようにお考えなのか聞かせていただければと思います。
 最後に、11ページに≪代行制度の持続可能性について≫と書かれており、持続可能性の中身が給付減額と掛金増加となっているのですが、一体誰にとっての持続可能性なのか。今のような経済が非常にデフレ下であって、この先わかりませんけれども、そういう意味でいうと、掛金を引き上げて給付を引き下げることで本当に制度の持続可能性が担保できるのか。その辺をお聞かせいただければと思います。
○神野委員長 では、3点お願いできますか。
○信託協会年金専門委員長 荒海様 恐らく幾つか重なる部分がおありだと思うので、まとめてお話ししたいと思います。
 最初に、一時的に代行割れするというところについての表現についてすごく気になられるということなのですけれども、誤解を恐れずあえて申し上げれば、やはり年金資産ですから、一時的に上がったり下がったりすることはございます。その際に、いわゆる代行割れの水準にまで一旦下がるということを今、代行割れと呼んでいるわけです。それは3つ目の質問で、既に財産権が毀損されているというお話をされたのですが、それはそうではないと思います。そうではなくて、いわゆる一旦そういう水準になった掛金というのは、何とか健全な水準に戻すために、時間をかけて掛金を上げて、あるいは場合によっては給付を下げて、その健全な状況に持ってきて、当然代行割れも回避しますし、将来の自分たちの年金の給付に資する資産を積み上げようとするわけです。
 これはぜひ御理解いただきたいのですけれども、過去、厚生年金基金の中でも、今でも非常に財政が苦しい基金さんはいらっしゃいますが、現実、代行割れのまま、つまり自分たちの自己責任を果たさずに終わってしまった基金さんというのは、別にいるわけではありません。それは時間をかけても、今、それを返済している基金さんもいらっしゃいますし、今、非常に苦しい状況のときに掛金を上げながら、何とかそれを回復しようとしている基金さんだけしかいらっしゃらないわけです。つまり、本体に対して何か傷をつけた基金さんがいるわけではありません。それは今、代行割れしているとしても、将来的にそれを回復するような施策を今、打たれながら、制度を持続されているということでございます。また、解散をする場合も、当然迷惑をかけずに、それだけの資産を代行水準まで戻した上で変換してきている。この歴史なわけです。
ですから、今、一時的に代行割れをしているという観点のみで毀損をしていると考えられているのですが、そうではなくて、その状態からきちんと返せる状態、また、自分の年金の給付ができる状態にまで戻そうと努力されている過程にあるとまずは考えていただきたいと思います。
 ですから、この1兆1,000億というのは、例えば24年3月末時点でそういう状態ですけれども、当然、それに対応して掛金を上げたり、あるいは給付を下げて何とか少しでもそういった問題を解消しようとしてやられている基金さんというのが相当数いらっしゃるということなのです。それが1点です。
 もう一つは、最後に申し上げましたけれども、私が一番言いたいことは、いろんな基金さんがいらっしゃるということです。その中で、では将来的に代行割れ、場合によっては本体を棄損させるリスクが高いとすれば、それは現状、その財政が非常に厳しい基金さんなのだと思います。今、財政が非常に厳しい基金さんについては、今度の試案にも入っていたとおり、なるべくスムーズに解散ができるようないろいろな施策、具体的に先ほどの、例えば母体企業が資金調達を平準化してできるような施策、あるいはこれは両論あるかもしれませんが、いわゆる負債額を確定させるという施策。そういうことで、ある意味、解散をスムーズにやることで、今、財政が非常に厳しい基金さんもスムーズに解散させようという施策については、これはいい施策だろうということで、我々も評価しているわけです。
 ただ、それとあわせて、健全な基金さんや、あるいはまさに回復過程にあるような基金さんも含めて一律廃止するということは非常に乱暴なやり方なのではないかと思います。そのことで副作用として、かなりの財産が実質的に毀損するというところが発生するのを非常に危惧しているということでございます。
 一時的に代行割れが発生するということと、実際の毀損というのは違うということをぜひ申し上げたいと思います。
○神野委員長 よろしいですか。ほかに何かありますか。
 山本委員、どうぞ。
○山本委員 関連しまして今の給付減額の前提である20%についてですが、各信託銀行からヒアリングを行った結果であるとか、アンケートをやった結果であるとか、何か裏付けがあるのでしょうか。同様に、掛金増加の前提である0.5%につきましても、何かしら理論的なバックグラウンドがあるのでしょうか。○信託協会年金専門委員長 荒海様 ここはもう本当に仮置きで計算した場合の試算にすぎません。ただ、20%とか0.5%というのは、今、個別の基金さんが実際どこまで減額をし、どこまでだったら掛金アップに耐えられるかといったときに、かなり代表的に出てくる数字を一応前提に置いたつもりであります。
 ただ、全ての基金さんはこれが可能だとか、あるいはみんなこれだったら大丈夫なのだとか、そういう意味ではなくて、1つの試算で見た場合の御参考程度の数字でしかございません。
○山本委員 ということは、何か固まった数字ではないということでしょうか。
○信託協会年金専門委員長 荒海様 固まった数字ではありません。
 ただ、これは御理解いただきたいのですけれども、やはり今回、去年1年の議論を踏まえて、もちろん解散を決断されている基金さんもいらっしゃいます。でも、制度を持続させようとしたときに、具体的にどこまでだったら可能なのかというのを具体的にやる場合に、こういった議論を今、水面下で実際、代議員会でも決議し、具体的に進めようとされていたところはかなり多かったというのも事実です。
○山本委員 了解しました。
○神野委員長 山口委員、どうぞ。
時間がないので、要領よくお願いします。
○山口委員 余り時間がないようですので手短に伺います。この文章の理解の仕方について教えていただきたいのですが、受給権の保護が大事だと言っておられて、もしこのまま制度を廃止すれば、金額にしてかなり大きな金額の受給権が毀損されるかもしれないということを言われているわけですよね。
 しかし、一方で、一律給付減額して代行部分の20%まで減額すれば持続可能性が高まるともおっしゃっておられます。ただし、この給付減額の水準は腰だめの数字だとおっしゃっていたのですけれども、そもそも受給権についてどのようなお考えを持っておられるのかということをぜひ教えていただきたい。
 もう一つ、これは間違ったメッセージになると困ると思うのですが、9ページあたりに書いてあることで、要するに今後、上乗せ部分について2兆1,000億といった金額が毀損される可能性があると書いておられるわけですけれども、上乗せ部分というものは本来はプランスポンサーがきちんと払うべきものですね。それが制度が廃止されることになれば、可能性としてそういうものが払われなくなるかもしれないと言われているのですが、それは言い換えれば、上乗せ給付はスポンサーが払わなくても済むかもしれないということを言われているわけですね。
そのようなことが話として出てくれば、この方式で解散していけば、上乗せ部分も払わなくていいのだという風潮になってしまう可能性もあるわけです。したがって、このような試算をするときの前提としての物事の考え方、先ほどの受給権についてどう考えておられるのかというところについても、やや安易に計算のためにいろいろな前提を置かれているのですけれども、一方では受給権が大事だと言い、一方では2割水準までカットすると言い、それでいろいろな計算をされておられて、結果的に間違ったメッセージになるといったようなことを発信されることになるといった懸念もありますから、このあたりの考え方を十分説明していただきたいと思います。
○信託協会年金専門委員長 荒海様 まず、最後の結論でも申し上げたとおりなのですけれども、こうした制度の存廃というのは、基本は一律廃止だとか、強制的な解散で持って行くのではなくて、労使の合意できちんと決める枠組みを守るべきだということをまず申し上げたかったというのが趣旨でございます。
 その上で受給権というのは、それぞれ今、持っている受給権が大切だというのは論をまたないわけなのですけれども、当然、正当な労使協議の中で決まっていくものというのは、相応に尊重すべきものなのだろうと思っております。
 ここで2.1兆円の受給権が毀損する可能性があると言っているのは、現実、今、例えば総合基金の解散というものを過去に見てきたときに、どんなことが起きてきたかということもあわせてそういった可能性について、むしろ、いわゆる今までの委員会の議論というのは、例えば平均8,000円程度の年金がなくなる話だという程度のメッセージしか送られていなかったと思います。
そうではなくて、実際それをこういう形で見れば、相応の金額の年金額なのですよということをお伝えしたかったというのが手前どもの趣旨でございまして、別に受給権そのものの考え方が右往左往しているわけではなくて、そういった重要なものであるということを片方に置きながら、その上で、もちろん本体の財政のことも考えながら結論をちゃんと出していっていただきたいというのが手前どものお願いでありまして、そういったデータを少なくともオープンにした上で御議論いただきたいということを申し上げたかっただけでございます。
○神野委員長 山口委員、よろしいですか。
○山口委員 はい。
○神野委員長 駒村委員、どうぞ。
○駒村委員 先ほど言及されて気になったところがあるので、これだけ教えてもらいたいのですけれども、先ほど新特例で入ってくる負債額の確定についていろいろ評価があると思いますとお話しされましたね。花井さんの答えに対しては、負債額の確定についてはいろいろ評価があるとは思いますとおっしゃいました。評価は実際どう考えられるのでしょうか。そこだけ教えてください。
 新特例で負債額を確定するという考え方について、いろいろ考え方がございますとおっしゃったのですが、おっしゃっていないですか。では、後で議事録を確認すれば。
○神野委員長 御説明があったかと思います。解散時の負債額の確定については、いろいろ見解があるかもしれないと。
○駒村委員 そこの協会としての評価を聞きたいということです。
○信託協会年金専門委員長 荒海様 わかりました。
 逆に、駒村先生のほうにお答えしたつもりだったのですけれども、いわゆる解散時の負債の確定の話でございますね。ここは確かにおっしゃりたいことは、もしそこでその後、どこかで倒産してしまったときに、今まででしたら、それ以外の事業所が引き受けて支払っていたわけですから、ある意味、本体との関係で言えば、明らかにその部分は穴があく要因ではないかということで、そこはおっしゃるとおりだと思います。
 ただ、これは逆に基金サイドから見たときの話なのですが、例えば通常の単年の厚年基金と、いわゆる総合型あるいは連合型の総合基金で考えた場合に、単年がそういう状況に陥ったときに、現実そういう状態があるわけではないですけれども、ほかの単年がそれをカバーするという仕組みにはなっていない中で、総合型の基金だけがほかの事業所がそういったものまで含めて負担するというところについて言うと、やや公平感が合っていないのではないかという考え方を持っております。
 ですから、確かに本体との関係で言えば、その分、その施策があるということは穴をあける可能性をふやしてしまうというところはあろうかと思いますけれども、単年等との関係で言えば、つまり、基金側から見た場合には、ある意味、少し公平性が保てる仕組みになるのではないかとは思っています。
○神野委員長 時間の関係もございますので、この程度で打ち切らせていただきたいのですが、どうぞ。
○渡辺課長 先ほどちょっとお話がありましたので、データだけ。
 現状、継続基準を満たしている基金のパーセンデージは、先ほど17%とおっしゃったのですけれども、私どものほうで公表しているデータでは14%でございます。
 それから、1点だけ申し上げますと、継続基準の財政検証をするときには、2つのステップがありまして、そもそも積立不足が生じているかどうかというのを客観的に評価するステップ1と、その結果として生じていた不足をどうやって掛金に反映させていくかということを見るステップ2がありまして、ここで出ております許容繰越不足金というのはステップ2に出てくる概念で、一定の範囲の不足であれば掛金に反映させなくてもいいということですので、ステップ1の財政状況を見るときに、この許容繰越不足金を純資産にプラスするというのは、今の継続基準のルールではありませんので、その点だけ言及しておきたいと思います。
○神野委員長 ありがとうございます。
 それでは、この辺で質問を打ち切らせていただきます。
 お忙しい中、どうもありがとうございました。
(説明者交代)
○神野委員長 引き続いて、生命保険協会の方々からヒアリングを頂戴したいと思います。
恐縮でございますが、15分程度で堤様から御説明をいただければと思います。よろしくお願いします。
○生命保険協会企業保険委員会委員 堤様 ただいま御紹介に預かりました生命保険協会の堤でございます。
 本日は、専門委員会での発言機会をいただき、まことにありがとうございます。
 それでは、御説明に入らせていただきます。
 テーマは「持続可能な企業年金の実現に向けて」でございます。
 1ページをごらんください。こちらが本日の内容となります。
 当協会では、これまでの専門委員会での議論において、厚生年金基金の廃止に関する議論が先行し、3つの論点の1つである企業年金の持続可能性を高めるための施策の推進に関する議論、中でも中小企業への企業年金の普及に関する議論が深まっていないのではないかと感じております。
 つきましては、本日は、中小企業向けの企業年金像について、当協会の考え方を御説明させていただければと思います。
 誤解のないように申し上げますと、今回の御説明は、基金の廃止を前提とするものではなく、中小企業における持続可能な企業年金の検討の一助として、適格年金移行での経験より得られた示唆を事例として御紹介、御説明するものでございます。委員の皆様、関係者の皆様には、御理解賜りたく、冒頭に申し述べさせていただきます。
 それでは、2ページをごらんください。
 まずは、適格年金の移行から得られる示唆についてでございます。
 ここでは、平成14年より取り組んだ適格年金の移行について、簡単に振り返ってみたいと思います。下段、左側の表をごらんください。
 適格年金の制度移行が開始された平成14年4月時点で、約7万3,000件の適格年金が存在し、そのうち生保幹事の受託契約件数は約9割の6万4,000件程度でございました。また、生保幹事契約の大半が100名未満の中小企業であり、適格年金の移行対応は、生保にとってまさに中小企業への対応であったといっても過言ではありません。生保は、この移行実務を通じて、多くの中小企業の年金制度に係る動向を見てまいりました。本日は、その経験を踏まえ、御説明をさせていただければと思っております。
 次に、資料上段の四角枠囲みをごらんください。
適格年金移行の振り返りとして、ポイントを3つ挙げております。
 移行先に企業年金を受け皿制度として選択した企業は、全体の約3割にとどまり、特に中小企業では、その大半が制度廃止か中退共への移行を選択する結果となっております。
 考えられる主な理由は、事業主側が主体となって対応しなければならない各地方厚生局への各種申請実務などに代表される複雑な制度運営手続、財政運営基準に代表される負担感の伴う難解な制度内容を挙げる声が多数あったことが挙げられます。
 3ページをごらんください。
 移行当時の生命保険会社の取り組みでございます。
 会員保険会社の例でございますが、いかにして多数の中小企業に他の企業年金制度に円滑に移行していただけるかが責任ある受託機関の立場からも重要であるとの認識のもと、その具体化に向けて2つの取り組みを実施いたしました。
 まず1点目ですが、定型化した簡易なパッケージプランを主として中小企業向けに開発、御提供いたしました。下段左側のボックス枠内にその仕組みを記載しております。
 簡単に申しますと、適格年金の解約返戻金を移行時の加入者持分として、以降、毎年定額の持ち分を付与していく、いわゆるキャッシュバランスプランの一種でございます。
 具体的な承認申請に際しては、厚労省の協力を得て規約のひな形を作成し、可変部分のみの審査としていただくことで規約申請に要する負担を軽減することができました。このパッケージプランの開発により、それまでDB制度の採用が少なかった中小企業にも御採用いただける余地を広げることができたと認識しております。
 2点目ですが、移行最終局面では、受託保証型DBを活用した閉鎖型適年の移行対応を実施いたしました。閉鎖型適年とは、適格年金の加入者部分をDCや中退共などの他制度に移行した後に残る年金受給者のみで構成される適格年金の呼称です。この閉鎖型適年は、年金受給者を有する適格年金契約の移行が進展するにつれ、その件数をふやしていくこととなり、移行最終年度には約3,000件となり、残された時間がない中、適格年金の新たな移行対象として加わることになりました。
 下段右側のボックス枠内をごらんください。
 受託保証型DBは、これら閉鎖型適年の移行を促進することを目的として導入された制度です。制度の特徴である「加入者が存在しないこと」に加え「積立金が給付現価相当額を下回らないこと」、つまり、予定利率での運用が保障される生保一般勘定で運用されており、原則として積立不足が生じない制度であることを前提として、行政当局に設立・運営手続を大幅に簡素化していただきました。
 その結果として、約3,000件の中小企業を中心とする閉鎖型適年を受託保証型DB制度へ実質約6カ月という短期間で移行完了できたものです。
 4ページをごらんください。
 このページでは、御参考までに人事院作成の民間企業退職給付調査の資料を掲載させていただきました。こちらの資料から100名未満の中小企業で退職給付制度を実施している割合は91.4%と高いものの、企業年金を実施している割合は39.1%と中堅・大企業に比べて低い水準にとどまっております。また、低い導入率にとどまっている中小企業の企業年金の約4割を厚生年金基金制度が担っているという事実があります。
 このことからも、代行制度のあり方の検討に関しては、一律の廃止ありきではなく、個々の基金の実情を踏まえた十分な議論と丁寧な説明が何より重要となります。
 5ページをごらんください。
 ここまでごらんいただきましたように、中小企業にとって確定給付企業年金制度を適格年金の受け皿とすることはハードルが高いものでした。その主な要因を移行折衝、移行実務を担った立場で整理してみますと、以下の4点となります。
 まず1点目ですが、パッケージ化された簡便でわかりやすい制度であれば、中小企業にも十分に受け入れられたという実績がございます。やはり中小企業にとっては、負担感の強い難解な制度設計をいかに理解容易なスキームとして再構築できるかが重要であると言えます。
 2点目は、積立不足により生じる追加負担の懸念から、確定給付企業年金の導入が見送られた経緯もございました。よって、この追加負担懸念も中小企業にとっては重たい課題になっていると言えます。
 3点目は、中小企業の場合、人的資源の制約から企業年金制度の検討に充てる人員の確保が困難であるという現実に直面しております。この事実は、企業年金の資産運用、投資に関する知識・経験の不足にもつながっていくこととなります。
 最後に、先ほども述べましたとおり、制度設立・制度運営手続の簡素化が中小企業のDB導入にとって有効であることが適格年金移行時の経験より実証されております。このことは、事業主側が主体となって実施する各種申請手続が、特に人手の伴わない中小企業にとっては大きな負担であったことを意味していると思われます。
 6ページをごらんください。
 ここまでの内容を踏まえ、中小企業での円滑な導入、運営を可能とする企業年金像というものについて、私どもの考えをまとめてみました。
 左側のボックスは、前のページで御説明した中小企業における主な課題を再掲したものになります。これらの課題を解消していくプロセスが中小企業に求められる企業年金像を描くことと考え、右側のボックスにその内容を4点記載しております。
 1点目は、わかりやすい制度設計。
 2点目は、積立不足が生じにくい制度。
 3点目は、過度の資産運用リスクを取らなくてよい制度。
 4点目は、簡素な制度運営手続です。
 今後、中小企業に企業年金をより一層普及させていくためには、これらの要件を満たす簡易な企業年金制度が必要であると考えております。
 7ページをごらんください。
 こちらより、求められる企業年金像の実現に向けた具体策について、適格年金移行時に取り組んだ対応策を踏まえ、御説明させていただければと思います。
 下段の表をごらんください。
 1点目の「分かり易い制度設計」に関しては、適格年金移行の際に活用したパッケージ化された簡易な制度設計と同様の対応を行います。こちらは現行法令の中で既に対応可能と考えております。
 2点目の「積立不足が生じにくい制度」、3点目の「過度の資産運用リスクを取らない制度設計」に対しては、厚労省試案にある運用実績に連動するキャッシュバランス制度と安定した資産運用を組み合わせることでその実現が可能と考えております。
 続く4点目の「簡素な制度運営・事務手続き」は、新たな要望として今回記載させていただきました。試案にあります運用実績に連動するキャッシュバランス制度についての安定した資産運用と組み合せることにより、積立不足が生じにくい仕組みを実現させることで、さきに実施経験済みである受託保証型DBの取扱いと同レベルでの事務簡素化の実現をお願いしたいと思います。
 これらの要望事項が実現された場合に可能となる中小企業向けの確定給付企業年金のイメージを8ページでまとめてみました。
 簡単に申し上げますと、適格年金の移行対応時に、主に中小企業向けとして開発、提供したパッケージプランをベースに、厚労省試案で示された運用実績に連動するキャッシュバランス制度と今回新規に要望させていただいた事務の簡素化を加味したものです。毎年勤続年数などに応じた定額の持ち分を付与し、再評価率で計算した利息を付利していきます。この際、イメージ図の土台部分に記載しておりますように、リスクを抑えた安定運用とすることで、利息がマイナスになるリスク、つまり、積立不足が発生するリスクを抑制いたします。加入期間中にこれらの金額を積み上げていき、退職時に累積された元利合計を年金原資として、退職以降、給付利率に応じて計算された年金額をお支払いいたします。
あわせて、簡素な制度運営、事務手続とすることで、制度運営に係る事業主の負荷を軽減することが可能となります。簡素な制度運営、各種申請等の事務手続につきましては、先ほど申し上げた閉鎖型適年から受託保証型DBへの移行対応時に既に経験しており、中小企業に対するその有効性についても実証済みであります。
 具体的な内容については、次のページにて御紹介させていただきます。
 9ページをごらんください。
 大きなポイントといたしましては、下段の表の太枠内となります。毎年定例で発生する厚生局宛ての各種申請、報告手続が大幅に簡素化されているということです。例えば②になりますが、毎年実施されます財政検証時に必要となる各種書類がごらんのように省略、簡略化されております。また、③になりますが、5年ごとの財政再計算報告につきましても、当該再計算基準日時点の財政検証書類を提出することでの代替が認められております。こちらの内容は、あくまでも簡素化を検討していく上での一例ではございますが、積立不足が生じにくいなど、制度運営上のリスクが低い確定給付企業年金について、手続の簡素化を図り、事業主の負荷を軽減することは十分に合理的であると考えております。
また、新たな視点として、例えば②の財政検証の時期を毎年から複数年に1回に見直すなどの簡素化も考えられ、これらの内容を踏まえ、簡素化に向けた検討、具体化について、ぜひよろしくお願いしたいと思います。
10ページをごらんください。
 こちらで新パッケージプランを実施した場合に考えられる事業主側、従業員側それぞれのメリットについて、適格年金移行時に顧客企業からいただいた声などを踏まえ、まとめさせていただきました。
 事業主側のメリットは、まず、シンプルな制度設計とすることにより、年金制度の理解が用意となり、従業員への説明も容易になるとのことでした。
 次に、追加負担が発生しにくく、資金繰りの見通しが立てやすくなるという利点が挙げられます。これは特に中小企業にとっては大きなメリットであると考えられます。
 事業主側のメリットの最後は、手続面での負担軽減が挙げられます。これは人的資源に制約がある中小企業にとっては大きなメリットであると御納得いただけるケースが多数ございました。
 次に、従業員側のメリットは、まず、シンプルな制度設計としていることから、自社年金制度に対する理解が容易になると思われます。このことは、労使が一体となった企業年金のガバナンスの実現にも寄与するものと言えます。
 また、年金制度が継続できることにより、外部積立てによる退職金原資の安定確保、一時金に加え、老後生活を補う年金での受け取りが可能となるなどのメリットも挙げられます。
 以上、ここまで適格年金移行から得られる示唆、そこから導かれる持続可能な企業年金像、それを実現するための方策について御説明いたしました。当協会では、中小企業に企業年金を普及していくためには、まず、中小企業の経営者自身が企業年金を導入しようと考えていただけるように、制度導入に向けた負担感、不安感の軽減を図ることが何より重要であると考えております。ぜひともその実現に向けた御検討をよろしくお願い申し上げます。
 11ページをごらんください。
 ここからは、中小企業に限らず、持続可能な企業年金のため、企業年金に関する税制改正や規制改革の実現に向けた対応をお願いさせていただきます。こちらに記載しておりますのは、生命保険協会の平成25年度税制改正要望でございます。個々の説明は割愛させていただきます。
 12ページをごらんください。
 次に、当協会の企業年金関連の規制改革要望でございます。
こちらも時間の関係上、個々の説明は割愛させていただきますが、さきの税制改正要望も含め、いずれの要望も企業年金の持続可能性を高め、普及を促進するために有効であると考えています。
 13ページをごらんください。
 最後になりますが、今後の専門委員会での議論につきまして3点述べさせていただき、当協会の御説明を結びたいと思います。
 まず1点目ですが、厚生年金基金は約700万人の御加入者・受給者を抱える制度であり、年金財政の健全な基金もございます。今後の議論においては、御加入者・受給者への影響を十分に配慮した議論をお願いいたします。
 2点目ですが、今回、基金及び基金関係者からヒアリングを実施していただきましたことは、とても有意義なことであると考えます。代行制度の存続を求める声や特例解散制度の見直しを求める声など、各基金の事情などにより、さまざまな声がございました。今後の議論においては、ヒアリングで寄せられた意見、要望を十分に踏まえた議論をお願いいたします。
 最後に3点目ですが、持続可能な企業年金の検討に当たりましては、中小企業の実態を把握し、中小企業が現実に実施可能な企業年金制度となるような議論をお願いいたします。本日の御提案がその一助となれば幸いでございます。
 当協会からの御説明は以上でございます。御清聴どうもありがとうございました。
○神野委員長 どうもありがとうございました。
 建設的な御提案を含む御意見を頂戴いたしましたが、委員の皆様方から御質問があればどうぞ。
 宮本委員、どうぞ。
○宮本委員 ありがとうございます。
 1つ質問させてください。
 「適格年金移行からの示唆」について、2ページに、移行の際に大きく3つの選択に分かれたとの記載があります。実は、私自身も当時、適格年金を実施していた多くの中小企業経営者とお会いして、廃止に伴って新しい制度はどうあるべきなのかということを御相談申し上げたり、あるいは退職金の外部保全措置にはどういう方法があるのかということをヒアリングしたりしました。
 中小企業経営者にしてみれば、先ほど御説明にありましたが、DC、DBは制度の運用とかが煩雑で、人材もいないし、そういうところにポストを回せないという事情がありました。また、年齢構成が高かったり、中途入社の方々が非常に多くて、特に30人未満とかで多くて、年金原資が積めなかったりという意見もありました。あるいは企業年金に移行しようにも、もともと、受託する金融機関が提供する商品と余りうまくマッチングしませんでした。したがって、多くのところで企業年金自体が廃止になってしまいました。さらに、中退共に移行しようともしましたが、中退共に既に入っているところは法律の規制があって入れませんでした。結果、廃止するより仕方なかったという意見がものすごく多く聞かれました。
 当時は、ここに提示されていますパッケージプランの話が余りありませんでした。廃止まで残り2年間ぐらいしかないというぎりぎりのところまで来ても、余りよい提案はありませんでした。むしろ、団体・法人向けの一時払い終身に移行したところが非常に多くて、結局、外部保全になったのかどうなのかよくわかりません。何となくいつもおつき合いしている生保から提案された商品に移行してしまったという実態が、当時、非常に多く見受けられたのです。
 新たなパッケージプランは非常によい商品であるとの御説明があったわけですが、そもそも当時、パッケージプランはどの程度活用されたのか、あるいはどのように中小企業経営者にアプローチされたのかお聞きしたいと思います。
○神野委員長 よろしいですか。
○生命保険協会企業保険委員会委員 堤様 まず、御質問に対しての数字の答えで申し上げますと、先ほど御紹介させていただきましたパッケージプランを御活用いただいた契約としましては、協会のデータですが、大手4社で約2,000契約の移行をこの仕組みをもって引き受けさせていただいているという実態がございます。
 今、コメントをいただいたとおりで、私どもも本当に中小企業様を日本中くまなく出向いて、直にお話をお聞きする中で、今、どういうふうな対応をするか、10年間ずっとやったわけです。やはり10年間というのはフルに使われてきたのではなくて、かなり後半に、後加重的に膨大な企業を御提案させていただくという役割を担ったかと思います。その中にやはり中退共というところも選択の中にある。ただ、お話しされたとおり、既設の中退共があるときは、そこに適格年金の移行はできないという制約があって、逆にそこの制約というのを規制緩和の中で何とか実現できないかというところの取り組みなどの期待感もあったりして、より待ちの姿勢が強まっていた。そういう中で、実は業界の中の会員様の取り組みの中で、きょう御説明したものが生み出されたということです。要は、最初からこれがスタートの段階では準備し切れていなかった。それを具体的にお客様と直に対話をする中で、こういうスキームというのが、先ほどのようなプロセスを経て出てきたというのが実態です。
 現状としては、2,000契約ではあっても、それなりの企業数に関して、こういう形の受託ができたということになります。これは今回、御議論いただく中でヒントになるのではないかということのスタンスで御案内させていただいたということでございます。
 なので、今、適年のときにやったときには、まだまだ改良の余地、もう一段、中小企業者の意見を反映した場合に加えられる余地というのを残した中で取り組んだというところも含めて、今回こういうところの議論の中で、もっと使い回しのいいものなどを議論していただければと思っております。
○神野委員長 ほかにいかがですか。
 花井委員、どうぞ。
○花井委員 1点だけ質問させてください。
 最後の13ページの一番上のところです。今ほど、新パッケージプランということで御説明いただきました。その上で、唐突感があるのですが、「加入者・受給者への影響も考慮したご議論をお願いしたい」とあります。当然、そのことを考慮するがゆえにこのような議論をしていると思っていますが、一方で、厚生年金基金に入っていない加入者も受給者もいるわけです。そこで、現に今代行割れが起こっているわけですが、そのことについてどのように考えられているのかお聞きできればと思います。
○神野委員長 よろしいですか。
○生命保険協会企業保険委員会委員 堤様 当然、この専門委員会の中で各回議論させていただいているものについても共有させていただいておりますとおり、やはり厚年本体への影響は最小限にとどめる必要があるというのは基本原則だと思うのです。そういう意味では、基金に入っていらっしゃらない事業者の視点から見た場合に対する配慮ということだと思います。
 当然、私どもはそこに言える立場ではございませんけれども、やはり廃止というか、十分な議論というところを含めて、丁寧な説明ですとか、あるいは全体の納得感が得られるような対応というものを検討していただきたいということが私どもの考え方になります。
○神野委員長 ありがとうございました。
 ほかにいかがですか。
 柿木委員、どうぞ。
○柿木委員 どうもありがとうございました。
 3点ほど意見と質問を言わせていただきたいと思います。
 まず、適年の経緯を踏まえますと、企業年金を存続するために、積立不足が発生しにくいとか、運営も簡素化で、中小企業が実施可能なDBを実現するということについて、我々としても是非賛成をしたいと思います。
 もう一つ、5ページに出ているのですけれども、制度設立・制度運営手続の簡素化を図るということは非常に重要ですが、中小企業で一番大きなハードルになっているのは一体何だろうかということです。受託保証型DBで認められている制度運営手段の簡素化を例に挙げられていますが、もし中小企業にとって制度運営についてこれは非常にハードルが高いという具体的なものがあったら教えていただきたいというのが2点目でございます。
 最後の11ページ、12ページの企業年金の普及を図るという観点からの要望がありますけれども、これは私どもの経団連の中の各社からの要望とも一致しますので、ぜひとも前向きに実現を考えていただきたいと思っております。
 以上です。
○神野委員長 どうもありがとうございました。
 御質問としては、ハードルの問題ですかね。お答えいただけますでしょうか。
○生命保険協会企業保険委員会委員 堤様 やはり先ほどのお話にもありましたけれども、中小企業の事業主の皆様としては、時間がない。かつ人手が全然そういったところに回す余地を持っていないというところの中で、それ以前は、きょうのお話で言うと、適格年金という制度の中で自社の仕組みを維持されていたわけで、確定給付企業年金という話になりますと、どうしてもそういったところの制度運営上の制約というものを企業が負わないといけなくなってくるというところに対する負担感というのは、全てに対してアレルギーとは言いませんけれども、大きなハードルであるという表明がありました。
 具体的な実務のところにつきましては、ここにおります有岡のほうから御説明させていただきたいと思います。
○生命保険協会企業保険第一部会部会長 有岡様 そうしましたら、本日の資料として御提示させていただいた9ページをごらんください。
 こちらは受託保証型DBとして、今回、簡素化で認められてございます例を挙げさせていただきました。先ほどの説明と重なる部分がございますけれども、例えば制度発足時、こちらの資料として記載が4点ございますが、実際は大体10種類前後ございまして、事業主様が作成するもの、あるいは受託機関がサポートさせていただくものがございますが、例えばこのような例でありましたら、右側の記載のところの3点が、加入者が存在しないことから省略ができましたということでございます。また、上の1つについては、大体可能なものもございましたというところでございます。
 我々としては、極力1つでもこういったものを減らしていくということが事業主様の負荷の軽減につながるものと考えてございます。
 下段のスタートして以降の毎年のところも同様の考えでございまして、こちらのほうも積立不足が生じない仕組みということから、省略化あるいは簡素化できたものでございますけれども、このような仕組みとか特徴に応じた簡素化というのを今後こういった何かの仕組みをつくっていく際には、細かいつぶつぶの話でございますが、こういったものを組み込んでいく、あるいは取り入れていくことが大切なことかと考えてございます。
 また、政府の規制改革要望を12ページで割愛させていただきましたけれども、③のところでは、確定給付企業年金の簡素化に向けた御提案をさせていただいておりまして、この中では例えば規約の変更とか申請ですね。この際に厚労省のほうに提出いたしますが、例えば認可手続きが必要なケースとか、届出で足りるようなケース、あるいは届出も不要なケースと、手続については大体こういう3類型がございます。こういったところについても、より事業主様の負担が軽減されるように、例えば届出で足りるようなものを届出不要にしていくとか、こういったものを拡大させていくと、こういったことが大切だと思っております。
 こういったことの積上げが簡素化につながるものと受けとめてございます。
○神野委員長 では、よろしいですかね。
 それでは、時間がちょっと押してまいりましたので、以上をもちまして、生命保険協会の皆様方からのヒアリングを打ち切らせていただきたいと思います。
 どうもありがとうございました。
(説明者交代)
○神野委員長 それでは、引き続いて、日本年金数理人会から御発表をいただければと思います。
 では、鈴木様、よろしくお願いします。
○日本年金数理人会理事長 鈴木様 御紹介いただきました日本年金数理人会の鈴木と申します。よろしくお願いします。
 本日は、数理人会として意見を述べる機会を頂戴いたしまして、ありがとうございます。感謝申し上げます。
 本日は、数理人会としての意見ということでございますので、代行部分の数理上の仕組みに範囲を限定するということで、意見を申し述べさせていただきたいと思います。そういうつもりでお聞きいただきたいと思います。
 まず、きょうの私どもの意見の結論でございますけれども、代行部分の数理上の仕組みにつきましては、当然、代行割れを起こさずに、健全に運営をされているという前提のもとでございますが、現在の数理上の仕組みは、後で述べます若干の改善点が改善されれば、将来にわたって基金側、厚年本体側双方について、基本的に不都合な点はないというのが当会の認識でございます。
 先ほど、若干の改善点と申しましたのは、本日の資料4-2に書いてございます、11月9日に数理人会が出しました意見でございますけれども、この中身は、この専門委員会で何度も出ている話でございまして、期ずれの修正があるとか、0.875の問題であるとか、そういう点でございます。
 当会といたしましては、そういう認識のもとで、今後さらに慎重な御議論をお願いしたいというのが結論でございます。
 それでは、資料4-1の御説明をさせていただきます。
 まず、年金数理人とは何ぞやという話があるかと思いますので、少し説明させていただきます。
 年金数理人というのは、①にございますように1988年にそういう制度が法律改正によってできました。
②決算書や掛金計算等、年金数理に関する書類について、適正な年金数理に基づいて作成されていることを確認し、署名捺印する。また年金制度の財政状態を健全に維持するために、制度の関係者に対して、意見を所見として示すとなっているわけです。
 これを素直に読むと、適正な年金数理に基づいて作成されているのであれば、何でこんな問題が起こっているのだということを思うかと思うのですけれども、この適正な年金数理に基づいて作成されているという意味ですが、これは私どもとしましては、国の認めている基準の範囲内であれば適正だと判断せざるを得ないということであります。
 したがいまして、例えば予定利率をもう少し引き下げたほうがいいと思っていても、現在、その企業が採用している予定利率が認められている範囲内であれば、それは適正だと署名捺印せざるを得ない。引き下げたほうがいいと思うところは、所見に書くということであります。しかし、所見に書いても強制力はございません。そういう意味では、限界のあるところがございます。
 ③の指定年金数理人と申しますのは、厚生年金基金制度だけでございまして、財政のチェックあるいは診断というものは、特定の数理人が継続的にずっと見ていくほうがよろしかろうということでできた制度でありまして、平成9年度よりそういう制度が導入されております。
 ④は省略いたします。
 (2)は「社団法人日本年金数理人会とは」ということで、当会の目的を書いてございます。これも割愛をいたします。
 以下は、先ほどの資料4-2のような意見を当会が取りまとめるに至りました背景について、御説明をいたしたいと思っております。
 まず、厚生年金基金の財政の運営につきましては、これもこの専門委員会で何度も議論されていると認識しておりますが、平成11年10月を機に、大きく考え方が変わっているという認識でございます。それが法制化されたのが平成16年で、適用が平成17年4月でございますけれども、実質的には平成11年10月に大きく変わっているという認識でございます。
 どう変わっているかということでございますが、全体の流れは本体との財政中立化という流れの中で次々に施策が打たれてきているということでございますが、決定的には平成11年10月に大きく変わっておりまして、それまでは、本体とは財政中立でない。つまり、代行メリットがあるとよく言いますが、代行メリットがあるということは、財政中立でないということでありますから、それまでは財政中立ではない、かつ、事前積立だったということでございます。
 平成11年10月からは、財政中立で事前積立がなくなっているということでございます。この事前積立でなくなっているというのは、平成17年4月以降、平成16年の法改正でいわゆる、これは本体のほうが100年有限均衡を法制化したときでありまして、あわせて厚生年金基金につきましても、過去分の代行給付現価相当額の半分までしか給付現価負担金というのを入れないということになったわけですから、ここで大きく変わっているということでございます。そのこと自体は、私どもとしては是とする立場でございます。
 そういう流れを受けまして、厚生年金基金制度は、現在は本体との財政中立化を基本として運営されておりますので、我々としましては、この財政中立化をいかに完全に果たすかという観点で、期ずれの問題であるとか、0.875の問題を指摘したということでございます。
 なお、この場でも給付現価負担金の話が少し出ているのですけれども、給付現価は2ページの「3.当会の意見」の上のパラグラフでございます。
 給付現価負担金は、現在の免除保険料では賄い切れない死亡率の改善や、厚年本体での長期的な予定利率と短期的な運用実績の差を埋めるものとしてあらかじめ制度で盛り込まれているものであり、最低責任準備金の計算上、免除保険料と同様に加算されている。すなわち、給付現価負担金という仕組みを通じて、財政中立性が確保されているのであって、これが生じたからといって、厚年本体に余分な負担を強いているわけではないということは、いま一度、御確認をさせていただきたいと思います。
 この負担ということが、私からしますと非常に誤解を招きやすいと思うのですけれども、そこにございますように、この金額は最低責任準備金の計算の中に繰り入れられておるわけでして、この説明としては正しいのですが、これをもう少しわかりやすく実態的に説明をいたしますと、免除保険料もこの給付現価負担金も性格的には全く同じものでありまして、これは厚生年金本体から見れば、基金に対する貸付金であります。基金から見れば、本体からの借入金であります。最低責任準備金は、今で言うと、本体から見れば基金への貸付金の元利合計ということになります。したがいまして、この交付が行われたからといって、基金に何かお金をあげているということではなくて、貸付金がふえているだけだということであります。
 したがいまして、最低積立準備金が確保されている限り、つまり代行割れを起こしていない限り、基金に対して余分な負担を強いるわけではないということでございます。
 こういう仕組みのもとで、現在運営をされておるということでございますが、もう一つ、先ほど少し触れましたが、同時に事前積立でなくなっているというのも、実は余り言われていないといいますか、我々からすれば、言わずもがなでございますけれども、どうも一般的には周知されていない可能性もあるかと思って、あえて申し上げているわけでございますが、今は完全に事前積立を前提にしておりません。
 一般的に企業年金は事前積立でございますけれども、この基金の代行部分に関しては、事前積立はないということであります。したがって、議論として厚年本体が徐々に賦課方式に移行していくという中で、基金のほうの代行部分が事前積立のままでいるのはおかしいのではないかというのは、それはそうではなくて、基金のほうも代行部分に関しては、既に事前積立でなくなっている。ですから、議論として、これは数理マターよりも、政策マターだと思いますが、基金の代行部分の積立てのレベルを本体に合わせていくべきなのだという議論が政策的にあるのであれば、それはそういうことが可能な仕組みになっています。つまり、給付現価負担金と免除保険料を下げていけば、基金のほうの代行部分の最低積立準備金、つまり、本体から見れば貸付金の元利合計が下がっていくわけでありますから、そういうこともやろうと思えば、事実として可能な仕組みに既になっているということでございます。
 したがいまして、私どもの結論は、繰り返しになりますけれども、もう一度大前提を申しますが、代行割れを起こさずに、健全に財政が運営されているという前提のもとであれば、将来にわたりまして財政中立性が確保されますし、厚年本体にも迷惑をかけるという数理的な仕組みにはなっておりませんので、そういうことをぜひ確認させていただいて、今後、慎重な御議論をいただきたいということが結論でございます。
 なお、資料4-2を若干説明申し上げますと、そういうことで、私どもはこの財政中立性を確保するということが、今回の問題で数理的には解決すべき一番大事な問題であるという認識でございましたので、そこにつきまして、後にありますように、期ずれの話とか、0.875の話を書いております。
 その中で1点だけ出ていない話として、2ページの「2.最低責任準備金の計算において対応すべき事項」の(2)です。これはコロガシ利率の見直しということで、何を言っているかというと、厚年本体のほうの利率は、基本的には時価ベースなのですが、満期保有の債券、具体的に財投債でございますが、これについては簿価ベースで利回りを計算されているという事実がございます。
 一方で、基金のほうも満期保有の債券で簿価ベースでやることは可能なのですが、実態としましては、国のほうは債券について、基本的には全部時価ベースでやっている。そういう意味で、少しそこはアンマッチですねということを申し上げているということであります。これはあくまで理屈として申し上げておりまして、このことが定量的にどれぐらい意味があるかという分析までいたしておりませんので、ここは理屈の世界で今は指摘しているということで御理解いただきたいと思います。
 以上でございます。
○神野委員長 どうもありがとうございました。
 それでは、ただいま御発表いただきました数理人会の内容につきまして、御質問はいかがでございましょうか。特にございませんか。
 森戸委員、どうぞ。
○森戸委員 1点だけ、本当に素人質問で申しわけないのですけれども、厚年基金の代行部分については、事前積立でないということの、それは法的に言うとどういう仕組みでどうなっているのかということを教えてほしいのです。
 要するに、事前積立でないということは、何でそう言えるのかということをもうちょっと聞きたいです。
○日本年金数理人会理事長 鈴木様 実態面で一番明らかなところは、この17年4月以降、給付現価負担金という制度ができました。これは基金側が代行給付を行うためのお金として、代行部分の資産を持っているわけですけれども、この水準が下がってきたときに、過去分の給付現価相当額の半分までというか、差額の5分の1ずつとかいう細かいルールがあるのですが、上限は半分までを給付現価負担金として交付するとなっているのです。
 事前積立というのは、全額なければいけないわけです。ですから、それは全額ではなくて、半分までしか上限を交付しないとなっているわけですから、これは制度として事前積立はやめているということです。
○森戸委員 わかりました。
 そういうことであれば、大丈夫です。
○神野委員長 あとはよろしいですか。
 山口委員、どうぞ。
○山口委員 積立の水準が過去分の給付現価の半分までだというご説明ですけれど、年金数理の専門家の方として、それでは、それはどのような財政方式があると説明されるのですか。
 今のご説明だと、過去分の給付現価、すなわち従前の最低責任準備金ですが、この半分程度の積立レベルで制度運営していくということですよね。年金数理の理論だと、トローブリッジのモデルがありますけれども、それによるとさまざまな積立水準がある、事前積立方式の場合であっても、いろいろな積立レベルが無数にあるわけです。ですから、過去分の給付現価の半分だとしても、それは事前積立方式のカテゴリーに入るのではないですか。
○日本年金数理人会理事長 鈴木様 それは事前積立に入るかどうかというのは、私自身はわかりません。
 ただ、先ほど申しましたとおり、企業年金は基本的に事前積立でないといかぬという理由は、企業が破綻をして、年金制度がいつ終了するかわからない。そのときに、仮に企業年金が賦課方式でありましたら、その企業が倒産して企業年金が終了したときの加入者は一銭ももらえないということになるわけです。そういうことではいかぬということで、基本的には、企業年金については事前積立で、従業員の現役時代に、それに見合う原資を積み立てるということになっているということだと理解しております。
 一方で、代行部分につきましては、公的年金の代行でありますから、今はそうなっていませんけれども、基金の部分の代行部分については、仮に賦課方式になったとしても、それは給付原価負担金という仕組みで本体のほうから給付の財源が来るわけでありますから、必ずしも積立方式である必要はないということだと思います。
 その積立レベルを賦課方式なのか、完全な積立方式なのか、どのレベルに持ってくるかというのは、政策マターであると理解します。山口先生がおっしゃるように、どの水準であろうとも運営は可能であろうということです。
○神野委員長 あとはいかがでしょうか。
 駒村委員、どうぞ。
○駒村委員 きょうは代行に係る部分についてのみのお話だったわけですけれども、資料4-1の裏の4.については、御意見が表明されているということで、このこと自体は極めておっしゃりたいことはよくわかり、なるほどと思います。
 ただ、こういう議論が発生した原因というのが、非常に代行割れ、不健全な状況のまま終わりそうだという基金がふえ始めていて、これに対しての何らかの措置をしなければいけなくなる。現行の特例解散あるいは新特例と、いろいろなオプションが出てきた。そういった中で、例えば新特例の一番緩いものをそのまま残してしまうと、場合によってはモラルハザードに引き金になってしまうかもしれないので、それは制度自体の存否も考えなければいけないという話の中で、制度廃止という議論も出てきていると思うのです。
 そういう議論の中で、何か制度廃止のところだけ取り除いてコメントを出されているのですけれども、協会さんとしては、この提案されている見直し案の中の例えば特例の見直しとか、新特例も含めて何か御意見があるのか。新特例は甘過ぎるので、そういうのはやらない。原則は今のままのことで、一切救済はしないということは想定した上での制度廃止反対なのか。この辺を整理していただきたいと思います。
○日本年金数理人会理事長 鈴木様 冒頭に申しましたことの繰り返しになるのですけれども、まず、代行割れはあってはならないというのは、当然我々の考えです。代行割れをせずに、健全に運営している基金については、将来数理的に大丈夫ですよとだけ申し上げているわけでありまして、では、代行割れしている基金についてどうなのだというと、それは数理の話ではなくて、そこの政策論議だと思うのです。
 例えば未来永劫、代行割れをしない、確率をゼロにできるのかといいますと、これは数理人の立場でできないとしかお答えようがないわけです。ですから、それはどの程度で線を引いていただくかというのは、まさしく政策マターであって、御議論をいただきたいということでございます。
○神野委員長 それでは、時間が押してまいりましたので、数理人会からのヒアリングをこれにて終わりたいと思います。
 どうもありがとうございました。
(説明者交代)
○神野委員長 それでは、大変お待たせいたしました。
 最後に、運営管理機関連絡協議会からヒアリングを賜りたいと思います。
 連絡協議会の高橋様から、よろしくお願いいたします。
○運営管理機関連絡協議会会長 高橋様 本日は、運営管理機関連絡協議会に発言に機会をいただきまして、ありがとうございます。
 私どもは、確定拠出年金制度の実務面からの意見を取りまとめておりますので、御説明をさせていただきたいと思います。お手元の資料5でございます。
 2ページをごらんください。
 我々運営管理機関連絡協議会の設立の背景、目的について、御説明させていただきます。
 運営管理機関は、証券会社、生損保会社、銀行、信託銀行等のさまざまな業態で業務を実施しておりますので、運営管理機関の横断的な組織が必要と思いまして、2006年に設立しました任意団体でございます。
 主な活動については、確定拠出年金制度の調査・研究並び統計資料の作成などを行っております。
 運用体制については、会副会社以下、このようになっております。
 3ページは、運営管理機関の会員となっている名簿でございますので、後ほどごらんください。
 4ページは、確定拠出年金制度の現状でございます。
 上の表をごらんいただきますと、右側に2012年3月末の数字が載っております。加入者の数は企業型で422万8,000人、資産額は6兆という形になっております。
 下のグラフにつきましては、左側が事業所数の伸び、右側が資産額の伸びを示しております。
 5ページは、年金制度におきます確定拠出年金制度の位置づけでございます。
 右上のほうに確定拠出年金(個人型)が13万人ございます。これが2012年11月現在の速報ベースで15万人になっております。
 真ん中上のほうに、企業年金制度の1つとして、確定拠出年金(企業型)がございまして、423万人でございます。これが11月現在で440万人の加入者となっております。
 6ページは、確定拠出年金制度の現状ということで、運用商品の選択状況でございます。
 右のパイチャートをごらんいただきたいのですが、資産額は先ほど申しましたように6兆円でございます。商品の内訳は、預貯金が41.1%、保険が22.1%ということで、元本確保型の商品で6割強というのが大きな特徴でございます。
 7ページは、先日の試案「集団運用型DC(仮称)」に関する意見でございます。
 私どもは、試案では投資教育は行わなくてもよいこととするという表現があったのですが、(1)にありますように、確定拠出年金においては投資教育は不可欠だと考えております。現在のDCと同様に、加入者が自己責任において運用商品の選択を行う前提であれば、投資教育は不可欠と考えておりますし、2011年に成立しました年金確保支援法による継続的投資教育の義務化の方向性とも異なる考え方だと思います。
 結論としては、投資教育の実施が確定拠出年金の定着・発展には欠かせないということと、加入者保護の観点からも重要と考えております。
 (2)資産運用委員会についてでございます。
 こちらの試案によりますと、運用商品推薦の法的位置づけ、責任が不明確であると考えられます。また「資産運用委員会」を担う人材を確保することが困難な企業というのもありますし、外部コンサルを雇う場合も、さらに事業主の費用負担を増加させるという懸念がありますので、少し困難ではないかと考えております。
 話は少し変わるのですが、(3)事業主のDCに対する懸念ということで、よく確定拠出年金の普及がいま一つという意見がありますが、特に中小企業において確定拠出年金の導入が進まない理由は、投資教育の負担というよりも、皆さん御存じのように、年金制度というのは退職一時金制度からの移行が多いということがありまして、定年以外の退職時もお金を受け取れるという概念が非常に強うございます。そのため、確定拠出年金の大きな特徴であります60歳まで受け取れない、老後の資金ということの認識の変更がなかなか進まないということが言えるかと思います。そのために、後ほど御説明させていただきますが、脱退一時金の支給要件の緩和、つまり60歳以前でお金を受け取れる可能性というものについての要望が強いということでございます。
 8ページをごらんください。
 私どもは、確定拠出年金の持続可能性を高めるための施策ということで、(1)事業主にとっての負担の軽減を考えてみました。
 ①としては、制度上の柔軟性を高める施策でございます。これも従来からお話ししていることですし、先ほども少しお話ししたのですが、脱退一時金の支給要件の緩和でございます。これは課税によって脱退一時金支給の可能性の道が開かないかということと、限定条件を列挙した形で要件緩和ができないかということで、例えば限定条件の例としては、無住宅者の住宅購入の場合、あるいは病気、けが等の費用を出すために脱退一時金を支給するという場合など、限定的な理由によっては支給してもいいのではないかということでございます。
 bは、これも従来からお話ししています拠出限度額の撤廃(もしくは引上げ)ということで、やはり限度額があるということで、全ての制度を確定拠出年金に持ってこない、つまり、100%確定拠出年金にできないという企業がございますので、特に中小企業にとっては、複数の年金制度を持つことが負担になるということが言えますので、撤廃もしくは引き上げをお願いしたいということでございます。
 cは、マッチング拠出における従業員拠出額の条件の撤廃でございます。現在、従業員の拠出と企業の拠出を合わせて限度額の範囲内ということと、こちらに書いてありますように、従業員拠出額は事業主拠出額を超えてはならないという条件がありますが、最後に申し上げました事業主拠出額を超えても従業員が拠出できるようにできないか。これはやはり企業年金ですから、事業主の掛金というのがベースになるという認識はありますが、やはり老後の生活費、あるいは会社ごとに拠出額というのは異なりますので、従業員の自助努力で老後のお金を積み立てるというチャンスをぜひ開いていただけたらと思っております。
 dは、加入者等通算期間の要件緩和(もしくは撤廃)でございます。御存じのように、確定拠出年金は10年加入していないと60歳から受け取れないという制約がございます。これを撤廃して、全ての加入者が60歳から受給開始可能とするという制度に緩和していただけないかということでございます。
 eは、代替措置無しの加入待期期間の容認ということで、先ほど申しましたように、退職一時金からの移行が多いということもありまして、勤続年数の短い人たちは退職金の対象外という制度がかなり多く見られます。そういった方々を入れるのではなくて、従来の退職金規定に基づいて、例えば勤続3年以上のものから加入できる、あるいは勤続2年以上の者からというように、退職金規定に基づいた形で代替措置無しの形で確定拠出年金に加入できるように緩和していただきたいということでございます。
 fは、個人型確定拠出年金への加入要件の緩和ということでございます。他の企業年金制度がある場合でも個人型に加入できるようにするということで、右のほうに図がございます。
 「f.個人型の加入要件撤廃」ということで、この白抜きのところの部分だけ個人型として加入できる機会があるわけなのですが、これを広げていただいて、確定拠出年金で自動移管の問題等がございますので、このような形になれば、自動移管の問題も少しずつ片づいていくのではないかと考えております。
 gは、掛金拠出方法の柔軟な対応でございます。確定拠出年金の場合は、掛金がその月の掛金を翌月の月末まで拠出しなければいけないという条件がございまして、毎月払いしか認められておりません。これにつきましては、やはり中堅・中小企業ですと、拠出事務というところがやや緩いところがございますので、年払いあるいは年2回の掛金の拠出といったような柔軟な対応をしていただくことが確定拠出年金の拡大につながるのではないかと考えております。
 ただし、この件につきましては、記録関連業務、レコードキーパーのシステム対応が必要である点は御留意が必要だと思っております。
 9ページは、事務手続を簡素化する施策ということで、先ほど生保協の方からもお話がありましたが、規約申請時の書類の軽減でございます。具体的には、左側に書いておりまして、さまざまな規約申請の際には書類の準備が必要なのですが、それを一部不要ということで、事業主の方の負担を軽減するという方策でございます。
 もう一つのbでございますが、事業主の掛金払込等の事務の外部委託ということでございます。特に従来、厚生年金基金等で事務の代行ですとか、あるいは加入者のデータの管理とかをしていただいていた企業というのは、自前でこういったことをすぐやれといってもなかなかできないケースがあるのではないかということで、外部委託する業者があれば、その業者を使って活用しながら、事業主の軽減を図っていくという考えでございます。
 10ページからは、加入者の商品選択に関する意思決定のサポートというテーマで考えてまいりました。
 ①は、投資教育の工夫でございます。繰り返しになりますが、私どもは投資教育が不可欠だと考えておりまして、ただし、何らかの工夫によってもう少しわかりやすくするということができるのではないかと思っておりまして、aですが、明示する項目の基準を設けて、投資教育の充実を図るということでございます。
こちらに書かれています2つの項目については、局長通知でこのような情報提供をしなさいということになっているわけなのですが、その仕方を専門委員の先生方の御意見も聞きながら、具体的な表示の仕方、あるいは説明の仕方を固めまして、事業主の教育負担を減らすという方法でございます。
 ①のbでございますが、関係省庁、業界関係者で協働しまして、投資教育に活用する汎用型の小冊子をつくって、確定拠出年金を導入する事業主に配布するといった手当も有効ではないかと考えております。
 ②商品選択の負担を減らすことについてでございますが、これもaでありますように、運用商品除外の要件を緩和して、商品本数を抑制することにより選択しやすくなるということでございます。当然、確定拠出年金が導入されて10年たちまして、商品もいろいろ追加するというプランが多くなっていますが、当然、商品の数が多くなれば選びづらくなるというのは言えると思いますので、商品を除外するということが、現状では、その商品に投資している方の加入者並びに運用指図者、これは60歳を超えた年金受給者も含めているわけなのですが、その方々の100%の同意をとらなければいけないという非常にハードルが高い制約がございますので、そのハードルを下げていただきたいということでございます。
 b、cについては、次のページで御説明させていただきますので、11ページをごらんください。
 11ページは、加入者等の運用負担の軽減のための制度設計でございます。
 本日御出席の方はよく御存じだと思いますが、DBというのは、予定利率を設定して、拠出金の設計を行う。予定利率が満たない場合は、事業主が追加負担をするという制度でございます。この確定拠出年金制度は、労使合意の上、想定利回りを設定して拠出金の設計を行います。そして、運用実績により将来の支給額というのが変化するということでございます。
 具体的には、左側の図をごらんいただきたいのですが、掛金を積み上げていって、運用収益が乗っかって、これを受給できるということになっていまして、この左側の図は、加入者の運用負担が少ない図でございます。つまり、想定利回りが低い制度でございます。
 一方、右側は、加入者の運用負担が大きい。つまり、想定利回りが高いということです。図をごらんいただきますと、掛金の類型に比べて運用収益の割合が非常に高くなっています。つまり、これは加入者の運用負担が大きいということになります。
 当然、右下にまとめていますように、想定利回りを高くすれば、加入者の運用負担は大きくなりますが、事業主側の拠出金の負担は小さくなる。一方、想定利回りを低くして、加入者の運用負担を小さくすると、事業主の方々の拠出金の負担が大きくなるということで、軽々にこの議論はできないのですが、ただ、従業員の方々の運用負担を減らすということであれば、この制度設計のところでも工夫ができるという考えでございます。
 左側のグラフをごらんいただきたいのですが、DCの導入時期と想定利回りの推移を表示しております。DCが導入された2001年度は2.39という高い水準でございますが、直近では1%台になっているということで、その時点時点での管理の環境とか、あるいは相場見通しによってこのように変わってくるわけなのですが、やはり想定利回りというのは非常に重要なファクターになるということでございます。
 12ページは、商品を選びやすくする「商品推薦」認定制度の導入でございます。
 なかなか投資教育をしても商品を選べないという方が存在するのは、私どもはよく認識しております。この「商品推薦」認定制度のコンセプトでございますが、確定拠出年金は自己責任で商品を選ぶことが求められる制度でございます。この商品の選択の意思決定をサポートするといった意味で、商品に推薦を認定するということでございます。その商品については、分散投資効果が十分にある運用商品ということを考えております。
 (2)に、その前提ということを書かせていただいております。投資教育の実施が不要であることは不変であります。
 ②「元本割れ」などの損失が発生した場合においても、一定の基準に従っている限り、商品の選定・提示を実施した運営管理機関並びに事業主の免責条項となる「セーフハーバー・ルール」の導入検討が必要だと考えております。
 また、「商品推薦」認定の基準、これは設定時あるいはモニタリング時もそうなのですが、関係省庁内に「商品推薦認定委員会」というものを設置して検討しなければいけないと考えております。
 ④商品によっては、商品推薦認定が「元本割れしない」あるいは「損失補填あり」といった誤認をされないように周知・徹底が非常に重要だと思っております。また、運用成績が振るわなかった場合、商品推薦認定が継続されるかどうかということについても議論が必要なテーマだと考えております。
 13ページからは、少し細かいところで、厚生年金基金からの移行に関してでございます。
 13ページは、厚生年金基金脱退時の確定拠出年金制度への移換期限に関する緩和でございます。
 左側に現状が書いておりまして、厚生年金基金の脱退後に確定拠出年金の加入資格を取得した場合は、厚生年金基金を1年以内に脱退して、3カ月以内の確定拠出年金の移換であれば、現状可能なのですが、下図のように、先に確定拠出年金に入っていて、その後、厚年基金を脱退したときは、3カ月以上になっていれば移換できないといったことがありますので、厚生年金基金の資格喪失1年以内であれば、脱退一時金をDCに移換できるというように緩和していただけないかというのが13ページの趣旨でございます。
 14ページは、厚生年金基金解散時の確定拠出年金制度への移換時の一括拠出に関する要件緩和でございます。
 現状は、図にありますように(1)DC移換による解散については、最低積立基準額まで一括拠出が必要なっております。一方、通常解散の場合は、最低責任基準金以上の規約で定めた水準までの一括拠出でよいということになっておりまして、この確保すべき金額が違うといったところがありますので、DC移換による解散に当たっても、通常解散と同じ基準でお認めいただけないかというのが14ページの趣旨でございます。
 以上、やや細かいところも御説明させていただきましたが、確定拠出年金制度の実務面からの意見を御説明させていただきました。
 ありがとうございました。
○神野委員長 どうもありがとうございました。
 それでは、ただいまの協議会からの御発表について、御質問があれば頂戴したいと思います。
 柿木委員、どうぞ。
○柿木委員 どうもありがとうございました。
 特に8ページにある確定拠出年金の持続可能性を高めるための施策で、いろいろ書かれていますけれども、私どもでDCを採用している各企業からは、特に脱退一時金の支給要件の緩和、拠出限度額の撤廃もしくは引き上げについて、非常に多くの要望が来ておりまして、経団連としてもかねて要望しておりますので、ぜひとも実現していただきたいと思っております。
 もう一点、質問なのですが、12ページのところで、商品を選びやすくする「商品推薦」認定制度の導入に関して、元本割れなどの損失が発生した場合の免責条項の導入というものをうたっているわけです。一定の基準に従っている限りというのは、何か具体的な基準についてのお考えがあるのでしょうか。あればお聞きしたいと思います。
○運営管理機関連絡協議会会長 高橋様 一定の基準についてはいろいろあると思いますが、例えば説明の仕方でこういう説明をしている場合は免責されるとか、あるいは何かこういったシミュレーションを提供していれば免責されるといった、これから具体的な内容は詰めなければいけないと思いますが、そういった事前に何かをしておけばという条件をつけて免責条項としていただければと考えております。
○神野委員長 あといかがでございましょうか。
 森戸委員、どうぞ。
○森戸委員 幾つか細かいことがあるのですけれども、まず11ページのDBとDCの比較をしていただいたものはよくわかるのですが、これは質問ですが、DCの想定利回りの話がありましたが、現行法上、DCは絶対想定利回りを設定しなければいけないのかどうかというのが1点確認です。
 あとは12ページの話ですが、商品推薦制度云々ですね。「商品推薦」認定制度は、関係省庁が認定、つまり、厚労省とか金融庁とかが幾つかのファンド、運用商品を推薦するというイメージなのかと思うのですが、イメージとして分散投資効果が十分にある運用商品とされるものはいろいろあるのかと思うのですけれども、国が3つぐらいに絞るとか、そういうイメージなのか。でも、選びやすくするのだから、分散投資効果のあるファンドは100ですと言われても選べないから、選びやすいというと3つぐらいかと思うのですが、そういうのを国の責任でやれという趣旨なのかということの確認です。
 それと、それに関係するのですが、今のセーフハーバーの話にもかかわると思うのですけれども、選びやすくということであれば、いわゆるデフォルトのファンドに何か一定の要件を満たしたファンドを商品が選択されていれば、嫌ならそこから外れればいいけれども、それを選んであれば、まさにセーフハーバーで運用責任は問いません、免責しますみたいなものがセーフハーバーのイメージだったのですが、先ほどの話だと、一定の基準というのは、こういう商品ならば、こういう条件を満たした、例えばライフサイクルファンドとかそういうものならいいですよというのではなくて、何か事前の説明、一般があればとかそういうようなイメージであったようですが、そういうデフォルトファンドみたいなものをもうちょっと積極的にやっていくとか、そういうことについてはどういうふうにお考えなのかということをお聞きしたいと思います。
 というのは、イギリスとかアメリカとかでも、自己責任と言いつつ、やはりDC的なものはある程度お膳立てしないといけないねという、自動加入とかデフォルトファンドの動きがあるように思いますので、そのあたりはどうお考えなのかということをお聞きしたいと思います。
 以上です。
○神野委員長 2点ですが、よろしいですか。
○運営管理機関連絡協議会会長 高橋様 まず、1点目の11ページのところなのですが、図で御説明させていただきます。左側の三角形の図をごらんいただきたいのですが、ほとんどの会社が退職金のモデルというものを持っておりまして、目標額という長方形の棒がありますが、それを大体定めています。これを例えば18歳から加入して60歳まで運用して、目標額幾らとするわけなのですが、そのときに、ただ積み上げるだけではなくて、やはり運用ができて、運用収益も加えて目標額になるでしょうという考え方をしますので、もちろん0%という想定利回りの会社もありますし、従来型の5.5というぐらいの高いところもあります。これは確定拠出年金においては労使合意で決めるということになっていますので、大体今は2%台あるいは1%台で決まっているということでございます。
○森戸委員 その想定利回りというのは、労使合意で決めなければいけない事項でですか。つまり、目標額が必ずなければいけないのかを確認したかったのですが、それはそういうことですか。
○運営管理機関連絡協議会会長 高橋様 実務上、法律で決まっているわけではないのですが、目標額が例えば1,000万円とすると、1,000万円を貯めるために何パーセントぐらいで運用できるだろうかということを労使で議論して、それが。
○森戸委員 目標はわからないけれども、とにかく月1万円ずつだよというのではだめなのですか、という質問です。
○神野委員長 課長、どうぞ。
○渡辺課長 法律上、そういうことをしなければならないということは決まっているかという御質問だったと思いますが、それはございません。
○森戸委員 それはないのですね。わかりました。
 済みません、それでいいです。
○運営管理機関連絡協議会会長 高橋様 それと、先ほど国がやれということなのかということですが、やはりこういう認定制度というのは、どこかの民間が決めることではなくて、公の機関で決めるべきではないかと考えていますので、この「関係省庁」という言葉を使わせていただいたということです。
 それと、デフォルトファンドのお話をいただいたのですが、デフォルトの定義が米国のデフォルトの定義と日本のデフォルトの定義が違うと我々は考えまして、例えばデフォルトというのは、運用の配分指定が決まるまでの一時的な待機資金がたまるのがデフォルトと言われるのが日本では多いわけなのですね。それなので、まさに先生が御指摘のように、アメリカのQDIAのように認定されたものが幾つかあって、それを選びやすくするというのは、考え方は同じです。
ただ、御懸念のように、いろいろな金融機関が幾つもQDIAと言われる、商品推薦される商品をたくさんつくるのではないか。それがたくさん並んでしまうと、結局また選びづらくなるというのは、私どもも懸念していることなので、そこは何らかの形で何本以内とかとしないと乱立するだけだと思っていますので、そこは工夫が必要だと考えています。
○神野委員長 いかがでしょうか。
 では、山口委員、先にどうぞ。
○山口委員 非常に詳しい御意見をありがとうございました。
 加入者のマッチング拠出の条件緩和などは、私も賛成でございます。
 今回は、総合基金に関する議論をしておりますので、DCでも総合型DCといいますか、そういったものがイメージとして出てくると思うのです。私が間違っているのかもしれないのですが、これは総合型DCに限らない話だと思うのですが、加入者のさまざまな情報、すなわち幾らどういうものに投資しているかとかいったような情報がスポンサーの企業さんのほうで、なかなかそういう情報を得ることができない。守秘義務といいますか、個人情報保護ということでしょうか。
そういう問題が、総合型のDCになれば、もっとハードルが高くなるように思うのです。投資教育とか商品の入れ替えとか、そういったことを判断していく上で、やはりある程度加入しておられる方がどういうものに投資されているのかとかいった情報の提供というのはすごく大事だと思うのですが、その辺について御意見を教えていただければと思います。
○運営管理機関連絡協議会会長 高橋様 ほとんどの運営管理機関がモニタリングということで、運用状況の御報告を事業主の方にしております。
 今、先生が御指摘のように、個人情報の問題がありますので、Aさんがこういう運用をしている、Bさんがこういう運用をしているという御報告はできないのですが、例えば30代の方はこういう傾向がある、40代の方はこういう傾向がある、あるいはジェンダーで話をするのはよくないのかもしれませんが、男性の方、あるいは40代の女性の方はという形で体系立てて御説明をしているのですが、これが中小企業様になりますと、特定されてしまう人数になるので、なかなかそれも難しい。
ですから、大きなプランであれば、今、私が申し上げたようなフィードバックをさせていただいて、例えば50代の方にもう少し投資教育が必要です、あるいは分散投資の意義をもう少しお話ししましょうといった御提案をさせていただいております。そういった中で商品のバランスが悪ければ、こういった商品を追加しませんかという御提案もあわせてさせていただいておるということでございます。
○神野委員長 駒村委員、どうぞ。
○駒村委員 これは質問というよりもコメントになってしまうのですけれども、今、山口委員からもお話があった8ページのいろいろな規制改革というのでしょうか、あるいは税制上の優遇の制限。これは生保協議会のほうからも、こちらの協議会のほうからも、両方DC、DBについてさまざまな案が出てきたと思っています。それ1個1個については、恐らく公的年金、私的年金の役割分担、位置づけといったものをきちんと整理した上で、マッチングをどう考えるか。途中引き出しをどう考えていくのか。税制上の優遇はどのぐらいまで広げていくのかというのは、やはり公共政策上の必要性の観点からも議論されなければいけないと思います。
これは事務局に対するお願いなのですけれども、やはり2回にわたっていろいろな方のヒアリングをさせていただいて、事務局が出された改革案については、特例解散の見直しと制度の廃止と企業年金の普及と3つあったわけですが、これはそれぞれ関心のある分野についてちゃんとお答えをいただいたわけなのですが、恐らくこの3つはばらばらに議論して整理していくと、また妙なことになると思うのです。例えば非常に緩いかどうかはあれですが、新特例という負債額を確定してしまうような形のものを残しつつ、入れつつ、制度は廃止しませんよとなると、これはモラルハザードの引き金になってしまうかもしれません。
 しかし一方で、受け皿を時間を決めずに、公私年金の役割分担の議論をこういう批判されているような前からある議論を先延ばししていたら、適格年金の二の舞になってしまうと思いますので、この3つの議論というのは、恐らく整合性のある組合せというのはあると思うので、つまみ食い的な組み合わせではなくて、整合性のあるような、つまり、特例水準に新特例みたいなもので、かなり許してあげる部分もあるけれども、そうするとやはり制度としては廃止で、モラルハザードの芽は摘んでおかなければいけない。それをやってしまえば、今の企業年金の優遇措置では全然前に進まないわけですから、逆に言うと、それを決めたというならば、時間を決めて、早急に公私年金の役割分担の整理をして、業界のさまざまな関係者から出てくる提案を1個1個クリアーにして、ぜひ適格のようなことが起きないようにしていかなければならない。
これは組み合わせではないのかと思います。今後まとめるときには、組み合わせた整理をしていただきたいと思います。
○神野委員長 わかりました。
 いずれにしても、相互に関連づけるということは、これまでも申し上げてきたことなのですが、有機的に関連づけた形で考えるということも、これは事務局のほうにまとめ方としてお願いするということでよろしいのですか。
○渡辺課長 はい。
○神野委員長 では、そのようなことにいたします。
 あとはいかがでございましょうか。よろしいですか。
 それでは、時間も大幅にオーバーしておりますので、この辺で質疑を打ち切らせていただきます。どうもありがとうございました。
 それでは、一応、本日のヒアリングはこれにて終了したいと思いますが、委員の皆様方から特に御発言があれば承っておきますが、よろしいでしょうか。
 それでは、私の議事運営の不手際でもって、時間が大幅におくれてしまったことをおわび申し上げまして、事務局のほうから連絡事項をお願いいたします。
○渡辺課長 次回、第6回目は、1月24日木曜日、18時からの開催を予定しております。
 詳細につきましては、また追って御連絡を申し上げます。
○神野委員長 それでは、ヒアリングに御協力をいただきました皆様方に重ねて感謝を申し上げるとともに、運営の不手際をおわび申し上げて、これにて解散したいと思います。
 どうもありがとうございました。


(了)

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