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2012年11月27日 第3回 厚生年金基金制度に関する専門委員会 議事録

年金局

○日時

平成24年11月27日(火) 16:00~18:00


○場所

中央合同庁舎第5号館18階専用第22会議室


○議題

(1)企業年金の持続可能性を高めるための施策の推進
(2)代行制度の見直し
(3)その他

○議事

○神野委員長 それでは、定刻でございますので、ただいまより第3回社会保障審議会年金部会「厚生年金基金制度に関する専門委員会」を開催したいと存じます。委員の皆様には、たびたび御無理を申し上げまして、御参集いただいております。心より御礼を申し上げる次第でございます。
 本日は、菊池委員、花井委員、山本委員から御欠席との御連絡をちょうだいしております。
花井委員の代理として、伊藤参考人が御出席いただけるということでございますので、出席につきまして御承認いただければと思います。よろしいでしょうか。
(「異議なし」と声あり)
○神野委員長 ありがとうございました。
 それでは、御出席を承認していただいたことにさせていただきます。
 議事に入りたいと思いますので、大変恐縮でございますが、カメラの方はここで御退室をお願いできますでしょうか。御協力をよろしくお願いいたします。
(報道関係者退室)
○神野委員長 本日は、お手元の議事次第にございますように、議題といたしまして試案の論点2の「企業年金の持続可能性を高めるための施策の推進」と論点3の「代行制度の見直し」を議題として準備させていただいております。
 議論は別々に行いたいと思いますが、資料につきましては、事務局のほうから一括で御説明をいただきますので、事務局から説明についてよろしくお願いいたします。
○渡辺企業年金国民年金基金課長 まず、資料の確認をさせていただきます。
 資料1は、論点2「企業年金の持続可能性を高めるための施策の推進」関連資料でございます。
 資料2は、論点3「代行制度の見直し」関連資料でございます。
 また、本日は2名の委員から資料が提出されておりまして、柿木委員からの提出資料を資料3、森戸委員からの提出資料を資料4として配付させていただいております。
 参考資料としまして、第1回目からお配りしております試案と参考資料をお配りしております。
 続きまして、資料1と資料2につきまして、一括して御説明をさせていただきます。
 まず、資料1は論点2「企業年金の持続可能性を高めるための施策の推進」関連資料でございますが、前々回に、本日御欠席でございます菊池委員から、厚生年金基金以外の企業年金等につきまして、現状がどうなっているのかということについての資料をということでございましたので、簡単な制度の概要を御用意させていただいております。
 2ページ目をお開きいただきたいと思います。
 この委員会で議論されておりますのは、厚生年金基金でございますが、これ以外の企業年金等の制度といたしましては、確定給付企業年金、確定拠出年金、これは企業型と個人型の2つのタイプがございます。それから、国民年金の1号被保険者を対象とします国民年金基金という制度がございます。これが企業年金等でございますけれども、これ以外に退職金制度といたしましては、中小企業の従業員を対象とした共済制度でございます中小企業退職金共済制度、そのほか特定業種退職金共済制度等がございます。
 さらに、退職後の所得保障に関しまして、一定の公的関与、これは主として税制上の優遇措置ということでございますが、こうした公的関与のある制度としましては、いわゆる財形年金貯蓄、保険あるいは信託等でやっております個人年金といったものがあるということでございます。
 3ページでございますが、本日はこの中から、今、申し上げました確定給付企業年金と確定拠出年金、国民年金基金、さらに中小企業退職金共済制度につきまして、厚生年金基金との比較ということで、簡単な概要を載せさせていただいております。
 まず、制度の概要でございますけれども、左から2つ目の確定給付企業年金は、いわゆる確定給付の制度でございますので、その意味では厚生年金基金と近いものでございますが、いわゆる代行部分というものがなくて、上乗せの年金給付のみを行う制度ということでございます。
 その隣の確定拠出年金でございますが、この確定拠出年金は国民年金の第1号被保険者と公務員を除く第2号被保険者を対象とした制度でございまして、これは名前のとおり、掛金とその運用益との合計額をもとに給付額が決定されるということで、拠出は確定しているけれども、給付のほうは運用次第という制度でございます。
 国民年金基金は、先ほども申しましたように1号被保険者が対象でございまして、所得に応じて加入口数や給付の型をみずから選択する個人年金の確定給付型のものでございます。
 中小企業退職金共済制度につきましては、事業主が独立行政法人勤労者退職金共済機構に掛金を拠出しまして、共済事業として退職金を支給するという事業でございます。
 掛金負担でございますが、確定給付企業年金は事業主拠出が原則でございますが、加入員の同意があれば本人負担も可能です。
 確定拠出年金は、企業型のほうは事業主負担が原則でございますが、ことしの1月から個人も事業主負担を超えず、かつ拠出限度額の範囲内で拠出するという、いわゆるマッチング拠出と言っておりますが、これが導入されております。個人型は当然加入者負担、国民年金基金も加入者負担ということでございます。中小企業退職金共済制度は、事業主負担ということでございます。
 給付形態としては、老齢年金または一時金ということでございますが、国民年金基金の場合は年金、退職金共済の場合は、もちろん一時金ではございますが、5年または10年の分割払いもできるという仕組みになってございます。
 税制は、拠出時、運用時、給付時ということで分けて書いてございますが、このうち拠出時に拠出限度額がある制度としましては、確定拠出年金、国民年金基金、中小企業退職金共済制度ということで、後ほど申し上げますが、それぞれ拠出限度額がございます。その中での拠出に対しての税の扱いということでございますが、事業主負担は全額損金算入。限度額のある制度は、その限度額の範囲でございますが、損金算入が通常でございます。
 加入者のほうにつきましては、厚生年金基金と国民年金基金は社会保険料控除という扱いになってございます。
 確定給付企業年金の場合は、加入者負担がある場合は生命保険料控除の範囲内、確定拠出年金のほうは、小規模企業共済と掛金控除の適用ということでございます。
 また、運用時につきましては、特別法人税というものが確定給付企業年金、確定拠出年金の企業型の場合はございまして、積立金につきまして、厚年基金の場合は代行部分の3.23倍を超える部分についての課税と、確定給付企業年金と確定拠出年金は積立金全体についての課税ということになっておりますが、これにつきましては25年度まで課税停止になっているということでございます。
 また、出口の給付時でございますが、これは雑所得課税でございますが公的年金等控除が適用されるということでございます。
 4ページでございますが、それぞれの制度の加入者数、受給者数は一時金ではなく年金受給者の人数を載せてございます。ごらんのとおりでございます。
また、契約数につきましては、基金のものにつきましては基金数、その他については契約件数ということで載せております。
 下から2つ目の拠出限度額のところでございますが、先ほど拠出限度額のある制度ということで確定拠出、国民年金基金、中小企業退職金共済と申し上げましたが、確定拠出年金のほうは、個人型の場合は1号被保険者の場合と2号被保険者の中でも他の企業年金に加入していない方についてはこの個人型に入れることになっておりますが、それぞれ限度額が異なりまして、1号被保険者の場合は国民年金基金と合わせて月額6.8万円。他の企業年金に加入していない企業の従業員の場合は、注3にございますけれども月額2.3万円ということでございます。
 企業型の場合の事業主の月額の拠出限度額は5.1万円でございますが、他の企業年金に加入している場合の限度額につきましては、その半分の2.55万円ということになってございます。
 国民年金基金につきましては月額6.8万円、中小企業退職金共済制度については月額3万円ということでございます。
 また、企業会計基準の取扱いにつきましては、厚生年金基金、確定給付企業年金につきましては、退職給付債務に対しての積立て不足というものがバランスシート上認識されるという形になっているということで、この点が確定拠出年金等と異なるところでございます。
 5ページからは、それぞれの制度の少し細かい概要でございますので、今、御説明したこともありますので、簡単に触れます。
 まず、5ページは確定給付企業年金です。
 制度の概要は、先ほど御説明したとおりでございまして、代行を行わない独自の上乗せ給付のみを支給する制度ということで、平成14年4月から施行されております。これは労使合意に基づいた規約を作成し、厚生労働大臣の認可等を受けることで実施されます。大きく分けますと、規約型と厚生年金基金のように基金をつくる基金型の2つの仕組みがあるということでございます。
 6ページ、7ページは、先ほど御説明しました確定拠出年金の企業型と個人型のそれぞれでございます。
先ほども申し上げましたけれども、限度額が企業型の確定拠出年金の場合は6ページにございますように、確定給付型の他の企業年金制度を実施している場合と、していない場合とで限度額が異なっているということでございます。
7ページは個人型の確定拠出年金でございます。
先ほども御説明しましたように、1号のほうは国民年金基金と合わせて6.8万円、他の企業年金制度を実施していない2号被保険者の場合は2.3万円ということになっております。
8ページは国民年金基金でございます。
 これは先ほど御説明しましたように、1号被保険者を対象とする老齢基礎年金の上乗せの年金給付でございまして、これは同一の都道府県内の居住者で組織する地域型基金が各都道府県に1つずつございまして、47基金ございます。
 それから、これとは別に同種の事業に従事する者によって組織されます職能型と言われるものが25基金あります。これは個人年金の確定給付型でございますので、口数によって年金額は変わってきます。1口目は終身年金が原則で、原則65歳支給開始。2口目以降は終身年金または有期年金で、1口目に合わせてそれぞれ入られる方が選択して選んでいくという仕組みになっています。
 9ページは中小企業退職金共済制度の概要でございます。
 これも先ほど申し上げましたように、事業主が独立行政法人勤労者退職金共済機構に掛金を納めまして、そして退職する場合に従業員に対して請求書を交付し、従業員が勤労者退職金共済機構に請求すると、そこから退職金が一時金または分割払いで支払われるといった仕組みになっています。
 10ページ、11ページは、企業年金に関しての最近の主な改正や、最近出されております主な改正要望等でございます。
 まず、企業年金に関しての最近の主な改正としましては、昨年8月に公布されました年金確保支援法の中で、特に確定拠出年金については大きな見直しが行われております。ここでは大きく3つ挙げてございますが、まず1つ目は、加入資格年齢を60歳から65歳まで引き上げるということでございます。
 2つ目は、先ほども申し上げましたように、一定の限度額の範囲内ではございますけれども、企業型の確定拠出年金におきまして従業員によるマッチング拠出というものを可能としたということ。それから、継続投資教育の実施義務を明文化すること等の改正も行っております。
 3つ目は、通常、この確定拠出年金というのは、中途脱退がかなり厳しく制限されておりまして、従来は企業型の加入資格を喪失した場合は、制度的に個人型に入れない方のみ一定の条件を満たした場合に中途脱退ができるということでしたが、昨年の改正によりまして、個人型の加入者になれる者であっても一定の要件を満たした者については中途脱退を認めるということで、一部要件を緩和しているということでございます。
 確定給付企業年金につきましては、法律あるいは運用ベースでも幾つかの改正を行っておりまして、ことしの3月に適格退職年金が廃止になるということで、この適格退職年金から確定給付企業年金への移行を促進するという観点から、加入者のいない受給者のみで構成されております閉鎖型の適年から移行する閉鎖型の確定給付企業年金につきましては、さまざまな添付書類等の省略を可能とするという規制緩和を行っております。
 また、昨年の年金確保支援法で、退職時の年金支給につきまして、60歳から65歳で退職した者についても可能にするという改正も行っております。
 試案の中でも先般このキャッシュバランスプランについては見直しの案を出しておりますが、今年の1月にこのインデックスにつきまして、東証株価指数等の市場インデックスを使えるようにするという改正も行っております。
 11ページは、企業年金に対しての主な規制緩和要望等です。
 これは毎年国民の声等で出されるもの等々から拾ったものでございますが、この確定拠出年金に関しましては、大きく3つの点がよく要望として出されておるところでございます。
 1つ目は、拠出限度額の引き上げ。
 2つ目は、先ほども申し上げました中途脱退要件の緩和。
 3つ目は、マッチング拠出につきましては、ことしの1月から導入いたしましたけれども、一定の上限というものもございますので、そういった要件の緩和という要望が出されております。
 また、確定給付企業年金につきましては、給付減額につきましての手続等の要件緩和ですとか、あるいはさまざまな証人認可手続の簡素化等につきましては、毎年の規制緩和要望等の中でよく出されるということでございます。
 以上が論点2の関係の資料でございます。
 続きまして、論点3、後半で御議論いただきます「代行制度の見直し」の関連資料でございます。これにつきましては、現存する厚生年金基金562基金につきまして、最低責任準備金に対する積立水準、これは第1回目のときの試案と合わせて、代行割れのリスクということで過去の実績データなどももとに最低責任準備金に対する積立水準と代行割れリスクの関係についてのデータをお示ししましたが、これと各基金のさまざまな財政関連指標との関係を少し分析したものを示しております。
 2ページ以降では、「積立水準」は最低責任準備金に対しての積立水準ということで見ております。そういったことを前提に、まず積立水準と基金の設立形態ということでごらんいただきますと、大きく総合型と単独・連合型ということで分けております。これでごらんいただきますと、下のグラフにもありますように、これは23年度末でございますが、総合型では約4割が代行割れという状況でございまして、5割が1以上1.3未満ということで、合せて9割ぐらいが最低責任準備金に対する比率としましては1.3未満ということになっております。
 一方、単独・連合型の場合は、代行割れとなっているところは1割弱ということでございまして、約2割が1以上1.3未満、逆に積立水準が1.7以上というところが半分以上ということになっております。
 3ページは、積立水準と上乗せ部分の予定利率の関係を見たものでございます。
 下のグラフでごらんいただきますと、濃い色でなっているところが5.5%以上というところで、だんだん右に行くに従って予定利率が低くなっているということですが、縦のほうは積立水準が低いほうから高いほうに並べておりますので、ごらんいただきますと積立水準が低いところでは上乗せ部分の予定利率も5.5%以上というところが比較的高く、積立水準が高いところでは逆に予定利率が低くなっているところが多いということでございます。
 4ページは、積立水準と基金の設立事業所の業種との関係でございまして、これは前々回のときにも代行割れと業種ということでお示しをしておりますけれども、このグラフでごらんいただきますと、これも濃い色のところが積立水準1未満ということで、いわゆる代行割れということですが、代行割れ基金の割合が高いところを業種で見ますと、繊維業、石油、運輸、建設などが多くなっております。逆に、比較的積立水準が高い1.7とか1.3を超えるようなところですと、金融とか情報・通信といったところが比較的高いということでございます。
 5ページは、積立水準と基金の設立時期の関係を見たものでございます。
 左のほうが設立年、下に行くほど古いということでございますけれども、左から2つ目の積立水準1未満、いわゆる代行割れというところで見ますと、やはり比較的古いところが多くなっている。逆に、積立水準の高いところは比較的新しい時期に設立されたものが多いということが読み取れるかと思います。
 6ページは、基金の成熟度との関係で見たものでございます。
 成熟度につきましては、前回の論点1を御議論いただいたときにも少し見ていただきましたけれども、これは加入員数に対する受給者数の比率ということで、人数ベースの成熟度ということでございます。これも右に行くほど成熟度が高いということでございます。
 このグラフの色で申しますと、濃いところは積立水準が低いというところになっておるわけですけれども、比較的薄い色の積立水準の高い基金というのは成熟度も低いものが多い。これに対して、代行割れ基金はやはり成熟度が高いものが多いということが読み取れるかと思います。
 7ページは、それを散布図にしたものでございますので、御参考までです。
 8ページは、積立水準と基金の運用実績ということでございます。
 これは平成11年11月から平成23年度末の平均運用利回りで見たものでございます。積立水準等の関係は、それほど先ほどごらんいただいたような財政指標と比べますと顕著ではございませんけれども、積立比率の低いほうが若干低めの利回りとなっているということで読み取れるかと思います。
 9ページは、積立水準と上乗せ給付の水準ということでございまして、これも下に行くほど積立水準の高いところでございまして、グラフで申し上げますと、濃い色のところが上乗せの厚さが低いところになりますが、積立水準が高い基金は上乗せ給付の比率が比較的高く、これに対しての積立水準が低いところは上乗せ給付の比率が低い基金の割合が高いということが見て取れるかと思います。
 これと表裏の関係にあるわけですが、10ページでございます。上乗せ掛金の比率を全体で見ますと、やはり積立水準の高いところ、これは上乗せの給付の水準が厚いということもありまして、掛金の比率も比較的高いところが多いということでございます。
 11ページは、積立不足に充てるための特別掛金、特例掛金でございますが、これも同じように積立水準の高い基金が高いということが見て取れるということで、さまざまな財政指標と積立水準との関係を少し分析したものでございます。
 以上、事務局からの御説明とさせていただきます。
○神野委員長 どうもありがとうございました。
 きょうの2つの議題に関連する資料を一括して御説明いただきましたが、まず、第1の議題ですね。論点2「企業年金の持続可能性を高めるための施策の推進」という議題について、委員の皆様方から御質問、御意見を頂戴したいと思います。いかがでございましょうか。
 駒村委員、どうぞ。
○駒村委員 資料の表題が「持続可能性」ということになっているのですけれども、持続可能性という見方なのか、制度により普及を考えていくということなのか。厚生年金基金の制度がもし仮に廃止されてしまったり、あるいは大幅に改正をしてしまえば、後退するのは間違いない。そういう意味で「持続可能性」という言葉を使われていると思うのですが、より踏み込んで、企業年金を今後どういうふうに位置づけるのかという議論がないと定まらないのかという感じがしておりますので、「持続可能性」という言葉がいいのか、普及政策がいいのか。
 例えば資料の11ページにあるいろいろな要望は、要件緩和とかいろいろな御要望があるわけですけれども、要望があるのは望ましい政策かというわけではないわけでして、政策上の誘導や税制上の優遇を行うということであるならば、それはどういう公共政策目的のためにやるのかということが明確でなくてはいけないわけでして、これは公的年金との役割の中で議論されるべきテーマなのかと思います。公的年金のほうはマクロ経済スライドで確実に2割程度は実施水準が下がっていくのは避けられないという状況でありますし、支給開始年齢の議論だって、いずれはやる必要が出てくるかもしれない。
こういった中で、こういう公的年金のある種守備範囲の縮小に対して積極的に企業年金をどういうふうに位置づけるのかという議論があって初めて、こういう要望に対する答えも決まってくるのではないかと思います。どの程度の拠出限度に対する税制上の優遇が必要なのかとか、途中脱退に対してどういうふうに評価していいか。例えば公的年金との代替的な性格を意図するならば、普通の貯蓄とは違うわけでありますので、途中引き出しというのはなるべく制限的にかけるべきで、11ページの2ポツに書いてある前段部分というのは余り評価できないわけですけれども、後半部分については、限定的にやむを得ない場合にのみ引き出しても構わないみたいな形に評価されると思いますので、こういう議論は公的年金との関係で企業年金がどう位置づけるかということが定まって、本来議論したいテーマかと思ってお話を聞いておりました。
○神野委員長 どうもありがとうございました。
 山口委員、どうぞ。
○山口委員 駒村先生の御意見はまことにそのとおりだと思うのですが、ただ、今回この委員会で主なテーマとしてやっておりますのは、総合設立基金、要するに中小企業の年金制度ということであります。そういう意味では、全体的な公的年金の今後の推移を見定めた上での企業年金政策というのは当然あるべきだと思うのですが、別けても中小企業に対してどうするかということが、今回の厚生年金基金を例えば廃止をするという前提で考えた場合には、特段の配慮があってもしかるべきではないかといった観点ももう一つあるのではないかと考えております。
 そのように考えますと、持続性の高い制度とは何かということなのですけれども、これまでの経験で言うと、結局積立不足が大きくなって、それで追加の掛金が必要になって、制度が立ち行かなくなるといったことの繰り返しがあったわけですが、なぜその積立不足が発生するのかといった点に立ち戻って考えていく必要があると思うのです。
 年金の財政を見てみますと、いろいろな要因で積立不足は出るわけです。1つは、例えば運用の利回りと予定している利回りとの差で出ると利差損とかいうものです。あとは、終身年金などの場合には、死亡率の低下によって発生する死差損とか、退職時期のずれによって発生する脱退差損とか、あるいは給与比例式の制度の場合には、実際の昇給と予定の昇給との差で発生する昇給差損とか、そういったさまざまな要素があるわけです。
 こういったものを発生しにくくする制度設計というものがあるのかどうかと考えた場合に、今、申し上げているのは確定給付タイプの制度の場合の話ですけれども、例えば非常に低い利率を基準とした元利合計の給付カーブを設計のベースにいたしまして、給与比例式ではなくて定額式で、かつ終身年金ではなくて有期年金で設計するといったような制度をつくれば、比較的不足は発生しにくいということになると思うのです。中小企業退職共済などの制度設計もこういう設計思想がベースになっているわけです。
 もしくは、DBではなくて、やはり全く積立不足といった問題から逃れるためには、いわゆるDCですね。確定拠出。これは平たく言えば貯金だと考えていただければいいわけで、運用の成否、つまり、うまくいってたくさん運用成果がある、あるいはうまくいかなくて資産が目減りするといったことが全て自己責任だということになっているのですが、そういう自己責任の制度としてつくられる確定拠出年金をベースに制度を導入していくといったことが基本的に考えられると思うわけです。
 そういう観点で申し上げるならば、まず前回でしたか、集団運用型DCというのが事務局から示されているわけですが、これについては私もいろいろ調べてみたり、いろいろな人に意見を聞いたりしたのですが、この案では資産運用委員会なるものが選択肢を提示して、加入者が選択するという作り方になっているわけですが、それでもやはり運用指図の1つになるわけですので、そういった選択をする限りは、やはり投資教育が全く要りませんというのは無理ではないかといったことを言う人がかなり多かったように思います。
 しかも、先ほど事務局からの説明もありましたように、年金確保支援法の中で事業主の投資教育の義務付けということを決めたばかりでありまして、そういう状況の中では、必要不可欠な投資教育を省略するのはやはり難しいのではないかということとか、あるいは資産運用委員会なるものが運用商品を推薦するといったことは、投資助言に当たる可能性もあるということで、金融商品取引法上の取扱いとか、あるいは運営管理機関登録とかいったことが必要になる可能性があることなど、ややこしい問題が出てくる可能性があるのではないか。あるいは中小企業で企業ごとにこういった資産運用委員会を設置するといったことが果たして本当に企業単位でできるのかといったような実現可能性の問題等々を出されておりまして、私も事務局が何とか中小企業のDCをいろいろ発展させるためのアイデアとして出されている点は非常に評価するのですが、この案だとなかなかしんどい面があるのではないかといったような気がしております。
 そういう意味では、駒村先生は全体のバランス論と言われたのですが、やはり10ページに書かれているような確定拠出年金制度に係る改正について、特に中小企業に限ってこういったものを取り上げていくということがあってもいいのではないかと私は思っておりまして、中途の場合の引出し要件の緩和ですとか、特に失職しているような状況で困窮しておられるといった場合には、せっかく自分のお金があるわけですから、それがあるのに出せない。一方で生活が大変な状態になっているといった場合には、ある程度引出しを容認するとかいったような配慮があってもいいのではないかと思います。
 それから、中小企業で企業の方は掛金を余り出せない。だけれども、従業員のために一生懸命年金制度をつくって、制度を何とか残していってあげたいと思っている事業主に対しては、制度をとにかく導入してください。事業主の掛金は少なくてもいいから、それを超えるような従業員の掛金も出せるようにしてあげて、とりあえず器だけは用意して、年金制度から離れていかないような仕掛けを残していくといった意味で、一部マッチング拠出の制限を緩和するとかいったことが本件を考える場合にはあってもいいのではないかと思います。あくまでも中小企業に限ってということでありますけれども、そんな見直しも必要と考えております。
○神野委員長 ありがとうございました。
 宮本委員、どうぞ。
○宮本委員 ありがとうございます。
 今ほど山口委員がおっしゃったとおり、私も委員の発言に大賛成であります。
その上で発言をさせていただきます。資料1の4ページにある、それぞれの企業年金制度の退職金制度の概要のところで、基金あるいは中退共も含む企業年金の加入者数を全部を合わせると2,050万人ぐらいになるのですが、重複加入者もおそらく入っていると思います。本年3月末時点ということですが、例えばDB、DCあるいは中退共等の加入者数は、経年的に恐らく減少してきているのではないかと推測しております。
 前回も申し上げたと思いますが、経済環境が非常に悪化をしている。そんな中で企業業績だとか、資産運用の環境が非常に悪化をしている。そこに新会計基準等も導入されたこともあって、多くの中小企業は倒産防止に必死な状況になっているということです。そういう状況の中で、企業年金を維持できなくなった結果、企業年金自体そのものが減少しているのではないかと推測をしております。
 今年の3月の適格年金制度の廃止のときにも、10年ほどかけて廃止移行をしてきたわけですが、厚労省の移行状況の調査もあったように、結局のところ、適年を解約した後に約3割が行方知れずでわからなくなっているということ。これがいわゆる労働条件の不利益変更を強いられているところもあるのではないかと思います。
 企業年金というのは、老後の生活保障に大きな役割を果たす公的年金を補完するための所得保障であり、非常に重要なものであるということを考えると、企業規模や産業、業種、例えば正規、非正規という雇用形態、あるいは同一企業での勤続年数の長さなどに関係なく、可能な限り全ての労働者が加入できるものにしてほしいと思います。
 今回の厚生年金基金の廃止に伴う持続可能性が高い企業年金への移行を検討するに当たっては、ぜひこの適格年金制度の廃止のときの二の舞にならないよう、丁重な移行が必要です。
 また、中退共の関係ですが、中退共は中小零細企業の従業員の老後の生活保障の確保をするための手段の1つであるということを考えると、平成23年度末時点での累損が今、1,758億円になっていると聞いておりますが、こういった財政問題は早急に健全化させるということは極めて重要な案件です。一方で、加入しやすい環境をつくることが中小零細企業の労使にとって非常に重要なことだと思います。
 また、このキャッシュバランスプランの給与設計の弾力化について、確定給付年金の運用実績を基準利率にできるようにするという考え方が試案で示されておりますが、これでは確定給付の一類とは言えなくなるのではないかと思います。退職年金、退職金が賃金の後払い分としての性格をもつことを十分に踏まえた支給のあり方を検討する必要があるのではないかと思います。
 最後に集団型DCについて、これも先ほど山口委員がおっしゃったとおり、事業主の投資教育の責任を外して、資産運用委員会を設置するという試案ですが、退職給付の確保という観点からすると、やはり問題があります。事業主に対して投資教育をもっとやりやすくするという方法も必要だと思います。
○神野委員長 ありがとうございます。
 ほかにいかがでしょうか。
 森戸委員、どうぞ。
○森戸委員 私は提出ペーパーがあるのですけれども、前半は次の論点にかかわることなので、また後で触れるかもしれませんが、後半で持続可能性を高める施策については箇条書きみたいになっているのですが、まず、今、フロアーで出た意見について、私の意見はどちらかというと駒村委員の意見に近いのですが、割ともうちょっと大きな観点からの議論がペーパーでは出ています。
山口委員がおっしゃったことはもっともだと思うのですが、ただ、素朴な疑問として、今の中小企業の労働者の企業年金の主力が厚生年金基金だと言えるのかどうかというところがちょっと疑問もありまして、確かに厚年基金廃止だから中小企業の労働者の企業年金はなくなってしまいます。だから、この後釜はどうしますかというのはわかるのですけれども、そもそも今の中小企業の労働者は、本当にそんなに厚年基金が主力なのか。それは昔の一定の産業だけなのではないか、もしくはそうではないかもしれないが、すごく薄いのではないかということも中小企業の労働者の大半がこれで企業年金を失いますよというデータがあって、それでこれはどうしますかという話になるのかと思います。私の認識がちょっと違うのかもしれません。
 山口委員がおっしゃったように、確かに積立不足が出るのかやっかいなので、それが出ないようにするには、山口委員がおっしゃったように、そこを一番払拭するのはやはりDCなのではないかと思います。それでDB的なもので中小企業にやってもらおうというのは、要するに経営上、何か平たく言えばプラスがないとやる気にならないので、廃止したばかりですけれども、何かすごく簡単な適年みたいなものを復活するとかいうなら別ですが、そうではないとなかなかDB的なものは難しいから、そうするとDCに何か中小企業の労働者が、あるいは月並みですけれども、企業が加入しやすくなるような措置を講じるというのが考え得るのかと思います。
ただ、集団型DCというのは、イメージが必ずしもよくわかっていない部分もありますが、皆さんがおっしゃったように、投資教育の義務を外すところが肝のようですが、結局それによって何かこういう運用をしなさいとか、こういうポートフォリオがいいですよと示したことの責任というのが問われるとなると、かえって委員会に何か組合の人とか入りたくないと思うのではないかというのが感覚的なもので、私がそうすればいいと思っているわけではないですけれども、もしそこを本当にすっきりするなら、アメリカのセーフハーバーみたいに、この労使委員会で示したものに従っていたら、もう受託者責任は問いませんとか、それがいいかどうかわかりませんが、そういう措置をしないと、かえって労使委員会、運用委員会みたいのをやるのはやりづらくなってしまう。かえって責任は誰がどう負うのだろう、投資教育もないみたいな感じになるのかなという気がします。だから、投資教育の義務の話とともに、そういう法的な責任を免除するみたいなこともあり得るのかということも一緒に考えないといけないのではないかと思います。もちろん、それがどれぐらい中小企業にとってメリットと感じられるかどうかもわからないですけれどもね。
 それで私の資料で言っていることを簡単にちょっとずつ触れたいと思います。
 企業年金の持続可能性を高める施策というのは、駒村先生がおっしゃったように、やはりいろいろ考えなければいけないことがあるのではないか。山口先生がおっしゃったような観点からすると、若干大きな話ばかりなのですが、今、代行部分もまとめて運用できるというスケールメリットをインセンティブにして、厚生年金基金制度があったわけですね。これを廃止するとなった。しかし、やはり同じレベルで企業年金制度を実施してほしいですと思っているのだったら、政策として代行メリットに匹敵するインセンティブを用意しなければいけないということになると思います。
 今後、代行割れが必ずしも確実ではないという基金も含めて廃止の方向だと出すならば、そういう基金なり企業がこれを機に企業年金制度をやめてしまわないようにするにはどうしたらいいかということを考えなければいけないと思います。
 企業年金制度の実施維持のインセンティブというと、税制優遇というのが思いつくのですが、特別法人税などもほとんど付加されていないので、今さらこれをかけないとかいうのがインセンティブになるかどうかわからない。そうするとどういうふうに考えていくか。昔、あるところでやった研究では、4つのフェーズに分けて、一番理想的な制度には、税制上一番優遇して、そこまで行けないけれども、とりあえず資産を取り分けている制度には少しだけ優遇してとか、そういう段階をつけるような案も考えたことがあって、ちょっと不十分ではあるのですが、そういうことも参考にしていただければと思います。
 2点目、厚生年金基金は、一応老後所得保障に資するいい制度だと、少なくともAIJまではされていたと思っていまして、終身給付が原則になっているわけですね。そういう制度をやめるとなると、企業年金も終身にあるべきだねという理論というか、理想を捨てるのかどうかということも考えないといけないと思います。それは厚年基金が無理してそんなことを要求していたのだよというならそれでいいですけれども、そうではなくて、老後の所得保障だから、終身であるべきだというのだったら、終身年金のオプションがある制度に税制優遇を与えるとか、民間の終身年金の商品を売りやすくするとか、そういうことも考えないといけないと思います。
 それから、やはり退職金税制ですね。一時金の税制についても考えないといけないと思います。一時金なのに、引退ではなく退職なのに何で優遇しているのかというところですね。老後所得保障のために使われるような給付の仕方の場合のみ優遇するという方向を考えていくべきなのではないかと思います。
 それとセットで、いわゆるIRAみたいな個人退職勘定、個人ごとに老後所得税の枠を持つような仕組みも考えるべきなのではないかと思います。中途で退職者退職金などもそこに入れていけるようなイメージが一番スムーズかと思います。
 あと2点ほどあるのですが、貯蓄だからこうだ、年金だからこうだと割と政策上仕分けされているのですけれども、老後のための貯蓄が年金ではないかと思うので、これは年金だからこうです、貯蓄だからこうですというのは少し柔軟に考えてもいいのではないかと思います。
 あとは、DC。先ほど中小企業はやはりDCなのではないかと申し上げましたが、DCは自己責任であり、投資教育でありという建前で来ましたけれども、既にほとんどDC主流になっているアメリカとかイギリスでも、事後責任だと無理だねという話になって、自動加入とかデフォルトファンドを設定するとか、少し誘導しないとだめですねという方向に動いているので、日本でもその辺を少し考えたほうがいいと思います。
 今のところのDCは、まだ事業主拠出がメーンですけれども、従業員の拠出もできるようになってきていますので、そうするとそういう自動拠出なり、そういうことも政策としては考え得るのではないかと思います。
 最後に1点だけ。より広い話ですが、やはり大きな話ですけれども、企業年金という枠だけで考えていないで、公的年金以外にそれぞれ国民が個人個人老後所得を何かの形で貯めなければいけないのだという考え方があって、だからそのために一定の税制優遇枠みたいなものが先ほどの個人別の退職所得勘定みたいなものがあり、その中で企業年金でたまたま自分の勤めている企業がそういうことをやってくれる企業は、企業年金でそういう枠を使ってもいいよと。企業年金がない場合は、自分で退職所得の税制の枠を使ってくださいみたいな考え方を今後はしていったほうがいいのではないかと思います。
 それはやはり厚生年金基金廃止となると、なおさら中小企業のための制度だったのでしょうと。これが廃止になると、企業年金はなおさら一部の大企業なり、お金持ちなり、正社員のものだけになってしまうではないですかと。そういうものをなぜ税制優遇するのですかという話になり得ると思うので、そうではなくて、全国民同じように老後所得を貯めてもらうための枠なり、保障なりはあって、その中を企業年金で埋めても別にいいではないですかという考え方をしていかないと、これまでの企業年金が培ってきた歴史というか、そういうものも生かしていけないのではないかと思いますので、そういうある意味企業年金の将来を考える話ですけれども、企業年金は老後所得保障を考える中の自助努力の中の一部なのだという考え方で政策も考えていかないと、全体として企業年金自体が将来危うくなってしまうのではないかということを思っています。
 大き過ぎる話かもしれませんが、今から考えなければいけない話なのではないかと思います。
 済みません、長々と。とりあえず、以上です。
○神野委員長 伊藤参考人、どうぞ。
○伊藤参考人  私も、先ほど駒村委員がおっしゃっていたように、公的年金との関係は非常に重要だと思っております。老後の所得保障としての極めて重要な役割を公的年金が果たしていますが、それが財政上の理由で削減するスケジュールがある中で、現状では企業年金が一部の人にとって重要な役割を果たしていることは事実です。特に厚生年金基金の上乗せ給付を含めた終身保障は大きな意味があったと思います。
 我々が非常に危機感を持っているのは、若い人の雇用環境が非常に厳しくて、非正規雇用の比率が大きくなっていることです。こうした若者が企業年金にどれだけ加入できているのかと思うと、公的年金の給付額が減額されていく中で、暗澹たる将来を想像します。そうならないようにしないといけないわけでして、厚生年金基金制度の廃止後の企業年金を考える場合、やはり終身保障を大切にしていく必要があります。先ほど提案がありましたが、例えば終身保障の年金設計にインセンティブを与えるようなことも検討すべきではないでしょうか。
 少なくとも、今、厚生年金基金に加入しているパート労働者が、基金の廃止によって上乗せ給付がなくなることがないようにしなければなりません。今回の試案では、移行支援として5つ提案がありますが、現在基金に加入しているパート労働者への企業年金の保証、そのための社内制度の整備などが必要になると思います。
 また、集団運用型DCについては、事業主に投資教育義務の回避を認める提案ですが、これは現行のDC法の目的にある加入者の自己責任原則自体に抵触する、基本的に考え方の異なるものであると思います。
 当専門委員会の議事録を拝見しましたが、厚労省の説明では、資産運用委員会は投資教育の代替であるとのことです。委員会の設置により、加入者が自己責任をあまり負わないでいいということになります。我々としてはDCは退職給付として望ましいとは思っていませんが、加入者が自己責任で運用指図を行うための投資教育が事業主によって行われることが、DC導入の労使合意の前提条件と理解しています。事業主と加入者の役割を大きく変える提案であり、極めて重大な問題だと思います。
 あと、質問が2つあります。キャッシュバランスで2012年から指標にTOPIXを入れているということですが、これがどれぐらい使われているのか、規約数ベースで示すデータがあれば教えていただければと思います。
 また、支払保証事業の見直しについての提案がありますが、現在既に受給している受給者に対しては、支払保証を続けるのでしょうか。またその場合、今後の財源をどうするのか。拠出金はどうなるのか、現時点でわかりましたら教えてください。
○神野委員長 今、キャッシュバランスで使う指標のトピックスはすぐ出ますか。
○渡辺企業年金国民年金基金課長 前段のデータは手元にございません。申しわけございません。
後段の支払保証事業のことでございますけれども、この支払保障事業自体は企業年金連合会の事業ということになってございますが、これは63年の法律改正で、根拠としては厚年法の中にございます。この試案の中では、この支払保証事業について代行返上支援事業と仮称でつけておりますが、こういう形で転換をしていくということで提案させていただいております。
 この支払保証事業自体は、各基金からの拠出金によりまして、いわゆる共済事業ということで、解散した基金の上乗せ給付を厚くしていくということでつくられた事業でございます。基金制度について、今後、試案で提案しておるようなことを考えていくということになれば、当然この支払保証事業のあり方ということも考えていかなければならないと思います。そのときに、いろいろな考え方があるかと思いますけれども、そもそもやはりこれは上乗せ給付を補てんするといいますか、そういう形でつくられた事業でありますので、その意味では同じ上乗せ給付を補てんするのであれば、解散していく基金よりは、むしろ代行返上して3階部分を続けていこうという基金に対しての支援という形で位置づけたらどうかということで試案では提案させていただいております。
 この間、この厚生年金基金の財政問題が顕在化してから、この支払保証の資金についてむしろ代行割れに補てんするべきではないかとか、そういう御意見もあったのですが、やはり上乗せ給付を厚くするという共済事業で始まっている事業ですので、使い道としてはそういう方法があり得るのではないかということで提案をさせていただいておりますが、いずれにしても実施主体は企業年金連合会ですので、またこの試案をもとに連合会のほうでも御議論をいただきたいと考えているところです。
○神野委員長 よろしいですか。
○伊藤参考人 はい。
○神野委員長 柿木委員、御提出いただいている資料にかかわってでも構いませんので、御意見、御質問を頂戴できればと思います。
○柿木委員 今回、資料を提出しましたけれども、ほとんどは質問に関する事項です。
 これと離れまして、今回の持続可能性の向上について、私どものほうで、今いろいろと意見が出ましたが、企業年金の現場から会員企業、その他から出た声を御紹介させていただきたいと思います。
全体的には、今回の試案は評価できる内容があるのではないかというのが我々の意見でございます。ただ、もう少し踏み込んだ対応が必要との要望が出ておりまして、それをまずお話しさせていただきます。
 第1に、今、受け皿となりますDBとかDCに対する特別法人税ですね。これは御承知のように、今、凍結されているわけでありますが、やはり撤廃をお願いしたい。御承知のように、過去十数年間、何年かおきに凍結を繰り返しているということなのですが、DB、DCを運営している事業主、加入者の中にはこういった特別法人税の存在を知らない人も多くいるわけで、速やかにこういった税の撤廃をお願いしたいという声が強くあります。
 先ほど山口委員、宮本委員からも出ていましたが、集団運用型DCについては、実際、DCを導入している企業からたくさんの意見がありまして、本当に投資教育が不必要なのかと。資産運用委員会の事業主の法的な責任といったものは本当にないのだろうか。また、現場でDC制度を運営している企業からは、ますます年金制度そのものに対する社員の理解がなくなっていってしまうのではないかという意見がありました。これは御承知だと思うのですが、転職その他で運用資産の自動移換者というのはどんどんふえているわけです。一説によると5割に達しているということで、これは6カ月以内に請求を行わないといけないということなのですが、現場で接している人事労務担当者は、こういった制度そのものについても全く知らない会員が多いとのことです。こういった中において集団運用型DCで本当に教育が必要ないのかという意見が強く出されております。
 次に、DCにおける柔軟な制度設計の確立について、11ページの改革要望で示されているので、説明は省きますけれども、DCの拠出限度額の引き上げ、中途引出し、脱退の要件の緩和、企業型DCにおける事業主拠出と加入者拠出の組み合わせの自由化といった要望について早く道筋をつけてほしいということでございます。
 さらに、個人型DCについても、ポータビリティの拡大などが求められます。データはないのですけれども、運用資産の自動移換者が非常に個人型に多いという会員企業からの意見もあります。資産移換にかかわる手続が非常に煩雑であり、途中で投げ出してしまう問題があるということで、手続の簡素化をぜひともお願いしたいということでございます。
 最後に、要望書のほうにも「4.試案には明示の無い論点について」ということで書いています。わかりづらくて申しわけないのですけれども、基金の数とか業種で十分把握しがたいというのは、要するに先日、各基金の規模については御説明がありましたが、その基金に入っている事業所の規模はどうなのだということに関しては、データがないのかもしれませんが、事業所数を考えるとかなり零細なものではないかと思われます。そういうことを考えますと、そういった企業が本当にDB、DCに移行できるのかということで、先ほど宮本委員からもお話がありましたけれども、適年も30%以上が解散したという現実を考えると、今回の厚生年金基金の持続可能性の向上といっても、これを上回るような数の企業が企業年金を継続するというのは実際上難しいのではないか。そういう意味で、もう少しやっていただくことが何かあるのではないか。たとえば、手続の簡素化だとか、運営面の負担の軽減だとか、とにかく中小零細企業が簡単にというのは言葉が悪いですが、手続を非常に簡素化して移れるような制度とするため、もう一段踏み込んで考えていただきたい。
 以上です。
○神野委員長 ありがとうございました。
 ほかいかがでございましょうか。
 駒村委員、どうぞ。
○駒村委員 参考資料1の8ページにかかわることを冒頭に申し上げさせていただいて、2つの目的があると。
1つ目は普及させる。ただ、この普及の目的が非常にあいまいな表現になっていて、なぜ普及が必要なのかということが、はっきり言えば避けているのではないかという雰囲気すらあるのかと思います。
 2つ目については、山口委員、宮本委員がおっしゃったとおりで、要するに税制適格の廃止や今回の厚生年金基金の解散あるいは制度廃止に関して、これよりもう既にかなり後退している状態。これ以上の後退を防ぐために何をしなければいけないか。ただ、これはある種、消火活動的なところなのですね。だから、消火活動で議論を置いてしまっていいのか。消火活動から今後の制度を考えていいのかということは冒頭申し上げさせていただいて、最初に、本来は制度がどうあるべきか考えなければいけない。これは森戸先生も山口先生も委員だったと思いますけれども、企業年金研究会があって、そこで大きい話をしていたのですが、中断していると。
やはり労働市場の産業界、労働界の方からお話があったように、労働市場や金融市場の変化のほうが国の制度の変更よりもはるかに早く動いてしまっている。そういう状況で、今回やはり消火活動的なことも議論して詰めていかなければいけないのはそのとおりだと思いますけれども、それだけにとどまってはいけなくて、早急に厚生年金のあり方についてきちんと方針を出さなければいけないだろうと思います。そういう上で、先ほども森戸先生から御紹介がありましたように、国によっては厚生年金の役割をある種整理して、その上で制度設計に具体的に入っていって、投資教育の限界と可能性もちゃんと検証して、デフォルトファンドでやらなければいけない部分もちゃんとあるのではないかという話に入ってきていると思いますので、もちろん消火活動をしなければいけないとは思うのですけれども、消火活動だけで終わらせてはいけないのではないかということを最初に申し上げさせていただきます。
○神野委員長 わかりました。
 問題解決的対応だけでなく、もう少し意義づけをちゃんとした上で普及させるなら普及させるという根拠を明らかにすべきだということですね。
○駒村委員 そうです。
○神野委員長 わかりました。
 ほかいかがでございますか。
 山口委員、よろしいですか。特に森戸委員の前半の部分などについて、コメントがあれば頂戴したいと思います。
○山口委員 私も基本的には同じ考えでして、特に公的年金のこれからを考えた場合、やはり2009年の財政検証では、出生率の予想と経済前提の予想で9つのケースが出されていて、所得代替率ベースで50%キープできるのは、そのうちの5つだったわけです。9分の5だったわけです。恐らくあの時点から出生率が若干改善した以外は、全部条件が悪くなっていますから、次回の検証では2009年の結果よりも多分悪くなるのではないかと私は考えております。そういう意味では、将来の所得代替率は50%から40%位まで2割も減りますという位に厳しい状況も予想されますので、そういう中で、先ほど駒村先生がおっしゃったような公的年金、私的な老後所得保障の枠組みをもう一度見直すといったことは絶対避けて通れない話だと私も思っております。
 その話とこの問題は、今ある制度の火を何とか消さないようにしたいという思いがありまして、代行部分の消火活動と言えばそういう面もありますけれども、一方で火を消さない活動も合わせてやる必要があるということを申し上げたということでございます。
○神野委員長 あといかがでございましょうか。
 事務局のほうから何かコメントありますか。よろしいですか。
 それでは、一応委員の皆様方から第1の議題につきまして御意見を頂戴いたしましたので、ほかにないようでございましたらば、次に2番目の議題、論点3の「代行制度の見直し」について、委員の皆様方から御質問、御意見を頂戴できればと思います。いかがでございますか。
 そうしたら、森戸委員から既に資料をいただいているので、解説を含めて頂戴できればと思います。
○森戸委員 解説というほどではないのですが、私は1回目を欠席したのですが、議事録を拝見した感じでは、みんなこぞって基金制度を廃止と言っている感じがしたのですけれども、私はそこに書いたのですが、一定の基準を決めて、それに届かない基金は解散を打ってでも速やかに店じまいしてもらう。それはどうしても、そうすると一定の負担が国庫なりにかかるかもしれないけれども、それでもしようがないのではないか。そうしないと将来もっと大きな負担を背負うのではないかというところは試案と同じように考えてはいます。
確かに法的にもあいまいな位置づけで、公的なのだけれども、私的ですねみたいなところがあって、ペーパーにも書きましたが、理事の個人責任が、要するに基金は保険料から控除しているのだから、個人責任を追及できませんとか、個人的にはおかしいと思っているのですが、そういうふうに遮断されたりとか、昔どなたかがぬえ的な制度だとか言ったこともあり、法的な位置づけもあいまいでよくないところもあるとは思うのです。ただ、私個人としては、一定の基準をどこで引くかという大きな問題はありますが、そこを満たす基金については今後も存続を認めてはいいのではないかと思っていまして、その点は試案と立場が違います。
 その根拠は、もちろん一定の基準を満たしているのだから、少なくともやっていけるという前提がある。その計算自体はいろいろ難しいところになるとわからないものもあるのですが、しかし一定の基準でやっていけるという線を引いたら、一応やっていけるほうに入る基金がそれなりにある。
 あとは、そこを一番書いたのですが、やはり厚年基金は、先ほども言いましたけれども、終身給付が原則であり、受給権保護も優れており、だから税制優遇も特法税ももともと基本的にはほぼかからないという優遇されていた企業年金制度の中核にある理想的な制度だと、裏はともかく祭り上げられてきた部分はあると思うのです。AIJ事件は起きましたけれども、それは確かに考えなければいけない部分は出てきたのですが、今までこの制度はいいのですよ、ずっとやっていてくださいと言っていて、実際にそんなに運営も財政も悪くないところに、いきなりやめろと言うというのは、余りに手のひら返しなのではないかというのが率直なところです。別に、急に政策が変わることがいけないとは言いませんけれども、今まではいい制度だと言っていたでしょうというのが1つ素朴な疑問としてあって、一定の基準を満たすのであれば、それはやってもらってもいいのではないかというのが私の基本的な考え方です。
一定の基準の決め方は、しかしいろいろ難しいですねということは書いたのですが、それプラス、これは柿木委員のペーパーなどにも書かれていたことですが、もうちょっと実際に考えていくと、それなりに財政的に悪くもなさそうなところをやめろというか、自主的にやめる方向に持って行くことで、上乗せ部分の給付をもらえなくなる人が加入者でも受給者でも出るかもしれない。出ると。加入者については、同じレベルのほかの制度がかわりに導入されれば不利益はないのでしょうけれども、代行メリットがなくなるので、全ての企業がやる基金がそうしてくれるとも限らない。だから、先ほど皆さんから出たように、適年廃止のときみたいに同じような、結局これを機に制度がなくなってしまったという人が出る可能性があるわけですね。受給者とかでももらっていた年金がなくなりますという人も出てくる。もちろん代行割れしているのだからしようがないという部分はあるけれども、代行割れとかしていないのに、もしかしたら給付が減ってしまうという人が出るのかもしれない。これは5年、10年でどういうふうに解散の方向に持って行くかによるのでわからないですがね。
 ちょっと懸念するのは、解散とか廃止への制度の持って行き方とか、立法の仕方によっては、要するに国がこれまでいい制度だと言ってやっていた基金制度を急にやめろと言うから受給権を失ったという、行政訴訟なのですかね。認可が不当だという訴訟なのか、あるいは訴訟ではなくても、社会的にそういうことが問題化するということもあり得るのではないかと思うのです。そういう社会的コスト、その訴訟で受給者とかが絶対勝てるかというと、それはわからないですけれども、でもそういう社会的コストみたいなことはいろいろあると思うのです。そうすると、つまり廃止と強引に持って行くことによる、そういう社会的コスト、もしかしたら訴訟のコストというものと天秤にかけてやっていけそうな基金は存続させるとしたほうが、その中に自主解散はあるのかもしれませんが、もしかしたらトータルで効率的だということはないのだろうか。そこは何かシミュレーションする能力はないので感覚的な話ですが、5年、10年でどういうふうに解散なり、廃止に持って行くかという持って行き方によっては、そういうこともあり得るのではないかと。そうすると、数字としてもやれるし、基金もやりたいというところまで無理に廃止とする必要まではないのではないかというのが、あとは今まで一応いい制度だと言っていただろうと。実はいい制度ではありませんでした、済みませんということなのかもしれませんが、そこの点が少し引っかかるところではあります。
皆さんの御意見とは違うのかもしれませんが、一応そういうことをペーパーに書かせていただきました。
 以上です。
○神野委員長 ありがとうございました。
 あといかがでございましょうか。
 山口委員、どうぞ。
○山口委員 今おっしゃった一応やっていけるとか、代行割れになっていないとかいう基金まで、なぜ廃止ということをやらなければいけないのかという話は、そういう御意見を持っている方はたくさんいらっしゃると思うのです。
これまでの事務局の説明の中でも実はあったのですけれども、我々の共通認識として、代行制度というのが今後どういうふうになっていくのかということは少し認識しておく必要があると思うのです。1999年にさかのぼるのですが、そのときに厚生年金保険法が改正されて、実は本体の運用利回りの見込みが、それまで5.5%だったのが、そのとき4.0%に引き下げられたのです。それで厚生年金基金の代行部分も、それに歩調を合わせて予定利率を4.0%にするという形で、本体と常に同じような前提条件でやってきていたら、今までどおりの運営ができたわけですが、それをすると積立不足、利率を下げると不足が出ることになったのです。割引率を下げると現在価値は大きくなる関係があるので、給付現価は大きくなりますから、不足が出ることになるのだけれども、その不足を埋めるのではなくて、計算方法を変更するというやり方で今日まで引っ張ってきているわけです。ですから、それが名前は一緒なのですが、最低責任準備金と言っている名前は、1999年以前も以降も同じ名前を使っているから紛らわしいのですが、中身は全く変わってしまっている。換骨奪胎みたいな話なのですが、名前は一緒で中身は変わってしまっているということです。
 それがどういうふうになっているかというと、いわゆる転がし方式というやり方に変わっていて、残高管理みたいなことをやっているだけなのです。それで計算される負債の額は、将来の給付を賄うに足る金額ではないのです。したがって、現在の最低責任準備金を上回る資産を持っているいわゆる代行割れでない基金であっても、今後このまま運営していきますと、必ず財政が行き詰ります。それは必要なお金を貯めていないからです。そのために、どこかのタイミングで一定の水準に達すれば、必ず給付現価負担金というものを本体から基金に補てんするルールになっているのです。ですから、厚生年金基金と厚生年金の本体というのは、給付現価負担金という手段によって結びついた財政になっている。
 1999年以前は、一応外形的には独立していて、本体の財政再計算のときには合算して計算していましたけれども、少なくとも外形的には厚生年金基金と本体はそれぞれ独立して財政を営んでいるものと理解されていたと私は思っているのですが、99年以降はそれが完全になくなってしまった。これは中立化と呼んでいるのですが、中立化をしたことによって、結局財政的には両者は共通のつながった形になっていて、したがって、基金でのいろいろな問題は、即厚生年金本体の問題だという認識になってきたわけです。そういう中でいろいろな事件が起こったりしてきているわけです。ですから、今後もやっていける、代行割れではないと言っている場合でも、本体と無関係に独立してやっていけるということではないことを承知しておく必要があります。
そういう状況の中で、先ほど少し言いかけましたが、厚年本体のほうが今後の財政検証を考えていくと、恐らく余裕がかなりなくなるだろうと私は見ていまして、そういう流れの中で厚生年金基金の給付現価負担金を出して将来的にも基金の面倒を見ていくという構図そのものが今後も果たして維持し続けていくことができるのか。その必然性が本体側からは大分なくなってきているのではないかと。これはあくまで本体側の議論なのですけれども、本体側のほうに、俗な言い方をすれば、尻に火がつく状態に今後なっていく中で、本体の一部を使った企業年金制度というものの意義がかなり以前とは変わってきているという構図の中で、これをどう考えるかという話だと私は理解しております。
 そういうことですので、一見未だ代行割れにもなっていないし、問題ないではないかと言われるのは、それはそれでわかるのですけれども、ただ、今の最低責任準備金を持っていても、自分が独立的に運営することはできないそういうものになってしまっているということは、我々共通の認識として理解しておく必要はあるだろうと思っております。
○神野委員長 森戸委員、どうぞ。
○森戸委員 その点は、前の議事録とかにありますけれども、完全に本体と切り離された話ではないというのは一応わかっているつもりでしたが、ただ、今の御説明は試案なり何なりに書いてあることですね。
○山口委員 それは事務局に説明してもらってください。
○森戸委員 私は、1.3とか1.7あれば結構大丈夫だぞと書いてあるように読んだのですけれども、今のことを聞くと、1.3とか1.7とかあっても実は足りません、将来負担金が絶対来ますよと。それは書いてあるのですか。私が読んでいないだけですか。
○山口委員 ちょっと説明してもらえますか。
○渡辺企業年金国民年金基金課長 試案の中にはそういう形で明確には書いてございません。また必要があれば、資料で御説明申し上げたいと思います。有識者会議等でも一度御説明は申し上げております。
 この1.3、1.7というのは、あくまで1つの分析ということで、代行割れのリスクの実績ということで1回目の資料で出させていただいております。
今、山口先生からお話がございましたのは、平成11年に最低責任準備金の計算方法が大きく変わったという御説明は申し上げたと思うのですが、その変わったことによりまして、本来将来必要な給付と無関係に、最低責任準備金が計算される形になっています。この最低責任準備金と、必要な給付債務、過去期間給付現価と言っておりますが、それとの差額を一定の場合に埋めるという給付現価負担金という制度がございます。それの御説明が最初の資料に入っていないので、ちょっとわかりにくかったのかと思いますが、そこはそういう制度になっているということは事実でございまして、必要があれば、また資料を御用意して御説明したいと思います。
○森戸委員 一応、転がしになって負担金が生じる仕組みはわかっていたつもりですが、問題は1.3とか1.7とか言っても、全然足りないということになるという認識では読んでいなかったので、そこは私の認識不足だったのかもしれません。
ただ、それはAIJが起きる前からそうだったのですね。では、みんなもうちょっと前から言ったほうがよかったのではないですか。
○山口委員 それは森戸先生がおっしゃるとおりで、どちらかと言えば、これは事務局には申しわけないけれども、解散しようとしても何とか頑張りなさい、受給権保護のために頑張りなさいということで、なかなか解散を許してもらえなかったといった事情があったように聞いていますから、実は1999年からこの事実は出ていたわけです。
知っている人は知っているわけですが、一方で代行返上というのがこの時期以降出てきて、単連はどんどん抜けていくのです。残るは総合だけになっていくという図式の中で、余り問題が顕在化しないままずっと推移してきたといったことだったのではないかと思っているのです。
○森戸委員 ありがとうございます。
○神野委員長 では、伊藤参考人。
○伊藤参考人 連合は90年代後半からずっと厚生年金基金の代行制度を廃止すべきだと言ってきております。企業年金の財政リスクを公的年金財政がカバーするような仕組みは、前から問題があると指摘してまいりましたので、廃止する方向で議論を進めていくべきだと考えております。
○神野委員長 宮本委員、どうぞ。
○宮本委員 ありがとうございます。
 私もこの際、今、伊藤参考人がおっしゃったような方向で一度整理をするべきだと考えております。それを前提に、この代行制度の見直しの試案は、全体的には評価できるものだと思います。
その上で、移行期間5年で強制的に廃止させる、それから10年で全体を整理するという、この時間軸についても、適年の廃止のときの期間もおおよそ10年でしたので、一定的に妥当な期間なのかと思います。
 ただ、この限られた期間ですから、ぜひこの1.3や1.7を上回るような基金も含めて、解散、移行が円滑にできるように、厚生労働省としてしっかりと周知、指導、あるいはインセンティブになるような、政策、制度も含めて対応を図ってもらいたいと要望しております。○神野委員長 ありがとうございます。
 柿木委員、何かございますか。
○柿木委員 前も私のほうから申し上げましたけれども、私どもの中でも、優良な厚生年金基金について、今まで果たしてきた役割を考えると残すべきではないかという意見があることも事実でございます。
ペーパーにも書きましたが、いずれにしても代行制度の存続可能性はないと判断されているようですが、我々も実際上、民間の年金の専門家、専門委員会の立場で、これはどういう方がおっしゃるかわかりませんが、とにかく代行制度の持続可能性について、定量的なデータに基づいた見解を次回のヒアリングのときにもぜひ入れていただければと思っております。これは要望です。
○神野委員長 それは後でお答えするとして、駒村委員、どうぞ。
○駒村委員 資料2の7ページを見ますと、単独型と総合型の分布が全然違いますね。これは果たして同じルールで動いているものなのかどうかすら、こう見ると怪しいわけですけれども、これは要するにガバナンスが違う、業界マネジメントがきちんと効いているかどうかとか、最後の責任のつけをちゃんと払える状態になっているかどうかという行動の、いかに同じルールでやっていても、ガバナンスの違いによって結果や状況が違ってくるのかよく見せている図ではないかと思うのです。
 今の御質問、経済界からの御意見もあるわけです。先ほどの森戸先生と山口先生のやりとりの中で考えると、この代行制度というのは60年代に、ある種、当時厚生年金制度が積立て方式を想定した中でつくられた制度だったわけですけれども、73年あたりからも明らかに賦課方式に変わってくるわけです。99年の後から決定的にその性格が変わってしまっているわけです。これの話は先ほどあったものだと思います。
 そういう意味では、我々の発想を、今、仮に代行制度をもしこういう制度を認めるのかという議論にもあるわけでして、そういう中で完全に賦課方式に向かって行く中で、この代行制度を残す積極的な意味が、ロジックを変えて今からつくるという考え方をしてもいいわけですけれども、積極的に代行制度を残す意味があるのか。あるいは将来、再び本体に何十年後か、どこかでけりをつけなくなったときに、再びこの本体に迷惑をかけるようなことにならないのか。そう考えると、代行制度に関する歴史的役割はもう終わったのではないかと私は評価しています。
○神野委員長 ありがとうございます。
 公的な年金制度の性格は大きく変わっているという現状を考えたときに、代行制度の持つ限界というのがあるのではないかということですね。
 あとはいかがでございましょうか。
 森戸委員、どうぞ。
○森戸委員 山口委員に補足的に1個質問なのですけれども、全部基金が廃止となって、先ほどおっしゃったように、最低責任準備金は今、名前は一緒だが、計算は昔と違うということになると、確認ですけれども、今、代行返上というか制度が廃止になったら、そのとき国に返すお金は今の最低責任準備金でいいのですね。だとしたら、一応その時点で穴が開くというか、返す額としては、本来なら足りないかもしれない額が返されると思っていいのですか。
○山口委員 そうですね。全くそのとおりで、本来代行給付に充てるために必要とされる債務の額とは違う額を国に返せば、それで支払の義務を引き継ぎますよというルールになっているわけです。
ですから、そういう意味では、今の最低責任準備金というのは、国が責任を引き取る金額という意味では一貫しているわけですが、それが数理計算上、それによって代行給付が払えるのか、そういう現在価値になっているかというと、そうはなっていない訳です。だから、この最低責任準備金の額を一生懸命クリアしていても、給付のキャッシュフローは責任を持って払えないものなのです。だけれども、国が引き取るのは、その額でいいですよというルールになっているわけです。ですから、基金を継続していった場合には、足りない金額ですから、いずれ基金が一生懸命代行給付をしていこうとすると、どこかで行き詰ってくるわけです。このため、それを補てんするために、国が給付現価負担金というものを基金に払ってあげますよというルールにしているわけです。ということは、解散して先に国に返しても給付に足りない金額であり、一方、そのまま基金を継続しても足りなくなるので後で国が給付現価負担金を払う形になっても、結局は同じことになっているわけです。
○森戸委員 そこが同じかどうか。やはり今、それは言ってみれば赤のままだけれども、返すというのも、今やったほうが、将来制度を続けていくより、まだ、要するに損というか、今のこの段階でやめてしまったほうがいいということになるわけですかね。
 今とにかく返上してしまえば、その分、赤が確定してしまうわけですね。それは、いずれにしても今後大きくなることしかないと考えていいのですか。別に私、何となくすごい存続派になっている気もしますけれども、そんなでもなかったのですが、結果的に何かそういう立場になりましたが、一応確認を自分の不勉強なあれも含めて。
○山口委員 最低責任準備金と実際の運用資産というのは、この際関係なしにしておいていただいて、今の最低責任準備金と前の最低責任準備金の差が、結局財政数理的には足りない分なのです。それは、要するに不足した状態のままで国に返しても、給付は国の方で責任を持ってしますよというルールは今後も変わりませんので、今後、いつのタイミングで解散するかというのは、この差が多分だんだん大きくなっていくのだと思うのです。だから、それでも今のルールだと、現在の最低責任準備金を返せばいいよと言っているわけですから、どのタイミングでやっても、それは中立的なはずですね。ということは、今やらなければいけないのだという理屈はここからは出てこないということだと思います。
 ただ、今度は見方を変えて、最低責任準備金と年金資産との関係において、代行割れが生じてあれだけ大きな穴が開いていたという事実からして、運用環境が今後変わっていったときに、また大きな穴が開くかもしれない。つもり、資産運用と現在の最低責任準備金との関係において、運用のリスク要因がある。それは先に行けば広がる可能性がある、あるいは縮まるかもしれないですけれども、運用のリスクというのは両サイドにありますから、そういうリスクがあるということについて、本体側としてどう考えるかということで、そこからこの問題の処理は早いほうがいいのではないかという意見もあるのではないかと思います。
○森戸委員 だから、基金が未来永劫続くのだったら返すということが生じないから、その話は出ないわけですね。だけれども、そういうわけではないとすれば、いずれにせよ、その負担はずっと赤のまま負っているということですね。
 何か私がレクチャーを受けているみたいで申しわけないです。
○山口委員 多分、今後ずっと基金を続けていかれた場合には、必ず給付現価負担金というのは本体から出てきます。本体から足らず米を払ってあげないと、基金で代行給付することはできなくなっていきます。ですから、基金とは一体その時点で何なのだということが出てくると思うわけです。基金は単なる支払代行機関かということになります。国からお金をもらって、それを右から左に受給者に払っている。国からお金をもらって、また払う。そういう図式になっていくわけです。そうすると、基金制度というのは一体何なのだという疑問が出てくることになる。
○森戸委員 ただ、要するにAIJまでは、基金は支払代行機関になったけれども、それでまさに中小企業の労働者のために制度を維持しているのだという説明がされていたと思うのですよ。そういうお財布みたいな形になってしまったが、それでやっていくのがいいですよと言っていたような気がするので、まあいいですけれども、多分これは議事録を読んだら、私すごくアホみたいに見えるのでしょうね。ちょっとカットしてもらいます。
○渡辺企業年金国民年金基金課長 今、御議論を聞いていて、事務局の資料不足を痛感しておりまして、申しわけございません。
 今、出たような給付原価負担金のお話ですとか、こういう積立金周りのお話は、少し資料を整えて、2ラウンド目の御議論のときにきちんと御議論いただけるようにしたいと思います。
○神野委員長 ほかいかがでございましょうか。
 伊藤参考人、どうぞ。
○伊藤参考人 論点2、3ではなく、1についてよろしいですか。
○神野委員長 関連する限り、できるだけ2、3に絞っていただきたいのですが、戻ってもいいと最初に言ってありますので、関連する限りにおいて構いません。
○伊藤参考人 先ほど森戸先生のご意見の中に、訴訟などのリスクという話もありましたが、試案の上乗せ給付の停止の前倒しという提案について、退職給付である上乗せ部分を最低責任準備金に充てることは、財産権との関係で問題があるのではないかと思うのですが、今のところは問題なっていないようです。問題になっていない理由、その解釈を教えてください。最高裁の判決を事務局に教えてもらいましたが、判決には、財産権の性質、その内容を変更する程度、公益の性質などを総合的に勘案すると書いてありました。そうすると逆に、内容の変更の程度次第では財産権などの問題が生ずる可能性もあるように思ったものですから、どのように解釈されるのか教えてください。
○渡辺企業年金国民年金基金課長 今、御指摘の上乗せの受給権のところは、柿木委員の先ほどの御質問にもございましたし、大変重要なことですので、改めてまた2ラウンド目のときにペーパー等でもお出ししたいと思いますが、今の法制的な仕組みということで申し上げますと、今の厚年法の中では、代行給付というのは、基金自体が代行割れであっても、代行割れでなくても必ずこれは保障されるという仕組みになっています。
 一方、基金が解散しますと、いわゆる上乗せ給付につきましては、残余財産の範囲内で分配するという形になっておりますので、その意味では、残余財産が3階部分まできちんと積み立ててあれば、受給権は保護されますし、逆にそこが足りなければ残余財産の範囲内でというのが今の公的なつくりということでございます。
 ただ、今の御指摘の今回試案で提案をしておりますのは、言わば解散をする前段階でそれに少し先立って3階部分をとめるということは、新たな立法措置になりますので、御指摘のように既裁定年金というのは、いわゆる財産権に当たりますので、現法29条の中での公共の福祉による制限ということで、どこまでこれが認め得るのかということについて、これは私どもが試案を提出する前に一応政府部内でも法制的に相談をしながらつくっております。
 ただいま御指摘がありました財産権の制限に対して、53年の最高裁の判決がございまして、その中では、今ありました財産権に対する変更の程度と、逆にそれに対する保護される公益との比較考慮といいますか、総合勘案だということかと思います。
 その意味で申し上げますと、基金の給付というのは、第1回目のときにも申し上げましたが、今、平均で大体月額4万円弱でございますが、そのうち8割は代行給付ということでございまして、その意味では、8割を占める代行給付というのは、何があっても必ず保全されるというのが現行の仕組みでございます。その意味では、確かに上乗せ部分というのは、ある意味では労使の側から見れば、労働契約的な部分もあると思いますが、そこは基金給付としては法的には賃金とは別のものということで整理をされていますので、そういう意味では基金給付全体として見れば8割は保全されるという意味での保全の程度ということと、逆に代行割れ基金の場合は、もう既に上乗せ給付についてはそれに相当する財産がないということですので、見方によっては、今、受給者の方に出していらっしゃる年金というのは、公的年金である代行部分の資金を使って上乗せを出しているということですので、その意味で今回は特例解散という特別な恩典といいますか、特例を与えて解散をするというところに限って見れば、やはり厚年本体にある程度の負荷をかけながら解散していくというときに、その負荷をできるだけ早くストップするといいますか、その意味で保護される公益という、そことの比較考慮で考えて、これについては政府部内で今、相談している限りでは、法制的にはぎりぎり妥当なものということで整理できるのではないかということになっています。
 ただ、もちろん法制的整理ということと、先ほど来出ております実際の現場での受給者の方への御説明とか、お話のありました訴訟リスクも含めて、そこはまた別問題として、これは対応を考えていかなければいけないことだと思っています。
○神野委員長 あといかがでございますか。よろしいですか。
 先ほどヒアリングのときに定量分析の民間研究者をということで柿木委員から御発言がありましたが、時間の制約もございますので、できればこれまで説明してまいりました趣旨どおりにヒアリングについては研究者ではない方をお呼びしたと思っております。
 ただ、研究者の業績であれば、わざわざヒアリングをするまでもなく、あるのであれば、ありますかね。つまり、事務局のほうで準備できるのであれば、要領よくまとめて読んでいただければ、なければしようがないわけですが、知っていますか。
○渡辺企業年金国民年金基金課長 定量分析ということになるとあるかどうかわかりませんが、当たってみます。柿木委員からお話がありましたので、御相談もしながら、何かこの代行部分に関してのさまざまな論文等、集められるものがあれば集めて、次々回以降にでもお出ししたいいと思います。
○神野委員長 それでは、申しわけありませんが、ヒアリングのほうはそういうことでやらせていただければと思っております。
 ほかいかがでございますか。よろしいでしょうか。
 それでは、きょうは議題2と3につきまして、ひとあたり委員の皆さん方から御意見を頂戴したということで、特にないようでございますので、本日はこれにて終了させていただきたいと思います。
 事務局のほうから、次回以降の日程等々について、連絡事項をお願いできればと思います。よろしくお願いします。
○渡辺企業年金国民年金基金課長 次回は、12月10日の月曜日、午後2時からを予定しております。内容につきましては、基金の現場の方、あるいは母体企業の方々からのヒアリングということを予定しておりますが、詳細につきましては、また追って御連絡をさせていただきたいと思います。
○神野委員長 どうもありがとうございました。
 それでは、本日はこれにて終了いたしたいと思いますが、議事運営に御協力いただきまして、時間を余して終わることができました。御協力に感謝すると同時に、御多忙の折、毎々お集まりいただいていることに重ねて感謝する次第でございます。
 どうもありがとうございました。


(了)

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